特許異議申立
2022-700586
着色感光性樹脂組成物、顔料分散液、隔壁、有機電界発光素子、画像表示装置及び照明
- 審判番号
- 2022-700586
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-231205外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6988780
- 請求日
- 2022年07月05日
- 審決日
- 2022年11月30日
- 公報発行日
- 2022年12月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】三菱ケミカル株式会社
- 【権利者代理人】田▲崎▼ 聡
- 【権利者代理人】伏見 俊介
- 【権利者代理人】大浪 一徳
- 【異議申立人】小黒 佑子
- 分類
- P1651.113-Y (G03F) / P1651.121-Y (G03F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6988780号発明「着色感光性樹脂組成物、顔料分散液、隔壁、有機電界発光素子、画像表示装置及び照明」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6988780号の請求項1ないし18に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6988780号の請求項1~18に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願(特願2018-231205号)は、平成29年11月29日(先の出願に基づく優先権主張 平成28年12月2日)を国際出願日とする特願2018-553266号の一部を平成30年12月10日に新たな特許出願としたものであって、令和3年12月6日にその特許権の設定登録がされ、令和4年1月5日に特許掲載公報が発行された。
本件特許について、特許掲載公報の発行の日から6月以内である令和4年7月5日に、特許異議申立人 小黒 佑子(以下「特許異議申立人」という。)から、全請求項に対して特許異議の申立てがされた。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1~18に係る発明(以下、それぞれ、「本件特許発明1」~「本件特許発明18」という。)は、特許請求の範囲の請求項1~18に記載された事項によって特定されるとおりの、以下のものである。
「【請求項1】
(A)着色剤、(B)分散剤、(C)バインダー樹脂、(D)光重合性モノマー及び(E)光重合開始剤を含有する着色感光性樹脂組成物であって、
前記(A)着色剤が、下記一般式(I)で表される化合物、前記化合物の幾何異性体、前記化合物の塩、及び前記化合物の幾何異性体の塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する(A1)有機黒色顔料を含み、
前記(B)分散剤が、塩基性官能基を有する高分子分散剤であり、かつアクリル系分散剤を含み、
前記(C)バインダー樹脂が、塩基性官能基を有さず、前記(C)バインダー樹脂における(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂の含有割合が85質量%以上であり、
前記(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂が、下記一般式(II)で表される繰り返し単位構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂及び下記一般式(III)で表される部分構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂の一方又は両方を含むことを特徴とする着色感光性樹脂組成物。
【化1】
[図:0001392063000001.jpg]
(式(I)中、Ra1及びRa6は各々独立に、水素原子、CH3、CF3、フッ素原子又は塩素原子を表し;
Ra2、Ra3、Ra4、Ra5、Ra7、Ra8、Ra9及びRa10は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、Ra11、COOH、COORa11、COO-、CONH2、CONHRa11、CONRa11Ra12、CN、OH、ORa11、COCRa11、OOCNH2、OOCNHRa11、OOCNRa11Ra12、NO2、NH2、NHRa11、NRa11Ra12、NHCORa12、NRa11CORa12、N=CH2、N=CHRa11、N=CRa11Ra12、SH、SRa11、SORa11、SO2Ra11、SO3Ra11、SO3H、SO3-、SO2NH2、SO2NHRa11又はSO2NRa11Ra12を表し;
且つ、Ra2とRa3、Ra3とRa4、Ra4とRa5、Ra7とRa8、Ra8とRa9、及びRa9とRa10からなる群から選ばれる少なくとも1つの組み合わせは、互いに直接結合してもよく、又は酸素原子、硫黄原子、NH若しくはNRa11ブリッジによって互いに結合してもよく;
Ra11及びRa12は各々独立に、炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数3~12のシクロアルケニル基又は炭素数2~12のアルキニル基を表す。)
【化2】
[図:0001392063000002.jpg]
(式(II)中、R11は水素原子又はメチル基を表し;
R12はそれぞれ置換基を有していてもよい、2価の環状の脂肪族基、2価の芳香族環基、又は1以上の2価の環状の脂肪族基と1以上の2価の芳香族環基とを連結した基を表し;
式(II)中のベンゼン環は、更に任意の置換基により置換されていてもよく;
*は結合手を表す。)
【化3】
[図:0001392063000003.jpg]
(式(III)中、R13は各々独立に、水素原子又はメチル基を表し;
R14は、環状炭化水素基を側鎖として有する2価の炭化水素基を表し;
R15及びR16は各々独立に、置換基を有していてもよい2価の脂肪族基を表し;
m及びnは各々独立に0~2の整数を表し;
*は結合手を表す。)
【請求項2】
前記(C)バインダー樹脂における前記(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂の含有割合が90質量%以上である、請求項1に記載の着色感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記アクリル系分散剤が、窒素原子を含有するアクリル系分散剤である、請求項1又は2に記載の着色感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A)着色剤の含有割合が、前記着色感光性樹脂組成物の全固形分あたり60質量%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の着色感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(A)着色剤が、さらに(A2)有機着色顔料及び(A3)カーボンブラックの一方又は両方を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の着色感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(A)着色剤における(A1)有機黒色顔料の含有割合が10質量%以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の着色感光性樹脂組成物。
【請求項7】
(A)着色剤、(B)分散剤、(C)バインダー樹脂、(D)光重合性モノマー及び(E)光重合開始剤を含有する、有機電界発光素子の隔壁を形成するための着色感光性樹脂組成物であって、
前記(A)着色剤が、下記一般式(I)で表される化合物、前記化合物の幾何異性体、前記化合物の塩、及び前記化合物の幾何異性体の塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する(A1)有機黒色顔料を含み、
前記(B)分散剤が、塩基性官能基を有する高分子分散剤であり、
前記(C)バインダー樹脂における(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂の含有割合が85質量%以上であり、
前記(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂が、下記一般式(II)で表される繰り返し単位構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂及び下記一般式(III)で表される部分構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂の一方又は両方を含むことを特徴とする着色感光性樹脂組成物。
【化4】
[図:0001392063000004.jpg]
(式(I)中、Ra1及びRa6は各々独立に、水素原子、CH3、CF3、フッ素原子又は塩素原子を表し;
Ra2、Ra3、Ra4、Ra5、Ra7、Ra8、Ra9及びRa10は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、Ra11、COOH、COORa11、COO-、CONH2、CONHRa11、CONRa11Ra12、CN、OH、ORa11、COCRa11、OOCNH2、OOCNHRa11、OOCNRa11Ra12、NO2、NH2、NHRa11、NRa11Ra12、NHCORa12、NRa11CORa12、N=CH2、N=CHRa11、N=CRa11Ra12、SH、SRa11、SORa11、SO2Ra11、SO3Ra11、SO3H、SO3-、SO2NH2、SO2NHRa11又はSO2NRa11Ra12を表し;
且つ、Ra2とRa3、Ra3とRa4、Ra4とRa5、Ra7とRa8、Ra8とRa9、及び
Ra9とRa10からなる群から選ばれる少なくとも1つの組み合わせは、互いに直接結合してもよく、又は酸素原子、硫黄原子、NH若しくはNRa11ブリッジによって互いに結合してもよく;
Ra11及びRa12は各々独立に、炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数3~12のシクロアルケニル基又は炭素数2~12のアルキニル基を表す。)
【化5】
[図:0001392063000005.jpg]
(式(II)中、R11は水素原子又はメチル基を表し;
R12はそれぞれ置換基を有していてもよい、2価の環状の脂肪族基、2価の芳香族環基、又は1以上の2価の環状の脂肪族基と1以上の2価の芳香族環基とを連結した基を表し;
式(II)中のベンゼン環は、更に任意の置換基により置換されていてもよく;
*は結合手を表す。)
【化6】
[図:0001392063000006.jpg]
(式(III)中、R13は各々独立に、水素原子又はメチル基を表し;
R14は、環状炭化水素基を側鎖として有する2価の炭化水素基を表し;
R15及びR16は各々独立に、置換基を有していてもよい2価の脂肪族基を表し;
m及びnは各々独立に0~2の整数を表し;
*は結合手を表す。)
【請求項8】
前記(C)バインダー樹脂における前記(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂の含有割合が90質量%以上である、請求項7に記載の着色感光性樹脂組成物。
【請求項9】
前記(A)着色剤の含有割合が、前記着色感光性樹脂組成物の全固形分あたり60質量%以下である、請求項7又は8に記載の着色感光性樹脂組成物。
【請求項10】
前記(A)着色剤が、さらに(A2)有機着色顔料及び(A3)カーボンブラックの一方又は両方を含む、請求項7~9のいずれか1項に記載の着色感光性樹脂組成物。
【請求項11】
前記(A)着色剤における(A1)有機黒色顔料の含有割合が10質量%以上である、請求項7~10のいずれか1項に記載の着色感光性樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の着色感光性樹脂組成物で構成される隔壁。
【請求項13】
請求項12に記載の隔壁を備える有機電界発光素子。
【請求項14】
請求項13に記載の有機電界発光素子を含む画像表示装置。
【請求項15】
請求項13に記載の有機電界発光素子を含む照明。
【請求項16】
(A)着色剤、(B)分散剤及び(C)バインダー樹脂を含有する顔料分散液であって、
前記(A)着色剤が、下記一般式(I)で表される化合物、前記化合物の幾何異性体、前記化合物の塩、及び前記化合物の幾何異性体の塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する(A1)有機黒色顔料を含み、
前記(B)分散剤が、塩基性官能基を有する高分子分散剤であり、かつアクリル系分散剤を含み、
前記(C)バインダー樹脂が、(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂を含み、
前記(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂が、下記一般式(II)で表される繰り返し単位構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂及び下記一般式(III)で表される部分構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂の一方又は両方を含み、着色感光性樹脂組成物を製造するために用いられることを特徴とする顔料分散液。
【化7】
[図:0001392063000007.jpg]
(式(I)中、Ra1及びRa6は各々独立に、水素原子、CH3、CF3、フッ素原子又は塩素原子を表し;
Ra2、Ra3、Ra4、Ra5、Ra7、Ra8、Ra9及びRa10は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、Ra11、COOH、COORa11、COO-、CONH2、CONHRa11、CONRa11Ra12、CN、OH、ORa11、COCRa11、OOCNH2、OOCNHRa11、OOCNRa11Ra12、NO2、NH2、NHRa11、NRa11Ra12、NHCORa12、NRa11CORa12、N=CH2、N=CHRa11、N=CRa11Ra12、SH、SRa11、SORa11、SO2Ra11、SO3Ra11、SO3H、SO3-、SO2NH2、SO2NHRa11又はSO2NRa11Ra12を表し;
且つ、Ra2とRa3、Ra3とRa4、Ra4とRa5、Ra7とRa8、Ra8とRa9、及びRa9とRa10からなる群から選ばれる少なくとも1つの組み合わせは、互いに直接結合してもよく、又は酸素原子、硫黄原子、NH若しくはNRa11ブリッジによって互いに結合してもよく;
Ra11及びRa12は各々独立に、炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数3~12のシクロアルケニル基又は炭素数2~12のアルキニル基を表す。)
【化8】
[図:0001392063000008.jpg]
(式(II)中、R11は水素原子又はメチル基を表し;
R12はそれぞれ置換基を有していてもよい、2価の環状の脂肪族基、2価の芳香族環基、又は1以上の2価の環状の脂肪族基と1以上の2価の芳香族環基とを連結した基を表し;
式(II)中のベンゼン環は、更に任意の置換基により置換されていてもよく;
*は結合手を表す。)
【化9】
[図:0001392063000009.jpg]
(式(III)中、R13は各々独立に、水素原子又はメチル基を表し;
R14は、環状炭化水素基を側鎖として有する2価の炭化水素基を表し;
R15及びR16は各々独立に、置換基を有していてもよい2価の脂肪族基を表し;
m及びnは各々独立に0~2の整数を表し;
*は結合手を表す。)
【請求項17】
前記(B)分散剤の含有割合が、(A)着色剤100質量部に対して10質量部以上である、請求項16に記載の顔料分散液。
【請求項18】
前記アクリル系分散剤が、窒素原子を含有するアクリル系分散剤である、請求項16又は17に記載の顔料分散液。」
第3 特許異議申立ての概要
1 証拠
特許異議申立人が提出した証拠は、特許異議申立書第110頁の「5 証拠方法」によると、以下のとおりである。
甲第1号証:国際公開第2013/115268号
甲第2号証:国際公開第2013/062011号
甲第3号証:国際公開第2015/046178号
甲第4号証:特開2016-164623号公報
甲第5号証:特開2016-167030号公報
甲第6号証:国際公開第2016/143878号
甲第7号証:国際公開第00/24736号(特表2002-528448号)
甲第8号証:国際公開第2009/010521号(特表2010-534726号)
甲第9号証:国際公開第2010/081624号(特表2012-515233号)
特許異議申立書第110頁の「5 証拠方法」における、甲第7号証~甲第9号証の記載は、上記のとおり、カッコ内に公表公報を併記した上で国際公開を記載した形式である。一方、「甲第7号証の写し」~「甲第9号証の写し」として提出された添付書類は、カッコ内に併記された公表公報である。
特許異議申立書第70~75頁によると、甲第7号証~甲第9号証は、外国語により国際公開されているため、便宜上、日本語による公表公報を用いたと記載されている。
そのため、本決定においては、甲第7号証~甲第9号証は、あくまで国際公開であるとしたうえで、カッコ内の公表公報はその参考訳であるとした。
なお、甲第1~5号証のそれぞれが主引用文献である(以下、「甲第1号証」~「甲第9号証」を、それぞれ、「甲1」~「甲9」という。)。
2 申立て理由の概要
特許異議申立人が主張する取消しの理由は、概略、以下のとおりである(特許異議申立書の第1~11及び109~110頁)。
(1)特許法29条1項3号(同法113条2号)
本件特許発明1~5、7~10及び12~18は、甲1に記載された発明である。
本件特許発明1~5、7~10及び12~18は、甲7~9に記載された周知技術を参酌すると、甲2に記載された発明である。
本件特許発明16~18は、甲3、甲4又は甲5に記載された各発明である。
(2)特許法29条2項(同法113条2号)
本件特許発明1~15は、甲1~甲6に記載された発明に基づいて、その発明が属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものである。
本件特許発明16~18は、甲1~甲5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 当合議体の判断
1 甲1~5の記載及び甲1~5に記載された発明
(1)甲1の記載
甲1は、先の出願前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載された文献であるところ、そこには、以下の記載がある。
なお、下線は当合議体が付与したものであって、引用発明の認定及び判断等において活用した箇所を示す(以下、他の甲号証についても同様である。)。
ア 「技術分野
[0001] 本発明は、着色感光性組成物等に関する。詳しくは、例えば液晶ディスプレイ等のカラーフィルターにおいてブラックフォトスペーサー等の形成に好ましく用いられる着色感光性組成物及びこの着色感光性組成物を用いて形成されたブラックフォトスペーサーとこのブラックフォトスペーサーを含むカラーフィルターに関する。
・・・中略・・・
発明が解決しようとする課題
・・・中略・・・
[0009] 本発明は、このような事情に鑑みてなされたものである。即ち、本発明の主たる課題は、フォトリソグラフィー法により高さの異なるブラックフォトスペーサーを一括形成する方法において、遮光性と液晶の電圧保持率を確保した上で、形状や段差のコントロールが可能で、基板との密着性に優れたブラックフォトスペーサーを形成し得る着色感光性組成物を提供することにある。
また、本発明の他の課題は、このような着色感光性組成物により形成されたブラックフォトスペーサーを提供することにある。
また更に、本発明の他の課題は、このようなブラックフォトスペーサーを備えるカラーフィルターを提供することにある。
課題を解決するための手段
[0010] 本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、着色剤として特定の顔料を使用することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明の要旨は以下の通りである。
[0011][1] 顔料、バインダー樹脂、光重合性モノマー、及び光重合開始剤を含む着色感光性組成物であって、前記顔料が、下記(A)に示す顔料及び(B)に示す顔料を含む着色感光性組成物。
(A)C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ64、及びC.I.ピグメントオレンジ72からなる群より選ばれる1つ
(B)C.I.ピグメントブルー60
[2] 前記顔料が、C.I.ピグメントオレンジ64及びC.I.ピグメントブルー60を含む上記[1]に記載の着色感光性組成物。
[3] 前記顔料が、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントバイオレット23、及びC.I.ピグメントバイオレット29からなる群より選ばれる1つをさらに含む上記[1]又は[2]に記載の着色感光性組成物。
[4] 前記顔料が、下記(1)に示す顔料又は(2)に示す顔料を含む上記[1]に記載の着色感光性組成物。
(1) C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントブルー60、及びC.I.ピグメントレッド254
(2) C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントブルー60、及びC.I.ピグメントバイオレット29
[5] 上記[1]乃至[4]のいずれかに記載の着色感光性組成物を用いて形成されたブラックフォトスペーサー。
[6] 上記[5]に記載のブラックフォトスペーサーを含むカラーフィルター。
発明の効果
[0012] 本発明によれば、フォトリソグラフィー法により高さの異なるブラックフォトスペーサーを一括形成する方法において、光吸収特性の異なる顔料種を適切に組み合わせ、紫外領域と可視領域の光吸収のバランスを確保することで、遮光性と液晶の電圧保持率を維持しつつ、形状や段差をコントロールすると共に、基板との高い密着性を実現することができる。」
イ 「発明を実施するための形態
・・・中略・・・
[0020][着色感光性組成物]
以下に本発明の着色感光性組成物の構成材料について説明する。
[0021][1]顔料
顔料は、本発明の着色感光性組成物を着色するものをいう。
顔料としては青色顔料、緑色顔料、赤色顔料、黄色顔料、紫色顔料、オレンジ顔料、ブラウン顔料、黒色顔料等各種の色の顔料を使用することができる。また、その構造としてはアゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、ジオキサジン系、インダンスレン系、ペリレン系等の有機顔料や、種々の無機顔料等が利用可能である。
[0022] 本発明の着色感光性組成物では、顔料として、下記(A)及び(B)を必須成分として含有する。
(A)C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ64、及びC.I.ピグメントオレンジ72からなる群より選ばれる1つ
(B)C.I.ピグメントブルー60
本発明の着色感光性組成物では、顔料として、上記(A)及び(B)を必須成分として含有する以外は、用いる顔料には特に制限はなく、赤、緑、青色等の各色の混合による黒色色材を用いることができる。更に、黒色顔料や、その他の無機又は有機の顔料、染料の中から適宜選択して併用することができる。
・・・中略・・・
[0030] 黒色顔料としては、ペリレンブラック(BASF社製 K0084、K0086)、シアニンブラック、ファーストブラックHB(C.I.26150)、Irgaphor Black S 0100 CF(BASF社製)、カーボンブラック、チタンブラックを挙げることができる。
・・・中略・・・
[0041][2]バインダー樹脂
本発明の着色感光性組成物に用いられるバインダー樹脂としては、カラーフィルターに使用される部材の樹脂であれば特に制限無く使用でき、例としてはエポキシアクリレート系樹脂、ノボラック系樹脂、ポリビニルフェノール系樹脂、アクリル系樹脂、カルボキシル基含有エポキシ樹脂、カルボキシル基含有ウレタン樹脂等が挙げられるが、形状や段差のコントロール、基板との密着性の観点から、カルボキシル基を有するエポキシアクリレート樹脂やアクリル樹脂を用いることが好ましく、カルボキシル基を有するエポキシアクリレート樹脂を用いることがさらに好ましい。
[0042] 上記エポキシアクリレート樹脂とは、エポキシ樹脂(又はエポキシ化合物)にα,β-不飽和モノカルボン酸又はエステル部分にカルボキシル基を有するα,β-不飽和モノカルボン酸エステルを付加させ、さらに、多塩基酸又はその無水物を反応させることにより合成される。かかる反応生成物は化学構造上、実質的にエポキシ基を有さず、かつ「アクリレート」に限定されるものではないが、エポキシ樹脂(又はエポキシ化合物)が原料であり、かつ「アクリレート」が代表例であるので、慣用に従いこのように命名したものである。
・・・中略・・・
[0045]<アルカリ可溶性樹脂(A’’),アルカリ可溶性樹脂(A1’’)>
本発明におけるバインダー樹脂として、特に好ましいものの一つに、下記一般式(1-a’’)で示されるエポキシ化合物(a’’)と不飽和基含有カルボン酸(b’’)との反応物を、多塩基酸及びその無水物(c’’)のうち少なくとも一方と反応させて得られるアルカリ可溶性樹脂(A’’)が挙げられる。
[0046][化1]
[図:0001392063000010.jpg]
[0047]〔上記一般式(1-a’’)において、Xは下記一般式(2a)、(2b)又は(3)で表される連結基を示す。但し、分子構造中に1つ以上のアダマンタン構造を含む。lは、2又は3の整数を示す。
[0048][化2]
[図:0001392063000011.jpg]
[0049](上記一般式(2a)及び(2b)において、R1~R4及びR13~R15は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアダマンチル基、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基を示す。
上記一般式(3)において、R5~R12は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基
を示す。Yは、置換基を有していてもよい、アダマンタン構造を含む2価の連結基を示す。
上記一般式(2a)、(2b)及び(3)において、*は、一般式(1-a’’)におけるグリシジルオキシ基との結合部位を示す。)〕
・・・中略・・・
[0055] 特に、前記一般式(1-a’’)で表されるエポキシ化合物(a’’)は、下記一般式(6)又は(7)で表されることが好ましい。
[0056]
[化4]
[図:0001392063000012.jpg]
・・・中略・・・
[0100] <アルカリ可溶性樹脂(A)>
アルカリ可溶性樹脂(A)は、特定のエポキシ樹脂(a)と、不飽和基含有カルボン酸(b)との反応物を、更に多塩基酸及びその無水物(c)のうち少なくとも一方と反応させて得られるものである。
[0101](1) エポキシ樹脂(a)
エポキシ樹脂(a)は下記一般式(1-a)で表される。
[0102][化6]
[図:0001392063000013.jpg]
・・・中略・・・
[0140]<アルカリ可溶性樹脂(A’)>
本発明におけるバインダー樹脂として、特に好ましいものの他の例として、下記一般式(1-a’)で示されるエポキシ化合物(a’)と、不飽和基含有カルボン酸(b’)との反応物を、多塩基酸及びその無水物(c’)のうち少なくとも一方と反応させて得られるアルカリ可溶性樹脂(A’)が挙げられる。
[0141]
[化9]
[図:0001392063000014.jpg]
・・・中略・・・
[0163]<アルカリ可溶性樹脂(A’’’)>
本発明におけるバインダー樹脂として、特に好ましいものの他の例として、下記一般式(1-a’’’)で示されるエポキシ樹脂(a’’’)と不飽和基含有カルボン酸(b’’’)との反応物を、多塩基酸及びその無水物(c’’’)のうち少なくとも一方と反応させて得られるアルカリ可溶性樹脂(A’’’)が挙げられる。
[0164][化12]
[図:0001392063000015.jpg]
[0165]〔上記一般式(1-a’’’)において、R51は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、R52は炭素数5~16の2価の多環式炭化水素基を表し、R53及びR54は各々独立に、水素原子又はグリシジル基を表す。sは1又は2を表す。t及びzは各繰り返し単位の割合を示し、t≧z≧0.5tである。〕
・・・中略・・・
[0174] エポキシ樹脂(a’’’)としては、ジシクロペンタジエンと上記フェノール系化合物との重付加反応物をグリシジル化してなる、下記一般式(1-a’’’-1)で表される
化合物が特に好ましい。
[0175][化15]
[図:0001392063000016.jpg]
・・・中略・・・
[0186] 本発明の着色感光性組成物におけるバインダー樹脂としては、上記のアルカリ可溶性樹脂(A)、(A’)、(A’’)、(A’’’)、(A1’’)の内、形状や段差のコントロール、基板との密着性のバランスの点からアルカリ可溶性樹脂(A)と(A’’’)が好ましい。
・・・中略・・・
[0272][着色感光性組成物の調製方法]
本発明の着色感光性組成物は常法に従って調製される。以下に、例を挙げて具体的に説明するが、本発明における着色感光性組成物の調製方法は、当該方法に限定される訳ではない。
[0273] 顔料の分散安定性の確保の点から、本発明の着色感光性組成物は、以下に述べるように、予め顔料分散液を調製し、これにその他の成分を混合する調製方法が好ましい。」
ウ 「実施例
[0301]
次に、実施例及び比較例を挙げて本実施の形態をより具体的に説明するが、本実施の形態はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下において「部」は「重量部」を表す。
[0302]
以下の実施例及び比較例で用いた着色感光性組成物の構成成分は次の通りである。
[0303]<バインダー樹脂-1>
日本化薬(株)製「ZCR-1569H」(MW=3000~4000、酸価=約100mg-KOH/g)
なお、このバインダー樹脂-1は、本発明における「アルカリ可溶性樹脂(A)」に相当する。
[0304]<バインダー樹脂-2>
日本化薬(株)製「ZCR-1642H」(MW=5000~6500、酸価=約100mg-KOH/g)
なお、このバインダー樹脂-2は、本発明における「アルカリ可溶性樹脂(A)」に相当する。
[0305]<バインダー樹脂-3>
下記構造(11)のエポキシ化合物とアクリル酸との反応物を、トリメチロールプロパン(TMP)及びビフェニルテトラカルボン酸2無水物(BPDA)と反応させて得られた樹脂(MW=3500~4500、酸価=約110mg-KOH/g)
[0306][化21]
[図:0001392063000017.jpg]
・・・中略・・・
[0309] なお、このバインダー樹脂-3は、本発明における「アルカリ可溶性樹脂(A1”)」に相当する。
[0310]<分散剤>
ビックケミー社製「DisperBYK-2000」
<分散助剤>
ループリゾール社製「S12000」
<界面活性剤>
大日本インキ化学社製「メガファック F-475」
<溶剤-1>
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
<溶剤-2>
MB:3-メトキシブタノール
[0311]<光重合開始剤>
下記化合物。
[0312]
[化22]
[図:0001392063000018.jpg]
[0313]<光重合性モノマー>
DPHA:日本化薬(株)製ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
[0314][顔料分散液-1~10の調製]
表1に記載の顔料、分散剤、分散助剤、バインダー樹脂、及び溶剤を、表1に記載の重量比で混合した。ここに、分散容器の容積の80%のジリコニアビーズ(平均粒径0.3mm)を混合した後、ピコミル分散容器に充填し、表1に示す必要なリテンション時間(RT)にて分散させて、各顔料分散液を調製した。
[0315]
[表1]
[図:0001392063000019.jpg]
[0316][実施例1~5、比較例1~6]
上記の通り調製された顔料分散液と表2に示す他の各成分とを、表2に示す割合で配合、撹拌して着色感光性組成物を調製した。
[0317] この着色感光性組成物を用いて、以下の通り各評価を行い、結果を表2に示した。
・・・中略・・・
[0328]
[表2]
[図:0001392063000020.jpg]
」
エ 「請求の範囲
[請求項1] 顔料、バインダー樹脂、光重合性モノマー、及び光重合開始剤を含む着色感光性組成物であって、前記顔料が、下記(A)に示す顔料及び(B)に示す顔料を含む着色感光性組成物。
(A)C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ64、及びC.I.ピグメントオレンジ72からなる群より選ばれる1つ
(B)C.I.ピグメントブルー60」
(2)甲1に記載された発明
ア 甲1構成成分
甲1の[0302]~[0313]によると、甲1には、実施例及び比較例で用いた構成成分として、以下の構成成分(以下「甲1構成成分」という。)が記載されている。
「<バインダー樹脂-1>
日本化薬(株)製「ZCR-1569H」(MW=3000~4000、酸価=約100mg-KOH/g)
<バインダー樹脂-2>
日本化薬(株)製「ZCR-1642H」(MW=5000~6500、酸価=約100mg-KOH/g)
<バインダー樹脂-3>
下記構造(11)のエポキシ化合物とアクリル酸との反応物を、トリメチロールプロパン(TMP)及びビフェニルテトラカルボン酸2無水物(BPDA)と反応させて得られた樹脂(MW=3500~4500、酸価=約110mg-KOH/g)
[化21]
[図:0001392063000021.jpg]
<分散剤>
ビックケミー社製「DisperBYK-2000」
<分散助剤>
ループリゾール社製「S12000」
<界面活性剤>
大日本インキ化学社製「メガファック F-475」
<溶剤-1>
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
<溶剤-2>
MB:3-メトキシブタノール
<光重合開始剤>
下記化合物
[化22]
[図:0001392063000022.jpg]
<光重合性モノマー>
DPHA:日本化薬(株)製ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート」
イ 甲1分散液
甲1の[0301]~[0302]、[0314]~[0316]及び[0328]を参照すると、甲1には、顔料分散液1~3及び6として、上記アの「甲1構成成分」を用いた、甲1における実施例又は比較例の着色感光性組成物を製造するために用いられる、以下の「顔料分散液」の発明(以下、それぞれ、「甲1分散液1発明」~「甲1分散液3発明」及び「甲1分散液6発明」という。)が記載されている。
(ア)甲1分散液1発明
「C.I.ピグメントレッド254が100重量部、
分散剤が固形分換算で33重量部、
バインダー樹脂-1が固形分換算で50重量部、
溶剤であるPGMEAが316重量部、
溶剤であるMBが110重量部、からなる、
着色感光性組成物を製造するために用いられる、顔料分散液。」
(イ)甲1分散液2発明
「C.I.ピグメントオレンジ64が100重量部、
分散剤が固形分換算で20重量部、
バインダー樹脂-1が固形分換算で50重量部、
溶剤であるPGMEAが304重量部、
溶剤であるMBが102重量部、からなる、
着色感光性組成物を製造するために用いられる、顔料分散液。」
(ウ)甲1分散液3発明
「C.I.ピグメントブルー60が100重量部、
分散剤が固形分換算で20重量部、
バインダー樹脂-1が固形分換算で50重量部、
溶剤であるPGMEAが304重量部、
溶剤であるMBが102重量部、からなる、
着色感光性組成物を製造するために用いられる、顔料分散液。」
(エ)甲1分散液6発明
「C.I.ピグメントレッド177が70重量部、
C.I.ピグメントブルー15:6が30重量部、
分散剤が固形分換算で20重量部、
分散助剤が固形分換算で1重量部、
バインダー樹脂-3が固形分換算で50重量部、
溶剤であるPGMEAが309重量部、
溶剤であるMBが102重量部、からなる、
着色感光性組成物を製造するために用いられる、顔料分散液。」
ウ 甲1組成物発明
甲1の[0301]~[0302]、[0316]、及び[0328]を参照すると、甲1には、実施例1として、上記アの「甲1構成成分」及び上記イの「甲1分散液1発明」~「甲1分散液3発明」を用いた、以下の「着色感光性組成物」の発明(以下「甲1組成物発明」という。)が記載されている。
「甲1分散液1発明が1.69重量部、
甲1分散液2発明が3.40重量部、
甲1分散液3発明が6.25重量部、
バインダー樹脂-2が固形分換算で6.03重量部、
光重合性モノマーが3.73重量部、
光重合開始剤が0.88重量部、
界面活性剤が0.02重量部、
溶剤-1が78重量部、からなる、
着色感光性組成物。」
(3)甲2の記載
甲2は、先の出願前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載された文献であるところ、そこには、以下の記載がある。
ア 「技術分野
[0001] 本発明は、着色感光性組成物等に関する。より詳しくは、例えば液晶ディスプレイ等のカラーフィルターにおいて着色スペーサ等に好ましく用いられる着色感光性組成物及びこれにより形成される着色スペーサ、カラーフィルター、液晶表示装置に関する。
・・・中略・・・
発明が解決しようとする課題
・・・中略・・・
[0009] 本発明は、このような事情に鑑みてなされたものである。即ち、本発明の主たる課題は、フォトリソグラフィー法により高さの異なる着色スペーサを一括形成する為の方法において、液晶の電圧保持率を確保する上、所望の形状の形成、段差のコントロール、基板との密着性に優れた着色感光性組成物を提供することにある。
また、本発明の他の課題は、このような着色感光性組成物により形成された着色スペーサを提供することにある。
・・・中略・・・
課題を解決するための手段
[0011] 本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、特定のアルカリ可溶性樹脂及び分散剤を使用し、かつエチレン性不飽和化合物に対するアルカリ可溶性樹脂の重量比及び特定のアルカリ可溶性樹脂の含有割合を特定の範囲とすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明の要旨は以下の通りである。
[1] (a)着色剤、(b)アルカリ可溶性樹脂、(c)光重合開始剤、(d)エチレン性不飽和化合物、(e)溶剤、及び(f)分散剤を含有する、フォトリソグラフィー法により高さの異なる着色スペーサを一括形成するために用いられる着色感光性組成物であって、
(b)アルカリ可溶性樹脂として、下記アルカリ可溶性樹脂(A-1)及びアルカリ可溶性樹脂(A-2)のうち少なくとも一方を含み、
(f)分散剤として、窒素原子を含有するアクリル系ブロック共重合体を含み、
(d)エチレン性不飽和化合物に対する(b)アルカリ可溶性樹脂の重量比が、7未満であり、
着色感光性組成物中の全固形分に対するアルカリ可溶性樹脂(A-1)及びアルカリ可溶性樹脂(A-2)の合計の割合が12重量%以上である着色感光性組成物。
<アルカリ可溶性樹脂(A-1)>
エポキシ樹脂に、α,β-不飽和モノカルボン酸又はエステル部分にカルボキシル基を有するα,β-不飽和モノカルボン酸エステルを付加させ、さらに、多塩基酸無水物を反応させることにより得られる樹脂
<アルカリ可溶性樹脂(A-2)>
エポキシ樹脂に、α,β-不飽和モノカルボン酸又はエステル部分にカルボキシル基を有するα,β-不飽和モノカルボン酸エステルを付加させ、さらに、多価アルコール及び多塩基酸無水物を反応させることにより得られる樹脂
[2] 着色感光性組成物中の全固形分に対するアルカリ可溶性樹脂(A-1)及びアルカリ可溶性樹脂(A-2)の合計の割合が20重量%以上である上記[1]に記載の着色感光性組成物。
[3] (a)着色剤の含有比率が、着色感光性組成物中の全固形分に対し30重量%未満である上記[1]又は[2]に記載の着色感光性組成物。
[4] (a)着色剤の含有比率が、着色感光性組成物中の全固形分に対し25重量%以上である上記[1]乃至[3]のいずれか1つに記載の着色感光性組成物。
[5] (a)着色剤として、以下の(1)赤色顔料を含み、かつ以下の(2)青色顔料及び以下の(3)紫色顔料のうち少なくとも一方を含む上記[1]乃至[4]のいずれか1つに記載の着色感光性組成物。
(1)C.I.ピックメントレッド177、254から選ばれる赤色顔料
(2)C.I.ピックメントブルー15:6である青色顔料
(3)C.I.ピックメントバイオレッド23である紫色顔料
[6] (a)着色剤として、C.I.ピックメントレッド254及びC.I.ピックメントブルー15:6を含む上記[1]乃至[4]のいずれか1つに記載の着色感光性組成物。
[7] (f)分散剤として、側鎖に4級アンモニウム塩基及びアミノ基のうち少なくとも一方を有するAブロックと、4級アンモニウム塩基及びアミノ基を有さないBブロックからなる、A-Bブロック共重合体及びB-A-Bブロック共重合体のうち少なくとも一方を含む上記[1]乃至[6]のいずれか1つに記載の着色感光性組成物。
[8] (f)分散剤として、側鎖に4級アンモニウム塩基及びアミノ基を有するAブロックと、4級アンモニウム塩基及びアミノ基を有さないBブロックからなる、A-Bブロック共重合体及びB-A-Bブロック共重合体のうち少なくとも一方を含む上記[1]乃至[6]のいずれか1つに記載の着色感光性組成物。
[9](f)分散剤として、側鎖に4級アンモニウム塩基を有さずアミノ基を有するAブロックと、4級アンモニウム塩基及びアミノ基を有さないBブロックからなる、A-Bブロック共重合体及びB-A-Bブロック共重合体のうち少なくとも一方を含む上記[1]乃至[6]のいずれか1つに記載の着色感光性組成物。
[10] (c)光重合開始剤として、オキシムエステル化合物を含む上記[1]乃至[9]のいずれか1つに記載の着色感光性組成物。
[11] 上記[1]乃至[10]のいずれか1つに記載の着色感光性組成物により一括形成された高さの異なる着色スペーサ。
[12] 上記[11]に記載の着色スペーサを備えるカラーフィルター。
[13] 上記[12]に記載のカラーフィルターを備える液晶表示装置。
[14] 上記[1]乃至[10]のいずれか1つに記載の着色感光性組成物を用いて、フォトリソグラフィー法により高さの異なる着色スペーサを一括形成する方法。
発明の効果
[0012] 本発明によれば、フォトリソグラフィー法により高さの異なる着色スペーサを一括形成する為の方法において、液晶の電気保持率を確保する上、所望の形状の形成、段差のコントロール、基板との密着性を実現することが出来る。」
イ 「発明を実施するための形態
・・・中略・・・
[0017] [2-1] (a)着色剤
着色剤としては、通常顔料が用いられる。顔料としては青色顔料、緑色顔料、赤色顔料、黄色顔料、紫色顔料、オレンジ顔料、ブラウン顔料、黒色顔料等各種の色の顔料を使用することができる。また、その構造としてはアゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、ジオキサジン系、インダンスレン系、ペリレン系等の有機顔料の他に種々の無機顔料等も利用可能である。以下、使用できる顔料の具体例をピグメントナンバーで示す。以下に挙げる「C.I.ピグメントレッド2」等の用語は、カラーインデックス(C.I.)を意味する。
・・・中略・・・
[0024] 黒色顔料として、ペリレンブラック(BASF K0084、K0086)、シアニンブラック、ファーストブラックHB(C.I.26150)を挙げることができる。
本発明の着色感光性組成物には単独の黒色色材、又は赤、緑、青色等の混合による黒色色材が使用可能である。これら黒色色材は、カーボンブラック、チタンブラックなどの無機又は有機の顔料、染料の中から適宜選択することができ、単独使用もしくは複数種混合して使用することができる。
・・・中略・・・
[0030] [2-2](b)アルカリ可溶性樹脂
本発明に用いるアルカリ可溶性樹脂(A-1)は、エポキシ樹脂に、α,β-不飽和モノカルボン酸又はエステル部分にカルボキシル基を有するα,β-不飽和モノカルボン酸エステルを付加させ、更に多塩基酸無水物を反応させることによりアルカリ可溶性を付与する等の方法で得られる。かかる反応生成物は化学構造上、実質的にエポキシ基を有さない。
[0031] 原料となるエポキシ樹脂として、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンとフェノールまたはクレゾールとの重付加反応物とエピハロヒドリンとの反応生成物であるエポキシ樹脂、アダマンチル基含有エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂等を好適に用いることができる。
・・・中略・・・
[0033] α,β-不飽和モノカルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸等が挙げられ、好ましくはアクリル酸及びメタクリル酸であり、特にアクリル酸が反応性に富むため好ましい。また、エステル部分にカルボキシル基を有するα,β-不飽和モノカルボン酸エステルとしては、アクリル酸-2-サクシノイルオキシエチル、アクリル酸-2-マレイノイルオキシエチル、アクリル酸-2-フタロイルオキシエチル、アクリル酸-2-ヘキサヒドロフタロイルオキシエチル、メタクリル酸-2-サクシノイルオキシエチル、メタクリル酸-2-マレイノイルオキシエチル、メタクリル酸-2-フタロイルオキシエチル、メタクリル酸-2-ヘキサヒドロフタロイルオキシエチル、クロトン酸-2-サクシノイルオキシエチル等を挙げられる。
・・・中略・・・
[0035]
尚、本発明においては、製造工程としてエポキシ樹脂を経由しなくても、最終的な樹脂の構造が同じであれば本出願においては、それもアルカリ可溶性樹脂(A-1)の範疇であると定義する。その例としては、例えばノボラック樹脂と不飽和基含有エポキシ化合物を反応させる方法が挙げられる。
エポキシ樹脂にα,β-不飽和モノカルボン酸又はエステル部分にカルボキシル基を有するα,β-不飽和モノカルボン酸エステルを付加させた生成物に更に付加させる多塩基酸無水物としては、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水クロレンド酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、好ましくは、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物であり、特に好ましい化合物は、無水テトラヒドロフタル酸及びビフェニルテトラカルボン酸二無水物である。
・・・中略・・・
[0038] 本発明に用いるアルカリ可溶性樹脂(A-2)は、エポキシ樹脂に、α,β-不飽和モノカルボン酸又はエステル部分にカルボキシル基を有するα,β-不飽和モノカルボン酸エステルを付加させ、さらに、多価アルコール及び多塩基酸無水物を反応させることにより得られる。
アルカリ可溶性樹脂(A-1)の合成に用いる合成方法や多価アルコール以外の成分は、全てがアルカリ可溶性樹脂(A-2)の合成に用いることができる。アルカリ可溶性樹脂(A-2)は、通常は、エポキシ樹脂に、α,β-不飽和モノカルボン酸又はエステル部分にカルボキシル基を有するα,β-不飽和モノカルボン酸エステルを付加させてなる反応物に、多価アルコール及び多塩基酸無水物を混合し、加温することにより得られる。この場合、多価アルコールと多塩基酸無水物の混合順序に、特に制限はない。」
ウ 「実施例
[0170] 次に、実施例及び比較例を挙げて本実施の形態をより具体的に説明するが、本実施の形態はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例で用いた着色感光性組成物の構成成分は次の通りである。
なお、以下において「部」は「重量部」を表す。
[0171] <アルカリ可溶性樹脂-1>
新中村化学工業(株)製 「ADEP02」((MW=3500~4500、酸価=約110mg-KOH/g、アルカリ可溶性樹脂(A-2)に該当)
<アルカリ可溶性樹脂-2>
日本化薬(株)製「ZCR-1664H」(MW=5000~6000、酸価=約60mg-KOH/g、アルカリ可溶性樹脂(A-1)に該当)
<アルカリ可溶性樹脂-3>
昭和高分子(株)製「SPCM-82」(MW=約10000、酸価=約24mg-KOH/g、アクリレート系アルカリ可溶性樹脂)
[0172] <アルカリ可溶性樹脂-4>
500mL4つ口フラスコにスチレン/アクリル酸樹脂、ジョンクリル680(BASFジャパン(株))61.2gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート138.6gに80℃で均一に溶解させた。これにテトラアンモニウムクロライド0.24g、p-メトキシフェノール0.09gを加えて溶解させ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート71.4gと3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート(サイクロマーA400 ダイセル化学(株))19.9gの混合液を40分かけて滴下した。反応溶液を80℃に保ったまま32時間攪拌し、重量平均分子量6700、酸価106mgKOH/gの樹脂を得た。
[0173] <アルカリ可溶性樹脂-5>
昭和高分子(株)製「SPCM-121B」(MW=約8300、酸価=約80mg-KOH/g、アクリレート系アルカリ可溶性樹脂)
[0174] <分散剤-1>
ビックケミー社製「DisperBYK-2000」(側鎖に4級アンモニウム塩基を有するAブロックと、4級アンモニウム塩基を有さないBブロックからなる、アクリル系A-Bブロック共重合体)
<分散剤-2>
ビックケミー社製「DisperBYK-LPN21116」(側鎖に4級アンモニウム塩基及びアミノ基を有するAブロックと、4級アンモニウム塩基及びアミノ基を有さないBブロックからなる、アクリル系A-Bブロック共重合体)
<分散剤-3>
ビックケミー社製「DisperBYK-167」(ウレタン系分散剤)
<分散助剤>
ループリゾール社製「S12000」
[0175] <界面活性剤>
大日本インキ化学社製 メガファック F-475
<溶剤-1>
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
<溶剤-2>
MB:3-メトキシブタノール
<溶剤-3>
MBA:酢酸3-メトキシブチル
<溶剤-4>
CHN:シクロヘキサノン
<光重合開始剤>
下記式で表される化合物。
[0176][化16]
[図:0001392063000023.jpg]
[0177] <エチレン性不飽和化合物>
DPHA:日本化薬(株)製 ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
<顔料分散液-1~4の調製>
表1に記載の顔料、分散剤、分散助剤、アルカリ可溶性樹脂、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)とメトキシブチルアセテート(MBA)を表1に記載の重量比で混合した。ここに、分散容器の容積の80%のジリコニアビーズを混合した後、ピコミル分散容器に充填し、必要なリテンション時間にて分散させて各顔料分散液を調製した。
[0178]
[表1]
[図:0001392063000024.jpg]
[0179] [実施例1~3、比較例1~4]
上記で調製された顔料分散液と、表2に示す成分とを表2に示す割合で配合、攪拌してそれぞれ着色感光性組成物塗布液を調製した。得られ着色感光性組成物溶液を用いて、後述の方法により、略円柱状スペーサパターンを形成し、形状、段差、基板との密着性及び電圧保持率(VHR)を評価した。結果を表2に併記した。
・・・中略・・・
[0191]
[表2]
[図:0001392063000025.jpg]
」
エ 「請求の範囲
[請求項1] (a)着色剤、(b)アルカリ可溶性樹脂、(c)光重合開始剤、(d)エチレン性不飽和化合物、(e)溶剤、及び(f)分散剤を含有する、フォトリソグラフィー法により高さの異なる着色スペーサを一括形成するために用いられる着色感光性組成物であって、
(b)アルカリ可溶性樹脂として、下記アルカリ可溶性樹脂(A-1)及びアルカリ可溶性樹脂(A-2)のうち少なくとも一方を含み、
(f)分散剤として、窒素原子を含有するアクリル系ブロック共重合体を含み、
(d)エチレン性不飽和化合物に対する(b)アルカリ可溶性樹脂の重量比が、7未満であり、
着色感光性組成物中の全固形分に対するアルカリ可溶性樹脂(A-1)及びアルカリ可溶性樹脂(A-2)の合計の割合が12重量%以上である着色感光性組成物。
<アルカリ可溶性樹脂(A-1)>
エポキシ樹脂に、α,β-不飽和モノカルボン酸又はエステル部分にカルボキシル基を有するα,β-不飽和モノカルボン酸エステルを付加させ、さらに、多塩基酸無水物を反応させることにより得られる樹脂
<アルカリ可溶性樹脂(A-2)>
エポキシ樹脂に、α,β-不飽和モノカルボン酸又はエステル部分にカルボキシル基を有するα,β-不飽和モノカルボン酸エステルを付加させ、さらに、多価アルコール及び多塩基酸無水物を反応させることにより得られる樹脂」
(4)甲2に記載された発明
ア 甲2構成成分
甲2の[0170]~[0177]によると、甲2には、実施例で用いた構成成分として、以下の構成成分(以下「甲2構成成分」という。)が記載されている。
「<アルカリ可溶性樹脂-1>
新中村化学工業(株)製 「ADEP02」((MW=3500~4500、酸価=約110mg-KOH/g、アルカリ可溶性樹脂(A-2)に該当)
<アルカリ可溶性樹脂-2>
日本化薬(株)製「ZCR-1664H」(MW=5000~6000、酸価=約60mg-KOH/g、アルカリ可溶性樹脂(A-1)に該当)
<分散剤-1>
ビックケミー社製「DisperBYK-2000」(側鎖に4級アンモニウム塩基を有するAブロックと、4級アンモニウム塩基を有さないBブロックからなる、アクリル系A-Bブロック共重合体)
<分散助剤>
ループリゾール社製「S12000」
<界面活性剤>
大日本インキ化学社製 メガファック F-475
<溶剤-1>
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
<溶剤-2>
MB:3-メトキシブタノール
<溶剤-3>
MBA:酢酸3-メトキシブチル
<光重合開始剤>
下記式で表される化合物
[化16]
[図:0001392063000026.jpg]
<エチレン性不飽和化合物>
DPHA:日本化薬(株)製 ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート」
イ 甲2分散液発明
甲2の[0170]、[0177]~[0179]及び[0191]を参照すると、甲2には、顔料分散液-1として、上記アの「甲2構成成分」を用いた、甲2における実施例の着色感光性組成物を製造するために用いられる、以下の「顔料分散液」の発明(以下「甲2分散液発明」という。)が記載されている。
「C.I.ピグメントレッド177が70重量部、
C.I.ピグメントブルー15:6が30重量部、
分散剤-1が固形分換算で20重量部、
分散助剤が固形分換算で1重量部、
アルカリ可溶性樹脂-1が固形分換算で50重量部、
溶剤であるPGMEAが335重量部、
溶剤であるMBが128重量部、
溶剤であるMBAが50重量部、からなる、
着色感光性組成物を製造するために用いられる、顔料分散液。」
ウ 甲2組成物発明
甲2の[0170]、[0179]、及び[0191]を参照すると、甲2には、実施例1として、上記アの「甲2構成成分」及び上記イの「甲2分散液発明」を用いた、以下の「着色感光性組成物」の発明(以下「甲2組成物発明」という。)が記載されている。
「甲2分散液発明が34.61重量部、
アルカリ可溶性樹脂-2が13.62重量部、
エチレン性不飽和化合物が4.28重量部、
光重合開始剤が0.88重量部、
界面活性剤が0.02重量部、
溶剤-1が36.19重量部
溶剤-2が10.41重量部、からなり、
着色感光性組成物中の全固形分に対する着色剤の含有比率が23重量%であり、
アルカリ可溶性樹脂/エチレン性不飽和化合物が固形分重量比で2.5であり、
着色感光性組成物中の全固形分に対するアルカリ可溶性樹脂の合計の割合が48.6重量%である、
着色感光性組成物。」
エ アルカリ可溶性樹脂
(ア)アルカリ可溶性樹脂(A-1)
甲2の[0030]~[0031]を参照すると、甲2には、以下の「アルカリ可溶性樹脂(A-1)」が記載されている。
「エポキシ樹脂に、α,β-不飽和モノカルボン酸又はエステル部分にカルボキシル基を有するα,β-不飽和モノカルボン酸エステルを付加させ、更に多塩基酸無水物を反応させることによりアルカリ可溶性を付与する等の方法で得られ、かかる反応生成物は化学構造上、実質的にエポキシ基を有さない樹脂であって、
当該エポキシ樹脂は、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンとフェノールまたはクレゾールとの重付加反応物とエピハロヒドリンとの反応生成物であるエポキシ樹脂、アダマンチル基含有エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂等である、アルカリ可溶性樹脂(A-1)」
(イ)アルカリ可溶性樹脂(A-2)
甲2の[0030]~[0031]及び[0038]~[0039]を参照すると、甲2には、以下の「アルカリ可溶性樹脂(A-2)」が記載されている。
「エポキシ樹脂に、α,β-不飽和モノカルボン酸又はエステル部分にカルボキシル基を有するα,β-不飽和モノカルボン酸エステルを付加させ、さらに、多価アルコール及び多塩基酸無水物を反応させることにより得られる樹脂であって、
当該エポキシ樹脂は、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンとフェノールまたはクレゾールとの重付加反応物とエピハロヒドリンとの反応生成物であるエポキシ樹脂、アダマンチル基含有エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂等である、アルカリ可溶性樹脂(A-2)」
(5)甲3の記載
甲3は、先の出願前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載された文献であるところ、そこには、以下の記載がある。
ア 「技術分野
[0001] 本発明は、感光性着色組成物、ブラックマトリクス、着色スペーサー及び画像表示装置に関するものである。詳しくは、遮蔽性及び製版特性に優れる感光性着色組成物と、その用途に関する。
・・・中略・・・
発明が解決しようとする課題
・・・中略・・・
[0007] さらに、特許文献4や5には、ビス-オキソジヒドロ-インドリレン-ベンゾフラン着色剤を画像表示装置に用いる遮蔽剤として用いることについては記載も示唆もなく、画像表示装置に用いる遮蔽剤として用いた際の光学濃度、分散性や製版性といった特性についても不明である。
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、遮光性に優れ、しかも、分散性や製版性に優れ、十分に低い比誘電率を示す感光性着色組成物を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0008] 本発明者らが、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、感光性着色組成物中の色材を、特定の構造を有する有機黒色顔料を用い、かつ、特定の分散剤を用いることで、上記課題を解決することができることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は以下の[1]~[17]の構成を有する。
[1](A)色材、(B)分散剤、(C)アルカリ可溶性樹脂、及び(D)光重合開始剤を少なくとも含有する感光性着色組成物であって、前記(A)色材が(A-1)下記一般式(1)で表される化合物、その幾何異性体、その塩、またはその幾何異性体の塩である有機黒色顔料を含み、かつ、前記(B)分散剤が4級アンモニウム塩基を官能基として有する高分子分散剤を含む感光性着色組成物。
[0009][化1]
[図:0001392063000027.jpg]
[0010][式(1)中、R1およびR6は互いに独立して水素原子、CH3、CF3、フッ素原子または塩素原子である;R2、R3、R4、R5、R7、R8、R9およびR10は他の全てから互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、R11、COOH、COOR11、COO-、CONH2、CONHR11、CONR11R12、CN、OH、OR11、COCR11、OOCNH2、OOCNHR11、OOCNR11R12、NO2、NH2、NHR11、NR11R12、NHCOR12、NR11COR12、N=CH2、N=CHR11、N=CR11R12、SH、SR11、SOR11、SO2R11、SO3R11、SO3H、SO3-、SO2NH2、SO2NHR11またはSO2NR11R12である;且つ、R2とR3、R3とR4、R4とR5、R7とR8、R8とR9、及びR9とR10からなる群から選ばれる少なくとも1つの組み合わせは、互いに直接結合し、または酸素原子、硫黄原子、NH若しくはNR11ブリッジによって互いに結合することもできる;R11およびR12は互いに独立して、炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数3~12のシクロアルケニル基または炭素数2~12のアルキニル基である。]
・・・中略・・・
[0014][10](D)光重合開始剤が、オキシムエステル開始剤、及び/又はケトオキシムエステル開始剤である、[1]~[9]のいずれか1つに記載の感光性着色組成物。
[11][1]~[10]のいずれか1つに記載の感光性着色組成物を硬化して得られる硬化物。
[12][11]に記載の硬化物から形成されるブラックマトリクス。
[13][11]に記載の硬化物から形成される着色スペーサー。
[14][12]に記載のブラックマトリクス又は[13]に記載の着色スペーサーを含む画像表示装置。
[15](A)色材、及び(B)分散剤を含有する顔料分散液であって、前記(A)色材が(A-1)下記一般式(1)で表される化合物、その幾何異性体、その塩、またはその幾何異性体の塩である有機黒色顔料を含み、かつ、前記(B)分散剤が4級アンモニウム塩基を官能基として有する高分子分散剤を含む顔料分散液。
[0015][化2]
[図:0001392063000028.jpg]
[0016][式中、R1およびR6は互いに独立して水素原子、CH3、CF3、フッ素原子または塩素原子である;R2、R3、R4、R5、R7、R8、R9およびR10は他の全てから互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、R11、COOH、COOR11、COO-、CONH2、CONHR11、CONR11R12、CN、OH、OR11、COCR11、OOCNH2、OOCNHR11、OOCNR11R12、NO2、NH2、NHR11、NR11R12、NHCOR12、NR11COR12、N=CH2、N=CHR11、N=CR11R12、SH、SR11、SOR11、SO2R11、SO3R11、SO3H、SO3-、SO2NH2、SO2NHR11またはSO2NR11R12である;且つ、R2とR3、R3とR4、R4とR5、R7とR8、R8とR9、及びR9とR10からなる群から選ばれる少なくとも1つの組み合わせは、互いに直接結合し、または酸素原子、硫黄原子、NH若しくはNR11ブリッジによって互いに結合することもできる;R11およびR12は互いに独立して、炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数3~12のシクロアルケニル基または炭素数2~12のアルキニル基である。]
・・・中略・・・
発明の効果
[0018] 本発明の感光性着色組成物は、特定の構造を有する有機黒色顔料を含むことで、顔料分散体作製時に分散剤の量を少なくすることができるため優れた製版特性を示し、また分散性にも優れる。よって、本発明の感光性着色組成物から形成されるブラックマトリクスは、優れた遮光性を示す。また、本発明のブラックマトリクス及び着色スペーサーは、TFT素子基板上に形成されても短絡・誤動作等を起こさないだけの十分低い比誘電率を示す。本発明のブラックマトリクスを有する画像表示装置は、TFT故障や液晶駆動の乱れ等の問題がなく、信頼性に優れる。」
イ 「発明を実施するための形態
・・・中略・・・
[0273] [有機ELディスプレイ]
本発明のブラックマトリクスを用いて本発明の有機ELディスプレイを作製することができる。
本発明のブラックマトリクスを用いて有機ELディスプレイを作製する場合、例えば図1に示すように、まず透明支持基板10上に、着色樹脂組成物により形成されたパターン(すなわち、画素20、及び隣接する画素20の間に設けられたブラックマトリクス(図示せず))が形成されてなるカラーフィルターを作製し、該カラーフィルター上に有機保護層30及び無機酸化膜40を介して有機発光体500を積層することによって、有機EL素子100を作製することができる。なお、画素20及びブラックマトリクスの内、少なくとも一つは本発明の感光性着色組成物を用いて作製されたものである。有機発光体500の積層方法としては、カラーフィルター上面へ透明陽極50、正孔注入層51、正孔輸送層52、発光層53、電子注入層54、及び陰極55を逐次形成していく方法や、別基板上へ形成した有機発光体500を無機酸化膜40上に貼り合わせる方法などが挙げられる。このようにして作製された有機EL素子100を用い、例えば「有機ELディスプレイ」(オーム社,2004年8月20日発光,時任静士、安達千波矢、村田英幸著)に記載された方法等にて、有機ELディスプレイを作製することができる。
なお、本発明のブラックマトリクスは、パッシブ駆動方式の有機ELディスプレイにもアクティブ駆動方式の有機ELディスプレイにも適用可能である。」
ウ 「実施例
[0274] 次に、合成例、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例で用いた感光性着色組成物の構成成分は次の通りである。
<(A-1)有機黒色顔料>
BASF社製、Irgaphor(登録商標) Black S 0100 CF(下記式(2)で表される化学構造を有する)
[0275]
[化30]
[図:0001392063000029.jpg]
[0276] <有機黒色顔料:ペリレンブラック>
BASF社製、Lumogen(登録商標) Black FK4281
<有機黒色顔料:アニリンブラック>
BASF社製、Paliotol(登録商標) Black L0080
[0277] <アルカリ可溶性樹脂-I>
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート145質量部を窒素置換しながら攪拌し、120℃に昇温した。ここにスチレン10質量部、グリシジルメタクリレート85.2質量部およびトリシクロデカン骨格を有するモノアクリレート(日立化成社製FA-513M)66質量部を滴下し、および2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル8.47質量部を3時間かけて滴下し、更に90℃で2時間攪拌し続けた。次に反応容器内を空気置換に変え、アクリル酸43.2質量部にトリスジメチルアミノメチルフェノール0.7質量部およびハイドロキノン0.12質量部を投入し、100℃で12時間反応を続けた。その後、テトラヒドロ無水フタル酸(THPA)56.2質量部、トリエチルアミン0.7質量部を加え、100℃3.5時間反応させた。こうして得られたアルカリ可溶性樹脂-IのGPCにより測定した重量平均分子量Mwは約8400、酸価は80mgKOH/gであった。
[0278] <アルカリ可溶性樹脂-II>
日本化薬(株)製「ZCR-1664H」(重量平均分子量Mw=5000~6000、酸価=約60mg-KOH/g)
<アルカリ可溶性樹脂-III>
[0279][化31]
[図:0001392063000030.jpg]
[0280] 上記構造のエポキシ化合物(エポキシ当量247)50g、アクリル酸14.3g、メトキシブチルアセテート59.5g、トリフェニルホスフィン1.29g、及びパラメトキシフェノール0.05gを、温度計、攪拌機、冷却管を取り付けたフラスコに入れ、攪拌しながら90℃で酸価が5mgKOH/g以下になるまで反応させた。反応には12時間を要し、エポキシアクリレート溶液を得た。
[0281] 上記エポキシアクリレート溶液25質量部及び、トリメチロールプロパン(TMP)0.8質量部、ビフェニルテトラカルボン酸2無水物(BPDA)4.1質量部、テトラヒドロフタル酸無水物(THPA)2.8質量部を、温度計、攪拌機、冷却管を取り付けたフラスコに入れ、攪拌しながら105℃までゆっくり昇温し反応させた。
樹脂溶液が透明になったところで、メトキシブチルアセテートで希釈し、固形分50質量%となるよう調製し、酸価131mgKOH/g、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)4000のカルボキシル基含有エポキシアクリレート樹脂(c1)を得た。
[0282] <アルカリ可溶性樹脂-IV>
日本化薬(株)製「ZCR-1642H」(MW=6500、酸価=98mg-KOH/g)
[0283] <分散剤-I>
ビックケミー社製「DISPERBYK-LPN21116」(側鎖に4級アンモニウム塩基及び3級アミノ基を有するAブロックと、4級アンモニウム塩基及びアミノ基を有さないBブロックからなる、アクリル系A-Bブロック共重合体。アミン価は70mgKOH/g。酸価は1mgKOH/g以下。)
分散剤-Iの全繰り返し単位に占める下記式(1a)、(2a)、及び(3a)の繰り返し単位の含有割合はそれぞれ11.1モル%、22.2モル%、6.7モル%である。
[0284][化32]
[図:0001392063000031.jpg]
[0285] <分散剤-II>
ビックケミー社製「DISPERBYK-2000」(側鎖に4級アンモニウム塩基を有するAブロックと、4級アンモニウム塩基を有さないBブロックからなる、アクリル系A-Bブロック共重合体)
<分散剤-III>
EFKA社製「EFKA-4300」(側鎖に3級アミノ基とブチル基を有する、アクリル系高分子分散剤。側鎖に4級アンモニウム塩基を有さない。)
[0286] <顔料誘導体>
ルーブリゾール社製「Solsperse12000」
<溶剤-I>
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
<溶剤-II>
MB:3-メトキシブタノール
・・・中略・・・
[0300] <顔料分散液-1~7の調製>
表1に記載の顔料、分散剤、分散助剤、アルカリ可溶性樹脂、及び溶剤を、表1に記載の質量比となるように混合した。この溶液をペイントシェーカーにより25~45℃の範囲で3時間分散処理を行った。ビーズとしては、0.5mmφのジルコニアビーズを用い、分散液の2.5倍の質量を加えた。分散終了後、フィルターによりビーズと分散液を分離して、顔料分散液-1~7を調製した。
・・・中略・・・
[0302]
[表1]
[図:0001392063000032.jpg]
・・・中略・・・
[0306] [実施例1~8及び比較例1~4]
上記調製した顔料分散液、被覆カーボンブラック分散液を用いて、固形分中の比率が表2の配合割合となるように各成分を加え、さらに固形分が17質量%となるようにPGMEAを加え、攪拌、溶解させて、感光性着色組成物を調製した。実施例1~8及び比較例1、2及び4は固形分中の顔料濃度を40質量%とし、比較例3は固形分中の顔料濃度を30質量%とした。また、全ての感光性着色組成物において、光重合性モノマーに対するアルカリ可溶性樹脂(分散液中の樹脂も含む)の質量比率を3とし、光重合開始剤を固形分中4質量%、添加剤を0.5質量%、界面活性剤を0.1質量%とした。得られた感光性着色組成物を用いて、後述する方法で評価を行った。
[0307][表2]
[図:0001392063000033.jpg]
・・・中略・・・
[0314] [分散性評価]
<顔料分散液-8~11の調製>
表4に記載の顔料、分散剤、分散助剤、アルカリ可溶性樹脂、及び溶剤を、表4に記載の質量比となるように混合した。この溶液をペイントシェーカーにより25~45℃の範囲で3時間分散処理を行った。ビーズとしては、0.5mmφのジルコニアビーズを用い、分散液の2.5倍の質量を加えた。分散終了後、フィルターによりビーズと分散液を分離して、顔料分散液-8~11を調製した。
[0315][表4]
[図:0001392063000034.jpg]
[0316] [実施例9及び比較例5~7]
上記調製した顔料分散液を用いて、固形分中の比率が表5の配合割合となるように各成分を加え、さらに固形分が17質量%となるようにPGMEAを加え、攪拌、溶解させて、感光性着色組成物を調製した。
また、得られた各感光性着色組成物について東機産業株式会社製 RC80L型粘度計(測定条件:23℃、50rpm)によりその粘度を測定した。結果を表5に示す。
[0317]
[表5]
[図:0001392063000035.jpg]
」
エ 「請求の範囲
[請求項1]
(A)色材、(B)分散剤、(C)アルカリ可溶性樹脂、及び(D)光重合開始剤を少なくとも含有する感光性着色組成物であって、
前記(A)色材が(A-1)下記一般式(1)で表される化合物、その幾何異性体、その塩、またはその幾何異性体の塩である有機黒色顔料を含み、かつ、
前記(B)分散剤が4級アンモニウム塩基を官能基として有する高分子分散剤を含む感光性着色組成物。
[化1]
[図:0001392063000036.jpg]
[式(1)中、R1およびR6は互いに独立して水素原子、CH3、CF3、フッ素原子または塩素原子である;R2、R3、R4、R5、R7、R8、R9およびR10は他の全てから互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、R11、COOH、COOR11、COO-、CONH2、CONHR11、CONR11R12、CN、OH、OR11、COCR11、OOCNH2、OOCNHR11、OOCNR11R12、NO2、NH2、NHR11、NR11R12、NHCOR12、NR11COR12、N=CH2、N=CHR11、N=CR11R12、SH、SR11、SOR11、SO2R11、SO3R11、SO3H、SO3-、SO2NH2、SO2NHR11またはSO2NR11R12である;且つ、R2とR3、R3とR4、R4とR5、R7とR8、R8とR9、及びR9とR10からなる群から選ばれる少なくとも1つの組み合わせは、互いに直接結合し、または酸素原子、硫黄原子、NH若しくはNR11ブリッジによって互いに結合することもできる;R11およびR12は互いに独立して、炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数3~12のシクロアルケニル基または炭素数2~12のアルキニル基である。]
・・・中略・・・
[請求項15]
(A)色材、及び(B)分散剤を含有する顔料分散液であって、
前記(A)色材が(A-1)下記一般式(1)で表される化合物、その幾何異性体、その塩、またはその幾何異性体の塩である有機黒色顔料を含み、かつ、
前記(B)分散剤が4級アンモニウム塩基を官能基として有する高分子分散剤を含む顔料分散液。
[化2]
[図:0001392063000037.jpg]
[式(1)中、R1およびR6は互いに独立して水素原子、CH3、CF3、フッ素原子または塩素原子である;R2、R3、R4、R5、R7、R8、R9およびR10は他の全てから互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、R11、COOH、COOR11、COO-、CONH2、CONHR11、CONR11R12、CN、OH、OR11、COCR11、OOCNH2、OOCNHR11、OOCNR11R12、NO2、NH2、NHR11、NR11R12、NHCOR12、NR11COR12、N=CH2、N=CHR11、N=CR11R12、SH、SR11、SOR11、SO2R11、SO3R11、SO3H、SO3-、SO2NH2、SO2NHR11またはSO2NR11R12である;且つ、R2とR3、R3とR4、R4とR5、R7とR8、R8とR9、及びR9とR10からなる群から選ばれる少なくとも1つの組み合わせは、互いに直接結合し、または酸素原子、硫黄原子、NH若しくはNR11ブリッジによって互いに結合することもできる;R11およびR12は互いに独立して、炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数3~12のシクロアルケニル基または炭素数2~12のアルキニル基である。]」
(6)甲3に記載された発明
ア 甲3構成成分
甲3の[0274]~[0286]によると、甲3には、実施例で用いた構成成分として、以下の構成成分(以下「甲3構成成分」という。)が記載されている。
「<(A-1)有機黒色顔料>
BASF社製、Irgaphor(登録商標) Black S 0100 CF(下記式(2)で表される化学構造を有する)
[化30]
[図:0001392063000038.jpg]
<アルカリ可溶性樹脂-I>
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート145質量部を窒素置換しながら攪拌し、120℃に昇温し、ここにスチレン10質量部、グリシジルメタクリレート85.2質量部およびトリシクロデカン骨格を有するモノアクリレート(日立化成社製FA-513M)66質量部を滴下し、および2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル8.47質量部を3時間かけて滴下し、更に90℃で2時間攪拌し続け、次に反応容器内を空気置換に変え、アクリル酸43.2質量部にトリスジメチルアミノメチルフェノール0.7質量部およびハイドロキノン0.12質量部を投入し、100℃で12時間反応を続け、その後、テトラヒドロ無水フタル酸(THPA)56.2質量部、トリエチルアミン0.7質量部を加え、100℃3.5時間反応させ、こうして得られたアルカリ可溶性樹脂であって、GPCにより測定した重量平均分子量Mwは約8400、酸価は80mgKOH/gであった、アルカリ可溶性樹脂。
<分散剤-I>
ビックケミー社製「DISPERBYK-LPN21116」(側鎖に4級アンモニウム塩基及び3級アミノ基を有するAブロックと、4級アンモニウム塩基及びアミノ基を有さないBブロックからなる、アクリル系A-Bブロック共重合体。アミン価は70mgKOH/g。酸価は1mgKOH/g以下。)
(分散剤-Iの全繰り返し単位に占める下記式(1a)、(2a)、及び(3a)の繰り返し単位の含有割合はそれぞれ11.1モル%、22.2モル%、6.7モル%である。)
[化32]
[図:0001392063000039.jpg]
<溶剤-I>
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
<溶剤-II>
MB:3-メトキシブタノール」
イ 甲3分散液発明
甲3の[0300]、[0302]及び[0306]~[0307]を参照すると、甲3には、顔料分散液-1として、上記アの「甲3構成成分」を用いた、甲3における実施例の感光性着色組成物を製造するために用いられる、以下の「顔料分散液」の発明(以下「甲3分散液発明」という。)が記載されている。
「(A-1)有機黒色顔料が100質量部、
分散剤-Iが固形分換算で20質量部、
アルカリ可溶性樹脂-Iが固形分換算で33質量部、
溶剤-Iが367質量部、
溶剤-IIが92質量部、からなる、
着色感光性組成物を製造するために用いられる、顔料分散液。」
(7)甲4の記載
甲4は、先の出願前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載された文献であるところ、そこには、以下の記載がある。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)着色剤、(b)アルカリ可溶性樹脂、(c)光重合開始剤、(d)エチレン性不飽和化合物、(e)溶剤、及び(f)分散剤を含有する感光性着色組成物であって、
前記(a)着色剤が、橙色顔料及び青色顔料を含み、
前記(c)光重合開始剤が、ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系化合物を含むことを特徴とする感光性着色組成物。」
イ 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性着色組成物、硬化物、着色スペーサー及び画像表示装置に関するものである。詳しくは、遮光性に優れ、液晶層への不純物溶出を抑制して高信頼性を確保できる感光性着色組成物と、その用途に関する。
・・・中略・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らが検討した結果、特許文献3に記載されている感光性着色組成物を用いて着色スペーサーを形成した場合、その上層膜となる配向膜を形成する際の溶剤に、着色剤由来の不純物が溶出することに加え、低顔料濃度で硬化成分が多いことに起因して硬化成分由来の不純物の溶出も多く、その結果、LCDの表示信頼性を悪化させるといった問題があることが見出された。
そこで本発明は、遮光性に優れ、溶剤への不純物の溶出を抑制して高信頼性を確保できる感光性着色組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、感光性着色組成物中の着色剤として特定の着色顔料を使用するとともに、特定の骨格構造を有する光重合開始剤を使用することで、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の[1]~[14]の構成を有する。
【0009】
[1] (a)着色剤、(b)アルカリ可溶性樹脂、(c)光重合開始剤、(d)エチレン性不飽和化合物、(e)溶剤、及び(f)分散剤を含有する感光性着色組成物であって、
前記(a)着色剤が、橙色顔料及び青色顔料を含み、
前記(c)光重合開始剤が、ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系化合物を含むことを特徴とする感光性着色組成物。
[2] 前記橙色顔料が下記(a-1)に示す橙色顔料であり、かつ、前記青色顔料が下記(a-2)に示す青色顔料である、[1]に記載の感光性着色組成物。
(a-1) C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントオレンジ72からなる群から選ばれる少なくとも1種
(a-2) C.I.ピグメントブルー60
[3] 前記(a)着色剤が、更に下記(a-3)に示す紫色顔料を含む、[1]又は[2]に記載の感光性着色組成物。
(a-3) C.I.ピグメントバイオレット23及びC.I.ピグメントバイオレット29からなる群から選ばれる少なくとも1種
[4] 前記(a)着色剤が、更に下記(a-4)に示す群から選ばれる少なくとも1種の有機着色顔料を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の感光性着色組成物。
(a-4)
青色顔料:C.I.ピグメントブルー15:6
赤色顔料:C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド272
[5] 前記(a)着色剤が、更に有機黒色顔料を含有する、[1]~[4]のいずれかに記載の感光性着色組成物。
・・・中略・・・
【発明の効果】
【0012】
本発明の感光性着色組成物は、遮光性に優れ、溶剤への不純物溶出を抑制して高信頼性を確保できる。また、遮光性に優れ、高信頼性である硬化物及び着色スペーサーを提供することができ、さらに、このような着色スペーサーを備える画像表示装置を提供することができる。」
ウ 「【発明を実施するための形態】
・・・中略・・・
【0018】
<(a)着色剤>
本発明で用いる(a)着色剤は、橙色顔料及び青色顔料を含有する。このように本発明の感光性着色組成物は、橙色顔料と青色顔料を含有することにより、紫外領域の光透過率を確保しながら、可視領域の光吸収を大きくして遮蔽率を向上することができる。(a)着色剤として顔料を用いることが好ましく、顔料は有機顔料であっても無機顔料であってもよいが、液晶の電圧保持率低下を抑制し、また、紫外線の吸収を抑制して形状や段差をコントロールしやすくするとの観点からは、有機顔料を用いることがより好ましい。
橙色顔料としては、紫外領域の光透過率及び可視領域の光吸収性の観点から、下記(a-1)に示す橙色顔料(以下、「(a-1)橙色顔料」と略記する場合がある)を好ましく用いることができる。
(a-1) C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントオレンジ72からなる群から選ばれる少なくとも1種
・・・中略・・・
【0030】
さらに、有機着色顔料に加えて、有機黒色顔料を用いることができる。有機黒色顔料を用いることで、遮蔽率が高くなる傾向がある。
有機黒色顔料の中でも、遮光性及び分散性の観点から、下記式(1)で表される化合物、その幾何異性体、その塩、またはその幾何異性体の塩である有機黒色顔料を用いることが好ましい。
【0031】
【化1】
[図:0001392063000040.jpg]
【0032】
式(1)中、R1およびR6は互いに独立して水素原子、CH3、CF3、フッ素原子または塩素原子である;
R2、R3、R4、R5、R7、R8、R9およびR10は他の全てから互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、R11、COOH、COOR11、COO-、CONH2、CONHR11、CONR11R12、CN、OH、OR11、COCR11、OOCNH2、OOCNHR11、OOCNR11R12、NO2、NH2、NHR11、NR11R12、NHCOR12、NR11COR12、N=CH2、N=CHR11、N=CR11R12、SH、SR11、SOR11、SO2R11、SO3R11、SO3H、SO3-、SO2NH2、SO2NHR11またはSO2NR11R12である;
且つ、R2とR3、R3とR4、R4とR5、R7とR8、R8とR9、及びR9とR10からなる群から選ばれる少なくとも1つの組み合わせは、互いに直接結合し、または酸素原子、硫黄原子、NH若しくはNR11ブリッジによって互いに結合することもできる;
R11およびR12は互いに独立して、炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数3~12のシクロアルケニル基または炭素数2~12のアルキニル基である。」
エ 「【実施例】
【0275】
次に、合成例、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例で用いた感光性着色組成物の構成成分は次の通りである。
【0276】
<有機黒色顔料>
BASF社製、Irgaphor(登録商標) Black S 0100 CF(下記式(2)で表される化学構造を有する)
【0277】
【化22】
[図:0001392063000041.jpg]
【0278】
<アルカリ可溶性樹脂-I>
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート145質量部を窒素置換しながら攪拌し、120℃に昇温した。ここにスチレン10質量部、グリシジルメタクリレート85.2質量部およびトリシクロデカン骨格を有するモノアクリレート(日立化成社製FA-513M)66質量部を滴下し、および2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル8.47質量部を3時間かけて滴下し、更に90℃で2時間攪拌し続けた。次に反応容器内を空気置換に変え、アクリル酸43.2質量部にトリスジメチルアミノメチルフェノール0.7質量部およびハイドロキノン0.12質量部を投入し、100℃で12時間反応を続けた。その後、テトラヒドロ無水フタル酸(THPA)56.2質量部、トリエチルアミン0.7質量部を加え、100℃3.5時間反応させた。こうして得られたアルカリ可溶性樹脂-IのGPCにより測定した重量平均分子量Mwは約8400、酸価は80mgKOH/gであった。
【0279】
<アルカリ可溶性樹脂-II>
日本化薬(株)製「ZCR-1642H」(MW=6500、酸価=98mg-KOH/g)
<アルカリ可溶性樹脂-III>
【0280】
【化23】
[図:0001392063000042.jpg]
【0281】
上記構造のエポキシ化合物(エポキシ当量247)50g、アクリル酸14.3g、メトキシブチルアセテート59.5g、トリフェニルホスフィン1.29g、及びパラメトキシフェノール0.05gを、温度計、攪拌機、冷却管を取り付けたフラスコに入れ、攪拌しながら90℃で酸価が5mgKOH/g以下になるまで反応させた。反応には12時間を要し、エポキシアクリレート溶液を得た。
【0282】
上記エポキシアクリレート溶液25質量部及び、トリメチロールプロパン(TMP)0.8質量部、ビフェニルテトラカルボン酸2無水物(BPDA)4.1質量部、テトラヒドロフタル酸無水物(THPA)2.8質量部を、温度計、攪拌機、冷却管を取り付けたフラスコに入れ、攪拌しながら105℃までゆっくり昇温し反応させた。
樹脂溶液が透明になったところで、メトキシブチルアセテートで希釈し、固形分50質量%となるよう調製し、酸価131mgKOH/g、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)4000のカルボキシル基含有エポキシアクリレート樹脂を得た。
【0283】
<分散剤-I>
ビックケミー社製「DISPERBYK-LPN21116」(側鎖に4級アンモニウム塩基及び3級アミノ基を有するAブロックと、4級アンモニウム塩基及びアミノ基を有さないBブロックからなる、アクリル系A-Bブロック共重合体)
【0284】
<溶剤-I>
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
<溶剤-II>
MB:3-メトキシブタノール
・・・中略・・・
【0298】
<顔料分散液-1~7の調製>
表1に記載の顔料、分散剤、アルカリ可溶性樹脂、及び溶剤を、表1に記載の質量比となるように混合した。この溶液をペイントシェーカーにより25~45℃の範囲で3時間分散処理を行った。ビーズとしては、0.5mmφのジルコニアビーズを用い、分散液の2.5倍の質量を加えた。分散終了後、フィルターによりビーズと分散液を分離して、顔料分散液-1~7を調製した。
【0299】
【表1】
[図:0001392063000043.jpg]
【0300】
[実施例1及び比較例1]
上記調製した顔料分散液を用いて、固形分中の比率が表2の配合割合となるように各成分を加え、さらに固形分が17質量%となるようにPGMEAを加え、攪拌、溶解させて、感光性着色組成物を調製した。調製した組成物の固形分比率を表2に示す。また、前述の方法にて測定した単位OD値及びNMP溶出試験結果を表2に示す。なお、表2中の感光性着色組成物の質量部は、固形分の質量を示す。
【0301】
【表2】
[図:0001392063000044.jpg]
【0302】
[実施例2~5及び比較例2、3]
上記調製した顔料分散液を用いて、固形分中の比率が表3の配合割合となるように各成分を加え、さらに固形分が17質量%となるようにPGMEAを加え、攪拌、溶解させて、感光性着色組成物を調製した。調製した組成物の固形分比率を表3に示す。また、前述の方法にて測定した単位OD値及びNMP溶出試験結果を表3に示す。なお、表3中の感光性着色組成物の質量部は、固形分の質量を示す。
【0303】
【表3】
[図:0001392063000045.jpg]
」
(8)甲4に記載された発明
ア 甲4構成成分
甲4の【0274】~【0286】によると、甲4には、実施例で用いた構成成分として、以下の構成成分(以下「甲4構成成分」という。)が記載されている。
「<有機黒色顔料>
BASF社製、Irgaphor(登録商標) Black S 0100 CF(下記式(2)で表される化学構造を有する)
【化22】
[図:0001392063000046.jpg]
<アルカリ可溶性樹脂-I>
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート145質量部を窒素置換しながら攪拌し、120℃に昇温し、ここにスチレン10質量部、グリシジルメタクリレート85.2質量部およびトリシクロデカン骨格を有するモノアクリレート(日立化成社製FA-513M)66質量部を滴下し、および2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル8.47質量部を3時間かけて滴下し、更に90℃で2時間攪拌し続け、次に反応容器内を空気置換に変え、アクリル酸43.2質量部にトリスジメチルアミノメチルフェノール0.7質量部およびハイドロキノン0.12質量部を投入し、100℃で12時間反応を続け、その後、テトラヒドロ無水フタル酸(THPA)56.2質量部、トリエチルアミン0.7質量部を加え、100℃3.5時間反応させ、こうして得られたアルカリ可溶性樹脂であって、GPCにより測定した重量平均分子量Mwは約8400、酸価は80mgKOH/gであった、アルカリ可溶性樹脂。
<分散剤-I>
ビックケミー社製「DISPERBYK-LPN21116」(側鎖に4級アンモニウム塩基及び3級アミノ基を有するAブロックと、4級アンモニウム塩基及びアミノ基を有さないBブロックからなる、アクリル系A-Bブロック共重合体)
<溶剤-I>
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
<溶剤-II>
MB:3-メトキシブタノール」
イ 甲4分散液発明
甲4の【0298】~【0299】及び【0302】~【0303】を参照すると、甲4には、顔料分散液-7として、上記アの「甲4構成成分」を用いた、甲4における実施例5の感光性着色組成物を製造するために用いられる、以下の「顔料分散液」の発明(以下「甲4分散液発明」という。)が記載されている。
「有機黒色顔料が100質量部、
分散剤-Iが20質量部、
アルカリ可溶性樹脂-Iが33質量部、
溶剤-Iが367質量部、
溶剤-IIが92質量部、からなる、
着色感光性組成物を製造するために用いられる、顔料分散液。」
(9)甲5の記載
甲5は、先の出願前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載された文献であるところ、そこには、以下の記載がある。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)着色剤、(b)アルカリ可溶性樹脂、(c)光重合開始剤、(d)エチレン性不飽和化合物、(e)溶剤、及び(f)分散剤を含有する感光性着色組成物であって、
前記(a)着色剤が、下記一般式(1)で表される化合物、その幾何異性体、その塩、またはその幾何異性体の塩である有機黒色顔料を含み、
前記(c)光重合開始剤が、下記一般式(I)で表されるジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系化合物を含むことを特徴とする感光性着色組成物。
【化1】
[図:0001392063000047.jpg]
[上記一般式(1)中、R1およびR6は互いに独立して水素原子、CH3、CF3、フッ素原子または塩素原子である;
R2、R3、R4、R5、R7、R8、R9およびR10は他の全てから互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、R11、COOH、COOR11、COO-、CONH2、CONHR11、CONR11R12、CN、OH、OR11、COCR11、OOCNH2、OOCNHR11、OOCNR11R12、NO2、NH2、NHR11、NR11R12、NHCOR12、NR11COR12、N=CH2、N=CHR11、N=CR11R12、SH、SR11、SOR11、SO2R11、SO3R11、SO3H、SO3-、SO2NH2、SO2NHR11またはSO2NR11R12である;
且つ、R2とR3、R3とR4、R4とR5、R7とR8、R8とR9、及びR9とR10からなる群から選ばれる少なくとも1つの組み合わせは、互いに直接結合し、または酸素原子、硫黄原子、NH若しくはNR11ブリッジによって互いに結合することもできる;
R11およびR12は互いに独立して、炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数3~12のシクロアルケニル基または炭素数2~12のアルキニル基である。]
【化2】
[図:0001392063000048.jpg]
[上記一般式(I)中、R23は、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。
R24は、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
R25は、水酸基、カルボキシル基又は下記一般式(I-1)で表される基を表し、hは0~5の整数を表す。
式(I)中に示されるベンゼン環はさらに置換基を有していてもよい。]
【化3】
[図:0001392063000049.jpg]
[上記一般式(I-1)中、R25aは、-O-、-S-、-OCO-又は-COO-を表す。
R25bは、置換基を有していてもよいアルキレン基を表す。
R25bのアルキレン部分は、-O-、-S-、-COO-又は-OCO-により1~5回中断されていてもよい。R25のアルキレン部分は分岐側鎖があってもよく、シクロヘキシレンであってもよい。
R25cは、水酸基又はカルボキシル基を表す。]」
イ 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性着色組成物、硬化物、着色スペーサー及び画像表示装置に関するものである。詳しくは、遮光性に優れ、液晶層への不純物溶出を抑制して高信頼性を確保できる感光性着色組成物と、その用途に関する。
・・・中略・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
液晶表示素子において駆動電極間からの光のもれを防ぐために、着色スペーサーには遮光性を更に高くする要求もある。遮光性を高くする方法としては、遮光性の高い有機黒色顔料を用いる方法や感光性着色組成物中の顔料含有割合を高くする方法などが挙げられる。
本発明者らが検討した結果、遮光性の高い有機黒色顔料を含む感光性着色組成物を用いて着色スペーサーを形成した場合、着色スペーサーの上層膜となる配向膜を形成する際の溶剤に、着色剤由来の不純物等の溶出も多く、LCDの表示信頼性を悪化させるといった問題があることが見出された。
そこで本発明は、遮光性に優れ、溶剤への不純物の溶出を抑制して高信頼性を確保できる感光性着色組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、感光性着色組成物中の着色剤として特定の有機黒色顔料を使用するとともに、特定の骨格構造を有する光重合開始剤を使用することで、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の[1]~[14]の構成を有する。
【0008】
[1] (a)着色剤、(b)アルカリ可溶性樹脂、(c)光重合開始剤、(d)エチレン性不飽和化合物、(e)溶剤、及び(f)分散剤を含有する感光性着色組成物であって、
前記(a)着色剤が、下記一般式(1)で表される化合物、その幾何異性体、その塩、またはその幾何異性体の塩である有機黒色顔料を含み、
前記(c)光重合開始剤が、下記一般式(I)で表されるジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系化合物を含むことを特徴とする感光性着色組成物。
【0009】
【化1】
[図:0001392063000050.jpg]
【0010】
[上記一般式(1)中、R1およびR6は互いに独立して水素原子、CH3、CF3、フッ素原子または塩素原子である;
R2、R3、R4、R5、R7、R8、R9およびR10は他の全てから互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、R11、COOH、COOR11、COO-、CONH2、CONHR11、CONR11R12、CN、OH、OR11、COCR11、OOCNH2、OOCNHR11、OOCNR11R12、NO2、NH2、NHR11、NR11R12、NHCOR12、NR11COR12、N=CH2、N=CHR11、N=CR11R12、SH、SR11、SOR11、SO2R11、SO3R11、SO3H、SO3-、SO2NH2、SO2NHR11またはSO2NR11R12である;
且つ、R2とR3、R3とR4、R4とR5、R7とR8、R8とR9、及びR9とR10からなる群から選ばれる少なくとも1つの組み合わせは、互いに直接結合し、または酸素原子、硫黄原子、NH若しくはNR11ブリッジによって互いに結合することもできる;
R11およびR12は互いに独立して、炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数3~12のシクロアルケニル基または炭素数2~12のアルキニル基である。]
【0011】
【化2】
[図:0001392063000051.jpg]
【0012】
[上記一般式(I)中、R23は、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。
R24は、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
R25は、水酸基、カルボキシル基又は下記一般式(I-1)で表される基を表し、hは0~5の整数を表す。
式(I)中に示されるベンゼン環はさらに置換基を有していてもよい。]
【0013】
【化3】
[図:0001392063000052.jpg]
【0014】
[上記一般式(I-1)中、R25aは、-O-、-S-、-OCO-又は-COO-を表す。
R25bは、置換基を有していてもよいアルキレン基を表す。
R25bのアルキレン部分は、-O-、-S-、-COO-又は-OCO-により1~5回中断されていてもよい。R25のアルキレン部分は分岐側鎖があってもよく、シクロヘキシレンであってもよい。
R25cは、水酸基又はカルボキシル基を表す。]
・・・中略・・・
【発明の効果】
【0018】
本発明の感光性着色組成物は、遮光性に優れ、溶剤への不純物溶出を抑制して高信頼性を確保できる。また、遮光性に優れ、高信頼性である硬化物及び着色スペーサーを提供することができ、さらに、このような着色スペーサーを備える画像表示装置を提供することができる。」
ウ 「【実施例】
【0281】
次に、合成例、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例で用いた感光性着色組成物の構成成分は次の通りである。
【0282】
<有機黒色顔料>
BASF社製、Irgaphor(登録商標) Black S 0100 CF(下記式(2)で表される化学構造を有する)
【0283】
【化25】
[図:0001392063000053.jpg]
【0284】
<アルカリ可溶性樹脂-I>
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート145質量部を窒素置換しながら攪拌し、120℃に昇温した。ここにスチレン10質量部、グリシジルメタクリレート85.2質量部およびトリシクロデカン骨格を有するモノアクリレート(日立化成社製FA-513M)66質量部を滴下し、および2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル8.47質量部を3時間かけて滴下し、更に90℃で2時間攪拌し続けた。次に反応容器内を空気置換に変え、アクリル酸43.2質量部にトリスジメチルアミノメチルフェノール0.7質量部およびハイドロキノン0.12質量部を投入し、100℃で12時間反応を続けた。その後、テトラヒドロ無水フタル酸(THPA)56.2質量部、トリエチルアミン0.7質量部を加え、100℃3.5時間反応させた。こうして得られたアルカリ可溶性樹脂-IのGPCにより測定した重量平均分子量Mwは約8400、酸価は80mgKOH/gであった。
【0285】
<アルカリ可溶性樹脂-II>
日本化薬(株)製「ZCR-1642H」(MW=6500、酸価=98mg-KOH/g)
<アルカリ可溶性樹脂-III>
【0286】
【化26】
[図:0001392063000054.jpg]
【0287】
上記構造のエポキシ化合物(エポキシ当量247)50g、アクリル酸14.3g、メトキシブチルアセテート59.5g、トリフェニルホスフィン1.29g、及びパラメトキシフェノール0.05gを、温度計、攪拌機、冷却管を取り付けたフラスコに入れ、攪拌しながら90℃で酸価が5mgKOH/g以下になるまで反応させた。反応には12時間を要し、エポキシアクリレート溶液を得た。
【0288】
上記エポキシアクリレート溶液25質量部及び、トリメチロールプロパン(TMP)0.8質量部、ビフェニルテトラカルボン酸2無水物(BPDA)4.1質量部、テトラヒドロフタル酸無水物(THPA)2.8質量部を、温度計、攪拌機、冷却管を取り付けたフラスコに入れ、攪拌しながら105℃までゆっくり昇温し反応させた。
樹脂溶液が透明になったところで、メトキシブチルアセテートで希釈し、固形分50質量%となるよう調製し、酸価131mgKOH/g、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)4000のカルボキシル基含有エポキシアクリレート樹脂を得た。
【0289】
<分散剤-I>
ビックケミー社製「DISPERBYK-LPN21116」(側鎖に4級アンモニウム塩基及び3級アミノ基を有するAブロックと、4級アンモニウム塩基及びアミノ基を有さないBブロックからなる、アクリル系A-Bブロック共重合体)
【0290】
<溶剤-I>
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
<溶剤-II>
MB:3-メトキシブタノール
・・・中略・・・
【0302】
<顔料分散液-1及び2の調製>
表1に記載の顔料、分散剤、アルカリ可溶性樹脂、及び溶剤を、表1に記載の質量比となるように混合した。この溶液をペイントシェーカーにより25~45℃の範囲で3時間分散処理を行った。ビーズとしては、0.5mmφのジルコニアビーズを用い、分散液の2.5倍の質量を加えた。分散終了後、フィルターによりビーズと分散液を分離して、顔料分散液-1及び2を調製した。
【0303】
【表1】
[図:0001392063000055.jpg]
【0304】
[実施例1]
上記調製した顔料分散液を用いて、固形分中の比率が表2の配合割合となるように各成分を加え、さらに固形分が17質量%となるようにPGMEAを加え、攪拌、溶解させて、感光性着色組成物を調製した。調製した組成物の固形分比率を表2に示す。また、前述の方法にて測定した単位OD値及びNMP溶出試験結果を表2に示す。なお、表2中の感光性着色組成物の質量部は、固形分の質量を示す。
【0305】
【表2】
[図:0001392063000056.jpg]
」
(10)甲5に記載された発明
ア 甲5構成成分
甲5の【0281】~【0290】によると、甲5には、実施例で用いた構成成分として、以下の構成成分(以下「甲5構成成分」という。)が記載されている。
「<有機黒色顔料>
BASF社製、Irgaphor(登録商標) Black S 0100 CF(下記式(2)で表される化学構造を有する)
【化25】
[図:0001392063000057.jpg]
<アルカリ可溶性樹脂-I>
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート145質量部を窒素置換しながら攪拌し、120℃に昇温し、ここにスチレン10質量部、グリシジルメタクリレート85.2質量部およびトリシクロデカン骨格を有するモノアクリレート(日立化成社製FA-513M)66質量部を滴下し、および2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル8.47質量部を3時間かけて滴下し、更に90℃で2時間攪拌し続け、次に反応容器内を空気置換に変え、アクリル酸43.2質量部にトリスジメチルアミノメチルフェノール0.7質量部およびハイドロキノン0.12質量部を投入し、100℃で12時間反応を続け、その後、テトラヒドロ無水フタル酸(THPA)56.2質量部、トリエチルアミン0.7質量部を加え、100℃3.5時間反応させ、こうして得られたアルカリ可溶性樹脂であって、GPCにより測定した重量平均分子量Mwは約8400、酸価は80mgKOH/gであった、アルカリ可溶性樹脂。
<分散剤-I>
ビックケミー社製「DISPERBYK-LPN21116」(側鎖に4級アンモニウム塩基及び3級アミノ基を有するAブロックと、4級アンモニウム塩基及びアミノ基を有さないBブロックからなる、アクリル系A-Bブロック共重合体)
<溶剤-I>
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
<溶剤-II>
MB:3-メトキシブタノール」
イ 甲5分散液発明
甲5の【0302】~【0305】を参照すると、甲5には、顔料分散液-2として、上記アの「甲5構成成分」を用いた、甲5における実施例1の感光性着色組成物を製造するために用いられる、以下の「顔料分散液」の発明(以下「甲5分散液発明」という。)が記載されている。
「有機黒色顔料が100質量部、
分散剤-Iが20質量部、
アルカリ可溶性樹脂-Iが33質量部、
溶剤-Iが367質量部、
溶剤-IIが92質量部、からなる、
着色感光性組成物を製造するために用いられる、顔料分散液。」
2 甲1を主引用文献とした場合について
(1)本件特許発明1
ア 対比
本件特許発明1と甲1組成物発明を対比すると、以下のとおりである。
(ア)着色剤
甲1組成物発明は、甲1分散液1発明の「C.I.ピグメントレッド254」、甲1分散液2発明の「C.I.ピグメントオレンジ64」、甲1分散液3発明の「C.I.ピグメントブルー60」をそれぞれ含んでおり、これらは、いずれも、本件特許発明1の「着色剤」に相当する。
(イ)分散剤
甲1組成物発明は、甲1分散液1発明~甲1分散液3発明の「分散剤」を含んでおり、当該「分散剤」は、本件特許発明1の「分散剤」に相当する。
(ウ)バインダー樹脂
甲1組成物発明は、「バインダー樹脂-2」に加えて、甲1分散液1発明~甲1分散液3発明の「バインダー樹脂-1」を含んでおり、これらは、いずれも、本件特許発明1の「バインダー樹脂」に相当する。
(エ)光重合性モノマー
甲1組成物発明の「光重合性モノマー」は、本件特許発明1の「光重合性モノマー」に相当する。
(オ)光重合開始剤
甲1組成物発明の「光重合開始剤」は、本件特許発明1の「光重合開始剤」に相当する。
(カ)着色感光性樹脂組成物
上記(ア)~(オ)を踏まえると、甲1組成物発明の「着色感光性組成物」は、本件特許発明1の「(A)着色剤、(B)分散剤、(C)バインダー樹脂、(D)光重合性モノマー及び(E)光重合開始剤を含有する」とされる、「着色感光性樹脂組成物」に相当する。
(キ)分散剤の詳細
甲1組成物発明の「分散剤」は、「ビックケミー社製「DisperBYK-2000」」である。
そして、「DisperBYK-2000」は、「側鎖に4級アンモニウム塩基を有するAブロックと、4級アンモニウム塩基を有さないBブロックからなる、アクリル系A-Bブロック共重合体」(甲2の[0174])である。
当該「DisperBYK-2000」の「4級アンモニウム塩基」は、本件特許発明1の「塩基性官能基」に相当する(「4級アンモニウム塩基」が本件特許発明1の「塩基性官能基」に相当することは、本件特許明細書[0089]の記載からも理解されることである。)。
また、当該「ビックケミー社製「DisperBYK-2000」は、「アクリル系A-Bブロック共重合体」であることから、本件特許発明1の「高分子分散剤」という要件を満たすとともに、「アクリル系分散剤」という要件を満たす。
そうしてみると、甲1組成物発明の「分散剤」は、本件特許発明1の「前記(B)分散剤が、塩基性官能基を有する高分子分散剤であり、かつアクリル系分散剤を含み、」という要件を満たす。
(ク)塩基性官能基、主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート
上記(ウ)のとおり、甲1組成物発明の「バインダー樹脂」は、「バインダー樹脂-1」及び「バインダー樹脂-2」からなる。
「バインダー樹脂-1」は、「日本化薬(株)製「ZCR-1569H」」であるところ、その構造は、特開2008-292677号公報の【0176】によると、以下のとおりである。
[図:0001392063000058.jpg]
上記構造を踏まえると、「バインダー樹脂-1」は、本件特許発明1の「塩基性官能基を有さず」、及び、「(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂」との要件を満たす。また、「バインダー樹脂-2」は、「日本化薬(株)製「ZCR-1642H」」であるところ、その構造は、本件特許明細書の【0420】及び【0197】によると、以下の化学式(II-1)で表される繰り返し単位構造であって、当該式(II-1)中、R11はメチル基であり、R12は以下の式(II-A)で表される基であり、RXはテトラヒドロフタル酸残基である、繰り返し単位構造を有する樹脂である。
[図:0001392063000059.jpg]
[図:0001392063000060.jpg]
上記の繰り返し単位構造を踏まえると、「バインダー樹脂-2」は、本件特許発明1の「塩基性官能基を有さず」、及び、「(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂」との要件を満たす。したがって、甲1組成物発明は、本件特許発明1の「前記(C)バインダー樹脂が、塩基性官能基を有さず」との要件を満たす。
また、甲1組成物発明の「バインダー樹脂」は、本件特許発明1の「前記(C)バインダー樹脂における(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂の含有割合」が100質量%である。
(ケ)一般式(II)及び(III)
上記(ク)のとおり、甲1組成物発明の「バインダー樹脂-1」及び「バインダー樹脂-2」は、いずれも、本件特許発明1の「(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂」である。
しかしながら、甲1組成物発明の「バインダー樹脂-1」は、本件特許発明1の「一般式(II)で表される繰り返し単位構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂」及び「一般式(III)で表される部分構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂」のいずれにも該当しない。
とりわけ、「一般式(II)」の「R12」に相当する部分が、甲1組成物発明の「バインダー樹脂-1」は、上記(ク)のとおり、本件特許明細書の【0194】の式(II-A)であるものの、当該式(II-A)は、本件特許明細書の【0193】によると、「1以上の2価の脂肪族基と1以上の2価の芳香族環基とを連結した基」である(当合議体注:下線は当合議体で付したものである。)。
よって、甲1組成物発明の「バインダー樹脂-1」における、「一般式(II)」の「R12」に相当する部分は、本件特許発明1の「置換基を有していてもよい」「1以上の2価の環状の脂肪族基と1以上の2価の芳香族環基とを連結した基」に該当しない(当合議体注:下線は当合議体で付したものである。)。
また、本件特許明細書のほかの箇所を参照しても、甲1組成物発明の「バインダー樹脂-1」における、「一般式(II)」の「R12」に相当する部分は、「置換基を有していてもよい」「2価の環状の脂肪族基」及び「2価の芳香族環基」のいずれにも該当しない。また、甲1組成物発明の「バインダー樹脂-2」も、上記と同様である。
したがって、甲1組成物発明は、本件特許発明1の「前記(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂が、下記一般式(II)で表される繰り返し単位構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂及び下記一般式(III)で表される部分構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂の一方又は両方を含む」という要件を満足しない。
イ 一致点
本件特許発明1と甲1組成物発明は、次の点で一致する。
「(A)着色剤、(B)分散剤、(C)バインダー樹脂、(D)光重合性モノマー及び(E)光重合開始剤を含有する着色感光性樹脂組成物であって、
前記(B)分散剤が、塩基性官能基を有する高分子分散剤であり、かつアクリル系分散剤を含み、
前記(C)バインダー樹脂が、塩基性官能基を有さず、前記(C)バインダー樹脂における(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂の含有割合が85質量%以上である、
着色感光性樹脂組成物。」
ウ 相違点
他方、本件特許発明1と甲1組成物発明は、次の点で相違する。
(ア)甲1相違点1
「着色剤」が、本件特許発明1は、「下記一般式(I)で表される化合物、前記化合物の幾何異性体、前記化合物の塩、及び前記化合物の幾何異性体の塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する(A1)有機黒色顔料を含み」という要件を満たすのに対して、甲1組成物発明は、当該要件を満たさない点。
[図:0001392063000061.jpg]
(式(I)中、Ra1及びRa6は各々独立に、水素原子、CH3、CF3、フッ素原子又は塩素原子を表し;
Ra2、Ra3、Ra4、Ra5、Ra7、Ra8、Ra9及びRa10は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、Ra11、COOH、COORa11、COO-、CONH2、CONHRa11、CONRa11Ra12、CN、OH、ORa11、COCRa11、OOCNH2、OOCNHRa11、OOCNRa11Ra12、NO2、NH2、NHRa11、NRa11Ra12、NHCORa12、NRa11CORa12、N=CH2、N=CHRa11、N=CRa11Ra12、SH、SRa11、SORa11、SO2Ra11、SO3Ra11、SO3H、SO3-、SO2NH2、SO2NHRa11又はSO2NRa11Ra12を表し;
且つ、Ra2とRa3、Ra3とRa4、Ra4とRa5、Ra7とRa8、Ra8とRa9、及びRa9とRa10からなる群から選ばれる少なくとも1つの組み合わせは、互いに直接結合してもよく、又は酸素原子、硫黄原子、NH若しくはNRa11ブリッジによって互いに結合してもよく;
Ra11及びRa12は各々独立に、炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数3~12のシクロアルケニル基又は炭素数2~12のアルキニル基を表す。)
(イ)甲1相違点2
「主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂」が、本件特許発明1は、「下記一般式(II)で表される繰り返し単位構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂及び下記一般式(III)で表される部分構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂の一方又は両方を含む」という要件を満たすのに対して、甲1組成物発明は、一般式(II)における「R12」における「それぞれ置換基を有していてもよい、2価の環状の脂肪族基、2価の芳香族環基、又は1以上の2価の環状の脂肪族基と1以上の2価の芳香族環基とを連結した基を表し」との要件を満たさないため一般式(II)で表される繰り返し単位構造を有するとはいえず、また、一般式(III)で表される部分構造を有するともいえない点。
[図:0001392063000062.jpg]
(式(II)中、R11は水素原子又はメチル基を表し;
R12はそれぞれ置換基を有していてもよい、2価の環状の脂肪族基、2価の芳香族環基、又は1以上の2価の環状の脂肪族基と1以上の2価の芳香族環基とを連結した基を表し;
式(II)中のベンゼン環は、更に任意の置換基により置換されていてもよく;
*は結合手を表す。)
[図:0001392063000063.jpg]
(式(III)中、R13は各々独立に、水素原子又はメチル基を表し;
R14は、環状炭化水素基を側鎖として有する2価の炭化水素基を表し;
R15及びR16は各々独立に、置換基を有していてもよい2価の脂肪族基を表し;
m及びnは各々独立に0~2の整数を表し;
*は結合手を表す。)
エ 判断
事案に鑑み、甲1相違点2に係る本件特許発明1の構成の容易想到性について検討する。
甲1の[0041]には、甲1の着色感光性組成物に用いられるバインダー樹脂として、カラーフィルターに使用される部材の樹脂であれば特に制限無く使用でき、例としてはエポキシアクリレート系樹脂バインダー樹脂が挙げられ、カルボキシル基を有するエポキシアクリレート樹脂がさらに好ましいと記載されている。
ここで、甲1組成物発明のバインダー樹脂は、甲1の[0100]~[0102]に記載されている「アルカリ可溶性樹脂(A)」である。
一方、主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂であって、本件特許発明1の「一般式(II)で表される繰り返し単位構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂、及び、一般式(III)で表される部分構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂」については、甲1の[0045]~[0049]及び[0055]~[0056]に記載される「アルカリ可溶性樹脂(A’’)」、[0140]~[0141]に記載される「アルカリ可溶性樹脂(A’)」、[0163]~[0165]及び[0174]~[0175]に記載される「アルカリ可溶性樹脂(A’’’)」が、それぞれ例示的に列挙されている。
また、甲1の[0186]には、甲1の着色感光性組成物におけるバインダー樹脂として、アルカリ可溶性樹脂(A)、(A’)、(A’’)、(A’’’)、(A1’’)の内、形状や段差のコントロール、基板との密着性のバランスの点からアルカリ可溶性樹脂(A)と(A’’’)が好ましいと記載されている。
そうしてみると、甲1組成物発明の「バインダー樹脂」は、甲1の[0186]で好ましいとされている「アルカリ可溶性樹脂(A)」なのであるから、甲1組成物発明の当該「アルカリ可溶性樹脂(A)」を敢えて他のアルカリ可溶性樹脂(A’)、(A’’)、(A1’’)に変更する動機付けは見いだし難い。
また、アルカリ可溶性樹脂(A’’’)は、本件特許発明1の「式(III)で表される繰り返し単位構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂」に相当するところ、甲1の[0186]において、甲1組成物発明の上記「アルカリ可溶性樹脂(A)」と同様に好ましいとされているものである。しかしながら、本件特許明細書の「エポキシ(メタ)アクリレート樹脂は剛直な骨格を有するため熱分解しにくく、また、骨格が剛直なため硬化時に配列構造をとって架橋性の高い膜が形成されるため、バインダー樹脂中のエポキシ(メタ)アクリレート樹脂の含有割合を高くすることによって、アウトガス特性が良好になったと考えられる。」(本件特許明細書の[0452])という効果や、本件特許発明1の「式(II)」及び「式(III)」についての「露光部への現像液の浸透低減の観点からは環状のものが好ましい。」(同[0184]~[0185]及び[0216])という効果が、甲1の記載に接した当業者が予想することができる範囲内の効果とはいえないことに照らせば、甲1組成物発明において、当業者が上記アルカリ可溶性樹脂(A’’’)を採用することが容易であるとはいえない。
したがって、甲1組成物発明において、甲1に例示的に列挙されている上記バインダー樹脂の中から、本件特許発明1の「一般式(II)で表される繰り返し単位構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂、及び、一般式(III)で表される部分構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂」に該当するバインダー樹脂を選択して甲1相違点2に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たものではない。
オ 特許異議申立人の主張について
(ア)新規性
特許異議申立人は、甲1組成物発明の「バインダー樹脂-1」である「ZCR-1569H」は本件特許発明1の一般式(II)に含まれ、また、甲1組成物発明の「バインダー樹脂-2」である「ZCR-1642H」は、本件特許の実施例のバインダー樹脂-Iと一致すると主張する(特許異議申立書第80頁)。
しかし、上記ア(ケ)に記載のとおり、「ZCR-1569H」は、本件特許発明1の一般式(II)で表される繰り返し単位構造を有さない。
また、「ZCR-1642H」は、本件特許の実施例のバインダー樹脂-Iと一致するものの、上記ア(ケ)に記載のとおり、「ZCR-1642H」は、本件特許発明1の一般式(II)で表される繰り返し単位構造を有さない。
したがって、特許異議申立人の上記主張を考慮したとしても、甲1組成物発明の「バインダー樹脂-1」及び「バインダー樹脂-2」は、本件特許発明1の一般式(II)で表される繰り返し単位を有さず、この点で、本件特許発明1と甲1組成物発明は相違する。
(イ)進歩性
特許異議申立人は、本件特許明細書の[0452]~[0453]の記載を根拠に、本件特許発明1の作用効果の発現についても、甲1に記載された着色感光性組成物はそれを具備すると解すると主張する(特許異議申立書第82頁)。
しかし、本件特許明細書に記載の事項は、本件優先日当時に、当業者が予測できたことの根拠とはならない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
カ 甲1の他の実施例について
上記ア~オは、甲1の実施例1に基づいて主引用発明を認定した場合について述べたが、甲1のその他の実施例に基づいて主引用発明を認定したとしても判断は同様である。
キ 本件特許発明1についての小括
したがって、本件特許発明1は、甲1に記載された発明ではない。
また、甲1相違点1について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1に記載された発明、特許異議申立人が提出したその他の甲号証に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
(2)本件特許発明7
本件特許発明7は、本件特許発明1と同様に、「前記(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂が、下記一般式(II)で表される繰り返し単位構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂及び下記一般式(III)で表される部分構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂の一方又は両方を含む」という構成を具備するものである。
そうしてみると、上記(1)と同様に、本件特許発明7は、甲1に記載された発明でない。また、本件特許発明7は、甲1に記載された発明、特許異議申立人が提出したその他の甲号証に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
(3)本件特許発明16
甲1分散液6発明は、下記のとおり、本件特許発明16の一般式(III)で表される繰り返し単位構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂を含むので、以下、甲1分散液6発明を主引用発明として検討する。
ア 対比
本件特許発明16と甲1分散液6発明を対比すると、以下のとおりである。
(ア)着色剤
甲1分散液6発明は、「C.I.ピグメントレッド177」及び「C.I.ピグメントブルー15:6」をそれぞれ含んでおり、これらは、いずれも、本件特許発明16の「着色剤」に相当する。
(イ)分散剤
甲1分散液6発明の「分散剤」は、本件特許発明16の「分散剤」に相当する。
(ウ)バインダー樹脂
甲1分散液6発明の「バインダー樹脂-3」は、本件特許発明16の「バインダー樹脂」に相当する。
(エ)顔料分散液
上記(ア)~(ウ)を踏まえると、甲1分散液6発明の「顔料分散液」は、本件特許発明16の「(A)着色剤、(B)分散剤及び(C)バインダー樹脂を含有する」とされる「顔料分散液」に相当する。
(オ)分散剤の詳細
甲1分散液6発明の「分散剤」は、「ビックケミー社製「DisperBYK-2000」」であるので、上記(1)ア(キ)と同様に、本件特許発明16の「前記(B)分散剤が、塩基性官能基を有する高分子分散剤であり、かつアクリル系分散剤を含み、」という要件を満たす。
(カ)エポキシ(メタ)アクリレート樹脂
甲1分散液6発明の「バインダー樹脂-3」は、「下記構造(11)のエポキシ化合物とアクリル酸との反応物を、トリメチロールプロパン(TMP)及びビフェニルテトラカルボン酸2無水物(BPDA)と反応させて得られた樹脂」であるので、本件特許発明16の「主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂」に相当する。
[図:0001392063000064.jpg]
(キ)一般式(II)及び(III)
甲1分散液6発明の「バインダー樹脂-3」は、上記(カ)に記載のとおりの「エポキシ(メタ)アクリレート樹脂」であるので、本件特許発明16の「一般式(III)で表される部分構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂」に相当する。
とりわけ、当該「バインダー樹脂-3」は、「一般式(III)」において、「R13」が水素原子、「R14」がアダマンチル基(環状炭化水素基)を側鎖として有するフェニレン基(2価の炭化水素基)であり、m及びnがいずれも0の整数である、部分構造を有する樹脂である。
(ク)用途
甲1分散液6発明は、本件特許発明16の「着色感光性樹脂組成物を製造するために用いられる」という要件を満たす。
イ 一致点
本件特許発明16と甲1分散液6発明は、次の点で一致する。
「(A)着色剤、(B)分散剤及び(C)バインダー樹脂を含有する顔料分散液であって、
前記(B)分散剤が、塩基性官能基を有する高分子分散剤であり、かつアクリル系分散剤を含み、
前記(C)バインダー樹脂が、(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂を含み、
前記(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂が、下記一般式(III)で表される部分構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂を含み、着色感光性樹脂組成物を製造するために用いられる顔料分散液。
[図:0001392063000065.jpg]
(式(III)中、R13は各々独立に、水素原子又はメチル基を表し;
R14は、環状炭化水素基を側鎖として有する2価の炭化水素基を表し;
R15及びR16は各々独立に、置換基を有していてもよい2価の脂肪族基を表し;
m及びnは各々独立に0~2の整数を表し;
*は結合手を表す。)」
ウ 相違点
他方、本件特許発明16と甲1分散液6発明は、次の点で相違する。
(ア)甲1相違点3
「着色剤」が、本件特許発明16は、「下記一般式(I)で表される化合物、前記化合物の幾何異性体、前記化合物の塩、及び前記化合物の幾何異性体の塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する(A1)有機黒色顔料を含み」という要件を満たすのに対して、甲1分散液6発明は、当該要件を満たさない点。
[図:0001392063000066.jpg]
(式(I)中、Ra1及びRa6は各々独立に、水素原子、CH3、CF3、フッ素原子又は塩素原子を表し;
Ra2、Ra3、Ra4、Ra5、Ra7、Ra8、Ra9及びRa10は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、Ra11、COOH、COORa11、COO-、CONH2、CONHRa11、CONRa11Ra12、CN、OH、ORa11、COCRa11、OOCNH2、OOCNHRa11、OOCNRa11Ra12、NO2、NH2、NHRa11、NRa11Ra12、NHCORa12、NRa11CORa12、N=CH2、N=CHRa11、N=CRa11Ra12、SH、SRa11、SORa11、SO2Ra11、SO3Ra11、SO3H、SO3-、SO2NH2、SO2NHRa11又はSO2NRa11Ra12を表し;
且つ、Ra2とRa3、Ra3とRa4、Ra4とRa5、Ra7とRa8、Ra8とRa9、及びRa9とRa10からなる群から選ばれる少なくとも1つの組み合わせは、互いに直接結合してもよく、又は酸素原子、硫黄原子、NH若しくはNRa11ブリッジによって互いに結合してもよく;
Ra11及びRa12は各々独立に、炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数3~12のシクロアルケニル基又は炭素数2~12のアルキニル基を表す。)
エ 判断
甲1相違点3に係る本件特許発明16の構成の容易想到性について検討する。
甲1の[0022]には、甲1の着色感光性組成物に用いられる顔料として黒色顔料を併用することができると記載され、同[0030]には、黒色顔料として「Irgaphor Black S 0100 CF(BASF社製)」が例示されている。
甲1の[0273]には、着色感光性組成物は予め顔料分散液を調整すると記載されているから、着色感光性組成物に用いられる顔料は、顔料分散液にも用いられる顔料である。そうすると、甲1には、顔料分散液に用いる黒色顔料として「Irgaphor Black S 0100 CF(BASF社製)」が例示されているといえる。
そして、「Irgaphor Black S 0100 CF(BASF社製)」は、甲1相違点3に係る本件特許発明16の構成である。
しかしながら、甲1分散液6発明において、甲1に例示的に多数列挙されている顔料の中から、「Irgaphor Black S 0100 CF(BASF社製)」を用いることの積極的な動機はなく、そのような顔料を選択することは、「Irgaphor Black S 0100 CF(BASF社製)」が甲3~甲5に記載(甲3分散液発明~甲5分散液発明)のとおり周知であったとしても、本件特許発明16を知った上で試みる改良であって、当該周知技術に基づいて本件特許発明16の進歩性を否定することは、いわゆる後知恵の論理といえる。
したがって、甲1分散液6発明において、当業者といえども、甲1相違点3に係る本件特許発明16の構成を採用する動機付けを見いだすことはできない。
また、甲1の[0022]には、「本発明の着色感光性組成物では、顔料として、下記(A)及び(B)を必須成分として含有する。
(A)C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ64、及びC.I.ピグメントオレンジ72からなる群より選ばれる1つ
(B)C.I.ピグメントブルー60」と記載されているところ、甲1分散液6発明は、これらの必須成分を含むものでなく、比較例1及び比較例2を製造するために用いられている分散液である。
しかしながら、比較例を製造するために用いられている顔料分散液をあえて改良の出発点にしようとする動機は想定し難いから、甲1分散液6発明において、甲1相違点3に係る本件特許発明16の構成を採用することの動機付けは、なおさら存在しない。
以上の点を踏まえると、甲1分散液6発明において甲1相違点3に係る本件特許発明16の構成を採用することは、当業者が容易になし得たといえない。
オ 特許異議申立人の主張について
(ア)新規性
特許異議申立人は、甲1に記載の発明が、本件特許発明16の構成を具備すると主張する(特許異議申立書第89頁)。
しかし、上記ウに記載のとおり、甲1分散液6発明は甲1相違点3において異なる。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
(イ)進歩性
特許異議申立人は、「Irgaphor Black S 0100 CF(BASF社製)」は周知であり、これを用いることは、本分野の通常の課題に対する当業者の設計的事項であって、容易に想到し得ると主張する(特許異議申立書第76~79、89頁)。
しかし、上記エに記載のとおり、甲1分散液6発明において、「Irgaphor Black S 0100 CF(BASF社製)」を採用することの動機付けが存在しない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
カ 本件特許発明16についての小括
したがって、本件特許発明16は、甲1に記載された発明ではない。
また、本件特許発明16は、甲1に記載された発明、特許異議申立人が提出したその他の甲号証に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
(4)本件特許発明2~6、8~15、17~18
本件特許の特許請求の範囲の請求項2~6、8~15、17~18は、いずれも、請求項1、7又は16を直接又は間接的に引用するものであって、本件特許発明2~6、8~15、17~18は、本件特許発明1、7又は16の構成を全て具備するものである。
そうしてみると、上記(1)~(3)と同様に、本件特許発明2~6、8~15、17~18は、甲1に記載された発明でない。また、本件特許発明2~6、8~15、17~18は、甲1に記載された発明、特許異議申立人が提出したその他の甲号証に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
3 甲2を主引用文献とした場合について
(1)本件特許発明1
ア 対比
本件特許発明1と甲2組成物発明を対比すると、以下のとおりである。
(ア)着色剤
甲2組成物発明は、甲2分散液発明の「C.I.ピグメントレッド177」及び「C.I.ピグメントブルー15:6」を含んでおり、これらは、いずれも、本件特許発明1の「着色剤」に相当する。
(イ)分散剤
甲2組成物発明は、甲2分散液発明の「分散剤-1」を含んでおり、当該「分散剤-1」は、本件特許発明1の「分散剤」に相当する。
(ウ)バインダー樹脂
甲2組成物発明は、「アルカリ可溶性樹脂-2」に加えて、甲2分散液発明の「アルカリ可溶性樹脂-1」を含んでおり、これらは、いずれも、本件特許発明1の「バインダー樹脂」に相当する。
(エ)光重合性モノマー
甲2組成物発明の「エチレン性不飽和化合物」は、本件特許発明1の「光重合性モノマー」に相当する。
(オ)光重合開始剤
甲2組成物発明の「光重合開始剤」は、本件特許発明1の「光重合開始剤」に相当する。
(カ)着色感光性樹脂組成物
上記(ア)~(オ)を踏まえると、甲2組成物発明の「着色感光性組成物」は、本件特許発明1の「(A)着色剤、(B)分散剤、(C)バインダー樹脂、(D)光重合性モノマー及び(E)光重合開始剤を含有する」とされる「着色感光性樹脂組成物」に相当する。
(キ)分散剤の詳細
甲2組成物発明の「分散剤-1」は、「ビックケミー社製「DisperBYK-2000」」であるので、上記(1)ア(キ)と同様に、本件特許発明1の「前記(B)分散剤が、塩基性官能基を有する高分子分散剤であり、かつアクリル系分散剤を含み、」という要件を満たす。
(ク)塩基性官能基
上記(ウ)のとおり、甲2組成物発明の「バインダー樹脂」は、「アルカリ可溶性樹脂-1」及び「アルカリ可溶性樹脂-2」からなる。
「アルカリ可溶性樹脂-1」は、「新中村化学工業(株)製 「ADEP02」((MW=3500~4500、酸価=約110mg-KOH/g、アルカリ可溶性樹脂(A-2)に該当)」であるところ、「アルカリ可溶性樹脂(A-2)に該当」との特定のみでは、バインダー樹脂が「塩基性官能基を有さず」に該当するか否かが明らかでない。
すなわち、「アルカリ可溶性樹脂(A-2)」は、「エポキシ樹脂に、α,β-不飽和モノカルボン酸又はエステル部分にカルボキシル基を有するα,β-不飽和モノカルボン酸エステルを付加させ、さらに、多価アルコール及び多塩基酸無水物を反応させることにより得られる樹脂」であるが、「エポキシ樹脂」、「α,β-不飽和モノカルボン酸又はエステル部分にカルボキシル基を有するα,β-不飽和モノカルボン酸エステル」、「多価アルコール及び多塩基酸無水物」のいずれもが、塩基性官能基を有さないのか否かは、これらの構造が具体的に定まっていないので明らかでない。
「アルカリ可溶性樹脂-2」は、「日本化薬(株)製「ZCR-1664H」(MW=5000~6000、酸価=約60mg-KOH/g、アルカリ可溶性樹脂(A-1)に該当)」であるところ、「日本化薬(株)製「ZCR-1664H」」は、特開2017-194644号公報の【0021】によると、「ビフェニル型エポキシアクリレート」である。
また、「日本化薬(株)製「ZCR-1664H」」のビフェニル骨格は、国際公開第2013/058386号の[0116]~[0122]によると、下式(A1-2a)で表されるビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂か、又は、下式(A1-2c)で表されるビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂に由来すると解される。
[図:0001392063000067.jpg]
(式(A1-2a)中、vは、1~50の整数であり、2~10の整数が好ましい。またベンゼン環の水素原子は、それぞれ独立に、炭素原子数1~12のアルキル基、ハロゲン原子、または一部の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基で置換されていてもよい。)
[図:0001392063000068.jpg]
(式(A1-2c)中、ベンゼン環の水素原子は、それぞれ独立に、炭素原子数1~12のアルキル基、ハロゲン原子、または一部の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基で置換されていてもよい。zは、0または1~10の整数である。)
しかしながら、「アルカリ可溶性樹脂-2」が「塩基性官能基を有さず」に該当するか否かは明らかでない。
なぜならば、上記の式(A1-2a)及び式(A1-2c)では、特に限定のない「置換基」を許容しており、当該「置換基」に「塩基性官能基」を有さないのか否かは明らかでないからである。
また、「アルカリ可溶性樹脂-2」は、「アルカリ可溶性樹脂(A-1)」に該当するところ、「アルカリ可溶性樹脂(A-1)」が用いる「多塩基酸無水物」はその構造が具体的に定まっていないので、この点を踏まえても、「塩基性官能基」を有さないのか否かは明らかでない。
したがって、甲2組成物発明の「バインダー樹脂」は、本件特許発明1の「塩基性官能基を有さず」との要件を満たすのか否か明らかでない。
(ケ)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート
甲2組成物発明の「アルカリ可溶性樹脂-2」は、「主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート」であるといえる。
なぜならば、甲2組成物発明の「アルカリ可溶性樹脂-2」は、上記(ク)のとおり、上記の式(A1-2a)又は式(A1-2c)で表されるエポキシ樹脂を反応させて得られた「ビフェニル型エポキシアクリレート」であるため、その主鎖には、ビフェニル骨格からなる芳香族環を有するからである。
他方、甲2組成物発明の「アルカリ可溶性樹脂-1」は、「新中村化学工業(株)製 「ADEP02」((MW=3500~4500、酸価=約110mg-KOH/g、アルカリ可溶性樹脂(A-2)に該当)」であるところ、「アルカリ可溶性樹脂(A-2)に該当」との特定のみでは、「主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート」なのか否かが明らかでない。
なぜならば、樹脂の原料となる「エポキシ樹脂」として例示列挙されている「アダマンチル基含有エポキシ樹脂」は主鎖に芳香族環を有するか否かは明らかでないし、そもそも、「原料となるエポキシ樹脂について・・・等を好適に用いる」と「等」を用いて特定されているから、「主鎖に芳香族環を有する」か否かは明らかでないからである(当合議体注:下線は当合議体で付したものである。)。
さらに、「α,β-不飽和モノカルボン酸又はエステル部分にカルボキシル基を有するα,β-不飽和モノカルボン酸エステル」を用いると特定され、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸エステルを用いるとは特定されていないから、「エポキシ(メタ)アクリレート」であるか否かも明らかでない。
次に、甲2組成物発明のバインダー樹脂における「アルカリ可溶性樹脂-1」と「アルカリ可溶性樹脂-2」の和に対する「アルカリ可溶性樹脂-2」の含有割合を算出する。
甲2組成物発明は、「甲2分散液発明」と「アルカリ可溶性樹脂-2」をそれぞれ「34.61重量部」、「13.62重量部」含むと特定されているが、これらの含有量は、溶剤も含んでいるのか否かは明らかでない。
しかしながら、甲2組成物発明は、「着色感光性組成物中の全固形分に対する着色剤の含有比率が23重量%であり」、「アルカリ可溶性樹脂/エチレン性不飽和化合物が固形分重量比で2.5であり」、「着色感光性組成物中の全固形分に対するアルカリ可溶性樹脂の合計の割合が48.6重量%である」という濃度条件を有するところ、「甲2分散液発明」を溶剤も含んで「34.61重量部」、かつ、固形分濃度が約60%の「アルカリ可溶性樹脂-2」を「13.62重量部」含むとすると、これらの濃度条件に概ね合致する。
そして、上記下線部の場合、「アルカリ可溶性樹脂-1」と「アルカリ可溶性樹脂-2」の和に対する「アルカリ可溶性樹脂-1」の含有割合は24重量%と算出される。
よって、甲2組成物発明は、「主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート」なのか否かが明らかでないバインダー樹脂が、24重量%含まれている。
そうしてみると、甲2組成物発明は、本件特許発明1の「前記(C)バインダー樹脂における(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂の含有割合が85質量%以上」との要件を満たすか否か明らかでない。
(コ)一般式(II)及び(III)
上記(ク)及び(ケ)のとおり、甲2組成物発明の「アルカリ可溶性樹脂-1」は、その具体的な構造が特定されていないから、本件特許発明1の「一般式(II)で表される繰り返し単位構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂」及び「一般式(III)で表される部分構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂」のいずれかに該当するか否かは明らかでない。
また、甲2組成物発明の「アルカリ可溶性樹脂-2」は、上記の式(A1-2a)又は式(A1-2c)で表されるエポキシ樹脂を反応させて得られた「ビフェニル型エポキシアクリレート」であると特定されるものの、本件特許発明1の「下記一般式(II)で表される繰り返し単位構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂及び下記一般式(III)で表される部分構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂の一方又は両方を含む」か否かは明らかでない。
とりわけ、「一般式(II)」の「R12」に相当する部分が、上記(ク)の式(A1-2a)を参照しても、甲2組成物発明の「アルカリ可溶性樹脂-2」は、本件特許発明1の「置換基を有していてもよい」「1以上の2価の環状の脂肪族基と1以上の2価の芳香族環基とを連結した基」に該当しないし、「置換基を有していてもよい」「2価の環状の脂肪族基」又は「2価の芳香族環基」にも該当しない(当合議体注:下線は当合議体で付したものである。)。
また、「一般式(III)」の「R14」に相当する部分が、上記(ク)の式(A1-2c)を参照しても、甲2組成物発明の「アルカリ可溶性樹脂-2」は、本件特許発明1の「環状炭化水素基を側鎖として有する2価の炭化水素基」となるのか否かが明らかでない。
したがって、甲2組成物発明は、本件特許発明1の「前記(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂が、下記一般式(II)で表される繰り返し単位構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂及び下記一般式(III)で表される部分構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂の一方又は両方を含む」という要件を満たすのか否かが明らかでない。
イ 一致点
本件特許発明1と甲2組成物発明は、次の点で一致する。
「(A)着色剤、(B)分散剤、(C)バインダー樹脂、(D)光重合性モノマー及び(E)光重合開始剤を含有する着色感光性樹脂組成物であって、
前記(B)分散剤が、塩基性官能基を有する高分子分散剤であり、かつアクリル系分散剤を含む、
着色感光性樹脂組成物。」
ウ 相違点
他方、本件特許発明1と甲2組成物発明は、次の点で相違する。
(ア)甲2相違点1
「着色剤」が、本件特許発明1は、「下記一般式(I)で表される化合物、前記化合物の幾何異性体、前記化合物の塩、及び前記化合物の幾何異性体の塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する(A1)有機黒色顔料を含み」という要件を満たすのに対して、甲2組成物発明は、当該要件を満たさない点。
[図:0001392063000069.jpg]
(式(I)中、Ra1及びRa6は各々独立に、水素原子、CH3、CF3、フッ素原子又は塩素原子を表し;
Ra2、Ra3、Ra4、Ra5、Ra7、Ra8、Ra9及びRa10は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、Ra11、COOH、COORa11、COO-、CONH2、CONHRa11、CONRa11Ra12、CN、OH、ORa11、COCRa11、OOCNH2、OOCNHRa11、OOCNRa11Ra12、NO2、NH2、NHRa11、NRa11Ra12、NHCORa12、NRa11CORa12、N=CH2、N=CHRa11、N=CRa11Ra12、SH、SRa11、SORa11、SO2Ra11、SO3Ra11、SO3H、SO3-、SO2NH2、SO2NHRa11又はSO2NRa11Ra12を表し;
且つ、Ra2とRa3、Ra3とRa4、Ra4とRa5、Ra7とRa8、Ra8とRa9、及びRa9とRa10からなる群から選ばれる少なくとも1つの組み合わせは、互いに直接結合してもよく、又は酸素原子、硫黄原子、NH若しくはNRa11ブリッジによって互いに結合してもよく;
Ra11及びRa12は各々独立に、炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数3~12のシクロアルケニル基又は炭素数2~12のアルキニル基を表す。)
(イ)甲2相違点2
本件特許発明1は、「(C)バインダー樹脂が、塩基性官能基を有さず、前記(C)バインダー樹脂における(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂の含有割合が85質量%以上であり、前記(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂が、下記一般式(II)で表される繰り返し単位構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂及び下記一般式(III)で表される部分構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂の一方又は両方を含む」という要件を満たすのに対して、甲2組成物発明は、「(C)バインダー樹脂が、塩基性官能基を有さず、前記(C)バインダー樹脂における(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂の含有割合が85質量%以上であり」といえるのか否かが明らかでなく、かつ、「下記一般式(II)で表される繰り返し単位構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂及び下記一般式(III)で表される部分構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂の一方又は両方を含む」といえるのか否かが明らかでない点。
[図:0001392063000070.jpg]
(式(II)中、R11は水素原子又はメチル基を表し;
R12はそれぞれ置換基を有していてもよい、2価の環状の脂肪族基、2価の芳香族環基、又は1以上の2価の環状の脂肪族基と1以上の2価の芳香族環基とを連結した基を表し;
式(II)中のベンゼン環は、更に任意の置換基により置換されていてもよく;
*は結合手を表す。)
[図:0001392063000071.jpg]
(式(III)中、R13は各々独立に、水素原子又はメチル基を表し;
R14は、環状炭化水素基を側鎖として有する2価の炭化水素基を表し;
R15及びR16は各々独立に、置換基を有していてもよい2価の脂肪族基を表し;
m及びnは各々独立に0~2の整数を表し;
*は結合手を表す。)
エ 判断
事案に鑑み、甲2相違点2に係る本件特許発明1の構成の容易想到性について検討する。
甲2の[0030]には、「本発明に用いるアルカリ可溶性樹脂(A-1)は、エポキシ樹脂に、α,β-不飽和モノカルボン酸又はエステル部分にカルボキシル基を有するα,β-不飽和モノカルボン酸エステルを付加させ、更に多塩基酸無水物を反応させることによりアルカリ可溶性を付与する等の方法で得られる。」と記載され、同[0031]には、「原料となるエポキシ樹脂として、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンとフェノールまたはクレゾールとの重付加反応物とエピハロヒドリンとの反応生成物であるエポキシ樹脂、アダマンチル基含有エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂等を好適に用いることができる。」と記載されている。また、同[0038]には、「本発明に用いるアルカリ可溶性樹脂(A-2)は、エポキシ樹脂に、α,β-不飽和モノカルボン酸又はエステル部分にカルボキシル基を有するα,β-不飽和モノカルボン酸エステルを付加させ、さらに、多価アルコール及び多塩基酸無水物を反応させることにより得られる。」「アルカリ可溶性樹脂(A-1)の合成に用いる合成方法や多価アルコール以外の成分は、全てがアルカリ可溶性樹脂(A-2)の合成に用いることができる。」と記載されている。
しかし、甲2には、例示的に多数列挙されている「原料となるエポキシ樹脂」の中から特定の「エポキシ樹脂」を選択する指針は記載されていないから、甲2組成物発明の「バインダー樹脂」である「アルカリ可溶性樹脂」について、「原料となるエポキシ樹脂」を敢えて他の「原料となるエポキシ樹脂」に変更した他の「アルカリ可溶性樹脂」を選択する動機付けは見いだし難い。
また、多数列挙された「原料となるエポキシ樹脂」のうち、「ジシクロペンタジエンとフェノールまたはクレゾールとの重付加反応物とエピハロヒドリンとの反応生成物であるエポキシ樹脂」は、本件特許発明1の「式(II)で表される繰り返し単位構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂」の原料となり得、「フルオレン型エポキシ樹脂」は、本件特許発明1の「式(III)で表される繰り返し単位構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂」の原料となり得る。しかしながら、本件特許明細書の「エポキシ(メタ)アクリレート樹脂は剛直な骨格を有するため熱分解しにくく、また、骨格が剛直なため硬化時に配列構造をとって架橋性の高い膜が形成されるため、バインダー樹脂中のエポキシ(メタ)アクリレート樹脂の含有割合を高くすることによって、アウトガス特性が良好になったと考えられる。」(本件特許明細書の[0452])という効果や、本件特許発明1の「式(II)」及び「式(III)」についての「露光部への現像液の浸透低減の観点からは環状のものが好ましい。」(同[0184]~[0185]及び[0216])という効果が、甲2の記載に接した当業者が予想することができる範囲内の効果とはいえないことに照らせば、甲2組成物発明の「バインダー樹脂」である「アルカリ可溶性樹脂」について、当業者が「原料となるエポキシ樹脂」として「ジシクロペンタジエンとフェノールまたはクレゾールとの重付加反応物とエピハロヒドリンとの反応生成物であるエポキシ樹脂」や「フルオレン型エポキシ樹脂」を選択し、併せて、「α,β-不飽和モノカルボン酸」及び「多塩基酸無水物」を適宜選択して合成した樹脂を採用することが容易であるとはいえない。
したがって、甲2組成物発明において、甲2に例示的に列挙されている上記「原料となるエポキシ樹脂」と、「α,β-不飽和モノカルボン酸」及び「多塩基酸無水物」を適宜選択して合成することで、本件特許発明1の「一般式(II)で表される繰り返し単位構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂、及び、一般式(III)で表される部分構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂」に該当するバインダー樹脂を採用し、甲2相違点2に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たものではない。
オ 特許異議申立人の主張について
(ア)新規性
a アルカリ可溶性樹脂-1
特許異議申立人は、甲2組成物発明の「アルカリ可溶性樹脂-1」である「ADEP02」は、甲2の[0031]で例示されているエポキシ樹脂の構造からしても、本件特許発明1の一般式(II)又は(III)に含まれると主張する(特許異議申立書第97頁)。
しかし、甲2の[0031]で例示されているエポキシ樹脂は、一般式(II)で表される繰り返し単位構造又は一般式(III)で表される部分構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂の原料とならないものが多数を占めている。
したがって、特許異議申立人の主張は採用できない。
b アルカリ可溶性樹脂-2
特許異議申立人は、甲2組成物発明の「アルカリ可溶性樹脂-2」である「ZCR-1664H」は、本件特許発明1の一般式(II)に含まれると主張する(特許異議申立書第97~100頁)。
しかし、上記ア(コ)に記載のとおり、「ZCR-1664H」は、本件特許発明1の一般式(II)で表される繰り返し単位構造を有さない。
したがって、特許異議申立人の主張は採用できない。
(イ)進歩性
特許異議申立人は、本件特許発明1の作用効果の発現についても、甲2に記載された着色感光性組成物はそれを具備すると解すると主張する(特許異議申立書第101頁)。
しかし、上記2(1)オ(イ)と同様に、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
カ 甲2の他の実施例について
上記ア~オは、甲2の実施例1に基づいて主引用発明を認定した場合について述べたが、甲2のその他の実施例に基づいて主引用発明を認定したとしても判断は同様である。
キ 本件特許発明1についての小括
したがって、本件特許発明1は、甲2に記載された発明ではない。
また、甲2相違点1について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲2に記載された発明、特許異議申立人が提出したその他の甲号証に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
(2)本件特許発明7
本件特許発明7は、本件特許発明1と同様に、「前記(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂が、下記一般式(II)で表される繰り返し単位構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂及び下記一般式(III)で表される部分構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂の一方又は両方を含む」という構成を具備するものである。
そうしてみると、上記(1)と同様に、本件特許発明7は、甲2に記載された発明でない。また、本件特許発明7は、甲2に記載された発明、特許異議申立人が提出したその他の甲号証に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
(3)本件特許発明16について
ア 対比
本件特許発明16と甲2分散液発明を対比すると、構成成分の対比については、上記(1)アと同様である。
また、甲2分散液発明は、本件特許発明16の「着色感光性樹脂組成物を製造するために用いられる」という要件を満たす。
イ 一致点
本件特許発明16と甲2分散液発明は、次の点で一致する。
「(A)着色剤、(B)分散剤及び(C)バインダー樹脂を含有する顔料分散液であって、
前記(B)分散剤が、塩基性官能基を有する高分子分散剤であり、かつアクリル系分散剤を含み、
着色感光性樹脂組成物を製造するために用いられる顔料分散液。」
ウ 相違点
他方、本件特許発明16と甲2分散液発明は、次の点で相違する。
(ア)甲2相違点3
「着色剤」が、本件特許発明16は、「下記一般式(I)で表される化合物、前記化合物の幾何異性体、前記化合物の塩、及び前記化合物の幾何異性体の塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する(A1)有機黒色顔料を含み」という要件を満たすのに対して、甲2分散液発明は、当該要件を満たさない点。
[図:0001392063000072.jpg]
(式(I)中、Ra1及びRa6は各々独立に、水素原子、CH3、CF3、フッ素原子又は塩素原子を表し;
Ra2、Ra3、Ra4、Ra5、Ra7、Ra8、Ra9及びRa10は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、Ra11、COOH、COORa11、COO-、CONH2、CONHRa11、CONRa11Ra12、CN、OH、ORa11、COCRa11、OOCNH2、OOCNHRa11、OOCNRa11Ra12、NO2、NH2、NHRa11、NRa11Ra12、NHCORa12、NRa11CORa12、N=CH2、N=CHRa11、N=CRa11Ra12、SH、SRa11、SORa11、SO2Ra11、SO3Ra11、SO3H、SO3-、SO2NH2、SO2NHRa11又はSO2NRa11Ra12を表し;
且つ、Ra2とRa3、Ra3とRa4、Ra4とRa5、Ra7とRa8、Ra8とRa9、及びRa9とRa10からなる群から選ばれる少なくとも1つの組み合わせは、互いに直接結合してもよく、又は酸素原子、硫黄原子、NH若しくはNRa11ブリッジによって互いに結合してもよく;
Ra11及びRa12は各々独立に、炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数3~12のシクロアルケニル基又は炭素数2~12のアルキニル基を表す。)
(イ)甲2相違点4
本件特許発明16は、「(C)バインダー樹脂が、(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂を含み、(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂が、下記一般式(II)で表される繰り返し単位構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂及び下記一般式(III)で表される部分構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂の一方又は両方を含む」という要件を満たすのに対して、甲2分散液発明は、「(C)バインダー樹脂が、(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂を含み」といえるのか否かが明らかでなく、かつ、「下記一般式(II)で表される繰り返し単位構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂及び下記一般式(III)で表される部分構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂の一方又は両方を含む」といえるのか否かが明らかでない点。
[図:0001392063000073.jpg]
(式(II)中、R11は水素原子又はメチル基を表し;
R12はそれぞれ置換基を有していてもよい、2価の環状の脂肪族基、2価の芳香族環基、又は1以上の2価の環状の脂肪族基と1以上の2価の芳香族環基とを連結した基を表し;
式(II)中のベンゼン環は、更に任意の置換基により置換されていてもよく;
*は結合手を表す。)
[図:0001392063000074.jpg]
(式(III)中、R13は各々独立に、水素原子又はメチル基を表し;
R14は、環状炭化水素基を側鎖として有する2価の炭化水素基を表し;
R15及びR16は各々独立に、置換基を有していてもよい2価の脂肪族基を表し;
m及びnは各々独立に0~2の整数を表し;
*は結合手を表す。)
エ 判断
事案に鑑み、甲2相違点4に係る本件特許発明16の構成の容易想到性について検討する。
上記(1)エと同様に、甲2分散液発明の「バインダー樹脂」を他の「バインダー樹脂」に変更する動機付けは見出し難い。
また、本件特許明細書の「エポキシ(メタ)アクリレート樹脂は剛直な骨格を有するため熱分解しにくく、また、骨格が剛直なため硬化時に配列構造をとって架橋性の高い膜が形成されるため、バインダー樹脂中のエポキシ(メタ)アクリレート樹脂の含有割合を高くすることによって、アウトガス特性が良好になったと考えられる。」(本件特許明細書の[0452])という着色感光性樹脂組成物の効果や、「式(II)」及び「式(III)」についての「露光部への現像液の浸透低減の観点からは環状のものが好ましい。」(同[0184]~[0185]及び[0216])という着色感光性樹脂組成物の効果を前提にした、「バインダー樹脂としてエポキシ(メタ)アクリレート樹脂を含む顔料分散液」「を用いて調整したことで、得られた着色感光性樹脂組成物に含まれるエポキシ(メタ)アクリレート樹脂の含有割合を高めることができた」(本件特許明細書の[0454])という顔料分散液の効果が、甲2の記載に接した当業者が予想することができる範囲内の効果とはいえないことに照らせば、上記(1)エと同様に、甲2分散液発明において、甲2相違点4に係る本件特許発明16の構成とすることが、当業者が容易になし得たものではない。
オ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、甲2に記載の発明が、本件特許発明16の構成を具備すると主張する(特許異議申立書第107~108頁)。
しかし、上記ウに記載のとおり、甲2分散液発明は甲2相違点3~4において異なり、また、上記エに記載のとおり、当該甲2相違点4に係る本件特許発明16に係る構成を採用することは当業者が容易になし得たともいえない。
したがって、特許異議申立人の主張は採用できない。
カ 甲2の他の実施例について
上記ア~オは、甲2の実施例における顔料分散液-1に基づいて主引用発明を認定した場合について述べたが、甲2の実施例におけるその他の顔料分散液に基づいて主引用発明を認定したとしても判断は同様である。
キ 本件特許発明16についての小括
したがって、本件特許発明16は、甲2に記載された発明ではない。
また、甲2相違点3について検討するまでもなく、本件特許発明16は、甲2に記載された発明、特許異議申立人が提出したその他の甲号証に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
(4)本件特許発明2~6、8~15、17~18
本件特許の特許請求の範囲の請求項2~6、8~15、17~18は、いずれも、請求項1、7又は16を直接又は間接的に引用するものであって、本件特許発明2~6、8~15、17~18は、本件特許発明1、7又は16の構成を全て具備するものである。
そうしてみると、上記(1)~(3)と同様に、本件特許発明2~6、8~15、17~18は、甲2に記載された発明でない。また、本件特許発明2~6、8~15、17~18は、甲2に記載された発明、特許異議申立人が提出したその他の甲号証に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
4 甲3を主引用文献とした場合について
(1)本件特許発明16
ア 対比及び相違点
本件特許発明16と甲3分散液発明とを対比すると、両者は、上記3(3)ウ(イ)の甲2相違点4と同様に、「(C)バインダー樹脂が、(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂を含み、(C1)主鎖に芳香族環を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂が、下記一般式(II)で表される繰り返し単位構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂及び下記一般式(III)で表される部分構造を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂の一方又は両方を含む」か否かという相違点(「甲3相違点」という。)にて相違する。
イ 判断
甲3相違点についての判断は、甲2相違点4に対する上記3(3)エの判断と同様であり、甲3分散液発明において甲3相違点に係る本件特許発明16の構成を採用することは、当業者が容易になし得たといえない。
ウ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、甲3に記載の発明が、本件特許発明16の構成を具備すると主張する(特許異議申立書第89頁)。
しかし、上記アに記載のとおり、甲3分散液発明は甲3相違点において異なり、また、上記イに記載のとおり、当該甲3相違点に係る本件特許発明16に係る構成を採用することは当業者が容易になし得たともいえない。
したがって、特許異議申立人の主張は採用できない。
エ 甲3のほかの実施例について
上記は、甲3の実施例における顔料分散液-1に基づいて主引用発明を認定した場合について述べたが、甲3の実施例におけるその他の顔料分散液に基づいて主引用発明を認定したとしても判断は同様である。
オ 本件特許発明16についての小括
したがって、本件特許発明16は、甲3に記載された発明ではない。
また、本件特許発明16は、甲3に記載された発明、特許異議申立人が提出したその他の甲号証に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
(2)本件特許発明17~18
本件特許の特許請求の範囲の請求項17~18は、いずれも、請求項16を直接又は間接的に引用するものであって、本件特許発明17~18は、本件特許発明16の構成を全て具備するものである。
そうしてみると、上記(1)と同様に、本件特許発明17~18は、甲3に記載された発明でない。また、本件特許発明17~18は、甲3に記載された発明、特許異議申立人が提出したその他の甲号証に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
5 甲4を主引用文献とした場合について
上記4は、主引用文献である甲3を甲4に、主引用発明である甲3分散液発明を甲4分散液発明に、それぞれ替えたとしても判断は同様である。
そうしてみると、上記4と同様に、本件特許発明16~18は、甲4に記載された発明でない。また、本件特許発明16~18は、甲4に記載された発明、特許異議申立人が提出したその他の甲号証に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
6 甲5を主引用文献とした場合について
上記4は、主引用文献である甲3を甲5に、主引用発明である甲3分散液発明を甲5分散液発明に、それぞれ替えたとしても判断は同様である。
そうしてみると、上記4と同様に、本件特許発明16~18は、甲5に記載された発明でない。また、本件特許発明16~18は、甲5に記載された発明、特許異議申立人が提出したその他の甲号証に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
第5 むすび
請求項1~18に係る特許は、いずれも、特許異議の申立ての理由及び証拠によって取り消すことはできない。また、他に請求項1~18に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-700586