特許異議申立
2025-700135
新規樹脂組成物およびその製造方法
- 審判番号
- 2025-700135
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-200098
- 登録番号
- 7524529
- 請求日
- 2025年01月30日
- 審決日
- 2025年12月05日
- 公報発行日
- 2026年03月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日本食品化工株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
- 【異議申立人】秋山 万奈
- 審判長/審判官
- 審判長 藤原 浩子
- 審判官 越本 秀幸
- 審判官 加藤 幹
- 分類
- P1651.113-YAA(C08L) / P1651.121-YAA(C08L) / P1651.536-YAA(C08L) / P1651.537-YAA(C08L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第113条第4号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7524529号発明「新規樹脂組成物およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7524529号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。
特許第7524529号の請求項1~4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7524529(以下「本件特許」という。)は、令和1年11月1日に出願され、令和6年7月22日にその特許権の設定登録(請求項の数4)がされ、同年同月30日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許に対し、令和7年1月30日に特許異議申立人 秋山 万奈(以下「申立人」という。)により、本件特許の請求項1~4に係る特許に対して特許異議の申立てがされ、当審は、同年5月23日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である同年7月24日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、その訂正の請求に対して、特許異議申立人は、同年9月1日に意見書を提出した。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである(下線は訂正箇所を表し、当審において付した。)。
特許請求の範囲の請求項1に係る
「水溶性分岐多糖を分散状態で含む樹脂組成物であって、水溶性分岐多糖の重量平均分子量が1000~10000であり、かつ、水溶性分岐多糖の水溶液(水溶性多糖濃度1.0質量%、エタノール濃度40質量%)の吸光度が25℃において0.7以下であり、水溶性分岐多糖が、難消化性グルカン、難消化性デキストリンおよびイソマルトデキストリンからなる群から選択される1種または2種以上であり、かつ、樹脂組成物中の樹脂および水溶性分岐多糖の総質量に対する水溶性分岐多糖の質量の比率が60%以下である、樹脂組成物。」を、
「水溶性分岐多糖を分散状態で含む樹脂組成物であって、水溶性分岐多糖の重量平均分子量が1000~10000であり、かつ、水溶性分岐多糖の水溶液(水溶性多糖濃度1.0質量%、エタノール濃度40質量%)の吸光度が25℃において0.7以下であり、水溶性分岐多糖が、難消化性グルカン、難消化性デキストリンおよびイソマルトデキストリンからなる群から選択される1種または2種以上であり、かつ、樹脂組成物中の樹脂および水溶性分岐多糖の総質量に対する水溶性分岐多糖の質量の比率が60%以下である、樹脂組成物(但し、チューイングガム組成物を除く)。」に訂正する。
なお、訂正前の請求項1~4について、請求項2~4は、それぞれ請求項1を直接引用するものであって、本件訂正によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。よって、訂正前の請求項1~4に対応する訂正後の請求項〔1~4〕は、特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。
2 訂正の目的の適否
本件訂正は、先の取消理由通知書に記載した甲第1号証の「チューイングガム組成物」を除くことにより、請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「樹脂組成物」を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
3 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)に記載された技術的事項は、請求項1において特定された水溶性分岐多糖を、化石原料由来の樹脂(例えば、石油系プラスチック)のフィラーとして使用した場合、樹脂中に良好に分散するため化石原料由来の樹脂割合を低減しつつ品質の高い樹脂組成物とできるというものであり(【0012】等参照)、当該樹脂組成物の具体的な用途については何も記載がないところ、当該樹脂組成物について、「チューイングガム組成物」という、本件明細書等に記載のない特定の用途の組成物を除いたことにより、上記の技術的事項とは異なる新たな技術事項が導入されたということはできない。
また、「チューイングガム組成物」を除いて「樹脂組成物」を限定する本件訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものには該当しない。
なお、訂正前の請求項1~4の全てについて特許異議の申立てがなされているので、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する第126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)は課されない。
4 申立人の主張について
申立人は、令和7年9月1日提出の意見書において、本件訂正は、請求項に係る発明が、その技術的思想が引用発明の技術的思想と顕著に異なるものではない発明から、引用発明の技術的思想と顕著に異なるものへと変化し、当該訂正により新たな技術事項が導入されていることとなる旨を主張する(意見書の3頁17行~21行)。
しかしながら、本件訂正は、新たな技術的事項を導入するものではないことは、上記3に説示したとおりである。
また、申立人の主張は、単に、本件訂正により、請求項に係る発明が引用発明とは異なるものとなったことを指摘するにすぎず、具体的に、新たな技術的事項が導入されたことを指摘するものではない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
5 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
本件訂正後の請求項1~4に係る発明(以下、順に「本件発明1」~「本件発明4」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
水溶性分岐多糖を分散状態で含む樹脂組成物であって、水溶性分岐多糖の重量平均分子量が1000~10000であり、かつ、水溶性分岐多糖の水溶液(水溶性多糖濃度1.0質量%、エタノール濃度40質量%)の吸光度が25℃において0.7以下であり、水溶性分岐多糖が、難消化性グルカン、難消化性デキストリンおよびイソマルトデキストリンからなる群から選択される1種または2種以上であり、かつ、樹脂組成物中の樹脂および水溶性分岐多糖の総質量に対する水溶性分岐多糖の質量の比率が60%以下である、樹脂組成物(但し、チューイングガム組成物を除く)。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂組成物を原料として含んでなる、樹脂成形物。
【請求項3】
水溶性分岐多糖と樹脂原料とを混合する工程を含んでなる、請求項1に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の樹脂組成物を成形する工程を含む、樹脂成形物の製造方法。」
第4 特許異議申立書に記載された申立理由と当審において通知した取消理由
1 申立理由の概要
申立人が提出した特許異議申立書(以下「申立書」という。)に記載した申立理由の概要は以下のとおりである。
(1)申立理由1(新規性)
本件特許の請求項1~4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~4係る発明についての特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)申立理由2(進歩性)
ア 甲第1号証に基づく進歩性
本件特許の請求項1~4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~4係る発明についての特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
イ 甲第3号証に基づく進歩性
本件特許の請求項1~4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第3号証に記載された発明及び甲第4号証~甲第5号証に記載された事項に基いて、本件特許の出願日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~4係る発明についての特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(3)申立理由3(サポート要件)
本件特許の請求項1~4に係る発明についての特許は、以下のア及びイの点で特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
ア 請求項1~4に係る発明の水溶性分岐多糖として選択される難消化性グルカン、難消化性デキストリンおよびイソマルトデキストリンについて、吸光度と重量平均分子量のいずれか又は両方が本件発明1~4の範囲外である場合の評価結果が示されていないから、本件特許の請求項1~4に係る発明の全範囲、特に吸光度及び重量平均分子量が本件明細書の実施例以外の樹脂組成物について、当該発明の課題を解決すると認識することはできない。
イ 請求項1~4に係る発明は、樹脂についての特定がなく、様々な構造、分子量、官能基を有するものを包含するが、本件明細書の実施例で使用されたもの以外のあらゆる樹脂について、当該実施例と同様に、当該発明の課題を解決すると認識することはできない。
(4)申立理由4(実施可能要件)
本件特許の請求項1~4に係る発明についての特許は、以下のア及びイの点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
ア 本件明細書の実施例で使用された水溶性分岐多糖以外に、どのような水溶性分岐多糖を用いたときに、樹脂組成物に分散状態で含まれることになるのか、十分に記載されていないため、樹脂組成物に分散状態で含まれる水溶性分岐多糖を同定するために過度の試行錯誤が必要となる。
イ 本件明細書の実施例で使用された樹脂以外に、どのような樹脂を用いたときに、水溶性分岐多糖を樹脂組成物中に分散させることができるのか、十分に記載されていないため、樹脂組成物に水溶性分岐多糖を分散させることができる樹脂を同定するために過度の試行錯誤が必要となる。
(5)申立理由5(明確性)
本件特許の請求項1~4に係る発明についての特許は、以下の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
請求項1~4に係る発明では、水溶性分岐多糖の吸光度について、吸光度を測定する際の測定波長が特定されていないから、あらゆる波長において「25℃において0.7以下」であることを意図したものか、特定の波長において「25℃において0.7以下」であることを意図したものか、不明確である。
2 取消理由の概要
当審において令和7年5月23日付けで通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
取消理由1(新規性)
本件特許の請求項1~4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、これらの請求項に係る発明の特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
取消理由2(進歩性)
本件特許の請求項1~4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、これらの請求項に係る発明の特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
3 申立人が提出した証拠方法
(1)申立書に添付した証拠方法
甲第1号証:特表2005-531317号公報
甲第2号証:特開2018-024619号公報
甲第3号証:特開2013-091763号公報
甲第4号証:辻啓介・森文平 編、「食物繊維の科学」、朝倉書店、1997年9月5日、108-109頁、116-131頁
甲第5号証:独立行政法人農畜産業振興機構調査情報部編、「砂糖類・でん粉情報」、独立行政法人農畜産業振興機構調査情報部、2016年2月10日、42-47頁
甲第6号証:(地独)大阪市立工業研究所・プラスチック読本編集委員会、プラスチック技術協会共編、「プラスチック読本」第20版、株式会社プラスチック・エージ、2009年10月1日、230-233頁、366-367頁
甲第7号証:特開2017-179199号公報
甲第8号証:社団法人日本分析化学会、高分子分析研究懇談会編、「高分子分析ハンドブック」、朝倉書店、1985年1月25日、209-213頁
甲第9号証:社団法人高分子学会編、「プラスチック加工技術ハンドブック」、日刊工業新聞社、1995年6月12日、1252-1257頁、1470-1475頁
(2)令和7年9月1日提出の意見書に添付した証拠方法
甲第10号証:小林彰夫、村田忠彦編、「菓子の事典」、朝倉書店、2000年5月20日、450-461頁
甲第11号証:西岡利勝編、「高分子添加剤分析ガイドブック」、朝倉書店、2014年8月25日、238-241頁
甲第12号証:特表2018-501396号公報
甲第13号証:GRAS Notice for Resistant Glucan、Nihon Shokuhin Kako Co., Ltd.、2017年5月29日発行、GRAS Notice(GRN) No.711、P.8, 9, 23
甲第13の2号証:甲第13号証の抄訳
甲第14号証:GRAS Notification for Isomaltodextrin (IMD) Manufactured by Hayashibara Co., Ltd.、Vanguard Regulatory Services, Inc.、2015年11月10日、GRAS Notice (GRN) No.610、P.16
甲第14の2号証:甲第14号証の抄訳
甲第15号証:国際公開第2018/081263号公報
甲第15の2号証:甲第15号証の抄訳
甲第16号証:MaRo Hwang et al.、Gentamicin-Loaded Wound Dressing With Polyvinyl Alcohol/Dextran Hydrogel: Gel Characterization and In Vivo Healing Evaluation、AAPS PharmSciTech、2010年9月、Vol.11, No.3、P.1092-1093
甲第16の2号証:甲第16号証の抄訳
甲第17号証:Ezatollah Fathi et al.、Physically crosslinked polyvinyl alcohol-dextran blend xerogels: Morphology and thermal behavior、2011年2月11日、Science Direct, Carbohydrate Polymers Vol.84, Issue 1、P.145-152
甲第17の2号証:甲第17号証の抄訳
甲第18号証:Md. Shahidul Islam et al.、Effect of pullulan/poly(vinyl alcohol) blend system on the montmorillonite structure with property characterization of electrospun pullulan/poly(vinyl alcohol)/ montmorillonite nanofibers、2012年2月15日、Science Direct, Journal of Colloid and Interface Science Vol.368, Issue 1、P.273-281
甲第18の2号証:甲第18号証の抄訳
甲第19号証:米国特許出願公開第2013/0186303号明細書
甲第19の2号証:甲第19号証の抄訳
甲第20号証:中国特許出願公開第102731844号明細書
甲第20の2号証:甲第20号証の抄訳
甲第21号証:Peter D Cooper and Nikolai Petrovsky、De1ta inu1in: a nove1, immuno1ogica11y active, stable packing structure comprising β-D-[2→l] poly(fructo-furanosyl) α-D-glucose polymers、Oxford University、2011年、Glycobiology Vol.21, No.5、P.595-606
甲第21の2号証:甲第21号証の抄訳
甲第22号証:米国特許第3425972号明細書
甲第22の2号証:甲第22号証の抄訳
甲第23号証:米国特許第6348090号明細書
甲第23の2号証:甲第23号証の抄訳
甲第24号証:特開2003-020025号公報
甲第25号証:米国特許出願公開第2018/0305524号明細書
甲第25の2号証:甲第25号証の抄訳
甲第26号証:Hyun-Gi Youn et al.、Inulin/PVA biomaterials using thiamine as an alternative plasticizer、2019年、Science Direct, Carbohydrate polymers vol. 220、P.86-94
甲第26の2号証:甲第26号証の抄訳
以下「甲第1号証」等を、番号にしたがって、「甲1」等という。
第5 当審の判断
当審は、取消理由1、2及び申立書に記載した申立理由1~5によっては、本件発明1~4に係る特許を取り消すことはできないものと判断する。
その理由は、以下のとおりである。
1 取消理由1及び2並びに申立理由1及び申立理由2(甲1に基づく進歩性)について
申立理由1及び申立理由2(甲1に基づく進歩性)は、甲1を主引例とする新規性及び進歩性についてのものであるので、取消理由1及び2と併せて検討する。
(1)甲1に記載された発明
甲1の、特に【請求項1】、【請求項3】、【0034】、【0053】から、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「チューイングガム中心を含む圧縮チューイングガムタブレットであって、
前記ガム中心が、ガムベース顆粒とチューイングガム添加物との圧縮物を含んでおり、
前記チューイングガム添加物が甘味料と香料とを含んでおり、
前記ガムベース顆粒の少なくとも第1の部分が、香料または活性成分混入ガムベースを含んでおり、
前記ガムベース顆粒の少なくとも第2の部分が、慣用のガムベースの顆粒を含んでいる圧縮チューイングガムタブレットであって、
前記ガムベース顆粒の少なくとも第1の部分が、合成樹脂を含んでおり、
低カロリーフィラーとして、ポリデキストロース、ラフチロース、ラフチリン、イヌリン、フラクトオリゴ糖(NutraFlora(商品名))、パラチノーゼオリゴ糖、ガーゴム加水分解物(例えばSun Fiber(商品名))又は難消化性デキストリン(例えばFibersol(商品名))のいずれかを、ガムベース成分において0~50重量%含む、圧縮チューインガムタブレット。」(以下「甲1発明」という。)
(2)本件発明1について
ア 対比
(ア)甲1発明の「ポリデキストロース、ラフチロース、ラフチリン、イヌリン、フラクトオリゴ糖(NutraFlora(商品名))、パラチノーゼオリゴ糖、ガーゴム加水分解物(例えばSun Fiber(商品名))または難消化性デキストリン(例えばFibersol(商品名))」のいずれかである「低カロリーフィラー」は、本件発明1の「水溶性」「多糖」に相当する。
(イ)甲1発明の「圧縮チューイングガムタブレット」は合成樹脂を含むものであるから、本件発明1の「樹脂組成物」である限りにおいて一致する。
以上から、本件発明1と甲1発明とは、
「水溶性多糖を含む樹脂組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
水溶性多糖について、本件発明1では「水溶性分岐多糖の重量平均分子量が1000~10000であり、かつ、水溶性分岐多糖の水溶液(水溶性多糖濃度1.0質量%、エタノール濃度40質量%)の吸光度が25℃において0.7以下」である「水溶性分岐多糖」を含有するのに対し、甲1発明では「ポリデキストロース、ラフチロース、ラフチリン、イヌリン、フラクトオリゴ糖(NutraFlora(商品名))、パラチノーゼオリゴ糖、ガーゴム加水分解物(例えばSun Fiber(商品名))または難消化性デキストリン(例えばFibersol(商品名))」のいずれかの「低カロリーフィラー」を含む点
<相違点2>
水溶性多糖について、本件発明1では「樹脂組成物」が「分散状態で」含むのに対し、甲1発明では当該事項について特定されていない点
<相違点3>
樹脂組成物が含む水溶性多糖の割合について、本件発明1では「組成物中の樹脂および水溶性分岐多糖の総質量に対する水溶性分岐多糖の質量の比率が60%以下」であるのに対し、甲1発明では当該事項について特定されていない点
<相違点4>
樹脂組成物について、本件発明1では「(但し、チューイングガム組成物を除く)」とあるのに対し、甲1発明では「圧縮チューイングガムタブレット」である点
イ 相違点についての判断
事案に鑑み、相違点4について検討する。
甲1発明は「圧縮チューイングガムタブレット」であり、本件発明1から除かれている「チューイングガム組成物」に相当するから、相違点4は実質的な相違点である。
そして、甲1発明は、甲1に記載された技術分野や発明が解決しようとする課題等からチューイングガムであることを必須とするものであり、甲1の他の記載を考慮しても、チューイングガム以外に適用する動機付けがあるとはいえない。
また、甲2、10、11の記載を検討しても、甲1発明の圧縮チューイングガムタブレットを、チューイングガム以外の用途に適用する動機付けとなる記載は見いだせない。
そうすると、甲1発明の「圧縮チューインガムタブレット」を、チューイングガム以外の用途のものとして、相違点4に係る「チューイングガム組成物を除く」ものとすることは、当業者が容易に想到し得たものではない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲1、2、10、11に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 申立人の主張について
申立人は、令和7年9月1日提出の意見書の2頁において、ガムベースやそれ以外の樹脂組成物において、フィラーを樹脂に均一に分散させ、良好な分散性を確保することは常に求められていることから(甲10、甲11)、甲1に記載された難消化性デキストリン等の分岐多糖類を、分散性を考慮しつつガムベースに限らない樹脂組成物のフィラーとして利用することには強い動機付けが存在する旨を主張する。
しかしながら、甲10には、チューイングガムの特性や原料について記載され、甲11には、プラスチックの強度向上等のために用いられるフィラーの分散状態が製品の性能に影響することが記載されているものの、甲1発明の「圧縮チューイングガムタブレット」を、チューイングガム以外の他の用途の組成物とすることを動機付ける記載はない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
エ 小括
したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明及び甲1、2、10、11に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明2~4について
本件発明2~4は、本件発明1を直接的に引用しており、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明2~4と甲1発明とは、少なくとも相違点4において相違する。
そうすると、上記(2)イ及びウで説示したのと同様の理由により、本件発明2~4は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明及び甲1、2、10、11に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)取消理由1及び2並びに申立理由1及び申立理由2(甲1に基づく進歩性)についてのまとめ
よって、本件発明1~4は、甲1に記載された発明ではなく、また、本件発明1~4は、甲1に記載された発明及び甲1、2、10、11に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、取消理由1及び2並びに申立理由1及び申立理由2(甲1に基づく進歩性)によっては本件発明1~4に係る特許を取り消すことはできない。
2 取消理由通知において採用しなかった申立理由について
(1)申立理由2(甲3に基づく進歩性)について
ア 甲3に記載された発明
甲3の【請求項1】の記載から、甲3には、以下の発明が記載されているものと認める。
「ポリ乳酸100質量部に対してポリ乳酸用可塑剤5~25質量部が配合された可塑化ポリ乳酸系組成物の連続相およびデキストリン100質量部に対してデキストリン用可塑剤20~75質量部が配合された可塑化デキストリン組成物の連続相が混在し互いに融着した状態にある共連続相構造を有する、生分解性樹脂組成物。」(以下「甲3発明」という。)
イ 本件発明1について
(ア)対比
甲3の【0066】に「共連続構造の水溶解性に優れる可塑化デキストリン連続相が除かれ」という記載及びデキストリンが一般的に水溶性であることから、甲3発明の「デキストリン」は、本件発明1の「水溶性分岐多糖」と、「水溶性多糖」という限りで一致する。
甲3発明の「ポリ乳酸」は、本件発明1の「樹脂」に相当する。
甲3発明の「生分解性樹脂組成物」は、本件発明1の「樹脂組成物(但し、チューイングガム組成物を除く)」と、「樹脂組成物」という限りで一致する。
以上から、本件発明1と甲3発明とは、
「水溶性多糖を含む樹脂組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点5>
水溶性多糖について、本件発明1では「水溶性分岐多糖の重量平均分子量が1000~10000であり、かつ、水溶性分岐多糖の水溶液(水溶性多糖濃度1.0質量%、エタノール濃度40質量%)の吸光度が25℃において0.7以下」である「水溶性分岐多糖」を含有するのに対し、甲3発明は「焙焼デキストリン」を含む点
<相違点6>
水溶性多糖について、本件発明1では「樹脂組成物」が「分散状態で」含むのに対し、甲3発明では「可塑化ポリ乳酸系組成物の連続相」及び「可塑化デキストリン組成物の連続相」が「混在し互いに融着した状態にある共連続相構造を有する」点
<相違点7>
樹脂組成物が含む水溶性多糖の割合について、本件発明1では「組成物中の樹脂および水溶性分岐多糖の総質量に対する水溶性分岐多糖の質量の比率が60%以下」であるのに対し、甲3発明では、ポリ乳酸とデキストリンの総質量に対するデキストリンの質量の比率は特定されていない点
<相違点8>
樹脂組成物について、本件発明1では「樹脂組成物(但し、チューイングガム組成物を除く)」であるのに対し、甲3発明では「生分解性樹脂組成物」である点。
(イ)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点6について検討する。
本件発明1の水溶性分岐多糖を「分散状態で含む」とは、本件明細書【0034】の記載から、マイクロスコープで観察した際、フィラー(多糖)が樹脂中に良好に分散しフィラーとして確認できないか、僅かに確認できる状態である。一方、甲3発明では、可塑化ポリ乳酸系組成物の連続相と可塑化デキストリン組成物の連続相が混在し互いに融着した状態にある共連続構造であることから、可塑化デキストリン組成物を生分解性樹脂組成物に分散状態で含むものではなく連続相として確認できるものであり、さらに甲3の【請求項12】にあるように「生分解性樹脂組成物からなるシートから少なくとも一部のデキストリンを脱落させ」たとしても、可塑化デキストリン組成物が連続相として確認できることから、上記した本件発明1の分散状態に相当するものでもない。
また、甲4、5の記載を検討しても、甲3発明の可塑化ポリ乳酸系組成物の連続相と可塑化デキストリン組成物の連続相との共連続相構造から、可塑化デキストリン組成物を分散状態にする動機付けとなる記載は見いだせない。
そうすると、甲3発明からは相違点6についての特定事項を導くことはできない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3に記載された発明及び甲3~5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ)小括
したがって、本件発明1は、甲3に記載された発明及び甲3~5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
ウ 本件発明2~4について
本件発明2~4は、本件発明1を直接的に引用しており、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明2~4と甲3発明とは、少なくとも相違点6において相違する。
そうすると、上記(イ)で説示したのと同様の理由により、本件発明2~4は、甲3に記載された発明及び甲3~5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
エ 申立理由2(甲3に基づく進歩性)についてのまとめ
よって、本件発明1~4は、甲3に記載された発明及び甲3~5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、申立理由2(甲3に基づく進歩性)によっては本件発明1~4に係る特許を取り消すことはできない。
(2)申立理由3(サポート要件)について
ア サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、検討する。
イ 本件発明が解決しようとする課題
本件発明が解決しようとする課題は、本件明細書の【0007】、【0008】の記載からみて、「バイオマス由来原料が良好な分散性を示す樹脂組成物及びその製造方法を提供すること」であると認められる。
ウ 本件発明について
本件明細書【0012】の「本発明に用いる水溶性分岐多糖は、重量平均分子量が1000~10000であり、かつ、吸光度が0.7以下であるという特徴を有する。上記性質を有する水溶性分岐多糖は、化石原料由来の樹脂(例えば、石油系プラスチック)のフィラーとして使用した場合、樹脂中に良好に分散するため化石原料由来の樹脂割合を低減しつつ品質の高い樹脂組成物と、品質の高い樹脂成形物を得ることができる」という記載より、水溶性分岐多糖として重量平均分子量が1000~10000及び吸光度が0.7以下の両方の特性を満たすことで、上記イの課題を解決できることが記載されている。
さらに、実施例の例1(【0036】、【表3】)において、水溶性分岐多糖として重量平均分子量が1000~10000及び吸光度が0.7以下を満たす難消化性グルカン、難消化性デキストリン又はイソマルトデキストリンを用い、樹脂として高密度ポリエチレン(HDPE)を用いた試験区1~3、5では分散性評価が◎である一方、重量平均分子量が1000~10000及び吸光度が0.7以下の両方又はいずれかを満たさないデキストリン、キサンタンガム、クラスターデキストリン、コーンスターチを用いた試験区6~9では分散性評価が×であることが確認されている。
また、重量平均分子量が1000~10000及び吸光度が0.7以下を満たす特定の水溶性分岐多糖を用い、例2(【0039】、【表4】)では相溶化剤を使用しない場合、例3(【0042】、【表5】)では、ポリブチレンサクシネート、ナイロン、ポリプロピレン、ポリ乳酸といった、HDPEとは物性の異なる様々な種類の樹脂を用いた場合、例4(【0045】、【表6】)では水溶性分岐多糖の配合量を大幅に増やした場合のいずれにおいても、良好な分散性を示すことが確認されている。
そうすると、重量平均分子量が1000~10000及び吸光度が0.7以下を満たす、難消化性グルカン、難消化性デキストリン又はイソマルトデキストリンを用いることにより、樹脂の種類に限らず、樹脂に対して良好な分散性を示し、上記イの課題を解決できることを当業者が認識できる。
したがって、本件発明は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載により当業者が上記イの課題を解決できると認識できる範囲のものである。
エ 申立人の主張について
申立人は、難消化性グルカン、難消化性デキストリン及びイソマルトデキストリンについて、吸光度と重量平均分子量のいずれか又は両方が本件発明の範囲外である場合の評価結果が示されていないから、フィラー(多糖)の吸光度や重量平均分子量が、分散性にどのように影響しているのか理解することができないから、吸光度や重量平均分子量が試験区1~3、5以外の値であるときに、樹脂組成物で良好な分散性を示すと認識することはできない旨を主張する(申立書の42頁)。
しかしながら、吸光度と重量平均分子量のいずれか又は両方が本件発明の範囲外である場合の評価結果が示されていなくても、上記ウで説示したとおり、吸光度と重量平均分子量が本件発明の範囲内であれば、本件発明が解決しようとする課題を解決できることが理解でき、それで足りるというべきである。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
オ 申立理由3についてのまとめ
よって、本件発明1~4は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合するから、申立理由3によっては本件発明1~4に係る特許を取り消すことはできない。
(3)申立理由4(実施可能要件)について
ア 実施可能要件の判断基準
発明の詳細な説明の記載が実施可能要件を満たすというためには、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができる程度の記載があることを要する。
そこで、検討する。
イ 本件発明について
本件明細書の発明の詳細な説明には、水溶性分岐多糖について、重量平均分子量、吸光度が具合的に記載され、具体的な測定方法や水溶性分岐多糖の種類も記載されているとともに(【0013】~【0015】)、実施例においても、本件発明を満たす水溶性分岐多糖として具体的な製品名が記載されている(【0026】、【表1】)。
また、上記(2)で説示したように、発明の詳細な説明の記載により、本件発明の所定の水溶性分岐多糖を用いれば、樹脂の種類によらず、樹脂に対して良好な分散性を示し、上記(2)イの課題を解決できることを当業者が認識できるから、発明の詳細な説明は、当業者が、過度な思考錯誤を要することなく、本件発明の所定の水溶性分岐多糖を分散状態で含む樹脂組成物とすることができるように記載されているといえる。
したがって、発明の詳細な説明には、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び本件出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明を実施することができる程度の記載があるといえる。
ウ 申立理由4についてのまとめ
よって、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1~4について、その実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであり、特許法第36条第4項第1号に規定する要件に適合するから、申立理由4によっては本件発明1~4に係る特許を取り消すことはできない。
(4)申立理由5(明確性)について
ア 本件発明について
(ア)申立人は、上記第4の1(5)の点、すなわち、本件発明における水溶性分岐多糖の吸光度について、吸光度を測定する際の測定波長が特定されておらず、あらゆる波長において「25℃において0.7以下」であることを意図したものか、特定の波長において「25℃において0.7以下」であることを意図したものか、不明確であるから、本件発明は明確でない旨を主張する。
しかし、本件明細書【0014】に「本発明において吸光度は、水溶性分岐多糖濃度1.0質量%およびエタノール濃度40質量%で調製した水溶液の25℃(室温)の条件下における660nmの吸光度である」と記載されているので、本件発明における吸光度を測定する際の測定波長は660nmであることは明らかである。
(イ)また、申立人は令和7年9月1日提出の意見書の3頁において、定義や具体例が本件明細書に記載されておらず、「チューイングガム組成物を除く」との記載の意味内容を当業者が理解できないため、発明の技術的範囲が不明確であり、特許法第113条第4号の取消理由に該当する旨主張する。
しかし、チューイングガムとは、広辞苑第7版によると「口中で噛みつづけて味わう菓子」とあり、チューイングガム組成物は、単にその組成物であることから、チューイングガム組成物の意味内容は明らかである。そして、意味内容が明らかなチューイングガム組成物を除いたものも明らかであるので、発明の技術的範囲は明確である。
イ 申立理由5についてのまとめ
よって、本件発明1~4は明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件に適合するから、申立理由5によっては本件発明1~4に係る特許を取り消すことはできない。
第6 令和7年9月1日提出の意見書において新たに主張された異議申立理由について
申立人が上記意見書の4頁~12頁においてする甲12、15に基づく新規性及び進歩性、甲16~20、22~26に基づく進歩性の主張については、特許異議申立が可能な時期に提出された申立書には記載されていなかった理由であり、時機に後れた新たな主張であるから検討を要しないが、念のため、本件発明1についての甲12に基づく新規性及び進歩性ついてのみ以下、検討する。
1 甲12に記載された発明
甲12の【請求項1】、【0028】から、甲12には、以下の発明が記載されていると認められる。
「ポリマーブレンド組成物であって、
(a)約1~約99重量%のポリマーと、
(b)約1~約75重量%のポリアルファ-1,3-グルカンと
を含むポリマーブレンド組成物であって、
前記ポリアルファ-1,3-グルカンは、分散相であるポリマーブレンド組成物」(以下「甲12」発明という。)
2 本件発明1について
(1)対比・判断
本件発明1と甲12発明とを対比すると、両発明は、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点9>
本件発明1では「水溶性分岐多糖の重量平均分子量が1000~10000であり、かつ、水溶性分岐多糖の水溶液(水溶性多糖濃度1.0質量%、エタノール濃度40質量%)の吸光度が25℃において0.7以下であり」、かつ「難消化性グルカン、難消化性デキストリンおよびイソマルトデキストリンからなる群から選択される1種または2種以上」である「水溶性分岐多糖」を含有するのに対し、甲12発明は「ポリアルファ-1,3-グルカン」を含む点。
相違点9について検討すると、甲12には、ポリアルファ-1,3-グルカンとして、難消化性グルカンが例示されているわけではなく、ポリアルファ-1,3-グルカンの重量平均分子量や水溶液の吸光度が特定されているわけでもないから、相違点9は実質的な相違点であり、甲12発明は、本件発明1ではない。
そして、甲12~15の記載を検討しても、甲12発明のポリアルファ-1,3-グルカンに代えて、難消化性グルカン、難消化性デキストリン又はイソマルトデキストリンを採用する動機付けはない。
(2)申立人の主張について
申立人は上記意見書の5頁において、甲13及び甲14を挙げて、甲12に記載されたポリアルファ-1,3-グルカンは、グルコシド結合としてα-1,3結合を含む点では、難消化性グルカン、難消化性デキストリン及びイソマルトデキストリンと共通しており、さらに、甲12に記載されたポリマーブレンド組成物には、ごく微量の、難消化性グルカン、難消化性デキストリン及びイソマルトデキストリンを含むものが存在する可能性は否定できない旨を主張する。
しかしながら、甲13及び甲14は、難消化性グルカンや難消化性デキストリンに含まれる構造の一般的な技術常識を示すものであり、甲12に記載されたポリマーブレンド組成物が、難消化性グルカン、難消化性デキストリン及びイソマルトデキストリンを含むことを証明するものではない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
(3)小括
したがって、本件発明1は、甲12に記載された発明ではなく、また、甲12に記載された発明及び甲12~15に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立理由によっては、本件発明1~4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700135