特許異議申立
2022-700765
ポリイミド系複合フィルムおよびこれを含むディスプレイ装置
- 審判番号
- 2022-700765
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-130386
- 登録番号
- 7016924
- 請求日
- 2022年08月04日
- 審決日
- 2023年12月25日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】エスケーマイクロワークス 株式会社
- 【権利者代理人】SK弁理士法人
- 【権利者代理人】奥野 彰彦
- 【権利者代理人】伊藤 寛之
- 【権利者】エスケーマイクロワークス ソリューションズ株式会社
- 【権利者代理人】SK弁理士法人
- 【権利者代理人】奥野 彰彦
- 【権利者代理人】伊藤 寛之
- 【異議申立人】石川 照子
- 審判長/審判官
- 審判長 山崎 勝司
- 審判官 稲葉 大紀
- 審判官 藤原 直欣
- 分類
- P1651.121-YAA(B32B) / P1651.536-YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7016924号発明「ポリイミド系複合フィルムおよびこれを含むディスプレイ装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7016924号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕、9について訂正することを認める。
特許第7016924号の請求項1~6、8、9に係る特許を維持する。
特許第7016924号の請求項7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7016924号の請求項1~9に係る特許についての出願は、令和2年7月31日(パリ条約による優先権主張令和1年8月14日外国庁受理(KR)韓国)に出願され、令和4年1月28日にその特許権の設定登録がされ、令和4年2月7日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1~9に係る特許に対し、令和4年8月4日に特許異議申立人石川照子(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。それ以降の経緯は以下のとおりである。
令和5年 1月18日付け 取消理由通知書
令和5年 4月21日 訂正請求書及び意見書(特許権者)
令和5年 7月 6日 意見書(申立人)
令和5年 9月12日付け 訂正拒絶理由通知書
令和5年11月 2日 手続補正書及び意見書(特許権者)
第2 訂正の適否
1 訂正請求書の補正について
令和5年11月2日の手続補正書による補正は、訂正請求書の請求の理由及び添付した訂正特許請求の範囲を補正するものであるところ、当該補正は、請求項4に係る訂正事項の全てを削除するものであるから、訂正請求書の要旨を変更するものではなく、特許法120条の5第9項で準用する同法131条の2第1項の規定に違反するものではない。
2 訂正の内容
令和5年11月2日提出の手続補正書により補正された訂正請求書による訂正の請求(以下、訂正自体を「本件訂正」という。)は、「特許第7016924号の特許請求の範囲を、本件請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~9について訂正することを求める。」ものであり、本件訂正の内容は、以下のとおりのものである。なお、下線は、当審が訂正箇所に付したものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「ポリイミド系樹脂を含むベースフィルムと、前記ベースフィルム上に配置された機能層と、を含み、
前記ベースフィルムと接する面の反対側に位置する前記機能層の一面を第1面とし、
前記機能層と接する前記ベースフィルムの一面を第2面とするとき、
下記数式1で表示されるレベリング指数が0.11~0.7である、ポリイミド系複合フィルム:
[数1]
[図:0001409067000001.jpg]
ここで、前記Sz1は前記第1面のSz粗さ(μm)であり、前記Sz2は前記第2面のSz粗さ(μm)である。
」とあるのを、
「ポリイミド系樹脂を含むベースフィルムと、前記ベースフィルム上に配置された機能層と、を含み、
前記ポリイミド系樹脂は、ジアミン化合物およびジアンヒドリド化合物の重合に由来するイミド繰り返し単位と、前記ジアミン化合物およびジカルボニル化合物の重合に由来するアミド繰り返し単位とを含むポリアミドイミド重合体を含み、
前記ベースフィルムがフィラーをさらに含み、前記フィラーが硫酸バリウム、シリカおよび炭酸カルシウムからなる群より選択された1種以上であり、
前記ベースフィルムと接する面の反対側に位置する前記機能層の一面を第1面とし、
前記機能層と接する前記ベースフィルムの一面を第2面とするとき、
下記数式1で表示されるレベリング指数が0.11~0.7であり、モジュラスが5GPa以上である、ポリイミド系複合フィルム:
[数1]
[図:0001409067000002.jpg]
ここで、前記Sz1は前記第1面のSz粗さ(μm)であり、前記Sz2は前記第2面のSz粗さ(μm)である。」に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2~4、6、8も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に
「前記Sz2が0.01μm~5μmであり、
前記Sz1が0.01μm~4μmである、請求項1に記載のポリイミド系複合フィルム。」とあるのを、
「前記レベリング指数が0.53以上、0.65未満であり、
前記Sz2が0.01μm~5μmであり、
前記Sz1が0.01μm~4μmである、請求項1に記載のポリイミド系複合フィルム。」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に
「前記ベースフィルムがフィラーをさらに含む、請求項1に記載のポリイミド系複合フィルム。」とあるのを、
「前記レベリング指数が0.600~0.643である、請求項1に記載のポリイミド系複合フィルム。」に訂正する。
(請求項3の記載を引用する請求項4も同様に訂正する。)
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に
「前記フィラーの粒径が0.01μm以上~1.0μm未満である、請求項3に記載のポリイミド系複合フィルム。」とあるのを、
「ポリイミド系樹脂を含むベースフィルムと、前記ベースフィルム上に配置された機能層と、を含み、
前記ポリイミド系樹脂は、ジアミン化合物およびジアンヒドリド化合物の重合に由来するイミド繰り返し単位と、前記ジアミン化合物およびジカルボニル化合物の重合に由来するアミド繰り返し単位とを含むポリアミドイミド重合体を含み、
前記ベースフィルムがフィラーをさらに含み、前記フィラーが硫酸バリウム、シリカおよび炭酸カルシウムからなる群より選択された1種以上であり、前記フィラーの粒径が0.01μm以上~1.0μm未満であり、
前記機能層がトリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、及びジペンタエリトリトールヘキサアクリレートからなる群より選択された1種以上に由来する構造単位を有する有機樹脂を含み、
前記機能層の伸び率が2%以上であり、
前記ベースフィルムと接する面の反対側に位置する前記機能層の一面を第1面とし、
前記機能層と接する前記ベースフィルムの一面を第2面とするとき、
下記数式1で表示されるレベリング指数が0.53以上、0.65未満であり、モジュラスが5GPa以上である、ポリイミド系複合フィルム:
[数1]
[図:0001409067000003.jpg]
ここで、前記Sz1は前記第1面のSz粗さ(μm)であり、前記Sz2は前記第2面のSz粗さ(μm)である。」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6に
「前記機能層の厚さが2μm~10μmであり、
下記数式2で表示されるFTが0.7未満である、請求項1に記載のポリイミド系複合フィルム:
[数2]
[図:0001409067000004.jpg]
ここで、前記Thは前記機能層の厚さ(μm)である。」とあるのを、
「前記機能層がアクリレート系モノマー、ウレタンアクリレート系オリゴマー、およびエポキシアクリレート系オリゴマーからなる基より選択された1種以上に由来する構造単位を有する有機樹脂を含み、
前記機能層の伸び率が2%以上であり、
前記機能層の厚さが2μm~10μmであり、
下記数式2で表示されるFTが0.7未満である、請求項1に記載のポリイミド系複合フィルム:
[数2]
[図:0001409067000005.jpg]
ここで、前記Thは前記機能層の厚さ(μm)である。」に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項7を削除する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項8に
「前記機能層の伸び率が2%以上である、請求項1に記載のポリイミド系複合フィルム。」とあるのを、
「前記レベリング指数が0.600~0.643であり、
前記機能層がアクリレート系モノマー、ウレタンアクリレート系オリゴマー、およびエポキシアクリレート系オリゴマーからなる基より選択された1種以上に由来する構造単位を有する有機樹脂を含み、
前記機能層の伸び率が2%以上である、請求項1に記載のポリイミド系複合フィルム。」に訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項9に
「ディスプレイパネルと、前記ディスプレイパネル上に配置されたカバーウィンドウとを含み、
前記カバーウィンドウが、ポリイミド系樹脂を含むベースフィルムと、前記ベースフィルム上に配置された機能層とを含み、
前記ベースフィルムと接する面の反対側に位置する前記機能層の一面を第1面とし、前記機能層と接する前記ベースフィルムの一面を第2面とするとき、
下記数式1で表示されるレベリング指数が0.75未満である、ディスプレイ装置:
[数1]
[図:0001409067000006.jpg]
ここで、前記Sz1は前記第1面のSz粗さ(μm)であり、前記Sz2は前記第2面のSz粗さ(μm)である。」とあるのを、
「ディスプレイパネルと、前記ディスプレイパネル上に配置されたカバーウィンドウとを含み、
前記カバーウィンドウが、ポリイミド系樹脂を含むベースフィルムと、前記ベースフィルム上に配置された機能層とを含み、
前記ポリイミド系樹脂は、ジアミン化合物およびジアンヒドリド化合物の重合に由来するイミド繰り返し単位と、前記ジアミン化合物およびジカルボニル化合物の重合に由来するアミド繰り返し単位とを含むポリアミドイミド重合体を含み、
前記ベースフィルムがフィラーをさらに含み、前記フィラーが硫酸バリウム、シリカおよび炭酸カルシウムからなる群より選択された1種以上であり、
前記ベースフィルムと接する面の反対側に位置する前記機能層の一面を第1面とし、前記機能層と接する前記ベースフィルムの一面を第2面とするとき、
下記数式1で表示されるレベリング指数が0.11~0.7であり、前記カバーウィンドウのモジュラスが5GPa以上である、ディスプレイ装置:
[数1]
[図:0001409067000007.jpg]
ここで、前記Sz1は前記第1面のSz粗さ(μm)であり、前記Sz2は前記第2面のSz粗さ(μm)である。」に訂正する。
(9)本件訂正は、一群の請求項〔1~8〕、及び請求項9について請求されている。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に記載のポリイミド系樹脂がジアミン化合物およびジアンヒドリド化合物の重合に由来するイミド繰り返し単位と、前記ジアミン化合物およびジカルボニル化合物の重合に由来するアミド繰り返し単位とを含むポリアミドイミド重合体を含むこと、ベースフィルムが硫酸バリウム、シリカおよび炭酸カルシウムからなる群より選択された1種以上であるフィラーを含むこと、及びポリイミド系複合フィルムのモジュラスが5GPa以上であることを限定するものである。
したがって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書の【0028】、【0087】及び【0223】の記載に基づく訂正であるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
(2)訂正事項2
訂正事項2は、本件訂正前の請求項2に記載のポリイミド系複合フィルムのレベリング指数の数値範囲をより狭い範囲に限定するものである。
したがって、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書の【0211】の記載に基づく訂正であるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
(3)訂正事項3
訂正事項3は、本件訂正前の請求項3に記載のポリイミド系複合フィルムのレベリング指数の数値範囲をより狭い範囲に限定するものである。
したがって、訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書の【0259】【表3】の記載に基づく訂正であるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
(4)訂正事項4
訂正事項4は、本件訂正前の請求項1及び請求項3を引用する請求項5に記載のポリイミド系複合フィルムを独立形式に改めた上で、ポリイミド系樹脂がジアミン化合物およびジアンヒドリド化合物の重合に由来するイミド繰り返し単位と、前記ジアミン化合物およびジカルボニル化合物の重合に由来するアミド繰り返し単位とを含むポリアミドイミド重合体を含むこと、フィラーが硫酸バリウム、シリカおよび炭酸カルシウムからなる群より選択された1種以上であること、機能層がトリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、及びジペンタエリトリトールヘキサアクリレートからなる群より選択された1種以上に由来する構造単位を有する有機樹脂を含むこと、機能層の伸び率が2%以上であること、レベリング指数の数値範囲をさらに狭い範囲に限定すること、及びポリイミド系複合フィルムのモジュラスが5GPa以上であることを限定するものである。
したがって、訂正事項4は、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項を引用しないものとすることを目的とするものであり、本件特許明細書の【0180】、【0211】及び【0217】の記載に基づく訂正であるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
(5)訂正事項5
訂正事項5は、本件訂正前の請求項6に記載の機能層がアクリレート系モノマー、ウレタンアクリレート系オリゴマー、およびエポキシアクリレート系オリゴマーからなる基より選択された1種以上に由来する構造単位を有する有機樹脂を含むこと、及び機能層の伸び率が2%以上であることを限定するものである。
したがって、訂正事項5は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書の【0177】及び【0217】の記載に基づく訂正であるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
(6)訂正事項6
訂正事項6は、本件訂正前の請求項7を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的するものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
(7)訂正事項7
訂正事項7は、本件訂正前の請求項8に記載のポリイミド系複合フィルムのレベリング指数の数値範囲をさらに狭い範囲に限定すること、及び機能層がアクリレート系モノマー、ウレタンアクリレート系オリゴマー、およびエポキシアクリレート系オリゴマーからなる基より選択された1種以上に由来する構造単位を有する有機樹脂を含むことを限定するものである。
したがって、訂正事項7は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書の【0177】及び【0259】【表3】の記載に基づく訂正であるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
(8)訂正事項8
訂正事項8は、本件訂正前の請求項9に記載のディスプレイ装置のカバーウィンドウのベースフィルムに含まれるポリイミド系樹脂がジアミン化合物およびジアンヒドリド化合物の重合に由来するイミド繰り返し単位と、前記ジアミン化合物およびジカルボニル化合物の重合に由来するアミド繰り返し単位とを含むポリアミドイミド重合体を含むこと、ベースフィルムが硫酸バリウム等のフィラーを含むこと、レベリング指数の数値範囲をさらに狭い範囲に限定すること、及びカバーウィンドウのモジュラスが5GPa以上であることを限定するものである。
したがって、訂正事項8は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書の【0028】、【0087】、【0211】及び【0223】の記載に基づく訂正であるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
4 小括
以上のとおりであるから、訂正事項1~8に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕、9について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
上記のとおり、本件訂正は認められるから、本件訂正後の請求項1~6、8、9に係る発明(以下「本件発明1」等といい、まとめて「本件発明」という。)は、令和5年11月2日提出の手続補正書により補正された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~6、8、9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
ポリイミド系樹脂を含むベースフィルムと、前記ベースフィルム上に配置された機能層と、を含み、
前記ポリイミド系樹脂は、ジアミン化合物およびジアンヒドリド化合物の重合に由来するイミド繰り返し単位と、前記ジアミン化合物およびジカルボニル化合物の重合に由来するアミド繰り返し単位とを含むポリアミドイミド重合体を含み、
前記ベースフィルムがフィラーをさらに含み、前記フィラーが硫酸バリウム、シリカおよび炭酸カルシウムからなる群より選択された1種以上であり、
前記ベースフィルムと接する面の反対側に位置する前記機能層の一面を第1面とし、
前記機能層と接する前記ベースフィルムの一面を第2面とするとき、
下記数式1で表示されるレベリング指数が0.11~0.7であり、モジュラスが5GPa以上である、ポリイミド系複合フィルム:
[数1]
[図:0001409067000008.jpg]
ここで、前記Sz1は前記第1面のSz粗さ(μm)であり、前記Sz2は前記第2面のSz粗さ(μm)である。
【請求項2】
前記レベリング指数が0.53以上、0.65未満であり、
前記Sz2が0.01μm~5μmであり、
前記Sz1が0.01μm~4μmである、請求項1に記載のポリイミド系複合フィルム。
【請求項3】
前記レベリング指数が0.600~0.643である、請求項1に記載のポリイミド系複合フィルム。
【請求項4】
前記フィラーが、硫酸バリウム、シリカ、および炭酸カルシウムからなる群より選ばれた1種以上である、請求項3に記載のポリイミド系複合フィルム。
【請求項5】
ポリイミド系樹脂を含むベースフィルムと、前記ベースフィルム上に配置された機能層と、を含み、
前記ポリイミド系樹脂は、ジアミン化合物およびジアンヒドリド化合物の重合に由来するイミド繰り返し単位と、前記ジアミン化合物およびジカルボニル化合物の重合に由来するアミド繰り返し単位とを含むポリアミドイミド重合体を含み、
前記ベースフィルムがフィラーをさらに含み、前記フィラーが硫酸バリウム、シリカおよび炭酸カルシウムからなる群より選択された1種以上であり、前記フィラーの粒径が0.01μm以上~1.0μm未満であり、
前記機能層がトリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、及びジペンタエリトリトールヘキサアクリレートからなる群より選択された1種以上に由来する構造単位を有する有機樹脂を含み、
前記機能層の伸び率が2%以上であり、
前記ベースフィルムと接する面の反対側に位置する前記機能層の一面を第1面とし、
前記機能層と接する前記ベースフィルムの一面を第2面とするとき、
下記数式1で表示されるレベリング指数が0.53以上、0.65未満であり、モジュラスが5GPa以上である、ポリイミド系複合フィルム:
[数1]
[図:0001409067000009.jpg]
ここで、前記Sz1は前記第1面のSz粗さ(μm)であり、前記Sz2は前記第2面のSz粗さ(μm)である。
【請求項6】
前記機能層がアクリレート系モノマー、ウレタンアクリレート系オリゴマー、およびエポキシアクリレート系オリゴマーからなる基より選択された1種以上に由来する構造単位を有する有機樹脂を含み、
前記機能層の伸び率が2%以上であり、
前記機能層の厚さが2μm~10μmであり、
下記数式2で表示されるFTが0.7未満である、請求項1に記載のポリイミド系複合フィルム:
[数2]
[図:0001409067000010.jpg]
ここで、前記Thは前記機能層の厚さ(μm)である。
【請求項8】
前記レベリング指数が0.600~0.643であり、
前記機能層がアクリレート系モノマー、ウレタンアクリレート系オリゴマー、およびエポキシアクリレート系オリゴマーからなる基より選択された1種以上に由来する構造単位を有する有機樹脂を含み、
前記機能層の伸び率が2%以上である、請求項1に記載のポリイミド系複合フィルム。
【請求項9】
ディスプレイパネルと、前記ディスプレイパネル上に配置されたカバーウィンドウとを含み、
前記カバーウィンドウが、ポリイミド系樹脂を含むベースフィルムと、前記ベースフィルム上に配置された機能層とを含み、
前記ポリイミド系樹脂は、ジアミン化合物およびジアンヒドリド化合物の重合に由来するイミド繰り返し単位と、前記ジアミン化合物およびジカルボニル化合物の重合に由来するアミド繰り返し単位とを含むポリアミドイミド重合体を含み、
前記ベースフィルムがフィラーをさらに含み、前記フィラーが硫酸バリウム、シリカおよび炭酸カルシウムからなる群より選択された1種以上であり、
前記ベースフィルムと接する面の反対側に位置する前記機能層の一面を第1面とし、前記機能層と接する前記ベースフィルムの一面を第2面とするとき、
下記数式1で表示されるレベリング指数が0.11~0.7であり、前記カバーウィンドウのモジュラスが5GPa以上である、ディスプレイ装置:
[数1]
[図:0001409067000011.jpg]
ここで、前記Sz1は前記第1面のSz粗さ(μm)であり、前記Sz2は前記第2面のSz粗さ(μm)である。」
第4 取消理由通知の概要
訂正前の請求項1~9に係る発明に対して、当審が令和5年1月18日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
理由1(進歩性)本件特許の請求項1~9に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
理由2(サポート要件)本件特許は、請求項1~9の記載が次の点で発明の詳細な説明に記載したものではなく、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(1)請求項1の「レベリング指数が0.11~0.7である」点及び請求項9の「レベリング指数が0.75未満である」点について、本件特許明細書の実施例1~3におけるレベリング指数の範囲は0.600~0.643である。そして、出願時の技術常識に照らしても、請求項1に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
(2)請求項7の「表面極性指数(SP)が1/40以上である」点について、本件特許明細書の実施例1~3におけるSPの範囲は0.117~0.170である。そして、出願時の技術常識に照らしても、請求項7に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
(3)請求項9の「レベリング指数が0.75未満である」点について、当該数値範囲は、比較例2のレベリング指数0.101を含んでいる。そして、出願時の技術常識に照らしても、請求項9に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
理由3(明確性)本件特許は、請求項7の「表面極性指数(SP)」を算出するための第1面及び第2面の接触角の測定に用いる液体の種類が不明であるから、「表面極性指数(SP)」との記載は明確でなく、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
<引用文献一覧>(以下、各甲号証を「甲1」等という。)
甲1:特開2011-100027号公報
甲2:JIS B 0633(ISO 4288)製品の幾何特性仕様(GPS)-表面性状:輪郭曲線方式-表面性状評価の方式及び手順
甲3:吉田一朗、「表面粗さ-その測定方法と規格に関して-」、精密工学会誌、vol.78、No.4、2012、p.301~304
甲4:国際公開第2018/070398号
甲5:国際公開第2018/074137号
甲6:特表2018-529987号公報
甲7:国際公開第2019/035398号
第5 当審の判断
1 取消理由通知について
事案に鑑み、サポート要件から判断する。
(1)サポート要件に係る取消理由について
ア 発明の詳細な説明の記載
発明の詳細な説明には、本件発明の解決しようとする課題について、「無色透明で、かつ、機械的物性および光学的物性に優れているポリイミド系複合フィルムおよびこれを含むディスプレイ装置を提供することとする。」(【0005】)と記載されている。
この課題の解決のために、発明の詳細な説明には「ポリイミド系樹脂を含むベースフィルムと、前記ベースフィルム上に配置される機能層と、を含み、前記ベースフィルムと接する面の反対側に位置する前記機能層の一面を第1面とし、前記機能層と接する前記ベースフィルムの一面を第2面としたとき、下記数式1で表示されるレベリング指数が0.75未満である。
[数1]
[図:0001409067000012.jpg]
ここで、前記Sz1は前記第1面のSz粗さ(μm)であり、前記Sz2は前記第2面のSz粗さ(μm)である。」(【0006】、【0007】)と記載されている。
イ 判断
本件発明1及び9は、数式1で示されるレベリング指数が「0.11~0.7」であることを、本件発明5は、前記レベリング指数が「0.53以上、0.65未満」であることをそれぞれ発明特定事項としており、発明の詳細な説明の記載には、以下の事項が記載されている。
「【0211】
一実現例において、前記レベリング指数が0.11~0.7であり得る。
一実現例において、前記レベリング指数は0.7未満であり得る。
一実現例において、前記レベリング指数は0.65未満であり得る。
他の実現例において、前記レベリング指数は0.53以上であり得る。
【0212】
前記ポリイミド系複合フィルムが前記のようなレベリング指数を有すると、前記機能層は、延伸される過程でクラックが生じ得る欠陥を減少させ得る。」
さらに、発明の詳細な説明の【0239】~【0276】の実施例において、本件発明1、5及び9のレベリング指数の数値範囲に含まれる実施例1~3において、ハードコート層の伸び率、及び光学欠陥の評価結果が良好であることが裏付けられている。
そうすると、これらを総合すると、本件発明特定事項により、本件発明の課題を解決できることが当業者であれば認識することができるといえる。
よって、本件発明1~6、8、9は、発明の詳細な説明に記載したものである。
(2)進歩性に係る取消理由について
ア 甲各号証について
(ア)甲1について
a 甲1の記載
甲1には以下の記載がある(下線は当審が付した。「・・・」は、文の省略を意味する。以下同様。)。
「【請求項1】
凹凸面を有する基材と、
上記基材の凹凸面に形成されたハードコート層と
を備え、
上記ハードコート層は、上記基材の凹凸面に倣った凹凸面に有し、上記ハードコート層の凹凸面は、頂部から底部に向かって広がる側面を有する複数の突起を備え、該複数の突起のうち隣り合う突起の底面同士が、接するまたはほぼ接する関係にあり、
上記ハードコート層の凹凸面の最大高さ(Rz)が、0.1μm以上1μm以下であり、
上記ハードコート層の凹凸面は、2.5°以上の傾斜角度成分と2°以下の傾斜角度成分との比が1/1000以下であり、0.5°以下の傾斜角度成分が全体の85%以下である傾斜角度分布を有する防眩性フィルム。」
「【0001】
本発明は、防眩性フィルム、およびその製造方法に関する。詳しくは、基材上にハードコート層を備える防眩性フィルムに関する。」
「【0014】
以上説明したように、本発明によれば、防眩性を損なうことなく、外光の散乱範囲を狭くすることができる。このような特性を有する防眩性フィルムを、液晶表示装置をはじめとする表示装置に対して適用した場合には、表示装置の黒さが際立ち、視認性が向上する。・・・」
「【0016】
本発明の実施形態について図面を参照しながら以下の順序で説明する。
1.第1の実施形態(防眩性フィルムの例)
2.第2の実施形態(表示装置の表面に防眩性フィルムを適用した例)
【0017】
<1.第1の実施形態>
[1.1.防眩性フィルムの構成]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る防眩性フィルムの一構成例を示す断面図である。この防眩性フィルム1は、表面に凹凸形状を有し、この凹凸形状により反射光を散乱させる光学フィルムである。図1に示すように、防眩性フィルム1は、凹凸面を有する基材11と、この基材11の凹凸面上に形成されたハードコート層12とを備える。基材11の凹凸面は、凹部または凸部である構造体11aを基材11表面に繰り返し形成することにより構成されている。なお、図1では、構造体11aが凸部である例が示されている。ハードコート層12は、基材11の凹凸面に倣った凹凸形状を表面に有している。」
「【0022】
ハードコート層12の凹凸面の最大高さ(Rz)が、0.1μm以上1μm以下、好ましくは0.25μm以上0.95μm以下である。0.1μm未満であると、外光の散乱範囲が狭くなりすぎ、防眩性が損なわれる傾向がある。一方、0.95μmを超えると、外光の散乱範囲が広くなりすぎ、防眩性フィルム1を液晶表示装置などに適用した場合に、表示面の黒さが低下し、視認性が低下する傾向がある。」
「【0039】
基材11は、例えば、透明性を有するプラスチック基材である。基材11の形状としては、例えば、透明性を有するフィルムなどを用いることができる。ここで、フィルムにはシートも含まれるものと定義する。基材11の材料としては、例えば、公知の高分子材料を用いることができる。公知の高分子材料としては、具体的には例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエステル(TPEE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、アラミド、ポリエチレン(PE)、ポリアクリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン(PP)、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、エポキシ樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。基材11の厚さは、生産性の観点から38~100μmであることが好ましいが、この範囲に特に限定されるものではない。」
「【0111】
<2.第2の実施形態>
[液晶表示装置の構成]
図17は、本発明の第2の実施形態に係る液晶表示装置の一構成を示す断面図である。図17に示すように、この液晶表示装置は、光を出射するバックライト3と、バックライト3から出射された光を時間的空間的に変調して画像を表示する液晶パネル2とを備える。液晶パネル2の両面にはそれぞれ、偏光子2a、2bが設けられている。液晶パネル2の表示面側の偏光子2bには、光学フィルムである防眩性フィルム1が設けられている。・・・」
【0115】
(防眩性フィルム)
防眩性フィルム1は、上述した第1の実施形態のものと同様であるので説明を省略する。」
「【0119】
(実施例1-1)
・・・
【0123】
次に、作製した転写ロール原盤を用いた形状転写(転写ロール温度:170℃、線圧:200kg/cm、転写速度:8m/min)により、TACフィルム(富士フイルム株式会社製、フィルム厚:80μm)表面に凹凸を形成した。次に、触針式表面粗さ測定器((株)小阪研究所製、商品名:サーフコーダET4000)でTACフィルム表面の凹凸形状を評価した。その結果、Ra(算術平均粗さ)=0.625μm、Rc(粗さ曲線要素の平均高さ)=1.774μm、Rz(十点平均粗さ)=2.186μm、RSm(粗さ曲線要素の平均長さ)=77μmであった。
【0124】
次に、下記配合の紫外線硬化型樹脂組成物をTACフィルムの凹凸の表面上に、コイルバーで塗工した後、紫外線硬化型樹脂組成物を80℃で1.5分乾燥させた。次に、窒素雰囲気下で350mJ/cm2の紫外線を照射して、膜厚5.4μmのハードコート層を有する防眩性フィルムを得た。」
「【0149】
(ハードコート層の突起の底面の形状評価)
ハードコート層の突起の底面の形状評価は、ハードコート層の表面微分画像を用いて評価した。・・・」
「【0154】
表1、表2は、上述の各評価結果をまとめて示す。
【表1】
[図:0001409067000013.jpg]
」
「【0170】
また、上述の実施形態において、基材に微粒子を含有させてもよい。また、基材の裏面に凹凸形状を形成するようにしてもよい。この凹凸形状の形成方法としては、例えば、エンボス加工、シボ加工を挙げることができる。また、基材裏面に、微粒子を含有する樹脂層を設け、この樹脂層の表面から微粒子を突出させるようにしてもよい。また、基材に微粒子を含有させるとともに、これらの微粒子の一部を基材裏面から突出させるようにしてもよい・・・。」
「【図1】
[図:0001409067000014.jpg]
」
「【図17】
[図:0001409067000015.jpg]
」
上記記載からみて、液晶表示装置に係る第2の実施形態に設けられる防眩性フィルムとしては第1の実施形態に係る防眩性フィルムが用いられており、前記防眩性フィルムの具体的な実施例として実施例1-1~実施例1-7及び実施例2-1~2-5が記載されているのだから、第2の実施形態の防眩性フィルムとして実施例1-1のものを用いることが記載されているといえる。
b 甲1に記載された発明
上記aの各記載事項を総合し、特に実施例1-1に着目して整理すると、甲1には以下の発明(以下「甲1フィルム発明」という。)が記載されている。
「TACフィルムと、前記TACフィルム上に形成されたハードコート層と、からなり、
ハードコート層の凹凸面のRz(最大高さ)が0.9146μmであり、
TACフィルム表面の凹凸形状のRa(算術平均粗さ)が0.625μmである、防眩性フィルム。」
また、上記aの各記載事項を総合し、特に実施例1-1の防眩性フィルムと第2の実施形態の液晶表示装置に着目して整理すると、甲1には以下の発明(以下「甲1ディスプレイ発明」という。)も記載されている。
「液晶パネル2と、前記液晶パネル2の表示面側に設けられた防眩性フィルムとを含み、
前記防眩性フィルムが、TACフィルムと、前記TACフィルム上に形成されたハードコート層と、からなり、
ハードコート層の凹凸面のRz(最大高さ)が0.9146μmであり、
TACフィルム表面の凹凸形状のRa(算術平均粗さ)が0.625μmである、液晶表示装置。」
(イ)甲2及び甲3について
a 甲2及び甲3の記載
甲2には以下の記載がある。
(a)「【表1】
[図:0001409067000016.jpg]
」(5ページ)
(b)「【表2】
[図:0001409067000017.jpg]
」(6ページ)
甲3には以下の記載がある。
(c)「【表2】
[図:0001409067000018.jpg]
」(303ページ)
b 甲2及び甲3の記載事項
上記aの(a)~(c)の記載事項を併せみると、同一のlr(粗さ曲線の基準長さ)に対するRz(最大高さ)の範囲は、Ra(算術平均粗さ)の範囲の5倍程度になっているから、表面粗さに関する技術分野における以下の技術常識(以下「表面粗さに関する技術常識」という。)が把握できる。
「Rz(最大高さ)はRa(算術平均粗さ)の5倍程度である。」
(ウ)甲4について
a 甲4の記載
甲4には以下の記載がある。
「[0001]
本発明は、透明ポリイミド樹脂、透明ポリイミド樹脂組成物、透明ポリイミド樹脂フィルム、赤外線吸収組成物、赤外線カットフィルター及び透明ポリイミド樹脂フィルムの製造方法に関し、より詳しくは、フィルムの透明性が良く、機械強度に優れた透明ポリイミド樹脂等に関する。」
「[0145]
(マット剤)
本発明の透明ポリイミド樹脂フィルムには、取扱性を向上させるため、例えば二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子などのマット剤を含有させることが好ましい。中でも二酸化ケイ素がフィルムのヘイズを小さくできるため、好ましい。
[0146]
微粒子の1次平均粒子径としては、20nm以下が好ましく、更に好ましくは、5~16nmであり、特に好ましくは、5~12nmである。
[0147]
これらの微粒子は0.1~5μmの粒径の2次粒子を形成してポリイミドに含まれることが好ましく、好ましい平均粒径は0.1~2μmであり、更に好ましくは0.2~0.6μmである。これにより、フィルム表面に高さ0.1~1.0μm程度の凹凸を形成し、これによってフィルム表面に適切な滑り性を与えることができる。」
b 甲4に記載された事項
上記aの記載事項から、甲4には以下の事項(以下「甲4記載事項」という。)が記載されている。
「透明ポリイミド樹脂フィルムに粒径0.1~5μmの二酸化ケイ素又は炭酸カルシウム等の無機微粒子を添加することで、フィルムの表面に凹凸を形成して滑り性を与えることができる。」
(エ)甲5について
a 甲5の記載
甲5には以下の記載がある。
「[0001] 本発明は、反射防止フィルム、偏光板、画像表示装置、反射防止物品、積層体の製造方法、および反射防止フィルムの製造方法に関する。」
「[0035]<<反射防止層>>
<バインダー>
伸び率が10%以上の反射防止フィルムを実現するためには、少なくとも反射防止層が10%以上の伸び率を有していればよい。反射防止層は、バインダーと微粒子とを含み、延伸した場合に、バインダーの光学膜厚の変化が最も反射防止フィルムの反射率に影響を及ぼす。したがって、バインダーの伸び率が少なくとも10%以上であることが好ましい。このようなバインダーとしては、スペーサーあるいはゴム状構造を有するポリアクリレートまたはポリウレタンアクリレートが挙げられ、その一方のみ含んでも両方含んでもよい。」
「[0211][反射防止フィルムの製造方法]
本発明の反射防止フィルムの製造方法は、上記本発明の積層体の製造方法における第四の工程の後に、粘着フィルム33を剥がす第五の工程(図2(5)参照)を備えたものであり、第一の工程から第四の工程は、上記積層体の製造方法と同様であるため、同符号を付し、詳細な説明は省略する。
粘着フィルム33を剥がす第五の工程を備えることによって、支持体11上に、微粒子13とバインダー14と有する反射防止層12を備えた反射防止層を得ることができる。」
「[図1]
[図:0001409067000019.jpg]
」
b 甲5に記載された事項
上記aの記載事項を総合すると、甲5には以下の事項(以下「甲5記載事項」という。)が記載されている。
「支持体11と反射防止層12から構成される反射防止フィルムにおいて、反射防止層の伸び率を10%以上とすること。」
(オ)甲6及び甲7について
a 甲6の記載
甲6には以下の記載がある。
「【0001】
ディスプレイに用いられる、透明性に優れ、硬度が高く、且つ、優れた屈曲性を有する表示装置用ハードコートフィルムおよびこれを有する表示装置に関する。」
「【0068】
前述した活性エネルギー線硬化型組成物は、ハードコーティング層または最終ハードコートフィルムの表面硬度を高め、その他の性能、例えば、アンチブロッキング性などを付与するために、選択により無機微粒子(D)をさらに含むことが好ましい。」
b 甲7の記載
甲7には以下の記載がある。
「[0002] 本発明は、光学フィルム、偏光板、および画像表示装置に関する。」
「[0054]<レベリング剤>
レベリング剤とは、ハードコート層12の表面張力が不均一となることによって生じる、ハジキ、凹み、ピンホール、ユズハダ等の欠陥を防止し、表面を滑らかにする添加剤を意味する。・・・」
c 甲6及び甲7に記載された事項
上記a及びbの記載事項を総合すると、甲6及び甲7には以下の事項(以下「甲6及び甲7記載事項」という。)が記載されている。
「ハードコート層を有する光学フィルムにおいて、ハードコート層に微粒子やレベリング剤を添加することで、ハードコート層表面の凹凸を調整して滑り性を改善することができる。」
イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1フィルム発明とを、その機能、構造及び技術的事項を考慮して対比する。
甲1フィルム発明の「ハードコート層」は、本件特許明細書の「前記機能層120は、ハードコート層、反射率低減層、防汚層、および防眩層からなる群より選択された1種以上であり得る。」(【0237】)の記載からみて、本件発明1の「機能層」に相当する。
甲1フィルム発明の「TACフィルム」は、基材をなすものなので(【0039】)、本件発明1の「ベースフィルム」に相当する。
甲1フィルム発明の「TACフィルム」と「ハードコート層」とからなる「防眩性フィルム」と、本件発明1の「ジアミン化合物およびジアンヒドリド化合物の重合に由来するイミド繰り返し単位と、前記ジアミン化合物およびジカルボニル化合物の重合に由来するアミド繰り返し単位とを含むポリアミドイミド重合体を含」む「ポリイミド系樹脂を含むベースフィルム」と「機能層」とを含む「ポリイミド系複合フィルム」は、ベースフィルムと機能層とを含む複合フィルムという限りにおいて一致する。
甲1フィルム発明の「ハードコート層の凹凸面」及び「TACフィルム表面」は、その配置を考慮すると、それぞれ、本件発明1の「第1面」及び「第2面」に相当する。甲1フィルム発明は、本件発明1の「前記ベースフィルムと接する面の反対側に位置する前記機能層の一面を第1面とし、前記機能層と接する前記ベースフィルムの一面を第2面と」する態様を備えている。
そうすると、本件発明1と甲1フィルム発明は、以下の点で一致し、相違する。
[一致点1]
「ベースフィルムと、前記ベースフィルム上に配置された機能層とを含み、
前記ベースフィルムと接する面の反対側に位置する前記機能層の一面を第1面とし、前記機能層と接する前記ベースフィルムの一面を第2面とする、
複合フィルム。」
[相違点1-1]
ベースフィルムを含む複合フィルムについて、本件発明1は、ベースフィルムが「ジアミン化合物およびジアンヒドリド化合物の重合に由来するイミド繰り返し単位と、前記ジアミン化合物およびジカルボニル化合物の重合に由来するアミド繰り返し単位とを含むポリアミドイミド重合体を含」む「ポリイミド系樹脂を含むベースフィルム」を含む「ポリイミド系複合フィルム」であるのに対し、甲1フィルム発明は、ベースフィルムが「TACフィルム」である「防眩性フィルム」である点。
[相違点1-2]
第1面と第2面の粗さに関し、本件発明1では「下記数式1で表示されるレベリング指数が0.11~0.7」、
「[数1]
[図:0001409067000020.jpg]
ここで、前記Sz1は前記第1面のSz粗さ(μm)であり、前記Sz2は前記第2面のSz粗さ(μm)である」のに対し、甲1フィルム発明では、「ハードコート層の凹凸面のRz(最大高さ)が0.9146μmであり、TACフィルム表面の凹凸形状のRa(算術平均粗さ)が0.625μmである」点。
[相違点1-3]
本件発明1は、前記ベースフィルムが「硫酸バリウム、シリカおよび炭酸カルシウムからなる群より選択された1種以上であ」る「フィラー」を含むのに対し、甲1フィルム発明は、かかる構成を有していない点。
[相違点1-4]
本件発明1は、「モジュラスが5GPa以上である」のに対し、甲1フィルム発明は、かかる構成を有するか不明である点。
(イ)判断
[相違点1-1]について
甲1には、甲1フィルム発明の基材の材料として、「トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエステル(TPEE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、アラミド、ポリエチレン(PE)、ポリアクリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン(PP)、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、エポキシ樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。」と記載されている(【0039】)。しかしながら、相違点1-1に係る「ポリアミドイミド重合体」を含む「ポリイミド系樹脂」は選択肢に記載されておらず、甲1フィルム発明の基材である樹脂フィルムとして当該ポリアミドイミド系樹脂を採用することの動機付けはない。また、相違点1-1に係る本件発明1の構成については、申立人が提出した他の証拠に記載も示唆もされておらず、また、本件特許に係る出願前における周知技術でもない。
したがって、甲1フィルム発明において、相違点1-1に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
[相違点1-3]について
甲1には、「基材に微粒子を含有させてもよい。」(【0170】)ことが記載されている。しかしながら、微粒子の材料等については記載されておらず、相違点1-3に係る「硫酸バリウム、シリカおよび炭酸カルシウムからなる群より選択された1種以上であ」る「フィラー」を採用することの動機付けはない。また、相違点1-3に係る本件発明1の構成については、申立人が提出した他の証拠に記載も示唆もされておらず、また、本件特許に係る出願前における周知技術でもない。
したがって、甲1フィルム発明において、相違点1-3に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
[相違点1-4]について
甲1には、【0040】及び【0116】に防眩性に加えて耐擦傷性をその課題とする記載はあるものの、防眩性フィルムのモジュラス、換言すると引張弾性力に関する記載も示唆もない。
したがって、甲1フィルム発明において、相違点1-4に係る「モジュラスが5GPa以上である」ようにすることの動機付けはない。
また、相違点1-4に係る本件発明1の構成については、申立人が提出した他の証拠に記載も示唆もされておらず、また、本件特許に係る出願前における周知技術でもない。
したがって、甲1フィルム発明において、相違点1-4に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
(ウ)小括
以上のとおりであるから、[相違点1-2]について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1フィルム発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件発明2~6、8について
本件発明2~4、6、8は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記イと同じ理由で、本件発明2~4、6、8は、甲1フィルム発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、本件発明5は、本件発明1の発明特定事項のうち、レベリング指数以外の発明特定事項を全て含み、さらに、レベリング指数の数値範囲をより限定したものであるから、上記イと同じ理由で、本件発明5は、甲1フィルム発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 本件発明9について
(ア)対比
本件発明9と甲1ディスプレイ発明とを、その機能、構造及び技術的事項を考慮して対比する。
甲1ディスプレイ発明の「液晶パネル2」、「防眩性フィルム」及び「液晶表示装置」はそれぞれ、本件発明9の「ディスプレイパネル」、「カバーウィンドウ」及び「ディスプレイ装置」に相当する。
甲1ディスプレイ発明の「TACフィルム」は、基材をなすものなので(【0039】)、本件発明9の「ベースフィルム」に相当する。
甲1ディスプレイ発明の「TACフィルム」と、本件発明9の「ジアミン化合物およびジアンヒドリド化合物の重合に由来するイミド繰り返し単位と、前記ジアミン化合物およびジカルボニル化合物の重合に由来するアミド繰り返し単位とを含むポリアミドイミド重合体を含」む「ポリイミド系樹脂を含むベースフィルム」は、ベースフィルムという限りにおいて一致する。
甲1ディスプレイ発明の「ハードコート層」は、本件特許明細書の「前記機能層120は、ハードコート層、反射率低減層、防汚層、および防眩層からなる群より選択された1種以上であり得る。」(【0237】)の記載からみて、本件発明9の「機能層」に相当する。
甲1ディスプレイ発明の「ハードコート層の凹凸面」及び「TACフィルム表面」は、その配置を考慮すると、それぞれ、本件発明9の「第1面」及び「第2面」に相当する。甲1ディスプレイ発明は、本件発明9の「前記ベースフィルムと接する面の反対側に位置する前記機能層の一面を第1面とし、前記機能層と接する前記ベースフィルムの一面を第2面と」する態様を備えている。
そうすると、本件発明9と甲1ディスプレイ発明は、以下の点で一致し、相違する。
[一致点2]
「ディスプレイパネルと、前記ディスプレイパネル上に配置されたカバーウィンドウとを含み、
前記カバーウィンドウが、ベースフィルムと、前記ベースフィルム上に配置された機能層とを含み、
前記ベースフィルムと接する面の反対側に位置する前記機能層の一面を第1面とし、前記機能層と接する前記ベースフィルムの一面を第2面とする、
ディスプレイ装置。」
[相違点2-1]
ベースフィルムについて、本件発明9では「ジアミン化合物およびジアンヒドリド化合物の重合に由来するイミド繰り返し単位と、前記ジアミン化合物およびジカルボニル化合物の重合に由来するアミド繰り返し単位とを含むポリアミドイミド重合体を含」む「ポリイミド系樹脂を含む」ものであるのに対し、甲1ディスプレイ発明では「TACフィルム」である点。
[相違点2-2]
第1面と第2面の粗さに関し、本件発明9では「下記数式1で表示されるレベリング指数が0.11~0.7」、
「[数1]
[図:0001409067000021.jpg]
ここで、前記Sz1は前記第1面のSz粗さ(μm)であり、前記Sz2は前記第2面のSz粗さ(μm)である」のに対し、甲1ディスプレイ発明では、「ハードコート層の凹凸面のRz(最大高さ)が0.9146μmであり、TACフィルム表面の凹凸形状のRa(算術平均粗さ)が0.625μmである」点。
[相違点2-3]
本件発明9は、前記ベースフィルムが「硫酸バリウム、シリカおよび炭酸カルシウムからなる群より選択された1種以上であ」る「フィラー」を含むのに対し、甲1ディスプレイ発明は、かかる構成を有していない点。
[相違点2-4]
本件発明9は、「モジュラスが5GPa以上である」のに対し、甲1ディスプレイ発明は、かかる構成を有するか不明である点。
(イ)各相違点についての判断
[相違点2-1]について
上記イ(イ)の「[相違点1-1]について」を参照。
[相違点2-3]について
上記イ(イ)の「[相違点1-3]について」を参照。
[相違点2-4]について
上記イ(イ)の「[相違点1-4]について」を参照。
(ウ)小括
以上のとおりであるから、[相違点2-2]について検討するまでもなく、本件発明9は、甲1ディスプレイ発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
申立人は請求項1及び9でレベリング指数が「0.11~0.7」と特定されているところ、実施例1~3で用いられたような、特定のフィラーを特定量含有する特定のポリイミド系フィルムの一面に、特定のナノシリカゾルと特定のレベリング剤を特定量で含むハードコート層を形成し、第2面粗さとしてSz2が1.4~1.7μm付近、且つ、第1面粗さとしてSz1が0.35~0.38μm付近で、レベリング指数が0.600~0.643付近であることを特定しない場合には、サポート要件及び実施可能要件を満たさない旨を主張している(申立書8ぺージ1行~10ページ16行)。
しかしながら、本件訂正後の本件発明1及び9では、ベースフィルムが「前記ポリイミド系樹脂は、ジアミン化合物およびジアンヒドリド化合物の重合に由来するイミド繰り返し単位と、前記ジアミン化合物およびジカルボニル化合物の重合に由来するアミド繰り返し単位とを含むポリアミドイミド重合体を含」むこと、「フィラーが硫酸バリウム、シリカおよび炭酸カルシウムからなる群より選択された1種以上であ」ること及びモジュラスが5GPa以上であることが特定されているから、レベリング指数による特定とは別に、「表面粗さおよび巻取性を向上させ得ることは無論のこと、フィルム作製時、走行の際に生じるスクラッチの改善効果を向上させ得る。」(【0087】)こと及びモジュラスが5GPa以上であることにより、本件発明が機械的強度を有するものであることが理解できる。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
第6 むすび
以上のとおり、請求項1~6、8、9に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。さらに、他に請求項1~6、8、9に係る特許を取り消すべき理由は発見しない。
また、請求項7に係る特許は、上記のとおり、本件訂正により削除された。これにより、申立人による請求項7に係る特許についての特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-700765