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特許異議申立

2025-700024

化粧シート、化粧材及び樹脂組成物

審判番号
2025-700024
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-512105
登録番号
7509136
請求日
2024年12月25日
審決日
2026年05月21日
公報発行日
2026年08月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】大日本印刷株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人大谷特許事務所
  • 【異議申立人】岡本 敏夫
  • 【異議申立人】山田 彰彦
審判長/審判官
  • 審判長 岩谷 一臣
  • 審判官 長谷川 一郎
  • 審判官 稲葉 大紀
分類
P1651.113-YAA(B32B) / P1651.121-YAA(B32B) / P1651.536-YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7509136号発明「化粧シート、化粧材及び樹脂組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7509136号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕、〔3、5~8〕、4、9について訂正することを認める。 特許第7509136号の請求項1~9に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7509136号(以下「本件特許」という。)の請求項1~9に係る特許についての出願は、2020年(令和2年)3月30日(優先権主張 平成31年3月29日、令和元年9月30日)を国際出願日とする出願であって、令和6年6月24日に特許権の設定登録がされ、令和6年7月2日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和 6年12月25日 :特許異議申立人岡本敏夫による請求項1、2、4~8に係る特許に対する特許異議の申立て(以下「申立人A」、「申立書A」という。) 令和 6年12月26日 :特許異議申立人山田彰彦による請求項1~9に係る特許に対する特許異議の申立て(以下「申立人B」、「申立書B」という。) 令和 7年 5月27日付け:取消理由通知書 令和 7年 7月25日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和 7年 8月21日 :特許権者による手続補正書(方式)の提出 令和 7年 9月22日 :申立人Aによる意見書の提出 令和 7年10月 3日 :申立人Bによる意見書の提出 令和 7年12月11日付け:取消理由通知書(決定の予告) 令和 8年 2月17日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和 8年 3月 3日 :特許権者による手続補正書(方式)の提出 令和7年7月25日にされ手続補正書(方式)により補正された訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 なお、令和8年3月12日付けで当審から申立人A、Bに対して訂正請求があった旨の通知を行い、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、当該期間内に申立人A、Bから意見書は提出されなかった。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和8年3月3日提出の手続補正書(方式)により補正された訂正請求書による訂正の請求(以下、訂正自体を「本件訂正」という。)は、「特許第7509136号の特許請求の範囲を、本請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~9について訂正することを求める。」ものであり、本件訂正の内容は、次の訂正事項からなるものである。なお、下線は当審において訂正箇所に付したものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「前記基材層と前記表面保護層との間に装飾層を有する、 化粧シート。」とあるのを、 「前記基材層と前記表面保護層との間に装飾層を有し、 前記装飾層と前記表面保護層との間に透明性樹脂層を有し、 前記透明性樹脂層は、ポリオレフィン系樹脂を70質量%以上含み、厚みが20μm以上150μm以下である、 化粧シート。」に訂正する。 (請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。) (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に 「前記基材層と前記表面保護層との間に、透明性樹脂層及びプライマー層から選ばれる一以上の層を有し、」とあるのを、 「前記基材層と前記表面保護層との間に、前記透明性樹脂層及びプライマー層を有し、」に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に「請求項1又は2に記載の化粧シート。」とあるうち、請求項1を引用するものについて独立形式に改めた上で、 「少なくとも基材層及び表面保護層を有する化粧シートであって、前記化粧シートの少なくとも表面保護層に下記一般式(I)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物を含み、 前記基材層と前記表面保護層との間に装飾層を有し、 前記表面保護層が硬化性樹脂組成物の硬化物を含む、化粧シート。 【化2】 [図:0001438266000001.jpg] 」に訂正する。 (請求項3の記載を引用する請求項5~8も同様に訂正する。) (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に「請求項1~3の何れか1項に記載の化粧シート。」とあるうち、請求項1を引用するものについて独立形式に改めた上で、 「少なくとも基材層及び表面保護層を有する化粧シートであって、前記化粧シートの少なくとも表面保護層に下記一般式(I)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物を含み、 前記基材層と前記表面保護層との間に装飾層を有し、 さらに前記基材層と前記表面保護層との間に透明性樹脂層及びプライマー層を有し、 前記プライマー層の厚みが1μm以上10μm以下、前記透明性樹脂層の厚みが20μm以上150μm以下であり、 JIS Z0208:1976に規定される防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)に準拠して測定された透湿度が0.75g/m2・24h以上45g/m2・24h以下である、化粧シート。 【化3】 [図:0001438266000002.jpg] 」に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5に「被着材と請求項1~4の何れか1項に記載の化粧シートとを有する化粧材。」とあるのを、 「被着材と請求項3に記載の化粧シートとを有する化粧材。」に訂正する。 (請求項5の記載を引用する請求項6~8も同様に訂正する。) (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項9に「【化2】」とあるのを 「【化4】」に訂正する。 (7)一群の請求項について 訂正前の請求項1~9は、請求項2~8が、訂正請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項〔1~8〕、9について請求されたものである。 そして、特許権者は、訂正後の請求項3及び5~8、並びに請求項4については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位とすることを求めている。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1 訂正事項1は、請求項1に記載の化粧シートが、装飾層と表面保護層との間に透明性樹脂層を有することを限定するとともに、当該透明性樹脂層の材料と厚みを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件明細書の【0052】、【0053】、【0057】の記載に基づくものであるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 (2)訂正事項2 訂正事項2は、請求項2に記載の化粧シートが、透明性樹脂層とプライマー層の両方を備えることを限定するとともに、当該透明性樹脂層が、請求項1に記載の透明性樹脂層のことであることを明確にするものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、本件明細書の【0047】、【0052】及び【図1】の記載に基づくものであるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 (3)訂正事項3 訂正事項3は、請求項1又は2を引用する請求項3について請求項1を引用する部分を独立形式に改めるとともに、引用する請求項の数を減少させるものであるから、他の請求項を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 (4)訂正事項4 訂正事項4は、請求項1~3の何れかを引用する請求項4について請求項1を引用する部分を独立形式に改めるとともに、引用する請求項の数を減少させるものであるとともに、透明性樹脂層とプライマー層の両方を備えることを限定した上で、当該透明性樹脂層及びプライマー層の厚みを限定するものであるから、他の請求項を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件明細書の【0047】、【0052】、【0057】及び【図1】の記載に基づくものであるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 (5)訂正事項5 訂正事項5は、引用する請求項の数を減少するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 (6)訂正事項6 訂正事項6は、請求項3、4について独立形式に改めることにより、【化1】としていたものをそれぞれ【化2】、【化3】と整理したことに伴い、番号の整合性を図るため「【化2】」を「【化4】」と改めるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 3 訂正の適否のまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合する。 そして、特許権者は、訂正後の請求項3及び5~8、並びに請求項4については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位とすることを求めているところ、上記のとおり本件訂正は認められるので、当該別の訂正単位とする求めを認める。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕、〔3、5~8〕、4、9について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 上記のとおり、本件訂正は認められるから、本件訂正後の請求項1~9に係る発明(以下「本件発明1」等といい、まとめて「本件発明」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 少なくとも基材層及び表面保護層を有する化粧シートであって、前記化粧シートの少なくとも表面保護層に下記一般式(I)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物を含み、 前記基材層と前記表面保護層との間に装飾層を有し、 前記装飾層と前記表面保護層との間に透明性樹脂層を有し、 前記透明性樹脂層は、ポリオレフィン系樹脂を70質量%以上含み、厚みが20μm以上150μm以下である、 化粧シート。 【化1】 [図:0001438266000003.jpg] 【請求項2】 前記基材層と前記表面保護層との間に、前記透明性樹脂層及びプライマー層を有し、前記透明性樹脂層、前記プライマー層及び前記表面保護層の少なくとも何れかに前記一般式(I)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物を含む、請求項1に記載の化粧シート。 【請求項3】 少なくとも基材層及び表面保護層を有する化粧シートであって、前記化粧シートの少なくとも表面保護層に下記一般式(I)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物を含み、 前記基材層と前記表面保護層との間に装飾層を有し、 前記表面保護層が硬化性樹脂組成物の硬化物を含む、化粧シート。 【化2】 [図:0001438266000004.jpg] 【請求項4】 少なくとも基材層及び表面保護層を有する化粧シートであって、前記化粧シートの少なくとも表面保護層に下記一般式(I)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物を含み、 前記基材層と前記表面保護層との間に装飾層を有し、 さらに前記基材層と前記表面保護層との間に透明性樹脂層及びプライマー層を有し、 前記プライマー層の厚みが1μm以上10μm以下、前記透明性樹脂層の厚みが20μm以上150μm以下であり、 JIS Z0208:1976に規定される防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)に準拠して測定された透湿度が0.75g/m2・24h以上45g/m2・24h以下である、化粧シート。 【化3】 [図:0001438266000005.jpg] 【請求項5】 被着材と請求項3に記載の化粧シートとを有する化粧材。 【請求項6】 前記化粧シートと前記被着材との間に、ウレタン系接着剤で構成される接着剤層を有する請求項5に記載の化粧材。 【請求項7】 前記ウレタン系接着剤が、湿気硬化型接着剤である請求項6に記載の化粧材。 【請求項8】 前記被着材が、金属部材又は樹脂部材である請求項5~7の何れか1項に記載の化粧材。 【請求項9】 硬化性樹脂組成物と、下記一般式(I)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物とを含む、表面保護層用の樹脂組成物。 【化4】 [図:0001438266000006.jpg] 」 第4 取消理由通知(決定の予告)について 1 取消理由の概要 令和7年7月25日の訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1~9に対し、当審において通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。 (以下、申立人が提出した甲第○号証を「甲○」という。) 取消理由1(新規性) 本件特許の請求項1に係る発明は、甲A1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるから、請求項1に係る特許は、取り消すべきものである。 取消理由2(進歩性) 本件特許の請求項1、2、4~8に係る発明は、甲A1又は甲A9に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1、2、4~8に係る特許は、取り消すべきものである。 [引用文献一覧] 甲A1:特開2018-103518号公報 甲A2:「J-GLOBAL科学技術総合リンクセンター チヌビン1600 化学物質情報」、2024年11月27日検索、インターネット<URL:https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200907050574130759> 甲A3:特開2009-226869号公報 甲A4:特開平9-314749号公報 甲A5:特開平9-314748号公報 甲A6:特開平9-174767号公報 甲A9:国際公開第2016/084740号 甲A10:特開2013-56497号公報 甲A11:Cymit Quimica社ホームページ、「Product categories、Phenol,2-[4,6- bis([1,1’-biphenyl]-4-yl)-1,3,5-triazin-2-yl]-5-[(2-ethylhexyl)oxy]-」、2024年12月16日検索、インターネット<URL:https://cymitquimica.com/products/IN-DA0029LF/204583-39-1/phenol-2-46-bis11-biphenyl-4-yl-135-triazin-2-yl-5-2-ethylhexyloxy/> 引用文献1:特許第5196042号公報(当審において職権で提示した文献) 引用文献2:特許第5540589号公報(当審において職権で提示した文献) 2 当審における判断 当審合議体は以下のとおり、上記取消理由(決定の予告)で通知した取消理由1、2によっては、本件発明1、2、4~8に係る特許は取り消されるべきものではないと判断する。 (1)引用文献に記載された事項、発明 ア 甲A1に記載された発明 (ア)甲A1には以下の記載がある。なお、下線は当審において付したものである。以下同様。 「【請求項1】 ポリカーボネート系樹脂層(A)の少なくとも一方の面にアクリル系樹脂層(B)が共押出成形により積層されてなる樹脂積層体であって、 前記ポリカーボネート系樹脂層(A)は下記一般式(1)で表される1価フェノールから誘導される末端構造と2価フェノールから誘導される構成単位とを有する、重量平均分子量20,000~37,000のポリカーボネート系樹脂(A)を含み、 前記樹脂積層体の幅方向の加熱収縮率(S1)が-10~0%であり、押出方向の加熱収縮率(S2)が0~10%であり、且つ、レターデーション値が1500nm以下である、樹脂積層体。 【化9】 [図:0001438266000007.jpg] (式中、R1は、炭素数8~36のアルキル基、又は炭素数8~36のアルケニル基を表し、 R2~R5はそれぞれ水素、ハロゲン、又は置換基を有してもよい炭素数1~20のアルキル基若しくは炭素数6~12のアリール基を表し、置換基は、ハロゲン、炭素数1~20のアルキル基、又は炭素数6~12のアリール基である。) ・・・ 【請求項5】 前記アクリル系樹脂層(B)の厚さが10~200μmであり、前記ポリカーボネート系樹脂層(A)および前記アクリル系樹脂層(B)の総厚が200~3,000μmである、請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂積層体。 ・・・ 【請求項10】 請求項1~8のいずれか一項に記載の樹脂積層体上の前記ポリカーボネート系樹脂層(A)側に印刷層を有し、前記印刷層上に溶融樹脂の射出成形体からなる裏打ち層を有する、インモールド成形体。」 「【背景技術】 【0002】 アクリル樹脂は表面硬度、透明性、耐擦傷性および耐候性などに優れる。一方、ポリカーボネート樹脂は耐衝撃性などに優れる。このことからアクリル樹脂層とポリカーボネート樹脂層とを有する積層体は、表面硬度、透明性、耐擦傷性、耐候性および耐衝撃性などに優れ、自動車部品、家電製品、電子機器および携帯型情報端末の表示窓に用いられている。」 「【0052】 <各種材料製造方法> 本発明の一形態は、ポリカーボネート系樹脂層(A)の少なくとも一方の面にアクリル系樹脂層(B)が積層されてなる樹脂積層体の製造方法に関する。本発明の樹脂積層体の製造方法は、特に限定されない。例えば、個別に形成したアクリル系樹脂層(B)と、ポリカーボネート系樹脂層(A)とを積層して両者を加熱圧着する方法、個別に形成したアクリル系樹脂層(B)とポリカーボネート系樹脂層(A)とを積層して、両者を接着剤によって接着する方法、アクリル系樹脂層(B)とポリカーボネート系樹脂層(A)とを共押出成形する方法、予め形成しておいたアクリル系樹脂層(B)を用いて、ポリカーボネート系樹脂層(A)をインモールド成形して一体化する方法、などの各種方法があるが、製造コストや生産性の観点からは、共押出成形する方法が好ましい。」 「【0085】 <インモールド成形体> また、本樹脂積層体は上記のような特徴を備えているため、例えば樹脂積層体上のポリカーボネート系樹脂層(A)側に印刷層を形成して熱成形する一方、前記印刷層側に溶融樹脂を射出成形して裏打ち層を形成することにより、意匠性に優れたインモールド成形体を製造することもできる。 【0086】 <用途> ・・・ 実施形態の樹脂積層体、熱成形体またはインモールド成形体は、・・・具体的には、携帯電話端末、携帯型電子遊具、携帯情報端末、モバイルPCといった携帯型のディスプレイデバイスや、ノート型PC、デスクトップ型PC液晶モニター、カーナビ液晶モニター、液晶テレビといった設置型のディスプレイデバイスなどの透明基板材料および透明保護材料(例えば、前面板)として使用することができ、中でも、高意匠性が要求されるタッチパネル前面保護板や、カーナビ用、OA機器用または携帯電子機器用の前面板として好適に用いられる。」 「【0099】 製造例2〔アクリル系樹脂(B11)ペレットの製造〕 アクリル系樹脂(B)として、R100(B-1)(スチレン:無水マレイン酸:MMAの質量比=65:15:20、重量平均分子量:170,000)75質量部と、パラペットHR-L(B-2)(メチルメタクリレート樹脂100%、重量平均分子量:90,000)25質量部との合計100質量部に対して、リン系添加剤PEP-36(株式会社ADEKA製)0.05質量%、およびステアリン酸モノグリセリド(製品名:H-100、理研ビタミン株式会社製)0.2質量%、酸化防止剤2,6-ジ-ターシャリーブチル-クレゾール(製品名:K-NOX、共同薬品株式会社製)0.1質量%、紫外線吸収剤Tinuvin1600(BASFジャパン株式会社製)0.7質量%を加え、ブレンダーで20分混合後、スクリュー径26mmの2軸押出機(東芝機械株式会社製、TEM-26SS、L/D≒40)を用い、シリンダー温度240℃で溶融混錬して、ストランド状に押出してペレタイザーでペレット化した。ペレットは安定して製造できた。」 (イ)上記(ア)を参照すると、甲A1には以下の発明(以下「甲A1発明」という。)が記載されていると認められる。 「ポリカーボネート系樹脂層(A)の一方の面にアクリル系樹脂層(B)が共押出成形により積層されてなる樹脂積層体であって、 アクリル系樹脂層(B)に紫外線吸収剤であるTinuvin1600を0.7質量%含有しており、 前記アクリル系樹脂層(B)の厚さが10~200μmであり、前記ポリカーボネート系樹脂層(A)および前記アクリル系樹脂層(B)の総厚が200~3000μmであり、 前記樹脂積層体上の前記ポリカーボネート系樹脂層(A)側に印刷層を有し、前記印刷層上に溶融樹脂の射出成形体からなる裏打ち層を有する、インモールド成形体。」 イ 甲A9に記載された発明 (ア)甲A9には以下の記載がある。 「[請求項1] アクリル樹脂組成物(A)又はフッ素系樹脂組成物(B)からなる樹脂層(I)と、 酸無水物共重合体(C-1)とアクリルゴム粒子(C-2)を含有する樹脂組成物(C)からなる樹脂層(II)と、を備える積層フィルム。 ・・・ [請求項17] 請求項1~14のいずれか1項に記載の積層フィルムと、メラミン基材とが、樹脂層(I)、樹脂層(II)、メラミン基材の順に積層されたメラミン化粧板。」 「[0002] アクリル樹脂フィルムは透明性や耐候性に優れ、表面硬度も高いことから、例えば、電気製品の光学部品、自動車の内装部品、看板、建材等、屋内又は屋外用途の各種成形品に貼合して、表面を保護するフィルムとして好ましく用いられている。・・・」 「[0086][保護フィルム、メラミン化粧板表面保護用フィルム、メラミン化粧板] 本発明に係る積層フィルムは優れた接着性を有し、各種の基材に接着することができるため、保護フィルムとして好適に使用できる。特に、本発明に係る積層フィルムはメラミン樹脂に対して優れた接着性を示すため、メラミン化粧板表面保護用フィルムとして好適に使用できる。 [0087] メラミン化粧板は、机、カウンター等の水平面、壁等の垂直面に使用されており、その構成、製造方法については、化粧板ハンドブック(新建材研究所、昭和48年発行)等に詳しく記載されている。これらのメラミン化粧板は、例えば、化粧板用の化粧紙にメラミン樹脂を含浸させ、乾燥したメラミン樹脂含浸紙と、芯材層である樹脂含浸コア紙とを積層し、更に必要に応じて、化粧紙の柄を保護する目的で、オーバーレイ紙にメラミン樹脂を含浸させ、乾燥したメラミン樹脂含浸オーバーレイ紙と、反りを抑制する目的で最下層にバランス紙とを積層し、熱圧成形することによって得られる。 [0088] 前記メラミン樹脂含浸紙としては、例えば化粧板用の化粧紙にメラミン-ホルムアルデヒド樹脂を含浸させ、乾燥した樹脂含浸紙を用いることができる。前記樹脂含浸コア紙としては、例えばクラフト紙、不織布、織布等に、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂又はこれらの混合物を主成分とする樹脂液と、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム等の無機充填材とを含むスラリーを含浸させ、乾燥した化粧板用のコア紙を使用できる。熱圧成形は、例えば、樹脂含浸コア紙及びメラミン樹脂含浸紙(メラミン基材)と、並びに本発明の積層フィルムとを積層し、温度110℃以上170℃以下、圧力5MPa以上10MPa以下、時間10分以上90分以下の条件で行なうことができる。 [0089] 本発明に係る積層フィルムをメラミン基材に貼合する場合には、樹脂組成物(C)からなる樹脂層(II)をメラミン基材側に向けて接するようにして、熱融着させることが好ましい。・・・」 「[0092] MMA:メチルメタクリレート MA:メチルアクリレート BA:ブチルアクリレート St:スチレン AMA:アリルメタクリレート BDMA:1,3-ブチレングリコールジメタクリレート CHP:クメンヒドロペルオキシド t-BH:t-ブチルハイドロパーオキサイド n-OM:n-オクチルメルカプタン RS-610NA:モノ-n-ドデシルオキシテトラオキシエチレン燐酸ナトリウム(商品名:「フォスファノールRS-610NA」、東邦化学工業(株)製) LA-31:(株)ADEKA製、「アデカスタブLA-31RG」(商品名) LA-57:(株)ADEKA製、「アデカスタブLA-57」(商品名) TV1600:BASF製、「Tinuvin1600」(商品名) Irg1076:BASF製、「Irganox1076」(商品名) T850:(株)クレハ製、「KFポリマー T#850」(商品名) VH:三菱レイヨン(株)製、「アクリペットVH001」(商品名) SZ15170:Polyscope社製、「Xiran SZ15170」(商品名)(マレイン酸無水物共重合量:15質量%、Tg:131℃) SZ08250:Polyscope社製、「Xiran SZ08250」(商品名)(マレイン酸無水物共重合量:8質量%、Tg:116℃)」 「[0112]<製造例1:アクリルゴム粒子(A-1A)の製造> ・・・ [0126][表1] [図:0001438266000008.jpg] 」 「[0128][表3] [図:0001438266000009.jpg] [0129]<実施例1~14:積層フィルム及びメラミン化粧板の作成> 実施例1では、製造例4で得た樹脂層(I)用のアクリル樹脂組成物(A1)、製造例11で得た樹脂層(II)用の樹脂組成物(C1)を80℃で一昼夜乾燥した。シリンダー温度を230℃に設定した30mmφの押出し機でC1を可塑化した。また、シリンダー温度を240℃に設定した400メッシュのスクリーンメッシュを設けた40mmφの押出し機でアクリル樹脂組成物(A1)を可塑化した。次いで、240℃に設定した2種2層用フィードブロックダイで、厚さ50μmの樹脂積層フィルムに製膜した。樹脂層(I)及び(II)の厚さはそれぞれ45μm及び5μmであった。 [0130] 更に、この積層フィルムの樹脂層(II)面側にメラミン基材を積層し、両面を鏡面のステンレス板で挟み、温度140℃、圧力4MPa、時間20分又は10分の条件でプレスしてメラミン化粧板を作成した。・・・ [0131][表4] [図:0001438266000010.jpg] 」 「[0133] また、実施例2~14では、表4、5に示す通りの材料を使用し、樹脂層(I)及び(II)の厚さを表4、5に示す通りとしたこと以外は、実施例1の操作と同様にして、積層フィルム及びメラミン化粧板を作成した。得られたメラミン化粧板の評価結果を表4、5に示す。」 「[0135] ・・・ また、紫外線吸収剤として、トリアジン系化合物であるTV1600を使用した実施例3では、煮沸試験後の白度上昇が抑制されており、外観に優れる。・・・」 (イ)上記(ア)から認定できる事項 a [0131][表4]の実施例3に着目すると、樹脂層(I)には組成物A2を、樹脂層(II)には組成物C2を、それぞれ用いていることがわかる。 b そして、組成物A2は、請求項1、[0126][表1]、[0092]及び[0112]を参照すると、アクリルゴム粒子(A-1A)16部、三菱レイヨン(株)製「アクリルペットVH001」84部、加工助剤2部、BASF製「Tinuvin1600」2.1部、ADEKA製「アデカスタブLA-57」0.3部、BASF製「Irganox1076」0.1部から製造された、樹脂層(I)用のアクリル樹脂組成物(A2)であることがわかる。 c 同様に、組成物C2は、請求項1及び[0128][表3]を参照すると、酸無水物共重合体(C-1)とアクリルゴム粒子(C-2)を含有する、樹脂層(II)用の樹脂組成物(C2)であることがわかる。 d 請求項17、[0088]~[0089]及び[0130]を参照すると、メラミン化粧板は、前記積層フィルムの樹脂層(II)面側に、化粧板用の化粧紙にメラミン樹脂を含浸させ乾燥したメラミン樹脂含浸紙と芯材層である樹脂含浸コア紙とを積層したメラミン基材を積層し、プレスして得られたものであることがわかる。 (ウ)上記(ア)及び(イ)を参照し、特に請求項17と実施例3に着目すると、甲A9には以下の発明(以下「甲A9発明」という。)が記載されていると認められる。 「アクリルゴム粒子(A-1A)16部、三菱レイヨン(株)製「アクリルペットVH001」84部、加工助剤2部、BASF製「Tinuvin1600」2.1部、ADEKA製「アデカスタブLA-57」0.3部、BASF製「Irganox1076」0.1部から製造された樹脂層(I)用のアクリル樹脂組成物(A2)と、 酸無水物共重合体(C-1)とアクリルゴム粒子(C-2)を含有する樹脂層(II)用の樹脂組成物(C2)とを、 2種2層用フィードブロックダイで、厚さ50μmの樹脂積層フィルムに製膜することで、樹脂層(I)及び(II)の厚さがそれぞれ45μm及び5μmの積層フィルムを得て、 更に、この積層フィルムの樹脂層(II)面側に、化粧板用の化粧紙にメラミン樹脂を含浸させ乾燥したメラミン樹脂含浸紙と芯材層である樹脂含浸コア紙とを積層したメラミン基材を積層し、プレスして得られた、 メラミン化粧板。」 (2)甲A1に基づく新規性、進歩性について ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲A1発明を対比する。 甲A1発明の「溶融樹脂の射出成形体からなる裏打ち層」は「基材層」に相当する。また甲A1発明の「アクリル系樹脂層(B)」は、層構造からみて、本件発明1の「表面保護層」に相当する。 ポリカーボネートは、技術常識に照らすと透明性を有するところ、甲A1発明の「ポリカーボネート系樹脂層(A)」は「裏打ち層」と「アクリル系樹脂層(B)」の間に位置するから、本件発明1の「前記基材層と前記表面保護層との間に」位置する「透明性樹脂層」に相当する。 甲A1発明の「インモールド成形体」は、「印刷層」が形成され、前面板などとしての透明保護材料として用いることが予定(【0085】、【0086】)されていることに鑑みれば、本件発明1の「化粧シート」に相当する。 本件明細書の【0012】、【0015】の記載を踏まえると、本件発明1の「ヒドロキシフェニルトリアジン化合物」は、紫外線吸収剤であることが理解できる。そうすると、甲A1発明の「アクリル系樹脂層に紫外線吸収剤であるTinuvin1600を0.7質量%含有している」ことと、本件発明1の「少なくとも表面保護層に下記一般式(I)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物を含」むことは、「少なくとも表面保護層に紫外線吸収剤を含む」という限りにおいて一致する。 甲A1発明の「前記樹脂積層体上の前記ポリカーボネート系樹脂層(A)側」に有する「印刷層」は、本件発明1の「前記基材層と前記表面保護層との間に」有する「装飾層」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲A1発明は、以下の点で一致し、少なくとも以下の点で相違する。 [一致点1] 「少なくとも基材層及び表面保護層を有する化粧シートであって、前記化粧シートの少なくとも表面保護層に紫外線吸収剤を含み、 前記基材層と前記表面保護層との間に装飾層を有し、 前記装飾層と前記表面保護層との間に透明性樹脂層を有する、 化粧シート。」 [相違点1-1] 透明性樹脂層について、本件発明1では、「ポリオレフィン系樹脂を70質量%以上含み、厚みが20μm以上150μm以下である」のに対し、甲A1発明では、ポリカーボネート系樹脂層(A)がかかる構成を有するか不明な点。 (イ)判断 当該相違点1-1について検討するに、まず、相違点1-1は実質的なものである。 そして、甲A1発明は、甲A1の【請求項1】及び【0002】にも記載されているとおり、樹脂積層体として「ポリカーボネート系樹脂層(A)」を用いることが前提となっている。してみれば、甲A1に「本発明のポリカーボネート系樹脂(A)は、・・・ポリカーボネート樹脂以外の他の樹脂(R)を含んでいてもよい。・・・他の樹脂(R)としては、ポリエステル系樹脂がある。」(【0030】)との記載、「例えば、樹脂(R)は、ポリカーボネート系樹脂層(A)を構成する樹脂成分(100質量%)中、0~50質量%の割合で含まれることが好ましく・・・。」(【0032】)との記載があったとしても、甲A1発明の「ポリカーボネート系樹脂層(A)」に代えて、他の樹脂成分を主成分とする層とすることは想定されていないし、当業者にとって、そのようにすることについての動機付けも生じ得ない。 したがって、甲A1発明において、相違点1-1に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (ウ)小括 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲A1発明ではなく、また、甲A1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明2について 本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加える発明であるから、上記アと同様の理由により、甲A1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明5~8について 本件訂正により、本件発明5は本件発明3を引用することが特定されたところ、本件発明3は、取消理由通知(決定の予告)において取消理由の対象となっていない、令和7年7月25日にされた訂正後の請求項3に係る発明と同じものである。 そうすると、本件発明5、及び、本件発明5を引用する本件発明6~8は、取消理由を有しない発明の発明特定事項を含み、さらに限定を加える発明であるから、甲A1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)甲A9に基づく進歩性について ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲A9発明を対比する。 甲A9発明の「メラミン化粧板」は、「樹脂層(I)」、「樹脂層(II)」、「メラミン樹脂含浸紙」、「芯材層である樹脂含浸コア紙」の順に積層されたものである。そして、この積層構造から見て、甲A9発明における「樹脂層(I)」、「芯材層」はそれぞれ、本件発明1の「表面保護層」、「基材層」に相当する。 甲A9発明の「メラミン樹脂含浸紙」は「化粧紙にメラミン樹脂を含浸させ」たものであるから、上記積層構造も踏まえれば、「基材層と表面保護層との間に」位置する「装飾層」に相当する。 甲A9発明の「樹脂層(II)」は、その層構造からみて、樹脂層(I)とメラミン樹脂含浸紙の間に位置するから、本件発明1の「前記装飾層と前記表面保護層との間に」位置する「透明性樹脂層」と、「前記装飾層と前記表面保護層との間に」位置する「樹脂層」である限りにおいて一致する。 甲A9発明の「メラミン化粧板」は本件発明1の「化粧シート」に相当する。 甲A9発明の「樹脂層(I)」に含有されている「Tinuvin1600」は、甲A9の[0135]を踏まえると紫外線吸収剤であるところ、本件明細書の【0012】、【0015】の記載も踏まえれば、本件発明1の「下記一般式(I)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物」と、紫外線吸収剤である限りで相当する。 そうすると、本件発明1と甲A9発明とは、以下の点で一致し、少なくとも以下の点で相違する。 [一致点2-1] 「少なくとも基材層及び表面保護層を有する化粧シートであって、前記化粧シートの少なくとも表面保護層に紫外線吸収剤を含み、 前記基材層と前記表面保護層との間に装飾層を有し、 前記装飾層と前記表面保護層との間に樹脂層を有する、 化粧シート。」 [相違点2-1] 樹脂層について、本件発明1では、「ポリオレフィン系樹脂を70質量%以上含み、厚みが20μm以上150μm以下である」「透明性樹脂層」であるのに対し、甲A9発明では、「樹脂層(II)」が、透明であるか不明であり、酸無水物共重合体とアクリルゴム粒子を含有する樹脂からなるものであり、厚さが5μmである点。 (イ)判断 相違点2-1について検討する。 甲A9発明の「樹脂層(II)」は、その材料に鑑みれば、透明であるか否か不明であるし、そもそもポリオレフィン系樹脂でもない。また、当該相違点2-1に係る本件発明1の発明特定事項を得ようという動機付けも見いだせない。 したがって、甲A9発明において、相違点2-1に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (ウ)小括 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲A9発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明4について (ア)対比 本件発明4と甲A9発明を対比すると、その相当関係は上記ア(ア)と同様である。 そうすると、本件発明4と甲A9発明は、以下の点で一致し、少なくとも以下の点で相違する。 [一致点2-2] 「少なくとも基材層及び表面保護層を有する化粧シートであって、前記化粧シートの少なくとも表面保護層に紫外線吸収剤を含み、 前記基材層と前記表面保護層との間に装飾層を有する、化粧シート。」 [相違点2-2] 樹脂層について、本件発明4では、「厚みが20μm以上150μm以下であ」る「透明性樹脂層」であるのに対し、甲A9発明では、「樹脂層(II)」が、透明であるか不明であり、厚さが5μmである点。 (イ)判断 相違点2-2について検討する。 甲A9発明の樹脂層(II)はその材料を鑑みても、透明であるか否か不明であるし、甲A9の「樹脂層(II)の厚さは、0.5μm以上9μm以下が好ましく・・・。」([0078]~[0079])との記載を参照すると、その厚さを相違点2-2に係る20μm以上とする動機付けはない。 したがって、甲A9発明において、相違点2-2に係る本件発明4の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (ウ)小括 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明4は、甲A9発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明5~8について 本件訂正により、本件発明5は本件発明3を引用することが特定されたところ、本件発明3は、取消理由通知(決定の予告)において取消理由の対象となっていない、令和7年7月25日にされた訂正後の請求項3に係る発明と同じものである。 そうすると、本件発明5、及び、本件発明5を引用する本件発明6~8は、取消理由を有しない発明の発明特定事項を含み、さらに限定を加える発明であるから、甲A9発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第5 取消理由通知(決定の予告)に採用しなかった特許異議申立理由について 1 申立理由の概要 申立書A、Bで申立人A、Bが主張する申立理由のうち、取消理由(決定の予告)で採用しなかったものの概要は、次の通りである。 (1)申立理由1(新規性)(申立人A) 本件特許の請求項1、2、4に係る発明は甲A9に記載された発明であり、同請求項1、4に係る発明は甲A10に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるから、請求項1、2、4に係る特許は、取り消すべきものである。 (2)申立理由2(進歩性)(申立人A、B) 本件特許の請求項4に係る発明は甲A1に記載された発明に基いて、同請求項2、5~8に係る発明は甲A10に記載された発明に基いて、同請求項1、2、4~8に係る発明は甲B1に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2、4~8に係る特許は、取り消すべきものである。 (3)申立理由3(サポート要件)(申立人B) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、請求項1~9に係る特許は、取り消すべきものである。 ア 甲B2、甲B3に示される当業者の技術常識を踏まえると、表面保護層を構成する樹脂が熱可塑性樹脂である場合は、表面に紫外線吸収剤がブリードアウトしやすく、経時的に耐候性が劣化しやすいと理解するはずである。そうすると、表面保護層の樹脂種を特定していない請求項1、2、4~8に係る発明は、本件課題を解決するものとはいえない。(申立書Bの8~14ページ) イ 甲B4~甲B6、甲B1に示される当業者の技術常識を踏まえれば、表面保護層に含まれる所定の構造を有するヒドロキシフェニルトリアジン化合物の含有量が、0.05重量部未満(又は0.1重量%未満、0.1重量部未満)等のごく微量である場合は、紫外線に対する防止効果が十分でなく、10重量部より多く含む場合はブリードアウトしてしまうことを容易に理解できる。そうすると、「表面保護層」に含まれる紫外線吸収剤の含有量を特定していない請求項1~9に係る発明は、本件課題を解決するものとはいえない。(申立書Bの14~22ページ) (4)申立理由4(実施可能要件)(申立人B) 本件特許は、発明の詳細な説明の記載が以下の点で、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでなく、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。 当業者は、表面保護層が熱可塑性樹脂の場合は紫外線吸収剤がブリードアウトしやすいと理解するから、樹脂の種類も紫外線吸収剤の含有量も特定されていない表面保護層を備えて、本件課題を解決する化粧シートをどのように製造できるのか理解することができない。また、本件課題を解決する化粧シートを得るための表面保護層を構成する樹脂と紫外線吸収剤との組み合わせを見いだすためには、所定の構造を有するヒドロキシフェニルトリアジン化合物と、あらゆる樹脂とを組み合わせて実験してみなければならず、当業者に過度の試行錯誤を要するものである。(申立書Bの22~23ページ) [証拠一覧] 申立人A、Bが申立書A、Bとともに提出した証拠は以下のとおりである。 甲A1:特開2018-103518号公報 甲A2、甲B7:「J-GLOBAL科学技術総合リンクセンター チヌビン1600 化学物質情報」、2024年11月27日検索、インターネット<URL:https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200907050574130759> 甲A3:特開2009-226869号公報 甲A4:特開平9-314749号公報 甲A5:特開平9-314748号公報 甲A6:特開平9-174767号公報 甲A7:特開2018-171884号公報 甲A8:特開2019-38914号公報 甲A9:国際公開第2016/084740号 甲A10:特開2013-56497号公報 甲A11:Cymit Quimica社ホームページ、「Product categories、Phenol,2-[4,6- bis([1,1’-biphenyl]-4-yl)-1,3,5-triazin-2-yl]-5-[(2-ethylhexyl)oxy]-」、2024年12月16日検索、インターネット<URL:https://cymitquimica.com/products/IN-DA0029LF/204583-39-1/phenol-2-46-bis11-biphenyl-4-yl-135-triazin-2-yl-5-2-ethylhexyloxy/> 甲B1:国際公開第2017/043467号 甲B2:特開2000-103018号公報 甲B3:特開平11-216812号公報 甲B4:特開平11-147292号公報 甲B5:特開2001-40113号公報 甲B6:特開2009-184167号公報 甲B8:特開2018-167500号公報 甲B9:特開2018-167501号公報 甲B10:特開2008-93921号公報 甲B11:特開2019-25653号公報 甲B12:特開2018-192692号公報 甲B13:特開2018-187877号公報 甲B14:特開2018-44375号公報 2 当審における判断 当審合議体は以下のとおり、上記申立理由1~4によっては、本件発明1~9に係る特許は取り消されるべきものではないと判断する。 (1)引用文献に記載された事項、発明 ア 甲A10に記載された発明 甲A10の【0085】~【0087】を参照し、特に実施例1に着目すると、甲A10には以下の発明(以下「甲A10発明」という。)が記載されていると認める。なお、甲A10の【0067】には、「本発明の加飾成形体は、基材およびその表面に形成された前述の加飾成形用フィルムを含む」と記載されているが続けて「基材は後述する各種部品の形状を有する成形体である。」とされている。そして、【0068】の成形体に関する記載を見れば、当該成形体は、加飾用フィルムを適用する相手方部材そのものであると理解できる。すなわち、ここで基材とされているものは、フィルムやシートを構成する基材としては、おおよそ認定できない。 「ポリカーボネート樹脂ペレット(帝人化成(株)製パンライトL-1250、粘度平均分子量23,700)およびポリエステル系熱可塑性エラストマーをそれぞれ事前に予備乾燥し、ポリカーボネート樹脂/ポリエステル系熱可塑性エラストマー=90/10(100/11.1)(重量部)となるようにV型ブレンダーで混合した後、2軸押出機を用いてシリンダー温度260℃で押出してペレット化し、A層用の成形材料Aを得て、(【0085】) B層用の成形材料Bとして、アクリル樹脂{エボニックデグサ(株)製ZK4BR(耐衝撃性グレード)}100重量部に対して、紫外線吸収剤2-(4,6-(4-ビフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-(2-エチルヘキシルオキシ)-フェノール(BASF社製:商標名;CGX UVA006)を0.5重量部含有したものを用意し、(【0086】) 成形材料Aおよび成形材料Bを、それぞれ単軸押出機を用いて押出し、冷却ロールに溶融樹脂の一方の面をタッチさせて冷却した後、エッジトリミングして作製した、B層/A層/B層の3層構造を有するフィルム幅400mmの多層フィルム。(【0087】)」 イ 甲B1に記載された発明 甲B1の[請求項1]、[0002]、[0078]を参照すると、甲B1には以下の発明(以下「甲B1発明」という。)が記載されている。 「フッ素系樹脂(X)を含む層と、アクリル系樹脂組成物(Y)を含む層とからなり、(X)層を表面に有する積層フィルムと、([請求項1]、[0078]) 前記積層フィルムを基材に積層してなる、化粧シート([請求項14]、[0002])」 (2)申立理由1(新規性)、申立理由2(進歩性)について ア 甲A1に基づく理由(本件発明4の進歩性) (ア)対比 本件発明4と甲A1発明を対比すると、その相当関係は、上記第4の2(2)ア(ア)と同様である。 そうすると、本件発明4と甲A1発明は、少なくとも以下の点で相違する。 [相違点1-2] 本件発明4は、化粧シートの「JIS Z0208:1976に規定される防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)に準拠して測定された透湿度が0.75g/m2・24h以上45g/m2・24h以下である」のに対し、甲A1発明は、インモールド成形体の透湿度が不明な点。 (イ)判断 相違点1-2について検討する。 甲A1には透湿度に関する事項は記載も示唆もされていない。また、甲A1の【0086】の記載からみて、甲A1発明の透湿度を当該相違点1―2に係る本件発明4の数値範囲に調整する動機付けもない。 そうすると、甲A1に基いて、相違点1-2に係る本件発明4の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (ウ)申立人Aの主張 申立人Aは申立書A(38~39ページ)において、相違点1-2に係る透湿度は甲A3(【0038】)、甲A4(【0018】)、甲A5(【0019】、【0022】、【0024】)、甲A6(【0017】、【0019】)の記載からみて一般的な値に過ぎない旨主張する。 しかしながら、甲A3~甲A6は建築物や建材に用いる化粧シートに関するものであるところ、甲A1は【0086】等に記載されるように携帯情報端末等の前面板に用いられるものであるから、甲A3~甲A6に記載の透湿度を適用する動機付けはない。 よって、申立人Aの主張は採用できない。 (エ)小括 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明4は、甲A1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 甲A9に基づく理由(本件発明1、2、4の新規性) 本件発明1、4と甲A9発明は、上記第4の2(3)で示した相違点2-1、2-2で少なくとも相違し、これらは実質的な相違点であるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1、2、4は、甲A9発明ではない。 ウ 甲A10に基づく理由(本件発明1、4の新規性、本件発明2、5~8の進歩性) (ア)本件発明1について(新規性) a 対比 本件発明1と甲A10発明とを対比する。 甲A10発明の「A層」、「B層」は、甲A10の【0001】、【0007】、【0008】、【0054】の記載から、それぞれ、本件発明1の「基材層」、「表面保護層」に相当する。 甲A10発明の「多層フィルム」は、これを利用して加飾成形用フィルムを形成するものであり(【0007】、【0063】)、その具体的な利用法及び用途についての【0065】、【0067】及び【0068】の記載も参酌すれば、本件発明1の「化粧シート」に相当する。 甲A10発明の「B層」(本件発明1の「表面保護層」)に含有されている紫外線吸収剤は、本件明細書の【0012】、【0015】の記載を踏まえれば、本件発明1の「下記一般式(I)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物」と、紫外線吸収剤である限りで相当する。 そうすると、本件発明1と甲A10発明とは、少なくとも以下の点で相違する。 [相違点3-1] 本件発明1は、「前記基材層と前記表面保護層との間に装飾層を有し、前記装飾層と前記表面保護層との間に透明性樹脂層を有」するのに対し、甲A10発明は、かかる構成を有していない点。 b 判断 相違点3-1について検討するところ、相違点3-1は実質的なものである。 c 小括 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲A10発明ではない。 (イ)本件発明2について(進歩性) a 対比 本件発明2と甲A10発明を対比すると、その相当関係は、上記(ア)aと同様であるから、少なくとも上記相違点3-1において相違する。 b 判断 相違点3-1について検討する。 甲A10発明は、「A層」、「B層」からなる「多層フィルム」であり、それぞれ本件発明2の「基材層」、「表面保護層」に相当するものであるところ、甲A10の請求項8、【0063】には、多層フィルムの一方の面を加飾することが記載されている。すなわち、「多層フィルム」の上面又は下面に加飾層を設けることは示唆されているものの、「多層フィルム」を構成する「A層」と「B層」との間において加飾層を設けることは、記載も示唆もされていない。そして、甲A10発明において加飾するに当たり、上記の記載にもかかわらず、あえて「A層」と「B層」との間に設ける必要はなく、その動機付けもない。 そうすると、基材層と表面保護層との間に加飾層を設けることは、当業者にとって容易に想到し得た事項ではない。 また、仮にそうではないとしても、加飾層と表面保護層との間にさらに透明樹脂層を設けることは、甲10Aには記載も示唆もなく、その必要性をうかがわせるような事情はないから、動機付けも生じ得ない。 したがって、甲A10発明において、相違点3-1に係る本件発明2の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない c 小括 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲A10発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ウ)本件発明4について(新規性) a 対比 本件発明4と甲A10発明とを対比すると、その相当関係は上記(ア)aと同様である。 そうすると、本件発明1と甲A10発明とは、少なくとも以下の点で相違する。 [相違点3-2] 本件発明4は、「前記基材層と前記表面保護層との間に装飾層を有し、さらに前記基材層と前記表面保護層との間に透明性樹脂層」を有するのに対し、甲A10発明は、かかる構成を有していない点。 b 判断 相違点3-2について検討するところ、相違点3-2は相違点3-1と同様であるから、その判断も、上記(イ)bのとおりである。 c 小括 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明4は、甲A10発明ではない。 (エ)本件発明5~8について(進歩性) 本件訂正により、本件発明5は本件発明3を引用することが特定されたところ、本件発明3は、取消理由通知(決定の予告)において取消理由の対象となっていない、令和7年7月25日にされた訂正後の請求項3に係る発明と同じものである。 そうすると、本件発明5、及び、本件発明5を引用する本件発明6~8は、取消理由を有しない発明の発明特定事項を含み、さらに限定を加える発明であるから、甲A10発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 エ 甲B1に基づく理由(本件発明1、2、4~8の進歩性) (ア)本件発明1について a 対比 本件発明1と甲B1発明を対比する。 甲B1発明の「基材」は本件発明1の「基材層」に相当する。 甲B1発明の「フッ素系樹脂(X)を含む層」は、「表面」に位置しているから、本件発明1の「表面保護層」に相当する。 甲B1発明の「アクリル系樹脂組成物(Y)を含む層」は、「透明性に優れて」([0002])いるから、本件発明1の「透明性樹脂層」に相当する。 甲B1発明の「化粧シート」は本件発明1の「化粧シート」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲B1発明は、少なくとも以下の点で相違する。 [相違点4-1] 本件発明1は、「表面保護層に下記一般式(I)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物を含」むのに対し、甲B1発明は、「フッ素系樹脂(X)を含む層」がかかる構成を有していない点。 b 判断 相違点4-1について検討する。 甲B1には、「(Y)層には耐候性付与のために、紫外線吸収剤を添加することが好ましい。・・・紫外線吸収剤の種類は、特に限定されないが、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。・・・後者の市販品としては、BASFジャパン(株)製のTinuvin1577、Tinuvin1600、Tinuvin460;(株)ADEKA製のアデカスタブLA-F70、アデカスタブLA-46が挙げられる。」([0072])と記載されている。 しかしながら、甲B1発明は(Y)層の外表面に、フッ素系樹脂(X)を含む層が位置するものであるから、[0072]の記載を参酌して(Y)層に紫外線吸収剤を添加したとしても相違点4-1に係る本件発明1の構成には至らない。また、当該記載にも関わらず、あえて(Y)層ではなく、フッ素系樹脂(X)を含む層に紫外線吸収剤を添加する動機づけも見いだせない。 したがって、甲B1発明において、相違点4-1に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 c 申立人Bの主張 申立人Bは申立書B(36~37ページ)において、甲B1の[0072]に記載されている「Tinuvin1600」は本件発明1の一般式(I)を満たすこと、及び、(Y)層に含まれる紫外線吸収剤は(X)層に移行する蓋然性が高いことを主張する。 しかしながら、甲B1発明において、[0072]に多数列挙されるうちの「Tinuvin1600」を積極的に採用する動機付けはないし、(Y)層に添加された紫外線吸収剤が(X)層に移行する蓋然性が高いともいえない。 したがって、上記主張は採用できない。 d 小括 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲B1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (イ)本件発明2について 本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加える発明であるから、上記(ア)と同様の理由により、甲B1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ウ)本件発明4について a 対比 本件発明1と甲B1発明を対比すると、その相当関係は上記(ア)aと同様である。 そうすると、本件発明4と甲B1発明は、少なくとも以下の点で相違する。 [相違点4-2] 本件発明4は、「表面保護層に下記一般式(I)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物を含」むのに対し、甲B1発明は、「フッ素系樹脂(X)を含む層」がかかる構成を有していない点。 b 判断 相違点4-2について検討するところ、相違点4-2は相違点4-1と同じであるから、その判断も上記(ア)bのとおりである。 d 小括 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明4は、甲B1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (エ)本件発明5~8について 本件訂正により、本件発明5は本件発明3を引用することが特定されたところ、本件発明3は、取消理由通知(決定の予告)において取消理由の対象となっていない、令和7年7月25日にされた訂正後の請求項3に係る発明と同じものである。 そうすると、本件発明5、及び、本件発明5を引用する本件発明6~8は、取消理由を有しない発明の発明特定事項を含み、さらに限定を加える発明であるから、甲B1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)申立理由3(サポート要件)について ア 判断規範について 特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件を満たすか否かは、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。以下、この点について検討する。 イ 上記規範を満たすか否かについて 本件明細書の【0008】には本件発明が解決しようとする課題として「ブリードアウトの抑制及び長期耐候性の維持を極めて良好にし得る化粧シート、化粧材及び樹脂組成物を提供すること」(以下「本件課題」という。)が記載されており、【0009】には本件課題を解決するための手段が、【0012】~【0085】には本件発明を実施するための形態が、【0086】~【0117】には実施例が記載されている。 そして、本件発明を解決するための機序として、【0016】には「上記一般式(I)に示すヒドロキシフェニルトリアジン化合物がブリードアウトの抑制及び長期耐候性の維持を極めて良好にできる理由は、・・・分子中にエステル結合を含まないためと考えられる。より具体的には、特許文献1及び特許文献2のヒドロキシフェニルトリアジン化合物はエステル結合が起点となり分子構造が変異するため、ブリードアウトの抑制及び長期耐候性の維持が不十分になると考えられる。」と説明されている。 さらに、【0103】【表1】及び【0116】【表2】には、一般式(I)のヒドロキシフェニルトリアジン化合物(UVA1)を用いた実施例1~6は、エステル結合を含むヒドロキシフェニルトリアジン化合物(UVA2、UVA3)を用いた比較例1~7に対して、耐候性(吸光度維持率、クラック発生時間)及び経時安定性(ブリードアウト)の全ての評価結果が良好であったことが示されている。 そうすると、一般式(I)のヒドロキシフェニルトリアジン化合物を含むことが特定された本件発明1~9は、発明の詳細な説明に記載したものであって、本件課題を解決できると当業者は認識できる。 よって、本件発明1~9は、サポート要件を満たす。 ウ 申立人Bの主張について 申立人Bは申立書Bにおいて、上記第5の1(3)のとおり主張する。 しかしながら、申立人Bが主張するように、表面保護層が熱可塑性樹脂である場合や、紫外線吸収剤の含有量が適切な範囲でなかった場合には、そうでなかった場合よりもブリードアウトの抑制や長期耐候性の面で劣ることがあったとしても、紫外線吸収剤として、一般式(I)のヒドロキシフェニルトリアジン化合物を用いる限りにおいて、本件課題を改善できていることは明らかである。 したがって、上記主張は採用できない。 (4)申立理由4(実施可能要件)について ア 判断規範について 発明の詳細な説明の記載が実施可能要件を満たすか否かは、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができる程度の記載があるか否かを検討して判断すべきものである。以下、この点について検討する。 イ 上記規範を満たすか否かについて 本件明細書の【0012】~【0085】には発明を実施するための形態が、【0086】~【0117】には具体的な実施例が記載されている。そして、これらの記載及び技術常識を参酌することで、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明を実施することができる。 よって、本件特許の発明の詳細な説明は、実施可能要件を満たす。 ウ 申立人の主張について 申立人Bは申立書Bにおいて、上記第5の1(4)のとおり主張する。 しかしながら、本件発明1~9において、表面保護層の樹脂種が熱可塑性樹脂であると特定されているわけではなく、また、紫外線吸収剤の含有量が過度に少ない又は多いことが特定されているわけでもない。 そして、本件明細書の【0012】~【0085】には本件発明を実施するための形態が、【0086】~【0117】には具体的な実施例が記載されており、これらの記載及び技術常識を参酌することで、当業者であれば本件発明を実施することができるものである。 したがって、申立人の主張は採用できない。 第6 むすび 以上のとおり、請求項1~9に係る特許は、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立理由によっては、取り消すことができない。 また、他に請求項1~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700024

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