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特許異議申立

2025-700106

易接着性ポリアミドフィルムの製造方法

審判番号
2025-700106
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-143697
登録番号
7521331
請求日
2025年01月23日
審決日
2025年11月21日
公報発行日
2026年02月27日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】東洋紡株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
  • 【異議申立人】中村 絵美
審判長/審判官
  • 審判長 金丸 治之
  • 審判官 長谷川 一郎
  • 審判官 長清 吉範
分類
P1651.121-YAA(B32B) / P1651.16 -YAA(B32B) / P1651.536-YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条の2、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7521331号発明「易接着性ポリアミドフィルムの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7521331号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~11〕について訂正することを認める。 特許第7521331号の請求項1~4、6~11に係る特許を維持する。 特許第7521331号の請求項5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7521331号の請求項1~7に係る特許についての出願は、令和2年8月27日に出願され、令和6年7月16日にその特許権の設定登録がされ、令和6年7月24日に特許掲載公報が発行された。 本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和7年 1月23日 :特許異議申立人中村絵美(以下「申立人」と いう。)による請求項1~7に係る特許に対 する特許異議の申立て 令和7年 3月25日付け:取消理由通知書 令和7年 5月15日 :特許権者による訂正の請求及び意見書の提出 令和7年 6月19日 :申立人による意見書の提出 令和7年 7月10日付け:取消理由通知書(決定の予告) 令和7年 8月28日 :特許権者による訂正の請求(以下「本件訂正 請求」という。)及び意見書の提出 令和7年10月17日 :申立人による意見書の提出 なお、令和7年5月15日の訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 本件訂正請求は、「特許第7521331号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~11について訂正することを求める。」ものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。また、下線は、当審が訂正箇所に付したものである。 (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1の「二軸延伸ポリアミドフィルム」との記載を「二軸延伸ポリアミドフィルム(ただし、脂肪族共重合ポリアミド重合体および/または熱可塑性エラストマーを含むものを除く)」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項3、4、6、7も同様に訂正する。)。 (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2の「メカニカルリサイクルしたポリアミド6を5~80質量%含有む二軸延伸ポリアミドフィルムであり、」との記載を「メカニカルリサイクルしたポリアミド6を5~80質量%含む二軸延伸ポリアミドフィルムであり、」に訂正する。 (3) 訂正事項3 (訂正事項3-1) 特許請求の範囲の請求項3の「請求項1又は2に記載の」との記載を「請求項1に記載の」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項4、6、7も同様に訂正する。)。 (訂正事項3-2) 特許請求の範囲の請求項3に「易接着性ポリアミドフィルムが下記の(a)~(c)を満足することを特徴とする前記請求項1又は2に記載の易接着性ポリアミドフィルムの製造方法。 (a)突刺し強度が0.65N/μm以上、 (b)衝撃強度が0.9J/15μm以上。 (c)耐摩擦ピンホールテストでピンホール発生までの距離が2900cm以上。」とあるうち、請求項2を引用するものについて独立形式に改め、「基材層(A層)の少なくとも片面に表面層(B層)が積層された二軸延伸ポリアミドフィルムの少なくとも片面に接着改質層(C層)が積層された易接着性ポリアミドフィルムの製造方法であって、基材層(A層)はポリアミド6を100質量%含むポリアミド樹脂からなり、前記ポリアミド6のうち5~90質量%がケミカルリサイクルしたポリアミド6であり、メカニカルリサイクルしたポリアミド6を5~80質量%含む二軸延伸ポリアミドフィルムであり、接着改質層(C層)は固形分として塗布量が0.01~3g/m2のポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、及び/又はポリアクリル樹脂のいずれかの樹脂からなる接着改質層であり、B層がポリアミド6を70質量%以上含み、メカニカルリサイクルしたポリアミド6を0~30質量%含むポリアミド樹脂組成物からなることを特徴とする易接着性ポリアミドフィルムの製造方法であり、 前記易接着性ポリアミドフィルムが下記の(a)~(c)を満足することを特徴とする易接着性ポリアミドフィルムの製造方法。 (a)突刺し強度が0.65N/μm以上、 (b)衝撃強度が0.9J/15μm以上。 (c)耐摩擦ピンホールテストでピンホール発生までの距離が2900cm以上。」と記載し、新たに請求項8とする。 (4) 訂正事項4 (訂正事項4-1) 特許請求の範囲の請求項4の「請求項1~3のいずれか1項に記載の」との記載を「請求項1又は3に記載の」に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項6、7も同様に訂正する。)。 (訂正事項4-2) 特許請求の範囲の請求項4の「易接着性ポリアミドフィルムが下記の(d)及び(e)を満足することを特徴とする前記1~3いずれか1項に記載の易接着性ポリアミドフィルムの製造方法。 (d)ヘイズが2.6%以下、 (e)動摩擦係数が1.0以下。」との記載を「易接着性ポリアミドフィルムが下記の(d)及び(e)を満足することを特徴とする前記請求項2又は8に記載の易接着性ポリアミドフィルムの製造方法。 (d)ヘイズが2.6%以下、 (e)動摩擦係数が1.0以下。」とし、新たに請求項9とする。 (5) 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5の記載を削除する。 (6) 訂正事項6 (訂正事項6-1) 特許請求の範囲の請求項6の「請求項1~5いずれか1項」との記載を「請求項1,3,4いずれか1項」に訂正する(請求項6の記載を引用する請求項7も同様に訂正する。)。 (訂正事項6-2) 特許請求の範囲の請求項6の「請求項1~5いずれか1項に記載の易接着性ポリアミドフィルムの製造方法により得られた易接着性ポリアミドフィルムにシーラントフィルムを積層した積層フィルムの製造方法。」との記載を「請求項2,8,9いずれか1項に記載の易接着性ポリアミドフィルムの製造方法により得られた易接着性ポリアミドフィルムにシーラントフィルムを積層した積層フィルムの製造方法。」とし、新たに請求項10とする。 (7) 訂正事項7 特許請求の範囲の請求項7の「請求項6に記載された積層フィルムの製造方法により得られた積層フィルムを用いた包装袋の製造方法。」との記載を「請求項10に記載された積層フィルムの製造方法により得られた積層フィルムを用いた包装袋の製造方法。」とし、新たに請求項11とする。 2 一群の請求項 本件訂正前の請求項1、3~7は、請求項3~7が、本件訂正前の請求項1の記載を引用する関係にあるから、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであり、訂正前の請求項1、3~7は、一群の請求項である。 また、本件訂正前の請求項2~7は、請求項3~7が、本件訂正前の請求項2の記載を引用する関係にあるから、訂正事項2によって記載が訂正される請求項2に連動して訂正されるものであり、訂正前の請求項2~7は、一群の請求項である。 そうすると、共通する請求項3~7を有するこれらの一群の請求項は組み合わされ、訂正前の請求項1~7は特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、本件訂正請求は、一群の請求項〔1~7〕に対して請求されたものである。 3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1) 訂正事項1 ア 訂正の目的について 訂正事項1は、訂正前の請求項1の「二軸延伸ポリアミドフィルム」のうち「脂肪族共重合ポリアミド重合体および/または熱可塑性エラストマーを含むもの」を除く訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の有無について 本件訂正前の請求項1には「脂肪族共重合ポリアミド重合体」と「熱可塑性エラストマー」のいずれも発明特定事項として特定されてはいない。 そして、願書に添付した明細書の【0029】に「<他の熱可塑性樹脂> 本発明における二軸延伸ポリアミドフィルム又は基材層(A層)には、本発明の目的を損なわない範囲で、上記のポリアミド6と少なくとも原料の一部がバイオマス由来であるポリアミド樹脂の他に熱可塑性樹脂を含むことができる。例えば、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド6・12共重合体、ポリアミド6・66共重合体、ポリアミドMXD6、などのポリアミド系樹脂が挙げられる。 必要に応じてポリアミド系以外の熱可塑性樹脂、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート等のポリエステル系重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系重合体等を含有させてもよい。」と記載されていることからみて、「ポリアミド6・12共重合体、ポリアミド6・66共重合体」といった「脂肪族共重合ポリアミド重合体」を含む熱可塑性樹脂は、本発明の目的を損なわない範囲で「ポリアミド6と少なくとも原料の一部がバイオマス由来であるポリアミド樹脂」に加えることができる任意付加成分であると認められるから、訂正前の請求項1に係る発明における二軸延伸ポリアミドフィルムから「脂肪族共重合ポリアミド重合体」を含むものを除くことは新たな技術的事項を追加するものとはいえない。「熱可塑性エラストマー」を含むものを除くことについても同様に新たな技術的事項を追加するものではない。 そうすると、訂正事項1は「願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 訂正事項1は、上記ア及びイからみて、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。 (2) 訂正事項2 訂正事項2は、訂正前の請求項2の「含有む」を「含む」と訂正するものであるから、誤記の訂正を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3)訂正事項3 訂正事項3に係る訂正前の請求項3は、請求項1又は2を引用するものであるところ、訂正事項3-1は、請求項2を引用しないものとし、訂正事項3-2は請求項1を引用しないものとする訂正であるから、訂正事項3-1及び3-2は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (4)訂正事項4について 訂正事項4-1は、訂正前の請求項4の「請求項1~3のいずれか1項に記載の」を「請求項1又は3に記載の」に訂正するものであり、請求項2の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 訂正事項4-2は、訂正前の請求項4の「請求項1~3のいずれか1項に記載の」を「請求項2又は8に記載の」に訂正したうえで新たな請求項9とするものであるが、請求項8の引用関係を踏まえると、当該訂正事項4-2は、請求項1の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (5) 訂正事項5について 訂正事項5は、訂正前の請求項5を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (6) 訂正事項6について 訂正事項6-1は、訂正前の請求項6の「請求項1~5のいずれか1項に記載の」を「請求項1,3,4いずれか1項に記載の」に訂正するものであり、請求項2及び5の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 訂正事項6-2は、訂正前の請求項6の「請求項1~5のいずれか1項に記載の」を「請求項2,8,9いずれか1項に記載の」に訂正したうえで新たな請求項9とするものであるが、請求項8及び9の引用関係を踏まえると、当該訂正事項6-2は、請求項1の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 また、訂正事項6のうち訂正事項6-1は、訂正前の請求項6が請求項1~5の記載を引用する記載であるところ、請求項2を直接的に又は間接的に引用しないものとする訂正であるとともに、訂正事項5で請求項5が削除されて請求項5を引用できなくなったことに伴い、請求項間の引用関係を解消する訂正であるから、明瞭でない記載の釈明又は他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。 訂正事項6のうち訂正事項6-2は、訂正前の請求項6が請求項1~5の記載を引用する記載であるところ、請求項1を直接的に又は間接的に引用しないものとする訂正であるとともに、訂正事項5で削除された請求項5を引用するものについて請求項間の引用関係を解消し、新たに請求項9とする訂正であるから、明瞭でない記載の釈明又は他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。 そして、訂正事項6-1及び訂正事項6-2により、訂正前の請求項6に含まれる引用関係の数が減少するから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正でもある。 さらに、訂正事項6は新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (7) 訂正事項7について 訂正事項7は、訂正前の請求項7の「請求項6に記載された」を「請求項10に記載された」に訂正したうえで新たな請求項11とするものであるが、請求項10及び請求項10が引用する請求項8及び請求項9の引用関係を踏まえると、当該訂正事項7は、請求項1の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 また、訂正事項7は新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 4 申立人の主張について 申立人は、令和7年10月17日に提出した意見書の3(2)イにおいて、訂正事項1が新規事項の追加である旨主張するが、3(1)イのとおりであるから、当該主張は採用できない。 5 小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1~4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~11〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 上記第2のとおり本件訂正は認められたから、本件訂正請求により訂正された請求項1~4、6~11に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~4、6~11に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 ポリアミド6を70質量%以上含むポリアミド樹脂からなり、前記ポリアミド6のうち4~90質量%がケミカルリサイクルしたポリアミド6であり、メカニカルリサイクルしたポリアミド6を5~60質量%含む二軸延伸ポリアミドフィルム(ただし、脂肪族共重合ポリアミド重合体および/または熱可塑性エラストマーを含むものを除く)の少なくとも片面に固形分として塗布量が0.01~3g/m2のポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、及び/又はポリアクリル樹脂のいずれかの樹脂からなる接着改質層を有することを特徴とする易接着性ポリアミドフィルムの製造方法。 【請求項2】 基材層(A層)の少なくとも片面に表面層(B層)が積層された二軸延伸ポリアミドフィルムの少なくとも片面に接着改質層(C層)が積層された易接着性ポリアミドフィルムの製造方法であって、基材層(A層)はポリアミド6を100質量%含むポリアミド樹脂からなり、前記ポリアミド6のうち5~90質量%がケミカルリサイクルしたポリアミド6であり、メカニカルリサイクルしたポリアミド6を5~80質量%含む二軸延伸ポリアミドフィルムであり、接着改質層(C層)は固形分として塗布量が0.01~3g/m2のポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、及び/又はポリアクリル樹脂のいずれかの樹脂からなる接着改質層であり、B層がポリアミド6を70質量%以上含み、メカニカルリサイクルしたポリアミド6を0~30質量%含むポリアミド樹脂組成物からなることを特徴とする易接着性ポリアミドフィルムの製造方法。 【請求項3】 易接着性ポリアミドフィルムが下記の(a)~(c)を満足することを特徴とする前記請求項1に記載の易接着性ポリアミドフィルムの製造方法。 (a)突刺し強度が0.65N/μm以上、 (b)衝撃強度が0.9J/15μm以上。 (c)耐摩擦ピンホールテストでピンホール発生までの距離が2900cm以上。 【請求項4】 易接着性ポリアミドフィルムが下記の(d)及び(e)を満足することを特徴とする前記請求項1又は3に記載の易接着性ポリアミドフィルムの製造方法。 (d)ヘイズが2.6%以下、 (e)動摩擦係数が1.0以下。」 「【請求項6】 請求項1,3,4いずれか1項に記載の易接着性ポリアミドフィルムの製造方法により得られた易接着性ポリアミドフィルムにシーラントフィルムを積層した積層フィルムの製造方法。 【請求項7】 請求項6に記載された積層フィルムの製造方法により得られた積層フィルムを用いた包装袋の製造方法。 【請求項8】 基材層(A層)の少なくとも片面に表面層(B層)が積層された二軸延伸ポリアミドフィルムの少なくとも片面に接着改質層(C層)が積層された易接着性ポリアミドフィルムの製造方法であって、基材層(A層)はポリアミド6を100質量%含むポリアミド樹脂からなり、前記ポリアミド6のうち5~90質量%がケミカルリサイクルしたポリアミド6であり、メカニカルリサイクルしたポリアミド6を5~80質量%含む二軸延伸ポリアミドフィルムであり、接着改質層(C層)は固形分として塗布量が0.01~3g/m2のポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、及び/又はポリアクリル樹脂のいずれかの樹脂からなる接着改質層であり、B層がポリアミド6を70質量%以上含み、メカニカルリサイクルしたポリアミド6を0~30質量%含むポリアミド樹脂組成物からなることを特徴とする易接着性ポリアミドフィルムの製造方法であり、 易接着性ポリアミドフィルムが下記の(a)~(c)を満足することを特徴とする易接着性ポリアミドフィルムの製造方法。 (a)突刺し強度が0.65N/μm以上、 (b)衝撃強度が0.9J/15μm以上。 (c)耐摩擦ピンホールテストでピンホール発生までの距離が2900cm以上。 【請求項9】 易接着性ポリアミドフィルムが下記の(d)及び(e)を満足することを特徴とする前記請求項2又は8に記載の易接着性ポリアミドフィルムの製造方法。 (d)ヘイズが2.6%以下、 (e)動摩擦係数が1.0以下。 【請求項10】 請求項2,8,9いずれか1項に記載の易接着性ポリアミドフィルムの製造方法により得られた易接着性ポリアミドフィルムにシーラントフィルムを積層した積層フィルムの製造方法。 【請求項11】 請求項10に記載された積層フィルムの製造方法により得られた積層フィルムを用いた包装袋の製造方法。」 第4 取消理由(決定の予告)の概要 令和7年7月10日付けで当審が通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。 取消理由1 (進歩性)請求項1、3、4、6、7に係る発明は、甲第2、4、7、10、12、15号証に記載の発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、3、4、6、7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 <引用文献等一覧> (申立人が提示した甲第2、4、7、10、12、15号証) 甲第2号証:特開2010-253713号公報 甲第4号証:特開2020-121496号公報 甲第7号証:特開2002-173531号公報 甲第10号証:特開2009-209464号公報 甲第12号証:ユニチカ株式会社、「環境配慮型食品包装用ナイロンフィルム「エンブレム CE」の開発について」、[online]、2020年2月12日、ユニチカ株式会社、インターネット<URL:https://www.unitika.co.jp/news/high-polymer/ce.html> 甲第15号証:特開2007-21773号公報 以下「甲第○号証」を「甲○」等という。 第5 当審の判断 1 甲号証等の記載及び甲2発明 (1) 甲2 ア 甲2記載事項 甲2には以下の記載がある(下線は当審で付した。以下、他の甲号証も同様。)。 「【請求項1】 脂肪族ポリアミド重合体97~70重量%と脂肪族共重合ポリアミド重合体3~20重量%および/または熱可塑性エラストマー0.5~10重量%との混合重合体からなるA層の少なくとも一方の面に、脂肪族ポリアミド重合体99.5~90重量%と熱可塑性エラストマー0.5~10.0重量%との混合ポリアミド重合体からなるB層が積層されてなり、かつ、少なくとも片面に共重合ポリエステルからなる接着改質層が積層されたポリアミド系混合樹脂積層フィルムであり、かつ、厚みが13μm以下、衝撃強度0.7J以上、突き刺し強度10N以上、23℃65%RHの静摩擦係数が0.90以下、5℃での屈曲ピンホール欠点数が5個以下であることを特徴とする積層2軸延伸ポリアミド系フィルム。」 「【技術分野】 【0001】 本発明は、耐衝撃性及び耐屈曲疲労性、特に、低温環境下における耐屈曲疲労性、耐突き差し性に優れ、食品包装等の包装材料として使用したときに、商品の輸送時、保管時における破袋防止等に効果があり、フィルム厚みを薄くした場合においてもその強度を十分に維持し、かつ、ラミネート加工した際のシーラント材との耐水接着性、耐熱水接着性に優れ、各種の包装用途に適した積層2軸延伸ポリアミド系フィルムに関するものである。」 「【0010】 本発明は、上記の現行耐ピンホール用途ポリアミド系フィルムの有する問題点に鑑み、特に薄いフィルムでありながらも、耐衝撃性、耐突き刺し性および耐屈曲疲労性、特に、低温環境下における耐屈曲疲労性に優れ、食品包装等の包装材料として使用したときに、商品の輸送時、保管蒔一における破袋防止等の効果に優れ、各種の包装用途、特にボイル、レトルト処理を必要とするスープやソース等の水物充填包装袋に適した積層2軸延伸ポリアミド系フィルムを提供することを目的とする。」 「【0012】 かかる本発明の積層2軸延伸ポリアミド系フィルムは、脂肪族ポリアミド重合体中に脂肪族ポリアミド共重合体が添加されることで柔軟化され、および/または耐ピンホール素材としての熱可塑性エラストマーが分散している構造をもつA層が主に耐衝撃性、耐突き刺し性および耐屈曲疲労性の発現に寄与し、特に低温環境下において優れた耐屈曲疲労性を与える。また、脂肪族ポリアミド重合体と熱可塑性エラストマーとの混合ポリアミド重合体からなるB層が主に優れた耐屈曲ピンホール性と優れた滑り性をもち、包装袋に加わる摩擦、屈曲の衝撃を受け止め耐磨耗性、破袋防止性の発現に寄与し、それぞれの特性の相乗効果によって高い衝撃強度、耐突き差し性、耐屈曲疲労性と耐磨耗性、破袋防止性を両立するものである。そして、付与された接着性改質層が高い剥離強度を均一に発現させ、高い破袋防止性を得るものである。」 「【0019】 本発明の積層2軸延伸ポリアミド系フィルムのA層を構成する脂肪族ポリアミド重合体としてはフィルム成形材料として使用することができ上記構造を形成するのに適切であれば特に制限されず広範なものが含まれる。例えば、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6・l0などの脂肪族ポリアミド単独重合体を使用することができる。」 「【0029】 前記のA層を構成する混合重合体は、上記脂肪族ポリアミド重合体と脂肪族ポリアミド共重合体および/または熱可塑性エラストマーと混合物である。この混合重合体は、バージン原料の上記、脂肪族ポリアミド重合体と熱可塑性エラストマーを混合したものであってよいし、また、本発明の積層2軸延伸ポリアミド系フィルムを製造する際に生成する規格外フィルムや切断端材(耳トリム)として発生する屑材、及びその再生レジンとバージン原料を加えて調整したものであってもよい。」 「【0041】 細孔容積は、シリカ微粒子の合成条件を変えることによって調整することができ、細孔容積が小さいほど、少量の添加量で良好な滑り性を与える事が可能となるが、細孔容積の小さいシリカ微粒子を使用すると、配合したポリアミド系樹脂の延伸工程においてフィルム表面高い突起を形成するが多くのボイドを生じ、フィルムの透明性が損なわれることがある。これに対し、細孔容積の大きいシリカ微粒子を使用すると、透明性を維持した上で多量添加が可能となる。しかし、その形成する表面突起の高さは低く高湿度条件下でも好適な滑り性を維持する為には多量のシリカ微量子の添加を必要とする。従って先述の範囲のシリカ微粒子の2種類以上を添加すると、透明性を維持したまま、高い表面突起と低い表面突起が共存し高湿度環境下での優れた滑り性を得ることができる。なお、2軸延伸フィルムの透明性は、延伸条件(温度や倍率)あるいはその後の緩和処理条件(緩和率や温度)によっても変わってくるので、これらの条件も適正にコントロールすることが望ましい。」 「【0056】 塗布剤の塗布量は、固形分として0.01~1g/m2、好ましくは0.02~0.05g/m2になるように塗布する。塗布量が0.01g/m2未満になると、接着改質層と他層との十分な接着強度が得づらくなり好ましくない。1g/m2以上になるとブロッキングが発生しやすくなり、好ましくない。」 「【0071】 (7)ラミネート加工 ボリアミド系フィルムにウレタン系AC剤(東洋モートン社製「EL443J」)を塗布した後、その上に、モダンマシーナリー社製のシングルテストラミネーター装置を用いて厚さ15μmのLDPE(低密度ポリエチレン)フィルムを315℃で押し出し、さらに、その上に厚さ40μmのLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)を連続的にラミネートした。」 「【0077】 2種2層の共押出しTダイ設備を使用し、次のような構成の未延伸シートを得た。A層/B層の構成で、未延伸シートのトータル厚みは144μmであり、トータル厚みに対するA層の厚み比率は88%である。 A層を構成する組成物:ナイロン6(東洋紡績社製、T814)が86.9重量%とNy6とNy12からなる脂肪族ポリアミド共重合体(宇部興産株式会社製 7034B)が10重量%およびNy-12をポリアミド成分とするポリアミド系ブロック共重合体(アルケマ社製、PEBAX4033SN01:ポリアミドエラストマー)が3重量%からなり、さらにフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、lrganox1010)0.1重量%を含有してなる混合重合体組成物。 B層を構成する組成物:ナイロン6が96.27重量%と上記ポリアミド系ブロック共重合体(アルケマ社製、PEBAX4033SN01:ポリアミドエラストマー)が3.0重量%、細孔容積0.6~1.0ml/gのシリカ粒子0.5重量%、および高脂肪酸アマイドが0.15重量%からなる重合体組成物。 B層に塗布する塗布液は共重合ポリエステル水系分散液を固形分濃度5%になるように調整した。 【0078】 得られた未延伸シートを縦方向に3.0一倍延伸したのちグラビア方式を用いて0.2g/m2の接着剤層が形成されるように調整した塗布液を連続的に塗布した。続いて横方向に4.0倍延伸することにより15μmの2軸延伸フィルムを作製し、さらに、線状低密度ポリエチレンフィルム(L-LDPEフィルム:東洋紡績社製、L4102)40μmとドライラミネートする側のB層表面にコロナ放電処理を実施した。得られた2軸延伸フィルムのヘイズ、衝撃強度、突き刺し強度、ピンホール数、静摩擦係数、剥離強度を測定した。その結果を表1に示す。 【0079】 (実施例2~7) 実施例1の記載において下記表1のように代えた他は、実施例1と同様の方法で2軸延伸フィルムを得た。得られた2軸延伸フィルムのヘイズ、衝撃強度、突き刺し強度、ピンホール数、静摩擦係数を測定した日その結果を表1に示す。 【0080】 (比較例1~2) 実施例1の記載において下記表1のように代えた他は、実施例1と同様の方法で2軸延伸フィルムを得た。得られた2軸延伸フィルムのヘイズ、衝撃強度、突き刺し強度、ピンホール数、静摩擦係数を測定した。その結果を表1に示す。 【0081】 【表1】 [図:0001432066000001.jpg] 」 イ 甲2発明 上記アを踏まえると、特に【表1】の実施例2に着目すると、甲2には以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。 「A層とB層とからなり、全体厚み12μmのうちA層厚み比率は92%であり、A層はナイロン6を86.9重量%、Ny6とNy12からなる脂肪族ポリアミド共重合体を10.0重量%、ポリアミドエラストマーを3.0重量%含みB層はナイロン6を96.27重量%、ポリアミドエラストマーを3.0重量%含む2軸延伸フィルムであって、接着改質層形成用の塗布液である、固形分濃度5%の共重合ポリエステル水系分散液をA層とB層からなるシートに0.2g/m2で塗布したポリアミド系フィルムであり、 突き刺し強度13N、衝撃強度0.88J、全体厚み12μmであり、 ヘイズ2.2%である、ポリアミド系フィルムの製造方法。」 (2) 甲12 ア 甲12記載事項 甲12には以下の記載がある。 「1.「エンブレムCE」開発の背景について 昨今の環境問題への意識の高まりの中、循環型社会による持続可能な成長社会を目指す”Circular Economy:CE”(循環経済)の考えに基づいて、植物由来の原料を用いたフィルムや、市場から回収されたプラスチックをリサイクルしたプラスチックフィルムが環境配慮型フィルムとして使用され始めています。しかしながら、これらの環境配慮型フィルムは、使用する材質によっては従来の石油由来のフィルムと比較して機械物性の低下や衛生性の観点から、食品包装用途に推奨できない等の問題がありました。 今回開発した環境配慮型ナイロンフィルム「エンブレムCE」は、当社の重合設備にてケミカルリサイクルし、再生したナイロン樹脂を使用したフィルムです。ケミカルリサイクルは、製品として利用できない、もしくは使用済みのプラスチックフィルムや成形品を化学的に分解することでプラスチック原料に戻し、異物を取り除いた後、再重合により再度製品として使用する方法です。」 「2.「エンブレムCE」の特長などについて 「エンブレムCE」は、ケミカルリサイクルナイロンとフィルムの製造工程内で発生した端材等を利用したマテリアルリサイクルを併用することで、機械物性、印刷適性などを損ねることなく、再生材料の利用比率を50%以上にすることが可能です。さらに、リサイクルする原料を厳密に管理することで、食品包装用途への使用を可能にしました。」 イ 甲12技術 上記アを踏まえると、甲12には以下の技術(以下「甲12技術」という。)が記載されている。 「環境配慮型ナイロンフィルムにおいて、使用済みのプラスチックフィルムや成形品を化学的に分解することでプラスチック原料に戻したケミカルリサイクルナイロンと、フィルムの製造工程内で発生した端材等を利用したマテリアルリサイクルと、を併用することで、機械物性、印刷適性などを損ねることなく、再生材料の利用比率を50%以上にすることが可能で、食品包装用途への使用を可能とする技術。」 (3) 甲7 甲7には以下の記載がある(・・・は省略を示す。以下の甲号証等でも同様。)。 「【0007】ポリアミド樹脂の製造現場における工程選別品や余剰品のリサイクル方法としては一般的には押出機等を用いて再溶融した後、再造粒する方法が挙げられる。この方法はコスト的に有利だが、色調等の品質が低下し、再溶融する前の製品と同等に使用できない問題が生じる。 ・・・ 【0009】3番目の方法として、一般にケミカルリサイクルと呼ばれる、モノマーに分解して再利用する方法が挙げられる。この方法は最も一般的であり、多くの原料メーカーが検討している。例えば特許第3048644号公報には、ポリアミド縮合生成物からジアミン及びジカルボン酸を回収する方法が示されている。この発明はポリアミド縮合生成物に硝酸を加えて加水分解する事によりモノマーを回収する方法であるが、採用する際にはやはり専用の装置を必要し、また、硝酸という強酸を使用することによる装置の腐食問題が存在するため、設備費及び維持費が大きな負担となる。」 (4) 甲10 甲10には以下の記載がある。 「【0005】 ナイロン6は、モノマーであるカプロラクタムにまで解重合し、解重合で得られたカプロラクタムを再重合してチップ化するというケミカルリサイクルが可能なポリアミドとして知られているが、解重合や再重合のプロセスが複雑で品質管理が難しいため、新鮮なモノマーを重合して得られるポリマー、いわゆるフレッシュポリマーに対し、コスト面での有意性が薄く、一般に広く用いられるには至っていない。 【0006】 一方で、解重合は行わず、ポリアミド屑を溶融しチップ化するマテリアルリサイクルも知られている。マテリアルリサイクルで得られたポリアミドチップは、繊維製造工程で発するポリアミドの繊維屑やポリマー屑を溶融しチップ化するためリサイクル工程は単純であり、コスト面ではフレッシュポリマーに対し優位性があるが、品質のばらつきや純度の問題から、繊維製造工程における紡糸や延伸時での操業性が悪く、糸切れが発生し易い。しかもマテリアルリサイクルで得られるポリアミドチップを用いた繊維は、伸度などが劣る傾向があり、実用に耐えないことが多い。」 (5) 甲4 甲4には以下の記載がある。 「【0039】 本発明における積層延伸ポリアミドフィルムは、衝撃強度が0.75J/15μm以上が好ましい。より好ましい衝撃強度は、1.0J/15μm以上である。また、本発明における積層延伸ポリアミドフィルムは、ゲルボフレックステスターを用いたひねり屈曲試験を温度1℃で1000回実施した時のゲルボピンホール欠点数が10個以下であることが好ましい。より好ましくは、5個以下である。更に、本発明における積層延伸ポリアミドフィルムは、耐摩擦ピンホールテストでピンホール発生までの距離が2900cm以上であることが好ましい。より好ましくは3000cm以上、更に好ましくは3100cm以上である。本発明の積層延伸ポリアミドフィルムは、これらの特性を同時に満足することが好ましい。これらの特性を持った延伸ポリアミドフィルムは、輸送時にピンホールが発生しにくい包装用フィルムとして有用である。 ・・・」 (6) 甲15 甲15には以下の記載がある。 「【請求項8】 前記各切り出し部から切り出された各試料について、23℃で80%RHの雰囲気下において動摩擦係数を測定したときに、それらの動摩擦係数の平均値である平均動摩擦係数が0.3~0.8の範囲内であるとともに、すべての試料の動摩擦係数の変動率が、前記平均動摩擦係数に対して±5%~±30%の範囲内であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のポリアミド系混合樹脂積層フィルムロール。」 「【0219】 【表5】 [図:0001432066000002.jpg] 」 (7) 技術常識 ア 技術常識1 上記(3)における甲7の【0009】、上記(4)における甲10の【0005】のとおり、以下の事項は技術常識(以下「技術常識1」という。)である。 「ケミカルリサイクルにはコスト面で課題があること。」 イ 技術常識2 上記(3)における甲7の【0007】、上記(4)における甲10の【0006】のとおり、以下の事項は技術常識(以下「技術常識2」という。)である。 「メカニカルリサイクルには品質面で課題があること。」 (8) 周知技術 上記(2)アにおける甲12の「2.「エンブレムCE」の特長などについて」での「ケミカルリサイクルナイロンとフィルムの製造工程内で発生した端材等を利用したマテリアルリサイクルを併用することで、機械物性、印刷適性などを損ねることなく、再生材料の利用比率を50%以上にすることが可能です。」という記載や、上記(3)における甲7の【0007】、【0009】、上記(4)における甲10の【0005】、【0006】からみて、以下の事項は周知技術(以下「周知技術」という。)である。 「リサイクルにおいて、ケミカルリサイクルやマテリアルリサイクルを使用すること。」 2 本件発明1について (1) 対比 本件発明1と甲2発明とを対比する。 甲2発明の「ナイロン6」は本件発明1の「ポリアミド6」に相当するから、甲2発明においてナイロン6を含む「A層とB層とからな」ることは、本件発明1の「ポリアミド樹脂からな」ることに相当する。そして、甲2発明において全体厚みのうち92%であるA層に含まれるナイロン6が86.9重量%、B層に含まれるナイロン6が96.27重量%であることから、全体では少なくとも87.6重量%(≒86.9×92/100+96.27×(100-92)/100)となる。また、甲2発明の「重量%」は本件発明の「質量%」に相当する。してみると、甲2発明の「全体厚み12μmのうちA層厚み比率は92%であり、A層はナイロン6を86.9重量%含みB層はナイロン6を96.27重量%含む」ことは、本件発明1の「ポリアミド6を70質量%以上含むポリアミド樹脂からな」ることに相当する。 甲2発明の「Ny6とNy12からなる脂肪族ポリアミド共重合体」、「ポリアミドエラストマー」はそれぞれ、本件発明1の「脂肪族共重合ポリアミド重合体」、「熱可塑性エラストマー」に相当し、甲2発明の「ポリアミド系フィルム」は本件発明1の「ポリアミドフィルム」に相当するから、甲2発明の「2軸延伸フィルム」は、甲2発明が「ナイロン6」、「Ny6とNy12からなる脂肪族ポリアミド共重合体」、「ポリアミドエラストマー」を含んでいることを踏まえると、本件発明1の「二軸延伸ポリアミドフィルム(ただし、脂肪族共重合ポリアミド重合体および/または熱可塑性エラストマーを含むものを除く)」と、「二軸延伸ポリアミドフィルム」に限り一致する。 甲2発明において「A層とB層からなるシートに0.2g/m2で塗布」された「接着改質層形成用の塗布液である、固形分濃度5%の共重合ポリエステル水系分散液」は、塗布液の塗布量「0.2g/m2」、「固形分濃度5%」なので、固形分としての塗布量は「0.01g/m2」と計算できるから、本件発明1の「二軸延伸ポリアミドフィルムの少なくとも片面に固形分として塗布量が0.01~3g/m2のポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、及び/又はポリアクリル樹脂のいずれかの樹脂からなる接着改質層」に相当する。 また、甲2発明の「ポリアミド系フィルム」は「接着改質層形成用の塗布液」が塗布されたものであるから、本件発明1の「易接着性ポリアミドフィルム」にも相当する。 そうすると、本件発明1と甲2発明の一致点及び相違点は次のとおりである。 <一致点1> 「ポリアミド6を70質量%以上含むポリアミド樹脂からなる二軸延伸ポリアミドフィルムの少なくとも片面に固形分として塗布量が0.01~3g/m2のポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、及び/又はポリアクリル樹脂のいずれかの樹脂からなる接着改質層を有する易接着性ポリアミドフィルムの製造方法。」 <相違点1> 本件発明1は「前記ポリアミド6のうち4~90質量%が、ポリアミド製製品の使用済み品を回収してケミカルリサイクルしたポリアミド6であり、メカニカルリサイクルしたポリアミド6を5~60質量%含む」のに対し、甲2発明はリサイクルしたポリアミド6を含まない点。 <相違点2> 二軸延伸ポリアミドフィルムに関し、本件発明1は「脂肪族共重合ポリアミド重合体および/または熱可塑性エラストマーを含むもの」は除かれているのに対し、甲2発明はNy6とNy12からなる脂肪族ポリアミド共重合体及びポリアミドエラストマーを含むものである点。 (2) 判断 事案に鑑み、相違点2から検討する。 上記1(1)アに記載した甲2の【0012】には、A層において「脂肪族ポリアミド重合体中に脂肪族ポリアミド共重合体が添加されることで柔軟化され」る事項と「熱可塑性エラストマー」が「耐ピンホール素材として」機能することが記載され、「脂肪族ポリアミド重合体と熱可塑性エラストマーとの混合ポリアミド重合体からなるB層」が「優れた耐屈曲ピンホール性と優れた滑り性をもち、包装袋に加わる摩擦、屈曲の衝撃を受け止め耐磨耗性、破袋防止性の発現に寄与」し、「それぞれの特性の相乗効果によって高い衝撃強度、耐突き差し性、耐屈曲疲労性と耐磨耗性、破袋防止性を両立する」ことが記載されており、「脂肪族ポリアミド共重合体」や「熱可塑性エラストマー」は甲2発明において必須の成分と認められるから、甲2発明におけるポリアミド系フィルムから、Ny6とNy12からなる脂肪族ポリアミド共重合体や熱可塑性エラストマーであるポリアミドエラストマーを除くことはできない。 そうすると、甲2発明において、上記相違点2に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者といえども容易に想到し得たことではない。 なお、本件発明1は本件訂正により「除くクレーム」により特定されるものとなったが、本件特許の【0010】には、「廃棄ポリアミド製品からケミカルリサイクルしたポリアミド6を原料に用いた環境負荷低減が可能な二軸延伸ポリアミドフィルムを提供する」とされているのに対し、甲2にはリサイクルしたポリアミド6に関する記載はなく、本件発明1は甲2発明と技術的思想としては顕著に異なり本来進歩性を有するが、たまたま甲2発明と重なるような構成を含む発明といえる。 (3) 申立人の主張について 申立人は、令和7年10月17日に提出した意見書の3(2)ウ及びエにおいて、「脂肪族共重合ポリアミド重合体」は当業者において一般的に用いられている技術用語ではなく、本件の当初明細書には「脂肪族共重合ポリアミド重合体」について定義が記載されていないから、「脂肪族共重合ポリアミド重合体」が明確でなく、甲2の【0020】によれば「脂肪族共重合ポリアミド重合体」は芳香族モノマーに由来する構造単位を含むから、甲2発明の「脂肪族共重合ポリアミド重合体」には、脂肪族モノマーと芳香族モノマーからなる共重合体も含まれるところ、本件発明1では脂肪族モノマーのみに由来する共重合体しか除外していないため、本件発明1では、「脂肪族共重合ポリアミド重合体」を有する甲2発明の全てが除外されていないから、甲2を主引用発明とする取消理由1が解消されていない旨、主張する。 しかしながら、「重合体」は、モノマーが複数重合したものをいい、そのうち「共重合体」とは2種類以上のモノマーが重合しているものをいうことと、「脂肪族」である「ポリアミド」は「ナイロン」を意味することは、当業者にとって技術常識であるから、それらの語が複合された「脂肪族共重合ポリアミド重合体」が複数種類のナイロンモノマー(脂肪族モノマー)からなる重合体であることは、当業者であれば理解し得る。そして、甲2の【0020】の記載は、「脂肪族共重合ポリアミド重合体」として、主成分である「脂肪族ポリアミド共重合体」に、追加で脂肪族ポリアミドモノマーと芳香族モノマーとの共重合体を含み得ることを記載しているにすぎない。そうすると、脂肪族ポリアミドモノマーと芳香族モノマーとの共重合体を含むが、脂肪族ポリアミドモノマーのみに由来する共重合体を含まないポリアミド共重合体は、甲2発明の「脂肪族共重合ポリアミド重合体」に該当しないから、「脂肪族共重合ポリアミド重合体」を含む甲2発明は、その全てが本件発明1から除外される。 してみれば、申立人の主張は採用できない。 (4) 小括 したがって、本件発明1は、甲2発明、甲12技術及び上記周知技術からは、当業者といえども容易に発明ができたものではない。 3 本件発明3、4、6、7について 本件発明3、4、6、7は、本件発明1に従属するから、本件発明3、4、6、7と甲2発明とを対比すると、少なくとも上記相違点2で相違する。 そうすると、上記2(2)と同様の理由で、甲2発明において上記相違点2に係る本件発明3、4、6、7の構成を備えたものとすることは、当業者といえども容易に想到し得たことではなく、本件発明3、4、6、7は、甲2発明、甲12技術及び上記周知技術からは、当業者といえども容易に発明できたものではない。 4 本件発明2、8~11について 本件発明2と甲2発明とを対比すると、両者は、少なくとも次の相違点3で相違する。 <相違点3> 本件発明2は、基材層(A層)はポリアミド6を100質量%含むポリアミド樹脂であるのに対し、甲2発明は、A層はナイロン6を86.9重量%のほかにNy6とNy12からなる脂肪族ポリアミド共重合体を10.0重量%、ポリアミドエラストマーを3.0重量%も含むものであるから、ポリアミド6を100質量%含むポリアミド樹脂ではない点。 そして、上記2(2)のとおり、甲2の【0012】には、A層において「脂肪族ポリアミド重合体中に脂肪族ポリアミド共重合体が添加されることで柔軟化され」る事項と「熱可塑性エラストマー」が「耐ピンホール素材として」機能することが記載されており、「脂肪族ポリアミド共重合体」や「熱可塑性エラストマー」は甲2発明のA層において必須の成分と認められるから、甲2発明のA層として、Ny6とNy12からなる脂肪族ポリアミド共重合体とポリアミドエラストマーが含まれていない、ポリアミド6を100質量%含むポリアミド樹脂とすることはできない。 そうすると、本件発明2は、甲2発明からは、当業者といえども容易に発明できたものではない。 また、本件発明8~11と甲2発明とを対比すると、本件発明8~11は本件発明2に従属し、上記相違点3を少なくとも含む。 そうすると、本件発明8~11についても、甲2発明からは、当業者といえども容易に発明できたものではない。 5 小括 上記2~4のとおり、本件の請求項1~4、6~11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 第6 取消理由(決定の予告)で採用しなかった申立理由 1 申立理由の概要 先の取消理由(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由の概要は次のとおりである。 申立理由1(拡大先願) 本件発明1、6、7は、甲1の出願当初の明細書等に記載された発明と同一又は実質同一である。 申立理由2-2(進歩性) 本件発明1、3、5~7は、甲3に記載された発明、周知技術、甲12、14、15にそれぞれ記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 申立理由3(明確性要件違反) 本件発明1~7は、物を生産する方法であるにも関わらず、発明特定事項として経時的な要素が含まれていないから、明確でない。 申立理由4-1(サポート要件) 本件発明1、2は、突刺し強度、耐衝撃性、及び耐摩耗性ピンホール性に優れるという本件特許発明の課題解決手段が記載されておらず、易接着性ポリアミドフィルムを精算する方法の発明であるにも関わらず、延伸条件や熱固定条件などの製造条件が一切特定されていないから、課題解決手段が反映されておらず、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許されており、サポート要件を満たさない。本件発明1、2に従属する本件発明3~7も同様である。 申立理由4-2(サポート要件) 本件発明1に従属する本件発明3は、耐摩耗ピンホールテストでピンホール発生までの距離が2900cm以上を満足することを発明特定事項としているが、発明の詳細な説明において、本件発明1に対応する、ポリアミド樹脂が単層である実施例3、4、6~8はいずれもピンホール発生までの距離が2900cm以上でないから、本件発明1に従属する本件発明3を満たす実施例は記載されておらず、サポート要件を満たさない。 申立理由4-3(サポート要件) 本件発明1に従属する本件発明4は、ヘイズが2.6%以下を満足することを発明特定事項としているが、発明の詳細な説明において、本件発明1に対応する、ポリアミド樹脂が単層である実施例3、4、6~8はいずれもヘイズが2.6%以下でないから、本件発明1に従属する本件発明4を満たす実施例は記載されておらず、サポート要件を満たさない。 申立理由4-4(サポート要件) 本件発明5は、ポリエチレン系シーラントフィルムと貼り合わせた後の耐水ラミネート強度が4.0N/15mm以上を満足することを発明特定事項としているが、発明の詳細な説明におけるいずれの実施例もポリエチレン系シーラントフィルムと貼り合わせた後の耐水ラミネート強度が4.0N/15mm以上でないから、本件発明5を満たす実施例は記載されておらず、サポート要件を満たさない。 申立理由4-5(サポート要件) 発明の詳細な説明において、実施例1、4、5、8、比較例1での全成分の合計質量%が100%ではなく、100質量%に足りない成分又は超える成分が不明であるから、実際に実施した組成が不明である。また、実施例12、13、17での表面層(B層)における全成分の合計質量%が100.1質量%であり、いずれかの成分が0.1質量%多く記載されていると考えられるが、その成分が不明であるから、実際に組成した成分が不明である。その結果、これらの実施例は、実施例及び比較例とすべきではなく、その場合、本件発明1に対応する実施例は、実施例3、6、7のみとなるが、これらの実施例は、ポリアミド6の合計量が99.4質量%であり、そのうちメカニカルリサイクルされたポリアミド6の含有量が9.9質量%のものしか記載されていないこととなる。そうすると、この実施例のメカニカルリサイクルされたポリアミド6の含有量から大きく外れた数値を含む、本件発明1における、ポリアミド6のうちのメカニカルリサイクルしたポリアミド6が5~60質量%という数値範囲がサポートされているとはいえない。 申立理由5-1~5-4(実施可能要件) 発明の詳細な説明には、上記申立理由4-1~4-4のそれぞれに対応する事項が記載されておらず、どのように実現するかが不明であって、当業者が過度な試行錯誤を要することなく実施できるものではないから、実施可能要件を満たしていない。 <申立人が提示した甲1、3、5、6、8、9、11、13、14、16> (申立人が提示した甲2、4、7、10、12、15については、上記第4の<引用文献等一覧>を参照されたい。) 甲1:国際公開第2021/149815号 甲3:特開平9-76437号公報 甲5:特開2001-58366号公報 甲6:特開平7-330718号公報 甲8:特開2009-242446号公報 甲9:特開平11-35554号公報 甲11:特開2013-155454号公報 甲13:特開2010-23242号公報 甲14:特開2006-95893号公報 甲16:国際公開2021/199461号 2 当審の判断 (1) 取消理由1(拡大先願)について ア 本件発明1について (ア) 甲1発明等 甲1は、2021年(令和3年)1月22日を国際出願日(優先権主張2020年(令和2年)1月24日)とするPCT/JP/2021/002310号であるところ、この出願の国際出願日は、本件特許に係る出願日である令和2年8月27日よりも後であるから、甲1に記載された発明のうち、特許法第29条の2でいう特許出願の日前の他の出願となるためのは、この国際出願の優先権主張の基礎とされ、2020年(令和2年)1月24日に出願された特願2020-10068号の願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下「当初明細書等」という。)に記載された発明の範囲でなければならない。 そうすると、甲1には、特願2020-10068号の当初明細書等に記載されていた発明として、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている(括弧内の段落は、甲1と特願2020-10068号の当初明細書等において、特に関連する箇所である。)。 「ポリアミド6を解重合用原料とした再生モノマーを90質量%以下含むポリアミド樹脂(甲1[0020]、[0028]、[0038]~[0040]、特願2020-10068号の明細書【0012】、【0017】、【0027】)と、 フィルム製造時に発生した未延伸屑、耳部トリミング屑、スリット屑、不良品等を再度溶融して成形されたペレット等からなり、ポリアミド樹脂フィルムに対して50質量%以下の再溶融樹脂(甲1[0038]~[0040]、特願2020-10068号の明細書【0027】)とを含む二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムに易接着処理をしたポリアミドフィルムの製造方法(甲1[0053]、[0057]、特願2020-10068号の明細書【0024】、【0030】)。」 (イ) 対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム」は本件発明1の「二軸延伸ポリアミドフィルム」に相当する。ここで、甲1発明における「ポリアミド樹脂フィルム」は「二軸延伸ポリアミド樹脂フィルム」となるものであり、「ポリアミド6を解重合用原料とした再生モノマーを90質量%以下含むポリアミド樹脂」であるから、甲1発明における「ポリアミド樹脂フィルム」の成分である「ポリアミド樹脂」と「再溶融樹脂」との両方を含む樹脂は、本件発明1における「二軸延伸ポリアミドフィルム」に含まれる「ポリアミド6を70質量%以上含むポリアミド樹脂」と対比して、「ポリアミド6を含むポリアミド樹脂」に限り一致する。 甲1発明の「ポリアミド6を解重合用原料とした再生モノマー」は、ケミカルリサイクルにおける原料であり、かつ、ポリアミド6を構成するモノマーであるから、甲1発明の「ポリアミド6を解重合用原料とした再生モノマーを90質量%以下含むポリアミド樹脂」のうち「90質量%以下含」まれる「ポリアミド6を解重合用原料とした再生モノマー」に由来する成分は、本件発明1における「前記ポリアミド6のうち4~90質量%がケミカルリサイクルしたポリアミド6」と対比して、「前記ポリアミド6のうち90質量%以下がケミカルリサイクルしたポリアミド6」に限り一致する。 甲1発明の「フィルム製造時に発生した未延伸屑、耳部トリミング屑、スリット屑、不良品等を再度溶融して成形されたペレット等」を用いている事項は、本件発明1の「メカニカルリサイクル」を行っているといえるから、甲1発明における「フィルム製造時に発生した未延伸屑、耳部トリミング屑、スリット屑、不良品等を再度溶融して成形されたペレット等からな」る「再溶融樹脂」が「50質量%以下」である事項は、本件発明1における「メカニカルリサイクルしたポリアミド6を5~60質量%含む」事項と対比して、「メカニカルリサイクルしたポリアミドを60質量%以下含む」事項に限り一致する。 甲1発明の「易接着処理」は本件発明1の「接着改質層」に相当し、甲1発明の「易接着処理をしたポリアミドフィルムの製造方法」は本件発明1の「易接着性ポリアミドフィルムの製造方法」に相当するから、「二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムに易接着処理をしたポリアミドフィルムの製造方法」は本件発明1の「二軸延伸ポリアミドフィルム」「の少なくとも片面に固形分として塗布量が0.01~3g/m2のポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、及び/又はポリアクリル樹脂のいずれかの樹脂からなる接着改質層を有することを特徴とする易接着性ポリアミドフィルムの製造方法」と対比して、「二軸延伸ポリアミド樹脂フィルムに接着改質層を有する易接着性ポリアミドフィルムの製造方法」に限り一致する。 してみると、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は次のとおりである。 <一致点2> 「ポリアミド6を含むポリアミド樹脂からなり、前記ポリアミド6のうち90質量%以下がケミカルリサイクルしたポリアミド6であり、メカニカルリサイクルしたポリアミドを60質量%以下含む二軸延伸ポリアミドフィルムに易接着層を設けたポリアミドフィルムの製造方法。」 <相違点4> 本件発明1は、ポリアミド6を70質量%以上含むポリアミド樹脂であるのに対し、甲1発明はポリアミド樹脂及び再生樹脂におけるポリアミド6の質量比が特定されていない点。 <相違点5> 本件発明1は、前記ポリアミド6のうち4~90質量%がケミカルリサイクルしたポリアミド6であるのに対し、甲1発明はポリアミド樹脂のおけるポリアミド6を解重合用原料とした再生モノマーの含有量の下限値が特定されていない点。 <相違点6> 本件発明1は、メカニカルリサイクルしたポリアミド6を5~60質量%含むのに対し、甲1発明はポリアミド6であるかどうかが特定されておらず、また、含有量の下限値も特定されていない点。 <相違点7> 本件発明1は、二軸延伸ポリアミドフィルム(ただし、脂肪族共重合ポリアミド重合体および/または熱可塑性エラストマーを含むものを除く)であるのに対し、甲1発明の二軸延伸ポリアミドフィルムは、脂肪族共重合ポリアミド重合体および/または熱可塑性エラストマーを含むものを除いているかどうか特定されていない点。 <相違点8> 本件発明1は、二軸延伸ポリアミドフィルムの少なくとも片面に固形分として塗布量が0.01~3g/m2のポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、及び/又はポリアクリル樹脂のいずれかの樹脂からなる接着改質層を有するのに対し、甲1発明は易接着処理について具体的に特定されていない点。 (ウ) 判断 事案に鑑み、相違点8について検討する。 本件発明1は、二軸延伸ポリアミドフィルムの少なくとも片面に固形分として塗布量が0.01~3g/m2のポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、及び/又はポリアクリル樹脂のいずれかの樹脂からなる接着改質層を有することで、本件特許明細書【0012】にあるように積層フィルム間の接着強度(ラミネート強度とも言う)が高いので、袋の破れの少ない包装袋が提供できるという効果を奏するから、相違点8は実質的な相違点であり、課題解決のための具体化手段における微差ともいえない。 してみると、甲1発明は、本件発明1と実質同一ではない。 イ 申立人の主張について 申立人は、甲1の実施例6、7、9、10、16、17に記載のポリアミド樹脂フィルム及びその製造方法は、本件発明1と同一である旨主張する。しかしながら、甲1に記載されたPCT/JP/2021/002310号の優先基礎出願である、特願2020-10068号の当初明細書等には、申立人が主張する実施例は記載されていない。そうすると、実施例6、7、9、10、16、17は、2021年(令和3年)1月22日を国際出願日とするPCT/JP/2021/002310号の発明であって、本件特許出願日よりも後の発明であるから、当該主張は採用できない。 また、申立人は、本件発明1に係る食品包装用のポリアミドフィルムにおいて接着改質層を設けることは周知技術の付加であって、新たな効果が奏されるものでもない旨主張するが、本件発明1の易接着性ポリアミドフィルムにおいて、接着改質層は主要構成の一部であり、基材であるポリアミドフィルムの性状等も踏まえ、その成分や含有量を調整しているものであるから、上記ア(ウ)のとおり、その違いは、課題解決のための具体化手段における微差とはいえない。 ウ 本件発明2について 本件発明2と甲1発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。 <相違点9> 本件発明2は、接着改質層(C層)は固形分として塗布量が0.01~3g/m2のポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、及び/又はポリアクリル樹脂のいずれかの樹脂からなる接着改質層であるのに対し、甲1発明の易接着処理はその構成が具体的に特定されていない点。 そして、上記ア(ウ)での相違点8と同様の点で、相違点9についても、実質的な相違点であり、課題解決のための具体化手段における微差ともいえないから、甲1発明は、本件発明2と実質同一ではない。 エ 本件発明3、4、6~11について 本件発明3、4、6~11は、本件発明1及び2のいずれかに従属するものであり、上記相違点8及び9のいずれかを含むから、上記ア(ウ)、ウのとおり、甲1発明とは実質同一でない。 オ 小括 上記ア~ウのとおり、甲1には、本件特許に係る出願の日前の先の出願であって、本件発明1~4、6~11と実質同一となる発明は記載されていないから、本件の請求項1~4、6~11に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものではない。 したがって、申立理由1によっては、請求項1~4、6~11に係る特許を取り消すことはできない。 (2) 申立理由2-2(進歩性)について ア 甲3発明 甲3(特に、【請求項1】、【0001】~【0002】、【0004】~【0005】、【0012】、【0065】、【0091】、【0105】~【0116】、【0123】を参照されたい。)の実施例1に着目すると、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されている(なお、括弧内の段落は、理解のため特に参照すべき箇所である。)。 「ポリエステル含むグラフト共重合体の分散液(【0107】)を固形分濃度5%になるように水で希釈して、厚み15μmの二軸延伸ポリアミドフィルムに塗布量0.2g/m2で塗布した後、150℃で乾燥した積層ポリアミドフィルムの製造方法(【0109】」。 イ 本件発明1について (ア) 対比 本件発明1と甲3発明とを対比すると、両者は少なくとも次の相違点10で相違する。 <相違点10> 二軸延伸ポリアミドフィルムに関し、本件発明1は、ポリアミド6を70質量%以上含むポリアミド樹脂からなり、前記ポリアミド6のうち4~90質量%がケミカルリサイクルしたポリアミド6であり、メカニカルリサイクルしたポリアミド6を5~60質量%含むものであるのに対し、甲3発明は、二軸延伸ポリアミドフィルムのポリアミドがポリアミド6を含むかであるかどうかが明らかでなく、また、仮にポリアミド6を含むとしても、それがリサイクルしたポリアミド6であるかどうかが明らかでない点。 (イ) 判断 上記相違点10について検討する。 甲3の【0065】には「(ポリアミドフィルム基材)本発明においてポリアミドフィルム基材に使用し得るポリアミドとしては、例えば、ε-カプロラクタムを主原料としたナイロン6、3員環以上のラクタム、ω-アミノ酸、二塩基酸とジアミンの重縮合によって得られるポリアミドなどを用い得る。」と記載されているから、甲3発明の二軸延伸ポリアミドフィルムのポリアミドとしてナイロン6、すなわちポリアミド6を用いることはできるとしても、それをリサイクルしたポリアミド6とする点については記載も示唆もない。 また、甲12にはポリアミド6として、ケミカルリサイクルされたものとメカニカルリサイクルされたものの両方を用いる点は記載されているもののそれぞれの含有量は記載されていない。 加えて、甲2、4~11、13~15には、ポリアミド6として、ケミカルリサイクルされたものとメカニカルリサイクルされたものの両方を用いる点については記載されていない。 そうすると、甲3発明において、甲3の【0065】の記載に基づいてポリアミドの種類をポリアミド6に特定した上で、そのポリアミド6として、甲12に記載の事項を適用してケミカルリサイクルのものとメカニカルリサイクルのものの両方を用い、さらに、その含有量を特定の数値範囲内として上記相違点10に係る本件発明1の構成を備えることは、当業者といえども容易になし得たことではない。 そうすると、本件発明1は、甲3発明や甲2、甲4~15に記載された事項から当業者が容易に発明できたものではない。 ウ 本件発明2について 本件発明2と甲3発明とを対比すると、両者は少なくとも次の相違点11で相違する。 <相違点11> 二軸延伸ポリアミドフィルムに関し、本件発明2は、基材層(A層)の少なくとも片面に表面層(B層)が積層された二軸延伸ポリアミドフィルムにおける、基材層(A層)はポリアミド6を100質量%含むポリアミド樹脂からなり、前記ポリアミド6のうち5~90質量%がケミカルリサイクルしたポリアミド6であり、メカニカルリサイクルしたポリアミド6を5~80質量%含むものであるのに対し、甲3発明は、基材層(A層)と表面層(B層)の少なくとも2層の構造かどうかが明らかでなく、ポリアミドがケミカルリサイクルしたポリアミド6及びメカニカルリサイクルしたポリアミド6を含むかどうかも明らかでない点。 そして、上記イ(イ)のとおり、甲3発明において、ポリアミドの種類をポリアミド6に特定した上で、そのポリアミド6として、ケミカルリサイクルのものとメカニカルリサイクルのものの両方を用い、さらに、その含有量を特定の数値範囲内に設定することは、当業者といえども容易になし得たことではないから、甲3発明において上記相違点11に係る本件発明2の構成とすることは、当業者といえども容易になし得たことではない。 そうすると、本件発明2は、甲3発明や甲2、甲4~15に記載された事項から当業者が容易に発明できたものではない。 エ 本件発明3、4、6、7について 本件発明3、4、6、7は、本件発明1に従属し、少なくとも上記相違点10を含むから、上記イと同様の理由により、本件発明3、4、6、7は、甲3発明や甲2、甲4~15に記載された事項から当業者が容易に発明できたものではない。 オ 本件発明8~11について 本件発明8~11は、本件発明2に従属し、少なくとも上記相違点11を含むから、上記ウと同様の理由により、本件発明8~11は、甲3発明や甲2、甲4~15に記載された事項から当業者が容易に発明できたものではない。 カ 小括 上記ア~オから、申立理由2-2からは請求項1~4、6~11に係る特許が特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえないから、申立理由2-2によっては、請求項1~4、6~11に係る特許を取り消すことはできない。 (3) 申立理由3(明確性要件違反)について 明確性要件は、特許請求の範囲の記載が、第三者に不足の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという規範で判断される。 本件特許の請求項1、3~4、6~11の記載は、ある具体的な方法があったときに、それが請求項に係る発明の範囲に入るか否かを当業者が理解できるものである。 申立人は「物を生産する方法であるにも関わらず、発明特定事項として経時的な要素が含まれていない」と主張するが、経時的な要素の発明特定事項の有無は明確性要件の上記判断に影響を与えるものではない。 そうすると、本件特許の特許請求の範囲の記載は、第三者に不足の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえず、特許法第36条第6項第2号に規定する要件に適合する。 したがって、申立理由3によっては、請求項1~4、6~11に係る特許を取り消すことはできない。 (4) 申立理由4(サポート要件)及び5(実施可能要件)について ア 申立理由4-1(サポート要件)及び5-1(実施可能要件)について 本件特許の発明の詳細な説明に記載された【表2】、【表3】からは、ケミカルリサイクル及びメカニカルリサイクルのポリアミド6を含む実施例は、石化由来原料のみのポリアミド6である比較例と比較しても、突刺し強度、耐衝撃性、及び耐摩耗性ピンホール性は大きく劣るものでははないから、ケミカルリサイクル及びメカニカルリサイクルのポリアミド6を特定範囲とした、本件発明1、2は本件特許発明の課題を解決しているものといえる。 そして、これらの実施例は発明の詳細な説明に製造方法が記載され、実施できるものであり、本件特許発明の課題も解決するものであるから、本件発明1、2は、発明の詳細な説明に記載されている。 イ 申立理由4-2、4-3(サポート要件)及び5-2、5-3(実施可能要件)について 本件特許の発明の詳細な説明に実施例9~17として記載された、A層とB層とを含む二軸延伸ポリアミドは、A層及びB層を含む未延伸フィルムを得て(【0147】)、当該未延伸フィルムをMD方向及びTD方向に延伸すること(【0148】)により、二軸延伸ポリアミドフィルムを得ているから、【表3】に記載された実施例9~17も、本件発明1に含まれる。 そして、【表3】にはピンホール発生までの距離が2900cm以上であり、ヘイズが2.6%以下のものを含むから、本件発明1に従属する本件発明3、4に対応する実施例は発明の詳細な説明に記載されている。 ウ 申立理由4-4(サポート要件)及び5-4(実施可能要件)について 本件訂正により、本件特許の請求項5に係る特許は削除されたから、申立理由4-4及び5-4は申立ての対象が存在しない。 オ 申立理由4-5(サポート要件)について 統計において、比率の数値を有効桁数に丸める関係で、表示された内訳の合計が必ずしも100%とならないことは、一般的に生じる事項である。そして、本件特許の発明の詳細な説明において、全成分の合計質量が100.1%となる実施例1、4、5、8、比較例1や、表面層(B層)における全成分の合計質量が100.1%となる実施例12、13、17において、内訳に記載された比率で各成分を分配した際に、合計0.1%となる統計上生じる差によって、その性質が大きく変化するような違いが生じるとは考えられないから、これらの実施例を除外しなければならない理由はない。 そうすると、本件特許の発明の詳細な説明には、ポリアミド6の含有量が99.4質量%のものにおいて、そのうちのメカニカルリサイクルされたポリアミド6の含有量が49.7%の実施例も記載されていることとなる。また、メカニカルリサイクルされたポリアミド6の含有量が多くなることや少なくなることが、ポリアミドフィルムにどのような変化をもたらすか、という機序は、【0027】を踏まえれば当業者が把握できるから、本件発明1は発明の詳細な説明に記載されている。 なお、申立人は、特許異議申立書において、本件特許の比較例1は、本件特許権者による甲16の参考例1とで、ポリアミド樹脂組成物、延伸倍率、熱固定温度などの成膜条件、ラミネート強度の測定条件が同じであるにもかかわらず、両者のラミネート強度の値が大きく異なっていることを前提に、本件特許の比較例1に記載されているラミネート強度の値は信憑性に欠ける旨、主張する。 しかしながら、本件特許の比較例1は発明の詳細な説明の【0150】や【表2】の「易接着塗布層塗布量」からみて、易接着塗布層を有さないものと認められるし、この点は【0012】における積層フィルム間の接着強度(ラミネート強度)が高い、という本件発明の効果にも合致する。一方、甲16は「易接着塗布層塗布量」について記載がなく、甲16における実施例と比較例とで易接着塗布層についての条件とが同じであると考えられるから、本件特許の比較例1と甲16の参考例1とは同じ二軸延伸ポリアミドフィルムを同様に測定した、とする申立人の主張は前提を欠く。 カ 小括 上記ア~オのとおり、本件発明1~4、6~11は発明の詳細な説明に記載されている発明であると認められ、その実施が可能なものであるから、本件特許の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第6項第1号及び同条第4項第1号の規定に適合する。 したがって、申立理由4、5によっては、請求項1~4、6~11に係る特許を取り消すことはできない。 第7 むすび 以上により、本件特許の請求項1~4、6~11に係る特許は、取消理由(決定の予告)及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由のいずれによっても取り消すことはできない。 さらに、他に本件特許の請求項1~4、6~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、本件特許の請求項5に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項5に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700106

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同じ当事者の審決259件(中村 絵美、東洋紡株式会社)
  • 2025-700264異議申立
    同じ当事者: 中村 絵美、東洋紡株式会社
  • 2026-700350異議申立 / 2026-08-31
    同じ当事者: 中村 絵美
  • 2025-700813異議申立 / 2026-05-25 / 請求成立(取消)
    同じ当事者: 中村 絵美
  • 2026-700153異議申立 / 2026-05-18 / 維持二軸配向ポリエステルフィルム
    同じ当事者: 東洋紡株式会社
  • 2026-700185異議申立 / 2026-05-11 / 維持蓄電装置用端子フィルム及び蓄電装置
    同じ当事者: 中村 絵美
同じ論点・分野の審決(審決分類)938件(121・B32B、16・B32B、536・B32B ほか)
  • 2022-700501異議申立 / 2023-08-01 / 訂正認容化粧シート及び化粧材
    共通の審決分類: 121・B32B、16・B32B、536・B32B、537・B32B
  • 2026-700281異議申立 / 2026-07-30 / 維持化粧シート
    共通の審決分類: 121・B32B、536・B32B、537・B32B
  • 2026-700223異議申立 / 2026-06-30 / 維持加飾シート
    共通の審決分類: 121・B32B、536・B32B、537・B32B
  • 2025-700921異議申立 / 2026-06-29 / 維持化粧材及び該表面保護層形成用樹脂組成物
    共通の審決分類: 121・B32B、536・B32B、537・B32B
  • 2025-700885異議申立 / 2026-06-09 / 訂正認容金属調加飾シート及びこれを備える金属調加飾成形体
    共通の審決分類: 121・B32B、536・B32B、537・B32B

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