特許異議申立
2022-700433
模様付固形化粧料およびその製造方法
- 審判番号
- 2022-700433
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-161212外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6969783
- 請求日
- 2022年05月19日
- 審決日
- 2023年01月31日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 分類
- P1652.113-ZC (A61K) / P1652.121-ZC (A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項特許法29条2項特許法113条1項2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6969783号発明「模様付固形化粧料およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6969783号の請求項1に係る特許を取り消す。
特許第6969783号の請求項3及び5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6969783号(以下「本件特許」という。)の請求項1~5に係る発明についての出願(以下「本件出願」という。)は、平成29年8月24日の出願であって、令和3年11月1日に特許権の設定登録がされ、同年同月24日にその特許掲載公報が発行されたものである。
その後、令和4年5月19日に、本件特許の請求項1、3及び5に係る発明の特許に対し、金澤 毅(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。
当審合議体は、特許権者に令和4年8月29日付けで取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、指定した期間内に特許権者からの応答はなかった。
第2 本件発明
本件特許の請求項1、3及び5に係る発明(以下、「本件発明1」、「本件発明3」及び「本件発明5」ということがある。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1、3及び5に記載された事項によって特定される以下のとおりのものである。
なお、請求項4に係る発明の特許は、本件特許異議の申立ての対象ではないが、請求項5において、請求項3又は請求項4の記載が択一的に引用されており、請求項4に記載された事項は、本件発明5を特定する事項に含まれているため、併せて摘記する。
「【請求項1】
曲面状の表面を有する固形化粧料と、
前記固形化粧料の表面に付された化粧料側模様とを備え、
前記化粧料側模様は、油性成分を含有し、前記固形化粧料とは異なる模様形成用化粧料からなるとともに、立体的形状に形成されていることを特徴とする模様付固形化粧料。」
「【請求項3】
曲面状の表面を有する固形化粧料の表面に倣って相対的にノズルを移動させるとともに、流動性を有し、油性成分を含有する模様形成用化粧料を粒状にして前記ノズルを介して飛ばすことによって、前記固形化粧料の表面に付着させて化粧料側模様を立体的形状に形成する模様形成ステップと、
前記模様形成ステップにて形成された前記化粧料側模様を固化させる模様固化ステップ
とを備えることを特徴とする模様付固形化粧料の製造方法。」
「【請求項4】
曲面状の表面を有する固形化粧料の表面および前記固形化粧料を収容する曲面状の表面を有する容器の表面に倣って相対的にノズルを移動させるとともに、流動性を有し、油性成分を含有する模様形成用化粧料を粒状にして前記ノズルを介して飛ばすことによって、前記固形化粧料の表面および前記固形化粧料の表面と隣接して配置された前記容器の表面に付着させて化粧料側模様および容器側模様を立体的形状に形成する模様形成ステップと、
前記模様形成ステップにて形成された前記化粧料側模様および前記容器側模様を固化させる模様固化ステップとを備え、
前記模様形成ステップは、一体的に組み合わせることによって特定の模様を形成するように前記化粧料側模様および前記容器側模様を形成することを特徴とする模様付固形化粧料の製造方法。」
「【請求項5】
請求項3または請求項4に記載された模様付固形化粧料の製造方法において、
前記模様形成ステップは、前記ノズルを移動させることによって、前記模様を形成することを特徴とする模様付固形化粧料の製造方法。」
第3 取消理由の概要及び当審の判断
1 取消理由の概要
請求項1に係る特許について、当審合議体が令和4年8月29日付け取消理由通知書で特許権者に通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
取消理由1(新規性欠如)
本件特許の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第1項第2号に該当し、取り消されるべきものである。
取消理由2(進歩性欠如)
本件特許の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第1項第2号に該当し、取り消されるべきものである。
甲第1号証:特開2014-189531号公報
2 当審の判断
当審合議体は、請求項1に係る特許について、令和4年8月29日付けで取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、指定した期間内に特許権者からの応答はなかった。
そして、当該取消理由は妥当なものと認められるので、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項及び同法同条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第1項第2号に該当し、取り消されるべきものである。
第4 特許異議の申立ての理由について
1 特許異議の申立ての理由の概要
申立人は、証拠方法として、以下の甲第1号証~甲第4号証及び参考資料1、2を提出して、以下に概要を示す特許異議の申立ての理由(以下「申立理由」という。)を主張している。
(証拠方法)
甲第1号証:特開2014-189531号公報(以下「甲1」という。)
甲第2号証:国際公開第2016/020442号(以下「甲2」という。)
甲第3号証:特表2017-518983号公報(以下「甲3」という。)
甲第4号証:新村 出編、「広辞苑第六版」、2008年1月11日、株式会社岩波書店発行、p.2947「立体的」の項(以下「甲4」という。)
参考資料1:特許第6969783号公報(本件特許掲載公報。以下「参考1」という。)
参考資料2:本件出願の審査において、令和3年6月28日に提出された意見書(以下「参考2」という。)
(申立理由の概要)
申立理由1
(1)本件発明1、3、5は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件発明1、3、5に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきものである。
(2)本件発明1、3、5は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明に基いて、又は、甲1に記載された発明、及び、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された技術的事項に基いて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件発明1、3、5に係る特許は、同法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきものである。
申立理由2
(1)本件発明1、3、5は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件発明1、3、5に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきものである。
(2)本件発明1、3、5は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3に記載された発明に基いて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件発明1、3、5に係る特許は、同法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきものである。
2 取消理由通知において採用しなかった申立理由について
上記第3のとおり、請求項1に係る特許は、取消理由1及び2によって、取り消されることから、請求項1に係る特許を対象とする申立理由1及び2については、検討を要しない。
したがって、請求項3及び5に係る特許を対象とする、申立理由1及び2について、以下検討する。
(1)甲1~甲4の記載事項
本決定において、引用箇所等に付した下線は、注記がない限り、いずれも当審合議体によるものである。
ア 甲1の記載事項
甲1には、以下の事項が記載されている。
甲1a
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記a)~c)の工程を含む油性化粧品への模様の形成方法。
a)水溶紙上に、油性の加飾用化粧料を用いて模様を描く工程
b)水溶紙上に描いた模様を油性化粧料に転写する工程
c)水洗して水溶紙を除去する工程」
甲1b
「【技術分野】
【0001】
本発明は、口紅、リップクリーム、コンシーラなどの油性化粧料の表面に模様を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固形化粧料の表面に文字や模様を形成する方法として、水溶性フィルムの転写媒体に固形化粧料と同じあるいは別の固体化粧料に模様を描き、この模様を前記固形化粧料に転写し、水中で当該水溶性フィルムを溶出除去することにより固形化粧料の表面に模様を形成する方法が開示されている。(特許文献1)。
・・・
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、水溶性高分子からなる水溶性フィルムを水で除去する場合、まず水溶性フィルムは、まず膨潤して塊となり、次にこの水溶性フィルムの塊が徐々に溶解する。このため、特許文献1のように、転写媒体として水溶性フィルムを使用する場合、水溶性フィルムの溶解に時間がかかり、生産性が悪くなるといった問題がある。
【0005】
さらに、口紅やコンシーラ等の油脂分を多く含む油性化粧料は非常に柔らかいため、固形化粧料上に形成させた油脂分を多く含む油性化粧料からなる模様と、転写媒体(水溶性フィルム)を溶解する際に発生する膨潤した水溶性フィルムの塊が接触すると、形成させた模様が壊れてしまう問題がある。
【0006】
そこで本発明は、転写媒体の溶解性を向上させ、且つ形成させた油性の加飾化粧料の模様を壊すことなくがなく転写媒体を除去する、油性化粧料への文字図柄などの模様を形成させる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の目的を達成するため以下の(1)~(2)を提供する。
(1)下記a)~c)の工程を含む油性化粧品への文字図柄模様の形成方法。
a)水溶紙上に、油性の加飾用化粧料を用いて模様を描く工程
b)水溶紙上に描いた模様を油性化粧料に転写する工程
c)水洗して水溶紙を除去する工程
(2)前記水溶紙の水分散時間が30秒以下であることを特徴とする(1)請求項1に記載の油性化粧料への文字図柄模様の形成方法。」
甲1c
「【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、転写媒体の溶解性を向上させ、且つ形成させた油性の加飾化粧料の模様を壊すことなくがなく転写媒体を除去する、油性化粧料への文字図柄などの模様を形成させる方法を提供することができる。
・・・
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る模様を形成した油性化粧料の一例を示す概略図であり、図2は図1のA-A’線に沿う断面図である。模様を形成した油性化粧料1は、平皿様の容器12の中に充填された被転写体となる油性化粧料11の上に模様となる加飾化粧料21が保持されている。
【0012】
図3は、転写媒体となる水溶紙22に模様となる加飾化粧料21を模様形成した形成態の概略図である。加飾化粧料21の転写媒体となる水溶紙22への模様の形成方法は、スクリーン印刷や凹版印刷など公知の印刷手法を適宜適用することができるが、これに限られるものではない。
【0013】
(模様)
本発明において、模様とは、形状の表面に現れる線図、色分けなどを示し、文字や図柄を含む概念である。なお、模様となる加飾化粧料21のデザイン、色、模様の数は、これに限られるものではない。
【0014】
図4は、被転写体となる油性化粧料10の概略図である。平皿様の容器12に被転写体となる油性化粧料11を充填し平面状にしたものであるが、被転写体となる油性化粧料は図7のように立体形状の油性化粧料31など種々の形状のものを使用することができる。
【0015】
図5は、転写媒体となる水溶紙22に形成した模様となる加飾化粧料21の化粧料面側と被転写体となる油性化粧料11の表面とを貼り付けた積層体40の概略図であり、図6は、図5のB-B’線に沿う断面図である。
【0016】
図5のように加飾化粧料と油性化粧料とを貼り付けた積層体40は水中で水溶紙22のみが洗い流され、図1の模様を形成した油性化粧料10が完成する。
・・・
【0018】
水溶紙の表面は、平滑であっても良いし、凹凸を有しても良い。スーパーカレンダー加工などで水溶紙の表面を平滑化したものであれば、加飾化粧料11と油性化粧料21とを積層した積層体40の水溶紙22を洗い流した後に露出した加飾化粧料の表面が平滑になり模様の均一性が向上する。エンボス加工などで水溶紙表面を凹凸化したものであれば、その凹凸が露出した加飾化粧料に転写されるので意匠性が向上する。」
甲1d
「【実施例】
・・・
【0033】
(油性化粧料Aの製造方法)
下記に示す成分1~8を110~120℃で加熱溶解後、成分9~15を加えて均一混合し、油性化粧料Aを得た。
【0034】
<油性化粧料A>
(成分) (質量部)
1.エチレン・ピロピレンコポリマー(注2) 10
2.キャンデリラワックス 1
3.ポリエチレンワックス 4
4.トリオクタン酸グリセリル 残量
5.テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット 10
6.トリイソステアリン酸ジグリセリル 35
7.トリイソステアリン酸グリセリル 4
8.重質流動イソパラフィン 5
9.シリル化処理無水ケイ酸(注3) 1
10.赤色202号 1
11.黄色4号 0.5
12.酸化チタン 0.5
13.黒酸化鉄 0.1
14.雲母チタン 5
15.酸化チタン被覆ガラス末(注4) 1
注2:EP-700(ニューフェーズテクノロジー社製)
注3:AEROSIL R972(日本エアロジル社製)
注4:メタシャイン1080RR(日本板硝子社製)
【0035】
(油性化粧料Bの製造方法)
下記に示す成分1~8を110~120℃で加熱溶解後、成分9~12を加えて均一混合し、油性化粧料Bを得た。
【0036】
<油性化粧料B>
(成分) (質量部)
1.エチレン・ピロピレンコポリマー(注2) 10
2.キャンデリラワックス 1
3.ポリエチレンワックス 4
4.トリオクタン酸グリセリル 残量
5.テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット 10
6.トリイソステアリン酸ジグリセリル 35
7.トリイソステアリン酸グリセリル 4
8.重質流動イソパラフィン 5
9.シリル化処理無水ケイ酸(注3) 1
10.酸化チタン 0.5
11.雲母チタン 5
12.酸化チタン被覆ガラス末(注4) 1
注2:EP-700(ニューフェーズテクノロジー社製)
注3:AEROSIL R972(日本エアロジル社製)
注4:メタシャイン1080RR(日本板硝子社製)
【0037】
(被転写体となる油性化粧料の作製)
直径54mm、深さ3.5mmの金属製の皿に110℃で加熱溶融した油性化粧料Aを流し込み、冷却固化して被転写体となる油性化粧料を得た。
【0038】
[実施例1]
油性化粧料Bを練ってペースト状とし、40メッシュ、乳剤厚100μm、開口部の外寸が幅30mm、長さ40mmの図3に示したデザインのスクリーン版を用いて水溶紙(製品名:30MDP、日本製紙パピリア製紙株式会社製)上に印刷し、加飾化粧料により模様を印刷した形成体を得た。
【0039】
次に、加飾化粧料により模様を印刷した形成体の化粧料面側を、被転写体となる油性化粧料の表面に貼り付けた後、水を入れた超音波洗浄機で3分間処理して水溶紙を除去した。
続いて、超音波洗浄機から取り出し、付着した水をエタノールで洗い流した後、40℃の乾燥機でエタノールを乾燥除去した。
エタノールを除去した油性化粧料は、90℃の乾燥機内で30秒間加熱した後、冷却処理し転写体となる油性化粧料を固化した。」
甲1e
(当審注:便宜上、本件明細書の【図面の簡単な説明】(【0009】)における図1~図7の各説明の後に、対応する各図及び【符号の説明】(【0043】)の記載を摘記する。)
「【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る模様を形成した油性化粧料の一例を示す概略図である。」
「【図1】
[図:0001398256000001.jpg]
」
「【符号の説明】
【0043】
1 模様を形成した油性化粧料(平面状)
・・・
11 被転写体となる油性化粧料
12 油性化粧料を充填する平皿様の容器
・・・
21、・・・ 模様となる加飾化粧料」
「【図2】図1のA-A’線に沿う断面図である。」
「【図2】
[図:0001398256000002.jpg]
」
「1 模様を形成した油性化粧料(平面状)
・・・
11 被転写体となる油性化粧料
12 油性化粧料を充填する平皿様の容器
・・・
21、・・・ 模様となる加飾化粧料」
「【図3】転写媒体となる水溶紙の表面に加飾化粧料からなる模様を形成した形成体の概略図である。」
「【図3】
[図:0001398256000003.jpg]
」
「20 転写媒体へ加飾化粧料により模様を形成した形成体
21、・・・ 模様となる加飾化粧料
22 転写媒体である水溶紙」
「【図4】被転写体となる油性化粧料の概略図である。」
「【図4】
[図:0001398256000004.jpg]
」
「10 被転写体となる油性化粧料体(平面状)
11 被転写体となる油性化粧料
12 油性化粧料を充填する平皿様の容器」
「【図5】転写媒体となる水溶紙の表面に加飾化粧料からなる模様を形成した形成体の化粧料面側と被転写体となる油性化粧料の表面とを貼り付けた積層体の概略図である。」
「【図5】
[図:0001398256000005.jpg]
」
「11 被転写体となる油性化粧料
12 油性化粧料を充填する平皿様の容器
・・・
21、・・・ 模様となる加飾化粧料
22 転写媒体である水溶紙
・・・
40 転写媒体となる水溶紙の表面に加飾化粧料からなる模様を形成した形成体の化粧料面側と被転写体となる油性化粧料の表面とを貼り付けた積層体」
「【図6】図5のB-B’線に沿う断面図である。」
「【図6】
[図:0001398256000006.jpg]
」
「11 被転写体となる油性化粧料
12 油性化粧料を充填する平皿様の容器
・・・
21・・・ 模様となる加飾化粧料
22 転写媒体である水溶紙
・・・
40 転写媒体となる水溶紙の表面に加飾化粧料からなる模様を形成した形成体の化粧料面側と被転写体となる油性化粧料の表面とを貼り付けた積層体」
「【図7】本発明の実施形態の一例のうち、口紅などの立体形状の油性化粧料に模様を形成した概略図である。」
「【図7】
[図:0001398256000007.jpg]
」
「23 模様となる加飾化粧料
・・・
30 模様を形成した油性化粧料(口紅等の立体形状)
31 被転写体となる油性化粧料(口紅等の立体形状)」
イ 甲2の記載事項
甲2には、以下の事項が記載されている(外国語で記載されているため、当審合議体による訳文で摘記する。)。
甲2a
「光活性化可能な材料を用いた直接投影により、化粧料組成物を含む又は形成する三次元物の積層造形の方法、及び関連装置」(1頁1~3行)
甲2b
「本発明の目的の一つは、複雑な形状、性質及び外観を有し得る、化粧料組成物を含む三次元物を製造するための簡単で汎用性の高い方法を提供することである。」(2頁11~13行)
甲2c
「図1は、本発明の方法により化粧料組成物を含む三次元物を製造するための装置の例の図である。図2~図4は、図1の装置を用いて本発明の方法によって創られた三次元物の例を示す。」(5頁17~21行)
甲2d
「有利には、各材料は、基板上又は形成された三次元物上にノズルを使用して噴霧される加熱された液滴の形態で堆積する。
少なくとも部分的に液体の化粧料材料は、冷却及び/又は架橋によって少なくとも部分的に固化することができる。・・・特に、材料は固体になることができる。」(10頁15~22行、)
甲2e
「口紅はオイルを含むことができる。」(18頁1行)
甲2f
「各液滴は、好ましくは100ng未満の質量を有し、例えば30ngと100ngの間である。」(23頁1~2行)
甲2g
「移動アセンブリ60は、基板表面58又は基板表面58に堆積した前の層19に対し、ノズル52の3軸における相対的な位置決めを可能にする。」(23頁22~24行)
ウ 甲3の記載事項
甲3には、以下の事項が記載されている。
甲3a
「【請求項1】
化粧製品の製造のための注型方法であって、一連の以下の工程:
a)30~150℃の間の流動化点、及び半球状プローブが設置されている質感分析器を使用して25℃で測定される0.5~80Nの間の平均硬さを有する、油を含有する少なくとも1種の組成物を、組成物の流動化点よりも大きい流動化温度に加熱することによって流動化させる工程と、
b)注型用ノズルに流動化組成物を導入する工程と、
c1)ノズルのオリフィスを介する前記流動化組成物の射出によって注型してかたまりを得るステップであり、かたまりが支持体上に堆積され、25℃に冷却した後、前記支持体上に前記組成物の第1の堆積物を形成する工程と、
c2)空間の3つの方向のうちの少なくとも1つにおいて前記ノズルを前記支持体に対して相対的に移動させる工程と、
d)前記注型を停止する工程と、次いで任意選択で
e)前記ノズルを前記支持体に対して相対的に転置する工程と、
f)30~150℃の間の流動化点、及び半球状プローブが設置されている質感分析器を使用して25℃で測定される0.5~80Nの間の平均硬さを有する、油を含有する同じ組成物又は別の組成物を使用して、工程a)~e)を少なくとも1回反復して、前記支持体に少なくとも1つの他の堆積物を形成する工程と
を含む、方法。」
甲3b
「【0018】
したがって、製造するのにより簡便、より早い及びより高価でない、色相の、質感の又は物質の新規な配置を提供する多組成物化粧製品を提供することが、依然として必要である。別の狙いは、より不規則及びより微細なレリーフを有する化粧製品を製造することである。
【発明の目的】
【0019】
特にメイクアップ分野において、油を含有する、特に高い割合で油を含有する、固体化粧品組成物の新規な形態及び新規な体裁を開発することが所望される。
【0020】
本発明の文脈において、本発明者らは、非常に変化に富んだ形態、レリーフ及び色相によるこうした組成物を作り出すことで、多色相製品を形成することが可能であることを見出した。彼らは、全く同一の工程中で、異なる質感の化粧品組成物を注型することで、多質感製品を形成することを可能にする方法も見出した。最終的に、彼らは、化粧品組成物及び非化粧品熱可塑性支持材料を同時に注型することで、多物質製品を形成することを可能にする方法を見出した。
【0021】
したがって、本発明者らは、従来技術の全ての方法の場合のように、鋳型の使用又は容器の使用を必要としない固体組成物の熱注型のための新規な方法を見出した。この方法は、特に、前に製造されたことがなかった、非常に微細なパターン、リボンのインターレース、さらには色濃淡を得ることを可能にする。
【0022】
本発明の方法は、複数の利点を呈する。該方法は、表面又は本体が複数の形態及び異なる色相の区域を含む製品を作り出すことを可能にする。これらの形態及びこれらの区域の表面は、必ずしも平らでない。
【0023】
したがって、本発明は、固体化粧製品を製造するための新規な方法であって、組成物を溶融し、所定のパターンに従って支持体に流体状態で組成物を注型し、複数の堆積物が連続的又は同時に形成され、次いで、堆積物を放置して冷却させることを含む、方法に関する。」
甲3c
「【0115】
該支持体は、化粧品的又は非化粧品的性質であってよい。
【0116】
支持体の温度は、注型組成物堆積物の冷却を加速することが所望される場合において、25℃以下、例えば10℃、4℃又は0℃に等しくてよい。反対の目的で、支持体を25℃超の温度に加熱することが可能である。
【0117】
好ましい実施形態によると、支持体は、化粧品的性質であり、上で注型された組成物と同じ方法で皮膚に適用することができる。支持体は、リップスティック、香り付け製品、固体ファンデーション又はアイシャドーであってよい。」
甲3d
「【0196】
実施例1:多色相リップスティック
組成物の調製
異なる色相:赤色、紫色及びピンクを有する3種の組成物を調製する。3種の組成物は、性質並びに顔料及び真珠光沢剤の相対的割合において異なる。3種の組成物を構成する成分、及び、重量百分率として表現される成分の割合は、後文において再現されている。
ポリエチレン、蜜ワックス及びオゾケライトの混合物 12.7
ベントン及びC10~C30エステルの混合物 3.4
ポリイソブテン、エステル、ポリデセン及びオクチルドデカノールの混合物 64.5
顔料及び真珠光沢剤の混合物(1)、又は
顔料及び真珠光沢剤の混合物(2)、又は
顔料及び真珠光沢剤の混合物(3) 15.9
保存剤、活性薬剤又は芳香 100までの適量
【0197】
95℃に等しい温度で撹拌しながら該成分を混合することによって、組成物を得る。組成物を25℃に冷却する。引き続いて、組成物の硬さ及び滴点を以下の方法によって測定する。
【0198】
Stable Micro Systemsからの質感分析器、TA.XT.Plusモデルを用いて、12.7mmの直径を有する半球状プローブ(Delrinフィンガーとして知られている)の侵入によって、組成物の硬さを測定した。100mlのCleopatraポットで測定を実施し、測定を3回反復した。
【0199】
測定のパラメータは以下のとおりであった:
接近 2mm/s
試験 2mm/s
引き込み 2mm/s
侵入 13mm
緩み 25秒
トリガー力 2g。
【0200】
2.8mmのオリフィス直径を有する標準化カップが設置されているMettler Toledo DP70器具を用いて、2.0℃/minの発熱速度、40℃の出発温度及び95℃の終了温度を採用することによって、滴点を測定した。器具に組み込まれているカメラを使用して、液滴を視覚的に検出する。
【0201】
第1の組成物は、43.3Nの硬さ及び78.2℃に等しい滴点を有する。第2の組成物は、40.2Nの硬さ及び79.4℃に等しい滴点を有する。第3の組成物は、40.7Nの硬さ及び77.5℃に等しい滴点を有する。
【0202】
注型装置
注型装置は、平らな非化粧品支持体、3つのノズル、及び各ノズルのための送給手段を含む。各ノズルは、0.5mmの直径を有する円形オリフィスを呈し;ノズルは、ノズルが垂直軌道に沿って転置されるのを可能にする機械的手段に接続されている。支持体には、支持体が定義する平面において移動するのを可能にする機械的手段が設置されている。
【0203】
注型装置は、25℃でサーモスタット制御されているチャンバーに置かれており;注型装置は、前に定義されている幾何学的なパターンを呈する3つの色相を含むリップスティック用スティックを製造するために、ノズルを送給するための手段、ノズルを転置するための手段、及び支持体を転置するための手段を制御するコンピューターに接続されている。
【0204】
注型方法
この方法において、制御ソフトウェアによってプログラミングされている所定の順序に従って、組成物は連続的堆積物によって注型される。
【0205】
90~95℃のオーダーの流動化温度で、第1の組成物を流動化し、第1の送給手段によって第1のノズルに導入し、次いで、大気圧にて支持体に注型することで、第1の組成物の第1のスレッドを形成する。堆積されたスレッドの形態は、注型中に線状又は曲線の軌道をたどり得る支持体の運動によって定義される。第1の堆積物又は第1の組成物の注型を、第1のノズルを送給するための手段のコンピューター制御によって停止する。
【0206】
第1の組成物の第1の堆積物を作るために上に記載されたものと同じ条件下で、引き続いて、第2のノズル及び支持体を位置決めすることで、第2の組成物の第1のスレッドを作る。引き続いて、第2の組成物の第1の堆積物の注型を停止する。
【0207】
3つのノズルを送給するための手段を制御するためのプログラムは、3種の組成物の注型の順序及び持続期間を、得ることが所望されるパターン及び形態の関数として定義する。
【0208】
例えば、一連の以下の工程:
工程i):支持体とノズルとの間の距離を一定にして、支持体上に第1の組成物の第1の堆積物を、次いで第2の組成物の第1の堆積物を注型する工程と、引き続いて
工程ii):支持体とノズルとの間の距離を、第1の堆積物の厚さに等しい長さだけ増加させ、先行する工程において作られた堆積物上に、第3の組成物の第1の堆積物、及び第1の組成物の第2の堆積物を注型する工程と、次いで
工程iii):支持体とノズルとの間の距離を、工程ii)において作られた堆積物の厚さに等しい長さだけ増加させ、工程ii)において作られた堆積物上に、第2の組成物の第2の堆積物、及び第3の組成物の第2の堆積物を注型する工程と、
工程iv):各工程内で支持体とノズルとの間の距離を増加させて、ノズルと堆積物が作られなければならない表面との間のギャップを、1つの工程から他の工程までは一定に保つようにしながら、工程i)~iii)を反復する工程と
を実施することができる。
【0209】
一連の工程を終わらせると、連続的堆積物からなる産物を、装置の支持体から分離させる。
【0210】
この順序に従うことによって、得られる製品は、図1に表されるとおりのスティック形態におけるリップスティックであり得る。このリップスティックは、十二面体形状化区域からなる。色相の選択は、該組合せが、調和のとれた魅力的な統一体を再創生するようなものである。」
甲3e
(当審注:便宜上、本件明細書の【図面の簡単な説明】(【0194】)における図1の説明の後に、対応する図1の記載を摘記する。)
「【図面の簡単な説明】
【0194】
【図1】本発明の方法によって得られる多色相化粧製品を示す略図である。」
「【図1】
[図:0001398256000008.jpg]
」
エ 甲4の記載事項
甲4には、以下の事項が記載されている。
甲4a
「りったい【立体】三次元の空間的よろがりをもつ物体。また、その物体が占める部分空間を抽象化した幾何学的対象。・・・。-てき【立体的】○1立体の感じを与えるさま。表面的な広がりだけでなく、深さや厚みをもっているさま。○2物事をあらゆる角度から総合的にとらえるさま。」(2947頁「立体的」の項)(当審注:○数字は、丸付き数字を表す。)
オ 参考1の記載事項
参考1は、本件特許掲載公報であり、記載事項の摘記は省略する。
カ 参考2の記載事項
参考2は、本件出願の審査において提出された意見書であり、申立人は、申立理由1のうち、甲1に基づく本件発明1の新規性・進歩性の欠如の理由についての主張を補うために参考2の記載を引用するが(特許異議申立書の11頁下から3行~12頁下から4行)、上記2の冒頭で説示したとおり、請求項1に係る特許は取消理由1及び2により取り消されるため、請求項1に係る特許を対象とする申立理由1及び2は検討を要しないので、参考2の記載事項の摘記は省略する。
(2)申立理由1について
ア 甲1に記載された発明
甲1には、「下記a)~c)の工程を含む油性化粧品への模様の形成方法。
a)水溶紙上に、油性の加飾用化粧料を用いて模様を描く工程
b)水溶紙上に描いた模様を油性化粧料に転写する工程
c)水洗して水溶紙を除去する工程」(甲1a 請求項1)について記載されている。
そして、上記請求項1の「油性化粧品への模様の形成方法」の具体例として、甲1の実施例1(甲1d)には、水溶紙上に油性の加飾用化粧料を用いて、模様として図3に示したデザインを描き、その水溶紙上に描いた模様を油性化粧料に転写した後、水洗して水溶紙を除去し、転写体となる油性化粧料を製造したことが記載されている。
さらに、甲1の図7には、実施形態の一例のうち、口紅などの立体形状の油性化粧料に模様(図3に示したデザインを転写した模様)を形成した概略図が記載されている。
そうすると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明2」という。)が記載されているといえる。
「口紅などの立体形状の油性化粧料と、
前記油性化粧料の表面に付された油性の加飾用化粧料からなる模様が形成された口紅などの立体形状の油性化粧料の製造方法であって、
前記模様の形成は、下記a)~c)の工程:
a)水溶紙上に、油性の加飾用化粧料を用いて模様を描く工程
b)水溶紙上に描いた模様を油性化粧料に転写する工程
c)水洗して水溶紙を除去する工程
を含む油性化粧品への模様の形成方法による、模様が形成された口紅などの立体形状の油性化粧料の製造方法。」
イ 本件発明3について
(ア)甲1発明2との対比
a 甲1発明2における「口紅などの立体形状の油性化粧料」は、固形化粧料といえるから、本件発明3における「固形化粧料」に相当する。
b 甲1発明2における「b)水溶紙上に描いた模様を油性化粧料に転写」して「口紅などの立体形状の油性化粧料」に形成された「模様」は、「水溶紙上」から「口紅などの立体形状の油性化粧料」に「転写」されたものであり、「口紅などの立体形状の油性化粧料」の表面に付されたものといえるから、上記aを踏まえると、甲1発明2における「模様が形成された口紅などの立体形状の油性化粧料模様の製造方法」は、本件発明3における「模様付固形化粧料の製造方法」に相当する。
c 以上によれば、本件発明3と甲1発明2とは、
「模様付固形化粧料の製造方法」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点2:
模様付固形化粧料の製造方法について、本件発明3は、「曲面状の表面を有する固形化粧料の表面に倣って相対的にノズルを移動させるとともに、流動性を有し、油性成分を含有する模様形成用化粧料を粒状にして前記ノズルを介して飛ばすことによって、前記固形化粧料の表面に付着させて化粧料側模様を立体的形状に形成する模様形成ステップと、
前記模様形成ステップにて形成された前記化粧料側模様を固化させる模様固化ステップ
とを備える」ことを特徴とする方法であるのに対し、甲1発明2は、「模様は、下記a)~c)の工程:
a)水溶紙上に、油性の加飾用化粧料を用いて模様を描く工程
b)水溶紙上に描いた模様を油性化粧料に転写する工程
c)水洗して水溶紙を除去する工程
を含む油性化粧品への模様の形成方法による」方法である点。
(イ)相違点についての判断
a 新規性について
模様付固形化粧料の製造方法について、本件発明3において採用されている、「曲面状の表面を有する固形化粧料の表面に倣って相対的にノズルを移動させるとともに、流動性を有し、油性成分を含有する模様形成用化粧料を粒状にして前記ノズルを介して飛ばすことによって、前記固形化粧料の表面に付着させて化粧料側模様を立体的形状に形成する模様形成ステップと、
前記模様形成ステップにて形成された前記化粧料側模様を固化させる模様固化ステップとを備える」方法は、要するに、模様形成用化粧料をノズルを介して飛ばし固形化粧料の表面に付着させて模様を立体的形状に形成、固化させる方法といえる。
一方、模様付固形化粧料の製造方法について、甲1発明2において採用されている、「模様は、下記a)~c)の工程:
a)水溶紙上に、油性の加飾用化粧料を用いて模様を描く工程
b)水溶紙上に描いた模様を油性化粧料に転写する工程
c)水洗して水溶紙を除去する工程
を含む油性化粧品への模様の形成方法による」方法は、要するに、水溶紙上に油性の加飾用化粧料を用いて描いた模様を固形化粧料に転写し、水洗して水溶紙を除去する方法といえる。
そうすると、本件発明3における、模様形成用化粧料をノズルを介して飛ばし固形化粧料の表面に付着させて模様を立体的形状に形成、固化させる方法と、甲1発明2における、水溶紙上に油性の加飾用化粧料を用いて描いた模様を固形化粧料に転写し、水洗して水溶紙を除去する方法とは、模様付固形化粧料の製造において、用いる装置・機構の点でも操作・処理の点でも、それぞれ異なる手段を採用したものであると認められる。
したがって、相違点2は、実質的な相違点である。
よって、本件発明3は、甲1に記載された発明であるとはいえない。
b 進歩性について
(a)模様付固形化粧料の製造方法について、甲1には、本件発明3において採用されている、「曲面状の表面を有する固形化粧料の表面に倣って相対的にノズルを移動させるとともに、流動性を有し、油性成分を含有する模様形成用化粧料を粒状にして前記ノズルを介して飛ばすことによって、前記固形化粧料の表面に付着させて化粧料側模様を立体的形状に形成する模様形成ステップと、
前記模様形成ステップにて形成された前記化粧料側模様を固化させる模様固化ステップとを備える」という手段を適用することを示唆するような記載は見出せない。
(b)甲1発明2は、転写媒体の溶解性を向上させ、且つ形成させた油性の加飾化粧料の模様を壊すことなく転写媒体を除去する、油性化粧料への文字図柄などの模様を形成させる方法を提供することを課題とするものであって(甲1b【0006】)、当該課題を解決するために、「下記a)~c)の工程:
a)水溶紙上に、油性の加飾用化粧料を用いて模様を描く工程
b)水溶紙上に描いた模様を油性化粧料に転写する工程
c)水洗して水溶紙を除去する工程
を含む油性化粧品への模様の形成方法」、要するに、水溶紙上に油性の加飾用化粧料を用いて描いた模様を固形化粧料に転写し、水洗して水溶紙を除去する方法を採用したものである(甲1b【0007】)。
甲1発明2は、油性加飾化粧料による模様を油性化粧料に形成する方法として、転写媒体を用いることを前提とし、転写媒体上に油性の加飾化粧料の模様を描き、模様を油性化粧料に転写すること、転写媒体として水溶紙を用い、模様を転写後水洗して転写媒体を除去するという方法を採用することによって、水溶紙である転写媒体の溶解性を向上でき、且つ、形成させた油性の加飾化粧料の模様を壊すことなく水で転写媒体である水溶紙を除去でき、甲1発明2の上記課題を解決したものと認められる。
他方、甲2には、光活性化可能な材料を用いた直接投影により、化粧料組成物を含む又は形成する三次元物の積層方法について記載されている(甲2a)。
甲2に記載された三次元物の積層方法は、複雑な形状、性質及び外観を有し得る、化粧料組成物を含む三次元物を製造するための簡単で汎用性の高い方法を提供することを課題とし(甲2b)、当該課題を解決するために、化粧料材料が、基板上又は形成された三次元物上に、ノズルを使用して噴霧される加熱された液滴の形態で堆積、固化する方法を採用したものである(甲2c~甲2d)。
甲2に記載された上記方法は、甲1発明2とは異なり、転写媒体を用いることを前提としていない方法であり、甲2に記載された上記方法の課題も、甲1発明2の転写媒体を用いることを前提とする方法における課題(すなわち、転写媒体の溶解性を向上させ、且つ形成させた油性の加飾化粧料の模様を壊すことなく転写媒体を除去する、油性化粧料への文字図柄などの模様を形成させる方法を提供すること)とは異なる課題(すなわち、複雑な形状、性質及び外観を有し得る、化粧料組成物を含む三次元物を製造するための簡単で汎用性の高い方法を提供すること)である。
そうすると、甲1発明2の転写媒体を用いることを前提とする方法において、甲1発明2の上記課題を解決するための必須の手段に代えて、甲2に記載された上記手段を適用しようという動機付けがあるとはいえない。
また、甲1発明2の転写媒体を用いることを前提とする方法において、甲1発明2が課題の解決ために採用した方法を、敢えて他の模様の形成方法に代えようとすることを動機付けるような技術常識が本件特許の出願時に存在したものとも認められない。
したがって、甲1発明2において、上記相違点2に係る構成を採用することは、当業者といえども容易に想到し得たとはいえない。
(c)本件発明3の効果について
上記(a)及び(b)で述べたとおりであるから、本件発明3の効果については検討を要しないが、念のため、以下検討する。
本件発明3の効果は、本件明細書の段落【0016】の記載より理解されるように、模様ごとに異なる型を準備することなく、模様付固形化粧料を製造することができ、模様付固形化粧料の製造コストを低減させることができること、さらに、流動性を有する模様形成用化粧料を粒状にしてノズルを介して飛ばすことによって、固形化粧料の表面および容器の表面に付着させたときの衝撃を安定させることができるので、繊細な模様を安定して付すことができ、美しい模様を形成することができることであり、そのような効果は、甲1、甲2及び甲4の記載から当業者が予測し得たものとはいえない。
c 申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書の8頁12行~10頁下から3行及び12頁下から4行~13頁26行において、甲1には、「(h)曲面状の表面を有する固形化粧料の表面に油性成分を含有する加飾化粧料を転写するステップを有する立体形状の化粧料の製造方法。」(以下、便宜的に「申立人甲1発明2」ということとする。)が記載されていると認定した上で、本件発明3と「申立人甲1発明2」とを対比し、
「相違点1」として、本件発明3は、固形化粧料の表面に倣って相対的にノズルを移動させるとともに、流動性を有する模様形成用化粧料を粒状にして前記ノズルを介して飛ばすことにより固形化粧料の表面に付着させているのに対し、「申立人甲1発明2」は、加飾化粧料を転写により付着させる点で相違すること、
「相違点2」として、本件発明3は、固形化粧料表面に付着させた模様形成化粧料を固化させるステップを有するのに対し、「申立人甲1発明2」は、固化させるステップを有していない点で相違すること、並びに、
当該「相違点1」及び「相違点2」について、甲2には、複雑な形状、外観を有する堆積した固形化粧量の表面に相対的にノズルを移動させるとともに、流動性を有し、油性成分を含有する化粧料を粒状にしてノズルを介して飛ばすことによって、複雑な形状、外観を有する堆積した固形化粧料の表面に、上記油性成分を有する粒状物を付着させて堆積するステップを有し、前記付着させた堆積物を固化させるステップを有する化粧料の製造方法の発明(「甲2発明」)が記載されていること、
そして、「申立人甲1発明2」及び「甲2発明」は、共に化粧料の製造方法の発明であり、甲2発明は「複雑な形状、性質および外観を有する、化粧品組成物を含む三次元の対象を製造するための簡単で汎用性の高い方法を提供する」ことを目的としたものであるから、上記「相違点1」は、当業者が容易に想到し得ることであり、かつ、甲2発明は「前記付着させた堆積物を固化させるステップ」を有しているから、上記「相違点2」も、当業者が容易に想到し得ることであり、また、本件発明3の作用効果についても格別なものとは認められないこと、を主張している。
しかしながら、申立人が認定した「申立人甲1発明2」は、甲1の課題を解決するための手段から、必須の構成の幾つかを捨象したものであり、そのような発明の認定は適切でないから、甲1に記載された発明として認定することはできず、そのような「申立人甲1発明2」と本件発明3とを対比・判断することはできない。
仮に、「申立人甲1発明2」と本件発明3とを対比し、申立人の主張する「相違点1」及び「相違点2」があるとしても、申立人の主張する「相違点1」及び「相違点2」を併せたものは、実質的に、前記(ア)に示した「相違点2」と同様であり、その判断については、上記a及びbで述べたとおりである。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
(ウ)小括
したがって、本件発明3は、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明に基いて、又は、甲1に記載された発明、及び、甲2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件発明5について
(ア)本件発明5のうち、請求項3の記載を引用する発明について
本件発明5のうち、請求項3の記載を引用する発明については、本件発明3において、模様形成ステップはノズルを移動させることによって模様を形成することを、技術的に更に限定した発明であるから、上記イで説示したのと同様の理由により、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明に基いて、又は、甲1に記載された発明、及び、甲2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(イ)本件発明5のうち、請求項4の記載を引用する発明について
a 本件発明5のうち、請求項4の記載を引用する発明(以下「本件発明5-2」という。)は、請求項4の記載を併せて書き示すと、以下のとおりである。
「曲面状の表面を有する固形化粧料の表面および前記固形化粧料を収容する曲面状の表面を有する容器の表面に倣って相対的にノズルを移動させるとともに、流動性を有し、油性成分を含有する模様形成用化粧料を粒状にして前記ノズルを介して飛ばすことによって、前記固形化粧料の表面および前記固形化粧料の表面と隣接して配置された前記容器の表面に付着させて化粧料側模様および容器側模様を立体的形状に形成する模様形成ステップと、
前記模様形成ステップにて形成された前記化粧料側模様および前記容器側模様を固化させる模様固化ステップとを備え、
前記模様形成ステップは、一体的に組み合わせることによって特定の模様を形成するように前記化粧料側模様および前記容器側模様を形成することを特徴とする模様付固形化粧料の製造方法において、
前記模様形成ステップは、前記ノズルを移動させることによって、前記模様を形成することを特徴とする模様付固形化粧料の製造方法。」
b 本件発明5-2は、本件発明3において、模様を形成する対象として「固形化粧料を収容する曲面状の表面を有する容器」を追加して限定し、その追加に伴い、模様形成ステップにおいて、模様形成用化粧料を「固形化粧料の表面および前記固形化粧料の表面と隣接して配置された前記容器の表面」に付着させ、「一体的に組み合わせることによって特定の模様を形成するように前記化粧料側模様および前記容器側模様を形成する」こと、及び、ノズルを移動させることによって模様を形成することを、技術的に更に限定した発明といえる。
そうすると、本件発明5-2は、本件発明3を技術的にさらに限定した発明といえるから、上記イで説示したのと同様の理由により、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明に基いて、又は、甲1に記載された発明、及び、甲2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
エ 申立理由1についてのまとめ
以上のとおり、請求項3及び5に係る特許は、特許法第29条第1項又は同法同条第2項の規定に違反してされたものとはいえず、同法第113条第1項第2号に該当しないから、申立理由1よって取り消されるべきものではない。
(3)申立理由2について
ア 甲3に記載された発明
(ア)甲3には、「化粧製品の製造のための注型方法であって、一連の以下の工程:
a)30~150℃の間の流動化点、及び半球状プローブが設置されている質感分析器を使用して25℃で測定される0.5~80Nの間の平均硬さを有する、油を含有する少なくとも1種の組成物を、組成物の流動化点よりも大きい流動化温度に加熱することによって流動化させる工程と、
b)注型用ノズルに流動化組成物を導入する工程と、
c1)ノズルのオリフィスを介する前記流動化組成物の射出によって注型してかたまりを得るステップであり、かたまりが支持体上に堆積され、25℃に冷却した後、前記支持体上に前記組成物の第1の堆積物を形成する工程と、
c2)空間の3つの方向のうちの少なくとも1つにおいて前記ノズルを前記支持体に対して相対的に移動させる工程と、
d)前記注型を停止する工程と、次いで任意選択で
e)前記ノズルを前記支持体に対して相対的に転置する工程と、
f)30~150℃の間の流動化点、及び半球状プローブが設置されている質感分析器を使用して25℃で測定される0.5~80Nの間の平均硬さを有する、油を含有する同じ組成物又は別の組成物を使用して、工程a)~e)を少なくとも1回反復して、前記支持体に少なくとも1つの他の堆積物を形成する工程と
を含む、方法。」(甲3a 請求項1)について記載されている。
その具体例として、甲3の実施例1(甲3d)には、「多色相リップスティック」の製造方法として、
「組成物の調製
異なる色相:赤色、紫色及びピンクを有する3種の組成物を調製する。・・・
注型装置
注型装置は、平らな非化粧品支持体、3つのノズル、及び各ノズルのための送給手段を含む。・・・
・・・注型装置は、前に定義されている幾何学的なパターンを呈する3つの色相を含むリップスティック用スティックを製造するために、ノズルを送給するための手段、ノズルを転置するための手段、及び支持体を転置するための手段を制御するコンピューターに接続されている。
・・・
注型方法
この方法において、制御ソフトウェアによってプログラミングされている所定の順序に従って、組成物は連続的堆積物によって注型される。
・・・
一連の工程を終わらせると、連続的堆積物からなる産物を、装置の支持体から分離させる。
・・・
この順序に従うことによって、得られる製品は、図1に表されるとおりのスティック形態におけるリップスティックであり得る。」ことが記載され、甲3の図1(甲3e)には、実施例1で実施して製造されたリップスティックである、多色相化粧製品の概略図が記載されている。
そうすると、甲3には、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているといえる。
「異なる色相として赤色、紫色及びピンクを有する3種の組成物を調製し、
注型装置は、平らな非化粧品支持体、3つのノズル、及び各ノズルのための送給手段を含み、幾何学的なパターンを呈する3つの色相を含むリップスティック用スティックを製造するために、ノズルを送給するための手段、ノズルを転置するための手段、及び支持体を転置するための手段を制御するコンピューターに接続されており、
当該注型装置を用いて、制御ソフトウェアによってプログラミングされている所定の順序に従って、組成物は連続的堆積物によって注型され、
一連の工程を終わらせると、連続的堆積物からなる産物を、装置の支持体から分離させる、
ことによる、多色相リップスティックの製造方法。」
イ 本件発明3について
(ア)甲3発明との対比
a 甲3発明における「多色相リップスティック」は、固形化粧料といえるから、本件発明3における「固形化粧料」に相当する。
b 甲3発明における「多色相リップスティック」は、「幾何学的なパターンを呈する3つの色相を含むリップスティック用スティック」を製造するための注型装置を用いて製造されるものであり、「幾何学的なパターンを呈する3つの色相」は、「リップスティック」に「多色相」として付されている模様といえるから、「多色相リップスティック」は、上記aを踏まえると、模様付固形化粧料といえる。
したがって、甲3発明における「多色相リップスティックの製造方法」は、本件発明3における「模様付固形化粧料の製造方法」に相当する。
c 以上によれば、本件発明3と甲3発明とは、
「模様付固形化粧料の製造方法」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点4:
模様付固形化粧料の製造方法について、本件発明3は、「曲面状の表面を有する固形化粧料の表面に倣って相対的にノズルを移動させるとともに、流動性を有し、油性成分を含有する模様形成用化粧料を粒状にして前記ノズルを介して飛ばすことによって、前記固形化粧料の表面に付着させて化粧料側模様を立体的形状に形成する模様形成ステップと、
前記模様形成ステップにて形成された前記化粧料側模様を固化させる模様固化ステップ
とを備える」ことを特徴とする方法であるのに対し、甲3発明は、「異なる色相として赤色、紫色及びピンクを有する3種の組成物を調製し、
注型装置は、平らな非化粧品支持体、3つのノズル、及び各ノズルのための送給手段を含み、幾何学的なパターンを呈する3つの色相を含むリップスティック用スティックを製造するために、ノズルを送給するための手段、ノズルを転置するための手段、及び支持体を転置するための手段を制御するコンピューターに接続されており、
当該注型装置を用いて、制御ソフトウェアによってプログラミングされている所定の順序に従って、注型して組成物を連続的堆積物とし、
一連の工程を終わらせると、連続的堆積物からなる産物を、装置の支持体から分離させる」方法である点。
(イ)相違点についての判断
a 新規性について
模様付固形化粧料の製造方法について、本件発明3において採用されている、「曲面状の表面を有する固形化粧料の表面に倣って相対的にノズルを移動させるとともに、流動性を有し、油性成分を含有する模様形成用化粧料を粒状にして前記ノズルを介して飛ばすことによって、前記固形化粧料の表面に付着させて化粧料側模様を立体的形状に形成する模様形成ステップと、
前記模様形成ステップにて形成された前記化粧料側模様を固化させる模様固化ステップとを備える」方法は、要するに、模様形成用化粧料をノズルを介して飛ばし固形化粧料の表面に付着させて、模様のみを固形化粧料の表面に立体的形状に形成、固化させる方法といえる。
一方、模様付固形化粧料の製造方法について、甲3発明において採用されている、「異なる色相として赤色、紫色及びピンクを有する3種の組成物を調製し、
注型装置は、平らな非化粧品支持体、3つのノズル、及び各ノズルのための送給手段を含み、幾何学的なパターンを呈する3つの色相を含むリップスティック用スティックを製造するために、ノズルを送給するための手段、ノズルを転置するための手段、及び支持体を転置するための手段を制御するコンピューターに接続されており、
当該注型装置を用いて、制御ソフトウェアによってプログラミングされている所定の順序に従って、注型して組成物を連続的堆積物とし、
一連の工程を終わらせると、連続的堆積物からなる産物を、装置の支持体から分離させる」方法は、要するに、異なる色相の組成物を注型装置を用いて、制御ソフトウェアによってプログラミングされている所定の順序に従って、注型して多色相の組成物を連続的堆積物とする、連続的堆積物からなる産物(いわゆる3D造形物と理解される。)を製造する方法といえる。
そうすると、本件発明3における、模様形成用化粧料をノズルを介して飛ばし固形化粧料の表面に付着させて、模様のみを固形化粧料の表面に立体的形状に形成、固化させる方法と、甲3発明における、注型装置を用いて、制御ソフトウェアによってプログラミングされている所定の順序に従って、注型して多色相の組成物を連続的堆積物とする、連続的堆積物からなる産物(いわゆる3D造形物と理解される。)を製造する方法とは、模様付固形化粧料の製造において、用いる装置・機構の点でも操作・処理の点でも、それぞれ異なる手段を採用したものであると認められる。
したがって、相違点4は、実質的な相違点である。
よって、本件発明3は、甲3に記載された発明であるとはいえない。
b 進歩性について
(a)模様付固形化粧料の製造方法について、甲3には、本件発明3において採用されている、「曲面状の表面を有する固形化粧料の表面に倣って相対的にノズルを移動させるとともに、流動性を有し、油性成分を含有する模様形成用化粧料を粒状にして前記ノズルを介して飛ばすことによって、前記固形化粧料の表面に付着させて化粧料側模様を立体的形状に形成する模様形成ステップと、
前記模様形成ステップにて形成された前記化粧料側模様を固化させる模様固化ステップとを備える」、要するに、模様形成用化粧料をノズルを介して飛ばし固形化粧料の表面に付着させて、模様のみを固形化粧料の表面に立体的形状に形成、固化させる、という手段を適用することを示唆するような記載は見出せない。
(b)本件発明3は、曲面状の表面を有する固形化粧料の表面にバリエーションに富んだ美しい模様を付すことができる模様付固形化粧料の製造方法を提供しようという課題の下、固形化粧料の表面に模様を付す方法として、曲面状の表面を有する固形化粧料の表面に倣って相対的にノズルを移動させるとともに、流動性を有し、油性成分を含有する模様形成用化粧料を粒状にして前記ノズルを介して飛ばすことによって、前記固形化粧料の表面に付着させて化粧料側模様を立体的形状に形成する模様形成ステップと、前記模様形成ステップにて形成された前記化粧料側模様を固化させる模様固化ステップとを備えることにより、当該課題を解決したものである。
本件発明3は、固形化粧料の表面に対して、立体的形状の模様を付す方法である。
他方、甲3発明は、本件発明3の課題とは異なる課題である、製造するのにより簡便、より早い及びより高価でない、色相の、質感の又は物質の新規な配置を提供する多組成物化粧製品を製造する方法を提供することを課題とするものであり(甲3b【0018】)、当該課題を解決するために、甲3の請求項1に記載された「化粧製品の製造のための注型方法」(甲3a)の具体例である、
「異なる色相として赤色、紫色及びピンクを有する3種の組成物を調製し、
注型装置は、平らな非化粧品支持体、3つのノズル、及び各ノズルのための送給手段を含み、幾何学的なパターンを呈する3つの色相を含むリップスティック用スティックを製造するために、ノズルを送給するための手段、ノズルを転置するための手段、及び支持体を転置するための手段を制御するコンピューターに接続されており、
当該注型装置を用いて、制御ソフトウェアによってプログラミングされている所定の順序に従って、注型して多色相の組成物を連続的堆積物とし、
一連の工程を終わらせると、連続的堆積物からなる産物を、装置の支持体から分離させる」方法(甲3d)を採用したものである。
甲3発明は、多色相リップスティックの製造方法として、制御ソフトウェアによってプログラミングされている所定の順序に従って、注型して多色相の組成物を連続的堆積物とすることにより、連続的堆積物からなる産物(いわゆる3D造形物と理解される。)を製造する方法を採用することにより、甲3発明の課題である、製造するのにより簡便、より早い及びより高価でない、色相の、質感の又は物質の新規な配置を提供する多組成物化粧製品を製造する方法を提供することを解決したものである。
甲3発明は、注型装置のノズルを介して注型して異なる色相の組成物を連続的堆積物とすることにより、連続的堆積物からなる産物(いわゆる3D造形物と理解される。)を製造する方法であり、このノズルを介して注型して多色相の組成物を連続的堆積物とする方法は、多色相の組成物を粒状にしてノズルを介して飛ばすことによって、模様を立体的形状に形成する方法とは異なるものである。
そうすると、甲3発明において、甲3発明の上記課題を解決するために、採用されている、注型装置のノズルを介して注型して異なる色相の組成物を連続的堆積物とすることにより、連続的堆積物からなる産物(いわゆる3D造形物と理解される。)を製造する方法に代えて、本件発明3における方法のような、模様形成用化粧料を粒状にしてノズルを介して飛ばすことによって、固形化粧料の表面に付着させて、模様のみを固形化粧料の表面に立体的形状に形成する方法を採用しようという動機付けがあるとは認められない。
また、甲3発明における支持体について、支持体自体も注型による組成物堆積物となり得ること(甲3c)を考慮しても、当該判断に変わりはない。
したがって、甲3発明において、上記相違点4に係る構成を採用することは、当業者といえども容易に想到し得たとはいえない。
(c)本件発明3の効果について
上記(a)及び(b)で述べたとおりであるから、本件発明3の効果については検討を要しないが、念のため、以下検討する。
本件発明3の効果は、本件明細書の段落【0016】の記載より理解されるように、模様ごとに異なる型を準備することなく、模様付固形化粧料を製造することができ、模様付固形化粧料の製造コストを低減させることができること、さらに、流動性を有する模様形成用化粧料を粒状にしてノズルを介して飛ばすことによって、固形化粧料の表面および容器の表面に付着させたときの衝撃を安定させることができるので、繊細な模様を安定して付すことができ、美しい模様を形成することができることであり、そのような効果は、甲3の記載から当業者が予測し得たものとはいえない。
c 申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書の14頁15行~17頁下から2行において、
甲3には、「(h)曲面状の表面を有する化粧品支持体との表面に倣って相対的にノズルを移動させるとともに、流動性を有し、油性成分を含有する化粧品組成物を粒状にして前記ノズルを介して飛ばすことによって、前記化粧品支持体の表面に堆積させてレリーフ等を形成するステップと、(i)前記ステップに堆積されたレリーフ等を固化させるステップとを有する化粧料の製造方法。」(以下、便宜的に「申立人甲3発明2」ということとする。)が記載されていると認定した上で、本件発明3と「申立人甲3発明2」とを対比し、
・構成上の相違点はないこと、
・仮に、構成上又は表現上の微差があるとしても、当該微差は当業者が容易に想到し得るものであり、かつ、そのような微差により作用効果において何ら格別なものは認められないこと、
を主張している。
しかしながら、申立人が認定した「甲3発明2」は、甲3の課題を解決するための手段から、必須の構成の幾つかを捨象したものであり、そのような発明の認定は適切でないから、甲3に記載された発明として認定することはできず、申立人が認定した「甲3発明2」と本件発明3とを対比・判断することはできない。
そして、甲3に記載されている発明は、「製造するのにより簡便、より早い及びより高価でない、色相の、質感の又は物質の新規な配置を提供する多組成物化粧製品を製造する方法を提供すること」を課題とするものであり(甲3b【0018】)、注型装置のノズルを介して注型して異なる色相の組成物を連続的堆積物とすることにより、連続的堆積物からなる産物(いわゆる3D造形物と理解される。)とする方法を採用することにより、甲3発明の課題である、製造するのにより簡便、より早い及びより高価でない、色相の、質感の又は物質の新規な配置を提供する多組成物化粧製品を製造する方法を提供することを解決したものである(甲3b【0023】)。
甲3に記載されている発明における、ノズルを介して注型して多色相の組成物を連続的堆積物とする方法は、本件発明3における、多色相の組成物を粒状にしてノズルを介して飛ばすことによって、模様を立体的形状に形成する方法とは異なるものである。
したがって、本件発明3と甲3に記載されている発明とは、異なる方法であるから、構成上の相違点がないとはいえず、また、構成上又は表現上の微差ともいえない。そして、本件発明3の効果も、上記b(c)で述べたとおり、甲3の記載から当業者が予測し得たものとはいえない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
(ウ)小括
したがって、本件発明3は、甲3に記載された発明であるとはいえず、また、甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件発明5について
(ア)本件発明5のうち、請求項3の記載を引用する発明について
本件発明5のうち、請求項3の記載を引用する発明については、本件発明3において、模様形成ステップはノズルを移動させることによって模様を形成することを、技術的に更に限定した発明であるから、上記イで説示したのと同様の理由により、甲3に記載された発明であるとはいえず、また、甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(イ)本件発明5のうち、請求項4の記載を引用する発明について
上記(2)ウ(イ)bで説示したように、本件発明5-2は、本件発明3において、模様を形成する対象として「固形化粧料を収容する曲面状の表面を有する容器」を追加して限定し、その追加に伴い、模様形成ステップにおいて、模様形成用化粧料を「固形化粧料の表面および前記固形化粧料の表面と隣接して配置された前記容器の表面」に付着させ、「一体的に組み合わせることによって特定の模様を形成するように前記化粧料側模様および前記容器側模様を形成する」こと、及び、ノズルを移動させることによって模様を形成することを、技術的に更に限定した発明といえる。
そうすると、本件発明5-2は、本件発明3を技術的にさらに限定した発明といえるから、上記イで説示したのと同様の理由により、甲3に記載された発明であるとはいえず、また、甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
エ 申立理由2についてのまとめ
以上のとおり、請求項3及び5に係る特許は、特許法第29条第1項又は同法同条第2項の規定に違反してされたものとはいえず、同法第113条第1項第2号に該当しないから、申立理由2よって取り消されるべきものではない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項及び同法同条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第1項第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件特許の請求項3及び5に係る特許は、申立人による特許異議申立ての理由及び証拠によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項3及び5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2022-700433