特許異議申立
2025-700690
二重容器、及びその分別方法
- 審判番号
- 2025-700690
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-157390
- 登録番号
- 7610098
- 請求日
- 2025年07月04日
- 審決日
- 2026年04月10日
- 公報発行日
- 2026年06月26日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】キョーラク株式会社
- 【権利者代理人】SK弁理士法人
- 【権利者代理人】奥野 彰彦
- 【権利者代理人】伊藤 寛之
- 【異議申立人】▲桑▼原 裕二
- 審判長/審判官
- 審判長 神山 茂樹
- 審判官 岩谷 一臣
- 審判官 稲葉 大紀
- 分類
- P1651.113-ZC (B65D) / P1651.121-ZC (B65D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項、特許法第29条第1項第3号、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7610098号発明「二重容器、及びその分別方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7610098号の請求項1~5、7~10に係る特許を取り消す。
特許第7610098号の請求項6に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7610098号(以下「本件特許」という。)の請求項1~10に係る特許についての出願は、令和2年9月18日に出願され、令和6年12月24日に特許権の設定登録がされ、令和7年1月8日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和7年 7月 4日 :特許異議申立人▲桑▼原裕二(審決注:▲桑▼の字は、きへんにツツ木。以下「申立人」という。)による請求項1~10に係る特許に対する特許異議の申立て
令和7年 8月 5日 :申立人による特許異議申立書に対する手続補正書(方式)の提出
令和7年10月24日付け:取消理由通知書
令和7年12月25日 :特許権者による意見書の提出
令和8年 1月20日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和8年 3月23日 :特許権者による意見書の提出
第2 本件発明
本件特許の請求項1~10に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、特許掲載公報の特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
外殻と内袋とを有する容器本体を備える二重容器であって、
前記容器本体の口部は、前記外殻と前記内袋とが積層されることで構成され、
前記口部において、前記内袋には、前記外殻の上端よりも上方に、前記外殻から前記内袋を引き出すための引き出し部を備え、下記(1)又は(2)の構成をさらに備える、二重容器。
(1)前記口部に装着され且つ内容物を吐出するキャップを備え、前記キャップは、前記口部へ装着された際に前記引き出し部と係合する係合爪を備えており、使用後、前記キャップを持ち上げると、前記内袋が前記外殻から引き出される。
(2)前記内袋の上端部と前記外殻の上端との間に配置されるスペーサーを備え、前記引き出し部は、前記外殻の上端と前記内袋の上端部の間であって周方向の少なくとも一部に、上下方向の隙間を設けることで形成され、前記隙間は、前記スペーサーを取り外すことで形成される。
【請求項2】
請求項1に記載の二重容器であって、
前記構成(1)を備えるとともに、前記内袋の上端部には、前記外殻の上端を上方側から塞ぐフランジ部が形成され、
前記引き出し部は、前記フランジ部の少なくとも一部が前記外殻の上端の外縁よりも径方向外側に突出することで形成されている、二重容器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の二重容器であって、
前記構成(1)を備え、
前記キャップは、前記口部に形成された係合部と係合する被係合部が内周面に形成された筒状部を備え、
前記係合爪は、前記筒状部の内周面における前記被係合部よりも上方の位置に形成される、二重容器。
【請求項4】
請求項3に記載の二重容器であって、
前記口部に形成された係合部は雄ねじ部であって、前記キャップの前記被係合部は前記雄ねじ部に螺入される雌ねじ部であって、
前記係合爪は、前記キャップが前記螺入により前記口部に完全に装着されると前記引き出し部と係合して前記内袋が前記キャップに保持されるよう構成されている、二重容器。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれかに記載の二重容器であって、
前記構成(1)を備え、
前記引き出し部の硬度は、前記容器本体の収容部における前記内袋の硬度よりも高硬度となっている、二重容器。
【請求項6】
請求項1に記載の二重容器であって、
前記構成(2)を備え、
前記スペーサーは、周方向に亘って形成されるとともに、2つ以上に分割されることで取り外し可能に構成される、二重容器。
【請求項7】
請求項1~請求項6の何れかに記載の二重容器であって、前記容器本体は、前記外殻を形成する外殻プリフォームと前記内袋を形成する内袋プリフォームを二重に組み合わせて二軸延伸ブロー成形することで形成される、二重容器。
【請求項8】
請求項7に記載の二重容器であって、
前記外殻プリフォームは射出成形されたプリフォームであり、前記内袋プリフォームは、ブロー成形されたチューブ状成形体である、二重容器。
【請求項9】
請求項1~請求項8の何れかに記載の二重容器であって、
内容物の減少に伴って前記内袋が収縮するよう構成される、二重容器。
【請求項10】
請求項1に記載の二重容器の分別方法であって、
前記引き出し部に他の部材を係合させて当該引き出し部を前記外殻の上端から引き上げるか、又は、前記引き出し部を把持して当該引き出し部を前記外殻の上端から引き上げて、前記内袋と前記外殻を分離する工程を備える、分別方法。」
第3 取消理由通知(決定の予告)について
1 取消理由の概要
当審において特許権者に通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
取消理由1(新規性)
本件特許の請求項1、5、9、10に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
取消理由2(進歩性)
本件特許の請求項1~5、7~10に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第4号証に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
[引用文献等一覧]
甲第1号証:特許第5542604号公報
甲第4号証:特開2019-10741号公報
(以下、申立人が提出した甲第○号証を「甲○」という。)
2 当審における判断
当審合議体は以下のとおり、本件発明1、5、9、10に係る特許は上記取消理由1によって、本件発明1~5、7~10に係る特許は上記取消理由2によって、それぞれ取り消されるべきものであると判断する。
(1)引用文献に記載された事項、発明
ア 甲1について
(ア)甲1の記載
甲1には以下の記載がある。なお、下線は当審において付したものであり、「・・・」は省略を示す。以下同様。
「【請求項1】
内容物が収容される容器本体と、
該容器本体の口部に装着され、内容物を注出する注出筒、及び、該注出筒を開閉自在に覆うオーバーキャップを有する注出キャップと、を備えた注出容器であって、
前記注出筒内には、破断可能な弱化部を介してこの注出筒に接続されるとともに、該注出筒内の軸方向の連通を遮断する閉塞体と、該閉塞体から上方に向けて突出する被係合部と、が設けられ、
前記オーバーキャップは、
前記注出筒に対して下降移動可能な天壁部と、
該天壁部から下方に向けて突出され、前記天壁部が下降移動することにより前記被係合部に係合して前記閉塞体を支持可能とされ、前記オーバーキャップを開けることによって前記注出筒内から前記閉塞体を離脱させる係合部と、を備え、
前記天壁部は、弾性連結部を介して前記オーバーキャップの周壁部に接続され、該周壁部に対しても下降移動可能であることを特徴とする注出容器。
・・・
【請求項3】
請求項1又は2に記載の注出容器であって、
前記容器本体は、
前記注出キャップに上端部が固着され、内容物が収容される内容器と、
該内容器が取り外し可能に内装される外容器と、を備えたことを特徴とする注出容器。」
「【0013】
この場合、内容器は、外容器に取り外し可能に内装されており、内容器の上端部は注出キャップに固着されている。従って、内容物を全て注出した後に、注出キャップを外容器から取り外すことにより、この注出キャップとともに内容器も外容器から取り外されるようになっている。このように、内容物が付着した注出キャップ及び内容器と、外容器とを簡便に分別できるので、内容物の種類によらず、外容器を容易にリサイクルできる。」
「【0018】
図示の例では、容器本体1は、注出キャップ4に上端部5aが固着され、内容物が収容されるとともに内圧の減少に伴いしぼみ変形する可撓性に富む内容器5と、該内容器5が取り外し可能に内装されるとともに弾性変形可能な外容器6と、を備えた二重容器となっている。
【0019】
図2に示すように、外容器6の上端部は、上側に位置する外上筒部6aと、下側に位置し外上筒部6aよりも大径に形成された外下筒部6bと、を備えており、これら外上筒部6a及び外下筒部6bが容器本体1の前記口部1aとなっている。
外上筒部6aには、径方向外方へ向けて突出するとともに周方向に沿って延びる環状突起7が形成されている。また、外下筒部6bの外周面には、雄ねじ部8が形成されており、該雄ねじ部8の下側には、径方向外方へ向けて突出するとともに周方向に沿って延びる環状のフランジ部9が形成されている。
【0020】
内容器5の上端部5aは、上側に位置する内上筒部5bと、下側に位置し内上筒部5bよりも小径に形成された内下筒部5cと、を備えている。また、上端部5aには、内上筒部5bから下方に向けて突出するとともに内下筒部5cから径方向外方に向けて突出する支持リブ11が、周方向に間隔をあけて複数形成されており、これら支持リブ11の下端は、外上筒部6aの上端開口縁に当接されている。また、内下筒部5cの外周面には、支持リブ11の下側に位置するとともに径方向外方に向けて突出するガイド突起12が、周方向に間隔をあけて複数形成されており、これらガイド突起12は、外上筒部6aに径方向内方から当接している。また、内上筒部5bの外周面における上側部分は、該上側部分よりも下側に位置する下側部分よりも大径に形成された固着フランジ13となっている。」
「【0023】
装着部材20は、口部1aの雄ねじ部8に螺合する雌ねじ部22を備えた装着筒23と、該装着筒23の下端部に周方向に間隔をあけて複数配設された薄肉のブリッジ24によってこの装着筒23に連結されているとともに、口部1aに対する装着筒23の容器軸O方向の移動を規制する規制筒25と、を有している。
【0024】
装着筒23は、上側部分23aが下側部分23bよりも小径に形成されている。上側部分23aの上端部には、径方向内方に向けて突出するとともに周方向に沿って延びる環状突起26が形成されている。また、上側部分23aの下端部28は、下側部分23b内において下方に向けて突出する筒状をなしており、この下端部28の上側には、径方向内方に向けて突出するとともに容器軸O方向に延びるリブ27が、周方向に間隔をあけて複数形成されている。これらリブ27の容器軸O方向の中間部分には、径方向内方に突出する突起27aがそれぞれ形成されている。また、下側部分23bの内周面には、前記雌ねじ部22が形成されている。
【0025】
図3に示すように、キャップ本体14が容器本体1の口部1aに装着された状態で、内容器5の上端部5aの固着フランジ13は、リブ27における突起27aの上側部分に径方向内方から当接しているとともに、突起27aに上方から当接している。また、環状突起7は、下端部28に径方向内方から当接しているとともに、リブ27に下方から接近状態で対向している。」
「【0035】
図3に示すように、弁座部材16がキャップ本体14内に配設された状態で、該弁座部材16の周壁の下端部は、内容器5の上端部5aの内上筒部5b内に嵌合されている。また、弁座部材16のリブ38は、装着筒23に径方向内方から当接しているとともに、その下端部が内上筒部5bの上端開口縁に上方から当接している。
このように、内容器5の上端部5aの内上筒部5bが、径方向内方から弁座部材16の周壁に当接され、上方からリブ38に当接され、径方向外方から装着筒23のリブ27に当接され、下方から突起27aに当接されることにより、上端部5aは注出キャップ4に固着されている。
また、嵌合筒40の環状突起42は、注出部材21の環状突起31に上方から当接している。」
「【0054】
また、内容器5は、外容器6に取り外し可能に内装されており、内容器5の上端部5aは注出キャップ4に固着されている。従って、内容物を全て注出した後に、図4に示すように、注出キャップ4を外容器6から取り外すことにより、この注出キャップ4とともに内容器5も外容器6から取り外されるようになっている。詳しくは、注出キャップ4を外容器6から取り外す際、容器本体1の口部1aに対して装着筒23を周方向の緩み方向に回転させると、該装着筒23は口部1aに対して上方に向けて移動していく。一方、規制筒25は、規制ツメ部25aがフランジ部9に下方から当接して上方への移動が規制されることから、ブリッジ24が破断される。これにより、注出キャップ4が外容器6から取り外し可能となる。
【0055】
このように、装着筒23を緩み方向に回転させる簡単な操作によって、内容物が付着した注出キャップ4及び内容器5と、外容器6とを簡便に分別できるので、内容物の種類によらず、外容器6を容易にリサイクルできる。」
「【図2】
[図:0001436198000001.jpg]
」
「【図3】
[図:0001436198000002.jpg]
」
「【図4】
[図:0001436198000003.jpg]
」
(イ)甲1の記載から認定できる事項
上記(ア)から以下の事項が認定できる。
a 【0019】、【図2】からみて、外容器6の上端部と、内容器5の上端部は、二重構造を有する容器本体口部を構成していること。
b 【0025】、【図3】からみて、内容器5の上端部には、外容器6の上端部より上方において、外容器6の上端部を上方から塞ぐ固着フランジ13が形成されていること。
c 【0054】、【図4】からみて、内容物を全て注出した後に、注出キャップ4を外容器6から取り外した際には、内容器5が外容器6から引き出されること。
d 【0025】、【0035】、【0054】、【図4】からみて、内容器5の上端部5aの固着フランジ13と係合している突起27aにより、固着フランジ13を外容器6の上端から引き上げるものであること。
(ウ)甲1に記載された発明
a 上記(ア)、(イ)を総合すると、甲1には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。なお、括弧内は特に参照した箇所である。
「内容物が収容される容器本体1と、
該容器本体1の口部1aに装着され、内容物を注出する注出筒2、及び、該注出筒を開閉自在に覆うオーバーキャップ3を有する注出キャップ4と、を備えた注出容器10であって、
前記注出筒2内には、破断可能な弱化部34を介してこの注出筒2に接続されるとともに、該注出筒2内の軸方向の連通を遮断する閉塞体35と、該閉塞体から上方に向けて突出する被係合部36と、が設けられた注出容器10であって、(請求項1)
前記容器本体1は、
前記注出キャップ4に上端部が固着され、内容物が収容されるとともに内圧の減少に伴いしぼみ変形する可撓性に富む内容器5と、
該内容器5が取り外し可能に内装されるとともに弾性変形可能な外容器6と、を備え、(請求項3、【0018】)
外容器6の上端部と、内容器5の上端部は、二重構造を有する容器本体口部を構成しており、(上記(イ)a)
内容器5の上端部には、外容器6の上端部より上方において、外容器6の上端部を上方から塞ぐ固着フランジ13が形成されており、(上記(イ)b)
注出キャップ4には、径方向内方に突出する突起27aが形成されており、(【0024】)
注出キャップ4が容器本体口部に装着された状態において、内容器5の上端部5aの内上筒部5bの固着フランジ13が、下方から突起27aに当接されることにより、上端部5aは注出キャップ4に固着されており、(【0035】、【図3】)
内容器5は、外容器6に取り外し可能に内装されており、内容物を全て注出した後に、注出キャップ4を外容器6から取り外すことにより、内容器5が外容器6から引き出されることにより、注出キャップ4とともに内容器5も外容器6から取り外されるようになっている、(【0054】、【図4】、上記(イ)c)
注出容器10。」
b また、上記(ア)の特に【0025】、【0054】、【0055】、【図4】の記載、及び上記(イ)dからみて、甲1には、上記aで認定した甲1発明について、以下の発明(以下「甲1方法発明」という。)も記載されている。
「甲1発明に係る注出容器10の分別方法であって、内容物を全て注出した後に、注出キャップ4を外容器6から取り外すことにより、内容器5の上端部5aの固着フランジ13と係合している突起27aにより固着フランジ13を外容器6の上端から引き上げ、内容器5を外容器6から取り外す工程を備える分別方法。」
イ 甲4について
(ア)甲4の記載
甲4には以下の記載がある。
「【0001】
本発明は、外層と内層を組み合わせて二軸延伸ブローを行う二重容器の成形方法に関するものであり、特に、外層に貫通孔を形成する技術に関する。」
「【0013】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、積層剥離容器のような二重容器を簡単に作製することができ、所定の形状の大気導入孔を容器の成形に悪影響を与えることなく形成することが可能な二重容器の成形方法を提供することを目的とする。」
「【0019】
本実施形態の二重容器の成形方法では、プリフォームの内側にチューブ状成形体を重ねた状態で二軸延伸ブローを行うことで、二重容器が作製される。本実施形態の成形方法により二重容器を作製するには、先ず、プラスチック材料製のプリフォーム1を準備する。プリフォーム1の成形方法としては、例えば射出成形機を用いた射出成形や、押し出し成形等を挙げることができる。」
「【0025】
前記チューブ状成形体2は、ブロー成形により予め成形しておくが、装填時の摩擦軽減のため、その外面は、若干粗度が高い方がよい。・・・」
(イ)甲4に記載された事項
上記(ア)を参照すると、甲4には以下の事項(以下「甲4記載事項」という。)が記載されている。
「プリフォームの内側にチューブ状成形体を重ねた状態で二軸延伸ブローを行うことで積層剥離容器に用いられる二重容器を作成する方法において、プリフォームを射出成形により成形するとともに、チューブ状成形体をブロー成形により成形しておくこと。」
(2)本件発明1について(理由1、2)
ア 対比
本件発明1と甲1発明を、その機能、構造又は技術的意義を考慮し対比する。
甲1発明の「内容器5」、「外容器6」、「容器本体1」、「注出容器10」はそれぞれ、本件発明1の「内袋」、「外殻」、「容器本体」、「二重容器」に相当する。
甲1発明の「外容器6の上端部と、内容器5の上端部は、二重構造を有する容器本体口部を構成して」いる構成は、本件発明1の「前記容器本体の口部は、前記外殻と前記内袋とが積層されることで構成され」ている構成に相当する。
甲1発明は「内容器5の上端部5aの内上筒部5bの固着フランジ13が、下方から突起27aに当接されることにより、上端部5aは注出キャップ4に固着されており、」「内容物を全て注出した後に、注出キャップ4を外容器6から取り外すことにより、内容器5が外容器6から引き出される」から、甲1発明の「固着フランジ13」、「突起27a」はそれぞれ本件発明1の「引き出し部」、「係合爪」に相当する。
そうすると、甲1発明の「内容器5の上端部には、外容器6の上端部より上方において、外容器6の上端部を上方から塞ぐ固着フランジ13が形成されており、
注出キャップ4には、径方向内方に突出する突起27aが形成されており、
注出キャップ4が容器本体口部に装着された状態において、内容器5の上端部5aの内上筒部5bの固着フランジ13が、下方から突起27aに当接されることにより、上端部5aは注出キャップ4に固着されており、
内容器5は、外容器6に取り外し可能に内装されており、内容物を全て注出した後に、注出キャップ4を外容器6から取り外すことにより、内容器5が外容器6から引き出されることにより、注出キャップ4とともに内容器5も外容器6から取り外されるようになっている」構成は、
本件発明1の「前記口部において、前記内袋には、前記外殻の上端よりも上方に、前記外殻から前記内袋を引き出すための引き出し部を備え、下記(1)又は(2)の構成をさらに備える、」「(1)前記口部に装着され且つ内容物を吐出するキャップを備え、前記キャップは、前記口部へ装着された際に前記引き出し部と係合する係合爪を備えており、使用後、前記キャップを持ち上げると、前記内袋が前記外殻から引き出される」構成に相当する。
イ 判断
以上を総合すると、本件発明1と甲1発明に相違点はない。
仮に相違点があったとしても、当業者が容易になし得た程度のものである。
ウ 小括
したがって、本件発明1は、甲1発明であるとともに、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)本件発明2について(理由2)
甲1発明の固着フランジ13は、「内容器5の上端部には、外容器6の上端部より上方において、外容器6の上端部を上方から塞ぐ」ものであるから、本件発明2の「フランジ部」にも相当する。
そして、甲1発明において、固着フランジ13は、外容器6の上端の外縁よりも径方向外側に突出するか不明であるが、そのような構成とすることは、具体化の際に当業者が適宜なし得たことである。
したがって、本件発明2は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)本件発明3、4について(理由2)
甲1の【0023】には、口部1aが雄ねじ部8(本件発明3の「係合部」、本件発明4の「雄ねじ部」に相当。)を有し、装着筒23が雌ねじ部22(本件発明3の「被係合部」、本件発明4の「雌ねじ部」に相当。)を有することが記載されており、【図2】を併せみると、当該ねじ部8、9よりも上方位置に突起27aが形成されていることが記載されている。
そして、甲1発明は、「注出キャップ4が容器本体口部に装着された状態において、内容器5の上端部5aの内上筒部5bが、下方から突起27aに当接されることにより、上端部5aは注出キャップ4に固着されて」いるものである。
そうすると、甲1発明において甲1の上記記載を参酌して、本件発明3、4とすることは、当業者が容易になし得たことである。
したがって、本件発明3、4は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)本件発明5、9について(理由1、2)
甲1発明の内容器5は、「内容物が収容されるとともに内圧の減少に伴いしぼみ変形する可撓性に富む」ものであるから、固着フランジ13の硬度が内容器5の硬度よりも高いことは自明である。
したがって、本件発明5、9は、甲1発明であるとともに、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(6)本件発明7、8について(理由2)
ア 判断
甲1発明における容器本体1の成形方法としてどのようなものを採用するかは、当業者が適宜選択し得ることである。
そして、甲1発明と甲4記載事項は、内側容器がしぼみ変形する二重容器に関するものである点で共通するから、甲1発明における内容器5と外容器6から構成される容器本体1の成形方法として、甲4記載事項を適用して、本件発明7、8とすることは、当業者が容易になし得たことである。
イ 特許権者の主張について
(ア)主張の概要
特許権者は、本件発明7、8について、令和8年3月23日提出の意見書において以下のとおり主張する。
a 主張1
「審判官殿は「可撓性が高い」ことを根拠に、あたかも内袋が何ら抵抗なく変形し、容易に引き抜けるかのように認定されています。・・・甲第4号証の段落0026・・・の樹脂を用いてブロー成形された内側容器は、・・・多少の剛性(コシ)を有しています。また、二軸延伸ブロー成形により成形された内袋は、・・・内容物の減少に伴い収縮したとしても、口部の径より小さくなるわけではありません。したがって、多少なりとも剛性を有する内袋であれば、「どのような形状でも全く抵抗なく引き抜ける」ということは物理的にあり得ず、形状によっては引き抜く際の抵抗は確実に増大します。」
b 主張2
「甲第1号証の二重容器は、「内容器を外容器から引き出して分別する」ことを主目的としており、・・・外容器と内容器との間に「初めから明確な隙間」を設ける構成を採用しています(図1,2等)。これに対し、甲第4号証の二軸延伸ブロー成形を適用すると、成形直後は内袋と外殻が密着した状態となり、・・・「初めから隙間を有する甲第1号証の構成」と比較すれば、格段に引き抜きにくくなります。「引き出しやすさ」を最重要課題とする甲第1号証の発明に対し、あえてその機能を低下させ、引き出しにくくする成形方法(甲第4号証)を適用することは、・・・阻害要因が存在します。」
c 主張3
「甲第1号証(図1)及び甲第4号証(図3)のいずれにおいても、容器底部は、・・・複雑な凹凸や鋭角な隅部が存在します。甲第4号証に記載の二軸延伸ブロー成形では、・・・高圧で押し付けられた内袋は、外殻底部の鋭角な隅部や微細な凹凸に対して食い込むことになり・・・うまく引き抜けない原因となり得る・・・この点、甲第1号証の図1を参照すると、外容器と内容器の底部形状を意図的に異ならせ、・・・上記のような噛み込みによる分離阻害を避けるための、重要かつ意図的な設計事項であると解され・・・「あえて隙間を設けている甲第1号証の二重容器」に対し、「隙間を作らず、逆に噛み込みを生じさせる甲第4号証の成形方法」を適用することは、甲第1号証の目的(分別廃棄)を阻害するものであり、・・・甲第1号証には隙間を有する構成のみしか開示されていない以上、本願出願当時においては、分別のためには隙間を設ける構成が必須であると認識されていたはずであり、・・・阻害要因が存在します。」
d 主張4
「本件発明7は、「二軸延伸ブロー成形により成形された密着性の高い二重容器の内袋は、剛性や噛み込みにより引き抜くことが困難である」という当業者の技術常識を覆したものです。すなわち、本件発明は、二軸延伸ブロー成形による「組み立て工程が不要で大量生産が可能」という生産上の大きな利点を享受しつつ、同時に、「使用後の内袋の引き抜き分離」をも可能にするという、二律背反の課題を解決した点に画期的な意義があります。このような、・・・有利な効果は、甲第1号証と甲第4号証の単なる組み合わせからは予測し得ないものであ」る
e 主張5
「本件発明8については、上記本件発明7の効果に加え、さらに顕著な作用効果を奏するものです。・・・二軸延伸ブロー成形に用いられる一般的な「射出成形プリフォーム」は、・・・樹脂を金型の隅々まで流動させるという要請から、ゲートの近く(すなわち底部)ほど厚肉にする必要があり・・・、延伸時に内袋が外殻の底部等に押し込まれた際に、そのような厚肉部の存在によって引き抜きの際の局所的な抵抗が比較的生じやすくなります。・・・これに対し、本件発明8では、内袋プリフォームとして「ブロー成形されたチューブ状成形体」を用いています。ブロー成形によりチューブ状に成形する場合、・・・底部を意図的に厚肉にする必要性がありません。したがって、・・・全体が比較的薄肉で均一、かつ柔軟性に富むという構造的特性を有しています。この特性により、二重ブロー成形時に外殻底部へ強く押し付けられたとしても、・・・使用後の引き抜き時には、局所的な抵抗の発生を回避して、より一層スムーズかつ軽い力で引き抜くことが可能となります。・・・甲第4号証には、チューブ状成形体を用いる記載があるものの、・・・「チューブ状成形体を用いることで底部のロックを防ぎ、引き抜きが容易になる」という技術的知見は一切記載されておらず、示唆もありません。」
(イ)主張についての判断
a 主張1(引き抜き抵抗)について
取消理由通知(決定の予告)において、申立人が主張するような内側容器が全く抵抗なく引き抜けるといった事項は説示しておらず、当該主張1は、そもそも取消理由通知(決定の予告)を正しく理解していない。その上で、取消理由通知(決定の予告)で説示したとおり、甲1発明と甲4記載事項は、本件発明と同様、内容物の減少に伴い内側容器がしぼみ変形するものであり、内側容器は可撓性が高いものであるから、仮に特許権者が主張するような、内側容器が口部から抜けやすい形状にならない状況が生じて引き抜く際の抵抗が多少増大するとしても、口部から引き抜くことを阻害するまでのものではない。よって、上記主張1は採用できない。
b 主張2、3(阻害要因)について
甲1の【0004】に記載の「前記従来の注出容器では、開封時に、閉塞体が容器本体の内部に落下するおそれがあった・・・本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、構成を複雑にすることなく、開封と同時に閉塞体を取り除くことができ、かつ、未開封であるか否かを外部から容易に視認できる注出容器を提供すること」が甲1が解決しようとする課題である。そして、甲1の【図1】~【図3】等において内容器5と外容器6の間の隙間や底部形状が異なることが看取できるとしても、当該構造が、外容器6から内容器5を引き抜くことを容易にするためものであるとの記載も示唆もなく、また、そのように理解すべき事情もない。加えて、甲1には、【図1】~【図3】を除き、隙間や底部形状についての記載すらそもそもない。よって、上記主張2、3は、甲1の記載事項を正しく理解した上での主張ではないから採用できない。
d 主張4、5(本件発明7、8の有利な効果)について
特許権者が主張する有利な効果は、甲1発明に甲4記載事項を適用すれば当然奏される効果に過ぎないし、そもそも、そのような有利な効果については本件明細書(特に【0029】)には記載も示唆もなく、上記主張4、5は本件明細書の記載に基づくものではない。
よって、主張4、5も採用できない。
ウ 小括
したがって、本件発明7、8は、甲1発明及び甲4記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(7)本件発明10について(理由1、2)
ア 対比
本件発明10と甲1方法発明を対比する。
本件発明10が引用する請求項1に記載の二重容器と甲1方法発明が引用する甲1発明に係る注出容器10との対比については、上記(2)アのとおりである。
そして、甲1方法発明の「突起27a」は本件発明10の「他の部材」に相当するから、甲1方法発明の「内容物を全て注出した後に、注出キャップ4を外容器6から取り外すことにより、内容器5の上端部5aの固着フランジ13と係合している突起27aにより固着フランジ13を外容器6の上端から引き上げ、内容器5を外容器6から取り外す工程」は、本件発明10の「前記引き出し部に他の部材を係合させて当該引き出し部を前記外殻の上端から引き上げる」ことで「前記内袋と前記外殻を分離する工程」に相当する。
イ 判断
以上を総合すると、本件発明10と甲1方法発明に相違点はない。
仮に相違点があったとしても、当業者が容易になし得た程度のものである。
ウ 小括
したがって、本件発明10は、甲1方法発明であるとともに、甲1方法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
3 まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1、5、9、10は甲1に記載された発明であり、本件発明1~5、9、10は甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明7、8は甲1に記載された発明及び甲4記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立書の申立理由の概要
申立人は、特許異議申立書において、以下の理由を主張する。
申立理由2(進歩性)
本件特許の請求項6に係る発明は、甲2に記載された発明及び甲3に記載された事項に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
[引用文献等一覧]
甲1:特許第5542604号公報
甲2:特開2018-134813号公報
甲3:特開2017-196822号公報
甲4:特開2019-10741号公報
2 当審における判断
当審合議体は以下のとおり、本件発明6に係る特許は上記申立理由2によって、取り消されるべきものではないと判断する。
(1)引用文献に記載された事項、発明
ア 甲2について
甲2の【0022】~【0023】、【0027】、【図3】を参照すると、甲2には以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。
「外筒プリフォーム1の成形により得られた外容器31と、外容器31内に収容されている内袋33とからなる、二重構造容器30であって、(【0027】)
内袋33において、外容器31から突出している部分の外面には、キャップ固定用突起として機能する螺条9が設けられており、この螺条9の下側には、把持部材として使用される周状突部11が設けられている、(【0022】~【0023】)
二重構造容器30。」
イ 甲3について
甲3の【0047】~【0048】、【図5】、【図6A】を参照すると、甲3には以下の事項(以下「甲3記載事項」という。)が記載されている。
「多重ボトル1において、外プリフォーム21の外口部4と内プリフォーム22の内口部11とを、口部把持ブロック33のブロック40、41により左右から挟持するときに、外口部4の上端縁と鍔部13との間に間隔保持部材としてのスペーサ45を配設した状態でブロー成形することで製造した、多重ボトル。」
(2)対比
本件発明6と甲2発明を対比する。
甲2発明の「外容器31」、「内袋33」、「外容器31」と「内袋33」をあわせたもの、「二重構造容器30」はそれぞれ、本件発明6の「外殻」、「内袋」、「容器本体」、「二重容器」に相当する。
甲2発明の「把持部材として使用される周状突部11」は、本件発明6の「前記外殻から前記内袋を引き出すための引き出し部」と、「外周突部」の限りにおいて一致する。
そうすると、本件発明6と甲2発明は、少なくとも以下の点で相違する。
[相違点]
本件発明6では、「前記内袋の上端部と前記外殻の上端との間に配置されるスペーサーを備え、前記引き出し部は、前記外殻の上端と前記内袋の上端部の間であって周方向の少なくとも一部に、上下方向の隙間を設けることで形成され、前記隙間は、前記スペーサーを取り外すことで形成され」、「前記スペーサーは、周方向に亘って形成されるとともに、2つ以上に分割されることで取り外し可能に構成される」のに対し、甲2発明では、周状突部11が内袋33を引き出すためのものとは特定されておらず、スペーサーに関する構成も有していない点。
(3)判断
甲2発明と甲3記載事項は、二重ブロー成形により製造される、内側容器がしぼみ変形する二重容器に関するものである点で共通するから、甲2発明に甲3記載事項を適用する動機付けが一定程度存在するといえる。
しかしながら、甲3の【0047】、図6Bには、スペーサ45に代えて、プリフォームの口部を把持するブロック40、41と一体に形成された突出部46を設ける変形例が記載されていることに鑑みると、甲3記載事項において、スペーサ46は二重ブロー成形後に多重ボトル1から取り外されることは明らかである。
そうすると、甲2発明に甲3記載事項を適用したとしても、上記相違点に係る、スペーサーを備えた二重容器とする構成には至らない。また、かかる構成は、申立人が提出したその他の証拠にも記載も示唆もされていない。
したがって、申立人が主張する本件発明6に対する上記申立理由2には理由がない。
第5 むすび
以上のとおり、請求項1、5、9、10に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるとともに、請求項1~5、7~10に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものであり、
また、請求項6に係る特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。さらに、他に請求項6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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