特許異議申立
2025-700709
振込代行システム、振込代行方法および振込代行プログラム
- 審判番号
- 2025-700709
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2024-036299
- 登録番号
- 7618082
- 請求日
- 2025年07月09日
- 審決日
- 2025年10月09日
- 公報発行日
- 2025年11月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社りそなホールディングス
- 【権利者代理人】宮嶋 学
- 【権利者代理人】関根 毅
- 【権利者代理人】吉田 昌司
- 【権利者代理人】河崎 亮
- 【異議申立人】金澤 毅
- 審判長/審判官
- 審判長 佐藤 智康
- 審判官 古川 哲也
- 審判官 岡北 有平
- 分類
- P1651.121-Y (G06Q)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7618082号発明「振込代行システム、振込代行方法および振込代行プログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7618082号の請求項1-11に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7618082号の請求項1~11に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、令和6年3月8日に出願され、令和7年1月9日にその特許権の設定登録がされ、同年1月20日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、同年7月9日に特許異議申立人 金澤 毅(以下、「異議申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~11に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明11」という。)は、それぞれ、特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定される次のとおりのものである
「【請求項1】
ソフトウェアプラットフォームを提供するSaaS事業者のサーバから請求情報を取得する情報取得部と、
支払日または前記支払日に基づく日が到来すると、仕向銀行における支払者の口座から、前記仕向銀行における振込代行事業者もしくは前記振込代行事業者の委託先の口座に支払い金額の口座振替を行うように前記仕向銀行に依頼する口座振替依頼部と、
前記仕向銀行から前記口座振替が完了した旨の通知を受信すると、中継銀行に対して、前記中継銀行における前記振込代行事業者もしくは前記振込代行事業者の委託先の口座から被仕向銀行における受取者の口座に前記支払い金額の振込処理を行うように依頼する振込依頼部と、
を備える振込代行システム。
【請求項2】
前記口座振替の実行により、前記支払者の口座から前記支払い金額が即時に引き落とされる、請求項1に記載の振込代行システム。
【請求項3】
振込代行を依頼する旨の支払い指図および請求情報を受信すると、前記支払者の引落口座および前記請求情報を含む支払い指図情報を支払い指図データベースに登録する登録部を備える、請求項1に記載の振込代行システム。
【請求項4】
前記登録部は、前記仕向銀行から前記口座振替の完了通知を受信すると、前記支払い指図データベースの口振ステータスを未処理から処理済みに更新する、請求項3に記載の振込代行システム。
【請求項5】
前記登録部は、前記中継銀行から前記振込処理の完了通知を受信すると、前記支払い指図データベースの振込ステータスを未処理から処理済みに更新する、請求項3に記載の振込代行システム。
【請求項6】
前記支払者の要求に応じて、前記支払い指図データベースに登録された振込ステータスを取得する情報取得部と、
前記振込ステータスを前記支払者の端末に表示させる表示制御部を備える、請求項5に記載の振込代行システム。
【請求項7】
前記仕向銀行は、前記支払者により指定された銀行である、請求項1に記載の振込代行システム。
【請求項8】
前記仕向銀行の銀行システムは、前記口座振替を行った後、所定の振込タイミングで、前記振込代行事業者もしくは前記振込代行事業者の委託先の口座に振り替えられた前記支払い金額を前記中継銀行における前記振込代行事業者もしくは前記振込代行事業者の委託先の口座に振り込む振込処理を行う、請求項1に記載の振込代行システム。
【請求項9】
前記仕向銀行の銀行システムは、支払日が同じ複数の請求に係る支払い金額を一括で前記中継銀行の前記口座に振り込む、請求項8に記載の振込代行システム。
【請求項10】
情報取得部が、ソフトウェアプラットフォームを提供するSaaS事業者のサーバから請求情報を取得するステップと、
口座振替依頼部が、支払日または前記支払日に基づく日が到来すると、仕向銀行における支払者の口座から、前記仕向銀行における振込代行事業者もしくは前記振込代行事業者の委託先の口座に支払い金額の口座振替を行うように前記仕向銀行に依頼するステップと、
振込依頼部が、前記仕向銀行から前記口座振替が完了した旨の通知を受信すると、中継銀行に対して、前記中継銀行における前記振込代行事業者もしくは前記振込代行事業者の委託先の口座から被仕向銀行における受取者の口座に前記支払い金額の振込処理を行うように依頼するステップと、
を備える振込代行方法。
【請求項11】
請求項10に記載の振込代行方法をコンピュータに実行させる振込代行プログラム。」
第3 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和7年7月9日に異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
1 異議申立人の提出した証拠
異議申立人は、次の甲第1号証~甲第3号証(以下、それぞれ、「甲1」~「甲3」という。)を証拠として提出している。
甲第1号証(甲1):特開2019-106095号公報
甲第2号証(甲2):特開2012-22417号公報
甲第3号証(甲3):特許第6925828号公報
2 申立理由
異議申立人の主張する特許異議の申立理由の概要は以下のとおりである。
理由(進歩性)
本件発明1~11は、甲1~甲3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
第4 異議申立人の提出した証拠の記載
1 甲1
(1)甲1の記載
甲1には、以下の記載がある。(なお、下線は合議体にて付与した。以下同じ。)
「【0007】
このように、従来の技術による決済手段では、購入者及び販売者の双方に対して必ずしも利便性が高いサービスを提供しているとはいえない状況にある。
【0008】
そこで、本発明の様々な実施形態により、利便性を向上させた決済を実行する処理装置を提供する。」
「【0019】
1.情報処理システムの概要
図1は、本発明の一実施形態に係る情報処理システムの構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、一実施形態に係る情報処理システム1は、インターネット等を含む通信網10に接続され、各購入者により操作可能な複数の端末装置20-1、20-2、・・・、20-N(以下「端末装置20」と総称することがある。)と、通信10に接続され、各販売者により運用される複数のサーバ装置30-1、30-2、・・・、30-N(以下「サーバ装置30」と総称することがある。)と、通信網10に接続され、決済代行企業により運用される1又はそれ以上のサーバ装置(処理装置)40と、通信網10に接続され、各金融機関により運用されるサーバ装置50-1、50-2、・・・、50-N(以下「サーバ装置50」と総称することがある。)と、を主に含む。
端末装置20、サーバ装置30、サーバ装置40及びサーバ装置50は、通信網10を介して、相互に通信することが可能なものである。」
「【0029】
2-1.決済代行企業により運用されるサーバ装置(処理装置)40の構成
図2に示すように、サーバ装置40は、CPU(Central Processing Unit)41と、メインメモリ42と、ユーザインターフェイス(I/F)43と、通信インターフェイス(I/F)44と、外部メモリ45と、ディスクドライブ46と、を含み得るものであり、これらの各構成要素がバス47を介して互いに電気的に接続されている。
【0030】
CPU41は、外部メモリ45からオペレーティングシステム、及び、様々な機能を実現するためのプログラム等をメインメモリ42にロードし、ロードしたプログラムに含まれる命令を実行する。メインメモリ42は、CPU41が実行するプログラムを格納するために用いられ、例えばDRAMによって構成される。CPU41に代えて又はCPU41とともに、MPU(Micro Processing Unit)を用いることも可能である。
【0031】
CPU41は、端末装置20、サーバ装置30及びサーバ装置50のうちの少なくとも1つの装置から受信した情報に基づいて、様々な処理及び演算を実行する。」
「【0044】
3-1.決済代行企業により運用されるサーバ装置(処理装置)40の機能
図4は、図1に示した情報処理システム1に用いられるサーバ装置40が有する機能の一例を示すブロック図である。図4に示すように、サーバ装置40は、主に、通信部100と、制御部110と、記憶部120と、を含む。
【0045】
通信部(送受信部)100は、通信網10に接続された装置、例えば、購入者により操作される端末装置20、販売者により運用されるサーバ装置30及び金融機関により運用されるサーバ装置50等と制御部110との間で通信を行うための通信インターフェイスである。通信部100は、図2に例示した要素のうち主に通信I/F44及びCPU41により実現され得るものである。
【0046】
制御部110は、販売者と購入者との間における代金の決済を代行するための様々な機能(後述)を実行するものである。制御部110は、図2に例示した要素のうち主にCPU41、メインメモリ42及び外部メモリ45により実現され得るものである。
【0047】
記憶部120は、販売者と購入者との間における代金の決済を代行するための様々な機能(後述)を実行するのに必要な情報を記憶するものである。記憶部120は、図2に例示した要素のうち主にCPU41、メインメモリ42及び外部メモリ45により実現され得るものである。
【0048】
制御部110により実行される機能の具体例は、以下のとおりである。
(1)購入者管理部111
購入者管理部111は、購入者の情報(購入者情報)を管理するための機能を備える。購入者管理部111は、主に購入者の初回利用時の登録や購入者情報の更新等を行うことができる。なお、購入者情報は、記憶部120において購入者情報121として記憶され得る。
【0049】
(2)販売者管理部112
販売者管理部112は、販売者の情報(販売者情報)を管理するための機能を備える。販売者管理部112は、販売者情報や販売者との契約条件等の登録及び更新等を行うことができる。なお、販売者情報は、記憶部120において販売者情報122として記憶され得る。
【0050】
(3)金融機関管理部113
金融機関管理部113は、購入者、販売者及び決済代行企業の各々が保有する金融機関の口座情報(金融機関口座情報)等を管理する機能を備える。なお、金融機関口座情報は、記憶部120において金融機関口座情報123として記憶され得る。金融機関管理部113は、主に、金融機関の口座の登録、API(Application Programming Interface)の利用に必要なクレデンシャル情報(第1許可情報及び第2許可情報)の登録、並びに、金融機関が定める期間及び頻度におけるクレデンシャル情報の更新等を行うことができる。なお、クレデンシャル情報は、記憶部120において金融機関情報126として記憶され得る。
【0051】
(4)決済代金出金部114
決済代金出金部114は、購入者が保有する口座から決済代行企業が保有する口座に対する送金を管理する機能を備える。決済代金出金部114は、主に、サーバ装置30からの要求信号の受付、送金実施結果の確認及び通知、購入者が保有する口座から決済代行企業Cが保有する口座に(同行間又は同一支店間振込による)送金する旨を指示する指示信号(第1指示信号)の送信、並びに、送金実施結果の取引情報への記録等を行うことができる。なお、取引情報は、記憶部120において取引情報124として記憶され得る。
【0052】
(5)決済代金入金部115
決済代金入金部115は、決済代行企業から販売者に対する送金を管理する機能を備える。決済代金入金部115は、主に、決済代行企業が保有する口座から販売者が保有する口座に(同行間又は同一支店間振込による)送金する旨を指示する指示信号(第2指示信号)の送信、及び、送金実施結果の取引情報への記録等を行うことができる。なお、取引情報は、記憶部120において取引情報124として記憶され得る。また、決済代金入金部115は、決済代行企業から販売者への送金を、予め販売者と合意した頻度に従って実施することも可能である。
【0053】
さらに、決済代金入金部115は、決済代行企業から販売者に送金を行う際に、販売者と同一の金融機関に決済代行企業が保有する口座において十分な残高がない場合には、後述するように、他の金融機関において決済代行企業が保有する口座から販売者が保有する口座に送金(他行間振替)を行うことができる。
【0054】
(6)残高管理部116
残高管理部116は、決済代行企業が保有する複数の金融機関の口座の残高を管理する機能を備える。残高管理部116は、主に、後述するように各金融機関の口座間の残高調整にかかる資金移動、及び、各金融機関の口座と定期的に残高情報の突合等を行う。
【0055】
3-2.金融機関により運用されるサーバ装置50の機能
図5は、図1に示した情報処理システム1に用いられるサーバ装置50が有する機能の一例を示すブロック図である。図5に示すように、サーバ装置50は、主に、通信部200と、制御部210と、記憶部220と、を含む。
【0056】
通信部(送受信部)200は、通信網10に接続された装置、例えば、購入者により操作される端末装置20、販売者により運用されるサーバ装置30及び決済代行企業により運用されるサーバ装置40等と制御部210との間で通信を行うための通信インターフェイスである。通信部200は、図3に例示した要素のうち主に通信I/F54及びCPU51により実現され得るものである。
【0057】
制御部210は、当該サーバ装置50がサーバ装置50Aとして機能する場合における第1送金を実現するための様々な機能(後述)、及び/又は、当該サーバ装置50がサーバ装置50Bとして機能する場合における第2送金を実現するための様々な機能(後述)を実行するものである。制御部210は、図3に例示した要素のうち主にCPU51、メインメモリ52及び外部メモリ55により実現され得るものである。
【0058】
記憶部220は、第1送金及び/又は第2送金を実現するための様々な機能(後述)を実行するのに必要な情報を記憶するものである。制御部210は、図3に例示した要素のうち主にCPU51、メインメモリ52及び外部メモリ55により実現され得るものである。
【0059】
制御部210は、主に、管理部211と、第1送金部212と、第2送金部213と、を含む。
管理部211は、購入者、販売者及び決済代行企業の各々が保有する金融機関の口座情報(金融機関口座情報)等を管理する機能を備える。なお、金融機関口座情報は、記憶部120に記憶され得る。また、管理部211は、金融機関の口座の登録、APIの利用に必要なクレデンシャル情報(第1許可情報及び第2許可情報)の登録等を行うことができる。なお、クレデンシャル情報もまた記憶部120に記憶され得る。
【0060】
第1送金部212は、通信部200が決済代行企業により運用されるサーバ装置40から第1指示信号を受信することを契機として、当該金融機関において購入者が保有する口座から当該金融機関において決済代行企業が保有する口座に代金を送金する(第1送金を実行する)。
【0061】
第2送金部213は、通信部200が決済代行企業により運用されるサーバ装置40から第2指示信号を受信することを契機として、当該金融機関(すなわちこのサーバ装置40を運用する金融機関)において決済代行企業が保有する口座から当該金融機関又は他の金融機関において販売者が保有する口座に代金を送金する(第2送金を実行する)。
【0062】
4.情報処理システム1の動作
4-1.基本的な動作
次に、上述した構成を有する情報処理システム1の動作について説明する。なお、一実施形態では、購入者は、決済代行企業により運用されるサーバ装置40に対して決済代金の支払いに用いるための金融機関の口座を複数設定し、決済の都度、決済代金の支払いに実際に用いる金融機関の口座を選択できるようにしてもよい。また、一実施形態では、販売者は、サーバ装置40に対して決済代金の被振込先となる金融機関の口座を複数設定し、これら複数の金融機関の口座のうち最も優先度の高い金融機関の口座を通常用いる口座としておき、最も優先度の高い金融機関の口座がその金融機関のシステム障害等に利用できないような場合には、次に優先度の高い金融機関の口座を被振込先の口座として利用することができる。
【0063】
図6は、図1に示した情報処理システム1において決済代行企業により運用されるサーバ装置40が金融機関により運用されるサーバ装置50からAPIの利用に関するアクセストークンを取得するために行われる動作の一例を示すフロー図である。図7は、図1に示した情報処理システム1の動作の一例を示すフロー図である。図8A~図8Lは、図1に示した情報処理システム1における購入者の端末装置20において表示される画面の遷移例を示す模式図である。
以下、図6及び図7に示された動作と図8A~図8Lに示された画面遷移とを対応付けて、情報処理システム1の動作を説明する。
【0064】
まず図8Aを参照すると、購入者の端末装置20の画面には、ECショップのために用意された所定のアプリケーション又は通常のウェブブラウザを介して、販売者のサーバ装置30から受信したECショップのページが表示されている。購入者は、ECショップで商品(ここでは、「ミネラルウォーター500ml」及び「トイレットペーパー 12ロール」)を選択して、「確認」というボタン300をタップする。これにより、端末装置20の画面には、図8Bに示すように、決済方法を選択するためのページが表示される。
【0065】
購入者は、決済方法として、本件出願により提案される新規な決済方法(以下「新決済方法」という。)を選択すべく、「新決済方法」というボタン301をタップする。これにより、図8Cに示すように、端末装置20の画面には、新決済方法による代金の決済のために利用する金融機関(振込元金融機関)として既に登録された振込元金融機関が表示される(なお、振込元金融機関が1つも登録されていない場合には、図8Cに示したページを飛ばして、後述する図8Dに示すページが表示される。)。ここでは、一例として、登録済みの振込元金融機関として、「××銀行」が表示されている。さらに、端末装置20の画面には、図8Cに示すように、振込元金融機関の追加を促す「振込元銀行の追加」というボタン302も表示される。
【0066】
図8Cに示した画面において、購入者が登録済みの振込元金融機関を選択した場合には、後述する図8Hに示すページが表示される。
【0067】
一方、購入者が新たな振込元金融機関を登録すべくボタン302をタップした場合には、図8Dに示すページが表示される。購入者は、このページに振込元金融機関の候補として表示された金融機関のうち、ここでは「△△銀行」を選択するものとする。これにより、図6に示したステップ(以下「ST」という。)400に示すように、端末装置20が販売者のサーバ装置30に対して、振込元金融機関の登録又は追加を要求する旨の信号を送信する。この信号を受信したサーバ装置30は、ST401において、決済代行企業のサーバ装置40に対して、振込元金融機関の登録又は追加に対する連携を要求する旨の信号を送信する。」
「【0074】
購入者が図8Hに例示されたページにおける「注文を確定する」というボタン304をタップすることにより注文内容を確定すると、端末装置20は、図7に示すように、ST500において、新決済方法を選択した(新決済方法を要求する)旨の信号を販売者のサーバ装置30に送信する。
【0075】
引き続き図7を参照すると、ST501において、新決済方法の要求を受けた販売者のサーバ装置30は、決済代行企業のサーバ装置40に対して決済代行要求を行う。具体的には、購入者と販売者との間における代金の決済に関して、販売者により運用されるサーバ装置30は、この決済を代行する旨を要求する要求信号を、決済代行企業のサーバ装置40に送信する。この要求信号は、購入者を識別する情報、購入者の金融機関口座(購入者により振込元金融機関として選択された金融機関において購入者が保有する口座)を識別する情報、当該決済を識別する情報(注文番号等)、決済代金を示す情報、販売者を識別する情報等を含むものとすることができる。
【0076】
サーバ装置30から要求信号を受信したサーバ装置40は、ST502において、要求信号により特定される金融機関に開設されている購入者の口座から上記金融機関に開設されている決済代行企業の口座に対して、要求信号により特定される代金を送金する旨を指示する第1指示信号(送金指示)を、上記金融機関により運用されるサーバ装置50Aに送信することができる。一実施形態では、サーバ装置40は、上記金融機関により提供されるAPIを実行することにより、第1指示信号をサーバ装置50Aに送信することができる。サーバ装置40によるこのAPIの利用は、サーバ装置40が上述したST409においてサーバ装置50Aから取得したクレデンシャル情報(アクセストークン/第1許可情報)を、第1指示信号又は別の信号を介してサーバ装置50Aに送信し、サーバ装置50Aがこのクレデンシャル情報を適切なものであることを確認することにより、可能となるようにしてもよい。ここで、サーバ装置40は、同行間振込又は同一支店間振込を実現するために、第1指示信号又は別の信号を介して、送金先には決済代行企業が要求信号により特定される金融機関に保有する口座を指定することができる。
【0077】
第1指示信号を受信したサーバ装置50Aは、2要素認証(複数経路認証)を実行すべく、ST503において、購入者の端末装置20に対して例えばプッシュ通知(電子メール等による通知であってもよい)を行う。これにより、再度図8を参照すると、端末装置20の画面には、図8Iに示すように、振込元金融機関として選択された金融機関のために用意された所定のアプリケーションからのプッシュ通知が表示される(なお、端末装置20がプッシュ通知を受信することに代えて電子メール等を受信するようにしてもよい)。購入者がプッシュ通知をタップすると、図8Jに示すように、端末装置20により上記所定のアプリケーションが起動される。購入者は、上記所定のアプリケーションを用いて振込金額(決済の代金)を確認して許可すると、端末装置20の画面には、図8Kに示すように、上記所定のアプリケーションにより2要素認証(複数経路認証)が要求される。すなわち、ECショップのために用意された所定のアプリケーションを用いた購入者による認証(図8Hに示した認証)に加えて、振込元金融機関として選択された金融機関のために用意された所定のアプリケーションを用いた購入者による認証(図8Kに示した認証)が実行され得る(なお、図8Kに例示された第2の認証を省くことも可能である)。図8Kに示した認証が正常に実行されると、端末装置20は、図8Lに示すように、ECショップのために用意された所定のアプリケーションに復帰して、注文が完了する。
【0078】
以上のような2要素認証が完了した後、再度図7を参照すると、ST504において、第1指示信号を受信したサーバ装置50Aは、この第1指示信号に従って、購入者の口座から決済代行企業の口座に代金を送金する(第1送金を実行する)。なお、別の実施形態では、サーバ装置50Aは、第1指示信号を受信した後、2要素認証を実行することなく、第1送金を実行してもよい。
【0079】
決済代行企業により運用されるサーバ装置40は、APIを利用して、第1指示信号(送金指示)に対する応答をサーバ装置50Aから受信して、第1指示信号(送金指示)の結果を確認し(ST505)、そのように確認した結果(決済結果)を販売者のサーバ装置30に通知する(ST506)。
【0080】
決済結果の通知を受けた販売者のサーバ装置30は、決済結果を購入者に通知する(ST507)。通知の方法としては、購入者のサイトに表示すること及びメール送信等の方法を用いることが可能である。販売者は、通知された決済結果に基づいて、決済が成功した旨を認識した場合には、購入者に対して商品の発送又はサービスの提供を実行する(ST508)。
【0081】
決済代行企業のサーバ装置40は、予め販売者と合意した頻度で、このサーバ装置40により選択された金融機関のサーバ装置50Bに対して、この選択された金融機関により提供されるAPIの実行、ファイル伝送、又は、全銀TCP/IP手順等の方法により、この選択された金融機関に開設されている決済代行企業の口座から販売者により予め設定された金融機関に開設されている販売者の口座に対して代金を送金する旨を指示する第2指示信号を送信することができる(ST509)。なお、決済代行企業のサーバ装置40が、第2送金を実行するサーバ装置50Bにより提供されるAPIの利用に関するクレデンシャル情報(アクセストークン/第2許可情報)を取得する方法は、例えば、第1送金を実行するサーバ装置50Aにより提供されるAPIの利用に関するクレデンシャル情報(アクセストークン/第1許可情報)を取得する方法(図6を参照して説明した方法)と同様のものとすることができる。
【0082】
一実施形態では、同行間振込又は同一支店間振込を実現するために、サーバ装置40は、送金元には、販売者により予め定められた金融機関において決済代行企業が保有する口座を指定することができる(すなわち、サーバ装置50Bとして、販売者により予め設定された金融機関と同一の金融機関により運用されるサーバ装置50Bを選択することができる)。別の実施形態では、後に図10A~図10Cを参照して説明するように、送金元となる金融機関の口座の残高(又は残高及び貸越極度額の合計)が送金に必要な額に満たない場合等には、サーバ装置40は、一時的に他の金融機関の口座からの送金も行うことも可能である(すなわち、サーバ装置50Bとして、販売者により予め設定された金融機関とは異なる金融機関により運用されるサーバ装置50Bを選択することも可能である)。
【0083】
また、さらに別の実施形態では、サーバ装置40は、上述したように、販売者により予め設定された複数の金融機関の口座のうち、通常用いる被振込先として設定された(最も優先度の高い)金融機関の口座が(この金融機関のシステムの障害等により)利用できない場合には、次に優先度の高い金融機関の口座を新たな被振込先として用いることが可能である。
【0084】
サーバ装置40から第2指示信号を受信したサーバ装置50B(すなわち、サーバ装置40により選択された金融機関のサーバ装置50B)は、ST510において、決済代行企業の口座から販売者の口座に代金を送金する(第2送金を実行する)。なお、上述したように、決済代行企業の口座が開設されている金融機関と販売者の口座が開設されている金融機関とは、同一である場合もあれば異なる場合もある。
【0085】
ST511において、販売者のサーバ装置30は、決済代行企業のサーバ装置40により提供される機能を用いて、図9に例示するような購入者との間で実施された取引の明細に対する照会及び出力を実行することができる。」
「【0092】
4-3.サーバ装置40における残高管理部116の動作
次に、決済代行企業が保有する複数の金融機関の口座の残高を調整する残高管理部116の具体的な動作の一例について、図11A及び図11Bを参照して説明する。図11A及び図11Bは、図1に示した情報処理システム1に用いられるサーバ装置40における決済代金入金部115の動作を説明する模式図である。
【0093】
残高管理部116により実行される残高調整処理は、第2送金の実行時に他行間振込を極力発生させないようにすべく、複数の金融機関において決済代行企業が保有する口座の残高を適切に管理する処理である。この残高調整処理は、定期的に実行されるものとすることができる。
【0094】
サーバ装置40の記憶部120には、残高情報125の一部として、図11Aに示すように、複数の金融機関において決済代行企業が保有する口座について送金可能額等が記憶されている。
【0095】
残高管理部116は、残高情報125を用いて、下限値を下回る送金可能額を有する口座及び上限値を上回る送金可能額を有する口座を認識する。図11Aに示した例では、残高管理部116は、下限値を下回る送金可能額を有する口座として、金融機関D3及びD5の口座を認識し、上限値を上回る送金可能額を有する口座として、金融機関D2、D4及びDnの口座を認識する。
【0096】
残高管理部116は、一実施形態では、出金用の口座として、振込回数が最小となるように、送金可能額が上限値を上回る額が最も多い口座を優先的に選択することができる。例えば、図11Aに示した例では、残高管理部116は、送金可能額が上限値を上回る額が最も多い金融機関D2の口座を、出金用の口座として優先的に選択し、送金可能額が下限値を下回る額がその次に最も多い金融機関D3を、入金用の口座として選択することができる。さらに、残高管理部116は、送金可能額が上限値を上回る額がその次に多い金融機関D4の口座を、出金用の口座として優先的に選択し、送金可能額が下回る額が最も多い金融機関D5を、入金用の口座として選択することができる。これにより、残高管理部116は、金融機関D2において決済代行企業が保有する口座から金融機関D3において決済代行企業が保有する口座に対して不足額(3,000,000円)を振り込み、金融機関D4において決済代行企業が保有する口座から金融機関D5において決済代行企業が保有する口座に対して不足額(200,000円)を振り込む。」
「【図1】
[図:0001429043000001.jpg]
」
「【図2】
[図:0001429043000002.jpg]
」
「【図4】
[図:0001429043000003.jpg]
」
「【図7】
[図:0001429043000004.jpg]
」
「【図9】
[図:0001429043000005.jpg]
」
「【図10A】
[図:0001429043000006.jpg]
」
「【図11A】
[図:0001429043000007.jpg]
」
(2)甲1に記載されているといえる事項
ア 段落【0019】の記載事項を踏まえると、甲1には、「各購入者により操作可能な端末装置20、各販売者により運用されるサーバ装置30、決済代行企業により運用されるサーバ装置40、各金融機関により運用されるサーバ装置50A,50Bを含む情報処理システム1におけるサーバ装置40」との事項が記載されているといえる。
イ 段落【0044】、【0048】、【0051】~【0052】の記載事項を踏まえると、甲1には、「サーバ装置40は、通信部100と、制御部110と、記憶部120を含み、制御部110により、決済代金出金部114、決済代金入金部115の機能が実行される」との事項が記載されているといえる。
ウ 段落【0051】、【0076】の記載事項を踏まえると、前記【0076】において、サーバ装置30から要求信号を受信するのはサーバ装置40が備える決済代金出金部114であることは明らかであるから、甲1には、「決済代金出金部114は、サーバ装置30からの要求信号の受付を行い、サーバ装置30から要求信号を受信すると、要求信号により特定される金融機関に開設されている購入者の口座から上記金融機関に開設されている決済代行企業の口座に対して、要求信号により特定される代金を送金する旨を指示する第1指示信号(送金指示)を、上記金融機関により運用されるサーバ装置50Aに送信する」との事項が記載されているといえる。
エ 段落【0075】の記載事項を踏まえると、甲1には、「要求信号は、決済代金を示す情報を含む」との事項が記載されているといえる。
オ 段落【0052】、【0081】の記載事項を踏まえると、前記【0081】に記載されているST509の処理を実行する主体は、サーバ装置40が備える決済代金入金部115であることは明らかであるから、甲1には、「決済代金入金部115は、予め販売者と合意した頻度で、このサーバ装置40により選択された金融機関のサーバ装置50Bに対して、この選択された金融機関に開設されている決済代行企業の口座から販売者により予め設定された金融機関に開設されている販売者の口座に対して代金を送金する旨を指示する第2指示信号を送信する」との事項が記載されているといえる。
カ 段落【0082】の記載事項を踏まえると、甲1には、「サーバ装置40は、サーバ装置50Bとして、販売者により予め設定された金融機関と同一の金融機関により運用されるサーバ装置50Bを選択することも、販売者により予め設定された金融機関とは異なる金融機関により運用されるサーバ装置50Bを選択することもできる」との事項が記載されているといえる。
(3)甲1に記載されている発明
上記(1)及び(2)によれば、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
(甲1発明)
「各購入者により操作可能な端末装置20、各販売者により運用されるサーバ装置30、決済代行企業により運用されるサーバ装置40、各金融機関により運用されるサーバ装置50A,50Bを含む情報処理システム1におけるサーバ装置40であって(上記ア)、
サーバ装置40は、通信部100と、制御部110と、記憶部120を含み、制御部110により、決済代金出金部114、決済代金入金部115の機能が実行され(上記イ)、
決済代金出金部114は、サーバ装置30から要求信号を受信すると、要求信号により特定される金融機関に開設されている購入者の口座から上記金融機関に開設されている決済代行企業の口座に対して、要求信号により特定される代金を送金する旨を指示する第1指示信号(送金指示)を、上記金融機関により運用されるサーバ装置50Aに送信し(上記ウ)、
要求信号は、決済代金を示す情報を含み(上記エ)、
決済代金入金部115は、予め販売者と合意した頻度で、このサーバ装置40により選択された金融機関のサーバ装置50Bに対して、この選択された金融機関に開設されている決済代行企業の口座から販売者により予め設定された金融機関に開設されている販売者の口座に対して代金を送金する旨を指示する第2指示信号を送信し(上記オ)、
サーバ装置40は、サーバ装置50Bとして、販売者により予め設定された金融機関と同一の金融機関により運用されるサーバ装置50Bを選択することも、販売者により予め設定された金融機関とは異なる金融機関により運用されるサーバ装置50Bを選択することもできる(上記カ)、
決済代行企業により運用されるサーバ装置40」
2 甲2
甲2には、以下の記載がある。
「【背景技術】
【0002】
従来における紙葉による請求書を用いた請求書発行側と請求書受領側との決済の流れは、例えば以下のように行われている。
【0003】
すなわち、従来、請求書発行側では、紙葉による請求書を作成し、切手代、封筒代、用紙代、印刷代のコストをかけて、かつ、担当者押印、上長押印、社印押印、請求書3つ折り、封入、ラベリングの手間をかけた後、郵便により相手方に郵送している。
【0004】
また、請求書受領側(支払側)では、請求書の到着を待たねばならず、結局事前にFAXをもらったり、メールで請求金額を知らせてもらったりと煩雑な作業を行っている。更に、請求書が届いた後においては、使用済み封筒のような廃棄物も出て廃棄作業も付加される。
【0005】
更に、請求書発行側においては、請求書発行後、請求書受領側(支払側)からの金融機関への入金に伴って、請求金額と入金金額との照合、消込作業が不可欠になり、多数の請求書を発行する事業者の経理部においては極めて煩雑な作業が必要であることが現状である。
【0006】
近年では、インターネットを利用した請求書発行側と請求書受領側との間の電子決済装置として、特許文献1に開示されているように、債権者端末から提供された取引データに基づいて請求書データを作成し、請求先である債務者端末での閲覧に供して、請求明細項目毎に支払の選択を受け付け、選択された請求明細項目に基づいて、固有のキー情報が付加された支払データが作成され、キー情報は支払データの基となった請求明細項目に対応する取引データに関係付けて記録し、債権者口座への振込処理が行なわれると、その振込処理を指示した支払データのキー情報が取得され、取得されたキー情報と、取引データに関係付けて記録されたキー情報との照合により、請求明細項目毎の消し込み処理を行ない、これにより、債務者側に専用のシステムを設けることを不要にしつつ、債権者が個々の取引に対応した請求項目毎の消し込み処理を行なえるように構成した電子決済装置が提案されている。
【0007】
しかし、この特許文献1を含め、SaaS(サース、Software as a Service)型の電子請求書アプリケーション、電子請求書受領アプリケーションを利用し、サービス提供事業者の介在の基に請求書発行側と請求書受領側との間の請求書関連の請求業務、更には、決済消込業務を低料金で、かつ、簡略、迅速に実現し得るような電子請求処理サービスシステムが存在しないのが実情である。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする問題点は、サービス提供事業者の介在の基に請求書発行側の請求業務を低料金で、かつ、簡略、迅速に実現し得るような電子請求処理サービスシステムが存在しない点である。」
「【実施例】
【0020】
以下、本発明の実施例1に係る電子請求書サービスシステムについて図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
本実施例1に係る電子請求書サービスシステム1は、図1に示すように、SaaS(サース、Software as a Service)型のカレンダー機能をも有する電子請求書アプリケーションをインターネットのような通信網2を経て利用可能に保持するサービス提供事業者のコンピュータシステム11と、前記通信網2を経て前記電子請求書アプリケーションのサービスを受けるとともに、他の事業者に対する有償の役務の提供を行う複数(例えばN個:Nは正の整数)のユーザー事業者であるユーザー企業のコンピュータ装置31と、前記通信網2に接続されるとともに、前記ユーザー企業からの役務の提供によりユーザー企業に対する支払い義務を有する複数(例えばN個:Nは正の整数)の顧客事業者である顧客企業のコンピュータ装置51と、を有している。
また、前記通信網2に接続される金融機関サーバー101は、サービス提供事業者、ユーザー企業、顧客企業との各個別契約に基づいたネットバンキング機能を有している。」
「【0043】
前記サービス提供事業者のコンピュータシステム11においては、ユーザー企業側から送信された請求データ、外部データを基に電子請求書アプリケーションの処理により請求書の体裁を具備する請求書データ(図7にプリントアウトした態様の請求書の一例を示す)及びその明細データが作成され、前記DB16に記憶される。
【0044】
次に、前記サービス提供事業者のコンピュータシステム11においては、電子請求書アプリケーションの処理により顧客企業向けに、例えば「ユーザー企業から御社宛の請求書が発行されています」との内容からなる請求通知メールが作成され、サービス提供事業者のコンピュータシステム11のURL(Uniform Resource Locator)付でメールサーバー14から通信網2を経て顧客企業担当端末53に送信される。
そして、顧客企業担当端末53において、担当者が顧客企業担当端末53を操作し前記URLをクリックすると、前記コンピュータシステム11のWebサーバー13が提供する顧客企業専用ページへログインできる画面が表示され、顧客企業担当端末53において、固有のID、パスワードでログインすることで、前記請求書データ及び明細データが通信網2を経て顧客企業担当端末53に送信され、この顧客企業担当端末53の画面に表示される。また、前記プリンタ54によりプリントアウトして紙葉として請求書とすることもできる。
この場合、顧客企業に対しては、顧客企業担当端末53にて前記請求書データの利用に伴い、その枚数に応じた従量課金制(顧客企業担当端末53によって当該請求書データを閲覧若しくはダウンロードした時点で例えば1通70円)の態様で課金される。」
「【図1】
[図:0001429043000008.jpg]
」
したがって、甲2には、以下の技術事項(以下、「甲2記載の技術事項」という。)が記載されているといえる。
(甲2記載の技術事項)
「SaaS(サース、Software as a Service)型の電子請求書アプリケーションを利用可能に保持するサービス提供事業者のコンピュータシステムから請求書を取得すること」
3 甲3
甲3には、以下の記載がある。
「【0135】
この時、同一の債権者に対する複数の送金データがある場合は、当該送金データを合算し、複数の取引識別子(例えば、請求書番号)を列記する形式の送金データを生成することも出来る。また、債権債務管理装置10bは、債務データに基づいて計算された消費税額を基に生成した仕訳データを、通信ネットワークを介して、電子申告システム30へ送信する。」
第5 当審の判断
1 理由1(進歩性)について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)「ソフトウェアプラットフォームを提供するSaaS事業者のサーバから請求情報を取得する情報取得部」について
甲1発明の「要求信号」は決済代金を示す情報を含むものであり、決済代金を示す情報は、販売者から購入者に対する請求に関する情報といえるから、甲1発明の「要求信号」は、本件発明1の「請求情報」に相当する。
また、甲1発明のサーバ装置40の「決済代金出金部114」は、サーバ装置30から要求信号を受信するものであるところ、要求信号を受信することは、要求信号を取得することといえる。
そうすると、甲1発明の「決済代金出金部114」と本件発明1の「情報取得部」は、「サーバから請求情報を取得する情報取得部」である点で共通しており、一方、両者は以下の点で相違する。
請求情報の取得元であるサーバに関し、本件発明1は、サーバが「ソフトウェアプラットフォームを提供するSaaS事業者のサーバ」であるのに対し、甲1発明はそのような特定がない点。
(イ)「支払日または前記支払日に基づく日が到来すると、仕向銀行における支払者の口座から、前記仕向銀行における振込代行事業者もしくは前記振込代行事業者の委託先の口座に支払い金額の口座振替を行うように前記仕向銀行に依頼する口座振替依頼部」について
甲1発明の「購入者」、「要求信号により特定される代金」は、本件発明1の「支払者」、「支払金額」に相当する。
また、甲1発明の「決済代行企業」は、購入者から販売者への代金の振込を代行しているといえるから、本件発明1の「振込代行事業者」に相当する。
さらに、本件発明1の「振込代行事業者もしくは前記振込代行事業者の委託先」は択一的な記載であって、甲1発明の「決済代行企業」は、上記のとおりその一方である振込代行事業者と一致している。
そして、甲1発明の「決済代金出金部114」は、「サーバ装置30から要求信号を受信すると、要求信号により特定される金融機関に開設されている購入者の口座から上記金融機関に開設されている決済代行企業の口座に対して、要求信号により特定される代金を送金する旨を指示する第1指示信号(送金指示)を、上記金融機関により運用されるサーバ装置50Aに送信」するものであり、ここで、甲1発明の「要求信号により特定される金融機関に開設されている購入者の口座」は、代金を送金する場合の送金元となる金融機関(仕向銀行)における購入者の口座であることを踏まえると、本件発明1の「仕向銀行における支払者の口座」に相当する。
また、甲1発明の「上記金融機関に開設されている決済代行業者の金融機関口座」は、本件発明1の「仕向銀行における振込代行事業者の口座」に相当する。
さらに、甲1発明において、「上記金融機関により運営されるサーバ装置50Aに、代金を送金する旨を指示する第1指示信号(送金指示)を送信する」ことは、購入者の口座から販売者の口座へ代金の振替を行うように金融機関に依頼することといえる。
してみると、甲1発明の「決済代金出金部114」と本件発明1の「口座振替依頼部」は、「仕向銀行における支払者の口座から、前記仕向銀行における振込代行事業者もしくは前記振込代行事業者の委託先の口座に支払い金額の口座振替を行うように前記仕向銀行に依頼する口座振替依頼部」である点で共通しており、一方、両者は以下の点で相違する。
本件発明1の「口座振替依頼部」は、「支払日または前記支払日に基づく日が到来すると」、「仕向銀行における支払者の口座から、前記仕向銀行における振込代行事業者もしくは前記振込代行事業者の委託先の口座に支払い金額の口座振替を行うように前記仕向銀行に依頼する」ものであるのに対し、甲1発明には、「決済代金出金部114」が送金指示を送信するタイミングとして、「支払日または前記支払日に基づく日が到来すると」との事項が特定されていない点。
(ウ)「前記仕向銀行から前記口座振替が完了した旨の通知を受信すると、中継銀行に対して、前記中継銀行における前記振込代行事業者もしくは前記振込代行事業者の委託先の口座から被仕向銀行における受取者の口座に前記支払い金額の振込処理を行うように依頼する振込依頼部」について
甲1発明の「販売者」は、購入者から代金を受け取る者であるから、本件発明1の「受取者」に相当する。
次に、本件発明1の「中継銀行」は「中継銀行における前記振込代行事業者もしくは前記振込代行事業者の委託先の口座から被仕向銀行における受取者の口座に前記支払い金額の振込処理を行う」ものであり、また、本件特許明細書の段落【0032】の「中継銀行は、仕向銀行または被仕向銀行と同一の銀行であってもよい。」との記載を参酌すると、被仕向銀行と同一の銀行であってもよい(当然異なるものであってもよい)ものである。
一方、甲1発明の「サーバ装置40により選択された金融機関」も、甲1発明が「サーバ装置50Bとして、販売者により予め設定された金融機関と同一の金融機関により運用されるサーバ装置50Bを選択することも、販売者により予め設定された金融機関とは異なる金融機関により運用されるサーバ装置50Bを選択することもできる」ものであることを踏まえると、販売者の口座が開設されている金融機関と同一の金融機関であってもよく、また、異なるものであってもよいものである。
そうすると、甲1発明の「サーバ装置40により選択された金融機関」は、本件発明1の「中継銀行」に相当し、「サーバ装置40により選択された金融機関に開設されている決済代行企業の口座」は、本件発明1の「前記中継銀行における前記振込代行事業者の口座」に相当する。
また、甲1発明の「販売者により予め設定された金融機関に開設されている販売者の口座」は、本件発明1の「被仕向銀行における受取者の口座」に相当する。
さらに、上記(イ)と同様に、本件発明1の「前記振込代行事業者もしくは前記振込代行事業者の委託先」は択一的な記載であって、甲1発明の「決済代行企業」はその一方である振込代行事業者と一致している。
してみると、甲1発明の「決済代金入金部115」が、「予め販売者と合意した頻度で、サーバ装置40により選択された金融機関のサーバ装置50Bに対して、サーバ装置40により選択された金融機関に開設されている決済代行企業の口座から販売者により予め設定された金融機関に開設されている販売者の口座に対して代金を送金する旨を指示する」ことは、本件発明1の「振込依頼部」が行う処理のうち、「中継銀行に対して、前記中継銀行における前記振込代行事業者もしくは前記振込代行事業者の委託先の口座から被仕向銀行における受取者の口座に前記支払い金額の振込処理を行うように依頼する」ことで共通しており、一方、両者は以下の点で相違する。
本件発明1の「振込依頼部」は、「前記仕向銀行から前記口座振替が完了した旨の通知を受信すると」振込処理を行うように依頼するものであるのに対し、甲1発明の「決済代金入金部115」は、「予め販売者と合意した頻度で」代金を送金する旨を指示するものである点。
(エ)「振込代行システム」について
甲1発明の「決済代行企業により運用されるサーバ装置40」は、購入者から販売者への振込を代行する機能を備えているものといえるから、「振込代行システム」と称し得るものである。
イ 一致点及び相違点
上記(1)で対比した事項を踏まえると、本件発明1と甲1発明は、
「サーバから請求情報を取得する情報取得部と、
仕向銀行における支払者の口座から、前記仕向銀行における振込代行事業者もしくは前記振込代行事業者の委託先の口座に支払い金額の口座振替を行うように前記仕向銀行に依頼する口座振替依頼部と、
中継銀行に対して、前記中継銀行における前記振込代行事業者もしくは前記振込代行事業者の委託先の口座から被仕向銀行における受取者の口座に前記支払い金額の振込処理を行うように依頼する振込依頼部と、
を備える振込代行システム。」
という点で一致し、以下の点で相違している。
(相違点1)
請求情報の取得元であるサーバに関し、本件発明1は、サーバが「ソフトウェアプラットフォームを提供するSaaS事業者のサーバ」であるのに対し、甲1発明はそのような特定がない点。
(相違点2)
本件発明1の「口座振替依頼部」は、「支払日または前記支払日に基づく日が到来すると」、「仕向銀行における支払者の口座から、前記仕向銀行における振込代行事業者もしくは前記振込代行事業者の委託先の口座に支払い金額の口座振替を行うように前記仕向銀行に依頼する」ものであるのに対し、甲1発明には、「決済代金出金部114」が送金指示を送信するタイミングとして、「支払日または前記支払日に基づく日が到来すると」との事項が特定されていない点。
(相違点3)
本件発明1の「振込依頼部」は、「前記仕向銀行から前記口座振替が完了した旨の通知を受信すると」振込処理を行うように依頼するものであるのに対し、甲1発明の「決済代金入金部115」は、「予め販売者と合意した頻度で」代金を送金する旨を指示するものである点。
ウ 判断
事案を鑑みて相違点1について検討する。
甲1の「近年、電子商取引(EC)市場の拡大に伴い、ECショップやオークションサービス等において複数の決済サービスが利用可能となっている。特開2009-9374号公報(特許文献1)には、電子商取引における利用代金を決済するために、クレジットカード等が用いられることが開示されている。クレジットカードやデビットカードによる決済や電子マネー等による決済サービスは、即時に決済を完了させるものであるため、購入者にとって利便性の高いサービスといえる。」(段落【0002】)、「しかしながら、クレジットカード等を保有していない購入者は、銀行振込や代金引換等の決済方法を選択した場合、その決済にかかる手数料をほぼ全額負担することとなる。また、銀行振込を行うためには、購入者が、銀行窓口や現金自動預け払い機を利用するか、又は、インターネットバンキングを利用する必要がある。いずれを利用する場合においても、クレジットカードによる決済等を利用する場合と比較すると、手間及び時間がかかり、利便性が落ちてしまう。」(段落【0004】)、「各販売者により運用されるサーバ装置30は、その販売者が運営又は加盟するECショップサイトやオークションサイト等を介したサービスを、各端末装置20にインストールされた所定のアプリケーション又はウェブブラウザ等により、通信網10を介して各端末装置20に対して提供するものである。」(段落【0022】)等の記載を踏まえると、甲1発明は、ECショップやオークション等における決済(いわゆるBtoC取引の決済)を対象とするものと解される。
一方、甲2には、上記第4の2に示したとおりの技術事項(「SaaS(サース、Software as a Service)型の電子請求書アプリケーションを利用可能に保持するサービス提供事業者のコンピュータシステムから請求書を取得すること」)が記載されているものの、段落【0032】の「前記ユーザー企業の営業担当は、自企業内の役務について顧客企業との商談を受け、営業担当端末33を操作し、前記電子請求書アプリケーションに基づき、当該顧客企業向けの見積書(図6にプリントアウトした態様の見積書一例を示す)を作成する。」等の記載から、甲2は、企業間取引における決済(いわゆるBtoB取引の決済)を対象とするものと解される。
上記のとおり、甲1と甲2は、対象とする取引の性質が大きく異なるものである。
そして、BtoC取引においては、クレジットカード、銀行振込、代金引換等の多様な決済手段が広く用いられているものの、継続的な取引が多く請求書に基づく管理が一般的なBtoB取引とは異なり、請求書の発行や管理が必要な場面は限られている。
そのため、BtoC取引において導入と運用にコストを要するSaaS型の電子請求書アプリケーションを利用することは一般的な商慣行とは認められない。
してみると、甲1発明に、甲2記載の技術事項を適用する動機付けは認められない。
また、甲3には、上記第4の3に示したとおりの記載があるのみで、上記相違点に係る構成は記載されていない。
そして、上記相違点1に係る構成が本件特許の出願時の技術常識に鑑みて、周知技術であった又は当業者であれば自明であるとの合理的な理由もない。
したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲2~甲3に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 異議申立人の主張について
異議申立人は、特許異議申立書において、以下のとおり主張している。
「甲1発明の解決すべき課題は「従来の技術による決済手段では、購入者及び販売者の双方に対して必ずしも利便性が高いサービスを提供しているとはいえない状況にある。そこで、本発明の様々な実施形態により、利便性を向上させた決済を実行する処理装置を提供する。」(甲第1号証【0007】、【0008】)ことであり、甲第2号証の解決すべき課題は「サービス提供事業者の介在の基に請求書発行側の請求業務を低料金で、かつ、簡略、迅速に実現し得るような電子請求処理サービスシステム」(甲第2号証【0009】)を提供することであるところ、両者はいずれも決済時の利便性向上を図ろうとするものである点で共通する。
そうすると、甲1発明の「販売者のサーバ装置30」から受信する「要求信号」を「ソフトウェアプラットフォームを提供するSaaS事業者のサーバ」から取得する「請求情報」とすることは、甲第2号証に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。」(異議申立書第26頁第7~20行)
上記主張について検討する。
甲1、甲2が決済時の利便性向上を図ろうとするものである点で共通するとしても、上記ウのとおり、甲1と甲2は、対象とする取引の性質が大きく異なるものであり、甲1発明に甲2記載の技術事項を適用する動機付けは認められない。
したがって、異議申立人の上記主張は採用できない。
オ 小括
上記ウ~エより、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2~甲3に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本件発明2~9について
本件発明2~9は、本件発明1の構成に限定を加えて減縮したものであり、これらの請求項に係る発明は、いずれも、上記(1)イに示した上記相違点1に係る構成を有しているから、上記「(1)本件発明1について」で示したのと同様の理由により、甲1発明、甲2~甲3に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件発明10について
本件発明10は、本件発明1の「振込代行システム」に係る発明を、「振込代行方法」として表現したものであり、少なくとも上記「(1)本件発明1について」で言及した上記相違点1に係る処理を実行するためのステップ(ソフトウェアプラットフォームを提供するSaaS事業者のサーバから請求情報を取得するステップ)が備わっているのであるから、上記「(1)本件発明1について」で検討したのと同様に、甲1発明、甲2~甲3に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件発明11について
本件発明11は、本件発明10の「振込代行方法」に係る発明を、「振込代行プログラム」として表現したものであり、上記「(3)本件発明10について」で検討したのと同様に、甲1発明、甲2~甲3に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第6 むすび
以上によれば、特許異議の申立ての理由(特許法29条2項)及び異議申立人の提出した証拠によっては、本件特許の請求項1~11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700709