特許異議申立
2025-700704
車載器、解析装置、及び解析システム
- 審判番号
- 2025-700704
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-075582
- 登録番号
- 7613843
- 請求日
- 2025年07月08日
- 審決日
- 2026年06月17日
- 公報発行日
- 2026年09月25日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】矢崎総業株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人栄光事務所
- 【異議申立人】川原 美津代
- 審判長/審判官
- 審判長 中屋 裕一郎
- 審判官 小川 恭司
- 審判官 高吉 統久
- 分類
- P1651.121-ZC (B66F) / P1651.536-ZC (B66F) / P1651.537-ZC (B66F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条、特許法第36条第6項第1号、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7613843号発明「車載器、解析装置、及び解析システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7613843号の請求項4、6~11に係る特許を取り消す。
同請求項1~3、5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯の概略
特許第7613843号の請求項1~11に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、令和2年4月21日の出願であり、手続の経緯は、概ね、次のとおりである。
令和 7年 1月 6日 特許権の設定登録
令和 7年 1月15日 特許掲載公報
令和 7年 7月 8日 特許異議申立人川原美津代(以下「申立人」という。)による請求項1~11に係る特許に対する特許異議の申立て
令和 8年 1月16日付け 取消理由通知書
なお、令和8年1月16日付け取消理由通知書に対して特許権者から何ら応答がなかった。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~11に係る発明(以下「本件発明1」などという。)は、特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定される次のとおりである。
【請求項1】
荷物を保持可能な荷物保持部を有する荷役車両に搭載され、所定の条件を満たしたときに、前記荷役車両近傍の状況を表す情報を記録する車載器であって、
前記荷物の運搬状況を監視する監視部と、
前記監視部が、前記荷役車両に対する二重操作、及び前記荷物の落下の少なくともいずれか一を検出した場合に、前記情報を記録するためのトリガを発生させるトリガ発生部と、
前記情報として、少なくとも、前記荷役車両近傍の状況を表す画像を記録する記録部と、
前記荷役車両に搭載され、前記荷役車両の前方であって前記荷物保持部の少なくとも一部を含む情景を撮影するカメラと、
を備え、
前記監視部は、前記カメラが撮影した画像を解析して、前記荷役車両に対する二重操作、及び前記荷物の落下の少なくともいずれか一を検出する画像解析部を含む
車載器。
【請求項2】
荷物を保持可能な荷物保持部を有する荷役車両に搭載され、所定の条件を満たしたときに、前記荷役車両近傍の状況を表す情報を記録する車載器であって、
前記荷物の運搬状況を監視する監視部と、
前記監視部が、前記荷役車両に対する二重操作、前記荷物の有無、前記荷物の落下、及び前記荷役車両の幅方向における前記荷物の揺れの少なくともいずれか一を検出した場合に、前記情報を記録するためのトリガを発生させるトリガ発生部と、
前記情報として、少なくとも、前記荷役車両近傍の状況を表す画像を記録する記録部と、
前記荷役車両に搭載され、前記荷役車両の前方であって前記荷物保持部の少なくとも一部を含む情景を撮影するカメラと、を備え、
前記監視部は、前記カメラが撮影した画像を解析して、前記荷役車両に対する二重操作、前記荷物の有無、前記荷物の落下、及び前記荷役車両の幅方向における前記荷物の揺れの少なくともいずれか一を検出する画像解析部を含み、
前記画像解析部は、
前記画像における、前記荷物保持部の少なくとも一部を含む領域を荷物検出範囲として解析して、前記荷物の領域を検出する荷物検出部を含み、
前記荷物検出部が前記荷物の領域を検出したか否かに応じて、前記荷物の有無を検出し、
前記荷物有りを検出した場合において、前記荷物の領域の少なくとも一部が欠落したことを検出したとき、前記荷物の落下を検出する
車載器。
【請求項3】
前記荷物保持部は昇降可能であり、
前記画像解析部は、
前記画像における、前記荷物検出範囲と離間した領域の一部を走行検出範囲として解析して、前記荷役車両が走行しているか否かを検出する走行検出部を含み、
前記画像における前記荷物の領域の位置又は大きさの変化に基づいて、前記荷物保持部の昇降を検出し、
前記荷役車両が走行中であり、かつ、前記荷物保持部が昇降した場合に、前記二重操作を検出する
請求項2に記載の車載器。
【請求項4】
荷物を保持可能な荷物保持部を有する荷役車両に搭載され、所定の条件を満たしたときに、前記荷役車両近傍の状況を表す情報を記録する車載器であって、
前記荷物の運搬状況を監視する監視部と、
前記監視部が、前記荷役車両に対する二重操作、前記荷物の有無、前記荷物の落下、及び前記荷役車両の幅方向における前記荷物の揺れの少なくともいずれか一を検出した場合に、前記情報を記録するためのトリガを発生させるトリガ発生部と、
前記情報として、少なくとも、前記荷役車両近傍の状況を表す画像を記録する記録部と、
を備え、
前記荷物保持部は昇降可能であり、
前記監視部は、
前記荷役車両に対して行われた操作を示す操作信号を取得する操作信号取得部を含み、
前記荷役車両が走行中であることを示す操作信号、及び前記荷物保持部が昇降されたことを示す操作信号を取得した場合に、前記二重操作を検出する
車載器。
【請求項5】
前記荷役車両のバッテリの電圧状況を監視するバッテリ監視部と、
前記荷役車両の稼働状況を監視する稼働監視部と、
前記電圧状況と前記稼働状況とに基づいて、前記バッテリが所定条件を満たすか否かを判定する判定部と、
を備える請求項1~4のいずれか一項に記載の車載器。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載の車載器から、前記トリガの発生に関わるトリガ情報を収集するトリガ情報収集部と、
所定期間内に発生した前記トリガの前記トリガ情報に基づいて、前記荷役車両の運行に関する解析を行う解析部と、
解析結果を出力する出力部と、
を備える解析装置。
【請求項7】
請求項5に記載の車載器から、前記電圧状況及び前記稼働状況を示すバッテリ情報を収集するバッテリ情報収集部と、
所定期間内における前記バッテリ情報に基づいて、前記バッテリの交換に関する予測情報を生成する予測部と、
前記予測情報を出力する出力部と、
を備える解析装置。
【請求項8】
請求項6に記載の解析装置と、
前記解析装置から前記解析結果を受信する受信装置と、
を備える解析システム。
【請求項9】
請求項7に記載の車載器及び解析装置と、
前記解析装置から前記予測情報を受信する受信装置と、
を備える解析システム。
【請求項10】
前記解析装置において、
前記トリガ情報収集部は、複数台の荷役車両のそれぞれに搭載された複数の前記車載器から、前記トリガ情報を収集し、
前記解析部は、収集した前記トリガ情報に基づいて、前記荷役車両の運行に関する指導書、分析レポート、ランキング、ヒートマップ、及びヒヤリハットマップの少なくともいずれか一を、前記解析結果として生成する
請求項8に記載の解析システム。
【請求項11】
前記解析装置において、
前記バッテリ情報収集部は、複数台の荷役車両のそれぞれに搭載された複数の前記車載器から、前記バッテリ情報を収集し、
前記予測部は、収集した前記バッテリ情報に基づいて、前記予測情報を生成する
請求項9に記載の解析システム。
第3 取消理由の概要と申立人の証拠方法
1 概要
本件訂正前の本件特許に対し通知した取消理由は、概ね、次のとおりである。
(1)請求項7、9、11に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第9号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項7、9、11に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2)請求項4、6~11に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証、甲第2号証、甲第9号証、甲第10号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項4、6~11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(3)請求項9係る本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
2 申立人の証拠方法
申立人提出の証拠方法は以下のとおりである。
甲第1号証:国際公開第2018/235347号
甲第2号証:特開2013-56736号公報
甲第3号証:特開2019-189435号公報
甲第4号証:特開2015-170284号公報
甲第5号証:特開平7-97198号公報
甲第6号証:実開平7-42346号公報
甲第7号証:安全 5月号,中央労働災害防止協会,平成9年5月1日,第48巻 第5号,p26~27
甲第8号証:物流 LOGISTICS 1997年8月号,株式会社ファラオ企画,平成9年8月20日,p28~33
甲第9号証:特開2003-264906号公報
甲第10号証:特開2009-104531号公報
以下、証拠番号に従い「甲1」「甲2」などという。
第4 当審合議体の判断
1 各甲号証について
(1)甲1について
ア 甲1の記載
甲1には、図面とともに次の記載がある(なお、下線は当審合議体が付したものである。以下同様。)。
「[0001] 本開示は、運行システム、車載機、産業用車輌、フォークリフト、コンピュータプログラム、データ構造及び運行方法に関する。」
「[0014] フォークリフトのような産業用運搬車輌については、一般の乗用車におけるドライブレコーダとは用途が異なってくる。産業用車輌は上述したような事故の抑止のみならず、効率的な導線での稼働が求められる。そこでドライブレコーダのカメラを用いてデータを収集し、その映像データ及び他の情報を用いて車輌の導線及び運転者である作業者の配置を総合的に管理することが期待される。
[0015] 本開示は、ドライブレコーダを用いて産業用車輌の効率的利用を可能とする運行システム、車載機、産業用車輌、フォークリフト、コンピュータプログラム、データ構造及び運行方法を提供することを目的とする。
[0016] [本願発明の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。また、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
[0017] 本実施の形態の運行システムは、複数の電子鍵と、該複数の電子鍵との間で信号を授受する産業用車輌に搭載される車載機とを含み、前記複数の電子鍵は夫々、鍵情報を記憶しており、該鍵情報を前記車載機へ向けて出力する出力部を備え、前記車載機は、前記複数の電子鍵から出力される鍵情報を取得する取得部と、取得された前記鍵情報に基づき、搭載される産業用車輌の運転可否を判断する判断部と、前記産業用車輌の周囲を撮影する撮影装置からの映像信号を入力する入力部とを備え、前記判断部により運転可と判断された場合、前記産業用車輌の状況を測定する状況測定部による測定結果をトリガとし、該トリガのタイミングに基づいて前記撮影装置にて撮影された所定時間分の映像を前記鍵情報と対応付けて保存する。
[0018] 本実施の形態の車載機は、複数の電子鍵から出力される鍵情報を取得する取得部と、取得された前記鍵情報に基づき、搭載される産業用車輌の運転可否を判断する判断部と、前記産業用車輌の周囲を撮影する撮影装置からの映像信号を入力する入力部と、前記判断部により運転可と判断された場合、前記産業用車輌の状況を測定する状況測定部による測定結果をトリガとし、該トリガのタイミングに基づいて前記撮影装置にて撮影された所定時間分の映像を前記鍵情報に対応付けて保存する記憶媒体とを備える。」
「[0025] 車載機は更に、搭載される産業用車輌の周囲を撮影する撮影装置からの映像信号を入力する。撮影装置は、運転中の各時点における車輌の周辺に存在する物又は人物を撮影すべく、撮影装置が車輌の周囲を撮影する。周囲とは360度全周であることが望ましいがこれに限らない。車載機は、取得した鍵情報に基づき運転が可と判断された場合には、前記産業用車輌に搭載されているセンサ、運転の制御装置等、車輌の状況を測定する状況測定部による測定結果をトリガとして入力している映像信号に基づく所定時間分の映像を保存する。なお映像には、運転が可と判断されたことの根拠となった鍵情報が対応付けて保存される。保存先は、自身の記憶部、外部メモリ、通信部を介して他の記憶装置等である。
[0026] 本実施の形態の運行システムでは、前記状況測定部は、車速センサ、加速度センサ、重量センサ、又は赤外線センサの内の少なくとも1つ以上を含む。
[0027] 映像を保存するためのトリガは、状況測定部による車輌の状況の測定結果であるところ、例えば状況測定部は産業用車輌に搭載されたセンサを用いる。センサとして車速センサ、加速度センサ、重量センサ、又は赤外線センサ等が挙げられるがこれに限らない。これらのセンサの内の少なくとも1つ以上のセンサからの測定結果を用い、例えば速度超過、及び衝撃検知をトリガに、運転者を後に特定可能な鍵識別情報又はユーザ識別情報と共に映像が保存される。また、重量センサにて測定できる被運搬物の重量、運転者の重量等を用いてもよい。また、車体から周囲までの距離を測定する赤外線センサを用い、その距離の変化をトリガとしてもよい。なお距離は赤外線センサに限らず、カメラで撮影した特定の物の大きさ(撮影画像(フレーム画像)に占める範囲)から測定されるものであってもよい。
[0028] 状況測定部は運転制御装置等であってトリガは運転状況を示す情報であってもよく、この場合車載機は例えば、イグニッションキーの位置、ギア位置、車輌の傾き、操舵角等の変化をトリガとして映像を保存するようにしてもよい。状況測定部は他に、車輌の位置情報を取得する機器等であってもよい。
[0029] 本実施の形態の運行システムでは、前記産業用車輌はフォークリフトであって、前記状況測定部は前記フォークリフトのフォーク部分に設けられて被運搬物の重量を測定する重量センサを含み、前記車載機は、測定された重量の変化をトリガとして前記所定時間分の映像を保存する。
[0030] 映像を保存するためのトリガは、産業用車輌をフォークリフトに限定した場合、フォーク部分に設けられて被運搬物の重量を測定できる重量センサを用いることが可能である。重量センサにて測定される重量の変化をトリガとすることで、例えばフォークリフトの走行中に、測定される重量が突如減少するなど、落下が疑われるような状況を示す場合に、この落下原因を事後的に推定させることが可能な映像を保存しておくことも可能である。」
「[0042] そして実施の形態1の車輌運行システムでは、フォークリフト1にカメラを搭載し、カメラでフォークリフト1の前後を撮影した映像(画像又は動画像)を撮影することにより、作業現場における衝突検知、急発進、急ブレーキなど事故に至る前の危険が検知されたとき等の状況を保存することができる。実施の形態1における車輌運行システムでは更に、カメラにより撮影された映像による状況保存を、フォークリフト1を運転するための電子鍵2の情報と対応付けて記憶することで電子鍵2の所持者を識別する情報に対応付ける。フォークリフト1で撮影される映像と、電子鍵2の所持者即ち運転者を識別する情報とを対応付けて保存するから、これを収集することで各フォークリフト1の導線及び運転者である作業者の配置を総合的に管理することが期待される。
[0043] 図2A及び図2Bは、実施の形態1の車輌運行システムの構成を示すブロック図である。車輌運行システムは、フォークリフト1に組み込まれている車載機10と、電子鍵2とを含む。図2Aは、車載機10側から電子鍵2へ問い合わせるパッシブ型の電波方式を示し、図2Bは、キーシリンダに挿入された電子鍵2から発信される信号を車載機10側で受信する電磁誘導方式を示す。
[0044] 車載機10は、制御部100、記憶部101、送信部102、受信部103、入力部104、出力部105、及び外部メモリ106を備える。制御部100は、例えば1若しくは複数のCPU(Central Processing Unit)又はマルチコアCPUを用い、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インタフェース、タイマ等を有するマイクロコントローラである。制御部100は内蔵ROMに記憶されている制御プログラムを実行することにより各構成部の動作を制御し、後述する運転可否の判断を実行する判断部である。」
「[0048] 入力部104は、車載機10の外部からの信号を入力するインタフェースである。制御部100は外部からの情報を入力部104から受信することが可能である。入力部104にはセンサ3群、及びカメラ4が接続されており、制御部100は入力部104によりセンサ3群から情報を取得し、カメラ4から映像信号を入力することが可能である。」
「[0050] 外部メモリ106は、記憶部101とは別途設けられ、例えばSDメモリカードを使用する。外部メモリ106は、車載機10自体がフォークリフト1の内装の内側に設けられている一方で、フォークリフト1の管理者によって着脱が可能な場所に挿入可能な小型のメモリとする。」
「[0052] センサ3は、車速を測定する車速センサ、車体への衝撃を検知するための加速度センサ等の各種センサを複数用いる。センサ3群はこれらを総称したものであり、車輌の状況を測定する状況測定部に相当する。
[0053] カメラ4は、フォークリフト1の前部に設けられて前方に向けて撮影する第1カメラと、後部に設けられて後方に向けて撮影する第2カメラとを含む。第1カメラ及び第2カメラは夫々広角レンズを有し、フォークリフト1の周辺に存在する物又は人物を漏れなく撮影すべく、合わせて画角が周辺360度に設定してある。また第1カメラ及び第2カメラは充分な防塵防水の耐久性を持つものであるとよい。なおカメラ4は1つのカメラと360度撮影可能な特殊ミラー及びレンズによって実現されてもよい。車載機10の制御部100は、カメラ4から入力部104により入力する映像信号を映像データとして順次記憶部101に記憶する。そして制御部100は、古い映像データに順に新しい映像データで上書きする。なおカメラ4は内部メモリを有し、この内部メモリに逐次映像信号に基づく映像データが記憶され、古いデータから順に上書きされるようにしてあり、制御部100から読み出し可能であってもよい。
[0054] 運転制御装置5は、フォークリフト1のエンジン又は駆動モータによる運転を制御する装置である。運転制御装置5は、イグニッションスイッチ又はパワーオンスイッチの状態と、車載機10が出力する運転の可否を示す信号とに基づいてエンジン又は駆動モータを始動させ、状態に応じて自動停止等を行なうことも可能である。図3に示す電磁誘導方式である場合の運転制御装置5は、キーシリンダにおけるキーの位置でイグニッションスイッチの状態を検知する。」
「[0075] (実施の形態2)
図4は、実施の形態2の車輌運行システムの構成を示すブロック図である。実施の形態2におけるセンサ3群(状況測定部)は、車速センサ3a、加速度センサ3bに加え、重量センサ3c、赤外線センサ3d、及び無線タグのリーダ3eを含む。その他の構成については実施の形態1の車輌運行システムと同様であるから、共通する構成には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。なお図4及び以下の説明ではパッシブ型電波方式の電子鍵2を使用する例を挙げて説明するが、電磁誘導方式の電子鍵2及び車載機10を用いるようにしてもよい。
[0076] 車速センサ3aはフォークリフト1のエンジン又はタイヤ付近に取り付けられて車速を測定するセンサであり、加速度センサ3bは車体のいずれかの箇所、又はフォーク部分に取り付けられた3軸センサである。重量センサ3cは、フォークリフト1のフォーク部分への荷重を測定するセンサであり、荷重に対応する信号レベルを出力する。赤外線センサ3dは例えば、赤色半導体レーザ及びCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサを有したセンサユニットであり、直近物との間の距離を計測する。赤外線センサ3dは例えばフォークリフト1のフォーク先端に設けられており、フォーク先端から直近物への距離を測定し、その距離に対応する信号レベルを出力する。赤外線センサ3dは、車体の複数箇所に設けられていて衝突回避のために利用されてもよい。リーダ3eは、無線タグに内蔵されている記憶媒体から情報を読み取る機器である。例えばRFID(Radio Frequency Identifier)リーダであって、被運搬物に取り付けられているRFIDタグから情報を読み出す。
[0077] 実施の形態2では車載機10の制御部100は、車速センサ3aにより得られる車速が所定速度を超過したか、又は加速度センサ3bにより得られる衝撃が検知されたかの判断のみならず、他のセンサ3群からの情報をトリガとして映像データを保存する。例えば制御部100は、重量センサ3cにて測定可能なフォーク部分への荷重量、赤外線センサ3で測定可能な周辺物までの距離、その他車体から周囲に存在する人又は物までの距離、そしてリーダ3eで読み取った被搬送物の情報をトリガとして保存を行なう。
[0078] 図5及び図6は、実施の形態2の車載機10による保存処理の手順の一例を示すフローチャートである。図5及び図6のフローチャートに示す処理手順の内、実施の形態1の図3のフローチャートに示した手順と共通する手順については同一のステップ番号を付して詳細な説明を省略する。
[0079] 実施の形態2ではステップS108において制御部100は、車速センサ3a、加速度センサ3b、重量センサ3c、赤外線センサ3d及びリーダ3eの内のいずれか1若しくは複数、又は全ての情報を取得する(S108)。そして制御部100は、ステップS111で衝撃を検知しないと判断された場合(S111:NO)、又は検知したと判断して映像データを保存した後(S112)、車速センサ3aから得られる車速と、重量センサ3cにて得られる荷重量とに基づき被運搬物が運搬中に落下したか否かを判断する(ステップS121)。ステップS121では例えば、車速がゼロでない、即ち停止していないにも拘わらず、フォーク部分への荷重が突然軽くなると判断できる場合には、落下が疑われるから(ステップS121:YES)、制御部100は映像データを保存する(ステップS122)。制御部100は映像データを保存した後、処理をステップS123へ進める。ステップS121では他に、ギア位置が被運搬物の積み込み又は積み下ろしのために停止用の位置になっていないにも拘わらず、荷重が突然軽くなると制御部100が判断できるか否か等を判断するようにしてもよい。荷重の変化はなく落下していないと判断される場合(S121:NO)、制御部100は処理をそのままステップS123へ進める。
[0080] なおステップS122における保存処理は、実施の形態1にて説明したステップS110の処理同様、制御部100は、カメラ4から入力して記憶部101に逐次記憶されている映像データの内、所定時間分の映像データを、鍵識別情報及び内蔵タイマにより取得される時間情報に対応付けて外部メモリ106に保存する。
[0081] そして制御部100は、赤外線センサ3dにより得られる距離が所定距離以下であるか否かを判断する(ステップS123)。所定距離以下であると判断された場合(S123:YES)、制御部100は映像データを保存し(ステップS124)、処理をステップS125へ進める。ステップS123において、距離が所定距離以下と判断される場合にはその間、被運搬物の積み込み又は積み下ろし等がなされる可能性があるから、この場合に映像データを保存することによって被運搬物の取り扱いについての映像記録が可能になる。ステップS124における保存処理はステップS110と同様である。ステップS123で所定距離よりも長いと判断された場合(S123:NO)、制御部100は処理をそのままステップS125へ進める。
[0082] 制御部100は、リーダ3eにより被運搬物から情報を読み取ることができたか否かを判断する(ステップS125)。読み取ることができた(可読)と判断された場合(S125:YES)、制御部100は読み取った情報を鍵識別情報と対応付けて外部メモリ106に保存し(ステップS126)、処理をステップS113へ進める。読み取ることができなかったと判断された場合(S125:NO)、制御部100は映像データを保存し(ステップS127)、処理をステップS113へ進める。この場合、不明な被運搬物について映像記録が可能になる。
[0083] なお図5及び図6のフローチャートに示したセンサ3群から得られる情報に基づく映像保存のための判断は一例に過ぎない。リーダ3eから情報を読み取ることができたか否かによって映像データを保存するという処理、赤外線センサ3dによる距離の測定に基づく処理も単に一例であり、これらから取捨選択されて適宜組み合わされてよい。また、他の判断処理によって代替されてもよい。ただし実施の形態2における車載機10は乗用車にも適用できるような外付けのドライブレコーダと異なり、フォークリフト1固有の情報、上述の例であればフォーク部分の荷重、被運搬物の情報、また接近する他の物(又は人物)との間の距離などを用いている。そして車載機10はフォークリフト1に予め組み込まれており、運転制御装置5と接続されるなど、車輌の状況を示す情報を取得することが可能である。ステップS121で例示したようなギア位置などセンサに限らず他の情報と、センサ3群から得られる情報とに基づき、推測されるフォークリフト1の状況(車輌の状況)に応じて映像データの保存のトリガとすることができる。」
「[0085] 図8は、実施の形態3の車輌運行システムの構成を示すブロック図である。実施の形態3の車輌運行システムでは車載機10は無線通信用のモジュールを用いる通信部107を備え、無線通信によって通信装置8との間で情報を送受信する。他の構成については実施の形態1と同様であるから共通する構成については実施の形態1と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。なお図8及び以下の説明ではパッシブ型電波方式の電子鍵2を使用する例を挙げて説明するが、電磁誘導方式の電子鍵2及び車載機10を用いるようにしてもよい。
[0086] 実施の形態3において車載機10が備える通信部107は、Wi-Fi 等による無線通信デバイスを用い、作業現場の各所に配設されているアクセスポイントAPを経由して工場内ネットワークN1に通信接続することが可能である。なおアクセスポイントAPは、工場内の異なる場所に配設されており、通信部107は、通信接続するアクセスポイントを識別する情報を取得するようにしてもよい。なお通信部107は、通信装置8と直接的に通信接続するようにしてもよく、この場合、通信部107はBluetooth(登録商標)を用いるようにしてもよい。制御部100の通信装置8との通信を実現するものであれば通信部107の方式は問わない。
[0087] 通信装置8は例えば、作業現場の管理者の権限を有したユーザにより使用されるPC(Personal Computer)である。通信装置8は、制御部80、記憶部81、通信部82、操作部83、及び出力部84を備え、出力部はモニタ85と接続されている。
[0088] 制御部80は、CPUを用いて各部を構成する。制御部80は、記憶部81に記憶されているプログラムに基づいて後述の処理手順を実行し、運行管理装置として動作する。
[0089] 記憶部81は、フラッシュメモリ又はハードディスク等の不揮発性の記憶装置を用いる。記憶部81にはサーバプログラム8Pが記憶されており、制御部80はこのサーバプログラム8Pを読み出して実行することにより、車載機10から送信される情報を、フォークリフト1の車輌識別情報、及び運転者を示す作業者識別情報と対応付けて記憶部81に記録する処理を実行する。また記憶部81には、制御部80のサーバプログラム8Pに基づく処理により、各フォークリフト1から集約される作業現場におけるフォークリフト1の運行記録が運行管理DB811として記憶される。
[0090] 通信部82は、無線又は有線により工場内ネットワークN1に通信接続することが可能である。制御部80は、通信部82により工場内ネットワークN1を介して、車載機10から送信される情報を受信することができる。
[0091] 操作部83は、マウス、又はキーボード等のユーザインタフェースであり、制御部80は操作部83にて検知された操作に応じて処理を実行する。出力部84はモニタ85との間のインタフェースであり、制御部80は記憶部81に記憶されている情報又は通信部82により受信した情報をモニタ85へイメージ出力することができる。」
「[0094] ステップS109で所定速度を超過していると判断された場合(S109:YES)、制御部100は、カメラ4から入力して記憶部101に逐次記憶されている映像データの内、所定時間分の映像データを、鍵識別情報及び内蔵タイマにより取得される時間情報に対応付けて通信部107から通信装置8宛てに送信し(ステップS131)、処理をステップS111へ進める。なおステップ131で制御部100は、速度の超過をトリガとしたことを示すトリガの種別の情報を共に送信してもよい。
[0095] またステップS111で衝撃を検知したと判断された場合(S111:YES)、制御部100は、カメラ4からの映像データの内、所定時間分の映像データを、鍵識別情報及び内蔵タイマにより取得される時間情報に対応付けて通信部107から通信装置8宛てに送信し(ステップS132)、処理をステップS133へ進める。ステップS132で制御部100はステップS131同様に、衝撃検知をトリガとしたことを示すトリガの種別の情報を共に送信してもよい。制御部100は、ステップS111で衝撃を検知しないと判断された場合も(S111:NO)、処理をステップS133へ進める。」
「[0103] (実施の形態4)
図12は、実施の形態4の車輌運行システムの構成を示すブロック図である。実施の形態4の車輌運行システムでは、電子鍵2は端末装置2aの1つの機能として実現される。そして端末装置2aが外部装置である通信装置8と通信を行なう。その他の構成については実施の形態1と同様であるから、共通する構成については実施の形態1と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。なお図12及び以下の説明では、パッシブ型電波方式による信号の送受信手順を例に挙げて説明する。」
「[0130] 図15は、実施の形態4の通信装置8に記憶される情報の内容例を示す説明図である。実施の形態4における運行管理DB811には、フォークリフト1毎に、その車輌識別情報と、運転可と判断された鍵情報(作業者識別情報)とに対応付けて、運転開始及び終了のログ及び映像データが、夫々の時間情報と共に記憶されている。これにより作業者識別情報によって、車輌毎及び作業者毎の運転の記録の抽出が可能になる。また図15の運行管理DB811では、トリガの種別も共に対応付けられている。
[0131] このように、フォークリフト1にて撮影された映像データが通信装置8に集約されることで、事後的に又はリアルタイムに、運行管理DB811に記憶されている複数のフォークリフト1についての映像データを総合的に解析することが可能になる。電子鍵2(端末装置2a)を所持する運転者毎に映像データが自動的に記憶されるので、同一の作業者が異なるフォークリフト1を運転した場合も、映像として運転傾向を分析するデータを記録しておくことができる。同一の作業現場にて運用される複数のフォークリフト1について解析を行なうことで、その作業現場に配置されるべきフォークリフト1の数、被移載物である荷物の保管位置及び保管量の適正配置の提示など、種々の応用が可能になる。また、リアルタイムに解析することで、より効率的な導線を提示するなどの運転支援も可能である。」
「図4
[図:0001439208000001.jpg]
」
「図5
[図:0001439208000002.jpg]
図6
[図:0001439208000003.jpg]
」
「図8
[図:0001439208000004.jpg]
」
「図11
[図:0001439208000005.jpg]
」
イ 甲1に記載された発明
上記ア及び図面から甲1には次の事項が記載されていると認められる。
(ア) 「フォークリフト」が「フォーク部分」を有することが記載されており([0030])、「フォークリフト」とは、「油圧によって上下・傾斜できる荷受け用の腕(フォーク)を自動車の前面に備えた荷役トラック」(広辞苑第7版岩波書店)を意味するから、フォークリフトの「フォーク部分」は「荷受け」可能なものであり、「フォーク部分」は上下させることができると認められる。
(イ) [0077]には、「実施の形態2では車載機10の制御部100は、車速センサ3aにより得られる車速が所定速度を超過したか、又は加速度センサ3bにより得られる衝撃が検知されたかの判断のみならず、他のセンサ3群からの情報をトリガとして映像データを保存する。例えば制御部100は、重量センサ3cにて測定可能なフォーク部分への荷重量、赤外線センサ3で測定可能な周辺物までの距離、その他車体から周囲に存在する人又は物までの距離、そしてリーダ3eで読み取った被搬送物の情報をトリガとして保存を行なう。」と記載され、[0083]には、「なお図5及び図6のフローチャートに示したセンサ3群から得られる情報に基づく映像保存のための判断は一例に過ぎない。リーダ3eから情報を読み取ることができたか否かによって映像データを保存するという処理、赤外線センサ3dによる距離の測定に基づく処理も単に一例であり、これらから取捨選択されて適宜組み合わされてよい。また、他の判断処理によって代替されてもよい。ただし実施の形態2における車載機10は乗用車にも適用できるような外付けのドライブレコーダと異なり、フォークリフト1固有の情報、上述の例であればフォーク部分の荷重、被運搬物の情報、また接近する他の物(又は人物)との間の距離などを用いている。そして車載機10はフォークリフト1に予め組み込まれており、運転制御装置5と接続されるなど、車輌の状況を示す情報を取得することが可能である。ステップS121で例示したようなギア位置などセンサに限らず他の情報と、センサ3群から得られる情報とに基づき、推測されるフォークリフト1の状況(車輌の状況)に応じて映像データの保存のトリガとすることができる。」と記載されているから、制御部100は、センサ3群からの情報と車輌の状況を示す情報を取得して被運搬物の運搬状態を把握していると認められる。
(ウ) [0079]には、「実施の形態2ではステップS108において制御部100は、車速センサ3a、加速度センサ3b、重量センサ3c、赤外線センサ3d及びリーダ3eの内のいずれか1若しくは複数、又は全ての情報を取得する(S108)。そして制御部100は、ステップS111で衝撃を検知しないと判断された場合(S111:NO)、又は検知したと判断して映像データを保存した後(S112)、車速センサ3aから得られる車速と、重量センサ3cにて得られる荷重量とに基づき被運搬物が運搬中に落下したか否かを判断する(ステップS121)。ステップS121では例えば、車速がゼロでない、即ち停止していないにも拘わらず、フォーク部分への荷重が突然軽くなると判断できる場合には、落下が疑われるから(ステップS121:YES)、制御部100は映像データを保存する(ステップS122)。制御部100は映像データを保存した後、処理をステップS123へ進める。ステップS121では他に、ギア位置が被運搬物の積み込み又は積み下ろしのために停止用の位置になっていないにも拘わらず、荷重が突然軽くなると制御部100が判断できるか否か等を判断するようにしてもよい。荷重の変化はなく落下していないと判断される場合(S121:NO)、制御部100は処理をそのままステップS123へ進める。」と記載され、図6には、S121で「被運搬物落下?」をみて、YESの場合にS122でカメラから入力した映像データを保存することが記載されているから、制御部100は、被運搬物が運搬中に落下したと判断した場合に前記映像を保存するためのトリガを生成させる部分を備えていると認められる。
(エ) [0086]には、「実施の形態3において車載機10が備える通信部107は、Wi-Fi等による無線通信デバイスを用い、作業現場の各所に配設されているアクセスポイントAPを経由して工場内ネットワークN1に通信接続することが可能である。なおアクセスポイントAPは、工場内の異なる場所に配設されており、通信部107は、通信接続するアクセスポイントを識別する情報を取得するようにしてもよい。なお通信部107は、通信装置8と直接的に通信接続するようにしてもよく、この場合、通信部107はBluetooth(登録商標)を用いるようにしてもよい。制御部100の通信装置8との通信を実現するものであれば通信部107の方式は問わない。」と記載され、[0094]には「制御部100は、速度の超過をトリガとしたことを示すトリガの種別の情報を共に送信してもよい。」、[0095]には、「ステップS132で制御部100はステップS131同様に、衝撃検知をトリガとしたことを示すトリガの種別の情報を共に送信してもよい。」と記載され、[0101]には、「通信装置8では、車載機10から受信した情報が運行管理DB811として記憶される。」と記載されているから、車載機10からトリガの種別の情報が送信され、通信装置8では、車載機10から受信した情報が運行管理DB811として記憶されると認められる。
(オ) [0087]には、「通信装置8は、制御部80、記憶部81、通信部82、操作部83、及び出力部84を備え、出力部はモニタ85と接続されている。」と記載され、[0091]には、「出力部84はモニタ85との間のインタフェースであり、制御部80は記憶部81に記憶されている情報又は通信部82により受信した情報をモニタ85へイメージ出力することができる。」と記載されているから、通信装置8の出力部84から記憶部81に記憶されている情報又は通信部82により受信した情報が出力され、モニタ85はそれらの情報を受信すると認められる。
(カ) [0130]には、「実施の形態4における運行管理DB811には、フォークリフト1毎に、その車輌識別情報と、運転可と判断された鍵情報(作業者識別情報)とに対応付けて、運転開始及び終了のログ及び映像データが、夫々の時間情報と共に記憶されている。これにより作業者識別情報によって、車輌毎及び作業者毎の運転の記録の抽出が可能になる。また図15の運行管理DB811では、トリガの種別も共に対応付けられている。」と記載され、[0131]には、「このように、フォークリフト1にて撮影された映像データが通信装置8に集約されることで、事後的に又はリアルタイムに、運行管理DB811に記憶されている複数のフォークリフト1についての映像データを総合的に解析することが可能になる。」と記載され、図15には、運行管理DB811として、車輌識別番号「001」と「002」が記載され、鍵情報、時間情報、映像データ、トリガの種別の情報も記載されているから、通信装置8の通信部82及び記憶部81は、複数の前記フォークリフト1に搭載された車載機10から「トリガの種別」を含む情報を運行管理DB811に集約していると認められる。
キ [0131]の運行管理DB811に集約された情報に基づいて運転傾向を分析する旨の記載に鑑みれば、通信装置8が作業者の運転傾向の分析を行う部分を備えることは記載されているに等しいといえる。そして、運転傾向を分析する際に、一定期間に得られたデータに基づいて分析することは通常行われることである。
上記ア及び上記(ア)~(ウ)から、甲1には、次の発明(以下「甲1発明1」という。)が記載されていると認められる。
[甲1発明1]
「荷受け可能なフォーク部分を有するフォークリフト1に搭載され、状況測定部による測定結果をトリガとし、前記フォークリフト1の周囲を撮影する撮影装置からの映像信号に基づく所定時間分の映像を保存する車載機10であって、
センサ3群からの情報と車輌の状況を示す情報を取得して被運搬物の運搬状態を把握する制御部100と、
前記制御部100は、被運搬物が運搬中に落下したと判断した場合に前記映像を保存するためのトリガを生成させる部分と、
前記映像を保存する記憶部101及び外部メモリ106と、を備え、
前記フォーク部分は上下させることができ、
前記制御部100は、センサ3群から情報を取得する入力部104を有し、
前記フォークリフト1の車速センサ3aから得られる車速がゼロでないにも拘わらず、重量センサ3cにて得られるフォーク部分への荷重が突然軽くなると判断できる場合に、前記被運搬物が運搬中に落下したと判断する車載機10。」
上記ア及び上記(エ)~(キ)から、甲1には、次の発明(「甲1発明2」という。)が記載されていると認められる。
[甲1発明2]
「甲1発明1の車載機10から、トリガの種別の情報を含む情報を受信して運行管理DB811に集約する通信部82及び記憶部81と、
一定期間に得られた情報に基づいて作業者の運転傾向を分析する部分と、
出力部84と、を備える、通信装置8。」
上記ア及び上記(エ)~(キ)から、甲1には、次の発明(「甲1発明3」という。)が記載されていると認められる。
[甲1発明3]
「甲1発明2の通信装置8と、前記通信装置8から情報を受信するモニタ85と、を備え、
前記通信部82及び前記記憶部81は、複数の前記フォークリフト1に搭載された車載機10から、前記トリガの種別を含む情報を前記運行管理DB811に集約し、
前記通信装置8の作業者の運転傾向を分析する部分は、運行管理DB811の前記トリガの種別を含む情報に基づいて作業者の運転傾向を分析した結果を生成させる車輌運行システム。」
(2)甲2について
ア 甲2の記載
甲2には、図面とともに次の記載がある。
「【0001】
本発明は、例えばフォークリフト(フォークリフトトラックと呼ばれる場合もある)、フォークリフトの一種であるリーチリフトなどの挙動(運行時の動態)の検出に適したデータレコーダ及び、これを利用した運行管理装置に関する。ここで、「運行管理」とは、例えばフォークリフトの運行によって生じる挙動の検出や運行データの解析、当該運行データを入手するための各種設定,その他当該運行に関わる情報の内容を処理することをいう。」
「【0015】
ある実施の態様では、前記フォークリフトの移動が停止したと判定された際に、停止時点の時刻情報と、移動を再開した時点の時刻情報とをそれぞれ取得し、取得した時刻情報から当該フォークリフトの移動停止時間を算出する停止時間算出手段を、さらに備え、前記旋回判定手段が、前記フォークリフトが旋回していると判定したときの当該フォークリフトの挙動と、当該フォークリフトのフォーク操作の有無との少なくとも一方を検出して、検出結果を前記記録媒体に記録するように構成されている。
これにより、停止判定手段の判定結果に基づいて、操作傾向の一つであるフォークリフトの移動が停止している停止時間が算出されるため、精度の高い算出結果が得られることになる。また、停止時間を把握することで、フォークリフトの進行方向の切替えがスムースに行われているか否かを把握することも可能になる。さらに、旋回中の急ブレーキや急アクセル、旋回中のフォーク上下操作などの複合的な操作が行われたか否かの把握も可能になる。」
「【0022】
[実施形態例]
本実施形態例の全体構成の概要を図1に示す。本発明のデータレコーダ10は、フォークリフト20の所定の位置に搭載され、当該フォークリフト20の運行データを検出し、この検出結果を含む運行データを記録媒体装着機構に装着された記録媒体60に記録する。このデータレコーダ10は、運行データの一つであるフォークリフト20が前進又は後退するのかを示すバック信号201、フォークの上げ下げを示すフォーク上下信号202、当該フォークの傾きを示すフォーク角度信号それぞれの識別信号をフォークリフト20が備えるセンサより受け付ける。データレコーダ10の搭載位置は、例えばフォークリフト20の屋根部前方や、計器が配置されている操作パネル上など、フォークリフト20の挙動が正しく伝達され、且つ、搭載可能な位置であれば良い。」
「【0025】
<データレコーダの機能構成等>
図2は、本実施形態例のデータレコーダの機能構成図である。
データレコーダ10は、運行データ検出部101、データ通信I/F(インタフェース)102、識別信号取得部103、推定移動速度算出部104、停止時間算出部105、停止判定部106、旋回判定部107、合成加速度算出部108、記録媒体装着機構109、主制御部110を主として備えている。主制御部110は、後述する各部の動作を統括的に制御する。」
「【0027】 運行データ検出部101は、前後加速度センサ101A、左右加速度センサ101B、方位角速度センサ101Cなどのセンサ部を含んで構成される。このようなセンサ部のほか、運行データ検出部101には、センサ部から出力されるアナログデータをデジタルデータに変換する公知のデータ変換部と、方位角速度センサ101Cの出力からオフセット成分及びドリフト成分の除去処理等を施すデータ補正部とを含めることもできる。データ補正部については、例えば特開平10-132849号公報の記載を参考にすることができる。運行データ検出部101から出力された情報は、現在時刻データと関連付けて、データレコーダ10が備える図示しない不揮発性のバッファに記録される。このバッファは、データ書き込み位置を示すポインタが最終位置の次に最初の位置に戻る循環式のリングバッファであることが望ましいが、そのようなものでなければならないというものではない。バッファに記録された情報の一部又は全部は、記録媒体60にも記録される。」
「【0032】
推定移動速度算出部104は、前後加速度101Aが検出した前後加速度に基づき、フォークリフト20の移動速度を算出する。以下、車速パルスセンサ40を得て公知の手法を用いて算出されたフォークリフト20の移動速度を「計測移動速度」、推定移動速度算出部104により算出された移動速度を「推定移動速度」と呼ぶ。
停止時間算出部105は、フォークリフト20の移動が停止し、再度移動を開始するまでの時間、すなわち移動停止時間を算出する。この移動停止時間は、後に説明する停止判定部106の判定結果に基づいて算出される。
停止判定部106は、例えばデータレコーダ10が受け付けたバック信号201と推定移動速度算出部104が算出した推定移動速度とにより、フォークリフト20の移動が停止したか否かを判定する。
旋回判定部107は、方位角速度センサ101Cの検出結果から、フォークリフト20が旋回中か否かを判定する。
推定移動速度算出部104、停止時間算出部105による算出及び、停止判定部106、旋回判定部107による判定の具体的な内容については後述する。」
「【0043】
[旋回の判定と旋回時間の算出方法]
旋回判定部107は、図6に示すように、方位角速度センサ101Cが検出した方位角速度ωが所定の閾値(第3閾値)を規定時間以上超えている状態であるときに、フォークリフト20が旋回中であると判定する。図6に示すグラフは、縦軸を方位角速度[°/sec]とし、横軸を時間[sec]として、閾値がω0となっている。また、フォークリフト20が旋回している時間(旋回時間)は、方位角速度ωがこの閾値-ω0を超えている時間により求めることができる。さらに、旋回中の角速度を積分することにより旋回角度θ[°]が算出される。
【0044】
これら算出結果から、フォークリフト20の運行データとして、例えば前進中又は後退中の符号付きの旋回中の角速度の最大値、前進中又は後退中の符号付きの旋回中の合成加速度の最大値、前進中又は後退中の符号付きの旋回角度θなどを記録媒体60に記録させることができる。さらに、旋回中にフォークを上下させる操作が行われたか否かを、受け付けたフォーク上下信号202から判定したり、フォークの角度を変える操作が行われたのか否かを、受け付けたフォーク角度信号203から判定することもできる。これらの操作が急旋回中に行われると大変危険であることから、運転者の操作傾向を把握する上で重要な情報である。」
「【0062】
また、停止判定の結果に基づき、停止時間算出部105がフォークリフト20の移動が停止している停止時間を算出するため、操作傾向の一つであるこの停止時間も高い精度で把握することができる。また、フォークリフト20の進行方向の切替えがスムースに行われているか否かを把握することも可能になる。
さらに、旋回判定部107の判定結果が加わることで、旋回中の急ブレーキや急アクセル、旋回中のフォーク上下操作などの複合的な操作が行われたか否かの把握も可能になる。また、旋回状態と時間との関係から、旋回がスムースに行われているか否かを把握することも可能になる。」
「図1
[図:0001439208000006.jpg]
」
「図2
[図:0001439208000007.jpg]
」
「図7
[図:0001439208000008.jpg]
」
イ 甲2に記載された技術的事項
【0015】には、「旋回中の急ブレーキや急アクセル、旋回中のフォーク上下操作などの複合的な操作が行われたか否かの把握も可能になる。」と記載され、【0022】には、「このデータレコーダ10は、運行データの一つであるフォークリフト20が前進又は後退するのかを示すバック信号201、フォークの上げ下げを示すフォーク上下信号202、当該フォークの傾きを示すフォーク角度信号それぞれの識別信号をフォークリフト20が備えるセンサより受け付ける。」と記載され、【0044】には、「さらに、旋回中にフォークを上下させる操作が行われたか否かを、受け付けたフォーク上下信号202から判定したり、フォークの角度を変える操作が行われたのか否かを、受け付けたフォーク角度信号203から判定することもできる。これらの操作が急旋回中に行われると大変危険であることから、運転者の操作傾向を把握する上で重要な情報である。」と記載されている。
そして、フォークリフトが旋回する際にフォークリフトの車輪は駆動され、フォークリフトの「旋回」はフォークリフトの「走行」の一形態といえるから、甲2には、フォーク上下信号を用いて旋回走行中のフォーク上下操作を判定すること、旋回走行中のフォーク上下操作が危険な複合的な操作であることが記載されていると認められる。
以上のことから、甲2には次の技術的事項が記載されていると認められる。
[甲2に記載された技術的事項]
「フォークリフト20に搭載されるデータレコーダ10において、センサよりフォーク上下信号202を受け付け、フォーク上下信号を用いて旋回走行中のフォーク上下操作という危険な複合的な操作が行われたことを判定すること。」
(3)甲9について
ア 甲9の記載
甲9には、図面とともに次の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明は、ハイブリッド電気自動車の如く、駆動力の少なくとも一部を二次電池の電力によって発生させる自動車に関するものである。」
「【0016】ハイブリッド電気自動車(1)には、マイクロコンピュータからなる制御装置(15)と、ROMやRAM等からなる記憶装置(16)と、液晶ディスプレイからなる表示装置(17)と、接続装置(18)とが配備されており、接続装置(18)は、給油口(図示省略)の近傍に設置された接続ターミナル(19)と繋がっている。
【0017】一方、ガソリンスタンド等のエネルギーステーション(21)には、接続ユニット(2)が配備されており、該接続ユニット(2)は、給油ガン(図示省略)に併設された接続ジャック(図示省略)を有し、給油時に、該接続ジャックを接続ターミナル(19)に差し込むことによって、自動車(1)と接続ユニット(2)とが互いに通信可能に接続される。
【0018】接続ユニット(2)は、インターネット(3)を介して、ハイブリッド電気自動車(1)のメーカ或いはディーラに設置された一元管理装置(4)と接続されている。一元管理装置(4)はマイクロコンピュータ等から構成され、該一元管理装置(4)には、ハードディスク装置から構成される運転情報データベース(41)、使用者情報データベース(42)及び広告情報データベース(43)が接続されている。
【0019】電池特性データベース(41)には、ハイブリッド電気自動車(1)の走行状態に関する運転情報(走行距離、走行時間等の履歴、燃料消費量等)と、二次電池(14)の動作状態に関する運転情報(電圧、電流、出力、抵抗、温度等の履歴、生涯経過時間等)が、ハイブリッド電気自動車(1)毎に蓄積されており、ハイブリッド電気自動車(1)から接続ユニット(2)及びインターネット(3)を経て随時送られてくる運転情報が追加記録される。使用者情報データベース(42)には、会員登録をしているハイブリッド電気自動車(1)の使用者毎に、性別、年齢、仕事、家族構成、趣味、嗜好等の個人情報が登録されている。又、広告情報データベース(43)には、種々の業種の業者から提供される広告情報が登録されている。
【0020】図3は、ハイブリッド電気自動車(1)の制御装置(15)が実行する制御手続きを表わしている。ハイブリッド電気自動車(1)の電源がオンになると、先ずステップS1では、給油中かどうかが判断される。ここで走行中の場合はノーと判断され、ステップS2にて、ハイブリッド電気自動車(1)の走行状態と二次電池(14)の動作状態に関する上述の運転情報が収集される。収集された運転情報は記憶装置(16)に記憶される。ガソリンスタンドで給油中であって、ハイブリッド電気自動車(1)の接続ターミナル(19)を接続ユニット(2)と接続した状態では、ステップS1にてイエスと判断されて、ステップS3に移行し、接続装置(18)をオンとした後、ステップS4にて、記憶装置(16)に記憶されている運転情報を接続ユニット(2)からインターネット(3)を経由して一元管理装置(4)へ送信する。尚、運転情報には、ハイブリッド電気自動車(1)を識別するための識別データが含まれている。
【0021】一元管理装置(4)においては、図4に示す如くステップS21によって運転情報の受信の有無が監視されており、運転情報の受信があったとき、ステップS22にて、受信した運転情報をハイブリッド電気自動車(1)毎に運転情報データベース(41)に記録する。続いて、ステップS23では、ハイブリッド電気自動車(1)の走行パターンを判別する。例えば図5に示す如く、走行時間の経過に伴う二次電池(14)の出力の変動パターンによって、同図(a)を山間部の走行パターン、同図(b)を市街地の走行パターン、同図(c)を田舎道或いは高速道路の走行パターンと判別することが出来る。尚、同図(a)の山間部走行パターンは、加速減速時の電池出力と時間の積が所定値を上回っているかどうかで判断することが出来る。同図(b)の市街地走行パターンは、加速減速の単位時間当たりの回数が所定値を上回っているかどうかで判断することが出来る。又、同図(c)の高速道路走行パターンは、エンジンの回転数が一定となる時間が所定値を上回っているかどうかで判断することが出来る。
【0022】次に図4のステップS24にて、二次電池(14)の状態を判定する。即ち、一元管理装置(4)においては、二次電池(14)の使用開始からの生涯経過時間、生涯走行距離、給油毎の走行距離、経過時間、燃料消費量、燃費、車温度履歴、エンジン回転数履歴、及び電池の履歴(充電深度(SOC)、電圧、電流、出力、温度)に基づいて、二次電池(14)の寿命をシミュレーションするコンピュータプログラムが登録されており、該シミュレーションの実行によって、現状の電池の特性、全寿命における位置付け、寿命時期の予測を行なう。例えば図6に示す如く、生涯経過時間T、温度t、電圧V、充電深度SOCを変数とする寿命予測関数fに基づいて、現在の生涯経過時間Tにおける換算出力P(初期の換算出力に対する比率)を導出し、更にその結果に図7の判断基準を適用して、寿命時期が初期であるか、中期であるか、或いは末期であるかを判定する。
【0023】又、図6に示す寿命予測関数fにおいて、生涯経過時間Tに対する電池出力Pの変化率ΔP/ΔTを算出し、その結果が所定値を上回っているとき、二次電池(14)に何らかの異常が発生していると診断して、ハイブリッド電気自動車(1)の使用者に点検を促すこととする。そして、上述の寿命予測の結果や診断の結果を診断データとする。」
「【0026】そして、図4のステップS26では、上述の診断データ、運用切替えデータ及び広告情報を含む管理情報を作成し、ステップS27にて該管理情報をインターネット(3)を経由して、ハイブリッド電気自動車(1)が給油しているエネルギーステーション(21)の接続ユニット(2)へ送信する。その後、ステップS28にて、一元管理装置(4)の電源がオフとなったかどうかを判断し、ノーの場合はステップS21に戻って、他のエネルギーステーション(21)の他のハイブリッド電気自動車(1)からの運転情報の受信に待機する。
【0027】ハイブリッド電気自動車(1)においては、図3のステップS5にて、一元管理装置(4)からインターネット(3)を経由して送られてくる管理情報を接続ユニット(2)から受信し、ステップS6にて、受信した管理情報を表示装置(17)に表示する。例えば、管理情報に含まれる二次電池(14)の診断情報が表示されることによって、ハイブリッド電気自動車(1)の使用者は、二次電池(14)の状態を認識することが出来、二次電池(14)を早期に点検修理に出すことが可能となる。又、表示装置(17)に広告情報が表示されることによって、ハイブリッド電気自動車(1)の使用者は有益な情報を入手することが出来る。」
「図1
[図:0001439208000009.jpg]
」
「図4
[図:0001439208000010.jpg]
」
イ 甲9に記載された発明
上記アから、甲9には、次の発明(以下「甲9発明1」という。)が記載されていると認められる。
[甲9発明1]
「ハイブリッド電気自動車1の接続装置18から、一元管理装置4に二次電池14の動作状態に関する運転情報(電圧、電流、出力、抵抗、温度等の履歴、生涯経過時間等)が接続ユニット(2)及びインターネット(3)を経て送られて運転情報データベース41に追加記録され、前記一元管理装置4は、二次電池14の使用開始からの生涯経過時間、生涯走行距離、給油毎の走行距離、経過時間、燃料消費量、燃費、車温度履歴、エンジン回転数履歴、及び電池の履歴(充電深度(SOC)、電圧、電流、出力、温度)に基づいて、二次電池14の寿命をシミュレーションするコンピュータプログラムが登録されており、該シミュレーションの実行によって、現状の電池の特性、全寿命における位置付け、寿命時期の予測を行ない、前記寿命予測の結果や診断の結果を診断データとして、前記診断データを含む管理情報を作成し、エネルギーステーション21の接続ユニット2へ送信する一元管理装置4。」
上記アから、甲9には、次の発明(以下「甲9発明2」という。)が記載されていると認められる。
[甲9発明2]
「甲9発明1の一元管理装置4と、前記一元管理装置4から前記寿命予測の結果を含む前記管理情報を受信するハイブリッド電気自動車1と、を備える自動車用電池管理システム。」
上記アから、甲9には、次の発明(以下「甲9発明3」という。)が記載されていると認められる。
[甲9発明3]
「前記一元管理装置4において、前記一元管理装置4に複数の前記ハイブリッド電気自動車の接続装置18から二次電池14の動作状態に関する運転情報(電圧、電流、出力、抵抗、温度等の履歴、生涯経過時間等)が接続ユニット(2)及びインターネット(3)を経て送られて運転情報データベース41に追加記録され、前記一元管理装置4は、二次電池14の使用開始からの生涯経過時間、生涯走行距離、給油毎の走行距離、経過時間、燃料消費量、燃費、車温度履歴、エンジン回転数履歴、及び電池の履歴(充電深度(SOC)、電圧、電流、出力、温度)に基づいて、二次電池14の寿命をシミュレーションするコンピュータプログラムが登録されており、該シミュレーションの実行によって、現状の電池の特性、全寿命における位置付け、寿命時期の予測を行ない、前記寿命予測の結果や診断の結果を診断データとして、前記診断データを含む管理情報を作成する甲9発明2に記載の自動車用電池管理システム。」
(4)甲10について
ア 甲10の記載
甲10には、図面とともに次の記載がある。
「【0023】
図1に示す通り、この危険情報通信システムは、ナビゲーション装置(車載危険地点通知装置の一例に相当する)1、車載センサ群2、およびセンタ(潜在危険地点検出装置の一例に相当する)3を含んでいる。ナビゲーション装置1および車載センサ群2は、複数の車両のそれぞれに1組搭載される。
【0024】
図2~図5に、この危険情報通信システムの作動の流れを概略的に示す。各車両に搭載されたナビゲーション装置1は、図2に示すように、同じ車両に搭載された車載センサ群2からの情報に基づいて危険事態の発生を検出する度に、その危険事態の情報を含む危険発生情報を作成し(ステップ101)、作成した複数の危険発生情報を適切な時期にまとめて(または作成の度に)センタ3に送信する(ステップ102)。
【0025】
センタ3は、図2に示すように、これら危険発生情報を受信し(ステップ201)、更にヒヤリハットマップDBとして記録する(ステップ202)。そしてセンタ3は、図3に示すように、適切な時期にヒヤリハットマップDBを用いて統計処理を行い(ステップ203)、その統計処理の結果を利用して潜在危険地点を抽出し(ステップ204)、抽出した潜在危険地点の情報をヒヤリハットマップDBに追加する(ステップ205)。」
「図1
[図:0001439208000011.jpg]
」
イ 甲10に記載された技術的事項
上記アの記載から、甲10には次の技術的事項が記載されていると認められる。
[甲10に記載された技術的事項]
「車載装置が危険状態の発生を検出して、その危険事態の情報を含む危険発生情報を作成してセンタに送信し、センタが危険発生情報を受信するとヒヤリハットマップDBとして記録し、ヒヤリハットマップDBを用いて統計処理を行い、潜在危険地点の情報をヒヤリハットマップDBに追加すること。」
2 新規性及び進歩性について
以下、本件の請求項1~11に係る発明を、その番号に応じて本件発明1などという。
(1)本件発明4
ア 対比
本件発明4と甲1発明1とをその機能、構造又は技術的意義を考慮して対比すると、後者の「荷受け可能なフォーク部分」は、前者の「荷物を保持可能な荷物保持部」に相当し、後者の「フォークリフト1」は、前者の「荷役車両」に相当する。
後者の「状況測定部による測定結果をトリガとし、」は、前者の「所定の条件を満たしたときに、」に相当する。
後者の「前記フォークリフト1の周囲」は前者の「前記荷役車両近傍」に相当し、後者の「映像を保存する車載機10」は前者の「情報を記録する車載器」に相当するから、後者の「前記フォークリフト1の周囲を撮影する撮影装置からの映像信号に基づく所定時間分の映像を保存する車載機10」は、前者の「前記荷役車両近傍の状況を表す情報を記録する車載器」に相当する。
後者の「被運搬物」は、前者の「荷物」に相当し、後者の「センサ3群からの情報と車輌の状況を示す情報を取得して被運搬物の運搬状態を把握する」は、前者の「前記荷物の運搬状況を監視する」に相当し、後者の「制御部100」は、前者の「監視部」に相当する。
後者の「被運搬物が運搬中に落下したと判断した場合」は、前者の「前記荷物の落下」「を検出した場合」に相当し、後者の「前記映像を保存するためのトリガを生成させる部分は、前者の「前記情報を記録するためのトリガを発生させるトリガ発生部」に相当する。
後者の「前記映像」は、「フォークリフト1の周囲を撮影する撮影装置からの映像信号に基づく所定時間分の映像」を意味するから、後者の「前記映像を保存する記憶部101及び外部メモリ106」は、前者の「前記情報として、少なくとも、前記荷役車両近傍の状況を表す画像を記録する記録部」に相当する。
後者の「前記フォーク部分は上下させることができ、」は、前者の「前記荷物保持部は昇降可能であり、」に相当する。
甲1の[0052]には、「センサ3は、車速を測定する車速センサ、車体への衝撃を検知するための加速度センサ等の各種センサを複数用いる。センサ3群はこれらを総称したものであり、」と記載され、センサ3群は車速センサ3aを含んでおり、車速センサ3aからの信号は荷役車両に対して行われた操作が反映された信号といえるから、後者の「センサ3群から情報を取得する入力部104を有し」は、前者の「前記荷役車両に対して行われた操作を示す操作信号を取得する操作信号取得部を含み」に相当する。
本件特許明細書の「荷役車両を走行させながら荷物保持部を昇降させる二重操作、又は、荷物の落下、といった、荷役車両に特有の事象又は状態の変化を検出してその状況を表す画像等の情報を記録できる。よって、荷役車両の管理者は、荷役車両の危険挙動や稼働状況を容易に把握できる。」との記載(【0007】)を踏まえれば、後者の「前記フォークリフト1の車速センサ3aから得られる車速がゼロでないにも拘わらず、重量センサ3cにて得られるフォーク部分への荷重が突然軽くなると判断できる場合に、前記被運搬物が運搬中に落下したと判断する」ことと、前者の「前記荷役車両が走行中であることを示す操作信号、及び前記荷物保持部が昇降されたことを示す操作信号を取得した場合に、前記二重操作を検出する」こととは、「荷役車両が走行中の危険な状況を検出する」点に限り一致する。
以上のことから、本件発明4と甲1発明1とは、次の一致点で一致し、次の相違点1で相違する。
[一致点]
「荷物を保持可能な荷物保持部を有する荷役車両に搭載され、所定の条件を満たしたときに、前記荷役車両近傍の状況を表す情報を記録する車載器であって、
前記荷物の運搬状況を監視する監視部と、
前記監視部が、前記荷役車両に対する二重操作、前記荷物の有無、前記荷物の落下、及び前記荷役車両の幅方向における前記荷物の揺れの少なくともいずれか一を検出した場合に、前記情報を記録するためのトリガを発生させるトリガ発生部と、
前記情報として、少なくとも、前記荷役車両近傍の状況を表す画像を記録する記録部と、
を備え、
前記荷物保持部は昇降可能であり、
前記監視部は、
前記荷役車両に対して行われた操作を示す操作信号を取得する操作信号取得部を含み、
前記荷役車両が走行中の危険な状況を検出する
車載器。」
[相違点1]
「荷役車両が走行中の危険な状況を検出する」ことに関し、本件発明4は、「前記荷役車両が走行中であることを示す操作信号、及び前記荷物保持部が昇降されたことを示す操作信号を取得した場合に、前記二重操作を検出する」のに対し、甲1発明1は「前記フォークリフト1の車速センサ3aから得られる車速がゼロでないにも拘わらず、重量センサ3cにて得られるフォーク部分への荷重が突然軽くなると判断できる場合に、前記被運搬物が運搬中に落下したと判断する」ものであり、「前記荷役車両が走行中であることを示す操作信号」は取得するものの、「前記荷物保持部が昇降されたことを示す操作信号を取得した場合に、前記二重操作を検出」していない点。
イ 判断
上記相違点1について判断する。
甲1発明と甲2記載の技術的事項は、荷役車両の運行管理ための車載装置という点で技術分野が共通し、「荷役車両が走行中の危険な状況」を把握するという課題も共通している。よって、甲2記載の技術的事項に接した当業者であれば、甲1発明1において、フォークリフトの走行中の危険な状況を検知するべく、甲2記載の技術的事項を適用することにより、相違点1に係る本件発明4の構成に想到することは容易になし得たものといえる。
そして、本件発明4は、甲1発明1及び甲2記載の技術的事項から予測し得ない格別な効果を奏するものとも認められない。
したがって、本件発明4は、甲1発明1及び甲2記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明することができたものである。
(2)本件発明6
ア 対比
請求項6は請求項1~4のいずれか一項を引用しているところ、請求項4を引用する本件発明6に着目して本件発明6と甲1発明2とをその機能、構造又は技術的意義を考慮して対比すると、上記(1)アの相当関係に加え、次のことがいえる。
後者の「トリガの種別を含む情報」は、前者の「前記トリガの発生に関わるトリガ情報」に相当し、後者の「トリガの種別の情報を含む情報を受信して運行管理DB811に集約する通信部82及び記憶部81」は、前者の「前記トリガの発生に関わるトリガ情報を収集するトリガ情報収集部」に相当する。
そして、後者の「一定期間に得られた情報」は、前者の「所定期間内に発生した前記トリガの前記トリガ情報」に相当し、後者の「作業者の運転傾向の分析」は、前者の「前記荷役車両の運行に関する解析」に相当するから、後者の「一定期間に得られた情報に基づいて作業者の運転傾向を分析する部分」は、前者の「所定期間内に発生した前記トリガの前記トリガ情報に基づいて、前記荷役車両の運行に関する解析を行う解析部」に相当する。
後者の「出力部84」は、前者の「結果を出力する出力部」に相当し、後者の「通信装置8」は前者の「解析装置」に相当する。
以上のことから、本件発明6と甲1発明2とは、上記(1)アの一致点に加えて次の一致点で一致し、上記相違点1で相違する。
[一致点]
「車載器から、
前記トリガの発生に関わるトリガ情報を収集するトリガ情報収集部と、
所定期間内に発生した前記トリガの前記トリガ情報に基づいて、前記荷役車両の運行に関する解析を行う解析部と、
解析結果を出力する出力部と、
を備える解析装置。」
イ 判断
上記相違点1について検討する。
本件発明6は「解析装置」の発明である。請求項6の記載によれば「解析装置」はトリガ情報収集部と、解析部と、出力部とを備えるものであって、車載器は解析装置とは別異のものであって、解析装置自体の構成要素ではない。そして、上記相違点1は車載器が有する構成に係る相違点であって、上記相違点1に係る本件発明6の車載器の構成が、解析装置の構成を特定するものとはいえないから、上記相違点1は本件発明6において実質的な相違点ではない。
してみれば、本件発明6は、甲1発明2である。
また、そうでないとしても、本件発明6は、甲1発明2に基いて当業者が容易に発明することができたものである。
なお、上記では請求項4を引用する本件発明6に着目したが、請求項1~3を引用する本件発明6に着目したとしても、本件発明6の「車載器」が有する、請求項1~3の記載により特定される車載器としての構成は、解析装置の構成を特定するものとはいえない。よって、請求項1~3を引用する本件発明6に着目したとしても、本件発明6は、甲1発明2であるか、甲1発明2に基いて当業者が容易に発明することができたものである。
(3)本件発明7
ア 対比
請求項7は請求項5を引用し、請求項5は請求項1~4のいずれか一項を引用しているところ、請求項4及び請求項5を引用する本件発明7に着目して本件発明7と甲9発明1とをその機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
後者の「ハイブリッド電気自動車1の接続装置18」と前者の「請求項5に記載の車載器」とは、「車載器」という限りにおいて一致する。
後者の「一元管理装置4」には、「二次電池14の動作状態に関する運転情報(電圧、電流、出力、抵抗、温度等の履歴、生涯経過時間等)が接続ユニット(2)及びインターネット(3)を経て送られて運転情報データベース41に追加記録され」るところ、後者の「二次電池14の動作状態に関する運転情報」のうちの「電圧」及び「温度等の履歴、生涯経過時間」は、前者の「前記電圧状況及び前記稼働状況を示すバッテリ情報」に相当し、後者の「一元管理装置4」の「運転情報データベース41」には、「二次電池14の動作状態に関する運転情報」が送られて「追加記録」され、「一元管理装置4」に「運転情報」が集められていると理解されるから、後者の「一元管理装置4」は、前者の「バッテリ情報収集部」に相当する。
後者の「一元管理装置4」は、「二次電池14の使用開始からの生涯経過時間、生涯走行距離、給油毎の走行距離、経過時間、燃料消費量、燃費、車温度履歴、エンジン回転数履歴、及び電池の履歴(充電深度(SOC)、電圧、電流、出力、温度)に基づいて、二次電池14の寿命をシミュレーションするコンピュータプログラムが登録されており、該シミュレーションの実行によって、現状の電池の特性、全寿命における位置付け、寿命時期の予測を行な」うところ、二次電池の寿命が尽きた際に二次電池を交換することは自明であり、「寿命時期の予測」は二次電池の交換時期を予測するものともいえるから、後者の「二次電池14の使用開始からの生涯経過時間、生涯走行距離、給油毎の走行距離、経過時間、燃料消費量、燃費、車温度履歴、エンジン回転数履歴、及び電池の履歴(充電深度(SOC)、電圧、電流、出力、温度)に基づいて、」「寿命時期の予測を行な」う「一元管理装置4」は、前者の「所定期間内における前記バッテリ情報に基づいて、前記バッテリの交換に関する予測情報を生成する予測部」に相当する。
後者の「一元管理装置4は、」「前記寿命予測の結果や診断の結果を診断データとして、前記診断データを含む管理情報を作成し、エネルギーステーション21の接続ユニット2へ送信する」から、前者の「前記予測情報を出力する出力部」にも相当し、後者の「一元管理装置4」は、前者の「解析装置」にも相当する。
以上のことから、本件発明7と甲9発明1とは、次の一致点で一致し、次の相違点2で相違する。
[一致点]
「車載器から、前記電圧状況及び前記稼働状況を示すバッテリ情報を収集するバッテリ情報収集部と、
所定期間内における前記バッテリ情報に基づいて、前記バッテリの交換に関する予測情報を生成する予測部と、
前記予測情報を出力する出力部と、
を備える解析装置。」
[相違点2]
車載器に関し、本件発明7は、「荷物を保持可能な荷物保持部を有する荷役車両に搭載され、所定の条件を満たしたときに、前記荷役車両近傍の状況を表す情報を記録する車載器であって、前記荷物の運搬状況を監視する監視部と、前記監視部が、前記荷役車両に対する二重操作、前記荷物の有無、前記荷物の落下、及び前記荷役車両の幅方向における前記荷物の揺れの少なくともいずれか一を検出した場合に、前記情報を記録するためのトリガを発生するトリガ発生部と、前記情報として、少なくとも、前記荷役車両近傍の状況を表す画像を記録する記録部と、を備え、前記荷物保持部は昇降可能であり、前記監視部は、前記荷役車両に対して行われた操作を示す操作信号を取得する操作信号取得部を含み、前記荷役車両が走行中であることを示す操作信号、及び前記荷物保持部が昇降されたことを示す操作信号を取得した場合に、前記二重操作を検出する」車載器であって、「前記荷役車両のバッテリの電圧状況を監視するバッテリ監視部と、前記荷役車両の稼働状況を監視する稼働監視部と、前記電圧状況と前記稼動状況とに基づいて、前記バッテリが所定条件を満たすか否かを判定する判定部と」を備える車載器であるのに対し、甲9発明1は、そのような構成を有しない「ハイブリッド電気自動車1」の「接続装置18」である点。
イ 判断
上記相違点2について検討する。
上記相違点2も車載器が有する構成に係る相違点であるから、上記(2)イと同様のことがいえ、上記相違点2は本件発明7において実質的な相違点ではない。
してみれば、本件発明7は、甲9発明1である。
仮にそうでないとしても、本件発明7は、甲9発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
なお、上記では請求項4を間接的に引用する本件発明7に着目したが、請求項1~3を間接的に引用する本件発明7に着目したとしても、本件発明7の「車載器」が有する、請求項1~3の記載により特定される車載器としての構成は、解析装置の構成を特定するものとはいえない。よって、請求項1~3を間接的に引用する本件発明7に着目したとしても、本件発明7は、甲9発明1であるか、甲9発明1に基いて当業者が容易に発明することができたものである。
(4)本件発明8
ア 対比
請求項8は請求項6を引用し、請求項6は請求項1~4のいずれか一項を引用しているところ、請求項4及び請求項6を引用する本件発明8に着目して本件発明8と甲1発明3とをその機能、構造又は技術的意義を考慮して対比すると、上記(1)ア、(2)アの相当関係に加え、後者の「受信するモニタ85」は、前者の「受信する受信装置」に相当し、後者の「車輌運行システム」は、前者の「解析システム」に相当する。
以上のことから、本件発明8及と甲1発明3とは、上記(1)ア、(2)アの一致点に加えて次の一致点で一致し、上記相違点1に加えて次の相違点3で相違する。
[一致点]
「解析装置と、
前記解析装置から前記解析結果を受信する受信装置と、
を備える解析システム。」
[相違点3]
本件発明8は、前記解析結果を受信するのに対し、甲1発明3は、モニタ85が、分析結果を受信するか否かが不明である点。
イ 判断
上記相違点1については、上記(2)イと同様のことがいえ、本件発明8において実質的な相違点とはならない。
次に、上記相違点3について検討すると、作業者の運転傾向の分析結果を利用するためには、その出力を行うことが必要であるところ、甲1発明3において、分析結果をモニタ85に送信してモニタ85で出力するようにし、相違点3に係る本件発明8の構成とすることは、当業者が適宜なし得たことである。
してみれば、本件発明8は、甲1発明3に基いて当業者が容易に発明することができたものである。
(5)本件発明9
ア 対比
請求項9の「請求項7に記載の車載器及び解析装置」との記載は、後述する第5のとおり不明確であるため、「請求項7に記載の解析装置」と解して、以下、検討する。
請求項9は請求項7を引用し、請求項7は請求項5を引用し、請求項5は請求項1~4のいずれか一項を引用しているところ、請求項4及び請求項5及び請求項7を引用する本件発明9に着目して本件発明9と甲9発明2とをその機能、構造又は技術的意義を考慮して対比すると、上記(3)アの相当関係に加え、次のことがいえる。
後者の「前記寿命予測の結果を含む前記管理情報」は、前者の「前記予測情報」に相当し、後者の「ハイブリッド電気自動車1」は情報を受信するものであるから前者の「受信装置」に相当し、後者の「自動車用電池管理システム」は、前者の「解析システム」に相当する。
以上のことから、本件発明9と甲9発明2とは、上記(3)アの一致点に加えて次の一致点で一致し、上記相違点2で相違する。
[一致点]
「解析装置と、
前記解析装置から前記予測情報を受信する受信装置と、
を備える解析システム。」
イ 判断
上記相違点2については、上記(3)イで判断したとおりである。
してみれば、本件発明9は、甲9発明2である。
仮にそうでないとしても、本件発明9は、甲9発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである
(6)本件発明10
ア 対比
請求項10は請求項8を引用し、請求項8は請求項6を引用し、請求項6は請求項1~4のいずれか一項を引用しているところ、請求項4及び請求項6及び請求項8を引用する本件発明10に着目して本件発明10と甲1発明3とをその機能、構造又は技術的意義を考慮して対比すると、上記(1)ア、(2)ア、(4)アの相当関係に加え、次のことがいえる。
後者の「前記通信部82及び前記記憶部81」は、前者の「前記トリガ情報収集部」に相当し、後者の「複数の前記フォークリフト1に搭載された前記車載機10から、前記トリガ種別を含む情報を前記運行DB811に集約し、」という事項は、前者の「複数台の荷役車両のそれぞれに搭載された複数の前記車載器から、前記トリガ情報を収集し、」という事項に相当し、後者の「前記通信装置8の作業者の運転傾向を分析する部分」は、前者の「前記解析部」に相当し、後者の「運行管理DB811の前記トリガの種別を含む情報」は、前者の「収集した前記トリガ情報」に相当する。
後者の「作業者の運転傾向を分析した結果」は、作業者の運転の指導に役立つのは明らかだから、前者の「前記荷役車両の運行に関する指導書」に相当し、それと同時に、後者の「作業者の運転傾向を分析した分析結果」は当然に前者の「分析レポート」にも相当する。
後者の「車輌運行システム」は、前者の「解析システム」に相当する。
以上のことから、本件発明10及と甲1発明3とは、上記(1)ア、(2)ア、(4)アの一致点に加えて次の一致点で一致し、上記相違点1、上記相違点3で相違する。
[一致点]
「前記解析装置において、
前記トリガ情報収集部は、複数台の荷役車両のそれぞれに搭載された複数の前記車載器から、前記トリガ情報を収集し、
前記解析部は、収集した前記トリガ情報に基づいて、前記荷役車両の運行に関する指導書、分析レポート、ランキング、ヒートマップ、及びヒヤリハットマップの少なくともいずれか一を、前記解析結果として生成する
解析システム。」
イ 判断
上記相違点1、上記相違点3については、上記(2)イ、(4)イで判断したとおりである。
してみれば、本件発明10は、甲1発明3に基いて当業者が容易に発明することができたものである。
次に分析結果が「前記荷役車両の運行に関する」「ランキング、ヒートマップ、及びヒヤリハットマップの少なくともいずれか一つ」である場合について追加的に検討する。
甲1発明3において、運転傾向の分析を行う際に、分析結果の具体的な態様として「ランキング」を生成することは、当業者が容易になし得たことである。
また、甲1の[0131]には、「同一の作業現場にて運用される複数のフォークリフト1について解析を行なうことで、その作業現場に配置されるべきフォークリフト1の数、被移載物である荷物の保管位置及び保管量の適正配置の提示など、種々の応用が可能になる。また、リアルタイムに解析することで、より効率的な導線を提示するなどの運転支援も可能である。」と記載されており、効率的な導線を見いだすためにフォークリフトの周囲の混雑状況を把握することは有用であるから、甲1発明3において、ヒートマップを生成することも当業者が容易になし得たことである。
そして、ヒヤリハットマップに関して、甲10には、「車載装置が危険状態の発生を検出して、その危険事態の情報を含む危険発生情報を作成してセンタに送信し、センタが危険発生情報を受信するとヒヤリハットマップDBとして記録し、ヒヤリハットマップDBを用いて統計処理を行い、潜在危険地点の情報をヒヤリハットマップDBに追加する」技術的事項が記載されている。
甲1発明3と甲10に記載された技術的事項は、車載装置に関する点で技術分野が関連し、車載装置を用いて危険の発生を検出してその情報を解析する点で共通しているから、甲1発明3において、甲10に記載された技術的事項を適用し、ヒヤリハットマップを生成することは、当業者が容易になし得たことである。
(7)本件発明11
ア 対比
請求項11は請求項9を引用し、請求項9は請求項7を引用し、請求項7は請求項5を引用し、請求項5は請求項1~4のいずれか一項を引用しているところ、請求項4及び請求項5及び請求項7及び請求項9を引用する本件発明11に着目して本件発明11と甲9発明3とをその機能、構造又は技術的意義を考慮して対比すると、上記(3)ア、(5)アの相当関係に加え、次のことがいえる。
自動車を用いて荷物を運ぶことは通常行われているから、後者の「ハイブリッド電気自動車」は、前者の「荷役車両」に相当する。
後者の「一元管理装置4」の「運転情報データベース41」には、「二次電池14の動作状態に関する運転情報」が送られて「追加記録」され、「一元管理装置4」に「運転情報」が集められていると理解されるから、後者の「一元管理装置4」は、前者の「バッテリ情報収集部」に相当する。
そうすると、「前記一元管理装置4に複数の前記ハイブリッド電気自動車から二次電池14の動作状態に関する運転情報(電圧、電流、出力、抵抗、温度等の履歴、生涯経過時間等)が接続ユニット(2)及びインターネット(3)を経て送られて運転情報データベース41に追加記録され」という事項は、前者の「前記バッテリ情報収集部は、複数台の荷役車両のそれぞれに搭載された複数の前記車載器から、前記バッテリ情報を収集し」という事項に相当する。
後者の「前記一元管理装置4」は、前者の「前記予測部「二次電池14の使用開始からの生涯経過時間、生涯走行距離、給油毎の走行距離、経過時間、燃料消費量、燃費、車温度履歴、エンジン回転数履歴、及び電池の履歴(充電深度(SOC)、電圧、電流、出力、温度)に基づいて、」「寿命時期の予測を行ない、」「前記寿命予測の結果」を含む管理情報を作成する」という事項は、前者の「前記予測部は、収集した前記バッテリ情報に基づいて、前記予測情報を生成する」という事項に相当し、後者の「自動車用電池管理システム」は、前者の「解析システム」に相当する。
以上のことから、本件発明11と甲9発明3とは、上記(3)ア、(5)アの一致点に加え次の一致点で一致し、上記相違点2で相違する。
[一致点]
「前記解析装置において、前記バッテリ情報収集部は、複数台の荷役車両のそれぞれに搭載された複数の前記車載器から、前記バッテリ情報を収集し、前記予測部は、収集した前記バッテリ情報に基づいて、前記予測情報を生成する解析システム。」
イ 判断
上記相違点2については、上記3(2)で判断したとおりである。
したがって、本件発明11は甲9発明3である。
仮にそうでないとしても、本件発明11は、甲9発明3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
3 明確性について
請求項9には、「請求項7に記載の車載器及び解析装置と、前記解析装置から前記予測情報を受信する受信装置と、を備える解析システム。」と記載されている。
しかしながら、請求項7は「解析装置」の発明であり、「車載器及び解析装置」の発明ではないから、「請求項7に記載の車載器及び解析装置」がどのようなものを特定しているのかを理解することができない。
したがって、請求項9に係る発明は明確でない。
請求項9を引用する請求項11についても同様である。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議の申立ての理由について
1 取消理由通知において採用しなかった特許異議の申立ての理由(だたし、上記第4の取消理由のない、請求項1~3、5に係る特許に対するものに限る。)は、概ね、次のとおりである。
(1)請求項5に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証~甲第9号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)発明の詳細な説明には、画像解析による二重操作及び荷物の落下の検出について特定の実施の形態が記載されているのみであり、請求項1及びこれを引用する請求項5に係る特許発明に含まれる他の画像解析手法による二重操作及び荷物の落下の検出についてどのように実施するのかを理解することはできないから、本件特許は、特許法第36条第4第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(3)発明の詳細な説明には、画像解析による二重操作及び荷物の落下の検出について特定の実施の形態が記載されているのみであり、出願時の技術常識に照らしても、請求項1及びこれを引用する請求項5に係る特許発明の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとは認められないから、請求項1及びこれを引用する請求項5に係る本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(4)請求項1、2における「前記荷役車両に対する二重操作」との記載、請求項2における「前記荷物有りを検出した場合において、前記荷物の領域の少なくとも一部が欠落したことを検出したとき、前記荷物の落下を検出する」との記載は、発明特定事項に技術的な不備があるから、請求項1、2及びこれらを引用する請求項3、5に係る本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
2 当審合議体の判断
(1)本件発明5の進歩性について
本件発明4を引用する本件発明5と甲1発明1とをその機能、構造又は技術的意義を考慮して対比すると、上記第4の2(1)アにおける一致点及び相違点1を有し、更に、次の相違点7において相違する。
[相違点7]
本願発明5の車載器は「前記荷役車両のバッテリの電圧状況を監視するバッテリ監視部と、前記荷役車両の稼働状況を監視する稼働監視部と、前記電圧状況と前記稼働状況とに基づいて、前記バッテリが所定条件を満たすか否かを判定する判定部」を備えているのに対し、甲1発明1の車載機10はそのような構成を備えていない点。
相違点7について検討する。
上記第4の1(3)で検討したとおり、甲9には甲9発明1が記載されている。しかし、甲9発明1は、ハイブリッド電気自動車1の二次電池14に関する運転情報が、接続ユニット(2)及びインターネット(3)を経て一元管理装置4へ送られ、一元管理装置4において電池の特性、寿命時期の予測等を行うものであり、車載器においてこれらの予測等を行うものではない。
また、甲9以外の申立人が提出した証拠も、「車載器」が「前記荷役車両のバッテリの電圧状況を監視するバッテリ監視部と、前記荷役車両の稼働状況を監視する稼働監視部と、前記電圧状況と前記稼働状況とに基づいて、前記バッテリが所定条件を満たすか否かを判定する判定部」を備えることを示す証拠ではない。
そして、本件発明5は、相違点7に係る構成を備えることによって、「荷役車両の稼働時間とバッテリ電圧とに基づいて、例えば電費が所定値を下回ると判定した場合に、適切なバッテリ管理を促すことが可能となる。よって、適切なバッテリ管理によるバッテリ寿命の延長及びバッテリ交換回数の削減に役立つ。」(【0012】)という効果を奏する。
したがって、本件発明5は、甲1発明1及び甲2~甲10に記載されている事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)実施可能要件について
請求項1には「前記監視部は、前記カメラが撮影した画像を解析して、前記荷役車両に対する二重操作、及び前記荷物の落下の少なくともいずれか一を検出する画像解析部を含む」と記載されているところ、発明の詳細な説明には、「<画像解析によるトリガ検出>
図5及び図6を参照して、車載器10が、画像解析によるトリガ検出を行う動作を説明する。図5は、図4に示した、荷物の運搬状況の監視処理(S1)の詳細を示し、車載器10が、カメラ23Bが撮影した画像を解析して、荷物の有無、二重操作の有無、荷物の落下、及び荷物の揺れを検出する動作を示す。」(【0054】)、「車載器10は、画像201における走行検出範囲201aを解析する(S21)。走行検出範囲201aは、図6に示すように、画像201上方の左右端部近傍の二領域に設定される。車載器10は、連続する複数フレームの画像201における、走行検出範囲201aの双方に現れる変化に基づいて、フォークリフト90が走行中か否かを検出する。」(【0055】)、「次に車載器10は、画像201における荷物検出範囲201b-1~201b-3を解析する(S23)。荷物検出範囲201b-1、201b-2、201b-3は、画像201において、爪91の少なくとも一部を含む所定の領域に設定される。画像201において、爪91の先端側からバックレスト92側にかけて、荷物検出範囲201b-1、201b-2、201b-3が、それぞれ設定される。車載器10は、荷物検出範囲201b-1~201b-3のそれぞれにおいて、荷物(荷物100又はパレット110)に相当するパターンの認識を実行する。車載器10は、認識結果に基づいて、爪91の上に荷物が存在するか否か、すなわち、荷物の有無を識別する。」(【0056】)、「車載器10は、荷物有りを検出した場合において、荷物の領域の一部が欠落するか、又は、荷物の領域の位置又は大きさが変化したか、を判断する(S27)。欠落及び変化のいずれもない場合には、車載器10は、二重操作、荷物の落下、及び荷物の揺れなしを検出する(S28)。荷物の領域の一部が欠落した場合、車載器10は、荷崩れ発生等による荷物の落下ありを検出する(S29)。画像201上における荷物の領域の位置又は大きさが前フレームの画像におけるものから変化した場合において、大きさが変化した場合には(S30でYES)、車載器10は、二重操作ありを検出する(S31)。」(【0057】)と記載されており、画像を解析して荷役車両に対する二重操作や荷物の落下を検出する手法が少なくとも1つは記載されているから、発明の詳細な説明の記載は、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができる程度の記載があるといえる。
したがって、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1及び請求項1を引用する本件発明5の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。
(3)サポート要件について
本件発明が解決しようとする課題は、「荷役車両に特有の事象の発生又は状態の変化をトリガとする記録を行うことができる車載器、並びに、この記録を利用した解析装置及び解析システムを提供すること」(【0005】である。
当該課題を解決する手段として、発明の詳細な説明には「<車載器の動作例>図1に示した車載器10の動作例を図4に示す。車載器10は、図2及び図3に示したフォークリフト90に搭載され、制御部11が車載器10の各機能部と連動して図4に示す動作を行う。制御部11は、荷物の運搬状況を監視する機能と、運搬状況が所定の条件を満たした場合に、フォークリフト90近傍の状況を表す画像等の情報を記録するためのトリガを発生させるトリガ発生機能とを有する。図4は、フォークリフト90の稼働状況(荷物の有無)及び危険挙動(二重操作、荷物の落下、荷物の揺れ)が発生した場合に、フォークリフト90近傍の状況を表す情報を記録する動作を示す。」(【0050】)と記載されており、二重操作や荷物の落下の検出については、上記(2)で摘記した事項が記載されている。
そして、請求項1には、「前記監視部が、前記荷役車両に対する二重操作、及び前記荷物の落下の少なくともいずれか一を検出した場合に、前記情報を記録するためのトリガを発生させるトリガ発生部と、前記情報として、少なくとも、前記荷役車両近傍の状況を表す画像を記録する記録部と、」を備えることが特定されているから、本件発明1及び請求項1を引用する本件発明5は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
したがって、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。
(4)明確性について
請求項1、2に記載されている「前記荷役車両に対する二重操作」について、請求項1、2には「二重操作」を特段限定する記載はないから、当業者の出願当時における技術常識を基礎として理解される任意の二重操作を含むことは明らかであって、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
また、請求項2における「前記荷物の領域の少なくとも一部が欠落した」との記載が、荷物の領域の全部が欠落した場合を含むこと、及び、「欠落した」ことと請求項3に記載されている「荷物の領域の位置又は大きさの変化」とは別の概念であることは明らかであって、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
したがって、請求項1、2及びこれらを引用する請求項3、5に係る発明は明確である。
3 申立人の主張について
申立人は、次の主張をしている。
(1)本件発明5の進歩性について
甲第9号証には、電気自動車のバッテリの電圧状況及び電気自動車の稼働状況に基づいてバッテリの寿命を予測し、寿命時期の診断情報を出力し、出力された当該診断情報を受信することが記載されている(以下、「甲9記載事項」という。)。甲9記載事項を踏まえて、甲1発明1において、フォークリフトのバッテリが所定条件を満たすかを判定することは当業者が適宜なし得たことである。(申立書23頁16行~21行)
(2)実施可能要件について
画像解析による荷役車両に対する二重操作の検出に関して、本件の特許明細書の発明の詳細な説明には、走行の有無の検出及び荷物(または荷物保持部)の昇降の有無に基づいて二重操作を検出することのみが実施の形態として記載されている(本件の特許明細書の段落0054ないし0057、及び、図面の図4ないし図6)。そして、本件の特許明細書の発明の詳細な説明は、他の画像解析手法によって二重操作を検出することを何ら教示していない。そのため、当業者が本件の特許明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識を考慮しても、本件特許発明1に含まれる他の画像解析手法による二重操作の検出についてどのように実施するのかを理解することはできない。(申立書25頁20行~21行、25頁27行~26頁6行)
また、画像解析による荷物の落下の検出に関して、本件の特許明細書の発明の詳細な説明には、カメラが撮像した画像の一部である荷物検出範囲に対してパターンの認識を実行することで荷物の領域を検出し、それにより、荷物の有無を検出し、荷物を検出した場合において、さらに、荷物の領域の一部が欠落した場合に荷物の落下を検出することのみが実施の形態として記載されている(本件の特許明細書の段落0054ないし0057、及び、図面の図4ないし図6)。そして、本件の特許明細書の発明の詳細な説明は、他の画像解析手法によって荷物の落下を検出することを何ら教示していない。そのため、当業者が本件の特許明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識を考慮しても、本件特許発明1に含まれる他の画像解析手法による荷物の落下の検出についてどのように実施するのかを理解することはできない。(申立書26頁7行~17行)
(3)サポート要件について
本件の特許請求の範囲の請求項1には、「前記監視部は、前記カメラが撮影した画像を解析して、前記荷役車両に対する二重操作、及び前記荷物の落下の少なくともいずれか―を検出する画像解析部を含む」と記載されている。しかしながら、画像解析による荷役車両に対する二重操作及び荷物の落下の検出に関して、本件の特許明細書の発明の詳細な説明には、上述の通り、特定の実施の形態が記載されているのみである。出願時の技術常識に照らしても、本件特許発明1の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとは認められない。(申立書26頁25行~27頁4行)
(4)明確性について
本件の特許請求の範囲の独立請求項である請求項1、2及び、4には、「前記荷役操作に対する二重操作」と記載されている。しかしながら、荷物保持部を有する荷役車両の技術分野において、技術常識からして、「二重操作」は、例えば、荷役車両の走行、荷物保持部の昇降(リフト)、傾倒(ティルト)、及び、前後進(リーチ)のうち任意の2つ以上を含むものであって、荷役車両の走行と荷物保持部の昇降との同時の操作に限らない。したがって、「前記荷役車両に対する二重操作」という記載だけでは、発明特定事項が不足している。(申立書27頁10行~19行)
本件の特許請求の範囲の請求項2には、「前記荷物の領域の少なくとも一部が欠落したことを検出したとき」と記載されているが、本件の特許明細書の発明の詳細な説明では、荷物の領域の一部が欠落した場合に荷物の落下を検出することを記載しているものの、荷物の領域の全部が欠落した場合についての記載はなく、本件の特許明細書及び図面の記載を考慮しても不明である。さらに、「荷物の領域の一部が欠落したこと」と「荷物の領域の大きさ又は位置が変化したこと」との明確な区別が、本件の特許明細書の記載や出願時の技術常識を考慮しても不明である。(申立書27頁23行~24行、28頁3行~9行)
申立人の主張(1)~(4)について検討すると、それぞれ上記2(1)~(4)のとおりであるから、申立人のこれらの主張を採用することはできない。
第6 むすび
上記第4の2で検討したとおり、請求項4、6~11に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものであり、上記第4の3で検討したとおり、請求項9に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。したがって、請求項4、6~11に係る特許は、特許法第113条第2号又は第4号に該当し、取り消されるべきものである。
また、上記第5で検討したとおり、請求項1~3、5に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由又は特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によって取り消すことはできない。
さらに、他に請求項1~3、5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700704