特許異議申立
2024-700795
油中水型乳化化粧料
- 審判番号
- 2024-700795
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-032427
- 登録番号
- 7438425
- 請求日
- 2024年08月23日
- 審決日
- 2026年03月31日
- 公報発行日
- 2026年07月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社 資生堂
- 【権利者代理人】内田 直人
- 【権利者代理人】奥原 康司
- 【異議申立人】大山 貴裕
- 【異議申立人】小山 幸子
- 審判長/審判官
- 審判長 冨永 保
- 審判官 野田 定文
- 審判官 新留 豊
- 分類
- P1651.113-YAA(A61K) / P1651.121-YAA(A61K) / P1651.537-YAA(A61K) / P1651.851-YAA(A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第7項、特許法第131条の2、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の8
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7438425号発明「油中水型乳化化粧料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7438425号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
特許第7438425号の請求項1~3に係る特許を維持する。
特許第7438425号の請求項4及び5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7438425号(以下「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願(特願2023-32427号)は、2018年(平成30年)8月31日(優先権主張 2017年9月1日)を国際出願日とする特願2019-539671号の一部を、令和5年3月3日に新たな特許出願としたものであって、令和6年2月15日に特許権の設定登録がされ、同年同月26日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、令和6年8月23日に特許異議申立人 大山貴裕(以下「申立人A」という。)により、本件請求項1~5に係る特許に対し、特許異議の申立てがされ、令和6年8月26日に特許異議申立人 小山幸子(以下「申立人B」という。)により、本件請求項1~5に係る特許に対し、特許異議の申立てがされた。
その後の主な手続の経緯は、次のとおりである。
令和6年12月20日付け 取消理由通知書
令和7年 2月19日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年 3月17日付け 訂正請求があった旨の通知書
同年 4月18日 意見書の提出(申立人A)
同年 同月 同日 意見書の提出(申立人B)
同年 6月24日付け 取消理由通知書(決定の予告)
同年 8月28日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年10月31日付け 訂正拒絶理由通知書
同年12月 3日 手続補正書及び意見書の提出(特許権者)
なお、令和7年2月19日提出の訂正請求書による訂正の請求(以下「先の訂正請求」という。)は、令和7年12月3日提出の手続補正書により補正された、令和7年8月28日提出の訂正請求書(以下、「本件訂正請求書」という。)による訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされたので、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
また、すでに先の訂正請求について申立人A及びBに意見書の提出の機会が与えられており、下記第2のとおり、本件訂正請求によって特許請求の範囲が相当程度減縮され、下記第5及び第6で述べるとおり、提出された全ての証拠や意見等を踏まえて更に審理を進めたとしても特許を維持すべきとの結論となると合議体は判断したことから、本件訂正請求について、申立人A及びBに再度の意見書の提出の機会は与えない。
第2 訂正の適否について
1 本件訂正請求書に対する補正の適否
(1)補正の内容
令和7年12月3日提出の手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)は、本件訂正請求書を補正するとともに、同請求書に添付された「訂正特許請求の範囲」を以下のように補正するものである。なお、「・・・」は摘記の省略を表し、下線は、補正による記載の変更箇所を含め、当審合議体が付したものである。
ア 補正事項1
訂正請求書の「7.請求の理由」「(2)訂正事項」の「ア 訂正事項1」の
「特許請求の範囲の請求項1において、「セレシンワックス、パラフィンワックス、キャンデリラワックス、及びマイクロクリスタリンワックスから選択される少なくとも1種」とされていた「(C)ワックス」を、「キャンデリラワックス」に限定し、「(前略);(C)1~15質量%のキャンデリラワックス;(中略)ことを特徴とする油中水型乳化化粧料。」と訂正する。」との記載を、
「特許請求の範囲の請求項1において、「セレシンワックス、パラフィンワックス、キャンデリラワックス、及びマイクロクリスタリンワックスから選択される少なくとも1種」とされていた「(C)ワックス」を「キャンデリラワックス」に限定する一文を追加し、「(前略);を含有し、前記(C)ワックスがキャンデリラワックスであり;(中略)ことを特徴とする油中 水型乳化化粧料。」と訂正する。」との記載に補正する。
イ 補正事項2
訂正請求書の「7.請求の理由」「(2)訂正事項」の「オ 訂正事項5」の
「特許請求の範囲の請求項3における「粉末成分」を「ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサンクロスポリマー及びポリメタクリル酸メチル粉末から選ばれる少なくとも1種」に限定し、「1~10質量%の、ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサンクロスポリマー及びポリメタクリル酸メチル粉末から選ばれる少なくとも1種の粉末成分を更に含有する、請求項1又は2に記載の化粧料。」と訂正する。」との記載を、
「特許請求の範囲の請求項3における「粉末成分」を「ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサンクロスポリマー及びポリメタクリル酸メチル粉末から選ばれる少なくとも1種」に限定し、「1~10質量%の粉末成分を更に含有し、前記粉末成分が、ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサンクロスポリマー及びポリメタクリル酸メチル粉末から選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の化粧料。」と訂正する。」との記載に補正する。
ウ 訂正特許請求の範囲
補正前後の「訂正特許請求の範囲」の記載は以下のとおりである。
(補正前)
【請求項1】
(A)0.1~5質量%の有機変性粘土鉱物;
(B)0.1~5質量%のHLB6以下の界面活性剤;
(C)1~15質量%のキャンデリラワックス;
(D)0.5~5質量%のシリコーンエラストマー;
(E)10~50質量%の揮発性油分;及び
(F)60質量%以下の水を含有し、
前記(D)シリコーンエラストマーは、ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、及びポリシリコーン-11から選択され、
・・・ことを特徴とする油中水型乳化化粧料。
【請求項2】・・・
【請求項3】
1~10質量%の、ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサンクロスポリマー及びポリメタクリル酸メチル粉末から選ばれる少なくとも1種の粉末成分を更に含有する、請求項1又は2に記載の化粧料。
【請求項4】(削除)
【請求項5】(削除)
(補正後)
【請求項1】
(A)0.1~5質量%の有機変性粘土鉱物;
(B)0.1~5質量%のHLB6以下の界面活性剤;
(C)1~15質量%の、セレシンワックス、パラフィンワックス、キャンデリラワックス、及びマイクロクリスタリンワックスから選択される少なくとも1種のワックス;
(D)0.5~5質量%のシリコーンエラストマー;
(E)10~50質量%の揮発性油分;及び
(F)60質量%以下の水を含有し、
前記(C)ワックスがキャンデリラワックスであり、
前記(D)シリコーンエラストマーは、ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、及びポリシリコーン-11から選択され、
・・・ことを特徴とする油中水型乳化化粧料。
【請求項2】・・・
【請求項3】
1~10質量%の粉末成分を更に含有し、前記粉末成分が、ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサンクロスポリマー及びポリメタクリル酸メチル粉末から選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の化粧料。
【請求項4】(削除)
【請求項5】(削除)
(2)補正の適否
訂正の請求について、特許法第120条の5第9項において同法第131条の2を準用するところ、審判請求書の補正の要旨変更について規定する特許法第131条の2の趣旨は、審理対象の拡張変更による審理遅延を防止することであると解される。したがって、審理対象の拡張変更を伴わない訂正請求書の補正は、同書の要旨を変更しないものとすることができる。
本件補正前の訂正請求書における訂正事項1及び5について、同請求書において、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とすると主張されているが、訂正事項1及び5は、当該主張と整合しない訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合しなかったものである(令和7年10月31日付け訂正拒絶理由)。
これに対し、上記補正事項1は、前記の不整合を是正して、請求項1の「1~15質量%」の数値限定がかかる成分(C)の「ワックス」を特許登録時の「セレシンワックス、パラフィンワックス、キャンデリラワックス、及びマイクロクリスタリンワックスから選択される少なくとも1種のワックス」に維持しつつ、選択される成分(C)の「ワックス」を「キャンデリラワックス」に限定するものである。また、上記補正事項2も、前記の不整合を是正して、請求項3の「1~10質量%」の数値限定が特許登録時の「粉末成分」全体にかかることを維持しつつ、具体的に選択される粉末成分を「ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサンクロスポリマー及びポリメタクリル酸メチル粉末から選ばれる少なくとも1種」に限定するものである。
したがって、上記補正事項1及び2は、訂正事項1及び5について、本来意図していた特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正に補正し、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更しないものとするのであるから、審理対象の拡張変更を伴うものではなく、訂正請求書の要旨を変更するものとはいえない。
したがって、本件補正は、令和7年8月28日提出の訂正請求書の要旨を変更するものでないから、認められる。
2 訂正請求の趣旨及び訂正の内容
(1)訂正請求の趣旨
本件補正により補正された本件訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)は、「特許第7438425号の特許請求の範囲を本請求書に添付した訂正特許請求の範囲(以下、単に「補正後の訂正特許請求の範囲」という。)のとおり、訂正後の請求項1~5について訂正することを求める。」というものであり、その訂正の内容は、以下の(2)のとおりである。
(2)訂正の内容
本件訂正の内容は、本件補正により補正された本件訂正請求書の記載及び同請求書に添付した補正後の訂正特許請求の範囲の記載からみて、次の訂正事項からなるものであると認められる。
なお、「・・・」は摘記の省略を表し、下線は、訂正による記載の変更箇所を含め、当審合議体が付したものである。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の
「(F)60質量%以下の水を含有する」
との記載を
「(F)60質量%以下の水を含有し、
前記(C)ワックスがキャンデリラワックスであり、」
との記載に訂正する。
また、請求項1の記載を直接的に又は間接的に引用する請求項2~5も同様に訂正する。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1において、上記訂正事項1の
「(F)60質量%以下の水を含有し、
前記(C)ワックスがキャンデリラワックスであり、」
との記載の後に、
「前記(D)シリコーンエラストマーは、ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、及びポリシリコーン-11から選択され、」
との記載を加える。
また、請求項1の記載を直接的に又は間接的に引用する請求項2~5も同様に訂正する。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1において、上記訂正事項2の
「前記(D)シリコーンエラストマーは、ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、及びポリシリコーン-11から選択され、」
との記載の後に
「炭素数28~42の炭化水素系ワックス部を20~95質量%と、炭素数43以上の炭化水素系ワックス部を5~80質量%とを含み、炭素数27以下の炭化水素系ワックス部の含有量が15質量%以下である炭化水素系ワックスを含まず、」
を加える。
また、請求項1の記載を直接的に又は間接的に引用する請求項2~5も同様に訂正する。
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1の
「ことを特徴とする油中水型乳化化粧料。」
との記載を
「D-アミノ酸及びその誘導体を含まないことを特徴とする油中水型乳化化粧料。」
との記載に訂正する。
また、請求項1の記載を直接的に又は間接的に引用する請求項2~5も同様に訂正する。
オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項3の
「1~10質量%の粉末成分を更に含有する、請求項1又は2に記載の化粧料。」
との記載を
「1~10質量%の粉末成分を更に含有し、前記粉末成分が、ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサンクロスポリマー及びポリメタクリル酸メチル粉末から選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の化粧料。」
との記載に訂正する。
カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項4及び5を削除する。
(3)一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~5のうち、請求項2~5はいずれも請求項1の記載を直接的又は間接的に引用するものであって、訂正事項1~4によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~5に対応する訂正後の請求項1~5についての本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項に規定される「一群の請求項」についてされたものである。
3 本件訂正による訂正の適否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載の「(C)1~15質量%の、セレシンワックス、パラフィンワックス、キャンデリラワックス、及びマイクロクリスタリンワックスから選択される少なくとも1種のワックス」について、「ワックス」を「キャンデリラワックス」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
また、訂正事項1で特定された「キャンデリラワックス」は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)の特許請求の範囲の請求項1に記載されたワックスの選択肢の一つであるから、訂正事項1に係る訂正は、本件特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものといえず、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
さらに、訂正事項1は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正に該当し、発明の対象やカテゴリーを変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(2)訂正事項2について
訂正事項2に係る訂正は、訂正前の請求項1に記載の「(D)」の「シリコーンエラストマー」を、「ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、及びポリシリコーン-11」から選択される具体的なポリマーに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
また、訂正事項2で特定された「(D)」の「シリコーンエラストマー」の選択肢のうち、「ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー」は、本件特許明細書等の段落【0030】に記載されており、「ポリシリコーン-11」は、同段落【0057】【表4】の「実施例15」の油中水型乳化化粧料が含有する「エラストマー」として記載されているから、訂正事項2に係る訂正は、本件特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものといえず、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
さらに、訂正事項2は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正に該当し、発明の対象やカテゴリーを変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(3)訂正事項3について
訂正事項3に係る訂正は、訂正前の請求項1に記載の「油中水型乳化化粧料」について、「炭素数28~42の炭化水素系ワックス部を20~95質量%と、炭素数43以上の炭化水素系ワックス部を5~80質量%とを含み、炭素数27以下の炭化水素系ワックス部の含有量が15質量%以下である炭化水素系ワックスを含まない」として、包含しうる態様の一部を除外するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
また、訂正事項3に係る訂正は、訂正前の請求項1に記載の「油中水型乳化化粧料」について、所定の組成の炭化水素系ワックスを含まないとすることで、包含しうる態様の一部を除外するものであるから、本件特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものといえず、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
さらに、訂正事項3は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正に該当し、発明の対象やカテゴリーを変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(4)訂正事項4について
訂正事項4に係る訂正は、訂正前の請求項1に記載の「油中水型乳化化粧料」について、「D-アミノ酸及びその誘導体を含まない」と特定し、包含しうる態様の一部を除外するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
また、訂正事項4に係る訂正は、訂正前の請求項1に記載の「油中水型乳化化粧料」について、「D-アミノ酸及びその誘導体を含まない」とすることで、包含しうる態様の一部を除外するものであるから、本件特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものといえず、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
さらに、訂正事項4は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正に該当し、発明の対象やカテゴリーを変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(5)訂正事項5について
訂正事項5に係る訂正は、訂正前の請求項3に記載の「粉末成分」について、「ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサンクロスポリマー及びポリメタクリル酸メチル粉末から選ばれる少なくとも1種」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
また、訂正事項5で特定された「粉末成分」の選択肢のうち、「ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサンクロスポリマー」は、本件特許明細書等の明細書の段落【0054】【表1】の「実施例1」の油中水型乳化化粧料が含有する「粉末」として記載されており、「ポリメタクリル酸メチル粉末」は、同段落【0045】に記載されているから、訂正事項4に係る訂正は、本件特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものといえず、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
さらに、訂正事項5は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてする訂正に該当し、発明の対象やカテゴリーを変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(6)訂正事項6について
訂正事項6に係る訂正は、請求項4及び5を削除する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
また、訂正事項6に係る訂正は、本件特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとはいえないことは明らかであるから、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであり、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(7)独立特許要件について
訂正事項1~6に係る訂正は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるが、本件特許異議申立においては、本件訂正前の全ての請求項である請求項1~5に係る特許に対して特許異議の申立てがされているから、本件訂正前の請求項1~5に対応する本件訂正後の請求項1~5に係る発明について、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(いわゆる「独立特許要件」)は課されない。
4 訂正の請求についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
よって、本件特許の特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
第3 本件発明について
本件訂正により訂正された特許請求の範囲の請求項1~5の記載は以下に示すとおりであり、請求項1~3に係る発明(以下、各請求項に係る発明を請求項の番号順に「本件発明1」等といい、「本件発明1~3」をまとめて「本件発明」ともいう。)は、訂正された特許請求の範囲の請求項1~3(以下、請求項の番号順に「本件請求項1」等という。)に記載された事項により特定されるとおりのものである。
なお、下線は訂正による記載の変更箇所を示し、当審合議体が付したものである。
「【請求項1】
(A)0.1~5質量%の有機変性粘土鉱物;
(B)0.1~5質量%のHLB6以下の界面活性剤;
(C)1~15質量%の、セレシンワックス、パラフィンワックス、キャンデリラワックス、及びマイクロクリスタリンワックスから選択される少なくとも1種のワックス;
(D)0.5~5質量%のシリコーンエラストマー;
(E)10~50質量%の揮発性油分;及び
(F)60質量%以下の水を含有し、
前記(C)ワックスがキャンデリラワックスであり、
前記(D)シリコーンエラストマーは、ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、及びポリシリコーン-11から選択され、
炭素数28~42の炭化水素系ワックス部を20~95質量%と、炭素数43以上の炭化水素系ワックス部を5~80質量%とを含み、炭素数27以下の炭化水素系ワックス部の含有量が15質量%以下である炭化水素系ワックスを含まず、D-アミノ酸及びその誘導体を含まないことを特徴とする油中水型乳化化粧料。
【請求項2】
前記(E)揮発性油分と前記(C)ワックスとの配合量比率([(E)/(C)])が50以下である、請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
1~10質量%の粉末成分を更に含有し、前記粉末成分が、ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサンクロスポリマー及びポリメタクリル酸メチル粉末から選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の化粧料。
【請求項4】(削除)
【請求項5】(削除)」
第4 特許異議申立理由及び取消理由について
1 特許異議の申立ての理由の概要
申立人Aは、証拠方法として、特許異議申立書(以下「申立書A」という。)に添付して下記(4)に示す甲第A1号証~甲第A21号証(以下、それぞれ番号順に「甲A1」~「甲A21」ともいう。)を提出し、本件訂正前の請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由として、下記(1)に示す特許異議の申立ての理由(以下「申立理由」という。)を主張している。
また、申立人Bは、証拠方法として、特許異議申立書(以下「申立書B」という。)に添付して下記(4)に示す甲第B1号証~甲第B4号証(以下、それぞれ番号順に「甲B1」~「甲B4」ともいう。)を提出し、本件訂正前の請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由として、下記(2)に示す申立理由を主張している。
申立理由の概要は、申立書の記載全体からみて、以下のとおりと認められる。
(1)申立人Aが申し立てた理由
(A1)申立理由A1(新規性欠如)
ア 甲A2を主引例とする新規性欠如
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、甲A2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1及び2に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
イ 甲A3を主引例とする新規性欠如
本件特許の請求項1~3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、甲A3に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~3に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
ウ 甲A4を主引例とする新規性欠如
本件特許の請求項1~3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、甲A4に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~3に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(A2)申立理由A2(進歩性欠如)
ア 甲A2を主引例とする進歩性欠如
本件特許の請求項1~5に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、甲A2に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
イ 甲A3を主引例とする進歩性欠如
本件特許の請求項1~5に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、甲A3に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
ウ 甲A5又は甲A6を主引例とする進歩性欠如
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、甲A5又は甲A6に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1及び2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
エ 甲A7又は甲A8を主引例とする進歩性欠如
本件特許の請求項1~5に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、甲A7又は甲A8に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
オ 甲A9を主引例とする進歩性欠如
本件特許の請求項1~5に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、甲A9に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(A3)申立理由A3(明確性要件違反)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が、以下の点で特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、請求項1~5に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
ア 請求項1~5について、シリコーンエラストマーの外縁が不明確である点(申立書A第26~28頁「エ-1-1」)。
イ 請求項4~5について、硬度の測定条件が不明確である点(申立書A第28~29頁「エ-1-2」)。
(A4)申立理由A4(サポート要件違反)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が、以下の点で特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、請求項4及び5に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
請求項4及び5について、原出願に係る特許(特許第7240318号)に対する特許異議申立事件(異議2023-700964)において、「バーム状といえる程度の硬度を有する固形又は半固形の油中水型乳化化粧料」でありながら、硬度200程度の化粧料であることを両立し得ることについて、その作用機構に関しての一般的な記載が全くない上に、具体例である実施例・比較例においては、硬度も測定されていない。・・・よって、請求項4の特許を受けようとする発明は、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえない。」と指摘されているように、サポート要件を具備していない点(申立書A第29~31頁「エ-2」)。
(2)申立人Bが申し立てた理由
(B1)申立理由B1(甲B1を主引例とする進歩性欠如)
本件特許の請求項1~5に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲B1に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(B2)申立理由B2(サポート要件違反)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が、以下の点で特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、請求項4及び5に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
明細書には、硬度200でありながらバーム状を呈する固形又は半固形の油中水型乳化化粧料を調製する手法についての記載がない点。
(4)証拠方法
[申立人Aが提出した証拠方法]
甲A1:異議2003-700964の令和5年11月14日付け取消理
由通知書
甲A2:特開2012-20989号公報
甲A3:特開2007-23022号公報
甲A4:特開2006-8560号公報
甲A5:信越化学工業株式会社の製品カタログ、信越シリコーン 化粧用
シリコーン オリジナル原料+、信越化学工業株式会社、201
4年2月
甲A6:特開2000-63233号公報
甲A7:特開2011-231102号公報
甲A8:特開2015-218113号公報
甲A9:特開2017-31149号公報
甲A10:特開2004-161698号公報
甲A11:蟇目浩吉 外3名編、化粧品製剤実用便覧、日光ケミカルズ株
式会社・日本サーファクタント工業株式会社、昭和57年5月
28日発行、p.12及び13
甲A12:光井武夫編、新化粧品学、株式会社南山堂、1994年5月1
0日、第1版2刷発行、p.178~180
甲A13:編集委員 刈米孝夫 外4名、乳化・分散プロセスの機能と応
用技術、株式会社サイエンスフォーラム、1997年5月19
日、第1版第2刷発行、p.288~294
甲A14:日本化粧品技術者会編、化粧品事典、丸善株式会社、平成15
年12月15日発行、p.524~527
甲A15:古澤邦夫監修、新しい分散・乳化の科学と応用技術の新展開、
株式会社テクノシステム、2006年6月20日発行、p.1
61~168
甲A16:日本化粧品技術者会編、日本化粧品技術者会誌、2010年3
月発行、第44巻第1号、p.2~22
甲A17:再公表WO2011/010652号
甲A18:特許第5269243号公報
甲A19:特開2013-1672号公報
甲A20:特開2012-250922号公報
甲A21:特開2012-214467号公報
[申立人Bが提出した証拠方法]
甲B1:国際公開第00/73374号
甲B2:特開2004-67628号公報
甲B3:特開2012-206974号公報
甲B4:日本化粧品工業連合会編、日本化粧品成分表示名称事典、200
1年4月27日、第1版第1刷発行、p.203~204
2 当審合議体が通知した取消理由の概要
(1)令和6年12月20日付け取消理由通知の取消理由の概要
当審合議体が、先の訂正請求前の請求項1~5に対して、令和6年12月20日付け取消理由通知(以下「先の取消理由通知」という。)で特許権者に通知した取消理由の概要は、下記ア~エのとおりであり、先の取消理由通知の取消理由と申立理由との対応関係は、下記「カ」のとおりである。
なお、ここでいう「請求項1」等は、本件特許の設定登録時の請求項1等のことである。
ア 取消理由1(明確性要件違反)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が、以下の点で、特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、請求項1~5に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(ア)請求項1の「シリコーンエラストマー」及び請求項3の「粉末成分」について、その技術的意味(シリコーンエラストマーと(シリコーン樹脂の場合の)粉末成分は技術的にどのような相違があり、具体的に区別するのか。)及び発明の範囲(請求項1に係る発明と請求項3に係る発明の包含関係、「シリコーンエラストマー」及び「粉末成分」の範囲、及び両者の含有量の計算の仕方)が不明確となっている点。
イ 取消理由2(サポート要件違反)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が、以下の点で、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、請求項4及び5に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(ア)本件明細書には「バーム状といえる程度の硬度を有する固形又は半固形の油中水型乳化化粧料」でありながら、硬度200程度の化粧料であることを両立し得ることについて、その作用機構に関しての一般的な記載が全くない上に、具体例である実施例・比較例においては、硬度も測定されていない点等の点において、請求項4及び5の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載されたものではない点。
ウ 取消理由3(新規性欠如)
(ア)取消理由3-1(引用文献1(甲A2)を主引例とする新規性欠如)
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、引用文献1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1及び2に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(イ)取消理由3-2(引用文献2(甲A3)を主引例とする新規性欠如)
本件特許の請求項1~3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、引用文献2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~3に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
エ 取消理由4(進歩性欠如)
(ア)取消理由4-1(引用文献1(甲A2)を主引例とする進歩性欠如)
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、引用文献1に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1及び2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(イ)取消理由4-2(引用文献2(甲A3)を主引例とする進歩性欠如)
本件特許の請求項1~3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、引用文献2に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
オ 取消理由3及び取消理由4について提示した証拠
取消理由3及び取消理由4について、提示した証拠は次のとおりである。
引用文献1:特開2012-20989号公報(甲A2)
引用文献2:特開2007-23022号公報(甲A3)
引用文献3:信越化学工業株式会社の製品カタログ、信越シリコーン 化
粧用シリコーン オリジナル原料+、信越化学工業株式会
社、2014年2月(甲A5)
引用文献4:蟇目浩吉 外3名編、化粧品製剤実用便覧、日光ケミカルズ
株式会社・日本サーファクタント工業株式会社、昭和57年
5月28日発行、p.12及び13(甲A11)
引用文献5:光井武夫編、新化粧品学、株式会社南山堂、1994年5月
10日、第1版2刷発行、p.178~180(甲A12)
引用文献6:編集委員 刈米孝夫 外4名、乳化・分散プロセスの機能と
応用技術、株式会社サイエンスフォーラム、1997年5月
19日、第1版第2刷発行、p.288~294(甲A1
3)
引用文献7:日本化粧品技術者会編、化粧品事典、丸善株式会社、平成1
5年12月15日発行、p.524~527(甲A14)
引用文献8:古澤邦夫監修、新しい分散・乳化の科学と応用技術の新展
開、株式会社テクノシステム、2006年6月20日発行、
p.161~168(甲A15)
引用文献9:日本化粧品技術者会編、日本化粧品技術者会誌、2010年
3月発行、第44巻第1号、p.2~22(甲A16)
カ 先の取消理由通知の取消理由と申立人A及びBの申立理由との対応関係
取消理由1は、申立理由A3のアと同旨である。
取消理由2は、申立理由A4及び申立理由B2と同旨である。
取消理由3-1及び4-1は、それぞれ申立理由A1のア及びA2のア(請求項1及び2を対象とするもの。)と同旨である。
取消理由3-2及び4-2は、それぞれ申立理由A1のイ及びA2のイ(請求項1~3を対象とするもの。)と同旨である。
(2)令和7年6月24日付け取消理由通知(決定の予告)の取消理由の概要
当審合議体が、先の訂正請求後の請求項1~5に対して、令和7年6月24日付け取消理由通知(決定の予告)(以下「決定予告」と略記する。)で特許権者に通知した取消理由の概要は、下記ア~イのとおりであり、決定予告の取消理由と、先の取消理由通知の取消理由及び申立理由との対応関係は、下記ウのとおりである。
なお、ここでいう「訂正請求項1」等は、先の訂正請求により訂正された本件特許の請求項1等のことである。
ア 取消理由5(明確性要件違反)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が、以下の点で、特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、訂正請求項1~3に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(ア)「(C)ワックス」の技術的意味及び当該成分を含む訂正請求項1の油中水型乳化化粧料の範囲が不明確である点。
イ 取消理由6(サポート要件違反)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が、以下の点で、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、訂正請求項1~3に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(ア)本件明細書に記載され、実施例において具体的に使用された「パラフィンワックス」や「マイクロクリスタリンワックス」等において訂正請求項1~3に係る発明の課題を解決できるとしても、「(C)ワックス」について、「但し」として所定の組成の炭化水素系ワックスを「含まない」とされたものについて、上記実施例のものと同様の機能・作用を発揮し、上記課題を解決できると認めるに足る根拠は示されておらず、本件特許の出願時にそのような技術常識が存在したとも認められない点。
ウ 決定予告の取消理由と、先の取消理由通知の取消理由及び申立理由との対応関係
決定予告の取消理由5及び同6は、職権に基づく新たな取消理由であり、先の取消理由通知の取消理由及び申立理由とは別のものである。
第5 取消理由についての当審合議体の判断
本件訂正により請求項4及び5は削除されたので、請求項4及び5に係る特許のみに対する取消理由2、並びに取消理由1のうち請求項4及び5に係る特許に関する部分については、判断の対象が存在しなくなった。
本件請求項1~3に係る特許について、当審合議体は、決定予告で通知した取消理由及び先の取消理由通知で通知した取消理由によっては、取り消すことはできないものと判断する。その理由は以下のとおりである。なお、取消理由の内容に基づき、取消理由1及び5について検討した後、取消理由3、4及び6について検討する。
1 取消理由1(明確性要件違反)について
(1)本件請求項1及び3の記載
本件訂正により訂正された本件請求項1には、成分「(D)」である「シリコーンエラストマー」について、「前記(D)シリコーンエラストマーは、ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、及びポリシリコーン-11から選択され」ることが記載されている。
また、請求項3には、「粉末成分」について、「ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサンクロスポリマー及びポリメタクリル酸メチル粉末から選ばれる少なくとも1種である」ことが記載されている。
したがって、上記「シリコーンエラストマー」及び「粉末成分」に含まれる成分の種類は物質名で特定されているから、それらの技術的意味及び発明の範囲は明確である。
よって、請求項1及び3の記載は明確であり、請求項1の記載を引用する請求項2の記載も明確である。
(2)申立人の主張について
申立人Aは申立書Aの第26頁第12行~第28頁下から5行の「エ-1-1」において、甲A1及び甲A5に基づき、「当業者であっても、請求項1で規定する「シリコーンエラストマー」と、明細書に粉末成分の具体例として記載されている「シリコーン樹脂粉末」(段落0045参照)をどのように区分けするのか理解することができない」と主張している。
しかしながら、上記(1)のとおり、本件請求項1及び3の記載は、「シリコーンエラストマー」及び「粉末物質」を具体的な物質名で特定しているため、両者を区別することができる。
よって、申立人Aの主張は採用できない。
(3)小括
以上より、取消理由1によって、本件特許を取り消すことはできない。
2 取消理由5(明確性要件違反)について
本件訂正により訂正された本件請求項1には、「(C)ワックス」について、「前記(C)ワックスがキャンデリラワックスであり」と記載されている。
したがって、「(C)ワックス」は、具体的な物質名で特定されているから、「(C)ワックス」の技術的意味及び当該成分を含む請求項1の油中水型乳化化粧料の範囲は明確である。
したがって、取消理由5によって、本件特許を取り消すことはできない。
3 取消理由3(新規性)及び4(進歩性)について
(1)引用文献の記載事項
先の取消理由通知における引用文献について、取消理由の判断に必要な範囲で、記載事項を以下に摘記する。なお、特に注釈がない限り、摘記中の下線は当審が付したものであり、「・・・」は摘記の省略を示す。
ア 引用文献1(甲A2)の記載事項
(1a)
「【請求項1】
(A)D-アミノ酸又はその誘導体あるいは塩の1種または2種以上と、
(B)非乳化性架橋型シリコーンの1種または2種以上を常温で液状の油分で膨潤した膨潤物とを含有することを特徴とする肌改善皮膚化粧料。」
(1b)
「【0016】
本発明に用いられる非乳化性の架橋型シリコーンとしては、例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサンとメチルビニルポリシロキサンとの反応によるクロスポリマー(以下、「ジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマー」という)、部分長鎖アルキル化あるいは部分フェニル化メチルハイドロジェンポリシロキサンとメチルビニルポリシロキサンとの反応によるクロスポリマー(以下、「ビニルジメチコン/アルキルジメチコンクロスポリマー」という)、メチルハイドロジェンポリシロキサンとアルケンとの反応によるクロスポリマー(以下、「ジメチコンクロスポリマー」という)等が挙げられる。本発明では、上記3種のクロスポリマーからなる群より選択される1種又は2種以上を用いるのが好ましい。
・・・
【0019】
なお、前記ジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマーは、表示名称(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーあるいはポリシリコーン-11と称されるものが該当する。ジメチコンクロスポリマーは、表示名称ジメチコンクロスポリマーと称されるものが該当する。また、ビニルジメチコン/アルキルジメチコンクロスポリマーのうち、ラウリル化メチルハイドロジェンポリシロキサンとメチルビニルポリシロキサンとの反応によるクロスポリマーは、表示名称(ビニルジメチコン/ラウリルジメチコン)クロスポリマーと称されるものが該当し、フェニル化メチルハイドロジェンポリシロキサンとメチルビニルポリシロキサンとの反応によるクロスポリマーは、(ジメチコン/フェニルビニルジメチコン)クロスポリマーと称されるものが該当する。また、分岐シリコーン含有部分長鎖アルキル化メチルハイドロジェンポリシロキサンとメチルビニルポリシロキサンとの反応によるクロスポリマーは、表示名称ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン/ビス-ビニルジメチコンクロスポリマーと称されるものが該当する。
・・・
【0026】
・・・
表示名称ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン/ビス-ビニルジメチコンクロスポリマーの膨潤物としては、KSG-042Z(ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン/ビス-ビニルジメチコンクロスポリマーとイソドデカンとの混合物で架橋物(実分)は約20%)、KSG-045Z(ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン/ビス-ビニルジメチコンクロスポリマーとシクロペンタシロキサンとの混合物で架橋物(実分)は約20%)(以上、信越化学工業株式会社製)が挙げられる。
・・・
【0029】
上記任意成分のうち、油分(前記の液状油を除く)の具体的な例としては、例えば、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、月見草油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン等の液体油脂、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、モクロウ核油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油等の固型油脂、ミツロウ、カンデリラロウ、カルナバロウ、ラノリン、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ホホバロウ、硬質ラノリン、ポリオキシエチレン(以下、POEという。)ラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル等のロウ類、流動パラフィン、オゾケライト、スクワレン、パラフィン、セレシン、スクワラン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素、・・・」
(1c)「【0062】
実施例16.エモリエントクリーム(W/O型)
成分 配合量(質量%)
(1)スクワラン 15.0
(2)エチルヘキサン酸セチル 5.0
(3)イソノナン酸イソノニル 3.5
(4)マイクロクリスタリンワックス 1.0
(5)ジステアルジモニウムヘクトライト 1.5
(6)PEG-10ジメチコン 1.0
商品名:KF-6017,信越化学工業株式会社製
(7)デカメチルシクロペンタシロキサン 5.0
(8)[成分(B)]ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン/ ビス-ビニルジメチコンクロスポリマー 25.0
(非乳化性架橋型シリコーン分5.0%)
商品名:KSG-045Z(非乳化性架橋型シリコーン純分20%), 信越化学工業株式会社製
(9)香料 0.1
(10)1,3-ブチレングリコール 5.0
(11)グリセリン 5.0
(12)[成分(A)]D-アスパラギン酸 1.0
(13)エチルパラベン 0.1
(14)フェノキシエタノール 0.2
(15)アスコルビン酸リン酸マグネシウム 0.1
(16)ワイルドタイムエキス 0.1
(17)チャ葉エキス 0.1
(18)イオン交換水 残余」
イ 引用文献2(甲A3)の記載事項
(2a)
「【請求項1】
炭化水素系ワックスを含むテカリ防止剤であって、
前記炭化水素系ワックスが、炭素数28~42の炭化水素系ワックス部を20~95質量%と、炭素数43以上の炭化水素系ワックス部を5~80質量%とを含み、炭素数27以下の炭化水素系ワックス部の含有量が15質量%以下であることを特徴とするテカリ防止剤。
・・・
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のテカリ防止剤を5~40質量%配合したことを特徴とするテカリ防止用化粧料。
【請求項6】
ワックスの固化力を低下せしめるワックス固化防止剤0.01~5質量%をさらに配合し、前記ワックス固化防止剤が金属セッケン、親油化ベントナイト、アミノ酸誘導体、デキストリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルおよびソルビトールのベンジリデン誘導体から選ばれるものであることを特徴とする請求項5に記載のテカリ防止用化粧料。
・・・
【請求項8】
親油性ゲル化剤、および(ジメチコン/ビニルジメチコン/メチコン)クロスポリマー、ポリメタクリル酸メチル、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、ポリメチルシルセスキオキサンから選ばれる粉末のうちの一種または二種以上を配合してなることを特徴とする請求項5または6に記載のテカリ防止用化粧料。」
(2b)
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明者は、テカリ防止効果の持続するテカリ防止剤を提供することを目的として鋭意研究した結果、特定の炭素数分布を有するワックスを用いれば、皮脂を奪うことなくテカリを防止し、しかもその効果が持続することをすることを見出し、本発明に至った。
・・・
【0012】
かかる炭化水素系ワックスとしては、炭素数28~42の炭化水素系ワックスを20~95質量%と、炭素数43以上の炭化水素系ワックスを5~80質量%とを含み、炭素数27以下の炭化水素系ワックスの含有量が15質量%以下のものであれば、天然物および合成物を問わずいずれをも用いることができ、例えば・・・、日本精鑞社製のHNP―9、日本精鑞社製のSP-0165等のパラフィンワックス、その他にもエチレンプロピレンコポリマー、セレシン、オゾケライトが挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。・・・
【0013】
本発明においては、上記テカリ防止剤を用いてテカリ防止用化粧料とすることができる。テカリ防止用化粧料におけるテカリ防止剤の配合量は、5~40質量%であり、より好ましくは5~25質量%である。テカリ防止剤の配合量が5質量%未満では、テカリ防止効果が不十分であり、40質量%を超えて用いると硬すぎて塗布しにくいという不都合がある。
【0014】
本発明のテカリ防止用化粧料には、上記テカリ防止剤を揮発性シリコーン油を含む油分に溶解して用いることが好ましい。揮発性シリコーン油としては、例えば、デカメチルテトラシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン等の鎖状ポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等の環状ポリシロキサン等が挙げられる。このうち特に環状ポリシロキサンを用いることが最適である。
揮発性シリコーン油の好ましい配合量は、20~95質量%である。
【0015】
本発明のテカリ防止用化粧料には、ワックスの固化力を低下せしめるワックス固化防止剤0.01~5質量%をさらに配合することが好ましい。
【0016】
本発明におけるテカリ防止剤の固化力を低下せしめるワックス固化防止剤は、同時に配合されるワックスの固化力を低下させるものであれば何でもよいが、金属セッケン、親油化ベントナイト、アミノ酸誘導体、デキストリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビトールのベンジリデン誘導体などの使用が好ましい。
金属セッケンとしては水酸基の残存しているアルミニウムステアレートが最も望ましく、次いでマグネシウムステアレート、ジンクミリステートが良い。親油化ベントナイトとしては、ジメチルベンジルドデシルアンモニウムモンモリロナイトクレー、ジメチルジオクタデシルアンモニウムモンモリナイトクレーが良い。アミノ酸誘導体としては、N-ラウロイル-L-グルタミン酸、α,γ-ジ-n-ブチルアミンが最も良い。デキストリン脂肪酸エステルとしては、デキストリンパルミチン酸エステル、デキストリンオレイン酸エステル、デキストリンステアリン酸エステルが良い。ショ糖脂肪酸エステルとしては、8個の水酸基のうち3個以下が高級脂肪酸でエステル化され、高級脂肪酸がステアリン酸、パルミチン酸であるものが良い。ソルビトールのベンジリデン誘導体としては、モノベンジリデンソルビトール、ジベンジリデンソルビトールが良い。これらのワックス固化防止剤のうち、特に好ましいのはパルミチン酸デキストリンである。
【0017】
本発明のテカリ防止用化粧料へのワックス固化防止剤の配合量には特に限定はないが、一般に0.01~5.0質量%であり、好ましくは0.03~2.0質量%である。ワックス固化防止剤の配合量が0.01質量%未満であるとワックスがまだ固化された状態にある傾向あり、逆に5質量%を超えると、それ以上は柔らかくならず、その上ワックス固化防止剤以外の配合成分の配合量が相対的に減量されることになり、テカリ防止用化粧料の品質を維持しにくくなる傾向にある。又これらのワックス固化防止剤は、基剤に直接溶解又は分散しても良く、あらかじめ油分等で分散処理をしておいても良い。
【0018】
本発明のテカリ防止用化粧料には、親油性ゲル化剤、および(ジメチコン/ビニルジメチコン/メチコン)クロスポリマー、ポリメタクリル酸メチル、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、ポリメチルシルセスキオキサンから選ばれる粉末のうちの一種または二種以上を3~40質量%配合することが好ましい。・・・」
(2c)
「【0033】
市販品としては、シリコーンゲル組成物にシリコーン油を配合したものとして、例えば、KSG-15、KSG-16、KSG-17、KSG-18(以上、いずれも信越化学工業社製)等が挙げられる。
・・・
【0036】
本発明のテカリ防止用化粧料におけるシリコーンゲル組成物の含有量は特に限定されないが、好ましくは0.05~50質量%、より好ましくは0.25~40質量%である。この範囲で用いれば、ワックス固化防止剤のみを配合した時に比べて、安定性、使用感(べたつきのなさ)ともにより良好なものとなる。
・・・
【0041】
本発明のテカリ防止用化粧料においては、・・・ポリオキシエチレンアルキルエーテル・・・等の非イオン界面活性剤類、・・・を含有することができる。」
(2d)
「【0062】
実施例6 W/Oクリーム(化粧下地)
アルキル架橋ポリメチルシロキサンのデカメチルシクロペンタ
シロキサン配合物 5.0
(Dow Corning 9045 Silicone Elastomer BlendTM:Dow Corning社製)
リジン誘導体変性シリコーン 5.0
パラフィンワックス 5.0
(HNP-9:日本精蝋(株)社)
ポリエチレンワックス 2.0
(ハイワックス720P:三井化学(株))
パルミチン酸デキストリン 0.5
酸化ポリプロピレンワックス 3.0
(LICOWAX371FP:クラリアントジャパン(株))
(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー 20.0
(KSG-15TM:信越化学工業(株)製)
ジメチルポリシロキサン6mPas 5.0
デカメチルシクロペンタシロキサン 25.0
ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体 3.0
グリセリン 1.0
1,3-ブチレングリコール 5.0
キシリット 0.5
イソステアリン酸 0.5
アルキル変性シリコン樹脂被覆無水ケイ酸 2.0
タルク 0.5
アルミニウムステアレート 1.0
ベンガラ被覆雲母チタン 0.1
ヘキサメタリン酸ナトリウム 0.05
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
L-セリン 0.1
オトギリソウエキス 0.1
酢酸DL-α-トコフェロール 0.2
チオタウリン 0.1
トゲナシエキス 0.1
シャクヤクエキス 0.1
アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム 0.1
ユキノシタエキス 0.1
パラオキシ安息香酸エステル 適量
フェノキシエタノール 適量
パルミチン酸デキストリン被覆黄酸化鉄 0.1
ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 1.0
精製水 残余
トリメチルシロキシケイ酸 1.5
球状無水ケイ酸 1.0
球状ポリエチレン末 5.0
香料 適量」
(2e)
「【0064】
実施例8 油性化粧料
アルキル架橋ポリメチルシロキサンのジメチルポリシロキサン配合物
5.0
(Dow Corning 9041 Silicone Elastomer BlendTM:Dow Corning社製)
リジン誘導体変性シリコーン 2.0
フィッシャートロプシュワックス 15.0
(FNP-0080:日本精蝋 (株 )社 )
ポリエチレンワックス 2.0
(ハイワックス 720P:三井化学(株))
(ジメチコン /ビニルジメチコン )クロスポリマー 20.0
(KSG-15TM:信越化学工業 (株 )製 )
パルミチンデキストリン 0.1
軽質イソパラフィン 残量
メチルハイドロジェンポリシロキサン 1.0
デカメチルシクロペンタシロキサン 15.0
ヒマシ油 2.0
キャンデリラロウ 5.0
イソステアリン酸 3.0
オレイン酸 1.0
トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル 2.0
ムクロジエキス 0.1
カラスムギエキス 0.1
パルミチン酸デキストリン 13.0
トリメチルシロキシケイ酸 15.0
テトラデセン 0.1
ポリエチレン 5.0
マイクロクリスタリンワックス 5.0
・・・
【0071】
実施例15 乳化ファンデーション
処方 (質量%)
リジン誘導体変性シリコーン 1.0
フィッシャートロプシュワックス 15.0
(FNP-0080:日本精蝋(株)社)
フィッシャートロプシュワックス 15.0
(CIREBELLE109:CIREBELLE社)
パルミチン酸デキストリン 2.0
マイクロクリスタリンワックス 1.0
ジメチルポリシロキサン 15.0
デカメチルシクロペンタシロキサン 2.0
アルキル架橋ポリメチルシロキサンのデカメチルシクロペンタ
シロキサン配合物 3.0
(Dow Corning 9045 Silicone Elastomer BlendTM:Dow Corning社製)
3-トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルカルバミド酸
プルラン 0.5
1,3-ブチレングリコール 6.0
キャンデリラロウ 3.0
イソステアリン酸 1.0
エチレングリコール脂肪酸エステル 0.1
ラノリン脂肪酸オクチルドデシル 0.5
2-アルキル-N-カルボキシメチル
-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン 4.0
酸化チタン 7.5
硫酸バリウム 5.0
酸化チタン 7.0
タルク 3.0
無水ケイ酸 4.0
架橋型シリコーン末 0.1
(トレフィルE-506TM:東レ・ダウ・コーニング・シリコーン社製)
メタリン酸ナトリウム 0.1
ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン 0.1
酢酸DL-α-トコフェロール 0.1
ハマメリス抽出液 0.1
シャクヤクエキス 0.1
コンドロイチン硫酸ナトリウム 0.1
ヒアルロン酸ナトリウム 0.1
酵母エキス 0.1
アセンヤクエキス 0.1
パラオキシ安息香酸エステル 適量
ベンガラ 適量
黄酸化鉄 適量
黒酸化鉄 適量
無機複合粉体(カバーリーフAR-80TM;触媒化成工業(株)製) 1.0
キサンタンガム 0.1
カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.1
アクリル酸ナトリウム/2-アクリルアミド-2-メチルプロパン
スルホン酸共重合体
(SIMULGEL EGTM;SEPPIC社製) 0.5
メリロートエキス 2.0
精製水 残余」
ウ 引用文献3(甲A5)の記載
(3a)
「
[図:0001437352000001.jpg]
」
(7頁表のKF-6017の欄)
(3b)
「
[図:0001437352000002.jpg]
」
(12頁のKSG-15の欄)
エ 引用文献4(甲A11)の記載
(4a)
「
[図:0001437352000003.jpg]
」
(13頁HLBの項目)
オ 引用文献5(甲A12)の記載
(5a)
「
[図:0001437352000004.jpg]
」
(180頁表7-4.)
カ 引用文献6(甲A13)の記載
(6a)
「
[図:0001437352000005.jpg]
」
(290頁左欄1~18行)
キ 引用文献7(甲A14)の記載
(7a)
「
[図:0001437352000006.jpg]
[図:0001437352000007.jpg]
」
(525頁右欄下から5行~526頁左欄8行)
ク 引用文献8(甲A15)の記載
(8a)
「
[図:0001437352000008.jpg]
[図:0001437352000009.jpg]
[図:0001437352000010.jpg]
」
(162頁左欄下から5行~163頁左欄1行)
ケ 引用文献9(甲A16)の記載
(9a)
「
[図:0001437352000011.jpg]
[図:0001437352000012.jpg]
」
(9頁右欄下から2行~10頁左欄6行)
(9b)
「
[図:0001437352000013.jpg]
[図:0001437352000014.jpg]
」
(11頁右欄下から4行~12頁左欄5行)
(2)取消理由3-1及び4-1について
ア 引用文献1に記載された発明
引用文献1において、請求項1に記載された肌改善皮膚化粧料(摘記(1a))の具体例を示したものである、実施例16(摘記(1c))の記載からみて、引用文献1には、次の「引用文献1発明」が記載されていると認める。
[引用文献1発明]
「(1)スクワラン15.0質量%、(2)エチルヘキサン酸セチル5.0質量%、(3)イソノナン酸イソノニル3.5質量%、(4)マイクロクリスタリンワックス1.0質量%(5)ジステアルジモニウムヘクトライト1.5質量%、(6)PEG-10ジメチコン(商品名:KF-6017,信越化学工業株式会社製)1.0質量%、(7)デカメチルシクロペンタシロキサン5.0質量%、(8)[成分(B)]ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン/ビス-ビニルジメチコンクロスポリマー(非乳化性架橋型シリコーン分5.0%)(商品名:KSG-045Z(非乳化性架橋型シリコーン純分20%)、信越化学工業株式会社製)25.0質量%、(9)香料0.1質量%、(10)1,3-ブチレングリコール5.0質量%、(11)グリセリン5.0質量%、(12)[成分(A)]D-アスパラギン酸1.0質量%、(13)エチルパラベン0.1質量%、(14)フェノキシエタノール0.2質量%、(15)アスコルビン酸リン酸マグネシウム0.1質量%、(16)ワイルドタイムエキス0.1質量%、(17)チャ葉エキス0.1質量%、及び(18)イオン交換水 残余、からなるW/O型のエモリエントクリーム。」
イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と引用文献1発明を対比する。
a 引用文献1発明の「(5)ジステアルジモニウムヘクトライト1.5質量%」は、本件発明1の「(A)0.1~5質量%の有機変性粘土鉱物」に相当する。
b 引用文献1発明の「(6)PEG-10ジメチコン1.0質量%」は、本件発明1の「(B)0.1~5質量%のHLB6以下の界面活性剤」と「0.1~5質量%の」「界面活性剤」という限りにおいて共通する。
c 引用文献1発明の「(4)マイクロクリスタリンワックス1.0質量%」は、本件発明1の成分「(C)1~15質量%のセレシンワックス、パラフィンワックス、キャンデリラワックス、及びマイクロクリスタリンワックスから選択される少なくとも1種のワックス」に相当する。
d 本件特許明細書【0030】の(D)シリコーンエラストマーの説明を考慮すると、引用文献1発明の「(8)[成分(B)]ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン/ビス-ビニルジメチコンクロスポリマー(非乳化性架橋型シリコーン分5.0%)(商品名:KSG-045Z(非乳化性架橋型シリコーン純分20%)、信越化学工業株式会社製)25.0質量%」中に含まれる「ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン/ビス-ビニルジメチコンクロスポリマー」5質量%(=25.0質量%×20%)は、本件発明1の「(D)0.5~5質量%のシリコーンエラストマー」に相当する。
e 引用文献1発明の「(8)[成分(B)]ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン/ビス-ビニルジメチコンクロスポリマー(非乳化性架橋型シリコーン分5.0%)(商品名:KSG-045Z(非乳化性架橋型シリコーン純分20%)、信越化学工業株式会社製)25.0質量%」中には、引用文献1の摘記(1c)【0026】の
「KSG-045Z(ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン/ビス-ビニルジメチコンクロスポリマーとシクロペンタシロキサンとの混合物で架橋物(実分)は約20%)」
との記載から、20.0質量%(=25.0質量%×(1-0.2))のシクロペンタシロキサンが含まれると認められる。
ここで、「シクロペンタシロキサン」は「デカメチルシクロペンタシロキサン」と同じ物質である(https://cosmetic-ingredients.org/base/11235/参照。)。
また、引用文献1発明は「(7)デカメチルシクロペンタシロキサン5.0質量%」を含む。
そして、本件明細書【0033】及び【0034】の記載から「デカメチルシクロペンタシロキサン」は「揮発性油分」である。
したがって、引用文献1発明は合計25.0質量%の揮発性油を含有するといえ、本件発明1が「(E)10~50質量%の揮発性油分」を含有することに相当する。
f 引用文献1発明の各成分の合計から、残余の「(18)イオン交換水」は、約32質量%であるから、本件発明1の「(F)60質量%以下の水」に相当する。
g 引用文献1発明の「W/O型のエモリエントクリーム」は、本件発明1の「油中水型乳化化粧料」に相当する。
したがって、本件発明1と引用文献1発明とは、
「(A)0.1~5質量%の有機変性粘土鉱物;
(B)0.1~5質量%の界面活性剤;
(C)1~15質量%のセレシンワックス、パラフィンワックス、キャンデリラワックス、及びマイクロクリスタリンワックスから選択される少なくとも1種のワックス;
(D)0.5~5質量%のシリコーンエラストマー;
(E)10~50質量%の揮発性油分;及び
(F)60質量%以下の水を含有することを特徴とする油中水型乳化化粧料。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1-1>
界面活性剤について、本件発明1は、「HLB6以下」と特定しているのに対して、引用文献1発明においては、(6)PEG-10ジメチコンのHLBが明らかでない点。
<相違点1-2>
(C)のワックスについて、本件発明1は、「(C)ワックスがキャンデリラワックスであ」ると特定しているのに対し、引用文献1発明は、(C)ワックスが「マイクロクリスタリンワックス」である点。
<相違点1-3>
(D)のシリコーンエラストマーについて、本件発明1は、「(D)シリコーンエラストマーは、ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、及びポリシリコーン-11から選択され」ると特定しているのに対し、引用文献1発明は、「ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン/ビス-ビニルジメチコンクロスポリマー」である点。
<相違点1-4>
本件発明1は、「炭素数28~42の炭化水素系ワックス部を20~95質量%と、炭素数43以上の炭化水素系ワックス部を5~80質量%とを含み、炭素数27以下の炭化水素系ワックス部の含有量が15質量%以下である炭化水素系ワックスを含ま」ないと特定しているのに対し、引用文献1発明は、そのようなワックスを含むか含まないかが不明である点。
<相違点1-5>
本件発明1は、「D-アミノ酸及びその誘導体を含まない」と特定しているのに対し、引用文献1発明は、D-アミノ酸である「D-アスパラギン酸」を含む点。
(イ)判断
上記相違点について検討するに、少なくとも相違点1-2、1-3及び1-5は実質的な相違点である。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は引用文献1に記載された発明であるとはいえない。
本件発明1の進歩性について検討する。
事案に鑑み、まず相違点1-2について検討する。
引用文献1には、油分の例として、「マイクロクリスタリンワックス」とともに「カンデリラロウ」、すなわち「キャンデリラワックス」も他のワックスとともに列挙されている(摘記(1b))。
しかしながら、引用文献1の記載を参酌し、本件特許の出願時の技術常識を考慮しても、引用文献1発明において、「マイクロクリスタリンワックス」に代えて、又はそれに加えて、多数のワックスの中から「キャンデリラワックス」を選択して使用する動機は見当たらない。
したがって、引用文献1発明において、「マイクロクリスタリンワックス」に代えて「キャンデリラワックス」を含有するものとすることは、当業者が容易になし得た事項であるということはできない。
次に、相違点1-3について検討する。
引用文献1には、引用文献1に記載の肌改善皮膚化粧料に用いられる架橋型シリコーンとして、実施例16で使用される「ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン/ビス-ビニルジメチコンクロスポリマー」、及びジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー等の物質が多数列挙されている(摘記(1b)の【0016】及び【0019】)。
しかしながら、本件特許の出願時の技術常識を考慮しても、引用文献1発明における多数の成分の中から特に「ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン/ビス-ビニルジメチコンクロスポリマー」に着目し、これに代えて、又はそれに加えて、多数の架橋型シリコーンの中から「ジメチコンクロスポリマー」又は「(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー」等の本件発明1の(D)のシリコーンエラストマーを選択して使用する動機は見当たらない。
したがって、引用文献1発明において、「ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、及びポリシリコーン-11から選択」されるシリコーンエラストマーを含有するものとすることは、当業者が容易になし得た事項であるということはできない。
さらに、相違点1-5について検討する。
引用文献1に記載された肌改善皮膚化粧料は「D-アミノ酸又はその誘導体あるいは塩の1種または2種以上」を含有することを特徴とするものである(摘記(1a))から、引用文献1発明において「D-アスパラギン酸」は必須の成分であるといえる。したがって、本件特許の出願時の技術常識を考慮しても、引用文献1発明において、「D-アミノ酸又はその誘導体あるいは塩の1種または2種以上」を含まないものとすることは、当業者が容易になし得た事項であるということはできない。
したがって、引用文献1発明において、相違点1-2、相違点1-3及び相違点1-5に係る技術的事項を採用することは、当業者が容易になし得たことであるとはいえないから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいうことはできない。
(ウ)申立人の主張の概要
申立人Aは、申立書A及び令和7年4月18日付けの意見書(以下「申立人A意見書」という。)において、引用文献1を主引例とする本件発明1の新規性又は進歩性の欠如に関連して、相違点1-5の「D-アミノ酸及びその誘導体」を含まない点について、概略、以下のa及びbの主張をしている。
a 「特許庁調整課審査基準室から2025年4月3日に公表された『「除くクレーム」とする補正について』と題する注意書きには、・・・「除くクレーム」とすることにより特許を受けることができる発明は、拒絶理由で指摘された引用発明と比較すると技術的思想としては顕著に異なり本来進歩性を有するが、たまたま引用発明と重なるような発明であって、引用発明と技術的思想としては顕著に異なる発明ではない場合は、「除くクレーム」とすることによつて進歩性欠如の拒絶理由が解消されることはほとんどないと考えられる。」旨記載されている。・・・
そうすると、引用文献1の実施例16に具現された発明の技術的思想と本件特許発明技術的思想が顕著に異なるとは到底認められない。したがつて、上記相違点1-1によって、引用文献1の実施例16に具現された発明に対して新規性が得られたとしても、かかる相違点1-5が引用文献1に記載された発明に基づく進歩性欠如の取消を解消し得るものではない。」
(申立人A意見書の第1~2頁「3-2の(ア)」)
b 「仮に上記相違点1-1(当審注:上記アの相違点1-5に対応する。)によって新規性および進歩性が認められるとした場合に備えて、引用文献1(特許異議申立書における甲第2号証)に代えて参考資料1(特開2010-77072号公報)を提出する。参考資料1は・・・「D-アミノ酸及びその誘導体」の代わりに「β-アラニン誘導体及びその塩」を含むことが記載されており、その実施例16には、引用文献1の実施例16におけるD-アスパラギン酸1.0質量%に代えてN-(3’、4’、5’-トリメトキシベンゾイル)-β-アラニン1.0質量%を用いること以外は、引用文献1の実施例16と全く同じ処方のエモリエントクリーム(W/O型)が記載されている。・・・
参考資料1の場合には、請求項1発明と引用文献1発明との間に見られた相違点1-1は存在しない。・・・
実施例14には「(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーを含むエモリエントクリーム(W/O型)が記載されているのであるから、上記実施例16のエモリエントクリーム(W/O型)におけるラウリルポリジメチルシロキシエチルエチルジメチコン/ビス-ビニルジメチコンクロスポリマー(「エチルエチル」については原文ママ)に代えて、参考資料1に記載された発明においてそれと同効のシリコーンエラストマーとして記載され、しかも、実施例14において架橋型シリコーンとして配合したことが記載されている(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーを用いることは・・・当業者にとって何ら創意工夫を要することなくなし得たことである。」
(申立人A意見書の第2~5頁「3-2の(イ)(ウ)」)
(エ)申立人Aの主張に対する判断
aの主張について、上記(イ)で述べたとおり、引用文献1発明において「D-アスパラギン酸」は必須の成分であるから、これを含有しない油中水型乳化化粧料は引用文献1発明とは技術的思想が顕著に異なるものである。そして、引用文献1の記載に基づいて「D-アスパラギン酸」を除いた肌改善皮膚化粧料とする動機は見当たらず、また本件特許の出願時の技術常識を考慮しても、引用文献1発明において、相違点1-5に係る技術的事項を採用することは当業者が容易になし得た事項であるということはできない以上、本件発明1が進歩性を欠如したものであるとはいえない。
bの主張について、上記参考資料1が引用文献1(甲A2)「に代えて」提出されること、また同資料に記載された実施例16が、引用文献1の実施例16におけるD-アスパラギン酸1.0質量%に代えてN-(3’、4’、5’-トリメトキシベンゾイル)-β-アラニン1.0質量%を用いること以外は、引用文献1の実施例16と全く同じ処方のエモリエントクリーム(W/O型)が記載されていることから、当初から申立理由として主張できた理由であると認められる。
したがって、上記主張は訂正の請求の内容に付随して生じる理由であるとは認められず、採用できない。
仮に、主張bが訂正の請求の内容に付随して生じた理由であるとして、参考資料1に基づく新規性・進歩性について検討するとしても、参考資料1には、相違点1-2に係る「キャンデリラワックス」を選択して使用する動機は見当たらない。
また、参考文献1の実施例14に、上記相違点1-3の「(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー」を含む別の組成物が記載されているなど、参考文献1に本件発明1の(D)に相当するシリコーンエラストマーが記載されていたとしても、実施例16のエモリエントクリーム(W/O型)におけるラウリルポリジメチルシロキシエチルエチルジメチコン/ビス-ビニルジメチコンクロスポリマーに着目して、それに代えて又はそれに加えて、本件発明1の(D)のシリコーンエラストマーを含有するものとする動機はない。
これらのことから、少なくとも相違点1-2及び相違点1-3の点において、本件発明1の進歩性を否定することはできない。
したがって、上記主張はいずれも採用できない。
(オ)小括
以上のとおり、本件発明1は、引用文献1に記載された発明であるとはいえず、また、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件発明2について
(ア)判断
本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、本件発明1をさらに限定するものであるから、本件発明2は、上記イ(イ)で述べたのと同様の理由により、引用文献1に記載された発明であるとはいえず、また、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(イ)申立人Aの主張について
請求項2に係る発明についての、申立書A及び申立人意見書Aにおける申立人の主張は、上記イ(ウ)の主張を前提とするものと認められる。
そして、上記イ(エ)で説示したとおり、上記主張は採用できないから、請求項2に係る発明についての申立人の主張も採用できない。
(ウ)小括
以上のとおり、本件発明2は、引用文献1に記載された発明であるとはいえず、また、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 引用文献1を主引用例とした場合についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1及び2は、引用文献1に記載された発明であるとはいえず、また、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、請求項1及び2に係る特許は、特許法第29条第1項の規定及び特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
よって、先の取消理由通知の取消理由3-1及び4-1は解消している。
(3)取消理由3-2及び4-2について
ア 引用文献2(甲A3)に記載された発明
引用文献2にはテカリ防止用化粧料が記載され(摘記(2a))、その具体例を示したものである実施例6(摘記(2d))の記載からみて、引用文献2には、次の「引用文献2発明」が記載されていると認める。
[引用文献2発明]
「アルキル架橋ポリメチルシロキサンのデカメチルシクロペンタシロキサン配合物(Dow Corning 9045 Silicone Elastomer BlendTM:Dow Corning社製)5.0質量%、リジン誘導体変性シリコーン5.0質量%、パラフィンワックス(HNP-9:日本精蝋(株)社)5.0質量%、ポリエチレンワックス(ハイワックス720P:三井化学(株))2.0質量%、パルミチン酸デキストリン0.5質量%、酸化ポリプロピレンワックス(LICOWAX371FP:クラリアントジャパン(株))3.0質量%、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー(KSG-15TM:信越化学工業(株)製)20.0質量%、ジメチルポリシロキサン6mPas5.0質量%、デカメチルシクロペンタシロキサン25.0質量%、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体3.0質量%、グリセリン1.0質量%、1,3-ブチレングリコール5.0質量%、キシリット0.5質量%、イソステアリン酸0.5質量%、アルキル変性シリコン樹脂被覆無水ケイ酸2.0質量%、タルク0.5質量%、アルミニウムステアレート1.0質量%、ベンガラ被覆雲母チタン0.1質量%、ヘキサメタリン酸ナトリウム0.05質量%、グリチルリチン酸ジカリウム0.1質量%、L-セリン0.1質量%、オトギリソウエキス0.1質量%、酢酸DL-α-トコフェロール0.2質量%、チオタウリン0.1質量%、トゲナシエキス0.1質量%、シャクヤクエキス0.1質量%、アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム0.1質量%、ユキノシタエキス0.1質量%、パラオキシ安息香酸エステル適量、フェノキシエタノール適量、パルミチン酸デキストリン被覆黄酸化鉄0.1質量%、ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト1.0質量%、精製水残余、トリメチルシロキシケイ酸1.5質量%、球状無水ケイ酸1.0質量%、球状ポリエチレン末5.0質量%、及び香料適量からなるW/Oクリーム(化粧下地)。」
イ 本件発明1について
(ア)引用文献2発明との対比
本件発明1と引用文献2発明を対比する。
a 引用文献2発明の「ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト1.0質量%」は、本件発明1の「(A)0.1~5質量%の有機変性粘土鉱物」に相当する。
b 引用文献2の【0041】の記載を考慮すると、引用文献2発明の「ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体3.0質量%」は、本件発明1の「(B)0.1~5質量%のHLB6以下の界面活性剤」と「0.1~5質量%の」「界面活性剤」という限りにおいて共通する。
c 引用文献2発明の「パラフィンワックス5.0質量%」は、本件発明1の「(C)1~15質量%のセレシンワックス、パラフィンワックス、キャンデリラワックス、及びマイクロクリスタリンワックスから選択される少なくとも1種のワックス」に相当する。
d 引用文献2発明の「(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー(KSG-15TM:信越化学工業(株)製)20.0質量%」は、引用文献3の摘記(3b)のKSG-15の説明から、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー4~10%、及びベースオイルであるシクロペンタンシロキサンとから構成されるから、組成物全体に対し、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーは0.8~2質量%(=20.0質量%×(0.04~0.1))、またシクロペンタンシロキサンは18.0~19.2質量%(=20.0質量%×(0.9~0.96))含まれるものと認められる。
そのため、上記「(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー(KSG-15TM:信越化学工業(株)製)20.0質量%」は、本件発明1の「(D)0.5~5質量%のシリコーンエラストマー」であって、「前記(D)シリコーンエラストマーは、ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、及びポリシリコーン-11から選択され」るものに相当する。
e さらに、シクロペンタンシロキサンはデカメチルシクロペンタンシロキサンの別名であり、また引用文献2発明には別途、「デカメチルシクロペンタシロキサン25.0質量%」が含まれるから、引用発明2には、デカメチルシクロペンタシロキサンが合計で43.0~44.2質量%含まれ、本件明細書【0033】及び【0034】にはデカメチルシクロペンタシロキサンが揮発性油分であることが記載されている。
したがって、引用文献2発明は合計25.0質量%の揮発性油を含有するといえ、本件発明1の「(E)10~50質量%の揮発性油分」に相当する。
f 引用文献2発明の各成分の合計から、残余の「精製水」は、約6質量%であるから、本件発明1の「(F)60質量%以下の水」に相当する。
g 引用文献2発明は、D-アミノ酸及びその誘導体を含まない。
h 引用文献2発明の「W/Oクリーム(化粧下地)」は、本件発明1の「油中水型乳化化粧料」に相当する。
したがって、本件発明1と引用文献2発明とは、
「(A)0.1~5質量%の有機変性粘土鉱物;
(B)0.1~5質量%の界面活性剤;
(C)1~15質量%のセレシンワックス、パラフィンワックス、キャンデリラワックス、及びマイクロクリスタリンワックスから選択される少なくとも1種のワックス;
(D)0.5~5質量%のシリコーンエラストマー;
(E)10~50質量%の揮発性油分;及び
(F)60質量%以下の水を含有し、
前記(D)シリコーンエラストマーは、ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、及びポリシリコーン-11から選択され、
D-アミノ酸及びその誘導体を含まないことを特徴とする油中水型乳化化粧料。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点2-1>
界面活性剤について、本件発明1は、「HLB6以下」と特定しているのに対して、引用文献2発明においては、「ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体」のHLBが明らかでない点。
<相違点2-2>
(C)のワックスについて、本件発明1は、「(C)ワックスがキャンデリラワックスであ」ると特定しているのに対し、引用文献2発明は、(C)ワックスが「パラフィンワックス」である点。
<相違点2-3>
本件発明1は、「炭素数28~42の炭化水素系ワックス部を20~95質量%と、炭素数43以上の炭化水素系ワックス部を5~80質量%とを含み、炭素数27以下の炭化水素系ワックス部の含有量が15質量%以下である炭化水素系ワックスを含ま」ないと特定しているのに対し、引用文献2発明には、これに該当する「パラフィンワックス(HNP-9:日本精蝋(株)社)」(摘記(2b)の【0012】の記載を参照。)が含まれる点。
(イ)判断
上記相違点について検討すると、少なくとも相違点2-2及び2-3は実質的な相違点である。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は引用文献2に記載された発明であるとはいえない。
次に、進歩性について検討する。
事案に鑑み、まず相違点2-2について検討する。
引用文献2には、ワックスとして、「キャンデリラワックス」に相当する「キャンデリラロウ」を含む組成物の実施例が記載されている(摘記(2e)の実施例8及び15)。
しかしながら、引用文献2発明の「W/Oクリーム(化粧下地)」と引用文献2の実施例8の「油性化粧料」及び実施例15の「乳化ファンデーション」は形態も用途も異なるものであり、前者の「パラフィンワックス」を後者の「キャンデリラワックス」にそのまま置換する動機はない。
したがって、本件特許の出願時の技術常識を考慮しても、引用文献2発明の「パラフィンワックス」に代えて、又はそれに加えて「キャンデリラワックス」を採用する動機はない。
したがって、引用文献2発明において、「マイクロクリスタリンワックス」に代えて「キャンデリラワックス」を含有するものとすることは、当業者が容易になし得た事項であるということはできない。
さらに、相違点2-3について検討する。
引用文献2に記載されたテカリ防止用化粧料は「炭素数28~42の炭化水素系ワックス部を20~95質量%と、炭素数43以上の炭化水素系ワックス部を5~80質量%とを含み、炭素数27以下の炭化水素系ワックス部の含有量が15質量%以下である炭化水素系ワックス」を含有することを特徴とするものである(摘記(2a))から、引用文献2発明において上記ワックスは必須の成分であるといえる。したがって、本件特許の出願時の技術常識を考慮しても、引用文献2発明において、上記ワックスを含有しないテカリ防止用化粧料とする動機付けがあるとはいえず、かかる化粧料とすることは当業者が容易になし得た事項であるということはできない。
したがって、引用文献2発明において、相違点2-2及び相違点2-3に係る技術的事項を採用することは、当業者が容易になし得たことであるとはいえないから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は引用文献2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいうことはできない。
(ウ)申立人の主張の概要
申立人Aは、申立書A意見書において、相違点2-3の「炭素数28~42の炭化水素系ワックス部を20~95質量%と、炭素数43以上の炭化水素系ワックス部を5~80質量%とを含み、炭素数27以下の炭化水素系ワックス部の含有量が15質量%以下である炭化水素系ワックス」を含まない点については、概略、以下のa~cの主張をしている。
a 「引用文献2に記載された発明は、特定の炭化水素系ワックスを必須成分とするものであるが、引用文献2には、特定の炭化水素系ワックスに相当しないパラフィンワックスを含む油中水型乳化化粧料も記載されており、特定の炭化水素系ワックスに相当するパラフィンワックスを含む油中水型乳化化粧料と比較したときに、テカリ抑制効果は不足する(△または×)が、油中水型乳化化粧料に求められるその他の性能はまつたく同等であることが開示されている。・・・
要するに、引用文献2は、特定の炭化水素系ワックスに相当しないパラフィンワックスを用いる場合には、テカリ抑制効果は不十分であるもののその他の評価項目では十分な性能を有することを示している。」及び
「引用文献2の実施例6には、特定の炭化水素系ワックスに相当するパラフィンワックス(HNP-9)を用いたW/Oクリームが記載されているところ、パラフィンワックス、HNP-9に代えて、特定の炭化水素系ワックスに相当しないパラフィンワックス(たとえば、155)を用いてW/Oクリームを調製し得ることは自明である。」
(申立人A意見書の第5~6頁「3-3の(イ)及び(ウ)」)
b 「特許明細書には、特許発明は「バーム状と呼べる程度の硬度を有する固形又は半固形の油中水型乳化化粧料であり、フックスを含む被膜で肌を被覆することによって優れた保湿効果を有する。また、塗布する際には肌上で溶けて崩れるような独特の感触を与え、水溶性は親水性の薬剤を安定に配合することが可能である。」との効果を有する、と記載されている(段落0010参照)が、実施例には、パラフィンワックス(実施例1~3、13~17)と記載されているだけであって、それが特定の炭化水素系ワックスであるのか、それとも特定の炭化水素系ワックスに相当しないのかは明らかでない。そもそもパラフィンワックスには、炭素数分布が異なる多数の品番があり、「パラフィンワックス」と記載することで特定の品番を指すという技術常識も存在しない。
そうすると、特許明細書に記載されている効果は実施例によって確認されたものとは言えないから、明細書に効果の記載があるとはいえ、訂正請求項1発明によってそのような効果が奏されるものとは認められない。」
(申立人A意見書の第6頁「3-3の(ウ)」)
c 「「除くクレーム」は、引用発明と比較すると技術的思想としては顕著に異なり本来進歩性を有するが、たまたま引用発明と重なるような発明について認められるものである。
引用文献2の実施例6に具現化されている発明は、油中水型乳化化粧料である点ばかりでなく、請求項1発明を構成する6つの成分も共通しており、両者の違いは引用文献2がテカリ抑制という特性に着目しているのに対して、請求項1発明では「バーム状といえる程度の硬度を有し、肌に塗布する際に溶けるようになじむ独特の使用感触を発揮する」という特性に着目している点だけである。
つまり、同じ油中水型乳化化粧料について、別々の特性に着目しているだけであって、組成的にも、剤型においても全く同一である。而して、訂正請求項1発明は「油中水型乳化化粧料」に係る発明であって用途を特定する用途発明ではないから、両者の技術的思想が顕著に異なるとは到底認められない。
そうすると、引用文献2記載の発明に基づいて当業者が容易に想到し得た発明において、「除くクレーム」とすることによつて進歩性が得られるために必要な「技術思想における顕著な相違」という前提を欠くものである。」
(申立人A意見書の第7頁「3-3の(エ)」)
(エ)申立人の主張に対する判断
aの主張について、引用文献2には、特定の炭化水素系ワックスに相当する炭化水素ワックスと、特定の炭化水素系ワックスに相当しないパラフィンワックスを比較しているが、この中にキャンデリラワックスは含まれていない。また、上記イで述べたとおり、引用文献2の他の記載をみても、実施例6の特定の炭化水素系ワックスに相当するパラフィンワックス(HNP-9)に代えて、キャンデリラワックスを採用する動機付けとなる記載は見当たらない。
したがって、bにおいて主張されている本件発明の効果について検討するまでもなく、実施例6のHNP-9に代えて、キャンデリラワックスを用いてW/Oクリームを調製することは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
さらに、cの主張について、引用文献2発明と本件発明1に一致する点があるとしても、上記イで述べたとおり、両者には相違点があり。同一の発明ではない。
そして、引用文献2発明は特定の炭素数分布を有するワックスを用いることにより、改善されたテカリ防止剤を提供することを技術的特徴とする(摘記(2b))のに対し、本件発明1は特定の配合により、ある程度の硬度を持つバーム状でありながら、肌に塗布する際にとろけるような独特の使用感触を発揮する油中水型乳化化粧料を提供することを技術的特徴とするものであって、両者の課題や技術的特徴が異なる上、上記イで述べたとおり、引用文献2発明において、相違点2-2及び相違点2-3に係る構成を採用する動機付けがない以上、当業者であっても、本件発明1は、引用文献2に記載された発明に基いて容易に想到し得たものであるとはいえない。
したがって、上記主張はいずれも採用できない。
(オ)小括
以上のとおり、本件発明1は、引用文献2に記載された発明であるとはいえず、また、引用文献2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件発明2及び3について
(ア)判断
本件発明2及び3は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、本件発明1をさらに限定するものであるから、本件発明2及び3は、上記イ(イ)で述べたのと同様の理由により、引用文献2に記載された発明であるとはいえず、また、引用文献2に記載された発明、及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(イ)申立人の主張について
請求項2及び3に係る発明についての、申立書A及び申立人意見書Aにおける申立人の主張は、上記イ(ウ)の主張を前提とするものと認められる。
そして、上記イ(エ)で説示したとおり、当該主張は採用できないため、請求項2及び3に係る発明についての申立人Aの主張についても、採用できない。
(ウ)小括
以上のとおり、本件発明2及び3は、引用文献2に記載された発明であるとはいえず、また、引用文献2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 引用文献2を主引用例とした場合についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1~3は、引用文献2に記載された発明であるとはいえず、また、引用文献2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定及び特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
よって、先の取消理由通知の取消理由3-2及び4-2は解消している。
4 取消理由6(サポート要件)について
(1)本件発明の解決しようとする課題
本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載、特に、本件特許明細書の背景技術(【0002】~【0005】)、発明が解決しようとする課題の記載(【0007】)及び実施例の記載(【0050】~【0063】)からみて、本件発明の解決しようとする課題は、「バーム状といえる程度の硬度を有する固形又は半固形の油中水型乳化化粧料であって、保湿効果に優れるとともに、肌に塗布する際に溶けるようになじむ独特の使用感触を発揮するとともに、水溶性又は親水性の薬剤を安定に配合する事のできる化粧料を提供すること」であると認める。
(2)本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載
本件特許明細書には、上記課題を解決する手段として、本件発明の成分の選択及びその添加量について、詳細に説明され(【0012】~【0047】)、さらに実施例10として、以下の組成物が乳化安定性及び使用感触のいずれにおいても優れていたことが、具体的に記載されている(【0050】~【0058】)。
[図:0001437352000015.jpg]
(3)判断
したがって、本件発明1~3は、その範囲全体にわたって前記課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものであり、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものである。
取消理由6は、「ワックスの種類や製品によって、その性質は異なり、油中水型乳化組成物等の組成物とした際の影響も異なることが技術常識といえるから、本件明細書に記載され、実施例において具体的に使用された「パラフィンワックス」や「マイクロクリスタリンワックス」等において上記課題を解決できるとしても、「(C)ワックス」について、「但し」として所定の組成の炭化水素系ワックスを「含まない」とされたものについて、上記実施例のものと同様の機能・作用を発揮し、上記課題を解決できると認めるに足る根拠は示されておらず、本件特許の出願時にそのような技術常識が存在したとも認められない。」とするものである。
しかしながら、本件訂正によって、本件発明1~3の「(C)ワックス」は上記のとおり、実施例で課題を解決できたことが示された「キャンデリラワックス」に限定された。
したがって、本件発明1~3は、当業者が上記課題を解決できると認識できる範囲内のものである。
(4)まとめ
よって、決定予告の取消理由6は解消している。
第6 取消理由で採用しなかった申立理由について
本件訂正により請求項4及び5は削除されたので、取消理由として採用しなかった申立理由A3のイ、並びに、申立理由A2及びB1のうち請求項4及び5に係る特許に関する部分については、判断の対象が存在しなくなった。
そこで、取消理由で採用しなかった申立理由のうち、残る申立理由A1のウ、申立理由A2のアのうち請求項3に関する部分、並びに申立理由A2のウ~オ及びB1のうち請求項1~3に関する部分について、以下検討する。
1 申立理由A2のアのうち請求項3に関する部分について
第5の3(2)イ(イ)で述べたとおり、本件発明1は甲A2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
そして、本件発明3は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、本件発明1をさらに限定するものであるから、本件発明3は、第5の3(2)イ(イ)で述べたのと同様の理由により、甲A2に記載された発明であるとはいえず、また、甲A2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、申立人Aの主張についても、第5の3(2)イ(エ)で述べたことと同じ理由により、採用できない。
以上のとおり、本件発明3は、甲A2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、請求項3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
よって、申立理由A2のアのうち請求項3に関する部分は理由がない。
2 甲A4~甲A9及び甲B1の記載
甲A4~甲A9及び甲B1には、以下の記載がある。なお、特に注釈がない限り、摘記中の下線は当審が付したものであり、「・・・」は摘記の省略を示す。
(1)甲A4の記載
(甲A4a)
「【請求項1】
下記成分(A)~(D)を含有し、界面活性剤を実質的に含有しないことを特徴とする油中水型睫用化粧料。
(A):(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸アルキル共重合体エマルジョン 30~90質量%
(B):部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物 0.1~15質量%
(C):揮発性シリコーン 7~50質量%
(D):有機シリコーン樹脂 1~30質量%」
(甲A4b)
「【実施例】
【0030】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、これらの実施例により本発明の技術範囲が限定されるものではない。尚、表中の数値は含有量(%)を表わす。・・・
【0032】
【表1】
[図:0001437352000016.jpg]
」
(2)甲A5の記載
(甲A5a)
「
[図:0001437352000017.jpg]
」(第5頁)
(甲A5b)
「
[図:0001437352000018.jpg]
」(第7頁)
(甲A5c)
「
[図:0001437352000019.jpg]
」(第8頁)
(甲A5d)
「
[図:0001437352000020.jpg]
」(第10頁)
(甲A5e)
「
[図:0001437352000021.jpg]
」(第12頁)
(甲A5f)
「
[図:0001437352000022.jpg]
」(第18頁)
(甲A5g)
「
[図:0001437352000023.jpg]
」(第23頁)
(3)甲A6の記載
(甲A6a)
「【請求項1】
次の成分(a)、(b);
(a)下記一般式(1)及び/又は(2)で示される長鎖アルキル含有ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン
R1aR2bR3cSiO(4-a-b-c)/2 …(1)
〔式中、R1は同一又は異なってもよく、炭素数1~10のアルキル基、水素原子、アリール基、アラルキル基、フッ素置換アルキル基を示し、R2は-CmH2m-O-(C2H4O)d-(C3H6O)e-R4で示される基(式中、mは1~5の整数、d、eは0以上の整数、且つ、d+e≧1~200であり、R4は水素原子若しくは炭素数1~5の一価炭化水素基又はR5-(CO)-で示される有機基、R5は炭素数1~5の一価炭化水素基)であり、R3は炭素数10~30の一価炭化水素基であり、a、b、cはそれぞれ1.0≦a≦2.5、0.001≦b≦1.5、0.001≦c≦1.5である。〕
R6fR7gR8hSiO(4-f-g-h)/2 …(2)
〔式中、R6は同一又は異なってもよく、炭素数1~10のアルキル基、水素原子、アリール基、アラルキル基、フッ素置換アルキル基を示し、R7は-CnH2n-O-(C2H4O)i-(C3H6O)j-R9で示される基(式中、nは1~5の整数、i、jは0以上の整数、且つ、i+j≧1~200であり、R9は水素原子若しくは炭素数1~5の一価炭化水素基又はR10-(CO)-で示される有機基、R10は炭素数1~5の一価炭化水素基)であり、R8は-CpH2p-O-(C2H4O)k-(C3H6O)l-R11(式中、pは1~5の整数、k、lは0以上の整数、且つ、200≧f+g>0であり、R11は炭素数10~30一価炭化水素基)であり、f、g、hはそれぞれ1.0≦f≦2.5、0.001≦g≦1.5、0.001≦h≦1.5である。〕
(b)部分架橋型オルガノポリシロキサン重合体を含有することを特徴とする油中水型化粧料。
【請求項2】
更に、成分(c)煙霧状疎水化シリカを含有する請求項1記載の油中水型化粧料。
【請求項3】
更に、成分(d)有機変性粘土鉱物を含有する請求項1又は2記載の油中水型化粧料。
・・・」
(甲A6b)
「【0002】
【従来の技術】従来、油中型化粧料には、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン等の界面活性剤が用いられおり、この油中水型化粧料の経時安定性を向上させる手段として、ワックス、有機変性粘土鉱物、部分架橋型オルガノポリシロキサン重合体等の油ゲル化剤を配合する技術があった。
・・・
【0005】即ち本発明は、特定の長鎖アルキル含有ポ リオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンと部分架橋オルガノポリシロキサン重合体を含有する油中水型化粧料に関するものである。
・・・
【0010】成分(b)の部分架橋型オルガノポリシロキサン重合体は、低粘度シリコーン油と混合したものとして、シリコンKSG-15、KSG-16、KSG-18(何れも、信越化学工業社製)等の市販品を用いる
ことができる。これらは必要に応じて一種または二種以上を用いることができる。
・・・
【0017】本発明における、成分(d)の有機変性粘土鉱物の配合量は、0.05~3%が好ましく、0.1~1.5%がより好ましい。この範囲で配合すると、経時安定性と油っぽさが無くさっぱりした感触が更に良好である。
・・・
【0022】油成分としては、例えば、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等の環状シリコーン類、25℃での粘度が5cs以下のジメチルポリシロキサンなどの揮発性シリコーン油、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ステアロキシ変性シリコーン等のアルコキシ変性シリコーン類、ベヘニル変性シリコーン等のアルキル変性シリコーン類、フッ素変性シリコーン等の変性シリコーン油、オリーブ油、ヒマシ油、ホホバ油、ミンク油等の油脂類、流動パラフィン、スクワラン、ポリイソブチレン、ポリブテン、ワセリン、パラフィンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、モクロウ、モンタンワックス、フィッシュトロプスワックス等の炭化水素類、ミツロウ、ラノリン、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ゲイロウ等のロウ類、セチルイソオクタネート、ミリスチン酸イソプロピル、トリオクタン酸グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、ジペンタエリトリット脂肪酸エステル等のエステル類、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体、N-ラウロイルーL-グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)等のアミノ酸誘導体油類、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン等のフッ素系油剤類等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。」
(甲A6c)
「【0031】
【表1】
[図:0001437352000024.jpg]
・・・
【0033】
注1:下記一般式(4)で表される長鎖アルキル含有ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン
【0034】
【化1】
[図:0001437352000025.jpg]
」
(甲A6d)
「【0050】
実施例15:アイカラー
(処方) (重量%)
1.デカメチルシクロペンタシロキサン 15
2.メチルフェニルポリシロキサン 2
3.部分架橋型メチルフェニルポリシロキサン重合体 0.16
4.長鎖アルキル含有ポリオキシアルキレン
変性オルガノポリシロキサン(注1) 2.5
5.ジカプリン酸ネオペンチルグリコール 5.5
6.有機変性ベントナイト(注6) 1
7.ジカプリン酸ネオペンチルグリコール 8
8.スクワラン 5
9.ステアロキシメチルポリシロキサン 1
10.酸化チタン 1
11.セリサイト 3
12.赤色226号 1.5
13.黄色401号 2
14.窒化ホウ素 1.5
15.ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム
・エポキシ積層粉末(注11) 2
16.オルガノポリシロキサンエラストマー粉体(注12)3
17.蒸留水 残部
18.1,3-ブタンジオール 6
19.美容成分 適量
20.香料 適量
※注11:DCグリッターゴールドI-R(0.005)
(東色ピグメント社製)
注12:トレフィルE505C(東レ・ダウコーニング・シコーン社製)
【0051】(製造方法)
A:1~16を混合分散する。
B:Aに、均一にした17~20を加え、ホモミキサーにて乳化し、アイカラを得た。
実施例15のアイカラーは、「油っぽさの無いさっぱり感」、「伸びの滑らかさ」、「膜薄感(肌負担感の無さ)」といった使用感の全ての項目で優れていた。また、このアイカラーの粘度値は、28000cPであり、経時安定性に優れていた。」
(4)甲A7の記載
(甲A7a)
「【請求項1】
(A)25℃における屈折率が1.45以上の高屈折率シリコーン油を4~18質量%と、
(B)(ジメチコン/フェニルビニルジメチコン)クロスポリマーと、
(C)疎水性または疎水化処理粉体と、
(D)ワックスと
を含むことを特徴とする固形乳化化粧料。」
(甲A7b)
「【0014】
また、(B)(ジメチコン/フェニルビニルジメチコン)クロスポリマーの屈折率(25℃)は、(A)成分と同様に高いことが好ましく、特に1.40以上であることが好適である。(A)成分が高屈折率を有していたとしても、該成分と共存する(B)成分の屈折率が低いと、十分なツヤ出し効果が得られないことがある。
(ジメチコン/フェニルビニルジメチコン)クロスポリマーは、上記した重合反応により合成して得る他、特に市販品として、信越化学工業社製のKSG-18Aを好適に使用することができる。前述のように、KSG-18Aは、約84%のジフェニルシロキシフェニルトリメチコンと、約16%の(ジメチコン/フェニルビニルジメチコン)クロスポリマーの混合ゲルの形態をもつため、本発明の(A)成分及び(B)成分として配合することが可能である。
・・・
【0018】
疎水化処理粉体は、通常化粧品や医薬部外品等に適用される任意の粉体の表面を、例えば、高級脂肪酸、油脂、ロウ、シリコーン化合物、フッ素化合物、炭化水素、界面活性剤、デキストリン脂肪酸エステル等の物質で処理することによって得ることができる。疎水化処理の方法は特に限定されず、適宜公知技術を適用することができる。
本発明においては、特に、クロスポリマーに取り込まれていないメチルフェニルシリコーンを吸収し、ワックスの析出抑制効果が高い点から、吸油性に優れた酸化チタンを被疎水化処理粉体として用いることが好ましい。
・・・
【0020】
なお、本発明においては、(A)及び(B)成分からなるゲル状物質の配合により、固形化粧料が所望する硬度まで固形化しないことがある。そのような場合、本発明では、上記した疎水性または疎水化処理粉体を配合し、化粧料の硬度の上昇を図ることが好ましい。硬度の上昇を図るに際しては、特に(C)成分としてシリコーン処理粉体を用いることが好ましい。シリコーン以外で処理を行った粉体では、十分な硬度上昇が望めないことがある。
【0021】
ここで、本発明において固形乳化化粧料の「固形」とは、50℃以下の温度において、組成物が流動性を示さない状態であることを意味する。より具体的には、例えば、レオメーター(不動工業社製)等の公知の測定装置を使用して測定した下記式に示される硬度γが30以上であることを意味する。
γ=(G*L)/(l*a) (dyn/cm2)
(式中、G:測定応力(gr)*980dyn,L:サンプルの厚み(mm),l:圧縮距離(mm),a:針の断面積(cm2))
(測定条件)
負荷重:200g,針の径:5.6φ,針入速度:2cm/min,針入距離:1mm,測定温度:37℃」
・・・
【0024】
本発明の固形乳化化粧料において使用可能なワックスとしては、具体的には、例えば、ミツロウ、キャンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、モクロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、ビースワックス、マイクロクリスリンワックス、パラフィンワックス、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、脂肪酸クリセリド、硬化ヒマシ油、ワセリン、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル等が挙げられる。これらのワックスは混合して用いることが可能であり、また、他の固形状あるいは液状油分などを混合して使用することも可能である。
本発明におけるワックスの配合量は、組成物に対し1~8質量%であることが好適である。配合量が1質量%に満たないと、組成物の固形化が不十分であり、8質量%を超えるとスポンジへの中味の取れが悪くなってしまう。」
(甲A7c)
「【実施例】
【0035】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。配合量については特に断りのない限り質量%を示す。・・・
[図:0001437352000026.jpg]
」
(5)甲A8の記載
(甲A8a)
「【請求項1】
(A)0.01~50質量%の揮発性流動油分;
(B)10質量%以上の水;
(C)前記揮発性流動油分をゲル化することのできるワックス;
(D)シリコーンエラストマー;及び
(E)シリコーン系界面活性剤を含有する、うるおい補給用スティック状化粧料」
(甲A8b)
「【0011】
本発明の化粧料は、スティック状の油中水型乳化化粧料でありながら水の含有量が多いことを特徴の一つとしている。・・・
【0014】
本発明の化粧料における(A)揮発性流動油分の配合量は、0.01~50質量%、好ましくは1~35質量%、より好ましくは5~20質量%である。配合量が0.01質量%未満であるとべたつきやギラつき、ファンデーションのヨレが起こり、50質量%を超えて配合すると滑らかなのびが失われ、さらに、スティックの欠けや崩れが生じやすくなる。また、塗布時のみずみずしさが失われる。
・・・
【0018】
ここで、上記の定義における「硬度」は、レオメータ(SUN社製)等の公知の測定装置を使用して下記の条件で測定した場合の下記式(1)で表される硬度(γ)である。
γ=(G*L)/(l*a) (N/cm2) (1)
(式中、G:測定応力、L:サンプルの厚み(mm)、l:圧縮距離(mm)、a:針
の断面積(cm2))
(測定条件)
MODE:20
R/H:Hold
P/T:Press
REP:1
MAX:2kg
針入度:10.0mm
針入速度:300mm/min.
針径:1.5mmφ
測定温度:25℃
【0019】
前記の条件を満たすワックスとしては、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、ミリスチン酸ミリスチル、セレシンワックス、キャンデリラロウ、ポリエチレンワックス、ホホバ油(水添ホホバ油)、ライスワックス等のロウ類又は固形炭化水素、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0020】
本発明の化粧料における(C)ワックスの配合量は、上記の揮発性流動油分を前記所定の硬度にゲル化できる量であればよい。通常は、0.1~20質量%、好ましくは1~15質量%、より好ましくは3~10質量%である。配合量が0.1質量%未満であると硬度が低すぎてスティックの形状を保てなくなる場合があり、20質量%を超えて配合すると硬度が高すぎてのびが悪く肌に塗布しにくくなる場合がある。
【0021】
本発明の化粧料は、さらに(D)シリコーンエラストマーを含有する。シリコーンエラストマーを配合することにより、経時的に揮発性油分が蒸発することによりスティックが細くなる「痩せ」を抑制し、優れた形状安定性が達成できるとともに、肌の凹凸補正効果も付与される。さらに、製造工程においてスティック形状に成型する際、中心の凹みを抑制するために徐冷が必要となるが、シリコーンエラストマーの配合により徐冷して固化するまでに、乳化粒子が増大することを抑制する効果がある。
・・・
【0023】
シリコーンエラストマーは、架橋型シリコーン樹脂粉末と溶媒とからなるシリコーンゲルの状態で配合してもよい。このようなシリコーンゲルは市販品を使用することができ、例えば、KSG-18A、KSG-16、KSG-15AP(以上、信越シリコーン社製)、エラストマーブレンドDC9045(東レ・ダウコーニング社製)などを挙げることができる。なお、これらのシリコーンゲルに溶媒として含まれる揮発性流動油分は上記成分(A)に分類され、その配合量は成分(A)の配合量に加算される。
・・・
【0027】
なお、(ジメチコン/(PEG-10/15))クロスポリマー等の架橋型ポリエーテル変性シリコーンは、(E)シリコーン系界面活性剤としてのみならず、前記(D)シリコーンエラストマーとしても作用しうるものであるが、本明細書においては、界面活性剤としての機能を持つものは(E)シリコーン系界面活性剤に分類して区別されるものとする。
【0028】
また、(E)シリコーン系界面活性剤についても、当該界面活性剤と溶媒とからなるシリコーンゲルの状態で配合してもよく、市販されているシリコーンゲルを使用することができる。例えば、KSG-210、KSG-710、KSG-360Z(以上、信越シリコーン社製)等が例示される。なお、これらのシリコーンゲルに溶媒として含まれる揮発性流動油分も上記成分(A)に分類され、その配合量は成分(A)の配合量に加算されることは言うまでもない。
・・・
【0033】
(G)非揮発性流動油分
非揮発性の流動油分を配合することによりスティック状化粧料の硬度を調整することができ、さらには、非揮発性流動油分が前記揮発性流動油分と協同して肌上に施されたメークアップを溶解できるため、局所的なメークアップ除去(クレンジング)機能を発揮し、簡便な化粧直しに適した態様となる。
本明細書における「非揮発性流動油分」は、常温(25℃)で流動性を有する液状の油分であって、上記(A)揮発性油分に該当しないものをいう。化粧料等に用いることのできる油分から選択することができる。例えば、常圧における沸点が260℃より高い油性成分の炭化水素油又はシリコーン油、あるいは粘度が10csを超えるシリコーン油の1種又は2種以上を用いることができる。
・・・
【0037】
本発明の化粧料に粉末成分を配合する場合、その配合量は、通常は、0.00001~30質量%、好ましくは0.00001~20質量%、より好ましくは0.00001~10質量%である。配合量が0.00001質量%未満であるとサラサラ感など粉末独自の使用感が十分に感じられない、あるいは十分な発色がされない場合があり、30質量%を超えて配合すると保湿効果やみずみずしさが失われる場合がある。
【0038】
(I)その他の任意成分
上記以外の任意成分としては、例えば、増粘剤、セラミド類、ビタミン類、紫外線吸収剤、キレート剤、殺菌剤、防腐剤、植物抽出液、アミノ酸、各種薬剤、エタノール等の低級アルコール類等が挙げられる。
【0039】
本発明の化粧料は、日中の肌へのうるおい補給用という新たな機能を有するスティック状化粧料であって、携帯用の化粧直しに適したものである。
本発明の化粧料は、スティック化粧料に従来から用いられている方法に従って製造することができる。簡潔に言えば、油性成分と水性成分とを別々に必要に応じて加熱しながら混合し、油相中に水相を乳化し、次いで得られた乳化物を容器に充填して徐冷することにより製造できる。
【0040】
本発明の化粧料はスティック状化粧料として十分な硬度を有している。具体的には、その硬度は、好ましくは5~120、より好ましくは7~70、さらに好ましくは10~50である。なお、この硬度は上記式(1)で表される値(γ)を意味する。」
(甲A8c)
「【実施例】
【0043】
本発明について、以下に実施例を挙げてさらに詳述するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、配合量は特記しない限り質量%を意味する。
・・・
【0053】
[図:0001437352000027.jpg]
」
(6)甲A9の記載
(甲A9a)
「【請求項1】
(A)ワックス及び(B)ジステアルジモニウムヘクトライトで液状油分を増粘又は固化した外油相、及び(C)内相粉末を水性媒体に分散させた内水相を含む油中水型乳化固形化粧料。」
(甲A9b)
「【0010】
本発明の油中水型乳化固形化粧料は、水相中に表面疎水化されていない粉末が配合されているので、肌への塗布時にのびが軽く、みずみずしい感触を与えるのみならず、吸油力にも優れており、化粧持ちに優れる。更に、油相をワックス及びジステアルジモニウムヘクトライトで増粘又は固化しているので特に高温での安定性に優れている。
本発明の固形化粧料で得られる塗布時のみずみずしい感触は、固形化粧料を皮膚に適用した際に固形が崩れて内部の水分があふれ出てくるような新鮮でみずみずしい独特の感触である。
・・・
【0012】
本発明に係る固形化粧料の外油相は、(A)ワックス及び(B)ジステアルジモニウムヘクトライトで増粘又は固化されている。
本発明で使用されるワックス(A成分)は、メーキャップ化粧料に従来から用いられているワックスから選択することができる。
具体例としては、カカオ脂、ヤシ油、馬油、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化ひまし油などの固体油脂、パラフィンワックス(直鎖炭化水素)、マイクロクリスタリンワックス(分岐鎖飽和炭化水素)、セレシンワックス、モクロウ、モンタンワックス、フィッシャートロプスワックスなどの炭化水素類、ミツロウ、ラノリン、カルナバワックス、キャンデリラロウ、米ぬかロウ(ライスワックス)、ゲイロウ、ホホバ油、ヌカロウ、モンタンロウ、カポックロウ、ベイベリーロウ、セラックロウ、サトウキビロウ、ラノリ
ン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、硬質ラノリン、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテルなどのロウ類、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベへニン酸などの高級脂肪酸、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコールなどの高級アルコールなどが挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらの中でも、パラフィンワックス(直鎖炭化水素)、マイクロクリスタリンワックス(分岐鎖飽和炭化水素)、セレシンワックス、ホホバ油を用いるのが好ましい。
・・・
【0013】
本発明の固形化粧料における(A)ワックスの配合量は、下記の(B)ジステアルジモニウムヘクトライトと相俟って油相を増粘又は固化して固形化粧料を形成できる量である。通常は、0.1~30質量%、好ましくは1~25質量%、より好ましくは2~20質量%、さらに好ましくは3~15質量%である。
【0014】
本発明におけるジステアルジモニウムヘクトライト(B成分)は、化粧料等の油相増粘剤(ゲル化剤)として従来から使用されている有機変性粘土鉱物の一種である。例えば、「ベントン38V」又は「ベントン38VCG」という商品名で市販されているジステアルジモニウムヘクトライトが好適に使用できる。
【0015】
本発明の固形化粧料におけるジステアルジモニウムヘクトライトの配合量は、0.05~2.5質量%、好ましくは0.1~2質量%、より好ましくは0.25~1質量%である。
また、前記(A)ワックスと(B)ジステアルジモニウムヘクトライトとの配合量比率(A/B=ワックス/ジステアルジモニウムヘクトライト)を1~200の範囲とするのが好ましい。
【0016】
本発明の固形化粧料の外油相においては、液状油分が、上記(A)ワックス及び(B)ジステアルジモニウムヘクトライトで増粘又は固化されている。
本明細書における液状油分とは、化粧品、医薬品に通常使用可能な、常温(25℃)で液状の油分を意味する。
【0017】
本発明の固形化粧料を構成する液状油分には液状シリコーン油を含めるのが好ましい。液状シリコーン油は、揮発性又は不揮発性の直鎖状シリコーン油及び環状シリコーン油を含む。なお、本明細書における直鎖状シリコーン油には、直鎖状及び分岐鎖状構造のシリコーン油が含まれるものとする。具体例としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサンなどが挙げられる。環状シリコーン油の例としては、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサンなどが挙げられる。
【0018】
従来の油性タイプ又は油中水型乳化タイプの固形化粧料では、外油相を構成する液状油分としてシリコーン油が汎用されており、特に揮発性の環状シリコーン油が配合されている。環状シリコーン油を配合することにより乳化物の安定性は向上するが、使用感に悪影響を与える場合が見受けられる。本発明の固形化粧料では、(A)ワックス及び(B)ジステアルジモニウムヘクトライトを配合することによって優れた安定性が得られているので、環状シリコーン油の配合量を少なくでき、環状シリコーン油を含まない態様とすることも可能である。例えば、本発明の固形化粧料では、環状シリコーン油と直鎖状シリコーン油との配合量比率(環状シリコーン油/直鎖状シリコーン油)を、0~3.0、好ましくは0~2.0、より好ましくは0~1.0とすることができる。
・・・
【0038】
また、本発明においては、上記した水相成分を油相成分に乳化する際の乳化剤として、一般に油中水型の乳化組成物に配合することのできる乳化剤を配合することができる。このような乳化剤としては、疎水性(HLB7以下)の乳化剤が好ましく用いられ、例えば、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類;グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレート、グリセロールイソステアレート、ジグリセロールジイソステアレート、ペンタイソステアリン酸デカグリセリル等のグリセロール脂肪酸エステル類;POE(5)、POE(7.5)、POE(10)硬化ひまし油等のポリオキシエチレン硬化ひまし油;ジポリヒドロキシステアリン酸エステル類:ジポリヒドロキシステアリン酸ポリグリセリル-2(コグニス社製 :PGPH)、PEG30 ジポリヒドロキシステアレート(ユニケマ社製 :アラセルP135)等の高分子量親油性活性剤;セチルジメチコンコポリオール〔例えば、「ABIL EM90」(ゴールドシュミット社製)〕、ポリエーテル変性シリコーン〔例えば、「KF6017」(信越化学工業社製)〕、架橋型ポリエーテル変性シリコーン〔例えば、「KSG」シリーズ(信越化学工業社製)〕などのポリエーテル系のシリコーン;ポリグリセリン変性シリコーン、アルキル共変性ポリグリセリン変性シリコーンなどのポリグリセリン系のシリコーン;等が挙げられる。本発明ではHLB7以下の乳化剤は1種または2種以上を用いることができる。特に、ポリエーテル系、ポリグリセリン系のシリコーン乳化剤の使用が好ましい。
【0039】
本発明の固形化粧料における任意成分は上記に限られず、化粧料に配合可能な他の任意成分を本発明の効果を損ねない範囲で内水相又は外油相に配合することができる。
なお、本明細書で用いる「固形」または「固形状」という語は化粧料の分野で通常用いられている意味に解され、例えば、50℃以下の温度において組成物全体が流動性を示さず、通常の保管条件下において著しい変形を示さない形態または状態と定義することができる。
本発明の固形化粧料は、ファンデーション、アイシャドー、アイライナー、マスカラ、頬紅等のメーキャップ化粧料、中でも固形ファンデーションとして提供するのに適している。また、下地やサンスクリーンとして提供することもできる。形状としてはスティック状あるいはコンパクト状とするのが好ましいが、これらに限られない。
【0040】
本発明の固形化粧料は、水相成分を必要に応じて加熱して混合し、そこに粉末を混合する工程、別途ワックス及び/またはゲル化剤を含む油相成分を必要に応じて加熱して混合し、得られた油相成分に前記の粉末を分散させた水相成分を乳化させる工程を経て製造することができる。」
(甲A9c)
「【0055】
処方例3:固形乳化ファンデーション(パクト状)
(処方) (質量%)
(1)ジメチルポリシロキサン 18
(2)デカメチルシクロペンタシロキサン 17
(3)マイクロクリスタリンワックス 2
(4)パラフィンワックス 4
(5)イソノナン酸イソノニル 3
(6)PEG-10ジメチコン 2
(7)ジステアルジモニウムヘクトライト 0.3
(8)シリカ被覆酸化チタン 5
(9)シリカ被覆酸化鉄赤 0.2
(10)シリカ被覆酸化鉄黄 1.2
(11)シリカ被覆酸化鉄黒 0.1
(12)シリカ被覆微粒子酸化チタン 3
(13)イオン交換水 33
(14)1, 3-ブチレングリコール 10
(15)ヘキサメタリン酸ナトリウム 0.1
(16)苛性カリ 0.1
(17)防腐剤 0.1
(18)パルミチン酸 0.8
(19)香料 0.1」
(7)甲B1の記載(原文が英文のため、対応する特表2003-501505に基づく訳文を示す。)
(甲B1a)
「本発明は局所用のシリコーン・ゲルまたは当該ゲルを含有している組成物(例えば、シリコーン中水形(ウォーター-イン-シリコーン形)の化粧品用ファンデーション)に関する。」(第1頁第24~26行)
(甲B1b)
「実施形態の一例において、上記組成物は、重量%において、(a)約0.001%乃至約90%(例えば、約1%乃至約50%)の上記シリコーン・ゲル、(b)約0.001%乃至約50%(例えば、約5%乃至約50%)の液体シリコーン(例えば、シクロメチコーン、ジメチコーン、またはこれらの混合物)、および(c)水(例えば、全ての別の成分を加えた後に100重量%にするための適量)を含有しているシリコーン中水形(ウォーター-イン-シリコーン形)のエマルジョンである。」(第3頁第24~31行)
(甲B1c)
「皮膚(例えば、顔面の皮膚)上に広げると、上記のシリコーン・ゲルは揮発性の液体を放出して、サリチル酸を皮膚に供給し、皮膚上に存在している不揮発性の過剰な皮膚の油分を吸収する(例えば、この油分はオイル膨潤性のシリコーン・ポリマー、および存在していれば、多孔質シリカにより吸収される)。この組成物の皮脂を吸収する能力により、皮膚が詰った気孔になり難い環境に維持されて、コメドの形成が阻止できる。上記シリコーン・ゲルは当該ゲルの油分吸収性をさらに高める多孔質シリカを含有することも可能である。さらに、このゲルは入射光線をあらゆる方向に散乱させる能力を有している。従って、反射光が減少するので、皮膚は滑らかな艶消しの外観を有する。
本明細書において使用するように、用語の「揮発性(volatile)」は周囲温度において一定の測定可能な蒸気圧を有する液体を意味する。この揮発性液体の例は分岐状または直鎖状の炭化水素(例えば、イソパラフィン、イソエイコサン、イソヘキサデカンおよびイソドデカン等のC3 乃至C20の炭化水素)およびシリコーン流体を含む。さらに、揮発性のシリコーン流体の例は以下のシクロメチコーン、ダウ・コーニング(Dow Corning)200、ダウ・コーニング344、およびダウ・コーニング345(ミシガン州ミッドランドのDow Corning社により製造されている)、シリコーン(Silicone)7158および7207(テキサス州ヒューストンのUnion Carbide社により製造されている)、SF1202(General Electric社により製造されている)、およびSWS-03314(SWS Silicones社により製造されている)等の約3個乃至約9個(例えば、約4個乃至約5個)のケイ素原子を含有している環状および直線状のポリジメチルシロキサンを含む。本明細書において使用するように、用語の「シクロメチコーン(cyclomethicone)」はシクロトリシロキサン、シクロテトラシロキサン、シクロペンタシロキサン、シクロヘキサシロキサン、またはこれらの混合物を言う。
本発明のシリコーン・ポリマーは10,000を超える一定の平均分子量(例えば、約10,000乃至10,000,000)を有している。このシリコーン・ポリマーの例はステアリル・メチル-ジメチル・シロキサン・コポリマー(ニュージャージー州エルムウッド・パークのGrant Industries社から入手可能なGransil SR-CYC)、ポリシリコーン-11(すなわち、シクロメチコーンの存在下においてビニル基末端シリコーン(例えば、1個-、2個-、または多数個-ビニル基末端シリコーン)およびメチルヒドロジメチル・シロキサンの反応により形成した架橋シリコーン・ゴム)、セテアリル・ジメチコーン/ビニル・ジメチコーン・クロスポリマー(すなわち、ビニル・ジメチル・ポリシロキサンにより架橋したセテアリル・ジメチコーンのコポリマー)、ジメチコーン/フェニル・ビニル・ジメチコーン・クロスポリマー(すなわち、フェニル・ビニル・ジメチルシロキサンにより架橋したジメチルポリシロキサンのコポリマー)、およびジメチコーン/ビニル・ジメチコーン・クロスポリマー(すなわち、ビニル・ジメチルシロキサンにより架橋したジメチルポリシロキサンのコポリマー)等の架橋シロキサン(例えば、ジメチコーンまたはジメチコーン誘導体)のコポリマーを含む。」(第5頁第27行~第7頁第14行)
(甲B1d)
「分散剤および懸濁剤の例はクォーターニウム-18・ヘクトライト、ポリヒドロキシ・ステアリン酸、ポリギーナン(poligeenan)、および酸化ケイ素を含む。さらに、別の分散剤および懸濁剤が上記ICTハンドブックの第1690頁乃至第1691頁に記載されている。
軟化剤は皮膚を軟化して滑らかにする薬剤である。この軟化剤の例は鉱油、ペトロラタム、微晶質ワックス、ポリエチレン、ひまし油におけるエステル等のトリグリセリド・エステル、ココア・バター、サフラワ油、綿実油、コーン・オイル、オリーブ油、たら肝油、アーモンド・オイル、アボカド・オイル、パーム油、ごま油、スクアレン、およびダイズ油、アセチル化モノグリセリド、エトキシル化グリセリド、脂肪酸、脂肪酸のアルキル・エステル、脂肪酸のアルケニル・エステル、脂肪族アルコール、脂肪族アルコール・エステル、エーテル-エステル、ラノリンおよびラノリンの誘導体、多価アルコール・エステル、蜜蝋等のワックス・エステル、木蝋、脂質、およびステロール等の炭化水素オイルおよびワックス類(例えば、天然および合成ワックス)を含む。さらに、別の軟化剤が上記ICTハンドブックの第1656頁乃至第1661頁に記載されている。」(第11頁第18行~第12頁第7行)
(甲B1e)
「実施例2:シリコーン・ゲルを含有しているシリコーン中水形化粧品用スキン・ファンデーション(当審注:下線は原文のままである。)
以下の表2に実施例2の化粧品用の全体の組成物における各成分およびそれぞれの重量%値を記載した。
[図:0001437352000028.jpg]
」(第17頁第21行~第18頁末行)
(甲B1f)
「請求の範囲
1.揮発性液体のシリコーン、固体のシリコーン・ポリマー、多孔質シリカ、およびサリチル酸を含有しているシリコーン・ゲルにおいて、前記多孔質シリカが約1μm乃至約20μmの直径を有しているシリコーン・ゲル。」(第25頁)
3 申立理由A1のウ(甲A4を主引例とする新規性欠如)について
(1)甲A4に記載された発明
甲A4には、油中水型睫用化粧料について記載されているところ(摘記(甲A4a))、摘記(甲4Ab)の比較例4の記載からみて、次の発明(以下「甲A4発明」という。)が記載されていると認める。
なお、以下の表における各成分についての数値は、摘記甲A4a及び摘記甲A4bの【0030】の記載からみて、「質量%」の値を示していると認める。
[甲A4発明]
「以下の組成の油中水型睫用化粧料。
[図:0001437352000029.jpg]
」
(2)本件発明1について
ア 甲A4発明との対比
以下、本件発明1と甲A4発明を対比する。
(ア)甲A4発明の「ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト2質量%」は本件発明1の「(A)0.1~5質量%の有機変性粘土鉱物」に相当する。
(イ)甲A4発明の「ポリエーテル変性シリコーン(KF-6017) 2質量%」について、「ポリエーテル変性シリコーン(KF-6017)」は、摘記(甲A5b)の記載からみて、HLBが4.5である界面活性剤であると認められるため、本件発明1の「(B)0.1~5質量%のHLB6以下の界面活性剤」に相当する。
(ウ)甲A4発明の「マイクロクリスタリンワックス2質量%」は本件発明1の「(C)1~15質量%のセレシンワックス、パラフィンワックス、キャンデリラワックス、及びマイクロクリスタリンワックスから選択される少なくとも1種のワックス」に相当する。
(エ)甲A4発明の「軽質流動イソパラフィン10質量%」は、本件発明1の「(E)10~50質量%の揮発性油分」に相当する。
(オ)甲A4発明の精製水は「残量」と記載されており、他の配合成分の合計含有量は94質量%であるから、「残量」にあたる精製水の含有量は6質量%であり、本件発明1の「(F)60質量%以下の水」に相当する。
(キ)甲A4発明は、D-アミノ酸及びその誘導体を含まない。
(ク)甲A4発明の「油中水型睫用化粧料」は本件発明1の「油中水型乳化化粧料」に相当する。
したがって、本件発明1と甲A4発明とは、
「(A)0.1~5質量%の有機変性粘土鉱物;
(B)0.1~5質量%のHLB6以下の界面活性剤;
(C)1~15質量%のセレシンワックス、パラフィンワックス、キャンデリラワックス、及びマイクロクリスタリンワックスから選択される少なくとも1種のワックス;
(E)10~50質量%の揮発性油分;及び
(F)60質量%以下の水を含有し、
D-アミノ酸及びその誘導体を含まないことを特徴とする油中水型乳化化粧料。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点A4-1>
本件発明1は、「(D)0.5~5質量%のシリコーンエラストマー」を含有し、「前記(D)シリコーンエラストマーは、ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、及びポリシリコーン-11から選択され」ると特定しているのに対し、甲A4発明はシリコーンエラストマーを含有しない点。
<相違点A4-2>
(C)のワックスについて、本件発明1は、「(C)ワックスがキャンデリラワックスであ」ると特定しているのに対し、甲A4発明は、「パラフィンワックス」である点。
<相違点A4-3>
本件発明1は、「炭素数28~42の炭化水素系ワックス部を20~95質量%と、炭素数43以上の炭化水素系ワックス部を5~80質量%とを含み、炭素数27以下の炭化水素系ワックス部の含有量が15質量%以下である炭化水素系ワックス」を含まないと特定しているのに対し、甲A4発明では、そのようなワックスを含むか含まないかが不明である点。
イ 相違点の判断
上記相違点について検討すると、少なくとも相違点A4-1及びA4-2は実質的な相違点である。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲A4発明であるとはいえない。
ウ 小括
以上のとおり、本件発明1は、甲A4に記載された発明であるとはいえない。
(3)本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、本件発明1をさらに限定するものであるから、本件発明2及び3は、上記(2)で述べたのと同様の理由により、甲A4に記載された発明であるとはいえない。
(4)甲A4を主引用例とした場合についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1~3は、甲A4に記載された発明であるとはいえないから、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
よって、申立理由A1のウは理由がない。
4 申立理由A2のウ(甲A5又は甲A6を主引例とする進歩性欠如)について
(1)甲A5及び甲A6に記載された発明
ア 甲A5に記載された発明
甲A5には、シリコーンについて記載されているところ、摘記(甲A5g)の記載からみて、次の発明(以下「甲A5発明」という。)が記載されていると認める。
[甲A5発明]
「以下の組成のW/Oリキッドファンデーション。(なお、「wt%」は「質量%」を表す。)
[図:0001437352000030.jpg]
」
イ 甲A6に記載された発明
甲A6には、油中水型化粧料について記載されているところ、摘記(甲A6d)の記載からみて、次の発明(以下「甲A6発明」という。)が記載されていると認める。
[甲A6発明]
「以下の組成のアイカラー。
(処方) (重量%)
1.デカメチルシクロペンタシロキサン 15
2.メチルフェニルポリシロキサン 2
3.部分架橋型メチルフェニルポリシロキサン重合体 0.16
4.長鎖アルキル含有ポリオキシアルキレン
変性オルガノポリシロキサン(注1) 2.5
5.ジカプリン酸ネオペンチルグリコール 5.5
6.有機変性ベントナイト(注6) 1
7.ジカプリン酸ネオペンチルグリコール 8
8.スクワラン 5
9.ステアロキシメチルポリシロキサン 1
10.酸化チタン 1
11.セリサイト 3
12.赤色226号 1.5
13.黄色401号 2
14.窒化ホウ素 1.5
15.ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム
・エポキシ積層粉末(注11) 2
16.オルガノポリシロキサンエラストマー粉体(注12)3
17.蒸留水 残部
18.1,3-ブタンジオール 6
19.美容成分 適量
20.香料 適量
※注11:DCグリッターゴールドI-R(0.005)
(東色ピグメント社製)
注12:トレフィルE505C(東レ・ダウコーニング・シコーン社製)」
(2)本件発明1について
ア 甲A5発明との対比
以下、本件発明1と甲A5発明を対比する。
(ア)甲A5発明の「有機変性ベントナイト 1.2wt%」は本件発明1の「(A)0.1~5質量%の有機変性粘土鉱物」に相当する。
(イ)甲A5発明の「KF-6028 2.0wt%」について、「KF-6028」のHLBは4.0である(摘記(甲5Ac))。また、「KSG-210 5.0wt%」について、「KSG-210」はW/O系の乳化剤として働くものであり(摘記(甲A5d))、HLBが3又は4から6までの界面活性剤はW/O型エマルションを形成することが知られていることから(必要であれば、上記第5の3(1)の摘記(4a)、(5a)、(6a)、(7a)、(8a)、(9a)及び(9b)等参照。)HLBが6以下である蓋然性が高い。さらに、「KSG-210」の架橋物の含有比率が20~30質量%である(摘記(甲A5d))ことから、甲A5発明には3.0~3.5質量%(=2.0+5.0×0.2~0.3)のHLB6以下の界面活性剤が含まれ、これは本件発明1の「(B)0.1~5質量%のHLB6以下の界面活性剤」に相当する。
(仮に、「KSG-210」のHLBが6以下でなかったとしても、「KF-6028」の含有量は2.0wt%であるから、同要件を満たす。)
(ウ)甲A5発明の「KSG-15 5.0 wt%」について、「KSG-15」は、INCI名「(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー」である(摘記甲5Ae)から、本件発明1の「(D)0.5~5質量%のシリコーンエラストマー」であって、「前記(D)シリコーンエラストマーは、ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、及びポリシリコーン-11から選択され」るものに相当する。
(エ)甲A5発明の「KF-995 22.6wt%」について、「KF-995」は揮発性シリコーンオイルのINCI名「シクロペンタシロキサン」である(摘記甲(A5a))から、本件発明1の「(E)10~50質量%の揮発性油分」に相当する。
(オ)甲A5発明の「精製水 38.5wt%」は本件発明1の「(F)60質量%以下の水」に相当する。
(カ)甲A5発明は炭化水素系ワックスを含まず、D-アミノ酸及びその誘導体を含まない。
(キ)甲A5発明の「W/Oリキッドファンデーション」は本件発明1の「油中水型乳化化粧料」に相当する。
したがって、本件発明1と甲A5発明とは、
「(A)0.1~5質量%の有機変性粘土鉱物;
(B)0.1~5質量%のHLB6以下の界面活性剤;
(D)0.5~5質量%のシリコーンエラストマー;
(E)10~50質量%の揮発性油分;及び
(F)60質量%以下の水を含有し、
前記(D)シリコーンエラストマーは、ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、及びポリシリコーン-11から選択され、
炭素数28~42の炭化水素系ワックス部を20~95質量%と、炭素数43以上の炭化水素系ワックス部を5~80質量%とを含み、炭素数27以下の炭化水素系ワックス部の含有量が15質量%以下である炭化水素系ワックスを含まず、D-アミノ酸及びその誘導体を含まないことを特徴とする油中水型乳化化粧料。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点A5>
本件発明1は「(C)1~15質量%の、セレシンワックス、パラフィンワックス、キャンデリラワックス、及びマイクロクリスタリンワックスから選択される少なくとも1種のワックス」を含有し、「前記(C)ワックスがキャンデリラワックスであ」ると特定しているのに対し、甲A5発明はかかるワックスを含有しない点。
イ 甲A6発明との対比
以下、本件発明1と甲A6発明を対比する。
(ア)甲A6発明の「有機変性ベントナイト 1(重量%)」は本件発明1の「(A)0.1~5質量%の有機変性粘土鉱物」に相当する。
(イ)甲A6発明の「長鎖アルキル含有ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン・・・2.5(重量%)」について、「長鎖アルキル含有ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン」は、摘記(甲A6b)及び(甲A6c)の記載から、界面活性剤であると認められるから、本件発明1の「(B)0.1~5質量%のHLB6以下の界面活性剤」と、「(B)0.1~5質量%の」「界面活性剤」である限りにおいて共通する。
(ウ)甲A6発明の「オルガノポリシロキサンエラストマー粉体・・・3(重量%)」は、本件発明1の「(D)0.5~5質量%のシリコーンエラストマー」に相当する。
(エ)甲A6発明の「デカメチルシクロペンタシロキサン 15(質量%)」について、上記2(2)ア(オ)で述べたとおり「デカメチルシクロペンタシロキサン」は揮発性シリコーンオイルであるから、本件発明1の「(E)10~50質量%の揮発性油分」に相当する。
(オ)甲A6発明の「蒸留水」は「残部」であるところ、他の成分の合計量に基づいて算出するとおよそ40重量%であるから、本件発明1の「(F)60質量%以下の水」に相当する。
(カ)甲A6発明は炭化水素系ワックスを含まず、D-アミノ酸及びその誘導体を含まない。
(キ)甲A6発明の「アイカラー」は、摘記(甲A6b)の【0005】等の記載から、油中水型化粧料と考えられるため、本件発明1の「油中水型乳化化粧料」に相当する。
したがって、本件発明1と甲A6発明とは、
「(A)0.1~5質量%の有機変性粘土鉱物;
(B)0.1~5質量%の界面活性剤;
(D)0.5~5質量%のシリコーンエラストマー;
(E)10~50質量%の揮発性油分;及び
(F)60質量%以下の水を含有し、
炭素数28~42の炭化水素系ワックス部を20~95質量%と、炭素数43以上の炭化水素系ワックス部を5~80質量%とを含み、炭素数27以下の炭化水素系ワックス部の含有量が15質量%以下である炭化水素系ワックスを含まず、D-アミノ酸及びその誘導体を含まないことを特徴とする油中水型乳化化粧料。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点A6-1>
本件発明1は「(C)1~15質量%の、セレシンワックス、パラフィンワックス、キャンデリラワックス、及びマイクロクリスタリンワックスから選択される少なくとも1種のワックス」を含有し、「(C)ワックスがキャンデリラワックスであ」ると特定しているのに対し、甲A6発明はかかるワックスを含有しない点。
<相違点A6-2>
(B)の界面活性剤について、本件発明1は「HLB6以下」と特定しているのに対し、甲A6発明の界面活性剤はHLB6以下かどうかが不明である点。
<相違点A6-3>
(D)のシリコーンエラストマーについて、本件発明1は、「(D)シリコーンエラストマー」であって、「ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、及びポリシリコーン-11から選択され」ると特定しているのに対し、甲A6発明は「オルガノポリシロキサンエラストマー粉体」である点。
ウ 相違点についての判断
(ア)甲A5発明について
甲A5には、甲A5発明の油中水型化粧料に「キャンデリラワックス」を含有させることについての記載はなく、本件特許の出願時の技術常識を考慮しても、甲A5発明において、キャンデリラワックスを含有するものとする動機は見いだせない。
したがって、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲A5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。
(イ)甲A6発明について
上記相違点A6-1について、甲A6には、多数列挙された油成分の一つとして、「キャンデリラワックス」が記載されているが(摘記(甲A6b))、特に甲A6発明の油中水型化粧料に「キャンデリラワックス」を含有させる動機付けとなる記載は見当たらない。また、本件特許の出願時の技術常識を考慮しても、甲A6発明において、キャンデリラワックスを含有するものとする動機は見いだせない。
したがって、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲A6に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。
エ 申立人の主張について
申立人Aは、申立書A(第48頁第2行~第49頁下から4行、及び第51頁第8~14行)において、甲A2~5及び甲A7~9の記載に基づき、「液状の油中水型乳化物に「1質量%以上のワックスを配合する」ことにより油相を固化させて固形の乳化物を調製することは、当業者にとって周知慣用ともいえる事項である」と主張する。
しかしながら、甲A5、甲A6又は上記のその他の甲号証を参酌しても、液状のW/Oリキッドファンデーション又はアイカラーである甲A5発明又は甲6A発明を、固化させて固形の乳化物に変更する動機は見いだせない。
したがって、申立人Aの主張は採用できない。
オ 小括
以上のとおり、本件発明1は、甲A5又は甲A6に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件発明2について
ア 対比・判断
本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、これをさらに限定するものであるから、本件発明2は、上記(2)で述べたのと同様の理由により、甲A5又は甲A6に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 申立人Aの主張について
請求項2に係る発明についての、申立書Aにおける申立人Aの主張は、上記(2)エの主張を前提とするものと認められる。
ところが、上記(2)エで述べたとおり、当該主張は採用できないため、請求項2に係る発明についての申立人Aの主張についても、採用できない。
ウ 小括
以上のとおり、本件発明2は、上記(2)で述べたのと同様の理由により、甲A5又は甲A6に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)甲A5及び甲A6を主引用例とした場合についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1及び2は、甲A5又は甲A6に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、請求項1及び2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
よって、申立理由A2のウは理由がない。
5 申立理由A2のエ(甲A7又は甲A8を主引例とする進歩性欠如)について
(1)甲A7及び甲A8に記載された発明
ア 甲A7に記載された発明
甲A7には、固形乳化化粧料について記載されているところ(摘記(甲A7a))摘記(甲A7a)及び(甲A7c)の試験例1-1の記載からみて、次の発明(以下「甲A7発明」という。)が記載されていると認める。
[甲A7発明]
「以下の組成の固形乳化化粧料(配合量は質量%である。)。
[図:0001437352000031.jpg]
」
イ 甲A8に記載された発明
甲A8には、うるおい補給用スティック状化粧料について記載されているところ(摘記(甲A8a))、摘記(甲A8a)、(甲A8b)及び(甲A8c)の実施例19の記載からみて、次の発明(以下「甲A8発明」という。)が記載されていると認める。
[甲A8発明]
「以下の組成のスティック状の油中水型乳化化粧料(配合量は質量%である。)。
[図:0001437352000032.jpg]
」
(2)本件発明1について
ア 甲A7発明との対比
以下、本件発明1と甲A7発明を対比する。
(ア)甲A7発明の「PEG-10ジメチコン 2(質量%)」について、「PEG-10ジメチコン」は、摘記(甲A5b)の記載からHLBが4.5であると認められるので、本件発明1の「(B)0.1~5質量%のHLB6以下の界面活性剤」に相当する。
(イ)甲A7発明の「マイクロクリスタリンワックス 0.8%(質量%)」、及び「パラフィンワックス 3.5%(質量%)」の合計4.3質量%は、本件発明1の「(C)1~15質量%の、セレシンワックス、パラフィンワックス、キャンデリラワックス、及びマイクロクリスタリンワックスから選択される少なくとも1種のワックス」に相当する。
(ウ)甲A7発明の「<エラストマー>」である「(ジメチコン/フェニルビニルジメチコン)クロスポリマー 3.36(質量%)」は、その名称からシリコーン系化合物のエラストマー、すなわち、シリコーンエラストマーであると認められるから、本件発明1と「(D)0.5~5質量%のシリコーンエラストマー」に相当する。
(エ)甲A7発明の「デカメチルシクロペンタシロキサン 30.65(質量%)」は、上記2(2)ア(オ)で述べたとおり、揮発性シリコーンオイルであるから、本件発明1の「(E)10~50質量%の揮発性油分」に相当する。
(オ)甲A7発明の「イオン交換水 15.08(質量%)」は、本件発明1の「(F)60質量%以下の水」に相当する。
(カ)甲A7発明はD-アミノ酸及びその誘導体を含まない。
したがって、本件発明1と甲A7発明とは、
「(B)0.1~5質量%のHLB6以下の界面活性剤;
(C)1~15質量%の、セレシンワックス、パラフィンワックス、キャンデリラワックス、及びマイクロクリスタリンワックスから選択される少なくとも1種のワックス;
(D)0.5~5質量%のシリコーンエラストマー;
(E)10~50質量%の揮発性油分;及び
(F)60質量%以下の水を含有し、
D-アミノ酸及びその誘導体を含まないことを特徴とする油中水型乳化化粧料。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点A7-1>
本件発明1が「(A)0.1~5質量%の有機変性粘土鉱物」を含有するのに対し、甲A7発明はこれを含まない点。
<相違点A7-2>
(C)のワックスについて、本件発明1は、「(C)ワックスがキャンデリラワックスであ」ると特定しているのに対し、甲A7発明は、「マイクロクリスタリンワックス」及び「パラフィンワックス」である点。
<相違点A7-3>
(D)のシリコーンエラストマーについて、本件発明1は、「(D)シリコーンエラストマーは、ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、及びポリシリコーン-11から選択され」ると特定しているのに対し、甲A7発明は、「(ジメチコン/フェニルビニルジメチコン)クロスポリマー」である点。
<相違点A7-4>
本件発明1は、「炭素数28~42の炭化水素系ワックス部を20~95質量%と、炭素数43以上の炭化水素系ワックス部を5~80質量%とを含み、炭素数27以下の炭化水素系ワックス部の含有量が15質量%以下である炭化水素系ワックスを含ま」ないと特定しているのに対して、甲A7発明は、そのようなワックスを含むか含まないかが不明である点。
<相違点7-5>
本件発明1は「油中水型乳化化粧料」であるのに対し、甲A7発明が「油中水型乳化化粧料」であるか、不明である点。
イ 甲A8発明との対比
以下、本件発明1と甲A8発明を対比する。
(ア)甲A8発明の「PEG-10ジメチコン 1(質量%)」について、「PEG-10ジメチコン」は、摘記(甲A5b)の記載からHLBが4.5であると認められるので、本件発明1の「(B)0.1~5質量%のHLB6以下の界面活性剤」に相当する。
(イ)甲A8発明の「マイクロクリスタリンワックス 4.6(質量%)」、及び「パラフィン 0.4(質量%)」の合計5.0質量%は、本件発明1の「(C)1~15質量%の、セレシンワックス、パラフィンワックス、キャンデリラワックス、及びマイクロクリスタリンワックスから選択される少なくとも1種のワックス」に相当する。
(ウ)甲A8発明の「KSG-18A 4(質量%)」及び「KSG-210 1.5(質量%)」はいずれもシリコーンエラストマーであり(摘記(甲A8b)の【0023】、【0027】及び【0028】)、前者は10~20%の(ジメチコン/フェニルビニルジメチコン)クロスポリマーを含むため(摘記(甲A5e))、当該クロスポリマーの含有量は0.4~0.8質量%(=4×(0.1~0.2))であり、後者は20~30%の(ジメチコン(PEG-10/15))クロスポリマーを含むため(摘記(甲A5d))、当該クロスポリマーの含有量は0.3~0.45質量%(=1.5×(0.2~0.3))であり、合計すると0.7~1.25質量%となる。そのため、これらのクロスポリマーは本件発明1の「(D)0.5~5質量%のシリコーンエラストマー」に相当する。
(エ)甲A8発明の「デカメチルシクロペンタシロキサン 13.5(質量%)」は、本件発明1の「(E)10~50質量%の揮発性油分」に相当する。
(オ)甲A8発明の「水 12.7(質量%)」は、本件発明1の「(F)60質量%以下の水」に相当する。
(カ)甲A8発明はD-アミノ酸及びその誘導体を含まない。
(キ)甲A8発明の「油中水型乳化化粧料」は、本件発明1の「油中水型乳化化粧料」に相当する。
したがって、本件発明1と甲A8発明とは、
「(B)0.1~5質量%のHLB6以下の界面活性剤;
(C)1~15質量%の、セレシンワックス、パラフィンワックス、キャンデリラワックス、及びマイクロクリスタリンワックスから選択される少なくとも1種のワックス;
(D)シリコーンエラストマー;
(E)10~50質量%の揮発性油分;及び
(F)60質量%以下の水を含有し、
D-アミノ酸及びその誘導体を含まないことを特徴とする油中水型乳化化粧料。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点A8-1>
本件発明1が「(A)0.1~5質量%の有機変性粘土鉱物」を含むのに対し、甲A8発明はこれを含まない点。
<相違点A8-2>
(C)のワックスについて、本件発明1は、「(C)ワックスがキャンデリラワックスであ」ると特定しているのに対し、甲A8発明は、「マイクロクリスタリンワックス」及び「パラフィン」である点。
<相違点A8-3>
(D)のシリコーンエラストマーについて、本件発明1は、「(D)シリコーンエラストマーは、ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、及びポリシリコーン-11から選択され」ると特定しているのに対し、甲A8発明は、「(ジメチコン/フェニルビニルジメチコン)クロスポリマー」及び「(ジメチコン(PEG-10/15))クロスポリマー」である点。
<相違点A8-4>
本件発明1は、「炭素数28~42の炭化水素系ワックス部を20~95質量%と、炭素数43以上の炭化水素系ワックス部を5~80質量%とを含み、炭素数27以下の炭化水素系ワックス部の含有量が15質量%以下である炭化水素系ワックスを含ま」ないと特定しているのに対して、甲A8発明は、そのようなワックスを含むか含まないかが不明である点。
ウ 相違点についての判断
(ア)甲A7発明について
相違点A7-2について、甲A7には、多数列挙されたワックスの1つとして、「キャンデリラロウ」すなわちキャンデリラワックスが記載されているが(摘記(7Ab))、甲A7の記載を参酌し、本件特許の出願時の技術常識を考慮しても、甲A7発明において、「マイクロクリスタリンワックス」又は「パラフィン」に代えて、又はそれらに加えて、多数のワックスの中から「キャンデリラワックス」を含有するものとする動機は見いだせない。
また、相違点A7-3について、甲A7には、「(ジメチコン/フェニルビニルジメチコン)クロスポリマー」を必須の成分とする固形乳化化粧料が記載されているところ(摘記(甲A7a))、本件特許の出願時の技術常識を考慮しても、上記クロスポリマーに代えて、又はそれに加えて、本件発明1のシリコーンエラストマーを含有するものとする動機は見いだせない。
したがって、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲A7に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。
(イ)甲A8発明について
相違点A8-2について、甲8Aには、多数列挙されたワックスの1つとして、「キャンデリラロウ」すなわちキャンデリラワックスが記載されているが(摘記(甲8Ab))、甲8Aの記載を参酌し、本件特許の出願時の技術常識を考慮しても、甲A8発明において、「マイクロクリスタリンワックス」又は「パラフィン」に代えて、又はそれらに加えて、多数のワックスの中から「キャンデリラワックス」を含有するものとする動機は見いだせない。
また、相違点A8-3について、甲A8には、甲A8発明の「(ジメチコン/(PEG-10/15))クロスポリマー」がシリコーン系界面活性剤としても作用することが記載されているから(摘記(A8b))、これを本件発明1で特定されるシリコーンエラストマーに置き換える動機はなく、甲8発明の「(ジメチコン/フェニルビニルジメチコン)クロスポリマー」についても、本件発明1で特定されるシリコーンエラストマーに置き換える動機は見当たらず、また本件特許の出願時の技術常識を考慮しても、甲A8発明の上記各ポリマーに代えて、又はそれらに加えて、本件発明1のシリコーンエラストマ-を含有する物とする動機は見いだせない。
したがって、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、A8に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。
エ 申立人Aの主張
申立人Aは、申立書A(第52頁第11行~第55頁下から8行、及び第57頁第12行~第59頁第9行)において、甲A2、4、6、9及び10の記載を示し、「油中水型乳化物を調製するに当たって、有機変性粘土鉱物を配合することにより乳化物を増粘または固化することは、当業者にとって周知の事項である」と主張する。
しかしながら、上記ウのとおり、相違点A7-2、A7-3、A8-2及びA8-3の構成を採用する動機付けはないため、本件発明1は、甲A7発明又はA8発明及び本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。
加えて、甲A7には、ワックスの析出抑制効果が高い点から、吸油性に優れた酸化チタンを被疎水化処理粉体として用いることが好ましいこと、硬度の上昇を図るに際しては、特に(C)成分としてシリコーン処理粉体を用いることが好ましく、シリコーン以外で処理を行った粉体では、十分な硬度上昇が望めないことが記載されている(摘記(甲A7b)の【0018】及び【0020】)。また、甲A8には、(C)ワックスの配合量は、上記の揮発性流動油分を前記所定の硬度にゲル化できる量であればよいこと、非揮発性の流動油分を配合することによりスティック状化粧料の硬度を調整することができることが記載されている(摘記(甲A8b)の【0020】及び【0033】)。
したがって、甲A7に記載された発明及び甲A8に記載された発明では、乳化物を増粘または固化するために、有機変性粘土鉱物を使用することは想定されておらず、その他の上記各文献の記載を参酌しても、甲A7発明及び甲A8発明において、有機変性粘土鉱物を使用する動機は見いだせない。
したがって、申立人Aの主張は採用できない。
オ 小括
以上のとおり、本件発明1は、甲A7又は甲A8に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件発明2~3について
ア 対比・判断
本件発明2~3は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、これをさらに限定するものであるから、本件発明2~3は、上記(2)で述べたのと同様の理由により、甲A7又は甲A8に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 申立人Aの主張について
請求項2及び3に係る発明についての、申立書Aにおける申立人Aの主張は、上記(2)エの主張を前提とするものと認められる。
ところが、上記(2)エで述べたとおり、当該主張は採用できないため、請求項2及び3に係る発明についての申立人Aの主張についても、採用できない。
ウ 小括
以上のとおり、本件発明2~3は、上記(2)で述べたのと同様の理由により、甲A7又は甲A8に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)甲A7及び甲A8を主引用例とした場合についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1~3は、甲A7又は甲A8に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
よって、申立理由A2のエは理由がない。
6 申立理由A2のオ(甲A9を主引例とする進歩性欠如)について
(1)甲A9に記載された発明
甲A9には、油中水型乳化固形化粧料について記載されているところ(摘記(甲A9a))、(甲A9c)の処方例3の記載からみて、次の発明(以下「甲A9発明」という。)が記載されていると認める。
[甲A9発明]
「以下の処方の固形乳化ファンデーション(パクト状)である油中水型乳化固形化粧料。
(処方) (質量%)
(1)ジメチルポリシロキサン 18
(2)デカメチルシクロペンタシロキサン 17
(3)マイクロクリスタリンワックス 2
(4)パラフィンワックス 4
(5)イソノナン酸イソノニル 3
(6)PEG-10ジメチコン 2
(7)ジステアルジモニウムヘクトライト 0.3
(8)シリカ被覆酸化チタン 5
(9)シリカ被覆酸化鉄赤 0.2
(10)シリカ被覆酸化鉄黄 1.2
(11)シリカ被覆酸化鉄黒 0.1
(12)シリカ被覆微粒子酸化チタン 3
(13)イオン交換水 33
(14)1, 3-ブチレングリコール 10
(15)ヘキサメタリン酸ナトリウム 0.1
(16)苛性カリ 0.1
(17)防腐剤 0.1
(18)パルミチン酸 0.8
(19)香料 0.1」
(2)本件発明1について
ア 甲A9発明との対比
以下、本件発明1と甲A9発明を対比する。
(ア)甲A9発明の「ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト0.3(質量%)」は本件発明1の「(A)0.1~5質量%の有機変性粘土鉱物」に相当する。
(イ)甲A9発明の「PEG-10ジメチコン 2(質量%)」について、「PEG-10ジメチコン」は、摘記(甲A5b)の記載からHLBが4.5であると認められるので、本件発明1の「(B)0.1~5質量%のHLB6以下の界面活性剤」に相当する。
(ウ)甲A9発明の「マイクロクリスタリンワックス 2(質量%)」、及び「パラフィンワックス 4(質量%)」の合計6質量%は、本件発明1の「(C)1~15質量%の、セレシンワックス、パラフィンワックス、キャンデリラワックス、及びマイクロクリスタリンワックスから選択される少なくとも1種のワックス」に相当する。
(エ)甲A9発明の「デカメチルシクロペンタシロキサン 17(質量%)」は、本件発明1の「(E)10~50質量%の揮発性油分」に相当する。
(オ)甲A9発明の「イオン交換水 33(質量%)」は、本件発明1の「(F)60質量%以下の水」に相当する。
(カ)甲A9発明はD-アミノ酸及びその誘導体を含まない。
(キ)甲A9発明の「油中水型乳化固形化化粧料」は、本件発明1の「油中水型乳化化粧料」に相当する。
したがって、本件発明1と甲A9発明とは、
「(A)0.1~5質量%の有機変性粘土鉱物;
(B)0.1~5質量%のHLB6以下の界面活性剤;
(C)1~15質量%の、セレシンワックス、パラフィンワックス、キャンデリラワックス、及びマイクロクリスタリンワックスから選択される少なくとも1種のワックス;
(E)10~50質量%の揮発性油分;及び
(F)60質量%以下の水を含有し、
D-アミノ酸及びその誘導体を含まないことを特徴とする油中水型乳化化粧料。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点A9-1>
本件発明1は、「(D)0.5~5質量%のシリコーンエラストマー」を含有し、「前記(D)シリコーンエラストマーは、ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、及びポリシリコーン-11から選択され」ると特定しているのに対し、甲A9発明はシリコーンエラストマーを含有しない点。
<相違点A9-2>
(C)のワックスについて、本件発明1は、「(C)ワックスがキャンデリラワックスであ」ると特定しているのに対し、甲A9発明は、「マイクロクリスタリンワックス」及び「パラフィンワックス」である点。
<相違点A9-3>
本件発明1は、「炭素数28~42の炭化水素系ワックス部を20~95質量%と、炭素数43以上の炭化水素系ワックス部を5~80質量%とを含み、炭素数27以下の炭化水素系ワックス部の含有量が15質量%以下である炭化水素系ワックス」を含まないと特定しているのに対し、甲A9発明では、そのようなワックスを含むか含まないかが不明である点。
イ 相違点の判断
事案に鑑み、まず相違点A9-2について検討すると、甲A9には、多数列挙されたワックスの1つとして、「キャンデリラロウ」すなわちキャンデリラワックスが記載されているが(摘記(9Ab))、甲A9の記載を参酌し、本件特許の出願時の技術常識を考慮しても、甲A9発明において、「マイクロクリスタリンワックス」又は「パラフィンワックス」に代えて、又はそれらに加えて、多数のワックスの中から「キャンデリラワックス」を含有するものとする動機は見いだせない。
また、相違点A9-1について、甲A9の記載を参酌し、本件特許の出願時の技術常識を考慮しても、甲A9発明において、「ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、及びポリシリコーン-11から選択され」る「(D)0.5~5質量%のシリコーンエラストマー」を含有するものとする動機は見いだせない。
したがって、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲A9に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。
ウ 申立人Aの主張
申立人Aは申立書Aの第60頁下から2行~第64頁第8行において、甲A2~A8を示し、「油中水型乳化物を調製するに際して、少量のシリコーンエラストマーを配合することは、当業者にとって周知の事項である」と主張する。
そして、その配合理由として、甲A5には「油相に構造粘性を付与する」こと、及び「シリコーンゲル独特のなめらかでシルキーな感触と、塗布表面にマット効果を付与する」こと、甲A6には「油中水型化粧料の刑事安定性が良好で、膜薄感(肌負担感の無さ)が更に良好である」こと、甲A7には「延びがよく滑らかな使用感が得られる」こと、甲A8には「経時的に揮発性油分が蒸発することによりスティックが細くなる「痩せ」を抑制し、優れた形状安定性が達成できるとともに、肌の凹凸補正効果も付与される。さらに、製造工程においてスティック形状に成型する際、中心の凹みを抑制するために徐冷が必要となるが、シリコーンエラストマーの配合により徐冷して固化するまでに、乳化粒子が増大することを抑制する効果がある」ことを主張する。さらに、甲A2~A4にも有機変性粘土鉱物及びワックス成分とともに架橋型シリコーンを配合した具体例が記載されているも主張している。
甲A9には、油中水型乳化固形化粧料の感触や使用感、さらには安定性について、「本発明の油中水型乳化固形化粧料は、水相中に表面疎水化されていない粉末が配合されているので、肌への塗布時にのびが軽く、みずみずしい感触を与えるのみならず、吸油力にも優れており、化粧持ちに優れる。更に、油相をワックス及びジステアルジモニウムヘクトライトで増粘又は固化しているので特に高温での安定性に優れている。」と記載されているが(摘記(甲A9b))、感触、使用感及び安定性を優れたものとするために、甲A9発明にさらに本件発明1で特定されるシリコーンエラストマーを含有するものとする動機付けは見いだせない。
したがって、申立人Aの主張は採用できない。
エ 小括
以上のとおり、本件発明1は、甲A9に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。
(3)本件発明2~3について
ア 対比・判断
本件発明2~3は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、これをさらに限定するものであるから、本件発明2~3は、上記(2)で述べたのと同様の理由により、甲A9に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。
イ 申立人Aの主張について
請求項2及び3に係る発明についての、申立書Aにおける申立人Aの主張は、上記(2)エの主張を前提とするものと認められる。
ところが、上記(2)エで述べたとおり、当該主張は採用できないため、請求項2及び3に係る発明についての申立人Aの主張についても、採用できない。
ウ 小括
以上のとおり、本件発明2~3は、甲A9に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。
(4)甲A9を主引用例とした場合についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1~3は、甲A9に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえないから、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
よって、申立理由A2のオは理由がない。
7 申立理由B1(甲B1を主引例とする進歩性欠如)について
(1)甲B1に記載された発明
甲B1には、シリコーン中水形(ウォーター-イン-シリコーン形)の化粧品用ファンデーション等の局所用のシリコーン・ゲルまたは当該ゲルを含有している組成物について記載されているところ(摘記(甲B1a))、(甲B1e)の実施例2の記載からみて、次の発明(以下「甲B1発明」という。)が記載されていると認める。
[甲B1発明]
「以下の組成のシリコーン中水形化粧品用スキン・ファンデーション。
[図:0001437352000033.jpg]
」
(2)本件発明1について
ア 甲B1発明との対比
以下、本件発明1と甲B1発明を対比する。
(ア)甲B1発明の「ポリグリセリル-4・オレエート」の含有量は1.60重量%(=0.8×2.00)、すなわち1.60質量%であるから、本件発明1の「(B)0.1~5質量%のHLB6以下の界面活性剤」と「0.1~5質量%の」「界面活性剤」である限りにおいて共通する。
(イ)甲B1発明の「合成ワックス」の含有量は1.20重量%、すなわち1.20質量%であるから、本件発明1の「(C)1~15質量%の、セレシンワックス、パラフィンワックス、キャンデリラワックス、及びマイクロクリスタリンワックスから選択される少なくとも1種のワックス」と(C)1~15質量%の」「ワックス」である限りにおいて共通する。
(ウ)甲B1発明の「ポリシリコーン-11」は、その含有量は0.7重量%(=0.07×10.00)、すなわち0.7質量%であるから、本件発明1の「(D)0.5~5質量%のシリコーンエラストマー」「(D)シリコーンエラストマー」を含有し、「前記(D)シリコーンエラストマーは、ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、及びポリシリコーン-11から選択され」ることに相当する。
(エ)甲B1発明の「シクロジメチコーン」はシリコーン油であり、摘記(甲1Bc)の記載から揮発性のものであると認められる。そして、その含有量は30.665重量%(=0.9×13.00+0.35×1.50+9.69+0.875×10.00)、すなわち30.665質量%であるから、本件発明1の「(E)10~50質量%の揮発性油分」に相当する。
(オ)甲B1発明の「脱イオン水 32.95(重量%)」は、本件発明1の「(F)60質量%以下の水」に相当する。
(カ)甲B1発明はD-アミノ酸及びその誘導体を含まない。
(キ)甲B1発明の「シリコーン中水形化粧品用スキン・ファンデーション」は、本件発明1の「油中水型乳化化粧料」に相当する。
したがって、本件発明1と甲B1発明とは、
「(B)0.1~5質量%の界面活性剤;
(C)1~15質量%の、ワックス;
(D)0.5~5質量%のシリコーンエラストマー;
(E)10~50質量%の揮発性油分;及び
(F)60質量%以下の水を含有し、
前記(D)シリコーンエラストマーは、ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、及びポリシリコーン-11から選択され、
D-アミノ酸及びその誘導体を含まないことを特徴とする油中水型乳化化粧料。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点B1-1>
本件発明1は「(A)0.1~5質量%の有機変性粘土鉱物」を含有するのに対し、甲B1発明の「クオータニウム-18(および)ヘクトライト」が「(A)0.1~5質量%の有機変性粘土鉱物」に該当するか不明な点。
<相違点B1-2>
本件発明1の界面活性剤が「HLB6以下」であるのに対し、甲B1発明の「ポリグリセリル-4・オレエート」が「HLB6以下」であるかが不明である点。
<相違点B1-3>
(C)のワックスについて、本件発明1は、「セレシンワックス、パラフィンワックス、キャンデリラワックス、及びマイクロクリスタリンワックスから選択される少なくとも1種のワックス」及び「前記(C)ワックスがキャンデリラワックスであ」ると特定しているのに対し、甲B1発明は、「合成ワックス」である点。
<相違点B1-4>
本件発明1は、「炭素数28~42の炭化水素系ワックス部を20~95質量%と、炭素数43以上の炭化水素系ワックス部を5~80質量%とを含み、炭素数27以下の炭化水素系ワックス部の含有量が15質量%以下である炭化水素系ワックスを含ま」ないと特定しているのに対し、甲B1発明は、そのようなワックスを含むか含まないかが不明である点。
イ 相違点の判断
相違点B1-3について
甲B1には「キャンデリラワックス」についての記載はなく、本件特許の出願時の技術常識を考慮しても、甲B1発明における多数の成分のうち、「合成ワックス」に着目し、甲B1発明において、合成ワックスに代えて、又はそれに加えてキャンデリラワックスを含有するものとする採用する動機は見いだせない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲B1に記載された発明及び本件特許の出願時の技術常識に基いて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。
ウ 申立人の主張について
(ア)申立人Bの主張の概要
申立人Bは申立書Bの第10頁第11行~第14頁第6行において、おおむね以下のa及びbの主張を行い、令和7年4月18日の申立人Bによる意見書(以下、「申立人B意見書」という。)の第4頁下から7行~第7頁第6行において、おおむね以下の主張を行っている。
a 甲B1には、エモリエント剤として、マイクロクリスタリンワックスやポリエチレンなどのワックス類を配合して良い旨開示されているのであるから、甲B1の実施例2において使用されている「合成ワックス」(すなわち、ポリエチレンワックスと同種の炭化水素ワックス)に代えて「マイクロクリスタリンワックス」を使用することは、当業者にとってなんらの創意工夫を要することなくなし得たことである。
b 本件明細書の実施例9~12の結果から、本件発明1の効果について、
(あ)マイクロクリスタリンワックス、カルナウバワックス、ポリエチレンワックスは、いずれも「使用感(とろけ感)」がA評価である。
(い)マイクロクリスタリンワックス、カルナウバワックス、ポリエチレンワックスは、いずれも「乳化安定性」がA評価であるが、キャンデリラワックスの「乳化安定性」はB評価である。
(う)「乳化安定性」については、キャンデリラワックスよりも、カルナウバワックス、およびポリエチレンワックスの方が優れている。
c 特許異議申立書に記載したように、クォータニウム-18ヘクトライトが有機変性粘土鉱物であることは、用語「クォータニウム-18ヘクトライト」に内在する事項である。また、甲第1号証には、エモリエント剤として、マイクロクリスタリンワックスやポリエチレンなどのワックス類を配合してよい旨開示されている(日本語訳の段落0027、および部分訳参照)のであるから、甲第1号証の実施例2において使用されている「合成ワックス」(すなわち、ポエチレンワックスと同種の炭化水素ワックス)に代えて「マイクロクリスタリンワックス」を使用することは、当業者にとってなんらの創意工夫を要することなくなし得たことである。
そして、「マイクロクリスタリンワックス」を使用することによつて、格別の効果を奏することがないことは、本件特許明細書の段落0027、および実施例9~12についての説明で詳述したとおりである。
そうすると、請求項1発明の構成は、甲第1号証の記載か当業者にとって自明なものであり、「合成ワックス」を「マイクロクリスタリンワックス」に置換したことによつて格別な効果を奏するとも認められない。」
(イ)申立人Bの主張に対する判断
上記a及びcの主張について、上記イで述べたとおり、甲B1には「キャンデリラワックス」についての記載はない。また、本件特許の出願時の技術常識を考慮しても、甲B1発明において、含有する多数の成分のうち、「合成ワックス」に着目し、合成ワックスに代えて、又はそれに加えてキャンデリラワックスを含有するものとする動機は見いだせない。
したがって、上記bの効果に関する主張について論ずるまでもなく、本件発明1は、甲B1発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。
エ 小括
以上のとおり、本件発明1は、甲B1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、本件発明1をさらに限定するものであるから、本件発明2及び3は、上記(2)で述べたのと同様の理由により、甲B1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)甲B1を主引用例とした場合についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1~3は、甲B1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
よって、申立理由B1は理由がない。
8 取消理由で採用しなかった申立理由についてのまとめ
以上のとおり、本件発明3は、甲A2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、本件発明1~3は、甲A4に記載された発明であるとはいえず、本件発明1及び2は、甲A5又は甲A6に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、また、本件発明1~3は、甲A7、甲A8、甲A9又は甲B1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定及び特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
したがって、申立理由A1のウ、申立理由A2のアのうち請求項3に関する部分、並びに申立理由A2のウ~オ及び申立理由B1のうち請求項1~3に関する部分についての理由は理由がない。
第7 むすび
以上のとおり、先の取消理由通知及び決定予告の取消理由、並びに申立書A及びBに記載した申立理由及び証拠によっては、請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。
また、ほかに請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件訂正により、請求項4及び5は削除されたため、申立人A及びBの同請求項に係る特許に対する特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しないものとなったので、同請求項に係る特許についての特許異議の申立ては不適法であって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8において準用する同法第135条の規定により、却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700795