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特許異議申立

2024-700655

スガマデクス含有の液体製剤

審判番号
2024-700655
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-139171
登録番号
7512762
請求日
2024年07月11日
審決日
2026年05月20日
公報発行日
2026年08月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】ニプロ株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
  • 【異議申立人】田中 秀行
審判長/審判官
  • 審判長 藤原 浩子
  • 審判官 井上 千弥子
  • 審判官 田中 耕一郎
分類
P1651.113-YAA(A61K) / P1651.121-YAA(A61K) / P1651.537-YAA(A61K) / P1651.536-YAA(A61K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第1項第2号、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第7項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7512762号発明「スガマデクス含有の液体製剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7512762号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。 特許第7512762号の請求項1~6に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7512762号(以下「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願(特願2020-139171号)は、令和2年8月20日に出願され、令和6年7月1日にその特許権の設定登録がされ、同年7月9日に特許掲載公報が発行された。 その後、令和6年7月11日に、請求項1~6に係る特許に対し、特許異議申立人 田中秀行(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがなされた。 以降の手続の経緯の概要は次のとおりである。 令和7年 5月22日付け 取消理由通知書及び審尋 同年 7月28日 訂正請求書、意見書及び 回答書の提出(特許権者) 同年 8月13日 上申書の提出(特許権者) 同年 9月22日 意見書の提出(申立人) 同年11月14日付け 取消理由通知書(決定の予告) 令和8年 1月 8日 訂正請求書、意見書の提出(特許権者) 同年 2月24日 意見書の提出(申立人) なお、令和7年7月28日にされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 第2 訂正の適否についての判断 1 請求の趣旨及び訂正の内容 (1)請求の趣旨 令和8年1月8日提出の訂正請求書により特許権者が行った訂正請求は、「特許第7512762号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを求める。」ことを請求の趣旨とするものである。 そして、上記訂正請求書によれば、上記訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。 なお、下線は訂正箇所を示し、当審合議体が付した。 (2)訂正の内容 <訂正事項1> 特許請求の範囲の請求項1に「前記液体製剤中のマンガンの濃度が、前記液体製剤中のスガマデクスの全質量に対して0.11ppm未満である」と記載されているのを、「前記液体製剤中のマンガンの濃度が、測定波長257.610nm、アキシャルモードとした測定モードにて、ICP発光分光分析装置を用いて測定した値として、前記液体製剤中のスガマデクスの全質量に対して0.07ppm以下である」に訂正する (請求項1の記載を引用する請求項2~6も同様に訂正する。)。 なお、訂正前の請求項1~6は、請求項2~6が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項1~6について請求されている。 2 訂正事項1について (1)訂正の目的について 訂正事項1は、訂正前の請求項1における「前記液体製剤中のマンガンの濃度が、前記液体製剤中のスガマデクスの全質量に対して0.11ppm未満である」を、「前記液体製剤中のマンガンの濃度が、測定波長257.610nm、アキシャルモードとした測定モードにて、ICP発光分光分析装置を用いて測定した値として、前記液体製剤中のスガマデクスの全質量に対して0.07ppm以下である」に限定するものである。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (2)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項1の「前記液体製剤中のマンガンの濃度が、前記液体製剤中のスガマデクスの全質量に対して0.11ppm未満である」を、「前記液体製剤中のマンガンの濃度が、測定波長257.610nm、アキシャルモードとした測定モードにて、ICP発光分光分析装置を用いて測定した値として、前記液体製剤中のスガマデクスの全質量に対して0.07ppm以下である」とする訂正は、本件特許の明細書【0016】の「マンガンの濃度は、測定波長を257.610nm、測定モードをアキシャルモードとして、ICP発光分光分析装置 (Agilent Technologies製、Agilent 5100 ICP-OES)を用いて測定、換算した。マンガン標準液(Mn 1000)(JCSS化学分析用、関東化学製)を用いて、適度に希釈し、該当濃度の検量線を作成した。作成した検量線を用いて製剤中のマンガン量を求め、換算した。」という記載、同【0016】表1の液体製剤a、bのマンガン濃度がそれぞれ0.03ppm、0.07ppmである旨の記載、及び、同【0020】表4の液体製剤Aのマンガン濃度が0.07ppmである旨の記載に基づくものであるから、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。 (3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項1は、上記(1)のとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。 3 小括 以上のとおりであるから、訂正事項1に係る本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであるから、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを認める。 第3 訂正発明 本件訂正は、上記第2のとおり認められるので、本件特許の請求項1~6に係る発明(以下、請求項の番号に従い「訂正発明1」などといい、まとめて「訂正発明」という。)は、令和8年1月8日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された次の事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 スガマデクス又はそのナトリウム塩を含有する液体製剤であって、 前記液体製剤中のマンガンの濃度が、測定波長257.610nm、アキシャルモードとした測定モードにて、ICP発光分光分析装置を用いて測定した値として、前記液体製剤中のスガマデクスの全質量に対して0.07ppm以下である液体製剤。 【請求項2】 前記液体製剤が容器に収容されており、 該容器が、ガラス製容器である請求項1に記載の液体製剤。 【請求項3】 前記液体製剤が容器に収容されており、 該容器が、気体の半透過性容器である請求項1に記載の液体製剤。 【請求項4】 前記液体製剤がシリンジを用いたプレフィルドシリンジの形態である請求項1~3のいずれか1項に記載の液体製剤。 【請求項5】 ブリスターパック又はピローパックに収納されている請求項2~4のいずれか1項に記載の液体製剤。 【請求項6】 前記容器又はシリンジ内の前記液体製剤の表面に接触する気体は、不活性ガスにより酸素濃度が低減された気体である請求項2~5のいずれか1つに記載の液体製剤。」 第4 特許異議申立書の申立理由と当審において通知した取消理由 1 特許異議申立書(以下「申立書」ということがある。)の申立理由 以下において、申立人の提出した「甲第1号証」等を「甲1」等といい、まとめて「甲号証」ということがある。 (1)申立理由1(新規性欠如) ア 甲1を主引例とする新規性欠如 本件特許の請求項1、2に係る発明は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである(申立書5頁の理由1A、19~24頁の項目(4-3))。 イ 甲3を主引例とする新規性欠如 本件特許の請求項1に係る発明は、甲3に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである(申立書5頁の理由1B、24~25頁の項目(4-4))。 (2)申立理由2(新規性欠如) 本件特許の請求項1、2に係る発明は、特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされていた発明であって、特許法第29条第1項第2号に該当し、特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである(申立書5頁の理由2、25~27頁の項目(4-5))。 (3)申立理由3(進歩性欠如) ア 甲4を主引例とする進歩性欠如 本件特許の請求項1、6に係る発明は、甲4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり、本件特許の請求項2に係る発明は、甲4に記載された発明及び甲1に記載された事項又は本件特許出願時の技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許の請求項3~5に係る発明は、甲4に記載された発明及び甲5に記載された事項又は本件特許出願時の技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである(申立書5頁の理由3A、27~39頁の項目(4-6))。 イ 甲1を主引例とする進歩性欠如 本件特許の請求項1、2、6に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり、本件特許の請求項3~5に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲4、甲5に記載された事項又は本件特許出願時の技術常識に基づいて当業者が容易に発明することができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである(申立書5頁の理由3B、39~41頁の項目(4-7))。 (4)申立理由4(サポート要件違反)、申立理由5(実施可能要件違反) 本件特許の特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである(申立書41~44頁の項目(4-8))。 申立理由4及び5について、具体的理由の概要は以下のとおり。 ア 本件特許の請求項1~6に係る発明は、市販製剤と比較して、スガマデクスナトリウム塩の分解又は酸化類縁物質の発生を低減させた液体製剤を提供することを解決すべき課題とするものである。一方、本件特許明細書の表2においては、スガマデクスナトリウム塩の市販製剤に含まれるマンガン濃度は、液体製剤中のスガマデクスの全質量に対して0.11ppmであると記載されているが、市販製剤に含まれるマンガン濃度は、0.11±0.03ppm程度であって、製品やロットによっては、マンガン濃度が0.11ppm未満のものも存在していた可能性が高いし、市販製剤に含まれるマンガン濃度が0.11ppmであるとしても、マンガン濃度が0.11ppmに限りなく近い濃度(例えば、0.109ppm)である液体製剤は、市販製剤と同程度の安定性を有することが予想される。したがって、マンガン濃度が0.11ppm未満である本件特許の請求項1~6に係る発明は、市販製剤よりスガマデクスナトリウム塩の分解又は酸化類縁物質の発生を低減させた液体製剤を提供するという課題を解決できないものを含むものであり、市販製剤よりスガマデクスナトリウム塩の分解又は酸化類縁物質の発生を低減させた液体製剤を使用できるように記載されているとはいえない。 イ また、液体製剤中のマンガンの濃度が液体製剤中のスガマデクスの全質量に対して0.11ppm未満である液体製剤については、本件特許明細書の表4において、各種供給元から入手した4種類のスガマデクスナトリウムを用いて、マンガンの濃度が0.07ppmの液体製剤Aを得たことが記載されているものの、この液体製剤Aを調製するために用いたスガマデクスナトリウム原料の製造方法、入手方法等は明記されていないし、本件特許の明細書の試験例1をみても、原料として使用したスガマデクスナトリウムの製造方法、入手方法等は明記されていないから、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件特許の請求項1~6に係る発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。 2 証拠方法 (1)申立人の提出した証拠方法 申立人は、申立書に添付して、甲1~甲5を証拠方法として提出している。 甲1:ブリディオン(R)静注200 mg及び同静注500 mgの添付文書:2015年10月(改定第7版)、MSD株式会社 甲2:ブリディオン(R)静注200 mg及び同静注500 mgについての審議結果報告書、厚生労働省医薬食品局審査管理課、平成21年(2009年)10月27日 甲3:国際公開第2019/231166号 甲4:中国特許出願公開第110638751号明細書 甲5:特開2020-70269号公報 なお、(R)は、原文では上付きの丸囲みされたRであって、「登録商標」であることを意味する。 (2)特許権者の提出した証拠方法 特許権者は、令和7年7月28日付けの意見書に添付して乙第1号証(以下「乙1」という。)を、同日付けの回答書に添付して添付資料1~5を、令和7年8月13日付けの上申書に添付して実験成績書を、それぞれ証拠方法として提出している。 乙1:ジョンソン・マッセイ社製のQuadraSilAPのHP、検索日2025年7月24日、https://www.sigmaaldrich.com/JP/ja/product/aldrich/679534?srsltid=AfmBOoqJnQQ6iOwyCJ9cwKIMpAc0u7oEFfjom_RiHBErWnSWwLSpEz4E 添付資料1:Curr Pollution Rep., 2016, Vol.2, pp168-177 添付資料2:土木学会論文集G(環境)、2014, Vol.70, No.7, III_501-III_508 添付資料3:マンガンを除去し得る製品A-19Sに関するAMEC社のウェブアーカイブ、2015年7月25日、https://web.archive.org/web/20150725000341/http://www.amec.jp:80/product/index.html 添付資料4:株式会社コーエキが作成した地下水又は浄化水の検査結果書、平成22年1月9日 添付資料5:株式会社コーエキが作成した飲料水水質検査成績書、平成17年9月28日 実験成績書:ニプロ株式会社が作成した実験成績書、2025年8月7日作成 3 当審において通知した取消理由 令和7年11月14日付け取消理由通知(決定の予告)において通知した取消理由1~3の概要は、以下のとおりである。 以下の取消理由1~3における「請求項」は、令和7年7月28日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲に記載された請求項を意味する。 ア 取消理由1(新規性) 本件特許の請求項1、2に係る発明は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許の請求項1、2に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 イ 取消理由2(新規性) 本件特許の請求項1、2に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、公然実施をされた発明であって、特許法第29条第1項第2号に該当するから、本件特許の請求項1、2に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 ウ 取消理由3(進歩性) 本件特許の請求項3~5に係る発明は、甲1に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許の請求項6に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲4に記載された事項並びに周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項3~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 第5 取消理由についての当審の判断 1 甲号証に記載された事項並びに甲号証に基づく発明 (1)甲1に記載された事項及び甲1に基づく発明について ア 甲1に記載された事項 甲1には、以下の事項が記載されている。 (甲1a)1頁のタイトル 「 [図:0001438258000001.jpg] 」 (甲1b)1頁左欄「【組成・性状】」の項 「 [図:0001438258000002.jpg] 」 (甲1c)4頁左欄「【有効成分に関する理化学的知見】」及び「【包装】」の項 「 [図:0001438258000003.jpg] 」 イ 甲1に基づく発明 甲1a~甲1cから、本件特許の出願前に日本国内において、以下の発明が公然実施をされていたと認められ、また、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。 「スガマデクスナトリウムを含有し、バイアルに封入された、薬事承認された無色~淡黄褐色澄明の注射液。」(以下「甲1発明」という。) (2)甲3に記載された事項及び甲3に記載された発明 ア 甲3に記載された事項 (甲3a)特許請求の範囲 「[請求項1] (i)下記化学式2で表される化合物を下記化学式3で表される化合物とトリフェニルホスフィンの存在下で反応させて、下記化学式4で表される化合物を収得する段階;及び (ii)下記化学式4で表される化合物を3-メルカプトプロピオン酸とナトリウム塩の存在下で反応させる段階を含む、下記化学式1で表されるスガマデクスナトリウム塩の製造方法。 ・・・ [図:0001438258000004.jpg] ・・・。 ・・・ [請求項7] 前記段階(ii)で収得した化学式1で表されるスガマデクスナトリウム塩をアミノプロピル官能化されたシリカで精製して重金属を除去する段階をさらに含む、請求項1に記載の製造方法。」 (甲3b) 「[5] 前記化学式1で表されるスガマデクスナトリウム塩は、筋弛緩拮抗剤であるブリディオン(Bridion)の活性医薬成分(API)である。 ・・・ [52] 前記化学式1で表されるスガマデクスナトリウム塩は、分子中の硫黄(S)原子が重金属と配位結合することがあり、重金属による汚染の可能性がある。本発明では、アミノプロピル官能化されたシリカを用いて、化学式1で表されるスガマデクスナトリウム塩から重金属、例えば、Fe、Cuなどを除去してよい。」 (甲3c) 「[75] 実施例4:化学式1で表されるスガマデクスナトリウム塩の精製 [76] 乾燥した化学式1で表されるスガマデクスナトリウム塩(2.53g)を蒸留水(5.06mL)、メタノール(5.06mL)に完全に溶解させ、アミノプロピル官能化されたシリカ(ジョンソン・マッセイ社製のQuadraSil AP)(0.0759g)を入れて1時間撹拌してからろ過した後、ろ液を50~60℃に昇温してからメタノール(22.5mL)を等温度で滴下した。反応液を室温に下げて2時間撹拌してからろ過し、ろ過物を60℃で12時間真空乾燥して、化学式1で表されるスガマデクスナトリウム塩(3.0g、83%)を収得した。化学式1で表されるスガマデクスナトリウム塩の純度は97.69%であった。 ・・・ [82] 実験例2:化学式1で表されるスガマデクスナトリウム塩の重金属成分除去分析 [83] 化学式1で表されるスガマデクスナトリウム塩をアミノプロピル官能化されたシリカで精製する前後の重金属の含量を誘導結合プラズマ質量分析法(ICP Mass)で測定した。その結果を下記の表2に表した。 [84] [表2] [図:0001438258000005.jpg] [85] 前記表2から、化学式1で表されるスガマデクスナトリウム塩をアミノプロピル官能化されたシリカで精製した後に重金属が効率よく除去されたことが確認できる。したがって、アミノプロピル官能化されたシリカを用いた精製過程が反応工程に有効であることが分かる。」 イ 甲3に記載された発明 甲3aにおける[請求項1]を引用する[請求項7]及び甲3cの[76]から、甲3には、以下の発明が記載されていると認められる。 「乾燥した化学式1で表されるスガマデクスナトリウム塩を蒸留水、メタノールに完全に溶解させ、アミノプロピル官能化されたシリカを入れて撹拌してからろ過し、重金属を除去した後、ろ液を昇温してからメタノールを滴下し、反応液を室温に下げて撹拌してからろ過し、ろ過物を真空乾燥して得られた、化学式1で表されるスガマデクスナトリウム塩。 [図:0001438258000006.jpg] 」(以下「甲3発明」という。) (3)甲4に記載された事項及び甲4に記載された発明 ア 甲4に記載された事項 (甲4a)特許請求の範囲 「1.以下の工程を含む、スガマデクスナトリウム注射剤の調製方法: 1)薬液の調製 純度99.99%以上の清浄な不活性ガスを調液タンクに吹き込み、注射用水中の溶存酸素を監視し、注射用水中の溶存酸素が1ppmを超えないように規定量のスガマデクスナトリウム原薬を添加し、中間液の溶存酸素が1ppmを超えないように、純度99.99%以上の清浄な不活性ガスを調液タンクに吹き込む工程、 2)ポッティング 中間品が検査に合格した後、異物が検出された後、滅菌濾過され、充填プロセス中に、まず、純度99.99%以上の滅菌不活性ガスでアンプルをパージし、滅菌不活性ガスでアンプルを充填し;アンプルに薬液を充填し、純度99.99%以上の滅菌不活性ガスを使用して薬液を満たしたアンプル瓶を充填し、アンプル瓶の密封を完了し、ポット製品のヘッドスペース残留酸素は3.0%を超えない工程、 3)滅菌と漏れ検出 充填されたアンプル半製品を所定の装填方法に従って減菌のために水槽滅菌キャビネットに入れ、必要に応じて滅菌された半製品の漏れ検出を実施する工程、 4)検査と保管 滅菌及び漏れ検出されたサンプルに対して光検査を実施して、目に見える異物がないか確認し、光検査に合格したサンプルを梱包、検査、保管する工程。 ・・・」 (甲4b) 「[0008]スガマデクスナトリウムは好気的環境下で酸化分解されるが、同時に、スガマデクスナトリウムの化学構造は空洞構造であるため、金属イオン(鉄、ヒ素、ニッケル、マンガンなど)を非常に容易にキレート化する。好気的環境では、微量金属イオンの存在がスガマデクスナトリウムの酸化分解を触媒し、その結果、スガマデクスナトリウム注射剤の不純物が大幅に増加し、薬液の色が大幅に変化する。 [0009]注射剤は人体の血液系に直接入る製剤であり、注射剤に含まれる不純物は人体に重大な悪影響を及ぼし、場合によっては生命を脅かす可能性があるため、注射剤中の不純物含有量や注射剤の特性の変化を可能な限り低減することにより、注射剤の使用リスクを効果的に制御することができる。 発明の内容 [0010]本発明の目的は、スガマデクスナトリウム注射剤の調製方法を提供することである。 [0011]本発明の調製方法は、製品中の不純物の増加を大幅に減少させ、製品の変色を大幅に減少させ、製品の有効期間を延長できるため、これまでのBridion製剤よりも優れた安定性を有し、大量生産に適した製品を提供できる。」 (甲4c) 「[0055」発明者は、研究において、酸素、ICH及び関連ガイドラインの制限要件を満たす微量金属イオン、及びICH及び関連ガイドラインの制限要件を満たすその他の微量未知物質がすべて、スガマデクスナトリウム注射剤の主要因子の安定性を低下させることを発見した。酸素の存在下では、ICH及び関連ガイドラインの制限要件を満たす微量の金属イオンと、ICH及び関連ガイドラインの制限要件を満たすその他の微量の未知物質が、スガマデクスナトリウム注射剤の分解を著しく触媒し、スガマデクスナトリウム注射剤における不純物の大幅な増加と、大幅な色の変化をもたらす。 [0056]微量の金属イオンは、液体調剤システムのステンレス鋼及びアンプルボトルの包装材料の成分であり、必然的に薬液に移行する。 [0057]本発明は、薬液の溶存酸素と、充填された半製品のヘッドスペース内の残留酸素濃度を制御することにより、製品の不純物の増加と色の変化を大幅に減らし、製品の安定性を大幅に改善する。」 イ 甲4に記載された発明 甲4aにおける請求項1から、甲4には、以下の発明が記載されていると認められる。 「以下の工程を含む調製方法により調製された、スガマデクスナトリウム注射剤。 1)薬液の調製 純度99.99%以上の清浄な不活性ガスを調液タンクに吹き込み、注射用水中の溶存酸素を監視し、注射用水中の溶存酸素が1ppmを超えないように規定量のスガマデクスナトリウム原薬を添加し、中間液の溶存酸素が1ppmを超えないように、純度99.99%以上の清浄な不活性ガスを調液タンクに吹き込む工程、 2)ポッティング 中間品が検査に合格した後、異物が検出された後、滅菌濾過され、充填プロセス中に、まず、純度99.99%以上の滅菌不活性ガスでアンプルをパージし、滅菌不活性ガスでアンプルを充填し;アンプルに薬液を充填し、純度99.99%以上の滅菌不活性ガスを使用して薬液を満たしたアンプル瓶を充填し、アンプル瓶の密封を完了し、ポット製品のヘッドスペース残留酸素は3.0%を超えない工程、 3)滅菌と漏れ検出 充填されたアンプル半製品を所定の装填方法に従って減菌のために水槽滅菌キャビネットに入れ、必要に応じて滅菌された半製品の漏れ検出を実施する工程、 4)検査と保管 滅菌及び漏れ検出されたサンプルに対して光検査を実施して、目に見える異物がないか確認し、光検査に合格したサンプルを梱包、検査、保管する工程。」(以下「甲4発明」という。) 2 取消理由1・申立理由1のア(甲1を主引例とする新規性欠如)、取消理由2・申立理由2(公然実施発明に基づく新規性欠如)、取消理由3・申立理由3のイ(甲1を主引例とする進歩性欠如)について 取消理由1は申立理由1のアと概ね同旨であり、取消理由2は申立理由2と概ね同旨であり、取消理由3は申立理由3のイと概ね同旨であるから、まとめて判断する。 (1)訂正発明1 ア 対比 訂正発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「スガマデクスナトリウム」を含有する「注射液」は、訂正発明1の「スガマデクス又はそのナトリウム塩」を含有する「液体製剤」に相当する。 そうすると、訂正発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「スガマデクス又はそのナトリウム塩を含有する液体製剤。」 <相違点> 相違点1 訂正発明1は、「液体製剤中のマンガンの濃度が、測定波長257.610nm、アキシャルモードとした測定モードにて、ICP発光分光分析装置を用いて測定した値として、前記液体製剤中のスガマデクスの全質量に対して0.07ppm以下である」のに対し、甲1発明は、対応する事項が特定されていない点。 イ 相違点1についての判断 本件特許の明細書には、「スガマデクスナトリウム」が「【非特許文献1】ブリディオン静注200mg、500mgの添付文書」に示されるような静脈内投与する製剤として市販されていること(【0002】、【0003】)、試験例1の「市販の製剤」が「市販のブリディオン静注200mg製剤」であること(【0016】)が記載されているから、本件特許の明細書の試験例1(【0016】)に記載された「市販の製剤」は、「【非特許文献1】ブリディオン静注200mg、500mgの添付文書」に記載されるプリディオン静注製剤であるといえる。 そして、本件特許の明細書の試験例2には、「市販の製剤」の「Mn濃度」が「0.11ppm」であることが記載されており(【0017】)、このMn濃度は、測定波長257.610nm、アキシャルモードとした測定モードにて、ICP発光分光分析装置を用いて測定した値であることも記載されている(【0016】)。 また、特許権者が提出した回答書には、「測定波長257.610nm、アキシャルモードとした測定モードにて、ICP発光分光分析装置を用いて測定した」Mn濃度は、例えば液体製剤c(Mn添加量0.1ppm)では「0.12ppm」と測定されたこと、及び、Mn濃度の測定誤差は0.01ppm程度であること、が記載されている(回答書3頁(5)参照)。 そうすると、本件特許の明細書に記載された【非特許文献1】は、ブリディオン静注の添付文書であって甲1にほかならないから、甲1に記載された製剤、すなわち甲1発明の注射剤の「測定波長257.610nm、アキシャルモードとした測定モードにて、ICP発光分光分析装置を用いて測定した」Mn濃度は、測定誤差0.01ppm程度を有する「0.11ppm」程度であるといえる。 一方、訂正発明のMn濃度は「0.07ppm以下」であるから、測定誤差を考慮しても、甲1発明(本件特許の明細書における市販製剤に相当)のMn濃度である「0.11ppm」と重複しないことが明らかである。 したがって、相違点1は、実質的な相違点であるといえるから、訂正発明1は、本件特許の出願前に日本国内において公然実施をされた発明に該当しないし、また、甲1に記載された発明にも該当しない。 甲4には、スガマデクスナトリウム注射剤を調製するにあたり、純度99.99%以上の清浄な不活性ガスを調液タンクに吹き込むことによって、残留酸素濃度を制御し、注射用水中の溶存酸素が1ppmを超えないようにして、好気的環境下で酸化分解されるスガマデクスナトリウムの安定性を向上させることができること(甲4a、c)、スガマデクスナトリウムの酸化分解がマンガンなどの金属イオンによって触媒されること(甲4b、c)が記載されている。 しかしながら、甲4及び他の甲号証をみても、液体製剤中のマンガンの濃度を、液体製剤中のスガマデクスの全質量に対して0.07ppm以下とすることを示唆する記載は見あたらないから、当業者は、甲1に記載された製剤を含む市販の製剤に含まれ得る微量の種々の不純物のうち、特に「Mn」に着目し、これを更に0.07ppm以下にしようと動機付けられたとはいえない。 そうすると、甲1発明において、「Mn」に特に着目し、これを更に0.07ppm以下とすることによって、相違点1の発明特定事項を備えたものとすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。 ウ 訂正発明1の効果について 本件特許の明細書には、試験例2(【0017】)において、Mn濃度がそれぞれ0.03ppm、0.07ppmである液体製剤a、bが、Mn濃度が0.11ppmの市販製剤と比較して、特定の類縁物質の発生の増加が抑えられること(表2、図1A、図1B)、及び、試験例3(【0020】)において、Mn濃度が0.07ppmである液体製剤Aが、Mn濃度が1.74~3.06ppmの液体製剤X~Zと比較して、特定の類縁物質の発生の増加が抑えられること(表4、図2A、図2B)が記載されている。 そして、甲1、4をみても、液体製剤中のマンガンの濃度を、液体製剤中のスガマデクスの全質量に対して0.07ppm以下とすることによって、本件特許の明細書に記載された効果を奏することは記載も示唆もされていない。 したがって、訂正発明1の効果は、甲1、4に記載された事項から、当業者が予測できたものとはいえない。 (2)訂正発明2~6 訂正発明2~6は、訂正発明1を直接又は間接的に引用するものである。 訂正発明2は、訂正発明1を直接引用するものであるから、少なくとも相違点1の点で相違する。 そうすると、上記(1)イで説示したように、相違点1は、実質的な相違点であるといえるから、訂正発明2は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明に該当しないし、また、甲1に記載された発明にも該当しない。 そして、上記(1)イで説示したように、甲1発明において、「Mn」に特に着目し、これを更に0.07ppm以下とすることによって、相違点1の発明特定事項を備えたものとすることは、当業者が容易に想到し得たことではないから、訂正発明2~6は、当業者が容易に想到し得たものではない。甲4、甲5に記載された事項及び本件特許出願時の技術常識を検討しても、同様である。 また、上記(1)ウで説示したように、訂正発明2~6の効果は、甲1、4に記載された事項から、当業者が予測できたものとはいえない。 (3)まとめ 以上のとおりであるから、訂正発明1、2は、甲1に記載された発明にも特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされていた発明にも該当せず、また、訂正発明1、2、6は、甲1発明及び甲4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、訂正発明3~5は、甲1発明及び甲4、甲5に記載された事項又は本件特許出願時の技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 よって、取消理由1~3には、理由がない。 第6 取消理由通知において採用しなかった申立理由についての当審の判断 1 申立理由1のイ(甲3を主引例とする新規性欠如)について (1)訂正発明1 ア 対比 訂正発明1と甲3発明とを対比する。 甲3発明の「化学式1で表されるスガマデクスナトリウム塩」は、訂正発明1の「スガマデクス又はそのナトリウム塩」に相当する。 そうすると、訂正発明1と甲3発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「スガマデクス又はそのナトリウム塩。」 <相違点> 相違点2 訂正発明1は、「液体製剤中のマンガンの濃度が、測定波長257.610nm、アキシャルモードとした測定モードにて、ICP発光分光分析装置を用いて測定した値として、前記液体製剤中のスガマデクスの全質量に対して0.07ppm以下である」スガマデクス又はそのナトリウム塩を含有する「液体製剤」であるのに対し、甲3発明は、対応する事項が特定されていない点。 イ 相違点2についての判断 甲3には、スガマデクスナトリウム塩をアミノプロピル官能化されたシリカで精製することによって、処理前に345ppmであったFeや、処理前に41.3ppmであったCuについては、検出限界以下まで効率よく除去することができたことが記載されている(甲3a~甲3c)ものの、Crを含む他の重金属については、処理前も処理後も0ppmである場合しか記載されていないから、処理前に存在していた重金属が、FeやCuと同様に検出限界以下まで除去されるか否かは不明である。 そうすると、周期律表においてFeとCrの間に位置する重金属であることが自明のマンガンについても、検出限界以下まで除去されるか否かは不明であり、0.07ppm以下であるともいえない。 したがって、相違点2は、実質的な相違点である。 (2)まとめ 以上のとおりであるから、訂正発明1は、甲3に記載された発明に該当しない。 よって、申立理由1のイには、理由がない。 2 申立理由3のア(甲4を主引例とする進歩性欠如)について (1)訂正発明1 ア 対比 訂正発明1と甲4発明とを対比する。 甲4発明の「スガマデクスナトリウム注射剤」は、訂正発明1の「スガマデクス又はそのナトリウム塩」を含有する「液体製剤」に相当する。 そうすると、訂正発明1と甲4発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「スガマデクス又はそのナトリウム塩を含有する液体製剤。」 <相違点> 相違点3 訂正発明1は、「液体製剤中のマンガンの濃度が、測定波長257.610nm、アキシャルモードとした測定モードにて、ICP発光分光分析装置を用いて測定した値として、前記液体製剤中のスガマデクスの全質量に対して0.07ppm以下である」スガマデクス又はそのナトリウム塩を含有する「液体製剤」であるのに対し、甲4発明は、対応する事項が特定されていない点 イ 相違点3についての判断 甲4には、スガマデクスナトリウムの化学構造は空洞構造であるため、金属イオン(鉄、ヒ素、ニッケル、マンガンなど)をキレート化し、当該金属イオンの存在が好気的環境においてスガマデクスナトリウムの酸化分解を触媒して不純物が大幅に増加すること(甲4bの[0008])、注射剤中の不純物含有量を可能な限り低減して優れた安定性を有する製品を提供すること(甲4bの[0009]~[0011])が記載されていることから、当業者は、スガマデクスナトリウムを含有する注射剤に含まれる不純物の量を減少させるため、不純物増加の原因となる金属イオンの量を低減しようとする動機付けがある。 しかしながら、甲4には、金属イオンの中でも特に、マンガンに着目したうえで、その量を液体製剤中のスガマデクスの全質量に対して0.07ppm以下とすることを動機付ける記載はない。 したがって、甲4発明について、相違点3に係る本件発明1の構成とすることを当業者が容易に想到し得たとはいえない。 そして、上記第5の2(1)ウで説示したのと同様に、訂正発明1の効果は、甲4に記載された事項から、当業者が予測できたものとはいえない。 なお、甲3には、スガマデクスナトリウム塩をアミノプロピル官能化されたシリカで精製することによって、処理前に345ppmであったFeや、処理前に41.3ppmであったCuについては、検出限界以下まで効率よく除去することができたことが記載されている(甲3a~甲3c)ものの、Crを含む他の重金属については、処理前も処理後も0ppmであり、FeやCuと同様に検出限界以下まで除去されるか否かは不明であるから、周期律表においてFeとCrの間に位置する重金属であることが自明のマンガンについても、検出限界以下まで除去されるか否かは不明である。 そうすると、甲3に接した当業者といえども、甲4発明において、液体製剤中のスガマデクスの全質量に対してマンガン濃度を0.07ppm以下とすることを動機付けられたとはいえない。 (2)訂正発明2~6 訂正発明2~6は、訂正発明1を引用するものであるから、少なくとも相違点3の点で相違する。 そして、上記(1)で説示したように、相違点3は当業者といえども容易に想到し得たとはいえない。甲1、甲5に記載された事項及び本件特許出願時の技術常識を検討しても、同様である。 また、訂正発明2~6の効果は、甲1、4、5に記載された事項から、当業者が予測できたものとはいえない。 (3)まとめ 以上のとおりであるから、訂正発明1、6は、甲4発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、訂正発明2は、甲4発明及び甲1に記載された事項又は本件特許出願時の技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、訂正発明3~5は、甲4発明及び甲5に記載された事項又は本件特許出願時の技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 よって、申立理由3のアには、理由がない。 3 申立理由4(サポート要件違反)について 申立理由4(サポート要件違反)は、上記第4の1(4)アに示す部分である。 (1)サポート要件の判断規範 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 そこで、上記の観点から、以下に検討する。 (2)訂正発明1について (ア)訂正発明1 訂正発明1は、上記第3で記載したとおりのものである。 (イ)訂正発明の課題 本件特許の明細書の発明の詳細な説明(以下「発明の詳細な説明」という。)の【0004】には、「本発明は、長期保存時においてスガマデクス又はそのナトリウム塩の安定した物性を維持することができるスガマデクス含有の液体製剤を提供することを目的とする。」と記載されていることから、訂正発明の解決しようとする課題は、「長期保存時においてスガマデクス又はそのナトリウム塩の安定した物性を維持することができるスガマデクス含有の液体製剤を提供すること」であると認められる。 (ウ)発明の詳細な説明の記載 発明の詳細な説明には、以下の事項が示されている。 a 試験例1 「【0016】 以下に、実施例、比較例及び試験例により、本発明をより具体的に説明する。 試験例1 スガマデクスナトリウムを、スガマデクスとして100mg/mlの最終濃度となるように注射用水に溶解した。pH調整剤として、必要に応じて塩酸又は水酸化ナトリウムを用いて、pH7.5に調整した後、ろ過した。 得られた液体製剤に、塩化マンガン水溶液を、スガマデクスの質量に対して、それぞれ、0.05ppm、0.1ppm及び0.2ppmのマンガン添加量となるように添加した。 得られた液体製剤を、無色のほう珪酸ガラスをファイアブラスト(登録商標)加工した、16mm(胴外形)×全長35mm(2mL)のバイアルに収容し、大気下にて、塩素化ブチルゴムのラミネート無の直径13mmのゴム栓で施栓し、アルミニウム製キャップ(ポリプロピレン製のフリップオフキャップ)によって巻締めして、液体製剤を得た。 その後、各液体製剤を、市販の高圧蒸気滅菌装置(日阪製作所製、高圧蒸気滅菌装置、GPS-120/20SPXF)を用いて、121℃にて20分間の条件で、高圧蒸気滅菌に付して、各液体製剤b、c、dを得た。なお、塩化マンガンを添加しない以外、同様の処理を行って得られた水溶液を、液体製剤aとした。 参考例として、市販のブリディオン静注200mg製剤(製造後12ヶ月)を準備した。 上記で得られた液体製剤a、b、c、d及び市販の製剤を、それぞれ、苛酷試験(60℃、75%RH)に付した。苛酷試験開始時(0日目)、10日目及び20日目に、液体製剤a、b、c、dのpH及び保存容器の空間部の酸素濃度(%)を測定した。 その結果を表1に示す。 【表1】 [図:0001438258000007.jpg] 表1中、Mn濃度*:スガマデクスの質量に対するMnの測定質量の割合を示す(単位:ppm)(以下同じ)。 なお、マンガンの濃度は、測定波長を257.610nm、測定モードをアキシャルモードとして、ICP発光分光分析装置 (Agilent Technologies製、Agilent 5100 ICP-OES)を用いて測定、換算した。マンガン標準液(Mn 1000)(JCSS化学分析用、関東化学製)を用いて、適度に希釈し、該当濃度の検量線を作成した。作成した検量線を用いて製剤中のマンガン量を求め、換算した。 保存容器の空間部の酸素濃度は、ガスタイトシリンジにより保存容器空間部の気体200μLをとり、市販のガスクロマトグラフ(GLサイエンス製、GC323)で測定した。 表1の結果から、液体製剤中のMnの濃度が高いほど、保存容器の空間部の酸素濃度がより低下する傾向が認められた。」 b 試験例2 「【0017】 試験例2 苛酷試験(60℃、75%RH)に付した上記の液体製剤a、b、c、d並びに市販の製剤について、苛酷試験開始時(0日目)、10日目及び20日目に、各液体製剤中の類縁物質の量(質量%)を、以下に示すように、液体クロマトグラフィーで測定した。 その結果を表2、図1A及び1Bに示す。なお、表2中、RRT0.67及びRRT0.78とは、それぞれ、液体クロマトグラフィーにおいて、試料溶液中のスガマデクスの保持時間を1.00とした場合の、約0.67及び約0.78の保持時間におけるピークで表される類縁物質を意味する。 【表2】 [図:0001438258000008.jpg] 表2中、各類縁物質の量は、スガマデクスに対する質量%を示す(単位:質量%)(以下同じ)。 表2、図1A及び1Bの結果から、液体製剤中のMn濃度が低い場合に、特定の類縁物質の発生の増加が抑えられることが確認された。 また、図1Aにおいて、市販製品は、少なくとも苛酷試験20日目までは、RRT0.67の類縁物質の質量は、全液体製剤において最も多かったが、その傾きは0.0220であることから、その傾きと同程度(±10%程度の変動は許容)又はそれ以下の傾きとなるMn濃度、例えば、0.12ppm以下であることが好ましい。 【0018】 液体製剤0.1mLを量り、移動相Aを加えて5mLとし、試料溶液とした。この液1mLを正確に量り、移動相Aを加えて正確に100mLとし、標準溶液とした。試料溶液及び標準溶液10μLずつを正確にとり、液体クロマトグラフィーにより試験を行い、それぞれの液の各々のピーク面積を自動積分法により測定した。 検出器:紫外吸光光度計(測定波長:200nm) カラム:内径4.6mm、長さ250mmのステンレス管に3μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充填した。 カラム温度:40℃付近の一定温度 移動相:移動相A-リン酸二水素ナトリウム二水和物3.9gを水1000mLに溶かし、リン酸を加えてpH3.0に調整した(リン酸塩緩衝液)。この液900mLにアセトニトリル100mLを加えた。 移動相B-アセトニトリル/リン酸塩緩衝液混液(4:1) 移動相の送液:移動相A及び移動相Bの混合比を表3に示すように変えて濃度勾配制御した。 流量:毎分1.0mL 注入量:10μL 【表3】 [図:0001438258000009.jpg] 【0019】 RRT0.67及びRRT0.78は、それぞれ、以下の式により求めた。RRT(相対保持時間)1.00は、試料溶液中のスガマデクスの保持時間を示す。 RRT=試料溶液中の類縁物質の保持時間/試料溶液中のスガマデクスの保持時間 また、類縁物質の量は、以下の式により求めた。 個々の類縁物質量(%)=試料溶液中の個々の類縁物質のピーク面積/標準溶液中のスガマデクスのピーク面積」 「 [図:0001438258000010.jpg] 」 「【0007】 【図1A】本発明の液体製剤を含む種々の液体製剤における苛酷試験でのRRT0.67の類縁物質の量を示すグラフである。 【図1B】本発明の液体製剤を含む種々の液体製剤における苛酷試験でのRRT0.78の類縁物質の量を示すグラフである。」 c 試験例3 「【0020】 試験例3 各種供給元から入手した4種類のスガマデクスナトリウムを、スガマデクスとして100mg/mlの最終濃度となるように注射用水に溶解した。pH調整剤として、必要に応じて塩酸又は水酸化ナトリウムを用いて、pH7.5に調整し、得られた液体製剤を、ろ過した。 得られた液体製剤を、無色のほう珪酸ガラスをファイアブラスト(登録商標)加工した、16mm(胴外形)×全長35mm(2mL)のバイアルに収容し、大気下にて、塩素化ブチルゴムのラミネート無の直径13mmのゴム栓で施栓し、アルミニウム製キャップ(ポリプロピレン製のフリップオフキャップ)によって巻締めして、液体製剤を得た。 その後、各液体製剤を、市販の高圧蒸気滅菌装置(日阪製作所製、高圧蒸気滅菌装置、GPS-120/20SPXF)を用いて、121℃にて20分間の条件で、高圧蒸気滅菌に付して、各液体製剤A、X、Y、Zを得た。なお、各供給元から入手した4種類のスガマデクスナトリウムを用いて製した液体製剤は、予め上述した方法により、Mn濃度を測定した。 上記で得られた液体製剤A、X、Y、Zを、それぞれ、苛酷試験(60℃、75%RH)に付した。苛酷試験開始時(0日目)、10日目及び20日目に、各液体製剤中の類縁物質の量(質量%)を、以下に示すように、液体クロマトグラフィーで測定した。 その結果を表4及び図2A、2Bに示す。 【表4】 [図:0001438258000011.jpg] 上記結果から、類縁物質であるRRT0.67及びRRT0.78は、いずれも、液体製剤中のMn濃度の低下に従って、増加率が低減することが確認された。 また、上記4種類の液体製剤について、試験例1と同様に、液体製剤のpH及び保存容器の空間部の酸素濃度(%)をそれぞれ測定した。 その結果を表5及び図3に示す。 【表5】 [図:0001438258000012.jpg] 表5及び図3の結果から、液体製剤中のMnの濃度が高いほど、保存容器の空間部の酸素濃度がより低下する傾向が認められた。また、pHも、マンガン濃度が高いほど低下する傾向が認められた。」 「 [図:0001438258000013.jpg] 」 「 [図:0001438258000014.jpg] 」 「【0007】 ・・・ 【図2A】4種類のスガマデクスナトリウム含有液体製剤における苛酷試験でのRRT0.67の類縁物質の量を示すグラフである。 【図2B】4種類のスガマデクスナトリウム含有液体製剤における苛酷試験でのRRT0.78の類縁物質の量を示すグラフである。 【図3】4種類のスガマデクスナトリウム含有液体製剤における苛酷試験での保存容器の空間部の酸素濃度を示すグラフである。」 (エ)当審の判断 訂正発明1は、液体製剤中のマンガン濃度がスガマデクスの全質量に対して0.07ppm以下であるから、市販製剤に含まれるマンガン濃度が0.11ppmに限りなく近い濃度であったとしても、市販製剤とは明確に区別できるものである。 そして、発明の詳細な説明には、試験例2において、Mn濃度がそれぞれ0.03ppm、0.07ppmである液体製剤a、bが、Mn濃度が0.11ppmの市販製剤と比較して、特定の類縁物質の発生の増加が抑えられること(上記(ウ)bの表2、図1A、図1B)、及び、試験例3において、Mn濃度が0.07ppmである液体製剤Aが、Mn濃度が1.74~3.06ppmの液体製剤X~Zと比較して、特定の類縁物質の発生の増加が抑えられること(上記(ウ)cの表4、図2A、図2B)が記載されている。 そうすると、液体製剤中のマンガン濃度がスガマデクスの全質量に対して0.07ppm以下である訂正発明1について、発明の詳細な説明に接した当業者は、市販製剤と比較して、長期保存時においてスガマデクス又はそのナトリウム塩の安定した物性を維持することができるスガマデクス含有の液体製剤を提供できると認識できる。 したがって、訂正発明1は、発明の詳細な説明の記載により当業者が上記(イ)の訂正発明の課題を解決できると認識できるといえる。 (3)訂正発明2~6について 訂正発明1を引用する訂正発明2~6についても、上記(2)で説示したのと同様に、発明の詳細な説明の記載により当業者が上記(2)(イ)の訂正発明の課題を解決できると認識できるといえる。 (4)まとめ 以上のとおりであるから、申立理由4には、理由がない。 4 申立理由5(実施可能要件違反)について 申立理由5(実施可能要件違反)は、上記第4の1(4)ア及びイに示す部分である。 (1)物の発明に関する実施可能要件の判断規範 物の発明について実施可能要件を満たすためには、明細書の発明の詳細な説明の記載が、当業者において、その記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、当該発明に係る物を作り、使用することができる程度のものでなければならない 。 そこで、上記の観点から、以下に検討する。 (2)当審の判断 発明の詳細な説明の試験例1(上記3(2)ア(ウ)aの試験例1)には、「スガマデクスナトリウムを、スガマデクスとして100mg/mlの最終濃度となるように注射用水に溶解した。・・・得られた液体製剤に、塩化マンガン水溶液を、スガマデクスの質量に対して、それぞれ、0.05ppm、0.1ppm及び0.2ppmのマンガン添加量となるように添加した。」、「マンガンの濃度は、測定波長を257.610nm、測定モードをアキシャルモードとして、ICP発光分光分析装置 (Agilent Technologies製、Agilent 5100 ICP-OES)を用いて測定、換算した。」と記載されている。 そうすると、当業者は、スガマデクスナトリウム含む溶液と塩化マンガン水溶液とを混合することによって、0.05ppm、0.1ppm、0.2ppmといったマンガン濃度の溶液を製造できることが理解できる。 そして、スガマデクスナトリウム塩を含む製剤は、本件特許の出願時において公知である(甲1、甲4)から、その原料であるスガマデクスナトリウム自体は、本件特許の出願時において当業者が容易に入手できるものであったといえる。 したがって、発明の詳細な説明の記載に接した当業者は、容易に入手できるスガマデクスナトリウム塩と塩化マンガン水溶液を用いて、0.07ppm以下の任意のマンガン濃度のスガマデクスを含む液体製剤を製造でき、また、使用できると理解できる。 以上のとおりであるから、申立理由5には、理由がない。 第7 申立人の主張について 申立人は、令和8年2月24日に提出した意見書(以下「申立人意見書2」という。)において、概略、以下の点を主張しているので、順に検討する。 ア 特許権者より提出された実験成績書の日付けと本件特許の出願日が約5年の時間差があり、その間に原薬の規格や製造業者が変更になることもあり得るため、当該実験成績書において用いられた「市販の製剤」と、本件特許の出願時に流通していた「市販の製剤」(=「甲1発明」)が、同一であるとする証拠は示されておらず、実験成績書は、本件特許の出願時に流通していた市販のブリディオン製剤中のマンガン濃度を立証する証拠としては不十分であるから、令和7年5月22日(起案日)付け取消理由通知書において指摘された取消理由1-1及び2(申立理由1のア、申立理由2に対応)は、解消していない(申立人意見書2の項目3-1)。 しかしながら、市販の製剤の販売時期によって原薬の規格や製造業者が異なることがあり得るとしても、実際に、「ブリディオン静注200mg製剤」という「市販の製剤」(=「甲1発明」)が、本件特許の出願日から実験成績書の作成日までの約5年の間に、原薬の規格や製造業者が変更されたことが具体的に示されているわけではなく、また、当該製剤中のマンガン濃度が、約5年間の間に異なるものとなったといえる具体的な事情も見あたらない。 そうすると、実験成績書が、本件特許の出願時に流通していた市販のブリディオン製剤中のマンガン濃度を立証する証拠として不十分とはいえない。 したがって、申立人の上記主張は、採用することができない。 イ 甲3には、Fe、Cu、Crなど多くの重金属を検出限界以下まで効率よく除去することができたことが記載されており、甲3発明において、FeとCrの間に位置する重金属であることが自明のマンガンについても、同様に検出限界以下まで除去されていると解されるから、令和7年11月14日(起案日)付け取消理由通知書において指摘された取消理由1-2、3-2(申立理由1のイ、申立理由3のアに対応)は、解消していない(申立人意見書2の項目3-2)。 しかしながら、上記第6の1において説示したように、甲3には、スガマデクスナトリウム塩をアミノプロピル官能化されたシリカで精製した場合について、Fe、Cu以外の他の重金属については、処理前も処理後も0ppmである場合しか記載されておらず、処理前にCrを含む他の重金属が存在していた場合に、FeやCuと同様にこれらが検出限界以下まで除去されるか否かは不明である。 そうすると、マンガンが周期律表においてFeとCrの間に位置する重金属であることが自明であったとしても、アミノプロピル官能化されたシリカで精製した場合に検出限界以下まで除去されるか否かは不明であるから、甲3発明のマンガン濃度が0.07ppm以下であるとはいえない。 したがって、申立人の上記主張は、採用することができない。 ウ 試験例1において用いられている「スガマデクスナトリウム」の原料の入手方法が発明の詳細な説明において明らかにされておらず、また、特許権者の回答書における「特定の化学物質の製造会社のうち特定の1社によるサンプル品の提供によって入手したもの」との回答では、当業者が容易に再現できる程度の具体的な入手方法を明示していないから、申立理由5(実施可能要件)は解消していない(申立人意見書2の項目3-3)。 しかしながら、上記第6の4において説示したように、スガマデクスナトリウム塩を含む製剤は、本件特許の出願時において公知である(甲1、甲4)から、その原料であるスガマデクスナトリウム自体は、本件特許の出願時において当業者が容易に入手できるものであったといえるし、申立人は、スガマデクスナトリウムを含む液体製剤中のマンガン含有量が0.07ppm以下となる、スガマデクスナトリウムの原料を得ることが、当業者において困難であったことを示す具体的な根拠を示していない。 したがって、申立人の上記主張は、採用することができない。 第8 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知書で通知された取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由によっては、本件訂正後の請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700655

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