2022-700018
ポリウレタン水分散体およびコーティング剤
- 審判番号
- 2022-700018
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-509053外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6903832
- 請求日
- 2022年01月12日
- 審決日
- 2023年10月16日
- 公報発行日
- 2024年01月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 分類
- P1651.113-YAA(C08G) / P1651.121-YAA(C08G) / P1651.536-YAA(C08G) / P1651.537-YAA(C08G)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第113条第2号、特許法第36条第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 15項目
第1 手続の経緯
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本件特許第6903832号に係る出願(特願2021-509053号、以下「本願」ということがある。)は、令和2年3月13日(優先権主張:平成31年3月26日、特願2019-57542号)の国際出願日によりされたものとみなされる特許出願であり、令和3年6月25日に特許権の設定登録(請求項の数14)がされ、令和3年7月14日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、本件特許につき、令和4年1月12日に特許異議申立人竹口美穂(以下「申立人」という。)により、「特許第6903832号の特許請求の範囲の全請求項に係る発明についての特許を取り消すべきである。」という趣旨の本件特許異議の申立てがされた。
本件特許異議の申立てにおける手続の経緯は、以下のとおりである。
令和4年 5月19日付け取消理由通知
同年 7月20日 意見書・訂正請求書
同年10月27日付け通知書(申立人宛)
同年11月29日 意見書(申立人)
令和5年 3月31日 取消理由通知(決定の予告)
同年 5月15日 意見書・訂正請求書
同年 5月25日付け通知書(申立人宛)
令和4年7月20日に提出された訂正請求書は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたとみなす。
なお、申立人に対して、令和5年5月25日付け通知書により、訂正請求があった旨の通知をしたが、申立人からの応答はなかった。
第2 令和5年5月15日にされた訂正請求の適否
1 訂正の内容
令和5年5月15日提出の訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである(当審注:下線は訂正箇所を示し、当審が付与した。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「を含む、ポリウレタン水分散体。」とあるのを、「を含み、上記鎖伸長剤(B)は、ジアミンおよび/またはポリアミンである、ポリウレタン水分散体。」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2、3及び14も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「上記ポリウレタン(C)の架橋度」とあるのを、「上記ポリウレタン(C)の下記式(1)により求められる架橋度」に訂正し、さらに式(1)として「式(1):
[図:0001405772000001.jpg]
式(1)において、MWAj、FAjおよびWAjは上記ポリイソシアネート(a)の分子量、官能基数および質量(g)をそれぞれ表し(但しjは1以上の整数)、MWBK、FBKおよびWBKは上記ポリオール(b)の分子量、官能基数および質量(g)をそれぞれ表し(但しkは1以上の整数)、MWCm、FCmおよびWCmは上記親水性基を有するポリオール(c)の分子量、官能基数および質量(g)をそれぞれ表し(但しmは1以上の整数)、MWDn、FDnおよびWDnは上記鎖伸長剤(B)の分子量、官能基数および質量(g)をそれぞれ表す(但しnは1以上の整数)。」を請求項1に追加する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2、3及び14も同様に訂正する)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に「上記ポリウレタン(C)のウレア結合量」とあるのを、「上記ポリウレタン(C)の下記式(2)により求められるウレア結合量」に訂正し、さらに式(2)として「式(2):
ウレア結合量(mol/kg)={(WA1/MWA1×FA1+WA2/MWA2×FA2+…+WAj/MWAj×FAj)-(WB1/MWB1×FB1+WB2/MWB2×FB2+…+WBk/MWBk×FBk+WC1/MWC1×FC1+…+WCm/MWCm×FCm)}×10
式(2)において、MWAj、FAjおよびWAjは上記ポリイソシアネート(a)の分子量、官能基数および質量(g)をそれぞれ表し(但しjは1以上の整数)、MWBk、FBkおよびWBkは上記ポリオール(b)の分子量、官能基数および質量(g)をそれぞれ表し(但しkは1以上の整数)、MWCm、FCmおよびWCmは上記親水性基を有するポリオール(c)の分子量、官能基数および質量(g)をそれぞれ表し(但しmは1以上の整数)、但し、式(2)中のWAj、WBkおよびWCmは、上記ポリイソシアネート(a)、上記ポリオール(b)および上記親水性基を有するポリオール(c)の合計100質量部を100gとしたときの当該100gあたりのポリイソシアネート(a)、ポリオール(b)および親水性基を有するポリオール(c)の質量(g)をそれぞれ表す。」を請求項1に追加する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2、3及び14も同様に訂正する)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1に「ウレア結合量が0.5mo1/kg以下であり、」とあるのを、「ウレア結合量が0.lmol/kg以上0.25mol/kg以下であり、」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2、3及び14も同様に訂正する)。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項6を削除する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項7を削除する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項8を削除する。
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項9を削除する。
(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項10を削除する。
(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項11を削除する。
(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項12を削除する。
(14)訂正事項14
特許請求の範囲の請求項13を削除する。
(15)訂正事項15
特許請求の範囲の請求項14に「請求項1から請求項13までのいずれか一項」とあるのを、「請求項1から請求項3までのいずれか一項」に訂正する。
(16)訂正事項16
明細書の段落【0063】に「耐溶剤性及び耐傷つき性の点から0.04mo1/ g以上が好ましく、0.05mo1/g以上がより好ましい。一方0.12mol/g以下が好ましく、0.10mo1/g以下がより好ましい。」とあるのを、「耐溶剤性及び耐傷つき性の点から0.04mo1/kg以上が好ましく、0.05mo1/kg以上がより好ましい。一方0.12mol/kg以下が好ましく、0.l0mol/kg以下がより好ましい。」に訂正する。
(17)訂正事項17
明細書の段落【0064】に「を反応せしめて得られたポリウレタン(C)の1000分子量あたりの架橋度」とあるのを、「を反応せしめて得られたポリウレタン(C)の1000gあたりの架橋度」に訂正する。
(18)訂正事項18
明細書の段落【0067】に
「なお、下記の式において、j、k、mは、いずれも1以上の整数である。ウレア結合量(mo1/kg)={(WA1/MWA1×FA1+WA2/MWA2×FA2+…+WAj/MWBj×FAj)-(WB1/MWB1×FB1+WB2/MWB2×FB2+…+WBk/MWBk×FBk+WC1/MWC1×FC1+WCm/MWCm×FCm)}×10」とあるのを、
「なお、下記の式において、MWAj、FAjおよびWAjはポリイソシアネート(a)の分子量、官能基数および質量(g)をそれぞれ表し、MWBk、FBkおよびWBkは上記ポリオール(b)の分子量、官能基数および質量(g)をそれぞれ表し、MWCm、FCmおよびWCmは上記親水性基を有するポリオール(c)の分子量、官能基数および質量(g)をそれぞれ表す。j、k、mは、いずれも1以上の整数である。但し、下記の式中のWAj、WBkおよびWCmは、ポリイソシアネート(a)、ポリオール(b)および親水性基を有するポリオール(c)の合計100質量部を100gとしたときの当該100gあたりのポリイソシアネート(a)、ポリオール(b)および親水性基を有するポリオール(c)の量(g)をそれぞれ表す。ウレア結合量(mo1/kg)={(WA1/MWAl×FA1+WA2/MWA2×FA2+…+WAj/MWAj×FAj)-(WB1/MWB1×FB1+WB2/MWB2×FB2+…+WBk/MWBk×FBk+WC1/MWC1×FC1+…+WCm/MWCm×FCm)}×10」に訂正する。
(19)一群の請求項について
訂正前の請求項1~14について、請求項2~14は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、訂正事項1~4によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1~14に対応する訂正後の請求項1~14は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(20)明細書の訂正と関係する請求項について
訂正事項16~18は、請求項1に記載された「架橋度」及び「ウレア結合量」に関するものであり、訂正前の請求項1及び同項を直接又は間接的に引用する請求項2~14の全てについて行うものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合するものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、本件明細書の「鎖伸長剤(B)は…ジアミンやポリアミンが使用できる。」(【0058】)との記載を基に鎖伸長剤(B)を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、令和4年5月19日付け取消理由通知の理由1(明確性)の「1.「架橋度」について」に対応して、本件明細書の【0064】及び【0065】に記載されたポリウレタン(C)の架橋度(mol/kg)の式を基に、請求項1に記載の「架橋度」の定義を明らかにするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、令和4年5月19日付け取消理由通知の理由1(明確性)の「2.「ウレア結合量」について」に対応して、本件明細書の【0067】に記載されたポリウレタン(C)のウレア結合量(mol/kg)の式を基に、請求項1に記載の「ウレア結合量」の定義を明らかにするものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
そして、訂正事項3は、以下に述べるとおり、新規事項の追加に該当するものではない。
ア 式(2)における「+WC1/MWC1×FC1+…+WCm/MWCm×FCm)」について
本件明細書の【0067】のウレア結合量の式は、親水性基を有するポリオール(c)に関する「…+WC1/MWC1×FC1+WCm/MWCm×FCm)…」が、ポリイソシアネート(a)に関する「(WA1/MWA1×FA1+WA2/MWA2×FA2+…+WAj/MWBj×FAj)」、及び、ポリオール(b)に関する「(WB1/MWB1×FB1+WB2/MWB2×FB2+…+WBk/MWBk×FBk」と比べて、C1とCmの間の項が欠落しており、正しくは「+WC1/MWC1×FC1+…+WCm/MWCm×FCm)」であることは当業者に明らかである。
イ 式(2)における「WAj/MWBj×FAj」について
本件明細書の【0067】のウレア結合量の式中、「WAj/MWBj×FAj」は、他の項の規則性からみて、「WAj/MWAj×FAj」であることは明らかである。
ウ 式(2)におけるWAj、WBk及びWCmの定義について
上記式における「WAj/MWBj×FAj」、「WBk/MWBk×FBk」及び「WCm/MWCm×FCm」等の括弧「( )」内の各項は、ポリイソシアネート(a)、ポリオール(b)および親水性基を有するポリオール(c)として用いられる成分毎に、その質量に応じたイソシアネート基又は水酸基の量を表していることは当業者に自明な事項である。このことから、上記式は、ポリイソシアネート(a)のイソシアネート基の量と、ポリオール(b)及び親水性基を有するポリオール(c)の水酸基の量との差を求めていると解される。
そして、ポリイソシアネートのイソシアネート基とポリオールの水酸基が1:1で反応してウレタン結合を形成し、また、ポリイソシアネートのイソシアネート基とジアミン又はポリアミンのアミノ基が1:1で反応してウレア結合を形成することは、本件出願時の技術常識であり、本件発明1の原料から主としてウレタン結合及びウレア結合が形成されると解されるから、上記式は、ポリイソシアネート(a)のイソシアネート基の量と、ウレタン結合の形成に使われる水酸基の量との差を求め、ウレア結合の形成に使われるポリイソシアネートのイソシアネート基の量を算出していると解される。
また、上記式で求める値の単位はmol/kgであって、1kg当たりのウレア結合量のモル数であり、上記式は、成分(a)~(c)の事項により構成され、{ }内が10倍されていることから、{ }内は、成分(a)~(c)の合計100g当たりのウレア結合のモル数を表していると解するのが合理的である。
そうすると、上記式中のWAj、WBk及びWCmが、それぞれ、成分(a)~(c)の合計100g当たりの各質量を表すことは、本件明細書の記載から、本件特許の出願時の技術常識を参酌することにより、当業者にとって自明な事項である。
エ 小括
したがって、訂正事項3は、本件明細書及び特許請求の範囲の記載を総合することにより導き出される技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、新規事項の追加に該当しない。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、請求項4及び本件明細書の【0066】を基に、請求項1に記載の「ポリウレタン(C)のウレア結合量」の範囲を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(5)訂正事項5~14について
訂正事項5~14は、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(6)訂正事項15について
訂正事項15は、訂正事項5~14による請求項の削除に伴い、請求項14が引用する請求項を削除又は整理するものであるから、特許請求の範囲の減縮又は明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(7)訂正事項16について
訂正事項16は、本件明細書の【0063】に記載の「mol/g」を、請求項1等に記載の「架橋度(mol/kg)」の単位に整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(8)訂正事項17について
訂正事項17は、本件明細書の【0064】に記載の「ポリウレタン(C)の1000分子量あたりの架橋度」を、請求項1の「ポリウレタン(C)の架橋度が、0.03mol/kg以上0.15mol/kg以下」との記載や、本件明細書の【0065】の架橋度の式において、分母のWA1等の単位がgであり、しかも「×1000」を乗じていることを基に、ポリウレタン(C)1000gあたりの架橋度であることを明らかにするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。そして、訂正事項17は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(9)訂正事項18について
訂正事項18は、訂正前の本件明細書【0067】のウレア結合量の式中、親水性基を有するポリオール(c)に関する「+WC1/MWC1×FC1+WCm/MWCm×FCm」の部分が、ポリイソシアネート(a)及びポリオール(b)に関する項との関係からみて明瞭でなく、同じく「WAj/MWBj×FAj」が、式中の他の項の規則性からみて明瞭でなく、同じくWAj、WBk及びWCmの定義が明瞭でなかったものを、訂正後の式及び記号の説明のとおりに明瞭にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、上記(3)で訂正事項3について述べたのと同じ理由により、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
3 申立人の主張について
(1)申立人は、令和4年11月29日提出の意見書において、訂正事項3について、概略、以下の主張をする。
[主張1]請求項1に、「式(2)」(当審注:式の表示は省略する。)及び「式(2)中のWAj、WBkおよびWCmは、上記ポリイソシアネート(a)、上記ポリオール(b)および上記親水性基を有するポリオール(c)の合計100質量部を100gとしたときの当該100gあたりのポリイソシアネート(a)、ポリオール(b)および親水性基を有するポリオール(c)の質量(g)をそれぞれ表す。」を加える訂正は、新規事項の追加に該当する。
[主張2] 訂正前の「ポリウレタン(C)」の「ウレア結合量」が、式(2)により算出される値であったと解釈することが当然であるとはいえないし、また、訂正後の「ウレア結合量」は、原料である上記(a)~(c)の使用量の合計質量1kg当たりのウレア結合のモル数と解釈でき、ポリウレタン(C)の質量を基準とした値ではないから、訂正の前後で「ウレア結合量」の技術的範囲が異なり、実質上特許請求の範囲を変更するものである。
(2)申立人の上記主張について検討する。
ア 主張1について
訂正事項3において、式(2)中のWAj、WBkおよびWCmの内容を定義する訂正は、上記2(3)のア~エに述べたとおり、本件明細書及び特許請求の範囲の記載を総合することにより導き出される技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、新規事項の追加に該当しないものである。
イ 主張2について
「ウレア結合量(mol/kg)」に関して、本件明細書の【0067】には、式(2)によって求めることができる旨が記載されており、本件明細書には、他に「ウレア結合量(mol/kg)」の求め方について具体的な記載がないから、本件発明における「ウレア結合量(mol/kg)」は上記式によって求められる値であると解するのが合理的である。
そうすると、訂正事項3は、訂正前の請求項1における「ウレア結合量(mol/kg)」について、本件明細書中で定義されていた式(2)による求め方を明示的に記載したにすぎず、本件訂正の前後で「ウレア結合量(mol/kg)」の技術的意味は何ら変わっておらず、実質上特許請求の範囲を変更するものではない。
(3)したがって、申立人の上記主張を採用することはできない。
4 訂正の適否についての判断のむすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、令和5年5月15日に提出された訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、本件訂正後の請求項1~14について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1~14に係る発明は、訂正された特許請求の範囲の請求項1~14に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】ポリイソシアネート(a)、ポリオール(b)、および親水性基を有するポリオール(c)を反応させて得られるウレタンプレポリマー(A)と鎖伸長剤(B)とを反応させて得られるポリウレタン(C)が水に分散されてなるポリウレタン水分散体であって、上記ウレタンプレポリマー(A)の重量平均分子量が2,000以上30,000以下であり、上記ポリウレタン(C)の下記式(1)により求められる架橋度が、0.03mol/kg以上0.15mol/kg以下であり、上記ポリウレタン(C)の下記式(2)により求められるウレア結合量が0.1mol/kg以上0.25mol/kg以下であり、上記ポリイソシアネート(a)は、脂環族ポリイソシアネートを含み、上記鎖伸長剤(B)は、ジアミンおよび /またはポリアミンである、ポリウレタン水分散体。続きを表示(全37行)式(1):【数1】[図:0001405772000002.jpg]式(1)において、MWAj、FAjおよびWAjは上記ポリイソシアネート(a)の分子量、官能基数および質量(g)をそれぞれ表し(但しjは1以上の整数)、MWBk、FBkおよびWBkは上記ポリオール(b)の分子量、官能基数および質量(g)をそれぞれ表し(但しkは1以上の整数)、MWCm、FCmおよびWCmは上記親水性基を有するポリオール(c)の分子量、官能基数および質量(g)をそれぞれ表し、(但しmは1以上の整数)、MWDn,FDnおよびWDnは上記鎖伸長剤(B)の分子量、官能基数および質量(g)をそれぞれ表す(但しnは1以上の整数)。式(2):ウレア結合量(mol/kg)={(WA1/MWA1×FA1+WA2/MWA2×FA2+…+WAj/MWAj×FAj)-(WB1/MWB1×FB1+WB2/MWB2×FB2+…+WBk/MWBk×FBk+WC1/MWC1×FC1+…+WCm/MWCm×FCm)}×10式(2)において、MWAj、FAjおよびWAjは上記ポリイソシアネート(a)の分子量、官能基数および質量(g)をそれぞれ表し(但しjは1以上の整数)、MWBk、FBkおよびWBkは上記ポリオール(b)の分子量、官能基数および質量(g)をそれぞれ表し(但しkは1以上の整数)、MWCm、FCmおよびWCmは上記親水性基を有するポリオール(c)の分子量、官能基数および質量(g)をそれぞれ表し(但しmは1以上の整数)、但し、式(2)中のWAj、WBkおよびWCmは、上記ポリイソシアネート(a)、上記ポリオール(b)および上記親水性基を有するポリオール(c)の合計100質量部を100gとしたときの当該100gあたりのポリイソシアネート(a)、ポリオール(b)および親水性基を有するポリオール(c)の質量(g)をそれぞれ表す。【請求項2】請求項1に記載のポリウレタン水分散体において、上記ウレタンプレポリマー(A)の重量平均分子量は、5,000以上15,000以下であることを特徴とする、ポリウレタン水分散体。【請求項3】請求項1または請求項2に記載のポリウレタン水分散体において、上記ポリウレタン(C)の架橋度は、0.05mol/kg以上0.10mol/kg以下であることを特徴とする、ポリウレタン水分散体。【請求項4】(削除)【請求項5】(削除)【請求項6】(削除)【請求項7】(削除)【請求項8】(削除)【請求項9】(削除)【請求項10】(削除)【請求項11】(削除)【請求項12】(削除)【請求項13】(削除)【請求項14】請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のポリウレタン水分散体を含有することを特徴とするコーティング剤。」
第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由及び当審が通知した取消理由
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1 申立書に記載した申立ての理由
本件特許の請求項1~14に係る特許は、下記(1)~(5)の理由により、特許法第113条第2号又は第4号に該当し取り消されるべきものである。証拠方法として、下記(6)の甲第1号証~甲第5号証を提出する。
(1)申立理由1(甲第1~4号証のいずれかを主引用文献とする新規性)
本件訂正前の請求項1~14に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲第1~4号証のいずれかに記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではないから、本件特許の請求項1~14に係る発明についての特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。
(2)申立理由2(甲第1~4号証のいずれかを主引用文献とする進歩性)
本件訂正前の請求項1~14に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲第1~4号証のいずれかに記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反し、本件特許の請求項1~14に係る発明についての特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。
(3)申立理由3(実施可能要件)
本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~14に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
その具体的理由は、概ね次のとおりである。
請求項1には「ウレタンプレポリマー(A)の重量平均分子量が2,000以上30,000以下」と記載されているが、本件明細書には、その重量平均分子量の調整方法が記載されていないから、発明の詳細な説明は、当業者がその実施をできる程度に明確かつ十分に記載されていない。(申立書27頁6~21行)
(4)申立理由4(サポート要件)
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~14の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、下記の点で発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないから、特許法第36条第6項第1号に適合するものでなく、請求項1~14に係る発明の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。
その具体的理由は、概ね次のとおりである。
ア 乳化を経てポリウレタン(C)を製造する場合、乳化前のウレタンプレポリマー(A)のイソシアネート基が全てウレア結合になるわけではないから、式(2)で算出されたウレア結合量と、実際に製造されたポリウレタン(C)のウレア結合量は一致しないはずであり、本件明細書には、ポリウレタン(C)のウレア結合量が0.5mol/kg以下であれば、課題を解決できると当業者が認識できる程度に具体例又は説明が記載されていない。(申立書25頁13行~26頁10行)
イ 請求項8では「ポリウレタン(C)の酸価は、10mgKOH/g以上45mgKOH/g以下である」と特定されているが、本件明細書の実施例は酸価に関する記載がなく、本件明細書には、請求項8に係る発明が課題を解決できると当業者が認識できる程度に具体例又は説明が記載されていない。(申立書26頁11行~下1行)
(5)申立理由5(明確性)
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~14の記載は、同各項に記載された発明が明確でないから、特許法第36条第6項第2号に適合するものでなく、請求項1~14に係る発明の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。
その具体的理由は、概ね次のとおりである。
ア 本件発明1の「ポリウレタン(C)の架橋度(mol/kg)」に関して、本件明細書の【0064】及び【0065】に記載された式(以下「式(1)」という。)を計算しても「mol/kg」という単位の数値は算出されないし、MWAj、MWBk、MWCm及びMWDnをモル質量(mol/g)と解釈しても、種類毎の質量及びモル質量を把握することは困難であるから「架橋度」を明確に把握できず、「ポリウレタン(C)の架橋度(mol/kg)」とはどのような数値を意味しているのか当業者は理解できない。(申立書の20頁下3行~22頁14行)
イ 本件発明1の「ポリウレタン(C)のウレア結合量(mol/kg)」に関して、本件明細書の【0067】に記載された式(以下「式(2)」という。)を計算しても「mol/kg」という単位の数値は算出されないし、MWAj、MWBk及びMWCmをモル質量(mol/g)と解釈しても、種類毎の質量及びモル質量を把握することは困難であるから「ウレア結合量」を明確に把握できない。また、式(2)には、WC2~WCm-1、MWC2~MWCm-1及びFC2~FCm-1の記載がなく、親水性基を有するポリオール(c)が3種類以上ある場合、式(2)を計算できないし、式(2)に従えば、「ポリウレタン(C)のウレア結合量(mol/kg)」の数値は、原料の使用量(質量)により増減する数値となる。更に、ウレタンプレポリマーを乳化すると、イソシアネート基の一部は乳化時の媒体である水と反応することは技術常識であり、実際に製造されたポリウレタンのウレア結合量と、式(2)から算出されるウレア結合量との間にずれが生じる。
これらのことから、本件発明1の「ポリウレタン(C)のウレア結合量(mol/kg)」とはどのような数値を意味しているのか当業者は理解できない。(申立書22頁15行~24頁12行)
(6)申立人が提示した証拠方法
ア 申立書に添付した証拠方法
(以下、甲第1号証~甲第5号証を、順に「甲1」等という。)
イ 令和4年11月29日提出の意見書に添付した証拠方法
(7)特許権者が令和4年7月20日付け意見書に添付して提示した証拠方法
2 当審が通知した取消理由
(1)令和4年5月19日付け取消理由通知の理由
取消理由1(明確性)
本件特許の請求項1~14は、記載不備であり、各請求項に係る発明につき明確でないから、特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、同項(柱書)に規定する要件を満たしていないものであって、各請求項に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
具体的理由は、概ね次のとおりである。
ア 本件発明1における「ポリウレタン(C)の架橋度」に関して、式(1)で得られる値の単位は「mol/kg」とならないし、「架橋度」が架橋構造の存在度合いを表すとしても、式(1)により架橋構造の存在量を算出できないから、本件発明1の「ポリウレタン(C)の架橋度が、0.03mol/kg以上0.15mol/kg」は技術的に意味が不明である。
イ 本件発明1における「ウレア結合量」に関して、本件明細書に記載の式(2)の「WAj/MWBj×FAj」及び「…FC1+WCm×/MWCm…」の部分は誤記と解されるし、式(2)で算出される値とポリウレタン(C)のウレア結合量との対応関係が不明であるし、さらに、式(2)により求められる値の単位は「mol/kg」にならないから、「ポリウレタン(C)のウレア結合量が0.5mol/kg」は技術的に意味が不明である。
(2)令和5年3月31日付け取消理由通知(決定の予告)の理由
取消理由2(甲1~甲4のいずれかを主引用文献とする新規性)
本件訂正前の請求項1~3、5~14に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲1~甲4のいずれかに記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではないから、本件特許の請求項1~3、5~14に係る発明についての特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(甲1に基づく理由:請求項1~3、5~14
第5 当審の判断
1 本件発明4~13に係る特許に対する申立ての却下
第2及び第3で示したとおり、本件特許の請求項4~13は本件訂正により削除され、この特許に対する申立ては、申立ての対象を欠くこととなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により決定をもって却下すべきものである。
2 取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由2(新規性)について
申立理由1(新規性)及び申立理由2(進歩性)は、取消理由2(新規性)と同じく、甲1~甲4を主引用文献とする理由であるから、これらを併せて検討する。
(1)甲1に基づく新規性及び進歩性について
ア 甲1に記載された事項及び甲1に記載された発明
(ア)甲1に記載された事項
甲1には、次の記載がある。
「【請求項1】樹脂酸価が2~20mgKOH/gであるウレタン樹脂水分散体(A)、水酸基含有樹脂(B)、及び架橋剤(C)を含有する水性中塗塗料であって、かつ該水性中塗塗料を水で希釈してフォードカップNo.4で50秒(20℃)に調整した水性中塗塗料のチクソトロピックインデックスが1.6~3.0の範囲にあり、該ウレタン樹脂水分散体(A)が、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート(a)、ビスフェノールA骨格又は水添ビスフェノールA骨格を含むアルキレンオキシド付加物であるポリエーテルポリオール(b1)、ジカルボン酸と低分子ジオールとの重縮合物であるポリエステルポリオール(b2)、少なくとも1個のカルボキシル基と少なくとも2個の水酸基を有する化合物(b3)及び必要に応じて、その他のポリオール(b4)を含む1分子中に少なくとも2個の水酸基を有するポリオール(b)を反応させてなるウレタンプレポリマーを中和剤(c)にて中和し、水性媒体中に安定に分散させてなることを特徴とする自動車用水性中塗塗料。」
「【発明の効果】【0009】本発明の自動車用水性中塗塗料は、樹脂酸価が2~20mgKOH/gの特定組成のウレタン樹脂水分散体(A)を含有する塗料であり、タレ発生、特に、ドアの鍵穴部や内板部のネジ部のタレ発生を抑制し、かつ一般面の仕上り性を確保して、さらに耐チッピング性に優れる複層塗膜を得ることができる。さらに、ウレタン樹脂水分散体(A)は、水希釈により固形分を45重量%以上で測定した粘度が200~3,000mPa・s(20℃)であることが好ましい。本発明においては、ウレタン樹脂水分散体(A)の添加によって、20℃にて、回転数6rpm及び60rpmの条件下に測定された塗装時における水性中塗塗料のチクソトロピックインデックスを1.6~3.0の範囲とすることによって、従来の塗膜に比べて粘度アップが図れたものである。続きを表示(全54行)【発明を実施するための最良の形態】【0010】本発明の自動車用水性中塗塗料は、樹脂成分の固形分合計に対して、特定組成のウレタン樹脂水分散体(A)を含有する。以下、自動車用水性中塗塗料について詳細に説明する。ウレタン樹脂水分散体(A):本発明のウレタン樹脂水分散体(A)は、ポリイソシアネート(a)、ポリエーテルポリオール(b1)、ポリエステルポリオール(b2)、化合物(b3)、及び必要に応じて、その他のポリオール(b4)を反応させてなる。中和剤(c)の量は、該ウレタンプレポリマーにおけるカルボキシル基のモル数に対して40%~120%であることが好適である。本発明のウレタン樹脂水分散体(A)は、ウレタンプレポリマーを中和剤(c)にて中和し、水性媒体中に安定に分散させてなるものである。上記ウレタンプレポリマーはイソシアネート末端を有することが好適である。さらに、ウレタン樹脂水分散体(A)は、固形分が45重量%以上であり、粘度(注)が200~3,000mPa・s(20℃)であることが好ましい。(注)粘度:粘度は、ウレタン樹脂水分散体(A)を水希釈にて固形分45重量%に調整し、20℃にて、B型粘度計(東京計器(株)製、B型粘度計、形式BM)を用いて測定した。【0011】ポリイソシアネート(a):ポリイソシアネート(a)としては、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物であって、例えば、芳香族イソシアネート(トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート等)、脂肪族イソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等)、脂環族イソシアネート(1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4′-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)等)、芳香環を有する脂肪族イソシアネート(キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等)、上記ジイソシアネートのウレタン化、カルボジイミド、ウレトジオン、ビュレット、イソシアヌレート変性物が使用できる。【0012】これらのポリイソシアネートの中で好ましいものは、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4′-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)である。特に好ましいポリイソシアネートは、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、4,4′-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)が挙げられる。【0013】ポリオール(b):ポリオール(b)としては、ビスフェノールA骨格又は水添ビスフェノールA骨格を含むアルキレンオキシド付加物のポリエーテルポリオール(b1)、ジカルボン酸(例えば、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、オルソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸)と低分子量ジオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3メチル1,5-ペンタンジオール、シクロヘキサンジメタノール等)と重縮合させたポリエステルポリオール(b2)、及びヒドロキシアルカン酸(例えば、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロールペンタン酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロール吉草酸等)の少なくとも1個のカルボキシル基と少なくとも2個の水酸基を有する化合物(b3)を必須成分として含有し、さらに必要に応じて、その他のポリオール(b4)を含有することができる。また、ポリエステルポリオール(b2)は、その構成成分として、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、オルソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸を少なくとも1種類以上用いることが、化合物(b3)は、ウレタン樹脂に2~20mgKOH/g、好ましくは2~15mgKOH/gの樹脂酸価を付与するために、2,2-ジメチロールプロピオン酸を用いることが好ましい。【0014】適宜に配合される、その他のポリオール(b4)としては、アルキレンオキシド(エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなど、環状エーテル(テトラハイドロフラン等)を開環(共)重合して得られる化合物、トリメチロールプロパン、グリセリン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどの多価アルコールを出発原料としてそれにアルキレンオキシドを付加重合させた化合物等;他に、分子中の繰り返し単位としてエーテル結合を有し、かつ1分子中に2個以上の水酸基を有するポリエーテルポリオール;ε-カプロラクトンモノマーをエチレングリコールなどのジオールを開始剤として開環重縮合させて得られるポリカプロラクトンジオール等;分子中の繰り返し単位としてエステル結合を有し、かつ1分子中に2個以上の水酸基を有するポリエステルポリオールを使用することができる。【0015】さらに、その他のポリオール(b4)として、ブタジエン、イソプレンなどを繰り返し単位とする共役ジエン系ポリオール、低分子ジオールとジアルキルカーボネートとの重縮合させたカーボネート系ポリオール、水酸基含有ポリオレフィン、等も使用することができる。【0016】上記のポリオール(b)は、数平均分子量(注1)60~6,000、好ましくは300~4,000の化合物である。またポリエーテルポリオール(b1)、ポリエステルポリオール(b2)、化合物(b3)、及びその他のポリオール(b4)の含有量は、ポリエーテルポリオール(b1)とポリエステルポリオール(b2)と化合物(b3)、及びその他のポリオール(b4)の固形分合計に対して、ポリエーテルポリオール(b1)が25~35重量%、好ましくは27~31重量%、ポリエステルポリオール(b2)が55~73重量%、好ましくは65~70重量%、化合物(b3)が0.6~7重量%、好ましくは1~3重量%、その他のポリオール(b4)が0~10重量%、好ましくは0~3重量%の範囲がよい。また重量比で、ポリエーテルポリオール(b1)/ポリエステルポリオール(b2)=1/4~2/1の範囲にあることが好ましい。【0017】(注1)数平均分子量:JIS K0124-83に準じて行ない、分離カラムにTSK GEL4000HXL+G3000HXL+G2500HXL+G2000HXL(東ソー株式会社製)を用いて40℃で流速1.0ml/分、溶離液にGPC用テトラヒドロフランを用いて、RI屈折計で得られたクロマトグラムとポリスチレンの検量線から計算により求めた。【0018】中和剤(c):中和剤(c)は、トリエチルアミンなどのトリアルキルアミン類、メチルジエタノールアミンなどの3級アルカノールアミン類、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物などが好適に使用できる。これらの中和剤(c)の中で特に好適には、トリエチルアミン、メチルジエタノールアミンが挙げられる。中和剤(c)の使用量としては、ポリイソシアネート(a)、及びポリオール(b)、を反応してなるウレタンプレポリマーにおけるカルボキシル基のモル数に対して、中和剤(c)のモル数が40%~120%、好ましくは40%~100%がよい。なおウレタン樹脂水分散体(A)には、下記に述べる界面活性剤(d)を含有していることが乳化や水分散性の向上のために好ましい。【0019】界面活性剤(d):ウレタン樹脂水分散体(A)の製造に用いる界面活性剤(d)は、アニオン性の界面活性剤、非イオン性の界面活性剤が好適に使用できる。具体的には、高級アルコール系のアルキレンオキシド付加物の界面活性剤が挙げられる。ウレタン樹脂水分散体(A)は、ポリイソシアネート(a)、及びポリオー(b)を反応せしめ、中和剤(c)と界面活性剤(d)を加えた後、水中に乳化分散することによって得ることができる。製造にあたって配合量としては、ポリイソシアネート(a)、ポリオール(b)、中和剤(c)と界面活性剤(d)の固形分合計量に対して、ポリイソシアネート(a)は20~40重量%、ポリオール(b)は60~80重量%、界面活性剤(d)は0~4重量%の範囲が好ましい。なお、界面活性剤(d)の添加量は、少量の方が塗膜性能(耐水性など)には好ましい。【0020】さらに必要ならば、鎖伸長剤(e)として、分子量300未満の低分子量ポリオール、低分子量ポリアミン、ジヒドラジド化合物を併用することも可能である。低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3メチル1,5-ペンタンジオール、シクロヘキサンジメタノール等の2官能低分子量ポリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多官能低分子量ポリオールを挙げることが出来る。低分子量ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンペンタミン、トリメチレンジアミン、ジプロピレンントリアミン、ピペラジン、ヒドロキシアミノプロピルアミンを挙げることができる。ジヒドラジド化合物としては、例えば、ヒドラジン、アジビン酸ジヒドラジドなどを挙げることができる。このような鎖伸長剤(e)の添加量としては、ウレタン樹脂水分散体(A)を構成する成分の固形分合計に対して、0.1~2重量%の範囲が好ましい。【0021】本発明におけるウレタン樹脂水分散体(A)の製造方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、分子内に活性水素基を含まない有機溶剤の存在下又は非存在下で、ポリイソシアネート(a)、ポリエーテルポリオール(b1)、ポリエステルポリオール(b2)、化合物(b3)と、適宜にその他のポリオール(b4)を加え、さらに反応促進のため通常のウレタン化反応に用いられるアミン系、或いは錫系の触媒を使用し、通常、20℃~150℃、好ましくは50℃~120℃の温度でウレタン化反応せしめ、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得る。【0022】次に、得られたウレタンプレポリマーに、中和剤(c)、界面活性剤(d)を加えた後、水中に乳化し、分散させて、水又は鎖伸長剤(e)によって、ウレタンプレポリマー中に存在するイソシアネート基を反応させ、分子量の増大や内部架橋反応を進行させて高分子量のウレタン樹脂水分散体(A)を得ることができる。本発明に使用するウレタン樹脂の数平均分子量(注1参照)は、塗膜の耐チッピング性、塗面平滑性などの観点から、2,000~5,000,000、好ましくは10,000~3,000,000であり、更に好ましくは30,000~1,000,000である。【0023】ウレタン樹脂水分散体(A)の平均粒子径(注2)は、0.02~0.4μm、好ましくは0.08~0.3μmである。平均粒子径が0.4μmを越えると塗料安定性や塗膜の仕上り性を損なうので好ましくない。一方、平均粒子径(注2)が0.02μm未満の場合は、該ウレタン樹脂の水分散体(A)の粘度が高くなり、固形分45重量%以上で且つ20℃において200~3,000mPa・sを達成できない。(注2)平均粒子径:平均粒子径は、光散乱法(マイクロトラックUPA粒度分析計、Model No.9340;日機装(株)製)を用いて測定した。上記の平均粒子径の範囲を達成するためには、ウレタン樹脂の樹脂酸価として2~20mgKOH/g、好ましくは2~15mgKOH/g、さらに好ましくは5~12mgKOH/gである。このようにして固形分45重量%以上で、且つ粘度200~3,000mPa・s(20℃)のウレタン樹脂水分散体(A)を得ることができる。【0024】ウレタン樹脂水分散体(A)の固形分が45重量%以上でかつ粘度200~3,000mPa・s(20℃)を外れると、ウレタン樹脂水分散体(A)を塗料中に配合した際に、塗膜のタレ抑制と一般面の仕上り性の両立を図ることは困難となる場合がある。上記のウレタン樹脂水分散体(A)の添加量は、自動車用水性中塗塗料を構成する樹脂成分の固形分合計量に対して、固形分で0.1~70重量%、好ましくは10~50重量%がよい。添加量が0.1重量%未満では塗膜のタレ性の向上に効果がなく、また70重量%を越えてもタレ性の向上への効果が少ないばかりか、仕上り性を損なうので好ましくない。」
「【0057】製造例2ウレタン樹脂水分散体No.2の製造メチルエチルケトンを反応溶媒として、テスラック2477(注6) 44.72部、BPX-33 (注12)28.46部、ジメチロールプロピオン酸 2.439部、VESTANAT IPDI(注15) 24.39部をジブチルチンジラウレートを触媒として70℃で反応させ、ウレタンプレポリマーを合成した。そのウレタンプレポリマーの遊離イソシアネート基は1.28%であった。続きを表示(全19行)次に、トリエチルアミン 1.94部を加えることにより中和を行ない、界面活性剤としてエマルゲン147(注17)を2.0部加えて均一化した後、ホモミキサーを用いて高速攪拌しながら蒸留水120部を添加して乳化を行った。次に、ジエチレントリアミンを0.819部を蒸留水10部に溶解したアミン水溶液を添加して遊離イソシアネート基と30℃で反応させた。次に、エバポレーターを用いて反応溶媒であるメチルエチルケトンを減圧回収することにより、固形分50.5重量%、粘度450mPa・s、pH8.4、粒子径0.25μmのウレタン樹脂水分散体No.2を得た。なお製造例2におけるウレタン樹脂の樹脂酸価は10mgKOH/gであった。【0058】・・・製造例4 ウレタン樹脂水分散体No.4の製造表1に示す原材料、仕込量とする以外は、製造例2に示す条件で反応を行って、ウレタン樹脂水分散体No.4を得た。・・・表1に、製造例1~製造例8の原材料、及び仕込量を示す。表2に、ウレタン樹脂水分散体No.1~No.8の性状を示す。【0060】【表1】[図:0001405772000003.jpg]【0061】・・(中略)・・(注8)ポリライトOD-X-2044:大日本インキ化学工業、商品名、ポリエステル樹脂(アジピン酸/ネオペンチルグリコール)、数平均分子量2,000、水酸基価56mgKOH/g・・(中略)・・(注15)VESTANI IPDI:イソホロンジイソシアネート・・(後略)」
「比較例1~8表2の配合内容で、比較例1~8の水性中塗塗料No.6~No.13を得た。【0070】【表4】[図:0001405772000004.jpg]」
(イ)甲1に記載された発明
甲1には、製造例4のウレタン樹脂水分散体No.4に着目して、次の発明が記載されているといえる。
「メチルエチルケトンを反応溶媒として、ポリライトOD-X-2044 48.08部、1,6-ヘキサンジオール9.62部、ジメチロールプロピオン酸5.77部、VESTANAT IPDI 36.54部をジブチルチンジラウレートを触媒として70℃で反応させ、ウレタンプレポリマーを合成し、次に、トリエチルアミン4.35部を加えることにより中和を行ない、界面活性剤としてエマルゲン147を2.0部加えて均一化した後、ホモミキサーを用いて高速攪拌しながら蒸留水120部を添加して乳化を行って、次に、ジエチレントリアミン0.89部を蒸留水10部に溶解したアミン水溶液を添加して遊離イソシアネート基と30℃で反応させた後、エバポレーターを用いて反応溶媒であるメチルエチルケトンを減圧回収することにより得られたウレタン樹脂水分散体。」(以下「甲1発明」という。)
イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明における「VESTANI IPDI」(イソホロンジイソシアネート)は、本件明細書の【0028】に例示された「ポリイソシアネート(a)」であるから、本件発明1の「ポリイソシアネート(a)」である「脂環族ポリイソシアネート」に相当する。
甲1発明の「ジメチロールプロピオン酸」は、本件明細書の【0049】に例示された「親水性基を有するポリオール(c)であるから、本件発明1の「親水性基を有するポリオール(c)」に相当する。
甲1発明における「ポリライトOD-X-2044」及び「1,6-ヘキサンジオール」はいずれも本件発明1における「ポリオール(b)」に相当するから、これらを反応させてなる甲1発明における「ウレタンプレポリマー」は、本件発明1における「ポリイソシアネート(a)、ポリオール(b)、および親水性基を有するポリオール(c)を反応させて得られるウレタンプレポリマー(A)」に相当する。
甲1発明の「ジエチレントリアミン」は、本件明細書の【0058】に例示された「鎖伸長剤(B)」であるから、本件発明1の「鎖伸長剤(B)」に相当する。
そして、甲1発明の「ウレタン樹脂水分散体」は、「ウレタンプレポリマー」の遊離イソシアネート基と「ジエチレントリアミン」を反応させて、ウレタン樹脂水分散体No.4を得ているから、甲1発明の「ウレタン樹脂水分散体No.4」は、本件発明1の「ウレタンプレポリマー(A)と鎖伸長剤(B)とを反応させて得られるポリウレタン(C)が水に分散されてなるポリウレタン水分散体」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「ポリイソシアネート(a)、ポリオール(b)、および親水性基を有するポリオール(c)を反応させて得られるウレタンプレポリマー(A)と鎖伸長剤(B)とを反応させて得られるポリウレタン(C)が水に分散されてなるポリウレタン水分散体であって、上記ポリイソシアネート(a)は、脂環族ポリイソシアネートを含み、上記鎖伸長剤(B)は、ポリアミンである、ポリウレタン水分散体。」
で一致し、以下の点で相違する。
(イ)検討
事案に鑑みて、相違点1cから検討する。
甲1発明では、IPDI、ポリライトOD-X-2044(数平均分子量2000で水酸基価が56mgKOH/gであるからジオールである。)、1,6-ヘキサンジオール、及び、ジメチロールプロピオン酸の使用量は、それぞれ、36.54重量部、48.08重量部、9.62重量部、及び、5.77重量部であって、これらの合計が100重量部であるから、全量が100gであるとして、各成分の使用量(g)をそのまま式(2)に代入すると、ポリウレタン樹脂水分散剤のウレア結合量は約0.31mol/kgと算出され、本件発明1の「0.1mol/kg以上0.25mol/kg以下」の範囲外となる。
そうすると、相違点1cは実質的な相違点であり、本件発明1は、甲1に記載された発明でない。
次に、相違点1cに係る本件発明1の構成が容易想到であるかを検討する。
甲1発明は、上記ア(イ)で述べたように、甲1に記載された比較例相当のウレタン樹脂水分散体であり、甲1に記載された事項に基づいて、その構成が改変されることが動機付けられるものではない。
なお、甲1に記載された事項は、塗膜にタレ発生がなく、仕上がり性や耐チッピング性に優れる自動車用中塗塗料に関するものであり(【0009】)、自己修復性や耐傷付き性に優れる塗膜を得ることは記載も示唆もされていない。ウレタン樹脂水分散体の原料であるポリイソシアネート、ポリオール、鎖伸長剤等について記載されているが、ウレア結合量を0.1mol/kg以上0.25mol/kg以下とすることは記載も示唆もされていない。
そうすると、甲1発明において、相違点1cに係る本件発明1の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことではない。
(ウ)小括
したがって、相違点1cは実質的な相違点であり、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明でないし、甲1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(2)甲2に基づく新規性及び進歩性について
ア 甲2に記載された事項及び甲2に記載された発明
(ア)甲2に記載された事項
甲2には、次の記載がある。
「【0008】【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来技術の問題点を解決するために為されたものであり、本発明の目的は、耐水性、耐溶剤性、耐久性等に優れた皮膜を形成することができる、常温硬化型の一液性水系ポリウレタン樹脂組成物及び該組成物を含有する水性樹脂組成物を提供することである。」
「【0025】(合成例1…(A)成分の合成)1,6-ヘキサンジオールのカーボネート(ラベカーブ106、ミテックス株式会社製、水酸基価=56.1)300重量部、イソホロンジイソシアネート107.2重量部、及びメチルエチルケトン114重量部を添加し、70~75℃で90分間反応させた。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は5.10(%)であった。次に、系の温度を50℃とし、ジメチロールプロピオン酸18.1重量部、先に合成したカルボニル基含有活性水素化合物Xを39.5重量部、トリエチルアミン7.3重量部、及びメチルエチルケトン94.5重量部を添加し、70~75℃で180分間反応させた。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は1.20(%)であった。このプレポリマーを撹拌下において水で希釈した後、ジプロピレントリアミンを5.8重量部添加し、末端NCO基をアミン伸長し、遊離イソシアネート基(%)の消失を確認した後、メチルエチルケトンを留去することにより、純分35%の分子側鎖にケトン性カルボニル基を有する(A)成分のアニオン性ポリウレタンポリマー水溶液Iを得た(理論カルボニル当量は3490(g/mol))。・・(中略)・・続きを表示(全19行)【0028】・・(中略)・・(比較合成例3)1,6-ヘキサンジオールのカーボネート(ラベカーブ106、ミテックス株式会社製、水酸基価=56.1)300重量部、イソホロンジイソシアネート83.3重量部、及びメチルエチルケトン114重量部を添加し、70~75℃で90分間反応させた。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は4.90(%)であった。次に、系の温度を50℃とし、ジメチロールプロピオン酸20.1重量部、トリエチルアミン1.5重量部、及びメチルエチルケトン85.2重量部を添加し、70~75℃で60分間反応させた。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は1.60(%)であった。プレポリマーを35℃まで冷却し、希釈水を添加し、更にジプロピレントリアミン6.7重量部を溶解した水溶液を添加し、遊離イソシアネート基(%)の消失を確認した後、メチルエチルケトンを留去することにより、純分35%のウレタンポリマー水溶液iiiを得た。・・(中略)・・【0031】(比較例1~3)比較合成例1~3で得られたウレタンポリマー又はウレタンプレポリマーを表2に示す割合で配合し、常温硬化性の水性樹脂組成物を調製した。【0032】【表2】[図:0001405772000005.jpg]【0033】上記で調製した実施例1~8及び比較例1~3の水性樹脂組成物を用いて塗膜を形成し、以下に示す方法で、その耐水性、アセトン不溶解分、並びに強度及び伸度を評価した。その評価結果を表1及び表2にそれぞれ示した。【0034】その結果、実施例1~8の塗膜は耐水性に優れていたが、比較例1~3の塗膜は何れも白化が見られた。また、アセトン不溶解分については、実施例1~8の塗膜は何れも高い数値を示したが、比較例1及び比較例3の塗膜は低い数値となった。更に、塗膜の強度及び伸度についても、実施例1~8の塗膜は高い数値を示したが、比較例1及び比較例2の塗膜は低い数値となった。これらの結果を総合すれば、実施例1~8の水性樹脂組成物は、有機溶剤を含有するポリウレタン樹脂に代替が可能であると判断することができる。これに対して、比較例1~3は、耐水性、耐溶剤性又は耐久性の何れかの点において有機溶剤系のポリウレタン樹脂に劣っていることが分かる。」
(イ)甲2に記載された発明
甲2には、比較合成例3のウレタンプレポリマー水溶液、及びこれを用いた比較例3の水性樹脂組成物に着目して、次の発明が記載されているといえる。
「1,6-ヘキサンジオールのカーボネート(水酸基価=56.1)300重量部、イソホロンジイソシアネート83.3重量部、及びメチルエチルケトン114重量部を添加し、70~75℃で90分間反応させ、系の温度を50℃とし、ジメチロールプロピオン酸20.1重量部、トリエチルアミン1.5重量部、及びメチルエチルケトン85.2重量部を添加し、70~75℃で60分間反応させた遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)1.60(%)のプレポリマーを35℃まで冷却し、希釈水を添加し、更にジプロピレントリアミン6.7重量部を溶解した水溶液を添加し、遊離イソシアネート基(%)の消失を確認した後、メチルエチルケトンを留去することに得られた純分35%のウレタンポリマー水溶液。」(以下「甲2発明」という。)
イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「イソホロンジイソシアネート」及び「ジメチロールプロピオン酸」は、それぞれ、本件発明1の「ポリイソシアネート(a)」である「脂環族ポリイソシアネート」及び「親水性基を有するポリオール(c)」に相当し、甲2発明の「1,6-ヘキサンジオールのカーボネート(水酸基価=56.1)」は、本件発明1の「ポリオール(b)」に相当するから、これらを反応させてなる甲2発明における「プレポリマー」は、本件発明1における「ポリイソシアネート(a)、ポリオール(b)、および親水性基を有するポリオール(c)を反応させて得られるウレタンプレポリマー(A)」に相当する。
また、甲2発明の「ジプロピレントリアミン」は、「ウレタンプレポリマー」が有する遊離イソシアネート基と反応させてポリマー鎖の延長を図るものであり(甲2の【0025】)、ポリアミン化合物であるから、本件発明1の「鎖伸長剤(B)」である「ポリアミン」に相当する。
さらに、甲2発明の「ウレタンポリマー水溶液」は、「プレポリマー」に希釈水を添加し、更にジプロピレントリアミンを溶解した水溶液を添加し、遊離イソシアネート基の消失を確認した後、有機溶媒であるメチルエチルケトンを留去することに得られたものであるから、本件発明1の「ポリイソシアネート(a)、ポリオール(b)、および親水性基を有するポリオール(c)を反応させて得られるウレタンプレポリマー(A)と鎖伸長剤(B)とを反応させて得られるポリウレタン(C)が水に分散されてなるポリウレタン水分散体」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲2発明とは、
「ポリイソシアネート(a)、ポリオール(b)、および親水性基を有するポリオール(c)を反応させて得られるウレタンプレポリマー(A)と鎖伸長剤(B)とを反応させて得られるポリウレタン(C)が水に分散されてなるポリウレタン水分散体であって、上記ポリイソシアネート(a)は、脂環族ポリイソシアネートを含み、上記鎖伸長剤(B)は、ポリアミンである、ポリウレタン水分散体。」
で一致し、以下の点で相違する。
(イ)検討
事案に鑑みて、相違点2cから検討する。
甲2発明では、イソホロンジイソシアネート、1,6-ヘキサンジオールのカーボネート及びジメチロールプロピオン酸の使用量は、それぞれ、83.3重量部、300重量部及び20.1重量部であって、これらを合計100gであるとすると、それぞれ、20.65g、74.37g及び4.98gとなるから、これらを式(2)に代入すると、ウレタンポリマー水溶液のウレア結合量は、約0.37mol/kgと算出され、本件発明1の「0.1mol/kg以上0.25mol/kg以下」の範囲外となる。
そうすると、相違点2cは実質的な相違点である。
次に、相違点2cに係る本件発明1の構成が容易想到であるかを検討する。
甲2発明は、上記ア(イ)で述べたように、甲2に記載された比較例相当のウレタンポリマー水溶液であり、甲2に記載された事項に基づいて、その構成が改変されることが動機付けられるものではない。
なお、甲2に記載された事項は、耐水性、耐溶剤性、耐久性等に優れた皮膜を形成することができる水系ポリウレタン樹脂組成物に関するものであるが(【0008】)、自己修復性や耐傷付き性に優れる塗膜を得ることや、ポリウレタンのウレア結合量を0.1mol/kg以上0.25mol/kg以下とすることは記載も示唆もされていない。
そうすると、甲2発明において、相違点2cに係る本件発明1の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことではない。
(ウ)小括
したがって、相違点2cは実質的な相違点であり、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2に記載された発明でないし、甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)甲3に基づく新規性及び進歩性について
ア 甲3に記載された事項及び甲3に記載された発明
(ア)甲3に記載された事項
甲3には、次の記載がある。
「【請求項1】 ウレタンプレポリマー、塩形成剤及び鎖伸長剤を必須成分とする水系ポリウレタン樹脂であって、該水系ポリウレタン樹脂におけるカルボキシル基による酸価が固形分に対して13KOHmg/g以上であり、かつガラス転移点温度が20℃以上であり、前記ウレタンプレポリマーが、[A]平均分子量62~5,000であり、分子中に2個以上の水酸基を有するポリオール化合物、[B]分子中に2個以上のイソシアネート基を有する有機ポリイソシアネート及び[C]分子中に水酸基またはアミノ基とカルボキシル基を有する化合物(以下、化合物[C]という)からなり、かつ前記塩形成剤が前記化合物[C]に対応する塩形成剤である水系ポリウレタン樹脂を含有する和紙補強剤。」
「【0006】【発明が解決しようとする課題】そこで本発明の目的は、和紙へ含浸加工する事により乾燥紙力増強性及び湿潤紙力増強性に優れる和紙補強剤を提供することにあり、更にポリエステルフィルムとラミネート加工された樹脂加工極薄和紙とする事により湿潤時接着性に優れ、かつ連続印刷時の印字のにじみが発生しない耐刷性の優れた感熱孔版印刷機用マスター紙を提供する為の感熱孔版印刷機マスター紙用和紙補強剤を提供する事である。」
「【0011】[水系ポリウレタン樹脂]水系ポリウレタン樹脂としては前記のごとく、ウレタンプレポリマー、塩形成剤及び鎖伸長剤から調製される。【0012】(1) ウレタンプレポリマーウレタンプレポリマーとしては、下記化合物A、B及びCからなるものである。【0013】化合物[A]続きを表示(全14行)化合物[A]として使用される平均分子量62~5,000 で分子中に2個以上の水酸基を有するポリオール化合物としては、エチレングリコ-ル、ジエチレングリコ-ル、ブタンジオール、プロピレングリール、ポリプロピレングリコール、ヘキサンジオール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、水素添加ビスフェノールA,ジブロムビスフェノールA,3-メチル-1,5- ペンタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジヒドロキシエチルテレフタレート、ハイドロキノンジヒドロキシエチルエーテル、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール、それらのアルキレン誘導体又はそれら多価アルコール若しくはそのアルキレン誘導体と多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、若しくは多価カルボン酸エステルからのエステル化物やポリブチレンアジペート、ポリカーボネートポリオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリチオエーテルポリオ-ル、ポリアセタールポリオ-ル、ヒマシ油ポリオ-ル等のポリオ-ル化合物等が挙げられる。【0014】化合物Aの平均分子量が5000を越える場合、製造されたウレタンプレポリマーの粘度上昇が著しく好ましくない。【0015】化合物[B]本発明の化合物[B]は分子中に2個以上のイソシアネート基を有する有機ポリイソシアネートが用いられる。具体的な有機ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネ-ト、ジフェニルメタンジイソシアネ-ト、キシリレンジイソシアネ-ト、ナフチレンジイソシアネ-ト、イソホロンジイソシアネ-ト、ヘキサメチレンジイソシアネ-ト、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネ-ト、水素添加トルエンジイソシアネート、テトラメチレンキシリレンジイソシアネ-ト並びにこれらイソシアネ-ト類のビュレット化物やイソシアヌレート化物等の従来より慣用されている全ての芳香族、脂肪族、脂環族系のイソシアネ-ト類の単独もしくは混合物が挙げられる。【0016】化合物[C]本発明の化合物[C]は、分子中に水酸基またはアミノ基とカルボキシル基を有する化合物が用いられ、それは塩形成性のカルボキシル基を持つ化合物であり、例えばグリコール酸、リンゴ酸、グリシン、アミノ安息香酸、アラニン、ジメチロールプロピオン酸等のヒドロキシ酸、アミノカルボン酸、多価ヒドロキシ酸類や前記エステル化合物の合成段階で反応を途中で停止させたハーフエステル化合物等があるが、特にジメチロールプロピオン酸の使用が好ましい。【0017】(2)化合物[C]に対応する塩形成剤前記化合物[C]に対応する塩形成剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の1価の金属水酸化物やアンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルアミノエタノール等の三級アミン化合物が挙げられる。【0018】(3)鎖伸長剤本発明に使用される鎖伸長剤としては、アミノ基を2個以上有する化合物が用いられ、例えばエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、ヘキシレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イソホロンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、水素添加ジフェニルメタンジアミン等が挙げられる。また水も鎖伸長剤としての役割を果す。鎖延長剤の添加量は、化合物[A]、[B]及び[C]から得られるイソシアネート末端ウレタンプレポリマーのイソシアネート基に対して当量以下が好ましい。」
「【0034】【実施例】以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明は、それらの実施例に拘束されるものではない。合成例1~4及び比較合成例1~2表1に示すように、メチルエチルケトン溶媒中で分子中に2個以上の水酸基を有するポリオール化合物[A]、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する有機ポリイソシアネート[B]、分子中に水酸基またはアミノ基とカルボキシル基を有する化合物[C]とそれに対応する塩形成剤からイソシアネート末端ウレタンプレポリマー合成後、公知の方法で水中に乳化した後、水またはアミノ基を2個以上有する鎖伸長剤で鎖延長することにより得られた乳白色あるいは透明液状続きを表示(全16行)の各種水系ポリウレタン樹脂から減圧下でメチルエチルケトン溶媒を留去して各種無溶剤型水系ポリウレタン樹脂を製造した。【0035】【表1】[図:0001405772000006.jpg]【0036】尚、表1中の分子中に2個以上の水酸基を有する高分子ポリオール化合物は以下に示すものを使用した。又表1中の数字は重量部を示す。ビスフェノールAアルキレン誘導体:ビスフェノールAのエチレンオキサイド3モル付加物(平均分子量360)ポリテトラメチレングリコール:テトラハイドロフランの開環重合物(平均分子量2000)フタル酸系ポリエステル:3-メチル-1,5-ペンタンジオールとテレフタル酸からのポリエステル(平均分子量1000)ポリプロピレングリコール:1,4-ブタンジオールのプロピレンオキサイド33モル付加物(平均分子量2000)ポリブチレンアジペート:1,4-ブタンジオールとアジピン酸からのポリエステル(平均分子量1000)【0037】実施例1~7表2に示す割合にて、合成例1~4で得られた各種無溶剤型水系ポリウレタン樹脂又はそれに表2の架橋剤を配合したものを7%固形分となるように水で希釈後、マニラ麻から抄紙された和紙へ含浸後、マングル絞り(絞り圧2Kg/cm2)機を通過させた後、150℃雰囲気中で1分間強制乾燥して樹脂加工和紙を作成した。次に、ポリエステルフィルム上に溶剤型熱可塑系ポリウレタン樹脂を塗布した後、樹脂加工和紙と180℃で15秒間圧着する事により感熱孔版印刷機マスター紙を作成した。得られた樹脂加工和紙、感熱孔版印刷機マスター紙に関し、下記項目別の諸性能を比較確認した。その結果を表2に併せて示す。」
(イ)甲3に記載された発明
甲3には、合成例2に着目すると、次の発明が記載されているといえる。
「メチルエチルケトン溶媒中で3-メチル-1,5-ペンタンジオールとテレフタル酸からのポリエステル(平均分子量1000)100重量部、3-メチル-1,5-ペンタンジオール20重量部及びトリメチロールプロパン3重量部を含む分子中に2個以上の水酸基を有するポリオール化合物の混合物[A]、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート[B]110重量部、分子中に水酸基とカルボキシル基を有するジメチロールプロピオン酸[C]10重量部とトリエチルアミン塩形成剤からイソシアネート末端ウレタンプレポリマー合成後、水中に乳化した後、アミノ基を2個以上有するエチレンジアミン鎖伸長剤2重量部で鎖延長することにより得られた乳白色あるいは透明液状の各種水系ポリウレタン樹脂から減圧下でメチルエチルケトン溶媒を留去して得られる無溶剤型水系ポリウレタン樹脂。」(以下「甲3発明」という。)
イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲3発明とを対比すると、甲3発明における「水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート[B]」並びに「ジメチロールプロピオン酸[C]」は、それぞれ、本件発明1における「ポリイソシアネート(a)」及び「ポリイソシアネート(a)は、脂環族ポリイソシアネート」並びに「親水性基を有するポリオール(c)」に相当し、甲3発明における「3-メチル-1,5-ペンタンジオールとテレフタル酸からのポリエステル」は本件発明1における「ポリオール(b)」に相当するから、これらを反応させてなる甲3発明における「イソシアネート末端ウレタンプレポリマー」は、本件発明1における「ポリイソシアネート(a)、ポリオール(b)、および親水性基を有するポリオール(c)を反応させて得られるウレタンプレポリマー(A)」に相当する。
また、甲3発明の「アミノ基を2個以上有するエチレンジアミン鎖伸長剤」は、ジアミン化合物であるから、本件発明1における「鎖伸長剤(B)」及び「ジアミン」に相当する。
さらに、甲3発明の「無溶剤型水系ポリウレタン樹脂」は、「イソシアネート末端ウレタンプレポリマー合成後、水中に乳化した後、アミノ基を2個以上有するエチレンジアミン鎖伸長剤で鎖延長することにより得られた乳白色あるいは透明液状の各種水系ポリウレタン樹脂から減圧下でメチルエチルケトン溶媒を留去して」得られたものであるから、本件発明1における「ポリイソシアネート(a)、ポリオール(b)、および親水性基を有するポリオール(c)を反応させて得られるウレタンプレポリマー(A)と鎖伸長剤(B)とを反応させて得られるポリウレタン(C)が水に分散されてなるポリウレタン水分散体」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲3発明とは、
「ポリイソシアネート(a)、ポリオール(b)、および親水性基を有するポリオール(c)を反応させて得られるウレタンプレポリマー(A)と鎖伸長剤(B)とを反応させて得られるポリウレタン(C)が水に分散されてなるポリウレタン水分散体であって、上記ポリイソシアネート(a)は、脂環族ポリイソシアネートを含み、上記鎖伸長剤(B)は、ポリアミンである、ポリウレタン水分散体。」
で一致し、以下の点で相違する。
(イ)検討
事案に鑑みて、相違点3cから検討する。
甲3発明では、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、フタル酸系ポリエステル、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、トリメチロールプロパン、及び、ジメチロールプロピオン酸の使用量は、それぞれ、110重量部、100重量部、20重量部、3重量部、及び、10重量部であって、これらを合計100gであるとすると、それぞれ、45.7g、41.15g、8.23g、1.23g及び4.12gとなるから、これらを式(2)に代入すると、無溶剤型水系ポリウレタン樹脂のウレア結合量は約0.35mol/kgと算出され、本件発明1の「0.1mol/kg以上0.25mol/kg以下」の範囲外となる。
そうすると、相違点3cは実質的な相違点であり、本件発明1は、甲3に記載された発明でない。
次に、相違点3cに係る本件発明1の構成が容易想到であるかを検討する。
甲3発明は、和紙へ含浸加工することにより乾燥紙力増強性及び湿潤紙力増強性に優れる和紙補強剤の提供を課題とするものであり(甲3の【0006】)、自己修復性や耐傷付き性に優れる塗膜を得ることは記載も示唆もされていない。また、甲3には、ウレタンプレポリマーを構成する種々のポリオールやポリイソシアネート、鎖伸長剤が記載されるにとどまり、ポリウレタンのウレア結合量を0.1mol/kg以上0.25mol/kg以下とすることは記載も示唆もされていない。
そうすると、甲3発明において、相違点3cに係る本件発明1の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことではない。
(ウ)小括
したがって、相違点3cは実質的な相違点であり、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3に記載された発明でないし、甲3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(4)甲4に基づく新規性及び進歩性について
ア 甲4に記載された事項及び甲4に記載された発明
(ア)甲4に記載された事項
甲4には、次の記載がある。
「【請求項1】 水性分散液において、次のもの:a)4~30個のC-原子を有するジイソシアネート、b)ジオール、そのうち;b.1)ジオール(b)の全量に対して、10~100モル%は、500~5000の分子量を有し、かつ次のものからなる:続きを表示(全12行)b1.1)(C4~C30-アルキル)-コハク酸及び/又は(C4~C30-アルケニル)-コハク酸、b1.2)成分(b1.1)に対して、成分(b1.1)と異なるジカルボン酸0~60モル%、b1.3)60~500g/モルの分子量を有するジオールb.2)ジオール(b)の全量に対して、0~90モル%は、60~500g/モルの分子量を有し、b.3)ジオール(b)の全量に対して、0~90モル%は、500~5000g/モルの分子量を有し、かつ(b1)と異なり、c)モノマー(a)及び(b)と異なり、少なくとも2個のイソシアネート基又は少なくとも2個のイソシアネート基に対して反応性な基を有し、更に、少なくとも1個の親水基又は潜在的親水基を有し、それにより、ポリウレタンを水分散性にするモノマー、d)場合により、アルコール系ヒドロキシル基、1級又は2級アミノ基又はイソシアネート基が該当する反応基を有し、モノマー(a)~(c)とは異なるその他の多価化合物、e)場合により、アルコール系ヒドロキシル基、1級又は2級アミノ基又はイソシアネート基が該当する反応基を有し、モノマー(a)~(c)とは異なる一価化合物からなるポリウレタンを含有することを特徴とする、水性分散液。」
「【請求項3】 請求項1又は2に記載の分散液を含有する、皮革、紙、テキスタイル、プラスチック又は金属用の被覆剤又は接着剤。」
「【0009】【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の課題は、皮革用の被覆剤として好適であり、かつ皮革に、良好な実用技術的使用特性及び製造特性をもたらす水性ポリウレタン分散液を提供することである。」
「【0011】モノマー(a)としては、ポリウレタン化学で通常使用されるジイソシアネートが、これに該当する。【0012】殊に、ジイソシアネートX(NCO)2を挙げることができ、その際、Xは、4~12個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、6~15個の炭素原子を有する脂環式又は芳香族炭化水素基又は7~15個の炭素原子を有する芳香脂肪族炭化水素基である。このようなジイソシアネートの例は、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、1-イソシアナト-3,5,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(IPDI)、2,2-ビス-(4-イソシアナトシクロヘキシル)-プロパン、トリメチルヘキサンジイソシアネート、1,4-ジイソシアナトベンゼン、2,4-ジイソシアナトトルエン、2,6-ジイソシアナトトルエン、4,4´-ジイソシアナト-ジフェニルメタン、2,4´-ジイソシアナト-ジフェニルメタン、p-キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、ビス-(4-イソシアナトシクロヘキシル)メタンのイソマー並びにこれらの化合物からなる混合物である。」
「【0029】ポリウレタンの水分散性を得るために、本ポリウレタンは、成分(a)、(b)、(d)及び(e)と並んで、成分(a)、(b)及び(d)と異なる、少なくとも2つのイソシアネート基又は少なくとも2つのイソシアネート基に対して反応性の基及び更に、少なくとも1つの親水基又は親水基に移行可能な基を有するモノマー(c)から成る。以下では、概念「親水基又は潜在的親水基」を、「(潜在的)親水基」と、略記する。ポリマー主鎖を構成するために用いられるモノマーの官能基に比べて、(潜在的)親水基は、イソシアネートと、本質的に、ゆっくりと反応する。【0030】成分(a)、(b)、(c)及び(d)の全量の(潜在的)親水基を有する成分の割合は、一般に、(潜在的)親水基のモル量は、全モノマー(a)~(d)の全量に対して、30~1000、有利に、50~600及び殊に、有利に、80~400ミリモル/kgであると測定される。」
「【0046】モノマー(a)~(c)と異なるモノマー(d)は、一般に、架橋又は鎖長延長に役立つ。これは、一般的に、二価を上回る非芳香族アルコール、2個又はそれ以上の1級及び/又は2級アミノ基を有するアミン並びに1個又はそれ以上のアルコール系ヒドロキシル基と並んで、1個又はそれ以上の1級及び/又は2級アミノ基を有する化合物である。【0047】2個又はそれ以上の1級及び/又は2級アミノ基を有するポリアミンを、殊に、鎖長延長もしくは架橋を、水の存在下に行う場合に使用し、それというのも、アミンは、一般的に、アルコール又は水よりも、迅速にイソシアネートと反応するためである。このことは、しばしば、架橋されたポリウレタン又は高分子量のポリウレタンの水性分散液が、所望される場合に、必要である。このような場合には、イソシアネート基を有するプレポリマーを製造し、これを迅速に水中に分散させ、引き続き、イソシアネートに対して反応性のアミノ基を有する化合物の添加により、鎖長延長するか、又は架橋することにより行う。【0048】このために好適なアミンは、一般に、少なくとも2個の1級、2個の2級又は1個の1級及び1個の2級アミノ基を有する分子量32~500g/モル、有利に、60~300g/モルの分子量範囲の多官能性アミンである。この例は、ジアミン、例えば、ジアミノエタン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノヘキサン、ピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチル-シクロヘキサン(イソホロンジアミン、IPDA)、4,4´-ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、アミノエチルエタノールアミン、ヒドラジン、ヒドラジンヒドレート又はトリアミン、例えば、ジエチレントリアミン又は1,8-ジアミノ-4-アミノメチルオクタンである。」
「【0052】特定の分枝度又は架橋度の調節のために使用可能な2より高い価数を有するアルコールは、例えば、トリメチロール、グリセリン又は糖である。・・・【0055】ポリウレタン化学の分野では、一般に、ポリウレタンの分子量は、相互に反応するモノマーの割合の選択並びに1分子当たりの反応性官能基の数の算術平均により調節することができると、公知である。」
「【0065】【実施例】製造例:A.成分(b1.1a)の製造続きを表示(全24行)アルファ-C12/14-オレフィン混合物108.0kg(約2:1)、フマル酸1.63kg及びヒドロキノンモノメチルエーテル0.82kgの混合物を、撹拌下に、窒素雰囲気中で、160℃に加熱した。無水マレイン酸54.5kgの溶融物を添加し、かつ反応混合物を、200℃に加熱し、かつこの温度で8時間保持した。引き続き、未反応のオレフィンを、100℃で、真空下に留去し、かつ粗製生成物を、薄膜蒸発器を用いて精製した。【0066】生成物:茶色液体;無水物価:KOH199mg/g。【0067】B.成分(b1.a)の製造成分(b1.1a)7.03kg及びヘキサン-1,6-ジオール3.40kgから、常法で・・(中略)・・相応するポリエステルジオール(ポリエステルジオールb1.a)を製造した。これは、56のヒドロキシル数を有した。【0068】C)分散液の製造略号TMXDI テトラメチレンキシリレンジイソシアネートEDA エチレンジアミンIPDI イソホロンジイソシアネートHMDI ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートIPDA イソホロンジアミンDETA ジエチレントリアミンDMPA ジメチロールプロピオン酸。【0069】例1ポリエステロール(b1.a)400g(0.200モル)に、・・(中略)・・【0073】例2例1からのポリエステロール400g(0.2モル)、DMPA36.0g(0.269モル)及びDBTL0.25gからなる混合物に、IPDI126.0g(0.567モル)を添加し、かつ100℃で、180分間撹拌した。生じたプレポリマーを、アセトン600g中に溶かし、その際、30℃まで冷却した。次いで、まず、TEA25.9g(0.256モル)を、次いで、水1100gを撹拌導入した。その後、直接、水400g中のDETA6.9g(0.067モル)を撹拌導入した。その後、アセトンを、真空下に除去した。【0074】固体含有率28.4%を有する微細に分配された分散液が得られた。」
(イ)甲4に記載された発明
甲4には、例2の分散液に着目して、次の発明が記載されているといえる。
「56のヒドロキシル数を有するポリエステルジオール(b1.a)400g(0.2モル)、ジメチロールプロピオン酸36.0g(0.269モル)及びDBTL0.25gからなる混合物に、イソホロンジイソシアネート126.0g(0.567モル)を添加し、かつ100℃で、180分間撹拌して生じたプレポリマーを、アセトン600g中に溶かし、冷却した後、TEA25.9g(0.256モル)を、次いで、水1100gを撹拌導入し、その後、直接、水400g中のジエチレントリアミン6.9g(0.067モル)を撹拌導入した後、アセトンを除去して得られる固体含有率28.4%を有する微細に分配された水性分散液。」 (以下「甲4発明」という。)
イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲4発明とを対比する。
甲4発明の「イソホロンジイソシアネート」及び「ジメチロールプロピオン酸」は、それぞれ、本件発明1の「ポリイソシアネート(a)」である「脂環族ポリイソシアネート」及び「親水性基を有するポリオール(c)」に相当し、甲4発明の「56のヒドロキシル数を有するポリエステルジオール(b1.a)」は、本件発明1の「ポリオール(b)」に相当するから、これらを反応させてなる甲4発明の「プレポリマー」は、本件発明1の「ポリイソシアネート(a)、ポリオール(b)、および親水性基を有するポリオール(c)を反応させて得られるウレタンプレポリマー(A)」に相当する。
また、甲4発明の「ジエチレントリアミン」は、「プレポリマー」が有する反応系に存在する遊離イソシアネート基と反応させてポリマー鎖の延長を図るものであり、ポリアミン化合物であるから(【0047】~【0048】)、本件発明1の「鎖伸長剤(B)」である「ポリアミン」に相当する。
さらに、甲4発明の「水性分散液」は、「プレポリマーを、アセトン600g中に溶かし、冷却した後、TEA25.9g(0.256モル)を、次いで、水1100gを撹拌導入し、その後、直接、水400g中のジエチレントリアミン6.9g(0.067モル)を撹拌導入した後、アセトンを除去して得られる」ものであるから、本件発明1の「ポリイソシアネート(a)、ポリオール(b)、および親水性基を有するポリオール(c)を反応させて得られるウレタンプレポリマー(A)と鎖伸長剤(B)とを反応させて得られるポリウレタン(C)が水に分散されてなるポリウレタン水分散体」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲4発明とは、
「ポリイソシアネート(a)、ポリオール(b)、および親水性基を有するポリオール(c)を反応させて得られるウレタンプレポリマー(A)と鎖伸長剤(B)とを反応させて得られるポリウレタン(C)が水に分散されてなるポリウレタン水分散体であって、上記ポリイソシアネート(a)は、脂環族ポリイソシアネートを含み、上記鎖伸長剤(B)は、ポリアミンである、ポリウレタン水分散体。」
で一致し、以下の点で相違する。
(イ)検討
事案に鑑みて、相違点4cから検討する。
a 相違点4cについて
相違点4cにつき検討すると、甲4発明では、イソホロンジイソシアネート、ポリエステルジオール(b1.a)、及び、ジメチロールプロピオン酸の使用量は、それぞれ、126.0g、400g、及び、36.0gであって、これらを合計100gであるとすると、それぞれ、22.42g、71.17g及び6.41gとなるから、これらを式(2)に代入すると、水性分散体のウレア結合量は、「約0.36mol/kg」と算出され、本件発明1の「0.1mol/kg以上0.25mol/kg以下」の範囲外となる。
そうすると、相違点4cは実質的な相違点であり、本件発明1は、甲4に記載された発明でない。
次に、相違点4cに係る本件発明1の構成が容易想到であるかを検討する。
甲4発明は、皮革用被覆剤に用いられる水性ポリウレタン分散液に関するものであり、高い曲げ亀裂寿命などの良好な実用技術的使用特性をもたらす上記分散液を提供することを課題とするものであるが(甲4の【0004】、【0009】)、種々のポリオールやポリイソシアネート、架橋又は鎖長延長に役立つアミン化合物などについて記載されるにとどまり、自己修復性や耐傷付き性に優れる塗膜を得ることや、ポリウレタンのウレア結合量を0.1mol/kg以上0.25mol/kg以下とすることは記載も示唆もされていない。
そうすると、甲4発明において、相違点4cに係る本件発明1の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことではない。
(ウ)小括
したがって、相違点4cは実質的な相違点であり、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲4に記載された発明でないし、甲4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(5)本件発明2、3及び14について
本件発明2、3及び14は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1について上記(1)イ、(2)イ、(3)イ及び(4)イで述べたのと同じ理由により、本件発明2、3及び14も甲1~甲4のいずれかに記載された発明でないし、甲1~甲4の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(6)まとめ
以上のとおり、本件発明1~3及び14は、甲1ないし甲4のいずれかに記載された発明でないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、甲1ないし甲4のいずれかに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものでもない。
したがって、本件発明1~3及び14に係る特許は、取消理由2(新規性)、申立理由1(新規性)及び申立理由2(進歩性)によっては、取り消すことができない。
3 取消理由通知(決定の予告)に採用しなかった理由について
(1)取消理由1(明確性)について
申立理由5(明確性)は、取消理由1(明確性)と概ね同旨であるから、併せて検討する。
まず、本件訂正により、本件発明1における「架橋度」が、式(1)により求められる値であること(訂正事項2)及び式(1)がポリウレタン(C)の1000gあたりの架橋度であること(訂正事項17)が明らかになり、それにより、式(1)を構成する要素の単位は、質量(g)、官能基数(無名数)、分子量(g/mol)であり、式(1)で求められる値の単位がmol/kgとなることが明らかになった。
また、本件訂正により、本件発明1における「ウレア結合量」が、式(2)により求められる値であり、WAj、WBk及びWCnが、ポリイソシアネート(a)、ポリオール(b)及び親水性基を有するポリオール(c)の合計100質量部を100gとしたときの各質量であることが明らかになり、さらに、式(2)の誤記が修正され(訂正事項3)、それにより、式(2)で求められる値の単位がmol/kgとなることが明らかになった。
そして、本件訂正により、取消理由1(明確性)で指摘した理由は解消され、本件発明1、及びこれを直接又は間接的に引用する本件発明2、3及び14は明確となった。
したがって、本件発明1~3及び14に係る特許は、取消理由1及び申立理由5によっては、取り消すことはできない。
(2)申立理由3(実施可能要件)について
申立人が述べる具体的理由は、請求項1には「ウレタンプレポリマー(A)の重量平均分子量が2,000以上30,000以下」と記載されているが、本件明細書には、その重量平均分子量の調整方法が記載されていないから、発明の詳細な説明は、当業者がその実施をできる程度に明確かつ十分に記載されていない、というものである。
これについて検討すると、本件明細書には、ウレタンプレポリマー(A)の原料であるポリイソシアネート(a)、ポリオール(b)、親水性基を有するポリオール(c)に関して、種々の化合物が例示されており、これらは分子量が異なるものであるし、上記原料の含有量の範囲も記載されている(【0026】~【0057】)。また、ポリマーの合成において、反応温度や反応時間により分子量を調節できることは、本願出願時の技術常識であるといえる。
このことから、本件明細書の上記記載を基に、本件出願時の技術常識を参酌して、ウレタンプレポリマー(A)の重量平均分子量を調節することは、当業者に過度の試行錯誤を課すことにはならない。
したがって、申立理由3は理由がない。
(3)申立理由4(サポート要件)について
ア 本件発明の課題
本件発明の課題は、「各種物性バランスに優れ、特に自己修復性に優れた塗膜が得られるポリウレタン水分散体およびこれを含有するコーティング剤を提供すること」(【0007】)である。
イ 本件発明1について
本件訂正によって、本件発明1の「ポリウレタン(C)のウレア結合量」は、「式(2)により求められるウレア結合量」とされ、ウレア結合量が式(2)により求められることが明らかになり、その範囲は「0.1mol/kg以上0.25mol/kg以下」となった。
そして、本件明細書には、耐溶剤性及び耐傷つき性の点から、ウレア結合量は0.1mol/kgが好ましく、0.25mol/kg以下が好ましいことが記載され(【0066】)、実施例では、ポリウレタン(C)のウレア結合量が0.1~0.25mol/kgである場合に、タック性、耐溶剤性及び自己修復性のいずれにも優れることを具体的に確認できる(実施例1、2、5~12)。
そうすると、本件明細書は、本件発明1が上記課題を解決できることを当業者が認識できるように記載されているといえる。
ウ 申立人の主張について
申立人は、乳化前のウレタンプレポリマー(A)のイソシアネート基が全てウレア結合になるわけではないから、式2で算出されたウレア結合量と、実際に製造されたポリウレタン(C)のウレア結合量は一致しないはずであり、本件明細書には、課題を解決できると当業者が認識できる程度に具体例又は説明が記載されていないと主張する。
申立人の上記主張について検討する。
まず、本件訂正により、ウレア結合量は、式(2)で求められる値であることが特定された。
また、上記イで述べたように、実施例から、ウレア結合量が0.1~0.25mol/kgである場合に、タック性、耐溶剤性及び自己修復性のいずれにも優れ、上記課題を解決できることが示されている。ここで、実施例のウレア結合量(表1の「ウレア量」)は、式(2)により求められた値であると解される。
そうすると、本件明細書には、本件発明1が上記課題を解決できることを当業者が認識できるように記載されているということができる。
なお、申立人は、上記主張により、本件特許がサポート要件を満たさない可能性を指摘するのみであって、その根拠を技術的な観点で具体的に示していない。
また、申立人は、本件訂正前の請求項8に記載の「酸価」について、実施例には酸価に関する記載がなく、本件発明8は課題を解決できない旨を述べるが、本件訂正により、本件発明8は削除され、申立ての対象がなくなった。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、請求項4~13に係る特許は本件訂正により削除され、請求項4~13に係る申立てはその対象がなくなったから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
請求項1~3及び14に係る特許は、当審が通知した取消理由通知(決定の予告)及び特許異議申立書に記載した申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項1~3及び14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700018