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特許異議申立

2023-701380

光学材料の製造方法、光学材料用重合性組成物

審判番号
2023-701380
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-512056
登録番号
7299306
請求日
2023年12月27日
審決日
2025年12月02日
公報発行日
2026年03月27日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】三井化学株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人太陽国際特許事務所
  • 【異議申立人】実川 栄一郎
審判長/審判官
  • 審判長 辰己 雅夫
  • 審判官 藤原 浩子
  • 審判官 藤井 勲
分類
P1651.113-YAA(C08G) / P1651.121-YAA(C08G) / P1651.536-YAA(C08G) / P1651.537-YAA(C08G)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第113条第2号、特許法第113条第4号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第36条第4項第1号、特許法第113条第1号、特許法第17条の2第3項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7299306号発明「光学材料の製造方法、光学材料用重合性組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7299306号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕、〔11~19〕について訂正することを認める。 特許第7299306号の請求項1~19に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本件特許である特許第7299306号についての出願(特願2021-512056号)は、2020年(令和2年)3月27日(優先権主張 平成31年3月29日)を国際出願日とし、令和5年6月19日にその特許権の設定登録(請求項の数19)がされ、同月27日に特許掲載公報が発行された。 そして、令和5年12月27日に実川栄一郎(以下「申立人」という。)により、請求項1~19に係る特許に対して特許異議の申立てがされた。以後の主な手続の経緯は、次のとおりである。 令和5年12月27日提出 :特許異議申立書 令和6年 3月25日付け :取消理由通知書 同年 5月28日提出 :訂正請求書及び意見書 同年 6月20日付け :手続補正指令書(方式) 同年 7月16日提出 :手続補正書(方式)(特許権者) 同年10月30日提出 :意見書(申立人) 同年12月13日付け :取消理由通知書(決定の予告) 令和7年 2月17日提出 :訂正請求書及び意見書 同年 4月 2日提出 :意見書(申立人) 同年 6月12日 :応対記録(初回応対日) 同年 7月10日付け :取消理由通知書 同年 9月11日提出 :訂正請求書及び意見書 なお、令和6年5月28日及び令和7年2月17日にされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。 また、令和7年9月11日にされた訂正の請求により、同年4月2日に提出された申立人の意見書において主張された申立理由が解消したことが明らかであったので、申立人に意見書の提出は求めなかった。 第2 訂正について 1 訂正の内容 令和7年9月11日提出の訂正請求書における請求の趣旨は、「特許第7299306号の明細書及び特許請求の範囲を、本件請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲の通り、訂正後の請求項1~19に訂正することを求める」というものであって、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「前記色相調整剤がアントラキノン系染料を含み、 前記色相調整剤の含有量が1.5ppm以上15ppm未満である光学材料の製造方法。」 とあるのを、 「前記色相調整剤がアントラキノン系染料であり、 前記色相調整剤の含有量が1.5ppm以上10ppm以下であり、 前記アントラキノン系染料が、 Solvent Blue 36(1,4-ビス(イソプロピルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、 Solvent Blue 94(1-アミノ-2-ブロモ-4-(フェニルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、及び Plast Red 8320(1-(シクロヘキシルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン) からなる群から選択される少なくとも1種である、 光学材料の製造方法。」 と訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に 「前記色相調整剤がアントラキノン系染料を含み、 前記色相調整剤の含有量が1.5ppm以上15ppm末満である光学材料の製造方法。」 とあるのを、 「前記色相調整剤がアントラキノン系染料であり、 前記色相調整剤の含有量が1.5ppm以上10ppm以下であり、 前記アントラキノン系染料が、 Solvent Blue 36(1,4-ビス(イソプロピルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、 Solvent Blue 94(1-アミノ-2-ブロモ-4-(フェニルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、及び Plast Red 8320(1-(シクロヘキシルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン) からなる群から選択される少なくとも1種である、 光学材料の製造方法。」 と訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項4に 「前記ベンゾトリアゾール化合物が、2-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(5-オクチルプロピオネート-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3-tert-ブチル-5-オクチルプロピオネート-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-エチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-(4-エトキシ-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、及び2-(4-ブトキシ-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾールからなる群から選択される少なくとも一種である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の光学材料の製造方法。」 とあるのを、 「前記ベンゾトリアゾール化合物が、2-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(5-オクチルプロピオネート-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3-tert-ブチル-5-オクチルプロピオネート-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、及び2-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-エチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾールからなる群から選択される少なくとも一種である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の光学材料の製造方法。」 と訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項11に 「前記色相調整剤がアントラキノン系染料を含み、 前記色相調整剤の含有量が1.5ppm以上15ppm未満である光学材料用重合性組成物。」 とあるのを、 「前記色相調整剤がアントラキノン系染料であり、 前記色相調整剤の含有量が1.5ppm以上10ppm以下であり、 前記アントラキノン系染料が、 Solvent Blue 36(1,4-ビス(イソプロピルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、 Solvent Blue 94(1-アミノ-2-ブロモ-4-(フェニルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、及び Plast Red 8320(1-(シクロヘキシルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン) からなる群から選択される少なくとも1種である、 光学材料用重合性組成物。」 と訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項12に 「前記色相調整剤がアントラキノン系染料を含み、 前記色相調整剤の含有量が1.5ppm以上15ppm末満である光学材料用重合性組成物。」 とあるのを、 「前記色相調整剤がアントラキノン系染料であり、 前記色相調整剤の含有量が1.5ppm以上10ppm以下であり、 前記アントラキノン系染料が、 Solvent Blue 36(1,4-ビス(イソプロピルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、 Solvent Blue 94(1-アミノ-2-ブロモ-4-(フェニルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、及び Plast Red 8320(1-(シクロヘキシルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン) からなる群から選択される少なくとも1種である、 光学材料用重合性組成物。」 と訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項14に 「前記ベンゾトリアゾール化合物が、2-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(5-オクチルプロピオネート-2 -ヒドロキシフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3-tert -ブチル-5-オクチルプロピオネート-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロ-2H -ベンゾトリアゾール、2-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-エチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-(4-エトキシ-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、及び2-(4-ブトキシ-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾールからなる群から選択される少なくとも一種である請求項11~請求項13のいずれか1項に記載の光学材料用重合性組成物。」 とあるのを、 「前記ベンゾトリアゾール化合物が、2-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(5-オクチルプロピオネート-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3-tert-ブチル-5-オクチルプロピオネート-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、及び2-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-エチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾールからなる群から選択される少なくとも一種である請求項11~請求項13のいずれか1項に記載の光学材料用重合性組成物。」 と訂正する。 (7)訂正事項7 願書に添付した明細書【0031】において、 「アントラキノン系染料としては、Solvent Blue 36(1,4-ビス(イソプロピルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、Solvent Blue 63(1-(メチルアミノ)-4-(m-トリルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、Solvent Blue 94(1-アミノ-2-ブロモ-4-(フェニルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、SolventBlue 97(1,4-ビス((2,6-ジエチル-4-メチルフェニル)アミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、Solvent Blue 104(1,4-ビス(メシチルアミノ) アントラセン-9,10-ジオン)、Solvent Violet 13(1-ヒドロキシ-4-(p-トリルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、Solvent Green 3(1,4-ビス(p-トリルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、Solvent Red 52(3-メチル-6-(p-トリルアミノ)-3H-ナフト[1,2,3-de]キノリン-2,7-ジオン)、Solvent Red 168又はPlast Red 8320(1-(シクロヘキシルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、Solvent Red 207(1,5-ビス(シクロヘキシルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、Disperse Red 22(1-(フェニルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、Disperse Red 60(1-アミノ-4-ヒドロキシ-2-フェノキシアントラセン-9,10-ジオン)、Solvent Violet 59(1,4-ジアミノ-2,3-ジフェニルアントラセン-9,10-ジオン)、Solvent Green 28(1,4-ビス((4-ブチルフェニル)アミノ)-5,8-ジヒドロキシアントラセン-9,10-ジオン)、Plast Blue8514(1-ヒドロキシ-4-[(4-メチルフェニル)アミノ]-9,10-アントラセンジオン)等を挙げることができる。」 とあるのを、 「アントラキノン系染料としては、Solvent Blue 36(1,4-ビス(イソプロピルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、Solvent Blue 63(1-(メチルアミノ)-4-(m-トリルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、Solvent Blue 94(1-アミノ-2-ブロモ-4-(フェニルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、SolventBlue 97(1,4-ビス((2,6-ジエチル-4-メチルフェニル)アミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、Solvent Blue 104(1,4-ビス(メシチルアミノ) アントラセン-9,10-ジオン)、Solvent Violet 13(1-ヒドロキシ-4-(p-トリルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、Solvent Green 3(1,4-ビス(p-トリルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、Solvent Red 168又はPlast Red 8320(1-(シクロヘキシルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、Solvent Red 207(1,5-ビス(シクロヘキシルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、Disperse Red 22(1-(フェニルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、Disperse Red 60(1-アミノ-4-ヒドロキシ-2-フェノキシアントラセン-9,10-ジオン)、Solvent Violet 59(1,4-ジアミノ-2,3-ジフェニルアントラセン-9,10-ジオン)、Solvent Green 28(1,4-ビス((4-ブチルフェニル)アミノ)-5,8-ジヒドロキシアントラセン-9,10-ジオン)、Plast Blue8514(1-ヒドロキシ-4-[(4-メチルフェニル)アミノ]-9,10-アントラセンジオン)等を挙げることができる。」 と訂正する。 なお、独立請求項である請求項1、2の訂正に連動し、請求項1、2を直接又は間接的に引用する請求項3~10も訂正され、請求項4~10では請求項1と請求項2の両方を択一的に引用しているので、請求項1~10は一群の請求項である。 また、独立請求項である請求項11、12の訂正に連動し、請求項11、12を直接又は間接的に引用する請求項13~19も訂正され、請求項14~19では請求項11と請求項12の両方を択一的に引用しているので、請求項11~19は一群の請求項である。 さらに、願書に添付した明細書【0031】についての訂正は、請求項1~19について訂正するものであるから、本件訂正は、訂正後の請求項〔1~10〕、〔11~19〕という各一群の請求項について請求するものである。 2 訂正の適否についての判断 (1)訂正事項1、2、4、5について 訂正事項1、2、4、5は、請求項1、2、11、12における「色相調整剤がアントラキノン系染料を含む」を「色相調整剤がアントラキノン系染料であり」と特定し、また、そのアントラキノン系染料の種類を、願書に添付した明細書【0034】及び【0071】の記載に基づいて実施例で使用された3種に限定し、さらに、色相調整剤の含有量を、【0085】の表1の実施例3と実施例9の記載に基づいて、「1.5ppm以上10ppm以下」に限定するものである。 したがって、訂正事項1、2、4、5は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、また、新規事項を追加するものでもない。 (2)訂正事項3、6について 訂正事項3、6は、それぞれ訂正前の請求項4及び14における選択肢の一部である「2-(4-エトキシ-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、及び2-(4-ブトキシ-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール」を削除する訂正である。 したがって、訂正事項3、6は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、また、新規事項を追加するものでもない。 (3)訂正事項7について 訂正事項7は、願書に添付した明細書の【0031】の記載から、アントラキノン骨格を含まず、アントラキノン系染料の概念に含まれない、「Solvent Red 52(3-メチル-6-(p-トリルアミノ)-3H-ナフト[1,2,3-de]キノリン-2,7-ジオン)」を削除して、記載を明瞭にするものである。 したがって、訂正事項7は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、また、新規事項を追加するものでもない。 3 訂正についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 よって、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕、〔11~19〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり、本件訂正は認められたので、請求項1~19に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1~19に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 (以下、請求項の番号を付して「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」ということがある。また、訂正請求書に添付された訂正明細書を「本件明細書」という。) 「 【請求項1】 光学材料用樹脂モノマーと、添加剤とを混合して、10mmの厚さで測定した場合のCIE1976(L*,a*,b*)色空間において、L*が70以上であり、b*が-30以上10以下の色相を備える光学材料用重合性組成物を調製する工程と、 前記光学材料用重合性組成物を重合硬化して、10mmの厚さで測定した場合のCIE1976(L*,a*,b*)色空間において、L*が70以上であり、b*が-30以上10以下の色相を備える硬化物を得る工程と、 を含み、 前記添加剤は、紫外線吸収剤と色相調整剤とを含み、 前記光学材料用重合性組成物を調製する工程は、 前記色相調整剤により前記光学材料用重合性組成物の色相を調整する工程を含み、 前記紫外線吸収剤は、下記一般式(1)で表されるベンゾトリアゾール化合物を含み、 前記光学材料用樹脂モノマーが、 イソシアネート化合物(A)と、2以上のメルカプト基を有するポリチオール化合物及び1以上のメルカプト基と1以上の水酸基を有するヒドロキシチオール化合物からなる群から選択される少なくとも一種の活性水素化合物(B)と、を含み、 前記色相調整剤がアントラキノン系染料であり、 前記色相調整剤の含有量が1.5ppm以上10ppm以下であり、 前記アントラキノン系染料が、 Solvent Blue 36(1,4-ビス(イソプロピルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、 Solvent Blue 94(1-アミノ-2-ブロモ-4-(フェニルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、及び Plast Red 8320(1-(シクロヘキシルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン) からなる群から選択される少なくとも1種である、 光学材料の製造方法。 【化1】 [図:0001433046000001.jpg] (一般式(1)中、m個のR1及びn個のR2は、それぞれ独立に、炭素数1~炭素数8のアルキル基、又はハロゲン原子を示す。mは1~3の整数を示し、nは0~3の整数を示し、pは0~1の整数を示し、p個のR3は、それぞれ独立に、エステル結合を含む炭素数2~炭素数15の官能基を示す。) 【請求項2】 光学材料用樹脂モノマーと、添加剤とを混合して、10mmの厚さで測定した場合のYIが-70以上20以下の色相を備える光学材料用重合性組成物を調製する工程と、 前記光学材料用重合性組成物を重合硬化して、10mmの厚さで測定した場合のYIが-70以上20以下の色相を備える硬化物を得る工程と、 を含み、 前記添加剤は、紫外線吸収剤と色相調整剤とを含み、 前記光学材料用重合性組成物を調製する工程は、 前記色相調整剤により前記光学材料用重合性組成物の色相を調整する工程を含み、 前記紫外線吸収剤は、下記一般式(1)で表されるベンゾトリアゾール化合物を含み、 前記光学材料用樹脂モノマーが、 イソシアネート化合物(A)と、2以上のメルカプト基を有するポリチオール化合物及び1以上のメルカプト基と1以上の水酸基を有するヒドロキシチオール化合物からなる群から選択される少なくとも一種の活性水素化合物(B)と、を含み、 前記色相調整剤がアントラキノン系染料であり、 前記色相調整剤の含有量が1.5ppm以上10ppm以下であり、 前記アントラキノン系染料が、 Solvent Blue 36(1,4-ビス(イソプロピルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、 Solvent Blue 94(1-アミノ-2-ブロモ-4-(フェニルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、及び P1ast Red 8320(1-(シクロヘキシルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン) からなる群から選択される少なくとも1種である、 光学材料の製造方法。 【化2】 [図:0001433046000002.jpg] (一般式(1)中、m個のR1及びn個のR2は、それぞれ独立に、炭素数1~炭素数8のアルキル基、又はハロゲン原子を示す。mは1~3の整数を示し、nは0~3の整数を示し、pは0~1の整数を示し、p個のR3は、それぞれ独立に、エステル結合を含む炭素数2~炭素数15の官能基を示す。) 【請求項3】 前記光学材料用重合性組成物は、10mmの厚さで測定した場合のCIE1976(L*,a*,b*)色空間において、L*が70以上であり、b*が-30以上10以下の色相を備え、 前記硬化物は、10mmの厚さで測定した場合のCIE1976(L*,a*,b*)色空間において、L*が70以上であり、b*が-30以上10以下の色相を備える請求項2に記載の光学材料の製造方法。 【請求項4】 前記ベンゾトリアゾール化合物が、2-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(5-オクチルプロピオネート-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3-tert-ブチル-5-オクチルプロピオネート-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、及び2-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-エチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾールからなる群から選択される少なくとも一種である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の光学材料の製造方法。 【請求項5】 前記色相調整剤が、ブルーイング剤である請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の光学材料の製造方法。 【請求項6】 前記イソシアネート化合物(A)が、脂肪族イソシアネート化合物、脂環族イソシアネート化合物、芳香族イソシアネート化合物、複素環イソシアネート化合物、及び芳香脂肪族イソシアネート化合物からなる群から選択される少なくとも一種を含む請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の光学材料の製造方法。 【請求項7】 前記イソシアネート化合物(A)が、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、及びイソホロンイソシアネートからなる群から選択される少なくとも一種を含む請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の光学材料の製造方法。 【請求項8】 前記ポリチオール化合物が、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、2,5-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ジチアン、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチエタン、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、3-メルカプトメチル-1,5-ジメルカプト-2,4-ジチアペンタン、トリス(メルカプトメチルチオ)メタン、及びエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)からなる群から選択される少なくとも一種を含む請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の光学材料の製造方法。 【請求項9】 前記光学材料用重合性組成物は、10mmの厚さで測定した場合のCIE1976(L*,a*,b*)色空間において、L*が70以上であり、b*が-30以上5以下の色相を備える請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の光学材料の製造方法。 【請求項10】 前記硬化物は、10mmの厚さで測定した場合のCIE1976(L*,a*,b*)色空間において、L*が70以上であり、b*が-25以上10以下の色相を備える請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の光学材料の製造方法。 【請求項11】 光学材料用樹脂モノマーと、添加剤とを含み、色相が、10mmの厚さで測定した場合のCIE1976(L*,a*,b*)色空間において、L*が70以上であり、b*が-30以上10以下であり、 前記添加剤は、紫外線吸収剤と色相調整剤とを含み、 前記紫外線吸収剤は、下記一般式(1)で表されるベンゾトリアゾール化合物を含み、 前記光学材料用樹脂モノマーが、 イソシアネート化合物(A)と、2以上のメルカプト基を有するポリチオール化合物及び1以上のメルカプト基と1以上の水酸基を有するヒドロキシチオール化合物からなる群から選択される少なくとも一種の活性水素化合物(B)と、を含み、 前記色相調整剤がアントラキノン系染料であり、 前記色相調整剤の含有量が1.5ppm以上10ppm以下であり、 前記アントラキノン系染料が、 Solvent Blue 36(1,4-ビス(イソプロピルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、 Solvent Blue 94(1-アミノ-2-ブロモ-4-(フェニルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、及び Plast Red 8320(1-(シクロヘキシルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン) からなる群から選択される少なくとも1種である、 光学材料用重合性組成物。 【化3】 [図:0001433046000003.jpg] (一般式(1)中、m個のR1及びn個のR2は、それぞれ独立に、炭素数1~炭素数8のアルキル基、又はハロゲン原子を示す。mは1~3の整数を示し、nは0~3の整数を示し、pは0~1の整数を示し、p個のR3は、それぞれ独立に、エステル結合を含む炭素数2~炭素数15の官能基を示す。) 【請求項12】 光学材料用樹脂モノマーと、添加剤とを含み、10mmの厚さで測定した場合のYIが-70以上20以下であり、 前記添加剤は、紫外線吸収剤と色相調整剤とを含み、 前記紫外線吸収剤は、下記一般式(1)で表されるベンゾトリアゾール化合物を含み、 前記光学材料用樹脂モノマーが、 イソシアネート化合物(A)と、2以上のメルカプト基を有するポリチオール化合物及び1以上のメルカプト基と1以上の水酸基を有するヒドロキシチオール化合物からなる群から選択される少なくとも一種の活性水素化合物(B)と、を含み、 前記色相調整剤がアントラキノン系染料であり、 前記色相調整剤の含有量が1.5ppm以上10ppm以下であり、 前記アントラキノン系染料が、 Solvent Blue 36(1,4-ビス(イソプロビルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、 Solvent Blue 94(1-アミノ-2-ブロモ-4-(フェニルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、及び Plast Red 8320(1-(シクロヘキシルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン) からなる群から選択される少なくとも1種である、 光学材料用重合性組成物。 【化4】 [図:0001433046000004.jpg] (一般式(1)中、m個のR1及びn個のR2は、それぞれ独立に、炭素数1~炭素数8のアルキル基、又はハロゲン原子を示す。mは1~3の整数を示し、nは0~3の整数を示し、pは0~1の整数を示し、p個のR3は、それぞれ独立に、エステル結合を含む炭素数2~炭素数15の官能基を示す。) 【請求項13】 CIE1976(L*,a*,b*)色空間において、L*が70以上であり、b*が-30以上10以下である請求項12に記載の光学材料用重合性組成物。 【請求項14】 前記ベンゾトリアゾール化合物が、2-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(5-オクチルプロピオネート-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3-tert-ブチル-5-オクチルプロピオネート-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、及び2-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-エチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾールからなる群から選択される少なくとも一種である請求項11~請求項13のいずれか1項に記載の光学材料用重合性組成物。 【請求項15】 前記色相調整剤が、ブルーイング剤である請求項11~請求項14のいずれか1項に記載の光学材料用重合性組成物。 【請求項16】 前記イソシアネート化合物(A)が、脂肪族イソシアネート化合物、脂環族イソシアネート化合物、芳香族イソシアネート化合物、複素環イソシアネート化合物、及び芳香脂肪族イソシアネート化合物からなる群から選択される少なくとも一種を含む請求項11~請求項15のいずれか1項に記載の光学材料用重合性組成物。 【請求項17】 前記イソシアネート化合物(A)が、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ-[2.2.1]-ヘプタン、ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、及びイソホロンイソシアネートからなる群から選択される少なくとも一種を含む請求項11~請求項16のいずれか1項に記載の光学材料用重合性組成物。 【請求項18】 前記ポリチオール化合物が、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、2,5-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ジチアン、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチエタン、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、3-メルカプトメチル-1,5-ジメルカプト-2,4-ジチアペンタン、トリス(メルカプトメチルチオ)メタン、及びエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)からなる群から選択される少なくとも一種を含む請求項11~請求項17のいずれか1項に記載の光学材料用重合性組成物。 【請求項19】 10mmの厚さで測定した場合のCIE1976(L*,a*,b*)色空間において、L*が70以上であり、b*が-30以上5以下の色相を備える請求項11~請求項18のいずれか1項に記載の光学材料用重合性組成物。」 第4 特許異議申立理由及び取消理由の概要 1 特許異議申立理由の概要 申立人は、証拠方法として甲第1~13号証(以下「甲1」などという。)を提出し、特許異議申立書において、概要、以下の申立理由を主張する(なお、甲1は、本件特許の優先日前に公開された文献である。)。 申立理由1(新規性:特許法第113条第2号) 請求項1~19に係る発明は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~19に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 申立理由2(進歩性:特許法第113条第2号) 請求項1~19に係る発明は、甲1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~19に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 申立理由3(明確性:特許法第113条第4号) 請求項1~19に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 申立理由4(実施可能要件:特許法第113条第4号) 請求項1、3~11、13~19に係る特許は、特許法第36条第4項第1号の規定を満たしていない特許出願に対してされたものである。 申立理由5(新規事項:特許法第113条第1号) 請求項1~19に係る特許は、願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内において補正したものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものである。 <甲号証一覧> 甲1:特開2018-16778号公報 甲2:特開2001-131420号公報 甲3:特開2018-123323号公報 甲4:特開2013-61653号公報 甲5:特開2015-118122号公報 甲6:特開2016-6184号公報 甲7:国際公開第2018/230662号 甲8:特開2018-58772号公報 甲9:特開2018-58774号公報 甲10:国際公開第2018/003059号 甲11:実験成績証明書、令和5年12日27日 作成者 実川栄一郎(申立人) 甲12:実験成績証明書、令和6年10日30日 作成者 実川栄一郎(申立人) 甲13:「樹脂着色用染料(Plast Color)」 http://www.arimoto-chem.co.jp/plast_color.html (令和7年3月30日出力) 2 取消理由の概要 令和7年7月10日付け取消理由通知書における取消理由の概要は、以下のとおりである。 取消理由1(進歩性:特許法第113条第2号) 請求項1~19に係る発明は、甲1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項1~19に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 取消理由3(明確性:特許法第113条第4号) 請求項4~10、14~19に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 第5 当審における判断 1 取消理由1、申立理由1及び2(甲1に基づく新規性・進歩性)について 取消理由1、申立理由1及び2は、甲1に基づく新規性・進歩性についての理由であるから、まとめて検討する。 (1)甲1に記載された発明 甲1の実施例6に着目すると、甲1には、次の発明が記載されていると認められる。 「ビス(イソシアナトメチル)ビシクロヘプタンと、触媒:ジメチルスズジクロライド、離型剤:酸性リン酸エステル(城北化学工業(株)製JP-506H)、紫外線吸収剤(シプロ化成(株)製シーソーブ703)を混合、溶解させて、続いて、染料LDV27:ディスパースバイオレット27及び染料SSR52:ソルベントレッド52を含むマスターバッチ溶液を加え、撹拌、溶解し、さらに、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)とビス(メルカプトエチルチオ)メルカプトプロパンを添加混合し、以下の組成を有する、混合均一液である樹脂組成物とし、 この混合均一液である樹脂組成物を、脱泡、濾過後、直径75mm、-4.00Dのガラスモールドとテープからなるレンズ用モールド型へ注入し、15℃から120℃まで20時間かけて徐々に昇温し、2時間保持し、重合終了後、電気炉からモールド型を取り出し、離型して眼鏡レンズを得て、その眼鏡レンズをさらに120℃で3時間アニールを行い、得られた眼鏡レンズの外観評価を行い、明るさが「3」(無色透明に近いわずかに青みを帯びた視感透過率88%の眼鏡レンズを「5」とし、視感透過率80%の着色眼鏡レンズを「1」とした場合の評価)で、目視色調が「やや暗い青」である眼鏡レンズの製造方法。 <混合均一液である樹脂組成物の組成> ・ポリイソシアネート I2:ビス(イソシアナトメチル)ビシクロヘプタン:50.60質量部 ・ポリチオール化合物 T3:ビス(メルカプトエチルチオ)メルカプトプロパン:25.50質量部 ・ポリチオール化合物 T2:ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート):23.90質量部 ・紫外線吸収剤 U2:2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール:「シーソーブ703」(シプロ化成(株)製):1.00質量部 ・染料L DV27:ディスパースバイオレット27:5000質量ppb ・染料S SR52:ソルベントレッド52:100質量ppb ・触媒:ジメチルスズジクロライド:0.05質量部 ・離型剤:ブトキシエチルアシッドフォスフェート(リン酸モノエステルとリン酸ジエステルの混合物)「JP-506H」(城北化学工業(株)製):0.15質量部」 (以下「甲1製法発明」という。) 「以下の組成を有する、目視色調が「やや暗い青」である眼鏡レンズを製造するための樹脂組成物。 <組成> ・ポリイソシアネート I2:ビス(イソシアナトメチル)ビシクロヘプタン:50.60質量部 ・ポリチオール化合物 T3:ビス(メルカプトエチルチオ)メルカプトプロパン:25.50質量部 ・ポリチオール化合物 T2:ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート):23.90質量部 ・紫外線吸収剤 U2:2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール:「シーソーブ703」(シプロ化成(株)製):1.00質量部 ・染料L DV27:ディスパースバイオレット27:5000質量ppb ・染料S SR52:ソルベントレッド52:100質量ppb ・触媒:ジメチルスズジクロライド:0.05質量部 ・離型剤:ブトキシエチルアシッドフォスフェート(リン酸モノエステルとリン酸ジエステルの混合物)「JP-506H」(城北化学工業(株)製):0.15質量部」 (以下「甲1組成物発明」という。) なお、「紫外線吸収剤 U2:2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール:「シーソーブ703」(シプロ化成(株)製)」は、以下のとおりの構造を有するベンゾトリアゾール化合物である。 https://www.shipro.co.jp/products/seesorb/#seesorb1 [図:0001433046000005.jpg] また、「染料L DV27:ディスパースバイオレット27」は、以下のとおりのアントラキノン骨格を有する染料である。 https://www.chemspider.com/Chemical-Structure.79390.html [図:0001433046000006.jpg] さらに、「染料S SR52:ソルベントレッド52」は、以下のとおりの構造を有する染料である。 https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200907067981936083 [図:0001433046000007.jpg] (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1製法発明とを対比する。 甲1製法発明の「ポリイソシアネート I2:ビス(イソシアナトメチル)ビシクロヘプタン」は、本件発明1の「イソシアネート化合物(A)」に相当する 。 甲1製法発明の「ポリチオール化合物 T3:ビス(メルカプトエチルチオ)メルカプトプロパン」及び「ポリチオール化合物 T2:ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)」は、本件発明1の「2以上のメルカプト基を有するポリチオール化合物及び1以上のメルカプト基と1以上の水酸基を有するヒドロキシチオール化合物からなる群から選択される少なくとも一種の活性水素化合物(B)」に相当する。 甲1製法発明の上記「ポリイソシアネート」と上記2種の「ポリチオール化合物」は、本件発明1の「光学材料用樹脂モノマー」に相当する。 甲1製法発明の「紫外線吸収剤 U2:2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール:「シーソーブ703」(シプロ化成(株)製)」は、本件発明1の「下記一般式(1)(当審注:式は省略)で表されるベンゾトリアゾール化合物を含」む「紫外線吸収剤」に相当する。 甲1製法発明の「染料L DV27:ディスパースバイオレット27:5000質量ppb」と「染料S SR52:ソルベントレッド52:100質量ppb」は、いずれも本件発明1の「色相調整剤」である「染料」に相当し、それらの合計量は計算すると5.1ppmとなり、本件発明1の「色相調整剤の含有量が1.5ppm以上10ppm以下」を満たす。 甲1製法発明の上記紫外線吸収剤と上記2種の染料は、本件発明1の「添加剤」に相当する。 甲1製法発明は、ポリイソシアネート、2種のポリチオール化合物と、紫外線吸収剤、染料Lと染料Sという2種の染料を混合して樹脂組成物とし、重合して眼鏡レンズを製造しており、また、甲1の【0004】【0005】によれば、重合時の熱処理や紫外線吸収性等の影響により黄色みを帯びる樹脂組成物に対して青色染料のみを添加すると緑みを帯びてしまい色調が悪くなることを踏まえて、2種の染料を用いて色調を修正することが記載されているから、甲1製法発明においては、2種の染料により樹脂組成物の「色相」を調整したといえる。 したがって、甲1製法発明は、本件発明1の「光学材料用樹脂モノマーと、添加剤とを混合して、」「光学材料用重合性組成物を調製する工程と、」「前記光学材料用重合組成物を重合硬化して」「硬化物を得る工程と、を含み」「前記色相調整剤により前記光学材料用重合性組成物の色相を調整する工程を含」む、「光学材料の製造方法」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲1製法発明との一致点及び相違点は次のとおりである。 <一致点1> 「光学材料用樹脂モノマーと、添加剤とを混合して、光学材料用重合性組成物を調製する工程と、 前記光学材料用重合性組成物を重合硬化して、硬化物を得る工程と、 を含み、 前記添加剤は、紫外線吸収剤と色相調整剤とを含み、 前記光学材料用重合性組成物を調製する工程は、 前記色相調整剤により前記光学材料用重合性組成物の色相を調整する工程を含み、 前記紫外線吸収剤は、下記一般式(1)(当審注:式は省略)で表されるベンゾトリアゾール化合物を含み、 前記光学材料用樹脂モノマーが、 イソシアネート化合物(A)と、2以上のメルカプト基を有するポリチオール化合物及び1以上のメルカプト基と1以上の水酸基を有するヒドロキシチオール化合物からなる群から選択される少なくとも一種の活性水素化合物(B)と、を含み、 前記色相調整剤が染料であり、 前記色相調整剤の含有量が1.5ppm以上10ppm以下である、光学材料の製造方法。」 <相違点1> 染料が、本件発明1においては、「アントラキノン系染料であり、」「前記アントラキノン系染料が、 Solvent Blue 36(1,4-ビス(イソプロピルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、 Solvent Blue 94(1-アミノ-2-ブロモ-4-(フェニルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、及び Plast Red 8320(1-(シクロヘキシルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン) からなる群から選択される少なくとも1種である」のに対して、甲1製法発明においては、「染料L DV27:ディスパースバイオレット27」と「染料S SR52:ソルベントレッド52」とからなる点 <相違点2> 本件発明1においては、光学材料用重合性組成物と硬化物が、いずれも「10mmの厚さで測定した場合のCIE1976(L*,a*,b*)色空間において、L*が70以上であり、b*が-30以上10以下の色相を備える」ことを特定しているのに対し、甲1製法発明においては、樹脂組成物と眼鏡レンズのL*とb*は不明であるが、眼鏡レンズの目視色調が「やや暗い青」であると特定している点 イ 判断 (ア)相違点1について a 甲1製法発明の「染料L DV27:ディスパースバイオレット27」と「染料S SR52:ソルベントレッド52」は、いずれも、本件発明1の「Solvent Blue 36(・・・)」、「Solvent Blue 94(・・・)」、「Plast Red 8320(・・・)」とは異なる染料であるから、相違点1は、実質的な相違点であり、本件発明1は、甲1に記載された発明ではない。 b 次に、相違点1の容易想到性について検討する。 甲1には、「20質量ppmのトルエン溶液中で550nm以上600nm以下に極大吸収波長を有する染料L」と、「20質量ppmのトルエン溶液中で500nm以上550nm未満に極大吸収波長を有する染料S」とを、〔染料Lの質量/染料Sの質量〕が5以上500以下となるように含む、樹脂組成物の発明が開示されており(請求項1)、染料Lと染料Sについて、以下のように記載されている。 「【0009】 〔染料L〕 染料Lは、わずかに青みを帯びた良好な色調の樹脂組成物を得る観点から、20質量ppmのトルエン溶液中で550nm以上600nm以下に極大吸収波長を有する。当該極大吸収波長は、最大極大吸収波長であることが好ましい。なお、20質量ppmのトルエン溶液とは、トルエン溶液全体に対する溶質の割合を意味する。 また、染料Lの極大吸収波長は、わずかに青みを帯びた良好な色調の樹脂組成物を得る観点から、好ましくは550nm以上、好ましくは560nm以上、好ましくは580nm以上である。そして、染料Lの極大吸収波長は、わずかに青みを帯びた良好な色調の樹脂組成物を得る観点から、好ましくは600nm以下、好ましくは590nm以下である。 【0010】 染料Lとしては、例えば、C.I.ソルベントバイオレット11、13、14、26、31、33、36、37、38、45、47、48、51、59、60;C.I.ディスパースバイオレット26、27、28;が挙げられる。これらの中でも、C.I.ディスパースバイオレット27、C.I.ソルベントバイオレット13、31が好ましく、重合性組成物の重合によっても安定性が高く色調の変化が少ないという観点から、C.I.ディスパースバイオレット27、C.I.ソルベントバイオレット13がより好ましく、C.I.ディスパースバイオレット27が更に好ましい。 【0011】 〔染料S〕 染料Sは、わずかに青みを帯びた良好な色調の樹脂組成物を得る観点から、20質量ppmのトルエン溶液中で500nm以上550nm未満に極大吸収波長を有する。当該極大吸収波長は、最大極大吸収波長であることが好ましい。 また、染料Sの極大吸収波長は、わずかに青みを帯びた良好な色調の樹脂組成物を得る観点から、好ましくは500nm以上、より好ましくは510nm以上、より好ましくは530nm以上である。そして、染料Lの極大吸収波長は、わずかに青みを帯びた良好な色調の樹脂組成物を得る観点から、好ましくは545nm以下である。 【0012】 染料Sとしては、わずかに青みを帯びた良好な色調の樹脂組成物を得る観点から、C.I.ソルベントレッド24、49、52、90、91、111、118、119、122、124、125、127、130、132、143、145、146、150、151、155、160、168、169、172、175、181、207、218、222、227、230、245、247;C.I.アシッドレッド73、80、91、92、97、138、151、211、274、289;が挙げられる。これらの中でも、C.I.ソルベントレッド52、146が好ましく、重合性組成物の重合によっても安定性が高く色調の変化が少ないという観点から、C.I.ソルベントレッド52がより好ましい。」 甲1の上記染料L及びSとして例示された中には、本件発明1の「Solvent Blue 36」、「Solvent Blue 94」、「Plast Red 8320」は含まれておらず、これらの特定の三つの染料を甲1発明において用いる動機付けがあるとはいえないから、甲1製法発明において相違点1に係る本件発明1の構成を有するものとすることを、当業者が容易に想到することができたとはいえない。 甲1以外の他の甲号証の記載を検討しても、同様である。 (イ)したがって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明2について ア 対比 上記(2)アの対比を踏まえて、本件発明2と甲1製法発明とを対比すると、上記(2)アの一致点1において一致し、以下の点において相違する。 <相違点1’> 染料が、本件発明2においては、「アントラキノン系染料であり、」「前記アントラキノン系染料が、 Solvent Blue 36(1,4-ビス(イソプロピルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、 Solvent Blue 94(1-アミノ-2-ブロモ-4-(フェニルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、及び Plast Red 8320(1-(シクロヘキシルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン) からなる群から選択される少なくとも1種である」のに対して、甲1製法発明においては、「染料L DV27:ディスパースバイオレット27」と「染料S SR52:ソルベントレッド52」とからなる点 <相違点3> 本件発明2においては、光学材料用重合性組成物と硬化物が、いずれも「10mmの厚さで測定した場合のYIが-70以上20以下の色相を備える」ことを特定しているのに対し、甲1製法発明においては、樹脂組成物と眼鏡レンズのYIは不明であるが、眼鏡レンズの目視色調が「やや暗い青」であると特定している点 イ 判断 相違点1’は、実質的に相違点1と同じであるから、上記(2)イ(ア)に説示したものと同様の理由により、相違点1’は実質的な相違点であり、甲1製法発明において相違点1’に係る本件発明2の構成を有するものとすることを、当業者が容易に想到することができたとはいえない。 したがって、相違点3について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件発明11について ア 対比 上記(2)アの対比を踏まえて、本件発明11と甲1組成物発明とを対比すると、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点2> 「光学材料用樹脂モノマーと、添加剤とを含み、色相が、10mmの厚さで測定した場合のCIE1976(L*,a*,b*)色空間において、L*が70以上であり、b*が-30以上10以下であり、 前記添加剤は、紫外線吸収剤と色相調整剤とを含み、 前記紫外線吸収剤は、下記一般式(1)(当審注:式は省略)で表されるベンゾトリアゾール化合物を含み、 前記光学材料用樹脂モノマーが、 イソシアネート化合物(A)と、2以上のメルカプト基を有するポリチオール化合物及び1以上のメルカプト基と1以上の水酸基を有するヒドロキシチオール化合物からなる群から選択される少なくとも一種の活性水素化合物(B)と、を含み、 前記色相調整剤が染料であり、 前記色相調整剤の含有量が1.5ppm以上10ppm以下であり、 光学材料用重合性組成物。」 <相違点1’’> 染料が、本件発明11においては、「アントラキノン系染料であり、」「前記アントラキノン系染料が、 Solvent Blue 36(1,4-ビス(イソプロピルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、 Solvent Blue 94(1-アミノ-2-ブロモ-4-(フェニルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、及び Plast Red 8320(1-(シクロヘキシルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン) からなる群から選択される少なくとも1種である」のに対して、甲1組成物発明においては、「染料L DV27:ディスパースバイオレット27」と「染料S SR52:ソルベントレッド52」とからなる点 <相違点2’> 本件発明11においては、光学材料用重合性組成物と硬化物が、いずれも「10mmの厚さで測定した場合のCIE1976(L*,a*,b*)色空間において、L*が70以上であり、b*が-30以上10以下の色相を備える」ことを特定しているのに対し、甲1組成物発明においては、樹脂組成物と眼鏡レンズのL*とb*は不明であるが、眼鏡レンズの目視色調が「やや暗い青」であると特定している点 イ 判断 相違点1’’は、実質的に相違点1と同じであるから、上記(2)イ(ア)に説示したものと同様の理由により、相違点1’’は実質的な相違点であり、甲1組成物発明において相違点1’’に係る本件発明11の構成を有するものとすることを、当業者が容易に想到することができたとはいえない。 したがって、相違点2’について検討するまでもなく、本件発明11は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)本件発明12について ア 対比 上記(2)アの対比を踏まえて、本件発明12と甲1組成物発明とを対比すると、上記(4)アの一致点2において一致し、以下の点において相違する。 <相違点1’’’> 染料が、本件発明12においては、「アントラキノン系染料であり、」「前記アントラキノン系染料が、 Solvent Blue 36(1,4-ビス(イソプロピルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、 Solvent Blue 94(1-アミノ-2-ブロモ-4-(フェニルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン)、及び Plast Red 8320(1-(シクロヘキシルアミノ)アントラセン-9,10-ジオン) からなる群から選択される少なくとも1種である」のに対して、甲1組成物発明においては、「染料L DV27:ディスパースバイオレット27」と「染料S SR52:ソルベントレッド52」とからなる点 <相違点3’> 本件発明12においては、光学材料用重合性組成物と硬化物が、いずれも「10mmの厚さで測定した場合のYIが-70以上20以下の色相を備える」ことを特定しているのに対し、甲1組成物発明においては、樹脂組成物と眼鏡レンズのYIは不明であるが、眼鏡レンズの目視色調が「やや暗い青」であると特定している点 イ 判断 相違点1’’’は、実質的に相違点1と同じであるから、上記(2)イ(ア)に説示したものと同様の理由により、相違点1’’’は実質的な相違点であり、甲1組成物発明において相違点1’’’に係る本件発明12の構成を有するものとすることを、当業者が容易に想到することができたとはいえない。 したがって、相違点3’について検討するまでもなく、本件発明12は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (6)本件発明3~10、13~19について 本件発明3~10は、本件発明1又は2を更に特定したものであり、本件発明13~19は、本件発明11又は12を更に特定したものである。 したがって、本件発明1、2、11、12と同様の理由により、本件発明3~10、13~19は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (7)小括 以上によれば、本件発明1~19に係る特許は、取消理由1、申立理由1及び2(甲1に基づく新規性・進歩性)により、取り消すことはできない。 2 取消理由3及び申立理由3(明確性要件)について 取消理由3及び申立理由3について、まとめて判断する。 (1)取消理由3及び申立理由3において、明確ではないと指摘する点は、次のとおりである。 ア 特許請求の範囲における「アントラキノン系染料」について、本件明細書【0031】には、アントラキノンの骨格を有さない「Solvent Red 52」が記載されているから、「アントラキノン系染料」の意味が明確ではない。 イ 請求項4に記載された「2-(4-エトキシ-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、及び2-(4-ブトキシ-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール」は、請求項4において引用する請求項1の一般式(1)で表されるベンゾトリアゾール化合物に含まれないものであるから、請求項4の記載は明確ではない。 請求項14に記載された「2-(4-エトキシ-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、及び2-(4-ブトキシ-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール」についても同様である。 ウ 特許請求の範囲における「ブルーイング剤」について、本件明細書の記載(【0035】)を考慮しても、どの波長域においてどの程度の吸収を有するのかが明らかではないから、どのような化合物が「ブルーイング剤」に入るのか否か、明確ではない。 エ 特許請求の範囲における「L*」、「b*」、「YI」は、温度条件や測定装置が異なると異なる数値となり、また、同じ条件で測定しても複数回の測定で異なる数値が得られるが、本件明細書には、温度条件、測定装置、何回の測定のどのような測定値を用いるのかについて特定されていないから、「L*」、「b*」、「YI」は、明確ではない。 オ 特許請求の範囲において「L*」の下限のみ規定されているから、発明の範囲が不明確である。 (2)明確性要件についての判断 ア 請求項1等における「アントラキノン系染料」について 本件訂正により、本件明細書【0031】から、「Solvent Red 52」が削除されたので、「アントラキノン系染料」が、アントラキノン骨格を有する染料であると解されることについて矛盾する記載はないから、「アントラキノン系染料」は明確である。 イ 請求項4、14の「2-(4-エトキシ-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、及び2-(4-ブトキシ-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール」について 本件訂正により、請求項4、14において、「2-(4-エトキシ-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、及び2-(4-ブトキシ-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール」は削除されたので、明確となった。 ウ 請求項5等における「ブルーイング剤」について 本件明細書には、「ブルーイング剤は、可視光領域のうち橙色から黄色の波長域に吸収帯を有し、樹脂からなる光学材料の色相を調整する機能を有する。」(【0035】)と記載されており、また、当業界において、ブルーイング剤とは、、紫外線吸収剤などにより、黄色味がかかった光学材料を、無色化すべく補色である青色味を加える剤として慣用されているものである。 したがって、本件明細書において、橙色から黄色の波長域が、具体的にどの波長の範囲かを特定されていなくても、当業者であれば、「ブルーイング剤」にどのような化合物が含まれるのかは、明確である。 エ 請求項1等における「L*」と「b*」、請求項2等における「YI」について 「10mmの厚さで測定した場合のCIE1976(L*,a*,b*)色空間」における「L*」、「b*」、及び、「10mmの厚さで測定した場合のYI」は、ASTM E313-05において定められた、当業界において慣用されている物性である(https://pdfcoffee.com/astm-e-313-05-calculating-yellowness-and-whiteness-indices-from-2-pdf-free.htmlの「Download File」のp.2「6.Yellownnes Index」参照)。 これらの数値に関し、温度条件、測定装置などにより、ある程度の誤差が生じるとしても、そのことをもって、これらの物性値が、第三者に不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。 オ 請求項1等において「L*」の下限のみ規定されていることについて L*は明度であり、その上限は100であるから、「L*が70以上であり」との発明特定事項には、L*が70以上で100以下のものが含まれることが明らかであるから、その上限が特定されていなくても、「L*が70以上であり」との記載は明確である。 カ その他、請求項1~19において不明確な点は見いだせず、本件発明1~19は明確である。 (3)小括 以上によれば、本件発明1~19に係る特許は、取消理由2及び申立理由3(明確性要件)により、取り消すことはできない。 3 申立理由4(実施可能要件)について 申立人は、本件発明1、3~11、13~19は、「L*」は下限のみ規定され、上限を規定していないから、実施可能要件に違反する旨を主張する。 しかしながら、本件明細書には、実施例において、Solvent Blue 36、Solvent Blue 94、及びPlast Red 8320から選択されたアントラキノン系染料を用いて、重合性組成物のL*が75.1~100.9、レンズのL*が75.1~93.8となるように製造した光学材料が具体的に記載されている。 したがって、本件明細書の実施例を参考にすれば、当業者が、本件発明1、3~11、13~19に係る製造方法又は光学材料用重合性組成物を、過度な試行錯誤を要することなく実施することができるといえる。 以上によれば、本件発明1、3~11、13~19に係る特許は、申立理由4(実施可能要件)により、取り消すことはできない。 4 申立理由5(新規事項)について (1)申立人は、独立請求項である請求項1、2、11、12に「前記色相調整剤がアントラキノン系染料を含み、」及び「前記色相調整剤の含有量が1.5ppm以上15ppm未満である」との発明特定事項を加えた補正は、以下の(i)、(ii)の点により、新規事項を追加するものである旨を主張する。 (i)本件明細書の表1中の色相調整剤は全てアントラキノン系染料であるから、アントラキノン系以外の染料が大部分を占める色相調整剤も包含される「アントラキノン系染料を含む色相調整剤の含有率の補正の根拠にはならない。 (ii)「15ppm未満である」との補正は、本件明細書の表1を根拠とすると特許権者は主張するが、表1における比較例1の「15ppm」は、「本件特許発明」において「15ppm未満」が色相調整剤の上限であることの補正の根拠にはならず、色相調整剤の含有量の上限を15ppm未満とした補正は新規事項を追加するものである。 (2)本件訂正により、「前記色相調整剤がアントラキノン系染料を含み、」との発明特定事項は、「前記色相調整剤がアントラキノン系染料であり、」と訂正された。 そして、当初明細書等に記載された表1の実施例における色相調整剤は、全てアントラキノン系染料であり、他の染料を含まないから、「前記色相調整剤がアントラキノン系染料であり、」と訂正された本件発明は、新規事項を含むものではない。 本件訂正により、「前記色相調整剤の含有量が1.5ppm以上15ppm未満である」との発明特定事項は、「前記色相調整剤の含有量が1.5ppm以上10ppm以下である」と訂正された。 当初明細書等における表1の実施例1~23における色相調整剤の含有量は、0.5~10ppmであり、実施例3においては1.5ppmであるから、「前記色相調整剤の含有量が1.5ppm以上10ppm以下である」と訂正された本件発明は、新規事項を含むものではない。 (3)小括 以上によれば、本件発明1~19は、当初明細書等に記載されていない新規事項を含むものではないから、本件発明1~19に係る特許は、申立理由5(新規事項)により、取り消すことはできない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、請求項1~19に係る特許は、特許異議申立書に記載された申立理由及び取消理由通知書に記載した取消理由によっては、取り消すことはできない。 また、ほかに請求項1~19に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-701380

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