特許異議申立
2026-700186
酸化チタン粒子及びその製造方法
- 審判番号
- 2026-700186
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2025-063286
- 登録番号
- 7732612
- 請求日
- 2026年03月02日
- 審決日
- 2026年06月23日
- 公報発行日
- 2026年07月31日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社レゾナック
- 【権利者代理人】青木 篤
- 【権利者代理人】三橋 真二
- 【権利者代理人】高橋 正俊
- 【権利者代理人】河原 肇
- 【異議申立人】竹口 美穂
- 審判長/審判官
- 審判長 粟野 正明
- 審判官 酒井 英夫
- 審判官 富永 泰規
- 分類
- P1652.113-Y (C01G) / P1652.121-Y (C01G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7732612号発明「酸化チタン粒子及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7732612号の請求項1~9、13~16に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件の特許第7732612号(請求項の数16。以下「本件特許」という。)の請求項1~16に係る特許についての出願は、2022年(令和 4年) 4月28日(優先権主張 令和 3年 5月17日)を国際出願日とする特願2023-522598号の一部を令和 7年 4月 7日に新たな特許出願(特願2025-63286号。以下「本願」という。)としたものであって、令和 7年 8月25日にその特許権の設定登録がされ、同年 9月 2日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、令和 8年 3月 2日に、その請求項1~9、13~16に係る特許について、特許異議申立人である竹口 美穂(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立て(以下「申立て」という。)がされた。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~16に係る発明は、本願の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~16に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
(以下、本件特許の請求項1~16に係る発明をそれぞれ「本件発明1」等といい、これらを総称して「本件発明」という。また、本願の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)
【請求項1】
レーザー回折・散乱分析法により測定した酸化チタン粒子におけるD90(LD)/D50(LD)が1.0超2.0以下であり、かつ、電界放射型走査型電子顕微鏡で観察した一次粒子のD50(SEM)に対して、一次粒子径がD50(SEM)の16倍を超える粗大粒子濃度(個数基準)が20ppm以下であり、D90(LD)が3000nm以下であり、D50(LD)が1000nm以下であり、BET比表面積(m2/g)が5~200m2/gであり、電界放射型走査型電子顕微鏡で観察した酸化チタン粒子の一次粒子における〔D90(SEM)-D10(SEM)〕/D50(SEM)が0.82以下である、酸化チタン粒子。
【請求項2】
レーザー回折・散乱分析法により測定した酸化チタン粒子におけるD90(LD)/D50(LD)が1.0超2.0以下であり、かつ、電界放射型走査型電子顕微鏡で観察した一次粒子のD50(SEM)に対して、一次粒子径がD50(SEM)の16倍を超える粗大粒子濃度(個数基準)が20ppm以下であり、D90(LD)が3000nm以下であり、D50(LD)が1000nm以下であり、BET比表面積(m2/g)が5~200m2/gであり、
動的光散乱法により測定された酸化チタン粒子におけるD90(DLS)/D50(DLS)が、1.0超2.0以下である、酸化チタン粒子。
【請求項3】
レーザー回折・散乱分析法により測定した酸化チタン粒子におけるD90(LD)/D50(LD)が1.0超2.0以下であり、かつ、電界放射型走査型電子顕微鏡で観察した一次粒子のD50(SEM)に対して、一次粒子径がD50(SEM)の16倍を超える粗大粒子濃度(個数基準)が20ppm以下であり、D90(LD)が3000nm以下であり、D50(LD)が1000nm以下であり、BET比表面積(m2/g)が5~200m2/gであり、動的光散乱法により測定された酸化チタン粒子におけるD90(DLS)と電界放射型走査型電子顕微鏡で観察した酸化チタン粒子の一次粒子におけるD90(SEM)の比である、D90(DLS)/D90(SEM)が2.2以下である、酸化チタン粒子。
【請求項4】
レーザー回折・散乱分析法により測定した酸化チタン粒子におけるD90(LD)/D50(LD)が1.0超2.0以下であり、かつ、電界放射型走査型電子顕微鏡で観察した一次粒子のD50(SEM)に対して、一次粒子径がD50(SEM)の16倍を超える粗大粒子濃度(個数基準)が20ppm以下であり、D90(LD)が3000nm以下であり、D50(LD)が1000nm以下であり、BET比表面積(m2/g)が5~200m2/gであり、動的光散乱法により測定した酸化チタン粒子におけるD90(DLS)及び電界放射型走査型電子顕微鏡で観察した酸化チタン粒子の一次粒子のD90(SEM)が200nm以下、D50(SEM)が10~150nmである、酸化チタン粒子。
【請求項5】
電界放射型走査型電子顕微鏡で観察した酸化チタン粒子の一次粒子におけるD90(SEM)/D50(SEM)が1.0超2.0以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の酸化チタン粒子。
【請求項6】
電界放射型走査型電子顕微鏡で観察した酸化チタン粒子の一次粒子におけるD99(SEM)/D50(SEM)が1.0超2.0以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の酸化チタン粒子。
【請求項7】
アナターゼ含有率が70%以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の酸化チタン粒子。
【請求項8】
硝酸銀電位差滴定法により測定した酸化チタン粒子のCl含有量が0.2質量%以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の酸化チタン粒子。
【請求項9】
Na,Al,S,Fe,Ni,Cr,Nb及びZrの含有量がそれぞれ10質量ppm以下、Si及びCの含有量がそれぞれ500質量ppm以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の酸化チタン粒子。
【請求項10】
四塩化チタン及び不活性ガスを含有する原料ガスと、酸素ガス及び水蒸気の少なくとも1種並びに不活性ガスを含有する酸化性ガスとを、反応管に導入して反応させた後に冷却することで酸化チタン粒子を製造する工程において、反応管内壁にパージ媒体の吹き出し口を設け、パージ媒体を反応管内壁に沿って旋回するように導入し、反応管の軸線に対して垂直な反応管の横断面に投影した面において、パージ媒体の吹き出し口と反応管中心軸線を結ぶ線に対して、反応管内壁からパージ媒体の吹き出し角度αが、50°以上であり、パージ媒体の吹き出し流速(B)が35m/s以上であり、反応管の入口(端面側)から反応管の軸線方向に導入される原料ガスG1及び酸化性ガスG2について、反応管入口の断面積(S1)と原料ガスG1及び酸化性ガスG2の導入管出口の断面積の総和(S2)の比(S1/S2)が1以上7.0以下である、酸化チタン粒子の製造方法。
【請求項11】
反応管の軸線を含む反応管の縦断面に投影した面において、反応管の軸線方向に対して、反応管内壁からのパージ媒体吹き出し角度βが、反応ガス流の順行側を0°として、60°以上である、請求項10に記載の酸化チタン粒子の製造方法。
【請求項12】
反応管内の原料ガスと酸化性ガスとか
ら形成される反応ガスの流速をA、パージ媒体の吹き出し流速をBとした時、B/Aが0.5以上となるようにパージ媒体を導入する、請求項10又は11に記載の酸化チタン粒子の製造方法。
【請求項13】
請求項1~4のいずれか1項に記載の酸化チタン粒子を含む、スラリー。
【請求項14】
請求項1~4のいずれか1項に記載の酸化チタン粒子を含む、分散体。
【請求項15】
請求項1~4のいずれか1項に記載の酸化チタン粒子を含む、組成物。
【請求項16】
請求項1~4のいずれか1項に記載の酸化チタン粒子を含む、誘電体原料。
第3 特許異議の申立て理由の概要
1 特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由
本件特許の請求項1~9、13~16に係る特許は、下記(1)~(6)のとおり、特許法第113条第2号に該当する(証拠方法は下記(7)を参照。以下、甲第1号証等を単に「甲1」等という。)。
(1)申立理由1-1(新規性:甲1を主引用例とする理由)
本件発明1~5、7~9、13~15は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許の請求項1~5、7~9、13~15に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件発明1~5、7~9、13~15に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立理由1-2(新規性:甲2を主引用例とする理由)
本件発明2、4~5、7~9、13~15は、甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許の請求項2、4~5、7~9、13~15に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件発明2、4~5、7~9、13~15に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)申立理由2-1(進歩性:甲1を主引用例とする理由)
本件発明1~9、13~15は、甲1に記載された発明及び周知技術に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~9、13~15に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件発明1~9、13~15に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(4)申立理由2-2(進歩性:甲2を主引用例とする理由)
本件発明1~5、7~9、13~15は、甲2に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~5、7~9、13~15に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件発明1~5、7~9、13~15に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(5)申立理由2-3(進歩性:甲1を主引用例とする理由)
本件発明16は、甲1に記載された発明、甲3及び甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明16に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件発明16に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(6)申立理由2-4(進歩性:甲2を主引用例とする理由)
本件発明16は、甲2に記載された発明、甲3及び甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明16に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件発明16に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(7)証拠方法
・甲1:特許第4077495号公報
・甲2:特開2006-28017号公報
・甲3:特開2015-182890号公報
・甲4:特開2012-66987号公報
第4 当合議体の判断
以下に述べるように、当合議体は、上記第3の申立理由によって、本件特許の請求項1~9、13~16に係る特許を取り消すことができないと判断する。
1 申立理由1-1(新規性)、2-1(進歩性)、2-3(進歩性)(いずれも、甲1を主引用例とするもの)について
(1)甲1に記載された発明
本願の優先日前に公知となった甲1には、その【0007】、【0009】、【0010】、【0016】~【0017】、【0021】~【0023】、【0027】、【0033】~【0047】及び図6bの記載によれば、特に実施例2のサンプル2bに着目すると、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「アルコールとしてIPA(イソプロピルアルコール)を35体積%で水中に含むアルコール水溶液を調製し、
このアルコール水溶液100体積部に対して四塩化チタンを5体積部で機械的にゆっくりと添加し、
上記で得られた液に、元のアルコール水溶液100体積部に対してケイ酸ソーダを0.5体積部で添加および撹拌し、
これにより得られた液から採取したサンプル2bの酸化チタン粒子分散液であって、
この酸化チタン粒子分散液を動的光散乱法による測定装置であるナノトラック粒度分布測定装置 UPA-EX150(日機装株式会社製)により、測定時間は60秒とし、測定下限は0.8μm、測定上限は6540.0μmとして測定した粒径分布が、体積基準で、以下に示す表1~表3のサンプル2bのものである、
酸化チタン粒子分散液に含まれる酸化チタン粒子。
【表1】
[図:0001437429000001.jpg]
【表2】
[図:0001437429000002.jpg]
【表3】
[図:0001437429000003.jpg]
」(以下「甲1発明」という。)
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「酸化チタン粒子分散液に含まれる酸化チタン粒子」は、本件発明1の「酸化チタン粒子」に相当する。
(イ)そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「酸化チタン粒子」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1-1>
本件発明1が、酸化チタン粒子について「レーザー回折・散乱分析法により測定した酸化チタン粒子におけるD90(LD)/D50(LD)が1.0超2.0以下であ」るのに対して、甲1発明の酸化チタン粒子は「レーザー回折・散乱分析法により測定した酸化チタン粒子におけるD90(LD)/D50(LD)」が不明である点
<相違点1-2>
本件発明1が、酸化チタン粒子について「電界放射型走査型電子顕微鏡で観察した一次粒子のD50(SEM)に対して、一次粒子径がD50(SEM)の16倍を超える粗大粒子濃度(個数基準)が20ppm以下であ」るのに対して、甲1発明の酸化チタン粒子は「電界放射型走査型電子顕微鏡で観察した一次粒子のD50(SEM)に対して、一次粒子径がD50(SEM)の16倍を超える粗大粒子濃度(個数基準)」が不明である点
<相違点1-3>
本件発明1が、酸化チタン粒子について「D90(LD)が3000nm以下であり、D50(LD)が1000nm以下であ」るのに対して、甲1発明の酸化チタン粒子は「D90(LD)」及び「D50(LD)」のいずれも不明である点
<相違点1-4>
本件発明1が、酸化チタン粒子について「BET比表面積(m2/g)が5~200m2/gであ」るのに対して、甲1発明の酸化チタン粒子は「BET比表面積(m2/g)」が不明である点
<相違点1-5>
本件発明1が、酸化チタン粒子について「電界放射型走査型電子顕微鏡で観察した酸化チタン粒子の一次粒子における〔D90(SEM)-D10(SEM)〕/D50(SEM)が0.82以下であ」るのに対して、甲1発明の酸化チタン粒子は「電界放射型走査型電子顕微鏡で観察した酸化チタン粒子の一次粒子における〔D90(SEM)-D10(SEM)〕/D50(SEM)」が不明である点
イ 相違点1-4について
事案に鑑み、上記相違点1-4について検討する。
(ア)甲1発明は、表3にCS(比表面積)(m2/cc)の値として、1154.31との値が示されている。そこで、この値から本件発明1の「BET比表面積(m2/g)」に換算することができるかについて検討する。
(イ)まず、甲1において、この「CS(比表面積)(m2/cc)」について、表3の記載以外の記載を見出すことができない。そうすると、このCS(比表面積)が、どのように測定されたものであるかについては不明であるから、このCS(比表面積)が「BET比表面積」であるのか不明であって、どのように換算すべきものであるか判断することができない。
(ウ)仮に、CS(比表面積)が「BET比表面積」であるとして、酸化チタン粒子の密度を用いてその単位を(m2/cc)から(m2/g)に換算できるとしても、換算に用いる妥当な密度が不明である。
(エ)ここで、申立人が特許異議申立書において主張するアナターゼ型二酸化チタンの密度(真密度)の「3.9g/cm3」を用いて甲1発明の「CS(比表面積)(m2/cc)」の単位を、(m2/g)に換算できるとして計算すると、1cc=1cm3であるから、
1154.31(m2/cc)/3.9(g/cc)
=296.0(m2/g)
となる。一方、粉体の実際の密度はかさ密度で表され、かさ密度は、真密度より低い値となるという技術常識を踏まえると、CS(比表面積)(m2/cc)の値が1154.31であることから換算される「比表面積(m2/g)」の値は、上記の値より大きい値となると認められる。
そうすると、上記のように仮に換算できるとして、CS(比表面積)が「BET比表面積」であるとしても、甲1発明の酸化チタン粒子のCS(比表面積)(m2/cc)の値が1154.31であることから、比表面積(m2/g)が5~200であるとはいえない。
(オ)また、甲1において、甲1発明の酸化チタン粒子のBET比表面積(m2/g)が5~200であるといえる他の記載を見出すことができないし、このことが技術常識であるともいえない。
以上によれば、相違点1-4は、実質的な相違点である。
(カ)また、甲1には、甲1発明において、酸化チタンの「BET比表面積(m2/g)を5~200」に調整することを動機付けるような記載は見当たらない。さらに、甲1~4の記載及び技術常識を勘案しても、甲1発明において、酸化チタンの「BET比表面積(m2/g)を5~200」に調整することが周知技術であるともいえない。
(キ)申立人は、申立書(25頁~26頁)において、甲1の段落【0022】に、分散液に含まれるナノ粒子の平均粒径について、「約1~100nmの範囲内」や「約1~10nmの範囲内」とすることができることが記載されており、例えば、一次粒子径の平均粒径を「10nm」とすれば、これを比表面積に換算すれば「154m2/g」となるから、甲1には、比表面積が「5~200m2/g」の酸化チタン粒子が記載されていると主張する。
しかしながら、甲1発明は、実施例2の特定の方法により得られたサンプルであって、表1に記載される所定の粒径分布を持つものであるから、甲1発明において、その粒子の平均粒径を10nmとする動機があるとはいえない。
また、上記の一次粒子径の平均粒径から比表面積への換算は、申立書(25頁)に記載される以下の換算式によるものと認められるが、この換算式は、粒子が真球であり、その表面がなめらかであり、粒径が均一であり、粒子の表面が全て露出していることを前提とするものである。
比表面積(m2/g)=6000/(ρ(密度)×d(粒径))
そうすると、この換算式を用いて、一次粒子径の粒径を「10nm」として、比表面積に換算した値が「154m2/g」となるからといって、甲1発明のBET比表面積が同様の値となるとはいえないから、甲1には、比表面積が「5~200m2/g」の酸化チタン粒子が記載されているとはいえない。
よって、この主張を採用しない。
(ク)そうすると、甲1発明において、相違点1-4に係る特定事項を備えようとすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
ウ 以上によれば、相違点1-4以外の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、本件発明1は、甲1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明2~4について
ア 本件発明2~4は、本件発明1と、酸化チタン粒子が「レーザー回折・散乱分析法により測定した酸化チタン粒子におけるD90(LD)/D50(LD)が1.0超2.0以下であり、かつ、電界放射型走査型電子顕微鏡で観察した一次粒子のD50(SEM)に対して、一次粒子径がD50(SEM)の16倍を超える粗大粒子濃度(個数基準)が20ppm以下であり、D90(LD)が3000nm以下であり、D50(LD)が1000nm以下であり、BET比表面積(m2/g)が5~200m2/gであ」る点で少なくとも共通する。
イ 上記アを前提として、上記(2)アの検討を踏まえると、本件発明2~4と甲1発明とを対比すると、少なくとも相違点1-1~相違点1-4と同様の点で相違することが明らかである。
ウ そして、上記(2)イで検討したとおり、上記相違点1-4は実質的な相違点であるし、また、甲1発明において、上記相違点1-4に係る特定事項を備えようとすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
エ 以上によれば、相違点1-4と同様の点以外の相違点について検討するまでもなく、本件発明2~4は、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、本件発明2~4は、甲1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)本件発明5~9、13~16について
ア 本件発明5~9は、請求項1~4のいずれか1項に記載の酸化チタン粒子であることを発明特定事項に含むものである。
そうすると、上記(2)、(3)における検討を踏まえると、本件発明5、7~9は、甲1に記載された発明であるとはいえない。また、本件発明5~9は、甲1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 本件発明13~16は、請求項1~4のいずれか1項に記載の酸化チタン粒子を含むことを特定するものである。
そうすると、上記(2)、(3)における検討を踏まえると、本件発明13~15は、甲1に記載された発明であるとはいえず、甲1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、甲3及び甲4には、酸化チタンが誘電体原料となり得ることが教示されているが、そのことが、上記(2)、(3)における判断を左右するものではないから、本件発明16は、甲1に記載された発明及び甲3、甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(5)申立理由1-1(新規性)、2-1(進歩性)、2-3(進歩性)(いずれも、甲1を主引用例とするもの)についてのまとめ
以上によれば、本件発明1~5、7~9、13~15は、甲1に記載された発明とはいえず、甲1に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本件発明6は、甲1に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
さらに、本件発明16は、甲1に記載された発明、甲3及び甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、申立理由1-1(新規性)、2-1(進歩性)、2-3(進歩性)によっては、本件特許の請求項1~9、13~16に係る特許を取り消すことはできない。
2 申立理由1-2(新規性)、2-2(進歩性)、2-4(進歩性)(いずれも、甲2を主引用例とするもの)について
(1)甲2に記載された発明
本願の優先日前に公知となった甲2には、その【0001】、【0003】、【0006】、【0009】、【0013】、【0061】~【0071】の記載によれば、特に、実施例1の【表1】において粉末の回収欄が時間2に示されるTiO2粉末に着目すると、甲2には、以下の発明が記載されていると認められる。
「粉末のBETによる平均表面積が114.1(m2/g)であり、
動的光散乱による粒度データが、d10が27nm、d50が41nm、d90が76nmであり、
52nmより大きい粒子の重量が28.6%、
104nmより大きい粒子の重量が4.2%、
208nmより大きい粒子の重量が1.4%である
TiO2粉末。」(以下「甲2発明」という。)
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
(ア)甲2発明の「TiO2粉末」は、本件発明1の「酸化チタン粒子」に相当する。
(イ)甲2発明のTiO2粉末が「粉末のBETによる平均表面積が114.1(m2/g)であ」ることは、本件発明1の酸化チタン粒子の「BET比表面積(m2/g)が5~200m2/gであ」ることを満たす。
(ウ)そうすると、本件発明1と甲2発明とは、
「BET比表面積(m2/g)が5~200m2/gである、
酸化チタン粒子」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点2-1>
本件発明1が、酸化チタン粒子について「レーザー回折・散乱分析法により測定した酸化チタン粒子におけるD90(LD)/D50(LD)が1.0超2.0以下であ」るのに対して、甲2発明の酸化チタン粒子は「レーザー回折・散乱分析法により測定した酸化チタン粒子におけるD90(LD)/D50(LD)」が不明である点
<相違点2-2>
本件発明1が、酸化チタン粒子について「電界放射型走査型電子顕微鏡で観察した一次粒子のD50(SEM)に対して、一次粒子径がD50(SEM)の16倍を超える粗大粒子濃度(個数基準)が20ppm以下であ」るのに対して、甲2発明の酸化チタン粒子は「電界放射型走査型電子顕微鏡で観察した一次粒子のD50(SEM)に対して、一次粒子径がD50(SEM)の16倍を超える粗大粒子濃度(個数基準)」が不明である点
<相違点2-3>
本件発明1が、酸化チタン粒子について「D90(LD)が3000nm以下であり、D50(LD)が1000nm以下であ」るのに対して、甲2発明の酸化チタン粒子は「D90(LD)」及び「D50(LD)」のいずれも不明である点
<相違点2-4>
本件発明1が、酸化チタン粒子について「電界放射型走査型電子顕微鏡で観察した酸化チタン粒子の一次粒子における〔D90(SEM)-D10(SEM)〕/D50(SEM)が0.82以下であ」るのに対して、甲2発明の酸化チタン粒子は「電界放射型走査型電子顕微鏡で観察した酸化チタン粒子の一次粒子における〔D90(SEM)-D10(SEM)〕/D50(SEM)」が不明である点
イ 相違点2-2について
事案に鑑み、上記相違点2-2について検討する。
(ア)甲2発明は、TiO2粉末の動的光散乱による粒度データについて特定するものの、電界放射型走査型電子顕微鏡で観察した一次粒子のD50(SEM)の値は不明である。そうすると、甲2発明において「一次粒子径がD50(SEM)の16倍を超える粗大粒子濃度(個数基準)が20ppm以下」であるとはいえない。
(イ)a 申立人は、申立書(33頁~35頁)において、「一次粒子径がD50(SEM)の16倍を超える粗大粒子濃度(個数基準)が20ppm以下」について、
1)「酸化チタンの一次粒子径は比表面積径と同程度である」とし、
2)比表面積径をTiO2粉末のBETによる平均表面積を「114.1m2/g」(【表1】)であること、アナターゼ型二酸化チタンの密度が「約3.9g/cm3」であることから、TiO2粉末の比表面積径を、6000/(3.9×114.1)=15.2nm程度であるとし、
3)上記1)、2)から粗大粒子の一次粒子径の最小値を、243nm程度であるとし、
4)甲2の表から仮定を置きつつ換算すると244nmの粒子が20ppm以下であることを主張する。
b しかしながら、上記aの1)のD50(SEM)が、比表面積径と同程度であるという主張について、その根拠が示されておらず、粒子の性状により影響を受けるものと認められるから、妥当とはいえない。
c 仮に上記aの1)を認めるとしても、上記aの2)の計算式は、形状が真球であることを前提とするものであるが、甲2発明のTiO2粉末の形状が真球であると認めることはできないから、上記計算式が妥当なものとはいえない。また、上記aの2)の計算の前提について、甲2発明のTiO2粉末が真密度と同じ密度を有するともいえず、また、全てがアナターゼ型であると認められるものではないから、アナターゼ型二酸化チタンの密度と同じであるともいえない。
そうすると、上記aの2)の主張についても妥当とはいえない。
d 仮にD50(SEM)の値が「15.2nm程度」であるとして、粗大粒子が、D50の16倍である243nm程度であるとして更に検討しても、表1からは、208nmより大きい粒子の重量が1.4%であることが示されているものの、このことから、243nm以上の粒子が、20ppm以下であるとまではいえない。なお、243nm以上の粒子が、20ppm以上であったとしても、表1に示されるデータと必ずしも矛盾するものでもない。
e 上記b~dの検討のとおり、上記aの申立人の主張を採用しない。
(ウ)以上によれば、相違点2-2は、実質的な相違点である。
(エ)また、甲2には、一般的には約100nm及びそれ以上を上回る直径を有して製品中に存在する粗くず(coarse tail)の存在が大きな問題であり(【0006】)、透明度に有害であると考えられており、粗くずのないナノ粒子を製造できる方法の必要性がある(【0007】)ことが記載されている。そして、この粗くずは、より小さい金属酸化物の粒子および/または反応物から形成され、また、部分的に合体した粒子から形成されうる粒子の凝集体が原因で生じる(【0006】)とされている。これらの記載によれば、甲2は、一次粒子ではなく、二次粒子である粗くずの存在を問題とするものと認められる。
一方、本件発明1の粗大粒子濃度(個数基準)は、「電界放射型走査型電子顕微鏡で観察した一次粒子」の粒度ごとの個数を基準とするものであるところ、この一次粒子の粒度に着目し、「電界放射型走査型電子顕微鏡で観察した一次粒子のD50(SEM)に対して、一次粒子径がD50(SEM)の16倍を超える粗大粒子濃度(個数基準)が20ppm以下であ」るようにすることについて、甲2には記載も示唆もされておらず、そのようにする動機があるともいえない。
(オ)また、甲1~4の記載及び技術常識を勘案しても、酸化チタンの「電界放射型走査型電子顕微鏡で観察した一次粒子のD50(SEM)に対して、一次粒子径がD50(SEM)の16倍を超える粗大粒子濃度(個数基準)が20ppm以下であ」るようにすることが周知技術であるともいえない。
(カ)そうすると、甲2発明において、上記相違点2-2に係る特定事項を備えようとすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
ウ 以上によれば、本件発明1は、相違点2-2以外の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明2~4について
ア 本件発明2~4は、本件発明1と酸化チタン粒子が「レーザー回折・散乱分析法により測定した酸化チタン粒子におけるD90(LD)/D50(LD)が1.0超2.0以下であり、かつ、電界放射型走査型電子顕微鏡で観察した一次粒子のD50(SEM)に対して、一次粒子径がD50(SEM)の16倍を超える粗大粒子濃度(個数基準)が20ppm以下であり、D90(LD)が3000nm以下であり、D50(LD)が1000nm以下であり、BET比表面積(m2/g)が5~200m2/gであ」る点で共通する。
イ 上記アを前提として、上記(2)の検討を踏まえ、本件発明2~4と甲2発明とを対比すると、少なくとも相違点2-1~相違点2-3と同様の点で相違することが明らかである。
ウ そして、上記(2)で検討したとおり、上記相違点2-2は実質的な相違点であるし、甲2発明において、該相違点2-2に係る特定事項を備えようとすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
エ 以上によれば、相違点2-2と同様の相違点以外の相違点について検討するまでもなく、本件発明2、4は、甲2に記載された発明であるとはいえず、また、本件発明2~4は、甲2に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)本件発明5、7~9、13~16について
ア 本件発明5、7~9は、請求項1~4のいずれか1項に記載の酸化チタン粒子であることを発明特定事項に含むものである。
そうすると、上記(2)、(3)における検討を踏まえると、本件発明5、7~9は、甲2に記載された発明であるとはいえず、甲2に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 本件発明13~16は、請求項1~4のいずれか1項に記載の酸化チタン粒子を含むことを特定するものである。
そうすると、上記(2)、(3)における検討を踏まえると、本件発明13~15は、甲2に記載された発明であるとはいえず、甲2に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、甲3及び甲4には、酸化チタンが誘電体原料となり得ることが教示されているが、そのことが、上記(2)、(3)における判断を左右するものではないから、本件発明16は、甲2に記載された発明及び甲3、甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(5)申立理由1-2(新規性)、2-2(進歩性)、2-4(進歩性)(いずれも、甲2を主引用例とするもの)についてのまとめ
以上によれば、本件発明2、4~5、7~9、13~15は、甲2に記載された発明とはいえず、甲2に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本件発明1、3は、甲2に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
さらに、本件発明16は、甲2に記載された発明、甲3及び甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、申立理由1-2(新規性)、2-2(進歩性)、2-4(進歩性)によっては、本件特許の請求項1~5、7~9、13~16に係る特許を取り消すことはできない。
第5 むすび
以上のとおり、特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~9、13~16に係る特許を取り消すことができない。
また、他に本件特許の請求項1~9、13~16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2026-700186