特許異議申立
2025-701169
ポリテトラフルオロエチレン系樹脂、電極合剤、電極、及び二次電池
- 審判番号
- 2025-701169
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2025-004777
- 登録番号
- 7697606
- 請求日
- 2025年12月23日
- 審決日
- 2026年03月18日
- 公報発行日
- 2026年04月24日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】AGC株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人志賀国際特許事務所
- 【異議申立人】竹口 美穂
- 審判長/審判官
- 審判長 木村 貴俊
- 審判官 ▲吉▼澤 雅博
- 審判官 畑中 博幸
- 分類
- P1651.113-Y (H01M) / P1651.121-Y (H01M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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特許第7697606号発明「ポリテトラフルオロエチレン系樹脂、電極合剤、電極、及び二次電池」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7697606号の請求項1~10に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7697606号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~10に係る特許についての出願は、令和7年1月14日(優先日 令和6年7月18日)の出願であって、令和7年6月16日にその特許権の設定登録がされ、同年6月24日に特許掲載公報が発行された。
その後、本件特許の請求項1~10に係る特許に対し、特許掲載公報の発行から6月以内である令和7年12月23日に、特許異議申立人 竹口 美穂(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~10に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明10」という。また、「本件発明1」~「本件発明10」をまとめて、「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~10に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
二次電池用バインダーとして用いられるポリテトラフルオロエチレン系樹脂であって、
前記ポリテトラフルオロエチレン系樹脂の全単位に対するテトラフルオロエチレンに基づく単位の含有量は、99質量%以上であり、
安息角が、32~44°であり、
細孔容積が、0.2~9.0cm3/gである、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂。
【請求項2】
細孔メディアン径が、10μm以上100μm以下である、請求項1に記載のポリテトラフルオロエチレン系樹脂。
【請求項3】
二次電池用バインダーとして用いられるポリテトラフルオロエチレン系樹脂であって、
安息角が、32~44°であり、
細孔容積が、0.2~9.0cm3/gであり、
細孔メディアン径が、10μm以上100μm以下である、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂。
【請求項4】
外径5mm、内径4mmの中空円柱状の成形体の耐電圧が5kV以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリテトラフルオロエチレン系樹脂。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載のポリテトラフルオロエチレン系樹脂と、活物質とを含む、電極合剤。
【請求項6】
さらに、硫化物系固体電解質を含み、
前記ポリテトラフルオロエチレン系樹脂の含有量が、前記硫化物系固体電解質の100質量部に対して、1~10質量部である、請求項5に記載の電極合剤。
【請求項7】
シート状である、請求項5に記載の電極合剤。
【請求項8】
さらに導電助剤を含み、
前記ポリテトラフルオロエチレン系樹脂の含有量が、前記電極合剤の全質量に対して、0.5~10質量%であり、
前記活物質の含有量が、前記電極合剤の全質量に対して、88~99質量%であり、
前記導電助剤の含有量が、前記電極合剤の全質量に対して、0.5~10質量%である、請求項5に記載の電極合剤。
【請求項9】
集電体と、前記集電体上に配置される請求項5に記載の電極合剤を含む電極層とを含む、電極。
【請求項10】
請求項9に記載の電極を含む、二次電池。」
第3 申立理由の概要
1 申立人の特許異議の申立ての理由の概要は、次のとおりである。
(1)申立理由1 特許法第29条第1項第3号(新規性)
本件発明1~5、7~10は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当するものである。
よって、本件発明1~5、7~10は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるから、本件特許は取り消されるべきものである。
(2)申立理由2 特許法第29条第2項(進歩性)
本件発明1~10は、甲第1号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件発明1~10は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、本件特許は取り消されるべきものである。
2 申立人が提出した証拠は次のとおりである。
甲第1号証:国際公開第2022/018954号
甲第2号証:特開2023-135641号公報
甲第3号証:特開2002-5807号公報
甲第4号証:分析報告書(株式会社MCエバテック、令和7年7月22日発行、異議申立人により一部情報をマスキング)
甲第5号証:試験報告書(住ベリサーチ株式会社、令和7年11月13日発行、異議申立人により一部情報をマスキング)
第4 甲号証の記載事項
1 甲第1号証及び甲1発明
(1)甲第1号証の記載
甲第1号証には、以下の各記載がある。(なお、下線は当審で付与した。以下同様である。)
「[0003] 近年、電極合剤を圧延してシート状に成形した後、当該電極合剤を芯材に貼り合わせて電極を作製する方法が提案されている。特許文献1には、フィブリル化(繊維化)したポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の繊維状結着剤を用いた電極フィルム(電極合剤)が開示されている。」
「[0011] 本開示に係る電池用電極は、リチウムイオン電池等の非水電解質二次電池の電極に好適であるが、水系電解液を含む電池に適用することも可能である。また、二次電池に限定されず、一次電池に適用することも可能である。以下では、非水電解質二次電池、及び非水電解質二次電池用電極(特に正極)を例に挙げて説明する。」
「[0020] [正極]
正極11は、正極活物質と、導電剤と、繊維状結着剤とを少なくとも含む正極合剤を有する。正極合剤の厚みは、例えば、30μm~300μmであってもよく、好ましくは30μm~120μmであり、より好ましくは50μm~100μmである。」
「[0027] 正極合剤30に含まれる繊維状結着剤は、例えば、粒子状の結着剤をフィブリル化することで得られる。繊維状結着剤の材質は、フィブリル化できるものであれば特に限定されないが、フィブリル化し易く正極活物質に対する接着性も良好であるため、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好適である。また、繊維状結着剤は、実質的にPTFEのみで構成されていてもよく、本開示の目的が損なわれない程度で他の成分を含有していてもよい。」
「[0050] <実施例1>
[正極合剤粒子の作製]
実施例1においては、湿式乾燥プロセスを用いて正極合剤粒子を作製した。正極活物質として、BET比表面積が0.26m2/gのニッケルコバルトマンガン酸リチウム(NMC)を用いた。また、導電剤として、ペースト状のアセチレンブラック(AB)を用いた。固形分換算で、100質量部の当該正極活物質と、1.5質量部の当該ABとを混合し、さらに、この混合物に対して質量比で83.8%のN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を加え、プラネタリミキサーを用いて30分間混合した。その後、さらに、1質量部のPTFE粒子(ダイキン工業社製、D210C)と、上記と同量のNMPとを加え、プラネタリミキサーを用いて5分間混合した後に、120℃で10時間乾燥させて溶媒を除去した。この混合処理によって、PTFE粒子がフィブリル化し、正極活物質、繊維状PTFE、及びABが均一に分散した正極合剤粒子が得られた。
[0051] [正極合剤シートの作製]
得られた正極合剤粒子を2つのロールの間に通して圧延し、正極合剤シートを作製した。2つのロール間で延伸処理して、目付け量が300g/m2となるまで薄膜化した。
[0052] [正極の作製]
得られた正極合剤シートを正極芯材の表面に配置し、2つのロールを用いて、正極合剤シートと正極芯材の積層体をプレス(線圧:1.0t/cm)して正極を得た。芯材としては、アルミニウム合金箔を用いた。作製した正極について、正極合剤を2等分した場合の各層のSpoを測定したところ、表面近傍では2.06m2/g、芯材近傍では2.07m2/gであった。」
「[0054] <実施例3>
[正極合剤粒子の作製]
実施例3においては、乾式プロセスを用いて正極合剤粒子を作製した。正極活物質として、BET比表面積が0.26m2/gのニッケルコバルトマンガン酸リチウム(NMC)を用いた。また、導電剤として、粒状のABを用いた。当該正極活物質と、PTFE粒子(ダイキン工業社製、F106)と、当該ABとを、100:4:1.5の質量比で混合機(大阪ケミカル製、ワンダークラッシャー)を用いて混合した。この混合処理によって、PTFE粒子がフィブリル化し、活物質、繊維状PTFE、およびアセチレンブラックが均一に分散した正極合材が得られた。得られた正極合材は、固形分濃度100%である。
[0055] 得られた正極合剤粒子を用いて、実施例1と同様にして正極合剤シートを作製した上で、正極を作製した。」
「[請求項1] 正極活物質と、導電剤と、繊維状結着剤とを少なくとも含む正極合剤を有し、
前記正極活物質及び前記導電剤を含む無機粒子のBET比表面積(Sin)に対する前記正極合剤のBET比表面積(Spo)の割合(Spo/Sin)が、1.0~2.0である、電池用正極。」
(2)甲1発明
上記(1)の記載事項によれば、以下のことが理解できる。
ア [0020]及び[請求項1]によれば、「電池用正極」が有する「正極合剤」について、「正極活物質と、導電材と、繊維状結着剤と」を含むことが記載されている。
イ [0003]及び[0027]によれば、「繊維状結着剤」の材質として「ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)」が好適であることが記載されている。
ウ [0054]によれば、実施例3において「正極合剤」は、「正極活物質」と、「導電剤」と、「PTFE粒子(ダイキン工業社製、F106)」とを混合して得られたものであり、ここで、「PTFE粒子(ダイキン工業社製、F106)」が「繊維状結着剤」の材質として用いられる「ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)」であることは明らかである。
エ [0011]によれば、「電池用正極」は「二次電池」にも適用されるものである。
以上から、実施例3の正極合剤に用いられる繊維状結着剤に着目すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
「正極活物質と、繊維状結着剤と、導電剤とを含む正極合剤を有する電池用正極の繊維状結着剤であって、繊維状結着剤のポリテトラフルオロエチレンとして、PTFE粒子(ダイキン工業社製、F106)を用い、電池用正極は二次電池に適用されること。」
2 甲第2号証
甲第2号証の段落【0172】から、甲第2号証には「ポリテトラフルオロエチレンのファインパウダー(ダイキン工業株式会社製、商品名:F106)がホモPTFEであること。」が記載されているといえる。
3 甲第3号証
(1)甲第3号証には、以下の各記載がある
「【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、自動成形装置の金型へ充填するポリテトラフルオロエチレン系樹脂の造粒粉末の充填性を評価する樹脂造粒粉末の金型充填性評価方法であって、所定量のポリテトラフルオロエチレン系樹脂の造粒粉末を所定のタッピング処理により凝集させ、前記造粒粉末のタッピング処理物について凝集性を測定する凝集性測定工程と、所定量のポリテトラフルオロエチレン系樹脂の造粒粉末を所定のタッピング処理により凝集させ、前記造粒粉末のタッピング処理物について崩壊性を測定する崩壊性測定工程と、前記測定した凝集性および崩壊性の値と前記造粒粉末が充填される金型のキャビティ寸法とに基づいて、当該金型への前記造粒粉末の充填性の良否を決定する充填性決定工程とを有する。」
「【0034】
【実施例】PTFE樹脂の造粒粉末について、金型充填性のそれぞれことなるサンプルをサンプルNo.1~25までの25種類準備した。上記の25種類のPTFE樹脂の造粒粉末について、安息角の測定、凝集性の値の測定および崩壊性の値の測定を行った。」
「【0038】第0ランクに属する金型への充填性試験
第0ランクに属するキャビティ寸法が3mmの金型を使用し、上記のNo.1~25の各PTFE樹脂の造粒粉末を実際に自動成形装置1において充填したときの充填の可否を調べた。結果を下記表1に示す。表1中、○は充填が良好であることを示し、×は充填が不良であることを示している。
【0039】
【表1】
[図:0001434205000001.jpg]
」
(2)上記(1)の記載事項によれば、甲第3号証には、以下の技術(以下、「甲第3号証に記載された技術」という。)が記載されているといえる。
「自動成形装置の金型へ充填するポリテトラフルオロエチレン系樹脂の造粒粉末において、25種類のPTFE樹脂の造粒粉末について安息角の測定を行ったところ、安息角が39.3~44.6度であること。」
4 甲第4号証
甲第4号証の「1.測定資料」及び「4.測定結果」によれば、甲第4号証には「POLYFLON PTFE F-106の細孔容積が1.4cm3/g、比表面積が13m2/gであること。」が記載されているといえる。
5 甲第5号証
甲第5号証の「1.結果」、「3.試験条件」及び「4.試験方法」によれば、甲第5号証には「JIS K6892-1995 耐電圧に準じた試験において、POLYFLON PTFE F-106は絶縁破壊しなかったこと。」が記載されているといえる。
第5 当審の判断
1 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、次のことがいえる。
甲1発明の「PTFE粒子(ダイキン工業社製、F106)」は、「電池用正極の繊維状結着剤」の「ポリテトラフルオロエチレン」であり、また、「電池用正極は二次電池に適用される」から、本件発明1における「二次電池用バインダーとして用いられるポリテトラフルオロエチレン系樹脂」である点で一致する。
しかしながら、本件発明1における「ポリテトラフルオロエチレン系樹脂」は、「前記ポリテトラフルオロエチレン系樹脂の全単位に対するテトラフルオロエチレンに基づく単位の含有量は、99質量%以上であり、」、「安息角が、32~44°であり、」、「細孔容積が、0.2~9.0cm3/gである、」と特定されているのに対し、甲1発明の「PTFE粒子(ダイキン工業社製、F106)」はそのように特定されていない点で相違する。
以上から、本件発明1と甲1発明との一致点および相違点は次のとおりである。
(一致点)
「二次電池用バインダーとして用いられるポリテトラフルオロエチレン系樹脂。」
(相違点)
相違点1-1 「前記ポリテトラフルオロエチレン系樹脂の全単位に対するテトラフルオロエチレンに基づく単位の含有量」について、本件発明1は「99質量%以上であり、」と特定されているのに対し、甲1発明ではそのように特定されていない点。
相違点1-2 「ポリテトラフルオロエチレン系樹脂」の「安息角」について、本件発明1は「32~44°であり、」と特定されているのに対し、甲1発明ではそのように特定されていない点。
相違点1-3 「ポリテトラフルオロエチレン系樹脂」の「細孔容積」について、本件発明1は「0.2~9.0cm3/gである、」と特定されているのに対し、甲1発明ではそのように特定されていない点。
(2)判断
ア 申立理由1 特許法第29条第1項第3号(新規性)について
(ア)本件発明1と甲1発明とは、上記相違点1-1~1-3において相違するから、本件発明1は甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。
(イ)ここで、申立人は相違点1-2について、「また、異議申立人が入手した情報によれば、ダイキン工業社製F106は、下記の条件で測定した安息角が38.4°(n=1:38.0、n=2:37.9、n=3:39.3の平均値)であり、甲1発明-1の「PTFE粒子」は(1C)の要件を充足するといえる。
(測定条件)
装置:ホソカワミクロン株式会社製パウダーテスターPT-X
メッシュ目開き1.7mm
メッシュ線径0.8mm
振幅:0.3mm
振動時間:20秒
スローダウン:10秒」と主張(申立書第11頁第3~12行)している。
(ウ)しかしながら、申立人が提出した甲第1号証~甲第5号証に「PTFE粒子(ダイキン工業社製、F106)」の「安息角」が「38.4°」であることについての記載はない。また、「PTFE粒子(ダイキン工業社製、F106)」の「安息角」が「38.4°」であることが技術常識であるともいえない。
すると、申立人の主張はその前提を欠くものであり、採用することができない。
以上から、本件発明1と甲1発明とは、少なくとも上記相違点1-2で相違するから、本件発明1は甲第1号証に記載された発明ではない。
イ 申立理由2 特許法第29条第2項(進歩性)について
(ア)事案に鑑み、上記相違点1-2について検討する。
甲1発明の「PTFE粒子(ダイキン工業社製、F106)」は、「電池用正極」の「繊維状結着剤」の材質であるのに対し、甲第3号証に記載された技術の「ポリテトラフルオロエチレン系樹脂」は、「自動成形装置の金型へ充填する」「造粒粉末」である。
すると、甲1発明と甲第3号証に記載された技術とは、どちらも「ポリテトラフルオロエチレン系樹脂」である点で共通する一方、甲1発明は「電池用正極」の「繊維状結着剤」の材質であるのに対し、甲第3号証に記載された技術は「自動成形装置の金型へ充填する」「造粒粉末」であり、その技術分野が関連するものであるとも、その作用・機能が共通するものであるともいえない。
そうすると、甲1発明に甲第3号証に記載された技術を適用する動機があるとはいえない。
そして、甲第3号証に記載された技術において、PTFE樹脂の造粒粉末の安息角は「39.3~44.6度」であるから、PTFEの安息角を32~44°とすることが周知の事項であるとはいえないし、仮に、甲1発明に甲第3号証に記載された技術を適用したとしても、本件発明1のポリテトラフルオロエチレン系樹脂の「安息角が、32~44°であり、」を充足せず、相違点1-2に係る構成に至らない。
また、特許異議の申立ての証拠として申立人が提出した他の証拠を検討しても、上記相違点1-2に係る構成について記載されていない。
したがって、上記相違点1-2に係る構成は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易になし得たことではない。
(イ)以上から、本件発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の構成を全て含み更に他の構成を付加したものであるから、本件発明1と同様の理由により甲第1号証に記載された発明でない。また、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 本件発明3について
(1)対比
本件発明3と甲1発明とを対比すると、次のことがいえる。
甲1発明の「PTFE粒子(ダイキン工業社製、F106)」は、「電池用正極の繊維状結着剤」の「ポリテトラフルオロエチレン」であり、また、「電池用正極は二次電池に適用される」から、本件発明3における「二次電池用バインダーとして用いられるポリテトラフルオロエチレン系樹脂」である点で一致する。
しかしながら、本件発明3における「ポリテトラフルオロエチレン系樹脂」は、「安息角が、32~44°であり、」、「細孔容積が、0.2~9.0cm3/gである、」、「細孔メディアン径が、10μm以上100μm以下である、」と特定されているのに対し、甲1発明の「PTFE粒子(ダイキン工業社製、F106)」はそのように特定されていない点で相違する。
以上から、本件発明3と甲1発明との一致点および相違点は次のとおりである。
(一致点)
「二次電池用バインダーとして用いられるポリテトラフルオロエチレン系樹脂。」
(相違点)
相違点3-1 「ポリテトラフルオロエチレン系樹脂」の「安息角」について、本件発明3は「32~44°であり、」と特定されているのに対し、甲1発明ではそのように特定されていない点。
相違点3-2 「ポリテトラフルオロエチレン系樹脂」の「細孔容積」について、本件発明3は「0.2~9.0cm3/gである、」と特定されているのに対し、甲1発明ではそのように特定されていない点。
相違点3-3 「ポリテトラフルオロエチレン系樹脂」の「細孔メディアン径」について、本件発明3は「10μm以上100μm以下である、」と特定されているのに対し、甲1発明ではそのように特定されていない点。
(2)判断
事案に鑑み、上記相違点3-1について検討する。
上記相違点3-1は、上記1における本件発明1についての相違点1-2と同じものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明でない。また、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4 本件発明4~10について
(1)本件発明4、5、7~10は、本件発明1又は本件発明3の構成を全て含み、更に他の構成を付加したものであるから、本件発明1又は本件発明3と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明でない。
(2)本件発明4~10は、本件発明1又は本件発明3の構成を全て含み、更に他の構成を付加したものであるから、本件発明1又は本件発明3と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
5 まとめ
以上から、本件特許の請求項1~5、7~10に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではない。
また、本件特許の請求項1~10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
第6 むすび
以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1~10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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