特許異議申立
2025-700844
液晶性ポリエステルの製造方法及び液晶性ポリエステル
- 審判番号
- 2025-700844
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-565486
- 登録番号
- 7636346
- 請求日
- 2025年08月26日
- 審決日
- 2025年11月28日
- 公報発行日
- 2026年01月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】住友化学株式会社
- 【権利者代理人】松沼 泰史
- 【権利者代理人】佐藤 彰雄
- 【権利者代理人】加藤 広之
- 【権利者代理人】▲高▼梨 航
- 【異議申立人】鈴木 佐知子
- 審判長/審判官
- 審判長 ▲吉▼澤 英一
- 審判官 加藤 幹
- 審判官 藤井 勲
- 分類
- P1651.113-Y (C08G) / P1651.121-Y (C08G) / P1651.536-Y (C08G) / P1651.537-Y (C08G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7636346号発明「液晶性ポリエステルの製造方法及び液晶性ポリエステル」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7636346号の請求項1~9に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7636346号の請求項1~9に係る特許についての出願は、2020年(令和2年)12月8日を国際出願日(優先権主張 令和1年12月19日)とする特願2021-565486号であって、令和7年2月17日にその特許権の設定登録(請求項の数9)がされ、同年同月26日に特許掲載公報が発行された。
その後、この特許に対し、令和7年8月26日に特許異議申立人 鈴木 佐知子(以下、「申立人」という。)は、特許異議の申立て(対象請求項:請求項1~9)を行った。
第2 本件特許発明
特許第7636346号の請求項1~9の特許に係る発明は、それぞれ、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、「本件発明1」~「本件発明9」といい、これらをあわせて「本件発明」という。)。
「【請求項1】
芳香族ジオール(A)と、芳香族ヒドロキシカルボン酸(B)と、ナフタレンジカルボン酸(C)とを反応させて液晶性ポリエステルを得る、液晶性ポリエステルの製造方法であって、
前記ナフタレンジカルボン酸(C)は、JIS K 0069(1992)の乾式ふるい分け試験方法により測定される粒子径が150μm未満であるナフタレンジカルボン酸粒子(C1)を90質量%以上含むナフタレンジカルボン酸粉末である、液晶性ポリエステルの製造方法。
【請求項2】
前記ナフタレンジカルボン酸(C)の使用量が、前記芳香族ジオール(A)と前記芳香族ヒドロキシカルボン酸(B)と前記ナフタレンジカルボン酸(C)との合計の使用量(100モル%)に対して10モル%以上である、請求項1に記載の液晶性ポリエステルの製造方法。
【請求項3】
前記ナフタレンジカルボン酸(C)が、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸及び1,4-ナフタレンジカルボン酸からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1又は2に記載の液晶性ポリエステルの製造方法。
【請求項4】
レーザー回折・散乱法により測定される、前記ナフタレンジカルボン酸粉末の中心粒径(D50)が、5~30μmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の液晶性ポリエステルの製造方法。
【請求項5】
前記芳香族ジオール(A)及び前記芳香族ヒドロキシカルボン酸(B)の少なくとも一方と、脂肪酸無水物とをアシル化反応させてアシル化物を得る工程(i)、並びに、
前記アシル化物と、前記ナフタレンジカルボン酸(C)とをエステル交換反応させて液晶性ポリエステルを得る工程(ii)を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の液晶性ポリエステルの製造方法。
【請求項6】
前記工程(ii)におけるエステル交換反応を250~350℃で行う、請求項5に記載の液晶性ポリエステルの製造方法。
【請求項7】
前記ナフタレンジカルボン酸粒子(C1)を90質量%以上含むナフタレンジカルボン酸粉末を調製する工程(iii)を有し、
前記工程(iii)は、
JIS K 0069(1992)の乾式ふるい分け試験方法により、ナフタレンジカルボン酸(C0)を、前記ナフタレンジカルボン酸粒子(C1)と、前記粒子径が150μm以上であるナフタレンジカルボン酸粒子(C2)とに分級する操作(a)を含む、
請求項1~6のいずれか一項に記載の液晶性ポリエステルの製造方法。
【請求項8】
前記ナフタレンジカルボン酸粒子(C1)を90質量%以上含むナフタレンジカルボン酸粉末を調製する工程(iii)を有し、
前記工程(iii)は、
JIS K 0069(1992)の乾式ふるい分け試験方法により、ナフタレンジカルボン酸(C0)を、前記ナフタレンジカルボン酸粒子(C1)と、前記粒子径が150μm以上であるナフタレンジカルボン酸粒子(C2)とに分級する操作(a)、
前記ナフタレンジカルボン酸粒子(C2)を加工して、前記粒子径を150μm未満に調整したナフタレンジカルボン酸粒子(C2*)を作製する操作(b)、及び
前記操作(a)で得られたナフタレンジカルボン酸粒子(C1)と、前記操作(b)で得られたナフタレンジカルボン酸粒子(C2*)とを混合する操作(c)を含む、
請求項1~7のいずれか一項に記載の液晶性ポリエステルの製造方法。
【請求項9】
芳香族ジオール(A)と、芳香族ヒドロキシカルボン酸(B)と、ナフタレンジカルボン酸(C)とを反応させて得られる液晶性ポリエステルであって、
前記ナフタレンジカルボン酸(C)は、JIS K 0069(1992)の乾式ふるい分け試験方法により測定される粒子径が150μm未満であるナフタレンジカルボン酸粒子(C1)を90質量%以上含むナフタレンジカルボン酸粉末である、液晶性ポリエステル。」
第3 特許異議申立理由の概要
1 特許異議申立理由の要旨
申立人が提出した特許異議申立書において主張する特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。
(1)申立理由1(明確性要件違反)
本件特許の請求項1~9に係る特許は、その特許請求の範囲が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、請求項1~9に係る特許は、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
理由の概要は以下のとおり。
本件発明1には、「液晶性ポリエステル」との記載があるが、本件明細書には何らの定義も存在しておらず、特許の付与された発明の技術的範囲が不明確となり、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。
(2)申立理由2(サポート要件違反)
本件特許の請求項1~9に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、請求項1~9に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
理由の概要は以下のとおり。
ア 本件明細書の実施例では、NDCA(2,6-ナフタレンジカルボン酸)に対応する構成単位が19~20%、HQ(ハイドロキノン)に対応する構成単位が20~21%という極めて限定された場合についての効果しか示されていないから、課題解決手段が特許請求の範囲に規定された範囲を超えるものであり、本件発明1はサポート要件を欠くものである。
その上、本件発明の実施例は全て、(A)として、HQ(ハイドロキノン)、(B)として、BON(2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸)又はPOB(4-ヒドロキシ安息香酸)、(C)として、NDCA(2,6-ナフタレンジカルボン酸)、(D)として、テレフタル酸を用いたものであるところ、構成単位の種類が変わればその液晶性ポリエステルとしての物性が変わることは技術常識であり、極めて限定された特定の構成単位を用いた場合しか裏付けとなる実験データを示していない。
イ 本件発明1では、「粒子径が150μm未満である」、「90質量%以上含む」といった特定があるが、これらの当該技術分野において、何らかの基準としての値であるという技術常識はないし、これらの数値に臨界的意義をもたないものである。
そして、実施例の表1から、「粒子径が150μm未満である」粒子の割合の「90質量%」という点に、何ら臨界的意義が存在せず、「粒子径が150μm未満である」粒子の割合が「90質量%」のときの、「引張強度」の値、「引張伸び」の値が、機械的強度に関する何らかの基準において意味のある値であるという技術常識はない。
したがって、本件発明の技術的義議が不明である。
(3)申立理由3(実施可能要件違反)
本件特許の請求項1~9に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、請求項1~9に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
理由の概要は以下のとおり。
上記(1)に示したように、本件発明1の「液晶性」ポリエステルの意味が理解できないから、本件発明は明確でなく、その技術的範囲を当業者が理解できるものでないため、過度な試行錯誤を要することなく、本件発明1の実施をすることができないものである。
(4)申立理由4-1(甲第1号証に基づく新規性欠如)
本件特許の請求項1~9に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、請求項1~9に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(5)申立理由4-2(甲第1号証を主引例とする進歩性欠如)
本件特許の請求項1~9に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証~第17号証に基づいて、本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1~9に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(6)申立理由5(甲第2号証を主引例とする進歩性欠如)
本件特許の請求項1~9に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1号証、甲第3号証~甲第17号証に基づいて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1~9に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
2 証拠方法
申立人は、証拠として、以下の文献を提出する。
甲第1号証:特開2004-2697号公報
甲第2号証:国際公開第2011/ 018837号
甲第3号証:米国特許第5710237号明細書及びその抄訳
甲第4号証:国際公開第97/44307号
甲第5号証:特開2002-322109号公報
甲第6号証:特開2020-94271号公報
甲第7号証:特開2019-65234号公報
甲第8号証:特開2018-154093号公報
甲第9号証:特開2012-130919号公報
甲第10号証:再公表特許第2009/122985号公報
甲第11号証:山崎堯右ら、複合材料の機械的強度に及ぼす粒径と粒度分布の影響、高知大学学術研究報告、第21巻、自然科学、第22号、1973年
甲第11号証の2:甲11の書誌事項
(https://cir.nii.ac.jp/crid/1050001202454893184)
甲第12号証:特公昭49-37599号公報
甲第13号証:粒子径、マルバーンのウェブページ
(https://www.malvernpanalytical.com/jp/products/measurement-type/particle-size)
甲第14号証:スミカスーパーTM LCPのウェブページ
(https://www.sumitomo-chem.co.jp/sep/products/lcp/)
甲第15号証:荒川正文、粒子の分散・凝集と濃厚スラリーの挙動、粉体工学会誌、Vol.27、No.3、181-185(1990)
(https://www.jstage.jst.go.jp/article/sptj1978/27/3/27_3_181/_pm2/g/-char/ja)
甲第15号証の2:甲15の書誌事項
(https://www.jstage.jst.go.jp/article/sptj1978/27/3/27_3_181/_article/-char/ja/)
甲第16号証:高野正雄、粉体粒度分布測定技術、日本画像学会誌、第46巻、第6号、459-464(2007)
(https://www.jstage.jst.go.jp/article/isj/46/ 6/46_6_459/_pdf)
甲第16号証の2:甲16の書誌事項
(https://www.jstage.jst.go.jp/browse/isj/46/6/_contents/-char/ja)
甲第17号証:中国特許庁の審査結果及びその抄訳
甲第1号証等を、その番号に従って、以下「甲1」等という。
第4 当審の判断
当審においては、申立人がした申立ての理由によって、本件特許の請求項1~9に係る特許を取り消すことはできないと判断する。その理由は以下のとおりである。
1 申立理由1(明確性要件違反)について
(1)検討
液晶ポリエステルとは、高分子液晶の一種で、メソーゲン基とフレキシブルスペーサ間、あるいはメソーゲン基同士間の結合基がエステル結合である高分子のこと(永井進監修、実用プラスチック用語辞典、1989年9月10日改訂第3版、第67頁)であり、本願出願時には、その定義は広く一般的に知られていたものである。
そして、本件発明1には、「芳香族ジオール(A)」と、「芳香族ヒドロキシカルボン酸(B)」と、「ナフタレンジカルボン酸(C)」とを反応させて液晶性ポリエステルを得ることが特定されている。
ついで、本件明細書の段落【0069】~【0096】には、本実施形態における液晶性ポリエステルとして、式(1)-O-Ar1-CO-で表される構成単位(Ar1は、置換されていてもよいアリーレン基を表す。)、式(2)-O-Ar2-O-で表される構成単位(Ar2は、置換されていてもよいアリーレン基、又は下記式(IV)(当審注:式(IV)は省略する。以下同様。)で表される2価の連結基を表す。)、および式(3)-CO-Ar3-CO-で表される構成単位(Ar3は、ナフチレン基を表す。)を含む液晶性ポリエステルであること、更に、式(4)-CO-Ar4-CO-で表される構成単位(Ar4は、置換されていてもよいアリーレン基、又は式(IV)で表される2価の連結基を表す。ただし、無置換のナフチレン基を除く。)を含んでいてもよいことが記載されている。
さらに、実施例では、(A)として、HQ(ハイドロキノン)、(B)として、BON(2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸)又はPOB(4-ヒドロキシ安息香酸)、(C)として、NDCA(2,6-ナフタレンジカルボン酸)、更には(D)として、テレフタル酸を用いて、液晶性ポリエステルを得たことが記載されている。
これらの記載によると、本件発明1の液晶性ポリエステルは、少なくとも、原料である芳香族ジオール(A)、芳香族ヒドロキシカルボン酸(B)、ナフタレンジカルボン酸(C)を反応させて得られるものであり、上記式(1)~式(3)で表される構成単位、更には式(4)で表される構成単位を有するものを意味していることが理解できるから、本件明細書に、液晶性ポリエステルの定義は記載されているといえる。
そうすると、本件発明1が不明確ではないから、その技術的範囲が不明確となり、第三者に不測の不利益を及ぼすとはいえない。
同様に、本件発明2~9においても不明確であるとはいえない。
してみると、申立理由1には理由がない。
(2)申立人の主張について
甲14には、LCP(液晶性ポリマー)は、耐熱性と難燃性に優れたスーパーエンジニアリングプラスチックスの一種で、結晶性の熱可塑性樹脂であることが記載されているが、具体的にどれほどの耐熱性や難燃性を有すれば液晶性ポリエステルにあたるかは不明である旨主張している。
しかしながら、液晶性ポリエステルの定義については、上記(1)に示したとおりであって、上述の耐熱性や難燃性であることとは関係しない。
したがって、当該主張は妥当でない。
(3)申立理由1についてのまとめ
本件発明1~9は、特許法第36条第6項第2号の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1~9に係る特許は、申立理由1によって取り消すことはできない。
2 申立理由2(サポート要件違反)について
(1)特許法第36条第6項第1号(サポート要件)の判断手法
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(2)本件発明の課題
本件明細書の段落【0006】によると、本件発明が解決しようとする課題は、従来のナフタレンジカルボン酸を用いて製造した同じ組成の液晶性ポリエステルに比べて、機械的強度、特に引張物性に優れるものとすることができる、液晶性ポリエステルの製造方法を提供することであると認められる。
(3)本件発明1について
本件明細書には、ナフタレンジカルボン酸(C)の全質量100質量%に対して、粒子径が150μm未満であるナフタレンジカルボン酸粒子(C1)を90質量%以上含むことにより、本実施形態の液晶性ポリエステルの製造方法は、従来のナフタレンジカルボン酸を用いて製造した同じ組成の液晶性ポリエステルに比べて、機械的強度、特に引張物性に優れる液晶性ポリエステルを製造できること(【0012】、【0068】、【0100】)、ナフタレンジカルボン酸粉末の中心粒径(D50)は、30μm以下であることが好ましいこと、ナフタレンジカルボン酸粉末の中心粒径(D50)が、より小さいほど、ナフタレンジカルボン酸の比表面積が大きくなり、芳香族ジオール(A)、芳香族ヒドロキシカルボン酸(B)、及び反応溶媒と、ナフタレンジカルボン酸粉末との接触点が増加し、重縮合反応をより速やかに進行させること(【0016】)が記載されている。
そして、実施例の表1では、実施例1、実施例2、及び比較例1において、(A)HQ(ハイドロキノン)、(B)BON(2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸)、(C)NDCA(ナフタレンジカルボン酸)を原料とした場合、実施例3、実施例4、及び比較例2において、(A)HQ、(B)BON、(C)NDCA、(D)TPA(テレフタル酸)を原料とした場合、実施例5、実施例6、及び比較例3において、(A)HQ、(B)POB(4-ヒドロキシ安息香酸)、(C)NDCAを原料とした場合の引張特性(引張強度、引張伸び)を評価している。
その評価の詳細は、NDCAの粒子径が150μm未満である粒子の割合が100.0質量%である実施例1、3、5では引張特性(引張強度、引張伸び)に最も優れ、NDCAの粒子径が150μm未満である粒子の割合が95.0質量%である実施例2、4、6、NDCAの粒子径が150μm未満である粒子の割合が84.9質量%である比較例1、2、3となるにつれ、引張物性(引張強度、引張伸び)が劣る結果となることが示されている。
これらの記載によると、液晶性ポリエステルの原料であるナフタレンジカルボン酸(C)の全質量100質量%に対して、粒子径が150μm未満であるナフタレンジカルボン酸(C1)を90質量%以上含むことで、ナフタレンジカルボン酸粉末の粒径が小さくなり、ナフタレンジカルボン酸の比表面積が大きくなって、芳香族ジオール(A)、芳香族ヒドロキシカルボン酸(B)、及び反応溶媒と、ナフタレンジカルボン酸粉末との接触点が増加し、重縮合反応をより速やかに進行することにより、従来のナフタレンジカルボン酸を用いて製造した同じ組成の液晶性ポリエステルに比べて、機械的強度、特に引張物性に優れることを理解でき、実施例においても、NDCAの全質量100質量%に対して、粒子径が150μm未満であるナフタレンジカルボン酸(C1)を90質量%以上含むことにより、しかもその割合が多いほど引張特性(引張強度、引張伸び)に優れることが確認されている。
そうすると、本件明細書には、「ナフタレンジカルボン酸(C)は、JIS K 0069(1992)の乾式ふるい分け試験方法により測定される粒子径が150μm未満であるナフタレンジカルボン酸粒子(C1)を90質量%以上含むナフタレンジカルボン酸粉末である」ことを特定事項とする本件発明1が上記課題を解決できることを当業者が認識できるように記載されており、本件の請求項1に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすといえる。
(4)本件発明2~8について
本件発明2~8は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、上記(3)で述べたと同様の理由により、本件明細書は、本件発明2~8が上記課題を解決できることを当業者が認識できるように記載されているといえる。
(5)本件発明9について
本件発明9は、液晶性ポリエステルに関する発明であり、「ナフタレンジカルボン酸(C)は、JIS K 0069(1992)の乾式ふるい分け試験方法により測定される粒子径が150μm未満であるナフタレンジカルボン酸粒子(C1)を90質量%以上含むナフタレンジカルボン酸粉末である」ことを特定事項とするものであるが、上記(3)で検討したと同様の理由により、本件明細書は、本件発明9が上記課題を解決できることを当業者が認識できるように記載されているといえる。
(6)申立人の主張について
申立人は、上記第3の1(2)ア及びイのような主張をしているので、順に検討する。
・アについて
上記(3)に示したように、液晶性ポリエステルの原料としての各成分の種類及びそれらの割合は、本件発明の課題解決に影響しないと推認できるところ、申立人は、各成分の種類及びそれらの割合によって、本件発明の課題が解決しないことについて主張するも、何ら具体的な技術的根拠を示してはいない。
・イについて
本件発明の発明特定事項が臨界的意義及び技術的意義が存在しないことを主張するのみであり、本件発明の課題が解決しないこととの関連性について何ら主張していないから、当該主張のみでは、上記(3)~(5)の判断に影響をしない。
したがって、当該主張はいずれも妥当でなく、採用できない。
(7)申立理由2についてのまとめ
本件発明1~9は、特許法第36条第6項第1号の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1~9に係る特許は、申立理由2によって取り消すことはできない。
3 申立理由3(実施可能要件違反)について
上記1に示したように、本件発明1の「液晶性」ポリエステルは明確であって、その意味が理解できるから、本件発明1は明確であって、その技術的範囲を当業者が理解できるものであるから、過度な試行錯誤を要することなく本件発明1の実施をすることができるものである。
また、本件発明2~9についても同様である。
してみると、申立理由3には理由がない。
したがって、本件発明1~9は、特許法第36条第4項第1号の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1~9に係る特許は、申立理由3によって取り消すことはできない。
4 申立理由4-1(新規性欠如)及び申立理由4-2(進歩性欠如)について
申立理由4-1と申立理由4-2は、甲1を引用するものであるから、併せて検討する。
(1)甲1に記載された発明
甲1には、パラヒドロキシ安息香酸(1)及びヒドロキノン(2)が有するフェノール性水酸基を脂肪酸無水物でアシル化してアシル化物を得、次いで、テレフタル酸(3)及び2,6-ナフタレンジカルボン酸(4)と、該アシル化物とが縮重合反応して得られる芳香族ポリエステルであること(請求項1)、パラヒドロキシ安息香酸、ヒドロキノン、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸から得られる芳香族ポリエステルに関すること(【0001】)が記載されている。
そして、上述の事項を具体化した実施例1に着目して、ポリエステルの製造方法、及び該製造方法により得られたポリエステルとして整理すると、次のとおりの発明が記載されていると認める。
「窒素置換された重合槽に、パラヒドロキシ安息香酸835.63g((1)、6.05モル)、ハイドロキノン272.52g((2)、2.475モル)、テレフタル酸123.35g((3)、0.742モル)、2,6-ナフタレンジカルボン酸374.55g((4)、1.733モル)、無水酢酸1349.55g(13.22モル)及び複素環状有機塩基化合物として1-メチルイミダゾール0.163gを添加し、室温で15分間攪拌した後、攪拌しながら昇温し、内温が145℃となったところで、同温度を保持したまま30分間攪拌し、
次に、同じく窒素雰囲気下で、留出する副生酢酸、未反応の無水酢酸を留去しながら、145℃から310℃まで3時間かけて昇温した後、1-メチルイミダゾール(以下、MIという)1.426gをさらに加えたのち、同温度で1時間保温して芳香族ポリエステルを得、得られた芳香族ポリエステルを室温に冷却し、粉砕機で粉砕して、芳香族ポリエステルの粉末(粒子径は約0.1mm~約1mm)を得、
上記で得た粉末を窒素雰囲気下、25℃から250℃まで1時間かけて昇温したのち、同温度から301℃まで8時間かけて昇温し、次いで同温度で5時間保温して固相重合させた後、固相重合した後の粉末を冷却し、冷却後の粉末(芳香族ポリエステル)を得る、芳香族ポリエステルの製造方法。」(以下、「甲1製造方法発明」という。)
「甲1製造方法発明により得られた芳香族ポリエステル。」(以下、「甲1ポリエステル発明」という。)
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1製造方法発明を対比する。
甲1製造方法発明の「パラヒドロキシ安息香酸」、「ハイドロキノン」、「2,6-ナフタレンジカルボン酸」は、順に、本件発明1の「芳香族ヒドロキシカルボン酸(B)」、「芳香族ジオール(A)」、「ナフタレンジカルボン酸(C)」に相当する。
そして、甲1製造方法発明は、「パラヒドロキシ安息香酸」、「ハイドロキノン」、「2,6-ナフタレンジカルボン酸」を反応させて芳香族ポリエステルの粉末を得る製造方法であるから、該製造方法と本件発明1の「芳香族ジオール(A)と、芳香族ヒドロキシカルボン酸(B)と、ナフタレンジカルボン酸(C)とを反応させて液晶ポリエステルを得る、液晶性ポリエステルの製造方法」とは、「芳香族ジオール(A)と、芳香族ヒドロキシカルボン酸(B)と、ナフタレンジカルボン酸(C)とを反応させてポリエステルを得る、ポリエステルの製造方法であ」る限りにおいて一致する。
してみると、本件発明1と甲1製造方法発明とは、
「芳香族ジオール(A)と、芳香族ヒドロキシカルボン酸(B)と、ナフタレンジカルボン酸(C)とを反応させてポリエステルを得る、ポリエステルの製造方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
ポリエステルに関し、本件発明1は「液晶性」ポリエステルであるのに対して、甲1製造方法発明は「液晶性」であることが特定されていない点
<相違点2>
ナフタレンジカルボン酸(C)に関し、本件発明1は「JIS K 0069(1992)の乾式ふるい分け試験方法により測定される粒子径が150μm未満であるナフタレンジカルボン酸粒子(C1)を90質量%以上含むナフタレンジカルボン酸粉末である」のに対して、甲1製造方法発明はそのような特定がない点
イ 検討
(ア)相違点1について
甲1製造方法発明である芳香族ポリエステルは、パラヒドロキシ安息香酸、ハイドロキノン、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸を原料として重合したものであるから、該芳香族ポリエステルは、複数の芳香環(メソーゲン基)を有し、かつエステル基で連結するポリマーであって、上記1(1)に示した「液晶ポリエステル」の定義に合致し、「液晶性ポリエステル」であるといえる。
また、本件明細書の段落【0069】~【0096】には、本実施形態における液晶性ポリエステルとして、式(1)-O-Ar1-CO-で表される構成単位(Ar1は、置換されていてもよいアリーレン基を表す。)、式(2)-O-Ar2-O-で表される構成単位(Ar2は、置換されていてもよいアリーレン基、又は下記式(IV)(当審注:式(IV)は省略する。以下同様。)で表される2価の連結基を表す。)、および式(3)-CO-Ar3-CO-で表される構成単位(Ar3は、ナフチレン基を表す。)を含む液晶性ポリエステルであること、更に、式(4)-CO-Ar4-CO-で表される構成単位(Ar4は、置換されていてもよいアリーレン基、又は式(IV)で表される2価の連結基を表す。ただし、無置換のナフチレン基を除く。)を含んでいてもよいことが記載されているところ、甲1製造方法発明である芳香族ポリエステルは、上述の式(1)~式(4)の構成単位を含むものであるから、構成単位の観点から見ても「液晶性」であるといえる。
してみると、相違点1は実質的な相違点でない。
(イ)相違点2について
a 甲1製造方法発明には、ナフタレンジカルボン酸の粒子径に関する発明特定事項を有しないから、相違点2は実質的な相違点である。
b 甲1製造方法発明に基づいて、相違点2、すなわち、JIS K 0069(1992)の乾式ふるい分け試験方法により測定される粒子径が150μm未満であるナフタレンジカルボン酸粒子(C1)を90質量%以上含むナフタレンジカルボン酸粉末(以下、「特定粒子径C1」という。以下同様。)とすることが、当業者にとって容易であるか否かについて検討する。
甲1には、テレフタル酸と2,6-ナフタレンジカルボン酸との配合割合に着目することで、引張り、曲げなどの機械的強度に優れ、熱変形温度などの耐熱性に優れ、しかも、衝撃強度に優れる成形体を与える芳香族ポリエステルを提供すること(【0004】)が記載され、実施例において、パラヒドロキシ安息香酸、ハイドロキノン、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸を原料とし、アシル化反応、縮重合反応、固相重合を経て、芳香族ポリエステルを製造することが記載されている。
しかしながら、甲1には、原料であるナフタレンジカルボン酸の粒子径について何ら記載も示唆もされていないため、当業者は当該粒子径に着目し得ないものであり、甲1製造方法発明において、「特定粒子径C1」とすることを当業者は想定し得ない。
そして、甲2~甲17のいずれにも、ナフタレンジカルボン酸の粒子径が、該ナフタレンジカルボン酸を原料として製造した液晶性ポリエステルの引張物性に影響を与えることを教示する記載はない。
そうすると、甲1に記載された発明及び甲2~甲17に記載された事項に基づいて、ナフタレンジカルボン酸の粒子径を調整しようとする動機付けを有しないものである。
したがって、相違点2のように構成することは、当業者が容易に想到し得たことではない。
また、「特定粒子径C1」とすることによって、引張物性(引張強度、引張伸び)に優れるという、本件発明1の効果を当業者が予測することはできない。
ウ 申立人の主張について
申立人は、次の主張をしている。
(ア)甲4には、「市販されているナフタレンジカルボン酸の粒径は、通常数十μmであり、かつ粒径が揃っている」こと(第1頁下から第3~4行)、表1において、原料NDA(ナフタレンジカルボン酸)の粒径分布(目開き38μmの篩を通過した粒子割合が98.9重量%)が記載されていることから、甲1に記載された2,6-ナフタレンジカルボン酸の粒径も数十μm程度であり、150μm未満であるナフタレンジカルボン酸粒子(C1)を90質量%以上含むことを満たす蓋然性が高いか、周知慣用なことである。
(イ)甲4には、粘度が低いNDA/EGスラリーが得られるようなナフタレンジカルボン酸粒子、及びこのようなナフタレンジカルボン酸粒子の製造方法が求められており、そのような状況を受けて、エチレングリコールとのスラリーとしたときに、スラリー流動性の良いナフタレンジカルボン酸粒子を提供することが記載されていることから、甲1発明(当審注:本決定における「甲1製造方法発明」のこと。以下同様。)の課題を解決するために、甲4の原料NDAを用いることを容易に想到しうるし、甲15には、単位体積あたりの粒子数(粒子径の大きさ)が小さくなると、スラリー粘度が小さくなり、機械的強度が増すことは技術常識であるから、甲4における原料NDAを採用する動機付けがある。
(ウ)甲5には、表1のサンプル1-7は、「150μm未満であるナフタレンジカルボン酸粒子(C1)を90質量%以上含む」を満たすナフタレンジカルボン酸粉末であり、該サンプル1-7は2-ヒドロキシナフタレン-6-カルボン酸造粒物において、平均粒子径が150μm未満であり、溶解速度が5分を超えるものであること(【0067】)が記載されており、甲1発明の課題(引張り、曲げなどの機械的強度に優れ、熱変形温度などの耐熱性に優れ、しかも耐衝撃性に優れる)を解決するために、該サンプル1-7のような2,6-ナフタレンジカルボン酸を採用することは容易に想到可能である。
(エ)本件発明1の「粒子径が150μm未満であるナフタレンジカルボン酸粒子(C1)を90質量%以上」において、数値範囲には臨界的意義が認められないし、甲5~甲10に見られるように、粒子径が150μm以下である粒子を含むことにより、機械的強度を向上することは周知慣用の技術であるから、甲1発明に上記周知慣用の技術を適用することは、容易に想到し得たものである。
(オ)甲12には、高軟化点のポリマーを得ること(第1欄第20~21行)を課題とし、本件発明の課題と共通することから、本件発明の課題は公知のものであり、甲5~甲10には上記(エ)に示したように、「150μm」以下の粒子から主になる物質が高い機械的強度を持つことは技術常識であり、本件発明1の「粒子径が150μm未満であるナフタレンジカルボン酸粒子(C1)を90質量%以上含むナフタレンジカルボン酸粉末」をポリマー原材料として用いたときに得られるポリマーも優れた機械的強度を持つことは自明であり、「特定粒子径C1」は周知慣用の技術にすぎないことに加え、甲2には、靱性、低ガス性、耐熱性に優れ、絶縁破壊性の高い液晶性ポリエステル及びその製造方法を提供すること([0005])を課題とすることから、本件発明の課題は公知のものに過ぎないし、甲2にはポリマーの反応時間を制御することにより、ポリマーのランダム化を促進し、平均連鎖長が制御され、ポリマーの物性が改善されたことが記載されており、甲13によると、粒径が小さい方が比表面積が大きくなり、反応速度が増加することは技術常識であるから、甲2のポリマーの反応時間の制御に代えて、或いは、反応時間の制御に加えて、粒子径を小さくすることで優れた物性を有する液晶性ポリエステルが得られることは自明であって、相違点1-1(当審注:本決定の「相違点2」のこと。以下同様。)は周知慣用の技術に過ぎない。
順に検討する。
・(ア)及び(イ)について
(ア)及び(イ)は、甲4に関連するものであるから併せて検討する。
(ア)及び(イ)における主張をまとめると、甲1発明は、甲4に記載された事項を考慮すると、本件発明の「特定粒子径C1」を有している蓋然性が高い、又は甲1発明に甲4に記載された事項を適用することで該「特定粒子径C1」とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるというものである。
甲4には、市販されているナフタレンジカルボン酸の粒径が通常数十μm未満であり、表1において、原料NDAは目開き38μmの篩を通過した粒子が98.9重量%であることが示されている一方で、本件明細書の実施例では、市販の2,6-ナフタレンジカルボン酸の粒子径を、乾式ふるい分け試験方法により測定したところ、2,6-ナフタレンジカルボン酸粉末の全質量100質量%に対して、粒子径が150μm未満であるナフタレンジカルボン酸粒子(C1)を84.9質量%含むものであり、150μm以上の粒子の割合が15.1質量%であったこと(【0104】)が記載されている。
これらの記載によると、市販されているナフタレンジカルボン酸の粒径が、必ずしも数十μmであるとはいえないことが理解できる。
また、甲4では、2,6-ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールとからポリエチレンナフタレートを製造するものである(第1頁第8~12行)ところ、ポリエチレンナフタレートは結晶性ポリエステルであって、液晶性ポリエステルではないから、甲4は、液晶性ポリエステルを製造するための知見を与えることはないといえる。
そうすると、甲1発明に甲4に記載された事項を適用して、本件発明1のように構成する動機付けを有しない。
したがって、当該主張は妥当でない。
・(ウ)について
甲5のサンプル1-7は、2-ヒドロキシナフタレン-6-カルボン酸であって、2,6-ナフタレンジカルボン酸でない。
そして、甲5の実施例における溶解速度は、2-ヒドロキシナフタレン-6-カルボン酸を5%水酸化ナトリウムに添加して溶解した状態を観察したものであり(【0059】)、上記サンプル1-7は、2-ヒドロキシナフタレン-6-カルボン酸の平均粒子径が150μm未満であるため、溶解速度に優れないとされているが(【0067】)、この溶解速度に優れないことが甲1発明の課題とどのような関係にあるのかが不明であるし、2-ヒドロキシナフタレン-6-カルボン酸において観察された事象が、2,6-ナフタレンジカルボン酸においても同様の事象となるとする理由も不明である。
そうすると、甲1発明に甲5の記載された事項を適用して、本件発明1のように構成する動機付けを有しない。
したがって、当該主張は妥当でない。
・(エ)について
甲1発明において、2,6-ナフタレンジカルボン酸粒子は、最終製品である芳香族ポリエステル中に粒子形状のまま存在するのではなく、液晶性ポリエステルの構成単位として存在するものである。
一方、甲5には、サンプル1-7として、平均粒子径が41μmの2-ヒドロキシナフタレン-6-カルボン酸の造粒物が記載されているだけであって、上記「・(ウ)について」に示したように、2,6-ナフタレンジカルボン酸とは異なるものである。
そして、甲6~甲10には、粒子径が150μm以下の充填材(2,6-ナフタレンジカルボン酸粒子ではない)を含有した組成物を用いて最終製品を得るものであり、該充填材は最終製品中にそのままの形状(構成単位にはならない)で存在して、機械的強度を向上させることが記載されている。
これらの記載によると、甲5~甲10には、2,6-ナフタレンジカルボン酸粒子は記載されていないし、液晶性ポリエステルの構成単位となることも記載されていない。
してみると、甲5~甲10を参照したとしても、甲1発明のナフタレンジカルボン酸が構成単位となることは当業者に明らかであるから、仮にそのままの形状の粒子を含むことにより機械的強度を向上することが周知慣用の技術であったとしても、その技術を甲1発明に適用することは動機付けられない。
したがって、当該主張は妥当でない。
・(オ)について
甲12には、2,6-ナフタレンジカルボン酸を主とする二官能性カルボン酸と、エチレングリコールを主とするグリコール又はそのエステル形成性誘導体とを反応させるポリエステルの製造法(請求項1)が記載されているところ、該ポリエステルは、その原料から見て結晶性ポリエステルであって、液晶性ポリエステルではない。
そして、甲5~甲10については、上記「・(エ)について」に示したように、液晶性ポリエステルに対して直ちに適用できないものである。
さらに、甲2には、液晶性ポリエステル(A)の製造方法では、溶融重合反応時の最高到達温度で1~3時間反応系を対流させることでポリマーのランダム化が促進され、平均連鎖長を調整できることが記載され(【0040】)、甲13には、粒子径の一般的な技術事項(粒子径が小さいほど、化学反応の反応速度が速くなること)が記載されている。
そうすると、当該主張は、甲1発明に甲2に記載された事項を適用した上で、さらにその事項を甲13に記載された技術常識を用いて改変するものであるから、いわゆる「容易の容易」といわれるものであって、容易であるとはいえない。
しかも、上述の甲12、甲5~甲10は、甲2に記載された事項と、どのように関係しているのか、また、どのように組み合わせるのかが不明であるから、甲2における反応時間の制御に代えて、或いは、反応時間の制御に加えて、粒径を小さくすることで、優れた物性を有する液晶性ポリエステルが得られることが自明であるとはいえないし、相違点1-1が周知慣用の技術にすぎないともいえない。
したがって、当該主張は妥当でない。
よって、いずれの主張も採用できない。
エ 小括
以上から、本件発明1は、甲1に記載された発明ではないし、甲1に記載された発明及び甲2~甲17の記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
(3)本件発明2~8について
本件発明2~8は、本件発明1を引用するものであるから、上記(2)イで検討したのと同様の理由により、本件発明2~8は、甲1に記載された発明ではないし、甲1に記載された発明及び甲2~甲17の記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
(4)本件発明9について
ア 対比
本件発明9と甲1ポリエステル発明と対比する。
甲1ポリエステル発明の「パラヒドロキシ安息香酸」、「ハイドロキノン」、「2,6-ナフタレンジカルボン酸」は、順に、本件発明9の「芳香族ヒドロキシカルボン酸(B)」、「芳香族ジオール(A)」、「ナフタレンジカルボン酸(C)」に相当する。
そして、甲1ポリエステル発明は、「パラヒドロキシ安息香酸」、「ハイドロキノン」、「2,6-ナフタレンジカルボン酸」とを反応させて得られる芳香族ポリエステルであるから、該芳香族ポリエステルと本件発明9の「芳香族ジオール(A)と、芳香族ヒドロキシカルボン酸(B)と、ナフタレンジカルボン酸(C)とを反応させて得られる液晶ポリエステル」とは、「芳香族ジオール(A)と、芳香族ヒドロキシカルボン酸(B)と、ナフタレンジカルボン酸(C)とを反応させて得られるポリエステル」である限りにおいて一致する。
してみると、本件発明9と甲1ポリエステル発明とは、
「芳香族ジオール(A)と、芳香族ヒドロキシカルボン酸(B)と、ナフタレンジカルボン酸(C)とを反応させて得られるポリエステル。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1’>
ポリエステルに関し、本件発明9は「液晶性」ポリエステルであるのに対して、甲1ポリエステル発明は「液晶性」であることが特定されていない点
<相違点2’>
ナフタレンジカルボン酸(C)に関し、本件発明9は「JIS K 0069(1992)の乾式ふるい分け試験方法により測定される粒子径が150μm未満であるナフタレンジカルボン酸粒子(C1)を90質量%以上含むナフタレンジカルボン酸粉末である」のに対して、甲1ポリエステル発明はそのような特定がない点
イ 検討
まず、相違点1'は、上記(2)イ(ア)に示したように、実質的な相違点ではない。
ついで、相違点2’は、上記(2)イ(イ)に示したように、甲1には、原料であるナフタレンジカルボン酸の粒子径について何ら記載も示唆もされていないため、当業者は当該粒子径に着目し得ないものであり、甲1ポリエステル発明において、「特定粒子径C1」とすることを当業者は想定し得ない。
そして、甲2~甲17のいずれにも、ナフタレンジカルボン酸の粒子径が、該ナフタレンジカルボン酸を反応させて得られる液晶性ポリエステルの引張物性に影響を与えることを教示する記載はない。
そうすると、甲1に記載された発明及び甲2~甲17に記載された事項に基づいて、ナフタレンジカルボン酸の粒子径を調整しようとする動機付けを有しないものである。
また、「特定粒子径C1」とすることによって、引張物性(引張強度、引張伸び)に優れるという、本件発明9の効果を予測することはできない。
ウ 小括
以上から、本件発明9は、甲1に記載された発明ではないし、甲1に記載された発明及び甲2~甲17の記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
(5)申立理由4-1及び4-2についてのまとめ
以上から、本件発明1~9は、特許法第29条第1項及び第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1~9に係る特許は、申立理由4-1及び4-2によって取り消すことはできない。
5 申立理由5(進歩性欠如)について
(1)甲2に記載された発明
甲2において、請求の範囲の請求項6に着目して、液晶性ポリエステル(A)の製造方法として整理すると、次の発明が記載されていると認める。
「ヒドロキシカルボン酸から得られる構造単位38~74モル%、4,4’-ジヒドロキシビフェニルから得られる構造単位13~31モル%、2,6-ナフタレンジカルボン酸から得られる構造単位13~31モル%の合計100モル%を有する液晶性ポリエステルであって、ヒドロキシカルボン酸から得られる構造単位の89モル%以上が2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸から得られる構造単位であり、該2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸から得られる構造単位の平均連鎖長が0.1~1である液晶性ポリエステル(A)の製造方法であって、
ヒドロキシカルボン酸が2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸であり、
得られる液晶性ポリエステルの(融点+20℃)~(融点+40℃)の温度範囲で溶融重合する液晶性ポリエステル(A)の製造方法」(以下、「甲2製造方法発明」という。)
同様に、甲2において、請求の範囲の請求項1に着目して、液晶性ポリエステル(A)として整理すると、次の発明が記載されていると認める。
「ヒドロキシカルボン酸から得られる構造単位38~74モル%、4,4’-ジヒドロキシビフェニルから得られる構造単位13~31モル%、2,6-ナフタレンジカルボン酸から得られる構造単位13~31モル%の合計100モル%を有する液晶性ポリエステルであって、ヒドロキシカルボン酸から得られる構造単位の89モル%以上が2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸から得られる構造単位であり、該2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸から得られる構造単位の平均連鎖長が0.1~1である液晶性ポリエステル(A)。」(以下、「甲2ポリエステル発明」という。)
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2製造方法発明を対比する。
甲2製造方法発明の「ヒドロキシカルボン酸(2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸)」、「4,4’-ジヒドロキシビフェニル」、「2,6-ナフタレンジカルボン酸」は、順に、本件発明1の「芳香族ヒドロキシカルボン酸(B)」、「芳香族ジオール(A)」、「ナフタレンジカルボン酸(C)」に相当する。
そして、甲2製造方法発明では、「ヒドロキシカルボン酸(2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸)」、「4,4’-ジヒドロキシビフェニル」、「2,6-ナフタレンジカルボン酸」を反応させて液晶性ポリエステルを得る製造方法であるから、本件発明1の「芳香族ジオール(A)と、芳香族ヒドロキシカルボン酸(B)と、ナフタレンジカルボン酸(C)とを反応させて液晶性ポリエステルを得る、液晶性ポリエステルの製造方法であ」ることに相当する。
してみると、本件発明1と甲2製造方法発明とは、
「芳香族ジオール(A)と、芳香族ヒドロキシカルボン酸(B)と、ナフタレンジカルボン酸(C)とを反応させて液晶性ポリエステルを得る、液晶性ポリエステルの製造方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点3>
ナフタレンジカルボン酸(C)に関し、本件発明1は「JIS K 0069(1992)の乾式ふるい分け試験方法により測定される粒子径が150μm未満であるナフタレンジカルボン酸粒子(C1)を90質量%以上含むナフタレンジカルボン酸粉末である」のに対して、甲2製造方法発明はそのような特定がない点
イ 検討
(ア)相違点3について
甲2製造方法発明に基づいて、JIS K 0069(1992)の乾式ふるい分け試験方法により測定される粒子径が150μm未満であるナフタレンジカルボン酸粒子(C1)を90質量%以上含むナフタレンジカルボン酸粉末(「特定粒子径C1」)とすることが、当業者にとって容易であるか否かについて検討する。
甲2には、特異的に流動性に優れ、かつ異方性が低く、靱性、低ガス性、耐熱性に優れ、絶縁破壊性の高い液晶性ポリエステル及びその製造方法、またはその組成物、それらからなる成形品を提供すること([0005])が記載され、実施例において、ヒドロキシカルボン酸(2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸)、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、2,6-ナフタレンジカルボン酸を原料とし、アシル化反応、溶融重合反応、固相重合を経て、芳香族ポリエステルを製造することが記載されている。
しかしながら、甲2には、原料であるナフタレンジカルボン酸の粒子径について何ら記載も示唆もされていないため、当業者は当該粒子径に着目し得ないものであり、甲2製造方法発明において、「特定粒子径C1」とすることを想定し得ない。
そして、甲1、甲3~甲17のいずれにも、ナフタレンジカルボン酸の粒子径が、該ナフタレンジカルボン酸を原料として製造した液晶性ポリエステルの引張物性に影響を与えることを教示する記載はない。
そうすると、甲2に記載された発明及び甲1、甲3~甲17に記載された事項に基づいて、ナフタレンジカルボン酸の粒子径を調整しようとする動機付けを有しないものである。
したがって、相違点3のように構成することは、当業者が容易に想到し得たことではない。
また、「特定粒子径C1」とすることによって、引張物性(引張強度、引張伸び)に優れるという、本件発明1の効果を当業者は予測することはできない。
ウ 申立人の主張について
申立人は、次の主張をしている。
(ア)甲2には、ポリマーの反応時間を制御することにより、ポリマーのランダム化を促進し、平均連鎖長が制御され、ポリマー物性を改善することが記載されているところ、甲13によると、原料であるモノマー粒径が小さい方が比表面積が大きくなり、反応速度が増加することは技術常識であるから、甲2発明(当審注:本決定における「甲2製造方法発明」のこと。以下同様。)のポリマーの反応時間の制御に代えて、或いは、反応時間の制御に加えて、粒径を小さくすることで、ポリマーのランダム化を促進し、平均連鎖長が制御され、甲2発明の課題たる優れた物性を有する液晶性ポリエステルを得ることができるから、相違点2-1(当審注:本決定における「相違点3」のこと。以下同様。)は容易に想到し得たことである。
(イ)甲12には、ナフタレンジカルボン酸粒子の粒子径を制御することで、反応時間の制御し、液晶性ポリマーの軟化点等の物性を向上させることが記載されているから、これとポリマーの反応時間を制御することにより、ポリマーのランダム化を促進し、平均連鎖長が制御され、ポリマーの物性を改善する甲2発明と組み合わせることで、甲2発明の課題たる優れた物性を有する液晶性ポリエステルを得るとの技術的知見を得ることができ、相違点2-1は容易に想到し得たことである。
(ウ)甲4には、粒径が数十μmであり、かつ粒径が揃っているナフタレンジカルボン酸粉末は粘度が高いこと(第1頁下から3~4行)が記載され、さらに、甲5には、平均粒子径が150μm未満であるナフタレンジカルボン酸粉末は分子間力や結合力が強いこと(【0027】、【0067】)が技術常識であるから、機械的強度等の物性の向上という甲2発明の課題解決のために、相違点2-1のようにすることは、容易に想到し得たことである。
(エ)甲11によると、d50粒径が小さい方が圧縮強度や曲げ強度が大きくなることが技術常識であるから、機械的強度の向上という甲2発明の課題を達成するため、ナフタレンジカルボン酸として、粒径が小さく、均一である構成を採用する動機付けがあり、甲5~甲10から、150μm以下の粒子から主になる物質が高い機械的強度を持つことは技術常識であるから、甲2発明に、慣用技術を組み合わせて、相違点2-1とすることは、容易に想到し得たことである。
順に検討する。
・(ア)について
甲2には、液晶性ポリエステル(A)の製造方法では、溶融重合反応時の最高到達温度で1~3時間反応系を対流させることでポリマーのランダム化が促進され、平均連鎖長を調整できることが記載され(【0040】)、甲13には、粒子径の一般的な技術事項(粒子径が小さいほど、化学反応の反応速度が速くなること)が記載されている。
ここで、上述の甲2に記載された事項、甲13に記載された技術事項を踏まえても、甲2発明と甲13に記載された技術事項とが、どのように関係しているのか、また、どのように組み合わせるのかが不明であるから、甲2における反応時間の制御に代えて、或いは、反応時間の制御に加えて、粒径を小さくすることで、相違点2-1にように構成することは、当業者が容易に想到し得たということはできない。
してみると、当該主張は妥当でない。
・(イ)について
甲12は、2,6-ナフタレンジカルボン酸を主とする二官能性カルボン酸と、エチレングリコールを主とするグリコール又はそのエステル形成性誘導体とを反応させるポリエステルの製造法である(請求項1)が、該ポリエステルは、その原料から見て結晶性ポリエステルであって、液晶性ポリエステルではないから、甲12は、液晶性ポリエステルを製造するための知見を与えることはないといえる。
そうすると、甲2発明及び甲12に記載された事項に基づいて、相違点2-1にように構成することは、当業者が容易に想到し得たということはできない。
してみると、当該主張は妥当でない。
・(ウ)について
上記4(2)ウ「・(ア)及び(イ)について」に示したように、市販されているナフタレンジカルボン酸の粒径が、必ずしも甲4に記載された粒径であるとはいえない。
そして、甲5には、2,6-ナフタレンジカルボン酸について記載されていないし、根拠を示すことなく、平均粒子径が150μm未満のナフタレンジカルボン酸粉末は分子間力や結合力が強いというのみでは、甲2発明において、2,6-ナフタレンジカルボン酸の平均粒子径を調整する動機付けにはならないといえる。
仮に、2-ヒドロキシナフタレン-6-カルボン酸が液晶ポリエステルの構成単位とならないことを想定しての主張であるなら、当を得ない主張である。
そうすると、甲2発明及び甲4に記載された事項、甲5に記載された事項に基づいて、相違点2-1にように構成することは、当業者が容易に想到し得たということはできない。
してみると、当該主張は妥当でない。
・(エ)について
まず、甲11には、エメリとパラフィンを含む複合材料であって、エメリの粒径が小さくなるほど機械的強度が強くなること(第357頁下から1~4行、図12~図14)が記載されているが、該エメリは液晶性ポリエステルの原料(ナフタレンジカルボン酸)ではない。
ついで、甲2発明では、液晶性ポリエステルの原料である2,6-ナフタレンジカルボン酸粒子は、最終製品である液晶性ポリエステル中に粒子形状のまま存在するのではなく、液晶性ポリエステルの構成単位として存在するものである。
一方、甲5には、サンプル1-7として、平均粒子径が41μmの2-ヒドロキシナフタレン-6-カルボン酸の造粒物が記載されているだけであって、2,6-ナフタレンジカルボン酸粉末について何ら知見を与えないものである。
そして、甲6~甲10には、粒子径が150μm以下の充填材(2,6-ナフタレンジカルボン酸粒子ではない)を含有した組成物を用いて最終製品を得るものであって、該充填材は最終製品中にそのままの形状で存在して、機械的強度を向上させることが記載されている。
これらの記載によると、甲5~甲10には、2,6-ナフタレンジカルボン酸粒子は記載されていないし、液晶性ポリエステルの構成単位となることも記載されていない。
してみると、甲5~甲10を参照したとしても、どの点において周知慣用の技術となるのか不明であるし、液晶ポリエステルの構成単位にならないことを想定した甲5~甲10の技術事項を、液晶ポリエステルの構成単位になることが当業者に自明である甲2に適用する動機付けはない。
したがって、当該主張は妥当でない。
よって、いずれの主張も採用できない。
エ 小括
以上から、甲2に記載された発明及び甲1、甲3~甲17に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
(3)本件発明2~8について
本件発明2~8は、本件発明1を引用するものであるから、上記(2)イで検討したのと同様の理由により、本件発明2~8は、本件発明1は、甲2に記載された発明及び甲1、甲3~甲17に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
(4)本件発明9について
ア 対比
本件発明9と甲2ポリエステル発明と対比する。
甲2ポリエステル発明の「ヒドロキシカルボン酸(2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸)」、「4,4’-ジヒドロキシビフェニル」、「2,6-ナフタレンジカルボン酸」は、順に、本件発明9の「芳香族ヒドロキシカルボン酸(B)」、「芳香族ジオール(A)」、「ナフタレンジカルボン酸(C)」に相当する。
そして、甲2ポリエステル発明では、「ヒドロキシカルボン酸(2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸)」、「4,4’-ジヒドロキシビフェニル」、「2,6-ナフタレンジカルボン酸」とを反応させて得られる液晶性ポリエステルであるから、本件発明1の「芳香族ジオール(A)と、芳香族ヒドロキシカルボン酸(B)と、ナフタレンジカルボン酸(C)とを反応させて得られる液晶性ポリエステル」であることに相当する。
してみると、本件発明9と甲2ポリエステル発明とは、
「芳香族ジオール(A)と、芳香族ヒドロキシカルボン酸(B)と、ナフタレンジカルボン酸(C)とを反応させて得られるポリエステル。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点3’>
ナフタレンジカルボン酸(C)に関し、本件発明9は「JIS K 0069(1992)の乾式ふるい分け試験方法により測定される粒子径が150μm未満であるナフタレンジカルボン酸粒子(C1)を90質量%以上含むナフタレンジカルボン酸粉末である」のに対して、甲2ポリエステル発明はそのような特定がない点
イ 検討
(ア)相違点3’について
上記(2)イに示したように、甲2には、原料であるナフタレンジカルボン酸の粒子径について何ら記載も示唆もされていないため、当業者は当該粒子径に着目し得ないものであり、甲2ポリエステル発明において、「特定粒子径C1」とすることを想定し得ない。
そして、甲1、甲3~甲17のいずれにも、ナフタレンジカルボン酸の粒子径が、該ナフタレンジカルボン酸を原料として製造した液晶性ポリエステルの引張物性に影響を与えることを教示する記載はない。
そうすると、甲2に記載された発明及び甲1、甲3~甲17に記載された事項に基づいて、ナフタレンジカルボン酸の粒子径を調整しようとする動機付けを有しないものである。
また、「特定粒子径C1」とすることによって、引張物性(引張強度、引張伸び)に優れるという、本件発明9の効果を予測することはできない。
したがって、相違点3’のように構成することは、当業者が容易に想到し得たことではない。
ウ 小括
以上から、本件発明9は、甲2に記載された発明及び甲1、甲3~甲17に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
(5)申立理由5についてのまとめ
本件発明1~9は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1~9に係る特許は、申立理由5によって取り消すことはできない。
第5 むすび
したがって、本件特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1~9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700844