2021-701091
ポリイミドフィルム及びその製造方法
- 審判番号
- 2021-701091
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-507136外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6874759
- 請求日
- 2021年11月18日
- 審決日
- 2022年06月30日
- 公報発行日
- 2022年09月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】コニカミノルタ株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人光陽国際特許事務所
- 【異議申立人】川野 由希
- 分類
- P1651.113-YAA(C08J) / P1651.121-YAA(C08J) / P1651.537-YAA(C08J) / P1651.536-YAA(C08J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 25項目
第1 手続の経緯
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特許第6874759号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、2017年(平成29年)2月20日(優先権主張 平成28年3月25日)を国際出願日とする特許出願であって、令和3年4月26日にその特許権の設定登録(請求項の数5)がされ、同年5月19日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年11月18日に特許異議申立人 川野 由希(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし5)がされ、令和4年1月27日付けで、取消理由が通知され、同年4月4日に特許権者 コニカミノルタ株式会社(以下、「特許権者」という。)より訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされるとともに意見書が提出されたものである。
なお、下記第2 1のとおり、令和4年4月4日にされた訂正請求は、実質的に一部の請求項の削除のみを目的とするものであるから、特許法第120条の5第5項ただし書における特別の事情にあたるものと合議体は判断し、特許異議申立人に意見書の提出の機会は与えないこととした。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。(下線は、訂正箇所について当審が付したものである。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に、「前記混合物が、前記ポリイミドと前記無機微粒子とを含有するポリイミドフィルムを破砕した破砕品であることを特徴とする請求項1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。」と記載されているのを、
「60℃において、ジメチルアセトアミド100g又はγ-ブチロラクトン100gに対し1g以上溶解されるポリイミドと無機微粒子とを含有するポリイミドフィルムの製造方法であって、前記ポリイミドと前記無機微粒子とを含有する混合物を準備する工程、前記混合物と前記ポリイミドと溶剤とを含有するドープを調製する工程、前記ドープを支持体上に流延して膜を形成する工程、前記膜を支持体から剥離する工程、及び、剥離された膜を乾燥する乾燥工程を含み、前記混合物が、前記ポリイミドと前記無機微粒子とを含有するポリイミドフィルムを破砕した破砕品であることを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法。」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に、「前記混合物が、前記ポリイミドと前記無機微粒子と溶剤とを含有するドープであることを特徴とする請求項1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。」と記載されているのを、
「60℃において、ジメチルアセトアミド100g又はγ-ブチロラクトン100gに対し1g以上溶解されるポリイミドと無機微粒子とを含有するポリイミドフィルムの製造方法であって、前記ポリイミドと前記無機微粒子とを含有する混合物を準備する工程、前記混合物と前記ポリイミドと溶剤とを含有するドープを調製する工程、前記ドープを支持体上に流延して膜を形成する工程、前記膜を支持体から剥離する工程、及び、剥離された膜を乾燥する乾燥工程を含み、前記混合物が、前記ポリイミドと前記無機微粒子と溶剤とを含有するドープであることを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法。」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に、「前記混合物が、製造されるポリイミドフイルムに対し10~70質量%の質量比率で含有されていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のポリイミドフィルムの製造方法。」と記載されているのを、
「60℃において、ジメチルアセトアミド100g又はγ-ブチロラクトン100gに対し1g以上溶解されるポリイミドと無機微粒子とを含有するポリイミドフィルムの製造方法であって、前記ポリイミドと前記無機微粒子とを含有する混合物を準備する工程、前記混合物と前記ポリイミドと溶剤とを含有するドープを調製する工程、前記ドープを支持体上に流延して膜を形成する工程、前記膜を支持体から剥離する工程、及び、剥離された膜を乾燥する乾燥工程を含み、前記混合物が、製造されるポリイミドフィルムに対し10~70質量%の質量比率で含有されていることを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法。」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項4に、「前記混合物が、製造されるポリイミドフィルムに対し10~70質量%の質量比率で含有されていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のポリイミドフィルムの製造方法。」と記載されているのを、
特許請求の範囲の請求項6として、
「60℃において、ジメチルアセトアミド100g又はγ-ブチロラクトン100gに対し1g以上溶解されるポリイミドと無機微粒子とを含有するポリイミドフィルムの製造方法であって、前記ポリイミドと前記無機微粒子とを含有する混合物を準備する工程、前記混合物と前記ポリイミドと溶剤とを含有するドープを調製する工程、前記ドープを支持体上に流延して膜を形成する工程、前記膜を支持体から剥離する工程、及び、剥離された膜を乾燥する乾燥工程を含み、前記混合物が、前記ポリイミドと前記無機微粒子とを含有するポリイミドフィルムを破砕した破砕品であり、前記混合物が、製造されるポリイミドフィルムに対し10~70質量%の質量比率で含有されていることを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法。」に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項4に、「前記混合物が、製造されるポリイミドフィルムに対し10~70質量%の質量比率で含有されていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のポリイミドフィルムの製造方法。」と記載されているのを、
特許請求の範囲の請求項7として、
「60℃において、ジメチルアセトアミド100g又はγ-ブチロラクトン100gに対し1g以上溶解されるポリイミドと無機微粒子とを含有するポリイミドフィルムの製造方法であって、前記ポリイミドと前記無機微粒子とを含有する混合物を準備する工程、前記混合物と前記ポリイミドと溶剤とを含有するドープを調製する工程、前記ドープを支持体上に流延して膜を形成する工程、前記膜を支持体から剥離する工程、及び、剥離された膜を乾燥する乾燥工程を含み、前記混合物が、前記ポリイミドと前記無機微粒子と溶剤とを含有するドープであり、前記混合物が、製造されるポリイミドフィルムに対し10~70質量%の質量比率で含有されていることを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法。」に訂正する。
(7)訂正事項7
明細書の段落【0017】の記載を削除する。
(8)訂正事項8
明細書段落【0018】に、
「2. 前記混合物が、前記ポリイミドと前記無機微粒子とを含有するポリイミドフィルムを破砕した破砕品であることを特徴とする第1項に記載のポリイミドフィルムの製造方法。」と記載されているのを、
「2. 60℃において、ジメチルアセトアミド100g又はγ-ブチロラクトン100gに対し1g以上溶解されるポリイミドと無機微粒子とを含有するポリイミドフィルムの製造方法であって、前記ポリイミドと前記無機微粒子とを含有する混合物を準備する工程、前記混合物と前記ポリイミドと溶剤とを含有するドープを調製する工程、前記ドープを支持体上に流延して膜を形成する工程、前記膜を支持体から剥離する工程、及び、剥離された膜を乾燥する乾燥工程を含み、前記混合物が、前記ポリイミドと前記無機微粒子とを含有するポリイミドフィルムを破砕した破砕品であることを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法。」に訂正する。
(9)訂正事項9
明細書段落【0019】に、
「3. 前記混合物が、前記ポリイミドと前記無機微粒子と溶剤とを含有するドープであることを特徴とする第1項に記載のポリイミドフィルムの製造方法。」と記載されているのを、
「3. 60℃において、ジメチルアセトアミド100g又はγ-ブチロラクトン100gに対し1g以上溶解されるポリイミドと無機微粒子とを含有するポリイミドフィルムの製造方法であって、前記ポリイミドと前記無機微粒子とを含有する混合物を準備する工程、前記混合物と前記ポリイミドと溶剤とを含有するドープを調製する工程、前記ドープを支持体上に流延して膜を形成する工程、前記膜を支持体から剥離する工程、及び、剥離された膜を乾燥する乾燥工程を含み、前記混合物が、前記ポリイミドと前記無機微粒子と溶剤とを含有するドープであることを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法。」に訂正する。
(10)訂正事項10
明細書段落【0020】に「4. 前記混合物が、製造されるポリイミドフィルムに対し10~70質量%の質量比率で含有されていることを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載のポリイミドフィルムの製造方法。」と記載されているのを、
「4. 60℃において、ジメチルアセトアミド100g又はγ-ブチロラクトン100gに対し1g以上溶解されるポリイミドと無機微粒子とを含有するポリイミドフィルムの製造方法であって、前記ポリイミドと前記無機微粒子とを含有する混合物を準備する工程、前記混合物と前記ポリイミドと溶剤とを含有するドープを調製する工程、前記ドープを支持体上に流延して膜を形成する工程、前記膜を支持体から剥離する工程、及び、剥離された膜を乾燥する乾燥工程を含み、前記混合物が、製造されるポリイミドフィルムに対し10~70質量%の質量比率で含有されていることを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法。」に訂正する。
(11)訂正事項11
明細書の段落【0021】に、「5. ポリイミドと無機微粒子とを含有する流延製膜されたポリイミドフィルムであって、
前記ポリイミドが、60℃において、ジメチルアセトアミド100g又はγ-ブチロラクトン100gに対し1g以上溶解されるポリイミドであり、
前記ポリイミドの全量に対して、前記ポリイミドと前記無機微粒子とを含有する前記ポリイミドフィルムを破砕した破砕品由来のポリイミドが、10~70質量%の範囲内で含まれており、かつ、
ヘイズ値の面方向での標準偏差が0.6以下であることを特徴とするポリイミドフィルム。」と記載されているのを、
「5. ポリイミドと無機微粒子とを含有する流延製膜されたポリイミドフィルムであって、前記ポリイミドが、60℃において、ジメチルアセトアミド100g又はγ-ブチロラクトン100gに対し1g以上溶解されるポリイミドであり、前記ポリイミドの全量に対して、前記ポリイミドと前記無機微粒子とを含有する前記ポリイミドフィルムを破砕した破砕品由来のポリイミドが、10~70質量%の範囲内で含まれており、かつ、ヘイズ値の面方向での標準偏差が0.6以下であることを特徴とするポリイミドフィルム。続きを表示(全20行)6. 60℃において、ジメチルアセトアミド100g又はγ-ブチロラクトン100gに対し1g以上溶解されるポリイミドと無機微粒子とを含有するポリイミドフィルムの製造方法であって、前記ポリイミドと前記無機微粒子とを含有する混合物を準備する工程、前記混合物と前記ポリイミドと溶剤とを含有するドープを調製する工程、前記ドープを支持体上に流延して膜を形成する工程、前記膜を支持体から剥離する工程、及び、剥離された膜を乾燥する乾燥工程を含み、前記混合物が、前記ポリイミドと前記無機微粒子とを含有するポリイミドフィルムを破砕した破砕品であり、前記混合物が、製造されるポリイミドフィルムに対し10~70質量%の質量比率で含有されていることを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法。7. 60℃において、ジメチルアセトアミド100g又はγ-ブチロラクトン100gに対し1g以上溶解されるポリイミドと無機微粒子とを含有するポリイミドフィルムの製造方法であって、前記ポリイミドと前記無機微粒子とを含有する混合物を準備する工程、前記混合物と前記ポリイミドと溶剤とを含有するドープを調製する工程、前記ドープを支持体上に流延して膜を形成する工程、前記膜を支持体から剥離する工程、及び、剥離された膜を乾燥する乾燥工程を含み、前記混合物が、前記ポリイミドと前記無機微粒子と溶剤とを含有するドープであり、前記混合物が、製造されるポリイミドフィルムに対し10~70質量%の質量比率で含有されていることを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法。」に訂正する。
(12)訂正事項12
明細書の段落【0372】に、「(混合用ドープ301Aの調製)
下記組成の主ドープを調製した。まず、加圧溶解タンクにジクロロメタン(沸点40℃)を添加した。溶剤の入った加圧溶解タンクに、上記調製したポリイミド溶液A及び残りの成分を撹拌しながら投入した。これを加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープを調製した。」と記載されているのを、
「(混合用ドープ301Aの調製)下記組成の混合用ドープを調製した。まず、加圧溶解タンクにジクロロメタン(沸点40℃)を添加した。溶剤の入った加圧溶解タンクに、上記調製したポリイミド溶液A及び残りの成分を撹拌しながら投入した。これを加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、混合用ドープを調製した。」に訂正する。
なお、請求項1ないし4、6及び7は一群の請求項である。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1に係る請求項1の訂正について
訂正事項1に係る請求項1の訂正は、請求項1を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであるといえるし、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
(2)訂正事項2に係る請求項2の訂正について
訂正事項2に係る請求項2の訂正は、訂正前の請求項2は請求項1の記載を引用する記載であったところ、請求項1の記載を引用しないものとするいわゆる引用関係の解消を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであるといえるし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことも明らかである。
(3)訂正事項3に係る請求項3の訂正について
訂正事項3に係る請求項3の訂正は、訂正前の請求項3は請求項1の記載を引用する記載であったところ、請求項1の記載を引用しないものとするいわゆる引用関係の解消を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであるといえるし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことも明らかである。
(4)訂正事項4に係る請求項4の訂正について
訂正事項4に係る請求項4の訂正は、訂正前の請求項4は請求項1から請求項3までのいずれか一項を引用する記載であったところ、訂正前の請求項1の記載を引用するものについて、請求項1の記載を引用しないものとするいわゆる引用関係の解消を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであるといえるし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことも明らかである。
(5)訂正事項5に係る請求項6の訂正について
訂正事項5に係る請求項6の訂正は、訂正前の請求項4は請求項1から請求項3までのいずれか一項を引用する記載であったところ、訂正前の請求項1を引用する請求項2の記載を引用するものについて、請求項1の記載を引用する請求項2の記載を引用しないものとして新しい請求項6とする、いわゆる引用関係の解消を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであるといえるし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことも明らかである。
(6)訂正事項6に係る請求項7の訂正について
訂正事項6に係る請求項7の訂正は、訂正前の請求項4は請求項1から請求項3までのいずれか一項を引用する記載であったところ、訂正前の請求項1を引用する請求項3の記載を引用するものについて、請求項1の記載を引用する請求項3の記載を引用しないものとして新しい請求項7とする、いわゆる引用関係の解消を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであるといえるし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことも明らかである。
(7)訂正事項7ないし11について
訂正事項7ないし11は、訂正事項1ないし6に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、願書に添付した明細書の段落【0017】~【0021】の記載を訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであるといえるし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことも明らかである。
また、当該訂正に係る請求項の全てについて訂正の請求は行われている。
(8)訂正事項12について
訂正事項12は、願書に添付した明細書の段落【0372】の「主ドープ」との記載を表題にある「混合用ドープ」に修正するもので、誤記の訂正を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであるといえるし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことも明らかである。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合する。
したがって、結論のとおり、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1~4、6及び7]について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明7」といい、これらを総称して「本件特許発明」という場合がある。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】(削除)【請求項2】60℃において、ジメチルアセトアミド100g又はγ-ブチロラクトン100gに対し1g以上溶解されるポリイミドと無機微粒子とを含有するポリイミドフィルムの製造方法であって、続きを表示(全49行)前記ポリイミドと前記無機微粒子とを含有する混合物を準備する工程、前記混合物と前記ポリイミドと溶剤とを含有するドープを調製する工程、前記ドープを支持体上に流延して膜を形成する工程、前記膜を支持体から剥離する工程、及び、剥離された膜を乾燥する乾燥工程を含み、前記混合物が、前記ポリイミドと前記無機微粒子とを含有するポリイミドフィルムを破砕した破砕品であることを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法。【請求項3】60℃において、ジメチルアセトアミド100g又はγ-ブチロラクトン100gに対し1g以上溶解されるポリイミドと無機微粒子とを含有するポリイミドフィルムの製造方法であって、前記ポリイミドと前記無機微粒子とを含有する混合物を準備する工程、前記混合物と前記ポリイミドと溶剤とを含有するドープを調製する工程、前記ドープを支持体上に流延して膜を形成する工程、前記膜を支持体から剥離する工程、及び、剥離された膜を乾燥する乾燥工程を含み、前記混合物が、前記ポリイミドと前記無機微粒子と溶剤とを含有するドープであることを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法。【請求項4】60℃において、ジメチルアセトアミド100g又はγ-ブチロラクトン100gに対し1g以上溶解されるポリイミドと無機微粒子とを含有するポリイミドフィルムの製造方法であって、前記ポリイミドと前記無機微粒子とを含有する混合物を準備する工程、前記混合物と前記ポリイミドと溶剤とを含有するドープを調製する工程、前記ドープを支持体上に流延して膜を形成する工程、前記膜を支持体から剥離する工程、及び、剥離された膜を乾燥する乾燥工程を含み、前記混合物が、製造されるポリイミドフィルムに対し10~70質量%の質量比率で含有されていることを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法。【請求項5】ポリイミドと無機微粒子とを含有する流延製膜されたポリイミドフィルムであって、前記ポリイミドが、60℃において、ジメチルアセトアミド100g又はγ-ブチロラクトン100gに対し1g以上溶解されるポリイミドであり、前記ポリイミドの全量に対して、前記ポリイミドと前記無機微粒子とを含有する前記ポリイミドフィルムを破砕した破砕品由来のポリイミドが、10~70質量%の範囲内で含まれており、かつ、ヘイズ値の面方向での標準偏差が0.6以下であることを特徴とするポリイミドフィルム。【請求項6】60℃において、ジメチルアセトアミド100g又はγ-ブチロラクトン100gに対し1g以上溶解されるポリイミドと無機微粒子とを含有するポリイミドフィルムの製造方法であって、前記ポリイミドと前記無機微粒子とを含有する混合物を準備する工程、前記混合物と前記ポリイミドと溶剤とを含有するドープを調製する工程、前記ドープを支持体上に流延して膜を形成する工程、前記膜を支持体から剥離する工程、及び、剥離された膜を乾燥する乾燥工程を含み、前記混合物が、前記ポリイミドと前記無機微粒子とを含有するポリイミドフィルムを破砕した破砕品であり、前記混合物が、製造されるポリイミドフィルムに対し10~70質量%の質量比率で含有されていることを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法。【請求項7】60℃において、ジメチルアセトアミド100g又はγ-ブチロラクトン100gに対し1g以上溶解されるポリイミドと無機微粒子とを含有するポリイミドフィルムの製造方法であって、前記ポリイミドと前記無機微粒子とを含有する混合物を準備する工程、前記混合物と前記ポリイミドと溶剤とを含有するドープを調製する工程、前記ドープを支持体上に流延して膜を形成する工程、前記膜を支持体から剥離する工程、及び、剥離された膜を乾燥する乾燥工程を含み、前記混合物が、前記ポリイミドと前記無機微粒子と溶剤とを含有するドープであり、前記混合物が、製造されるポリイミドフィルムに対し10~70質量%の質量比率で含有されていることを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法。」
第4 申立ての理由の概要
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申立ての理由の概要は次のとおりである。
1 申立理由1(甲第1号証を主引用文献とする新規性)
本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2 申立理由2-1(甲第1号証を主引用文献とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
3 申立理由2-2(甲第2号証を主引用文献とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
4 申立理由3(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、以下の理由で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
申立理由3は、おおむね次のとおりである。
本件特許発明が解決しようとする課題は、フィルムの面方向でのヘイズ値の標準偏差が0.6未満であるポリイミドフィルムを提供することであると認められるところ、ジメチルアセトアミド又はγ-ブチロラクトンに対する溶解度が規定されており、可溶性ポリイミドに無機微粒子をあらかじめ混合する工程を含んでいるからといって、ドープに含まれる無機微粒子の種類、疎水性、粒径、混合比率やドープに含まれる溶媒の種類等によっても変動する無機微粒子の偏りを少なくでき、得られるポリイミドフィルムのヘイズ値の面方向の標準偏差を0.6未満という特定の数値未満とできる理由はない。
5 申立理由4(明確性要件)
本件特許の請求項5に係る特許は、以下の理由で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
申立理由4は、おおむね次のとおりである。
ヘイズ値の測定箇所が特定されていない結果、発明の範囲が不明確である。
6 申立理由5(実施可能要件)
本件特許の請求項5に係る特許は、以下の理由で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである
申立理由5は、おおむね次の(6-1)、(6-2)のとおりである。
(6-1)「ポリイミドと無機微粒子とを含有する流延製膜されたポリイミドフィルムであって、前記ポリイミドが、60℃において、ジメチルアセトアミド100g又はγ-ブチロラクトン100gに対し1g以上溶解されるポリイミドであり、前記ポリイミドの全量に対して、前記ポリイミドと前記無機微粒子とを含有する前記ポリイミドフィルムを破砕した破砕品由来のポリイミドが、10~70質量%の範囲内で含まれて」いるポリイミドフィルムであっても、「ヘイズ値の面方向での標準偏差が0.6以下」との発明特定事項を充足しない場合、当該発明特定事項を充足するポリイミドフィルムをどのように製造すればよいのかが、発明の詳細な説明に記載されていない。
(6-2)ヘイズ値の測定箇所が特定されていないため、発明の詳細な説明の記載は当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。
7 証拠方法
以下、順に「甲1」のようにいう。
なお、証拠の表記は、特許異議申立書の記載に従った。
第5 取消理由通知に記載した取消理由の概要
当審が令和4年1月27日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
1 取消理由1(甲1を主引用文献とする新規性)
本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2 取消理由2(甲1を主引用文献とする進歩性)
本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
第6 取消理由についての当審の判断
上記第2 1のとおり、本件訂正請求により、請求項1は削除された。よって、上記第5の取消理由はその対象がなくなった。
第7 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
当審が令和4年1月27日付けで特許権者に通知した取消理由通知書において採用しなかった申立理由は、請求項2ないし7に対しての申立理由2-1(甲1に基づく進歩性)、申立理由2-2(甲2に基づく進歩性)、申立理由3(サポート要件)及び申立理由4(明確性要件)であるので、順次検討する。なお、申立理由1は、その対象がなくなった。
1 申立理由2-1(甲1に基づく進歩性)について
(1)甲1に記載された事項及び甲1発明
ア 甲1に記載された事項
甲1には、「光学フィルムの製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。
「[1] 樹脂と粒子とを加熱溶融及び混練して、樹脂と粒子の混合材料を調製する工程、該混合材料を溶媒中に溶解して樹脂溶液とする工程、及び該樹脂溶液を溶液流延法により光学フィルムとする工程を経て光学フィルムを製造することを特徴とする光学フィルムの製造方法。」
「[4] 前記樹脂溶液は、前記混合材料に、更に樹脂を添加・溶解して調製することを特徴とする請求の範囲第1項乃至第3項のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。」
「[0207] 粒子としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機粒子や架橋高分子粒子を挙げることが出来る。樹脂がセルロースの場合、二酸化ケイ素のような粒子を後述する有機物やケイ素系の材料等で表面処理した粒子が活用出来、該表面処理した粒子は光学フィルムのヘイズを維持したまま本発明の目的を達成出来るため好ましい。」
「[0232] 《樹脂》本発明の光学フィルムの製造方法に用いる樹脂は、上述のように樹脂と粒子の混合材料を得るために熱可塑性樹脂を用いる場合、樹脂の種類に関して特に限定されるものではない。[0233] 例えば、ポリカーボネート、脂環式構造含有ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリイミド、セルロース樹脂が挙げられる。中でもセルロース樹脂や脂環式構造含有ポリマーが好ましい。」
「[0281] (溶液流延)本発明の光学フィルムの製造は、樹脂、粒子、好ましくは可塑剤、安定化剤を加熱溶融物として、混練押出しして得られたペレットを、溶媒に溶解させてドープを調製する工程、ドープを無限に移行する無端の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸または幅保持する工程、更に乾燥する工程、仕上がったフィルムを巻取る工程により行われる。」
イ 甲1に記載された発明
甲1に記載された事項を、特許請求の範囲の[4]を引用する[1]、[0207]、[0232]、[0233]、[0281]の記載を中心に整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1製法発明」、「甲1フィルム発明」という。)が記載されていると認める。
<甲1製法発明>
「樹脂と粒子とを加熱溶融及び混練して、樹脂と粒子の混合材料を調製する工程、該混合材料を溶媒中に溶解して樹脂溶液とする工程、及び該樹脂溶液を溶液流延法により光学フィルムとする工程を経て光学フィルムを製造する光学フィルムの製造方法において、前記樹脂溶液は、前記混合材料に、更に樹脂を添加・溶解して調製するものであり、前記樹脂は、ポリカーボネート、脂環式構造含有ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリイミド又はセルロース樹脂であり、前記粒子は、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機粒子又は架橋高分子粒子であり、前記溶液流延法は、前記樹脂溶液であるドープを無限に移行する無端の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸または幅保持する工程、更に乾燥する工程を含む、光学フィルムの製造方法。」
<甲1フィルム発明>
「樹脂と粒子とを加熱溶融及び混練して、樹脂と粒子の混合材料を調製する工程、該混合材料を溶媒中に溶解して樹脂溶液とする工程、及び該樹脂溶液を溶液流延法により光学フィルムとする工程を経て得られた光学フィルムであって前記樹脂溶液は、前記混合材料に、更に樹脂を添加・溶解して調製するものであり、前記樹脂は、ポリカーボネート、脂環式構造含有ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリイミド又はセルロース樹脂であり、前記粒子は、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機粒子又は架橋高分子粒子であり、前記溶液流延法は、前記樹脂溶液であるドープを無限に移行する無端の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸または幅保持する工程、更に乾燥する工程を含む、光学フィルム。」
(2)本件特許発明2について
本件特許発明2と甲1製法発明とを対比する。
甲1製法発明において、光学フィルムに含まれる「樹脂」が「ポリカーボネート、脂環式構造含有ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリイミド又はセルロース樹脂」であるとともに、光学フィルムに含まれる「粒子」が「二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機粒子又は架橋高分子粒子」であるから、甲1製法発明の「ポリイミド」と「無機粒子」とを含有する「光学フィルム」は本件特許発明2の「ポリイミドと無機微粒子とを含有するポリイミドフィルム」に相当し、また、甲1製法発明の「ポリイミド」と「無機粒子」の「混合材料」は本件特許発明2の「前記ポリイミドと前記無機微粒子とを含有する混合物」に相当する。
さらに、甲1製法発明において、「樹脂溶液」から溶液流延法によりフィルムを成形していることからみて、甲1製法発明の「樹脂溶液」は本件特許発明1の「ドープ」に相当し、また、甲1製法発明は、「混合材料を溶媒中に溶解して樹脂溶液とする工程」において、前記混合材料に、更に樹脂を添加・溶解して樹脂溶液を調製するから、甲1製法発明の当該工程は、本件特許発明2の「前記混合物と前記ポリイミドと溶剤とを含有するドープを調製する工程」に相当する。
そして、甲1製法発明の「溶液流延法」に含まれる「前記樹脂溶液であるドープを無限に移行する無端の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程」、「金属支持体から剥離する工程」、「更に乾燥する工程」は、それぞれ、本件特許発明2の「前記ドープを支持体上に流延して膜を形成する工程」、「前記膜を支持体から剥離する工程」、及び、「剥離された膜を乾燥する乾燥工程」に相当する。
以上の点をふまえると、両者は、以下の点で一致する。
「ポリイミドと無機微粒子とを含有するポリイミドフィルムの製造方法であって、前記ポリイミドと前記無機微粒子とを含有する混合物を準備する工程、前記混合物と前記ポリイミドと溶剤とを含有するドープを調製する工程、前記ドープを支持体上に流延して膜を形成する工程、前記膜を支持体から剥離する工程、及び、剥離された膜を乾燥する乾燥工程を含むポリイミドフィルムの製造方法。」
そして、両者は、以下の点で相違する。
<相違点1-1>
ポリイミドに関して、本件特許発明2は「60℃において、ジメチルアセトアミド100g又はγ-ブチロラクトン100gに対し1g以上溶解されるポリイミド」と特定するのに対して、甲1製法発明は、そのように特定されていない点
<相違点1-2>
無機微粒子を含有する混合物に関して、本件特許発明2は「前記ポリイミドと前記無機微粒子とを含有するポリイミドフィルムを破砕した破砕品である」と特定するのに対し、甲1製法発明は、この点を特定しない点
事案に鑑み、相違点1-2から検討する。
無機微粒を含有する混合物として、用いられるポリイミドと用いられる無機微粒子とを含有するポリイミドフィルムを破砕した破砕品を利用することに関する証拠は、特許異議申立人からは提出されておらず、本件特許の優先日時点において、混合物として、用いられるポリイミドと用いられる無機微粒子とを含有するポリイミドフィルムを破砕した破砕品を利用することが、当業者において周知あるいは技術常識であったとも認められない。
そうすると、甲1製法発明において、他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点1-2に係る本件特許発明2の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして、本件特許発明1の奏する「フィルムの搬送性が良く、フィルムの面方向でのヘイズ値のバラツキが少ないポリイミドフィルムを提供できる」(本件特許明細書の段落【0022】)という効果は甲1製法発明及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することができた範囲を超える顕著なものであるといえる。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明2は甲1製法発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明3について
本件特許発明3と甲1製法発明とを対比すると、上記(2)と同様の相当関係が成り立つから、両者は、上記(2)において一致するとした点で一致し、上記(2)の相違点1-1に加えて、以下の相違点1-3で相違する。
<相違点1-3>
無機微粒子を含有する混合物に関して、本件特許発明3は「前記ポリイミドと前記無機微粒子と溶剤とを含有するドープである」と特定するのに対し、甲1製法発明は、そのように特定されていない点
事案に鑑み、相違点1-3について検討する。
支持体上に流延するドープを混合物と前記ポリイミドと溶剤とから調整するものにおいての混合物が、「前記ポリイミドと前記無機微粒子と溶剤とを含有するドープである」ものは、特許異議申立人が提出したいずれの証拠にもなく、本件特許の優先日時点において、混合物として、ポリイミドと前記無機微粒子と溶剤とを含有するドープを用いることが、当業者において周知あるいは技術常識であったとも認められない。
そうすると、甲1製法発明において、他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点1-3に係る本件特許発明3の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして、本件特許発明3の奏する「フィルムの搬送性が良く、フィルムの面方向でのヘイズ値のバラツキが少ないポリイミドフィルムを提供できる」という効果は甲1製法発明及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することができた範囲を超える顕著なものであるといえる。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明3は甲1製法発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4)本件特許発明4について
本件特許発明4と甲1製法発明とを対比すると、上記(2)と同様の相当関係が成り立つから、両者は、上記(2)において一致するとした点で一致し、上記(2)の相違点1-1に加えて、以下の相違点1-4で相違する。
<相違点1-4>
無機微粒子を含有する混合物に関して、本件特許発明4は「製造されるポリイミドフィルムに対し10~70質量%の質量比率で含有されている」と特定するのに対し、甲1製法発明は、そのように特定されていない点
事案に鑑み、相違点1-4について検討する。
無機微粒子を含有する混合物をどの程度ポリイミドフィルムに配合するかについての記載は甲1にはないし、具体的な配合量についての言及もない。また、他の証拠にも記載も示唆もない。
そして、甲1製法発明において、混合物の配合量を相違点1-4のようにする動機付けもない。
そうすると、甲1製法発明において、他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点1-4に係る本件特許発明4の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして、本件特許発明4の奏する「フィルムの搬送性が良く、フィルムの面方向でのヘイズ値のバラツキが少ないポリイミドフィルムを提供できる」という効果は甲1製法発明及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することができた範囲を超える顕著なものであるといえる。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明4は甲1製法発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(5)本件特許発明5について
本件特許発明4と甲1フィルム発明とを対比すると、上記(2)と同様の相当関係が成り立つから、両者は、以下の点で一致する。
「ポリイミドと無機微粒子とを含有する流延製膜されたポリイミドフィルム。」
そして、両者は、以下の点で相違する。
<相違点1-5>
ポリイミドに関して、本件特許発明5は「60℃において、ジメチルアセトアミド100g又はγ-ブチロラクトン100gに対し1g以上溶解されるポリイミド」と特定するのに対して、甲1製法発明は、そのように特定されていない点
<相違点1-6>
本件特許発明5は「前記ポリイミドの全量に対して、前記ポリイミドと前記無機微粒子とを含有する前記ポリイミドフィルムを破砕した破砕品由来のポリイミドが、10~70質量%の範囲内で含まれており」と特定するのに対し、甲1フィルム発明は、この点を特定しない点
<相違点1-7>
本件特許発明5は「ヘイズ値の面方向での標準偏差が0.6以下である」と特定するのに対し、甲1フィルム発明は、この点を特定しない点
事案に鑑み、相違点1-6について検討する。
相違点1-6は、上記(4)における相違点1-4と同じであるから、その判断は、上記(4)に記載のとおりである。
そうすると、甲1フィルム発明において、他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点1-6に係る本件特許発明5の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして、本件特許発明5の奏する「フィルムの搬送性が良く、フィルムの面方向でのヘイズ値のバラツキが少ないポリイミドフィルムを提供できる」という効果は甲1製法発明及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することができた範囲を超える顕著なものであるといえる。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明5は甲1フィルム発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(6)本件特許発明6について
本件特許発明6と甲1製法発明とを対比すると、上記(2)と同様の相当関係が成り立つから、両者は、上記(2)において一致するとした点で一致し、上記(2)の相違点1-1、相違点1-2、相違点1-4で相違している。
そして、相違点1-2及び相違点1-4についての判断は、上記(2)、(4)に記載のとおりである。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明6は甲1製法発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(7)本件特許発明7について
本件特許発明7と甲1製法発明とを対比すると、上記(2)と同様の相当関係が成り立つから、両者は、上記(2)において一致するとした点で一致し、上記(2)の相違点1-1、相違点1-3、相違点1-4で相違している。
そして、相違点1-3及び相違点1-4についての判断は、上記(3)、(4)に記載のとおりである。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明7は甲1製法発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(8)まとめ
以上のとおりであるから、本件特許の請求項2ないし7に対する申立理由2-1には理由がない。
2 申立理由2-2(甲2に基づく進歩性)について
(1)甲2に記載された発明
甲2の[0161]-[0202]、[0212]、[0213]の記載を中心に整理すると、甲2には次の発明(以下、「甲2製法発明」、「甲2フィルム発明」という。)が記載されていると認める。
<甲2製法発明>
「下記一般式(BI):[図:0001388396000001.jpg](式中、Aは、4価の芳香族基または脂肪族基、Bは2価の芳香族基であり、R4はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~6のアルキル基または炭素数3~9のアルキルシリル基である。)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体であって、前記一般式(BI)中の基Bとして、下記式(BB1):続きを表示(全12行)[図:0001388396000002.jpg](式中、R1およびR2は、互いに独立して、水素原子または炭素数1~12のアルキル基またはアリール基を示し、R3は水素原子、メチル基またはエチル基を示す。)で表されるトリアジン部分構造を含むポリイミド前駆体と、第1の有機溶媒とを含有するポリイミド前駆体溶液を製造する工程と、前記第1の有機溶媒を除去しながらイミド化してポリイミドを得る工程と、製造されたポリイミドを第2の有機溶媒に溶解してポリイミド溶液を製造する工程と、前記ポリイミド溶液から得られるポリイミドフィルムの製造時に生じるピンニングスリット部など、フィルムの裁断により生じ、通常は製品として使用されない部分を再溶解させ、再びポリイミド溶液を得、このようにして得られたポリイミド溶液をキャストし、乾燥させることにより、再びポリイミドフィルムを得る、ポリイミドフィルムの製造方法。」
<甲2フィルム発明>
「甲2製法発明により得られるポリイミドフィルム。」
(2)本件特許発明2について
本件特許発明2と甲2製法発明とを対比すると、両者は、
「ポリイミドを含有するポリイミドフィルムの製造方法であって、混合物として前記ポリイミドを含有するフィルムの破砕物を準備する工程、前記混合物としてのフィルムの破砕物と前記ポリイミドと溶剤とを含有するドープを調製する工程、前記ドープを支持体上に流延して膜を形成する工程、前記膜を支持体から剥離する工程、及び、剥離された膜を乾燥する乾燥工程を含むポリイミドフィルムの製造方法。」
で一致し、両者は、以下の点で相違する。
<相違点2-1>
ポリイミドに関して、本件特許発明2は「60℃において、ジメチルアセトアミド100g又はγ-ブチロラクトン100gに対し1g以上溶解されるポリイミド」と特定するのに対して、甲2製法発明は、そのように特定されていない点
<相違点2-2>
ポリイミドフィルムに関して、本件特許発明2は「無機微粒子」を含有するのに対して、甲2製法発明は、この点を特定しない点
<相違点2-3>
混合物に関し、本件特許発明2は「前記ポリイミドと前記無機微粒子とを含有するポリイミドフィルムを破砕した破砕品である」と特定するのに対し、甲2製法発明は、ポリイミドフィルムを破砕した破砕品である点
事案に鑑み、相違点2-3から検討する。
甲2には、[0202]にフィルム製造時に生じるピンニングスリット部など、フィルムの裁断により生じ、通常は製品として使用されない部分を再溶解させ、再びポリイミド溶液を得ること、及び、[0212]、[0213]に無機微粒子を含有できることは記載されているものの、無機微粒子を含有するフィルムについて、通常は製品として使用されない部分を再溶解させ、再びポリイミド溶液を得ることは記載されていないし、相違点2-3に係る発明特定事項を採用する動機付けはない。
また、その効果については、たとえ当業者であっても予測し得るものではない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明2は甲2製法発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(2)本件特許発明3について
本件特許発明3と甲2製法発明とを対比すると、上記(1)の相違点2-1、2-2に加えて、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点2-4>
混合物に関して、本件特許発明3は「前記ポリイミドと前記無機微粒子と溶剤とを含有するドープである」と特定するのに対し、甲1製法発明は、無機微粒子を含有しない前記ポリイミドフィルムを破砕した破砕品である点
事案に鑑み、相違点2-4について検討する。
支持体上に流延するドープを混合物と前記ポリイミドと溶剤とから調整するものにおいての混合物が、「前記ポリイミドと前記無機微粒子と溶剤とを含有するドープである」ものは、特許異議申立人が提出したいずれの証拠にもなく、本件特許の優先日時点において、混合物として、ポリイミドと前記無機微粒子と溶剤とを含有するドープを用いることが、当業者において周知あるいは技術常識であったとも認められない。
そうすると、甲2製法発明において、他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点2-4に係る本件特許発明3の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
また、その効果については、たとえ当業者であっても予測し得るものではない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明3は甲2製法発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明4について
本件特許発明4と甲2製法発明とを対比すると、上記(1)の相違点2-1、2-2に加えて、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点2-5>
混合物に関して、本件特許発明4は「無機微粒子を含有する混合物を製造されるポリイミドフィルムに対し10~70質量%の質量比率で含有されている」と特定するのに対し、甲2製法発明は、そのように特定されていない点
事案に鑑み、相違点2-5について検討する。
そもそも、甲2製法発明は無機微粒子を含有するフィルムではないから、無機微粒子を含有する混合物をどの程度ポリイミドフィルムに配合するかについての記載は甲2にはないし、具体的な配合量についての言及もない。また、他の証拠にも記載も示唆もない。
そして、甲2製法発明において、無機微粒子を含有する混合物の配合量を相違点2-5のようにする動機付けもない。
そうすると、甲2製法発明において、他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点2-5に係る本件特許発明4の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
また、その効果については、たとえ当業者であっても予測し得るものではない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明4は甲2製法発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4)本件特許発明5について
本件特許発明5と甲2フィルム発明とを対比すると、両者は、
「ポリイミドを含有する流延製膜されたポリイミドフィルム。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点2-6>
ポリイミドに関して、本件特許発明5は「60℃において、ジメチルアセトアミド100g又はγ-ブチロラクトン100gに対し1g以上溶解されるポリイミド」と特定するのに対して、甲2フィルム発明は、そのように特定されていない点
<相違点2-7>
本件特許発明5はさらに、「無機微粒子を含有する」ものであって「前記ポリイミドの全量に対して、前記ポリイミドと前記無機微粒子とを含有する前記ポリイミドフィルムを破砕した破砕品由来のポリイミドが、10~70質量%の範囲内で含まれており」と特定するのに対し、甲2フィルム発明は、この点を特定しない点
<相違点2-8>
本件特許発明5は「ヘイズ値の面方向での標準偏差が0.6以下である」と特定するのに対し、甲2フィルム発明は、この点を特定しない点
事案に鑑み、相違点2-7について検討する。
無機微粒子を含有するポリイミドフィルムにおいて、用いられるポリイミドと用いられる無機微粒子とを含有するポリイミドフィルムを破砕した破砕品を利用することに関する証拠は、特許異議申立人からは提出されておらず、本件特許の優先日時点において、当該事項が当業者において周知あるいは技術常識であったとも認められない。
また、甲2フィルム発明は無機微粒子を含有するフィルムではないから、無機微粒子を含有する混合物をどの程度ポリイミドフィルムに配合するかについての記載は甲2にはないし、具体的な配合量についての言及もない。また、他の証拠にも記載も示唆もない。
そして、甲2フィルム発明において、無機微粒子を含有する混合物の配合量を相違点2-7のようにする動機付けもない。
そうすると、甲2フィルム発明において、他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点2-7に係る本件特許発明5の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
また、その効果については、たとえ当業者であっても予測し得るものではない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明5は甲2フィルム発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(5)本件特許発明6について
本件特許発明6と甲2製法発明とを対比すると、両者は、上記(1)において一致するとした点で一致し、上記(1)の相違点2-1、相違点2-2、相違点2-3、相違点2-5で相違している。
そして、相違点2-3及び相違点2-5についての判断は、上記(1)、(3)に記載のとおりである。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明6は甲2製法発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(7)本件特許発明7について
本件特許発明7と甲1製法発明とを対比すると、両者は、上記(1)の相違点2-1、相違点2-3、相違点2-4で相違している。
そして、相違点2-3及び相違点2-4についての判断は、上記(1)、(4)に記載のとおりである。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明7は甲2製法発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(8)まとめ
以上のとおりであるから、申立理由2-2には理由がない。
3 申立理由3(サポート要件)について
本件特許発明の課題は、「長尺のフィルムをロール状に巻き取った際に、搬送性が良く、フィルムの面方向でのヘイズ値のバラツキが少ないポリイミドフィルムを提供すること」(【0014】)である。そして、本件特許の明細書の発明の詳細な説明を見るに、「本発明に係る上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、可溶性ポリイミドと無機微粒子をあらかじめ混合した混合物を調製し、この混合物を新たな可溶性ポリイミドに混合してドープを調製し溶液流延することにより、搬送性が良く、フィルムの面方向でのヘイズ値のバラツキが少ないポリイミドフィルムが製造できることを見いだし本発明に至った。」(【0015】)、「可溶性ポリイミドに無機微粒子をあらかじめ混合させていることにより、新たな可溶性ポリイミドに対してなじみやすく、流延時に新たな可溶性ポリイミドが配向しても、無機微粒子の偏りが少な」(【0026】)くできるとの記載があり、具体的に記載された実施例及び比較例において、可溶性ポリイミドと無機微粒子をあらかじめ混合した混合物を調製し、この混合物を新たな可溶性ポリイミドに混合してドープを調製し溶液流延している実施例は、混合しない比較例に比べて搬送性がよく、フィルムの面方向でのヘイズ値のばらつきが少ないことが確認されている。
これらの記載に接した当業者であれば、「可溶性ポリイミドと無機微粒子をあらかじめ混合した混合物を調製し、この混合物を新たな可溶性ポリイミドに混合してドープを調製し溶液流延して」製造されたポリイミドフィルムは、搬送性がよく、フィルムの面方向でのヘイズ値のばらつきが少ないものと理解することができる。
そして、本件特許発明2ないし4、6及び7は、「可溶性ポリイミドと無機微粒子をあらかじめ混合した混合物を調製し、この混合物を新たな可溶性ポリイミドに混合してドープを調製し溶液流延して」製造するポリイミドフィルムをさらに限定したものであるから、本件特許発明の課題を解決するものと認識できる。
本件特許発明5は、無機微粒子を含有するポリイミドフィルムであって、ヘイズ値の面方向での標準偏差が0.6以下のポリイミドフィルムであることから、当業者は、本件特許発明の課題を解決するものと認識できる。
特許異議申立人は、本件特許の課題を実施例の評価基準(フィルムの面方向のヘイズ値の標準偏差が0.6未満)であると主張しているが、上述のとおり、本件発明の課題は、発明の詳細な説明の【0014】に記載されるとおりに認定されるものであり、当該特許異議申立人の主張は失当であり採用できない。
よって、申立理由3は理由がない。
4 申立理由4(明確性要件)について
請求項5の「ポリイミドフィルムのヘイズ値の面方向での標準偏差が0.6以下」との記載は、それ自体明確である。
特許異議申立人は、ヘイズの測定箇所が特定されていないため、発明の範囲が明確でないと主張するが、「ヘイズ値」がいかなるものかを理解している当業者は、上記ヘイズ値の測定箇所は、フィルムの面方向の特定の箇所に集中させず、分散するように選択すると理解できる。
また、特許異議申立人は、フィルムのヘイズ値は、幅方向であれば両端に近いエリアと中央に近いエリアとで、長さ方向であれば始端や終端に近いエリアとそれ以外のエリアとで、大きく異なると主張している。しかし、当業者であれば、ヘイズ値の測定箇所を選択する際に、特許異議申立人の主張するような技術常識に照らせば、ヘイズ値の大きく異なり製品に適さない端部近傍を選択しないようにするのは明らかであるから、当該主張も失当であって採用できない。
よって、申立理由4は理由がない。
5 申立理由5(実施可能要件)について
本件特許の明細書の段落【0256】ないし【0326】には、本件特許発明5のポリイミドフィルムの製造方法が記載されており、さらに、【0329】ないし【0382】には、本件特許発明5の実施例が記載され、当該実施例において、ヘイズ値の面方向での標準偏差が0.6未満であるポリイミドフィルムが製造できたことを確認している。
したがって、これらの記載を参酌すれば、当業者が過度の試行錯誤を要することなく本件特許発明5の物を生産し、かつ、使用できるものといえる。
よって、申立理由5は理由がない。
第8 結語
上記第6及び7のとおり、本件特許の請求項2ないし7に係る特許は、取消理由、特許異議申立人が提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項2ないし7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件特許の請求項1に係る特許は、訂正により削除されたため、特許異議申立人による請求項1に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-701091