特許異議申立
2023-701026
用紙処理装置
- 審判番号
- 2023-701026
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-049895
- 登録番号
- 7247680
- 請求日
- 2023年09月26日
- 審決日
- 2025年05月27日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】コニカミノルタ株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人鷲田国際特許事務所
- 【異議申立人】伊藤 直宏
- 審判長/審判官
- 審判長 鈴木 貴雄
- 審判官 田々井 正吾
- 審判官 刈間 宏信
- 分類
- P1651.121-ZAA(B26D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条、特許法第36条、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7247680号発明「用紙処理装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7247680号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。
特許第7247680号の請求項1、6~9に係る特許を取り消す。
特許第7247680号の請求項2~5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
1 特許掲載公報の発行までの経緯
特許第7247680号(以下「本件特許」という。)の請求項1~9に係る特許についての出願は、平成31年3月18日に出願され、令和5年3月20日にその特許権の設定登録がされ、同月29日に特許掲載公報が発行された。
2 特許異議の申立て以降の経緯
本件特許についての特許異議の申立て以降の主な経緯は、次のとおりである。
(1)令和5年9月26日
特許異議申立人 伊藤直宏(以下「申立人」という。)による、本件特許の請求項1~9に係る特許に対する特許異議の申立て
(2)令和5年12月27日付け(発送日:令和6年1月5日)
取消理由通知書による取消理由の通知
(3)令和6年2月14日
特許権者 コニカミノルタ株式会社(以下単に「特許権者」という。)と審判合議体との面接審理
(4)令和6年3月1日
特許権者による意見書の提出
(5)令和6年4月23日付け(発送日:同月26日)
取消理由通知書による取消理由(決定の予告)の通知
(6)令和6年6月6~17日
特許権者と審判合議体との間での電話及び電子メールでの応対
(7)令和6年6月25日
特許権者による訂正請求書及び意見書の提出
(8)令和6年7月17日付け(発送日:同月22日)
訂正請求書に対する手続補正指令
(9)令和6年8月9日
特許権者による手続補正書(方式)の提出
(10)令和6年9月26日
申立人による意見書の提出
(11)令和7年1月23日付け(発送日:同月31日)
取消理由通知書による取消理由(決定の予告)の通知(以下、当該取消理由(決定の予告)を「本件決定予告」といい、この取消理由通知書を単に「取消理由通知書」という。)
(12)令和7年3月31日
特許権者による訂正請求書及び意見書の提出(以下、当該訂正請求書に係る訂正の請求を「本件訂正請求」といい、本件訂正請求に係る訂正を「本件訂正」という。)
なお、令和6年6月25日に提出された訂正請求書に係る訂正の請求は、特許法120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
また、本件訂正の内容を検討しても、本件特許の請求項1、6~9に係る特許を取り消すべきと合議体が判断したため、特許法120条の5第5項ただし書に規定された特別の事情があるときに該当し、本件訂正について、申立人に意見書の提出の機会を与えない。
第2 本件訂正の適否
1 本件訂正請求の趣旨
本件訂正請求の趣旨は、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~9について訂正することを求める、というものである。
2 訂正の内容
本件訂正は、一群の請求項〔1~9〕に対する以下の訂正事項1~9と、一群の請求項〔1~9〕について明細書を訂正する以下の訂正事項10からなる。なお、下線は、訂正前後での訂正箇所を明らかにするために当審で付したものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「前記断裁屑の前記用紙搬送方向の長さが前記所定の長さの場合は、」と記載されているのを
「前記断裁屑の前記用紙搬送方向の長さが前記所定の長さ以上の場合は、」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2~9も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に
「請求項1から5のいずれか一項に記載」と記載されているのを
「請求項1に記載」に訂正する。(請求項6の記載を引用する請求項7~9も同様に訂正する。)
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に
「請求項1から6のいずれか一項に記載」と記載されているのを
「請求項1又は6に記載」に訂正する。(請求項7の記載を引用する請求項8~9も同様に訂正する。)
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8に
「請求項1から7のいずれか一項に記載」と記載されているのを
「請求項1、6、7のいずれか一項に記載」に訂正する。(請求項8の記載を引用する請求項9も同様に訂正する。)
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項9に
「請求項1から8のいずれか一項に記載」と記載されているのを
「請求項1、6から8のいずれか一項に記載」に訂正する。
(10)訂正事項10
願書に添付した明細書の【0007】に
「前記断裁屑の前記用紙搬送方向の長さが前記所定の長さの場合は、」と記載されているのを
「前記断裁屑の前記用紙搬送方向の長さが前記所定の長さ以上の場合は、」に訂正する。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否
本件訂正前の請求項1は、断裁屑が所定長さの場合に第2の落下スペースを落下させるように制御することを特定する一方、断裁屑が所定長さを超える場合にどのような制御をするのか特定していなかったところ、訂正事項1により、所定長さを超える場合にも、所定長さの場合と同じく第2の落下スペースを落下させるように制御することを特定するから、訂正事項1に係る訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当する。
イ 新規事項の有無
断裁屑が所定長さ以上の場合に第2の落下スペースを落下させるように制御することは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)の【0041】の「先端断裁屑W1は、断裁長さLが第1の長さL1以上の場合は、・・・によって搬送された後、第2の落下スペースF2から落下し、・・・回収される。」という事項に示すように本件明細書等に記載されているから、訂正事項1に係る訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、上記アのとおり、特許請求の範囲を減縮するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことが明らかであるから、訂正事項1に係る訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項の規定に適合する。
(2)訂正事項2~5について
訂正事項2~5は、それぞれ、本件訂正前の請求項2~5を削除するものであるから、その訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当する。
また、訂正事項2~5に係る訂正が、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであることは明らかであるし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことも明らかであるから、訂正事項2~5に係る訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
(3)訂正事項6~9について
訂正事項6~9は、それぞれ、本件訂正前の請求項6~9が引用する請求項について、請求項2~5を含んでいたところ、引用する請求項から請求項2~5を削除するように訂正するものであるから、その訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当する。
また、訂正事項6~9に係る訂正が、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであることは明らかであるし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことも明らかであるから、訂正事項6~9に係る訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
(4)訂正事項1~9についての付言
なお、全ての請求項に対して特許異議の申立てがされているので、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正事項1~9に関し、特許法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条7項に規定される要件(独立特許要件)は適用されない。
また、訂正事項1は、訂正前の請求項1についてされたものであるところ、請求項2~9は、当該請求項1を引用するものであって、訂正される請求項1に連動して訂正されるから、訂正前の請求項1~9に対応する訂正後の請求項1~9は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項であることを付言する。
(5)訂正事項10について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項10は、訂正事項1により請求項1の記載を訂正することに合わせて、明細書等の【0007】の記載を訂正事項1と同様に訂正するものであるから、訂正事項10に係る訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる明瞭でない記載の釈明に該当する。
イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項10は、訂正事項1と同様のものであるから、上記(1)イ及びウと同様の理由により、訂正事項10に係る訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
(6)訂正事項10についての付言
なお、訂正事項10に係る明細書の訂正は、一群の請求項〔1~9〕について訂正するものである。また、全ての請求項に対して特許異議の申立てがされており、かつ、訂正事項10は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、訂正事項10に関し、特許法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条7項に規定される要件(独立特許要件)は適用されないことを付言する。
4 小括
以上のとおり、本件訂正は、訂正の要件を全て満たすものであるから、明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
本件特許の請求項1~9に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~9に記載された、以下の事項により特定されるとおりのものである。(以下、請求項1、6~9に係る発明を、それぞれ「本件発明1」などという。なお、請求項2~5に係る発明は、削除された。)
「【請求項1】
用紙を成果物と断裁屑とに断裁する用紙処理装置であって、
前記用紙を搬送する搬送部と、
前記用紙を用紙搬送方向に直交する方向に断裁する断裁機と、
前記断裁により生じた断裁屑を落下させる第1の落下スペースと、
前記断裁により生じた断裁屑を落下させるスペースであって、前記第1の落下スペースよりも大きい第2の落下スペースと、
前記断裁屑の前記用紙搬送方向の長さが所定の長さより短い場合は、前記断裁屑を前記第1の落下スペースを落下させ、前記断裁屑の前記用紙搬送方向の長さが前記所定の長さ以上の場合は、前記断裁後に前記断裁屑を前記第2の落下スペースに達するまで搬送して前記第2の落下スペースを落下させるように制御する制御部と、
を備える用紙処理装置。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
前記成果物の搬送経路を形成する第1の状態と、前記第2の落下スペースを形成する第2の状態に切替可能な第3の切替ガイドを有し、
前記制御部は、前記断裁屑の前記用紙搬送方向の長さが前記所定の長さ以上の場合は、前記第3の切替ガイドを前記第2の状態に制御する、
請求項1に記載の用紙処理装置。
【請求項7】
前記成果物を排紙する排紙トレイを有し、
前記第2の落下スペースは、前記排紙トレイよりも前記断裁機の近くに設けられている、請求項1又は6に記載の用紙処理装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記断裁屑を前記第2の落下スペースに達するまで搬送する際、前記断裁屑に先行する成果物又は前記断裁屑に後続する成果物と、前記断裁屑との前記用紙搬送方向における間隔をあけるように前記搬送部を制御する、請求項1、6、7のいずれか一項に記載の用紙処理装置。
【請求項9】
前記断裁屑が回収される回収容器を備え、
前記回収容器は、断裁途中にジャムが生じた場合に、前記第1の落下スペース又は前記第2の落下スペースを介して、ジャム処理後の残紙を回収可能である、請求項1、6から8のいずれか一項に記載の用紙処理装置。」
第4 本件決定予告の概要
本件訂正前の請求項1~9に係る発明(すなわち、令和6年6月25日に提出され、同年8月9日に補正がされた訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される発明。以下同様。)に対する本件決定予告の要旨は、以下のとおりである。
(1)理由E(実施可能要件)
本件訂正前の特許は、本件訂正前の請求項2~5に係る発明の詳細な説明の記載が不備のため、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。(上記取消理由通知書10~12ページ)
(2)理由F(明確性)
本件訂正前の特許は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2~5の記載が不備のため、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。(上記取消理由通知書12~13ページ)
(3)理由G(進歩性)
本件訂正前の請求項1、6~7に係る発明(ただし、請求項2~5を引用するものを除く。)は、甲第1号証に記載された発明及び甲第1号証の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるか、又は、甲第1号証に記載された発明、甲第1号証の記載及び甲第3号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本件訂正前の請求項8~9に係る発明(ただし、請求項2~5を引用するものを除く。)は、甲第1号証に記載された発明、甲第1号証の記載及び周知例1に例示された周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるか、又は、甲第1号証に記載された発明、甲第1号証の記載、甲第3号証に記載された技術的事項及び周知例1に例示された周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件訂正前の請求項1、6~9(ただし、請求項2~5を引用するものを除く。)に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。(上記取消理由通知書13~28ページ)
(4)理由Gで引用する証拠
甲第1号証:特開2017-185582号公報(以下「甲1」という。)
甲第3号証:特開2002-356045号公報(以下「甲3」という。)
周知例1:実願昭50-153393号(実開昭52-66438号)のマイクロフィルム(当審が職権で探知した周知例。以下「周知例1」という。)
第5 当審の判断
1 理由E及び理由Fについて
本件特許の請求項2~5に係る特許は、本件訂正により削除されたので、理由E及び理由Fに係る取消理由の対象が存在しない。
2 理由Gについて
(1)甲1の記載事項及び甲1発明
ア 甲1の記載事項
甲1には、以下の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、用紙裁断装置及びその裁断方法に関する。」
「【0005】
又、前記裁断時に用紙の切除部分がニップされない場合の問題点を解決する施策として、上記特許文献2に記載の裁断装置のように、裁断刃の前後にある搬送ローラ対の内側に接離自在な押圧部材を備えて、裁断時に用紙を押さえながらカッター(裁断刃)で裁断することも考えられるが、前記裁断により生じた不要部分である切除片は、搬送経路上に残ってしまうか又は、加工品と共に、搬送経路下流側に搬送されてしまう。
【0006】
本発明の目的は、切除領域が搬送ローラ対にニップされないときでも、適正に用紙を裁断できる用紙裁断装置を提供することであり、さらに、前記裁断により生じた不要部分である切除片を、搬送経路上の下流部に移送することなく、裁断部下方の切除片箱に落下させて確実に回収することである。」
「【0028】
[用紙加工装置100の全体構成]
図1は本発明に係る用紙裁断装置を備えた用紙加工装置の模式縦断面図である。この図1において、用紙加工装置100は、装置本体1の用紙Zの搬送方向Fの上流端部に給紙部3を備え、搬送方向Fの下流端部に紙受け部2を備え、該給紙部3と紙受け部2との間に、略水平な搬送経路5が構成されている。給紙部3には給紙ローラ対8が配置され、搬送経路5には、複数の搬送ローラ対9、10、11、12、13等が搬送方向Fに間隔をおいて配置されると共に、主たる加工機構として、用紙搬送上流側から用紙搬送下流側に向けて、スリット形成機構20、折り型形成機構21及び裁断機構22が配置されている。裁断機構22、搬送ローラ対12、13及び、用紙保持手段70は裁断装置101を構成している。また、装置本体1内の下端部には、スリット、裁断等の加工により発生する屑紙である切除片Jを収容する切除片箱23が配置されている。」
「【0049】
(8)裁断装置101では、裁断機構22により各裁断線Cf、Cm1、Cm2、Crで順次裁断し、生じた切除片Jは下方の切除片箱23に落下し、加工品Qは紙受け部2に搬送され、積載される。」
「【0065】
[裁断装置101の第一の実施形態]
(裁断装置101の基本構成)
裁断装置101は、主に、裁断機構22、搬送ローラ対12、13及び、用紙保持手段70から構成されている。
詳細には、図5A、図2のように、裁断機構22は、用紙搬送幅方向Wに延び、相対向する一対の裁断刃220を備える。一方の裁断刃220は上側可動刃22Aにより、他方の裁断刃220は下側固定刃22Bにより構成されており、上側可動刃22Aが下側固定刃22Bに対し接触離間し、用紙Zを搬送方向Fと直交する搬送幅方向Wに裁断する。上側可動刃22Aは、動力伝達機構を介してモータ等の裁断駆動部50に連結されている。」
「【0069】
(裁断装置101の動作)
次に、上記構成の裁断装置101の動作について順を追って説明する。裁断装置101は、以下(1)~(3)に示すように、可動押さえ部材72a、72bを「退避位置」、「押圧位置」、「廃棄位置」に選択的に移動させる制御手段を備える。
(1)図5Aは、可動押さえ部材72a、72bが「退避位置」にある状態を示している。
退避位置においては、図5Aに示すように、可動押さえ部材72a、72bと固定押さえ部材71a、71bとの間に隙間を形成しており、一対の搬送ローラ12により、この隙間を通して、用紙Zを所定の裁断位置に向けて(搬送方向Fに)供給する。
好ましくは、可動押さえ部材72a、72bは、図5Aのように、水平状態ではなく、搬送方向上流側に向かって傾斜させるのがよい。前記用紙Zを供給する際、用紙先端部が突き当たってジャムとなることを防ぐ為である。
【0070】
(2)図5Bは、可動押さえ部材72a、72bが「押圧位置」にある状態を示している。
用紙Zが裁断位置(裁断線C(前裁断線Cf))に達すると、一対の搬送ローラ12による搬送を停止すると共に、前記可動押さえ部材72a、72bが固定押さえ部材71a、71bに向けて移動し、図5Bに示すように、用紙Zを可動押さえ部材と固定押さえ部材71a、71bとの間に挟持状態に押圧する。そして、前記挟持状態のまま、裁断機構22の上側可動刃22Aが下側固定刃22Bに向けて移動し、用紙Zの裁断位置(裁断線C(前裁断線Cf))において裁断する。
【0071】
(3)図5Cは、可動押さえ部材72a、72bが「廃棄位置」にある状態を示している。
前記用紙Zの裁断後、前記可動押さえ部材72a、72bは、前記退避位置よりさらに固定押さえ部材71a、71bから離れる方向に移動し、図5Cに示すように、下方に向けて傾斜した姿勢となる。したがって、用紙Zが裁断位置(裁断線C(前裁断線Cf))において裁断され生じた切除片J(前端切除領域Kf)は、下方の切除片箱23にスムーズに落下し、収納される。
【0072】
図5Dのように、切除片J(後端切除領域Kr)が用紙Zの後端部に配置される場合についても、裁断装置101は、前記(1)~(3)と同様の動作を行うが、(3)の「廃棄位置」においては、切除片Jは、可動押さえ部材72bの傾斜により、下方の切除片箱23にスムーズに落下し、収納される。尚、(1)の「退避位置」においては、用紙Zの先端部は、一対の搬送ローラ12から一対の搬送ローラ13への受渡しにより、隙間を通して、所定の裁断位置に向けて(搬送方向Fに)供給される。」
「【0092】
前述の第一、第二の実施形態において、裁断する切断領域(Kf、Km、Kr)の用紙搬送方向長さが、所定以上長い場合は、可動押さえ部材72aが「廃棄位置」に配置されても、裁断され生じた切除片Jは、可動押さえ部材72aに引っかかって、下方の切除片箱23にスムーズに落下しない。
【0093】
その場合は、図11に示すように、用紙先端部Zaの移送前に可動押さえ部材72aを「廃棄位置」に配置し、用紙先端部Zaを下方にガイドしながら裁断位置まで移送するように構成してもよい。尚、このとき、可動押さえ部材72bは「退避位置」から「押圧位置」に移動する。
【0094】
又は、図12に示すように、裁断装置101の搬送方向下流側にリジェクトゲート235をさらに備え、リジェクトゲート235を退避位置(実線位置)に配置し、用紙先端部Zaを下方にガイドしながら裁断位置まで移送するように構成してもよい。」
図5C
「
[図:0001427905000001.jpg]
」
図5D
「
[図:0001427905000002.jpg]
」
図11
「
[図:0001427905000003.jpg]
」
図12
「
[図:0001427905000004.jpg]
」
イ 甲1の記載から理解できる事項
(ア)甲1には、用紙Zを加工品Qと切除片Jとに裁断する裁断装置101(【0049】)が開示されており、用紙Zは、搬送ローラ対12、13によって搬送され(【0069】、【0072】)、裁断機構22が、用紙Zを搬送方向Fと直交する搬送幅方向Wに裁断する(【0065】)。
(イ)可動押さえ部材72a、72bを「廃棄位置」とすると、用紙Zが裁断されて生じた切除片Jが下方に落下する(【0071】、図5C)から、可動押さえ部材72a、72bの下方には、用紙搬送方向の長さが所定の長さより短い切除片Jを落下させる落下スペースがあることを理解できる。
(ウ)裁断する切断領域の用紙搬送方向長さが所定以上長い場合(【0092】)には、裁断装置101の下流側のリジェクトゲート235を退避位置(図12の実線位置)に配置し、用紙先端部Zaを下方にガイドしながら裁断位置まで移送する(【0094】)。
(エ)上記(ウ)のリジェクトゲート235の退避位置への動作が、裁断装置101の制御手段によって制御されることは、甲1に接した当業者が当然に把握できる事項である。したがって、切断領域の用紙搬送方向長さが所定以上長い場合には、リジェクトゲート235が退避位置に動作するように、裁断装置101の制御手段が制御することを理解できる。
ウ 甲1発明
上記イより、甲1の【0092】、【0094】及び図12に示される実施態様に係る記載事項を本件発明1の記載に合わせて整理すると、甲1には、以下に示す発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているということができる。
<甲1発明>
「用紙Zを加工品Qと切除片Jとに裁断する裁断装置101であって、
前記用紙Zを搬送する搬送ローラ対12、13と、
前記用紙Zを搬送方向Fと直交する搬送幅方向Wに裁断する裁断機構22と(上記イ(ア))、
前記裁断により生じた切除片Jを落下させる第1の落下スペース(上記イ(イ))と、
前記切除片Jの用紙搬送方向の長さが所定の長さより短い場合は、前記切除片Jを前記第1の落下スペースを落下させ、前記切除片Jの前記用紙搬送方向の長さが前記所定長さ以上長い場合は、リジェクトゲート235を退避位置へ動作させるように制御する制御手段(上記イ(イ)~(エ))と、
を備える裁断装置101。」
(2)甲3の記載及び甲3記載の技術的事項
ア 甲3の記載事項
甲3には、以下の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、画像形成装置及び画像形成方法並びに記録媒体に関し、更に詳しくは、長手方向に搬送される帯状の記録媒体に複数の画像を並べて記録し、画像記録後に各画像毎に記録媒体を切断して画像プリントを作成する画像形成装置及び画像形成方法並びに記録媒体に関するものである。」
「【0033】第2カッタ17の切断位置に記録紙25aの切断位置CL2が達すると、コントローラ20がドライバ55を介して第2カッタ17を動作させて記録紙25aを切断する。これにより、各画像毎に記録紙25aが切り離されて、画像36の周囲に幅tの縁41が形成されたプリント56となる。プリント56は、排紙ローラ対61によってソータ19に排出される。
【0034】また、余白40であったシート状の記録紙25cが搬送される場合には、搬送路切り換え板60が集積位置に回動し、記録紙25cを余白集積ボックス18に向かってガイドして集積する。」
図2
「
[図:0001427905000005.jpg]
」
イ 甲3記載の技術的事項
甲3の記載事項を本件発明1の記載に合わせて整理すると、以下に示す技術的事項(以下「甲3記載の技術的事項」という。)が記載されているということができる。
「記録紙25aを画像プリント56と余白であった記録紙25cとに切断する画像形成装置において、
記録紙25aを第2カッタ17で切断し、記録紙25aから切り離されたプリント56は、排紙ローラ対61によってソータ19に排出し、
余白であった記録紙25cを搬送する場合は、搬送路切り換え板60を集積位置に回動して下方の余白集積ボックス18にガイドして落下させること。」
(3)周知例1の記載及び周知の技術的事項
ア 周知例1の記載事項
周知例1には、以下の事項が記載されている。
(ア)周知例1の明細書4ページ12~16行
「本考案は、上述の如きシートの先後端部の切断除去作用およびその先後端部とシート有効部とを所定の方向にタイミング良く搬送して、ジャム等の不具合の発生を防止し得るようにしたシート裁断制御装置を提供することを目的としている。」
(イ)周知例1の明細書13ページ16行~14ページ11行
「第11図において、シート3を切断し終って可動カッター10aが上昇すると、マイクロスイッチMS-1が閉成されソレノイドSOL2(第17図参照)が励磁される。この結果、第9図に示すようにスプリングクラッチ76によってスプロケット74と64とは互に連結されチェーン65系のスプロケットが回転する。これに対しチェーン88系のスプロケットには、一方向回転クラッチ82、83、84を介しているので、その駆動力が伝達されずに停止した状態に保持されている。よって、給送ローラー21は停止したままの状態に保持され、かつ回転した状態にある送りローラー28、29は先端紙片L1をシート有効部から引き離し、それは平生態位におかれた下部フラップ板32の下面にガイドされながら、切屑排出コンベアー93(第1図参照)上へ落とされる。」
(ウ)第11図
「
[図:0001427905000006.jpg]
」
イ 周知の技術的事項
上記アの記載事項からみて、周知例1には、以下に示す周知の技術的事項が記載されているということができる。
「シート裁断制御装置(断裁装置)において、ジャム等の不具合(搬送の不具合)が生じるのを防止するために先端紙片L1(断裁屑)とシート3(成果物)との間隔を開けるように給送ローラー21(搬送部)を制御すること。」
(4)本件発明1の進歩性について
ア 本件発明1と甲1発明の対比
本件発明1と甲1発明を対比すると、甲1発明の「用紙Z」が本件発明1の「用紙」に相当することは明らかであり、以下同様に、「加工品Q」が「成果物」に、「切除片J」が「断裁屑」に、「裁断する」ことが「断裁する」ことに、「裁断装置101」が「用紙処理装置」に、「搬送ローラ対12、13」が「搬送部」に、「搬送方向Fと直交する搬送幅方向W」が「用紙搬送方向に直交する方向」に、「裁断機構22」が「断裁機」に、それぞれ相当する。
また、甲1発明の「前記切除片Jの用紙搬送方向の長さが所定の長さより短い場合は、前記切除片Jを前記第1の落下スペースを落下させ、前記切除片Jの前記用紙搬送方向の長さが前記所定長さ以上長い場合は、リジェクトゲート235を退避位置へ動作させるように制御する制御手段」と、本件発明1の「前記断裁屑の前記用紙搬送方向の長さが所定の長さより短い場合は、前記断裁屑を前記第1の落下スペースを落下させ、前記断裁屑の前記用紙搬送方向の長さが前記所定の長さ以上の場合は、前記断裁後に前記断裁屑を前記第2の落下スペースに達するまで搬送して前記第2の落下スペースを落下させるように制御する制御部」を対比すると、「前記断裁屑の前記用紙搬送方向の長さが所定の長さより短い場合は、前記断裁屑を前記第1の落下スペースを落下させ、前記断裁屑の前記用紙搬送方向の長さが前記所定の長さ以上の場合は、長さが短い場合とは別の動作を行うように制御する制御部」という点に限って一致する。
したがって、本件発明1と甲1発明は、以下の一致点で一致し、相違点1で相違する。
[一致点]
両発明は、
「用紙を成果物と断裁屑とに断裁する用紙処理装置であって、
前記用紙を搬送する搬送部と、
前記用紙を用紙搬送方向に直交する方向に断裁する断裁機と、
前記断裁により生じた断裁屑を落下させる第1の落下スペースと、
前記断裁屑の前記用紙搬送方向の長さが所定の長さより短い場合は、前記断裁屑を前記第1の落下スペースを落下させ、前記断裁屑の前記用紙搬送方向の長さが前記所定の長さ以上の場合は、長さが短い場合とは別の動作を行うように制御する制御部と、
を備える用紙処理装置。」
である点。
[相違点1]
本件発明1は、「前記断裁により生じた断裁屑を落下させるスペースであって、前記第1の落下スペースよりも大きい第2の落下スペース」を備え、制御部が、「前記断裁屑の前記用紙搬送方向の長さが前記所定の長さ以上の場合は、前記断裁後に前記断裁屑を前記第2の落下スペースに達するまで搬送して前記第2の落下スペースを落下させる」ように制御するのに対して、
甲1発明は、第1の落下スペースよりも大きい第2の落下スペースを備えているか不明であり、制御部が、「前記切除片Jの前記用紙搬送方向の長さが前記所定長さ以上長い場合は、リジェクトゲート235を退避位置へ動作させる」ように制御する点。
イ 相違点1の判断
(ア)甲1には、切断領域が所定以上長い場合に、可動押さえ部材72aを図5Cの「廃棄位置」に配置しても、切除片Jが可動押さえ部材72aに引っかかってスムーズに下方に落下しない(【0092】)ことから、リジェクトゲート235を設けて、図12の退避位置に配置して、用紙先端部Zaを下方にガイドしながら裁断位置まで移送すること(【0094】)が記載されている一方、裁断後の切除片Jをどこから落下させるのかは、明記されていない。
これに対して、裁断後の切除片Jを放置することはできないから、当業者は、甲1発明における所定以上に長い切除片Jを、どこかのスペースから下方に落下させるように構成する動機があることは当然である。
(イ)そこで、甲3記載の技術的事項を参照すると、「記録紙25aを画像プリント56と余白であった記録紙25cとに切断する画像形成装置において、記録紙25aを第2カッタ17で切断し、記録紙25aから切り離されたプリント56は、排紙ローラ対61によってソータ19に排出し、余白であった記録紙25cを搬送する場合は、搬送路切り換え板60を集積位置に回動して下方の余白集積ボックス18にガイドして落下させること。」(上記2(2))というものであり、用紙(記録紙25a)を切断した後の成果物(プリント56)と断裁屑(記録紙25c)を下流側に搬送し、搬送路切り換え板60により、断裁屑を下方にガイドして落下させることが示されている。
(ウ)甲1発明と甲3記載の技術的事項は、用紙を切断した後の成果物と断裁屑を選別する技術という点で、技術分野が共通するといえ、上記(ア)のとおり甲1発明には、所定以上に長い切除片Jを、どこかのスペースから下方に落下させるように構成する動機があるところ、甲1発明のリジェクトゲート235は、退避位置に配置するか否かで、成果物を搬送する経路を切り替えているから、甲3記載の技術的事項に接した当業者であれば、甲1発明における長い切除片Jについて、甲3記載の技術的事項の記録用紙25cと同様に、下流側に搬送して、リジェクトゲート235により下方にガイドして落下させるように構成することを容易に想到できるといえる。
(エ)そして、上記(ウ)のように、長い切除片Jを、リジェクトゲート235の下方に落下させるならば、リジェクトゲート235の下方に、長い切除片Jを落下させるために、第1の落下スペースよりも大きい第2の落下スペースを備えるようにすることは、当業者であれば適宜なし得たことである。
(オ)したがって、相違点1は、甲1発明及び甲3記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に想到できたものであるから、本件発明1は、甲1発明及び甲3記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 特許権者の主張について
(ア)特許権者は、令和7年3月31日に提出した意見書において、概ね以下の5点を主張している。
(主張1)甲1のリジェクトゲート235は、図1の紙受け部2の直前に配置される一方、切除片箱は、装置本体から隙間を有して配置することが一般的であるから、長い切除片Jをリジェクトゲート235から破棄すると、切除片箱23に落下させることが確実とはいえず、甲1の【0006】の「断裁部下方の切除片箱に落下させて確実に回収する」という記載を無視することになる。
(主張2)本件決定予告では、甲1の図11において用紙先端部を下方にガイドして切除片を落下させるのと同様に、甲1発明の切除片の先端部を下方にガイドしたままリジェクトゲート235の下方に落下させるように構成することはごく自然に想到し得る事項と判断し(本件決定予告の22ページ、第5の4(4)イ(ウ))、甲1の【0006】の記載は、そのように想到することを阻害する記載ではないと判断している(本件決定予告の22~23ページ、第5の4(4)イ(エ)及び(オ))。
しかし、単に「解釈によってはごく自然に想到し得る事項と解することもできる」との判断を根拠として、あえて「ごく自然に想到し得る事項である」と理解することは、「ごく自然に想到し得る事項である」との結論を導き出すための、後知恵にほかならない。
(主張3)甲1の【0006】には、「発明の目的」として「裁断部下方の切除片箱に落下させて確実に回収すること」と明記されているから、落下させる位置が「裁断部下方」であることは明らかであり、落下スペースが「裁断部」であると判断することは当然である。本件決定予告では、相違点1の判断において「当業者は、甲1発明における所定以上に長い切除片Jを、どこかのスペースから下方に落下させるように構成する動機がある」と判断する(本件決定予告の23ページ、第5の4(4)ウ(ア))が、本件特許に複数の落下スペースが存在することを前提として甲1を理解するものであるから、後知恵である。
一方、甲3の記録紙25cの落下位置は、第2カッタ17の下方ではないから、甲1の発明の目的を鑑みれば、甲1発明に甲3を組み合わせることには阻害要因がある。
(主張4)甲1の図11と図12は「又は」として記載されているから、図12は図11と同様に、第1の落下スペースから切除片を落下させる機能を実現する別の構成として理解するべきであり、別の機能(リジェクトゲート235から切除片を落下させる機能)を実現する別の構成と理解する必要はない。
(主張5)甲1の【0094】には、図12のリジェクトゲート235が「退避位置」と記載されているから、仮に、リジェクトゲート235が図12の状態で用紙を廃棄するなら、「退避位置」という記載は「廃棄位置」の誤記であると解する必要があるが、そのように解する理由はない。
合議体は、【0094】に「廃棄位置」ではなく「待避位置」と記載されることについて、何も判断していない。
(イ)事案に鑑みて、上記(主張3)について検討すると、本件発明1で「複数の落下スペース」の存在を前提にしていることが後知恵である旨の上記(ア)の説明からみれば、特許権者は、甲1の【0006】の「裁断部下方」について、「裁断部の位置の下方(裁断部の直下)」という意味と理解しているようであるが、以下に説明するように、当該理解は失当である。
まず、甲1発明が解決しようとする課題は、切除片が加工品と共に、加工品が搬送される搬送経路上の下流部に移送されてしまうこと(【0005】)による不具合である。
また、甲1には、切除片箱23について、「装置本体1内の下端部には、スリット、裁断等の加工により発生する屑紙である切除片Jを収容する切除片箱23が配置されている」(【0028】)と記載されるとおり、切除片箱23は装置本体1内の下端部、すなわち、裁断部よりも下側に設けることが説明されているにすぎず、裁断部から離れた位置の下方で切除片を回収することを妨げるものではない。
そして、裁断部から離れた位置の下方で切除片を回収しても、上記の課題(切除片が加工品と共に、加工品の搬送経路上の下流部に移送されてしまうことによる不具合)が解決されることは明らかである。
請求人の主張に対して、甲1には、裁断部から離れた位置の下方で切除片を回収することにより生じる課題や、裁断部の直下で切除片を回収することで、どのように発明の課題が解決されるのか、という説明が全くないから、甲1発明の目的が、裁断部の直下で切除片を回収することであると解することはできない。
したがって、甲1の【0006】に「発明の目的」として、「裁断部下方・・・に落下させて確実に回収すること」が記載されているとしても、そこでいう「裁断部下方」は、裁断部よりも下側という意味にすぎず、裁断部から離れた位置の下側も当然に含むと解するのが相当であり、裁断部の直下という意味であると理解することは失当である。
以上から、上記主張3に係る特許権者の説明は採用できない。
(ウ)次に、上記(主張1)について検討すると、甲1の上記【0028】の記載を参照した当業者であれば、装置本体1の下方に廃棄される切除片を切除片箱23で回収するように、切除片箱23の大きさや設置位置について配慮することは当然であって、甲1発明において、切除片をリジェクトゲート235から破棄するように構成するからといって、甲1の【0006】の記載を無視することにはならない。
したがって、上記(主張1)に係る特許権者の説明は採用できない。
(エ)最後に、上記(主張2)、(主張4)及び(主張5)について検討すると、これらの主張は、いずれも、本件決定予告では、本件発明1と甲1発明の相違点1について、甲1の図11に係る記載に基づいて、甲1発明の切除片の先端部を下方にガイドしたままリジェクトゲート235の下方に落下させるように構成することはごく自然に想到し得る事項と判断したこと(本件決定予告の22ページ、第5の4(4)イ(ウ))が誤りであることを説明するものである。
これに対して、上記イでは、相違点1について、甲1発明及び甲3記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に想到できたものであると判断しているから、上記(主張2)、(主張4)及び(主張5)は、当該判断を覆すものとはいえず、採用できない。
エ 本件発明1の進歩性の小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明及び甲3記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)本件発明6の進歩性について
ア 本件発明6と甲1発明の対比
本件発明6と甲1発明を対比すると、上記(4)アの一致点及び相違点1で一致及び相違するほか、以下の相違点2で相違する。
[相違点2]
本件発明6は、「前記成果物の搬送経路を形成する第1の状態と、前記第2の落下スペースを形成する第2の状態に切替可能な第3の切替ガイドを有し、前記制御部は、前記断裁屑の前記用紙搬送方向の長さが前記所定の長さ以上の場合は、前記第3の切替ガイドを前記第2の状態に制御する」ものであるのに対して、甲1発明はリジェクトゲート235を有している点。
イ 相違点1の判断
相違点1は、上記(4)イで説示するとおり、当業者が容易に想到できたものである。
ウ 相違点2の判断
甲1の【0094】及び図12の記載から、甲1のリジェクトゲート235が退避位置である状態(図12に実線で示された状態)において、用紙先端Zaが下方にガイドされ、水平な状態(図12に点線で示された状態)において、加工品Qが搬送経路の下流に搬送されることを理解できる。
したがって、当業者であれば、甲1発明のリジェクトゲート235について、水平な状態に制御することで、加工品Qの搬送経路を形成することができること、すなわち、相違点2に係る「前記成果物の搬送経路を形成する第1の状態」を構成することを容易に想到するといえる。
また、相違点1で判断したように、甲3記載の技術的事項に接した当業者であれば、甲1発明のリジェクトゲート235を退避位置である状態に制御して、切除片Jを下流側に搬送することで、切除片Jをリジェクトゲート235の下方に落下させることを容易に想到するところ、その「退避位置」が相違点2に係る「前記第2の落下スペースを形成する第2の状態」にほかならない。
したがって、相違点2に係る本件発明6の構成は、甲1発明、甲3記載の技術的事項及び甲1の記載に基づいて、当業者が容易に想到できたものである。
エ 本件発明6の進歩性の小括
以上のとおりであるから、本件発明6は、甲1発明、甲3記載の技術的事項及び甲1の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(6)本件発明7の進歩性について
ア 本件発明7と甲1発明の対比
本件発明7と甲1発明を対比すると、上記(4)アの一致点及び相違点1で一致及び相違するほか、相違点2(上記(5)ア)で相違し、さらに、以下の相違点3で相違する。
[相違点3]
本件発明7は、「前記成果物を排紙する排紙トレイを有し、前記第2の落下スペースは、前記排紙トレイよりも前記断裁機の近くに設けられている」ものであるのに対して、甲1発明は、排紙トレイを有しているか不明な点。
イ 相違点1及び2の判断
相違点1及び2は、上記(5)イ及びウのとおり、いずれも当業者が容易に想到できたものである。
ウ 相違点3の判断
甲1の【0049】及び図1には、加工品Qが排紙される紙受け部2を備える点が記載されており、当該「紙受け部2」が、本件発明7の「排紙トレイ」に相当することは明らかである。
また、切除片Jは、紙受け部2よりも上流側で搬送経路から取り除かれることは当然であるから、甲1発明のリジェクトゲート235を、紙受け部2よりも裁断機構22に近い側に設けるように構成することは、当業者が当然に想到する事項である。
したがって、相違点3に係る本件発明7の構成は、甲1発明及び甲1の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
エ 本件発明7の進歩性の小括
以上のとおりであるから、本件発明7は、甲1発明、甲3記載の技術的事項及び甲1の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(7)本件発明8の進歩性について
ア 本件発明8と甲1発明の対比
本件発明8と甲1発明を対比すると、上記(4)アの一致点及び相違点1で一致及び相違するほか、相違点2(上記(5)ア)、相違点3(上記(6)ア)で相違し、さらに、以下の相違点4で相違する。
[相違点4]
本件発明8では、「前記制御部は、前記断裁屑を前記第2の落下スペースに達するまで搬送する際、前記断裁屑に先行する成果物又は前記断裁屑に後続する成果物と、前記断裁屑との前記用紙搬送方向における間隔をあけるように前記搬送部を制御する」ものであるのに対して、甲1発明では、制御手段は、加工品Qと切除片Jとの間隔をあけるように制御するか不明な点。
イ 相違点1~3の判断
相違点1~3は、上記(6)イ及びウのとおり、いずれも当業者が容易に想到できたものである。
ウ 相違点4の判断
断裁装置において、ジャム等の搬送の不具合が生じるのを防止するために断裁屑と成果物との間隔を開けるように搬送部を制御することは、例えば周知例1に示すように周知の技術的事項(上記(3)イ)であり、甲1発明において、ジャム等の搬送の不具合が望ましくないことは自明な事項であるから、搬送の不具合を防止するために当該周知の技術的事項を採用して、相違点4に係る本件発明8の構成を想到することは、当業者が容易になし得たことである。
エ 本件発明8の進歩性の小括
したがって、本件発明8は、甲1発明、甲3記載の技術的事項、甲1の記載及び周知例1に例示された周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(8)本件発明9の進歩性について
ア 本件発明9と甲1発明の対比
本件発明9と甲1発明を対比すると、上記(4)アの一致点及び相違点1で一致及び相違するほか、相違点2(上記(5)ア)、相違点3(上記(6)ア)、相違点4(上記(7)ア)で相違し、さらに、以下の相違点5で相違する。
[相違点5]
本件発明9では、「前記断裁屑が回収される回収容器を備え、前記回収容器は、断裁途中にジャムが生じた場合に、前記第1の落下スペース又は前記第2の落下スペースを介して、ジャム処理後の残紙を回収可能である」ものであるのに対して、甲1発明では、回収容器を備えているか不明な点。
イ 相違点1~4の判断
相違点1~4は、上記(7)イ及びウのとおり、いずれも当業者が容易に想到できたものである。
ウ 相違点5の判断
甲1の【0028】、【0072】及び図1には、切除片Jが回収される切除片箱23を備える点が記載されている。当該切除片箱23は、落下スペースを介して切除片Jを回収可能なものであるから、搬送経路においてジャムが生じた場合にも、当該落下スペースを介して残紙を回収することが可能であるといえる。
したがって、相違点5に係る本件発明9の構成は、甲1発明及び甲1の記載に基づいて、当業者が容易に想到することができたものである。
エ 本件発明9の進歩性の小括
以上のとおりであるから、本件発明9は、甲1発明、甲3記載の技術的事項、甲1の記載及び周知例1に例示された周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(9)理由G(進歩性)の小括
したがって、本件特許の請求項1、6~9に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
第6 むすび
以上のとおり、本件特許の請求項1、6~9に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるから、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、請求項2~5に係る特許は、訂正により削除され、請求項2~5に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701026