特許異議申立
2024-700306
シート、物品、化粧シート、化粧材、および硬化性組成物
- 審判番号
- 2024-700306
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-132317外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7355183
- 請求日
- 2024年04月03日
- 審決日
- 2024年11月11日
- 公報発行日
- 2025年02月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】大日本印刷株式会社
- 【権利者代理人】山下 昭彦
- 【権利者代理人】岸本 達人
- 【異議申立人】森川 元嗣
- 【異議申立人代理人】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
- 分類
- P1651.113-YAA(C08J) / P1651.121-YAA(C08J) / P1651.537-YAA(C08J) / P1651.536-YAA(C08J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条6項1号特許法113条4号特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7355183号発明「シート、物品、化粧シート、化粧材、および硬化性組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7355183号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし12〕及び〔13ないし17〕について訂正することを認める。
特許第7355183号の請求項1ないし4及び7ないし16に係る特許を維持する。
特許第7355183号の請求項5、6及び17に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7355183号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし17に係る特許についての出願は、令和4年3月11日に出願された特願2022-38397号の一部を同年8月23日に新たな特許出願としたものであって、令和5年9月25日にその特許権の設定登録(請求項の数17)がされ、同年10月3日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和6年4月3日に特許異議申立人 森川 元嗣(以下、「特許異議申立人」という。)から特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし17)がされ、同年5月27日付けで取消理由が通知され、同年7月25日に特許権者 大日本印刷株式会社(以下、「特許権者」という。)から意見書が提出されるととともに訂正請求がされ、同年8月9日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年9月10日に特許異議申立人から意見書が提出されたものである。
第2 本件訂正について
1 訂正の内容
令和6年7月25日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。下線は訂正箇所を示すものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記表面形状のJIS B0601:2013に規定されるRz(最大高さ)が、3μm以上であり、」を追加する訂正をする。併せて、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2ないし4及び7ないし16も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項6を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1から請求項6までのいずれかの請求項に記載のシート。」と記載されているのを、「請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載のシート。」に訂正する。併せて、請求項7の記載を直接的又は間接的に引用する請求項8ないし16も同様に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項10に「請求項1から請求項9までのいずれかの請求項に記載のシートを有する、」と記載されているのを、「請求項1~4、7~9のいずれかの請求項に記載のシートを有する、」に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項11に「請求項1から請求項9までのいずれかの請求項に記載のシートを有する、」と記載されているのを、「請求項1~4、7~9のいずれかの請求項に記載のシートを有する、」に訂正する。併せて、請求項11の記載を引用する請求項12も同様に訂正する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項13に「皺構造を有する表面形状を備える表面層に用いられる硬化性組成物であって、」と記載されているのを、「請求項1~4、7~9のいずれかの請求項に記載のシートにおける前記表面層に用いられる硬化性組成物であって、」に訂正する。併せて、請求項13の記載を直接的又は間接的に引用する請求項14ないし16も同様に訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項17を削除する。
2 訂正の目的、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)請求項1についての訂正について
訂正事項1による請求項1についての訂正は、「シート」の「表面形状」の「JIS B0601:2013に規定されるRz(最大高さ)」に関する限定を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1による請求項1についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)請求項2ないし4についての訂正について
訂正事項1による請求項2ないし4についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1による請求項2ないし4についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)請求項5についての訂正について
訂正事項2による請求項5についての訂正は、請求項5を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項2による請求項5についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)請求項6についての訂正について
訂正事項3による請求項6についての訂正は、請求項6を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項3による請求項6についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)請求項7についての訂正について
訂正事項1による請求項7についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項4による請求項7についての訂正は、引用請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1及び4による請求項7についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(6)請求項8及び9についての訂正について
訂正事項1による請求項8及び9についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項4による請求項8及び9についての訂正は、請求項7についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1及び4による請求項8及び9についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(7)請求項10についての訂正について
訂正事項1による請求項10についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項4による請求項10についての訂正は、請求項7についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項5による請求項10についての訂正は、引用請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1、4及び5による請求項10についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(8)請求項11についての訂正について
訂正事項1による請求項11についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項4による請求項11についての訂正は、請求項7についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項6による請求項11についての訂正は、引用請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1、4及び6による請求項11についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(9)請求項12についての訂正について
訂正事項1による請求項12についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項4による請求項12についての訂正は、請求項7についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項6による請求項12についての訂正は、請求項11についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1、4及び6による請求項12についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(10)請求項13についての訂正について
訂正事項7による請求項13についての訂正は、「皺構造を有する表面形状を備える表面層」が、「請求項1~4、7~9いずれかの請求項に記載のシートにおける」「表面層」であることを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項1及び4による請求項13についての訂正は、請求項1ないし4及び7ないし9についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1、4及び7による請求項13についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(11)請求項14ないし16についての訂正について
訂正事項1、4及び7による請求項14ないし16についての訂正は、請求項13についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1、4及び7による請求項14ないし16についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(12)請求項17についての訂正について
訂正事項8による請求項17についての訂正は、請求項17を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項8による請求項17についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 むすび
以上のとおり、訂正事項1ないし8による請求項1ないし17についての訂正は、いずれも、特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。
また、訂正事項1ないし8による請求項1ないし17についての訂正は、いずれも、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。
なお、訂正前の請求項1ないし12は一群の請求項に該当するものである。
そして、訂正事項1ないし6による請求項1ないし12についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
訂正前の請求項13ないし17は一群の請求項に該当するものである。
そして、訂正事項7及び8による請求項13ないし17についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
また、特許異議申立人からの特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし17に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし12〕及び〔13ないし17〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし17に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし17に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
表面層を有するシートであって、
前記表面層の一方の表面が、皺構造を有する表面形状を備え、
前記表面形状のJIS B0601:2013に規定されるRSm(曲線要素の平均長さ)が、50μm以下であり、
前記表面形状のJIS B0601:2013に規定されるRz(最大高さ)が、3μm以上であり、
前記表面層が、環状構造を含む第1繰り返し単位と、ポリオキシアルキレン基を含む第2繰り返し単位とを有する重合体を含有する、シートであって、
前記第1繰り返し単位が、電離放射線硬化性官能基および前記環状構造を含む第1重合性化合物に由来する繰り返し単位であり、
前記第2繰り返し単位が、電離放射線硬化性官能基および前記ポリオキシアルキレン基を含む第2重合性化合物に由来する繰り返し単位である、シート。
【請求項2】
前記環状構造が、脂環式炭化水素環構造またはイソシアヌレート環構造の少なくともいずれか一方である、請求項1に記載のシート。
【請求項3】
前記第1重合性化合物が、重合性オリゴマーであり、前記第2重合性化合物が、重合性オリゴマーまたは重合性モノマーの少なくともいずれか一方である、請求項1または請求項2に記載のシート。
【請求項4】
前記第1繰り返し単位が前記ポリオキシアルキレン基をさらに含み、前記第1繰り返し単位が前記第2繰り返し単位を兼ねる、請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載のシート。
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
前記表面層の前記表面形状を有する表面とは反対側の面に、基材層を有する、請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載のシート。
【請求項8】
前記表面層と前記基材層との間に、装飾層を有する、請求項7に記載のシート。
【請求項9】
前記表面層と前記基材層との間に、透明性樹脂層を有する、請求項7または請求項8に記載のシート。
【請求項10】
表面に、請求項1~4、7~9のいずれかの請求項に記載のシートを有する、物品。
【請求項11】
請求項1~4、7~9のいずれかの請求項に記載のシートを有する、化粧シート。
【請求項12】
被着体と、前記被着体の一方の面に配置された、請求項11に記載の化粧シートと、を有する、化粧材。
【請求項13】
請求項1~4、7~9のいずれかの請求項に記載のシートにおける前記表面層に用いられる硬化性組成物であって、
環状構造を含む第1重合性化合物と、ポリオキシアルキレン基を含む第2重合性化合物とを含有する、硬化性組成物であって、
前記第1重合性化合物が、電離放射線硬化性官能基および前記環状構造を含み、前記第2重合性化合物が、電離放射線硬化性官能基および前記ポリオキシアルキレン基を含む、硬化性組成物。
【請求項14】
前記環状構造が、脂環式炭化水素環構造またはイソシアヌレート環構造の少なくともいずれか一方である、請求項13に記載の硬化性組成物。
【請求項15】
前記第1重合性化合物が、重合性オリゴマーであり、前記第2重合性化合物が、重合性オリゴマーまたは重合性モノマーの少なくともいずれか一方である、請求項13または請求項14に記載の硬化性組成物。
【請求項16】
前記第1重合性化合物が前記ポリオキシアルキレン基をさらに含み、前記第1重合性化合物が前記第2重合性化合物を兼ねる、請求項13から請求項15までのいずれかの請求項に記載の硬化性組成物。
【請求項17】
(削除)」
第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要等
令和6年4月3日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要及び証拠方法は次のとおりである。
1 申立理由1(甲第1号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1、3、6ないし13及び15は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許発明1、3、5ないし13、15及び17は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3、5ないし13、15及び17に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 申立理由2(甲第2号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1、2及び6ないし14は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第2号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2及び6ないし14に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
3 申立理由3(甲第3号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし3、5ないし15及び17は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第3号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3、5ないし15及び17に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
4 申立理由4(甲第4号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし3、5ないし15及び17は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第4号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3、5ないし15及び17に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
5 申立理由5(甲第5号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし3、5ないし15及び17は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第5号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第5号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3、5ないし15及び17に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
6 申立理由6(甲第6号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1、3、4及び6ないし16は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第6号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第6号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3、4及び6ないし16に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
7 申立理由7(明確性要件)
本件特許の請求項5ないし12に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
本件特許発明5は、本件特許発明1~4における表面層が、皺形成安定剤を含有するというものである。皺形成安定剤という技術用語は、当該技術分野では一般的に使用される用語ではないところ、本件明細書には、皺形成安定剤という用語で特定される物質の範囲が明確に定義されていない。また、明細書の段落【0164】では、「さらに、『皺形成安定剤』と『マット剤』とは、含有量と表面の艶(グロス値)との関係においても異なる。同じ物質Aを皺形成開始剤AW(W:皺,wrincle)として用い、これを特定量Cで含有させて表面に皺を形成させた場合の表面の60°グロス値G60°AW(C)は、同物質Aを単なるマット剤AMとして用い、これを特定量Cで含有させるも表面に皺が形成しない場合の表面の60゜グロス値G60°AM(C)よりも明らかに低下する。すなわち、以下の関係式が成立する。G60°AW(C)<G60°AM(C)」として、皺形成安定剤とマット剤を区別する説明を行っている。この記載は、「同じ物質Aを皺形成開始剤AWとして用い、これを特定量Cで含有させ」た場合に、表面に皺が形成され、「同物質Aを単なるマット剤AMとして用い、これを特定量Cで含有させ」た場合に、表面に皺が形成しないと説明しているようであるが、物質Aを同じ量で配合した場合に、皺形成開始剤という位置付けで配合した場合には皺が形成され、また、マット剤という位置付けで配合した場合には皺が形成されないということは、技術的に成立しない。
このように、本件特許発明5で特定する「皺形成安定剤」は、そこに含まれる物の外延が不明であって、特許請求の範囲の記載を不明りょうとするものである。
また、本件特許発明5を直接又は間接的に引用する本件特許発明6~12も、同様の理由により、特許請求の範囲の記載を不明りょうとするものである。
8 申立理由8(実施可能要件)及び申立理由9(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし17に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号及び同法同条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
本件特許発明で解決しようとする課題は、「艶消し性および耐傷性の両立が可能なシートを提供すること」(段落【0009】)であるところ、これまでに説明した甲1の硬化物及び甲2のハードコートフィルムの例から、本件特許発明1に含まれるシートであっても、艶消し性という本件特許発明の課題を解決することができないものが存在している。そうしてみると、本件明細書の少数の実施例の記載を、本件特許発明1まで拡張ないし一般化でき、本件特許発明1について、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載されているということはできないことは明らかである。
また、本件特許発明1の範囲に含まれるシートであっても、艶消し効果が得られない場合があることは上述のとおりであるため、本件特許発明1の電離放射線硬化性官能基及び環状構造を含む第1重合性化合物及び電離放射線硬化性官能基及びポリオキシアルキレン基を含む第2重合性化合物を使用して、艶消し性と耐傷性が両立したシートを製造することは、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤等をする必要があると認められる。
したがって、本件特許発明1について、発明の詳細な説明の記載は、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではなく、また本件特許発明1の記載は、発明の詳細な説明に記載されたものでない。また、本件特許発明1を引用する本件発明2~12及び本件特許発明1の硬化性組成物の部分を抽出した本件特許発明13~17も、同様の理由で、発明の詳細な説明の記載は、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではなく、また本件特許発明2~17の記載は、発明の詳細な説明に記載されたものでない。
9 証拠方法
甲第1号証:特開2020-111715号公報
甲第2号証:国際公開第2011/055624号
甲第3号証:特開2021-142749号公報
甲第4号証:特開2006-138878号公報
甲第5号証:特開2022-20989号公報
甲第6号証:特開2021-24177号公報
証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。
第5 取消理由の概要
令和6年5月27日付けで通知された取消理由(以下、「取消理由」という。)の概要は次のとおりである。
1 取消理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1、3、6ないし13及び15に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の請求項1、3、5ないし13、15及び17に係る発明は、甲1に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3、5ないし13、15及び17に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。なお、該取消理由1は申立理由1とおおむね同旨である。
2 取消理由2(甲3に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項13ないし15及び17に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲3に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項13ないし15及び17に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。なお、該取消理由2は申立理由3のうち請求項13ないし15及び17に対する新規性・進歩性とおおむね同旨である。
3 取消理由3(甲4に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし3、5ないし15及び17に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲4に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲4に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3、5ないし15及び17に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。なお、該取消理由3は申立理由4とおおむね同旨である。
4 取消理由4(甲5に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし3、5ないし15及び17に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲5に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲5に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3、5ないし15及び17に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。なお、該取消理由4は申立理由5とおおむね同旨である。
5 取消理由5(甲6に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1、3及び6ないし15に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲6に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の請求項1、3、4及び6ないし16に係る発明は、甲6に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3、4及び6ないし16に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。なお、該取消理由5は申立理由6のうち請求項1、3及び6ないし15に対する新規性並びに請求項1、3、4及び6ないし16に対する進歩性とおおむね同旨である。
6 取消理由6(明確性要件)
本件特許の請求項5ないし12及び17に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。なお、該取消理由6は申立理由7を包含する。
本件特許の請求項5に記載された「皺形成安定剤」という技術用語は、本件特許が属する技術分野において、一般的に使用される用語ではないところ、本件特許の発明の詳細な説明には、「皺形成安定剤」という用語で特定される物質の範囲が明確に定義されていない。特に、発明の詳細な説明の【0161】の「よって、従来技術におけるいわゆる「マット剤」と本開示における「皺形成安定剤」とは、例えその構成物質、平均粒径が同じまたは類似であった場合においても、両者の光反射抑制および艶消の機構(作用)、光反射抑制および艶消を発現させるための構造、ならびに使用量と、表面の艶(グロス値)の程度との関係において異なるものとなる。」及び同【0164】の「さらに、「皺形成安定剤」と「マット剤」とは、含有量と表面の艶(グロス値)との関係においても異なる。同じ物質Aを皺形成開始剤AW(W:皺,wrincle)として用い、これを特定量Cで含有させて表面に皺を形成させた場合の表面の60°グロス値G60°AW(C)は、同物質Aを単なるマット剤AMとして用い、これを特定量Cで含有させるも表面に皺が形成しない場合の表面の60°グロス値G60°AM(C)よりも明らかに低下する。」という記載によると、「マット剤」と「皺形成安定剤」は同じ物質であってもよいことになるが、その区別をどのようにして行うのかについて、発明の詳細な説明には記載されていないし、当業者の出願時における技術常識でもない。
したがって、本件特許発明5に関して、特許請求の範囲の記載は、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として第三者の利益が不当に害されるほどに不明確である。
また、請求項5を直接又は間接的に引用する本件特許発明6ないし12及び「皺形成安定剤」という発明特定事項を有する本件特許発明17に関して、本件特許発明1と同様に、特許請求の範囲の記載は、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として第三者の利益が不当に害されるほどに不明確である。
第6 取消理由についての当審の判断
本件訂正により、本件特許の請求項5、6及び17が削除され、本件特許の請求項5、6及び17に対する取消理由はその対象がなくなったので、本件特許の請求項1ないし4及び7ないし16について判断する。
1 主な証拠に記載された事項等
(1)甲1に記載された事項等
ア 甲1に記載された事項
甲1には、「硬化物」に関して、おおむね次の事項が記載されている。下線は当審で付したものと予め付されたものである。他の証拠についても同様。
・「【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に、しわ状構造を有する硬化物であって、
前記硬化物の表面の算術平均粗さRaが0.01μm以上である硬化物。
・・・(略)・・・
【請求項3】
前記しわ状構造の凹凸間周期Rsmが5μm以上20μm以下である請求項1又は請求項2に記載の硬化物。
【請求項4】
前記しわ状構造を有する硬化物の60°光沢度が1以上90以下である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の硬化物。
・・・(略)・・・
【請求項7】
基材の表面に請求項1から請求項6のいずか1項に記載の硬化物が積層された積層体。」
・「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし特許文献1記載の、ヘアーライン加工や梨地加工では十分な艶消し効果得られず、また、サンドブラスト加工では、フィルム中に残った砂が品質上の問題となることがある。
また特許文献2に記載の方法では、アクリル系粒子が使用中に脱落することで、ディスプレイの視認性に支障をきたすことがある。
本発明はこれらの問題を解決することを目的とする。」
・「【発明の効果】
【0006】
本発明の硬化物は、ぎらつきが抑制され、艶消し性に優れた表面が得られ、建築建材、ディスプレイ関連、加飾フィルム等の表面の視認性、意匠性等を向上することができる。」
・「【0007】
本発明の硬化物は表面にしわ状構造を有する。本発明において、しわ状構造とは、一般にリンクル構造として知られている、表面層が座屈して得られる波上の凹凸構造であり、たとえば図1に示すような迷路状の構造をいう。
本発明における、前記硬化物の表面の算術平均粗さRaは、0.01μm以上である。
前記算術平均粗さRaが0.01μm以下では、艶消し性が不十分となる。
前記算術平均粗さRaは、硬化物の耐擦傷性と艶消し性を両立させる観点から、0.05μm以上、2μm以下が好ましい。
また本発明における前記しわ状構造の凹凸の傾斜角θaは硬化物の耐擦傷性と艶消し性を両立させる観点から0.5°以上20°以下が好ましく、より好ましくは5°以上17°以下、さらに好ましくは7°以上15°以下である。
前記傾斜角θaは、本発明の硬化物の耐擦傷性の点から低い方が好ましく、艶消し性の点から高いほうが好ましい。
さらに本発明の硬化物の凹凸周期(粗さ曲線要素の平均長さ)Rsmは0.5μm以上30μm以下が好ましく、より好ましくは2μm以上20μm以下、さらに好ましくは3μm以上15μm以下である。前記Rsmが30μmを超えると、本発明の硬化物を防眩性フィルムとして用いた場合に表面のぎらつきが問題となり、0.5μmより低いと十分な艶消し性が得られない。
また本発明における前記しわ状構造の最大高さRzは硬化物の耐擦傷性と艶消し性を両立させる観点から、0.02μm以上5μm以下が好ましく、より好ましくは0.2μm以上4μm以下、さらに好ましくは0.5μm以上3μm以下である。
前記Rzは、本発明の硬化物の耐擦傷性の点から低い方が好ましく、艶消し性の点から高いほうが好ましい。
本発明における前記しわ状構造の算術平均粗さRa、平均長さRsm、最大高さRz、傾斜角θaは、JIS B 0601-2001に準拠し、光干渉法にて測定した値である。
なお、測定は、表面形状計測システム(株式会社日立ハイテクノロジーズ「VertScan」(登録商標)R5500)を用いて、硬化物表面において、縦237.65μm、横178.25μmの四角形の領域の測定を行い、補完およびベースライン補正を行い、データを読み取った。なお、測定時における対物レンズの倍率は20倍に設定した。
また本発明のしわ状構造を有する硬化物の60°光沢度は艶消し性と透明性を両立させる観点から1以上90以下であり、より好ましくは3以上70以下、さらに好ましくは5以上50以下である。
さらに、本発明のしわ状構造を有する硬化物を防眩性フィルム等の透明性を必要とする用途に用いる場合、ヘイズ15%以上、全光線透過率85%以上であることが好ましい。」
・「【0011】
本発明の硬化物は、たとえば、紫外線活性基を有する重合体A、多官能(メタ)アクリレートB及び有機溶媒Cを含む硬化性重合体組成物を、基材に塗布した後、熱風乾燥により溶剤を留去し、活性エネルギー線を照射することで得られる。
前記活性エネルギー線としては、例えば、α線、β線、γ線、紫外線等が挙げられる。汎用性の観点から、活性エネルギー線としては紫外線が好ましい。
紫外線の発生源としては、例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、マグネトロンを利用した無電極UVランプ、LED等が挙げられる。
前記硬化性重合体組成物を硬化させる際の雰囲気としては、空気、窒素、アルゴン等の不活性ガスが挙げられる。実用性及び経済性の観点から、空気もしくは窒素が好ましい。活性エネルギー線として紫外線を使用する場合の好ましい硬化条件としては、例えば、高圧水銀灯を用いて波長340~380nmの積算光量が10以上3000mJ/cm2以下となるように照射することが好ましい。」
・「【0019】
前記多官能(メタ)アクリレートBは、一分子中に2つ以上の不飽和二重結合を有する化合物である。多官能(メタ)アクリレートBは、得られる硬化物の硬度や硬化性重合体組成物の硬化性を高める作用がある。
前記多官能(メタ)アクリレートBとしては1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート、グリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、ジメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトール(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。また、上記化合物のアルキル変性(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレートや、上記以外の脂肪族ポリオールの(メタ)アクリレート、さらに、デンドリマーまたはハイパーブランチポリマーと称される、アクリレート基を末端に有する樹枝状脂肪族化合物が挙げられる。アクリレート基を末端に有する樹枝状脂肪族化合物は市販品としてビスコートV#1000、V#5020、STAR-501(何れも大阪有機化学工業社製)などが挙げられる。前記の多官能アクリレート化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記多官能(メタ)アクリレートBのなかでも得られる硬化物の硬度や硬化性重合体組成物の硬化性が高くなる点でジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ビスコートV#1000、V#5020、STAR-501などが好ましい。
また、硬化性重合体組成物の硬化性が良好となる点から、前記多官能(メタ)アクリレートBの含有量は、硬化性重合体組成物100質量部に対し80.0質量部以上99.5質量部以下が好ましく、90.0質量部以上99.3質量部以下がより好ましく、93.0質量部以上99.0質量部以下がさらに好ましい。」
・「【0027】
本発明の硬化物は、前記硬化性重合体組成物を基材に塗布した後、得られた硬化物を乾燥し、紫外線を照射し得られる。
前記基材としては各種重合体フィルム及び重合体板、重合体成形体等を使用することができる。重合体フィルムとして、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ジアセチレンセルロースフィルム、アセテートブチレートセルロースフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリアクリル系重合体フィルム、ポリウレタン系重合体フィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、(メタ)アクリルニトリルフィルム、シクロオレフィンポリマー(COP)フィルム、延伸ポリプロピレンフィルム、無延伸ポリプロピレンフィルム等が挙げられる。」
・「【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、評価は以下の方法によって行った。
<評価方法>
<評価サンプル>
硬化性重合体組成物の塗布液を、厚さ100μmのPETフィルム(三菱ケミカル(株)製、O321E100)に#7のバーコーターで塗布し、得られた塗膜を100℃に加熱した熱風乾燥機で60秒間乾燥を行うことで溶剤を揮発させた。次いで、アイグラフィックス株式会社製のUVコンベアを用いて、高圧水銀灯により空気下で塗膜の硬化を行ったものを評価サンプルとした。
紫外線による硬化は、波長300~390nmの積算光量が、岩崎電気株式会社製の照度計(アイ紫外線積算照度計 UVPF―A1、PD-365)で測定した際に、250mJ/cm2(250mW/J/cm2)となるように調整し、約1秒の照射を2回(500mJ/cm2)行った。」
・「【0034】
<艶消し性>
蛍光灯を灯した室内で、蛍光灯と評価サンプルの距離を2.5mに設定して評価サンプルの表面への蛍光灯の映り込みを目視で評価した。
○:蛍光灯の反射像は、強くぼやけており、蛍光灯の輪郭が確認できない。
△:蛍光灯の反射像は、ぼやけているが、うっすらと輪郭を確認することができる。
×:蛍光灯の反射像は、鮮明ではっきりと輪郭を確認することができる。」
・「【0036】
<紫外線活性基を有する重合体A-1>
撹拌機、冷却管及び温度計を備えたフラスコ中に、メチルイソブチルケトン(MIBK)78.0部を入れて撹拌した。次いで、フラスコ内を窒素置換し65℃に昇温してメチルメタクリレート(三菱ケミカル(株)製、商品名:アクリエステルM)30.0部、ステアリルメタクリレート(三菱ケミカル(株)製、商品名:アクリルエステルS)20.0部、4―メタクリロイルオキシベンゾフェノン(MCCユニテック(株)製)50.0部、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名:KBM-803)3.0部、アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業(株)製、商品名:V-65)1.0部、MIBK78.0部の混合溶液を2時間かけて滴下した。さらに2時間後、アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業(株)製、商品名:V-65)0.5部、MIBK0.6部の混合液を投入し、5時間保持した。その後、反応液を40℃に冷却することで紫外線活性基を有する重合体A-1を重合した。前記A-1の固形分は40%であり、重量平均分子量(Mw)は10,700であった。また、ガラス転移温度は95℃であった。
【0037】
<紫外線活性基を有する重合体A-2>
撹拌機、冷却管及び温度計を備えたフラスコ中に、メチルイソブチルケトン(MIBK)78.0部を入れて撹拌した。次いで、フラスコ内を窒素置換し65℃に昇温して2-エチルヘキシルメタクリレート(三菱ケミカル株式会社製、商品名:アクリエステルEH)30.0部、ステアリルメタクリレート(三菱ケミカル株式会社製、商品名:アクリルエステルS)10.0部、ジメチルアミノエチルメタクリレート(三菱ケミカル株式会社製、商品名:アクリエステルDM)10.0部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(三菱ケミカル株式会社製、商品名:アクリルエステルHO)10.0部、4―メタクリロイルオキシベンゾフェノン(MCCユニテック株式会社製)40.0部、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名:KBM-803)3.0部、アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業株式会社製、商品名:V-65)1.0部、MIBK78.0部の混合溶液を2時間かけて滴下した。さらに2時間後、アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業株式会社製、商品名:V-65)0.5部、MIBK0.6部の混合液を投入し、5時間保持した。その後、反応液を40℃に冷却することで紫外線活性基を有する重合体A-2を重合した。前記A-2の固形分は40%であり、重量平均分子量(Mw)は5,700であった。また、ガラス転移温度は46℃であった。
【0038】
<実施例1>
撹拌子を備えたフラスコ中に、紫外線活性基を有する重合体AとしてA-1を固形分として2.5質量部、多官能のアクリレートBとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製 商品名:KAYARAD DPHA)(E型粘度計で測定した粘度6850mPa・s)を固形分として90.0質量部とペンタエリスリトールトリアクリレート(大阪有機化学工業(株)製 商品名:V#300)(E型粘度計で測定した粘度500mPa・s)を固形分として10.0質量部、有機溶剤Cとして、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)105.6質量部、メチルエチルケトン(MEK)45.3質量部を添加した後に均一になるまで撹拌を行い、硬化性重合体組成物の塗布液を調製した。得られた塗布液の硬化物の評価結果を表1に示す。
【0039】
<実施例2>
多官能のアクリレートBとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製 商品名:KAYARAD DPHA)を固形分として80.0質量部とペンタエリスリトールトリアクリレート(大阪有機化学工業(株)製 商品名:V#300)を固形分として20.0質量部とした以外は実施例1と同様に硬化性重合体組成物の塗布液を調製した。得られた塗布液の硬化物の評価結果を表1に示す。
【0040】
<実施例3>
多官能のアクリレートBとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製 商品名:KAYARAD DPHA)を固形分として70.0質量部とペンタエリスリトールトリアクリレート(大阪有機化学工業(株)製 商品名:V#300)を固形分として30.0質量部とした以外は実施例1と同様に硬化性重合体組成物の塗布液を調製した。得られた塗布液の硬化物の評価結果を表1に示す。
【0041】
<実施例4>
多官能のアクリレートBとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製 商品名:KAYARAD DPHA)を固形分として60.0質量部とペンタエリスリトールトリアクリレート(大阪有機化学工業(株)製 商品名:V#300)を固形分として40.0質量部とした以外は実施例1と同様に硬化性重合体組成物の塗布液を調製した。得られた塗布液の硬化物の評価結果を表1に示す。
【0042】
<実施例5>
多官能のアクリレートBとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製 商品名:KAYARAD DPHA)を固形分として80.0質量部とペンタエリスリトールトリアクリレート(大阪有機化学工業(株)製 商品名:V#300)を固形分として20.0質量部とした以外は実施例5と同様に硬化性重合体組成物の塗布液を調製した。得られた塗布液の硬化物の評価結果を表1に示す。
【0043】
<実施例6>
多官能のアクリレートBとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製 商品名:KAYARAD DPHA)を固形分として60.0質量部とペンタエリスリトールトリアクリレート(大阪有機化学工業(株)製 商品名:V#300)を固形分として40.0質量部とした以外は実施例5と同様に硬化性重合体組成物の塗布液を調製した。得られた塗布液の硬化物の評価結果を表1に示す
【0044】
<比較例1>
撹拌子を備えたフラスコ中に、紫外線活性基を有する重合体AとしてA-1を固形分として2.5質量部、多官能のアクリレートBとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製 商品名:KAYARAD DPHA)(E型粘度計で測定した粘度6850mPa・s)を固形分として100.0質量部、有機溶剤Cとして、プロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、PGM)105.6質量部、メチルエチルケトン(以下、MEK)45.3質量部添加した後に均一になるまで撹拌を行い、硬化性重合体組成物の塗布液を調製した。得られた塗布液の硬化物の評価結果を表1に示す。」
・「【0046】
【表1】
[図:0001419354000001.jpg]
」
イ 甲1に記載された発明
甲1に記載された事項を、特に実施例1ないし6に関して整理すると、甲1には次の発明(以下、順に「甲1物発明」及び「甲1組成物発明」という。)が記載されていると認める。
<甲1物発明>
「実施例1ないし6において得られた硬化性重合体組成物の塗布液をPETフィルムに塗布し、得られた塗膜を硬化させた硬化物。」(当審注:「実施例1ないし6」については上記ア参照。)
<甲1組成物発明>
「甲1物発明に用いる硬化性重合体組成物。」
(2)甲3に記載された事項等
ア 甲3に記載された事項
甲3には、「化粧シート及び化粧板」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「【請求項1】
厚さ方向において順に、基材シートと、表面保護層とを少なくとも備える積層体から構成される化粧シートであって、前記表面保護層は、前記基材シート側から第2表面保護層と第1表面保護層とが順に隣接して積層されており、
(1)前記第1表面保護層は、樹脂A及び樹脂Bの二種類の脂肪族ウレタンアクリレートを含む電離放射線硬化型樹脂を含有し、前記樹脂Aはイソシアヌレート骨格を有する脂肪族ウレタンアクリレートであり、前記樹脂Bはイソシアヌレート骨格を有さず、脂環骨格を有する脂肪族ウレタンアクリレートであり、
(2)前記第1表面保護層は、ナノインデンテーション硬さが160MPa以上240MPa以下であり、
(3)前記第2表面保護層は、ナノインデンテーション硬さが100MPa以上240MPa以下で、且つ、前記第1表面保護層よりもナノインデンテーション硬さが小さく、
(4)前記第1表面保護層は、更に消臭剤を含有する、
ことを特徴とする化粧シート。」
・「【請求項4】
前記第1表面保護層は、無機フィラーを含有する、請求項1~3のいずれかに記載の化粧シート。」
・「【請求項6】
前記消臭剤は、不定形のフィラーであり、シリカ、金属塩の単体、金属塩の複合物、及び金属塩の複合物を焼成してなるゼオライトからなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1~5のいずれかに記載の化粧シート。」
【請求項7】
前記消臭剤は、平均粒子径が1μm未満である、請求項1~6のいずれかに記載の化粧シート。」
・「【請求項12】
厚さ方向において順に、化粧板基材と、請求項1~11のいずれかに記載の化粧シートとを少なくとも備える積層体から構成される化粧板。」
・「【0002】
従来、建築物の内装材に用いられる建具、床、壁等の表面化粧等のために各種の化粧シートが用いられている。例えば、厚さ方向において順に、基材シートと、透明性樹脂層と、表面保護層とを有する積層体から構成される化粧シートが幅広く用いられており、必要に応じて基材シート上に装飾層を設けたり、接着性を高めるために透明性樹脂層と表面保護層との間にプライマー層を設けたり、表面保護層の耐傷性を高めるために表面保護層の樹脂成分に電離放射線硬化型樹脂を含有すること等が知られている。」
・「【0051】
第1表面保護層に含まれる樹脂成分は電離放射線硬化型樹脂を含有し、本発明では詳細には樹脂A及び樹脂Bの二種類の脂肪族ウレタンアクリレートを含んでいる。
【0052】
樹脂Aはイソシアヌレート骨格を有する脂肪族ウレタンアクリレートであり、この要件を満たす限り限定的ではないが、例えば、ジイソシアネートの三量体により形成されるイソシアヌレート骨格を有する脂肪族ウレタンアクリレートが好ましい。具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート(特に1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート)の三量体、トリレンジイソシアネートの三量体、メタキシレンジイソシアネートの三量体等が挙げられる。なお、トリレンジイソシアネート及びメタキシレンジイソシアネートはベンゼン環を有する点でヘキサメチレンジイソシアネートよりも耐候性が劣る可能性があるため、これらのジイソシアネートは水素添加されていることが好ましい。これらの樹脂Aは、第1表面保護層の耐汚染性、耐アルカリ性等を向上させる効果がある。
【0053】
樹脂Bはイソシアヌレート骨格を有さず、脂環骨格を有する脂肪族ウレタンアクリレートであり、この要件を満たす限り限定的ではないが、例えば、当該脂環骨格としてイソホロン及びシクロヘキサンの少なくとも一種を有することが好ましい。具体的には、イソホロンジイソシアネートとブタンジオールとをモノマーとする重合体であるウレタンオリゴマーの末端にアクリレートを付加したもの、水素添加ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート(水添MDI)のPG変性ジアクリレート等が挙げられる。これらの樹脂Bは、第1表面保護層に柔軟性を付与する効果があり、樹脂Aとの組み合わせにより第1表面保護層に長期間に亘る優れた耐汚染性、耐アルカリ性等とともに、衝撃が加わった際や加工時の割れやクラックの発生を抑制する効果を与える。
【0054】
第1表面保護層に含まれる樹脂成分は実質的に全量が電離放射線硬化型樹脂から構成でき、当該電離放射線硬化型樹脂は実質的に樹脂A及び樹脂Bの二種類の脂肪族ウレタンアクリレートから構成すればよい。なお、電離放射線硬化型樹脂は、樹脂A、樹脂Bのように紫外線、電子線等の電離放射線の照射により重合架橋反応可能なラジカル重合性二重結合を分子中に含むプレポリマー(オリゴマーを含む)及び/又はモノマーを主成分とする透明性樹脂であって、硬化反応は、通常、架橋硬化反応である。電離放射線硬化型樹脂を硬化させるために用いる電離放射線としては、電離放射線硬化型樹脂(組成物)中の分子を硬化反応させ得るエネルギーを有する電磁波又は荷電粒子が用いられる。通常は紫外線又は電子線を用いればよいが、可視光線、X線、イオン線等を用いてもよい。なお、本発明では電離放射線硬化型樹脂の中でも、光重合開始剤を含まない点で原料樹脂の性質がそのまま第1表面保護層の性質に反映できる点、且つ耐候剤を併用する場合の選択の幅が広がるという点から電子線硬化型樹脂を用いることが好ましい。」
・「【0065】
なお、消臭剤の平均粒径が1μm未満であることにより、本発明の化粧シートの表面保護層に含まれる無機フィラーとは測定時に区別し易く、混同され難い。」
・「【0121】
実施例1
基材シートとして60μm厚の着色ポリプロピレンフィルムを用意し、基材シートの裏面に裏面プライマー層(厚さ2μm)を形成して、基材シートのおもて面に、厚さ2μmとなるように絵柄模様層をグラビア印刷により形成した。絵柄模様層上にウレタン系樹脂を用いて厚さ2μmとなるように透明性接着剤層を形成した。接着剤層上に、厚さ80μmとなるように透明ポリプロピレン系樹脂のシートを押し出しラミネート方式で積層し、透明性樹脂層を形成した。
【0122】
次いで、その表面にコロナ放電処理を施した後、プライマー剤を厚さ2μmで塗工することによりプライマー層を形成した。
【0123】
プライマー層のおもて面に、表1に示す第2表面保護層形成用コーティング剤〔直鎖多官能脂肪族ウレタンアクリレートである脂環骨格を有さない樹脂Cとイソシアヌレート骨格を有さない脂環骨格を有する樹脂Bを、第2表面保護層のナノインデンテーション硬さが140MPaになるように樹脂を配合したコーティング剤(第1表面保護層との密着性を考慮し1Mradの条件で電子線を照射して試作)〕をグラビアコート方式で塗工(12μm)した後、上層に表1に示す第1表面保護層形成用コーティング剤(第1表面保護層のナノインデンテーション硬さが240MPaとなるように電離放射線硬化型樹脂にイソシアヌレート骨格を有する樹脂Aとイソシアヌレート骨格を有さない脂環骨格を有する樹脂Bとを混合し、樹脂成分100質量部に対して疎水化処理された無機フィラーを20質量部及び消臭剤(不定形のシリカ、平均粒子径0.1μm)を10質量部含むコーティング剤)をグラビアコート方式で塗工(15μm)し、次いで酸素濃度200ppm以下の環境下、電子線照射装置を用いて加速電圧165KeV、5Mradの条件で電子線を照射して、電子線硬化型樹脂を硬化させることで第2表面保護層及び第1表面保護層を形成した。なお、樹脂Aはヘキサメチレンジイソシアネートの三量体により形成されたイソシアヌレート骨格を有する脂肪族ウレタンアクリレートであり、樹脂Bは水素添加ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート(水添MDI)のPG変性ジアクリレート(イソシアヌレート骨格を有さない)であり、樹脂Cはペンタエリストール系多官能アクリレート(イソシアヌレート骨格及び脂環骨格を有さない)である(以下同様)。
【0124】
実施例2
表1に示す通り、第2表面保護層形成用コーティング剤として、直鎖多官能脂肪族ウレタンアクリレートである脂環骨格を有さない樹脂Cとイソシアヌレート骨格を有さない脂環骨格を有する樹脂Bを、第2表面保護層のナノインデンテーション硬さが215MPaになるように樹脂を配合したコーティング剤(第1表面保護層との密着性を考慮し1Mradの条件で電子線を照射して試作)を用いた以外は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。
【0125】
実施例3
表1に示す通り、第2表面保護層形成用コーティング剤として、直鎖多官能脂肪族ウレタンアクリレートである脂環骨格を有さない樹脂Cとイソシアヌレート骨格を有さない脂環骨格を有する樹脂Bを、第2表面保護層のナノインデンテーション硬さが270MPaになるように樹脂を配合したコーティング剤(第1表面保護層との密着性を考慮し1Mradの条件で電子線を照射して試作)を用いた以外は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。
【0126】
実施例4
表1に示す通り、第2表面保護層形成用コーティング剤として、直鎖多官能脂肪族ウレタンアクリレートである脂環骨格を有さない樹脂Cのみを用いて、第2表面保護層のナノインデンテーション硬さが80MPaになるように調製したコーティング剤(第1表面保護層との密着性を考慮し1Mradの条件で電子線を照射して試作)を用いた以外は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。
【0127】
実施例5
実施例1で用いた第1表面保護層形成用コーティング剤100重量部に対して、抗ウイルス剤としてリン酸系ガラス銀担持化合物(興亜硝子製/PG-711)を3重量部添加したこと以外は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。
【0128】
実施例6
実施例1で用いた第1表面保護層形成用コーティング剤に対して、抗アレルゲン性を有するアニオン性フェノール系材料(DIC社製「EXP20530A」)及び抗アレルゲン性を有する亜鉛系材料(DIC社製「EXP20530B」)を配合したこと以外は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。上記アニオン性フェノール系材料及び上記亜鉛系材料は、配合後のコーティング剤100質量%中、それぞれ固形分割合で23質量%となるように配合した。」
・「【0130】
床用化粧材の作製
上述のようにして作製した実施例1~4及び比較例1の化粧シートの裏面プライマー層側が木質基材(2.7mmMDF)と接するようにして、化粧シートを水系接着剤(BA-10L/BA-11B 中央理化工業株式会社製、塗布量7g/尺角)を用いて木質基材に貼り合わせることにより、実施例1~4及び比較例1の床用化粧材を作製した。」
・「【0140】
【表1】
[図:0001419354000002.jpg]
樹脂A:ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体により形成されたイソシアヌレート骨格を有する脂肪族ウレタンアクリレート
樹脂B:水素添加ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート(水添MDI)のPG変性ジアクリレート(イソシアヌレート骨格を有さない)
樹脂C:ペンタエリストール系多官能アクリレート(イソシアヌレート骨格及び脂環骨格を有さない)」
イ 甲3に記載された発明
甲3に記載された事項を、特に実施例1ないし4に関して整理すると、甲3には次の発明(以下、順に「甲3物発明」及び「甲3組成物発明」という。)が記載されていると認める。
<甲3物発明>
「着色ポリプロピレンフィルムの上層に実施例1ないし4において得られた第1表面保護層形成用コーティング剤をグラビアコート方式で塗工し、次いで電子線を照射して、電子線硬化型樹脂を硬化させることで形成した第1表面保護層。」(当審注:「実施例1ないし4」については上記ア参照。)
<甲3組成物発明>
「甲3物発明に用いる第1表面保護層形成用コーティング剤。」
(3)甲4に記載された事項等
ア 甲4に記載された事項
甲4には、「防眩フィルタ及びこれを用いたディスプレイ」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「【請求項1】
ポリカプロラクトン構造を有する化合物を構成成分として含有する組成物を硬化させて得られる樹脂層を有する防眩フィルタ。
【請求項2】
前記組成物が、1分子中に複数個のイソシアネート基を有する有機イソシアネートとポリカプロラクトン変性アルキル(メタ)アクリレートとを反応させて得られる放線線硬化性のウレタン(メタ)アクリレートを構成成分として含有する放射線硬化型組成物であることを特徴とする請求項1記載の防眩フィルタ。
【請求項3】
前記ウレタン(メタ)アクリレートがイソシアヌレート環を有することを特徴とする請求項2記載の防眩フィルタ。
【請求項4】
前記樹脂が長鎖アルキル基含有化合物、シリコーン化合物及びフッ素化合物の少なくとも1つを骨格に有することを特徴とする請求項2又は請求項3記載の防眩フィルタ。
【請求項5】
前記樹脂層が、透光性微粒子を含有するか、もしくは表面に微細凹凸を有することを特徴とする請求項1~4いずれか1項に記載の防眩フィルタ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の防眩フィルタが、ディスプレイの観察側に配置されてなるディスプレイ。」
・「【0109】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。なお、これらの記載により本発明を制限するものではない。
【0110】
(合成例1)
ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性タイプ(三井武田ケミカル株式会社製、タケネートD-170N、イソシアネート含有量:21%)50部、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学工業株式会社製プラクセルFA2)90部、及びジブチル錫ラウレート0.02部を混合した。それから室温で30分間保持し、さらに70℃にまで昇温して同温度で5時間保持しウレタンアクリレートを 得た。なお、このウレタンアクリレートにおけるアクリレートモノマー残基当たりのカプロラクトン単位の繰り返し数は2である。
【0111】
(合成例2)
ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性タイプ(三井武田ケミカル株式会社製、タケネートD-170N)50部、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学工業株式会社製プラクセルFA1)50.5部、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学工業株式会社製プラクセルFA5)21.4部、及びジブチル錫ラウレート0.02部を混合した。それから室温で30分間保持し、さらに70℃にまで昇温して同温度で5時間保持しウレタンアクリレートの混合物を得た。なお、これらのウレタンアクリレートにおけるアクリレートモノマー残基当たりのカプロラクトン単位の繰り返し数の平均は1.5である。
【0112】
(合成例3)
ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性タイプ(三井武田ケミカル株式会社製、タケネートD-170N)50部、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学工業株式会社製プラクセルFA5)180部、及びジブチル錫ラウレート0.02部を混合した。それから室温で30分間保持し、さらに70℃にまで昇温して同温度で5時間保持しウレタンアクリレートを得た。なお、このウレタンアクリレートにおけるアクリレートモノマー残基当たりのカプロラクトン単位の繰り返し数は5である。
【0113】
(合成例4)
ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性タイプ(三井武田ケミカル株式会社製、タケネートD-170N)50部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(共栄社化学株式会社製ライトエステルHOA)29.4部、及びジブチル錫ラウレート0.02部を混合した。それから室温で30分間保持し、さらに70℃にまで昇温して同温度で5時間保持しウレタンアクリレートを得た。なお、このウレタンアクリレートにおけるアクリレートモノマー残基当たりのカプロラクトン単位の繰り返し数は0である。
【実施例1】
【0114】
合成例1で得られたウレタンアクリレート100部に光開始剤(チバガイギー社製イルガキュア184)2部を混合して、これに防眩性を付与するための樹脂ビーズとして粒径5μmのポリメタクリル酸メチルアクリレートビーズを樹脂100重量部に対して4重量部配合した。更に樹脂ビーズの沈降防止剤として粒径0.25μmのシリカビーズを樹脂100重量部に対して0.2重量部配合して防眩性を付与する放射線硬化型組成物とした。前記放射線硬化型組成物をリバースロールコーティング法により、トリアセチルセルロースフィルム上に膜厚7μm(乾燥時)になるように塗工した。次いで、160Wの紫外線照射装置の下を5m/minのスピードで通過させ、樹脂を硬化させて自己修復機能に基づく耐擦傷性を有する防眩フィルタを得た。なお、上記の放射線硬化型組成物に含まれるウレタンアクリレートにおけるアクリレートモノマー残基当たりのカプロラクトン単位の繰り返し数は2である。
【実施例2】
【0115】
合成例2で得られたウレタンアクリレートの混合物60部、トリエチレングリコールジアクリレート(共栄社化学株式会社製ライトアクリレート3EG-A)20部、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート(東亞合成株式会社製M-5400)20部、及び光開始剤(チバガイギー社製イルガキュア184)2部を混合して放射線硬化型組成物を調製した以外、樹脂ビーズや沈降防止剤、塗工方法は実施例1と同様にして、自己修復機能に基づく耐擦傷性を有する防眩フィルタを得た。なお、上記の放射線硬化型組成物に含まれるウレタンアクリレートにおけるアクリレートモノマー残基当たりのカプロラクトン単位の繰り返し数の平均は1.5である。また、この放射線硬化型組成物に含まれるウレタンアクリレート間における前記繰り返し数の差は最大で4である。
【実施例3】
【0116】
合成例3で得られたウレタンアクリレート51.5部、合成例4で得られたウレタンアクリレート18.5部、トリエチレングリコールジアクリレート(共栄社化学株式会社製ライトアクリレート3EG-A)28部、及び光開始剤(チバガイギー社製イルガキュア184)2部を混合して放射線硬化型組成物を調製した以外は樹脂ビーズや沈降防止剤、塗工方法は実施例1と同様にして、自己修復機能に基づく耐擦傷性を有する防眩フィルタを得た。なお、上記の放射線硬化型組成物に含まれるウレタンアクリレートにおけるアクリレートモノマー残基当たりのカプロラクトン単位の繰り返し数の平均は2.5である。また、この放射線硬化型組成物に含まれる2種類のウレタンアクリレート間における前記繰り返し数の差は5である。
【0117】
(比較例1)
防眩層の放射線硬化型組成物として、ポリエステルアクリレートとポリウレタンアクリレートとの混合物(EXG:商品名:大日精化製)からなる樹脂組成物100重量部に対して、熱可塑性樹脂としてポリメタクリル酸メチルアクリレートを37重量部配合した。防眩性を付与するための樹脂ビーズとして粒径5μmのポリメタクリル酸メチルアクリレートビーズを樹脂100重量部に対して4重量部配合した。樹脂ビーズの沈降防止剤として粒径0.25μmのシリカビーズを樹脂100重量部に対して0.2重量部配合して防眩性を付与する塗料組成物とした。前記塗料組成物をリバースロールコーティング法により、トリアセチルセルロースフィルム上に膜厚7μm(乾燥時)になるように塗工した。次いで、160Wの紫外線照射装置の下を5m/minのスピードで通過させ、樹脂を硬化させてハードコート層に基づく耐擦傷性を有する防眩フィルタを得た。
【0118】
(評価)
実施例及び比較例においてそれぞれ得られたフィルタについて評価を行なった結果を、図3に示す。実施例1~3の防眩フィルタは、何れも良好な性能であったが、比較例1の防眩フィルタは、耐屈曲性および耐熱性において満足できるものではなかった。
【0119】
[評価方法]
・防眩性:防眩性の判定は、ルーバーの無いむきだしの蛍光灯を作製した耐擦傷性防眩フィルタに写し、その正反射光の眩しさを目視にて以下の基準に従って評価した。○:眩しさを感じない、×:眩しさが感じられる。
・耐屈曲性:作製した耐擦傷性防眩フィルタを直径2.5cmの円筒に巻き付けたときに、フィルタにクラックやワレなどの破損が生じないものを○、破損が生じるものを×とした。
・耐熱性:作製した防眩フィルタを60℃の雰囲気下に100時間放置したときにフィルタの外観に変化が生じないものを○、外観に変化が生じるものを×とした。
・耐擦傷性:作製した耐擦傷性防眩フィルタ上を#0000のスチールウールを使って500グラムの荷重で往復20回ラビングした後のヘイズ変化量(%)を測定した。」
・「【図3】
[図:0001419354000003.jpg]
」
イ 甲4に記載された発明
甲4に記載された事項を、特に実施例2及び3に関して整理すると、甲4には次の発明(以下、順に「甲4物発明」及び「甲4組成物発明」という。)が記載されていると認める。
<甲4物発明>
「実施例2及び3において得られた放射性硬化型組成物をトリアセチルセルロースフィルムに塗工し、次いで硬化して得た防眩フィルム。」(当審注:「実施例2及び3」については上記ア参照。)
<甲4組成物発明>
「甲4物発明に用いる放射性硬化型組成物。」
(4)甲5に記載された事項等
ア 甲5に記載された事項
甲5には、「活性エネルギー線硬化性コーティング剤、これを用いた塗装建材」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「【請求項1】
硬化成分として単官能(メタ)アクリレートモノマー、複数の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としてジシクロヘキシルメタン4,4'-ジイソシアナートと水酸基含有(メタ)アクリレートとの反応生成物であるウレタン(メタ)アクリレート、及び/又は二重結合当量が100~1000/molの(メタ)アクリロイル基を含有するアクリル系樹脂を含有する活性エネルギー線硬化性コーティング剤であって、
(1)単官能(メタ)アクリレートモノマーが硬化成分全量の10~60質量%
(2)ジシクロヘキシルメタン4,4'-ジイソシアナートと水酸基含有(メタ)アクリレートとの反応生成物であるウレタン(メタ)アクリレートが硬化成分全量の4~30質量%
(3)二重結合当量が100~1000/molの(メタ)アクリロイル基を含有するアクリル系樹脂が硬化成分全量の0.1~20質量%
である事を特徴とする活性エネルギー線硬化性コーティング剤。」
・「【請求項4】
更に2官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを含有する請求項1~3のいずれか1つに記載の活性エネルギー線硬化性コーティング剤。」
・「【0002】
従来より、住宅等の建築物内部における家具・床材等において化粧シートが多く用いられており、その表層は保護や美装を目的として各種塗装が行われている。化粧シートは木材等の部材と張り合わせ、表面を加飾するための印刷物の総称である。」
・「【0017】
前記単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチルテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエタノールアクリル酸多量体エステル等が挙げられる。」
・「【0025】
本発明で使用する(メタ)アクリロイル基を含有するアクリル系樹脂を構成するモノマー成分としては、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N-ビニルプロリドン等の単官能モノマー並びに多官能モノマー、例えば、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。」
・「【0030】
更に、本発明の活性エネルギー線硬化性コーティング剤では、前記単官能(メタ)アクリレートモノマー以外に、2官能以上の(メタ)メタクリレートを併用しても良い。前記単官能(メタ)アクリレートモノマーに加えて、2官能以上の(メタ)アクリレートを併用する事により、塗膜外観を保持しつつ、単官能モノマーのみを使用した場合に比べて高い強度を得ることができる。更に必要に応じて重合性オリゴマーを併用してもよい。
【0031】
前記2官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の2価アルコールのジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0032】
前記3官能以上の(メタ)メタクリレートとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート等の3価以上の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート、グリセリン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジ又はトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレンポリオールのポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0033】
また更に、2官能以上の(メタ)アクリレートにあたるジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物 (DPHAと略する場合がある)、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTAと略する場合がある)、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドを付加して得たトリオールのトリ(メタ)アクリレートであるトリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加体トリ(メタ)アクリレート等を使用してもよい。前記トリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加体トリ(メタ)アクリレートとしては、代表的なものとしてトリメチロールプロパンエチレンオキサイド(EO)変性(n≒3)トリアクリレートが挙げられる。
前記した単官能(メタ)アクリレート、2官能以上の(メタ)メタクリレートの総量が、コーティング剤中の硬化成分全量の60~80質量%の範囲が好ましく、より好ましくは65~75質量%である。」
・「【0070】
(活性エネルギー線硬化性コーティング剤の調整)
〔実施例1〕
ジシクロヘキシルメタン4,4'-ジイソシアナートと水酸基含有(メタ)アクリレートとの反応生成物であるウレタン(メタ)アクリレート(数平均分子量:5000)2部、単官能アクリレートとしてエトキシエトキシエタノール アクリル酸多量体エステルであるα -アクリロイル-ω -(3,6-ジオキサオクタン-1-イルオキシ)ポリ(オキシエチレンカルボニル)(Cas.No 188746-52-3)を16.6部、2官能アクリレートであるヘキサンジオールエチレンオキサイド変性ジアクリレートMiramer M202(MIWON社製)を16.6部、2官能アクリレートであるトリプロピレングリコールジアクリレートMiramer M220(MIWON社製)を16.6部、3官能アクリレートであるトリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリアクリレート、MIWON社製M3130を20.8部、BASF社製1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン「Omnirad184」8.3部、湿式シリカであるニップシールE170(平均粒子径:3μm、東ソ・シリカ(株)社製)を8.3部、ナトリウムカリウムアルミニウムシリケートであるミネックス8F(白石工業株式会社製)を5部、ポリプロピレンワックスであるランコワックスPP1362D(平均粒子径6μm、日本ルーブリゾール株式会社製)を3.3部、消泡剤BYK A501(ビックケミー・ジャパン社製)を0.2部の合計99.9部を攪拌機で1時間撹拌混合した後、ビーズミルで2時間撹拌処理し、活性エネルギー線硬化性コーティング剤1を作製した。
【0071】
(活性エネルギー線硬化性コーティング剤の調整)
〔実施例2~19、比較例1~11〕
表1~3に示す配合に従って、実施例1と同様の手順にて、各活性エネルギー線硬化性コーティング剤を作製した。
尚、(メタ)アクリロイル基を含有するアクリル系樹脂としてアクリルアクリレート樹脂A(二重結合当量250g/mol品、重量平均分子量25,000、Tg56℃、水酸基価113mgKOH/g)、アクリルアクリレート樹脂B(二重結合当量360g/mol品、重量平均分子量25,000、Tg73℃、水酸基価78mgKOH/g)、アクリルアクリレート樹脂C(二重結合当量550品g/mol品、重量平均分子量25,000、Tg85℃、水酸基価50mgKOH/g)の3種類を使用した。
また、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート混合物(DPHA)としては、Miramer M600(MIWON社製)を使用した。
実施例16,17については、剥離剤としてTEGORAD2700(アクリル変性ポリシロキサン Cas番号:157811-87-5、エボニック・ジャパン社製社製)1.2部を添加した。
また、実施例18では、更に耐傷性を向上させる目的で、アクリル樹脂ビーズGM-0801(平均粒子径8μm、アイカ工業(株)社製)20部を添加した。
【0072】
<化粧シートの作製>
基材として墨ベタ印刷紙(厚さ40μm)を用い、バーコーター(4μm)を使用して前記実施例1~17、比較例1~11で作製した活性エネルギー線硬化性コーティング剤を其々塗布した後、高圧水銀灯による紫外線照射を1回行い、塗膜を硬化させた。空冷高圧水銀灯(出力120W/cm1灯)およびベルトコンベアを搭載したUV照射装置(株式会社ジーエス・ユアサ コーポレーション)を使用し、塗工物をコンベア上に載せ、ランプ直下(照射距離11cm)を分速25メートルの速度で通過させることにより、建材塗料を硬化させた。
紫外線照射量は紫外線積算光量計(株式会社ジーエス・ユアサ コーポレーション製 工業用UVチェッカー UVR-N1)を用いて40mJ/cm2である事を確認した。
【0073】
〔評価方法〕
本発明の活性エネルギー線硬化性コーティング剤の評価方法を示す。
【0074】
〔評価項目1:低光沢性〕
作製した紫外線硬化後の各化粧シート表面を、日本電色製グロスメーターVG2000を用いてグロス(光沢)値を測定し、次の3段階で評価した。
光沢の測定条件は入射角60°反射角60°とした。
(評価基準)
○:60度のグロス値が15未満である。
△:60度のグロス値が15以上~30未満である。
×:60度のグロス値が30以上である。」
・「【0078】
各活性エネルギー線硬化性コーティング剤を用いた化粧シートの評価結果を表1~3に示す。
尚、表中の数値は、全て質量部、又は質量%であり。空欄は未配合であることを示す。
【0079】
【表1】
[図:0001419354000004.jpg]
」
・「【0081】
【表3】
[図:0001419354000005.jpg]
」
・「【0084】
本発明の活性エネルギー線硬化性コーティング剤を用いた化粧シートは、有機溶媒を使用せずともマット調の低光沢性、塗工むらのない優れた印刷適性、及び耐セロテープ(登録商標)を兼備している。
また、アクリル樹脂ビーズを添加すれば、化粧シート表面の耐傷性を更に向上させる結果となった。」
イ 甲5に記載された発明
甲5に記載された事項を、特に実施例1ないし5、15、16、18及び19に関して整理すると、甲5には次の発明(以下、順に「甲5物発明」及び「甲5組成物発明」という。)が記載されていると認める。
<甲5物発明>
「実施例1ないし5、15、16、18及び19において得られた活性エネルギー線硬化性コーティング剤を用いた化粧シート。」(当審注:「実施例1ないし5、15、16、18及び19」については上記ア参照。)
<甲5組成物発明>
「甲5物発明に用いる活性エネルギー線硬化性コーティング剤。」
(5)甲6に記載された事項等
ア 甲6に記載された事項
甲6には、「積層体」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「【請求項1】
基材層と、前記基材層の一方の面上に設けられた、相分離による凹凸を有する凹凸層とを有し、
さらに、前記基材層と前記凹凸層との間に設けられたプライマー層、前記凹凸層の前記基材層側とは反対側の面上に設けられた表面機能層、及び前記基材層の前記凹凸層側とは反対側の面上に設けられた裏面機能層からなる群から選ばれる1つ以上の層を有する積層体。」
・「【請求項8】
前記凹凸層が、水酸基、アミノ基、アミド基、スルホニル基、リン酸エステル基、チオール基から選ばれる少なくとも1種の極性基を含有する化合物(X)と、前記極性基を含有しない化合物(Y)とを含む組成物の硬化物である、請求項1~7のいずれか1項に記載の積層体。」
・「【0007】
本発明によれば、艶消し性を有する積層体を提供することができる。」
・「【0037】
「凹凸層」
相分離による凹凸層2は、相溶性の異なる材料からなる組成が、塗布、乾燥、硬化の過程で相分離を起こし、それにより表面に凹凸形状を成すものである。相分離を起こす材料として、従来公知の材料を使うことができる。特にフィルムへのコーティングによる方法で形成しやすいことから極性の異なる材料同士からなる組成が好ましい。例えば、水酸基、アミノ基、アミド基、スルホニル基、リン酸エステル基、チオール基から選ばれる少なくとも1種の極性基を含有する化合物(X)と、それらの極性基を含有しない化合物(Y)の組み合わせが挙げられる。また、形成された凹凸形状を保持し各種の用途に用いるためには、ハードコート用の硬化性組成物であることが好ましい。」
・「【0046】
化合物(X)にアミド基を含有させるための(メタ)アクリルアミド系モノマーとしては、(メタ)アクリロイルモルホリン、ヒドロキシルメチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシルエチル(メタ)アクリルアミド 、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。導入のしやすさを考慮するとメタクリルアミドモノマーより、アクリルアミドモノマーの方が好ましい。また上記中でも重合体の安定性や極性の強さを考慮すると、特に(メタ)アクリロイルモルホリンが好ましく、アクリロイルモルホリンがさらに好ましい。また、これらの(メタ)アクリルアミド系モノマーは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。」
・「【0057】
水酸基、アミノ基、アミド基、スルホニル基、リン酸エステル基、チオール基を含有しない化合物(Y)としては、従来公知の各種の化合物を使用することができる。例えば、(メタ)アクリル系重合体や、各種の(メタ)アクリル系モノマーを使用することができる。」
・「【0060】
また、水酸基、アミノ基、アミド基、スルホニル基、リン酸エステル基、チオール基を含有しない(メタ)アクリル系モノマーとしては、従来公知の各種の材料を使用することができる。単官能化合物でも良いが、形成された凹凸層2の強度の観点から二官能以上の多官能(メタ)アクリレートであることが好ましく、特に三官能以上の多官能(メタ)アクリレートがより好ましい。また、極性が低い方が好ましいため、エチレンオキシド構造などエーテルなどの水素結合基が少ないもの、あるいはないものが好ましい。
【0061】
二官能(メタ)アクリレートとしては、例えば1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート等のビスフェノール変性ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ウレタンジ(メタ)アクリレート、エポキシジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0062】
三官能以上の多官能(メタ)アクリレートは特に限定されるものではないが、例えばジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート等のイソシアヌル酸変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー等のウレタンアクリレート等が挙げられる。これらの中でも特にジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが好ましい。」
・「【0166】
(11)艶消し性の評価方法
白色で直線状の蛍光灯を灯した室内に、積層体を設置し、蛍光灯と積層体の距離を2.5mに設定して目視外観にて凹凸層側の艶消し性(蛍光灯の映り込み)を評価した。評価A~Cにおいては艶消し性が確認できる判定である。
A:蛍光灯の反射像が強くぼやけており、蛍光灯の輪郭が確認できない。
B:蛍光灯の反射像がぼやけているが、うっすらと輪郭を確認することができる。
C:蛍光灯の反射像が少しぼやけており、輪郭を確認することもできるが、波打った形状で観察され、暗い白色に映る。
D:蛍光灯の反射像が鮮明ではっきりと輪郭を確認することができ、また直線状で白色に映る。」
・「【0174】
・アミド基および不飽和二重結合を含有する重合体:(A-2)
温度計、攪拌機及び還流冷却管を備えた2000mlのセパラブルフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル(360質量部)を加えた。一方、1000mlのメスシリンダーにグリシジルメタクリレート(180質量部)、アクリロイルモルホリン(180質量部)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(180質量部)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(1.8質量部)を加えてモノマー溶液を調製した。
その後、セパラブルフラスコの撹拌機を始動し、続いてセパラブルフラスコとメスシリンダーにはそれぞれ流量300ml/minにて1時間ほど窒素ガスを導入した。
次に、セパラブルフラスコをオイルバスに浸し、内温65℃まで加温した。次いで、セパラブルフラスコに、メスシリンダー内で調製したモノマー溶液をポンプにより送液し、2時間かけて滴下することで、ラジカル重合を行った。滴下完了後、さらに内温65℃にて2時間撹拌を続け、その後、さらに2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(0.9質量部)を加え3時間反応させた後、プロピレングリコールモノメチルエーテル(259質量部)、p-メトキシフェノール(1.6質量部)を加え100℃まで加熱した。
次に、アクリル酸(93質量部)、及びトリフェニルホスフィン(6.8質量部)を添加して、110℃で6時間反応させることで、アミド基と不飽和二重結合を有する、不飽和二重結合量(アクリロイル当量(アクリロイル基の導入量))2.8mmol/gの(メタ)アクリロイル共重合体(A-2)を得た。
得られた(メタ)アクリロイル共重合体(A-2)のSP値は19.1、アクリル酸の消費率は93%であった。この溶液(固形分30質量%)の25℃における粘度は1050mPa・s、重量平均分子量(Mw)は22500であった。
【0175】
・(メタ)アクリレート:(B-1)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(SP値:12.1)」
・「【0190】
[実施例1]
ポリエステル(A)、(B)、(C)をそれぞれ91質量%、3質量%、6質量%の割合で混合した原料を最外層(表層)の原料とし、ポリエステル(A)、(B)をそれぞれ97質量%、3質量%の割合で混合した原料を中間層の原料として、2台の押出機に各々を供給し、各々285℃で溶融した後、40℃に設定した冷却ロール上に、2種3層(表層/中間層/表層=1:8:1の吐出量)の層構成で共押出し冷却固化させて未延伸シートを得た。
次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で縦方向に3.1倍延伸した後、この縦延伸フィルムの片面に、下記表2に示す塗布液P1を塗布し、テンターに導き、95℃で10秒間乾燥させた後、横方向に120℃で4.2倍延伸し、230℃で10秒間熱処理を行った後、横方向に2%弛緩し、厚み(乾燥後)が0.1μmのプライマー層を有する厚み50μmのポリエステルフィルムを得た。
【0191】
得られたポリエステルフィルムのプライマー層上に、下記表1に示す塗布液S1を塗布し、70℃で1分間乾燥し、高圧水銀灯で250mJ/cm2の光を、塗布液S1からなる塗膜に照射し、その塗膜の成分を相分離させて厚み(乾燥後)が5μmの凹凸層を形成した。
【0192】
次いで、凹凸層の上に、下記表1に示す塗布液F1を塗布し、80℃で1分間乾燥し、高圧水銀灯で250mJ/cm2の光を、塗布液F1からなる塗膜に照射して厚み(乾燥後)が0.5μmの機能層を形成した。
【0193】
得られた積層体は艶消し性およびペン筆記性による防汚性試験で良好な結果であった。この積層体の特性を下記表3に示す。
【0194】
[実施例2~13]
実施例1において、塗布剤組成を表1および表2に示す塗布剤組成に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、積層体を得た。得られた積層体の特性を下記表3に示す。」
・「【0201】
【表1】
[図:0001419354000006.jpg]
【0202】
【表2】
[図:0001419354000007.jpg]
【0203】
【表3】
[図:0001419354000008.jpg]
」
イ 甲6に記載された発明
甲6に記載された事項を、特に実施例13に関して整理すると、甲6には次の発明(以下、順に「甲6物発明」及び「甲6組成物発明」という。)が記載されていると認める。
<甲6物発明>
「実施例13で使用される塗布液S3をポリエステルフィルムのプライマー層上に塗布し、光を照射して得た凹凸層。」(当審注:「実施例13」に関しては上記ア参照。)
<甲6組成物発明>
「甲6物発明に用いる塗布液S3。」
2 取消理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1物発明を対比する。
甲1物発明の認定の根拠である甲1の実施例1ないし4で使用された「重合体A-1」並びに実施例5及び6で使用された「重合体A-2」は、紫外線活性基を含むものであり、「4-メタクリロイルオキシベンゾフェノン」を含む単量体組成物を重合させたものであるから、ベンゾフェノン構造に由来する環状構造を有し、かつ、メタクリロイル基に由来する電離放射線硬化性官能基を有している。
したがって、甲1物発明は本件特許発明1における「環状構造を有する第1繰り返し単位」であって「前記第1繰り返し単位が、電離放射線硬化性官能基および前記環状構造を含む第1重合性化合物に由来する繰り返し単位」を有する。
また、甲1物発明の認定の根拠である実施例1ないし6は多官能(メタ)アクリレートである「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)」を使用するものであり、これは、ジペンタエリスリトール構造に由来するポリオキシアルキレン構造を有し、アクリレート基に由来する電離放射線硬化性官能基を有している。
したがって、甲1物発明は本件特許発明1における「ポリオキシアルキレン基を含む第2繰り返し単位」であって「前記第2繰り返し単位が、電離放射線硬化性官能基および前記ポリオキシアルキレン基を含む第2重合性化合物に由来する繰り返し単位」を有する。
そして、甲1物発明は、「重合体A-1」又は「重合体A-2」と「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)」とを含む重合性組成物をPETフィルム上に塗布し、重合・硬化させて表面層としたものであるから、甲1物発明における「塗布液をPETフィルムに塗布し、得られた塗膜を硬化させた硬化物」は本件特許発明1における「表面層を有するシート」に相当する。
甲1物発明の認定の根拠である甲1の実施例1ないし6の「平均長さRSm」は、甲1の【0046】の【表1】によると「50μm以下」であるから、甲1物発明は本件特許発明1における「前記表面層の一方の表面が、皺構造を有する表面形状を備え、
前記表面形状のJIS B0601:2013に規定されるRSm(曲線要素の平均長さ)が、50μm以下であり」という発明特定事項の条件を満たす。
甲1物発明の認定の根拠である甲1の実施例1ないし6の「最大高さRz」は、甲1の【0046】の【表1】によると「最小値」が「0.25μm」であり、「最大値」が「1.82μm」であるから、甲1物発明は本件特許発明1における「前記表面形状のJIS B0601:2013に規定されるRz(最大高さ)が、3μm以上であり」という発明特定事項の条件を満たさない。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「表面層を有するシートであって、
前記表面層の一方の表面が、皺構造を有する表面形状を備え、
前記表面形状のJIS B0601:2013に規定されるRSm(曲線要素の平均長さ)が、50μm以下であり、
前記表面層が、環状構造を含む第1繰り返し単位と、ポリオキシアルキレン基を含む第2繰り返し単位とを有する重合体を含有する、シートであって、
前記第1繰り返し単位が、電離放射線硬化性官能基および前記環状構造を含む第1重合性化合物に由来する繰り返し単位であり、
前記第2繰り返し単位が、電離放射線硬化性官能基および前記ポリオキシアルキレン基を含む第2重合性化合物に由来する繰り返し単位である、シート。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点1>
本件特許発明1においては「前記表面形状のJIS B0601:2013に規定されるRz(最大高さ)が、3μm以上であり」と特定されているのに対し、甲1物発明においては「最大高さRz」の「最小値」が「0.25μm」であり、「最大値」が「1.82μm」であり、「前記表面形状のJIS B0601:2013に規定されるRz(最大高さ)が、3μm以上であり」という条件を満たさない点。
イ 判断
したがって、本件特許発明1は甲1物発明であるとはいえない。
また、甲1の【0007】には、甲1物発明における「最大高さRz」について、「0.02μm以上5μm以下が好ましく、より好ましくは0.2μm以上4μm以下、さらに好ましくは0.5μm以上3μm以下である。」と記載されており、既に「さらに好ましくは0.5μm以上3μm以下である。」とされている「3μm以下」の数値範囲にある甲1物発明における「最大高さRz」を「さらに好ましくは」とはされていない方に大きい値として、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けは甲1にはないし、他の証拠にもそうする動機付けとなる記載はない。
したがって、本件特許発明1は甲1物発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(2)本件特許発明3及び7ないし9について
本件特許発明3及び7ないし9は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1物発明であるとはいえないし、甲1物発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明10ないし12について
本件特許発明10ないし12は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1が甲1物発明であるとはいえず、甲1物発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない以上、本件特許発明10ないし12は甲1に記載された発明であるとはいえないし、甲1に記載された発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4)本件特許発明13について
本件特許発明13と甲1組成物発明を対比する。
両者の間には、本件特許発明1と甲1物発明の間と同様の相当関係が成り立つ。
したがって、両者の間には、相違点1と同様の相違点がある。
よって、本件特許発明13は甲1組成物発明であるとはいえない。
また、本件特許発明13は甲1組成物発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(5)本件特許発明15について
本件特許発明15は、請求項13の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明13の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明13と同様に、甲1組成物発明であるとはいえないし、甲1組成物発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(6)取消理由1についてのむすび
したがって、本件特許発明1、3、7ないし13及び15は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえない。
よって、本件特許の請求項1、3、7ないし13及び15に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当しないので、取消理由1によっては取り消すことができない。
3 取消理由2(甲3に基づく新規性・進歩性)について
(1)本件特許発明13について
ア 対比
本件特許発明13と甲3組成物発明を対比する。
甲3組成物発明の認定の根拠である甲3の実施例1ないし4で使用された「樹脂A」は、「ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体により形成されたイソシアヌレート骨格を有する脂肪族ウレタンアクリレート」であり、イソシアヌレート骨格に由来する環状構造を有すると共にアクリレート基、すなわち電離放射線硬化性官能基を有するから、甲3組成物発明は本件特許発明13における「環状構造を含む第1重合性化合物」であって「前記第1重合性化合物が、電離放射線硬化性官能基および前記環状構造を含」む「化合物」を有する。
甲3組成物発明の認定の根拠である甲3の実施例1ないし4で使用された「樹脂B」は、「水素添加ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート(水添MDI)のPG変性ジアクリレート(イソシアヌレート骨格を有さない)」であり、PG変性に由来するポリオキシプロピレン構造を有すると共にアクリレート基、すなわち電離放射線硬化性官能基を有するから、甲3組成物発明は本件特許発明13における「ポリオキシアルキレン基を含む第2重合性化合物」であって「前記第2重合性化合物が、電離放射線硬化性官能基および前記ポリオキシアルキレン基を含む」「化合物」を有する。
甲3組成物発明の認定の根拠である甲3の実施例1ないし4は、これらの樹脂A及び樹脂Bを含む第1表面保護層形成用コーティング剤をプライマー処理等した基材上にグラビアコートし、電離線照射で硬化させて表面層とするものであるから、その表面形状は皺構造を有しているといえる。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「皺構造を有する表面形状を備える表面層に用いられる硬化性組成物であって、
環状構造を含む第1重合性化合物と、ポリオキシアルキレン基を含む第2重合性化合物とを含有する、硬化性組成物であって、
前記第1重合性化合物が、電離放射線硬化性官能基および前記環状構造を含み、前記第2重合性化合物が、電離放射線硬化性官能基および前記ポリオキシアルキレン基を含む、硬化性組成物。」
そして、両者は次の点で一応相違する。
<相違点3>
本件特許発明13においては「請求項1~4、7~9のいずれかの請求項に記載のシートにおける前記表面層に用いられる硬化性組成物」と特定されているのに対し、甲3組成物発明においてはそのようには特定されていない点。なお、「請求項1~4、7~9のいずれかの請求項に記載のシートにおける前記表面層」は「前記表面形状のJIS B0601:2013に規定されるRSm(曲線要素の平均長さ)が、50μm以下であり、
前記表面形状のJIS B0601:2013に規定されるRz(最大高さ)が、3μm以上であり」という条件を満たすものである。
イ 判断
甲3には、甲3組成物発明で形成した「第1表面保護層1」の「表面形状のJIS B0601:2013に規定されるRSm(曲線要素の平均長さ)」及び「JIS B0601:2013に規定されるRz(最大高さ)」について記載も示唆もされておらず、「第1表面保護層1」を形成する際の条件も本件特許の発明の詳細な説明に記載された実施例の条件と異なるから、甲3組成物発明で形成した「第1表面保護層1」が「表面形状のJIS B0601:2013に規定されるRSm(曲線要素の平均長さ)が、50μm以下であり、JIS B0601:2013に規定されるRz(最大高さ)が、3μm以上であり」という条件を満たす蓋然性が高いとはいえない。
そうすると、相違点3は実質的な相違点である。
したがって、本件特許発明13は甲3組成物発明であるとはいえない。
また、甲3には、甲3組成物発明を、本件特許の請求項1ないし4及び7ないし9のいずれかの請求項に記載された特定の数値範囲(JIS B0601:2013に規定されるRSm(曲線要素の平均長さ)が、50μm以下)のRSm及び特定の数値範囲(JIS B0601:2013に規定されるRz(最大高さ)が、3μm以上)のRzを有するシートに用いるようにして、相違点3に係る本件特許発明13の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。
したがって、本件特許発明13は甲3組成物発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(2)本件特許発明14及び15について
本件特許発明14及び15は、請求項13の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明13の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明13と同様に、甲3組成物発明であるとはいえないし、甲3組成物発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)取消理由2についてのむすび
したがって、本件特許発明13ないし15は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえない。
よって、本件特許の請求項13ないし15に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当しないので、取消理由2によっては取り消すことができない。
4 取消理由3(甲4に基づく新規性・進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲4物発明を対比する。
甲4物発明の認定の根拠である甲4の実施例2で使用された「合成例2」並びに実施例3で使用された「合成例3」及び「合成例4」は、「イソシアヌレート環」及び「アクリレート基」を有する組成物であるから、甲4物発明は、本件特許発明1における「環状構造を有する第1繰り返し単位」であって「前記第1繰り返し単位が、電離放射線硬化性官能基および前記環状構造を含む第1重合性化合物に由来する繰り返し単位」を有する。
甲4物発明の認定の根拠である甲4の実施例2及び3は「トリエチレングリコールジアクリレート」を使用するものであるから、甲4物発明は本件特許発明1における「ポリオキシアルキレン基を含む第2繰り返し単位」であって「前記第2繰り返し単位が、電離放射線硬化性官能基および前記ポリオキシアルキレン基を含む第2重合性化合物に由来する繰り返し単位」を有する。
甲4物発明における「トリアセチルセルロースフィルムに塗工し、次いで硬化して得た防眩フィルム」は本件特許発明1における「表面層を有するシート」に相当する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「表面層を有するシートであって、
前記表面層の一方の表面が、皺構造を有する表面形状を備え、
前記表面層が、環状構造を含む第1繰り返し単位と、ポリオキシアルキレン基を含む第2繰り返し単位とを有する重合体を含有する、シートであって、
前記第1繰り返し単位が、電離放射線硬化性官能基および前記環状構造を含む第1重合性化合物に由来する繰り返し単位であり、
前記第2繰り返し単位が、電離放射線硬化性官能基および前記ポリオキシアルキレン基を含む第2重合性化合物に由来する繰り返し単位である、シート。」
そして、両者は次の点で一応相違する。
<相違点4>
本件特許発明1においては「前記表面形状のJIS B0601:2013に規定されるRSm(曲線要素の平均長さ)が、50μm以下であり、
前記表面形状のJIS B0601:2013に規定されるRz(最大高さ)が、3μm以上であり」と特定されているのに対し、甲4物発明においてはそのようには特定されていない点。
イ 判断
甲4には、甲4物発明における「防眩フィルム」の「表面形状のJIS B0601:2013に規定されるRSm(曲線要素の平均長さ)」及び「JIS B0601:2013に規定されるRz(最大高さ)」について記載も示唆もされておらず、「防眩フィルム」を得る際の条件も本件特許の発明の詳細な説明に記載された実施例の条件と異なるから、甲4物発明における「防眩フィルム」が「表面形状のJIS B0601:2013に規定されるRSm(曲線要素の平均長さ)が、50μm以下であり、JIS B0601:2013に規定されるRz(最大高さ)が、3μm以上であり」という条件を満たす蓋然性が高いとはいえない。
そうすると、相違点4は実質的な相違点である。
したがって、本件特許発明1は甲4物発明であるとはいえない。
また、甲4には、甲4物発明において、相違点4に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。
したがって、本件特許発明1は甲4物発明並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(2)本件特許発明2、3及び7ないし9について
本件特許発明2、3及び7ないし9は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲4物発明であるとはいえないし、甲4物発明並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明10ないし12について
本件特許発明10ないし12は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1が甲4物発明であるとはいえず、甲4物発明並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない以上、本件特許発明10ないし12は甲4に記載された発明であるとはいえないし、甲4に記載された発明並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4)本件特許発明13について
本件特許発明13と甲4組成物発明を対比する。
両者の間には、本件特許発明1と甲4物発明の間と同様の相当関係が成り立つ。
したがって、両者の間には、相違点4と同様の相違点がある。
よって、本件特許発明13は甲4組成物発明であるとはいえない。
また、本件特許発明13は甲4組成物発明並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(5)本件特許発明14及び15について
本件特許発明14及び15は、請求項13の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明13の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明13と同様に、甲4組成物発明であるとはいえないし、甲4組成物発明並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(6)取消理由3についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし3及び7ないし15は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえない。
よって、本件特許の請求項1ないし3及び7ないし15に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当しないので、取消理由3によっては取り消すことができない。
5 取消理由4(甲5に基づく新規性・進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲5物発明を対比する。
甲5物発明の認定の根拠である甲5の実施例1ないし5、15、16、18及び19で使用された「ジシクロヘキシルメタン4,4'-ジイソシアナートと水酸基含有(メタ)アクリレートとの反応生成物であるウレタン(メタ)アクリレート」は、シクロヘキサン環を含む(メタ)アクリレートであるから、甲5物発明は本件特許発明1における「環状構造を有する第1繰り返し単位」であって「前記第1繰り返し単位が、電離放射線硬化性官能基および前記環状構造を含む第1重合性化合物に由来する繰り返し単位」を有する。
甲5物発明の認定の根拠である甲5の実施例1ないし5、15、16、18及び19で使用された「α-アクリロイル-ω -(3,6-ジオキサオクタン-1-イルオキシ)ポリ(オキシエチレンカルボニル)」、「ヘキサンジオールエチレンオキサイド変性ジアクリレートMiramer M202(MIWON社製)」、「トリプロピレングリコールジアクリレートMiramer M220(MIWON社製)」、「トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリアクリレート、MIWON社製M3130」及び「ジペンタエリスリトールペンタアクリレート混合物(DPHA)Miramer M600(MIWON社製)」はいずれもポリオキシアルキレン基を含むアクリレートであるから、甲5物発明は本件特許発明1における「ポリオキシアルキレン基を含む第2繰り返し単位」であって「前記第2繰り返し単位が、電離放射線硬化性官能基および前記ポリオキシアルキレン基を含む第2重合性化合物に由来する繰り返し単位」を有する。
甲5物発明における「活性エネルギー線硬化性コーティング剤を用いた化粧シート」は本件特許発明1における「表面層を有するシート」に相当する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「表面層を有するシートであって、
前記表面層の一方の表面が、皺構造を有する表面形状を備え、
前記表面層が、環状構造を含む第1繰り返し単位と、ポリオキシアルキレン基を含む第2繰り返し単位とを有する重合体を含有する、シートであって、
前記第1繰り返し単位が、電離放射線硬化性官能基および前記環状構造を含む第1重合性化合物に由来する繰り返し単位であり、
前記第2繰り返し単位が、電離放射線硬化性官能基および前記ポリオキシアルキレン基を含む第2重合性化合物に由来する繰り返し単位である、シート。」
そして、両者は次の点で一応相違する。
<相違点5>
本件特許発明1においては「前記表面形状のJIS B0601:2013に規定されるRSm(曲線要素の平均長さ)が、50μm以下であり、
前記表面形状のJIS B0601:2013に規定されるRz(最大高さ)が、3μm以上であり」と特定されているのに対し、甲5物発明においてはそのようには特定されていない点。
イ 判断
甲5には、甲5物発明における「化粧シート」の「表面形状のJIS B0601:2013に規定されるRSm(曲線要素の平均長さ)」及び「JIS B0601:2013に規定されるRz(最大高さ)」について記載も示唆もされておらず、「化粧シート」を得る際の条件も本件特許の発明の詳細な説明に記載された実施例の条件と異なるから、甲5物発明における「化粧シート」が「表面形状のJIS B0601:2013に規定されるRSm(曲線要素の平均長さ)が、50μm以下であり、JIS B0601:2013に規定されるRz(最大高さ)が、3μm以上であり」という条件を満たす蓋然性が高いとはいえない。
そうすると、相違点5は実質的な相違点である。
したがって、本件特許発明1は甲5物発明であるとはいえない。
また、甲5には、甲5物発明において、相違点5に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。
したがって、本件特許発明1は甲5物発明並びに甲5及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(2)本件特許発明2、3及び7ないし9について
本件特許発明2、3及び7ないし9は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲5物発明であるとはいえないし、甲5物発明並びに甲5及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明10ないし12について
本件特許発明10ないし12は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1が甲5物発明であるとはいえず、甲5物発明並びに甲5及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない以上、本件特許発明10ないし12は甲5に記載された発明であるとはいえないし、甲5に記載された発明並びに甲5及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4)本件特許発明13について
本件特許発明13と甲5組成物発明を対比する。
両者の間には、本件特許発明1と甲5物発明の間と同様の相当関係が成り立つ。
したがって、両者の間には、相違点5と同様の相違点がある。
よって、本件特許発明13は甲5組成物発明であるとはいえない。
また、本件特許発明13は甲5組成物発明並びに甲5及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(5)本件特許発明14及び15について
本件特許発明14及び15は、請求項13の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明13の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明13と同様に、甲5組成物発明であるとはいえないし、甲5組成物発明並びに甲5及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(6)取消理由4についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし3及び7ないし15は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえない。
よって、本件特許の請求項1ないし3及び7ないし15に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当しないので、取消理由4によっては取り消すことができない。
6 取消理由5(甲6に基づく新規性・進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲6物発明を対比する。
甲6物発明の認定の根拠である甲6の実施例13で使用された「アミド基および不飽和二重結合を含有する重合体:(A-2)」は、アクリロイルモルホリンを有する(メタ)アクリレート共重合体であるから、甲6物発明は本件特許発明1における「環状構造を有する第1繰り返し単位」であって「前記第1繰り返し単位が、電離放射線硬化性官能基および前記環状構造を含む第1重合性化合物に由来する繰り返し単位」を有する。
甲6物発明の認定の根拠である甲6の実施例13で使用された「(メタ)アクリレート:(B-1)」は、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートであるから、甲6物発明は本件特許発明1における「ポリオキシアルキレン基を含む第2繰り返し単位」であって「前記第2繰り返し単位が、電離放射線硬化性官能基および前記ポリオキシアルキレン基を含む第2重合性化合物に由来する繰り返し単位」を有する。
甲6物発明における「塗布液S3をポリエステルフィルムのプライマー層上に塗布し、光を照射して得た凹凸層」は本件特許発明1における「表面層を有するシート」に相当する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「表面層を有するシートであって、
前記表面層の一方の表面が、皺構造を有する表面形状を備え、
前記表面層が、環状構造を含む第1繰り返し単位と、ポリオキシアルキレン基を含む第2繰り返し単位とを有する重合体を含有する、シートであって、
前記第1繰り返し単位が、電離放射線硬化性官能基および前記環状構造を含む第1重合性化合物に由来する繰り返し単位であり、
前記第2繰り返し単位が、電離放射線硬化性官能基および前記ポリオキシアルキレン基を含む第2重合性化合物に由来する繰り返し単位である、シート。」
そして、両者は次の点で一応相違する。
<相違点6>
本件特許発明1においては「前記表面形状のJIS B0601:2013に規定されるRSm(曲線要素の平均長さ)が、50μm以下であり、
前記表面形状のJIS B0601:2013に規定されるRz(最大高さ)が、3μm以上であり」と特定されているのに対し、甲6物発明においてはそのようには特定されていない点。
イ 判断
甲6には、甲6物発明における「凹凸層」の「表面形状のJIS B0601:2013に規定されるRSm(曲線要素の平均長さ)」及び「JIS B0601:2013に規定されるRz(最大高さ)」について記載も示唆もされておらず、「凹凸層」を得る際の条件も本件特許の発明の詳細な説明に記載された実施例の条件と異なるから、甲6物発明における「凹凸層」が「表面形状のJIS B0601:2013に規定されるRSm(曲線要素の平均長さ)が、50μm以下であり、JIS B0601:2013に規定されるRz(最大高さ)が、3μm以上であり」という条件を満たす蓋然性が高いとはいえない。
そうすると、相違点6は実質的な相違点である。
したがって、本件特許発明1は甲6物発明であるとはいえない。
また、甲6には、甲6物発明において、相違点6に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することの動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。
したがって、本件特許発明1は甲6物発明並びに甲6及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(2)本件特許発明3及び7ないし9について
本件特許発明3及び7ないし9は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲6物発明であるとはいえないし、甲6物発明並びに甲6及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明4について
本件特許発明4は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲6物発明並びに甲6及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件特許発明10ないし12について
本件特許発明10ないし12は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1が甲6物発明であるとはいえず、甲6物発明並びに甲6及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない以上、本件特許発明10ないし12は甲6に記載された発明であるとはいえないし、甲6に記載された発明並びに甲6及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(5)本件特許発明13について
本件特許発明13と甲6組成物発明を対比する。
両者の間には、本件特許発明1と甲6物発明の間と同様の相当関係が成り立つ。
したがって、両者の間には、相違点6と同様の相違点がある。
よって、本件特許発明13は甲6組成物発明であるとはいえない。
また、本件特許発明13は甲6組成物発明並びに甲6及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(6)本件特許発明14及び15について
本件特許発明14及び15は、請求項13の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明13の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明13と同様に、甲6組成物発明であるとはいえないし、甲6組成物発明並びに甲6及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(7)本件特許発明16について
本件特許発明16は、請求項13の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明13の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明13と同様に、甲6組成物発明並びに甲6及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(8)取消理由5についてのむすび
したがって、本件特許発明1、3及び7ないし15は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、本件特許発明1、3、4及び7ないし16は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえない。
よって、本件特許の請求項1、3、4及び7ないし16に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当しないので、取消理由5によっては取り消すことができない。
7 取消理由6(明確性要件)について
(1)明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
そこで、検討する。
(2)明確性要件の判断
取消理由6は、本件訂正前の請求項5及び17に記載された「皺形成安定剤」という用語で特定される物質の範囲が明確に定義されていないことに起因する明確性要件違反であるところ、本件訂正により請求項5及び17が削除された。
また、本件特許の請求項7ないし12の記載はそれ自体不明確な記載はなく、発明の詳細な説明の記載とも整合する。
したがって、本件特許の請求項7ないし12に関して、特許請求の範囲の記載は、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
(3)取消理由6についてのむすび
したがって、本件特許の請求項7ないし12に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえず、同法第113条第4号に該当しないので、取消理由6によっては取り消すことはできない。
第7 取消理由に採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由についての当審の判断
取消理由に採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由は次のとおりである。
・申立理由2(甲2に基づく新規性・進歩性)
・申立理由3(甲3に基づく新規性・進歩性)のうち請求項1ないし3及び7ないし12に対する新規性・進歩性
・申立理由6(甲6に基づく新規性・進歩性)のうち請求項4に対する新規性
・申立理由8(実施可能要件)
・申立理由9(サポート要件)
以下、順に検討する。なお、本件訂正により、本件特許の請求項5、6及び17が削除され、本件特許の請求項5、6及び17に対する申立理由はその対象がなくなったので、本件特許の請求項1ないし4及び7ないし16について検討する。
1 申立理由2(甲2に基づく新規性・進歩性)について
(1)甲2に記載された事項等
ア 甲2に記載された事項
甲2には、「偏光板、及び液晶表示装置」に関しておおむね次の事項が記載されている。
・「[0004] また近年、ハードコートフィルムは、より高いコントラストや視認性(クリア性)の点から、表面に反射した像の輪郭をぼかす防眩処理タイプよりもクリアタイプのものが求められている。」
・「[0010] 本発明の目的は、高温高湿条件下での部分的な変形故障の発生抑制と視認性(クリア性)の両立を図った偏光板、及びそれを用いた液晶表示装置を提供することにある。」
・「[0029] また、輪郭曲線要素の平均長さRSmも算術平均粗さRaと同様に、JIS B0601:2001の規定に基づいて、光学干渉式表面粗さ計(RST/PLUS、WYKO社製)で測定した値である。RSmは3~80μmが好ましく、より好ましくは5~70μmである。上記のように測定した算術平均粗さRaと輪郭曲線要素の平均長さRSmの比(Ra/RSm)を3×10-4~2×10-3の範囲にコントロールすることで、視認性(クリア性)に優れ、かつ耐久試験後の部分的な変形故障の発生抑制にも良好に効果を発揮する。
[0030] 本発明に係るハードコート層は、上記範囲の算術平均粗さRa(以下、単にRaとも言う)とするため、ハードコート層に突起形状を有する事が好ましい。突起形状の高さは、1nm~1μm、好ましくは10nm~0.5μmである。」
・「[0041] <ハードコートフィルム>
本発明に係るハードコートフィルムは、少なくとも基材フィルムとハードコート層によって構成されており、該ハードコート層は活性線硬化樹脂を含有し、紫外線や電子線のような活性線(活性エネルギー線ともいう)照射により、架橋反応を経て硬化する樹脂を主たる成分とする層であることが好ましい。」
・「[0259] 実施例3
ハードコートフィルム1の作製において、ハードコート層塗布組成物1に単官能アクリレートを、多官能アクリレート(ペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート)に対して、アクリレートの総量が100質量部となるように、種類及び添加量を表3に記載したように変化させて加えた以外は、同様にしてハードコートフィルム13~23を作製した。これら作製したハードコートフィルム13~23を用いて、偏光板113~123、及び液晶表示装置413~423を作製した。
[0260] なお、表3の記載において、多官能アクリレートであるペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレートはPETA。単官能アクリレートである2-ヒドロキシプロピルアクリレート(大阪有機化学社製)はHPA、ベンジルアクリレート(大阪有機化学社製)はBZA、テトラヒドロフルフリルアクリレート(大阪有機化学社製)はTHFAと示した。」
・「[0262]
[表3]
[図:0001419354000009.jpg]
」
イ 甲2に記載された発明
甲2に記載された事項を、特に実施例3に関して整理すると、甲2には、次の発明(以下、順に「甲2物発明」及び「甲2組成物発明」という。)
<甲2物発明>
「単官能アクリレートを、多官能アクリレート(ペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート)に対して、アクリレートの総量が100質量部となるように、種類及び添加量を表3に記載したように変化させて加えて作成したハードコート層塗布組成物1を用いたハードコートフィルム13~23。」(当審注:「表3」については上記ア参照。)
<甲2組成物発明>
「甲2物発明に用いるハードコート層塗布組成物1。」
(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲2物発明を対比する。
両者は少なくとも次の点で一応相違する。
<相違点2-1>
本件特許発明1においては「ポリオキシアルキレン基を含む第2重合性化合物とを含有する」と特定されているのに対し、甲2物発明においてはそのようには特定されていない点(「多官能アクリレート(ペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート)」は「ポリオキシアルキレン基を含む」「重合性化合物」とはいえない。)。
<相違点2-2>
本件特許発明1においては「前記表面形状のJIS B0601:2013に規定されるRz(最大高さ)が、3μm以上である」と特定されているのに対し、甲2物発明においてはそのようには特定されていない点。
イ 判断
相違点2-1及び2-2はいずれも実質的な相違点である。
したがって、本件特許発明1は甲2物発明であるとはいえない。
また、甲2には、甲2物発明における「多官能アクリレート(ペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート)」を「ポリオキシアルキレン基を含む」「多官能アクリレート」として、相違点2-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を想到する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもそうする動機付けとなる記載はない。
さらに、甲2の[0004]の「防眩処理タイプよりもクリアタイプのものが求められている。」、[0010]の「本発明の目的は、高温高湿条件下での部分的な変形故障の発生抑制と視認性(クリア性)の両立を図った偏光板、及びそれを用いた液晶表示装置を提供することにある。」及び同[0020]の「突起形状の高さは、1nm~1μm、好ましくは10nm~0.5μmである。」という記載を考慮すると、甲2物発明において、相違点2-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けがあるとはいえないし、他の証拠にそうする動機付けとなる記載もない。
よって、本件特許発明1は甲2物発明であるとはいえないし、甲2物発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明2及び7ないし9について
本件特許発明2及び7ないし9は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲2物発明であるとはいえないし、甲2物発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4)本件特許発明10ないし12について
本件特許発明10ないし12は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1が甲2物発明であるとはいえず、甲2物発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない以上、本件特許発明10ないし12は甲2に記載された発明であるとはいえないし、甲2に記載された発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(5)本件特許発明13について
本件特許発明13と甲2組成物発明を対比する。
両者の間には、少なくとも相違点2-1及び2-2と同様の相違点がある。
よって、本件特許発明13は甲2組成物発明であるとはいえない。
また、本件特許発明13は甲2組成物発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(6)本件特許発明14について
本件特許発明14は、請求項13の記載を引用して特定するものであり、本件特許発明13の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明13と同様に、甲2組成物発明であるとはいえないし、甲2組成物発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(7)申立理由2についてのむすび
したがって、本件特許発明1、2及び7ないし14は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえない。
よって、本件特許の請求項1、2及び7ないし14に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当しないので、申立理由2によっては取り消すことができない。
2 申立理由3(甲3に基づく新規性・進歩性)のうち請求項1ないし3、7ないし12に対する新規性・進歩性について
(1)甲3物発明
甲3物発明は上記第6 1(2)イのとおりである。
(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲3物発明を対比する。
両者の間には、本件特許発明13と甲3組成物発明の間と同様の相当関係が成り立つ。
したがって、両者の間には、相違点3と同様の相違点がある。
イ 判断
したがって、本件特許発明1は甲3物発明であるとはいえない。
また、本件特許発明1は甲3物発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明2、3及び7ないし9について
本件特許発明2、3及び7ないし9は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲3物発明であるとはいえないし、甲3物発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4)本件特許発明10ないし12について
本件特許発明10ないし12は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1が甲3物発明であるとはいえず、甲3物発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない以上、本件特許発明10ないし12は甲3に記載された発明であるとはいえないし、甲3に記載された発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(5)申立理由3のうち請求項1ないし3及び7ないし12に対する新規性・進歩性についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし3及び7ないし12は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえない。
よって、本件特許の請求項1ないし3及び7ないし12に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当しないので、申立理由3のうち請求項1ないし3及び7ないし12に対する新規性・進歩性によっては取り消すことができない。
3 申立理由6(甲6に基づく新規性・進歩性)のうち請求項4に対する新規性について
(1)甲6物発明
甲6物発明は上記第6 1(5)イのとおりである。
(2)対比・判断
本件特許発明4は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲6物発明であるとはいえない。
(3)申立理由6のうち請求項4に対する新規性についてのむすび
したがって、本件特許発明4は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえない。
よって、本件特許の請求項4に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当しないので、申立理由6のうち請求項4に対する新規性によっては取り消すことができない。
4 申立理由8(実施可能要件)について
(1)実施可能要件の判断基準
上記第3のとおり、本件特許発明1ないし4及び7ないし16は物の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用をすることができる程度の記載があることを要する。
そこで、検討する。
(2)実施可能要件の判断
本件特許の発明の詳細な説明(以下、「発明の詳細な説明」という。)には、本件特許発明1ないし4及び7ないし16の各発明特定事項について、その技術的意義を含め具体的に記載されている。
すなわち、発明の詳細な説明の【0021】には「本開示におけるシートは、表面層を有するシートであって、上記表面層の一方の表面が、皺構造を有する表面形状を備え、上記表面形状のJIS B0601:2013に規定される輪郭曲線の横方向のパラメータであるRSm(曲線要素の平均長さ)が、50μm以下であり、上記表面層が、環状構造を含む第1繰り返し単位と、ポリオキシアルキレン基を含む第2繰り返し単位とを有する重合体を含有する。」、同【0022】には「図1は、本開示におけるシートを例示する概略断面図である。図2は、本開示におけるシートの表面層表面の顕微鏡画像である。図1に示すシート10は、表面層1を有しており、表面層1の一方の表面S1は、皺構造を有する表面形状を備える。さらに、表面層1は、環状構造を含む第1繰り返し単位と、ポリオキシアルキレン基を含む第2繰り返し単位とを有する重合体を含有する。」、同【0023】には「本開示におけるシートによれば、表面層が一方の表面に皺構造を有するため、表面層と空気との屈折率差界面での光拡散効果により、光反射を抑制することができる。これにより、艶消し効果が発現する。」、同【0024】には「また、RSm(曲線要素の平均長さ)は、輪郭曲線の横方向のパラメータであり、基準長さにおける輪郭曲線要素の長さの平均である。Rsmが小さいほど、基準長さに含まれる凸部が多くなる。本開示におけるシートによれば、RSmが所定の値以下であるため、凸部が密に存在する。そのため、艶消し効果を向上させることができる。」、同【0025】には「ここで、後述するように、硬化性組成物を硬化させて表面層を形成する際に、硬化性組成物に短波長の紫外線による照射処理を行うと、紫外線のエネルギーが表面部分のみに浸透し、それより下層にはエネルギーが到達しないことにより、表面部分だけが硬化をはじめる。よって、表面だけが硬化収縮を生じることで、皺構造が形成するものと考えられる。表面層に含有される重合体が、ポリオキシアルキレン基を含む第2繰り返し単位を有する場合には、ポリオキシアルキレン基によって、柔軟な部分が導入される。そのため、表面部分だけの硬化収縮が十分に進行すると推量される。よって、本開示におけるシートによれば、表面層に含有される重合体が、柔軟なポリオキシアルキレン基を含む第2繰り返し単位を有することにより、皺の形成を安定させ、艶消し効果を向上させることができる。」、同【0026】には「また、本開示におけるシートによれば、表面層に含有される重合体が、剛直な環状構造を含む第1繰り返し単位を有するため、表面層の硬度や強度を高めることができる。さらに、表面層に含有される重合体が、ポリオキシアルキレン基を含む第2繰り返し単位を有することにより、硬化性組成物を硬化させて表面層を形成する際に、酸素による硬化阻害を抑制できる。ポリオキシアルキレン基では水素原子が引き抜かれやすいことから、パーオキシラジカルが生成しても、水素原子を与えてラジカルを生成しやすい。そのため、酸素による硬化阻害を抑制できる。よって、表面層の表面硬度を高めることができる。したがって、表面層が、環状構造を含む第1繰り返し単位と、ポリオキシアルキレン基を含む第2繰り返し単位とを有する重合体を含有することにより、表面層の耐傷性を向上させることができる。そのため、多官能の重合性化合物の量を多くしたり、多官能の官能基数を多くしたりしなくとも、優れた耐傷性を得ることができる。」、同【0027】には「このように本開示におけるシートによれば、艶消し性および耐傷性を両立することが可能である。また、本開示においては、艶消し効果が発現するので、低艶感が得られ、シートに意匠性を付与できるだけでなく、防眩性も得ることができる。」、同【0061】には「表面性状として、JIS B0601:2013に規定されるRz(最大高さ)は、10μm以下であることが好ましい。Rz(最大高さ)は、輪郭曲線の山及び高さパラメータの一つであり、基準長さにおける輪郭曲線の中で、最も高い山の高さと最も深い谷の深さとの和である。Rz(最大高さ)の数値が大きいほど、谷(凹部)からみて形状が大きい(高い)凸部が存在し、そのような凸部が多く存在する傾向があることを示す指標となる。よって、Rz(最大高さ)が上記範囲であると、凸部の高さのバラツキも少なくなり、均一な艶消し効果が発現する。」及び同【0062】には「Rz(最大高さ)は、より好ましくは8μm以下、さらに好ましくは7μm以下である。Rz(最大高さ)の下限は、艶消し効果を発現させるため、好ましくは3μm以上、より好ましくは3.2μm以上、さらに好ましくは3.5μm以上である。」と記載されている。
発明の詳細な説明の【0074】ないし【0157】には、硬化性組成物の材料について具体的に記載されている。
発明の詳細な説明の【0185】ないし【0210】には、表面層の形成方法について具体的に記載されている。
発明の詳細な説明の【0211】ないし【0245】及び【0247】ないし【0285】には、シートの表面層以外の他の層について具体的に記載されている。
発明の詳細な説明の【0246】及び【0286】には、シートの用途について具体的に記載されている。
発明の詳細な説明の【0287】ないし【0312】には、シートを用いた物品、シートを用いた化粧シート及びシートを用いた化粧材について具体的に記載されている。
発明の詳細な説明の【0313】ないし【0330】には、硬化性組成物について具体的に記載されている。
発明の詳細な説明の【0332】ないし【0348】には、実施例について、具体的に記載されている。
したがって、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1ないし4及び7ないし16を生産し、使用をすることができる程度の記載があるといえる。
よって、本件特許発明1ないし4及び7ないし16に関して、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を充足する。
(3)特許異議申立人の申立理由8における主張について
特許異議申立人の申立理由8における主張(上記第4 8参照。)について検討する。
本件特許発明の課題解決の評価基準と甲1又は2に記載された発明の課題解決の評価基準は異なることから、仮に、本件特許発明1に含まれるシートが甲1又は2に記載された発明における発明の課題が解決できなかったとしても、本件特許発明1が本件特許発明1の発明の課題を解決できないことの証拠にはならない。
そして、上記(2)のとおり、発明の詳細な説明には、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1ないし4及び7ないし16を生産し、使用をすることができる程度の記載があるといえる。
したがって、特許異議申立人の申立理由8における主張は採用できない。
(4)申立理由8についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1ないし4及び7ないし16に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由8によっては取り消すことはできない。
5 申立理由9(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、検討する。
(2)サポート要件の判断
ア 特許請求の範囲の記載
本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。
イ 発明の課題
発明の詳細な説明の【0001】ないし【0009】によると、本件特許発明1ないし4及び7ないし9の解決しようとする課題は「艶消し性および耐傷性の両立が可能なシート」を提供することであり、本件特許発明10の解決しようとする課題は「該シートを有する物品」を提供することであり、本件特許発明11の解決しようとする課題は「該シートを有する化粧シート」を提供することであり、本件特許発明12の解決しようとする課題は「該シートを有する化粧材」を提供することであり、本件特許発明13ないし16の解決しようとする課題は「該シートにおける表面層に用いられる硬化性組成物」を提供することである(以下、総称して「発明の課題」という。)。
ウ 判断
上記4(2)のとおり、発明の詳細な説明には、本件特許発明1ないし4及び7ないし16の各発明特定事項について、その技術的意義を含め具体的に記載されている。
また、発明の詳細な説明の【0332】ないし【0348】において、「表面層を有するシートであって、前記表面層の一方の表面が、皺構造を有する表面形状を備え、前記表面形状のJIS B0601:2013に規定されるRSm(曲線要素の平均長さ)が、50μm以下であり、前記表面層が、環状構造を含む第1繰り返し単位と、ポリオキシアルキレン基を含む第2繰り返し単位とを有する重合体を含有する、シートであって、前記第1繰り返し単位が、電離放射線硬化性官能基および前記環状構造を含む第1重合性化合物に由来する繰り返し単位であり、前記第2繰り返し単位が、電離放射線硬化性官能基および前記ポリオキシアルキレン基を含む第2重合性化合物に由来する繰り返し単位である、シート」の条件を満たす「シート」の実施例が、該条件を満たさない「シート」の比較例と比べて、艶消し性及び耐傷性に優れていることを確認する記載がある。
そうすると、発明の詳細な説明の上記記載から、当業者は「表面層を有するシートであって、前記表面層の一方の表面が、皺構造を有する表面形状を備え、前記表面形状のJIS B0601:2013に規定されるRSm(曲線要素の平均長さ)が、50μm以下であり、前記表面層が、環状構造を含む第1繰り返し単位と、ポリオキシアルキレン基を含む第2繰り返し単位とを有する重合体を含有する、シートであって、前記第1繰り返し単位が、電離放射線硬化性官能基および前記環状構造を含む第1重合性化合物に由来する繰り返し単位であり、前記第2繰り返し単位が、電離放射線硬化性官能基および前記ポリオキシアルキレン基を含む第2重合性化合物に由来する繰り返し単位である、シート」、「該シートを有する物品」、「該シートを有する化粧シート」、「該シートを有する化粧材」及び「該シートにおける表面層に用いられる硬化性組成物」は、発明の課題を解決できると認識できる。
そして、本件特許発明1ないし4及び7ないし9は当業者が発明の課題を解決できると認識できる上記「シート」をさらに限定したものであり、本件特許発明10は当業者が発明の課題を解決できると認識できる上記「該シートを有する物品」をさらに限定したものであり、本件特許発明11は当業者が発明の課題を解決できると認識できる上記「該シートを有する化粧シート」をさらに限定したものであり、本件特許発明12は、当業者が発明の課題を解決できると認識できる上記「該シートを有する化粧材」をさらに限定したものであり、本件特許発明13ないし16は当業者が発明の課題を解決できると認識できる上記「該シートにおける表面層に用いられる硬化性組成物」をさらに限定したものである。
したがって、本件特許発明1ないし4及び7ないし16は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、本件特許発明1ないし4及び7ないし16に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。
(3)特許異議申立人の申立理由9における主張について
特許異議申立人の申立理由9における主張(上記第4 8参照。)について検討する。
本件特許発明の課題解決の評価基準と甲1又は2に記載された発明の課題解決の評価基準は異なることから、仮に、本件特許発明1に含まれるシートが甲1又は2に記載された発明における発明の課題が解決できなかったとしても、本件特許発明1が本件特許発明1の発明の課題を解決できないことの証拠にはならない。
そして、上記(2)のとおり、本件特許発明1ないし4及び7ないし16は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
したがって、特許異議申立人の申立理由9における主張は採用できない。
(4)申立理由9についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1ないし4及び7ないし16に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由9によっては取り消すことはできない。
第8 特許異議申立人の令和6年9月10日に提出された意見書における主張について
特許異議申立人は、令和6年9月10日に提出された意見書において、取消理由1について、おおむね次のとおり主張する。
「(1)取消理由通知書で示された取消理由1(甲1に基づく進歩性)について
ア 特許権者は、訂正後の請求項1に係る発明(以下、「本件訂正発明1」といいます。)において、RSmが50μm以下であること、及び、Rzが3μm以上であることの両者を備える表面形状を得るためには、典型的には、本件明細書の段落【0190】~【0210】に記載されているように、(1)100nm以上200nm末満の第1の波長光の照射処理、並びに、(2)電子線及び200nm以上400nm以下の第2の波長光の少なくとも一方での照射処理を行うことが重要であり、このような照射処理を行うことで、RSmが50μm以下で、Rzが3μm以上の両者を備える表面形状を得られるところ、このような照射処理を行わない甲1に記載の方法では、Rzが3μm以上の表面形状を得ることは困難である旨を主張しています。(意見書の4ページ、5(4)エ~5ページ、5(4)ク。以下、この主張を「表面層の形成方法に基づく主張」といいます。)
・・・以上のとおり、意見書における特許権者の表面層の形成方法に基づく主張は、明細書の記載に反するものであることから、採用することはできないと思料いたします。
・・・(略)・・・
ウ そして、甲1の段落【0007】には、「また本発明における前記しわ状構造の最大高さRzは硬化物の耐擦傷性と艶消し性を両立させる観点から、0.02μm以上5μm以下が好ましく、・・・。前記Rzは、本発明の硬化物の耐擦傷性の点から低い方が好ましく、艶消し性の点から高いほうが好ましい。」と記載されており、また、段落【0010】には、「本発明の硬化物のしわ状構造は、活性エネルギー線の照射強度を強化し硬化性組成物の硬化時間を短くすることで、より小さいしわ状構造を得ることができ、活性エネルギー線の照射強度を低下し硬化性組成物の硬化時間を長くすることでより大きいしわ状構造を得ることができる。さらに、本発明の硬化物のしわ状構造は、硬化性組成物の溶剤を除いた粘度を高くし流動性を低下させることで、より小さいしわ状構造を得ることができ、硬化性組成物の溶剤を除いた粘度を低く流動性を向上させることでより大きいしわ状構造を得ることができる。」と記載されていることから、本件訂正発明1における重合体についての発明特定事項を満たす重合体が含まれる硬化物である甲1物発明の製造において、活性エネルギー線の照射条件や、硬化性組成物の粘度を変更して、しわ状構造の最大高さRzが本件訂正発明1の範囲内のしわ状構造を有する硬化物を得ることは、格別の創意を要する事項ではないと思料いたします。」(上記意見書第2ないし5ページ)
また、特許異議申立人は取消理由2ないし4についても同様の主張をしている。
そこで、検討する。
仮に、「(1)100nm以上200nm末満の第1の波長光の照射処理、並びに、(2)電子線及び200nm以上400nm以下の第2の波長光の少なくとも一方での照射処理を行うことが重要であり、このような照射処理を行うことで、RSmが50μm以下で、Rzが3μm以上の両者を備える表面形状を得られるところ、このような照射処理を行わない甲1に記載の方法では、Rzが3μm以上の表面形状を得ることは困難である」という特許権者の主張が採用することができないものであったとしても、上記第6 2(1)で示したとおり、既に「さらに好ましくは0.5μm以上3μm以下である。」とされている「3μm以下」の数値範囲にある甲1物発明において、「最大高さRz」を「3μm以上」とする動機付けが甲1及び他の証拠にもない以上、「しわ状構造の最大高さRzが本件訂正発明1の範囲内のしわ状構造を有する硬化物を得ることは、格別の創意を要する事項ではない」とはいえない。
したがって、特許異議申立人の取消理由1についての主張は採用できない。
また、特許異議申立人の取消理由2ないし4についての主張も同様に採用できない。
第9 結語
上記第6ないし8のとおり、本件特許の請求項1ないし4及び7ないし16に係る特許は、取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし4及び7ないし16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件特許の請求項5、6及び17に係る特許は、訂正により削除されたため、特許異議申立人による請求項5、6及び17に係る特許についての特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700306