特許異議申立
2023-701407
フィルム、および、フィルムの製造方法
- 審判番号
- 2023-701407
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-168762
- 登録番号
- 7305494
- 請求日
- 2023年12月28日
- 審決日
- 2024年08月29日
- 公報発行日
- 2024年12月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】住友化学株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人藤本パートナーズ
- 【異議申立人】加藤 浩志
- 審判長/審判官
- 審判長 柴田 昌弘
- 審判官 天野 宏樹
- 審判官 淺野 美奈
- 分類
- P1651.113-YAA(C08J) / P1651.121-YAA(C08J) / P1651.537-YAA(C08J) / P1651.536-YAA(C08J) / P1651.161-YAA(C08J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第9項、特許法第29条の2、特許法第2条第3項第1号、特許法第2条第3項第3号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7305494号発明「フィルム、および、フィルムの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7305494号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。
特許第7305494号の請求項1、4、5、7、8に係る特許を維持する。
特許第7305494号の請求項2、3、6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7305494号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願は、令和元年9月17日の出願であって、令和5年6月30日にその特許権の設定登録がされ、同年7月10日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その特許について令和5年12月28日に特許異議申立人加藤浩志(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1~8)がなされた。
以降の手続の経緯は以下のとおりである。
令和6年 3月25日付け:取消理由通知
同年 5月17日 :訂正請求書及び意見書(特許権者)
同年 5月24日付け:訂正請求があった旨の通知
同年 6月28日 :意見書(申立人)
第2 訂正請求について
1.訂正の内容
令和6年5月17日に提出された訂正請求書(以下、「本件訂正請求書」という。)による訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)の趣旨は、「特許第7305494号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~8について訂正することを求める。」というものであり、本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。
なお、以下において、隅付き括弧は「[ ]」と表記した。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「突刺破断荷重が1900g以上であり、突刺破断変形量が11.0mm以上である」と記載されているのを、「突刺破断荷重が1900g~2200gであり、突刺破断変形量が11.0mm~13.0mmである」に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項4も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1~3のいずれか一項に記載のフィルム」と記載されているのを、「請求項1に記載のフィルム」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「プロピレンに由来する構造単位を50質量%以上含むプロピレン重合体と、エチレンに由来する構造単位を50質量%以上含むエチレン重合体とを含有し、プロピレン重合体およびエチレン重合体の合計含有量100質量%に対して、プロピレン重合体の含有量が50質量%~95質量%であり、エチレン重合体の含有量が5質量%~50質量%であり、前記エチレン重合体は、エチレン-α-オレフィン共重合体であり、該エチレン-α-オレフィン共重合体は、エチレンに由来する構造単位を65質量%~98質量%含むと共に、炭素原子数4~12のα-オレフィンに由来する構造単位を2質量%~35質量%含み、密度が860kg/m3~930kg/m3である組成物を溶融混錬する工程と、
溶融混錬された組成物を、スクリューを備える押出機を用いて、スクリュー回転数100rpm以上の条件で押し出す工程と、
押し出された組成物を厚さが30μm~200μmに成膜する工程と
を含む、フィルムの製造方法。」と記載されているのを、
「請求項1または4に記載のフィルムの製造方法であって、プロピレンに由来する構造単位を50質量%以上含むプロピレン重合体と、エチレンに由来する構造単位を50質量%以上含むエチレン重合体とを含有し、プロピレン重合体およびエチレン重合体の合計含有量100質量%に対して、プロピレン重合体の含有量が50質量%~95質量%であり、エチレン重合体の含有量が5質量%~50質量%であり、前記エチレン重合体は、エチレン-α-オレフィン共重合体であり、該エチレン-α-オレフィン共重合体は、エチレンに由来する構造単位を65質量%~98質量%含むと共に、炭素原子数4~12のα-オレフィンに由来する構造単位を2質量%~35質量%含み、密度が860kg/m3~930kg/m3である組成物を溶融混錬する工程と、
溶融混錬された組成物を、スクリューを備える押出機を用いて、スクリュー回転数100rpm~120rpmの条件で押し出す工程と、
押し出された組成物を厚さが30μm~200μmに成膜する工程と
を含む、フィルムの製造方法。」に訂正する。
請求項5の記載を引用する請求項7も同様に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6を削除する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に「請求項5または6に記載のフィルムの製造方法」と記載されているのを、「請求項5に記載のフィルムの製造方法」に訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8に「プロピレンに由来する構造単位を50質量%以上含むプロピレン重合体と、エチレンに由来する構造単位を50質量%以上含むエチレン重合体とを含有し、プロピレン重合体およびエチレン重合体の合計含有量100質量%に対して、プロピレン重合体の含有量が50質量%~95質量%であり、エチレン重合体の含有量が5質量%~50質量%であり、前記エチレン重合体は、エチレン-α-オレフィン共重合体であり、該エチレン-α-オレフィン共重合体は、エチレンに由来する構造単位を65質量%~98質量%含むと共に、炭素原子数4~12のα-オレフィンに由来する構造単位を2質量%~35質量%含み、密度が860kg/m3~930kg/m3である組成物が溶融混練されたものが、100rpm以上で回転するスクリューを備える押出機を用いて押し出されて成膜され、厚さが30μm~200μmであるフィルム。」と記載されているのを、
「プロピレンに由来する構造単位を50質量%以上含むプロピレン重合体と、エチレンに由来する構造単位を50質量%以上含むエチレン重合体とを含有し、プロピレン重合体およびエチレン重合体の合計含有量100質量%に対して、プロピレン重合体の含有量が50質量%~95質量%であり、エチレン重合体の含有量が5質量%~50質量%であり、前記エチレン重合体は、エチレン-α-オレフィン共重合体であり、該エチレン-α-オレフィン共重合体は、エチレンに由来する構造単位を65質量%~98質量%含むと共に、炭素原子数4~12のα-オレフィンに由来する構造単位を2質量%~35質量%含み、密度が860kg/m3~930kg/m3である組成物が溶融混練されたものが、100rpm~120rpmで回転するスクリューを備える押出機を用いて押し出されて成膜され、厚さが30μm~200μmであり、突刺破断荷重が1900g~2200gであり、突刺破断変形量が11.0mm~13.0mmである、フィルム。」に訂正する。
なお、訂正事項1~4に係る訂正前の請求項1~4について、請求項2~4は請求項1を直接又は間接的に引用する関係にあり、本件訂正により請求項4は請求項1に連動して訂正される。また、訂正事項5~7に係る訂正前の請求項5~7について、請求項6及び7は請求項5を直接又は間接的に引用する関係にあり、本件訂正により請求項7は請求項5に連動して訂正される。よって、本件訂正は一群の請求項ごとに請求されたものである。
2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
ア 訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に記載されていた「突刺破断荷重が1900g以上」という発明特定事項の数値範囲を、本件訂正前の請求項2に基づいて「1900g~2200g」に減縮し、また、本件訂正前の請求項1に記載されていた「突刺破断変形量が11.0mm以上」という発明特定事項の数値範囲を、本件訂正前の請求項3に基づいて「11.0mm~13.00mm」に減縮するものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。また、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないことも明らかである。さらに、請求項1を引用する請求項4の訂正も同様である。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
イ 訂正事項2及び3について
訂正事項2及び3は、それぞれ請求項2及び3を削除する訂正であるから、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。また、訂正事項2及び3は、いずれも実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないことも明らかである。
よって、訂正事項2及び3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
ウ 訂正事項4について
訂正事項4は、本件訂正前の請求項4が請求項1~3のいずれか一項を引用していたところ、訂正事項2及び3により請求項2及び3が削除されたことに伴い、引用先から請求項2及び3を削除し、引用先を請求項1に書き改めるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。また、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないことも明らかである。
よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
エ 訂正事項5について
訂正事項5は、本件訂正前の請求項5がフィルムの製造方法を独立形式で特定していたものを、「請求項1または4に記載のフィルム」を引用する形式とすることにより減縮し、また、本件訂正前の請求項5に記載されていた「スクリュー回転数100rpm以上」という発明特定事項の数値範囲を、本件訂正前の請求項6に基づいて「100rpm~120rpm」に減縮するものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。また、訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないことも明らかである。さらに、請求項5を引用する請求項7の訂正も同様である。
よって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
オ 訂正事項6について
訂正事項6は、請求項6を削除する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。また、訂正事項6は、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないことも明らかである。
よって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
カ 訂正事項7について
訂正事項7は、本件訂正前の請求項7が請求項5又は6を引用していたところ、訂正事項6により請求項6が削除されたことに伴い、引用先から請求項6を削除し、引用先を請求項5に書き改めるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。また、訂正事項7は、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないことも明らかである。
よって、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
キ 訂正事項8について
訂正事項8は、本件訂正前の請求項8に記載されていた「スクリュー回転数100rpm以上」という発明特定事項の数値範囲を、本件訂正前の請求項6等に基づいて「100rpm~120rpm」に減縮し、また、本件訂正前の請求項8の発明特定事項に、本件明細書の[0015]~[0016]の記載等に基づいて「突刺破断荷重が1900g~2200gであり、突刺破断変形量が11.0mm~13.0mmである」という発明特定事項を直列的に付加することにより、特許請求の範囲を減縮するものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。また、訂正事項8は、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないことも明らかである。
よって、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(2)独立特許要件について
本件においては、訂正前のすべての請求項1~8に対して特許異議の申立てがなされているので、訂正前の請求項1~8に係る訂正事項1~8については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
3.訂正請求についてのまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
よって、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。
第3 本件発明について
本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1~8に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明8」という。まとめて、「本件発明」ということもある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「[請求項1]
プロピレンに由来する構造単位を50質量%以上含むプロピレン重合体と、エチレンに由来する構造単位を50質量%以上含むエチレン重合体とを含有するフィルムであって、
プロピレン重合体およびエチレン重合体の合計含有量100質量%に対して、プロピレン重合体の含有量が50質量%~95質量%であり、エチレン重合体の含有量が5質量%~50質量%であり、
前記エチレン重合体は、エチレン-α-オレフィン共重合体であり、該エチレン-α-オレフィン共重合体は、エチレンに由来する構造単位を65質量%~98質量%含むと共に、炭素原子数4~12のα-オレフィンに由来する構造単位を2質量%~35質量%含み、密度が860kg/m3~930kg/m3であり、
厚さが30μm~200μmであり、
突刺破断荷重が1900g~2200gであり、突刺破断変形量が11.0mm~13.0mmである、フィルム。
[請求項2](削除)
[請求項3](削除)
[請求項4]
前記プロピレン重合体は、プロピレンブロック共重合体であり、
該プロピレンブロック共重合体は、
プロピレンに由来する構造単位を95質量%以上含む成分Aと、
プロピレンに由来する構造単位を50質量%~85質量%、並びに、エチレンおよび炭素原子数4~12のα-オレフィンからなる群から選ばれる1種以上に由来する構造単位を15質量%~50質量%含む成分Bとを含有し、
成分Aおよび成分Bの合計含有量100質量%に対して、成分Aの含有量が50質量%~85質量%であり、成分Bの含有量が15質量%~50質量%である、
請求項1に記載のフィルム。
[請求項5]
請求項1または4に記載のフィルムの製造方法であって、プロピレンに由来する構造単位を50質量%以上含むプロピレン重合体と、エチレンに由来する構造単位を50質量%以上含むエチレン重合体とを含有し、プロピレン重合体およびエチレン重合体の合計含有量100質量%に対して、プロピレン重合体の含有量が50質量%~95質量%であり、エチレン重合体の含有量が5質量%~50質量%であり、前記エチレン重合体は、エチレン-α-オレフィン共重合体であり、該エチレン-α-オレフィン共重合体は、エチレンに由来する構造単位を65質量%~98質量%含むと共に、炭素原子数4~12のα-オレフィンに由来する構造単位を2質量%~35質量%含み、密度が860kg/m3~930kg/m3である組成物を溶融混錬する工程と、
溶融混錬された組成物を、スクリューを備える押出機を用いて、スクリュー回転数100rpm~120rpmの条件で押し出す工程と、
押し出された組成物を厚さが30μm~200μmに成膜する工程と
を含む、フィルムの製造方法。
[請求項6](削除)
[請求項7]
前記スクリューの径が40mm~200mmである、請求項5に記載のフィルムの製造方法。
[請求項8]
プロピレンに由来する構造単位を50質量%以上含むプロピレン重合体と、エチレンに由来する構造単位を50質量%以上含むエチレン重合体とを含有し、プロピレン重合体およびエチレン重合体の合計含有量100質量%に対して、プロピレン重合体の含有量が50質量%~95質量%であり、エチレン重合体の含有量が5質量%~50質量%であり、前記エチレン重合体は、エチレン-α-オレフィン共重合体であり、該エチレン-α-オレフィン共重合体は、エチレンに由来する構造単位を65質量%~98質量%含むと共に、炭素原子数4~12のα-オレフィンに由来する構造単位を2質量%~35質量%含み、密度が860kg/m3~930kg/m3である組成物が溶融混練されたものが、100rpm~120rpmで回転するスクリューを備える押出機を用いて押し出されて成膜され、厚さが30μm~200μmであり、突刺破断荷重が1900g~2200gであり、突刺破断変形量が11.0mm~13.0mmである、フィルム。」
第4 特許異議申立書に記載した特許異議申立理由
申立人は、証拠方法として下記2.に示す甲第1号証~甲第3号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲3」のようにいう。)及び参考資料1~参考資料4(以下、それぞれ「甲参1」~「甲参4」のようにいう。)を提出し、概略、以下の特許異議申立理由を主張している。
また、申立人は令和6年6月28日に意見書及び証拠方法として下記2.に示す参考資料1及び参考資料2(以下、それぞれ「甲参1’」及び「甲参2’」のようにいう。)を提出している。
なお、申立理由の番号は当審が仮に付与した。
1.特許異議申立理由
(1)申立理由1(甲1に基づく拡大先願)
本件発明1~8は、本件特許の出願の日前の日本語特許出願であって、その出願後に国際公開がされた下記の甲1の日本語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の日本語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記日本語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29の2の規定により特許を受けることができるものではなく(同法第184条の13参照)、それらの発明についての特許は同法第29条の2の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである(甲参1参照)。
(2)申立理由2-1(甲2に基づく新規性欠如)
本件発明1~5、8は、本件特許の出願前に日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである(甲参3参照)。
(3)申立理由2-2(甲2に基づく進歩性欠如)
本件発明1~8は、本件特許の出願前に日本国内または外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲2に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである(甲参3参照)。
(4)申立理由3(甲3に基づく進歩性欠如)
本件発明1~8は、本件特許の出願前に日本国内または外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲3に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである(甲参4、甲参2参照)。
(5)申立理由4(サポート要件違反)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、本件発明1~8についての特許は同法同条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
ア スクリュー回転数について
スクリュー回転数によりフィルムの落袋強度が影響される理由として、フィルムを構成する異なる重合体間の分散と熱劣化が要因と考えられ、これらの兼ね合いによりスクリュー回転数の好ましい範囲が決まるのは当業者の技術常識である。また、重合体間の分散性は相溶性にも影響されるため、エチレン重合体(PE1、PE2、比較例PE3)が異なればプロピレン重合体(PP1)中のプロピレン単独重合体ブロック(成分A)との相溶性が異なり、スクリュー回転数の好ましい範囲も異なることは自明である。しかし、本件明細書の実施例には、スクリュー回転数を100rpm以外として押し出した場合について一切記載されておらず、出願時の技術常識に照らしても、スクリュー回転数が100rpm以外である場合に、耐破袋性に優れた包装袋を形成することができるフィルムが得られて、本件特許発明の課題を解決できると当業者は認識することができない。
イ ダイ温度について
本件明細書の実施例には、ダイ温度を240℃として押し出した場合に発明の課題が解決できることが開示されているが、ダイ温度を240℃以外の温度として押し出した場合について一切記載されておらず、出願時の技術常識に照らしても、ダイ温度が240℃以外の温度である場合に、耐破袋性に優れた包装袋を形成することができるフィルムが得られて、本件特許発明の課題を解決できると当業者は認識することができない。
ウ スクリューの形状について
本件明細書の実施例には、スクリューの形状の詳細が記載されておらず、いかなる形状のスクリューを用いて押し出した場合に耐破袋性に優れた包装袋を形成することができるフィルムが得られて、本件特許発明の課題を解決できるのか、当業者は認識することができない。
(6)申立理由5(実施可能要件違反)
本件特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に適合するものではなく、本件発明1~8についての特許は同法同条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
本件特許の発明の詳細な説明には、スクリュー回転数を100rpmとし、ダイ温度を240℃として押し出した実施例が開示されているが、スクリュー回転数を100rpm以外として押し出した場合、及びダイ温度を240℃以外の温度として押し出した場合については一切開示されておらず、押出機のスクリューの形状に関しても何ら記載されていないから、これらを具体的にどのように調整すれば耐破袋性に優れた包装袋を形成することができるフィルムを得ることができるのか不明であり、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤、複雑高度な実験等を行う必要がある。したがって、本件特許の発明の詳細な説明は、本件特許の請求項に係る発明について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。
2.証拠方法
甲1:国際公開第2019/189486号
甲2:特開2015-230777号公報
甲3:特開2017-105174号公報
甲参1:特開2009-96119号公報
甲参2:特開2017-66326号公報
甲参3:特開2019-137058号公報
甲参4:特開2003-25525号公報
甲参1’:富山秀樹,"押出機のスケールアップ理論 第1講 理論の考え方とパラメータの導出",成形加工,一般社団法人プラスチック成形加工学会,2013年7月20日,第25巻,第8号,p.376-379
甲参2’:J. Goff,T. Whelan,D. DeLaney,"The Dynisco Extrusion Processors Handbook 2nd edition",中表紙,目次,p.150,206-216,[online],2000年,DYNISCO,[令和6年6月25日検索],インターネット<https://www.plasticportal.sk/image/staticke/File/Extrusion_ProcessorsDynisco.pdf>
第5 取消理由通知に記載した取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~8に係る発明についての特許に対して、令和5年11月10日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
取消理由1(甲2に基づく新規性欠如)
本件特許の請求項1~5、8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
取消理由2(甲2に基づく進歩性欠如)
本件特許の請求項1~8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内または外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
取消理由3(サポート要件違反)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、本件特許の請求項1~8に係る発明についての特許は同法同条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
実施例で採用されたような融点、密度、メルトフローレート等が好ましい範囲にある特定のエチレン-ブテン-1共重合体と、各ブロックの共重合モノマーの比率及びメルトフローレートが特定の範囲にあるプロピレンブロック共重合体とを実施例で採用されたような好ましいとされるスクリュー回転数の条件で溶融混合した場合の樹脂組成物を押出成膜すれば、実施例と同様の刺破断強度、突刺破断変形量及び落袋強度が得られ、発明の課題を解決し得るものと当業者は認識することができる。しかし、エチレン重合体の融点、密度、メルトフローレート、分子量分布、共重合モノマーの種類が実施例の物とは異なっているときには、適切なプロピレン重合体を見出し、押出機のスクリュー回転数を好ましいとされる範囲に調整することによって上記課題を解決し得ると当業者は認識することができない。
本件発明1においては、エチレン重合体は上記好ましいとされる特性を全て備えたエチレン-α-オレフィン共重合体に限られていないから、本件明細書の記載及び出願時の技術常識に照らしても、本件発明1の全ての範囲において上記課題を解決できると当業者は認識することができない。同様の理由により、本件発明2~8についても、その全ての範囲において上記課題を解決できると当業者は認識することができない。
第6 取消理由通知に記載した取消理由についての判断
当審は、取消理由通知に記載した取消理由1~取消理由3によって本件発明1、4、5、7、8についての特許を取り消すことはできないと判断する。理由は以下のとおり。
1.取消理由1(甲2に基づく新規性欠如)及び取消理由2(甲2に基づく進歩性欠如)について
(1)引用文献及びその記載事項
ア 甲2に記載された事項
甲2には以下の事項が記載されている。
(2-1)「[請求項1]
多段重合により得られる、下記(a1)~(a4)の条件を満たすプロピレン系重合体成分(A1)とプロピレン-エチレンランダム共重合体成分(A2)とを含むプロピレン-エチレンブロック共重合体(A)からなることを特徴とする電池包装フィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物。
・プロピレン-エチレンブロック共重合体(A);
(a1)プロピレン系重合体成分(A1)は、エチレン含量が0~2重量%のプロピレン単独重合体または共重合体であること。
(a2)プロピレン系重合体成分(A1)のMFR(230℃、2.16kg荷重)が1.0~10g/10分であること。
(a3)プロピレン-エチレンランダム共重合体成分(A2)は、エチレン含量が10~40重量%であること。
(a4)プロピレン-エチレンランダム共重合体成分(A2)のMFR(230℃、2.16kg荷重)が0.5~5g/10分であること。
・・・
[請求項3]
請求項1又は2に記載の電池包装フィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物を溶融押出製膜して得られることを特徴とする単層シーラントフィルム。」
(2-2)「[技術分野]
[0001]
本発明は、電池包装用ポリプロピレン系樹脂組成物及びフィルムに関し、さらに詳しくは、耐熱性や密封性、成形性に優れるだけでなく、高いシール強度や耐衝撃性を有し、変形加工時の耐白化性や耐クラッキング性にも優れる電池包装用ポリプロピレン系樹脂組成物及びフィルムに関する。
[背景技術]
[0002]
ポリプロピレン系材料は、その耐熱性や包装適性、更には経済性や環境問題適応性などにより、包装材料として汎用されてきた。
また、適応用途の多様化も進み、食品包装用途に留まらず、自動車外装や部品又は液晶テレビ部材の表面傷付きを予防する目的での保護フィルムや、シリコンウェハ加工時の固定フィルムなど工業用途への進出も、目立ってきている。中でも、近年その発展が著しい分野の一つとして、電池用包装材料がある。」
(2-3)「[発明が解決しようとする課題]
[0009]
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、耐熱性や密封性、成形性に優れるだけでなく、高いシール強度や耐衝撃性を有し、変形加工時の耐白化性や耐クラッキング性などにおしなべて優れる電池包装用ポリプロピレン系樹脂組成物及びフィルムを提供することにある。」
(2-4)「[0042]
(2)オレフィン系共重合体エラストマー
また、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物には、さらに、フィルムの柔軟性を向上させる目的で、オレフィン系共重合体エラストマーを、プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)100重量部に対して、3~30重量部添加することができる。
オレフィン系共重合エラストマーの密度は、0.880~0.910g/cm3であることが好ましく、より好ましくは0.885~0.907g/cm3の範囲である。密度が0.910g/cm3以下の場合には、変形加工時の耐白化性や耐クラッキング性が向上し、また、柔軟性付与の向上効果が見られるため、好ましい。
ここで、密度は、JIS K7112に準拠して測定する値である。」
(2-5)「[0065]
3.プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)の製造
[製造例A-1]
内容積2m3の流動床型重合槽が2個直列に繋がった2槽連続重合設備を用いて、プロピレン-エチレンブロック共重合体の製造を行った。
使用するプロピレン、エチレン、水素、窒素は、一般的な精製触媒を用いて精製したものを使用した。第1重合槽におけるプロピレン系重合体成分(A1)の製造量、及び、第2重合槽におけるプロピレン-エチレンランダム共重合体成分(A2)の製造量は、重合槽の温度制御に使用する熱交換器の冷却水温度の値から求めた。
[0066]
(1)重合工程(i):プロピレン系重合体成分(A1)の製造
第1重合槽を用いてプロピレンの単独重合を行った。重合温度は65℃、全圧は3.0MPaG、パウダーホールド量は40kgとした。重合槽に連続的にプロピレン、水素、及び、窒素を供給し、プロピレン及び水素の濃度がそれぞれ70.83mol%、0.49mol%となる様に調整した。助触媒として、Et3Alを5.0g/hの速度で連続的に供給した。第1重合槽におけるプロピレン系重合体成分(A1)の製造量が20.0kg/hとなる様に、上記で得られた予備重合触媒を重合槽に連続的に供給した。生成したプロピレン系重合体成分(A1)は連続的に抜き出しを行い、パウダーホールド量が40kgで一定となる様に調整した。第1重合槽から抜き出したプロピレン系重合体成分(A1)は、第2重合槽に連続的に供給し、プロピレン-エチレンランダム共重合体成分(A2)の製造を引き続いて行った。
第1重合槽で生成したプロピレン系重合体成分(A1)の一部を抜き出して分析したところ、MFR(A1)は3.90g/10分であった。また、プロピレン系重合体成分(A1)の製造量を供給した触媒量(但し予備重合触媒に含まれるポリプロピレンを除く)で割った値から触媒活性を計算したところ、重合工程(i)における触媒活性は、22kg-PP/g-触媒であった。
[0067]
(2)重合工程(ii):プロピレン-エチレンランダム共重合体成分(A2)の製造
第2重合槽を用いてプロピレンとエチレンのランダム共重合を行った。重合温度は65℃、全圧は2.0MPaG、パウダーホールド量は40kgとした。重合槽に連続的にプロピレン、エチレン、水素、及び、窒素を供給し、プロピレン、エチレン、及び、水素の濃度がそれぞれ62.00mol%、9.43mol%、3.57mol%となる様に調整した。重合抑制剤であるエタノールを連続的に供給する事によって、第2重合槽におけるプロピレン-エチレンランダム共重合体成分(A2)の製造量が5.0kg/hとなる様に調整した。こうして生成したプロピレン-エチレンブロック共重合体(A)は連続的に抜き出しを行い、パウダーホールド量が40kgで一定となる様に調整を行った。第2重合槽から抜き出したプロピレン-エチレンブロック共重合体(A)は、更に乾燥機に移送し、充分に乾燥を行った。
生成したプロピレン-エチレンブロック共重合体(A)の一部を分析したところ、MFR(A)は3.80g/10分、エチレン含量E(A)は4.6wt%であった。重合工程(i)の製造量と重合工程(ii)の製造量から、プロピレン系重合体成分(A1)の重量比率W(A1)とプロピレン-エチレンランダム共重合体成分(A2)の重量比率W(A2)を求めたところ、それぞれ、0.80、0.20であった。
[0068]
こうして得られたW(A1)、W(A2)、E(A)、MFR(A1)、MFR(A)から、プロピレン-エチレンランダム共重合体成分(A2)のエチレン含量E(A2)及びMFR(A2)を計算した。計算には以下の式を使用した。
E(A2)={E(A)-E(A1)×W(A1)}÷W(A2)
MFR(A2)=exp{(loge[MFR(A)]-W(A1)×loge[MFR(A1)])÷W(A2)}
(ここで、プロピレン系重合体成分(A1)は、プロピレン単独重合体なのでE(A1)は0wt%である。また、上記の2式は、前記段落[0035]と[0037]に記載したものを、E(A2)、MFR(A2)について、整理しなおしたものである。) エチレン含量[E(A2)]は23.0wt%、MFR(A2)は3.42g/10分であった。」
(2-6)「[0071]
[表2]
[図:0001417642000001.jpg]
」
(2-7)「[0072]
[実施例1~6及び比較例1~6]
プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)100重量部に対して、テトラキス[メチレン-3-(3´,5´-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン0.05重量部、トリス(2,4-ジ-t―ブチルフェニル)ホスファイト0.05重量部、ステアリン酸カルシウム0.05重量部、また、実施例6においては、さらにエルカ酸アマイド0.20重量部を加えて、タンブラーにてそれぞれ混合し均一化し、得られた混合物を、35mm径の二軸押出機により230℃で溶融混練し、ペレット化した。その混練条件を下記に示す。
このペレットを用いて、330mm幅のT型ダイスを有する35mm径の押出機にて230℃で溶融押出しした後、30℃に調整された直径300mmのチルロールに巻き付けながら冷却固化し、フィルム厚み30μmの無延伸の電池包装用シーラントフィルムを得た。そのフィルム成形の仕様を下記に示す。
得られたフィルムについての物性を、前記測定法に準拠し測定した。表3にその評価結果を示す。
[0073]
(混練条件)
混練機:東芝機械社製35mm径同方向二軸混練機
混練温度:230℃
スクリュー回転数:250rpm
フィーダー回転数:50rpm
(フィルム成形)
Tダイ成形機:プラコー社製35mm径単軸成形機
押出温度:240℃
チルロール温度:35℃
引取速度:18.0~20.0m/分
フィルム厚さ:30μm前後」
(2-8)「[0074]
[実施例7、8]
実施例7、8では、エチレン-α-オレフィン共重合体エラストマーとして、以下のER-1、ER-2を用いた。
・ER-1:三井化学(株)製、タフマーA4085S
[密度:0.886g/cm3、MFR(190℃):3.6g/10分]
・ER-2:日本ポリエチレン(株)製、カーネルKS340T
[密度:0.880g/cm3、MFR(190℃):3.5g/10分]
[0075]
上記実施例6と同様に得られた実施例7、8のプロピレン-エチレンブロック共重合体(A)を含む組成物の各ペレットに、プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)100重量部に対して、ER-1またはER-2を10重量部の割合となるように加えて、ER-1またはER-2を均一になるように、混ぜ合わせた後、実施例6などと同様に、330mm幅のT型ダイスを有する35mm径の押出機にて250℃で溶融押出しした後、40℃に調整された直径300mmのチルロールに巻き付けながら冷却固化し、フィルム厚み30μmの無延伸の電池包装用シーラントフィルムを得た。
得られたフィルムについての物性を、前記測定法に準拠し測定した。表3にその評価結果を示す。」
(2-9)「[0076]
[表3]
[図:0001417642000002.jpg]
」
イ 甲参3に記載された事項
甲参3には以下の事項が記載されている。
(参3-1)「[0426]
エチレン-α-オレフィンランダム共重合体(C)
以下のエチレン-α-オレフィンランダム共重合体を用いた。
(C-1):エチレン-ブテンランダム共重合体(MFR=6.8g/10分、Tm=66℃、密度=0.885g/cm3、エチレン含量=84重量%):三井化学(株)製、商品名「タフマーA4085S」
(C-2):エチレン-ブテンランダム共重合体(MFR=7.0g/10分、Tm=47℃、密度=0.860g/cm3、エチレン含量=73重量%):三井化学(株)製、商品名「タフマーA4050S」
(C-3):エチレン-オクテンランダム共重合体(MFR=2.0g/10分、Tm=77℃、密度=0.885g/cm3、エチレン含量=85重量%):デュポンダウ社製、商品名「エンゲージEG8003」
(C-4):エチレン-オクテンランダム共重合体(MFR=2.0g/10分、Tm=38℃、密度=0.860g/cm3、エチレン含量=75重量%):デュポンダウ社製、商品名「エンゲージEG8842」
(C-5):エチレン-ヘキセンランダム共重合体(MFR=3.5g/10分、Tm=60℃、密度=0.880g/cm3、エチレン含量=76重量%):日本ポリエチレン(株)製、商品名「カーネルKS340T」
(C-6):エチレン-プロピレンランダム共重合体(MFR=7.0g/10分、Tm=38℃、密度=0.860g/cm3、エチレン含量=73重量%):三井化学(株)製、商品名「タフマーP0280」」
(2)甲2に記載された発明
甲2の請求項1及び3(摘記2-1)には「多段重合により得られる、下記(a1)~(a4)の条件を満たすプロピレン系重合体成分(A1)とプロピレン-エチレンランダム共重合体成分(A2)とを含むプロピレン-エチレンブロック共重合体(A)からなることを特徴とする電池包装フィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物。
・プロピレン-エチレンブロック共重合体(A);
(a1)プロピレン系重合体成分(A1)は、エチレン含量が0~2重量%のプロピレン単独重合体または共重合体であること。
(a2)プロピレン系重合体成分(A1)のMFR(230℃、2.16kg荷重)が1.0~10g/10分であること。
(a3)プロピレン-エチレンランダム共重合体成分(A2)は、エチレン含量が10~40重量%であること。
(a4)プロピレン-エチレンランダム共重合体成分(A2)のMFR(230℃、2.16kg荷重)が0.5~5g/10分であること。」及び「請求項1又は2に記載の電池包装フィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物を溶融押出製膜して得られることを特徴とする単層シーラントフィルム。」が記載されており、[0042](摘記2-4)には、フィルムの柔軟性を向上させる目的で、オレフィン系共重合体エラストマーを、プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)100重量部に対して、3~30重量部添加することができることが記載されている。
また、[0065]~[0068](摘記2-5)及び[0071][表2](摘記2-6)には、甲2の実施例で用いられるプロピレン-エチレンブロック共重合体(A)の製造方法及び得られた共重合体の分析結果が記載されており、第1重合槽を用いてプロピレンの単独重合を行い、第1重合槽から抜き出したプロピレン系重合体成分(A1)を第2重合槽に連続的に供給し、プロピレン-エチレンランダム共重合体成分(A2)の製造を引き続いて行ったこと、生成したプロピレン-エチレンブロック共重合体(A)のエチレン含量E(A)は4.6wt%であったこと、プロピレン系重合体成分(A1)の重量比率W(A1)とプロピレン-エチレンランダム共重合体成分(A2)の重量比率W(A2)を求めたところ、それぞれ0.80、0.20であったこと、プロピレン-エチレンランダム共重合体成分(A2)のエチレン含量E(A2)を計算したところ23.0wt%であったことが記載されている。
さらに、[0072]~[0073](摘記2-7)にはフィルムの製造方法が記載されており、プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)100重量部に対して、テトラキス[メチレン-3-(3´,5´-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン0.05重量部、トリス(2,4-ジ-t―ブチルフェニル)ホスファイト0.05重量部、ステアリン酸カルシウム0.05重量部、また、実施例6においては、さらにエルカ酸アマイド0.20重量部を加えて、タンブラーにてそれぞれ混合し均一化し、得られた混合物を、35mm径の二軸押出機により230℃でスクリュー回転数:250rpmで溶融混練し、ペレット化し、このペレットを用いて、330mm幅のT型ダイスを有する35mm径の押出機にて230℃で溶融押出しした後、30℃に調整された直径300mmのチルロールに巻き付けながら冷却固化し、フィルム厚み30μmの無延伸の電池包装用シーラントフィルムを得たことが記載されている。
加えて、[0074]~[0075](摘記2-8)及び[0076][表3](摘記2-9)には、実施例7及び8のフィルムの製造方法が記載されており、実施例7、8では、エチレン-α-オレフィン共重合体エラストマーとして、ER-1(三井化学(株)製、タフマーA4085S)及びER-2(日本ポリエチレン(株)製、カーネルKS340T)を用いたこと、実施例6と同様に得られた実施例7、8のプロピレン-エチレンブロック共重合体(A)を含む組成物の各ペレットに、プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)100重量部に対して、ER-1またはER-2を10重量部の割合となるように加えて、ER-1またはER-2を均一になるように、混ぜ合わせた後、実施例6などと同様に、330mm幅のT型ダイスを有する35mm径の押出機にて250℃で溶融押出しした後、40℃に調整された直径300mmのチルロールに巻き付けながら冷却固化し、フィルム厚み30μmの無延伸の電池包装用シーラントフィルムを得たことが記載されている。
そうすると、甲2には、実施例7及び8に基づいて以下の発明が記載されている。
「プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)100重量部に対して、テトラキス[メチレン-3-(3´,5´-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン0.05重量部、トリス(2,4-ジ-t―ブチルフェニル)ホスファイト0.05重量部、ステアリン酸カルシウム0.05重量部及びエルカ酸アマイド0.20重量部を加え、混合物を35mm径の二軸押出機により230℃でスクリュー回転数:250rpmで溶融混練し、ペレット化し、
このペレットに、プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)100重量部に対してER-1(三井化学(株)製、タフマーA4085S)又はER-2(日本ポリエチレン(株)製、カーネルKS340T)を10重量部の割合となるように加えて、ER-1またはER-2を均一になるように混ぜ合わせ、
330mm幅のT型ダイスを有する35mm径の押出機にて250℃で溶融押出しした後、40℃に調整された直径300mmのチルロールに巻き付けながら冷却固化し、フィルム厚み30μmとしたフィルムであって、
前記プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)は、
プロピレンの単独重合体からなるプロピレン系重合体成分(A1)と、
プロピレン-エチレンランダム共重合体成分(A2)とを含み、プロピレン-エチレンランダム共重合体成分(A2)のエチレン含量E(A2)は23.0wt%であり、
プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)のエチレン含量E(A)は4.6wt%であり、
プロピレン系重合体成分(A1)の重量比率W(A1)とプロピレン-エチレンランダム共重合体成分(A2)の重量比率W(A2)は、それぞれ0.80、0.20である、
フィルム。」(以下、「甲2発明」という。)
「プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)100重量部に対して、テトラキス[メチレン-3-(3´,5´-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン0.05重量部、トリス(2,4-ジ-t―ブチルフェニル)ホスファイト0.05重量部、ステアリン酸カルシウム0.05重量部及びエルカ酸アマイド0.20重量部を加え、混合物を35mm径の二軸押出機により230℃でスクリュー回転数:250rpmで溶融混練し、ペレット化し、
このペレットに、プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)100重量部に対してER-1(三井化学(株)製、タフマーA4085S)又はER-2(日本ポリエチレン(株)製、カーネルKS340T)を10重量部の割合となるように加えて、ER-1またはER-2を均一になるように混ぜ合わせ、
330mm幅のT型ダイスを有する35mm径の押出機にて250℃で溶融押出しした後、40℃に調整された直径300mmのチルロールに巻き付けながら冷却固化し、フィルム厚み30μmとすることを含む、フィルムの製造方法であって、
前記プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)は、
プロピレンの単独重合体からなるプロピレン系重合体成分(A1)と、
プロピレン-エチレンランダム共重合体成分(A2)とを含み、プロピレン-エチレンランダム共重合体成分(A2)のエチレン含量E(A2)は23.0wt%であり、
プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)のエチレン含量E(A)は4.6wt%であり、
プロピレン系重合体成分(A1)の重量比率W(A1)とプロピレン-エチレンランダム共重合体成分(A2)の重量比率W(A2)は、それぞれ0.80、0.20である、
フィルムの製造方法。」(以下、「甲2製法発明」という。)
(3)本件発明1について
ア 本件発明1と甲2発明との対比
本件発明1と甲2発明とを対比すると、甲2発明における「プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)」は、「プロピレンの単独重合体からなるプロピレン系重合体成分(A1)と、プロピレン-エチレンランダム共重合体成分(A2)とを含み」、「プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)のエチレン含量E(A)は4.6wt%」であるから、本件発明1における「プロピレンに由来する構造単位を50質量%以上含むプロピレン重合体」に相当する。
甲2発明における「ER-1(三井化学(株)製、タフマーA4085S)」は、甲参3の[0426](摘記参3-1)を参酌すると「エチレン-ブテンランダム共重合体(MFR=6.8g/10分、Tm=66℃、密度=0.885g/cm3、エチレン含量=84重量%)」であり、甲2発明における「ER-2(日本ポリエチレン(株)製、カーネルKS340T)」は、甲参3の[0426]を参酌すると「エチレン-ヘキセンランダム共重合体(MFR=3.5g/10分、Tm=60℃、密度=0.880g/cm3、エチレン含量=76重量%)」であるから、いずれも本件発明1における「エチレンに由来する構造単位を50質量%以上含むエチレン重合体」に相当し、かつ、「前記エチレン重合体は、エチレン-α-オレフィン共重合体であり、該エチレン-α-オレフィン共重合体は、エチレンに由来する構造単位を65質量%~98質量%含むと共に、炭素原子数4~12のα-オレフィンに由来する構造単位を2質量%~35質量%含み、密度が860kg/m3~930kg/m3であり」に相当する。
甲2発明における「プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)100重量部に対してER-1(三井化学(株)製、タフマーA4085S)又はER-2(日本ポリエチレン(株)製、カーネルKS340T)を10重量部の割合となるように加えて」は、(A)及びER-1又はER-2の合計110重量部を100質量%とする割合に換算すると、(A)の含有量が90.9質量%であり、ER-1又はER-2の含有量が9.1質量%であるから、本件発明1における「プロピレン重合体およびエチレン重合体の合計含有量100質量%に対して、プロピレン重合体の含有量が50質量%~95質量%であり、エチレン重合体の含有量が5質量%~50質量%であり」に相当する。
甲2発明における「フィルム厚み30μm」及び「フィルム」は、本件発明1における「厚さが30μm~200μm」及び「フィルム」に相当する。
そうすると、両者は、
「プロピレンに由来する構造単位を50質量%以上含むプロピレン重合体と、エチレンに由来する構造単位を50質量%以上含むエチレン重合体とを含有するフィルムであって、
プロピレン重合体およびエチレン重合体の合計含有量100質量%に対して、プロピレン重合体の含有量が50質量%~95質量%であり、エチレン重合体の含有量が5質量%~50質量%であり、
前記エチレン重合体は、エチレン-α-オレフィン共重合体であり、該エチレン-α-オレフィン共重合体は、エチレンに由来する構造単位を65質量%~98質量%含むと共に、炭素原子数4~12のα-オレフィンに由来する構造単位を2質量%~35質量%含み、密度が860kg/m3~930kg/m3であり、
厚さが30μm~200μmである、フィルム。」
の点で一致し、
相違点1:本件発明1は「突刺破断荷重が1900g~2200gであり、突刺破断変形量が11.0mm~13.0mmである、」と特定するのに対し、甲2発明はそのように特定されていない点
で相違する。そこで、相違点1について検討する。
イ 相違点1について
(ア)新規性について
本件明細書の[0015]には、「本発明に係るフィルムの突刺破断荷重は、1800g以上であり、好ましくは1900g~2200gである。・・・また、突刺破断荷重を上記の範囲とする方法としては、後述するように押出機のスクリューの回転数を所定の条件に調節する方法等が挙げられる」と記載され、[0016]には、「本発明に係るフィルムの突刺破断変形量は、10.5mm以上であり、好ましくは11.0mm~13.0mmである。・・・また、突刺破断変形量を上記の範囲とする方法としては、後述するように押出機のスクリューの回転数を所定の条件に調節する方法等が挙げられる」と記載され、[0057]には、「押出工程は、スクリュー1aの回転数が80rpm以上の条件で行い、好ましくは80rpm~120rpmの条件で行う。スクリュー1aの回転数が上記の範囲である条件で押出工程を行うことで、耐破袋性に優れた包装袋を形成することができるフィルムを得ることができる」と記載され、[0060]~[0082]の実施例においては、押出機のスクリューの回転数を100rpmとして樹脂組成物の溶融混練及び押出を行い、上記好ましいとされる範囲の突刺破断強度及び突刺破断変形量を示すフィルムを得ているから、これらの記載を参酌すると、相違点1に係る「突刺破断荷重が1900g~2200gであり、突刺破断変形量が11.0mm~13.0mmである」という、好ましい範囲と説明されている特性は、所定の樹脂組成物の押出工程をスクリューの回転数が100rpm~120rpmの条件で行うことにより得られると解される。また、[0081]の[表1]に記載された比較例2、比較例1及び実施例3の実験データを参酌すると、スクリュー回転数(rpm)が20、50、100と上がるにつれ、突刺破断荷重及び突刺破断変形量が大きくなっていることが読み取れる。
これに対し、甲2発明は「混合物を35mm径の二軸押出機により230℃でスクリュー回転数:250rpmで溶融混練し、ペレット化」する工程を経て製造されており、その後の「330mm幅のT型ダイスを有する35mm径の押出機にて250℃で溶融押出し」する工程も、ペレット化工程と同様にフィルム原料が完全に溶融混練する条件が求められることが通常であるから、スクリュー回転数:250rpmで行われた蓋然性が高い。そうすると、甲2発明のフィルム原料及び厚さは本件発明1のフィルム原料及び厚さに一致するものの、押出機のスクリュー回転数が本件明細書に記載された100rpm~120rpmの条件とは異なるため、甲2発明の突刺破断荷重及び突刺破断変形量が本件発明1と一致するとはいえない。
また、甲2には、甲2発明の突刺破断荷重及び突刺破断変形量については具体的に記載されておらず、他の証拠を参酌しても、甲2発明が相違点1に係る特定の範囲の突刺破断荷重及び突刺破断変形量を示すものとは認められない。
よって、相違点1は実質的な相違点である。
(イ)進歩性について
甲2の[0009](摘記2-3)には、甲2発明の解決しようとする課題が「耐熱性や密封性、成形性に優れるだけでなく、高いシール強度や耐衝撃性を有し、変形加工時の耐白化性や耐クラッキング性などにおしなべて優れる電池包装用ポリプロピレン系樹脂組成物及びフィルムを提供することにある」ことが記載されているが、当該課題を解決する手段としてフィルムの突刺破断荷重及び突刺破断変形量を相違点1に係る範囲に調整することは、記載も示唆もされていない。また、他の証拠を参照しても、甲2発明において相違点1に係る特定の範囲の突刺破断荷重及び突刺破断変形量を有するものとすることの動機付けとなる記載は見いだせない。そして、本件発明1が発揮する「突刺破断荷重が上記の範囲であり、突刺破断変形量が上記の範囲であるフィルムを用いることで、耐破袋性に優れた包装袋を形成することができる」という効果は、甲2及び他の証拠から予測することができない顕著な効果である。
よって、相違点1は甲2発明に基づいて当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
(ウ)申立人の主張について
申立人は、令和6年6月28日に提出した意見書2~3頁において、(a)「訂正発明1においてスクリュー回転数は一切規定されて」いないこと、(b)「100rpmを超えた範囲では、スクリュー回転数が大きくなれば、突き刺し破断荷重及び突き刺し破断変形量も大きくなるとは当然にはいえない」こと、及び甲参1’を引用し、(c)「押出量Qを含め、スクリュ回転数N以外のどのパラメータも規定されていないため、甲2発明において、スクリュー回転数が250rpmである場合に、・・・パラメータを適宜調整し、得られたフィルムの突刺破断荷重及び突刺破断変形量が相違点1で規定される範囲を満たすようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである」と主張している。
しかし、(a)及び(b)の事情を参酌しても、そのことによって直ちに甲2発明が相違点1に係る特定の範囲の突刺破断荷重及び突刺破断変形量を備えていることにはならず、また、申立人は甲2発明の突刺破断荷重及び突刺破断変形量の実測値等の具体的な証拠は示していないから、相違点1が実質的な相違点であるという判断は覆らない。
また、(c)については、上記(イ)に記載したとおり、甲2発明の課題に鑑みれば、甲2発明のフィルムの突刺破断荷重及び突刺破断変形量を相違点1で規定される範囲を満たすようにする動機が生じるとはいえず、また、甲参1’を含む他の証拠の記載を参酌しても、甲2発明において、フィルムの突刺破断荷重及び突刺破断変形量を調整する手段として、押出量Q、スクリュ回転数Nを含む押出成形に関わるパラメータの調整を採用することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
よって、申立人の主張はいずれも採用することができない。
(エ)相違点1についてのまとめ
以上まとめると、相違点1は実質的な相違点であり、かつ、甲2発明及びいずれの証拠の記載に基づいても当業者が容易に想到することができたものではない。
ウ 本件発明1についてのまとめ
以上のことから、本件発明1は甲2発明ではなく、かつ、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明4、5、7について
本件発明4、5、7は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。
そうすると、本件発明1と同様の理由により、本件発明4、5は、いずれも甲2発明ではなく、かつ、本件発明4、5、7は、いずれも甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)本件発明8について
ア 本件発明8と甲2発明との対比
上記(3)アに記載した本件発明1と甲2発明との対比を踏まえて、本件発明8と甲2発明とを対比すると、両者は、
「プロピレンに由来する構造単位を50質量%以上含むプロピレン重合体と、エチレンに由来する構造単位を50質量%以上含むエチレン重合体とを含有し、プロピレン重合体およびエチレン重合体の合計含有量100質量%に対して、プロピレン重合体の含有量が50質量%~95質量%であり、エチレン重合体の含有量が5質量%~50質量%であり、前記エチレン重合体は、エチレン-α-オレフィン共重合体であり、該エチレン-α-オレフィン共重合体は、エチレンに由来する構造単位を65質量%~98質量%含むと共に、炭素原子数4~12のα-オレフィンに由来する構造単位を2質量%~35質量%含み、密度が860kg/m3~930kg/m3である組成物が溶融混練されたものが、スクリューを備える押出機を用いて押し出されて成膜され、厚さが30μm~200μmであるフィルム。」
の点で一致し
相違点2:本件発明8は「100rpm~120rpmで回転するスクリューを備える押出機」と特定するのに対し、甲2発明は成膜するための押出機のスクリュー回転数が特定されていない点
相違点3:本件発明8は「突刺破断荷重が1900g~2200gであり、突刺破断変形量が11.0mm~13.0mmである、」と特定するのに対し、甲2発明はそのように特定されていない点
で相違する。そこで、事案に鑑みて相違点3について検討する。
イ 相違点3について
相違点3は、実質的に相違点1と同じ内容の相違点であるから、上記(3)イと同様に判断される。
ウ 本件発明8についてのまとめ
よって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明8は甲2発明ではなく、かつ、本件発明8は甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(6)取消理由1(甲2に基づく新規性欠如)及び取消理由2(甲2に基づく進歩性欠如)についてのまとめ
以上まとめると、本件発明1、4、5、8は、いずれも甲2に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号には該当せず、また、本件発明1、4、5、7、8は、いずれも甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
よって、取消理由1(甲2に基づく新規性欠如)及び取消理由2(甲2に基づく進歩性欠如)により本件発明1、4、5、7、8についての特許を取り消すことはできない。
2.取消理由3(サポート要件違反)について
(1)サポート要件の判断手法
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(2)本件発明の課題について
本件明細書の[0006]等の記載から見て、本件発明1、4及び8の課題は「耐破袋性に優れた包装袋を形成することができるフィルムを提供する」ことにあり、本件発明5及び7の課題は「耐破袋性に優れた包装袋を形成することができるフィルムの製造方法を提供する」ことにあるものと認められる。
(3)本件明細書の記載について
本件明細書には以下の事項が記載されている。下線は当審が付記した。
「[0015]本発明に係るフィルムの突刺破断荷重は、1800g以上であり、好ましくは1900g~2200gである。なお、突刺破断荷重は、下記の実施例に記載の方法で測定されるものである。また、突刺破断荷重を上記の範囲とする方法としては、後述するように押出機のスクリューの回転数を所定の条件に調節する方法等が挙げられる。
[0016]
また、本発明に係るフィルムの突刺破断変形量は、10.5mm以上であり、好ましくは11.0mm~13.0mmである。なお、突刺破断変形量は、下記の実施例に記載の方法で測定されるものである。また、突刺破断変形量を上記の範囲とする方法としては、後述するように押出機のスクリューの回転数を所定の条件に調節する方法等が挙げられる。
[0017]
突刺破断荷重が上記の範囲であり、突刺破断変形量が上記の範囲であるフィルムを用いることで、耐破袋性に優れた包装袋を形成することができる。」
「[0018]
プロピレン重合体としては、例えば、プロピレン単独重合体およびプロピレン系共重合体が挙げられる。
・・・
[0019]
プロピレン系共重合体としては、例えば、プロピレン系ランダム共重合体およびプロピレンブロック共重合体が挙げられる。」
「[0034]
エチレン重合体としては、例えば、エチレンの単独重合体およびエチレン系共重合体が挙げられる。
エチレン系共重合体は、エチレンに由来する構成単位を、好ましくは50質量%以上含み、より好ましくは60質量%~98質量%含む。
エチレン系共重合体に含まれるエチレン以外の構成単位としては、例えば、炭素原子数4~12のα-オレフィン、および、プロピレンからなる群から選ばれる1種以上に由来する構成単位が挙げられる。
[0035]
具体的には、エチレン重合体としては、例えば、エチレンとα-オレフィンとの共重合体(以下では、エチレン-α-オレフィン共重合体とも記す)が挙げられる。
エチレン-α-オレフィン共重合体は、エチレンに由来する構成単位を、好ましくは65質量%~98質量%含み、より好ましくは75質量%~95質量%含む。
またエチレン-α-オレフィン共重合体は、炭素原子数4~12のα-オレフィンに由来する構成単位を、好ましくは2質量%~35質量%含み、より好ましくは5質量%~25質量%含む。」
「[0041]
エチレン重合体の融点は、耐衝撃性の観点から、好ましくは135℃以下であり、より好ましくは130℃以下である。
[0042]
エチレン重合体の密度は、好ましくは860kg/m3~930kg/m3であり、より好ましくは880kg/m3~930kg/m3である。エチレン重合体の密度が880kg/m3以上であることで、剛性に優れたフィルムを得ることができる。また、エチレン重合体の密度が930kg/m3以下であることで、低温での耐衝撃性に優れたフィルムを得ることができる。エチレン重合体の密度を上記の範囲とする方法としては、エチレンとα-オレフィンとを共重合する割合を調整する方法が挙げられる。
[0043]
また、エチレン重合体のメルトフローレートは、好ましくは0.5g/10分~30g/10分であり、より好ましくは0.5g/10分~10g/10分であり、さらに好ましくは1g/10分~5g/10分である。メルトフローレートが0.5g/10分以上であることで、フィルムの表面に微細な凹凸(所謂、ゆず肌)を発生してしまうのを抑制することができる。また、メルトフローレートが30g/10分以下であることで、包装袋を製造する際にフィルムのヒートシール強度を良好なものとすることができる。
・・・
[0044]
また、エチレン重合体の分子量分布は、好ましくは1以上4未満であり、より好ましくは1.5以上3未満である。分子量分布が3未満であることで、低温での耐衝撃性に優れたフィルムを得ることができる。
エチレン重合体の分子量分布を1以上4未満とする方法としては、例えば、メタロセン触媒を用いて、エチレンとα-オレフィンとを共重合する方法が挙げられる。」
「[0057]
前記押出工程では、スクリュー1aの回転による樹脂組成物の搬送を継続することで、押出開口部1bに達した樹脂組成物を押出開口部1bから押し出す。
押出工程は、スクリュー1aの回転数が80rpm以上の条件で行い、好ましくは80rpm~120rpmの条件で行う。スクリュー1aの回転数が上記の範囲である条件で押出工程を行うことで、耐破袋性に優れた包装袋を形成することができるフィルムを得ることができる。
押出工程における出口圧力としては、好ましくは10Mpa~35Mpa、より好ましくは15Mpa~30Mpaである。なお、出口圧力とは、押出開口部1b付近における溶融樹脂にかかる圧力である。出口圧力の測定方法としては、押出開口部1b付近に圧力計を設置して測定する方法などが挙げられる。」
「[0061]
<プロピレン重合体>
第一工程として、チーグラー・ナッタ型触媒を用いて、気相重合法により、プロピレンを重合した。次いで、第二工程として、得られたプロピレンの単独重合体の存在下で、気相重合法により、プロピレンとエチレンとを共重合し、プロピレン重合体を得た。得られたプロピレン重合体は、プロピレン単独重合体(成分A)の含有量が77質量%であり、エチレン-プロピレン共重合体(成分B)の含有量が23質量%であった。また、成分Bにおけるエチレンに由来する構造単位の含有量が30質量%であった。
得られたプロピレン重合体100質量部に対して、水酸化カルシウム0.005質量%、スミライザーGP(2,4,8,10-テトラ-t-ブチル-6-[3-(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、住友化学株式会社製)0.075質量%、スミライザーGS(2,4―ジ-t-アミル-6-[1-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)エチル]フェニルアクリレート、住友化学株式会社製)0.03質量%、および、メルトフローレート調整剤(2,5-ジメチル-2,5ジ(ターシャリ-ブチルパーオキシ)ヘキサン)適量をプロピレン重合体と共にヘンシェルミキサーで混合した後、溶融押出を行ってペレット状のプロピレン重合体(PP1)を得た。得られたペレット状のプロピレン重合体(PP1)は、230℃で測定したメルトフローレートが3g/10分であった。」
「[0065]
<エチレン重合体(PE1)>
エチレン重合体(PE1)として、エチレン-ブテン-1共重合体(スミカセン FS240、住友化学株式会社製)を用いた。エチレン重合体(PE1)は、190℃で測定したメルトフローレートが2.0g/10分であり、密度が922kg/m3であった。
[0066]
[エチレン重合体(PE2)]
エチレン重合体(PE2)として、エチレン-ブテン-1共重合体(タフマー A4085s、三井化学株式会社製)を用いた。エチレン重合体(PE2)は、190℃で測定したメルトフローレートが3.6g/10分であり、密度が885kg/m3であった。」
[0081]
[表1]
[図:0001417642000003.jpg]
[0082]
<まとめ>
上記の表1を見ると、各実施例の方が各比較例よりも突刺破断荷重および突刺破断変形量が大きいことが認められる。そして、各実施例および各比較例の落袋強度を見ると、各実施例の方が点数が高いことが認められる。つまり、本発明のように、突刺破断荷重および突刺破断変形量が所定の範囲となるように構成されたフィルムを用いることで、耐破袋性に優れた包装袋を形成することができる。また、スクリュー1aの回転が本発明の範囲となる条件でフィルムを製造することで、得られたフィルムを用いて耐破袋性に優れた包装袋を形成することができる。」
(4)サポート要件違反の判断
本件明細書の[0018]~[0033]には、フィルムを構成する樹脂成分のうちプロピレン重合体について、[0034]~[0044]には、フィルムを構成する樹脂成分のうちエチレン重合体について、それぞれ好ましく用いられる共重合単位、共重合比、重合方法等について具体的に記載されており、[0065]~[0066]には、実施例で用いられたエチレン重合体PE-1及びPE-2がいずれも上記好ましいとされる範囲のメルトフローレート及び密度を有するものであることが記載されている。なお、甲参3の[0426]の記載を参酌すると、PE-1の融点は66℃、PE-2の融点は60℃であるから、融点も上記好ましいとされる範囲にある。
また、[0047]~[0058]には、上記プロピレン重合体及びエチレン重合体を含む樹脂組成物を用いてフィルムを製造する方法が記載されており、[0054]には上記プロピレン重合体とエチレン重合体の量比について、[0050]~[0053]には押出機のスクリュー形状について、[0057]にはスクリューの回転数についてそれぞれ好ましい態様が具体的に記載されている。
さらに、[0015]~[0017]及び[0057]には、押出工程におけるスクリュー回転数を所定の条件(80rpm以上、好ましくは80rpm~120rpm)に調節することにより、突刺破断荷重を好ましくは1900g~2200gの範囲、突刺破断変形量を好ましくは11.0mm~13.0mmの範囲とすることができること、及び突刺破断強度が上記の範囲であり突刺破断変形量が上記の範囲であるフィルムを用いることで、耐破袋性に優れた包装袋を形成することができることが記載されている。
加えて、[0061]には、実施例で用いられたプロピレン重合体PP1の製造方法が記載されており、プロピレン単独重合体(成分A)の含有量が77質量%であり、エチレン-プロピレン共重合体(成分B)の含有量が23質量%であり、成分Bにおけるエチレンに由来する構造単位の含有量が30質量%であるブロック共重合体であり、230℃で測定したメルトフローレートが3g/10分であったことが読み取れる。また、[0065]~[0067]には、実施例及び比較例で用いられたエチレン重合体が商品名で特定されている。
そして、[0071]~[0082]の実施例及び比較例の記載を参酌すると、当業者は、実施例で採用されたプロピレンブロック共重合体に代表される上記[0034]~[0044]に記載されたプロピレン重合体(「プロピレンに由来する構造単位を50質量%以上含むプロピレン重合体」)、及び実施例で採用されたエチレン-ブテン-1共重合体に代表される上記[0018]~[0033]に記載されたエチレン重合体(「エチレンに由来する構造単位を50質量%以上含むエチレン重合体」であって、「前記エチレン重合体は、エチレン-α-オレフィン共重合体であり、該エチレン-α-オレフィン共重合体は、エチレンに由来する構造単位を65質量%~98質量%含むと共に、炭素原子数4~12のα-オレフィンに由来する構造単位を2質量%~35質量%含み、密度が860kg/m3~930kg/m3であ」るもの)を、[0054]に記載された量比(「プロピレン重合体およびエチレン重合体の合計含有量100質量%に対して、プロピレン重合体の含有量が50質量%~95質量%であり、エチレン重合体の含有量が5質量%~50質量%」)で含む樹脂組成物を用いて、好ましくは[0047]~[0058]に記載されたような溶融押出条件で成膜することにより、「厚さが30μm~200μmであり、突刺破断荷重が1900g~2200gであり、突刺破断変形量が11.0mm~13.0mmである」という特性を備えるものとしたフィルムは、耐破袋性に優れた包装袋を形成することができるものであり、本件発明の課題を解決することができると認識することができる。
本件発明1は、当業者が発明の課題を解決できると認識することができる上記フィルムの特性を全て備えた発明であるから、本件発明1について、当業者は上記発明の課題を解決できると認識することがでる。
請求項1を直接又は間接的に引用して特定され、本件発明1の発明特定事項を全て備える本件発明4、5、7、並びに、本件発明1と同様の樹脂組成物が「100rpm~120rpmで回転するスクリューを備える押出機を用いて押し出されて成膜され」、本件発明1と同様の厚さ、突刺破断荷重及び突刺破断変形量を備えるフィルムであることが特定された本件発明8についても同様である。
(5)申立人の主張について
申立人は、令和6年6月28日に提出した意見書3~5頁において、(a)「本件明細書の[0017]・・・突刺破断荷重及び突刺破断変形量は、耐破袋性と深く関連しており、耐破袋性と同様の挙動を示すことがわかる」ところ、「エチレン-α-オレフィン共重合(ママ)やプロピレン重合体の特性(融点、密度等)が実施例の物と異なると、突刺破断荷重及び突刺破断変形量が訂正発明1で規定する範囲になるか明らかではなく、訂正発明1の課題を解決し得るか否か、当業者が十分に認識できるものではなく、サポート要件を満たすとは到底いえない」こと、及び(b)「押出成形において、分散状態や樹脂劣化度合いは、スクリューの形状等によって変動するため、スクリューの径を40mm~200mmに設定しただけでは、突刺破断荷重及び突刺破断変形量が訂正発明1で規定する範囲になるか明らかではなく、訂正発明7の課題を解決し得るか否か、当業者が十分に認識できるものではなく、サポート要件を満たすとは到底いえない」ことを主張している。
しかし、(a)については、上記(4)に記載したとおり、申立人も引用する本件明細書の[0017]の記載等を参酌すると、当業者は「突刺破断荷重が1900g~2200gであり、突刺破断変形量が11.0mm~13.0mmである」という発明特定事項を備える本件発明1のフィルムにより、「耐破袋性に優れた包装体を形成することができるフィルムを提供する」という課題を解決し得るものと認識することができる。そして、当業者は、本件明細書に記載されたプロピレン重合体及びエチレン重合体についての説明及び樹脂組成物を用いて成膜する方法についての説明を参照することにより、実施例で採用されたものとは異なるプロピレン重合体及びエチレン重合体であっても、本件発明1に特定される範囲のプロピレン重合体及びエチレン重合体を用いて、「厚さが30μm~200μmであり、突刺破断荷重が1900g~2200gであり、突刺破断変形量が11.0mm~13.0mmである」フィルムを得ることができ、得られたフィルムは上記課題を解決し得るものと認識することができる。また、申立人は、実施例以外の樹脂組成物では「厚さが30μm~200μmであり、突刺破断荷重が1900g~2200gであり、突刺破断変形量が11.0mm~13.0mmである」フィルムを得ることができないことを裏付ける具体的な証拠を示していない。よって、申立人の主張を採用することはできない。
(b)については、上記(4)に記載したとおり、本件明細書の[0050]~[0053]には押出機のスクリュー形状について、[0057]にはスクリューの回転数についてそれぞれ好ましい態様が具体的に記載されているから、当業者は本件発明7において特定される「スクリューの径が40mm~200mmである」押出機を用いたフィルムの製造方法によって、「厚さが30μm~200μmであり、突刺破断荷重が1900g~2200gであり、突刺破断変形量が11.0mm~13.0mmである」フィルムを製造することができ、「耐破袋性に優れた包装袋を形成することができるフィルムの製造方法を提供する」という課題を解決することができると認識することができる。また、申立人が示した甲参1’及び甲参2’を参酌すると、押出機における押出条件を調整する手段は、本件特許に係る出願の出願当時における技術常識といえるものであるから、当業者は、本件明細書の記載及び当該出願時の技術常識に照らし、「スクリューの径が40mm~200mmである」ことが特定された本件発明7によって、「厚さが30μm~200μmであり、突刺破断荷重が1900g~2200gであり、突刺破断変形量が11.0mm~13.0mmである」フィルムを製造することができ、上記課題を解決し得るものと認識することができる。さらに、申立人は、スクリューの径が40mm~200mmでは「厚さが30μm~200μmであり、突刺破断荷重が1900g~2200gであり、突刺破断変形量が11.0mm~13.0mmである」フィルムを製造することができないことを裏付ける具体的な証拠を示していない。よって、申立人の主張を採用することはできない。
(6)取消理由3(サポート要件違反)についてのまとめ
以上のことから、本件発明1、4、5、7及び8は、いずれも発明の詳細な説明に記載したものであるといえるから、特許法第36条第6項第1号に適合するものであり、それらの発明についての特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものである。
よって、取消理由3(サポート要件違反)により本件発明1、4、5、7及び8についての特許を取り消すことはできない。
3.取消理由通知に記載した取消理由についてのまとめ
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由1(甲2に基づく新規性欠如)、取消理由2(甲2に基づく進歩性欠如)及び取消理由3(サポート要件違反)のいずれの取消理由によっても、本件発明1、4、5、7及び8についての特許を取り消すことはできない。
第7 取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由についての当審の判断
当審は、特許異議申立理由はいずれも理由がないものと判断する。理由は以下のとおり。
1.取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由の概要
上記第4の1.(2)及び(3)に記載した申立理由2-1(甲2に基づく新規性欠如)及び申立理由2-2(甲2に基づく進歩性欠如)は取消理由通知で採用したが(上記第5の取消理由1及び取消理由2)、その他の申立理由は採用しなかった。以下、検討する。
2.申立理由1(甲1に基づく拡大先願)について
(1)引用出願
甲1に係る日本語特許出願:PCT/JP2019/013399(国際公開第2019/189486号)
甲1に係る日本語特許出願(以下、「甲1出願」という。)は、本件特許の出願日前である2019年(平成31年)3月27日を国際出願日とする出願であり、その後、令和元年10月3日に国際公開がされたものであり、しかも、本件特許に係る出願の発明者は甲1出願の発明者と同一でなく、また、本件特許に係る出願の出願時において、その出願人は甲1出願の出願人と同一でもない。
(2)甲1出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載された事項
甲1出願の当初明細書等には、以下の事項が記載されている。
(1-1)「[請求項1] 下記要件(a-1)~(a-4)を満たすプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)を75~95質量%、
下記要件(b-1)および(b-2)を満たすエチレン・α-オレフィン共重合体(B)を5~25質量%含有することを特徴とするプロピレン系樹脂組成物。
(a-1)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が2.0~8.0g/10分である。
(a-2)パラキシレン可溶成分量が15質量%以上であり、かつ、パラキシレン可溶成分量(質量%)とn-デカン可溶成分量(質量%)とが、次の関係式(1)を満たす。
n-デカン可溶成分量≦パラキシレン可溶成分量×0.95 …(1)
(a-3)パラキシレン可溶成分中の、エチレンに由来する構造単位の含有量が、20~30質量%である。
(a-4)パラキシレン不溶成分中の、ペンタッドアイソタクティック分率が、94mol%以上である。
(b-1)メルトフローレート(190℃、2.16kg荷重)が0.5~5.0g/10分である。
(b-2)密度が890kg/m3~910kg/m3である。
・・・
[請求項3]
請求項1または2に記載のプロピレン系樹脂組成物からなることを特徴とするフィルム。」
(1-2)「発明が解決しようとする課題
[0014] 本発明は、低温での耐衝撃性およびレトルト後のヒートシール強度に高度に優れるとともに、剛性、透明性にも優れ、ハイレトルトCPPとして好適に使用可能なフィルムを製造し得るプロピレン系樹脂組成物、それを用いたフィルムおよび積層体、ならびにレトルトパウチを提供することを課題としている。」
(1-3)「発明の効果
[0019] 本発明のプロピレン系樹脂組成物は、ハイレトルトCPPフィルム等のフィルム製造に好適であり、耐ブロッキング性にも優れる。本発明のプロピレン系樹脂組成物から得られたフィルムは、ヒートシール性に優れ、ヒートシール強度が高く、レトルトパウチの内層面として好適であり、低温での耐衝撃性に優れ、ハイレトルトCPPフィルムとしての品質に優れるとともに、透明性、剛性にも優れる。本発明の積層体およびそれからなるレトルトパウチは、耐ブロッキング性に優れることから内容物の充填時の取り扱い性に優れ、ヒートシール強度が高く、レトルト殺菌処理後のヒートシール強度に優れる。」
(1-4)「[0024] 本発明で用いるプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)は、通常、プロピレン単独重合体部と、プロピレン・エチレンランダム共重合体部あるいはエチレン重合体部とを有するブロック共重合体である。プロピレン単独重合体部と、プロピレン・エチレンランダム共重合体部とを有するプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)においては、主としてプロピレン・エチレンランダム共重合体部がパラキシレン可溶成分およびn-デカン可溶成分となり、主としてプロピレン単独重合体部がパラキシレン不溶成分およびn-デカン不溶成分となる。ここで、パラキシレンとn-デカンとでは、n-デカンの方が貧溶媒となることから、共重合体中の若干の結晶性を有する部分については、パラキシレンには溶解し、n-デカンには不溶となるという差異が生じると考えられる。
(1-5)「[0088] プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)のn-デカン不溶成分およびパラキシレン不溶成分は、主として、プロピレン単独重合体成分から構成される。一方、n-デカン可溶成分およびパラキシレン可溶成分は、主としてゴム状成分であるエチレン・プロピレン共重合体成分から構成される。例えば、以下の二つの重合工程1及び2を連続的に実施することによって、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)が得られる。」
(1-6)「[0096] 本発明に係るエチレン・α-オレフィン共重合体(B)は、エチレンと、α-オレフィンとを、共重合触媒の存在下で共重合させたものである。・・・また、α-オレフィンが、炭素数4~20のα-オレフィンであることも好ましく、なかでも、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンが好ましい。エチレンと共重合するα-オレフィンは、1種単独でもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。」
(1-7)「[0124]
・・・
(12)落袋試験
積層フィルムを用いて、縦方向175mm、横方向125mmの3方シール袋を、製袋機を使用して作成した。なおシール幅は、10mmである。作成した3方シール袋に、水200mlを充填し、エア抜きを行った上で、口部をシールした。
[0125]
このような袋を20袋準備し、5℃の雰囲気下で24時間静置した後、1つの袋に対して、高さ10cmから、横方向が落下方向になるような落下、袋サイズと同様なサイズの重り1300gを添えた面部からの落下を1セットとし、20セットを上限に落下を繰り返し、破袋までの回数を数えた。20袋準備した袋の破袋までの回数を平均し、その平均値を平均破袋回数とした。」
(1-8)「[0126]
[製造例1]
(プロピレン・エチレンブロック共重合体(A-1)の製造)
(1)固体状チタン触媒成分の調製
無水塩化マグネシウム95.2g、デカン442mlおよび2-エチルヘキシルアルコール390.6gを130℃で2時間加熱反応を行って均一溶液とした後、この溶液中に無水フタル酸21.3gを添加し、さらに130℃にて1時間攪拌混合を行い、無水フタル酸を溶解させた。
[0127]
このようにして得られた均一溶液を室温に冷却した後、-20℃に保持した四塩化チタン200ml中に、この均一溶液の75mlを1時間にわたって滴下装入した。装入終了後、この混合液の温度を4時間かけて110℃に昇温し、110℃に達したところでフタル酸ジイソブチル(DIBP)5.22gを添加し、これより2時間同温度にて攪拌保持した。
[0128]
2時間の反応終了後、熱濾過にて固体部を採取し、この固体部を275mlの四塩化チタンに再懸濁させた後、再び110℃で2時間、加熱した。反応終了後、再び熱濾過にて固体部を採取し、110℃のデカンおよびヘキサンにて溶液中に遊離のチタン化合物が検出されなくなるまで充分洗浄した。
[0129]
上記の様に調製された固体状チタン触媒成分はヘキサンスラリーとして保存されるが、このうち一部を乾燥して触媒組成を調べた。固体状チタン触媒成分は、チタンを2.3質量%、塩素を61質量%、マグネシウムを19質量%およびDIBPを12.5質量%の量で含有していた。
(2)前重合触媒の製造
(1)で調製した固体状チタン触媒成分87.5g、トリエチルアルミニウム19.5mL、ヘプタン10Lを内容量20Lの攪拌機付きオートクレーブに装入し、内温15~20℃に保ちプロピレンを263g装入し、100分間攪拌しながら反応させた。重合終了後、固体成分を沈降させ、上澄み液の除去およびヘプタンによる洗浄を2回行った。得られた前重合触媒を精製ヘプタンに再懸濁して、固体触媒成分濃度で0.7g/Lとなるよう、ヘプタンにより調整を行って触媒スラリーを得た。
(3)本重合
内容量58Lの攪拌機付きベッセル重合器に、プロピレンを30kg/時間、水素を40NL/時間、前記(2)で製造した触媒スラリーを遷移金属触媒成分として0.44g/時間、トリエチルアルミニウム4.9mL/時間、ジシクロペンチルジメトキシシラン1.6mL/時間を連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状重合器の温度は70℃であり、圧力は3.3MPa/G(G=ゲージ圧力)であった。
[0130]
得られたスラリーは内容量70Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを15kg/時間、水素を気相部の水素濃度が1.5mol%になるように供給した。重合温度70℃、圧力3.0MPa/Gで重合を行った。
[0131]
得られたスラリーを内容量2.4Lの移液管に移送し、当該スラリーをガス化させ、気固分離を行った後、内容量480Lの気相重合器にポリプロピレンホモポリマーパウダーを送り、エチレン/プロピレンブロック共重合を行った。気相重合器内のガス組成が、エチレン/(エチレン+プロピレン)=0.20(モル比)、水素/エチレン=0.078(モル比)になるようにプロピレン、エチレン、水素を連続的に供給した。重合温度70℃、圧力1.0MPa/Gで重合を行った。
[0132]
得られたスラリーは失活、気化後、気固分離を行い、80℃で真空乾燥を行った。これにより、ポリプロピレン部とエチレン・プロピレン共重合体部とを有する、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A-1)を得た。
[0133]
得られたプロピレン・エチレンブロック共重合体(A-1)の物性を表1に示す。
(単層フィルムの製造・評価)
得られたプロピレン・エチレンブロック共重合体(A-1)を用い、製膜機として単層CPP試験機(三菱重工製、φ75mm)を用い、樹脂温度設定:250℃、チルロール温度設定:40℃、エアギャップ長さ:約80mm、製膜速度40m/分の条件で、膜厚70μmのフィルムを押出成形し、40℃で24時間静置してエージングを行い、単層フィルムを得た。得られた単層フィルムについて、透明性(ヘイズ値)、ブロッキング強度および引張弾性率を、上述の方法により測定した。結果を表1に併せて示す。
(積層フィルムの製造・評価)
外面から、ポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm)/アルミニウム箔(7μm)/上記で得た単層フィルム(70μm)となる構成で、ハイレトルトCPP用ドライラミ接着剤(ポリエステルポリオール系、固形分35%)を層間に用いて、ライン速度80m/分の条件でドライラミネートし、接着剤の効果のために40℃で5日間エージングを行って積層フィルムを得た。
[0134]
得られた積層フィルムを用いて、上述の方法でヒートシール強度の評価および落体試験を行った。結果を表1に併せて示す。」
(1-9)「[0135]
[製造例2]
(プロピレン・エチレンブロック共重合体(A-2)の製造)
(1)固体状チタン触媒成分の調製
無水塩化マグネシウム95.2g、デカン442mlおよび2-エチルヘキシルアルコール390.6gを130℃で2時間加熱反応を行って均一溶液とした後、この溶液中に無水フタル酸21.3gを添加し、さらに130℃にて1時間攪拌混合を行い、無水フタル酸を溶解させた。
[0136]
このようにして得られた均一溶液を室温に冷却した後、-20℃に保持した四塩化チタン200ml中に、この均一溶液の75mlを1時間にわたって滴下装入した。装入終了後、この混合液の温度を4時間かけて110℃に昇温し、110℃に達したところでフタル酸ジイソブチル(DIBP)5.22gを添加し、これより2時間同温度にて攪拌保持した。
[0137]
2時間の反応終了後、熱濾過にて固体部を採取し、この固体部を275mlの四塩化チタンに再懸濁させた後、再び110℃で2時間、加熱した。反応終了後、再び熱濾過にて固体部を採取し、110℃のデカンおよびヘキサンにて溶液中に遊離のチタン化合物が検出されなくなるまで充分洗浄した。
[0138]
上記の様に調製された固体状チタン触媒成分はヘキサンスラリーとして保存されるが、このうち一部を乾燥して触媒組成を調べた。固体状チタン触媒成分は、チタンを2.3重量%、塩素を61重量%、マグネシウムを19重量%およびDIBPを12.5重量%の量で含有していた。
(2)前重合触媒の製造
固体触媒成分100g、トリエチルアルミニウム91.2mL、2-イソブチル、2-イソプロピル、1,3ジメトキシプロパン30.8ml、ヘプタン10Lを内容量20Lの攪拌機付きオートクレーブに挿入し、内温15~20℃に保ちプロピレンを1000g挿入し、100分間攪拌しながら反応させた。重合終了後、固体成分を沈降させ、上澄み液の除去およびヘプタンによる洗浄を2回行った。得られた前重合触媒を精製ヘプタンに再懸濁して、固体触媒成分濃度で0.75g/Lとなるよう、ヘプタンにより調整を行った。
(3)本重合
内容量58Lの攪拌機付きベッセル重合器に、プロピレンを30kg/時間、水素を27NL/時間、前記(2)で製造した触媒スラリーを遷移金属触媒成分として0.33g/時間、トリエチルアルミニウム2.9mL/時間、ジシクロペンチルジメトキシシラン0.76mL/時間を連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状重合器の温度は70℃であり、圧力は3.3MPa/Gであった。
[0139]
得られたスラリーは内容量70Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを15kg/時間、水素を気相部の水素濃度が2.2mol%になるように供給した。重合温度70℃、圧力3.0MPa/Gで重合を行った。
[0140]
得られたスラリーを内容量2.4Lの移液管に移送し、当該スラリーをガス化させ、気固分離を行った後、内容量480Lの気相重合器にポリプロピレンホモポリマーパウダーを送り、エチレン/プロピレンブロック共重合を行った。気相重合器内のガス組成が、エチレン/(エチレン+プロピレン)=0.1965(モル比)、水素/エチレン=0.1296(モル比)になるようにプロピレン、エチレン、水素を連続的に供給した。重合温度70℃、圧力1.1MPa/Gで重合を行った。
[0141]
得られたスラリーは失活、気化後、気固分離を行い、80℃で真空乾燥を行った。これにより、ポリプロピレン部とエチレン・プロピレン共重合体部とを有する、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A-2)を得た。
[0142]
得られたプロピレン・エチレンブロック共重合体(A-2)の物性、およびそれを用いて製造例1と同様に作成した単層フィルムおよび積層フィルムの物性評価結果を表1に示す。」
(1-10)「[0152][表1]
[図:0001417642000004.jpg]
[実施例1]
(プロピレン系樹脂組成物(1)の製造)
製造例1で得たプロピレン・エチレンブロック共重合体(A-1)80質量部と、エチレン・ヘキセン-1共重合体であるエチレン・α-オレフィン共重合体(B-1)((株)プライムポリマー製、商品名:エボリュー(登録商標)SP0510、MFR:1.2g/10分、密度904kg/m3、n-デカン可溶成分2.3質量%)20重量部とを配合し、二軸混練機で混練・造粒して、プロピレン系樹脂組成物(1)を得た。
[0153]
得られたプロピレン系樹脂組成物(1)を用いて、製膜機として単層CPP試験機(三菱重工製、φ75mm)を用い、樹脂温度設定:250℃、チルロール温度設定:40℃、エアギャップ長さ:約80mm、製膜速度40m/分の条件で、膜厚70μmのフィルムを押出成形し、40℃で24時間静置してエージングを行い、単層フィルムを得た。得られた単層フィルムについて、透明性(ヘイズ値)、ブロッキング強度および引張弾性率を、上述の方法により測定した。結果を表2に示す。
(積層フィルムの製造・評価)
外面から、ポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm)/アルミニウム箔(7μm)/上記で得た単層フィルム(70μm)となる構成で、ハイレトルトCPP用ドライラミ接着剤(ポリエステルポリオール系、固形分35%)を層間に用いて、ライン速度80m/分の条件でドライラミネートし、接着剤の効果のために40℃で5日間エージングを行って積層フィルムを得た。
[0154]
得られた積層フィルムを用いて、上述の方法で、ヒートシール温度200℃および220℃でのヒートシール強度の評価、および落体試験を行った。結果を表2に併せて示す。
[0155]
[実施例2]
実施例1において、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A-1)に代えて、製造例2で得たプロピレン・エチレンブロック共重合体(A-2)を用いたことの他は、実施例1と同様にして、プロピレン系樹脂組成物、単層フィルムおよび積層フィルムを製造し、各性状を評価した。結果を表2に示す。
[0156]
[実施例3]
実施例2において、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A-2)と、エチレン・α-オレフィン共重合体(B-1)の配合量を、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A-2)90質量部、エチレン・α-オレフィン共重合体(B-1)10質量部に変更したことの他は、実施例2と同様にしてプロピレン系樹脂組成物、単層フィルムおよび積層フィルムを製造し、各性状を評価した。結果を表2に示す。」
(1-11)「[0162]
[表2]
[図:0001417642000005.jpg]
」
(3)甲1出願の当初明細書等に記載された発明
甲1の請求項1及び3(摘記1-1)には「下記要件(a-1)~(a-4)を満たすプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)を75~95質量%、
下記要件(b-1)および(b-2)を満たすエチレン・α-オレフィン共重合体(B)を5~25質量%含有することを特徴とするプロピレン系樹脂組成物。
(a-1)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が2.0~8.0g/10分である。
(a-2)パラキシレン可溶成分量が15質量%以上であり、かつ、パラキシレン可溶成分量(質量%)とn-デカン可溶成分量(質量%)とが、次の関係式(1)を満たす。
n-デカン可溶成分量≦パラキシレン可溶成分量×0.95 …(1)
(a-3)パラキシレン可溶成分中の、エチレンに由来する構造単位の含有量が、20~30質量%である。
(a-4)パラキシレン不溶成分中の、ペンタッドアイソタクティック分率が、94mol%以上である。
(b-1)メルトフローレート(190℃、2.16kg荷重)が0.5~5.0g/10分である。
(b-2)密度が890kg/m3~910kg/m3である。」及び「請求項1または2に記載のプロピレン系樹脂組成物からなることを特徴とするフィルム。」が記載されており、[0152]~[0154](摘記1-10)には、実施例1として、「プロピレン・エチレンブロック共重合体(A-1)80重量部と、エチレン・ヘキセン-1共重合体であるエチレン・α-オレフィン共重合体(B-1)((株)プライムポリマー製、商品名:エボリュー(登録商標)SP0510、MFR:1.2g/10分、密度904kg/m3、n-デカン可溶成分2.3質量%)20重量部とを配合し、二軸混練機で混練・造粒して、プロピレン系樹脂組成物(1)を得」て、「得られたプロピレン系樹脂組成物(1)を用いて、製膜機として単層CPP試験機(三菱重工製、φ75mm)を用い、樹脂温度設定:250℃、チルロール温度設定:40℃、エアギャップ長さ:約80mm、製膜速度40m/分の条件で、膜厚70μmのフィルムを押出成形し、40℃で24時間静置してエージングを行い、単層フィルムを得た」ことが記載されている。また、[0126]~[0134](摘記1-8)には、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A-1)の製造方法が記載されており、[0132]には「ポリプロピレン部とエチレン・プロピレン共重合体部とを有する、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A-1)を得た」ことが記載され、[0152]の[表1](摘記1-10)には、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A-1)のパラキシレン可溶成分量は19.8質量%であり、n-デカン可溶成分量は16.8質量%であることが記載されている。
そうすると、甲1出願の当初明細書等には、実施例1に基づいて以下の発明が記載されている。
「パラキシレン可溶成分量が19.8質量%であり、n-デカン可溶成分量が16.8質量%である、ポリプロピレン部とエチレン・プロピレン共重合体部とを有するプロピレン・エチレンブロック共重合体(A-1)80重量部と、エチレン・ヘキセン-1共重合体であるエチレン・α-オレフィン共重合体(B-1)((株)プライムポリマー製、商品名:エボリュー(登録商標)SP0510、MFR:1.2g/10分、密度904kg/m3、n-デカン可溶成分2.3質量%)20重量部とを配合し、二軸混練機で混練・造粒し、得られたプロピレン系樹脂組成物(1)を用いて、製膜機として単層CPP試験機(三菱重工製、φ75mm)を用い、樹脂温度設定:250℃、チルロール温度設定:40℃、エアギャップ長さ:約80mm、製膜速度40m/分の条件で、膜厚70μmのフィルムを押出成形し、40℃で24時間静置してエージングを行うことにより得た、単層フィルム。」(以下、「甲1実施例1発明」という。)
また、甲1の[0155](摘記1-10)には、実施例2として、「実施例1において、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A-1)に代えて、製造例2で得たプロピレン・エチレンブロック共重合体(A-2)を用いたことの他は、実施例1と同様にして、プロピレン系樹脂組成物、単層フィルムおよび積層フィルムを製造し」たことが記載され、[0156](摘記1-10)には、実施例3として、「実施例2において、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A-2)と、エチレン・α-オレフィン共重合体(B-1)の配合量を、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A-2)90質量部、エチレン・α-オレフィン共重合体(B-1)10質量部に変更したことの他は、実施例2と同様にしてプロピレン系樹脂組成物、単層フィルムおよび積層フィルムを製造し」ことが記載されており、[0135]~[0142](摘記1-9)には、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A-2)の製造方法が記載されており、[0141]には「ポリプロピレン部とエチレン・プロピレン共重合体部とを有する、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A-2)を得た」ことが記載され、[0152]の[表1](摘記1-10)には、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A-2)のパラキシレン可溶成分量は23.8質量%であり、n-デカン可溶成分量は20.2質量%であることが記載されている。
そうすると、甲1出願の当初明細書等には、実施例2又は3に基づいて以下の発明が記載されている。
「パラキシレン可溶成分量が23.8質量%であり、n-デカン可溶成分量が20.2質量%である、ポリプロピレン部とエチレン・プロピレン共重合体部とを有するプロピレン・エチレンブロック共重合体(A-2)80重量部と、エチレン・ヘキセン-1共重合体であるエチレン・α-オレフィン共重合体(B-1)((株)プライムポリマー製、商品名:エボリュー(登録商標)SP0510、MFR:1.2g/10分、密度904kg/m3、n-デカン可溶成分2.3質量%)20重量部とを配合し、二軸混練機で混練・造粒し、得られたプロピレン系樹脂組成物(1)を用いて、製膜機として単層CPP試験機(三菱重工製、φ75mm)を用い、樹脂温度設定:250℃、チルロール温度設定:40℃、エアギャップ長さ:約80mm、製膜速度40m/分の条件で、膜厚70μmのフィルムを押出成形し、40℃で24時間静置してエージングを行うことにより得た、単層フィルム。」(以下、「甲1実施例2発明」という。)
「パラキシレン可溶成分量が23.8質量%であり、n-デカン可溶成分量が20.2質量%である、ポリプロピレン部とエチレン・プロピレン共重合体部とを有するプロピレン・エチレンブロック共重合体(A-2)90重量部と、エチレン・ヘキセン-1共重合体であるエチレン・α-オレフィン共重合体(B-1)((株)プライムポリマー製、商品名:エボリュー(登録商標)SP0510、MFR:1.2g/10分、密度904kg/m3、n-デカン可溶成分2.3質量%)10重量部とを配合し、二軸混練機で混練・造粒し、得られたプロピレン系樹脂組成物(1)を用いて、製膜機として単層CPP試験機(三菱重工製、φ75mm)を用い、樹脂温度設定:250℃、チルロール温度設定:40℃、エアギャップ長さ:約80mm、製膜速度40m/分の条件で、膜厚70μmのフィルムを押出成形し、40℃で24時間静置してエージングを行うことにより得た、単層フィルム。」(以下、「甲1実施例3発明」という。)
以下、「甲1実施例1発明」~「甲1実施例3発明」をまとめて「甲1発明」ということがある。
(4)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明との対比
本件発明1と甲1実施例1発明とを対比する。
甲1の[0024](摘記1-4)及び[0088](摘記1-5)には、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)について、「主としてプロピレン・エチレンランダム共重合体部がパラキシレン可溶成分およびn-デカン可溶成分となり、主としてプロピレン単独重合体部がパラキシレン不溶成分およびn-デカン不溶成分となる」ことが記載されているから、甲1実施例1発明における「パラキシレン可溶成分量が19.8質量%であり、n-デカン可溶成分量が16.8質量%である、ポリプロピレン部とエチレン・プロピレン共重合体部とを有するプロピレン・エチレンブロック共重合体(A-1)」は、プロピレン・エチレンランダム共重合体部を19.8質量%又は16.8質量%含み、プロピレン単独重合体部を80.2質量%又は83.2質量%含むものと解される。そうすると、甲1実施例1発明における上記「プロピレン・エチレンブロック共重合体(A-1)」は、本件発明1における「プロピレンに由来する構造単位を50質量%以上含むプロピレン重合体」に相当する。
また、甲1実施例1発明における「エチレン・ヘキセン-1共重合体であるエチレン・α-オレフィン共重合体(B-1)((株)プライムポリマー製、商品名:エボリュー(登録商標)SP0510、MFR:1.2g/10分、密度904kg/m3、n-デカン可溶成分2.3質量%)」については、甲参1の実施例1([0024])における同商品名の記載及び[0012]におけるα-オレフィンの共重合量は4~15mol%が好ましい旨の記載を参酌すると、エチレンに由来する構造単位を85~96mol%含むと共に、ヘキセン-1に由来する構造単位を4~15mol%含むもの、すなわち、エチレンに由来する構造単位を65~89質量%含むと共に、ヘキセン-1に由来する構造単位を11~35質量%含むものと解されるから、本件発明1における「エチレンに由来する構造単位を50質量%以上含むエチレン重合体」に相当し、かつ、「前記エチレン重合体は、エチレン-α-オレフィン共重合体であり、該エチレン-α-オレフィン共重合体は、エチレンに由来する構造単位を65質量%~98質量%含むと共に、炭素原子数4~12のα-オレフィンに由来する構造単位を2質量%~35質量%含み、密度が860kg/m3~930kg/m3であり」に相当する。
甲1実施例1発明は、上記プロピレン・エチレンブロック共重合体(A-1)80重量部と、上記エチレン・α-オレフィン共重合体(B-1)20重量部とを配合したプロピレン系樹脂組成物(1)を用いて製膜されたものであるから、本件発明1における「プロピレン重合体およびエチレン重合体の合計含有量100質量%に対して、プロピレン重合体の含有量が50質量%~95質量%であり、エチレン重合体の含有量が5質量%~50質量%であり」に相当する。
甲1実施例1発明における「膜厚70μm」及び「単層フィルム」は、それぞれ本件発明1における「厚さが30μm~200μm」及び「フィルム」に相当する。
そうすると、両者は、
「プロピレンに由来する構造単位を50質量%以上含むプロピレン重合体と、エチレンに由来する構造単位を50質量%以上含むエチレン重合体とを含有するフィルムであって、
プロピレン重合体およびエチレン重合体の合計含有量100質量%に対して、プロピレン重合体の含有量が50質量%~95質量%であり、エチレン重合体の含有量が5質量%~50質量%であり、
前記エチレン重合体は、エチレン-α-オレフィン共重合体であり、該エチレン-α-オレフィン共重合体は、エチレンに由来する構造単位を65質量%~98質量%含むと共に、炭素原子数4~12のα-オレフィンに由来する構造単位を2質量%~35質量%含み、密度が860kg/m3~930kg/m3であり、
厚さが30μm~200μmである、フィルム。」
の点で一致し、
相違点甲1-1:本件発明1は「突刺破断荷重が1900g~2200gであり、突刺破断変形量が11.0mm~13.0mmである、」と特定するのに対し、甲1実施例1発明はそのように特定されていない点
で相違する。
また、本件発明1と甲1実施例2発明又は甲1実施例3発明とを対比したときの一致点及び相違点は、本件発明1と甲1実施例1発明とを対比したときの一致点及び相違点と同様である。
そこで、相違点甲1-1について検討する。
イ 相違点甲1-1について
甲1には、相違点甲1-1に係る突刺破断荷重及び突刺破断変形量については具体的に記載されていない。また、上記第6 1.(3)イ(ア)「新規性について」に記載したように、本件明細書の[0015]、[0016]、[0057]及び[0060]~[0082]の実施例の記載等を参酌すると、相違点甲1-1に係る「突刺破断荷重が1900g~2200gであり、突刺破断変形量が11.0mm~13.0mmである」という特性は、所定の樹脂組成物の押出工程をスクリューの回転数が100rpm~120rpmの条件で行うことにより得られると解されるが、甲1には甲1発明の押出成形時のスクリュー回転数は記載されていないから、スクリュー回転数の観点から異同を判断することはできない。さらに、他の証拠を参酌しても、甲1発明が相違点1に係る特定の範囲の突刺破断荷重及び突刺破断変形量を示すものとは認められない。
よって、相違点甲1-1は実質的な相違点である。
ウ 申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書50~52頁において、「スクリュー回転数を100rpm以上の範囲に調整することは、当業者であれば、周知技術、慣用技術に基づいて、適宜、なしうること」であり、また、甲1には低温での耐衝撃性に優れ、剛性にも優れること([0019]、摘記1-3)、及び落袋強度([0162]の[表2]、摘記1-11)が示されているから、上記相違点甲1-1は「課題解決のための具体化手段における微差(周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものではないもの)に過ぎない」旨を主張している。
しかし、甲1には、甲1発明の押出成形時のスクリュー回転数は記載されておらず、本件明細書において好ましいとされる100rpm~120rpmであったことは読み取れない。また、他の証拠を参照しても、本件特許に係る出願の出願当時において100rpm~120rpmという数値範囲が一般的な押出条件であったとは認められない。
さらに、甲1の[0124](摘記1-7)に記載された落袋試験の試験条件は本件明細書の[0079]に記載された落袋強度の試験条件とは異なるから、仮に甲1に記載された落袋試験の結果を参酌しても、甲1発明が相違点甲1-1に係る特定の範囲の突刺破断荷重及び突刺破断変形量を備えていることにはならない。また、甲1の[0014](摘記1-2)には、甲1発明が解決しようとする課題が「低温での耐衝撃性およびレトルト後のヒートシール強度に高度に優れるとともに、剛性、透明性にも優れ、ハイレトルトCPPとして好適に使用可能なフィルムを製造し得るプロピレン系樹脂組成物、それを用いたフィルムおよび積層体、ならびにレトルトパウチを提供すること」にあることが記載されているが、突刺破断荷重及び突刺破断変形量については言及がなく、課題の解決手段として相違点甲1-1に係る特定の範囲の突刺破断荷重及び突刺破断変形量を採用することも記載されていないから、甲1発明の落袋試験の結果が、フィルムの突刺破断荷重及び突刺破断変形量を相違点甲1-1に係る特定の範囲に調整したことに由来するものと解することはできない。
加えて、申立人は甲1発明の突刺破断荷重及び突刺破断変形量の実測値等の具体的な証拠は示していない。
よって、申立人の主張を採用することはできない。
エ 本件発明1についてのまとめ
以上のことから、相違点甲1-1は実質的な相違点であり、本件発明1は甲1出願の当初明細書等に記載された発明ではない。
(5)本件発明4、5、7について
本件発明4、5、7は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。
そうすると、本件発明1と同様の理由により、本件発明4、5、7は、いずれも甲1出願の当初明細書等に記載された発明ではない。
(6)本件発明8について
ア 本件発明8と甲1発明との対比
上記(4)アに記載した本件発明1と甲1発明との対比を踏まえて、本件発明8と甲1発明とを対比すると、両者は、
「プロピレンに由来する構造単位を50質量%以上含むプロピレン重合体と、エチレンに由来する構造単位を50質量%以上含むエチレン重合体とを含有し、プロピレン重合体およびエチレン重合体の合計含有量100質量%に対して、プロピレン重合体の含有量が50質量%~95質量%であり、エチレン重合体の含有量が5質量%~50質量%であり、前記エチレン重合体は、エチレン-α-オレフィン共重合体であり、該エチレン-α-オレフィン共重合体は、エチレンに由来する構造単位を65質量%~98質量%含むと共に、炭素原子数4~12のα-オレフィンに由来する構造単位を2質量%~35質量%含み、密度が860kg/m3~930kg/m3である組成物が溶融混練されたものが、スクリューを備える押出機を用いて押し出されて成膜され、厚さが30μm~200μmであるフィルム。」
の点で一致し
相違点甲1-2:本件発明8は「100rpm~120rpmで回転するスクリューを備える押出機」と特定するのに対し、甲1発明は押出機のスクリュー回転数が特定されていない点
相違点甲1-3:本件発明8は「突刺破断荷重が1900g~2200gであり、突刺破断変形量が11.0mm~13.0mmである、」と特定するのに対し、甲1発明はそのように特定されていない点
で相違する。そこで、事案に鑑みて相違点甲1-3について検討する。
イ 相違点甲1-3について
相違点甲1-3は、実質的に相違点甲1-1と同じ内容の相違点であるから、上記(4)イと同様に判断される。
ウ 本件発明8についてのまとめ
よって、相違点甲1-2について検討するまでもなく、本件発明8は甲1出願の当初明細書等に記載された発明ではない。
(7)申立理由1(甲1に基づく拡大先願)についてのまとめ
以上まとめると、本件発明1、4、5、7、8は、いずれも甲1出願の当初明細書等に記載された発明ではないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものではない。
よって、申立理由1(甲1に基づく拡大先願)により本件発明1、4、5、7、8についての特許を取り消すことはできない。
3.申立理由3(甲3に基づく進歩性欠如)について
(1)甲3に記載された事項
甲3には以下の事項が記載されている。
(3-1)「[請求項1]
二つの表層の間に中間層を有し、下記要件(1)、要件(2)および要件(3)の全てを満足する多層フィルムであって、
前記中間層は、少なくとも二種類のオレフィン重合体を含有し、前記二種類のオレフィン重合体が海島型の相分離構造を形成している層であり、
前記表層は、エチレンに由来する構造単位と炭素数4~20のα-オレフィンに由来する構造単位とを有するエチレン-α-オレフィン共重合体と、プロピレン系重合体(II)とを含有する層である多層フィルム。
要件(1):JIS K7105-1981に従って測定されるヘーズが25%以下である。
要件(2):該フィルム同士を200℃でヒートシールしたときのヒートシール強度が35N/15mm以上である。
要件(3):該フィルム同士を170℃でヒートシールしたときのヒートシール強度が35N/15mm以下である。」
(3-2)「[発明が解決しようとする課題]
[0006]
しかしながら、上記の透明性に優れるフィルムからなる包装袋は、落袋強度および耐ブロッキング性が十分ではなかった。
本発明の課題は、透明性、落袋強度および耐ブロッキング性に優れる包装袋を得られる多層フィルムを提供することである。」
(3-3)「[0064]
(12)落袋強度評価
多層フィルムと厚み7μmの二軸延伸ナイロンフィルムと厚み12μmのポリエチレンテレフタラートフィルムを、ドライラミネート法により貼り合わせた複合フィルムを用いて、西部機械(株)製スタンディングパウチ製袋機により多層フィルム面を内側にして三辺がヒートシールされた包装袋を作製した。得られた包装袋に水200gを充填した後、ヒートシールされていなかった一辺をヒートシールして密封して水充填袋を作製した。この水充填袋を5℃で24時間状態調整した後、70cmの高さから充填袋を20回繰返して落下させてテストを行った。テストは計10袋で行い、割れなかった回数(残存回数)の合計によって落袋強度を評価した。全く割れなかった場合は200点、全て1回で割れた場合は0点とした。」
(3-4)「[0068]
実施例および比較例で用いた各成分は、以下のとおりである。
[プロピレン重合体組成物(1)]
チーグラー・ナッタ型触媒を用いて、第一工程で、気相中でプロピレンを重合し、次いで第二工程で、気相中でプロピレンとエチレンを共重合し、プロピレン重合体(A)とエチレン-プロピレン共重合体(B)とからなるプロピレン重合体組成物を得た。得られたプロピレン重合体組成物は、プロピレン重合体(A)の含有量が68重量%、[η]Aが1.73dl/g、エチレン-プロピレン共重合体(B)の含有量が30重量% 、[η]Bが4.28dl/g、エチレン-プロピレン共重合体(B)におけるエチレンに由来する構造単位の含有量が30重量%であった。
得られたプロピレン重合体組成物100重量部に対して、水酸化カルシウム0.005重量%、スミライザーGP(2,4,8,10-テトラ-t-ブチル-6-[3-(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、住友化学株式会社製)0.075重量%、住友化学株式会社社製スミライザーGS(2,4―ジ-t-アミル-6-[1-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)エチル]フェニルアクリレート、住友化学(株)製)0.03重量%およびメルトフローレート調整剤として2,5-ジメチル-2,5ジ(ターシャリ-ブチルパーオキシ)ヘキサン適量をヘンシェルミキサーで混合した後、溶融押出を行ってペレット化した。得られたペレットの230℃で測定したメルトフローレートは2.5g/10分であった。以下、BCPP1と称することがある。
[0069]
[プロピレン重合体組成物(2)]
チーグラー・ナッタ型触媒を用いて、第一工程で、気相中でプロピレンを重合し、次いで第二工程で、気相中でプロピレンとエチレンを共重合し、プロピレン重合体(A)とエチレン-プロピレン共重合体(B)とからなるプロピレン重合体組成物を得た。得られたプロピレン重合体組成物は、プロピレン重合体(A)の含有量が79重量%、[η]Aが2.77dl/g、エチレン-プロピレン共重合体(B)の含有量が21重量% 、[η]Bが2.77dl/g、エチレン-プロピレン共重合体(B)におけるエチレンに由来する構造単位の含有量が35重量%であった。
得られたプロピレン重合体組成物100重量部に対して、ステアリン酸カルシウム0.05重量%、ビタミンE0.05重量%およびメルトフローレート調整剤として2,5-ジメチル-2,5ジ(ターシャリ-ブチルパーオキシ)ヘキサン適量をヘンシェルミキサーで混合した後、溶融押出を行ってペレット化した。得られたペレットの230℃で測定したメルトフローレートは2g/10分であった。以下、BCPP2と称することがある。」
(3-5)「[0072]
[エチレン-α-オレフィン共重合体(1)]
エチレン-1-ヘキセン共重合体であるスミカセンE FV405(商品名)(住友化学株式会社製)を用いた。190℃で測定したメルトフローレートは3.8g/10分であり、密度は924kg/m3、分子量分布(Mw/Mn)は2.2であった。以下、PE1と称することがある。
[0073]
[エチレン-α-オレフィン共重合体(2)]
エチレン-ブテン共重合体であるタフマーA4085s(商品名)(三井化学株式会社製)を用いた。190℃で測定したメルトフローレートは3.6g/10分であり、密度は885kg/m3、分子量分布(Mw/Mn)は1.9であった。以下、PE2と称することがある。」
(3-6)「[0075]
[実施例1]
中間層用樹脂組成物として、プロピレン重合体組成物(1)80重量%とエチレン-α-オレフィン共重合体(1)20重量%をペレットブレンドした混合物を用い、表層用樹脂組成物として、プロピレン単独重合体(1)70重量%とエチレン-プロピレン共重合体(1)20重量%とエチレン-α-オレフィン共重合体(1)10重量%をペレットブレンドした混合物を用いた。
これらの混合物を濾過精度40μmの金属フィルターを使用した3台の押出機のうち1台で中間層用樹脂組成物を、2台で表層用樹脂組成物を溶融混練し、フィードブロック型のTダイ(ダイ幅1250mm、リップ開度0.8mm)に導入して、中間層比が60%となるようにダイ温度240℃で溶融押出を行った。
押し出された溶融膜を、50m/分で回転する冷却温度50℃のチルロールで冷却固化させ、厚さ70μmの多層フィルムを得た。多層フィルムの表層および中間層に含まれる各成分の含有量を表1に示す。得られた多層フィルムを用いて、フィルムのヘーズを測定した。得られた多層フィルムの中間層は、海島型の相分離構造を形成していた。
続いて、得られた多層フィルムと、厚み7μmの二軸延伸ナイロンフィルムおよび厚み12μmのポリエチレンテレフタラートフィルムをドライラミネート法で積層し、複合フィルムを得た。この複合フィルムを用いて多層フィルムのヒートシール強度を測定した。
さらにこの複合フィルムを用いて15cm×18cmの包装袋を作製し、水200gを封入し、水充填袋を得た。この水充填袋を用いて落袋強度評価を行った。
また、前記包装袋に市販のレトルト食品である大塚食品株式会社製「ボンカレーゴールド 辛口」(商品名)を封入しカレー充填袋を得た。このカレー充填袋を用いてゆず肌評価を行った。その結果を表2に示す。」
(3-7)「[0077]
[実施例3]
中間層用樹脂組成物として、プロピレン重合体組成物(2)95重量%とエチレン-α-オレフィン共重合体(2)5重量%をペレットブレンドした混合物を用いた以外は、実施例1と同様の方法によって、多層フィルムを得、評価を行った。結果を表2に示す。得られた多層フィルムの中間層は、海島型の相分離構造を形成していた。」
(3-8)「[0079]
[実施例5]
中間層用樹脂組成物として、プロピレン重合体組成物(1)95重量%とエチレン-α-オレフィン共重合体(2)5重量%をペレットブレンドした混合物を用いた以外は、実施例4と同様の方法によって、多層フィルムを得、評価を行った。結果を表2に示す。得られた多層フィルムの中間層は、海島型の相分離構造を形成していた。」
(3-9)「[0087]
[表1]
[図:0001417642000006.jpg]
」
(2)甲3に記載された発明
甲3の請求項1(摘記3-1)には「二つの表層の間に中間層を有し、下記要件(1)、要件(2)および要件(3)の全てを満足する多層フィルムであって、
前記中間層は、少なくとも二種類のオレフィン重合体を含有し、前記二種類のオレフィン重合体が海島型の相分離構造を形成している層であり、
前記表層は、エチレンに由来する構造単位と炭素数4~20のα-オレフィンに由来する構造単位とを有するエチレン-α-オレフィン共重合体と、プロピレン系重合体(II)とを含有する層である多層フィルム。
要件(1):JIS K7105-1981に従って測定されるヘーズが25%以下である。
要件(2):該フィルム同士を200℃でヒートシールしたときのヒートシール強度が35N/15mm以上である。
要件(3):該フィルム同士を170℃でヒートシールしたときのヒートシール強度が35N/15mm以下である。」が記載されている。また、[0075](摘記3-6)には実施例1の多層フィルムの製造方法が記載され、[0087]の[表1](摘記3-9)には実施例の多層フィルムの表層および中間層に含まれる各成分の含有量が記載されているところ、両記載を合わせると、「中間層用樹脂組成物として、プロピレン重合体組成物(1)(BCPP1)80重量%とエチレン-α-オレフィン共重合体(1)(PE1)20重量%をペレットブレンドした混合物を用い、表層用樹脂組成物として、プロピレン単独重合体(1)(HCC)70重量%とエチレン-プロピレン共重合体(1)(RPP)20重量%とエチレン-α-オレフィン共重合体(1)(PE1)10重量%をペレットブレンドした混合物を用い」、「これらの混合物を濾過精度40μmの金属フィルターを使用した3台の押出機のうち1台で中間層用樹脂組成物を、2台で表層用樹脂組成物を溶融混練し、フィードブロック型のTダイ(ダイ幅1250mm、リップ開度0.8mm)に導入して、中間層比が60%となるようにダイ温度240℃で溶融押出を行」い、「押し出された溶融膜を、50m/分で回転する冷却温度50℃のチルロールで冷却固化させ、厚さ70μmの多層フィルムを得た」ことが記載されている。さらに、[0068](摘記3-4)には、甲3の実施例1で用いられるプロピレン重合体組成物(1)(BCPP1)の製造方法が記載されており、添加剤以外の樹脂成分は「チーグラー・ナッタ型触媒を用いて、第一工程で、気相中でプロピレンを重合し、次いで第二工程で、気相中でプロピレンとエチレンを共重合し、プロピレン重合体(A)とエチレン-プロピレン共重合体(B)とからなるプロピレン重合体組成物を得た。得られたプロピレン重合体組成物は、プロピレン重合体(A)の含有量が68重量%、[η]Aが1.73dl/g、エチレン-プロピレン共重合体(B)の含有量が30重量% 、[η]Bが4.28dl/g、エチレン-プロピレン共重合体(B)におけるエチレンに由来する構造単位の含有量が30重量%であった」ことが記載されている。加えて、[0072](摘記3-5)には、甲3の実施例1で用いられるエチレン-α-オレフィン共重合体(1)(PE1)について、「エチレン-1-ヘキセン共重合体であるスミカセンE FV405(商品名)(住友化学株式会社製)を用いた。190℃で測定したメルトフローレートは3.8g/10分であり、密度は924kg/m3、分子量分布(Mw/Mn)は2.2であった」ことが記載されている。
そうすると、甲3には、実施例1に基づいて以下の発明が記載されている。
「中間層用樹脂組成物として、プロピレン重合体組成物(BCPP1)80重量%とエチレン-α-オレフィン共重合体(PE1)20重量%をペレットブレンドした混合物を用い、BCPP1は樹脂成分が、第一工程で気相中でプロピレンを重合し、次いで第二工程で気相中でプロピレンとエチレンを共重合して得られ、プロピレン重合体(A)とエチレン-プロピレン共重合体(B)とからなり、プロピレン重合体(A)の含有量が68重量%、[η]Aが1.73dl/g、エチレン-プロピレン共重合体(B)の含有量が30重量% 、[η]Bが4.28dl/g、エチレン-プロピレン共重合体(B)におけるエチレンに由来する構造単位の含有量が30重量%であるものであり、PE1はエチレン-1-ヘキセン共重合体であるスミカセンE FV405(商品名)(住友化学株式会社製、密度は924kg/m3)であり、表層用樹脂組成物として、プロピレン単独重合体(HCC)70重量%とエチレン-プロピレン共重合体(RPP)20重量%とエチレン-α-オレフィン共重合体(PE1)10重量%をペレットブレンドした混合物を用い、これらの混合物を濾過精度40μmの金属フィルターを使用した3台の押出機のうち1台で中間層用樹脂組成物を、2台で表層用樹脂組成物を溶融混練し、フィードブロック型のTダイ(ダイ幅1250mm、リップ開度0.8mm)に導入して、中間層比が60%となるようにダイ温度240℃で溶融押出を行い、押し出された溶融膜を、50m/分で回転する冷却温度50℃のチルロールで冷却固化させて得られる、厚さ70μmの多層フィルム。」(以下、「甲3実施例1発明」という。)
また、甲3の[0077](摘記3-7)には、実施例3として、「中間層用樹脂組成物として、プロピレン重合体組成物(2)95重量%とエチレン-α-オレフィン共重合体(2)5重量%をペレットブレンドした混合物を用いた以外は、実施例1と同様の方法によって、多層フィルムを得」たことが記載され、[0079](摘記3-8)には、実施例5として、「中間層用樹脂組成物として、プロピレン重合体組成物(1)95重量%とエチレン-α-オレフィン共重合体(2)5重量%をペレットブレンドした混合物を用いた以外は、実施例4と同様の方法によって、多層フィルムを得」ことが記載され、[0087]の[表1](摘記3-9)には実施例の多層フィルムの表層および中間層に含まれる各成分の含有量が記載されている。さらに、[0069](摘記3-4)には、甲3の実施例3で用いられるプロピレン重合体組成物(2)(BCPP2)の製造方法が記載されており、添加剤以外の樹脂成分は「チーグラー・ナッタ型触媒を用いて、第一工程で、気相中でプロピレンを重合し、次いで第二工程で、気相中でプロピレンとエチレンを共重合し、プロピレン重合体(A)とエチレン-プロピレン共重合体(B)とからなるプロピレン重合体組成物を得た。得られたプロピレン重合体組成物は、プロピレン重合体(A)の含有量が79重量%、[η]Aが2.77dl/g、エチレン-プロピレン共重合体(B)の含有量が21重量% 、[η]Bが2.77dl/g、エチレン-プロピレン共重合体(B)におけるエチレンに由来する構造単位の含有量が35重量%であった」ことが記載されている。加えて、[0073](摘記3-5)には、甲3の実施例3及び5で用いられるエチレン-α-オレフィン共重合体(2)(PE2)について、「エチレン-ブテン共重合体であるタフマーA4085s(商品名)(三井化学株式会社製)を用いた。190℃で測定したメルトフローレートは3.6g/10分であり、密度は885kg/m3、分子量分布(Mw/Mn)は1.9であった」ことが記載されている。
そうすると、甲3には、実施例3又は5に基づいて以下の発明が記載されている。
「中間層用樹脂組成物として、プロピレン重合体組成物(BCPP2)95重量%とエチレン-α-オレフィン共重合体(PE2)5重量%をペレットブレンドした混合物を用い、BCPP2は樹脂成分が、第一工程で気相中でプロピレンを重合し、次いで第二工程で気相中でプロピレンとエチレンを共重合して得られ、プロピレン重合体(A)とエチレン-プロピレン共重合体(B)とからなり、プロピレン重合体(A)の含有量が79重量%、[η]Aが2.77dl/g、エチレン-プロピレン共重合体(B)の含有量が21重量% 、[η]Bが2.77dl/g、エチレン-プロピレン共重合体(B)におけるエチレンに由来する構造単位の含有量が35重量%であるものであり、PE2はエチレン-ブテン共重合体であるタフマーA4085s(商品名)(三井化学株式会社製、密度は885kg/m3)であり、表層用樹脂組成物として、プロピレン単独重合体(HCC)70重量%とエチレン-プロピレン共重合体(RPP)20重量%とエチレン-α-オレフィン共重合体(PE1)10重量%をペレットブレンドした混合物を用い、これらの混合物を濾過精度40μmの金属フィルターを使用した3台の押出機のうち1台で中間層用樹脂組成物を、2台で表層用樹脂組成物を溶融混練し、フィードブロック型のTダイ(ダイ幅1250mm、リップ開度0.8mm)に導入して、中間層比が60%となるようにダイ温度240℃で溶融押出を行い、押し出された溶融膜を、50m/分で回転する冷却温度50℃のチルロールで冷却固化させて得られる、厚さ70μmの多層フィルム。」(以下、「甲3実施例3発明」という。)
「中間層用樹脂組成物として、プロピレン重合体組成物(BCPP1)95重量%とエチレン-α-オレフィン共重合体(PE2)5重量%をペレットブレンドした混合物を用い、BCPP1は樹脂成分が、第一工程で気相中でプロピレンを重合し、次いで第二工程で気相中でプロピレンとエチレンを共重合して得られ、プロピレン重合体(A)とエチレン-プロピレン共重合体(B)とからなり、プロピレン重合体(A)の含有量が68重量%、[η]Aが1.73dl/g、エチレン-プロピレン共重合体(B)の含有量が30重量% 、[η]Bが4.28dl/g、エチレン-プロピレン共重合体(B)におけるエチレンに由来する構造単位の含有量が30重量%であるものであり、PE2はエチレン-ブテン共重合体であるタフマーA4085s(商品名)(三井化学株式会社製、密度は885kg/m3)であり、表層用樹脂組成物として、プロピレン単独重合体(HCC)90重量%とエチレン-α-オレフィン共重合体(PE1)10重量%をペレットブレンドした混合物を用い、これらの混合物を濾過精度40μmの金属フィルターを使用した3台の押出機のうち1台で中間層用樹脂組成物を、2台で表層用樹脂組成物を溶融混練し、フィードブロック型のTダイ(ダイ幅1250mm、リップ開度0.8mm)に導入して、中間層比が60%となるようにダイ温度240℃で溶融押出を行い、押し出された溶融膜を、50m/分で回転する冷却温度50℃のチルロールで冷却固化させて得られる、厚さ70μmの多層フィルム。」(以下、「甲3実施例5発明」という。)
以下、「甲3実施例1発明」、「甲3実施例3発明」及び「甲3実施例5発明」をまとめて「甲3発明」ということがある。
(3)本件発明1について
ア 本件発明1と甲3発明との対比
(ア)本件発明1と甲3実施例1発明との対比
本件発明1と甲3実施例1発明とを対比する。
甲3実施例1発明における「プロピレン重合体組成物(BCPP1)」は、樹脂成分が「第一工程で気相中でプロピレンを重合し、次いで第二工程で気相中でプロピレンとエチレンを共重合して得られ、プロピレン重合体(A)とエチレン-プロピレン共重合体(B)とからなり、プロピレン重合体(A)の含有量が68重量%、[η]Aが1.73dl/g、エチレン-プロピレン共重合体(B)の含有量が30重量% 、[η]Bが4.28dl/g、エチレン-プロピレン共重合体(B)におけるエチレンに由来する構造単位の含有量が30重量%である」から、本件発明1における「プロピレンに由来する構造単位を50質量%以上含むプロピレン重合体」に相当する。
また、甲3実施例1発明における「エチレン-α-オレフィン共重合体(PE1)」は、「エチレン-1-ヘキセン共重合体であるスミカセンEFV405(商品名)(住友化学株式会社製、密度は924kg/m3)」であるところ、甲参4の実施例1([0035])における同商品名の記載及び[0006]における共重合体中のα-オレフィン単位の含有量は通常1~15重量%である旨の記載を参酌すると、本件発明1における「エチレンに由来する構造単位を50質量%以上含むエチレン重合体」に相当し、かつ、「前記エチレン重合体は、エチレン-α-オレフィン共重合体であり」、「密度が860kg/m3~930kg/m3」である限りにおいて一致する。
甲3実施例1発明は、中間層用樹脂組成物として、プロピレン重合体組成物(BCPP1)80重量%とエチレン-α-オレフィン共重合体(PE1)20重量%をペレットブレンドした混合物を用いて、中間層比が60%となるように溶融押出して製造されたものであるから、中間層の樹脂組成は本件発明1における「プロピレン重合体およびエチレン重合体の合計含有量100質量%に対して、プロピレン重合体の含有量が50質量%~95質量%であり、エチレン重合体の含有量が5質量%~50質量%であり」と一致し、また、甲3実施例1発明における「中間層」は、樹脂組成物の層である限りにおいて本件発明1における「フィルム」と一致する。
甲3実施例1発明は「厚さ70μm」であるから、本件発明1における「厚さが30μm~200μm」に相当する。
そうすると、両者は、
「プロピレンに由来する構造単位を50質量%以上含むプロピレン重合体と、エチレンに由来する構造単位を50質量%以上含むエチレン重合体とを含有する樹脂組成物の層を有するフィルムであって、
樹脂組成物の層はプロピレン重合体およびエチレン重合体の合計含有量100質量%に対して、プロピレン重合体の含有量が50質量%~95質量%であり、エチレン重合体の含有量が5質量%~50質量%であり、
前記エチレン重合体は、エチレン-α-オレフィン共重合体であり、密度が860kg/m3~930kg/m3であり、
厚さが30μm~200μmである、フィルム。」
の点で一致し、
相違点甲3-1:本件発明1は「フィルム」であるのに対し、甲3実施例1発明は「多層フィルム」である点
相違点甲3-2:本件発明1は「突刺破断荷重が1900g~2200gであり、突刺破断変形量が11.0mm~13.0mmである、」と特定するのに対し、甲3実施例1発明はそのように特定されていない点
相違点甲3-3:本件発明1は「該エチレン-α-オレフィン共重合体は、エチレンに由来する構造単位を65質量%~98質量%含むと共に、炭素原子数4~12のα-オレフィンに由来する構造単位を2質量%~35質量%含み」と特定するのに対し、甲3実施例1発明はそのように特定されていない点
で相違する。
(イ)本件発明1と甲3実施例3発明又は甲3実施例5発明との対比
本件発明1と甲3実施例3発明又は甲3実施例5発明とを対比する。
甲3実施例3発明における「プロピレン重合体組成物(BCPP2)」は、樹脂成分が「第一工程で気相中でプロピレンを重合し、次いで第二工程で気相中でプロピレンとエチレンを共重合して得られ、プロピレン重合体(A)とエチレン-プロピレン共重合体(B)とからなり、プロピレン重合体(A)の含有量が79重量%、[η]Aが2.77dl/g、エチレン-プロピレン共重合体(B)の含有量が21重量%、[η]Bが2.77dl/g、エチレン-プロピレン共重合体(B)におけるエチレンに由来する構造単位の含有量が35重量%である」から、本件発明1における「プロピレンに由来する構造単位を50質量%以上含むプロピレン重合体」に相当する。
甲3実施例3発明又は甲3実施例5発明における「エチレン-α-オレフィン共重合体(PE2)」は、「エチレン-ブテン共重合体であるタフマーA4085s(商品名)(三井化学株式会社製、密度は885kg/m3)」であるところ、甲参2の[0044]における同商品名の記載を参酌すると、「エチレン/1-ブテン=82/18質量%」であるから、本件発明1における「エチレンに由来する構造単位を50質量%以上含むエチレン重合体」に相当し、かつ、「前記エチレン重合体は、エチレン-α-オレフィン共重合体であり、該エチレン-α-オレフィン共重合体は、エチレンに由来する構造単位を65質量%~98質量%含むと共に、炭素原子数4~12のα-オレフィンに由来する構造単位を2質量%~35質量%含み、密度が860kg/m3~930kg/m3であり」に相当する。
甲3実施例3発明及び甲3実施例5発明は、中間層用樹脂組成物として、プロピレン重合体組成物(BCPP2)又はプロピレン重合体組成物(BCPP1)95重量%とエチレン-α-オレフィン共重合体(PE2)5重量%をペレットブレンドした混合物を用いて、中間層比が60%となるように溶融押出して製造されたものであるから、いずれも中間層の樹脂組成は本件発明1における「プロピレン重合体およびエチレン重合体の合計含有量100質量%に対して、プロピレン重合体の含有量が50質量%~95質量%であり、エチレン重合体の含有量が5質量%~50質量%であり」と一致し、また、甲3実施例3発明及び甲3実施例5発明における「中間層」は、いずれも樹脂組成物の層である限りにおいて本件発明1における「フィルム」と一致する。
甲3実施例3発明及び甲3実施例5発明は「厚さ70μm」であるから、いずれも本件発明1における「厚さが30μm~200μm」に相当する。
そうすると、両者は、
「プロピレンに由来する構造単位を50質量%以上含むプロピレン重合体と、エチレンに由来する構造単位を50質量%以上含むエチレン重合体とを含有する樹脂組成物の層を有するフィルムであって、
樹脂組成物の層はプロピレン重合体およびエチレン重合体の合計含有量100質量%に対して、プロピレン重合体の含有量が50質量%~95質量%であり、エチレン重合体の含有量が5質量%~50質量%であり、
前記エチレン重合体は、エチレン-α-オレフィン共重合体であり、該エチレン-α-オレフィン共重合体は、エチレンに由来する構造単位を65質量%~98質量%含むと共に、炭素原子数4~12のα-オレフィンに由来する構造単位を2質量%~35質量%含み、密度が860kg/m3~930kg/m3であり、
厚さが30μm~200μmである、フィルム。」
の点で一致し、
相違点甲3-1’:本件発明1は「フィルム」であるのに対し、甲3実施例3発明及び甲3実施例5発明はいずれも「多層フィルム」である点
相違点甲3-2’:本件発明1は「突刺破断荷重が1900g~2200gであり、突刺破断変形量が11.0mm~13.0mmである、」と特定するのに対し、甲3実施例3発明及び甲3実施例5発明はそのように特定されていない点
で相違する。
イ 相違点甲3-2について
事案に鑑みて、相違点甲3-2について検討する。なお、相違点甲3-2’も実質的に同じ内容の相違点である。
甲3には、相違点甲3-2に係る突刺破断荷重及び突刺破断変形量については具体的に記載されていない。また、本件明細書の実施例等の記載を参酌すると、本件発明1における突刺破断荷重及び突刺破断変形量は、「プロピレンに由来する構造単位を50質量%以上含むプロピレン重合体と、エチレンに由来する構造単位を50質量%以上含むエチレン重合体とを含有するフィルム」について測定されるものと解されるが、甲3実施例1発明は多層フィルムであり(相違点甲3-1)、その中間層の突刺破断荷重及び突刺破断変形量に着目して相違点甲3-2に係る特定の範囲とする動機付けとなる記載は、甲3には見いだせない。
上記第6 1.(3)イ(ア)「新規性について」に記載したように、本件明細書の[0015]、[0016]、[0057]及び[0060]~[0082]の実施例の記載等を参酌すると、相違点甲3-2に係る「突刺破断荷重が1900g~2200gであり、突刺破断変形量が11.0mm~13.0mmである」という特性は、所定の樹脂組成物の押出工程をスクリューの回転数が100rpm~120rpmの条件で行うことにより得られると解されるが、甲3には甲3実施例1発明の押出成形時のスクリュー回転数は記載されていないから、仮に中間層に限って検討したとしても、スクリュー回転数の観点から突刺破断荷重及び突刺破断変形量の異同を判断することはできない。また、他の証拠を参酌しても、多層フィルムである甲3実施例1発明において、中間層の押出機のスクリュー回転数を100~120rpmに調整すること、及び中間層の突刺破断荷重及び突刺破断変形量を相違点甲3-2に係る特定の範囲とすることの動機付けとなる記載は見いだせない。
よって、相違点甲3-2は当業者が容易に想到し得ることではない。
ウ 申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書62~63頁において、「落袋強度等を向上させるため、スクリュー回転数を調整して100rpm以上の範囲に定めることは、当業者が適宜なし得る数値範囲の最適化又は好適化に過ぎない」から「甲第3号証の実施例1、3、及び5において中間層を形成するフィルムについて、「突刺破断荷重」を「1900g以上」とし、「突刺破断変形量」を「11.0mm以上」とすることは、当業者であれば容易になし得たことである」と主張している。
しかし、甲3の[0006](摘記3-2)には、「本発明の課題は、透明性、落袋強度および耐ブロッキング性に優れる包装袋を得られる多層フィルムを提供することである」と記載されており、[0064](摘記3-3)に記載された落袋強度評価の方法も多層フィルムを前提とした評価であって、本件明細書に記載された落袋強度の評価方法とは測定条件が異なる。また、甲3発明における落袋強度は中間層と表層との組合せによりもたらされる特性であり、かつ、甲3には、落袋強度を中間層の「突刺破断荷重」及び「突刺破断変形量」と結びつける記載はなく、他の証拠の記載を参酌しても、甲3発明における中間層の「突刺破断荷重」及び「突刺破断変形量」を、相違点甲3-2に係る特定の範囲とする動機は見いだせないから、相違点甲3-2は当業者が容易になし得たこととはいえない。
よって、申立人の主張を採用することはできない。
エ 本件発明1についてのまとめ
以上のことから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明4、5、7について
本件発明4、5、7は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。
そうすると、本件発明1と同様の理由により、本件発明4、5、7は、いずれも甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)本件発明8について
ア 本件発明8と甲3発明との対比、判断
ア 上記(3)アに記載した本件発明1と甲3発明との対比を踏まえて、本件発明8と甲3発明とを対比すると、両者は、少なくとも、
相違点甲3-4:本件発明8は「突刺破断荷重が1900g~2200gであり、突刺破断変形量が11.0mm~13.0mmである、」と特定するのに対し、甲3発明はそのように特定されていない点
で相違する。
そして、相違点甲3-4は、実質的に相違点甲3-2と同じ内容の相違点であるから、上記(3)イと同様に判断される。
イ 本件発明8についてのまとめ
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明8は甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(6)申立理由3(甲3に基づく進歩性欠如)についてのまとめ
以上まとめると、本件発明1、4、5、7、8は、いずれも甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
よって、申立理由3(甲3に基づく進歩性欠如)により本件発明1、4、5、7、8についての特許を取り消すことはできない。
4.申立理由4(サポート要件違反)について
(1)申立人の主張について
サポート要件違反についての判断は、上記第6 2.に記載したとおりであるが、申立人は上記第4 1.(5)ア~ウのように主張しているので、さらに検討する。
上記第6 2.(4)に記載したとおり、本件明細書の[0050]~[0053]には押出機のスクリュー形状について、[0057]にはスクリューの回転数についてそれぞれ好ましい態様が具体的に記載されており、[0018]~[0044]には、樹脂成分の好ましい融点、密度、メルトフローレート等が記載されているから、スクリュー回転数が100rpm以外である場合、ダイ温度が240℃以外の温度である場合であっても、また、実施例にはスクリュー形状の詳細が記載されていなくとも、当業者は本件発明1に特定される範囲において「厚さが30μm~200μmであり、突刺破断荷重が1900g~2200gであり、突刺破断変形量が11.0mm~13.0mmである」フィルムを製造することができ、「耐破袋性に優れた包装袋を形成することができるフィルムの製造方法を提供する」という課題を解決することができると認識することができる。また、申立人は、スクリュー回転数が100rpm以外、又はダイ温度が240℃以外の温度では「厚さが30μm~200μmであり、突刺破断荷重が1900g~2200gであり、突刺破断変形量が11.0mm~13.0mmである」フィルムを製造することができない等、課題を解決できないことを合理的に推認させる具体的な理由は示していない。
よって、申立人の主張を採用することはできない。
(2)申立理由4(サポート要件違反)についてのまとめ
したがって、上記第6 2.に記載した判断は覆らず、本件発明1、4、5、7及び8は、いずれも発明の詳細な説明に記載したものであるといえるから、特許法第36条第6項第1号に適合するものであり、それらの発明についての特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものである。
よって、申立理由4(サポート要件違反)により本件発明1、4、5、7及び8についての特許を取り消すことはできない。
5.申立理由5(実施可能要件違反)について
(1)実施可能要件の判断手法
物の発明における実施とは、物の生産、使用等の行為をいうから(特許法第2条第3項第1号)、物の発明について、実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、その物を生産し、かつ、その物を使用できる程度の記載があれば、実施可能要件を満たすということができる。
また、物を生産する方法の発明における実施とは、その物を生産する方法の使用をする行為のほか、その方法により生産した物の使用等をする行為をいうから(特許法第2条第3項第3号)、物を生産する方法の発明について、実施可能要件を充足するためには、例えば、明細書等にその物を生産する方法を使用することができることの具体的な記載があるか、そのような記載がなくても、出願時の技術常識に基づいて当業者がその物を生産する方法を使用することができることが必要である。
(2)本件明細書の記載事項
本件明細書には、上記第6 2.(3)に記載した事項が記載されている。
(3)実施可能要件についての判断
本件明細書の[0018]~[0033]には、フィルムを構成する樹脂成分のうちプロピレン重合体について、[0034]~[0044]には、フィルムを構成する樹脂成分のうちエチレン重合体について、それぞれ好ましく用いられる共重合単位、共重合比、重合方法等について具体的に記載されている。また、[0047]~[0058]には、上記プロピレン重合体及びエチレン重合体を含む樹脂組成物を用いてフィルムを製造する方法が記載されており、[0054]には上記プロピレン重合体とエチレン重合体の量比について、[0050]~[0053]には押出機のスクリュー形状について、[0057]にはスクリューの回転数についてそれぞれ好ましい態様が具体的に記載されている。さらに、[0071]~[0082]の実施例及び比較例の記載等を参酌すると、当業者は、実施例で採用されたプロピレンブロック共重合体に代表される上記[0034]~[0044]に記載されたプロピレン重合体(「プロピレンに由来する構造単位を50質量%以上含むプロピレン重合体」)、及び実施例で採用されたエチレン-ブテン-1共重合体に代表される上記[0018]~[0033]に記載されたエチレン重合体(「エチレンに由来する構造単位を50質量%以上含むエチレン重合体」であって、「前記エチレン重合体は、エチレン-α-オレフィン共重合体であり、該エチレン-α-オレフィン共重合体は、エチレンに由来する構造単位を65質量%~98質量%含むと共に、炭素原子数4~12のα-オレフィンに由来する構造単位を2質量%~35質量%含み、密度が860kg/m3~930kg/m3であ」るもの)を、[0054]に記載された量比(「プロピレン重合体およびエチレン重合体の合計含有量100質量%に対して、プロピレン重合体の含有量が50質量%~95質量%であり、エチレン重合体の含有量が5質量%~50質量%」)で含む樹脂組成物を用いて、好ましくは[0047]~[0058]に記載されたような溶融押出条件で成膜することにより、「厚さが30μm~200μmであり、突刺破断荷重が1900g~2200gであり、突刺破断変形量が11.0mm~13.0mmである」という特性を備えるものとしたフィルムを製造することができると理解することができる。また、上記第6 2.(4)における検討を踏まえると、当業者は上記フィルムを耐破袋性に優れた包装袋の形成に使用することができると理解することができる。
そうすると、本件明細書の発明の詳細な説明には、本件発明1の発明特定事項に対応した説明の記載や実施例の記載があるから、当業者が本件発明1を生産し、かつ、本件発明1を使用することができる程度の記載があるといえる。
請求項1を直接又は間接的に引用して特定され、本件発明1の発明特定事項を全て備える本件発明4、5、7、並びに、本件発明1と同様の樹脂組成物が「100rpm~120rpmで回転するスクリューを備える押出機を用いて押し出されて成膜され」、本件発明1と同様の厚さ、突刺破断荷重及び突刺破断変形量を備えるフィルムであることが特定された本件発明8についても同様である。
(4)申立人の主張について
申立人は、上記第4 1.(6)のように主張するが、上記(3)に記載したとおり、本件明細書には、樹脂材料、押出成形の方法等について具体的に記載されており、記載を裏付ける実施例も記載されているから、スクリュー回転数が100rpm以外である場合、ダイ温度が240℃以外の温度である場合であっても、また、実施例にはスクリュー形状の詳細が記載されていなくとも、当業者は本件発明1に特定される「厚さが30μm~200μmであり、突刺破断荷重が1900g~2200gであり、突刺破断変形量が11.0mm~13.0mmである」フィルムを製造することができ、フィルムの製造に際して当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤、複雑高度な実験等を行う必要があるとまではいえない。
よって、申立人の主張を採用することはできない。
(5)申立理由5(実施可能要件違反)についてのまとめ
以上のことから、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1、4、5、7、8を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるといえるから、特許法第36条第4項第1号に適合するものであり、それらの発明についての特許は、同法同条第4項第1号に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものである。
よって、申立理由5(実施可能要件違反)により本件発明1、4、5、7、8についての特許を取り消すことはできない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由のいずれによっても、本件発明1、4、5、7、8についての特許を取り消すことはできない。また、他に、これらの特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項2、3、6は訂正により削除され、これにより、本件発明2、3、6についての特許に係る特許異議の申立ては対象となる請求項が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701407