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特許異議申立

2024-700670

生分解性球状粒子及びその製造方法

審判番号
2024-700670
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-097945
登録番号
7421599
請求日
2024年07月17日
審決日
2025年09月19日
公報発行日
2025年12月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社ダイセル
  • 【権利者代理人】杉村 憲司
  • 【権利者代理人】杉村 光嗣
  • 【権利者代理人】塚中 哲雄
  • 【権利者代理人】大島 かおり
  • 【異議申立人】羽川 延子
  • 【異議申立人】河村 貴子
  • 【異議申立人】吉川 雅也
審判長/審判官
  • 審判長 天野 宏樹
  • 審判官 柴田 昌弘
  • 審判官 加藤 友也
分類
P1651.113-YAA(C08J) / P1651.121-YAA(C08J) / P1651.161-YAA(C08J) / P1651.536-YAA(C08J) / P1651.537-YAA(C08J)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条6項2号特許法113条4号特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条の2、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7421599号発明「生分解性球状粒子及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7421599号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし15〕について訂正することを認める。 特許第7421599号の請求項1、3ないし15に係る特許を維持する。 特許第7421599号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7421599号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし15に係る特許についての出願は、令和4年6月17日を出願日とする出願であって、令和6年1月16日にその特許権の設定登録(請求項の数15)がされ、同年同月24日に特許掲載公報が発行されたものである。 その後、その特許に対し、令和6年7月17日に特許異議申立人 羽川 延子(以下、「特許異議申立人A」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし11)がされ、同年同月23日に特許異議申立人 河村 貴子(以下、「特許異議申立人B」という。)及び特許異議申立人 吉川 雅也(以下、「特許異議申立人C」という。)のそれぞれにより特許異議の申立て(対象請求項は、それぞれ、請求項1ないし11並びに請求項1ないし8及び11ないし15)がされ、同年8月20日付けで特許異議申立人A及び特許異議申立人Cのそれぞれから手続補正書(方式)が提出され、同年11月15日付けで取消理由が通知され、令和7年1月16日に特許権者 株式会社ダイセル(以下、「特許権者」という。)から意見書が提出されるとともに訂正請求がされ、同年2月10日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、これに対し同年3月13日に特許異議申立人B及び特許異議申立人Cのそれぞれから意見書(以下、順に「意見書B」及び「意見書C」という。)が提出され、特許異議申立人Aからは応答がなかったものである。 第2 本件訂正について 1 訂正の内容 令和7年1月16日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。下線は訂正箇所を示すものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「OECD TG301Fに準拠した生分解性試験において、下記式により算出される5日目の生分解度が40%以下である、」 と記載されているのを、 「OECD TG301Fに準拠した生分解性試験において、下記式により算出される5日目の生分解度が40%以下であり、 OECD TG301Fに準拠した生分解性試験により測定される5日目の生分解度BD5の、28日目の生分解度BD28に対する比BD5/BD28が、0.60以下である、」に訂正する。請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3ないし15も同様に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (3)一群の請求項について 訂正前の請求項1ないし15について、請求項2ないし15は請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであるから、訂正前の請求項1ないし15に対応する訂正後の請求項1ないし15は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 2 訂正の適否の判断 (1)訂正の目的、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア 訂正事項1について 訂正事項1に係る請求項1の訂正は、訂正前の請求項1に記載されていた生分解性球状粒子について、生分解度の比BD5/BD28が0.60以下であることを特定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1の訂正により請求項1に追加された事項は、訂正前の請求項2に記載されており、訂正事項1に係る請求項1の訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。 訂正事項1による、請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項3ないし15の訂正についても同様である。 イ 訂正事項2について 訂正事項2に係る請求項2の訂正は、訂正前の請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。 そして、訂正事項2に係る請求項2の訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。 (2)独立特許要件について 特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし15に対してされているので、訂正を認める要件として、訂正前の請求項1ないし15に対応する訂正後の請求項1ないし15に対しては、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。 3 訂正請求についてのまとめ 以上のとおり、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 よって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし15〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし15に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、総称して「本件特許発明」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 生分解性高分子を主成分として含み、 前記生分解性高分子が、多糖類、多糖エステル及び脂肪族ポリエステルからなる群から選択され、 前記多糖エステルの総置換度が0.7未満であり、 粒子径変動係数CVが40%以下であり、 平均粒子径が0.08μm以上100μm以下であり、 OECD TG301Fに準拠した生分解性試験において、下記式により算出される5日目の生分解度が40%以下であり、 OECD TG301Fに準拠した生分解性試験により測定される5日目の生分解度BD5の、28日目の生分解度BD28に対する比BD5/BD28が、0.60以下である、生分解性球状粒子。 生分解度(%)=(BOD-B)/TOD×100 (式中、BODは試験物質による生物化学的酸素消費量(mg)であり、Bはブランクの生物化学的酸素消費量(mg)であり、TODは試験物質による理論的酸素消費量(mg)である。) 【請求項2】 削除 【請求項3】 OECD TG301Fに準拠した生分解性試験により測定される5日目の生分解度BD5と、28日目の生分解度BD28と、が下記式を満たす、請求項1に記載の生分解性球状粒子。 (BD28-BD5)/BD5≧ 0.50 【請求項4】 走査型電子顕微鏡を用いて、倍率5000倍で0.5mm×0.5mmの視野を観察したときに、その表面にミクロンサイズの凹部が認められる粒子が実質的に存在しない、請求項1に記載の生分解性球状粒子。 【請求項5】 走査型電子顕微鏡を用いて、倍率5000倍で0.5mm×0.5mmの視野を観察したときに、その球状粒子の円弧に沿って描いた仮想円から突出するミクロンサイズの凸部が認められる粒子が実質的に存在しない、請求項1に記載の生分解性球状粒子。 【請求項6】 前記多糖類が、セルロース及びデンプンから選択される1種又は2種である、請求項1に記載の生分解性球状粒子。 【請求項7】 前記多糖エステルの総置換度が0を超えて0.7未満である、請求項1に記載の生分解性球状粒子。 【請求項8】 前記多糖エステルが、炭素数2以上10以下のアシル基を有するセルロースアシレートであり、このセルロースアシレートの総置換度が0を超えて0.7未満である、請求項1に記載の生分解性球状粒子。 【請求項9】 前記脂肪族ポリエステルが、ポリヒドロキシアルカン酸、又は、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとの重合体である、請求項1に記載の生分解性球状粒子。 【請求項10】 前記脂肪族ポリエステルが、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸及びポリ乳酸からなる群から選択される1種又は2種以上である、請求項1に記載の生分解性球状粒子。 【請求項11】 請求項1に記載の生分解性球状粒子を含む、化粧品組成物。 【請求項12】 生分解性高分子と、可塑剤と、水溶性高分子と、を混合して混合物を得ること、 前記混合物を200℃以上280℃以下で溶融混練して混練物を得ること、 及び 前記混練物から、前記水溶性高分子を除去すること、を含み、 前記生分解性高分子が、多糖類、多糖エステル及び脂肪族ポリエステルからなる群から選択され、 前記多糖エステルの総置換度が0.7未満である、請求項1に記載の生分解性球状粒子の製造方法。 【請求項13】 前記生分解性高分子が多糖エステルの場合、前記混練物から前記水溶性高分子を除去する工程において、この混練物を、アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物から選択される1種又は2種以上の金属化合物を含む溶媒と混合して、前記多糖エステルを加水分解することをさらに含む、請求項12に記載の生分解性球状粒子の製造方法。 【請求項14】 前記溶媒が前記金属化合物の水溶液である、請求項13に記載の生分解性球状粒子の製造方法。 【請求項15】 前記金属化合物が、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物である、請求項13に記載の生分解性球状粒子の製造方法。」 第4 特許異議申立書等に記載した申立ての理由の概要 1 特許異議申立人Aによる特許異議の申立ての理由の概要等 令和6年7月17日に特許異議申立人Aが提出し、同年8月20日に提出した手続補正書により補正された特許異議申立書(以下、「特許異議申立書A」という。)に記載した特許異議申立ての理由の概要及び証拠方法は次のとおりである。 なお、申立て理由の番号は、当審において付したものである。以下、同様である。 (1)申立理由A1-1(甲第A1号証を主たる証拠とする新規性) 本件特許発明1ないし6及び9は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし6及び9に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (2)申立理由A1-2(甲第A1号証を主たる証拠とする進歩性) 本件特許発明1ないし6及び9ないし11は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A1号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし6及び9ないし11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (3)申立理由A2-1(甲第A2号証を主たる証拠とする新規性) 本件特許発明1及び9ないし11は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び9ないし11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (4)申立理由A2-2(甲第A2号証を主たる証拠とする進歩性) 本件特許発明1及び9ないし11は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A2号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び9ないし11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (5)申立理由A3-1(甲第A3号証を主たる証拠とする新規性) 本件特許発明1ないし6及び11は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし6及び11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (6)申立理由A3-2(甲第A3号証を主たる証拠とする進歩性) 本件特許発明1ないし6及び11は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A3号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし6及び11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (7)申立理由A4(実施可能要件) 本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 ア 本件特許発明1は、生分解性球状粒子について「粒子径変動係数CVが40%以下であり、OECD TG301Fに準拠した生分解性試験において、下記式により算出される5日目の生分解度が40%以下である 生分解度(%)=(BOD-B)/TOD×100」ことを特定するものである(当審注:式中の記号の説明は省略した。)。 しかし、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、粒子径変動係数CVや生分解度をどのように調整すればよいのか記載がなく、甲第A6号証の実施例には、本件特許明細書の発明の詳細な説明の【0082】~【0083】に記載された方法で得られた生分解性粒子が記載されているものの、CVが40%を超えるものも含まれており、粒子径変動係数CVや生分解度をどのように調整すればよいのかが不明である。 イ 本件特許発明1は、生分解性球状粒子の49.99・・重量%まで生分解性高分子以外の成分を含み得るが、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された実施例では、生分解性高分子と可塑剤を含む粒子のみが用いられており、それ以外の成分を含む粒子であっても本件特許発明1の発明特定事項を満たす粒子が得られるのかや、良好な触感を有し、且つ、使用感が短期的には変動しない化粧品組成物が得ることができるのかが何ら開示されていない。 (8)申立理由A5(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 ア 本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された実施例では、生分解性高分子に特定の可塑剤を特定の含有量で配合した粒子しか記載されておらず、他の可塑剤を含むもの、可塑剤の配合量が異なるもの、可塑剤を含まないものであっても本件特許発明の課題を解決できるのかが不明である。 イ 本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された実施例A-1では、生分解性球状粒子の主成分が実質的にセルロースであることが記載されているのみであり、どの程度の重量比で含まれるのかが記載されておらず、他の実施例については、生分解性高分子が主成分であるか否かが開示されていないので、本件特許の出願時の技術常識を参酌しても、最大49.99・・重量%の生分解性高分子以外のあらゆるものを含みうる粒子の範囲にまで本件特許の明細書に記載された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。 (9)申立理由A6(明確性) 本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 本件特許明細書の【0042】の記載から、セルロースアシレートの総置換度は、良好な生分解性に影響するといえるが、その効果が特許請求の範囲に明確に記載されていない。 (10)証拠方法 甲第A1号証:土井幸夫ほか,Polybutylene Succinate-co-adipateエマルションの生分解性接着剤適性の研究[生分解性ポリエステル接着剤の応用研究(その3)],日本接着学会誌, 2005年, Vol.41, No.10,p.393-403 甲第A1-1号証:特開2002-3607号公報 甲第A1-2号証:国際公開第2014/189024号 甲第A2号証:特開2022-22947号公報 甲第A3号証:特開2019-214521号公報 甲第A4号証:特開2023-115890号公報 甲第A5号証:特開2020-152851号公報 甲第A6号証:国際公開第2019/156116号 甲第A7号証:国際公開第2017/195642号 甲第A8号証:国際公開第2016/080530号 なお、証拠の表記については、特許異議申立書Aの記載に概ね従った。以下、順に「甲A1」のようにいう。 2 特許異議申立人Bによる特許異議の申立ての理由の概要等 令和6年7月23日に特許異議申立人Bが提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書B」という。)に記載した特許異議申立ての理由の概要及び証拠方法は次のとおりである。 (1)申立理由B1-1(甲第B1号証を主たる証拠とする新規性) 本件特許発明1ないし11は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (2)申立理由B1-2(甲第B1号証を主たる証拠とする進歩性) 本件特許発明1ないし11は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B1号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (3)申立理由B2-1(甲第B2号証を主たる証拠とする新規性) 本件特許発明1ないし11は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (4)申立理由B2-2(甲第B2号証を主たる証拠とする進歩性) 本件特許発明1ないし11は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B2号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (5)申立理由B3-1(甲第B3号証を主たる証拠とする新規性) 本件特許発明1ないし11は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (6)申立理由B3-2(甲第B3号証を主たる証拠とする進歩性) 本件特許発明1ないし11は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B3号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (7)申立理由B4-1(甲第B4号証を主たる証拠とする新規性) 本件特許発明1ないし11は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (8)申立理由B4-2(甲第B4号証を主たる証拠とする進歩性) 本件特許発明1ないし11は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B4号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (9)申立理由B5-1(甲第B5号証を主たる証拠とする新規性) 本件特許発明1ないし11は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B5号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (10)申立理由B5-2(甲第B5号証を主たる証拠とする進歩性) 本件特許発明1ないし11は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B5号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (11)申立理由B6-1(甲第B6号証を主たる証拠とする新規性) 本件特許発明1ないし11は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B6号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (12)申立理由B6-2(甲第B6号証を主たる証拠とする進歩性) 本件特許発明1ないし11は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B6号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (13)申立理由B7-1(甲第B7号証を主たる証拠とする新規性) 本件特許発明1ないし11は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B7号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (14)申立理由B7-2(甲第B7号証を主たる証拠とする進歩性) 本件特許発明1ないし11は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B7号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (15)申立理由B8-1(甲第B8号証を主たる証拠とする新規性) 本件特許発明1ないし11は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B8号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (16)申立理由B8-2(甲第B8号証を主たる証拠とする進歩性) 本件特許発明1ないし11は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B8号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (17)申立理由B9-1(甲第B9号証を主たる証拠とする新規性) 本件特許発明1ないし11は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B9号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (18)申立理由B9-2(甲第B9号証を主たる証拠とする進歩性) 本件特許発明1ないし11は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B9号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (19)申立理由B10(甲第B12号証を主たる証拠とする拡大先願) 本件特許発明1ないし11は、本件特許の出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた特許出願(甲第B12号証に係る出願)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であって、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また、この出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (20)申立理由B11(明確性) 本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 ア 本件特許発明1は、生分解性球状粒子について「OECD TG301Fに準拠した生分解性試験において、下記式により算出される5日目の生分解度が40%以下である」ことを特定するものであり、5日目の生分解度が0%程度の難分解性高分子も包含することから、何を持って「生分解性」とするのか、その定義が明確でない。 イ 本件特許発明1は、生分解性球状粒子について「OECD TG301Fに準拠した生解性試験において、下記式により算出される5日目の生分解度が40%以下である 生分解度(%)=(BOD-B)/TOD×100」ことを特定するものであるが、5日目の生分解度を40%以下にするための構成が明確でない。 ウ 生分解度の算出に用いる「ブランク」が何を指すのか明確でない。 エ 本件特許の請求項4及び5に記載された「ミクロンサイズ」という用語の定義や意味する範囲等が明確でない。 オ 本件特許の請求項4及び5に記載された「実質的に存在しない」という用語の定義等が明確でない。 (21)申立理由B12(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された実施例では、セルロースアセテートなどの特定の生分解性高分子を用いた実施例が記載されているのみで、技術的な裏付けが不十分であり、本件特許発明のすべての範囲において本発明の課題を解決できることを当業者が認識できるものとは認められない。 (22)申立理由B13(甲第B10号証を主たる証拠とする進歩性) 本件特許発明1ないし11は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B10号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (23)証拠方法 甲第B1号証:特開2022-41692号公報 甲第B2号証:特開2020-152851号公報 甲第B3号証:国際公開第2020/004604号 甲第B4号証:国際公開第2021/033742号 甲第B5号証:国際公開第2020/262509号 甲第B6号証:国際公開第2016/080530号 甲第B7号証:特開2016-222897号公報 甲第B8号証:特開2005-162842号公報 甲第B9号証:国際公開第2017/195642号 甲第B10号証:Ryosuke Nabeoka et al., Evaluating the Ready Biodegradability of Biodegradable Plastics, Environmental Toxicology and Chemistry, 2021年, vol.40, No.9, p2443-2449, https://doi.org/10.1002/etc.5116 甲第B11号証:Hisaschi T. Tee et al., Aliphatic Long-Chain Polypyrophosphates as Biodegradable Polyethylene Mimics, Macromolecules, 2019年, vol.52, No.3, p.1166-1172, https://doi.org/10.1021/acs.macromol.8b02474 甲第B12号証:特開2023-115890号公報(特願2022-17985号) 甲第B13号証: 柴山雅子ほか、微生物産生ポリエステルの活性汚泥での生分解性、土木学会第51回年次学術講演会講演概要集、平成8年9月、p.52-53 甲第B14号証:特開平10-204101号公報 甲第B15号証:一般財団法人 日本規格協会編、JISハンドブック 26 プラスチックI 第1版、K6950:2000 プラスチック-水系培養液中の好気的究極生分解度の求め方、2020年1月31日発行、p.2023-2035 甲第B16号証:日本規格協会編、JISハンドブック11 プラスチック 第1版、K6950-1994 プラスチック-活性汚泥による好気的生分解度試験方法、1995年4月20日発行、p.384-387 なお、証拠の表記については、特許異議申立書Bの記載に概ね従った。以下、順に「甲B1」のようにいう。 甲13ないし甲16は、意見書Bに添付して提出されたものである。 3 特許異議申立人Cによる特許異議の申立ての理由の概要等 令和6年7月23日に特許異議申立人Cが提出し、同年8月20日に提出した手続補正書により補正された特許異議申立書(以下、「特許異議申立書C」という。)に記載した特許異議申立の理由の概要及び証拠方法は次のとおりである。 (1)申立理由C1-1(甲第C1号証を主たる証拠とする新規性) 本件特許発明1ないし3、7、8及び11は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第C1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3、7、8及び11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (2)申立理由C1-2(甲第C1号証を主たる証拠とする進歩性) 本件特許発明1ないし3、7、8及び11は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第C1号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3、7、8及び11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (3)申立理由C2-1(甲第C3号証を主たる証拠とする新規性) 本件特許発明1ないし3、6及び11は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第C3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3、6及び11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 なお、甲第C3号証は、甲第A3号証と同一の文献である。 (4)申立理由C2-2(甲第C3号証を主たる証拠とする進歩性) 本件特許発明1ないし3、6及び11は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第C3号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3、6及び11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (5)申立理由C3(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし6及び11ないし15に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、本件特許の請求項1ないし6及び11ないし15に係る特許は、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 本願明細書には、生分解性高分子として「多糖類」を用いた具体例が記載されていない。そして、生分解性高分子の種類と得られる効果(短期的な生分解性)との関係は、単なる化学構造から推認することは困難である。したがって、生分解性高分子として多糖類を用いた場合にも本件特許発明の課題を解決できることを当業者が認識できるとはいえない。 (6)証拠方法 甲第C1号証:特開2021-21044号公報 甲第C2号証:株式会社ダイセルのWebページ「酢酸セルロースの技術情報」(https://www.daicel.com/cell_ac/detail/index.html) 甲第C3号証:特開2019-214521号公報 甲第C4号証:特開2020-152851号公報 参考資料1:アビセルR(当審注:Rは、「R」に○囲いをした文字)の製品情報、Pharma Solutionsウェブサイト、URL:https://pharma.iff.com/jp/industry-segments/pharma-solutions/products/avicel 参考資料2:大東化成工業株式会社のウェブサイト、製品情報 化粧品原料一覧、URL:https://www.daitokasei.com/product/chemical.php?lar_cat=19 参考資料3:JNC株式会社のウェブサイト、化粧品原料 セルフローTMのページ、URL: https://www.jnc-corp.co.jp/celluflow/ なお、証拠の表記については、特許異議申立書Cの記載に概ね従った。以下、順に「甲C1」のようにいう。 参考資料1ないし3は、意見書Cに添付して提出されたものである。 4 特許権者による証拠方法 特許権者は、令和7年1月16日に提出した意見書に添付して以下の証拠を提出している。 乙第1号証:「OECD TG301F」の「DATA AND REPORTING Treatment of results」の欄 乙第2号証:「株式会社ダイセルでOECD301Fに準拠して測定した微結晶セルロースの生分解度」 乙第3号証:甲B10における微結晶セルロースの生分解度 第5 取消理由の概要 令和6年11月15日付けで通知された取消理由の概要は次のとおりである。 1 取消理由1(甲A2を主たる証拠とする新規性・進歩性) 本件特許発明1及び6ないし11は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲A2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、また、本件特許発明1及び6ないし11は、甲A2に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び6ないし11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 2 取消理由2(甲A3を主たる証拠とする新規性・進歩性) 本件特許発明1ないし11は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲A3に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、また、本件特許発明1ないし11は、甲A3に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 3 取消理由3(甲B12に基づく拡大先願) 本件特許発明1ないし11は、本件特許の出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた特許出願(甲B12に係る出願)の先願明細書等に記載された発明と同一であって、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また、この出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 なお、甲12に係る出願の出願日は、令和4年7月29日であるが、その優先日は令和4年2月8日であるから、甲B12に係る出願の先願明細書等に記載された事項のうち、優先権主張の基礎とされた出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項については、拡大先願の地位を有する。 第6 当審の判断 当審は、取消理由1ないし3並びに申立理由A1-1ないしA6、申立理由B1-1ないしB13及び申立理由C1ないしC3には、以下のとおり理由がないと判断する。 なお、取消理由1は、申立理由A2-1及び申立理由A2-2を包含するものであり、取消理由2は、申立理由A3-1及び申立理由A3-2並びに申立理由C2-1及び申立理由C2-2を包含するものであり、取消理由3は、申立理由B10とおおむね同旨である。 1 取消理由1(甲A2を主たる証拠とする新規性・進歩性)並びに申立理由A2-1及び申立理由A2-2について 取消理由1は、申立理由A2-1及び申立理由A2-2を包含するものであるから併せて検討する。 (1)甲A2に記載された事項等 ア 甲A2に記載された事項 甲A2には、「生分解性樹脂粒子」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。他の文献についても同様である。 ・「【請求項20】 生分解性樹脂を含む母粒子と、 前記母粒子の表面上に有する、化合物層と、 を有し、 ISO-14855-2(2018年)に準じた方法測定した、3か月後の好気条件生分解率が20%以下である生分解性樹脂粒子。」 ・「【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明の課題は、生分解性樹脂を含む母粒子の表面上に、ポリアルキレンイミン、ポリアリルアミン及びポリビニルアミンの少なくとも1種のカチオン性樹脂を含む層のみを有する生分解性樹脂粒子に比べ、経時での生分解速度を有しつつ、初期の生分解速度が遅い生分解性樹脂粒子を提供することである。」 ・「【0017】 生分解性樹脂粒子は、速い生分解速度が求められる。しかし、過度に生分解速度が速いと、樹脂粒子自体の耐久性の低下が速くなる。つまり、ある期間(例えば、使用期間中の数年程度の期間)は、樹脂粒子としての機能を維持させることが求められる。」 ・「【0028】 [母粒子] 母粒子は、第一層及び第二層が形成される対象の粒子であり、生分解性樹脂を含む。 母粒子は、生分解性樹脂を主成分として含む粒子が挙げられ、具体的には、母粒子全体に対して、生分解性樹脂を、90質量%、95質量%、98質量%、又は100質量%含む粒子が挙げられる。 【0029】 -生分解性樹脂- 生分解性樹脂は、微生物により、水と二酸化炭素に分解される樹脂である。具体的には、生分解性樹脂とは、ISO-14855-2(2018年)に準じた方法で測定した好気条件生分解率が、1か月で50%以上となる樹脂を意味する。 【0030】 生分解性樹脂としては、ポリエステル樹脂、天然高分子、ポリビニルアルコール等が挙げられる。 【0031】 ポリエステル樹脂としては、脂肪族ポリエステル樹脂、脂肪族芳香族ポリエステル樹脂等が挙げられる。 脂肪族ポリエステル樹脂としては、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)ポリヒドロキシブチレート、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネート/アジペート(PBSA)、ポリエチレンサクシネート(PBA)等のポリヒドロキシアルカン酸;等が挙げられる。 脂肪族芳香族ポリエステル樹脂としては、ポリブチレンアジペート/テレフタレート共重合樹脂(PBAH)、ポリテトラメチレンアジペート/テレフタレート共重合樹脂、等が挙げられる。」 ・「【0146】 [各層の含有量] 本実施形態に係る生分解性樹脂粒子において、経時での生分解速度向上、及び、初期の生分解速度低下の観点から、第一層におけるカチオン性樹脂の被覆量と第二層における疎水性化合物の被覆量との質量比(カチオン性樹脂の被覆量/疎水性化合物の被覆量)は、0.05以上20以下が好ましく、0.1以上10以下がより好ましく、0.1以上3以下がさらに好ましい。 【0147】 また、経時での生分解速度向上、及び、初期の生分解速度低下の観点から、母粒子に対するカチオン性樹脂の含有量は、0.05質量%以上15質量%以下が好ましく、0.1質量%以上10質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上3質量%以下がさらに好ましい。 また、経時での生分解速度向上、及び、初期の生分解速度低下の観点から、母粒子に対する疎水性化合物の含有量は、0.05質量%以上15質量%以下が好ましく、0.1質量%以上10質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上3質量%以下がさらに好ましい。」 ・「【0151】 本実施形態に係る生分解性樹脂粒子は、ISO-14855-2(2018年)に準じた方法測定した、3か月後の好気条件生分解率は20%以下である。 3か月後の好気条件生分解率が上記範囲であると、初期の生分解速度が低下する。 3か月後の好気条件生分解率は、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下である。なお、下限は理想的には0%であるが、例えば、1%以上である。 【0152】 本実施形態に係る生分解性樹脂粒子は、ISO-14855-2(2018年)に準じた方法測定した、6か月後の好気条件生分解率と3か月後の好気条件生分解率との比(6か月後の好気条件生分解率/3か月後の好気条件生分解率)は、1.20以上が好ましく、1.50以上が好ましく、2.00以上がより好ましい。 また、ISO-14855-2(2018年)に準じた方法測定した、12か月後の好気条件生分解率と3か月後の好気条件生分解率との比(12か月後の好気条件生分解率/3か月後の好気条件生分解率)は、3.50以上が好ましく、5.00以上が好ましく、10.00以上がより好ましく、15.00以上がさらに好ましく、20.00以上がより好ましい。」 ・「【0158】 生分解性樹脂粒子の体積平均粒径は、3μm以上100μm以下が好ましく、5μm以上70μm以下がより好ましく、8μm以上60μm以下がさらに好ましい。 粒状体の粒径を3μm以上にすると、単位重量あたりの粒子の個数が多くなりすぎないため、生分解速度の低下が抑制される。一方、生分解性樹脂粒子の粒径が100μm以下にすると、比表面積が高くなり、より生分解速度の向上が図られる。 そのため、粒状体の体積平均粒径は、上記範囲が好ましい。 【0159】 生分解性樹脂粒子の大径側粒度分布指標GSDvは、1.5以下が好ましく、1.3以下がより好ましく、1.2以下がさらに好ましい。 生分解性樹脂粒子の粒度分布が均一に近づけると、水との一定の接触機会を与えることで規則的な加水分解が進行し、より生分解速度の向上が図られる。 【0160】 生分解性樹脂粒子の体積平均粒径および大径側粒度分布指標GSDvは、次の通り測定される。 LS粒度分布測定装置「BeckmanCoulter LS13 320(ベックマンコールター社製)」により粒径を測定し、粒径の累積分布を、体積基準で小径側から描き、累積50%となる粒子径を、体積平均粒径として求める。 一方、粒径の累積分布を、体積基準で小径側から描き、累積50%となる粒子径を個数平均粒子径D50v、累積84%となる粒子径を個数粒子径D84vと定義する。そして、大径側個数粒度分布指標GSDvは、式GSDv=(D84v/D50v) 1/2で算出する。」 ・「【0170】 本実施形態に係る生分解性樹脂粒子の用途としては、化粧品基材、ローリング剤、研磨剤、スクラブ剤、ディスプレイスペーサー、ビーズ成形用材料、光拡散粒子、樹脂強化剤、屈折率制御剤、生分解促進剤、肥料、吸水性粒子、トナー粒子の粒状体が挙げられる。」 ・「【0173】 [母粒子の生分解性樹脂] ・DAC:(株)ダイセル製「L-50」、セルロースジアセテート、重量平均重合度570 ・CAB:イーストマンケミカル「CAP504-0.2」、セルロースアセテートプロピオネート、重量平均重合度133、アセチル基置換度0.04、プロピオニル基置換度2.09 ・CAP:セルロースアセテートプロピオネート、重量平均重合度716、アセチル基置換度0.18、プロピオニル基置換度2.49 ・PLA:ポリ乳酸、重量平均分子量180000 ・PHA:ポリヒドロキシアルカン酸 ・PBS:ポリブチレンサクシネート、重量平均分子量200000 ・PBSA:ポリブシレンサクシネートアジペート、重量平均分子量110000 ・PBAT:ポリブチレンアジペートテレフタレート、重量平均分子量100000 ・PETS:ポリエチレンテレフタレート/サクシネート共重合体、重量平均分子量150000」 ・「【0179】 一方、樹脂として、DAC、CAB、及びCAP以外の樹脂を使用する場合、次の通り母粒子を得た。 樹脂ペレット2000gを溶融混錬(ニーダー)し、混錬物を2本ロールで圧延し板状に成形後、成形物を冷却し粉砕機で粗粉砕する。この粗粉砕物をジェトミルで微粉砕することで母粒子を得た。この母粒子を、純水に分散して母粒子のスラリーを得た。 【0180】 (生分解性樹脂粒子の作製) 表1~表2に示す第一層及び第二層の材料を使用して、各層の被覆量が表1~表2に示す量となるように、次の通り、生分解性樹脂粒子を得た。 母粒子のスラリーを固形分が20%になるように調整後、このスラリーに含まれる固形分量に対してカチオン性樹脂の溶液を純分換算で所定量を添加して25℃の条件下で1時間撹拌した。撹拌終了後、残渣のろ過を行い、再度純水に分散して、固形分が20%になるように調整し、このスラリーに含まれる固形分量に対して、疎水性化合物を純分換算で所定量を添加して25℃の条件下で1時間撹拌した。撹拌終了後、残渣のろ過を行い、固形分を凍結乾燥して生分解性樹脂粒子を得た。 以上の工程を経て、生分解性樹脂粒子を得た。 なお、比較例A2、B2では、第一層を形成せず、実施例A1、B1と同じ被覆量となるように第二層を形成する処理(疎水性化合物の添加処理)を実施したが、疎水性化合物が吸着し難く、第二層の被覆量は0.0001%であった。」 ・「【0186】 <生分解性の測定> 得られた生分解性樹脂粒子を用いて、ISO-14855-2(2018年)に準じた方法で、3か月後、6ヶ月後、12ヶ月後の各好気条件生分解率を測定した。結果を表1~表2に示す。 【0187】 【表1-1】 [図:0001429989000001.jpg] 【0188】 【表1-2】 [図:0001429989000002.jpg] 」 イ 甲A2に記載された発明 甲A2に記載された事項を、特に実施例A10ないしA15及び【0170】について整理すると、甲A2には、次の発明(以下、順に「甲A2粒子発明」、「甲A2組成物発明」といい、それらをまとめて「甲A2発明」という場合がある。)が記載されていると認める。 <甲A2粒子発明> 「実施例A10ないしA15の生分解性樹脂粒子であって、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)、ポリブチレンサクシネート/アジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)又はポリエチレンテレフタレート/サクシネート共重合体(PETS)のいずれか一つの生分解性樹脂からなる母粒子と、前記母粒子の表面上に有する化合物層と、を有し、体積平均粒子径(D50v)が8ないし12μmであり、ISO-14855-2(2018年)に準じた方法で測定した、3か月後の好気条件生分解率が3ないし15%である生分解性樹脂粒子。」 (当審注:実施例A10-A15については、上記アを参照。) <甲A2組成物発明> 「甲A2粒子発明の粒子を含む、化粧品組成物。」 (2)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲A2粒子発明とを対比する。 甲A2粒子発明の「生分解性樹脂」は、本件特許発明1の「生分解性高分子」に相当し、甲A2粒子発明の「ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)、ポリブチレンサクシネート/アジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリエチレンテレフタレート/サクシネート共重合体(PETS)」は、本件特許発明1の「脂肪族ポリエステル」に相当し、甲A2粒子発明の「体積平均粒径(D50v)」は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の【0028】の記載からみて、本件特許発明1の「平均粒子径」に相当する。 そして、甲A2粒子発明の生分解性樹脂粒子は、母粒子に対する第一層(カチオン性樹脂)及び第二層(疎水性化合物)の割合が各1%であるから(【表1-1】)、生分解性高分子を主成分として含むものといえ、その平均粒子径が8ないし12μmであるから、本件特許発明1の「平均粒子径が0.08μm以上100μm以下であり」という発明特定事項を満たすといえる。 そうすると、両者は、以下の点で一致する。 <一致点> 「生分解性高分子を主成分として含み、前記生分解性高分子が、多糖類、多糖エステル及び脂肪族ポリエステルからなる群から選択され、前記多糖エステルの総置換度が0.7未満であり、平均粒子径が0.08μm以上100μm以下である生分解性粒子。」 そして、両者は、以下の点で相違する。 <相違点A2-1-1> 本件特許発明1の粒子は「粒子径変動係数CVが40%以下であ」るのに対し、甲A2粒子発明の粒子は粒子径変動係数CVが不明である点。 <相違点A2-1-2> 本件特許発明1の粒子は、「OECD TG301Fに準拠した生分解性試験において、下記式により算出される5日目の生分解度(以下、単に「BD5」という。)が40%以下である 生分解度(%)=(BOD-B)/TOD×100 (式中、BODは試験物質による生物化学的酸素消費量(mg)であり、Bはブランクの生物化学的酸素消費量(mg)であり、TODは試験物質による理論的酸素消費量(mg)である。)」のに対し、甲A2粒子発明の粒子は「ISO-14855-2(2018年)に準じた方法で測定した、3か月後の好気条件生分解率が3ないし15%である」点。 <相違点A2-1-3> 本件特許発明1の粒子は、「OECD TG301Fに準拠した生分解性試験により測定される5日目の生分解度BD5の、28日目の生分解度BD28に対する比BD5/BD28(以下、単に「BD5/BD28」という。)が、0.60以下である」のに対して、甲A2粒子発明の粒子は、BD5/BD28が不明である点。 <相違点A2-1-4> 本件特許発明1の粒子は「球状」であるのに対し、甲A2粒子発明の粒子は形状が不明である点。 イ 判断 事案に鑑み、上記相違点A2-1-3について検討する。 甲A2には、甲A2粒子発明の粒子のBD5/BD28が0.60以下であることは記載されていないし、甲A2及び他の証拠をみても、甲A2粒子発明の粒子のBD5/BD28が0.60以下である蓋然性が高いと判断する理由もない。したがって、上記相違点A2-1-3は実質的な相違点である。 そして、甲A2及び他の証拠をみても、甲A2粒子発明において、粒子のBD5/BD28を0.60以下にする動機付けがない。 よって、甲A2粒子発明において、相違点A2-1-3に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲A2粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 特許異議申立人の主張について 上記相違点A2-1-3は、甲A2に基づく異議申立ての理由の対象になっていない訂正前の請求項2の発明特定事項であり、特許異議申立人Aは特段の主張を行っていない。特許異議申立人B及び特許異議申立人Cについても同様である。 (3)本件特許発明6ないし10について 本件特許発明6ないし10は、請求項1の記載を引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有し、さらに特定するものである。 そして、上記(2)のとおり、本件特許発明1は甲A2粒子発明ではなく、甲A2粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明6ないし10もまた、甲A2粒子発明ではなく、甲A2粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (4)本件特許発明11について 本件特許発明11と甲A2組成物発明とを対比すると、前者は本件特許発明1の粒子を含む化粧品組成物であり、後者は甲A2粒子発明の粒子を含む化粧品組成物であるから、両者の間には本件特許発明1と甲A2粒子発明の間と同様の相当関係があるといえ、少なくとも以下の点で両者は相違する。 <相違点A2-11> 本件特許発明11の組成物は、BD5/BD28が0.60以下である粒子を含むのに対して、甲A2組成物発明は、BD5/BD28が不明である粒子を含む点。 上記相違点A2-11について検討すると、相違点A2-11は、相違点A2-1-3と実質的に同じ内容であるから、相違点A2-1-3と同様に判断される。 よって、本件特許発明11は、甲A2組成物発明ではなく、甲A2組成物発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (5)取消理由1並びに申立理由A2-1及び申立理由A2-2についてのまとめ したがって、本件特許発明1、6ないし11は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、本件特許発明1、6ないし11は、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえない。 よって、本件特許の請求項1、6ないし11に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取消理由1並びに申立理由A2-1及び申立理由A2-2によっては取り消すことはできない。 2 取消理由2(甲A3を主たる証拠とする新規性・進歩性)並びに申立理由A3-1、申立理由A3-2、申立理由C2-1及び申立理由C2-2について 取消理由2と申立理由A3-1、申立理由A3-2、申立理由C2-1及び申立理由C2-2とは、同一の文献を主たる証拠とする理由であるから、併せて検討する。 (1)甲A3に記載された事項等 ア 甲A3に記載された事項 甲A3には、「固形状香料組成物」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「【請求項1】 下記成分(a)~(e): (a)香料0.5~30重量% (b)固形油 (c)球状無水ケイ酸及び球状セルロースから選ばれる1種又は2種以上の粉体5~50重量% (d)炭素数16~36の液状モノエステル油 (e)ポリグリセリン脂肪酸エステル類、フィトステロール脂肪酸エステル類、及びペンタエリスリトール脂肪酸エステル類から選ばれる1種又は2種以上の半固形エステル油0.5~10重量% を含有し、上記成分(d)の液状モノエステル油の含有量を1とした際に上記成分(e)の半固形エステル油の含有量が0.02~0.3となる比率であることを特徴とする固形状香料組成物。 【請求項2】 上記成分(c)の球状無水ケイ酸又は球状セルロースの平均一次粒子径が5~15μmで、吸油量が150mL/100g以下であることを特徴とする請求項1記載の固形状香料組成物。」 ・「【発明が解決しようとする課題】 【0009】 本願発明は、自然環境に配慮してマイクロプラスチックビーズを含有せず、かつ経時安定性及び使用性のどちらも優れた固形状香料組成物を提供するものである。」 ・「【0016】 また球状無水ケイ酸及び球状セルロースの平均一次粒子径は通常化粧料に用いられるものであれば特に限定されない。一般的には化粧料として用いられる場合塗布時の滑らかさが求められるため2~30μmのものが汎用されている。2μmより小さいと塗布時に軋みを感じ、30μmより大きいと滑らかさが損なわれるためであるが、より好ましくは5~15μmである。平均一次粒子径はレーザー回折散乱光を用いて測定・算出する。さらに吸油量は通常化粧料に用いられるものであれば特に限定されないが、加温溶解し充填する際の流動性や塗布時の滑らかさ等の使用性を鑑みると、150mL/100g以下のものが好ましい。吸油量は顔料試験方法JISK 5101-13-1に準拠した精製あまに油法によって算出する。市販品としてはサンスフェアNP-100(AGCエスアイテック株式会社製)、SI-SB-150(三好化成株式会社製)、SA-SB-300(7%)(三好化成株式会社製)、シリカマイクロビードP-1500(日揮触媒化成株式会社製)、CELLULOBEADSD-10(大東化成工業株式会社製)などが挙げられる。これらの球状無水ケイ酸及び球状セルロースは1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。」 ・「【0026】 【表1】 [図:0001429989000003.jpg] ※ 1 シリカマイクロビードP-1500(日揮触媒化成株式会社製) ※ 2 サンスフェアNP-100(AGCエスアイテック株式会社製) ※ 3 サンスフェアH-52(AGCエスアイテック株式会社製) ※ 4 サンスフェアH-122(AGCエスアイテック株式会社製) ※ 5 SA-SB-300(7%)(三好化成株式会社製) ※ 6 CELLULOBEADS D-10(大東化成工業株式会社製) ※ 7 セルフロー C-25(JNC株式会社製) ※ 8 ITT-0.5 CELLULOBEADSD-10(大東化成工業株式会社製) ※ 9 サイリシア440(富士シリシア化学株式会社製) ※10 タルク JA-13R(浅田製粉株式会社製)」 (イ)甲A3に記載された発明 甲A3に記載された事項を、特に実施例6及び7について整理すると、甲A3には、次の発明(以下、順に「甲A3粒子発明」、「甲A3組成物発明」といい、これらをまとめて「甲A3発明」という場合がある。)が記載されていると認める。 <甲A3粒子発明> 「平均粒子径15μm、吸油量60mL/100gである、CELLULOBEADS D-10(大東化成工業株式会社製)の粒状セルロース又は平均粒子径10μm、吸油量90mL/100gであるセルフロー C-25(JNC株式会社製)の粒状セルロース。」 <甲A3組成物発明> 「甲A3粒子発明の粒状セルロースを含む、固形状香料組成物。」 (2)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲A3粒子発明とを対比する。 甲A3粒子発明の「平均粒子径」は、甲A3の【0016】の測定方法を参酌すると、本件特許発明1の「平均粒子径」に、甲A3粒子発明の「セルロース」は、本件特許発明1の「多糖類」及び「生分解性高分子」に、それぞれ相当し、甲A3粒子発明の「粒状セルロース」は、「粒状」であるから「粒子」であるといえ、セルロースを主成分とするものといえる。また、甲A3粒子発明は、平均粒子径が15μmまたは10μmであるから、本件特許発明1の「平均粒子径が0.08μm以上100μm以下であり」という発明特定事項を満たす。 そうすると、両者は、以下の点で一致する。 <一致点> 「生分解性高分子を主成分として含み、前記生分解性高分子が、多糖類、多糖エステル及び脂肪族ポリエステルからなる群から選択され、前記多糖エステルの総置換度が0.7未満であり、平均粒子径が0.08μm以上100μm以下である生分解性粒子。」 そして、両者は、以下の点で一応相違する。 <相違点A3-1-1> 本件特許発明1の粒子は「粒子径変動係数CVが40%以下であ」るのに対し、甲A3粒子発明の粒子は粒子径変動係数CVが不明である点。 <相違点A3-1-2> 本件特許発明1の粒子はBD5が40%以下であるのに対し、甲A3粒子発明の粒子はそのような特定がされていない点。 <相違点A3-1-3> 本件特許発明1の粒子は「球状」であるのに対し、甲A3粒子発明の粒子は球状であるか否かが明確でない点。 <相違点A3-2> 本件特許発明1の粒子は、BD5/BD28が0.60以下であるのに対して、甲A3粒子発明の粒子は、BD5/BD28が不明である点。 イ 判断 事案に鑑み、上記相違点A3-2について検討する。 甲A3には、甲A3粒子発明の粒子のBD5/BD28が0.60以下であることは記載されていないし、甲A3及び他の証拠をみても、甲A3粒子発明の粒子のBD5/BD28が0.60以下である蓋然性が高いと判断する理由もない。したがって、上記相違点A3-2は実質的な相違点である。 そして、甲A3及び他の証拠をみても、甲A3粒子発明において、粒子のBD5/BD28を0.60以下にする動機付けがない。 よって、甲A3粒子発明において、相違点A3-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲A3粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 特許異議申立人の主張について (ア)特許異議申立人Aの主張について 特許異議申立人Aは、特許異議申立書A(42-43頁)において、甲A3粒子発明の粒子は、共にセルロースの粒子であり、セルロースという材料名にて本件特許発明1の粒子と共通するので、生分解性に関する特性についても共通するから、上記相違点A3-2は実質的な相違点ではない、と主張している。 しかし、生分解性樹脂粒子の生分解性は、その材料名のみで決まるものではなく、粒子の粒度分布や表面形状等によっても変化するものと認められるので(本件特許の明細書の【0026】、【0033】)、セルロース粒子であれば全て同様の生分解性を示すことを前提とした特許異議申立人Aの主張は採用することができない。 (イ)特許異議申立人Bの主張について 特許異議申立人Bは、意見書B(3~9頁)において、甲B13~甲B16を引用し、甲B12における生分解性試験は本件特許発明における生分解性試験と同様にブランクを対象として行われたものであるから、甲B12に記載されたCELLULOBEADS D-10(大東化成工業株式会社製)及びセルフロー C-25(JNC株式会社製)の生分解度に基づいて、相違点A3-2は実質的な相違点ではない旨主張している。 しかし、甲B12には、60日間の生分解率は記載されているものの、28日間の生分解率は記載されていないので、仮に甲B12における生分解性試験が本件特許発明における生分解性試験と同様にブランクを対象として行われたものであるとしても、甲A3粒子発明のBD5/BD28は依然として不明である。また、微結晶セルロースの生分解度(乙2、乙3)を参酌すると、甲B12に記載された生分解度は本件特許発明1における生分解度とは異なるものであり、BD5/BD28が0.60以下であるという根拠にはならない。さらに、特許異議申立人Bは、甲A3粒子発明が上記相違点A3-2を満たすことを示す具体的な証拠を提示するものでもない。 よって、特許異議申立人Bの主張は、上記イの結論を左右するものではない。 (ウ)特許異議申立人Cの主張について 特許異議申立人Cは、特許異議申立書C(36-37頁)において、BD5/BD28は急激な分解反応の進行が抑制されていることの指標であり、主に、球状粒子の主成分である「多糖類」の組成及び粒子径プロファイルにより制御されているものであるところ、甲A3粒子発明の主成分は、本件特許発明1の主成分と一致していることから、甲A3粒子発明のBD5/BD28の値も自ずと0.60以下になる蓋然性が高い、と主張している。また、意見書C(3-4頁)において、乙第2号証の微結晶セルロースの生分解度の曲線を参照しても、28日目以降で生分解率が大きく変化していることは確認できないので、60日目の生分解率から28日目の生分解率を見積もることには妥当性がある、と主張している。 しかし、生分解性樹脂粒子の生分解性は、その主成分の樹脂のみで決まるものではなく、粒子の粒度分布や表面形状等によっても変化するものと認められるので、甲A3粒子発明の主成分が本件特許発明1の主成分と一致していることを根拠とする特許異議申立人Cの主張は採用することができない。また、乙第2号証の生分解度曲線は、甲A3粒子発明とは粒子径等が異なる対照の微結晶セルロース粒子に関するものであり、甲A3粒子発明の粒子の生分解度曲線が、乙2号証の生分解度曲線と同じになると解する理由もないので、特許異議申立人Cの主張は、上記イの結論を左右するものではない。 (3)本件特許発明3ないし10について 本件特許発明3ないし10は、請求項1の記載を引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有し、さらに特定するものである。 そして、上記(2)のとおり、本件特許発明1は甲A3粒子発明ではなく、甲A3粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明3ないし10もまた、甲A3粒子発明ではなく、甲A3粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (4)本件特許発明11について 本件特許発明11と甲A3組成物発明とを対比すると、前者は本件特許発明1の粒子を含む化粧品組成物であり、後者は甲A3粒子発明の粒子を含む化粧品組成物であるから、両者の間には本件特許発明1と甲A3粒子発明の間と同様の相当関係があるといえ、少なくとも以下の点で両者は相違する。 <相違点A3-11> 本件特許発明11の組成物は、BD5/BD28が0.60以下である粒子を含むのに対して、甲A3組成物発明は、BD5/BD28が不明である粒子を含む点。 上記相違点A3-11について検討すると、相違点A3-11は、相違点A3-2と実質的に同じ内容であるから、相違点A3-2と同様に判断される。 よって、本件特許発明11は、甲A3組成物発明ではなく、甲A3組成物発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (5)取消理由2並びに申立理由A3-1、申立理由A3-2、申立理由C2-1及び申立理由C2-2についてのまとめ したがって、本件特許発明1、3ないし11は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、本件特許発明1、3ないし11は、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえない。 よって、本件特許の請求項1、3ないし11に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取消理由2並びに申立理由A3-1、申立理由A3-2、申立理由C2-1及び申立理由C2-2によっては取り消すことはできない。 3 取消理由3(甲B12を主たる証拠とする拡大先願)及び申立理由B10について 取消理由3と申立理由B10とは、同一の文献を主たる証拠とする理由であるから、併せて検討する。 (1)甲B12に記載された事項等 ア 甲B12に記載された事項 甲B12(特願2022-17985号の願書に最初に添付された明細書及び特許請求の範囲にも同じ記載がある。)には、「セルロース粒子」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「【請求項1】 セルロースを主成分し、 JIS K6950:2000に準拠して測定される、5日間の生分解率が20%未満、且つ60日間の生分解率60%以上であるセルロース粒子。」 ・「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 本発明の課題は、セルロースを主成分し、JISK6950:2000に準拠して測定される、5日間の生分解率が20%超え、又は60日間の生分解率60%未満であるセルロース粒子に比べ、生分解性が高く、質感の経時変化が少ないセルロース粒子を提供することである。」 ・「【0023】 (生分解率) 本実施形態に係るセルロース粒子における、JISK6950:2000に準拠して測定される、5日間の生分解率は20%未満である。質感の経時変化抑制の観点から、5日間の生分解率は15%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。 5日間の生分解率は、理想的には0%が好ましいが、本質的には生分解性を有する材料を使用する観点から、完全に初期の生分解性を抑制することは困難であり、例えば、5%以上である。 【0024】 本実施形態に係るセルロース粒子における、JISK6950:2000に準拠して測定される、60日間の生分解率は60%以上である。高い生分解性の観点から、60日間の生分解率は65%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。 60日間の生分解率は、高い程好ましいが、BOD測定精度の限界、すなわち酸素検出精度や検体の分解に関わらない微生物による酸素消費の影響などで、100%にならないのが通常である観点から、例えば、95%以下である。 【0025】 ここで、生分解率は、JISK6950:2000に準拠して測定される。そして、JISK6950:2000は、ISO14851:1999に相当する。 具体的は、生分解率は、測定対象のセルロース粒子(以下対象物質)と参照物質の酸素要求量から下記式で算出される。 生分解率(%)=(A-B)/C×100 A(mg):対象物質の生化学的酸素要求量 B(mg):対照物質の平均生化学的酸素要求量 C(mg):対象物質を酸化するために必要な理論上の最大酸素量 【0026】 そして、酸素要求量は、下記条件で閉鎖系酸素消費量測定装置を用いて測定する。 植種源:主に家庭排水を処理する下水処理場の好気的反応槽汚泥 対照物質:微結晶セルロース 対象物質濃度:100mg/L 対照物質濃度:100mg/L 植種源濃度:150mg/L 試験液量:300mL 試験温度:25±1℃ 培養期間:30日間」 ・「【0067】 (体積平均粒子径及び大径側個数粒度分布指標GSDv) 本実施形態に係るセルロース粒子の体積平均粒子径は、3μm以上10μm未満であることが好ましく、4μm以上9μm以下であることより好ましく、5μm以上8μm以下であること更に好ましい。 【0068】 本実施形態に係るセルロース粒子の体積平均粒子径を、3μm以上10μm未満とすることで、生分解性が高く、質感の経時変化が少ないセルロース粒子に更になりやすい。その理由は、次の通り推測される。 体積平均粒径が3μm以上であれば、粒子の表面積が大きくなり過ぎず、質感が良好になり、表面欠損の影響を受けにくいことから、質感の経時変化が小さくなる。また、体積平均粒径が10μm未満であれば、表面積が適度に大きくなることから、表面から起こる生分解が均一に進行しやすく生分解性に優れる傾向にある 以上のことから、生分解性が高く、かつ質感の経時変化が小さいセルロース粒子に更になりやすいと推測される。 【0069】 本実施形態に係るセルロース粒子の大径側個数粒度分布指標GSDvは1.0以上1.7以下であることが好ましく、1.0以上1.5以下であることがより好ましく、1.0以上1.3以下であることが更に好ましい。 【0070】 本実施形態に係るセルロース粒子の大径側個数粒度分布指標GSDvを、1.0以上1.7以下とすることで、生分解性が高く、質感の経時変化が少ないセルロース粒子に更になりやすい。その理由は、次の通り推測される。 GSDvが1.0以上1.7以下であれば、微粉(3μm未満の小さな粒子)の量が少ないことから、この微粉が残存することによる質感の低下が起こりにくく、質感の経時変化が少なくなる。また、粗紛(10μmを越える大きな粒子)による生分解阻害(表面から分解するため)が起こりにくく、優れた生分解性を実現できる傾向にある。 以上のことから、生分解性が高く、かつ質感の経時変化が少ないセルロース粒子に更になりやすいと推測される。 【0071】 セルロース粒子の体積平均粒径および大径側粒度分布指標GSDpは、次の通り測定される。 LS粒度分布測定装置「BeckmanCoulter LS13 320(ベックマンコールター社製)」により粒径を測定し、粒径の累積分布を、体積基準で小径側から描き、累積50%となる粒子径を、体積平均粒径として求める。 一方、粒径の累積分布を、体積基準で小径側から描き、累積50%となる粒子径を個数平均粒子径D50v、累積84%となる粒子径を個数粒子径D84vと定義する。そして、大径側個数粒度分布指標GSDvは、式GSDv=(D84v/D50v)1/2で算出する。」 ・「【0072】 (真球度) 本実施形態に係るセルロース粒子の真球度は0.90以上であることが好ましく、0.95以上であることがより好ましく、0.97以上であることが更に好ましい。 【0073】 本実施形態に係るセルロース粒子の真球度を、0.90以上とすることで、生分解性が高く、質感の経時変化が少ないセルロース粒子に更になりやすい。その理由は、次の通り推測される。 真球度が0.9以上であれば、たとえ表面欠陥が生じてもその影響を最小限にでき、質感の経時変化が少なくなる。また、微生物による分解が表面から内部中心に向かい、最短で進行することが可能になり、生分解性が優れる傾向にある。 以上のことから、生分解性が高く、かつ質感の経時変化が少ないセルロース粒子に更になりやすいと推測される。 【0074】 真球度は、(円相当周囲長)/(周囲長)[(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)]により求められる。具体的には、次の方法で測定される値である。 まず、測定対象となるセルロース粒子を吸引採取し、扁平な流れを形成させ、瞬時にストロボ発光させることにより静止画像として粒子像を取り込み、その粒子像を画像解析するフロー式粒子像解析装置(シスメックス(株)製のFPIA-3000)によって求める。そして、真球度を求める際のサンプリング数は3500個とする。 セルロース粒子が外添剤を有する場合、界面活性剤を含む水中に、測定対象となるセルロース粒子を分散させた後、超音波処理を行って外添剤を除去したセルロース粒子とし、測定対象として用いる。 【0075】 (表面平滑度) 本実施形態に係るセルロース粒子の表面平滑度は80%以上であることが好ましく、82%以上99%以下であることがより好ましく、84%以上98%以下であることが更に好ましい。 【0076】 本実施形態に係るセルロース粒子の表面平滑度を、80%以上とすることで、生分解性が高く、質感の経時変化が少ないセルロース粒子になりやすい。その理由は、次の通り推測される。 平滑度が80%以上であれば、粒子の表面欠損が生じたとしても、全体に平滑なため質感に影響がでにくく、質感の経時変化が少なくなる。また、生分解を進める微生物には比較的大きなサイズのものもあるが、そのような大きな微生物で粒子表面に接触することができるため、生分解性に優れる傾向にある。 以上のことから、より生分解性が高く、かつ質感の経時変化が少ないセルロース粒子になりやすいと推測される。 【0077】 表面平滑度は以下の通りの手順で測定する。 走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影したセルロース粒子のSEM画像(倍率5,000倍)を観察し、下記式より、個々のセルロース粒子の平滑度Mを算出する。そして、任意に選択した10個以上のセルロース粒子の平滑度Mの相加平均値を表面平滑度とする。平滑度Mの値が1に近いほど、セルロース粒子の表面は平滑に近い。 M=(1-(S3)/(S2))×100 上記式中、S2は、画像中に占めるセルロース粒子の面積(投影面積)を示し、S3は画像中のセルロース粒子とS2と同じ投影面積をもつ円と、を重ねた際に、「S2と同じ投影面積をもつ円の輪郭より外側、かつ、画像中のセルロース粒子の輪郭より内側の面積」及び「S2と同じ投影面積をもつ円の輪郭より内側、かつ、画像中のセルロース粒子の輪郭より外側の面積」の総和を示す。 なお、画像中のセルロース粒子とS2と同じ投影面積をもつ円とを重ねる方法は以下の通りである。 画像中のセルロース粒子とS2と同じ投影面積をもつ円とを重ねた時に、2つの画像の重なる領域の面積(S2と同じ投影面積をもつ円の輪郭より内側、かつ、画像中のセルロース粒子の輪郭より内側の面積)が最大となる様に重ねる。」 ・「【0089】 本実施形態に係るセルロース粒子の用途としては、化粧品が好ましい。 中でも、本実施形態に係るセルロース粒子の用途としては、化粧品添加剤が好ましい。 本実施形態に係るセルロース粒子は柔軟性に優れるため、化粧品添加剤として用いた場合、当該化粧品を肌に塗布した場合における、肌への化粧品の伸びが良好となりやすい。」 ・「【0124】 <比較例1~4> 以下の粒子を、各例のセルロース粒子とした。 比較例1:CELLULOBEADS D10(大東化成社製、セルロースを主成分とするセルロース粒子。被覆層、及び外添剤を有しない。) 比較例2:OTS-0.5ACELLULOBEADSD10(大東化成社製、セルロースを主成分とする母粒子と、トリエトキシオクチルシランを含む被覆層と、を有するセルロース粒子。外添剤を有しない。) 比較例3:S-STMCELLULOBEADSD-5(大東化成社製、セルロースを主成分とする母粒子と、ステリアン酸マグネシウムを含む被覆層と、を有するセルロース粒子。外添剤を有しない。) 比較例4:セルフローC25(JNC社製、セルロースを主成分とするセルロース粒子。被覆層、及び外添剤を有しない。)」 ・「【0151】 【表2-5】 [図:0001429989000004.jpg] 」 イ 甲B12に記載された発明 甲B12に記載された事項を、特に比較例1及び4並びに【0089】について整理すると、甲B12には、次の発明(以下、順に「甲B12粒子発明」、「甲B12組成物発明」という。)が記載されていると認める。 <甲B12粒子発明> 「JIS K6950:2000に準拠して測定される、5日間の生分解率が38%、60日間の生分解率が79%で、粒径が14μm、GSDvが1.17、真球度が0.97、表面平滑度が98%である、比較例1のCELLULOBEADS D10(大東化成社製)のセルロース粒子又はJIS K6950:2000に準拠して測定される、5日間の生分解率が30%、60日間の生分解率が78%で、粒径が10μm、GSDvが1.86、真球度が0.97、表面平滑度が90%である、比較例4のセルフローC25(JNC社製)のセルロース粒子。」 (当審注:比較例1及び比較例4については、上記アを参照のこと。) <甲B12組成物発明> 「甲B12粒子発明の粒子を含む、化粧品組成物。」 (2)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲B12粒子発明とを対比する。 甲B12粒子発明の「粒径」は、甲B12の【0067】から【0071】の記載からみて、本件特許発明1の「平均粒子径」に、甲B12粒子発明の「セルロース」は、本件特許発明1の「多糖類」に、甲B12粒子発明の「セルロース粒子」は、本件特許発明1の「生分解性樹脂粒子」にそれぞれ相当し、甲B12粒子発明は「セルロース粒子」であるから、セルロースを主成分とするものといえ、その真球度からみて、「球状」であるといえる。また、甲B12粒子発明は、平均粒子径が14μmまたは10μmであるから、本件特許発明1の「平均粒子径が0.08μm以上100μm以下であり」という発明特定事項を満たす。 そうすると、両者は、以下の点で一致する。 <一致点> 「生分解性高分子を主成分として含み、前記生分解性高分子が、多糖類、多糖エステル及び脂肪族ポリエステルからなる群から選択され、前記多糖エステルの総置換度が0.7未満であり、平均粒子径が0.08μm以上100μm以下である生分解性球状粒子。」 そして、両者は、以下の点で一応相違する。 <相違点B12-1-1> 本件特許発明1の粒子は「粒子径変動係数CVが40%以下である」のに対し、甲B12粒子発明の粒子は粒子径変動係数CVが不明である点。 <相違点B12-1-2> 本件特許発明1の粒子はBD5が40%以下であるのに対し、甲B12粒子発明の粒子は「JIS K6950:2000に準拠して測定される、5日間の生分解率が38%又は30%」である点。 <相違点B12-2> 本件特許発明1の粒子は、BD5/BD28が0.60以下であるのに対して、甲B12粒子発明の粒子は、BD5/BD28が不明である点。 イ 判断 事案に鑑み、上記相違点B12-2について検討する。 甲B12には、甲B12粒子発明の粒子のBD5/BD28が0.60以下であることは記載されていないし、甲B12及び他の証拠をみても、甲B12粒子発明の粒子のBD5/BD28が0.60以下である蓋然性が高いと判断する理由もない。したがって、上記相違点B12-2は実質的な相違点である。 ウ 特許異議申立人の主張について (ア)特許異議申立人Bの主張について 特許異議申立人Bは、特許異議申立書B(136頁)において、甲B12粒子発明の粒子は、どちらもJIS K6950:2000に準拠して測定される5日間の生分解率の、60日目の生分解率に対する比が、0.60以下であること、JIS K6950:2000に準拠して測定される、5日間の生分解率と、OECD TG301Fに準拠した生分解性試験における生分解度の技術的関係並びに技術的に見て28日目の生分解率と60日目の生分解率がほぼ同じ値になると解されること(甲B10の図1(B))から、甲B12粒子発明の粒子はBD5/BD28が0.60以下であるといえると主張している。また、特許異議申立人Bは、意見書B(3~10頁)において甲B13~甲B16を引用し、甲B12における生分解性試験は本件特許発明における生分解性試験と同様にブランクを対象として行われたものであるから、取消理由通知書における上記相違点B12-2についての判断に誤りがない旨主張している。 しかし、甲B12には、60日間の生分解率は記載されているものの、28日目の生分解率は記載されていないので、仮に甲B12における生分解性試験が本件特許発明における生分解性試験と同様にブランクを対象として行われたものであるとしても、甲B12粒子発明のBD5/BD28は依然として不明である。そして、甲B10の図1(B)は、甲B12粒子発明の粒子とは粒子径等が異なる微結晶セルロース粒子の生分解度曲線を示すものであり、甲B12粒子発明の粒子の生分解度曲線が、甲B10の図1(B)の生分解度曲線と同じになると解する理由もないので、甲B10の図1(B)を根拠として、甲B12粒子発明の粒子の28日目の生分解率と60日目の生分解率がほぼ同じ値になると解されるとする特許異議申立人Bの主張は採用することができない。 よって、特許異議申立人Bの主張は、上記イの結論を左右するものではない。 (イ)特許異議申立人Cの主張について 特許異議申立人Cは、意見書C(4頁)において、上記2(2)ウ(ウ)で述べたことと同様に、取消理由通知書における相違点B12-2に関する判断は誤っていない、と主張している。 しかし、上記2(2)ウ(ウ)で検討したとおり、乙第2号証の生分解度曲線は、甲B12粒子発明とは粒子径等が異なる対照の微結晶セルロース粒子に関するものであり、甲B12粒子発明の粒子の生分解度曲線が、乙第2号証の生分解度曲線と同じになると解することはできないので、特許異議申立人Cの主張は、上記イの結論を左右するものではない。 (3)本件特許発明3ないし10について 本件特許発明3ないし10は、請求項1の記載を引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有し、さらに特定するものである。 そして、上記(2)のとおり、本件特許発明1は甲B12粒子発明と同一ではないから、本件特許発明3ないし10もまた、甲B12粒子発明と同一ではない。 (4)本件特許発明11について 本件特許発明11と甲B12組成物発明とを対比すると、前者は本件特許発明1の粒子を含む化粧品組成物であり、後者は甲B12粒子発明の粒子を含む化粧品組成物であるから、両者の間には本件特許発明1と甲B12粒子発明の間と同様の相当関係があるといえ、少なくとも以下の点で両者は相違する。 <相違点B12-11> 本件特許発明11の組成物は、BD5/BD28が0.60以下である粒子を含むのに対して、甲B12組成物発明は、BD5/BD28が不明である粒子を含む点。 上記相違点B12-11について検討すると、相違点B12-11は、相違点B12-2と実質的に同じ内容であるから、相違点B12-2と同様に判断される。 よって、本件特許発明11は、甲B12組成物発明と同一ではない。 (5)取消理由3及び申立理由B10についてのまとめ したがって、本件特許発明1、3ないし11は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。 よって、本件特許の請求項1、3ないし11に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取消理由3及び申立理由B10によっては取り消すことはできない。 4 申立理由A1-1(甲A1を主たる証拠とする新規性)及び申立理由A1-2(甲A1を主たる証拠とする進歩性)について (1)甲A1に記載された事項等 ア 甲A1に記載された事項 甲A1には、「Polybutylene Succinate-co-adipateエマルションの生分解性接着剤」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「2.実験 2.1 材料 [PESA emulsion] polybutylene succinate-co-adipate (Bionolle 3050M,昭和高分子(株))の溶融乳化により調製した。組成は保護コロイドPVA/Bionolle 3050M=6.75/100であり,コロイド性状は固形分濃度=56.3%,粒子径=l.3μm,粘度=6850mPa・s/23℃,pH= 5.5,MFT=85℃で,詳しくは既報9)の通りである。」(394頁左欄) ・「3.結果と考察 3.1 生分解性 PBSAエマルションそのものの生分解性試験は水中,25℃,植種源に活性汚泥を用いIS0-14851によって行われた。標準品のセルローズと遜色ない生分解性であった(Fig.l)。この結果は誤って自然環境に流出しても分解される可能性を示すと同時に,保存に当っては通常の非生分解性合成樹脂エマルジョンより細菌などの汚染に,より注意する必要のあることをも示唆している。」(395頁右欄1-9行) ・「 [図:0001429989000005.jpg] 」(395頁図1) ・「さらに詳細に皮膜形成条件変化の影響を知るため,SEMおよび偏光顕微鏡観察,皮膜の強伸度測定ならびに耐水性測定などを行った。50℃/1hの乾燥ではPBSAエマルション皮膜に粒子の変形は見られなかった(Fig. 9 (a))が,それを融点91~95℃を越えて110℃にまで加熱すると粒子界面は消失した(Fig.9 (b))」(397頁右欄最下行から398頁左欄5行) ・「 [図:0001429989000006.jpg] 」(398頁図9(a)) イ 甲A1に記載された発明 甲A1に記載された事項を、特に、polybutylene succinate-co-adipateエマルションについて整理すると、甲A1には、次の発明(以下、「甲A1発明」という。)が記載されていると認める。 <甲A1発明> 「ポリブチレンサクシネート・コ・アジペート(PBSA)の溶融乳化により調製したPBSAエマルション。」 (2)本件特許発明1について ア 対比・判断 本件特許発明1と甲A1発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点において相違する。 (相違点A1) 本件特許発明1の粒子は、「粒子径変動係数CVが40%以下である」のに対して、甲A1発明は、粒子径変動係数CVが不明である点。 上記相違点A1について検討する。 甲A1には、甲A1発明の粒子径変動係数CVが40%以下であることは記載されていないし、甲A1及び他の証拠をみても、甲A1発明の粒子径変動係数CVが40%以下である蓋然性が高いと判断する理由もない。したがって、上記相違点A1は実質的な相違点である。 そして、甲A1及び他の証拠をみても、甲A1発明において、粒子径変動係数CVを40%以下にする動機付けがない。 よって、甲A1粒子発明において、相違点A1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲A1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 特許異議申立人Aの主張について 特許異議申立人Aは、特許異議申立書A(31-32頁)において、本件特許の図1及び図3並びに甲A1-2の図4及び図10と、甲A1の図9(a)の写真との対比から、CVは走査型電子顕微鏡(SEM)画像と相関性があり、甲A1発明はCVが40%以下である蓋然性が高い、と主張している。 しかし、本件特許発明におけるCVは【0026】に定義されるものであるから、CVがSEM画像と相関性があるという特許異議申立人Aの主張は、CVの定義に照らして妥当ではない。また、甲A1の図9(a)はPBSAエマルション皮膜の写真であり、PBSA粒子の状態を写した写真ではないこと、並びに写真に掲載されている粒子は粒子全体のごく一部であり、写真に掲載されている粒子のうち、特定の粒子の粒子径から全体の粒径分布を正確に推定することは困難であること及び特許異議申立書Aに記載された方法でCVを推定する際に、何を基準として「大きな粒子」及び「小さな粒子」を選定するのかが不明であり、どの粒子を選定するかによってCV値が大きく変化することは明らかであることなどから、仮に特許異議申立人Aの主張するような相関性を考慮することができるとしても、甲A1の図9(a)の写真を根拠として甲A1発明はCVが40%以下である蓋然性が高いとする、特許異議申立人Aの主張は採用することができない。 (3)本件特許発明3ないし6、9及び10について 本件特許発明3ないし6、9及び10は、請求項1の記載を引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有し、さらに特定するものである。 そして、上記(2)のとおり、本件特許発明1は甲A1発明ではなく、甲A1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明3ないし6及び9もまた、甲A1発明ではなく、本件特許発明3ないし6、9及び10は、甲A1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (4)本件特許発明11について ア 対比・判断 本件特許発明11と甲A1発明とを対比すると、少なくとも以下の点で両者は相違する。 <相違点A1-11> 本件特許発明11の組成物は、「化粧料組成物」であるのに対して、甲A1発明は、接着剤に用いる「エマルション」である点。 上記相違点A1-11について検討すると、甲A1発明は織布接着、顔料接着、紙のヒートシールなどのための接着剤用のエマルションであるから、甲A1及び他の証拠をみても甲A1発明のエマルションを化粧料組成物に用いる動機付けを見いだすことができない。 よって、本件特許発明11は、甲A1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ 特許異議申立人Aの主張について 異議申立人Aは、特許異議申立書A(36頁)において、甲A7及び甲A8に粒度分布の狭い脂肪族ポリエステル粒子を含む、感触性に優れた化粧料が記載されているので、本件特許発明11は、甲A1、甲A7及び甲A8から容易に到達できるものであり、進歩性がない、と主張している。 しかし、甲A1発明は接着剤用のエマルションに係る発明であるのに対し、甲A7及び甲A8には、化粧料ないし化粧料に用いる水系分散体に係る発明が記載されており、技術分野が大きく異なり、その課題も異なることから、甲A1発明を、甲A7及び甲A8の記載を参照して化粧料組成物に転用することは、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえず、特許異議申立人Aの主張は採用することができない。 (5)申立理由A1-1及び申立理由A1-2についてのまとめ したがって、本件特許発明1、3ないし6及び9は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、本件特許発明1、3ないし6及び9ないし11は、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえない。 よって、本件特許の請求項1、3ないし6及び9ないし11に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、申立理由A1-1及び申立理由A1-2によっては取り消すことはできない。 5 申立理由B1-1(甲B1を主たる証拠とする新規性)及び申立理由B1-2(甲B1を主たる証拠とする進歩性)について (1)甲B1に記載された発明等 ア 甲B1に記載された事項 甲B1には、「樹脂ビーズ及び樹脂ビーズを用いた製品」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「【請求項1】 セルロースを主成分とする樹脂で形成された樹脂ビーズであって、 体積基準の累積50%粒子径が、50μm以下であり、 真球度が、0.7~1.0であり、 表面平滑度が、70~100%であり、 中実度が、50~100%であり、 JIS K6950:2000(ISO 14851:1999)に準拠して測定される5日間の生分解率が、20%以上である樹脂ビーズ。 【請求項2】 体積基準の累積90%粒子径が、40μm以下である請求項1に記載の樹脂ビーズ。 【請求項3】 体積基準の累積10%粒子径が、0.1μm以上である請求項1又は2に記載の樹脂ビーズ。 【請求項4】 粒子径のCV値が、10~90%である請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂ビーズ。」 ・「【請求項15】 樹脂ビーズを含有する、化粧料、外皮用薬、塗料、成形体、フィルム、コーティング剤、及び樹脂組成物のいずれかの製品であって、 前記樹脂ビーズが、請求項1~7のいずれか一項に記載の樹脂ビーズである製品。」 ・「【0016】 樹脂ビーズの体積基準の累積50%粒子径(メジアン径;D50)は50μm以下であり、好ましくは30μm以下、さらに好ましくは0.5~28μm、特に好ましくは1~25μmである。D50を上記の範囲とすることで、化粧料等に配合される樹脂ビーズに要求される滑り性やソフトフォーカス性を有効に発現させることができる。 【0017】 樹脂ビーズの体積体積基準の累積90%粒子径(D90)は、40μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがさらに好ましく、5~25μmであることが特に好ましい。また、樹脂ビーズの体積基準の累積10%粒子径(D10)は、0.1μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがさらに好ましく、1.5~10μmであることがさらに好ましい。そして、樹脂ビーズの粒子径のCV値(変動係数)は、10~90%であることが好ましく、25~75%であることがさらに好ましく、40~60%であることが特に好ましい。D90、D10、及びCV値をそれぞれ上記の範囲とすることで、化粧料等に配合される樹脂ビーズに要求される異物感のない滑らかさを発現させることができるとともに、シワへの入り込みが抑制された化粧料とすることができる。」 イ 甲B1に記載された発明 甲B1に記載された事項を、特に請求項1を引用する請求項4並びに請求項4を引用する請求項15について整理すると、甲B1には、次の発明(以下、順に「甲B1粒子発明」及び「甲B1組成物発明」という。)が記載されていると認める。 <甲B1粒子発明> 「セルロースを主成分とする樹脂で形成された樹脂ビーズであって、体積基準の累積50%粒子径が、50μm以下であり、真球度が、0.7~1.0であり、表面平滑度が、70~100%であり、中実度が、50~100%であり、JIS K6950:2000(ISO 14851:1999)に準拠して測定される5日間の生分解率が、20%以上であり、粒子径のCV値が、10~90%である樹脂ビーズ。」 <甲B1組成物発明> 「甲B1粒子発明の樹脂ビーズを含有する化粧料。」 (2)本件特許発明1について ア 対比・判断 本件特許発明1と甲B1粒子発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。 (相違点B1-1) 本件特許発明1の粒子は、「粒子径変動係数CVが40%以下である」のに対して、甲B1粒子発明は、粒子径のCV値が10~90%である点。 上記相違点B1-1について検討する。 甲B1には、甲B1粒子発明の粒子径変動係数CVが40%以下であることは記載されていないし、甲B1及び他の証拠をみても、甲B1粒子発明の粒子径変動係数CVが40%以下である蓋然性が高いと判断する理由もない。したがって、上記相違点B1-1は実質的な相違点である。 そして、甲B1には、樹脂ビーズの粒子径のCV値は、40~60%であることが特に好ましいことが記載されているので(【0017】)、甲B1及び他の証拠をみても、甲B1粒子発明において、粒子径変動係数CVを特に好ましい範囲とは異なる40%以下にする動機付けがあるとはいえない。さらに、本件特許発明1は、球状粒子の急激な分解に起因する使用感の低下が回避されるという、当業者が予期し得る範囲を超えた顕著な効果を奏する。 よって、甲B1粒子発明において、相違点B1-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲B1粒子発明ではなく、甲B1粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 特許異議申立人Bの主張について 特許異議申立人Bは、特許異議申立書B(105頁)において、本件特許発明1と甲B1粒子発明とは、10%以上40%以下の範囲で粒子径変動係数CVが重複する、とを主張している。 しかし、本件特許発明1の粒子径変動係数CVが40%以下であるのに対し、甲B1粒子発明のそれは、10%以上90%以下であるから、その数値範囲は相違している。そして、甲B1には、CV値が40~60%であることが特に好ましいことが記載されているのであるから、甲B1粒子発明において、10~40%のCV値を選択する積極的な動機付けがないことは上記のとおりである。そして、本件特許発明1は、球状粒子の急激な分解に起因する使用感の低下が回避されるという、当業者が予測できない効果を発揮するものである。 したがって、特許異議申立人Bの主張は、採用することができない。 (3)本件特許発明3ないし10について 本件特許発明3ないし10は、請求項1の記載を引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有し、さらに特定するものである。 そして、上記(2)のとおり、本件特許発明1は甲B粒子1発明ではなく、甲B1粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明3ないし10もまた、甲B1粒子発明ではなく、甲B1粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (4)本件特許発明11について 本件特許発明11と甲B1組成物発明とを対比すると、前者は本件特許発明1の粒子を含む化粧品組成物であり、後者は甲B1粒子発明の樹脂ビーズを含む化粧品組成物であるから、両者の間には、本件特許発明1と甲B1粒子発明の間と同様の相当関係があるといえ、少なくとも以下の点で両者は相違する。 <相違点B1-11> 本件特許発明11の組成物は、「粒子径変動係数CVが40%以下である」粒子を含むのに対して、甲B1組成物発明は、粒子径変動係数CVが不明である粒子を含有する点。 上記相違点B1-11について検討すると、相違点B1-11は、相違点B1-1と実質的に同じ内容であるから、相違点B1-1と同様に判断される。 よって、本件特許発明11は、甲B1組成物発明ではなく、甲B1組成物発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (5)申立理由B1-1及びB1-2についてのまとめ したがって、本件特許発明1、3ないし11は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、本件特許発明1、3ないし11は、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえない。 よって、本件特許の請求項1、3ないし11に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、申立理由B1-1及び申立理由B1-2によっては取り消すことはできない。 6 申立理由B2-1(甲B2を主たる証拠とする新規性)及び申立理由B2-2(甲B2を主たる証拠とする進歩性)について (1)甲B2に記載された発明等 ア 甲B2に記載された事項 甲B2には、「セルロース誘導体粒子、化粧品組成物及びセルロース誘導体粒子の製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「【請求項1】 炭素数が2以上のアルコキシ基、又は炭素数が3以上のアシル基を有するセルロース誘導体粒子であって、 前記セルロース誘導体粒子は、平均粒子径が80nm以上100μm以下、及び真球度が70%以上100%以下、表面平滑度が80%以上100%以下であり、 前記セルロース誘導体の総置換度が0.7以上3以下である、セルロース誘導体粒子。」 ・「【0115】 (比較例A-4) セルロース粒子は、セルフロー C-25(JNC社製)を使用した。上記の測定方法により、この粒子の各物性を評価した。結果は表1に示す。 【0116】 【表1】 [図:0001429989000007.jpg] 」 ・「【0118】 (実施例B-1) リキッドファンデーションの調製 表2に示す各成分を混合後、良く攪拌し、容器に充填してリキッドファンデーションを調製した。得られたリキッドファンデーションの各物性を下記の方法で評価した。結果は表3に示す。 【表2】 [図:0001429989000008.jpg] 」 ・「【0124】 (比較例B-1~4) 表2における実施例A-1で得られたセルロース誘導体粒子を、それぞれ比較例A-1~4の粒子に変更した以外は、実施例B-1と同様にして、リキッドファンデーションを調製した。得られたリキッドファンデーションの各物性を上記の方法で評価した。結果は表3に示す。 【0125】 【表3】 [図:0001429989000009.jpg] 」 イ 甲B2に記載された発明 甲B2に記載された事項を、特に比較例A-4及び比較例B-4について整理すると、甲B2には、次の発明(以下、順に「甲B2粒子発明」及び「甲B2組成物発明」という。)が記載されていると認める。 <甲B2粒子発明> 「平均粒子径が9.2μm、粒子径変動係数が37%、真球度が90%、表面平滑度が68%である、比較例A-4のセルフローC-25(JNC社製)のセルロース粒子。」 (当審注:比較例A-4については、上記アを参照のこと。) <甲B2組成物発明> 「甲B2粒子発明の粒子を含む、リキッドファンデーション。」 (2)本件特許発明1について ア 対比・判断 本件特許発明1と甲B2粒子発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。 (相違点B2-1) 本件特許発明1の粒子は、BD5/BD28が0.60以下であるのに対して、甲B2粒子発明の粒子は、BD5/BD28が不明である点。 上記相違点B2-1について検討する。 甲B2には、甲B2粒子発明の粒子のBD5/BD28が0.60以下であることは記載されていないし、甲B2及び他の証拠をみても、甲B2粒子発明の粒子のBD5/BD28が0.60以下である蓋然性が高いと判断する理由もない。したがって、上記相違点B2-1は実質的な相違点である。 そして、甲B2及び他の証拠をみても、甲B2粒子発明において、粒子のBD5/BD28を0.60以下にする動機付けがない。 よって、甲B2粒子発明において、相違点B2-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲B2粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 特許異議申立人Bの主張について 特許異議申立人Bは、特許異議申立書B(110~111頁、124頁)及び意見書B(11頁)において、甲B2粒子発明はセルロースの球状粒子であり、甲B10の図1(B)の記載から、セルロース粒子は、BD5/BD28が0.60以下であると看取することができるから、甲B2粒子発明もBD5/BD28が0.60以下を満たすと主張している。 しかし、甲B10の図1(B)は、甲B2粒子発明の粒子とは粒子径等が異なる微結晶セルロース粒子の生分解度曲線を示すものであり、甲B2粒子発明の粒子の生分解度曲線が、甲B10の図1(B)の生分解度曲線と同じになると解する理由もないので、甲B10の図1(B)を根拠として、甲B2粒子発明の粒子のBD5/BD28が0.60以下であるとする特許異議申立人Bの主張は採用することができない。 (3)本件特許発明3ないし10について 本件特許発明3ないし10は、請求項1の記載を引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有し、さらに特定するものである。 そして、上記(2)のとおり、本件特許発明1は甲B2粒子発明ではなく、甲B2粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明3ないし10もまた、甲B2粒子発明ではなく、甲B2粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (4)本件特許発明11について 本件特許発明11と甲B2組成物発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。 <相違点B2-11> 本件特許発明11の組成物は、BD5/BD28が0.60以下である粒子を含むのに対して、甲B2組成物発明は、BD5/BD28が不明である粒子を含有する点。 上記相違点B2-11について検討すると、相違点B2-11は、相違点B2-1と実質的に同じ内容であるから、相違点B2-1と同様に判断される。 よって、本件特許発明11は、甲B2組成物発明ではなく、甲B2組成物発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (5)申立理由B2-1及びB2-2についてのまとめ したがって、本件特許発明1、3ないし11は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、本件特許発明1、3ないし11は、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえない。 よって、本件特許の請求項1、3ないし11に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、申立理由B2-1及び申立理由B2-2によっては取り消すことはできない。 7 申立理由B3-1(甲B3を主たる証拠とする新規性)及び申立理由B3-2(甲B3を主たる証拠とする進歩性)について (1)甲B3に記載された発明等 ア 甲B3に記載された事項 甲B3には、「多孔質セルロース粒子とその製造方法、および化粧料」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「[請求項1] 結晶性セルロースが集合して形成された多孔質セルロース粒子であって、 前記結晶性セルロースは、グルコース分子を構成単位としたI型の結晶形であり、 前記多孔質セルロース粒子は、平均粒子径d1が0.5~50μm未満、比表面積が25~1000m2/g、真球度が0.85以上であることを特徴とする多孔質セルロース粒子。 [請求項2] 粒子変動係数(CV)が50%以下である請求項1に記載の多孔質セルロース。」 ・「[請求項10] 請求項1~7のいずれか一項に記載の多孔質セルロース粒子が配合された化粧料。」 イ 甲B3に記載された発明 甲B3に記載された事項を、特に請求項2及び請求項10について整理すると、甲B3には、次の発明(以下、順に「甲B3粒子発明」及び「甲B3組成物発明」という。)が記載されていると認める。 <甲B3粒子発明> 「結晶性セルロースが集合して形成された多孔質セルロース粒子であって、前記結晶性セルロースは、グルコース分子を構成単位としたI型の結晶形であり、前記多孔質セルロース粒子は、平均粒子径d1が0.5~50μm未満、比表面積が25~1000m2/g、真球度が0.85以上であり、粒子変動係数(CV)が50%以下であるセルロース粒子。」 <甲B3組成物発明> 「甲B3粒子発明の粒子が配合された化粧料。」 (2)本件特許発明1について ア 対比・判断 本件特許発明1と甲B3粒子発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。 (相違点B3-1) 本件特許発明1の粒子は、BD5/BD28が0.60以下であるのに対して、甲B3粒子発明の粒子は、BD5/BD28が不明である点。 上記相違点B3-1について検討する。 甲B3には、甲B3粒子発明の粒子のBD5/BD28が0.60以下であることは記載されていないし、甲B3及び他の証拠をみても、甲B3粒子発明の粒子のBD5/BD28が0.60以下である蓋然性が高いと判断する理由もない。したがって、上記相違点B3-1は実質的な相違点である。 そして、甲B3及び他の証拠をみても、甲B3粒子発明において、粒子のBD5/BD28を0.60以下にする動機付けがない。 よって、甲B3粒子発明において、相違点B3-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲B3粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 特許異議申立人Bの主張について 特許異議申立人Bは、特許異議申立書B(111~113頁、124頁)及び意見書B(11頁)において、甲B3粒子発明はセルロースの球状粒子であり、甲B10の図1(B)の記載から、セルロース粒子は、BD5/BD28が0.60以下であると看取することができるから、甲B3粒子発明はBD5/BD28が0.60以下を満たすと主張している。 しかし、甲B10の図1(B)は、特定の微結晶セルロース粒子の生分解度曲線を示すものであり、甲B3粒子発明の粒子の生分解度曲線が、甲B10の図1(B)の生分解度曲線と同じになると解する理由がないので、甲B10の図1(B)を根拠として、甲B3粒子発明の粒子のBD5/BD28が0.60以下であるとする特許異議申立人Bの主張は採用することができない。 (3)本件特許発明3ないし10について 本件特許発明3ないし10は、請求項1の記載を引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有し、さらに特定するものである。 そして、上記(2)のとおり、本件特許発明1は甲B3粒子発明ではなく、甲B3粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明3ないし10もまた、甲B3粒子発明ではなく、甲B3粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (4)本件特許発明11について 本件特許発明11と甲B3組成物発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。 <相違点B3-11> 本件特許発明11の組成物は、BD5/BD28が0.60以下である粒子を含むのに対して、甲B3組成物発明は、BD5/BD28が不明である粒子を含有する点。 上記相違点B3-11について検討すると、相違点B3-11は、相違点B3-1と実質的に同じ内容であるから、相違点B3-1と同様に判断される。 よって、本件特許発明11は、甲B3組成物発明ではなく、甲B3組成物発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (5)申立理由B3-1及びB3-2についてのまとめ したがって、本件特許発明1、3ないし11は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、本件特許発明1、3ないし11は、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえない。 よって、本件特許の請求項1、3ないし11に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、申立理由B3-1及び申立理由B3-2によっては取り消すことはできない。 8 申立理由B4-1(甲B4を主たる証拠とする新規性)及び申立理由B4-2(甲B4を主たる証拠とする進歩性)について (1)甲B4に記載された発明等 ア 甲B4に記載された事項 甲B4には、「澱粉を含む粒子とその製造方法、および化粧料」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「[請求項1] アミロペクチンの含有量が90重量%以上の澱粉を含む粒子であって、 平均粒子径d1が0.5~20μm、 最大粒子径d2が30μm未満、かつ、前記平均粒子径の3.0倍未満であることを特徴とする粒子。 [請求項2] 前記粒子が、無機酸化物を含むことを特徴とする請求項1に記載の粒子。 [請求項3] 前記粒子には、前記澱粉が30~90重量%、前記無機酸化物が10~70重量%の範囲で含まれることを特徴とする請求項2に記載の粒子。 [請求項4] 前記粒子が澱粉で構成された澱粉粒子である請求項1に記載の粒子。 [請求項5] 比表面積が20m2/g以上であることを特徴とする請求項4に記載の粒子。 [請求項6] 前記粒子の固形分濃度50重量%の水分散液では、示差走査熱量計を使用して得られたDSC曲線による糊化開始温度が45℃以上である請求項4または5に記載の粒子。 [請求項7] 前記粒子は、外殻の内側に空洞を有する中空粒子であることを特徴とする請求項4~6のいずれか一項に記載の粒子。 [請求項8] 前記粒子の固形分濃度10重量%の水分散液を80℃で24時間加熱したとき、加熱後の水分散液の粘度V2と、加熱前の水分散液の粘度V1の比(V2/V1)が2.0以下であることを特徴とする請求項2または3に記載の粒子。 [請求項9] グロブリンの含有量が0.10重量%以下である請求項1~8のいずれか一項に記載の粒子。 [請求項10] 真球度が0.85以上であることを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の粒子。 [請求項11] 粒子変動係数が50%以下である請求項1~10のいずれか一項に記載の粒子。」 ・「[請求項15] 請求項1~12のいずれか一項に記載の粒子が配合された化粧料。」 イ 甲B4に記載された発明 甲B4に記載された事項を、特に請求項1、請求項11及び請求項15について整理すると、甲B4には、次の発明(以下、順に「甲B4粒子発明」及び「甲B4組成物発明」という。)が記載されていると認める。 <甲B4粒子発明> 「アミロペクチンの含有量が90重量%以上の澱粉を含む粒子であって、平均粒子径d1が0.5~20μm、最大粒子径d2が30μm未満、かつ、前記平均粒子径の3.0倍未満であり、粒子変動係数が50%以下である粒子。」 <甲B4組成物発明> 「甲B4粒子発明の粒子が配合された化粧料。」 (2)本件特許発明1について ア 対比・判断 本件特許発明1と甲B4粒子発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。 (相違点B4-1) 本件特許発明1の粒子は、BD5/BD28が0.60以下であるのに対して、甲B4粒子発明の粒子は、BD5/BD28が不明である点。 上記相違点B4-1について検討する。 甲B4には、甲B4粒子発明の粒子のBD5/BD28が0.60以下であることは記載されていないし、甲B4及び他の証拠をみても、甲B4粒子発明の粒子のBD5/BD28が0.60以下である蓋然性が高いと判断する理由もない。したがって、上記相違点B4-1は実質的な相違点である。 そして、甲B4及び他の証拠をみても、甲B4粒子発明において、粒子のBD5/BD28を0.60以下にする動機付けがない。 よって、甲B4粒子発明において、相違点B4-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲B4粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 特許異議申立人Bの主張について 特許異議申立人Bは、特許異議申立書B(113~115頁、124頁)及び意見書B(11頁)において、甲B4粒子発明は澱粉の球状粒子であり、甲B11の図3f)の記載から、多糖であるデンプン粒子は、BD5/BD28が0.60以下であると看取することができるから、甲B4粒子発明はBD5/BD28が0.60以下を満たすと主張している。 しかし、甲B11の図3f)は、特定のデンプン粒子の生分解度曲線を示すものであり、甲B4粒子発明の粒子の生分解度曲線が、甲B11の図3f)の生分解度曲線と同じになると解する理由がないので、甲B11の図3f)を根拠として、甲B4粒子発明の粒子のBD5/BD28が0.60以下であるとする特許異議申立人Bの主張は採用することができない。 (3)本件特許発明3ないし10について 本件特許発明3ないし10は、請求項1の記載を引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有し、さらに特定するものである。 そして、上記(2)のとおり、本件特許発明1は甲B4粒子発明ではなく、甲B4粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明3ないし10もまた、甲B4粒子発明ではなく、甲B4粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (4)本件特許発明11について 本件特許発明11と甲B4組成物発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。 <相違点B4-11> 本件特許発明11の組成物は、BD5/BD28が0.60以下である粒子を含むのに対して、甲B4組成物発明は、BD5/BD28が不明である粒子を含有する点。 上記相違点B4-11について検討すると、相違点B4-11は、相違点B4-1と実質的に同じ内容であるから、相違点B4-1と同様に判断される。 よって、本件特許発明11は、甲B4組成物発明ではなく、甲B4組成物発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (5)申立理由B4-1及びB4-2についてのまとめ したがって、本件特許発明1、3ないし11は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、本件特許発明1、3ないし11は、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえない。 よって、本件特許の請求項1、3ないし11に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、申立理由B4-1及び申立理由B4-2によっては取り消すことはできない。 9 申立理由B5-1(甲B5を主たる証拠とする新規性)及び申立理由B5-2(甲B5を主たる証拠とする進歩性)について (1)甲B5に記載された発明等 ア 甲B5に記載された事項 甲B5には、「生分解性樹脂粒子及びそれを含有する外用剤」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「[請求項1] ポリヒドロキシアルカノエートからなる生分解性樹脂粒子であり、粒子中に含まれるCa成分量が10~10,000ppmであり、体積平均粒子径が2~50μmであり、BET比表面積が0.8~10m2/gであり、アマニ油吸油量が50~300ml/100gである、生分解性樹脂粒子。 [請求項2] 粒子径の変動係数が45%以下である、請求項1に記載の生分解性樹脂粒子。 [請求項3] 750℃で30分加熱後の灰分が0.01~3%である、請求項1又は2に記載の生分解性樹脂粒子。 [請求項4] 3-アルコキシ-3-メチル-1-ブタノール及び3-アルコキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート(但し、いずれもアルコキシ基の炭素数は1~5個)のうち少なくとも1つを更に含む、請求項1~3いずれかに記載の生分解性樹脂粒子。 [請求項5] 体積平均粒子径が8~20μmである、請求項1~4いずれかに記載の生分解性樹脂粒子。 [請求項6] 請求項1~5いずれかに記載の生分解性樹脂粒子を含む、外用剤。 [請求項7] 20℃の粘度が550mPa・s以下である不揮発性油を更に含む、請求項6記載の外用剤。 [請求項8] スキンケア化粧料、洗浄用化粧料、日焼け止め化粧料である、請求項6または7記載の外用剤。」 ・「[請求項15] 請求項1~12のいずれか一項に記載の粒子が配合された化粧料。」 イ 甲B5に記載された発明 甲B5に記載された事項を、特に請求項2、請求項6及び請求項8について整理すると、甲B5には、次の発明(以下、順に「甲B5粒子発明」及び「甲B5組成物発明」という。)が記載されていると認める。 <甲B5粒子発明> 「ポリヒドロキシアルカノエートからなる生分解性樹脂粒子であり、粒子中に含まれるCa成分量が10~10,000ppmであり、体積平均粒子径が2~50μmであり、BET比表面積が0.8~10m2/gであり、アマニ油吸油量が50~300ml/100gであり、粒子径の変動係数が45%以下である生分解性樹脂粒子。」 <甲B5組成物発明> 「甲B5粒子発明の粒子を含む、スキンケア化粧料、洗浄用化粧料、日焼け止め化粧料。」 (2)本件特許発明1について ア 対比・判断 本件特許発明1と甲B5粒子発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。 (相違点B5-1) 本件特許発明1の粒子は、BD5/BD28が0.60以下であるのに対して、甲B5粒子発明の粒子は、BD5/BD28が不明である点。 上記相違点B5-1について検討する。 甲B5には、甲B5粒子発明の粒子のBD5/BD28が0.60以下であることは記載されていないし、甲B5及び他の証拠をみても、甲B5粒子発明の粒子のBD5/BD28が0.60以下である蓋然性が高いと判断する理由もない。したがって、上記相違点B5-1は実質的な相違点である。 そして、甲B5及び他の証拠をみても、甲B5粒子発明において、粒子のBD5/BD28を0.60以下にする動機付けがない。 よって、甲B5粒子発明において、相違点B5-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲B5粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 特許異議申立人Bの主張について 特許異議申立人Bは、特許異議申立書B(115~116頁、124頁)及び意見書B(11頁)において、甲B5粒子発明は脂肪族ポリエステルの球状粒子であり、甲B10の図2の記載から、種々の脂肪族ポリエステルの粒子は、BD5/BD28が0.60以下であると看取することができるから、甲B5粒子発明はBD5/BD28が0.60以下を満たすと主張している。 しかし、甲B10の図2は、特定の脂肪族ポリエステル粒子の生分解度曲線を示すものであり、甲B5粒子発明の粒子の生分解度曲線が、甲B10の図2の生分解度曲線のいずれかと同じになると解する理由がないので、甲B10の図2を根拠として、甲B5粒子発明の粒子のBD5/BD28が0.60以下であるとする特許異議申立人Bの主張は採用することができない。 (3)本件特許発明3ないし10について 本件特許発明3ないし10は、請求項1の記載を引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有し、さらに特定するものである。 そして、上記(2)のとおり、本件特許発明1は甲B5粒子発明ではなく、甲B5粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明3ないし10もまた、甲B5粒子発明ではなく、甲B5粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (4)本件特許発明11について 本件特許発明11と甲B5組成物発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。 <相違点B5-11> 本件特許発明11の組成物は、BD5/BD28が0.60以下である粒子を含むのに対して、甲B5組成物発明は、BD5/BD28が不明である粒子を含有する点。 上記相違点B5-11について検討すると、相違点B5-11は、相違点B5-1と実質的に同じ内容であるから、相違点B5-1と同様に判断される。 よって、本件特許発明11は、甲B5組成物発明ではなく、甲B5組成物発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (5)申立理由B5-1及びB5-2についてのまとめ したがって、本件特許発明1、3ないし11は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、本件特許発明1、3ないし11は、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえない。 よって、本件特許の請求項1、3ないし11に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、申立理由B5-1及び申立理由B5-2によっては取り消すことはできない。 10 申立理由B6-1(甲B6を主たる証拠とする新規性)及び申立理由B6-2(甲B6を主たる証拠とする進歩性)について (1)甲B6に記載された発明等 ア 甲B6に記載された事項 甲B6には、「真球状単分散性ポリエステル樹脂水分散体とその製造方法並びに真球状単分散性ポリエステル樹脂粒子および化粧品」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「[請求項1] ポリエステル樹脂が水に分散された真球状単分散性ポリエステル樹脂水系分散体であって、前記ポリエステル樹脂の粒子平均粒径は1~1000μmの範囲内であり、その真球度は粒子の長径/短径の平均値(アスペクト比)として1.00~1.10の範囲内であり、単分散性は、平均粒径と標準偏差からの変動係数として8%以下であり、 前記分散体中には、前記ポリエステル樹脂とともに、 分散剤として、(A)平均分子量500万以上2500万以下のアニオン性高分子化合物と(B)ポリビニルアルコールとを質量比(A/B)で1/10~1/99の範囲の割合で含有し、 前記分散体は、その粘度が、0.1~5Pa・sの範囲内であることを特徴とする真球状単分散性ポリエステル樹脂水系分散体。」 ・「[請求項10] 請求項1から6のうちのいずれか一項に記載の真球状単分散性ポリエステル樹脂水系分散体から樹脂粒子を分離、洗浄、そして乾燥して得られたものであることを特徴とする真球状単分散性ポリエステル樹脂粒子。 [請求項11] 請求項10に記載の真球状単分散性ポリエステル樹脂粒子を含有することを特徴とする化粧品。」 イ 甲B6に記載された発明 甲B6に記載された事項を、特に請求項1、請求項10及び請求項11について整理すると、甲B6には、次の発明(以下、順に「甲B6粒子発明」及び「甲B6組成物発明」という。)が記載されていると認める。 <甲B6粒子発明> 「ポリエステル樹脂が水に分散された真球状単分散性ポリエステル樹脂水系分散体であって、前記ポリエステル樹脂の粒子平均粒径は1~1000μmの範囲内であり、その真球度は粒子の長径/短径の平均値(アスペクト比)として1.00~1.10の範囲内であり、単分散性は、平均粒径と標準偏差からの変動係数として8%以下であり、前記分散体中には、前記ポリエステル樹脂とともに、分散剤として、(A)平均分子量500万以上2500万以下のアニオン性高分子化合物と(B)ポリビニルアルコールとを質量比(A/B)で1/10~1/99の範囲の割合で含有し、前記分散体は、その粘度が、0.1~5Pa・sの範囲内である真球状単分散性ポリエステル樹脂水系分散体から樹脂粒子を分離、洗浄、そして乾燥して得られたものである真球状単分散性ポリエステル樹脂粒子。」 <甲B6組成物発明> 「甲B6粒子発明の粒子を含有する化粧品。」 (2)本件特許発明1について ア 対比・判断 本件特許発明1と甲B6粒子発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。 (相違点B6-1) 本件特許発明1の粒子は、BD5/BD28が0.60以下であるのに対して、甲B6粒子発明の粒子は、BD5/BD28が不明である点。 上記相違点B6-1について検討する。 甲B6には、甲B6粒子発明の粒子のBD5/BD28が0.60以下であることは記載されていないし、甲B6及び他の証拠をみても、甲B6粒子発明の粒子のBD5/BD28が0.60以下である蓋然性が高いと判断する理由もない。したがって、上記相違点B6-1は実質的な相違点である。 そして、甲B6及び他の証拠をみても、甲B6粒子発明において、粒子のBD5/BD28を0.60以下にする動機付けがない。 よって、甲B6粒子発明において、相違点B6-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲B6粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 特許異議申立人Bの主張について 特許異議申立人Bは、特許異議申立書B(116~118頁、124頁)及び意見書B(11頁)において、甲B6粒子発明は脂肪族ポリエステルの球状粒子であり、甲B10の図2の記載から、種々の脂肪族ポリエステルの粒子は、BD5/BD28が0.60以下であると看取することができるから、甲B6粒子発明はBD5/BD28が0.60以下を満たすと主張している。 しかし、甲B10の図2は、特定の脂肪族ポリエステル粒子の生分解度曲線を示すものであり、甲B6粒子発明の粒子の生分解度曲線が、甲B10の図2の生分解度曲線のいずれかと同じになると解する理由がないので、甲B10の図2を根拠として、甲B6粒子発明の粒子のBD5/BD28が0.60以下であるとする特許異議申立人Bの主張は採用することができない。 (3)本件特許発明3ないし10について 本件特許発明3ないし10は、請求項1の記載を引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有し、さらに特定するものである。 そして、上記(2)のとおり、本件特許発明1は甲B6粒子発明ではなく、甲B6粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明3ないし10もまた、甲B6粒子発明ではなく、甲B6粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (4)本件特許発明11について 本件特許発明11と甲B6組成物発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。 <相違点B6-11> 本件特許発明11の組成物は、BD5/BD28が0.60以下である粒子を含むのに対して、甲B6組成物発明は、BD5/BD28が不明である粒子を含有する点。 上記相違点B6-11について検討すると、相違点B6-11は、相違点B6-1と実質的に同じ内容であるから、相違点B6-1と同様に判断される。 よって、本件特許発明11は、甲B6組成物発明ではなく、甲B6組成物発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (5)申立理由B6-1及びB6-2についてのまとめ したがって、本件特許発明1、3ないし11は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、本件特許発明1、3ないし11は、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえない。 よって、本件特許の請求項1、3ないし11に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、申立理由B6-1及び申立理由B6-2によっては取り消すことはできない。 11 申立理由B7-1(甲B7を主たる証拠とする新規性)及び申立理由B7-2(甲B7を主たる証拠とする進歩性)について (1)甲B7に記載された発明等 ア 甲B7に記載された事項 甲B7には、「熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子、その製造方法及びその用途」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「【請求項1】 真球度が0.90~1.00、かつ光散乱指数が0.5~1.0、かつアマニ油吸油量が30~150mL/100gである熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子。 【請求項2】 前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂及びポリアミド系樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂である請求項1に記載の熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子。 【請求項3】 前記熱可塑性樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリカプロラクタム、ナイロン12及びナイロン6からなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂である請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子。 【請求項4】 前記熱可塑性樹脂が、生分解性を有し、かつポリエステル系樹脂及びポリエーテル系樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂である請求項1~3のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子。 【請求項5】 請求項1~4のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子が、3-アルコキシ-3-メチル-1-ブタノール及び/又は3-アルコキシ-3メチル-1-ブチルアセテート(アルコキシ基の炭素数は1~5個)を含む溶媒、水及び分散安定剤の存在下、熱可塑性樹脂を100℃以上の温度で乳化・分散し、その後冷却することで得られる熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子の製造方法。 【請求項6】 請求項1~4のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子を配合した化粧料。」 ・「【0049】 (実施例8) 1500mLオートクレーブに熱可塑性樹脂としてポリブチレンサクシネート(三菱化学社製GS-Pla(R) 品番:FZ71PD)を240g、溶剤として3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(クラレ社製 ソルフィットファイングレード)480g、イオン交換水480g、分散剤として疎水性フュームドシリカ(日本アエロジル社製AEROSIL(R)R976S)を12g分散させた混合溶液を投入した。投入後、反応温度120℃、撹拌回転数600rpmで90分撹拌した。 その後、撹拌回転数を維持したまま急冷(25℃まで30分間)した後、内容物を取り出した。内容物を脱水・ろ過・乾燥に付すことで略球状粒子を得た。」 ・「【0055】 【表1】 [図:0001429989000010.jpg] 」 イ 甲B7に記載された発明 甲B7に記載された事項を、特に実施例8について整理すると、甲B7には、次の発明(以下、順に「甲B7粒子発明」及び「甲B7組成物発明」という。)が記載されていると認める。 <甲B7粒子発明> 「真球度が0.964、平均粒子径が19μm、CV値が39.1である、実施例8のポリブチレンサクシネート粒子。」 (当審注:実施例8については、上記アを参照のこと。) <甲B7組成物発明> 「甲B7粒子発明の粒子を配合した化粧料。」 (2)本件特許発明1について ア 対比・判断 本件特許発明1と甲B7粒子発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。 (相違点B7-1) 本件特許発明1の粒子は、BD5/BD28が0.60以下であるのに対して、甲B7粒子発明の粒子は、BD5/BD28が不明である点。 上記相違点B7-1について検討する。 甲B7には、甲B7粒子発明の粒子のBD5/BD28が0.60以下であることは記載されていないし、甲B7及び他の証拠をみても、甲B7粒子発明の粒子のBD5/BD28が0.60以下である蓋然性が高いと判断する理由もない。したがって、上記相違点B7-1は実質的な相違点である。 そして、甲B7及び他の証拠をみても、甲B7粒子発明において、粒子のBD5/BD28を0.60以下にする動機付けがない。 よって、甲B7粒子発明において、相違点B7-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲B7粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 特許異議申立人Bの主張について 特許異議申立人Bは、特許異議申立書B(118~119頁、124頁)及び意見書B(11頁)において、甲B7粒子発明は脂肪族ポリエステルの球状粒子であり、甲B10の図2の記載から、ポリブチレンサクシネートの粒子は、BD5/BD28が0.60以下であると看取することができるから、甲B7粒子発明はBD5/BD28が0.60以下を満たすと主張している。 しかし、甲B10の図2は、特定のポリブチレンサクシネート粒子の生分解度曲線を示すものであり、粒子径等が異なる甲B7粒子発明の粒子の生分解度曲線が、甲B10の図2の生分解度曲線と同じになると解する理由がないので、甲B10の図2を根拠として、甲B7粒子発明の粒子のBD5/BD28が0.60以下であるとする特許異議申立人Bの主張は採用することができない。 (3)本件特許発明3ないし10について 本件特許発明3ないし10は、請求項1の記載を引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有し、さらに特定するものである。 そして、上記(2)のとおり、本件特許発明1は甲B7粒子発明ではなく、甲B7粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明3ないし10もまた、甲B7粒子発明ではなく、甲B7粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (4)本件特許発明11について 本件特許発明11と甲B7組成物発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。 <相違点B7-11> 本件特許発明11の組成物は、BD5/BD28が0.60以下である粒子を含むのに対して、甲B7組成物発明は、BD5/BD28が不明である粒子を含有する点。 上記相違点B7-11について検討すると、相違点B7-11は、相違点B7-1と実質的に同じ内容であるから、相違点B7-1と同様に判断される。 よって、本件特許発明11は、甲B7組成物発明ではなく、甲B7組成物発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (5)申立理由B7-1及びB7-2についてのまとめ したがって、本件特許発明1、3ないし11は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、本件特許発明1、3ないし11は、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえない。 よって、本件特許の請求項1、3ないし11に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、申立理由B7-1及び申立理由B7-2によっては取り消すことはできない。 12 申立理由B8-1(甲B8を主たる証拠とする新規性)及び申立理由B8-2(甲B8を主たる証拠とする進歩性)について (1)甲B8に記載された発明等 ア 甲B8に記載された事項 甲B8には、「有機固体粒子」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「【請求項1】 溶融可能な有機固体成分(A)と、少なくともオリゴ糖(B1)を含む水溶性助剤成分(B)とで構成され、前記有機固体成分(A)が粒子状に分散した分散体から、水溶性助剤成分(B)を溶出して得られた有機固体粒子であって、全体に対して、10000ppm(重量基準)以下の水溶性助剤成分(B)を含む有機固体粒子。 【請求項2】 有機固体成分(A)が熱可塑性樹脂で構成されている請求項1記載の有機固体粒子。 【請求項3】 有機固体成分(A)が、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ(チオ)エーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、セルロース誘導体、及び熱可塑性エラストマーから選択された少なくとも一種で構成されている請求項1記載の有機固体粒子。」 ・「【0127】 本発明の有機固体粒子は、有害物質を含まず、粒子サイズが均一であるので、化粧品(例えば、ファンデーション、白粉、頬紅、アイシャドーなど)、インクジェットプリントなどに使用されるインク(ポリマーインクも含む)や着色トナーなどの画像記録材料、塗料やコート剤(粉体塗装又はスラリー塗装用塗料など)、印刷インキの着色剤などに有用である。また、有機固体粒子は、他の微粒子(例えば、無機微粒子など)との混合適性を改良するために使用してもよく、ブロッキング防止剤(例えば、成形体のブロッキング防止剤)、スペーサー(液晶スペーサーなど)、シート又はフィルム用添加剤、半導体のケミカルメカニカルポリッシング(CMP)用の研磨剤などとしても使用できる。」 ・「【0130】 実施例1~3 表1に示す組成の樹脂成分と水溶性助剤成分とで構成された樹脂組成物を、ブラベンダー(東洋精機(株)製、ラボプラストミル)により表1に示す加工温度にて50rpmで5分間溶融混練した後、固形分濃度10重量%となるように60℃の純水中に浸漬し、室温で1時間攪拌することにより樹脂粒子の懸濁液を得た。孔径0.45μmのポリビニリデンフルオライド製のメンブレン膜を用いて、この懸濁液より不溶分を分離することにより樹脂粒子を回収した。得られた樹脂粒子の助剤成分の含有量を下記の方法により測定した。さらに、得られた樹脂粒子を、固形分濃度10重量%となるように純水中に投入し、室温で1時間攪拌した後、ろ過して樹脂粒子を回収した。得られた樹脂粒子の助剤成分の含有量(洗浄後)を同様に測定した。 【0131】 なお、実施例は、下記の成分を用いるとともに、樹脂及び助剤成分のせん断粘度、樹脂粒子の平均粒子径及び粒径分布、並びに樹脂及び助剤成分の接触角は下記の方法により測定した。 【0132】 これらの結果を表1に示す。 【0133】 (樹脂成分) 樹脂1:ポリアミド12樹脂(ダイセル・デグサ(株)製、ダイアミドL1600) 樹脂2:ポリカプロラクトン-ポリブチレンサクシネート共重合樹脂(ダイセル化学工業(株)製、セルグリーン CBS178) 樹脂3:ポリスチレン樹脂(東洋スチレン(株)製、GPPS HRM63C) (水溶性助剤成分) (B1)オリゴ糖 (B1-1):デンプン糖(日本食品化工(株)製、デンプン糖化物フジオリゴ450P) (B1-2):デンプン糖(東和化成工業(株)製、還元デンプン糖化物PO-10) (B2)可塑化成分 糖アルコール:ソルビトール(東和化成工業(株)製、ソルビット)。」 ・「【0139】 【表1】 [図:0001429989000011.jpg] 」 イ 甲B8に記載された発明 甲B8に記載された事項を、特に実施例2について整理すると、甲B8には、次の発明(以下、順に「甲B8粒子発明」及び「甲B8組成物発明」という。)が記載されていると認める。 <甲B8粒子発明> 「数平均粒子径が6.4μm、変動係数が32%である、実施例2のポリカプロラクトン-ポリブチレンサクシネート共重合樹脂粒子。」 (当審注:実施例2については、上記アを参照のこと。) <甲B8組成物発明> 「甲B8粒子発明の粒子を含む化粧品。」 (2)本件特許発明1について ア 対比・判断 本件特許発明1と甲B8粒子発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。 (相違点B8-1) 本件特許発明1の粒子は、BD5/BD28が0.60以下であるのに対して、甲B8粒子発明の粒子は、BD5/BD28が不明である点。 上記相違点B8-1について検討する。 甲B8には、甲B8粒子発明の粒子のBD5/BD28が0.60以下であることは記載されていないし、甲B8及び他の証拠をみても、甲B8粒子発明の粒子のBD5/BD28が0.60以下である蓋然性が高いと判断する理由もない。したがって、上記相違点B8-1は実質的な相違点である。 そして、甲B8及び他の証拠をみても、甲B8粒子発明において、粒子のBD5/BD28を0.60以下にする動機付けがない。 よって、甲B8粒子発明において、相違点B8-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲B8粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 特許異議申立人Bの主張について 特許異議申立人Bは、特許異議申立書B(119~120頁、124頁)及び意見書B(11頁)において、甲B8粒子発明は脂肪族ポリエステルの球状粒子であり、甲B10の図2の記載から、種々の脂肪族ポリエステル粒子は、BD5/BD28が0.60以下であると看取することができるから、甲B8粒子発明はBD5/BD28が0.60以下を満たすと主張している。 しかし、甲B10の図2は、特定の脂肪族ポリエステル粒子の生分解度曲線を示すものであり、粒子径等が異なる甲B8粒子発明の粒子の生分解度曲線が、甲B10の図2の生分解度曲線のいずれかと同じになると解する理由がないので、甲B10の図2を根拠として、甲B8粒子発明の粒子のBD5/BD28が0.60以下であるとする特許異議申立人Bの主張は採用することができない。 (3)本件特許発明3ないし10について 本件特許発明3ないし10は、請求項1の記載を引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有し、さらに特定するものである。 そして、上記(2)のとおり、本件特許発明1は甲B8粒子発明ではなく、甲B8粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明3ないし10もまた、甲B8粒子発明ではなく、甲B8粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (4)本件特許発明11について 本件特許発明11と甲B8組成物発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。 <相違点B8-11> 本件特許発明11の組成物は、BD5/BD28が0.60以下である粒子を含むのに対して、甲B8組成物発明は、BD5/BD28が不明である粒子を含有する点。 上記相違点B8-11について検討すると、相違点B8-11は、相違点B8-1と実質的に同じ内容であるから、相違点B8-1と同様に判断される。 よって、本件特許発明11は、甲B8組成物発明ではなく、甲B8組成物発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (5)申立理由B8-1及びB8-2についてのまとめ したがって、本件特許発明1、3ないし11は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、本件特許発明1、3ないし11は、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえない。 よって、本件特許の請求項1、3ないし11に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、申立理由B8-1及び申立理由B8-2によっては取り消すことはできない。 13 申立理由B9-1(甲B9を主たる証拠とする新規性)及び申立理由B9-2(甲B9を主たる証拠とする進歩性)について (1)甲B9に記載された発明等 ア 甲B9に記載された事項 甲B9には、「化粧料」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「[請求項1] 脂肪族ポリエステル系樹脂粒子を含む化粧料であって、 前記脂肪族ポリエステル系樹脂粒子は、体積平均粒子径が2~30μmであり、かつ粒子径1μm未満の粒子の割合が15体積%以下、粒子径30μmを超える粒子の割合が6体積%以下の粒子である、化粧料。 [請求項2] 前記脂肪族ポリエステル系樹脂粒子の10%変位圧縮強度が1MPa以上である請求項1に記載の化粧料。 [請求項3] 前記脂肪族ポリエステル系樹脂粒子が、グリコール成分と脂肪族ジカルボン酸成分とを有する樹脂の粒子である請求項1又は2に記載の化粧料。 [請求項4] 前記脂肪族ポリエステル系樹脂粒子が、ポリ乳酸系樹脂粒子である請求項1又は2に記載の化粧料。 [請求項5] 前記脂肪族ポリエステル系樹脂粒子を構成する脂肪族ポリエステル系樹脂が、生分解性を有する樹脂である請求項1~4のいずれか一項に記載の化粧料。」 イ 甲B9に記載された発明 甲B9に記載された事項を、特に請求項1を引用する請求項5について整理すると、甲B9には、次の発明(以下、順に「甲B9粒子発明」及び「甲B9組成物発明」という。)が記載されていると認める。 <甲B9粒子発明> 「生分解性を有する脂肪族ポリエステル系樹脂粒子であって、体積平均粒子径が2~30μmであり、かつ粒子径1μm未満の粒子の割合が15体積%以下、粒子径30μmを超える粒子の割合が6体積%以下の粒子。」 <甲B9組成物発明> 「甲B9粒子発明の粒子を含む化粧料。」 (2)本件特許発明1について ア 対比・判断 本件特許発明1と甲B9粒子発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。 (相違点B9-1) 本件特許発明1の粒子は、BD5/BD28が0.60以下であるのに対して、甲B9粒子発明の粒子は、BD5/BD28が不明である点。 上記相違点B9-1について検討する。 甲B9には、甲B9粒子発明の粒子のBD5/BD28が0.60以下であることは記載されていないし、甲B9及び他の証拠をみても、甲B9粒子発明の粒子のBD5/BD28が0.60以下である蓋然性が高いと判断する理由もない。したがって、上記相違点B9-1は実質的な相違点である。 そして、甲B9及び他の証拠をみても、甲B9粒子発明において、粒子のBD5/BD28を0.60以下にする動機付けがない。 よって、甲B9粒子発明において、相違点B9-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲B9粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 特許異議申立人Bの主張について 特許異議申立人Bは、特許異議申立書B(120~122頁、124頁)及び意見書B(11頁)において、甲B9粒子発明は脂肪族ポリエステルの球状粒子であり、甲B10の図2の記載から、種々の脂肪族ポリエステル粒子は、BD5/BD28が0.60以下であると看取することができるから、甲B9粒子発明はBD5/BD28が0.60以下を満たすと主張している。 しかし、甲B10の図2は、特定の脂肪族ポリエステル粒子の生分解度曲線を示すものであり、甲B9粒子発明の粒子の生分解度曲線が、甲B10の図2の生分解度曲線のいずれかと同じになると解する理由がないので、甲B10の図2を根拠として、甲B9粒子発明の粒子のBD5/BD28が0.60以下であるとする特許異議申立人Bの主張は採用することができない。 (3)本件特許発明3ないし10について 本件特許発明3ないし10は、請求項1の記載を引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有し、さらに特定するものである。 そして、上記(2)のとおり、本件特許発明1は甲B9粒子発明ではなく、甲B9粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明3ないし10もまた、甲B9粒子発明ではなく、甲B9粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (4)本件特許発明11について 本件特許発明11と甲B9組成物発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。 <相違点B9-11> 本件特許発明11の組成物は、BD5/BD28が0.60以下である粒子を含むのに対して、甲B9組成物発明は、BD5/BD28が不明である粒子を含有する点。 上記相違点B9-11について検討すると、相違点B9-11は、相違点B9-1と実質的に同じ内容であるから、相違点B9-1と同様に判断される。 よって、本件特許発明11は、甲B9組成物発明ではなく、甲B9組成物発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (5)申立理由B9-1及びB9-2についてのまとめ したがって、本件特許発明1、3ないし11は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、本件特許発明1、3ないし11は、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえない。 よって、本件特許の請求項1、3ないし11に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、申立理由B9-1及び申立理由B9-2によっては取り消すことはできない。 14 申立理由B13(甲B10を主たる証拠とする進歩性)について (1)甲B10に記載された発明等 ア 甲B10に記載された事項 甲B10には、「生分解性プラスチックの易生分解性の評価」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、特許異議申立人Bが提出した訳文にて示す。 ・「本研究では、「生物分解性プラスチック」と呼ばれる以下の8種類のポリマーを使用した:3-分岐ポリアミド4(PA4)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート:PHBHHx)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート;PHB)、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸-co-3-ヒドロキシ吉草酸;PHBV)、ポリカブロラクトン(PCL)、ポリ(ブチレンサクシネートアジペート;PBSA)、ポリ(ブチレンサクシネート;PBS)、ポリ(D, L-ラクチド;PLA)。」(2444頁左欄35-41行) ・「試験材料 8種類のプラスチックの情報を表1に示す。OECD 301Fの標準物質である安息香酸ナトリウムは、植菌活性の確認に使用した。また、ISO Plastics biodegradation test 14851の標準物質であるセルロースもOECD 301F(国際標準化機構2019)の標準物質として使用できるかを調べた。 各プラスチックの粉末は以下のように調製した。PA4、PHBHHx、PHB、PBSA、PBSについては、液体窒素を用いた極低温粉砕により粉末を調製した。PHBVとPCLについては、それぞれ160℃と80℃で3分間プレス成形して薄膜を作製し、液体窒素による極低温粉砕で粉末化した。それぞれの粉末はふるいにかけられ、試験に使用するために回収された。本試験は、run 1とrun 2の2つの試験で構成された。run 1では、PA4、PBSA、PBS、PLA及び2つの参照材料の生分解を90日間の培養期間にわたって試験した。試験用パウダーは500μmメッシュのふるいを用いて調整した。run 2では、8種類のプラスチックと2種類の標準物質の生分解性を60日間の培養で調べ、250μmメッシュのふるいを用いて試験粉末を調整した。市販のPLAは粉体であるが、その中に大きな粒子がないことを確認するためにふるいにかけた。安息香酸ナトリウムとセルロースは前処理なしで使用した。」(2444頁右欄32-57行) ・「 [図:0001429989000012.jpg] 表1:試験材料の情報 a安息香酸ナトリウムとセルロースを除く試験物質の元素分析から得られた。 b組成式より算出。 cレーザー回折式粒度分布測定装置で乾式分散法により測定した体積基準値。 ThOD=理論酸素要求量;PA4=ポリアミド4;PHBHHx=ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート);PHB=ポリ(3-ヒドロキシブチレート);PHBV=ポリ(3-ヒドロキシ酪酸-co-3-ヒドロキシ吉草酸);PC L=ポリカプロラクトン;PBSA=ポリ(ブチレンサクシネートアジペート);PBS=ポリ(ブチレンサクシネート);PLA=ポリ(D,L-ラクチド); AIST =日本国産業技術総合研究所;Mw=重量平均分子量;Mn=数平均分子量;PHV=3-ヒドロキシ吉草酸。」(2445頁表1) ・「試験の有効性 OECD 301Fでは、試験開始後1 4日間及び1 0日間の試験期間終了時に基準物質の生分解率が6 0%を超え、かつ28日目までに植菌ブランクの基礎呼吸値が60mg/Lを超えない場合、試験は有効であるとみなされる。安息香酸ナトリウムの場合、14日目の生分解率はrun 1とrun 2でそれぞれ77.8%と86.6%であった(図1)。0日間の試験期間終了時の生分解率はそれぞれ76.4%と84.3%、28日目の基礎呼吸値はそれぞれ23.2mg/Lと44.4mg/Lであった(補足データ)。したがって、これらの試験結果は、我々の実験設定の妥当性を実証した。ISO 14851で標準物質として使用されているセルロースの場合、4日目の生分解率はrun 1とrun 2でそれぞれ51.4%と59.1%であり、10日間のウィンドウが終了した時点ではそれぞれ50.7%と59.0%であった(表2;補足データ)。セルロースを用いたすべての再現実験は、生分解性の基準(28日目に60%以上の生分解)を満たした。プラスチックの基準物質となりうるセルロースは、OECD試験ガイドライン301の基準物質とは比較にならなかったが、これはおそらく典型的な試験濃度 (試験物質100mg/L)のためであろう。OECD 301Fでは、50~100mgThOD/Lの試験濃度が認められている(経済協力開発機構1992)本試験では、セルロース100mg/Lは18mgThOD/Lに相当する。より低い試験濃度(例えば、59mgThOD/Lに相当する50mg/L)を用いた場合、セルロースの生分解は14日目までに水平状態(plateau)に達しないため、 生分解率の計算から14日目の生分解率は高くなる。従って、試験濃度を低く設定することで、セルロースをOECD試験ガイドライン301の基準物質として使用することができる。」(2245頁右欄11行から2246頁右欄3行) ・「 [図:0001429989000013.jpg] 図1:安息香酸ナトリウム(A)及びセルロース(B)の、run 1(ボトル1,〇;ボトル2,△;及びボトル3,□)及びrun 2(ボトル1,〇;ボトル2,△;及びボトル3,□)における生分解曲線。」(2446頁図1) ・「 [図:0001429989000014.jpg] 図2:ポリアミド4(A)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート)(B)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)(C)、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸-co-3-ヒドロキシ吉草酸)(D)、ポリカプロラクトン(E)、ポリ(ブチレンサクシネートアジペート)(F)、ポリ(ブチレンサクシネート)(G)及びポリ(D,L-ラクチド)(H)の、run 1(ボトル1,〇;ボトル2,△;及びボトル3,□)及びrun 2(ボトル1,〇;ボトル2,△;及びボトル3,□)における生分解曲線。PA4=ポリアミド4;PHBHHx=ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート);PHB=ポリ(3-ヒドロキシブチレート);PHBV=ポリ(3-3-ヒドロキシ酪酸-co-3-ヒドロキシ吉草酸);PCL=ポリカプロラクトン;PBSA=ポリ(ブチレンサクシネートアジペート);PBS=ポリ(ブチレンサクシネート);PLA=ポリ(D,L-ラクチド)。」(2447頁図2) イ 甲B10に記載された発明 甲B10に記載された事項を、特に表1に記載されたセルロース粒子「Avicel(R)(当審注:(R)は、○囲いの中にR) PH-101」について整理すると、甲B10には、次の発明(以下、「甲B10粒子発明」という。)が記載されていると認める。 <甲B10粒子発明> 「「Avicel(R)(当審注:(R)は、○囲いの中にR) PH-101」という商品名のセルロース粒子。」 (2)本件特許発明1について ア 対比・判断 本件特許発明1と甲B10粒子発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。 (相違点B10-1) 本件特許発明1の粒子は、「粒子径変動係数CVが40%以下である」のに対して、甲B10粒子発明は、粒子径変動係数CVが不明である点。 上記相違点B10-1について検討する。 甲B10には、甲B10粒子発明の粒子径変動係数CVが40%以下であることは記載されていないし、甲B10及び他の証拠をみても、甲B10粒子発明の粒子径変動係数CVが40%以下である蓋然性が高いと判断する理由もない。したがって、上記相違点B10-1は実質的な相違点である。 そして、甲B10及び他の証拠をみても、甲B10粒子発明において、粒子の粒子径変動係数CVを40%以下にする動機付けがない。 よって、甲B10粒子発明において、相違点B10-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲B10粒子発明ではなく、甲B10粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 特許異議申立人Bの主張について 特許異議申立人Bは、意見書B(18頁)において、甲B10粒子発明の粒子について、その粒子径変動係数CV値を好適化することは当業者が適宜なしえることである、と主張している。 しかし、甲B10粒子発明は、市販のセルロース粒子であり、甲B10粒子発明において、そのCV値を変更する動機付けは見当たらない。 したがって、特許異議申立人Bの主張は、採用することができない。 (3)本件特許発明3ないし10について 本件特許発明3ないし10は、請求項1の記載を引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有し、さらに特定するものである。 そして、上記(2)のとおり、本件特許発明1は、甲B10粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明3ないし10もまた、甲B10粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件特許発明11について 甲B10には、本件特許発明11と対比することができる発明が記載されていない。したがって、本件特許発明11は、甲B10に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (5)申立理由B13についてのまとめ したがって、本件特許発明1、3ないし11は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。 よって、本件特許の請求項1、3ないし11に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、申立理由B13によっては取り消すことはできない。 15 申立理由C1-1(甲C1を主たる証拠とする新規性)及び申立理由C1-2(甲C1を主たる証拠とする進歩性)について (1)甲C1に記載された発明等 ア 甲C1に記載された事項 甲C1には、「セルロース粒子又は酢酸セルロース粒子の製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「【請求項1】 酢酸セルロース粒子の製造方法であって、 (a)酢酸セルロースを有機溶媒に溶解して、酢酸セルロース溶液を調製する工程、 (b)前記酢酸セルロース溶液と水性媒体とを、外筒と該外筒内に同軸状に配置される内筒との間隙に通過させるとともに、前記外筒と前記内筒の少なくとも一方を回転させることによって、乳化液を得る工程、 (c)前記乳化液から酢酸セルロース粒子を析出させる工程、を含む製造方法。」 ・「【請求項11】 請求項1~10のいずれか一項に記載の製造方法により製造される、(酢酸)セルロース粒子。」 ・「【請求項13】 修飾されていてもよい、請求項11に記載の(酢酸)セルロース粒子を含む、化粧料。」 ・「【0040】 (酢酸)セルロース粒子の粒子径は、本発明の目的を損なわない限り特に限定されないが、例えば、様々な物質の吸着体として利用できるという観点からは、1μm~2mmであることが好ましく、20μm~1mmであることがより好ましく、35μm~600μmであることが特に好ましい。 また、化粧料、あるいは衛生用品、生理用品、洗濯用洗剤、オーラルケア用品、トイレタリー用品等の日用品の添加物として使用できる。その場合、(酢酸)セルロース粒子の粒子径は、1~30μmであることが好ましく、2~20μmであることがより好ましく、5~15μmであることが特に好ましい。1~30μmであれば、化粧料や各種日用品の様々な用途で使用できるが、特に化粧料として滑らかな感触が求められる場合は、5~15μmであると滑り性が向上するので好ましい。 さらに目的に応じて、異なる粒子径を有する複数の(酢酸)セルロース粒子を混合して使用してもよい。 (酢酸)セルロース粒子の粒子径は、例えば、粒度分布測定装置:HORIBA製 Laser Scattering Particle Size distribution Analyzer Partica LA-950を使用して粒度分布を測定することにより算出することができる。」 ・「[実施例1] (a)の工程 シクロヘキサノン4.8gに、二酢酸セルロース0.2g(ダイセル社製:L-20、酢化度:55~56%)を加えて攪拌した。さらに、昇温して60℃で3時間以上撹拌することにより二酢酸セルロースを溶解し、二酢酸セルロース濃度が4重量%である酢酸セルロース溶液を調製し、これを分散相とした。 【0059】 (b)の工程 純水50 gに、界面活性剤ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.1 gおよびシクロヘキサノン3.5 gを加えて攪拌した。さらに、60℃まで昇温することにより水性媒体を調製し、これを連続相とした。 上記で得られた分散相は、予め60℃に予熱して、シリンジポンプ(高圧マイクロフィーダーJP-H/古江サイエンス株式会社製)を用いて、毎分1 mLで内筒回転装置(内筒外径78mm、内筒長さ215mm、外筒内径80mm、クリアランス1mm/チップトン社製)の導入口1(図1の入口1)、上記で得られた連続相は、予め60℃に予熱して、プランジャーポンプ(NP-KX-840/日本精密科学社製)を用いて、毎分10mLで内筒回転装置の導入口2(図1の入口2)、にそれぞれ供給し、内筒回転数2000rpm、乳化時間138秒にて乳化を行った結果、水中油型の乳化液を得た。 【0060】 (c)の工程 続いてこの水中油型の乳化液を5℃に冷却し、二重管状の合流器に前記乳化液と貧溶媒である純水を毎分10 mLで供給し、二酢酸セルロースを析出させることで、二酢酸セルロース粒子スラリー液を得た。その後、上記分散物を遠心分離法およびろ過法によって固液分離し、得られた二酢酸セルロース粒子を大量の水で十分に洗浄した。そして、洗浄後の二酢酸セルロース球状粒子をろ過し、生成物である二酢酸セルロース粒子が得られた。 【0061】 (d)の工程 また、得られた二酢酸セルロース粒子に対し55重量%メタノール水溶液(7重量部)と20重量%水酸化ナトリウム水溶液(3.5重量部)の混合液に二酢酸セルロース粒子を投入し、35℃で20時間撹拌することにより、二酢酸セルロース粒子を鹸化した。その結果、最終生成物であるセルロース粒子が得られた。 【0062】 (試験例1:粒度分布の測定) 上記実施例1で得られた二酢酸セルロース粒子について粒度分布を測定した。得られたメジアン径を粒子径と定義し、粒子径と標準偏差の値より下記式によりCV値を求めた。測定に使用した装置は、以下の通りである。 装置:Laser Scattering Particle Size distribution Analyzer Partica LA-950S2(HORIBA製) CV[%]=(σ/D)×100(σ:標準偏差、D:粒子径)」 ・「【0064】 【表1】 [図:0001429989000015.jpg] 」 イ 甲C1に記載された発明 甲C1に記載された事項を、特に実施例1について整理すると、甲C1には、次の発明(以下、順に「甲C1粒子発明」及び「甲C1組成物発明」という。)が記載されていると認める。 <甲C1粒子発明> 「粒子径が、4.0μmであり、粒子径のCV値が、37.1%である、実施例1のセルロース粒子。」 (当審注:実施例1については上記アを参照のこと。) <甲C1組成物発明> 「甲C1粒子発明の粒子を含む、化粧料。」 (2)本件特許発明1について ア 対比・判断 本件特許発明1と甲C1粒子発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。 (相違点C1-1) 本件特許発明1の粒子は、BD5/BD28が0.60以下であるのに対して、甲C1粒子発明の粒子は、BD5/BD28が不明である点。 上記相違点C1-1について検討する。 甲C1には、甲C1粒子発明の粒子のBD5/BD28が0.60以下であることは記載されていないし、甲C1及び他の証拠をみても、甲C1粒子発明の粒子のBD5/BD28が0.60以下である蓋然性が高いと判断する理由もない。したがって、上記相違点C1-1は実質的な相違点である。 そして、甲C1及び他の証拠をみても、甲C1粒子発明において、粒子のBD5/BD28を0.60以下にする動機付けがない。 よって、甲C1粒子発明において、相違点C1-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲C1粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 特許異議申立人Cの主張について 特許異議申立人Cは、特許異議申立書C(29~30頁)において、BD5/BD28は急激な分解反応の進行が抑制されていることの指標であり、その指標は、主に、球状粒子の主成分である「多糖エステル」の置換度と、球状粒子の平均粒子径及び粒子径変動係数により制御されているものであるところ、甲C1粒子発明の主成分は、本件特許発明1の主成分と一致していることから、甲C1粒子発明のBD5/BD28の値も自ずと「0.60以下」を満たす蓋然性が極めて高い、と主張している。 しかし、本件特許の明細書に記載された実施例1では、セルロースアセテートをけん化する際に4.7重量%の水酸化ナトリウム水溶液を用いて80℃で3時間撹拌しているのに対し、甲C1粒子発明では、20重量%水酸化ナトリウム水溶液を用いて35℃で20時間撹拌しており、条件が異なることから両者の多糖エステルの置換度が同一であるとまではいえないこと、生分解性樹脂粒子の生分解性は、その主成分の樹脂のみで決まるものではなく、粒子の表面形状等によっても変化するものと認められることから、甲C1粒子発明の主成分が本件特許発明1の主成分と一致していることを根拠とする特許異議申立人Cの主張は採用することができない。 (3)本件特許発明3、7及び8について 本件特許発明3、7及び8は、請求項1の記載を引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有し、さらに特定するものである。 そして、上記(2)のとおり、本件特許発明1は甲C1粒子発明ではなく、甲C1粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明3、7及び8もまた、甲C1粒子発明ではなく、甲C1粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (4)本件特許発明11について 本件特許発明11と甲C1組成物発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。 <相違点C1-11> 本件特許発明11の組成物は、BD5/BD28が0.60以下である粒子を含むのに対して、甲C1組成物発明は、BD5/BD28が不明である粒子を含有する点。 上記相違点C1-11について検討すると、相違点C1-11は、相違点C1-1と実質的に同じ内容であるから、相違点C1-1と同様に判断される。 よって、本件特許発明11は、甲C1組成物発明ではなく、甲C1組成物発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (5)申立理由C1-1及びC1-2についてのまとめ したがって、本件特許発明1、3、7、8及び11は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、本件特許発明1、3、7、8及び11は、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえない。 よって、本件特許の請求項1、3、7、8及び11に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、申立理由C1-1及び申立理由C1-2によっては取り消すことはできない。 16 申立理由A4(実施可能要件)について (1)実施可能要件の判断基準 上記第3のとおり、本件特許発明1ないし11は物の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、かつ、その物を使用できる程度の記載を要する。 (2)実施可能要件の判断 本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、本件特許発明が「化粧品組成物に用いる生分解性球状粒子及びその製造方法に関する」(【0001】)ものであって、生分解性球状粒子が生分解性高分子を主成分として含み、粒子径変動係数CVが40%以下であり、BD5が40%以下であることによって本発明の課題を解決することができる(【0011】、【0012】)ことが記載されている。 そして、【0064】~【0097】には球状粒子の製造方法についての記載があり、特に、【0065】には、従来のO/Wエマルジョン法では、必然的に有機溶媒の溶出経路に起因する凹凸が粒子表面に形成されるのに対し、有機溶媒を使用しない溶融混練法を採用することにより、粒子表面に溶媒溶出に起因する凹凸が形成されることなく、極めて表面平滑性の高い球状粒子が得られることが記載されている。 さらに、【0098】~【0142】には具体的な実施例が示されており、表11の評価結果から、生分解性高分子を主成分として含み、粒子径変動係数CVが40%以下であり、BD5が所定値以下である生分解性球状粒子を含む化粧料について、良好な触感を有することが示されており、そのものを生産し、使用することができることが示されている。 したがって、本件特許の発明の詳細な説明に、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1、3ないし11を生産及び使用することができる程度の記載があるといえ、本件特許発明1、3ないし11に関して、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を充足する。 (3)特許異議申立人Aの主張について 特許異議申立人Aは特許異議申立書Aにおいて、上記第4 1(7)のとおり主張しているので、検討する。 ア 甲A6の実施例の記載について 甲A6には、本件特許の明細書に記載されたものと同様の方法で製造したセルロースアセテート粒子が記載されており(甲A6の[0116]の[表1])、実施例A-2、A-3、A-8の粒子の粒子径変動係数は41~44%であり、40%を超えるものの、実施例A-1、A-4~A-7及びA-9~A-11の粒子の粒子径変動係数は40%以下である。 そうすると、甲6の実施例に粒子径変動係数が40%を超える粒子がいくつか記載されているとしても、甲6に記載された実施例の過半においては粒子径変動係数が40%以下である粒子が得られているのであるから、このことをもって本件特許発明が実施可能要件を満たしていないとすることはできない。 したがって、特許異議申立人Aの主張は、上記(2)の判断に影響するものではない。 イ 生分解性高分子と可塑剤以外の成分を含む粒子について 本件特許の明細書の【0141】の【表11】には、生分解性高分子を主成分として含み、粒子径変動係数CVが40%以下であり、BD5が所定値以下である生分解性球状粒子を含む化粧料が良好な感触を有することが示されている。そして、特許異議申立人Aは、生分解性高分子と可塑剤以外の成分を含む粒子では、本発明の課題を解決できないことを示す具体的な根拠を提示するものでもない。 したがって、特許異議申立人Aの主張は、上記(2)の判断に影響するものではない。 (4)申立理由A4についてのまとめ 上記(2)及び(3)に記載したとおり、本件特許の請求項1、3ないし11に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由A4によって取り消すことはできない。 17 申立理由A5、申立理由B12及び申立理由C3(サポート要件)について 申立理由A5、申立理由B12及び申立理由C3はいずれも、サポート要件に関する申立ての理由であるから、併せて検討する。 (1)サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (2)特許請求の範囲の記載 特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。 (3)本件特許発明が解決しようとする課題 本件特許の明細書の【0010】の記載からみて、本件特許発明1、3ないし10が解決しようとする課題は、「良好な触感を有し、使用感が短期的には変動しない化粧品組成物を得ることができる生分解性球状粒子の提供」であり、本件特許発明11が解決しようとする課題は「良好な触感を有し、使用感が短期的には変動しない化粧品組成物の提供」であり、本件特許発明12ないし15が解決しようとする課題は「良好な触感を有し、使用感が短期的には変動しない化粧品組成物を得ることができる生分解性球状粒子の製造方法の提供」であると認められる。 (4)サポート要件の判断 本件特許の明細書の【0016】~【0018】、【0020】~【0022】【0026】~【0028】、【0033】~【0040】、【0045】~【0047】、【0062】~【0067】、【0090】~【0092】、【0144】~【0159】には、本件特許発明1、3ないし15に対応する記載がある。そして、同【0020】には、BD5について具体的な調整すべき範囲がその理由とともに記載されており、同【0026】及び【0027】にはそれぞれ、粒子径変動係数CV及び平均粒子径について具体的な調整すべき範囲がその理由とともに記載されており、同【0065】には、粒子の製造時に有機溶媒を使用しない溶融混練法を用いることにより、極めて表面平滑性が高い球状粒子が得られることが記載されており、同【0098】~【0142】には、BD5、CV及び平均粒子径が所定の条件を満たす実施例A-1、A-4~A-6の粒子を含む実施例B-1~11の化粧品組成物の触感がいずれも良好であることが記載され、これらの条件を満たさない比較例A-1の粒子を含む比較例B-1の化粧品組成物は触感が劣ることが示されている。そして、実施例B-1~B-11の化粧品組成物に含まれる実施例A-1、A-4~A-6の粒子は、表1及び表2の記載から、日時の経過に伴い球状粒子の分解反応が進行した場合も触感の急激な変化はないものと推測されるのに対して、比較例B-2の化粧品組成物に含まれる比較例A-2の粒子は、BD5が40%を超えており、粒子径変動係数CVも40%を超えていることから、時間経過に伴い球状粒子の分解反応が進行した場合には、触感が急激に変化することが推測される。 そうすると、粒子径変動係数CV及び平均粒子径が所定の条件を満たし、BD5が40%以下である生分解性球状粒子を用いれば、良好な触感を有し、使用感が短期的には変動しない化粧品組成物を得ることができると当業者は認識する。 そして、本件特許発明1は、上記事項をすべて満たし、さらに限定するものであるから、発明の詳細な説明の記載から当業者が本発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 したがって、本件特許の明細書の上記記載並びに出願時の技術常識を踏まえれば、当業者であれば本件特許発明1の構成を満たせば本発明の課題が解決できるものと理解する。本件特許発明1の発明特定事項のすべてを有し、さらに限定するものである本件特許発明3ないし15についても同様である。 よって、本件特許発明1、3ないし15は、発明の詳細な説明に記載されたものであり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を充足する。 (5)特許異議申立人の主張 ア 特許異議申立人Aの主張について 特許異議申立人Aは特許異議申立書A(47~50頁)において、上記第4 1(8)の主張をしているので、検討する。 (ア)可塑剤の含有量について 本件特許の明細書の【0053】には、球状粒子に含まれる可塑剤の含有量は特に限定されないことが記載されており、同【0085】には、混錬物から水溶性高分子を除去する過程で,可塑剤を除去してもよいことが記載されているので、本件特許発明において可塑剤が任意成分であることは明らかである。そして、特許異議申立人Aは、可塑剤を含まない粒子では本件特許発明の課題を解決することができないことを示す具体的な根拠を示すものでもないから、特許異議申立人Aの主張は採用することができない。 (イ)生分解性高分子以外の成分について 特許異議申立人Aは、生分解性を有しない素材を多く含むと、生分解度が低くなるので、最大49.99・・重量%の生分解性高分子以外のあらゆるものを含みうる粒子の範囲において本件特許発明の課題が解決できるものとは認められない旨主張するが、粒子の重量の過半を占める生分解性高分子自体の生分解曲線が変わるものではなく、また、生分解度が低くなれば、使用感の変動がより緩やかになることが推定されること、並びに、最大49.99・・重量%の生分解性高分子以外の成分を含む粒子では本件特許発明の課題を解決することができないことを示す具体的な根拠を示すものではないことから、特許異議申立人Aの主張は採用することができない。 イ 特許異議申立人Bの主張について 特許異議申立人Bは特許異議申立書B(142~143頁)及び意見書B(11頁)において、上記第4 2(21)の主張をしているので、検討する。 本件特許の明細書の【0018】には、本件特許発明の球状粒子は生分解性の素材からなり、その形状及び狭い粒度分布によって極めて良好な触感を有していることが記載されており、所定の形状及び粒度分布を有する生分解性の素材の粒子であれば、良好な触感を有することが認識できる。そして、同【0020】には、BD5を40%以下にすることで、短期的な使用感の変化が抑制されることが記載されており、BD5が所定の範囲であれば、使用感が短期的には変動しないことが認識できる。 そうすると、生分解性高分子として実施例で用いられた特定の生分解性高分子以外のものを用いたとしても、所定の形状及び粒度分布を有する生分解性の素材の粒子であって、BD5が所定の範囲の粒子であれば、本件特許発明の課題が解決できると当業者は認識する。 また、特許異議申立人Bは、実施例で用いられた特定の生分解性高分子以外のものを用いた粒子では、本件特許発明の課題を解決することができないことを示す具体的な根拠を示すものでもない。 したがって、特許異議申立人Bの主張は、上記(4)の結論を左右するものではない。 ウ 特許異議申立人Cの主張について 特許異議申立人Cは特許異議申立書C(38~39頁)及び意見書B(11頁)において、上記第4 2(21)の主張をしているので、検討する。 生分解性高分子として実施例で用いられた特定の生分解性高分子以外のものを用いたとしても、所定の要件を満たすものであれば本件特許発明の課題が解決できると当業者は認識することは、上記イで検討したとおりである。 そして、特許異議申立人Cは、実施例で用いられた特定の生分解性高分子以外のものを用いた粒子では、本件特許発明の課題を解決することができないことを示す具体的な根拠を示すものでもない。 したがって、特許異議申立人Cの主張は、上記(4)の結論を左右するものではない。 (6)申立理由A5、申立理由B12及び申立理由C3についてのまとめ 上記(4)及び(5)に記載したとおり、本件特許の請求項1、3ないし15に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由A5、申立理由B12及び申立理由C3によって取り消すことはできない。 18 申立理由A6及び申立理由B11(明確性)について 申立理由A6及び申立理由B11はいずれも、明確性に関する申立ての理由であるから、併せて検討する。 (1)明確性要件の判断基準 特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 (2)明確性要件の判断 ア 申立理由A6について 特許異議申立人Aは特許異議申立書A(50頁)において、上記第4 1(9)の主張をしているので、検討する。 本件特許の効果が特許請求の範囲に明確に記載されていないとしても、本件特許の特許請求の範囲の記載自体は明確であり、本件特許の明細書の記載を考慮しても矛盾するところはない。 そうすると、本件特許の請求項1の記載は、上記(1)の判断基準によれば、第三者の利益が不当に害されるほど不明確であるとはいえないから、明確性の要件を充足するといえる。 請求項1を引用する請求項3ないし11についても同様である。 イ 申立理由B11について 特許異議申立人Bは特許異議申立書B(141-142頁)及び意見書B(11頁)において、上記第4 2(20)の主張をしているので、検討する。 (ア)「生分解性」という用語について 本件特許発明の生分解性球状粒子は、請求項1の記載によれば、生分解性高分子を主成分として含むものであり、「生分解性高分子」という用語は一般的な技術用語であるといえるから、本件特許発明の生分解性球状粒子がおよそどの程度の生分解性を有するものまで包含するものであるのかは、当業者であれば理解ができるといえる。 したがって、請求項1に記載された「生分解性球状粒子」という用語が第三者の利益が不当に害されるほど不明確であるとまではいえない。 請求項1を引用する請求項3ないし11についても同様である。 (イ)BD5を40%以下にするための構成について 請求項1にBD5を40%以下にするための構成が記載されていないとしても、「40%以下」という数値範囲の記載自体は明確であり、本件特許の明細書の記載と矛盾するものでもない。 よって、本件特許の請求項1の記載は、明確性の要件を充足するといえる。 請求項1を引用する請求項3ないし11についても同様である。 (ウ)「ブランク」が何を指すかについて 本件特許の請求項1には、「OECD TG301Fに準拠した生分解性試験」と記載されているので、OECD TG301Fに定められた測定方法を参照すれば、当業者であれば「ブランク」がどのようなものを指すのかを理解できるといえ、請求項1の記載が第三者の利益が不当に害されるほど不明確であるとはいえない。 請求項1を引用する請求項3ないし11についても同様である。 (エ)「ミクロンサイズ」について 本件特許の明細書の【0033】には、「ミクロンサイズ」という用語の定義が記載されているので、願書に添付した明細書の記載を考慮すれば、請求項4及び5の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 (オ)「実質的に存在しない」について 本件特許の明細書の【0034】には、「実質的に存在しない」という用語について記載されているので、願書に添付した明細書の記載を考慮すれば、請求項4及び5の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 (3)申立理由A6及び申立理由B11についてのまとめ したがって、本件特許の請求項1、3ないし11に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由A6及び申立理由B11によっては取り消すことができない。 第7 結語 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した理由及び特許異議申立書AないしCに記載した理由によっては、本件特許の請求項1、3ないし15に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1、3ないし15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 特許異議申立人AないしCによる特許異議の申立てについて、請求項2に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700670

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