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特許異議申立

2025-700195

樹脂粒子及びその用途

審判番号
2025-700195
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-149159
登録番号
7542703
請求日
2025年02月14日
審決日
2025年12月17日
公報発行日
2026年04月24日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】松本油脂製薬株式会社
  • 【異議申立人】東レ 株式会社
  • 【異議申立人代理人】伴 俊光
  • 【異議申立人代理人】細田 浩一
  • 【異議申立人】鈴木 幸子
審判長/審判官
  • 審判長 天野 宏樹
  • 審判官 宮久保 博幸
  • 審判官 水野 明梨
分類
P1651.113-YAA(C08J) / P1651.121-YAA(C08J) / P1651.536-YAA(C08J) / P1651.537-YAA(C08J)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7542703号発明「樹脂粒子及びその用途」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7542703号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。 特許第7542703号の請求項1~6に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7542703号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、令和5年9月14日を出願日(優先権主張令和4年9月30日(以下、「優先日」という。)、日本国)とする出願であって令和6年8月22日にその特許権の設定登録(請求項の数6)がされ、同年同月30日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対して、令和7年2月14日に特許異議申立人東レ株式会社(以下、「申立人A」という。)により特許異議の申立て(対象:全請求項)がなされ、同年同月27日に特許異議申立人鈴木 幸子(以下、「申立人B」という。)により特許異議の申立て(対象:全請求項)がなされたものである。 その後の手続の経緯は以下のとおりである。 令和7年 6月23日付け:取消理由通知 同年 8月 7日 :意見書及び訂正請求書(特許権者) 同年 8月22日付け:通知書(申立人A及びB宛て) 同年 9月22日 :意見書(申立人B) 本通知書に対して、申立人Aからの応答はなかった。 以下において、令和7年2月14日に申立人Aが提出した特許異議申立書を「申立書A」といい、令和7年2月27日に申立人Bが提出した特許異議申立書を「申立書B」という。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和7年8月7日の訂正請求書による訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)の趣旨は、「特許第7542703号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを求める。」というものであり、本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は以下の通りである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「前記熱可塑性樹脂が、ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂及びセルロース系樹脂から選ばれる少なくとも1種であり、」と記載されているのを、「前記熱可塑性樹脂が、ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂及びセルロース系樹脂から選ばれる少なくとも1種であり、」に訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~6も同様に訂正する)。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1 訂正事項1による請求項1の訂正は、「熱可塑性樹脂」のうち「ポリアミド樹脂」を削除し、「熱可塑性樹脂」の種類を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲、又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~6の訂正についても同様である。 (2)独立特許要件について 本件においては、訂正前の全ての請求項1~6について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項1~6に係る訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 3 訂正についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。 したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~6に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」~「本件特許発明6」という。まとめて、「本件特許発明」ということもある。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 熱可塑性樹脂を含み、体積平均粒子径が1~100μmであり、表面に凹凸部を有し、前記凹凸部が前記表面に沿って連続した形状を有し、前記凹凸部の深度が0.0001~0.05であり、オレイン酸吸油量が30~150mL/100gであり、 前記熱可塑性樹脂が、ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂及びセルロース系樹脂から選ばれる少なくとも1種であり、 前記ポリエステル系樹脂が、脂肪族ポリエステル系樹脂及び脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む、樹脂粒子。 【請求項2】 真球度が0.7~1.0である、請求項1に記載の樹脂粒子。 【請求項3】 前記樹脂粒子が生分解性を有する、請求項1又は2に記載の樹脂粒子。 【請求項4】 請求項1又は2に記載の樹脂粒子を含む、化粧料。 【請求項5】 請求項1又は2に記載の樹脂粒子を含む、コーティング組成物。 【請求項6】 請求項1又は2に記載の樹脂粒子を含む、光学部材。」 第4 特許異議申立理由の概要 1 申立人Aが申し立てた特許異議申立理由の概要 令和7年2月14日に申立人Aが申し立てた請求項1~6に係る特許に対する特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。 (1)申立理由A1(甲第A1号証に基づく新規性) 本件特許発明1~6は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~6に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (2)証拠方法 ・甲第A1号証:特開2020-100846号公報 ・甲第A2号証:実験成績証明書、東レ株式会社 名古屋事業場 化成品研究所 研究員 小宮健、作成日2024年12月26日 証拠の表記は当審による。 以下、順に「甲A1」のようにいう。 2 申立人Bが申し立てた特許異議申立理由の概要 令和7年2月27日に申立人Bが申し立てた請求項1~6に係る特許に対する特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。なお、判断の便宜上、新規性・進歩性に関する申立理由については、主引用文献となる証拠毎に申立理由を整理した。 (1)申立理由B1(甲第B1号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1~6は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第B1号証に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~6に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (2)申立理由B2(甲第B2号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1~4は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、または、本件特許発明1~6は、甲第B2号証に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~6に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (3)申立理由B3(甲第B3号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1~6は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第B3号証に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~6に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (4)申立理由B4(甲第B4号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1~5は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、または、本件特許発明1~6は、甲第B4号証に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~6に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (5)申立理由B5(甲第B5号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1、2及び4~6は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B5号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第B5号証に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2及び4~6に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (6)申立理由B6(サポート要件) 本件特許の請求項1~6に係る特許は、以下のとおり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 ・本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されている【0014】~【0015】、【0042】、【0056】及び他の記載を見ても、特定の方法、特に、アルカリ処理工程を含む製造方法で得た樹脂粒子以外により、本件特許発明の課題を解決し得ることは記載も示唆もされていない。 そうすると、本件特許発明の詳細な説明及び出願時の技術常識に照らして、当業者が本件特許発明の課題を解決できると認識できるのは、本件特許明細書の段落0042に記載された特定の製造方法、すなわち、特定の工程1~工程3により得られた樹脂粒子を、工程4としてアルカリ処理して得られた樹脂粒子に限られるものといえる。 したがって、このような特定がなされていない本件特許発明1は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に照らして、当業者が本件特許発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えるものである。本件特許発明1を引用する、本件特許発明2~6についても同様である。 したがって、本件特許の請求項1~6の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 (7)申立理由B7(実施可能要件) 本件特許の請求項1~6に係る特許は、以下のとおり、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 ア 本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載を見ても、本件特許明細書の段落0042に記載された特定の製造方法により得られた樹脂粒子以外に、特定の凹凸部を有する樹脂粒子を製造する方法について明らかにされておらず、出願時の技術常識に照らしても、本件特許明細書の段落0042に記載された特定の製造方法により得られた樹脂粒子以外の樹脂粒子を得るには、当業者であっても過度の試行錯誤を要することになるといえる。 イ 段落0064の記載のとおり、本件特許発明1~6の樹脂粒子の凹凸部は、樹脂粒子断面の電子顕微鏡写真に基づいてその深度が測定されるものである。しかしながら、「樹脂粒子の断面」をどのように写真撮影するのかについて、何ら記載されていないし、そのような電子顕微鏡写真についても、本件特許明細書には何ら示されていない。仮に「樹脂粒子の断面」の電子顕微鏡写真を撮影することができたとしても、断面がどの部分であるのかの詳細な条件について何ら記載されていない(なお、例えば甲第B1号証、甲第B2号証及び甲第B5号証に示されるような樹脂粒子の外観に係る電子顕微鏡写真の場合、凹凸部に対するカメラアングルや樹脂粒子の位置等により、その深度は大きく異なるものとなることから、どのような条件で樹脂粒子を撮影すればよいのかも不明である。)。 また、「体積平均粒子径に近い樹脂粒子の断面を10個選び」とあるが、具体的な選定基準も不明である。 さらに、図8に示される凹凸部以外の形状の凹凸部(例えば、左右の凸部が同じ高さとならない凹凸部)や、凹凸部が不定形状の場合等の図8に示される凹凸部の測定方法が適用できない凹凸部について、どのようにして深度を測定すればよいのか等も不明である。 これより、本件特許明細書の記載及び出願時の技術常識に照らしても、樹脂粒子表面の凹凸部の深度の値を得るためには、当業者であっても過度の試行錯誤を要することになるといえる。 以上のことから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 (8)申立理由B8(明確性要件) 本件特許の請求項1~6に係る特許は、以下のとおり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 ・本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載(段落0064)によると、請求項1における樹脂粒子の凹凸部は、樹脂粒子断面の電子顕微鏡写真に基いてその深度が測定されるものである。しかしながら、「樹脂粒子の断面」をどのように写真撮影するのかについて、何ら記載されていないし、そのような電子顕微鏡写真についても、本件特許明細書には何ら示されていない。仮に「樹脂粒子の断面」の電子顕微鏡写真を撮影することができたとしても、断面がどの部分であるのかの詳細な条件について何ら記載されていない。さらに、仮に例えば甲第B1号証、甲第B2号証及び甲第B5号証に示されるような樹脂粒子の外観に係る電子顕微鏡写真を用いた場合、凹凸部に対するカメラアングルや樹脂粒子の位置等により、その深度は大きく異なるものとなるところ、どのような条件で樹脂粒子を撮影すればよいのかも何ら記載されていない。 また、「体積平均粒子径に近い樹脂粒子の断面を10個選び」とあるが、具体的な選定基準も不明である。 さらに、図8に示される凹凸部以外の形状の凹凸部(例えば、左右の凸部が同じ高さとならない凹凸部)や、凹凸部が不定形状の場合等の図8に示される凹凸部の測定方法が適用できない凹凸部について、どのようにして深度を測定すればよいのか等も不明である。 これより、本件特許の請求項1~6における深度に係る要件は、その測定方法が明確に定義されておらず、同じサンプルを複数回測定した場合に全く異なる結果となる可能性が高いものであるから、このような要件を用いた特定を含む本件特許の請求項1~6の記載は、明確でない。 したがって、本件特許の請求項1~6の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 (9)証拠方法 ・甲第B1号証:国際公開2020/095702号 ・甲第B2号証:国際公開2020/262509号 ・甲第B3号証:特開2016-222897号公報 ・甲第B4号証:特開2021-66704号公報 ・甲第B5号証:特開2009-29953号公報 ・甲第B6号証:宮本晃吉他、海中での生分解性に優れた繊維の開発、あいち産業科学技術総合センター 研究報告 2012、第138~141ページ、< https://www.aichi-inst.jp/mikawa/research/report/01-p138-ms45.pdf> ・甲第B7号証:特開2004-106517号公報 証拠の表記は当審による。 以下、順に「甲B1」のようにいう。 第5 令和7年 6月23日付け取消理由通知に記載した取消理由の概要 ・取消理由A1(甲A1に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1~6に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲A1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲A1に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~6に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 第6 当審の判断 当審は、申立人A及び申立人Bが申し立てたいずれの特許異議申立理由によっても、本件発明1~6についての特許を取り消すことはできないと判断する。また、令和 7年 6月23日付けで特許権者に通知した取消理由によっても本件特許を取り消すことはできないと判断する。 理由は以下のとおりである。 1 申立理由A1(甲A1に基づく新規性・進歩性)及び取消理由A1(甲A1に基づく新規性・進歩性)について (1)証拠に記載された事項等 ア 甲A1に記載された事項 甲A1には、「ポリアミド微粒子」について、おおむね次の事項が記載されている。 「【背景技術】 【0002】 ポリアミド微粒子は、高靭性、柔軟性や高い耐熱性といった特徴を活かし、粉体塗料や粉末造形など各種用途に使用されており、中でも真球形状で内部に孔の存在しない中実かつ平滑表面なポリアミド微粒子は化粧品に使用されている。一方で、自然環境の負荷を低減できる観点から、生分解性を有するポリアミド微粒子が望まれており、多孔質形状の粒子は開示されているが、用途によっては、真球形状の粒子が望まれていた(特許文献1)。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 本発明では、表面が平滑で真球中実な生分解性を有するポリアミド微粒子を得ることを課題とする。」 「【発明の効果】 【0018】 本発明の表面が平滑で真球中実な生分解性を有するポリアミド微粒子は、良好な滑り性を示し、塗料、接着剤、インク、トナー光拡散剤、液晶用スペーサー、艶消し剤、ポリマーアロイ用添加剤、各種触媒の担体、クロマトグラフィー担体、自動車部品、航空機部品、電子部品、化粧品の添加剤および医療用担体などに好適に利用できる。更に高い生分解性を有するため、使用後の廃棄が容易となり、環境負荷を低減できる。」 「【実施例】 【0072】 以下本発明を実施例に基づき説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。 【0073】 (1)平均粒子径および粒子径分布指数 ポリアミド微粒子の数平均粒子径は、走査型電子顕微鏡写真から無作為に100個の粒子直径を特定し、その算術平均を求めることにより算出した。上記写真において、真円状でない場合、即ち楕円状のような場合は、粒子の最大径をその粒子径とした。また粒子径分布指数は、上記で得られた粒子径の値を、下記数値変換式に基づき算出した。 【0074】 【数4】 [図:0001434143000001.jpg] 【0075】 なお、Di:粒子個々の粒子径、n:測定数100、Dn:数平均粒子径、Dv:体積平均粒子径、PDI:粒子径分布指数とする。 【0076】 (2)真球度 ポリアミド微粒子の真球度は、走査型電子顕微鏡写真から無作為に30個の粒子を観察し、その短径と長径から下記数式に従い算出した。 【0077】 【数5】 [図:0001434143000002.jpg] 【0078】 なお、S:真球度、a:長径、b:短径、n:測定数30とする。 【0079】 (3)アマニ油吸油量 日本工業規格(JIS規格)JIS K 5101(2004)「顔料試験方法精製あまに油法」に準じ、ポリアミド微粒子約100mgを時計皿の上に精秤し、精製アマニ油(関東化学株式会社製)をビュレットで1滴ずつ徐々に加え、パレットナイフで練りこんだ後に、試料の塊ができるまで滴下-練りこみを繰り返し、ペーストが滑らかな硬さになった点を終点とし、滴下に使用した精製アマニ油の量から吸油量(mL/100g)を算出した。 【0080】 (4)BET比表面積 日本工業規格(JIS規格)JIS R 1626(1996)「気体吸着BET法による比表面積の測定方法」に従い、日本ベル製BELSORP-maxを用いて、ポリアミド微粒子約0.2gをガラスセルに入れ、80℃で約5時間減圧脱気した後に、液体窒素温度におけるクリプトンガス吸着等温線を測定し、BET法により算出した。 【0081】 (5)ポリアミド微粒子を構成するポリアミドの結晶化温度と融点 TAインスツルメント社製示差走査熱量計(DSCQ20)を用いて、窒素雰囲気下、30℃からポリアミドの融点を示す吸熱ピークまで20℃/分の速度で昇温した後に1分間保持し、20℃/分の速度で30℃まで温度を冷却させる際に出現する発熱ピークの頂点を結晶化温度とした。30℃から20℃/分で昇温した際の吸熱ピークを融点とした。測定に要したポリアミド微粒子は約8mgである。 【0082】 (6)ポリアミド微粒子を構成するポリアミドの分子量 ポリアミドの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法を用い、ポリメチルメタクリレートによる校正曲線と対比させて分子量を算出した。測定サンプルは、ポリアミド微粒子約3mgをヘキサフルオロイソプロパノール約3gに溶解し調製した。 装置:Waters e-Alliance GPC system カラム:昭和電工株式会社製HFIP-806M×2 移動相:5mmol/Lトリフルオロ酢酸ナトリウム/ヘキサフルオロイソプロパノール流速:1.0ml/min 温度:30℃ 検出:示差屈折率計。 【0083】 (7)ポリマー(B)の分子量 ポリマー(B)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法を用い、ポリエチレングリコールによる校正曲線と対比させて分子量を算出した。測定サンプルは、ポリマー(B)約3mgを水約6gに溶解し調製した。装置:株式会社島津製作所製 LC-10Aシリーズカラム:東ソー株式会社製TSKgelG3000PWXL移動相:100mmol/L塩化ナトリウム水溶液 流速:0.8ml/min 温度:40℃ 検出:示差屈折率計。 【0084】 (8)生分解性の評価 JIS K 6955(2006)に従い、粒子100mgを土壌100g中に配合し、BOD測定から評価した。2か月後に10%以上の分解を示した場合、生分解性を有するとした。 【0085】 [実施例1] 100mLのオートクレーブに4-アミノ酪酸(和光純薬工業株式会社製特級、SP値21.0計算)4g、ポリエチレングリコール(和光純薬工業株式会社製1級ポリエチレングリコール20,000、SP値21.3)6g、溶媒として水10gを加え密封後、窒素で10kg/cm2まで置換した。窒素を放出させながら系の圧力を0.1kg/cm2に調整後、温度を240℃まで昇温させた。この際、系の圧力が10kg/cm2に達した後、圧が10kg/cm2を維持するよう水蒸気を微放圧させながら制御した。温度が240℃に達した後に、0.2kg/cm2・分の速度で放圧させ重合を開始した。この時点で内溶液は均一透明であった。温度を255℃まで上昇させながら系内の圧力を0kg/cm2にまで低下させ、0kg/cm2になると同時に窒素を1時間流しながら加熱を維持し重合を完了させた。なお重合後は、内溶液が懸濁していた。窒素を再度10kg/cm2まで充填後、室温まで冷却させた。得られた固形物に水を加え80℃に加熱し、溶解物を溶かした。得られたスラリー液のろ過を行い、ろ上物に水40gを加え、80℃で洗浄を行った。その後200μmの篩を通過させた凝集物を除いたスラリー液を、再度ろ過して単離したろ上物を80℃で12時間乾燥させ、粉末を2.8g得た。また、200μm超の凝集物は存在しなかった。得られた粉末の融点はポリアミド4と同様の265℃、結晶化温度は230℃であり、分子量は45,000であった。また走査型電子顕微鏡観察からポリアミド4粉末は真球の微粒子形状であり、数平均粒子径は10.1μm、粒子径分布指数は1.31、真球度は97、アマニ油吸油量は65mL/100g、BET比表面積は0.75m2/gであり、R=1.1で中実な形態である。生分解性の評価では1か月後に30%分解した。なおポリアミド4のSP値は、22.9である。また、得られたポリアミド4微粒子の特性を表1、走査型電子顕微鏡写真の結果を図1に示す。」 「【0091】 [実施例7] ポリエチレングリコールをポリプロピレングリコール(和光純薬工業株式会社1級3000、分子量5,200、SP値18.7)、水素化ナトリウムをカリウム-tert-ブトキシド、N-アシル-カプロラクタム0.1gの使用、温度を210℃から50℃に変更した以外は、実施例6と同様の方法で重合した。洗浄溶媒には、イソプロパノールを用い粉末を2.2g得た。得られた粉末の融点はポリアミド4と同様の260℃、結晶化温度は232℃であり、分子量は17,000であった。また走査型電子顕微鏡観察からポリアミド4粉末は真球で表面平滑な微粒子形状であり、数平均粒子径は5.8μm、粒子径分布指数1.12、真球度は90、アマニ油吸油量は76mL/100gであり、生分解性の評価では1か月後28%分解した。また、得られたポリアミド4微粒子の特性を表1、走査型電子顕微鏡写真の結果を図2に示す。 【0092】 [実施例8] 分子量の異なるポリプロピレングリコール(和光純薬工業株式会社1級4000、分子量7,000、SP値18.7)に変更した以外は、実施例7と同様の方法で重合し、粉末を2.5g得た。得られた粉末の融点はポリアミド4と同様の260℃、結晶化温度は233℃であり、分子量は23,000であった。また走査型電子顕微鏡観察からポリアミド4粉末は真球で表面平滑な微粒子形状であり、数平均粒子径は5.2μm、粒子径分布指数1.13、真球度は90、アマニ油吸油量は75mL/100gであり、生分解性の評価では1か月後に30%分解した。また、得られたポリアミド4微粒子の特性を表1に示す。」 「【0097】 【表1】 [図:0001434143000003.jpg] 」 「【図1】 [図:0001434143000004.jpg] 【図2】 [図:0001434143000005.jpg] 」 イ 甲A1に記載された発明 上記アに記載された内容のうち、特に実施例1、7及び8を中心に整理すると、甲A1には次の発明(以下、順に「甲A1-1発明」、「甲A1-7発明」及び「甲A1-8発明」という。また、これらをまとめて「甲A1発明」という。)が記載されていると認める。 <甲A1-1発明> 「実施例1で得られ、表1に示された特性を有するポリアミド微粒子。」(当審注:表1については、上記(1)を参照。以下、同様。) <甲A1-7発明> 「実施例7で得られ、表1に示された特性を有するポリアミド微粒子。」 <甲A1-8発明> 「実施例8で得られ、表1に示された特性を有するポリアミド微粒子。」 ウ 甲A2に記載された事項 甲A2には、おおむね次の事項が記載されている。 ・「 [図:0001434143000006.jpg] 」 ・「 [図:0001434143000007.jpg] 」 ・「 [図:0001434143000008.jpg] 」 ・「 [図:0001434143000009.jpg] [図:0001434143000010.jpg] 」 ・「 [図:0001434143000011.jpg] 」 (2)対比・判断 ア 本件特許発明1について (ア)本件特許発明1と甲A1-1発明との対比 本件特許発明1と甲A1-1発明とを対比する。 甲A1-1発明は、ポリアミド4からなり、融点が265℃のポリアミド微粒子であるから、本件特許発明1の「熱可塑性樹脂を含」むことを満たす。 また、図1を参照すれば、甲A1-1発明における微粒子は表面が平滑ではなく、表面に凹凸部が形成され、凹凸部は表面に沿って連続していることが看て取れるから、本件特許発明1の「前記凹凸部が前記表面に沿って連続した形状を有し」を満たす。 そうすると、両者の一致点及び一応の相違点は以下のとおりである。 (一致点) 「熱可塑性樹脂を含み、表面に凹凸部を有し、前記凹凸部が前記表面に沿って連続した形状を有する、樹脂粒子。」 (相違点) ・相違点A1-1 本件特許発明1では、「体積平均粒子径が1~100μmであ」ることが特定されているのに対し、甲A1-1発明では、そのようには特定されていない点。 ・相違点A1-2 本件特許発明1では、「前記凹凸部の深度が0.0001~0.05であ」ることが特定されているのに対し、甲A1-1発明では、そのようには特定されていない点。 ・相違点A1-3 本件特許発明1では、「オレイン酸吸油量が30~150mL/100gであ」ることが特定されているのに対し、甲A1-1発明では、そのようには特定されていない点。 ・相違点A1-4 本件特許発明1では「前記熱可塑性樹脂が、ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂及びセルロース系樹脂から選ばれる少なくとも1種であり、前記ポリエステル系樹脂が、脂肪族ポリエステル系樹脂及び脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む」ことが特定されているのに対し、甲A1-1発明ではポリアミド4からなる点。 (イ)相違点A1-4について 事案に鑑み、相違点A1-4について検討する。 甲A1には、ポリアミド4又はポリアミド3の単量体をポリマー(B)の存在下重合し、その後ポリアミド微粒子を単離する方法によって製造されるポリアミド粒子の発明が記載されており(甲A1の請求項1、【0068】~【0071】)、生分解性を有するポリアミド4又はポリアミド3の微粒子により、「表面が平滑で真球中実な生分解性を有するポリアミド微粒子を得る」という課題を解決しようとするものである(【0021】、【0004】)。 また、甲A2は、申立人Aの従業者である研究員が、所属する研究所の所在地において甲A1の追試を目的として行った実験の結果を、自らが報告者となってまとめたとされる実験成績証明書であるところ、甲A1-1発明が、ポリアミド4以外の熱可塑性樹脂を含むことを示すものではない。 したがって、相違点A1-4は実質的な相違点である。 また、甲A1及び他の全ての証拠の記載を見ても、甲A1-1発明において、ポリアミド4に代えて、ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂及びセルロース系樹脂から選ばれる少なくとも1種を用いる動機はない。 よって、甲A1-1発明において相違点A1-4に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になしえたこととはいえない。 (ウ)申立人Aの主張について 申立人Aが申立書Aにおいて主張した理由は、本件訂正によって解消した。 (エ)小括 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲A1-1発明ではなく、甲A1-1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (オ)本件特許発明1と甲A1-7発明及び甲A1-8発明との対比 甲A1-7発明及び甲A1-8発明についても、ポリアミド4からなる微粒子であるから、本件特許発明1との対比においては、甲A1-1発明と同様の事がいえる。 よって、本件特許発明1は、甲A1-7発明及び甲A1-8発明のいずれでもなく、かつ、甲A1-7発明及び甲A1-8発明のいずれに基いても当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件特許発明2~6について 本件特許発明2~6は、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有し、さらに限定するものである。 そして、上記アのとおり、本件特許発明1は、甲A1発明ではなく、甲A1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明2~6は甲A1発明ではなく、また、本件特許発明2~6は、甲A1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)申立理由A1及び取消理由A1についてのまとめ 上記(2)のとおりであるから、申立理由A1及び取消理由A1では、本件特許発明1~6に係る特許を取り消すことはできない。 2 申立理由B1(甲B1に基づく新規性・進歩性)について (1)証拠に記載された事項等 ア 甲B1に記載された事項 甲B1には、「ポリアミド微粒子」について、おおむね次の事項が記載されている。 「[請求項13]ポリアミドがポリアミド4またはポリアミド3であり、数平均粒子径が0.1~300μm、粒子径分布指数が3.0以下、真球度が90以上、アマニ油吸油量が100mL/100g以下であるポリアミド微粒子。」 「[0032] ポリアミド微粒子の中実性と表面の平滑性とは、ポリアミド微粒子がアマニ油を吸収する量で表すことが可能である。即ち、表面が平滑であるほど表面に孔の存在しない微粒子となり、アマニ油の吸収量を示すアマニ油吸油量が少なくなる。また、中実であるほど、例えば中空粒子のように、内部にアマニ油を担持できなくなるため、吸油量が少なくなる。本発明のポリアミド微粒子のアマニ油吸油量は、100mL/100g以下である。ポリアミド微粒子のアマニ油吸油量が100mL/100gを超えると、中空や多孔質粒子となり、化粧品や塗料に良好な流動性を与えることができない。ポリアミド微粒子のアマニ油吸油量は90mL/100g以下が好ましく、80mL/100g以下がより好ましく、70mL/100g以下がさらに好ましく、60mL/100g以下が特に好ましい。アマニ油吸油量の下限は0mL/100g以上である。 [0033] なお、アマニ油吸油量は、日本工業規格(JIS規格)JIS K 5101(2004)「顔料試験方法 精製あまに油法」に準じて測定される。」 「[0085][実施例1] 100mLのオートクレーブに4-アミノ酪酸(和光純薬工業株式会社製特級、SP値21.0計算)4g、ポリエチレングリコール(和光純薬工業株式会社製1級ポリエチレングリコール20,000、SP値21.3)6g、溶媒として水10gを加え密封後、窒素で10kg/cm2まで置換した。窒素を放出させながら系の圧力を0.1kg/cm2に調整後、温度を240℃まで昇温させた。この際、系の圧力が10kg/cm2に達した後、圧が10kg/cm2を維持するよう水蒸気を微放圧させながら制御した。温度が240℃に達した後に、0.2kg/cm2・分の速度で放圧させ重合を開始した。この時点で内溶液は均一透明であった。温度を255℃まで上昇させながら系内の圧力を0kg/cm2にまで低下させ、0kg/cm2になると同時に窒素を1時間流しながら加熱を維持し重合を完了させた。なお重合後は、内溶液が懸濁していた。窒素を再度10kg/cm2まで充填後、室温まで冷却させた。得られた固形物に水を加え80℃に加熱し、溶解物を溶かした。得られたスラリー液のろ過を行い、ろ上物に水40gを加え、80℃で洗浄を行った。その後200μmの篩を通過させた凝集物を除いたスラリー液を、再度ろ過して単離したろ上物を80℃で12時間乾燥させ、粉末を2.8g得た。また、200μm超の凝集物は存在しなかった。得られた粉末の融点はポリアミド4と同様の265℃、結晶化温度は230℃であり、分子量は45,000であった。また走査型電子顕微鏡観察からポリアミド4粉末は真球の微粒子形状であり、数平均粒子径は10.1μm、粒子径分布指数は1.31、真球度は97、アマニ油吸油量は65mL/100g、BET比表面積は0.75m2/gであり、R=1.1で中実な形態である。生分解性の評価では1か月後に30%分解した。なおポリアミド4のSP値は、22.9である。また、得られたポリアミド4微粒子の特性を表1、走査型電子顕微鏡写真の結果を図1に示す。」 「[0090][実施例6] 100mLのオートクレーブに2-ピロリドン(和光純薬工業株式会社製特級、SP値22.5計算)4g、ポリエチレングリコール(和光純薬工業株式会社製1級ポリエチレングリコール20,000、分子量18,600、SP値21.3)6g、触媒として水素化ナトリウム0.1gを加え、窒素置換を行った後に、温度を210℃で1時間反応させた。室温まで冷却後、実施例1と同様の方法で粒子の洗浄、単離を行い、粉末を3.2gで得た。重合開始時点では均一溶液、重合後は懸濁溶液であった。得られた粉末の融点はポリアミド4と同様の265℃、結晶化温度は231℃であり、分子量は82,000であった。また走査型電子顕微鏡観察からポリアミド4粉末は真球で表面平滑な微粒子形状であり、数平均粒子径は5.4μm、粒子径分布指数1.58、真球度は95、アマニ油吸油量は60mL/100gであり、生分解性の評価では1か月後に25%分解した。また、得られたポリアミド4微粒子の特性を表1に示す。 [実施例7] ポリエチレングリコールをポリプロピレングリコール(和光純薬工業株式会社1級3000、分子量5,200、SP値18.7)、水素化ナトリウムをカリウム-tert-ブトキシド、N-アシル-カプロラクタム0.1gの使用、温度を210℃から50℃に変更した以外は、実施例6と同様の方法で重合した。洗浄溶媒には、イソプロパノールを用い粉末を2.2g得た。得られた粉末の融点はポリアミド4と同様の260℃、結晶化温度は232℃であり、分子量は17,000であった。また走査型電子顕微鏡観察からポリアミド4粉末は真球で表面平滑な微粒子形状であり、数平均粒子径は5.8μm、粒子径分布指数1.12、真球度は90、アマニ油吸油量は76mL/100gであり、生分解性の評価では1か月後28%分解した。また、得られたポリアミド4微粒子の特性を表1、走査型電子顕微鏡写真の結果を図2に示す。」 「[0096] [表1] [図:0001434143000012.jpg] 」 「 [図:0001434143000013.jpg] 」 イ 甲B1に記載された発明 上記アに記載された内容のうち、特に請求項13と実施例1、7を中心に整理すると、甲B1には次の発明(以下、「甲B1発明」という。)が記載されていると認める。 <甲B1発明> 「ポリアミドがポリアミド4又はポリアミド3であり、数平均粒子径が0.1~300μm、粒子径分布指数が3.0以下、真球度が90以上、アマニ油吸油量が100mL/100g以下であり、図1または図2に示す表面を有するポリアミド微粒子。」 (2)対比・判断 ア 本件特許発明1について (ア)本件特許発明1と、甲B1発明との対比 本件特許発明1と甲B1発明とを対比する。 甲B1発明は、ポリアミド4又はポリアミド3からなり、本件特許発明1の「熱可塑性樹脂を含」むことを満たす。 また、図1を参照すれば、甲B1発明における微粒子は表面が平滑ではなく、表面に凹凸部が形成され、凹凸部は表面に沿って連続していることが看て取れるから、本件特許発明1の「前記凹凸部が前記表面に沿って連続した形状を有し」を満たす。 そうすると、両者の一致点及び一応の相違点は以下のとおりである。 (一致点) 「 熱可塑性樹脂を含み、表面に凹凸部を有し、前記凹凸部が前記表面に沿って連続した形状を有する、樹脂粒子。」 (相違点) ・相違点B1-1 本件特許発明1では、「体積平均粒子径が1~100μmであ」ることが特定されているのに対し、甲B1発明では、そのようには特定されていない点。 ・相違点B1-2 本件特許発明1では、「前記凹凸部の深度が0.0001~0.05であ」ることが特定されているのに対し、甲B1発明では、そのようには特定されていない点。 ・相違点B1-3 本件特許発明1では、「オレイン酸吸油量が30~150mL/100gであ」ることが特定されているのに対し、甲B1発明では、そのようには特定されていない点。 ・相違点B1-4 本件特許発明1では「前記熱可塑性樹脂が、ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂及びセルロース系樹脂から選ばれる少なくとも1種であり、前記ポリエステル系樹脂が、脂肪族ポリエステル系樹脂及び脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む」ことが特定されているのに対し、甲B1発明はポリアミド4又はポリアミド3からなる点。 (イ)相違点B1-4について 事案に鑑み、相違点B1-4について検討する。 甲B1には、ポリアミド4又はポリアミド3の単量体をポリマー(B)の存在下重合し、その後ポリアミド微粒子を単離する方法によって製造されるポリアミド粒子の発明が記載されており(甲B1の請求項1、[0068]~[0071])、生分解性を有するポリアミド4又はポリアミド3の微粒子により、「表面が平滑で真球中実な生分解性を有するポリアミド微粒子を得る」という課題を解決しようとするものである(甲B1の[0021]、[0004])。また、請求項13及び実施例1、7を含むいずれの実施例においても、ポリアミド4又はポリアミド3以外の樹脂は用いられていない。 したがって、相違点B1-4は実質的な相違点である。 また、甲B1及び他の全ての証拠の記載を見ても、甲B1発明において、ポリアミド4又はポリアミド3に代えて、ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂及びセルロース系樹脂から選ばれる少なくとも1種を用いる動機はない。 よって、甲B1発明において相違点B1-4に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になしえたこととはいえない。 (ウ)申立人Bの主張について 本件訂正により、本件特許発明1における熱可塑性樹脂の選択肢から、ポリアミド樹脂が削除された。そして、本件訂正によって生じた相違点B1-4については(イ)に記載したとおりである。 よって、申立人Bの主張は採用できない。 (エ)小括 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲B1発明ではなく、甲B1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 イ 本件特許発明2~6について 本件特許発明2~6は、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有し、さらに限定するものである。 そして、上記アのとおり、本件特許発明1は、甲B1発明ではなく、甲B1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明2~6は甲B1発明ではなく、また、本件特許発明2~6は、甲B1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)申立理由B1についてのまとめ 上記(2)のとおりであるから、申立理由B1では、本件特許発明1~6に係る特許を取り消すことはできない。 3 申立理由B2(甲B2に基づく新規性・進歩性)について (1)証拠に記載された事項等 ア 甲B2に記載された事項 甲B2には、「生分解性樹脂粒子」について、おおむね次の事項が記載されている。 「[請求項1] ポリヒドロキシアルカノエートからなる生分解性樹脂粒子であり、粒子中に含まれるCa成分量が10~10,000ppmであり、体積平均粒子径が2~50μmであり、BET比表面積が0.8~10m2/gであり、アマニ油吸油量が50~300ml/100gである、生分解性樹脂粒子。」 「[図面の簡単な説明] [0010][図1]実施例1の生分解性樹脂粒子のSEM写真である。」 「[0014] 本発明の生分解性樹脂粒子はBET比表面積が0.8~10m2/gである。比表面積が0.8より低いと粒子の比重が重くなり、沈降し易くなる為、外用剤の調液時のハンドリング性が低下し、好ましくない。比表面積が10m2/gより高いと、表面が大きな凹凸構造あるいは多孔質形状となるため、粒子強度が低く、保存安定性が低下する為、好ましくない。好ましい範囲は0.9~8m2/g、より好ましい範囲は1~5m2/gである。BET比表面積は、後述の実施例に記載の方法により測定される。 [0015] 本発明の生分解性樹脂粒子はアマニ油吸油量が50~300ml/100gである。アマニ油吸油量が50ml/100gより低いと、肌への滑り性が低下する事がある。吸油量が300ml/100gより高いと、外用剤やリキッドファンデーションの調液時に粘度増加しやすく、ハンドリング性が著しく低下する為好ましくない。好ましい範囲は55~250ml/100g、より好ましい範囲は60~200ml/100gである。アマニ油吸油量は、後述の実施例に記載の方法により測定される。」 「[0062] 実施例1 撹拌翼及び温度計を取り付けた2Lオートクレーブに生分解性樹脂として3-ヒドロキシヘキサノエートと3-ヒドロキシブチレートとの共重合体樹脂(Danimer社製DAN-01210;融点Tmax142℃)を120g、溶媒として3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール486g、イオン交換水486g、分散安定剤として製造例1で得られた炭酸カルシウム分散液120gを投入し、回転数600rpmで攪拌しながら内温が142℃となるように加熱し、142℃到達後、60分乳化した。その後、撹拌回転数を維持したまま30℃まで1時間かけて冷却し、懸濁液を得た。得られた懸濁液に20%塩酸を50g(必要モル数の1.14倍)加え、10分間攪拌して炭酸カルシウムを分解した後、遠心分離機(タナベウィルテック社製)を用いて生分解性樹脂粒子を分離し、得られた生分解性樹脂粒子を樹脂の添加量に対して20倍量のイオン交換水を用いて洗浄した。次に、得られた生分解性樹脂粒子を60℃、真空度0.05MPaの条件にて20時間に亘って乾燥した。目開き45μmのスクリーンを設置した分級機(東洋ハイテック社製 商品名「ハイボルターNR300」)を用意した。分級機を用いて生分解性樹脂粒子を相対湿度が20%の空気雰囲気下にて分級した。生分解性樹脂粒子を相対湿度が20%の空気の流れにのせて、生分解性樹脂粒子をスクリーンに衝突させ、スクリーンの網目を通過しない粒子を除去することによって粒径の大きな粒子を除去し、生分解性樹脂を得た。」 「[0076] 実施例1~8及び比較例1~5で使用した原料の種類、量、及び乳化温度と、実施例1~8及び比較例1~5で得られた生分解樹脂粒子における体積平均粒子径、変動係数、BET比表面積、アマニ油吸油量、10%圧縮強度、灰分、Ca成分量、及び実施例1~8及び比較例1~5で得られた生分解性樹脂粒子を配合したファンデーションの付着性、及び伸びの官能評価を表1、2にまとめて示す。 [0077] [表1] [図:0001434143000014.jpg] 」 「 [図:0001434143000015.jpg] 」 イ 甲B2に記載された発明 上記アに記載された内容のうち、特に請求項1と実施例を中心に整理すると、甲B2には次の発明(以下、「甲B2発明」という。)が記載されていると認める。 <甲B2発明> 「ポリヒドロキシアルカノエートからなる生分解性樹脂粒子であり、粒子中に含まれるCa成分量が155ppmであり、体積平均粒子径が17.72μmであり、BET比表面積が1.83m2/gであり、アマニ油吸油量が101ml/100gである、生分解性樹脂粒子。」 (2)対比・判断 ア 本件特許発明1について (ア)本件特許発明1と甲B2発明との対比 本件特許発明1と甲B2発明とを対比する。 甲B2発明における「ポリヒドロキシアルカノエート」は脂肪族ポリエステル系樹脂に相当するから、甲B2発明は、本件特許発明1における「熱可塑性樹脂を含み、」及び「前記熱可塑性樹脂が、ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂及びセルロース系樹脂から選ばれる少なくとも1種であり、前記ポリエステル系樹脂が、脂肪族ポリエステル系樹脂及び脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む」を満たす。 また、甲B2発明における「体積平均粒子径が17.72μmであり」は、本件特許発明1における「体積平均粒子径が1~100μm」を満たす。 また、図1を参照すれば、甲B2発明における微粒子は表面が平滑ではなく、表面に凹凸部が形成され、凹凸部は表面に沿って連続していることが看て取れるから、本件特許発明1における「前記凹凸部が前記表面に沿って連続した形状を有し」を満たす。 そうすると、両者の一致点及び一応の相違点は以下のとおりである。 (一致点) 「熱可塑性樹脂を含み、体積平均粒子径が1~100μmであり、表面に凹凸部を有し、前記凹凸部が前記表面に沿って連続した形状を有し、 前記熱可塑性樹脂が、ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂及びセルロース系樹脂から選ばれる少なくとも1種であり、 前記ポリエステル系樹脂が、脂肪族ポリエステル系樹脂及び脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む、樹脂粒子。」 (相違点) ・相違点B2-1 本件特許発明1が、「前記凹凸部の深度が0.0001~0.05であり、オレイン酸吸油量が30~150mL/100gであり」と特定されているのに対し、甲B2発明には、そのような特定がない点。 (イ)相違点B2-1について 相違点B2-1について検討する。 甲B2発明においては、BET比表面積やアマニ油吸油量が特定されているが、それらは凹凸部の深度及びオレイン酸吸油量に直接結びつくものではなく、甲B2及び他の全ての証拠の記載を見ても、甲B2発明の凹凸部の深度及びオレイン酸吸油量が、本件特許発明1の発明特定事項を満たすとはいえない。 したがって、相違点B2-1は、実質的な相違点である。 また、甲B2及び他の全ての証拠の記載を見ても、甲B2発明において、凹凸部の深度やオレイン酸吸油量に着目し、凹凸部の深度を0.0001~0.05とし、オレイン酸吸油量を30~150mL/100gとする動機もない。 よって、甲B2発明において、相違点B2-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 (ウ)申立人Bの主張について 申立人Bは、申立書B及び令和7年9月22日に提出された意見書において、アマニ油吸油量とオレイン酸吸油量とは、いずれも粒子表面の平滑性の指標となるものであり、その数値に大きな差が生じることがないから、甲B2発明のアマニ油吸油量からみて、甲B2発明は「オレイン酸吸油量が30~150mL/100g」の範囲内となることが明らかである旨主張し、さらに、オレイン酸吸油量に差異がなく、樹脂粒子の表面の凹凸の状況に差異がないことから、「凹凸部の深度が0.0001~0.05」との要件を満たす旨主張している。 確かに、アマニ油吸油量とオレイン酸吸油量とは、いずれも粒子表面の平滑性の指標となるものである。 しかしながら、出願時の技術常識において、基材とその表面に吸着させる物質との組み合わせに応じて、吸油(液)量は変化するものである。また、申立人Bは甲B2発明においてアマニ油吸油量とオレイン酸吸油量の数値に大きな差が生じることがないといえる具体的な証拠は示していない。 よって、甲B2発明のオレイン酸吸油量が「30~150mL/100g」の範囲内であると推認する理由はない。 さらに、仮にオレイン酸吸油量がアマニ油吸油量と同程度であったとしても、吸油量から粒子表面の正確な形状を求めることはできないし、本件特許の明細書の【表1】に示されているように、凹凸部の深度とオレイン酸吸油量の間に、単純な相関関係は成り立たないため、オレイン酸吸油量の値(又はアマニ油吸油量の値)から、凹凸部の深度を推定することはできず、甲B2発明の凹凸部の深度が「0.0001~0.05」の範囲内であると推認する理由はない。 よって、甲B2発明における凹凸部の深度及びオレイン酸吸油量が、相違点B2-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たす蓋然性が高いということはできない。 さらに、申立人Bは、申立書B及び令和7年9月22日に提出された意見書において、甲B5には、樹脂粒子の表面に凹凸部である皺を形成することで、化粧品、光学部材、塗料等の用途に有用な樹脂粒子とすることが、甲B6には、生分解性樹脂をアルカリ処理し、生分解性樹脂の表面に沿って連続した微細な凹凸部であるクラックを形成することで、生分解性樹脂の生分解性を向上させることが、甲B7には、樹脂粒子の表面に微細な皺を形成することが、甲A1には表面に凹凸部を有する樹脂粒子において、凹凸部の深度を0.0001~0.05の範囲内とすることが、それぞれ記載されており、甲B5~甲B7及び甲A1の記載を参考に、甲B2発明において凹凸部の深度を0.0001~0.05の範囲とすることは容易である旨主張している。 しかしながら、甲B5~甲B7及び甲A1の記載を参酌しても、凹凸部の深度を0.0001~0.05の範囲とする動機はない。 甲B5には、ビニル系樹脂粒子の製造方法が記載されており、特定の製造方法で得られたビニル系樹脂粒子が、好ましい凹凸構造を有することが示されている(甲B5の特に【0028】)。してみると、ポリヒドロキシアルカノエートからなる生分解性樹脂粒子である甲B2発明と、甲B5の記載を組み合わせる動機がない。 また、甲B6、甲B7及び甲A1には、いずれも凹凸部の深度に着目する記載がなく、凹凸部の深度の好ましい範囲も記載されていないから、甲B6、甲B7及び甲A1を参酌したとしても、甲B2発明において、凹凸部の深度に着目する動機がない。 したがって、申立人Bの上記主張は採用することができない。 (エ)小括 したがって、本件特許発明1は、甲B2発明ではなく、甲B2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 イ 本件特許発明2~6について 本件特許発明2~6は、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有し、さらに限定するものである。 そして、上記アのとおり、本件特許発明1は、甲B2発明ではなく、甲B2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明2~4は甲B2発明ではなく、また、本件特許発明2~6は、甲B2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)申立理由B2についてのまとめ 上記(2)のとおりであるから、申立理由B2では、本件特許発明1~6に係る特許を取り消すことはできない。 4 申立理由B3(甲B3に基づく新規性・進歩性)について (1)証拠に記載された事項等 ア 甲B3に記載された事項 甲B3には、「熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子」について、おおむね次の事項が記載されている。 「【請求項1】 真球度が0.90~1.00、かつ光散乱指数が0.5~1.0、かつアマニ油吸油量が30~150mL/100gである熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子。 【請求項2】 前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂及びポリアミド系樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂である請求項1に記載の熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子。 【請求項3】 前記熱可塑性樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリカプロラクタム、ナイロン12及びナイロン6からなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂である請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子。 【請求項4】 前記熱可塑性樹脂が、生分解性を有し、かつポリエステル系樹脂及びポリエーテル系樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂である請求項1~3のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子。 【請求項5】 請求項1~4のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子が、3-アルコキシ-3-メチル-1-ブタノール及び/又は3-アルコキシ-3メチル-1-ブチルアセテート(アルコキシ基の炭素数は1~5個)を含む溶媒、水及び分散安定剤の存在下、熱可塑性樹脂を100℃以上の温度で乳化・分散し、その後冷却することで得られる熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子の製造方法。 【請求項6】 請求項1~4のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子を配合した化粧料。 【請求項7】 請求項1~4のいずれか1つに記載の熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子を配合したコーティング材料。」 「【0013】 (熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子:以下、略球状粒子ともいう) (1)諸物性 略球状粒子は、0.90~1.00の真球度、0.5~1.0の光散乱指数、30~150mL/100gのアマニ油吸油量を有する。真球度及び光散乱指数及びアマニ油吸油量の測定法は、実施例の欄に記載する。 真球度が0.90未満の場合、化粧料等に配合した際に、流動性が低下し、触感や滑り性が悪くなることがある。好ましい真球度は0.92~1.00であり、より好ましい真球度は0.93~1.00である。 光散乱指数が0.5より小さい場合、十分な光散乱性を示さず、化粧料等に配合した場合にはソフトフォーカス特性に劣ることがある。好ましい光散乱指数は0.55~1.0であり、より好ましい光散乱指数は0.6~1.0である。 【0014】 また、アマニ油吸油量が上記範囲であることで、略球状粒子を含む製品を製造する際に、略球状粒子の配合時のハンドリング特性を良好とすることができる。30mL/100g未満の場合、化粧料等に配合した際に化粧崩れをおこしやすく、化粧もちが悪くなる場合がある。アマニ油吸油量が150mL/100gより大きい場合、他の成分が吸収されてしまい、流動性が低下するため、ハンドリング性が悪化することがある。より好ましいアマニ油吸油量は30~145mL/100gである。 【0015】 更に、略球状粒子は、1~500μmの体積平均粒子径を有することが好ましい。略球状粒子は用途に応じて様々な粒子径を使用することができる。例えば、ファンデーション用途の場合は3~20μm、スクラブ剤の場合は、200~500μm、塗料用途の場合は3~100μm等、用途に応じて適宜選択することができる。平均粒子径の測定法は、実施例の欄に記載する。」 「【0039】 (光散乱指数の測定) (i)反射光度分布の測定 以下に示す方法により、樹脂粒子の表面で反射した光の拡散性を評価する。 樹脂粒子の反射光度分布を、三次元光度計(村上色彩研究所社製のゴニオフォトメーターGP-200)を用い、室温20℃、相対湿度65%の環境下で測定する。 【0040】 具体的には、 (1)図1に示すように、厚み2mmの黒色ABS樹脂板(タキロン社製)4の中心に、2cm角の正方形にカットした両面テープ(日東電工製 ORT-1)3を貼る。 (2)次いで、前記黒色ABS樹脂板4の黒色部分上の両面テープ3の粘着面に、樹脂粒子2を見かけ密度測定器の漏斗及び漏斗台(JIS K5101-12-1-2004)を用いて落としてから、その粘着面上の余分な樹脂粒子2を0.05~0.1MPaの圧縮空気で吹き飛ばす。 (3)前記黒色ABS樹脂板4を平坦なガラス板の上に載せ、別の平坦な5cm角の正方形の250gのガラス板を樹脂粒子2の点着面に載せ、樹脂粒子2に荷重を加えて1分間静置する。その後、再び、前記粘着面上の余分な樹脂粒子を圧縮空気で吹き飛ばす。 (4)(2)及び(3)の操作を3回繰り返した試験片を反射光度分布測定用の試験片1とする。そして、得られた試験片1の反射光を次のようにして測定する。図1に示すように、試験片1(樹脂粒子2)の法線(0°)に対して-45°の角度で、ハロゲンランプを光源とした光5を試験片1(樹脂粒子2)に入射させ、反射した反射光6の反射角-90°~+90°における光度分布を三次元光度計により測定する。測定に際しては全ての入射光が試験片1の黒色部分に入射するように試験片1の位置を調整する。なお、反射光検出は分光感度185~850nm、最高感度波長530nmの光電子増倍管により検出する。 【0041】 (ii)+45°の反射光強度100に対する0°の反射光強度の算出 前記反射光度分布の測定により得られた反射角0°、+45°における反射光強度データ(ピーク光度データ)から、反射角+45°の反射光強度(ピーク光度)を100としたときの、反射角0°における反射光強度(ピーク光度)を求める。反射角+45°(正反射方向)の反射光強度を100としたとき、反射角0°の反射光強度が100に近づくほど、化粧料に配合したときのソフトフォーカス効果が大きくなる。光散乱指数は下記式により算出する。 光散乱指数=(0°の散乱光強度)/(45°の散乱光強度) より1に近い値を示すほど、角度依存性のない高い光散乱特性を示すといえる。」 「【0042】 (実施例1) 300mLオートクレーブに熱可塑性樹脂としてポリブチレンサクシネート(三菱化学社製GS-Pla(R)品番:FZ71PD)を20g、溶剤として3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(クラレ社製 ソルフィットファイングレード)60g、イオン交換水100g、分散剤として10%第三リン酸カルシウム水溶液(太平化学産業社製TCP-10U)20g、界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウム0.24gを投入し、反応温度(加熱撹拌温度)120℃、撹拌回転数400rpmにて90分撹拌した。 その後、撹拌回転数を維持したまま急冷(25℃まで30分間)した後、内容物を取り出した。内容物を脱水・ろ過・乾燥に付すことで略球状粒子を得た。」 「【0054】 ・・・実施例で得られた略球状粒子の各種物性を下記表に示す。 【0055】 【表1】 [図:0001434143000016.jpg] 」 イ 甲B3に記載された発明 上記アに記載された内容のうち、特に請求項1を引用する請求項3と、実施例1~11を中心に整理すると、甲B3には次の発明(以下、「甲B3発明」という。)が記載されていると認める。 <甲B3発明> 「真球度が0.928~0.985、かつ光散乱指数が0.71~0.954、かつアマニ油吸油量が90~142mL/100gである熱可塑性樹脂からなる略球状樹脂粒子であって、前記熱可塑性樹脂が、ポリヒドロキシアルカノエートであり、平均粒子径が12~22μmである略球状樹脂粒子。」 (2)対比・判断 ア 本件特許発明1について (ア)本件特許発明1と甲B3発明との対比 本件特許発明1と甲B3発明とを対比する。 甲B3発明における「ポリヒドロキシアルカノエート」は脂肪族ポリエステル系樹脂に相当するから、甲B3発明は、本件特許発明1における「熱可塑性樹脂を含み、」及び「前記熱可塑性樹脂が、ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂及びセルロース系樹脂から選ばれる少なくとも1種であり、前記ポリエステル系樹脂が、脂肪族ポリエステル系樹脂及び脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む」を満たす。 また、甲B3発明における「平均粒子径が12~22μmである」は、甲B3の【0033】~【0034】を参酌すると、体積平均粒子径の値であるから、本件特許発明1における「体積平均粒子径が1~100μmであり」を満たす。 そうすると、両者の一致点及び一応の相違点は以下のとおりである。 (一致点) 「熱可塑性樹脂を含み、体積平均粒子径が1~100μmであり、表面に凹凸部を有し、 前記熱可塑性樹脂が、ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂及びセルロース系樹脂から選ばれる少なくとも1種であり、 前記ポリエステル系樹脂が、脂肪族ポリエステル系樹脂及び脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む、樹脂粒子。」 (相違点) ・相違点B3-1 本件特許発明1が、「前記凹凸部が前記表面に沿って連続した形状を有し、」と特定されているのに対し、甲B3発明には、そのような特定がない点。 ・相違点B3-2 本件特許発明1が、「前記凹凸部の深度が0.0001~0.05であり、オレイン酸吸油量が30~150mL/100gであり」と特定されているのに対し、甲B3発明には、そのような特定がない点。 (イ)相違点B3-2について 事案に鑑み、相違点B3-2について検討する。 甲B3においては、アマニ油吸油量が特定されているが、アマニ油吸油量は凹凸部の深度及びオレイン酸吸油量に直接結びつくものではなく、甲B3及び他の全ての証拠の記載を見ても、甲B3発明の凹凸部の深度及びオレイン酸吸油量が、本件特許発明1の発明特定事項を満たすとはいえない。 したがって、相違点B3-2は、実質的な相違点である。 また、甲B3及び他の全ての証拠の記載を見ても、甲B3発明において、凹凸部の深度やオレイン酸吸油量に着目し、凹凸部の深度を0.0001~0.05とし、オレイン酸吸油量を30~150mL/100gとする動機もない。 よって、甲B3発明において、相違点B3-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 (ウ)申立人Bの主張について 申立人Bは、申立書B及び令和7年9月22日に提出された意見書において、甲B3発明は光散乱指数が0.5~1.0と光散乱性(光乱反射性に相当)に優れたものであること、3(2)ア(ウ)で主張したとおり、オレイン酸吸油量に差異が無いことから、樹脂粒子の表面の凹凸状況が本件特許発明1と差異が無く、「凹凸部の深度が0.0001~0.05」との要件を満たすものといえる旨主張している。 しかしながら、3(2)ア(ウ)で述べたとおり、アマニ油吸油量からオレイン酸吸油量及び凹凸部の深度を推定することはできず、甲B3発明が本件特許発明1における「オレイン酸吸油量が30~150mL/100gであり」を満たす蓋然性が高いとはいえないし、「凹凸部の深度が0.0001~0.05」を満たすともいえない。 また、甲B3における「光散乱指数」は、樹脂粒子そのものに光を照射して測定するものであるところ(甲B3の【0039】~【0041】)、本件特許の「光乱反射性」とは、文字を印刷した紙の上に、樹脂粒子とメチルシリコーンオイルからなる塗膜を重ねて、文字の輪郭がぼやけて見えるか否かを評価したものであり、両者は全く異なる概念であり、甲B3における「光散乱性」が、本件特許における「光乱反射性」に相当するとは言えない。 よって、仮に甲B3発明における光散乱指数を参酌しても、甲B3発明が本件特許発明1における「オレイン酸吸油量が30~150mL/100gであり」を満たす蓋然性が高いとはいえないし、「凹凸部の深度が0.0001~0.05」を満たすともいえない。 さらに、申立人Bは、申立書B及び令和7年9月22日に提出された意見書において、甲B5~甲B7及び甲A1の記載を参考に、甲B3発明において凹凸部の深度を0.0001~0.05の範囲とすることは容易である旨主張している。 しかしながら、3(2)ア(ウ)で述べたことと同様に、甲B5~甲B7及び甲A1の記載を参酌しても、甲B3発明において凹凸部の深度を0.0001~0.05の範囲とする動機はない。 したがって、申立人Bの上記主張は採用することができない。 (エ)小括 したがって、本件特許発明1は、甲B3発明ではなく、甲B3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 イ 本件特許発明2~6について 本件特許発明2~6は、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有し、さらに限定するものである。 そして、上記アのとおり、本件特許発明1は、甲B3発明ではなく、甲B3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明2~6は甲B3発明ではなく、また、本件特許発明2~6は、甲B3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)申立理由B3についてのまとめ 上記(2)のとおりであるから、申立理由B3では、本件特許発明1~6に係る特許を取り消すことはできない。 5 申立理由B4(甲B4に基づく新規性・進歩性)について (1)証拠に記載された事項等 ア 甲B4に記載された事項 甲B4には、「複合粒子」について、おおむね次の事項が記載されている。 「【請求項1】 セルロースと、界面活性剤及び/又は水溶性高分子とを含む複合粒子であって、 前記界面活性剤及び/又は前記水溶性高分子の含有量が、前記セルロース100重量部に対して0.2~50重量部であり、 下記条件1を満たす、複合粒子。 条件1:乾式法により測定される複合粒子の平均粒子径DD50と、湿式法により測定される複合粒子の平均粒子径DW50の比(DD50/DW50)が、下記式(1)の関係を有する。 0.6≦(DD50/DW50)≦1.8 式(1) 【請求項2】 前記DW50が1~100μmである、請求項1に記載の複合粒子。 【請求項3】 吸油量が20~200ml/100gである、請求項1又は2に記載の複合粒子。」 「【0012】 〔セルロース〕 セルロースは木材、綿花、麻、竹等由来の天然セルロースや、再生あるいは精製セルロース等を挙げることができる。これらセルロース原料は、粉砕や切断することで、微細繊維化することができる。粉砕には、例えば、ボールミル、ビーズミル、振動ミル、カッターミル、ハンマーミル、ウイレーミル、ジェットミル、押出機、臼式粉砕機、グラインダー、高圧ホモジナイザー等が用いられる。 上記セルロースは、カルボキシル基、燐酸基、アミノ基等により変性されていてもよい。」 「【0026】 本発明の複合粒子の吸油量は、特に限定されないが、20~200ml/100gであると好ましい。吸油量が20ml/100g未満であると、化粧料へ配合した場合にべたつきを感じることがある。一方、吸油量が200ml/100g超であると、すべり性に劣ることがある。吸油量の下限は、より好ましくは40ml/100g、さらに好ましくは50ml/100g、最も好ましくは60ml/100gである。一方、吸油量の上限は、より好ましくは190ml/100g、さらに好ましくは180ml/100g、最も好ましくは160ml/100gである。 なお、複合粒子の吸油量の測定方法は、実施例で測定される方法によるものである。」 「【0040】 (乾式法による平均粒子径の測定) 乾式型レーザー回折式粒度分布測定装置(マスタサイザー3000、Malvern社製)を使用し、乾式測定法により測定した。平均粒子径は体積基準測定によるD50値を採用した。 【0041】 (湿式法による平均粒子径の測定) 湿式型レーザー回折式粒度分布測定装置(マイクロトラック粒度分布計(型式9320-HRA)、日機装株式会社製)を使用し、湿式測定法により測定した。平均粒子径は体積基準測定によるD50値採用した。 【0042】 (吸水量、吸油量の測定) JIS-K5101吸油量の測定法に基づき、吸水量測定はイオン交換水を、吸油量測定はオレイン酸を用いて測定した。」 「【0046】 〔実施例1〕 イオン交換水10000重量部と精製した木材パルプ由来のセルロース粉末(湿式法による平均粒子径25.2μm)100重量部とポリビニルアルコール(分子量22000)10重量部を含有した分散液をダイノミル装置にて処理することにより処理液を得た。処理液の擬似粒度分布曲線における平均粒子径は12.2μmであった。 得られた処理液(pH6.7)をスプレードライヤー(入口温度;200℃、出口温度;80℃)にて噴霧乾燥し、複合粒子1を得た。得られた複合粒子1の物性を表1に示す。 感触評価において、全てに項目において数値が大きく、感触に優れる結果であった。 なお、上記分散液、上記処理液、上記複合粒子1の光学顕微鏡を、それぞれ図1(分散液)、図2(処理液)、図3(複合粒子1)に示す。」 「【0056】 【表1】 [図:0001434143000017.jpg] 」 イ 甲B4に記載された発明 上記アに記載された内容のうち、特に請求項1及び2を引用する請求項3を中心に整理すると、甲B4には次の発明(以下、「甲B4発明」という。)が記載されていると認める。 <甲B4発明> 「セルロースと、界面活性剤及び/又は水溶性高分子とを含む複合粒子であって、前記界面活性剤及び/又は前記水溶性高分子の含有量が、前記セルロース100重量部に対して0.2~50重量部であり、乾式法により測定される複合粒子の平均粒子径DD50と、湿式法により測定される複合粒子の平均粒子径DW50の比(DD50/DW50)が、下記式(1)の関係を有し、 0.6≦(DD50/DW50)≦1.8 式(1) 前記DW50が1~100μmであり、 吸油量が20~200ml/100gである、複合粒子。」 (2)対比・判断 ア 本件特許発明1について (ア)本件特許発明1と甲B4発明との対比 本件特許発明1と甲B4発明とを対比する。 本件特許明細書において、体積平均粒子径は湿式測定法により測定されているから(本件特許明細書の【0063】)、甲B4発明の湿式法により測定される複合粒子の平均粒子径DW50は、本件特許発明1における「体積平均粒子径」に相当する。すなわち、甲B4発明は、本件特許発明1における「体積平均粒子径が1~100μmであり」を満たす。 また、甲B4の【0042】には、吸油量の測定においてオレイン酸を用いたことが記載されており、甲B4発明における「吸油量」は、本件特許発明1における「オレイン酸吸油量」に相当する。 そうすると、両者の一致点及び一応の相違点は以下のとおりである。 (一致点) 「体積平均粒子径が1~100μmである、樹脂粒子。」 (相違点) ・相違点B4-1 本件特許発明1は、「熱可塑性樹脂を含み、」及び「前記熱可塑性樹脂が、ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂及びセルロース系樹脂から選ばれる少なくとも1種であり、前記ポリエステル系樹脂が、脂肪族ポリエステル系樹脂及び脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む」と特定されるのに対し、甲B4発明は、セルロースと、界面活性剤及び/又は水溶性高分子とを含む点。 ・相違点B4-2 本件特許発明1は「表面に凹凸部を有し、前記凹凸部が前記表面に沿って連続した形状を有し」と特定されるのに対し、甲B4発明にはそのような特定がされていない点。 ・相違点B4-3 本件特許発明1は「前記凹凸部の深度が0.0001~0.05であり、」と特定されるのに対し、甲B4発明にはそのような特定がされていない点。 ・相違点B4-4 本件特許発明1は「オレイン酸吸油量が30~150mL/100gである」と特定されるのに対し、甲B4発明は「吸油量が20~200ml/100gである」点。 (イ)相違点B4-3について 事案に鑑み、相違点B4-3について検討する。 甲B4発明には、凹凸部の深度は記載されておらず、甲B4及び他の全ての証拠の記載を見ても、甲B4発明の凹凸部の深度が、本件特許発明1の発明特定事項を満たすとは言えない。 したがって、相違点B4-3は、実質的な相違点である。 また、甲B4及び他の全ての証拠の記載を見ても、甲B4発明において、凹凸部の深度に着目し、凹凸部の深度を0.0001~0.05をとする動機もない。 よって、甲B4発明において、相違点B4-3に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 (ウ)申立人Bの主張について 申立人Bは、申立書B及び令和7年9月22日に提出された意見書において、甲B4発明は本件特許発明1とオレイン酸吸油量に差異が無いことから、樹脂粒子の表面の凹凸の状況に差異が無く、「凹凸部の深度が0.0001~0.05」との要件を満たす旨主張している。 しかしながら、3(2)ア(ウ)で述べたことと同様に、オレイン酸吸油量から粒子表面の正確な形状を求めることはできず、甲B4発明の凹凸部の深度が「0.0001~0.05」の範囲内であると推認する理由はない。 さらに、申立人Bは、申立書B及び令和7年9月22日に提出された意見書において、甲B5~甲B7及び甲A1の記載を参考に、甲B4発明において凹凸部の深度を0.0001~0.05の範囲とすることは容易である旨主張している。 しかしながら、3(2)ア(ウ)で述べたことと同様に、甲B5~甲B7及び甲A1の記載を参酌しても、甲B4発明において凹凸部の深度を0.0001~0.05の範囲とする動機はない。 したがって、申立人Bの上記主張は採用することができない。 (エ)小括 したがって、本件特許発明1は、甲B4発明ではなく、甲B4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 イ 本件特許発明2~6について 本件特許発明2~6は、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有し、さらに限定するものである。 そして、上記アのとおり、本件特許発明1は、甲B4発明ではなく、甲B4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明2~5は甲B4発明ではなく、また、本件特許発明2~6は、甲B4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)申立理由B4についてのまとめ 上記(2)のとおりであるから、申立理由B4では、本件特許発明1~6に係る特許を取り消すことはできない。 6 申立理由B5(甲B5に基づく新規性・進歩性)について (1)証拠に記載された事項等 ア 甲B5に記載された事項 甲B5には、「ビニル系樹脂粒子の製造方法」について、おおむね次の事項が記載されている。 「【請求項1】 (a)水性媒体中に、ビニル系単量体Aの液滴を分散させて水性分散液を調製する水性分散液調製工程、及び(b)上記水性分散液中のビニル系単量体Aを重合させる重合工程を含む、表面に皺を有する平均粒径1~200μmのビニル系樹脂粒子の製造方法であって、 (1)前記(a)工程におけるビニル系単量体Aの液滴は、脂肪族エステル類からなる可塑剤を含み、かつ該可塑剤の添加量が、ビニル系単量体A100重量部に対して、0.1~3重量部であること、 (2)前記(b)工程において、ビニル系単量体Aの重合転化率が50~80%の状態で、溶解度パラメーターが13.0~15.0(MPa)1/2の炭化水素化合物を重合反応系に添加すること、及び (3)前記(b)工程において、上記(2)の操作に引き続き、ビニル系単量体B及び架橋剤を重合反応系に添加し、かつビニル系単量体Bの添加量が、ビニル系単量体A100重量部に対して、1~10重量部であること、 を特徴とするビニル系樹脂粒子の製造方法。」 「【0018】 [(b)工程] 本発明の製造方法における(b)工程は、前記(a)工程で調製された水性分散液中のビニル系単量体Aを重合させる、重合工程である。 当該重合工程においては、例えば、前記(a)工程で調製された水性分散液を攪拌装置を備えた反応器に投入し、窒素置換により反応器内の酸素を除去した後、攪拌しながら反応器を加熱し、所定温度で所定時間、ビニル系単量体を重合させる。 本発明の製造方法により得られる樹脂粒子の平均粒径は、1~200μmである。この範囲内に平均粒径を調整するには、前記水性分散液に添加されるアニオン系界面活性剤等の種類や量、撹拌条件等によりビニル系単量体Aの分散状態を制御すればよい。なお、当然のことながら、得られた樹脂粒子を分級することにより平均粒径を調整することができる。 本明細書における樹脂粒子の平均粒径とは、体積平均粒子径のことをいう。なお、体積平均粒子径は、樹脂粒子を水中に分散させ、レーザー回折散乱法により粒度分布を測定し、全粒子の体積に対する累積体積が50%になる時の粒子径として求められる。測定装置としては、例えば、日機装株式会社製「マイクロトラックMT-3300EX」等を使用することができる。」 「【0028】 このようにして形成された樹脂粒子は、ろ過や遠心分離などの公知の固液分離手段によって反応終了液から取り出し、表面に付着した懸濁剤を除去後、洗浄及び乾燥処理することにより、表面に皺を有すると共に、平均粒径が1~200μmの範囲にある、例えば後述の図1に示すようなビニル系樹脂粒子が得られる。なお、本発明でいう皺とは、粒子表面が平滑ではなく、粒子表面にランダムな曲線状凹凸形状を、全表面に対して少なくとも10%有するものを指す。好ましくは30%以上であり、より好ましくは50%以上である。また、曲線状凹凸形状の凸部の高さと凹部の深さとの差は、樹脂粒子の粒径にもよるが、通常0.01~2μm程度、好ましくは0.1~1.5μmであり、かつ平均粒径に対して0.1~10%の深さである。本発明において、曲線状凹凸形状の凸部と凹部との高低差を「皺の深さ」と言う。このような皺は、走査型電子顕微鏡や原子間力顕微鏡により確認することができる。 皺の深さは、具体的には以下のようにして測定する。ビニル系樹脂粒子をナノスケールハイブリッド顕微鏡を使用して写真撮影し、任意の20箇所について、樹脂粒子表面の皺の深さをカンチレバーのたわみ量により計測する。20箇所の計測値の算術平均値を皺の平均深さとする。 次に、本発明の方法によって得られる樹脂粒子の膨潤度について詳述する。 前記、樹脂微粒子の膨潤度とは、樹脂粒子の架橋度を表す指標であり、値が小さいほど架橋度が高いことを意味し、値が大きいほど架橋度が低いことを意味する。なお、本願発明の樹脂粒子の膨潤度は0~20であることが好ましい。 膨潤度は以下のようにして測定できる。メスシリンダーに樹脂粒子1gを精秤し、数回タッピング後、トルエン等の常温で樹脂粒子の架橋部分は溶解、膨潤させず、無架橋部分は溶解、膨潤させ得る溶媒を、静かに壁面を伝わらせて50mlまで入れる。その後、25℃で24時間静置し、膨潤したゲルの高さをml表示で読み取り、 膨潤度[-]=(読み取り値[ml]×0.5[g/ml])/試料採取量[g]により、算出された値である。なお、上式中の0.5[g/ml]は樹脂粒子のかさ密度である。 このようなビニル系樹脂粒子は、電気、電子分野、医療分野、化学分野、化粧品分野、その他工業分野において有用である。 【実施例】 【0029】 次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。 なお、各例における諸特性は、以下に示す方法に従って求めた。 (1)体積平均粒径(d50):樹脂粒子の50%粒子径の測定 樹脂粒子を水中に分散させ、レーザー回折散乱法(日機装株式会社製「マイクロトラックMT-3300EX」(商品名))により粒度分布を測定し、全粒子の体積に対する累積体積が50%になる時の粒子径を50%粒子径として求めた。粒子の形状ファクターは非球形とした。 (2)分散度(d90/d10):樹脂粒子の10%粒子径に対する90%粒子径の比の測定 樹脂粒子を水中に分散させ、レーザー回折散乱法(日機装株式会社製「マイクロトラックMT-3300EX」(商品名))により粒度分布を測定し、全粒子の体積に対する累積体積が10%、90%になる時の粒子径をそれぞれ10%粒子径、90%粒子径とし、90%粒子径を10%粒子径で除した値を用いた。粒子の形状ファクターは非球形とした。 (3)樹脂微粒子の表面形状 粒子表面形状の確認には、測定装置としてキーエンス社製走査型電子顕微鏡「VE7800」(商品名)を使用して樹脂粒子表面を撮影し、皺の有無を確認した。 (4)皺の平均深さ ビニル系樹脂粒子をナノスケールハイブリッド顕微鏡(キーエンス社製VN8000(商品名))を使用して1250倍に拡大して写真撮影し、任意の20箇所について、樹脂粒子表面の皺の深さをカンチレバーのたわみ量により計測する。20箇所の計測値の算術平均値を皺の平均深さとした。 (5)樹脂粒子の膨潤度 メスシリンダーに樹脂粒子1gを精秤し、数回タッピング後、トルエンを、静かに壁面を伝わらせて50mlまで入れる。その後、25℃で24時間静置し、膨潤したゲルの高さをml表示で読み取り、 膨潤度[-]=(読み取り値[ml]×0.5[g/ml])/試料採取量[g]により、算出した。 (6)拡散性フィルムの全光線透過率、ヘイズの測定 光拡散フィルムより50mm×50mmのサンプル片を切り出し、ヘイズメーター(日本電色社製「NDH5000」(商品名))にて全光線透過率とヘイズを測定した。 【0030】 実施例1 撹拌翼を備えた容量3Lの反応器(オートクレーブ)に脱イオン水1kgを入れ、更にピロリン酸ナトリウム16.2gを加えて溶解させた後、粉末状の硝酸マグネシウム・6水和物37.5gを加え、室温で30分間撹拌して懸濁剤としてのピロリン酸マグネシウムスラリーを合成した。 次いで、この反応生成物含有スラリーに、ラウリルスルホン酸ナトリウム10重量%水溶液5gと、予めビニル系単量体Aとしてメタクリル酸メチル375g、スチレン90g、α-メチルスチレン35gに重合開始剤としての過酸化ベンゾイル(日本油脂社製「ナイパーBW」(商品名)、水希釈粉体品)2.5g、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキシルカーボネート0.67g、連鎖移動剤としてα-メチルスチレンダイマー(日本油脂社製「ノフマーMSD」(商品名))1g、可塑剤の脂肪酸エステル類としてグリセリントリステアレート(日本油脂社製牛脂極度硬化油)5gを溶解させた溶液を加えた後、その混合溶液をホモジナイザー(Mテクニック社製)にて、回転数10000rpmで10分間攪拌して、水中にビニル系単量体Aを微細に分散させた。 【0031】 次いで、オートクレーブ内を窒素置換した後、撹拌翼を回転数200rpmで撹拌しながら、昇温を開始し、1時間半かけて80℃(重合開始温度)まで昇温した。80℃到達後、115℃まで6.5時間かけて昇温し、そのまま115℃で5時間保持した後、30℃まで約6時間かけて冷却した。80℃(重合開始温度)到達から4時間30分後に炭化水素化合物(異形化剤)としてペンタン(n-ペンタン80%とイソペンタン20%の混合物)75gを約10分間かけ、オートクレーブ内に添加した。次に、80℃(重合開始温度)到達から5時間後に、前もって作製しておいた乳濁液を約20分間かけ、オートクレーブ内に添加した。この乳濁液は、純水30g、ラウリルスルホン酸ナトリウム10重量%水溶液1gの分散液にビニル系単量体Bとしてスチレン30g、架橋剤としてジビニルベンゼン20gを加え、ホモジナイザー(Mテクニック社製)にて、回転数10000rpmで5分間撹拌して、水中にビニル系単量体Bを微細に分散させたものである。 冷却後、内容物を取り出し、硝酸(67.5重量%)を25ml添加し、15分間撹拌して、樹脂粒子の表面に付着した懸濁剤を溶解させた。その後、遠心分離機で脱水・洗浄し、真空乾燥機で水分を除去し、樹脂粒子を得た。 なお、実施例1で得られた樹脂粒子の顕微鏡写真を図1に示す。 【0032】 実施例2 炭化水素化合物(異形化剤)としてペンタン(n-ペンタン80%とイソペンタン20%の混合物)60gを用い、80℃(重合開始温度)到達から4時間後に20分間かけて添加し、次に、80℃(重合開始温度)到達から4時間30分後に、前もって作製しておいた乳濁液を約20分間かけ、オートクレーブ内に添加した以外は実施例1と同様に実施して、樹脂粒子を得た。尚、この乳濁液は、純水30g、ラウリルスルホン酸ナトリウム10重量%水溶液1gの分散液にビニル系単量体Bとしてスチレン30g、架橋剤としてジビニルベンゼン20gを加え、ホモジナイザー(Mテクニック社製)にて、回転数10000rpmで5分間撹拌して、水中にビニル系単量体Bを微細に分散させたものである。 なお、実施例2で得られた樹脂粒子の顕微鏡写真を図2に示す。」 「【0054】 ・・・以上、実施例1~13及び比較例1~15で得られた樹脂粒子の重合条件、表面形状、皺の平均深さ、膨潤度、d50、分散度(d90/d10)を表1~表4に示す。 【0055】 【表1】 [図:0001434143000018.jpg] 【0056】 【表2】 [図:0001434143000019.jpg] 」 「【0060】 実施例14 実施例1で得られた樹脂粒子を所定量(0.2g、0.5g、1g)計量する。計量した樹脂粒子それぞれとバインダー樹脂(東洋紡績社製「バイロナールMD-1200」(商品名))10gを5分間、撹拌混合し、小型塗工装置にて厚さ100μmのPETフィルム(東レ社製「ルミナー100T6」(商品名))に100μm厚で塗布した。その後、乾燥機で80℃1時間加熱し、光拡散フィルムを作製した。 実施例15 実施例2の樹脂粒子を用いる以外は、実施例14と同様に行って光拡散フィルムを作製した。 実施例16 実施例3の樹脂粒子を用いる以外は、実施例14と同様に行って光拡散フィルムを作製した。 比較例16 比較例1の樹脂粒子を用いる以外は、実施例14と同様に行って光拡散フィルムを作製した。 実施例14~16及び比較例16で得られた光拡散フィルムについて光学特性を評価(全光線透過率及びヘイズを測定)した。その結果を表5に示す。 これらの結果から、本発明で得られた表面に皺を有する樹脂粒子を光拡散剤として用いると、従来の表面が滑らかな樹脂粒子を用いたときに比べて、同添加量とした場合には、全光線透過率を維持しながらも高ヘイズの光拡散フィルムが得られ、同ヘイズの光拡散フィルムを製造する場合には、樹脂粒子の添加量を削減できることがわかる。 【0061】 【表5】 [図:0001434143000020.jpg] 【産業上の利用可能性】 【0062】 本発明により得られる表面に皺を有するビニル系樹脂粒子は、光拡散剤や、化粧品、塗料などへの添加剤用途に使用でき、更に皺を有することによる機能性を生かした各種用途に使用できるものである。」 「【図1】 [図:0001434143000021.jpg] 【図2】 [図:0001434143000022.jpg] 」 イ 甲B5に記載された発明 上記アに記載された内容のうち、特に請求項1及び実施例1~13を中心に整理すると、甲B5には次の発明(以下、「甲B5発明」という。)が記載されていると認める。 <甲B5発明> 「表面に皺を有する体積平均粒径(d50)が8.2~20.8μmのビニル系樹脂粒子であって、しわの平均深さが0.1~1.8μmである、ビニル系樹脂粒子」 (2)対比・判断 ア 本件特許発明1について (ア)本件特許発明1と甲B5発明との対比 本件特許発明1と甲B5発明とを対比する。 甲B5発明は、ビニル系樹脂からなり、本件特許発明1における「熱可塑性樹脂を含み、 」及び「前記熱可塑性樹脂が、ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂及びセルロース系樹脂から選ばれる少なくとも1種であり、前記ポリエステル系樹脂が、脂肪族ポリエステル系樹脂及び脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む」との発明特定事項を満たす。 甲B5の【0029】の「(1)体積平均粒径(d50):樹脂粒子の50%粒子径の測定」を参酌すると、甲B5発明の「体積平均粒径(d50)」は、本件特許発明1の「体積平均粒子径」に相当する。 甲B5発明は、表面に皺を有するものであり、図2の顕微鏡写真からみても、「表面に凹凸部を有し、前記凹凸部が前記表面に沿って連続した形状を有し」ている。 そうすると、両者の一致点及び一応の相違点は以下のとおりである。 (一致点) 「熱可塑性樹脂を含み、体積平均粒子径が1~100μmであり、表面に凹凸部を有し、前記凹凸部が前記表面に沿って連続した形状を有し、前記熱可塑性樹脂が、ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂及びセルロース系樹脂から選ばれる少なくとも1種であり、前記ポリエステル系樹脂が、脂肪族ポリエステル系樹脂及び脂肪族-芳香族ポリエステル系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む、樹脂粒子。」 (相違点) ・相違点B5-1 本件特許発明1は「オレイン酸吸油量が30~150mL/100gであり」と特定するのに対し、甲B5発明には、そのような特定がない点。 ・相違点B5-2 本件特許発明1は「前記凹凸部の深度が0.0001~0.05であり、」と特定するのに対し、甲B5発明には、そのような特定がない点。 (イ)相違点B5-1について 相違点B5-1について検討する。 甲B5には、オレイン酸吸油量について記載はなく、甲B5及び他の全ての証拠の記載を見ても、甲B5発明のオレイン酸吸油量が、本件特許発明1の発明特定事項を満たすとはいえない。 また、甲B5及び他の全ての証拠の記載を見ても、甲B5発明において、オレイン酸吸油量に着目し、オレイン酸吸油量を30~150mL/100gとする動機もない。 よって、甲B5発明において、相違点B5-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 (ウ)申立人Bの主張について 申立人Bは、申立書B及び令和7年9月22日に提出された意見書において、本件特許発明1は「光学部材に配合した場合は、透明性を保持したまま光散乱効果を得ることができる」ものであるところ、甲B5発明も光学部材に配合した場合には、透明性を保持したまま光散乱効果を付与することができるものであり(甲B5の【0060】~【0061】)、本件特許発明1と表面の凹凸状態に差異がないから、「オレイン酸吸油量を30~150mL/100g」との要件を満たす旨主張している。 しかしながら、オレイン酸吸油量は、光学部材に配合したときの透明性及び光散乱性並びに表面のしわの平均深さだけ決まるものではないから、透明性を保持したまま光散乱効果を得ることができる樹脂粒子であって、しわの平均深さが0.7μmであれば、「オレイン酸吸油量が30~150mL/100gであり」を満たすとはいえず、甲B5発明の特性から、オレイン酸吸油量を推定することはできない。 また、甲B5には「全光線透過率を維持しながらも高ヘイズの光拡散フィルムが得られ」たことが記載されているが(甲B5の【0061】)、これは本件特許の「透明性を保持したまま光散乱効果を得ることができる」という効果と、同一または同様の効果ではない。 例えば、本件特許の【0067】では、文字を印刷した紙に塗膜を重ねて文字の見え方を観察し、文字が目視で確認できるか否かによって、透明性を評価している。文字が目視で確認できるということは、平行線透過率が高いことを示していると考えられる。出願時の技術常識から見ても、透明性とは平行線透過率に比例するものであって、「全光線透過率」(散乱等により、平行に透過しない光も含む透過率)では透明性は評価できない。むしろ、「高ヘイズ」であることは、透明性の低さを示しており、甲B5発明によって得られる効果は、本件特許発明1によって得られる効果とは別物であると考えられる。 してみると、そもそも得られる効果が異なる点からも、光学部材に配合したときの透明性及び光散乱性並びに表面のしわの平均深さから、オレイン酸吸油量が推定できない点からも、甲B5発明と、本件特許発明1の表面の凹凸状態に差異がないとはいえず、甲B5発明が「オレイン酸吸油量を30~150mL/100g」との要件を満たすとはいえない。 また、申立人Bは、申立書B及び令和7年9月22日に提出された意見書において、甲B2~甲B4、甲A1には、樹脂粒子について「オレイン酸吸油量が30~150mL/g」とすることがそれぞれ記載されており、化粧品、塗料等に用いられる甲B5発明において、甲B2~B4、甲A1の知見に基いて、オレイン酸吸油量を30~150mL/gの範囲とすることは、当業者が容易になしえたことである旨主張している。 しかしながら、上記3(2)、4(2)、1(2)に記載した通り、甲B2、甲B3及び甲A1のいずれにも、オレイン酸吸油量が記載されているとはいえず、オレイン酸吸油量に着目する記載はなく、30~150ml/gという特定の範囲に調整する動機もない。また、甲B4は、セルロースからなり、肌上でのすべり性及び肌上でのしっとり感に優れ、皮膚感覚が良好な複合粒子の提供を目的としており(甲B4の【0004】)、複合粒子による光学特性に言及するものではなく、ビニル系樹脂からなり、専ら全光線透過率を維持しながらも高ヘイズの光拡散フィルムが得られるという効果に着目する甲B5発明とは、材料も解決しようとする課題も異なるから、甲B5と組み合わせる動機がない。 そして、本件特許発明1の「透明性を保持したまま光散乱効果を得ることができる」という効果は、甲B5発明の効果とは異なり、更に甲B4に記載の効果とも異なり、当該構成から、当業者が予測し得ない効果である。 以上より、申立人Bの上記主張は採用できない。 (エ)小括 したがって、本件特許発明1は、甲B5発明ではなく、甲B5発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 イ 本件特許発明2及び4~6について 本件特許発明2及び4~6は、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有し、さらに限定するものである。 そして、上記アのとおり、本件特許発明1は、甲B5発明ではなく、甲B5発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明2及び4~6は甲B5発明ではなく、また、本件特許発明2及び4~6は、甲B5発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)申立理由B5についてのまとめ 上記(2)のとおりであるから、申立理由B5では、本件特許発明1、2及び4~6に係る特許を取り消すことはできない。 7 申立理由B6(サポート要件)について (1)サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 そこで、検討する。 (2)特許請求の範囲の記載 上記第3のとおりである。 (3)サポート要件についての判断 本件特許発明1~6が解決しようとする課題は、「透明性及び光乱反射性を両立できる樹脂粒子を提供すること」(以下、「発明の課題」という)である(【0004】)。 そして、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、「前記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、特定の表面状態であり、特定の性質を示す樹脂粒子であると、透明性及び光乱反射性を両立できることを見出し、本発明に到達した。」「すなわち、本発明の樹脂粒子は、熱可塑性樹脂を含み、体積平均粒子径が1~100μmであり、表面に凹凸部を有し、前記凹凸部の深度が0.0001~0.05であり、オレイン酸吸油量が30~150mL/100gである。」(【0005】)との記載、「本発明の樹脂粒子の体積平均粒子径は1~100μmである。該平均粒子径が1μm未満であると、透明性に劣る。一方、100μm超であると、光乱反射性に劣る。」(【0011】)との記載、「本発明の樹脂粒子は、表面に凹凸部を有し、その凹凸部の深度が0.0001~0.05と特定の表面状態を有するものである。樹脂粒子の表面に凹凸部を有し、さらに、凹凸部の深度が0.0001~0.05であることで、樹脂粒子表面で光が散乱され、光乱反射性に優れるとともに、光の乱反射が適正化され、樹脂粒子の透明性が損なわれず、透明性及び光乱反射性を両立できる樹脂粒子となる。」(【0014】)との記載、「本発明の樹脂粒子のオレイン酸吸油量は、30~150mL/100gである。該吸油量が30mL/100g未満であると光乱反射性に劣る。150mL/100g超であると透明性に劣る。該吸油量が30mL/100g未満であると、樹脂粒子の表面の平滑性が高く、光乱反射性に劣ると考えられる。」(【0016】)との記載があり、実施例には、体積平均粒子径が6.6~16μmであり、表面に凹凸部を有し、前記凹凸部の深度が0.003~0.040であり、オレイン酸吸油量が55~90mL/100gである樹脂粒子が、透明性と光乱反射性に優れていること、並びに凹凸部の深度が0.000の比較例1及び凹凸部の深度が0.12の比較例2が記載されており、【0075】には「比較例1の粒子は表面が平滑であり、透明性には優れるが、光乱反射性に劣る。また、比較例2の粒子は表面の凹凸が大きく、光拡散性が強く、透明性に劣る。」と記載されている。 これらの記載に接した当業者であれば、粒子の体積平均粒子径、凹凸部の深度及びオレイン酸吸油量が、透明性及び光乱反射性に影響する物性であり、それらを実施例で採用された範囲を含む、【0005】、【0011】及び【0014】で記載された好ましいとされる範囲に調整することによって、透明性及び光乱反射性を両立することができ、発明の課題を解決できると認識することができる、すなわち、体積平均粒子径が1~100μmであり、表面に凹凸部を有する樹脂粒子が、前記凹凸部の深度が0.0001~0.05であり、オレイン酸吸油量が30~150mL/100gとなるような表面状態を有していれば、上記発明の課題を解決できると認識できる。 そして、本件特許発明1~6は、いずれも、上記発明の課題を解決できると認識できる特定事項を全て有し、さらに限定する発明であるから、いずれも発明の課題を解決できると認識できる。 (4)申立人Bの主張について 申立人Bは、申立書B及び令和7年9月22日に提出された意見書において、おおむね以下の通り主張する。 すなわち、本件明細書の【0068】から【0071】には、実施例1~4として、特定のものを原料とし、特定の製造方法を用いて、樹脂粒子を得たことが記載されており、それ以外の樹脂粒子については確認されていないことから、特にポリブチレンサクシネート及び/又はポリブチレンサクシネートアジペートとポリビニルアルコールと特定の界面活性剤を含み、アルカリ処理工程を含む製造方法で得た樹脂粒子以外の、あらゆる樹脂粒子において、本願の課題を解決できると理解できない旨主張してる。 しかしながら、上記(3)のとおり、発明の課題は、体積平均粒子径が1~100μmであり、表面に凹凸部を有する樹脂粒子が、前記凹凸部の深度が0.0001~0.05であり、オレイン酸吸油量が30~150mL/100gとなるような表面状態を有することで解決できると認識できるものであるから、当業者は、熱可塑性樹脂の種類及び粒子の製造方法に関わらず、本件特許発明は発明の課題を解決できると認識することができる。 よって、申立人Bの上記主張は採用できない。 (5)申立理由B6についてのまとめ 上記(3)のとおりであるから、申立理由B6では、本件特許発明1~6に係る特許を取り消すことはできない。 8 申立理由B7(実施可能要件)について (1)実施可能要件の判断基準 上記第3のとおり、本件特許発明1~6は物の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。 (2)実施可能要件の判断 本件特許の発明の詳細な説明の【0042】には、本件特許発明の樹脂粒子は、「例えば、上述の熱可塑性樹脂と、界面活性剤と、水溶性高分子と、水とを混合し、予備混合液を得る工程1と、工程1で得られた予備混合液を加熱攪拌し、加熱分散液を得る工程2と、工程2で得られた加熱分散液を冷却する工程3と、工程3で得られた分散液をアルカリ処理する工程4を含む方法で製造することができる。」と記載されており、【0043】~【0056】に、各工程の好ましい製造条件が記載されており、更に実施例には、工程1~工程4を含む具体的な方法により、樹脂粒子を得たことが記載されている。 また、【0067】には、樹脂粒子とメチルフェニルシリコーンオイルを3:7の重量割合で混合し、塗膜を作成したこと、得られた塗膜の透明性及び光乱反射性を評価したことが記載されている。 したがって、本件特許の発明の詳細な説明に、当業者が、本件特許の発明の詳細な説明及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1~6を生産し、使用することができる程度の記載があるといえる。 よって、本件特許発明1~6に関して、本件特許の発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を充足する。 (3)申立人Bの主張について 申立人Bは、申立書B及び令和7年9月22日に提出された意見書において、おおむね以下の通り主張する。 すなわち、「表面に凹凸部を有し、その凹凸部の深度が0.0001~0.05と特定の表面状態を有する」との特性が、いかなるメカニズム等で樹脂粒子の表面に形成されるのかが不明であり、熱可塑性樹脂を含み、前記熱可塑性樹脂が、ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂及びセルロース系樹脂から選ばれる少なくとも1種である樹脂粒子の全てについて、「体積平均粒子径が1~100μmであり、表面に凹凸部を有し、前記凹凸部が前記表面に沿って連続した形状を有し、前記凹凸部の深度が0.0001~0.05であり、オレイン酸吸油量が30~150mL/100g」とすることは、当業者であっても過度の試行錯誤を要する旨主張する。 また、本件特許の発明の詳細な説明の【0064】には、樹脂粒子の凹凸部は、樹脂粒子断面の電子顕微鏡写真に基づいて測定されるとされているところ、樹脂粒子の断面を測定する条件や、「体積平均粒子径に近い樹脂粒子の断面を10個選び」の具体的な選定基準が不明であり、樹脂粒子の表面状態が「凹凸部の深度が0.0001~0.05」であることを確認するのに、当業者であっても過度の試行錯誤を要する旨主張する。 さらに、本願の図8に示されるような単純な形状以外の凹凸部では、図8に示される測定方法が適応できず、「凹凸部の深度」を求めるには、当業者であっても過度の試行錯誤を要する旨主張する。 しかしながら、上記(2)で検討したとおり、本件特許の発明の詳細な説明には、上記工程1~工程4を含む方法で製造することにより、本件特許発明1~6を実施できることが記載されており、各工程において好ましく採用される諸条件とその理由も具体的に記載されているから、詳細なメカニズムの記載がないとしても、当業者がその製造に際し過度の試行錯誤を要するとはいえない。 また、本件特許の発明の詳細な説明の【0064】には、「凹凸部の深度=(凹凸部の長さ)/((粒子の長径+粒子の短径)/2) (4)」と定義されており、具体的な測定方法として【0063】の方法で測定される体積平均粒子径に近い樹脂粒子の断面を電子顕微鏡にて観察する方法が記載されている。電子顕微鏡によって粒子の断面を測定する方法は周知であるし、凹凸部の深度も明確に定義されているところ、凹凸部の深度が測定できるように測定条件等を調節することが、当業者にとって困難であったとはいえない。また、「体積平均粒子径に近い樹脂粒子の断面を10個選び」という工程は、粒度分布を持つ粒子についての測定を行っていることに鑑みれば妥当な条件と言え、電子顕微鏡によって粒子の断面を測定した結果に基づいて、体積平均粒子径に近い樹脂粒子の断面を10個選ぶことは、当業者にとって何ら困難なことではないから、選定基準が不明とは言えない。 さらに、本件特許の発明の詳細な説明の【0064】には「樹脂粒子中心部を円心とし、凹凸部の外周を結んだ円周弧(R1)と凹凸部の内周を結んだ円周弧(R2)との差を、粒子の凹凸部の長さ(L)と規定した。」と記載されているから、図8に示されるような形状以外の凹凸部であっても、【0064】の記載から凹凸部の長さを測定することは可能である。 以上より、申立人Bの主張は採用できない。 (4)申立理由B7についてのまとめ 上記(2)のとおりであるから、申立理由B7では、本件特許発明1~6に係る特許を取り消すことはできない。 9 申立理由B8(明確性要件)について (1)明確性要件の判断基準 特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 (2)特許請求の範囲の記載 上記第3のとおりである。 (3)明確性要件の判断 本件特許の請求項1における「熱可塑性樹脂」、「体積平均粒子径」、「表面に凹凸部を有し、前記凹凸部が前記表面に沿って連続した形状を有し」、「オレイン酸吸油量」は、それ自体明確であり、数値範囲も明確である。 また、本件特許の請求項1には、「凹凸部の深度が0.0001~0.05であり」と記載されているが、本件特許発明1の「凹凸部の深度」は、本件特許の発明の詳細な説明の【0064】に、「凹凸部の深度=(凹凸部の長さ)/((粒子の長径+粒子の短径)/2) (4)」と定義されており、明確であるし、数値範囲の特定も明確である。 さらに、請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定する請求項2~6の記載も明確である。 してみると、本件特許の請求項1~6の記載は、それ自体明確であるか、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮して明確であり、願書に添付した明細書及び図面の記載とも整合する。 したがって、本件特許発明1~6に関して、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書及び図面の記載を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 (4)申立人Bの主張について 申立人Bは、申立書B及び令和7年9月22日に提出された意見書において、おおむね以下の通り主張する。 すなわち、本件特許の発明の詳細な説明の【0064】に記載された凹凸部の深度の測定方法において、樹脂粒子の断面の撮影条件が不明であり、「体積平均粒子径に近い樹脂粒子の断面を10個選び」の具体的な選定基準も不明であり、さらに図8に示されるような形状以外の凹凸部の場合に、「凹凸部の深度」の測定方法が不明である旨主張している。 しかしながら、上記(3)で判断したとおり、「凹凸部の深度」は、式(4)によって定義されるとおりであって、その測定方法も上記8(3)にも記載した通り、当業者が明確に理解できるものであるから、「凹凸部の深度」は明確である。 また、式(4)の「(凹凸部の長さ)」については、本件特許の発明の詳細な説明の【0064】に「樹脂粒子中心部を円心とし、凹凸部の外周を結んだ円周弧(R1)と凹凸部の内周を結んだ円周弧(R2)との差を、粒子の凹凸部の長さ(L)と規定した。」と記載されており、図8に示されるような形状以外の凹凸部であっても、当該記載を当てはめて、凹凸部の長さを一意に測定することが可能である。 よって、申立人Bの主張は採用できない。 (5)申立理由B8についてのまとめ 上記(3)のとおりであるから、申立理由B8では、本件特許発明1~6に係る特許を取り消すことはできない。 第7 むすび 以上のとおり、本件発明1~6についての特許は、上記のいずれの特許異議申立理由によっても取り消すことはできない。 また、他に、これらの特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700195

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