特許異議申立
2024-700025
球状架橋粒子
- 審判番号
- 2024-700025
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-164989
- 登録番号
- 7309156
- 請求日
- 2024年01月16日
- 審決日
- 2025年09月22日
- 公報発行日
- 2026年01月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ダイキン工業株式会社
- 【権利者代理人】山田 卓二
- 【権利者代理人】式見 真行
- 【権利者代理人】畠中 省伍
- 【権利者】国立大学法人神戸大学
- 【権利者代理人】山田 卓二
- 【権利者代理人】式見 真行
- 【権利者代理人】畠中 省伍
- 【異議申立人】森本 美奈
- 審判長/審判官
- 審判長 淺野 美奈
- 審判官 天野 宏樹
- 審判官 磯貝 香苗
- 分類
- P1652.113-YAA(C08J) / P1652.121-YAA(C08J) / P1652.536-YAA(C08J) / P1652.537-YAA(C08J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条4項1号特許法113条4号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第113条第2号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第113条第4号、特許法第126条第6項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7309156号発明「球状架橋粒子」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7309156号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし7〕、〔8、11ないし14〕について訂正することを認める。
特許第7309156号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7309156号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし14に係る特許についての出願は、
令和 3年10月 6日に特許出願され、
令和 5年 7月 7日にその特許権の設定登録(請求項の数14)がされ、
令和 5年 7月18日に特許掲載公報が発行され、
その後、当該特許に対し、
令和 6年 1月16日に特許異議申立人 森本 美奈(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1~7)がされ、
令和 6年 4月18日付けで取消理由が通知され、
令和 6年 6月20日に特許権者 ダイキン工業株式会社、国立大学法人神戸大学(以下、「特許権者」という。)から訂正請求がされると共に意見書が提出され、
令和 6年 6月28日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、
令和 6年 7月29日に特許異議申立人から意見書が提出され、
令和 6年12月19日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、
令和 7年 3月 7日に特許権者から訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされると共に意見書が提出されたものである。
なお、令和6年 6月20日にされた先の訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
また、当審は、本件訂正請求につき、特許法第120条の5第5項ただし書きに規定する「特許異議申立人に意見を提出する機会を与える必要がないと認められる特別の事情」がある場合に該当すると判断し、改めて、特許異議申立人に意見書を提出する機会を与えないこととした。
すなわち、本件訂正請求人による訂正の内容は先の訂正請求による訂正の内容に含まれており、先の訂正請求による訂正の内容については、特許異議申立人は、既に意見書を提出する機会を与えられている。
第2 本件訂正について
1 訂正の内容
本件訂正請求における訂正の内容は次のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「平均粒径1μm以上、」と記載されているのを、
「平均粒径1μm以上50μm以下、」に訂正する。
請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし7も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に、
「R11は炭素数6~40の脂肪族炭化水素基であり、」と記載されているのを、
「R11は炭素数16~40の脂肪族炭化水素基であり、」に訂正する。
請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし7も同様に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に、
「 前記架橋性単量体は、
[図:0001431094000001.jpg]
、
[図:0001431094000002.jpg]
又は
[図:0001431094000003.jpg]
[式中、R51及びR61は、それぞれ独立的に直接結合、あるいは炭素数1~20の炭化水素基、-(CH2CH2O)r-(rは1~10の数)、-C6H4-、-O-、又は-NR’-(R’は、H又は炭素数1~4の炭化水素基)から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される2~6価の基であり、
R52及びR62は、水素原子、一価の有機基、又はハロゲン原子であり、
Y51は、-O-、又は-NR’-(R’は、H又は炭素数1~4の炭化水素基)であり、
pは、2~6であり、
qは1~5である。]
で表される単量体、またはジビニルベンゼンである、」と記載されているのを、
「 前記架橋性単量体は、
[図:0001431094000004.jpg]
又は
[図:0001431094000005.jpg]
[式中、R61は、直接結合、あるいは炭素数1~20の炭化水素基、-(CH2CH2O)r-(rは1~10の数)、-C6H4-、-O-、又は-NR’-(R’は、H又は炭素数1~4の炭化水素基)から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される2~6価の基であり、
R62は、水素原子、一価の有機基、又はハロゲン原子であり、
pは、2~6であり、
qは1~5である。]
で表される単量体、またはジビニルベンゼンである、」に訂正する。
請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし7も同様に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6に、
「前記平均粒径が50μm以下である」と記載されているのを、
「前記平均粒径が10μm以下である」に訂正する。
請求項6を引用する請求項7も同様に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項8に、
「請求項1~7のいずれか一項に記載の球状架橋粒子から構成されるコア、及び、シェル重合体から構成される前記コアを被覆するシェルを有する、コアシェル粒子。」と記載されているのを、
「球状架橋粒子から構成されるコア、及び、シェル重合体から構成される前記コアを被覆するシェルを有する、コアシェル粒子であって、
前記球状架橋粒子が、平均粒径1μm以上、かつ、粒径分散度(CV値)が20%以下であって、
前記球状架橋粒子が疎水性単量体から誘導された繰り返し単位を含み、
前記疎水性単量体が非架橋性であって、ホモポリマーの水接触角が90°以上であり、
前記疎水性単量体は、
式:CH2=C(-R12)-C(=O)-Y11-(R11)k
[式中、
R11は炭素数6~40の脂肪族炭化水素基であり、
R12は水素原子、一価の有機基又はハロゲン原子であり、
Y11は、直接結合、2~4価の炭素数1の炭化水素基、-C6H4-、-O-、-C(=O)-、-S(=O)2-及び-NR’-(R’は、H又は炭素数1~4の炭化水素基)から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される2~4価の基であり、
kは1~3である。]
で表される疎水性単量体(1)であり、
前記球状架橋粒子が少なくとも2つの重合性二重結合を有する架橋性単量体から誘導された繰り返し単位によって架橋がなされており、
前記架橋性単量体は、
[図:0001431094000006.jpg]
、
[図:0001431094000007.jpg]
又は
[図:0001431094000008.jpg]
[式中、R51及びR61は、それぞれ独立的に直接結合、あるいは炭素数1~20の炭化水素基、-(CH2CH2O)r-(rは1~10の数)、-C6H4-、-O-、又は-NR’-(R’は、H又は炭素数1~4の炭化水素基)から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される2~6価の基であり、
R52及びR62は、水素原子、一価の有機基、又はハロゲン原子であり、
Y51は、-O-、又は-NR’-(R’は、H又は炭素数1~4の炭化水素基)であり、
pは、2~6であり、
qは1~5である。]
で表される単量体、またはジビニルベンゼンである、コアシェル粒子。」に訂正する。
請求項8を直接又は間接的に引用する請求項11ないし14も同様に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項11に、
「請求項1~7のいずれか一項に記載の球状架橋粒子又は請求項8に記載のコアシェル粒子を含む、撥剤組成物。」と記載されているのを、
「(1)平均粒径1μm以上、かつ、粒径分散度(CV値)が20%以下の球状架橋粒子であって、
疎水性単量体から誘導された繰り返し単位を含み、
前記疎水性単量体が非架橋性であって、ホモポリマーの水接触角が90°以上であり、
前記疎水性単量体は、
式:CH2=C(-R12)-C(=O)-Y11-(R11)k
[式中、
R11は炭素数6~40の脂肪族炭化水素基であり、
R12は水素原子、一価の有機基又はハロゲン原子であり、
Y11は、直接結合、2~4価の炭素数1の炭化水素基、-C6H4-、-O-、-C(=O)-、-S(=O)2-及び-NR’-(R’は、H又は炭素数1~4の炭化水素基)から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される2~4価の基であり、
kは1~3である。]
で表される疎水性単量体(1)であり、
少なくとも2つの重合性二重結合を有する架橋性単量体から誘導された繰り返し単位によって架橋がなされており、
前記架橋性単量体は、
[図:0001431094000009.jpg]
、
[図:0001431094000010.jpg]
又は
[図:0001431094000011.jpg]
[式中、R51及びR61は、それぞれ独立的に直接結合、あるいは炭素数1~20の炭化水素基、-(CH2CH2O)r-(rは1~10の数)、-C6H4-、-O-、又は-NR’-(R’は、H又は炭素数1~4の炭化水素基)から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される2~6価の基であり、
R52及びR62は、水素原子、一価の有機基、又はハロゲン原子であり、
Y51は、-O-、又は-NR’-(R’は、H又は炭素数1~4の炭化水素基)であり、
pは、2~6であり、
qは1~5である。]
で表される単量体、またはジビニルベンゼンである、球状架橋粒子又は
(2)請求項8に記載のコアシェル粒子
を含む、撥剤組成物。」に訂正する。
請求項11を引用する請求項12も同様に訂正する。
(8)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項13に、
「請求項1~7のいずれか一項に記載の球状架橋粒子又は請求項8に記載のコアシェル粒子が付着した処理基材。」と記載されているのを、
「(1)平均粒径1μm以上、かつ、粒径分散度(CV値)が20%以下の球状架橋粒子であって、
疎水性単量体から誘導された繰り返し単位を含み、
前記疎水性単量体が非架橋性であって、ホモポリマーの水接触角が90°以上であり、
前記疎水性単量体は、
式:CH2=C(-R12)-C(=O)-Y11-(R11)k
[式中、
R11は炭素数6~40の脂肪族炭化水素基であり、
R12は水素原子、一価の有機基又はハロゲン原子であり、
Y11は、直接結合、2~4価の炭素数1の炭化水素基、-C6H4-、-O-、-C(=O)-、-S(=O)2-及び-NR’-(R’は、H又は炭素数1~4の炭化水素基)から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される2~4価の基であり、
kは1~3である。]
で表される疎水性単量体(1)であり、
少なくとも2つの重合性二重結合を有する架橋性単量体から誘導された繰り返し単位によって架橋がなされており、
前記架橋性単量体は、
[図:0001431094000012.jpg]
、
[図:0001431094000013.jpg]
又は
[図:0001431094000014.jpg]
[式中、R51及びR61は、それぞれ独立的に直接結合、あるいは炭素数1~20の炭化水素基、-(CH2CH2O)r-(rは1~10の数)、-C6H4-、-O-、又は-NR’-(R’は、H又は炭素数1~4の炭化水素基)から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される2~6価の基であり、
R52及びR62は、水素原子、一価の有機基、又はハロゲン原子であり、
Y51は、-O-、又は-NR’-(R’は、H又は炭素数1~4の炭化水素基)であり、
pは、2~6であり、
qは1~5である。]
で表される単量体、またはジビニルベンゼンである、球状架橋粒子又は
(2)請求項8に記載のコアシェル粒子
が付着した処理基材。」に訂正する。
請求項13を引用する請求項14も同様に訂正する。
(9)一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし8及び11ないし14について、請求項2ないし8及び11ないし14は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、訂正事項1ないし3により記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。
なお、訂正後の請求項8及び11ないし14については、訂正が認められる場合には、別の訂正単位とする求めがある。
2 訂正の目的、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1ないし3に係る請求項1及び請求項2ないし7の訂正について
訂正事項1ないし3に係る請求項1の訂正は、訂正事項1により、平均粒径を「1μm以上」から「1μm以上50μm以下」に特定し、訂正事項2により、R11を「炭素数6~40の脂肪族炭化水素基」から「炭素数16~40の脂肪族炭化水素基」に特定し、訂正事項3により、架橋性単量体の選択肢を3式から2式に特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1ないし3に係る請求項1の訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
そして、訂正事項1ないし3に係る請求項1の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし7の訂正についても同様である。
(2)訂正事項4に係る請求項6及び請求項7の訂正について
訂正事項4に係る請求項6の訂正は、請求項6の平均粒径を「50μm以下」から「10μm以下」に特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項4に係る請求項6の訂正は、本件特許明細書【0010】の記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
そして、訂正事項4に係る請求項6の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
請求項6を引用する請求項7の訂正についても同様である。
(3)訂正事項5に係る請求項8及び請求項11ないし14の訂正について
訂正事項5に係る請求項8の訂正は、訂正前の請求項8が請求項1ないし7を引用する記載であるところ、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消し、請求項2ないし7を引用するものについては削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項5に係る請求項8の訂正は、いずれも願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
請求項8を直接又は間接的に引用する請求項11ないし14の訂正についても同様である。
(4)訂正事項6に係る請求項11及び請求項12の訂正について
訂正事項6に係る請求項11の訂正は、訂正前の請求項11が請求項1ないし7を引用する記載であるところ、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消し、請求項2ないし7を引用するものについては削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項6による請求項11の訂正は、いずれも願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
請求項11を引用する請求項12の訂正についても同様である。
(5)訂正事項7に係る請求項13及び請求項14の訂正について
訂正事項7に係る請求項13の訂正は、訂正前の請求項13が請求項1ないし7を引用する記載であるところ、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消し、請求項2ないし7を引用するものについては削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項7による請求項13の訂正は、いずれも願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
請求項13を引用する請求項14の訂正についても同様である。
(6)独立特許要件について
本件特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし7に対してされているから、訂正後の請求項1ないし7について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
訂正事項5ないし7は、特許異議の申立てられていない請求項8及び11ないし14について訂正をするものであるから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定する独立特許要件の検討を行う。
以下、本件訂正後の明細書、特許請求の範囲及び図面を「訂正明細書」という。
ア 訂正明細書の請求項8に係る発明について
訂正明細書の請求項8に係る発明は、訂正明細書の請求項8に記載された事項により特定されるとおりのものであり、「球状架橋粒子から構成されるコア、及び、シェル重合体から構成される前記コアを被覆するシェルを有する、コアシェル粒子
」の構成を含み、「球状架橋粒子」を、訂正前の請求項1に係る発明における「球状架橋粒子」としたものである。
特許異議申立人は、訂正前の請求項1に係る発明に対して、下記第4.1ないし9のとおり、申立理由1ないし9の特許異議申立てをしている。
申立理由1ないし6の甲第1号証ないし甲第6号証に基づく新規性・進歩性について、訂正明細書の請求項8に係る発明を検討すると、甲第1号証ないし甲第6号証及び他の全ての証拠をみても、訂正前の請求項1に係る発明における「球状架橋粒子」から構成されるコア、及び、シェル重合体から構成されるコアを被覆するシェルを有する、コアシェル粒子とした記載はなく、また、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
また、申立理由8のサポート要件、申立理由9の実施可能要件については、下記第7に記すとおりであり、訂正前の請求項1に係る発明についても、それぞれサポート要件、実施可能要件を充足する。
したがって、訂正明細書の請求項8に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。
イ 訂正明細書の請求項11及び12に係る発明について
訂正明細書の請求項11及び12に係る発明は、訂正明細書の請求項11及び12に記載された事項により特定されるとおりのものであり、「球状架橋粒子又は」「(2)請求項8に記載のコアシェル粒子を含む、撥剤組成物」の構成を含み、「球状架橋粒子」を、訂正前の請求項1に係る発明における「球状架橋粒子」としたものである。
上記アにおいて検討したのと同様に、申立理由1ないし6の甲第1号証ないし甲第6号証に基づく新規性・進歩性について、訂正明細書の請求項11及び12に係る発明を検討すると、甲第1号証ないし甲第6号証及び他の全ての証拠をみても、訂正前の請求項1に係る発明における「球状架橋粒子」「を含む、撥剤組成物」とした記載、及び、訂正明細書の請求項8に記載の「コアシェル粒子」「を含む、撥剤組成物」とした記載はなく、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
また、申立理由8のサポート要件、申立理由9の実施可能要件については、下記第7に示すとおりであり、訂正前の請求項1に係る発明についても、それぞれ、サポート要件、実施可能要件を充足する。
したがって、訂正明細書の請求項11及び12に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。
ウ 訂正明細書の請求項13及び14に係る発明について
訂正明細書の請求項13及び14に係る発明は、訂正明細書の請求項12に記載された事項により特定されるとおりのものであり、「球状架橋粒子又は」「(2)請求項8に記載のコアシェル粒子が付着した処理基材」の構成を含み、「球状架橋粒子」を、訂正前の請求項1に係る発明における「球状架橋粒子」としたものである。
上記ア、イにおいて検討したのと同様に、申立理由1ないし6の甲第1号証ないし甲第6号証に基づく新規性・進歩性について、訂正明細書の請求項13及び14に係る発明を検討すると、甲第1号証ないし甲第6号証及び他の全ての証拠をみても、訂正前の請求項1に係る発明における「球状架橋粒子」「が付着した処理基材」とした記載、及び、訂正明細書の請求項8に記載の「コアシェル粒子が付着した処理基材」とした記載はなく、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
また、申立理由8のサポート要件、申立理由9の実施可能要件については、下記第7に示すとおりであり、訂正前の請求項1に係る発明についても、それぞれ、サポート要件、実施可能要件を充足する。
したがって、訂正明細書の請求項13及び14に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。
3 小括
以上のとおり、本件訂正請求による特許請求の範囲の訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とし、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項、第6項及び第7項の規定に適合するものである。
したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし7〕、〔8、11ないし14〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」等といい、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された次の事項により特定されるとおりものである。
「【請求項1】
平均粒径1μm以上50μm以下、かつ、粒径分散度(CV値)が20%以下の球状架橋粒子であって、
疎水性単量体から誘導された繰り返し単位を含み、
前記疎水性単量体が非架橋性であって、ホモポリマーの水接触角が90°以上であり、
前記疎水性単量体は、
式:CH2=C(-R12)-C(=O)-Y11-(R11)k
[式中、
R11は炭素数16~40の脂肪族炭化水素基であり、
R12は水素原子、一価の有機基又はハロゲン原子であり、
Y11は、直接結合、2~4価の炭素数1の炭化水素基、-C6H4-、-O-、-C(=O)-、-S(=O)2-及び-NR’-(R’は、H又は炭素数1~4の炭化水素基)から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される2~4価の基であり、
kは1~3である。]
で表される疎水性単量体(1)であり、
少なくとも2つの重合性二重結合を有する架橋性単量体から誘導された繰り返し単位によって架橋がなされており、
前記架橋性単量体は、
[図:0001431094000015.jpg]
又は
[図:0001431094000016.jpg]
[式中、R61は、直接結合、あるいは炭素数1~20の炭化水素基、-(CH2CH2O)r-(rは1~10の数)、-C6H4-、-O-、又は-NR’-(R’は、H又は炭素数1~4の炭化水素基)から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される2~6価の基であり、
R62は、水素原子、一価の有機基、又はハロゲン原子であり、
pは、2~6であり、
qは1~5である。]
で表される単量体、またはジビニルベンゼンである、
球状架橋粒子。
【請求項2】
前記球状架橋粒子を80℃1時間加熱した後における前記平均粒径及び前記粒径分散度が、加熱前(室温)と比較して、±10%以内である、請求項1に記載の球状架橋粒子。
【請求項3】
前記疎水性単量体から誘導された繰り返し単位の量が、前記球状架橋粒子に対して、50重量%以上である、請求項1または2に記載の球状架橋粒子。
【請求項4】
反応性基及び/又は親水性基を有する反応性/親水性単量体から誘導された繰り返し単位の量が、前記球状架橋粒子に対して、10重量%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の球状架橋粒子。
【請求項5】
前記架橋性単量体から誘導された繰り返し単位の量が40重量%未満である、請求項1~4のいずれか一項に記載の球状架橋粒子。
【請求項6】
前記平均粒径が10μm以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の球状架橋粒子。
【請求項7】
前記粒径分散度が10%以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の球状架橋粒子。」
第4 特許異議申立書に記載した特許異議申立理由の概要
令和 6年 1月16日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
1 申立理由1(甲第1号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし7は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 申立理由2(甲第2号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし7は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第2号証に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
3 申立理由3(甲第3号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし7は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第3号証に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
4 申立理由4(甲第4号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし7は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第4号証に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
5 申立理由5(甲第5号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし7は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第5号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第5号証に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
6 申立理由6(甲第6号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし7は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第6号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第6号証に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
7 申立理由7(明確性要件)
本件特許発明2ないし7についての特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
具体的理由はおおむね次のとおりである。
・請求項2の「加熱前(室温)」について、具体的な温度が何ら規定されておらず、「球状架橋粒子を80℃1時間加熱した後における前記平均粒径及び前記粒径分散度」を、どのような温度の球状架橋粒子の平均粒径及び粒径分散度と比較した結果「±10%以内」であるのか明確でない。
よって、本件特許の請求項2及び請求項2を引用する本件特許の請求項3ないし7の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
8 申立理由8(サポート要件)
本件特許発明1ないし7についての特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
具体的理由はおおむね次のとおりである。
(1)本件特許明細書の段落【0005】「ミクロンオーダーのような比較的粒径の大きく疎水性球形架橋粒子は、粒形が球状にならなかったり、粒径が揃わなかったりする等の問題が生じやすく、その製造は容易ではない。」という技術課題があるなかで、同【0005】「平均粒径が比較的大きく(ミクロンオーダー)、かつ、粒径が揃っており、表面凹凸効果により基材に撥水性を付与することができる新規な球状架橋粒子を提供すること」という本件特許発明が解決しようとする課題を解決できる球状架橋粒子は、特定の疎水性単量体(ステアリルアクリレート)及び特定の架橋性単量体(ジビニルベンゼン)を用い、特定の製造方法により得られた球状架橋粒子に過ぎない。
そして、ステアリルアクリレート以外の疎水性単量体やジビニルベンゼン以外の架橋性単量体を用いた場合等であっても、本件特許発明の課題を解決できると認識できるとはいえない。
これより、本件特許の請求項1ないし7は、当業者が課題を解決できると認識できる範囲を超えるものである。さらに、技術常識に照らしても、本件特許の発明の詳細な説明の内容を、本件特許の請求項1ないし7の範囲まで一般化することはできない。
(2)本件特許の請求項2は、「球状架橋粒子を80℃1時間加熱した後における前記平均粒径及び前記粒径分散度が、加熱前(室温)と比較して、±10%以内である」ことを要件とするものであるが、本件特許明細書の【0111】~【0120】の記載からみて、多数列記されている疎水性単量体や架橋性単量体のうち、特定の疎水性単量体(ステアリルアクリレート)及び特定の架橋性単量体(ジビニルベンゼン)以外に、どのような疎水性単量体及び/又は架橋性単量体を用い、どのような製造方法によれば、このような要件を満足させることができるのか、認識できるとはいえない。
したがって、本件特許の請求項2ないし7は、当業者が課題を解決できると認識できる範囲を超えるものである。さらに、技術常識に照らしても、本件特許の発明の詳細な説明の内容を、本件特許の請求項2ないし7の範囲まで一般化することはできない。
9 申立理由9(実施可能要件)
本件特許発明1ないし7についての特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
具体的理由はおおむね次のとおりである。
・本件特許明細書の【0005】に記載されている技術課題のもとで、製造方法等の特定が何らなされていない本件特許発明1ないし7の実施に際しては、本件特許明細書の【0111】~【0120】の実施例及び比較例の記載(同じ単量体を用いても、所期の球状樹脂粒子を得ることができない場合がある等)等を参酌しても、当業者に過度の試行錯誤を強いるものである。
したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
10 証拠方法
甲第1号証:特開2010-83987号公報
甲第2号証:特開2012-46562号公報
甲第3号証:特開2003-82191号公報
甲第4号証:特開2000-53710号公報
甲第5号証:特開2011-153217号公報
甲第6号証:国際公開第2010/013668号
甲第7号証:特開平9-221504号公報
甲第8号証:特開平6-228212号公報
甲第9号証:特開平5-40366号公報
証拠の表記は特許異議申立書の記載におおむね従った。
以下、順に「甲1」等という。
第5 取消理由(決定の予告)の概要
当審が令和 6年12月19日付けで通知した取消理由(決定の予告)(以下、「取消理由(決定の予告)」という。)の概要は次のとおりである。
取消理由2(甲1に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし7は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲1に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
取消理由3(甲5に基づく進歩性)
本件特許発明1ないし7は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲5に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
第6 当審の判断
当審は、以下に述べるように、取消理由2及び3によって、本件特許発明1ないし7を取り消すことはできないと判断する。
1 取消理由2(甲1に基づく新規性・進歩性)について
(1)甲1の記載事項等
ア 甲1の記載事項
甲1には、「有機粒子およびそれを用いた有機粒子含有組成物」に関し、次の事項が記載されている。
「【請求項1】
単量体組成物を重合して得られる有機粒子であって、
粒子径の変動係数が20%以下であり、疎水性指数が35~65であることを特徴とする有機粒子。
【請求項2】
前記単量体組成物が、炭素数4~10の直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基および環状アルキル基よりなる群から選択される少なくとも1種を有する非架橋性(メタ)アクリル系単量体を含有するものである請求項1に記載の有機粒子。
【請求項3】
前記単量体組成物に含まれる全単量体100質量%中の前記炭素数4~10の直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基および環状アルキル基よりなる群から選択される少なくとも1種を有する非架橋性(メタ)アクリル系単量体の含有率が、5質量%以上である請求項1または2に記載の有機粒子。」
「【請求項5】
平均粒子径が0.5μm~40μmである請求項1~4のいずれか一項に記載の有機粒子。」
「【0016】
疎水性指数
本発明の有機粒子は、疎水性指数が35以上65以下であることを必須とする。疎水性指数が65以下であれば、有機粒子を溶媒などと混合して有機粒子含有組成物を調製した際に、有機粒子含有組成物中での有機粒子の分散安定性が高くなり、35以上であれば、有機粒子間の相互作用が高まり、自己凝集性が発現する。
【0017】
ここで、本発明において、自己凝集性とは、有機粒子を溶媒などと混合して有機粒子含有組成物を調製した後、当該有機粒子含有組成物から溶媒を揮発させた際に、凝集剤などの添加剤を加えなくても、有機粒子同士の相互作用により凝集して2次粒子を形成する性質をいう。なお、本願において2次粒子を形成する状態とは、実質的に殆どの有機粒子が5個以上の単位で凝集した状態で、基材の表面に存在する状態を意味する。
【0018】
有機粒子の疎水性指数は、37以上が好ましく、より好ましくは40以上であり、63以下が好ましく、より好ましくは60以下である。なお、有機粒子の疎水性指数とは、有機粒子の疎水性を示す指数であり、後述する方法によって測定できる。なお、有機粒子の疎水性指数は、有機粒子を構成する単量体の種類、組成比や、有機粒子の平均粒子径を制御することにより、適宜調整することができる。」
「【0020】
前記単量体組成物は、炭素数4~10の直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基および環状アルキル基よりなる群から選択される少なくとも1種を有する非架橋性(メタ)アクリル系単量体(以下、「特定有機基含有単量体」ということがある。)を含むことが好ましい。ここで、非架橋性とは、1分子中にビニル基などの重合性基を2個以上有さない単量体である。」
「【0023】
前記特定有機基含有単量体としては、例えば、炭素数4~10の直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基および環状アルキル基よりなる群から選択される少なくとも1種を有する(メタ)アクリル酸エステルを挙げることができる。具体的には、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル;シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、シクロへプチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、4-t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルなどが挙げられる。これらの特定有機基含有単量体は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの特定有機基含有単量体はいずれも本発明の自己凝集性の発現に効果を有するものであるが、後述する有機粒子の製造方法において、安定に有機粒子中に特定有機基含有単量体を組み込むことができ、且つ、分子間相互作用を一層有効に働かせる点で、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好適である。なお、本願において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸、メタクリル酸およびこれらの混合物を示し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレートおよびこれらの混合物を示すものとする。
【0024】
前記特定有機基含有単量体を用いる場合、単量体組成物に含まれる全単量体100質量%中の特定有機基含有単量体の含有率は、5質量%以上が好ましく、より好ましくは10質量%以上であり、90質量%以下が好ましく、より好ましくは85質量%以下である。特定有機基含有単量体の含有率を5質量%以上とすることにより、得られる有機粒子間の相互作用をより高めることができ、自己凝集性を向上させることができ、90質量%以下とすることにより、有機粒子を製造する際の重合反応中における粒子間の凝集が起こるのをより抑制することができる。」
「【0040】
前記単量体組成物は、架橋性ビニル系単量体を含むことも好ましい。前記架橋性ビニル系単量体とは、1分子中に2個以上のビニル基を有する架橋性単量体である。具体的には、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、デカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタコンタヘクタエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレンジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート;ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、および、これらの誘導体などの芳香族ジビニル化合物;N,N-ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルサルファイド、ジビニルスルホン酸などの架橋剤などが挙げられる。これらの架橋性ビニル系単量体は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、多官能(メタ)アクリレート、芳香族ジビニル化合物が好ましく、特にエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼンが好適である。
【0041】
架橋性単量体を用いる場合、単量体組成物に含まれる全単量体100質量%中の架橋性単量体の含有率は、5質量%以上が好ましく、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、65質量%以下が好ましく、より好ましくは55質量%以下、さらに好ましくは45質量%以下である。架橋性単量体の含有率を5質量%以上とすることにより、得られる有機粒子の耐溶剤性が向上し、溶媒などと混合し有機粒子含有組成物を調製した際に有機粒子が膨潤しにくくなり、当該有機粒子含有組成物中で有機粒子が凝集してしまうことが抑制され、65質量%以下とすることにより、得られる有機粒子の密度が高くなり過ぎず、有機粒子含有組成物中における有機粒子の沈降を抑制できる。なお、架橋性単量体としては、前記架橋性シラン系単量体または架橋性ビニル系単量体が好適である。」
「【0043】
単量体組成物に用いられる前記他の単量体としては、(メタ)アクリル酸;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレートなどの炭素数1~3または炭素数11以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル;シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロウンデシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレートなどの炭素数3または炭素数11以上の環状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、フェネチル(メタ)アクリレートなどの芳香族アクリル系単量体などが挙げられる。これらの他の単量体は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。」
「【0053】
粒子物性
本発明の有機粒子の形状は特に限定されるものではなく、例えば、球状、回転楕円体状、金平糖状、薄板状、針状、まゆ状のいずれでも良いが、球状が好ましく、特に真球状が好ましい。また、有機粒子の平均粒子径は0.5μm以上が好ましく、より好ましくは1.0μm以上、さらに好ましくは1.5μm以上であり、40μm以下が好ましく、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。有機粒子の平均粒子径を0.5μm以上とすることにより、有機粒子と溶媒などを混合して有機粒子含有組成物を調製する際に、有機粒子をより均一に分散させることができ、40μm以下とすることにより、調製後の有機粒子含有組成物中における有機粒子の沈降を抑制することができる。ここで、本発明における「平均粒子径」とは、個数平均粒子径を指すものとし、コールター原理を使用した精密粒度分布測定装置(例えば、商品名「コールターマルチサイザーIII型」、ベックマンコールター株式会社製)により測定される値とする。
【0054】
また本発明の有機粒子の粒子径における変動係数は、20%以下が好ましく、より好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下、最も好ましくは8%以下である。粒子径の変動係数が20%を超えると、有機粒子間の自己凝集性が低下するおそれがある。なお、粒子径の変動係数の増大により有機粒子の自己凝集性が低下する理由は必ずしも明らかではないが、個々の有機粒子のバラツキが大きいと、有機粒子の表面積にもバラツキが生じることとなるため、有機粒子間の相互作用が不均一となり、自己凝集性が低下すると考えられる。ここで、本発明において粒子径の変動係数とは、コールター原理を使用した精密粒度分布測定装置により測定される有機粒子の平均粒子径と、有機粒子の粒子径の標準偏差とを下記式に当てはめて求められる値である。
有機粒子の変動係数(%)=100×粒子径の標準偏差/平均粒子径」
「【0103】
(3)疎水性指数
底部に撹拌子を置いた200mlのガラスビーカーに、イオン交換水50mlを投入し、水面に有機粒子0.2gを浮かべた後、撹拌子を緩やかに回転させる。その後、ビーカー内の水中にビュレットの先端を沈め、撹拌子を緩やかに回転させながら、前記有機粒子添加から5分後に、ビュレットからメタノールを徐々に導入する。メタノールは1mlずつ導入し、1ml導入する度に3分撹拌を行い、また1mlずつ導入した。水面の有機粒子の全量が完全に水中に沈むまで(水面に浮いている有機粒子がなくなった状態)メタノールの導入を続け、水中に有機粒子が完全に沈んだときのメタノール導入量(ml)を測定し、下式に基づき疎水性指数を求めた。
疎水性指数(%)=100×メタノール導入量(ml)/(イオン交換水の量(ml)+メタノール導入量(ml))
なお、ビュレットからメタノールを添加する前に、水面に浮かべた有機粒子が水中に完全に沈んだ場合は、疎水性指数を0と判定した。」
「【0105】
製造例1
冷却管、温度計、滴下口を備えた四つ口フラスコに、イオン交換水526質量部と25モル%アンモニア水溶液1.6質量部、メタノール118質量部を入れ、撹拌しながらこの混合液に3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、KBM-503)20質量部を滴下口から添加して、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解、縮合を行ってシード粒子となるポリシロキサン粒子を調製した。反応開始から2時間後、得られたポリシロキサン粒子の乳濁液をサンプリングし、コールターマルチサイザーIII(ベックマンコールター社製)により粒子径を測定したところ、個数平均粒子径は1.2μmであった。
【0106】
続いて、乳化剤としてポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業社製、ハイテノールNF-08)2.0質量部をイオン交換水175質量部で溶解した溶液に、単量体としてのスチレン(St)165質量部、t-ブチルメタクリレート(t-BMA)65質量部、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)70質量部、重合開始剤としての2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製、V-65)2質量部を溶解した溶液を加えてTKホモミキサー(特殊機化工業社製)により6000rpmで5分間乳化分散させてモノマーエマルションを調製し、得られたモノマーエマルションをポリシロキサン粒子の乳濁液中に添加して、さらに撹拌を行った。モノマーエマルション添加から2時間後、反応液をサンプリングして顕微鏡で観察したところ、ポリシロキサン粒子が単量体組成物を吸収して肥大化していることが確認された。
【0107】
次いで、反応液を窒素雰囲気下で65℃に昇温させて、65℃で2時間保持し単量体組成物のラジカル重合を行った。反応液を冷却した後、定量濾紙(アドバンテック東洋社製、定量濾紙No.5C)を用いて濾過して、重合生成物のケーキを濾取した。次いで、得られたケーキをメタノールで洗浄し再度濾過を行い、濾取したケーキを100℃で6時間乾燥した。乾燥後の粒子を、粉砕機(日本ニューマチック工業社製、「実験室用超音速ジェット粉砕機 LJ Type」)にて、粉砕圧4kgf/cm2で粉砕し有機粒子1を得た。得られた有機粒子1の単量体組成および、各評価結果を表1に示した。」
「【0115】
製造例9
単量体を、スチレン(St)103質量部、ラウリルメタクリレート(LMA)175質量部、ジビニルベンゼン(新日鐵化学株式会社製、DVB960)22質量部に変更したこと以外は製造例1と同様にして有機粒子9を作製した。得られた有機粒子9の単量体組成および、各評価結果を表1に示した。
【0116】
製造例10
冷却管、温度計、滴下口を備えた四つ口フラスコに、イオン交換水90質量部、スチレン10質量部、n-デシルメルカプタン0.5質量部、NaCl0.1質量部を入れ、1時間窒素を流して反応器内の窒素置換を行った。その後反応液を70℃に昇温させて、続いて0.1質量部の過硫酸カリウムを溶解させたイオン交換水溶液を、注射器を用いて反応液に注ぎ込んだ。その後、70℃で24時間反応を行った。反応終了後、得られた乳濁液を固液分離し、得られたケーキをイオン交換水、メタノールで洗浄して、シード粒子となるポリスチレン粒子を調製した。得られたポリスチレン粒子を、コールターマルチサイザーIII(ベックマンコールター社製)により測定したところ、平均粒子径は1.2μm、粒子の変動係数は8.9%であった。 」
「【0123】
製造例14
単量体を、スチレン(St)165質量部、ライトエステルL-8(共栄社化学社製、アルキル(炭素数12~炭素数15)メタクリレート)(L-8)65質量部、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)70質量部に変更したこと以外は製造例1と同様にして有機粒子14を作製した。得られた有機粒子14の単量体組成および、各評価結果を表1に示した。
【0124】
製造例15
単量体を、スチレン(St)165質量部、ライトエステルIM-A(共栄社化学社製、イソミリスチルアクリレート(炭素数14))(IMA)65質量部、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)70質量部に変更したこと以外は製造例1と同様にして有機粒子15を作製した。得られた有機粒子15の単量体組成および、各評価結果を表1に示した。」
「【0126】
製造例17
単量体を、スチレン(St)3.8質量部、ライトエステルL-8(共栄化学社製)8.86質量部、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)1.41質量部に変更したこと以外は製造例9と同様にして有機粒子17を作製した。得られた有機粒子17の単量体組成および、各評価結果を表1に示した。
【0127】
[図:0001431094000017.jpg]
【0128】
有機粒子1~11は、いずれも単量体として特定有機基含有単量体(炭素数4~10の直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基または環状アルキル基を有する非架橋性(メタ)アクリル系単量体)を含有するものである。これらの有機粒子1~11は、疎水性指数が37~61であった。有機粒子12,13,16は、単量体として、炭素数4未満の直鎖状アルキル基を有する非架橋性メタクリル酸単量体を含有するものであるが、いずれも疎水性指数が22~30と低い値であった。有機粒子14,15,17は、単量体として炭素数10超の直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基または環状アルキル基を有する非架橋性(メタ)アクリル系単量体を含有するものであるが、いずれも疎水性指数が70~74と高い値であった。」
「【0135】
疎水性指数が65超である有機粒子14,15,17を用いた有機粒子含有組成物は、溶媒としてトルエン、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコールのいずれを用いた場合でも、組成物中での有機粒子の分散安定性が悪かった。また、これらの有機粒子14,15,17を用いた有機粒子含有組成物は、さらにバインダーとしてトリメチロールプロパントリアクリレートを含有させた場合でも、組成物中の有機粒子の分散安定性が悪かった。なお、これらの有機粒子14,15,17を用いた有機粒子含有組成物は、いずれも溶媒乾燥後の有機粒子の凝集性が良好であった。」
イ 甲1に記載された発明
甲1の【0123】製造例14、【0124】製造例15、【0126】製造例17を中心に整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。
<甲1発明>
「平均粒子径3.3~3.5μm、変動係数5.9%~7.8%の有機粒子であって、
3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解、縮合により個数平均粒子径1.2μmのポリシロキサン粒子を調製してシード粒子とするか、
平均粒径1.2μmのポリスチレン粒子を調製してシード粒子として、
ポリシロキサン粒子又はポリスチレン粒子の乳濁液中にモノマーエマルションを添加し、ポリシロキサン粒子又はポリスチレン粒子にモノマーエマルションを吸収して肥大化させ、次いで、モノマーエマルションのラジカル重合を行い、反応液を冷却した後、濾過して、重合生成物のケーキを濾取し、得られたケーキをメタノールで洗浄し濾過を行い、濾取したケーキを100℃で6時間乾燥し、乾燥後の粒子を、粉砕機にて、粉砕圧4kgf/cm2で粉砕した有機粒子。
モノマーエマルション組成は次のとおり:
・スチレン(St)165質量部、ライトエステルL-8(共栄社化学社製、アルキル(炭素数12~炭素数15)メタクリレート)65質量部、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)70質量部
・スチレン(St)165質量部、ライトエステルIM-A(共栄社化学社製、イソミリスチルアクリレート(炭素数14)65質量部、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)70質量部
・スチレン(St)3.8質量部、ライトエステルL-8(共栄社化学社製、アルキル(炭素数12~炭素数15)メタクリレート)8.86質量部、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)1.41質量部」
(2)検討
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明における「平均粒子径3.3~3.5μm、変動係数5.9%~7.8%」は、本件特許発明1における「平均粒径1μm以上50μm以下、かつ、粒径分散度(CV値)が20%以下」に相当する。
また、甲1発明における「エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)」を含む「モノマーエマルション」を、「ポリシロキサン粒子又はポリスチレン粒子」からなる「シード粒子」の存在下で「ラジカル重合を行い」「得られたケーキを」「濾過」し「濾取したケーキを」「乾燥し」「乾燥後の粒子を、粉砕機にて、」「粉砕した有機粒子」は、本件特許発明1における「球状架橋粒子」に相当する。
甲1発明における「モノマーエマルション組成」の「ライトエステルL-8(共栄社化学社製、アルキル(炭素数12~炭素数15)メタクリレート)」、「ライトエステルIM-A(共栄社化学社製、イソミリスチルアクリレート(炭素数14)」は、本件特許発明1における「疎水性単量体」に相当し、かつ、「前記疎水性単量体が非架橋性であって、」「前記疎水性単量体は、式:CH2=C(-R12)-C(=O)-Y11-(R11)k
[式中、R11は脂肪族炭化水素基であり、R12は水素原子、一価の有機基又はハロゲン原子であり、Y11は、直接結合、2~4価の炭素数1の炭化水素基、-C6H4-、-O-、-C(=O)-、-S(=O)2-及び-NR’-(R’は、H又は炭素数1~4の炭化水素基)から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される2~4価の基であり、kは1~3である。]で表される疎水性単量体(1)」に相当する。
そして、甲1発明における「モノマーエマルション組成」の「エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)」は、本件特許発明1における「少なくとも2つの重合性二重結合を有する架橋性単量体」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲1発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「平均粒径1μm以上50μm以下、かつ、粒径分散度(CV値)が20%以下の球状架橋粒子であって、
疎水性単量体から誘導された繰り返し単位を含み、
前記疎水性単量体が非架橋性であって、
前記疎水性単量体は、
式:CH2=C(-R12)-C(=O)-Y11-(R11)k
[式中、
R11は脂肪族炭化水素基であり、
R12は水素原子、一価の有機基又はハロゲン原子であり、
Y11は、直接結合、2~4価の炭素数1の炭化水素基、-C6H4-、-O-、-C(=O)-、-S(=O)2-及び-NR’-(R’は、H又は炭素数1~4の炭化水素基)から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される2~4価の基であり、
kは1~3である。]
で表される疎水性単量体(1)であり、
少なくとも2つの重合性二重結合を有する架橋性単量体から誘導された繰り返し単位によって架橋がなされている、
球状架橋粒子。」
<相違点1-1>
本件特許発明1は、疎水性単量体の「ホモポリマーの水接触角が90°以上」であるとの特定を有するのに対し、甲1発明はそのような特定がない点。
<相違点1-2>
本件特許発明1は、R11が「炭素数16~40の」脂肪族炭化水素基であるとの特定を有するのに対し、甲1発明は、ライトエステルL-8(共栄社化学社製)で「アルキル(炭素数12~15)」、又は、イソミリスチルアクリレートで「(炭素数14)」である点
そのような特定がない点。
<相違点1-3>
本件特許発明1は、架橋性単量体が、
[図:0001431094000018.jpg]
又は
[図:0001431094000019.jpg]
[式中、R61は、直接結合、あるいは炭素数1~20の炭化水素基、-(CH2CH2O)r-(rは1~10の数)、-C6H4-、-O-、又は-NR’-(R’は、H又は炭素数1~4の炭化水素基)から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される2~6価の基であり、
R62は、水素原子、一価の有機基、又はハロゲン原子であり、
pは、2~6であり、
qは1~5である。]
で表される単量体、またはジビニルベンゼンである」との特定を有するのに対し、甲1発明は、「エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)」である点。
事案に鑑み、相違点1-2について検討する。
甲1発明における疎水性単量体は、「ライトエステルL-8(共栄社化学社製、アルキル(炭素数12~炭素数15)メタクリレート)」、「ライトエステルIM-A(共栄社化学社製、イソミリスチルアクリレート(炭素数14)」であるから、即ち、炭素数12~15のメタクリレート、あるいは、炭素数14のイソミリスチルアクリレートであって、R11の脂肪族炭化水素の炭素数は12~15、あるいは、14である。したがって、相違点1-2は実質的な相違点である。よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1発明ではない。
そして、甲1には、甲1発明の「有機粒子14,15,17は、単量体として炭素数10超の直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基または環状アルキル基を有する非架橋性(メタ)アクリル系単量体を含有するものであるが、いずれも疎水性指数が70~74と高い値」であり(甲1【0128】)、「疎水性指数が65超である有機粒子14,15,17を用いた有機粒子含有組成物は、溶媒としてトルエン、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコールのいずれを用いた場合でも、組成物中での有機粒子の分散安定性が悪」い(甲1【0135】)と記載されており、甲1(請求項1)の記載からも明らかなとおり、甲1において、比較例と位置づけられているものであるところ、甲1及び他の全ての証拠をみても、甲1発明における疎水性単量体のR11の脂肪族炭化水素の炭素数を、更に長鎖である炭素数16~40とする動機となる記載はない。
したがって、甲1発明において、R11の脂肪族炭化水素の炭素数を16~40にすることを当業者が容易になし得たとはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
イ 本件特許発明2ないし7について
本件特許発明2ないし7は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するから、本件特許発明1と同様に判断される。
よって、本件特許発明2ないし7は甲1発明ではなく、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)取消理由2のまとめ
以上のとおり、本件特許発明1ないし7は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当しない。
よって、取消理由2の理由によっては、本件特許の請求項1ないし7に係る特許を取り消すことはできない。
2 取消理由3(甲5に基づく進歩性)について
(1)甲5の記載事項等
ア 甲5の記載事項
甲5には、架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子について、次の事項が記載されている。
「【請求項1】
(メタ)アクリル酸エステル系単量体と架橋剤とを含む重合性単量体組成物を重合することにより得られる樹脂粒子であり、前記樹脂粒子が0.90~1.04g/cm3の真密度を有することを特徴とする架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル酸エステル系単量体が、炭素数が8~20の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する請求項1に記載の架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子。
【請求項3】
前記架橋剤が、ビニル基を2個以上有する多官能性ビニル系単量体であり、前記重合性単量体組成物100重量%中1~30重量%混合される請求項1又は2に記載の架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子。」
「【0013】
架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子の平均粒子径は、0.2~50μmが好ましい。より好ましくは、1~30μmである。平均粒子径が0.2μm未満では、微粉体であるためにハンドリング性が悪化する場合がある。一方、50μmを超えると、分散媒との比重差が小さい場合でも粒子径が大きいため沈降速度が速くなり分散媒中で直ぐに沈降してしまう場合がある。
【0014】
架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子は、単分散性に優れていることが好ましい。ここで言う単分散性とは、粒子の大きさが略均一であって凝集せずに散らばりやすい状態のことを指す。単分散性の1つの指標となる粒度分布において、変動係数(CV値)が40%以下であることが好ましい。より好ましくは、30%以下である。CV値が40%を超えると、各樹脂粒子の大きさが異なることにより、分散媒中における各樹脂粒子の沈降度合いにバラツキが生じる場合がある。なお、CV値測定方法については、実施例において述べる。
【0015】
架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子は、(メタ)アクリル酸エステル系単量体を少なくとも一種類以上含むビニル系重合性単量体に架橋剤が混合された重合性単量体組成物を重合することによって得られる。
(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体としては、重合可能なものであれば特に限定されるものではないが、炭素数が8~20である直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体であれば、より好ましい。このような単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸i-オクチル、(メタ)アクリル酸i-ノニル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリルが挙げられる。これらの単量体から1種のみ使用しても又は2種以上を併用してもよい。」
「【0019】
架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子を製造する際に、耐溶剤性や耐熱性を付与するために用いられる架橋剤としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、これらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、アリルメタクリレート、t-ブチルアミノエチルメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート等のビニル基を2個以上有する化合物が挙げられる。
【0020】
架橋剤の添加量は、ビニル系重合性単量体及び架橋剤を混合した重合性単量体組成物100重量%中、1~30重量%が好ましい。より好ましくは、5~20重量%である。架橋剤の添加量が1重量%未満では、樹脂の架橋度が低く、また耐溶剤が低くなるため、得られる樹脂粒子が膨潤することや一部溶解することがあり、また樹脂粒子同士が合着することがある。また、架橋剤の添加量が30重量%を超えると、架橋剤により樹脂密度が高くなり、得られる樹脂粒子の真密度が大きくなることにより、分散媒中での樹脂粒子の沈降速度が速くなり、沈降凝集等を生ずる場合がある。
【0021】
架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子を得るための重合性単量体組成物を重合する方法としては、公知の重合方法、例えば懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法等を用いることができる。以下懸濁重合法による(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子の製造方法の一例について説明するが、本発明は、この製造方法のみに限定されるものではない。」
「【0039】
(実施例1)
アクリル酸イソステアリル(大阪有機化学社製)90%、エチレングリコールジメタクリレート(商品名:ライトエステルEG 共栄社化学社製)10%を用いて重合性単量体組成物を調製した。
この重合性単量体組成物100重量部に、ABNV(日本ヒドラジン工業社製)0.5部及び過酸化ベンゾイル(商品名ナイパーBW 日油社製)0.3部を添加し溶解させた。次に、あらかじめ調整された0.03%のラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウムと2.5%のピロリン酸マグネシウムを分散した水500重量部に投入し、T.K.ホモミキサー(特殊機化工業社製)を用い液滴径が8μm程度になるように調製した。
この懸濁液を窒素雰囲気下で、全体を均一に撹拌しながら昇温して、60℃で5時間重合を行った。更に、この懸濁液を105℃に昇温して、1時間重合を継続した。次いで常温まで冷却し、塩酸を添加して懸濁安定剤としてのピロリン酸マグネシウムを溶解させた。次いで、固液分離、水洗浄を繰り返し行い、70℃の熱風乾燥機で24時間乾燥し、樹脂粒子を得た。
【0040】
得られた樹脂粒子は、平均粒子径が8.1μm、CV値が29.2%、真密度が0.98g/cm3であった。また、有機分散媒系における沈降性評価においては、分散安定性に優れ、粒子の沈殿がほとんどなく、また無色透明な上澄み部分が10%未満(◎)であった。」
「【0043】(実施例4)
重合性単量体組成物をアクリル酸イソステアリル80%、メタクリル酸2-ヒドロキシブチル(商品名:ライトエステルHOB 共栄社化学社製)15%、エチレングリコールジメタクリレート5%に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作で樹脂粒子を得た。
得られた樹脂粒子は、平均粒子径が7.5μm、CV値が24.7%、真密度が1.01g/cm3であった。また、有機分散媒系及び水系分散媒系における沈降性評価においては、分散安定性に優れ、粒子の沈殿が若干見られているものの、無色透明な上澄み部分が40%未満(○)であった。
【0044】(実施例5)
重合性単量体組成物をアクリル酸イソステアリル70%、エチレングリコールジメタクリレート30%に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作で樹脂粒子を得た。
得られた樹脂粒子は、平均粒子径が7.6μm、CV値が27.6%、真密度が1.03g/cm3であった。また、有機分散媒系における沈降性評価においては、分散安定性に優れ、粒子の沈殿が若干見られているものの、無色透明な上澄み部分が40%未満(○)であった。
【0045】(実施例6)
重合性単量体組成物をアクリル酸イソステアリル60%、メタクリル酸メチル25%、スチレン10%、エチレングリコールジメタクリレート5%に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作で樹脂粒子を得た。
得られた樹脂粒子は、平均粒子径が7.8μm、CV値が28.1%、真密度が1.04g/cm3であった。また、有機分散媒系における沈降性評価においては、分散安定性に優れ、粒子の沈殿が若干見られているものの、無色透明な上澄み部分が40%未満(○)であった。」
「【0052】
【表1】
[図:0001431094000020.jpg]
ISTA:アクリル酸イソステアリル
LA:アクリル酸ラウリル
IOAA:アクリル酸イソオクチル
BMA:メタクリル酸n-ブチル
HBMA:メタクリル酸2-ヒドロキシブチル
MMA:メタクリル酸メチル
EGDMA:エチレングリコールジメタクリレート
St:スチレン」
イ 甲5に記載された発明
甲5の【0052】【表1】実施例1、4~6を中心に整理すると、甲5には次の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されていると認める。
<甲5発明>
「アクリル酸イソステアリル、エチレングリコールジメタクリレートを含む重合性単量体組成物を調製し、この重合性単量体組成物により懸濁液を調製し、懸濁液を重合し、固液分離、水洗浄、熱風乾燥により得られた、平均粒子径が7.5~8.1μm、CV値が24.7~29.2%の樹脂粒子。
重合性単量体組成物は、表1の実施例1、4、5、6のとおり
[図:0001431094000021.jpg]
ISTA:アクリル酸イソステアリル
LA:アクリル酸ラウリル
IOAA:アクリル酸イソオクチル
BMA:メタクリル酸n-ブチル
HBMA:メタクリル酸2-ヒドロキシブチル
MMA:メタクリル酸メチル
EGDMA:エチレングリコールジメタクリレート
St:スチレン」
(2)検討
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲5発明とを対比する。
甲5発明における「平均粒子径が7.5~8.1μm」「の樹脂粒子」は、本件特許発明1における「平均粒径1μm以上50μm以下」「の球状」「粒子」に相当する。
甲5発明における「アクリル酸イソステアリル」は、イソステアリル基、すなわち、分岐した炭素数18の脂肪族炭化水素基を有するアクリル酸エステルであるから、本件特許発明1における「疎水性単量体」であって、「疎水性単量体が非架橋性であって」「前記疎水性単量体は、
式:CH2=C(-R12)-C(=O)-Y11-(R11)k
[式中、
R11は炭素数16~40の脂肪族炭化水素基であり、
R12は水素原子、一価の有機基又はハロゲン原子であり、
Y11は、直接結合、2~4価の炭素数1の炭化水素基、-C6H4-、-O-、-C(=O)-、-S(=O)2-及び-NR’-(R’は、H又は炭素数1~4の炭化水素基)から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される2~4価の基であり、
kは1~3である。]
で表される疎水性単量体(1)」に相当する。
甲5発明における「エチレングリコールジメタクリレート」は、本件特許発明1における「少なくとも2つの重合性二重結合を有する架橋性単量体」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲5発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
平均粒径1μm以上50μm以下の球状架橋粒子であって、
疎水性単量体から誘導された繰り返し単位を含み、
前記疎水性単量体が非架橋性であって、
前記疎水性単量体は、
式:CH2=C(-R12)-C(=O)-Y11-(R11)k
[式中、
R11は炭素数16~40の脂肪族炭化水素基であり、
R12は水素原子、一価の有機基又はハロゲン原子であり、
Y11は、直接結合、2~4価の炭素数1の炭化水素基、-C6H4-、-O-、-C(=O)-、-S(=O)2-及び-NR’-(R’は、H又は炭素数1~4の炭化水素基)から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される2~4価の基であり、
kは1~3である。]
で表される疎水性単量体(1)であり、
少なくとも2つの重合性二重結合を有する架橋性単量体から誘導された繰り返し単位によって架橋がなされている、球状架橋粒子。」
<相違点5-1>
本件特許発明1は、「粒径分散度(CV値)が20%以下」との特定を有するのに対し、甲5発明は、CV値が24.7~29.2%である点。
<相違点5-2>
本件特許発明1は、疎水性単量体の「ホモポリマーの水接触角が90°以上」との特定を有するのに対し、甲5発明は、そのような特定がない点。
<相違点5-3>
本件特許発明1は、架橋性単量体が、
[図:0001431094000022.jpg]
又は
[図:0001431094000023.jpg]
[式中、R61は、直接結合、あるいは炭素数1~20の炭化水素基、-(CH2CH2O)r-(rは1~10の数)、-C6H4-、-O-、又は-NR’-(R’は、H又は炭素数1~4の炭化水素基)から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される2~6価の基であり、
R62は、水素原子、一価の有機基、又はハロゲン原子であり、
pは、2~6であり、
qは1~5である。]
で表される単量体、またはジビニルベンゼンである」との特定を有するのに対して、甲5発明は、エチレングリコールジメタクリレートである点。
相違点5-1について検討する。
甲5には「単分散の1つの指標である粒度分布において、変動係数(CV値)が40%以下であることが好ましい。より好ましくは30%以下である。」(甲5【0014】)と記載され、CV値として24.7~34.7%(甲5【0052】【表1】)で良好な沈降性評価が得られたことが記載されているから、甲5発明における粒径分散度(CV値)を、さらに20%以下にまで低減させる動機となる記載及びCV値を20%以下に下げる具体的な製造例等の記載は、甲5にはなく、また、他の全ての証拠にもない。
したがって、甲5発明において、CV値を20%以下にすることは、当業者が容易になし得たとはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲5発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件特許発明2ないし7について
本件特許発明2ないし7は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するから、本件特許発明1と同様に判断される。
よって、本件特許発明2ないし7は、甲5発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)取消理由3についてのまとめ
以上のとおり、本件特許発明1ないし7は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当しない。
よって、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、取消理由3によって取り消すことはできない。
第7 取消理由(決定の予告)に採用しなかった特許異議申立書に記載した特許異議申立理由について
取消理由(決定の予告)に採用しなかった特許異議申立書に記載した特許異議申立理由は、
・申立理由2(甲2に基づく新規性・進歩性)
・申立理由3(甲3に基づく新規性・進歩性)
・申立理由4(甲4に基づく新規性・進歩性)
・申立理由5(甲5に基づく新規性)
・申立理由6(甲6に基づく新規性・進歩性)
・申立理由7(明確性要件)
・申立理由8(サポート要件)
・申立理由9(実施可能要件)である。
以下、順に検討する。
1 申立理由2(甲2に基づく新規性・進歩性)について
(1)甲2の記載事項等
ア 甲2に記載された事項
甲2には、重合体粒子およびそれを用いた重合体粒子含有組成物について次の事項が記載されている。
「【請求項1】
単量体組成物を重合して得られる重合体粒子であって、
前記単量体組成物が(A)架橋性単量体及び(B)炭素数4~12のアルキル基を有する非架橋性(メタ)アクリル系単量体を含有し、
前記単量体組成物が含有する全単量体中、(A)架橋性単量体の含有率が25質量%以上であり、(B)炭素数4~12のアルキル基を有する非架橋性(メタ)アクリル系単量体の含有率が21質量%以上66質量%以下であることを特徴とする重合体粒子。
【請求項2】
前記単量体組成物中の前記(A)架橋性単量体と前記(B)非架橋性(メタ)アクリル系単量体との質量比((A)/(B))が0.5~3である請求項1に記載の重合体粒子。
【請求項3】
前記単量体組成物がさらに(C)スチレン系単量体を含有し、前記単量体組成物が含有する全単量体中、(C)スチレン系単量体の含有率が25質量%以下である請求項1または2に記載の重合体粒子。
【請求項4】
前記(B)非架橋性(メタ)アクリル系単量体が有するアルキル基が、炭素数4もしくは5の分岐状アルキル基、又は、炭素数6~12のアルキル基である請求項1~3のいずれか一項に記載の重合体粒子。
【請求項5】
平均粒子径が1μm~16μmである請求項1~4のいずれか一項に記載の重合体粒子。」
「【0015】
架橋性単量体
前記単量体組成物は、全単量体中、(A)架橋性単量体を25質量%以上含有する。前記(A)架橋性単量体の含有率が25質量%未満では、得られる重合体粒子間の相互作用が小さく、自己凝集性が発現しない。
また、前記(A)架橋性単量体の含有率は30質量%以上が好ましく、より好ましくは40質量%以上であり、65質量%以下が好ましく、より好ましくは55質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。前記(A)架橋性単量体の含有率が30質量%以上であれば、得られる重合体粒子間の相互作用をより高めることができ、自己凝集性を向上させることができ、65質量%以下であれば、得られる重合体粒子の密度が高くなり過ぎず、重合体粒子含有組成物中における重合体粒子の沈降を抑制できる。前記(A)架橋性単量体としては、例えば、架橋性ビニル系単量体、架橋性シラン系単量体が挙げられる。
【0016】
前記架橋性ビニル系単量体とは、1分子中に2個以上のビニル基を有する架橋性単量体である。具体的には、アリル(メタ)アクリレートなどのアリル(メタ)アクリレート類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレンジ(メタ)アクリレートなどのアルカンジオールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、デカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタコンタヘクタエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの3官能以上の多官能(メタ)アクリレート類;ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、および、これらの誘導体等の架橋性スチレン系単量体;N,N-ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルサルファイド、ジビニルスルホン酸等の架橋剤;ポリブタジエン、ポリイソプレン不飽和ポリエステル等が挙げられる。これらの架橋性単量体は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、1分子中に2以上のビニル基を有する架橋性単量体が好ましく、より好ましくは1分子中に2以上の(メタ)アクリロイル基を有する架橋性単量体である。
【0017】
前記架橋性ビニル系単量体を用いる場合には、架橋性ビニル系単量体中、1分子中に2以上の(メタ)アクリロイル基を有する架橋性単量体の割合を80質量%以上とすることが好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。また、架橋性ビニル系単量体として、1分子中に2以上の(メタ)アクリロイル基を有する架橋性単量体のみを用いることが特に好ましい。一方、前記架橋性ビニル系単量体を用いる場合、ジビニルベンゼン等の架橋性スチレン系単量体の使用量は極力少なくすることが好ましく、架橋性スチレン系単量体は用いないことが好ましい。架橋性スチレン系単量体の使用量を少なくすることにより、得られる重合体粒子の耐熱性、耐光性がより向上する。」
「【0034】
特定有機基含有単量体
前記単量体組成物は、(B)炭素数4~12のアルキル基を有する非架橋性(メタ)アクリル系単量体(以下、「(B)特定有機基含有単量体」ということがある。)を含む。炭素数4~12のアルキル基としては、炭素数4~12の直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基および環状アルキル基よりなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。ここで、非架橋性とは、1分子中にビニル基などの重合性基を1個のみ有する単量体である。
【0035】
前記(B)特定有機基含有単量体の含有量は、全単量体中、21質量%以上66質量%以下である。前記特定有機基含有単量体の含有量が21質量%未満では、得られる重合体粒子間の相互作用を小さく、自己凝集性が発現せず、一方、66質量%を超えると、重合体粒子間の相互作用が大きくなりすぎ、自己凝集後の重合体粒子の凝集状態が不均一となってしまう。すなわち、重合体粒子の凝集からなる2次粒子が大きくなり、海島構造に例えると構造が疎かになるため、空隙部分の存在により光抜けを起こし光の拡散・散乱特性が低下したものとなる。」
「【0039】
前記特定有機基含有単量体としては、例えば、炭素数4~12の直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基および環状アルキル基よりなる群から選択される少なくとも1種を有する(メタ)アクリル酸エステルを挙げることができる。具体的には、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル;シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、シクロへプチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、4-t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルなどが挙げられる。これらの特定有機基含有単量体は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの特定有機基含有単量体はいずれも本発明の自己凝集性の発現に効果を有するものであるが、後述する重合体粒子の製造方法において、安定に重合体粒子中に特定有機基含有単量体を組み込むことができ、且つ、分子間相互作用を一層有効に働かせる点で、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好適である。
【0040】
前記単量体組成物中、(A)架橋性単量体と(B)特定有機基含有単量体との質量比((A)/(B))は、0.5以上が好ましく、3以下が好ましく、より好ましくは2.6以下、さらに好ましくは2以下である。前記質量比((A)/(B))が0.5以上であれば、自己凝集性が大きくなり過ぎず、自己凝集後の重合体粒子の凝集状態がより均一となり、3以下であれば、得られる重合体粒子間の相互作用をより高めることができ、自己凝集性をより向上させることができる。」
「【0045】
単量体組成物に用いられる前記他の単量体としては、(メタ)アクリル酸;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレートなどの炭素数1~3または炭素数13以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル;シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロトリデシル(メタ)アクリレート、シクロテトラデシル(メタ)アクリレートなどの炭素数3または炭素数13以上の環状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、フェネチル(メタ)アクリレートなどの芳香族アクリル系単量体などが挙げられる。」
「【0050】
本発明の重合体粒子の形状は特に限定されるものではなく、例えば、球状、回転楕円体状、金平糖状、薄板状、針状、まゆ状のいずれでも良いが、球状が好ましく、特に真球状が好ましい。また、重合体粒子の平均粒子径は1μm以上が好ましく、より好ましくは2μm以上、さらに好ましくは3μm以上であり、16μm以下が好ましく、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは7μm以下である。
重合体粒子の平均粒子径が1μm以上であれば、重合体粒子と有機溶媒などを混合して重合体粒子含有組成物を調製する際に、重合体粒子をより均一に分散させることができ、16μm以下であれば、重合体粒子含有組成物中での重合体粒子の分散安定性が優れたものとなる。その結果、長時間保存後であっても、該組成物を塗布したときの溶剤揮散時の凝集体形成のバラツキが少ない膜が得られやすい。ここで、本発明における「平均粒子径」とは、個数平均粒子径を指すものとし、コールター原理を使用した精密粒度分布測定装置(例えば、商品名「コールターマルチサイザーIII型」、ベックマンコールター株式会社製)により測定される値とする。
【0051】
また本発明の重合体粒子の粒子径における変動係数は、20%以下が好ましく、より好ましくは15%以下、さらに好ましくは12%以下、最も好ましくは10%以下である。粒子径の変動係数が20%を超えると、重合体粒子間の自己凝集性が低下するおそれがある。なお、粒子径の変動係数の増大により重合体粒子の自己凝集性が低下する理由は必ずしも明らかではないが、個々の重合体粒子のバラツキが大きいと、重合体粒子の表面積にもバラツキが生じることとなるため、重合体粒子間の相互作用が不均一となり、自己凝集性が低下すると考えられる。ここで、本発明において粒子径の変動係数とは、コールター原理を使用した精密粒度分布測定装置により測定される重合体粒子の平均粒子径と、重合体粒子の粒子径の標準偏差とを下記式に当てはめて求められる値である。
重合体粒子の変動係数(%)=100×粒子径の標準偏差/平均粒子径」
「【0072】
2.重合体粒子
製造例1
冷却管、温度計、滴下口を備えた四つ口フラスコに、イオン交換水526質量部と25モル%アンモニア水溶液1.6質量部、メタノール118質量部を入れ、撹拌しながらこの混合液に3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、KBM-503)20質量部を滴下口から添加して、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解、縮合を行ってシード粒子となるメタクリロイル基を有するポリシロキサン粒子(重合性ポリシロキサン粒子)を調製した。反応開始から2時間後、得られた重合性ポリシロキサン粒子の乳濁液をサンプリングし、粒子径を測定したところ、個数平均粒子径は1.2μmであった。
【0073】
続いて、乳化剤としてポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業社製、ハイテノールNF-08)の20質量%水溶液2.0質量部をイオン交換水175質量部に溶解した溶液に、単量体としてのスチレン(St)20質量部、t-ブチルメタクリレート(t-BMA)92質量部、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)88質量部、重合開始剤としての2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製、V-65)2質量部を溶解した溶液を加え、乳化分散させてモノマーエマルションを調製した。
【0074】
得られたモノマーエマルションを重合性ポリシロキサン粒子の乳濁液中に添加して、さらに撹拌を行った。モノマーエマルション添加から2時間後、反応液をサンプリングして顕微鏡で観察したところ、重合性ポリシロキサン粒子が単量体組成物を吸収して肥大化していることが確認された。
【0075】
次いで、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩の20%水溶液8質量部、イオン交換水20.6質量部を加え、反応液を窒素雰囲気下で65℃に昇温させて、65℃で2時間保持し単量体組成物のラジカル重合を行った。ラジカル重合後の反応液を固液分離し、得られたケーキをイオン交換水、メタノールで洗浄した後、100℃で6時間乾燥させて重合体粒子No.1を得た。」
「【0083】
製造例9
単量体成分について、スチレン(St)30質量部、ラウリルメタクリレート(LMA)70質量部、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)100質量部に変更したこと以外は製造例1と同様にして重合体粒子No.9を作製した。」
「【0095】
[図:0001431094000024.jpg]
」
イ 甲2に記載された発明
甲2の【0083】、【0095】【表2】製造例9を中心に整理すると、甲2には次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認める。
<甲2発明>
「平均粒子径3.5μm、変動係数10.0%の有機粒子であって、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解、縮合により個数平均粒子径1.2μmの重合性ポリシロキサン粒子を調製してシード粒子とし、重合性ポリシロキサン粒子の乳濁液中にモノマーエマルションを添加し、重合性ポリシロキサン粒子にモノマーエマルションを吸収させて肥大化させ、次いで、モノマーエマルションのラジカル重合を行い、ラジカル重合後の反応液を固液分離し、得られたケーキを洗浄した後、100℃で6時間乾燥させた有機粒子。
モノマーエマルションの単量体組成は次のとおり:スチレン(St)30質量部、ラウリルメタクリレート(LMA)70質量部、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)100質量部」
(2)検討
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明における「平均粒子径3.5μm、変動係数10.0%」は、本件特許発明1における「平均粒子径1μm以上50μm以下、かつ、粒径分散度(CV値)が20%以下」に相当する。
甲2発明における「エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)」を含む「モノマーエマルション」を「重合性ポリシロキサン粒子を調製し」た「シード粒子」の存在下で「ラジカル重合を行い」「ラジカル重合後の反応液を固液分離し、得られたケーキを洗浄した後、100℃で6時間乾燥させた有機粒子」は、本件特許発明1における「球状架橋粒子」に相当する。
甲2発明における「モノマーエマルションの単量体組成」の「ラウリルメタクリレート(LMA)」は、本件特許発明1における「疎水性単量体」に相当し、かつ、「前記疎水性単量体が非架橋性であって、」「「前記疎水性単量体は、式:CH2=C(-R12)-C(=O)-Y11-(R11)k
[式中、R11は脂肪族炭化水素基であり、R12は水素原子、一価の有機基又はハロゲン原子であり、Y11は、直接結合、2~4価の炭素数1の炭化水素基、-C6H4-、-O-、-C(=O)-、-S(=O)2-及び-NR’-(R’は、H又は炭素数1~4の炭化水素基)から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される2~4価の基であり、kは1~3である。]で表される疎水性単量体(1)」に相当する。
甲2発明における「モノマーエマルション組成」の「エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)」は、本件特許発明1における「少なくとも2つの重合性二重結合を有する架橋性単量体」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲2発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「平均粒径1μm以上50μm以下、かつ、粒径分散度(CV値)が20%以下の球状架橋粒子であって、
疎水性単量体から誘導された繰り返し単位を含み、
前記疎水性単量体が非架橋性であって、
前記疎水性単量体は、
式:CH2=C(-R12)-C(=O)-Y11-(R11)k
[式中、
R11は脂肪族炭化水素基であり、
R12は水素原子、一価の有機基又はハロゲン原子であり、
Y11は、直接結合、2~4価の炭素数1の炭化水素基、-C6H4-、-O-、-C(=O)-、-S(=O)2-及び-NR’-(R’は、H又は炭素数1~4の炭化水素基)から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される2~4価の基であり、
kは1~3である。]
で表される疎水性単量体(1)であり、
少なくとも2つの重合性二重結合を有する架橋性単量体から誘導された繰り返し単位によって架橋がなされている、球状架橋粒子。」
<相違点2-1>
本件特許発明1は、疎水性単量体の「ホモポリマーの水接触角が90°以上」であるとの特定を有するのに対して、甲2発明は、そのような特定がない点。
<相違点2-2>
本件特許発明1は、R11が「炭素数16~40の」脂肪族炭化水素基であるとの特定を有するのに対して、甲2発明は、ラウリルメタクリレート(LMA)であるから、炭素数は12である点。
点。
<相違点2-3>
本件特許発明1は、架橋性単量体が、
[図:0001431094000025.jpg]
又は
[図:0001431094000026.jpg]
[式中、R61は、直接結合、あるいは炭素数1~20の炭化水素基、-(CH2CH2O)r-(rは1~10の数)、-C6H4-、-O-、又は-NR’-(R’は、H又は炭素数1~4の炭化水素基)から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される2~6価の基であり、
R62は、水素原子、一価の有機基、又はハロゲン原子であり、
pは、2~6であり、
qは1~5である。]
で表される単量体、またはジビニルベンゼンである」との特定を有するのに対して、甲2発明は、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)である点。
事案に鑑み、相違点2-2について検討する。
甲2発明における疎水性単量体は、ラウリルメタクリレート(LMA)」であり、ラウリル基、すなわち、炭素数12の脂肪族炭化水素基を有するメタクリル酸エステルであるから、R11の脂肪族炭化水素の炭素数は12である。したがって、相違点2-2は実質的な相違点である。よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲2発明ではない。
そして、甲2には、「前記単量体組成物は、」「(B)炭素数4~12のアルキル基を有する非架橋性(メタ)アクリル系単量体」「を含む。」(甲2【0034】)と記載されているが、脂肪族炭化水素の炭素数を「16~40」とする動機となる記載ではない。
また、甲2の【0045】には、「単量体組成物に用いられる」「他の単量体として」「トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレートなどの炭素数1~3または炭素数13以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル」「などが挙げられる。」と記載されているが、甲2の【0044】には「単量体として、前記(A)架橋性単量体、(B)特定有機基含有単量体、(C)非架橋性スチレン系単量体のみを含有する態様が好適である」旨記載されているから、上記甲2【0045】に記載の「他の単量体」を必須の単量体とする動機はなく、甲2【0045】に例示的に多数並列記載されている単量体の中から、炭素数13以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに着目する動機もなく、さらに、直鎖状アルキル基の炭素数として「16~40」を選択する動機もない。
そして、甲2及び他の全ての証拠をみても、甲2発明において、疎水性単量体のR11の脂肪族炭化水素の炭素数を16~40とする動機となる記載はない。
したがって、甲2発明において、R11の脂肪族炭化水素の炭素数を16~40にすることを当業者が容易になし得たとはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
イ 本件特許発明2ないし7について
本件特許発明2ないし7は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するから、本件特許発明1と同様に判断される。
よって、本件特許発明2ないし7は甲2発明ではなく、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)申立理由2についてのまとめ
したがって、本件特許発明1ないし7は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当しない。
よって、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、申立理由2によって取り消すことはできない。
2 申立理由3(甲3に基づく新規性・進歩性)について
(1)甲3の記載事項等
ア 甲3の記載事項
甲3には、ビニル系架橋樹脂粒子、その製造方法およびその用途について、次の事項が記載されている。
「【請求項1】架橋樹脂粒子中の有機溶媒含有量が100ppm以下である、ビニル系架橋樹脂粒子。
【請求項2】請求項1に記載のビニル系架橋樹脂粒子が用いられてなる、液晶表示板用スペーサー。」
「【0010】本発明のビニル系架橋樹脂粒子は、上述のように、ラジカル重合可能な架橋性ビニル単量体由来の構造単位を含む樹脂からなる粒子であることが好ましく、その架橋形態は、例えば、複数あるラジカル重合性不飽和基のうち重合に関与しなかったラジカル重合性不飽和基による架橋や、その他反応性を有する官能基による架橋であってもよく、特に限定はされない。上記架橋性ビニル単量体は、特に限定はされないが、なかでも、ラジカル重合性不飽和基を複数有する架橋性ビニル単量体としては、具体的には、例えば、ジビニルベンゼン、1,4-ジビニロキシブタン、ジビニルスルホン等のビニル化合物;ジアリルフタレートおよびその異性体、トリアリルイソシアヌレートおよびその誘導体、トリアリルトリメテート等のアリル化合物;(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)オキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル化合物;などが挙げられる。同様に、上記架橋性ビニル単量体のなかでも、ラジカル重合性不飽和基以外の反応性を有する官能基を有する架橋性ビニル単量体としては、例えば、反応性を有する官能基としてエポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、チオヒドロキシル基(SH基)などを有するラジカル重合性ビニル単量体を挙げることができ、具体的には、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド等が好ましく挙げられる。これら架橋性ビニル単量体は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0011】本発明のビニル系架橋樹脂粒子中、上記架橋性ビニル単量体由来の構造単位としては、特に限定はされないが、1~100重量%であることが好ましく、より好ましくは3~90重量%、さらにより好ましくは5~80重量%である。1重量%未満であると、粒子中の架橋度が低くなり、所望の硬度、耐熱性、耐溶剤性などが発現しにくくなり、多すぎると、未反応のビニル基が残存しやすくなるため、用途によっては好ましくない場合がある。本発明のビニル系架橋樹脂粒子においては、上記架橋性ビニル単量体由来の構造単位以外にも、ラジカル重合可能な非架橋性ビニル単量体由来の構造単位や、その他のラジカル重合性単量体由来の構造単位を含んでいてもよい。
【0012】上記非架橋性ビニル単量体としては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、スチレン、p-(m-)メチルスチレン、p-(m-)エチルスチレン、p-(m-)クロロスチレン、p-(m-)クロロメチルスチレン、スチレンスルホン酸、p-(m-)t-ブトキシスチレン、α-メチル-p-t-アミロキシスチレン、p-t-アミロキシスチレン等のスチレン系モノマー;(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;(メタ)アクリル酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸系モノマー;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;酢酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;(メタ)アクリロニトリル、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド;などが挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。」
「【0014】本発明のビニル系架橋樹脂粒子中、上記非架橋性ビニル単量体由来の構造単位およびその他のラジカル重合性単量体由来の構造単位は、上記架橋性ビニル単量体由来の構造単位の含有割合の範囲外で含まれていればよい。本発明のビニル系架橋樹脂粒子においては、その平均粒子径は、0.5~50μmであることが好ましく、より好ましくは1.0~40μm、さらにより好ましくは1.5~30μmである。特に、本発明のビニル系架橋樹脂粒子が、後述するように液晶表示板用スペーサーとして用いられる場合は、上記平均粒子径は、1.0~30μmであることが好ましく、より好ましくは1.0~25μm、さらにより好ましくは1.0~20μmである。
【0015】同様に、本発明のビニル系架橋樹脂粒子の粒度分布は、変動係数が1~50%であることが好ましく、より好ましくは2~40%、さらにより好ましくは2~30%である。特に、本発明のビニル系架橋樹脂粒子が、後述するように液晶表示板用スペーサーとして用いられる場合は、上記変動係数は、1~10%であることが好ましく、より好ましくは2~8%、さらにより好ましくは2~6%である。本発明のビニル系架橋樹脂粒子おいては、その用途は、特に限定されるわけではないが、具体的には、例えば、プラスチックフィルム・シートの滑り性向上剤、ブロッキング防止剤、つや消し仕上げ剤、光拡散剤、表面硬度向上剤などの各種改良剤や、塗料や化粧品用の充填剤、吸着処理やイオン交換処理等の処理用充填剤およびプラスチック成形品等に光沢を付与する充填剤等の各種充填剤や、液晶表示板用スペーサーおよびその材料や、測定・分析用標準粒子などの各種用途に有用でる。」
「【0035】本発明の製造方法においては、得られるビニル系架橋樹脂粒子を着色粒子とすることもでき、その場合、上記合成反応系中に染料を含めた状態で行うことが好ましい。上記染料としては、特に限定はされないが、具体的には、酸性染料、塩基性染料、蛍光染料、蛍光増白剤などが好ましく、なかでも酸性染料が、染料の耐熱性が高いためより好ましい。上記(a)~(c)の各種合成方法等により得られるビニル系架橋樹脂粒子(分級前)を、溶剤や溶媒から分離、乾燥するためには、従来公知の方法を用いれば良く、分離としては、例えば、自然沈降法あるいは遠心沈降法とデカンテーションとによる分離やろ過による分離などの各種分離法があり、必要であれば水洗等を行ってもよい。乾燥としては、例えば、自然乾燥、減圧乾燥および熱風乾燥などの各種乾燥法がある。また、分離に先立って、硫酸アルミニウム等の凝集剤を添加して分離を促進することもできる。上記分離、乾燥により得られたビニル系架橋樹脂粒子(分級前)は、ボールミル等のごく軽い力で容易に乳濁液中の硬化樹脂粒子と同じく実質的に球状で比較的均一な粒子径を有する架橋樹脂粒子とすることができる。」
「【0050】電成ふるいにより分級を行う場合、分級中の分級装置内の液量を一定に保つことが好ましい。液量を一定に保つことで、温度、系内の粒子の濃度、超音波振動の大きさ等を一定に保つことができるため、分級速度や分級精度の変化を抑制することができる。なお、ここでは、液量を一定に保つとは、液量の変化が30%以内であることをいい、好ましくは20%以内である。本発明のビニル系架橋樹脂粒子は、上記分級によって、平均粒子径0.5~50μmとなるように調製されることが好ましく、より好ましくは1.0~40μm、さらにより好ましくは1.5~30μmである。特に、本発明のビニル系架橋樹脂粒子を、液晶表示板用スペーサーとして用いる場合は、上記平均粒子径は、1.0~30μmとなるように調製されることが好ましく、より好ましくは1.0~25μm、さらにより好ましくは1.0~20μmである。
【0051】同様に、粒度分布については、変動係数が1~50%であることが好ましく、より好ましくは2~40%、さらにより好ましくは2~30%である。特に、本発明のビニル系架橋樹脂粒子を、液晶表示板用スペーサーとして用いる場合は、上記変動係数は、1~10%となるように調製されることが好ましく、より好ましくは2~8%、さらにより好ましくは2~6%である。本発明の製造方法においては、上記湿式による分級の後、分級したビニル系架橋樹脂粒子を単離する。単離する方法としては、特に限定されないが、例えば、遠心分離、デカンテーション、溶媒を蒸発させる方法などが挙げられる。」
「【0056】
【実施例】以下に、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、以下では、便宜上、「重量部」を単に「部」と記すことがある。-実施例1-四つ口フラスコに、エタノール200部を仕込んでポリビニルピロリドン2部を溶解させた後、スチレン6部およびアゾビスイソブチロニトリル0.1部を投入して、攪拌しながら70℃で24時間重合させ、平均粒子径1.2μmのポリスチレン樹脂を得た。得られたポリスチレン粒子10部を、3%ポリビニルアルコール水溶液300部に超音波分散機を用いて分散させた。次いで、この分散液に、ジビニルベンゼン6部、メチルメタクリレート3部、2-エチルヘキシルアクリレート1部および過酸化ベンゾイル0.5部の混合液を加えてポリスチレン粒子へ吸収させ、その後、窒素気流下、80℃で15時間重合を行った後、120℃で減圧乾燥して、樹脂粒子Aを得た。
【0057】得られた樹脂粒子Aの粒度分布を粒度分布測定機(コールター社製、コールターマルチサイザー)で測定したところ、平均粒子径6.03μm、変動係数3.3%であった。次に、n-へキサン/エタノール=2/1(体積比)の混合溶媒を調製し、上記樹脂粒子A400gをこの混合液1リットルに分散させ分散液を調製した。そして、ガラス製フィルターホルダーに、開口径7.0μm、線数1500本/インチの電成ふるい(ニッケル系)を取り付け、ジルコニア系セラミクスからなる超音波振動子を有する超音波分散機を用いて、周波数20kHz、振幅10mmで振動させながら、上記分散液をろ過した。
【0058】その際、ふるいの穴が詰まらないように、また、分級時の粒子濃度が高くならないように、新しい上記n-へキサン/エタノールの混合溶媒を加えながら分級した。なお、電成ふるいと超音波振動子の間隔は10mmに設定した。分級後の分散液から、樹脂粒子をろ過により単離し、真空乾燥機で70℃、4時間、減圧乾燥した後、解砕することにより、実施例1のビニル系架橋樹脂粒子(以下、ビニル系架橋樹脂粒子(1)と称することがある。)を得た。得られたビニル系架橋樹脂粒子(1)の粒度分布を粒度分布測定機(コールター社製、コールターマルチサイザー)で測定したところ、平均粒子径5.98μm、変動係数2.6%であった。さらに、得られたビニル系架橋樹脂粒子(1)中のn-へキサンおよびエタノールの合計含有量は10ppmであった。」
イ 甲3に記載された発明
甲3の【0058】実施例1を中心に整理すると、甲3には次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認める。
<甲3発明>
「平均粒子径1.2μmのポリスチレン粒子を3%ポリビニルアルコール水溶液に分散させ、この分散液に、ジビニルベンゼン6部、メチルメタクリレート3部、2-エチルヘキシルアクリレート1部および過酸化ベンゾイル0.5部を加えてポリスチレン粒子へ吸収させ、重合を行った後、120℃で減圧乾燥した、平均粒子径6.03μm、変動係数3.3%の樹脂粒子。」
(2)検討
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲3発明とを対比する。
甲3発明における「平均粒子径6.03μm、変動係数3.3%の樹脂粒子」は、本件特許発明1における「平均粒径1μm以上50μm以下、かつ、粒径分散度(CV値)が20%以下の」「球状」「粒子」に相当する。
甲3発明における「2-エチルヘキシルアクリレート」は、本件特許発明1における「疎水性単量体」であり、かつ、「疎水性単量体は、 式:CH2=C(-R12)-C(=O)-Y11-(R11)k
[式中、
R11は脂肪族炭化水素基であり、
R12は水素原子、一価の有機基又はハロゲン原子であり、
Y11は、直接結合、2~4価の炭素数1の炭化水素基、-C6H4-、-O-、-C(=O)-、-S(=O)2-及び-NR’-(R’は、H又は炭素数1~4の炭化水素基)から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される2~4価の基であり、
kは1~3である。]
で表される疎水性単量体(1)」に相当する。
甲3発明における「ジビニルベンゼン」は、本件特許発明1における「少なくとも2つの重合性二重結合を有する架橋性単量体」であって、「前記架橋性単量体は」「ジビニルベンゼンである」に相当する。
甲3発明における「ジビニルベンゼン」「を加えて」「重合を行った」「樹脂粒子」は、本件特許発明1における「球状架橋粒子」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲3発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「平均粒径1μm以上50μm以下、かつ、粒径分散度(CV値)が20%以下の球状架橋粒子であって、
疎水性単量体から誘導された繰り返し単位を含み、
前記疎水性単量体が非架橋性であって、
前記疎水性単量体は、
式:CH2=C(-R12)-C(=O)-Y11-(R11)k
[式中、
R11は脂肪族炭化水素基であり、
R12は水素原子、一価の有機基又はハロゲン原子であり、
Y11は、直接結合、2~4価の炭素数1の炭化水素基、-C6H4-、-O-、-C(=O)-、-S(=O)2-及び-NR’-(R’は、H又は炭素数1~4の炭化水素基)から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される2~4価の基であり、
kは1~3である。]
で表される疎水性単量体(1)であり、
少なくとも2つの重合性二重結合を有する架橋性単量体から誘導された繰り返し単位によって架橋がなされており、
前記架橋性単量体は、
[図:0001431094000027.jpg]
又は
[図:0001431094000028.jpg]
[式中、R61は、直接結合、あるいは炭素数1~20の炭化水素基、-(CH2CH2O)r-(rは1~10の数)、-C6H4-、-O-、又は-NR’-(R’は、H又は炭素数1~4の炭化水素基)から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される2~6価の基であり、
R62は、水素原子、一価の有機基、又はハロゲン原子であり、
pは、2~6であり、qは1~5である。]で表される単量体、またはジビニルベンゼンである、球状架橋粒子。」
<相違点3-1>
本件特許発明1は、疎水性単量体の「ホモポリマーの水接触角が90°以上」であるとの特定を有するのに対して、甲3発明は、そのような特定がない点。
<相違点3-2>
本件特許発明1は、R11が「炭素数16~40の」脂肪族炭化水素基であるとの特定を有するのに対して、甲3発明は、2-エチルヘキシルアクリレートであるから、炭素数8である点。
事案に鑑み、相違点3-2について検討する。
甲3発明における疎水性単量体は、「2-エチルヘキシルアクリレート」であるから、炭素数8の脂肪族炭化水素基を有するアクリル酸エステルであって、R11の脂肪族炭化水素の炭素数は8である。したがって、相違点3-2は実質的な相違点である。よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲3発明ではない。
甲3(【0012】)には、「非架橋性ビニル単量体として」「例えば、…(略)…(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル…(略)…などが挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。」との記載があるが、ここに例示的に多数示されている各種ビニル単量体の中から、(メタ)アクリル酸エステルモノマーに着目し、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルを必須の単量体とする動機はない。
また、甲3には、(メタ)アクリル酸エステルの脂肪族炭化水素の炭素数によって選別するという技術的思想は記載されておらず、まして、16~40という特定の炭素数のものを選択する動機はない。
そして、甲3及び他の全ての証拠をみても、甲3発明において、疎水性単量体のR11の脂肪族炭化水素の炭素数を16~40とする動機となる記載はない。
したがって、甲3発明において、R11の脂肪族炭化水素の炭素数を16~40にすることを当業者が容易になし得たとはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
イ 本件特許発明2ないし7について
本件特許発明2ないし7は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するから、本件特許発明1と同様に判断される。
よって、本件特許発明2ないし7は甲3発明ではなく、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)申立理由3についてのまとめ
したがって、本件特許発明1ないし7は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当しない。
よって、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、申立理由3によって取り消すことはできない。
3 申立理由4(甲4に基づく新規性・進歩性)について
(1)甲4の記載事項等
ア 甲4の記載事項
甲4には、接着剤組成物用ポリマー粒子、ポリマー粒子の製造方法、接着剤組成物及び接着フィルムについて、次の事項が記載されている。
「【請求項1】 微孔質膜乳化法により水中に分散させたモノマー滴を懸濁重合して形成されたポリマー粒子において、-80~20℃の範囲のガラス転移温度と、1~200μmの範囲の体積平均直径とを有し、接着剤組成物の成分として用いることを特徴とする、ポリマー粒子」
「【0014】ポリマー粒子は、通常1~200μmの範囲の体積平均直径を有する。近視外観の改善のためには、ポリマー粒子の直径は可及的に小さい方が良い。しかしながら、気泡抜け性や再剥離性を良好にするには、反対にポリマー粒子の直径は大きな方が良い。ポリマー粒子の平均体積直径が上記範囲にあれば、それらの両立が可能である。この様な観点から、ポリマー粒子の平均体積直径は、好適には5~100μm、特に好適には10~50μmの範囲である。
【0015】ポリマー粒子の体積平均直径の変動係数((体積平均直径の測定値の標準偏差/体積平均直径)X100)は、支持体の硬さ(可撓性の程度)や厚さにもよるが、通常30%以下、好適には20%以下、特に好適には15%以下である。平均体積直径の変動係数が30%を超えると、接着フィルムの近視外観を改善できないおそれがある。」
「【0023】ポリマー粒子の出発原料であるモノマーは、懸濁重合可能なものであれば特に限定されないが、通常アクリル系モノマーを含む。アクリル系モノマーは、通常、イソオクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ラウリルメタクリレート等、(メタ)アクリレート系の油溶性モノマーと、必要に応じて、(メタ)アクリル酸、アクリルアミド等、酸性または塩基性官能基を有する水溶性モノマーとを用いることができる。
【0024】モノマーが2種以上のアクリル系モノマーを含む場合、それらの配合比率は、ポリマー粒子のTgが上記所定の範囲になる様に決定される。たとえば、イソオクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ラウリルメタクリレート等の、ホモポリマーのTgが-80~0℃の(メタ)アクリレートモノマーが、アクリル系モノマー全重量に対して占める割合は、通常70重量%以上、好適には80重量%以上、特に好適には90重量%以上である。これにより、ポリマー粒子のTgを上記所定の範囲に制御するのが容易である。また、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート等の架橋剤をモノマーに含有させ、ポリマー粒子を架橋させることもできる。」
「【0055】
【実施例】実施例1
中実粘着性粒子(1)
本例のポリマー粒子を、図2に示される装置を用いて調製した。まず、0.5gのクラレ(株)社製ポリビニルアルコール「(品番)PVA-217」と、0.15gのラウリル硫酸ナトリウムと、0.05gの亜硝酸ナトリウムとを、450gの脱イオン水に溶かして水性成分を形成し、分散体循環槽に入れた。一方、47.0gのイソオクチルアクリレートと、0.013gの1,4-ブタンジオールジアクリレートと、重合開始剤としての0.5gのベンゾイルパーオキサイド(25%の水分を含有する)を混合、溶解させて油性成分を形成し、タンクに入れた。
【0056】次に、水性成分をペリスタポンプ(循環ポンプ)を用いて分散体循環槽から微孔質膜モジュールへと導入し、MPG膜チューブ(伊勢化学(株)社製、平均細孔径7.0μm)の内側を通してもとの分散体循環槽へ循環させる様にした。その一方で、油性成分には圧力をかけてMPG膜チューブの外側からMPG膜を通してその内側を循環する水性成分の中へ押し出し、水性成分からなる連続相中に分散されたモノマー滴を含む分散体を形成した。
【0057】続いて、分散体を反応器に移し、3.0gのアクリル酸を加えて、攪拌装置の回転速度を160rpmにしてゆっくりと攪拌し、アクリル酸の一部をモノマー滴に溶解させた。ついで、反応器内を窒素で置換し、65℃で3時間懸濁重合を行った。これにより、本例の、中実粘着性ポリマー粒子が得られた。
【0058】ポリマー粒子の体積平均径および体積粒度の変動係数(C.V.値:(標準偏差/体積平均径)X100)をコールター(株)社製レーザー回折・散乱粒径測定装置LS-230を用いて測定した。それぞれ、35.9μmおよび13%であった。また、ポリマー粒子のTgは、-40℃であった。
【0059】なお、Tgは、レオメトリックス(株)社製の粘弾性スペクトロメーター「(品番)RDAII」を用い、次の様にして測定した。測定試料として、ポリマー粒子の分散液を乾燥させ、直径7.8mm、高さ5mmのシリンダー状の試料を成形し、それを平行プレート治具に取り付け、1rad/secの周波数のせん断ひずみを与えながら、-100~200℃の温度変化を与え、弾性率の温度依存性を測定した。」
「【0062】実施例3
中実ゴム状(非粘着性)粒子(1)
油性成分モノマーとして49.5gのラウリルメタクリレートと0.5gの1,6-ヘキサンジオールジアクリレートとを、重合開始剤として0.375gの2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)を用いた以外は実施例1と同様にして、モノマー滴を含有する分散体を形成した。
【0063】また、分散体を45℃に加熱して重合を開始させた後、65℃で反応させた以外は、実施例1と同様にして本例の中実ゴム状ポリマー粒子を調製した。ポリマー粒子の体積平均径および体積粒度の変動係数は、それぞれ、35.8μmおよび12.8%であった。また、ポリマー粒子のTgは-16℃であった。
【0064】実施例4
中実ゴム状(非粘着性)粒子(2)
油性成分モノマーとして、49.5gの2-エチルヘキシルアクリレートと、0.5gの1,6-ヘキサンジオールジアクリレートとを用いた以外は、実施例1と同様にして本例の中実ゴム状ポリマー粒子を調製した。ポリマー粒子の体積平均径および体積粒度の変動係数は、それぞれ、41.2μmおよび10.1%であった。また、ポリマー粒子のTgは-51℃であった。」
イ 甲4に記載された発明
甲4の【0062】~【0063】実施例3、【0064】実施例4を中心に整理すると、甲4には次の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されていると認める。
<甲4発明>
「微硬質膜乳化法により水中に分散させたモノマー滴を懸濁重合して形成されたポリマー粒子であって、油性成分モノマーとしてラウリルメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、又は油性成分モノマーとして2-エチルヘキシルメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートを用いて懸濁重合し、体積平均粒径が35.8μm又は41.2μm、体積粒度の変動係数が12.8%又は10.1%であるポリマー粒子。」
(2)検討
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲4発明とを対比する。
甲4発明における「体積平均粒径が35.8μm又は41.2μm、体積粒度の変動係数が12.8%又は10.1%であるポリマー粒子」は、本件特許発明1における「平均粒径1μm以上50μm以下、かつ、粒度分散度(CV値)が20%以下の」「球状粒子」に相当する。
甲4発明における「ラウリルメタクリレート」又は「2-エチルヘキシルメタクリレート」は、本件特許発明1における「疎水性単量体」であり、「 前記疎水性単量体は、
式:CH2=C(-R12)-C(=O)-Y11-(R11)k
[式中、
R11は脂肪族炭化水素基であり、
R12は水素原子、一価の有機基又はハロゲン原子であり、
Y11は、直接結合、2~4価の炭素数1の炭化水素基、-C6H4-、-O-、-C(=O)-、-S(=O)2-及び-NR’-(R’は、H又は炭素数1~4の炭化水素基)から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される2~4価の基であり、
kは1~3である。]
で表される疎水性単量体(1)」に相当する。
甲4発明における「ヘキサンジオールジアクリレート」及び「1,6-ヘキサンジオールジアクリレート」は、本件特許発明1における「少なくとも2つの重合性二重結合を有する架橋性単量体」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲4発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「 平均粒径1μm以上50μm以下、かつ、粒径分散度(CV値)が20%以下の球状架橋粒子であって、
疎水性単量体から誘導された繰り返し単位を含み、
前記疎水性単量体が非架橋性であって、ホモポリマーの水接触角が90°以上であり、
前記疎水性単量体は、
式:CH2=C(-R12)-C(=O)-Y11-(R11)k
[式中、
R11は脂肪族炭化水素基であり、
R12は水素原子、一価の有機基又はハロゲン原子であり、
Y11は、直接結合、2~4価の炭素数1の炭化水素基、-C6H4-、-O-、-C(=O)-、-S(=O)2-及び-NR’-(R’は、H又は炭素数1~4の炭化水素基)から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される2~4価の基であり、
kは1~3である。]
で表される疎水性単量体(1)であり、
少なくとも2つの重合性二重結合を有する架橋性単量体から誘導された繰り返し単位によって架橋がなされている、球状架橋粒子。」
<相違点4-1>
本件特許発明1は、疎水性単量体の「ホモポリマーの水接触角が90°以上」であるとの特定を有するのに対して、甲4発明は、そのような特定がない点。
<相違点4-2>
本件特許発明1は、R11が「炭素数16~40の」脂肪族炭化水素基であるとの特定を有するのに対して、甲4発明は、「ラウリルメタクリレート」又は「2-エチルヘキシルメタクリレート」であるから、炭素数12又は炭素数8である点。
<相違点4-3>
本件特許発明1は、架橋性単量体が、
「
[図:0001431094000029.jpg]
又は
[図:0001431094000030.jpg]
[式中、R61は、直接結合、あるいは炭素数1~20の炭化水素基、-(CH2CH2O)r-(rは1~10の数)、-C6H4-、-O-、又は-NR’-(R’は、H又は炭素数1~4の炭化水素基)から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される2~6価の基であり、
R62は、水素原子、一価の有機基、又はハロゲン原子であり、
pは、2~6であり、
qは1~5である。]
で表される単量体、またはジビニルベンゼンである」との特定を有するのに対して、甲4発明は、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートである点。
事案に鑑み、相違点4-2について検討する。
甲4発明における疎水性単量体は、「ラウリルメタクリレート」又は「2-エチルヘキシルメタクリレート」、炭素数12又は8の脂肪族炭化水素基を有するメタクリル酸エステルであって、R11の脂肪族炭化水素の炭素数は12又は8である。したがって、相違点4-2は実質的な相違点である。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲4発明ではない。
そして、甲4には、「アクリル系モノマーは、通常、イソオクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ラウリルメタクリレート等、(メタ)アクリレート系の油溶性モノマー」「を用いることができ」(甲4【0023】)、「モノマーが2種以上のアクリル系モノマーを含む場合、それらの配合比率は、ポリマー粒子のTgが上記所定の範囲になる様に決定される。たとえば、イソオクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ラウリルメタクリレート等の、ホモポリマーのTgが-80~0℃の(メタ)アクリレートモノマーが、アクリル系モノマー全質量に対して占める割合は」「特に好適には90重量%以上である」(甲4【0024】)と記載されているところ、甲4及び他の全ての証拠をみても、甲4発明において、疎水性単量体のR11の脂肪族炭化水素の炭素数を、ラウリルメタクリレートの炭素数12又は2-エチルヘキシルアクリレートの炭素数8よりも更に長鎖の炭素数16~40とする動機となる記載はない。
したがって、甲4発明において、R11の脂肪族炭化水素の炭素数を16~40にすることを当業者が容易になし得たとはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
イ 本件特許発明2ないし7について
本件特許発明2ないし7は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するから、本件特許発明1と同様に判断される。
よって、本件特許発明2ないし7は甲4発明ではなく、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)申立理由4のまとめ
したがって、本件特許発明1ないし7は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当しない。
よって、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、申立理由4によって取り消すことはできない。
4 申立理由5(甲5に基づく新規性)について
(1)甲5の記載事項等
甲5の記載事項及び甲5発明は、上記第6の2(1)のとおりである。
(2)検討
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲5発明との対比は、上記第6の2(2)アのとおりであり、本件特許発明1と甲5発明とは、相違点5-1~相違点5-3で相違する。
よって、本件特許発明1は甲5発明であるとはいえない。
イ 本件特許発明2ないし7について
本件特許発明2ないし7は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するから、本件特許発明1と同様に判断される。
よって、本件特許発明2ないし7は、甲5発明であるとはいえない。
(3)申立理由5のまとめ
したがって、本件特許発明1ないし7は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当しない。
よって、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、申立理由5によって取り消すことはできない。
5 申立理由6(甲6に基づく新規性・進歩性)について
(1)甲6の記載事項等
ア 甲6の記載事項
甲6には、「重合体粒子、導電性粒子、異方性導電材料及び接続構造体」について、次の事項が記載されている。
「[0099] 上記重合体粒子の体積膨張率は、1.3以下であることが好ましく、1.25以下であることがより好ましく、さらに1.15以下であることがより好ましい。上記重合体粒子の体積膨張率が小さいほど、上記重合体粒子を用いて上記導電性粒子を得た場合に、該導電性粒子がリフローなどの高温に晒されても、導電層にひび割れ又は剥離が生じ難くなる。
[0100] 上記重合体粒子の体積膨張率は、以下のようにして求めることができる。
[0101] 先ず、重合体粒子の粒子径を測定する。次に、ガラス板上に重合体粒子を置き、260℃に設定されたホットプレートを用いて、重合体粒子を6分間加熱する。加熱後に、重合体粒子の粒子径を測定する。得られた測定値から、下記式により体積膨張率を求めることができる。
[0102] 体積膨張率=D23/D13
D1:加熱前の重合体粒子の粒子径
D2:加熱後の重合体粒子の粒子径
[0103] 上記重合体粒子の平均粒子径は、0.1~1,000μmの範囲内にあることが好ましい。上記重合体粒子の平均粒子径のより好ましい下限は1μm、より好ましい下限は1.5μm、より好ましい下限は2μm、さらに好ましい下限は10μmである。上記重合体粒子の平均粒子径のより好ましい上限は500μm、より好ましい上限は300μm、より好ましい上限は60μm、さらに好ましい上限は30μmである。上記平均粒子径が小さすぎると、上記重合体粒子の表面に導電層を無電解めっきにより形成する際に凝集しやすくなり、凝集した導電性粒子が形成されやすくなる。さらに、導電性粒子が電極間の接続に用いられた場合に、導電性粒子と電極との接触面積が小さくなるため、接続信頼性が低下することがある。上記平均粒子径が大きすぎると、電極間の間隔が必要以上に大きくなりすぎることがある。
[0104] なお、上記「平均粒子径」は、数平均粒子径を示す。上記平均粒子径は、例えばコールターカウンター(ベックマンコールター社製)を用いて測定できる。
[0105] 上記重合体粒子のCV値(粒度分布の変動係数)は、10%以下であることが好ましく、5%以下であることが好ましく、さらに3%以下であることが好ましい。上記CV値が大きすぎると、導電性粒子が電極間の接続に用いられた場合に、電極間の間隔にばらつきが生じやすくなる。
[0106] 上記CV値は、重合体粒子の直径の標準偏差をρとし、平均粒子径をDnとしたときに、下記式により求められる。
CV値(%)=(ρ/Dn)×100」
「[0157] (実施例10)
イオン交換水835重量部と、ポリビニルアルコールの5.5重量%水溶液1124重量部とを均一に分散させた分散液に、ラウリルアクリレート(LA)50重量部と、1,10-デカンジオールジアクリレート(A-DOD)50重量部と、重合開始剤としてのパーブチルO(日油社製)3.1重量部とを混合し粒子径が240μmとなるように大きさを調整した液滴を添加し、混合液を得た。
[0158] 窒素雰囲気下で、70℃で5時間かけて、得られた混合液の重合を行った。その後、吸引濾過することにより粒子を取り出した。イオン交換水とアセトンを用いて粒子を洗浄することにより、分散媒を完全に除去し、次に乾燥し、重合体粒子を得た。
[0159] (実施例11~16及び比較例5~8)
ラウリルアクリレート(LA)50重量部及び1,10-デカンジオールジアクリレート(A-DOD)50重量部にかえて、下記の表3,4に示す(メタ)アクリレートモノマーを下記の表3,4に示す割合で用いたこと以外は実施例10と同様にして、重合体粒子を得た。」
「[0161] (実施例17)
ラウリルアクリレート(LA)50重量部と、1,10-デカンジオールジアクリレート(A-DOD)50重量部と、パーブチルO(日油社製)3.1重量部とを混合し、ポリビニルアルコール1重量%水溶液中で懸濁重合したのち分級処理を施すことにより、重合体粒子を得た。
[0162] (実施例10~17及び比較例5~9の評価) 実施例1~8及び比較例1,2の評価と同様にして、(1)重合体粒子の圧縮弾性率(10%K値)、(2)重合体粒子の圧縮変形回復率、及び(3)重合体粒子の体積膨張率を評価した。
[0163] 結果を下記の表3,4に示す。
[0164][表3]
[図:0001431094000031.jpg]
」
「請求の範囲
[請求項1] 下記式(1)で表される構造を有する2官能の(メタ)アクリレートモノマー、下記式(2)で表される構造を有する3官能の(メタ)アクリレートモノマー、及び下記式(3)で表される構造を有する4官能の(メタ)アクリレートモノマーからなる群から選択された少なくとも一種の多官能(メタ)アクリレートと、下記式(4)で表される構造を有する単官能の(メタ)アクリレートモノマーとを含む共重合成分を共重合させることにより得られ、
前記多官能(メタ)アクリレートが下記式(3)で表される構造を有する4官能の(メタ)アクリレートモノマーを含むとき、前記共重合成分は、前記4官能の(メタ)アクリレートモノマーと前記単官能の(メタ)アクリレートモノマーとの合計100重量%中に、前記単官能の(メタ)アクリレートモノマーを80重量%以下含有し、
圧縮変形回復率が70%以上である、重合体粒子。
[化1]
[図:0001431094000032.jpg]
上記式(1)中、nは、4~10の範囲内の整数を表す。
[化2]
[図:0001431094000033.jpg]
上記式(2)中、R11は、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、R12、R13及びR14はそれぞれ、炭素数1~4のアルキレン基を表し、R15、R16及びR17はそれぞれ、水素原子又はメチル基を表す。
[化3]
[図:0001431094000034.jpg]
上記式(3)中、R3、R4、R5及びR6はそれぞれ、炭素数1~4のアルキレン基を表し、R7、R8、R9及びR10はそれぞれ、水素原子又はメチル基を表す。
[化4]
[図:0001431094000035.jpg]
上記式(4)中、R1は、水素原子又はメチル基を表し、R2は、炭素数5~18のアルキル基を表し、該アルキル基は、直鎖構造を有していてもよく、分岐構造を有していてもよい。」
「[請求項3] 前記共重合成分は、前記4官能の(メタ)アクリレートモノマーと前記単官能の(メタ)アクリレートモノマーとの合計100重量%中に、前記単官能の(メタ)アクリレートモノマーを70重量%以下含有する、請求項1又は2に記載の重合体粒子。
[請求項4] 前記単官能の(メタ)アクリレートモノマーが、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート及びイソアミル(メタ)アクリレートからなる群から選択された少なくとも一種である、請求項1~3のいずれか1項に記載の重合体粒子。
[請求項5] 前記単官能の(メタ)アクリレートモノマーが、ラウリル(メタ)アクリレート及びステアリル(メタ)アクリレートの内の少なくとも一種である、請求項4に記載の重合体粒子。」
イ 甲6に記載された発明
甲6の特許請求の範囲、及び、[0162]、[0164][表3]の実施例14及び実施例16を中心に整理すると、甲6には次の発明(以下、「甲6発明」という。)が記載されていると認める。
<甲6発明>
「2官能の(メタ)アクリレートモノマーとして、A-DOD(1,10-デカンジオールジアクリレート)と、単官能の(メタ)アクリレートモノマーとして、SA(ステアリルアクリレート)、又は、ISA(イソステアリルアクリレート)を含む共重合成分を共重合させることにより得られ、単官能の(メタ)アクリレートモノマーを80重量%以下含有し、圧縮変形回復率が70%以上であり、数平均粒子径が240μmである、重合体粒子。」
(2)検討
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲6発明とを対比する。
甲6発明における「数平均粒子径が240μmである、重合体粒子」は、本件特許発明1における「平均粒径1μm以上」「の球状」「粒子」に相当する。
甲6発明における「単官能の(メタ)アクリレートモノマーとして」の「SA(ステアリルアクリレート)、又は、ISA(イソステアリルアクリレート)」は、ステアリル基又はイソステアリル基、すなわち、炭素数18の脂肪族炭化水素基を有するアクリル酸エステルであるから、本件特許発明1における「疎水性単量体」であって「前記疎水性単量体が非架橋性であって」「前記疎水性単量体は、式:CH2=C(-R12)-C(=O)-Y11-(R11)k
[式中、
R11は炭素数16~40の脂肪族炭化水素基であり、
R12は水素原子、一価の有機基又はハロゲン原子であり、
Y11は、直接結合、2~4価の炭素数1の炭化水素基、-C6H4-、-O-、-C(=O)-、-S(=O)2-及び-NR’-(R’は、H又は炭素数1~4の炭化水素基)から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される2~4価の基であり、
kは1~3である。]
で表される疎水性単量体(1)」に相当する。
甲6発明における
「2官能の(メタ)アクリレートモノマーとして」の「A-DOD(1,10-デカンジオールジアクリレート)」は、本件特許発明1における「少なくとも2つの重合性二重結合を有する架橋性単量体」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲6発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「平均粒径1μm以上の球状架橋粒子であって、
疎水性単量体から誘導された繰り返し単位を含み、
前記疎水性単量体が非架橋性であって、
前記疎水性単量体は、
式:CH2=C(-R12)-C(=O)-Y11-(R11)k
[式中、
R11は炭素数16~40の脂肪族炭化水素基であり、
R12は水素原子、一価の有機基又はハロゲン原子であり、
Y11は、直接結合、2~4価の炭素数1の炭化水素基、-C6H4-、-O-、-C(=O)-、-S(=O)2-及び-NR’-(R’は、H又は炭素数1~4の炭化水素基)から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される2~4価の基であり、
kは1~3である。]
で表される疎水性単量体(1)であり、
少なくとも2つの重合性二重結合を有する架橋性単量体から誘導された繰り返し単位によって架橋されている、球状架橋粒子。」
<相違点6-1>
本件特許発明1は、平均粒子径が「50μm以下」との特定を有するのに対し、甲6発明は、数平均粒子径が240μmである点。
<相違点6-2>
本件特許発明1は、「粒径分散度(CV値)が20%以下」との特定を有するのに対し、甲6発明はそのような特定がない点。
<相違点6-3>
本件特許発明1は、疎水性単量体の「ホモポリマーの水接触角が90°以上」との特定を有するのに対し、甲6発明はそのような特定がない点。
<相違点6-4>
本件特許発明1は、架橋性単量体が、
「
[図:0001431094000036.jpg]
又は
[図:0001431094000037.jpg]
[式中、R61は、直接結合、あるいは炭素数1~20の炭化水素基、-(CH2CH2O)r-(rは1~10の数)、-C6H4-、-O-、又は-NR’-(R’は、H又は炭素数1~4の炭化水素基)から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される2~6価の基であり、
R62は、水素原子、一価の有機基、又はハロゲン原子であり、
pは、2~6であり、
qは1~5である。]
で表される単量体、またはジビニルベンゼンである」との特定を有するのに対して、甲6発明は、A-DOD(1,10-デカンジオールジアクリレート)である点。
事案に鑑み、相違点6-4について検討する。
甲6発明における架橋性単量体は、「A-DOD(1,10-デカンジオールジアクリレート)」であるから、相違点6-4は実質的な相違点である。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲6発明ではない。
そして、甲6及び他の全ての証拠をみても、甲6発明において、架橋性単量体を、
[図:0001431094000038.jpg]
又は
[図:0001431094000039.jpg]
[式中、R61は、直接結合、あるいは炭素数1~20の炭化水素基、-(CH2CH2O)r-(rは1~10の数)、-C6H4-、-O-、又は-NR’-(R’は、H又は炭素数1~4の炭化水素基)から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される2~6価の基であり、
R62は、水素原子、一価の有機基、又はハロゲン原子であり、
pは、2~6であり、
qは1~5である。]
で表される単量体、またはジビニルベンゼンとする動機となる記載はない。
したがって、甲6発明において、架橋性単量体を
[図:0001431094000040.jpg]
又は
[図:0001431094000041.jpg]
[式中、R61は、直接結合、あるいは炭素数1~20の炭化水素基、-(CH2CH2O)r-(rは1~10の数)、-C6H4-、-O-、又は-NR’-(R’は、H又は炭素数1~4の炭化水素基)から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される2~6価の基であり、
R62は、水素原子、一価の有機基、又はハロゲン原子であり、
pは、2~6であり、
qは1~5である。]
で表される単量体、またはジビニルベンゼン
とすることを当業者が容易になし得たとはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲6発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
イ 本件特許発明2ないし7について
本件特許発明2ないし7は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであって、本件特許発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1と同様に判断される。
よって、本件特許発明2ないし7は、甲6発明ではなく、また、甲6発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)申立理由6についてのまとめ
したがって、本件特許発明1ないし7は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当しない。
よって、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、申立理由6によって取り消すことはできない。
6 申立理由7(明確性要件)について
(1)明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
そこで、検討する。
(2)明確性要件の判断
本件特許の請求項2ないし7の記載は、上記第3のとおりであり、それ自体に不明確な記載はなく、本件特許の明細書の記載及び図面とも整合する。
したがって、本件特許発明2ないし7に関して、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
(3)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人の上記第4 7の主張について検討する。
請求項2の「加熱前(室温)」とは、室温にて置かれた状態のことをいい、温度が数値により特定されていなくても、当業者であれば、出願時の技術常識からみて室温としての温度を理解することができる。そして、室温温度が数値により特定されていないことが、第三者の利益が不当に害されるほどのものであるとはいえない。
よって、特許異議申立人の主張は採用し得ない。
(4)申立理由7についてのまとめ
上記のとおり、本件特許の請求項2ないし7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、特許法第113条第4号に該当しない。
よって、本件特許の請求項2ないし7に係る特許は、申立理由7によって取り消すことはできない。
7 申立理由8(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、検討する。
(2)サポート要件の判断
本件特許の発明の詳細な説明の【0005】の「本開示は、平均粒径が比較的大きく(ミクロンオーダー)、かつ、粒径が揃っており、表面凹凸効果により基材に撥水性を付与することができる新規な球状架橋粒子を提供することを目的とする。」との記載から、本件特許発明1ないし7の解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は、平均粒径が比較的大きく(ミクロンオーダー)、かつ、粒径が揃っており、表面凹凸効果により基材に撥水性を付与することができる新規な球状架橋粒子を提供すること、である。
また、本件特許の発明の詳細な説明の【0006】には特許請求の範囲に対応する記載があり、【0007】には平均粒径が大きく(ミクロンオーダー)、かつ、粒径が揃っている球状架橋粒子を基材に付与することで、表面凹凸効果が発現し基材に撥水性を付与することができることが記載されている。
そして、本件特許の発明の詳細な説明の【0010】には球状架橋粒子の平均粒径について、【0012】には粒径分散度(CV値)について記載されている。
また、本件特許の発明の詳細な説明の【0014】ないし【0028】には疎水性単量体について、【0029】ないし【0038】には疎水性単量体について、【0039】ないし【0046】には架橋性単量体について、【0047】ないし【0049】には球状架橋粒子の組成について、【0050】ないし【0060】には製造方法についてそれぞれ記載されている。
そして、本件特許の発明の詳細な説明の【0107】ないし【0125】の実施例及び比較例は、平均粒径1μm以上、かつ、粒径分散度(CV値)が20%以下の球状架橋粒子であって、ホモポリマーの水接触角が90°以上で非架橋の疎水性単量体から誘導された繰り返し単位を含み、少なくとも2つの重合性二重結合を有する架橋性単量体から誘導された繰り返し単位によって架橋されている球状架橋粒子は、布処理浴に適用した際に、処理布の対水接触角において良好な撥水性を付与し、当該処理布の表面積/面積で定義される面積比が1.1以上、すなわち、表面凹凸効果を付与することを実証している。
そうすると、当業者はこれらの記載事項から、平均粒径1μm以上、かつ、粒径分散度(CV値)が20%以下の球状架橋粒子であって、ホモポリマーの水接触角が90°以上で非架橋の疎水性単量体から誘導された繰り返し単位を含み、少なくとも2つの重合性二重結合を有する架橋性単量体から誘導された繰り返し単位によって架橋されている球状架橋粒子は、表面凹凸効果により基材に撥水性を付与することができ、すなわち、発明の課題を解決できると認識できる。
そして、本件特許発明1ないし7は、上記発明の課題を解決できると認識できる球状架橋粒子をさらに限定したものである。
したがって、本件特許発明1ないし7は、本件特許の発明の詳細な説明に記載された発明であり、かつ、本件特許の発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
よって、本件特許発明1ないし7に関し、特許請求の範囲はサポート要件に適合するといえる。
(3)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人の第4 8の主張について検討する。
特許異議申立人の主張は、本件特許明細書において具体的に検証されている実施例は疎水性単量体としてステアリルアクリレートを用い、架橋性単量体としてジビニルベンゼンを用いたものであり、これら特定の疎水性単量体及び特定の架橋性単量体を用いて特定の製造方法により得られた球状架橋粒子に限られるため、この特定の疎水性単量体及び特定の架橋性単量体を用い特定の製造方法により製造された球状架橋粒子以外で発明の課題を解決できると認識できるとはいえないというものである。
しかしながら、発明の課題であるところの、平均粒径が比較的大きく(ミクロンオーダー)、かつ、粒径が揃った粒子が、エマルジョン重合法等を用いて製造し得ることは、甲1ないし甲6にも記載されているとおり、既に広く知られるところであり、請求人のいうような特定の製造方法に限られるものではない。また、疎水性単量体を使用することにより撥水性を付与することはでき、疎水性単量体としてステアリルアクリレートを用い、架橋性単量体としてジビニルベンゼンを用いたものでなければ、撥水性を付与することができる球状架橋粒子を得ることができないというものではない。
よって、特定の製造方法により製造され、かつ、疎水性単量体としてステアリルアクリレート、架橋性単量体としてジビニルベンゼンを用いた球状架橋粒子以外では、発明の課題を解決することができないとする特許異議申立人の主張には、具体的な根拠はなく、特許異議申立人の主張は採用し得ない。
(4)申立理由8についてのまとめ
上記のとおり、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、特許法第113条第4号に該当しない。
よって、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、申立理由8によって取り消すことはできない。
8 申立理由9(実施可能要件)について
(1)実施可能要件の判断基準
上記第3のとおり、本件特許発明1ないし7は物の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。
そこで、検討する。
(2)実施可能要件の判断
本件特許の発明の詳細な説明には、本件特許発明1ないし7の各発明特定事項について具体的に記載され、実施例についてもその製造方法を含め具体的に記載されている。
したがって、本件特許の発明の詳細な説明に、当業者が、本件特許の発明の詳細な説明及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1ないし7を生産し、使用することができる程度の記載があるといえる。
よって、本件特許発明1ないし7に関して、本件特許の発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を充足する。
(3)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人の第4 9の主張について検討する。
本件特許の発明の詳細な説明の【0111】~【0120】の実施例及び比較例における球状架橋粒子の製法は、実施例・比較例ともに非架橋性の疎水性単量体(1)としてSA(ステアリルアクリレート)を用いる点で共通しているが、実施例においては、架橋性単量体として用いられるDVB(ジビニルベンゼン)の添加を、重合開始3時間後(参考実施例の結果によると、重合率84.1%)のタイミングでSA、DVB、エタノール(溶媒)の混合物で添加し、その後、更に21時間重合後に室温に戻し静置置換することで、アスペクト比がほぼ1:1、平均粒径1.31μmでCV値が5.5%の球状架橋粒子が得られたことが記載されている。
当業者は、これら本件特許の発明の詳細な説明の本件特許の実施例を含む本件特許の発明の詳細な説明の記載、及び、出願時の技術常識に基づき、本件特許発明1ないし7を生産し、使用することができるといえ、当業者に過度の試行錯誤を強いるものであるとまではいえない。
よって特許異議申立人の主張は採用し得ない。
(4)申立理由9についてのまとめ
上記のとおり、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、特許法第113条第4号に該当しない。
よって、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、申立理由9によって取り消すことはできない。
第8 結語
以上のとおり、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、取消理由(決定の予告)及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700025