2021-700687
プロセス用離型フィルム、その用途、及びそれを用いた樹脂封止半導体の製造方法
- 審判番号
- 2021-700687
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-236639外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6818406
- 請求日
- 2021年07月15日
- 審決日
- 2022年10月17日
- 公報発行日
- 2023年01月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】三井化学東セロ株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人浅村特許事務所
- 【異議申立人】笠原 佳代子
- 分類
- P1652.121-YAA(B29C) / P1652.113-YAA(B29C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項特許法113条2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 19項目
第1 手続の経緯
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特許第6818406号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし16に係る特許についての出願は、平成27年12月3日を出願日とする出願であって、令和3年1月5日にその特許権の設定登録(請求項の数16)がされ、同年同月20日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年7月15日に特許異議申立人 笠原 佳代子(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし13)がされ、同年11月11日付けで取消理由が通知され、令和4年2月3日に特許権者 三井化学東セロ株式会社(以下、「特許権者」という。)から訂正請求がされると共に意見書が提出され、同年3月11日に特許権者から上申書が提出され、同年同月31日付けで訂正拒絶理由が通知され、同年4月28日に特許権者から意見書及び手続補正書が提出され、同年7月15日付けで特許異議申立人に対し訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年8月18日に特許異議申立人から意見書が提出されたものである。
第2 本件訂正について
1 訂正の内容
令和4年4月28日に提出された手続補正書により補正(訂正事項の一部を削除するものであり、要旨を変更しないものと認める。)された同年2月3日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである。なお、検討の便宜上、当審で訂正事項を整理して認定し直した。また、下線は訂正箇所を示すものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記耐熱樹脂層BのJISK7221に準じて示差走査熱量測定(DSC)によって測定した第1回昇温工程での結晶融解熱量が15J/g以上、60J/g以下である」と記載されているのを、「前記耐熱樹脂層BのJISK7221に準じて示差走査熱量測定(DSC)によって測定した第1回昇温工程での結晶融解熱量が20J/g以上、55J/g以下である」に訂正する。
併せて、請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2、5ないし13及び16も請求項1の記載を訂正したことに伴う訂正をする。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に「前記耐熱樹脂層BのJISK7221に準じて示差走査熱量測定(DSC)によって測定した第1回昇温工程での結晶融解熱量が15J/g以上、60J/g以下である」と記載されているのを、「前記耐熱樹脂層BのJISK7221に準じて示差走査熱量測定(DSC)によって測定した第1回昇温工程での結晶融解熱量が20J/g以上、55J/g以下である」に訂正する。
併せて、請求項3の記載を直接又は間接的に引用する請求項4ないし13及び16も請求項3の記載を訂正したことに伴う訂正をする。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項14に「熱硬化性樹脂による封止プロセスに用いる、請求項1から13のいずれか一項に記載のプロセス用離型フィルム」と記載されているのを、「熱硬化性樹脂による封止プロセスに用いる、下記(1)又は(2)のプロセス用離型フィルム:
(1)
離型層Aと、耐熱樹脂層Bと、を含む積層フィルムであるプロセス用離型フィルムであって、
前記離型層Aの水に対する接触角が、90°から130°であり、
0.005Nの荷重をかけた状態で23℃5分間保持後、23℃から120℃まで10℃/分の昇温速度で昇温して測定した、23℃時のサンプル長及び120℃時のサンプル長から算出した、前記積層フィルムの横(TD)方向の23℃から120℃までの熱寸法変化率が3%以下であり、
前記耐熱樹脂層BのJISK7221に準じて示差走査熱量測定(DSC)によって測定した第1回昇温工程での結晶融解熱量が20J/g以上、55J/g以下である、上記プロセス用離型フィルム;
(2)
離型層Aと、耐熱樹脂層Bと、を含む積層フィルムであるプロセス用離型フィルムであって、
前記離型層Aの水に対する接触角が、90°から130°であり、
0.005Nの荷重をかけた状態で23℃5分間保持後、23℃から170℃まで10℃/分の昇温速度で昇温して測定した、23℃時のサンプル長及び170℃時のサンプル長から算出した、前記積層フィルムの横(TD)方向の23℃から170℃までの熱寸法変化率が4%以下であり、
前記耐熱樹脂層BのJISK7221に準じて示差走査熱量測定(DSC)によって測定した第1回昇温工程での結晶融解熱量が20J/g以上、55J/g以下である、上記プロセス用離型フィルム。」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項15に「樹脂封止半導体の製造方法であって、
成形金型内の所定位置に、樹脂封止される半導体装置を配置する工程と、
前記成形金型内面に、請求項1から13のいずれか一項に記載の半導体封止プロセス用離型フィルムを、前記離型層Aが前記半導体装置と対向するように配置する工程と、
前記成形金型を型締めした後、前記半導体装置と、前記半導体封止プロセス用離型フィルムとの間に封止樹脂を注入成形する工程と、
を有する、上記樹脂封止半導体の製造方法。」と記載されているのを、「樹脂封止半導体の製造方法であって、
成形金型内の所定位置に、樹脂封止される半導体装置を配置する工程と、
前記成形金型内面に、下記(1)又は(2)の半導体封止プロセス用離型フィルムを、
離型層Aが前記半導体装置と対向するように配置する工程と、
前記成形金型を型締めした後、前記半導体装置と、前記半導体封止プロセス用離型フィルムとの間に封止樹脂を注入成形する工程と、
を有する、上記樹脂封止半導体の製造方法:
(1)
離型層Aと、耐熱樹脂層Bと、を含む積層フィルムであるプロセス用離型フィルムであって、
前記離型層Aの水に対する接触角が、90°から130°であり、
0.005Nの荷重をかけた状態で23℃5分間保持後、23℃から120℃まで10℃/分の昇温速度で昇温して測定した、23℃時のサンプル長及び120℃時のサンプル長から算出した、前記積層フィルムの横(TD)方向の23℃から120℃までの熱寸法変化率が3%以下であり、
前記耐熱樹脂層BのJISK7221に準じて示差走査熱量測定(DSC)によって測定した第1回昇温工程での結晶融解熱量が20J/g以上、55J/g以下である、上記プロセス用離型フィルム;
(2)
離型層Aと、耐熱樹脂層Bと、を含む積層フィルムであるプロセス用離型フィルムであって、
前記離型層Aの水に対する接触角が、90°から130°であり、
0.005Nの荷重をかけた状態で23℃5分間保持後、23℃から170℃まで10℃/分の昇温速度で昇温して測定した、23℃時のサンプル長及び170℃時のサンプル長から算出した、前記積層フィルムの横(TD)方向の23℃から170℃までの熱寸法変化率が4%以下であり、
前記耐熱樹脂層BのJISK7221に準じて示差走査熱量測定(DSC)によって測定した第1回昇温工程での結晶融解熱量が20J/g以上、55J/g以下である、上記プロセス用離型フィルム。」に訂正する。
(5)訂正事項5
明細書の【0084】の「実施例2~12」という記載を「実施例2~3及び6~12、並びに参考例1及び2」に訂正し、同じく【0087】の【表1】中の「実施例4」及び「実施例5」という記載を「参考例1」及び「参考例2」に訂正し、同じく【0088】の「実施例13~20」という記載を「実施例13~15及び17~20、並びに参考例3」に訂正し、同じく【0091】の【表2】中の「実施例16」という記載を「参考例3」に訂正する。
2 訂正の目的、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)請求項1についての訂正について
訂正事項1による請求項1についての訂正は、「耐熱樹脂層BのJISK7221に準じて示差走査熱量測定(DSC)によって測定した第1回昇温工程での結晶融解熱量」の数値範囲を狭くするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1による請求項1についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)請求項2についての訂正について
訂正事項1による請求項2についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1による請求項2についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)請求項3についての訂正について
訂正事項2による請求項3についての訂正は、「耐熱樹脂層BのJISK7221に準じて示差走査熱量測定(DSC)によって測定した第1回昇温工程での結晶融解熱量」の数値範囲を狭くするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項2による請求項3についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)請求項4についての訂正について
訂正事項2による請求項4についての訂正は、請求項3についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項2による請求項4についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)請求項5ないし13及び16についての訂正について
訂正事項1による請求項5ないし13及び16についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項2による請求項5ないし13及び16についての訂正は、請求項2についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1及び2による請求項5ないし13及び16についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(6)請求項14についての訂正について
訂正事項3による請求項14についての訂正は、訂正前の請求項14が請求項1から13を引用していたのを、そのうち、請求項1又は3を引用するものについて、請求項1又は3の記載を引用しない独立形式に書き下した上で、「耐熱樹脂層BのJISK7221に準じて示差走査熱量測定(DSC)によって測定した第1回昇温工程での結晶融解熱量」の数値範囲を狭くするものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして、訂正事項3による請求項14についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(7)請求項15についての訂正について
訂正事項4による請求項15についての訂正は、訂正前の請求項15が請求項1から13を引用していたのを、そのうち、請求項1又は3を引用するものについて、請求項1又は3の記載を引用しない独立形式に書き下した上で、「耐熱樹脂層BのJISK7221に準じて示差走査熱量測定(DSC)によって測定した第1回昇温工程での結晶融解熱量」の数値範囲を狭くするものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして、訂正事項4による請求項15についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(8)明細書についての訂正について
訂正事項5による明細書についての訂正は、特許請求の範囲の記載と明細書の記載の整合をとるための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項5による明細書についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 むすび
以上のとおり、訂正事項1ないし5による請求項1ないし16及び明細書についての訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1、3又は4号に掲げる事項を目的とするものである。
また、訂正事項1ないし5による請求項1ないし16及び明細書についての訂正は、いずれも、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。
さらに、訂正事項5による明細書についての訂正に係る請求項の全てについて訂正の請求は行われているから、訂正事項5による明細書についての訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第4項の規定に適合する。
なお、訂正前の請求項1ないし16は一群の請求項に該当するものである。
そして、訂正事項1ないし4による請求項1ないし16についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
また、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし13に対してされているので、訂正を認める要件として、請求項1ないし13に対しては特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されないが、請求項14ないし16に対しては上記独立特許要件が課されるところ、訂正後の請求項14ないし16に係る発明は、下記第3、6及び7のとおり、令和3年11月11日付けで通知された取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由によっては取り消すことのできない訂正後の請求項1又は3に係る発明の発明特定事項を全て有するものであるから、訂正後の請求項1又は3に係る発明と同様に上記取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由によっては特許を受けることができないものであるとはいえないし、他に訂正後の請求項14ないし16に係る発明が特許を受けることができないものであるという理由も発見しないことから、訂正後の請求項14ないし16に係る発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。
さらに、訂正後の請求項14及び15については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、それぞれ一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することの求めがある。
したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を令和4年4月28日に提出された手続補正書により補正された同年2月3日に提出された訂正請求書(以下、「訂正請求書」という。)に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし13及び16〕、14並びに15について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし13に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】離型層Aと、耐熱樹脂層Bと、を含む積層フィルムであるプロセス用離型フィルムであって、前記離型層Aの水に対する接触角が、90°から130°であり、0.005Nの荷重をかけた状態で23℃5分間保持後、23℃から120℃まで10℃/分の昇温速度で昇温して測定した、23℃時のサンプル長及び120℃時のサンプル長から算出した、前記積層フィルムの横(TD)方向の23℃から120℃までの熱寸法変化率が3%以下であり、続きを表示(全33行)前記耐熱樹脂層BのJISK7221に準じて示差走査熱量測定(DSC)によって測定した第1回昇温工程での結晶融解熱量が20J/g以上、55J/g以下である、上記プロセス用離型フィルム。【請求項2】0.005Nの荷重をかけた状態で23℃5分間保持後、23℃から120℃まで10℃/分の昇温速度で昇温して測定した、23℃時のサンプル長及び120℃時のサンプル長から算出した、前記積層フィルムの横(TD)方向の23℃から120℃までの熱寸法変化率と縦(MD)方向の23℃から120℃までの熱寸法変化率の和が6%以下である、請求項1に記載のプロセス用離型フィルム。【請求項3】離型層Aと、耐熱樹脂層Bと、を含む積層フィルムであるプロセス用離型フィルムであって、前記離型層Aの水に対する接触角が、90°から130°であり、0.005Nの荷重をかけた状態で23℃5分間保持後、23℃から170℃まで10℃/分の昇温速度で昇温して測定した、23℃時のサンプル長及び170℃時のサンプル長から算出した、前記積層フィルムの横(TD)方向の23℃から170℃までの熱寸法変化率が4%以下であり、前記耐熱樹脂層BのJISK7221に準じて示差走査熱量測定(DSC)によって測定した第1回昇温工程での結晶融解熱量が20J/g以上、55J/g以下である、上記プロセス用離型フィルム。【請求項4】0.005Nの荷重をかけた状態で23℃5分間保持後、23℃から170℃まで10℃/分の昇温速度で昇温して測定した、23℃時のサンプル長及び170℃時のサンプル長から算出した、前記積層フィルムの横(TD)方向の23℃から170℃までの熱寸法変化率と縦(MD)方向の23℃から170℃までの熱寸法変化率の和が7%以下である、請求項3に記載のプロセス用離型フィルム。【請求項5】0.005Nの荷重をかけた状態で23℃5分間保持後、23℃から120℃まで10℃/分の昇温速度で昇温して測定した、23℃時のサンプル長及び120℃時のサンプル長から算出した、前記耐熱樹脂層Bの横(TD)方向の23℃から120℃までの熱寸法変化率が3%以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載のプロセス用離型フィルム。【請求項6】0.005Nの荷重をかけた状態で23℃5分間保持後、23℃から120℃まで10℃/分の昇温速度で昇温して測定した、23℃時のサンプル長及び120℃時のサンプル長から算出した、前記耐熱樹脂層Bの横(TD)方向の23℃から120℃までの熱寸法変化率と縦(MD)方向の23℃から120℃までの熱寸法変化率の和が6%以下である、請求項5に記載のプロセス用離型フィルム。【請求項7】0.005Nの荷重をかけた状態で23℃5分間保持後、23℃から170℃まで10℃/分の昇温速度で昇温して測定した、23℃時のサンプル長及び170℃時のサンプル長から算出した、前記耐熱樹脂層Bの横(TD)方向の23℃から170℃までの熱寸法変化率が3%以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載のプロセス用離型フィルム。【請求項8】0.005Nの荷重をかけた状態で23℃5分間保持後、23℃から170℃まで10℃/分の昇温速度で昇温して測定した、23℃時のサンプル長及び170℃時のサンプル長から算出した、前記耐熱樹脂層Bの横(TD)方向の23℃から170℃までの熱寸法変化率と縦(MD)方向の23℃から170℃までの熱寸法変化率の和が4%以下である、請求項7に記載のプロセス用離型フィルム。【請求項9】前記離型層Aが、フッ素樹脂、4-メチル-1-ペンテン(共)重合体、及びポリスチレン系樹脂からなる群より選ばれる樹脂を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のプロセス用離型フィルム。【請求項10】前記耐熱樹脂層Bが、延伸フィルムを含んでなる、請求項1から9のいずれか一項に記載のプロセス用離型フィルム。【請求項11】前記延伸フィルムが、延伸ポリエステルフィルム、延伸ポリアミドフィルム、及び延伸ポリプロピレンフィルムからなる群より選ばれる、請求項10に記載のプロセス用離型フィルム。【請求項12】前記積層フィルムが、更に離型層A’を有し、かつ、該離型層Aと、前記耐熱樹脂層Bと、前記離型層A’と、をこの順で含み、該離型層A’の水に対する接触角が、90°から130°である、請求項1から11のいずれか一項に記載のプロセス用離型フィルム。【請求項13】前記離型層A及び前記離型層A’の少なくとも一方が、フッ素樹脂、4-メチル-1-ペンテン(共)重合体、及びポリスチレン系樹脂からなる群より選ばれる樹脂を含む、請求項12に記載のプロセス用離型フィルム。」
第4 特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由の概要
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令和3年7月15日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由の概要は次のとおりである。
1 申立理由A(甲第1号証を主引用文献とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし13に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし13に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 申立理由B-1(甲第3号証を主引用文献とする新規性)
本件特許の請求項1ないし13に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし13に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
3 申立理由B-2(甲第3号証を主引用文献とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし13に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明に基づいて、本件特許の出願日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし13に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
4 証拠方法
https://www.m-ep.co.jp/pdf/product/novaduran/physicality.pdf
https://web.archive.org/web/collections/20150715000000*/https://www.m-ep.co.jp/pdf/product/novaduran/physicality.pdf
なお、甲第4号証の1ないし甲第5号証は、令和4年8月18日に提出された意見書に添付されたものである。証拠の表記は、おおむね特許異議申立書及び上記意見書の記載に従った。以下、順に「甲1」のようにいう。
第5 取消理由の概要
令和3年11月11日付けで通知した取消理由(以下、「取消理由」という。)の概要は次のとおりである。
1 取消理由1(甲1を主引用文献とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし13に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし13に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
なお、該取消理由1は申立理由Aとおおむね同旨である。
2 取消理由2(甲3を主引用文献とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし13に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし13に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
なお、該取消理由2は申立理由B-2とおおむね同旨である。
第6 取消理由についての当審の判断
1 主な証拠に記載された事項等
(1)甲1に記載された事項及び甲1に記載された発明
ア 甲1に記載された事項
甲1には、「離型フィルム」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「【0011】
本発明は従来技術の前記問題点を解決し、柔軟性、離型性、耐熱性、非汚染性に優れ、特に、精密なパターンを有するプリント基板に対する埋込み性が良好で、かつ、シートの巻取りや裁断時の取扱作業性に優れる離型フィルムを提供することにある。」
・「【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、これに限定されるものではない。
【0061】
(A)ポリエステル系エラストマー
(A-1)ハイトレル5557;東レ・デュポン社製、Tm208℃、Tg-20℃
(A-2)ハイトレル6347;東レ・デュポン社製、Tm221℃、Tg3℃
(A-3)ハイトレル7247;東レ・デュポン社製、Tm221℃、Tg12℃
(A-4)ハイトレル6347M;東レ・デュポン社製、Tm215℃、Tg3℃
Tmは融点、Tgはガラス転移温度を意味する。
上記4種のポリエステル系エラストマーは、いずれもポリブチレンテレフタレートとポリエーテルのブロック共重合体である。
【0062】
(B1)結晶性芳香族ポリエステル
(B1-1)ポリブチレンテレフタレート;三菱エンジニアリングプラスチックス社製ノバデュラン5010CS、Tm223℃、Tg34℃
(B1-2)ポリトリメチレンテレフタレート;シェルケミカルズジャパン社製コルテラ9200、Tm223℃、Tg52℃
(B1-3)ポリエチレンテレフタレート;日本エステル社製NEH-2050、Tm255℃、Tg:80℃
(B1-4)イソフタル酸4mol%共重合ポリエチレンテレフタレート、Tm246℃、Tg:75℃
【0063】
(B2)CHDM-PET
・イーストマンケミカル社製PETG6763、Tg80℃
(C)その他
・ポリメチルペンテン;三井化学社製DX845、Tm233℃、Tg20℃
【0064】
本発明における測定法を以下に示す。
【0065】
<結晶化速度指標>
示差走査型熱量計(Perkin Elmer社製 Pyris1 DSC)を用い、サンプル10mgを速度20℃/minで260℃まで昇温し、ガラス転移温度(Tg)、融点(Tm)、結晶融解熱量(△Hm)を測定した。さらに、260℃で3分間ホールドした後、速度20℃/minで冷却し、結晶化ピーク温度(Tc)を測定した。融点と降温時結晶化ピーク温度の差を結晶化速度指標とした。
融点(Tm)、ガラス転移温度(Tg)、結晶化速度指標の測定におけるサンプルは、原料樹脂を一度溶融してから急冷して得た非晶化したサンプルを用いた。(A)層の結晶融解熱量は、ポリエステル系エラストマー(A)単独樹脂を、厚み、押出速度、キャスティングロール温度を積層フィルムと同条件になるようにして単層フィルムサンプルを作成し、これを用いて測定した。(B)層の結晶融解熱量においても同様に、結晶性芳香族ポリエステル(B1)とCHDM-PET(B2)とをブレンドした樹脂から積層フィルムと同じ製造条件にて単層フィルムサンプルを作成し、これを用いて測定した。
【0066】
<製膜作業性>
得られたフィルムの端部をカットした後のロール巻取り性を以下の基準に従って評価し、○を合格(良好)とした。
○:ロール巻取り性に問題ない。
△:ロール巻取り時に少々シワが入る
×:ロール巻取り時にシワなく巻き取ることが困難であった
【0067】
<耐熱性、中間層はみ出し性、埋込性、離型性>
両面に20μmのエポキシ系接着剤(東亜合成社製AS-60)を塗布した25μmポリイミドフィルム(デュポン社製カプトン100V)の両側に、厚さ35μmの銅箔を積層して3層タイプの銅張積層板を作成した。その片面に20μmのエポキシ系接着剤(東亜合成社製AS-60)を塗布した25μm厚のポリイミドフィルム(デュポン社製カプトン100V)カバーレイフィルムをのせ、さらに両側を離型フィルムで挟んだ。このとき、離型フィルムのポリエステル系エラストマー面が内側になるように配置した。その後、温度180℃、圧力3MPaで5分間熱プレスした。プレス後、素早く取り出して放冷した後、離型フィルムを剥し、以下の基準に従って耐熱性、中間層はみ出し性、埋込性、離型性の評価を行い、○以上を合格(良好)と判断した。その際、カバーレイフィルムには直径5mmの真円状の孔を開けて接着剤のはみ出しの評価に用いた。
【0068】
(耐熱性)
○:プレス後のフィルムにシワが認められない
△:プレス後のフィルムに少々シワが認められる
×:プレス後のフィルムに顕著にシワが認められる
【0069】
(中間層はみ出し性)
○:プレス後のフィルム端部より中間層ポリマーのはみ出しが認められない
△:プレス後のフィルム端部より中間層ポリマーのはみ出しが認められる
×:プレス後のフィルム端部より中間層ポリマーのはみ出しが顕著に認められ、積層板やプレス熱板へのポリマー付着が認められる
【0070】
(埋込性)
カバーレイフィルム孔部の接着剤のはみ出しを顕微鏡にて観察し、以下の基準にて評価した。
◎:接着剤のはみ出しが50μm以下
○:接着剤のはみ出しが50μmを越え70μm以下
△:接着剤のはみ出しが70μmを越え100μm以下
×:接着剤のはみ出しが100μmを越える
【0071】
(離型性)
◎:抵抗なく剥せる
○:やや抵抗はあるが積層板に影響なく剥がれる
△:抵抗はあるが、積層板の変形なく剥せる
×:抵抗が強く、剥離時に積層板の変形が伴う
【0072】
<耐汚染性>
熱脱着GC-MSを用い、180℃、10分間の加熱でフィルムから発生するガスを無極性キャピラリーカラムを用いて分離し、検出されたピーク総面積のヘキサン換算量をフィルム重量で規格化し、これをアウトガス発生量とした。アウトガス発生量は少ない程好ましく、400ppm以下を合格(良好)と判断した。
【0073】
<熱収縮率>
次の手順に従い、フィルムMD方向、およびTD方向の熱収縮率を測定した。サンプルフィルムを10mm×150mmにカットし、これに間隔100mmとなるように2本の標線を入れた試験片を5本作成した。
得られた試験片を無荷重下で170℃のオーブン中に30分間熱処理した後、試験片を取り出して室温に戻して標線間距離を測定した。熱収縮率を下式に従い求め、5本の平均値を各サンプルフィルムの熱収縮率とした。
熱収縮率(%)=(L-L´)/A×100
L:熱処理前の標線間距離(mm)、L´:熱処理後の標線間距離(mm)
【0074】
[実施例1]
2台の独立した押出機に、(A)層樹脂としてA-2を、(B)層樹脂として、B1-1とB2を40/60の質量比となるように、それぞれ供給し、いずれの層の樹脂も260℃で溶融混練し、それぞれの溶融体をTダイの出口に至る前でA/B/Aの3層状に合流積層した後、Tダイ出口より押出し、80℃に調整したキャスティングロールに密着させて冷却して、層厚みがA/B/A=20/60/20(μm)の積層フィルムを得た。キャスティングロールへの密着時間は4秒であった。
【0075】
[実施例2~12、比較例1~5]
実施例1において、(A)層および(B)層の各層に用いる樹脂の種類、B層の配合比率、層厚み構成を表1~3記載のように変更し、実施例2~7、実施例10、比較例1~5は260℃、実施例8~9は280℃で溶融させてTダイ出口より押出し、表1~2に示す温度に調整したキャスティングロールに密着させた。そのほかの条件は実施例1と同様にして、A/B/Aの構成を有する2種3層の積層フィルムを得た。キャスティングロールへの密着時間は4秒であった。
【0076】
[実施例13]
2台の独立した押出機に、(A)層樹脂としてA-2を、(B)層樹脂として、B1-1とB2を40/60の質量比となるように、それぞれ供給し、いずれの層の樹脂も260℃で溶融混練し、それぞれの溶融体をTダイの出口に至る前でA/Bの2層状に合流積層した後、Tダイ出口より押出し、80℃に調整したキャスティングロールに密着させて冷却して、層厚みがA/B=30/60(μm)の積層フィルムを得た。キャスティングロールへの密着時間は4秒であった。
【0077】
[実施例14~15、比較例6]
実施例13において、(A)層および(B)層の各層に用いる樹脂の種類、B層の配合比率、層厚み構成を表2~3記載のように変更し、260℃で溶融させてTダイ出口より押出し、表2~3に示す温度に調整したキャスティングロールに密着させた。そのほかの条件は実施例1と同様にして、A/Bの構成を有する2種2層の積層フィルムを得た。キャスティングロールへの密着時間は4秒であった。
・・・(略)・・・
【0079】
実施例1~15、比較例1~10の層構成、樹脂組成、各種特性、性能評価結果を表1~3に示す。なお、各表においてB層配合比率は質量比を示している。
【0080】
【表1】
[図:0001393059000001.jpg]
【0081】
【表2】
[図:0001393059000002.jpg]
」
イ 甲1に記載された発明
甲1に記載された事項を、特に実施例1ないし5、10、11及び13ないし15に関して整理すると、甲1には次の発明(以下、順に「甲1実施例1発明」のようにいう。)が記載されていると認める。
(ア)甲1実施例1発明
「(A)層樹脂と(B)層樹脂(ポリエステル)とを用いた(A)/(B)/(A)の2種3層構成の積層フィルムからなる高温熱プレス用の離型フィルムであって、上記積層フィルムは、MD方向熱収縮率が1.5%、TD方向熱収縮率が0.3%であり、また、上記(B)層樹脂から上記積層フィルムと同じ製造条件にて単層フィルムサンプルを作成し、測定された(B)層の結晶融解熱量ΔHmが28である、高温熱プレス用の離型フィルム。」
(イ)甲1実施例2発明
「(A)層樹脂と(B)層樹脂(ポリエステル)とを用いた(A)/(B)/(A)の2種3層構成の積層フィルムからなる高温熱プレス用の離型フィルムであって、上記積層フィルムは、MD方向熱収縮率が0.8%、TD方向熱収縮率が0.2%であり、また、上記(B)層樹脂から上記積層フィルムと同じ製造条件にて単層フィルムサンプルを作成し、測定された(B)層の結晶融解熱量ΔHmが28である、高温熱プレス用の離型フィルム。」
(ウ)甲1実施例3発明
「(A)層樹脂と(B)層樹脂(ポリエステル)とを用いた(A)/(B)/(A)の2種3層構成の積層フィルムからなる高温熱プレス用の離型フィルムであって、上記積層フィルムは、MD方向熱収縮率が1.9%、TD方向熱収縮率が0.4%であり、また、上記(B)層樹脂から上記積層フィルムと同じ製造条件にて単層フィルムサンプルを作成し、測定された(B)層の結晶融解熱量ΔHmが28である、高温熱プレス用の離型フィルム。」
(エ)甲1実施例4発明
「(A)層樹脂と(B)層樹脂(ポリエステル)とを用いた(A)/(B)/(A)の2種3層構成の積層フィルムからなる高温熱プレス用の離型フィルムであって、上記積層フィルムは、MD方向熱収縮率が0.7%、TD方向熱収縮率が0.2%であり、また、上記(B)層樹脂から上記積層フィルムと同じ製造条件にて単層フィルムサンプルを作成し、測定された(B)層の結晶融解熱量ΔHmが28である、高温熱プレス用の離型フィルム。」
(オ)甲1実施例5発明
「(A)層樹脂と(B)層樹脂(ポリエステル)とを用いた(A)/(B)/(A)の2種3層構成の積層フィルムからなる高温熱プレス用の離型フィルムであって、上記積層フィルムは、MD方向熱収縮率が1.2%、TD方向熱収縮率が0.2%であり、また、上記(B)層樹脂から上記積層フィルムと同じ製造条件にて単層フィルムサンプルを作成し、測定された(B)層の結晶融解熱量ΔHmが35である、高温熱プレス用の離型フィルム。」
(カ)甲1実施例10発明
「(A)層樹脂と(B)層樹脂(ポリエステル)とを用いた(A)/(B)/(A)の2種3層構成の積層フィルムからなる高温熱プレス用の離型フィルムであって、上記積層フィルムは、MD方向熱収縮率が1.5%、TD方向熱収縮率が0.2%であり、また、上記(B)層樹脂から上記積層フィルムと同じ製造条件にて単層フィルムサンプルを作成し、測定された(B)層の結晶融解熱量ΔHmが28である、高温熱プレス用の離型フィルム。」
(キ)甲1実施例11発明
「(A)層樹脂と(B)層樹脂(ポリエステル)とを用いた(A)/(B)/(A)の2種3層構成の積層フィルムからなる高温熱プレス用の離型フィルムであって、上記積層フィルムは、MD方向熱収縮率が1.3%、TD方向熱収縮率が0.1%であり、また、上記(B)層樹脂から上記積層フィルムと同じ製造条件にて単層フィルムサンプルを作成し、測定された(B)層の結晶融解熱量ΔHmが28である、高温熱プレス用の離型フィルム。」
(ク)甲1実施例13発明
「(A)層樹脂と(B)層樹脂(ポリエステル)とを用いた(A)/(B)の2種2層構成の積層フィルムからなる高温熱プレス用の離型フィルムであって、上記積層フィルムは、MD方向熱収縮率が1.7%、TD方向熱収縮率が0.2%であり、また、上記(B)層樹脂から上記積層フィルムと同じ製造条件にて単層フィルムサンプルを作成し、測定された(B)層の結晶融解熱量ΔHmが28である、高温熱プレス用の離型フィルム。」
(ケ)甲1実施例14発明
「(A)層樹脂と(B)層樹脂(ポリエステル)とを用いた(A)/(B)の2種2層構成の積層フィルムからなる高温熱プレス用の離型フィルムであって、上記積層フィルムは、MD方向熱収縮率が1.4%、TD方向熱収縮率が0.4%であり、また、上記(B)層樹脂から上記積層フィルムと同じ製造条件にて単層フィルムサンプルを作成し、測定された(B)層の結晶融解熱量ΔHmが28である、高温熱プレス用の離型フィルム。」
(コ)甲1実施例15発明
「(A)層樹脂と(B)層樹脂(ポリエステル)とを用いた(A)/(B)の2種2層構成の積層フィルムからなる高温熱プレス用の離型フィルムであって、上記積層フィルムは、MD方向熱収縮率が1.2%、TD方向熱収縮率が0.1%であり、また、上記(B)層樹脂から上記積層フィルムと同じ製造条件にて単層フィルムサンプルを作成し、測定された(B)層の結晶融解熱量ΔHmが28である、高温熱プレス用の離型フィルム。」
(2)甲3に記載された事項及び甲3に記載された発明
ア 甲3に記載された事項
甲3には、「プリント基板製造用離型フィルム」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「【0005】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その解決課題は、FPC製造時の補強板貼付け工程(加熱プレス)において、FPC仕上がり外観、メッキ付き性などの要求特性を満たしつつ、従来のポリエステルフィルムでは発現することのできなかったプレス板とFPC材料に対する優れた離形性を有する、FPC製造用離型フィルムを提供することにある。」
・「【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、FPC製造時の補強板貼付け工程(加熱プレス)において、FPC仕上がり外観、メッキ付き性などの要求特性を満たしつつ、従来のポリエステルフィルムでは発現することのできなかったプレス板とFPC材料に対する優れた離形性を有する、FPC製造用離型フィルムを提供することができ、その工業的価値は高い。」
・「【0035】
(4)熱収縮率(%)
フィルムを長手方向(MD)または幅方向(TD)に幅15mm長さ150mmに切り出し、100mm間隔にマーキングし、無張力状態で180℃の熱風循環式オーブン内で5分間熱処理した。熱処理前のマーキング間隔:a、熱処理後のマーキング間隔:bを測定し、下記式により熱収縮率を求めた。測定数nは3とし、その平均値をとった。
熱収縮率(%)=(a-b)×100/a
【0036】
(5)水滴接触角(°)
イオン交換水を2μL滴下し、1分後のフィルム表面における水滴接触角をθ/2法により、接触角測定器(協和界面科学株式会社製CA-A型)を使用して測定した。
【0037】
(6)熱プレスによる工程適性試験
・プレス熱板への付着物について。
(離型)フィルム/FPC/(離型)フィルムの順に重ねたものをプレス熱板で加圧(170℃、30kg/cm2、60分)後、50℃になるまで加圧冷却した後、以下の項目を評価した。
【0038】
「FPC離型性」
〇:FPCとの離型が容易であった。
×:FPCとの離型が困難であり、加工適性に問題が認められた。
【0039】
「プレス板離型性」
○:熱板との付着は認められず、良好であった。
×:熱板への付着が生じ、加工適性に問題があった。
【0040】
「メッキ付き性」
○:必要メッキ面積の90%以上にメッキが付いているもの
×:メッキ付きが必要メッキ面積の90%未満のもの」
・「【実施例1】
【0042】
平均粒径2.4μmの無定型シリカ粒子を0.07%含有する、固有粘度0.66のポリエチレンテレフタレートチップをベント付二軸押出機に直接投入して270℃で溶融、混練し、得られた溶融体をTダイを経由してスリット状に押出し、30℃の冷却ドラム上で冷却して無延伸シートを得た。次いで当該無延伸シートを縦方向に82℃で3.3倍延伸したフィルムの両面に、ポリビニルアルコール:フッ素系アクリル樹脂:ヘキサメトキシメチルメラミンの尿素共重合体=50:30:20の比率で混合させた液をバーコート方式により塗布した後、テンターに導き、横方向に120℃で4.1倍延伸し、段階的に昇温後、232℃で3秒間熱処理した。次いで180℃の雰囲気下、幅方向に2%の弛緩処理(テンターレール幅を狭める)を行った。最終的に、両面に塗工量(乾燥後)が0.02g/m2の塗布層が設けられた、厚さ38μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【実施例2】
【0043】
実施例1において、塗布層の配合比率をポリビニルアルコール:フッ素系アクリル樹脂:ヘキサメトキシメチルメラミンの尿素共重合体=35:45:20の比率に変更した以外は同様にして、両面に塗工量(乾燥後)が0.02g/m2の塗布層が設けられた、厚さ38μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【実施例3】
【0044】
実施例1において、塗布層の配合比率をポリビニルアルコール:フッ素系アクリル樹脂:ヘキサメトキシメチルメラミンの尿素共重合体=70:10:20の比率に変更した以外は同様にして、両面に塗工量(乾燥後)が0.02g/m2の塗布層が設けられた、厚さ38μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。」
・「【0048】
【表1】
[図:0001393059000003.jpg]
」
イ 甲3に記載された発明
甲3に記載された事項を、特に実施例1ないし3に関して整理すると、甲3には次の発明(以下、順に「甲3実施例1発明」のようにいう。)が記載されていると認める。
(ア)甲3実施例1発明
「ポリエチレンテレフタレートチップをベント付二軸押出機に直接投入して溶融、混練し、得られた溶融体をTダイを経由してスリット状に押出し、冷却ドラム上で冷却して無延伸シートを得て、次いで当該無延伸シートを縦方向に3.3倍延伸したフィルムの両面に、ポリビニルアルコール:フッ素系アクリル樹脂:ヘキサメトキシメチルメラミンの尿素共重合体を混合させた液を塗布した後、テンターに導き、横方向に4.1倍延伸し、段階的に昇温後、熱処理し、両面に塗布層が設けられた、厚さ38μmの二軸配向ポリエステルフィルムを用いたプリント基板製造用離型フィルムであって、上記二軸配向ポリエステルフィルムは、塗布層表面の水滴接触角が110°であり、MD方向の熱収縮率が2.1%、TD方向の熱収縮率が0.3%である、プリント基板製造用離型フィルム。」
(イ)甲3実施例2発明
「ポリエチレンテレフタレートチップをベント付二軸押出機に直接投入して溶融、混練し、得られた溶融体をTダイを経由してスリット状に押出し、冷却ドラム上で冷却して無延伸シートを得て、次いで当該無延伸シートを縦方向に3.3倍延伸したフィルムの両面に、ポリビニルアルコール:フッ素系アクリル樹脂:ヘキサメトキシメチルメラミンの尿素共重合体を混合させた液を塗布した後、テンターに導き、横方向に4.1倍延伸し、段階的に昇温後、熱処理し、両面に塗布層が設けられた、厚さ38μmの二軸配向ポリエステルフィルムを用いたプリント基板製造用離型フィルムであって、当該二軸配向ポリエステルフィルムは、塗布層表面の水滴接触角が113°であり、MD方向の熱収縮率が2.1%、TD方向の熱収縮率が0.3%である、プリント基板製造用離型フィルム。」
(ウ)甲3実施例3発明
「ポリエチレンテレフタレートチップをベント付二軸押出機に直接投入して溶融、混練し、得られた溶融体をTダイを経由してスリット状に押出し、冷却ドラム上で冷却して無延伸シートを得て、次いで当該無延伸シートを縦方向に3.3倍延伸したフィルムの両面に、ポリビニルアルコール:フッ素系アクリル樹脂:ヘキサメトキシメチルメラミンの尿素共重合体を混合させた液を塗布した後、テンターに導き、横方向に4.1倍延伸し、段階的に昇温後、熱処理し、両面に塗布層が設けられた、厚さ38μmの二軸配向ポリエステルフィルムを用いたプリント基板製造用離型フィルムであって、当該二軸配向ポリエステルフィルムは、塗布層表面の水滴接触角が105°であり、MD方向の熱収縮率が2.1%、TD方向の熱収縮率が0.3%である、プリント基板製造用離型フィルム。」
2 取消理由1(甲1を主引用文献とする進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 甲1実施例1発明との対比・判断
(ア)対比
本件特許発明1と甲1実施例1発明を対比する。
甲1実施例1発明における「(A)層樹脂」の「層」は、本件特許発明1における「離型層A」に相当する。
甲1実施例1発明における「(B)層」は、本件特許発明1における「耐熱樹脂層B」に相当する。
甲1実施例1発明における「積層フィルムからなる高温熱プレス用の離型フィルム」は、本件特許発明1における「積層フィルムであるプロセス用離型フィルム」に相当する。
したがって、両者は、以下の点で一致する。
<一致点>
「離型層Aと、耐熱樹脂層Bと、を含む積層フィルムであるプロセス用離型フィルム。」
そして、両者は、以下の点で相違又は一応相違する。
<相違点1-1>
本件特許発明1においては「前記離型層Aの水に対する接触角が、90°から130°」であると特定されているのに対して、甲1実施例1発明においてはそのようには特定されていない点。
<相違点1-2>
本件特許発明1においては「0.005Nの荷重をかけた状態で23℃5分間保持後、23℃から120℃まで10℃/分の昇温速度で昇温して測定した、23℃時のサンプル長及び120℃時のサンプル長から算出した、前記積層フィルムの横(TD)方向の23℃から120℃までの熱寸法変化率が3%以下」であると特定されているのに対して、甲1実施例1発明においてはそのようには特定されていない点。
<相違点1-3>
本件特許発明1においては「前記耐熱樹脂層BのJISK7221に準じて示差走査熱量測定(DSC)によって測定した第1回昇温工程での結晶融解熱量が20J/g以上、55J/g以下」であると特定されているのに対して、甲1実施例1発明においてはそのようには特定されていない点。
(イ)判断
そこで、事案に鑑み、相違点1-2について検討する。
甲1には、甲1実施例1発明における「積層フィルムからなる高温熱プレス用の離型フィルム」を「0.005Nの荷重をかけた状態で23℃5分間保持後、23℃から120℃まで10℃/分の昇温速度で昇温して」「23℃時のサンプル長及び120℃時のサンプル長」を測定し、それらの「サンプル長」から「前記積層フィルムの横(TD)方向の23℃から120℃までの熱寸法変化率」を算出することは記載されていないし、当然、その値が「3%以下」であることは記載されていない。
また、甲1実施例1発明における「積層フィルムからなる高温熱プレス用の離型フィルム」が「0.005Nの荷重をかけた状態で23℃5分間保持後、23℃から120℃まで10℃/分の昇温速度で昇温して測定した、23℃時のサンプル長及び120℃時のサンプル長から算出した、前記積層フィルムの横(TD)方向の23℃から120℃までの熱寸法変化率が3%以下」である蓋然性が高いともいえない。
そうすると、相違点1-2は、実質的な相違点である。
また、甲1実施例1発明において、相違点1-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載は、甲1にはないし、他の証拠にもない。
したがって、甲1実施例1発明において、相違点1-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして、本件特許発明1の奏する「従来技術では実現できなかった高いレベルの離型性、皺の抑制、及び金型追従性を兼ね備えるので、これを用いることで、半導体チップ等を樹脂封止等して得られる成形品を容易に離型できるとともに、皺や欠けなどの外観不良のない成形品を、高い生産性で製造することができる」(本件特許の発明の詳細な説明の【0010】)という効果は、甲1実施例1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
なお、相違点1-2に関して、特許異議申立人は、特許異議申立書において、「段落0057には、・・・(略)・・・ここで、1N=0.102kgfのため、荷重0.005Nは0.51gfに相当し、フィルムのタルミをなくす程度の微少な張力が生じるものの、フィルムの熱寸法変化率に与える影響は微小であるといえる。また、昇温前に0.005Nの荷重をかけた状態で23℃5分間保持する操作についても、室温に近い温度のため、室温での放置状態と変わりがなく、フィルムの熱寸法変化率に与える影響は微小であるといえる。更に、熱寸法変化率は、昇温後の最終温度に大きく影響される一方で昇温速度の影響はそれほど大きくない。
そして、120℃における熱収縮率は、180℃の場合より小さくなることが周知であるため、甲第1号証の実施例1~15について、120℃における熱収縮率は、-0.7~0.4%よりその絶対値が小さくなる蓋然性が高い。
従って、本件特許発明と甲第1号証とでは、熱寸法変化率測定の際の昇温最終温度が相違すると共に、測定条件に若干の相違があるものの、同じ条件で測定した場合には、甲第1号証の離型フィルムのTD方向の熱寸法変化率が3%以下である蓋然性が高い。」(特許異議申立書第13ページ第11行ないし第15ページ第3行)旨主張する。
そこで、検討する。
甲1の【0073】に「<熱収縮率>
次の手順に従い、フィルムMD方向、およびTD方向の熱収縮率を測定した。サンプルフィルムを10mm×150mmにカットし、これに間隔100mmとなるように2本の標線を入れた試験片を5本作成した。
得られた試験片を無荷重下で170℃のオーブン中に30分間熱処理した後、試験片を取り出して室温に戻して標線間距離を測定した。熱収縮率を下式に従い求め、5本の平均値を各サンプルフィルムの熱収縮率とした。
熱収縮率(%)=(L-L´)/A×100
L:熱処理前の標線間距離(mm)、L´:熱処理後の標線間距離(mm)」と記載されており、当該熱収縮率を計算するのに熱処理後に室温に戻して測定された標線間距離が用いられているから、上記熱収縮率は、熱膨張による寸法変化分を含まず、フィルム成形時の残留応力に起因した寸法変化分のみを含むといえる。そして、甲1実施例1発明は、TD方向熱収縮率が0.3%(正の値)であるから、上記積層フィルム成形時の残留応力に起因してTD方向に熱収縮する(TD方向の寸法変化分が負の値である)ものといえる。
しかし、甲1実施例1発明における「離型フィルム」の昇温時の寸法を測定した場合の熱膨張による寸法変化分が、フィルム成形時の残留応力に起因した寸法変化分と比べて微小であるといえる証拠は示されていないし、「熱寸法変化率」がどの程度になるかを推定できる証拠も示されていない。
したがって、甲1実施例1発明における「離型フィルムのTD方向の熱寸法変化率が3%以下である蓋然性が高い」とはいえず、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
また、相違点1-2に関して、特許異議申立人は、令和4年8月18日に提出された意見書において、「甲第4号証の1には下記の図が示されている(16頁)。
[図:0001393059000004.jpg]
ここで、この技術資料では、ノバデュラン5010R5が非強化タイプの代表的なものとして取り上げられている(5010G30は強化タイプの代表例)。このグラフにおいて、温度20℃から120℃までを平均したノバデュラン5010R5の線熱膨張係数は、約15×10-5/℃である。このため、100℃の昇温において、100×15×10-5=1.5%程度の膨張が生じることが明らかである。
従って、特許権者は、「熱寸法変化率」を熱収縮率のみから推定することはできない旨の主張をしているが、PBTの線熱膨張係数の温度依存性は、当業者に周知技術であるため、「熱寸法変化率」を熱収縮率のみから推定することはできる。例えば引用された甲1実施例14発明の場合、170℃のTD方向の熱収縮率が0.4%であるため、120℃における熱寸法変化率は、1.5―0.4=1.1%である。その結果、請求項1で特定された「熱寸法変化率が3%以下」であることが明らかである。」(上記意見書第3ページ末行ないし第4ページ下から5行)旨の主張もしている。
そこで、検討する。
本件特許発明1における「熱寸法変化率」が「3%以下」という規定は、「積層フィルム」に関する規定であるところ、上記意見書の「例えば引用された甲1実施例14発明の場合、170℃のTD方向の熱収縮率が0.4%であるため、120℃における熱寸法変化率は、1.5―0.4=1.1%である。」という計算における「1.5」は、「ノバデュラン5010R5」単層の値であり、「積層フィルム」とした場合の値ではないので、その計算結果が、「積層フィルム」に関する規定である「熱寸法変化率」に当てはまるとはいえないし、当てはまるとする証拠も示されていない。
したがって、「請求項1で特定された「熱寸法変化率が3%以下」であることが明らかである」とはいえず、特許異議申立人の上記主張も採用できない。
(ウ)甲1実施例1発明との対比・判断のまとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1実施例1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 甲1実施例2発明ないし甲1実施例5発明、甲1実施例10発明、甲1実施例11発明及び甲1実施例13発明ないし甲1実施例15発明のいずれかとの対比・判断
本件特許発明1と、甲1実施例2発明ないし甲1実施例5発明、甲1実施例10発明、甲1実施例11発明及び甲1実施例13発明ないし甲1実施例15発明のいずれかとの対比・判断は、上記アと同様である。
すなわち、本件特許発明1は、甲1実施例2発明ないし甲1実施例5発明、甲1実施例10発明、甲1実施例11発明及び甲1実施例13発明ないし甲1実施例15発明のいずれか並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件特許発明1についてのまとめ
したがって、本件特許発明1は、甲1実施例1発明ないし甲1実施例5発明、甲1実施例10発明、甲1実施例11発明及び甲1実施例13発明ないし甲1実施例15発明のいずれか並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本件特許発明3について
ア 甲1実施例1発明との対比・判断
(ア)対比
本件特許発明3と甲1実施例1発明を対比すると、上記(1)アの一致点で一致し、上記(1)アの相違点1-1及び1-3に加え、以下の点で相違又は一応相違する。
<相違点1-2a>
本件特許発明3においては「0.005Nの荷重をかけた状態で23℃
5分間保持後、23℃から170℃まで10℃/分の昇温速度で昇温して測定した、23℃時のサンプル長及び170℃時のサンプル長から算出した、前記積層フィルムの横(TD)方向の23℃から170℃までの熱寸法変化率が4%以下」であるのに対して、甲1実施例1発明にはそのような特定がない点。
(イ)判断
そこで、事案に鑑み、相違点1-2aについて検討する。
甲1には、甲1実施例1発明における「積層フィルムからなる高温熱プレス用の離型フィルム」を「0.005Nの荷重をかけた状態で23℃5分間保持後、23℃から170℃まで10℃/分の昇温速度で昇温して」「23℃時のサンプル長及び170℃時のサンプル長」を測定し、それらの「サンプル長」から「前記積層フィルムの横(TD)方向の23℃から170℃までの熱寸法変化率」を算出することは記載されていないし、当然、その値が「4%以下」であることは記載されていない。
また、甲1実施例1発明における「積層フィルムからなる高温熱プレス用の離型フィルム」が「0.005Nの荷重をかけた状態で23℃5分間保持後、23℃から170℃まで10℃/分の昇温速度で昇温して測定した、23℃時のサンプル長及び170℃時のサンプル長から算出した、前記積層フィルムの横(TD)方向の23℃から170℃までの熱寸法変化率が4%以下」である蓋然性が高いともいえない。
そうすると、相違点1-2aは、実質的な相違点である。
また、甲1実施例1発明において、相違点1-2aに係る本件特許発明3の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載は、甲1にはないし、他の証拠にもない。
したがって、甲1実施例1発明において、相違点1-2aに係る本件特許発明3の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして、本件特許発明3の奏する「従来技術では実現できなかった高いレベルの離型性、皺の抑制、及び金型追従性を兼ね備えるので、これを用いることで、半導体チップ等を樹脂封止等して得られる成形品を容易に離型できるとともに、皺や欠けなどの外観不良のない成形品を、高い生産性で製造することができる」という効果は、甲1実施例1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
なお、相違点1-2aに関する特許異議申立人の主張(特許異議申立書第17ページ第15行ないし第18ページ第12行)は、相違点1-2に関する主張と実質的に同様であるから、上記(1)ア(イ)と同様に、採用できない。
(ウ)甲1実施例1発明との対比・判断のまとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明3は、甲1実施例1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 甲1実施例2発明ないし甲1実施例5発明、甲1実施例10発明、甲1実施例11発明及び甲1実施例13発明ないし甲1実施例15発明のいずれかとの対比・判断
本件特許発明3と、甲1実施例2発明ないし甲1実施例5発明、甲1実施例10発明、甲1実施例11発明及び甲1実施例13発明ないし甲1実施例15発明のいずれかとの対比・判断は、上記アと同様である。
すなわち、本件特許発明3は、甲1実施例2発明ないし甲1実施例5発明、甲1実施例10発明、甲1実施例11発明及び甲1実施例13発明ないし甲1実施例15発明のいずれか並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件特許発明3についてのまとめ
したがって、本件特許発明3は、甲1実施例1発明ないし甲1実施例5発明、甲1実施例10発明、甲1実施例11発明及び甲1実施例13発明ないし甲1実施例15発明のいずれか並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
以下、甲1実施例1発明ないし甲1実施例5発明、甲1実施例10発明、甲1実施例11発明及び甲1実施例13発明ないし甲1実施例15発明を総称して、甲1に記載された発明という。
(3)本件特許発明2及び4ないし13について
本件特許発明2及び4ないし13は、請求項1又は3を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1又は3の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1又は3と同様に、甲1に記載された発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)取消理由1についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし13は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし13に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取消理由1によっては取り消すことはできない。
3 取消理由2(甲第3号証を主引用文献とする進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 甲3実施例1発明との対比・判断
(ア)対比
本件特許発明1と甲3実施例1発明を対比する。
甲3実施例1発明における「塗布層」は、本件特許発明1における「離型層A」に相当する。
甲3実施例1発明における「塗布層表面の水滴接触角」は、本件特許発明1における「離型層Aの水に対する接触角」に相当する。
甲3実施例1発明における「ポリエチレンテレフタレートチップ」から製造された「フィルム」は、本件特許発明1における「耐熱樹脂層B」に相当する。
甲3実施例1発明における「両面に塗布層が設けられた、厚さ38μmの二軸配向ポリエステルフィルムを用いたプリント基板製造用離型フィルム」は、本件特許発明1における「積層フィルムであるプロセス用離型フィルム」に相当する。
したがって、両者は、以下の点で一致する。
<一致点>
「離型層Aと、耐熱樹脂層Bと、を含む積層フィルムであるプロセス用離型フィルムであって、前記離型層Aの水に対する接触角が、90°から130°である、上記プロセス用離型フィルム。」
そして、両者は、以下の点で相違又は一応相違する。
<相違点3-1>
本件特許発明1においては「0.005Nの荷重をかけた状態で23℃5分間保持後、23℃から120℃まで10℃/分の昇温速度で昇温して測定した、23℃時のサンプル長及び120℃時のサンプル長から算出した、前記積層フィルムの横(TD)方向の23℃から120℃までの熱寸法変化率が3%以下」と特定されているのに対して、甲3実施例1発明においてはそのようには特定されていない点。
<相違点3-2>
本件特許発明1においては「前記耐熱樹脂層BのJISK7221に準じて示差走査熱量測定(DSC)によって測定した第1回昇温工程での結晶融解熱量が20J/g以上、55J/g以下」であるのに対して、甲3実施例1発明においてはそのようには特定されていない点。
(イ)判断
そこで、相違点3-1について検討する。
甲3には、甲3実施例1発明における「両面に塗布層が設けられた、厚さ38μmの二軸配向ポリエステルフィルムを用いたプリント基板製造用離型フィルム」を「0.005Nの荷重をかけた状態で23℃5分間保持後、23℃から120℃まで10℃/分の昇温速度で昇温して」「23℃時のサンプル長及び120℃時のサンプル長」を測定し、それらの「サンプル長」から「前記積層フィルムの横(TD)方向の23℃から120℃までの熱寸法変化率」を算出することは記載されていないし、当然、その値が「3%以下」であることは記載されていない。
また、甲3実施例1発明における「両面に塗布層が設けられた、厚さ38μmの二軸配向ポリエステルフィルムを用いたプリント基板製造用離型フィルム」が「0.005Nの荷重をかけた状態で23℃5分間保持後、23℃から120℃まで10℃/分の昇温速度で昇温して測定した、23℃時のサンプル長及び120℃時のサンプル長から算出した、前記積層フィルムの横(TD)方向の23℃から120℃までの熱寸法変化率が3%以下」である蓋然性が高いともいえない。
そうすると、相違点3-1は、実質的な相違点である。
また、甲3実施例1発明において、相違点3-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載は、甲3にはないし、他の証拠にもない。
したがって、甲3実施例1発明において、相違点3-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして、本件特許発明1の奏する「従来技術では実現できなかった高いレベルの離型性、皺の抑制、及び金型追従性を兼ね備えるので、これを用いることで、半導体チップ等を樹脂封止等して得られる成形品を容易に離型できるとともに、皺や欠けなどの外観不良のない成形品を、高い生産性で製造することができる」という効果は、甲3実施例1発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
なお、相違点3-1に関する特許異議申立人の主張(特許異議申立書第25ページ第27行ないし第27ページ第14行及び令和4年8月18日に提出された意見書第6ページ第21行ないし第7ページ第10行)は、相違点1-2に関する主張と実質的に同様であるから、上記2(1)ア(イ)と同様に、採用できない。
(ウ)甲3実施例1発明との対比・判断のまとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲3実施例1発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 甲3実施例2発明又は甲3実施例3発明との対比・判断
本件特許発明1と、甲3実施例2発明又は甲3実施例3発明との対比・判断は、上記アと同様である。
すなわち、本件特許発明1は、甲3実施例2発明又は甲3実施例3発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件特許発明1についてのまとめ
したがって、本件特許発明1は、甲3実施例1発明ないし甲3実施例3発明のいずれか並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本件特許発明3について
ア 甲3実施例1発明との対比・判断
(ア)対比
本件特許発明3と甲3実施例1発明を対比すると、上記(1)アの一致点で一致し、上記(1)アの相違点3-2に加え、以下の点で相違又は一応相違する。
<相違点3-1a>
本件特許発明3においては「0.005Nの荷重をかけた状態で23℃5分間保持後、23℃から170℃まで10℃/分の昇温速度で昇温して測定した、23℃時のサンプル長及び170℃時のサンプル長から算出した、前記積層フィルムの横(TD)方向の23℃から170℃までの熱寸法変化率が4%以下」と特定されているのに対して、甲3実施例1発明にはおいてはそのようには特定されていない点。
(イ)判断
そこで、相違点3-1aについて検討する。
甲3には、甲3実施例1発明における「両面に塗布層が設けられた、厚さ38μmの二軸配向ポリエステルフィルムを用いたプリント基板製造用離型フィルム」を「0.005Nの荷重をかけた状態で23℃5分間保持後、23℃から170℃まで10℃/分の昇温速度で昇温して」「23℃時のサンプル長及び170℃時のサンプル長」を測定し、それらの「サンプル長」から「前記積層フィルムの横(TD)方向の23℃から170℃までの熱寸法変化率」を算出することは記載されていないし、当然、その値が「4%以下」であることは記載されていない。
また、甲3実施例1発明における「両面に塗布層が設けられた、厚さ38μmの二軸配向ポリエステルフィルムを用いたプリント基板製造用離型フィルム」が「0.005Nの荷重をかけた状態で23℃5分間保持後、23℃から170℃まで10℃/分の昇温速度で昇温して測定した、23℃時のサンプル長及び170℃時のサンプル長から算出した、前記積層フィルムの横(TD)方向の23℃から170℃までの熱寸法変化率が4%以下」である蓋然性が高いともいえない。
そうすると、相違点3-1aは、実質的な相違点である。
また、甲3実施例1発明において、相違点3-1aに係る本件特許発明3の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載は、甲3にはないし、他の証拠にもない。
したがって、甲3実施例1発明において、相違点3-1aに係る本件特許発明3の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして、本件特許発明3の奏する「従来技術では実現できなかった高いレベルの離型性、皺の抑制、及び金型追従性を兼ね備えるので、これを用いることで、半導体チップ等を樹脂封止等して得られる成形品を容易に離型できるとともに、皺や欠けなどの外観不良のない成形品を、高い生産性で製造することができる」という効果は、甲3実施例1発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
なお、相違点3-1aに関する特許異議申立人の主張(特許異議申立書第29ページ第12行ないし第30ページ第1行)は、相違点1-2に関する主張と実質的に同様であるから、上記2(1)ア(イ)と同様に、採用できない。
(ウ)甲3実施例1発明との対比・判断のまとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明3は、甲3実施例1発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 甲3実施例2発明又は甲3実施例3発明との対比・判断
本件特許発明3と、甲3実施例2発明又は甲3実施例3発明との対比・判断は、上記アと同様である。
すなわち、本件特許発明3は、甲3実施例2発明又は甲3実施例3発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件特許発明3についてのまとめ
したがって、本件特許発明3は、甲1実施例1発明ないし甲1実施例3発明のいずれか並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
以下、甲3実施例1発明ないし甲3実施例3発明を総称して、甲3に記載された発明という。
(3)本件特許発明2及び4ないし13について
本件特許発明2及び4ないし13は、請求項1又は3を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1又は3の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1又は3と同様に、甲3に記載された発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)取消理由2についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし13は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし13に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取消理由2によっては取り消すことはできない。
第7 取消理由に採用しなかった特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由について
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取消理由に採用しなかった特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由は、申立理由B-1(甲3を主引用文献とする新規性)である。
そこで、検討する。
上記第6 3(1)ア(ア)及び(イ)のとおり、本件特許発明1と甲3に記載された発明の間には、実質的な相違点である相違点3-1があるから、本件特許発明1は甲3に記載された発明であるとはいえない。
上記第6 3(2)ア(ア)及び(イ)のとおり、本件特許発明3と甲3に記載された発明の間には、実質的な相違点である相違点3-1aがあるから、本件特許発明3は甲3に記載された発明であるとはいえない。
本件特許発明2及び4ないし13は、請求項1又は3を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1又は3の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1又は3と同様に、甲3に記載された発明であるとはいえない。
したがって、本件特許発明1ないし13は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし13に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由B-1によっては取り消すことはできない。
第8 結語
上記第6及び7のとおり、本件特許の請求項1ないし13に係る特許は、取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700687