特許異議申立
2026-700116
電気融着装置
- 審判番号
- 2026-700116
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-023211
- 登録番号
- 7720268
- 請求日
- 2026年02月09日
- 審決日
- 2026年05月26日
- 公報発行日
- 2026年06月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社クボタケミックス
- 【権利者代理人】山田 義人
- 【異議申立人】赤松 智信
- 審判長/審判官
- 審判長 角田 慎治
- 審判官 中木 努
- 審判官 本郷 彰
- 分類
- P1652.113-Y (B29C) / P1652.121-Y (B29C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第113条第1項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7720268号発明「電気融着装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7720268号の請求項1、2、4、5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7720268号(以下、「本件特許」という。)の請求項1から請求項5に係る特許についての出願は、令和4年2月17日に出願され、令和7年7月30日にその特許権の設定登録がなされ、令和7年8月7日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、請求項1、2、4、5に係る特許に対して、令和8年2月9日に特許異議申立人 赤松 智信(以下、単に「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされたものである。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1、2、4、5に係る発明(以下、「本件特許発明1」、「本件特許発明2」、「本件特許発明4」、「本件特許発明5」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1、2、4、5に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
電気融着継手と樹脂管とを電気融着接合する電気融着装置であって、
筐体、
前記筐体内に設けられ、当該電気融着装置の動作を制御する制御部、および
前記筐体内に設けられ、前記電気融着継手に対して電力を供給する蓄電池を備え、
前記制御部は、
前記蓄電池の電池残量を検出する残量検出部、
必要電力量を含む前記電気融着継手に関する情報を取得する継手情報取得部、
前記残量検出部によって検出された電池残量および前記継手情報取得部によって取得された必要電力量に基づいて、当該継手情報取得部によって前記必要電力量の情報が取得された電気融着継手を用いた融着動作が完了可能かどうかを判定する融着可否判定部、および
前記融着可否判定部によって前記電気融着継手を用いた融着動作が完了できないと判定されたとき、当該電気融着継手に対する通電の開始を規制する通電規制部を含む、電気融着装置。
【請求項2】
前記蓄電池は、前記筐体に対して着脱可能に設けられる、請求項1記載の電気融着装置。」
「【請求項4】
前記筐体に設けられた表示部を備え、
前記制御部は、前記残量検出部によって検出された電池残量を前記表示部に表示させる表示制御部を含む、請求項1から3のいずれかに記載の電気融着装置。
【請求項5】
前記筐体に設けられた表示部を備え、
前記制御部は、
前記残量検出部によって検出された電池残量および前記継手情報取得部によって取得された必要電力量に基づいて、融着可能な前記電気融着継手の数量を算出する数量算出部、および
前記数量算出部によって検出された数量を前記表示部に表示させる表示制御部を含む、請求項1から3のいずれかに記載の電気融着装置。」
第3 申立人の主張及び証拠方法
1 申立人の主張の概要
申立人が特許異議申立書において主張する、本件特許についての特許異議申立の理由の概要は、以下のとおりである。
<申立理由1>
本件特許発明1、2、4、5は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。
したがって、本件特許発明1、2、4、5に係る特許は、同法第113条第1項第2号に該当するから、取り消されるべきものである。
<申立理由2>
本件特許発明1、2、4、5は、甲第1号証に記載された発明、並びに、甲第2号証から甲第4号証に記載された技術的事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件特許発明1、2、4、5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第1項第2号に該当するから、取り消されるべきものである。
<申立理由3>
本件特許発明1は、甲第4号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。
したがって、本件特許発明1に係る特許は、同法第113条第1項第2号に該当するから、取り消されるべきものである。
<申立理由4>
本件特許発明1、2、4、5は、甲第4号証に記載された発明、並びに、甲第1号証に記載された技術的事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件特許発明1、2、4、5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第1項第2号に該当するから、取り消されるべきものである。
2 申立人が提出した証拠方法
甲第1号証:特開2018-128067号公報
甲第2号証:特開2007-145011号公報
甲第3号証:特開平11-216777号公報
甲第4号証:米国特許第6441352号明細書
第4 各甲号証に記載された事項
1 甲第1号証の記載事項
(1)甲第1号証(特開2018-128067号公報)には、以下の各記載がある。(なお、下線は合議体で付与した。)
ア 「【0020】
本発明による電気融着器の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図面中、同一構成要素には同一符号を付す。
図1は、本発明による電気融着器の第1の実施の形態を示す回路図であり、図2は、図1の操作表示部の一例を示す図であり、図3は、図1のEEPROMに格納される電気融着記録の一例を示す図であり、図4は、図1の電気融着器の操作及び表示のフローチャートである。図1において、電気融着器1は、バッテリ電源式樹脂管電気融着器であり、電気融着継手2を樹脂管(図示せず)に電気融着する。
【0021】
電気融着器1は、バッテリパック11と、本体12と、ケーブル13aと、ケーブル13bと、を備える。バッテリパック11は、電気融着器1(本体12)から取外し自在であり、樹脂ケース(図示せず)に収納されるバッテリ電源21及びマイコン22を有する。
(中略)
【0022】
本体12は、主スイッチ23と、継電器24と、FET25と、気温センサ26と、操作表示部27と、通信部28と、シャント抵抗29と、端子30と、端子31と、インタフェース(I/F)32と、EEPROM33と、制御部(CPU)34と、を有する。
(中略)
【0023】
主スイッチ23は、電気融着器1の使用時には、バッテリ電源21から本体12に電力を供給するためにオンにされ、電気融着器1の不使用時には、バッテリ電源21から本体12に電力を供給しないようにするためにオフにされる。継電器24は、主スイッチ23がオンであるときの操作表示部27の操作に応じて、制御部34によってオン又はオフにされる。継電器24がオンになると、電気融着継手2の電気融着を開始する。」
イ 「【0027】
通信部28は、制御部34の指示に応じて、バッテリ電源21の電圧及びバッテリ残量の数値データをマイコン22に要求し、要求に応じてマイコン22から取得したバッテリ電源21の電圧及びバッテリ残量の数値データを制御部34に送出する。」
ウ 「【0038】
その後、制御部34は、EEPROM33に格納された融着記録を照合し(ステップS4)、取得した気温データの外気温で所望の個数(例えば、1日の作業で使用する個数)の電気融着継手2の電気融着を行うときに消費する総融着エネルギーを算出する(ステップS5)。この場合、制御部34は、特定の製造会社によって製造された所定の口径を有する1個の電気融着継手2の電気融着で消費する融着エネルギーを融着記録に基づいて取得し、取得した融着エネルギーと電気融着継手2の個数との積を総バッテリ容量として算出する。
(中略)
【0040】
電気融着継手2の電気融着で消費する融着エネルギーが3WHである場合、使用する電気融着継手2の本数が40個であるときには、総バッテリ容量は120WHとなり、使用する電気融着継手2の本数が80個であるときには、総バッテリ容量は240WHとなる。
(中略)
【0042】
次に、制御部34は、バッテリ残量に相当するエネルギーが総融着エネルギー以上であるか否かを判断する(ステップS6)。
(中略)
【0043】
バッテリ残量に相当するエネルギーが総融着エネルギー未満である場合、制御部34は、充電又はバッテリ交換の告知を操作表示部27の表示部27aに表示する(ステップS7)。」
エ 「【0078】
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。例えば、上記実施の形態において、バッテリ電源21(バッテリパック11)が取外し自在である場合について説明したが、バッテリ電源21が電気融着器に内蔵されてもよい。」
(2)甲第1号証に記載された発明
ア 上記「(1)」の「ア」の段落0020には「電気融着器1は、バッテリ電源式樹脂管電気融着器であり、電気融着継手2を樹脂管(図示せず)に電気融着する」と記載されている。
そうすると、甲第1号証には「電気融着器は、バッテリ電源式樹脂管電気融着器であり、電気融着継手を樹脂管に電気融着する」ことが記載されている、といえる。
イ 上記「(1)」の「ア」の段落0021には「電気融着器1は、バッテリパック11と、本体12と、ケーブル13aと、ケーブル13bと、を備える。バッテリパック11は、電気融着器1(本体12)から取外し自在であり、樹脂ケース(図示せず)に収納されるバッテリ電源21及びマイコン22を有する」こと、段落0022には「本体12は、主スイッチ23と、継電器24と、FET25と、気温センサ26と、操作表示部27と、通信部28と、シャント抵抗29と、端子30と、端子31と、インタフェース(I/F)32と、EEPROM33と、制御部(CPU)34と、を有する」こと、上記「(1)」の「エ」の段落0078には「上記実施の形態において、・・・バッテリ電源21が電気融着器に内蔵されてもよい。」こと、がそれぞれ記載されている。
そうすると、甲第1号証には「電気融着器は、バッテリパックと本体とを備え、バッテリパックはバッテリ電源を有し電気融着器に内蔵され、本体は制御部を有する」ことが記載されている、といえる。
ウ 上記「(1)」の「ア」の段落0023には「主スイッチ23は、電気融着器1の使用時には、バッテリ電源21から本体12に電力を供給するためにオンにされ、・・・継電器24は、主スイッチ23がオンであるときの操作表示部27の操作に応じて、制御部34によってオン・・・にされる。継電器24がオンになると、電気融着継手2の電気融着を開始する。」ことが記載されている。
そうすると、甲第1号証には「電気融着器の使用時には、バッテリ電源から本体に電力を供給し、継電器は制御部によってオンになると、電気融着継手の電気融着を開始する」ことが記載されている、といえる。
エ 上記「(1)」の「イ」の段落0027には「制御部34の指示に応じて、バッテリ電源21の電圧及びバッテリ残量の数値データをマイコン22に要求し、要求に応じてマイコン22から取得したバッテリ電源21の電圧及びバッテリ残量の数値データを制御部34に送出する」と記載されている。
そうすると、甲第1号証には「制御部の指示に応じてバッテリ電源の電圧及びバッテリ残量の数値データを制御部に送出する」ことが記載されている、といえる。
オ 上記「(1)」の「ウ」の段落0038には「制御部34は、・・・1個の電気融着継手2の電気融着で消費する融着エネルギーを融着記録に基づいて取得」すること、段落0040には「電気融着継手2の電気融着で消費する融着エネルギーが3WHである」こと、が記載されている。ここで、3WHのWHは融着エネルギーの単位であって、電力量を表すものであることは技術常識である。
そうすると、甲第1号証には「制御部は1個の電気融着継手の電気融着で消費する融着エネルギー(WH:電力量)を融着記録に基づいて取得する」ことが記載されている、といえる。
カ 上記「(1)」の「ウ」の段落0038には「制御部34は、・・・所望の個数(例えば、1日の作業で使用する個数)の電気融着継手2の電気融着を行うときに消費する総融着エネルギーを算出する」こと、段落0042には「制御部34は、バッテリ残量に相当するエネルギーが総融着エネルギー以上であるか否かを判断する」こと、段落0043には「バッテリ残量に相当するエネルギーが総融着エネルギー未満である場合、制御部34は、充電又はバッテリ交換の告知を操作表示部27の表示部27aに表示する」ことが、それぞれ記載されている。
そうすると、甲第1号証には「制御部は、所望の個数の電気融着継手の電気融着を行うときに消費する総融着エネルギーを算出し、バッテリ残量に相当するエネルギーが総融着エネルギー以上であるか否か判断し、バッテリ残量に相当するエネルギーが総融着エネルギー未満である場合、制御部は、充電又はバッテリ交換の告知を操作表示部の表示部に表示する」ことが記載されている、といえる。
キ 上記「ア」から「カ」を総合すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲1発明>
「 電気融着器は、バッテリ電源式樹脂管電気融着器であり、電気融着継手を樹脂管に電気融着するものであって、
前記電気融着器は、バッテリパックと本体とを備え、前記バッテリパックはバッテリ電源を有し前記電気融着器に内蔵され、前記本体は制御部を有し、
前記電気融着器の使用時には、前記バッテリ電源から前記本体に電力を供給し、継電器は前記制御部によってオンになると、前記電気融着継手の電気融着を開始するものであり、
前記制御部の指示に応じて前記バッテリ電源の電圧及びバッテリ残量の数値データを前記制御部に送出し、
前記制御部は1個の前記電気融着継手の前記電気融着で消費する融着エネルギー(WH:電力量)を融着記録に基づいて取得し、
前記制御部は、所望の個数の前記電気融着継手の電気融着を行うときに消費する総融着エネルギーを算出し、前記バッテリ残量に相当するエネルギーが前記総融着エネルギー以上であるか否か判断し、前記バッテリ残量に相当するエネルギーが前記総融着エネルギー未満である場合、前記制御部は、充電又はバッテリ交換の告知を操作表示部の表示部に表示する、
電気融着器。」
2 甲第2号証に記載された事項
(1)甲第2号証(特開2007-145011号公報)には、以下の記載がある。(なお、下線は合議体で付与した。)
「【0065】
また、本実施の形態の電気融着装置1は、さらに、外部電源2の電圧を測定する外部電圧測定手段172を備え、制御部12は、さらに、融着中に外部電源2から融着電源部11への供給電圧が規定値を下回ったことが外部電圧測定手段172により検知されたときこの検知結果に基づいて融着電源部11からヒータへの融着電力の供給を停止させる一方、供給電圧が規定値以上に回復したことが外部電圧測定手段172により検知されたときはこの検知結果に基づいて融着電源部11からヒータへの融着電力の供給を再開させる制御を行うものであってもよい。」
(2)甲第2号証に記載された技術的事項
上記「(1)」の段落0065には「電気融着装置1は、・・・融着中に外部電源2から融着電源部11への供給電圧が規定値を下回ったことが外部電圧測定手段172により検知されたときこの検知結果に基づいて融着電源部11からヒータへの融着電力の供給を停止させる」ことが記載されている。
そうすると、甲第2号証には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
<甲第2号証に記載された技術的事項>
「電気融着装置は、融着中に外部電源から融着電源部への供給電圧が規定値を下回ったことが外部電圧測定手段により検知されたときこの検知結果に基づいて融着電源部からヒータへの融着電力の供給を停止させる、電気融着装置。」
3 甲第3号証に記載された事項
(1)甲第3号証(特開平11-216777号公報)には、以下の記載がある。(なお、下線は合議体で付与した。)
「【0070】図6は本発明の融着制御装置の更に別の例を示す詳細図である。この融着制御装置5は、バーコード読取部51、出力電圧演算部52、許容出力電流演算部53、電源出力制御部54、電流検出部55、出力電流測定部56、融着用電源57、操作部58を具備している。
(中略)
【0073】電源出力制御部54は、実測電流値と許容電流最大値とを比較し、実測電流値が許容電流最大値よりも小さいときは、融着用電源57に通電開始の信号を出し、実測電流が許容電流最大値と等しいか又は許容電流最大値より大きいときは、融着用電源への通電開始の信号を停止する機能を有している。操作部58は、融着開始の指令を出す部分である。
【0074】次に、上記の本発明の融着制御装置5を用いた本発明の電気融着継手の融着制御方法の更に別の例を、図7のフロー図及び図8の回路図を参照して説明する。」
(2)甲第3号証に記載された技術的事項
上記「(1)」の段落0070には「この融着制御装置5は・・・電源出力制御部54・・・を具備している」こと、段落0073には「電源出力制御部54は、実測電流値と許容電流最大値とを比較し、・・・実測電流が許容電流最大値と等しいか又は許容電流最大値より大きいときは、融着用電源への通電開始の信号を停止する機能を有している」こと、段落0074には「本発明の融着制御装置5を用いた本発明の電気融着継手の融着制御方法」と、それぞれ記載されている。
そうすると、甲第3号証には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
<甲第3号証に記載された技術的事項>
「融着制御装置を用いた電気融着継手の融着制御方法は、前記融着制御装置が具備する電源出力制御部が実測電流値と許容電流最大値とを比較し、実測電流が許容電流最大値と等しいか又は許容電流最大値より大きいときは、融着用電源への通電開始の信号を停止する」
4 甲第4号証の記載事項
(1)甲第4号証(米国特許第6441352号明細書)には、以下の各記載(合議体仮訳)がある。(なお、下線は合議体で付与した。)
ア 「図2は、本発明の好適な実施形態における電気融着システム8を示している。電気融着システム8は、熱可塑性電気融着継手11に埋め込まれた抵抗素子10に交流電圧を供給する交流発生器および電圧制御装置9を含む。この継手11は熱可塑性パイプ12に融着される。電気融着システム8はさらに、ユーザーがシステム8を制御するために読み取りおよび操作するLCDディスプレイ13とプッシュボタン14、およびシステム8の動作を制御するマイクロプロセッサ15を備えている。システム8はまた、直流電源16を含み、これはシステム8の内外に配置される一次バッテリー、二次バッテリー、燃料バッテリー、または本技術分野の通常の技術者が知るその他の直流電源で構成される場合がある。ここで、「一次バッテリー」とは充電できないバッテリーを意味し、「二次バッテリー」とは充電可能なバッテリーを意味する。」(4欄下から21行から下から5行目)
イ 「充電が終了すると、バッテリー容量モニタ32に電源16に戻された充電量が記録される。この情報は、電源16に融着を完了するのに十分なエネルギーがあるかどうかを判断するために使用される。」(5欄33行から37行)
ウ 「ユーザーが適切な継手を選択すると、マイクロプロセッサ15は以下のステップを実行する:
(1)継手抵抗を再測定し、抵抗が指定された許容範囲内であることを確認する;
(2)バッテリーに継手11の融着を完了するのに十分なエネルギーがあるかを確認する;
(3)継手データテーブル43から正しい電圧を出力電圧制御に設定する;
(4)外部温度センサ45を測定し(外部温度センサ45が接続されていない場合は内部温度センサ44を測定)、継手データテーブル43の融着時間および温度補正時間を用いて適切な融着時間を計算する;
(5)電源コンタクタ46を閉じ、交流発生器および電圧制御9をオンにする;
(6)継手電圧測定回路40で継手の電圧を測定する;
(7)継手データテーブル43から得られた電圧と等しくなるように、交流発生器および電圧制御9を変調して継手11に電圧を印加する。」(6欄7行から27行)
エ 「18.複数の熱可塑性部材間で電気融着を行うための装置であって、少なくとも一つの部材に電気抵抗素子が埋め込まれていることを特徴とし、該装置は以下を含む:
プログラムされた算術および論理処理を実行しデータを格納するためのプログラム可能な電子データ処理手段であって、該データ処理手段は、電気融着を完了するのに十分なエネルギーを電気抵抗素子に供給するために直流電源に十分なエネルギーが存在するかをチェックする手段;
直流電源に電気融着を完了するのに十分なエネルギーが存在しない場合に電気融着を防止する手段;
直流電源に電気融着を完了するのに十分なエネルギーが存在する場合に、直流電源から交流電圧を生成する手段;および
直流電源に電気融着を完了するのに十分なエネルギーが存在する場合に、交流電圧を電気抵抗素子に送信する手段。」(16欄24行から45行)
(2)甲第4号証に記載された発明
ア 上記「(1)」の「ア」には「電気融着システム8は、熱可塑性電気融着継手11に埋め込まれた抵抗素子10に交流電圧を供給する交流発生器および電圧制御装置9を含む。この継手11は熱可塑性パイプ12に融着される。」と記載されている。
そうすると、甲第4号証には「電気融着システムは、熱可塑性電気融着継手を熱可塑性パイプに融着する」ことが記載されている、といえる。
イ 上記「(1)」の「ア」には「電気融着システム8はさらに、・・・システム8の動作を制御するマイクロプロセッサ15を備えている。」と記載されている。
そうすると、甲第4号証には「電気融着システムは、システムの動作を制御するマイクロプロセッサを備える」ことが記載されている、といえる。
ウ 上記「(1)」の「ア」には「システム8はまた、直流電源16を含み、これはシステム8の内外に配置される・・・二次バッテリー・・・で構成される場合がある。ここで、・・・「二次バッテリー」とは充電可能なバッテリーを意味する。」と記載されている。
そうすると、甲第4号証には「電気融着システム内に直流電源を含み、該直流電源は充電可能なバッテリーで構成される」ことが記載されている、といえる。
エ 上記「(1)」の「イ」には「バッテリー容量モニタ32に電源16に戻された充電量が記録される。この情報は、電源16に融着を完了するのに十分なエネルギーがあるかどうかを判断するために使用される。」こと、「ウ」には「マイクロプロセッサ15は以下のステップを実行する:・・・バッテリーに継手11の融着を完了するのに十分なエネルギーがあるかを確認する」ことが記載されている。
そうすると、甲第4号証には「バッテリー容量モニタは電源に戻された充電量を記録し、マイクロプロセッサはバッテリーに継手の融着を完了するのに十分なエネルギーがあるかどうかについて該記録を使用し確認する」ことが記載されている、といえる。
オ 上記「(1)」の「ウ」には「マイクロプロセッサ15は以下のステップを実行する:・・・継手抵抗を再測定し、抵抗が指定された許容範囲内であることを確認する」ことが記載されている。」
そうすると、甲第4号証には「マイクロプロセッサは継手抵抗の再測定を実行する」ことが記載されている、といえる。
カ 上記「(1)」の「イ」には「マイクロプロセッサ15は以下のステップを実行する:・・・バッテリーに継手11の融着を完了するのに十分なエネルギーがあるかを確認する」ことが記載されている。また、「エ」には「複数の熱可塑性部材間で電気融着を行うための装置であって、・・・該装置は以下を含む・・・データ処理手段は、電気融着を完了するのに十分なエネルギーを電気抵抗素子に供給するために直流電源に十分なエネルギーが存在するかをチェックする手段・・・直流電源に電気融着を完了するのに十分なエネルギーが存在しない場合に電気融着を防止する手段」が記載されている。
そうすると、甲第4号証の電気融着を行うための装置は「データ処理手段は、電気融着を完了するのに十分なエネルギーを電気抵抗素子に供給するために直流電源に十分なエネルギーが存在するかをチェックする手段、直流電源に継手の電気融着を完了するのに十分なエネルギーが存在しない場合に電気融着を防止する手段を含む」ことが記載されている、といえる。
キ 上記「ア」から「カ」を総合すると、甲第4号証には、次の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲4発明>
「 電気融着システムは、熱可塑性電気融着継手を熱可塑性パイプに融着するものであって、
前記電気融着システムは、システムの動作を制御するマイクロプロセッサを備え、
前記電気融着システム内に直流電源を含み、前記直流電源は充電可能なバッテリーで構成され、
バッテリー容量モニタは電源に戻された充電量を記録し、前記マイクロプロセッサはバッテリーに継手の融着を完了するのに十分なエネルギーがあるかどうかについて前記記録を使用し確認し、
前記マイクロプロセッサは継手抵抗の再測定を実行し、
データ処理手段は、電気融着を完了するのに十分なエネルギーを電気抵抗素子に供給するために直流電源に十分なエネルギーが存在するかをチェックする手段、直流電源に継手の電気融着を完了するのに十分なエネルギーが存在しない場合に電気融着を防止する手段を含む、
電気融着システム。」
(3)甲第4号証に記載された技術的事項
上記「(1)」の「エ」には「複数の熱可塑性部材間で電気融着を行うための装置であって、・・・該装置は以下を含む・・・データ処理手段は、電気融着を完了するのに十分なエネルギーを電気抵抗素子に供給するために直流電源に十分なエネルギーが存在するかをチェックする手段・・・直流電源に電気融着を完了するのに十分なエネルギーが存在しない場合に電気融着を防止する手段」が記載されている。
そうすると、甲第4号証には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
<甲第4号証に記載された技術的事項>
「電気融着を行うための装置であって、データ処理手段は、電気融着を完了するのに十分なエネルギーを電気抵抗素子に供給するために直流電源に十分なエネルギーが存在するかをチェックする手段、直流電源に電気融着を完了するのに十分なエネルギーが存在しない場合に電気融着を防止する手段を含む」
第5 当審の判断
申立理由1から4(特許法第29条第1項第3号、第29条第2項)について、甲第1号証を主引例とする場合(申立理由1及び2)と、甲第4号証を主引例とする場合(申立理由3及び4)とに分けて判断する。
1 甲第1号証を主引例とする場合
(1)対比
本件特許発明1と甲1発明を対比すると、次のことがいえる。
ア 甲1発明の「電気融着継手」、「樹脂管」は、本件特許発明1の「電気融着継手」、「樹脂管」にそれぞれ相当する。そして、甲1発明の「電気融着器」は電気融着継手を樹脂管に電気融着するもの、すなわち、電気融着継手と樹脂管を電気融着接合するものであるから、甲1発明の「電気融着器」は本件特許発明1の「電気融着装置」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲1発明は「電気融着継手と樹脂管とを電気融着接合する電気融着装置」という点で共通する。
イ 甲1発明の電気融着器は、バッテリパックと本体とを備え、前記本体は制御部を有するものである。電気融着器は制御部を有するものであり、装置は制御部を保護するために筐体という外装を備えるものであって、筐体内に制御部を設ける構造であることは自明であり、電気融着器の制御部は電気融着器の動作を制御するためのものであることは技術常識である。
また、甲1発明の電気融着器はバッテリパックを備え、バッテリパックはバッテリ電源を有し電気融着器に内蔵されるものであるから、バッテリ電源は電気融着器の筐体に内蔵されるものである。また、前記電気融着器の使用時には、前記バッテリ電源から前記本体に電力を供給し、前記電気融着継手の電気融着を開始するものであるから、バッテリ電源は電気融着継手に対して電力を供給するものである。そして、バッテリ電源とは蓄電池のことであり、また、上記「ア」で述べたとおり、甲1発明の「電気融着器」は本件発明1の「電気融着装置」に相当する。
よって、甲1発明の電気融着器は、筐体、筐体内に設けられ電気融着装置の動作を制御する制御部、筐体内に設けられ、電気融着継手に対して電力を供給する蓄電池を備えるといえる。
そうすると、本件特許発明1と甲1発明は「筐体、筐体内に設けられ、電気融着装置の動作を制御する制御部、および、前記筐体内に設けられ、電気融着継手に対して電力を供給する蓄電池を備え」る点で共通する。
ウ 甲1発明の電気融着器は制御部の指示に応じてバッテリ電源の電圧及びバッテリ残量の数値データを制御部に送出するものであるから、甲1発明の電気融着器の制御部は、バッテリ電源、すなわち、蓄電池の電池残量を検出する残量検出部を含むといえる。
そうすると、本件特許発明1と甲1発明は「制御部は、蓄電池の電池残量を検出する残量検出部を含む」点で共通する。
エ 甲1発明の電気融着器の制御部は1個の電気融着継手の電気融着で消費する融着エネルギー(WH:電力量)を融着記録に基づいて取得するものであって、1個の電気融着継手の電気融着で消費する融着エネルギーとは電気融着継手に関する情報であるといえるものであるから、電気融着器の制御部は電気融着継手に関する情報を取得する継手情報取得部であるといえる。そして、1個の電気融着継手の電気融着で消費する融着エネルギー(WH:電力量)とは、1個の電気融着継手の電気融着で消費する必要電力量であるといえる。
よって、甲1発明の電気融着器の制御部は、必要電力量を含む電気融着継手に関する情報を取得する継手情報取得部を含むといえる。
そうすると、本件特許発明1と甲1発明は「制御部は、必要電力量を含む電気融着継手に関する情報を取得する継手情報取得部を含む」点で共通する。
オ 甲1発明の電気融着器の制御部は、所望の個数の前記電気融着継手の電気融着を行うときに消費する総融着エネルギーを算出し、前記バッテリ残量に相当するエネルギーが前記総融着エネルギー以上であるか否か判断し、前記バッテリ残量に相当するエネルギーが前記総融着エネルギー未満である場合、前記制御部は、充電又はバッテリ交換の告知を操作表示部の表示部に表示するものである。
ここで、バッテリ残量とは、上記「ウ」で述べたとおり、バッテリ残量は残量検出部によって検出されたものから得られるものであるから、バッテリ残量に相当するエネルギーも残量検出部によって検出されたものから得られるもの、すなわち、残量検出部によって検出された電池残量であるといえる。
また、上記「エ」で述べたとおり、必要電力量は継手情報取得部で取得されたものである。
そして、甲1発明の電気融着器の制御部は、所望の個数の前記電気融着継手の電気融着を行うときに消費する総融着エネルギーを算出し、前記バッテリ残量に相当するエネルギーが前記総融着エネルギー以上であるか否か判断するものであるが、所望の個数とは1個の場合も含まれるものであり、1個の電気融着継手の電気融着を行うときに消費する総融着エネルギーは、1個の前記電気融着継手の前記電気融着で消費する融着エネルギーと同じであるから、バッテリ残量に相当するエネルギーが総融着エネルギー以上であるか否か判断することは、バッテリ残量に相当するエネルギーが1個の電気融着継手の電気融着で消費する融着エネルギー以上であるか否か判断すること、すなわち、電気融着継手を用いた融着動作が完了可能かを判定するものといえる。
よって、甲1発明の電気融着器の制御部は、残量検出部によって検出された電池残量および継手情報取得部によって取得された必要電力量に基づいて、当該継手情報取得部によって前記必要電力量の情報が取得された電気融着継手を用いた融着動作が完了可能かどうかを判定する融着可否判定部であるといえる。
そうすると、本件特許発明1と甲1発明は「残量検出部によって検出された電池残量および継手情報取得部によって取得された必要電力量に基づいて、当該継手情報取得部によって前記必要電力量の情報が取得された電気融着継手を用いた融着動作が完了可能かどうかを判定する融着可否判定部を含む」点で共通する。
カ したがって、上記「ア」から「オ」を総合すれば、本件特許発明1と甲1発明は、以下の点で一致し、また相違する。
<一致点>
「 電気融着継手と樹脂管とを電気融着接合する電気融着装置であって、
筐体、
前記筐体内に設けられ、当該電気融着装置の動作を制御する制御部、および、
前記筐体内に設けられ、前記電気融着継手に対して電力を供給する蓄電池を備え、
前記制御部は、
前記蓄電池の電池残量を検出する残量検出部、
必要電力量を含む電気融着継手に関する情報を取得する継手情報取得部、
前記残量検出部によって検出された電池残量および前記継手情報取得部によって取得された必要電力量に基づいて、当該継手情報取得部によって前記必要電力量の情報が取得された電気融着継手を用いた融着動作が完了可能かどうかを判定する融着可否判定部を含む、電気融着装置。」
<相違点>
残量検出部によって検出された電池残量および継手情報取得部によって取得された必要電力量に基づいて、当該継手情報取得部によって前記必要電力量の情報が取得された電気融着継手を用いた融着動作が完了可能かどうかを判定する融着可否判定部によって電気融着継手を用いた融着動作が完了できないと判定されたとき、本件特許発明1は「電気融着継手に対する通電の開始を規制する通電規制部を含む」ものであるのに対して、甲1発明では、「充電又はバッテリ交換の告知を操作表示部の表示部に表示する」ものであって、電気融着継手に対する通電の開始を規制するものではない点。
(2)甲1発明の判断
上記(1)のとおりであるから、本件特許発明1は、甲1発明でない。
次に、上記相違点について検討する。
甲第2号証及び甲第3号証は、必要電力量に基づいて電気融着継手を用いた融着動作が完了可能かどうかを判定するものではないし、「電気融着継手に対する通電の開始を規制する」ものでもない。また、甲第4号証は、「電気融着を完了するのに十分なエネルギーを電気抵抗素子に供給するために直流電源に十分なエネルギーが存在するかをチェックする手段、直流電源に電気融着を完了するのに十分なエネルギーが存在しない場合に電気融着を防止する手段」を有しているものの、電気融着を防止する手段がどのようにして防止を行うのか特定されていない。したがって、甲第2号証から甲第4号証のいずれにも、電気融着を完了するのに十分なエネルギーを電気抵抗素子に供給するために直流電源に十分なエネルギーが存在するかをチェックする手段が必要電力量に基づいたものであるとの記載はなく、また、電気融着を防止する手段が電気融着継手に対する通電の開始を規制するものであるとの記載も存在しない。
そうすると、本件特許発明1は、当業者であっても、甲第1号証に記載された発明、並びに甲第2号証から甲第4号証に記載された技術的事項に基づいて、容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本件特許発明1は、甲1発明でなく、当業者であっても、甲第1号証に記載された発明、並びに甲第2号証から甲第4号証に記載された技術的事項に基づいて、容易に発明をすることができたものではない。
2 甲第4号証を主引例とする場合
本件特許発明1と甲4発明は、上記「1」の「(1)」で述べた上記相違点と少なくとも同じ点で相違するものであり、上記説示したとおりである。
したがって、本件特許発明1は、甲4発明でなく、当業者であっても、甲4発明に基づいて、容易に発明をすることができたものではない。
3 本件特許発明2、本件特許発明4及び本件特許発明5について
本件特許発明2、本件特許発明4及び本件特許発明5は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件特許発明1と同様である。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本件特許発明1、本件特許発明2、本件特許発明4及び本件特許発明5は、甲第1号証に記載された発明でなく(申立理由1)、本件特許発明1、本件特許発明2、本件特許発明4及び本件特許発明5は、当業者であっても、甲第1号証に記載された発明、並びに甲第2号証から甲第4号証に記載された技術的事項に基いて、容易に発明をすることができたものでない(申立理由2)。
また、本件特許発明1は、甲第4号証に記載された発明でもなく(申立理由3)、本件特許発明1、本件特許発明2、本件特許発明4及び本件特許発明5は、当業者であっても、甲第4号証に記載された発明、並びに甲第1号証に記載された技術的事項に基いて、容易に発明をすることができたものでもない(申立理由4)。
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許発明1、本件特許発明2、本件特許発明4及び本件特許発明5は、特許法第113条第1項第2号には該当せず、取り消すことはできない。
また、他に、本件特許発明1、本件特許発明2、本件特許発明4及び本件特許発明5を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2026-700116