審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2023-701250

ペル及びポリフルオロアルキル化合物吸着活性炭

審判番号
2023-701250
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-135048
登録番号
7282719
請求日
2023年11月28日
審決日
2024年09月27日
公報発行日
2025年01月31日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】国立研究開発法人産業技術総合研究所
  • 【権利者代理人】加藤 大輝
  • 【権利者】フタムラ化学株式会社
  • 【権利者代理人】加藤 大輝
  • 【異議申立人】平居 博美
  • 【異議申立人】笠原 佳代子
審判長/審判官
  • 審判長 深草 祐一
  • 審判官 原 賢一
  • 審判官 後藤 政博
分類
P1651.113-YAA(B01J) / P1651.121-YAA(B01J) / P1651.536-YAA(B01J) / P1651.537-YAA(B01J)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7282719号発明「ペル及びポリフルオロアルキル化合物吸着活性炭」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7282719号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2、4~6〕について訂正することを認める。 特許第7282719号の請求項1、2、4~6に係る特許を維持する。 特許第7282719号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7282719号の請求項1~6に係る特許についての出願は、令和2年8月7日(優先権主張 令和1年8月20日)を出願日とする出願であり、令和5年5月19日にその特許権の設定登録がされ、同年同月29日に特許掲載公報が発行され、その後、同年11月28日に、その請求項1~6に係る特許を対象として特許異議申立人平居博美(以下、「異議申立人1」という。)により、同じく、その請求項1~6に係る特許を対象として特許異議申立人笠原佳代子(以下、「異議申立人2」という。)により特許異議の申立てがなされ、令和6年2月2日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年3月28日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求があり、これに対し、同年6月11日に異議申立人2により意見書の提出があり、同年同月17日に異議申立人1により意見書の提出があったものである。 第2 訂正の適否 1 訂正事項 本件訂正は、本件明細書及び特許請求の範囲を、それぞれ、訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを求めるものであって、その具体的な訂正事項は次のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「前記活性炭吸着材の下記の(i)式に規定する1nm以下のミクロ孔容積の和(Vmic)と2~60nm以下のメソ孔容積の和(Vmet)との容積差(Vs)が0.45cm3/g以上である」とあるのを、「前記活性炭吸着材の2~60nmのメソ孔容積の和(Vmet)が0.02~0.124cm3/gであり、前記活性炭吸着材の下記の(i)式に規定する1nm以下のミクロ孔容積の和(Vmic)と前記メソ孔容積の和(Vmet)との容積差(Vs)が0.45cm3/g以上である」に訂正する。 (請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2、4~6も同様に訂正する。) (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項4に「請求項1ないし3のいずれか1項に記載のペル及びポリフルオロアルキル化合物吸着活性炭。」とあるのを、「請求項1又は2に記載のペル及びポリフルオロアルキル化合物吸着活性炭。」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項5に「請求項1ないし4のいずれか1項に記載のペル及びポリフルオロアルキル化合物吸着活性炭。」とあるのを、「請求項1,2,4のいずれか1項に記載のペル及びポリフルオロアルキル化合物吸着活性炭。」に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項6に「請求項1ないし5のいずれか1項に記載の吸着活性炭を保持してなる」とあるのを、「請求項1,2,4,5のいずれか1項に記載の吸着活性炭を保持してなる」に訂正する。 (6)訂正事項6 本件明細書の【0014】に「前記活性炭吸着材の下記の(i)式に規定する1nm以下のミクロ孔容積の和(Vmic)と2~60nm以下のメソ孔容積の和(Vmet)との容積差(Vs)が0.45cm3/g以上である」とあるのを、「前記活性炭吸着材の2~60nmのメソ孔容積の和(Vmet)が0.02~0.124cm3/gであり、前記活性炭吸着材の下記の(i)式に規定する1nm以下のミクロ孔容積の和(Vmic)と前記メソ孔容積の和(Vmet)との容積差(Vs)が0.45cm3/g以上である」に訂正する。 (7)訂正事項7 本件明細書の【0017】を削除する。 (8)訂正事項8 本件明細書の【0018】に「第1ないし3の発明のいずれかにおいて、」とあるのを、「第1又は2の発明のいずれかにおいて、」に訂正する。 (9)訂正事項9 本件明細書の【0019】に「第1ないし4の発明のいずれかにおいて、」とあるのを、「第1,2,4の発明のいずれかにおいて、」に訂正する。 (10)訂正事項10 本件明細書の【0020】に「第1ないし5の発明のいずれかの吸着活性炭を保持してなる」とあるのを、「第1,2,4,5のいずれかの吸着活性炭を保持してなる」に訂正する。 (11)訂正事項11 本件明細書の【0021】に「前記活性炭吸着材の下記の(i)式に規定する1nm以下のミクロ孔容積の和(Vmic)と2~60nm以下のメソ孔容積の和(Vmet)との容積差(Vs)が0.45cm3/g以上である」とあるのを、「前記活性炭吸着材の2~60nmのメソ孔容積の和(Vmet)が0.02~0.124cm3/gであり、前記活性炭吸着材の下記の(i)式に規定する1nm以下のミクロ孔容積の和(Vmic)と前記メソ孔容積の和(Vmet)との容積差(Vs)が0.45cm3/g以上である」に訂正する。 (12)訂正事項12 本件明細書の【0023】を削除する。 (13)訂正事項13 本件明細書の【0024】に「第1ないし3の発明のいずれかにおいて、」とあるのを、「第1又は2の発明のいずれかにおいて、」に訂正する。 (14)訂正事項14 本件明細書の【0025】に「第1ないし4の発明のいずれかにおいて、」とあるのを、「第1,2,4の発明のいずれかにおいて、」に訂正する。 (15)訂正事項15 本件明細書の【0026】に「第1ないし5の発明のいずれかの吸着活性炭を保持してなる」とあるのを、「第1,2,4,5のいずれかの吸着活性炭を保持してなる」に訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1による下線部の特定について、前半の「前記活性炭吸着材の2~60nmのメソ孔容積の和(Vmet)が0.02~0.124cm3/gであり」に係る訂正は、「2~60nmのメソ孔容積の和(Vmet)」の範囲を限定するものであり、その和の下限は、訂正前の特許請求の範囲の【請求項3】の「前記活性炭吸着材の前記メソ孔容積の和(Vmet)が0.02cm3/g以上である」との記載に基づくと共に、その和の上限は、本件明細書の【0085】【表5】に記載される「試作例18」の活性炭における「メソ孔容積(Vmet)」の値である「0.124」の記載に基づいている。 また、後半の「前記メソ孔容積の和(Vmet)」に係る訂正は、訂正前は、「2~60nm以下のメソ孔容積の和(Vmet)」とされていたものであるところ、上記前半の下線部の特定に「2~60nmのメソ孔容積の和(Vmet)」の記載があるため、この「2~60nmのメソ孔容積の和(Vmet)」を受けるものであることを明らかにし、また、「2~60nm」の重複を避けるため、「前記メソ孔容積の和(Vmet)」としたものであり、訂正前後で内容が変わるものではない。 そうすると、上記訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮、及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項3~5について 訂正事項3~5は、請求項4~6について、それぞれ引用する請求項に請求項3が含まれていたところ、訂正事項2の訂正により請求項2が削除されたことに伴い、これに整合させるため引用する請求項から請求項3を削除し、引用請求項数を減少させるものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、訂正事項3~5は、それぞれ請求項3~5が引用していた請求項の数を減少させるもので、訂正後の請求項4~6の内容は、それぞれ請求項4~6の範囲内のものであるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)訂正事項6~15について 訂正事項6~15において、訂正事項6、11に係る【0014】、【0021】には、請求項1に対応する記載がなされ、訂正事項7、12に係る【0017】、【0023】には、請求項3に対応する記載がなされ、訂正事項8、13に係る【0018】、【0024】には、請求項4に対応する記載がなされ、訂正事項9、14に係る【0019】、【0025】には、請求項5に対応する記載がなされ、訂正事項10、15に係る【0020】、【0026】には、請求項6に対応する記載がなされていたところ、上記(1)~(5)の訂正事項1~5によって、請求項1、3~6が訂正されたため、訂正事項6~15は、訂正後の請求項の内容に整合させるように、本件明細書の、訂正される請求項に対応する記載がなされていた箇所を訂正するものである。 そうすると、上記訂正事項6~15は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。また、上記訂正事項6~15が、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは、上記(1)~(3)で述べたのと同様である。 3 小括 本件訂正は、特許法第120条の5第4項及び同法同条第9項で準用する同法第126条第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項〔1~6〕について訂正することを求めるものであるところ、上記2のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであるから、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり、本件訂正は認容し得るものであるから、本件訂正後の請求項1~6に係る発明(以下、各請求項に係る発明及び特許を項番に対応させて「本件発明1」、「本件特許1」などといい、併せて「本件発明」、「本件特許」ということがある。)は、次のとおり特定されるものである。なお、以下、本件訂正後の明細書を、本件訂正前の明細書と区別せずに「本件明細書」という。 「【請求項1】 BET比表面積が900m2/g以上である活性炭吸着材からなり、 前記活性炭吸着材の2~60nmのメソ孔容積の和(Vmet)が0.02~0.124cm3/gであり、 前記活性炭吸着材の下記の(i)式に規定する1nm以下のミクロ孔容積の和(Vmic)と前記メソ孔容積の和(Vmet)との容積差(Vs)が0.45cm3/g以上である 大気試料中のペル及びポリフルオロアルキル化合物を脱離可能に吸着するための ペル及びポリフルオロアルキル化合物吸着活性炭。 【数1】 [図:0001418223000001.jpg] 【請求項2】 前記活性炭吸着材の前記ミクロ孔容積の和(Vmic)が0.35cm3/g以上である請求項1に記載のペル及びポリフルオロアルキル化合物吸着活性炭。 【請求項3】(削除) 【請求項4】 前記活性炭吸着材の表面酸化物量が0.10meq/g以上である請求項1又は2に記載のペル及びポリフルオロアルキル化合物吸着活性炭。 【請求項5】 前記活性炭吸着材が繊維状活性炭である請求項1,2,4のいずれか1項に記載のペル及びポリフルオロアルキル化合物吸着活性炭。 【請求項6】 請求項1,2,4,5のいずれか1項に記載の吸着活性炭を保持してなることを特徴とするペル及びポリフルオロアルキル化合物吸着フィルター体。」 第4 令和6年2月2日付けで通知した取消理由、及び異議申立人1、2による特許異議の申立理由の概要 1 令和6年2月2日付けで通知した取消理由の概要 ・特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)(以下、「取消理由」とする。) 本件特許は、設定登録時の請求項1~6の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 記 (1)サポート要件判断の規範と本件発明の課題 特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである(以下、「サポート要件の判断規範」ということがある。)。 本件明細書の発明の詳細な説明の記載によれば、本件明細書の【0008】~【0011】には、ペル及びポリフルオロアルキル化合物は自然界(水中、土壌中、大気中)に残存し続けることから、ペル及びポリフルオロアルキル化合物の定量試験方法の確立が検討されているところ、定量試験方法の検討の課題は、ペル及びポリフルオロアルキル化合物の高い吸着及び脱離性能を有する捕集材の開発であること(【0008】)、既存の捕集材では、定量測定に用いられる捕集材としての使用には適していないこと(【0009】)、また十分な捕集性能がなく、正確に定量測定ができないという問題があること(【0010】)が記載されている。そして、【0011】、【0013】には、この問題を受け、活性炭が、ペル及びポリフルオロアルキル化合物の捕集を可能とし、正確な定量測定に大きく寄与することが見出されたことを踏まえ(【0011】)、【発明が解決しようとする課題】の項目に続いて、本発明は、前記の点に鑑みなされたものであり、特に、大気試料中のペル及びポリフルオロアルキル化合物を脱離可能に捕集することが可能なペル及びポリフルオロアルキル化合物吸着活性炭及びそれを用いたフィルター体を提供するものである(【0013】)ことが記載されている。 ここで、【0013】の記載が、既存の捕集材がペル及びポリフルオロアルキル化合物に対する十分な捕集性能がなく、正確に定量測定ができないという問題を受けたものであることを考慮すると、本件発明の課題は、「大気試料中のペル及びポリフルオロアルキル化合物を、十分に、かつ正確に定量測定ができる程度に、脱離可能に捕集することが可能なペル及びポリフルオロアルキル化合物吸着活性炭及びそれを用いたフィルター体を提供する」こと(以下、単に「本件発明の課題」ということがある。)であるといえる。 (2)本件発明の課題に対応する本件明細書の発明の詳細な説明の記載 上記(1)の発明の課題に対応して、【課題を解決するための手段】として、【0014】に、「BET比表面積が900m2/g以上である活性炭吸着材からなり、前記活性炭吸着材の下記の(i)式に規定する1nm以下のミクロ孔容積の和(Vmic)と2~60nm以下のメソ孔容積の和(Vmet)との容積差(Vs)が0.45cm/g以上である大気試料中のペル及びポリフルオロアルキル化合物を脱離可能に吸着するためのペル及びポリフルオロアルキル化合物吸着活性炭。 [図:0001418223000002.jpg] 」 が記載されているところ、活性炭を特定する要素に、「2~60nm以下のメソ孔容積の和(Vmet)」(以下、単に「メソ孔容積」ということがある。)が含まれていることから、上記(1)の発明の課題を解決する活性炭には、少なくとも、「メソ孔容積」による寄与があるといえる。 以下、「メソ孔容積」に着目して、本件明細書の記載を確認すると共に、本件明細書における上記(1)の本件発明の課題を解決することができる範囲について検討する。 【0037】には、「メソ孔が一定以上形成されることにより、該化合物(ペル及びポリフルオロアルキル化合物)がミクロ孔にまで容易に侵入可能となる」こと、【0097】には、メソ孔容積が0.001である試作例8、0.004である試作例9について、「ミクロ孔の発達はみられるがメソ孔が発達していないため、活性炭の細孔の入り口側に存在するメソ孔が少なく、ミクロ孔内にFTOHの分子がスムーズに導入されず、吸着されなかったと考えられる」ことが記載されていることから、ペル及びポリフルオロアルキル化合物を十分に、かつ正確に定量測定ができる程度に、脱離可能に捕集するには、一定以上のメソ孔の存在が必要であることが理解できる。 そして、そのメソ孔の容積について、【0023】に「前記活性炭吸着材の前記メソ孔容積の和(Vmet)が0.02cm3/g以上であることから、ペル及びポリフルオロアルキル化合物を効率よく脱離可能に捕集することができる。」と記載されていることや、【0098】で「ミクロ孔及びメソ孔いずれの細孔容積も大きく、どちらの細孔も十分に発達していると考えられるため、FTOHの分子が活性炭の細孔内にスムーズに導入され、優れた吸着性能が示されたと推察できる」とされた試作例10~21のうち、メソ孔容積が最小である試作例10のメソ孔容積が、0.02と同程度の0.026であることから、ペル及びポリフルオロアルキル化合物を十分に、かつ正確に定量測定ができる程度に、脱離可能に捕集するには、メソ孔容積が、0.02(cm3/g)以上である必要があることが理解できる。 一方、【0038】の「メソ孔を発達させすぎないことに加え、ミクロ孔を良好に発達させた活性炭とすることにより、ペル及びポリフルオロアルキル化合物の吸着性能を向上させつつ、後の抽出操作時において、該化合物がスムーズに脱離可能とされることにより、定量測定が良好に行われることができると考えられる。」との記載、【0098】の「試作例12~19は、特に優れたFTOHの回収性能を示した。試作例12~19はいずれもミクロ孔の細孔容積が大きく、かつメソ孔の細孔の発達がみられるもののメソ孔の細孔容積がそれほど大きくないことが特徴である。」との記載、【0099】の「試作例20,21は、ミクロ孔及びメソ孔の細孔容積がともに大きいことから、大きな細孔から小さな細孔まで複雑に発達した細孔を有する活性炭であるといえる。複雑に発達した細孔内に吸着されたFTOHの分子は、抽出操作時において、スムーズに脱離されにくくなり、試作例12~19に比してFTOHの回収率に若干劣ることとなったと推察される。」との記載によれば、一定値以上のメソ孔容積は必要であるが、メソ孔を発達させすぎる(メソ孔の細孔容積が大き過ぎる)と、ペル及びポリフルオロアルキル化合物を十分に、かつ正確に定量測定ができる程度に、脱離可能に捕集することができないことも理解できる。そして、特に優れたFTOHの回収性能を示し、いずれもミクロ孔の細孔容積が大きく、かつメソ孔の細孔の発達がみられるもののメソ孔の細孔容積がそれほど大きくないとされた試作例12~19のうち、最大のメソ孔容積は、0.124(試作例18)であるから、少なくとも、メソ孔容積が、0.124(cm3/g)までは、ペル及びポリフルオロアルキル化合物を十分に、かつ正確に定量測定ができる程度に、脱離可能に捕集することが理解できる。 以上の本件明細書の発明の詳細な説明の記載によれば、上記(1)の発明の課題を解決するには、少なくとも、メソ孔容積が、「0.02~0.124cm3/g」であることが肝要であるといえる。 (3)特許請求の範囲の記載と本件明細書の発明の詳細な説明の記載との対比 上記(2)で述べたように、本件明細書の発明の詳細な説明の記載に照らすと、上記(1)の発明の課題を解決するには、メソ孔容積が、「0.02~0.124cm3/g」であることが肝要であると理解されるところ、設定登録時の請求項1に係る発明には、メソ孔容積が、「0.02~0.124cm3/g」であることは特定されていない。 そうすると、設定登録時の、請求項1に係る発明及び請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2~6に係る発明は、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるということはできないし、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるということはできない。 (4)まとめ 上記(3)について、上記(1)のサポート要件判断の規範への当てはめを行うと、設定登録時の、請求項1に係る発明及び請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2~6に係る発明は、サポート要件を満たしていない。 2 異議申立人1による特許異議の申立理由の概要 (1)特許法第29条第1項第3号所定の規定違反(新規性欠如)(以下、「申立理由1」という。) 設定登録時の請求項1~6に係る発明は、下記4(1)に記載の甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号の規定に該当するから、その特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 (2)特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)(以下、「申立理由2」という。) 設定登録時の請求項1~6に係る発明は、下記4(1)に記載の甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証、甲第4号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、それらの特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (3)特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)(以下、「申立理由3」という。) 本件特許は、設定登録時の請求項1~6の記載が下記(5)の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (4)特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)(以下、「申立理由4」という。) 本件特許は、設定登録時の請求項1~6の記載が下記(6)の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 記 (5)申立理由3の内容 ア 「BET比表面積が900m2/g以上」について BET比表面積の上限記載がなく、あらゆる上限であっても本件発明の効果を奏することはサポートされていない。 BET比表面積についての本件明細書の記載や、実施例に記載されているBET比表面積の最大値が2017m2/gであること等を考慮すると、BET比表面積と細孔容積は活性炭の細孔構造に連動して変動するものであるから、本件明細書の記載に鑑みると本件発明の活性炭のBET比表面積が本件実施例に開示された上限を超えても、PFOS、PFOAの吸着に効果を奏することはサポートされているとはいえない。 したがって、設定登録時の、請求項1に係る発明及び請求項1を引用する請求項2~6に係る発明は、サポート要件を充足しない(26頁9行~27頁6行)。 イ 「1nm以下のミクロ孔容積の和(Vmic)と2~60nm以下のメソ孔容積の和(Vmet)との容積差(Vs)が0.45cm3/g以上」について 本件明細書にはあらゆる値のミクロ孔容積の和、メソ孔容積の和、容積差(Vs)であっても本件発明の効果を奏することはサポートされていない。 本件明細書の記載によれば、PFOS、PFOAの吸着には適切なミクロ孔容積の和、メソ孔容積の和、および容積差(Vs)の範囲が存在することが教示されている。 本件実施例ではミクロ孔容積の和が0.45cm3/g以下の場合(試作例6~11)は、そもそも要件(容積差0.45cm3/g以上)を充足せず、一方で0.841cm3/g(試作例18)を超える場合はサポートされていない。同様にメソ孔容積の和が0.02cm3/g未満の場合(試作例8、9)や0.234cm3/gを超える場合(試作例20、21)もサポートされていない。また容量差(Vs)についても0.721cm3/gを超える場合(試作例19)はサポートされていない。 したがって、設定登録時の、請求項1に係る発明及び請求項1を引用する請求項2~6に係る発明は、サポート要件を充足しない(27頁7行~29頁7行)。 ウ 「大気試料中のペル及びポリフルオロアルキル化合物を脱離可能に吸着するためのペル及びポリフルオロアルキル化合物吸着活性炭」について PFOS、PFOAの吸着活性炭として繊維状活性炭以外はサポートされていない。 試作例20(ヤシ殻活性炭:【0076】)はBET比表面積が1700cm2/g、容積差(Vs)が0.445cm3/gであり(【表5】)、BET比表面積及び容積差(Vs)に関する要件を充足しない。 また試作例21(フェノール樹脂活性炭:【0077】)は容量差(Vs)が0.315cm3/gであり(【表5】)、容積差(Vs)に関する要件を充足しない。 本件明細書には繊維状活性炭以外の活性炭が、BET比表面積及び容積差(Vs)に関する要件を充足し、発明の効果を奏することはサポートされていない。 したがって、設定登録時の、請求項1に係る発明及び請求項1を引用する請求項2~6に係る発明は、サポート要件を充足しない(29頁8~21行)。 (6)申立理由4の内容 ア 「2~60nm以下のメソ孔容積の和(Vmet)」について 本件明細書の【0080】によれば実際に測定したメソ孔容積の細孔直径の範囲は「2.43~59.72nm」であり、設定登録時の請求項1の「2~60nm以下」の範囲と一致していないから不明確である。 よって、設定登録時の、請求項1に係る発明及び請求項1を引用する請求項3~6に係る発明は、不明確である(29頁23行~30頁5行)。 イ 「1nm以下のミクロ孔容積の和(Vmic)が0.35cm3/g以上」について 式(i)「Vs=Vmic-Vmet」から求められる容積差(Vs)が0.45cm3/g以上である。 しかしながらミクロ孔容積の和(Vmic)が、設定登録時の請求項2で特定されるように「0.35cm3/g以上」であっても0.45cm3/g以下の場合、上記式(i)の要件を充足することは不可能である(試作例10、11)。 したがって、設定登録時の請求項2で特定される(Vmic)の「0.35cm3/g以上」との要件は、上記容積差(Vs)の要件を充足することが不可能な範囲を含んでおり、不明確である。 よって、設定登録時の、請求項2に係る発明及び請求項2を引用する請求項3~6に係る発明は、不明確である。 3 異議申立人2による特許異議の申立理由の概要 ・特許法第29条第1項第3号所定の規定違反(新規性欠如)及び同法同条第2項所定の規定違反(進歩性欠如) (1)設定登録時の請求項1~6に係る発明は、下記4(2)に記載の甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号の規定に該当するから、それらの特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである(甲第4号証、甲第5号証を参考とする。)か、同甲第1号証に記載された発明及び甲第4号証、甲第5号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、それらの特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(以下、「申立理由5」という。)。 (2)設定登録時の請求項1~6に係る発明は、下記4(2)に記載の甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号の規定に該当するから、それらの特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである(甲第4号証、甲第5号証を参考とする。)か、同甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、それらの特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(以下、「申立理由6」という。)。 (3)設定登録時の請求項1、2、5、6に係る発明は、下記4(2)に記載の甲第3号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号の規定に該当するから、それらの特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるか、設定登録時の請求項1~6に係る発明は、同甲第3号証に記載された発明及び下記4(2)に記載の甲第1号証、甲第2号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、それらの特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(以下、「申立理由7」という。)。 4 提出された証拠 (1)異議申立人1から提出された証拠 甲第1号証:特開2011-105545号公報 甲第2号証:「太閤ACF(脱臭・空気浄化用 活性炭シート)」を項目とする株式会社 森部商店のホームページのウェブアーカイブ、2018年9月3日(https://web.archive.org/web/20180903230828/https://www.moribe.biz/filter/629.html) 甲第3号証:三島聡子 他、神奈川県の大気環境中における有機フッ素化合物の実態調査、神奈川県環境科学センター研究報告 No.42(2019)、33~37頁(https://www.pref.kanagawa.jp/documents/60011/r01bull05.pdf) 甲第4号証:「活性炭」を項目とするフタムラ化学株式会社のホームページのウェブアーカイブ、2018年10月6日(https://web.archive.org/web/20181006194623/http://www.futamura.co.jp:80/activated_carbon/) 以下の甲第5号証~甲第7号証は、令和6年6月17日に提出の意見書と共に提出されたものである。 甲第5号証:東條俊樹 他、大気中有機フッ素化合物の一斉調査について、e-シンポ、2012年3月17日(https://www.ee-net.ne.jp/ms/e-13/tojo-20120317.pdf) 甲第6号証:環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部、PFOS含有廃棄物の処理に関する技術的留意事項、平成23年3月(https://www.env.go.jp/recycle/misc/pfos/tptc.pdf) 甲第7号証:川下博之 他、有機フッ素化合物の実態解明に関する調査研究(第4報)、福井県衛生環境研究センター年報 第12巻、2013年、60~63頁 なお、上記甲第3号証は、「https://www.pref.kanagawa.jp/documents/60011/r01bull00.pdf」での以下の内容からすると、本件の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものではないおそれがあるが、念のため本件の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものとして扱った。 「 [図:0001418223000003.jpg] 」 (2)異議申立人2から提出された証拠 甲第1号証:特開2011-106052号公報 甲第2号証:特開2011-105545号公報(異議申立人1から提出された甲第1号証と同じである。) 甲第3号証:特開2014-147864号公報 甲第4号証:福田卓司、松本賢一、繊維状活性炭フィルタによるフロン回収技術、燃料及燃焼 第58巻 第2号、1991年2月、81~92頁 甲第5号証:松本賢一、特集/コンバーターの廃棄物対策 Kフィルターによるフロン回収技術、コンバーテック 第18巻 第1号、1990年1月、25~30頁 以下、異議申立人1により提出された甲第1号証を甲1-1などといい、異議申立人2により提出された甲第1号証を甲1-2などという。) 第5 当審の判断 当審は、上記取消理由及び申立理由1~7のいずれの理由によっても、本件特許を取り消すことはできないと判断する。 以下、その理由について詳述する。 1 記載要件に関する、取消理由、申立理由及び意見書における異議申立人1、2の主張について (1)取消理由(サポート要件違反)について 本件発明のサポート要件の判断は、上記第4の1(1)に記載の「サポート要件の判断規範」に従って判断すべきところ、この「サポート要件の判断規範」に従って判断すると、サポート要件を充足するには、同(3)で述べたように、設定登録時の請求項1に係る発明において、メソ孔容積が、「0.02~0.124cm3/g」であることを特定することが必要である。 そして、本件訂正によって、本件発明1は、第3に記載されるとおりのものとなり、「前記活性炭吸着材の2~60nmのメソ孔容積の和(Vmet)が0.02~0.124cm3/gであ」ることが特定された。 そうすると、本件訂正によって、本件発明1において、サポート要件を充足するために必要な事項が全て特定されたことになるから、本件発明1及び本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2、4~6は、サポート要件を充足するものであり、取消理由には、理由がない。 (2)申立理由3(サポート要件違反)について 上記(1)で述べたように、本件発明のサポート要件の判断は、上記第4の1(1)に記載の「サポート要件の判断規範」に従って判断すべきところ、この「サポート要件の判断規範」に従って判断すると、上記(1)で述べたように、本件発明はサポート要件を充足するのであるから、サポート要件に関する申立理由3によっては、本件発明をサポート要件を充足しないものとすることはできないが、念ため各理由について検討する。 ア 申立理由3のアについて まず、BET比表面積の範囲の上限の記載がないからといって、実用上考えられないような値までが本件発明1の範囲に含まれるわけではない。耐久性等の面から、活性炭として実用上許容されるBET比表面積の上限を当業者であれば認識できるといえる。 そして、本件明細書の【0035】の「大気試料中のペル及びポリフルオロアルキル化合物を脱離可能に吸着する活性炭の吸着性能は、後述の実施例により導き出されるように、比表面積を900m2/g以上とすることにより発揮される。活性炭の細孔が一定以上形成されることにより、該化合物の吸着性能が確保される。」との記載によれば、特にBET比表面積が大きくなった際に、上記第4の1(1)で述べた本件発明の課題を解決できないような範囲があるとは認識できないし、同【0085】【表5】に記載される試作例18では、BET比表面積が、2017m2/gであるが、同【0093】【表8】に記載される、本件課題で捕集対象としている「ペル及びポリフルオロアルキル化合物」に含まれるFTOHの回収率では、優れた結果を示しており、BET比表面積が2017m2/gよりさらに大きくなったとしても、FTOHの回収率が、本件課題を解決しないほど低下することは、認識することはできない。 イ 申立理由3のイについて 「本件実施例ではミクロ孔容積の和が0.45cm3/g以下の場合(試作例6~11)は、そもそも要件(容積差0.45cm3/g以上)を充足せず、一方で0.841cm3/g(試作例18)を超える場合はサポートされていない。同様にメソ孔容積の和が0.02cm3/g未満の場合(試作例8、9)や0.234cm3/gを超える場合(試作例20、21)もサポートされていない。また容量差(Vs)についても0.721cm3/gを超える場合(試作例19)はサポートされていない。」としているが、ミクロ孔容積の和が、「0.841cm3/g(試作例18)を超える場合」、メソ孔容積の和が「0.02cm3/g未満の場合(試作例8、9)」や「0.234cm3/gを超える場合(試作例20、21)」、容量差(Vs)が、「0.721cm3/gを超える場合(試作例19)」について、これらの範囲を超えた場合に、本件発明の課題を達成できない事情を主張するのであればともかく、単に、実施例での範囲がその数値までしかないということでは、本件発明をサポート要件を充足しないものとすることはできない。 しかも、本件訂正によって、メソ孔容積の和は、0.02~0.124cm3/gに限定されているから、メソ孔容積の和については、本件発明1は、ほぼ、各試作例で開示された範囲内にある。 そして、上記試作例18では、ミクロ孔容積の和が、0.841cm3/g、上記試作例19では、容量差(Vs)が、0.721cm3/gであるが、これらの試作例では、本件明細書の【0093】【表8】に記載される、本件発明の課題で捕集対象としている「ペル及びポリフルオロアルキル化合物」に含まれるFTOHの回収率において、優れた結果を示しており、上記試作例18で、ミクロ孔容積の和が、0.841cm3/gよりさらに大きくなったとしても、また、上記試作例19で、容量差(Vs)が、0.721cm3/gよりさらに大きくなったとしても、FTOHの回収率が、本件課題を解決しないほど低下することを、認識することはできない。 ウ 申立理由3のウについて まず、単に、繊維状活性炭以外の本件発明1の範囲に含まれる吸着活性炭が実施例として記載されていないということだけで、本件発明をサポート要件を充足しないものとすることはできない。なお、試作例20のBET比表面積は、本件発明1の範囲内にある。 そして、本件明細書の【0093】【表8】に記載される、本件発明の課題で捕集対象としている「ペル及びポリフルオロアルキル化合物」に含まれるFTOHの試作例20及び試作例21での回収率は、容積差(Vs)の条件を充足していないにもかかわらず、本件発明1の態様である試作例12~試作例19の結果には劣るものの相応の結果を示している。この結果を踏まえると、試作例20及び試作例21において、容積差(Vs)の条件を充足するようにすれば、更に回収率が上昇するであろうことは、当業者にとって容易に認識できる。 また、本件明細書の【0035】の「大気試料中のペル及びポリフルオロアルキル化合物を脱離可能に吸着する活性炭の吸着性能は、後述の実施例により導き出されるように、比表面積を900m2/g以上とすることにより発揮される。活性炭の細孔が一定以上形成されることにより、該化合物の吸着性能が確保される。」との記載、同【0036】の「そして、大気試料中のペル及びポリフルオロアルキル化合物の吸着においては、活性炭に形成された細孔分布も寄与することがわかった。・・・後述の実施例により導き出されるように、ミクロ孔の細孔容積(Vmic)の合計が0.35cm3/g以上とすると、大気試料中のペル及びポリフルオロアルキル化合物の吸着性能が向上する。・・・ミクロ孔が一定以上形成されることにより、該化合物が細孔中に捕集されやすくなると考えられる。」との記載、同【0037】の「メソ孔の細孔容積(Vmet)の合計が0.02cm3/g以上とすると、大気試料中のペル及びポリフルオロアルキル化合物の吸着性能が向上する。・・・メソ孔が一定以上形成されることにより、該化合物がミクロ孔にまで容易に侵入可能となると考えられる。」との記載、同【0038】の「加えて、ミクロ孔の細孔容積とメソ孔の細孔容積の差も効率的なペル及びポリフルオロアルキル化合物の吸着に寄与していると考えられる。後述の実施例により導き出されるように、ミクロ孔容積の和(Vmic)とメソ孔容積の和(Vmet)との容積差(Vs)を0.45以上とすることにより、大気試料中のペル及びポリフルオロアルキル化合物を効率的に脱離可能に吸着することができる。メソ孔を発達させすぎないことに加え、ミクロ孔を良好に発達させた活性炭とすることにより、ペル及びポリフルオロアルキル化合物の吸着性能を向上させつつ、後の抽出操作時において、該化合物がスムーズに脱離可能とされることにより、定量測定が良好に行われることができると考えられる。」との記載によれば、ペル及びポリフルオロアルキル化合物の吸着性能を向上させつつ、後の抽出操作時において、該化合物がスムーズに脱離可能にするには、活性炭における比表面積、活性炭に形成されたミクロ孔及びメソ孔の細孔分布が関係し、これらの条件を満足する限り、活性炭が繊維状である否かは、それ程関係しないことが理解できる。 そうすると、本件発明の活性炭において、繊維状活性炭以外の活性炭の場合について、本件課題を解決できないとすることはできない。 エ 上記ア~ウによれば、申立理由3には、理由がない。 (3)申立理由4(明確性要件違反)について ア 申立理由4のアについて 本件発明1が明確であるか否かは、「特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。」 この観点で判断するに、まず、請求項1には、メソ孔の細孔直径の範囲は「2~60nm以下」とされ特に不明確なことはない。 そして、本件明細書の【0080】の「〔メソ孔容積〕 細孔直径が2~60nmの範囲におけるdV/dDの値は、窒素ガスの吸着等温線からDH法により解析した。なお、解析ソフトにおける細孔直径2~60nmの直径範囲は2.43~59.72nmである。この解析結果より、試作例6~21細孔直径2~60nmの範囲の細孔容積であるメソ孔容積の和(Vmet)(cm3/g)を求めた。」との記載によれば、解析ソフトにおける、細孔直径2~60nmの直径範囲と、「2.43~59.72nm」とでのメソ孔容積(Vmet)の同値性を理解でき、解析ソフトから得られた結果を、細孔直径2~60nmのものとして理解すれば良いことが分かる。 また、本件発明の態様である試作例12~19における実際のメソ孔容積(Vmet)を参照すると(【0084】【表4】、【0085】【表5】)、メソ孔容積(Vmet)は、ミクロ孔容積(Vmic)に比べて相当小さく、仮に、メソ孔容積(Vmet)を測定するのに解析ソフトを用いなければならないことにより本来のメソ孔容積(Vmet)に対し多少のずれがあったとしても、本件発明の活性炭の細孔構造の把握に影響を与えるものではないといえるから、特段、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるということはできない。 他方で、異議申立人1による特許異議申立書には、解析ソフトから得られた結果を、細孔直径2~60nmのものとして理解した場合に、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確になることを示す証拠は提出されていない。 そうすると、申立理由4のアの理由では、本件発明1及び本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2、4~6を、明確でないとすることはできない。 イ 申立理由4のイについて 本件発明2で特定される(Vmic)の「0.35cm3/g以上」との要件は、記載上は容積差(Vs)の要件を充足することができない範囲を含んでいることは明らかではあるが、本件発明2は本件発明1を引用するのであるから、当然、(Vmic)の「0.35cm3/g以上」の範囲の中で、本件発明1における条件を満たさなくなる範囲は、実際は、本件発明2の範囲外のものであることが明らかであり、特に、本件発明2が不明確になっているということはない。 ウ 上記ア及びイによれば、申立理由4には、理由がない。 (4)異議申立人1による令和6年6月17日提出の意見書における記載要件に関する主張について 異議申立人1は、同意見書において、明確性要件、実施可能要件及びサポート要件に関して以下の主張をしている。 ここで、上記(1)で述べたように、本件発明は、サポート要件を充足するのであり、この結論は、異議申立人1の同意見書における主張に左右されるものではないが、念のため異議申立人1の主張について検討する。 また、以下のア(ア)の実施可能要件に関する主張、及び(イ)の主張は、特許異議申立ての理由にはない新たな内容を含むものであると共に、特許権者による訂正の請求に付随して生じた理由でもないから、採用することはできないが、念のため検討する。 ア 異議申立人1の主張 (ア)理由1(明確性要件違反及び実施可能要件違反) 本件発明1は以下の点で不明確であり、実施できない。 本件発明1では「2~60nmのメソ孔容積の和(Vmet)が、0.02~0.124cm3/g」と規定されている。 メソ孔容積の和の測定について、本件明細書には以下の記載がある。 【0037】:「本明細書において、メソ孔は細孔直径が2~60nmの範囲である細孔を指し、・・・本明細書中、各試作例の2~60nmの範囲のメソ孔容積はDH法(Dollimore-Heal法)による測定である。DH法の測定によるため、測定対象は2.43~59.72nmの細孔とした。」 【0080】:「なお、解析ソフトにおける細孔直径2~60nmの直径範囲は2.43~59.72nmである。この解析結果より、試作例6~21細孔直径2~60nmの範囲の細孔容積であるメソ孔容積の和(Vmet)(cm3/g)を求めた。」 上記によれば、本件発明1の「2~60nmのメソ孔容積」は解析ソフトの2.43~59.72nm範囲の細孔容積である。 しかしながら全ての解析ソフトの2.43~59.72nm範囲が2~60nmのメソ孔に対応しているという技術常識はない。 特に本件発明では解析ソフトは2~60nmの範囲よりも0.71nm([2.42nm-2nm]+[60nm-59.72nm])狭い範囲を測定した値を採用しているが、測定範囲が異なるとメソ孔容積の値も異なることから、具体的に解析ソフト、及び設定条件を特定することが必須である。 したがって当業者がメソ孔容積を一義的に決定できず、そのため2~60nmのメソ孔容積の和(Vmet)を算出できないから実施できない。 よって本件発明1及び本件発明1に従属する本件発明2~6は、明確性要件、および実施可能要件を充足しない(2頁26行~3頁19行)。 (イ)理由2(サポート要件違反) 本件発明1では「大気試料中のペルおよびポリフルオロアルキル化合物」を吸着対象として規定している。しかしながら実施例の吸着対象は、フルオロテロマーアルコール(「FTOHs」)のみであり、発明の詳細な説明、および実施例を参酌しても「ペルおよびポリフルオロアルキル化合物」全てを吸脱着できることはサポートされておらず、クレームの範囲まで拡張ないし一般化できない。 本件明細書には、細孔の孔径により活性炭の吸着対象、性能が変化すると記載されており、活性炭の表面酸化物量を増加させると親水性基を有するフルオロテロマーアルコール類の捕集性能が向上することが開示されている。 また実施例の「大気試料中のペル及びポリフルオロアルキル化合物の捕集性能の検討1」(【0041】以降)では、「ペル及びポリフルオロアルキル化合物として、今回はフルオロテロマーアルコール(以降「FTOHs」と表記する。)及びエチルペルフルオロオクタンスルホアミド(IUPAC名:N-エチル-1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-ヘプタデカフルオロオクタン-1-スルホアミド)(以降「N-EtFOSA」と表記する。)を用いて評価を行った。」(【0053】)と記載されているが、使用された試作例1~5が本件発明の各要件、すなわち、メソ孔容積の和(Vmet)、容積差(Vs)は開示されておらず、これらが本件発明1を満足する活性炭であることは示されていない。 そして実施例の「大気試料中のペル及びポリフルオロアルキル化合物の捕集性能の検討2」(【0061】以降)では、表面酸化物量、BET比表面積、メソ孔容積(Vmet)、容積差(Vs)が異なる繊維状活性炭を試料とし(表3~5)、フルオロテロマーアルコール(「FTOHs」)に対する吸着性能が示されているが(【0086】、表6~8)、これ以外の「ペル及びポリフルオロアルキル化合物」の捕集性能は示されていない。 したがって、実施例に示されているのは所定の物性を満足する繊維状活性炭(本件発明5) がフルオロテロマーアルコール(「FTOHs」)に対して吸脱着性能を有することのみである(この後、同趣旨の主張で、甲5、甲7を引用している。)。 上述の通り、発明の詳細な説明の記載、および実施例を参酌しても「ペルおよびポリフルオロアルキル化合物」全てを吸脱着できることはサポートされておらず、クレームの範囲まで拡張ないし一般化できない(3頁20行~5頁14行)。 (ウ)理由3(明確性要件違反) 本件発明1の容積差(Vs)は、(i)式「Vs=Vmic-Vmet」で表される。 ここで、「Vmic」が0.35cm3/g以上」(本件発明2)、Vmetは「0.02~0.124cm3/g」(本件発明1)であるから、少なくともVmicが0.35~0.47cm3/g未満の範囲において、Vsが「0.45cm3/g以上」となることはない。 したがって本件発明2は不可能な範囲を含んでいるから明確でない。 よって本件発明2、および本件発明2に従属する本件発明4~6は明確性要件を充足しない(9頁10~21行)。 イ 異議申立人1の主張に対する判断 (ア)上記ア(ア)の主張について 上記ア(ア)における明確性要件違反に関する主張は、第4の2(6)アで述べた申立理由4のアと同趣旨であるから、上記第5の1(3)アで述べたのと同様の理由により採用することができない。 また、2~60nmのメソ孔容積の和(Vmet)を算出するには、本件明細書の【0080】の記載に従えば、窒素ガスの吸着等温線からDH法による、測定対象である細孔直径2~60nmの直径範囲が、2.43~59.72nmに対応付けられている解析ソフトを使用して得られる結果を、2~60nmのメソ孔容積の和(Vmet)とすれば良いことが分かると共に、この測定が特別なものである事情も読み取れないから、DH法による測定に用いられる一般的な測定装置に組み込まれているソフトを用いれば良いことが理解でき、特に、2~60nmのメソ孔容積の和(Vmet)を算出するのに過度の試行錯誤が必要であるとはいえない。 他方で、異議申立人1からは、2~60nmのメソ孔容積の和(Vmet)を算出するのに過度の試行錯誤が必要であることを示す証拠等は提出されていない。 そうすると、上記ア(ア)における実施可能要件違反に関する主張も、採用することはできない。 (イ)上記ア(イ)の主張について まず、「ペルおよびポリフルオロアルキル化合物」においては、本件明細書の【0005】及び【0007】に記載されるそれぞれの化学式を参照すると、CnF2n+1を主要な原子団として含む点で共通していることが理解できる。 ここで、本件明細書の【0036】の「大気試料中のペル及びポリフルオロアルキル化合物の吸着においては、活性炭に形成された細孔分布も寄与することがわかった。・・・ミクロ孔が一定以上形成されることにより、該化合物が細孔中に捕集されやすくなると考えられる。」との記載、【0037】の「メソ孔が一定以上形成されることにより、該化合物がミクロ孔にまで容易に侵入可能となると考えられる。」等の記載によれば、本件発明の活性炭は、活性炭における孔構造の中で最も小さいミクロ孔に吸着対象物質を閉じ込めることにより吸着を行うことが理解できる。この吸着の機構によれば、ミクロ孔の大きさと化合物との関係が重要であって、化合物に含まれる特定の官能基との相互作用というよりは、化合物の全体的な構造との相互作用が重要であることが理解できる。 そして、活性炭の表面酸化物量を増加させると親水性基を有するフルオロテロマーアルコール類の捕集性能が向上する(【0032】)という副次的な効果はあるものの、本件発明の実施例(試作例12~19、【0084】【表4】、【0085】【表5】)によれば、本件発明で特定される細孔構造を有する活性炭に、化合物の全体的な構造として、CnF2n+1を主要な原子団として含む点で特徴付けられる種々のフルオロテロマーアルコールが、良好に吸着されていることが示されているのであるから、CnF2n+1を主要な原子団として含む点で、フルオロテロマーアルコールと共通する他のペル及びポリフルオロアルキル化合物であっても、本件発明1の活性炭に吸着されることが理解できる。 また、試作例2~5については、メソ孔容積の和(Vmet)、容積差(Vs)が具体的に示されてはいないが、材料として試作例12~19と同じとはいえないまでも、同様の繊維状活性炭を用いていることから(【0043】~【0046】、【0068】~【0075】)、試作例2~5の「ペルおよびポリフルオロアルキル化合物」に対する吸着機構は、本件発明の態様である試作例12~19と同じであるといえる。 ここで、【0059】【表2】に示される試作例2~5における回収率の測定結果によれば、同【0054】に示される化学式で、「SO2N(C2H5)」の構造部分で、フルオロテロマーアルコールの「OH」の構造部分とは相違するものの、CnF2n+1を主要な原子団として含むことでは「フルオロテロマーアルコール」と共通する「N-EtFOSA」であっても、少なくとも、フルオロテロマーアルコールと同様に繊維状活性炭に吸着されることが示されているといえる。そして、この結果は、本件発明1の活性炭が吸着するペルおよびポリフルオロアルキル化合物は、本件発明1の態様である試作例12~19における吸着対象物質である「フルオロテロマーアルコール」に限られるものではないことを示しているといえる。 そうすると、上記ア(イ)におけるサポート要件違反に関する異議申立人1の主張は、採用することはできない。 (イ)上記ア(イ)の主張について 上記(3)イで述べたように、本件発明2で特定される(Vmic)の「0.35cm3/g以上」との要件は、記載上は容積差(Vs)の要件を充足することができない範囲を含んでいることは明らかではあるが、本件発明2は本件発明1を引用するのであるから、当然、(Vmic)の「0.35cm3/g以上」の範囲の中で、本件発明1における条件を満たさなくなる範囲は、実際は、本件発明2の範囲外のものであることが明らかであり、特に、本件発明2が不明確になっているということはない。 また、本件発明2で特定される(Vmic)の「0.35cm3/g以上」との要件は、引用する本件発明1も考慮すれば、実際は、少なくとも「0.47cm3/g」以上であることは、当業者にとって明らかである。 そうすると、上記ア(ウ)における明確性要件違反に関する異議申立人1の主張は、採用することはできない。 (5)異議申立人2による令和6年6月11日提出の意見書における記載要件に関する主張について 異議申立人2は、同意見書において、サポート要件に関して以下の主張をしている。 ここで、上記(1)で述べたように、本件発明は、サポート要件を充足するのであり、この結論は、異議申立人2の同意見書における主張に左右されるものではないが、念のため異議申立人2の主張について検討する。 また、以下のア(イ)及び(ウ)の主張は、特許異議申立ての理由にはない新たな内容を含むものであると共に、特許権者による訂正の請求に付随して生じた理由でもないから、採用することはできないが、念のため検討する。 ア 異議申立人2の主張 (ア)訂正後の請求項1では、サポート要件を充足する特定として、「前記活性炭吸着材の2~60nmのメソ孔容積の和(Vmet)が0.02~0.124cm3/gであ」ることが特定されたが、その下限値の「0.02cm3/g」について、令和6年2月2付取消理由通知で、「メソ孔容積が最小である試作例10のメソ孔容積が、0.02と同程度の0.026であることから、ペル及びポリフルオロアルキル化合物を十分に、かつ正確に定量測定ができる程度に、脱離可能に捕集するには、メソ孔容積が、0.02(cm3/g)以上である必要があることが理解できる。」と判断したことに対して、試作例10は、「比較例」に該当するものであり、当該比較例の数値をもってメソ孔容積が0.02(cm3/g)以上である必要があるとすることはできない(2頁23行~4頁11行)。 (イ)容積差について 本件明細書の記載より、本件発明においては、容積差(Vs)が重要であることが理解できるが、試作例12~19では、その容積差が「0.094~0.702cm3/g」の範囲であるのに対して、本件発明1の容積差は「0.45cm3/g以上」あり、試作例と比較して非常に広範な範囲であることがわかる。即ち、容積差が1cm3/gを超えるような場合にも本件発明の課題を解決できると認識できる範囲ということはできないものであって、また、当業者が出願時の技術常識に照らし本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるということはできないことは明らかである(4頁12行~5頁8行)。 (ウ)試作例について 本件明細書の試作例14では、「フタムラ化学株式会社製:繊維状活性炭「FE3015」(平均繊維径:15μm)」(以降、C5)を使用しているが、当該試作例14と同じC5の活性炭吸着材を用い、かつ、表面酸化物量やBET比表面積が同程度である試作例2では、回収率がかなり低い。本件明細書【0061】によると、試作例14では、試作例1~5と比較して、「GC-MS/MSのMRMモードの最適なトランジションとコリジョンエネルギーを再検討し、より精度の高い分析条件の下、大気試料中のペル及びポリフルオロアルキル化合物の捕集実験2を行っ」ており、試作例2と試作例14では、分析精度が異なるものである。しかしながら、精度が異なっていたとしても、試作例2では、吸着対象物質であるペル及びポリフルオロアルキル化合物の捕集効率が試作例14と同等とはいえない程に低いことが記載されている。試作例2では、メソ孔容積の和(Vmet)や容積差(Vs)については記載されていない。しかしながら、同じ活性炭吸着材を使用している以上、試作例14と同程度のメソ孔容積の和(Vmet)や容積差(Vs)を有すると考えるのが当然であり、試作例2は、本件訂正後の請求項1に記載のメソ孔容積の和(Vmet)と容積差(Vs)を有する。即ち、当該記載によれば、吸着活性炭において、メソ孔容積の和(Vmet)が本件発明1の範囲であっても捕集効率に優れるわけではないと理解することができると言える。 また、同様に、試作例19では、フタムラ化学株式会社製:繊維状活性炭「FE3018」(平均繊維径:15μm)(以降、C6)を使用しており、同じC6の活性炭吸着材を用い、かつ、表面酸化物量やBET比表面積が同程度である試作例5においても、回収率が試作例19と比較して大幅に低いことがわかる。 上記結果より、本件発明においてはどのような範囲とすることで効果を奏するのかが不明であり、少なくとも、本件発明1の構成によっても本件発明の課題を解決できる範囲ではないことが、試作例2、試作例5から明らかであって、本件請求項1に記載された活性炭は、発明の詳細な説明に記載された事項及び本件出願時の技術常識に基づき、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるということはできない(5頁9行~7頁6行)。 イ 異議申立人2の主張に対する判断 (ア)上記ア(ア)の主張について 本件発明のサポート要件の判断は、上記第4の1(1)に記載の「サポート要件の判断規範」に従って判断すべきところ、この規範における「当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のもの」を検討する際に、本件発明の範囲に入らない例だからといって、判断の際の根拠にしないということはない。 試作例10は、本件発明の範囲に含まれないものではあるが、本件発明の課題を解決することができない例とされているわけではない。実際、例えば、試作例6~10は、本件明細書の【0091】【表6】によれば、フルオロテロマーアルコール類(FTOH)の回収率がNDとされ、本件発明の課題を解決できないものであると理解できるのに対し、試作例10は、少なくとも56%の回収率を示しており、本件発明の課題を解決することができない例とすることはできない。 そうすると、「サポート要件の判断規範」における「当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のもの」を検討する際に、試作例10を考慮することができないということはないから、異議申立人2の上記ア(ア)の主張は採用することができない。 (イ)上記ア(イ)の主張について 試作例12~19での容積差は、「0.470~0.721cm3/g」であるが、単に、試作例での容積差の範囲と比較して本件発明での範囲が広範であるというだけでは、本件発明がサポート要件を充足していないとすることはできない。試作例で示されている範囲を超える場合に、本件発明の課題を解決することができなくなることを、客観的な根拠によって主張するものではないから、異議申立人2の上記ア(イ)の主張は採用することができない。 (ウ)上記ア(ウ)の主張について 上記ア(ウ)の主張でも引用している本件明細書の【0061】の記載によれば、「より精度の高い分析条件の下、大気試料中のペル及びポリフルオロアルキル化合物の捕集実験2を行っ」ているのであるから、同じ趣旨の実験(「FTOH」に対する回収率)であれば当業者は、「より精度の高い分析条件」で行われる捕集実験2でもって、本件発明のサポート要件の充足性を判断するといえ、同じ趣旨の実験(「FTOH」に対する回収率)が、捕集実験2で行われているのであれば、【0059】【表2】に記載される捕集実験1での結果は、本件発明のサポート要件の判断を左右するものではない。 さらに、試作例14は、本件明細書の【0070】の「<試作例14> フタムラ化学製繊維状活性炭「FE3015」(C5)10gを過酸化水素濃度1.5%溶液500mlに浸漬させ、40時間静置後、取り出して乾燥させ試作例14の活性炭とした。」とされるもので、「FE3015」(C5)に対し過酸化水素による処理がなされている点で、「FE3015」(C5)をそのまま用いている試作例2(本件明細書の【0043】)と相違し、試作例2でのメソ孔容積の和(Vmet)や容積差(Vs)を、試作例14と同程度とすることはできない。 同様に、試作例19は、本件明細書の【0075】の「<試作例19> フタムラ化学製繊維状活性炭「FE3018」(C6)10gを過酸化水素濃度4.2%溶液500mlに浸漬させ、50時間静置後、取り出して乾燥させ試作例19の活性炭とした。」とされるもので、「FE3018」(C6)に対し濃度4.2%の過酸化水素による処理がなされているのに対し、試作例5は、「FE3018」(C6)に対して濃度6%の過酸化水素による処理がなされており(本件明細書の【0046】)、「FE3018」(C6)に対する処理条件が一致しないから、試作例5でのメソ孔容積の和(Vmet)や容積差(Vs)を、試作例19と同程度とすることはできない。 そうすると、試作例2、5に対する【0059】【表2】に記載される回収率の結果をもって、本件発明がサポート要件を充足していないということはできないし、そもそも、【0059】【表2】に記載される回収率の結果によれば、試作例2~5は、各対象物質に対する回収率に「ND」があり、本件発明の課題を解決していないといえる試作例1に比べれば、各対象物質の回収率は、向上しているものであり、本件発明の課題を解決していないとまではいうことはできない。 以上によれば、異議申立人2の上記ア(ウ)の主張は採用することができない。 (6)記載要件の理由に関するまとめ 以上のとおり、本件特許は、請求項1、2、4~6の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである、ということはできないから、取消理由、申立理由3、4には、理由がない。 2 新規性欠如及び進歩性欠如に関する、取消理由、申立理由及び意見書における異議申立人1、2の主張について (1)各甲号証に記載された事項 ア 甲1-1(甲2-2)に記載された事項 (ア)「【請求項1】 BET比表面積が1500~2300m2/g、全細孔容積が0.7~1.2cc/g、細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔容積が全マイクロポア細孔容積の90~92%であり、かつ、温度25℃、相対湿度52%における水分吸着率が4%以下である、活性炭素繊維。 ・・・ 【請求項3】 沸点が120~300℃の範囲内の有機化合物を吸着させるために用いられる、請求項1または2に記載の活性炭素繊維。」 (イ)「【発明が解決しようとする課題】 【0008】 沸点が120~300℃の範囲内のたとえばm-キシレンなどの有機化合物は、吸着される分子の容積が大きく、小さな細孔には吸着しないという性質を有するため、このような有機化合物を活性炭素繊維で吸着させようとする場合、活性炭素繊維の細孔が有効に活用できないという問題がある。したがって、このような有機化合物に対し特に優れた吸着性能を有する活性炭素繊維の開発が望まれている。 【0009】 本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、沸点が120~300℃の範囲内の有機化合物に対し特に優れた吸着性能を有する活性炭素繊維を提供することである。 【課題を解決するための手段】 【0010】 本発明の活性炭素繊維は、BET比表面積が1500~2300m2/g、全細孔容積が0.7~1.2cc/g、細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔容積が全マイクロポア細孔容積の90~92%であり、かつ、温度25℃、相対湿度52%における水分吸着率が4%以下であることを特徴とする。 ・・・ 【0015】 本発明の活性炭素繊維はまた、全細孔容積が0.7~1.2cc/gの範囲内であることを特徴の1つとする。本発明の活性炭繊維の全細孔容積が0.7cc/g未満である場合には、沸点が120~300℃の範囲内のたとえばm-キシレンなどの有機化合物が十分に吸着されないという不具合があり、1.2cc/gを超える場合には、単繊維の強度が著しく低下し、形態を保てないという不具合がある。沸点が120~300℃の範囲内のたとえばm-キシレンなどの有機化合物が十分に吸着でき、繰り返し使用した際に形態を保持するためには、活性炭素繊維の全細孔容積は0.7~1.0cc/gの範囲内であることが好ましい。なお、全細孔容積は、たとえば比表面積・細孔分布測定装置Gemini2375(Micromeritics社製)を用いて測定することができる。 【0016】 本発明の活性炭素繊維は、細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔容積が全マイクロポア細孔容積の90~92%であることを特徴の1つとする。細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔容積が全マイクロポア細孔容積の90%未満である場合には、細孔が大きくなりすぎて、沸点が120~300℃の範囲内のたとえばm-キシレンなどの有機化合物が十分に吸着されないという不具合があり、また、92%を超える場合には、細孔が小さくなりすぎて、沸点が120~300℃の範囲内のたとえばm-キシレンなどの有機化合物が十分に吸着されないという不具合がある。沸点が120~300℃の範囲内のたとえばm-キシレンなどの有機化合物が十分に吸着できるためには、活性炭素繊維の細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔容積は、全マイクロポア細孔容積の91~92%であることが好ましい。なお、細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔容積の割合は、たとえば比表面積・細孔分布測定装置Gemini2375(Micromeritics社製)を用いて測定することができる。」 (ウ)「【0025】 本発明の活性炭素繊維は、高沸点有機化合物に対し特に優れた吸着性能を示すものであるため、このような高沸点有機化合物を主な吸着対象とするフィルタに好適に適用することができる。本発明の活性炭素繊維を適用したフィルタは、吸着と水蒸気による脱着を交互に切り替え可能であり、化学工場、医薬工場などの工業プロセスから排出される高沸点有機化合物を除去、回収するための排ガス処理装置に好適に用いられる。」 (エ)「【0034】 (3)全マイクロポア細孔容積(A)(cc/g) 試料を約30mg採取し、120℃で12時間真空乾燥して秤量し、比表面積・細孔分布測定装置Gemini2375(Micromeritics社製)を使用して測定した。液体窒素の沸点(-195.8℃)における窒素ガスの吸着量を相対圧が0.02~0.95の範囲で測定し、試料の吸着等温線を作成した。この結果をMP法によって解析範囲0~20Å、t決定式H.Jの条件で解析し、吸着時のマイクロポア細孔径分布数表の結果より全マイクロポア細孔容積(A)(単位:cc/g)を算出した。」 (オ)「【0041】 (10)m-キシレンに対する吸着性能評価 試料を約3kg充填した吸着槽を2槽併設した吸着装置に、濃度1000ppm、温度30℃、湿度50%、風量10m3/minのm-キシレンのガスを流し、一定時間吸着し、吸着終了時に吸着槽に水蒸気を噴出させて脱着するサイクルを10回繰り返して、平均の吸着破過時間(分)を求めた。 【0042】 実施例1、2、比較例1、2の活性炭素繊維について得られた結果を表1、2にそれぞれ示す。 【0043】 【表1】(当審注:【表1】の一部のみ表示) [図:0001418223000004.jpg] 【0044】 【表2】 [図:0001418223000005.jpg] 」 イ 甲2-1に記載された事項 (ア)「 [図:0001418223000006.jpg] ・・・ [図:0001418223000007.jpg] 」(1/5頁) (イ)「 [図:0001418223000008.jpg] 」(2/5頁) ウ 甲3-1に記載された事項 (ア)「 [図:0001418223000009.jpg] 」(33頁) (イ)「 [図:0001418223000010.jpg] [図:0001418223000011.jpg] 」(33頁左欄18行~右欄2行) (ウ)「 [図:0001418223000012.jpg] 」(34頁左欄6~15行) (エ)「 [図:0001418223000013.jpg] 」(34頁右欄7~25行) エ 甲4-1に記載された事項 「 [図:0001418223000014.jpg] 」 オ 甲1-2に記載された事項 (ア)「【請求項1】 BET比表面積が1000~1800m2/g、全細孔容積が0.4~0.9cc/g、細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔容積が全マイクロポア細孔容積の93~94%であり、かつ、温度25℃、相対湿度52%における水分吸着率が6%以下である、活性炭素繊維。 ・・・ 【請求項3】 沸点が70~120℃の有機化合物を吸着させるために用いられる、請求項1または2に記載の活性炭素繊維。」 (イ)「【発明が解決しようとする課題】 【0008】 沸点が70~120℃の範囲内のたとえばトルエンなどの有機化合物は、吸着される分子の容積が比較的大きく、小さな細孔には吸着せず、また大きな細孔になると吸着速度が遅くなるという性質を有するため、このような有機化合物を活性炭素繊維で吸着させようとする場合、活性炭素繊維の細孔が有効に活用できないという問題がある。したがって、このような有機化合物に対し特に優れた吸着性能を有する活性炭素繊維の開発が望まれている。 【0009】 本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、沸点が70~120℃の範囲内の有機化合物に対し特に優れた吸着性能を有する活性炭素繊維を提供することである。 【課題を解決するための手段】 【0010】 本発明の活性炭素繊維は、BET比表面積が1000~1800m2/g、全細孔容積が0.4~0.9cc/g、細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔容積が全マイクロポア細孔容積の93~94%であり、かつ、温度25℃、相対湿度52%における水分吸着率が6%以下であることを特徴とする。 ・・・ 【0015】 本発明の活性炭素繊維はまた、全細孔容積が0.4~0.9cc/gの範囲内であることを特徴の1つとする。本発明の活性炭繊維の全細孔容積が0.4cc/g未満である場合には、沸点が70~120℃の範囲内のたとえばトルエンなどの有機化合物が十分に吸着されないという不具合があり、また、0.9cc/gを超える場合には、吸着速度が遅くなるという不具合がある。沸点が70~120℃の範囲内のたとえばトルエンなどの有機化合物が十分に吸着できるためには、活性炭素繊維の全細孔容積は0.6~0.7cc/gの範囲内であることが好ましい。なお、全細孔容積は、たとえば比表面積・細孔分布測定装置Gemini2375(Micromeritics社製)を用いて測定することができる。 【0016】 本発明の活性炭素繊維は、細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔容積が全マイクロポア細孔容積の93~94%以上であることを特徴の1つとする。細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔容積が全マイクロポア細孔容積の93%未満である場合には、細孔が大きくなりすぎて、沸点が70~120℃の範囲内のたとえばトルエンなどの有機化合物が十分に吸着されないという不具合があり、また、94%を超える場合には、細孔が小さくなりすぎて、沸点が70~120℃の範囲内のたとえばトルエンなどの有機化合物が十分に吸着されないという不具合がある。沸点が70~120℃の範囲内のたとえばトルエンなどの有機化合物が十分に吸着できるためには、活性炭素繊維の細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔容積は、全マイクロポア細孔容積の93.3~93.8%の範囲内であることが好ましい。なお、細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔容積の割合は、たとえば比表面積・細孔分布測定装置Gemini2375(Micromeritics社製)を用いて測定することができる。」 (ウ)「【0025】 本発明の活性炭素繊維は、沸点が70~120℃の範囲内の有機化合物に対し特に優れた吸着性能を示すものであるため、このような有機化合物を主な吸着対象とするフィルタに好適に適用することができる。本発明の活性炭素繊維を適用したフィルタは、吸着と水蒸気による脱着を交互に切り替え可能であり、化学工場、医薬工場などの工業プロセスから排出される有機化合物を除去、回収するための排ガス処理装置に好適に用いられる。」 (エ)「【0034】 (3)全マイクロポア細孔容積(A)(cc/g) 試料を約30mg採取し、120℃で12時間真空乾燥して秤量し、比表面積・細孔分布測定装置Gemini2375(Micromeritics社製)を使用して測定した。液体窒素の沸点(-195.8℃)における窒素ガスの吸着量を相対圧が0.02~0.95の範囲で測定し、試料の吸着等温線を作成した。この結果をMP法によって解析範囲0~20Å、t決定式H.Jの条件で解析し、吸着時のマイクロポア細孔径分布数表の結果より全マイクロポア細孔容積(A)(単位:cc/g)を算出した。」 (オ)「【0041】 (10)トルエンに対する吸着性能評価 試料を約3kg充填した吸着槽を2槽併設した吸着装置に、濃度1000ppm、温度30℃、湿度50%、風量10m3/minのトルエンのガスを流し、一定時間吸着し、吸着終了時に吸着槽に水蒸気を噴出させて脱着するサイクルを10回繰り返して、平均の吸着破過時間(分)を求めた。 【0042】 実施例1、2、比較例1、2の活性炭素繊維について得られた結果を表1、2にそれぞれ示す。 【0043】 【表1】(当審注:【表1】の一部のみ表示) [図:0001418223000015.jpg] 【0044】 【表2】 [図:0001418223000016.jpg] 」 カ 甲3-2に記載された事項 (ア)「【請求項1】 有機溶剤を吸着可能な吸着材を有し、有機溶剤を含む被処理ガスと前記吸着材から有機溶剤を脱着するための加熱蒸気とが交互に供給される処理槽を有し、 2つの前記処理槽から選択された一つの前記処理槽に前記加熱蒸気を導入する加熱蒸気供給部と、 残りの前記処理槽に前記被処理ガスを導入する被処理ガス供給部と、 前記加熱蒸気供給部と連通された気相部を有し、前記加熱蒸気の供給時に前記処理槽から排出された脱着ガスから有機溶剤を回収するコンデンサおよび/またはセパレータを含む回収機構部と、を備え、 前記被処理ガス供給部は、 前記被処理ガスを導入する処理ガス入口ラインと、 前記処理ガス入口ラインに設けられ、前処理用吸着材が収容される前処理用吸着槽と、有し、 前記回収機構部は、 前記脱着ガスによって前記コンデンサおよび/またはセパレータから押し出される戻りガスを、前記処理ガス入口ラインの前処理用吸着槽よりも上流側に戻す戻りラインを有する、ガス処理装置。」 (イ)「【技術分野】 【0001】 本発明は、吸着材を用いて有機溶剤含有ガスに含まれる有機溶剤の吸着を行なう工程と、吸着した有機溶剤の脱着を行なう工程とを並行に行なうことを可能としたガス処理装置およびガス処理方法に関するものである。」 (ウ)「【発明が解決しようとする課題】 【0007】 吸着に関与する細孔が粒状活性炭では、マクロポアであるのに対し、ACFでは、ミクロポアであることから、有機溶剤の吸着・脱着速度がACFの方が速く、また脱着時間が短時間で終了するため回収溶剤の品質が良いことが挙げられる。 【0008】 また、脱着工程により脱着された脱着ガスはコンデンサで冷却され、さらにセパレータで回収溶剤として分離回収される。コンデンサおよび/またはセパレータには加圧防止のため、コンデンサおよび/またはセパレータの気相部分を開放しておく必要がある。 【0009】 しかし、脱着ガスによって押し出されるコンデンサおよび/またはセパレータに滞留しているガスは、飽和蒸気圧に近い未濃縮の高濃度有機溶剤含有ガスであるため、高濃度有機溶剤含有ガスを処理する酸化分解設備や回収設備を付設する必要があった。以下、脱着ガスによって押し出されるコンデンサおよび/またはセパレータに滞留している高濃度有機溶剤含有ガスを「戻りガス」と呼ぶ。 【0010】 脱着工程の初期段階では、吸着槽内に滞留した被処理ガスが脱着用蒸気でコンデンサおよび/またはセパレータへ押し出される。しかし被処理ガスの殆どは冷却濃縮されないため、吸着槽の約容積分だけの「戻りガス」が短時間で排出される。その後は、殆ど冷却凝縮される有機溶剤含有蒸気がコンデンサおよび/またはセパレータへ送られるため、「戻りガス」の風量は著しく低下する。 【0011】 つまり「戻りガス」の風量は脱着工程初期で最も大きくなり、その後著しく低下するため、「戻りガス」中の有機溶剤を高効率で回収することは困難とされていた。 【0012】 また、分離回収された有機溶剤は、環境配慮や製造コスト削減の意識から再利用されることも多いため、回収率の向上のためには高濃度の有機溶剤を含有している「戻りガス」を効率よく回収する必要がある。 【0013】 したがって、本発明は、吸着材を用いて有機溶剤含有ガスの吸脱着を高効率かつ連続的に行なうことを可能とした、ガス処理装置およびこのガス処理装置を用いたガス処理方法を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0014】 近年の環境認識の向上に伴い、排出ガス中の有機溶剤含有量の規制が強化されたことから、有機溶剤含有量の低減化が活発となってきていることから、高い有機溶剤回収を持つガス処理装置が求められる。 【0015】 本発明は、被処理ガス供給部の前段に前処理用吸着材が充填された前処理用吸着槽を設け、脱着ガスによって押し出される戻りガスを前処理用吸着槽の前段に送り、被処理ガスと混合させた後、前処理用吸着槽を通過させて吸着槽で処理する手段を設けることで、戻りガスによる吸着工程入口ガス濃度の変動を大幅に緩和して平準化できるため、吸着熱による吸着材の劣化や性能低下を防ぐことができる。また戻りガスを別途処理設備で処理した時よりも有機溶剤を高収率で回収でき、従来よりもコンパクトでありランニングコストも安価となるガス処理装置を提供するものである。」 (エ)「【0056】 <実施例> 被処理ガスの一例となる有機溶剤含有ガスには塩化メチレン、吸着材には東洋紡株式会社製のACF「K-FILTER」3.8kg/槽を用い、一回の脱着に必要な蒸気量は1.9kgとした。 【0057】 塩化メチレンを22,000ppm含む25℃の被処理ガスを、風量2.7Nm3/minで送風機1より吸着工程となっている第2処理槽3に送風した。第2処理槽3で処理された後は清浄空気Bとして系外に排出された。 【0058】 第2処理槽3から排出される吸着工程出口ガスの塩化メチレン濃度が1,100ppmに達した時点で工程を切り替えた。第2処理槽3が吸着工程を行なっている間、第1処理槽2では加熱蒸気を噴出して脱着工程を行なった。 【0059】 脱着ガスはコンデンサ10で凝縮され、セパレータ12で有機溶剤と水に分離された。コンデンサ10およびセパレータ12に滞留しているガスは脱着ガスによって押し出され、戻りガスとして戻りガスライン13を通って前処理用吸着槽14の前段の処理ガス入口ライン17に送られた。前処理用吸着槽14の前処理用吸着材15には粒状活性炭を用いた。 【0060】 特定の処理槽での処理サイクルは、吸着工程→脱着工程を1サイクルとし、合計12サイクルを実施した。12サイクル運転で1セットとし、これを66セット繰り返し、各処理槽ACFの劣化確認を実施した。 ・・・ 【0064】 劣化確認実施前後のACFのBET比表面積は、マイクロメリティックスジャパン合同会社製の比表面積・細孔分布測定装置(Gemini2375)を用いて測定した。ACFを120℃で12時間真空乾燥し、液体窒素の沸点(-195.8℃)における窒素ガスの吸着量を相対圧が0.02~0.95の範囲で測定し、試料の吸着等温線を作成した。相対圧0.02~0.15の範囲での結果をもとに、BET法により算出した。 【0065】 劣化確認実施前後のACFの細孔直径10Å以下のマイクロポア細孔容積は、マイクロメリティックスジャパン合同会社製の比表面積・細孔分布測定装置(Gemini2375)を用いて測定した。ACFを120℃で12時間真空乾燥し、液体窒素の沸点(-195.8℃)における窒素ガスの吸着量を相対圧が0.02~0.95の範囲で測定し、試料の吸着等温線を作成した。 【0066】 この結果をMP法によって解析範囲0~20Å、t決定式H.Jの条件で解析し、吸着時のマイクロポア細孔径分布数表の結果より全マイクロポア細孔容積から細孔直径10.03Å以上のマイクロポア細孔容積を引いて算出した。 【0067】 図2に、実施例、および、比較例1から2の吸着工程入口および出口の塩化メチレン濃度、サイクル終了後のセパレータで分離された液体塩化メチレンの回収率、約800回吸脱着サイクルを繰り返した後のACFの表面物性を示す。 【0068】 サイクル運転前のACFの表面物性は、BET比表面積が1610m2/g、10Å以下の全マイクロポア容積が0.64m3/gであった。」 (オ)「【図1】 [図:0001418223000017.jpg] 【図2】 [図:0001418223000018.jpg] 」 キ 甲4-2に記載された事項 (ア)「1.はじめに 東洋紡績株式会社が昭和48年に開発した繊維状活性炭フィルタ(商品名「Kフィルター」)は,工業的に難しいとされていた活性炭の外表面積(粒子径にほぼ反比例する)を,従来の活性炭に比べ2桁以上上げることができた.」(81頁1~4行) (イ)「(1)構造特性 炭化賦活された本フィルタは第1図でみるように1本1本(大きさ~20μ)の繊維状活性炭(単系)は非常に滑らかで,この表面からガス吸普に関与する~20Aの細孔(ミクロポアー)をあけている(第2図).」(81頁18~20行) (ウ)「 [図:0001418223000019.jpg] 」(82頁) (エ)「 [図:0001418223000020.jpg] 」(82頁) (オ)「4.溶剤回収装置のフロンへの適用例 本フィルタ装置によるフロンの回収装置は10年前から納入実績があり今日も順調に稼働している.フロン113,11および112など主な納入先は第7表の通りで,原ガス処理風量は0.5~140m3/min,濃度は350~50,000ppmと,ごく小風量から大風量,濃度も低濃度から高濃度と実績の範囲も非常に広い.」(86頁下から3行~87頁3行) ク 甲5-2に記載された事項 (ア)「1.はじめに Kフィルターは,東洋紡織が1972年に開発した繊維状活性炭である。これは,工業的に難しいとされていた活性炭の外表面積(粒子径にほぼ反比例する)を,従来の活性炭に比べ,2桁以上繊維から活性炭を作ることによって上げることができた。」(25頁1欄1~8行) (イ)「2.1 Kフィルターの構造特性 炭化賦活されたKフィルターは,写真1でみるように1本1本(大きさ~20μ)のKフィルターの活性炭素繊維(単糸)は非常に滑らかで,この表面からガス吸着に関与する~20Åの細孔(ミクロポァー)をあけている(図1)。」(25頁3欄17~23行) (ウ)「 [図:0001418223000021.jpg] 」(25頁) (エ)「 [図:0001418223000022.jpg] 」(26頁) (オ)「4.Kフィルター溶剤回収装置のフロンへの適用例 Kフィルタ装置によるフロンの回収装置は,10年前から納入実績があり,今日も順調に稼働している。フロン113,11及び112など主な納入先は表7の通りで,原ガス処理風量は0.5~140m3/min,濃度は350~50,000ppmと,ごく小風量から大風量,濃度も低濃度から高濃度と実績の範囲も非常に広い。」(28頁1欄13~22行) (2)甲1-1(2-2)、2-1、1-2、3-2に記載された発明 ア 甲1-1(2-2)に記載された発明 甲1-1の上記(1)ア(ア)には、【請求項1】を引用する【請求項3】として、「BET比表面積が1500~2300m2/g、全細孔容積が0.7~1.2cc/g、細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔容積が全マイクロポア細孔容積の90~92%であり、かつ、温度25℃、相対湿度52%における水分吸着率が4%以下である、沸点が120~300℃の範囲内の有機化合物を吸着させるために用いられる、活性炭素繊維。」が記載されているといえる。 そして、この活性炭素繊維の具体的な態様として、実施例1として、同(オ)の【0043】【表1】には、BET比表面積が1887m2/g、全細孔容積が0.82cc/g、全マイクロポア細孔容積が0.80cc/g、細孔直径1mm以下(【請求項1】や他の明細書中の記載との対応から「nm」の誤記であると認める。)のマイクロポア細孔容積が0.74cc/gである活性炭素繊維が記載され、同(オ)の【0041】及び【0044】【表2】の記載によれば、【請求項1】に記載される「沸点が120~300℃の範囲内の有機化合物」として、m-キシレンを対象として、m-キシレンの吸着破過時間を測定することが記載されている。 また、同(エ)の【0034】の「この結果をMP法によって解析範囲0~20Å、t決定式H.Jの条件で解析し、吸着時のマイクロポア細孔径分布数表の結果より全マイクロポア細孔容積(A)(単位:cc/g)を算出した。」との記載によれば、全マイクロポア細孔の細孔径は、「0~20Å」である。 以上を、【請求項1】を引用する【請求項3】の記載形式でまとめると、甲1-1には、上記実施例1に対応する以下の発明(以下、「甲1-1発明」という。)が記載されているといえる。 「BET比表面積が1887m2/g、全細孔容積が0.82cc/g、細孔径が0~20Åである全マイクロポア細孔容積が0.80cc/g、細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔容積が0.74cc/g、細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔容積が全マイクロポア細孔容積の90~92%であり、かつ、温度25℃、相対湿度52%における水分吸着率が4%以下である、沸点が120~300℃の範囲内の有機化合物であるm-キシレンを吸着させるために用いられる、活性炭素繊維。」 イ 甲2-1に記載された発明 甲2-1の上記(1)イ(ア)の「太閤ACF(脱臭・空気浄化用 活性炭シート)」との記載によれば、甲2-1には、「脱臭・空気浄化用活性炭シートである太閤ACF」が記載されているといえる。 そして、同(イ)の「・標準的物性:フェルト(FE)タイプ」の表の記載によれば、上記「太閤ACF」の中のフェルト(FE)タイプの製品に、品名「FE3015」があることが理解できる。 そうすると、甲2-1には、以下の発明(以下、「甲2-1発明」という。)が記載されているといえる。 「脱臭・空気浄化用活性炭シートである太閤ACFの品名FE3015であるフェルト(FE)タイプの製品。」 ウ 甲1-2に記載された発明 甲1-2の上記(1)オ(ア)には、【請求項1】を引用する【請求項3】として、「BET比表面積が1000~1800m2/g、全細孔容積が0.4~0.9cc/g、細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔容積が全マイクロポア細孔容積の93~94%であり、かつ、温度25℃、相対湿度52%における水分吸着率が6%以下である、沸点が70~120℃の有機化合物を吸着させるために用いられる、活性炭素繊維。」が記載されているといえる。 そして、この活性炭素繊維の具体的な態様として、実施例1として、同(オ)の【0043】【表1】には、BET比表面積が1471m2/g、全細孔容積が0.65cc/g、全マイクロポア細孔容積が0.62cc/g、細孔直径1mm以下(【請求項1】や他の明細書中の記載との対応から「nm」の誤記であると認める。)のマイクロポア細孔容積が0.58cc/gである活性炭素繊維が記載され、同(オ)の【0041】及び【0044】【表2】の記載によれば、【請求項1】に記載される「沸点が70~120℃の有機化合物」として、トルエンを対象として、トルエンの吸着破過時間を測定することが記載されている。 また、同(エ)の【0034】の「この結果をMP法によって解析範囲0~20Å、t決定式H.Jの条件で解析し、吸着時のマイクロポア細孔径分布数表の結果より全マイクロポア細孔容積(A)(単位:cc/g)を算出した。」との記載によれば、全マイクロポア細孔の細孔径は、「0~20Å」である。 以上を、【請求項1】を引用する【請求項3】の記載形式でまとめると、甲1-2には、上記実施例1に対応する以下の発明(以下、「甲1-2発明」という。)が記載されているといえる。 「BET比表面積が1471m2/g、全細孔容積が0.65cc/g、細孔径が0~20Åである全マイクロポア細孔容積が0.62cc/g、細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔容積が0.58cc/g、細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔容積が全マイクロポア細孔容積の93~94%であり、かつ、温度25℃、相対湿度52%における水分吸着率が6%以下である、沸点が70~120℃の有機化合物であるトルエンを吸着させるために用いられる、活性炭素繊維。」 エ 甲3-2に記載された発明 甲3-2の上記(1)カ(エ)の【0056】には、同(ア)の【請求項1】に記載され、同(オ)の【図1】に示されるガス処理装置の「吸着剤」(【図1】における4A:第1吸着材、4B:第2吸着材)として、「東洋紡株式会社製のACF「K-FILTER」」を用いることが記載されていると共に、この吸着剤は、被処理ガスの一例として塩化メチレン含有ガスを対象とすることが記載されている。 そして、同(エ)の【0058】の「第2処理槽3から排出される吸着工程出口ガスの塩化メチレン濃度が1,100ppmに達した時点で工程を切り替えた。第2処理槽3が吸着工程を行なっている間、第1処理槽2では加熱蒸気を噴出して脱着工程を行なった。」等の記載によれば、上記吸着剤は、塩化メチレン含有ガスの塩化メチレンを吸着、脱着するものであるといえる。 また、同(エ)の【0068】の「サイクル運転前のACFの表面物性は、BET比表面積が1610m2/g、10Å以下の全マイクロポア容積が0.64m3/gであった。」との記載によれば、上記吸着剤のBET比表面積は1610m2/g、10Å以下の全マイクロポア容積は0.64m3/g(同(オ)の【図2】の記載との対応から「cm3/g」の誤記と認める。)である。 そうすると、甲3-2には、以下の発明(以下、「甲3-2発明」という。)が記載されているといえる。 「被処理ガスの一例として塩化メチレン含有ガスを対象とし、塩化メチレン含有ガスの塩化メチレンを吸着、脱着し、BET比表面積が1610m2/g、10Å以下の全マイクロポア容積が0.64cm3/gである、東洋紡株式会社製のACF「K-FILTER」。」 (3)甲1-1(甲2-2)を主引用例として(申立理由1、6) 申立理由1と申立理由6は、共に特開2011-105545号公報を主引用例とするものであるから、まとめて判断する。 ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲1-1発明を対比する。 a 甲1発明の「活性炭素繊維」は、「沸点が120~300℃の範囲内の有機化合物であるm-キシレンを吸着させるために用いられる」ものであるから、本件発明1の「活性炭吸着材」及び「吸着活性炭」に相当する。 また、甲1-1の上記(1)ア(オ)の【0041】の「(10)m-キシレンに対する吸着性能評価 試料を約3kg充填した吸着槽を2槽併設した吸着装置に、濃度1000ppm、温度30℃、湿度50%、風量10m3/minのm-キシレンのガスを流し、一定時間吸着し、吸着終了時に吸着槽に水蒸気を噴出させて脱着するサイクルを10回繰り返して、平均の吸着破過時間(分)を求めた。」との記載によれば、甲1-1発明の「活性炭素繊維」は、m-キシレンを脱離可能に吸着するためのものであると共に、甲1-1発明の「m-キシレン」は、本件発明1の「ペル及びポリフルオロアルキル化合物」と、「有機化合物」である点で共通する。 そうすると、甲1-1発明の「沸点が120~300℃の範囲内の有機化合物であるm-キシレンを吸着させるために用いられる、活性炭素繊維」は、本件発明1の「大気試料中のペル及びポリフルオロアルキル化合物を脱離可能に吸着するためのペル及びポリフルオロアルキル化合物吸着活性炭」と、「有機化合物を脱離可能に吸着するための有機化合物吸着活性炭」である点で共通する。 b 甲1-1発明において、「BET比表面積が1887m2/g」であることは、本件発明1の「BET比表面積が900m2/g以上である」との条件を満足するから、甲1発明の「BET比表面積が1887m2/g」である「活性炭素繊維」は、本件発明1の「BET比表面積が900m2/g以上である活性炭吸着材からな」る「吸着活性炭」に相当する。 c 甲1-1発明の「細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔容積」は、本件発明1の「1nm以下のミクロ孔容積の和(Vmic)」に相当する。 そして、甲1-1発明では、全細孔容積が0.82cc/g、細孔径が0~20Åである全マイクロポア細孔容積が0.80cc/gであるところ、20Åは2nmであるから、「全細孔容積」の「0.82cc/g」から「細孔径が0~20Åである全マイクロポア細孔容積」の「0.80cc/g」を引けば、2nm以上の孔容積の和が「0.02cc/g」と求められるが、この孔容積の和は、「2~60nmのメソ孔容積の和(Vmet)」を含んだものとなる。 ここで、甲1-1発明では、「2nm以上の孔容積の和」、すなわち、60nm超の孔の孔容積を含めても、この容積(0.02cc/g)を、「細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔容積」である「0.74cc/g」から引けば、「0.72cc/g」となり、本件発明1の「1nm以下のミクロ孔容積の和(Vmic)と前記メソ孔容積の和(Vmet)との容積差(Vs)」の下限である「0.45cm3/g」の値を超えるのであるから、甲1-1発明において、「細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔容積」から、その数値は不明であるものの、細孔直径2~60nm以下の細孔容積を引いた場合には、当然、本件発明1の「1nm以下のミクロ孔容積の和(Vmic)と前記メソ孔容積の和(Vmet)との容積差(Vs)が0.45cm3/g以上である」との条件を満足するといえる。 c 上記a~cによれば、本件発明1と甲1-1発明は、「BET比表面積が900m2/g以上である活性炭吸着材からなり、 前記活性炭吸着材の下記の(i)式(省略)に規定する1nm以下のミクロ孔容積の和(Vmic)と前記メソ孔容積の和(Vmet)との容積差(Vs)が0.45cm3/g以上である 有機化合物を脱離可能に吸着するための有機化合物吸着活性炭。」の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 <相違点1> 活性炭吸着材について、本件発明1では、「2~60nmのメソ孔容積の和(Vmet)が0.02~0.124cm3/gであ」るのに対し、甲1-1発明では、全細孔容積が0.82cc/g、細孔径が0~20Åである全マイクロポア細孔容積が0.80cc/g、細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔容積が0.74cc/gである点。 <相違点2> 脱離可能に吸着するための有機化合物が、本件発明1では、大気試料中のペル及びポリフルオロアルキル化合物であるのに対し、甲1-1発明では、沸点が120~300℃の範囲内の有機化合物であるm-キシレンである点。 (イ)相違点に対する判断 上記相違点1について検討する。 a 甲1-1発明の「活性炭素繊維」について、「全細孔容積」、「細孔径が0~20Åである全マイクロポア細孔容積」及び「細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔容積」については明らかにされているものの、「2~60nmのメソ孔容積の和(Vmet)」については、甲1-1においては、何ら明らかされていない。ここで、20Åは2nmであるから、「全細孔容積」の「0.82cc/g」から「細孔径が0~20Åである全マイクロポア細孔容積」の「0.80cc/g」を引けば、2nm以上の孔容積の和までは求められるが、この値には、60nm超の孔容積の和も含まれることになるから、「2~60nmのメソ孔容積の和(Vmet)」は明らかにはならない。しかも、甲1-1発明の「活性炭素繊維」では、2nm以上の孔容積の和が0.2cc/g(0.82cc/g-0.80cc/g)であるところ、「活性炭素繊維」で60nm超の孔が全く存在しないということは、技術常識として考えられないから、2~60nmの孔容積の和は、0.02cc/g(m3/g)未満であるといえる。 そうすると、甲1-1発明の「活性炭素繊維」において、「2~60nmのメソ孔容積の和(Vmet)」が明らかでないばかりではなく、本件発明1での「0.02~0.124cm3/g」の範囲にあるということはできないから、上記相違点1は、実質的な相違点である。 b 次に上記相違点1に係る構成が、当業者が容易に想到し得るものであるか否かについて検討する。 甲1-1の上記(1)ア(イ)の記載によれば、甲1-1発明は、活性炭素繊維の細孔を有効に活用し、沸点が120~300℃の範囲内のたとえばm-キシレンなどの有機化合物に対し特に優れた吸着性能を有する活性炭素繊維を提供することを課題とし(【0008】、【0009】)、活性炭素繊維のBET比表面積を1500~2300m2/g、全細孔容積を0.7~1.2cc/g、細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔容積を全マイクロポア細孔容積の90~92%とし、かつ、温度25℃、相対湿度52%における水分吸着率を4%以下とすることにより、課題を解決している(【0010】)。そして、細孔に着目すると、甲1-1発明は、全細孔容積を0.7~1.2cc/gの範囲内の値とすることで、沸点が120~300℃の範囲内のたとえばm-キシレンなどの有機化合物が十分に吸着されないという不具合、単繊維の強度が著しく低下し、形態を保てないという不具合を避け(【0015】)、細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔容積が全マイクロポア細孔容積の90~92%とすることにより、細孔が大きくなりすぎて、沸点が120~300℃の範囲内のたとえばm-キシレンなどの有機化合物が十分に吸着されないという不具合、細孔が小さくなりすぎて、沸点が120~300℃の範囲内のたとえばm-キシレンなどの有機化合物が十分に吸着されないという不具合を避けるようにしている(【0016】)。 以上によれば、甲1-1発明は、「2~60nmのメソ孔」に何ら着目するものではなく、甲1-1発明には、「2~60nmのメソ孔容積の和(Vmet)」を所定の範囲に調整する動機付けはない。 また、申立理由6で参考として引用されている甲4-2、5-2には、活性炭吸着剤における「2~60nmのメソ孔容積の和(Vmet)」に関する何らの記載もない。 そうすると、上記相違点1に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。 (ウ)小括 以上のとおり、上記相違点1は、実質的な相違点であると共に、上記相違点1に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえないから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1-1発明ではないし、甲1-1発明及び甲4-2、5-2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明2、4~6について 本件発明2、4~6は、本件発明1を引用し、これを、さらに限定するものであるか、本件発明1の構成を全て含むものであるところ、本件発明1が、甲1-1発明ではないし、甲1-1発明及び甲4-2、5-2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明2、4~6も同様に、甲1-1発明ではないし、甲1-1発明及び甲4-2、5-2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 甲1-1に記載される他の実施例及び比較例を基に甲1-1発明を認定した場合について 甲1-1の上記(1)ア(オ)の【0043】【表1】には、BET比表面積が1962m2/g、全細孔容積が0.85cc/g、全マイクロポア細孔容積が0.83cc/g、細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔容積が0.76cc/gの活性炭素繊維である実施例2、BET比表面積が1808m2/g、全細孔容積が0.78cc/g、全マイクロポア細孔容積が0.77cc/g、細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔容積が0.71cc/gの活性炭素繊維である比較例1、BET比表面積が1993m2/g、全細孔容積が0.86cc/g、全マイクロポア細孔容積が0.84cc/g、細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔容積が0.77cc/gの活性炭素繊維である比較例2が記載されているので、これらの態様を基に、上記(2)アに記載した甲1-1発明において、「BET比表面積」、「全細孔容積」、「全マイクロポア細孔容積」及び「細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔容積」の値を、これら実施例2、比較例1及び比較例2の値とした発明を認定することができる(厳密には、比較例1の場合、甲1-1発明の「温度25℃、相対湿度52%における水分吸着率が4%以下である」との条件、比較例2の場合、「細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔容積が全マイクロポア細孔容積の90~92%であり、かつ、温度25℃、相対湿度52%における水分吸着率が4%以下である」との条件を満たしていない。)が、「活性炭素繊維」において、「2~60nmのメソ孔容積の和(Vmet)」が明らかでないこと、甲1-1は、「2~60nmのメソ孔」に何ら着目するものではなく、甲1-1には、「2~60nmのメソ孔容積の和(Vmet)」を所定の範囲に調整する動機付けはないことは、甲1-1発明と同じであるから、実施例2、比較例1及び比較例2を基に甲1-1発明を認定したとしても、上記ア(イ)、イで述べたのと同様の理由で、本件発明1、2、4~6を新規性欠如又は進歩性欠如とすることはできない。 エ 異議申立人1による令和6年6月17日提出の意見書における主張について 異議申立人1は、同意見書において、同意見書と共に提出された甲5-1及び甲6-1も引用して、本件発明1、及び本件発明1に従属する本件発明2、4~6は進歩性がないことを主張しているが(5頁27行~8頁18行)、この主張は、上記ア(イ)で判断した相違点1に係るものではないから、上記ア(イ)での判断及びそれにより導かれた結論を左右するものではない。 そうすると、同意見書における異議申立人1の主張を採用することはできない。 (4)甲2-1を主引用例として(申立理由2) ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲2発明を対比する。 a 甲2-1発明の「太閤ACFの」「フェルト(FE)タイプの製品」である「脱臭・空気浄化用活性炭シート」は、空気中の臭気物質や汚染物質を吸着して、脱臭・空気浄化を行うものであるといえるから、本件発明1の「活性炭吸着材」及び「吸着活性炭」に相当する。 また、甲2-1発明の「脱臭・空気浄化用活性炭シート」は、空気中の何らかの臭気物質や汚染物質である化合物を吸着するものであるといえるから、甲2-1発明の「太閤ACFの」「フェルト(FE)タイプの製品」である「脱臭・空気浄化用活性炭シート」は、本件発明1の「大気試料中のペル及びポリフルオロアルキル化合物を脱離可能に吸着するためのペル及びポリフルオロアルキル化合物吸着活性炭」と、「化合物を吸着するための化合物吸着活性炭」である点で共通する。 b 上記aによれば、本件発明1と甲2-1発明は、「活性炭吸着材からなり、化合物を吸着するための化合物吸着活性炭。」の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 <相違点3> 活性炭吸着材について、本件発明1では、「BET比表面積が900m2/g以上であり、2~60nmのメソ孔容積の和(Vmet)が0.02~0.124cm3/gであり、(i)式に規定する1nm以下のミクロ孔容積の和(Vmic)と前記メソ孔容積の和(Vmet)との容積差(Vs)が0.45cm3/g以上である」のに対し、甲2-1発明では、これらの値について明らかでない点。 <相違点4> 活性炭吸着材が、本件発明1では、大気試料中のペル及びポリフルオロアルキル化合物を脱離可能に吸着するためのペル及びポリフルオロアルキル化合物吸着活性炭であるのに対し、甲2-1発明では、このような化合物吸着活性炭であるのか明らかでない点。 (イ)相違点に対する判断 事案に鑑み上記相違点4について検討する。 a 本件発明1の「大気試料中のペル及びポリフルオロアルキル化合物を脱離可能に吸着する」とは、本件明細書の記載によれば、「ペル及びポリフルオロアルキル化合物は自然界(水中、土壌中、大気中)に残存し続けることから、ペル及びポリフルオロアルキル化合物の定量試験方法の確立が検討され」、「ペル及びポリフルオロアルキル化合物の高い吸着及び脱離性能を有する捕集材の開発」が求められていたところ(【0008】)、「既存の捕集材」では、「該化合物の脱離はできないため、定量測定に用いられる捕集材として使用には適して」おらず(【0009】)、「また、ペル及びポリフルオロアルキル化合物は物理化学特性に幅のある様々な形態で環境中に残存しており、既存の吸着材では十分な捕集性能がなく、正確に定量測定ができないという問題」(【0010】)を解決するという技術的意義を有するものである。 しかしながら、甲2-1発明の「活性炭シート」は、空気中の何らかの臭気物質や汚染物質である化合物を吸着するものであることが理解できるにとどまり、従来、高い吸着及び脱離性能を有する捕集材のなかったペル及びポリフルオロアルキル化合物を吸着及び脱離の対象としようとする動機付けが、甲2-1発明にあるとはいえない。 甲2-1発明に、ペル及びポリフルオロアルキル化合物を吸着及び脱離の対象としようとする動機付けがないのであるから、他の甲号証の記載にかかわらず、甲2-1発明における、「活性炭シート」を、吸着だけでなく脱離も可能であるものとして使用し、さらに、ペル及びポリフルオロアルキル化合物を吸着及び脱離の対象とすることは、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえないが、念のため、甲3-1、4-1についても検討する。 b 甲3-1には、甲3の上記(1)ウ(イ)~(エ)の記載によれば、活性炭繊維フェルトが、ペルフルオロアルキル化合物に相当するPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)、PFOA(ペルフルオロオクタン酸)を脱離可能に吸着することは理解できるところ、本件明細書に記載される実施例、特に【0083】【表3】、【0084】【表4】、【0085】【表5】、【0091】【表6】、【0092】【表7】及び【0093】【表8】の記載によれば、同じ繊維状活性炭であっても、試作例6~9の繊維状活性炭(【0062】~【0065】)は、ポリフルオロアルキル化合物を吸着できない(【0091】【表6】)のに対し、試作例12~19の繊維状活性炭(【0068】~【0075】)は、ポリフルオロアルキル化合物を良好に吸着している(【0092】【表7】、【0093】【表8】)ことを踏まえると、単に、活性炭繊維フェルトということだけで、ペル及びポリフルオロアルキル化合物を吸着及び脱離することができるとはいえないのであるから、当業者が甲3-1の記載に接したとしても、甲2-1発明における特定の「活性炭シート」を、ペル及びポリフルオロアルキル化合物を吸着及び脱離の対象とするものとすることを、容易に想到し得るとはいえない。 甲4-1には、上記相違点4に係る本件発明1の構成に関係する事項は、記載されていない。 以上によれば、甲3-1、4-1の記載を考慮したとしても、上記相違点4に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。 (ウ)小括 以上のとおり、上記相違点4に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえないから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1-1発明及び甲3-1、4-1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明2、4~6について 本件発明2、4~6は、本件発明1を引用し、これを、さらに限定するものであるか、本件発明1の構成を全て含むものであるところ、本件発明1が、甲2-1発明及び甲3-1、4-1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明2、4~6も同様に、甲2-1発明及び甲3-1、4-1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 異議申立人1による令和6年6月17日提出の意見書における主張について 異議申立人1は、同意見書において、同意見書と共に提出された甲5-1を引用して、「甲第5号証の高速溶媒抽出装置にはテロマー類の溶剤回収に「活性炭繊維フェルト」が用いられている。 したがって当業者であれば溶剤回収用途に使用される甲第2号証の繊維状活性炭フェルト(FE)を高速溶媒抽出装置のテロマー類の溶剤回収に使用する「活性炭素フェルト」として用いる動機付けがある。 よって本件発明1、及び本件発明1に従属する本件発明2、4~6は進歩性がない。」と主張している(8頁19行~9頁9行)。 しかしながら、上記ア(イ)で述べたように、甲2-1には、繊維状活性炭フェルトを「ペル及びポリフルオロアルキル化合物」の回収に用いることは、記載も示唆もされていない。 また、甲5-1には、活性炭繊維フェルトで捕集するテロマー類が溶剤であることは記載されておらず、甲5-1に記載される活性炭繊維フェルトは、溶剤を捕集しているものではないから、当業者が、仮に甲5-1に接したとしても、「ペル及びポリフルオロアルキル化合物」の回収に用いることが、記載も示唆もされておらず、単に、溶剤を回収の対象としている甲2-1の繊維状活性炭フェルトを、甲5-1に記載される繊維状活性炭フェルトとして用いることはない。 そうすると、同意見書における異議申立人1の主張を採用することはできない。 (5)甲1-2を主引用例として(申立理由5) ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲1-2発明を対比する。 a 甲1-2発明の「活性炭素繊維」は、「沸点が70~120℃の範囲内の有機化合物であるトルエンを吸着させるために用いられる」ものであるから、本件発明1の「活性炭吸着材」及び「吸着活性炭」に相当する。 また、甲1-2の上記(1)オ(オ)の【0041】の「(10)トルエンに対する吸着性能評価 試料を約3kg充填した吸着槽を2槽併設した吸着装置に、濃度1000ppm、温度30℃、湿度50%、風量10m3/minのトルエンのガスを流し、一定時間吸着し、吸着終了時に吸着槽に水蒸気を噴出させて脱着するサイクルを10回繰り返して、平均の吸着破過時間(分)を求めた。」との記載によれば、甲1-2発明の「活性炭素繊維」は、トルエンを脱離可能に吸着するためのものであると共に、甲1-2発明の「トルエン」は、本件発明1の「ペル及びポリフルオロアルキル化合物」と、「有機化合物」である点で共通する。 そうすると、甲1-2発明の「沸点が70~120℃の有機化合物であるトルエンを吸着させるために用いられる、活性炭素繊維」は、本件発明1の「大気試料中のペル及びポリフルオロアルキル化合物を脱離可能に吸着するためのペル及びポリフルオロアルキル化合物吸着活性炭」と、「有機化合物を脱離可能に吸着するための有機化合物吸着活性炭」である点で共通する。 b 甲1-2発明において、「BET比表面積が1471m2/g」であることは、本件発明1の「BET比表面積が900m2/g以上である」との条件を満足するから、甲1-2発明の「BET比表面積が1471m2/g」である「活性炭素繊維」は、本件発明1の「BET比表面積が900m2/g以上である活性炭吸着材からな」る「吸着活性炭」に相当する。 c 甲1-2発明の「細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔容積」は、本件発明1の「1nm以下のミクロ孔容積の和(Vmic)」に相当する。 そして、甲1-2発明では、全細孔容積が0.65cc/g、細孔径が0~20Åである全マイクロポア細孔容積が0.62cc/gであるところ、20Åは2nmであるから、「全細孔容積」の「0.65cc/g」から「細孔径が0~20Åである全マイクロポア細孔容積」の「0.62cc/g」を引けば、2nm以上の孔容積の和が「0.03cc/g」と求められるが、この孔容積の和は、「2~60nmのメソ孔容積の和(Vmet)」を含んだものとなる。 ここで、甲1-2発明では、「2nm以上の孔容積の和」、すなわち、60nm超の孔の孔容積を含めても、この容積(0.03cc/g)を、「細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔容積」である「0.58cc/g」から引けば、「0.55cc/g」となり、本件発明1の「1nm以下のミクロ孔容積の和(Vmic)と前記メソ孔容積の和(Vmet)との容積差(Vs)」の下限である「0.45cm3/g」の値を超えるのであるから、甲1-2発明において、「細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔容積」から、その数値は不明であるものの、細孔直径2~60nm以下の細孔容積を引いた場合には、当然、本件発明1の「1nm以下のミクロ孔容積の和(Vmic)と前記メソ孔容積の和(Vmet)との容積差(Vs)が0.45cm3/g以上である」との条件を満足するといえる。 d 上記a~cによれば、本件発明1と甲1-2発明は、「BET比表面積が900m2/g以上である活性炭吸着材からなり、 前記活性炭吸着材の下記の(i)式(省略)に規定する1nm以下のミクロ孔容積の和(Vmic)と前記メソ孔容積の和(Vmet)との容積差(Vs)が0.45cm3/g以上である 有機化合物を脱離可能に吸着するための有機化合物吸着活性炭。」の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 <相違点5> 活性炭吸着材について、本件発明1では、「2~60nmのメソ孔容積の和(Vmet)が0.02~0.124cm3/gであ」るのに対し、甲1-2発明では、全細孔容積が0.65cc/g、細孔径が0~20Åである全マイクロポア細孔容積が0.62cc/g、細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔容積が0.58cc/gとされている点。 <相違点6> 脱離可能に吸着するための有機化合物が、本件発明1では、大気試料中のペル及びポリフルオロアルキル化合物であるのに対し、甲1-2発明では、沸点が70~120℃の有機化合物であるトルエンである点。 (イ)相違点に対する判断 上記相違点5について検討する。 a 甲1-2発明の「活性炭素繊維」について、「全細孔容積」、「細孔径が0~20Åである全マイクロポア細孔容積」及び「細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔容積」については明らかにされているものの、「2~60nmのメソ孔容積の和(Vmet)」については、甲1-2においては、何ら明らかにされていない。ここで、20Åは2nmであるから、「全細孔容積」の「0.65cc/g」から「細孔径が0~20Åである全マイクロポア細孔容積」の「0.62cc/g」を引けば、2nm以上の孔容積の和までは求められるが、この値には、60nm超の孔容積の和も含まれることになるから、「2~60nmのメソ孔容積の和(Vmet)」は明らかにはならない。しかも、甲1-2発明の「活性炭素繊維」では、2nm以上の孔容積の和が0.03cc/g(0.65cc/g-0.62cc/g)であるところ、「活性炭素繊維」で60nm超の孔も相応の量で存在するといえるから、この容積の内、0.02cc/g以上が「2~60nmのメソ孔容積の和(Vmet)」とすることはできない。 そうすると、甲1-2発明の「活性炭素繊維」において、「2~60nmのメソ孔容積の和(Vmet)」が明らかでないばかりではなく、本件発明1での「0.02~0.124cm3/g」の範囲にある蓋然性が高いともいうことはできないから、上記相違点5は、実質的な相違点である。 b 次に上記相違点5に係る構成が、当業者が容易に想到し得るものであるか否かについて検討する。 甲1-2の上記(1)オ(イ)の記載によれば、甲1-2発明は、活性炭素繊維の細孔を有効に活用し、沸点が70~120℃の範囲内のたとえばトルエンなどの有機化合物に対し特に優れた吸着性能を有する活性炭素繊維を提供することを課題とし(【0008】、【0009】)、活性炭素繊維のBET比表面積を1000~1800m2/g、全細孔容積を0.4~0.9cc/g、細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔容積を全マイクロポア細孔容積の93~94%とし、かつ、温度25℃、相対湿度52%における水分吸着率を6%以下とすることにより、課題を解決している(【0010】)。そして、細孔に着目すると、甲1-2発明は、全細孔容積を0.4~0.9cc/gの範囲内の値とすることで、沸点が70~120℃の範囲内のたとえばトルエンなどの有機化合物が十分に吸着されないという不具合を避け(【0015】)、細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔容積が全マイクロポア細孔容積の93~94%とすることにより、細孔が大きくなりすぎて、沸点が70~120℃の範囲内のたとえばトルエンなどの有機化合物が十分に吸着されないという不具合、細孔が小さくなりすぎて、沸点が70~120℃の範囲内のたとえばトルエンなどの有機化合物が十分に吸着されないという不具合を避けるようにしている(【0016】)。 以上によれば、甲1-2発明は、「2~60nmのメソ孔」に何ら着目するものではなく、甲1-2発明には、「2~60nmのメソ孔容積の和(Vmet)」を所定の範囲に調整する動機付けはない。 また、甲4-2、5-2には、活性炭吸着剤における「2~60nmのメソ孔容積の和(Vmet)」に関する何らの記載もない。 そうすると、上記相違点5に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。 (ウ)小括 以上のとおり、上記相違点5は、実質的な相違点であると共に、上記相違点5に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえないから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1-2発明ではないし、甲1-2発明及び甲4-2、5-2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明2、4~6について 本件発明2、4~6は、本件発明1を引用し、これを、さらに限定するものであるか、本件発明1の構成を全て含むものであるところ、本件発明1が、甲1-2発明ではないし、甲1-2発明及び甲4-2、5-2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明2、4~6も同様に、甲1-2発明ではないし、甲1-2発明及び甲4-2、5-2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 甲1-2に記載される他の実施例及び比較例を基に甲1-2発明を認定した場合について 甲1-2の上記(1)オ(オ)の【0043】【表1】には、BET比表面積が1664m2/g、全細孔容積が0.72cc/g、全マイクロポア細孔容積が0.71cc/g、細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔容積が0.66cc/gの活性炭素繊維である実施例2、BET比表面積が1450m2/g、全細孔容積が0.64cc/g、全マイクロポア細孔容積が0.64cc/g、細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔容積が0.59cc/gの活性炭素繊維である比較例1、BET比表面積が1602m2/g、全細孔容積が0.67cc/g、全マイクロポア細孔容積が0.67cc/g、細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔容積が0.63cc/gの活性炭素繊維である比較例2が記載されているので、これらの態様を基に、上記(2)ウに記載した甲1-2発明に、「BET比表面積」、「全細孔容積」、「全マイクロポア細孔容積」及び「細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔容積」の値を、これら実施例2、比較例1及び比較例2の値とした発明を認定することができる(厳密には、比較例1、2の場合、甲1-2発明の「温度25℃、相対湿度52%における水分吸着率が6%以下である」との条件を満たしていない。)が、「活性炭素繊維」において、「2~60nmのメソ孔容積の和(Vmet)」が明らかでないこと、甲1-2は、「2~60nmのメソ孔」に何ら着目するものではなく、甲1-2には、「2~60nmのメソ孔容積の和(Vmet)」を所定の範囲に調整する動機付けはないことは、甲1-2発明と同じであるから、実施例2、比較例1及び比較例2を基に甲1-2発明を認定したとしても、上記ア(イ)で述べたのと同様の理由で、本件発明1、2、4~6を新規性欠如又は進歩性欠如とすることはできない。 エ 異議申立人2による令和6年6月11日提出の意見書における主張について 異議申立人2は、同意見書で、「容積差(Vs)とメソ孔容積の和(Vmet)についても、当業者であれば、ペル及びポリフルオロアルキル化合物は沸点が比較的高い有機化合物なので、ミクロ孔とメソ孔の容積をコントロールすることで吸着及び脱着を向上させることは容易に想像できる範囲内のことであり、少なくとも、甲1-2~甲3-2に記載された発明の設計事項の範囲と言わざるを得ないものである。 さらに、前述の通り、本件明細書中の試作例2、試作例5では、吸着対象物質であるペル及びポリフルオロアルキル化合物の捕集効率が、同じ活性炭吸着材を使用している試作例14や試作例19と同等とはいえない程に低いことが記載されている。即ち、当該記載によれば、そもそも、吸着活性炭において、BET比表面積、容積差(Vs)、メソ孔容積の和(Vmet)が本件発明1の範囲であっても捕集効率に優れるものではなく、そうである以上、本件発明1は、依然として、甲1-2~甲3-2に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができた程度のものであ」ることを主張している(7頁12行~8頁7行)。 しかしながら、「当業者であれば、ペル及びポリフルオロアルキル化合物は沸点が比較的高い有機化合物なので、ミクロ孔とメソ孔の容積をコントロールすることで吸着及び脱着を向上させることは容易に想像できる範囲内のことであ」ることについては、特に根拠が示されていない。 また、本件発明の進歩性は、まずは、本件発明の構成を当業者が容易に想到できるか否かで判断すべきであり、「吸着活性炭において、BET比表面積、容積差(Vs)、メソ孔容積の和(Vmet)が本件発明1の範囲であっても捕集効率に優れるものではな」いことは、むしろ、サポート要件等の本件の記載要件には関係するものであるが、本件発明が、特に、サポート要件等を充足しないものではないことは、上記1で述べたとおりである。 そうすると、異議申立人2の本件発明の進歩性に関する主張は、採用することができない。 (6)甲3-2を主引用例として(申立理由7) ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲3-2発明を対比する。 a 甲3-2発明の「K-FILTER」は、「ACF」、すなわち、例えば、甲2-1の上記(1)イ(ア)の「繊維状活性炭(ACF:Activated Carbon Fiber)」との記載によれば、繊維状活性炭からなるものであるところ、「被処理ガスの一例として塩化メチレン含有ガスを対象とし、塩化メチレン含有ガスの塩化メチレンを吸着、脱着」するものであるから、本件発明1の「活性炭吸着材」及び「吸着活性炭」に相当する。 また、甲3-2発明の「塩化メチレン」は、本件発明1の「ペル及びポリフルオロアルキル化合物」と、「有機化合物」である点で共通する。 そうすると、甲3-2発明の「被処理ガスの一例として塩化メチレン含有ガスを対象とし、塩化メチレン含有ガスの塩化メチレンを吸着、脱着」する「東洋紡株式会社製のACF「K-FILTER」」は、本件発明1の「大気試料中のペル及びポリフルオロアルキル化合物を脱離可能に吸着するためのペル及びポリフルオロアルキル化合物吸着活性炭」と、「有機化合物を脱離可能に吸着するための有機化合物吸着活性炭」である点で共通する。 b 甲3-2発明において、「BET比表面積が1610m2/g」であることは、本件発明1の「BET比表面積が900m2/g以上である」との条件を満足するから、甲3-2発明の「BET比表面積が1610m2/g」である「東洋紡株式会社製のACF「K-FILTER」」は、本件発明1の「BET比表面積が900m2/g以上である活性炭吸着材からな」る「吸着活性炭」に相当する。 c 上記a、bによれば、本件発明1と甲3-2発明は、「BET比表面積が900m2/g以上である活性炭吸着材からなり、 有機化合物を脱離可能に吸着するための有機化合物吸着活性炭。」の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 <相違点7> 活性炭吸着材について、本件発明1では、「2~60nmのメソ孔容積の和(Vmet)が0.02~0.124cm3/gであり、前記活性炭吸着材の下記の(i)式(省略)に規定する1nm以下のミクロ孔容積の和(Vmic)と前記メソ孔容積の和(Vmet)との容積差(Vs)が0.45cm3/g以上である」のに対し、甲3-2発明では、10Å以下の全マイクロポア容積が0.64cm3/gとされている点。 <相違点8> 脱離可能に吸着するための有機化合物が、本件発明1では、大気試料中のペル及びポリフルオロアルキル化合物であるのに対し、甲3-2発明では、一例としての塩化メチレンである点。 (イ)相違点に対する判断 上記相違点7について検討する。 a 甲3-2発明の東洋紡株式会社製の「K-FILTER」を構成する「ACF」(以下、単に「ACF」という。)について、「2~60nmのメソ孔容積の和(Vmet)」については、甲3-2には何の記載もなく、その値は不明である。 そして、甲3-2発明では、本件発明1の「1nm以下のミクロ孔容積の和(Vmic)」に相当する値は、「0.64cm3/g」とされているものの、「2~60nmのメソ孔容積の和(Vmet)」が不明であるため、本件発明1での「1nm以下のミクロ孔容積の和(Vmic)と前記メソ孔容積の和(Vmet)との容積差(Vs)」も不明である。 b ここで、異議申立人2により提出された特許異議申立書では、「甲4(当審注:甲4-2)(繊維状活性炭フィルタによるフロン回収技術)、甲5(当審注:甲5-2)(Kフィルターによるフロン回収技術)より、実施例で使用したACF「K-FILTER」は、~20Å(2nm)の細孔(ミクロポアー)を有するものであり、ACF「K-FILTER」のメソ孔容積はミクロ孔容積と比較して小さいことがわかる。 また、実施例で使用したACF「K-FILTER」のBET比表面積(1600cm2/g)、10Å(1nm)以下の全マイクロポア容積(0.64cm3/g)から、前述の甲第1号証(当審注:甲1-2)の実施例2の活性炭素繊維(BET比表面積:1664cm2/g、1nm以下のマイクロポア容積:0.66cm3/g)と同程度のものであることが分かる。従って、実施例で使用したACF「K-FILTER」のVmetは、甲第1号証の実施例2と同程度である「0~0.01cm3/g」になる蓋然性が非常に高い。」(19頁2~13行)としている。 しかしながら、甲4-2の上記(1)キ(イ)(甲5-2の上記(1)ク(イ))の「炭化賦活されたKフィルターは,写真1でみるように1本1本(大きさ~20μ)のKフィルターの活性炭素繊維(単糸)は非常に滑らかで,この表面からガス吸着に関与する~20Åの細孔(ミクロポァー)をあけている」との記載は、大きさが2nmまでのマイクロポアが、活性炭素繊維表面に直接設けられていることを意味しているにとどまり、2~60nmのメソ孔がどのような状態であるのかを示すものではない。また、甲4-2の同(ウ)(甲5-2の同(ウ))も、大きさが2nmまでのマイクロポアが、活性炭素繊維表面に直接設けられていることを示す概念図であって、2~60nmのメソ孔がどのような状態で存在するかを定量的に示すものではない。 そして、甲4-2の同(エ)(甲5-2の同(エ))の記載によれば、Kフィルターといっても複数種があるところ、甲3-2発明におけるACF「K-FILTER」の種類が不明である以上、甲4-2及び甲5-2との間で2~60nmのメソ孔がどのような状態であるかについて、正確に対応付けることができるのかも不明である。 また、BET比表面積と10Å(1nm)以下の全マイクロポア容積だけで、活性炭素繊維の孔構造全体を把握することはできないのであるから、甲3-2発明の「K-FILTER」を構成する「ACF」のBET比表面積と10Å(1nm)以下の全マイクロポア容積が、それぞれ、甲1-2に記載される実施例2の活性炭素繊維(甲1-2の上記(1)オ(オ)の【0043】【表1】)と同じ孔構造を持つものであるとすることはできない。そうすると、甲3-2発明の「K-FILTER」を構成する「ACF」のVmetは、甲1-2の実施例2の活性炭素繊維のVmetと同程度であるとすることはできない。しかも、甲1-2の実施例2の活性炭素繊維のVmetは、上記(5)ウで述べたように不明である。 よって、上記異議申立書に記載される理由を考慮したとしても、甲3-2発明の「K-FILTER」を構成する「ACF」の「2~60nmのメソ孔容積の和(Vmet)」及び「1nm以下のミクロ孔容積の和(Vmic)と前記メソ孔容積の和(Vmet)との容積差(Vs)」は不明であるから、上記相違点7は、実質的な相違点である。 c 次に上記相違点7に係る構成が、当業者が容易に想到し得るものであるか否かについて検討する。 甲3-2の上記(1)カ(イ)の記載によれば、甲3-2に記載される技術は、吸着材を用いて有機溶剤含有ガスに含まれる有機溶剤の吸着を行なう工程と、吸着した有機溶剤の脱着を行なう工程とを並行に行なうことを可能としたガス処理装置およびガス処理方法に関するものである(【0001】)。ここで、脱着工程により脱着された脱着ガスはコンデンサで冷却され、さらにセパレータで回収溶剤として分離回収されるところ(【0008】)、脱着ガスによって押し出されるコンデンサおよび/またはセパレータに滞留している高濃度有機溶剤含有ガスを、以下「戻りガス」と呼ぶ(【0009】)と、脱着工程の初期段階では、吸着槽内に滞留した被処理ガスが脱着用蒸気でコンデンサおよび/またはセパレータへ押し出されるが、被処理ガスの殆どは冷却濃縮されないため、吸着槽の約容積分だけの「戻りガス」が短時間で排出され、その後は、殆ど冷却凝縮される有機溶剤含有蒸気がコンデンサおよび/またはセパレータへ送られるため、「戻りガス」の風量は著しく低下する(【0010】)、つまり「戻りガス」の風量は脱着工程初期で最も大きくなり、その後著しく低下するため、「戻りガス」中の有機溶剤を高効率で回収することは困難とされ(【0011】)、また、分離回収された有機溶剤は、環境配慮や製造コスト削減の意識から再利用されることも多いため、回収率の向上のためには高濃度の有機溶剤を含有している「戻りガス」を効率よく回収する必要がある(【0012】)という問題を受け、甲3-2に記載される技術は、吸着材を用いて有機溶剤含有ガスの吸脱着を高効率かつ連続的に行なうことを可能とした、ガス処理装置およびこのガス処理装置を用いたガス処理方法を提供することを課題としている(【0013】)。 そして、甲3-2に記載される技術では、上記課題を、「被処理ガス供給部の前段に前処理用吸着材が充填された前処理用吸着槽を設け」、脱着ガスによって押し出される戻りガスを前処理用吸着槽の前段に送り、被処理ガスと混合させた後、前処理用吸着槽を通過させて吸着槽で処理する手段を設けること(【0015】)で解決するものである。 以上によれば、甲3-2に記載される技術は、甲3-2の同(ウ)の【0007】に「ACFでは、ミクロポアであることから、有機溶剤の吸着・脱着速度がACFの方が速く、また脱着時間が短時間で終了するため回収溶剤の品質が良いことが挙げられる。」とあるように、ACF、すなわち甲3-2発明を、このガス処理装置の吸着剤として、用いることが前提となるものであるが、特に、このACFに対して、何らかの改良を施そうというものではない。 そうすると、甲3-2発明には、何らかの改良を行うこと、ましてや、「2~60nmのメソ孔」に着目し、「2~60nmのメソ孔容積の和(Vmet)」を所定の範囲に調整する動機付けはない。 また、甲1-2、2-2には、活性炭吸着剤における「2~60nmのメソ孔容積の和(Vmet)」に関する何らの記載もないことは前述のとおりである。 そうすると、上記相違点7に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。 (ウ)小括 以上のとおり、上記相違点7は、実質的な相違点であると共に、上記相違点7に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえないから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3-2発明ではないし、甲3-2発明及び甲1-2、2-2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明2、4~6について 本件発明2、4~6は、本件発明1を引用し、これを、さらに限定するものであるか、本件発明1の構成を全て含むものであるところ、本件発明1が、甲3-2発明ではないし、甲3-2発明及び甲1-2、2-2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明2、5、6も同様に、甲3-2発明ではないし、本件発明2、4~6は、甲3-2発明及び甲1-2、2-2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第6 むすび 上記第5で検討したとおり、本件特許1、2、4~6は、特許法第29条第1項及び同法同条第2項の規定に違反してされたものであるとも、同法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるということもできず、同法第113条第2号又は第4号に該当するものではないから、上記取消理由及び上記申立理由1~7では、本件特許1、2、4~6を取り消すことはできない。 また、他に本件特許1、2、4~6を取り消すべき理由を発見しない。 そして、本件特許3に対する特許異議の申立ては、本件訂正により、当該特許に係る請求項が削除され、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2023-701250

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決229件(フタムラ化学株式会社、国立研究開発法人産業技術総合研究所、平居 博美 ほか)
  • 2025-700807異議申立 / 2026-08-28
    同じ当事者: フタムラ化学株式会社、国立研究開発法人産業技術総合研究所
  • 2025-700031異議申立 / 2025-03-04 / 維持水試料中のペル及びポリフルオロアルキル化合物吸着活性炭
    同じ当事者: フタムラ化学株式会社、国立研究開発法人産業技術総合研究所
  • 2026-390009訂正審判 / 2026-02-20 / 訂正認容水試料中のペル及びポリフルオロアルキル化合物吸着活性炭
    同じ当事者: フタムラ化学株式会社、国立研究開発法人産業技術総合研究所
  • 2024-011066拒絶査定不服審判 / 2026-02-02 / 原査定取消(特許/登録すべき)大気試料中のペル及びポリフルオロアルキル化合物吸着活性炭
    同じ当事者: フタムラ化学株式会社、国立研究開発法人産業技術総合研究所
  • 2023-022125拒絶査定不服審判 / 2024-04-02 / 原査定取消(特許/登録すべき)水試料中のペル及びポリフルオロアルキル化合物吸着活性炭
    同じ当事者: フタムラ化学株式会社、国立研究開発法人産業技術総合研究所
同じ論点・分野の審決(審決分類)430件(113・B01J、121・B01J、536・B01J ほか)
  • 2025-700964異議申立 / 2026-01-19 / 維持水電解用イリジウム含有触媒
    共通の審決分類: 113・B01J、121・B01J、536・B01J、537・B01J
  • 2023-700501異議申立 / 2025-02-18 / 訂正認容排気ガス浄化用途のための低ウォッシュコート充填量単層触媒
    共通の審決分類: 113・B01J、121・B01J、536・B01J、537・B01J
  • 2023-700095異議申立 / 2024-06-25 / 訂正認容吸水性樹脂粒子、これを用いた吸収体及び吸収性物品、並びに吸水性樹脂粒子の製造方法
    共通の審決分類: 113・B01J、121・B01J、536・B01J、537・B01J
  • 2023-700216異議申立 / 2023-09-06 / 維持熱膨張性マイクロカプセル、発泡用樹脂組成物及び発泡体
    共通の審決分類: 113・B01J、121・B01J、536・B01J、537・B01J
  • 2021-701095異議申立 / 2022-12-13 / 訂正認容吸水性樹脂粒子、吸収体、吸収性物品及び止水材
    共通の審決分類: 113・B01J、121・B01J、536・B01J、537・B01J

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存