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特許異議申立

2024-701086

食品用包装フィルムおよび食品用包装体

審判番号
2024-701086
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-121446
登録番号
7480401
請求日
2024年11月07日
審決日
2025年04月24日
公報発行日
2025年05月30日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】三井化学東セロ株式会社
  • 【権利者代理人】速水 進治
  • 【異議申立人】井戸田 能幸
  • 【異議申立人】平居 博美
審判長/審判官
  • 審判長 柴田 昌弘
  • 審判官 松本 陶子
  • 審判官 天野 宏樹
分類
P1651.113-Y (C08J) / P1651.121-Y (C08J) / P1651.537-Y (C08J)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第44条第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7480401号発明「食品用包装フィルムおよび食品用包装体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7480401号の請求項1~12に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7480401号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~12に係る特許についての出願は、平成30年7月6日に出願した特願2018-129071号の一部を、特許法第44条第1項の規定により令和5年7月26日に新たな特許出願としたものであって、令和6年4月26日にその特許権の設定登録(請求項の数12)がされ、同年5月9日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対して、同年11月7日に特許異議申立人井戸田能幸(以下、「申立人A」という。)により特許異議の申立て(対象:全請求項)がなされ、同年同月8日に特許異議申立人平居博美(以下、「申立人B」という。)により特許異議の申立て(対象:全請求項)がなされたものである。 その他の手続の経緯は以下のとおりである。 令和6年12月 6日付け:手続補正指令書(方式) (申立人Aに対して) 同年 同月24日 :特許異議申立書の手続補正書(方式) (申立人A) 以下において、令和6年12月24日に提出された手続補正書(方式)により補正された申立人Aが提出した特許異議申立書を「申立書A」といい、申立人Bが提出した特許異議申立書を「申立書B」という。 第2 本件発明について 本件特許の請求項1~12に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明12」という。まとめて、「本件発明」ということもある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~12に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 なお、以下において、隅付き括弧は「[ ]」と表記した。 「[請求項1] 食品を包装するための食品用包装フィルムであって、 プロピレン系重合体を含む二軸延伸フィルム層を備え、 前記プロピレン系重合体は、DSC測定による融点が137℃以上162℃以下の範囲にある第1プロピレン系重合体(ただし、高立体規則性プロピレン系重合体を除く)と、DSC測定による融点が162℃超え180℃以下の範囲にある第2プロピレン系重合体と、を含み、 前記二軸延伸フィルム層に含まれる前記第1プロピレン系重合体および前記第2プロピレン系重合体の合計量を100質量%としたとき、前記二軸延伸フィルム層中の前記第2プロピレン系重合体の含有量が1質量%以上85質量%以下であり、 前記食品用包装フィルムの全体の厚みに対する前記二軸延伸フィルム層の厚みの割合が50%以上99%以下であり、 前記第2プロピレン系重合体のアイソタクチックメソペンタッド分率(mmmm)が96.0%以上である、食品用包装フィルム。 [請求項2] 請求項1に記載の食品用包装フィルムにおいて、 JIS K7127(1999)に準拠し、引張試験機を用いて測定温度23±2℃、50±5%RH、引張速度5mm/minの条件で測定される、前記食品用包装フィルムのMD方向の引張弾性率T1とTD方向の引張弾性率T2との合計値(T1+T2)が5000MPa以上10000MPa以下である食品用包装フィルム。 [請求項3] 請求項1または2に記載の食品用包装フィルムにおいて、 前記二軸延伸フィルム層の少なくとも一方の面上にヒートシール層をさらに備える食品用包装フィルム。 [請求項4] 請求項3に記載の食品用包装フィルムにおいて、 前記ヒートシール層は前記二軸延伸フィルム層の前記一方の面に直接接するように設けられている食品用包装フィルム。 [請求項5] 請求項3または4に記載の食品用包装フィルムにおいて、 前記ヒートシール層がホモポリプロピレンおよびプロピレンと炭素数が2以上10以下のα-オレフィンとのランダム共重合体から選択される一種または二種以上を含む食品用包装フィルム。 [請求項6] 請求項1乃至5のいずれか一項に記載の食品用包装フィルムにおいて、 前記二軸延伸フィルム層の一方の面上に表面層をさらに備える食品用包装フィルム。 [請求項7] 請求項6に記載の食品用包装フィルムにおいて、 前記表面層はアンチブロッキング剤を含む食品用包装フィルム。 [請求項8] 請求項6または7に記載の食品用包装フィルムにおいて、 前記表面層はホモポリプロピレンおよびプロピレンと炭素数が2以上10以下のα-オレフィンとのランダム共重合体から選択される一種または二種以上を含む食品用包装フィルム。 [請求項9] 請求項1乃至8のいずれか一項に記載の食品用包装フィルムにおいて、 前記二軸延伸フィルム層に含まれる粘着付与剤の含有量が、前記二軸延伸フィルム層の全体を100質量%としたとき、10質量%以下である食品用包装フィルム。 [請求項10] 請求項1乃至9のいずれか一項に記載の食品用包装フィルムにおいて、 下記の方法で測定される水蒸気透過度が6.0g/(m2・24h)以下である食品用包装フィルム。 (測定方法) 前記食品用包装フィルムをヒートシール層が内面になるように折り返し、2方をヒートシールして袋状にする。その後、内容物として塩化カルシウムを入れる。次いで、もう1方をヒートシールして表面積が0.01m2になるように袋を作製する。次いで、得られた袋を40℃、湿度90%RHの条件で72時間保管する。保管前後の塩化カルシウムの重量を測定し、その差から水蒸気透過度(g/(m2・24h))を算出する。 [請求項11] 請求項1乃至10のいずれか一項に記載の食品用包装フィルムにおいて、 外装包装袋に用いられる食品用包装フィルム。 [請求項12] 請求項1乃至11のいずれか一項に記載の食品用包装フィルムを用いた食品用包装体。」 第3 特許異議申立理由の概要 1.申立人A 申立人Aは、証拠方法として下記(5)に示す甲第1号証~甲第11号証(以下、申立人Aが提出した甲第1号証~甲第11号証を、それぞれ「甲1A」~「甲11A」のようにいう。)を提出し、概略、以下の特許異議申立理由を主張している。申立理由の番号は当審が仮に付与した。 (1)理由1A(甲1Aに基づく新規性欠如) 本件発明1、2、10~12は、本件特許の出願前に日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1Aに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (2)理由2A(甲1Aに基づく進歩性欠如) 本件発明1、2、10~12は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1Aに記載された発明に基づいて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 なお、申立人Aは、主に、甲1Aに記載された実施例8に基づく新規性欠如及び進歩性欠如を主張している。 (3)理由3A(甲1A~甲4Aに基づく進歩性欠如) 本件発明1~12は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1A~甲4Aに記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (4)理由4A(サポート要件違反) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、本件発明1~12についての特許は同条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 ●第2プロピレン系重合体の含有量の下限値について 請求項1では「前記二軸延伸フィルム層に含まれる前記第1プロピレン系重合体および前記第2プロピレン系重合体の合計量を100質量%としたとき、前記二軸延伸フィルム層中の前記第2プロピレン系重合体の含有量が1質量%以上85質量%以下であ」ることが規定されているが、当該事項は発明の詳細な説明中に記載も示唆もされていない。 すなわち、本件明細書の段落[0029]にて「・・・第2プロピレン系重合体の含有量は、食品用包装フィルム100の水蒸気バリア性向上の観点から、1質量%以上であることが好ましく、・・・」と記載されている。しかしながら、第2プロピレン系重合体であるPP1の含有量の下限が「1質量%」であることを満たす発明の具体例は、発明の詳細な説明中には記載されていない。請求項1において当該含有量の下限として規定される「1質量%」は、実施例1に記載される当該含有量の最小値(10質量%)より、比較例1(0質量%)に近い値であるため、当該含有量の下限が「1質量%」であることは、発明の詳細な説明中に示唆されているともいえない。 したがって、請求項1~12に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。 (5)証拠方法 甲1A:国際公開第2009/063819号 甲2A:特開2000-233478号公報 甲3A:金井俊孝,"フィルムの成形挙動解析と材料設計",成形加工,一般社団法人プラスチック成形加工学会,平成28年10月20日,第28巻,第11号,p.450-455 甲4A:金田麻菜美,田村和弘,多田薫,金井俊孝,武部智明,藤井望,"ポリプロピレンの二軸延伸性と偏肉精度の解明",成形加工(年次大会),一般社団法人プラスチック成形加工学会,平成28年6月7日,第27巻,p.283-284 甲5A:特開昭56-58861号公報 甲6A:特開2016-74760号公報 甲7A:特開2000-17086号公報 甲8A:特開2004-17333号公報 甲9A:特開2008-73926号公報 甲10A:特開2011-93259号公報 甲11A:特開2004-82499号公報 2.申立人B 申立人Bは、証拠方法として下記(3)に示す甲第1号証~甲第6号証(以下、申立人Bが提出した甲第1号証~甲第6号証を、それぞれ「甲1B」~「甲6B」のようにいう。)を提出し、概略、以下の特許異議申立理由を主張している。申立理由の番号は当審が仮に付与した。 (1)理由1B(甲1Bに基づく進歩性欠如) 本件発明1~12は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1Bに記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 なお、申立人Bは、主に、甲1Bの実施例5に基づく進歩性欠如(理由1B-1)及び実施例9に基づく進歩性欠如(理由1B-2)を主張している。 (2)理由2B(甲2Bに基づく進歩性欠如) 本件発明1~12は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲2Bに記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (3)証拠方法 甲1B:国際公開第2009/063819号 甲2B:特開2013-112736号公報 甲3B:国際公開第2017/170330号 甲4B:特開2015-199228号公報 甲5B:特開2001-114908号公報 甲6B:特開2016-50222号公報 第4 当審の判断 当審は、申立人A及び申立人Bが申し立てたいずれの特許異議申立理由によっても、本件発明1~12についての特許を取り消すことはできないと判断する。理由は以下のとおりである。 なお、甲1Aと甲1Bは同じ文献であるため、理由1A(甲1Aに基づく新規性欠如)、理由2A(甲1Aに基づく進歩性欠如)及び理由1B(甲1Bに基づく進歩性欠如)について、まとめて検討した。 次いで、理由3A(甲1A~甲4Aに基づく進歩性欠如)、理由2B(甲2Bに基づく進歩性欠如)及び理由4A(サポート要件違反)の順に検討した。 1.理由1A(甲1Aに基づく新規性欠如)、理由2A(甲1Aに基づく進歩性欠如)及び理由1B(甲1Bに基づく進歩性欠如)について 甲1Aと甲1Bは同じ文献であるため、証拠番号の表示は甲1Aに統一した。 (1)甲1Aに記載された事項 甲1Aには以下の事項が記載されている。 (1A-1)「請求の範囲 [1] DSCで測定した融点が156~170℃である高融点プロピレン系樹脂(A')10~90重量%と、 DSCで測定した融点が70~155℃である少なくとも一種以上の低融点プロピレン系樹脂(A'')10~90重量%(ただし、A'とA''の合計は100重量%)とを含んでなり、 下記[1]~[4]の要件を満たすことを特徴とする延伸シート用プロピレン系樹脂組成物(A)。 [1]メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が0.5~10.0g/10minである。 [2]DSCで測定した融点が150~170℃である。 [3]延伸シート用プロピレン系樹脂組成物(A)中に、α-オレフィンコモノマー含有量が1~11mol%である。 [4]造核成分を含む。 ・・・ [3] 請求項1または2に記載の延伸シート用プロピレン系樹脂組成物(A)を、少なくとも一軸方向に延伸した単層シート(B1)。」 (1A-2)「発明が解決しようとする課題 [0008] 本発明は、上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものであって、一軸延伸、二軸延伸、原反冷却、および延伸倍率等の延伸方法に制約を受けず、且つ、優れた剛性、耐熱剛性、透明性、均一延伸性、および熱成形性を有する延伸シート用のプロピレン系樹脂組成物、並びに該樹脂組成物を含む延伸シートおよび熱成形体を提供することにある。 課題を解決するための手段 [0009] 本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、特定範囲の融点のプロピレン系樹脂同士を組み合わせた組成分布の広い樹脂組成物は、延伸方法に制約を受けずに延伸することができ、更に、該樹脂組成物を含む延伸シートは、剛性、耐熱剛性、透明性、均一延伸性、および熱成形性のバランスが極めて良好であることを見出し、本発明を完成するに至った。」 (1A-3)「[0056] 〔実施例〕 次に本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はそれらの実施例に限定されるものではない。 [0057] 実施例における物性の測定方法は次の通りである。 ・・・ [0059] 2)融点(Tm[℃]) DSCにて、30℃から230℃まで10℃/minで昇温し、230℃で10分間保持後、30℃まで10℃/minで冷却し、再び10℃/minで昇温する際に現れる吸熱ピーク温度を融点とした。 [0060] 3)アイソタクティックペンタッド分率(mmmm:[M5]) 13C-NMRスペクトルにおけるPmmmmおよびPwの吸収強度から前記式(Eq-1)により決定した。但し、ピーク帰属はPolymer, 1993, Vol34, No14, 3129-3131に従って行った。」 (1A-4)「[0069] [実施例1] 造核成分として3-メチル-1-ブテン(3MB-1)を予備重合した後、プロピレンを単独重合させたTm=167℃、MFR=2g/10min、mmmm=0.972の高融点プロピレン系樹脂(A'-1)を75重量%、プロピレンとエチレン6mol%を共重合させたTm=135℃、MFR=2g/10minの低融点プロピレン系樹脂(A''-1)を25重量%組み合わせた樹脂組成物100重量部に対して、酸化防止剤として、テトラキス[メチレン-3(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(IRGANOX1010、チバスペシャリティーケミカルズ社製、商標)を0.1重量部およびトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェノール)フォスフェート(IRGAFOS168、チバスペシャリティーケミカルズ社製、商標)を0.1重量部、中和剤としてステアリン酸カルシウム(日本油脂社製)を0.1重量部配合し、単軸押出機を用いて、樹脂温度230℃で溶融混練してペレット状に造粒した。このとき造核成分である3MB-1重合体の割合は、上記樹脂組成物中に0.027重量%である。得られた樹脂組成物(ペレット)の物性を表1、2に示した。 [0070] 上記ペレットを縦一軸延伸シート成形機へ供給し、樹脂温度250℃でTダイから押出し、温度30℃の冷却ロールで引き取りながら厚み1.2mmの原反を成形、温度150℃の予熱ロールにて再加熱後、延伸倍率を4倍としてロール延伸を行い、温度110℃でアニールし、厚み0.3mmの縦一軸延伸シートを得た。得られたシートの物性を表1、2に示した。 [0071] 上記延伸シートを熱板成形機にて、前記容器モデル金型を用い、圧空エアー圧力0.64MPa、真空度0.09MPa、シート加熱時間3s、賦型時間3sに設定し、熱板温度100~160℃の範囲で熱成形し、得られた熱成形体の中で白濁がなく最も良好な賦型評点を表1、2に示した。 ・・・ [0074] [実施例5] 実施例1で用いた高融点プロピレン系樹脂(A'-1)を50重量%、プロピレンとエチレン5.4mol%を共重合させたTm=140℃、MFR=0.5g/10minの低融点プロピレン系樹脂(A''-3)を50重量%組み合わせた樹脂組成物(3MB-1重合体の割合は、樹脂組成物中に0.018重量%)を用いた以外は実施例1と同様に行い、その結果を表1に示した。」 (1A-5)「[0080] [表1] [図:0001422457000001.jpg] 」 (1A-6)「[0081] [実施例8] 実施例1で得られたペレットを逐次二軸延伸シート成形機へ供給し、樹脂温度250℃でTダイから押出し、温度30℃の冷却ロールで引き取りながら厚み1.8mmの原反を成形し、温度150℃の予熱ロールにて再加熱、延伸倍率3倍としてロール延伸を行い、その後、テンターへ供給し、延伸温度155℃、延伸倍率3倍として横延伸し、温度160℃で幅5%弛緩しながらアニールを行い、厚み0.2mmの逐次二軸延伸シートを得た。得られたシートの物性を表2に示した。 [0082] [実施例9] 実施例8において、厚み3.0mmの原反を成形し、横延伸を5倍に変更した以外は実施例8と同様に行い、その結果を表2に示した。」 (1A-7)「[0085] [表2] [図:0001422457000002.jpg] 」 (2)甲1Aに記載された発明 甲1Aの請求の範囲(摘記1A-1)には、「DSCで測定した融点が156~170℃である高融点プロピレン系樹脂(A')10~90重量%と、 DSCで測定した融点が70~155℃である少なくとも一種以上の低融点プロピレン系樹脂(A'')10~90重量%(ただし、A'とA''の合計は100重量%)とを含んでなり、 下記[1]~[4]の要件を満たすことを特徴とする延伸シート用プロピレン系樹脂組成物(A)。 [1]メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が0.5~10.0g/10minである。 [2]DSCで測定した融点が150~170℃である。 [3]延伸シート用プロピレン系樹脂組成物(A)中に、α-オレフィンコモノマー含有量が1~11mol%である。 [4]造核成分を含む。」及び上記樹脂組成物(A)を少なくとも一軸方向に延伸した単層シート(B1)が記載されており、単層シートの実施例として、実施例5(摘記1A-4)及び表1(摘記1A-5)には、所定の樹脂組成物を用いて製造された縦一軸延伸シートの実施例が記載され、実施例8及び9(摘記1A-6)及び表2(摘記1A-7)には、所定の樹脂組成物を用いて製造された逐次二軸延伸シートの実施例が記載されている。 また、[0057]~[0062](摘記1A-3)には、各実施例の説明に記載された融点はDSC測定によるものであり、mmmm(アイソタクティックペンタッド分率)は、13C-NMRにより決定したものであることが記載されている。 そうすると、甲1Aには、実施例5、8及び9に基づいて以下の発明が記載されている。 「造核成分として3-メチル-1-ブテン(3MB-1)を予備重合した後、プロピレンを単独重合させたDSC測定によるTm=167℃、MFR=2g/10min、13C-NMRにより決定したmmmm=0.972の高融点プロピレン系樹脂(A’-1)を50重量%、プロピレンとエチレン5.4mol%を共重合させたDSC測定によるTm=140℃、MFR=0.5g/10minの低融点プロピレン系樹脂(A”-3)を50重量%組み合わせた樹脂組成物100重量部に対して、酸化防止剤として、テトラキス[メチレン-3(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(IRGANOX1010、チバスペシャリティーケミカルズ社製、商標)を0.1重量部およびトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェノール)フォスフェート(IRGAFOS168、チバスペシャリティーケミカルズ社製、商標)を0.1重量部、中和剤としてステアリン酸カルシウム(日本油脂社製)を0.1重量部配合し、単軸押出機を用いて、樹脂温度230℃で溶融混練してペレット状に造粒し、 得られたペレットを縦一軸延伸シート成形機へ供給し、樹脂温度250℃でTダイから押出し、温度30℃の冷却ロールで引き取りながら厚み1.2mmの原反を成形し、温度150℃の予熱ロールにて再加熱後、延伸倍率を4倍としてロール延伸を行い、温度110℃でアニールを行って得た、厚み0.3mmの縦一軸延伸シート。」(以下、「甲1A実施例5発明」という。) 「造核成分として3-メチル-1-ブテン(3MB-1)を予備重合した後、プロピレンを単独重合させたDSC測定によるTm=167℃、MFR=2g/10min、13C-NMRにより決定したmmmm=0.972の高融点プロピレン系樹脂(A’-1)を75重量%、プロピレンとエチレン6mol%を共重合させたDSC測定によるTm=135℃、MFR=2g/10minの低融点プロピレン系樹脂(A”-1)を25重量%組み合わせた樹脂組成物100重量部に対して、酸化防止剤として、テトラキス[メチレン-3(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(IRGANOX1010、チバスペシャリティーケミカルズ社製、商標)を0.1重量部およびトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェノール)フォスフェート(IRGAFOS168、チバスペシャリティーケミカルズ社製、商標)を0.1重量部、中和剤としてステアリン酸カルシウム(日本油脂社製)を0.1重量部配合し、単軸押出機を用いて、樹脂温度230℃で溶融混練してペレット状に造粒し、 得られたペレットを逐次二軸延伸シート成形機へ供給し、樹脂温度250℃でTダイから押出し、温度30℃の冷却ロールで引き取りながら厚み1.8mmの原反を成形し、温度150℃の予熱ロールにて再加熱後、延伸倍率3倍としてロール延伸を行い、その後、テンターへ供給し、延伸温度155℃、延伸倍率3倍として横延伸し、温度160℃で幅5%弛緩しながらアニールを行って得た、厚み0.2mmの逐次二軸延伸シート。」(以下、「甲1A実施例8発明」という。) 「造核成分として3-メチル-1-ブテン(3MB-1)を予備重合した後、プロピレンを単独重合させたDSC測定によるTm=167℃、MFR=2g/10min、13C-NMRにより決定したmmmm=0.972の高融点プロピレン系樹脂(A’-1)を75重量%、プロピレンとエチレン6mol%を共重合させたDSC測定によるTm=135℃、MFR=2g/10minの低融点プロピレン系樹脂(A”-1)を25重量%組み合わせた樹脂組成物100重量部に対して、酸化防止剤として、テトラキス[メチレン-3(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(IRGANOX1010、チバスペシャリティーケミカルズ社製、商標)を0.1重量部およびトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェノール)フォスフェート(IRGAFOS168、チバスペシャリティーケミカルズ社製、商標)を0.1重量部、中和剤としてステアリン酸カルシウム(日本油脂社製)を0.1重量部配合し、単軸押出機を用いて、樹脂温度230℃で溶融混練してペレット状に造粒し、 得られたペレットを逐次二軸延伸シート成形機へ供給し、樹脂温度250℃でTダイから押出し、温度30℃の冷却ロールで引き取りながら厚み3.0mmの原反を成形し、温度150℃の予熱ロールにて再加熱後、延伸倍率3倍としてロール延伸を行い、その後、テンターへ供給し、延伸温度155℃、延伸倍率5倍として横延伸し、温度160℃で幅5%弛緩しながらアニールを行って得た、厚み0.13mmの逐次二軸延伸シート。」(以下、「甲1A実施例9発明」という。) また、以下において、甲1A実施例5発明、甲1A実施例8発明及び甲1A実施例9発明をまとめて「甲1A発明」という。 (3)本件発明1について ア 理由1A(甲1Aに基づく新規性欠如)及び理由2A(甲1Aに基づく進歩性欠如)についての判断 (ア)本件発明1と甲1A実施例8発明との対比 本件発明1と甲1A実施例8発明とを対比すると、甲1A実施例8発明における「造核成分として3-メチル-1-ブテン(3MB-1)を予備重合した後、プロピレンを単独重合させたDSC測定によるTm=167℃、MFR=2g/10min、13C-NMRにより決定したmmmm=0.972の高融点プロピレン系樹脂(A’-1)」は、本件発明1における「DSC測定による融点が162℃超え180℃以下の範囲にある第2プロピレン系重合体」に相当し、かつ「前記第2プロピレン系重合体のアイソタクチックメソペンタッド分率(mmmm)が96.0%以上である、」を満たしている。甲1A実施例8発明における「プロピレンとエチレン6mol%を共重合させたDSC測定によるTm=135℃、MFR=2g/10minの低融点プロピレン系樹脂(A”-1)」は、本件発明1における「DSC測定による融点が137℃以上162℃以下の範囲にある第1プロピレン系重合体」と、「DSC測定による融点が162℃以下の範囲にある第1プロピレン系重合体」である限りにおいて一致し、また、その融点を参酌すると、本件発明1における第1プロピレン系重合体についての「(ただし、高立体規則性プロピレン系重合体を除く)」という要件を満たす蓋然性が高いものである。 甲1A実施例8発明における「高融点プロピレン系樹脂(A’-1)を75重量%」及び「低融点プロピレン系樹脂(A”-1)を25重量%組み合わせた樹脂組成物100重量部に対して、酸化防止剤として、テトラキス[メチレン-3(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(IRGANOX1010、チバスペシャリティーケミカルズ社製、商標)を0.1重量部およびトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェノール)フォスフェート(IRGAFOS168、チバスペシャリティーケミカルズ社製、商標)を0.1重量部、中和剤としてステアリン酸カルシウム(日本油脂社製)を0.1重量部配合し、単軸押出機を用いて、樹脂温度230℃で溶融混練してペレット状に造粒し、 得られたペレットを逐次二軸延伸シート成形機へ供給し、樹脂温度250℃でTダイから押出し、温度30℃の冷却ロールで引き取りながら厚み1.8mmの原反を成形し、温度150℃の予熱ロールにて再加熱後、延伸倍率3倍としてロール延伸を行い、その後、テンターへ供給し、延伸温度155℃、延伸倍率3倍として横延伸し、温度160℃で幅5%弛緩しながらアニールを行って得た、」という特定事項からみて、甲1A実施例8発明における「厚み0.2mmの逐次二軸延伸シート」は、本件発明1における「フィルム」に相当するとともに、本件発明1と「プロピレン系重合体を含む二軸延伸フィルム層を備え、」る点で一致し、また、甲1A実施例8発明における「高融点プロピレン系樹脂(A’-1)を75重量%」及び「低融点プロピレン系樹脂(A”-1)を25重量%」という配合割合は、本件発明1における「前記二軸延伸フィルム層に含まれる前記第1プロピレン系重合体および前記第2プロピレン系重合体の合計量を100質量%としたとき、前記二軸延伸フィルム層中の前記第2プロピレン系重合体の含有量が1質量%以上85質量%以下であり、」との要件を満たしている。 そうすると、両者は、 「フィルムであって、 プロピレン系重合体を含む二軸延伸フィルム層を備え、 前記プロピレン系重合体は、DSC測定による融点が162℃以下の範囲にある第1プロピレン系重合体(ただし、高立体規則性プロピレン系重合体を除く)と、DSC測定による融点が162℃超え180℃以下の範囲にある第2プロピレン系重合体と、を含み、 前記二軸延伸フィルム層に含まれる前記第1プロピレン系重合体および前記第2プロピレン系重合体の合計量を100質量%としたとき、前記二軸延伸フィルム層中の前記第2プロピレン系重合体の含有量が1質量%以上85質量%以下であり、 前記第2プロピレン系重合体のアイソタクチックメソペンタッド分率(mmmm)が96.0%以上である、フィルム。」 の点で一致し、 相違点甲1A-1:本件発明1は「食品を包装するための食品用包装フィルム」と特定するのに対し、甲1A実施例8発明はそのように特定されない点 相違点甲1A-2:本件発明1は第1プロピレン系重合体のDSC測定による融点を「137℃以上162℃以下の範囲」と特定するのに対し、甲1A実施例8発明は「低融点プロピレン系樹脂(A”-1)」のDSC測定によるTmが「135℃」である点 相違点甲1A-3:本件発明1は「前記食品用包装フィルムの全体の厚みに対する前記二軸延伸フィルム層の厚みの割合が50%以上99%以下であり、」と特定するのに対し、甲1A実施例8発明はそのように特定されない点 で相違する。 そこで、事案に鑑み、相違点甲1A-2について検討する。 (イ)相違点甲1A-2について 甲1A実施例8発明は、樹脂組成物の成分組成及び性質と、逐次二軸延伸シート成形機を用いた二軸延伸の条件との組合せが適切に調整されることにより、表2(摘記1A-7)に記載された平均厚み、均一延伸性、引張弾性率、HAZE、賦形評点が得られるように最適化された実施例の一つと解されるところ、当該実施例の樹脂組成物に含まれる樹脂の融点を変更することは、延伸条件とのバランスを崩し、原反の成形性や延伸シートの物性を悪化させる可能性があるから、相違点甲1A-2に係る融点範囲への変更は当業者が動機付けられることとはいえない。また、甲1Aの[0009](摘記1A-2)には、甲1A発明の課題解決手段が、「特定範囲の融点のプロピレン系樹脂同士を組み合わせた組成分布の広い樹脂組成物」を用いることにあることが記載されているところ、当業者は、甲1A実施例8発明における「低融点プロピレン系樹脂」をより高い融点の樹脂に変更することは、樹脂組成物の組成分布を狭くすることになり、課題解決に望ましい方向の変更ではないと理解するから、この点からも相違点甲1A-2に係る融点範囲への変更は当業者が動機付けられることとはいえない。さらに、甲1Aの[0008](摘記1A-2)には、甲1A発明の課題が「一軸延伸、二軸延伸、原反冷却、および延伸倍率等の延伸方法に制約を受けず、且つ優れた剛性、耐熱剛性、透明性、均一延伸性、および熱成形性を有する延伸シート」の提供にあることが記載されているが、本件発明における「水蒸気バリア性向上および厚みムラ抑制の両方をバランス良く向上させるという観点」(本件明細書の[0007])は甲1Aには記載されておらず、また、他の全ての証拠の記載を参照しても、甲1A実施例8発明における「低融点プロピレン系樹脂」の融点を「137℃以上162℃以下の範囲」に変更することによって「水蒸気バリア性向上および厚みムラ抑制の両方をバランス良く向上させる」ことができることは記載も示唆もされていないから、甲1A実施例8発明において上記観点から相違点甲1A-2に係る融点範囲を採用することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 (ウ)本件発明1の効果について 仮に、甲1Aの請求項1(摘記1A-1)等の記載から、相違点甲1A-2に係る融点範囲の採用を試みることに思い至ることがあるとしても、他の相違点も合わせ持つ本件発明1の発明特定事項により「厚みムラが小さく、水蒸気バリア性が向上した食品用包装フィルムを提供できる」(本件明細書の[0012])という効果が得られることは、甲1Aの記載から予測し得ることではなく、さらに他の全ての証拠の記載を参酌しても、本件発明1の発明特定事項に基づいて上記効果が得られることを当業者が予測し得たとはいえない。 (エ)申立人Aの主張について 申立人Aは、申立書Aの10頁において「本件特許明細書には、第1プロピレン系重合体の融点が、137℃以上である場合と、137℃未満(特に、135℃)である場合とを比較する記載はな」く、「本件特許発明1における第1プロピレン系重合体の融点の範囲(137℃以上162℃以下)は、当業者が実験的に数値範囲を最適化又は好適化したものであり、単なる設計的事項」にすぎず、「甲1文献との実質的な差異はない」と主張している。 しかし、上記(イ)及び(ウ)に記載したとおり、甲1A実施例8発明における低融点プロピレン系樹脂(A”-1)の融点を相違点甲1A-2に係る融点範囲に変更する動機はなく、また、甲1A及び他の全ての証拠の記載を参照しても、当業者が、甲1A実施例8発明において「水蒸気バリア性向上および厚みムラ抑制の両方をバランス良く向上させる」という課題を認識し、その解決手段として低融点プロピレン系樹脂(A”-1)の融点を「最適化又は好適化」することに容易に想到し得たともいえない。さらに、相違点甲1A-2を含む本件発明1の発明特定事項に基づいて「厚みムラが小さく、水蒸気バリア性が向上した食品用包装フィルムを提供できる」という効果が得られること自体、当業者が予測し得たこととはいえないから、本件明細書において第1プロピレン系重合体の融点が137℃以上である場合と135℃である場合とを比較する記載がないことによって、甲1A実施例8発明に基づく新規性欠如及び進歩性欠如の判断が覆ることはない。 よって、申立人Aの主張を採用することはできない。 (オ)本件発明1についてのまとめ 以上のことから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲1A実施例8発明ではなく、かつ、甲1A実施例8発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 理由1B(甲1Bに基づく進歩性欠如)のうち、理由1B-1(実施例5に基づく進歩性欠如)についての判断 (ア)本件発明1と甲1A実施例5発明との対比 本件発明1と甲1A実施例5発明とを対比すると、甲1A実施例5発明における「造核成分として3-メチル-1-ブテン(3MB-1)を予備重合した後、プロピレンを単独重合させたDSC測定によるTm=167℃、MFR=2g/10min、13C-NMRにより決定したmmmm=0.972の高融点プロピレン系樹脂(A’-1)」は、本件発明1における「DSC測定による融点が162℃超え180℃以下の範囲にある第2プロピレン系重合体」に相当し、かつ「前記第2プロピレン系重合体のアイソタクチックメソペンタッド分率(mmmm)が96.0%以上である、」を満たしている。甲1A実施例5発明における「プロピレンとエチレン5.4mol%を共重合させたDSC測定によるTm=140℃、MFR=0.5g/10minの低融点プロピレン系樹脂(A”-3)」は、本件発明1における「DSC測定による融点が137℃以上162℃以下の範囲にある第1プロピレン系重合体」に相当し、また、その融点を参酌すると、本件発明1における第1プロピレン系重合体についての「(ただし、高立体規則性プロピレン系重合体を除く)」という要件を満たす蓋然性が高いものである。 甲1A実施例5発明における「高融点プロピレン系樹脂(A’-1)を50重量%」及び「低融点プロピレン系樹脂(A”-3)を50重量%組み合わせた樹脂組成物100重量部に対して、酸化防止剤として、テトラキス[メチレン-3(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(IRGANOX1010、チバスペシャリティーケミカルズ社製、商標)を0.1重量部およびトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェノール)フォスフェート(IRGAFOS168、チバスペシャリティーケミカルズ社製、商標)を0.1重量部、中和剤としてステアリン酸カルシウム(日本油脂社製)を0.1重量部配合し、単軸押出機を用いて、樹脂温度230℃で溶融混練してペレット状に造粒し、 得られたペレットを縦一軸延伸シート成形機へ供給し、樹脂温度250℃でTダイから押出し、温度30℃の冷却ロールで引き取りながら厚み1.2mmの原反を成形し、温度150℃の予熱ロールにて再加熱後、延伸倍率を4倍としてロール延伸を行い、温度110℃でアニールを行って得た、」という特定事項からみて、甲1A実施例5発明における「厚み0.3mmの縦一軸延伸シート」は、本件発明1における「フィルム」に相当するとともに、本件発明1における「プロピレン系重合体を含む二軸延伸フィルム層を備え、」と「プロピレン系重合体を含む延伸フィルム層を備え」る限りにおいて一致し、また、甲1A実施例5発明における「高融点プロピレン系樹脂(A’-1)を50重量%」及び「低融点プロピレン系樹脂(A”-3)を50重量%」という配合割合は、本件発明1における「前記二軸延伸フィルム層に含まれる前記第1プロピレン系重合体および前記第2プロピレン系重合体の合計量を100質量%としたとき、前記二軸延伸フィルム層中の前記第2プロピレン系重合体の含有量が1質量%以上85質量%以下であり、」との要件を、「延伸フィルム層」における割合である限りにおいて満たしている。 そうすると、両者は、 「フィルムであって、 プロピレン系重合体を含む延伸フィルム層を備え、 前記プロピレン系重合体は、DSC測定による融点が137℃以上162℃以下の範囲にある第1プロピレン系重合体(ただし、高立体規則性プロピレン系重合体を除く)と、DSC測定による融点が162℃超え180℃以下の範囲にある第2プロピレン系重合体と、を含み、 前記延伸フィルム層に含まれる前記第1プロピレン系重合体および前記第2プロピレン系重合体の合計量を100質量%としたとき、前記延伸フィルム層中の前記第2プロピレン系重合体の含有量が1質量%以上85質量%以下であり、 前記第2プロピレン系重合体のアイソタクチックメソペンタッド分率(mmmm)が96.0%以上である、フィルム。」 の点で一致し、 相違点甲1A-1’:本件発明1は「食品を包装するための食品用包装フィルム」と特定するのに対し、甲1A実施例5発明はそのように特定されない点 相違点甲1A-2’:本件発明1は「二軸延伸」と特定するのに対し、甲1A実施例5発明は「縦一軸延伸」である点 相違点甲1A-3’:本件発明1は「前記食品用包装フィルムの全体の厚みに対する前記二軸延伸フィルム層の厚みの割合が50%以上99%以下であり、」と特定するのに対し、甲1A実施例5発明はそのように特定されない点 で相違する。 そこで、事案に鑑み、相違点甲1A-2’について検討する。 (イ)相違点甲1A-2’について 甲1A実施例5発明は、特定の成分組成及び性質を備えた樹脂組成物を、縦一軸延伸シート成形機を用いた特定の条件で縦一軸延伸を行ったときに、表1(摘記1A-5)に記載された平均厚み、均一延伸性、引張弾性率、HAZE、加熱収縮率、賦形評点が得られるように構成された実施例であり、延伸条件を一軸から二軸に変更することは、甲1A発明が課題とする「優れた剛性、耐熱剛性、透明性、均一延伸性および熱成形性」([0008](摘記1A-2))を損なうおそれがあるから、当業者は甲1の実施例5における延伸条件を変更することを動機付けられない。よって、相違点甲1A-2’は、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 (ウ)本件発明1の効果について また、仮に、甲1Aの[0008]における「一軸延伸、二軸延伸、原反冷却、および延伸倍率等の延伸方法に制約を受けず」等の記載から、相違点甲1A-2’に係る二軸延伸を試みることに思い至ることがあるとしても、他の相違点も合わせ持つ本件発明1の発明特定事項により「厚みムラが小さく、水蒸気バリア性が向上した食品用包装フィルムを提供できる」(本件明細書の[0012])という効果が得られることは、甲1Aの記載から予測し得ることではなく、さらに他の全ての証拠の記載を参酌しても、本件発明1の発明特定事項に基づいて上記効果が得られることを当業者が予測し得たとはいえない。 (エ)申立人Bの主張について 申立人Bは、申立書Bの52頁において「上記課題に照らせば、一軸延伸に制限されることはなく、一軸延伸及び二軸延伸のいずれも採用することは周知技術であり二軸延伸を実施することに動機付けられる」と主張するが、上記(イ)のとおり、延伸条件の変更はフィルム物性の低下を招くおそれがあるから、当業者が動機付けられることとはいえず、実際、甲1の表2(摘記1A-7)に記載された実施例1及び8~10を参照すると、同じ樹脂組成物に対して縦一軸延伸を行った実施例1に対し、逐次二軸延伸を行った実施例8及び9並びに同時二軸延伸を行った実施例10は均一延伸性及び引張弾性率(110℃)が悪化している。そして、上記(ウ)のとおり、「厚みムラが小さく、水蒸気バリア性が向上した食品用包装フィルムを提供できる」という本件発明1の効果は、甲1及び他の全ての証拠の記載を参酌しても、当業者が予測し得たものとはいえない。よって、申立人Bの主張を採用することはできない。 (オ)本件発明1についてのまとめ 以上のことから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲1A実施例5発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 理由1B(甲1Bに基づく進歩性欠如)のうち、理由1B-2(実施例9に基づく進歩性欠如)についての判断 (ア)本件発明1と甲1A実施例9発明との対比 甲1Aの[0082](摘記1A-6)には、実施例9が「実施例8において、厚み3.0mmの原反を成形し、横延伸を5倍に変更した以外は実施例8と同様」に行ったものであることが記載されている。そこで、上記ア(ア)における本件発明1と甲1A実施例8発明との対比を踏まえて、本件発明1と甲1A実施例9発明とを対比すると、両者は、 「フィルムであって、 プロピレン系重合体を含む二軸延伸フィルム層を備え、 前記プロピレン系重合体は、DSC測定による融点が162℃以下の範囲にある第1プロピレン系重合体(ただし、高立体規則性プロピレン系重合体を除く)と、DSC測定による融点が162℃超え180℃以下の範囲にある第2プロピレン系重合体と、を含み、 前記二軸延伸フィルム層に含まれる前記第1プロピレン系重合体および前記第2プロピレン系重合体の合計量を100質量%としたとき、前記二軸延伸フィルム層中の前記第2プロピレン系重合体の含有量が1質量%以上85質量%以下であり、 前記第2プロピレン系重合体のアイソタクチックメソペンタッド分率(mmmm)が96.0%以上である、フィルム。」 の点で一致し、 相違点甲1A-1”:本件発明1は「食品を包装するための食品用包装フィルム」と特定するのに対し、甲1A実施例9発明はそのように特定されない点 相違点甲1A-2”:本件発明1は第1プロピレン系重合体のDSC測定による融点を「137℃以上162℃以下の範囲」と特定するのに対し、甲1A実施例9発明は「低融点プロピレン系樹脂(A”-1)」のDSC測定によるTmが「135℃」である点 相違点甲1A-3”:本件発明1は「前記食品用包装フィルムの全体の厚みに対する前記二軸延伸フィルム層の厚みの割合が50%以上99%以下であり、」と特定するのに対し、甲1A実施例9発明はそのように特定されない点 で相違する。 そこで、事案に鑑み、相違点甲1A-2”について検討する。 (イ)相違点甲1A-2”について 相違点甲1A-2”は、実質的に相違点甲1A-2と同じ内容の相違点であるから、上記ア(イ)及び(ウ)と同じことがいえる。よって、甲1A実施例9発明において相違点甲1A-2”に係る融点範囲を採用することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 (ウ)申立人Bの主張について 申立人Bは、申立書Bの60~61頁において「甲1-2発明は、課題として一軸延伸、二軸延伸等の延伸方法に制約を受けずに熱成形性を有する延伸シート用のプロピレン系樹脂組成物等を提供することを掲げている・・・。この課題に照らせば、甲1-1発明で示される様に、融点140℃の低融点プロピレン系樹脂を一軸延伸のみならず二軸延伸にも使用することに動機付けられ、プロピレン系樹脂の融点を137℃以上とすることに動機付けられる」と主張している。 しかし、上記ア(イ)及び(ウ)に記載したことと同じことがいえるから、甲1A及び他の全ての証拠の記載を参照しても、甲1A実施例9発明における低融点プロピレン系樹脂(A”-1)の融点を相違点甲1A-2”に係る融点範囲に変更することに当業者が動機付けられるとはいえない。 よって、申立人Bの主張を採用することはできない。 (オ)本件発明1についてのまとめ 以上のことから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲1A実施例9発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件発明2~12について ア 理由1A(甲1Aに基づく新規性欠如)及び理由2A(甲1Aに基づく進歩性欠如)についての判断 本件発明2及び10~12は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記(3)アで検討した本件発明1と同様の理由により、本件発明2及び10~12は、いずれも甲1A実施例8発明ではなく、かつ、甲1A実施例8発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 イ 理由1B(甲1Bに基づく進歩性欠如)のうち、理由1B-1(実施例5に基づく進歩性欠如)についての判断 本件発明2~12は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記(3)イで検討した本件発明1と同様の理由により、本件発明2~12は、いずれも甲1A実施例5発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 理由1B(甲1Bに基づく進歩性欠如)のうち、理由1B-2(実施例9に基づく進歩性欠如)についての判断 本件発明2~12は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記(3)ウで検討した本件発明1と同様の理由により、本件発明2~12は、いずれも甲1A実施例9発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)理由1A(甲1Aに基づく新規性欠如)、理由2A(甲1Aに基づく進歩性欠如)及び理由1B(甲1Bに基づく進歩性欠如)についてのまとめ 以上まとめると、本件発明1、2及び10~12は、いずれも甲1Aに記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号には該当せず、また、本件発明1、2及び10~12は、いずれも甲1Aに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 よって、理由1A(甲1Aに基づく新規性欠如)及び理由2A(甲1Aに基づく進歩性欠如)により本件発明1、2及び10~12についての特許を取り消すことはできない。 また、本件発明1~12は、いずれも甲1A実施例5発明又は甲1A実施例9発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 よって、理由1B(甲1Bに基づく進歩性欠如)により本件発明1~12についての特許を取り消すことはできない。 2.理由3A(甲1A~甲4Aに基づく進歩性欠如)について 申立人Aは、申立書Aの14~19頁において本件発明と甲1A~甲4Aとを対比し主張しているので、理由3A(甲1A~甲4Aに基づく進歩性欠如)は、甲1A~甲4Aのそれぞれを主引例とする進歩性欠如の申立てと解して検討を行った。 (1)甲1A~甲4Aに記載された事項 ア 甲1Aに記載された事項 甲1Aには上記1.(1)に摘記した事項が記載されている。 イ 甲2Aに記載された事項 甲2Aには以下の事項が記載されている。 (2A-1)「[請求項1]フィルムの機械軸方向および該機械軸方向と直交する方向における、150℃の熱収縮率がいずれも5%以下である二軸延伸ポリプロピレンフィルムと、該フィルムの少なくとも片面上に積層された高分子ガスバリア層とからなることを特徴とする積層フィルム。」 (2A-2)「[0008] [発明が解決しようとする課題]したがって、本発明の目的は、OPPフィルムに高分子ガスバリア層を積層した積層フィルムにおいて、OPPフィルムを基材として使用することによる外観・仕上がり不良の問題、該不良による酸素バリア性の低下の問題、さらには、製袋時の熱融着によるシワの発生による包装袋としてのガスバリア性が低下する問題を全て解消した、優れた特性を有する積層フィルムを提供することにある。 [0009] [課題を解決するための手段]本発明者らは、上記目的を達成すべく、鋭意研究を重ねてきた。その結果、熱収縮率を特定の範囲に限定したOPPフィルムを基材として使用し、この基材に高分子ガスバリア層を積層することにより、上記課題が全て解決できることを見い出し、本発明を完成するに至った。 ・・・ [0011] [発明の実施の形態]本発明において、基材フィルムとして使用されるOPPフィルムは、二軸延伸によりポリプロピレン分子が配向した構造をなしているため、優れた機械的強度を有するとともに、特に水蒸気に対するガスバリア性に優れ、これに積層される高分子ガスバリア層との組合せによって、高レベルの総合的なガスバリア性を示すことが可能となる。」 (2A-3)「[0019]また、上記ポリプロピレン樹脂は、結晶性を示す13C-NMRによるアイソタクチックペンタッド分率が、0.950~0.995であることが好ましく、0.970~0.990である高結晶のポリプロピレン樹脂(以下、高結晶性PP樹脂ともいう)を使用することがより好ましい。 [0020]上記ペンタッド分率が0.950より小さい場合は、OPPフィルムの融点が低下し、熱収縮率が高くなったり、防湿性が低下する等の問題が起こりやすくなる。また、0.995より大きい場合はOPPフィルム製造時の延伸加工性が低下する。 [0021]なお、上記アイソタクチックペンタッド分率は、エー.ザンベリ(A.Zambelli)らによってマクロモレキュールズ(Macromolecules),13,267(1980)に発表された13C-NMRスペクトルのピーク帰属に基づいて定量されたプロピレンユニット5個が連続して等しい立体配置をとる分率である。 [0022]上記ポリプロピレン樹脂は、公知の製造方法により得ることができる。例えば、TiCl3、担持型TiCl3、メタロセン系触媒等の公知のポリプロピレン用重合触媒を用いて、上記した単量体を重合する方法が挙げられる。また、重合後、必要に応じて、過酸化物などによる分解を行ってもよい。 [0023]上記ポリプロピレン樹脂のDSCにおけるピークトップの測定値(融点)は、フィルムの耐熱性を勘案すると、155~165℃が好ましく、160~165℃がより好ましい。このような融点を有するポリプロピレン樹脂を用いることにより、前記したOPPフィルムの好ましい融点を容易に達成することができる。」 (2A-4)「[0043]本発明の積層フィルムにおいて、前記OPPフィルムに積層される高分子ガスバリア層は、公知のものが特に制限なく使用できる。例えば、水溶性高分子層、水溶性高分子並びに金属アルコキシドおよび/またはケイ素アルコキシドをゾル-ゲル法により重縮合して得られる酸化物ポリマーよりなり、必要に応じて、該水溶性高分子と酸化物ポリマーとを縮合させてなる複合ポリマー層等が挙げられる。 [0044]そのうち、上記複合ポリマー層が、水溶性高分子単独よりなる層に比べて、ガスバリア性が優れ、ガスバリア性の湿度依存性が小さく、しかも、塩素系の水溶性高分子に対して焼却性、廃棄性に優れるため、本発明において好適に使用することができる。 [0045]上記複合ポリマー層としては、(1)金属アルコキシドおよびケイ素アルコキシドよりなる群から選ばれる少なくとも1種のアルコキシドの部分加水分解重縮合物と水溶性高分子との混合物、(2)該部分加水分解重縮合物と水溶性高分子との反応生成物、または(3)該部分加水分解重縮合物、水溶性高分子および該反応生成物との混合物のいずれか1種からなるものが好ましい。 [0046]上記水溶性高分子は、常温で水に完全に溶解もしくは微分散可能な高分子であり、具体的に例示すると、ポリビニルアルコールおよびその誘導体;一酸化炭素-エチレン系共重合体からなるポリケトンを還元して得たポリアルコール;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体;酸化でんぷん、エーテル化でんぷん、デキストリン等のでんぷん類;ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、またはそのエステル、塩類およびそれらの共重合体等のビニル系共重合体;あるいはこれらの各種重合体のカルボキシル基、シリル基等による官能基変性重合体等が挙げられる。」 (2A-5)「[0113](1)原料樹脂のDSCによる主ピークの測定 約5~6mgの試料を秤量後、アルミパンに封入し、示差熱量計にて20ml/minの窒素気流中で室温から235℃まで昇温し、この温度で10分間保持し、次いで10℃/minで室温まで冷却する。この後、昇温速度10℃/minで得られる融解曲線より、主ピークを測定した。 ・・・ [0116](4)ペンタッド分率(mmmm値)および共重合組成日本電子製のJNM-GSX-270(13C-核共鳴周波数67.8MHz)を用い、次の条件で測定した。 [0117] 測定モード :1H-完全デカップリング パルス幅 :7.0マイクロ秒(C45度) パルス繰返し時間:3秒 積算回数 :10,000回 溶媒 :オルトジクロルベンゼン/重ベンゼンの混合溶媒(90/10容量%) 試料濃度 :120mg/2.5ml溶媒 測定温度 :120℃ この場合、mmmmペンタッド分率は、13C-NMRスペクトルのメチル基領域における分裂ピークの測定により求めた。また、メチル基領域のピークの帰属は、A.Zambelli et al[Macromolecules 13,267(1980)]に従って行った。 ・・・ [0121](8)防湿性(水蒸気バリア性) JIS K7129 B法に準じて、透湿度測定装置(mocon社製;PERMATRAN-W TWIN)を用い、40℃、90%RHの雰囲気下で測定した。」 (2A-6)「[0130]実施例1 表1に示す樹脂Aを、Tダイ押出機を用いて280℃で加熱溶融下シート状に押出し、チルロール上で冷却固化した後、加熱ロール延伸機によりシート温度151℃で4.4倍に縦延伸し、続いてテンター横延伸機により158℃で10.5倍に横延伸した後、雰囲気温度175℃で10秒間熱処理しながら、TD方向に8%の弛緩処理を行い、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムの片面にコロナ処理を施した。得られた二軸延伸フィルムの評価結果を表2に示した。次いで、テトラエトキシシラン30重量部、エタノール20重量部、2N塩酸1重量部、水4重量部を混合し、室温で1時間攪拌した。次いで、γ-グリシドキシトリメトキシシラン3重量部、ソアノール20L(日本合成化学社製エチレン-ビニルアルコール水/IPA溶液)40重量部、N,N-ジメチルベンジルアミン0.15重量部を加えて攪拌し、コート液Aとした。上記二軸延伸ポリプロピレンフィルムのコロナ処理面に、上記コート液Aをバーコーターにより乾燥後のコート層厚みが3μmとなるようにコートし、表3に示した条件で乾燥硬化した。得られた積層フィルムの評価結果を表3に示した。 ・・・ [0133] [表1] [図:0001422457000003.jpg] [0134] [表2] [図:0001422457000004.jpg] [0135] [表3] [図:0001422457000005.jpg] 」 ウ 甲3Aに記載された事項 甲3Aには以下の事項が記載されている。摘記の都合上、本文と表の配置を一部変更した。 (3A-1)「はじめに ・・・ 従来,延伸フィルムグレードを開発するには,大量の試作サンプルをパイロットプラント等で製造し,かつ連続の二軸延伸機を利用して,多くの人,時間,費用をかけて,検討してきた.しかし,このような開発では新規グレード開発に結び付けるのに,多くの困難が伴う.また,フィルムを製造する上で,最適な延伸条件を探索するためには,かなりの時間が必要である. そこで,少量のサンプルと短時間でかつ簡便に,延伸性や構造変化を観察しながら,評価する方法について,延伸用樹脂として最も広く使用されているPPを中心に,例を挙げて紹介したい.」(p.450左欄1~18行) (3A-2)「多モード粘弾性パラメータを考慮できるモデルを利用し,それらのパラメータであるηiおよびGi(i=1,2,3)をそれぞれ変化させることにより,得られたテンターでの歪み-応力曲線およびフィルム厚みの偏肉を予測した結果の一例を図5に示す.横軸は延伸倍率,縦軸は延伸力を示す.なお,図中の偏肉の値は,延伸前の偏肉が10%存在した場合の延伸後の偏肉精度を示す. ・・・ PPの場合,低立体規則性や低エチレンランダム共重合PPは結晶化を乱す方向に作用するため,結晶化速度を遅くし,結晶サイズや結晶化度が低下し,球晶生成も遅くするため,延伸倍率-延伸応力の初期降伏値が低下する.そのため,立体規則性や低エチレンランダム共重合PPは図6に示したように延伸前の厚みが均一と仮定した場合(上図)と局所的に偏肉が存在した場合(下図),延伸後の厚み均一性は両方のケースで共に,標準サンプルよりも良好になる結果が得られ,また延伸初期の降伏値の応力も小さい.立体規則性を下げる,もしくはエチレンを共重合させて結晶化を抑制すると,剛性は下がる傾向に働く. ・・・ 図7にはロールで縦延伸したサンプルを用いて,テーブルテンター延伸試験機によりTD延伸して得られた各種PPの延伸応力-延伸倍率曲線を示す1),5).低立体規則性PPや微量エチレン共重合PPは高立体規則性PPに比較して結晶化速度を遅くするため,初期の降伏値を下げる.また,低温融解成分も増加し,組成分布も広がるため,延伸可能な温度領域も広がる6). ・・・ 上記結果を図9にまとめて記載し,良い延伸条件を以下に列挙した1). a)広い分子量分布 b)低立体規則性か低エチレン量の共重合 c)広い組成分布 d)高速延伸条件では高めのMFR e)両面急速冷却により原反成形時および予熱時に低結晶化度に維持」(p.451左欄下から4行~p.452右欄2行) (3A-3)「結晶化速度を抑制できる超低立体規則性PP(LMPP)9)を通常のPPにブレンドした系での二軸延伸の検討結果を述べる.標準サンプルに融点Tmの低い少量の超低立体規則性PP,および超立体規則かつ超低分子量サンプルを少量添加してPPの結晶化速度を遅くした系などのサンプル(表1)を用いて,縦延伸後のTD延伸過程の高次構造変化を観察し,定量的な延伸性への影響を測定した. L1は標準的な低立体規則性PPで,L2はL1よりもさらに立体規則性の低い超低立体規則性LMPP,L3はL1と比較して立体規則性は同じで分子量が約2倍高いLMPPを用いた10),11). 横軸に面倍率,縦軸にTDの公称応力をとった.赤線のAの挙動は降伏値が高く,Aと比較すると青線のA/L1(L15%ブレンドサンプル),緑線のA/L2(L25%ブレンドサンプル)は降伏応力値が約30%低減され,延伸後期の応力はAと同様に大きな値となっている(図11). A/L3(L35%ブレンドサンプル)の降伏応力値はほぼ変わらないが,分子量が大きいLMPPのため,分子鎖同士の絡み合いで延伸後期の応力が大きくなることがわかる.L1,L2のブレンドは破断防止効果があり,偏肉精度の向上も期待できることが考えられる. ・・・先ほどのDSC測定結果でPPにLMPPをブレンドすると融点は一定のまま結晶化度を抑制させ,降伏応力値を低減しているため,LMPPが非晶相に溶け込み可塑剤として作用することで延伸性が向上したのではないかと考えられる(図13). ・・・ PPの結晶化速度を抑制するLMPPの添加は,降伏応力を低下させることで立ち上がり度が上昇し,延伸過程において原反の厚い部分が均一に延伸され,偏肉精度の標準偏差が小さくなったと考えられる.」(p.453右欄15行~p.454右欄11行) (3A-4)「表1 評価した樹脂の性状 [図:0001422457000006.jpg] 注)L1:標準LMPP, L2:超低立体規則性LMPP, L3:高分子量LMPP ブレンドサンプル:二軸延伸PP グレードA にL1,L2,L3を5wt%ブレンド 厚み500μm の原反A/L1,A/L2,A/L3は押出成形により製膜 [図:0001422457000007.jpg] 図11 公称応力-面倍率曲線(延伸温度159℃)」(p.454左欄表1及び図11) エ 甲4Aに記載された事項 甲4Aには以下の事項が記載されている。 (4A-1)「 1.緒言 ポリプロピレン(以下PP)は安価であり成形加工性が優れるなどから、食品包装や工業用途に幅広く使用されている。その中でも二軸延伸フィルムは最も多く利用されており、今後も大きな需要の拡大が予想される。そこで近年、薄膜化や超高速生産化が求められているが、生産時にフィルムの破断や厚みムラ(偏肉精度)といった問題が発生する。そこで、低立体規則性PP(以下LMPP)の優れた延伸性改良効果に着目し、これをPPに添加することで延伸性の向上効果を期待した。本研究ではPPの二軸延伸性改良に適切なLMPPの検討および延伸性向上に影響するメカニズムの解明を行う。」(p.283左欄1~14行) (4A-2)「2.実験 2.1使用樹脂 本研究に使用したサンプルの樹脂性状をTable1に示す。(株)プライムポリマー製のi-PPを基準サンプルF300SPとして、基準LMPPであるS901、超低立体規則性LMPPであるX901L、低立体規則性で低分子量であるS400をF300SPにそれぞれ5wt%ブレンドし、T-ダイ法により厚み500μmの原反F300SP/S901、F300SP/X901L、F300SP/S400を製膜した。以下、F300SPをA、S901をB、X901LをC、S400をDとし、それぞれのLMPPブレンドサンプルをAB、AC、ADとする。試験片はこの原反から85mm角に切り出し使用した。 Table1 Characteristic of resins [図:0001422457000008.jpg] 2.2二軸延伸試験機 金沢大学とヱトー(株)が共同開発した新規二軸延伸機SDR-527Kを用いて、延伸可能温度幅、応力-ひずみ特性、屈折率、位相差及び光散乱を測定した。実験条件は延伸速度100mm/sec、延伸倍率縦(MD)5×横(TD)5.84倍、予熱時間2minで行った。」(p.283左欄下から2行~p.284左欄2行) (4A-3)「3.結果と考察 3.1延伸可能温度幅と偏肉精度標準偏差 Fig.1に延伸可能温度幅および偏肉精度標準偏差の結果を示す。二軸延伸後のフィルムの厚みを膜厚計で30点測定することで、各延伸温度における偏肉精度の標準偏差を求めた。基準i-PPのAに比べ、LMPPをブレンドしたサンプルは延伸可能温度幅が広くなり、延伸可能な条件が広いことが判明した。また、AB及びACは大幅に偏肉精度が改良された。 [図:0001422457000009.jpg] Fig.1 Standard deviation of thickness uniformity and stretchable temperature」(p.284左欄3行~図1) (4A-4)「4.結言 LMPPをPPにブレンドすることで結晶化度が抑制されたため、延伸性が良好になったといえる。また、降伏応力値が下がることやネック延伸を抑制させることで延伸後のフィルムの偏肉精度が改良されることが示唆された。」(p.284右欄下から12行~下から7行) (2)甲1Aに基づく進歩性欠如について ア 甲1Aに記載された発明 甲1Aには上記1.(2)に記載した甲1A発明が記載されている。 申立人Aは、申立書Aの12頁において、甲1Aの[0081](実施例8)等の記載を引用し、「甲1文献には、均一延伸性等の向上を課題としてなされた、アイソタクティックペンタッド分率が0.972の高融点プロピレン系樹脂を使用した二軸延伸シートが記載されている」と主張しているから、特に、甲1A実施例8発明に基づいて主張するものと解し、以下、検討する。 イ 本件発明1について (ア)本件発明1と甲1A実施例8発明との対比、判断 本件発明1と甲1A実施例8発明との対比及び進歩性についての判断は、上記1.(3)アに記載したとおりである。 (イ)申立人Aの主張について a.申立人Aの主張の内容 申立人Aは、申立書Aの14~15頁において「甲2文献~甲4文献から明らかなように、OPPフィルムを構成するプロピレン系重合体として高結晶性プロピレン系重合体を使用した場合に、OPPフィルムにおいて水蒸気バリア性および厚みムラの間にはトレードオフの関係があること、すなわち、OPPフィルムには、水蒸気バリア性向上および厚みムラ抑制の両方をバランスよく向上させるという観点において改善の余地がある、という本件特許発明1の課題は周知である」から、「甲1~4文献の二軸延伸シート又は二軸延伸フィルムにおいて、当該シート又はフィルムの水蒸気バリア性向上および厚みムラ抑制の両方をバランスよく向上させる目的で、アイソタクチックメソペンタッド分率の高いプロピレン系樹脂(高結晶性プロピレン系重合体に相当)を使用することは、当業者の通常の創作能力の発揮の範囲内でなされたもの」であり、「アイソタクチックペンタッド分率の範囲、融点、配合割合や、・・・低融点プロピレン系樹脂の融点、並びに・・・厚みの割合を具体的にどの程度とするかは、当業者が適宜設定する数値範囲の最適化または好適化による設計事項にすぎない」と主張している。 b.甲2A~甲4Aの記載について しかし、甲2A~甲4Aのいずれにも、「水蒸気バリア性向上および厚みムラ抑制の両方をバランスよく向上させる」という課題は記載されておらず、また、他の全ての証拠の記載を参酌しても、本件特許に係る出願の出願日当時において、OPPフィルムの技術分野においてそのような課題が周知であったとは認められない。 すなわち、甲2Aの[0008](摘記2A-2)の「発明の解決しようとする課題」には、水蒸気バリア性および厚みムラのいずれも課題として掲げられておらず、また、[0020](摘記2A-3)には、「ペンタッド分率が0.950より小さい場合は、OPPフィルムの融点が低下し、熱収縮率が高くなったり、防湿性が低下する等の問題が起こりやすくなる」と記載されているが、厚みムラ抑制については記載されておらず、甲2Aの他の箇所の記載を参照しても、「防湿性」と厚みムラ抑制がトレードオフの関係にあることも、両者のバランスを取ることも記載されていない。 甲3Aのp.451右欄下から6行~p.452左欄5行(摘記3A-2)には、「PPの場合,低立体規則性や低エチレンランダム共重合PPは結晶化を乱す方向に作用するため,・・・延伸後の厚み均一性は両方のケースで共に,標準サンプルよりも良好になる結果が得られ,また延伸初期の降伏値の応力も小さい」と記載されているが、水蒸気バリア性向上については記載されておらず、甲3Aの他の箇所の記載を参照しても、水蒸気バリア性向上と厚みムラ抑制がトレードオフの関係にあることも、両者のバランスを取ることも記載されていない。 甲4Aのp.283左欄1~9行(摘記4A-1)には、「近年、薄膜化や超高速生産化が求められているが、生産時にフィルムの破断や厚みムラ(偏肉精度)といった問題が発生する。そこで、低立体規則性PP(以下LMPP)の優れた延伸性改良効果に着目し、これをPPに添加することで延伸性の向上効果を期待した」と記載されているが、水蒸気バリア性向上については記載されておらず、甲4Aの他の箇所の記載を参照しても、水蒸気バリア性向上と厚みムラ抑制がトレードオフの関係にあることも、両者のバランスを取ることも記載されていない。 c.甲1Aとの組合せについて そして、上記1.(3)ア(イ)及び(ウ)に記載したとおり、甲1A実施例8発明の課題([0008]、摘記1A-2)は「一軸延伸、二軸延伸、原反冷却、および延伸倍率等の延伸方法に制約を受けず、且つ優れた剛性、耐熱剛性、透明性、均一延伸性、および熱成形性を有する延伸シート」の提供にあるが、上記b.に記載した甲2A~甲4Aに記載された事項は甲1A実施例8発明の課題と共通するものではないから組み合わせる動機はなく、さらに、「水蒸気バリア性向上および厚みムラ抑制の両方をバランス良く向上させる」(本件明細書の[0007])という課題は甲1A~甲4Aを含むいずれの証拠にも記載されていないから、申立人Aが主張する甲2A~甲4Aの記載を参酌しても、甲1A実施例8発明における「低融点プロピレン系樹脂」の融点を「137℃以上162℃以下の範囲」に変更することによって「水蒸気バリア性向上および厚みムラ抑制の両方をバランス良く向上させる」ことは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。そして、本件発明1の発明特定事項に基づいて「厚みムラが小さく、水蒸気バリア性が向上した食品用包装フィルムを提供できる」(本件明細書の[0012])という効果が得られることは、甲1A~甲4Aの記載等から当業者が予測し得たこととはいえない。 d.申立人Aの主張についてのまとめ よって、本件発明1の課題が周知であることを前提とした申立人Aの主張を採用することはできず、甲1A実施例8発明においてアイソタクチックメソペンタッド分率の高いプロピレン系樹脂(高結晶性プロピレン系重合体に相当)を使用すること(相違点甲1A-2)は、上記1.(3)アに記載したように、当業者の通常の創作能力の発揮の範囲内でなされたものであるとも、単なる設計事項にすぎないともいえない。 (ウ)本件発明1についてのまとめ 以上のことから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲1A実施例8発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明2~12について 本件発明2~12は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記イで検討した本件発明1と同様の理由により、本件発明2~12は、いずれも甲1A実施例8発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 エ 甲1Aに基づく進歩性欠如についてのまとめ 以上まとめると、本件発明1~12は、いずれも甲1Aに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 よって、理由3Aのうち、甲1Aに基づく進歩性欠如の理由により本件発明1~12についての特許を取り消すことはできない。 (3)甲2Aに基づく進歩性欠如について ア 甲2Aに記載された発明 甲2Aの請求項1(摘記2A-1)には「フィルムの機械軸方向および該機械軸方向と直交する方向における、150℃の熱収縮率がいずれも5%以下である二軸延伸ポリプロピレンフィルムと、該フィルムの少なくとも片面上に積層された高分子ガスバリア層とからなることを特徴とする積層フィルム。」が記載されており、「高分子ガスバリア層」について、[0043]~[0046](摘記2A-4)には、「水溶性高分子並びに金属アルコキシドおよび/またはケイ素アルコキシドをゾル-ゲル法により重縮合して得られる酸化物ポリマーよりなり、必要に応じて、該水溶性高分子と酸化物ポリマーとを縮合させてなる複合ポリマー層等」が使用できることが記載されている。 また、その実施例の一つとして、[0130]~[0135](摘記2A-6)には樹脂Aからなる二軸延伸フィルム([0134]の表2(種類a、原料樹脂A)を参照すると、厚み20μmである。)の片面にコロナ処理を施し、コロナ処理面に乾燥後のコート層厚みが3μmとなるようにコート液Aをコートし、乾燥硬化させて得られた実施例1の積層フィルムが記載されており、[0113]、[0116]及び[0117](摘記2A-5)には、実施例の説明に記載された融点はDSC測定によるものであり、ペンタッド分率(mmmm値)は、13C-NMRにより決定したものであることが記載されている。 そうすると、甲2Aには、実施例1に基づいて以下の発明が記載されている。 「樹脂A(アンチブロッキング剤を0.05重量部含有するプロピレン単独重合体、DSCピークトップ165℃、13C-NMRにより決定したペンタッド分率0.985)を、Tダイ押出機を用いて280℃で加熱溶融下シート状に押出し、チルロール上で冷却固化した後、加熱ロール延伸機によりシート温度151℃で4.4倍に縦延伸し、続いてテンター横延伸機により158℃で10.5倍に横延伸した後、雰囲気温度175℃で10秒間熱処理しながら、TD方向に8%の弛緩処理を行い、厚み20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得て、得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムの片面にコロナ処理を施し、次いで、上記二軸延伸ポリプロピレンフィルムのコロナ処理面に、下記コート液Aをバーコーターにより乾燥後のコート層厚みが3μmとなるようにコートし、乾燥硬化することにより得られた、積層フィルム。 <コート液A> テトラエトキシシラン30重量部、エタノール20重量部、2N塩酸1重量部、水4重量部を混合し、室温で1時間攪拌し、次いで、γ-グリシドキシトリメトキシシラン3重量部、ソアノール20L(日本合成化学社製エチレン-ビニルアルコール水/IPA溶液)40重量部、N,N-ジメチルベンジルアミン0.15重量部を加えて攪拌し、コート液Aとした。」(以下、「甲2A発明」という。) イ 本件発明1について (ア)本件発明1と甲2A発明との対比 本件発明1と甲2A発明とを対比すると、甲2A発明における「樹脂A(アンチブロッキング剤を0.05重量部含有するプロピレン単独重合体、DSCピークトップ165℃、13C-NMRにより決定したペンタッド分率0.985)」は、本件発明1における「DSC測定による融点が162℃超え180℃以下の範囲にある第2プロピレン系重合体」に相当し、かつ「前記第2プロピレン系重合体のアイソタクチックメソペンタッド分率(mmmm)が96.0%以上である、」を満たしている。 甲2A発明における「樹脂A(・・・プロピレン単独重合体・・・)を、Tダイ押出機を用いて280℃で加熱溶融下シート状に押出し、チルロール上で冷却固化した後、加熱ロール延伸機によりシート温度151℃で4.4倍に縦延伸し、続いてテンター横延伸機により158℃で10.5倍に横延伸した後、雰囲気温度175℃で10秒間熱処理しながら、TD方向に8%の弛緩処理を行い、厚み20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得て、」及び「得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムの片面にコロナ処理を施し、次いで、上記二軸延伸ポリプロピレンフィルムのコロナ処理面に、下記コート液Aをバーコーターにより乾燥後のコート層厚みが3μmとなるようにコートし、乾燥硬化することにより得られた、」という特定事項からみて、甲2A発明における「積層フィルム」は、本件発明1における「フィルム」に相当するとともに、本件発明1と「プロピレン系重合体を含む二軸延伸フィルム層を備え、」る点で一致し、また、甲2A発明における「厚み20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム」と「乾燥後のコート層厚みが3μm」という厚みの比率は、本件発明1における「フィルムの全体の厚みに対する前記二軸延伸フィルム層の厚みの割合が50%以上99%以下であり、」との要件を満たしている。 そうすると、両者は、 「フィルムであって、 プロピレン系重合体を含む二軸延伸フィルム層を備え、 前記プロピレン系重合体は、DSC測定による融点が162℃超え180℃以下の範囲にある第2プロピレン系重合体、を含み、 前記フィルムの全体の厚みに対する前記二軸延伸フィルム層の厚みの割合が50%以上99%以下であり、 前記第2プロピレン系重合体のアイソタクチックメソペンタッド分率(mmmm)が96.0%以上である、フィルム。」 の点で一致し、 相違点甲2A-1:本件発明1は「食品を包装するための食品用包装フィルム」と特定するのに対し、甲2A発明はそのように特定されない点 相違点甲2A-2:本件発明1は「DSC測定による融点が137℃以上162℃以下の範囲にある第1プロピレン系重合体(ただし、高立体規則性プロピレン系重合体を除く)」を含むと特定するのに対し、甲2A発明はそのように特定されない点 で相違する。 そこで、事案に鑑み、相違点甲2A-2について検討する。 (イ)相違点甲2A-2について 甲2Aの[0008](摘記2A-2)には、甲2A発明の課題が「OPPフィルムに高分子ガスバリア層を積層した積層フィルムにおいて、OPPフィルムを基材として使用することによる外観・仕上がり不良の問題、該不良による酸素バリア性の低下の問題、さらには、製袋時の熱融着によるシワの発生による包装袋としてのガスバリア性が低下する問題を全て解消した、優れた特性を有する積層フィルムを提供すること」にあることが記載されており、その解決手段に関し、[0011](摘記2A-2)には、「基材フィルムとして使用されるOPPフィルムは、二軸延伸によりポリプロピレン分子が配向した構造をなしているため、優れた機械的強度を有するとともに、特に水蒸気に対するガスバリア性に優れ」ると記載され、[0019]~[0020](摘記2A-3)には、「上記ポリプロピレン樹脂は、・・・高結晶のポリプロピレン樹脂・・・を使用することがより好ましい。上記ペンタッド分率が0.950より小さい場合は、OPPフィルムの融点が低下し、熱収縮率が高くなったり、防湿性が低下する等の問題が起こりやすくなる。」と記載されている。よって、甲2A発明の基材フィルムを構成するポリプロピレン樹脂としては、高結晶であり、OPPフィルムの融点を低下させないものが好ましいものとされており、低融点のポリプロピレン樹脂を共存させることは課題解決を妨げることにつながるから、当業者は、甲2A発明において、相違点甲2A-2に係る「融点が137℃以上162℃以下の範囲にある第1プロピレン系重合体」を用いることを動機付けられない。 また、上記(2)イ(イ)bに記載したとおり、甲2Aには、本件発明における「水蒸気バリア性向上および厚みムラ抑制の両方をバランス良く向上させるという観点」(本件明細書の[0007])は記載されておらず、さらに、他の全ての証拠の記載を参照しても、甲2A発明において「DSC測定による融点が137℃以上162℃以下の範囲にある第1プロピレン系重合体」を用いることによって「水蒸気バリア性向上および厚みムラ抑制の両方をバランス良く向上させる」ことができることは記載も示唆もされていない。よって、甲2A発明において上記観点から相違点甲2A-2に係る低融点のポリプロピレン樹脂を採用することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 なお、甲2Aの[0133]の[表1](摘記2A-6)には、「樹脂D」として、DSCピークトップが138℃の「プロピレン-エチレンランダム共重合体」が記載されているが、当該樹脂Dは、無水マレイン酸変性ポリプロピレンとの混合樹脂とした上で、基材フィルム(樹脂A又はB)とは別の層として積層するために用いられているから(実施例25~30等。摘記を省略した。)、甲2A発明において相違点甲2A-2に係る低融点のポリプロピレン樹脂を採用する動機とはならないものである。 (ウ)本件発明1の効果について そして、他の相違点も合わせ持つ本件発明1の発明特定事項により「厚みムラが小さく、水蒸気バリア性が向上した食品用包装フィルムを提供できる」(本件明細書の[0012])という効果が得られることは、甲2Aの記載から予測し得ることではなく、さらに他の全ての証拠の記載を参酌しても、本件発明1の発明特定事項に基づいて上記効果が得られることを当業者が予測し得たとはいえない。 (エ)申立人Aの主張について 申立人Aは、申立書Aの14~15頁において、甲2Aに「OPPフィルムを構成するポリプロピレン樹脂としてアイソタクチックペンタッド分率が高い(立体規則性が高い)ものを使用すると、OPPフィルムの水蒸気バリア性を向上できることが記載され(段落「0020」等参照)」ていることを根拠の一つとした上で、上記(2)イ(イ)aに記載したように、本件発明1の課題は周知であるから、甲1A~甲4Aの二軸延伸シート又は二軸延伸フィルムにおいて、当該シート又はフィルムの水蒸気バリア性向上および厚みムラ抑制の両方をバランスよく向上させる目的で、アイソタクチックメソペンタッド分率の高いプロピレン系樹脂(高結晶性プロピレン系重合体に相当)を使用することは、当業者の通常の創作能力の発揮の範囲内でなされたものである旨を主張している。 しかし、上記(2)イ(イ)b及びcに記載したとおり、甲2Aを含む全ての証拠の記載を参酌しても、本件特許に係る出願の出願日当時において、「水蒸気バリア性向上および厚みムラ抑制の両方をバランスよく向上させる」という課題がOPPフィルムの技術分野において周知であったとは認められないから、本件発明1の課題が周知であることを前提とした申立人Aの主張を採用することはできない。そして、甲2A発明において「DSC測定による融点が137℃以上162℃以下の範囲にある第1プロピレン系重合体(ただし、高立体規則性プロピレン系重合体を除く)」を使用すること(相違点甲2A-2)は、上記(イ)及び(ウ)に記載したとおり、当業者の通常の創作能力の発揮の範囲内でなされたものであるとも、単なる設計事項にすぎないともいえない。 (オ)本件発明1についてのまとめ 以上のことから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲2A発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明2~12について 本件発明2~12は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記イで検討した本件発明1と同様の理由により、本件発明2~12は、いずれも甲2A発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 エ 甲2Aに基づく進歩性欠如についてのまとめ 以上まとめると、本件発明1~12は、いずれも甲2Aに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 よって、理由3Aのうち、甲2Aに基づく進歩性欠如の理由により本件発明1~12についての特許を取り消すことはできない。 (4)甲3Aに基づく進歩性欠如について ア 甲3Aに記載された発明 甲3Aのp.450「はじめに」(摘記3A-1)には、「少量のサンプルと短時間でかつ簡便に,延伸性や構造変化を観察しながら,評価する方法について,延伸用樹脂として最も広く使用されているPPを中心に,例を挙げて紹介」すると記載されており、p.453右欄15行~p.454左欄6行(摘記3A-3)には「結晶化速度を抑制できる超低立体規則性PP(LMPP)を通常のPPにブレンドした系での二軸延伸の検討結果を述べる.標準サンプルに融点Tmの低い少量の超低立体規則性PP,および超立体規則かつ超低分子量サンプルを少量添加してPPの結晶化速度を遅くした系などのサンプル(表1)を用いて,縦延伸後のTD延伸過程の高次構造変化を観察し,定量的な延伸性への影響を測定した.」と記載されており、p.454左欄の表1及びその注釈並びに図11(摘記3A-4)を参照すると、ブレンドサンプルとして、二軸延伸PPグレードA(i-PP、Tm161℃)に、L1(標準LMPP、Tm70℃)、L2(超低立体規則性LMPP、Tm60℃)又はL3(高分子量LMPP、Tm70℃)を5wt%ブレンドした系(それぞれA/L1、A/L2、A/L3と称する)を、厚み500μmの原反に押出成形により製膜し、面倍率35倍に二軸延伸したことが読み取れる。また、p.454左欄下から4行~右欄1行(摘記3A-3)における「DSC測定結果でPPにLMPPをブレンドすると融点は一定のまま結晶化度を抑制」等の記載を参酌すると、甲3Aに記載された融点はDSC測定によるものと解される。 そうすると、甲3Aには、上記二軸延伸の検討結果に基づいて以下の発明が記載されている。 「二軸延伸PPグレードA(i-PP、DSCによるTm161℃)に、超低立体規則性PP(LMPP)であるL1(標準LMPP、DSCによるTm70℃)、L2(超低立体規則性LMPP、DSCによるTm60℃)又はL3(高分子量LMPP、DSCによるTm70℃)を5wt%ブレンドしたブレンドサンプルA/L1、A/L2又はA/L3を、厚み500μmの原反に押出成形により製膜し、次いで、面倍率35倍に二軸延伸することにより得られた二軸延伸フィルム。」(以下、「甲3A発明」という。) イ 本件発明1について (ア)本件発明1と甲3A発明との対比 本件発明1と甲3A発明とを対比すると、甲3A発明における「二軸延伸PPグレードA(i-PP、DSCによるTm161℃)」は、本件発明1における「DSC測定による融点が137℃以上162℃以下の範囲にある第1プロピレン系重合体」に相当する。 甲3A発明における「二軸延伸PPグレードA(i-PP、DSCによるTm161℃)に、超低立体規則性PP(LMPP)であるL1(標準LMPP、DSCによるTm70℃)、L2(超低立体規則性LMPP、DSCによるTm60℃)又はL3(高分子量LMPP、DSCによるTm70℃)を5wt%ブレンドしたブレンドサンプルA/L1、A/L2又はA/L3を、厚み500μmの原反に押出成形により製膜し、次いで、面倍率35倍に二軸延伸する」という特定事項からみて、甲3A発明における「二軸延伸フィルム」は、本件発明1における「フィルム」に相当するとともに、本件発明1と「プロピレン系重合体を含む二軸延伸フィルム層を備え、」る点で一致する。 そうすると、両者は、 「フィルムであって、 プロピレン系重合体を含む二軸延伸フィルム層を備え、 前記プロピレン系重合体は、DSC測定による融点が137℃以上162℃以下の範囲にある第1プロピレン系重合体、を含む、フィルム。」 の点で一致し、 相違点甲3A-1:本件発明1は「食品を包装するための食品用包装フィルム」と特定するのに対し、甲3A発明はそのように特定されない点 相違点甲3A-2:本件発明1は、第1プロピレン系重合体を「(ただし、高立体規則性プロピレン系重合体を除く)」と特定するのに対し、甲3A発明においてはそのように特定されない点 相違点甲3A-3:本件発明1は「DSC測定による融点が162℃超え180℃以下の範囲にある第2プロピレン系重合体」を含み、「前記第2プロピレン系重合体のアイソタクチックメソペンタッド分率(mmmm)が96.0%以上である、」と特定するのに対し、甲3A発明はそのように特定されない点 相違点甲3A-4:本件発明1は「前記二軸延伸フィルム層に含まれる前記第1プロピレン系重合体および前記第2プロピレン系重合体の合計量を100質量%としたとき、前記二軸延伸フィルム層中の前記第2プロピレン系重合体の含有量が1質量%以上85質量%以下であり、」と特定するのに対し、甲3A発明はそのように特定されない点 相違点甲3A-5:本件発明1は「前記食品用包装フィルムの全体の厚みに対する前記二軸延伸フィルム層の厚みの割合が50%以上99%以下であり、」と特定するのに対し、甲3A発明はそのように特定されない点 で相違する。 そこで、事案に鑑み、相違点甲3A-3について検討する。 (イ)相違点甲3A-3について 甲3Aのp.451左欄下から4行~p.452右欄2行(摘記3A-2)には、モデルを利用したフィルム厚みの偏肉を予測した結果について記載されており、PPの場合、低立体規則性や低エチレンランダム共重合PPは結晶化を乱す方向に作用し、偏肉精度が標準サンプルより良好になる結果が得られること、低立体規則性PPや微量エチレン共重合PPは高立体規則性PPに比較して結晶化速度を遅くし、初期の降伏値を下げ、低温融解成分が増加し、組成分布が広がり、延伸可能な温度領域が広がること、よって、良い延伸条件として、広い分子量分布、低立体規則性か低エチレン量の共重合、広い組成分布等が挙げられることが記載されている。これらの記載に接した当業者は、高融点かつ高結晶化度のポリプロピレン(高立体規則性PP)は、偏肉精度の点では低立体規則性PPや微量エチレン共重合PPより良くないものと理解するから、甲3A発明におけるポリプロピレンとして、相違点甲3A-3に係る「DSC測定による融点が162℃超え180℃以下の範囲にある第2プロピレン系重合体」であって「前記第2プロピレン系重合体のアイソタクチックメソペンタッド分率(mmmm)が96.0%以上である」成分を追加的に含有させることを動機付けられることはない。 また、上記(2)イ(イ)bに記載したとおり、甲3Aには、本件発明における「水蒸気バリア性向上および厚みムラ抑制の両方をバランス良く向上させるという観点」(本件明細書の[0007])は記載されておらず、さらに、他の全ての証拠の記載を参照しても、甲3A発明において「DSC測定による融点が162℃超え180℃以下の範囲にある第2プロピレン系重合体」であって「前記第2プロピレン系重合体のアイソタクチックメソペンタッド分率(mmmm)が96.0%以上である」成分を含有させることによって「水蒸気バリア性向上および厚みムラ抑制の両方をバランス良く向上させる」ことができることは記載も示唆もされていない。よって、甲3A発明において上記観点から相違点甲3A-3に係る高融点、高ペンタッド分率のポリプロピレンを採用することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 (ウ)本件発明1の効果について そして、他の相違点も合わせ持つ本件発明1の発明特定事項により「厚みムラが小さく、水蒸気バリア性が向上した食品用包装フィルムを提供できる」(本件明細書の[0012])という効果が得られることは、甲3Aの記載から予測し得ることではなく、さらに他の全ての証拠の記載を参酌しても、本件発明1の発明特定事項に基づいて上記効果が得られることを当業者が予測し得たとはいえない。 (エ)申立人Aの主張について 申立人Aは、申立書Aの14~15頁において、甲3Aに「二軸延伸PPフィルムを構成するPPの立体規則性が延伸性及び偏肉精度(厚みムラ)に影響することが記載され」ており、「[図8]には、mmmm/NMRが大きい(立体規則性が高い)PPを使用すると、二軸延伸PPフィルムの厚み精度(偏肉精度)が不良になることが記載されている」ことを根拠の一つとした上で、上記(2)イ(イ)aに記載したように、本件発明1の課題は周知であるから、甲1A~甲4Aの二軸延伸シート又は二軸延伸フィルムにおいて、当該シート又はフィルムの水蒸気バリア性向上および厚みムラ抑制の両方をバランスよく向上させる目的で、アイソタクチックメソペンタッド分率の高いプロピレン系樹脂(高結晶性プロピレン系重合体に相当)を使用することは、当業者の通常の創作能力の発揮の範囲内でなされたものである旨を主張している。 しかし、上記(2)イ(イ)b及びcに記載したとおり、甲3Aを含む全ての証拠の記載を参酌しても、本件特許に係る出願の出願日当時において、「水蒸気バリア性向上および厚みムラ抑制の両方をバランスよく向上させる」という課題がOPPフィルムの技術分野において周知であったとは認められないから、本件発明1の課題が周知であることを前提とした申立人Aの主張を採用することはできない。そして、甲3A発明において「DSC測定による融点が162℃超え180℃以下の範囲にある第2プロピレン系重合体」であって「前記第2プロピレン系重合体のアイソタクチックメソペンタッド分率(mmmm)が96.0%以上である」成分を含有させること(相違点甲3A-3)は、上記(イ)及び(ウ)に記載したとおり、当業者の通常の創作能力の発揮の範囲内でなされたものであるとも、単なる設計事項にすぎないともいえない。 (オ)本件発明1についてのまとめ 以上のことから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲3A発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明2~12について 本件発明2~12は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記イで検討した本件発明1と同様の理由により、本件発明2~12は、いずれも甲3A発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 エ 甲3Aに基づく進歩性欠如についてのまとめ 以上まとめると、本件発明1~12は、いずれも甲3Aに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 よって、理由3Aのうち、甲3Aに基づく進歩性欠如の理由により本件発明1~12についての特許を取り消すことはできない。 (5)甲4Aに基づく進歩性欠如について ア 甲4Aに記載された発明 甲4Aのp.283左欄「1.緒言」(摘記4A-1)には、ポリプロピレン(PP)について、「生産時にフィルムの破断や厚みムラ(偏肉精度)といった問題が発生する。そこで、低立体規則性PP(以下LMPP)の優れた延伸性改良効果に着目し、これをPPに添加することで延伸性の向上効果を期待した。」と記載されており、p.283左欄~p.284左欄「2.実験」(摘記4A-2)及びp.284左欄「3.結果と考察」の「3.1 延伸可能温度幅と偏肉精度標準偏差」(摘記4A-3)には、「(株)プライムポリマー製のi-PPを基準サンプルF300SPとして、基準LMPPであるS901、超低立体規則性LMPPであるX901L、低立体規則性で低分子量であるS400をF300SPにそれぞれ5wt%ブレンドし、T-ダイ法により厚み500μmの原反F300SP/S901、F300SP/X901L、F300SP/S400を製膜した。以下、F300SPをA、S901をB、X901LをC、S400をDとし、それぞれのLMPPブレンドサンプルをAB、AC、ADとする。」こと、原反から試験片を切り出し、二軸延伸機を用いて「延伸速度100mm/sec、延伸倍率縦(MD)5×横(TD)5.84倍、予熱時間2min」の条件で二軸延伸した結果、「基準i-PPのAに比べ、LMPPをブレンドしたサンプルは延伸可能温度幅が広くなり、延伸可能な条件が広いことが判明した。また、AB及びACは大幅に偏肉精度が改良された。」ことが記載されている。さらに、p.283右欄のTable1には、F300SPのTmは160℃、S901のTmは80℃、X901LのTmは45℃であることが記載されている。 そうすると、甲4Aには、ブレンドサンプルAB及びACを用いた二軸延伸フィルムの実験結果に基づいて以下の発明が記載されている。 「(株)プライムポリマー製i-PPを基準サンプルF300SP(Tm160℃、Aと表記)として、基準LMPP(低立体規則性PP)であるS901(Tm80℃、Bと表記)又は超低立体規則性LMPPであるX901L(Tm45℃、Cと表記)をそれぞれ5wt%ブレンドし(それぞれブレンドサンプルAB、ACと表記)、T-ダイ法により厚み500μmの原反を製膜し、延伸倍率縦(MD)5×横(TD)5.84倍に二軸延伸することにより得られた、二軸延伸フィルム。」(以下、「甲4A発明」という。) なお、甲4Aには、Tm(融点)の測定方法は記載されていないが、例えば甲1A~甲3Aに記載されているように、PPの融点測定方法としてDSC測定による方法が一般的であるから、以下において、甲4A発明におけるTmはDSC測定によるものと仮定して検討を行った。 イ 本件発明1について (ア)本件発明1と甲4A発明との対比 本件発明1と甲4A発明とを対比すると、甲4A発明における「(株)プライムポリマー製i-PPを基準サンプルF300SP(Tm160℃、Aと表記)」は、本件発明1における「DSC測定による融点が137℃以上162℃以下の範囲にある第1プロピレン系重合体」に相当する。 甲4A発明における「(株)プライムポリマー製i-PPを基準サンプルF300SP(Tm160℃、Aと表記)として、基準LMPP(低立体規則性PP)であるS901(Tm80℃、Bと表記)又は超低立体規則性LMPPであるX901L(Tm45℃、Cと表記)をそれぞれ5wt%ブレンドし(それぞれブレンドサンプルAB、ACと表記)、T-ダイ法により厚み500μmの原反を製膜し、延伸倍率縦(MD)5×横(TD)5.84倍に二軸延伸する」という特定事項からみて、甲4A発明における「二軸延伸フィルム」は、本件発明1における「フィルム」に相当するとともに、本件発明1と「プロピレン系重合体を含む二軸延伸フィルム層を備え、」る点で一致する。 そうすると、両者は、 「フィルムであって、 プロピレン系重合体を含む二軸延伸フィルム層を備え、 前記プロピレン系重合体は、DSC測定による融点が137℃以上162℃以下の範囲にある第1プロピレン系重合体、を含む、フィルム。」 の点で一致し、 相違点甲4A-1:本件発明1は「食品を包装するための食品用包装フィルム」と特定するのに対し、甲4A発明はそのように特定されない点 相違点甲4A-2:本件発明1は、第1プロピレン系重合体を「(ただし、高立体規則性プロピレン系重合体を除く)」と特定するのに対し、甲4A発明においてはそのように特定されない点 相違点甲4A-3:本件発明1は「DSC測定による融点が162℃超え180℃以下の範囲にある第2プロピレン系重合体」を含み、「前記第2プロピレン系重合体のアイソタクチックメソペンタッド分率(mmmm)が96.0%以上である、」と特定するのに対し、甲4A発明はそのように特定されない点 相違点甲4A-4:本件発明1は「前記二軸延伸フィルム層に含まれる前記第1プロピレン系重合体および前記第2プロピレン系重合体の合計量を100質量%としたとき、前記二軸延伸フィルム層中の前記第2プロピレン系重合体の含有量が1質量%以上85質量%以下であり、」と特定するのに対し、甲4A発明はそのように特定されない点 相違点甲4A-5:本件発明1は「前記食品用包装フィルムの全体の厚みに対する前記二軸延伸フィルム層の厚みの割合が50%以上99%以下であり、」と特定するのに対し、甲4A発明はそのように特定されない点 で相違する。 そこで、事案に鑑み、相違点甲4A-3について検討する。 (イ)相違点甲4A-3について 甲4Aのp.283左欄「1.緒言」(摘記4A-1)には、ポリプロピレン(PP)の生産時にフィルムの破断や厚みムラ(偏肉精度)といった問題が発生するため、「低立体規則性PP(以下LMPP)の優れた延伸性改良効果に着目し、これをPPに添加することで延伸性の向上効果を期待した。」と記載され、p.284左欄「3.結果と考察」の「3.1 延伸可能温度幅と偏肉精度標準偏差」(摘記4A-3)には、甲4A発明に係る実験結果の考察として、「基準i-PPのAに比べ、LMPPをブレンドしたサンプルは延伸可能温度幅が広くなり、延伸可能な条件が広いことが判明した。また、AB及びACは大幅に偏肉精度が改良された。」と記載され、p.284右欄「4.結言」(摘記4A-4)には、「LMPPをPPにブレンドすることで結晶化度が抑制されたため、延伸性が良好になったといえる。」と記載されている。これらの記載に接した当業者は、基準i-PPのA(Tm160℃)にブレンドする成分として、その結晶化度を抑制する成分を選択することにより、延伸時の偏肉精度を改良することができると理解するから、甲4A発明において、基準i-PPのA(Tm160℃)より高融点かつ高結晶化度である「DSC測定による融点が162℃超え180℃以下の範囲にある第2プロピレン系重合体」であって「前記第2プロピレン系重合体のアイソタクチックメソペンタッド分率(mmmm)が96.0%以上である」ポリプロピレンを追加的に含有させることを動機付けられることはない。 また、上記(2)イ(イ)bに記載したとおり、甲4Aには、本件発明における「水蒸気バリア性向上および厚みムラ抑制の両方をバランス良く向上させるという観点」(本件明細書の[0007])は記載されておらず、さらに、他の全ての証拠の記載を参照しても、甲4A発明において「DSC測定による融点が162℃超え180℃以下の範囲にある第2プロピレン系重合体」であって「前記第2プロピレン系重合体のアイソタクチックメソペンタッド分率(mmmm)が96.0%以上である」成分を含有させることによって「水蒸気バリア性向上および厚みムラ抑制の両方をバランス良く向上させる」ことができることは記載も示唆もされていない。よって、甲4A発明において上記観点から相違点甲4A-3に係る高融点、高ペンタッド分率のポリプロピレンを採用することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 (ウ)本件発明1の効果について そして、他の相違点も合わせ持つ本件発明1の発明特定事項により「厚みムラが小さく、水蒸気バリア性が向上した食品用包装フィルムを提供できる」(本件明細書の[0012])という効果が得られることは、甲4Aの記載から予測し得ることではなく、さらに他の全ての証拠の記載を参酌しても、本件発明1の発明特定事項に基づいて上記効果が得られることを当業者が予測し得たとはいえない。 (エ)申立人Aの主張について 申立人Aは、申立書Aの14~15頁において、甲4Aに「二軸延伸PPフィルムを構成するPPの立体規則性が延伸性及び偏肉精度(厚みムラ)に影響することが記載され」ていることを根拠の一つとした上で、上記(2)イ(イ)aに記載したように、本件発明1の課題は周知であるから、甲1A~甲4Aの二軸延伸シート又は二軸延伸フィルムにおいて、当該シート又はフィルムの水蒸気バリア性向上および厚みムラ抑制の両方をバランスよく向上させる目的で、アイソタクチックメソペンタッド分率の高いプロピレン系樹脂(高結晶性プロピレン系重合体に相当)を使用することは、当業者の通常の創作能力の発揮の範囲内でなされたものである旨を主張している。 しかし、上記(2)イ(イ)b及びcに記載したとおり、甲4Aを含む全ての証拠の記載を参酌しても、本件特許に係る出願の出願日当時において、「水蒸気バリア性向上および厚みムラ抑制の両方をバランスよく向上させる」という課題がOPPフィルムの技術分野において周知であったとは認められないから、本件発明1の課題が周知であることを前提とした申立人Aの主張を採用することはできない。そして、甲4A発明において「DSC測定による融点が162℃超え180℃以下の範囲にある第2プロピレン系重合体」であって「前記第2プロピレン系重合体のアイソタクチックメソペンタッド分率(mmmm)が96.0%以上である」成分を含有させること(相違点甲4A-3)は、上記(イ)及び(ウ)に記載したとおり、当業者の通常の創作能力の発揮の範囲内でなされたものであるとも、単なる設計事項にすぎないともいえない。 (オ)本件発明1についてのまとめ 以上のことから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲4A発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明2~12について 本件発明2~12は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記イで検討した本件発明1と同様の理由により、本件発明2~12は、いずれも甲4A発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 エ 甲4Aに基づく進歩性欠如についてのまとめ 以上まとめると、本件発明1~12は、いずれも甲4Aに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 よって、理由3Aのうち、甲4Aに基づく進歩性欠如の理由により本件発明1~12についての特許を取り消すことはできない。 (6)理由3A(甲1A~甲4Aに基づく進歩性欠如)についてのまとめ 以上まとめると、本件発明1~12は、いずれも甲1A~甲4Aに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 よって、理由3A(甲1A~甲4Aに基づく進歩性欠如)により本件発明1~12についての特許を取り消すことはできない。 3.理由2B(甲2Bに基づく進歩性欠如)について (1)甲2Bに記載された事項 甲2Bには以下の事項が記載されている。 (2B-1)「[請求項1] 融点(Tm2)が120~150℃の範囲にあるプロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体(A-1)を10~70質量%、融点(Tm3)が155~170℃の範囲にあるプロピレン重合体(A-2)を10~40質量%、極限粘度[η]が2.0~10.0dl/gであり、プロピレン由来の構成単位の含有量が60-90質量%(プロピレン由来の構成単位とαオレフィン由来の構成単位との合計を100質量%とする)であるプロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体(B-1)を1~25質量%、及び密度が0.865~0.910g/cm3の範囲にあるエチレンと炭素数が4以上のα‐オレフィンとのランダム共重合体であるエチレン・α‐オレフィンランダム共重合体(C)を5~30質量%含む〔(A-1)+(A-2)+(B-1)+(C)=100質量%とする。〕ことを特徴とするプロピレン共重合体組成物(E-2)からなる二軸延伸フィルム。 [請求項2] 請求項1記載の二軸延伸フィルムの片面に、基材層が積層されてなる多層二軸延伸フィルム。 [請求項3] 基材層が、アルミニウム、紙、ポリエステル樹脂のフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアミドフィルム、エチレン・ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリビニルクロライドフィルム、及びポリビニリデンクロライドフィルムから選ばれる基材層である請求項2記載の多層二軸延伸フィルム。 [請求項4] 二軸延伸フィルムを熱融着層に用いてなる被加熱・殺菌包装物の包装用であることを特徴とする請求項2または3記載の多層二軸延伸フィルム。」 (2B-2)「[発明が解決しようとする課題] [0011] 本発明は、剛性などの機械特性、透明性に優れ、レトルト殺菌処理などの熱処理を行ってもヒートシール強度の低下が少なく、熱処理後の低温での落下破袋強度に特に優れ、耐ブロッキング性をも有する二軸延伸フィルムを得るに好適なプロピレン系重合体組成物、及び、当該性能を備えた二軸延伸フィルムを得ることを目的とする。」 (2B-3)「[0058] <二軸延伸フィルム> 本発明の二軸延伸フィルムは、前記プロピレン共重合体組成物(E-2)または二軸延伸してなるフィルムであり、通常、厚さが5μm以上、好ましくは5~55μm、より好ましくは10~50μmの範囲にある。厚さが5μm未満のフィルムは、熱融着層に用いた場合に、落袋強度が不十分な包装材料となる虞がある。 [0059] 本発明の二軸延伸フィルムの厚さの上限は、特に限定はされないが、50μmを超えるフィルムは、そのヒートシール性能と破袋強度の性能を維持し、且つ薄肉であるというコスト上のメリットが薄れる場合がある。 [0060] 本発明の二軸延伸フィルムは、用途に応じて、その厚さが50~100μmと厚いフィルムも利用可能である。 本発明の二軸延伸フィルムは、前記プロピレン共重合体組成物(E-2)からなる限り、単層であっても二層以上の多層であってもよい。 [0061] 例えば、二軸延伸フィルムを三層構成とする場合は、通常、内層の厚さが全体の厚さの50~99パーセント、両表面層の厚さががそれぞれ全体の0.5~25パーセントの厚さとする。また、表面層の厚さは、0.5~15μm、特に1~10μmであることが好ましい。 [0062] このように、二軸延伸フィルムを多層とした場合は品質管理が容易で最終的な収率も高くなりコスト上のメリットがある。 また、本発明の二軸延伸フィルムの表面は、基材層との接着性を改良するために、必要に応じて片面あるいは両面をコロナ処理、火炎処理等の表面処理をしてもよい。」 (2B-4)「[0066] <多層二軸延伸フィルム> 本発明の多層二軸延伸フィルムは、前記二軸延伸フィルムの片面に基材層を積層してなるフィルムである。 [0067] 基材層としては、シート状、フィルム状、トレーあるいは容器状のもので包装材料として使用できるものあれば、特に限定されない。基材層の例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートに代表されるポリエステルからなるフィルム、ポリカーボネートフィルム、ナイロン6、ナイロン66等からなるポリアミドフィルム、エチレン・ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、およびポリプロピレン等のポリオレフィンからなるフィルム等の熱可塑性樹脂フィルム、あるいはそれら熱可塑性樹脂からなるシート、更にはシートを熱成形したトレーあるいはカップ状の容器、アルミニウム箔、紙等から構成されるそれら形状物が挙げられる。」 (2B-5)「[実施例] [0077] 次に実施例を通して本発明をより詳細に説明するが、本発明はそれらの実施例によって何ら制限されるものではない。 なお、重合体、組成物の性状を示す物性値およびフィルムを評価するための物性値は、次に記す試験方法によって求めた。 ・・・ [0082] <メルトフローレート(MFR)> ASTM D-1238に準拠して、230℃、荷重2.16kgの条件で測定した。 <融点(Tm)> 重合体の融点(Tm)(℃)は、JIS K 7121に準拠し、示差走査熱量計〔DSC、パーキンエルマー社製(Diamond DSC)〕を用いて下記測定条件にて測定を行うことにより求めた。なお、下記測定条件で測定を行った際の、第3stepにおける吸熱ピークの頂点を融点(Tm)と定義した。吸熱ピークが複数ある場合はピークの高さが最大となる吸熱ピークの頂点を融点(Tm)とした。 また、組成物の融解ピークは、下記条件で測定を行った際の複数の吸熱ピークを融解ピーク(Tp)とした。」 (2B-6)「[0095] ・・・ 本発明の実施例および比較例で用いた重合体を以下に示す。 [0096] (1)プロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体(A-1) プロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体(A-1)として、固体状Ti触媒により製造したプロピレン・エチレン・1-ブテンランダム共重合体(a-1-4)〔MFR:32g/10分、エチレン/1-ブテンの含有量:2.3/2.0質量%、DSCで測定した融点(Tm2):137℃〕、固体状Ti触媒により製造したプロピレン・エチレンランダム共重合体(a-1-1)〔MFR:2.3g/10分、エチレンから導かれる単位の含有量:2.6質量%、融点:145℃〕、および、プロピレン・エチレンランダム共重合体(a-1-2)〔MFR:1.2g/10分、エチレンから導かれる単位の含有量:4.0質量%、融点:139℃〕を用いた。 [0097] (2)プロピレン重合体(A-2) プロピレン重合体(A-2)として、固体状Ti触媒で製造したプロピレン単独重合体(a-2-2)〔MFR:7g/10分、融点(Tm3):163℃〕を用いた。 [0098] (3)プロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体(B-1) プロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体(B-1)として、固体状Ti触媒により製造したプロピレン・エチレンランダム共重合体(b-1-1)〔極限粘度[η]:2.7dl/g、エチレンから導かれる単位の含有量:32質量%,融点:120℃未満に存在〕を用いた。 [0099] (4)エチレン・α‐オレフィンランダム共重合体(C) エチレン・α‐オレフィンランダム共重合体(C)として、シングルサイト触媒により製造したエチレン・1-ブテンランダム共重合体(c-1)〔密度:0.880g/cm3、MFR:0.9g/10分、エチレンから導かれる単位の含有量:79質量%(88.3モル%)、融点:80℃以下に存在〕を用いた。」 (2B-7)「[0102] 〔実施例1〕 〈プロピレン系共重合体組成物(e-5)の製造〉 プロピレン・エチレン・1-ブテンランダム共重合体(a-1-4):52質量%、プロピレン単独重合体(a-2-2):20質量%、プロピレン・エチレンランダム共重合体(b-1-1):13質量%、及び、エチレン・1-ブテンランダム共重合体(c-1):15質量%〔(a-1-4)+(a-2-2)+(b-1-1)+(c-1)=100質量%〕の割合で秤量した後、二軸押出し機を用いて220℃の樹脂温度で溶融混練してプロピレン共重合体組成物(e-5)を得た。得られたプロピレン共重合体組成物(e-5)のMFRは7g/10分であった。 [0103] なお、プロピレン・エチレン・1-ブテンランダム共重合体(a-1-4):52質量部、プロピレン単独重合体(a-2-2):20質量部、合計72質量部を、二軸押出し機にて前記と同様にして溶融混練して得た組成物のMFR(230℃)は21.0g/10分であった。 [0104] また、プロピレン・エチレンランダム共重合体(b-1-1):13質量部、エチレン・1-ブテンランダム共重合体(c-1):15質量部、合計28質量部を前記と同様にして溶融混練して得た組成物のMFR(230℃)は0.6g/10分であった。 [0105] 得られたプロピレン共重合体組成物(e-5)のMFRは7g/10分であり、149.8℃に融解ピーク(Tp2)及び160.6℃に融解ピーク(Tp3)を有していた。 [0106] 〈二軸延伸フィルム(熱融着層)の製造〉 上記プロピレン共重合体組成物(e-5)を用いて、二軸延伸し、熱融着層を得た。用いたプロピレン共重合体組成物(e-5)には、耐熱安定剤としてテトラキス[メチレンー3-(3’、5’―ジーt―ブチルー4’ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(日本チバガイキー社製品 製品名イルガノックス1010)1000ppm及びステアリン酸カルシウム(日本油脂製)1000ppmを配合した。 [0107] なお、熱融着層は、三層構成とし、上記プロピレン共重合体組成物(e-5)を用い、表面層/内層/表面層の押出量比が(1/10/1)になるよう各々スクリュー押出機を用いて溶融押出しマルチマニホールドタイプT-ダイを用いて押出し、冷却ロール上にて急冷し厚さ約1.5mmの多層シートを得た。この多層シートを120℃で加熱し、多層シートの流れ方向(縦方向)に5倍延伸した。この5倍延伸した多層シートを160℃で加熱し流れ方向に対して直交する方向(横方向)に10倍延伸して、内層の厚さ:34μm、各両表面層の厚さ:3μm(合計厚さ:40μmの三層多層フィルムからなる熱融着を得た。熱融着層の基材層と積層する表面層には、コロナ処理を施した。 [0108] 〈積層フィルムの製造〉 二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:12μm)、二軸延伸ポリアミドフィルム(厚さ:15μm)および二軸延伸フィルム(熱融着層)を用意し、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムと二軸延伸ポリアミドフィルムを、ラミネート機を使用して貼り合わせた後、二軸延伸フィルムのコロナ処理面を、二軸延伸ポリアミドフィルム側に、ウレタン系接着剤を用いて、ドライラミネーションして貼り合わせ、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム/二軸延伸ポリアミドフィルム/二軸延伸フィルム(熱融着層)からなる積層フィルムを得た。 得られた熱融着層、積層フィルムなどの物性を上記方法で測定した。結果を表1に示す。」 (2B-8)「[0114] [表1] [図:0001422457000010.jpg] 」 (2)甲2Bに記載された発明 甲2Bの請求項1、2、4(摘記2B-1)には、「融点(Tm2)が120~150℃の範囲にあるプロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体(A-1)を10~70質量%、融点(Tm3)が155~170℃の範囲にあるプロピレン重合体(A-2)を10~40質量%、極限粘度[η]が2.0~10.0dl/gであり、プロピレン由来の構成単位の含有量が60-90質量%(プロピレン由来の構成単位とαオレフィン由来の構成単位との合計を100質量%とする)であるプロピレン・α‐オレフィンランダム共重合体(B-1)を1~25質量%、及び密度が0.865~0.910g/cm3の範囲にあるエチレンと炭素数が4以上のα‐オレフィンとのランダム共重合体であるエチレン・α‐オレフィンランダム共重合体(C)を5~30質量%含む〔(A-1)+(A-2)+(B-1)+(C)=100質量%とする。〕ことを特徴とするプロピレン共重合体組成物(E-2)からなる二軸延伸フィルム。」、「請求項1記載の二軸延伸フィルムの片面に、基材層が積層されてなる多層二軸延伸フィルム。」及び「二軸延伸フィルムを熱融着層に用いてなる被加熱・殺菌包装物の包装用であることを特徴とする請求項2または3記載の多層二軸延伸フィルム。」が記載されており、[0060](摘記2B-3)には、「本発明の二軸延伸フィルムは、前記プロピレン共重合体組成物(E-2)からなる限り、単層であっても二層以上の多層であってもよい」ことが記載され、[0066](摘記2B-4)には、「本発明の多層二軸延伸フィルムは、前記二軸延伸フィルムの片面に基材層を積層してなるフィルムである」ことが記載されている。そして、上記多層二軸延伸フィルムの実施例として、[0102]~[0108](摘記2B-7)には実施例1が記載されており、二軸延伸フィルム(熱融着層)は「プロピレン・エチレン・1-ブテンランダム共重合体(a-1-4):52質量%、プロピレン単独重合体(a-2-2):20質量%、プロピレン・エチレンランダム共重合体(b-1-1):13質量%、及び、エチレン・1-ブテンランダム共重合体(c-1):15質量%〔(a-1-4)+(a-2-2)+(b-1-1)+(c-1)=100質量%〕」からなるプロピレン共重合体組成物(e-5)を用いて所定の方法で得た三層多層フィルム(合計厚さ:40μm)からなり、積層フィルム(多層二軸延伸フィルム)は二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:12μm)/二軸延伸ポリアミドフィルム(厚さ:15μm)/二軸延伸フィルム(熱融着層)を所定の方法で貼り合わせてなるものであることが記載されている。 また、[0082](摘記2B-5)には、「重合体の融点(Tm)(℃)は、JIS K 7121に準拠し、示差走査熱量計〔DSC、パーキンエルマー社製(Diamond DSC)〕を用いて」求めたものであることが記載されており、[0114]の[表1](摘記2B-8)及び[0096]~[0099](摘記2B-6)には、実施例で用いられた各重合体のTm等が記載されている。 そうすると、甲2Bには、実施例1に基づいて以下の発明が記載されている。 「DSC測定による融点(Tm2)が137℃であるプロピレン・エチレン・1-ブテンランダム共重合体(a-1-4):52質量%、DSC測定による融点(Tm3)が163℃であるプロピレン単独重合体(a-2-2):20質量%、DSC測定による融点が120℃未満に存在するプロピレン・エチレンランダム共重合体(b-1-1):13質量%、及び、DSC測定による融点が80℃以下に存在するエチレン・1-ブテンランダム共重合体(c-1):15質量%〔(a-1-4)+(a-2-2)+(b-1-1)+(c-1)=100質量%〕を溶融混練して得られたプロピレン共重合体組成物(e-5)に、耐熱安定剤としてテトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(日本チバガイキー社製品 製品名イルガノックス1010)1000ppm及びステアリン酸カルシウム(日本油脂製)1000ppmを配合し、 表面層/内層/表面層の押出量比が(1/10/1)になるよう各々スクリュー押出機を用いて溶融押出しマルチマニホールドタイプT-ダイを用いて押出し、冷却ロール上にて急冷し厚さ約1.5mmの多層シートを得て、この多層シートを120℃で加熱し、多層シートの流れ方向(縦方向)に5倍延伸し、この5倍延伸した多層シートを160℃で加熱し流れ方向に対して直交する方向(横方向)に10倍延伸して、内層の厚さ:34μm、各両表面層の厚さ:3μm(合計厚さ:40μm)の三層多層フィルムからなる二軸延伸フィルム(熱融着層)を得て、熱融着層の基剤層と積層する表面層にコロナ処理を施し、 二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:12μm)と二軸延伸ポリアミドフィルム(厚さ:15μm)を、ラミネート機を使用して貼り合わせた後、前記二軸延伸フィルム(熱融着層)のコロナ処理面を、二軸延伸ポリアミドフィルム側に、ウレタン系接着剤を用いて、ドライラミネーションして貼り合わせて得た、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム/二軸延伸ポリアミドフィルム/二軸延伸フィルム(熱融着層)からなる積層フィルム。」(以下、「甲2B発明」という。) (3)本件発明1について ア 本件発明1と甲2B発明との対比 本件発明1と甲2B発明とを対比すると、甲2B発明における「DSC測定による融点(Tm2)が137℃であるプロピレン・エチレン・1-ブテンランダム共重合体(a-1-4)」は、本件発明1における「DSC測定による融点が137℃以上162℃以下の範囲にある第1プロピレン系重合体」に相当し、また、その融点を参酌すると、本件発明1における第1プロピレン系重合体についての「(ただし、高立体規則性プロピレン系重合体を除く)」という要件を満たす蓋然性が高いものである。甲2B発明における「DSC測定による融点(Tm3)が163℃であるプロピレン単独重合体(a-2-2)」は、本件発明1における「DSC測定による融点が162℃超え180℃以下の範囲にある第2プロピレン系重合体」に相当する。 甲2B発明における「・・・(a-1-4)・・・(a-2-2)・・・(b-1-1)・・・(c-1)・・・を溶融混練して得られたプロピレン共重合体組成物(e-5)に、耐熱安定剤としてテトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(日本チバガイキー社製品 製品名イルガノックス1010)1000ppm及びステアリン酸カルシウム(日本油脂製)1000ppmを配合し、 表面層/内層/表面層の押出量比が(1/10/1)になるよう各々スクリュー押出機を用いて溶融押出しマルチマニホールドタイプT-ダイを用いて押出し、冷却ロール上にて急冷し厚さ約1.5mmの多層シートを得て、この多層シートを120℃で加熱し、多層シートの流れ方向(縦方向)に5倍延伸し、この5倍延伸した多層シートを160℃で加熱し流れ方向に対して直交する方向(横方向)に10倍延伸して、内層の厚さ:34μm、各両表面層の厚さ:3μm(合計厚さ:40μm)の三層多層フィルムからなる二軸延伸フィルム(熱融着層)を得て、熱融着層の基剤層と積層する表面層にコロナ処理を施し、 二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:12μm)と二軸延伸ポリアミドフィルム(厚さ:15μm)を、ラミネート機を使用して貼り合わせた後、前記二軸延伸フィルム(熱融着層)のコロナ処理面を、二軸延伸ポリアミドフィルム側に、ウレタン系接着剤を用いて、ドライラミネーションして貼り合わせて得た、」という特定事項からみて、甲2B発明における「二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム/二軸延伸ポリアミドフィルム/二軸延伸フィルム(熱融着層)からなる積層フィルム」は、本件発明1における「フィルム」に相当するとともに、本件発明1と「プロピレン系重合体を含む二軸延伸フィルム層を備え、」る点で一致し、また、甲2B発明における「プロピレン・エチレン・1-ブテンランダム共重合体(a-1-4):52質量%」及び「プロピレン単独重合体(a-2-2):20質量%」という配合割合は、本件発明1における「前記二軸延伸フィルム層に含まれる前記第1プロピレン系重合体および前記第2プロピレン系重合体の合計量を100質量%としたとき、前記二軸延伸フィルム層中の前記第2プロピレン系重合体の含有量が1質量%以上85質量%以下であり、」との要件を満たしており、さらに、甲2B発明における「(合計厚さ:40μm)の三層多層フィルムからなる二軸延伸フィルム(熱融着層)」、「二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:12μm)」及び「二軸延伸ポリアミドフィルム(厚さ:15μm)」という厚みの比率は、本件発明1における「フィルムの全体の厚みに対する前記二軸延伸フィルム層の厚みの割合が50%以上99%以下であり、」との要件を満たしている。 そうすると、両者は、 「フィルムであって、 プロピレン系重合体を含む二軸延伸フィルム層を備え、 前記プロピレン系重合体は、DSC測定による融点が137℃以上162℃以下の範囲にある第1プロピレン系重合体(ただし、高立体規則性プロピレン系重合体を除く)と、DSC測定による融点が162℃超え180℃以下の範囲にある第2プロピレン系重合体と、を含み、 前記二軸延伸フィルム層に含まれる前記第1プロピレン系重合体および前記第2プロピレン系重合体の合計量を100質量%としたとき、前記二軸延伸フィルム層中の前記第2プロピレン系重合体の含有量が1質量%以上85質量%以下であり、 前記食品用包装フィルムの全体の厚みに対する前記二軸延伸フィルム層の厚みの割合が50%以上99%以下である、フィルム。」 の点で一致し、 相違点甲2B-1:本件発明1は「食品を包装するための食品用包装フィルム」と特定するのに対し、甲2B発明はそのように特定されない点 相違点甲2B-2:本件発明1は「前記第2プロピレン系重合体のアイソタクチックメソペンタッド分率(mmmm)が96.0%以上である、」と特定するのに対し、甲2B発明はそのように特定されない点 で相違する。 そこで、事案に鑑み、相違点甲2B-2について検討する。 イ 相違点甲2B-2について 甲2Bの[0097](摘記2B-6)には、「プロピレン重合体(A-2)として、固体状Ti触媒で製造したプロピレン単独重合体(a-2-2)〔MFR:7g/10分、融点(Tm3):163℃〕を用いた。」と記載されているが、当該記載からプロピレン単独重合体(a-2-2)のアイソタクチックメソペンタッド分率(mmmm)を求めることはできない。また、甲2Bには、プロピレン重合体(A-2)のアイソタクチックメソペンタッド分率(mmmm)について何ら記載されておらず、甲2Bの記載から「96.0%以上」という特定の数値範囲を導き出すことはできない。さらに、甲2Bの[0011](摘記2B-2)には、甲2B発明の課題が、「剛性などの機械特性、透明性に優れ、レトルト殺菌処理などの熱処理を行ってもヒートシール強度の低下が少なく、熱処理後の低温での落下破袋強度に特に優れ、耐ブロッキング性をも有する二軸延伸フィルムを得るに好適なプロピレン系重合体組成物、及び、当該性能を備えた二軸延伸フィルムを得ること」にあることが記載されているが、本件発明における「水蒸気バリア性向上および厚みムラ抑制の両方をバランス良く向上させるという観点」(本件明細書の[0007])は甲2Bには記載されておらず、また、他の全ての証拠の記載を参照しても、甲2B発明における「プロピレン単独重合体(a-2-2)」のアイソタクチックメソペンタッド分率(mmmm)に着目し、その値が「96.0%以上」という特定の数値範囲にあるものを用いることによって「水蒸気バリア性向上および厚みムラ抑制の両方をバランス良く向上させる」ことができることは記載も示唆もされていないから、甲2B発明において上記観点から相違点甲2B-2に係るアイソタクチックメソペンタッド分率(mmmm)を採用することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 ウ 本件発明1の効果について 仮に、甲2B発明におけるプロピレン重合体(A-2)相当の重合体として、相違点甲2B-2に係るアイソタクチックメソペンタッド分率(mmmm)が96.0%以上のプロピレン重合体の採用を試みることに思い至ることがあるとしても、他の相違点も合わせ持つ本件発明1の発明特定事項により「厚みムラが小さく、水蒸気バリア性が向上した食品用包装フィルムを提供できる」(本件明細書の[0012])という効果が得られることは、甲2Bの記載から予測し得ることではなく、さらに他の全ての証拠の記載を参酌しても、本件発明1の発明特定事項に基づいて上記効果が得られることを当業者が予測し得たとはいえない。 エ 申立人Bの主張について 申立人Bは、申立書Bの70~71頁において、甲4Bを引用し、「融点155℃~165℃の結晶性ポリプロピレン系樹脂のアイソタクチックペンタッド分率は94.0~96.0%であることが段落0030に記載され、融点166℃~175℃の結晶性ポリプロピレン系樹脂のアイソタクチックペンタッド分率は97.0%以上であることが段落0032に記載されている」から「プロピレン系樹脂の融点が高くなると、アイソタクチックペンタッド分率の値が高くなることが分か」り、甲2Bと甲4Bとは「二軸延伸ポリプロピレン系フィルム及びヒートシール強度・・・の点で共通」するから、当業者はこれらを組み合わせることに動機付けられ、甲2B発明において「高融点のポリプロピレン樹脂を用い、第2プロピレン系重合体のアイソタクチックメソペンタッド分率(mmmm)を96.0%以上とすること・・・に動機付けられ」、したがって、本件発明1は甲2発明に照らし進歩性を欠くと主張している。 しかし、甲4Bの[0030]における「融点155℃~165℃の結晶性ポリプロピレン系樹脂の中、13C核磁気共鳴スペクトルによるアイソタクチックペンタッド分率(IP)が94.0%~96.0%であるものが好ましい。」との記載、及び[0032]における「融点166℃~175℃の結晶性ポリプロピレン系樹脂の中、13C核磁気共鳴スペクトルによるアイソタクチックペンタッド分率(IP)が97.0%以上であるものが好ましく、98%~99.5%であるものがより好ましい。」との記載からも明らかなとおり、ポリプロピレン系樹脂のアイソタクチックペンタッド分率は融点のみに基づいて一意に決まる値ではないから、甲4Bの記載を参酌しても甲2B発明におけるプロピレン単独重合体(a-2-2)のアイソタクチックメソペンタッド分率(mmmm)を96.0%以上と特定することはできない。 また、甲4Bの特許請求の範囲には、「表面層、基材層、及びシール層の少なくとも3層を有する二軸延伸ポリプロピレン系フィルムであって、シール層にプロピレン系ランダム共重合体を75~93重量%、及びポリエチレン系樹脂を7~25重量%含有することを特徴とする、二軸延伸ポリプロピレン系フィルム。」(請求項1)及び「表面層に、融点155℃~165℃の結晶性ポリプロピレン系樹脂を50~99重量%、及び融点166℃~175℃の結晶性ポリプロピレン系樹脂を1~50重量%含有する、請求項1に記載の二軸延伸ポリプロピレン系フィルム。」(請求項2)が記載されているところ、申立人Bが引用した上記段落[0030]及び[0032]は「表面層」について記載されている[0027]~[0034]の一部を抜き出したものである。そして、[0027]には「表面層は、樹脂フィルムを包装用袋に成形した際、外面となる層であり、金型を用いてフィルム状に成形する際、基材層を熱から守る目的で必要となる。」と記載されており、また、[0055]には「2枚のフィルムを、シール層面が向かい合うように重ねた後、ヒートシールテスター(東洋精機製作所製 HG-100)にて、温度130℃、圧力0.2MPa、シール時間1.0秒の条件でヒートシールした。」と記載されているから、当該「表面層」はヒートシール層ではないことが明らかである。そうすると、仮に、甲2Bと甲4Bとを組み合わせることができるとしても、甲2B発明におけるヒートシール層の一成分であるプロピレン単独重合体(a-2-2)として甲4Bに記載された表面層の成分を用いることは、当業者が容易に想到し得ることではない。 さらに、上記イ及びウに記載したとおり、甲2B及び他の全ての証拠の記載を参照しても、当業者が、甲2B発明において「水蒸気バリア性向上および厚みムラ抑制の両方をバランス良く向上させる」という課題を認識し、その解決手段として「プロピレン単独重合体(a-2-2)」のアイソタクチックメソペンタッド分率(mmmm)に着目し、その値を「96.0%以上」という特定の数値範囲とする動機は見いだせないから、本件発明1が甲2B発明に照らし進歩性を欠くとはいえない。 よって、申立人Bの主張を採用することはできない。 オ 本件発明1についてのまとめ 以上のことから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲2B発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件発明2~12について 本件発明2~12は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記(3)で検討した本件発明1と同様の理由により、本件発明2~12は、いずれも甲2B発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)理由2B(甲2Bに基づく進歩性欠如)についてのまとめ 以上まとめると、本件発明1~12は、いずれも甲2Bに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 よって、理由2B(甲2Bに基づく進歩性欠如)により本件発明1~12についての特許を取り消すことはできない。 4.理由4A(サポート要件違反)について (1)サポート要件の判断手法 特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (2)本件発明の課題について 本件明細書の[0008]等の記載からみて、本件発明1~12の課題は「厚みムラが小さく、水蒸気バリア性が向上した食品用包装フィルムを提供する」ことにあるものと認められる。 (3)本件明細書の記載事項 本件明細書の[0016]~[0018]には、上記課題を解決するための手段及び機序について「二軸延伸フィルム層を構成するプロピレン系重合体として、DSC測定による融点が130℃以上162℃以下の範囲にある第1プロピレン系重合体と、DSC測定による融点が162℃超え180℃以下の範囲にある第2プロピレン系重合体と、を併用することによって、厚みムラが小さく、水蒸気バリア性が向上した食品用包装フィルムが得られることを見出した。」こと、及び「これにより、水蒸気バリア性向上および厚みムラ抑制の両方をバランスよく向上させることができる。この理由は明らかではないが以下の理由が考えられる。まず、二軸延伸フィルム層101が第1プロピレン系重合体を含むことにより、二軸延伸フィルム層101の結晶化による延伸ムラを低減することができ、その結果、二軸延伸フィルム層101の延伸時に生じる厚みムラを小さくすることができる、と考えられる。また、二軸延伸フィルム層101が第2プロピレン系重合体を含むことにより、二軸延伸フィルム層101の結晶性を高めることができ、その結果、本実施形態に係る食品用包装フィルム100の水蒸気バリア性を向上させることができる、と考えられる。」と記載されている。また、[0024]~[0036]には、二軸延伸フィルム層の層構成及び当該層に含まれるプロピレン系重合体及びその他の成分からなるプロピレン系重合体組成物について記載されており、[0026]には、食品用包装フィルムの全体の厚みに対する二軸延伸フィルム層の厚みの好ましい割合が記載され、[0028]には、プロピレン系重合体を構成する単量体及び共重合比が具体的に記載され、[0029]には、第1プロピレン系重合体及び第2プロピレン系重合体それぞれの融点及びそれらの配合比率について、第2プロピレン系重合体の含有量は、食品用包装フィルムの水蒸気バリア性向上の観点から1質量%以上であることが好ましく、厚みムラをより一層抑制する観点から85質量%以下であることが好ましいことなどが記載され、[0030]には、第2プロピレン系重合体はアイソタクチックメソペンタッド分率(mmmm)が96.0%以上である高立体規則性プロピレン系重合体であることが好ましいことが記載されており、[0031]にはプロピレン系重合体の製造方法に関し、公知の触媒を用いて製造することができることが記載されている。さらに、[0064]には、食品用包装フィルムの製造方法について、成形装置及び二軸延伸の条件等が具体的に記載されている。そして、[0068]~[0079]には実施例が記載されており、「PP1:高立体規則性プロピレン単独重合体(MFR:3g/10分、融点:167℃、アイソタクチックメソペンタッド分率(mmmm):98.5%)」と「PP2:プロピレン単独重合体(MFR:3g/10分、融点:161℃、アイソタクチックメソペンタッド分率(mmmm):92%)」とをそれぞれ0~100質量部/100~0質量部(合計100質量部)の範囲で用いた実施例1~7及び比較例1、2、並びに、上記PP1と「PP3:プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体(MFR:7g/10分、融点:137℃)」とをそれぞれ70~85質量部/30~15質量部(合計100質量部)の範囲で用いた実施例8~11が記載されており、上記[0016]~[0018]に記載された「DSC測定による融点が130℃以上162℃以下の範囲にある第1プロピレン系重合体と、DSC測定による融点が162℃超え180℃以下の範囲にある第2プロピレン系重合体と、を併用する」ことによって、厚みムラの評価が◎又は○((最大厚み-最小厚み)/(最大厚み+最小厚み)が2%未満、又は2%以上4%未満)であり、かつ、水蒸気バリア性の評価が◎◎、◎又は○(ヒートシール層を形成したフィルムを袋状にヒートシールした場合において、水蒸気透過度が5.0g/(m2・24h)以下、5.0g/(m2・24h)超過5.5g/(m2・24h)以下、又は5.5g/(m2・24h)超過6.0g/(m2・24h)以下)となり、「実施例の食品用包装フィルムは、比較例の食品用包装フィルムよりも厚みムラがそれぞれ小さかった。また、実施例の食品用包装フィルムを用いると、比較例の食品用包装フィルムを用いた場合に比べて、水蒸気バリア性が向上した食品用包装体を得ることができた。」([0079])と記載されている。 (4)サポート要件についての判断 本件明細書の一般記載並びにその記載を裏付ける実施例の記載に基づいて、当業者は本件明細書に記載された所定の融点及びアイソタクチックメソペンタッド分率(mmmm)によって特徴付けられる第1プロピレン系重合体と第2プロピレン系重合体とを併用した二軸延伸フィルムによって、水蒸気バリア性向上および厚みムラ抑制の両方をバランスよく向上させることができ、発明の課題を解決し得ると認識することができる。 そうすると、当業者は、 「フィルムであって、 プロピレン系重合体を含む二軸延伸フィルム層を備え、 前記プロピレン系重合体は、DSC測定による融点が137℃以上162℃以下の範囲にある第1プロピレン系重合体と、DSC測定による融点が162℃超え180℃以下の範囲にある第2プロピレン系重合体と、を含み、 前記二軸延伸フィルム層に含まれる前記第1プロピレン系重合体および前記第2プロピレン系重合体の合計量を100質量%としたとき、前記二軸延伸フィルム層中の前記第2プロピレン系重合体の含有量が1質量%以上85質量%以下であり、 前記食品用包装フィルムの全体の厚みに対する前記二軸延伸フィルム層の厚みの割合が50%以上99%以下であり、 前記第2プロピレン系重合体のアイソタクチックメソペンタッド分率(mmmm)が96.0%以上である、フィルム。」 の範囲で本件発明の課題が解決されるものと理解することができる。そして、本件発明1は、上記課題を解決し得る発明の発明特定事項を全て含み、さらに限定するものであるから、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により、又は出願時の技術常識に照らして、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 請求項1を直接又は間接的に引用する本件発明2~12も、本件発明1と同様の理由により、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により、又は出願時の技術常識に照らして、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 (5)申立人Aの主張について 申立人Aは、上記第3 1.(4)のように、第2プロピレン系重合体の含有量の下限値について主張している。 しかし、上記(3)に記載したように、本件明細書の[0018]には「二軸延伸フィルム層101は、・・・DSC測定による融点が130℃以上162℃以下の範囲にある第1プロピレン系重合体と、DSC測定による融点が162℃超え180℃以下の範囲にある第2プロピレン系重合体と、を含むものである。これにより、水蒸気バリア性向上および厚みムラ抑制の両方をバランスよく向上させることができる。・・・第1プロピレン系重合体を含むことにより・・・延伸ムラを低減することができ、その結果、・・・厚みムラを小さくすることができる・・・また、・・・第2プロピレン系重合体を含むことにより・・・結晶性を高めることができ、その結果、・・・水蒸気バリア性を向上させることができる」と記載されている。また、「PP1:高立体規則性プロピレン単独重合体(MFR:3g/10分、融点:167℃、アイソタクチックメソペンタッド分率(mmmm):98.5%)」と「PP2:プロピレン単独重合体(MFR:3g/10分、融点:161℃、アイソタクチックメソペンタッド分率(mmmm):92%)」の比率を0~100重量部/100~0質量部(合計100質量部)の間で変化させた実施例1~7及び比較例1、2の実験データ等からも、PP1(第2プロピレン系重合体)及びPP2(第1プロピレン系重合体)のそれぞれの含有割合に応じて、それぞれに由来する配合比率相応の水蒸気バリア性及び厚みムラ抑制の効果が得られることが確認できる。よって、これらの記載に接した当業者は、PP1の含有割合が10質量%(実施例1)~0質量%(比較例1)の中間(1質量%)であっても、各成分に由来する配合比率相応の作用効果が期待でき、比較例1よりも水蒸気バリア性が向上し、厚みムラ低減も一定程度維持されることにより、「厚みムラが小さく、水蒸気バリア性が向上した食品用包装フィルムを提供する」という課題を解決し得ると認識することができる。 よって、申立人Aの主張を採用することはできない。 (6)理由4A(サポート要件違反)についてのまとめ 以上のことから、本件発明1~12は、いずれも発明の詳細な説明に記載したものであるといえるから、特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号に適合するものであり、それらの発明についての特許は、同条第6項に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものである。 よって、理由4A(サポート要件違反)により本件発明1~12についての特許を取り消すことはできない。 第5 むすび 以上のとおり、本件発明1~12についての特許は、上記のいずれの特許異議申立理由によっても取り消すことはできない。 また、他に、これらの特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-701086

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