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特許異議申立

2023-700803

水洗大便器

審判番号
2023-700803
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-010430
登録番号
7218767
請求日
2023年08月03日
審決日
2026年04月27日
公報発行日
2026年09月25日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】TOTO株式会社
  • 【権利者代理人】田中 伸一郎
  • 【権利者代理人】須田 洋之
  • 【権利者代理人】弟子丸 健
  • 【権利者代理人】倉澤 伊知郎
  • 【権利者代理人】山本 泰史
  • 【異議申立人】渡辺 陽子
審判長/審判官
  • 審判長 居島 一仁
  • 審判官 立澤 正樹
  • 審判官 西田 秀彦
分類
P1651.537-ZAA(E03D) / P1651.113-ZAA(E03D) / P1651.121-ZAA(E03D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第44条第1項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第7項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7218767号発明「水洗大便器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7218767号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2及び3について訂正することを認める。 特許第7218767号の請求項1~3に係る特許を取り消す。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7218767号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし3に係る特許についての出願は、平成28年11月16日に出願された特許出願(特願2016-223228号)の一部を、平成30年7月31日に特許法第44条第1項の規定による新たな特許出願(特願2018-143517号)とし、更にその一部を、令和3年1月26日に特許法第44条第1項による新たな特許出願(特願2021-10430号)としたものであって、令和5年1月30日にその特許権の設定登録がされ、同年2月7日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和5年 8月 3日 :特許異議申立人 渡辺陽子による請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立て 同年11月17日付け:取消理由通知書 令和6年 1月22日 :意見書及び訂正請求書の提出(特許権者) 同年 2月28日 :意見書の提出(申立人) 同年 3月28日付け:取消理由通知書(決定の予告) 同年 5月31日 :意見書及び訂正請求書の提出(特許権者) 同年 6月20日付け:手続補正指令(方式)(特許権者宛て) 同年 7月19日 :手続補正書(方式)の提出(特許権者) 同年 7月25日 :手続補正書(方式)の提出(特許権者) 同年 9月12日付け:訂正拒絶理由通知書 同年10月16日 :意見書及び手続補正書の提出(特許権者) 同年11月21日 :意見書の提出(申立人) なお、令和6年5月31に訂正請求書が提出されたことにより、同年1月22日提出の訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 第2 訂正請求について 1 訂正請求書の補正及びその適否 (1)第1の補正、及び、第2の補正について 令和6年7月19日提出の手続補正書(方式)による補正(以下、「第1の補正」という。)、及び、同年7月25日提出の手続補正書(方式)による補正(以下、「第2の補正」という。)は、同年5月31日提出の訂正請求書について、訂正事項4について、「新たな請求項4とする。」と明記がないことに対して、訂正後の内容を具体的かつ明確に特定できるように記載する必要がある旨、及び、「訂正の理由」「一群の請求項についての説明」「訂正事項が全ての訂正要件に適合している事実の説明」それぞれに記載された特許法の条文が間違っており、正確に記載する必要がある旨、を命じた同年6月20日付け手続補正指令(方式)に対応する補正をしたものである。 したがって、第1の補正、及び、第2の補正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第131条の2第1項ただし書き第3号に該当するから、当該補正を認める。 (2)第3の補正について 令和6年10月16日提出の手続補正書による補正(以下、「第3の補正」という。)は、令和6年9月12日付け訂正拒絶理由通知書において、訂正事項3、4による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1~4号のいずれにも該当しないから、訂正は拒絶すべきものである旨通知したのに対し、第1の補正、及び、第2の補正後の同年5月31日提出の訂正請求書及びこれに添付された訂正特許請求の範囲において、訂正請求書における訂正後の請求項4に対応する訂正事項4を削除する旨の補正を行うものである。 そうすると、第3の補正は、「訂正事項の削除」に該当し、訂正請求書の要旨を変更するものではない。 したがって、第3の補正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第131条の2第1項の規定に適合するから、当該補正を認める。 そして、第3の補正により、訂正事項4が削除され、それに伴い、訂正事項3と訂正事項4の間の不整合に基づく訂正事項3の訂正拒絶理由が解消されるから、令和6年9月12日付け訂正拒絶理由通知書において指摘した訂正拒絶理由は、解消した。 2 訂正の請求の趣旨 上記1の第1ないし第3の補正後の令和6年5月31日提出の訂正請求書(以下、「本件訂正請求書」という。)による訂正の請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)の趣旨は、 「特許第7218767号の特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~3について訂正することを求める。」 というものである。 3 訂正の内容 下記(1)で説示するとおり、本件訂正は、訂正後の請求項1~3からなる「一群の請求項」について、訂正の請求がされたものである。 そして、本件特許の設定登録後の特許請求の範囲の記載、本件訂正請求書の記載、及び、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の記載からみて、本件訂正の内容は、下記(2)の訂正事項1~3からなるものと認められる。なお、下線は訂正による記載の変更箇所を示す。 (1)一群の請求項及び訂正単位について ア 一群の請求項 本件訂正前の請求項1~3について、請求項2及び3はそれぞれ請求項1を引用しているものであって、下記(2)アの訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正がされるものであるから、訂正前の請求項1~3に対応する訂正後の請求項1~3は、特許法第120条の5第4項に規定する関係を有する「一群の請求項」である。 イ 別の訂正単位とする求めについて 本件訂正請求においては、訂正後の請求項2及び3について、当該請求項について訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することの求めがされている。また、訂正後の請求項2及び3は、他の請求項の記載を引用しない独立形式で記載されている。 ウ 一群の請求項及び訂正単位についてのまとめ 以上のとおり、本件訂正は、「一群の請求項」である訂正後の請求項1~3について、「一群の請求項」ごとに訂正の請求がされたものであって、「一群の請求項」のうち、訂正後の請求項2及び3について、それぞれの請求項についての訂正が認められる場合には、訂正後の請求項1とは別途訂正することの求めがされたものである。 (2)一群の請求項の訂正 ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に記載の 「 洗浄水源から供給される洗浄水によって洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、 ボウル形状の汚物受け面と、この汚物受け面の上縁に形成される棚部と、この棚部の外縁から立ち上がるリム内壁面を形成するリム部と、を備えたボウル部と、 上記ボウル部内に洗浄水を吐水するリム吐水部と、を有し、 上記ボウル部は、このボウル部を左右方向に二等分するように水平前後方向に延びる中心軸線に対して左側及び右側にそれぞれ形成される左側領域及び右側領域をそれぞれ備えており、 上記リム吐水部は、上記ボウル部の上記リム部に設けられて洗浄水を吐水するリム吐水口を上記リム部の全周において1つ形成し、上記リム吐水口は、上記左側領域又は上記右側領域のいずれかの上記リム部に設けられて洗浄水を吐水するものであり、 上記リム内壁面における上記リム吐水口よりも上側の領域は、平坦状に形成されており、ボウル部の周方向に連続するように形成されており、 上記リム内壁面における上記リム吐水口の開口端面よりも上側の領域は、上記リム吐水口の開口端面における上下方向の大きさよりも広い範囲で形成され、下流側に向かうにつれて狭くなることを特徴とする水洗大便器。」を、 「 洗浄水源から供給される洗浄水によって洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、 ボウル形状の汚物受け面と、この汚物受け面の上縁に形成される棚部と、この棚部の外縁から立ち上がるリム内壁面を形成するリム部と、を備えたボウル部と、 上記ボウル部内に洗浄水を後方に吐水するリム吐水部と、を有し、 上記ボウル部は、このボウル部を左右方向に二等分するように水平前後方向に延びる中心軸線に対して左側及び右側にそれぞれ形成される左側領域及び右側領域をそれぞれ備えており、 上記リム吐水部は、上記ボウル部の上記リム部に設けられて洗浄水を吐水するリム吐水口を上記リム部の全周において1つ形成し、上記リム吐水口は、上記左側領域又は上記右側領域のいずれかの上記リム部に設けられて洗浄水を吐水するものであり、 上記リム内壁面における上記リム吐水口よりも上側の領域は、平面視で上記リム吐水口の開口の内側端よりも上記ボウル部の中心側に形成され、且つ、平坦状に形成されており、ボウル部の周方向に連続するように形成されており、 上記リム内壁面における上記リム吐水口の開口端面よりも上側の領域は、上記リム吐水口の開口端面における上下方向の大きさよりも広い範囲で形成され、下流側に向かうにつれて狭くなることを特徴とする水洗大便器。」 と訂正する。 イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に記載の 「 上記リム吐水部は、上記リム吐水口の下流側に通水路を形成し、この通水路の流路断面は、上記棚部の棚面、この棚面の外縁から立ち上がる上記リム内壁面、及び、このリム内壁面の上方部分に形成されるオーバーハング部分のそれぞれにより形成され、上記通水路の流路断面の上下方向の大きさは、上記通水路の下流側に向かうにつれて大きくなる請求項1記載の水洗大便器。」を、 「 洗浄水源から供給される洗浄水によって洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、 ボウル形状の汚物受け面と、この汚物受け面の上縁に形成される棚部と、この棚部の外縁から立ち上がるリム内壁面を形成するリム部と、を備えたボウル部と、 上記ボウル部内に洗浄水を吐水するリム吐水部と、を有し、 上記ボウル部は、このボウル部を左右方向に二等分するように水平前後方向に延びる中心軸線に対して左側及び右側にそれぞれ形成される左側領域及び右側領域をそれぞれ備えており、 上記リム吐水部は、上記ボウル部の上記リム部に設けられて洗浄水を吐水するリム吐水口を上記リム部の全周において1つ形成し、上記リム吐水口は、上記左側領域又は上記右側領域のいずれかの上記リム部に設けられて洗浄水を吐水するものであり、 上記リム内壁面における上記リム吐水口よりも上側の領域は、平面視で上記リム吐水口の開口の内側端よりも上記ボウル部の中心側に形成され、且つ、平坦状に形成されており、ボウル部の周方向に連続するように形成されており、 上記リム内壁面における上記リム吐水口の開口端面よりも上側の領域は、上記リム吐水口の開口端面における上下方向の大きさよりも広い範囲で形成され、下流側に向かうにつれて狭くなり、 上記リム吐水部は、上記リム吐水口の下流側に通水路を形成し、この通水路の流路断面は、上記棚部の棚面、この棚面の外縁から立ち上がる上記リム内壁面、及び、このリム内壁面の上方部分に形成されるオーバーハング部分のそれぞれにより形成され、上記通水路の流路断面の上下方向の大きさは、上記通水路の下流側に向かうにつれて大きくなる水洗大便器。」 と訂正する。 ウ 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に記載の 「 上記リム吐水部は、上記リム吐水口の下流側に通水路を形成し、この通水路の流路断面は、上記棚部の棚面、この棚面の外縁から立ち上がる上記リム内壁面、及び、このリム内壁面の上方部分に形成されるオーバーハング部分のそれぞれにより形成され、 上記オーバーハング部分は、その下端から斜め上方に且つ上記ボウル部の内側に向かって傾斜した傾斜面を形成している請求項1又は2に記載の水洗大便器。」を、 「 洗浄水源から供給される洗浄水によって洗浄されで汚物を排出する水洗大便器であって、 ボウル形状の汚物受け面と、この汚物受け面の上縁に形成される棚部と、この棚部の外縁から立ち上がるリム内壁面を形成するリム部と、を備えたボウル部と、 上記ボウル部内に洗浄水を後方に吐水するリム吐水部と、を有し、 上記ボウル部は、このボウル部を左右方向に二等分するように水平前後方向に延びる中心軸線に対して左側及び右側にそれぞれ形成される左側領域及び右側領域をそれぞれ備えており、 上記リム吐水部は、上記ボウル部の上記リム部に設けられて洗浄水を吐水するリム吐水口を上記リム部の全周において1つ形成し、上記リム吐水口は、上記左側領域又は上記右側領域のいずれかの上記リム部に設けられて洗浄水を吐水するものであり、 上記リム内壁面における上記リム吐水口よりも上側の領域は、平面視で上記リム吐水口の開口の内側端よりも上記ボウル部の中心側に形成され、且つ、平坦状に形成されており、ボウル部の周方向に連続するように形成されており、 上記リム内壁面における上記リム吐水口の開口端面よりも上側の領域は、上記リム吐水口の開口端面における上下方向の大きさよりも広い範囲で形成され、下流側に向かうにつれて狭くなり、 上記リム吐水部は、上記リム吐水口の下流側に通水路を形成し、この通水路の流路断面は、上記棚部の棚面、この棚面の外縁から立ち上がる上記リム内壁面、及び、このリム内壁面の上方部分に形成されるオーバーハング部分のそれぞれにより形成され、 上記オーバーハング部分は、その下端から斜め上方に且つ上記ボウル部の内側に向かって傾斜した傾斜面を形成している水洗大便器。」 と訂正する。 4 訂正事項についての訂正要件の判断 訂正事項1~3についての訂正要件の判断は、以下のとおりである。 なお、下線は、訂正による記載の変更箇所を示すもののほか、当審合議体が付したものも含まれる。 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的 訂正事項1による訂正は、請求項1に記載の「リム吐水部」の吐水される方向が「後方」であること、及び、「上記リム内壁面における上記リム吐水口よりも上側の領域」が「平面視で上記リム吐水口の開口の内側端よりも上記ボウル部の中心側に形成され」ること、それぞれ限定するものである。 したがって、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更 上記アのとおり、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とし、訂正の前後で発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 新規事項の追加 訂正事項1の「リム吐水部」の吐水される方向が「後方」であることについて、本件特許に係る願書に添付した明細書(以下、「本件特許明細書」といい、特許請求の範囲及び図面とあわせて「本件特許明細書等」という。)の段落【0016】には、「また、このリム通水路14の下流端には、ボウル部10内に洗浄水を後方に吐水して旋回流を形成するリム吐水部の一部として機能する単一のリム吐水口16が形成されている。」と記載されている。 【図1】 [図:0001439168000001.jpg] 【図2】 [図:0001439168000002.jpg] 【図3】 [図:0001439168000003.jpg] さらに、本件特許明細書の段落【0020】には、「また、図1~4に示すように、リム内壁面8aにおけるリム吐水口16よりも上側の領域U1は、ボウル部10の全周に亘って連続的な帯状に形成されている。」、段落【0021】には、「また、リム内壁面8aにおける単一のリム吐水口16よりも上側の領域U1がボウル部10の全周に亘って連続的な帯状に形成されることにより、リム吐水口16を隠蔽し易くすることができるため、・・・」、段落【0022】には、「・・・リム吐水口16の開口端面A1をボウル部の左右方向に延びる中心線軸と平行に設定したことにより、ボウル部の前方且つ上方の使用者から見たリム吐水口16の隠蔽性を保ちつつ、・・・」とそれぞれ記載されている。また、上記段落【0020】~【0022】の記載と、図1~図3から、リム吐水口16の開口端面A1上におけるボウル部10の中心側の縁部よりも、リム部の縁部が、ボウル部10の中心側に位置することが記載されていることから、リム内壁面におけるリム吐水口よりも上側の領域U1は、平面視でリム吐水口16の開口の内側端よりもボウル部の中心側に形成されていることが記載されている。 したがって、訂正事項1に係る訂正は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的 訂正事項2は、訂正前の請求項2が請求項1の記載を引用していたところ、請求項間の引用関係を解消し、独立形式の請求項に改めるとともに、「上記リム内壁面における上記リム吐水口よりも上側の領域」が「平面視で上記リム吐水口の開口の内側端よりも上記ボウル部の中心側に形成され」ることを限定するものである。 したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとする」を目的とするとともに、同法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更 上記アのとおり、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とし、訂正の前後で発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 新規事項の追加 訂正事項2の「上記リム内壁面における上記リム吐水口よりも上側の領域」が「平面視で上記リム吐水口の開口の内側端よりも上記ボウル部の中心側に形成され」ることについて、上記(1)ウに示したとおり、本件特許明細書の段落【0020】~【0022】の記載と、図1~図3から、リム吐水口16の開口端面A1上におけるボウル部10の中心側の縁部よりも、リム部の縁部が、ボウル部10の中心側に位置することが記載されていることから、リム内壁面におけるリム吐水口よりも上側の領域U1は、平面視でリム吐水口16の開口の内側端よりもボウル部の中心側に形成されていることが記載されている。 したがって、訂正事項2に係る訂正は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 (3)訂正事項3について ア 訂正の目的 訂正事項3は、訂正前の請求項3が「請求項1又は2」の記載を引用していたところ、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の内容を含む独立形式の請求項に改めるとともに、「リム吐水部」の吐水される方向が「後方」であること、及び、「上記リム内壁面における上記リム吐水口よりも上側の領域」が「平面視で上記リム吐水口の開口の内側端よりも上記ボウル部の中心側に形成され」ること、それぞれ限定するものである。 したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとする」を目的とするとともに、同法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更 上記アのとおり、訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とし、訂正の前後で発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 新規事項の追加 訂正事項3の「リム吐水部」の吐水される方向が「後方」であること、及び、「上記リム内壁面における上記リム吐水口よりも上側の領域」が「平面視で上記リム吐水口の開口の内側端よりも上記ボウル部の中心側に形成され」ることについて、上記(1)ウに示したとおり、本件特許明細書の段落【0016】には、「また、このリム通水路14の下流端には、ボウル部10内に洗浄水を後方に吐水して旋回流を形成するリム吐水部の一部として機能する単一のリム吐水口16が形成されている。」と記載され、段落【0020】~【0022】の記載と、図1~図3から、リム吐水口16の開口端面A1上におけるボウル部10の中心側の縁部よりも、リム部の縁部が、ボウル部10の中心側に位置することが記載されていることから、リム内壁面におけるリム吐水口よりも上側の領域U1は、平面視でリム吐水口16の開口の内側端よりもボウル部の中心側に形成されていることが記載されている。 したがって、訂正事項3に係る訂正は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 5 一群の請求項及び別の訂正単位とする求めについて 訂正前の請求項1~3について、請求項2、3は、請求項1を直接的または間接的に引用するものであり、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~3に対応する訂正後の1~3は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 特許権者は、訂正後の請求項2、3については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めているので以下検討する。 上記4(1)~(3)のとおり、訂正事項1に係る訂正、訂正事項2に係る訂正、訂正事項3に係る訂正は、それぞれ適法なものである。 また、本件訂正後の請求項1に係る発明、請求項2に係る発明、請求項3に係る発明は、互いに引用関係にないから、これらの請求項に係る発明について、別の訂正単位とする求めを認めない理由はない。 したがって、本件訂正後の請求項1に係る発明、請求項2に係る発明及び請求項3に係る発明について、別の訂正単位とすることを認める。 6 まとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし第1号及び第4号に掲げる目的とし、同法第120条の5第9項により準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合する。 よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2及び3について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 特許第7218767号の請求項1ないし3の特許に係る発明(以下、「本件特許発明1」等という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 洗浄水源から供給される洗浄水によって洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、 ボウル形状の汚物受け面と、この汚物受け面の上縁に形成される棚部と、この棚部の外縁から立ち上がるリム内壁面を形成するリム部と、を備えたボウル部と、 上記ボウル部内に洗浄水を後方に吐水するリム吐水部と、を有し、 上記ボウル部は、このボウル部を左右方向に二等分するように水平前後方向に延びる中心軸線に対して左側及び右側にそれぞれ形成される左側領域及び右側領域をそれぞれ備えており、 上記リム吐水部は、上記ボウル部の上記リム部に設けられて洗浄水を吐水するリム吐水口を上記リム部の全周において1つ形成し、上記リム吐水口は、上記左側領域又は上記右側領域のいずれかの上記リム部に設けられて洗浄水を吐水するものであり、 上記リム内壁面における上記リム吐水口よりも上側の領域は、平面視で上記リム吐水口の開口の内側端よりも上記ボウル部の中心側に形成され、且つ、平坦状に形成されており、ボウル部の周方向に連続するように形成されており、 上記リム内壁面における上記リム吐水口の開口端面よりも上側の領域は、上記リム吐水口の開口端面における上下方向の大きさよりも広い範囲で形成され、下流側に向かうにつれて狭くなることを特徴とする水洗大便器。 【請求項2】 洗浄水源から供給される洗浄水によって洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、 ボウル形状の汚物受け面と、この汚物受け面の上縁に形成される棚部と、この棚部の外縁から立ち上がるリム内壁面を形成するリム部と、を備えたボウル部と、 上記ボウル部内に洗浄水を吐水するリム吐水部と、を有し、 上記ボウル部は、このボウル部を左右方向に二等分するように水平前後方向に延びる中心軸線に対して左側及び右側にそれぞれ形成される左側領域及び右側領域をそれぞれ備えており、 上記リム吐水部は、上記ボウル部の上記リム部に設けられて洗浄水を吐水するリム吐水口を上記リム部の全周において1つ形成し、上記リム吐水口は、上記左側領域又は上記右側領域のいずれかの上記リム部に設けられて洗浄水を吐水するものであり、 上記リム内壁面における上記リム吐水口よりも上側の領域は、平面視で上記リム吐水口の開口の内側端よりも上記ボウル部の中心側に形成され、且つ、平坦状に形成されており、ボウル部の周方向に連続するように形成されており、 上記リム内壁面における上記リム吐水口の開口端面よりも上側の領域は、上記リム吐水口の開口端面における上下方向の大きさよりも広い範囲で形成され、下流側に向かうにつれて狭くなり、 上記リム吐水部は、上記リム吐水口の下流側に通水路を形成し、この通水路の流路断面は、上記棚部の棚面、この棚面の外縁から立ち上がる上記リム内壁面、及び、このリム内壁面の上方部分に形成されるオーバーハング部分のそれぞれにより形成され、上記通水路の流路断面の上下方向の大きさは、上記通水路の下流側に向かうにつれて大きくなる水洗大便器。 【請求項3】 洗浄水源から供給される洗浄水によって洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、 ボウル形状の汚物受け面と、この汚物受け面の上縁に形成される棚部と、この棚部の外縁から立ち上がるリム内壁面を形成するリム部と、を備えたボウル部と、 上記ボウル部内に洗浄水を後方に吐水するリム吐水部と、を有し、 上記ボウル部は、このボウル部を左右方向に二等分するように水平前後方向に延びる中心軸線に対して左側及び右側にそれぞれ形成される左側領域及び右側領域をそれぞれ備えており、 上記リム吐水部は、上記ボウル部の上記リム部に設けられて洗浄水を吐水するリム吐水口を上記リム部の全周において1つ形成し、上記リム吐水口は、上記左側領域又は上記右側領域のいずれかの上記リム部に設けられて洗浄水を吐水するものであり、 上記リム内壁面における上記リム吐水口よりも上側の領域は、平面視で上記リム吐水口の開口の内側端よりも上記ボウル部の中心側に形成され、且つ、平坦状に形成されており、ボウル部の周方向に連続するように形成されており、 上記リム内壁面における上記リム吐水口の開口端面よりも上側の領域は、上記リム吐水口の開口端面における上下方向の大きさよりも広い範囲で形成され、下流側に向かうにつれて狭くなり、 上記リム吐水部は、上記リム吐水口の下流側に通水路を形成し、この通水路の流路断面は、上記棚部の棚面、この棚面の外縁から立ち上がる上記リム内壁面、及び、このリム内壁面の上方部分に形成されるオーバーハング部分のそれぞれにより形成され、 上記オーバーハング部分は、その下端から斜め上方に且つ上記ボウル部の内側に向かって傾斜した傾斜面を形成している水洗大便器。」 第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 請求項1ないし3に係る特許に対して、当審が令和6年3月28日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 理由1(サポート要件)本件特許の請求項1~3に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 理由2(新規性)又は理由3(進歩性)本件特許の請求項1~3に係る発明は、甲第5号証に記載された発明であるか、または甲第5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第1項第3号又は第2項の規定により、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 <引用文献等一覧> 特開2018-162667号公報:申立人が提出した甲第5号証(以下、「申立甲5」という。)(本件特許の原出願の公開公報) 2 当審の判断 当審合議体は、上記取消理由で通知した取消理由の理由1ないし3によって、本件特許発明1~3に係る特許は取り消されるべきものであると判断する。 (1)理由1について ア 本件特許発明2について (ア)発明が解決しようとする課題 本件特許の課題について、本件特許の詳細な説明には、以下の記載がある(なお、下線は当審で付した。以下同様。)。 「【0004】 しかしながら、上述した特許文献1~3に記載されている従来の水洗大便器おいては、リム吐水口の周辺形状が複雑になり易いため、リム吐水口の周辺が影となる等、意匠性の低下を招いている。 特に、上述した特許文献1に記載されている従来の水洗大便器では、リム吐水口が配置されているボウル部内の前方領域が複雑な形状になるため、便座に腰掛けて両脚をやや開いた使用者の視野に入ってしまい、意匠性の低下を招くという問題がある。 また、上述した特許文献2、3に記載されている従来の水洗大便器では、リム吐水口が配置されているボウル部内の後方領域が複雑な形状になるため、便器本体の正面側に立つかしゃがんだ使用者の視野に入ってしまい、意匠性の低下を招くという問題がある。 さらに、上述した特許文献1~3に記載されている従来の水洗大便器においては、リム吐水口の周辺形状の意匠性のみを重視し過ぎると、リム吐水口から吐水された洗浄水によるボウル部の洗浄性能を維持することが難しくなり、洗浄性能と意匠性をいかに両立させるかが要請された課題となっている。 【0005】 そこで、本発明は、上述した従来技術の問題や課題を解決するためになされたものであり、ボウル部の洗浄性能を維持しつつ、リム吐水口を隠蔽し易く、美観性に優れた水洗大便器を提供することを目的としている。」 上記記載から、本件特許が解決しようとする課題は、「ボウル部の洗浄性能を維持しつつ、リム吐水口を隠蔽し易く、美観性に優れた水洗大便器を提供すること」であると認められる。 (イ)発明の課題を解決するための手段 上記課題を解決するための手段について、本件特許の詳細な説明には、以下の記載がある。 「【0021】 つぎに、上述した本発明の一実施形態による水洗大便器1における作用について説明する。 まず、本発明の一実施形態による水洗大便器1によれば、リム吐水部が、ボウル部10のリム部8に設けられて洗浄水を吐水するリム吐水口16をリム部8の全周において1つ形成し、このリム吐水口16は前方側領域F内の右側領域Rのリム部8に設けられて洗浄水を後方に吐水するものであるため、リム吐水口16から後方に吐水された洗浄水によるボウル部10の洗浄性能を維持しつつ、ボウル部10よりも前方且つ上方の使用者や便座(図示せず)に座った状態の使用者からリム吐水口16を見え難くすることができる。」 上記記載から、本件特許の発明の詳細な説明に記載された課題を解決するための手段は、「リム吐水口が洗浄水を後方に吐出すること」であると認められる。 そして、本件特許の詳細な説明の記載全体からみても、「リム吐水口が洗浄水を後方に吐出すること」がない手段により、課題を解決できるといえる記載や示唆もない。 (ウ)検討・判断 本件特許発明2には、「上記リム吐水口は、上記左側領域又は上記右側領域のいずれかの上記リム部に設けられて洗浄水を吐水するものであり、」との記載があるものの、洗浄水を後方に吐水することが特定されておらず、前方、すなわち使用者側に吐水するものを含むことになるから、本件特許発明2が、「ボウル部の洗浄性能を維持しつつ、ボウル部よりも前方且つ上方の使用者からリム吐水口を見え難くすることができる」ものとは認められない。 また、本件特許発明2には、「上記リム内壁面における上記リム吐水口よりも上側の領域は、平面視で上記リム吐水口の開口の内側端よりも上記ボウル部の中心側に形成され、且つ、平坦状に形成されており、ボウル部の周方向に連続するように形成されており、」との記載があり、平面視ではリム吐水口を隠蔽し得るものである。 しかしながら、ボウル部の前方に立った使用者は、平面視、すなわち真上からボウル部を見るのではなく、前方且つ上方から見ることとなる。この場合、リム吐水口がボウル部の前方領域に形成されていれば、使用者は、略真上から見るものと同様にボウル部の前方側領域を視認でき、リム吐水口の吐水方向によらず、リム吐水口が隠蔽され得る。これに対して、リム吐水口がボウル部の後方側領域に形成されていると、使用者は、略真上からではなく、前方側の斜め上方からボウル部の後方側領域を視認することとなり、洗浄水を後方に吐水することが特定されなければ、前方に立った使用者からは、リム吐水口が視認できることは明らかである。 よって、本件特許発明2に係る発明は、リム吐水口の吐水方向が特定されておらず、リム吐水口がボウル部の前方側領域に形成されることも特定されていないから、依然として、「リム吐水口を隠蔽し易くすることができる」ものとは認められない。 したがって、「リム吐水口が洗浄水を後方に吐水すること」が特定されていない請求項2の記載は、「ボウル部の洗浄性能を維持しつつ、リム吐水口を隠蔽し易く、美観性に優れた水洗大便器を提供する」という課題を解決するための手段が反映されているとはいえない。 (エ)特許権者の主張 a 特許権者の主張の概要 特許権者は、令和6年5月31日提出の意見書において、「理由1(サポート要件違反)」について、下記のように主張している((主張1)~(主張3)は、合議体が区分けしたものである。)。 (主張1) 「 第1に、本件特許の明細書には、3つの従来技術、具体的には、特許文献1(特開2007-314975号公報)、特許文献2(特開2016-41880号公報)、及び、特許文献3(特開2016-41880号公報)(合議体注:「特許第5592617号公報」の誤記であると思われる。)が記載されている。特許文献1には、リム吐水口が前方側領域にあり且つ洗浄水を後方に吐水する便器が記載され、特許文献2には、リム吐水口が後方側領域にある且つ洗浄水を前方に吐水する便器が記載され、特許文献3には、リム吐水口が後方側領域にあり且つ洗浄水を後方に吐水する便器が記載されている。 本件発明の解決課題を有する便器として、特許文献1~3が記載されているが、これらの便器においては、解決課題と、リム吐水口の前方側又は後方側の領域、及び、吐水方向は、無関係であることが示されている。 このことから、本件発明は、後方吐水に限らず、後方吐水及び前方吐水の両者が持つ問題を解決した発明であると理解可能である。」 (主張2) 「 第2に、訂正発明2においては、リム内壁面におけるリム吐水口よりも上側の領域が、平面視でリム吐水口の開口の内側端よりもボウル部の中心側に形成されているので、ボウル部10より前方且つ上方の使用者や便座に座った状態の使用者からリム吐水口16を見え難くすることができる。 以下、詳細に説明する。 先ず、特許文献1に記載の従来の水洗大便器では、リム吐水口が便座に腰掛けて両脚をやや開いた使用者の視野に入ってしまうという問題がある、記載されている(段落0004)。次に、特許文献2、3に記載の従来の水洗大便器では、リム吐水口が便器本体の正面側に立つかしゃがんだ使用者の視野に入ってしまうという問題がある、と記載されている(段落0004)。 本件発明は、このような従来技術が持つ解決課題の存在を前提として、「リム吐水口を隠蔽し易く」した水洗大便器である。 上述した従来の水洗大便器の解決課題を前提にすれば、「リム吐水口を隠蔽し易く」とは、リム吐水口を完全に隠蔽することを意図したものではなく、使用者からリム吐水口が見え難くすれば良いと、理解できる。 次に、取消理由通知書6頁下から4行~末行において、「本件特許の請求項1には、『上記リム内壁面における上記リム吐水口よりも上側の領域は、平面視で上記リム吐水口の開口の内側端よりも内側に形成され、且つ、平坦上に形成されており、ボウル部の周方向に連続するように形成されており、』との記載があり、平面視ではリム吐水口を隠蔽し得るものである。」と記載されており、平面視、即ち、真上から見た場合には、リム吐水口が隠蔽し得るものであると、認められている。 一方、本件特許の明細書の段落〔0021〕には、「ボウル部10よりも前方且つ上方の使用者が弁座(図示せず)に座った状態の使用者からリム吐水口16を見え難くすることができる。」と記載されている。 この記載において、「弁座に座った状態の使用者」」とは、使用者が真上から水洗大便器を見た場合であり、この場合には、リム吐水口は使用者から見えない。また、水洗大便器が設置されるトイレ空間は狭いのが普通でありので、「ボウル部10よりも前方且つ上方の使用者」とは、「ボウル部にごく近い位置に立った状態の使用者」であるので、使用者からは、ボウル部がほぼ真下に見えるような状態となっている。このため、使用者がボウル部よりも前方且つ上方で見た場合には、リム吐水口は見え難い状態になっていることは明らかである。 このように、本件発明(訂正発明2)においては、リム吐水口が完全に隠蔽されて状態でなくても、使用者から見え難い状態であれば、課題は解決されていると言える。」 (主張3) 「 以上から、訂正発明2において、本件特許の明細書に記載された課題を解決する手段として「リム吐水口が後方に吐水すること」を特定する必要がない。」 b 特許権者の主張に対する当審の判断 (a)(主張1)について 特許権者が主張するように、特許文献1~3は、洗浄水を後方もしくは前方に吐水する便器であり、それぞれの特許文献の便器にあわせて課題解決が行われているものである。たしかに、解決課題自体は、リム吐水口の前方側又は後方側の領域、及び、吐水方向は、無関係であり、共通する解決課題であるかもしれないが、リム吐水口が設けられた領域、もしくは、吐水方向に応じて、便器が備える各種構造が異なることは明らかであり、解決課題を解決する具体的手段は異なるものになることは当然である。 それに対して、本件特許は、上記「(ア)」に説示したとおり、「ボウル部の洗浄性能を維持しつつ、リム吐水口を隠蔽し易く、美観性に優れた水洗大便器を提供する」という課題を解決するために、上記「(イ)」に説示した「リム吐水口が洗浄水を後方に吐出すること」により課題を解決しているものであると認められる。 すなわち、本件特許は、「ボウル部の洗浄性能を維持しつつ、リム吐水口を隠蔽し易く、美観性に優れた水洗大便器を提供する」という課題を解決するために、「リム吐水口が洗浄水を後方に吐出する」という解決手段を開示したものであり、また、「洗浄水を前方に吐水する」という技術的手段は開示されていない。 また、使用者からリム吐水口を見え難くするという発明の課題を解決する手段として、本件特許の詳細な説明の記載及び実施例では、「リム吐水口が洗浄水を後方に吐出すること」が特定されているもののみが記載されており、単に特許文献1~3に従来例として、「洗浄水を前方に吐出する」ものを含むものにおいて、上記課題を有する便器が示されていることをもって、洗浄水を前方に吐出するものにまで拡張して課題を解決できる手段として理解する特段の事由があるとはいえない。 よって、上記特許権者の(主張1)を採用することはできない。 (b)(主張2)について (b-1)特許権者は、「上述した従来の水洗大便器の解決課題を前提にすれば、「リム吐水口を隠蔽し易く」とは、リム吐水口を完全に隠蔽することを意図したものではなく、使用者からリム吐水口が見え難くすれば良いと、理解できる。」と主張する。 この点、本件特許の発明の詳細な説明の段落【0022】に「・・・ボウル部よりも前方且つ上方の使用者側から見たリム吐水口16の隠蔽性を保ちつつ、清掃時にしゃがむ等の姿勢で目線をボウル部10付近まで低くし、左右いずれかの内のリム吐水口16が設けられていない側から見た際には、リム吐水口16が視認し易くするため、・・・」の記載を参酌すると、使用者とは別の清掃等を行う者からは視認し易い方がよく、使用者からは隠蔽性を確保しようとしていることが理解される。 よって、本件特許は、使用者からは隠蔽性を確保しようとするものであり、特許権者が主張するように、「完全に隠蔽することを意図したもの」であるとは言い難い、と認められる。 (b-2)次に、特許権者は、取消理由通知書6頁下から4行~末行の記載を引用し、平面視、即ち、真上から見た場合には、リム吐水口が隠蔽し得るものであると、認められている、と主張している。 この点、取消理由通知書の指摘箇所に続く箇所にも説示しているとおり、ボウル部の前方に立った使用者は、平面視、すなわち真上からボウル部を見るのではなく、前方且つ上方から見ることとなる。この場合、リム吐水口がボウル部の前方側領域に形成されていれば、使用者は、ほぼ真上から見るものと同様にボウル部の前方側領域を視認でき、リム吐水口の吐水方向によらず、リム吐水口が隠蔽され得る。これに対して、リム吐水口がボウル部の後方側領域に形成されていると、使用者は、ほぼ真上からではなく、前方側の斜め上方からボウル部の後方側領域を視認することとなり、洗浄水を後方に吐水することが特定されていなければ、前方に立った使用者からは、リム吐水口が視認できることは明らかである。 すなわち、「完全に隠蔽することを意図したもの」ではないとしても、課題は、使用者側から見たリム吐水口の隠蔽性を保つことであり、使用者は使用時に前方且つ上方からボウル部を見ることになり、前方からの視認及び上方からの視認で隠蔽されることを課題としていると解されるところ、特許権者は、真上からボウル部を見た場合にリム吐水口が隠蔽し得るものであると主張しているが、前方側の斜め上方から視認するものを課題として含むものであり、その場合、リム吐水口の吐水方向が特定されておらず、リム吐水口がボウル部の前方側領域に形成されることも特定されていないのであるから、依然として「リム吐水口を隠蔽し易くすることができる」ものであるとは認められない。 よって、上記特許権者の主張を採用することはできない。 (b-3)また、特許権者は、本件特許の明細書の段落【0021】の「ボウル部10より前方且つ上方の使用者が弁座(図示せず)に座った状態の使用者からリム吐水口16を見え難くすることができる。」との記載を引用し、「弁座に座った状態の使用者」とは、使用者が真上から水洗大便器を見た場合であり、リム吐水口は使用者から見えないこと、及び、水洗大便器が設置されているトイレ空間は狭いのが普通であり、「ボウル部10よりも前方且つ上方の使用者」とは、「ボウル部のごく近い位置に立った状態の使用者」であるので、使用者からは、ボウル部がほぼ真下に見えるような状態となっていること、それぞれを主張している。 この点、特許権者の引用した本件特許の発明の詳細な説明の段落【0021】のその前段には、「・・・このリム吐水口16は前方側領域F内の右側領域Rのリム部8に設けられて洗浄水を後方に吐水するものであるため、・・・」という水洗大便器としての前提となる構成に基づくものであることが記載されている。すなわち、本件特許の発明の詳細な説明に開示されている技術的事項は、「リム吐水口16は前方側領域F内」「に設けられて洗浄水を後方に吐水するもの」で、「ボウル部10より前方且つ上方の使用者が弁座(図示せず)に座った状態の使用者からリム吐水口16を見え難くすることができる。」ものであると認められ、特許権者が主張するように、本件特許の発明の詳細な説明に開示された前提を考慮しない「弁座に座った状態の使用者」及び「ボウル部10よりも前方且つ上方の使用者」からリム吐水口が見え難い状態を開示したものではない。 よって、上記特許権者の主張を採用することはできない。 また、使用者からリム吐水口を見え難くするという発明の課題を解決する手段として、本件特許の詳細な説明の記載及び実施例では、「リム吐水口が洗浄水を後方に吐出すること」が特定されているもののみが記載されており、単に特許文献1~3に従来例として、上記課題を有する便器が示されていることをもって、それらにまで拡張されたものが記載されているとはいえない。 以上まとめて、上記特許権者の(主張2)を採用することはできない。 (c)(主張3)について そして、仮に、本件特許の解決すべき課題が、リム吐水口の前方側又は後方側の領域、及び、吐水方向は、無関係であったとしても、本件特許の発明の詳細な説明全般を参酌しても、水洗大便器において、ボウル部の洗浄に関して、リム吐水口から後方に吐水された洗浄水によるボウル部の洗浄すること以外は記載も示唆もされていない。 また、使用者からリム吐水口を見え難くするという発明の課題を解決する手段として、本件特許の詳細な説明の記載及び実施例では、「リム吐水口が洗浄水を後方に吐出すること」が特定されているもののみが記載されており、単に特許文献1~3に従来例として、上記課題を有する便器が示されていることをもって、それらにまで拡張されたものが記載されているとはいえない。 よって、上記「(a)」「(b)」の検討結果を併せて考慮しても、「本件特許の明細書に記載された課題を解決する手段として「リム吐水口が後方に吐水すること」を特定する必要がない。」とはいえない。 c まとめ 上記「b」から、上記特許権者の主張を採用することはできない。 (オ)まとめ よって、本件特許発明2は、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められない。 以上のとおりであるから、本件特許発明2は発明の詳細な説明に記載したものでない。 イ 本件特許発明1及び3について (ア)判断 上記ア(イ)のとおり、本件特許の発明の詳細な説明に記載された課題を解決するための手段は、「リム吐水口が洗浄水を後方に吐出すること」であると認められる。 そして、本件特許発明1及び3は、本件訂正請求書による訂正により、「上記ボウル部内に洗浄水を後方に吐水するリム吐水部と、を有し、」と訂正されたことにより、「リム吐水口が洗浄水を公報に吐水すること」を構成として備えることになった。 結果、本件特許発明1及び3は、「ボウル部の洗浄性能を維持しつつ、リム吐水口を隠蔽し易く、美観性に優れた水洗大便器を提供する」という課題を解決するための手段が反映されたものとなった。 (イ)まとめ よって、本件特許発明1及び3は、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであると認められる。 以上のとおりであるから、本件特許発明1及び3は発明の詳細な説明に記載したものである。 (2)分割要件 本件特許発明2は、上記(1)アのとおり本件特許の発明の詳細な説明に記載されたものではなく、また、同様の理由から本件特許の原出願である特願2018-14317号の当初明細書等及び原出願の分割直前の明細書等にも、「リム吐水口が洗浄水を後方に吐出する」ものしか記載がない。 そして、上記(1)アで説示したとおり、本件特許発明2は、リム吐水口が、前方、すなわち使用者側に吐水する構成を含むことになるところ、当該構成については、原出願の当初明細書等及び原出願の分割直前の明細書等に記載されたものでも、自明なものでもなく、原出願の当初明細書等及び原出願の分割直前の明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるから、本件特許発明2に係る本件特許の出願は分割要件を満たしていない。 よって、本件特許発明2を含む本件特許の出願日は、現実の出願日である令和3年1月26日である。 (3)理由2又は理由3について ア 甲第5号証について (ア)甲第5号証の記載 本件特許の原出願の公開公報である甲第5号証(特開2018-162667号公報)には、以下の記載がある。 (ア-1)「【0006】 上述した課題を解決するために、本発明は、洗浄水源から供給される洗浄水によって洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、ボウル形状の汚物受け面と、この汚物受け面の上縁に形成される棚部と、この棚部の外縁から立ち上がるリム内壁面を形成するリム部と、を備えたボウル部と、上記ボウル部内に洗浄水を吐水するリム吐水部と、を有し、上記ボウル部は、このボウル部を前後方向に二等分する左右方向に延びる中心軸線に対して前方側及び後方側にそれぞれ形成される前方側領域及び後方側領域をそれぞれ備えており、上記リム吐水部は、上記ボウル部の上記リム部に設けられて洗浄水を吐水するリム吐水口を上記リム部の全周において1つ形成し、上記リム吐水口は上記前方側領域の左右いずれかの上記リム部に設けられて洗浄水を後方に吐水するものであり、上記リム内壁面における上記リム吐水口よりも上側の領域は、上記ボウル部の全周に亘って連続的な帯状に形成されていることを特徴としている。 このように構成された本発明においては、リム吐水部が、ボウル部のリム部に設けられて洗浄水を吐水するリム吐水口をリム部の全周において1つ形成し、このリム吐水口が、前方側領域の左右いずれかのリム部に設けられて洗浄水を後方に吐水するものであるため、リム吐水口から後方に吐水された洗浄水によるボウル部の洗浄性能を維持しつつ、ボウル部よりも前方且つ上方の使用者からリム吐水口を見え難くすることができる。 また、リム内壁面における単一のリム吐水口よりも上側の領域がボウル部の全周に亘って連続的な帯状に形成されていることにより、リム吐水口を隠蔽し易くすることができるため、美観性に優れた水洗大便器を提供することができる。 さらに、ボウル部の前端にリム吐水口が形成される場合に比べ、ボウル部の前端が複雑な形状になりにくく、美観性を向上させることができる。」 (ア-2)「【0008】 本発明において、好ましくは、上記リム吐水部は、上記リム吐水口の下流側に通水路を形成し、この通水路の流路断面は、上記棚部の棚面、この棚面の外縁から立ち上がる上記リム内壁面、及び、このリム内壁面の上方部分に形成されるオーバーハング部分のそれぞれにより形成され、上記オーバーハング部分は、その下端から斜め上方に且つ上記ボウル部の内側に向かって傾斜した傾斜面を形成している。 このように構成された本発明においては、リム吐水部がリム吐水口の下流側に通水路を形成し、この通水路の流路断面が、棚部の棚面、この棚面の外縁から立ち上がるリム内壁面、及び、このリム内壁面の上方部分に形成されるオーバーハング部分のそれぞれにより形成され、オーバーハング部分が、その下端から斜め上方に且つボウル部の内側に向かって傾斜した傾斜面を形成しているため、ボウ ル部よりも前方且つ上方の使用者側から見たリム吐水口の隠蔽性を保つことができる。さらに、清掃時にしゃがむ等の姿勢で目線をボウル部付近まで低くした際には、リム吐水口がより視認し易くなるため、清掃具をリム吐水口に当てやすくなる等、清掃性をより向上させることができる。 したがって、リム吐水口の隠蔽性と清掃性とを両立させることができる。」 (ア-3)「【0015】 ここで、図1及び図2に示す本発明の一実施形態による水洗大便器1においては、便器本体2のボウル部10の平面視において、ボウル部10を前後方向に二等分するように水平左右方向に延びる中心軸線を「X」で示し、ボウル部10を左右方向に二等分するように水平前後方向に延びる中心軸線を「Y」で示し、ボウル部10の中心Oを通る鉛直方向に延びる中心軸線を「Z」で示している。 また、図2に示すように、水洗大便器1の前後左右の方向については、「前」、「後」、「左」、「右」でそれぞれ示している。 そして、図1及び図2に示すように、水洗大便器1のボウル部10における中心O、水平左右方向の中心軸線X、及び鉛直方向の中心軸線Zに対して、前方側、後方側のそれぞれの領域について、「前方側領域F」、「後方側領域B」とそれぞれ定義している。 さらに、図2に示すように、水洗大便器1のボウル部10における中心O、水平前後方向の中心軸線Yに対して、前方から見て左側、右側のそれぞれの領域について、「左側領域L」、「右側領域R」とそれぞれ定義している。」 (ア-4)「【0018】 つぎに、図1~図4を参照して、本発明の一実施形態による水洗大便器1のボウル部10のリム吐水口16及びリム部8の詳細について説明する。 まず、図2に示すように、ボウル部10の前方側領域F且つ右側領域Rのリム部8の内周側に形成された単一のリム吐水口16は、ボウル部10内の前端10aからリム吐水口16までの前後方向の距離Y1がボウル部10内の前端10aから後端10bまでの距離Y2の30%の位置に設けられている。 また、図2に示すように、リム吐水口16は、その開口端面A1がボウル部10の左右方向に延びる中心軸線Xと平行になるように形成されている。 これらにより、ボウル部10よりも前方且つ上方の使用者側から見たリム吐水口16の隠蔽性を保つことができるようになっている。また、清掃時にしゃがむ等の姿勢で目線をボウル部10付近まで低くした際には、リム吐水口16が視認し易くなるため、清掃具をリム吐水口16に当てやすくなる等、清掃性を向上させることができるようになっている。 なお、ボウル部10内の前端10aからリム吐水口16までの前後方向の距離Y1については、ボウル部10内の前端10aから後端10bまでの距離Y2の20%~40%になるように設定されていることが好ましく、25%~35%になるように設定されていることが最も好ましい。 【0019】 つぎに、図4は、図2のIV-IV線に沿った断面図である。 図1~図4に示すように、リム吐水口16の下流側には、リム吐水部の一部としても機能する通水路22が形成されている。 また、図4に示すように、通水路22の流路断面A2については、棚部6の棚面6b、この棚面6bの外縁6a付近から立ち上がるリム内壁面8a、及び、このリム内壁面8aの上方部分に形成されるオーバーハング部分8bのそれぞれにより形成されている。 さらに、オーバーハング部分8bは、その下端8cから斜め上方に且つボウル部10の内側に向かって傾斜した傾斜面S1を形成している。 【0020】 また、図1~図4に示すように、リム内壁面8aにおけるリム吐水口16よりも上側の領域U1は、ボウル部10の全周に亘って連続的な帯状に形成されている。 なお、ここでいう「帯状」とは、例えば、リム吐水口16の上下方向の大きさよりも広い範囲で平坦に広がった領域である。」 (ア-5)【図1】 「 [図:0001439168000004.jpg] 」 (ア-6)【図2】 「 [図:0001439168000005.jpg] 」 (ア-7)【図3】 「 [図:0001439168000006.jpg] 」 (ア-8)【図4】 「 [図:0001439168000007.jpg] 」 (イ) 図面から看取できる事項 (イ-1)上記段落【0018】の「リム吐水口16は、その開口端面A1がボウル部10の左右方向に延びる中心軸線Xと平行になるように形成されている」との記載及び【図2】の記載から、開口端面A1は、ボウル部10の左右方向に延びる中心軸線Xと平行になるように、空間上に設定された仮想的な面であって、吐水口16を塞ぐように設定された面であると解せる。 (イ-2)上記(イ-1)を踏まえると、【図1】に示された「16」の指示線が指し示す上下方向に延びる線が、開口端面A1のボウル部10内側縁部の位置を示す線であり、この上下方向に延びる線の上端よりも上側の領域が、リム内壁面における「リム吐水口16の開口端面A1よりも上側の領域」に「U1」が含まれると解される。 (イ-3)上記(イ-2)及び【図1】~【図4】の記載を総合すると、【図1】に示された「16」の指示線が指し示す上下方向に延びる線の上端から左上方へ延びる線は、リム内壁面における「リム吐水口16の開口端面A1よりも上側の領域U1」の下端の一部を示すものと解せる。 (イ-4)上記(イ-3)より、「リム吐水口16の開口端面A1よりも上側の領域U1」の下端の一部を示す線が左上方へ延びることから、【図1】から、「リム吐水口16の開口端面A1よりも上側の領域U1」は、左側に向かうにつれて狭くなることが看取できる。 (イ-5)【図1】の左方向が吐水口16による洗浄水の吐水方向であって、【図1】の左側が下流側であることは明らかである。 (イ-6)上記(イ-1)~(イ-5)を踏まえると、【図1】から、リム内壁面におけるリム吐水口16の開口端面A1よりも上側の領域U1の上下方向の大きさは、リム吐水口16の開口端面A1の位置において、リム吐水口16の開口端面A1の上下方向の大きさよりも広い範囲で形成され、リム吐水口16の開口端面A1の位置から下流側に向かうにつれて狭くなること、が看取できる。 (イ-7)【図4】の記載から、「リム吐水口16の開口端面A1よりも上側の領域U1」の下端よりも下側の領域が通水路22であると解せる。 (イ-8)上記(イ-3)のとおり、【図1】に示された「16」の指示線が指し示す上下方向に延びる線の上端から左上方へ延びる線は、リム内壁面における「リム吐水口16の開口端面A1よりも上側の領域U1」の下端の一部を示すものと解せるから、【図1】~【図4】の記載を総合すると、【図1】に示された「16」の指示線が指し示す上下方向に延びる線の上端から左上方へ延びる線は、通水路22の範囲の境界を示すものと解せる。 (イ-9)上記(イ-7)及び(イ-8)を踏まえると、【図1】から、通水路22の流路断面A2の上下方向の大きさは、通水路22の下流側に向かうにつれて大きくなること、が看取できる。 (イ-10)【図4】において、「U1」の指示線が指し示す面と同じ面に対して、「8」の指示線が示されていることから、【図2】において「8」の指示線が示す環状の線は、平面視におけるリム吐水口16の開口端面A1よりも上側の領域U1を示すものである。 (イ-11)上記(イ-1)及び(イ-10)を踏まえると、【図4】から、リム内壁面におけるリム吐水口16の開口端面A1よりも上側の領域U1は、平面視で、リム吐水口16の開口のリム内壁面8aのうち、ボウル部10の中心側の部分よりも、ボウル部10の中心側の位置に形成されていること、が看取できる。 (ウ) 甲5発明 上記(ア)及び(イ)より、甲第5号証には、次の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されていると認められる。 <甲5発明> 「洗浄水源から供給される洗浄水によって洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって(【0006】)、 ボウル形状の汚物受け面と、この汚物受け面の上縁に形成される棚部と、この棚部の外縁から立ち上がるリム内壁面を形成するリム部と、を備えたボウル部と(【0006】)、 上記ボウル部内に洗浄水を吐水するリム吐水部と、を有し(【0006】)、 ボウル部10における中心O、水平前後方向の中心軸線Yに対して、前方から見て左側、右側のそれぞれの領域について、「左側領域L」、「右側領域R」とそれぞれ定義し(【0015】)、 上記リム吐水部は、上記ボウル部の上記リム部に設けられて洗浄水を吐水するリム吐水口を上記リム部の全周において1つ形成し、上記リム吐水口は左右いずれかの上記リム部に設けられて洗浄水を後方に吐水するものであり(【0006】)、 上記リム内壁面における上記リム吐水口よりも上側の領域は、上記ボウル部の全周に亘って連続的な帯状に形成され(【0006】)、 リム内壁面8aにおけるリム吐水口16よりも上側の領域U1は、ボウル部10の全周に亘って連続的な帯状に形成されており、ここでいう「帯状」とは、例えば、リム吐水口16の上下方向の大きさよりも広い範囲で平坦に広がった領域であり(【0020】)、 リム内壁面におけるリム吐水口16の開口端面A1よりも上側の領域U1は、平面視で、リム吐水口16の開口の縁部のうち、ボウル部10の中心側の部分よりも、ボウル部10の中心側の位置に形成され(上記(イ)(イ-11))、 リム吐水口16は、その開口端面A1がボウル部10の左右方向に延びる中心軸線Xと平行になるように形成され(【0018】)、 リム内壁面におけるリム吐水口16の開口端面A1よりも上側の領域U1の上下方向の大きさは、リム吐水口16の開口端面A1の位置において、リム吐水口16の開口端面A1の上下方向の大きさよりも広い範囲で形成され、リム吐水口16の開口端面A1の位置から下流側に向かうにつれて狭くなり(上記(イ)(イ-6))、 上記リム吐水部は、上記リム吐水口の下流側に通水路を形成し、この通水路の流路断面は、上記棚部の棚面、この棚面の外縁から立ち上がる上記リム内壁面、及び、このリム内壁面の上方部分に形成されるオーバーハング部分のそれぞれにより形成され(【0008】)、 通水路22の流路断面A2の上下方向の大きさは、通水路22の下流側に向かうにつれて大きくなり(上記(イ)(イ-9))、 上記オーバーハング部分は、その下端から斜め上方に且つ上記ボウル部の内側に向かって傾斜した傾斜面を形成している(【0008】)、 水洗大便器。」 イ 当審の判断 (ア)本件特許発明1について a 対比・判断 (a-1)甲5発明の「洗浄水源から供給される洗浄水によって洗浄されて汚物を排出する水洗大便器」は、本件発明1の「洗浄水源から供給される洗浄水によって洗浄されて汚物を排出する水洗大便器」に相当する。 (a-2)甲5発明が「ボウル形状の汚物受け面と、この汚物受け面の上縁に形成される棚部と、この棚部の外縁から立ち上がるリム内壁面を形成するリム部と、を備えたボウル部と、上記ボウル部内に洗浄水を吐水するリム吐水部と、を有」し、「上記リム吐水部は、上記ボウル部の上記リム部に設けられて洗浄水を吐水するリム吐水口を上記リム部の全周において1つ形成し、上記リム吐水口は左右いずれかの上記リム部に設けられて洗浄水を後方に吐水するものであ」ることは、本件発明1が「ボウル形状の汚物受け面と、この汚物受け面の上縁に形成される棚部と、この棚部の外縁から立ち上がるリム内壁面を形成するリム部と、を備えたボウル部と、上記ボウル部内に洗浄水を後方に吐水するリム吐水部と、を有」することに相当する。 (a-3)甲5発明において、「ボウル部10における中心O、水平前後方向の中心軸線Yに対して、前方から見て左側、右側のそれぞれの領域について、」「それぞれ定義」される「左側領域L」、「右側領域R」は、本件発明1の「ボウル部を左右方向に二等分するように水平前後方向に延びる中心軸線に対して左側及び右側にそれぞれ形成される左側領域及び右側領域」に相当するから、甲5発明と本件発明1とは、「上記ボウル部は、このボウル部を左右方向に二等分するように水平前後方向に延びる中心軸線に対して左側及び右側にそれぞれ形成される左側領域及び右側領域をそれぞれ備えて」いる点で一致する。 (a-4)甲5発明において、「上記リム吐水部は、上記ボウル部の上記リム部に設けられて洗浄水を吐水するリム吐水口を上記リム部の全周において1つ形成し、上記リム吐水口は左右いずれかの上記リム部に設けられて洗浄水を後方に吐水するものであ」ることは、本件発明1において「上記リム吐水部は、上記ボウル部の上記リム部に設けられて洗浄水を吐水するリム吐水口を上記リム部の全周において1つ形成し、上記リム吐水口は、上記左側領域又は上記右側領域のいずれかの上記リム部に設けられて洗浄水を吐水するものであ」ることに相当する。 (a-5)甲5発明において、「上記リム内壁面における上記リム吐水口よりも上側の領域は、上記ボウル部の全周に亘って連続的な帯状に形成され、」「平面視でリム吐水口16の開口の内側端よりも内側に形成され、」「「帯状」とは、」「リム吐水口16の上下方向の大きさよりも広い範囲で平坦に広がった領域であ」ることは、本件発明1の「上記リム内壁面における上記リム吐水口よりも上側の領域は、平面視で上記リム吐水口の開口の内側端よりも内側に形成され、且つ、平坦状に形成されており、ボウル部の周方向に連続するように形成されて」いることに相当する。 (a-6)甲5発明において、「リム内壁面におけるリム吐水口16の開口端面A1よりも上側の領域U1は、リム吐水口16の開口端面A1における上下方向の大きさよりも広い範囲で形成され、下流側に向かうにつれて狭くな」ることは、本件発明1において「上記リム内壁面における上記リム吐水口の開口端面よりも上側の領域は、上記リム吐水口の開口端面における上下方向の大きさよりも広い範囲で形成され、下流側に向かうにつれて狭くなること」に相当する。 (a-7)以上のとおりであるから、本件発明1と甲5発明に相違点はない。仮に相違点があるとしても、設計事項程度のことである。 b 特許権者の主張 特許権者は、令和6年5月31日提出の意見書において、「理由2(新規性の欠如)又は理由3(進歩性の欠如)」について、下記のように説明している。 「上述したように、本件特許の出願日は、原出願の出願日であるので、平成30年10月18日に出願公開された甲第5号証(特開2018-162667号公報)は、本件特許の出願日以降に公開されたものであるので、訂正発明2及び4が、甲第5号証から新規性を欠如し、又は、進歩性を欠如しているとの認定はできない。」 しかし、上記(1)(2)で説示したとおり、本件特許発明2は、リム吐水口が、前方、すなわち使用者側に吐水する構成を含むことになるところ、当該構成については、原出願の当初明細書等及び原出願の分割直前の明細書等に記載されたものでも、自明なものでもなく、原出願の当初明細書等及び原出願の分割直前の明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるから、分割要件を満たしていない。 したがって、本件特許発明2を含む本件特許の出願日は、現実の出願日である令和3年1月26日である。 よって、上記特許権者の主張は採用できない。 c 小括 よって、本件発明1は、甲5発明であるか、または甲5発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (イ)本件特許発明2について a 対比・判断 (a-1)甲5発明の「洗浄水源から供給される洗浄水によって洗浄されて汚物を排出する水洗大便器」は、本件特許発明2の「洗浄水源から供給される洗浄水によって洗浄されて汚物を排出する水洗大便器」に相当する。 (a-2)甲5発明が「ボウル形状の汚物受け面と、この汚物受け面の上縁に形成される棚部と、この棚部の外縁から立ち上がるリム内壁面を形成するリム部と、を備えたボウル部と、上記ボウル部内に洗浄水を吐水するリム吐水部と、を有」することは、本件特許発明2が「ボウル形状の汚物受け面と、この汚物受け面の上縁に形成される棚部と、この棚部の外縁から立ち上がるリム内壁面を形成するリム部と、を備えたボウル部と、上記ボウル部内に洗浄水を吐水するリム吐水部と、を有」することに相当する。 (a-3)甲5発明において、「ボウル部10における中心O、水平前後方向の中心軸線Y」は、本件特許発明2の「ボウル部を左右方向に二等分するように水平前後方向に延びる中心軸線」に相当する。そして、甲5発明の「左側領域L」、「右側領域R」は、「ボウル部10における中心O、水平前後方向の中心軸線Yに対して、前方から見て左側、右側のそれぞれの領域について」、「それぞれ定義」されることから、本件特許2の「ボウル部を左右方向に二等分するように水平前後方向に延びる中心軸線に対して左側及び右側にそれぞれ形成される」「左側領域」及び「右側領域」に相当する。 そうしてみると、甲5発明と本件特許発明2とは、「上記ボウル部は、このボウル部を左右方向に二等分するように水平前後方向に延びる中心軸線に対して左側及び右側にそれぞれ形成される左側領域及び右側領域をそれぞれ備えて」いる点で一致する。 (a-4)甲5発明において、「上記リム吐水部は、上記ボウル部の上記リム部に設けられて洗浄水を吐水するリム吐水口を上記リム部の全周において1つ形成し、上記リム吐水口は左右いずれかの上記リム部に設けられて洗浄水を後方に吐水するものであ」ることは、本件特許発明2において「上記リム吐水部は、上記ボウル部の上記リム部に設けられて洗浄水を吐水するリム吐水口を上記リム部の全周において1つ形成し、上記リム吐水口は、上記左側領域又は上記右側領域のいずれかの上記リム部に設けられて洗浄水を吐水するものであ」ることに相当する。 (a-5)甲5発明の「上記リム内壁面における上記リム吐水口よりも上側の領域」は、本件特許発明2の「上記リム内壁面における上記リム吐水口よりも上側の領域」に相当する。 そして、甲5発明において、「上側の領域」が、「平面視で、リム吐水口16の開口の縁部のうち、ボウル部10の中心側の部分よりも、ボウル部10の中心側の位置に形成され」ていることは、本件特許発明2の「上側の領域」が、「平面視で上記リム吐水口の開口の内側端よりも上記ボウル部の中心側に形成され、且つ、平坦状に形成されており、ボウル部の周方向に連続するように形成されて」いることに相当する。 また、甲5発明では、「上側の領域」が「上記ボウル部の全周に亘って連続的な帯状に形成され」ており、「帯状」とは、「リム吐水口16の上下方向の大きさよりも広い範囲で平坦に広がった領域であ」ることから、本件特許発明2の「上側の領域」が「平坦状に形成されており、ボウル部の周方向に連続するように形成されて」いることに相当する。 そうしてみると、甲5発明において、「上記リム内壁面における上記リム吐水口よりも上側の領域は、上記ボウル部の全周に亘って連続的な帯状に形成され、」「平面視で、リム吐水口16の開口の縁部のうち、ボウル部10の中心側の部分よりも、ボウル部10の中心側の位置に形成され」、「「帯状」とは、」「リム吐水口16の上下方向の大きさよりも広い範囲で平坦に広がった領域であ」ることは、本件特許発明2の「上記リム内壁面における上記リム吐水口よりも上側の領域は、平面視で上記リム吐水口の開口の内側端よりも上記ボウル部の中心側に形成され、且つ、平坦状に形成されており、ボウル部の周方向に連続するように形成されて」いることに相当する。 (a-6)甲5発明において、「リム内壁面におけるリム吐水口16の開口端面A1よりも上側の領域U1は、リム吐水口16の開口端面A1における上下方向の大きさよりも広い範囲で形成され、下流側に向かうにつれて狭くな」ることは、本件特許発明2において「上記リム内壁面における上記リム吐水口の開口端面よりも上側の領域は、上記リム吐水口の開口端面における上下方向の大きさよりも広い範囲で形成され、下流側に向かうにつれて狭くなること」に相当する。 (a-7)甲5発明の「上記リム吐水部は、上記リム吐水口の下流側に通水路を形成し、この通水路の流路断面は、上記棚部の棚面、この棚面の外縁から立ち上がる上記リム内壁面、及び、このリム内壁面の上方部分に形成されるオーバーハング部分のそれぞれにより形成され」ることは、本件特許発明2の「上記リム吐水部は、上記リム吐水口の下流側に通水路を形成し、この通水路の流路断面は、上記棚部の棚面、この棚面の外縁から立ち上がる上記リム内壁面、及び、このリム内壁面の上方部分に形成されるオーバーハング部分のそれぞれにより形成され」ることに相当する。 (a-8)甲5発明の「通水路22の流路断面A2の上下方向の大きさは、通水路22の下流側に向かうにつれて大きくな」ることは、本件特許発明2の「上記通水路の流路断面の上下方向の大きさは、上記通水路の下流側に向かうにつれて大きくなる」ことに相当する。 (a-9)以上のとおりであるから、本件特許発明2と甲5発明に相違点はない。仮に相違点があるとしても、設計事項程度のことである。 b 特許権者の主張 特許権者は、令和6年5月31日提出の意見書において、「理由2(新規性の欠如)又は理由3(進歩性の欠如)」について、下記のように説明している。 「上述したように、本件特許の出願日は、原出願の出願日であるので、平成30年10月18日に出願公開された甲第5号証(特開2018-162667号公報)は、本件特許の出願日以降に公開されたものであるので、訂正発明2及び4が、甲第5号証から新規性を欠如し、又は、進歩性を欠如しているとの認定はできない。」 しかし、上記(1)(2)で説示したとおり、本件特許発明2は、リム吐水口が、前方、すなわち使用者側に吐水する構成を含むことになるところ、当該構成については、原出願の当初明細書等及び原出願の分割直前の明細書等に記載されたものでも、自明なものでもなく、原出願の当初明細書等及び原出願の分割直前の明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるから、分割要件を満たしていない。 したがって、本件特許発明2を含む本件特許の出願日は、現実の出願日である令和3年1月26日である。 よって、上記特許権者の主張は採用できない。 c 小括 よって、本件特許発明2は、甲5発明であるか、または甲5発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (ウ)本件特許発明3について a 対比・判断 (a-1)甲5発明の「洗浄水源から供給される洗浄水によって洗浄されて汚物を排出する水洗大便器」は、本件発明3の「洗浄水源から供給される洗浄水によって洗浄されて汚物を排出する水洗大便器」に相当する。 (a-2)甲5発明が「ボウル形状の汚物受け面と、この汚物受け面の上縁に形成される棚部と、この棚部の外縁から立ち上がるリム内壁面を形成するリム部と、を備えたボウル部と、上記ボウル部内に洗浄水を吐水するリム吐水部と、を有」し、「上記リム吐水部は、上記ボウル部の上記リム部に設けられて洗浄水を吐水するリム吐水口を上記リム部の全周において1つ形成し、上記リム吐水口は左右いずれかの上記リム部に設けられて洗浄水を後方に吐水するものであ」ることは、本件発明3が「ボウル形状の汚物受け面と、この汚物受け面の上縁に形成される棚部と、この棚部の外縁から立ち上がるリム内壁面を形成するリム部と、を備えたボウル部と、上記ボウル部内に洗浄水を後方に吐水するリム吐水部と、を有」することに相当する。 (a-3)甲5発明において、「ボウル部10における中心O、水平前後方向の中心軸線Yに対して、前方から見て左側、右側のそれぞれの領域について、」「それぞれ定義」される「左側領域L」、「右側領域R」は、本件発明1の「ボウル部を左右方向に二等分するように水平前後方向に延びる中心軸線に対して左側及び右側にそれぞれ形成される左側領域及び右側領域」に相当するから、甲5発明と本件発明3とは、「上記ボウル部は、このボウル部を左右方向に二等分するように水平前後方向に延びる中心軸線に対して左側及び右側にそれぞれ形成される左側領域及び右側領域をそれぞれ備えて」いる点で一致する。 (a-4)甲5発明において、「上記リム吐水部は、上記ボウル部の上記リム部に設けられて洗浄水を吐水するリム吐水口を上記リム部の全周において1つ形成し、上記リム吐水口は左右いずれかの上記リム部に設けられて洗浄水を後方に吐水するものであ」ることは、本件発明3において「上記リム吐水部は、上記ボウル部の上記リム部に設けられて洗浄水を吐水するリム吐水口を上記リム部の全周において1つ形成し、上記リム吐水口は、上記左側領域又は上記右側領域のいずれかの上記リム部に設けられて洗浄水を吐水するものであ」ることに相当する。 (a-5)甲5発明において、「上記リム内壁面における上記リム吐水口よりも上側の領域は、上記ボウル部の全周に亘って連続的な帯状に形成され、」「平面視でリム吐水口16の開口の内側端よりも内側に形成され、」「「帯状」とは、」「リム吐水口16の上下方向の大きさよりも広い範囲で平坦に広がった領域であ」ることは、本件発明3の「上記リム内壁面における上記リム吐水口よりも上側の領域は、平面視で上記リム吐水口の開口の内側端よりも内側に形成され、且つ、平坦状に形成されており、ボウル部の周方向に連続するように形成されて」いることに相当する。 (a-6)甲5発明において、「リム内壁面におけるリム吐水口16の開口端面A1よりも上側の領域U1は、リム吐水口16の開口端面A1における上下方向の大きさよりも広い範囲で形成され、下流側に向かうにつれて狭くな」ることは、本件発明3において「上記リム内壁面における上記リム吐水口の開口端面よりも上側の領域は、上記リム吐水口の開口端面における上下方向の大きさよりも広い範 囲で形成され、下流側に向かうにつれて狭くなること」に相当する。 (a-7)甲5発明の「上記リム吐水部は、上記リム吐水口の下流側に通水路を形成し、この通水路の流路断面は、上記棚部の棚面、この棚面の外縁から立ち上がる上記リム内壁面、及び、このリム内壁面の上方部分に形成されるオーバーハング部分のそれぞれにより形成され」ることは、本件発明3の「上記リム吐水部は、上記リム吐水口の下流側に通水路を形成し、この通水路の流路断面は、上記棚部の棚面、この棚面の外縁から立ち上がる上記リム内壁面、及び、このリム内壁面の上方部分に形成されるオーバーハング部分のそれぞれにより形成され、」に相当する。 (a-8)甲5発明の「上記オーバーハング部分は、その下端から斜め上方に且つ上記ボウル部の内側に向かって傾斜した傾斜面を形成している」ことは、本件発明3の「上記オーバーハング部分は、その下端から斜め上方に且つ上記ボウル部の内側に向かって傾斜した傾斜面を形成している」ことに相当する。 (a-9)以上のとおりであるから、本件発明3と甲5発明に相違点はない。仮に相違点があるとしても、設計事項程度のことである。 b 特許権者の主張 特許権者は、令和6年5月31日提出の意見書において、「理由2(新規性の欠如)又は理由3(進歩性の欠如)」について、下記のように説明している。 「上述したように、本件特許の出願日は、原出願の出願日であるので、平成30年10月18日に出願公開された甲第5号証(特開2018-162667号公報)は、本件特許の出願日以降に公開されたものであるので、訂正発明2及び4が、甲第5号証から新規性を欠如し、又は、進歩性を欠如しているとの認定はできない。」 しかし、上記(1)(2)で説示したとおり、本件特許発明2は、リム吐水口が、前方、すなわち使用者側に吐水する構成を含むことになるところ、当該構成については、原出願の当初明細書等及び原出願の分割直前の明細書等に記載されたものでも、自明なものでもなく、原出願の当初明細書等及び原出願の分割直前の明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるから、分割要件を満たしていない。 したがって、本件特許発明2を含む本件特許の出願日は、現実の出願日である令和3年1月26日である。 よって、上記特許権者の主張は採用できない。 c 小括 よって、本件発明3は、甲5発明であるか、または甲5発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第5 むすび 上記「第4 2(1)」で示したとおり、本件特許発明2は、発明の詳細に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求するものである。 したがって、本件特許発明2に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 また、上記「第4 2(3)」で示したとおり、本件特許発明1~3は、甲第5号証に記載された発明又は甲第5号証に記載された発明から容易に相当し得るものである。 したがって、本件特許発明2に係る特許は、特許法第29条第1項第3号又は同条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700803

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