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特許異議申立

2026-700500

フェノール樹脂発泡体

審判番号
2026-700500
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-541187
登録番号
7783281
請求日
2026年06月05日
審決日
2026年07月29日
公報発行日
2026年08月28日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】旭化成建材株式会社
  • 【権利者代理人】杉村 憲司
  • 【権利者代理人】杉村 光嗣
  • 【権利者代理人】吉田 憲悟
  • 【権利者代理人】坪内 伸
  • 【異議申立人】堀 久美子
審判長/審判官
  • 審判長 松田 成正
  • 審判官 宮久保 博幸
  • 審判官 加藤 友也
分類
P1651.113-Y (C08J) / P1651.121-Y (C08J)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号
データ出所
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特許第7783281号発明「フェノール樹脂発泡体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7783281号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7783281号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし7に係る特許についての出願は、2021年(令和3年)8月12日を国際出願日とする出願であって、令和7年12月1日にその特許権の設定登録(請求項の数7)がされ、同年同月9日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和8年6月5日に特許異議申立人 堀 久美子(以下、「特許異議申立人」という。)から特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし7)がされたものである。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1ないし7に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 下記、(1)、(2)及び(3)を満たし、独立気泡率80%以上、発泡体密度が20~80kg/m3であるフェノール樹脂発泡体。 (1)フェノール樹脂発泡体の最表層における金属化合物の存在割合が0.5~25.0%である。 (2)フェノール樹脂発泡体の中心層における金属化合物の存在割合が0.5~15.0%である。 (3)フェノール樹脂発泡体の最表層から厚み方向に5mmの位置で最表層と平行に切断した断面の平均気泡径が50~120μmである。 【請求項2】 23℃における熱伝導率が0.0260W/(m・K)以下である請求項1に記載のフェノール樹脂発泡体。 【請求項3】 前記フェノール樹脂発泡体の最表層における金属化合物の存在割合は、前記フェノール樹脂発泡体の中心層における金属化合物の存在割合よりも大きい請求項1または2に記載のフェノール樹脂発泡体。 【請求項4】 前記金属化合物の金属が、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、バリウム、アルミニウム、鉄、ナトリウム、カリウムの群から選択される少なくとも1種である請求項1~3のいずれか1項に記載のフェノール樹脂発泡体。 【請求項5】 前記金属化合物の金属が、カルシウムである請求項1~3のいずれか1項に記載のフェノール樹脂発泡体。 【請求項6】 前記金属化合物の金属が、酸化物、塩化物、硫酸化物、炭酸化物の群から選択される少なくとも1種との組み合わせで構成される、1種以上の金属化合物である請求項1~5のいずれか1項に記載のフェノール樹脂発泡体。 【請求項7】 耐アルカリ性試験後の引張強度の強度維持率が30%以上である請求項1~6のいずれか1項に記載のフェノール樹脂発泡体。」 第3 特許異議申立書に記載された特許異議申立ての理由の概要等 令和8年6月5日に特許異議申立人から提出された特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載された特許異議申立ての理由の概要及び証拠方法は次のとおりである。 1 申立理由(甲第1号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1ないし7は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 2 証拠方法 甲第1号証:国際公開第2016/152155号 甲第2号証:特開2008-24868号公報 甲第3号証:国際公開第2009/048717号 甲第4号証:特開2019-85522号公報 甲第5号証:特開2019-72922号公報 甲第6号証:特開2018-165049号公報 証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。 第4 申立理由(甲1に基づく新規性・進歩性)について 1 甲1に記載された事項等 (1)甲1に記載された事項 甲1には、「フェノール樹脂発泡体及びその製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。下線は当審で付したものである。 ・「請求の範囲 [請求項1] フェノール樹脂と、塩素化ハイドロフルオロオレフィン、非塩素化ハイドロフルオロオレフィン、及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し 密度が20kg/m3以上100kg/m3以下であり、 平均気泡径が10μm以上300μm以下であり、 独立気泡率が80%以上99%以下であり、 透湿率が0.38ng/(m・s・Pa)以上2.00ng/(m・s・Pa)以下であることを特徴とするフェノール樹脂発泡体。」 ・「技術分野 [0001] 本発明は、フェノール樹脂発泡体及びその製造方法に関する。 背景技術 [0002] 近年、省エネに関する意識向上、及び次世代省エネ基準の義務化等により、住宅の高気密性能、断熱性能の向上が求められてきている。このように住宅の気密性能及び断熱性能向上の要求に伴い、必要とされる断熱材の厚みが増すことが予想されるが、室内の居住スペースの圧迫や壁体内の空間に制限があることから、断熱材の厚みが増すことに伴う設計変更が必要となるといった問題が生じていた。また、断熱材は壁体内に施工されるため、施工後の交換は非常に困難であることから、断熱材には長期間に渡って断熱性能が維持されることも要求されてきている。 [0003] 住宅用途の断熱材としてはグラスウール、ロックウールをはじめとする繊維系の断熱材やスチレン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂を発泡させた発泡プラスチック系の断熱材が知られている。また、発泡プラスチック系の断熱材は、気泡内に内包される化合物の種類や状態によって断熱性能が大きく影響を受けることが知られている。 [0004] 従来、発泡プラスチック系の断熱材に用いる上記化合物としては、ガスの熱伝導率が低いクロロフルオロカーボン(CFC)が使用されていた。しかしながら、CFCは、オゾン層の破壊や気候変動に大きく寄与することから、1987年に採択されたモントリオール議定書により使用が廃止された。この結果、上記化合物としてオゾン破壊係数が比較的低いハイドロフルオロカーボン(HFC)などへ転換が進んだ。しかしながら、HFCは、高い地球温暖化係数を有している物質が多く、オゾン破壊係数、及び地球温暖化係数が一層低い化合物への転換が求められている。 [0005] 上記化合物として炭化水素系化合物は、オゾン破壊係数、地球温暖化係数が極めて低く、環境保護の点で非常に優れた化合物である。一方で、従来のCFC系化合物と比較して、熱伝導率が高いという課題があった。 [0006] 特許文献1、特許文献2には、オゾン破壊係数が低い又はゼロであり、地球温暖化係数が低い不飽和ハロゲン化ヒドロオレフィンを含む化合物が開示されている。」 ・「発明が解決しようとする課題 [0008] しかしながら、特許文献1、特許文献2には、不飽和ハロゲン化ヒドロオレフィンを含む化合物をポリウレタン樹脂発泡体やポリイソシアヌレート樹脂発泡体に適用した例しか記載されておらず、フェノール樹脂発泡体に適用した例は記載されていない。 そこで、本発明者らがフェノール樹脂発泡体への適用について研究を重ねたところ、特許文献1、特許文献2において多くのハロゲン化ヒドロオレフィンが開示されているが、これらの化合物は極性が高いために、フェノール樹脂発泡体に使用する場合、親水基である水酸基を有するフェノール樹脂を可塑化してしまい、フェノール樹脂発泡体の気泡径を粗大化させてしまったり、独立気泡率を低下させてしまったりする虞があることが明らかとなった。そのため、本発明者らの研究によれば、フェノール樹脂発泡体の製造においてハロゲン化ヒドロオレフィンを含む化合物を使用した場合、環境への負荷は低減できるものの、気泡径が粗大化したり、独立気泡率が低下したりして熱伝導率が悪化することで、長期間にわたって優れた断熱性能が発揮されなくなる虞があるという問題が生じることが明らかとなった。更に気泡径の粗大化に伴いフェノール樹脂発泡体の単位厚みあたりの気泡膜の減少や独立気泡率の低下等に伴って透湿量が増加するため、そのようなフェノール樹脂発泡体を内断熱施工した住宅では、冬季に屋内で発生した湿気がフェノール樹脂発泡体を透過する量が増えることにより屋外側の壁体内部で結露が発生して、カビ等に起因する健康上のリスクが発生し易くなるという課題もあった。 [0009] そこで、本発明は、環境への負荷が低く(オゾン破壊係数が低い又はゼロであり、且つ地球温暖化係数が低く)、且つ長期間にわたって優れた断熱性能を維持でき、更には透湿量増加に伴う壁体内部の結露を低減させたフェノール樹脂発泡体及びその製造方法を提供することを目的とする。」 ・「[0021] 本実施形態におけるフェノール樹脂発泡体は、さらに、無機化合物を含有していてもよい。水酸化アルミニウム、タルク、酸化ケイ素、ガラス粉、酸化チタンなどの無機化合物を含有していると気泡径が微細化する傾向があり、熱伝導率が向上するという利点がある。中でも、水酸化アルミニウムが好ましい。」 ・「[0048] 上記フェノール樹脂発泡体は、上記発泡性フェノール樹脂組成物を、発泡及び硬化(加熱硬化)させることにより得ることができる。フェノール樹脂発泡体は、例えば、上記発泡性フェノール樹脂組成物を走行する面材(下面材)上に連続的に吐出し、フェノール樹脂組成物の面材と接触する面とは反対側の面を、他の面材(上面材)で被覆し(発泡又は未発泡のフェノール樹脂組成物の両面を面材で挟み)、加熱硬化させる連続生産方式や、型枠内面に面材を設けたり、離型剤を塗布したりして、上記発泡性フェノール樹脂組成物を流し込み、発泡及び加熱硬化させるバッチ生産方式などにより得ることができる。中でも、生産性、及び得られるフェノール樹脂発泡体の品質の観点から、連続生産方式が好ましい。」 ・「実施例 [0059] 以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。 [0060](評価) 実施例及び比較例中のフェノール樹脂、フェノール樹脂発泡体について、以下の項目の測定及び評価を行った。 [0061](1)発泡体密度 JIS K 7222に準拠して、実施例及び比較例で得られたフェノール樹脂発泡体積層板から、20cm角の試料を切り出し、面材を取り除いて、フェノール樹脂発泡体の質量と見かけ容積を測定した。求めた質量及び見かけ容積を用いて、発泡体密度(発泡体見かけ密度)を算出した。 [0062](2)平均気泡径 JIS K 6402記載の方法を参考に、以下の方法で測定した。 実施例及び比較例で得られたフェノール樹脂発泡体積層板中のフェノール樹脂発泡体の厚み方向ほぼ中央を表裏面に平行に切削して得られた切断面を走査型電子顕微鏡で50倍に拡大した写真を撮影し、得られた写真上に9cmの長さ(実際の発泡体断面における1,800μmに相当する)の直線を4本引き、各直線が横切った気泡の数の平均値を求めた。平均気泡径は、横切った気泡の数の平均値で、1,800μmを除した値である。 [0063](3)独立気泡率 ASTM D 2856-94(1998)A法を参考に以下の方法で測定した。 実施例及び比較例で得られたフェノール樹脂発泡体積層板中のフェノール樹脂発泡体の厚み方向中央部から、約25mm角の立方体試片を切り出した。厚みが薄く25mmの均質な厚みの試片が得られない場合は、切り出した約25mm角の立方体試片表面を約1mmずつスライスし均質な厚みを有する試片を用いた。各辺の長さをノギスにより測定し、見かけ体積(V1:cm3)を計測すると共に試片の重量(W:有効数字4桁,g)を測定した。引き続き、エアーピクノメーター(東京サイエンス社、商品名「MODEL1000」)を使用し、ASTM D 2856のA法に記載の方法に従い、試片の閉鎖空間体積(V2:cm3)を測定した。 また、上述の(2)平均気泡径の測定法に従い平均気泡径(t:cm)を計測すると共に、上記試片の各辺の長さより、試片の表面積(A:cm2)を計測した。 t及びAより、式VA=(A×t)/1.14により、試片表面の切断された気泡の開孔体積(VA:cm3)を算出した。また、固形フェノール樹脂の密度は1.3g/cm3とし、試片に含まれる気泡壁を構成する固体部分の体積(VS:cm3)を式VS=試片重量(W)/1.3により、算出した。 下記式(8)により独立気泡率を算出した。 独立気泡率(%)=〔(V2-VS)/(V1-VA-VS)〕×100 (8) 同一製造条件の発泡体サンプルについて6回測定し、その平均値を代表値とした。 ・・・(略)・・・ [0065](5)初期熱伝導率 JIS A 1412-2:1999に準拠し、以下の方法で23℃における熱伝導率を測定した。 実施例及び比較例で得られたフェノール樹脂発泡体積層板を600mm角に切断し、試片を温度23±1℃、湿度50±2%の雰囲気に入れ、24時間ごとに質量の経時変化を測定し、24時間経過の質量変化が0.2質量%以下になるまで、状態調節をした。状態調節された試片は、同環境下に置かれた熱伝導率装置に導入した。 熱伝導率測定は、フェノール樹脂発泡体表面を傷つけないように面材を剥がし、低温板13℃高温板33℃の条件で、それぞれ試片1枚・対称構成方式の測定装置(英弘精機株式会社製、商品名「HC-074/600」)を用い行った。」 ・「[0071](実施例1) 反応器に52質量%ホルムアルデヒド水溶液3500kgと99質量%フェノール2510kgを仕込み、プロペラ回転式の攪拌機により攪拌し、温調機により反応器内部液温度を40℃に調整した。次いで50質量%水酸化ナトリウム水溶液を反応液のpHが8.7になるまで加えた。反応液を1時間かけて85℃まで昇温し、その後オストワルド粘度が200センチストークス(200×10-6m2/s、25℃における測定値、終点粘度)に到達した段階で、反応液を冷却し、尿素を400kg添加した。その後、反応液を30℃まで冷却し、パラトルエンスルホン酸一水和物の50重量%水溶液を、pHが6.4になるまで添加した。得られた反応液を薄膜蒸発機によってフェノール樹脂中の水分率が8.3質量%となるまで濃縮処理した結果、粘度は20000mPa・sであった。 [0072] フェノール樹脂100質量部に対して、界面活性剤としてエチレンオキサイド-プロピレンオキサイドのブロック共重合体50質量%とポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル50質量%との混合物を2.0重量部の割合で混合した。上記界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して、揮発性化合物として1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを11質量部、硬化触媒としてキシレンスルホン酸80質量%とジエチレングリコール20質量%との混合物14質量部を、15℃に温調したミキシングヘッドで混合し、発泡性フェノール樹脂組成物を調製した。そして、発泡性フェノール樹脂組成物の吐出温度を30℃にして移動する面材上に供給した。 [0073] 面材上に供給した発泡性フェノール樹脂組成物は、面材と接触する面とは反対側の面が、他の面材で被覆されると同時に、二枚の面材で挟み込まれるようにして、80℃に加熱されたスラット型ダブルコンベアに導入し、15分の滞留時間で硬化させた後、110℃のオーブンで2時間キュアしてフェノール樹脂発泡体積層板を得た。」 ・「[0090](実施例18) フェノール樹脂のオストワルド粘度を80センチストークス、体積平均粒径20μmの水酸化アルミニウムをフェノール樹脂100質量部に対して5質量部添加し、揮発性化合物として1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(90質量%)とシクロペンタン(10質量%)との混合物を、界面活性剤が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して10質量部添加し、27℃に温調したミキシングヘッドで混合し、吐出温度を50℃としたこと以外は実施例1と同様にしてフェノール樹脂発泡体積層板を得た。」 ・「[0113] 上記実施例及び比較例で使用したフェノール樹脂の評価結果、及びフェノール樹脂発泡体の評価結果を表1及び表2に示す。 [0114] [表1] [図:0001438327000001.jpg] 」 (2)甲1に記載された発明 甲1に記載された事項を、特に実施例18及び[0062]に関して整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。 <甲1発明> 「実施例18として得られたフェノール樹脂発泡体積層体における二枚の面材で挟まれた発泡体密度が29.1kg/m3、厚み方向ほぼ中央を表裏面に平行に切削して得られた切断面を走査型電子顕微鏡で50倍に拡大した写真を撮影し、得られた写真上に9cmの長さ(実際の発泡体断面における1,800μmに相当する)の直線を4本引き、各直線が横切った気泡の数の平均値である平均気泡径が91μm、独立気泡率が96.0%のフェノール樹脂発泡体。」(当審注:「実施例18」については上記(1)参照。) 2 本件特許発明1について (1)対比 本件特許発明1と甲1発明を対比する。 甲1発明における「発泡体密度が29.1kg/m3」は本件特許発明1における「発泡体密度が20~80kg/m3」という発明特定事項の条件を満たす。 甲1発明における「独立気泡率が96.0%」は本件特許発明1における「独立気泡率80%以上」という発明特定事項の条件を満たす。 甲1発明における「実施例18として得られたフェノール樹脂発泡体積層体における二枚の面材で挟まれた」「フェノール樹脂発泡体」は本件特許発明1における「フェノール樹脂発泡体」に相当する。 そうすると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「独立気泡率80%以上、発泡体密度が20~80kg/m3であるフェノール樹脂発泡体。」 そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。 <相違点1> 本件特許発明1においては「下記、(1)」「を満たし、」「(1)フェノール樹脂発泡体の最表層における金属化合物の存在割合が0.5~25.0%である。」と特定されているのに対し、甲1発明においてはそのようには特定されていない点。 <相違点2> 本件特許発明1においては「下記、」「(2)」「を満たし、」「(2)フェノール樹脂発泡体の中心層における金属化合物の存在割合が0.5~15.0%である。」と特定されているのに対し、甲1発明においてはそのようには特定されていない点。 <相違点3> 本件特許発明1においては「下記、」「(3)を満たし、」「(3)フェノール樹脂発泡体の最表層から厚み方向に5mmの位置で最表層と平行に切断した断面の平均気泡径が50~120μmである。」と特定されているのに対し、甲1発明においては「厚み方向ほぼ中央を表裏面に平行に切削して得られた切断面を走査型電子顕微鏡で50倍に拡大した写真を撮影し、得られた写真上に9cmの長さ(実際の発泡体断面における1,800μmに相当する)の直線を4本引き、各直線が横切った気泡の数の平均値である平均気泡径が91μm」と特定されている点。 (2)判断 事案に鑑み、相違点3について検討する。 甲1発明における「平均気泡径」は「厚み方向ほぼ中央を表裏面に平行に切削して得られた切断面」における「平均気泡径」であり、「最表層から厚み方向に5mmの位置で最表層と平行に切断した断面の平均気泡径」ではない。 そうすると、甲1には、甲1発明が「フェノール樹脂発泡体の最表層から厚み方向に5mmの位置で最表層と平行に切断した断面の平均気泡径が50~120μmである。」という本件特許発明1の発明特定事項の条件を満たすことは記載も示唆もされていないし、甲1発明が上記発明特定事項の条件を満たすことが本件特許の出願時の当業者の技術常識であるともいえない。 したがって、相違点3は実質的な相違点である。 また、甲1を含めいずれの証拠にも、甲1発明において、「フェノール樹脂発泡体の最表層から厚み方向に5mmの位置で最表層と平行に切断した断面の平均気泡径」に着目し、その値を「50~120μm」の範囲内として、「フェノール樹脂発泡体の最表層から厚み方向に5mmの位置で最表層と平行に切断した断面の平均気泡径が50~120μmである。」という本件特許発明1の発明特定事項の条件を満たすようにする動機付けとなる記載はない。 よって、甲1発明において、甲1及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点3に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は「耐アルカリ性に優れたフェノール樹脂発泡体」「を提供することができる」(本件特許の発明の詳細な説明の【0012】)という本件特許発明1の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 (3)特許異議申立人の主張について ア 特許異議申立人の主張 特許異議申立人は、相違点3に関して、特許異議申立書の第27及び28ページにおいて、おおむね次のとおり主張する。主張の適記に際し空白行は省略した。 「これに対し、引用発明は以下の構成(イ)を有する。 (イ)平均気泡径が91μmであり、 構成(イ)の9lμmは、構成要件lGの「50~120μm」に該当する。 なお、構成要件lGは、「平均気泡径」を、「フェノール樹脂発泡体の最表層から厚み方向に5mmの位置で最表層と平行に切断した断面の平均気泡径」と規定している。 これに対して、引用発明の構成(イ)の平均気泡径は、フェノール樹脂発泡体の最表層から厚み方向に5mmの位置で最表層と平行に切断した断面の平均気泡径かどうか明らかではない。 しかしながら、引用発明は、構成(キ)において、揮発性化合物を混合して発泡体を得ており、フェノール樹脂発泡体中の気泡の平均的な大きさは、最表層であっても、中央層であっても、最表層から厚み5mmの位置であってもほぼ変わりがないと考えられる。また、引用発明の構成(イ)の「91μm」という値は、構成要件lGの数値範囲「50~120μm」の中央に近い値である。 そのため、引用発明のフェノール樹脂発泡体は、フェノール樹脂発泡体の最表層から厚み方向に5mmの位置で最表層と平行に切断した断面の平均気泡径が9lμmであり、「50~120μm」という数値範囲内に含まれる蓋然性が高い。 よって、構成要件1Gの点で本件発明と引用発明は一致する。」(当審注:「引用発明」は特許異議申立人が甲1の実施例18から認定した発明のことであり、「構成要件1G」は「(3)フェノール樹脂発泡体の最表層から厚み方向に5mmの位置で最表層と平行に切断した断面の平均気泡径が50~120μmである。」という発明特定事項のことであり、「構成(キ)」は特許異議申立人が引用発明の発明特定事項として認定した「上記界面活性剤及び無機化合物が混合されたフェノール樹脂100質量部に対して、揮発性化合物として1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(90質量%)とシクロペンタン(10質量部)との混合物を10質量部、硬化触媒としてキシレンスルホン酸80質量%とジエチレングリコール20質量%との混合物14質量部を、27℃に温調したミキシングヘッドで混合し、発泡性フェノール樹脂組成物を調製する工程」のことであり、「本件発明」は「本件特許発明1」のことである。) イ 特許異議申立人の主張についての判断 上記主張について検討する。 本件特許発明1は、本件特許の発明の詳細な説明の【0045】、【0048】、【0049】及び【0070】ないし【0084】によると、「雰囲気温度は60℃以上80℃以下、かつ滞留時間は5分以上20分以下であることが好ましい。」とされる「予成形工程(C)」を含む製造方法により製造されるものであり、該「予成形工程(C)」により、「発泡性フェノール樹脂組成物の表層近傍の発泡剤の揮発を促進させつつも、発泡性フェノール樹脂組成物の表層を速やかに硬化させることで、所望のフェノール樹脂発泡体を得ることが可能となる」(本件特許の発明の詳細な説明の【0049】)ものである。 他方、甲1発明の認定の根拠となった実施例18は、上記「予成形工程(C)」に相当する工程を有していない。 そうすると、上記実施例18においては、「予成形工程(C)」がないことから、発泡体を急激に加熱することになり、表層の硬化が早く進み、気泡が形成される前に固化するため、表層付近の平均気泡径は大きくならないといえる(このことは、本件特許の審査の過程において、特許権者 旭化成建材株式会社が令和7年4月8日に提出した意見書に添付された実験成績証明書によっても裏付けられている。)。 したがって、上記実施例18は、揮発性化合物を混合して発泡体を得ているとしても、「フェノール樹脂発泡体中の気泡の平均的な大きさは、最表層であっても、中央層であっても、最表層から厚み5mmの位置であってもほぼ変わりがないと考えられる。」とはいえないし、「フェノール樹脂発泡体の最表層から厚み方向に5mmの位置で最表層と平行に切断した断面の平均気泡径が9lμmであり、「50~120μm」という数値範囲内に含まれる蓋然性が高い。」ともいえないので、その結果として、「構成要件1Gの点で本件発明と引用発明は一致する。」とはいえない。 したがって、上記主張は採用できない。 (4)まとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1発明であるとはいえないし、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 3 本件特許発明2ないし7について 本件特許発明2ないし7は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1発明であるとはいえないし、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 4 申立理由についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし7は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当しないので、申立理由によっては取り消すことはできない。 第5 結語 上記第4のとおり、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立ての理由によっては取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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