2021-700035
パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物を含む組成物
- 審判番号
- 2021-700035
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-538375外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年01月14日
- 審決日
- 2021年09月30日
- 公報発行日
- 2021年12月24日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ダイキン工業株式会社
- 【権利者代理人】山田 卓二
- 【権利者代理人】吉田 環
- 【権利者代理人】式見 真行
- 【異議申立人】宮本 邦彦
- 分類
- P1651.121-YAA(C08L) / P1651.536-YAA(C08L) / P1651.537-YAA(C08L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
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結論
理由
目次 ▾ 16項目
第1 手続の経緯及び証拠方法
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1.手続の経緯
特許第6724994号(請求項の数32。以下、「本件特許」という。)は、平成29年8月30日(優先権主張:平成28年9月8日、日本国)を国際出願日とする特許出願(特願2018-538375号)に係るものであって、令和2年6月29日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は、令和2年7月15日である。)。
その後、令和3年1月14日に、本件特許の請求項1~32に係る特許に対して、特許異議申立人である宮本邦彦(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立て(以下、「申立」という。)がされた。
それ以降の手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年 4月26日付け 取消理由通知書
同年 7月 5日 訂正の請求及び意見書の提出(特許権者)
同年 7月 8日付け 通知書(申立人宛)
同年 8月11日 意見書(申立人)の提出
2.証拠方法
申立人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。
(以下、「甲第1号証」~「甲第4号証」を、それぞれ「甲1」~「甲4」という。)
第2 訂正の適否
1.訂正事項
令和3年7月5日付けの訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の請求は、特許請求の範囲を、上記訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおりに訂正することを求めるものであり、その内容は、以下のとおりのものである。下線は、訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、
「PFPE2は、各出現においてそれぞれ独立して、式:-(OC6F12)a-(OC5F10)b-(OC4F8)c-(OC3F6)d-(OC2F4)e-(OCF2)f-(式中、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は少なくとも1であり、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。)で表される基であり;」とあるのを、
「PFPE2は、各出現においてそれぞれ独立して、式:-(OC6F12)a-(OC5F10)b-(OC4F8)c-(OC3F6)d-(OC2F4)e-(OCF2)f-(式中、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は少なくとも1であり、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり、OC6F12、OC5F10、OC4F8、OC3F6、及びOC2F4は、直鎖状である。)で表される基であり;」と訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1において、
「Rf2は、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1~16のアルキル基を表し;」とあるのを
「Rf2は、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい直鎖の炭素数1~16のアルキル基を表し;」と訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1において、
「Aは、-COOR3、または-PO(OH)2であり;」とあるのを
「Aは、-COOR3であり;」と訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1において、
「数平均分子量の差が2000以内である、」とあるのを、
「数平均分子量の差が2000以内であり、」とし、その後に、
「前記パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物と前記式(E1)で表される化合物の含有量のモル比は、99.99:0.01~97:3である」の発明特定事項を加える。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項16において、
「Rf2が、炭素数1~16のパーフルオロアルキル基である」とあるのを、
「Rf2が、直鎖の炭素数1~16のパーフルオロアルキル基である」と訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項17において、
「PFPE2が下記式(a)、(b)または(c):-(OC3F6)d- (a)[式中、dは1以上200以下の整数である。]-(OC4F8)c-(OC3F6)d-(OC2F4)e-(OCF2)f- (b)続きを表示(全13行)[式中、cおよびdは、それぞれ独立して、0以上30以下の整数であり;eおよびfは、それぞれ独立して、1以上200以下の整数であり;c、d、eおよびfの和は、10以上200以下の整数であり;添字c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。]-(R6-R7)q- (c)[式中、R6は、OCF2またはOC2F4であり;R7は、OC3F6、OC4F8、OC5F10およびOC6F12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2または3つの基の組み合わせであり;qは、2~100の整数である。]である」とあるのを、
「PFPE2が下記式(a)、(b)または(c):-(OC3F6)d- (a)[式中、dは1以上200以下の整数であり、OC3F6は、直鎖状である。]続きを表示(全16行)-(OC4F8)c-(OC3F6)d-(OC2F4)e-(OCF2)f- (b)[式中、cおよびdは、それぞれ独立して、0以上30以下の整数であり;eおよびfは、それぞれ独立して、1以上200以下の整数であり;c、d、eおよびfの和は、10以上200以下の整数であり;添字c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意であり、OC4F8、OC3F6、及びOC2F4は、直鎖状である。]-(R6-R7)q- (c)[式中、R6は、OCF2またはOC2F4であり;R7は、OC3F6、OC4F8、OC5F10およびOC6F12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2または3つの基の組み合わせであり;qは、2~100の整数であり、OC6F12、OC5F10、OC4F8、OC3F6、及びOC2F4は、直鎖状である。]である」と訂正する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項20を削除する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項21において、
「請求項1~20のいずれか1項に記載の組成物。」とあるのを、
「請求項1~19のいずれか1項に記載の組成物。」と訂正する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項22において、
「請求項1~21のいずれか1項に記載の組成物。」とあるのを、
「請求項l~19および21のいずれか1項に記載の組成物。」と訂正する。
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項24において、
「請求項1~23のいずれか1項に記載の組成物。」とあるのを、
「請求項l~19および21~23のいずれか1項に記載の組成物。」と訂正する。
(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項25において、
「請求項1~24のいずれか1項に記載の組成物。」とあるのを、
「請求項l~19および21~24のいずれか1項に記載の組成物。」と訂正する。
(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項26において、
「請求項1~25のいずれか1項に記載の組成物。」とあるのを、
「請求項l~19および21~25のいずれか1項に記載の組成物。」と訂正する。
(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項27において、
「請求項1~26のいずれか1項に記載の組成物」とあるのを、
「請求項l~19および21~26のいずれか1項に記載の組成物」と訂正する。
(14)訂正事項14
特許請求の範囲の請求項28において、
「請求項1~26のいずれか1項に記載の組成物」とあるのを、
「請求項l~19および21~26のいずれか1項に記載の組成物」と訂正する。
2.一群の請求項について
訂正前の請求項2~32は、訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用する関係にあり、訂正事項1~14によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~32に対応する訂正後の請求項1~32は、一群の請求項に該当するものである。
3.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・
変更の存否
(1)訂正事項1、6
訂正事項1、6は、訂正前の請求項1、17の「PFPE2」の定義で用いられている「OC6F12」、「OC5F10」、「OC4F8」、「OC3F6」、「OC2F4」について、本件明細書の
「【0170】上記式中、PFPE2は、上記したPFPE1と同様のパーフルオロ(ポリ)エーテル基であり、それぞれ独立して、式:-(OC6F12)a-(OC5F10)b-(OC4F8)c-(OC3F6)d-(OC2F4)e-(OCF2)f-で表される基である。【0171】これら繰り返し単位は、直鎖状であっても、分枝鎖状であってもよいが、好ましくは直鎖状である。」
との記載に基づき、「直鎖状」のものに限定するものであるから、訂正事項1、6は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえない。
(2)訂正事項2、5
訂正事項2、5は、訂正前の請求項1、16の「Rf2」について、本件明細書の
「【0175】上記式中、Rf2は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1~16のアルキル基を表す。【0176】上記1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1~16のアルキル基における「炭素数1~16のアルキル基」は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖または分枝鎖の炭素数1~6、特に炭素数1~3のアルキル基であり、より好ましくは直鎖の炭素数1~3のアルキル基である。」
との記載に基づき、「直鎖状」のものに限定するものであるから、訂正事項2、5は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえない。
(3)訂正事項3
訂正事項3は、訂正前の請求項1の「A」として記載されていた「-COOR3、または-PO(OH)2」の選択肢のうち、「-PO(OH)2」を削除するものであるから、訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえない。
(4)訂正事項4
訂正事項4は、訂正前の請求項1に記載されていた、「一般式(B1)、(B2)、(C1)、(C2)、(D1)および(D2)で表されるパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物」と、「式(E1)で表される化合物」の量的関係を、本件明細書の
「【0192】一の態様において、本発明の組成物中の上記パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物と上記パーフルオロ(ポリ)エーテル変性化合物の含有量の比は、99.99:0.01~97:3、好ましくは99.9:0.1~98:2であり得る。…」との記載、及び、
「【0246】実施例1上記合成例1で得たパーフルオロポリエーテル変性メチルエステル化合物(A)および下記に示すパーフルオロポリエーテル変性シラン化合物(X)を、モル比2:98で混合し、ノベック7200(スリーエム社製)に溶解させて、濃度20wt%になるように、表面処理剤1を調製した。…」
との記載に基づき、「モル比」として、「99.99:0.01~97:3」の範囲に限定するものであるから、訂正事項4は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえない。
なお、申立人は、令和3年8月11日提出の意見書において、「本件明細書では、上記「含有量の比」は「モル比」とも「質量比」とも解され得ることから、段落【0192】の記載を根拠に…一義的に決められるものではない。」と主張する。
しかしながら、上記のとおり、本件明細書の実施例1には、「モル比」に関する記載がある一方で、「質量比」に関する記載はなく、「99.99:0.01~97:3」が、「モル比」を意図していることは明らかであるから、申立人の主張は当を得ないものである。
(5)訂正事項7
訂正事項7は、訂正前の請求項20を単に削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものともいえない。
(6)訂正事項8~14
訂正事項8~14は、訂正事項7により、訂正前の請求項20が削除されたことに伴い、訂正前の請求項21~22、24~28が引用している訂正前の請求項20を単に削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものともいえない。
4.小括
以上のとおり、本件訂正請求による訂正事項1~14は、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とするものであり、いずれも同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合している。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおりに訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
本件訂正により訂正された請求項1~32に係る発明(以下、項番に従い、「本件発明1」などといい、これらを総称して、「本件発明」ということがある。また、本件特許の設定登録時の明細書を「本件明細書」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~32に記載された、以下の事項によって特定されるとおりのものである。下線は、訂正箇所を示す。
「【請求項1】下記一般式(B1)、(B2)、(C1)、(C2)、(D1)および(D2):【化1】[式中: PFPE1は、各出現においてそれぞれ独立して、式:続きを表示(全276行)-(OC6F12)a-(OC5F10)b-(OC4F8)c-(OC3F6)d-(OC2F4)e-(OCF2)f-(式中、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は少なくとも1であり、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。)で表される基であり;Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1~16のアルキル基を表し;R1は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し;R2は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~22のアルキル基を表し;n1は、(-SiR1n1R23-n1)単位毎に独立して、0~3の整数であり;ただし、式(B1)および(B2)において、少なくとも1つのn1が、1~3の整数であり;X5は、それぞれ独立して、単結合または2~10価の有機基を表し;βは、それぞれ独立して、1~9の整数であり;β’は、それぞれ独立して、1~9の整数であり;X7は、それぞれ独立して、単結合または2~10価の有機基を表し;γは、それぞれ独立して、1~9の整数であり;γ’は、それぞれ独立して、1~9の整数であり;Raは、各出現においてそれぞれ独立して、-Z1-SiR71p1R72q1R73r1を表し;Z1は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子または2価の有機基を表し;R71は、各出現においてそれぞれ独立して、Ra’を表し;Ra’は、Raと同意義であり;Ra中、Z1基を介して直鎖状に連結されるSiは最大で5個であり;R72は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し;R73は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;p1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;q1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;r1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;ただし、式(C1)および(C2)において、少なくとも1つのq1が1~3の整数であり;Rbは、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し;Rcは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;k1は、各出現においてそれぞれ独立して、1~3の整数であり;l1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~2の整数であり;m1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~2の整数であり;X9は、それぞれ独立して、単結合または2~10価の有機基を表し;δは、それぞれ独立して、1~9の整数であり;δ’は、それぞれ独立して、1~9の整数であり;Rdは、各出現においてそれぞれ独立して、-Z2-CR81p2R82q2R83r2を表し;Z2は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子または2価の有機基を表し;R81は、各出現においてそれぞれ独立して、Rd’を表し;Rd’は、Rdと同意義であり;Rd中、Z2基を介して直鎖状に連結されるCは最大で5個であり;R82は、各出現においてそれぞれ独立して、-Y-SiR85n2R863-n2を表し;Yは、各出現においてそれぞれ独立して、2価の有機基を表し;R85は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し;R86は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;n2は、(-Y-SiR85n2R863-n2)単位毎に独立して、1~3の整数を表し;ただし、式(D1)および(D2)において、少なくとも1つのn2は1~3の整数であり;R83は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;p2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;q2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;r2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;Reは、各出現においてそれぞれ独立して、-Y-SiR85n2R863-n2を表し;Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;k2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;l2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;m2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~2の整数であり;ただし、式(D1)および(D2)において、少なくとも1つのq2は2または3であるか、あるいは、少なくとも1つのl2は2または3である。]のいずれかで表される少なくとも1種のパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物、および下記式(E1):【化2】[式中:PFPE2は、各出現においてそれぞれ独立して、式:-(OC6F12)a-(OC5F10)b-(OC4F8)c-(OC3F6)d-(OC2F4)e-(OCF2)f-(式中、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は少なくとも1であり、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり、OC6F12、OC5F10、OC4F8、OC3F6、及びOC2F4は、直鎖状である。)で表される基であり;Rf2は、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい直鎖の炭素数1~16のアルキル基を表し;Z2は、単結合または2価の有機基を表し;xは1であり;Aは、-COOR3であり;R3は、水素原子または炭化水素基である。]で表される少なくとも1種の化合物を含む組成物であって、式(B1)、(B2)、(C1)、(C2)、(D1)または(D2)で表されるパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物の数平均分子量と、式(E1)で表される化合物の数平均分子量の差が2000以内であり、前記パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物と前記式(E1)で表される化合物の含有量のモル比は、99.99:0.01~97:3である、組成物。【請求項2】Rf1が、炭素数1~16のパーフルオロアルキル基である、請求項1に記載の組成物。【請求項3】PFPE1が下記式(a)、(b)または(c):-(OC3F6)d- (a)[式中、dは1以上200以下の整数である。]-(OC4F8)c-(OC3F6)d-(OC2F4)e-(OCF2)f- (b)[式中、cおよびdは、それぞれ独立して、0以上30以下の整数であり;eおよびfは、それぞれ独立して、1以上200以下の整数であり;c、d、eおよびfの和は、10以上200以下の整数であり;添字c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。]-(R6-R7)q- (c)[式中、R6は、OCF2またはOC2F4であり;R7は、OC3F6、OC4F8、OC5F10およびOC6F12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から選択される2または3つの基の組み合わせであり;qは、2~100の整数である。]である、請求項1または2に記載の組成物。【請求項4】X5、X7およびX9が2価の有機基であり、β、γおよびδが1であり、β’、γ’およびδ’が1である、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。【請求項5】X5、X7およびX9が、それぞれ独立して、-(R31)p’-(Xa)q’-[式中:R31は、それぞれ独立して、単結合、-(CH2)s’-(式中、s’は、1~20の整数である)またはo-、m-もしくはp-フェニレン基を表し;Xaは、-(Xb)l’-(式中、l’は、1~10の整数である)を表し;Xbは、各出現においてそれぞれ独立して、-O-、-S-、o-、m-もしくはp-フェニレン基、-C(O)O-、-Si(R33)2-、-(Si(R33)2O)m’-Si(R33)2-(式中、m’は1~100の整数である)、-CONR34-、-O-CONR34-、-NR34-および-(CH2)n’-(式中、n’は1~20の整数である)からなる群から選択される基を表し;R33は、各出現においてそれぞれ独立して、フェニル基、C1-6アルキル基またはC1-6アルコキシ基を表し;R34は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基またはC1-6アルキル基を表し;p’は、0、1または2であり;q’は、0または1であり;ここに、p’およびq’の少なくとも一方は1であり、p’またはq’を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり;R31およびXaは、フッ素原子、C1-3アルキル基およびC1-3フルオロアルキル基から選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい。]で表される基である、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。【請求項6】X5、X7およびX9が、それぞれ独立して:単結合、-CH2O(CH2)2-、-CH2O(CH2)3-、-CH2O(CH2)6-、-CH2O(CH2)3Si(CH3)2OSi(CH3)2(CH2)2-、-CH2O(CH2)3Si(CH3)2OSi(CH3)2OSi(CH3)2(CH2)2-、-CH2O(CH2)3Si(CH3)2O(Si(CH3)2O)2Si(CH3)2(CH2)2-、-CH2O(CH2)3Si(CH3)2O(Si(CH3)2O)3Si(CH3)2(CH2)2-、-CH2O(CH2)3Si(CH3)2O(Si(CH3)2O)10Si(CH3)2(CH2)2-、-CH2O(CH2)3Si(CH3)2O(Si(CH3)2O)20Si(CH3)2(CH2)2-、-CH2OCF2CHFOCF2-、-CH2OCF2CHFOCF2CF2-、-CH2OCF2CHFOCF2CF2CF2-、-CH2OCH2CF2CF2OCF2-、-CH2OCH2CF2CF2OCF2CF2-、-CH2OCH2CF2CF2OCF2CF2CF2-、-CH2OCH2CF2CF2OCF(CF3)CF2OCF2-、-CH2OCH2CF2CF2OCF(CF3)CF2OCF2CF2-、-CH2OCH2CF2CF2OCF(CF3)CF2OCF2CF2CF2-、-CH2OCH2CHFCF2OCF2-、-CH2OCH2CHFCF2OCF2CF2-、-CH2OCH2CHFCF2OCF2CF2CF2-、-CH2OCH2CHFCF2OCF(CF3)CF2OCF2-、-CH2OCH2CHFCF2OCF(CF3)CF2OCF2CF2-、-CH2OCH2CHFCF2OCF(CF3)CF2OCF2CF2CF2--CH2OCF2CHFOCF2CF2CF2-C(O)NH-CH2-、-CH2OCH2(CH2)7CH2Si(OCH3)2OSi(OCH3)2(CH2)2Si(OCH3)2OSi(OCH3)2(CH2)2-、-CH2OCH2CH2CH2Si(OCH3)2OSi(OCH3)2(CH2)3-、-CH2OCH2CH2CH2Si(OCH2CH3)2OSi(OCH2CH3)2(CH2)3-、-CH2OCH2CH2CH2Si(OCH3)2OSi(OCH3)2(CH2)2-、-CH2OCH2CH2CH2Si(OCH2CH3)2OSi(OCH2CH3)2(CH2)2-、-CH2-、-(CH2)2-、-(CH2)3-、-(CH2)4-、-(CH2)5-、-(CH2)6-、-CO--CONH--CONH-CH2-、-CONH-(CH2)2-、-(CH2)2-Si(CH3)2-(CH2)2--CONH-(CH2)3-、-CON(CH3)-(CH2)3-、-CON(Ph)-(CH2)3-(式中、Phはフェニルを意味する)、-CONH-(CH2)6-、-CON(CH3)-(CH2)6-、-CON(Ph)-(CH2)6-(式中、Phはフェニルを意味する)、-CONH-(CH2)2NH(CH2)3-、-CONH-(CH2)6NH(CH2)3-、-CH2O-CONH-(CH2)3-、-CH2O-CONH-(CH2)6-、-S-(CH2)3-、-(CH2)2S(CH2)3-、-CONH-(CH2)3Si(CH3)2OSi(CH3)2(CH2)2-、-CONH-(CH2)3Si(CH3)2OSi(CH3)2OSi(CH3)2(CH2)2-、-CONH-(CH2)3Si(CH3)2O(Si(CH3)2O)2Si(CH3)2(CH2)2-、-CONH-(CH2)3Si(CH3)2O(Si(CH3)2O)3Si(CH3)2(CH2)2-、-CONH-(CH2)3Si(CH3)2O(Si(CH3)2O)10Si(CH3)2(CH2)2-、-CONH-(CH2)3Si(CH3)2O(Si(CH3)2O)20Si(CH3)2(CH2)2--C(O)O-(CH2)3-、-C(O)O-(CH2)6-、-CH2-O-(CH2)3-Si(CH3)2-(CH2)2-Si(CH3)2-(CH2)2-、-CH2-O-(CH2)3-Si(CH3)2-(CH2)2-Si(CH3)2-CH(CH3)-、-CH2-O-(CH2)3-Si(CH3)2-(CH2)2-Si(CH3)2-(CH2)3-、-CH2-O-(CH2)3-Si(CH3)2-(CH2)2-Si(CH3)2-CH(CH3)-CH2-、-OCH2-、-O(CH2)3-、-OCFHCF2-、【化3】からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。【請求項7】k1が3であり、Ra中、q1が3である、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。【請求項8】l2が3であり、n2が3である、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。【請求項9】Yが、C1-6アルキレン基、-(CH2)g’-O-(CH2)h’-(式中、g’は0~6の整数であり、h’は0~6の整数である)、または-フェニレン-(CH2)i’-(式中、i’は、0~6の整数である)である、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。【請求項10】X5、X7およびX9が、それぞれ独立して、3~10価の有機基である、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。【請求項11】X5、X7およびX9が、それぞれ独立して:【化4】[式中、各基において、Tのうち少なくとも1つは、式(B1)、(B2)、(C1)、(C2)、(D1)および(D2)においてPFPE1に結合する以下の基:-CH2O(CH2)2-、-CH2O(CH2)3-、-CF2O(CH2)3-、-(CH2)2-、-(CH2)3-、-(CH2)4-、-CONH-(CH2)3-、-CON(CH3)-(CH2)3-、-CON(Ph)-(CH2)3-(式中、Phはフェニルを意味する)、および【化5】であり、別のTのうち少なくとも1つは、式(B1)、(B2)、(C1)、(C2)、(D1)および(D2)において、炭素原子またはSi原子に結合する-(CH2)n-(nは2~6の整数)であり、残りは、それぞれ独立して、メチル基、フェニル基、炭素数1~6のアルコキシ基またはラジカル捕捉基もしくは紫外線吸収基であり、R41は、それぞれ独立して、水素原子、フェニル基、炭素数1~6のアルコキシ基または炭素数1~6のアルキル基であり、R42は、それぞれ独立して、水素原子、C1-6のアルキル基またはC1-6のアルコキシ基を表す。]からなる群から選択される、請求項10に記載の組成物。【請求項12】式(B1)、(B2)、(C1)、(C2)、(D1)または(D2)で表されるパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物の数平均分子量が、1,000~30,000である、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。【請求項13】パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物が、式(B1)および(B2)のいずれかで表される少なくとも1種の化合物である、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物。【請求項14】パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物が、式(C1)および(C2)のいずれかで表される少なくとも1種の化合物である、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物。【請求項15】パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物が、式(D1)および(D2)のいずれかで表される少なくとも1種の化合物である、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物。【請求項16】Rf2が、直鎖の炭素数1~16のパーフルオロアルキル基である、請求項1~15のいずれか1項に記載の組成物。【請求項17】PFPE2が下記式(a)、(b)または(c):-(OC3F6)d- (a)[式中、dは1以上200以下の整数であり、OC3F6は、直鎖状である。]-(OC4F8)c-(OC3F6)d-(OC2F4)e-(OCF2)f- (b)[式中、cおよびdは、それぞれ独立して、0以上30以下の整数であり;eおよびfは、それぞれ独立して、1以上200以下の整数であり;c、d、eおよびfの和は、10以上200以下の整数であり;添字c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意であり、OC4F8、OC3F6、及びOC2F4は、直鎖状である。]-(R6-R7)q- (c)[式中、R6は、OCF2またはOC2F4であり;R7は、OC3F6、OC4F8、OC5F10およびOC6F12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2または3つの基の組み合わせであり;qは、2~100の整数であり、OC6F12、OC5F10、OC4F8、OC3F6、及びOC2F4は、直鎖状である。]である、請求項1~16のいずれか1項に記載の組成物。【請求項18】Z2における2価の有機基が、-(CR182)k7-(O)k8-(NR19)k9-、[式中:R18は、それぞれ独立して、水素原子またはフッ素原子であり;R19は、それぞれ独立して、水素原子、フェニル基またはC1-6アルキル基を表し;k7は、1~20の整数であり;k8は、0~10の整数であり;k9は、0~10の整数であり;ここに、k7、k8またはk9を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]である、請求項1~17のいずれか1項に記載の組成物。【請求項19】Z2が、-(CF2)k7’-または-(CF2)k7’-(O)k8’-[式中:k7’は、1~6の整数であり;k8’は、1~3の整数であり;ここに、k7’またはk8’を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]である、請求項1~18のいずれか1項に記載の組成物。【請求項20】(削除)【請求項21】式(E1)で表される化合物の数平均分子量が、1,000~30,000である、請求項1~19のいずれか1項に記載の組成物。【請求項22】含フッ素オイル、シリコーンオイル、および触媒から選択される1種またはそれ以上の他の成分をさらに含有する、請求項1~19および21のいずれかに記載の組成物。【請求項23】含フッ素オイルが、式(3):Rf3-(OC4F8)a1-(OC3F6)b1-(OC2F4)c1-(OCF2)d1-Rf4 (3)[式中:Rf3は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1~16のアルキル基を表し;Rf4は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1~16のアルキル基、フッ素原子または水素原子を表し;a1、b1、c1およびd1は、ポリマーの主骨格を構成するパーフルオロ(ポリ)エーテルの4種の繰り返し単位数をそれぞれ表し、互いに独立して0以上300以下の整数であって、a1、b1、c1およびd1の和は少なくとも1であり、添字a1、b1、c1またはd1を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。]で表される1種またはそれ以上の化合物である、請求項22に記載の組成物。【請求項24】さらに溶媒を含む、請求項1~19および21~23のいずれか1項に記載の組成物。【請求項25】表面処理剤である、請求項1~19および21~24のいずれか1項に記載の組成物。【請求項26】防汚性コーティング剤または防水性コーティング剤として使用される、請求項1~19および21~25のいずれか1項に記載の組成物。【請求項27】請求項1~19および21~26のいずれか1項に記載の組成物を含有するペレット。【請求項28】基材と、該基材の表面に、請求項1~19および21~26のいずれか1項に記載の組成物より形成された層とを含む物品。【請求項29】基材がガラスである、請求項28に記載の物品。【請求項30】基材がサファイアガラス、ソーダライムガラス、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、クリスタルガラスおよび石英ガラスから成る群から選択されるガラスである、請求項28に記載の物品。【請求項31】光学部材である、請求項28~30のいずれか1項に記載の物品。【請求項32】ディスプレイである、請求項28~31のいずれか1項に記載の物品。」
第4 取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立理由の概要
1.取消理由通知書に記載した取消理由1,2の概要
取消理由通知書に記載した取消理由1、2の概要は、以下に示すとおりである。
(1)取消理由1(サポート要件)
甲2の記載内容、すなわち、含フッ素有機ケイ素化合物(成分A)と含フッ素カルボン酸(成分B)を併用したコーティング剤組成物において、含フッ素カルボン酸(成分B)の量が下限値未満では、触媒の効果が発現し難く、上限値を超えると、硬化被膜の撥水性が低下するなど表面特性に悪影響をあたえる傾向があることは、含フッ素有機ケイ素化合物の一つである本件発明1のパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物と、含フッ素カルボン酸の態様を含む本件発明1の(E1)で表される化合物(パーフルオロ(ポリ)エーテル変性化合物)との組み合わせにおいても妥当するものと解されるから、パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物と(E1)で表される化合物との重量比について規定のない、本件訂正前の請求項1~32に係る発明は、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲を明らかに超えるものを含むと推認できる。
したがって、本件訂正前の請求項1~32に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえず、本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。
(2)取消理由2(進歩性)
本件訂正前の請求項1~32に係る発明は、その出願前に日本国内または外国において頒布された甲1又は甲2に記載された発明と甲1~4に記載された技術的事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、それらの発明に係る特許は、取り消すべきものである。
2.特許異議申立理由の概要
申立人が主張する特許異議申立理由(以下、「申立理由」という。)は、以下のとおりである。
(1)申立理由1(進歩性)
本件訂正前の請求項1~32に係る発明は、甲第1、2、3、4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、それらの発明に係る特許は、同法第第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(2)申立理由2(サポート要件)
本件訂正前の請求項1に係る発明では、「数平均分子量の差が2000以内である」ことが規定されているが、この数値範囲の全てにわたって常に好ましい効果が得られることが本件特許明細書から理解することができない(申立理由2-1)。
一般式(B1)~(D2)で表されるパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物と式(E1)で表されるパーフルオロ(ポリ)エーテル化合物の配合比率が全ての範囲にわたって、本件訂正前の請求項1~32に係る発明の作用効果が有効に発現されるとは到底考えられない(申立理由2-2)。
本件明細書において、本件訂正前の請求項1~32に係る発明の作用効果が具体的に実証されているのは実施例1~9の(OC3F6)単位が直鎖状の(CF2CF2CF2O)単位であって、かつa=b=c=e=f=0であり、d=32の場合だけであり、それ以外のパーフルオロポリエーテル基 (PFPE1、PFPE2)に関して、本件訂正前の請求項1~32に係る発明の作用効果が有効に発現されるか否かについては全く確認、立証されていない(申立理由2-3)。
以上から、本件訂正前の請求項1~32に係る発明は、サポート要件(特許法第36条第6項第1号)に違反するから、それらの発明に係る特許は、同法第第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
(3)申立理由3(実施可能要件)
本件訂正前の請求項1に係る発明の式(D1)、(D2)で表されるパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物の合成方法に関して、本件明細書の実施例では具体的に示されておらず、段落[0166]にその一例が示されているのみであるから、本件訂正前の請求項1に係る発明の実施に当たり、無数の化合物を製造、スクリーニングして確認するという当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤を行う必要があると認められる。
したがって、発明の詳細な説明は、本件訂正前の請求項1~32に係る発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されておらず、本件明細書は実施可能要件(特許法第36条第4項第1号)に違反するから、それらの発明に係る特許は、同法第第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
第5 当審の判断
訂正前の請求項20は、本件訂正により、その内容が削除され、申立ての対象を欠くものとなっており、請求項20に対する申立ては、その対象を欠き、不適法なもので、その治癒ができないものであるから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、請求項20に係る特許に対する各特許異議の申立ては却下すべきものである。
また、以下で述べるように、本件発明1~19、21~32に係る特許は、上記の取消理由通知書に記載した取消理由1、2、申立人による申立理由1~3によって、取り消すことができない。
1.当審が通知した取消理由の検討
(1)取消理由1(サポート要件違反)
ア.本件明細書に記載された事項
本a
「【発明が解決しようとする課題】【0005】パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物を含む表面処理剤から得られる層は、撥水性、撥油性、防汚性などの機能を薄膜でも発揮し得ることから、光透過性および透明性が求められるメガネやタッチパネルなどの光学部材に好適に利用されている。とりわけ、これら用途においては、繰り返し摩擦を受けてもかかる機能を維持し得るように摩擦耐久性が求められる。【0006】続きを表示(全12行)本発明は、撥水性、撥油性、防汚性、防水性を有し、かつ、高い摩擦耐久性を有する層を形成することのできるパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物を含んで成る組成物を提供することを目的とする。【課題を解決するための手段】【0007】本発明者らは、鋭意検討した結果、パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物およびパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有酸または酸誘導体を含んで成る組成物を用いることにより、高い摩擦耐久性を有する表面処理層を形成できることを見出し、本発明を完成するに至った。…【発明の効果】【0011】本発明のパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物と、パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有酸または酸誘導体とを含む組成物を用いることにより、高い摩擦耐久性を有する表面処理層を形成することができる。 」
本b
「【0165】式(D1)または式(D2)で表されるパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物は、公知の方法を組み合わせることにより製造することができる。例えば、Xが2価である式(D1’)で表される化合物は、限定するものではないが、以下のようにして製造することができる。【0166】HO-X-C(YOH)3(式中、XおよびYは、それぞれ独立して、2価の有機基である。)で表される多価アルコールに、二重結合を含有する基(好ましくはアリル)、およびハロゲン(好ましくはブロモ)を導入して、Hal-X-C(Y-O-R-CH=CH2)3(式中、Halはハロゲン、例えばBrであり、Rは二価の有機基、例えばアルキレン基である。)で表される二重結合含有ハロゲン化物を得る。次いで、末端のハロゲンと、RPFPE-OH(式中、RPFPEは、パーフルオロポリエーテル基含有基である。)で表されるパーフルオロポリエーテル基含有アルコールとを反応させて、RPFPE-O-X-C(Y-O-R-CH=CH2)3を得る。次いで、末端の-CH=CH2と、HSiCl3およびアルコールまたはHSiR853と反応させて、RPFPE-O-X-C(Y-O-R-CH2-CH2-SiR853)3を得ることができる。」
本c
「【0190】好ましい態様において、上記式(A1)、(A2)、(B1)、(B2)、(C1)、(C2)、(D1)または(D2)で表されるパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物の数平均分子量と、式(E1)で表されるパーフルオロ(ポリ)エーテル変性化合物の数平均分子量の差は、2,000以内、好ましくは1,500以内、より好ましくは1,000以内、さらに好ましくは500以内である。【0191】本発明の組成物中、上記パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物と上記パーフルオロ(ポリ)エーテル変性化合物の含有量の比は、99.99:0.01~70:30、好ましくは99.5:0.5~80:20、より好ましくは99:1~90:10であり得る。かかる範囲とすることで、パーフルオロ(ポリ)エーテル変性化合物は、パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物と基材との反応を効率よく触媒することができる。【0192】一の態様において、本発明の組成物中の上記パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物と上記パーフルオロ(ポリ)エーテル変性化合物の含有量の比は、99.99:0.01~97:3、好ましくは99.9:0.1~98:2であり得る。別の態様において、本発明の組成物中の上記パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物と上記パーフルオロ(ポリ)エーテル変性化合物の含有量の比は、95:5~70:30、好ましくは92:8~80:20であり得る。」
本d
「【0246】実施例1上記合成例1で得たパーフルオロポリエーテル変性メチルエステル化合物(A)および下記に示すパーフルオロポリエーテル変性シラン化合物(X)を、モル比2:98で混合し、ノベック7200(スリーエム社製)に溶解させて、濃度20wt%になるように、表面処理剤1を調製した。・パーフルオロポリエーテル変性シラン化合物(X)続きを表示(全189行)CF3CF2CF2O(CF2CF2CF2O)32CF2CF2CH2OCH2CH2CH2Si(OCH3)3【0247】上記で調製した表面処理剤1を化学強化ガラス(コーニング社製、「ゴリラ」ガラス、厚さ0.7mm)上に真空蒸着した。…その後、蒸着膜付き化学強化ガラスを、温度20℃および湿度65%の雰囲気下で24時間静置した。これにより、蒸着膜が硬化して、表面処理層が形成された。【0248】(実施例2~9)パーフルオロポリエーテル変性化合物(A)~(C)とパーフルオロポリエーテル変性シラン化合物(X)~(Z)を下記表の組み合わせで、モル比2:98で混合して表面処理剤を作成した以外は、実施例1と同様にして、表面処理剤を調製し、表面処理層を形成した。・パーフルオロポリエーテル変性シラン化合物(Y)CF3CF2CF2O(CF2CF2CF2O)32CF2CF2CON(CH3)CH2CH2CH2Si(OCH3)3・パーフルオロポリエーテル変性シラン化合物(Z)CF3CF2CF2O(CF2CF2CF2O)32CF2CF2CH2OCH2CH2CH2Si[CH2CH2CH2Si(OCH3)3]3【0249】【表1】(当審注:(A)~(C)の化合物の化学構造式は以下のとおりである。)【0250】比較例1~3上記のパーフルオロポリエーテル変性シラン化合物(X)~(Z)を単独で用いること以外は、実施例1と同様にして、表面処理剤を調製し、表面処理層を形成した。【表2】【0251】比較例4酢酸と上記のパーフルオロポリエーテル変性シラン化合物(X)をモル比2:98で混合して表面処理剤を作成した以外は、実施例1と同様にして、表面処理剤を調製し、表面処理層を形成した。【0252】上記の実施例1~9、比較例1~4にて基材表面に形成された表面処理層について、消しゴム摩擦耐久試験により、摩擦耐久性を評価した。…往復回数500回毎に水の静的接触角(度)を測定した。接触角の測定値が100度未満となった時点で評価を中止した。最後に接触角が100度を超えた時の往復回数を、表3に示す。【0253】【表3】【0254】上記の結果から、パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物およびパーフルオロポリエーテル変性化合物を組み合わせて用いた実施例1~9は、パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物を単独で用いた比較例1~3よりも、高い消しゴム耐性を有することが確認された。本発明はいかなる理論によっても拘束されないが、パーフルオロポリエーテル変性化合物(A)~(C)が、表面処理層作成時に、酸性の触媒として作用し、パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物(X)~(Z)と基材表面との反応性を向上させ、その結果、優れた消しゴム耐久性が得られたと考えられる。また、単に触媒として機能し得る酢酸を用いた比較例4よりも、パーフルオロポリエーテル変性カルボン酸化合物(B)を用いた実施例4が、高い消しゴム耐性を有することが確認された。本発明はいかなる理論によっても拘束されないが、これは酸がパーフルオロポリエーテル基を有することにより、それ自体が表面処理層の機能に寄与できるためと考えられる。イ.当審が通知した取消理由の判断取消理由通知書に記載した取消理由1は、上記の第4の1.(1)で述べたとおり、パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物と(E1)で表される化合物との重量比について規定の無い本件訂正前の請求項1~32に係る発明は、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲を明らかに超えるものを含むと推認でき、本件訂正前の請求項1~32に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない、というものである。これに対し、本件訂正の訂正事項4により、訂正前の請求項1に「パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物と前記式(E1)で表される化合物の含有量のモル比は、99.99:0.01~97~3である」との発明特定事項が加えられ、本件明細書の実施例1~9において、本件発明の課題を解決できることが裏付けられている「98:2」を含む範囲となったため、訂正後の請求項1~19、21~32に係る発明(本件発明1~19、21~32)は、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものとなった。この点について、申立人は、令和3年8月11日提出の意見書において、「実施例において本件発明の作用効果が具体的に確認され、立証されているのは、特許権者も認めているように…モル比が98:2のみの1水準のみである。…含有比率の下限値(99.99:0.01)は実施例で実証されている配合比率の1/200であって…1/200であっても、本件発明の作用効果が発現されるとは到底想像できるものではない。」と主張する。しかし、モル比が「98:2」の条件以外で、「高い摩擦耐久性」が期待できないとする客観的理由は、申立人より何ら示されていないし、本件と出願人が異なる甲3においても、「触媒の添加量は、0.001~1ミリモル/L程度が好ましい。」、「リン酸エステルやカルボニル化合物の添加量は、0.1~100ミリモル/L程度とすることができる。」と一定の数値範囲を示したうえで、「良好な耐久性の向上が望める」と説明しているから(下記の甲3bの【0024】)、単に、本件明細書に、下限値(99.99:0.01)の実施例が存在しないからといって、当該下限値において本件発明の作用効果を想像できないとはいえない。したがって、申立人の上記主張は、理由がない。以上のとおりであるから、本件発明1~19、21~32に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由1により取り消すことはできない。(2)取消理由2(進歩性)ア.甲1に記載された事項及び甲1に記載された発明(甲1発明)(ア)甲1の記載事項甲1(特開2016-132719号公報)には、以下の記載がある。甲1a「【請求項1】(1)下記式(A1)、(A2)、(B1)、(B2)、(C1)および(C2)のいずれかで表される少なくとも1種のパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物:【化1】[式中:PFPEは、各出現においてそれぞれ独立して、-(OC4F8)a-(OC3F6)b-(OC2F4)c-(OCF2)d-を表し、ここに、a、b、cおよびdは、それぞれ独立して、0以上200以下の整数であり、a、b、cおよびdの和は、1以上であり、添字a、b、cまたはdを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意であり;Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1~16のアルキル基を表し;R1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~22のアルキル基を表し;R2は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し;R11は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子またはハロゲン原子を表し;R12は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;nは、(-SiR1nR23-n)単位毎に独立して、0~3の整数であり;ただし、式(A1)、(A2)、(B1)および(B2)において、少なくとも1つのR2が存在し;X4は、それぞれ独立して、単結合または2~10価の有機基を表し;X2は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2価の有機基を表し;tは、各出現においてそれぞれ独立して、1~10の整数であり;αは、それぞれ独立して、1~9の整数であり;α’は、それぞれ独立して、1~9の整数であり;X5は、それぞれ独立して、単結合または2~10価の有機基を表し;βは、それぞれ独立して、1~9の整数であり;β’は、それぞれ独立して、1~9の整数であり;X7は、それぞれ独立して、単結合または2~10価の有機基を表し;γは、それぞれ独立して、1~9の整数であり;γ’は、それぞれ独立して、1~9の整数であり;Raは、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR71pR72qR73rを表し;Zは、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子または2価の有機基を表し;R71は、各出現においてそれぞれ独立して、Ra’を表し;Ra’は、Raと同意義であり;Ra中、Z基を介して直鎖状に連結されるSiは最大で5個であり;R72は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し;R73は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;pは、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;qは、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;rは、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;ただし、一のRaにおいて、p、qおよびrの和は3であり、式(C1)および(C2)において、少なくとも1つのR72が存在し;Rbは、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し;Rcは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;kは、各出現においてそれぞれ独立して、1~3の整数であり;lは、各出現においてそれぞれ独立して、0~2の整数であり;mは、各出現においてそれぞれ独立して、0~2の整数であり;ただし、γを付して括弧でくくられた単位において、k、lおよびmの和は3である。]および(2)下記式(D1)、(D2)、(E1)、(E2)、(F1)、(F2)、(G1)および(G2)のいずれかで表される少なくとも1種の含フッ素化合物:【化2】[式中:Aは、各出現においてそれぞれ独立して、-OH、-SH、-COOR5、-COSH、-CONH2、-P(O)(OH)2、-OP(O)(OH)2、-NR52、【化3】を表し;R5は、それぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;X1は、OまたはSを表し;M1およびM2は、それぞれ独立して、水素原子またはアルカリ金属を表し;Yは、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2価の有機基を表し;PFPEは、各出現においてそれぞれ独立して、-(OC4F8)a-(OC3F6)b-(OC2F4)c-(OCF2)d-を表し、ここに、a、b、cおよびdは、それぞれ独立して、0以上200以下の整数であり、a、b、cおよびdの和は、1以上であり、添字a、b、cまたはdを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意であり;Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1~16のアルキル基を表し;R11は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子またはハロゲン原子を表し;R12は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;X2は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2価の有機基を表し;tは、各出現においてそれぞれ独立して、1~10の整数であり;X8は、それぞれ独立して、単結合または2~10価の有機基を表し;δは、それぞれ独立して、1~9の整数であり;δ’は、それぞれ独立して、1~9の整数であり;X3は、それぞれ独立して、単結合または2~10価の有機基を表し;εは、それぞれ独立して、1~9の整数であり;ε’は、それぞれ独立して、1~9の整数であり;X9は、それぞれ独立して、単結合または2~10価の有機基を表し;χは、それぞれ独立して、1~9の整数であり;χ’は、それぞれ独立して、1~9の整数であり;Rdは、各出現においてそれぞれ独立して、-Z-SiR74p’R75q’R76r’を表し;Zは、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子または2価の有機基を表し;R74は、各出現においてそれぞれ独立して、Rd’を表し; Rd’は、Rdと同意義であり;Rd中、Z基を介して直鎖状に連結されるSiは最大で5個であり;R75は、各出現においてそれぞれ独立して、-X10-Y-Aを表し;X10は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子または2価の有機基を表し;R76は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;p’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;q’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;r’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり;ただし、一のRdにおいて、p’、q’およびr’の和は3であり、式(F1)および(F2)において、少なくとも1つのR75が存在し;Reは、各出現においてそれぞれ独立して、-X10-Y-Aを表し;Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;kは、各出現においてそれぞれ独立して、1~3の整数であり;lは、各出現においてそれぞれ独立して、0~2の整数であり;mは、各出現においてそれぞれ独立して、0~2の整数であり;ただし、χを付して括弧でくくられた単位において、k、lおよびmの和は3であり;X6は、それぞれ独立して、単結合または2~10価の有機基を表し;θは、それぞれ独立して、1~9の整数であり;θ’は、それぞれ独立して、1~9の整数であり;R91は、フッ素原子、-CHF2または-CF3を表し;Rf’は、炭素数1~20のパーフルオロアルキレン基を表す。]を含んでなる、表面処理剤。」甲1b「【0007】本発明は、撥水性、撥油性、防汚性、防水性を有し、かつ、高い摩擦耐久性を有する層を形成することのできるパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物を含む表面処理剤を提供することを目的とする。【課題を解決するための手段】【0008】本発明者らは、鋭意検討した結果、パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物を含んで成る表面処理剤に、官能基を有する含フッ素化合物を加えることにより、より優れた摩擦耐久性を有する表面処理層を形成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。」甲1c「【0113】一の態様において、本発明の表面処理剤中、(1)式(A1)、(A2)、(B1)、(B2)、(C1)および(C2)のいずれかで表されるパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物(以下、「パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物(1)」ともいう)と、(2)式(D1)、(D2)、(E1)、(E2)、(F1)、(F2)、(G1)および(G2)のいずれかで表される含フッ素化合物(以下、「含フッ素化合物(2)」ともいう)との質量比(それぞれ、2種以上の場合にはそれらの合計、以下も同様)は、好ましくは1:50~50:1であり、より好ましくは1:10~10:1であり、さらに好ましくは1:4~4:1である。かかる範囲とすることで、表面処理剤の摩擦耐久性をより向上させることができる。」甲1d「【0167】実施例1下記の平均組成を有するパーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物(A)およびパーフルオロポリエーテル化合物(D)を、質量比2:1の割合で、濃度20wt%(化合物(A)および化合物(D)の合計)になるようにハイドロフルオロエーテル(スリーエム社製、ノベックHFE7200)に溶解させて表面処理剤を調製した。…・パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物(A)CF3O(CF2CF2O)20(CF2O)16CF2CH2OCH2CH2CH2Si[CH2CH2CH2Si(OCH3)3]3 …・パーフルオロポリエーテル基含有アルコール化合物(D)CF3O(CF2CF2O)19(CF2O)16CF2CH2OH」【0168】実施例2化合物(A)に代えて、下記の平均組成を有するパーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物(B)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、表面処理剤を調製し、表面処理層を形成した。・パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物(B)CF3CF2CF2O(CF2CF2CF2O)20CF2CF2CH2OCH2CH2CH2Si[CH2CH2CH2Si(OCH3)3]3【0169】実施例3化合物(A)に代えて、下記の平均組成を有するパーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物(C)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、表面処理剤を調製し、表面処理層を形成した。・パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物(C)【0170】実施例4化合物(D)に代えて、下記の平均組成を有するパーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物(E)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、表面処理剤を調製し、表面処理層を形成した。・パーフルオロポリエーテル基含有アルコール化合物(E)CF3CF2CF2O(CF2CF2CF2O)20CF2CF2CH2OH【0171】実施例5化合物(A)に代えて、化合物(B)を用いたこと以外は、実施例4と同様にして、表面処理剤を調製し、表面処理層を形成した。【0172】実施例6化合物(A)に代えて、化合物(C)を用いたこと以外は、実施例4と同様にして、表面処理剤を調製し、表面処理層を形成した。【0173】実施例7化合物(D)に代えて、下記の平均組成を有するパーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物(F)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、表面処理剤を調製し、表面処理層を形成した。・パーフルオロポリエーテル基含有アルコール化合物(F)CF3CF2CF2O(CF2CF2CF2O)30CF2CF2CH2OH【0174】実施例8化合物(A)に代えて、化合物(B)を用いたこと以外は、実施例7と同様にして、表面処理剤を調製し、表面処理層を形成した。【0175】実施例9化合物(A)に代えて、化合物(C)を用いたこと以外は、実施例7と同様にして、表面処理剤を調製し、表面処理層を形成した。…【0182】・摩擦耐久性評価 上記実施例および比較例にて基材表面に形成された表面処理層について、水の静的接触角を測定した。水の静的接触角は、接触角測定装置(協和界面科学社製)を用いて、水1μLにて実施した。…【0184】その後、摩擦耐久性評価として、スチールウール摩擦耐久性評価を実施した。具体的には、表面処理層を形成した基材を水平配置し、スチールウール(番手♯0000、寸法5mm×10mm×10mm)を表面処理層の露出上面に接触させ、その上に1,000gfの荷重を付与し、その後、荷重を加えた状態でスチールウールを140mm/秒の速度で往復させた。一定の往復回数毎に水の静的接触角(度)を測定した。接触角の測定値が100度未満となった時点、または摩擦回数が20000回を超えた時点で評価を中止した。結果を下記表1および表2に示す。【0185】【表1】【0187】上記の表1および表2から理解されるように、本発明のパーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物にパーフルオロポリエーテル基含有アルコール化合物を混合した実施例1~9は、官能基を含有しないパーフルオロポリエーテル化合物を混合した比較例1~3または、パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物のみの比較例4~6に比べて摩擦耐久性が著しく向上することが確認された。本発明はいかなる理論にも拘束されないが、これは、アルコールなどの官能基が層を形成するパーフルオロポリエーテル鎖の酸素原子と、水素結合等の相互作用が働き、層への担持力が大きくなり、耐摩耗性が向上したと考えられる。」
(イ)甲1に記載された発明(甲1発明)
甲1の特に実施例1(甲1d)に着目して、甲1に記載された発明(甲1発明)を認定すると、以下のとおりとなる。
「CF3O(CF2CF2O)20(CF2O)16CF2CH2OCH2CH2CH2Si[CH2CH2CH2Si(OCH3)3]3であるパーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物(A)およびCF3O(CF2CF2O)19(CF2O)16CF2CH2OH」であるパーフルオロポリエーテル化合物(D)を、質量比2:1の割合で、濃度20wt%(化合物(A)および化合物(D)の合計)になるようにハイドロフルオロエーテル(スリーエム社製、ノベックHFE7200)に溶解させた表面処理剤」
イ.甲2に記載された事項及び甲2に記載された発明(甲2発明)
(ア)甲2の記載事項
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甲2(特開2008-144144号公報)には、以下の記載がある。
甲2a
「【請求項1】(A)下記式(1)又は(2)で表される含フッ素有機ケイ素化合物の少なくとも一種Rf1-QZ1Aα (1)AαZ1Q-Rf2-(Q-Z2-Q-Rf2)x-QZ1Aα (2)続きを表示(全20行)[式中、Rf1はパーフルオロアルキル基、またはパーフルオロオキシアルキル基、Rf2はパーフルオロオキシアルキレン基、Z1は単結合又はケイ素原子1~15個を含む2~9価の有機基、Z2はケイ素原子2~100個を含む2価のポリオルガノシロキシレン基であり、Qは酸素原子及び/又は窒素原子を含んでいてよい炭素数2~12の、2~9価の基であり、但し式(2)において、互いに異なっていてもよく、αは1~8の整数、xは0~5の整数であり、及び、Aは下記一般式で示される基である-CbH2bSiR3-aXa(式中、Rは炭素数1~4のアルキル基またはフェニル基、Xは加水分解性基であり、aは2又は3、bは0~6の整数である)]、及び(B)数平均分子量が100~10,000の、分子重量の25重量%以上のフッ素原子を含む含フッ素カルボン酸を、前記(A)成分100質量部に対して、0.001~10質量部で、含有することを特徴とするコーティング剤組成物。【請求項2】前記(B)成分が、パーフルオロアルキルカルボン酸又はパーフルオロポリエーテルカルボン酸であることを特徴とする請求項1記載のコーティング剤組成物。…【請求項4】前記(B)成分が、下記のいずれかの式で表されることを特徴とする請求項1または2記載のコーティング剤組成物。(nは1~200の整数である)(nは1~10の整数、mは1~100の整数である)(lおよびmはそれぞれ独立に0~100の整数、nは1~10の整数である)(m、nはそれぞれ独立に1~200の整数であり、各繰り返し単位の配列はランダムであってよい)」
甲2b
「【発明が解決しようとする課題】【0008】そこで、本発明は、簡易な工程で、速やかに硬化被膜を形成することができるコーティング剤組成物を提供することを目的とする。【課題を解決するための手段】【0009】上記要望に応えるべく検討した結果、硬化触媒として所定のカルボン酸を使用することによって、上記目的を達成できることを見出した。…【発明の効果】【0011】上記本発明の表面処理剤は、速やかに硬化して、基材に強固に密着し、撥水性等に優れた表面を形成する。」
甲2c
「【0037】[(B)成分]硬化触媒として作用する(B)成分は、数平均分子量が100~10,000、好ましくは、200~8000の、分子重量の25重量%以上のフッ素原子を含む含フッ素カルボン酸である。25重量%以上のフッ素原子を含むことによって、フッ素系溶剤への溶解性に優れる。さらに、硬化膜中で撥水撥油作用を奏する。好ましくはパーフルオロアルキルカルボン酸及び/又はパーフルオロポリエーテルカルボン酸が使用される。【0038】続きを表示(全12行)より好ましくは、カルボキシル基が結合する炭素原子上に、フッ素が1つ以上結合している構造が好ましい。この構造により触媒としての活性がより高められる。【0039】分子重量の25重量%以上のフッ素原子を含む含フッ素カルボン酸の好適な例としては下記のものが挙げられる。【0047】なお、含フッ素カルボン酸の誘導体であって、使用時に加水分解等によりカルボン酸を発生させる誘導体もまた好適である。このようなカルボン酸誘導体としては、相当するカルボン酸の酸無水物及びエステル類である。【0048】[(A)と(B)の混合比]成分(B)の配合量は、所望の硬化時間、その分子量に依存して異なるが、成分(A)100質量部に対して0.001~10質量部が好ましく、より好ましくは0.05~2質量部である。添加量が前記下限値未満では、触媒の効果が発現し難く、上限値を超えると、硬化被膜の撥水性が低下するなど表面特性に悪影響をあたえる傾向がある。…」
甲2d
「【0054】[実施例及び比較例]表1に示す含フッ素有機ケイ素化合物及びカルボン酸を、同表に示す濃度で、Novec HFE-7200(住友3M社製、フッ素系溶媒)中で混合して溶解し、コーティング剤溶液を調製した。試験片としてスライドガラスをこの溶液に浸漬したのち、引き上げて25℃、相対湿度50%の室内に放置した。コーティング剤を塗布してから30分後にスライドグラス表面の水の接触角を、接触角計(協和界面科学社製A3型)を用いて、滑落法により測定した。結果を表1に示す。【0055】続きを表示(全16行)表1中のA-1~A-7は以下の含フッ素有機ケイ素化合物である。…(A-2)【0058】【化21】…(B-2)【0072】【化34】…【0077】【表1】表1から分かるように、B-1、B-2、B-3、B-4を硬化触媒として用いた場合は、水の接触角が高い硬化膜が得られ、コーティング剤塗布後30分の放置にて十分に硬化したことが分かる。しかしB-5、B-6の場合は、水の接触角が低いことから分かるように、30分では十分に硬化しなかった。」
(イ)甲2に記載された発明(甲2発明)
甲1の特に実施例2(甲2d)に着目して、甲2に記載された発明(甲2発明)を認定すると、以下のとおりとなる。
「0.3%の濃度の含フッ素有機ケイ素化合物であるA-2と30ppmの濃度の触媒であるB-2を含むコーティング剤」
ウ.甲3~4に記載された事項
(ア)甲3に記載された事項
甲3(特開2003- 64348号公報)には、以下の記載がある。
甲3a
「【請求項1】 下記一般式(1)で示されるアルコキシシラン化合物を含有する防汚性表面処理剤において、アルコキシシラン化合物のパーフルオロポリエーテル基の平均分子量が2000~10000の範囲にあることを特徴とする防汚性表面処理剤。【化1】…【請求項7】 前記防汚性表面処理用組成物が、酸、塩基、リン酸エステル、及びβ-ジケトンから選ばれる1種又は2種以上の触媒を含有することを特徴とする請求項6記載の防汚性表面処理用組成物。」
甲3b
「【0024】また、上記アルコキシシラン化合物のコーティング組成物を調製するに際して、必要に応じて反応触媒としての酸あるいは塩基を添加することが好ましい。酸触媒としては例えば,硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、酸性白土、硼酸、トリフルオロ酢酸などを用いることができ、また塩基触媒としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物などを用いることができる。これらの触媒の添加量は、0.001~1ミリモル/L程度が好ましい。これらの酸、塩基に加えて、リン酸ジラウリルエステル、リン酸パーフルオロポリエーテルエステルなどのリン酸エステル系の触媒、あるいはアセチルアセトンのようなβ-ジケトンを添加してその触媒効果を高めることが可能である。このように触媒が添加されることによって、一般式(1)で表される化合物のシラノ基と、基材表面のSiO2との結合反応を伴う相互作用が、低温であるいは加熱を行なわずとも良好に進行する。このため、成膜した表面処理膜に変形などの悪影響を及ぼさずに反応させることができ、SiO2上の薄膜材料においては、その膜厚から耐久性への要求が厳しいものであるにもかかわらず、良好な耐久性の向上が望めるものとなる。このようなリン酸エステルやカルボニル化合物の添加量は、0.1~100ミリモル/L程度とすることができる。このような触媒を添加したコーティング組成物の塗布後の乾燥温度は、20~170℃程度とすることが好ましい。」
甲3c
「【0042】<コーティング組成物の調製及び表面処理>化合物1から合成されたアルコキシシラン化合物2部を、沸点が55℃のハイドロフルオロポリカーボン(三井・デュポン社製、商品名Vertrel-XF)フッ素系溶剤200部に溶解し、さらにリン酸パーフルオロポリエーテルエステル0.08部を加えて均一な溶液としたのち、さらにメンブランフィルターで瀘過を行ってコーティング組成物を得た。このコーティング組成物を上記スライドガラス板の表面に5cm/分の引き上げ速度でディップコーティングした後、室温で24時間乾燥させ、膜厚2nm程度の処理膜を成膜した。」
(イ)甲4に記載された事項
甲4(特開2015-199906号公報)には、以下の記載がある。
甲4a
「【請求項1】下記一般式(1)【化1】(式中、Rfは1価のフルオロオキシアルキル基又は2価のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー残基であり、Yはシロキサン結合又はシリレン基を有してもよい2~6価の炭化水素基であり、Rは独立に炭素数1~4のアルキル基又はフェニル基であり、Xは独立に加水分解性基であり、nは1~3の整数であり、mは1~5の整数であり、αは1又は2である。)で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シラン。 」
甲4b
「【課題を解決するための手段】【0012】本発明者らは、上記目的を解決すべく鋭意検討した結果、上記フルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シランにおいて、フルオロポリエーテル基と加水分解性シリル基との連結基にエーテル結合を含有しない、後述する一般式(1)で表されるフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シランを用いた表面処理剤が、耐候性に優れた撥水撥油層を形成し得ることを知見した。 更に、該表面処理剤は、室温硬化などの温和な硬化条件下、短時間でも耐摩耗性、耐候性及び低動摩擦性に優れた撥水撥油層を形成し得ることを見出し、本発明をなすに至った。」
甲4c
「【0094】[実施例1]反応容器に下記式(II)【化42】続きを表示(全12行)で表される化合物200g(2.6×10-2mol)、1,3-ビストリフルオロメチルベンゼン200g、トリメトキシシラン12.7g(1.1×10-1mol)、及び塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液6.0×10-1g(Pt単体として1.6×10-5molを含有)を混合し、80℃で40時間熟成させた。その後、溶剤及び未反応物を減圧留去した。続いて、分子蒸留装置により残存する低沸点成分、高沸点成分を取り除いたところ、液状の生成物201gを得た。【0095】得られた化合物は、NMRにより下記式(III)で示される構造であることが確認された。【化43】…【0114】【0115】」
エ.本件発明1と甲1発明の対比・判断
(ア)対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明の「パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物(A)」は、本件発明1の「(C1)」のパーフルオロシラン化合物に相当する。
甲1発明の「パーフルオロポリエーテル化合物(D)」は、直鎖状のアルキル基によるパーフルオロ(ポリ)エーテル基と水酸基(-OH)を併せ持つものであるから、本件発明1の「(E1)」で表される化合物とは、直鎖状のアルキル基によるパーフルオロ(ポリ)エーテル基を含有する化合物である限りにおいて、共通している。
甲1発明の表面処理剤は、ハイドロフルオロエーテルを含むものであるが、本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明22、23は、エーテル構造を有する含フッ素オイルの含有を許容しているから、甲1発明がハイドロフルオロエーテルを含む点において、本件発明1と甲1発明は相違しない。
甲1発明の表面処理剤は、化学構造が異なる3種類の化合物を含む組成物であるから、甲1発明の「表面処理剤」は、本件発明1の「組成物」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明は、
「一般式(B1)、(B2)、(C1)、(C2)、(D1)および(D2)のいずれかで表される少なくとも1種のパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物(化学構造式は略す。)、および、直鎖状のアルキル基によるパーフルオロ(ポリ)エーテル基を含有する化合物を含む組成物。」で一致し、
本件発明1では、パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物と式(E1)で表される化合物を、「99.99:0.01~97~3」の「モル比」で含有しているのに対し、
甲1発明では、パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物(A)とパーフルオロポリエーテル化合物(D)を、「2:1」の「質量比」で含有している点(相違点1)、
本件発明1では、直鎖状のアルキル基によるパーフルオロ(ポリ)エーテル基を含有する化合物として、「-COOR3…R3は、水素原子または炭化水素基である。]」の官能基を含有しているのに対し、甲1発明では、水酸基(-OH)を含有している点(相違点2)、
本件発明1では、パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物の数平均分子量と、(E1)で表される化合物の数平均分子量の差を2000以内としているのに対し、
甲1発明では、両化合物の数平均分子量の差を特定していない点(相違点3)
で相違している。
(イ)判断
相違点1について、以下で検討する。
甲1発明のパーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物(A)は、原子量(H;1、C;12、N;14、O;16、F;19、Si;28)と原子数から 分子量を算出すると、4100となり、甲1発明のパーフルオロポリエーテル化合物(D)は、3426であるから、甲1発明の「質量比2:1」をモル比に換算すると「98:58」となり、この数値は本件発明1の「99.99:0.01~97:3」の数値範囲と顕著に異なっている。
そして、甲1には、「表面処理剤中…パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物…と、…含フッ素化合物…との質量比…は、好ましくは1:50~50:1であり、より好ましくは1:10~10:1であり、さらに好ましくは1:4~4:1である。かかる範囲とすることで、表面処理剤の摩擦耐久性をより向上させることができる。」(甲1cの【0113】)との記載はあるものの、かかる記載は、特に、モル比で「99.99:0.01~97:3」の数値範囲を選択することを当業者に動機付けるものとはいえない。
また、甲2には、「数平均分子量が100~10,000の、分子重量の25重量%以上のフッ素原子を含む含フッ素カルボン酸を、前記(A)成分100質量部に対して、0.001~10質量部で、含有する」こと(甲2aの請求項1)、「触媒であるB-2」を、「含フッ素有機ケイ素化合物であるA-2」の「0.3%」に対し「30ppm」の濃度、すなわち、「含フッ素有機ケイ素化合物であるA-2」と「触媒であるB-2」を100:1の質量比で含有させること(甲2dの【0058】、【0072】、【0077】)が記載されているが、甲1発明の「パーフルオロポリエーテル化合物(D)」は、水酸基(-OH)を含むものの、カルボン酸基を含まない点において、甲2に記載されている「含フッ素カルボン酸」(甲2aの請求項1)又は「触媒であるB-2」(甲2dの【0072】)と化学構造が異なるから、甲2の実施例2より導き出せる100:1の質量比、ひいては相違点1として挙げた本件発明1の発明特定事項を、甲1発明に適用することを当業者が容易に想到し得たとは認められない。
同様に、甲3には、反応触媒として、無機又は有機の「酸あるいは塩基」、「リン酸エステル系の触媒」、「β-ジケトン」が列挙され(甲3bの【0024】)、実施例では、「アルコキシシラン化合物2部」に「リン酸パーフルオロポリエーテルエステル0.08部」を含有させること、すなわち、100:4の質量比で両化合物を用いることが記載されているが(甲3cの【0042】)、甲1発明の「パーフルオロポリエーテル化合物(D)」と、甲3に記載されている、無機又は有機の「酸あるいは塩基」、「リン酸パーフルオロポリエーテルエステル」等の「リン酸エステル系の触媒」、「β-ジケトン」は化学構造が異なるから、甲3の実施例より導き出せる100:4の質量比、ひいては、相違点1として挙げた本件発明1の発明特定事項を、甲1発明に適用することを当業者が容易に想到し得たとは認められない。
なお、甲4には、本件発明1の「(D1)、(D2)で表されるパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物」に相当する「フルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シラン」が示されるに過ぎないから、甲4は、相違点1の容易想到性の判断を左右するものではない。
したがって、甲1~4の記載事項を勘案しても、相違点1として挙げた本件発明1の発明特定事項を、当業者が容易に想到し得たとは認められないので、相違点2、3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明、すなわち、甲1に記載された発明と甲1~4の記載事項に基づき、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
オ.本件発明1と甲2発明の対比・判断
(ア)対比
本件発明1と甲2発明を対比する。
甲2発明の「触媒であるB-2」は、含フッ素基に分枝鎖のアルキル基を有しているから、PFPE2、Rf2において直鎖のアルキル基を有している本件発明1の「(E1)で表される化合物」と、パーフルオロ(ポリ)エーテル基を含有するカルボン酸化合物である限りにおいて共通している。
甲2発明の「含フッ素有機ケイ素化合物であるA-2」は、パーフルオロ(ポリ)エーテル基とシラン基を併せ持つから、本件発明1の(B1)、(B2)、(C1)、(C2)、(D1)および(D2)で表されるパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物とは、パーフルオロ(ポリ)エーテル基を含有するシラン化合物である限りにおいて共通している。
甲2発明の「コーティング剤」は、化学構造が異なる2種類の化合物を含む組成物であるから、甲2発明の「コーティング剤」は、本件発明1の「組成物」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲2発明は、
「パーフルオロ(ポリ)エーテル基を含有するシラン化合物、およびパーフルオロ(ポリ)エーテル基を含有するカルボン酸化合物を含む組成物。」で一致し、
本件発明1では、パーフルオロ(ポリ)エーテル基を含有するカルボン酸化合物として、直鎖のアルキル基によるPFPE2、Rf2を含有しているのに対し、甲2発明では、分枝鎖のプロピル基による含フッ素基を含有している点(相違点4)、
本件発明1では、パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物と式(E1)で表される化合物を、「99.99:0.01~97~3」の「モル比」で含有しているのに対し、
甲2発明では、「触媒であるB-2」を、「含フッ素有機ケイ素化合物であるA-2」の「0.3%」に対し、「30ppm」の濃度で含有させている点(相違点5)
本件発明1では、パーフルオロ(ポリ)エーテル基を含有するシラン化合物として、「(B1)、(B2)、(C1)、(C2)、(D1)および(D2)で表されるパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物」を用いているのに対し、
甲2発明では、「含フッ素有機ケイ素化合物であるA-2」を用いている点(相違点6)、
本件発明1では、パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物の数平均分子量と、(E1)で表される化合物の数平均分子量の差を2000以内としているのに対し、
甲2発明では、「含フッ素有機ケイ素化合物であるA-2」と「触媒であるB-2」の数平均分子量の差を特定していない点(相違点7)で相違している。
(イ)判断
相違点4について、以下で検討する。
甲2には、「数平均分子量が100~10,000の…フッ素原子を含む含フッ素カルボン酸」(甲2aの請求項1)を具体的に示す説明が【0037】~【0047】にかけて記載されているが(甲2c)、「触媒であるB-2」が有する含フッ素のアルキル基を、分枝鎖から直鎖に置き換えることを示唆する記載は見当たらない。
そして、甲2の実施例をみても、「含フッ素有機ケイ素化合物」である(A-1)~(A-3)、(A-6)~(A-7)、「触媒」である(B-3)は、「触媒であるB-2」と同様に、含フッ素基にプロピル基を有するものであるが、いずれも分枝鎖のプロピル基のみが採用されており、これを直鎖のプロピル基に置き換える旨の記載や示唆は、甲2に存在しない。
しかも、甲2では、「簡易な工程で、速やかに硬化被膜を形成すること」を、発明の目的、効果に掲げ(甲2bの【0008】~【0009】、【0011】)、実施例において、「コーティング剤塗布後30分の放置」における「硬化」の程度が評価されるに止まるから(甲2dの【0077】)、「高い摩擦耐久性を有する表面処理層を形成する」(本aの【0006】、【0007】)という本件発明1の課題や令和3年7月5日提出の意見書に示された、パーフルオロ(ポリ)エーテル基のアルキル基が分枝鎖と直鎖の違いにより摩耗耐久性の程度が異なるという効果は、甲2の記載から導き出すことはできない。
そうすると、甲2の記載事項を参酌しても、甲2発明において、「触媒であるB-2」が有する含フッ素基のプロピル基を、分枝鎖から直鎖に置き換えることを、当業者が容易に想到し得たとはいえないし、本件発明1の「高い摩擦耐久性を有する表面処理層を形成する」という効果(本aの【0011】、本dの【0253】~【0254】)も、甲2の記載より当業者が期待、予測し得るとは認められない。
また、甲2発明の「触媒であるB-2」は、概念上、甲1の請求項1に記載された「式(D1)、(D2)、(E1)、(E2)、(F1)、(F2)、(G1)および(G2)のいずれかで表される含フッ素化合物」に含まれる可能性があるものの、エ(イ)で示したように、甲1で具体的に開示されている「パーフルオロポリエーテル化合物(D)」とは、カルボン酸基、分枝鎖を有する点で化学構造が異なり、シラン化合物に対する使用量の点でも異なっている。
更に、甲2発明の「触媒であるB-2」は、甲3に記載された無機又は有機の「酸あるいは塩基」、「リン酸パーフルオロポリエーテルエステル」等の「リン酸パーフルオロポリエーテルエステル」、「β-ジケトン」と化学構造が異なっている。
よって、甲1、3の記載事項を勘案しても、甲2発明の「触媒であるB-2」の含フッ素基のプロピル基を、分枝鎖から直鎖に置き換えることが当業者に容易に動機付けられるとはいえない。
なお、甲4には、本件発明1の「(D1)、(D2)で表されるパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物」に相当する「フルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シラン」が示されるに過ぎないから、甲4は、相違点4の容易想到性の判断を左右するものではない。
以上からすると、甲1~4の記載事項を勘案しても、相違点4として挙げた本件発明1の発明特定事項を、当業者が容易に想到し得たとは認められないので、相違点5~7について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明、すなわち、甲2に記載された発明と甲1~4の記載事項に基づき、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
カ.本件発明2~19、21~32の進歩性の判断
(ア)本件発明2~19
本件発明2~19は、本件発明1の「一般式(B1)、(B2)、(C1)、(C2)、(D1)および(D2)で表されるパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物」の化学構造を限定するものであるが、これらの限定により、本件発明2~19と甲1発明又は甲2発明との間に新たな相違点は生じないから、上記のエ(イ)、オ(イ)で示した、本件発明1の場合と同様の理由により、本件発明2~19は、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
(イ)本件発明21
本件発明21は、「式(E1)で表される化合物」の数平均分子量を、1,000~30,000に限定するものであるが、原子量(H;1、C;12、N;14、O;16、F;19、Si;28)と原子数から分子量を算出すると、甲1発明のパーフルオロポリエーテル化合物(D)の分子量は「3426」、甲2発明の「触媒であるB-2」の分子量は「4148」であり、いずれも上記の数値範囲を満たすから、当該限定により、本件発明21と甲1発明又は甲2発明との間に新たな相違点は生じない。
したがって、上記のエ(イ)、オ(イ)で示した、本件発明1の場合と同様の理由により、本件発明21は、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
(ウ)本件発明22~32
本件発明22~24は、組成物に、含フッ素オイル、シリコーンオイル、触媒、溶媒が含まれること、本件発明25~26は、組成物が、防汚性コーティング剤または防水性コーティング剤等の表面処理剤に用いられること、本件発明27は、組成物がペレットであること、本件発明28は、ガラス等の基剤と組成物が、光学部材、ディスプレイ等の物品を構成することを規定するものである。
以上の本件発明22~32の発明特定事項は、甲1発明又は甲2発明との間で新たな相違点を生じるものであるが、本件発明22~32は、本件発明1を直接又は間接的に引用することから、少なくとも、甲1発明又は甲2発明との間で相違点1又は4を有しており、そのうち相違点1、4で特定される本件発明1の発明特定事項は、上記のエ(イ)、オ(イ)で示したとおり、当業者が容易に想到し得たものとはいえないから、本件発明22~32についても、本件発明1と同様に、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
(3)当審で通知した取消理由の検討のまとめ
以上のとおり、本件発明1~19、21~32に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由1、2により取り消すことはできない。
2.取消理由で採用しなかった申立理由
申立人の申立理由のうち申立理由1(進歩性)、申立理由2-2(サポート要件)は、当審が通知した取消理由に含まれているから、以下では、申立理由2-1、申立理由2-3(いずれもサポート要件)、申立理由3(実施可能要件)について検討する。
(1)申立理由2-1(サポート要件違反)
申立人は、本件訂正前の請求項1に係る発明では「数平均分子量の差が2000以内である」ことが規定されているところ、本件明細書の発明の詳細な説明には、数値範囲の全てにわたって常に好ましい効果が得られることが本件明細書から理解することができないことを主張する。
しかし、本件明細書には、「好ましい態様において、上記式(A1)、(A2)、(B1)、(B2)、(C1)、(C2)、(D1)または(D2)で表されるパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物の数平均分子量と、式(E1)で表されるパーフルオロ(ポリ)エーテル変性化合物の数平均分子量の差は、2,000以内、好ましくは1,500以内、より好ましくは1,000以内、さらに好ましくは500以内である。」と記載され(本cの【0190】)、実施例において、パーフルオロ(ポリ)エーテル基の繰り返し単位が同じであり、数平均分子量の差が小さいといえるパーフルオロポリエーテル変性シラン化合物(X)~(Z)とパーフルオロポリエーテル変性化合物(A)~(C)の組合せが「高い摩擦耐久性」を示すことが裏付けられているから(本dの【0249】、【0253】、【0254】)、「数平均分子量の差が2000以内である」ことにより、本件発明の「撥水性、撥油性、防汚性、防水性を有し、かつ、高い摩擦耐久性を有する層を形成することのできるパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物を含んで成る組成物を提供」(本aの【0006】)するという課題が解決できることを当業者は認識できる。
したがって、申立人の主張は理由がなく、本件明細書に、数値範囲の全てにわたって常に好ましい効果が得られることが示されていないことだけを理由に、本件発明がサポート要件に違反しているとはいえない。
(2)申立理由2-3(サポート要件違反)
申立人は、本件明細書においては、(OC3F6)単位が直鎖状の(CF2CF2CF2O)単位であって、かつa=b=c=e=f=0であり、d=32の場合だけの効果が示されており、それ以外のパーフルオロポリエーテル基 (PFPE1、PFPE2)に関して、本件訂正前の請求項1~32に係る発明の作用効果が有効に発現されるか否かについては全く確認、立証されていないことを主張する。
しかし、甲1~4に、各種鎖長のパーフルオロ(ポリ)エーテル基を有する化合物が、一定の効果を有するものとして、包括的に特許請求の範囲等に記載されていることに照らすと、本件発明の高い摩擦耐久性を有する効果のみが、直鎖状の(CF2CF2CF2O)単位で且つ繰り返し数32でしか得られないものとは解せないし、申立人は、上記場合以外では、高い摩擦耐久性に係る効果を奏することを当業者が期待できないことを窺わせる客観的理由も示していない。
そうすると、単に、本件明細書の実施例に、上記場合以外のパーフルオロポリエーテル基 (PFPE1、PFPE2)を用いた実験結果が存在しないことを理由に、本件発明がサポート要件に違反しているとはいえない。
したがって、申立人の上記主張は、理由がない。
(3)申立理由3(実施可能要件)
申立人は、本件訂正前の請求項1に係る発明の式(D1)、(D2)で表されるパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物の合成方法に関して、本件明細書の実施例では具体的に示されておらず、段落[0166]にその一例が示されているのみであるから、本件訂正前の請求項1に係る発明の実施には、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤を行う必要があると主張する。
しかし、甲4には、本件発明1の式(D1)、(D2)に対応する化合物の製造方法が具体的に開示され(甲4cの【0094】~【0095】等)、かかる化合物が、温和な硬化条件下、短時間でも耐摩耗性、耐候性及び低動摩擦性に優れた撥水撥油層を形成し得ることが記載されるので(甲4bの【0012】、甲4cの【0114】~【0115】)、甲4が頒布された2015年11月12日時点、すなわち、本件特許の出願日(平成29年8月30日)よりも前の時点で、当業者が、式(D1)、(D2)で表されるパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物を製造し、使用できる状態になっていたものと認められる。
そうすると、本件明細書に上記化合物の合成方法が記載されてなくても、本件明細書に記載されているように「式(D1)または式(D2)で表されるパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物は、公知の方法を組み合わせることにより製造することができ」(本bの【0165】)たものといえる。
したがって、申立人の上記主張は、理由がない。
(4)取消理由で採用しなかった申立理由の検討のまとめ
以上のとおり、本件発明1~19、21~32に係る特許は、申立人による申立理由2-1、2-3、申立理由3により取り消すことはできない。
第6 むすび
以上のとおり、本件訂正については、適法であるから、これを認める。
本件特許の請求項20に対する申立は、不適法なものであるから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、却下すべきものである。
本件特許の請求項1~19、21~32に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~19、21~32に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700035