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特許異議申立

2022-700261

防汚基材

審判番号
2022-700261
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-086414
登録番号
6943315
請求日
2022年03月28日
審決日
2022年12月09日
公報発行日
2023年03月31日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】ダイキン工業株式会社
  • 【権利者代理人】山田 卓二
  • 【権利者代理人】吉田 環
  • 【権利者代理人】式見 真行
  • 【権利者代理人】澤内 千絵
  • 【異議申立人】宮本 邦彦
審判長/審判官
  • 審判長 山崎 勝司
  • 審判官 井上 茂夫
  • 審判官 加藤 友也
分類
P1651.113-YAA(G02B) / P1651.121-YAA(G02B) / P1651.537-YAA(G02B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の8第1項、特許法第135条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6943315号発明「防汚基材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6943315号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~15、17〕、16について訂正することを認める。 特許第6943315号の請求項1、4~7、9~16に係る特許を維持する。 特許第6943315号の請求項2、3、8、17に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6943315号(以下「本件特許」という。)の請求項1~17に係る特許についての出願は、令和2年5月18日(優先権主張 令和1年5月22日 日本国、令和1年9月2日 日本国)を出願日とする出願であって、令和3年9月13日にその特許権の設定登録がされ(特許掲載公報令和3年9月29日発行)、その後、その特許について、令和4年3月28日に特許異議申立人宮本邦彦(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、令和4年5月30日付けで取消理由が通知され、令和4年8月1日に特許権者から意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)がされ、令和4年9月13日に申立人から意見書が提出されたものである。 第2 本件訂正請求について 1.訂正の内容 本件訂正請求は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~15、17〕、16について訂正することを求めるものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1において、「前記複合酸化物は、SiとTaとの複合酸化物またはSiとNbとの複合酸化物であり、」との発明特定事項を加える。(請求項1の記載を引用する請求項4~7、9~15も同様に訂正する。) (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1において、「前記複合酸化物は、SiとTaの酸化物またはSiとNbの酸化物が均一相を構成するものである、」との発明特定事項を加える。(請求項1の記載を引用する請求項4~7、9~15も同様に訂正する。) (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項4において、「請求項1~3のいずれか1項に記載の物品。」とあるのを、「請求項1に記載の物品。」と訂正する。(請求項4の記載を引用する請求項5~7、10~15も同様に訂正する。) (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項5において、「請求項1~4のいずれか1項に記載の物品。」とあるのを、「請求項1または4に記載の物品。」と訂正する。(請求項5の記載を引用する請求項6、7、10~15も同様に訂正する。) (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項6において、「請求項1~5のいずれか1項に記載の物品。」とあるのを、「請求項1、4~5のいずれか1項に記載の物品。」と訂正する。(請求項6の記載を引用する請求項7、10~15も同様に訂正する。) (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項7において、「請求項1~6のいずれか1項に記載の物品。」とあるのを、「請求項1、4~6のいずれか1項に記載の物品。」と訂正する。(請求項7の記載を引用する請求項10~15も同様に訂正する。) (9)訂正事項9 特許請求の範囲の請求項8を削除する。 (10)訂正事項10 特許請求の範囲の請求項10において、「請求項1~9のいずれか1項に記載の物品。」とあるのを、「請求項1、4~7、および9のいずれか1項に記載の物品。」と訂正する。(請求項10の記載を引用する請求項11~15も同様に訂正する。) (11)訂正事項11 特許請求の範囲の請求項12において、「請求項1~11のいずれか1項に記載の物品。」とあるのを、「請求項1、4~7、9~11のいずれか1項に記載の物品。」と訂正する。(請求項12の記載を引用する請求項13~15も同様に訂正する。) (12)訂正事項12 特許請求の範囲の請求項13において、「請求項8~12のいずれか1項に記載の物品。」とあるのを、「請求項9~12のいずれか1項に記球の物品。」と訂正する。(請求項13の記載を引用する請求項14、15も同様に訂正する。) (13)訂正事項13 特許請求の範囲の請求項14において、「請求項1~13のいずれか1項に記載の物品。」とあるのを、「請求項1、4~7、9~13のいずれか1項に記載の物品。」と訂正する。(請求項14の記載を引用する請求項15も同様に訂正する。) (14)訂正事項14 特許請求の範囲の請求項15において、「請求項1~13のいずれか1項に記載の物品。」とあるのを、「請求項1、4~7、9~13のいずれか1項に記載の物品。」と訂正する。 (15)訂正事項15 特許請求の範囲の請求項16において、「ここに、前記他の金属は、TaまたはNbであり、」との発明特定事項を加える。 (16)訂正事項16 特許請求の範囲の請求項17を削除する。 2.一群の請求項について 訂正前の請求項2~15、17は、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用するものであり、いずれも、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正後の請求項1~15、17は、一群の請求項を構成するものである。 3.訂正の適否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載されていた「複合酸化物」について「SiとTaとの複合酸化物またはSiとNbとの複合酸化物であ」ると限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 訂正事項1は、本件特許の願書に添付された明細書又は特許請求の範囲(以下「本件特許明細書等」という。)の段落【0022】の記載及び請求項8の記載からみて、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものである。 さらに、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、訂正前の請求項1に記載されていた「複合酸化物」について「SiとTaの酸化物またはSiとNbの酸化物が均一相を構成するものである」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 訂正事項2は、本件特許明細書等の段落【0018】の記載からみて、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものである。 さらに、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項3、4、9、16について 訂正事項3、4、9、16は、それぞれ訂正前の請求項2、3、8、17を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、訂正事項3、4、9、16は、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。 (4)訂正事項5~8、10~14について 訂正事項5~8、10~14は、訂正事項3、4、9により、訂正前の請求項2、3、8を削除することに伴い、それらの請求項を引用する請求項において、それらの請求項を引用しないものと訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明に該当する。 また、訂正事項5~8、10~14は、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。 (5)訂正事項15について 訂正事項15は、訂正前の請求項16に記載されていた「他の金属」について「TaまたはNbであ」ると限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 訂正事項15は、本件特許明細書等の段落【0022】の記載からみて、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内のものである。 さらに、訂正事項15は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 4.本件訂正請求についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げられた事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~15、17〕、16について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記のとおり、本件訂正請求が認められるから、本件特許の請求項1、4~7、9~16に係る発明(以下「本件発明1」等といい、また、本件発明1、4~7、9~16を総称して「本件発明」ともいう。)は、それぞれ、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1、4~7、9~16に記載された、次のとおりのものである。 【請求項1】 基材と、 前記基材上に位置する、中間層と、 前記中間層の直上に位置する、含フッ素シラン化合物を含む表面処理剤から形成された表面処理層と を有して成り、 前記基材は、ガラス基材であり、 前記中間層は、Siを含む複合酸化物を含み、 前記含フッ素シラン化合物は、下記式(1)または(2): 【化1】 [図:0001395210000001.jpg] [式中: RF1は、各出現においてそれぞれ独立して、Rf1-RF-Oq-であり; RF2は、-Rf2p-RF-Oq-であり; Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基であり; Rf2は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基であり; RFは、各出現においてそれぞれ独立して、2価のフルオロポリエーテル基であり; pは、0または1であり; qは、各出現においてそれぞれ独立して、0または1であり; RSiは、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基、加水分解可能な基、水素原子または1価の有機基が結合したSi原子を含む1価の基であり; 少なくとも1つのRSiは、水酸基または加水分解可能な基が結合したSi原子を含む1価の基であり; XAは、それぞれ独立して、単結合または2~10価の有機基であり; αは、1~9の整数であり; βは、1~9の整数であり; γは、それぞれ独立して、1~9の整数である。] で表される少なくとも1種のフルオロポリエーテル基含有化合物であり、 前記複合酸化物は、SiとTaとの複合酸化物またはSiとNbとの複合酸化物であり、 前記複合酸化物は、SiとTaの酸化物またはSiとNbの酸化物が均一相を構成するものである、 物品。 【請求項4】 前記中間層において、前記表面処理層に近い最表面から0.1nm~10nmにおけるSiと他の金属とのモル比は、10:90~99.9:0.1である、請求項1に記載の物品。 【請求項5】 前記複合酸化物において、Siと他の金属とのモル比は、10:90~99.9:0.1である、請求項1または4に記載の物品。 【請求項6】 前記複合酸化物において、Siと他の金属とのモル比は、13:87~93:7である、請求項1、4~5のいずれか1項に記載の物品。 【請求項7】 前記複合酸化物において、Siと他の金属とのモル比は、45:55~75:25である、請求項1、4~6のいずれか1項に記載の物品。 【請求項9】 Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、C1-16パーフルオロアルキル基であり、 Rf2は、各出現においてそれぞれ独立して、C1-6パーフルオロアルキレン基である、 請求項1に記載の物品。 【請求項10】 RFは、各出現においてそれぞれ独立して、式: -(OC6F12)a-(OC5F10)b-(OC4F8)c-(OC3RFa6 )d-(OC2F4)e-(OCF2)f- [式中、RFaは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子または塩素原子であり、 a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は1以上であり、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。] で表される基である、請求項1、4~7、および9のいずれか1項に記載の物品。 【請求項11】 RFaは、フッ素原子である、請求項10に記載の物品。 【請求項12】 RFは、各出現においてそれぞれ独立して、下記式(f1)、(f2)または(f3): -(OC3F6)d- (f1) [式中、dは1~200の整数である。] -(OC4F8)c-(OC3F6)d-(OC2F4)e-(OCF2)f- (f2) [式中、cおよびdは、それぞれ独立して、0~30の整数であり; eおよびfは、それぞれ独立して、1~200の整数であり; c、d、eおよびfの和は、10~200の整数であり; 添字c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。] -(R6-R7)g- (f3) [式中、R6は、OCF2またはOC2F4であり; R7は、OC2F4、OC3F6、OC4F8、OC5F10およびOC6F12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から選択される2または3つの基の組み合わせであり; gは、2~100の整数である。] で表される基である、請求項1、4~7、9~11のいずれか1項に記載の物品。 【請求項13】 RSiは、下記式(S1)、(S2)、(S3)、または(S4): 【化2】 [図:0001395210000002.jpg] [式中: R11は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基であり; R12は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり; n1は、(SiR11n1R123-n1)単位毎にそれぞれ独立して、0~3の整数であり; X11は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2価の有機基であり; R13は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり; tは、各出現においてそれぞれ独立して、2~10の整数であり; R14は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子またはハロゲン原子であり; Ra1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z1-SiR21p1R22q1R23r1であり; Z1は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子または2価の有機基であり; R21は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z1’-SiR21’p1’R22’q1’R23’r1’であり; R22は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基であり; R23は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり; p1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり; q1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり; r1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり; Z1’は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子または2価の有機基であり; R21’は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z1”-SiR22”q1”R23”r1”であり; R22’は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基であり; R23’は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり; p1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり; q1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり; r1’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり; Z1”は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子または2価の有機基であり; R22”は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基であり; R23”は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり; q1”は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり; r1”は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり; Rb1は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基であり; Rc1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり; k1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり; l1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり; m1は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり; Rd1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z2-CR31p2R32q2R33r2であり; Z2は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子または2価の有機基であり; R31は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z2’-CR32’q2’R33’r2’であり; R32は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z3-SiR34n2R353-n2 であり; R33は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基または1価の有機基であり; p2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり; q2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり; r2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり; Z2’は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子または2価の有機基であり; R32’は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z3-SiR34n2R353-n2であり; R33’は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基または1価の有機基であり; q2’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり; r2’は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり; Z3は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子または2価の有機基であり; R34は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基であり; R35は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または1価の有機基であり; n2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり; Re1は、各出現においてそれぞれ独立して、-Z3-SiR34n2R353-n2であり; Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、水酸基または1価の有機基であり; k2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり; l2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数であり; m2は、各出現においてそれぞれ独立して、0~3の整数である。] で表される基である、請求項9~12のいずれか1項に記載の物品。 【請求項14】 α、β、およびγは、1である、請求項1、4~7、9~13のいずれか1項に記載の物品。 【請求項15】 XAは、それぞれ独立して、3価の有機基であり、 αは1かつβは2であるか、αは2かつβは1であり、 γは2である、 請求項1、4~7、9~13のいずれか1項に記載の物品。 【請求項16】 基材と、その上に形成された含フッ素シラン化合物を含む表面処理剤から形成された表面処理層とを有して成る物品の製造方法であって、 上記基材上に、Siと他の金属を同時に蒸着させて、Siを含む複合酸化物を含む中間層を形成すること、ここに、前記他の金属は、TaまたはNbであり、および 上記中間層の直上に、表面処理層を形成すること を含み、 前記基材は、ガラス基材であり、 前記含フッ素シラン化合物は、下記式(1)または(2): 【化3】 [図:0001395210000003.jpg] [式中: RF1は、各出現においてそれぞれ独立して、Rf1-RF-Oq-であり; RF2は、-Rf2p-RF-Oq-であり; Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基であり; Rf2は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基であり; RFは、各出現においてそれぞれ独立して、2価のフルオロポリエーテル基であり; pは、0または1であり; qは、各出現においてそれぞれ独立して、0または1であり; RSiは、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基、加水分解可能な基、水素原子または1価の有機基が結合したSi原子を含む1価の基であり; 少なくとも1つのRSiは、水酸基または加水分解可能な基が結合したSi原子を含む1価の基であり; XAは、それぞれ独立して、単結合または2~10価の有機基であり; αは、1~9の整数であり; βは、1~9の整数であり; γは、それぞれ独立して、1~9の整数である。] で表される少なくとも1種のフルオロポリエーテル基含有化合物である、 方法。 第4 取消理由及び特許異議の申立ての理由について 1.特許権者に通知した取消理由 本件発明に対して、特許権者に通知した取消理由の要旨は以下のとおりである。 (1)理由1 本件特許の請求項1~17に係る発明は、その優先日前に日本国内または外国において頒布された次の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 甲第1号証:特開2004-21550号公報 甲第2号証:再公表特許WO2016/190047号公報 甲第3号証:再公表特許WO2014/129333号公報 甲第4号証:特表2009-519149号公報 以下、甲第1号証を「甲1」といい、甲第2号証以降も同様にいう。 (2)理由2 本件特許の請求項1~17に係る発明は、下記の点で発明の詳細な説明に記載されたものでなく、本件特許の請求項1~17に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 本件特許の発明の詳細な説明の記載から、SiとTaの複合酸化物以外の複合酸化物について、本件発明の課題(より高い摩擦耐久性や耐薬品性)を解決し得るとは認識できず、このSiとTaの複合酸化物以外の複合酸化物を含む本件発明は、サポート要件を満たしていない。 2.取消理由についての判断 (1)甲3を主引用例とする理由1について ア 甲3の記載事項、甲3に記載された発明 (ア)「【請求項1】 透明基体と、 前記透明基体上に積層された低反射膜と、 前記低反射膜上に積層された防汚膜と、を有しており、 前記防汚膜の表面粗さRaが3nm以下である光学部品。 【請求項2】 前記透明基体がガラス基板である請求項1に記載の光学部品。」 「【請求項5】 前記低反射膜が高屈折率層と低屈折率層との積層体であり、 前記高屈折率層が窒化ケイ素層であり、 前記低屈折率層が、SiとSnとの混合酸化物を含む材料、SiとZrとの混合酸化物を含む材料、SiとAlとの混合酸化物を含む材料、のいずれかである、請求項1乃至3何れか一項に記載の光学部品。」 (イ)「【0015】 本実施形態の光学部品について図1を用いて説明する。図1は、本実施形態の光学部品10の断面図を模式的に示したものであり、透明基体11上に低反射膜12と、該低反射膜12上に防汚膜13が積層された構成を有している。光学部品10を構成する各部材について以下に説明する。」 (ウ)「【0034】 特に反射防止性能を高めるためには、低反射膜は複数の層が積層された積層体であることが好ましく、例えば該積層体は全体で2層以上6層以下の層が積層されていることが好ましく、2層以上4層以下の層が積層されていることがより好ましい。ここでの積層体は、上記の様に高屈折率層と低屈折率層とを積層した積層体であることが好ましく、高屈折率層、低屈折率層各々の層数を合計したものが上記範囲であることが好ましい。 【0035】 高屈折率層、低屈折率層の材料は特に限定されるものではなく、要求される反射防止の程度や生産性等を考慮して選択できる。高屈折率層を構成する材料としては、例えば酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、窒化ケイ素(SiN)、酸化タンタル(Ta2O5)から選択された1種以上を好ましく利用できる。低屈折率層を構成する材料としては、酸化ケイ素(SiO2)、SiとSnとの 混合酸化物を含む材料、SiとZrとの混合酸化物を含む材料、SiとAlとの混合酸化 物を含む材料から選択された1種以上を好ましく利用できる。」 (エ)「【0049】 次に防汚膜13について説明する。防汚膜13はフッ素含有有機ケイ素化合物により構成できる。 【0050】 ここで、フッ素含有有機ケイ素化合物について説明する。本実施形態で用いるフッ素含有有機ケイ素化合物としては、防汚性、撥水性、撥油性を付与するものであれば特に限定されず使用できる。 【0051】 このようなフッ素含有有機ケイ素化合物としては例えば、ポリフルオロポリエーテル基、ポリフルオロアルキレン基及びポリフルオロアルキル基からなる群から選ばれる1つ以上の基を有するフッ素含有有機ケイ素化合物を好ましく利用できる。なお、ポリフルオロポリエーテル基とは、ポリフルオロアルキレン基とエーテル性酸素原子とが交互に結合した構造を有する2価の基のことである。 【0052】 このポリフルオロポリエーテル基、ポリフルオロアルキレン基及びポリフルオロアルキル基からなる群から選ばれる1つ以上の基を有するフッ素含有有機ケイ素化合物の具体例としては、下記一般式(I)~(V)で表される化合物等が挙げられる。 【0053】 【化1】 [図:0001395210000004.jpg] 式中、Rfは炭素数1~16の直鎖状のポリフルオロアルキル基(アルキル基として、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基等)、X は水素原子又は炭素数1~5の低級アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基等)、R1は加水分解可能な基(例えば、アミノ基、アルコキシ基等)又はハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等)、mは1~50、好ましくは1~30の整数、nは0~2、好ましくは1~2の整数、pは1~10、好ましくは1~8の整数である。 【0054】 CqF2q+1CH2CH2Si(NH2)3 (II) ここで、qは1以上、好ましくは2~20の整数である。 【0055】 一般式(II)で表される化合物としては例えば、n-トリフロロ(1,1,2,2-テトラヒドロ)プロピルシラザン(n-CF3CH2CH2Si(NH2)3)、n-ヘプタフロロ(1,1,2,2-テトラヒドロ)ペンチルシラザン(n-C3F7CH2C H2Si(NH2)3)等を例示できる。 【0056】 Cq’F2q’+1CH2CH2Si(OCH3)3 (III) ここで、q'は1以上、好ましくは1~20の整数である。 【0057】 一般式(III)で表される化合物としては、2-(パーフルオロオクチル)エチルトリメトキシシラン(n-C8F17CH2CH2Si(OCH3)3)等を例示できる。 【0058】 【化2】 [図:0001395210000005.jpg] 式(IV)中、Rf2は、-(OC3F6)s-(OC2F4)t-(OCF2)u-(s、t、uはそれぞれ独立に0~200の整数)で表わされる2価の直鎖状ポリフルオロポリエーテル基であり、R2、R3は、それぞれ独立に炭素原子数1~8の一価炭化水素基(例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基等)である。X2、X3は独立に加水分解可能な基(例えば、アミノ基、アルコキシ基、アシロキシ基、アルケニルオキシ基、イソシアネート基等)またはハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)であり、d、eは独立に1~2の整数であり、c、fは独立に1~5(好ましくは1~2)の整数であり、aおよびbは独立に2または3である。 【0059】 化合物(IV)が有するRf2においてs+t+uは、20~300であることが好ましく、25~100であることがより好ましい。また、R2、R3としては、メチル基、エチル基、ブチル基がより好ましい。X2、X3で示される加水分解性基としては、炭素数1~6のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基が特に好ましい。また、aおよびbはそれぞれ3が好ましい。 【0060】 【化3】 [図:0001395210000006.jpg] 式(V)中、vは1~3の整数であり、w、y、zはそれぞれ独立に0~200の整数であり、hは1または2であり、iは2~20の整数であり、X4は加水分解性基であり 、R4は炭素数1~22の直鎖または分岐の炭化水素基であり、kは0~2の整数である。w+y+zは、20~300であることが好ましく、25~100であることがより好ましい。また、iは2~10であることがより好ましい。X4は、炭素数1~6のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基がより好ましい。R4としては、炭素数1~10のアルキル基がより好ましい。 【0061】 また、市販されているポリフルオロポリエーテル基、ポリフルオロアルキレン基及びポリフルオロアルキル基からなる群から選ばれる1つ以上の基を有するフッ素含有有機ケイ素化合物として、KP-801(商品名、信越化学社製)、KY178(商品名、信越化学社製)、KY-130(商品名、信越化学社製)、KY185(商品名、信越化学社製)、オプツ-ル(登録商標)DSXおよびオプツール(登録商標)AES(いずれも商品名、ダイキン社製)などが好ましく使用できる。」 (オ)「【0083】 まず、各実験例の防汚膜について以下の手順により擦り試験を行った。 【0084】 底面が10mm×10mmである平面金属圧子の表面に、スチールウール#0000を装着して、サンプルを擦る摩擦子とした。 【0085】 次に、上記摩擦子を用い、平面摩耗試験機3連式(大栄科学精器社製、型式:PA-300A)にて擦り試験を行った。具体的には、まず上記摩擦子の底面がサンプルの防汚膜面に接触するよう摩耗試験機に取り付け、摩擦子への加重が1000gとなるように重りを載せ、平均速さ6400mm/min、片道40mmで往復摺動した。往復1回で擦り回数1回として、擦り回数が2000回となるように擦り試験を行った。 【0086】 その後、防汚膜について以下の手順により水接触角の測定を行った。 【0087】 防汚膜の水接触角の測定は、自動接触角計(協和界面科学社製、型式:DM-501)を用いて、防汚膜上に純水1μLを滴下し、その接触角を測定することにより行った。測定に際しては、各試料について防汚膜表面の10箇所で測定を行い、その平均値を当該試料の水接触角とした。 【0088】 この際、水接触角が90°以上を合格とし、90°未満を不合格として評価した。」 (カ)「【0096】 次いで低反射膜上に防汚膜を以下の手順により成膜した。 【0097】 まず、防汚膜材料A(ダイキン社製、商品名:オプツール(登録商標)DSX剤)を加熱容器内に導入した。その後、加熱容器内を真空ポンプで10時間以上脱気して溶液中の溶媒除去を行って、フッ素含有有機ケイ素化合物被膜形成用の組成物とした。 【0098】 次いで、上記フッ素含有有機ケイ素化合物膜形成用の組成物が入った加熱容器を270℃まで加熱した。270℃に到達した後、温度が安定するまで10分間その状態を保持した。 【0099】 そして、真空チャンバ内に設置した上記低反射膜が積層された透明基体の、低反射膜に対して、前記フッ素含有有機ケイ素化合物膜形成用の組成物が入った加熱容器と接続されたノズルから、フッ素含有有機ケイ素化合物膜形成用の組成物を供給し、成膜を行った。 【0100】 成膜の際には、真空チャンバ内に設置した水晶振動子モニタにより膜厚を測定しながら行い、透明基体A上に形成したフッ素含有有機ケイ素化合物膜の膜厚が7nmになるまで成膜を行った。」 「【0121】 ・・・・ [例5] 以下の手順により、光学部品を製造した。 【0122】 透明基体として化学強化処理が施されたガラス基体(旭硝子社製、商品名:ドラゴントレイル(登録商標))を用いた。薄膜形成装置には、Siターゲットを備えたカソード、 Sn含有Siターゲットを備えたカソード、プラズマ源、透明基体をセットできる回転ドラムからなる装置を用いた。そして、透明基体の一方の面に以下の手順により低反射膜を成膜した。 【0123】 薄膜形成装置の真空度が2×10-4Pa以下になった後、Siターゲットにアルゴンガスを85sccm、プラズマ源に窒素ガスを105sccmで導入した。その後、Siターゲットのカソードに電力6kWを、プラズマ源に電力0.55kWを投入してスパッタリングを行い、厚さ26nm、屈折率(n)2.09の高屈折率層を形成した。 【0124】 次に、SiターゲットとSn含有Siターゲットにそれぞれアルゴンガスを40sccm、プラズマ源に酸素ガスを140sccmで導入した。その後、Siターゲットのカソードに電力6kWを、Sn含有Siターゲットに電力0.6kWを、プラズマ源に電力0.85kWを投入してスパッタリングを行い、高屈折率層の上に厚さ30nm、屈折率(n)1.49の低屈折率層を形成した。 【0125】 この後、この低屈折率層の上に、上述した高屈折率層と同様の材料を用いて、同様の形成方法により、厚さが50nmの高屈折率層を形成した。さらにこの高屈折率層の上に、上述した低屈折率層と同様の材料を用いて、同様の形成方法により、厚さが88nmの低屈折率層を形成した。 【0126】 このようにして、窒化ケイ素(窒化シリコン)とSiとSnとの混合酸化物とが合計4層積層された低反射膜を形成した。 【0127】 今回は、SiターゲットとSn含有Siターゲットを用いたが、Sn含有Siターゲットだけで低屈折率層を成膜してもよい。また、今回はSn含有Siターゲットを用いたが、Zr含有SiターゲットやAl含有Siターゲットであってもよい。ついで、防汚膜の形成は、例1と同様にして防汚膜を形成した。 【0128】 このようにして得られた試料について上記表面粗さの測定、擦り耐久性試験を行った。 結果を表1に示す。」 (キ)「【0139】 【表1】 [図:0001395210000007.jpg] 」 (ク)「【図1】 [図:0001395210000008.jpg] 」 (ケ)甲3に記載された発明 甲3には、特に例5の記載からみて、次の「甲3発明」が記載されていると認められる。 「化学強化ガラスの上に、低反射膜の第4層として、SiとSnとの混合酸化物の層を位置させ、その直上に、フッ素含有有機ケイ素化合物のダイキン社製オプツールDSX剤からなる防汚層を位置させた、光学部品。」 イ 本件発明1について (ア)本件発明1と甲3発明を対比する。 甲3発明の「化学強化ガラス」は本件発明1の「基材」及び「ガラス基材」に相当する。 甲3発明の「低反射膜」の「SiとSnとの混合酸化物の層」と、本件発明1の「Siを含む複合酸化物を含み」、「前記複合酸化物は、SiとTaとの複合酸化物またはSiとNbとの複合酸化物であり、前記複合酸化物は、SiとTaの酸化物またはSiとNbの酸化物が均一相を構成するものである」、「中間層」とは、「金属酸化物を含む層」という限りで一致する。 甲3発明の「光学部品」は本件発明1の「物品」に相当する。 また、甲3発明の「フッ素含有有機ケイ素化合物のダイキン社製オプツールDSX剤からなる防汚層」と、本件発明1の「含フッ素シラン化合物を含む表面処理剤から形成された表面処理層」とは、「フッ素含有有機ケイ素化合物を含む層」という限りで一致する。 そうすると、本件発明1と甲3発明とは、 「基材と、 前記基材上に位置する、金属酸化物を含む層と、 前記金属酸化物を含む層の直上に位置する、フッ素含有有機ケイ素化合物を含む層とを有して成る、物品。」で一致し、 次の<相違点1>及び<相違点2>で相違する。 <相違点1> 「金属酸化物を含む層」に関して、 本件発明1は、「Siを含む複合酸化物を含み」、「前記複合酸化物は、SiとTaとの複合酸化物またはSiとNbとの複合酸化物であり、前記複合酸化物は、SiとTaの酸化物またはSiとNbの酸化物が均一相を構成するものである」、「中間層」であるのに対し、 甲3発明は「低反射膜」の「SiとSnとの混合酸化物の層」である点。 <相違点2> 「フッ素含有有機ケイ素化合物を含む層」に関して、 本件発明1が、「含フッ素シラン化合物を含む表面処理剤から形成された表面処理層」であって、「前記含フッ素シラン化合物は、下記式(1)または(2): 【化1】 [図:0001395210000009.jpg] [式中: RF1は、各出現においてそれぞれ独立して、Rf1-RF-Oq-であり; RF2は、-Rf2p-RF-Oq-であり; Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基であり; Rf2は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基であり; RFは、各出現においてそれぞれ独立して、2価のフルオロポリエーテル基であり; pは、0または1であり; qは、各出現においてそれぞれ独立して、0または1であり; RSiは、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基、加水分解可能な基、水素原子または1価の有機基が結合したSi原子を含む1価の基であり; 少なくとも1つのRSiは、水酸基または加水分解可能な基が結合したSi原子を含む1価の基であり; XAは、それぞれ独立して、単結合または2~10価の有機基であり; αは、1~9の整数であり; βは、1~9の整数であり; γは、それぞれ独立して、1~9の整数である。] で表される少なくとも1種のフルオロポリエーテル基含有化合物であ」のに対し、 甲3発明は、「フッ素含有有機ケイ素化合物のダイキン社製オプツールDSX剤からなる防汚層」である点。 (イ)上記相違点1について検討する。 甲3には、防汚層に接する低反射膜の層について、「SiとTaとの複合酸化物またはSiとNbとの複合酸化物であり、前記複合酸化物は、SiとTaの酸化物またはSiとNbの酸化物が均一相を構成するもの」を含むようにすることは、記載も示唆もされていない。 また、他の証拠にも記載も示唆もされていない。 したがって、上記相違点1に係る本件発明1の構成は、甲3発明に基いて、当業者が容易に想到し得たものではない。 (ウ)よって、上記相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明4~7、9~15について 本件発明4~7、9~15は、本件発明1の発明特定事項をすべて備えるものであるところ、本件発明1が、上記イで述べたように、本件発明1は、甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明4~7、9~15も、甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 エ 本件発明16について (ア)甲3には、次の製造方法に係る発明(以下「甲3製造方法発明」という。)も記載されていると認められる。 「化学強化ガラスの上に、低反射膜の第4層として、SiとSnとの混合酸化物の層を成膜し、その直上に、フッ素含有有機ケイ素化合物のダイキン社製オプツールDSX剤からなる防汚層を成膜した、方法。」 この甲3製造方法発明と、本件発明16を対比すると、表面処理層に係る上記相違点2で相違するほか、次の相違点3で相違する。 <相違点3> 本件発明16は、「Siと他の金属を同時に蒸着させて、Siを含む複合酸化物を含む中間層を形成すること、ここに、前記他の金属は、TaまたはNbであ」るのに対し、 甲3製造方法発明は、SiとSnとの混合酸化物の層を成膜した点。 (イ)この相違点3について検討する。 甲3には、防汚層に接する低反射膜の層として、SiとTaまたはNbの複合酸化物を形成することは、記載も示唆もされていない。 また、他の証拠にも記載も示唆もされていない。 したがって、上記相違点3に係る本件発明1の構成は、甲3製造方法発明に基いて、当業者が容易に想到し得たものではない。 (ウ)よって、上記相違点2について検討するまでもなく、本件発明16は、甲3製造方法発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)甲4を主引用例とする理由1について ア 甲4の記載事項、甲4に記載された発明 甲4には、以下の事項が記載されている。 (ア)「【請求項1】 少なくとも一つの表面を有する物品であって、前記表面の少なくとも一部を、静的水接触角が少なくとも115°に等しくなるような表面粗さを有する超高疎水性膜で被覆され、前記膜は ―物品の表面に付着する少なくとも1種の結合剤で結合されたナノ粒子を含む第1層と、 ―前記第1層の少なくとも一部を被覆する防汚トップコートである第2層と を含むナノ構造膜である物品。」 「【請求項20】 ナノ粒子が金属または半金属の酸化物、窒化物、フッ化物、またはこれらの混合物の中から選択される無機質のナノ粒子である、請求項1または2のいずれかに記載の物品。 【請求項21】 無機質のナノ粒子が酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化アンチモン、酸化タンタル、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム、酸化セリウム、Si3N4、MgF2、またはこれらの混合物のナノ粒子の中から選択される、請求項20に記載の物品。」 「【請求項28】 物品が金属、合金、セラミック、ガラス、木材、模造木材、複合材、塗料面、合成ポリマー、石材の中から選択された材料から成る、請求項1または2のいずれかに記載の物品。 【請求項29】 物品が光学品、好ましくは眼科用レンズまたはレンズブランクである、請求項1または2のいずれかに記載の物品。」 (イ)「【0031】 本発明のナノ構造膜は二つの層、すなわち、少なくとも1種の結合剤および該結合剤で結合されたナノ粒子を含むナノ構造層と、ナノ構造層を少なくとも部分的に覆う、低エネルギー表面をもたらす防汚トップコートの層とを必須的に含む。本発明の膜は、特定の表面形状をもたらす粒子の入念な選択によって作られる特定の物理的構造、すなわちランダムな凹凸を具えた表面を有する。 【0032】 本発明によれば、物品の表面に付着する少なくとも1種の結合剤で結合されたナノ粒子の層がナノ構造層を構成する。本発明に関してナノ構造膜または層という語は、表面の凹凸の寸法がナノメートルの範囲に有るような表面粗さを有する膜または層を意味する。表面の凹凸の寸法は用いるナノ粒子の寸法と密接に関連する。」 「【0054】 好ましくは、本発明の超高疎水性膜に用いるナノ粒子の粒径は150nm以下であり、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは70nm以下である。その大部分が40nm以下の粒径を有するナノ粒子も有用である。好ましくは、ナノ粒子の粒径は10nm以上である。これらの条件を全部のナノ粒子が満たすことが好ましい。 【0055】 好ましい一実施形態において、本発明の膜の第1層は粒径20~150nm、好ましくは20~100nmのナノ粒子を含む。 その際、被覆された本発明の物品の光透過率Tは少なくとも可視スペクトル波長域において85%より高く、より好ましくは90%より高く、さらに好ましくは92%を越え、曇り度は0.8未満、好ましくは0.5未満である。 【0056】 粒径150nm以下のナノ粒子を含む本発明の超高疎水性膜は、それ自体で反射防止特性を有する。好ましくは、被覆された本発明による物品の可視域反射は3%未満であり、2%未満であればなお好い。 【0057】 ナノ粒子は有機質でも無機質でもよく、両者を混合して用いることも可能である。好ましくは無機ナノ粒子、特に金属もしくは半金属の酸化物、窒化物またはフッ化物のナノ粒子かまたはこのようなナノ粒子の混合物が用いられる。 【0058】 好適な無機ナノ粒子は、例えば酸化アルミニウムAl2O3、酸化ケイ素SiOまたはSiO2、酸化ジルコニウムZrO2、酸化チタンTiO2、酸化アンチモン、酸化タンタルTa2O5、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム、酸化セリウム、Si3N4、MgF2、またはこれらの混合物のナノ粒子である。混合酸化物の粒子を用いることも可能である。異なる種類のナノ粒子を用いることで、ヘテロ構造のナノ粒子層の形成が可能となる。好ましくは、ナノ粒子は酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムまたは酸化ケイ素SiO2の粒子であり、より好ましくはSiO2ナノ粒子である。」 (ウ)「【0091】 ナノ粒子のナノ構造層の少なくとも一部の上にデポジットされる防汚トップコートの層は、低表面エネルギーのトップコートである。」 「【0094】 本発明による防汚トップコートは好ましくは有機性である。有機性とは、被覆層が該層の総質量の少なくとも40質量%、好ましくは少なくとも50質量%の有機材料を含むことを意味する。好ましい防汚トップコートは、少なくとも1種のフッ素化化合物を含有する液状被覆材料から作製される。 【0095】 疎水性および/または疎油性の表面被膜は大抵の場合、フッ素化された基、特に1個以上のパーフルオロカーボンまたはパーフルオロポリエーテル基を有するシラン主体の化合物を含む。・・・・ 【0096】 通常の防汚トップコート形成方法では、フッ素化基およびSi-R基を有する化合物をデポジットし、前記式中Rは-OH基か、または-Cl、-NH2、-NH-もしくは-O-アルキルといったその前駆物質であり、好ましくはアルコキシ基である。この化合物はデポジットされた表面で直ちに、または加水分解後に側鎖の反応性基によって重合および/または架橋反応し得る。 【0097】 好ましいフッ素化化合物は、フッ素化炭化水素、パーフルオロカーボン、F3C-(OC3F6)24-O-(CF2)2-(CH2)2-O-CH2-Si(OCH3)3などのフッ素化ポリエーテル、およびパーフルオロポリエーテルの中から選択される少なくとも1種の基、特にパーフルオロポリエーテルを有するシランおよびシラザンである。 【0098】 フルオロシランの中から、式: 【化1】 [図:0001395210000010.jpg] 〔式中、nは5、7、9または11であり、Rはアルキル基で、典型的にはメチル、エチルおよびプロピル; CF3CH2CH2SiCl3; 【化2】 [図:0001395210000011.jpg] などのC1~C10アルキル基であり、前記式中n’は7または9であり、Rは先に規定したとおりである〕の化合物を挙げることができる。 【0099】 やはり疎水性および/または疎油性トップコートの作製に有用である、フルオロシラン化合物を含有する組成物が米国特許第6,183,872号に開示されている。この組成物は下記一般式で表わされる、5×102~1×105の数平均分子量を有するケイ素含有有機フルオロポリマーを含む。 【0100】 【化3】 [図:0001395210000012.jpg] 〔式中、RFはパーフルオロアルキル基であり、Zはフッ素原子またはトリフルオロメチル基であり、a、b、c、dおよびeはそれぞれ独立に0または1以上の整数であり、ただしa+b+c+d+eは1未満でなく、括弧に入れ、下付き記号a、b、c、dおよびeを付した反復単位の式中に現われる順番は上記に限定されず、Yは水素原子、または炭素数1~4のアルキル基であり、Xは水素、臭素またはヨウ素原子であり、R1はヒドロキシ基、または加水分解可能な置換基であり、R2は水素原子、または一価の炭化水素基であり、lは0、1または2であり、mは1、2または3であり、n”は1以上、好ましくは2以上の整数である〕。 【0101】 疎水性および/または疎油性表面被膜の形成に好ましく用いられる他の組成物に、フッ素化ポリエーテル基、特にパーフルオロポリエーテル基を有する化合物を含有するものが有る。フッ素化ポリエーテル基を含有する組成物で特に好ましいものは米国特許第6,277,485号に開示されている。米国特許第6,277,485号の防汚トップコートはフッ素化シロキサンを含む、少なくとも部分的に硬化した被膜であり、この被膜は式: 【化4】 [図:0001395210000013.jpg] 〔式中、RFは一価または二価のポリフルオロポリエーテル基であり、R1は、場合によっては1個以上のヘテロ原子または官能基を有し、かつ場合によってはハロゲン原子で置換されている、好ましくは炭素数2~16のアルキレン基、アリーレン基、またはこれらの組み合わせであり、R2は低級アルキル基(すなわちC1~C4アルキル基)であり、Yはハロゲン原子、低級アルコキシ基(すなわちC1~C4アルコキシ基で、好ましくはメトキシ基またはエトキシ基)または低級アシルオキシ基(すなわち-OC(O)R3で、式中R3はC1~C4アルキル基)であり、xは0または1であり、yは1(RFが一価の時)または2(RFが二価の時)である〕のフッ素化シランを少なくとも1種含有する(典型的には溶液状の)被覆組成物の適用によって作製される。好適化合物は典型的には、少なくとも約1000の分子量(数平均)を有する。好ましくは、Yは低級アルコキシ基であり、RFはパーフルオロポリエーテル基である。 【0102】 防汚トップコートの作製に用いられる市販組成物には、信越化学工業によって販売されている組成物KY 130およびKP 801M、並びにダイキン工業によって販売されている組成物OPTOOL DSX(パーフルオロプロピレン部分を有するフッ素主体の樹脂)が有る。最も好ましい防汚トップコート用被覆材料はOPTOOL DSXである。」 (エ)甲4に記載された発明 甲4には、特に請求項1、請求項21、請求項28、請求項29及び【0095】の記載からみて、次の「甲4発明」が記載されている認められる。 「ガラスの表面に、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化アンチモン、酸化タンタル、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム、酸化セリウム等の混合物からなるナノ粒子を含む第1層と、前記第1層を被覆する、フッ素化された基、特に1個以上のパーフルオロカーボンまたはパーフルオロポリエーテル基を有するシラン主体の化合物を含む第2層を含む、光学品。」 イ 本件発明1について (ア)本件発明1と甲4発明を対比する。 本件発明1と甲4発明を対比すると、甲4発明の「ガラス」は本件発明1の「基材」及び「ガラス基材」に相当し、甲4発明の「光学部品」は本件発明1の「物品」に相当する。 甲4発明の「酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化アンチモン、酸化タンタル、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム、酸化セリウム等の混合物からなるナノ粒子を含む第1層」と、本件発明1の「Siを含む複合酸化物を含み」、「前記複合酸化物は、SiとTaとの複合酸化物またはSiとNbとの複合酸化物であり、前記複合酸化物は、SiとTaの酸化物またはSiとNbの酸化物が均一相を構成するものである」、「中間層」とは、「金属酸化物を含む層」という限りで一致する。 また、甲4発明の「第1層を被覆する、フッ素化された基、特に1個以上のパーフルオロカーボンまたはパーフルオロポリエーテル基を有するシラン主体の化合物を含む第2層」と、本件発明1の「中間層の直上に位置する、含フッ素シラン化合物を含む表面処理剤から形成された表面処理層」とは、「金属酸化物を含む層の直上に位置する、フッ素含有シラン化合物を含む層」という限りで一致する。 そうすると、本件発明1と甲4発明とは、 「基材と、 前記基材上に位置する、金属酸化物を含む層と、 前記金属酸化物を含む層の直上に位置する、フッ素含有有機ケイ素化合物を含む層を有して成る、物品。」で一致し、 次の<相違点4>及び<相違点5>で相違する。 <相違点4> 「金属酸化物を含む層」に関して、 本件発明1は、「Siを含む複合酸化物を含み」、「前記複合酸化物は、SiとTaとの複合酸化物またはSiとNbとの複合酸化物であり、前記複合酸化物は、SiとTaの酸化物またはSiとNbの酸化物が均一相を構成するものである」、「中間層」であるのに対し、 甲4発明は、「酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化アンチモン、酸化タンタル、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム、酸化セリウム等の混合物からなるナノ粒子を含む第1層」である点。 <相違点5> 「フッ素含有有機ケイ素化合物を含む層」に関して、 本件発明1が、「含フッ素シラン化合物を含む表面処理剤から形成された表面処理層」であって、「前記含フッ素シラン化合物は、下記式(1)または(2): 【化1】 [図:0001395210000014.jpg] [式中: RF1は、各出現においてそれぞれ独立して、Rf1-RF-Oq-であり; RF2は、-Rf2p-RF-Oq-であり; Rf1は、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基であり; Rf2は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基であり; RFは、各出現においてそれぞれ独立して、2価のフルオロポリエーテル基であり; pは、0または1であり; qは、各出現においてそれぞれ独立して、0または1であり; RSiは、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基、加水分解可能な基、水素原子または1価の有機基が結合したSi原子を含む1価の基であり; 少なくとも1つのRSiは、水酸基または加水分解可能な基が結合したSi原子を含む1価の基であり; XAは、それぞれ独立して、単結合または2~10価の有機基であり; αは、1~9の整数であり; βは、1~9の整数であり; γは、それぞれ独立して、1~9の整数である。] で表される少なくとも1種のフルオロポリエーテル基含有化合物であ」のに対し、 甲4発明は、「フッ素化された基、特に1個以上のパーフルオロカーボンまたはパーフルオロポリエーテル基を有するシラン主体の化合物を含む第2層」である点。 (イ)上記相違点4について検討する。 甲4には、第1層について、「SiとTaとの複合酸化物またはSiとNbとの複合酸化物であり、前記複合酸化物は、SiとTaの酸化物またはSiとNbの酸化物が均一相を構成するもの」を含むようにすることは、記載も示唆もされていない。 また、他の証拠にも記載も示唆もされていない。 したがって、上記相違点4に係る本件発明1の構成は、甲4発明に基いて、当業者が容易に想到し得たものではない。 (ウ)よって、上記相違点5について検討するまでもなく、本件発明1は、甲4発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明4~7、9~15について 本件発明4~7、9~15は、本件発明1の発明特定事項をすべて備えるものであるところ、本件発明1が、上記イで述べたように、本件発明1は、甲4発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明4~7、9~15も、甲4発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 エ 本件発明16について (ア)甲4には、次の製造方法に係る発明(以下「甲4製造方法発明」という。)も記載されている。 「ガラスの表面に、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化アンチモン、酸化タンタル、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム、酸化セリウム等の混合物からなるナノ粒子を含む第1層を成膜し、前記第1層を被覆する、フッ素化された基、特に1個以上のパーフルオロカーボンまたはパーフルオロポリエーテル基を有するシラン主体の化合物を含む第2層を成膜する、方法。」 この甲4製造方法発明と、本件発明16を対比すると、表面処理層に係る上記相違点5で相違するほか、次の相違点6で相違する。 <相違点6> 本件発明16は、「Siと他の金属を同時に蒸着させて、Siを含む複合酸化物を含む中間層を形成すること、ここに、前記他の金属は、TaまたはNbであ」るのに対し、 甲4製造方法発明は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化アンチモン、酸化タンタル、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム、酸化セリウム等の混合物からなるナノ粒子を含む第1層を成膜した点。 (イ)この相違点6について検討する。 甲6には、第1層について、Siと、TaまたはNbの複合酸化物を含んで形成することは、記載も示唆もされていない。 また、他の証拠にも記載も示唆もされていない。 したがって、上記相違点6に係る本件発明16の構成は、甲4製造方法発明に基いて、当業者が容易に想到し得たものではない。 (ウ)よって、上記相違点5について検討するまでもなく、本件発明16は、甲4製造方法発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)理由2について 本件訂正により、本件発明1の複合酸化物は、SiとTaとの複合酸化物またはSiとNbとの複合酸化物であり、SiとTaの酸化物またはSiとNbの酸化物が均一相を構成するものであると特定された。 本件特許の発明の詳細な説明の記載を参酌すると、SiとTaの複合酸化物については、アルカリ浸漬試験により耐薬品性が、摩擦耐久性試験により摩擦耐久性が確認されており、SiとTaの複合酸化物を含む中間層を備えたものは、本件発明の「より摩擦耐久性、耐薬品性の高い表面処理層を有する物品を提供する」(本件明細書の段落【0005】)という課題を解決し得ると認識できるものである。 また、SiとNbの複合酸化物についても、本件特許の発明の詳細な説明のSiとNbの複合酸化物の実施例10から、比較例のSiの酸化物と比べて、アルカリ浸漬試験において耐薬品性が高い傾向があることが把握できる。なお、令和4年8月1日の意見書における、SiとNbの複合酸化物が、Siの酸化物と比べてアルカリ浸漬試験と摩擦耐久性試験に関し良好であるとする、追加試験の結果もこれを裏付けている。 よって、「複合酸化物は、SiとTaとの複合酸化物またはSiとNbとの複合酸化物であり、SiとTaの酸化物またはSiとNbの酸化物が均一相を構成するものである」との事項を備える本件発明は、サポート要件を満たすものである。 3.取消理由に採用しなかった特許異議申立理由について (1)甲1を主引用例とする新規性及び進歩性に係る申立理由 ア 甲1に記載された発明 甲1(特に、【0024】~【0025】)には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「ガラス等より成る基材40の上に、フィルム基材1を配置し、 フィルム基材1の上には、第1の屈折率層4、第2の屈折率層5、第3の屈折率層6、第4の屈折率層7及び防汚層がこの順に積層され、第1~第4の屈折率層4~7により反射防止層10が構成される、積層体。」 イ 対比 本件発明1と甲1発明を対比すると、本件発明1の表面処理層の直下に位置する「中間層」と、甲1発明の防汚層の直下に位置する「第4の屈折率層7」に関し、本件発明1が「Siを含む複合酸化物を含み」、「前記複合酸化物は、SiとTaとの複合酸化物またはSiとNbとの複合酸化物であり、前記複合酸化物は、SiとTaの酸化物またはSiとNbの酸化物が均一相を構成するものである」、「中間層」であるのに対し、甲1発明の「第4の屈折率層7」はそのように特定されていない点(以下「相違点7」という。)で、少なくとも相違する。 ウ 判断 上記相違点7について検討する。 甲1発明の防汚層の直下に位置する「第4の屈折率層7」は、第1~第3の屈折率層4~6とともに反射防止層10を構成するものであって、甲1には、第1~第4の各屈折率層4~7について、 「【0038】 そして反射防止層10は、上述したように異なる屈折率を有する屈折率層を2層以上積層したものを用いることができる。 特に、フィルム基材1又は補助フィルム基材13側から順に、比較的屈折率の高い第1の屈折率層、比較的屈折率の低い第2の屈折率層、比較的屈折率の高い第3の屈折率層、比較的屈折率の低い第4の屈折率層より構成することによって、即ち第1及び第3の屈折率層の屈折率を、第2及び第4の屈折率層の屈折率に比して大として構成することによって、それらの光干渉効果を利用して反射率を効率良く抑えることができる。」 「【0041】 そして反射防止層を構成する屈折率層のうち、比較的屈折率の高い第1及び第3の屈折率層の材料としては、1.85以上の屈折率を持つ光透過性材料であれば特に制限は無いが、SiN、TiO2 、Nb2 O5 、Ta2 O5 、ITO及びこれらを主成分とした合金酸化物が一般的に用いられる。即ち、上述のSiN、TiO2 、Nb2 O5 、Ta2 O5 、ITOを主成分としてその特性に影響を与えない範囲でSi、Sn、Zr、Al等の金属を添加したものがあげられる。・・・・ 【0042】 ・・・・ 比較的屈折率の低い第2及び第4の屈折率層としては、MgF2 、SiO2 等、またはこれに微量の添加物を混入した材料が用いられるが、スパッタリング法を用いる場合はSiO2 が最も望ましい。」と記載されている。 甲1において、第4の屈折率層については、第1~第3の屈折率層との組み合わせにおいて、SiO2 が最も望ましいとされており、甲1発明の防汚層の直下に位置する「第4の屈折率層」を「SiとTaとの複合酸化物またはSiとNbとの複合酸化物であり」、「SiとTaの酸化物またはSiとNbの酸化物が均一相を構成するもの」に換える動機付けはなく、他の証拠にも記載ないし示唆はない。 したがって、上記相違点7に係る本件発明1の構成は、甲1発明に基いて、当業者が容易に想到し得たものではない。 よって、本件発明1は甲1発明ではなく、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 本件発明4~7、9~16についても同様である。 エ 以上より、甲1を主引用例とする新規性及び進歩性に係る理由には理由がない。 (2)甲3、甲4を主引用例とする新規性に係る申立理由 上記2.(1)及び(2)で述べたように、本件発明1と甲3発明との間の相違点1は実質的な相違点であり、本件発明1は甲3発明ではなく、本件発明1と甲4発明との間の相違点4は実質的な相違点であり、本件発明1は甲4発明ではない。 本件発明4~7、16についても同様である。 以上より、甲3、甲4を主引用例とする新規性に係る理由には理由がない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、本件特許の請求項1、4~7、9~16に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。また、他に本件特許の請求項1、4~7、9~16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 本件訂正により、請求項2、3、8、17に係る特許は削除されたため、請求項2、3、8、17に対して申立人がした特許異議の申立ては、不適法であって、その補正をすることができないものであることから、特許法第120条の8第1項で準用する特許法第135条の規定により、却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700261

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