2020-700727
ポリアミド系フィルム
- 審判番号
- 2020-700727
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-193281外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6672419
- 請求日
- 2020年09月24日
- 審決日
- 2022年01月21日
- 公報発行日
- 2022年04月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】グンゼ株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人三枝国際特許事務所
- 【異議申立人】松岡 規子
- 分類
- P1651.113-YAA(C08L) / P1651.121-YAA(C08L) / P1651.537-YAA(C08L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 12項目
第1 手続の経緯
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特許第6672419号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成27年6月4日に出願した特願2015-114090号の一部を平成30年10月12日に新たな特許出願としたものであって、令和2年3月6日にその特許権の設定登録(請求項の数5)がされ、同年同月25日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その特許に対して、令和2年9月24日に特許異議申立人 松岡 規子(以下、「特許異議申立人」という。)により、特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、同年12月11日付けで特許異議申立人に審尋がなされ、同年同月28日に特許異議申立人より回答書が提出され、令和3年2月26日付けで取消理由が通知され、同年5月7日に特許権者 グンゼ株式会社(以下、「特許権者」という。)より訂正の請求がなされるとともに意見書の提出がされ、同年同月28日付けで特許法第120条の5第5項に基づく訂正請求があった旨の通知を行ったところ、同年6月30日に特許異議申立人より意見書の提出がされ、同年9月3日付けで取消理由(決定の予告)が通知されたところ、同年11月5日に特許権者より訂正の請求がなされるとともに意見書が提出されるとともに、同年同月19日に訂正請求書に対する手続補正書(以下、手続補正書により補正された訂正請求を「本件訂正請求」という。)が提出されたものである。
なお、令和2年5月7日にされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
また、特許異議申立人には、すでに意見書の提出の機会が与えられており、令和3年11月5日にされた訂正の請求によって、特許請求の範囲が相当程度減縮され、本件特許異議申立事件において提出された全ての証拠や意見等を踏まえてさらに審理を進めたとしても、下記第6のとおり、特許を維持すべきとの結論になると合議体は判断したため、本件訂正請求に対し、特許法第120条の5第5項ただし書における特別の事情と認め、特許異議申立人に対して同法同条第5項の通知を行っていない。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。(下線は、訂正箇所について合議体が付したものである。)
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の、
「ポリアミド系フィルム」において、
「積層ポリアミド系フィルムであって、少なくとも、ポリアミド層(A)、及びポリアミド層(B)が、層(A)/層(B)/層(A)の順で積層されており、前記ポリアミド層(A)は、脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミドとからなり、」を追加する訂正をする。
請求項1を直接又は間接的に引用する、請求項3ないし5についても同様に訂正する。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に、
「ポリアミドを86~98重量%、及び耐屈曲剤を2~14重量%含有するポリアミド層(B)を少なくとも有し、」とあるのを、
「ポリアミド層(B)は、ポリアミドを86~98重量%、及び耐屈曲剤を2~14重量%含有し、」に訂正する。
請求項1を直接又は間接的に引用する、請求項3ないし5についても同様に訂正する。
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に、
「前記ポリアミドは、脂肪族ポリアミドを含有し」とあるのを、
「前記ポリアミド層(B)に含まれる前記ポリアミドは、脂肪族ポリアミド、及び芳香族ポリアミドを含有し、前記ポリアミド層(B)に含まれる前記脂肪族ポリアミドは、ナイロン-6であり、前記ポリアミド層(B)に含まれる前記芳香族ポリアミドは、ポリメタキシリレンアジパミド、又はヘキサメチレンジアミン-テレフタル酸-ヘキサメチレンジアミン-イソフタル酸の共重合体であり、」に訂正する。
請求項1を直接又は間接的に引用する、請求項3ないし5についても同様に訂正する。
(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1に、
「前記ポリアミド中の前記脂肪族ポリアミドの含有量は、前記ポリアミドの量を100重量%として80~100重量%であり」とあるのを、
「前記ポリアミド層(B)に含まれる前記ポリアミド中の前記脂肪族ポリアミドの含有量は、前記ポリアミドの量を100重量%として80~87/92×100重量%であり、前記ポリアミド層(B)に含まれる前記ポリアミド中の前記芳香族ポリアミドの含有量は、前記ポリアミドの量を100重量%として5/92×100~20重量%であり、」に訂正する。
請求項1を直接又は間接的に引用する、請求項3ないし5についても同様に訂正する。
(5) 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項1に、
「前記ポリアミドは、JIS K6920に準拠した測定方法により、96%H2SO4、1.0g/100ml、温度25℃の条件で測定した相対粘度が3.2~4.5であり、前記耐屈曲剤は熱可塑性エラストマーであり、前記熱可塑性エラストマーはポリエステル系エラストマーを含み、前記ポリエステル系エラストマーは、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有する飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーが、不飽和カルボン酸又はその誘導体により変性された変性ポリエステル系エラストマーである、」とあるのを、
「前記ポリアミド層(B)に含まれる前記ポリアミドは、JIS K6920に準拠した測定方法により、96%H2SO4、1.0g/100ml、温度25℃の条件で測定した相対粘度が3.2~4.5であり、前記ポリアミド層(B)に含まれる前記耐屈曲剤は、熱可塑性エラストマーであり、前記熱可塑性エラストマーは、ポリエステル系エラストマーを含み、前記ポリエステル系エラストマーは、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有する飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーが、不飽和カルボン酸又はその誘導体により変性された変性ポリエステル系エラストマーであり、前記ポリアミド層(B)の厚みは、ポリアミド系フィルムの総厚みに対して、厚み比が40~50%であり、」に訂正する。
請求項1を直接又は間接的に引用する、請求項3ないし5についても同様に訂正する。
(6) 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項1に、
「ポリアミド系フィルム。」とあるのを、
「次の屈曲による耐ピンホール性の耐屈曲性試験:理化学工業(株)製のゲルボフレックステスターを用いて、折り径150mm、長さ300mmの筒状に製袋したポリアミド系フィルムを、ゲルボフレックステスターに装着し、最初の88.9mmで440°の捻りを与え、その後63.5mmは直線水平運動となる繰り返しの屈曲直線運動を、-25℃の条件下で、試験速度40回/分にて1000回繰り返した後、前記ポリアミド系フィルムの3枚において、その中央部における300cm2の箇所のピンホールの数を測定し、その平均値を出すという試験において、発生するピンホール数が40個以下である、積層ポリアミド系フィルム。」に訂正する。
請求項1を直接又は間接的に引用する、請求項3ないし5についても同様に訂正する。
(7) 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(8) 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項3に、
「少なくともポリアミド層(A)、前記ポリアミド層(B)及びバリア層(C)がこの順に積層されており、」とあるのを、
「少なくとも前記ポリアミド層(A)、前記ポリアミド層(B)及びバリア層(C)がこの順に積層されており、」に訂正する。
請求項3を直接又は間接的に引用する、請求項4及び5についても同様に訂正する。
(9) 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項5に、
「前記熱可塑性エラストマーは、更に、ポリアミド系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー、及びアイオノマー重合体からなる群から選ばれる少なくとも一種の熱可塑性エラストマーを含む、請求項1~4のいずれかに記載のポリアミド系フィルム。」とあるのを、
「前記ポリアミド層(B)に含まれる前記熱可塑性エラストマーは、更に、ポリアミド系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー、及びアイオノマー重合体からなる群から選ばれる少なくとも一種の熱可塑性エラストマーを含む、請求項1、3及び4のいずれかに記載のポリアミド系フィルム。」に訂正する。
なお、訂正前の請求項2ないし5はいずれも訂正前の請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであるから、請求項1ないし5は、特許法第120条の5第4項に規定するところの一群の請求項である。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1ないし6について
訂正事項1ないし6に係る請求項1の訂正は、ポリアミド系フィルムが、「積層ポリアミド系フィルムであって、少なくとも、ポリアミド層(A)、及びポリアミド層(B)が、層(A)/層(B)/層(A)の順で積層されており、前記ポリアミド層(A)は、脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミド」とからなるものであって、前記ポリアミド層(B)に含まれる前記ポリアミドが、「脂肪族ポリアミド、及び芳香族ポリアミドを含有し、前記ポリアミド層(B)に含まれる前記脂肪族ポリアミドは、ナイロン-6であり、前記ポリアミド層(B)に含まれる前記芳香族ポリアミドは、ポリメタキシリレンアジパミド、又はヘキサメチレンジアミン-テレフタル酸-ヘキサメチレンジアミン-イソフタル酸の共重合体」であることを特定するとともに、「脂肪族ポリアミド」と「芳香族ポリアミド」の具体的な材料及び添加割合を特定すること、「ポリアミド層(B)」の厚み、「屈曲による耐ピンホール性の耐屈曲性試験」の試験条件を特定するとともに、これらの特定を行うことに伴いその表記を整えるものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1ないし6に係る請求項1の訂正は、訂正前の請求項2、願書に添付した明細書の段落【0015】ないし【0024】、【0049】ないし【0056】、【0067】、【0082】、【0096】及び実施例9、11ないし20の記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであるから新規事項の追加に該当しない。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項3ないし5についても同様である。
(2) 訂正事項7について
訂正事項7に係る請求項2の訂正は、請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
(3) 訂正事項8について
訂正事項8に係る請求項3の訂正は、請求項1の訂正に伴い、「ポリアミド層(A)」が請求項1で特定するところの「ポリアミド層(A)」であることを明確にするために「前記ポリアミド層(A)」と訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
請求項3の記載を直接又は間接的に引用する請求項4及び5についても同様である。
(4) 訂正事項9について
訂正事項9に係る請求項5の訂正は、「熱可塑性エラストマー」が含まれる層を特定するとともに、請求項2を削除する訂正に伴って、引用先の請求項から請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
3 訂正の適否についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-5]について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明5」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】積層ポリアミド系フィルムであって、少なくとも、ポリアミド層(A)、及びポリアミド層(B)が、層(A)/層(B)/層(A)の順で積層されており、前記ポリアミド層(A)は、脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミドとからなり、続きを表示(全25行)ポリアミド層(B)は、ポリアミドを86~98重量%、及び耐屈曲剤を2~14重量%含有し、前記ポリアミド層(B)に含まれる前記ポリアミドは、脂肪族ポリアミド、及び芳香族ポリアミドを含有し、前記ポリアミド層(B)に含まれる前記脂肪族ポリアミドは、ナイロン-6であり、前記ポリアミド層(B)に含まれる前記芳香族ポリアミドは、ポリメタキシリレンアジパミド、又はヘキサメチレンジアミン-テレフタル酸-ヘキサメチレンジアミン-イソフタル酸の共重合体であり、前記ポリアミド層(B)に含まれる前記ポリアミド中の前記脂肪族ポリアミドの含有量は、前記ポリアミドの量を100重量%として80~87/92×100重量%であり、前記ポリアミド層(B)に含まれる前記ポリアミド中の前記芳香族ポリアミドの含有量は、前記ポリアミドの量を100重量%として5/92×100~20重量%であり、前記ポリアミド層(B)に含まれる前記ポリアミドは、JIS K6920に準拠した測定方法により、96%H2SO4、1.0g/100ml、温度25℃の条件で測定した相対粘度が3.2~4.5であり、前記ポリアミド層(B)に含まれる前記耐屈曲剤は、熱可塑性エラストマーであり、前記熱可塑性エラストマーは、ポリエステル系エラストマーを含み、前記ポリエステル系エラストマーは、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有する飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーが、不飽和カルボン酸又はその誘導体により変性された変性ポリエステル系エラストマーであり、前記ポリアミド層(B)の厚みは、ポリアミド系フィルムの総厚みに対して、厚み比が40~50%であり、次の屈曲による耐ピンホール性の耐屈曲性試験:理化学工業(株)製のゲルボフレックステスターを用いて、折り径150mm、長さ300mmの筒状に製袋したポリアミド系フィルムを、ゲルボフレックステスターに装着し、最初の88.9mmで440°の捻りを与え、その後63.5mmは直線水平運動となる繰り返しの屈曲直線運動を、-25℃の条件下で、試験速度40回/分にて1000回繰り返した後、前記ポリアミド系フィルムの3枚において、その中央部における300cm2の箇所のピンホールの数を測定し、その平均値を出すという試験において、発生するピンホール数が40個以下である、積層ポリアミド系フィルム。【請求項2】(削除)【請求項3】少なくとも前記ポリアミド層(A)、前記ポリアミド層(B)及びバリア層(C)がこの順に積層されており、前記バリア層(C)が、エチレン-ビニルアルコール共重合体及び/又はポリメタキシリレンアジパミドを含有する、請求項1に記載のポリアミド系フィルム。【請求項4】前記ポリアミド層(A)、前記ポリアミド層(B)及び前記バリア層(C)がこの順に積層されており、少なくとも層(A)/層(B)/層(C)/層(B)の順で積層されてなる構成、又は少なくとも層(A)/層(B)/層(C)/層(B)/層(A)の順で積層されてなる構成である、請求項3に記載のポリアミド系フィルム。【請求項5】前記ポリアミド層(B)に含まれる前記熱可塑性エラストマーは、更に、ポリアミド系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー、及びアイオノマー重合体からなる群から選ばれる少なくとも一種の熱可塑性エラストマーを含む、請求項1、3及び4のいずれかに記載のポリアミド系フィルム。」
第4 特許異議申立人が主張する特許異議申立理由について
特許異議申立人が特許異議申立書において、訂正前の請求項1ないし5に係る特許に対して申し立てた特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。
申立理由1-1(新規性) 本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の原出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、その発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
申立理由1-2(新規性) 本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の原出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
申立理由1-3(新規性) 本件特許の請求項1、2及び5に係る発明は、本件特許の原出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第5号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
申立理由2-1(進歩性) 本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の原出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有するもの(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
申立理由2-2(進歩性) 本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の原出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
申立理由2-3(進歩性) 本件特許の請求項1、2及び5に係る発明は、本件特許の原出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
<証拠方法>
ジ、打ち出し、https://www.ube.com/contents/jp/chemical
/nylon/nylon_extrusion.html
(証拠の表記は、おおむね特許異議申立書における記載にしたがった。)
また、令和3年6月30日提出の意見書とともに、次の参考文献が提出されている。
第5 令和3年9月3日付け取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要
当審が令和3年9月3日付けで特許権者に通知した取消理由通知(決定の予告)における取消理由の概要は、次のとおりである。なお、取消理由2-2及び取消理由2-3は、申立理由2-2及び申立理由2-3を包含している。
取消理由2-2(進歩性) 本件特許の請求項1~5に係る発明は、本件特許の原出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
取消理由2-3(進歩性) 本件特許の請求項1~5に係る発明は、本件特許の原出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
取消理由3(明確性) 本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
記
取消理由3-1 請求項1には、積層ポリアミド系フィルムに関し、「前記ポリアミド層(B)とは異なるポリアミド層」を備えることが特定されているが、ここで、「前記ポリアミド層(B)とは異なるポリアミド層」とは、その組成が異なることを意味するのか、組成は同じでも物理的な値が異なる(例えば、厚みなど)ことで事足りるのか、あるいは、それ以外の何かを意味するのか、明らかではない。
取消理由3-2 請求項1には、積層ポリアミド系フィルムに関し、「前記ポリアミド層(B)とは異なるポリアミド層」を備えることが特定されている。
この点について、請求項1を引用する請求項2には、「前記ポリアミド層(B)の少なくとも一方面上に、脂肪族ポリアミドを含有するポリアミド層(A)が積層されている」ことが特定されているが、ここで、「前記ポリアミド層(B)とは異なるポリアミド層」には、「ポリアミド層(A)」が含まれるのか明らかではない。
第6 当審の判断
1 取消理由についての判断
(1) 取消理由2-2(進歩性):甲第4号証を主たる根拠とする理由について
ア 甲第4号証の記載事項等
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(ア) 甲第4号証の記載事項
甲第4号証には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】6ナイロンを96~99.5重量%含み、非晶性ナイロンを0.5~4重量%含む樹脂組成物から形成されるポリアミド層(A)、6ナイロンを70~97重量%含み、ナイロン6/6,6共重合体を3~30重量%含む樹脂組成物から形成されるポリアミド層(B)、及びエチレン-酢酸ビニル共重合体けん化物を含む樹脂組成物から形成される酸素バリア層(C)、を含むポリアミド系多層フィルムであって、ポリアミド層(A)、ポリアミド層(B)、及び酸素バリア層(C)が、A/B/C/B/A、又はB/A/C/A/Bの順で積層されたポリアミド系多層フィルム。」
「【技術分野】【0001】本発明は、ポリアミド系多層フィルムに関し、詳細には、酸素バリア層をポリアミド層で挟んだ構造を有する少なくとも5層構造のポリアミド系多層フィルムに関する。」
「【発明が解決しようとする課題】【0008】本発明は、屈曲による耐ピンホール性及び繰り返し接触による耐ピンホール性の両方を兼ね備えたポリアミド系多層フィルムにおいて、特に、複雑な印刷柄を施し、袋のような製品を加工しても、その印刷柄のズレや歪みが非常に小さくなるようにすべく、テンションや熱によるナイロンフィルムの伸びの非常に小さいポリアミド系多層フィルムを提供することを目的とする。【課題を解決するための手段】【0009】このような問題を解決するために、鋭意検討した結果、ポリアミド層(A)、ポリアミド層(B)、及び酸素バリア層(C)を有するポリアミド系多層フィルムで、層構成がA/B/C/B/A、又はB/A/C/A/Bの順で積層されたポリアミド系多層フィルムにおいて、ポリアミド層(A)を形成する樹脂組成物として非晶性ナイロンを特定量含有させ、さらに、ポリアミド層(B)を形成する樹脂組成物として、ナイロン6/6,6共重合体を特定量含有させることによって、上記の課題を解決できることを見出した。本発明は、斯かる知見に基づき完成されたものである。」
「【0018】・ポリアミド層(B)ポリアミド層(B)は、柔軟性、即ち耐屈曲性を備えるために設けられる層であり、6ナイロン及びナイロン6/6,6共重合体を含む樹脂組成物から形成される。ここで、「ナイロン6/6,6共重合体」とは、ポリカプロラクタム(6ナイロン)と、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との縮合反応によって得られるポリアミド(6,6ナイロン)との共重合体を表す。【0019】続きを表示(全11行)6ナイロンの含有割合は、70重量%以上であり、75重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましい。6ナイロンの含有割合が、70重量%未満であると、得られる多層フィルムの耐摩耗性が悪化する傾向がある。また、また、6ナイロンの含有割合は、97重量%以下であり、95重量%以下がより好ましい。6ナイロンの含有割合が、97重量%を超えると、得られる多層フィルムの屈曲によるピンホールが発生しやすくなる傾向がある。【0020】ナイロン6/6,6共重合体の含有割合は、3重量%以上であり、5重量%以上がより好ましい。ナイロン6/6,6共重合体の含有割合が、3重量%未満であると、得られる多層フィルムの屈曲によるピンホールが発生しやすくなる傾向がある。また、ナイロン6/6,6共重合体の含有割合は、30重量%以下であり、25重量%以下が好ましく、20重量%以下がより好ましい。ナイロン6/6,6共重合体の含有割合が、30重量%を超えると、得られる多層フィルムの耐摩耗性が悪化する傾向がある。【0021】ナイロン6/6,6共重合体におけるナイロン6,6の共重合割合は、5~40モル%が好ましく、10~30モル%がより好ましい。【0022】更に耐屈性を付与する為に、本発明の目的を阻害しない範囲で、耐屈曲剤を添加してもよい。耐屈曲剤としては公知のもの、例えばポリアミドエラストマー類、ポリエステルエラストマー類、ポリオレフィン類等が挙げられる。」
「【0032】・ポリアミド系多層フィルムの製造方法本発明のポリアミド系多層フィルムは、例えば各層の樹脂組成物を上記したA/B/C/B/A、又はB/A/C/A/Bの順序になるように、Tダイスより冷却水が循環するチルロール上に共押出せしめフラット状の多層フィルムとして得ることができる。」
「【0041】以下に、本発明を、実施例及び比較例を用いてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。【0042】下記の実施例及び比較例で使用した原料樹脂を下記に示す。続きを表示(全14行)【0043】6ナイロン:1022FDX04(宇部興産(株)製)ナイロン6/66共重合体:5034B(宇部興産(株)製)エチレン-酢酸ビニル共重合体けん化物(EVOH):DC3203FB(日本合成化学工業(株)製(エチレン含有率:32モル%、けん化度:99.6モル%、MFR:3.2g/10分(210℃、荷重:2160g))非晶性ナイロン(6I6T(1)):シーラPA 3426(三井・デュポン ポリケミカル(株)製)非晶性ナイロン(6I6T(2)):X-21(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)結晶性芳香族ポリアミド(MXDNy):S-6011(三菱ガス化学(株)製)【0044】・実施例1~8、比較例1~9表1及び2に示す層(A)~(C)となるように、表1及び表2に示す樹脂成分及び樹脂組成で配合して、各層を構成する樹脂組成物をA/B/C/B/A(実施例1、2及び5~8、並びに比較例1~9)、又はB/A/C/A/B(実施例3及び4)の順序になるように、バレル温度が180~260℃の押出機に投入し、温度250℃の多層ダイスから押出し、温度20℃~40℃のチルロールにて冷却固化し、フラット状の5層フィルムを得た。得られた5層フィルムを、35~60℃のロール延伸機により2.8倍に縦延伸し、次いで110℃の雰囲気のテンター延伸機により4.0倍に横延伸し、さらに同テンターにより210℃の雰囲気中で熱処理して、厚さ15μmの多層フィルムを得た。各層の厚さは3.5/3/2/3/3.5(μm)であった。」
「【0053】[耐屈曲性]理化学工業(株)製のゲルボフレックステスターを用いて測定した。折り径150mm、長さ300mmの筒状に製袋したフィルムをゲルボフレックステスターに装着し、捻り角度440度で15.0cmの屈曲直線運動を5℃及び23℃の条件下で1,000回繰り返した後、それぞれ浸透液を用いてピンホールの数を調べた。なお、ピンホール数の測定はサンプルの中央部における300cm2の箇所で行った。3枚のサンプルについてピンホールの数を測定し、その平均値を算出し、以下のように評価した。・23℃(1,000回)の場合続きを表示(全11行)0~2個・・・○3~4個・・・△5個以上・・・×・5℃(1,000回)の場合0~8個・・・○9~14個・・・△15個以上・・・×」
(イ) 甲第4号証に記載された発明
上記(ア)の記載、特に、請求項1に記載のフィルムとして、甲第4号証には、以下の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されていると認める。
「6ナイロンを96~99.5重量%含み、非晶性ナイロンを0.5~4重量%含む樹脂組成物から形成されるポリアミド層(A)、6ナイロンを70~97重量%含み、ナイロン6/6,6共重合体を3~30重量%含む樹脂組成物から形成されるポリアミド層(B)、及びエチレン-酢酸ビニル共重合体けん化物を含む樹脂組成物から形成される酸素バリア層(C)、を含むポリアミド系多層フィルムであって、ポリアミド層(A)、ポリアミド層(B)、及び酸素バリア層(C)が、A/B/C/B/A、又はB/A/C/A/Bの順で積層されたポリアミド系多層フィルム。」
イ 対比・判断
(ア) 本件発明1について
本件発明1と甲4発明とを対比する。
甲4発明の「6ナイロン」は、本件発明1の「脂肪族ポリアミド」である「ナイロン-6」に相当する。
甲4発明の「ポリアミド層(B)」は、本件発明1の「ポリアミド層(B)」に相当し、甲4発明の「ポリアミド層(A)」は、本件発明1の「ポリアミド層(B)とは異なるポリアミド層」に相当する。
また、甲4発明の「ポリアミド系多層フィルム」は、本件発明1の「積層ポリアミド系フィルム」に相当する。
そして、甲4発明の「ポリアミド層(A)、ポリアミド層(B)、及び酸素バリア層(C)が、A/B/C/B/Aの順で積層された」ポリアミド系多層フィルムは、本件発明1の積層ポリアミド系フィルムにおける「少なくとも、ポリアミド層(A)、及びポリアミド層(B)が、層(A)/層(B)/層(A)の順で積層されており、」との特定事項を満たすことも明らかである。
してみると、両者は
「積層ポリアミド系フィルムであって、少なくとも、ポリアミド層(A)、及びポリアミド層(B)が、層(A)/層(B)/層(A)の順で積層されており、前記ポリアミド層(A)は、脂肪族ポリアミドを有し、ポリアミド層(B)は、ポリアミドを含有し、前記ポリアミド層(B)に含まれる前記ポリアミドは、脂肪族ポリアミドを含有し、前記ポリアミド層(B)に含まれる前記脂肪族ポリアミドは、ナイロン-6である、積層ポリアミド系フィルム。」
で一致し、次の点で相違する。
・相違点1
ポリアミド層(A)の組成に関し、本件発明1は、「脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミド」とからなるものであるのに対し、甲4発明は、「脂肪族ポリアミド」を有するものである点。
・相違点2
ポリアミド層(B)の組成に関し、本件発明1は、「ポリアミドを86~98重量%、及び耐屈曲剤を2~14重量%含有する」ものであって、耐屈曲剤は「熱可塑性エラストマーであり、前記熱可塑性エラストマーはポリエステル系エラストマーを含み、前記ポリエステル系エラストマーは、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有する飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーが、不飽和カルボン酸又はその誘導体により変性された変性ポリエステル系エラストマーである」のに対して、甲4発明にはそのような特定がない点。
・相違点3
ポリアミド層(B)に含まれるポリアミドに関し、本件発明1は、「脂肪族ポリアミド、及び芳香族ポリアミドを含有」するものであって、「芳香族ポリアミドは、ポリメタキシリレンアジパミド、又はヘキサメチレンジアミン-テレフタル酸-ヘキサメチレンジアミン-イソフタル酸の共重合体」であり、「前記ポリアミド層(B)に含まれる前記ポリアミド中の前記脂肪族ポリアミドの含有量は、前記ポリアミドの量を100重量%として80~87/92×100重量%であり、前記ポリアミド層(B)に含まれる前記ポリアミド中の前記芳香族ポリアミドの含有量は、前記ポリアミドの量を100重量%として5/92×100~20重量%」であるのに対して、甲4発明にはそのような特定がない点。
・相違点4
ポリアミド層(B)に含まれるポリアミドについて、本件発明1は、「JIS K6920に準拠した測定方法により、96%H2SO4、1.0g/100ml、温度25℃の条件で測定した相対粘度が3.2~4.5」であると特定されるのに対し、甲4発明ではそのような特定がない点。
・相違点5
ポリアミド層(B)の厚みについて、本件発明1は、「ポリアミド系フィルムの総厚みに対して、厚み比が40~50%」と特定されるのに対し、甲4発明にはそのような特定がない点。
・相違点6
積層ポリアミド系フィルムについて、本件発明1は、「次の屈曲による耐ピンホール性の耐屈曲性試験:理化学工業(株)製のゲルボフレックステスターを用いて、折り径150mm、長さ300mmの筒状に製袋したポリアミド系フィルムを、ゲルボフレックステスターに装着し、最初の88.9mmで440°の捻りを与え、その後63.5mmは直線水平運動となる繰り返しの屈曲直線運動を、-25℃の条件下で、試験速度40回/分にて1000回繰り返した後、前記ポリアミド系フィルムの3枚において、その中央部における300cm2の箇所のピンホールの数を測定し、その平均値を出すという試験において、発生するピンホール数が40個以下である」と特定されるのに対し、甲4発明にはそのような特定がない点。
事案に鑑み、まず相違点6について検討する。
甲第4号証は、「屈曲による耐ピンホール性及び繰り返し接触による耐ピンホール性の両方を兼ね備えたポリアミド系多層フィルム」に関する(段落【0008】)ものであるものの、具体的に検証している耐屈曲性(「屈曲による耐ピンホール性」に相当)の試験条件は、23℃及び5℃(段落【0053】)であり、「-25℃」の低温で行ったものではないし、甲第4号証の他の記載を見ても、本件発明1のような低温下における屈曲による耐ピンホール性についての記載もないし、また、他の証拠をみても、「-25℃」の低温下における屈曲による耐ピンホール性について、何ら記載もない。
すると、甲4発明が、-25℃という低温下での屈曲による耐ピンホール性を特定の条件を満たすもの、すなわち、相違点6に係る発明特定事項を満たすものであると推認することはできないし、さらに、甲4発明において、-25℃という低温下での屈曲による耐ピンホール性を特定の条件を満たすものとする動機付けがあるともいえない。
よって、甲4発明において、相違点6に係る発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易に想到し得たものということはできない。
してみれば、他の相違点については検討するまでもなく、本件発明1は、甲4発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ) 本件発明3ないし5について
本件発明3ないし5はいずれも、直接又は間接的に請求項1を引用する発明であり、本件発明1の特定事項を全て有するものである。
そして、上記アのとおり、本件発明1は、甲4発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明3ないし5も、甲4発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ) 取消理由2-2についてのまとめ
上記(ア)及び(イ)のとおりであるから、取消理由2-2の理由によって、本件発明1及び3ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
(2) 取消理由2-3(進歩性):甲第5号証を主たる根拠とする理由について
ア 甲第5号証の記載事項等
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(ア) 甲第5号証の記載事項
甲第5号証には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】脂肪族ポリアミド重合体97~70重量%と脂肪族共重合ポリアミド重合体3~20重量%と所望により熱可塑性エラストマー0.5~10重量%との混合重合体からなるA層の少なくとも一方の面に、脂肪族ポリアミド重合体99.5~90重量%と熱可塑性エラストマー0.5~10.0重量%との混合重合体からなるB層が積層されていることを特徴とする積層2軸延伸ポリアミド系フィルム。」
「【技術分野】【0001】本発明は、耐衝撃性及び耐屈曲疲労性、特に、低温環境下における耐屈曲疲労性、耐突き差し性に優れ、食品包装等の包装材料として使用したときに、商品の輸送時、保管時における破袋防止等に効果があり、フィルム厚みを薄くした場合においてもその強度を十分に維持することができる各種の包装用途に適した積層2軸延伸ポリアミド系フィルムに関するものである。」
「【発明が解決しようとする課題】【0010】本発明は、かかる従来技術の耐ピンホール用ポリアミド系フィルムの有する問題点に鑑み創案されたものであり、その目的は、耐破袋性、耐衝撃性、耐突き刺し性および耐屈曲疲労性、特に、低温環境下における耐屈曲疲労性に優れ、食品包装等の包装材料として使用したときに、商品の輸送時、保管時における破袋防止等の効果に優れ、各種の包装用途、特にスープやソース等の水物充填包装袋に適した積層2軸延伸ポリアミド系フィルムを提供することにある。」
「【0015】以下、本発明の積層2軸延伸ポリアミド系フィルムを詳細に説明する。本発明の積層2軸延伸ポリアミド系フィルムは、特定の混合重合体からなるA層の少なくとも一方の面に特定の混合重合体からなるB層が積層されて構成されるものである。【0016】本発明のA層は、脂肪族ポリアミド重合体97~70重量%と脂肪族共重合ポリアミド重合体3~20重量%と所望により熱可塑性エラストマー0.5~10重量%との混合重合体からなる。かかるA層は、耐衝撃性および耐屈曲疲労性に優れる脂肪族ポリアミド重合体中に柔軟性付与剤、粘り性付与剤として脂肪族共重合ポリアミド重合体が微分散している構造をもつことで、優れた衝撃強度、耐突き刺し性、耐屈曲疲労性の改善に寄与し、さらに耐ピンホール素材としての熱可塑性エラストマーが分散している構造を持つことで、さらに優れた耐屈曲疲労性、特に、低温環境下における耐屈曲疲労性の改善に寄与する。ここで、A層を構成する脂肪族共重合ポリアミド重合体の混合量が3重量%未満では、熱可塑性エラストマーの混合量が少ないと現行の耐ピンホール性ポリアミド延伸フィルムを越える高度に要求された耐衝撃性、耐突き刺し性、耐屈曲疲労性を得ることができない。また、混合量が20重量%を超えると、衝撃強度、耐突き刺し性、耐屈曲疲労性が飽和する。さらに、熱可塑性エラストマーの混合量が増加すると、耐屈曲疲労性の改善効果が得られるが、混合量が10重量%を超えると、透明性が不良となり、耐屈曲疲労性も飽和する。」
「【0018】A層に混合される脂肪族共重合ポリアミド重合体としては、上記の脂肪族ポリアミド単独重合体に共重合可能なモノマーが10重量%以下、好ましくは1~10重量%の共重合体、例えば、ナイロン6/6・6共重合体、ナイロン6/12共重合体、ナイロン6/6・10共重合体、ナイロン6・6/6・10共重合体などの脂肪族共重合ポリアミド重合体で代表される脂肪族ポリアミド、またはε-カプロラクタムを主成分としこれとヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸とのナイロン塩やメタキシリレンジアミンとアジピン酸とのナイロン塩などとを共重合させた少量の芳香族を含むポリアミド共重合体等を使用することができる。」
「【0019】A層に混合される熱可塑性エラストマーは、ゴム状弾性を有する物質としての熱可塑性材料のことであり、上記構造を形成するのに適切であれば特に制限されない。例えば、ポリアミド系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー、アイオノマー重合体等の他、これらのエラストマーの混合物などが挙げられる。熱可塑性エラストマーは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。【0020】本発明では、熱可塑性エラストマーは、本発明の目的を損なわない範囲において改質が行われてもよい。例えば、前記例示の熱可塑性エラストマーの変性体であってもよい。熱可塑性エラストマーにおける改質としては、例えば、共重合やグラフト変性による改質、極性基の付与による改質などが挙げられる。極性基の付与は、グラフト変性により行われてもよい。このような極性基としては、例えば、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、ヒドロキシル基、アミノ基、オキソ基などが挙げられる。極性基は1種類で又は複数の種類を組み合わせて付与することができる。従って、極性基が付与された変性体には、例えば熱可塑性エラストマーのエポキシ変性体、カルボキシ変性体、酸無水物変性体、ヒドロキシ変性体、アミノ変性体などが含まれる。」
「【0031】本発明のB層は、脂肪族ポリアミド重合体99.5~90重量%と熱可塑性エラストマー0.5~10重量%との混合重合体からなる。かかるB層は、優れた耐屈曲ピンホール性を持ち、包装袋に加わる屈曲の衝撃を受け止め、破袋防止性の発現に寄与する。熱可塑性エラストマーの含有量が上記範囲内であれば、良好な透明性を維持しながら耐屈曲疲労性を向上させることができる。【0032】B層を構成する脂肪族ポリアミド重合体及び熱可塑性エラストマーは、上述したA層の脂肪族ポリアミド重合体及び熱可塑性エラストマーを同様に使用することができる。」
「【0055】(2)屈曲疲労ピンホール数理学工業社製のゲルボフレックステスターを使用し、下記の方法により屈曲疲労ピンホール数を測定した。実施例で作製したフィルムにポリエステル系接着剤を塗布後、厚み40μmの線状低密度ポリエチレンフィルム(L-LDPEフィルム:東洋紡績社製、L4102)をドライラミネートし、40℃の環境下で3日間エージングを行いラミネートフィルムとした。得られたラミネートフィルムを12インチ×8インチに裁断し、直径3.5インチの円筒状にし、円筒状フィルムの一方の端をゲルボフレックステスターの固定ヘッド側に、他方の端を可動ヘッド側に固定し、初期の把持間隔を7インチとした。ストロークの最初の3.5インチで440度のひねりを与え、その後2.5インチは直線水平運動で全ストロークを終えるような屈曲疲労を、40回/minの速さで500回行い、ラミネートフィルムに発生したピンホール数を数えた。なお、測定は5℃の環境下で行った。テストフィルムのL-LDPEフィルム側を下面にしてろ紙(アドバンテック、No.50)の上に置き、4隅をセロテープ(登録商標)で固定した。インク(パイロット製インキ(品番INK-350-ブルー)を純水で5倍希釈したもの)をテストフィルム上に塗布し、ゴムローラーを用いて一面に延展させた。不要なインクをふき取った後、テストフィルムを取り除き、ろ紙に付いたインクの点の数を計測した。」
「【0060】(実施例1)2種3層の共押出しTダイ設備を使用し、次のような構成の未延伸シートを得た。B層/A層の構成で、未延伸シートの合計厚みは160μmであり、合計厚みに対するA層の厚み比率は88%である。A層を構成する組成物:ナイロン6(東洋紡績社製、T814)87重量部、ナイロン6とナイロン12からなる脂肪族共重合ポリアミド重合体(宇部興産株式会社製 7034B)10重量部、およびナイロン12をポリアミド成分とするポリアミド系エラストマー(アルケマ社製、PEBAX4033SN01)3.0重量部からなり、さらにフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、Irganox1010)0.1重量部を含有してなる混合重合体組成物。B層を構成する組成物:ナイロン6(東洋紡績社製 T814)96.85重量部、ポリアミド系エラストマー(アルケマ社製、PEBAX4033SN01)3.0重量部、細孔容積0.6~1.0mlのシリカ粒子0.08重量部、細孔容積1.1~1.6mlのシリカ粒子0.5重量部および脂肪酸アマイド0.15重量部からなる重合体組成物。【0061】得られた未延伸シートを縦方向に3.4倍延伸し、続いて横方向に4.0倍延伸することにより、厚み12μmの2軸延伸フィルムを作製し、さらに、厚み40μmの線状低密度ポリエチレンフィルム(L-LDPEフィルム:東洋紡績社製、L4102)とドライラミネートする側のB層表面にコロナ放電処理を実施した。得られた2軸延伸フィルムのヘイズ、静止摩擦係数、破断強度、衝撃強度、突き刺し強度、屈曲疲労ピンホール数を測定した。その結果を層構成の詳細とともに表1に示す。」
(イ) 甲第5号証に記載された発明
上記(ア)の記載、特に、請求項1に記載のフィルムとして、甲第5号証には、以下の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されていると認める。
「脂肪族ポリアミド重合体97~70重量%と脂肪族共重合ポリアミド重合体3~20重量%と所望により熱可塑性エラストマー0.5~10重量%との混合重合体からなるA層の少なくとも一方の面に、脂肪族ポリアミド重合体99.5~90重量%と熱可塑性エラストマー0.5~10.0重量%との混合重合体からなるB層が積層されている積層2軸延伸ポリアミド系フィルム。」
イ 対比・判断
(ア) 本件発明1について
本件発明1と甲5発明を対比する。
甲5発明の「積層2軸延伸ポリアミド系フィルム」は、本件発明1の「積層ポリアミド系フィルム」に相当し、甲5発明の「脂肪族ポリアミド重合体」、「脂肪族共重合ポリアミド重合体」はいずれも、本件発明1の「ポリアミド系フィルムを構成する「脂肪族ポリアミド」に相当する。
甲5発明の「熱可塑性エラストマー」は、甲第5号証の段落【0016】からみて、本件発明1の「耐屈曲剤」に相当する。
そうすると、甲5発明の「脂肪族ポリアミド重合体97~70重量%と脂肪族共重合ポリアミド重合体3~20重量%と所望により熱可塑性エラストマー0.5~10重量%との混合重合体からなるA層」は、本件発明1の「ポリアミド層(B)は、ポリアミド、及び耐屈曲剤を含有し」に相当し、甲5発明の「B層」は、本件発明1の「ポリアミド層(A)」に相当する。
また、甲5発明は、本件発明1の「前記ポリアミド層(B)に含まれる前記ポリアミド中の前記脂肪族ポリアミドの含有量は、前記ポリアミドの量を100重量%として80~87/92×100重量%である」との特定事項を満たしている。
してみると、両者は
「積層ポリアミド系フィルムであって、前記ポリアミド層(A)は、脂肪族ポリアミドを含み、ポリアミド層(B)は、ポリアミド、及び耐屈曲剤を含有し、前記ポリアミド層(B)に含まれる前記ポリアミドは、脂肪族ポリアミドであり、前記ポリアミド層(B)に含まれる前記ポリアミド中の前記脂肪族ポリアミドの含有量は、前記ポリアミドの量を100重量%として80~87/92×100重量%である、積層ポリアミド系フィルム。」
で一致し、次の点で相違する。
・相違点7
積層ポリアミドフィルムの積層構造に関し、本件発明1は、「少なくとも、ポリアミド層(A)、及びポリアミド層(B)が、層(A)/層(B)/層(A)の順で積層されており」と特定されるのに対し、甲5発明にはそのような特定がない点。
・相違点8
ポリアミド層(A)の組成に関し、本件発明1は、「脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミド」とからなるものであるのに対し、甲5発明は、「脂肪族ポリアミド」を有するものである点。
・相違点9
ポリアミド層(B)の組成に関し、本件発明1は、「ポリアミドを86~98重量%、及び耐屈曲剤を2~14重量%含有する」ものであって、耐屈曲剤は「熱可塑性エラストマーであり、前記熱可塑性エラストマーはポリエステル系エラストマーを含み、前記ポリエステル系エラストマーは、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有する飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーが、不飽和カルボン酸又はその誘導体により変性された変性ポリエステル系エラストマーである」のに対して、甲5発明にはそのような特定がない点。
・相違点10
ポリアミド層(B)に含まれるポリアミドに関し、本件発明1は、「脂肪族ポリアミド、及び芳香族ポリアミドを含有」するものであって、「脂肪族ポリアミドは、ナイロン-6」であり、「芳香族ポリアミドは、ポリメタキシリレンアジパミド、又はヘキサメチレンジアミン-テレフタル酸-ヘキサメチレンジアミン-イソフタル酸の共重合体」であり、「前記ポリアミド層(B)に含まれる前記ポリアミド中の前記脂肪族ポリアミドの含有量は、前記ポリアミドの量を100重量%として80~87/92×100重量%であり、前記ポリアミド層(B)に含まれる前記ポリアミド中の前記芳香族ポリアミドの含有量は、前記ポリアミドの量を100重量%として5/92×100~20重量%」であるのに対して、甲5発明にはそのような特定がない点。
・相違点11
ポリアミド層(B)に含まれるポリアミドについて、本件発明1は、「JIS K6920に準拠した測定方法により、96%H2SO4、1.0g/100ml、温度25℃の条件で測定した相対粘度が3.2~4.5」であると特定されるのに対し、甲5発明ではそのような特定がない点。
・相違点12
ポリアミド層(B)の厚みについて、本件発明1は、「ポリアミド系フィルムの総厚みに対して、厚み比が40~50%」と特定されるのに対し、甲5発明にはそのような特定がない点。
・相違点13
積層ポリアミド系フィルムについて、本件発明1は、「次の屈曲による耐ピンホール性の耐屈曲性試験:理化学工業(株)製のゲルボフレックステスターを用いて、折り径150mm、長さ300mmの筒状に製袋したポリアミド系フィルムを、ゲルボフレックステスターに装着し、最初の88.9mmで440°の捻りを与え、その後63.5mmは直線水平運動となる繰り返しの屈曲直線運動を、-25℃の条件下で、試験速度40回/分にて1000回繰り返した後、前記ポリアミド系フィルムの3枚において、その中央部における300cm2の箇所のピンホールの数を測定し、その平均値を出すという試験において、発生するピンホール数が40個以下である」と特定されるのに対し、甲5発明にはそのような特定がない点。
事案に鑑み、まず相違点13について検討する。
甲第5号証は、「耐衝撃性及び耐屈曲疲労性、特に、低温環境下における耐屈曲疲労性、耐突き差し性に優れ、食品包装等の包装材料として使用したときに、商品の輸送時、保管時における破袋防止等に効果があり、フィルム厚みを薄くした場合においてもその強度を十分に維持することができる各種の包装用途に適した積層2軸延伸ポリアミド系フィルム」に関する(段落【0001】)ものであるものの、具体的に検証している耐屈曲疲労性(「屈曲による耐ピンホール性」に相当)の試験条件は、5℃(段落【0055】)であり、「-25℃」の低温で行ったものではないし、甲第5号証の他の記載を見ても、本件発明1のような低温下における屈曲による耐ピンホール性についての記載もないし、また、他の証拠をみても、「-25℃」の低温下における屈曲による耐ピンホール性について、何ら記載もない。
すると、甲5発明が、-25℃という低温下での屈曲による耐ピンホール性を特定の条件を満たすもの、すなわち、相違点13に係る発明特定事項を満たすものであると推認することはできないし、さらに、甲5発明において、-25℃という低温下での屈曲による耐ピンホール性を特定の条件を満たすものとする動機付けがあるともいえない。
よって、甲5発明において、相違点13に係る発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易に想到し得たものということはできない。
してみれば、他の相違点については検討するまでもなく、本件発明1は、甲5発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ) 本件発明3ないし5について
本件発明3ないし5はいずれも、直接又は間接的に請求項1を引用する発明であり、本件発明1の特定事項を全て有するものである。
そして、上記アのとおり、本件発明1は、甲5発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明3ないし5も、甲5発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ) 取消理由2-3についてのまとめ
上記(ア)及び(イ)のとおりであるから、取消理由2-3の理由によって、本件発明1及び3ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
(3) 取消理由3(明確性)について
ア 取消理由3-1について
訂正により、積層ポリアミド系フィルムは、「少なくとも、ポリアミド層(A)、及びポリアミド層(B)が、層(A)/層(B)/層(A)の順で積層」されているものであって、ポリアミド層(A)及びポリアミド層(B)の組成も特定された。
よって、取消理由3-1はその理由がない。
イ 取消理由3-2について
訂正により、請求項2は削除された。
また、上記アの検討のとおり、訂正により、積層ポリアミド系フィルムは、「少なくとも、ポリアミド層(A)、及びポリアミド層(B)が、層(A)/層(B)/層(A)の順で積層」されているものであって、ポリアミド層(A)及びポリアミド層(B)の組成も特定された。
よって、取消理由3-2はその理由がない。
2 取消理由(決定の予告)で採用しなかった異議申立理由について
取消理由(決定の予告)で採用しなかった異議申立理由は、申立理由1-1、申立理由1-2、申立理由1-3及び申立理由2-1であるので、以下、検討する。
(1) 申立理由1-1(新規性)及び申立理由2-1(進歩性):甲第1号証を根拠とする理由について
ア 甲第1号証の記載事項等
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(ア) 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、次の事項が記載されている。
「[図:0001383244000001.jpg]」
「[図:0001383244000002.jpg]」
「[図:0001383244000003.jpg]」
「[図:0001383244000004.jpg]」
(イ) 甲第1号証に記載された発明
上記(ア)の記載、特に「技術資料:ナイロン改質性能」及び「技術資料:ナイロン改質品のフィルム物性」に記載されているプリマロイ○R-APを3又は5質量%含むTダイ単層フィルムとして 、甲第1号証には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。
「6Ny(ナイロン)を95又は97質量%と変性ポリエステル系熱可塑性エラストマーであるプリマロイ○R-AP(GQ430)を3又は5質量%含むTダイ単層フィルム。」
イ 対比・判断
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「6Ny(ナイロン)」は、本件発明1の「ポリアミド」であって、そのポリアミドにおける「脂肪族ポリアミド」に相当する。
また、甲1発明の「プリマロイ○R-AP(GQ430)」は、上記(1)アにおける「技術資料:ナイロン改質性能」の記載によると、ゲルボフレックス(耐ピンホール性)を改善するものであるが、その評価方法は、「一定屈曲後インクを塗布し背後のろ紙に転着したスポット数をカウント」することにより評価されるものであるから、結局のところ、屈曲時のピンホール発生に関して試験していることに他ならない。そして、本件発明1の耐屈曲性とは、本件特許明細書の段落【0096】に記載のとおりであることからすると、甲1発明の「ゲルボフレックス(耐ピンホール性)」を改善することは、本件発明1における耐屈曲性を改善することと同じである。そうすると 、甲1発明の「プリマロイ○R-AP(GQ430)」は、本件発明1の「耐屈曲剤」に相当するものといえる。
甲1発明の「Tダイ単層フィルム」は、本件発明1の「ポリアミド層(B)」を有する「ポリアミド系フィルム」との限りにおいて相当する。
本件発明1と甲1発明との上記相当関係からからすると,甲1発明は、本件発明1の「ポリアミド層(B)は、ポリアミドを86~98重量%、及び耐屈曲剤を2~14重量%含有すし、前記ポリアミド層(B)に含まれる前記ポリアミドは、脂肪族ポリアミドを含有」するとの特定事項を満足している。
してみると、両者は、
「ポリアミド系フィルムであって、ポリアミド層(B)は、ポリアミドを86~98重量%、及び耐屈曲剤を2~14重量%含有し、前記ポリアミドは、脂肪族ポリアミドを含有する、ポリアミド系フィルム。」
で一致し、次の点で一応相違する。
・相違点14
ポリアミド系フィルムについて、本件発明1は、「積層ポリアミド系フィルム」であって、「少なくとも、ポリアミド層(A)、及びポリアミド層(B)が、層(A)/層(B)/層(A)の順で積層」されている旨特定するのに対し、甲1発明にはそのような特定がない点。
・相違点15
ポリアミド層(A)について、本件発明1は、「脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミドとからなり」と特定するのに対して、甲1発明には、ポリアミド層(A)に相当する層自体の特定がない点。
・相違点16
ポリアミド層(B)について、本件発明1は、「前記ポリアミド層(B)に含まれる前記ポリアミドは、脂肪族ポリアミド、及び芳香族ポリアミドを含有し、前記ポリアミド層(B)に含まれる前記脂肪族ポリアミドは、ナイロン-6であり、前記ポリアミド層(B)に含まれる前記芳香族ポリアミドは、ポリメタキシリレンアジパミド、又はヘキサメチレンジアミン-テレフタル酸-ヘキサメチレンジアミン-イソフタル酸の共重合体であり、前記ポリアミド層(B)に含まれる前記ポリアミド中の前記脂肪族ポリアミドの含有量は、前記ポリアミドの量を100重量%として80~87/92×100重量%であり、前記ポリアミド層(B)に含まれる前記ポリアミド中の前記芳香族ポリアミドの含有量は、前記ポリアミドの量を100重量%として5/92×100~20重量%」であると特定する対し、甲1発明にはそのような特定がない点。
・相違点17
ポリアミド層(B)に含まれるポリアミドに関し、本件発明1は、「JIS K6920に準拠した測定方法により、96%H2SO4、1.0g/100ml、温度25℃の条件で測定した相対粘度が3.2~4.5」であると特定するのに対し、甲1発明にはそのような特定がない点。
・相違点18
ポリアミド層(B)に含まれる耐屈曲剤に関し、本件発明1は、「熱可塑性エラストマーであり、前記熱可塑性エラストマーは、ポリエステル系エラストマーを含み、前記ポリエステル系エラストマーは、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有する飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーが、不飽和カルボン酸又はその誘導体により変性された変性ポリエステル系エラストマーであり」と特定するのに対し、甲1発明にはそのような特定がない点。
・相違点19
ポリアミド層(B)の厚みに関し、本件発明1は、「ポリアミド系フィルムの総厚みに対して、厚み比が40~50%であり」と特定するのに対し、甲1発明にはそのような特定がない点。
・相違点20
積層ポリアミド系フィルムに関し、本件発明1は、「次の屈曲による耐ピンホール性の耐屈曲性試験:理化学工業(株)製のゲルボフレックステスターを用いて、折り径150mm、長さ300mmの筒状に製袋したポリアミド系フィルムを、ゲルボフレックステスターに装着し、最初の88.9mmで440°の捻りを与え、その後63.5mmは直線水平運動となる繰り返しの屈曲直線運動を、-25℃の条件下で、試験速度40回/分にて1000回繰り返した後、前記ポリアミド系フィルムの3枚において、その中央部における300cm2の箇所のピンホールの数を測定し、その平均値を出すという試験において、発生するピンホール数が40個以下である」と特定するのに対し、甲1発明にはそのような特定がない点。
事案に鑑み、まず、相違点20について検討する。
甲第1号証では、「技術資料:ナイロン改質性能」の頁において、ゲルホフレックス(耐ピンホール性)試験(「耐ピンホール性の耐屈曲性試験」に相当)が行われているが、その試験条件は23℃であり、本件発明1の「-25℃」と明らかに相違している。
してみれば、本件発明1は、甲1発明ではない。
また、甲第1号証の他の記載全体をみても、本件発明1で特定されるような「-25℃」との低温下における屈曲による耐ピンホール性についての記載もない。
すると、甲1発明が、-25℃という低温下での屈曲による耐ピンホール性を特定の条件を満たすもの、すなわち、相違点20に係る発明特定事項を満たすものであると推認することはできないし、さらに、甲1発明において、-25℃という低温下での屈曲による耐ピンホール性を特定の条件を満たすものとする動機付けがあるともいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、申立理由1-1及び申立理由2-1の理由によって、本件発明1に係る特許を取り消すことはできない。
(2) 申立理由1-2(新規性):甲第4号証を根拠とする理由について
ア 本件発明1について
1(1)イで検討のとおり、本件発明1は甲4発明ではない。
イ 本件発明3ないし5について
本件発明3ないし5はいずれも、直接又は間接的に請求項1を引用する発明であり、本件発明1の特定事項を全て有するものである。
そして、上記アのとおり、本件発明1は、甲4発明と同一ではないから、本件発明3ないし5も、甲4発明と同一ではない。
ウ 申立理由1-2についてのまとめ
上記ア及びイのとおりであるから、申立理由1-2の理由によって、本件発明1及び3ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
(3) 申立理由1-3(新規性):甲第5号証を根拠とする理由について
ア 本件発明1について
1(2)イで検討のとおり、本件発明1は甲5発明ではない。
イ 本件発明3ないし5について
本件発明3ないし5はいずれも、直接又は間接的に請求項1を引用する発明であり、本件発明1の特定事項を全て有するものである。
そして、上記アのとおり、本件発明1は、甲5発明と同一ではないから、本件特許発明3ないし5も、甲5発明と同一ではない。
ウ 申立理由1-3についてのまとめ
上記ア及びイのとおりであるから、申立理由1-3の理由によって、本件発明1及び3ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
第7 結語
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1、3ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1、3ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件特許の請求項2に係る特許は、訂正により削除されたため、特許異議申立人による請求項2に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2020-700727