特許異議申立
2024-700317
繊維製品
- 審判番号
- 2024-700317
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-215342
- 登録番号
- 7357520
- 請求日
- 2024年04月05日
- 審決日
- 2025年03月06日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】グンゼ株式会社
- 【権利者代理人】安田岡本弁理士法人
- 【異議申立人】久門 享
- 審判長/審判官
- 審判長 筑波 茂樹
- 審判官 武市 匡紘
- 審判官 金丸 治之
- 分類
- P1651.113-YAA(D04B) / P1651.121-YAA(D04B) / P1651.536-YAA(D04B) / P1651.537-YAA(D04B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7357520号発明「繊維製品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7357520号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
特許第7357520号の請求項1に係る特許を維持する。
特許第7357520号の請求項2~5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7357520号の請求項1~5に係る特許についての出願は、令和元年11月28日の出願であって、令和5年9月28日にその特許権の設定登録がされ、令和5年10月6日に特許掲載公報が発行された。
本件の特許異議の申立てに係る手続の経緯の概要は、次のとおりである。
令和6年 4月 5日 :特許異議申立人久門享(以下「申立人」という。)による請求項1~5に係る特許に対する本件特許異議の申立て
令和6年 8月 8日付け:取消理由通知書
令和6年10月 9日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出(以下、この訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)
令和6年11月29日 :申立人による意見書の提出
第2 本件訂正の適否
1 本件訂正の内容
本件訂正請求の趣旨は、「特許第7357520号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5について訂正することを求める。」ものであり、本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。
(1)訂正事項1
本件訂正前の請求項1に記載された
「0.9≦合成CF1/合成CF2≦1.10であることを特徴とし、」を、
「0.9≦合成CF1/合成CF2≦1.10、かつ、L1>L2
であることを特徴とし、」に訂正する。
(2)訂正事項2
本件訂正前の請求項1に記載された
「合成CF2=1/L2×SQR[(1/(5905.4/S2)+1/[(5905.4/D2)×Df2]]」を、
「合成CF2=1/L2×SQR[1/(5905.4/S2)+1/[(5905.4/D2)×Df2]]」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2~5を削除する。
2 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~5は、請求項2~4が、本件訂正前の請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正請求は、一群の請求項〔1~5〕について請求されたものである。
3 訂正の目的、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の適否について
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1で規定する繊維製品を構成する非弾性繊維A及び非弾性繊維Bにおける、非弾性繊維Aのループ長[cm]であるL1及び非弾性繊維Bのループ長[cm]であるL2の関係をL1>L2と限定したものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項1が、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものであるか否かについて検討すると、訂正事項1は、【図1】に示された実施例2に基づくものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、「合成CF2=1/L2×SQR[(1/(5905.4/S2)+1/[(5905.4/D2)×Df2]]」における「1/(5905.4/S2)」の直前の「(」が、閉じられていないという不明瞭な記載の釈明を目的とするものである。また、訂正事項2は、明細書の【0018】の記載から、「1/(5905.4/S2)」の直前の「(」は誤記であることが明らかであり、誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。
訂正事項2は、新たな技術的事項が導入されるものではないから、訂正事項2は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項2は、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、請求項2~5を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項3は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、若しくは第2号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正が認められたから、本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
裁断箇所を処理せずに切りっぱなしで使用される編地を縁部に有する繊維製品であって、
前記編地は非弾性繊維Aと弾性繊維Aとがプレーティング編みされたコースと、前記コースに隣接配置され非弾性繊維Bと弾性繊維Bとがプレーティング編みされたコースとを含む編地であり、
下記の式(A)で表される非弾性繊維Aと前記弾性繊維Aとの合成カバーファクターを合成CF1として、
下記の式(B)で表される非弾性繊維Bと前記弾性繊維Bとの合成カバーファクターを合成CF2としたとき、
0.9≦合成CF1/合成CF2≦1.10、かつ、L1>L2
であることを特徴とし、
前記非弾性繊維Aがレーヨン糸であって、前記非弾性繊維Bがポリエステルのマルチフィラメント糸である繊維製品。
・式(A)
合成CF1=1/L1×SQR[(1/S1)+1/[(5905.4/D1)×Df1]]
L1:非弾性繊維Aのループ長[cm]
S1:非弾性繊維Aの繊度[英国式綿番手]
D1:弾性繊維Aの繊度[dtex]
Df1:ドラフト率=編地編成時の弾性繊維Aの給糸速度/非弾性繊維Aの給糸速度
・式(B)
合成CF2=1/L2×SQR[1/(5905.4/S2)+1/[(5905.4/D2)×Df2]]
L2:非弾性繊維Bのループ長[cm]
S2:非弾性繊維Bの繊度[dtex]
D2:弾性繊維Bの繊度[dtex]
Df2:ドラフト率=編地編成時の弾性繊維Bの給糸速度/非弾性繊維Bの給糸速度」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
本件訂正前の請求項1~5に係る特許に対して、当審が特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
1 取消理由1(サポート要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
「0.9≦合成CF1/合成CF2≦1.10」という条件で特定される編地は、単に一様に編まれた一般的な編地を広く包含するものであり、当該「0.9≦合成CF1/合成CF2≦1.10」という条件で、着用と洗濯とを繰り返しても縁部(裁断端縁)の解れが発生しにくい繊維製品を特定することができないことは当業者からみて明らかであるから、本件特許の請求項1の記載では、発明が解決しようとする課題を解決することはできない。
2 取消理由2(明確性)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(1)本件特許の請求項1には、「合成CF2=1/L2×SQR[(1/(5905.4/S2)+1/[(5905.4/D2)×Df2]]」と記載されているが、合成CF2を算出する当該数式において、1/(5905.4/S2)の部分の直前に存在する丸括弧「(」が閉じられていないため、当該丸括弧で括られるべき範囲が不明である。
(2)請求項2及び3は、非弾性繊維Aと非弾性繊維Bとは同一の材料からなるものであるが、この場合、隣接配置されている、非弾性繊維Aと弾性繊維Aとからなるコースと、非弾性繊維Bと弾性繊維Bとからなるコースについて区別することができず、非弾性繊維Aと弾性繊維Aとからなるコースと、非弾性繊維Bと弾性繊維Bとをどのように特定するかについて不明であるところ、非弾性繊維Aと弾性繊維Aとからなるコースと、非弾性繊維Bと弾性繊維Bとをどのように選択するかによって合成CF1/合成CF2の値は変化し得るため、請求項2及び請求項3にかかる発明を一義的に特定することができない。
3 取消理由3(進歩性)
本件の請求項1~5に係る発明は、以下の引用文献1~6に記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
<引用文献等一覧>
引用文献1:国際公開第2009/011440号(申立人が提出した甲第1号証)
引用文献2:特開2005-350800号公報(同甲第2号証)
引用文献3:特開2007-182650号公報(同甲第8号証)
引用文献4:北浦滋夫(著者代表)、「ニットに関する24章」、第2版、株式会社理工新社、昭和51年7月10日、274~279頁(同甲第3号証、技術常識を示す文献)
引用文献5:国際公開第2007/086491号(当審で引用する文献、周知技術を示す文献)
引用文献6:登録実用新案第3183008号公報(当審で引用する文献、周知技術を示す文献)
第5 当審の判断
以下に示すとおり、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件特許の請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
1 引用文献の記載、引用発明及び周知技術について
(1)引用文献1
ア 引用文献1の記載
引用文献1には、以下の記載がある。(下線は当審で付した。「・・・」は摘記の省略を示す。以下同様。)
「従って、本発明の目的は、上記の従来の問題点を解決し、目的の形状に裁断しても、ヘミングを行うことなく、そのまま着用しても風合いを損なうことなく、ランやカーリングの発生を抑えたダブルニット編地を提供することである。
・・・
本発明は低融点弾性糸を使用せず、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ね、裁断したままでへミング処理が不要で、該裁断端部からのランの発生やカーリングが発生し難くい、衣料用として使用可能なダブルニット編地である。」(第2頁第26行~第3頁第10行)
「また、本発明において用いることのできる非弾性糸は、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリビニルアルコールなどの合成繊維、レーヨンなどの再生繊維、綿、麻、羊毛、絹などの天然繊維やこれらの複合繊維からなるものでもよいが、ポリエステル、ナイロン、あるいは、セルロース系の繊維を用いてスルホン酸塩を含む処理液を付与したものは、195~205℃で熱処理した場合でも、黄変などの糸の脆化を抑制することができるので好ましい。」(第6頁第14行~第20行)
「請求の範囲
1.非弾性糸と熱変形開始温度が150~190℃の弾性糸から編成してなるダブルニット編地であって、該編地の両面の表面に非弾性糸が現れ、編地内側に弾性糸が現れる様にプレーティング編成されてなる編地であって、弾性糸と非弾性糸の繊度比が1:0.3~1:3.0で伸長率が180%以上、伸長回復率が92%以上、 製品の編地の経密度と緯密度の積が5000/平方インチ以上であるランやカーリングの発生防止能に優れたダブルニット編地。」(第16頁第1行~第8行)
イ 引用発明
上記アより、引用文献1には以下の発明(引用発明1)が記載されていると認める。
「裁断したままでヘミング処理が不要な編地を使用しそのまま着用する衣料であって、
前記編地は、両面の表面に非弾性糸が現れ、編地内側に弾性糸が現れる様にプレーティング編成されてなる編地であり
前記非弾性糸は、ポリエステル、ナイロン、あるいはアクリル、ポリビニルアルコールなどの合成性繊維、レーヨンなどの再生繊維、綿、麻、羊毛、絹などの天然繊維やこれらの複合繊維からなるものである衣料。」
(2)引用文献2
ア 引用文献2の記載
引用文献2には、以下の記載がある。
「【請求項1】
100%伸長状態で150℃、45秒間の乾熱処理後の強力保持率が50%以上であり、180℃以下の融点を有すると共に、カセイソーダ2g/Lの水溶液にて100%伸長状態で100℃、60分間処理した後の強力保持率が60%以上である高融着耐アルカリ性ポリウレタン弾性繊維のベア糸が、少なくとも1種類の非弾性糸からなる1×1ゴム編組織又は中糸入りリバーシブル編組織の緯編地を構成する各ループ目の全てにプレーティングされてなり、熱セットにより高融着耐アルカリ性ポリウレタン弾性繊維相互及び/又はこれと非弾性糸の交差部が熱融着されてなるポリウレタン弾性繊維混用緯編地。」
「【0010】
本発明は、アルカリ処理等の後処理を行ってもポリウレタン弾性繊維本来の高伸長性・高伸長回復性を保持できると共に、編地の変形、目ずれ、わらい、ほつれ、ラン、デンセン、カール、スリップイン等を起き難くしたポリウレタン弾性繊維混用緯編地、特に、裁断した編地端をそのままの状態、所謂「切りっぱなし」のまま使用可能なポリウレタン弾性糸混用緯編地及びその製造方法を提供することを目的とする。」
「【0045】
この場合、本発明の緯編地に用いられる非弾性糸としては特に制限は無く、例えば、木綿、麻、羊毛、絹等の天然繊維、レーヨン、キュプラ、ポリノジック等の再生繊維、アセテート等の半再生繊維、ナイロン、ポリエステル、アクリル等の化学合成繊維等のフィラメント糸、ステープル糸、ステープル混紡糸など任意の糸を使用することができる。・・・」
「【0062】
〈編地の製造〉
この高融着耐アルカリ性ポリウレタン弾性繊維を用い、フライス編機(釜径:17インチ、ゲージ18、給糸口:33口)で図1の編成組織図に基づき緯編地を編成した。・・・」
「【0074】
[実施例2]
実施例1と同様の高融着耐アルカリ性ポリウレタン弾性繊維を用い、フライス編機(釜径:30インチ、22ゲージ、給糸口:60口)で図3の編成組織図に基づき編地を編成した。図3中、1は綿100%の紡績糸80番手、2はナイロン仮撚り糸78デシテックス24フィラメント、3は該ポリウレタン弾性繊維、4はダイヤル針、5はシリンダー針、F1~F3はそれぞれ給糸口である。各糸条の編込糸長は、綿糸1とナイロン糸2をそれぞれ30.0cm、該ポリウレタン弾性繊維を22.0cmに設定した。
【0075】
この編組織において、給糸口F1より綿糸1とポリウレタン弾性繊維3を給糸し、プレーティング編にて編み込み、ダイヤル針4で全針ニット編を行い、給糸口F2よりポリウレタン弾性繊維3を給糸し、ダイヤル針4とシリンダー針5で全針ニット編を行い、給糸口F3よりナイロン糸2とポリウレタン弾性繊維3を給糸し、プレーティング編にて編み込み、シリンダー針5で全針ニット編を行い、中糸入りリバーシブル編地を得た。」
「【図3】
[図:0001423485000001.jpg]
」
イ 引用発明
上記アより、引用文献2には以下の発明(引用発明2)が記載されていると認める。
「「切りっぱなし」のまま使用可能なポリウレタン弾性糸混用緯編地を用いた製品であって、
前記ポリウレタン弾性繊維混用緯編地は、高融着耐アルカリ性ポリウレタン弾性繊維のベア糸が、少なくとも1種類の非弾性糸からなる1×1ゴム編組織又は中糸入りリバーシブル編組織の緯編地を構成する各ループ目の全てにプレーティングされてなり、
前記非弾性糸としては、木綿、麻、羊毛、絹等の天然繊維、レーヨン、キュプラ、ポリノジック等の再生繊維、アセテート等の半再生繊維、ナイロン、ポリエステル、アクリル等の化学合成繊維等のフィラメント糸、ステープル糸、ステープル混紡糸など任意の糸を使用することができる製品。」
(3)引用文献3
ア 引用文献3の記載
引用文献3には、以下の記載がある。
「【請求項1】
衣類の縁の一部又は全部あるいは、衣類の縁でない箇所の一部において、任意のラインで裁断されたままの編地を含む切りっぱなし衣類に用いられる緯編地であって、カール抑制機能を有する平編組織よりなる緯編地。」
「【0018】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明の緯編地は、衣類の縁の一部又は全部あるいは、衣類の縁でない箇所の一部において、任意のラインで裁断されたままである切りっぱなし衣類に用いられるカール抑制機能がある平編組織(所謂天竺編)の緯編地であり、例えば、該緯編地が熱融着ポリウレタン弾性繊維と非弾性繊維をプレーティング編により混用した天竺編地で、熱セットによって、熱融着ポリウレタン弾性繊維相互を熱融着させ、且つ22N荷重伸長直後のカール性が50%以下の編地が好適に使用できる。」
「【0024】
本発明に用いられる非弾性繊維としては、特に制限はなく、例えば木綿、麻、羊毛、絹等の天然繊維、レーヨン、キュプラ、ポリノジック等の再生繊維、アセテート等の半再生繊維、ナイロン、ポリエステル、アクリル等の化学合成繊維等のフィラメント糸、ステープル糸、ステープル混紡糸など任意の糸を使用することができるが、少なくとも1種類の熱可塑性合成繊維を含む非弾性繊維を使用することが好ましい。」
イ 引用発明
上記アより、引用文献3には以下の発明(引用発明3)が記載されていると認める。
「任意のラインで裁断されたままの緯編地を含む切りっぱなし衣類であって、
前記緯編地が熱融着ポリウレタン弾性繊維と非弾性繊維をプレーティング編により混用した天竺編地であり、
前記非弾性繊維として、木綿、麻、羊毛、絹等の天然繊維、レーヨン、キュプラ、ポリノジック等の再生繊維、アセテート等の半再生繊維、ナイロン、ポリエステル、アクリル等の化学合成繊維等のフィラメント糸、ステープル糸、ステープル混紡糸を使用することができる衣類。」
(4)引用文献4
ア 引用文献4の記載
引用文献4の278頁には、以下の記載がある。
「
[図:0001423485000002.jpg]
」
イ 引用文献4の記載事項
1テックス=10デシテックス の関係があることは明らかであるから、上記アより、引用文献4には以下の事項(引4記載事項)が記載されていると認める。
「糸の太さにおいて、英式綿番手とデシテックス(dtex)については、
英国式番手=5905.4/デシテックス(dtex)で換算することができる。」
(5)引用文献5
ア 引用文献5の記載
引用文献5には、以下の記載がある。
「[0001] 本発明は特殊な吸水時に寸法変化する繊維が混用された布帛に関する。より詳細には、吸水時に寸法変化(吸水自己伸長または吸水自己収縮)するセルロース系繊維が混用された、着用発汗時に快適な布帛を提供するものである。」
「[0009] 以下、本発明について詳細に説明する。
本発明におけるセルロース繊維とは、キュプラ、レーヨン、精製セルロース繊維、竹繊維、綿などであり、キュブラ、レーヨン等の再生セルロースが好適に使用される。・・・」
「[0011] なお、本発明において、吸水時寸法変化率が2%未満の繊維を普通繊維という。普通繊維としては、ポリエステル、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリウレタン系繊維、後述するアルカリ処理や撚糸による吸水寸法変化性能が付与されていないセルロース系繊維、アセテート、ウールなど、任意の繊維の長繊維、あるいは短繊維が挙げられる。これらの断面形状は任意で、丸断面やW型断面などの異型糸であってもよい。
・・・」
「[0013] 本発明の吸水自己伸長セルロース繊維は、吸水伸長率が+2%以上であり、好ましくは+3%以上である。セルロース繊維を吸水自己伸長糸とするには、通常のセルロース繊維をアルカリ水溶液中で処理すればよい。セルロース繊維をアルカリ処理することは従来より知られており、例えばシルケット加工が最も一般的な処理方法である。しかし、本発明では、従来の常識を打ち破り、過酷なアルカリ処理を行うことにより吸水時に2%以上、好ましくは3%以上伸長するセルロース繊維の製造に成功した。
・・・」
「[0018] また、吸水自己伸長セルロース繊維が吸汗し、布帛を構成する編目や織糸が伸びて大きくなり、吸汗部分の密度が下がるように設計すれば、運動などの発汗時に蒸れ感を覚えない衣服製造が可能となる。この蒸れ感を覚えない衣服を製造する場合は、織物よりも編物の方が効果の高い衣服が得られる。例えば、フライス組織で、非吸水伸長繊維とセルロース系の繊維との構成を、1本交互や3本中に1本吸水自己伸長セルロース繊維を配置するなどの設計により製造可能である。・・・」
イ 引用文献5の記載から明らかな事項
[0011]の「吸水時寸法変化率が2%未満の繊維を普通繊維という。」という記載及び[0013]の「本発明の吸水自己伸長セルロース繊維は、吸水伸長率が+2%以上であり、好ましくは+3%以上である。」という記載より、「吸水伸長率が+2%以上」でないものは「吸水自己伸長セルロース繊維」ではなく、「吸水伸長率が+2%以上」でないものは「吸水時寸法変化率が2%未満」と同義である。また、その語義から、「吸水自己伸長繊維」ではないものは「非吸水伸長繊維」であることは明らかであるから、[0018]に記載の「非吸水伸長繊維」は、[0011]に記載の「普通繊維」と同義であることは明らかである。
ウ 引用文献5の記載事項
上記ア及びイより、引用文献5には以下の事項(引5記載事項)が記載されていると認める。
「非吸水伸長繊維としてポリエステル長繊維、セルロース系の繊維としてレーヨンがそれぞれ例示される、非吸水伸長繊維とセルロース系の繊維とを1本交互に配置したフライス組織。」
(6)引用文献6
ア 引用文献6の記載
引用文献6には、以下の記載がある。
「【請求項1】
表糸、第一の裏糸及び第二の裏糸を用いて編成されると共に、対をなす表糸及び裏糸からできたループが横方向に連続してなる横列を複数列備えてなるプレーティング天竺編組織を持った編地であって、
前記表糸が、レーヨン紡績糸であり、
前記第一の裏糸が、レーヨン長繊維フィラメント糸であり、
前記第二の裏糸が、ポリエステル繊維からなる糸であり、
前記表糸と第一の裏糸とによって形成される横列と、前記表糸と第二の裏糸とによって形成される横列とが、縦方向に交互に配置されている、
ことを特徴とするプレーティング天竺編組織の編地。」
「【請求項3】
前記レーヨン紡績糸は、40/1レーヨン紡績糸であり、
前記レーヨン長繊維フィラメント糸は、84dtex/31fレーヨン長繊維フィラメント糸であり、
前記ポリエステル繊維からなる糸は、84dtex/24f異形断面ポリエステル繊維の2ヒータ加工糸である、
請求項1または請求項2に記載のプレーティング天竺編組織の編地。」
イ 引用文献6の記載事項
上記アより、引用文献6には以下の事項(引6記載事項)が記載されていると認める。
「表糸がレーヨン紡績糸であり、第一の裏糸がレーヨン長繊維フィラメント糸であり、第二の裏糸が異形断面ポリエステル繊維フィラメント糸であり、前記表糸と第一の裏糸とによって形成される横列と、前記表糸と第二の裏糸とによって形成される横列とが、縦方向に交互に配置されている、プレーティング天竺編組織の編地。」
2 取消理由1(サポート要件)について
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。以下検討する。
本件発明は、「下記の式(A)で表される非弾性繊維Aと前記弾性繊維Aとの合成カバーファクターを合成CF1として、
下記の式(B)で表される非弾性繊維Bと前記弾性繊維Bとの合成カバーファクターを合成CF2としたとき、
0.9≦合成CF1/合成CF2≦1.10、かつ、L1>L2
であることを特徴とし、
前記非弾性繊維Aがレーヨン糸であって、前記非弾性繊維Bがポリエステルのマルチフィラメント糸である繊維製品」であり、CF1及びCF2については、
「・式(A)
合成CF1=1/L1×SQR[(1/S1)+1/[(5905.4/D1)×Df1]]
L1:非弾性繊維Aのループ長[cm]
S1:非弾性繊維Aの繊度[英国式綿番手]
D1:弾性繊維Aの繊度[dtex]
Df1:ドラフト率=編地編成時の弾性繊維Aの給糸速度/非弾性繊維Aの給糸速度
・式(B)
合成CF2=1/L2×SQR[1/(5905.4/S2)+1/[(5905.4/D2)×Df2]]
L2:非弾性繊維Bのループ長[cm]
S2:非弾性繊維Bの繊度[dtex]
D2:弾性繊維Bの繊度[dtex]
Df2:ドラフト率=編地編成時の弾性繊維Bの給糸速度/非弾性繊維Bの給糸速度」と特定するものであり、本件特許の発明の詳細な説明には、【発明が解決しようとする課題】として、
「【0007】
「本発明は、従来技術の上述の問題点に鑑みて開発されたものであり、その目的とするところは、裁断箇所を処理せずに切りっぱなしで使用される編地を縁部に有する肌着等の繊維製品に関し、特に、着用と洗濯とを繰り返しても縁部(裁断端縁)の解れが発生しにくい繊維製品を提供することである。」と記載されている。そして【0018】には、
「通常のCF(カバーファクター)は、編地において1ループが占める全面積に対して編糸が表面を覆っている面積の比率として定義されるものであって、一般的には、ループ長(cm)をL、恒重式番手(綿番手)をSとすると、1/L×SQR(1/S)によって表されるものである。上述したように、本発明に係る繊維製品においては、非弾性繊維と弾性繊維とが任意のドラフト率Df(ドラフト率Df=弾性繊維の給糸速度/非弾性繊維の給糸速度)でプレーティング編みされて編地が編成されている。より詳しくは、本発明に係る繊維製品においては、非弾性繊維Aと弾性繊維Aとがドラフト率Df1でプレーティング編みされたコースと、このコースに隣接配置され非弾性繊維Bと弾性繊維Bとがドラフト率Df2でプレーティング編みされたコースとを含む編地で編成されている。このため、1/L×SQR(1/S)として表される一般的なカバーファクターではなく、非弾性繊維の(糸の)太さ(ここでは恒重式番手(綿番手)S)に加えて、弾性繊維の(糸の)太さ(ここでは恒長式番手(デシテックス番手[dtex])D)および編地編成時の非弾性繊維の給糸速度に対する弾性繊維の給糸速度の比率(弾性繊維の給糸速度/非弾性繊維の給糸速度)であるドラフト率Dfを考慮した上述した式(A)および式(B)で表される合成カバーファクター(合成CF1および合成CF2)を本願出願人は見い出して、さらに、この合成カバーファクターの比率である合成CF1/合成CF2(合成CF1と合成CF2との比率、合成CF2に対する合成CF1の割合、合成CF2を基準とした合成CF1の相対値等、CF2/CF1でも構わないがしきい値も逆数に不等号も逆になる)がある特定の範囲内(0.9≦合成CF1/合成CF2≦1.10)にある場合に耐洗濯性が特に好ましい(着用と洗濯とを繰り返しても縁部(裁断端縁)の解れが発生しにくい)ことを見い出したのである。」と記載されている。
さらに、【0020】~【0026】及び【図1】には、実施例が示され、本件発明の発明特定事項を有しかつ【発明が解決しようとする課題】を解決するものとして実施例2が示されている。
これらの記載を参照することにより、特許請求の範囲の記載が、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであることを認識することができ、サポート要件に適合するといえる。
なお、取消理由通知では、本件特許の請求項1に該当するものとして、単に一様に編まれた一般的な編地を広く包含することから、「0.9≦合成CF1/合成CF2≦1.10」という条件で、着用と洗濯とを繰り返しても縁部(裁断端縁)の解れが発生しにくい繊維製品を特定することができないことを説示したが、本件訂正により、「L1>L2」であることが特定され、単に一様に編まれた一般的な編地を広く包含するものではなくなった。
3 取消理由2(明確性)について
請求項に係る発明が明確に把握されるためには、請求項に係る発明の範囲が明確であること、すなわち、ある具体的な物や方法が請求項に係る発明の範囲に入るか否かを当業者が理解できるように記載されていることが必要である。
本件発明について、請求項1の記載により、「裁断箇所を処理せずに切りっぱなしで使用される編地を縁部に有する繊維製品」が特定され、これにより、ある具体的な物や方法が請求項に係る発明の範囲に入るか否かを当業者が理解できるものである。そうすると、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
なお、本件訂正により、本件特許の請求項1は、「合成CF2=1/L2×SQR[1/(5905.4/S2)+1/[(5905.4/D2)×Df2]]」と訂正された。また請求項2及び3を含む請求項2~5は削除された。したがって取消理由通知で指摘した、取消理由2(明確性)は、解消した。
4 取消理由3(進歩性)について
(1)引用文献1を主引用例とする進歩性について
ア 対比
本件発明と引用発明1を対比する。
引用発明1の「衣料」は、本件発明の「繊維製品」に相当するから、引用発明1の「裁断したままでヘミング処理が不要な編地を使用しそのまま着用する衣料」は、本件発明の「裁断箇所を処理せずに切りっぱなしで使用される編地を縁部に有する繊維製品」に相当する。
引用発明1の「非弾性糸」、「弾性糸」及び「プレーティング編成」は、それぞれ本件発明の「非弾性繊維A」と「非弾性繊維B」、「弾性繊維A」と「弾性繊維B」及び「プレーティング編み」に相当し、引用発明1において「プレーティング編成」した場合「コース」が形成されることは明らかであるから、引用発明1の「前記編地は、両面の表面に非弾性糸が現れ、編地内側に弾性糸が現れる様にプレーティング編成されてなる編地であ」ることは、本件発明の「前記編地は非弾性繊維Aと弾性繊維Aとがプレーティング編みされたコースと、前記コースに隣接配置され非弾性繊維Bと弾性繊維Bとがプレーティング編みされたコースとを含む編地であ」ることと、「前記編地は非弾性繊維と弾性繊維とがプレーティング編みされたコースを含む編地であ」る限りにおいて一致する。
以上より、本件発明と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点1>
「裁断箇所を処理せずに切りっぱなしで使用される編地を縁部に有する繊維製品であって、
前記編地は非弾性繊維と弾性繊維とがプレーティング編みされたコースを含む編地である繊維製品。」
<相違点1>
「前記編地は非弾性繊維と弾性繊維とがプレーティング編みされたコースを含む編地であ」ることに関し、本件発明では、「前記編地は非弾性繊維Aと弾性繊維Aとがプレーティング編みされたコースと、前記コースに隣接配置され非弾性繊維Bと弾性繊維Bとがプレーティング編みされたコースとを含む編地であ」り、「前記非弾性繊維Aがレーヨン糸であって、前記非弾性繊維Bがポリエステルのマルチフィラメント糸である」のに対して、引用発明1では、「前記編地は、両面の表面に非弾性糸が現れ、編地内側に弾性糸が現れる様にプレーティング編成されてなる編地であ」り、「前記非弾性糸は、ポリエステル、ナイロン、あるいはアクリル、ポリビニルアルコールなどの合成性繊維、レーヨンなどの再生繊維、綿、麻、羊毛、絹などの天然繊維やこれらの複合繊維からなるものである」点。
<相違点2>
本件発明では、「下記の式(A)で表される非弾性繊維Aと前記弾性繊維Aとの合成カバーファクターを合成CF1として、下記の式(B)で表される非弾性繊維Bと前記弾性繊維Bとの合成カバーファクターを合成CF2としたとき、0.9≦合成CF1/合成CF2≦1.10、かつ、L1>L2である
・式(A)
合成CF1=1/L1×SQR[(1/S1)+1/[(5905.4/D1)×Df1]]
L1:非弾性繊維Aのループ長[cm]
S1:非弾性繊維Aの繊度[英国式綿番手]
D1:弾性繊維Aの繊度[dtex]
Df1:ドラフト率=編地編成時の弾性繊維Aの給糸速度/非弾性繊維Aの給糸速度
・式(B)
合成CF2=1/L2×SQR[1/(5905.4/S2)+1/[(5905.4/D2)×Df2]]
L2:非弾性繊維Bのループ長[cm]
S2:非弾性繊維Bの繊度[dtex]
D2:弾性繊維Bの繊度[dtex]
Df2:ドラフト率=編地編成時の弾性繊維Bの給糸速度/非弾性繊維Bの給糸速度」のに対し、引用発明1では、当該本件発明のような特定は有しない点。
イ 判断
事案に鑑み相違点2より検討する。
<相違点2>について
引用発明1において、「編地」を「両面の表面に非弾性糸が現れ、編地内側に弾性糸が現れる様にプレーティング編成」するにあたり、隣接配置されたコースで、糸の太さやループ長、給糸速度等の編み条件を変更することなく、同じ編み方とすることは、普通に考えることであり、これは、隣接配置されたコースが、どのような繊維の「プレーティング編成」によって形成されたかに関わらずいえることである。
そして、隣接配置されたコースにおいて同じ編み方であれば、非弾性繊維Aのループ長[cm]であるL1と、非弾性繊維Bのループ長[cm]であるL2との関係が、L1>L2となることはない。また、引用文献1には、隣接配置されたコースで、糸の太さやループ長、給糸速度等の編み条件を変更するとの記載や示唆はなく、同引用発明1において、L1>L2とすることを容易に想到し得た得たことではない。
また、引用文献2~6の記載を参照しても、非弾性繊維Aのループ長[cm]であるL1と、非弾性繊維Bのループ長[cm]であるL2との関係をL1>L2とすることは、容易に想到し得たことではない。
ウ 小括
以上により、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明は、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)引用文献2を主引用例とする進歩性について
ア 対比
本件発明と引用発明2を対比する。
引用発明2の「ポリウレタン弾性糸混用緯編地」及び「製品」は、本件発明の「編地」及び「繊維製品」に相当するから、引用発明2の「「切りっぱなし」のまま使用可能なポリウレタン弾性糸混用緯編地を用いた製品」は、本件発明の「裁断箇所を処理せずに切りっぱなしで使用される編地を縁部に有する繊維製品」に相当する。
引用発明2の「非弾性糸」、「高融着耐アルカリ性ポリウレタン弾性繊維のベア糸」及び「プレーティング」は、それぞれ本件発明の「非弾性繊維A」と「非弾性繊維B」、「弾性繊維A」と「弾性繊維B」及び「プレーティング編み」に相当し、引用発明2において「プレーティング」した場合「コース」が形成されることは明らかであるから、引用発明2の「前記ポリウレタン弾性繊維混用緯編地は、高融着耐アルカリ性ポリウレタン弾性繊維のベア糸が、少なくとも1種類の非弾性糸からなる1×1ゴム編組織又は中糸入りリバーシブル編組織の緯編地を構成する各ループ目の全てにプレーティングされてな」ることは、本件発明の「前記編地は非弾性繊維Aと弾性繊維Aとがプレーティング編みされたコースと、前記コースに隣接配置され非弾性繊維Bと弾性繊維Bとがプレーティング編みされたコースとを含む編地であ」ることと、「前記編地は非弾性繊維と弾性繊維とがプレーティング編みされたコースを含む編地であ」る限りにおいて一致する。
以上より、本件発明と引用発明2との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点2>
「裁断箇所を処理せずに切りっぱなしで使用される編地を縁部に有する繊維製品であって、
前記編地は非弾性繊維と弾性繊維とがプレーティング編みされたコースを含む編地である繊維製品。」
<相違点3>
「前記編地は非弾性繊維と弾性繊維とがプレーティング編みされたコースを含む編地であ」ることに関し、本件発明では、「前記編地は非弾性繊維Aと弾性繊維Aとがプレーティング編みされたコースと、前記コースに隣接配置され非弾性繊維Bと弾性繊維Bとがプレーティング編みされたコースとを含む編地であ」り、「前記非弾性繊維Aがレーヨン糸であって、前記非弾性繊維Bがポリエステルのマルチフィラメント糸である」のに対して、引用発明2では、「前記ポリウレタン弾性繊維混用緯編地は、高融着耐アルカリ性ポリウレタン弾性繊維のベア糸が、少なくとも1種類の非弾性糸からなる1×1ゴム編組織又は中糸入りリバーシブル編組織の緯編地を構成する各ループ目の全てにプレーティングされてな」り、「前記非弾性糸としては、木綿、麻、羊毛、絹等の天然繊維、レーヨン、キュプラ、ポリノジック等の再生繊維、アセテート等の半再生繊維、ナイロン、ポリエステル、アクリル等の化学合成繊維等のフィラメント糸、ステープル糸、ステープル混紡糸など任意の糸を使用することができる」点。
<相違点4>
本件発明では、「下記の式(A)で表される非弾性繊維Aと前記弾性繊維Aとの合成カバーファクターを合成CF1として、下記の式(B)で表される非弾性繊維Bと前記弾性繊維Bとの合成カバーファクターを合成CF2としたとき、0.9≦合成CF1/合成CF2≦1.10、かつ、L1>L2である
・式(A)
合成CF1=1/L1×SQR[(1/S1)+1/[(5905.4/D1)×Df1]]
L1:非弾性繊維Aのループ長[cm]
S1:非弾性繊維Aの繊度[英国式綿番手]
D1:弾性繊維Aの繊度[dtex]
Df1:ドラフト率=編地編成時の弾性繊維Aの給糸速度/非弾性繊維Aの給糸速度
・式(B)
合成CF2=1/L2×SQR[1/(5905.4/S2)+1/[(5905.4/D2)×Df2]]
L2:非弾性繊維Bのループ長[cm]
S2:非弾性繊維Bの繊度[dtex]
D2:弾性繊維Bの繊度[dtex]
Df2:ドラフト率=編地編成時の弾性繊維Bの給糸速度/非弾性繊維Bの給糸速度」のに対し、引用発明2では、当該本件発明のような特定は有しない点。
イ 判断
事案に鑑み相違点4より検討する。
<相違点4>について
引用発明2において、「ポリウレタン弾性繊維混用緯編地」を「高融着耐アルカリ性ポリウレタン弾性繊維のベア糸が、少なくとも1種類の非弾性糸からなる1×1ゴム編組織又は中糸入りリバーシブル編組織の緯編地を構成する各ループ目の全てにプレーティングされて」形成するにあたり、隣接配置されたコースで、糸の太さやループ長、給糸速度等の編み条件を変更することなく、同じ編み方とすることは、普通に考えることであることり、これは、隣接配置されたコースが、どのような繊維の「プレーティング」によって形成されたかに関わらずいえることである。
そうすると上記(1)イと同様に、引用発明2の製品のループ長について、L1>L2とすることを容易に想到することはない。
また、引用文献1、3~6の記載を参照しても、非弾性繊維Aのループ長[cm]であるL1と、非弾性繊維Bのループ長[cm]であるL2との関係をL1>L2とすることは、容易に想到し得たことではない。
ウ 小括
以上により、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明は、引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)引用文献3を主引用例とする進歩性について
ア 対比
本件発明と引用発明3を対比する。
引用発明3の「衣類」は、本件発明の「繊維製品」に相当するから、引用発明3の「任意のラインで裁断されたままの緯編地を含む切りっぱなし衣類」は、本件発明の「裁断箇所を処理せずに切りっぱなしで使用される編地を縁部に有する繊維製品」に相当する。
引用発明3の「非弾性繊維」、「熱融着ポリウレタン弾性繊維」及び「プレーティング編」は、それぞれ本件発明の「非弾性繊維A」と「非弾性繊維B」、「弾性繊維A」と「弾性繊維B」及び「プレーティング編み」に相当し、引用発明3の「プレーティング編により混用した天竺編地」においては「コース」が形成されることは明らかであるから、引用発明3の「前記緯編地が熱融着ポリウレタン弾性繊維と非弾性繊維をプレーティング編により混用した天竺編地であ」ることは、本件発明の「前記編地は非弾性繊維Aと弾性繊維Aとがプレーティング編みされたコースと、前記コースに隣接配置され非弾性繊維Bと弾性繊維Bとがプレーティング編みされたコースとを含む編地であ」ることと、「前記編地は非弾性繊維と弾性繊維とがプレーティング編みされたコースを含む編地であ」る限りにおいて一致する。
以上より、本件発明と引用発明3との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点3>
「裁断箇所を処理せずに切りっぱなしで使用される編地を縁部に有する繊維製品であって、
前記編地は非弾性繊維と弾性繊維とがプレーティング編みされたコースを含む編地である繊維製品。」
<相違点5>
「前記編地は非弾性繊維と弾性繊維とがプレーティング編みされたコースを含む編地であ」ることに関し、本件発明では、「前記編地は非弾性繊維Aと弾性繊維Aとがプレーティング編みされたコースと、前記コースに隣接配置され非弾性繊維Bと弾性繊維Bとがプレーティング編みされたコースとを含む編地であ」り、「前記非弾性繊維Aがレーヨン糸であって、前記非弾性繊維Bがポリエステルのマルチフィラメント糸である」のに対して、引用発明3では、「前記編地が熱融着ポリウレタン弾性繊維と非弾性繊維をプレーティング編により混用した天竺編地であ」り、「前記非弾性繊維として、木綿、麻、羊毛、絹等の天然繊維、レーヨン、キュプラ、ポリノジック等の再生繊維、アセテート等の半再生繊維、ナイロン、ポリエステル、アクリル等の化学合成繊維等のフィラメント糸、ステープル糸、ステープル混紡糸を使用することができる」点。
<相違点6>
本件発明では、「下記の式(A)で表される非弾性繊維Aと前記弾性繊維Aとの合成カバーファクターを合成CF1として、下記の式(B)で表される非弾性繊維Bと前記弾性繊維Bとの合成カバーファクターを合成CF2としたとき、0.9≦合成CF1/合成CF2≦1.10、かつ、L1>L2である
・式(A)
合成CF1=1/L1×SQR[(1/S1)+1/[(5905.4/D1)×Df1]]
L1:非弾性繊維Aのループ長[cm]
S1:非弾性繊維Aの繊度[英国式綿番手]
D1:弾性繊維Aの繊度[dtex]
Df1:ドラフト率=編地編成時の弾性繊維Aの給糸速度/非弾性繊維Aの給糸速度
・式(B)
合成CF2=1/L2×SQR[1/(5905.4/S2)+1/[(5905.4/D2)×Df2]]
L2:非弾性繊維Bのループ長[cm]
S2:非弾性繊維Bの繊度[dtex]
D2:弾性繊維Bの繊度[dtex]
Df2:ドラフト率=編地編成時の弾性繊維Bの給糸速度/非弾性繊維Bの給糸速度」のに対し、引用発明3では、当該本件発明のような特定は有しない点。
イ 判断
事案に鑑み相違点6より検討する。
<相違点6>について
引用発明3において、「緯編地」を「熱融着ポリウレタン弾性繊維と非弾性繊維をプレーティング編により混用した天竺編地」とするにあたり、隣接配置されたコースで、ループ長や、給糸速度等の編み条件を変更することなく、同じ編み方とすることは、普通に考えることであり、これは、隣接配置されたコースが、どのような繊維の「プレーティング編」によって形成されたかに関わらずいえることである。
そうすると上記(1)イと同様に、引用発明3の衣類のループ長について、L1>L2とすることを容易に想到することはない。
また、引用文献1~2、4~6の記載を参照しても、非弾性繊維Aのループ長[cm]であるL1と、非弾性繊維Bのループ長[cm]であるL2との関係をL1>L2とすることは、容易に想到し得たことではない。
ウ 小括
以上により、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明は、引用発明3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立書に記載の申立理由について
1 取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由の概要について
取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由の概要は次のとおりである。
(1)申立理由1(新規性)
本件の請求項1~5に係る発明は引用文献1又は2に記載の発明であって、また、本件の請求項3に係る発明は引用文献3に記載の発明であって、いずれも特許法第29条第1項第3号に該当するから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2)申立理由3(実施可能要件)
本件特許は、明細書の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
「0.9≦合成CF1/合成CF2≦1.10」という要件の範囲外となる比較例が示されておらず、当該要件の技術的意義が理解できず、当業者が請求項に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。
(3)申立理由4(サポート要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
「0.9≦合成CF1/合成CF2≦1.10」という要件の技術的意義が理解できず、本件特許の請求項1に係る発明が解決しようとする課題を解決することができるような記載となっていない。
(4)申立理由5(明確性)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
ア 「0.9≦合成CF1/合成CF2≦1.10」という要件の技術的意義が理解できず、明確でない。
イ 本件特許の請求項1に係る発明は、繊維製品という物の発明でありながら、「DF1:ドラフト率=編地編成時の弾性繊維Aの給糸速度/非弾性繊維Aの給糸速度」、及び「DF2:ドラフト率=編地編成時の弾性繊維Bの給糸速度/非弾性繊維Bの給糸速度」という製造方法を発明特定事項として規定しており、明確でない。
2 当審の判断
(1)申立理由1(新規性)
上記第5の4(1)ア及びイに示したとおり、本件発明と引用発明1とを対比したとき実質的な相違点を有するものである。よって、本件の請求項1に係る発明は引用文献1に記載の発明ではない。
また、上記第5の4(2)ア及びイに示したとおり、本件発明と引用発明2とを対比したとき実質的な相違点を有するものである。よって、本件の請求項1に係る発明は引用文献2に記載の発明ではない。
なお、請求項3は本件訂正により削除されたため、請求項3に係る特許についての申立ては、申立ての対象が存在しないものとなった。
(2)申立理由3(実施可能要件)
物の発明について実施可能要件を満たすためには、明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が、その記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、当該発明に係る物を作り、使用をすることができる程度のものでなければならない。以下検討する。
本件発明が、本件特許の請求項1に記載のとおりのものであるところ、本件特許の発明の詳細な説明の【0018】には、合成CF1/合成CF2についての記載がなされ、【0020】~【0026】及び【図1】には、実施例が示され、本件発明の発明特定事項を有しかつ【発明が解決しようとする課題】を解決するものとして実施例2が示されているものである。
これらの記載を参照することにより、当業者が、その記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明を実施できるものである。
また、申立人は、「0.9≦合成CF1/合成CF2≦1.10」という要件の範囲外となる比較例が示されておらず、当該要件の技術的意義が理解できないと主張するが、「0.9≦合成CF1/合成CF2≦1.10」という要件の範囲外となる比較例が示されていないとしても、上記のように発明の詳細な説明の記載から当業者が発明を実施できることは明らかであり、当該申立人の主張は採用することはできない。なお、「0.9≦合成CF1/合成CF2≦1.10」という要件の技術的意義は、非弾性繊維Aのループ長[cm]であるL1と、非弾性繊維Bのループ長[cm]であるL2との関係をL1>L2とする要件と合わせて検討すると、【0018】の説明により当業者であれば理解できるものである。
(3)申立理由4(サポート要件)
上記第5の2に示したとおり、本件発明の特許請求の範囲の記載が、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであることを認識することができ、サポート要件に適合するといえる。
また、申立人は、「0.9≦合成CF1/合成CF2≦1.10」という要件の技術的意義が理解できず、本件特許の請求項1に係る発明が解決しようとする課題を解決することができるような記載となっていないと主張するが、上記(2)でも示したとおり、「0.9≦合成CF1/合成CF2≦1.10」という要件の技術的意義については当業者であれば理解できるものである。
(4)申立理由5(明確性)
上記第5の3に示したとおり、本件発明の特許請求の範囲の記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえず、明確性要件に適合するといえる。
また、申立人は、「0.9≦合成CF1/合成CF2≦1.10」という要件の技術的意義が理解できず、明確でないと主張するが、上記(2)でも示したとおり、「0.9≦合成CF1/合成CF2≦1.10」という要件の技術的意義については当業者であれば理解できるものである。
一方で、申立人は、「DF1:ドラフト率=編地編成時の弾性繊維Aの給糸速度/非弾性繊維Aの給糸速度」、及び「DF2:ドラフト率=編地編成時の弾性繊維Bの給糸速度/非弾性繊維Bの給糸速度」という製造方法を発明特定事項として規定しており、明確でないとも主張する。ここで、DF1及びDF2は製造方法により特定されるパラメータではあるが、並行している弾性繊維と非弾性繊維とをプレーティング編みするための条件であり、これにより並行している弾性繊維と非弾性繊維それぞれの伸縮の程度などの性状を示すものといえる。しかしながら、編み物の各目における各繊維の伸縮の程度などの性状を個別に把握し、物の構造又は特性として直接的に特定する方法が知られているわけではない。すなわち、並行している弾性繊維と非弾性繊維それぞれの伸縮の程度などの性状を、物の構造又は特性により直接特定することは不可能又は非実際的であるとすべきものである。よって、製造方法を発明特定事項として規定しており明確でないという申立人の上記主張は採用することはできない。
第7 むすび
以上のとおり、請求項1に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。さらに、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件特許の請求項2~5は、本件訂正により削除されたため、請求項2~5に係る特許についての本件特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700317