特許異議申立
2025-700661
ポリプロピレンコーティング組成物
- 審判番号
- 2025-700661
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-572485
- 登録番号
- 7605863
- 請求日
- 2025年06月23日
- 審決日
- 2026年04月30日
- 公報発行日
- 2026年08月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ボレアリス・アクチェンゲゼルシャフト
- 【権利者代理人】曾我 道治
- 【権利者代理人】佐藤 さおり
- 【異議申立人】村川 明美
- 審判長/審判官
- 審判長 辰己 雅夫
- 審判官 ▲吉▼澤 英一
- 審判官 岩田 行剛
- 分類
- P1651.113-YAA(C08L) / P1651.121-YAA(C08L) / P1651.537-YAA(C08L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7605863号発明「ポリプロピレンコーティング組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7605863号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-14〕について訂正することを認める。
特許第7605863号の請求項1ないし14に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7605863号(以下「本件特許」という。)の請求項1~14に係る特許についての出願は、令和3年5月26日を国際出願日(パリ条約による優先権主張 令和2年5月27日 (EP)欧州特許庁)とする特願2022-572485号であって、令和6年12月16日にその特許権の設定登録(請求項の数14)がされ、同年同月24日に特許掲載公報が発行され、その後、本件特許に対し、令和7年6月23日に特許異議申立人 村川 明美(以下「申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1~14)がされたものである。
特許異議の申立てにおける手続の経緯は、次のとおりである。
令和7年9月25日付け:取消理由通知書
令和8年1月 5日 :訂正請求書及び意見書(特許権者)
同年2月 3日付け:通知書(申立人宛て)
同年3月 6日 :意見書(申立人)
第2 訂正の適否について
1 訂正の内容
令和8年1月5日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「・ISO 1133に従って測定される15~40g/10分のメルトフローレートMFR2(230℃/2.16kg)、
・ISO 11357に従ってDSCによって測定される115~145℃の溶融温度Tm、
・13C NMRによって測定される0.01~1.2モル%の、2,1部位欠陥及び3,1部位欠陥の数、並びに
・ISO 178に従って射出成形試験片に対して決定される500~950MPaの曲げ弾性率
を有するプロピレンランダムコポリマーを含むポリプロピレン組成物。」と記載されているのを、
「・ISO 1133に従って測定される15~40g/10分のメルトフローレートMFR2(230℃/2.16kg)、
・ISO 11357に従ってDSCによって測定される115~145℃の溶融温度Tm、
・13C NMRによって測定される0.01~1.2モル%の、2,1部位欠陥及び3,1部位欠陥の数、
・ISO 178に従って射出成形試験片に対して決定される500~950MPaの曲げ弾性率、並びに
・GPCによって決定される2.4~5.5の分子量分布MWD
を有するプロピレンランダムコポリマーを含むポリプロピレン組成物。」に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記プロピレンランダムコポリマーが、GPCによって決定される2.4~5.5の分子量分布MWD及び/又はFDA法(federal registration、タイトル21、チャプター1、パート177、セクション1520、付属書B)に従い、溶融温度220℃及びチルロール温度20℃の単層キャストフィルムラインで製造した厚さ100μmのキャストフィルムに対して測定される2.0重量%未満のヘキサン抽出物含有量を有する、請求項1に記載のポリプロピレン組成物。」と記載されているのを、
「前記プロピレンランダムコポリマーが、FDA法(federal registration、タイトル21、チャプター1、パート177、セクション1520、付属書B)に従い、溶融温度220℃及びチルロール温度20℃の単層キャストフィルムラインで製造した厚さ100μmのキャストフィルムに対して測定される2.0重量%未満のヘキサン抽出物含有量を有する、請求項1に記載のポリプロピレン組成物。」に訂正する。
(3)一群の請求項についての説明
訂正前の請求項1~14について、請求項2~14は、請求項1を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~14に対応する訂正後の請求項1~14は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
2 判断
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載の「プロピレンランダムコポリマー」について、さらに「GPCによって決定される2.4~5.5の分子量分布MWD」を有するものに限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1は、訂正前の請求項2及び本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の【0021】の記載に基づくものであるから、新規事項の追加に該当せず、また、特許請求の範囲が減縮されているから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正後の請求項2が請求項1を引用するものであるところ、訂正後の請求項1では「GPCによって決定される2.4~5.5の分子量分布MWDを有する」ことが特定され、訂正後の請求項2では「GPCによって決定される2.4~5.5の分子量分布MWD及び/又は」との記載が削除されたことにより、訂正前の請求項2に記載の「プロピレンランダムコポリマー」について、「GPCによって決定される2.4~5.5の分子量分布MWD」及び「FDA法(federal registration、タイトル21、チャプター1、パート177、セクション1520、付属書B)に従い、溶融温度220℃及びチルロール温度20℃の単層キャストフィルムラインで製造した厚さ100μmのキャストフィルムに対して測定される2.0重量%未満のヘキサン抽出物含有量」の両方を満たすものに限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項2は、訂正前の請求項2の記載に基づくものであるから、新規事項の追加に該当せず、また、特許請求の範囲が減縮されているから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
3 訂正の適否についてのまとめ
以上のとおりであるから、訂正事項1及び2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。
よって、本件訂正を認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~14に係る発明(以下、「本件発明1」、「本件発明2」のようにいい、まとめて「本件発明」ということもある。)は、令和8年1月5日提出の訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1~14に記載された次の事項のとおりのものである。
「【請求項1】
・ISO 1133に従って測定される15~40g/10分のメルトフローレートMFR2(230℃/2.16kg)、
・ISO 11357に従ってDSCによって測定される115~145℃の溶融温度Tm、
・13C NMRによって測定される0.01~1.2モル%の、2,1部位欠陥及び3,1部位欠陥の数、
・ISO 178に従って射出成形試験片に対して決定される500~950MPaの曲げ弾性率、並びに
・GPCによって決定される2.4~5.5の分子量分布MWD
を有するプロピレンランダムコポリマーを含むポリプロピレン組成物。
【請求項2】
前記プロピレンランダムコポリマーが、FDA法(federal registration、タイトル21、チャプター1、パート177、セクション1520、付属書B)に従い、溶融温度220℃及びチルロール温度20℃の単層キャストフィルムラインで製造した厚さ100μmのキャストフィルムに対して測定される2.0重量%未満のヘキサン抽出物含有量を有する、請求項1に記載のポリプロピレン組成物。
【請求項3】
前記プロピレンランダムコポリマーが、GPCによって決定される2.5~4.5の分子量分布MWD及び/又はFDA法(federal registration、タイトル21、チャプター1、パート177、セクション1520、付属書B)に従い、溶融温度220℃及びチルロール温度20℃の単層キャストフィルムラインで製造した厚さ100μmのキャストフィルムに対して測定される1.5重量%未満のヘキサン抽出物含有量を有する、請求項1又は2に記載のポリプロピレン組成物。
【請求項4】
前記プロピレンランダムコポリマーが、ISO 1133に従って測定される17~35g/10分のメルトフローレートMFR2(230℃/2.16kg)、及び/又はISO 11357に従ってDSCによって決定される120~140℃の溶融温度Tm、及び/又は13C NMRによって測定される0.1~1.0モル%の、2,1部位欠陥及び3,1部位欠陥の数を有している、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリプロピレン組成物。
【請求項5】
前記プロピレンランダムコポリマーが、エチレンプロピレンランダムコポリマーである、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリプロピレン組成物。
【請求項6】
前記プロピレンランダムコポリマーが、2.0~5.5重量%の範囲又は2.2~4.5重量%の範囲のエチレン含有量を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリプロピレン組成物。
【請求項7】
前記プロピレンランダムコポリマーが、ISO 11357に従ってDSCによって決定される75~110℃の範囲の結晶化温度Tc及び/又はISO 16152に従って決定される0.1~15重量%未満の冷キシレン可溶(XCS)画分を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリプロピレン組成物。
【請求項8】
前記プロピレンランダムコポリマーが、ISO 11357に従ってDSCによって決定される80~105℃の範囲の結晶化温度Tc及び/又はISO 16152に従って決定される0.1~7.5重量%未満の冷キシレン可溶(XCS)画分を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリプロピレン組成物。
【請求項9】
前記プロピレンランダムコポリマーが、ISO 178に従って射出成形試験片に対して決定される600~900MPaの曲げ弾性率を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリプロピレン組成物。
【請求項10】
前記ランダムプロピレンコポリマーが、2つのポリマー画分(RACO-1)及び(RACO-2)を含むか又はこれらからなり、画分(RACO-1)と画分(RACO-2)との間の分割が30:70~70:30である、請求項1~9のいずれか一項に記載のポリプロピレン組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のポリプロピレン組成物を含むコーティング層を有する、コーティングされた物品。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載のポリプロピレン組成物を、押出により物品上にコーティングする、物品のコーティング方法。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか一項に記載のポリプロピレン組成物の、物品の押出コーティングのための使用。
【請求項14】
前記物品が、紙、板紙、繊維基材、及び/又は金属箔である、請求項12又は13に記載の方法又は使用。」
第4 証拠方法、特許異議申立書(以下「申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要及び取消理由の概要
1 証拠方法
(1)申立書に添付した証拠方法
・甲第1号証:国際公開第99/09079号
・甲第2号証:特開2010-106172号公報
・甲第3号証:特表2009-542872号公報
・甲第4号証:特表2008-540815号公報
・甲第5号証:特開2000-63419号公報
・甲第6号証:特開2000-351879号公報
・甲第7号証:特表2016-525597号公報
・甲第8号証:特表2019-536856号公報
・甲第9号証:特開2012-233195号公報
・甲第10号証:特表2009-512750号公報
・甲第11号証:特開2008-144086号公報
・甲第12号証:金井玄、「メタロセン触媒を用いたプロピレンランダム共重合体の開発」、高分子、2004年、第53巻、10月号、796~798頁
以下、「甲第1号証」~「甲第12号証」を「甲1」~「甲12」という。
(2)申立人が令和8年3月6日に提出した意見書に添付した証拠方法
・参考資料1:Carlos R. Wolf and Emir Grave, “A STUDY OF PARAMETERS RELATED TO ANALYSIS OF TRANSITION TEMPERATURES AND ENTHALPIES OF POLYPROPYLENE BY DIFFERENTIAL SCANNING CALORIMETRY(DSC)”,SOUTHERN BRAZILIAN JOURNAL OF CHEMISTRY, 2002, Vol.10, No.11, p.73-78及びその翻訳文
・参考資料2:上出健二、真田昌彦、「イソタクチックポリプロピレン無配向フィルムの熱処理物の熱解析」、高分子化学、1967年、第24巻、第270号、662~676頁
2 申立書に記載した申立ての理由の概要
申立書に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
(1)申立理由1(甲1を主引例とする新規性・進歩性)
本件特許の請求項1~14に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲1に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~14に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)申立理由2(甲2を主引例とする新規性・進歩性)
本件特許の請求項1~10に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲2に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~10に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(3)申立理由3(サポート要件)
本件特許の請求項1~14に係る特許は、以下の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
ア 本件特許の発明の課題のうち、ゲル含有量を低くすること及び高温に耐えることに関しては、実施例及び比較例において確認されておらず、この課題が解決できることが本件特許の明細書で具体的に示されているとはいえいない。そして、本件特許の請求項1に規定された4つの数値範囲を満たすプロピレンランダムコポリマーを含むポリプロピレン組成物を用いさえすれば、改善されたシーリング特性及びホットタック特性を有し、ゲル含有量が低く、高温に耐えることができることが出願時の技術常識から当業者が認識できるとする根拠も見当たらない。
イ 本件特許の実施例として、メタロセン触媒を用いて重合されたIE1(プロピレンランダムコポリマーであり、MFRが25g/10分、溶融温度Tmが128 ℃、2,1部位欠陥及び3,1部位欠陥の数(2,1e)が0.4mol%、曲げ弾性率FMが778MPa)が記載されているのみであり、この記載から触媒の種類を特定せずに、MFRが15~40g/10分、溶融温度Tmが115~145℃、2,1部位欠陥及び3,1部位欠陥の数が0.01~1.2モル%、曲げ弾性率FMが500~950MPaという広い範囲にまで、拡張・一般化できるものとは認められない。本件発明4および9についても同様である。
また、同じことが本件発明2,3の分子量分布MWDおよびヘキサン抽出物含有量、本件発明6のエチレン含有量、並びに本件発明7,8の結晶化温度Tcおよび冷キシレン可溶(XCS)画分についても言える。
さらに、本件発明10の画分(RACO-1)と画分(RACO-2)の有無、およびこれらの間の分割に関しては、実施例に全く記載されていない。
ウ 本件発明5は、「エチレンプロピレンランダムコポリマー」を規定する。そうすると、本件発明1は、「エチレンプロピレンランダムコポリマー」以外のプロピレンランダムコポリマーを包含するものと理解される。しかしながら、本件特許の実施例には、エチレンプロピレンランダムコポリマーであるIE1が記載されているのみである。
「エチレンプロピレンランダムコポリマー」と、例えばプロピレンブテンランダムコポリマーやエチレンプロピレンブテンランダムコポリマーとは、互いに特性の相違が大きく、エチレンプロピレンランダムコポリマーIE1の結果をそれ以外のプロピレンランダムコポリマーにまで拡張・一般化することはできない。
(4)申立理由4(明確性要件)
本件特許の請求項2~14に係る特許は、以下の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
ア 本件特許の請求項2,3に係る発明は、「GPCによって決定される分子量分布MWD」を規定するが、一般にGPC分子量分布にはMw/Mn、Mz/Mw、Mz/Mnなど複数の基準があり、MWDがどの基準を指すのかが判然としない。
本件特許の明細書には段落0021にMWDが記載され、これとは別に段落0093,0094にはMw/Mnの文言があり、Mw/Mnには多分散度、多分散性なる語が当てられていることからして、分子量分布MWDは、Mw/Mn以外の基準を指すものと解されるが、依然としてMWDがどの基準を指すのかが判然としない。
イ 本件特許の請求項10に係る発明は、「2つのポリマー画分(RACO-1)及び画分(RACO-2)」を規定するが、それぞれの定義が不明確であり、その定量方法および単位についても全く記載されていない。
例えば、本件特許の実施例に記載されたIE1[段落0104[表2]表1:重合データ(IE1)]は、画分(RACO-1)と画分(RACO-2)とを含むのか否か、さらに含むとして画分(RACO-1)と画分(RACO-2)の間の分割について、全く記載しない。
3 取消理由の概要
当審において令和7年9月25日付けで通知した取消理由の概要は次のとおりである。
(1)取消理由1(甲1を主引例とする新規性・進歩性)
本件特許の請求項1~8及び10に係る発明は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の請求項1~14に係る発明は、甲1に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~14に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)取消理由2(サポート要件)
本件特許の請求項1~14に係る特許は、以下の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
実施例である1E1のプロピレンランダムコポリマーは、メルトフローレート、溶融温度、2,1部位欠陥及び3,1部位欠陥の数並びに曲げ弾性率以外の物性値も記載されているから、1E1のプロピレンランダムコポリマーが発明の課題を解決したという結果が、本件発明1のメルトフローレート、溶融温度、2,1部位欠陥及び3,1部位欠陥の数並びに曲げ弾性率の特定事項を満たすことのみに起因するとは、当業者は直ちに認識することはできない。
そして、プロピレンランダムコポリマーのメルトフローレート、溶融温度、2,1部位欠陥及び3,1部位欠陥の数並びに曲げ弾性率が、発明の課題を解決する要因であることが本件出願日時点における技術常識であるとはいえないから、本件明細書には、特定のメルトフローレート、溶融温度、2,1部位欠陥及び3,1部位欠陥の数並びに曲げ弾性率を有する本件発明1について、本件発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載されているとはいえない。
(3)取消理由3(明確性要件)
本件特許の請求項10~14に係る特許は、以下の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
本件発明10は、「前記ランダムプロピレンコポリマーが、2つのポリマー画分(RACO-1)及び(RACO-2)を含むか又はこれらからなり」と特定するものである。
しかし、本件明細書には、「2つのポリマー画分(RACO-1)及び(RACO-2)」が何であるのか、その定義については何ら記載されておらず、2つのポリマー画分の定量方法及び単位についても記載がない。
そうすると、「2つのポリマー画分(RACO-1)及び(RACO-2)」がどのような成分を含むのかが、本件明細書からは当業者といえども把握できないから、「2つのポリマー画分(RACO-1)及び(RACO-2)」の特定事項を含む本件発明10の範囲が著しく不明確であるといえる。
第5 当審の判断
以下に述べるように、取消理由通知の取消理由及び申立書に記載した申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~14に係る特許を取り消すことはできない。
1 取消理由1及び申立理由1(甲1を主引例とする新規性・進歩性)について
上記第4の3(1)の取消理由1及び上記第4の2(1)の申立理由1は、いずれも甲1を主引例とする新規性及び進歩性についてのものであるので、まとめて検討する。
(1)甲1に記載された発明
甲1には、以下の記載がある。
「(A)プロピレン/エチレン・ランダム共重合体
実施例1
メタロセン担持型触媒の調製
十分に乾燥された500mlのフラスコをΝ2置換した後、ジメチルシリレン(2,3,5-トリメチルシクロペンタジエニル)(2’,4’,5’-トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド0.39g(0.889mmol)およびAl原子換算で267mmolのメチルアルミノキサンのトルエン溶液を仕込み10分間反応させた。次いで、この反応系に800℃で8時間焼成したシリカ(グレース・デビソン)10gを添加し、10分間攪拌した。引き続いて、フラスコの底部から微量のΝ2を供給しながら混合物を減圧下に排気しながら、70℃に9時間加熱攪拌し、溶媒を蒸発させた。得られた乾燥固体を、室温下に一晩放置して冷却しメタロセン担持型触媒を得た。
メタロセン担持型触媒の予備活性化
十分に乾燥された500mlのフラスコをΝ2置換した後、上記で得られたメタロセン担持型触媒の全量および250mlのイソペンタンを仕込み0℃に冷却した。次いで、エチレンを80ml/分の供給速度で4時間連続供給して予備重合させ、メタロセン担持型触媒を予備活性化した。メタロセン担持型触媒の予備活性化終了後、デカンテーションにより上澄み液を分離した。さらに100mlのイソペンタンを用いて洗浄し、デカンテーションにより上澄み液を分離する操作を4回繰り返した。さらに室温で2時間乾燥して予備活性化されたメタロセン担持型触媒35gを得た。
プロピレン/エチレン・ランダム共重合体の製造
Ν2で十分に置換された内容積630Lのオートクレーブに、n-へキサン120Lおよびトリエチルアルミニウム250mmolを仕込み、5分間攪拌した。次いで、この中に上記調製された予備活性化されたメタロセン担持型触媒25gを添加して50℃に昇温した。引き続いて、エチレンモノマーを195NL/時の一定速度で供給しながら、50℃で1.32MPaの一定圧力を維持するようにプロピレンモノマーを連続供給し、プロピレンとエチレンとの共重合反応を10時間継続した。重合時間経過後、遠心分離機を用いて得られたスラリーをパウダーと溶媒とに分離し、パウダーを乾燥してプロピレン/エチレン・ランダム共重合体40kgを得た。
プロピレン/エチレン・ランダム共重合体の特性評価
上記で得られたプロピレン/エチレン・ランダム共重合体の前記定義した各特性を、定義した方法により分析または測定した。
13C-NMR分光法による解析結果は、エチレン含有量(Ew)が2.0wt%、孤立エチレン含有率(E1)が0.882(>0.83)、ならびにポリマー鎖中に存在する2,1-および1,3-プロピレン単位が0.29mol%であった。
上記で得られたプロピレン/エチレン・ランダム共重合体の13C-NMRスペクトルを図1に示す。
GPCにより測定した重量平均分子量(Mw)は、1.37×105g/molであり、Mw/Mnは1.7であった。また、メルトフローレート(MFR)は34g/10minおよび融点(Tm)は 143.8℃であった。」(31頁19行~33頁6行)
「(B)成形材料
実施例4 プロピレン系組成物(第一成形材料)
前記実施例1~3および比較例1~3で製造したプロピレン/エチレン・ランダム共重合体のそれぞれをベース樹脂PE1、PE2、PE3、CPE1、CPE2およびCPE3とし、それぞれのベース樹脂100重量部当たり、酸化防止剤のテトラキス[メチレン(3,5-ジーt-ブチル-4-ヒドロキシル・ハイドロシンナメート)]メタン0.05重量部、酸化防止剤のトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト0.1重量部および中和剤のステアリン酸カルシウム0.1重量部を配合し、CPE3にはさらにラジカル発生剤の1,3-ビス(t-ブチル-パーオキシイソプロピル)ベンゼン0.05重量部を添加し、それらを混合して押出温度を190℃に設定したスクリュー径40mmの単軸押出造粒機を使用して混合物をペレット化し、プロピレン/エチレン・ランダム共重合体および所望の添加成分とを含有するプロピレン系組成物(第一成形材料)1M1~1M3および比較用成形材料1CM1~1CM3を調製した。比較用成形材料1CM3のMFRは43g/10minであった。
調製した各第一成形材料を後述する成形品の製造に供した。」(38頁14行~39頁3行)
「(C)成形品
実施例7 第一成形材料から成形したフィルム
フィルムの調製
前記実施例4で調製した各ペレットを、Tダイ法により溶融押出温度190℃、冷却ロール温度30℃およびライン速度(引取速度)20m/minの条件で製膜し、厚さ20μmおよび50μm、幅300mmのフィルムを得た。
フィルムの評価
得られた各フィルムについて、下記物性を測定した。
ヤング率(YM):20μm厚さのフィルムについて、ASTM D882に準拠して測定したMD(縦方向) とTD(横方向)の引張強度(単位MPa)のいずれか低い方の値。
ヘイズ:50μm厚さのフィルムについて、ASTM D1003に準拠して測定した内部ヘイズ値(単位%)。
成形材料組成および物性測定結果を表3に示す。
[図:0001438284000001.jpg]
」(41頁8行~42頁30行)
「実施例9 第一成形材料から成形した射出成形品
前記実施例4で調製したペレット1M1、1M2および1CM3のそれぞれを、スクリュー径40mmの射出成形機を使用し、樹脂温度200℃および金型温度50℃の条件で射出成形し、JIS型の試験片を製造した。
射出成形品の評価
得られた各射出成形品について、下記物性を測定し、結果を表3に示した。
曲げ弾性率:JIS K7203に準拠して測定した値(単位MPa)。
熱変形温度:JIS K7207に準拠し、加重0.451MPで測定した値(単位℃)。
ヘイズ:厚さ1mmの試験片について、JIS K7105に準拠して測定した内部ヘイズ値(単位%)。
前記表3に示したように、フィルムと同様に機械的特性を単純に比較することはできないが、第一成形材料から成形された射出成形品は、従来のチーグラー・ナッタ触媒系から得られた共重合体をベースとする比較用材料1CM3から成形された射出成形品に比較して透明性が優れている。」(45頁5~19行)
上記記載を基に、実施例1のプロピレン/エチレン・ランダム共重合体に着目すると、以下の発明が記載されている。
「Ν2で十分に置換された内容積630Lのオートクレーブに、n-へキサン120L及びトリエチルアルミニウム250mmolを仕込み、5分間攪拌し、次いで、この中に以下の方法で調製された予備活性化されたメタロセン担持型触媒25gを添加して50℃に昇温し、引き続いて、エチレンモノマーを195NL/時の一定速度で供給しながら、50℃で1.32MPaの一定圧力を維持するようにプロピレンモノマーを連続供給し、プロピレンとエチレンとの共重合反応を10時間継続し、重合時間経過後、遠心分離機を用いて得られたスラリーをパウダーと溶媒とに分離し、パウダーを乾燥して得られ、13C-NMR分光法による解析結果が、エチレン含有量(Ew)が2.0wt%、孤立エチレン含有率(E1)が0.882(>0.83)、ポリマー鎖中に存在する2,1-および1,3-プロピレン単位が0.29mol%であり、GPCにより測定した重量平均分子量(Mw)は1.37×105g/mol及びMw/Mnは1.7であり、メルトフローレート(MFR)は34g/10min及び融点(Tm)は 143.8℃であり、以下の方法で成形したJIS型の試験片についてJIS K7203に準拠して測定した曲げ弾性率が930MPaである、プロピレン/エチレン・ランダム共重合体PE1。
・予備活性化されたメタロセン担持型触媒の調製方法
十分に乾燥された500mlのフラスコをΝ2置換した後、ジメチルシリレン(2,3,5-トリメチルシクロペンタジエニル)(2’,4’,5’-トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド0.39g(0.889mmol)及びAl原子換算で267mmolのメチルアルミノキサンのトルエン溶液を仕込み10分間反応させた。次いで、この反応系に800℃で8時間焼成したシリカ(グレース・デビソン)10gを添加し、10分間攪拌した。引き続いて、フラスコの底部から微量のΝ2を供給しながら混合物を減圧下に排気しながら、70℃に9時間加熱攪拌し、溶媒を蒸発させた。得られた乾燥固体を、室温下に一晩放置して冷却しメタロセン担持型触媒を得た。
十分に乾燥された500mlのフラスコをΝ2置換した後、上記で得られたメタロセン担持型触媒の全量及び250mlのイソペンタンを仕込み0℃に冷却した。次いで、エチレンを80ml/分の供給速度で4時間連続供給して予備重合させ、メタロセン担持型触媒を予備活性化した。メタロセン担持型触媒の予備活性化終了後、デカンテーションにより上澄み液を分離した。さらに100mlのイソペンタンを用いて洗浄し、デカンテーションにより上澄み液を分離する操作を4回繰り返した。さらに室温で2時間乾燥して予備活性化されたメタロセン担持型触媒35gを得た。
・JIS型の試験片の成形方法
ベース樹脂PE1の100重量部当たり、酸化防止剤のテトラキス[メチレン(3,5-ジーt-ブチル-4-ヒドロキシル・ハイドロシンナメート)]メタン0.05重量部、酸化防止剤のトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト0.1重量部及び中和剤のステアリン酸カルシウム0.1重量部を配合し、それらを混合して押出温度を190℃に設定したスクリュー径40mmの単軸押出造粒機を使用して混合物をペレット化し、プロピレン/エチレン・ランダム共重合体及び所望の添加成分とを含有するプロピレン系組成物(第一成形材料)1M1を調製した。ペレット1M1を、スクリュー径40mmの射出成形機を使用し、樹脂温度200℃及び金型温度50℃の条件で射出成形し、JIS型の試験片を製造した。」(以下「甲1発明」という。)
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「プロピレン/エチレン・ランダム共重合体PE1」は、本件明細書の【0018】には「本発明の組成物は、少なくとも80重量%のプロピレンランダムコポリマー、より好ましくは少なくとも90重量%のプロピレンランダムコポリマー、最も好ましくはプロピレンランダムコポリマーが組成物に存在する唯一のポリマー成分であること、すなわちポリプロピレン組成物がプロピレンランダムコポリマーからなり」と記載されており、本件発明1のポリプロピレン組成物が「プロピレンランダムコポリマーからなるもの」も含まれることから、甲1発明の「プロピレン/エチレン・ランダム共重合体PE1」は、本件発明1の「プロピレンランダムコポリマーを含むポリプロピレン組成物」に相当する。
(イ)甲1発明の「ポリマー鎖中に存在する2,1-および1,3-プロピレン単位」は、甲1には、「チーグラー・ナッタ系触媒を使用してプロピレンとエチレンとを共重合した場合、ポリマー鎖中のプロピレン単位はそのほとんどが1,2-挿入の形で重合反応が進行するが、メタロセン系触媒を使用してプロピレンとエチレンとを共重合した場合には、プロピレン単位は1,2-挿入反応が支配的ではあるものの、同時に2,1-および1,3-挿入反応も起こり得ること、およびその結果としてポリマー鎖中に存在する不規則な2,1-および1,3-プロピレン単位がプロピレン/エチレン・ランダム共重合体の融点を低下させていることが、上記Polymer, 30, 1350 (1989)により知られている。」(9頁15~22行)と記載されているところ、本件明細書には、「プロピレンポリマーの部位欠陥には、2,1-エリトロ欠陥(2,le)、2,1-トレオ欠陥(2,It)及び3,1欠陥という3つの異なる種類があり得る。」(【0013】)、「メタロセン触媒を使用して調製されたポリプロピレンは、チーグラー・ナッタ(ZN)触媒を使用して調製されたポリプロピレンと比較して、異なる微細構造を提供する。最も大きな違いは、メタロセンで製造されたポリプロピレンには部位欠陥が存在することであり、これはチーグラー・ナッタ(ZN)触媒によって製造したポリプロピレンには当てはまらない。」(【0016】)と記載されており、本件発明1の「2,1部位欠陥及び3,1部位欠陥」とはメタロセン触媒を使用することによって生じる異なる微細構造である点で同じであるから、甲1発明の「ポリマー鎖中に存在する2,1-および1,3-プロピレン単位」は、本件発明1の「2,1部位欠陥及び3,1部位欠陥」に相当するといえる。
(ウ)上記(イ)のとおりであるから、甲1発明の「13C-NMR分光法による解析結果が、・・・ポリマー鎖中に存在する2,1-および1,3-プロピレン単位が0.29mol%」は、本件発明1の「13C NMRによって測定される0.01~1.2モル%の、2,1部位欠陥及び3,1部位欠陥の数」の特定事項を満たす。
そうすると、両者は次の点で一致する。
「・13C NMRによって測定される0.01~1.2モル%の、2,1部位欠陥及び3,1部位欠陥の数、
を有するプロピレンランダムコポリマーを含むポリプロピレン組成物。」
そして、両者は次の点で相違する。
・相違点1-1
メルトフローレートに関して、本件発明1は「ISO 1133に従って測定される15~40g/10分のメルトフローレートMFR2(230℃/2.16kg)」であるのに対し、甲1発明は「メルトフローレート(MFR)は34g/10min」である点
・相違点1-2
溶融温度に関して、本件発明1は「ISO 11357に従ってDSCによって測定される115~145℃の溶融温度Tm」であるのに対し、甲1発明は「融点(Tm)は 143.8℃」である点
・相違点1-3
曲げ弾性率に関して、本件発明1は「ISO 178に従って射出成形試験片に対して決定される500~950MPaの曲げ弾性率」であるのに対し、甲1発明は「JIS型の試験片についてJIS K7203に準拠して測定した曲げ弾性率が930MPa」である点
・相違点1-4
分子量分布に関して、本件発明1は「GPCによって決定される2.4~5.5の分子量分布MWD」であるのに対し、甲1発明は「Mw/Mnは1.7」である点
イ 判断
事案に鑑み、相違点1-4について検討する。
甲1には、「(v)GPCにより測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)」(7頁14~15行)と記載されているところ、下記3(2)で示すとおり、本件発明1の「分子量分布MWD」が「Mw/Mn]であることは明らかであるから、甲1発明の「Mw/Mn」は、本件発明1の「GPCによって決定される」「分子量分布MWD」に相当する。
そうすると、甲1発明の「Mw/Mnは1.7」は、本件発明1の範囲外であるから、相違点1-4は実質的な相違点である。
また、甲1には、「幅広い成形分野に適用可能な成形材料のベース樹脂として 好適なプロピレン/エチレン・ランダム共重合体を提供すること」(4頁6~7行)を発明が解決しようとする課題とすることが記載されており、「本発明に係るプロピレン/エチレン・ランダム共重合体は、下記の諸特性を有する。
(i)13C-NMR分光法により測定したエチレン含有量(Ew)が0.1~10wt%(0.15~16.67mol%)の範囲である。
(ii)13C-NMR分光法により測定した孤立エチレン含有率(E1)と上記エチレン含有量(Ew)との関係が下記式で表される。
E1>0.85-0.01Ew
(iii)13C-NMR分光法により測定したポリマー鎖中に存在する2,1-および1,3-プロピレン単位が0~1mol%である。
(iv)GPCにより測定した重量平均分子量(Mw)が40,000~1,000,000の範囲である。そして
(v)GPCにより測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.5~3.8の範囲である。
さらに、
(vi)JIS K7210に準拠して測定したメルトフローレート(MFR)が、1g/10min以上、好ましくは 20g/10min以上である。
(vii)示差走査熱量分析計により測定した融点(Tm)が、100~160℃の範囲である。」(7頁3~20行)と記載され、「また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は分子量分布幅、すなわちプロピレン/エチレン・ランダム共重合体の分散性を表す。本発明に係るプロピレン/エチレン・ランダム共重合体の分散性(Mw/Mn)は1.5~3.5、好ましくは1.5~2.5の範囲である。」(10頁11~14行)と記載され、プロピレン/エチレン・ランダム共重合体のMw/Mnを1.5~3.8の範囲で調整することが示唆されている。
しかし、甲1には、メルトフローレート、溶融温度及び曲げ弾性率を本件発明1に係る特定事項を満足しつつ、プロピレン/エチレン・ランダム共重合体のMw/Mnを1.5~3.8の範囲で調整することについては記載も示唆もされていない。
そして、プロピレン/エチレン・ランダム共重合体のMw/Mnを変化させることにより、メルトフローレート、溶融温度及び曲げ弾性率の値も変化することが、本件優先日時点における技術常識であることに鑑みれば、甲1には、甲1発明において、メルトフローレート、溶融温度及び曲げ弾性率の値を本件発明1の範囲内に維持しつつ、Mw/Mnを「1.7」から「2.4~5.5」の範囲内に変更する動機付けとなる記載はないし、甲2~甲12にもそのような記載はない。
なお、甲1発明において、Mw/Mnを「1.7」から「2.4~5.5」の範囲内に変更することによって、得られるプロピレン/エチレン・ランダム共重合体のメルトフローレート、溶融温度及び曲げ弾性率の値が、引き続き同時に本件発明1の範囲内に維持されると認める具体的な技術的根拠は見当たらない。
そうすると、甲1発明において、相違点1-4に係る本件発明1の特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
そして、本件発明1は、相違点1-1~1-4に係る特定事項を有することにより、「高速押出コーティングによく適しており、改善されたシーリング特性を示し、コーティングされた物品が食品包装に使用され得るように、すなわち低いヘキサン抽出物を有するコーティングをもたらす。」(【0012】)という効果を奏する。
ウ 申立人の主張について
申立人は令和8年3月6日提出の意見書(以下「申立人意見書」という。)において、「訂正発明1と甲1発明とは課題も共通していて、甲1発明における1.7のMw/Mnを2.4~3.8の範囲に調整する動機付けは存在する。また、本件明細書にはMw/Mnが2.4未満との性能の対比が示されておらず、Mw/Mnを2.4以上にする臨界的な意味は読み取れないので、顕著な効果があるとは言えない。さらに、Mw/Mnを2.4~5.5の範囲にすることと、解決すべき課題である「シーリング特性及びホットタック特性の改善」との関係(技術的意義)が本件明細書には全く記載されておらず、2.4~5.5のMw/Mnは当業者が適宜変更できる設計事項である。Mw/Mnを2.4~5.5の範囲にすることに格別顕著な効果や予期し得ない有利な効果があるとは認められない。」(6頁5~14行)と主張している。
しかし、上記イで検討したとおり、甲1には、甲1発明において、メルトフローレート、溶融温度及び曲げ弾性率の値を本件発明1の範囲内に維持しつつ、Mw/Mnを「1.7」から「2.4~5.5」の範囲内に変更する動機付けとなる記載はないし、本件明細書の実施例において、メルトフローレート、溶融温度、2,1部位欠陥及び3,1部位欠陥の数、曲げ弾性率及び分子量分布が本件発明1の範囲内であるIE1が、本件発明1の範囲外であるCE2と比べてより低いシーリング温度及びより高いシーリング力であることが実証されている(【0097】~【0116】、図1及び図2)ことから、上記イで検討したとおり、本件発明1は有利な効果を奏するものと認められる。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
エ 本件発明1についてのまとめ
上記ア~ウのとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲1に記載された発明ではないし、甲1に記載された発明及び甲1~甲12に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)本件発明2~14について
本件発明2~14は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、上記(2)で本件発明1について述べたのと同様の理由により、本件発明2~14は甲1に記載された発明ではないし、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(4)取消理由1及び申立理由1についてのまとめ
以上のとおりであるから、取消理由1及び申立理由1はその理由がない。
2 取消理由2及び申立理由3(サポート要件)について
上記第4の3(2)の取消理由2及び上記第4の2(3)の申立理由3は、いずれもサポート要件についてのものであるので、まとめて検討する。
(1)サポート要件の判断手法
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
以下、この観点に立って判断する。
(2)サポート要件の判断
本件明細書には、「改善されたシーリング特性及びホットタック特性を有し、ゲル含有量が低く、高温に耐えることができる、広範な種々の基材の押出コーティングに適している改善されたプロピレンポリマー組成物が依然として必要とされている。」(【0009】)と記載されている。
そうすると、本件発明が解決しようとする課題(以下「発明の課題」という。)は、改善されたシーリング特性及びホットタック特性を有し、ゲル含有量が低く、高温に耐えることができる、広範な種々の基材の押出コーティングに適している改善されたプロピレンポリマー組成物を提供することであると解される。
一方、本件明細書には、「・ISO 1133に従って測定される15~40g/10分のメルトフローレートMFR2(230℃/2.16kg)、
・ISO 11357に従ってDSCによって測定される115~145℃の溶融温度Tm、及び
・13C NMRによって測定される0.01~1.2モル%の、2,1部位欠陥及び3,1部位欠陥の数
を有するプロピレンランダムコポリマーを含むか又はこれからなるポリプロピレン組成物を提供する。」(【0010】)と記載され、発明の課題を解決するために上記ポリプロピレン組成物を提供することが示唆されている。
また、本件明細書の【0002】には、「高速押出コーティングでは、10g/10分以上の比較的高いメルトフローレートMFR2が要求される。」と記載され、プロピレンランダムコポリマーのメルトフローレートMFR2が押出コーティングに適するかどうかに関連する物性であることが示唆されており、同【0016】には、「メタロセン触媒を使用して調製されたポリプロピレンは、チーグラー・ナッタ(ZN)触媒を使用して調製されたポリプロピレンと比較して、異なる微細構造を提供する。最も大きな違いは、メタロセンで製造されたポリプロピレンには部位欠陥が存在することであり、これはチーグラー・ナッタ(ZN)触媒によって製造したポリプロピレンには当てはまらない。」と記載され、プロピレンランダムコポリマーの2,1部位欠陥及び3,1部位欠陥の数は、メタロセン触媒を使用して調製することにより得られることが示唆されており、プロピレンランダムコポリマーの溶融温度は、高温に耐えることができるかどうかに関連する物性であることは、本件出願時の技術常識であると解される。
さらに、本件明細書の【0021】には「プロピレンランダムコポリマーは、好ましくはGPCによって決定される比較的小さい分子量分布を有する。したがって、プロピレンランダムコポリマーは、好ましくは2.4~5.5、より好ましくは2.5~4.5、更により好ましくは2.7~4.0の分子量分布MWDを有する。」と記載され、同【0028】には「プロピレンランダムコポリマーは、好ましくは、ISO 178に従って射出成形試験片に対して決定される500~1000MPa、より好ましくは550~950MPaの範囲、最も好ましくは600~900MPaの範囲の曲げ弾性率を有する。」と記載され、分子量分布MWD及び曲げ弾性率を特定の範囲内とすることにより発明の課題を解決することが示唆されていると解される。
そして、本件明細書の実施例には、メタロセン(MC1)を用いて調製され、MFRが25g/10分、Tmが128℃、2,1eと2,1tと3,1eの合計が0.4mol%、FMが778MPa、MWDが3.4であり本件発明1の範囲内であるIE1のプロピレンランダムコポリマーが、チーグラー・ナッタ触媒を用いて調製され、MFRが33g/10分、Tmが149℃、2,1eと2,1tと3,1eの合計が0mol%、FMが991MPa、MWDが6.5であり本件発明の範囲外であるCE2のエチレンプロピレンランダムコポリマーと比べて、より低いシーリング温度及びより高いシーリング力を有し、発明の課題を解決することを確認できる記載もある(【0097】~【0116】、図1及び図2)。
そうすると、当業者は、「・ISO 1133に従って測定される15~40g/10分のメルトフローレートMFR2(230℃/2.16kg)、
・ISO 11357に従ってDSCによって測定される115~145℃の溶融温度Tm、及び
・13C NMRによって測定される0.01~1.2モル%の、2,1部位欠陥及び3,1部位欠陥の数」
を有するとともに、さらに「ISO 178に従って射出成形試験片に対して決定される500~950MPa」及び「GPCによって決定される2.4~5.5の分子量分布MWD」を有するプロピレンランダムコポリマーを含む」ポリプロピレン組成物により、発明の課題を解決できると認識できる。
よって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、本件発明1に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。
また、本件発明2~14は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明2~14に関して、特許請求の範囲はサポート要件に適合する。
(3)申立人の主張について
ア 申立人意見書の主張
申立人は申立人意見書において、以下のとおり主張している。
(ア)「本件明細書には、プロピレンランダムコポリマーのメルトフローレート、溶融温度、2,1部位欠陥及び3,1部位欠陥の数、曲げ弾性率、分子量分布について、それぞれの数値範囲が記載されているだけであり、各物性と発明の課題を解決することとの技術的な関連性に関して全く記載されていない。
また、本件明細書の実施例には、実施例としてメタロセン触媒を用いて調製されたプロピレンランダムコポリマーIE1が1つだけ記載され、比較例としてチーグラー・ナッタ触媒を用いて調製されたプロピレンランダムコポリマーCE2が1つだけ記載されているのみである。しかも、IE1及びCE2の対比は、シーリング特性及びシーリングカに関して図示するのみである。すなわち、IE1とCE2との対比からは、ゲル含有量を低くすること及び高温に耐えることという発明の課題が解決されたと解することはできない。
訂正発明1は、メルトフローレート、溶融温度、2,1部位欠陥及び3,1部位欠陥の数、曲げ弾性率、分子量分布の数値範囲を特定したプロピレンランダムコポリマーを規定し、「訂正発明1に記載された各物性の数値範囲さえ満たせば、発明の課題が解決される」と主張していると解されるが、訂正発明1の範囲にまで発明の課題が解決できることが本件明細書には記載されているとは言えない。」(7頁1~16行)
(イ)「実施例には、プロピレンランダムコポリマーIE1という実験例がただ1つ記載されているのみで、訂正発明1の各物性に関する数値範囲の全域にわたり、IE1と同じ結果が得られるかについて何ら実証されていない。例えば、2,1部位欠陥及び3,1部位欠陥の数の下限値0.01モル%という値は、IE1の0.4モル%より、CE2の0モル%に極めて近いことが明らかである。2,1部位欠陥及び3,1部位欠陥の数が0.01モル%であるプロピレンランダムコポリマーが本件発明の課題を解決できるとは当業者であっても理解できない。同様に、メルトフローレート、溶融温度、曲げ弾性率及び分子量分布の上限値は、いずれもIE1の値よりCE2の値に近いことが明らかである。そうすると、訂正発明1の範囲には、メルトフローレートが40g/10分、溶融温度が145℃、曲げ弾性率が950MPa、分子量分布が5.5、2,1部位欠陥及び3,1部位欠陥の数が0.01モル%であるプロピレンランダムコポリマーが含まれるところ、そのようなプロピレンランダムコポリマーが本件発明の課題を解決できるとは理解できない。しかも、本件明細書には訂正発明1の各物性の数値範囲を特定することの技術的意義が全く記載されておらず、出願時の技術常識でもないから各物性の範囲を訂正発明1まで拡張して解釈する術もない。
以上のとおり、本件明細書には、特定のメルトフローレート、溶融温度、2,1部位欠陥及び3,1部位欠陥の数、曲げ弾性率及び分子量分布を有する訂正発明1について、本件発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載されているとはいえない。」(7頁17行~8頁7行)
上記(ア)の主張について検討すると、本件明細書の【0005】~【0007】には、「しかしながら、押出コーティングに必要な高いメルトフローレートは、通常、制御されたレオロジー、すなわち過酸化物又は放射線の使用などによってメルトフローレートを増加させる製造後のポリプロピレン処理によって得られる。・・・
国際公開第2012/109449号は、放射線変性方法に基づく、押出コーティング用の高溶融強度ポリプロピレンを含む制御されたレオロジー配合物を開示している。・・・しかしながら、これらの変性は、例えばゲルの形成の原因となるポリプロピレンの著しい劣化をもたらすため、医療分野などの需要の高い用途におけるポリプロピレン組成物の使用が制限される。」と記載されており、ゲルの形成の原因が「過酸化物又は放射線の使用などによってメルトフローレートを増加させる製造後のポリプロピレン処理」であることが示唆されているから、当該ポリプロピレン処理を要しない本件発明が、ゲル含有量が低いとの課題を解決することは、当業者であれば理解できることである。
さらに、上記(2)で検討したとおり、溶融温度は高温に耐えることができるかどうかに関連する物性であることは、本件出願時の技術常識であると解される。
そうすると、本件明細書の実施例において、IE1及びCE2の対比が、シーリング特性及びシーリング力に関するもののみであることでもって、ゲル含有量を低くすること及び高温に耐えることという発明の課題が解決されたと解することができないとはいえない。
上記(イ)の主張について検討すると、上記(2)で検討したとおり、本件明細書には、メルトフローレート、溶融温度、2,1部位欠陥及び3,1部位欠陥の数、曲げ弾性率及び分子量分布が特定の範囲を有するプロピレンランダムコポリマーを含むポリプロピレン組成物が発明の課題を解決すること、並びに、メルトフローレート及び溶融温度が発明の課題と関連した物性であることが示唆されているといえるし、実施例の結果からもこのことが実証されているといえるから、メルトフローレート、溶融温度、2,1部位欠陥及び3,1部位欠陥の数、曲げ弾性率及び分子量分布のすべての物性の技術的意義が記載されていないからといって、直ちに本件発明が発明の課題を解決できないとはいえない。
さらに、申立人は「メルトフローレートが40g/10分、溶融温度が145℃、曲げ弾性率が950MPa、分子量分布が5.5、2,1部位欠陥及び3,1部位欠陥の数が0.01モル%であるプロピレンランダムコポリマーが含まれるところ、そのようなプロピレンランダムコポリマーが本件発明の課題を解決できるとは理解できない。」点について、本件発明の範囲内であるプロピレンランダムコポリマーを用いても発明の課題を解決できない場合があることを実証する等、具体的な技術的根拠を何ら示していないから、この点については何ら根拠のない主張である。
イ 申立書の主張
申立人は申立書において、上記第4の2(3)ア~ウのとおり主張している。
上記第4の2(3)アの主張については、上記ア(ア)の主張について検討したとおりであり、上記第4の2(3)イの主張については、上記ア(イ)の主張について検討したとおりである。
上記第4の2(3)ウの主張について検討すると、当該主張は、「エチレンプロピレンランダムコポリマー」と、他のコポリマーとが、互いに特性の相違が大きいことのみを根拠とするものであり、何ら具体的な技術的根拠を示していないことから、当該主張は何ら根拠のないものである。
ウ 申立人の主張についてのまとめ
上記ア及びイのとおりであるから、申立人の申立書及び申立人意見書の主張はいずれも採用できない。
(4)取消理由2及び申立理由3についてのまとめ
以上のとおりであるから、取消理由2及び申立理由3はその理由がない。
3 取消理由3及び申立理由4(明確性要件)について
上記第4の3(3)の取消理由3及び上記第4の2(4)の申立理由4は、いずれも明確性要件についてのものであるので、まとめて検討する。
(1)明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
そこで、検討する。
(2)明確性要件の判断
本件発明2は、「GPCによって決定される2.4~5.5の分子量分布MWD」との特定事項を有する本件発明1を引用するものであり、本件発明3は、「GPCによって決定される2.5~4.5の分子量分布MWD」との特定事項を有するものである。
そして、本件明細書の【0093】には、「i)分子量特性 数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び多分散度(Mw/Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、以下の方法に従って決定された。」と記載され、通常、多分散度は分子量分布を意味することは本件出願時の技術常識であるから、本件発明2及び3において、上記特定事項の「分子量分布MWD」が「Mw/Mn」であることは明らかである。
また、本件発明10は、「前記ランダムプロピレンコポリマーが、2つのポリマー画分(RACO-1)及び(RACO-2)を含むか又はこれらからなり、画分(RACO-1)と画分(RACO-2)との間の分割が30:70~70:30である」との特定事項を有するものであるが、当該特定事項は、単に、ランダムプロピレンコポリマーを2つの画分又はそれ以上に分割したことを規定しているに過ぎないことを当業者は理解できるから、当該特定事項の範囲は明確である。
さらに、上記で検討した特定事項以外の本件発明2~14の記載は、それ自体に不明確な記載はなく、本件明細書の記載とも整合する。
よって、本件発明2~14に関して、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
(3)申立人の主張について
申立人は申立人意見書において、以下のとおり主張しており、申立書においても同様の主張をしている(上記第4の2(4))。
「2つのポリマー画分(RACO-1)及び(RACO-2)がそれぞれどのようなランダムプロピレンコポリマーであるのかは依然として不明確なままである。また、ランダムプロピレンコポリマーが、2つのポリマー画分(RACO-1)及び(RACO-2)を含むことと、ランダムプロピレンコポリマーが、多峰性(少なくとも二峰性)であることとは、直接関係になく一義的に導かれるものではない。
例えば、ランダムプロピレンコポリマーが、多峰性(少なくとも二峰性)であることは、GPCの分子量分布曲線について多峰性であるのか、DSCの融解曲線について多峰性であるのか、TREFの溶出曲線について多峰性であるのか、一義的に理解できない。
仮に、GPCの分子量分布について多峰性であったとすると、少なくとも二峰性とは、二つのピークトップ分子量(Mp)をもつ分子量分布の形状のことをいい、単に分子量分布が不均等に広がっているだけでピークトップが1つしかない分布形状は二峰性とは言わない。すなわち仮に2つのポリマー画分(RACO-1)及び(RACO-2)の多分散度(Mw/Mn)が互いに相違するとしても、互いのピークトップ分子量(Mp)が同じ又は近接した値であれば、二峰性の分子量分布が発現することはない。しかも、本件明細書には、ピークトップ分子量(Mp)に関する記載すら全くない。
さらに、特許権者は、本件明細書の段落[0031]~[0033]に、(RACO-1)及び(RACO-2)のエチレン含有量及びMFR2が規定されていると主張するが、(RACO-1)及び(RACO-2)のMFR2の範囲は互いに重複しており全く同じこともあるから、必ず二峰性になるとは限らない。すなわち、ポリマー画分(RACO-1)及び(RACO-2)に関し、「単に、多峰性のものであるか又は二峰性のものであるかを規定しているに過ぎないことを当業者であれば理解することができ(る)」という特許権者の主張は的外れである。」(8頁22行~9頁19行)
しかし、上記(2)で検討したとおり、「前記ランダムプロピレンコポリマーが、2つのポリマー画分(RACO-1)及び(RACO-2)を含むか又はこれらからなり」との特定事項は、単に、ランダムプロピレンコポリマーを2つの画分又はそれ以上に分割したことを規定しているに過ぎないことを当業者は理解でき、ランダムプロピレンコポリマーが多峰性(少なくとも二峰性)であるか、2つの画分が全く同じであり二峰性にならないかが、上記(2)の判断に影響を及ぼすものではない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
(4)取消理由3及び申立理由4についてのまとめ
以上のとおりであるから、取消理由3及び申立理由4はその理由がない。
4 申立理由2(甲2を主引例とする新規性・進歩性)について
(1)甲2に記載された発明
甲2には、以下の記載がある。
「【0056】
1.評価方法
(1)重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn):前述の条件のゲル・パーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定した。
(2)13C-NMRによるエチレン含量:前述の方法で測定した。
(3)メルトフローレート(MFR):JIS K7210(230℃、2.16kg荷重)に準拠して求めた。
(4)融点(Tm):セイコー社製DSCを用いて測定した。サンプル5.0mgを採り、200℃で5分間保持した後、40℃まで10℃/minの降温速度で結晶化させてその熱履歴を消去し、更に10℃/minの昇温速度で融解させた時の融解曲線のピーク温度を融点(Tm)とした。
(5)曲げ弾性率:射出成形により試験片を成形し、成形後に室温23℃、湿度50%に調節された恒温室に24時間放置した後、JIS K-7171(ISO178)に準拠して求めた。
・・・
【0058】
(触媒製造例)
(i)メタロセン化合物の合成
特開平11-240909号公報に記載の方法に準じて、(r)-ジクロロ[1,1’ -ジメチルシリレンビス{2-メチル-4-(4-クロロフェニル)-4H-アズレニル}]ハフニウムの合成を行った。
(ii)化学処理
撹拌翼と還流装置を取り付けた5Lセパラブルフラスコに、純水1,700gを投入し、98%硫酸500gを滴下した。そこへ、さらに造粒モンモリロナイト(水澤化学社製、ベンクレイSL、平均粒径:18.5μm)を300g添加後撹拌した。その後90℃で2時間反応させた。このスラリーをヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて、洗浄した。
回収したケーキに硫酸リチウム1水和物325gの水900mL水溶液を加え90℃で2時間反応させた。このスラリーをヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて、pH>4まで洗浄した。
回収したケーキを120℃で終夜乾燥した。その結果、270gの化学処理体を得た。その後、2Lフラスコに全量投入し、200℃にて6hr減圧乾燥を行った。
(iii)固体触媒の調製
内容積13リットルの攪拌機の付いた金属製反応器に、上記で得た乾燥珪酸塩0.223kgとヘプタン1.45リットルの混合物を導入し、さらにトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M)0.79リットルを加え、系内温度を25℃に維持した。1時間の反応後、ヘプタンにて十分に洗浄し、珪酸塩スラリーを3.1リットルに調製した。
上記スラリーにトリノルマルオクチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.39M)を34.4ミリリットル加えて10分間攪拌した。さらに予め(r)-ジクロロ[1,1’ -ジメチルシリレンビス{2-メチル-4-(4-クロロフェニル)-4H-アズレニル}]ハフニウム2.73gにヘプタンを0.55リットルを添加した混合物を導入して、室温にて1時間反応させた後、ヘプタンを追加して5.6リットルに調整した。
続いて、温度40℃にて、プロピレンを111.8g/時間の速度で供給し、4時間予備重合を行った。さらに1時間、後重合した。
予備重合終了後、残モノマーをパージした後、触媒をヘプタンにて十分に洗浄した。続いて、トリイソブチルアルミニウム(0.71M)のヘプタン溶液95mL添加した後に、40℃で減圧乾燥を実施した。この操作により、乾燥したメタロセン系重合触媒Aを0.688kg得た。
【0059】
(製造例1)
(1)第一工程
撹拌および温度制御装置を有する内容積3Lのオートクレーブをプロピレンで充分置換した後に、トリエチルアルミニウム・n-ヘプタン溶液3.3ml(4.0mmol)を加え、エチレン水素80ml、続いて液体プロピレン750gを導入し、70℃に昇温しその温度を維持した。上記のメタロセン系重合触媒をn-ヘプタンでスラリー化し、触媒として15mgを圧入し、重合を開始した。槽内温度を70℃に維持して60分重合を継続した。その後、常圧まで残モノマーをパージし、さらに精製した窒素で完全に置換した。生成したポリマーを得た後、引き続いて第二工程を行った。一部ポリマーをサンプリングして分析したところ、エチレン含量4.1重量%、融点124.2℃、MFRは4.2g/10分であった。
(2)第二工程
温度を40℃に制御し、水素を100ml導入し、さらに比例制御装置を使用し、エチレンとプロピレンとの混合ガスに対するエチレンのガス組成が17mol%になるように調整して導入した。昇温し、温度が70℃、圧力が1.8MPaとなったのち、第二工程の重合を開始した。60分間重合を継続した。その間、圧力が1.8MPaを下回らないように7mol%のガス組成のエチレン、プロピレン混合ガスを導入した。その後、エタノールを10ml導入して重合を停止した。残存ガスをパージした。回収したポリマーは60℃減圧乾燥機にて乾燥した。収量は430gであった。生成したポリマーを一部サンプリングして分析したところ、第一工程で製造したポリプロピレン系重合体を80重量%と第二工程で製造したポリプロピレン系重合体を20重量%含有する、MFRが8.7g/10min、Mw/Mnが5.2、エチレン含量が4.2重量%のプロピレン系樹脂混合物を得た。
【0060】
(製造例2~11)
製造例1の重合条件を表3の条件に代えた以外は、製造例1に準拠し、製造例2~11の重合条件によって各種プロピレン系樹脂混合物を得た。
【0061】
【表3】
[図:0001438284000002.jpg]
【0062】
(実施例1)
(1)射出成形用プロピレン系樹脂組成物の製造
製造例1によって得たプロピレン系樹脂混合物100重量部に対して、酸化防止剤:テトラキス{メチレン-3-(3’,5’ -ジ-t-ブチル-4’ -ヒドロキシフェニル)プロピオネート}メタン(商品名=イルガノックス1010)0.05重量部、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト(商品名=イルガフォス168)0.05重量部、中和剤:ステアリン酸カルシウム0.05重量部、造核剤として有機燐酸エステル金属塩(商品名=NA21)0.20重量部をスーパーミキサーで窒素シール後、3分間混合した。その後、パウダーは東芝機械社製2軸押出機TEM35を用いホッパーを窒素シールしながらシリンダー温度200℃、スクリュー回転数150rpm、押出量15kg/hで造粒することにより、射出成形用プロピレン系樹脂組成物を得た。
(2)射出成形品の製造
上記で得られた樹脂組成物ペレット試料を東芝射出成形機EC100に供給し、射出1次圧力50Mpa、成形温度200℃、金型冷却水温度40℃、成形サイクル15秒で試験片、試験用平板を成形した。
また、同じく東芝射出成形機EC100に供給し、成形温度240℃、金型冷却水温度40℃、射出時間10秒、射出一次圧力75MPaの条件で成形し、スパイラルフロー長を測定した。
得られた試験片、試験用平板、スパイラルフロー長の評価結果を表4に示す。得られた射出成形品は、本発明の特定物性を全て満足しており、溶融時の樹脂流動性(スパイラルフロー長)は、同程度のMFRである比較例1と比べ高く、成形性に優れ、透明性が高く、ベタツキが少ないものであった。
・・・
【0064】
(実施例3)
製造例1によって得たプロピレン系樹脂混合物の代わりに、製造例3によって得たプロピレン系樹脂混合物を用いた以外は、実施例1と同様に造粒し、射出成形品を製造した。
得られた試験片、試験用平板、スパイラルフロー長の評価結果を表4に示す。得られた射出成形品は、本発明の特定物性を全て満足しており、溶融時の樹脂流動性は、同程度のMFRである比較例1、2と比べ高く、成形性に優れ、透明性が高く、ベタツキが少ないものであった。
・・・
【0073】
【表4】
[図:0001438284000003.jpg]
」
上記記載を基に、製造例3のプロピレン系樹脂混合物に着目すると、以下の発明が記載されている。
「以下の第一工程及び第二工程を経て得られ、第一工程で製造したポリプロピレン系重合体を80重量%と第二工程で製造したポリプロピレン系重合体を20重量%含有する、MFRが15g/10min、Mw/Mnが4.7、エチレン含量が4.1重量%であり、JIS K-7171(ISO178)に準拠して求めた射出成形試験片の曲げ弾性率が720MPaである、プロピレン系樹脂混合物。
・第一工程
撹拌および温度制御装置を有する内容積3Lのオートクレーブをプロピレンで充分置換した後に、トリエチルアルミニウム・n-ヘプタン溶液3.3ml(4.0mmol)を加え、エチレン水素160ml、続いて液体プロピレン750gを導入し、70℃に昇温しその温度を維持した。(r)-ジクロロ[1,1’ -ジメチルシリレンビス{2-メチル-4-(4-クロロフェニル)-4H-アズレニル}]ハフニウムを含むメタロセン系重合触媒Aをn-ヘプタンでスラリー化し、触媒として10mgを圧入し、重合を開始した。槽内温度を70℃に維持して60分重合を継続した。その後、常圧まで残モノマーをパージし、さらに精製した窒素で完全に置換した。生成したエチレン含量4.2重量%、MFRは10.2g/10分であるポリマーを得た後、引き続いて第二工程を行った。
・第二工程
温度を40℃に制御し、水素を100ml導入し、さらに比例制御装置を使用し、エチレンとプロピレンとの混合ガスに対するエチレンのガス組成が17mol%になるように調整して導入した。昇温し、温度が70℃、圧力が1.8MPaとなったのち、第二工程の重合を開始した。90分間重合を継続した。その間、圧力が1.8MPaを下回らないように7mol%のガス組成のエチレン、プロピレン混合ガスを導入した。その後、エタノールを10ml導入して重合を停止した。残存ガスをパージした。回収したポリマーは60℃減圧乾燥機にて乾燥した。」(以下「甲2発明」という。)
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
(ア)甲2発明の「プロピレン系樹脂混合物」は、第一工程及び第二工程で得られるポリマーが、プロピレンランダムコポリマーであることは明らかであるから、本件発明1の「プロピレンランダムコポリマーを含むポリプロピレン組成物」に相当する。
(イ)甲2発明の「JIS K-7171(ISO178)に準拠して求めた射出成形試験片の曲げ弾性率が720MPa」は、本件発明1の「ISO 178に従って射出成形試験片に対して決定される500~950MPaの曲げ弾性率」との特定事項を満たす。
(ウ)甲2発明の「Mw/Mnが4.7」は、甲2の【0056】には、「重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn):前述の条件のゲル・パーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定した。」と記載されているから、本件発明1の「GPCによって決定される2.4~5.5の分子量分布MWD」の特定事項を満たす。
そうすると、両者は次の点で一致する。
「・ISO 178に従って射出成形試験片に対して決定される500~950MPaの曲げ弾性率、並びに
・GPCによって決定される2.4~5.5の分子量分布MWD
を有するプロピレンランダムコポリマーを含むポリプロピレン組成物。」
そして、両者は次の点で相違する。
・相違点2-1
メルトフローレートに関して、本件発明1は「ISO 1133に従って測定される15~40g/10分のメルトフローレートMFR2(230℃/2.16kg)」であるのに対し、甲2発明は「MFRが15g/10min」である点
・相違点2-2
本件発明1は「ISO 11357に従ってDSCによって測定される115~145℃の溶融温度Tm」であるのに対し、甲2発明はそのような特定がない点
・相違点2-3
本件発明1は、「13C NMRによって測定される0.01~1.2モル%の、2,1部位欠陥及び3,1部位欠陥の数」であるのに対し、甲2発明はそのような特定がない点
イ 判断
事案に鑑み、相違点2-2について検討する。
甲2発明は、プロピレン系樹脂混合物の溶融温度が不明であり、また、第一工程で製造したポリプロピレン系重合体及び第二工程で製造したポリプロピレン系重合体それぞれの溶融温度も不明であるから、「ISO 11357に従ってDSCによって測定される115~145℃の溶融温度Tm」である蓋然性が高いとはいえない。
したがって、相違点2-2は実質的な相違点である。
また、甲2には、製造例1において第一工程で製造したポリプロピレン系重合体について「融点124℃」と記載されているにとどまり、プロピレン系樹脂混合物の溶融温度について記載されていないことから、甲2発明において、「ISO 11357に従ってDSCによって測定される115~145℃の溶融温度Tm」の範囲内に変更する動機付けとなる記載はないし、甲1及び甲3~甲12にもそのような記載はない。
そうすると、甲2発明において、相違点2-2に係る本件発明1の特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
そして、本件発明1は、相違点2-1~2-3に係る特定事項を有することにより、「高速押出コーティングによく適しており、改善されたシーリング特性を示し、コーティングされた物品が食品包装に使用され得るように、すなわち低いヘキサン抽出物を有するコーティングをもたらす。」(【0012】)という効果を奏する。
ウ 申立人の主張について
申立人は申立書において、「甲2発明のエチレン-プロピレンランダム共重合体の融点は、以下のとおり推測することができる。
甲2発明のエチレンープロピレンランダム共重合体は、第一工程で製造したエチレン含量4.2重量%のプロピレン系共重合体(A)を重量80%、第二工程で製造したプロピレン系共重合体(B)を20重量%含有する、エチレン含量が4.1重量%のプロピレン系樹脂混合物(A)+(B)である(表3の製造例3、表4の実施例3)。
第一工程後のプロピレン系共重合体(A)のエチレン含量が4.2重量%、第二工程後のプロピレン系共重合体(A)+(B)のエチレン含量が4.1重量%から、第二工程のみのプロピレン系共重合体(B)のエチレン含量を加成性に基づき計算すると3.7重量%となる。プロピレン系樹脂混合物(A)+(B)は、プロピレン系共重合体(A)が80重量%、プロピレン系共重合体(B)が20重量%であるから、その融点はプロピレン系共重合体(A)の融点が支配的であり、エチレン含量3.7重量%のプロピレン系共重合体(B)の影響を受けるとしても軽微(わずかに高いか同等)であるといえる。
ここで、甲第2号証の製造例1における第一工程後のプロピレン系共重合体(A)は、エチレン含量4.1重量%、融点124.2℃であり(段落[0059])、甲2発明(製造例)の第一工程後のプロピレン系共重合体(A)はエチレン含量が4.2重量%であることからその融点が約124℃(124.2℃よりわずかに低いか同等)と推測される。したがって、甲2発明(プロピレン系樹脂混合物(A)+(B))の融点は約124℃と推測される。また、この値は、本件特許発明1の(構成B-1.)の略中央値に近く、第一工程のプロピレン系共重合体(A)のエチレン含量が4.2重量%、第二工程のプロピレン系共重合体(B)のエチレン含量がエチレン含量3.7重量%というエチレン含量の相違に伴う軽微な影響を受けるとしても下限値および上限値を超えることはないといえる。」(82頁9行~83頁6行)ことを根拠とし、上記アの相違点2-2は実質的な相違点ではない旨、主張している。
しかし、プロピレン系樹脂混合物が、プロピレン系共重合体(A)が80重量%、プロピレン系共重合体(B)が20重量%であるからといって、当該混合物の溶融温度がプロピレン系共重合体(A)の溶融温度が支配的であるとは直ちにはいえず、申立人はこの点について何ら具体的な技術的根拠を示していない。さらに、製造例3のプロピレン系共重合体(A)とプロピレン系共重合体(B)は、Mwが210000と96000であり大きく異なることからみて、プロピレン系樹脂混合物の溶融温度が、プロピレン系共重合体(A)と同等であるとも直ちにはいえない。
さらに、製造例3の高分子量プロピレン系重合体(A)のMw及びMw/Mnが、製造例1の高分子量プロピレン系重合体(A)と相違するものであるから、製造例3と製造例1の高分子量プロピレン系重合体(A)のエチレン含量の差が0.1重量%であることのみでもって、製造例3の高分子量プロピレン系重合体(A)の融点が、製造例1の高分子量プロピレン系重合体(A)の融点124.1℃と推測することもできないし、プロピレン系重合体の溶融温度がエチレン含量に大きく依存することについて、申立人は何ら具体的な技術的根拠を示していない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
エ 本件発明1についてのまとめ
上記ア~ウのとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲2に記載された発明ではないし、甲2に記載された発明及び甲1~甲12に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)本件発明2~10について
本件発明2~10は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、上記(2)で本件発明1について述べたのと同様の理由により、本件発明2~10は甲2に記載された発明ではないし、甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(4)申立理由2についてのまとめ
以上のとおりであるから、申立理由2はその理由がない。
第6 結語
本件特許の請求項1~14に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された申立ての理由によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項1~14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700661