特許異議申立
2023-700909
ガラス繊維強化再生ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の製造方法、およびガラス繊維強化再生ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を成形してなる成形品
- 審判番号
- 2023-700909
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-544343
- 登録番号
- 7235177
- 請求日
- 2023年09月05日
- 審決日
- 2024年07月05日
- 公報発行日
- 2024年10月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】東レ株式会社
- 【異議申立人】山内 慶子
- 【異議申立人】早川 利子
- 審判長/審判官
- 審判長 磯貝 香苗
- 審判官 加藤 友也
- 審判官 天野 宏樹
- 分類
- P1651.537-YAA(C08L) / P1651.121-YAA(C08L) / P1651.113-YAA(C08L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7235177号発明「ガラス繊維強化再生ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の製造方法、およびガラス繊維強化再生ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を成形してなる成形品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7235177号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし14〕及び〔15ないし17〕について訂正することを認める。
特許第7235177号の請求項1ないし7及び9ないし17に係る特許を維持する。
特許第7235177号の請求項8に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7235177号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし17に係る特許についての出願は、2022年(令和4年)7月14日(優先権主張 令和3年7月19日)を国際出願日とする出願であって、令和5年2月28日にその特許権の設定登録(請求項の数17)がされ、同年3月8日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年9月5日に特許異議申立人 山内 慶子(以下、「特許異議申立人A」という。)から特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし7及び15ないし17)がされ、同年同月8日に特許異議申立人 早川 利子(以下、「特許異議申立人B」という。)から特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし17)がされ、同年11月10日付けで取消理由が通知され、同年12月25日に特許権者 東レ株式会社(以下、「特許権者」という。)から訂正請求がされるとともに意見書が提出され、令和6年1月11日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年2月14日に特許異議申立人Bから意見書が提出され、同年同月15日に特許異議申立人Aから意見書が提出され、同年3月18日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年5月13日に特許権者から訂正請求がされるとともに意見書が提出されたものである。
なお、令和5年12月25日にされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
また、すでに特許異議申立人A及びBに意見書の提出の機会が与えられており、下記第2 1のとおり、令和6年5月13日にされた訂正請求によって特許請求の範囲が相当程度減縮され、下記第6ないし8のとおり、提出された全ての証拠や意見等を踏まえて更に審理を進めたとしても特許を維持すべきとの結論となると合議体は判断し、特許法第120条の5第5項ただし書に規定された特別の事情があるときといえるから、特許異議申立人A及びBに再度の意見書の提出の機会を与えていない。
第2 本件訂正について
1 訂正の内容
令和6年5月13日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「(B)重量平均分子量(以下、「Mw」ということがある)が20000~60000のPPS樹脂40~90重量%およびガラス繊維10~60重量%を配合してなるPPS樹脂組成物(以下、「(B)PPS樹脂組成物」ということがある)とを、混合することを特徴とするガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法。」とあるのを、「(B)重量平均分子量(以下、「Mw」ということがある)が20000~60000のPPS樹脂40~90重量%およびガラス繊維10~60重量%を配合してなるPPS樹脂組成物(以下、「(B)PPS樹脂組成物」ということがある)とを、混合することを特徴とするガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法であり、該(B)PPS樹脂組成物の一部または全てに、(C)PPS樹脂中にペレットの長さ方向に揃えられたガラス繊維束を10~80重量%含有し、かつペレットの長さが3.0~50mmであるガラス長繊維強化PPS樹脂組成物(以下、「(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物」ということがある)を使用する、ガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法。」に訂正する。
併せて、請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2ないし7及び9ないし14も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項8を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項9の「請求項8に記載の」を「請求項1に記載の」に訂正する。
併せて、請求項9の記載を引用する請求項12ないし14も同様に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項10の「請求項8に記載の」を「請求項1に記載の」に訂正する。
併せて、請求項10の記載を直接又は間接的に引用する請求項11ないし14も同様に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項11の「数平均分散粒子径500m以下で分散した分散相を形成する」を「数平均分散粒子径500nm以下で分散した分散相を形成する」に訂正する。
併せて、請求項11の記載を引用する請求項12ないし14も同様に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項12の「請求項8~11のいずれかに記載の」を「請求項1、9~11のいずれかに記載の」に訂正する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項13の「請求項8~11のいずれかに記載の」を「請求項1、9~11のいずれかに記載の」に訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項14の「請求項8~11のいずれかに記載の」を「請求項1、9~11のいずれかに記載の」に訂正する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項15に「ガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物を成形してなる成形品であって、」とあるのを、「ガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物を成形してなる成形品であって、該ガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物は(B)PPS樹脂組成物を含有し、該(B)PPS樹脂組成物の一部または全てとして(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物を含有し、」に訂正する。
併せて、請求項15の記載を直接又は間接的に引用する請求項16及び17も同様に訂正する。
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項15に「該ガラス繊維の重量平均繊維長(Lw)」とあるのを、「成形品中のガラス繊維の重量平均繊維長(Lw)が200μm以上2000μm以下であり、該ガラス繊維の重量平均繊維長(Lw)」に訂正する。
併せて、請求項15の記載を直接又は間接的に引用する請求項16及び17も同様に訂正する。
(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項15に「該ガラス繊維の重量平均繊維長(Lw)と数平均繊維長(Ln)の比(Lw/Ln)が」とあるのを、「成形品中のガラス繊維の重量平均繊維長(Lw)と数平均繊維長(Ln)の比(Lw/Ln)が」に訂正する。
併せて、請求項15の記載を直接又は間接的に引用する請求項16及び17も同様に訂正する。
2 訂正の目的、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)請求項1についての訂正について
訂正事項1による請求項1についての訂正は、「(B)PPS樹脂組成物」をさらに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1による請求項1についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)請求項2ないし7についての訂正について
訂正事項1による請求項2ないし7についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1による請求項2ないし7についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)請求項8についての訂正について
訂正事項2による請求項8についての訂正は、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項2による請求項8についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)請求項9についての訂正について
訂正事項1による請求項9についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項3による請求項9についての訂正は、訂正前の請求項8に記載された事項が請求項1に追加され、訂正前の請求項8が削除されたことに伴い、請求項9の引用先を請求項8から請求項1に変更するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項1及び3による請求項9についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)請求項10についての訂正について
訂正事項1による請求項10についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項4による請求項10についての訂正は、訂正前の請求項8に記載された事項が請求項1に追加され、訂正前の請求項8が削除されたことに伴い、請求項10の引用先を請求項8から請求項1に変更するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項1及び4による請求項10についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(6)請求項11についての訂正について
訂正事項1による請求項11についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項4による請求項11についての訂正は、請求項10についての訂正と同様に、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項5による請求項11についての訂正は、訂正前の「500m以下」という記載が「500nm以下」の誤記であることは、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の【0061】の記載から明らかであるから、誤記の訂正を目的とするものである。
そして、訂正事項1、4及び5による請求項11についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(6)請求項12についての訂正について
訂正事項1による請求項12についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項3による請求項12についての訂正は、請求項9についての訂正と同様に、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項4による請求項12についての訂正は、請求項10についての訂正と同様に、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項5による請求項12についての訂正は、請求項11についての訂正と同様に、誤記の訂正を目的とするものである。
訂正事項6による請求項12についての訂正は、訂正前の請求項8に記載された事項が請求項1に追加され、訂正前の請求項8が削除されたことに伴い、請求項12の引用先を請求項8から請求項1に変更するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項1及び3ないし6による請求項12についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(7)請求項13についての訂正について
訂正事項1による請求項13についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項3による請求項13についての訂正は、請求項9についての訂正と同様に、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項4による請求項13についての訂正は、請求項10についての訂正と同様に、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項5による請求項13についての訂正は、請求項11についての訂正と同様に、誤記の訂正を目的とするものである。
訂正事項7による請求項13についての訂正は、訂正前の請求項8に記載された事項が請求項1に追加され、訂正前の請求項8が削除されたことに伴い、請求項13の引用先を請求項8から請求項1に変更するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項1、3ないし5及び7による請求項13についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(8)請求項14についての訂正について
訂正事項1による請求項14についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項3による請求項14についての訂正は、請求項9についての訂正と同様に、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項4による請求項14についての訂正は、請求項10についての訂正と同様に、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項5による請求項14についての訂正は、請求項11についての訂正と同様に、誤記の訂正を目的とするものである。
訂正事項8による請求項14についての訂正は、訂正前の請求項8に記載された事項が請求項1に追加され、訂正前の請求項8が削除されたことに伴い、請求項14の引用先を請求項8から請求項1に変更するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項1、3ないし5及び8による請求項14についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(9)請求項15についての訂正について
訂正事項9による請求項15についての訂正は、「ガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物」の組成を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項10による請求項15についての訂正は、「ガラス繊維」が「成形品中」のものであることを明確にするとともに「ガラス繊維の重量平均長(Lw)」の長さを特定するものであるから、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項11による請求項15についての訂正は、「ガラス繊維」が「成形品中」のものであることを明確にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項9ないし11による請求項15についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(10)請求項16及び17についての訂正について
訂正事項9ないし11による請求項16及び17についての訂正は、請求項15についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項9ないし11による請求項16及び17についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 むすび
以上のとおり、訂正事項1ないし11による請求項1ないし17についての訂正は、いずれも、特許法120条の5第2項ただし書第1ないし3号のいずれかに掲げる事項を目的とするものである。
また、訂正事項1ないし11による請求項1ないし17についての訂正は、いずれも、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。
なお、訂正前の請求項1ないし14は一群の請求項に該当するものである。
そして、訂正事項1ないし8による請求項1ないし14についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
また、訂正前の請求項15ないし17は一群の請求項に該当するものである。
そして、訂正事項9ないし11による請求項15ないし17についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
さらに、特許異議申立人Bからの特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし17に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし14〕及び〔15ないし17〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし17に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし17に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】ポリフェニレンスルフィド(以下、「PPS」ということがある)樹脂およびガラス繊維を配合してなる成形品を破砕し、(A)成形品破砕物を得て、該(A)成形品破砕物と、(B)重量平均分子量(以下、「Mw」ということがある)が20000~60000のPPS樹脂40~90重量%およびガラス繊維10~60重量%を配合してなるPPS樹脂組成物(以下、「(B)PPS樹脂組成物」ということがある)とを、混合することを特徴とするガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法であり、該(B)PPS樹脂組成物の一部または全てに、(C)PPS樹脂中にペレットの長さ方向に揃えられたガラス繊維束を10~80重量%含有し、かつペレットの長さが3.0~50mmであるガラス長繊維強化PPS樹脂組成物(以下、「(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物」ということがある)を使用する、ガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】前記(B)PPS樹脂組成物が、カルボキシル基を20~400μmol/g含有するPPS樹脂を配合してなることを特徴とする請求項1に記載のガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】前記(A)成形品破砕物が、Mwが20000~60000のPPS樹脂40~90重量%およびガラス繊維10~60重量%を配合してなることを特徴とする請求項1または2に記載のガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】前記(A)成形品破砕物が、オレフィン系共重合体1~20重量%を配合してなり、かつ前記(B)PPS樹脂組成物が、オレフィン系共重合体1~20重量%を配合してなることを特徴とする請求項1または2に記載のガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】前記(A)成形品破砕物が、成形品を破砕した後、さらに押出機で溶融混練して得られた成形品破砕物ペレットであることを特徴とする請求項1または2に記載のガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】前記(A)成形品破砕物が、製品として使用後に回収された成形品を破砕して得られたことを特徴とする請求項1または2に記載のガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】前記(A)成形品破砕物が、製品として使用後に回収された成形品を溶媒で洗浄した後、破砕して得られたことを特徴とする請求項6に記載のガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】(削除)
【請求項9】前記(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物が、Mwが20000~60000のPPS樹脂40~90重量%およびガラス繊維束10~60重量%を含有することを特徴とする請求項1に記載のガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】前記(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物が、オレフィン系共重合体1~20重量%を配合してなることを特徴とする請求項1に記載のガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】前記(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物の相構造において、PPS樹脂が連続相を形成し、オレフィン系共重合体が、数平均分散粒子径500nm以下で分散した分散相を形成することを特徴とする請求項10に記載のガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法。
【請求項12】前記(A)成形品破砕物と、(B)PPS樹脂組成物と(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物が、実質的に同一組成であることを特徴とする請求項1、9~11のいずれかに記載のガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法。
【請求項13】前記(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物が、前記ガラス繊維束の周囲を被覆するようにPPS樹脂が配置されている芯鞘構造であることを特徴とする請求項1、9~11のいずれかに記載のガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法。
【請求項14】前記(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物が、エポキシ基、アミノ基、およびイソシアネート基から選択される少なくとも1種の官能基を有する有機シラン化合物を0.01~5重量%配合してなることを特徴とする請求項1、9~11のいずれかに記載のガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法。
【請求項15】Mwが20000~60000のPPS樹脂40~90重量%およびガラス繊維10~60重量%を配合してなるガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物を成形してなる成形品であって、該ガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物は(B)PPS樹脂組成物を含有し、該(B)PPS樹脂組成物の一部または全てとして(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物を含有し、成形品中のガラス繊維の重量平均繊維長(Lw)が200μm以上2000μm以下であり、成形品中のガラス繊維の重量平均繊維長(Lw)と数平均繊維長(Ln)の比(Lw/Ln)が1.3以上、4.0以下である成形品。
【請求項16】前記ガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物が、オレフィン系共重合体を1~20重量%配合してなることを特徴とする請求項15に記載の成形品。
【請求項17】PPS樹脂が連続相を形成し、オレフィン系共重合体が、数平均分散粒子径500nm以下で分散した分散相を形成することを特徴とする請求項16に記載の成形品。」
第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要等
1 特許異議申立人Aが提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要等
令和5年9月5日に特許異議申立人Aが提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書A」という。)に記載した申立ての理由の概要及び証拠方法は次のとおりである。
(1)申立理由A1(甲第A1号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1、3及び5は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許発明1ないし7及び15ないし17は、甲第A1号証に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7及び15ないし17に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)申立理由A2(甲第A9号証に基づく進歩性)
本件特許発明1ないし4、6、7及び15ないし17は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A9号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4、6、7及び15ないし17に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(3)申立理由A3(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし7及び15ないし17に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
・本件特許発明の解決課題は、ガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物を成形してなる成形品について、ガラス繊維の折損や、埃や油状の汚れ成分の付着により、未使用材に比べ機械特性が低下したり、臭気が発生したりするという問題を従来技術とは異なる方法で解決しようとするものであると理解される。
そして、本件特許の請求項1の記載によると、本件特許発明1は、要するに、ガラス繊維を含むPPS樹脂組成物からなる成形品を破砕して、(A)成形品破砕物(PPS樹脂であれば樹脂の種類、組成は任意である)を得て、当該(A)成形品破砕物に対して、「(B)重量平均分子量(以下、「Mw」ということがある)が20000~60000のPPS樹脂40~90重量%およびガラス繊維10~60重量%を配合してなるPPS樹脂組成物」という未使用PPS樹脂組成物(B)を混合することを課題解決手段としているということである。
しかし、当業者は、本件特許の発明の詳細な説明(以下、「発明の詳細な説明」という。)の記載や本件出願時の技術常識を参酌したとしても、上記発明の解決課題が、特許請求の範囲に記載された発明により解決できるとは認識しない。
すなわち、発明の詳細な説明の【0029】によれば、PPS樹脂の重量平均分子量が20000~60000であれば、再生品を成形する際の、「ガラス繊維の更なる折損」が抑制できるとされるが、本件特許の請求項1に規定されるPPS樹脂の重量平均分子量の幅が広いことや、甲第A2、A3、A6及びA7号証に記載されているとおり、PPS樹脂の重量平均分子量が20000~60000のものが、技術常識であったことからすると、このような記載のみで、PPS樹脂の重量平均分子量が20000~60000であれば、(A)成形品破砕物のPPS樹脂の種類や樹脂組成物の組成(ガラス繊維の比率や具体的種類)によらず、ガラス繊維の折損や、埃や油状の汚れ成分の付着により、未使用材に比べ機械特性が低下したり、臭気が発生したりするという問題が解決できるとは理解できない。
また、本件特許の請求項1には、「PPS樹脂40~90重量%およびガラス繊維10~60重量%を配合して」との要件もあるが、当該要件に関しては、発明の詳細な説明において、「(B)PPS樹脂組成物におけるPPS樹脂の配合量は、機械特性と流動性を両立する観点から、40~90重量%が必要」(発明の詳細な説明の【0031】)と説明されるにすぎず、比較例にも当該要件を満たさないものは記載されていないから、当業者が、当該要件によって、発明の課題を解決できると理解することもない。
よって、本件特許の請求項1はサポート要件を充足しない。また、同様の理由により、本件特許の請求項2ないし7及び15ないし17も、サポート要件を充足しない。
(4)証拠方法
甲第A1号証:特開2009-269369号公報
甲第A2号証:特開平11-323118号公報
甲第A3号証:特開2009-300724号公報
甲第A4号証:特開2011-137930号公報
甲第A5号証:東レ株式会社ホームページ、https://www.plastics.toray/ja/technical/torelina/tec_029.html、2023年8月23日、東レ株式会社、
甲第A6号証:国際公開第2013/099234号
甲第A7号証:特開2015-214612号公報
甲第A8号証:国際公開第2015/046324号
甲第A9号証:特開2001-26719号公報
甲第A10号証:特開2001-234052号公報
甲第A11号証:特開2014-40576号公報
甲第A12号証:知財高裁平成17年11月11日特別部判決(平成17年(行ケ)第10042号)
なお、甲第A12号証は、令和6年2月15日に特許異議申立人Aから提出された意見書に添付して提出されたものである。
証拠の表記は、特許異議申立書A及び上記意見書の記載におおむね従った。以下、順に「甲A1」のようにいう。
2 特許異議申立人Bが提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要等
令和5年9月8日に特許異議申立人Bが提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書B」という。)に記載した申立ての理由の概要及び証拠方法は次のとおりである。
(1)申立理由B1(甲第B1号証に基づく進歩性)
本件特許発明1ないし17は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B1号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし17に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)申立理由B2(サポート要件)
本件特許の請求項15ないし17に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
・本件特許発明15について、まず、「Mwが20000~60000のPPS樹脂40~90重量%およびガラス繊維10~60重量%を配合してなるガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物」が認定される。そして、この「ガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物」を成形してなる「成形品」が認定される。この構成において、「ガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物」は、成形前の材料と疑義なく認定される。このため、本件特許発明15において、「該ガラス繊維の重量平均繊維長(Lw)と数平均繊維長(Ln)の比(Lw/Ln)が1.3以上、4.0以下である」との限定は、成形前の材料に含まれるガラス繊維の繊維長限定であると認定される。
一方、発明の詳細な説明の【0075】及び【0077】に記載されているように、発明の詳細な説明には、ガラス繊維の繊維長限定は、成形された後の成形品に含まれるガラス繊維の繊維長限定として記載されている。そして、成形前の材料に含まれるガラス繊維について、「該ガラス繊維の重量平均繊維長(Lw)と数平均繊維長(Ln)の比(Lw/Ln)が1.3以上、4.0以下である」ことは記載されていない。
よって、本件特許発明15は、該ガラス繊維の重量平均繊維長(Lw)と数平均繊維長(Ln)の比(Lw/Ln)が1.3以上、4.0以下である」との発明特定事項が、成形前の材料である「ガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物」に含まれるガラス繊維における繊維長さを規定している点で、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。
また、上記の【0075】と【0077】は、「本発明で得られるガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物を成形してなる成形品は」との主語があるとおり、それまでに記載されている本件特許発明1のような製造方法で得られることを前提とした記載となっている。一方で本件特許発明15は独立請求項であり、本件特許発明1の限定事項の全てを含むものではない。「再生」の文言が1箇所に含まれるものの、どのような「再生」かまでは限定されていない。このため、本件特許発明15は、「ガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物」なるものが、過程に関係なく「Mwが20000~60000のPPS樹脂40~90重量%およびガラス繊維10~60重量%を配合してなる」ものであれば、当該構成要件が充足される。そうすれば、分子量と配合割合は充足するものを使用するとして、PPS樹脂とガラス繊維を配合した成形品を粉砕した材料(繊維強化リサイクル材)を用いた場合のみでなく、繊維未強化PPS樹脂の成形品のリサイクル材に対して、炭素繊維を多く含むペレットを配合したようなガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物とする場合なども含まれる。その結果、「(A)成形品破砕物の折損したガラス繊維長を回復して、(A)成形品破砕物の未使用材と比較しても機械特性の低下が少ない特徴を有する」といった作用効果を明らかに奏さない(そもそも折損していない)場合までを含むほどに拡張されているといえる。
よって、発明の詳細な説明及び出願時の技術常識に照らしても、本件特許発明15の全範囲にまで、発明の詳細な説明に記載した内容を拡張ないし一般化することはできない。本件特許発明16及び17についても同様である。
(3)証拠方法
甲第B1号証:特開2009-291986号公報
甲第B2号証:東レ株式会社製「トレリナ」のカタログ、2010年8月、東レ株式会社
甲第B3号証:「トレリナ」の基本物性を示す東レ株式会社のweb頁、 https://www.plastics.toray/ja/technical/torelina/tec_029.html、2023年9月8日(出力日)
甲第B4号証:特開2009-056441号公報
甲第B5号証:特開2007-254519号公報
甲第B6号証:国際公開第2013/099234号
甲第B7号証:実用プラスチック事典、1993年5月1日、株式会社産業調査会
甲第B8号証:特許第3019108号公報
甲第B9号証:特開2011-153242号公報
甲第B10号証:特開2010-116428号公報
甲第B11号証:特開平5-301222号公報
甲第B12号証:特開平11-166054号公報
甲第B13号証:特開平7-80834号公報
証拠の表記は、特許異議申立書Bの記載におおむね従った。以下、順に「甲B1」のようにいう。
第5 取消理由(決定の予告)の概要
令和6年3月18日付けで通知した取消理由(決定の予告)(以下、「取消理由(決定の予告)」という。)の概要は次のとおりである。なお、下記の取消理由2ないし4は、それぞれ、令和5年11月10日付けで通知した取消理由2ないし4のことである。
1 取消理由2(サポート要件)のうちの請求項15ないし17に対するサポート要件
本件特許の請求項15ないし17に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
なお、該理由は申立理由B2とおおむね同旨である。
当業者は、発明の詳細な説明の記載からは、「Mwが20000~60000のPPS樹脂40~90重量%およびガラス繊維10~60重量%を配合してなるガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物を成形してなる成形品」であって、実施例1、3、8ないし11、13ないし20、22及び24の樹脂組成物(成形品)において示された寸法の重量平均繊維長(Lw)及び数平均繊維長(Ln)を有し、かつ、所定範囲内の重量平均繊維長(Lw)及び数平均繊維長(Ln)の比(Lw/Ln)を有する成形品は発明の課題を解決できると認識できるものの、「Mwが20000~60000のPPS樹脂40~90重量%およびガラス繊維10~60重量%を配合してなるガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物を成形してなる成形品であって、成形品中のガラス繊維の重量平均繊維長(Lw)と数平均繊維長(Ln)の比(Lw/Ln)が1.3以上、4.0以下である成形品」ということだけで、発明の課題を解決できることを、当業者といえども理解することはできない。
また、「Mwが20000~60000のPPS樹脂40~90重量%およびガラス繊維10~60重量%を配合してなるガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物を成形してなる成形品であって、成形品中のガラス繊維の重量平均繊維長(Lw)と数平均繊維長(Ln)の比(Lw/Ln)が1.3以上、4.0以下である成形品」ということだけで、発明の課題を解決できることが、当業者の技術常識であったともいえない。
したがって、本件特許発明15ないし17は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえないし、当業者が出願時の技術常識に照らし発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるともいえない。
したがって、本件特許発明15ないし17は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえないし、当業者が出願時の技術常識に照らし発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるともいえない。
よって、本件特許発明15ないし17に関して、特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合するものであるとはいえない。
2 取消理由3(甲A1に基づく新規性・進歩性)のうちの請求項15ないし17に対する進歩性
本件特許発明15ないし17は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲A1に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項15ないし17に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
なお、該理由は申立理由A1のうちの本件特許発明15ないし17に対する進歩性とおおむね同旨である。
3 取消理由4(甲B1に基づく新規性・進歩性)のうちの請求項15ないし17に対する進歩性
本件特許発明15ないし17は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲B1に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項15ないし17に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
なお、該理由は申立理由B1のうちの本件特許発明15ないし17に対する進歩性とおおむね同旨である。
第6 取消理由(決定の予告)についての当審の判断
1 取消理由2(サポート要件)のうちの請求項15ないし17に対するサポート要件について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、検討する。
(2)サポート要件の判断
ア 特許請求の範囲の記載
本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。
イ 発明の課題
本件特許の発明の詳細な説明(以下、「発明の詳細な説明」という。)の【0001】ないし【0008】によると、本件特許発明1ないし7及び9ないし14の解決しようとする課題は「ガラス繊維が折損することで機械特性が低下する問題を解決」できる「ガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法」を提供することであり、本件特許発明15ないし17の解決しようとする課題は「ガラス繊維が折損することで機械特性が低下する問題を解決」できる「ガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物」を成形してなる「成形品」を提供することである(以下、総称して「発明の課題」という。)。
ウ 判断
(ア)発明の詳細な説明の【0009】には「PPS樹脂およびガラス繊維を配合してなる成形品を破砕して得られた成形品破砕物に、特定の重量平均分子量を有するPPS樹脂とガラス繊維からなるPPS樹脂組成物を混合することで、上記課題が解消されることを見出した。さらに、PPS樹脂組成物として、特定のガラス長繊維強化PPS樹脂組成物を混合することで、より効率的に目的が達成されることを見出し、本発明に至った。」と記載され、同【0010】には、本件特許発明1ないし7、9ないし14及び15ないし17に対応する記載がある。
(イ)発明の詳細な説明の【0029】には「本発明で用いられる(B)PPS樹脂組成物に配合するPPS樹脂の重量平均分子量は、(A)成形品破砕物と混合して各種成形を行う際のガラス繊維の更なる折損を抑制するために、20000~60000であることが必要である。」と記載され、同【0031】には「(B)PPS樹脂組成物におけるPPS樹脂の配合量は、機械特性と流動性を両立する観点から、40~90重量%が必要であり」と記載され、同【0052】には「(B)PPS樹脂組成物における上記ガラス繊維の配合量は、強度向上効果と流動性を両立する観点から、10~60重量%の範囲が必要である。」と記載されている。
(ウ)発明の詳細な説明の【0055】には「本発明におけるガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法において、(B)PPS樹脂組成物の一部または全てに、(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物を使用することが、折損したガラス繊維長を回復させて、機械特性を飛躍的に向上させる観点で特に好ましい。」と記載され、同【0056】には「(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物とは、PPS樹脂中にペレットの長さ方向に揃えられたガラス繊維束を含有し、ペレットの長さが実質的にガラス繊維束の繊維長である樹脂組成物である。」と記載され、同【0057】には「PPS樹脂中のガラス繊維束の含有量は強度補強効果と繊維束の分散性の観点から10~80重量%が好ましく」と記載されている。
(エ)発明の詳細な説明の【0075】には「本発明の製造方法によって得られるガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物は、重量平均分子量が20000~60000のPPS樹脂40~90重量%とガラス繊維10~60重量%を配合してなる。また、該ガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物を成形してなる成形品は、含有するガラス繊維の重量平均繊維長(Lw)と数平均繊維長(Ln)の比(以下、Lw/Ln)が、1.3以上、4.0以下である特徴を有する。」と記載され、同【0077】には「本発明で得られるガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物を成形してなる成形品は、(A)成形品破砕物の折損したガラス繊維長を回復して、(A)成形品破砕物の未使用材と比較しても機械特性の低下が少ない特徴を有するだけでなく、一定範囲のLw/Lnの成形品が得られる。Lw/Lnが大きい程、繊維長が長いガラス繊維が短いガラス繊維に対して残存していることを表し、流動性の低下を抑制しながら、ガラス繊維の配向を好ましく変化させることが可能となり、(A)成形品破砕物の未使用材の特性をも凌駕する特性を発現することが可能である。」と記載され、同【0078】には「ガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物を成形してなる成形品の、ガラス繊維の重量平均繊維長は、優れた機械特性と流動性確保の観点から50~5000μmであることが好ましい。優れた機械特性を得る観点から100μm以上が好ましく、200μm以上がより好ましく、金属代替用途に用いる観点から300μm以上がさらに好ましい。また、Lw/Lnが好ましい範囲である場合は、更に機械特性と流動性の両立が可能であることから、400μm以上であることがより好ましく、500μm以上であることが特に好ましい。また、優れた流動性を得る観点から4000μm以下が好ましく、3000μm以下がより好ましく、2000μm以下が特に好ましい。」と記載されている。
(オ)発明の詳細な説明の【0134】ないし【0163】において、「PPS樹脂およびガラス繊維を配合してなる成形品を破砕し、(A)成形品破砕物を得て、該(A)成形品破砕物と、(B)Mwが20000~60000のPPS樹脂40~90重量%およびガラス繊維10~60重量%を配合してなるPPS樹脂組成物とを、混合する」「ガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法であり、該(B)PPS樹脂組成物の一部または全てに、(C)PPS樹脂中にペレットの長さ方向に揃えられたガラス繊維束を10~80重量%含有し、かつペレットの長さが3.0~50mmであるガラス長繊維強化PPS樹脂組成物を使用する、ガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法」により製造された「成形品」及び「Mwが20000~60000のPPS樹脂40~90重量%およびガラス繊維10~60重量%を配合してなるガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物を成形してなる成形品であって、該ガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物は(B)PPS樹脂組成物を含有し、該(B)PPS樹脂組成物の一部または全てとして(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物を含有し、成形品中のガラス繊維の重量平均繊維長(Lw)が200μm以上2000μm以下であり、成形品中のガラス繊維の重量平均繊維長(Lw)と数平均繊維長(Ln)の比(Lw/Ln)が1.3以上、4.0以下である成形品」の条件を満たす実施例8ないし11、13ないし20、22及び24が、シャルピー衝撃強さ等の機械的特性の低下が抑制されていることを確認している。
(カ)そうすると、当業者は、発明の詳細な説明の記載から、「Mwが20000~60000のPPS樹脂40~90重量%およびガラス繊維10~60重量%を配合してなるガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物を成形してなる成形品であって、該ガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物は(B)PPS樹脂組成物を含有し、該(B)PPS樹脂組成物の一部または全てとして(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物を含有し、成形品中のガラス繊維の重量平均繊維長(Lw)が200μm以上2000μm以下であり、成形品中のガラス繊維の重量平均繊維長(Lw)と数平均繊維長(Ln)の比(Lw/Ln)が1.3以上、4.0以下である成形品」は発明の課題を解決できると認識できる。
(キ)そして、本件特許発明15は発明の課題を解決できると認識できる上記「成形品」であり、本件特許発明16及び17は発明の課題を解決できると認識できる上記「成形品」をさらに限定したものである。
(ク)したがって、本件特許発明15ないし17は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
よって、本件特許発明15ないし17に関して、特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合する。
(3)取消理由2のうちの請求項15ないし17に対するサポート要件についてのむすび
したがって、本件特許の請求項15ないし17に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、取消理由2のうちの請求項15ないし17に対するサポート要件によっては取り消すことはできない。
2 取消理由3(甲A1に基づく新規性・進歩性)のうちの本件特許発明15ないし17に対する進歩性について
(1)甲A1に記載された事項等
ア 甲A1に記載された事項
甲A1には、「成形体の製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。
・「【請求項1】
繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物再生ペレット20~80重量%及び繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物非再生ペレット80~20重量%を射出成形機に供し、射出成形を行うことを特徴とする成形体の製造方法。
【請求項2】
繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物再生ペレット、繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物非再生ペレットが、繊維状充填材20~60重量%を含有したものであることを特徴とする請求項1に記載の成形体の製造方法。」
・「【請求項4】
同一割合の繊維状充填材を含有した繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物再生ペレット及び繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物非再生ペレットからなることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の成形体の製造方法。」
・「【請求項7】
繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物再生ペレット、繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物非再生ペレットが、ガラス繊維及び/又は炭素繊維を含有してなるものであることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の成形体の製造方法。」
・「【0008】
そこで、本発明は、成形体中の材料として使用される再生ポリフェニレンスルフィドの比率を高めても、ポリフェニレンスルフィド成形体が本来有する機械強度、耐熱性、耐薬品性、寸法安定性に優れるという特性を保持した、成形体の製造方法を提供することを目的とし、さらに詳しくは、電気・電子部品又は自動車電装部品などの電気部品用途に特に有用な成形体の製造方法を提供することにある。」
・「【0012】
本発明の成形体の製造方法は、繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物再生ペレット20~80重量%及び繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物非再生ペレット80~20重量%を射出成形し成形体とするものである。
【0013】
ここで、繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物非再生ペレットとは、製造後溶融・成形を行っていないバージンポリフェニレンスルフィド樹脂及び繊維状充填材、必要に応じタルク、炭酸カルシウム等を加え、押出機等により加熱溶融混合を行い、押し出された組成物ストランドをホットカット、コールドカット等の方法により形状を整えた繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物ペレットとしたものである。そして、該繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物非再生ペレットとしては、例えばサスティールPPS(東ソー株式会社製)、トレリナ(東レ株式会社製)、DIC-PPS(大日本インキ工業株式会社製)、フォートロン(ポリプラスチックス製)、出光PPS(出光石油化学製)、スミコン(住友ベークライト製)、ライトン(ティコナ製)等の市販品を挙げることができる。なお、ポリフェニレンスルフィド樹脂とは、p-ジクロロベンゼンに硫化ナトリウムに代表される硫化物を重縮合反応させて、精製・回収することにより得られる樹脂であり、一度も溶融・成形に使用してないポリフェニレンスルフィド樹脂をバージンポリフェニレンスルフィド樹脂と称している。
【0014】
また、繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物再生ペレットとは、該繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物非再生ペレットを成形加工に供した際に発生するスプルー、ランナー等の端材、規格外成形体、使用済み成形体等を回収し、粉砕等を行った後、押出機等を用い加熱溶融・混合を行い、押し出された再生組成物ストランドをホットカット、コールドカット等の方法により形状を整え、再度繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物ペレットとした再生品をいう。なお、繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物再生ペレットとする際には、再生・リサイクルの概念を逸脱しない範囲にて通常繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物ペレットを製造する際に用いられるバージンポリフェニレンスルフィド樹脂、繊維状充填材、タルク、炭酸カルシウム等を加えることも可能である。
【0015】
該繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物再生ペレット及び該繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物非再生ペレットは、特に射出成形時の成形加工性に優れ、得られる成形体が機械的特性、耐熱性、寸法安定性に優れたものとなることから、それぞれ繊維状充填材を20~60重量%含んでなるものであることが好ましく、特に30~50重量%含んでなるものであることが好ましい。また、特に射出成形により得られる成形体個々間における機械的特性、耐熱性、寸法安定性のバラツキが抑えられた成形体が得られることから、該繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物再生ペレット及び該繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物非再生ペレットに含まれる繊維状充填材の量は同一であることが好ましい。
【0016】
該繊維状充填材としては、繊維状充填材と称される範疇に属するものであれば如何なるものも用いることが可能であり、例えばガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、アラミド繊維、ボロン繊維等を挙げることができ、その中でもガラス繊維、炭素繊維であることが好ましい。」
・「【0032】
<合成例2(PPS-4))の合成)>
攪拌機を装備する50リットルオートクレーブに、フレーク状硫化ソーダ(Na2S・2.9H2O)6214g及びN-メチル-2-ピロリドン17000gを仕込み、窒素気流下攪拌しながら徐々に205℃まで昇温して、1355gの水を留去した。この系を140℃まで冷却した後、p-ジクロロベンゼン7160g、N-メチル-2-ピロリドン5000gを添加し、窒素気流下に系を封入した。この系を2時間かけて225℃に昇温し、225℃にて2時間重合させた後、30分かけて250℃に昇温し、さらに250℃にて3時間重合を行った。重合終了後、室温まで冷却しポリマーを遠心分離機により単離した。該固形分を温水でポリマーを繰り返し洗浄し100℃で一昼夜乾燥することにより、溶融粘度が280ポイズのポリフェニレンスルフィド(以下、PPS-3と記す。)を得た。このPPS-3を、さらに酸素雰囲気下250℃で4時間硬化を行い架橋型バージンポリフェニレンスルフィド(以下、PPS-4と記す。)を得た。
【0033】
得られたPPS-4の溶融粘度は、3200ポイズであった。
【0034】
実施例及び比較例において、ガラス繊維、滑剤として以下のものを用いた。
【0035】
ガラス繊維;エヌエスジー・ヴェトロテックス(株)製、(商品名)RES03-TP91;繊維径9μm、繊維長3mm。
【0036】
滑剤(カルナバワックス);日興ファインプロダクツ製、(商品名)精製カルナバ1号粉末。
【0037】
比較例1
PPS-4/ガラス繊維/カルナバワックス=59.5/40/0.5(重量%)の割合となるように、310℃に加熱した二軸押出機(東芝機械製、(商品名)TEM-35-102B)用い、スクリュー回転数200rpmにて溶融混練し、ダイより流出する溶融組成物を冷却後裁断し、ガラス繊維強化ポリフェニレンスルフィド組成物非再生ペレットを作製した。
【0038】
得られたガラス繊維強化ポリフェニレンスルフィド組成物非再生ペレットの平均長径(D2)は2.1mmであり、平均長さ(L2)は、3.6mmであった。
【0039】
該ガラス繊維強化ポリフェニレンスルフィド組成物非再生ペレットを、310℃に加熱した射出成形機(住友重機械工業製、(商品名)SE75)のホッパーに投入し、引張強度、引張伸び、曲げ強度、曲げたわみ量を測定するための試験片、シャルピー衝撃強度を測定するための試験片、ウェルド強度を測定するための試験片をそれぞれ成形した。これら試験片を用い、引張強度、引張伸び、曲げ強度、曲げたわみ量、シャルピー衝撃強度、ウェルド強度、をそれぞれ評価した。これらの結果を表1に示す。
【0040】
実施例1
比較例1において試験片を作成した際に発生したスプルー・ランナー、また、評価後の試験片を集め、粉砕を行った後、310℃に加熱した二軸押出機(東芝機械製、(商品名)TEM-35-102B)用い、スクリュー回転数200rpmにて溶融混練し、ダイより流出する溶融組成物を冷却後裁断し、ガラス繊維強化ポリフェニレンスルフィド組成物再生ペレットを作製した。
【0041】
得られたガラス繊維強化ポリフェニレンスルフィド組成物再生ペレットの平均長径(D1)は2.1mmであり、平均長さ(L1)は、3.3mmであった。
【0042】
該ガラス繊維強化ポリフェニレンスルフィド組成物再生ペレット/比較例1により得られたガラス繊維強化ポリフェニレンスルフィド組成物非再生ペレット=30/70(重量%)を、310℃に加熱した射出成形機(住友重機械工業製、(商品名)SE75)のホッパーに投入し、引張強度、引張伸び、曲げ強度、曲げたわみ量を測定するための試験片、シャルピー衝撃強度を測定するための試験片、ウェルド強度を測定するための試験片をそれぞれ成形した。これら試験片を用い、引張強度、引張伸び、曲げ強度、曲げたわみ量、シャルピー衝撃強度、ウェルド強度、をそれぞれ評価した。これらの結果を表1に示す。」
イ 甲A1に記載された発明
甲A1に記載された事項を、特に【請求項1】、【請求項4】及び【請求項7】に関して整理すると、甲A1には次の発明(以下、順に「甲A1製法発明」及び「甲A1成形品発明」という。)が記載されていると認める。
<甲A1製法発明>
「繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物再生ペレット20~80重量%及び繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物非再生ペレット80~20重量%からなる射出成形機に供し、射出成形を行うためのペレットの製造方法であって、繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物再生ペレット及び繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物非再生ペレットが、繊維状充填材20~60重量%を含有したものであり、繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物再生ペレット及び繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物非再生ペレットが、ガラス繊維を含有してなる、ペレットの製造方法。」
<甲A1成形品発明>
「繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物再生ペレット20~80重量%及び繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物非再生ペレット80~20重量%からなる射出成形機に供し、射出成形を行うためのペレットの製造方法であって、繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物再生ペレット及び繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物非再生ペレットが、繊維状充填材20~60重量%を含有したものであり、繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物再生ペレット及び繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物非再生ペレットが、ガラス繊維を含有してなる、ペレットの製造方法により製造されたペレットにより成形された成形品。」
(2)本件特許発明15について
ア 対比
本件特許発明15と甲A1成形品発明を対比する。
甲A1成形品発明における「繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物再生ペレット20~80重量%及び繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物非再生ペレット80~20重量%からなる射出成形機に供し、射出成形を行うためのペレットの製造方法であって、繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物再生ペレット及び繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物非再生ペレットが、繊維状充填材20~60重量%を含有したものであり、繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物再生ペレット及び繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物非再生ペレットが、ガラス繊維を含有してなる、ペレットの製造方法により製造されたペレット」は本件特許発明15における「Mwが20000~60000のPPS樹脂40~90重量%およびガラス繊維10~60重量%を配合してなるガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物」と、「PPS樹脂およびガラス繊維10~60重量%を配合してなるガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物」という限りにおいて一致する。
甲A1成形品発明における「成形された成形品」は本件特許発明15における「成形してなる成形品」に相当する。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「PPS樹脂およびガラス繊維10~60重量%を配合してなるガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物を成形してなる成形品。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点A1-15a>
「PPS樹脂」に関して、本件特許発明15においては、「Mwが20000~60000」と特定されているのに対し、甲A1成形品発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点A1-15b>
「PPS樹脂」の配合量に関して、本件特許発明15においては、「40~90重量%」と特定されているのに対し、甲A1成形品発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点A1-15c>
本件特許発明15においては、「該ガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物は(B)PPS樹脂組成物を含有し、該(B)PPS樹脂組成物の一部または全てとして(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物を含有し、成形品中のガラス繊維の重量平均繊維長(Lw)が200μm以上2000μm以下であり、成形品中のガラス繊維の重量平均繊維長(Lw)と数平均繊維長(Ln)の比(Lw/Ln)が1.3以上、4.0以下である」と特定されているのに対し、甲A1成形品発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点A1-15cについて検討する。
甲A1には、甲A1成形品発明において、相違点A1-15cに係る本件特許発明15の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。
したがって、甲A1成形品発明において、相違点A1-15cに係る本件特許発明15の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明15の奏する「(A)成形品破砕物の未使用材の特性を凌駕する特性を発現することが可能である。」(発明の詳細な説明の【0077】)という効果は、甲A1成形品発明並びに甲A1及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明15の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明15は甲A1成形品発明並びに甲A1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本件特許発明16及び17について
本件特許発明16及び17は、請求項15を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明15の発明特定事項を全て有するものである。
したがって、本件特許発明15と同様に、本件特許発明16及び17は、甲A1成形品発明並びに甲A1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)取消理由3のうちの本件特許発明15ないし17に対する進歩性についてのむすび
したがって、本件特許発明15ないし17は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項15ないし17に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当しないので、取消理由3のうちの本件特許発明15ないし17に対する進歩性によっては取り消すことはできない。
3 取消理由4(甲B1に基づく新規性・進歩性)のうちの本件特許発明15ないし17に対する進歩性について
(1)甲B1に記載された事項等
ア 甲B1に記載された事項
甲B1には、「成形体の製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。
・「【請求項1】
平均径2~7mmを有する繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド製成形体粉砕物(a)100重量部に対し、繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物ペレット(b)100~400重量部を配合し、射出成形機に供し、射出成形を行うことを特徴とする成形体の製造方法。」
・「【請求項3】
繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド製成形体粉砕物(a)が、繊維状充填材20~60重量%を含有しており、繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物ペレット(b)が、繊維状充填材20~60重量%を含有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の成形体の製造方法。」
・「【請求項6】
繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド製成形体粉砕物(a)、繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物ペレット(b)が、ガラス繊維及び/又は炭素繊維強化であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の成形体の製造方法。」
・「【0001】
本発明は、再生ポリフェニレンスルフィドよりなる成形体の製造方法に関するものであり、更に詳細には、成形体を製造する際に発生するスプルー、ランナー又は該成形体の不要品等からなる繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド製成形体を有効利用し、再度成形体とする製造方法に関するものである。」
・「【0004】
ポリフェニレンスルフィドは、熱可塑性樹脂の中でも優れた耐熱性、耐薬品性および難燃性を有することから、使用済み成形品の処理が困難であり、焼却処理の際に亜硫酸ガスを発生する場合があり、再利用が強く求められている。」
・「【0008】
そこで、本発明は、成形体中の材料として使用される再生ポリフェニレンスルフィドの比率を高めても、ポリフェニレンスルフィド成形体が本来有する機械強度、耐熱性、耐薬品性、寸法安定性に優れるという特性を保持した、成形体の製造方法を提供することを目的とし、さらに詳しくは、電気・電子部品又は自動車電装部品などの電気部品用途に特に有用な成形体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド製成形体粉砕物に対し、繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物ペレットを特定割合で配合し、射出成形を行うことにより、ポリフェニレンスルフィドが本来有する機械強度、耐熱性、耐薬品性、寸法安定性に優れるという特性を保持し、成形加工性にも優れる成形体となることを見出し、本発明を完成させるに至った。」
・「【0012】
本発明の成形体の製造方法は、成形済み、使用済みの繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド製成形体を粉砕した粉砕物(a)に、成形加工を行う前の繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物ペレット(b)を配合し、射出成形を行い再生ポリフェニレンスルフィド成形体とするものである。
【0013】
ここで、該粉砕物(a)は、繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物を用いてなる成形済み、使用済み成形体を粉砕機等により平均径2~7mmに粉砕したものである。そして、成形体とする前の繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物は、通常、ポリフェニレンスルフィド及び繊維状充填材、必要に応じタルク、炭酸カルシウム等を加え、押出機等により加熱溶融混合を行い、押し出された組成物ストランドをホットカット、コールドカット等の方法により形状を整えた繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物ペレットとして入手する事が可能であり、該繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物としては、例えばサスティールPPS(東ソー株式会社製)、トレリナ(東レ株式会社製)、DIC-PPS(大日本インキ工業株式会社製)、フォートロン(ポリプラスチックス製)、出光PPS(出光石油化学製)、スミコン(住友ベークライト製)、ライトン(ティコナ製)等の市販品を挙げることができる。これら市販品繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物ペレットは、繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物ペレット(b)として用いることも可能である。なお、ポリフェニレンスルフィドとは、p-ジクロロベンゼンに硫化ナトリウムに代表される硫化物を重縮合反応させて、精製・回収することにより得られる樹脂である。
【0014】
該粉砕物(a)は、繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物を成形加工に供した際に発生するスプルー、ランナー等の端材、規格外成形体、使用済み成形体等を回収し、粉砕を行ったものであり、平均径2~7mmを有する粉砕物であれば如何なるものも用いることが可能である。ここで、平均径が2mm未満の粉砕物である場合、繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物ペレット(b)と配合し、射出成形機に供した際に、該粉砕物と該ペレット(b)の配合がうまくいかず射出成形機内への供給が劣る結果、成形加工性に劣る場合がある。また、粉砕物中の繊維状充填材の繊維長が短くなることから得られる成形体が機械特性に劣る場合がある。一方、平均径が7mmを越える場合、射出成形機内での該粉砕物と該ペレット(b)の混合がうまくいかず成形体は製品外観に劣ったり、場合によって成形そのものが困難となる場合がある。また、本発明の製造方法においては、射出成形機への粉砕物(a)及び繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物ペレット(b)の供給が安定する結果、製品外観に優れる成形体を効率よく製造することが可能となることから該粉砕物(a)として、粒径0.5mm以下の成分含有量率が5重量%以下である繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド製成形体粉砕物を用いることが好ましい。なお、本発明における平均径は、例えば粉砕物を顕微鏡等により目視観察し、その長径の平均長さを求めることにより測定することが可能であり、粒径0.5mm以下の成分含有量は、例えば目開き0.5mmの篩により粉砕物を篩うことにより測定することが可能である。
【0015】
本発明に用いられる該粉砕物(a)及び繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物ペレット(b)に含有される繊維状充填材としては、繊維状充填材として知られているものであれば如何なるものでもよく、例えばガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、アラミド繊維等を挙げることができ、その中でも特にガラス繊維、炭素繊維であることが好ましい。そして、特に機械的特性、耐熱性に優れた成形体の製造方法となることから、該粉砕物(a)及び繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物ペレット(b)における繊維状充填材の配合割合としては20~60重量%であることが好ましい。さらに、得られる成形体個々間における機械特性、耐熱性、寸法安定性のバラツキが抑えられた成形体の製造方法となることから、該粉砕物(a)と繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物ペレット(b)における繊維状充填材の配合割合は、同一であることが好ましい。」
・「【0030】
<合成例2(PPS-4))の合成)>
攪拌機を装備する50リットルオートクレーブに、フレーク状硫化ソーダ(Na2S・2.9H2O)6214g及びN-メチル-2-ピロリドン17000gを仕込み、窒素気流下攪拌しながら徐々に205℃まで昇温して、1355gの水を留去した。この系を140℃まで冷却した後、p-ジクロロベンゼン7160g、N-メチル-2-ピロリドン5000gを添加し、窒素気流下に系を封入した。この系を2時間かけて225℃に昇温し、225℃にて2時間重合させた後、30分かけて250℃に昇温し、さらに250℃にて3時間重合を行った。重合終了後、室温まで冷却しポリマーを遠心分離機により単離した。該固形分を温水でポリマーを繰り返し洗浄し100℃で一昼夜乾燥することにより、溶融粘度が280ポイズのポリフェニレンスルフィド(以下、PPS-3と記す。)を得た。このPPS-3を、さらに酸素雰囲気下250℃で4時間硬化を行い架橋型バージンポリフェニレンスルフィド(以下、PPS-4と記す。)を得た。
【0031】
得られたPPS-4の溶融粘度は、3200ポイズであった。
【0032】
実施例及び比較例において、ガラス繊維、滑剤として以下のものを用いた。
【0033】
ガラス繊維;エヌエスジー・ヴェトロテックス(株)製、(商品名)RES03-TP91;繊維径9μm、繊維長3mm。
【0034】
滑剤(カルナバワックス);日興ファインプロダクツ製、(商品名)精製カルナバ1号粉末。
【0035】
比較例1
PPS-4/ガラス繊維/カルナバワックス/=59.5/40/0.5(重量%)の割合となるように、310℃に加熱した二軸押出機(東芝機械製、(商品名)TEM-35-102B)用い、スクリュー回転数200rpmにて溶融混練し、ダイより流出する溶融組成物を冷却後裁断し、ガラス繊維強化ポリフェニレンスルフィド組成物ペレットを作製した。
【0036】
該ガラス繊維強化ポリフェニレンスルフィド組成物ペレットを、310℃に加熱した射出成形機(住友重機械工業製、(商品名)SE75)のホッパーに投入し、引張強度、引張伸び、曲げ強度、曲げたわみ量を測定するための試験片、シャルピー衝撃強度を測定するための試験片、ウェルド強度を測定するための試験片をそれぞれ成形した。これら試験片を用い、引張強度、引張伸び、曲げ強度、曲げたわみ量、シャルピー衝撃強度、ウェルド強度、をそれぞれ評価した。これらの結果を表1に示す。
【0037】
実施例1
比較例1において試験片を作成した際に発生したスプルー・ランナー、また、評価後の試験片を集め、粉砕機により粉砕を行い、平均径4.3mmの成形体粉砕物を得た。また、該粉砕物中の粒径0.5mm以下の成分含有率は1.5重量%であった。
【0038】
該成形体粉砕物100重量部に対し、比較例1により得られたガラス繊維強化ポリフェニレンスルフィド組成物ペレット200重量部を混合した後、310℃に加熱した射出成形機(住友重機械工業製、(商品名)SE75)のホッパーに投入し、引張強度、引張伸び、曲げ強度、曲げたわみ量を測定するための試験片、シャルピー衝撃強度を測定するための試験片、ウェルド強度を測定するための試験片をそれぞれ成形した。これら試験片を用い、引張強度、引張伸び、曲げ強度、曲げたわみ量、シャルピー衝撃強度、ウェルド強度、をそれぞれ評価した。これらの結果を表1に示す。」
イ 甲B1に記載された発明
甲B1に記載された事項を、特に【請求項1】、【請求項3】及び【請求項6】に関して整理すると、甲B1には次の発明(以下、順に「甲B1製法発明」及び「甲B1成形品発明」という。)が記載されていると認める。
<甲B1製法発明>
「平均径2~7mmを有する繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド製成形体粉砕物(a)100重量部に対し、繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物ペレット(b)100~400重量部を配合し、射出成形機に供し、射出成形を行うための成形体の原料を製造する製造方法であって、繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド製成形体粉砕物(a)が、繊維状充填材20~60重量%を含有しており、繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物ペレット(b)が、繊維状充填材20~60重量%を含有しており、繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド製成形体粉砕物(a)及び繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物ペレット(b)が、ガラス繊維強化である、成形体の原料製造方法。」
<甲B1成形品発明>
「平均径2~7mmを有する繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド製成形体粉砕物(a)100重量部に対し、繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物ペレット(b)100~400重量部を配合し、射出成形機に供し、射出成形を行うための成形体の原料を製造する製造方法であって、繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド製成形体粉砕物(a)が、繊維状充填材20~60重量%を含有しており、繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物ペレット(b)が、繊維状充填材20~60重量%を含有しており、繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド製成形体粉砕物(a)及び繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物ペレット(b)が、ガラス繊維強化である、成形体の原料製造方法により製造された成形体の原料により成形された成形品。」
(2)本件特許発明15について
ア 対比
本件特許発明15と甲B1成形品発明を対比する。
甲B1成形品発明における「平均径2~7mmを有する繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド製成形体粉砕物(a)100重量部に対し、繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物ペレット(b)100~400重量部を配合し、射出成形機に供し、射出成形を行うための成形体の原料を製造する製造方法であって、繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド製成形体粉砕物(a)が、繊維状充填材20~60重量%を含有しており、繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物ペレット(b)が、繊維状充填材20~60重量%を含有しており、繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド製成形体粉砕物(a)及び繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物ペレット(b)が、ガラス繊維強化である、成形体の原料製造方法により製造された成形体の原料」は本件特許発明15における「Mwが20000~60000のPPS樹脂40~90重量%およびガラス繊維10~60重量%を配合してなるガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物」と、「PPS樹脂およびガラス繊維10~60重量%を配合してなるガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物」という限りにおいて一致する。
甲B1成形品発明における「成形された成形品」は本件特許発明15における「成形してなる成形品」に相当する。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「PPS樹脂およびガラス繊維10~60重量%を配合してなるガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物を成形してなる成形品。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点B1-15a>
「PPS樹脂」に関して、本件特許発明15においては、「Mwが20000~60000」と特定されているのに対し、甲B1成形品発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点B1-15b>
「PPS樹脂」の配合量に関して、本件特許発明15においては、「40~90重量%」と特定されているのに対し、甲B1成形品発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点B1-15c>
本件特許発明15においては、「該ガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物は(B)PPS樹脂組成物を含有し、該(B)PPS樹脂組成物の一部または全てとして(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物を含有し、成形品中のガラス繊維の重量平均繊維長(Lw)が200μm以上2000μm以下であり、成形品中のガラス繊維の重量平均繊維長(Lw)と数平均繊維長(Ln)の比(Lw/Ln)が1.3以上、4.0以下である」と特定されているのに対し、甲B1成形品発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点B1-15cについて検討する。
甲B1には、甲B1成形品発明において、相違点B1-15cに係る本件特許発明15の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。
したがって、甲B1成形品発明において、相違点B1-15cに係る本件特許発明15の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明15の奏する「(A)成形品破砕物の未使用材の特性を凌駕する特性を発現することが可能である。」という効果は、甲B1成形品発明並びに甲B1及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明15の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明15は甲B1成形品発明並びに甲B1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本件特許発明16及び17について
本件特許発明16及び17は、請求項15を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明15の発明特定事項を全て有するものである。
したがって、本件特許発明15と同様に、本件特許発明16及び17は、甲B1成形品発明並びに甲B1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)取消理由4のうちの本件特許発明15ないし17に対する進歩性についてのむすび
したがって、本件特許発明15ないし17は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項15ないし17に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当しないので、取消理由4のうちの本件特許発明15ないし17に対する進歩性によっては取り消すことはできない。
第7 取消理由(決定の予告)に採用しなかった特許異議申立書A及びBに記載した申立ての理由について
取消理由(決定の予告)に採用しなかった特許異議申立書A及びBに記載した申立ての理由は、次のとおりである。
・申立理由A1(甲A1に基づく新規性・進歩性)のうちの本件特許発明1、3及び5に対する新規性並びに本件特許発明1ないし7に対する進歩性
・申立理由A2(甲A9に基づく進歩性)
・申立理由A3(サポート要件)のうちの請求項1ないし7に対するサポート要件
・申立理由B1(甲B1に基づく進歩性)のうちの本件特許発明1ないし7及び9ないし14に対する進歩性
以下、順に検討する。
1 申立理由A1(甲A1に基づく新規性・進歩性)のうちの本件特許発明1、3及び5に対する新規性並びに本件特許発明1ないし7に対する進歩性について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲A1製法発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「PPS樹脂およびガラス繊維を配合してなる成形品を破砕し、(A)成形品破砕物を得て、該(A)成形品破砕物と、(B)PPS樹脂およびガラス繊維10~60重量%を配合してなるPPS樹脂組成物とを、混合するガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法。」
そして、両者は次の点で一応相違する。
<相違点A1-1a>
「PPS樹脂組成物」中の「PPS樹脂」に関して、本件特許発明1においては、「重量平均分子量が20000~60000」と特定されているのに対し、甲A1製法発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点A1-1b>
「PPS樹脂組成物」中の「PPS樹脂」の配合量に関して、本件特許発明1においては、「40~90重量%」と特定されているのに対し、甲A1製法発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点A1-1c>
本件特許発明1においては「該(B)PPS樹脂組成物の一部または全てに、(C)PPS樹脂中にペレットの長さ方向に揃えられたガラス繊維束を10~80重量%含有し、かつペレットの長さが3.0~50mmであるガラス長繊維強化PPS樹脂組成物(以下、「(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物」ということがある)を使用する」と特定されているのに対し、甲A1製法発明においてはそのようには特定されていない点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点A1-1cについて検討する。
相違点A1-1cが実質的な相違点であることは当業者に明らかである。
また、甲A1には、甲A1製法発明において、相違点A1-1cに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。
したがって、甲A1製法発明において、相違点A1-1cに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1の奏する「(A)成形品破砕物の未使用材の特性を凌駕する特性を発現することが可能である。」という効果は、甲A1製法発明並びに甲A1及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲A1製法発明であるとはいえないし、甲A1製法発明並びに甲A1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(2)本件特許発明2ないし7について
本件特許発明2ないし7は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものである。
したがって、本件特許発明1と同様に、本件特許発明3及び5は甲A1製法発明であるとはいえないし、本件特許発明2ないし7は甲A1製法発明並びに甲A1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)申立理由A1のうちの本件特許発明1、3及び5に対する新規性並びに本件特許発明1ないし7に対する進歩性についてのむすび
したがって、本件特許発明1、3及び5は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、本件特許発明1ないし7は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当しないので、申立理由A1のうちの本件特許発明1、3及び5に対する新規性並びに本件特許発明1ないし7に対する進歩性によっては取り消すことはできない。
2 申立理由A2(甲A9に基づく進歩性)について
(1)甲A9に記載された事項等
ア 甲A9に記載された事項
甲A9には、「リサイクル樹脂組成物及びその製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。
・「【請求項1】 (a)原料樹脂、(b)少なくとも1種の樹脂用添加剤、並びに(c)前記(a)原料樹脂と前記(b)少なくとも1種の樹脂用添加剤とを含む原料樹脂組成物及び/又は前記(a)原料樹脂と前記(b)少なくとも1種の樹脂用添加剤とを含むリサイクル樹脂組成物の成形において発生する回収成形物の粉砕品を含む混合物をコンパウンディングすることによって得られるリサイクル樹脂組成物。」
・「【請求項6】 (a)原料樹脂が、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン系樹脂、及びポリフェニレンスルフィド樹脂からなる群より選ばれる一種の樹脂または二種以上の樹脂の混合物である、請求項1から5の何れかに記載のリサイクル樹脂組成物。
【請求項7】 (b)樹脂用添加剤の1種としてガラス繊維を含む、請求項1から6の何れかに記載のリサイクル樹脂組成物。」
・「【0041】本発明のリサイクル樹脂組成物は、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法など、熱可塑性樹脂組成物の成形法として従来から知られている成形法によって、製品または部品(成形品)を製造することができる。これら成形法の中では、射出成形法が特に好ましい。製品または部品としては、工業電気製品部品、家庭電気製品部品、光学機器部品、日用品などが挙げられる。」
・「【0045】[参考例1]以下に記載の実施例、参考例、比較例で用いた原料樹脂組成物は、未成形ポリブチレンテレフタレート(PBT樹脂)のペレット100重量部、臭素化エポキシ樹脂18重量部、酸化アンチモン9重量部、ガラス繊維54重量部を基本組成としたものである。四成分をそれぞれ秤量し、ガラス繊維以外の三成分をブレンダーで混合し、真空ベント口を備えた二軸押出機の主フィード口より供給して混練し、ガラス繊維はサイドフィード口から添加し、溶融混練し、押出機先端に装着したダイスより押し出したストランドを冷却し、カッターで切断して原料樹脂組成物のペレットを得た。」
イ 甲A9に記載された発明
甲A9に記載された事項を、特に【請求項1】、【請求項6】及び【請求項7】に関して整理すると、甲A9には次の発明(以下、順に「甲A9製法発明」及び「甲A9成形品発明」という。)が記載されていると認める。
<甲A9製法発明>
「(a)原料樹脂、(b)少なくとも1種の樹脂用添加剤、並びに(c)前記(a)原料樹脂と前記(b)少なくとも1種の樹脂用添加剤とを含む原料樹脂組成物及び/又は前記(a)原料樹脂と前記(b)少なくとも1種の樹脂用添加剤とを含むリサイクル樹脂組成物の成形において発生する回収成形物の粉砕品を含む混合物をコンパウンディングすることによってリサイクル樹脂組成物を得る方法であって、(a)原料樹脂が、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン系樹脂、及びポリフェニレンスルフィド樹脂からなる群より選ばれる一種の樹脂または二種以上の樹脂の混合物であり、(b)樹脂用添加剤の1種としてガラス繊維を含む方法。」
<甲A9成形品発明>
「(a)原料樹脂、(b)少なくとも1種の樹脂用添加剤、並びに(c)前記(a)原料樹脂と前記(b)少なくとも1種の樹脂用添加剤とを含む原料樹脂組成物及び/又は前記(a)原料樹脂と前記(b)少なくとも1種の樹脂用添加剤とを含むリサイクル樹脂組成物の成形において発生する回収成形物の粉砕品を含む混合物をコンパウンディングすることによってリサイクル樹脂組成物を得る方法であって、(a)原料樹脂が、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン系樹脂、及びポリフェニレンスルフィド樹脂からなる群より選ばれる一種の樹脂または二種以上の樹脂の混合物であり、(b)樹脂用添加剤の1種としてガラス繊維を含む方法により得られたリサイクル樹脂組成物により成形された成形品。」
なお、特許異議申立人Aは、特許異議申立書Aにおいて、次の甲9発明1及び甲9発明2が認定できる旨主張する(特許異議申立書Aの第41及び47ページ)。
<甲9発明1>
「9a (a)原料PPS樹脂と(b)ガラス繊維とを含む原料樹脂組成物を含むリサイクル樹脂組成物の成形において発生する回収成形物の粉砕品を得て、
9b 当該粉砕品と、
9c (a)原料PPS樹脂、(b)ガラス繊維を含有する樹脂組成物を、混合する
9d リサイクルPPS樹脂組成物の製造方法。」
<甲9発明2>
「PPS樹脂、ガラス繊維を含有するリサイクル樹脂組成物を成形してなる成形品」
そこで、検討する。
甲A9の【請求項6】及び【0045】に記載されているように、「ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS樹脂)」は、具体的な実施例、参考例及び比較例としては用いられておらず、数多くの樹脂の一つとして記載されているに過ぎない。
そうすると、甲A9には、PPS樹脂を含有するリサイクル樹脂組成物に関する発明が記載されているとはいえないから、特許異議申立人Aの上記主張は採用することができない。
(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲A9製法発明を対比する。
両者は、少なくとも次の点で相違する。
<相違点A9-1a>
本件特許発明1においては、「原料樹脂」を「ポリフェニレンスルフィド(以下、「PPS」ということがある)樹脂」とした上で、「重量平均分子量(以下、「Mw」ということがある)が20000~60000のPPS樹脂40~90重量%およびガラス繊維10~60重量%を配合してなるPPS樹脂組成物(以下、「(B)PPS樹脂組成物」ということがある)とを、混合する」と特定されているのに対し、甲A9製法発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点A9-1b>
本件特許発明1においては、「該(B)PPS樹脂組成物の一部または全てに、(C)PPS樹脂中にペレットの長さ方向に揃えられたガラス繊維束を10~80重量%含有し、かつペレットの長さが3.0~50mmであるガラス長繊維強化PPS樹脂組成物(以下、「(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物」ということがある)を使用する」と特定されているのに対し、甲A9製法発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
そこで、上記相違点について検討する。
(ア)相違点A9-1aについて
甲A9には、甲A9製法発明において、相違点A9-1aに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。
したがって、甲A9製法発明において、相違点A9-1aに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
(イ)相違点A9-1bについて
甲A9には、甲A9製法発明において、相違点A9-1bに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。
したがって、甲A9製法発明において、相違点A9-1bに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
(ウ)効果について
そして、本件特許発明1の奏する「(A)成形品破砕物の未使用材の特性を凌駕する特性を発現することが可能である。」という効果は、甲A9製法発明並びに甲A9及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
ウ まとめ
したがって、本件特許発明1は甲A9製法発明並びに甲A9及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本件特許発明2ないし4、6及び7について
本件特許発明2ないし4、6及び7は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものである。
したがって、本件特許発明1と同様に、本件特許発明2ないし4、6及び7は甲A9製法発明並びに甲A9及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件特許発明15について
ア 対比
本件特許発明15と甲A9成形品発明を対比する。
両者は、少なくとも次の点で相違する。
<相違点A9-15a>
本件特許発明15においては、「Mwが20000~60000のPPS樹脂40~90重量%およびガラス繊維10~60重量%を配合してなるガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物を成形してなる成形品」と特定されているのに対し、甲A9成形品発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点A9-15b>
本件特許発明15においては、「該ガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物は(B)PPS樹脂組成物を含有し、該(B)PPS樹脂組成物の一部または全てとして(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物を含有し、成形品中のガラス繊維の重量平均繊維長(Lw)が200μm以上2000μm以下であり、成形品中のガラス繊維の重量平均繊維長(Lw)と数平均繊維長(Ln)の比(Lw/Ln)が1.3以上、4.0以下である」と特定されているのに対し、甲A9成形品発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
そこで、上記相違点について検討する。
(ア)相違点A9-15aについて
甲A9には、甲A9成形品発明において、相違点A9-15aに係る本件特許発明15の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。
したがって、甲A9成形品発明において、相違点A9-15aに係る本件特許発明15の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
(イ)相違点A9-15bについて
甲A9には、甲A9成形品発明において、相違点A9-15bに係る本件特許発明15の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。
したがって、甲A9成形品発明において、相違点A9-15bに係る本件特許発明15の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
(ウ)効果について
そして、本件特許発明15の奏する「(A)成形品破砕物の未使用材の特性を凌駕する特性を発現することが可能である。」という効果は、甲A9成形品発明並びに甲A9及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明15の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
ウ まとめ
したがって、本件特許発明15は甲A9成形品発明並びに甲A9及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件特許発明16及び17について
本件特許発明16及び17は、請求項15を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明15の発明特定事項を全て有するものである。
したがって、本件特許発明15と同様に、本件特許発明16及び17は、甲A9成形品発明並びに甲A9及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(5)申立理由A2についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし4、6、7及び15ないし17は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし4、6、7及び15ないし17に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当しないので、申立理由A2によっては取り消すことはできない。
3 申立理由A3(サポート要件)のうちの請求項1ないし7に対するサポート要件について
(1)サポート要件の判断基準
サポート要件の判断基準は、上記第6 1(1)のとおりである。
(2)サポート要件の判断
ア 特許請求の範囲の記載
本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。
イ 発明の課題
本件特許発明1ないし7及び9ないし14の解決しようとする課題は、上記第6 1(2)イのとおり、「ガラス繊維が折損することで機械特性が低下する問題を解決」できる「ガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法」を提供することである。
ウ 判断
(ア)発明の詳細な説明には、上記第6 1(2)ウ(ア)ないし(オ)のとおりの記載がある。
(イ)そうすると、当業者は、発明の詳細な説明の記載から、「PPS樹脂およびガラス繊維を配合してなる成形品を破砕し、(A)成形品破砕物を得て、該(A)成形品破砕物と、(B)Mwが20000~60000のPPS樹脂40~90重量%およびガラス繊維10~60重量%を配合してなるPPS樹脂組成物とを、混合する」「ガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法であり、該(B)PPS樹脂組成物の一部または全てに、(C)PPS樹脂中にペレットの長さ方向に揃えられたガラス繊維束を10~80重量%含有し、かつペレットの長さが3.0~50mmであるガラス長繊維強化PPS樹脂組成物を使用する、ガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法」は発明の課題を解決できると認識できる。
(ウ)そして、本件特許発明1は発明の課題を解決できると認識できる上記「製造方法」であり、本件特許発明2ないし7は発明の課題を解決できると認識できる上記「製造方法」をさらに限定したものである。
(エ)したがって、本件特許発明1ないし7は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
よって、本件特許発明1ないし7に関して、特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合する。
(オ)特許異議申立人A及びBの主張について
特許異議申立人Aは、令和6年2月15日に提出された意見書において、請求項1ないし7及び10ないし14に対するサポート要件違反について、「(A)成形品破砕物」と「(B)PPS樹脂組成物」の組成が異なる場合については、何ら具体的な実施例が記載されておらず、請求項1に対するサポート要件違反について、特許権者が令和5年12月25日に意見書に添付して提出した実験成績証明書(乙第1号証)はサポート要件の判断に参酌できるものではないから、依然として解消していない旨主張する(上記意見書第5ないし8ページ)。
また、特許異議申立人Bも、令和6年2月14日に提出された意見書において、請求項1に対するサポート要件違反について、特許権者が令和5年12月25日に意見書に添付して提出した実験成績証明書(乙第1号証)はサポート要件の判断に参酌できるものではないから、依然として解消していない旨主張する(上記意見書第3ないし5ページ)。
そこで、検討する。
発明の詳細な説明には、上記第6 1(2)ウ(ア)ないし(オ)のとおりの記載があり、上記記載から、乙第1号証を参酌するまでもなく、当業者は、上記(イ)記載の「ガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法」は発明の課題を解決できると認識できる。
また、「(A)成形品破砕物」と「(B)PPS樹脂組成物」の組成が異なる場合に発明の課題を解決できないとする具体的な証拠が提出されている訳でもない。
したがって、特許異議申立人A及びBの上記主張はいずれも採用できない。
(3)申立理由A3のうちの請求項1ないし7に対するサポート要件についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、取消理由A3のうちの請求項1ないし7に対するサポート要件によっては取り消すことはできない。
4 申立理由B1(甲B1に基づく進歩性)のうちの本件特許発明1ないし7及び9ないし14に対する進歩性について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲B1製法発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「ポリフェニレンスルフィド樹脂およびガラス繊維を配合してなる成形品を破砕し、(A)成形品破砕物を得て、該(A)成形品破砕物と、(B)PPS樹脂およびガラス繊維10~60重量%を配合してなるPPS樹脂組成物とを、混合するガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点B1-1a>
「PPS樹脂組成物」中の「PPS樹脂」に関して、本件特許発明1においては、「重量平均分子量が20000~60000」と特定されているのに対し、甲B1製法発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点B1-1b>
「PPS樹脂組成物」中の「PPS樹脂」の配合量に関して、本件特許発明1においては、「40~90重量%」と特定されているのに対し、甲B1製法発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点B1-1c>
本件特許発明1においては「該(B)PPS樹脂組成物の一部または全てに、(C)PPS樹脂中にペレットの長さ方向に揃えられたガラス繊維束を10~80重量%含有し、かつペレットの長さが3.0~50mmであるガラス長繊維強化PPS樹脂組成物(以下、「(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物」ということがある)を使用する」と特定されているのに対し、甲B1製法発明においてはそのようには特定されていない点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点B1-1cについて検討する。
甲B1には、甲B1製法発明において、相違点B1-1cに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。
したがって、甲B1製法発明において、相違点B1-1cに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1の奏する「(A)成形品破砕物の未使用材の特性を凌駕する特性を発現することが可能である。」という効果は、甲B1製法発明並びに甲B1及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
ウ 特許異議申立人Bの主張について
特許異議申立人Bは、令和6年2月14日に提出された意見書において、甲B12には、リサイクル樹脂に配合するためのPPS樹脂組成物として、強化繊維がペレットの長さ方向に対して実質的に平行に配列しており、かつペレットの長さが3.0~50mmであり、強化繊維の合計量が10~80重量%であるペレットが規定されており、甲B1と甲B12の記載から、甲B1製法発明における「繊維状充填材強化ポリフェニレンスルフィド組成物ペレット(b)」の全部又はその一部を、PPS樹脂中にペレットの長さ方向に揃えられたガラス繊維束を10~80重量%含有し、かつペレットの長さが3.0~50mmであるものにすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである旨主張する(上記意見書第9ないし12ページ)。
そこで、検討する。
甲B12の【0008】に記載されているように、「ポリフェニレンサルファイド樹脂」は他の多くの樹脂の一つとして記載されているに過ぎず、特許異議申立人Bが主張するようなリサイクル樹脂に配合するためのPPS樹脂組成物に関する事項が記載されているとはいえないから、甲B1製法発明に甲B12に記載された事項を適用しても相違点B1-1cに係る本件特許発明1の発明特定事項には至らない。
したがって、特許異議申立人Bの上記主張は採用することができない。
エ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲B1製法発明並びに甲B1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本件特許発明2ないし7及び9ないし14について
本件特許発明2ないし7及び9ないし14は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものである。
したがって、本件特許発明1と同様に、本件特許発明2ないし7及び9ないし14は甲B1製法発明並びに甲B1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)申立理由B1のうちの本件特許発明1ないし7及び9ないし14に対する進歩性についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし7及び9ないし14は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし7及び9ないし14に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当しないので、申立理由B1のうちの本件特許発明1ないし7及び9ないし14に対する進歩性によっては取り消すことはできない。
第8 むすび
以上のとおり、本件特許の請求項1ないし7及び9ないし17に係る特許は、取消理由(決定の予告)並びに特許異議申立書A及びBに記載した申立ての理由によっては取り消すことはできない。
他に本件特許の請求項1ないし7及び9ないし17に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件特許の請求項8に係る特許は、訂正により削除されたため、特許異議申立人Bによる請求項8に係る特許についての特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700909