特許異議申立
2024-700365
樹脂シート
- 審判番号
- 2024-700365
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-507134外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7367891
- 請求日
- 2024年04月18日
- 審決日
- 2025年02月14日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】味の素株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人酒井国際特許事務所
- 【異議申立人】松本 文彦
- 分類
- P1651.113-YAA(C08L) / P1651.121-YAA(C08L) / P1651.537-YAA(C08L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7367891号発明「樹脂シート」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7367891号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~19〕、20、21について訂正することを認める。
特許第7367891号の請求項1~3、5~21に係る特許を維持する。
特許第7367891号の請求項4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7367891号(以下「本件特許」という。)の請求項1~21に係る特許についての出願は、2022年(令和4年)3月15日(優先権主張令和3年3月16日)を国際出願日とする出願であって、令和5年10月16日にその特許権の設定登録がされ、令和5年10月24日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1~21に係る特許に対し、令和6年4月18日に特許異議申立人松本文彦(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。それ以降の経緯は以下のとおりである。
令和6年 8月23日付け 取消理由通知書
令和6年10月25日 訂正請求書及び意見書(特許権者)
令和6年11月14日 訂正請求書の手続補正書(方式)
令和6年12月12日 意見書(申立人)
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和6年10月25日提出の訂正請求書(当該本件訂正請求書による訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)は、「特許第7367891号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~21について訂正することを求める。」ものであり、本件訂正の内容は、次の訂正事項からなるものである。なお、下線は、当審が訂正箇所に付したものである。
(1)訂正事項1
請求項1に「(B)成分中の沸点120℃未満の有機溶剤の含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、0質量%~30質量%である、樹脂シート。」とあるのを、
「(B)成分中の沸点120℃未満の有機溶剤の含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、0質量%~30質量%であり、
樹脂組成物層中の(C)成分の含有量が、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、73.4質量%以上である、樹脂シート。」に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項3、5~19も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
請求項2に「(B)成分中の沸点120℃以上220℃未満の有機溶剤の含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、85質量%以上である、樹脂シート。」とあるのを、
「(B)成分中の沸点120℃以上220℃未満の有機溶剤の含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、85質量%以上であり、
樹脂組成物層中の(C)成分の含有量が、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、73.4質量%以上である、樹脂シート。」に訂正する。
(請求項2の記載を引用する請求項3、5~19も同様に訂正する。)
(3)訂正事項3
請求項4を削除する。
(4)訂正事項4
請求項5に「請求項1~4の何れか1項に記載の樹脂シート。」とあるのを、
「請求項1~3の何れか1項に記載の樹脂シート。」に訂正する。
(5)訂正事項5
請求項6に「請求項1~5の何れか1項に記載の樹脂シート。」とあるのを、
「請求項1~3、5の何れか1項に記載の樹脂シート。」に訂正する。
(6)訂正事項6
請求項7に「請求項1~6の何れか1項に記載の樹脂シート。」とあるのを、
「請求項1~3、5、6の何れか1項に記載の樹脂シート。」に訂正する。
(7)訂正事項7
請求項8に「請求項1~7の何れか1項に記載の樹脂シート。」とあるのを、
「請求項1~3、5~7の何れか1項に記載の樹脂シート。」に訂正する。
(8)訂正事項8
請求項9に「請求項1~8の何れか1項に記載の樹脂シート。」とあるのを、
「請求項1~3、5~8の何れか1項に記載の樹脂シート。」に訂正する。
(9)訂正事項9
請求項11に「請求項1~10の何れか1項に記載の樹脂シート。」とあるのを、
「請求項1~3、5~10の何れか1項に記載の樹脂シート。」に訂正する。
(10)訂正事項10
請求項14に「請求項1~13の何れか1項に記載の樹脂シート。」とあるのを、
「請求項1~3、5~13の何れか1項に記載の樹脂シート。」に訂正する。
(11)訂正事項11
請求項15に「請求項1~14の何れか1項に記載の樹脂シート。」とあるのを、
「請求項1~3、5~14の何れか1項に記載の樹脂シート。」に訂正する。
(12)訂正事項12
請求項16に「請求項1~15の何れか1項に記載の樹脂シート。」とあるのを、
「請求項1~3、5~15の何れか1項に記載の樹脂シート。」に訂正する。
(13)訂正事項13
請求項17に「請求項1~16の何れか1項に記載の樹脂シート。」とあるのを、
「請求項1~3、5~16の何れか1項に記載の樹脂シート。」に訂正する。
(14)訂正事項14
請求項18に「請求項1~17の何れか1項に記載の樹脂シート。」とあるのを、
「請求項1~3、5~17の何れか1項に記載の樹脂シート。」に訂正する。
(15)訂正事項15
請求項19に「(I)請求項1~18の何れか1項に記載の樹脂シートを、樹脂シートの樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する工程」とあるのを、
「(I)請求項1~3、5~18の何れか1項に記載の樹脂シートを、樹脂シートの樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する工程」に訂正する。
(16)訂正事項16
請求項20に「(B)成分中の沸点120℃未満の有機溶剤の含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、0質量%~30質量%である、樹脂組成物。」とあるのを、
「(B)成分中の沸点120℃未満の有機溶剤の含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、0質量%~30質量%であり、
(C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、73.4質量%以上である、樹脂組成物。」に訂正する。
(17)訂正事項17
請求項21に「(B)成分中の沸点120℃以上220℃未満の有機溶剤の含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、85質量%以上である、樹脂組成物。」とあるのを、
「(B)成分中の沸点120℃以上220℃未満の有機溶剤の含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、85質量%以上であり、
(C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、73.4質量%以上である、樹脂組成物。」に訂正する。
(18)一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~21は、請求項3~19が、本件訂正請求の対象である請求項1又は2の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項〔1~19〕、20、21について請求されたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
訂正事項1は、請求項1に記載の樹脂組成物層について、「(C)成分の含有量が、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、73.4質量%以上である」ことを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件明細書の【0058】、【0260】【表1】の実施例1、2の記載に基づく訂正であるから新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
(2)訂正事項2
訂正事項2は、請求項2に記載の樹脂組成物層について、「(C)成分の含有量が、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、73.4質量%以上である」ことを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件明細書の【0058】、【0260】【表1】の実施例1、2の記載に基づく訂正であるから新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項2は、請求項1に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
(3)訂正事項3
訂正事項4は、請求項4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的するものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当
(4)訂正事項4~15
訂正事項4~15は、請求項4が削除されたことに伴い、引用する請求項の数を減少させ、また、削除された請求項4を引用しているという不明瞭な状態を解消させるものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
(5)訂正事項16
訂正事項16は、請求項20に記載の樹脂組成物について、「(C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、73.4質量%以上である」ことを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件明細書の【0058】、【0260】【表1】の実施例1、2の記載に基づく訂正であるから新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項16は、請求項20に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
(6)訂正事項17
訂正事項17は、請求項21に記載の樹脂組成物について、「(C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、73.4質量%以上である」ことを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件明細書の【0058】、【0260】【表1】の実施例1、2の記載に基づく訂正であるから新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項17は、請求項20に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3、5~19〕、20、21について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
上記のとおり、本件訂正は認められるから、本件訂正後の請求項1~3、5~21に係る発明(以下「本件発明1」等といい、まとめて「本件発明」ということもある。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~3、5~21に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
支持体と、当該支持体上に設けられた樹脂組成物層と、を有する樹脂シートであって、
樹脂組成物層が、(A)エポキシ樹脂、(B)有機溶剤、(C)無機充填材、(D)応力緩和材、及び(G)ラジカル重合性化合物を含み、
(B)成分が、沸点120℃以上220℃未満の有機溶剤を含み、
(B)成分中のトルエンの含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、0質量%~9質量%であり、
(B)成分中の沸点120℃未満の有機溶剤の含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、0質量%~30質量%であり、
樹脂組成物層中の(C)成分の含有量が、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、73.4質量%以上である、樹脂シート。
【請求項2】
支持体と、当該支持体上に設けられた樹脂組成物層と、を有する樹脂シートであって、
樹脂組成物層が、(A)エポキシ樹脂、(B)有機溶剤、(C)無機充填材、(D)応力緩和材、及び(G)ラジカル重合性化合物を含み、
(B)成分中のトルエンの含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、0質量%~9質量%であり、
(B)成分中の沸点120℃以上220℃未満の有機溶剤の含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、85質量%以上であり、
樹脂組成物層中の(C)成分の含有量が、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、73.4質量%以上である、樹脂シート。
【請求項3】
樹脂組成物層中の(D)成分の含有量が、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、1質量%以上である、請求項1又は2に記載の樹脂シート。
【請求項5】
樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合の(C)成分の含有量(質量%)の値と(C)成分の比表面積(m2/g)の値との積が、300以上である、請求項1~3の何れか1項に記載の樹脂シート。
【請求項6】
(B)成分中の沸点220℃以上の有機溶剤の含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、0質量%~10質量%である、請求項1~3、5の何れか1項に記載の樹脂シート。
【請求項7】
(B)成分中の芳香族性溶剤の含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、0質量%~9質量%である、請求項1~3、5、6の何れか1項に記載の樹脂シート。
【請求項8】
(D)成分が、ポリブタジエン構造及びポリカーボネート構造から選ばれる1種以上の構造を有する樹脂を含む非粒子状の応力緩和材を含む、請求項1~3、5~7の何れか1項に記載の樹脂シート。
【請求項9】
(D)成分が、粒子状の応力緩和材を含む、請求項1~3、5~8の何れか1項に記載の樹脂シート。
【請求項10】
粒子状の応力緩和材の平均粒径が、10,000nm以下である、請求項9に記載の樹脂シート。
【請求項11】
樹脂組成物層が、(E)硬化剤をさらに含む、請求項1~3、5~10の何れか1項に記載の樹脂シート。
【請求項12】
(E)成分が、活性エステル系硬化剤及びカルボジイミド系硬化剤から選ばれる1種以上の硬化剤を含む、請求項11に記載の樹脂シート。
【請求項13】
(E)成分が、活性エステル系硬化剤を含む、請求項12に記載の樹脂シート。
【請求項14】
樹脂組成物層が、(F)硬化促進剤をさらに含む、請求項1~3、5~13の何れか1項に記載の樹脂シート。
【請求項15】
(G)成分が、マレイミド基を有する、請求項1~3、5~14の何れか1項に記載の樹脂シート。
【請求項16】
支持体と接しない面を外気に露出し190℃で30分間加熱処理した後の樹脂組成物層の重量減少率が、1質量%~10質量%となる、請求項1~3、5~15の何れか1項に記載の樹脂シート。
【請求項17】
樹脂組成物層の硬化後の誘電正接(Df)が、10GHz、23℃で測定した場合、0.0090以下である、請求項1~3、5~16の何れか1項に記載の樹脂シート。
【請求項18】
樹脂組成物層の100℃における溶融粘度が、50,000poise以下である、請求項1~3、5~17の何れか1項に記載の樹脂シート。
【請求項19】
下記(I)及び(II)の工程を含むプリント配線板の製造方法。
(I)請求項1~3、5~18の何れか1項に記載の樹脂シートを、樹脂シートの樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する工程
(II)樹脂組成物層を硬化して絶縁層を形成する工程
【請求項20】
(A)エポキシ樹脂、(B)有機溶剤、(C)無機充填材、(D)応力緩和材、及び(G)ラジカル重合性化合物を含み、
(B)成分が、沸点120℃以上220℃未満の有機溶剤を含み、
(B)成分中のトルエンの含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、0質量%~9質量%であり、
(B)成分中の沸点120℃未満の有機溶剤の含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、0質量%~30質量%であり、
(C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、73.4質量%以上である、樹脂組成物。
【請求項21】
(A)エポキシ樹脂、(B)有機溶剤、(C)無機充填材、(D)応力緩和材、及び(G)ラジカル重合性化合物を含み、
(B)成分中のトルエンの含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、0質量%~9質量%であり、
(B)成分中の沸点120℃以上220℃未満の有機溶剤の含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、85質量%以上であり、
(C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、73.4質量%以上である、樹脂組成物。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
当審において特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(1)取消理由1(新規性)
本件特許の請求項1~3、5~7、9~21に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。
(2)取消理由2(進歩性)
本件特許の請求項1~21に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(3)引用文献一覧(申立人が提出した甲○号証は以下「甲○」という。)
甲1:特開2020-158704号公報
引用文献1:特開2016-39042号公報(当審において職権で引用する文献)
2 当審における判断
(1)引用文献の記載、発明
甲1には、次の記載がある(なお、下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。また、「・・・」は省略を示す。以下同様。)。
「【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂及び無機充填材を含む樹脂組成物に関する。」
「【0046】
<(D)粘着性柔軟化剤>
本発明の樹脂組成物は、(D)粘着性柔軟化剤を含有する。
【0047】
(D)粘着性柔軟化剤は、熱硬化性樹脂の硬化物に柔軟性を付与する柔軟化剤のうち、硬化物の粘着性を高くする性質を有する成分を意味する。(D)粘着性柔軟化剤は、硬化物の粘着性を高くする性質を有する公知の柔軟化剤を広く用いることができる。(D)粘着性柔軟化剤としては、例えば、ポリブタジエン構造を有する樹脂(以下「ポリブタジエン樹脂」という)、ポリロタキサン樹脂、ポリイミド樹脂、ダイマー酸骨格を有するマレイミド樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。」
「【0198】
<実施例1>
ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学社製「YX4000HK」、エポキシ当量約185g/eq.)5部、ナフタレン型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学社製「ESN475V」、エポキシ当量約332g/eq.)5部、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂(三菱化学社製「YL7760」、エポキシ当量約238g/eq.)10部、シクロヘキサン型エポキシ樹脂(三菱化学社製「ZX1658GS」、エポキシ当量約135g/eq.)2部、合成例1で得たポリイミドブタジエン樹脂(不揮発成分50質量%)40部、及びシクロヘキサノン10部の混合溶剤に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、そこへ、トリアジン骨格含有クレゾールノボラック系硬化剤(DIC社製「LA-3018-50P」、水酸基当量約151、不揮発分50%の2-メトキシプロパノール溶液)4部、活性エステル系硬化剤(DIC社製「EXB-8000L-65M」、活性基当量約220、不揮発成分65質量%のMEK溶液)6部、球形シリカ(アドマテックス社製「SC2500SQ」、平均粒径0.5μm、比表面積11.2m2/g、シリカ100部に対してN-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM573)1部で表面処理したもの)40部、コア-シェル型グラフト共重合体ゴム粒子(ダウ・ケミカル日本社製「EXL2655」)6部、アミン系硬化促進剤(4-ジメチルアミノピリジン(DMAP))0.2部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散した後に、カートリッジフィルター(ROKITECHNO社製「SHP020」)で濾過して、樹脂組成物を調製した。」
「【0203】
<実施例6>
合成例1で得たポリイミドブタジエン樹脂(不揮発成分50質量%)40部を使用する代わりに、ビスマレイミド樹脂(DM社製、「BMI689」)20部を使用したこと以外、実施例1と同じ操作を行って、樹脂組成物を調製した。」
「【0209】
<試験例1:柔軟性(MIT耐折性)の評価>
各実施例及び比較例の樹脂組成物をアルキド系離型剤で処理されたPETフィルム(厚さ38μm)の離型処理面上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが40μmになるよう、ダイコータにて均一に塗布し、80~120℃(平均100℃)で6分間乾燥させて、樹脂シートを得た。」
「【0215】
試験例1で得た樹脂シートを、バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ(株)製、2ステージビルドアップラミネーター、CVP700)を用いて、樹脂組成物層が内層回路基板と接するように、内層回路基板の両面にラミネートした。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とし、130℃、圧力0.74MPaにて45秒間圧着させることにより実施した。次いで、120℃、圧力0.5MPaにて75秒間熱プレスを行った。
【0216】
樹脂シートがラミネートされた内層回路基板を、100℃の温度条件で、100℃のオーブンに投入後30分間、次いで180℃の温度条件で、180℃のオーブンに移し替えた後30分間、熱硬化して絶縁層を形成した。これを「評価用基板」とする。」
「【0219】
【表1】
[図:0001422427000001.jpg]
」
以上の記載を総合し、特に実施例6に着目すると、甲1には以下の発明(以下それぞれを「甲1シート発明」、「甲1樹脂発明」という。)が記載されている。
[甲1シート発明]
「ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学社製「YX4000HK」、エポキシ当量約185g/eq.)5部、ナフタレン型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学社製「ESN475V」、エポキシ当量約332g/eq.)5部、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂(三菱化学社製「YL7760」、エポキシ当量約238g/eq.)10部、シクロヘキサン型エポキシ樹脂(三菱化学社製「ZX1658GS」、エポキシ当量約135g/eq.)2部、ビスマレイミド樹脂(DM社製、「BMI689」)20部、及び、シクロヘキサノン10部の混合溶剤に撹拌しながら加熱溶解させ、室温にまで冷却した後、そこへ、トリアジン骨格含有クレゾールノボラック系硬化剤(DIC社製「LA-3018-50P」、水酸基当量約151、不揮発分50%の2-メトキシプロパノール溶液)4部、活性エステル系硬化剤(DIC社製「EXB-8000L-65M」、活性基当量約220、不揮発成分65質量%のMEK溶液)6部、球形シリカ(アドマテックス社製「SC2500SQ」、平均粒径0.5μm、比表面積11.2m2/g、シリカ100部に対してN-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM573)1部で表面処理したもの)40部、コア-シェル型グラフト共重合体ゴム粒子(ダウ・ケミカル日本社製「EXL2655」)6部、アミン系硬化促進剤(4-ジメチルアミノピリジン(DMAP))0.2部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散した後に、カートリッジフィルター(ROKITECHNO社製「SHP020」)で濾過して、樹脂組成物を調整し、
前記樹脂組成物をアルキド系離型剤で処理されたPETフィルム(厚さ38μm)の離型処理面上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが40μmになるよう、ダイコータにて均一に塗布し、80~120℃(平均100℃)で6分間乾燥させて得た、樹脂シート。」
[甲1樹脂発明]
「ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学社製「YX4000HK」、エポキシ当量約185g/eq.)5部、ナフタレン型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学社製「ESN475V」、エポキシ当量約332g/eq.)5部、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂(三菱化学社製「YL7760」、エポキシ当量約238g/eq.)10部、シクロヘキサン型エポキシ樹脂(三菱化学社製「ZX1658GS」、エポキシ当量約135g/eq.)2部、ビスマレイミド樹脂(DM社製、「BMI689」)20部、及び、シクロヘキサノン10部の混合溶剤に撹拌しながら加熱溶解させ、室温にまで冷却した後、そこへ、トリアジン骨格含有クレゾールノボラック系硬化剤(DIC社製「LA-3018-50P」、水酸基当量約151、不揮発分50%の2-メトキシプロパノール溶液)4部、活性エステル系硬化剤(DIC社製「EXB-8000L-65M」、活性基当量約220、不揮発成分65質量%のMEK溶液)6部、球形シリカ(アドマテックス社製「SC2500SQ」、平均粒径0.5μm、比表面積11.2m2/g、シリカ100部に対してN-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM573)1部で表面処理したもの)40部、コア-シェル型グラフト共重合体ゴム粒子(ダウ・ケミカル日本社製「EXL2655」)6部、アミン系硬化促進剤(4-ジメチルアミノピリジン(DMAP))0.2部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散した後に、カートリッジフィルター(ROKITECHNO社製「SHP020」)で濾過して調整された、樹脂組成物。」
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1シート発明とを対比する。
(ア)各成分について
甲1シート発明の「ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学社製「YX4000HK」、エポキシ当量約185g/eq.)」、「ナフタレン型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学社製「ESN475V」、エポキシ当量約332g/eq.)」、「ビスフェノールAF型エポキシ樹脂(三菱化学社製「YL7760」、エポキシ当量約238g/eq.)」及び「シクロヘキサン型エポキシ樹脂(三菱化学社製「ZX1658GS」、エポキシ当量約135g/eq.)」は本件発明1の「(A)エポキシ樹脂」に相当し、以下同様に、
「ビスマレイミド樹脂(DM社製、「BMI689」)」は本件明細書の【0130】を踏まえると「(G)ラジカル重合性化合物」に、
「シクロヘキサノン」、「トリアジン骨格含有クレゾールノボラック系硬化剤(DIC社製「LA-3018-50P」、水酸基当量約151、不揮発分50%の2-メトキシプロパノール溶液)」中の「2-メトキシプロパノール」、「活性エステル系硬化剤(DIC社製「EXB-8000L-65M」、活性基当量約220、不揮発成分65質量%のMEK溶液)」中の「MEK」は、「(B)有機溶剤」に、
「球形シリカ(アドマテックス社製「SC2500SQ」、平均粒径0.5μm、比表面積11.2m2/g、シリカ100部に対してN-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM573)1部で表面処理したもの)」は本件明細書の【0049】を踏まえると「(C)無機充填材」に、
「コア-シェル型グラフト共重合体ゴム粒子(ダウ・ケミカル日本社製「EXL2655」)」は本件明細書の【0062】を踏まえると「(D)応力緩和材」に、それぞれ相当する。
(イ)有機溶剤について
甲1シート発明の有機溶剤において、「シクロヘキサノン」は沸点が156℃であることは技術常識であり、有機溶剤中に占める割合は71質量%(=10部/(10部+(4部×0.5)+(6部×0.35)))となり、
「2-メトキシプロパノール」は沸点が130℃であることは技術常識であり、有機溶剤中に占める割合は14質量%(=(4部×0.5)/(10部+(4部×0.5)+(6部×0.35)))となり、
「MEK」は沸点が80℃であることは技術常識であり、有機溶剤中に占める割合は15質量%(=(6部×0.35)/(10部+(4部×0.5)+(6部×0.35)))となる。
また、甲1シート発明の有機溶剤中にトルエンは含まれていない。
そうすると、甲1シート発明は、本件発明1の「(B)成分が、沸点120℃以上220℃未満の有機溶剤を含み、(B)成分中のトルエンの含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、0質量%~9質量%であり、(B)成分中の沸点120℃未満の有機溶剤の含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、0質量%~30質量%である」ことを満たす。
(ウ)樹脂シートについて
甲1シート発明の「樹脂シート」は本件発明1の「樹脂シート」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1シート発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。
[一致点1]
「支持体と、当該支持体上に設けられた樹脂組成物層と、を有する樹脂シートであって、
樹脂組成物層が、(A)エポキシ樹脂、(B)有機溶剤、(C)無機充填材、(D)応力緩和材、及び(G)ラジカル重合性化合物を含み、
(B)成分が、沸点120℃以上220℃未満の有機溶剤を含み、
(B)成分中のトルエンの含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、0質量%~9質量%であり、
(B)成分中の沸点120℃未満の有機溶剤の含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、0質量%~30質量%である、樹脂シート。」
[相違点1]
(C)無機充填材の含有量について、
本件発明1は、「樹脂組成物層中の(C)成分の含有量が、樹脂組成物層中の不揮発成分を100質量%とした場合、73.4質量%以上である」のに対し、
甲1シート発明は、「球形シリカ(アドマテックス社製「SC2500SQ」、平均粒径0.5μm、比表面積11.2m2/g、シリカ100部に対してN-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM573)1部で表面処理したもの)40部」、すなわち、樹脂組成物の不揮発分94.1部(【表1】参照)における球形シリカ(「(C)無機充填材」に相当)の含有量が43質量%(=40部/94.1部)である点。
イ 判断
まず、相違点1は実質的なものであるから、本件発明1は甲1シート発明ではない。
そして、甲1の【0027】~【0030】、【0036】を参酌すると、甲1シート発明の「球形シリカ」は「(B)無機充填材」として含有されるものであり、その含有量は、「より柔軟性に優れた硬化物を得る観点から、好ましくは70質量%以下、・・・十分な機械的強度を有する硬化物を得る観点から、・・・好ましくは20質量%以上」とされているから、甲1シート発明に求められる柔軟性や機械的強度に応じて球形シリカの含有量を20~70質量%の範囲で増減することは当業者が容易に想到し得たことであるといえるものの、相違点1に係る本件発明1の構成のように、「73.4質量%以上」とすることまでが当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
ウ 申立人の主張について
申立人は、「甲第1号証の【0036】には、「(B)無機充填材の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、より柔軟性に優れた硬化物を得る観点から、好ましくは70質量%以下、・・・」と記載があるが、上限値の記載はあくまでも例示に過ぎず、柔軟性や機械的強度などの所望の特性に応じて、当業者は(B)無機充填材の含有量を適宜調整するものと思料する。」(意見書の2ページ10~18行)と主張する。
しかしながら、甲1シート発明において当業者が(B)無機充填材の含有量を適宜調整する際には、甲1に記載の上限値である70質量%以下で調整することが自然であり、あえて70質量%を超える範囲に調整することが容易に想到し得たことであったとはいえない。
また、申立人は、「本件特許発明の解決しようとする課題・・・である、硬化後の反りを抑制できること、及びその解決手段としての無機充填材の含有量を約75質量%以上と多くすることは、以下の甲第7号証の1~甲第7号証の5に記載があるように、周知技術であった」(意見書の3ページ22~25行)とも主張する。
しかしながら、甲1には樹脂組成物の硬化後の反りに関する記載はないから、申立人が主張する周知技術を甲1シート発明に適用する動機はない。
したがって、申立人の主張は採用できない。
エ 小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1シート発明ではなく、甲1シート発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明2について
ア 対比
本件発明2と甲1シート発明とを対比すると、その相当関係は上記(2)アで説示したことと同様である。
そして、上記(2)アで説示したように、甲1シート発明の有機溶剤は、沸点156℃の「シクロヘキサノン」を71質量%含有し、沸点130℃の「2-メトキシプロパノール」を14質量%含有し、それらの合計は85質量%であるから、本件発明2の「(B)成分中の沸点120℃以上220℃未満の有機溶剤の含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、85質量%以上である」ことを満たす。
そうすると、本件発明2と甲1シート発明は以下の一致点2で一致し、上記相違点1において相違する。
[一致点2]
支持体と、当該支持体上に設けられた樹脂組成物層と、を有する樹脂シートであって、
樹脂組成物層が、(A)エポキシ樹脂、(B)有機溶剤、(C)無機充填材 、(D)応力緩和材 、及び(G)ラジカル重合性化合物を含み、
(B)成分が、沸点120℃以上220℃未満の有機溶剤を含み、
(B)成分中のトルエンの含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、0質量%~9質量%であり、
(B)成分中の沸点120℃以上220℃未満の有機溶剤の含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、85質量%以上である、樹脂シート。」
[相違点1]
上記(2)アで説示したとおりである。
イ 判断
上記(2)イで説示したとおりである。
ウ 申立人の主張とそれについての判断
上記(2)ウで説示したとおりである。
エ 小括
したがって、本件発明2は、甲1シート発明ではなく、甲1シート発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)請求項3、5~19に係る発明について
本件発明3、5~19は、本件発明1又は2の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(2)又は(3)で検討したのと同じ理由により、本件発明3、5~7、9~19は甲1シート発明ではなく、本件発明3、5~19は甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)本件発明20について
ア 対比
本件発明20と甲1樹脂発明を対比すると、その相当関係は上記(2)アで説示したことと同様である。
そうすると、本件発明20と甲1樹脂発明は以下の一致点3一致し、上記相違点1において相違する。
[一致点3]
「(A)エポキシ樹脂、(B)有機溶剤、(C)無機充填材、(D)応力緩和材、及び(G)ラジカル重合性化合物を含み、
(B)成分が、沸点120℃以上220℃未満の有機溶剤を含み、
(B)成分中のトルエンの含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、0質量%~9質量%であり、
(B)成分中の沸点120℃未満の有機溶剤の含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、0質量%~30質量%である、樹脂組成物。」
[相違点1]
上記(2)アで説示したとおりである。
イ 判断
上記(2)イで説示したとおりである。
ウ 申立人の主張とそれについての判断
上記(2)ウで説示したとおりである。
エ 小括
したがって、本件発明20は、甲1樹脂発明ではなく、甲1樹脂発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(6)本件発明21について
ア 対比
本件発明21と甲1樹脂発明を対比すると、その相当関係は上記(3)アで説示したことと同様である。
そうすると、本件発明21と甲1樹脂発明は以下の一致点4一致し、上記相違点1において相違する。
[一致点4]
「(A)エポキシ樹脂、(B)有機溶剤、(C)無機充填材、(D)応力緩和材、及び(G)ラジカル重合性化合物を含み、
(B)成分中のトルエンの含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、0質量%~9質量%であり、
(B)成分中の沸点120℃以上220℃未満の有機溶剤の含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、85質量%以上である、樹脂組成物。」
[相違点1]
上記(2)イで説示したとおりである。
イ 判断
上記(2)イで説示したとおりである。
ウ 申立人の主張とそれについての判断
上記(2)ウで説示したとおりである。
エ 小括
したがって、本件発明21は、甲1樹脂発明ではなく、甲1樹脂発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(7)まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1~3、5~7、9~21は甲1に記載された発明ではなく、本件発明1~3、5~21は、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立理由の概要
(1)申立理由1(甲1を主引例とする新規性)
本件特許の請求項4、8に係る発明は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2)申立理由1、2(甲3を主引例とする新規性、進歩性)
本件特許の請求項1~21に係る発明は、甲3に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
また、本件特許の請求項1~21に係る発明は、甲3に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(3)申立理由3(サポート要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
ア 本件特許に係る発明の課題は「ラミネート後のムラの発生を抑えることができ且つ硬化後の反りを抑制できる樹脂シートを提供すること」(【0006】)であるところ、実施例で用いられている「(G)ラジカル重合性化合物」は、マレイミド基を有する化合物である、BMI-689又はマレイミド化合物の2種類のみであり、マレイミド化合物がプリント配線板の樹脂組成物層において反りを抑制できることが技術常識(甲3、甲4)である。
そうすると、マレイミド基を有しないラジカル重合性化合物を包含する本件特許の請求項1~14、16~21に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できない。
イ 本件特許に係る発明の課題は「ラミネート後のムラの発生を抑えることができ且つ硬化後の反りを抑制できる樹脂シートを提供すること」(【0006】)であるところ、プリント配線板のエポキシ樹脂組成物層が硬化剤を含有することで反りやムラを抑制できることが技術常識(甲5)である。この点、本件明細書の実施例では、何らかの「(E)硬化剤」を用いた場合のみが示されているに過ぎないにもかかわらず、本件特許の請求項1~10、14~21に係る発明は、「(E)硬化剤」を用いない場合をも包含している。
そうすると、硬化剤を含有しないものも含む本件特許の請求項1~10、14~21に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できない。
(4)申立人が提出した証拠
甲1:特開2020-158704号公報
甲2の1:「2-メトキシ-1-プロパノール」、[online]、2022年1月21日、総務省消防庁ホームページ、[2024年4月1日検索]、インターネット<URL:https://internal.fdma.go.jp/kiken-info/material/m_27970.html>
甲2の2:「2-Methoxypropan-1-ol」、東京化成工業株式会社ホームページ、<URL:https://www.tcichemicals.com/JP/ja/p/M3614>
甲2の3:特開2022-124401号公報
甲3:特開2016-74849号公報
甲4の1:特開2019-178198号公報
甲4の2:特開2011-219674号公報
甲5の1:特開2016-79366号公報
甲5の2:特開2016-84413号公報
甲5の3:特開2013-203950号公報
甲5の4:特開2018-125378号公報
甲6:特許第7367891号公報
甲7の1:特開2021-21050号公報(意見書に添付して提出)
甲7の2:特開2017-179279号公報(同上)
甲7の3:特開2018-12747号公報(同上)
甲7の4:特開2017-178991号公報(同上)
甲7の5:特開2018-12775号公報(同上)
2 当審における判断
(1)申立理由1(甲1を主引例とする新規性)について
ア 甲1に記載された甲1シート発明
上記第4の2(1)で説示したとおり。
イ 本件発明4について
本件発明4は本件訂正により削除されたから申立ての対象が存在しないものとなった。
ウ 本件発明8について
本件発明8と甲1シート発明を対比すると、「(D)応力緩和材」について、本件発明8では、「ポリブタジエン構造及びポリカーボネート構造から選ばれる1種以上の構造を有する樹脂を含む非粒子状の応力緩和材を含む」のに対し、甲1シート発明の「コア-シェル型グラフト共重合体ゴム粒子(ダウ・ケミカル日本社製「EXL2655」)」は、そのような材料から選ばれるものではない点で相違する。
そして、当該相違点は実質的なものである。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明8は甲1シート発明ではない。
(2)申立理由1、2(甲3を主引例とする新規性、進歩性)について
ア 甲3に記載された発明
(ア)甲3の実施例10に基づく発明
甲3の【0094】、【0096】【表2】、【0093】の注釈欄を参照し、特に実施例10に着目すると、甲3には以下の2つの発明(以下それぞれを「甲3フィルム発明A」、「甲3樹脂発明A」という。)が記載されている。
[甲3フィルム発明A]
「下記の各成分を配合し、混練分散・調整した樹脂組成物をキャリアフィルムに塗布・乾燥して片面に熱硬化性樹脂層を有する乾燥塗膜を得、次いで、保護フィルムを樹脂層上に積層して得た、ドライフィルムであって、
前記樹脂組成物が、
熱硬化性樹脂成分としてエポキシ樹脂HP-4032及びエポキシ樹脂ZX-1059を含有し、
硬化剤としてトリアジン含有フェノールノボラック樹脂LA-7054を含有し、
硬化促進剤としてホスホニウム塩2E4MZを含有し、
マレイミド化合物としてフェニルメタンマレイミドの縮合物BMI-2300を含有し、
フィラーとして球状シリカSO-C2を含有し、
溶剤としてシクロヘキサノン(沸点150°)193部、イプゾール150(沸点184~205℃)71部及びメチルエチルケトン(沸点79.5℃)16部を含有する、ドライフィルム。」
[甲3樹脂発明A]
「熱硬化性樹脂成分としてエポキシ樹脂HP-4032及びエポキシ樹脂ZX-1059を含有し、
硬化剤としてトリアジン含有フェノールノボラック樹脂LA-7054を含有し、
硬化促進剤としてホスホニウム塩2E4MZを含有し、
マレイミド化合物としてフェニルメタンマレイミドの縮合物BMI-2300を含有し、
フィラーとして球状シリカSO-C2を含有し、
溶剤としてシクロヘキサノン(沸点150°)193部、イプゾール150(沸点184~205℃)71部及びメチルエチルケトン(沸点79.5℃)16部を含有する、樹脂組成物。」
(イ)甲3の実施例27に基づく発明
甲3の【0094】、【0096】【表2】、【0093】の注釈欄を参照し、特に実施例27に着目すると、甲3には以下の2つの発明(以下それぞれを「甲3フィルム発明B」、「甲3樹脂発明B」という。)も記載されている。
[甲3フィルム発明B]
「下記の各成分を配合し、混練分散・調整した樹脂組成物をキャリアフィルムに塗布・乾燥して片面に熱硬化性樹脂層を有する乾燥塗膜を得、次いで、保護フィルムを樹脂層上に積層して得た、ドライフィルムであって、
前記樹脂組成物が、
熱硬化性樹脂成分としてエポキシ樹脂HP-4032及びエポキシ樹脂ZX-1059を含有し、
硬化剤としてトリアジン含有フェノールノボラック樹脂LA-7054を含有し、
硬化促進剤としてホスホニウム塩2E4MZを含有し、
マレイミド化合物としてフェニルメタンマレイミドの縮合物BMI-2300を含有し、
フィラーとして球状シリカSO-C2を含有し、
高分子樹脂としてコアシェルゴム粒子AC-3816を含有し、
溶剤としてトルエン(沸点110℃)57部、シクロヘキサノン(沸点150°)211部及びメチルエチルケトン(沸点79.5℃)20部を含有する、ドライフィルム。」
[甲3樹脂発明B]
「熱硬化性樹脂成分としてエポキシ樹脂HP-4032及びエポキシ樹脂ZX-1059を含有し、
硬化剤としてトリアジン含有フェノールノボラック樹脂LA-7054を含有し、
硬化促進剤としてホスホニウム塩2E4MZを含有し、
マレイミド化合物としてフェニルメタンマレイミドの縮合物BMI-2300を含有し、
フィラーとして球状シリカSO-C2を含有し、
高分子樹脂としてコアシェルゴム粒子AC-3816を含有し、
溶剤としてトルエン(沸点110℃)57部、シクロヘキサノン(沸点150°)211部及びメチルエチルケトン(沸点79.5℃)20部を含有する、樹脂組成物。」
イ 甲3フィルム発明A又は甲3樹脂発明Aを主引例とする新規性及び進歩性について
(ア)本件発明1について
a 対比
本件発明1と甲3フィルム発明Aを対比する。
(A)
甲3フィルム発明Aの「キャリアフィルム」、「熱硬化性樹脂層」、「ドライフィルム」はそれぞれ、本件発明1の「支持体」、「樹脂組成物層」、「樹脂シート」に相当する。
(B-1)
甲3フィルム発明Aの「熱硬化性樹脂成分としてエポキシ樹脂HP-4032及びエポキシ樹脂ZX-1059」、「マレイミド化合物としてフェニルメタンマレイミドの縮合物BMI-2300」、「フィラーとして球状シリカSO-C2」、はそれぞれ、「(A)エポキシ樹脂」、「(G)ラジカル重合性化合物」、「(C)無機充填材」に相当する。
(C)
甲3フィルム発明Aの溶剤はトルエンを含有しないから、本件発明1の「(B)成分中のトルエンの含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、0質量%~9質量%であ」ることに相当する。
(D-1)
甲3フィルム発明Aの「シクロヘキサノン(沸点150°)」は、本件発明1の「(B)成分が、沸点120℃以上220℃未満の有機溶剤」に相当する。
(E)
甲3フィルム発明Aの「溶剤としてシクロヘキサノン(沸点150°)193部、イプゾール150(沸点184~205℃)71部及びメチルエチルケトン(沸点79.5℃)16部を含有する」ことは、
溶剤全体においてメチルエチルケトン(沸点79.5℃)を5.7質量%=(16部÷(193部+71部+16部))含有することになるから、
本件発明1の「(B)成分中の沸点120℃未満の有機溶剤の含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、0質量%~30質量%である」ことに相当する。
以上を総合すると、本件発明1と甲3フィルム発明Aは少なくとも以下の点において相違する。
[相違点A(応力緩和材)]
樹脂組成物層が、本件発明1は、「(D)応力緩和材」を含有するのに対し、甲3フィルム発明Aは、応力緩和材に相当する成分を含有していない点。
b 判断
まず、相違点Aは実質的なものであるから、本件発明1は甲3フィルム発明Aではない。
そして、甲3には、トルエンを含有しない態様のまま、応力緩和材に相当する成分を含有するようにすることについて記載も示唆もない。またそのようにすることが周知技術であるとの証拠も提出されていないし、技術常識であるともいえないから、甲3フィルム発明Aにおいて、相違点Aに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3フィルム発明Aではなく、甲3フィルム発明Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)本件発明2について
甲3フィルム発明Aと本件発明2を対比すると、その相当関係は上記(A)、(B-1)、(C)で説示したことに加え、以下のとおりである。
(D-2)
甲3フィルム発明Aの「溶剤としてシクロヘキサノン(沸点150°)193部、イプゾール150(沸点184~205℃)71部及びメチルエチルケトン(沸点79.5℃)16部を含有する」ことは、
溶剤全体におけるシクロヘキサノン(沸点150°)とイプゾール150(沸点184~205℃)を94質量%(=(193部+71部)÷(193部+71部+16部))含有することになるから、本件発明2の「(B)成分中の沸点120℃以上220℃未満の有機溶剤の含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、85質量%以上である」ことに相当する。
以上を総合すると、本件発明2と甲3フィルム発明Aは少なくとも相違点Aにおいて相違する。
そして、その判断は、上記(ア)bで説示したとおりである。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲3フィルム発明Aではなく、甲3フィルム発明Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ)本件発明3、5~19について
本件発明3、5~19は、本件発明1又は2の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(ア)又は(イ)で検討したのと同じ理由により、甲3フィルム発明Aではなく、甲3フィルム発明Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(エ)本件発明20について
本件発明20と甲3樹脂発明Aを対比すると、その相当関係は、上記(ア)で説示したことと同様である。
そして、本件発明20と甲3樹脂発明Aは少なくとも相違点Aにおいて相違する。
そして、その判断についても上記(ア)bで説示したとおりである。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明20は、甲3樹脂発明Aではなく、甲3樹脂発明Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(オ)本件発明21について
本件発明21と甲3樹脂発明Aを対比すると、その相当関係は、上記(イ)で説示したことと同様である。
そして、本件発明21と甲3樹脂発明Aは少なくとも相違点Aにおいて相違する。
そして、その判断についても上記(ア)bで説示したとおりである。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明21は、甲3樹脂発明Aではなく、甲3樹脂発明Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 甲3フィルム発明B又は甲3樹脂発明Bを主引例とする新規性及び進歩性について
(ア)本件発明1について
a 対比
本件発明1と甲3フィルム発明Bを対比する。
(A)
甲3フィルム発明Bの「キャリアフィルム」、「熱硬化性樹脂層」、「ドライフィルム」はそれぞれ、本件発明1の「支持体」、「樹脂組成物層」、「樹脂シート」に相当する。
(B)
甲3フィルム発明Bの「熱硬化性樹脂成分としてエポキシ樹脂HP-4032及びエポキシ樹脂ZX-1059」、「マレイミド化合物としてフェニルメタンマレイミドの縮合物BMI-2300」、「フィラーとして球状シリカSO-C2」、「高分子樹脂としてコアシェルゴム粒子AC-3816」はそれぞれ、本件発明1の「(A)エポキシ樹脂」、「(G)ラジカル重合性化合物」、「(C)無機充填材」、「(D)応力緩和材」に相当する。
(D-1)
甲3フィルム発明Bの「シクロヘキサノン(沸点150°)」は、本件発明1の「(B)成分が、沸点120℃以上220℃未満の有機溶剤」に相当する。
(E)
甲3フィルム発明Bの「 溶剤としてトルエン(沸点110℃)57部、シクロヘキサノン(沸点150°)211部及びメチルエチルケトン(沸点79.5℃)20部を含有する」ことは、
溶剤全体においてメチルエチルケトン(沸点79.5℃)を6.9質量%=(20部÷(57部+211部+20部))含有することになるから、本件発明1の「(B)成分中の沸点120℃未満の有機溶剤の含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、0質量%~30質量%である」ことに相当する。
以上を総合すると、本件発明1と甲3フィルム発明Bは少なくとも以下の点において相違する。
[相違点B(トルエン)]
全(B)成分中のトルエンの含有量について、
本件発明1は「0質量%~9質量%であ」るのに対し、
甲3フィルム発明Bは、「溶剤としてトルエン(沸点110℃)57部、シクロヘキサノン(沸点150°)211部及びメチルエチルケトン(沸点79.5℃)20部を含有する」、すなわち、トルエンの含有量が20質量%((=57部÷(57部+211部+20部))である点。
b 判断
まず、相違点Bは実質的なものであるから、本件発明1は甲3フィルム発明Bではない。
そして、甲3には、高分子樹脂としてコアシェルゴム粒子AC-3816(「(D)応力緩和材」に相当)を含有する態様のまま、トルエンの含有量を「全(B)成分を100質量%とした場合、0質量%~9質量%」まで低減させることについての記載も示唆もない。また、そのようにすることが周知技術であるとの証拠も提出されていないし、技術常識であるともいえない。
よって、甲3フィルム発明Bにおいて、相違点Bに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3フィルム発明Bではなく、甲3フィルム発明Bに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)本件発明2について
甲3フィルム発明Bと本件発明2を対比すると、その相当関係は上記(A)、(B)、(C)で説示したことに加え、以下のとおりである。
(D-2)
甲3フィルム発明Bの「溶剤としてトルエン(沸点110℃)57部、シクロヘキサノン(沸点150°)211部及びメチルエチルケトン(沸点79.5℃)20部を含有する」ことは、
溶剤全体におけるシクロヘキサノン(沸点150°)を73質量%(=211部÷(57部+211部+20部))含有することになるから、
本件発明2の「(B)成分中の沸点120℃以上220℃未満の有機溶剤の含有量が、全(B)成分を100質量%とした場合、85質量%以上である」ことと、「(B)成分中に沸点120℃以上220℃未満の有機溶剤を含有する」という限りにおいて一致する。
以上を総合すると、本件発明2と甲3フィルム発明Bは少なくとも相違点Aにおいて相違する。
そして、その判断は、上記(ア)で説示したとおりである。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲3フィルム発明Bではなく、甲3フィルム発明Bに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ)本件発明3、5~19について
本件発明3、5~19は、本件発明1又は2の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(ア)又は(イ)で検討したのと同じ理由により、甲3フィルム発明Bではなく、甲3フィルム発明Bに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない
(エ)本件発明20について
本件発明20と甲3樹脂発明Bを対比すると、その相当関係は、上記(ア)で説示したことと同様である。
そして、本件発明20と甲3樹脂発明Bは少なくとも相違点Bにおいて相違する。
そして、その判断についても上記(ア)bで説示したとおりである。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明20は、甲3樹脂発明Bではなく、甲3樹脂発明Bに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(オ)本件発明21について
本件発明21と甲3樹脂発明Bを対比するに、その相当関係は、上記(イ)で説示したことと同様である。
そして、本件発明21と甲3樹脂発明Bは少なくとも相違点Bにおいて相違する。
そして、その判断についても上記(ア)bで説示したとおりである。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明21は、甲3樹脂発明Bではなく、甲3樹脂発明Bに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 申立人の主張について
申立人は申立書の44~64ページにおいて、甲3の特に実施例27~30からゴム状粒子AC-3816Nを含有する構成を、同様に実施例10、11、26から溶剤中のトルエンの含有量が0質量%である構成を認定した上で、申立書の64ページ記載の甲3発明を認定して、本件発明との対比を行っている。
しかしながら、甲3には、ゴム状粒子AC-3816Nを含有する構成及び溶剤中のトルエンの含有量が0質量%である構成を具備するようにすることは記載も示唆もされていないから、申立人の主張はその前提を欠くものである。
したがって、申立人の主張は採用できない。
オ 小括
以上のとおりであるから、本件発明1~3、5~21は、甲3に記載された発明ではなく、甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)申立理由3(サポート要件)について
ア 上記1(2)アの主張について
本件明細書(特に【0014】、【0129】)において、ラジカル重合性化合物は任意成分とされているし、解決すべき課題(ムラ、反りの抑制)との関連についての記載も示唆もない。また、ラジカル重合性化合物を添加していない実施例3、7においても、「反り」の評価結果は良好となっている。
したがって、ラジカル重合性化合物の種類を特定していない本件発明1~3、5~14、16~21においても本件課題を解決できることを当業者であれば認識できる。
イ 上記1(2)イの主張について
本件明細書(特に【0014】、【0103】)において、硬化剤は任意成分とされているし、解決すべき課題(ムラ、反りの抑制)との関連についての記載も示唆もない。また、比較例2、35においては、硬化剤を添加しているにもかかわらず「反り」の評価結果は「×」となっている。そうすると、硬化剤の添加は、本件発明の課題を解決するための必要条件であるとまではいえない。
したがって、ラジカル重合性化合物の種類を特定していない本件発明1~3、5~10、14~21においても課題を解決できることを当業者であれば認識できる。
第6 むすび
以上のとおり、請求項1~3、5~21に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項1~3、5~21に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項4に係る特許についての特許異議の申立ては、本件訂正により申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700365