特許異議申立
2018-700171
組成物製造用粉末状セルロースナノファイバー、組成物製造用粉末状セルロースナノファイバーの製造方法、ならびに組成物
- 審判番号
- 2018-700171
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-008232外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年02月26日
- 審決日
- 2018年12月20日
- 公報発行日
- 2019年03月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】スターライト工業株式会社
- 【権利者代理人】白井 重隆
- 【異議申立人】野中 恵
- 【異議申立人】中西 恒裕
- 分類
- P1651.121-YAA(C08L) / P1651.161-YAA(C08L) / P1651.537-YAA(C08L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条の2、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6189559号発明「組成物製造用粉末状セルロースナノファイバー、組成物製造用粉末状セルロースナノファイバーの製造方法、ならびに組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6189559号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-14〕について訂正することを認める。
特許第6189559号の請求項3ないし14に係る特許を維持する。
特許第6189559号の請求項1及び2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許6189559号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし14に係る特許についての出願は、平成29年1月20日(優先権主張 平成28年5月19日)の出願であって、平成29年8月10日にその特許権の設定登録(請求項の数14)がされ、同年8月30日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、平成30年2月26日に特許異議申立人 野中 恵(以下、「特許異議申立人1」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、同年2月28日に特許異議申立人 中西 恒裕(以下、「特許異議申立人2」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし4及び9ないし14)がされ、同年5月23日付けで取消理由が通知され、同年7月30日に特許権者 スターライト工業株式会社(以下、「特許権者」という。)から意見書が提出されるとともに訂正の請求がされ、同年9月10日付けで訂正拒絶理由が通知され、同年10月2日に特許異議申立人2から上申書が提出され、同年10月12日に特許権者から意見書並びに訂正請求書、訂正明細書及び訂正特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出されたものである。
なお、平成30年10月12日に提出された手続補正書により補正された同年7月30日にされた訂正の請求による訂正は、後記第2のとおり、特許請求の範囲に関しては、一部の請求項の削除の訂正、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとする訂正又は誤記の訂正を目的とするものであり、迅速かつ効率的な審理の観点からみて、実質的な判断に影響を与えるものではないから、上記訂正には特許法120条の5第5項ただし書所定の特別の事情があると認め、上記訂正の請求について、特許異議申立人に対し、同項所定の意見書を提出する機会を与えていない。
第2 訂正の適否について
1 平成30年10月12日に提出された手続補正書による訂正請求書、訂正明細書及び訂正特許請求の範囲の補正について
平成30年10月12日に提出された手続補正書による訂正請求書、訂正明細書及び訂正特許請求の範囲の補正(以下、「本件補正」という。)は、訂正請求書における訂正事項7ないし10並びに訂正明細書及び訂正特許請求の範囲の対応箇所を補正するものであって、補正の前後で訂正の審理範囲を実質的に変更するものである。すなわち、本件補正は訂正請求書の要旨を変更するものである。
しかし、本件補正後の訂正特許請求の範囲の請求項10ないし12に記載された事項は、設定登録時の請求項10ないし12と実質的に何ら変わるものではないこと等の事情に鑑みて、その違法性を問わないこととする。
2 訂正の内容
本件補正により補正された平成30年7月30日にされた訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に、「(B)分散剤が、P-OH基、-COOH基、-SO3H基、及び/または、それらの金属塩基、ならびにイミダゾリン基の群から選ばれた少なくとも1種が結合した分散剤である、請求項1または2に記載の組成物製造用粉末状セルロースナノファイバー。」とあるのを、
「(A)未変性の粉末状のセルロースナノファイバーに対し、(B)P-OH基、-COOH基、-SO3H基、及び/または、それらの金属塩基、ならびにイミダゾリン基の群から選ばれた少なくとも1種が結合した分散剤を固形分換算で1~40重量%配合してなり、かつ嵩密度が90~200g/Lであることを特徴とする組成物製造用粉末状セルロースナノファイバー。」に訂正する。
併せて、訂正前の請求項3を引用する訂正前の請求項4、9、13及び14についても、その引用部分について同様に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に、「(A)未変性のセルロースナノファイバーの分散体であって、分散媒として水を用いた該分散体中に(B)分散剤を含み、ゼータ電位が-20~-50mVであり、さらにメディアレス分散機で分散されてなるセルロースナノファイバー分散体を乾燥することを特徴とする、請求項1~4いずれかに記載の組成物製造用粉末状セルロースナノファイバーの製造方法。」とあるのを、
「(A)未変性のセルロースナノファイバーの分散体であって、分散媒として水を用いた該分散体中に(B)分散剤を含み、ゼータ電位が-20~-50mVであり、さらにメディアレス分散機で分散されてなるセルロースナノファイバー分散体を乾燥することにより、(A)未変性の粉末状のセルロースナノファイバーに対し、(B)分散剤を固形分換算で1~40重量%配合してなり、かつ嵩密度が90~200g/Lとなした、組成物製造用粉末状セルロースナノファイバーの製造方法。」に訂正する。
併せて、訂正前の請求項5を引用する訂正前の請求項6ないし8についても、その引用部分について同様に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6に、「分散体の乾燥が、凍結乾燥、減圧乾燥、加熱乾燥、あるいは噴霧乾燥である、請求項5かに記載の組成物製造用粉末状セルロースナノファイバーの製造方法。」とあるのを、
「分散体の乾燥が、凍結乾燥、減圧乾燥、加熱乾燥、あるいは噴霧乾燥である、請求項5に記載の組成物製造用粉末状セルロースナノファイバーの製造方法。」に訂正する。
併せて、訂正前の請求項6を引用する訂正前の請求項7及び8についても、その引用部分について同様に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項9に、「請求項1~4いずれかに記載の、(A)未変性のセルロースナノファイバーおよび(B)分散剤から構成される組成物製造用粉末状セルロースナノファイバー、ならびに(C)(C-1)熱可塑性樹脂、(C-2)熱硬化性樹脂および(C-3)ゴムから選ばれたマトリックス成分を主成分とする組成物。」とあるのを、
「請求項3または4に記載の(A)未変性のセルロースナノファイバーおよび(B)分散剤から構成される組成物製造用粉末状セルロースナノファイバー、ならびに(C)(C-1)熱可塑性樹脂、(C-2)熱硬化性樹脂および(C-3)ゴムから選ばれたマトリックス成分を主成分とする組成物。」に訂正する。
併せて、訂正前の請求項9を引用する訂正前の請求項13及び14についても、その引用部分について同様に訂正する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項10に、「(C-1)熱可塑性樹脂が、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル-スチレン(AS)樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリケトン樹脂、および環状ポリオレフィン樹脂の群から選ばれた少なくとも1種である、請求項9に記載の組成物。」とあるのを、
「(A)未変性の粉末状のセルロースナノファイバーに対し、(B)分散剤を固形分換算で1~40重量%配合してなり、かつ嵩密度が90~200g/Lである組成物製造用粉末状セルロースナノファイバー、ならびに(C-1)熱可塑性樹脂をマトリックス成分の主成分とする組成物であって、(C-1)熱可塑性樹脂が、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル-スチレン(AS)樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリケトン樹脂、および環状ポリオレフィン樹脂の群から選ばれた少なくとも1種である、組成物。」に訂正する。
併せて、訂正前の請求項10を引用する訂正前の請求項13及び14についても、その引用部分について同様に訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項11に、「(C-2)熱硬化性樹脂が、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ジアリル(テレ)フタレート樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂、および熱硬化性ポリイミド樹脂の群から選ばれた少なくとも1種である請求項9に記載の組成物。」とあるのを、
「(A)未変性の粉末状のセルロースナノファイバーに対し、(B)分散剤を固形分換算で1~40重量%配合してなり、かつ嵩密度が90~200g/Lである組成物製造用粉末状セルロースナノファイバー、ならびに(C-2)熱硬化性樹脂をマトリックス成分の主成分とする組成物であって、(C-2)熱硬化性樹脂が、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ジアリル(テレ)フタレート樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂、および熱硬化性ポリイミド樹脂の群から選ばれた少なくとも1種である、組成物。」に訂正する。
併せて、訂正前の請求項11を引用する訂正前の請求項13及び14についても、その引用部分について同様に訂正する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項12に、「(C-3)ゴムが、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン- ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム(ACM)、およびフッ素ゴム(FKM)の群から選ばれた少なくとも1種である、請求項9に記載の組成物。」とあるのを、
「(A)未変性の粉末状のセルロースナノファイバーに対し、(B)分散剤を固形分換算で1~40重量%配合してなり、かつ嵩密度が90~200g/Lである組成物製造用粉末状セルロースナノファイバー、ならびに(C-3)ゴムをマトリックス成分の主成分とする組成物であって、(C-3)ゴムが、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン- ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム(ACM)、およびフッ素ゴム(FKM)の群から選ばれた少なくとも1種である、組成物。」に訂正する。
併せて、訂正前の請求項12を引用する訂正前の請求項13及び14についても、その引用部分について同様に訂正する。
(10)訂正事項10
明細書中、
「【0001】
本発明は、粉末状のナノファイバー、この製造方法、ならびに粉末状ナノファイバーを樹脂などのマトリックス成分中に分散させた組成物に関する。」とあるのを、
「【0001】
本発明は、組成物製造用粉末状のナノファイバー、この製造方法、ならびに組成物製造用粉末状ナノファイバーを樹脂などのマトリックス成分中に分散させた組成物に関する。」に訂正する。
(11)訂正事項11
明細書中、
「【0005】
本発明は、以下の(1)~(19)により構成される。
(1)(A)粉末状のナノファイバーに対し、(B)分散剤を固形分換算で1~40重量%配合してなり、かつ嵩密度が90~200g/Lであることを特徴とする粉末状ナノファイバー。
(2)(A)ナノファイバーが、セルロースナノファイバーである(1)に記載の粉末状ナノファイバー。
(3)(A)セルロースナノファイバーの平均繊維径が10~100nmである(2)に記載の粉末状ナノファイバー。
(4)(B)分散剤が、P-OH基、-COOH基、-SO3H基、及び/または、それらの金属塩基、ならびにイミダゾリン基の群から選ばれた少なくとも1種が結合した分散剤である、(1)~(3)いずれかに記載の粉末状ナノファイバー。
(5)(B)分散剤が、リン酸またはポリリン酸、リン酸またはポリリン酸の塩、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸共重合体、ポリアクリル酸の塩、ポリアクリル酸共重合体の塩、オレフィン(a)および不飽和カルボン酸(塩)(b)を必須構成単量体として含む共重合体、アルキルイミダゾリン系化合物、ならびに酸価とアミン価とを有する分散剤の群から選ばれた少なくとも1種である、(4)に記載の粉末状ナノファイバー。
(6)(A)ナノファイバーの分散体であって、該分散体中に(B)分散剤を含み、ゼータ電位が-20~-50mVであり、さらにメディアレス分散機で分散されてなるナノファイバー分散体を乾燥することを特徴とする、(1)に記載の粉末状ナノファイバーの製造方法。
(7)(A)ナノファイバーが、セルロースナノファイバーである、(6)に記載の粉末状ナノファイバーの製造方法。
(8)(A)セルロースナノファイバーの平均繊維径が10~100nmである(7)に記載の粉末状ナノファイバーの製造方法。
(9)(B)分散剤が、P-OH基、-COOH基、-SO3H基、及び/または、それらの金属塩基、ならびにイミダゾリン基の群から選ばれた少なくとも1種が結合した分散剤である、(6)~(8)いずれかに記載の粉末状ナノファイバーの製造方法。
(10)(B)分散剤が、リン酸またはポリリン酸、リン酸またはポリリン酸の塩、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸共重合体、ポリアクリル酸の塩、ポリアクリル酸共重合体の塩、オレフィン(a)および不飽和カルボン酸(塩)(b)を必須構成単量体として含む共重合体、アルキルイミダゾリン系化合物、ならびに酸価とアミン価とを有する分散剤の群から選ばれた少なくとも1種である、(9)に記載の粉末状ナノファイバーの製造方法。
(11)分散体の乾燥が、凍結乾燥、減圧乾燥、加熱乾燥、あるいは噴霧乾燥である、請求項(6)~(10)いずれかに記載の粉末状ナノファイバーの製造方法。
(12)分散体の乾燥が、凍結乾燥である、(11)に記載の粉末状ナノファイバーの製造方法。
(13)乾燥後に、さらに粉砕を行う(6)~(12)いずれかに記載の粉末状ナノファイバーの製造方法。
(14)上記(1)~(5)いずれかに記載の、(A)ナノファイバーおよび(B)分散剤から構成される粉末状ナノファイバー、ならびに(C)(C-1)熱可塑性樹脂、(C-2)熱硬化性樹脂および(C-3)ゴムから選ばれたマトリックス成分を主成分とする組成物。
(15)(C-1)熱可塑性樹脂が、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル-スチレン(AS)樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリケトン樹脂、および環状ポリオレフィン樹脂の群から選ばれた少なくとも1種である、(15)に記載の組成物。
(16)(16)(C-2)熱硬化性樹脂が、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ジアリル(テレ)フタレート樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂、および熱硬化性ポリイミド樹脂の群から選ばれた少なくとも1種である(14)に記載の組成物。
(17)(C-3)ゴムが、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン- ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム(ACM)、およびフッ素ゴム(FKM)の群から選ばれた少なくとも1種である、(14)に記載の組成物。
(18)固形分換算で、(A)ナノファイバーが0.5~20重量%、(B)分散剤が0.0005~10重量%、(C)マトリックス成分が70~99.4995重量%[ただし、(A)+(B)+(C)=100重量%]である、(14)~(17)いずれかに記載の組成物。
(19)上記(14)~(18)いずれかに記載の組成物を成形してなる、成形品。」とあるのを、
「【0005】
本発明は、以下の(1)~(12)により構成される。
(1)(A)未変性の粉末状のセルロースナノファイバーに対し、(B)P-OH基、-COOH基、-SO3H基、及び/または、それらの金属塩基、ならびにイミダゾリン基の群から選ばれた少なくとも1種が結合した分散剤を固形分換算で1~40重量%配合してなり、かつ嵩密度が90~200g/Lであることを特徴とする組成物製造用粉末状セルロースナノファイバー。
(2)(B)分散剤が、リン酸またはポリリン酸、リン酸またはポリリン酸の塩、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸共重合体、ポリアクリル酸の塩、ポリアクリル酸共重合体の塩、オレフィン(a)および不飽和カルボン酸(塩)(b)を必須構成単量体として含む共重合体、アルキルイミダゾリン系化合物、ならびに酸価とアミン価とを有する分散剤の群から選ばれた少なくとも1種である、(1)に記載の組成物製造用粉末状セルロースナノファイバー。
(3)(A)未変性のセルロースナノファイバーの分散体であって、分散媒として水を用いた該分散体中に(B)分散剤を含み、ゼータ電位が-20~-50mVであり、さらにメディアレス分散機で分散されてなるセルロースナノファイバー分散体を乾燥することにより、(A)未変性の粉末状のセルロースナノファイバーに対し、(B)分散剤を固形分換算で1~40重量%配合してなり、かつ嵩密度が90~200g/Lとなした、組成物製造用粉末状セルロースナノファイバーの製造方法。
(4)分散体の乾燥が、凍結乾燥、減圧乾燥、加熱乾燥、あるいは噴霧乾燥である、(3)に記載の組成物製造用粉末状セルロースナノファイバーの製造方法。
(5)分散体の乾燥が、凍結乾燥である、(4)に記載の組成物製造用粉末状セルロースナノファイバーの製造方法。
(6)乾燥後に、さらに粉砕を行う(3)~(5)のいずれかに記載の組成物製造用粉末状セルロースナノファイバーの製造方法。
(7)上記(1)または(2)に記載の(A)未変性のセルロースナノファイバーおよび(B)分散剤から構成される組成物製造用粉末状セルロースナノファイバー、ならびに(C)(C-1)熱可塑性樹脂、(C-2)熱硬化性樹脂および(C-3)ゴムから選ばれたマトリックス成分を主成分とする組成物。
(8)(A)未変性の粉末状のセルロースナノファイバーに対し、(B)分散剤を固形分換算で1~40重量%配合してなり、かつ嵩密度が90~200g/Lである組成物製造用粉末状セルロースナノファイバー、ならびに(C-1)熱可塑性樹脂をマトリックス成分の主成分とする組成物であって、(C-1)熱可塑性樹脂が、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル-スチレン(AS)樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリケトン樹脂、および環状ポリオレフィン樹脂の群から選ばれた少なくとも1種である、組成物。
(9)(A)未変性の粉末状のセルロースナノファイバーに対し、(B)分散剤を固形分換算で1~40重量%配合してなり、かつ嵩密度が90~200g/Lである組成物製造用粉末状セルロースナノファイバー、ならびに(C-2)熱硬化性樹脂をマトリックス成分の主成分とする組成物であって、(C-2)熱硬化性樹脂が、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ジアリル(テレ)フタレート樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂、および熱硬化性ポリイミド樹脂の群から選ばれた少なくとも1種である、組成物。
(10)(A)未変性の粉末状のセルロースナノファイバーに対し、(B)分散剤を固形分換算で1~40重量%配合してなり、かつ嵩密度が90~200g/Lである組成物製造用粉末状セルロースナノファイバー、ならびに(C-3)ゴムをマトリックス成分の主成分とする組成物であって、(C-3)ゴムが、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン- ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム(ACM)、およびフッ素ゴム(FKM)の群から選ばれた少なくとも1種である、組成物。
(11)固形分換算で、(A)未変性のセルロースナノファイバーが0.5~20重量%、(B)分散剤が0.0005~10重量%、(C)マトリックス成分が70~99.4995重量%[ただし、(A)+(B)+(C)=100重量%]である、(7)~(10)いずれかに記載の組成物。
(12)上記(7)~(11)いずれかに記載の組成物を成形してなる、成形品。」に訂正する。
3 訂正の目的の適否、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項2は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項3並びに訂正前の請求項3を引用する訂正前の請求項4、9、13及び14が訂正前の請求項1又は2を引用するものであったのを、訂正前の請求項2を引用するものを削除し、訂正前の請求項1を引用するものについて、訂正前の請求項3に関して、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項に改め、訂正前の請求項4、9、13及び14に関して、訂正後の請求項3を引用するものに訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
また、訂正事項3は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものである。
さらに、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の請求項5及び訂正前の請求項6ないし8が訂正前の請求項1ないし4のいずれかを引用するものであったのを、訂正前の請求項2ないし4を引用するものを削除し、訂正前の請求項1を引用するものについて、訂正前の請求項5に関して、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項に改め、訂正前の請求項6ないし8に関して、訂正後の請求項5を引用するものに訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
また、訂正事項4は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものである。
さらに、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)訂正事項5について
訂正事項5は、訂正前の請求項6の「請求項5かに記載の」という記載を「請求項5に記載の」と訂正するものであり、「かに」が「に」の誤記であることは明らかであるから、誤記の訂正を目的とするものである。
また、訂正事項5は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものである。
さらに、訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
さらにまた、訂正事項5は、訂正前の請求項6を引用する訂正前の請求項7及び8についても、その引用部分について同様である。
(6)訂正事項6について
訂正事項6は、訂正前の請求項9並びに訂正前の請求項9を引用する訂正前の請求項13及び14が訂正前の請求項1ないし4のいずれかを引用するものであったのを、訂正前の請求項1及び2を引用するものを削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項6は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものである。
さらに、訂正事項6は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(7)訂正事項7について
訂正事項7は、訂正前の請求項10並びに訂正前の請求項10を引用する訂正前の請求項13及び14が訂正前の請求項9を介して訂正前の請求項1ないし4のいずれかを引用するものであったのを、訂正前の請求項9を介して訂正前の請求項2ないし4を引用するものを削除し、訂正前の請求項9を介して訂正前の請求項1を引用するものについて、訂正前の請求項10に関して、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項に改め、訂正前の請求項13及び14に関して、訂正後の請求項10を引用するものに訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
また、訂正事項7は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものである。
さらに、訂正事項7は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(8)訂正事項8について
訂正事項8は、訂正前の請求項11並びに訂正前の請求項11を引用する訂正前の請求項13及び14が訂正前の請求項9を介して訂正前の請求項1ないし4のいずれかを引用するものであったのを、訂正前の請求項9を介して訂正前の請求項2ないし4を引用するものを削除し、訂正前の請求項9を介して訂正前の請求項1を引用するものについて、訂正前の請求項11に関して、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項に改め、訂正前の請求項13及び14に関して、訂正後の請求項11を引用するものに訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
また、訂正事項8は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものである。
さらに、訂正事項8は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(9)訂正事項9について
訂正事項9は、訂正前の請求項12並びに訂正前の請求項12を引用する訂正前の請求項13及び14が訂正前の請求項9を介して訂正前の請求項1ないし4のいずれかを引用するものであったのを、訂正前の請求項9を介して訂正前の請求項2ないし4を引用するものを削除し、訂正前の請求項9を介して訂正前の請求項1を引用するものについて、訂正前の請求項12に関して、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項に改め、訂正前の請求項13及び14に関して、訂正後の請求項12を引用するものに訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
また、訂正事項9は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものである。
さらに、訂正事項9は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(10)訂正事項10について
訂正事項10は、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載の整合をとるためのものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項10は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものである。
さらに、訂正事項10は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(11)訂正事項11について
訂正事項11は、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載の整合をとるためのものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項11は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものである。
さらに、訂正事項11は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
4 むすび
以上のとおり、訂正事項1ないし11は、それぞれ、特許法120条の5第2項ただし書第1ないし4号のいずれかに掲げる事項を目的とするものである。
また、訂正事項1ないし11は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないので、同法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。
なお、訂正前の請求項2ないし14は訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、訂正前の請求項1ないし14は一群の請求項に該当するものである。そして、訂正事項1ないし9は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
また、訂正事項10及び11は、願書に添付した明細書についての訂正であるが、当該明細書に係る請求項の全てについて、本件訂正の請求は行われているので、同法第120条の5第9項において準用する同法第126条第4項の規定に適合する。
さらに、特許異議の申立ては、訂正前の全ての請求項に対してされているので、訂正を認める要件として、同法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
したがって、本件訂正は適法なものであり、訂正後の請求項〔1-14〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし14に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、平成30年10月12日に提出された手続補正書により補正された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】(削除)
【請求項2】(削除)
【請求項3】
(A)未変性の粉末状のセルロースナノファイバーに対し、(B)P-OH基、-COOH基、-SO3H基、及び/または、それらの金属塩基、ならびにイミダゾリン基の群から選ばれた少なくとも1種が結合した分散剤を固形分換算で1~40重量%配合してなり、かつ嵩密度が90~200g/Lであることを特徴とする組成物製造用粉末状セルロースナノファイバー。
【請求項4】
(B)分散剤が、リン酸またはポリリン酸、リン酸またはポリリン酸の塩、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸共重合体、ポリアクリル酸の塩、ポリアクリル酸共重合体の塩、オレフィン(a)および不飽和カルボン酸(塩)(b)を必須構成単量体として含む共重合体、アルキルイミダゾリン系化合物、ならびに酸価とアミン価とを有する分散剤の群から選ばれた少なくとも1種である、請求項3に記載の組成物製造用粉末状セルロースナノファイバー。
【請求項5】
(A)未変性のセルロースナノファイバーの分散体であって、分散媒として水を用いた該分散体中に(B)分散剤を含み、ゼータ電位が-20~-50mVであり、さらにメディアレス分散機で分散されてなるセルロースナノファイバー分散体を乾燥することにより、(A)未変性の粉末状のセルロースナノファイバーに対し、(B)分散剤を固形分換算で1~40重量%配合してなり、かつ嵩密度が90~200g/Lとなした、組成物製造用粉末状セルロースナノファイバーの製造方法。
【請求項6】
分散体の乾燥が、凍結乾燥、減圧乾燥、加熱乾燥、あるいは噴霧乾燥である、請求項5に記載の組成物製造用粉末状セルロースナノファイバーの製造方法。
【請求項7】
分散体の乾燥が、凍結乾燥である、請求項6に記載の組成物製造用粉末状セルロースナノファイバーの製造方法。
【請求項8】
乾燥後に、さらに粉砕を行う請求項5~7のいずれかに記載の組成物製造用粉末状セルロースナノファイバーの製造方法。
【請求項9】
請求項3または4に記載の、(A)未変性のセルロースナノファイバーおよび(B)分散剤から構成される組成物製造用粉末状セルロースナノファイバー、ならびに(C)(C-1)熱可塑性樹脂、(C-2)熱硬化性樹脂および(C-3)ゴムから選ばれたマトリックス成分を主成分とする組成物。
【請求項10】
(A)未変性の粉末状のセルロースナノファイバーに対し、(B)分散剤を固形分換算で1~40重量%配合してなり、かつ嵩密度が90~200g/Lである組成物製造用粉末状セルロースナノファイバー、ならびに(C-1)熱可塑性樹脂をマトリックス成分の主成分とする組成物であって、(C-1)熱可塑性樹脂が、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル-スチレン(AS)樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリケトン樹脂、および環状ポリオレフィン樹脂の群から選ばれた少なくとも1種である、組成物。
【請求項11】
(A)未変性の粉末状のセルロースナノファイバーに対し、(B)分散剤を固形分換算で1~40重量%配合してなり、かつ嵩密度が90~200g/Lである組成物製造用粉末状セルロースナノファイバー、ならびに(C-2)熱硬化性樹脂をマトリックス成分の主成分とする組成物であって、(C-2)熱硬化性樹脂が、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ジアリル(テレ)フタレート樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂、および熱硬化性ポリイミド樹脂の群から選ばれた少なくとも1種である、組成物。
【請求項12】
(A)未変性の粉末状のセルロースナノファイバーに対し、(B)分散剤を固形分換算で1~40重量%配合してなり、かつ嵩密度が90~200g/Lである組成物製造用粉末状セルロースナノファイバー、ならびに(C-3)ゴムをマトリックス成分の主成分とする組成物であって、(C-3)ゴムが、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン- ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム(ACM)、およびフッ素ゴム(FKM)の群から選ばれた少なくとも1種である、組成物
【請求項13】
固形分換算で、(A)未変性のセルロースナノファイバーが0.5~20重量%、(B)分散剤が0.0005~10重量%、(C)マトリックス成分が70~99.4995重量%[ただし、(A)+(B)+(C)=100重量%]である、請求項9~12いずれかに記載の組成物。
【請求項14】
請求項9~13いずれかに記載の組成物を成形してなる、成形品。」
第4 特許異議申立ての理由及び取消理由の概要
1 特許異議申立人1の申立て理由の概要
特許異議申立人1は、甲第1及び2号証として、本件特許の優先日前に日本国内において、頒布された下記の刊行物を提出し、訂正前の請求項1ないし14に係る特許に対して、おおむね次の理由を主張している。
(進歩性)本件特許発明1ないし14は、本件特許の優先日前に日本国内において、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし14に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
甲第1号証:特開2011-56456号公報
甲第2号証:特開2012-51991号公報
(以下、順に「甲1(1)」及び「甲1(2)」という。)
2 特許異議申立人2の申立て理由の概要
特許異議申立人2は、甲第1号証として、特願2015-207933号の出願公開公報である特開2017-78145号公報を提出し、訂正前の請求項1ないし4及び9ないし14に係る特許に対して、おおむね次の理由を主張している。
(1)(拡大先願)本件特許発明1ないし4及び9ないし14に係る発明は、本件特許の優先日前の他の特許出願であって、本件特許の出願後に出願公開された特願2015-207933号の願書に最初に添付された明細書又は特許請求の範囲に記載された発明と同一であり、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4及び9ないし14に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(2)(サポート要件)本件特許の請求項1には、単に「分散剤」と記載されており、どのような分散剤が、本件特許発明の課題を解決できるのか不明であり、また、分散剤の配合量が数値限定されて記載されているが、全ての分散剤において数値限定された数値範囲内において、本件特許発明の課題を解決できるのか不明である。
したがって、本件特許の請求項1ないし4及び9ないし14に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
(3)(明確性)本件特許の請求項3において、分散剤として-COOH基を有するものが記載されている。他方、本件特許の発明の詳細な説明の【0014】には、分散剤以外の薬品として、クエン酸が例示されているが、クエン酸は-COOH基を有するものであるから、請求項3の記載と矛盾する。
したがって、本件特許発明において、分散剤が何を意味するのか不明であり、本件特許発明は不明確である。
また、本件特許発明において、「未変性」とは、どの程度のものまで含まれるのか不明であるため、本件特許発明は不明確である。
よって、本件特許の請求項1ないし4及び9ないし14に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
甲第1号証:特開2017-78145号公報(特願2015-207933号の願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された内容を公開したものである。以下、「甲2(1)」という。)
3 取消理由の概要
訂正前の請求項1、2、9及び14に係る特許に対して、平成30年5月23日付けで通知した取消理由の概要は次のとおりである。なお、この取消理由は、特許異議申立人2の主張する拡大先願の申立て理由のうちの、訂正前の請求項1、2、9及び14に係る特許に対するものと同旨である。
(拡大先願)本件特許の請求項1、2、9及び14に係る発明は、本件特許の優先日前の特許出願であって、本件特許の出願後に出願公開された特願2015-207933号の願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の発明者がその優先日前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2、9及び14に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
第5 特許異議申立ての理由及び取消理由についての判断
1 特許異議申立人1の申立て理由についての判断
(1)甲1(1)に記載された事項及び甲1(1)発明
ア 甲1(1)に記載された事項
甲1(1)には、次の記載がある。
・「【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスの分散流体を100~245MPaで高圧噴射して衝突用硬質体に衝突させることを特徴とする、バイオナノファイバーの製造方法。
・・・(略)・・・
【請求項3】
前記シングル噴射チャンバーと高濃度(10~20重量%)のバイオマスの分散流体に対応した回路が備わる微細化装置を組み合わせることで噴射時の剪断効果を高め、ナノファイバーの繊維幅(短径)を10~100nm、好ましくは10~40nmに微細化することを特徴とする、バイオナノファイバーの製造方法。
・・・(略)・・・
【請求項5】
請求項4に記載のバイオナノファイバーを含む複合材料またはバイオナノファイバーからなるフィルム。」
・「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バイオマス、特にセルロースやキチンは、その強固な結晶構造のための有効利用が滞っていた。これらの有効利用には、結晶性生体高分子(セルロースやキチン)の高効率かつ連続的な微細化処理方法の開発が必須である。
【0006】
本発明の目的は、セルロースやキチン・キトサンなどのバイオマスを効率的にナノファイバー化し、バイオマスを有効利用することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ウォータージェットの技術を基にバイオマスに特化した新規微細化技術の開発に成功した。本技術を用いることによって、セルロースやキチン・キトサンのナノファイバー化が可能となる。ナノファイバー化したセルロースからは、その高強度・低熱膨張などの特性を利用した各種樹脂の補強剤としてグリーンコンポジットの開発が可能になる。また、ナノファイバー化したキチン・キトサンからは、その抗菌性・創傷治癒性・生分解性などの特性を利用した医療分野における生体適合材料の開発が可能になる。」
・「【0012】
本発明において、高圧噴射処理の対象となる「バイオマス」とは、生物由来の高分子、特に水に難溶性の高分子を意味し、具体的にはセルロース、キチン、キトサンなどが挙げられる。セルロース、キチン、キトサンは、酵素分解されにくく、加工も難しい材料であった。本発明によれば、セルロース、キチン、キトサンなどの結晶性ないし水難溶性の天然高分子を水の分散流体とし高圧噴射処理によりナノファイバーとすることができ、得られたナノファイバーは酵素分解によりグルコース、N-アセチルグルコサミン、グルコサミンなどの単量体もしくはそれらの二量体、三量体などのオリゴマーに導くことができる。ここで、「分散流体」とは、バイオマスを水に分散したものであり、濃度が薄い場合には、流動性の分散液になるが、特にバイオマスが微細化するにしたがって粘性が高くなり、濃度が高くなるとペーストに近い性状となる。」
・「【0021】
・・・(略)・・・このため、高結晶ゆえに優れた耐熱性および強度特性を備えた本発明のセルロースナノファイバーを透明樹脂中に均一分散することで、樹脂の透明性を保ったまま耐熱性や強度特性を改善することが可能である。例えば、本発明のセルロースナノファイバーをゴム、プラスチック、透明樹脂などに混ぜることで、自動車のタイヤ、バンパー、フロントガラスなどの補強と軽量化の両方の効果が得られ得る。」
・「【0024】
本発明で高圧噴射する分散流体は、バイオマスを水のみに分散させてもよいが、リン酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸などの酸を少量加えてもよく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリを少量加えてもよい。特にバイオマスの分解に関しては、少量の酸・アルカリの添加によりその効率を高めることができる。」
・「【0033】
実施例4
バイオナノファイバーの結晶化度(当審注:下線はあらかじめ付されたものである。)
バイオナノファイバーの結晶化度は、粉末X線回折により求めた。X線回折実験に先立ち、ウォータージェット処理を施した試料を凍結乾燥させることで乾燥粉末試料を得た。・・・(略)・・・すなわち処理回数により結晶化度の調節が可能であり、本発明のバイオナノファイバーは低結晶性が要求される酵素基質としても、高結晶性が要求されるコンポジット材料としても適している。ウォータージェット処理によりナノファイバー化されたセルロースおよびキチンの粉末X線回折パターンを図6,7に示す。」
・「【0050】
本発明のセルロースナノファイバーをフィラーとして用いる際の合成高分子樹脂として、ポリオレフィンなどのビニル系樹脂、ポリアミドなどの重縮合系樹脂などが上げられる。また、セルロースと等しい屈折率のエポキシなどの透明基材(樹脂)との複合化により新機能性透明フィルム・樹脂を合成することができる。特に、本発明のセルロースナノファイバーは、水素結合形成可能なフェノール樹脂、ポリエチレングリコール、ポリエチレンテレフタラート、ポリビニルアルコールなどの高分子と複合化することで、強度ないし表面特性を変えることができる。
【0051】
さらに、本発明のセルロースナノファイバーは、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトンなどの生分解性樹脂との複合化により、これら樹脂の強度、耐熱性などの特性を向上させることができる。」
イ 甲1(1)発明
甲1(1)に記載された事項を、特に【特許請求の範囲】、【0024】、【0033】及び【0050】に関して整理すると、甲1(1)には、次の発明が記載されていると認める。
「バイオマスを、少量のリン酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸などの酸又は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリを加えた水に分散させた分散流体を100~245MPaで高圧噴射して衝突用硬質体に衝突させて得た粉末の複合材料用セルロースナノファイバー」(以下、「甲1(1)発明1」という。)
「バイオマスを、少量のリン酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸などの酸又は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリを加えた水に分散させた分散流体を100~245MPaで高圧噴射して衝突用硬質体に衝突させて得た粉末の複合材料用セルロースナノファイバーの製造方法。」(以下、「甲1(1)発明2」という。)
「バイオマスを、少量のリン酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸などの酸又は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリを加えた水に分散させた分散流体を100~245MPaで高圧噴射して衝突用硬質体に衝突させて得た粉末の複合材料用セルロースナノファイバーをフィラーとして含む複合材料。」(以下、「甲1(1)発明3」という。)
(2)甲1(2)に記載された事項及び甲1(2)発明
ア 甲1(2)に記載された事項
甲1(2)には、次の記載がある。
・「【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースナノファイバーの分散体であって、該分散体中に陰イオン性分散剤を含むことを特徴とするセルロースナノファイバーの分散体。
【請求項2】
前記陰イオン性分散剤が、P-OH基、-COOH基、-SO3H基、及び/または、それらの金属塩基が少なくとも1種結合した分散剤であることを特徴とする請求項1に記載の分散体。
【請求項3】
前記陰イオン性分散剤が、リン酸またはポリリン酸、リン酸またはポリリン酸の塩、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸共重合体、ポリアクリル酸の塩、ポリアクリル酸共重合体の塩、からなる群から少なくとも1種含むことを特徴とする請求項1に記載の分散体。
【請求項4】
セルロースナノファイバーの平均繊維径が10~100nmである、請求項1~3のいずれかに記載の分散体。
【請求項5】
セルロースナノファイバーを0.01~10重量%、分散剤をセルロースナノファイバーに対して0.1~50重量%含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の分散体。
【請求項6】
セルロースファイバーと陰イオン性分散剤を含む分散体を高圧噴射処理することを特徴とするセルロースナノファイバーの分散体の製造方法。」
・「【0006】
本発明は、セルロースナノファイバーが良好に分散した分散体及びその製造方法を提供することを目的とする。」
・「【0009】
本発明によれば、セルロースナノファイバーが良好に分散した分散体を得ることができる。」
・「【0041】
表4に示す実験は、分散剤としてポリアクリル酸ナトリウム(PAANa)を加え、KCフロック(KC50GK)をスターバースト処理(200MPa、5, 10, 15, 20パス)した。
【0042】
PAANaの添加量は、セルロースナノファイバーKC50GKに対して重量比(KC50GK : PAANa)で、(i) 1 : 0.02、(ii) 1 : 0.1、(iii) 1 : 0.5、とした。ただし、実験番号D10においては、PAANa(iii)の添加量が計算値 20.8 g に足らず 19.1 g となったので、KC50GK 2.6 wt%、重量比(KC50GK : PAANa(iii)) 1 : 0.35、となった。
【0043】
結果を表1~表4に示す。」
イ 甲1(2)発明
甲1(2)に記載された事項を整理すると、甲1(2)には、次の発明が記載されていると認める。
「セルロースナノファイバーを0.01~10重量%、P-OH基、-COOH基、-SO3H基、及び/または、それらの金属塩基が少なくとも1種結合した陰イオン性分散剤をセルロースナノファイバーに対して0.1~50重量%含むセルロースナノファイバーの分散体。」(以下、「甲1(2)発明1」という。)
「セルロースナノファイバーを0.01~10重量%、P-OH基、-COOH基、-SO3H基、及び/または、それらの金属塩基が少なくとも1種結合した陰イオン性分散剤をセルロースナノファイバーに対して0.1~50重量%含むセルロースナノファイバーの分散体の製造方法。」(以下、「甲1(2)発明2」という。)
(3)甲1(1)を主引用文献とした場合の進歩性
ア 本件特許発明3について
(ア)対比
本件特許発明3と甲1(1)発明1を対比する。
両者は次の点で一致する。
「未変性の粉末状のセルロースナノファイバーである組成物製造用粉末状セルロースナノファイバー。」
そして、両者は次の点で相違する。
<甲1(1)発明1との相違点1>
本件特許発明3においては、「(B)P-OH基、-COOH基、-SO3H基、及び/または、それらの金属塩基、ならびにイミダゾリン基の群から選ばれた少なくとも1種が結合した分散剤を固形分換算で1~40重量%配合して」いるのに対し、甲1(1)発明1においては、「リン酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸などの酸又は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ」を「少量」加えている点。
<甲1(1)発明1との相違点2>
本件特許発明3においては、「嵩密度が90~200g/Lである」のに対し、甲1(1)発明1においては、嵩密度の値は不明な点。
(イ)判断
a 甲1(1)発明1との相違点1について
甲1(1)発明1における「リン酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸などの酸又は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ」について、その配合量に関する記載は、甲1(1)にはない。
また、甲1(1)発明1における「リン酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸などの酸又は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ」について、甲1(1)には、それらが「分散剤」であるとの記載はなく、むしろ、本件特許の発明の詳細な説明の【0014】に記載された「酸」又は「アルカリ」に相当するものであると認められるから、甲1(2)に記載された分散剤の配合量に関する事項を適用する動機付けはない。
したがって、甲1(1)発明1において、甲1(1)発明1との相違点1に係る本件特許発明3の発明特定事項とすることは、甲1(1)自体に記載された事項及び甲1(2)に記載された事項を考慮しても、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
b 甲1(1)発明1との相違点2について
本件特許の発明の詳細な説明の【0033】に「なお、本発明の粉末状ナノファイバーは、上記のようにして得られる乾燥品がシート状、粒状、膜状、立体状などの形態である場合には、粉砕機を用いて粉砕して、粉末状としてもよい。」と記載されていることからみて、分散剤の配合比が1~40重量%を満足すれば、必然的に、セルロースナノファイバーの嵩密度が90~200g/Lとなるわけではない。
したがって、甲1(1)発明1が、セルロースナノファイバーの嵩密度が90~200g/Lである蓋然性が高いとはいえないし、そのことを認めるに足りる証拠もない。
よって、甲1(1)発明1において、甲1(1)発明1との相違点2に係る本件特許発明3の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
c まとめ
よって、本件特許発明3は、甲1(1)発明1、すなわち甲1(1)に記載された発明及び甲1(2)に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件特許発明4について
本件特許発明4は、請求項3を引用するものであり、本件特許発明3の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明3が、甲1(1)に記載された発明及び甲1(2)に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない以上、本件特許発明4も、甲1(1)に記載された発明及び甲1(2)に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件特許発明5について
(ア)対比
本件特許発明5と甲1(1)発明2を対比する。
両者は次の点で一致する。
「未変性の粉末状のセルロースナノファイバーである組成物製造用粉末状セルロースナノファイバーの製造方法。」
そして、両者は次の点で相違する。
<甲1(1)発明2との相違点1>
本件特許発明5においては、「分散剤を固形分換算で1~40重量%配合して」いるのに対し、甲1(1)発明2においては、「リン酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸などの酸又は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ」を「少量」加えている点。
<甲1(1)発明2との相違点2>
本件特許発明5においては、「嵩密度が90~200g/Lである」のに対し、甲1(1)発明2においては、嵩密度の値は不明な点。
<甲1(1)発明2との相違点3>
本件特許発明5においては、「ゼータ電位が-20~-50mVであり、さらにメディアレス分散機で分散されて」いるのに対し、甲1(1)発明2においては、そのようには特定されていない点。
(イ)判断
そこで、まず、甲1(1)発明2との相違点1及び2について検討する。
甲1(1)発明2との相違点1及び2は、甲1(1)発明1との相違点1及び2と同じであるから、本件特許発明3の判断と同様であり、甲1(1)発明2において、甲1(1)発明2との相違点1及び2に係る本件特許発明5の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
したがって、甲1(1)発明2との相違点3について検討するまでもなく、本件特許発明5は、甲1(1)発明2、すなわち甲1(1)に記載された発明及び甲1(2)に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 本件特許発明6ないし8について
本件特許発明6ないし8は、請求項5を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明5の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明5が、甲1(1)に記載された発明及び甲1(2)に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない以上、本件特許発明6ないし8も、甲1(1)に記載された発明及び甲1(2)に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
オ 本件特許発明9について
本件特許発明9は、請求項3又は4を引用するものであり、本件特許発明3又は4の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明3又は4が、甲1(1)に記載された発明及び甲1(2)に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない以上、本件特許発明9も、甲1(1)に記載された発明及び甲1(2)に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
カ 本件特許発明10について
(ア)対比
本件特許発明10と甲1(1)発明3を対比する。
両者は次の点で一致する。
「未変性の粉末状のセルロースナノファイバーである組成物製造用粉末状セルロースナノファイバーを含む組成物。」
そして、両者は次の点で相違する。
<甲1(1)発明3との相違点1>
本件特許発明10においては、「分散剤を固形分換算で1~40重量%配合」しているのに対し、甲1(1)発明3においては、「リン酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸などの酸又は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ」を「少量」加えている点。
<甲1(1)発明3との相違点2>
本件特許発明10においては、組成物について、「嵩密度が90~200g/Lである」のに対し、甲1(1)発明3においては、嵩密度の値は不明な点。
<甲1(1)発明3との相違点3>
本件特許発明10においては、組成物について、「ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル-スチレン(AS)樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリケトン樹脂、および環状ポリオレフィン樹脂の群から選ばれた少なくとも1種である」「(C-1)熱可塑性樹脂」を「マトリックス成分の主成分」とすることが特定されているのに対し、甲1(1)発明3においては、そのようには特定されていない点。
(イ)判断
そこで、まず、甲1(1)発明3との相違点1及び2について検討する。
甲1(1)発明3との相違点1及び2は、甲1(1)発明1との相違点1及び2と同じであるから、本件特許発明3の判断と同様であり、甲1(1)発明3において、甲1(1)発明3との相違点1及び2に係る本件特許発明10の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
したがって、甲1(1)発明3との相違点3について検討するまでもなく、本件特許発明10は、甲1(1)発明3、すなわち甲1(1)に記載された発明及び甲1(2)に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
キ 本件特許発明11について
(ア)対比
本件特許発明11と甲1(1)発明3を対比する。
両者は次の点で一致する。
「未変性の粉末状のセルロースナノファイバーである組成物製造用粉末状セルロースナノファイバーを含む組成物。」
そして、両者は次の点で相違する。
<甲1(1)発明3との相違点1>
本件特許発明11においては、「分散剤を固形分換算で1~40重量%配合」しているのに対し、甲1(1)発明3においては、「リン酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸などの酸又は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ」を「少量」加えている点。
<甲1(1)発明3との相違点2>
本件特許発明11においては、「嵩密度が90~200g/Lである」のに対し、甲1(1)発明3においては、嵩密度の値は不明な点。
<甲1(1)発明3との相違点3’>
本件特許発明11においては、組成物について、「フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ジアリル(テレ)フタレート樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂、および熱硬化性ポリイミド樹脂の群から選ばれた少なくとも1種である」「(C-2)熱硬化性樹脂」を「マトリックス成分の主成分」とすることが特定されているのに対し、甲1(1)発明3においては、そのようには特定されていない点。
(イ)判断
そこで、まず、甲1(1)発明3との相違点1及び2について検討する。 甲1(1)発明3との相違点1及び2は、甲1(1)発明1との相違点1及び2と同じであるから、本件特許発明3の判断と同様であり、甲1(1)発明3において、甲1(1)発明3との相違点1及び2に係る本件特許発明11の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
したがって、甲1(1)発明3との相違点3’について検討するまでもなく、本件特許発明11は、甲1(1)発明3、すなわち甲1(1)に記載された発明及び甲1(2)に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ク 本件特許発明12について
(ア)対比
本件特許発明12と甲1(1)発明3を対比する。
両者は次の点で一致する。
「未変性の粉末状のセルロースナノファイバーである組成物製造用粉末状セルロースナノファイバーを含む組成物。」
そして、両者は次の点で相違する。
<甲1(1)発明3との相違点1>
本件特許発明12においては、「分散剤を固形分換算で1~40重量%配合」しているのに対し、甲1(1)発明3においては、「リン酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸などの酸又は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ」を「少量」加えている点。
<甲1(1)発明3との相違点2>
本件特許発明12においては、「嵩密度が90~200g/Lである」のに対し、甲1(1)発明3においては、嵩密度の値は不明な点。
<甲1(1)発明3との相違点3’’>
本件特許発明12においては、組成物について、「天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン- ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム(ACM)、およびフッ素ゴム(FKM)の群から選ばれた少なくとも1種である」「(C-3)ゴム」を「マトリックス成分の主成分」とすることが特定されているのに対し、甲1(1)発明3においては、そのようには特定されていない点。
(イ)判断
そこで、まず、甲1(1)発明3との相違点1及び2について検討する。 甲1(1)発明3との相違点1及び2は、甲1(1)発明1との相違点1及び2と同じであるから、本件特許発明3の判断と同様であり、甲1(1)発明3において、甲1(1)発明3との相違点1及び2に係る本件特許発明12の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
したがって、甲1(1)発明3との相違点3’’について検討するまでもなく、本件特許発明12は、甲1(1)発明3、すなわち甲1(1)に記載された発明及び甲1(2)に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ケ 本件特許発明13について
本件特許発明13は、請求項9ないし12を引用するものであり、本件特許発明9ないし12のいずれかの発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明9ないし12が、甲1(1)に記載された発明及び甲1(2)に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない以上、本件特許発明13も、甲1(1)に記載された発明及び甲1(2)に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
コ 本件特許発明14について
本件特許発明14は、請求項9ないし13を引用するものであり、本件特許発明9ないし13のいずれかの発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明9ないし13が、甲1(1)に記載された発明及び甲1(2)に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない以上、本件特許発明14も、甲1(1)に記載された発明及び甲1(2)に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)甲1(2)を主引用文献とした場合の進歩性
ア 本件特許発明3について
(ア)対比
本件特許発明3と甲1(2)発明1を対比するに、甲1(2)発明1における「セルロースナノファイバーの分散体」は本件特許発明3における「組成物製造用粉末状セルロースナノファイバー」と「物」であるという限りにおいて一致する。
したがって、両者は次の点で一致する。
「未変性のセルロースナノファイバー並びにP-OH基、-COOH基、-SO3H基、及び/または、それらの金属塩基、ならびにイミダゾリン基の群から選ばれた少なくとも1種が結合した分散剤を配合した物。」
そして、両者は次の点で相違する。
<甲1(2)発明1との相違点1>
「物」に関して、本件特許発明3においては、「組成物製造用粉末状セルロースナノファイバー」であるのに対し、甲1(2)発明1においては、「分散体」である点。
<甲1(2)発明1との相違点2>
本件特許発明3においては、「(A)未変性の粉末状のセルロースナノファイバー」に対し、「(B)P-OH基、-COOH基、-SO3H基、及び/または、それらの金属塩基、ならびにイミダゾリン基の群から選ばれた少なくとも1種が結合した分散剤」を「固形分換算で1~40重量%配合してなり」、かつ「嵩密度が90~200g/Lである」のに対し、甲1(2)発明1においては、分散剤の配合量及び嵩密度がそのようには特定されていない点。
(イ)判断
そこで、まず、甲1(2)発明1との相違点1について検討する。
甲1(2)には、甲1(2)発明1における「分散体」を、「粉末状」とする動機付けとなる記載はない。すなわち、甲1(2)には、セルロースナノファイバーが良好に分散した分散体を得ることを目的とすることが記載されているにとどまり、分散体から粉末状のセルロースナノファイバーを得ることは何ら記載されていない。
また、甲1(1)にも、甲1(2)発明1における「分散体」を、「粉末状」とする動機付けとなる動機付けとなる記載はない。すなわち、甲1(1)は、バイオマスを効率的にナノファイバー化することを目的とすることが記載されているにとどまり、甲1(1)に記載された事項を甲1(2)発明1に適用することを示唆する記載はない。
したがって、甲1(2)発明1において、「分散体」を「粉末状」として、甲1(2)発明1との相違点1に係る本件特許発明3の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
よって、甲1(2)発明1との相違点2について検討するまでもなく、本件特許発明3は、甲1(2)発明1、すなわち甲1(2)に記載された発明及び甲1(1)に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件特許発明4について
本件特許発明4は、請求項3を引用するものであり、本件特許発明3の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明3が、甲1(2)に記載された発明及び甲1(1)に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない以上、本件特許発明4も、甲1(2)に記載された発明及び甲1(1)に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件特許発明5について
(ア)対比
本件特許発明5と甲1(2)発明2を対比するに、甲1(2)発明2における「セルロースナノファイバーの分散体」は本件特許発明5における「組成物製造用粉末状セルロースナノファイバー」と「物」であるという限りにおいて一致する。
したがって、両者は次の点で一致する。
「未変性のセルロースナノファイバー並びにP-OH基、-COOH基、-SO3H基、及び/または、それらの金属塩基、ならびにイミダゾリン基の群から選ばれた少なくとも1種が結合した分散剤を配合した物の製造方法。」
そして、両者は次の点で相違する。
<甲1(2)発明2との相違点1>
「物」に関して、本件特許発明5においては、「組成物製造用粉末状セルロースナノファイバー」であるのに対し、甲1(2)発明2においては、「分散体」である点。
<甲1(2)発明2との相違点2>
本件特許発明5においては、「(A)未変性の粉末状のセルロースナノファイバー」に対し、「(B)P-OH基、-COOH基、-SO3H基、及び/または、それらの金属塩基、ならびにイミダゾリン基の群から選ばれた少なくとも1種が結合した分散剤」を「固形分換算で1~40重量%配合してなり」、かつ「嵩密度が90~200g/Lである」のに対し、甲1(2)発明2においては、分散剤の配合量及び嵩密度がそのようには特定されていない点。
<甲1(2)発明2との相違点3>
本件特許発明5においては、「ゼータ電位が-20~-50mVであり、さらにメディアレス分散機で分散されて」いるのに対し、甲1(2)発明2においては、そのようには特定されていない点。
(イ)判断
そこで、まず、甲1(2)発明2との相違点1について検討する。
甲1(2)発明2との相違点1は、甲1(2)発明1との相違点1と同じであるから、本件特許発明3の判断と同様であり、甲1(2)発明2において、甲1(2)発明2との相違点1に係る本件特許発明5の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
したがって、甲1(2)発明2との相違点2及び3について検討するまでもなく、本件特許発明5は、甲1(2)発明2、すなわち甲1(2)に記載された発明及び甲1(1)に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 本件特許発明6ないし8について
本件特許発明6ないし8は、請求項5を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明5の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明5が、甲1(2)に記載された発明及び甲1(1)に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない以上、本件特許発明6ないし8も、甲1(2)に記載された発明及び甲1(1)に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
オ 本件特許発明9について
本件特許発明9は、請求項3又は4を引用するものであり、本件特許発明3又は4の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明3又は4が、甲1(2)に記載された発明及び甲1(1)に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない以上、本件特許発明9も、甲1(2)に記載された発明及び甲1(1)に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
カ 本件特許発明10について
(ア)対比
本件特許発明10と甲1(2)発明1を対比するに、甲1(2)発明1における「セルロースナノファイバーの分散体」は本件特許発明10における「組成物」と「物」であるという限りにおいて一致する。
したがって、両者は次の点で一致する。
「未変性のセルロースナノファイバー及び分散剤を配合した物。」
そして、両者は次の点で相違する。
<甲1(2)発明1との相違点3>
「物」に関して、本件特許発明10においては、「ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル-スチレン(AS)樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリケトン樹脂、および環状ポリオレフィン樹脂の群から選ばれた少なくとも1種である」「(C-1)熱可塑性樹脂」を「マトリックス成分の主成分」とする「組成物」であるのに対し、甲1(2)発明1においては、「分散体」である点。
<甲1(2)発明1との相違点4>
本件特許発明10においては、「(A)未変性の粉末状のセルロースナノファイバー」に対し、「(B)分散剤」を固形分換算で1~40重量%配合してなり、かつ嵩密度が90~200g/Lであるのに対し、甲1(2)発明1においては、分散剤の配合量及び嵩密度がそのようには特定されていない点。
(イ)判断
そこで、まず、甲1(2)発明1との相違点3について検討する。
甲1(2)には、甲1(2)発明1における「分散体」を、「ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル-スチレン(AS)樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリケトン樹脂、および環状ポリオレフィン樹脂の群から選ばれた少なくとも1種である」「(C-1)熱可塑性樹脂」を「マトリックス成分の主成分」とする「組成物」とする動機付けとなる記載はないし、甲1(1)にも動機付けとなる記載はない。
したがって、甲1(2)発明1において、甲1(2)発明1との相違点3に係る本件特許発明10の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
よって、甲1(2)発明1との相違点4について検討するまでもなく、本件特許発明10は、甲1(2)発明1、すなわち甲1(2)に記載された発明及び甲1(1)に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
キ 本件特許発明11について
(ア)対比
本件特許発明11と甲1(2)発明1を対比するに、甲1(2)発明1における「セルロースナノファイバーの分散体」は本件特許発明11における「組成物」と「物」であるという限りにおいて一致する。
したがって、両者は次の点で一致する。
「未変性のセルロースナノファイバー及び分散剤を配合した物。」
そして、両者は次の点で相違する。
<甲1(2)発明1との相違点3’>
「物」に関して、本件特許発明11においては、「フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ジアリル(テレ)フタレート樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂、および熱硬化性ポリイミド樹脂の群から選ばれた少なくとも1種である」「(C-2)熱硬化性樹脂」を「マトリックス成分の主成分」とする「組成物」であるのに対し、甲1(2)発明1においては、「分散体」である点。
<甲1(2)発明1との相違点4>
本件特許発明11においては、「(A)未変性の粉末状のセルロースナノファイバー」に対し、「(B)分散剤」を固形分換算で1~40重量%配合してなり、かつ嵩密度が90~200g/Lであるのに対し、甲1(2)発明1においては、分散剤の配合量及び嵩密度がそのようには特定されていない点。
(イ)判断
そこで、まず、甲1(2)発明1との相違点3’について検討する。
甲1(2)には、甲1(2)発明1における「分散体」を、「フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ジアリル(テレ)フタレート樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂、および熱硬化性ポリイミド樹脂の群から選ばれた少なくとも1種である」「(C-2)熱硬化性樹脂」を「マトリックス成分の主成分」とする「組成物」とする動機付けとなる記載はないし、甲1(1)にも動機付けとなる記載はない。
したがって、甲1(2)発明1において、甲1(2)発明1との相違点3’に係る本件特許発明11の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
よって、甲1(2)発明1との相違点4について検討するまでもなく、本件特許発明11は、甲1(2)発明1、すなわち甲1(2)に記載された発明及び甲1(1)に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ク 本件特許発明12について
(ア)対比
本件特許発明12と甲1(2)発明1を対比するに、甲1(2)発明1における「セルロースナノファイバーの分散体」は本件特許発明12における「組成物」と「物」であるという限りにおいて一致する。
したがって、両者は次の点で一致する。
「未変性のセルロースナノファイバー及び分散剤を配合した物。」
そして、両者は次の点で相違する。
<甲1(2)発明1との相違点3’’>
「物」に関して、本件特許発明12においては、「天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン- ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム(ACM)、およびフッ素ゴム(FKM)の群から選ばれた少なくとも1種である」「(C-3)ゴム」を「マトリックス成分の主成分」とする「組成物」であるのに対し、甲1(2)発明1においては、「分散体」である点。
<甲1(2)発明1との相違点4>
本件特許発明12においては、「(A)未変性の粉末状のセルロースナノファイバー」に対し、「(B)分散剤」を固形分換算で1~40重量%配合してなり、かつ嵩密度が90~200g/Lであるのに対し、甲1(2)発明1においては、分散剤の配合量及び嵩密度がそのようには特定されていない点。
(イ)判断
そこで、まず、甲1(2)発明1との相違点3’’について検討する。
甲1(2)には、甲1(2)発明1における「分散体」を、「天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン- ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム(ACM)、およびフッ素ゴム(FKM)の群から選ばれた少なくとも1種である」「(C-3)ゴム」を「マトリックス成分の主成分」とする「組成物」とする動機付けとなる記載はないし、甲1(1)にも動機付けとなる記載はない。
したがって、甲1(2)発明1において、甲1(2)発明1との相違点3’’に係る本件特許発明12の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
したがって、甲1(2)発明1との相違点4について検討するまでもなく、本件特許発明12は、甲1(2)発明1、すなわち甲1(2)に記載された発明及び甲1(1)に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ケ 本件特許発明13について
本件特許発明13は、請求項9ないし12を引用するものであり、本件特許発明9ないし12のいずれかの発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明9ないし12が、甲1(2)に記載された発明及び甲1(1)に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない以上、本件特許発明13も、甲1(2)に記載された発明及び甲1(1)に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
コ 本件特許発明14について
本件特許発明14は、請求項9ないし13を引用するものであり、本件特許発明9ないし13のいずれかの発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明9ないし13が、甲1(2)に記載された発明及び甲1(1)に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない以上、本件特許発明14も、甲1(2)に記載された発明及び甲1(1)に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2 特許異議申立人2の申立て理由についての判断
(1)拡大先願について
ア 先願明細書等に記載された事項及び先願発明
(ア)先願明細書等に記載された事項
特許異議申立人2が、甲2(1)として提出した特開2017-78145号公報(特願2015-207933号の願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された内容を公開したものである。以下、「先願明細書等」という。)には、次の記載がある。なお、下線は当審で付したものである。
・「【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースナノファイバーと水とを含み、上記セルロースナノファイバーの含有量が1質量%超50質量%以下である混合物をダブルドラムドライヤーにより乾燥させる工程
を備えるセルロースナノファイバー乾燥体の製造方法。
【請求項2】
上記セルロースナノファイバーにおけるカルボキシ基の含有量が0.5mmol/g以下である請求項1に記載のセルロースナノファイバー乾燥体の製造方法。
【請求項3】
上記乾燥工程の前に、
水分散状態のパルプへの微細化処理により、上記セルロースナノファイバーの水分散液を得る工程、及び
上記水分散液の濃縮により、上記混合物を得る工程
をさらに備える請求項1又は請求項2に記載のセルロースナノファイバー乾燥体の製造方法。
【請求項4】
上記混合物が、ヒドロキシ酸、ヒドロキシ酸塩、グリセリン、グリセリン誘導体又はこれらの組み合わせを含む請求項1、請求項2又は請求項3に記載のセルロースナノファイバー乾燥体の製造方法。」
・「【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロースナノファイバー乾燥体の製造方法に関する。」
・「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、再分散性が良好なセルロースナノファイバー乾燥体を省エネルギーで製造する方法を提供することである。」
・「【0011】
上記セルロースナノファイバーにおけるカルボキシ基の含有量としては、0.5mmol/g以下が好ましい。このように、カルボキシ基の含有量が小さく、水との親和性が抑えられているセルロールナノファイバーを用いることで、ダブルドラムドライヤーによる緩和な乾燥によって、より効率的に乾燥させることができる。また、このようなセルロースナノファイバーを用いることで、得られる乾燥体の再分散性をさらに高めることができる。」
・「【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、適宜図面を参照にしつつ、本発明の一実施形態に係るセルロースナノファイバー乾燥体の製造方法について詳説する。
【0018】
当該セルロースナノファイバー乾燥体の製造方法は、セルロースナノファイバーと水とを含む混合物をダブルドラムドライヤーにより乾燥させる工程(乾燥工程)を備える。当該製造方法は、上記乾燥工程の前に、水分散状態のパルプへの微細化処理により、上記セルロースナノファイバーの水分散液を得る工程(微細化工程)、及び上記水分散液の濃縮により、上記混合物を得る工程(濃縮工程)をさらに備えることが好ましい。以下、各工程について詳説する。
【0019】
(微細化工程)
本微細化工程においては、水分散状態のパルプへ微細化処理を施すことにより、水分散状態のセルロールナノファイバーを得る。セルロースナノファイバーとは、植物原料であるパルプ(パルプ繊維)を解繊して得られる微細なセルロース繊維をいい、一般的に繊維幅がナノサイズ(1nm以上1000nm以下)のセルロース微細繊維を含むセルロース繊維をいう。
【0020】
セルロースナノファイバーの原料となるパルプとしては、例えば
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)等の広葉樹クラフトパルプ(LKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)等の針葉樹クラフトパルプ(NKP)等の化学パルプ;
ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、晒サーモメカニカルパルプ(BTMP)等の機械パルプ;
茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙、更紙古紙等から製造される古紙パルプ;
古紙パルプを脱墨処理した脱墨パルプ(DIP)などが挙げられる。これらは、本発明の効果を損なわない限り、単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
パルプとしては、これらの中で、乾燥が容易となる観点などから、化学パルプが好ましく、広葉樹クラフトパルプ(LKP)がより好ましい。このようなパルプは、不純物が少ないという利点もある。
・・・(略)・・・
【0028】
セルロースナノファイバーは、水分散状態でレーザー回折法により測定される擬似粒度分布曲線において1つのみのピークを有することが好ましい。また、このピークとなるセルロースナノファイバーの粒径(最頻値)としては、例えば5μm以上25μm以下が好ましい。このような、サイズが比較的均等であり、かつ微細過ぎないセルロースナノファイバーを用いることで、乾燥効率がより高まり、また、均一的なムラの無い乾燥ができるため、再分散性がより優れる乾燥体を得ることができる。上記粒径としては、10μm以上がより好ましく、15μm以上がさらに好ましい。なお、「擬似粒度分布曲線」とは、粒度分布測定装置(例えば株式会社セイシン企業のレーザー回折・散乱式粒度分布測定器)を用いて測定される体積基準粒度分布を示す曲線を意味する。
・・・(略)・・・
【0030】
(濃縮工程)
本濃縮工程においては、上記微細化工程で得られたセルロースナノファイバーの水分散液を濃縮する。この濃縮とは、水分散液中の分散媒である水の一部を除去し、セルロースナノファイバーの含有量(濃度)を高めることを言う。上記水分散液を濃縮したものが、乾燥工程に供される混合物となる。このように濃縮工程を経た混合物を乾燥工程に供することで、効率的でエネルギー消費量の少ない乾燥を行うことができる。
・・・(略)・・・
【0032】
(乾燥工程)
本乾燥工程においては、セルロースナノファイバーと水とを含む混合物をダブルドラムドライヤーにより乾燥させる。当該製造方法によれば、乾燥にダブルドラムドライヤーを用いることで、穏やかにセルロースナノファイバーを乾燥させることができ、セルロースナノファイバー間の凝集が緩やかな乾燥体を得ることができる。これにより、得られた乾燥体の再分散性が良好になる。また、当該製造方法によれば、比較的高濃度で、かつ流動性の低い又は流動性の無い混合物であっても、ダブルドラムドライヤーを用いることで、再分散性が良好な乾燥体を得ることができる。
【0033】
乾燥工程に供せられるこの混合物におけるセルロースナノファイバーの含有量は、1質量%超である。この含有量の下限としては、1.5質量%が好ましく、5質量%であってもよく、10質量%であってもよい。一方、この含有量の上限としては、50質量%であり、30質量%が好ましく、10質量%であってもよく、5質量%であってもよい。当該製造方法によれば、比較的高濃度の混合物を乾燥させることで、省エネルギーでセルロースナノファイバーを得ることができる。セルロースナノファイバーの含有量が上記下限を上回ることにより、乾燥効率が高まり、省エネルギー化を図ることができる。一方、セルロースナノファイバーの含有量が上記上限以下であることにより、混合物をダブルドラムドライヤーにより良好に乾燥させることができ、緩やかな凝集によって、嵩密度が低く再分散性の高い乾燥体を得ることができる。
【0034】
乾燥工程に供せられる混合物は、再分散剤として、ヒドロキシ酸、ヒドロキシ酸塩、グリセリン、グリセリン誘導体又はこれらの組み合わせを含むことが好ましい。混合物にこれらの再分散剤をさらに加えることで、得られる乾燥体の再分散性をさらに高めることなどができる。
【0035】
ヒドロキシ酸は、ヒドロキシカルボン酸、オキシ酸等とも称され、ヒドロキシ基(-OH)を有するカルボン酸をいう。ヒドロキシ酸としては、グリコール酸、乳酸、タルトロン酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、イソクエン酸、メバロン酸、パントイン酸、リシノール酸等の脂肪族ヒドロキシ酸、サリチル酸、バニリン酸、没食子酸等の芳香族ヒドロキシ酸等を挙げることができる。
・・・(略)・・・
【0042】
上記混合物における上記再分散剤の含有量は特に限定されないが、セルロースナノファイバー100質量部に対する下限としては、0.1質量部が好ましく、1質量部がより好ましく、10質量部がさらに好ましく、30質量部が特に好ましい。一方、この上限としては、200質量部が好ましく、100質量部がより好ましい。上記再分散剤の含有量が上記下限未満の場合、再分散剤を用いたことによる十分な再分散性向上効果が表れない場合がある。逆に、上記再分散剤の含有量が上記上限を超える場合、再分散剤の使用量が増加し、コスト高となるおそれがある。
・・・(略)・・・
【0047】
(セルロースナノファイバー乾燥体)
このような各工程を経て得られるセルロースナノファイバー乾燥体は、良好な再分散性を有する。上記セルロースナノファイバー乾燥体は、通常、粉末状又はフレーク状とすることができる。
・・・(略)・・・
【実施例】
【0053】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
・・・(略)・・・
【0058】
[実施例1]
原料パルプ(LBKP:水分97.5質量%)に対し、ナイヤガラビーターを用いて2時間30分かけて予備叩解を行った。次いで、石臼型分散機(増幸産業社の「スーパーマスコロイダー」)を用いた解繊処理を2回施し、セルロースナノファイバーの水分散液を得た。この水分散液に含まれるセルロースナノファイバーは、レーザー回折を用いた粒度分布測定の疑似粒度分布において1つのピークを有し、保水度は350%以上であった。上記ピークにおける粒径は、20.2μmであった。また、カルボキシ基の含有量は、0.05mmol/gであった。
【0059】
一方、水70gと、グリセリン30gとを混合し、マグネットスターラーを用い60分間600rpmで撹拌し、グリセリン水溶液を得た。
【0060】
得られた濃度2.5質量%のセルロースナノファイバーの水分散液5,000gと、濃度30質量%のグリセリン水溶液83gと、水1,167gとを混合し、マグネットスターラーを用い60分間1,200rpmで撹拌し、混合物を得た。得られた混合物におけるセルロースナノファイバー(CNF)とグリセリンとの混合比(質量比)は100:20、CNFの含有量は約2.0質量%となった。この混合物をダブルドラムドライヤー(ジョンソンボイラー社の「ジョンミルダーJM-T型」)にて、ドラム回転数3rpm、ドラム表面温度135℃で乾燥させ、実施例1のセルロースナノファイバー乾燥体を得た。得られたセルロースナノファイバー乾燥体の水分率は、5質量%であった。
【0061】
[実施例2]
得られた濃度2.5質量%のセルロースナノファイバーの水分散液5,000gと、濃度30質量%のグリセリン水溶液250g、水1,000gとを混合したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、セルロースナノファイバー乾燥体を得た。なお、この際、乾燥に供される混合物におけるセルロースナノファイバー(CNF)とグリセリンとの混合比(質量比)は100:60、CNFの含有量は2.0質量%となった。
【0062】
[実施例3]
実施例1と同様の方法にて、濃度2.5質量%のセルロースナノファイバーの水分散液を得た。一方、水70gと、クエン酸ナトリウム30gとを混合し、マグネットスターラーを用い60分間600rpmで撹拌し、クエン酸ナトリウム水溶液を得た。
【0063】
得られた濃度2.5質量%のセルロースナノファイバーの水分散液5,000gと、濃度30質量%のクエン酸ナトリウム水溶液83gと、水1,167gとを混合し、マグネットスターラーを用い60分間1,200rpmで撹拌し、混合物を得た。得られた混合物におけるセルロースナノファイバー(CNF)とクエン酸ナトリウムとの混合比(質量比)は100:20、CNFの含有量は約2.0質量%となった。この混合物をダブルドラムドライヤー(ジョンソンボイラー社の「ジョンミルダーJM-T型」)にて、ドラム回転数3rpm、ドラム表面温度135℃で乾燥させ、セルロースナノファイバー乾燥体を得た。得られたセルロースナノファイバー乾燥体の水分率は、5質量%であった。
【0064】
[実施例4]
得られた濃度2.5質量%のセルロースナノファイバーの水分散液5,000gと、濃度30質量%のクエン酸ナトリウム水溶液250gと、水1、000gとを混合したこと以外は、実施例3と同様の操作を行い、セルロースナノファイバー乾燥体を得た。なお、この際、乾燥に供される混合物におけるセルロースナノファイバー(CNF)とクエン酸ナトリウムとの混合比(質量比)は100:60、CNFの含有量は2.0質量%となった。
【0065】
[比較例1]
実施例1と同様の方法にて、セルロースナノファイバー(CNF)とグリセリンとの混合比(質量比)が100:20であり、CNFの含有量が2.0質量%の混合液を得た。【0066】
上記混合物をスプレードライヤー(プリス社の「TR160」)にて、アトマイザー回転数14,000rpm、入口温度200℃、供給量3kg/hで乾燥させ、セルロースナノファイバー乾燥体を得た。得られたセルロースナノファイバーの水分率は、5質量%であった。
【0067】
[比較例2]
実施例3と同様の方法にて、セルロースナノファイバー(CNF)とクエン酸ナトリウムとの混合比(質量比)が100:20であり、CNFの含有量が2.0質量%の混合液を得た。
【0068】
上記混合物をスプレードライヤー(プリス社の「TR160」)にて、アトマイザー回転数14,000rpm、入口温度200℃、供給量3kg/hで乾燥させ、セルロースナノファイバー乾燥体を得た。得られたセルロースナノファイバーの水分率は、5質量%であった。
【0069】
<評価>
[上澄濃度(%)]
得られた各セルロースナノファイバー乾燥体0.2gを水9.8gに添加し、次いで、マグネティックスターラーを用い60分間、800rpmで撹拌して、各セルロースナノファイバーの再分散液を得た。得られた再分散液を10分間静置した後、上澄み液の濃度を以下の方法にて測定した。なお、完全に再分散した状態であれば、濃度は2.0質量%となる。
【0070】
セルロースナノファイバーの再分散液(沈殿があるものは上澄み液)を1g採取し、容器に移す。105℃で2時間乾燥後、電子天秤にて質量を測定し、濃度を算出した。これを2回行い、平均値を求めた。測定結果を表1に示す。
【0071】
[嵩密度(g/ml)]
得られた各セルロースナノファイバー乾燥体について、JIS-K-5101-12-1(2004)に準じた静置法にて、嵩密度(見掛け密度)を測定した。測定結果を表1に示す。表中の「-」は、測定していないことを示す。
【0072】
[形状]
得られた各セルロースナノファイバー乾燥体の形状を目視にて観察した。その形状を表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
表1に示されるように、実施例1~4のセルロースナノファイバー乾燥体から得られた再分散液の上澄み液の濃度は、比較例1~2と比べて高く、再分散性に優れることがわかる。また、実施例1~4のドラム乾燥は、比較例1、2のスプレー乾燥に対して、電力消費量の約41%削減できた。
【0075】
[実施例5]
実施例1と同様の方法にて、濃度2.5質量%のセルロースナノファイバーの水分散液を得た。次いで、これを水で希釈することにより濃度2質量%のセルロースナノファイバーの水分散液(混合物)を得た。得られた濃度2質量%のセルロースナノファイバーの水分散液をダブルドラムドライヤー(ジョンソンボイラー社の「ジョンミルダーJM-T型」)にて、ドラム回転数3rpm、ドラム表面温度135℃で乾燥させ、実施例5のセルロースナノファイバー乾燥体を得た。
【0076】
[実施例6~7、比較例3]
得られたセルロースナノファイバーの水分散液を希釈又は濃縮することにより、表2に示す固形分濃度とし、このセルロースナノファイバーの水分散液をダブルドラムドライヤーにて乾燥させたこと以外は、実施例5と同様の操作をして、実施例6~7及び比較例3のセルロースナノファイバー乾燥体を得た。得られた各セルロースナノファイバーの嵩密度と水分率とを測定した。測定値を表2に示す。
【0077】
【表2】
【0078】
表2に示されるように、セルロースナノファイバー濃度が1質量%の分散液(混合物)を乾燥させた比較例3においては、同条件では十分な乾燥体が得られなかった。一方、セルロースナノファイバー濃度が1質量%を超える分散液(混合物)を用いた実施例5~7においては、十分な乾燥体が得られることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明のセルロースナノファイバー乾燥体の製造方法は、再分散性が良好なセルロースナノファイバー乾燥体を低エネルギーで製造することができる。従って、当該製造方法により得られるセルロースナノファイバー乾燥体は、ろ過材、ろ過助剤、イオン交換体の基材、クロマトグラフィー分析機器の充填材、樹脂及びゴムの配合用充填剤、化粧品の配合剤、食品及び塗料の粘度保持剤、食品原料生地の強化剤、水分保持剤、食品安定化剤、低カロリー添加物、乳化安定化助等の従来のセルロースナノファイバーの使用用途に好適に用いることができる。」
(イ)先願発明
先願明細書等に記載された事項、特に実施例7に関する記載を整理すると、先願明細書等には次の発明(以下、「先願発明1」という。)が記載されていると認める。
「カルボキシ基の含有量が0.05mmol/gのフレーク状のセルロースナノファイバーに対し、再分散剤としてグリセリンを20質量%配合してなり、かつ嵩密度が0.10g/mlである、樹脂及びゴムの配合用充填剤に用いることのできるフレーク状セルロースナノファイバー。」
また、先願発明1は、樹脂及びゴムの配合用充填剤に好適に用いることのできるものであり、さらに、樹脂には熱硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂の2種類があることは当業者に自明の事項であるところ、これらのいずれもセルロースナノファイバーが充填される樹脂として汎用されていることから、先願発明1は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂およびゴムから選ばれたマトリックス成分を主成分とする組成物の複合用充填剤として用いることができるものである。
したがって、先願明細書等には、次の発明(以下、「先願発明2」という。)も記載されていると認める。
「カルボキシ基の含有量が0.05mmol/gのフレーク状のセルロースナノファイバーに対し、再分散剤としてグリセリンを20質量%配合してなり、かつ嵩密度が0.10g/mlである、樹脂及びゴムの配合用充填剤に用いることのできるフレーク状セルロースナノファイバー、ならびに熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂およびゴムから選ばれたマトリックス成分を主成分とする組成物。」
イ 対比・判断
(ア)本件特許発明3について
本件特許発明3と先願発明1を対比する。
本件特許発明3における「未変性」の意味は、積極的に変性を行っているもの以外のものであるという意味であることは本件特許の発明の詳細な説明の【0053】以降の記載及び技術常識から明らかである。そして、先願明細書等に記載された実施例7において使用されているセルロースナノファイバーは、積極的に変性が行われているものではない。したがって、先願発明1における「カルボキシ基の含有量が0.05mmol/gの」は、本件特許発明3における「未変性の」に相当する。
本件特許発明3における「粉末状」の意味は、本件特許明細書の【0031】の「本発明において、「粉末状」ナノファイバーとは、固体状の形態を有するナノファイバーが細かく砕かれた状態をいうが、本発明の「嵩密度」を満たす限り、乾燥後の固形物が膜状、シート状、立体状などいかなる形状のものも、この「粉末状」に広く包含されるものと解釈すべきであるが、後述する溶融混練過程における樹脂への分散性を考慮すると、細かく砕かれたものが好ましい。」という記載によると、本件特許発明3の「嵩密度」の数値範囲を満たす限り、いかなる形状のものでもよいという意味であり、先願発明1の嵩密度の0.10g/mlは、換算すると「100g/L」であり、本件特許発明3の「嵩密度」の「90~200g/L」を満たすから、先願発明1における「フレーク状」は、本件特許発明3における「粉末状」に相当する。
先願発明1における「再分散剤」としての「グリセリン」は、本件特許発明3における「P-OH基、-COOH基、-SO3H基、及び/または、それらの金属塩基、ならびにイミダゾリン基の群から選ばれた少なくとも1種が結合した分散剤」と、「分散剤」という限りにおいて一致する。
先願発明1における「グリセリン」の配合量である「20質量%」は、本件特許発明3における「分散剤」の配合量である「固形分換算で1~40質量%」に包含される。
したがって、本件特許発明3と先願発明1は次の点で一致する。
「(A)未変性の粉末状のセルロースナノファイバーに対し、(B)分散剤を固形分換算で1~40重量%配合してなり、かつ嵩密度が90~200g/Lである組成物製造用粉末状セルロースナノファイバー。」
そして、両者は次の点で相違する。
<先願発明1との相違点1>
「分散剤」に関して、本件特許発明3においては、「P-OH基、-COOH基、-SO3H基、及び/または、それらの金属塩基、ならびにイミダゾリン基の群から選ばれた少なくとも1種が結合した」ものであるのにたいし、先願発明1においては、「グリセリン」である点。
そこで、先願発明1との相違点1について検討するに、先願発明1における「グリセリン」は、「P-OH基、-COOH基、-SO3H基、及び/または、それらの金属塩基、ならびにイミダゾリン基の群から選ばれた少なくとも1種が結合した」ものではないから、先願発明1との相違点1は実質的な相違点である。
したがって、本件特許発明3は、先願発明1、すなわち先願明細書等に記載された発明と同一であるとはいえない。
(イ)本件特許発明4について
本件特許発明4は、請求項3を引用するものであり、本件特許発明3の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明3が、先願明細書等に記載された発明と同一であるといえない以上、本件特許発明4も、先願明細書等に記載された発明と同一であるとはいえない。
(ウ)本件特許発明9について
本件特許発明9は、請求項3又は4を引用するものであり、本件特許発明3又は4の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明3又は4が、先願明細書等に記載された発明と同一であるといえない以上、本件特許発明9も、先願明細書等に記載された発明と同一であるとはいえない。
(エ)本件特許発明10について
本件特許発明10と先願発明2を対比する。
両者の間には、本件特許発明3と先願発明1との間と同様の相当関係が成り立つ。
したがって、両者は次の点で一致する。
「(A)未変性のセルロースナノファイバーに対し、(B)分散剤を固形分換算で1~40重量%配合してなり、かつ嵩密度が90~200g/Lである組成物製造用粉末状セルロースナノファイバー、ならびに(C-1)熱可塑性樹脂をマトリックス成分の主成分とする組成物。」
そして、両者は次の点で相違する。
<先願発明2との相違点2>
「(C-1)熱可塑性樹脂」に関して、本件特許発明10においては、「ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル-スチレン(AS)樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリケトン樹脂、および環状ポリオレフィン樹脂の群から選ばれた少なくとも1種である」であるのに対し、先願発明2においては、不明な点。
そこで、先願発明2との相違点2について検討するに、先願明細書等に、熱可塑性樹脂として何を使用するかは何ら記載されていないので、先願発明2との相違点2は実質的な相違点である。
したがって、本件特許発明10は、先願発明2、すなわち先願明細書等に記載された発明と同一であるとはいえない。
(オ)本件特許発明11について
本件特許発明11と先願発明2を対比する。
両者の間には、本件特許発明3と先願発明1との間と同様の相当関係が成り立つ。
したがって、両者は次の点で一致する。
「(A)未変性のセルロースナノファイバーに対し、(B)分散剤を固形分換算で1~40重量%配合してなり、かつ嵩密度が90~200g/Lである組成物製造用粉末状セルロースナノファイバー、ならびに(C-2)熱硬化性樹脂をマトリックス成分の主成分とする組成物。」
そして、両者は次の点で相違する。
<先願発明2との相違点3>
「(C-2)熱硬化性樹脂」に関して、本件特許発明11においては、「熱硬化性樹脂が、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ジアリル(テレ)フタレート樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂、および熱硬化性ポリイミド樹脂の群から選ばれた少なくとも1種である」であるのに対し、先願発明2においては、不明な点。
そこで、先願発明2との相違点3について検討するに、先願明細書等に、熱硬化性樹脂として何を使用するかは何ら記載されていないので、先願発明2との相違点3は実質的な相違点である。
したがって、本件特許発明11は、先願発明2、すなわち先願明細書等に記載された発明と同一であるとはいえない。
(カ)本件特許発明12について
本件特許発明12と先願発明2を対比する。
両者の間には、本件特許発明3と先願発明1との間と同様の相当関係が成り立つ。
したがって、両者は次の点で一致する。
「(A)未変性のセルロースナノファイバーに対し、(B)分散剤を固形分換算で1~40重量%配合してなり、かつ嵩密度が90~200g/Lである組成物製造用粉末状セルロースナノファイバー、ならびに(C-3)ゴムをマトリックス成分の主成分とする組成物。」
そして、両者は次の点で相違する。
<先願発明2との相違点4>
「(C-3)ゴム」に関して、本件特許発明12においては、「天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン- ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム(ACM)、およびフッ素ゴム(FKM)の群から選ばれた少なくとも1種である」であるのに対し、先願発明2においては、不明な点。
そこで、先願発明2との相違点4について検討するに、先願明細書等に、ゴムとして何を使用するかは何ら記載されていないので、先願発明2との相違点4は実質的な相違点である。
したがって、本件特許発明12は、先願発明2、すなわち先願明細書等に記載された発明と同一であるとはいえない。
(キ)本件特許発明13について
本件特許発明13は、請求項9ないし12を引用するものであり、本件特許発明9ないし12のいずれかの発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明9ないし12が、先願明細書等に記載された発明と同一であるといえない以上、本件特許発明13も、先願明細書等に記載された発明と同一であるとはいえない。
(ク)本件特許発明14について
本件特許発明14は、請求項9ないし13を引用するものであり、本件特許発明9ないし13のいずれかの発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明9ないし13が、先願明細書等に記載された発明と同一であるといえない以上、本件特許発明14も、先願明細書等に記載された発明と同一であるとはいえない。
(2)サポート要件について
ア サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
イ 判断
(ア)本件特許の特許請求の範囲の記載は、上記第3 1のとおりである。
(イ)本件特許の発明の詳細な説明の【0001】ないし【0004】の記載によると本件特許発明の解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は、「セルロースナノファイバーなどのナノファイバーの、樹脂などのマトリックス成分中での分散性を高めることができる粉末状のナノファイバーと、その製造方法、ならびにこのナノファイバーをマトリックス成分中に均一に分散させた組成物を提供すること」である。
(ウ)そして、本件特許の発明の詳細な説明には、次の記載がある。
・「【0009】
<(B)分散剤>
(B)分散剤としては、P-OH基、-COOH基、-SO3H基、及び/または、それらの金属塩基、ならびにイミダゾリン基の群から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。
この(B)分散剤の具体例としては、(A)セルロースナノファイバーを分散できるものであれば、いかなるものでもよい。例えばリン酸またはポリリン酸、リン酸またはポリリン酸の塩、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸共重合体、ポリアクリル酸の塩、ポリアクリル酸共重合体の塩、オレフィン(a)および不飽和カルボン酸(塩)(b)を必須構成単量体として含む共重合体(詳細は、特開2015-196790号公報参照)、アルキルイミダゾリン系化合物(詳細は、特開2015-934号公報、特開2014-118521号公報参照)、ならびに酸価とアミン価とを有する分散剤(詳細は、特開2010-186124号公報参照)の群から選ばれた少なくとも1種などが挙げられ、特にリン酸、ポリリン酸、リン酸、もしくはポリリン酸の塩、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸共重合体、ポリアクリル酸の塩、ポリアクリル酸共重合体の塩などの陰イオン性分散剤が好ましい。
【0010】
このような陰イオン性分散剤としては、具体的にはピロリン酸、ポリリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸、メタリン酸、トリメタリン酸、テトラメタリン酸、ヘキサメタリン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリイタコン酸、オルトケイ酸、メタケイ酸、ホスホン酸、ポリマレイン酸共重合体、フミン酸、タンニン酸、ドデシル硫酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、リグニンスルホン酸、スルホン酸基結合ポリエステル及び/またはその塩が挙げられる。それらは単独重合体に限定されず、共重合体も好ましい。例えば、該ポリアクリル酸やポリメタクリル酸へ他の単量体を共重合させることも可能である。かかる単量体としては、例えば、α-ヒドロキシアクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和カルボン酸およびそれらの塩、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸などの不飽和スルホン酸およびそれらの塩などが挙げられる。
【0011】
分散剤は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。好ましい分散剤は、ポリリン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアニリンスルホン酸 及びそれらの共重合体及び/またはその塩が挙げられる。塩としては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウムなどの第2族元素の塩、アンモニウム塩が好ましく例示され、水に対する溶解性の点からナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩がより好ましく、カリウム塩が最も好ましい。
このような分散剤の具体例としては、東亜合成社製のA-6144(カルボン酸系分散剤)、東亜合成社製のA-6012(スルホン酸系の分散剤)、花王社製のデモールNL(スルホン酸系の分散剤)、東亜合成社製のSD-10(ポリアクリル酸系分散剤)などが挙げられる。
【0012】
なお、本発明に用いられる分散剤には、(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(共)重合体を併用してもよい。
ここで、(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとは、メタアクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと、アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとを統括した言葉である。これらは、常法に従って製造される。即ち、一例を挙げれば、2-ブロモエチルホスホリルジクロリドと2-ヒドロキシエチルホスホリルジクロリドと2-ヒドロキシエチルメタクリレートとを反応させて2-メタクリロイルオキシエチル-2′-ブロモエチルリン酸を得、更にこれをトリメチルアミンとメタノール溶液中で反応させて得ることができる。
【0013】
なお、このようなポリマー或いはコポリマー〔(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(共)重合体〕には既に市販されているものがあり、かかる市販品を購入して利用することもできる。この様な市販品としては、例えば、ポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンである、「リピジュアHM」(日本油脂株式会社製)、メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチルコポリマーである、「リピジュアPMB」(日本油脂株式会社製)、メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ステアリルコポリマーである、「リピジュアNR」(日本油脂株式会社製)等が好ましく例示できる。当該(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(共)重合体からなる分散剤は、セルロースナノファイバーと同様に生体適合性を有し、本発明による樹脂組成物を、医療あるいは食品用途に好適に使用できる。」
・「【0017】
なお、本発明のセルロースナノファイバー分散体は、(A)セルロースナノファイバー1重量部に対し、(B)分散剤を好ましくは固形換算で0.01~0.4重量部、さらに好ましくは0.02~0.3重量部、より好ましくは0.03~0.25重量部、最も好ましくは0.05~0.2重量部程度である。分散剤は多すぎても少なすぎてもセルロースナノファイバーの分散が充分でなく沈降を生じやすくなる。」
・「【0035】
本発明の粉末状セルロースナノファイバーの「嵩密度」は、通常、90~200g/L、好ましくは95~170g/L、さらに好ましくは100~150g/Lである。なお、乾燥した本発明の粉末状セルロースナノファイバーは、高度にミクロフィブリル化した形態を有しており、繊維同士の絡み合いが少なく、塊状に凝集又は絡み合った繊維集合体(塊状の乾燥物)を含まない場合が多い。すなわち、本発明の粉末状セルロースナノファイバーは、通常、粉末状の形態を有している。」
・「【0052】
(分散性および沈降安定性の評価方法)
得られた分散体組成物の分散性を目視で評価したのち、24時間静置して、セルロースナノファイバーの沈降の有無(CNF沈降安定性)を目視にて観察した。
分散性:
〇:分散体の色調が均一でムラがなく、かつ凝集物がない。
×:分散体が不均一で、凝集物が存在する。
沈降安定性:
〇:24時間静置後の分散体に層分離がなく、沈降を生じない。
×:24時間静置後に層分離が生じ、セルロースナノファイバーが沈降している。」
・「【0053】
実施例1~6、比較例1~2
メディアレス分散機として、寿工業社製のK―2を用い、分散媒としての精製水、セルロースナノファイバーおよびスルホン酸系分散剤(東亜合成社製、アロンA-6012)を分散したスラリー状物を当該メディアレス分散機に投入して回転周速30m/sで循環させ、せん断によりセルロースの分散を促進させて、分散が安定したセルロースナノファイバーを得た。
すなわち、上記の装置を用いて、セルロースナノファイバー原料(BiNFi-s、スギノマシン製)を0.1重量%、分散剤として表1記載の分散剤を表1の配合比で含む水分散液について5回メディアレス分散処理を繰り返し、セルロースナノファイバー分散体を調製した。
その後、凍結乾燥用の容器に移して-80℃にて凍結した後、凍結乾燥機(東京理化機械(株)製、FD-1)用いて凍結乾燥した。凍結乾燥後に粉砕機を用いて粉末状のセルロースナノファイバーを得た。得られたセルロースナノファイバー分散体及びその凍結粉砕による粉体物の性状は表1のとおりであった。粉体物の嵩密度はJIS K7365に準拠して測定した。
上記にて得られた分散体のゼータ電位、分散性、沈降安定性、および粉末の嵩密度を表1に示す。
【0054】
【表1】
」
・「【0055】
実施例7~9、比較例3
(セルロースナノファイバー粉体を熱可塑性樹脂マトリックス成分に添加する場合)
表1のうち、実施例2による粉末状のセルロースナノファイバーを、ポリ乳酸樹脂(Nature Works製、Ingeo Biopolymer 3001D)に対して1,5,10wt%になるように配合し、2軸の混練押出装置((株)プラスチック工学研究所社製「BT―30」、L/D=30)にてセルロースナノファイバーと樹脂を複合化した後、射出成形にてテストピースを成形し、JIS K7161に基づいて、力学特性を評価した。さらに複合材の流動性を、JIS K7210に基づき、島津フローテスター CFT-5000((株)島津製作所製)を用いて、バレル温度;200℃、測定荷重;700Nにて測定した。結果を表2に示す。
なお、比較例3は、セルロースナノファイバー無添加の例である。
・・・(略)・・・
【0057】
実施例7~9および比較例3の対比から、セルロースナノファイバーを添加すると、添加量に応じて流動性が低下し、引張強度、引張弾性率が向上しているが、反面、引張伸びが低下している。
このように、本発明によれば、市販の部材を用いて汎用的な操作で、セルロースナノファイバーが均一に微細分散した組成物を得ることができる。
・・・(略)・・・
【0059】
実施例10~12、比較例4~6
(セルロースナノファイバー粉体を熱硬化性樹脂マトリックス成分に添加する場合)
上記にて得られた実施例2のセルロースナノファイバー(分散剤を添加し、分散処理後に凍結乾燥したもの)粉末を、エポキシ樹脂(828、三菱化学(株)製)に対して1、5あるいは10重量%になるように配合し、さらに硬化剤(ジアミノジフェニルメタン(DDM)、和光純薬工業(株)製)をエポキシ樹脂に対して20重量%添加し、自動乳鉢にてセルロースナノファイバーと樹脂を複合化した。得られた樹脂混合体を80℃に加熱して粘度を下げ、キャビティ寸法:50×100mmのシリコーン型に注入し、加熱成形(150℃×4時間)にて3mmのシートを作製し、機械加工にて50×100×3mmのテストピースを作成し、複合材硬化物の曲げ強度ならびに曲げ弾性率を、JIS K7171に基づいて評価した。その結果を表3に示す(実施例10~12)。
一方、セルロースナノファイバーを含まないエポキシ樹脂を実施例10と同様にシリコーン型にて50×100×3mmのシートを作製し、50×100×3mmのテストピースを機械加工にて作製し、曲げ特性を評価した(比較例4)。
また、分散剤を配合していない以外、実施例10に準じて調製されたセルロースナノファイバー5
【0060】
さらに、分散剤を配合した実施例10のセルロースナノファイバーの添加量を15重量%とし、実施例10と同様にしてテストピースを作製し評価した(比較例6)。
以上の結果を表4に示す。
・・・(略)・・・
【0063】
表3の実施例10~12と比較例4~5の対比から、次のようなことが分かる。
すなわち、セルロースナノファイバーを添加していない比較例4の組成物に比べて、セルロースナノファイバーを1%添加した実施例10の組成物は、曲げ強度、曲げ弾性率が向上している。分散剤を添加していない比較例5のセルロースナノファイバーの組成物に対し、分散剤を添加した実施例11の組成物は、特に曲げ強度が比較例5に比べて大幅に向上している。これは、マトリックス成分中で、実施例11で用いたセルロースナノファイバーの分散性が分散剤により向上しているためと考えられる。実施例11に比べてセルロースナノファイバーの添加量を増やした実施例12では、曲げ強度、曲げ弾性率ともに向上している。
・・・(略)・・・
【0065】
実施例13~15、比較例7~9
(セルロースナノファイバー粉体をゴムマトリックス成分に添加する場合)
上記の実施例2にて得られた粉末を天然ゴム(NR)に対して1、5あるいは10重量%になるように配合し、2本オープンロールにてセルロースナノファイバーとゴムを複合化して厚さ1mmのシートを得た。その後打抜きにて力学的特性を評価する平行部寸法が5×12mmのマイクロダンベル状引張テストピースを作製し、JIS K6251に基づいて、ゴム複合材の力学特性を評価した。その結果を表4に示す(実施例13~15) 一方、セルロースナノファイバーを含まない天然ゴム(NR)を同様に機械加工にてテストピースを成形し、力学特性を評価した(比較例7)。
また、分散剤を配合していない以外、実施例1に準じて調製されたセルロースナノファイバー5重量%を用いて、実施例13と同様にしてテストピースを作製し、評価した(比較例8)。
以上の結果を表5に示す。
・・・(略)・・・
【0067】
表5から、次のことが分かる。
すなわち、セルロースナノファイバーを添加していない比較例7の組成物に比べて、セルロースナノファイバーを1%添加した実施例13の組成物は、引張強度が向上している。
また、分散剤を添加していない比較例8のセルロースナノファイバーの組成物に対し、分散剤を添加した実施例14の組成物は、引張強度が大幅に向上している。これは、マトリックス成分中で、実施例14で用いたセルロースナノファイバーの分散性が分散剤により向上しているためと考えられる。さらに、実施例14に比べてセルロースナノファイバーの添加量を増やした実施例15では、引張強度が大幅に向上している。」
(エ)発明の詳細な説明の【0009】ないし【0013】には、「分散剤」として特定の分散剤が多数例示されている。
また、発明の詳細な説明の【0053】及び【0054】には、4種類の特定の「分散剤」を用いた実施例が分散性に優れていることが記載され、【0055】ないし【0067】には、上記実施例が力学特性に優れていることが記載されている。
しかし、発明の詳細な説明の【0017】には、「分散剤」を「固形換算で1~40重量%」配合する理由が記載され、当該箇所には、特定の分散剤に限定して記載されているわけではない。
また、発明の詳細な説明の【0035】には、「粉末状セルロースナノファイバー」の「嵩密度」を「90~200g/l」とする理由が記載され、当該箇所には、特定の分散剤に限定して記載されているわけではない。
したがって、発明の詳細な説明の上記記載から、分散剤の種類によらず、分散剤の配合量及び粉末状セルロースナノファイバーの嵩密度を本件特許発明のように特定すれば、当業者は、発明の課題を解決できると認識することができる。
よって、本件特許発明、すなわち特許請求の範囲に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合するといえる。
(3)明確性要件について
ア 明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
イ 判断
(ア)本件特許の特許請求の範囲の請求項3ないし5及び9ないし13に「分散剤」という記載があるが、その記載自体から、「分散剤」が分散性を改善することを目的とする添加剤であることは、当業者に明らかであるし、その具体的な種類も本件特許の発明の詳細な説明の【0009】ないし【0013】に記載されている。
(イ)本件特許の特許請求の範囲の請求項3、5及び9ないし13に「未変性」という記載があるが、「未変性」が積極的に変性しているもの以外のものであることは、技術常識から当業者に明らかである。
(ウ)したがって、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえず、本件特許発明は明確である。
3 取消理由についての判断
平成30年5月23日付けで通知した取消理由は、特許異議申立人2の主張する拡大先願の申立て理由のうちの、訂正前の請求項1、2、9及び14に係る特許に対するものと同旨であるから、上記第5 2(1)で検討したことと同様に、該取消理由では、本件特許の請求項9及び14に係る特許を取り消すことはできない。
第6 むすび
したがって、取消理由並びに特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項3ないし14に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項3ないし14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項1及び2に係る特許は、訂正により削除されたため、特許異議申立人1及び2による特許異議の申立てについて、請求項1及び2に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2018-700171