特許異議申立
2017-700850
基礎部の配管構造
- 審判番号
- 2017-700850
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-129717外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年09月06日
- 審決日
- 2018年09月04日
- 公報発行日
- 2019年02月22日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】積水化学工業株式会社
- 【権利者代理人】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
- 【異議申立人】藤谷 しげ子
- 分類
- P1651.121-ZDA(E03C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6093808号発明「基礎部の配管構造」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6093808号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、3、4について訂正することを認める。
特許第6093808号の請求項1、2に係る特許を取り消す。
特許第6093808号の請求項3、4に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6093808号の請求項1~4に係る特許についての出願は、平成22年3月19日(優先日:平成21年4月22日、平成21年7月1日)に出願した特願2010-64028号の一部を平成27年6月29日に新たな特許出願としたものであって、平成29年2月17日付けでその特許権の設定登録がされ、その後、平成29年9月6日に特許異議申立人藤谷しげ子(以下「申立人」という。)より、請求項1~4に対して特許異議の申立てがされ、平成29年12月8日付け(発送日:平成29年12月14日)で取消理由が通知され、その指定期間内である平成30年2月9日に意見書の提出及び訂正請求がなされ、平成30年3月28日に申立人から意見書の提出がされ、平成30年5月28日付けで取消理由(決定の予告)が通知されて、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは応答がなかったものである。
第2 訂正請求について
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下の(1)~(3)のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。)
(1)一群の請求項1及び2
ア 訂正事項1
訂正前の【請求項1】に
「建物の基礎部を構成するコンクリートを貫通するさや管と、該さや管に挿通される配管と、を備える基礎部の配管構造であって、
少なくとも、前記さや管の内面と前記配管の外面との間に、防蟻処理された内防蟻部材が設置され、
該内防蟻部材が、防蟻成分を含有する防蟻パッキンであり、
該防蟻パッキンは、弾性材料により円環状に形成され、外面にテーパ面が設けられて、前記配管と前記さや管との間に押し込められるものであることを特徴とする基礎部の配管構造。」
と記載されているのを、
「建物の基礎部を構成するコンクリートを貫通するさや管と、該さや管に挿通され、両端部に接着受口を備えた排水管と、前記排水管と接続された塩化ビニル樹脂管と、を備える基礎部の配管構造であって、
少なくとも、前記さや管の内面と前記排水管の外面との間に、防蟻処理された内防蟻部材が設置され、
該内防蟻部材が、防蟻成分を含有する防蟻パッキンであり、
該防蟻パッキンは、弾性材料により円環状に形成され、外面にテーパ面が設けられて、前記排水管の屋外側の前記接着受口と前記さや管との間に押し込められるものであることを特徴とする基礎部の配管構造。」
に訂正する。
イ 訂正事項2
訂正前の【請求項2】に
「請求項1に記載の基礎部の配管構造において、
前記さや管が、ブロー成形によって形成されたことを特徴とする基礎部の配管構造。」
と記載されているのを、
「建物の基礎部を構成するコンクリートを貫通するさや管と、該さや管に挿通される可撓性のない配管と、を備える基礎部の配管構造であって、
前記さや管が、ブロー成形によって形成され、
少なくとも、前記さや管の内面と前記配管の外面との間に、防蟻処理された内防蟻部材が設置され、
該内防蟻部材が、防蟻成分を含有する防蟻パッキンであり、
該防蟻パッキンは、弾性材料により円環状に形成され、外面にテーパ面が設けられて、前記配管と前記さや管との間に押し込められるものであることを特徴とする基礎部の配管構造。」
に訂正する。
(2)一群の請求項3及び4
ア 訂正事項1
訂正前の【請求項3】に
「建物の基礎部を構成するコンクリートを貫通するさや管と、該さや管に挿通される配管と、を備える基礎部の配管構造であって、
少なくとも、前記さや管の内面と前記配管の外面との間に、防蟻処理された内防蟻部材が設置され、
該内防蟻部材が、前記さや管の内面と前記配管の外面との間に設置されたバックアップ材の屋内側に充填された、防蟻成分を含有する防蟻シーリング材であることを特徴とする基礎部の配管構造。」
と記載されているのを、
「建物の基礎部を構成するコンクリートを貫通し、水平部と該水平部から立ち上がる立上り部とを備えるさや管と、該さや管に挿通される配管と、を備える基礎部の配管構造であって、
少なくとも、前記さや管の内面と前記配管の外面との間に、防蟻処理された内防蟻部材が設置され、
該内防蟻部材が、前記さや管の内面と前記配管の外面との間に設置されたバックアップ材の屋内側に充填された、防蟻成分を含有する防蟻シーリング材であることを特徴とする基礎部の配管構造。」
に訂正する。
イ 訂正事項2
訂正前の【請求項4】に
「請求項3に記載の基礎部の配管構造において、
前記配管が、可撓性を有する給水管であることを特徴とする基礎部の配管構造。」
と記載されているのを、
「建物の基礎部を構成するコンクリートを貫通するさや管と、該さや管に挿通される配管と、を備える基礎部の配管構造であって、
少なくとも、前記さや管の内面と前記配管の外面との間に、防蟻処理された内防蟻部材が設置され、
該内防蟻部材が、前記さや管の内面と前記配管の外面との間に設置されたバックアップ材の屋内側に充填された、防蟻成分を含有する防蟻シーリング材であり、
前記配管が、可撓性を有する給水管であり、
前記内防蟻部材が、前記さや管の屋外側の端面近傍であって、前記さや管と前記配管との間に充填された、防蟻シーリング材でもあることを特徴とする基礎部の配管構造。」
に訂正する。
(3)発明の名称
ア 訂正事項1
明細書の【発明の名称】の欄に「基礎部の配管構造及び基礎部の配管工法」と記載されているのを、「基礎部の配管構造」に訂正する。
2 訂正の適否
(1)一群の請求項1及び2
ア 訂正事項1について
(ア)訂正の目的について
訂正事項1は、基礎部の配管構造について、「配管」をより具体的に「両端部に接着受口を備えた排水管」とするとともに、「前記排水管と接続された塩化ビニル樹脂管」を付加して特定するするものであり、さらに防蟻パッキンが押し込まれる場所をより具体的に「前記排水管の屋外側の前記接着受口と前記さや管との間」と特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としているといえる。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否か
上記(ア)で説示したとおり、訂正事項1は、基礎部の配管構造についてより具体的に特定するものであって、発明のカテゴリー、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえない。
(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否か
本件特許明細書の段落【0021】には、「配管としての排水管72は、屈曲したさや管2に挿通される部分である内面平滑の可撓管(フレキシブル管)である排水管31と、その他の部分である塩化ビニル樹脂の排水管32,33と、によって構成されている」と記載され、また段落【0022】には、「両端部には塩ビ管の接着受口が一体化されている」と記載され、さらに段落【0028】には、「内防蟻部材としての防蟻パッキン50は、SBRなどの合成ゴムの弾性材料によって円環状に形成されるもので、さや管2の屋外側の端部に嵌め込まれている」と記載されているとおり、訂正事項1は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえる。
イ 訂正事項2について
(ア)訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項2の記載が訂正前の請求項1を引用するものであったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし独立形式請求項へと改め、さらに配管の特性を可撓性のないものに特定するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的としているといえる。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否か
上記(ア)で説示したとおり、訂正事項2は、請求項1の記載を引用しないものとし独立形式請求項へと改め、配管の特性を可撓性のないものに特定するものであって、発明のカテゴリー、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえない。
(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否か
本件特許明細書の段落【0119】には、「配管として可撓性のない塩化ビニル樹脂のものなどを用いることもできる」と記載されているとおり、訂正事項2は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえる。
(2)一群の請求項3及び4
ア 訂正事項1について
(ア)訂正の目的について
訂正事項1は、さや管について「水平部と該水平部から立ち上がる立上り部とを備える」ことを具体的に特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としているといえる。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否か
上記(ア)で説示したとおり、訂正事項1は、さや管を具体的に特定するものであって、発明のカテゴリー、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえない。
(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否か
本件特許明細書の段落【0019】には、「このさや管2は、塩化ビニルなどの合成樹脂によって途中で緩やかなL字状に屈曲した筒状に形成されるもので、水平部21とこの水平部21から斜め45度に立ち上がる立上がり部22とを一体に備えて、基礎部を構成するコンクリート10を貫通するように埋設されている」と記載されているとおり、訂正事項1は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえる。
イ 訂正事項2について
(ア)訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項4の記載が訂正前の請求項3を引用するものであったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項3の記載を引用しないものとし独立形式請求項へと改め、さらに内防蟻部材が「前記さや管の内面と前記配管の外面との間に設置されたバックアップ材の屋内側に充填された、防蟻成分を含有する防蟻シーリング材」と特定しているところ、これに加えて、内防蟻部材の充填場所について「前記さや管の屋外側の端面近傍であって、前記さや管と前記配管との間に充填された、防蟻シーリング材でもある」として、内防蟻部材の充填場所を限定するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的としているといえる。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否か
上記(ア)で説示したとおり、訂正事項2は、請求項3の記載を引用しないものとし独立形式請求項へと改め、内防蟻部材の充填場所を特定するものであって、発明のカテゴリー、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえない。
(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否か
本件特許明細書の段落【0077】には、「内防蟻部材としての防蟻シーリング材60は、ウレタン系やシリコン系などの合成樹脂によって形成されるもので、さや管2の屋外側の端面近傍であって保温材34aが取外された部分に充填されている」と記載され、また段落【0117】には、「防蟻シーリング材60が床下側の端部に充填される場合について説明したが、これに限定されるものではなく、屋外側の端部に充填されるものであってもよいし、途中の部分に充填されるものであってもよい」と記載され、さらに図6には、防蟻シーリング材60が、さや管2の屋外側の端面近傍であって、さや管2と配管34との間に充填されていることが図示されているから、訂正事項2は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえる。
(3)発明の名称
ア 訂正事項1について
(ア)訂正の目的について
訂正事項1は、発明の名称の記載を「基礎部の配管構造」とし、特許請求の範囲の内容に合致するようにしたものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否か
上記(ア)で説示したとおり、訂正事項1は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、発明のカテゴリー、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえない。
(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否か
訂正事項1は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることは明らかである。
(4)一群の請求項について
訂正前の請求項2は、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、請求項1ないし2は一群の請求項である。また、
訂正前の請求項4は、訂正の請求の対象である請求項3の記載を引用する関係にあるから、請求項3ないし4は一群の請求項である。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による、それぞれ一群の請求項1及び2、一群の請求項3及び4、発明の名称に係る訂正事項1~3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項、第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項1、2、3、4について訂正することを認める。
一群の請求項1及び2における訂正事項2(訂正後の請求項2関係)及び一群の請求項3及び4における訂正事項2(訂正後の請求項4関係)は、引用関係の解消を目的とする訂正であって、その訂正は認められるものである。そして、特許権者から、訂正後の請求項2及び4について訂正が認められるときはそれぞれ請求項1及び請求項3とは別の訂正単位として扱われることの求めがあったことから、訂正後の請求項1、2、3、4について請求項ごとに訂正することを認める。
第3 特許異議の申立てについて
1 訂正後の請求項1~4に係る発明
本件訂正請求により訂正された請求項1~4に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、以下のとおりのものである。(下線は訂正箇所を示す。)
(1)本件発明1
「【請求項1】
建物の基礎部を構成するコンクリートを貫通するさや管と、該さや管に挿通され、両端部に接着受口を備えた排水管と、前記排水管と接続された塩化ビニル樹脂管と、を備える基礎部の配管構造であって、
少なくとも、前記さや管の内面と前記排水管の外面との間に、防蟻処理された内防蟻部材が設置され、
該内防蟻部材が、防蟻成分を含有する防蟻パッキンであり、
該防蟻パッキンは、弾性材料により円環状に形成され、外面にテーパ面が設けられて、前記排水管の屋外側の前記接着受口と前記さや管との間に押し込められるものであることを特徴とする基礎部の配管構造。」
(2)本件発明2
「【請求項2】
建物の基礎部を構成するコンクリートを貫通するさや管と、該さや管に挿通される可撓性のない配管と、を備える基礎部の配管構造であって、
前記さや管が、ブロー成形によって形成され、
少なくとも、前記さや管の内面と前記配管の外面との間に、防蟻処理された内防蟻部材が設置され、
該内防蟻部材が、防蟻成分を含有する防蟻パッキンであり、
該防蟻パッキンは、弾性材料により円環状に形成され、外面にテーパ面が設けられて、前記配管と前記さや管との間に押し込められるものであることを特徴とする基礎部の配管構造。」
(3)本件発明3
「【請求項3】
建物の基礎部を構成するコンクリートを貫通し、水平部と該水平部から立ち上がる立上り部とを備えるさや管と、該さや管に挿通される配管と、を備える基礎部の配管構造であって、
少なくとも、前記さや管の内面と前記配管の外面との間に、防蟻処理された内防蟻部材が設置され、
該内防蟻部材が、前記さや管の内面と前記配管の外面との間に設置されたバックアップ材の屋内側に充填された、防蟻成分を含有する防蟻シーリング材であることを特徴とする基礎部の配管構造。」
(4)本件発明4
「【請求項4】
建物の基礎部を構成するコンクリートを貫通するさや管と、該さや管に挿通される配管と、を備える基礎部の配管構造であって、
少なくとも、前記さや管の内面と前記配管の外面との間に、防蟻処理された内防蟻部材が設置され、
該内防蟻部材が、前記さや管の内面と前記配管の外面との間に設置されたバックアップ材の屋内側に充填された、防蟻成分を含有する防蟻シーリング材であり、
前記配管が、可撓性を有する給水管であり、
前記内防蟻部材が、前記さや管の屋外側の端面近傍であって、前記さや管と前記配管との間に充填された、防蟻シーリング材でもあることを特徴とする基礎部の配管構造。」
2 取消理由の概要
訂正前の請求項1~4に係る特許に対して平成29年12月8日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術(甲2-8)に基いて、もしくは甲第2号証に記載された発明及び周知技術(甲1,3-8)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(2)本件特許の請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術(甲2-10)に基いて、もしくは甲第2号証に記載された発明に記載された発明及び周知技術(甲1,3-10)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(3)本件特許の請求項3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術(甲11,12)に基いて、甲第11号証及び甲第1号証に記載された発明に基いて、または、甲第12号証及び甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(4)本件特許の請求項4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術(甲11-13)に基いて、甲第11号証に記載された発明、甲第1号証に記載された発明及び周知技術(甲13)に基いて、または、甲第12号証に記載された発明、甲第1号証に記載された発明及び周知技術(甲13)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
3 甲号証について
甲第1号証:特開2003-321883号公報
甲第2号証:特開2002-115294号公報
甲第3号証:特開2005-282763号公報
甲第4号証:特開2000-188819号公報
甲第5号証:特開2003-82726号公報
甲第6号証:実願平5-36198号(実開平7-1189号)のCD-ROM
甲第7号証:実願昭51-158481号(実開昭53-76220号)のマイクロフィルム
甲第8号証:特開平11-63325号
甲第9号証:特開2004-244977号公報
甲第10号証:特開2009-127227号公報
甲第11号証:特開2003-56031号公報
甲第12号証:特開2006-161998号公報
甲第13号証:特開2002-167817号公報
甲第14号証:特開2005-314976号公報(申立人から意見書と ともに提出された証拠)
(1)甲第1号証
ア 甲第1号証の記載事項
取消理由で通知した甲第1号証には、次の事項が記載されている(下線は、本決定で付した。以下同様。)。
(ア)「【請求項1】 土壌地盤から基礎躯体や床盤躯体等のコンクリート躯体のコンクリート中に直接埋設貫通させる方法や、予め、貫通下穴を設ける方法や、鞘管を埋設させる方法のいずれかにより設けた貫通穴から貫通させた後、床下空間を経て建造物に配設される給排水管やガス管等の配管類又は電線、ケーブル等の配線類等の長尺配設物と鞘管の双方又はいずれか一方の外周面に外嵌させた耐腐食性を有する耐蟻性材料から形成されたシロアリ侵入阻止部材で該貫通穴と長尺配設物と鞘管の双方又はいずれか一方との隙間を実質的に閉鎖する建造物における長尺配設物の防蟻性能を付加した配設方法
・・・・・・・・・
【請求項4】 シロアリ侵入阻止部材が、長尺配設物の外周面に外嵌させる配設物固定部と鞘管の開口部を閉止する封止部とから構成される鞘管封止キャップであって、少なくとも鞘管の屋内側開口端又は屋外側開口端のいずれか一方の開口端に当接し設けることによってなされる請求項1に記載の建造物における長尺配設物の防蟻性能を付加した配設方法」
(イ)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は建造物における長尺配設物の防蟻性能を付加した配設方法とそれに用いるシロアリ侵入阻止部材に関し、更に詳しくは、土壌地盤から床下空間を経て建造物に至る建造物における長尺配設物の防蟻性能を付加した配設方法とそれに用いるシロアリ侵入阻止部材に関する。」
(ウ)「【0032】
【発明の実施の形態】
本発明は土壌地盤Eから基礎躯体Aや床盤躯体C等のコンクリート躯体を貫通させた埋設貫通穴Sや貫通下穴Jから床下空間Hを経て建造物Bに配設する長尺配設物や鞘管等の内、外周面に内嵌、外嵌させた耐腐食性を有する耐蟻性材料から形成されるシロアリ侵入阻止部材等で該貫通穴の貫通穴口縁外周部と長尺配設物や鞘管Lとの隙間等を実質的に閉鎖することを特徴としている。
【0033】
本発明の請求項1に記載するシロアリ侵入阻止部材で該貫通穴と長尺配設物の隙間を実質的に閉鎖することが意味することは、長尺配設物がコンクリート躯体の各種の貫通穴等から床下空間Hを経て建造物Bに配設される間に形成される様々な侵入隙間からシロアリに侵入されるが、これらの長尺配設物の配設に起因する全てのシロアリの侵入経路や侵入隙間をシロアリが実質的に侵入できない状態
に閉鎖させることである。
【0034】
本発明における基礎躯体Aは建造物や構築物に供される基礎の総称で、建造物Bは戸建住宅や集合住宅を含む建造物や構築物の総称であって特に限定するものではないが本発明の実施の形態は戸建住宅を引例の中心に説明する。
【0035】
本発明における長尺配設物と呼称するものには、土中から建造物に敷設される給排水管やガス管や外装被覆材を被覆した温給水管や冷媒管等の配管類や外装被覆材を被覆した電線・ケーブル類・アース線等の配線類等やこれらを保護する外装用波付き硬質樹脂管(商品名:カナフレックス)等が含まれる。本説明の中で長尺配設物や配設物や配管や電線や鞘管等の用語を適宜用いる場合があるがこれは表現上便宜的に行うものであって本発明を何ら制限するものではない。」
(エ)「【0036】
また、本発明におけるシロアリ侵入阻止部材を構成する耐腐食性を有する耐蟻性材料としては、シロアリに実質的に食加害されない硬度と土中の水分や防蟻剤を含む床下の不特定物質に対する耐水、耐薬品、耐腐食性のある防蟻に有効な安定した材料を言う。例えば、施工面から成形性や施工可撓性や経済性に優れている硬質合成樹脂(塩ビやポリカーボネートやABSやHI-ポリスチレン樹脂等)や金属製のシート状体や薄板状体(亜鉛引き鉄板、銅、アルミ、ステンレス、真鍮等)や防蟻剤を塗布したガラス繊維布(商品名:シロアリシャター)等の防蟻シート材が望ましい。発錆性の金属類は鍍金や塗装等の防錆処理をすればよい。又、硬度は不足していても防蟻剤を混練した防蟻性のある防蟻シート材(商品名:アリダン等)は可撓性に優れ防蟻性と耐腐食性を有する耐蟻性材料として使用できる。」
(オ)「【0038】
又、気密パッキン層14の別の対応としては、例えば貫通穴口縁外周等のコンクリート面やシロアリ侵入阻止材料の気密面に予めアスファルトやコールタール等のゴム状の瀝青物や防蟻剤や防蟻材入りのシーリング材や硬化型接着剤(商品名:ロードボンド等)等の粘着性や接着性のあるパッキン層を形成させると凹凸面が修復され相互の接着力が付加され望ましい。」
(カ)「【0040】
本発明におけるシロアリ侵入阻止部材としては、請求項2に記載の配設物固定防蟻具1と、請求項3に記載のフード付き配設物固定防蟻具2や分解型フード付き配設物固定防蟻具3と、請求項4に記載の鞘管封印キャップ7と、請求項5に記載の蟻返し鞘管封印キャップ8と請求項6に記載の埋設防蟻具6と、請求項7に記載の埋設スリーブ9、10と、請求項12に記載のピット蓋17等がある。」
(キ)「【0041】
これらは、配設物の姿勢保持や支持固定の効果があり配設品質の向上と修復交換時に着脱自在でメンテナンス性に優れる。これらのシロアリ侵入阻止部材の選定は長尺配設物の配設構造や鞘管や配管ピットの採用等現場施工実態に合わせ最も効果的なものを適宜選定し配設すればよい。また、市販の配設物位置決め固定金具21を併用すると配設品質は向上する。」
(ク)「【0053】
配設構造は、例えば直接コンクリート躯体に埋設貫通させた埋設配管Kと貫通穴口縁外周部を内包する状態で配設する。また、請求項10に記載のごとく鞘管L内の主配管Kと鞘管Lの空間隙間や鞘管Lの貫通穴口縁外周部からなる複数の侵入経路をフード内に内包する状態で配設すると防蟻とメンテナンス性に優れる。取り付けは配管固定部4の締め付けネジや面板部を気密パッキン層14を介し
コンクリート釘や締め付けネジで固定する方法がある。又、配設物固定部の締め付けネジ16でコンクリート面に圧接固定する方法や面板部を気密パッキン層14の粘着性接着剤等で接着固定させてもよい。」
(ケ)「【0061】
鞘管封止キャップ7は配管Kの外周面に外嵌させる配設物固定部と鞘管Lの開口部を閉止する封止部から構成され、配管Kの外周面と鞘管内面の開口部からシロアリが侵入できない嵌合公差からなる封止構造のものであれば鞘管部の嵌合が外嵌、内嵌を問わない。取り付けは締め付けネジや接着固定や鞘管の内外周面にネジ加工し相互を締めこむ構造としてもよい。取り付けは少なくとも鞘管の上端又は下端のいずれか一方に取り付けることで侵入は阻止される。」
(コ)「【0073】
実施例2
図2は鞘管Lを用いた施工例で(a)は鞘管Lと配管Kとの隙間空間部を封止する鞘管封印キャップ7を屋内側開口端と屋外側開口端に当接し設けた。又、床下空間Hの配管Kの途上に下方に開口した二層の環状凹部を持つ配設物蟻返し具5を吊設し鞘管Lの貫通穴口縁外周隙間からの侵入を阻止し基礎壁面から配設物位置決め固定金具21を併用させた。また、鞘管Lの埋設部位に予め埋設防蟻具6を取り付けてコンクリートを打設一体化させ貫通穴Sからの侵入を阻止した。」
(サ)「【0086】
【発明の効果】
叙上のとおり、本発明によれば、土壌地盤から基礎躯体や床盤躯体等のコンクリート躯体の貫通穴や鞘管や配管ピットや長尺配設物の外周に沿って侵入し床下空間を経て建造物に加害するシロアリの侵入を阻止するとともに長尺配設物のメンテナンス性を向上させるものであって、長尺配設物と鞘管の双方又はいずれか一方の外周面に外嵌させたシロアリ侵入阻止部材等でコンクリート躯体面の貫通下穴等の侵入隙間を実質的に閉鎖する配設方法によって長尺配設物の高いメンテナンス性と安定した防蟻性が実現されるのである。」
(シ)図2(a)には以下の点が看てとれる。
a 鞘管Lに配管Kが挿通されている点。
b 鞘管Lの内面と配管Kの外面との間に鞘管封止キャップ7が設置されている点。
c 鞘管Lが、水平部と該水平部から立ち上がる立上がり部とを備えている点。
イ 甲第1号証に記載された発明
上記アからみて、甲第1号証には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲1発明)
「戸建住宅や集合住宅を含む建造物Bのコンクリートの基礎躯体Aを貫通する水平部と立ち上がり部を備える鞘管Lと、該鞘管Lに挿通される給排水管である配管Kを備える配設構造であって、
前記鞘管Lの内面と前記配管Kの外面との間に、シロアリ侵入阻止部材が設置され、
該シロアリ侵入阻止部材が、防蟻に有効な安定した材料で構成される鞘管封止キャップ7であり、
該鞘管封止キャップ7は、配管Kの外周面に外嵌させて、前記配管Kと前記鞘管Lの屋内側または鞘管Lの屋外側の開口端との間に設置されるものである配設構造」
(2)甲第2号証
ア 甲第2号証の記載事項
取消理由で通知した甲第2号証には、次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項9】 建物の内部からこの建物の外部地表面下へと貫通され、内部に曲り可能な小径管が挿脱可能に挿通されて、この小径管を建物の内部から外部地表面下へと挿通させる湾曲した管体を具備していることを特徴とした排水路装置。」
(イ)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、建物内の排水設備を建物外の排水路へと接続する排水路の形成方法および排水路装置に関する。
・・・・・
【0005】
・・・建物1の基礎2から地表面G上へと排水管5の下流端が貫通している・・・。・・・建物1の外部位置で地表面G上に出ている排水管5・・・」
(ウ)「【0033】
図1において、11は排水路装置で、この排水路装置11は、建物としての住宅12内の図示しない排水口などの排水設備を、この住宅12の宅地内に埋設された図示しない排水路としての汚水桝へと接続する。また、住宅12の床下には、この住宅12の基礎13である略水平な、いわゆるべた基礎14が形成されている。また、このべた基礎14の基礎スラブから立ち上がって、住宅12の柱の基礎となる、いわゆる布基礎15が形成されている。これらべた基礎14および布基礎15は、コンクリートにより打設されている。
・・・・・・
【0036】
さらに、ベンド管21の内部には、このベンド管21より径小な小径管である曲り可能管としての内面平滑なフレキシブル管31が挿脱可能に挿通されている。このフレキシブル管31は、ベンド管21に挿脱可能に挿通された際に、このベンド管21内で屈曲または湾曲する。」
(エ)「【0060】
この図3に示す排水路装置11は、基本的には図2に示す排水路装置11と同様であるが、住宅12のべた基礎14および布基礎15に貫通されるベンド管21の軸方向における中間域が湾曲されたものである。ここで、このベンド管21は、中心軸が弓なり、すなわち円弧状に曲がっている。
【0061】
また、このベンド管21に挿通されるフレキシブル管31の上流端34および下流端32それぞれには、これら上流端34および下流端32にフレキシブル管31と同径の管状体としての排水管85,86を内嵌合により接続可能とする嵌合受口87,88がそれぞれ設けられている。
【0062】
そして、ベンド管21に挿通されたフレキシブル管31の下流端32とベンド管21の下流端23との間には、これらフレキシブル管31の下流端32とベンド管21の下流端23との間を閉塞する円環状の閉塞手段としてのパッキン89が取り付けられている。また、ベンド管21に挿通されたフレキシブル管31の上流端34には、短管90が内嵌合されて接着固定されている。さらに、この短管90の上流端には、約45度軸方向が湾曲したエルボ体91が内嵌合により接着固定されている。そして、このエルボ体91の上流端には、排水管85が内嵌合されて接着固定されている。
【0063】
さらに、この排水管85の上流端は、住宅12の排水設備に接続されており、この排水管85の下流端近傍には、フロアバンド81が取り付けられて住宅12のべた基礎14上に位置決め固定されている。
【0064】
この結果、この図3に示す排水路装置11は、住宅12のべた基礎14上からこの住宅12の布基礎15の外部へと貫通させたベンド管21にフレキシブル管31を挿通させて、このフレキシブル管31の上流端34および下流端32それぞれに排水管85,86を接続することにより形成されるので、図2に示す排水路装置11と同様の作用効果を奏することができる。」
(オ)「【0066】
「さらに、ベンド管21に挿通されたフレキシブル管31の下流端32とベンド管21の下流端23との間を、パッキン89にて閉塞したことにより、このパッキン89の弾性変形にて、これらベンド管21およびフレキシブル管31の下流端における隙間が気密かつ水密に閉塞できる。このため、住宅12の基礎13を形成する場合に、この住宅12の基礎13を形成する際の用材、例えばコンクリートミルクなどに対するベンド管21およびフレキシブル管31の下流端におけるこれらベンド管21とフレキシブル管31との隙間への侵入を防止できるとともに、これらベンド管21およびフレキシブル管31の下流端におけるこれらベンド管21およびフレキシブル管31との隙間へと虫や土砂、雨水などの侵入を防止できる。」
(カ)図3(本発明の第3の実施の形態を示す断面図)には、小径管(フレキシブル管31)の嵌合受口88の外面とベンド管21(図中の「20」は、誤記と認める。)の下流端23の内面との間に、パッキン89が設置されている点及び前記下流端23が、地表面Gの近傍に位置している点が看てとれる。
(キ)上記(カ)から「下流端23は住宅12の外にある地表面G側にある」といえる。
イ 甲第2号証に記載された発明
上記アからみて、甲第2号証には、以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲2発明)
「建物としての住宅12の、コンクリートにより打設されたベタ基礎14および布基礎15を貫通するベンド管21と、該ベンド管21に挿通され、上流端34および下流端32に嵌合受口87,88が設けられた小径管(フレキシブル管31)と、前記小径管(フレキシブル管31)と接続された排水管85,86とを備える排水路装置であって、
前記ベンド管21の内面と小径管(フレキシブル管31)の外面との間に、パッキン89が設置され、
該パッキンが、虫の侵入を防止するためのパッキンであり、
該パッキンが、弾性変形するものであって、円環状となっているものであり、
前記小径管(フレキシブル管31)の下流側32の嵌合受口88と、前記ベンド管21の下流端23との間に弾性変形して設置されているものであり、
ベンド管21の下流端23は、住宅12の外にある地表面G側にある
排水路装置。」
(3)甲第3号証
ア 甲第3号証の記載事項
(ア)「【0008】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載の止水パッキン材は、一方の管2の内周面2aと、該一方の管2に挿通配置される他方の管1の外周面1aとの間隙部分6に装着される環状の止水パッキン材5であって、
前記一方の管2に接する外層部7と前記他方の管1の外周面1aに接する内層部8とで構成され、各部7,8が吸水樹脂を混練一体化させた水膨張性ゴム材または熱可塑性エラストマー材よりなる環状の水膨張部10,11の前後の少なくとも一方に非水膨張性ゴム材または熱可塑性エラストマー材よりなる環状の非水膨張部12,13が一体成形されており、
前記外層部7と内層部8とは、それぞれ外周面7a,8aでの中心軸線CL1,CL3と内周面7b,8bでの中心軸線CL2,CL4が偏芯して形成され、最大肉厚部7L,8Lと最小肉厚部7S,8Sとを有しているとともに、
前記他方の管1が挿通される挿通孔16から半径方向に延び外側面5aに達して半割切込18が形成され、該半割切込18の形状を、中心軸線CLの方向に沿う方向で中途を屈曲させ周方向で互いが嵌合する段付切込形状とすることを特徴とする。」
(イ)図3には、止水パッキン材5の一方の管2に接する外層部7の外周円7aにテーパ面を設けた点が看てとれる。
(4)甲第4号証
ア 甲第4号証の記載事項
(ア)「【請求項1】 土中に管路2を布設し、その管路2内にケーブルaを通した地中電線路において、前記管路2の接合部に白蟻侵入防止処理を施したことを特徴とする地中電線路における白蟻食害防止管継手。
【請求項2】 上記白蟻侵入防止処理を、管路接合部における両管2の管端間に介在するゴム輪1a、1bに防蟻用薬剤を添加したものを使用して行ったことを特徴とする請求項1に記載の地中電線路における白蟻食害防止管継手。」
(5)甲第5号証
ア 甲第5号証の記載事項
(ア)「【0031】
排水主管2を屋外排水管7に接続する前記の基礎貫通部材6は、図4,図5に示すように、その本体6a、高さ調節用のアジャスター6b、さや管6c、防水パッキン付き直角エルボ6d、内管6e、立上り管6f、蓋材6g、キャップ6hなどの主要部品からなるものであって、蓋材6gやキャップ6hはゴム又は軟質合成樹脂の成形品であるが、他の部品は全て硬質合成樹脂で成形された成形品である。
・・・
【0036】
また、さや管6cの先端には、土砂や基礎コンクリートの侵入を防止するキャップ6hが取付けられている。このキャップ6hは、図8に示すように、円形の端板60hと外筒部61hと内筒部62hを備えたもので、端板60hには、屋外排水管7を挿通するための切抜き口を手で簡単に切抜くことができるように断
面V字形の切取り溝63hが形成されており、切抜かれる部分にはツマミ64hが形成されている。
【0037】
このキャップ6hは、図4,図9に示すように、外筒部61hがさや管6cに外嵌され、内筒部62hがさや管6cと管継手6iとの間に挿入された状態で取付けられるため、管継手6iや内管6eが常にさや管6cと同心的位置関係を保ち、内管6eが斜め下方へ傾斜するのを防止できる利点がある。」
(イ)図8、図9には、さや管6cと管継手6iとの間に挿入される内筒部62hの外面にテーパ面を設けた点が看てとれる。
(6)甲第6号証
ア 甲第6号証の記載事項
(ア)「【0011】
本考案は、コンクリートAを打設する場合、該コンクリートAの打設部へ多数のパイプB等の開口部Cを有する場合に用いる養生用の栓1に関するものであり、パイプB等の開口部Cの周域へコンクリートAを打設時に用いる養生用栓1であって、コンクリートAへ埋設されるパイプB等の開口部Cへ挿通させる先端方向に窄むテーパー胴部を有した截台円錐台部2を形成し、該截台円錐台部2の基端へ少なくとも二方向へ膨出させた厚みを有する鍔部3を延設し、前記鍔部3と截台円錐台部2とを貫通する鞘管挿通孔4を穿設したものである。
【0012】
即ち、本考案はコンクリートAの中に埋設される配管等の多数のパイプBの開口部CへコンクリートAが入らないようにするための養生用栓1であり、該養生栓は1若干の弾性を有する合成ゴム又は合成樹脂等で一体形成するものである。」
(イ)「【0015】
本考案の開口部養生用栓1はコンクリートAを打設する前に、パイプB等の開口部Cへ截台円錐台部2を挿通固定させるものであり、該截台円錐台部2は先端方向に窄むテーパー胴部に形成されているため、開口部Cへ容易に挿通固定することができ、又、鍔部3を形成したことによって引き抜くことが容易と成るものである。」
(7)甲第7号証
ア 甲第7号証の記載事項
(ア)「継手本体1の端部内面にはシール面としてのテーパ面3を設けてあるが、パツキン7の継手本体1側端部は前記テーパ面3より傾斜角度の大きなテーパ面10とし、角度11が前記テーパ面3にあたるようにする。また、パツキン7の内径12は管9との間に隙間13を有する程度に継手本体1の内径より大きくする。以上のように構成した管継手の袋ナツト4を締付けると、第4図に示すように、パツキン7はその断面において内径側すなわち管9外面に向つて弧状に変形し、良好なシール性をもたらす。」(明細書3頁3-13行)
(8)甲第8号証
ア 甲第8号証の記載事項
(ア) 「【0014】
受口部1aの開口端部内周面には、開口端側がテーパ状に拡径する環状凹部3が形成され、この環状凹部3と挿口部2aの外周面との間に形成される環状空間4には、硬質ゴム等よりなるパッキン5が圧入されるようになっている。
【0015】
パッキン5は、特に図3に示されるように、上記環状空間4とほぼ同形のリング状をなし、その左端部内周縁には、外方、すなわち後記する押輪6側に向って漸次テーパ状に拡径する環状の第1舌片5aが連設されているとともに、左端部内周縁には、押輪6側に向って漸次テーパ状に拡径する環状の第2舌片5bが連設されている。また、これら第1・第2舌片5a、5bとの間には、押輪6側を向く平面状の端面5c(平面部)が形成されている。さらにパッキン5の図中右側端部は、挿口部2aの外周面と環状凹部3との間のシール性を向上すべく断面略球形状に形成されている。」
(イ)図3,図4には、パッキン5にテーパ面を設けた点が看てとれる。
(9) 甲第9号証
ア 甲第9号証の記載事項
(ア)「【0029】
そして、この排水路装置11は、前記べた基礎部14上から布基礎部15の外側部位置で地表面Gの下方位置に貫通した被閉塞管体、例えば鞘管といわれる断面円形の円筒状スリーブ管17を備えている。このスリーブ管17は、例えば呼び径が100mmであり、塩化ビニル樹脂などでブロー成型にて軸方向中間部でθ°屈曲した円筒状に成形され、一端端末は軸線に対して0°より大きく90°より小さい角度、すなわち、0°<θ°<90°となる角度θ°にした楕円形状の開口端面18が形成されている。この角度θ°は好ましくは30°より大きく60°より小さい角度、すなわち30°<θ°<60°であり、最適な角度θ°は45°である。」
(10)甲第10号証
ア 甲第10号証の記載事項
(ア)「【0027】
図1および図2に示すように、鞘管12は、ポリエチレンなどの合成樹脂からなり、ブロー成形によって別体に成形された第1鞘管部16および第2鞘管部18を組み合わせることによって、略L字状に形成される。第1鞘管部16は、垂直方向に延びて、その一端が屋内かつ基礎垂直部104近傍に開口する。第2鞘管部18は、第1鞘管部16の他端から水平方向に延びて、屋外に開口する。ただし、「垂直」或いは「水平」とは、厳密に垂直或いは水平と一致するか否かを定義するものではなく、建築物の基礎100に鞘管12を設ける際などに、第1鞘管部16および第2鞘管部18の角度が多少変化した場合も含む。したがって、ここでいう「垂直」或いは「水平」とは、略垂直方向を含む垂直方向、或いは略水平方向を含む水平方向を意味する。」
(11)甲第11号証
ア 甲第11号証の記載事項
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば、高層建物等の排水通気設備における通気口の構造に関するものである。」
(イ)「【0012】
6は前記スリーブ3内に間隙を存して挿入された建物内の通気管であり、この通気管6は、建物排水管内の空気を屋上に排気するもので、前記床スラブコンクリート1にアンカーボルト等(図示せず)で一体化させた管支持金物7にUボルト等8で固定されており、その通気管6と前記スリーブ3との間隙部には、その上下部において不乾性シール材9aとバックアップ材(ヤーン)9bが充填されている。9cはそのバックアップ材9bを止め付けているバックアップ止めリングである。」
(12) 甲第12号証
ア 甲第12号証の記載事項
(ア)「【0002】
従来の既存構造物の外壁貫通配管工事を図7により説明する。
従来の外壁貫通配管工事においては、まず、既存構造物のコンクリート外壁1に配管を通すためのコア抜きを行い、コア抜き部2に配管3(例えば、PEライニング管)3を挿入する。なお、図7の右側は構造物外、左側は構造物内を示している。」
(イ)「【0003】
次いで、コア抜きしたコンクリート部と配管との間にスペーサ(材質はヤーン)4を詰めてレベル調整を行い、バックアップ材(材質はシリコン系コーキング材)5を詰めて防水処理を行い、さらに配管廻りにコーキング6を施して防水処理を行う。」
(13)甲第13号証
ア 甲第13号証の記載事項
(ア)「【0029】
図1及び図2は、給水の配管システム1を示した図であり、同配管システム1は、屋外に敷設された水道管2に配水盤3を接続し、同配水盤3に配水管4を連通連結し、同配水管4を中途で分岐させて、一方の配水管4aには給湯機5を介して分水盤6を接続し、他方の配水管4bには分水盤6を直接接続し、更には、分水盤6にて複数の流路に分岐させて台所用湯水混合栓7、浴室用湯水混合栓8、洗濯機68、洗面化粧台用湯水混合栓11、トイレ10,12等に給水供給管13とカップリング盤1 4,14'と連結管77とを介して接続している。配水盤3と分水盤6及び分水盤6とカップリング盤14,14'とを連通連結する給水管としての配水管4及び給水供給管13には、架橋ポリエチレンやポリブテン等の可撓性を有する合成樹脂管を用いている。」
(14) 甲第14号証(申立人から意見書とともに提出された証拠)
ア 甲第14号証の記載事項
(ア)「【0003】
しかしながら、上述したさや管装置では、曲がり可能な可撓管は曲がらない管に比べて高価であるので、曲がらない直管を使用することが好ましい。また、排水管として曲がらない直管を使用した場合には、この排水管が挿通されるさや管自体も直管にしなければ、このさや管の屈曲部分や湾曲部分で排水管の接続作業をしなければならないから、配管作業が非常に困難となってしまう。」
(イ)「【0031】
一方、さや管本体11の上流端側には、このさや管本体11より小径な小径管である円筒状の第1の排水管である挿通管41が挿脱可能に挿入される。すなわち、この挿通管41は、さや管本体11の下流端に継手体21が取り付けられ、これらさや管本体11および継手体21が住宅2の基礎4に埋設されている状態で、このさや管本体11に挿入されている。そして、この挿通管41は、例えば塩化ビニル樹脂などの合成樹脂製の直管にて構成されている。
・・・・
【0034】
すなわち、このエルボ体45は、継手体21の開口部28からこの継手体21の内部に挿入可能となるように、この継手体21の傾斜角度に略等しい屈曲角度を有している。さらに、このエルボ体45の下流端側の嵌合部47には、円筒状の第2の排水管である導出管48の一端部である上流端側が内嵌合されて接着固定されている。ここで、このエルボ体45は、このエルボ体45の下流端側の嵌合部47に嵌合された導出管48を地表面に対して略水平に設置させることができる程度の角度で傾斜している。さらに、この導出管48は、例えば塩化ビニル樹脂などの合成樹脂製であり、挿通管41と同様の呼び径を有する直管にて構成されている。そして、この導出管48の下流端は、住宅2の宅地内に埋設された汚水桝へと接続される。」
(ウ)「【0053】
上述したように、上記一実施の形態によれば、継手体21の下流端側の開口部28を大きく開口させた。この結果、さや管本体11の下流端に継手体21の受口23を嵌合させた状態で、このさや管本体11の上端側から挿入させた挿通管41の下流端側を継手体21の開口部28よりも外側に通り抜けさせて突出できるとともに、この挿通管41の下流端に接着固定されたエルボ体45を継手体21の開口部28内へと挿入させて収容できる。したがって、この継手体21の開口部28より外側で挿通管41の下流端にエルボ体45を接続できるとともに、この挿通管41を湾曲させたり屈曲させたりする必要がなくなる。
【0054】
この結果、この挿通管41を比較的高価な曲がり可能管であるフレキシブルな蛇腹管や可撓管などにする必要がなく、これら蛇腹管や可撓管よりも構成が簡単で比較的安価な直管の挿通管41やエルボ体45、導出管48、エルボ体53および導入管56を使用するので、排水管3の配管を安価にできる。また、この排水管3を住宅2内から住宅2外へと基礎4を貫通して挿通させる排水管3の接続作業、すなわち配管作業を容易に施工できる。したがって、排水管3の導入管56の上流端に住宅2の排水設備を接続し、この排水管3の導出管48の下流端を汚水桝へと接続することにより、住宅2の排水設備を汚水桝へと接続できるので、住宅2の排水管路を容易に形成できる。」
4 判断
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2発明とを対比すると、
甲2発明の「建物としての住宅12」は、本件発明1の「建物」に相当する。
以下同様に、
「ベンド管21」は、「さや管」に相当し
排水路装置に用いられている「小径管(フレキシブル管21)」は、「排水管」に、
「小径管(フレキシブル管31)」の「上流端34および下流端32」に設けられた「嵌合受口87,88」は、「排水管」の両端部に備えた「接着受口」に、
「ベタ基礎14および布基礎15」の「排水路装置」は、「基礎部の配管構造」に、
「前記ベンド管21の内面と小径管(フレキシブル管21)の外面との間」は、「前記さや管の内面と前記排水管の外面との間」にそれぞれ相当する。
また、甲2発明の「コンクリートにより打設されたベタ基礎14および布基礎15」は、排水路装置における基礎部をコンクリートで構成しているものといえるから、本件発明1の「基礎部を構成するコンクリート」に相当するといえる。
また、甲2発明の「ベンド管21の下流端23は、住宅12の外にある地表面G側にある」から、「下流端23」がある側は、建物の「屋外側」を意味しており、このことをふまえると、甲2発明の「パッキン89」がある「前記小径管(フレキシブル管31)の下流側32の嵌合受口88と、前記ベンド管21の下流端23との間」という位置は、本件発明1の「前記排水管の屋外側の前記接着受口と前記さや管との間」という位置に相当するといえる。
また、甲2発明の「パッキン89」は、弾性変形するものであり、円環状となっているから、本件発明の「パッキン」と同様に、「弾性材料により円環状」に形成されているといえる。
また、パッキンが一般的に気密かつ水密に隙間を閉塞する性質のものであり、甲2発明のパッキンが「弾性変形」する性質のものであることをふまえれば、甲2発明のパッキンは、ベンド管21の下流端23の内面と小径管(フレキシブル管21)の下流端に設けられた嵌合受口88との「間」に対して、縮めた上で設置していることになる、すなわち、押し込められているといえるから、甲2発明の前記小径管(フレキシブル管31)の下流側32の嵌合受口88と、前記ベンド管21の下流端23との「間に弾性変形して設置されている」ことは、本件発明1の排水管の屋外側の接着受口とさや管との「間に押し込められる」ことと、実質的に同じ事項を意味しているといえる。
さらに、甲2発明の「小径管(フレキシブル管31)と接続された排水管85,86」と、本件発明1の「排水管と接続された塩化ビニル樹脂管」とは、管である点で共通し、
また、甲2発明の「パッキン89」と、本件発明1の「内防蟻部材」とは、いずれもさや管の内面と排水管の外面の間に設置され、虫の侵入を防止するものであるから、「内防虫部材」である点で共通し、
また、甲2発明の「パッキン89」と、本件発明1の「防蟻成分を含有する防蟻パッキン」とは、いずれもさや管の内面と排水管の外面の間に設置され、虫の侵入を防止するものであるから、「防虫パッキン」である点で共通する。
そうすると、本件発明1と甲2発明との<一致点>および<相違点>は、以下のとおりである。
<一致点>
建物の基礎部を構成するコンクリートを貫通するさや管と、該さや管に挿通され、両端部に接着受口を備えた排水管と、前記排水管と接続された管と、を備える基礎部の配管構造であって、
少なくとも、前記さや管の内面と前記排水管の外面との間に、内防虫部材が設置され、
該内防虫部材が、防虫パッキンであり、
該防虫パッキンは、弾性材料により円環状に形成され、前記排水管の屋外側の前記接着受口と前記さや管との間に押し込められるものである基礎部の配管構造。
<相違点1>
排水管と接続された管が、本件発明1では、塩化ビニル樹脂管であるのに対して、甲2発明では、どのような管であるか特定されていない点。
<相違点2>
防虫パッキンが、本件発明1では、防蟻処理された部材であり、防蟻成分を含有する防蟻パッキンであるのに対して、甲2発明では、防蟻処理がされているか否か、防蟻成分を含有するものであるか否か特定されていない点。
<相違点3>
防虫パッキンの外面に、本件発明1では、テーパ面が設けられているのに対して、甲2発明では、テーパ面が設けられていない点。
イ 判断
(ア)相違点1について
水を流す管として、塩化ビニル樹脂管は、甲第14号証などに記載されているように本件出願日前(優先日前)において周知の技術である。そして、甲2発明の排水管85,86は、前記周知の技術と同様、水を流す管に関するものであり、塩化ビニル樹脂管を用いることができない特別の事情もないことから、甲2発明の排水管と接続された管に前記周知の技術を適用し、本件発明1の相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到できるものである。
(イ)相違点2について
地中、地盤近くの物体と物体との隙間に介在させるパッキン等の部材に防蟻機能を付加するため、防蟻処理をしたり、防蟻成分を含有させたりすることは、甲第1号証、甲第4号証などに記載されているように本件出願日前(優先日前)において周知の技術である。
そして、甲2発明は周知の技術と同様、地盤等の基礎まわりにおいて、防虫のためにパッキン等を物体間の隙間に介在させるものであり、防虫性を高めるために甲2発明の虫の侵入を防止するためのパッキンに上記周知の技術を適用し、本件発明1の相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到できるものである。
(ウ)相違点3について
パッキンを間隙に押し込む際にその作業性等を向上させるために、パッキンの外面にテーパ面を設けることは、甲第3号証、甲第5号証、甲第6号証、甲第7号証および甲第8号証などに記載されているように本件出願日前(優先日前)において周知の技術である。また、パッキンの使用時にその作業性を向上させることは周知の課題である。そして、甲2発明の間隙を封止する部材であるパッキンに対して、作業性を向上するために前記周知の技術を適用し、本件発明1の相違点3に係る構成とすることは、当業者が容易に想到できるものである。
ウ 特許権者の主張について
特許権者は、「刊行物2に記載されたパッキン89は、ベンド管21およびフレキシブル管31の下流端における隙間が気密かつ水密に閉塞できる程度の弾性変形を可能にする材料で形成されていることになる。このような弾性変形をするパッキンは、パッキンの外面にテーパ面が設けられていない限り、物体と物体の間に押し込まれることはない。すなわち、パッキン89は、物体と物体との間に押し込まれる物ではなく、物体と物体の間に単に配置されているに過ぎない。したがって、刊行物2のパッキン89は、外面にテーパ面を設ける動機付けがまるで存在しない。」と主張する。(意見書8頁1-9行)
しかしながら、上記アで説示したとおり、甲2発明のパッキン89は、弾性変形する性質であることを踏まえれば、押し込まれていると解される。そして、上記イ(ウ)で説示したとおり、作業性の向上等は、パッキンの技術分野において周知の課題といえるものであるから、外面にテーパ面を設ける動機が存在しないとまではいえない。
したがって、特許権者の主張を採用することができない。
エ 小括
以上のとおり、本件発明1は、甲2発明および周知の技術(甲1,3-8,14)に基いて、当業者が容易に発明をすることができるものである。
(2)本件発明2について
ア 甲1発明を主引用例として
(ア)対比
本件発明2と甲1発明とを対比すると、
甲1発明の「戸建住宅や集合住宅を含む建造物」は、本件発明2の「建物」に相当する。
以下同様に、
「鞘管L」は、「さや管」に相当し
配設構造に用いられている「配管K(排水管)」は、「配管」に、
「基礎躯体A」の「配設構造」は、「基礎部の配管構造」に、
「前記鞘管Lの内面と前記配管Kの外面との間」は、「前記さや管の内面と前記配管の外面との間」にそれぞれ相当する。
また、甲1発明の「戸建住宅や集合住宅を含む建造物のコンクリートの基礎躯体A」は、配管を備える配設構造における基礎躯体をコンクリートで構成しているものといえるから、本件発明2の「基礎部を構成するコンクリート」に相当するといえる。
また、甲1発明の「鞘管封止キャップ7」は、配管Kの外周面に外嵌させて、前記配管Kと前記鞘管Lとの間に設置から、本件発明2の「パッキン」と同様に、「円環状」に形成されているといえる。
また、甲1発明の「防蟻に有効な安定した材料で構成される鞘管封止キャップ7」(シロアリ侵入阻止部材)は、防蟻成分を含有することが明らかであり、さや管の内面と配管の外面の間に設置される防蟻部材であるから、本件発明2の「防蟻処理された内防蟻部材」に相当するとともに、本件発明2の「防蟻成分を含有する防蟻パッキン」とは、「防蟻成分を含有する内防蟻部材」である点で共通する。
また、甲1発明の「該鞘管封止キャップ7」が、「前記配管Kと前記鞘管Lとの間に設置される」ことと、本件発明2の「防蟻パッキン」が、「前記配管と前記さや管との間に押し込められる」こととは、「前記配管と前記さや管との間に設置される」ことで共通する。
そうすると、本件発明2と甲1発明との<一致点>および<相違点>は、以下のとおりである。
<一致点>
建物の基礎部を構成するコンクリートを貫通するさや管と、該さや管に挿通される配管と、を備える基礎部の配管構造であって、
少なくとも、前記さや管の内面と前記配管の外面との間に、防蟻処理された内防蟻部材が設置され、
該内防蟻部材が、防蟻成分を含有する内防蟻部材であり、
該防蟻成分を含有する防蟻部材は、円環状に形成され、前記配管と前記さや管との間に設置されるものである基礎部の配管構造。」
<相違点1>
さや管に挿通される配管が、本件発明2では、可撓性のない配管であるのに対して、甲1発明では、どのような管であるか特定されていない点。
<相違点2>
さや管が、本件発明2では、ブロー成形によって形成されているのに対して、甲1発明では、どのように形成されているか特定されていない点。
<相違点3>
内防蟻部材が、本件発明2では、弾性材料により形成され、外面にテーパ面が設けられたパッキンであって、前記配管と前記さや管との間に押し込められるものであるのに対して、甲1発明では、鞘管封止キャップである点。
(イ)判断
a 相違点1について
さや管に挿通される配管として、可撓性のない配管は、甲第14号証などに記載されているように本件出願日前(優先日前)において周知の技術である。そして、甲1発明の配管Kは直線状の管が用いられており、可撓性のない管を用いることに特別な支障は見受けられないから、甲1発明に前記周知の技術を適用し、本件発明2の相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到できるものである。
b 相違点2について
さや管をブロー成形によって形成することは、甲第9号証などに記載されているように本件出願日前(優先日前)において周知の技術であるから、甲1発明に上記周知の技術を適用し、本件発明2の相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到できるものである。
c 相違点3について
間隙を封止するための部材として弾性材料により形成されたパッキンを押し込み、また、間隙に設置する時の作業性の向上のために部材の外面にテーパ面を設けることは、甲第3号証、甲第5号証、甲第6号証、甲第7号証および甲第8号証などに記載されているように本件出願日前(優先日前)において周知の技術である。そして、甲1発明の間隙を封止する部材である鞘管封止キャップは、鞘管Lと配管Kとの間にシロアリが侵入しないようにするため、シール性が求められるものであるから、そのようなシール性機能を有するものとして、前記周知の技術を適用し、鞘管封止キャップを弾性材料により形成されたパッキンとし、その際にパッキンとして周知の構成であるテーパ面を部材の外面に設け、本件発明2の相違点3に係る構成とすることは、当業者が容易に想到できるものである。
(ウ)特許権者の主張について
特許権者は、「刊行物1の鞘管封印キャップ7は、本件特許発明1のように、物体と物体との間に押し込まれるものではない。すなわち、鞘管封印キャップ7は、物体と物体との間に押し込まれるものでない以上、外面にテーパを設ける必要性は全くない。したがって、刊行物1の鞘管封印キャップ7は、外面にテーパ面を設ける動機付けがまるで存在しない。」(意見書11頁6-11行)、「刊行物10は、本件特許発明2に係る特許出願の基礎とされる先の出願後に公開されているため、引用例としての適格を欠く。」(同11頁20-21行)と主張する。
しかしながら、上記(イ)で説示したとおり、甲1発明の鞘管封止キャップ7を、弾性材料により形成され押し込まれるパッキンとし、またその外面にテーパ面を形成することは容易想到であるといえる。
また、甲第10号証が、上記先の出願後に公開されたものであるとしても、さや管をブロー成形によって形成することは、他の例として示した甲第9号証に記載されているのであるから、さや管をブロー成形によって形成することが周知の技術であることに変わりはない。
したがって、特許権者の主張を採用することができない。
(エ)小括
以上のとおり、本件発明2は、甲1発明および周知の技術(甲3,5-9,14)に基いて、当業者が容易に発明をすることができるものである。
イ 甲2発明を主引用例として
(ア)対比
本件発明2と甲2発明とを対比すると、
甲2発明の「建物としての住宅12」は、本件発明2の「建物」に相当する。
以下同様に、
「ベンド管21」は、「さや管」に相当し
排水路装置に用いられている「小径管(フレキシブル管21)」は、「配管」に、
「ベタ基礎14および布基礎15」の「排水路装置」は、「基礎部の配管構造」に、
「前記ベンド管21の内面と小径管(フレキシブル管21)の外面との間」は、「前記さや管の内面と前記配管の外面との間」にそれぞれ相当する。
また、甲2発明の「コンクリートにより打設されたベタ基礎14および布基礎15」は、排水路装置における基礎部をコンクリートで構成しているものといえるから、本件発明2の「基礎部を構成するコンクリート」に相当するといえる。
また、甲2発明の「パッキン89」は、弾性変形するものであり、円環状となっているから、本件発明2の「パッキン」と同様に、「弾性材料により円環状」に形成されているといえる。
また、パッキンが一般的に気密かつ水密に隙間を閉塞する性質のものであり、甲2発明のパッキンが「弾性変形」する性質のものであることをふまえれば、甲2発明のパッキンは、ベンド管21の内面と小径管(フレキシブル管21)の外面との「間」に対して、縮めたうえで設置していることになる、すなわち、押し込められているといえるから、甲2発明のベンド管21の内面と小径管(フレキシブル管21)の外面との「間に弾性変形して設置されている」ことは、本件発明2のさや管と配管との「間に押し込められる」ことと、実質的に同じ事項を意味しているといえる。
また、甲2発明の「パッキン89」は、さや管の内面と配管の外面の間に設置され、虫の侵入を防止するものであるから、本件発明2の「内防蟻部材」とは、「内防虫部材」である点で共通するとともに、本件発明2の「防蟻成分を含有する防蟻パッキン」とは、「防虫パッキン」である点で共通する。
そうすると、本件発明2と甲2発明との<一致点>および<相違点>は、以下のとおりである。
<一致点>
建物の基礎部を構成するコンクリートを貫通するさや管と、該さや管に挿通され配管と、を備える基礎部の配管構造であって、
少なくとも、前記さや管の内面と前記配管の外面との間に、内防虫部材が設置され、
該内防虫部材が、防虫パッキンであり、
該防虫パッキンは、弾性材料により円環状に形成され、前記配管と前記さや管との間に押し込められるものである基礎部の配管構造。
<相違点1>
さや管に挿通される配管が、本件発明2では、可撓性がない管であるのに対して、甲2発明では、フレキシブル管である点。
<相違点2>
さや管が、本件発明2では、ブロー成形によって形成されているものであるのに対して、甲2発明では、どのように形成されているか特定されていない点。
<相違点3>
防虫パッキンが、本件発明2では、防蟻処理された部材であり、防蟻成分を含有する防蟻パッキンであるのに対して、甲2発明では、防蟻処理がされているか否か、防蟻成分を含有するものであるか否か特定されていない点。
<相違点4>
防虫パッキンの外面に、本件発明2では、テーパ面が設けられているのに対して、甲2発明では、テーパ面が設けられていない点。
(イ)判断
a 相違点1について
さや管に挿通される配管として、可撓性のない配管をさや管に挿通させることは、甲第14号証などに記載されているように本件出願日前(優先日前)において周知の技術である。そして、甲2発明の配管はフレキシブル管であるものの、フレキシブル管でなければ機能しないものではないから、甲2発明のさや管に挿通される配管に対して前記周知の技術を適用し、本件発明2の相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到できるものである。
b 相違点2について
さや管をブロー成形によって形成することは、甲第9号証などに記載されているように本件出願日前(優先日前)において周知の技術であるから、甲2発明に上記周知の技術を適用し、本件発明2の相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到できるものである。
c 相違点3について
地中、地盤近くの物体と物体との隙間に介在させるパッキン等の部材に防蟻機能を付加するため、防蟻処理をしたり、防蟻成分を含有させたりすることは、甲第1号証、甲第4号証などに記載されているように本件出願日前(優先日前)において周知の技術である。
そして、甲2発明は周知の技術と同様、地盤等の基礎まわりにおいて、防虫のためにパッキン等を物体間の隙間に介在させるものであり、防虫性を高めるために甲2発明の虫の侵入を防止するためのパッキンに上記周知の技術を適用し、本件発明2の相違点3に係る構成とすることは、当業者が容易に想到できるものである。
d 相違点4について
パッキンを間隙に押し込む際にその作業性等を向上させるために、パッキンの外面にテーパ面を設けることは、甲第3号証、甲第5号証、甲第6号証、甲第7号証および甲第8号証などに記載されているように本件出願日前(優先日前)において周知の技術である。また、パッキンの使用時にその作業性を向上させることは周知の課題である。そして、甲2発明の間隙を封止する部材であるパッキンに対して、作業性を向上するために前記周知の技術を適用し、本件発明2の相違点4に係る構成とすることは、当業者が容易に想到できるものである。
(ウ)特許権者の主張について
特許権者は、「刊行物2に記載されたパッキン89は、ベンド管21およびフレキシブル管31の下流端における隙間が気密かつ水密に閉塞できる程度の弾性変形を可能にする材料で形成されていることになる。このような弾性変形をするパッキンは、パッキンの外面にテーパ面が設けられていない限り、物体と物体の間に押し込まれることはない。すなわち、パッキン89は、物体と物体との間に押し込まれるものではなく、物体と物体の間に単に配置されているに過ぎない。したがって、刊行物2のパッキン89は、外面にテーパ面を設ける動機付けがまるで存在しない。」(意見書13頁3-11行)、「刊行物10は、本件特許発明2に係る特許出願の基礎とされる先の出願後に公開されているため、引用例としての適格を欠く。」(同13頁20-21行)と主張する。
しかしながら、上記(ア)で説示したとおり、甲2発明のパッキン89は、弾性変形する性質であることを踏まえれば、押し込まれていると解される。そして、上記(イ)dで説示したとおり、作業性の向上等は、パッキンの技術分野において周知の課題といえるものであるから、外面にテーパ面を設ける動機が存在しないとまではいえない。
また、甲第10号証が、上記先の出願後に公開されたものであるとしても、さや管をブロー成形によって形成することは、他の例として示した甲第9号証に記載されているのであるから、さや管をブロー成形によって形成することが周知の技術であることに変わりはない。
したがって、特許権者の主張を採用することができない。
(エ)小括
以上のとおり、本件発明2は、甲2発明および周知の技術(甲1,3-9,14)に基いて、当業者が容易に発明をすることができるものである。
(3)本件発明3について
ア 甲1発明を主引用例として
(ア)対比
本件発明3と甲1発明とを対比すると、
甲1発明の「戸建住宅や集合住宅を含む建造物」は、本件発明3の「建物」に相当する。
以下同様に、
「水平部と立ち上がり部を備える鞘管L」は、「水平部と該水平部から立ち上がる立上り部とを備えるさや管」に、
「配管K」は、「配管」に、
「基礎躯体A」の「配設構造」は、「基礎部の配管構造」に、
「前記鞘管Lの内面と前記配管Kの外面との間」は、「前記さや管の内面と前記配管の外面との間」にそれぞれ相当する。
また、甲1発明の「戸建住宅や集合住宅を含む建造物のコンクリートの基礎躯体A」は、配管を備える配設構造における基礎躯体をコンクリートで構成しているものといえるから、本件発明3の「基礎部を構成するコンクリート」に相当するといえる。
また、甲1発明の「屋内側」の「鞘管L」に「内嵌する」「鞘管封止キャップ7」は、配管Kの外周面に外嵌させて、前記配管Kと前記鞘管Lとの間に設置されることから、本件発明3の「屋内側に充填された」「内防蟻部材」に相当する。
また、甲1発明の「防蟻に有効な安定した材料で構成される鞘管封止キャップ7」(シロアリ侵入阻止部材)は、防蟻成分を含有することが明らかであり、さや管の内面と配管の外面の間に設置される防蟻部材であるから、本件発明3の「防蟻処理された内防蟻部材」に相当するとともに、「封止」機能すなわちシーリングの機能があることから、本件発明3の「防蟻成分を含有する防蟻シーリング材」に相当する。
そうすると、本件発明3と甲1発明との<一致点>および<相違点>は、以下のとおりである。
<一致点>
建物の基礎部を構成するコンクリートを貫通し、水平部と該水平部から立ち上がる立上り部とを備えるさや管と、該さや管に挿通される配管と、を備える基礎部の配管構造であって、
少なくとも、前記さや管の内面と前記配管の外面との間に、防蟻処理された内防蟻部材が設置され、
該内防蟻部材が、屋内側に充填された、防蟻成分を含有する防蟻シーリング材であることを特徴とする基礎部の配管構造。
<相違点1>
防蟻シーリング材が、本件発明3では、さや管の内面と配管の外面との間に設置されたバックアップ材の屋内側に充填されたものであるのに対して、甲1発明では、配管Kの外周面に外嵌させて、前記配管Kと前記鞘管Lの屋内側または鞘管Lの屋外側の開口端との間に設置されるものである点。
(イ)判断
相違点1について
甲第11号証には、「通気管6と前記スリーブ3との間隙部」に、その上下部において「不乾性シール材9a」と「バックアップ材(ヤーン)9b」が充填されている点が記載されており、甲第12号証には、コア抜きしたコンクリート部と配管との間」に、「バックアップ材(材質はシリコン系コーキング材)5を詰めて防水処理を行い、さらに配管廻りにコーキング6を施し」た点が記載されている。
しかしながら、甲1発明の鞘管封止キャップ7(配管Kの外周面に外嵌させて、配管Kと鞘管Lとの間に設置されるもの)は、第3の3(1)ア(ケ)の記載によると、締め付けネジや接着固定によって鞘管に取り付けられるものであり、充填するものではなく固形物であると解されるから、バックアップ材を必要とするものではなく、甲1発明に、甲第11号証及び甲第12号証に記載のバックアップ材を適用する動機付けはないといえる。
また、甲第2号証ないし甲第10号証、甲第13号証、甲第14号証のいずれをみても、相違点1の本件発明3に係る構成が記載も示唆もされていない。
したがって、甲1発明において、相違点1に係る本件発明3の構成とすることは、当業者が容易に想到できたとはいえない。
(ウ)申立人の主張について
「シーリング材を充填する場合、バックアップ材を用いることは、本件出願前に一般的に行われていた周知の技術(例えば、刊行物11に記載の「バックアップ材(ヤーン)9b」及び刊行物12に記載の「バックアップ材(材質はシリコン系コーキング材)5」参照。)にすぎず、訂正後の請求項3に係る発明では、バックアップ材とさや管及び配管との位置関係等については何らの限定もされていないことから、相違点1は、上記周知技術に基づいて、当業者が容易になし得る事項であるといえる。」と主張する。(意見書第7頁12-18行)
確かに、甲第11号証および甲第12号証に記載されているようにシーリング材を充填する場合に、バックアップ材を用いることが周知の技術であるとしても、上記(イ)で説示したとおり、甲1発明に、当該周知の技術を適用する動機付けはない。
したがって、申立人の主張を採用することができない。
(エ)小括
したがって、本件発明3は、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第14号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 甲第11号証に記載された発明を主引用例として
(ア)対比
甲第11号証には、高層建築物等の排水通気設備における通気口の構造に関し、「通気管6と前記スリーブ3との間隙部」に、その上下部において「不乾性シール材9a」と「バックアップ材(ヤーン)9b」が充填されている発明が記載されている。
そこで、本件発明3と甲第11号証に記載された発明とを対比すると、
甲11号証に記載された発明の「通気管6」、「スリーブ3」、「不乾性シール材9a」及び「バックアップ材(ヤーン)9b」は、本件発明3の「配管」、「さや管」、「シーリング材」及び「バックアップ材」に相当する。
そうすると、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点1>
さや管の内面と配管の外面との間に、本件発明3では、防蟻処理された内防蟻部材が設置されているのに対して、甲第11号証に記載された発明では、不乾性シール材9aが充填されている点。
(イ)判断
相違点1について
甲第1号証には、鞘管Lの内面と前記配管Kの外面との間に、シロアリ侵入阻止部材が設置され、該シロアリ侵入阻止部材を、防蟻に有効な安定した材料で構成される鞘管封止キャップ7とした点が記載されている。
しかしながら、甲第11号証の「不乾性シール材9a」は、高層建築物等の排水通気設備における通気口の構造に設けられるものであり、このような通気口近傍にシロアリ等の蟻が発生することは一般的に想定しえないことから、甲第11号証に記載された発明において、シロアリ侵入防止ないしは防蟻の課題があるとはいえない。
以上のことから、甲第11号証に記載された発明に甲1発明を適用する動機付けはないといえる。
したがって、甲第11号証に記載された発明において、相違点1に係る本件発明3の構成とすることは、当業者が容易に想到できたとはいえない。
(ウ)小括
したがって、本件発明3は、その他の相違点を検討するまでもなく、甲第11号証に記載された発明及び甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 甲第12号証に記載された発明を主引用例として
(ア)対比
甲第12号証には、既存構造物の外壁貫通配管工事の防水処理方法に関し、「コア抜きしたコンクリート部と配管との間」に、「バックアップ材(材質はシリコン系コーキング材)5を詰めて防水処理を行い、さらに配管廻りにコーキング6を施し」た点が記載されている。
そこで、本件発明3と甲第12号証に記載された発明とを対比すると、
甲12号証に記載された発明の「配管」、「コーキング6」及び「バックアップ材5」は、本件発明3の「配管」、「さや管」、「シーリング材」及び「バックアップ材」に相当する。
そうすると、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点1>
本件発明3は、水平部と該水平部から立ち上がる立上り部とを備えるさや管を備えているのに対して、甲第12号証に記載された発明では、さや管を備えていない点。
<相違点2>
本件発明3は、さや管の内面と配管の外面との間に防蟻処理された内防蟻部材が設置されているのに対して、甲第12号証に記載された発明は、さや管を備えておらず、配管の外面に不乾性シール材9aが充填されている点。
(イ)判断
相違点1について
甲第12号証に記載された発明は、そもそもさや管を備えておらず、さや管を必要とする特別の事情もないわけであるから、甲第1号証に水平部と該水平部から立ち上がる立上り部とを備えるさや管が記載されているとしても、このような部位を備えるさや管を甲第12号証に記載された発明に適用する動機付けはない。
したがって、甲第12号証に記載の発明において、相違点1に係る本件発明3の構成とすることは、当業者が容易に想到できたとはいえない。
(ウ)小括
したがって、本件発明3は、その他の相違点を検討するまでもなく、甲第12号証に記載された発明及び甲第1号証に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明4について
ア 甲1発明を主引用例として
(ア)対比
本件発明4と甲1発明とを対比すると、
甲1発明の「戸建住宅や集合住宅を含む建造物」は、本件発明4の「建物」に相当する。
以下同様に、
「鞘管L」は、「さや管」に、
「配管K(給排水管)」は、「配管」または「給水管」に、
「基礎躯体A」の「配設構造」は、「基礎部の配管構造」に、
「前記鞘管Lの内面と前記配管Kの外面との間」は、「前記さや管の内面と前記配管の外面との間」にそれぞれ相当する。
また、甲1発明の「戸建住宅や集合住宅を含む建造物のコンクリートの基礎躯体A」は、配管を備える配設構造における基礎躯体をコンクリートで構成しているものといえるから、本件発明4の「基礎部を構成するコンクリート」に相当するといえる。
また、甲1発明の「屋内側」の「鞘管L」に「内嵌する」「鞘管封止キャップ7」は、配管Kの外周面に外嵌させて、前記配管Kと前記鞘管Lとの間に設置されることから、本件発明4の「屋内側に充填された」「内防蟻部材」に相当する。
また、甲1発明の「屋外側」の「鞘管L」の端面近傍に「内嵌する」「鞘管封止キャップ7」は、配管Kの外周面に外嵌させて、前記配管Kと前記鞘管Lとの間に設置されることから、本件発明4の「屋外側に充填された」「内防蟻部材」に相当する。
また、甲1発明の「防蟻に有効な安定した材料で構成される鞘管封止キャップ7」(シロアリ侵入阻止部材)は、防蟻成分を含有することが明らかであり、さや管の内面と配管の外面の間に設置される防蟻部材であるから、本件発明4の「防蟻処理された内防蟻部材」に相当するとともに、「封止」機能すなわちシーリングの機能があることから、本件発明4の「防蟻成分を含有する防蟻シーリング材」に相当する。
そうすると、本件発明4と甲1発明との<一致点>及び<相違点>は、以下のとおりである。
<一致点>
建物の基礎部を構成するコンクリートを貫通するさや管と、該さや管に挿通される配管と、を備える基礎部の配管構造であって、
少なくとも、前記さや管の内面と前記配管の外面との間に、防蟻処理された内防蟻部材が設置され、
該内防蟻部材が、屋内側に充填された、防蟻成分を含有する防蟻シーリング材であり、
前記配管が、給水管であり、
前記内防蟻部材が、前記さや管の屋外側の端面近傍であって、前記さや管と前記配管との間に充填された、防蟻シーリング材でもあることを特徴とする基礎部の配管構造。
<相違点1>
防蟻シーリング材が、本件発明4では、さや管の内面と配管の外面との間に設置されたバックアップ材の屋内側に充填されたものであるのに対して、甲1発明では、鞘管の屋内側に充填されているものの、バックアップ材が鞘管の内面と配管の外面との間に設置されていない点。
<相違点2>
給水管が、本件発明4では、可撓性を有しているのに対して、甲1発明では、可撓性を有しているか否か特定されていない点。
(イ)判断
相違点1は、実質的に上記(3)ア(ア)の相違点1と同じであるから、上記(3)ア(イ)において説示したとおりである。
(ウ)申立人の主張について
申立人は、「・・・、訂正事項『バックアップ材の屋内側に充填された、・・・防蟻シーリング材」及び訂正事項「さや管の屋外側の端面近傍であって、・・・、防蟻シーリング材』の両方を構成要件と備えるものであるが、本件明細書の段落[0117]には、どちらか一方を備えることしか記載されていない。そうであれば、当該訂正事項は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正とはいえない。また、仮に、当該訂正事項が、その範囲内の訂正であったとしても、当該構成は、刊行物12 (「コーキング6」参照。)に記載されている。
このように、相違点1-3は、上記周知技術に基づいて、当業者が容易になし得る事項であるといえ、訂正後の請求項4に係る発明は進歩性を欠如するものである。」と主張している。(意見書第8頁第19-29行)
「当該訂正事項」(第2の1(2)イの訂正事項2)について、本件発明の目的は、「防蟻性能を有する基礎部の配管構造」を提供することである(段落【0008】)。このような目的を達成するための構造として、本件明細書の段落【0117】には、「前記実施例2では、防蟻シーリング材60が床下側の端部に充填される場合について説明したが、これに限定されるものではなく、屋外側の端部に充填されるものであってもよいし・・・」と記載されており、「防蟻シーリング材60が床下側の端部に充填される場合」の例が示されるとともに、防蟻シーリング材が、「屋外側の端部に充填される場合」であってもよいことが説示されている。また、同段落【0077】には、「内防蟻部材としての防蟻シーリング材60は、ウレタン系やシリコン系などの合成樹脂によって形成されるもので、さや管2の屋外側の端面近傍であって保温材34aが取外された部分に充填されている。」と記載されており、「防蟻シーリング材60」が、「さや管2の屋外側の端面近傍」に充填されている例が示されている。これらの例の構造をみると、各々の例の構造でなければ、本件特許の上記目的達成できないというわけではなく、各例を併用しても上記目的は達成できるといえる。また、本件明細書の記載をみると、これらの例を併用することを禁止する記載はない。一方、作用効果(防蟻性能)をより確実にするために、個別に説示された例を、複数、組み合わせることは通常考えられるところであるが、個別の例のみならず、複数組み合わせた例をすべて実施例において示さなければならない訳ではない。そうであれば、本件明細書においては、「防蟻シーリング材60」をシーリング材を充填する部位をバックアップ材の屋内側とすることに加えて、さや管の屋外側の端面近傍とすることの態様も含まれていると言うべきである。したがって、当該訂正事項は、第2の2(2)イ(ウ)のとおり適法になされたものである。
また、甲第12号証には、「コーキング6」が記載されているとしても、上記(イ)で説示したとおり、甲1発明に甲第12号証の記載のバックアップを用いる動機付けはないのであるから、相違点1に係る本件発明4の構成に想到することはできない。
したがって、申立人の主張を採用することができない。
(エ)小括
以上のとおり、本件発明4は、その他の相違点を検討するまでもなく、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第14号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 甲第11号証に記載された発明を主引用例として
(ア)対比
甲第11号証には、高層建築物等の排水通気設備における通気口の構造に関し、「通気管6と前記スリーブ3との間隙部」に、その上下部において「不乾性シール材9a」と「バックアップ材(ヤーン)9b」が充填されている発明が記載されている。
そこで、本件発明4と甲第11号証に記載された発明とを対比すると、
甲11号証に記載された発明の前記「通気管6」、「スリーブ3」、「不乾性シール材9a」及び「バックアップ材(ヤーン)9b」は、本件発明4の「配管」、「さや管」、「シーリング材」及び「バックアップ材」に相当する。
そうすると、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点1>
さや管の内面と配管の外面との間に、本件発明4では、防蟻処理された内防蟻部材が設置されているのに対して、甲第11号証に記載された発明では、不乾性シール材9aが充填されている点。
(イ)判断
相違点1は、実質的に上記(3)イ(ア)の相違点1と同じであるから、上記(3)イ(イ)において説示したとおりである。
(ウ)小括
したがって、本件発明4は、その他の相違点を検討するまでもなく、甲第11号証に記載された発明及び甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 甲第12号証に記載された発明を主引用例として
(ア)対比
甲第12号証には、既存構造物の外壁貫通配管工事の防水処理方法に関し、「コア抜きしたコンクリート部と配管との間」に、「バックアップ材(材質はシリコン系コーキング材)5を詰めて防水処理を行い、さらに配管廻りにコーキング6を施し」た点が記載されている。
そこで、本件発明4と甲第12号証に記載された発明とを対比すると、
甲12号証に記載された発明の「配管」、「コーキング6」及び「バックアップ材5」は、本件発明4の「配管」、「さや管」、「シーリング材」及び「バックアップ材」に相当する。
そうすると、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点1>
本件発明4は、さや管の内面と配管の外面との間に防蟻処理された内防蟻部材が設置されているのに対して、甲第12号証に記載された発明は、さや管を備えておらず、配管の外面に不乾性シール材9aが充填されている点。
(イ)判断
相違点1について
甲第12号証に記載された発明は、そもそもさや管を備えておらず、さや管を必要とする特別の事情もないわけであるから、甲第1号証にさや管が記載されているとしても、このようなさや管を甲第12号証に記載された発明に適用する動機付けはない。
したがって、甲第12号証に記載の発明において、相違点1に係る本件発明4の構成とすることは、当業者が容易に想到できたとはいえない。
(ウ)小括
したがって、本件発明4は、その他の相違点を検討するまでもなく、甲第12号証に記載された発明及び甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第4 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1、2は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、取消理由通知及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明3、4に係る特許を取り消すことはできない。さらに、他に本件発明3、4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-700850