特許異議申立
2023-701134
水栓装置
- 審判番号
- 2023-701134
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-197307
- 登録番号
- 7262967
- 請求日
- 2023年10月24日
- 審決日
- 2024年07月25日
- 公報発行日
- 2024年10月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社LIXIL
- 【権利者代理人】弁理士法人グランダム特許事務所
- 【異議申立人】TOTO 株式会社
- 【異議申立人代理人】田中 伸一郎
- 【異議申立人代理人】弟子丸 健
- 【異議申立人代理人】渡邊 誠
- 【異議申立人代理人】磯貝 克臣
- 審判長/審判官
- 審判長 居島 一仁
- 審判官 蔵野 いづみ
- 審判官 太田 恒明
- 分類
- P1652.851-YAA(E03C) / P1652.857-YAA(E03C) / P1652.112-YAA(E03C) / P1652.113-YAA(E03C) / P1652.121-YAA(E03C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7262967号発明「水栓装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7262967号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕、3、及び4について訂正することを認める。
特許第7262967号の請求項1、2に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7262967号(以下「本件特許」という。)に係る特許についての出願は、平成30年10月19日に出願され、令和5年4月14日にその特許権の設定登録がされ、同年同月24日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和5年10月24日 特許異議申立人TOTO株式会社(以下「申 立人」という。)による請求項1、2に係る 特許に対する特許異議の申立て
令和6年 2月 8日付け 取消理由通知書
同年 4月 8日 意見書及び訂正請求書の提出(特許権者)
同年 5月 1日 手続補正指令書
同年 5月16日 訂正請求書の手続補正書の提出
同年 6月27日 意見書の提出(申立人)
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和6年5月16日提出の手続補正書により補正された令和6年4月8日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の趣旨は、「特許第7262967号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~4について訂正することを求める。」というものであり、その内容は以下のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、「前記キャップ部材は、前記操作レバーが延びる方向に対して交差した水平方向から取り外し作業が可能である」と記載されているのを「前記キャップ部材は、前記操作レバーが延びる方向に対して交差した水平方向から取り外し作業が可能であり、前記基端部と反対側からの側面視で、左右両側の少なくとも一方に切り欠き部を有している」に訂正する。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2において、「前記水栓に接続される接続部を内部に有し、この接続部を臨む開口部が形成された側面を有したハンドル本体と、」と記載されているのを「前記水栓に接続される接続部を内部に有し、この接続部を臨む開口部が形成され、上端から下端に向けて外方向に傾斜した傾斜面である側面を有したハンドル本体と、」と訂正する。
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「前記キャップ部材は、前記基端部と反対側からの側面視で、左右両側の少なくとも一方に切り欠き部を有している請求項1及び2のいずれか一項に記載の水栓装置。」とあるうち、請求項2を引用するものについて、独立形式に改め、「水栓と、前記水栓に接続される接続部を内部に有し、この接続部を臨む開口部が形成された側面を有したハンドル本体と、前記開口部と反対側の前記ハンドル本体の側面を基端部として一方向へ延びた操作レバーと、前記開口部に取り付けられたキャップ部材と、を有し、前記操作レバーの左右方向への可動範囲は、水のみを吐出する水吐水範囲、湯のみを吐出する湯吐水範囲、及び湯水混合水を吐出する混合水吐水範囲であり、前記混合水吐水範囲は、前記水吐水範囲と前記湯吐水範囲との間にあり、前記操作レバーが前記水栓の手前に位置するときは前記水吐水範囲となっており、前記水吐水範囲は、前記操作レバーの可動範囲のうちの前記水吐水範囲を除いた可動範囲よりも狭く、前記キャップ部材は、前記操作レバーが前記水吐水範囲を除いた可動範囲へ回動操作された際に前記ハンドル本体の背面側から手前側にくる位置に設けられており、前記基端部と反対側からの側面視で、左右両側の少なくとも一方に切り欠き部を有している水栓装置。」と訂正する。
(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「前記キャップ部材は、前記基端部と反対側からの側面視で、左側に切り欠き部を有している請求項1に記載の水栓装置。」とあるものについて、独立形式に改め、「接続部を内部に有し、この接続部を臨む開口部が形成された側面を有したハンドル本体、前記開口部と反対側の前記ハンドル本体の側面を基端部として一方向へ延びた操作レバー、及び、前記開口部に取り付けられたキャップ部材、を有する水栓用ハンドルと、前記ハンドル本体の前記接続部と接続された水栓と、を備え、前記水栓は、前記操作レバーの左右方向への回動操作により吐水温度を調節し、上下方向への回動操作により吐水流量を調節するものであり、前記操作レバーの左右方向への可動範囲は、水のみを吐出する水吐水範囲、及び湯水混合水を吐出する混合水吐水範囲を有しており、前記操作レバーが前記水栓の手前に位置するときは前記水吐水範囲となっており、前記水吐水範囲と前記混合水吐水範囲との境界における前記操作レバーの位置を基準とし、前記操作レバーの右方向の可動範囲が前記水吐水範囲であり、前記操作レバーの左方向の可動範囲が前記混合水吐水範囲であって、前記操作レバーの前記水栓の手前から右方向の可動範囲よりも、左方向の可動範囲が広く、前記キャップ部材は、前記操作レバーが延びる方向に対して交差した水平方向から取り外し作業が可能であり、前記基端部と反対側からの側面視で、左側に切り欠き部を有している水栓装置。」に訂正する。
(5) 一群の請求項及び別の訂正単位とする求め
訂正前の請求項1~4について、請求項3及び4は、請求項1を直接的に引用しているものであり、請求項3は、請求項2を直接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1、又は訂正事項2によって記載が訂正される請求項2に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~4に対応する訂正後の請求項1~4は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であって、訂正事項1~4に係る訂正は、一群の請求項1~4についてするものである。
また、特許権者は、訂正後の請求項3、4については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位として扱われることを求めている。
2 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無、及び独立特許要件
(1) 訂正事項1
ア 訂正の目的
訂正事項1に係る訂正は、請求項1に記載された「キャップ部材」について、「前記基端部と反対側からの側面視で、左右両側の少なくとも一方に切り欠き部を有している」ことを特定して限定することで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記アで説示したとおり、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、発明のカテゴリーや対象又は目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ウ 新規事項の有無
訂正事項1は、訂正前の請求項3に「前記キャップ部材は、前記基端部と反対側からの側面視で、左右両側の少なくとも一方に切り欠き部を有している」との記載がなされていることから、訂正事項1に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)に記載した事項のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(2) 訂正事項2
ア 訂正の目的
訂正事項2に係る訂正は、請求項2に記載された「ハンドル本体」の「側面」について、「上端から下端に向けて外方向に傾斜した傾斜面である」ことを特定して限定することで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記アで説示したとおり、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、発明のカテゴリーや対象又は目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ウ 新規事項の有無
本件明細書等の【0019】には、「ハンドル本体31は、図2及び図3に示すように、ハンドル本体31の側面のうち、操作レバー32が延びる基端部36と反対側の側面である背面39に、水平方向に貫通した開口部60が形成されている。」と記載されている。
また、下記に示す本件明細書等の図3、図5、及び図6から、ハンドル本体31の側面である背面39が上端から下端に向けて外方向に傾斜した傾斜面であることが見て取れる。
「【図3】
[図:0001415291000001.jpg]
」
「【図5】
[図:0001415291000002.jpg]
」
「【図6】
[図:0001415291000003.jpg]
」
以上のことから、本件明細書等には、「ハンドル本体」の「側面」が「上端から下端に向けて外方向に傾斜した傾斜面である」ことが記載されている。
したがって、訂正事項2に係る訂正は、本件明細書等に記載した事項のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(3) 訂正事項3
訂正事項3は、訂正前の請求項3が請求項1及び2の記載を引用する記載であったところ、請求項1を引用しないものとした上で、請求項2を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、新規事項の追加にも該当しない。
(4) 訂正事項4
訂正事項4は、訂正前の請求項4が請求項1の記載を引用する記載であったところ、請求項間の引用関係を解消して、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもなく、新規事項の追加にも該当しない。
(5) 独立特許要件について
本件においては、訂正前の請求項1及び2について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項1及び2に係る訂正事項1及び2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
また、訂正事項3は、特許異議の申立てがされていない請求項に係るものであるところ、特許請求の範囲が減縮されて、異議申立てがされていない、訂正後の請求項3(訂正前の請求項3に対応。)について、特許出願の際独立して特許を受けることができない理由は発見しない。
さらに、訂正事項4は、特許異議の申立てがされていない請求項に係るものであるところ、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであるから、訂正後の請求項4(訂正前の請求項4に対応。)について、独立特許要件は課されない。
3 小括
以上のとおり、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項~第7項の規定に適合する。
また、訂正後の請求項3及び4について、別の訂正単位とする求めも認めることができる。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕、3、及び4について訂正することを認める。
第3 訂正後の特許発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~4に係る発明は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、それぞれ請求項番号により「本件発明1」等という。また、請求項1及び2の「A」等は、当審で付した。以下「A」等を付した事項を「特定事項A」等という。)。
「【請求項1】
A 接続部を内部に有し、この接続部を臨む開口部が形成された側面を有したハンドル本体、前記開口部と反対側の前記ハンドル本体の側面を基端部として一方向へ延びた操作レバー、及び、前記開口部に取り付けられたキャップ部材、を有する水栓用ハンドルと、
B 前記ハンドル本体の前記接続部と接続された水栓と、
を備え、
C 前記水栓は、
前記操作レバーの左右方向への回動操作により吐水温度を調節し、上下方向への回動操作により吐水流量を調節するものであり、
D 前記操作レバーの左右方向への可動範囲は、水のみを吐出する水吐水範囲、及び湯水混合水を吐出する混合水吐水範囲を有しており、
E 前記操作レバーが前記水栓の手前に位置するときは前記水吐水範囲となっており、
F 前記水吐水範囲と前記混合水吐水範囲との境界における前記操作レバーの位置を基準とし、前記操作レバーの右方向の可動範囲が前記水吐水範囲であり、前記操作レバーの左方向の可動範囲が前記混合水吐水範囲であって、
G 前記操作レバーの前記水栓の手前から右方向の可動範囲よりも、左方向の可動範囲が広く、
H 前記キャップ部材は、前記操作レバーが延びる方向に対して交差した水平方向から取り外し作業が可能であり、前記基端部と反対側からの側面視で、左右両側の少なくとも一方に切り欠き部を有している
I 水栓装置。
【請求項2】
J 水栓と、
K 前記水栓に接続される接続部を内部に有し、この接続部を臨む開口部が形成され、上端から下端に向けて外方向に傾斜した傾斜面である側面を有したハンドル本体と、
L 前記開口部と反対側の前記ハンドル本体の側面を基端部として一方向へ延びた操作レバーと、
M 前記開口部に取り付けられたキャップ部材と、
を有し、
N 前記操作レバーの左右方向への可動範囲は、水のみを吐出する水吐水範囲、湯のみを吐出する湯吐水範囲、及び湯水混合水を吐出する混合水吐水範囲であり、
O 前記混合水吐水範囲は、前記水吐水範囲と前記湯吐水範囲との間にあり、
P 前記操作レバーが前記水栓の手前に位置するときは前記水吐水範囲となっており、
Q 前記水吐水範囲は、前記操作レバーの可動範囲のうちの前記水吐水範囲を除いた可動範囲よりも狭く、
R 前記キャップ部材は、前記操作レバーが前記水吐水範囲を除いた可動範囲へ回動操作された際に前記ハンドル本体の背面側から手前側にくる位置に設けられている
S 水栓装置。
【請求項3】
水栓と、
前記水栓に接続される接続部を内部に有し、この接続部を臨む開口部が形成された側面を有したハンドル本体と、
前記開口部と反対側の前記ハンドル本体の側面を基端部として一方向へ延びた操作レバーと、
前記開口部に取り付けられたキャップ部材と、
を有し、
前記操作レバーの左右方向への可動範囲は、水のみを吐出する水吐水範囲、湯のみを吐出する湯吐水範囲、及び湯水混合水を吐出する混合水吐水範囲であり、
前記混合水吐水範囲は、前記水吐水範囲と前記湯吐水範囲との間にあり、
前記操作レバーが前記水栓の手前に位置するときは前記水吐水範囲となっており、
前記水吐水範囲は、前記操作レバーの可動範囲のうちの前記水吐水範囲を除いた可動範囲よりも狭く、
前記キャップ部材は、前記操作レバーが前記水吐水範囲を除いた可動範囲へ回動操作された際に前記ハンドル本体の背面側から手前側にくる位置に設けられており、前記基端部と反対側からの側面視で、左右両側の少なくとも一方に切り欠き部を有している
水栓装置。
【請求項4】
接続部を内部に有し、この接続部を臨む開口部が形成された側面を有したハンドル本体、前記開口部と反対側の前記ハンドル本体の側面を基端部として一方向へ延びた操作レバー、及び、前記開口部に取り付けられたキャップ部材、を有する水栓用ハンドルと、
前記ハンドル本体の前記接続部と接続された水栓と、
を備え、
前記水栓は、
前記操作レバーの左右方向への回動操作により吐水温度を調節し、上下方向への回動操作により吐水流量を調節するものであり、
前記操作レバーの左右方向への可動範囲は、水のみを吐出する水吐水範囲、及び湯水混合水を吐出する混合水吐水範囲を有しており、
前記操作レバーが前記水栓の手前に位置するときは前記水吐水範囲となっており、
前記水吐水範囲と前記混合水吐水範囲との境界における前記操作レバーの位置を基準とし、前記操作レバーの右方向の可動範囲が前記水吐水範囲であり、前記操作レバーの左方向の可動範囲が前記混合水吐水範囲であって、
前記操作レバーの前記水栓の手前から右方向の可動範囲よりも、左方向の可動範囲が広く、
前記キャップ部材は、前記操作レバーが延びる方向に対して交差した水平方向から取り外し作業が可能であり、前記基端部と反対側からの側面視で、左側に切り欠き部を有している
水栓装置。」
第4 特許異議申立理由の概要、証拠方法及び取消理由通知において通知した取消理由の概要
1 特許異議申立理由の概要
申立人は、特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、概ね以下の申立理由を主張するとともに、証拠方法として下記2に示す各甲号証を提出している。
(1) 申立理由1(新規性欠如(公知))
本件発明1は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であって、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
(2) 申立理由2(新規性欠如(公知))
本件発明2は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であって、請求項2に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
(3) 申立理由3(新規性欠如(公然実施))
本件発明1は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において公然実施されていた甲第1号証に記載された発明であって、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
(4) 申立理由4(新規性欠如(公然実施))
本件発明2は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において公然実施されていた甲第1号証に記載された発明であって、請求項2に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
(5) 申立理由5(甲第1号証を主たる引用例とする進歩性欠如)
本件発明1は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証、及び周知技術(甲第2号証~甲第5号証)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(6) 申立理由6(甲第1号証を主たる引用例とする進歩性欠如)
本件発明2は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証、及び周知技術(甲第2号証~甲第5号証)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、請求項2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(7) 申立理由7(甲第2号証を主たる引用例とする進歩性欠如)
本件発明1は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証、周知技術1(甲第1号証、甲第6号証~甲第9号証)及び周知技術2(甲第1号証、甲第3号証、甲第4号証)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(8) 申立理由8(甲第2号証を主たる引用例とする進歩性欠如)
本件発明2は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証、及び周知技術(甲第1号証、甲第6号証~甲第9号証)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、請求項2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
2 証拠方法
(1) 甲第1号証:“TOTO 洗面所用シングルレバー混合栓 品番 :TLCC31型・TLCF31型取扱説明書”,[online], TOTO株式会社,[令和6年1月30日検索],インターネッ ト<URL:https://search.toto.jp/tr/03J63_201507.pdf>
(2) 甲第2号証:特開2018-62813号公報
(3) 甲第3号証:特開2014-214581号公報
(4) 甲第4号証:実願平2-402663号(実開平4-95179 号)のマイクロフィルム
(5) 甲第5号証:特開2004-108120号公報
(6) 甲第6号証:特開2015-197115号公報
(7) 甲第7号証:特開2012-92961号公報
(8) 甲第8号証:特開2015-227672号公報
(9) 甲第9号証:特開2010-281452号公報
(以下「甲第1号証」等を「甲1」等という。)
3 取消理由通知において通知した取消理由の概要
当審において令和6年2月8日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は次のとおりである。
取消理由1(新規性-公知)本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、その発明に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
・引用文献等 甲1
取消理由2(新規性-公然実施)本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明であって、特許法第29条第1項第2号に該当するから、その発明に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
・引用文献等 甲1
取消理由3(進歩性)本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、その発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
・引用文献等 甲1~甲9
なお、取消理由通知書に記載した上記取消理由は、申立人が申し立てた理由と同趣旨であり、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由はない。
第5 証拠について
1 甲1
(1) 記載事項
甲1には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同じ。)。
表紙頁
「
[図:0001415291000004.jpg]
」
第6頁
「
[図:0001415291000005.jpg]
」
第7頁
「
[図:0001415291000006.jpg]
」
第8頁
「
[図:0001415291000007.jpg]
」
第14頁
「
[図:0001415291000008.jpg]
」
裏表紙頁
「
[図:0001415291000009.jpg]
」
(2) 認定事項
ア 第14頁の「レバーハンドルの固定方法(TLCC3l型の場合)」に図示されたレバーハンドルの形状とインデックスの位置から、レバーハンドルは、インデックスと反対側の側面から一方向に延びる部分を有することが見てとれる(以下「認定事項1-1」という。)。
イ 第6頁に図示された「レバーハンドル」及び「本体」、及び第14頁の「レバーハンドルの固定方法(TLCC31型の場合)」との記載から、レバーハンドルは本体に固定されるものと認められる(以下「認定事項1-2」という。)。
ウ 第14頁の「レバーハンドルの固定方法(TLCC3l型の場合)」に記載及び図示された事項から、レバーハンドルの固定方法は、レバーハンドルの背面に取り付けられたインデックスを精密マイナスドライバーで取り外し、インデックスが取り付けられていた箇所に六角棒レンチを差し込んで回転し、インデックス裏側及びハンドル背面に設けられた凹凸をあわせて、インデックスをレバーハンドルに取り付けることによって行うことが理解される(以下「認定事項l-3」という。)。
エ 第7頁に記載及び図示された事項から、レバーハンドルを回すことによって、温度調節を行い、レバーハンドルを中央よりも右側に回すと水、左側へ回すとしだいに温度が上がり、左側いっぱいに回すと、最高温度になり、レバー中央(水栓の正面)で水を出すことができ、レバーハンドルの可動範囲は、レバー中央(水栓の正面)から右が40°、左が60°であることが理解される(以下「認定事項1-4」という。)。
オ 第14頁に記載及び図示された事項から、「レバーハンドルの固定方法(TLCC31型の場合)」では、インデックスは、精密マイナスドライバーを、下方向からインデックスの下側に差し込むことで取り外しているのに対し、「レバーハンドルの固定方法(TLCF3l型の場合)」では、インデックスは、精密マイナスドライバーを、横方向からインデックスの下側に差し込むことで取り外していることが見てとれるが、「レバーハンドルの固定方法(TLCC3l型の場合)」と、「レバーハンドルの固定方法(TLCF3l型の場合)」それぞれにはインデックスの形状については相違は示されていないことが見てとれる(以下「認定事項1-5」という。)。
カ 裏表紙頁の右下に「2015.10」と記載されていることから、甲1は、本件特許出願前である2015年10月に掲載されたものと認められる(以下「認定事項1-6」という。)。
(3) 甲1発明
上記(1)及び(2)からみて、甲1には、TLCC31型の洗面所用シングルレバー混合栓として、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されており、この甲1発明は、本件特許出願前の2015年10月に電気通信回線を通じて公衆に利用可能になった(認定事項1-6)ものと認められる。
(甲1発明)
「インデックスと反対側の側面から一方向に延びる部分を有するレバーハンドルと(第14頁、認定事項1-1)
レバーハンドルが固定される本体と、を備え(第6、14頁、認定事項1-2)、
配管まわりにガタツキがある場合はインデックスを外し、ねじを締めなおすことができ、レバーハンドルの固定方法は、レバーハンドルの背面に取り付けられたインデックスを精密マイナスドライバーで取り外し、インデックスが取り付けられていた箇所に六角棒レンチを差し込んで回転し、インデックス裏側及びハンドル背面に設けられた凹凸をあわせて、インデックスをレバーハンドルに取り付けることによって行い(第14頁、認定事項1-3)、
レバーハンドルを回すことによって、温度調節を行い、レバーハンドルを中央よりも右側に回すと水、左側へ回すとしだいに温度が上がり、左側いっぱいに回すと、最高温度になり、レバー中央(水栓の正面)で水を出すことができ、レバーハンドルの可動範囲は、レバー中央(水栓の正面)から右が40°、左が60°であり(第7頁、認定事項1-4)、
レバーハンドルを上げると水(湯)を出すことができ、レバーハンドルを下げると水(湯)を止めることができ(第8頁)、
インデックスの形状は、精密マイナスドライバーを、横方向からインデックスの下側に差し込むことで取り外し可能であるTLCF31型のインデックスの形状と相違がない(第14頁、認定事項1-5)、
TLCC31型洗面所用シングルレバー混合栓(表紙頁)。」
2 甲2
(1) 記載事項
甲2には、以下の事項が記載されている。
「【0012】
本実施例1の混合水栓1は、壁面取り付け型の水栓である。混合水栓1は、図1~図4に示すように、水栓本体10、吐出管20、熱湯吐出口40、湯水吐出口42、レバー式ハンドル50及び回動式ハンドル60を備えている。これらの各部材は、大部分を白色の樹脂カバーにより夫々覆われており、全体として白色を呈する清潔感のある意匠とされている。」
「【0027】
混合弁14で混合された湯水は、内筒29の中心孔30、湯水用接続筒部28、湯水用水平管部38を順に通り、湯水吐出口42から空気の泡沫を含んだストレート状に吐出される。内筒29の中心孔30、湯水用接続筒部28、湯水用水平管部38は、湯水流通路17を構成する。湯水の吐出量と温度(熱湯と水の混合割合)は、水栓本体10の上面の左右方向略中央に設けたレバー式ハンドル50を操作して混合弁14を作動させることによって行われる。レバー式ハンドル50を水平軸周りに上下移動させると、湯水の吐出量を調節することができる。レバー式ハンドル50を鉛直軸周りに回動させると、湯水の混合割合を調節することができる。」
「【図8】
[図:0001415291000010.jpg]
」(図8の右上の2つの矢印は、合議体が付したものである。)
(2) 認定事項
ア 【0012】、【0027】を参照しつつ、図8の右上の2つの矢印で示した箇所をみると、混合水栓1において、レバー式ハンドル50の内部には、レバー式ハンドル50と水栓本体10の内部の混合弁14に延びる部材とを接続するネジが設けられ、レバー式ハンドル50の側面には、上記ネジの頭に対向する開口部が設けられ、この開口部には、開口部を塞ぐ部材が取り付けられていることが見てとれる(以下「認定事項2-1」という。)。
イ 図8から、レバー式ハンドル50は、上記開口部とは反対側の側面から一方向に延びる部分を有することが見てとれる(以下「認定事項2-2」という。)。
(3) 甲2発明
上記(1)及び(2)によれば、甲2には以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲2発明)
「水栓本体10の上面の左右方向略中央に設けたレバー式ハンドル50を備え、レバー式ハンドル50を水平軸周りに上下移動させると、湯水の吐出量を調節することができ、レバー式ハンドル50を鉛直軸周りに回動させると、湯水の混合割合を調節することができ(【0027】)、
レバー式ハンドル50の内部には、レバー式ハンドル50と水栓本体10の内部の混合弁14に延びる部材とを接続するネジが設けられ、レバー式ハンドル50の側面には、上記ネジの頭に対向する開口部が設けられ、この開口部には、開口部を塞ぐ部材が取り付けられ(図8、認定事項2-1)、
レバー式ハンドル50は、上記開口部とは反対側の側面から一方向に延びる部分を有する(図8、認定事項2-2)
混合水栓1(【0012】)。」
3 甲3
甲3には、以下の事項が記載されている。
「【0014】
図1及び図2に示す湯水混合栓は、デッキタイプでワンホール型の湯水混合栓であり、例えばキッチン用として水平カウンターの上面に設置され、図1に示すように、この水栓の金属製の水栓本体1の下部には、湯供給管H及び水供給管Cが接続される。」
「【0020】
尚、図1及び図2において、14はシングルレバー13を栓棒4aに接続するための接続部材、15は接続部材14の操作のためにシングルレバー13に設けられた孔16を覆うためのキャップである。」
「【図2】
[図:0001415291000011.jpg]
」
【0014】、【0020】を参照しつつ、図2をみると、湯水混合栓において、シングルレバー13の内部には、シングルレバー13を栓棒4aに接続するための接続部材14が設けられ、シングルレバー13の側面には、接続部材14に対向する孔16が設けられ、孔16には、キャップ15が取り付けられていることが見てとれる。
4 甲4
甲4には、以下の事項が記載されている。
「【0001】
【産業上の利用分野】
本考案はレバーハンドル式水栓におけるレバーハンドル取付構造、特にレバーハンドルがそのレバー部を上方に向けて水栓本体の側周面に取付けられる形式の水栓におけるレバーハンドルの取付構造に関する。」
「【0011】
またレバーハンドル1にはこれをスピンドル5に固定する止めネジ6用の孔7がハンドル主体部1aの上面に開口するように開設されている。
上記止めネジ用の孔7はスピンドル係合部10に開穿されるネジ孔7aと、このネジ孔7aに螺挿する止めネジ6をレバーハンドル1外部からドライバー等で操作するためにハンドル主体部1aの側周面に開穿される工具挿通孔7bからなり、工具挿通孔7bがハンドル主体部1aの側周面上面部分、即ちレバー部1bの根本部分近傍のハンドル主体部1a側周面に貫通開穿され、この工具挿通孔7bに対応するスピンドル係合部10の部位にネジ孔7aが貫通開穿されている。
【0012】
そして、上記ネジ孔7aにねじ込まれる止めネジ6はその先端をスピンドル5の周面に圧接してスピンドル5とレバーハンドル1を固定する。
また、工具挿通孔7bにはキャップ8が、この孔7bを塞いで着脱自在に装着される。キャップ8は裏面に複数の弾性脚8aを有し、該脚8aを工具挿通孔7bに嵌合してその弾性により工具挿通孔7bに取付けられる。」
「【図1】
[図:0001415291000012.jpg]
」
【0001】、【0011】、【0012】を参照しつつ、図1をみると、レバーハンドル式水栓において、レバーハンドル1の内部に、レバーハンドル1をスピンドル5に固定する止めネジ6が設けられ、レバーハンドル1の側面には、止めネジ6に対向する工具挿通孔7bが設けられ、工具挿通孔7bにはキャップ8が、この孔7bを塞いで着脱自在に装着されることが理解される。
5 甲5
甲5には、以下の事項が記載されている。
「【0020】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して本発明をより具体的に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態である壁埋め込み水栓の外観を示す斜視図である。図2は図1の断面図である。
本発明の壁埋め込み水栓1は壁Wに埋め込まれた形態で設置されており、正面には吐水口4と、この吐水口4からの流量を制御するハンドル2とがカバー3から突出した状態で設置されている。
壁Wの内側にはボックス7と水栓本体5が設置されており、給水口6から供給された水はバルブ9と逆止弁10を経由して吐水口4に導かれる。
吐水口4には全自動洗濯機等に使用されている継手(図示せず)が接続され、接続により緊急止水弁11がリフトし、水を全自動洗濯機等に供給できるようになっている。」
「【0032】
この時、ボックス7の水平・垂直が確実に出ていないと、筒状ナット25の装着がカバー3に対して斜めになり、うまくねじ込めない。又、吐水口4も斜めになりカバー3装着時に干渉したり、品位上問題となってしまう。従って、ボックス7を水平・垂直に固定しやすくするために、前述のように長穴23の断面を略凸形状にしておくことが重要となる。
最後に図14に示すように、ハンドル2をスピンドル12に装着し、ビス28で固定した後、インデックス29をハンドル2に装着して施工完了となる。」
「【図14】
[図:0001415291000013.jpg]
」
【0020】、【0032】を参照しつつ、図14をみると、壁埋め込み水栓1において、ハンドル2の内部に、ハンドル2をスピンドル12に固定するビス28が設けられ、ハンドル2には、ビス28に対向する開口部が設けられ、インデックス29がハンドル2の開口部に装着されることが見てとれる。
6 甲6
(1) 記載事項
甲6には、以下の事項が記載されている。
「【0016】
以下、添付図面を参照して本発明の第1実施形態による湯水混合バルブ装置について説明する。
まず、図1は、本発明の第1実施形態による湯水混合バルブ装置が組み込まれた湯水混合水栓装置を斜め前方から見た概略斜視図である。
図1に示すように、本発明の第1実施形態による湯水混合バルブ装置1が組み込まれた湯水混合水栓装置2は、給湯源(図示せず)から供給される湯と給水源(図示せず)から供給される水を混合し、単一の操作ハンドル4を操作することにより湯水の流量と温度を調節した湯水をスパウト6の吐水口6aから吐止水することができる、いわゆる、シングルレバー式の湯水混合水栓装置である。
・・・
【0021】
また、図2に示すように、操作ハンドル4が温調操作時に水平方向に回動操作される操作領域Rは、湯水混合水栓装置2を正面前方から見て中央に位置する湯水混合操作領域R0と、図2に示す湯水混合操作領域R0の左側(湯側)に位置する湯側操作領域R1と、図2に示す湯水混合操作領域R0の右側(水側)に位置する水側操作領域R2とからなる。
湯水混合操作領域R0は、操作ハンドル4の温調操作角度φが0度ときの状態と、この状態から湯側と水側にそれぞれ左右対称に大きさが等しい所定の温調操作角度φ3,φ4(例えば、φ3=φ4=40°)で回動操作した状態までの操作領域であり、湯水を湯水混合水栓装置2の吐水口6aから混合湯水を吐水させる操作領域である。
また、湯側操作領域R1は、操作ハンドル4の温調操作角度φの大きさを湯側に所定の温調操作角度φ3の大きさよりも大きい操作角度に設定した状態から湯側の最大温調操作角度φ1まで回動操作させた状態までの操作領域であり、湯水を湯水混合水栓装置2の吐水口6aから湯のみを吐水させる操作領域である。
さらに、水側操作領域R2は、操作ハンドル4の温調操作角度φの大きさを水側に所定の温調操作角度φ4の大きさよりも大きい操作角度に設定した状態から水側の最大温調操作角度φ2まで回動操作させた状態までの操作領域であり、湯水を湯水混合水栓装置2の吐水口6aから水のみを吐水させる操作領域である。」
「【0060】
つぎに、図10~図14を参照して、本発明の第2実施形態による湯水混合バルブ装置について説明する。
図10は、本発明の第2実施形態による湯水混合バルブ装置が組み込まれた湯水混合水栓装置の概略平面図であり、混合湯水を吐水させる湯水混合操作領域、湯のみを吐水させる湯側操作領域、及び水のみを吐水させる水側操作領域を概略的に説明した図である。また、図11は、本発明の第2実施形態による湯水混合バルブ装置において、湯水混合水栓装置の操作ハンドルを中央の温調操作位置(湯水混合水栓装置の正面位置)に設定し且つ流調操作角度を0度に設定したときの全閉状態及び全開状態の可動弁体と固定弁体を示す平面図である。ここで、図11に示す可動弁体116においては、全閉状態の可動弁体116を実線及び符号「C」で示し、全開状態の可動弁体116を鎖線及び符号「O」で示している。
【0061】
まず、図10及び図11に示すように、本発明の第2実施形態による湯水混合バルブ装置100においては、その固定弁体114と可動弁体116の構造のみが、上述した本発明の第1実施形態による湯水混合バルブ装置1の固定弁体14と可動弁体16の構造と異なっており、操作ハンドル4の温調操作角度φを0度に設定し、操作ハンドル4を中央の温調操作位置P0に設定した状態で、流調操作角度θを操作することにより可動弁体116を開弁させると、湯水混合水栓装置2のスパウト6の吐水口6aから水のみが吐水されるようになっている点で、本発明の第実施形態による湯水混合バルブ装置1と異なっている。
したがって、本発明の第2実施形態による湯水混合バルブ装置100、及び、この湯水混合バルブ装置100が組み込まれた湯水混合水栓装置2においては、上述した本発明の第1実施形態による湯水混合バルブ装置1、及び、この湯水混合バルブ装置1が組み込まれた湯水混合水栓装置2と同一部分については同一の符号を付し、これらの説明は省略し、異なる部分のみについて説明する。
【0062】
図10に示すように、湯水混合操作領域R100は、操作ハンドル4の温調操作角度φを0度から湯側(図10の「H側」)に温調操作角度φ104だけ回動操作した状態から、温調操作角度φを湯側(図10の「H側」)に温調操作角度φ3まで回動操作した状態までの操作可能な領域である。
また、水側操作領域R102は、操作ハンドル4を温調操作角度φ104から水側(図10の「C側」)に温調操作角度φ2まで回動操作した状態まで操作可能な領域である。特に、水側操作領域R102内において、操作ハンドル4を温調操作角度φが0度である中央の温調操作位置P0に設定したときには、湯水混合水栓装置2の吐水口6aから水のみが吐水される点が、上述した第1実施形態と異なっている。」
「【図10】
[図:0001415291000014.jpg]
」
(2) 認定事項
ア 【0061】の記載及び図10に「Rl」、「Rl03」として示されている領域の位置関係から、第2実施形態による湯水混合バルブ装置100において、第1実施形態による湯水混合バルブ装置1における「湯側操作領域Rl」と同様に、湯水混合操作領域Rl03(当審注:甲6の【0062】に記載の「湯水混合操作領域R100」との記載は、正しくは、「湯水混合操作領域Rl03」の誤記と認められる。)の左側(湯側)に位置する領域は、湯のみを吐水させる操作領域である湯側操作領域R1であると認められる(以下「認定事項6-1」という。)
イ 図10から、操作ハンドル4の温調操作角度が0度である中央の温調操作位置P0を基準として、操作ハンドル4の右方向の操作可能な領域が水側操作領域Rl02であり、操作ハンドル4の左方向の操作可能な領域が湯水混合操作領域Rl03(当審注:甲6の【0062】に記載の「湯水混合操作領域Rl00」との記載は、正しくは、「湯水混合操作領域Rl03」の誤記と認められる。)であることが見てとれる(以下「認定事項6-2」という。)。
(3) 甲6開示事項
上記(1)及び(2)によれば、甲6には、以下の事項(以下「甲6開示事項」という。)が開示されていると認められる。
(甲6開示事項)
「湯水混合バルブ装置100において(【0061】)、
水側操作領域R102は、操作ハンドル4を温調操作角度φ104から水側に温調操作角度φ2まで回動操作した状態まで操作可能な領域であり、湯水混合操作領域Rl03は、操作ハンドル4の温調操作角度φを0度から湯側に温調操作角度φ104だけ回動操作した状態から、温調操作角度φを湯側に温調操作角度φ3まで回動操作した状態までの操作可能な領域であり(【0062】)、湯水混合操作領域R103の左側(湯側)に位置する領域は、湯のみを吐水させる操作領域である湯側操作領域R1であり(認定事項6-1)、
操作ハンドル4を温調操作角度φが0度である中央の温調操作位置P0に設定したときには、水のみが吐水され(【0062】)、
操作ハンドル4の温調操作角度φが0度である中央の温調操作位置P0を基準として、操作ハンドル4の右方向の操作可能な領域が水側操作領域R102であり、操作ハンドル4の左方向の操作可能な領域が湯水混合操作領域R103であること(認定事項6-2)。」
7 甲7
(1) 記載事項
甲7には、以下の事項が記載されている。
「【0026】
而して請求項1のものは、(a)水流入弁孔及び湯流入弁孔と混合水の流出弁孔とを備えた固定弁体と、(b)該水流入弁孔及び/又は湯流入弁孔と該流出弁孔とを連通させる連通開口を備え、前記固定弁体上を摺動する可動弁体と、(c)該可動弁体を移動操作するレバーハンドルと、を有し、該レバーハンドルの上下方向の回動操作により弁開閉を行って吐止水と吐水の流量調節を行い、左右方向の回動操作により、前記水流入弁孔に対して相対的に左側に位置している前記湯流入弁孔と該水流入弁孔の開度を互いに大小逆の関係で変化させて吐水の温度調節を行うシングルレバー混合水栓において、前記水流入弁孔における前記可動弁体とは反対側の裏面側の入側開口と、前記湯流入弁孔における該裏面側の入側開口との間の、前記レバーハンドルの回動方向に沿った左右方向の中心に対して、該水流入弁孔における前記可動弁体側の表面側の出側開口と、該湯流入弁孔における該表面側の出側開口との間の前記左右方向の中心位置が左方向に離隔して位置するように、前記水流入弁孔における前記出側開口及び前記湯流入弁孔における前記出側開口のそれぞれが、対応する該水流入弁孔及び湯流入弁孔における各入側開口に対して左方向に位置をずらせて配置してあることを特徴とする。」
「【0077】
具体的にはここでは、レバーハンドル14を使用者に正対した基準位置Xから左方向に最大α=67.5°の範囲で回動可能とし、そして図8(イ)に示しているように左方向に一杯まで回動させた位置で湯(湯だけ)を吐水するようになしている。
尚この実施形態においても、レバーハンドル14が使用者に正対した基準位置Xから左方向に角度θ2に亘る領域が水吐水領域とされ、そして水吐水領域を超えた左側領域がθ1の角度に亘って混合水吐水領域とされ、更にその混合水吐水領域を超えた左側領域が角度θ3に亘って湯吐水領域とされている。
【0078】
ここで角度θ2に亘る水吐水領域,角度θ3に亘る湯吐水領域は図6に示す吐水領域と同じで、それぞれθ2,θ3の角度は5°の範囲である。
また角度θ1に亘る混合水吐水領域はここでは57.5°の範囲であり、そして混合水吐水領域における中央位置が、レバーハンドル14を使用者に正対した基準位置Xから左向きに33.75°回動させた位置となる。
これに応じてこの実施形態では、図7に示すように固定ディスク58における中心線P1Aの傾き角度θAが、33.75°に設定されている。
【0079】
またこの実施形態ではレバーハンドル14の中心線Q、従って可動弁体60における中心線P2が使用者に対し正対した位置で、厳密にはレバーハンドル14が水吐水領域にある状態でレバーハンドル14を開操作したときに水だけが吐水され、またその位置からレバーハンドル14を左向きに67.5°回動させた位置で、厳密にはレバーハンドル14が湯吐水領域にある状態でこれを開操作したときに湯だけが吐水されるように、水流入弁孔76及び湯流入弁孔78が、より詳しくはそれらの出側開口76A,78Aが、図6に示すものに比べて若干形状を異ならせてある。
【0080】
この実施形態ではまた、図6に示す実施形態に比べて、レバーハンドル14における水吐水領域が若干拡く設定されている。
具体的には、レバーハンドル14が使用者に正対した基準位置Xから更に右向きに微小角度θ4に亘って、つまり全体としてθ2+θ4の角度に亘って水吐水領域が設定してある。
ここではθ4の角度は2.5°であり、従って水吐水領域はθ2の5°にθ4の2.5°を加えた7.5°の範囲に亘っている。
従ってこの実施形態において、レバーハンドル14の左右方向の全回動範囲はβ=70°である。
尚、他の点については上記第1の実施形態と基本的に同様である。
この図7及び図8に示す実施形態の場合、湯を吐止水操作する際のレバーハンドル14の位置が、図6に示す第1の実施形態に比べて使用者に近く、従って湯を吐止水する際の操作性がより良好である。」
「【図8】(イ)
[図:0001415291000015.jpg]
」
(2) 甲7開示事項
上記(1)によれば、甲7には、以下の事項(以下「甲7開示事項」という。)が開示されていると認められる。
(甲7開示事項)
「シングルレバー混合水栓において(【0026】)、
レバーハンドル14が使用者に正対した基準位置Xから左方向に角度θ2に亘る領域が水吐水領域とされ、そして水吐水領域を超えた左側領域がθ1の角度に亘って混合水吐水領域とされ、更にその混合水吐水領域を超えた左側領域が角度θ3に亘って湯吐水領域とされ(【0077】)、
レバーハンドル14の中心線Q、従って可動弁体60における中心線P2が使用者に対し正対した位置で、水だけが吐水され(【0079】)、
θ2,θ3の角度は5°の範囲であり、角度θ1に亘る混合水吐水領域は57.5°の範囲であり(【0078】)、θ2+θ4の角度に亘って水吐水領域が設定してあり、θ4の角度は2.5°であり、水吐水領域はθ2の5°にθ4の2.5°を加えた7.5°の範囲に亘っていること(【0080】)。」
8 甲8
(1) 記載事項
甲8には、以下の事項が記載されている。
「【0012】
以下に、この発明を具体化したシングルレバー水栓の実施形態を図面に従って説明する。
図1~図4に示すように、この実施形態のシングルレバー水栓のベース部材11の上部外周にはネジ部12が形成されるとともに、上端には一対の位置決め凹部13が形成されている。」
「【0026】
図13に示すように、前記操作レバー41の水平方向,すなわち左右方向の回動範囲は、図示しないストッパにより、使用者側である正面側の中央位置Cから右側へ50度、左側へ60度の範囲に設定されている。また、操作レバー41が中央位置C及び左側の50度の位置を通過して同中央位置Cを越えることにより、前記突条51と係合子53とによって前記のクリック感が発生される。なお、図13から明らかなように、操作レバー41が正面側の中央に配置されたときに、前記中央位置Cは僅かに左側に変位しており、この変位については後述する。」
「【0030】
すなわち、図12,図15及び図16に示すように、操作レバー41が左右方向の中央に位置したとき(図13の実線位置)には、通水孔34に連通孔37が重なる一方、前記張出し部37aによって通湯孔35が閉鎖される。従って、この状態で水が吐出可能になる。このとき、操作レバー41が配置上の中央となるが、通水孔34がその中央から僅かに偏倚した中央位置Cに配置される。以後、この位置を操作レバー41においても中央位置Cとする。操作レバー41が前記中央位置Cから右側に回動された場合には、連通孔37が通水孔34に重なる状態が維持され、水の吐出可能状態が維持される。従って、正面側の中央位置Cから右側は水吐出領域であり、その範囲は中央位置Cから右側へ操作レバー41の中心角50度となっている。
【0031】
操作レバー41が前記中央位置Cから左側に回動された場合には、図15及び図16に示すように、連通孔37が通湯孔35と重なる領域に移動される。このとき、操作レバー41が前記中央位置Cから50度の範囲内に位置する状態においては連通孔37は通湯孔35及び通水孔34の双方と重なるため、湯水混合水が吐出される。従って、操作レバー41の中央位置Cから左側へ中心角50度の範囲は混合水吐出領域となっている。
【0032】
さらに、操作レバー41が混合水吐出領域からさらに左側に回動されると、図15及び図16に示すように、連通孔37は通水孔34から外れて通湯孔35のみと重なる。このため、湯が吐出される状態となる。連通孔37が通湯孔35のみと重なる範囲は、中心角10度に設定されている。従って、混合水吐出領域から外側の10度の範囲は湯吐出領域である。
【0033】
そして、操作レバー41の水平方向への回動操作により、可動弁体28が水吐出領域と混合水吐出領域との間の境界、すなわち正面側の中央位置C、混合水吐出領域と湯吐出領域との間の境界を越えるときには、前記クリック感が発生される。
【0034】
このとき、操作レバー41の上下方向の回動角度に応じて可動弁体28の前後位置が調節されて、連通孔37と通水孔34及び通湯孔35と重なり度合いが調節され、その結果、吐出水量が調節される。そして、操作レバー41が最多水量の位置,つまり最も起立する位置に配置されたときに、前記ピン43が突条58に係合して、突条51と係合子53とによってクリック感が発生される。」
「【図13】
[図:0001415291000016.jpg]
」
(2) 甲8開示事項
上記(1)によれば、甲8には、以下の事項(以下「甲8開示事項」という。)が開示されていると認められる。
(甲8開示事項)
「シングルレバー水栓において(【0012】)、
操作レバー41が中央位置Cから右側に回動された場合には、水の吐出可能状態が維持され(【0030】)、操作レバー41が中央位置Cから左側に回動された場合には、湯水混合水が吐出され(【0031】)、操作レバー41が混合水吐出領域からさらに左側に回動されると、湯が吐出され(【0032】)、
操作レバー41が左右方向の中央に位置したとき、水が吐出可能になり(【0030】)、
正面側の中央位置Cから右側は水吐出領域であり、その範囲は中央位置Cから右側へ操作レバー41の中心角50度となっており(【0030】)、操作レバー41の中央位置Cから左側へ中心角50度の範囲は混合水吐出領域となっており(【0031】)、混合水吐出領域から外側の10度の範囲は湯吐出領域であること(【0032】)。」
9 甲9
(1) 記載事項
甲9には、以下の事項が記載されている。
「【0018】
図1~図7に示すように、本実施形態の湯水混合水栓10は、操作レバー11を上下回動操作することによって吐水止水および吐水量調節を行い、左右回動操作することによって吐水の温度調節を行う。湯水混合バルブユニット12は、供給される湯、水をそれぞれ流入させる湯バルブ流入口12h、水バルブ流入口12cと、操作レバー11の操作に連動する操作ロッド13と、混合された湯水を流出させる湯水バルブ流出口12mと、を備えている。」
「【0023】
次に、図8に基づいて、湯水混合水栓10の操作方法について説明する。図8(a)は湯水混合水栓10が待機状態(止水状態)にあることを示している。操作レバー11は正面側に位置している。この状態で操作レバー11の先端を上げると、図8(c)に示すように、水バルブ流入口12cのみが開放され、吐水口14c(図1参照)から水が吐出される。また、水バルブ流入口12cは円弧形状をなしているため、図8(b)に示すように、操作レバー11が右側(反時計方向)へずれている状態で、操作レバー11の先端が上げられたときも、水バルブ流入口12cのみが全開され、吐水口14cから水が吐出される。また、操作レバー11が多少左側(時計方向)にずれている状態でも、水バルブ流入口12cのみが全開され、吐水口14cから水が吐出される。即ち、操作レバー11の水吐出操作範囲が、当該操作レバー11の正面位置を中心にして所定角度(約20度)だけ左右に回動した範囲内に設定されている。
【0024】
次に、図8(d)に示すように、操作レバー11を左側(時計方向)へ回した状態で吐水操作すると、水バルブ流入口12cおよび湯バルブ流入口12hの両方が開放されるため、吐水口14cから湯水混合水が吐出される。この場合、操作レバー11を時計方向に回動させると混合水の温度が上昇し、反時計方向に回動させると混合水の温度が下がる。
また、図8(e)に示すように、操作レバー11を左側(時計方向)へ限度まで回した状態で吐水操作すると、湯バルブ流入口12hが全開されるため、吐水口14cから湯が吐出される。」
「【図8】
[図:0001415291000017.jpg]
」
(2) 認定事項
上記【0024】の「図8(e)に示すように、操作レバー11を左側(時計方向)へ限度まで回した状態で吐水操作すると」との記載、及び上記図8(e)には、操作レバー11を、左側(時計方向)に約90°回動させた状態が示されていることから、操作レバー11を左側(時計方向)へ限度まで回した状態は、操作レバー11を左側(時計方向)へ約90°回動させた状態であると認められる(以下「認定事項9」という。)。
(3) 甲9開示事項
上記(1)及び(2)によれば、甲9には、以下の事項(以下「甲9開示事項」という。)が開示されていると認められる。
(甲9開示事項)
「湯水混合水栓10において(【0018】)、
操作レバー11が右側(反時計方向)へずれている状態で、水が吐出され、操作レバー11が多少左側(時計方向)にずれている状態でも、水が吐出され、操作レバー11の水吐出操作範囲が、当該操作レバー11の正面位置を中心にして所定角度(約20度)だけ左右に回動した範囲内に設定され(【0023】)、操作レバー11を左側(時計方向)へ回した状態で吐水操作すると、湯水混合水が吐出され、操作レバー11を左側(時計方向)へ限度まで回した状態で吐水操作すると、湯が吐出され(【0024】)、
操作レバー11を左側(時計方向)へ限度まで回した状態は、操作レバー11を左側(時計方向)へ約90°回動させた状態であること(認定事項9)。」」
第6 当審の判断
1 取消理由通知に記載した取消理由についての判断
(1) 取消理由1(新規性-公知)について
ア 本件発明1について
(ア) 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。なお、見出しはa等とし、本件発明の分説に概ね対応させている。以下同様。
a 特定事項Aについて
甲1発明の「レバーハンドル」は、「本体」に「固定される」ものであって、「配管まわりにガタツキがある場合はインデックスを外し、ねじを締めなおすことができ」ることから、「ねじを締めなおす」ことによって「本体」に「固定され」る部分を有していることは明らかであり、この「レバーハンドル」の「ねじを締めなおす」ことによって「本体」に「固定され」る部分は、本件発明1の「ハンドル本体」が「内部に有」する「接続部」に相当する。
甲1発明の「インデックスを精密マイナスドライバーで取り外し」た後の「インデックスが取り付けられていた箇所」は、「六角棒レンチを差し込んで回転」することができることから、「レバーハンドル」の「ねじを締めなおす」ことによって「本体」に「固定され」る部分を臨む開口部であると認められ、本件発明1の「接続部を臨む開口部」に相当する。
したがって、甲1発明の「レバーハンドル」は、本件発明1の「接続部を内部に有し、この接続部を臨む開口部が形成された側面を有したハンドル本体」に相当する部分を備える。
甲1発明の「レバーハンドル」の「インデックスと反対側の側面から一方向に延びる部分」は、本件発明1の「前記開口部と反対側の前記ハンドル本体の側面を基端部として一方向へ延びた操作レバー」に相当する。
甲1発明の「インデックス」は、「レバーハンドルの背面に取り付けられ」、「精密マイナスドライバーで取り外し、インデックスが取り付けられていた箇所に六角棒レンチを差し込んで回転し、インデックス裏側及びハンドル背面に設けられた凹凸をあわせて」、「レバーハンドルに取り付け」られるものであるから、本件発明1の「前記開口部に取り付けられたキャップ部材」に相当する。
以上のことから、甲1発明は、本件発明1の特定事項Aを備える。
b 特定事項Bについて
甲1発明の「レバーハンドルが固定される本体」は、「ねじを締めなおすこと」によって「レバーハンドル」と「固定」されることが明らかであるから、本件発明1の「前記ハンドル本体の前記接続部と接続された水栓」に相当する。
したがって、甲1発明は、本件発明1の特定事項Bを備える。
c 特定事項Cについて
甲1発明は、「レバーハンドルを回すことによって、温度調節を行い」、「レバーハンドルを上げると水(湯)を出すことができ」るものであり、このことは、本件発明1の「前記水栓は、前記操作レバーの左右方向への回動操作により吐水温度を調節し、上下方向への回動操作により吐水流量を調節するものであ」ることに相当する。
したがって、甲1発明は、本件発明1の特定事項Cを備える。
defg 特定事項D、E、F、Gについて
甲1発明の「レバーハンドルを回すことによって、温度調節を行い、レバーハンドルを中央よりも右側に回すと水、左側へ回すとしだいに温度が上がり、左側いっぱいに回すと、最高温度になり、レバー中央(水栓の正面)で水を出すことができ、レバーハンドルの可動範囲は、レバー中央(水栓の正面)から右が40°、左が60°であ」ることは、本件発明1の特定事項Dの「前記操作レバーの左右方向への可動範囲は、水のみを吐出する水吐水範囲、及び湯水混合水を吐出する混合水吐水範囲を有して」いること、特定事項Eの「前記操作レバーが前記水栓の手前に位置するときは前記水吐水範囲となって」いること、特定事項Fの「前記水吐水範囲と前記混合水吐水範囲との境界における前記操作レバーの位置を基準とし、前記操作レバーの右方向の可動範囲が前記水吐水範囲であり、前記操作レバーの左方向の可動範囲が前記混合水吐水範囲であ」ること、及び特定事項Gの「前記操作レバーの前記水栓の手前から右方向の可動範囲よりも、左方向の可動範囲が広」いことに相当する。
したがって、甲1発明は、本件発明1の特定事項D、E、F、Gを備える。
h 特定事項Hについて
甲1発明において、「インデックスの形状は、精密マイナスドライバーを、横方向からインデックスの下側に差し込むことで取り外し可能であるTLCF31型のインデックスの形状と相違がない」ことから、甲1発明の「TLCC31型洗面所用シングルレバー混合栓」は、「TLCF31型」と同様に、精密マイナスドライバーを、横方向からインデックスの下側に差し込むことで取り外し可能であると認められ、このことは、本件発明1の「前記キャップ部材は、前記操作レバーが延びる方向に対して交差した水平方向から取り外し作業が可能であ」ることに相当すると認められる。
したがって、本件発明1の特定事項Hと、甲1発明は、「前記キャップ部材は、前記操作レバーが延びる方向に対して交差した水平方向から取り外し作業が可能であ」る点で共通する。
i 特定事項Iについて
甲1発明の「TLCC31型洗面所用シングルレバー混合栓」は、本件発明1の「水栓装置」に相当する。
したがって、甲1発明は、本件発明1の特定事項Iを備える。
以上によれば、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
[一致点]
「A 接続部を内部に有し、この接続部を臨む開口部が形成された側面を有したハンドル本体、前記開口部と反対側の前記ハンドル本体の側面を基端部として一方向へ延びた操作レバー、及び、前記開口部に取り付けられたキャップ部材、を有する水栓用ハンドルと、
B 前記ハンドル本体の前記接続部と接続された水栓と、
を備え、
C 前記水栓は、
前記操作レバーの左右方向への回動操作により吐水温度を調節し、上下方向への回動操作により吐水流量を調節するものであり、
D 前記操作レバーの左右方向への可動範囲は、水のみを吐出する水吐水範囲、及び湯水混合水を吐出する混合水吐水範囲を有しており、
E 前記操作レバーが前記水栓の手前に位置するときは前記水吐水範囲となっており、
F 前記水吐水範囲と前記混合水吐水範囲との境界における前記操作レバーの位置を基準とし、前記操作レバーの右方向の可動範囲が前記水吐水範囲であり、前記操作レバーの左方向の可動範囲が前記混合水吐水範囲であって、
G 前記操作レバーの前記水栓の手前から右方向の可動範囲よりも、左方向の可動範囲が広く、
H’前記キャップ部材は、前記操作レバーが延びる方向に対して交差した水平方向から取り外し作業が可能である
I 水栓装置。」
[相違点1-1](特定事項H)
「キャップ部材」に関して、
本件発明1では、「前記基端部と反対側からの側面視で、左右両側の少なくとも一方に切り欠き部を有している」のに対し、
甲1発明では、「インデックス」「側の側面」から見た形状が不明である点。
(イ) 判断
a 新規性の判断について
上記相違点1-1について検討する。
甲1発明には、「インデックス」「側の側面」から見たときの、「インデックス」の形状について記載されておらず、また、「インデックス」「側の側面」から見たときに「インデックス」の左右両側の少なくとも一方に切り欠き部を有するようにすることが本件特許の出願時において周知であるともいえない。
さらに、甲1発明の「インデックス」は、「精密マイナスドライバーを」、「インデックスの下側に差し込むことで取り外し可能である」「形状」であるから、「インデックス」の左右両側の少なくとも一方に切り欠き部を有するようにすることが単なる設計変更であるともいえない。
よって、上記相違点1-1は実質的な相違点であり、本件発明1は、甲1発明ではない。
b 申立人の主張について
申立人は、令和6年6月27日提出の意見書(以下「申立人意見書」という。)において、以下の主張をしている。
「訂正請求人は、意見書において、訂正後の本件特許の請求項1に係る発明は、特許異議の申立てがされていなかった訂正前の請求項3の全ての発明特定事項を含むものであり、甲第1号証に記載された発明及び公然実施された発明とは同一ではなく、甲各号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとは認められないと主張している。
しかしながら、訂正前の請求項3に記載された「前記キャップ部材は、前記基端部と反対側からの側面視で、左右両側の少なくとも一方に切り欠き部を有している」という限定は、「切り欠き部」の向きの単なる選択であって、施工場所に応じた設計的事項に過ぎない。」(申立人意見書第2頁第3~11行)
上記主張について検討する。
上記第2において検討したとおり、本件訂正請求による訂正は認められたので、訂正後の請求項1に係る発明(本件発明1)は、実質的に訂正前の請求項3に係る発明の全ての発明特定事項を含むものとなった。
そして、上記主張は、特許異議申立てがされていない、訂正前の請求項3に記載された事項に基づく主張であるところ、申立書に記載されていない新たな主張なので、この主張は採用できない。
(ウ) まとめ
以上のことから、本件発明1は、甲1発明ではない。
イ 本件発明2について
(ア) 対比
本件発明2と甲1発明とを対比する。
j 特定事項Jについて
甲1発明の「レバーハンドルが固定される本体」は、本件発明2の「水栓」に相当する。
したがって、甲1発明は、本件発明2の特定事項Jを備える。
k 特定事項Kについて
甲1発明の「レバーハンドル」の「ねじを締めなおす」ことによって「本体」に「固定され」る部分は、本件発明2の「ハンドル本体」が「内部に有」する「前記水栓に接続される接続部」に相当する。
甲1発明の「インデックスを精密マイナスドライバーで取り外し」た後の「インデックスが取り付けられていた箇所」は、「六角棒レンチを差し込んで回転」することができることから、「レバーハンドル」の「ねじを締めなおす」ことによって「本体」に「固定され」る部分を臨む開口部であると認められ、本件発明2の「接続部を臨む開口部」に相当する。
したがって、甲1発明の「レバーハンドル」は、本件発明2の「前記水栓に接続される接続部を内部に有し、この接続部を臨む開口部が形成され」た「側面を有したハンドル本体」に相当する部分を備える。
よって、本件発明2の特定事項Kと、甲1発明は、「前記水栓に接続される接続部を内部に有し、この接続部を臨む開口部が形成され」た「側面を有したハンドル本体」を有する点で共通する。
l 特定事項Lについて
甲1発明の「レバーハンドル」の「インデックスと反対側の側面から一方向に延びる部分」は、本件発明2の「前記開口部と反対側の前記ハンドル本体の側面を基端部として一方向へ延びた操作レバー」に相当する。
したがって、甲1発明は、本件発明2の特定事項Lを備える。
m 特定事項Mについて
甲1発明の「インデックス」は、「レバーハンドルの背面に取り付けられ」、「精密マイナスドライバーで取り外し、インデックスが取り付けられていた箇所に六角棒レンチを差し込んで回転し、インデックス裏側及びハンドル背面に設けられた凹凸をあわせて」、「レバーハンドルに取り付け」られるものであるから、本件発明2の「前記開口部に取り付けられたキャップ部材」に相当する。
したがって、甲1発明は、本件発明2の特定事項Mを備える。
nopq 特定事項N、O、P、Qについて
甲1発明の「レバーハンドルを回すことによって、温度調節を行い、レバーハンドルを中央よりも右側に回すと水、左側へ回すとしだいに温度が上がり、左側いっぱいに回すと、最高温度になり、レバー中央(水栓の正面)で水を出すことができ、レバーハンドルの可動範囲は、レバー中央(水栓の正面)から右が40°、左が60°であ」ることは、本件発明2の特定事項Nの「前記操作レバーの左右方向への可動範囲は、水のみを吐出する水吐水範囲、湯のみを吐出する湯吐水範囲、及び湯水混合水を吐出する混合水吐水範囲であ」ること、特定事項Oの「前記混合水吐水範囲は、前記水吐水範囲と前記湯吐水範囲との間にあ」ること、特定事項Pの「前記操作レバーが前記水栓の手前に位置するときは前記水吐水範囲となって」いること、及び特定事項Qの「前記水吐水範囲は、前記操作レバーの可動範囲のうちの前記水吐水範囲を除いた可動範囲よりも狭」いことに相当する。
したがって、甲1発明は、本件発明2の特定事項N、O、P、Qを備える。
r 特定事項Rについて
甲1発明において、「レバーハンドルの背面に取り付けられ」ている「インデックス」は、「レバーハンドルを中央よりも」「左側へ回すとしだいに温度が上がり」、「レバーハンドルの可動範囲は、レバー中央(水栓の正面)から」「左が60°であ」ることから、レバーハンドルを中央よりも左側の温度が上がる可動範囲(前記水吐水範囲を除いた可動範囲)へ回した際に、レバーハンドルの背面側から手前側に移動するものと認められ、このことは、本件発明2の「前記キャップ部材は、前記操作レバーが前記水吐水範囲を除いた可動範囲へ回動操作された際に前記ハンドル本体の背面側から手前側にくる位置に設けられている」ことに相当する。
したがって、甲1発明は、本件発明2の特定事項Rを備える。
s 特定事項Sについて
甲1発明の「TLCC31型洗面所用シングルレバー混合栓」は、本件発明2の「水栓装置」に相当する。
したがって、甲1発明は、本件発明2の特定事項Sを備える。
以上によれば、本件発明2と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
[一致点]
「J 水栓と、
K’前記水栓に接続される接続部を内部に有し、この接続部を臨む開口部が形成された側面を有したハンドル本体と、
L 前記開口部と反対側の前記ハンドル本体の側面を基端部として一方向へ延びた操作レバーと、
M 前記開口部に取り付けられたキャップ部材と、
を有し、
N 前記操作レバーの左右方向への可動範囲は、水のみを吐出する水吐水範囲、湯のみを吐出する湯吐水範囲、及び湯水混合水を吐出する混合水吐水範囲であり、
O 前記混合水吐水範囲は、前記水吐水範囲と前記湯吐水範囲との間にあり、
P 前記操作レバーが前記水栓の手前に位置するときは前記水吐水範囲となっており、
Q 前記水吐水範囲は、前記操作レバーの可動範囲のうちの前記水吐水範囲を除いた可動範囲よりも狭く、
R 前記キャップ部材は、前記操作レバーが前記水吐水範囲を除いた可動範囲へ回動操作された際に前記ハンドル本体の背面側から手前側にくる位置に設けられている
S 水栓装置。」
[相違点2-1](特定事項K)
「ハンドル本体」の「側面」が
本件発明2では、「上端から下端に向けて外方向に傾斜した傾斜面」であるのに対し、
甲1発明では、このような特定がなされていない点。
(イ) 判断
a 新規性の判断について
上記相違点2-1について検討する。
甲1発明の「レバーハンドル」は、本件発明2の「側面」に相当する部分を有するものの、その「側面」に相当する部分の形状は不明である。
また、本件発明2のように「前記操作レバーが前記水吐水範囲を除いた可動範囲へ回動操作された際に前記ハンドル本体の背面側から手前側にくる位置に設けられている」「キャップ部材」が「取り付けられた」「開口部」が「形成され」た「側面」を、「上端から下端に向けて外方向に傾斜した傾斜面」とすることが本件特許の出願時において周知であるともいえない。
よって、上記相違点2-1は実質的な相違点であり、本件発明2は、甲1発明ではない。
b 申立人の主張について
申立人は、申立人意見書において、以下の主張をしている。
「訂正請求人は、意見書において、訂正後の本件特許の請求項2に係る発明は、「ハンドル本体は、接続部を臨む開口部が形成され、上端から下端に向けて外方向に傾斜した傾斜面である側面を有している」ものであるから、甲第1号証に記載された発明ではなく、また、甲第1号証又は甲第2号証に周知技術を適用しても、当業者が容易に発明することができたものとは認められないと主張している。
しかしながら、ハンドル本体の側面を上端から下端に向けて外方向に傾斜した傾斜面とすることは、意匠性の観点から適宜に採用される周知技術に過ぎない。当該周知技術の採用は、甲第3号証(特に図2参照)、甲第4号証(特に図1参照)、甲第7号証(特に図1参照)及び甲第8号証(特に図1参照)においても認められる。従って、甲第1号証及び甲第2号証における「ハンドル部の接続部を臨む開口部が傾斜された側面」について、それを「上端から下端に向けて外方向に傾斜した傾斜面」とすることは、単なる設計的事項に過ぎない。」(申立人意見書第2頁第16行~第3頁第2行)
しかしながら、甲3,甲4、甲7及び甲8を見ても、「前記操作レバーが前記水吐水範囲を除いた可動範囲へ回動操作された際に前記ハンドル本体の背面側から手前側にくる位置に設けられている」「キャップ部材」が「取り付けられた」「開口部」が「形成され」た「側面」を、「上端から下端に向けて外方向に傾斜した傾斜面」とすることが周知技術であったとは認められず、「ハンドル本体の側面を上端から下端に向けて外方向に傾斜した傾斜面」とすることは、単なる設計的事項とはいえない。
よって、上記主張は採用できない。
(ウ) まとめ
以上のことから、本件発明2は、甲1発明ではない。
(2) 取消理由2(新規性-公然実施)について
甲1には、上記第5の1(3)に記載の甲1発明が記載されているところ、表紙の「取扱説明書」、「洗面所用シングルレバー混合栓」、「品番TLCC31型TLCF31型」との記載、及び裏表紙の右下の「2015.10」との記載から、甲1発明は、品番がTLCC31型である洗面所用シングルレバー混合栓として、2015年10月に公然実施(販売等)されていたものと認められる。
しかしながら、上記(1)ア及びイで検討したように、本件発明1及び本件発明2は、甲1発明ではない。
よって、本件発明1及び本件発明2は、本件特許出願前に公然実施されていた甲1発明ではない。
(3) 取消理由3(進歩性)について
ア 甲1を主たる引用例とする理由
(ア) 本件発明1について
a 対比
上記(1)ア(ア)aで検討したように、甲1発明の「インデックスを精密マイナスドライバーで取り外し」た後の「インデックスが取り付けられていた箇所」は、「レバーハンドル」の「ねじを締めなおす」ことによって「本体」に「固定され」る部分を臨む開口部であると認められ、本件発明1の「接続部を臨む開口部」に相当すると認められるところ、仮に、「レバーハンドル」の「ねじを締めなおす」ことによって「本体」に「固定され」る部分を臨んでおらず、本件発明1の「接続部を臨む開口部」に相当するとはいえない場合について検討する。
この場合、本件発明1と甲1発明は、上記(1)ア(ア)の相違点1-1に加え、下記の相違点1-2で相違し、その他の点で一致する。
[相違点1-2](特定事項A)
本件発明1において、「ハンドル本体」の有する「側面」に「形成された」「開口部」が、「接続部を臨む」のに対して、
甲1発明の「レバーハンドルの背面に取り付けられた」「インデックスを精密マイナスドライバーで取り外し」た後の「インデックスが取り付けられていた箇所」(「ハンドル本体」の有する「側面」に「形成された」「開口部」)が、「レバーハンドル」の「ねじを締めなおす」ことによって「本体」に「固定され」る部分(「接続部」)を臨まない点。
b 判断
事案に鑑み相違点1-1から検討する。
相違点1-1は、上記(1)ア(イ)aで検討したとおり実質的な相違点であり、甲1発明に基づいて、上記相違点1-1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
また、申立人の主張については、上記(1)ア(イ)bで検討したとおりである。
そして、本件発明1は、当該相違点1-1に係る構成を備えることにより、ハンドル本体の開口部とキャップ部材との間に形成される隙間が、切り欠き部によって広くなることにより、左右方向からその隙間に工具を挿入してキャップ部材の取り外し作業が可能となり、また、この取り外し作業の作業口となる隙間は、キャップ部材を切り欠くことにより形成されるので、ハンドル本体の開口部の一部を広げて形成する必要がなく、意匠性のさらに良い水栓用ハンドルとなる(【0010】)という効果を奏するものである。
よって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
c まとめ
以上のことから、本件発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
(イ) 本件発明2について
a 対比
上記(1)イ(ア)kで検討したように、甲1発明の「インデックスを精密マイナスドライバーで取り外し」た後の「インデックスが取り付けられていた箇所」は、「レバーハンドル」の「ねじを締めなおす」ことによって「本体」に「固定され」る部分を臨む開口部であると認められ、本件発明2の「接続部を臨む開口部」に相当すると認められるところ、仮に、「レバーハンドル」の「ねじを締めなおす」ことによって「本体」に「固定され」る部分を臨んでおらず、本件発明2の「接続部を臨む開口部」に相当するとはいえない場合について検討する。
この場合、本件発明2と甲1発明は、上記(1)イ(ア)の相違点2-1に加え、下記の相違点2-2で相違し、その他の点で一致する。
[相違点2-2](特定事項K)
本件発明2において、「ハンドル本体」の有する「側面」に「形成された」「開口部」が、「接続部を臨む」のに対して、
甲1発明の「レバーハンドルの背面に取り付けられた」「インデックスを精密マイナスドライバーで取り外し」た後の「インデックスが取り付けられていた箇所」(「ハンドル本体」の有する「側面」に「形成された」「開口部」)が、「レバーハンドル」の「ねじを締めなおす」ことによって「本体」に「固定され」る部分(「接続部」)を臨まない点。
b 判断
事案に鑑み相違点2-1から検討する。
相違点2-1は、上記(1)イ(イ)aで検討したとおり実質的な相違点であり、甲1発明に基づいて、上記相違点2-1に係る本件発明2の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
また、申立人の主張については、上記(1)イ(イ)bで検討したとおりである。
そして、本件発明2は、「前記操作レバーが前記水吐水範囲を除いた可動範囲へ回動操作された際に前記ハンドル本体の背面側から手前側にくる位置に設けられている」「キャップ部材」が「取り付けられた」「開口部」が「形成され」た「側面」を、当該相違点2-1に係る構成である「上端から下端に向けて外方向に傾斜した傾斜面」とすることにより、水栓からハンドルを取り外してメンテナンスする際、作業者は、ハンドル本体の開口部に取り付けられたキャップ部材を上方から視認しながら、キャップ部材を取り外すことができ、一方、通常の使用の際、正面から操作レバーを操作する使用者からはキャップ部材が水栓本体の背面側に位置するため、視認し難いという効果を奏するものである。
よって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
c まとめ
以上のことから、本件発明2は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
イ 甲2を主たる引用例とする理由
(ア) 本件発明1について
a 対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
(a) 特定事項Aについて
甲2発明の「内部には、レバー式ハンドル50と水栓本体10の内部の混合弁14に延びる部材とを接続するネジが設けられ」、「側面には、上記ネジの頭に対向する開口部が設けられ」た「レバー式ハンドル50」は、本件発明1の「接続部を内部に有し、この接続部を臨む開口部が形成された側面を有したハンドル本体」に相当する構成を含む。
甲2発明の「レバー式ハンドル50」が有する「上記開口部とは反対側の側面から一方向に延びる部分」は、本件発明1の「前記開口部と反対側の前記ハンドル本体の側面を基端部として一方向へ延びた操作レバー」に相当する。
甲2発明の「開口部を塞ぐ部材」は、本件発明1の「前記開口部に取り付けられたキャップ部材」に相当する。
以上によれば、甲2発明の「レバー式ハンドル50」は、本件発明1の「接続部を内部に有し、この接続部を臨む開口部が形成された側面を有したハンドル本体、前記開口部と反対側の前記ハンドル本体の側面を基端部として一方向へ延びた操作レバー、及び、前記開口部に取り付けられたキャップ部材、を有する水栓用ハンドル」に相当する。
したがって、甲2発明は、本件発明1の特定事項Aを備える。
(b) 特定事項Bについて
甲2発明において、「水栓本体10の上面の左右方向略中央に」「レバー式ハンドル50」が設けられ、「レバー式ハンドル50の内部には、レバー式ハンドル50と水栓本体10の内部の混合弁14に延びる部材とを接続するネジが設けられ」ていることから、甲2発明の「水栓本体10」は、本件発明1の「前記ハンドル本体の前記接続部と接続された水栓」に相当する。
したがって、甲2発明は、本件発明1の特定事項Bを備える。
(c) 特定事項Cについて
甲2発明において、「レバー式ハンドル50を水平軸周りに上下移動させると、湯水の吐出量を調節することができ、レバー式ハンドル50を鉛直軸周りに回動させると、湯水の混合割合を調節することができ」ることは、本件発明1の「前記水栓は、前記操作レバーの左右方向への回動操作により吐水温度を調節し、上下方向への回動操作により吐水流量を調節するものであ」ることに相当する。
したがって、甲2発明は、本件発明1の特定事項Cを備える。
(i) 特定事項Iについて
甲2発明の「混合水栓1」は、本件発明1の「水栓装置」に相当する。
したがって、甲2発明は、本件発明1の構成Iに相当する構成を備える。
以上によれば、本件発明1と甲2発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
[一致点]
「A 接続部を内部に有し、この接続部を臨む開口部が形成された側面を有したハンドル本体、前記開口部と反対側の前記ハンドル本体の側面を基端部として一方向へ延びた操作レバー、及び、前記開口部に取り付けられたキャップ部材、を有する水栓用ハンドルと、
B 前記ハンドル本体の前記接続部と接続された水栓と、
を備え、
C 前記水栓は、
前記操作レバーの左右方向への回動操作により吐水温度を調節し、上下方向への回動操作により吐水流量を調節するものである
I 水栓装置。」
[相違点1-3](特定事項D、E、F、G)
本件発明1が、
「前記操作レバーの左右方向への可動範囲は、水のみを吐出する水吐水範囲、及び湯水混合水を吐出する混合水吐水範囲を有しており、
前記操作レバーが前記水栓の手前に位置するときは前記水吐水範囲となっており、
前記水吐水範囲と前記混合水吐水範囲との境界における前記操作レバーの位置を基準とし、前記操作レバーの右方向の可動範囲が前記水吐水範囲であり、前記操作レバーの左方向の可動範囲が前記混合水吐水範囲であって、
前記操作レバーの前記水栓の手前から右方向の可動範囲よりも、左方向の可動範囲が広」いのに対して、
甲2発明が当該構成を有しない点。
[相違点1-4](特定事項H)
本件発明1が、
「前記キャップ部材は、前記操作レバーが延びる方向に対して交差した水平方向から取り外し作業が可能であり、前記基端部と反対側からの側面視で、左右両側の少なくとも一方に切り欠き部を有している」のに対して、
甲2発明が当該構成を有しない点。
b 判断
事案に鑑み相違点1-4から検討する。
甲1(上記第5の1)、甲3(上記第5の3)、甲4(上記第5の4)に例示されるように、混合水栓において、「レバー(ハンドル)に設けられた開口部を塞ぐキャップ部材を、レバー(ハンドル)が延びる方向に対して交差した水平方向から取り外し作業が可能となるように構成すること」は、周知の技術である。
しかしながら、「レバー(ハンドル)」の基端部と反対側からの側面から見たときに「キャップ部材」の「左右両側の少なくとも一方に切り欠き部を有している」ことまで周知の技術であるとはいえない。
また、申立人の主張については、上記(1)ア(イ)bで検討したとおりである。
そして、本件発明1は、当該相違点1-4に係る構成を備えることにより、ハンドル本体の開口部とキャップ部材との間に形成される隙間が、切り欠き部によって広くなることにより、左右方向からその隙間に工具を挿入してキャップ部材の取り外し作業が可能となり、また、この取り外し作業の作業口となる隙間は、キャップ部材を切り欠くことにより形成されるので、ハンドル本体の開口部の一部を広げて形成する必要がなく、意匠性のさらに良い水栓用ハンドルとなる(【0010】)という効果を奏するものである。
よって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
c まとめ
以上のことから、本件発明1は、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
(イ) 本件発明2について
a 対比
本件発明2と甲2発明とを対比する。
(j) 特定事項Jについて
甲2発明の「水栓本体10」は、本件発明2の「水栓」に相当する。
したがって、甲2発明は、本件発明2の特定事項Jを備える。
(k) 特定事項Kについて
甲2発明の「内部には、レバー式ハンドル50と水栓本体10の内部の混合弁14に延びる部材とを接続するネジが設けられ」、「側面には、上記ネジの頭に対向する開口部が設けられ」た「レバー式ハンドル50」は、本件発明2の「前記水栓に接続される接続部を内部に有し、この接続部を臨む開口部が形成され」た「側面を有したハンドル本体」に相当する構成を含む。
したがって、本件発明2の特定事項Kと、甲2発明は、「前記水栓に接続される接続部を内部に有し、この接続部を臨む開口部が形成され」た「側面を有したハンドル本体」を有する点で共通する。
(1) 特定事項Lについて
甲2発明の「レバー式ハンドル50」が有する「上記開口部とは反対側の側面から一方向に延びる部分」は、本件発明2の「前記開口部と反対側の前記ハンドル本体の側面を基端部として一方向へ延びた操作レバー」に相当する。
したがって、甲2発明は、本件発明2の特定事項Lを備える。
(m) 特定事項Mについて
甲2発明の「開口部を塞ぐ部材」は、本件発明2の「前記開口部に取り付けられたキャップ部材」に相当する。
したがって、甲2発明は、本件発明2の特定事項Mを備える。
(s) 特定事項Sについて
甲2発明の「混合水栓1」は、本件発明2の「水栓装置」に相当する。
したがって、甲2発明は、本件発明2の特定事項Sを備える。
以上によれば、本件発明2と甲2発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
[一致点]
「J 水栓と、
K’前記水栓に接続される接続部を内部に有し、この接続部を臨む開口部が形成された側面を有したハンドル本体と、
L 前記開口部と反対側の前記ハンドル本体の側面を基端部として一方向へ延びた操作レバーと、
M 前記開口部に取り付けられたキャップ部材と、
を有する
S 水栓装置。」
[相違点2-3](特定事項K)
「ハンドル本体」の「側面」が
本件発明2では、「上端から下端に向けて外方向に傾斜した傾斜面」であるのに対し、
甲2発明では、このような特定がなされていない点。
[相違点2-4](特定事項N、O、P、Q)
本件発明2が、
「前記操作レバーの左右方向への可動範囲は、水のみを吐出する水吐水範囲、湯のみを吐出する湯吐水範囲、及び湯水混合水を吐出する混合水吐水範囲であり、
前記混合水吐水範囲は、前記水吐水範囲と前記湯吐水範囲との間にあり、
前記操作レバーが前記水栓の手前に位置するときは前記水吐水範囲となっており、
前記水吐水範囲は、前記操作レバーの可動範囲のうちの前記水吐水範囲を除いた可動範囲よりも狭」いのに対して、
甲2発明が当該構成を有しない点。
[相違点2-5](特定事項R)
本件発明2が、
「前記キャップ部材は、前記操作レバーが前記水吐水範囲を除いた可動範囲へ回動操作された際に前記ハンドル本体の背面側から手前側にくる位置に設けられている」のに対して、
甲2発明が当該構成を有しない点。
b 判断
事案に鑑み相違点2-3から検討する。
甲2発明の「レバー式ハンドル50」は、本件発明2の「側面」に相当する部分を有するものの、その「側面」に相当する部分の形状は不明である。
また、本件発明2のように「前記操作レバーが前記水吐水範囲を除いた可動範囲へ回動操作された際に前記ハンドル本体の背面側から手前側にくる位置に設けられている」「キャップ部材」が「取り付けられた」「開口部」が「形成され」た「側面」を、「上端から下端に向けて外方向に傾斜した傾斜面」とすることが本件特許の出願時において周知であるともいえない。
したがって、相違点2-3は、実質的な相違点であり、甲2発明に基づいて、上記相違点2-3に係る本件発明2の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
また、申立人の主張については、上記(1)イ(イ)bで検討したとおりである。
そして、本件発明2は、「前記操作レバーが前記水吐水範囲を除いた可動範囲へ回動操作された際に前記ハンドル本体の背面側から手前側にくる位置に設けられている」「キャップ部材」が「取り付けられた」「開口部」が「形成され」た「側面」を、当該相違点2-3に係る構成である「上端から下端に向けて外方向に傾斜した傾斜面」とすることにより、水栓からハンドルを取り外してメンテナンスする際、作業者は、ハンドル本体の開口部に取り付けられたキャップ部材を上方から視認しながら、キャップ部材を取り外すことができ、一方、通常の使用の際、正面から操作レバーを操作する使用者からはキャップ部材が水栓本体の背面側に位置するため、視認し難いという効果を奏するものである。
よって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
c まとめ
以上のことから、本件発明2は、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
第7 むすび
以上のとおり、本件発明1及び2に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件発明1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701134