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特許異議申立

2024-701034

導電材料、接続構造体及び接続構造体の製造方法

審判番号
2024-701034
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-038350
登録番号
7474029
請求日
2024年10月21日
審決日
2026年02月13日
公報発行日
2026年07月31日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】積水化学工業株式会社
  • 【権利者代理人】田口 昌浩
  • 【異議申立人】永田 裕之
  • 【異議申立人】白井 雅恵
審判長/審判官
  • 審判長 小宮 慎司
  • 審判官 中野 浩昌
  • 審判官 綿引 隆
分類
P1651.121-ZAA(H01B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法113条2号特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7474029号発明「導電材料、接続構造体及び接続構造体の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7474029号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~14〕について訂正することを認める。 特許第7474029号の請求項1、3~14に係る特許を取り消す。 特許第7474029号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7474029号の請求項1~14に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、平成31年3月4日(優先権主張平成30年3月7日)の出願であって、令和6年4月16日にその特許権の設定登録がされ、令和6年4月24日に特許掲載公報が発行された。 その特許についての特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和6年10月21日 :特許異議申立人永田裕之(以下「申立人1」という。)による特許異議の申立て(以下「申立1」という。) 同年10月23日 :特許異議申立人白井雅恵(以下「申立人2」という。)による特許異議の申立て(以下「申立2」という。) 令和7年 1月16日 :申立人1による手続補正書(方式)の提出 同年 2月26日 :申立人2による手続補正書の提出 同年 3月31日付け:取消理由通知書 同年 6月 4日 :特許権者による意見書、訂正請求書の提出 同年 6月12日 :特許権者による手続補正書(方式)の提出 同年 7月23日 :申立人2による意見書の提出 同年 7月25日 :申立人1による意見書の提出 同年 8月14日 :申立人1による手続補正書(方式)の提出 同年 9月 8日付け:取消理由通知書(決定の予告) 同年11月 5日 :特許権者による意見書、訂正請求書の提出 同年12月10日 :申立人2による意見書の提出 同年12月17日 :申立人1による意見書の提出 なお、令和7年6月4日にされ、同年6月12日提出の手続補正書(方式)により補正された訂正請求については、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 第2 訂正の適否について 1 訂正の内容 令和7年11月5日に提出された訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の請求の内容は、次のとおりである。(下線は訂正箇所を示すため合議体において付与した。) (1) 訂正事項1 訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、「導電材料100重量%中、前記はんだ粒子の含有量が、15重量%以上である、導電材料(但し、遷移的液相焼結組成物を除く)」と記載されているのを、「導電材料100重量%中、前記はんだ粒子の含有量が、15重量%以上であり、前記はんだ粒子の固相線温度における導電材料の粘度が、0.1Pa・s以上50Pa・s以下であり、前記はんだ粒子の液相線温度における導電材料の粘度が、0.1Pa・s以上10Pa・s以下である、導電材料(但し、遷移的液相焼結組成物を除く)」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項3~14も同様に訂正する。) (2) 訂正事項2 訂正前の特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (3) 訂正事項3 訂正前の特許請求の範囲の請求項3に、「請求項1又は2に記載の導電材料」と記載されているのを、「請求項1に記載の導電材料」に訂正する。(請求項3の記載を引用する請求項4~14も同様に訂正する。) (4) 訂正事項4 訂正前の特許請求の範囲の請求項4に、「請求項1~3のいずれか1項に記載の導電材料」と記載されているのを、「請求項1及び3のいずれか1項に記載の導電材料」に訂正する。(請求項4の記載を引用する請求項8~14も同様に訂正する。) (5) 訂正事項5 訂正前の特許請求の範囲の請求項5に、「請求項1~3のいずれか1項に記載の導電材料」と記載されているのを、「請求項1及び3のいずれか1項に記載の導電材料」に訂正する。(請求項5の記載を引用する請求項6~14も同様に訂正する。) (6) 訂正事項6 訂正前の特許請求の範囲の請求項8に、「請求項1~7のいずれか1項に記載の導電材料」と記載されているのを、「請求項1及び3~7のいずれか1項に記載の導電材料」に訂正する。(請求項8の記載を引用する請求項9~14も同様に訂正する。) (7) 訂正事項7 訂正前の特許請求の範囲の請求項9に、「請求項1~8のいずれか1項に記載の導電材料」と記載されているのを、「請求項1及び3~8のいずれか1項に記載の導電材料」に訂正する。(請求項9の記載を引用する請求項10~14も同様に訂正する。) (8) 訂正事項8 訂正前の特許請求の範囲の請求項10に、「請求項1~9のいずれか1項に記載の導電材料」と記載されているのを、「請求項1及び3~9のいずれか1項に記載の導電材料」に訂正する。(請求項10の記載を引用する請求項11~14も同様に訂正する。) (9) 訂正事項9 訂正前の特許請求の範囲の請求項11に、「請求項1~10のいずれか1項に記載の導電材料」と記載されているのを、「請求項1及び3~10のいずれか1項に記載の導電材料」に訂正する。(請求項11の記載を引用する請求項12も同様に訂正する。) (10) 訂正事項10 訂正前の特許請求の範囲の請求項13に、「請求項1~10のいずれか1項に記載の導電材料」と記載されているのを、「請求項1及び3~10のいずれか1項に記載の導電材料」に訂正する。(請求項13の記載を引用する請求項14も同様に訂正する。) 2 訂正の適否についての判断 以下、訂正事項1~10による訂正の適否について検討する。 (1) 訂正事項1について ア 訂正の目的 訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された「導電材料」について、「前記はんだ粒子の固相線温度における導電材料の粘度が、0.1Pa・s以上50Pa・s以下であり、前記はんだ粒子の液相線温度における導電材料の粘度が、0.1Pa・s以上10Pa・s以下である」との限定を付加するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であるか 訂正事項1により付加される記載は、訂正前の特許請求の範囲の請求項2の「前記はんだ粒子の固相線温度における導電材料の粘度が、0.1Pa・s以上50Pa・s以下である、請求項1に記載の導電材料。」との記載、及び、本件明細書等の【0043】の「 はんだ粒子の液相線温度(融点)での導電材料の粘度(ηmp)は、好ましくは50Pa・s以下、より好ましくは10Pa・s以下、さらに好ましくは1Pa・s以下であり、好ましくは0.1Pa・s以上、より好ましくは0.2Pa・s以上である。上記粘度(ηmp)が、上記上限以下であれば、電極上にはんだを効率的に凝集させることができる。上記粘度が、上記下限以上であれば、接続部でのボイドを抑制し、接続部以外への導電材料のはみだしを抑制することができる。」との記載に基づくものであって、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。 したがって、訂正事項1は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか 訂正事項1は、「導電材料」について、「前記はんだ粒子の固相線温度における導電材料の粘度が、0.1Pa・s以上50Pa・s以下であり、前記はんだ粒子の液相線温度における導電材料の粘度が、0.1Pa・s以上10Pa・s以下である」との限定を付加するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。 (2) 訂正事項2について ア 訂正の目的 訂正事項2は、請求項2を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 イ 本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるか 訂正事項2は、上記アのとおり、請求項2を削除するものであって、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。 したがって、訂正事項2は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか 訂正事項2は、上記アのとおり、請求項2を削除するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。 (3) 訂正事項3~10について ア 訂正の目的 訂正事項3~10は、それぞれ訂正前に請求項2を引用していた請求項3~5、8~11、13を対象とする訂正であって、訂正事項2による請求項2の削除と整合するために、請求項3~5、8~11、13の引用請求項から請求項2を削除して引用請求項の数を減少させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。 イ 本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるか 訂正事項3~10は、上記アのとおり、訂正事項2による請求項2の削除と整合するためのものであって、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。 したがって、訂正事項3~10は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正であるか 訂正事項3~10は、上記アのとおり、訂正事項2による請求項2の削除と整合するためのものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。 (4) 小括 以上のとおり、本件訂正の請求は、適法にされたものであるから、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~14〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2のとおり本件訂正の請求は認められるから、本件特許の請求項1~14に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」~「本件特許発明14」という。)は、それぞれ訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~14に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 熱硬化性成分と、はんだ粒子とを含み、 導電材料に含まれる導電性粒子粉体は、液相線温度が300℃以下であるはんだ粒子のみであり、 前記はんだ粒子の固相線温度と前記はんだ粒子の液相線温度との差の絶対値が、5℃以上であり、 導電材料100重量%中、前記はんだ粒子の含有量が、15重量%以上であり、 前記はんだ粒子の固相線温度における導電材料の粘度が、0.1Pa・s以上50Pa・s以下であり、 前記はんだ粒子の液相線温度における導電材料の粘度が、0.1Pa・s以上10Pa・s以下である、導電材料(但し、遷移的液相焼結組成物を除く)。 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 導電材料に含まれる粒子は、液相線温度が230℃以下であるはんだ粒子のみである、請求項1に記載の導電材料。 【請求項4】 導電材料に含まれる導電性粒子粉体は、錫とビスマスとを含むはんだ粒子のみであるか、錫とインジウムとを含むはんだ粒子のみであるか、錫とインジウムと銀とを含むはんだ粒子のみであるか、又は、錫とビスマスとを含むはんだ粒子と錫と銀と銅とを含むはんだ粒子との2種のみである、請求項1及び3のいずれか1項に記載の導電材料。 【請求項5】 前記はんだ粒子が、ビスマス、インジウム、銀、銅、又は錫を含む、請求項1及び3のいずれか1項に記載の導電材料。 【請求項6】 前記はんだ粒子に含まれる金属100重量%中、ビスマスの含有量が、1重量%以上58重量%以下である、請求項5に記載の導電材料。 【請求項7】 前記はんだ粒子に含まれる金属100重量%中、インジウムの含有量が、1重量%以上52重量%以下である、請求項5又は6に記載の導電材料。 【請求項8】 前記はんだ粒子の固相線温度が、115℃以上220℃以下である、請求項1及び3~7のいずれか1項に記載の導電材料。 【請求項9】 前記はんだ粒子の粒子径が、0.01μm以上30μm以下である、請求項1及び3~8のいずれか1項に記載の導電材料。 【請求項10】 導電ペーストである、請求項1及び3~9のいずれか1項に記載の導電材料。 【請求項11】 第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材と、 第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材と、 前記第1の接続対象部材と、前記第2の接続対象部材とを接続している接続部とを備え、 前記接続部の材料が、請求項1及び3~10のいずれか1項に記載の導電材料であり、 前記第1の電極と前記第2の電極とが、前記接続部中のはんだ部により電気的に接続されている、接続構造体。 【請求項12】 前記第1の電極と前記接続部と前記第2の電極との積層方向に前記第1の電極と前記第2の電極との対向し合う部分をみたときに、前記第1の電極と前記第2の電極との対向し合う部分の面積100%中の50%以上に、前記接続部中のはんだ部が配置されている、請求項11に記載の接続構造体。 【請求項13】 請求項1及び3~10のいずれか1項に記載の導電材料を用いて、第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材の表面上に、前記導電材料を配置する工程と、 前記導電材料の前記第1の接続対象部材側とは反対の表面上に、第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材を、前記第1の電極と前記第2の電極とが対向するように配置する工程と、 前記はんだ粒子の液相線温度以上に前記導電材料を加熱することで、前記第1の接続対象部材と前記第2の接続対象部材とを接続している接続部を、前記導電材料により形成し、かつ、前記第1の電極と前記第2の電極とを、前記接続部中のはんだ部により電気的に接続する工程とを備える、接続構造体の製造方法。 【請求項14】 前記第1の電極と前記接続部と前記第2の電極との積層方向に前記第1の電極と前記第2の電極との対向し合う部分をみたときに、前記第1の電極と前記第2の電極との対向し合う部分の面積100%中の50%以上に、前記接続部中のはんだ部が配置されている接続構造体を得る、請求項13に記載の接続構造体の製造方法。」 第4 取消理由通知書(決定の予告)の概要 令和7年9月8日付けで特許権者に通知した取消理由通知書(決定の予告)の概要は、次のとおりである。 (進歩性)本件特許の請求項1、3~5、8~14に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献3に記載された事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、本件特許の請求項1、3~6、8~14に係る発明は、引用文献2に記載された発明及び引用文献3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許の請求項1、3~14に係る発明は、引用文献4に記載された発明並びに引用文献3に記載された事項及び引用文献5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、3~14に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 引用文献一覧 引用文献1:国際公開第2007/018288号(申立2の甲第2号証) 引用文献2:特開2011- 56527号公報(申立2の甲第1号証) 引用文献3:国際公開第2016/104275号(申立2の甲第3号証) 引用文献4:特許第4983913号公報(申立1の甲第1号証) 引用文献5:国際公開第2017/033935号(申立1の甲第2号証) 引用文献6:特表2015-530705号公報(審査において提示された文献) 第5 引用文献に記載された発明及び技術事項 1 引用文献1について (1) 引用文献1の記載 引用文献1には、次の記載がある。 「[0002] 電子部品のはんだ付けには、Pb-63Sn合金(本明細書において、合金組成を表示する数字は質量%を意味する)である共晶はんだが主に用いられてきた。共晶はんだは、融点(共晶であるので固相線温度と液相線温度が同じ)が183℃と比較的低い。はんだ付け温度は一般にはんだの液相線温度+20~50℃が適当とされているので、共晶はんだのはんだ付け温度は約200~230℃となる。はんだ付け温度がこの温度範囲であると、電子部品やプリント基板に熱影響を与えずにはんだ付けすることができる。また、共晶はんだは、はんだ付け性に優れているため、はんだ付け部に未はんだやボイドの発生が少ないという利点もある。 ・・・・ [0048] ビスフェノールA型エポキシ樹脂の硬化物は、接合強度が高く、耐熱性にも優れているが、硬く、柔軟性に欠けるという難点がある。そのため、ソルダペーストに使用するはんだ合金の溶融時の体積膨張率が大きいと、二次はんだ付け時にはんだ付け部が溶融した際に、はんだの膨張により加わる応力に耐えられず、はんだを包囲する樹脂が破壊して、溶融はんだが漏出し、電極間の短絡を引き起こす。本発明では、はんだ合金の溶融時の体積膨張率が0.5%以下であるため、熱硬化樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いても、樹脂が破壊することがない。 ・・・・ [0051] 本発明では、後述する理由により、ジカルボン酸およびカルボン酸無水物から選ばれたカルボン酸類を硬化剤として使用する。本発明で使用することができるカルボン酸系硬化剤の例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、アジピン酸、グルタル酸、マロン酸等が挙げられる。 [0052] 無水カルボン酸はエポキシ樹脂の硬化剤として普通に使用されているが、アジピン酸のような遊離のジカルボン酸は、硬化速度が遅くなるため、エポキシ樹脂の硬化剤として一般には使用されていない。しかし、本発明ではエポキシ樹脂の硬化が、はんだ付け時の非常な高温で進行するため、遊離のジカルボン酸でも硬化剤として十分に機能する。 ・・・・ [0060] 本発明のソルダペーストを用いたはんだ付けは、例えば、電子素子を回路基板に搭載して電子部品を作製するのに利用することができる。本発明のソルダペーストははんだ付け部の全てに用いてもよく、或いは一部のはんだ付け部だけに用いてもよい。」 「実施例 [0062][実施例A] 表1に示すはんだ合金の融点(固相線温度および液相線温度)、溶融時の体積膨張率(固相線温度での体積に対する液相線温度での体積の比)を測定した。 [0063] これらのはんだ合金の粉末(平均粒径25~35μm)を下記に示す組成(%は質量%)のフラックスAと下記の配合比で混和してソルダペーストを作り、セルフアライメント性について試験した。結果を表1に併記する。なお、実施例で使用したビスフェノールA型エポキシ樹脂は、いずれも液状のモノマー(ビスフェノールAジグリシジルエーテル)であった。 [0064][表1] [図:0001437355000001.jpg] [0065] 1.フラックスAの組成 重合ロジン 30% ビスフェノールA型エポキシ樹脂 30% フタル酸無水物 20% 水素添加ヒマシ油 2% トリエタノールアミンHBr 1% フェニルグリコール 17% 2.ソルダペーストの配合比 はんだ合金粉末 90.5質量% フラックス 9.5質量% 3.試験方法 (1)融点 示差走査熱最計を用いてはんだ粉末の融点を測定した。測定は昇温速度:5℃/min、試料重最:約0.080gで行った。得られたチャートから固相線温度と液相線温度を求めた。 ・・・・ [0069] (3)セルフアライメント性 ソルダペーストをプリント基板のランドに途布し、該途布部に0603タイプ(0.6×0.3mm)のチップ型セラミックコンデンサーをランド間で正規の搭載位置から30゜傾けて搭載した。リフロー炉ではんだ付け後に平均90~97%以上の戻りがあるので、ランド間での正規の搭載位置から3゜以内の傾斜になっているか否かを観察した。試験試料は20個ずつとし、3゜以内になっていないものの数(NG数)でセルフアライメント性を評価した。 ・・・・ [0077] 本発明のソルダペーストを用いた一次はんだ付けにより作製された電子部品は、ステップはんだ付けにおける二次はんだ付け時に一次はんだ付け部から溶融はんだが滲み出すこともなく、またはんだボールの生成も少ないので、電子部品の電極間で短絡が発生しない。また、セルファライメント試験の結果から、本発明のソルダペーストは位置ずれを起こさずに所定のはんだ付け部にはんだ付けすることができ、信頼性に優れていることも判明した。」 (2) 引用発明1-1~引用発明1-3 ア 上記(1)の[0065]に、「2.ソルダペーストの配合比」に記載されている「フラックス」は、[0063]の「はんだ合金の粉末(平均粒径25~35μm)を下記に示す組成(%は質量%)のフラックスAと下記の配合比で混和してソルダペーストを作り」との記載における「フラックスA」のことであるといえる。 イ 上記(1)の[0048]の「熱硬化樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂」及び[0052]の「エポキシ樹脂の硬化が、はんだ付け時の非常な高温で進行する」との記載から、上記(1)の[0065]に記載の「ビスフェノールA型エポキシ樹脂」は、「熱硬化樹脂」であるといえる。 ウ 上記(1)、上記ア及びイによれば、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1-1」~「引用発明1-3」という。)が記載されている。 [引用発明1-1] 「90.5質量%のはんだ合金の粉末と、9.5質量%のフラックスAを混和して作られたソルダペーストであって、 はんだ合金の粉末は、平均粒径が25~35μmであり、 はんだ合金の粉末の組成は、Biが70質量%で残りがSn、Biが80質量%で残りがSn又はBiが85質量%で残りがSnであり、 Biが70質量%で残りがSnの組成のはんだ合金の粉末の固相線温度は139℃で液相線温度は180℃であり、Biが80質量%で残りがSnの組成のはんだ合金の粉末の固相線温度は139℃で液相線温度は210℃であり、Biが85質量%で残りがSnの組成のはんだ合金の粉末の固相線温度は139℃で液相線温度は215℃であり、 フラックスAの組成は、30%の重合ロジンと、30%の熱硬化樹脂であるビスフェノールA型エポキシ樹脂と、20%のフタル酸無水物と、2%の水素添加ヒマシ油と、1%のトリエタノールアミンHBrと、17%のフェニルグリコールである、 ソルダペースト。」 [引用発明1-2] 「引用発明1-1のソルダペーストをプリント基板のランドに途布し、該途布部にチップ型セラミックコンデンサーを搭載し、リフロー炉ではんだ付けすることにより形成した、チップ型セラミックコンデンサーが搭載されたプリント基板。」 [引用発明1-3] 「引用発明1-1のソルダペーストをプリント基板のランドに途布し、該途布部にチップ型セラミックコンデンサーを搭載し、リフロー炉ではんだ付けした、チップ型セラミックコンデンサーが搭載されたプリント基板の製造方法。」 2 引用文献2について (1) 引用文献2の記載 引用文献2には、次の記載がある。 「【0036】 鉛フリーはんだ粉末とフラックスとの含有比率(鉛フリーはんだ粉末:フラックス)は、60~90質量%:40~10質量%であることが好ましく、より好ましくは75~85質量%:25~15質量%である。上記比率とすることにより、ペーストとしての粘性やチクソ性が良好となり、印刷やディスペンス塗布などの量産工程に適したはんだ接合剤組成物が得られる。更に、接合信頼性の向上が可能となる。 ・・・・ 【0040】 (実施例1) ビスフェノールA型熱硬化性樹脂(DIC株式会社製、EPICLON860)85質量%、チクソ剤(日本化成株式会社製、スリパークスZHH)2質量%、活性剤(アジピン酸)5質量%、界面活性剤(ビックケミージャパン株式会社製、BYK361N)2質量%、消泡剤(共栄社化学株式会社製、フローレンAC303)1質量%、さらに硬化剤として2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール(2P4MHZ)5質量%を同じ容器に計量し、らいかい機を用いて混合し、フラックスを得た。得られたフラックスと、42Sn/58Biはんだ粉末と、96.5Sn/3.0Ag/0.5Cuはんだ粉末とを、フラックス:42Sn/58Biはんだ粉末:96.5Sn/3.0Ag/0.5Cuはんだ粉末=20:8:72の比率で計量し、これらを混練機にて2時間混合することで、はんだ接合剤組成物を調製した。このはんだ接合剤組成物を用いて、後述する各種物性評価を行った。実施例1の成分配合および評価結果を表1に記載した。なお、表1において、はんだ成分(2種類のはんだ粉末の混合物)の融解開始温度は、示差走査熱量計(セイコーインスツルメント社製、EXSTAR6000)を用い、測定温度範囲を30~600℃として測定した。測定の際は、吸熱量が1.5J/g以上あるものを測定対象物由来のピークとし、それ未満のピークは、分析精度の観点から除外した。以下の例においても同様に測定した。 【0041】 (実施例2) 実施例1の調製方法のうち、フラックスと、42Sn/58Biはんだ粉末と、96.5Sn/3.0Ag/0.5Cuはんだ粉末とを、フラックス:42Sn/58Biはんだ粉末:96.5Sn/3.0Ag/0.5Cuはんだ粉末=20:20:60の比率で用いたこと以外は、実施例1と同様にしてはんだ接合剤組成物を調製し、後述する各種物性評価を行った。 ・・・・ 【0051】 (1)はんだフィレットの状態 ガラスエポキシ基板上に形成された銅箔ランド(導体寸法:0.85×0.55mm、導体間隔:0.85mm)に、得られたはんだ接合剤組成物を、厚み150μmtのメタルマスクを用いてメタルスキージで印刷し、Snめっきされた1608CRチップを上記銅箔ランドの印刷膜上に載置した。そして、各種はんだに合わせたリフロー条件(図1~図3)にて加熱して試験片を作製した。得られた試験片について外観検査を行い、図4A~Cに示す判定基準にて判定を行った。即ち、はんだ5が良好なフィレット形状を示す場合を○(図4A)、フィレットの表面に未溶融のはんだ5が存在する場合を△(図4B)、はんだ5が溶融せずにはんだボールの状態で存在する場合を×(図4C)とした。なお、図4において、参照符号1はガラスエポキシ基板、参照符号2は銅箔ランド、参照符号3は1608CRチップ、参照符号4はフラックスである。 【0052】 (2)ピン間ボール試験 ガラスエポキシ基板上に形成されたQFP(Quad Flat Package)用ランド(0.8mmピッチ)に、得られたはんだ接合剤組成物を、厚み200μmtのメタルマスクを用いてメタルスキージで印刷し、各種はんだに合わせたリフロー条件(図1~図3)にて加熱して試験片を作製した。得られた試験片について残渣膜中に発生したはんだボールをカウントして、1ピン間(1ランド間)当たりの平均はんだボール数を算出した。 【0053】 (3)せん断強度の測定 ガラスエポキシ基板上に形成された銅箔ランド(導体寸法:0.85×0.55mm、導体間隔:0.85mm)に、得られたはんだ接合剤組成物を、厚み150μmtのメタルマスクを用いてメタルスキージで印刷し、Snめっきされた1608CRチップを上記銅箔ランド(10個)の印刷膜上に1つずつ載置した。そして、各種はんだに合わせたリフロー条件(図1~図3)にて加熱して試験片を作製した。得られた試験片について、引張り試験機(SHIMADZU社製EZ-L)を用いて、5mm/minの条件でチップのせん断強度を測定した。なお、表1の結果は、せん断強度を測定した10個のチップの平均値である。 ・・・・ 【0056】 【表1】 [図:0001437355000002.jpg] 【0057】 表1に示すように、本発明の実施例は、比較例に比べ、いずれの評価項目についても良好な結果が得られた。また、図1に示すように、本発明の実施例は、リフロー温度が220℃以下であり、96.5Sn/3.0Ag/0.5Cuはんだ粉末のみを用いた比較例7(図3参照)のリフロー温度(240℃)よりも低い温度でのリフローが可能であった。よって、本発明によれば、リフロー温度を下げることができる上、接合信頼性の高いはんだ接合剤組成物が得られることが分かった。」 (2) 引用発明2-1~引用発明2-3 上記(1)によれば、引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2-1」~「引用発明2-3」という。)が記載されている。 [引用発明2-1] 「85質量%のビスフェノールA型熱硬化性樹脂、2質量%のチクソ剤、5質量%の活性剤、2質量%の界面活性剤、1質量%の消泡剤、5質量%の硬化剤を含むフラックスと、42Sn/58Biはんだ粉末と、96.5Sn/3.0Ag/0.5Cuはんだ粉末とが、フラックス:42Sn/58Biはんだ粉末:96.5Sn/3.0Ag/0.5Cuはんだ粉末=20:20:60の比率で混合されたはんだ接合剤組成物であって、 フラックス:42Sn/58Biはんだ粉末:96.5Sn/3.0Ag/0.5Cuはんだ粉末=20:20:60のはんだ接合剤組成物のはんだ成分の溶融開始温度が139℃及び203℃である、 ペーストとしての粘性やチクソ性が良好な、はんだ接合剤組成物。」 [引用発明2-2] 「ガラスエポキシ基板上に形成された銅箔ランドに、引用発明2-1のはんだ接合剤組成物を印刷し、Snめっきされた1608CRチップを上記銅箔ランドの印刷膜上に載置し、加熱して作製した試験片。」 [引用発明2-3] 「ガラスエポキシ基板上に形成された銅箔ランドに、引用発明2-1のはんだ接合剤組成物を印刷し、Snめっきされた1608CRチップを上記銅箔ランドの印刷膜上に載置し、 はんだに合わせたリフロー条件にて加熱して試験片を作製する、 試験片の作製方法。」 3 引用文献3について (1) 引用文献3の記載 引用文献3には、次の記載がある。 「[0053] 上記はんだ粒子の平均粒子径は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、更に好ましくは3μm以上、特に好ましくは5μm以上、好ましくは100μm以下、より好ましくは60μm以下、より一層好ましくは40μm以下、更に好ましくは30μm以下、更に一層好ましくは20μm以下、特に好ましくは15μm以下、最も好ましくは10μm以下である。上記はんだ粒子の平均粒子径が上記下限以上及び上記上限以下であると、はんだ粒子を電極上により一層効率的に配置することができる。上記はんだ粒子の平均粒子径は、3μm以上、30μm以下であることが特に好ましい。 ・・・・ [0123] 導通信頼性をより一層高める観点からは、上記第1の電極と上記接続部と上記第2の電極との積層方向に上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分をみたときに、上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分の面積100%中の50%以上(より好ましくは60%以上、更に好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上)に、上記接続部中のはんだ部が配置されていることが好ましい。 ・・・・ [0132] 上記はんだ粒子におけるはんだの融点温度での導電ペーストの粘度は、好ましくは50Pa・s以下、より好ましくは10Pa・s以下、更に好ましくは1Pa・s以下、好ましくは0.1Pa以上、より好ましくは0.2Pa・s以上である。粘度が上記上限以下であれば、はんだ粒子を効率的に凝集させることができ、粘度が上記下限以上であれば、接続部でのボイドを抑制し、接続部以外への導電ペーストのはみだしを抑制することができる。」 (2) 引用文献3記載事項1 上記(1)の[0132]によれば、引用文献3には次の事項(以下「引用文献3記載事項1」という。)が記載されている。 「はんだ粒子におけるはんだの融点温度での導電ペーストの粘度は、好ましくは10Pa・s以下、0.1Pa・s以上であり、粘度が上記上限以下であれば、はんだ粒子を効率的に凝集させることができ、粘度が上記下限以上であれば、接続部でのボイドを抑制し、接続部以外への導電ペーストのはみだしを抑制することができる。」 (なお、上記(1)の[0132]の「好ましくは0.1Pa以上」との記載は、「好ましくは0.1Pa・s以上」の誤記である。) (3) 引用文献3記載事項2 上記(1)の[0053]によれば、引用文献3には次の事項(以下「引用文献3記載事項2」という。)が記載されている。 「はんだ粒子の平均粒子径は、好ましくは0.5μm以上、30μm以下であり、はんだ粒子の平均粒子径が上記下限以上及び上記上限以下であると、はんだ粒子を電極上により一層効率的に配置することができる。」 (4) 引用文献3記載事項3 上記(1)の[0123]によれば、引用文献3には次の事項(以下「引用文献3記載事項3」という。)が記載されている。 「導通信頼性をより一層高める観点から、第1の電極と接続部と第2の電極との積層方向に上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分をみたときに、上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分の面積100%中の50%以上に、上記接続部中のはんだ部が配置されていることが好ましい。」 4 引用文献4について (1) 引用文献4の記載 引用文献4には、次の記載がある。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 熱硬化性樹脂中に導電性粒子を含む異方性導電材料において、前記導電性粒子は、固相線温度が125℃以上であり、ピーク温度が200℃以下であるとともに、固相線温度とピーク温度との間の温度差が15℃以上である低融点粒子であることを特徴とする異方性導電材料。 【請求項2】 前記低融点粒子は、Inが13~22質量%、Agが1~9質量%、残部Snからなる組成範囲の中で、固相線温度が125℃以上であり、ピーク温度が200℃以下であるとともに、固相線温度とピーク温度との間の温度差が15℃以上である合金であることを特徴とする請求項1記載の異方性導電材料。 ・・・・ 【請求項4】 前記低融点粒子は、Biが25~75質量%、残部Snからなる組成範囲の中で、固相線温度が125℃以上であり、ピーク温度が200℃以下であるとともに、固相線温度とピーク温度との間の温度差が15℃以上である合金であることを特徴とする請求項1記載の異方性導電材料。 【請求項5】 前記合金は、Biが25~40質量%、残部Snからなる合金であることを特徴とする請求項4記載の異方性導電材料。」 「【課題を解決するための手段】 【0013】 本発明者が従来の低融点粒子を用いた異方性導電材料(以下、単に異方性導電材料という)における問題点について鋭意検討を加えた結果、低融点粒子の溶融時の流動性が大いに影響していることが分かった。つまり従来の異方性導電材料では、熱硬化性樹脂が加熱されると、軟化してから液化し、さらに加熱が進んで硬化温度に達したときに硬化する。この熱硬化性樹脂が硬化する前に、低融点粒子が溶融し、液化した熱硬化性樹脂内で流動して導体に濡れることにより接合するものである。この接合のメカニズムから異方性導電材料としては、低融点粒子を熱硬化性樹脂の硬化前にすばやく流動させて導体に濡れさせるために、低融点粒子は流動性の良いものが適していると考えられていたものである。 【0014】 一般に低融点合金は、固相線温度と液相線温度の凝固範囲が全くない共晶組成のものや、或いは共晶組成でなくても固相線温度と液相線温度間の凝固範囲が非常に狭いもの程、流動性は良い。そこで従来、異方性導電材料に用いられていた低融点粒子は、Pb-63Sn(共晶温度:183℃)、Sn-58Bi(共晶温度139℃)、Sn-52In(共晶温度:117℃)、Sn-3.5Ag(共晶温度:221℃)等の共晶組成や、Sn-3Ag-0.5Cu(固相線温度:217℃、液相線温度:221℃、凝固範囲:4℃)のように凝固範囲が狭く流動性の良いものであった。 【0015】 しかしながら共晶組成や凝固範囲の狭い低融点粒子を用いた異方性導電材料では、流動性が良過ぎるため、熱圧着したときに、上下導体間から隣接導体間に押し出された樹脂とともに低融点粒子も隣接導体間に移動してしまう。その結果、上下導体間に存在する低融点粒子が少なくなって上下導体間の接続抵抗が大きくなり、また隣接導体間に存在する低融点粒子が多くなって隣接導体間の絶縁抵抗が小さくなってしまうものであった。 ・・・・ 【0019】 本発明は、低融点はんだをエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂系の接着剤のバインダーとして使用するときに、低融点はんだの最適範囲を見いだしたものである。本発明に使用する低融点粒子は、固相線温度とピーク温度間の温度差が15℃以上でなければならない。この温度差が15℃よりも小さいと、加熱時に低融点粒子が一挙に溶融し、上下の導体間に挟まれた低融点粒子が押し流され、導体間に低融点粒子が少なくなって導体間の接続抵抗が大きくなってしまう。 【発明の効果】 【0020】 本発明の異方性導電材料は、導電性粒子と導体とが充分に金属的な接合となるため、接合した基板が反ったり、ねじれたり、さらには異方性導電材料中の樹脂が水分で膨潤したりしても、導体から剥離するようなことがない。また本発明の異方性導電材料は、導電性粒子の固相線温度とピーク温度間における温度差が広いため、熱圧着時、液化した熱硬化性樹脂が隣接導体間方向に押しやられても導電性粒子は流動性の悪い半溶融状態となっていて隣接導体間方向には流動しない。その結果、本発明の異方性導電材料は、上下導体間の導電率が向上し、隣接導体間の絶縁抵抗も大きいという従来の異方性導電材料にはない優れた効果を奏するものである。」 「【発明を実施するための最良の形態】 ・・・・ 【0027】 本発明に使用して好適な低融点粒子としてはSn-Ag-In系やSn-Bi系の合金である。Sn-Ag-In系合金の組成範囲としては、Agが1~9質量%、Inが13~22質量%、残部Snからなる合金であり、この組成範囲の中で固相線温度が125℃以上でピーク温度が200℃以下、そして固相線温度とピーク温度間の温度差が15℃以上の特性を有するものを採用する。Sn-Ag-In系合金において本発明に使用して好適な組成は、Sn-3.5Ag-20Inである。この組成の固相線温度は144℃、ピーク温度は189℃であり、その温度差は45℃である。 【0028】 Sn-Ag-In系合金において、Agはピーク温度を下げる効果があり、その添加量が1質量%よりも少ないと合金のピーク温度が200℃以上となってしまう。しかるにAgの添加量が9質量%よりも多いと200℃ではAg-Snの金属間化合物が残り、溶融性が悪くなる。またInはSn主成分の固相線温度を下げるものであり、13質量%よりも少ないと、Agを添加してもピーク温度を200℃以下に下げることができない。一方、Inの添加量が22質量%を超えると、固相線温度が125℃よりも下がってしまう。 ・・・・ 【0030】 Sn-Bi系合金の組成範囲としては、Biが25~75質量%、残部Snからなる合金であり、この組成範囲の中で固相線温度が125℃以上でピーク温度が200℃以下、そして固相線温度とピーク温度間の温度差が15℃以上の特性を有するものを採用する。Sn-Bi系合金において本発明に使用して好適な組成は、Sn-25Biである。この組成の固相線温度は139℃、ピーク温度は194℃であり、その温度差は55℃である。 ・・・・ 【0040】 異方性導電材料 エポキシ樹脂(熱硬化性樹脂)85質量%、硬化促進剤5質量%、低融点粒子10質量%を混練して厚さ40μmの異方性導電フィルムを作製。 低融点粒子:所定粒径が10μm(最大粒径35μm)であり、下記の粒子からなる。 6μm未満粒子(10μmに対して-40%径):8%(個数) 14μm超粒子(10μmに対して+40%径):8%(個数) 6~14μmの粒子:残部 【0041】 隣接導体間隔が150μmのプリント基板とフレキシブル基板間に異方性導電フィルムを挟み込んで、熱圧着装置により、接合面積当たり1~5MPaの圧力で200℃で1分間熱圧着した。試験サンプルは、各20サンプルである。接合後のサンプルを-40℃~+125℃(各30分間保持、500サイクル)の環境試験にかけた後、上下導体間の接続抵抗と隣接導体間の絶縁抵抗を測定した。 ・・・・ 【産業上の利用可能性】 【0044】 実施例では異方性導電材料としてフィルム状のもので説明したが、本発明はフィルム状以外にも熱硬化性樹脂が常温で液体となったペースト状にも適用できる。」 (2) 引用発明4-1~引用発明4-3 ア 上記(1)の【0020】に記載の「発明の効果」は、上記(1)の【特許請求の範囲】に記載された発明の効果である。 また、上記(1)の【発明を実施するための最良の形態】として記載されている事項は、【特許請求の範囲】に記載された発明を実施するための最良の形態である。 また、上記(1)の【産業上の利用可能性】として記載されている事項は、【特許請求の範囲】に記載された発明の産業上の利用可能性についての記載である。 イ 上記(1)及び上記アによれば、引用文献4には次の発明(以下、「引用発明4-1」~「引用発明4-3」という。)が記載されている。 [引用発明4-1] 「熱硬化性樹脂中に導電性粒子を含む異方性導電材料において、前記導電性粒子は、固相線温度が125℃以上であり、ピーク温度が200℃以下であるとともに、固相線温度とピーク温度との間の温度差が15℃以上である低融点粒子である異方性導電材料であって、 前記低融点粒子は、Inが13~22質量%、Agが1~9質量%、残部Sn、又は、Biが25~40質量%、残部Snからなる合金であり、 Sn-Ag-In系合金における好適な組成であるSn-3.5Ag-20Inの固相線温度は144℃であり、 Sn-Bi系合金における好適な組成であるSn-25Biの固相線温度は139℃であり、 低融点粒子の所定粒径は10μmであり、6μm未満粒子が8%(個数)、14μm超粒子が8%(個数)、残部が6~14μmの粒子であり、 ペースト状にも適用できる、 上下導体間の導電率が向上し、隣接導体間の絶縁抵抗が大きいという効果を奏する、 異方性導電材料。」 [引用発明4-2] 「隣接導体間隔が150μmのプリント基板とフレキシブル基板間に引用発明4-1の異方性導電材料を挟み込んで、熱圧着装置により200℃で1分間熱圧着して作製した試験サンプル。」 [引用発明4-3] 「隣接導体間隔が150μmのプリント基板とフレキシブル基板間に引用発明4-1の異方性導電材料を挟み込んで、熱圧着装置により200℃で1分間熱圧着する、試験サンプルの作製方法。」 (3) 引用文献4記載事項1 上記(1)の【0014】によれば、引用文献4には次の事項(以下「引用文献4記載事項1」という。)が記載されている。 「Sn-58Biの共晶温度は139℃であり、Sn-3Ag-0.5Cuの液相線温度は221℃である。」 (4) 引用文献4記載事項2 上記(1)の【0028】によれば、引用文献4には次の事項(以下「引用文献4記載事項2」という。)が記載されている。 「Sn-Ag-In系合金において、Agはピーク温度を下げる効果があり、その添加量が1質量%よりも少ないと合金のピーク温度が200℃以上となってしまい、InはSn主成分の固相線温度を下げるものであり、13質量%よりも少ないと、Agを添加してもピーク温度を200℃以下に下げることができない。」 5 引用文献5について (1) 引用文献5の記載 引用文献5には、次の記載がある。 「発明を実施するための形態 ・・・・ [0137] 上記導電材料100重量%中、上記導電性粒子の含有量は好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、更に好ましくは10重量%以上、特に好ましくは20重量%以上、最も好ましくは30重量%以上であり、好ましくは80重量%以下、より好ましくは60重量%以下、更に好ましくは50重量%以下である。上記導電性粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、電極上に導電性粒子におけるはんだをより一層効率的に配置することができ、電極間に導電性粒子におけるはんだを多く配置することが容易であり、導通信頼性がより一層高くなる。導通信頼性をより一層高める観点からは、上記導電性粒子の含有量は多い方が好ましい。 ・・・・ [0187] 導通信頼性をより一層高める観点からは、上記第1の電極と上記接続部と上記第2の電極との積層方向に上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分をみたときに、上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分の面積100%中の50%以上(好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上)に、上記接続部中のはんだ部が配置されていることが好ましい。」 (2) 引用文献5記載事項1 上記(1)の[0137]によれば、引用文献5には次の事項(以下「引用文献5記載事項1」という。)が記載されている。 「導電材料100重量%中、上記導電性粒子の含有量は20重量%以上であることが特に好ましく、上記導電性粒子の含有量が上記下限以上であると、電極上に導電性粒子におけるはんだをより一層効率的に配置することができ、電極間に導電性粒子におけるはんだを多く配置することが容易であり、導通信頼性がより一層高くなり、導通信頼性をより一層高める観点からは、上記導電性粒子の含有量は多い方が好ましいこと。」 (3) 引用文献5記載事項2 上記(1)の[0187]によれば、引用文献5には次の事項(以下「引用文献5記載事項2」という。)が記載されている。 「導通信頼性をより一層高める観点からは、上記第1の電極と上記接続部と上記第2の電極との積層方向に上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分をみたときに、上記第1の電極と上記第2の電極との対向し合う部分の面積100%中の50%以上に、上記接続部中のはんだ部が配置されていることが好ましいこと。」 6 引用文献6について (1) 引用文献6の記載 引用文献6には、次の記載がある。 「【0004】 粉末に関する「一時的な液相焼結(transient liquid phase sintering)」または「TLPS」という用語は、金属の均質化の結果、液体が短期間のみ存在し、固体合金および/またはインターメタリックの混合物を形成するプロセスをいう。液相は、周囲の固相に対する非常に高い溶解牲がある。その結果、急速に固体内に拡散して、最終的には固まる。混合物を平衡融解温度より上まで加熱しなくとも、拡散均質化は最終組成物を作成する。」 「【0033】 【図5】図5はスズおよびビスマスの2元状態図である。」 「【図5】 [図:0001437355000003.jpg] 」 第6 当審における判断 1 引用文献1を主引用例とする取消理由について (1) 本件特許発明1について ア 本件特許発明1と引用発明1-1との対比 (ア) 引用発明1-1における「熱硬化樹脂であるビスフェノールA型エポキシ樹脂」は、本件特許発明1における「熱硬化性成分」に相当する。 (イ) 引用発明1-1における「Biが70質量%で残りがSn、Biが80質量%で残りがSn又はBiが85質量%で残りがSn」である「はんだ合金の粉末」は、「Biが70質量%で残りがSnの組成のはんだ合金の粉末の固相線温度は139℃で液相線温度は180℃であり、Biが80質量%で残りがSnの組成のはんだ合金の粉末の固相線温度は139℃で液相線温度は210℃であり、Biが85質量%で残りがSnの組成のはんだ合金の粉末の固相線温度は139℃で液相線温度は215℃」であるから、本件特許発明1における「液相線温度が300℃以下であ」り、「固相線温度」と「液相線温度との差の絶対値が、5℃以上」である「はんだ粒子」に相当する。 (ウ) 引用発明1-1における「フラックスA」は、その組成から導電性粒子粉体を含んでいないといえるから、上記(イ)を踏まえると、引用発明1-1における「90.5質量%のはんだ合金の粉末と、9.5質量%のフラックスAを混和して作られたソルダペースト」は、本件特許発明1における「熱硬化性成分と、はんだ粒子とを含み」、「導電材料に含まれる導電性粒子粉体は、液相線温度が300℃以下であるはんだ粒子のみであり」、「導電材料100重量%中、前記はんだ粒子の含有量が、15重量%以上であ」「る、導電材料」に相当する。 (エ) 本件特許についての拒絶査定不服審判(不服2023-9863)の審判請求書の【請求の理由】には、「(5)1.(進歩性)の拒絶理由について」において「上記の補正により、本願請求項1及び本願請求項1に従属する本願請求項2-14に係る発明から、遷移的液相焼結組成物(TLPS組成物)が除かれることとなったので、本願発明の技術分野と引用文献2の技術分野とはより確実に区別されることとなり、また本願発明の対象物と引用文献1と引用文献2とを組み合わせた対象物とはより明確に区別されることとなり、引用文献1及び引用文献2を知得した当業者が、補正後の本願発明に容易に想到し得るものではないことは明らかである。」と記載されている。 したがって、本件特許発明1における「遷移的液相焼結」とは、「TLPS」のことであるといえる。 また、上記第5の6(1)の【0004】から、「TLPS」という用語は、「金属の均質化の結果、液体が短期間のみ存在し、固体合金および/またはインターメタリックの混合物を形成するプロセス」のことであるといえる。 そして、引用発明1-1における「90.5質量%のはんだ合金の粉末と、9.5質量%のフラックスAを混和して作られたソルダペーストであって」、「はんだ合金の粉末の組成は、Biが70質量%で残りがSn、Biが80質量%で残りがSn又はBiが85質量%で残りがSnであ」る「ソルダペースト」は、1種類のはんだ合金の粉末を含むものであるから、「金属の均質化の結果、液体が短期間のみ存在し、固体合金および/またはインターメタリックの混合物を形成する」組成物ではなく、本件特許発明1における「遷移的液相焼結組成物」に該当しない。 (オ) 以上をまとめると、本件特許発明1と引用発明1-1との一致点及び相違点は次のとおりである。 <一致点> 「 熱硬化性成分と、はんだ粒子とを含み、 導電材料に含まれる導電性粒子粉体は、液相線温度が300℃以下であるはんだ粒子のみであり、 前記はんだ粒子の固相線温度と前記はんだ粒子の液相線温度との差の絶対値が、5℃以上であり、 導電材料100重量%中、前記はんだ粒子の含有量が、15重量%以上である、導電材料(但し、遷移的液相焼結組成物を除く)。」 <相違点1> 本件特許発明1は、「前記はんだ粒子の固相線温度における導電材料の粘度が、0.1Pa・s以上50Pa・s以下であり、 前記はんだ粒子の液相線温度における導電材料の粘度が、0.1Pa・s以上10Pa・s以下である」のに対して、引用発明1-1は、「ソルダペースト」の粘度が、そのような値となっているか明らかでない点。 イ 判断 (ア) 上記第5の3(2)のとおり、引用文献3には、「はんだ粒子におけるはんだの融点温度での導電ペーストの粘度は、好ましくは10Pa・s以下、0.1Pa・s以上であり、粘度が上記上限以下であれば、はんだ粒子を効率的に凝集させることができ、粘度が上記下限以上であれば、接続部でのボイドを抑制し、接続部以外への導電ペーストのはみだしを抑制することができる。」という引用文献3記載事項1が記載されているところ、当該引用文献3記載事項1は、はんだ粒子が溶融し凝集が生じる温度における導電ペーストの粘度を、10Pa・s以下、0.1Pa・s以上とすることにより、はんだ粒子を効率的に凝集させることができるとともに、接続部でのボイドを抑制し、接続部以外への導電ペーストのはみだしを抑制することができると解されるものである。 (イ) 一方、上記第5の1(1)の[0077]の「セルフアライメント試験の結果から、本発明のソルダペーストは位置ずれを起こさずに所定のはんだ付け部にはんだ付けすることができ、信頼性に優れていることも判明した。」との記載によれば、引用発明1-1に係るソルダペーストについて、ソルダペーストに含まれるはんだ合金の粉末がはんだ付け部の表面上に位置ずれを起こさずに溶融して凝集することができ、信頼性に優れたものとする、という動機付けが認められる。 (ウ) そうすると、上記(ア)の引用文献3記載事項1の「はんだ粒子を効率的に凝集させること」は、上記(イ)の「はんだ付け部の表面上に位置ずれを起こさずに溶融して凝集すること」と共通する課題であるといえる。 (エ) また、上記第5の1(1)の[0062]には、「はんだ合金の融点(固相線温度および液相線温度)」と記載されており、[0064]には、[表1]において、「融点(℃)」として「固相」と「液相」の項目が示され、実施例1~10として各項目にそれぞれ異なる値が示されているから、引用発明1-1は、はんだ合金の融点として固相線温度および液相線温度を想定しているといえる。 そして、引用発明1-1に係るソルダペーストは、ソルダペーストに含まれるはんだ合金の粉末が、はんだ付け部の表面上に溶融して凝集するものといえるところ、はんだ合金の粉末の溶融が固相線温度から液相線温度の間で生じることから、はんだ合金の粉末が溶融して凝集することも、固相線温度から液相線温度の間で生じるといえる。 (オ) そうすると、上記(ア)の「はんだ粒子が溶融し凝集が生じる温度」である引用文献3記載事項1の「はんだ粒子におけるはんだの融点温度」は、上記(エ)の「はんだ合金の粉末が溶融して凝集すること」が生じる温度である「はんだ合金の融点(固相線温度および液相線温度)」に対応すると理解することができる。 (カ) したがって、引用発明1-1に対して上記引用文献3記載事項1を適用し、はんだ合金の融点(固相線温度および液相線温度)における「ソルダペースト」の粘度を、「10Pa・s以下、0.1Pa・s以上」とし、相違点1に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 ウ 特許権者の主張 (ア) 特許権者は、令和7年11月5日提出の意見書の第9ページ第7行~第14行において、引用文献3には「はんだの融点温度」と記載されているだけであり、本件発明のように効果なども含めて「はんだ粒子の固相線温度」と「はんだ粒子の液相線温度」を区別している記載は一切ないことから、引用文献3の「はんだの融点温度」が、固相線温度か液相線温度のいずれか一方に該当すると解され得るとしても、他方の温度については一切記載されていないことになるから、引用文献3の「はんだの融点温度」が固相線温度と液相線温度の両方に該当すると解することは、曲解である旨主張する。 しかしながら、引用文献3には「はんだの融点温度」と記載されているだけであり、「はんだ粒子の固相線温度」と「はんだ粒子の液相線温度」を区別する記載はないから、引用文献3の「はんだの融点温度」を、固相線温度か液相線温度のいずれか一方に該当すると区別して解するよりも、固相線温度と液相線温度に区別せずに解する方が自然な解釈である。 また、上記第5の1(1)の[0002]に「共晶はんだは、融点(共晶であるので固相線温度と液相線温度が同じ)」と記載され、[0062]に「はんだ合金の融点(固相線温度および液相線温度)」と記載されているように、「はんだ合金の融点」を、固相線温度と液相線温度の両方を含むものと解することは、本件の優先日前になされていたことである。 そうすると、これらの記載に接した当業者であれば、引用文献3の「はんだの融点温度」を固相線温度と液相線温度の両方を含むものであると解することができるから、上記の主張は採用できない。 (イ) また、意見書の第9ページ第16行~第25行において、引用文献1、3には、「はんだ粒子の固相線温度における導電材料の粘度」や「はんだ粒子の液相線温度における導電材料の粘度」は記載も示唆もされておらず、引用発明1において、はんだ粒子の固相線温度及び液相線温度における導電材料の粘度に着目することは困難であり、相違点1に係る本件発明1の構成を想到することは当業者であっても容易になし得たとはいえない旨主張する。 しかしながら、上記イに記載したとおりであるから、上記の主張は採用できない。 (ウ) また、意見書の第7ページ下から3行~第8ページ第14行、第9ページ第26行~第27行において、本件発明1は、本件明細書の【0025】に記載の「電極上にはんだを効率的に配置することができ、接続されるべき上下の電極間の導通信頼性を効果的に高めることができる」という、相乗的かつ格別に顕著な効果を奏する旨主張する。 しかしながら、引用文献3記載事項1によれば、当該効果は、本件特許についての出願の優先権主張の日の技術水準から、当業者が容易に予測できる範囲のものであるから、上記の主張は採用できない。 エ 小括 以上によれば、本件特許発明1は、引用発明1-1及び引用文献3記載事項1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2) 本件特許発明3について 引用発明1-1における「はんだ合金の粉末」の液相線温度は、180℃、210℃、又は、215℃であるから、引用発明1-1における「ソルダペースト」の「はんだ合金の粉末」は、本件特許発明3の「導電材料に含まれる粒子は、液相線温度が230℃以下であるはんだ粒子のみ」に相当する構成となっている。 したがって、本件特許発明3は、引用発明1-1及び引用文献3記載事項1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3) 本件特許発明4、5について 引用発明1-1における「はんだ合金の粉末の組成」は、「Biが70質量%で残りがSn、Biが80質量%で残りがSn又はBiが85質量%で残りがSn」であるから、本件特許発明4の「錫とビスマスとを含むはんだ粒子のみである」及び本件特許発明5の「前記はんだ粒子が、ビスマス、インジウム、銀、銅、又は錫を含む」に相当する。 したがって、本件特許発明4及び本件特許発明5は、引用発明1-1及び引用文献3記載事項1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4) 本件特許発明8について 引用発明1-1における「はんだ合金の粉末」は、その固相線温度が139℃であるから、本件特許発明8の「前記はんだ粒子の固相線温度が、115℃以上220℃以下である」に相当する。 したがって、本件特許発明8は、引用発明1-1及び引用文献3記載事項1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (5) 本件特許発明9について ア 本件特許発明9と引用発明1-1との対比 本件特許発明9と引用発明1-1とを対比すると、両者は上記(1)ア(オ)の相違点1に加えて、さらに次の点で相違する。 <相違点2> 本件特許発明9は、「前記はんだ粒子の粒子径が、0.01μm以上30μm以下である」のに対して、引用発明1-1は、「はんだ合金の粉末」の粒子径が、そのような値となっているか明らかでない点。 イ 判断 相違点1についての検討は、上記(1)イのとおりである。 相違点2について検討する。 上記第5の3(3)のとおり、引用文献3には、引用文献3記載事項2が記載されている。 したがって、引用発明1-1において、「はんだ合金の粉末」の粒子径を、「0.5μm以上、30μm以下」とし、相違点2に係る本件特許発明9の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 ウ 小括 以上によれば、本件特許発明9は、引用発明1-1及び引用文献3記載事項1、2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (6) 本件特許発明10について 引用発明1-1における「ソルダペースト」は、本件特許発明10における「導電ペースト」に相当する。 したがって、本件特許発明10は、引用発明1-1及び引用文献3記載事項1、又は、引用発明1-1及び引用文献3記載事項1、2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (7) 本件特許発明11について ア 本件特許発明11と引用発明1-2との対比 (ア) 引用発明1-2における「プリント基板のランド」は、本件特許発明11における「第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材」に相当する。 (イ) 引用発明1-2における「チップ型セラミックコンデンサー」は、本件特許発明11における「第2の電極」を表面に有しているといえるから、本件特許発明11における「第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材」に相当する。 (ウ) 引用発明1-2における「リフロー炉ではんだ付け」された後の「プリント基板のランドに途布」された「ソルダペースト」は、「プリント基板のランド」と「チップ型セラミックコンデンサー」をはんだ付けするものであるから、本件特許発明11における「前記第1の接続対象部材と、前記第2の接続対象部材とを接続している接続部」に相当する。 (エ) 引用発明1-2における「チップ型セラミックコンデンサーが搭載されたプリント基板」は、本件特許発明11における「接続構造体」に相当する。 (オ) 以上をまとめると、本件特許発明11と引用発明1-2は、上記(1)ア(オ)の相違点1、又は、上記(1)ア(オ)の相違点1及び上記(5)アの相違点2で相違する。 イ 判断 相違点1についての検討は、上記(1)イのとおりであり、相違点2についての検討は、上記(5)イのとおりである。 ウ 小括 以上によれば、本件特許発明11は、引用発明1-2及び引用文献3記載事項1、又は、引用発明1-2及び引用文献3記載事項1、2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (8) 本件特許発明12について ア 本件特許発明12と引用発明1-2との対比 本件特許発明12と引用発明1-2とを対比すると、両者は上記(1)ア(オ)の相違点1及び上記(5)アの相違点2に加えて、さらに次の点で相違する。 <相違点3> 本件特許発明12は、「前記第1の電極と前記接続部と前記第2の電極との積層方向に前記第1の電極と前記第2の電極との対向し合う部分をみたときに、前記第1の電極と前記第2の電極との対向し合う部分の面積100%中の50%以上に、前記接続部中のはんだ部が配置されている」のに対して、引用発明1-2は、「プリント基板のランド」と「チップ型セラミックコンデンサー」の電極との対向し合う部分の面積100%中のどの程度の部分に、引用発明1-2における「リフロー炉ではんだ付け」された後の「プリント基板のランドに途布」された「ソルダペースト」が配置されているか明らかでない点。 イ 判断 相違点1についての検討は、上記(1)イのとおりであり、相違点2についての検討は、上記(5)イのとおりである。 相違点3について検討する。 上記第5の3(4)のとおり、引用文献3には、引用文献3記載事項3が記載されている。 したがって、引用発明1-2において、引用発明1-2における「リフロー炉ではんだ付け」された後の「プリント基板のランドに途布」された「ソルダペースト」を、「プリント基板のランド」と「チップ型セラミックコンデンサー」の電極との対向し合う部分の面積100%中の50%以上に配置し、相違点3に係る本件特許発明12の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 ウ 小括 以上によれば、本件特許発明12は、引用発明1-2及び引用文献3記載事項1、3、又は、引用発明1-2及び引用文献3記載事項1~3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (9) 本件特許発明13について ア 本件特許発明13と引用発明1-3との対比 (ア) 本件特許発明13における「請求項1及び3~10のいずれか1項に記載の導電材料」と、引用発明1-3における「引用発明1-1のソルダペースト」とは、「導電材料」である点で共通する。 (イ) 引用発明1-3における「プリント基板のランド」は、本件特許発明13における「第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材」に相当する。 (ウ) 上記(ア)及び(イ)を踏まえると、本件特許発明13における「請求項1及び3~10のいずれか1項に記載の導電材料を用いて、第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材の表面上に、前記導電材料を配置する工程」と、引用発明1-3における「引用発明1-1のソルダペーストをプリント基板のランドに途布し」とは、「導電材料を用いて、第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材の表面上に、前記導電材料を配置する工程」である点で共通する。 (エ) 引用発明1-3における「チップ型セラミックコンデンサー」は、本件特許発明13における「第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材」に相当し、引用発明1-3における「該途布部にチップ型セラミックコンデンサーを搭載し」は、本件特許発明13における「前記導電材料の前記第1の接続対象部材側とは反対の表面上に、第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材を、前記第1の電極と前記第2の電極とが対向するように配置する工程」に相当する。 (オ) 引用発明1-3における「リフロー炉ではんだ付け」する工程は、「チップ型セラミックコンデンサー」を「プリント基板のランド」にはんだ付けする工程であるから、本件特許発明13における「前記はんだ粒子の液相線温度以上に前記導電材料を加熱することで、前記第1の接続対象部材と前記第2の接続対象部材とを接続している接続部を、前記導電材料により形成し、かつ、前記第1の電極と前記第2の電極とを、前記接続部中のはんだ部により電気的に接続する工程」に相当する。 (カ) 引用発明1-3における「チップ型セラミックコンデンサーが搭載されたプリント基板の製造方法」は、本件特許発明13における「接続構造体の製造方法」に相当する。 (キ) 以上をまとめると、本件特許発明13と引用発明1-3は、上記(1)ア(オ)の相違点1、又は、上記(1)ア(オ)の相違点1及び上記(5)アの相違点2で相違する。 イ 判断 相違点1についての検討は、上記(1)イのとおりであり、相違点2についての検討は、上記(5)イのとおりである。 ウ 小括 以上によれば、本件特許発明13は、引用発明1-3及び引用文献3記載事項1、又は、引用発明1-3及び引用文献3記載事項1、2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (10) 本件特許発明14について 上記(8)と同様の理由により、本件特許発明14は、引用発明1-3及び引用文献3記載事項1、3、又は、引用発明1-3及び引用文献3記載事項1~3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 2 引用文献2を主引用例とする取消理由について (1) 本件特許発明1について ア 本件特許発明1と引用発明2-1との対比 (ア) 引用発明2-1における「ビスフェノールA型熱硬化性樹脂」は、本件特許発明1における「熱硬化性成分」に相当する。 (イ) 上記第5の4(3)の引用文献4記載事項1によれば、「42Sn/58Biはんだ粉末」の共晶温度は139℃であり、「96.5Sn/3.0Ag/0.5Cuはんだ粉末」の液相線温度は221℃である。 したがって、引用発明2-1における「42Sn/58Biはんだ粉末」及び「96.5Sn/3.0Ag/0.5Cuはんだ粉末」は、本件特許発明1における「液相線温度が300℃以下であるはんだ粒子」に相当する。 (ウ) 引用発明2-1における「フラックス:42Sn/58Biはんだ粉末:96.5Sn/3.0Ag/0.5Cuはんだ粉末=20:20:60のはんだ接合剤組成物のはんだ成分の溶融開始温度が139℃及び203℃である」との事項を考慮すると、引用発明2-1における「42Sn/58Biはんだ粉末」及び「96.5Sn/3.0Ag/0.5Cuはんだ粉末」の固相線温度は139℃であり、液相線温度は203℃よりも高い温度であるといえる。 そうすると、引用発明2-1における「42Sn/58Biはんだ粉末」及び「96.5Sn/3.0Ag/0.5Cuはんだ粉末」の、固相線温度と液相線温度との差の絶対値は、5℃以上となっているといえる。 したがって、引用発明2-1における「42Sn/58Biはんだ粉末」及び「96.5Sn/3.0Ag/0.5Cuはんだ粉末」は、本件特許発明1における「固相線温度」と「液相線温度との差の絶対値が、5℃以上」である「はんだ粒子」に相当する。 (エ) 引用発明2-1における「フラックス」は、その組成から導電性粒子粉体を含んでいないといえるから、上記(イ)及び(ウ)を踏まえると、引用発明2-1における「フラックスと、42Sn/58Biはんだ粉末と、96.5Sn/3.0Ag/0.5Cuはんだ粉末とが、フラックス:42Sn/58Biはんだ粉末:96.5Sn/3.0Ag/0.5Cuはんだ粉末=20:20:60の比率で混合されたはんだ接合剤組成物」は、本件特許発明1における「熱硬化性成分と、はんだ粒子とを含み」、「導電材料に含まれる導電性粒子粉体は、液相線温度が300℃以下であるはんだ粒子のみであり」、「導電材料100重量%中、前記はんだ粒子の含有量が、15重量%以上であ」「る、導電材料」に相当する。 (オ) 引用発明2-1における「フラックスと、42Sn/58Biはんだ粉末と、96.5Sn/3.0Ag/0.5Cuはんだ粉末とが、フラックス:42Sn/58Biはんだ粉末:96.5Sn/3.0Ag/0.5Cuはんだ粉末=20:20:60の比率で混合されたはんだ接合剤組成物」は、低融点の「42Sn/58Biはんだ粉末」が共晶合金からなるものであるから、「金属の均質化の結果、液体が短期間のみ存在し、固体合金および/またはインターメタリックの混合物を形成する」組成物ではなく、本件特許発明1における「遷移的液相焼結組成物」に該当しない。 (カ) 以上をまとめると、本件特許発明1と引用発明2-1との一致点及び相違点は次のとおりである。 <一致点> 「 熱硬化性成分と、はんだ粒子とを含み、 導電材料に含まれる導電性粒子粉体は、液相線温度が300℃以下であるはんだ粒子のみであり、 前記はんだ粒子の固相線温度と前記はんだ粒子の液相線温度との差の絶対値が、5℃以上であり、 導電材料100重量%中、前記はんだ粒子の含有量が、15重量%以上である、導電材料(但し、遷移的液相焼結組成物を除く)。」 <相違点4> 本件特許発明1は、「前記はんだ粒子の固相線温度における導電材料の粘度が、0.1Pa・s以上50Pa・s以下であり、 前記はんだ粒子の液相線温度における導電材料の粘度が、0.1Pa・s以上10Pa・s以下である」のに対して、引用発明2-1は、「はんだ接合剤組成物」の粘度が、そのような値となっているか明らかでない点。 イ 判断 (ア) 上記第5の2(1)の【0052】には、「(2)ピン間ボール試験」として「ガラスエポキシ基板上に形成されたQFP(Quad Flat Package)用ランド(0.8mmピッチ)に、得られたはんだ接合剤組成物を、厚み200μmtのメタルマスクを用いてメタルスキージで印刷し、各種はんだに合わせたリフロー条件(図1~図3)にて加熱して試験片を作製した。得られた試験片について残渣膜中に発生したはんだボールをカウントして、1ピン間(1ランド間)当たりの平均はんだボール数を算出した。」と記載されている。 また、上記第5の2(1)の【0056】【表1】には、「フラックスの配合」、「はんだ接合剤組成物の配合」、及び、「ピン間ボール試験(個/ピン間)」、「せん断強度(N)」等の「評価結果」がまとめて記載されているところ、硬化剤が異なる実施例1と実施例4を比較すると、「ピン間ボール試験(個/ピン間)」が0.4であり、「せん断強度(N)」が64である実施例1に対して、「ピン間ボール試験(個/ピン間)」が0.8である実施例4は、「せん断強度(N)」が57であることから、「ピン間ボール試験(個/ピン間)」の値が大きいと、はんだ接合剤組成物のはんだ成分がピン(ランド)の上に溶融して凝集できず、残渣膜中に発生するはんだボールが多いことにより、せん断強度(N)が小さくなっていると解することができる。 そして、上記第5の2(1)の【0057】の「評価項目についても良好な結果が得られ・・・接合信頼性の高いはんだ接合剤組成物が得られることが分かった」との記載によれば、実施例1は、実施例4よりも、接合信頼性が高いといえる。 そうすると、引用発明2-1に係るはんだ接合剤組成物について、1ピン間(1ランド間)当たりの平均はんだボール数を少なくし、接合信頼性を高くするという動機付けが認められる。 (イ) また、上記第5の3(2)のとおり、引用文献3には、引用文献3記載事項1が記載されているところ、上記(ア)の「はんだ接合剤組成物のはんだ成分がピン(ランド)の上に溶融して凝集できず、残渣膜中に発生するはんだボールが多い」との現象を考慮すると、引用文献3記載事項1の「はんだ粒子を効率的に凝集させること」は、上記(ア)の「1ピン間(1ランド間)当たりの平均はんだボール数を少なく」することと共通する課題といえる。 (ウ) 一方、引用発明2-1に係るはんだ接合剤組成物は、「フラックス:42Sn/58Biはんだ粉末:96.5Sn/3.0Ag/0.5Cuはんだ粉末=20:20:60のはんだ接合剤組成物のはんだ成分の溶融開始温度が139℃及び203℃である」ものであるところ、「42Sn/58Biはんだ粉末」の共晶温度である「139℃」において、「42Sn/58Biはんだ粉末」の溶融が開始し、「フラックス:42Sn/58Biはんだ粉末:96.5Sn/3.0Ag/0.5Cuはんだ粉末=20:20:60のはんだ接合剤組成物のはんだ成分の溶融開始温度」である「203℃」で、「96.5Sn/3.0Ag/0.5Cuはんだ粉末」の溶融が開始し、「96.5Sn/3.0Ag/0.5Cuはんだ粉末」の液相線温度である「221℃」までに、「42Sn/58Biはんだ粉末」及び「96.5Sn/3.0Ag/0.5Cuはんだ粉末」が完全に溶融するものであるといえる。そうすると、「139℃」で「42Sn/58Biはんだ粉末」の銅箔ランド上への凝集が開始し、「214℃」から「42Sn/58Biはんだ粉末」及び「96.5Sn/3.0Ag/0.5Cuはんだ粉末」が完全に溶融する温度においても、凝集せずに残存するはんだ粉末の、銅箔ランド上への凝集が生じるから、はんだ接合剤組成物のはんだ成分の固相線温度から液相線温度の間で、はんだ成分であるはんだ粉末が溶融して凝集することが生じるといえる。 (エ) そして、「はんだ粒子が溶融し凝集が生じる温度」である引用文献3記載事項1の「はんだ粒子におけるはんだの融点温度」は、上記(ウ)の「はんだ成分であるはんだ粉末が溶融して凝集することが生じる」温度である「はんだ接合剤組成物のはんだ成分の固相線温度から液相線温度の間」に対応すると理解することができるから、引用発明2-1に対して上記引用文献3記載事項1を適用し、はんだ接合剤組成物のはんだ成分の固相線温度から液相線温度の間における「はんだ接合剤組成物」の粘度を、「10Pa・s以下、0.1Pa・s以上」とし、相違点4に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 ウ 小括 以上によれば、本件特許発明1は、引用発明2-1及び引用文献3記載事項1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2) 本件特許発明3について 上記(1)ア(イ)のとおり、「42Sn/58Biはんだ粉末」の共晶温度は139℃であり、「96.5Sn/3.0Ag/0.5Cuはんだ粉末」の液相線温度は221℃であるから、引用発明2-1における「はんだ接合剤組成物」の「はんだ粉末」は、本件特許発明3の「導電材料に含まれる粒子は、液相線温度が230℃以下であるはんだ粒子のみ」に相当する構成となっている。 したがって、本件特許発明3は、引用発明2-1及び引用文献3記載事項1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3) 本件特許発明4~6について 引用発明2-1における「フラックスと、42Sn/58Biはんだ粉末と、96.5Sn/3.0Ag/0.5Cuはんだ粉末とが、フラックス:42Sn/58Biはんだ粉末:96.5Sn/3.0Ag/0.5Cuはんだ粉末=20:20:60の比率で混合されたはんだ接合剤組成物」は、本件特許発明4の「錫とビスマスとを含むはんだ粒子と錫と銀と銅とを含むはんだ粒子との2種のみ」、本件特許発明5の「前記はんだ粒子が、ビスマス、インジウム、銀、銅、又は錫を含む」及び本件特許発明6の「前記はんだ粒子に含まれる金属100重量%中、ビスマスの含有量が、1重量%以上58重量%以下である」に相当する。 したがって、本件特許発明4~6は、引用発明2-1及び引用文献3記載事項1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4) 本件特許発明8について 上記(1)ア(ウ)のとおり、引用発明2-1における「42Sn/58Biはんだ粉末」及び「96.5Sn/3.0Ag/0.5Cuはんだ粉末」は、その固相線温度は139℃であり、本件特許発明8の「前記はんだ粒子の固相線温度が、115℃以上220℃以下である」に相当する。 したがって、本件特許発明8は、引用発明2-1及び引用文献3記載事項1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (5) 本件特許発明9について ア 本件特許発明9と引用発明2-1との対比 本件特許発明9と引用発明2-1とを対比すると、両者は上記(1)ア(カ)の<相違点4>に加えて、さらに次の点で相違する。 <相違点5> 本件特許発明9は、「前記はんだ粒子の粒子径が、0.01μm以上30μm以下である」のに対して、引用発明2-1は、「42Sn/58Biはんだ粉末」及び「96.5Sn/3.0Ag/0.5Cuはんだ粉末」の粒子径が、そのような値となっているか明らかでない点。 イ 判断 相違点4についての検討は、上記(1)イのとおりである。 相違点5について検討する。 上記第5の3(3)のとおり、引用文献3には、引用文献3記載事項2が記載されている。 したがって、引用発明2-1において、「42Sn/58Biはんだ粉末」及び「96.5Sn/3.0Ag/0.5Cuはんだ粉末」の粒子径を、「0.5μm以上、30μm以下」とし、相違点5に係る本件特許発明9の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 ウ 小括 以上によれば、本件特許発明9は、引用発明2-1及び引用文献3記載事項1、2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (6) 本件特許発明10について 引用発明2-1における「ペーストとしての粘性やチクソ性が良好な、はんだ接合剤組成物」は、本件特許発明10における「導電ペースト」に相当する。 したがって、本件特許発明10は、引用発明2-1及び引用文献3記載事項1、又は、引用発明2-1及び引用文献3記載事項1、2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (7) 本件特許発明11について ア 本件特許発明11と引用発明2-2との対比 (ア) 引用発明2-2における「ガラスエポキシ基板上に形成された銅箔ランド」は、本件特許発明11における「第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材」に相当する。 (イ) 引用発明2-2における「Snめっきされた1608CRチップ」は、本件特許発明11における「第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材」に相当する。 (ウ) 引用発明2-2における「加熱」された後の「銅箔ランド」に印刷された「はんだ接合剤組成物」は、本件特許発明11における「前記第1の接続対象部材と、前記第2の接続対象部材とを接続している接続部」に相当する。 (エ) 引用発明2-2における「Snめっきされた1608CRチップを上記銅箔ランドの印刷膜上に載置し、加熱して作製した試験片」は、本件特許発明11における「接続構造体」に相当する。 (オ) 以上をまとめると、本件特許発明11と引用発明2-2は、上記(1)ア(カ)の相違点4、又は、上記(1)ア(カ)の相違点4及び上記(5)アの相違点5で相違する。 イ 判断 相違点4についての検討は、上記(1)イのとおりであり、相違点5についての検討は、上記(5)イのとおりである。 ウ 小括 以上によれば、本件特許発明11は、引用発明2-2及び引用文献3記載事項1、又は、引用発明2-2及び引用文献3記載事項1、2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (8) 本件特許発明12について ア 本件特許発明12と引用発明2-2との対比 本件特許発明12と引用発明2-2とを対比すると、両者は上記(1)ア(カ)の<相違点4>及び上記(5)アの<相違点5>に加えて、さらに次の点で相違する。 <相違点6> 本件特許発明12は、「前記第1の電極と前記接続部と前記第2の電極との積層方向に前記第1の電極と前記第2の電極との対向し合う部分をみたときに、前記第1の電極と前記第2の電極との対向し合う部分の面積100%中の50%以上に、前記接続部中のはんだ部が配置されている」のに対して、引用発明2-2は、「銅箔ランド」と「Snめっきされた1608CRチップ」の電極との対向し合う部分の面積100%中のどの程度の部分に、引用発明2-2における「加熱」された後の「銅箔ランド」に印刷された「はんだ接合剤組成物」が配置されているか明らかでない点。 イ 判断 相違点4についての検討は、上記(1)イのとおりであり、相違点5についての検討は、上記(5)イのとおりである。 相違点6について検討する。 上記第5の3(4)のとおり、引用文献3には、引用文献3記載事項3が記載されている。 したがって、引用発明2-2において、引用発明2-2における「加熱」された後の「銅箔ランド」に印刷された「はんだ接合剤組成物」を、「銅箔ランド」と「Snめっきされた1608CRチップ」の電極との対向し合う部分の面積100%中の50%以上に配置し、相違点6に係る本件特許発明12の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 ウ 小括 以上によれば、本件特許発明12は、引用発明2-2及び引用文献3記載事項1、3、又は、引用発明2-2及び引用文献3記載事項1~3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (9) 本件特許発明13について ア 本件特許発明13と引用発明2-3との対比 (ア) 本件特許発明13における「前記接続部の材料が、請求項1及び3~10のいずれか1項に記載の導電材料であり」と、引用発明2-3における「引用発明2-1のはんだ接合剤組成物」とは、「導電材料」である点で共通する。 (イ) 引用発明2-3における「銅箔ランド」は、本件特許発明13における「第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材」に相当する。 (ウ) 上記(ア)及び(イ)を踏まえると、本件特許発明13における「請求項1及び3~10のいずれか1項に記載の導電材料を用いて、第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材の表面上に、前記導電材料を配置する工程」と、引用発明2-3における「ガラスエポキシ基板上に形成された銅箔ランドに、引用発明2-1のはんだ接合剤組成物を印刷」とは、「導電材料を用いて、第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材の表面上に、前記導電材料を配置する工程」である点で共通する。 (エ) 引用発明2-3における「Snめっきされた1608CRチップ」は、本件特許発明13における「第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材」に相当し、引用発明2-3における「Snめっきされた1608CRチップを上記銅箔ランドの印刷膜上に載置し」は、本件特許発明13における「前記導電材料の前記第1の接続対象部材側とは反対の表面上に、第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材を、前記第1の電極と前記第2の電極とが対向するように配置する工程」に相当する。 (オ) 引用発明2-3における「はんだに合わせたリフロー条件にて加熱して試験片を作製する」工程は、「銅箔ランド」と「Snめっきされた1608CRチップ」とを「はんだ」により接続する工程であるから、本件特許発明13における「前記はんだ粒子の液相線温度以上に前記導電材料を加熱することで、前記第1の接続対象部材と前記第2の接続対象部材とを接続している接続部を、前記導電材料により形成し、かつ、前記第1の電極と前記第2の電極とを、前記接続部中のはんだ部により電気的に接続する工程」に相当する。 (カ) 引用発明2-3における「試験片の作製方法」は、本件特許発明13における「接続構造体の製造方法」に相当する。 (キ) 以上をまとめると、本件特許発明13と引用発明2-3は、上記(1)ア(カ)の相違点4、又は、上記(1)ア(カ)の相違点4及び上記(5)アの相違点5で相違する。 イ 判断 相違点4についての検討は、上記(1)イのとおりであり、相違点5についての検討は、上記(5)イのとおりである。 ウ 小括 以上によれば、本件特許発明13は、引用発明2-3及び引用文献3記載事項1、又は、引用発明2-3及び引用文献3記載事項1、2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (10) 本件特許発明14について 上記(8)と同様の理由により、本件特許発明14は、引用発明2-3及び引用文献3記載事項1、3、又は、引用発明2-3及び引用文献3記載事項1~3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 3 引用文献4を主引用例とする取消理由について (1) 本件特許発明1について ア 本件特許発明1と引用発明4-1との対比 (ア) 引用発明4-1における「熱硬化性樹脂」は、本件特許発明1における「熱硬化性成分」に相当する。 (イ) 上記第5の4(4)の引用文献4記載事項2によれば、Sn-Ag-In系合金において、Agはピーク温度を下げる効果があり、その添加量が1質量%よりも少ないと合金のピーク温度が200℃以上となってしまい、InはSn主成分の固相線温度を下げるものであり、13質量%よりも少ないと、Agを添加してもピーク温度を200℃以下に下げることができないものである。 また、上記第5の6(1)の【図5】のスズおよびビスマスの2元状態図によれば、スズの融点は約232℃である。 したがって、引用発明4-1における「Inが13~22質量%、Agが1~9質量%、残部Sn」「からなる合金」の「低融点粒子」である「導電性粒子」は、本件特許発明1における「液相線温度が300℃以下であるはんだ粒子」に相当する。 また、上記第5の6(1)の【図5】のスズおよびビスマスの2元状態図によれば、引用発明4-1における「Biが25~40質量%、残部Snからなる合金」の「低融点粒子」である「導電性粒子」は、本件特許発明1における「液相線温度が300℃以下であるはんだ粒子」に相当する。 そして、引用発明4-1の「熱硬化性樹脂中に導電性粒子を含む異方性導電材料において、前記導電性粒子は、固相線温度が125℃以上であり、ピーク温度が200℃以下であるとともに、固相線温度とピーク温度との間の温度差が15℃以上である低融点粒子である異方性導電材料であって、 前記低融点粒子は、Inが13~22質量%、Agが1~9質量%、残部Sn、又は、Biが25~40質量%、残部Snからなる合金であ」る「異方性導電材料」は、本件特許発明1における「含まれる導電性粒子粉体は、液相線温度が300℃以下であるはんだ粒子のみ」である「導電材料」に相当する。 (ウ) 引用発明4-1の「導電性粒子」は、「固相線温度が125℃以上であり、ピーク温度が200℃以下であるとともに、固相線温度とピーク温度との間の温度差が15℃以上である低融点粒子」であるから、本件特許発明1における「固相線温度」と「液相線温度との差の絶対値が、5℃以上」である「はんだ粒子」に相当する。 (エ) 引用発明4-1における「熱硬化性樹脂中に導電性粒子を含む異方性導電材料において、前記導電性粒子は、固相線温度が125℃以上であり、ピーク温度が200℃以下であるとともに、固相線温度とピーク温度との間の温度差が15℃以上である低融点粒子である異方性導電材料であって、 前記低融点粒子は、Inが13~22質量%、Agが1~9質量%、残部Sn、又は、Biが25~40質量%、残部Snからなる合金であ」る「異方性導電材料」は、1種類の導電性粒子を含むものであるから、「金属の均質化の結果、液体が短期間のみ存在し、固体合金および/またはインターメタリックの混合物を形成する」組成物ではなく、本件特許発明1における「遷移的液相焼結組成物」に該当しない。 (オ) 以上をまとめると、本件特許発明1と引用発明4-1との一致点及び相違点は次のとおりである。 <一致点> 「 熱硬化性成分と、はんだ粒子とを含み、 導電材料に含まれる導電性粒子粉体は、液相線温度が300℃以下であるはんだ粒子のみであり、 前記はんだ粒子の固相線温度と前記はんだ粒子の液相線温度との差の絶対値が、5℃以上である、 導電材料(但し、遷移的液相焼結組成物を除く)。」 <相違点7> 本件特許発明1は、「導電材料100重量%中、前記はんだ粒子の含有量が、15重量%以上であ」るのに対して、引用発明4-1は、「熱硬化性樹脂中に導電性粒子を含む異方性導電材料」における「導電性粒子」の含有量が明らかでない点。 <相違点8> 本件特許発明1は、「前記はんだ粒子の固相線温度における導電材料の粘度が、0.1Pa・s以上50Pa・s以下であり、 前記はんだ粒子の液相線温度における導電材料の粘度が、0.1Pa・s以上10Pa・s以下である」のに対して、引用発明4-1は、「異方性導電材料」の粘度が、そのような値となっているか明らかでない点。 イ 判断 (ア) 相違点7について 上記第5の4(2)によれば、引用発明4-1は、上下導体間の導電率が向上するという効果を奏するものであり、上記第5の5(2)によれば、引用文献5記載事項1は、導通信頼性がより一層高くなるものであるから、両者は導電性を向上するとの点で共通しているといえる。 したがって、引用発明4-1において、導通信頼性をより一層高めるために、「熱硬化性樹脂中に導電性粒子を含む異方性導電材料」における「導電性粒子」の含有量を20重量%以上とし、相違点7に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 (イ) 相違点8について a 上記第5の4(1)の【0013】の「この熱硬化性樹脂が硬化する前に、低融点粒子が溶融し、液化した熱硬化性樹脂内で流動して導体に濡れることにより接合するものである。」との記載によれば、引用発明4-1に係る異方性導電材料の、はんだ粒子の融点における粘度について、溶融した低融点粒子が熱硬化性樹脂内で流動して導体に濡れることができる程度の適度な値とする動機付けが認められる。 b また、上記第5の4(1)の【0015】の「共晶組成や凝固範囲の狭い低融点粒子を用いた異方性導電材料では、流動性が良過ぎるため、熱圧着したときに、上下導体間から隣接導体間に押し出された樹脂とともに低融点粒子も隣接導体間に移動してしまう。その結果、上下導体間に存在する低融点粒子が少なくなって上下導体間の接続抵抗が大きくなり、また隣接導体間に存在する低融点粒子が多くなって隣接導体間の絶縁抵抗が小さくなってしまう」との記載によれば、引用発明4-1に係る異方性導電材料の、はんだ粒子の融点における粘度について、低融点粒子が上下導体間から隣接導体間に押し出されることがなく、上下導体間の接続抵抗や隣接導体間の絶縁抵抗が適切な値となる程度の適度な値とする動機付けが認められる。 c そして、上記第5の3(2)のとおり、引用文献3には、引用文献3記載事項1が記載されているところ、引用文献3記載事項1の「はんだ粒子を効率的に凝集させること」は、上記aの「溶融した低融点粒子が熱硬化性樹脂内で流動して導体に濡れることができる」ことと共通し、引用文献3記載事項1の「接続部以外への導電ペーストのはみだしを抑制すること」は、上記bの「低融点粒子が上下導体間から隣接導体間に押し出されることがなく」、「隣接導体間に存在する低融点粒子が多くなって隣接導体間の絶縁抵抗が適切な値となる程度の適度な値とする」ことと共通する課題といえる。 d さらに、上記第5の4(1)の【0019】の「本発明に使用する低融点粒子は、固相線温度とピーク温度間の温度差が15℃以上でなければならない。この温度差が15℃よりも小さいと、加熱時に低融点粒子が一挙に溶融し、上下の導体間に挟まれた低融点粒子が押し流され、導体間に低融点粒子が少なくなって導体間の接続抵抗が大きくなってしまう。」との記載によれば、引用発明4-1は、低融点粒子の固相線温度から液相線温度の間で、低融点粒子が溶融して凝集する際に、「加熱時に低融点粒子が一挙に溶融し、上下の導体間に挟まれた低融点粒子が押し流され、導体間に低融点粒子が少なくなって導体間の接続抵抗が大きくなってしまう」という課題を解決しようとするものである。 e そして、「はんだ粒子が溶融し凝集が生じる温度」である引用文献3記載事項1の「はんだ粒子におけるはんだの融点温度」は、上記dの「低融点粒子が溶融して凝集する」温度である「低融点粒子の固相線温度から液相線温度の間」に対応すると理解することができるから、引用発明4-1に対して上記引用文献3記載事項1を適用し、低融点粒子の固相線温度から液相線温度の間における「異方性導電材料」の粘度を、「10Pa・s以下、0.1Pa・s以上」とし、相違点8に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 ウ 小括 以上によれば、本件特許発明1は、引用発明4-1並びに引用文献3記載事項1及び引用文献5記載事項1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2) 本件特許発明3について 上記(1)ア(イ)のとおり、引用発明4-1の「異方性導電材料」は、「熱硬化性樹脂中に導電性粒子を含む異方性導電材料において、前記導電性粒子は、固相線温度が125℃以上であり、ピーク温度が200℃以下であるとともに、固相線温度とピーク温度との間の温度差が15℃以上である低融点粒子である異方性導電材料であって、 前記低融点粒子は、Inが13~22質量%、Agが1~9質量%、残部Sn、又は、Biが25~40質量%、残部Snからなる合金であ」るから、本件特許発明3における「導電材料に含まれる粒子は、液相線温度が230℃以下であるはんだ粒子のみ」に相当する構成となっている。 したがって、本件特許発明3は、引用発明4-1並びに引用文献3記載事項1及び引用文献5記載事項1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3) 本件特許発明4~7について 引用発明4-1における「Inが13~22質量%、Agが1~9質量%、残部Sn」、「からなる合金」の「低融点粒子」である「導電性粒子」は、本件特許発明4の「錫とインジウムとを含むはんだ粒子のみ」、本件特許発明5の「前記はんだ粒子が、ビスマス、インジウム、銀、銅、又は錫を含む」及び本件特許発明7の「前記はんだ粒子に含まれる金属100重量%中、インジウムの含有量が、1重量%以上52重量%以下である」に相当する。 また、引用発明4-1における「Biが25~40質量%、残部Snからなる合金」の「低融点粒子」である「導電性粒子」は、本件特許発明4の「錫とビスマスとを含むはんだ粒子のみ」、本件特許発明5の「前記はんだ粒子が、ビスマス、インジウム、銀、銅、又は錫を含む」、及び、本件特許発明6の「前記はんだ粒子に含まれる金属100重量%中、ビスマスの含有量が、1重量%以上58重量%以下である」に相当する。 したがって、本件特許発明4~7は、引用発明4-1並びに引用文献3記載事項1及び引用文献5記載事項1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4) 本件特許発明8について 引用発明4-1における「Sn-Ag-In系合金における好適な組成であるSn-3.5Ag-20Inの固相線温度は144℃であり、 Sn-Bi系合金における好適な組成であるSn-25Biの固相線温度は139℃であり」によれば、引用発明4-1の導電性粒子は、本件特許発明8の「前記はんだ粒子の固相線温度が、115℃以上220℃以下である」に相当する。 したがって、本件特許発明8は、引用発明4-1並びに引用文献3記載事項1及び引用文献5記載事項1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (5) 本件特許発明9について 引用発明4-1における「低融点粒子の所定粒径は10μmであり、6μm未満粒子が8%(個数)、14μm超粒子が8%(個数)、残部が6~14μmの粒子であり」によれば、引用発明4-1の低融点粒子の平均粒径は、6~14μmの範囲内の値であるといえる。 したがって、本件特許発明9は、引用発明4-1並びに引用文献3記載事項1及び引用文献5記載事項1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (6) 本件特許発明10について 引用発明4-1は、「ペースト状にも適用できる」ものである。 したがって、本件特許発明10は、引用発明4-1並びに引用文献3記載事項1及び引用文献5記載事項1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (7) 本件特許発明11について ア 本件特許発明11と引用発明4-2との対比 (ア) 引用発明4-2における「隣接導体間隔が150μmのプリント基板」は、本件特許発明11における「第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材」に相当する。 (イ) 引用発明4-2における「フレキシブル基板」は、本件特許発明11における「第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材」に相当する。 (ウ) 引用発明4-2における「熱圧着」された後の「異方性導電材料」は、本件特許発明11における「前記第1の接続対象部材と、前記第2の接続対象部材とを接続している接続部」に相当する。 (エ) 引用発明4-2における「プリント基板」と「フレキシブル基板」を「熱圧着して作製した試験サンプル」は、本件特許発明11における「接続構造体」に相当する。 (オ) 以上をまとめると、本件特許発明11と引用発明4-2は、上記(1)ア(オ)の相違点7及び相違点8で相違する。 イ 判断 相違点7、8についての検討は、上記(1)イのとおりである。 ウ 小括 以上によれば、本件特許発明11は、引用発明4-2並びに引用文献3記載事項1及び引用文献5記載事項1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (8) 本件特許発明12について ア 本件特許発明12と引用発明4-2との対比 本件特許発明12と引用発明4-2とを対比すると、両者は上記(1)ア(オ)の<相違点7>及び<相違点8>に加えて、さらに次の点で相違する。 <相違点9> 本件特許発明12は、「前記第1の電極と前記接続部と前記第2の電極との積層方向に前記第1の電極と前記第2の電極との対向し合う部分をみたときに、前記第1の電極と前記第2の電極との対向し合う部分の面積100%中の50%以上に、前記接続部中のはんだ部が配置されている」のに対して、引用発明4-2は、「隣接導体間隔が150μmのプリント基板」の電極と「フレキシブル基板」の電極との対向し合う部分の面積100%中のどの程度の部分に、引用発明4-2における「熱圧着」された後の「異方性導電材料」が配置されているか明らかでない点。 イ 判断 相違点7、8についての検討は、上記(1)イのとおりである。 相違点9について検討する。 上記第5の5(3)のとおり、引用文献5には、引用文献5記載事項2が記載されている。 したがって、引用発明4-2において、引用発明4-2における「熱圧着」された後の「異方性導電材料」を、「隣接導体間隔が150μmのプリント基板」の電極と「フレキシブル基板」の電極との対向し合う部分の面積100%中の50%以上に配置し、相違点9に係る本件特許発明12の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 ウ 小括 以上によれば、本件特許発明12は、引用発明4-2並びに引用文献3記載事項1及び引用文献5記載事項1、2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (9) 本件特許発明13について ア 本件特許発明13と引用発明4-3との対比 (ア) 本件特許発明13における「前記接続部の材料が、請求項1及び3~10のいずれか1項に記載の導電材料であり」と、引用発明4-3における「引用発明4-1の異方性導電材料」とは、「導電材料」である点で共通する。 (イ) 引用発明4-3における「隣接導体間隔が150μmのプリント基板」は、本件特許発明13における「第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材」に相当する。 (ウ) 引用発明4-3における「フレキシブル基板」は、本件特許発明13における「第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材」に相当する。 (エ) 上記(ア)~(ウ)を踏まえると、本件特許発明13における「請求項1及び3~10のいずれか1項に記載の導電材料を用いて、第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材の表面上に、前記導電材料を配置する工程」及び「前記導電材料の前記第1の接続対象部材側とは反対の表面上に、第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材を、前記第1の電極と前記第2の電極とが対向するように配置する工程」と、引用発明4-3における「隣接導体間隔が150μmのプリント基板とフレキシブル基板間に引用発明4-1の異方性導電材料を挟み込んで」とは、「導電材料を用いて、第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材の表面上に、前記導電材料を配置する工程」である点で共通する。 (オ) 引用発明4-3における「熱圧着装置により200℃で1分間熱圧着する」工程は、「プリント基板」と「フレキシブル基板」とを異方性導電材料により接続する工程であるから、本件特許発明13における「前記はんだ粒子の液相線温度以上に前記導電材料を加熱することで、前記第1の接続対象部材と前記第2の接続対象部材とを接続している接続部を、前記導電材料により形成し、かつ、前記第1の電極と前記第2の電極とを、前記接続部中のはんだ部により電気的に接続する工程」に相当する。 (カ) 引用発明4-3における「試験サンプルの作製方法」は、本件特許発明13における「接続構造体の製造方法」に相当する。 (キ) 以上をまとめると、本件特許発明13と引用発明4-3は、上記(1)ア(オ)の相違点7及び相違点8で相違する。 イ 判断 相違点7、8についての検討は、上記(1)イのとおりである。 ウ 小括 以上によれば、本件特許発明13は、引用発明4-3並びに引用文献3記載事項1及び引用文献5記載事項1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (10) 本件特許発明14について 上記(8)と同様の理由により、本件特許発明14は、引用発明4-3並びに引用文献3記載事項1及び引用文献5記載事項1、2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7 むすび 以上のとおり、本件の請求項1、3~14に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 また、請求項2は、本件訂正により削除されたため、請求項2に対する特許異議の申立ては、対象となる請求項が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-701034

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