特許異議申立
2023-700620
樹脂製継手および排水配管構造
- 審判番号
- 2023-700620
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-067975
- 登録番号
- 7187724
- 請求日
- 2023年06月12日
- 審決日
- 2024年11月07日
- 公報発行日
- 2025年02月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社クボタケミックス
- 【権利者代理人】安田岡本弁理士法人
- 【異議申立人】赤松 智信
- 審判長/審判官
- 審判長 古屋野 浩志
- 審判官 太田 恒明
- 審判官 ▲高▼橋 祐介
- 分類
- P1652.113-YAA(E03C) / P1652.121-YAA(E03C) / P1652.537-YAA(E03C) / P1652.851-YAA(E03C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第113条第2号、特許法第120条の5第7項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7187724号発明「樹脂製継手および排水配管構造」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7187724号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~17〕について訂正することを認める。
特許第7187724号の請求項1、3~7、16~17に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7187724号(以下「本件特許」という。)の請求項1、3~7、16~17に係る特許についての出願は、令和4年4月18日に出願され、同年12月2日にその特許権の設定登録がされ、同月12日に特許掲載公報が発行された。
その特許について、令和5年6月12日に特許異議申立人赤松智信(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は同年9月27日付けで取消理由を通知し、特許権者はその指定期間内である同年11月22日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、その訂正の請求に対して申立人は同年12月26日に意見書を提出した。
その後、当審は令和6年2月13日付けで取消理由(決定の予告)を通知し、特許権者はその指定期間内である同年4月9日に意見書及び訂正請求書の提出を行い、当審は同年5月20日付けで訂正請求書に対して手続補正(方式)を指令し、特許権者はその指定期間内である同年5月27日に訂正請求書に係る手続補正書(方式)の提出を行い、その訂正の請求に対して申立人は同年8月1日に意見書を提出した。
なお、令和6年4月9日に訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)がされたことにより、令和5年11月22日にされた訂正の請求は、取り下げられたものとみなす(特許法第120条の5第7項)。
第2 訂正請求について
1 訂正の内容
令和6年4月9日付けの訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は、以下のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「上流側の上立て管に接続可能な上方立て管接続部を上端に、横枝管に接続可能な横枝管接続部を側面に、下流側の配管部材に接続可能な下方配管接続部を下端に、それぞれ有する本体部を含む最下階用樹脂製継手であって、」
と記載されているのを、
「上流側の上立て管に接続可能な上方立て管接続部を上端に、横枝管に接続可能な横枝管接続部を側面に、下流側の配管部材に接続可能な下方配管接続部を下端に、それぞれ有する本体部を含む最下階用樹脂製継手(1本のみの横枝管が接続される最下階用樹脂製継手を除く)であって、」
と訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に
「前記樹脂製継手は、排水が前記突起にあたったことに起因する前記横枝管への排水の流入を防止する流入防止機構を備えることを特徴とする、」
と記載されているのを、
「前記樹脂製継手は、排水が前記突起にあたったことに起因する前記横枝管への排水の流入を防止する流入防止機構を備え、前記突起は水膜切断用の突起であることを特徴とする、」
と訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5に
「上流側の上立て管に接続可能な上方立て管接続部を上端に、横枝管に接続可能な横枝管接続部を側面に、下流側の配管部材に接続可能な下方配管接続部を下端に、それぞれ有する本体部を含む樹脂製継手であって、」
と記載されているのを、
「上流側の上立て管に接続可能な上方立て管接続部を上端に、横枝管に接続可能な横枝管接続部を側面に、下流側の配管部材に接続可能な下方配管接続部を下端に、それぞれ有する本体部を含む(前記横枝管接続部を上下方向に2段以上備える多段式の樹脂製継手を除く単段式の)樹脂製継手であって、」
と訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に
「前記流入防止機構は、前記樹脂製継手の側面視において、前記横枝管接続部に接続される横枝管の上方側を覆う構造物が、前記突起よりも下方に存在することにより実現されることを特徴とする、」
と記載されているのを、
「前記流入防止機構は、前記樹脂製継手の側面視において、前記横枝管接続部に接続される横枝管の上方側を覆う構造物が、前記突起よりも下方に存在することにより実現され、前記突起は、水膜切断用の突起であって、排水が流下する上下方向に対して前記突起が左右対称であるために旋回流を発生させず、」
と訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に、上記訂正事項4に続けて
「前記樹脂製継手の側面視において、前記流入防止機構により排水の流入が防止される前記横枝管を接続する単段の前記横枝管接続部の管芯よりも上方に、前記突起の下端が存在することを特徴とする、」
と訂正する。
(6)訂正の単位について
訂正事項1~2に係る訂正前の請求項2~4、13~17は訂正前の請求項1を直接的又は間接的に引用するものであるから、これらの請求項1~4、13~17は一群の請求項に該当するものであり、訂正前の請求項1~4、13~17について訂正する訂正事項1~2は一群の請求項に対してされたものである。
また、訂正事項3~5に係る訂正前の請求項6~12、16~17は訂正前の請求項5を直接的又は間接的に引用するものであるから、これらの請求項5~12、16~17は一群の請求項に該当するものであり、訂正前の請求項5~12、16~17について訂正する訂正事項3~5は一群の請求項に対してされたものである。
そして、訂正前の請求項1~4、13~17と訂正前の請求項5~12、16~17は共通する請求項16~17を有するから、これらの請求項1~17は一群の請求項に該当するものであり、訂正前の請求項1~17について訂正する訂正事項1~5は一群の請求項に対してされたものである。
2 訂正の適否の判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1における発明特定事項である「上流側の上立て管に接続可能な上方立て管接続部を上端に、横枝管に接続可能な横枝管接続部を側面に、下流側の配管部材に接続可能な下方配管接続部を下端に、それぞれ有する本体部を含む最下階用樹脂製継手」について、「1本のみの横枝管が接続される最下階用樹脂製継手を除く」ことを限定するものである。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張、変更
訂正事項1は、上記アのとおり、発明特定事項を限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ウ 新規事項
訂正事項1は、令和5年9月27日付け取消理由で引用した特開2021-55417号公報(甲第1号証)に記載された発明との重なりのみを除くものであるところの、訂正前の請求項1に係る発明が引用発明と重なるために新規性、進歩性が否定されるおそれがある場合に、その重なりのみを除く訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2は、訂正前の請求項1における発明特定事項である「前記横枝管接続部よりも上流側において、前記本体部の内周面、または、前記上方立て管接続部に接続される上方部材の内周面に」「形成され」る「1以上の突起」について、「前記突起は水膜切断用の突起である」ことを限定するものである。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張、変更
訂正事項2は、上記アのとおり、発明特定事項を限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ウ 新規事項
訂正事項2により限定された事項は、本件特許明細書等における【0020】に記載された事項であるから、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的
訂正事項3は、訂正前の請求項5における発明特定事項である「上流側の上立て管に接続可能な上方立て管接続部を上端に、横枝管に接続可能な横枝管接続部を側面に、下流側の配管部材に接続可能な下方配管接続部を下端に、それぞれ有する本体部を含む樹脂製継手」について、「前記横枝管接続部を上下方向に2段以上備える多段式の樹脂製継手を除く単段式」であることを限定するものである。
よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張、変更
訂正事項3は、上記アのとおり、発明特定事項を限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ウ 新規事項
訂正事項3は、令和6年2月13日付け取消理由(決定の予告)で引用した特開2021-50594号公報(甲第2号証)に記載された発明との重なりのみを除くものであるところの、訂正前の請求項5に係る発明が引用発明と重なるために新規性、進歩性が否定されるおそれがある場合に、その重なりのみを除く訂正であるから、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的
訂正事項4は、訂正前の請求項5における発明特定事項である「前記横枝管接続部よりも上流側において、前記本体部の内周面、または、前記上方立て管接続部に接続される上方部材の内周面に」「形成され」る「1以上の突起」について、「前記突起は、水膜切断用の突起であって、排水が流下する上下方向に対して前記突起が左右対称であるために旋回流を発生させ」ないことを限定するものである。
よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張、変更
訂正事項4は、上記アのとおり、発明特定事項を限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ウ 新規事項
本件特許明細書等の【0034】には、「この樹脂製継手100は、横枝管接続部104よりも上流側において、(図5~図9に示すように)本体部の内周面、または、上方立て管接続部102に接続される上方部材(図10に示す下端が延長された立て管受口120I等)の内周面に1以上の水膜切断用の突起150が形成され、樹脂製継手100は、立て管を流下する排水が突起150にあたったことに起因する横枝管400への排水の流入を防止する(詳しくは後述する)流入防止機構を備える。」と記載されている。
また、本件特許明細書等の図5~図10における(A)から「突起150」は、樹脂製継手の中心方向に対向する面が、樹脂製継手の内面と一致する箇所を頂点として、左右に継手の中心方向に傾斜しながら垂下する辺が、当該頂点から鉛直方向からみた、それぞれが離間する長さが等しいことがみてとれ、かつ、図5~図10の(B)において上記辺の双方の下端が、図示水平方向で同じ位置にあることから、「左右対称」かつ「継手の中心方向に対向する面」が「二等辺三角形」をなすといえる。
さらに、本件特許明細書等の【0004】~【0006】には、先行技術文献の特許文献1として特開2021-55417号公報が記載され、当該文献に開示された管継手の概要と問題点(発明が解決しようとする課題)が記載されているところ、特開2021-55417号公報の【0036】には、「突起41は、図3、図4に一例を示すように……、アダプタ38の軸心側から突起41を正面に配置するようにアダプタ38の内周面を見た場合の側面視二等辺三角形状に形成されている。」と記載されている。ここで、本件特許明細書等には、「突起」の形状について特開2021-55417号公報の突起と異なる形状とすることは記載されていない。
そして、旋回流を発生させるためには、左右で非対称な部位を形成する必要があることは技術常識であるところ、以上のとおり、本件特許明細書等の「突起」が左右で非対称な部位を形成してなされたものではなく、左右対称であるから、本件特許明細書等の「突起」は、左右対称であるために旋回流を発生させないものであるといえる。
これらの記載から、本件特許明細書等には、「前記突起は、水膜切断用の突起であって、排水が流下する上下方向に対して前記突起が左右対称であるために旋回流を発生させ」ないことが記載されているといえる。
したがって、訂正事項4により限定された事項は、本件特許明細書等における【0004】~【0006】、【0034】、図5~図10に記載された事項であるから、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(5)訂正事項5について
ア 訂正の目的
訂正事項5は、訂正前の請求項5における発明特定事項である「樹脂製継手」について、「前記樹脂製継手の側面視において、前記流入防止機構により排水の流入が防止される前記横枝管を接続する単段の前記横枝管接続部の管芯よりも上方に、前記突起の下端が存在する」ことを限定するものである。
よって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張、変更
訂正事項5は、上記アのとおり、発明特定事項を限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ウ 新規事項
本件特許明細書等の図5~図9の(B)には、樹脂製継手の側面視において、流入防止機構により排水の流入が防止される横枝管を接続する単段の横枝管接続部の管芯よりも上方に、突起の下端が存在することが記載されている。
したがって、訂正事項5により限定された事項は、本件特許明細書等における図5~図9の(B)に記載された事項であるから、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
よって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(6)独立特許要件について
本件においては、訂正前の請求項1、3~7、16~17が特許異議の申立ての対象とされているので、上記(1)~(5)のとおり請求項1、3~7、16~17について特許請求の範囲の減縮が行われていても、訂正後の請求項1、3~7、16~17に係る発明には、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法126条7項の独立特許要件は課されない。
特許異議の申立ての対象とされていない請求項2、8~15に係る発明は、上記(1)~(5)のとおり特許請求の範囲の減縮が行われているから、訂正後の請求項2、8~15に係る発明には、独立特許要件が課される。そこで、訂正後の請求項2、8~15に係る発明が独立特許要件を満たすか否かについて検討したが、独立特許要件を欠くとする事由を見いだすことができない。よって、請求項2、8~15についての訂正は、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
3 まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項~第7項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~17〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められるから、本件訂正請求による訂正後の請求項1、3~7、16~17に係る発明(以下「本件訂正発明1」等という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1、3~7、16~17に記載された、次の事項により特定されるとおりのものである。なお、符号1A等は分説のため当審で付与した。分説された本件訂正発明1等の発明特定事項を、符号に基づき、以下「本件発明特定事項1A」等という。
「 【請求項1】
1A 上流側の上立て管に接続可能な上方立て管接続部を上端に、
1B 横枝管に接続可能な横枝管接続部を側面に、
1C 下流側の配管部材に接続可能な下方配管接続部を下端に、
1D それぞれ有する本体部を含む最下階用樹脂製継手(1本のみの横枝管が接続される最下階用樹脂製継手を除く)であって、
1E 前記横枝管接続部よりも上流側において、前記本体部の内周面、または、前記上方立て管接続部に接続される上方部材の内周面に1以上の突起が形成され、
1F 前記樹脂製継手は、排水が前記突起にあたったことに起因する前記横枝管への排水の流入を防止する流入防止機構を備え、前記突起は水膜切断用の突起である
1G ことを特徴とする、樹脂製継手。
【請求項3】
3H 前記横枝管接続部より上流側において、前記上立て管の内径よりも前記突起が出っ張るとともに、
3I 前記流入防止機構は、前記樹脂製継手の上面視において、前記横枝管接続部に接続される横枝管と対面する領域に前記突起が存在しないことにより実現される
3G ことを特徴とする、請求項1に記載の樹脂製継手。
【請求項4】
4J 前記流入防止機構は、前記横枝管の管芯を水平方向または垂直方向とした前記樹脂製継手の上面視において、前記上方立て管接続部に接続される上立て管の断面を、前記上立て管の管芯を中心として90度間隔で前記横枝管の管芯の延長線を線対称軸として4分割して、45度回転させた扇型形状の4領域の中で、前記上立て管の管芯まで延長した前記延長線を含む領域に対して180度回転させた領域に前記突起が存在しないことにより実現される
4G ことを特徴とする、請求項3に記載の樹脂製継手。
【請求項5】
5A 上流側の上立て管に接続可能な上方立て管接続部を上端に、
5B 横枝管に接続可能な横枝管接続部を側面に、
5C 下流側の配管部材に接続可能な下方配管接続部を下端に、
5D それぞれ有する本体部を含む(前記横枝管接続部を上下方向に2段以上備える多段式の樹脂製継手を除く単段式の)樹脂製継手であって、
5E 前記横枝管接続部よりも上流側において、前記本体部の内周面、または、前記上方立て管接続部に接続される上方部材の内周面に1以上の突起が形成され、
5F 前記樹脂製継手は、排水が前記突起にあたったことに起因する前記横枝管への排水の流入を防止する流入防止機構を備え、
5H 前記横枝管接続部より上流側において、前記上立て管の内径よりも前記突起が出っ張るとともに、
5K 前記流入防止機構は、前記樹脂製継手の側面視において、前記横枝管接続部に接続される横枝管の上方側を覆う構造物が、前記突起よりも下方に存在することにより実現され、
5K2 前記突起は、水膜切断用の突起であって、排水が流下する上下方向に対して前記突起が左右対称であるために旋回流を発生させず、
5K3 前記樹脂製継手の側面視において、前記流入防止機構により排水の流入が防止される前記横枝管を接続する単段の前記横枝管接続部の管芯よりも上方に、前記突起の下端が存在する
5G ことを特徴とする、樹脂製継手。
【請求項6】
6L 前記構造物は、前記本体部に設けられた庇である
6G ことを特徴とする、請求項5に記載の樹脂製継手。
【請求項7】
7M 前記樹脂製継手は、前記本体部とは別部材であって、前記本体部の横枝管接続部に接続される枝管受口をさらに含み、
7N 前記構造物は、前記枝管受口に設けられた庇である
7G ことを特徴とする、請求項5に記載の樹脂製継手。
【請求項16】
16O 請求項1~請求項15のいずれかに記載の樹脂製継手を最下階または最下階以外の床スラブに施工した
16P ことを特徴とする、排水配管構造。
【請求項17】
17Q 前記下方配管接続部に、熱膨張性耐火材料を含む樹脂組成物を成形することによって作製された配管部材が接続された
17P ことを特徴とする、請求項16に記載の排水配管構造。」
第4 特許異議申立理由、取消理由の概要
1 特許異議申立理由の概要
申立人は、特許異議申立書において、証拠方法として甲第1号証~甲第4号証を提出し、本件特許の請求項1、3、4、5、6、7、16、17に係る特許に対し次の理由を申し立てた。
(新規性)本件特許の請求項1、3、4、16に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であるから、本件特許の請求項1、3、4、16に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(進歩性)本件特許の請求項17に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明及び周知技術(甲第3号証)に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項17に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(新規性)本件特許の請求項5、7、16に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証に記載された発明であるから、本件特許の請求項5、7、16に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(進歩性)本件特許の請求項6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証及び甲第4号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(進歩性)本件特許の請求項5、6、7、16、17に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証に記載された発明及び周知技術(甲第3号証)に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項17に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
2 令和5年9月27日付けの取消理由の概要
本件特許の請求項1、3~7、16~17に係る特許に対して、当審が令和5年9月27日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(新規性)請求項1、3、4、16、17に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であり、また、請求項5、6、7、16、17に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証に記載された発明であるから、請求項1、3、4、5、6、7、16、17に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(進歩性)請求項1、3、4、16、17に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明に基いて、また、請求項5、6、7、16、17に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、3、4、5、6、7、16、17に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
3 令和6年2月13日付けの取消理由(決定の予告)の概要
令和5年11月22日付けの訂正請求により訂正された本件特許の請求項5~7、16~17に係る特許に対して、当審が令和6年2月13日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。
(明確性)特許請求の範囲の請求項5~7、16~17の記載は明確ではないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。したがって、請求項5~7、16~17に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(進歩性)請求項5~7、16~17に係る発明は、甲第2号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。したがって、請求項5~7、16~17に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
第5 証拠一覧、各甲号証について
1 証拠一覧
(1)申立書とともに提出された証拠
申立人によって申立書とともに提出された証拠は、以下のとおりである。
甲第1号証 :特開2021-55417号公報
甲第2号証 :特開2021-50594号公報
甲第3号証 :特開2019-215076号公報
甲第4号証 :特開2016-69982号公報
(2)令和5年12月26日付けの意見書とともに提出された証拠
申立人によって令和5年12月26日付けの意見書とともに提出された証拠は、以下のとおりである。
甲第5号証 :意匠登録第1457687号公報
甲第6号証 :意匠登録第1179218号公報
甲第7号証 :特開2011-117133号公報
(3)令和6年8月1日付けの意見書とともに提出された証拠
申立人によって令和6年8月1日付けの意見書とともに提出された証拠は、以下のとおりである。
甲第8号証 :カタログ「樹脂製単管式排水システム ビニコア V-CP V-HQ V-LJ Series」、2022年3月31日、前澤化成工業株式会社、p.1~3,p14~17,最終ページ
以下、各甲号証を「甲1」等という。
2 甲1
(1)記載事項
甲1には、次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。以下同様。)。
ア 「【0023】
以下、図1~図4を参照し、本発明の一実施形態に係る管継手を建物の排水システムに適用した場合の一例について説明する。
……
図1に示すように排水システム10は、立主管(第1の縦管)20と、該立主管20の下端部に接続された集合継手21と、集合継手21の下端部9に接続された下部接続管(第2の縦管:直管)22と、下部接続管22に順次接続された脚部継手23と、横主管25を備えている。
【0024】
立主管20は、各階層(床スラブ)を通過するように設けられている。……
【0025】
複数の集合継手のうち、図1に示すように、建物の最下層に設けられた最下層用の集合継手21に、後述する本実施形態の特徴的な構成が適用されている。
集合継手21は筒状の継手管本体26を有し、その外周面には、周回りに3つの枝管接続部27が形成され、それぞれに横枝管(横管)28が接続されている。
横枝管28は、排水設備から排出された排水を枝管接続部27を介し継手管本体26の内部に導く。継手管本体26の上端部には第1の縦管接続部26Aが形成され、継手管本体部26の下端部には第2の縦管接続部26Bが形成されている。
【0026】
継手管本体26の第1の縦管接続部26Aに、アダプタ38を介し立主管20の下端部が接合され、継手管本体26の第2の縦管接続部26Bに内径均一の下部接続管(直管)22が接続されている。下部接続管22の下端部には脚部継手23が接続されている。脚部継手23は側面視L字型の曲り管部30の両端部に受口部31を有している。
【0027】
下部接続管22は、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂と熱膨張性耐火材料である熱膨張性黒鉛とを含有する樹脂組成物からなる。すなわち、下部接続管22は、熱膨張性耐火材料を含む樹脂組成物を押出成形することによって作製される。
これらの熱膨張性耐火材料を設けておくと、床スラブに設けた貫通孔に下部接続管22を挿通するように配置した場合、耐火性を発揮できる。」
イ 「【0030】
【0030】
横枝管接続部27は、図2に示すように、継手管本体26の周壁から径方向の外側に向けて延在されている。本実施形態の例では横枝管接続部27は3つ形成されている。
3つの横枝管接続部27のうち、2つが継手管本体26の中心軸Oを挟む位置に各別に配置されている。残り1つの横枝管接続部27は、径方向のうち、前記2つの横枝管接続部27それぞれが伸びる方向と、上面視で90゜をなす方向に延在されている。」
ウ 「【0031】
継手管本体26は、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、非膨張性黒鉛や水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの難燃剤を0.1~10.0重量部の割合で含むポリ塩化ビニル系樹脂組成物からなる。継手管本体26は、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物を成形機のキャビティ内に射出充填されて得られる。」
エ 「【0032】
集合継手21には、図2に示すように、立主管20の下端部が接続される継手管本体26の上端の縦管接続部26Aに、縦パッキン37を備えた筒型のアダプタ38が装着され、更に、アダプタ38の上端部に端部処理部材39が嵌着されている。」
オ 「【0034】
アダプタ38は、外周壁下部に嵌合部38bを有する。この嵌合部38bはアダプタ38の外周壁上部38cより小径であり、継手管本体26の上部側の縦管接続部26Aに嵌合部38bを挿入することでアダプタ38を継手管本体26の縦管接続部26Aに嵌合できる。
アダプタ38の内周部であって、嵌合部38bの下端側に内向きリング状の内周フランジ40が形成されている。この内周フランジ40の内周縁に管軸方向に所定の長さで延在するリング状の延出片40Aが形成され、この延出辺40Aの内周周りに所定の間隔で複数の突起41が形成されている。
【0035】
本実施形態において、内周フランジ40の張出長さ(筒型の嵌合部38bの内周面から嵌合部38bの軸心に向かう径方向に沿う内周フランジ40の突出長さ)は、縦パッキン37に設けた内周段部37cを支持できる張出長さに設定されている。従って、内周フランジ40の内径は、縦パッキン37における内周段部37cの内径と略同一であり、縦パッキン37に挿入される立主管20の下端部の内径と略同一である。
……
【0036】
本実施形態の突起41は、内周フランジ40の内周方向に一定間隔で6つ形成されている。即ち、この例の場合、突起41が内周フランジ40の内周方向に60゜間隔で6つ形成されている。突起41は、内周フランジ40の周方向に等間隔で均等に形成されていることが好ましい。
突起41は、図3、図4に一例を示すようにアダプタ38の開口部をその中心軸線方向から見た場合の平面視矩形状、かつ、アダプタ38の軸心側から突起41を正面に配置するようにアダプタ38の内周面を見た場合の側面視二等辺三角形状に形成されている。
……
【0039】
……
突起41は、内周フランジ40の内周縁を通過して落下する筒状の排水流の水膜に切れ目を入れて水膜に分断部分を生成するために設けられている。」
カ 「【0052】
なお、突起41、50~56を設ける位置は、平面視、横管接続部27の開口に位置を合わせることが望ましいが、突起をアダプタ38の周方向に複数設けた場合は周方向に位置が多少ずれていても、差し支えない。横管接続部27を1つのみ設ける場合に、突起を1つのみ設ける場合もあるが、その場合は、平面視した場合に横管接続部27の開口に突起を位置合わせして設置することが望ましい。」
キ 「【図2】
[図:0001419311000001.jpg]
」
(2)甲1発明
上記(1)から、甲1には、次の発明(以下「甲1発明1」という。)が記載されている。なお、引用箇所の段落番号等を併記し、また、分説された甲1発明1の発明特定事項に本件発明1特定事項等の符号におけるA等に概ね対応させたa等を含む符号を付した(以下同様。)。
「1a,b,c,dア
建物の最下層に設けられた最下層用の集合継手21であって(【0025】)、
立主管20は、各階層(床スラブ)を通過するように設けられており(【0024】)、
集合継手21は筒状の継手管本体26を有し、その外周面には、枝管接続部27が形成され、横枝管28が接続されており、
継手管本体26の上端部には第1の縦管接続部26Aが形成され、継手管本体部26の下端部には第2の縦管接続部26Bが形成されており(【0025】)、
継手管本体26の第1の縦管接続部26Aに、アダプタ38を介し立主管20の下端部が接合され、継手管本体26の第2の縦管接続部26Bに内径均一の下部接続管22が接続されており(【0026】)、
1dイ
横枝管接続部27は、継手管本体26の周壁から径方向の外側に向けて延在されており(【0030】)、
継手管本体26は、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物からなり(【0031】)、
1e,h
立主管20の下端部が接続される継手管本体26の上端の縦管接続部26Aに、縦パッキン37を備えた筒型のアダプタ38が装着され(【0032】)、
アダプタ38の内周部に内向きリング状の内周フランジ40が形成されており、この内周フランジ40の内周縁に突起41が形成されており(【0034】)、
内周フランジ40の内径は、立主管20の下端部の内径と略同一であり(【0035】)、
突起41は、アダプタ38の軸心側から突起41を正面に配置するようにアダプタ38の内周面を見た場合の側面視二等辺三角形状に形成されており(【0036】)、
突起41は、内周フランジ40の内周縁を通過して落下する筒状の排水流の水膜に切れ目を入れて水膜に分断部分を生成するために設けられており(【0039】)、
1f,i,j
突起41を設ける位置は、平面視、横管接続部27の開口に位置を合わせ、横管接続部27を1つのみ設け、突起を1つのみ設ける(【0052】)、
1g
集合継手21(【0023】)。」
3 甲2
(1)記載事項
甲2には、次の事項が記載されている。
ア 「【0025】
〔第1実施形態〕
以下、図面を参照し、本発明の第1実施形態に係る管継手を備えた継手構造について説明する。管継手1は、例えば、建物排水用として用いられ、床スラブに形成されたスラブ貫通孔の部分に配置される。
図1および図2に示すように、本実施形態に係る管継手1は、継手本体(管継手)10を備えている。継手本体10は、上部接続管11と、下部接続管12と、上部接続管11と下部接続管12とを接続する中間管15と、を備えている。上部接続管11は、第1の縦管P1に接続可能な縦管接続部13と、縦管接続部13の側面に突設されて横管P3を接続可能な横管接続部14と、を有している。」
イ 「【0027】
上部接続管11と下部接続管12と中間管15は、例えば、塩化ビニル等の難燃性を有する樹脂で形成されている。
中間管15は、上部接続管11の下端部に接続されている。図示の例では、中間管15の上端部が、縦管接続部13の下端部内に嵌合されている。中間管15は、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂と熱膨張性黒鉛とを含有する樹脂組成物を含有する。」
ウ 「【0031】
下部接続管12は、上方よりも下方が縮径された管状をなしている。下部接続管12は、中間管15に接続される接続管部16と、接続管部16から下方に延び、下方に向かうに従い漸次、縮径する傾斜管部17と、傾斜管部17の下端部に設けられ、第2の縦管P2が接続される下側管部18と、を備えている。接続管部16内には、中間管15が嵌合されている。下側管部18内には、第2の縦管P2が嵌合されている。接続管部16、傾斜管部17および下側管部18は、例えば合成樹脂材料により一体形成されている。
【0032】
上部接続管11の上端部(縦管接続部13の上端部)には、第1ブッシュ21と、第1パッキン22と、第1リング23と、が設けられている。
第1ブッシュ21は、嵌合部21aと、支持部21cと、第一旋回羽根21bと、を備えている。嵌合部21aは、縦管接続部13内に嵌合する管状に形成されている。支持部21cは、嵌合部21aから下方に延びている。第一旋回羽根21bは、支持部21cの下端部に設けられている。第一旋回羽根21bは、中心軸線O回りに延びている。
……
【0046】
更に、中間管15の内部に第二の旋回羽根30が設けられ、下部接続管12の内部に第三の旋回羽根31が設けられている。
第二旋回羽根30と第三旋回羽根31はともに、第一旋回羽根21bと同様、継手本体10内を流下する排水を旋回流とする作用を奏する。」
エ 「【0096】
〔第2実施形態〕
本発明の管継手は、以下に説明する各形態のようにその構成を様々に変形することができる。
例えば、図11に示す管継手40に示すように上部接続管11と中間管15との間に、上部接続管11に設けた横管接続部14と同等構成の横管接続部14を単数あるいは複数設けた多段構成の管継手に本発明を適用することができる。
第2実施形態において、上部接続管11の下方に増設用の延長管37と継手管本体38が設けられ、継手管本体38の外周部に複数の横管継手部14が形成されている。継手管本体38の下端部に中間管15と下部接続管12が接合されている。図11の継手管本体38には図11に示す縦断面において左右に対向するように一対の横管接続部14が形成されている。」
オ 「【0099】
第2実施形態の構造においては、継手管本体38の左右一対の横管接続部14にもそれぞれ横管継手本体部41と第3パッキン42とカバー部材43を備えたブッシュ45が接続されている。
そして、図11に示すように上部接続管11に設けた横管接続部14に対向する側であって、継手管本体38の左側に設けた横管接続部14に逆流防止リブ(逆流防止部)50を備えたブッシュ45が嵌合されている。
【0100】
……
第2実施形態の逆流防止リブ50は、横管継手本体部41の先端面から突出され、第1実施形態の逆流防止リブ29と同様に横管継手本体部41の先端面に開口されている開口部41dの左右両側に突出された長方形板状の縦リブ50Aを備える。また、逆流防止リブ50は、左右の縦リブ50A、50Aの上端部どうしを接続する湾曲板からなる庇部50Bを備えている。」
カ 「【0102】
図11の右側下方のブッシュ45には横管P5(当審注:「横管P5」は「横管P6」の誤記と認める。)が接続され、左側下方のブッシュ45には横管P6(当審注:「横管P6」は「横管P5」の誤記と認める。)が接続されている。
……
【0103】
図11に示す構造の管継手40においては、右上部側の横管P4から上部接続管11に排水が流入すると、図11の矢印Sに示すように排水が落下する場合がある。ここで、矢印Sの方向の下方には横管P5を接続した横管接続部14が設けられているので、場合によっては矢印S方向に落下する排水の一部が横管接続部14を介し横管P5に逆流するおそれがある。
ここで、逆流防止リブ50は、横管接続部14の開口部41dの左右両側に縦リブ50Aを有し、それらの上部側に庇部50Bを有するので、これらが落下する排水を受け、横管接続部14を介し横管P5へ排水が逆流することを防止する。
また、上述の排水が旋回流となって上部接続管11から落下する場合、横管接続部14の左右両側の縦リブ50A、50Aが螺旋流となっている排水を受け、横管接続部14を介し横管P5側へ排水が逆流することを防止できる。」
キ 「【図1】
[図:0001419311000002.jpg]
」
ク 「【図11】
[図:0001419311000003.jpg]
」
ケ 「【図12】
[図:0001419311000004.jpg]
」
(2)甲2発明
上記(1)から、甲2には、次の発明(以下「甲2発明1」という。)が記載されている。
「2a,b1,c,dア
継手本体10を備えており、継手本体10は、上部接続管11と、下部接続管12と、上部接続管11と下部接続管12とを接続する中間管15と、を備えており、上部接続管11は、第1の縦管P1に接続可能な縦管接続部13と、縦管接続部13の側面に突設されて横管P3を接続可能な横管接続部14と、を有しており(【0025】)、上部接続管11と中間管15との間に、横管接続部14を単数あるいは複数設けた多段構成の管継手であり(【0096】)、
2dイ
上部接続管11と下部接続管12と中間管15は、例えば、塩化ビニル等の難燃性を有する樹脂で形成されており(【0027】)、
2c,e,h,kア
下部接続管12は、第2の縦管P2が接続される下側管部18を備えており(【0031】)、
縦管接続部13の上端部には、第1ブッシュ21が設けられており、
第1ブッシュ21は、第一旋回羽根21bを備えており、第一旋回羽根21bは、中心軸線O回りに延びており(【0032】)、
第一旋回羽根21bは、継手本体10内を流下する排水を旋回流とする作用を奏し(【0046】)、
2b2,f1,kイ,l
上部接続管11の下方に増設用の延長管37と継手管本体38が設けられ、継手管本体38の外周部に複数の横管継手部14が形成されており、継手管本体38の下端部に中間管15と下部接続管12が接合されており(【0096】)、
継手管本体38の左右一対の横管接続部14にもそれぞれ横管継手本体部41と第3パッキン42とカバー部材43を備えたブッシュ45が接続されており、そして、継手管本体38の左側に設けた横管接続部14に逆流防止リブ50を備えたブッシュ45が嵌合されており(【0099】)、
逆流防止リブ50は、横管継手本体部41の先端面から突出され、横管継手本体部41の先端面に開口されている開口部41dの左右両側に突出された長方形板状の縦リブ50Aを備え、また、逆流防止リブ50は、左右の縦リブ50A、50Aの上端部どうしを接続する湾曲板からなる庇部50Bを備えており(【0100】)、
2b3
左側下方のブッシュ45には横管P5が接続されており(【0102】)、
2f2
逆流防止リブ50は、横管接続部14の開口部41dの左右両側に縦リブ50Aを有し、それらの上部側に庇部50Bを有するので、これらが落下する排水を受け、横管接続部14を介し横管P5へ排水が逆流することを防止する
(【0103】)、
2g
管継手(【0096】)。」
4 甲8
(1)記載事項
甲8には、次の事項が記載されている。
ア 第16頁の記載(その1)
[図:0001419311000005.jpg]
イ 第16頁の記載(その2)
[図:0001419311000006.jpg]
(2)認定事項
第16頁の記載(その2)によれば、以下のことが認められる。
「減速ガイドに流れた排水は切断されることなく、減速ガイドの下方に流れていること。」
第6 判断
1 明確性について
上記第4の3で述べたように、令和6年2月13日付けの取消理由(決定の予告)において、請求項5~7、16~17の記載に対して明確性要件違反を通知した。以下、この点について検討する。
令和5年11月22日付けの訂正請求により訂正された本件特許の請求項5には、「樹脂製継手(2段式の樹脂製継手を除く)」と記載されていた。
ここで、「樹脂製継手」から除かれる「2段式の樹脂製継手」はどのようなものであるのかが、明らかではなく、また、「2段式の樹脂製継手を除く」「樹脂製継手」に、2段式以外の多段構成の樹脂製継手が含まれるのか否かが、明らかではなかった。また、請求項5を引用する請求項6~7、16~17の記載についても同様であった。
しかしながら、本件訂正により訂正された本件特許の請求項5には、「(前記横枝管接続部を上下方向に2段以上備える多段式の樹脂製継手を除く単段式の)樹脂製継手」と記載されている。これにより、「樹脂製継手」から除かれるものが、「前記横枝管接続部を上下方向に2段以上備える多段式の樹脂製継手」であることが明確になり、また、「樹脂製継手」は、「前記横枝管接続部を上下方向に2段以上備える多段式の樹脂製継手を除く単段式の」ものであるから、2段式以外の多段構成の樹脂製継手を含まないことが明らかになった。
よって、本件訂正により訂正された本件特許の請求項5における「(前記横枝管接続部を上下方向に2段以上備える多段式の樹脂製継手を除く単段式の)樹脂製継手」との記載は、不明確であるとはいえない。また、請求項5を引用する請求項6~7、16~17の記載についても同様である。
2 本件訂正発明1の新規性、進歩性について
上記第4の2で述べたように、令和5年9月27日付けの取消理由において、請求項1に係る発明に対して甲1を主たる証拠とした新規性、進歩性の欠如を通知した。以下、この点について検討する。
(1)対比
本件訂正発明1と甲1発明1とを対比する。
ア 本件発明特定事項1Aについて
甲1発明1の「立主管20」は、本件訂正発明1の「上流側の上立て管」に相当する。
また、甲1発明1では、「継手管本体26の第1の縦管接続部26Aに、アダプタ38を介し立主管20の下端部が接合され」るから、甲1発明1の「継手管本体26の第1の縦管接続部26A」は、本件訂正発明1の「上流側の上立て管に接続可能な上方立て管接続部」に相当する。
よって、甲1発明1は、本件発明特定事項1Aに相当する構成を有する。
イ 本件発明特定事項1Bについて
甲1発明1の「横枝管28」は、本件訂正発明1の「横枝管」に相当する。
また、甲1発明1では、「建物の最下層に設けられた最下層用の集合継手21は筒状の継手管本体26を有し、その外周面には、枝管接続部27が形成され、横枝管28が接続されて」いるから、甲1発明1における「継手管本体26」の「枝管接続部27」は、本件訂正発明1の「横枝管に接続可能な横枝管接続部」に相当する。
よって、甲1発明1は、本件発明特定事項1Bに相当する構成を有する。
ウ 本件発明特定事項1Cについて
甲1発明1の「下部接続管22」は、本件訂正発明1の「下流側の配管部材」に相当する。
また、甲1発明1では、「継手管本体26の第2の縦管接続部26Bに内径均一の下部接続管22が接続されて」いるから、甲1発明1の「継手管本体26の第2の縦管接続部26B」は、本件訂正発明1の「下流側の配管部材に接続可能な下方配管接続部」に相当する。
よって、甲1発明1は、本件発明特定事項1Cに相当する構成を有する。
エ 本件発明特定事項1Dについて
甲1発明1では、「集合継手21は筒状の継手管本体26を有」するところ、「継手管本体26は、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物からなり」、かつ、「集合継手21」は「建物の最下層に設けられた最下層用」であるから、甲1発明1の「集合継手21」は、本件訂正発明1の「最下階用樹脂製継手」に相当する。
また、上記ア~ウで述べたように、甲1発明1の「継手管本体26の第1の縦管接続部26A」、「継手管本体26」の「枝管接続部27」、「継手管本体26の第2の縦管接続部26B」は、それぞれ、本件訂正発明1の「上方立て管接続部」、「横枝管接続部」、「下方配管接続部」に相当するところ、甲1発明1では、「集合継手21は筒状の継手管本体26を有し、その外周面には、枝管接続部27が形成され」るものであるから、甲1発明1の「集合継手21」は、本件訂正発明1の「最下階用樹脂製継手」のように、「上方立て管接続部」、「横枝管接続部」、「下方配管接続部」を「それぞれ有する本体部を含む」といえる。
よって、甲1発明1は本件訂正発明1と、「上方立て管接続部」、「横枝管接続部」、「下方配管接続部」を「それぞれ有する本体部を含む」「最下階用樹脂製継手」である点で共通する。
オ 本件発明特定事項1Eについて
甲1発明1の「継手管本体26の上端の縦管接続部26Aに」「装着され」る「アダプタ38」、「突起41」は、それぞれ、本件訂正発明1の「前記上方立て管接続部に接続される上方部材」、「突起」に相当する。
また、甲1発明1では、「アダプタ38の内周部に内向きリング状の内周フランジ40が形成されており、この内周フランジ40の内周縁に突起41が形成されて」いるところ、「継手管本体26の上端部には第1の縦管接続部26Aが形成され」、「継手管本体26の第1の縦管接続部26Aに、アダプタ38を介し立主管20の下端部が接合され」るから、甲1発明1は、本件訂正発明1と同様に、「前記横枝管接続部よりも上流側において、」「前記上方立て管接続部に接続される上方部材の内周面に1以上の突起が形成され」るといえる。
よって、甲1発明1は、本件発明特定事項1Eに相当する構成を有する。
カ 本件発明特定事項1Fについて
甲1発明1では、「横管接続部27を1つのみ設け、突起を1つのみ設ける」ところ、「突起41を設ける位置は、平面視、横管接続部27の開口に位置を合わせ」るから、集合継手21の平面視(上面視)において、「横管接続部27」に接続される「横枝管28」と対面する領域には「突起41」が存在しないことになる。
ここで、本件発明特定事項3I(「前記流入防止機構は、前記樹脂製継手の上面視において、前記横枝管接続部に接続される横枝管と対面する領域に前記突起が存在しないことにより実現される」)を踏まえると、本件発明特定事項1Fの「流入防止機構」は、「前記樹脂製継手の上面視において、前記横枝管接続部に接続される横枝管と対面する領域に前記突起が存在しないことにより実現される」ものを含む。
そうすると、甲1発明1は、排水が「突起41」にあたったことに起因する「横枝管28」への排水の流入を防止する機構を備えるといえる。
また、甲1発明1の「突起41」は、「内周フランジ40の内周縁を通過して落下する筒状の排水流の水膜に切れ目を入れて水膜に分断部分を生成するために設けられて」いるものであるから、「水膜切断用」の「突起」であるといえる。
よって、甲1発明1は、本件発明特定事項1Fに相当する構成を有する。
キ 本件発明特定事項1Gについて
甲1発明1では、「集合継手21は筒状の継手管本体26を有」するところ、「継手管本体26は、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物からな」るから、甲1発明1の「建物の最下層に設けられた最下層用の集合継手21」は、本件訂正発明1の「樹脂製継手」に相当する。
よって、甲1発明1は、本件発明特定事項1Gに相当する構成を有する。
ク 一致点・相違点
以上のことから、本件訂正発明1と甲1発明1とは、
「1A 上流側の上立て管に接続可能な上方立て管接続部を上端に、
1B 横枝管に接続可能な横枝管接続部を側面に、
1C 下流側の配管部材に接続可能な下方配管接続部を下端に、
1D’ それぞれ有する本体部を含む最下階用樹脂製継手であって、
1E 前記横枝管接続部よりも上流側において、前記本体部の内周面、または、前記上方立て管接続部に接続される上方部材の内周面に1以上の突起が形成され、
1F 前記樹脂製継手は、排水が前記突起にあたったことに起因する前記横枝管への排水の流入を防止する流入防止機構を備え、前記突起は水膜切断用の突起である
1G 樹脂製継手。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1-1(本件発明特定事項1D)>
本件訂正発明1では、「最下階用樹脂製継手」が「1本のみの横枝管が接続される最下階用樹脂製継手を除く」ものであるのに対し、
甲1発明1では、「集合継手21」が「横管接続部27を1つのみ設け」る点。
(2)判断
甲1発明1は、「横管接続部27を1つのみ設け、突起を1つのみ設ける」ところ、「突起41を設ける位置は、平面視、横管接続部27の開口に位置を合わせ」るから、集合継手21の上面視において、「横管接続部27」に接続される「横枝管28」と対面する領域には「突起41」が存在しないことになる。
ここで、甲1発明1において「横管接続部27」を横管接続部27aと横管接続部27bの2つとした場合を検討する。平面視、横管接続部27aの開口に位置を合わせた「突起41」を突起41aと呼び、平面視、横管接続部27bの開口に位置を合わせた「突起41」を突起41bと呼ぶ。この場合には、横管接続部27a及び突起41aと横管接続部27b及び突起41bとが対面しないときがあり得るものの、横管接続部27a及び突起41aと横管接続部27b及び突起41bとが対面するときもあり得る。そうすると、甲1発明1において「横管接続部27」を横管接続部27aと横管接続部27bの2つとした場合には、集合継手21の上面視において、横管接続部27aに接続される「横枝管28」と対面する領域に突起41bが存在せず、横管接続部27bに接続される「横枝管28」と対面する領域に突起41aが存在しないということはできない。このように、甲1発明1において「横管接続部27」を2つ以上設けると、本件発明特定事項1Dに相当する構成を有するようになるものの、本件発明特定事項1Fに相当する構成を有しなくなる。
よって、本件訂正発明1は甲1発明1に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。
3 本件訂正発明5の新規性、進歩性について
上記第4の2で述べたように、令和5年9月27日付けの取消理由において、請求項5に係る発明に対して甲2を主たる証拠とした新規性、進歩性の欠如を通知した。また、令和6年2月13日付けの取消理由(決定の予告)において、請求項5に係る発明に対して甲2を主たる証拠とした進歩性の欠如を通知した。以下、これらの点について検討する。
(1)対比
本件訂正発明5と甲2発明1とを対比する。
ア 本件発明特定事項5Aについて
甲2発明1の「第1の縦管P1」は、本件訂正発明5の「上流側の上立て管」に相当する。
また、甲2発明1の「第1の縦管P1に接続可能な縦管接続部13」は、本件訂正発明5の「上流側の上立て管に接続可能な上方立て管接続部」に相当する。
よって、甲2発明1は、本件発明特定事項5Aに相当する構成を有する。
イ 本件発明特定事項5Bについて
甲2発明1の「横管P5」は、本件訂正発明5の「横枝管」に相当する。
また、甲2発明1の「横管を接続可能な横管接続部14」及び「継手管本体38の左側に設けた横管接続部14に」「嵌合され」た「逆流防止リブ50を備えたブッシュ45」であり「横管P5が接続されて」いる「左側下方のブッシュ45」は、いずれも、本件訂正発明5の「横枝管に接続可能な横枝管接続部」に相当する。
よって、甲2発明1は、本件発明特定事項5Bに相当する構成を有する。
ウ 本件発明特定事項5Cについて
甲2発明1の「第2の縦管P2」は、本件訂正発明5の「下流側の配管部材」に相当する。
また、甲2発明1の「第2の縦管P2が接続される下側管部18を備えて」いる「下部接続管12」は、本件訂正発明5の「下流側の配管部材に接続可能な下方配管接続部」に相当する。
よって、甲2発明1は、本件発明特定事項5Cに相当する構成を有する。
エ 本件発明特定事項5Dについて
甲2発明1の「管継手」は、本件訂正発明5の「継手」に相当する。
また、甲2発明1では、「管継手」は、「継手本体10を備えており、継手本体10は、上部接続管11と、下部接続管12と、上部接続管11と下部接続管12とを接続する中間管15と、を備えて」いるものであるところ、「上部接続管11と下部接続管12と中間管15は、例えば、塩化ビニル等の難燃性を有する樹脂で形成されて」いるから、甲2発明1の「管継手」は、本件訂正発明5の「樹脂製継手」に相当する。
また、上記ア~ウで述べたように、甲2発明1の「縦管接続部13」、「横管接続部14」、「下部接続管12」は、それぞれ、本件訂正発明5の「上方立て管接続部」、「横枝管接続部」、「下方配管接続部」に相当するところ、「管継手」は、「継手本体10を備えており、継手本体10は、上部接続管11と、下部接続管12と、上部接続管11と下部接続管12とを接続する中間管15と、を備えて」いるものであるから、甲2発明1の「管継手」は、本件訂正発明5の「樹脂製継手」のように、「上方立て管接続部」、「横枝管接続部」、「下方配管接続部」を「それぞれ有する本体部を含む」といえる。
よって、甲2発明1は、本件発明特定事項5Dに相当する構成を有するか、甲2発明1と本件訂正発明5とは、「上方立て管接続部」、「横枝管接続部」、「下方配管接続部」を「それぞれ有する本体部を含む樹脂製継手」である点で共通する。
オ 本件発明特定事項5Eについて
甲2発明1の「縦管接続部13の上端部に」「設けられ」る「第1ブッシュ21」は、本件訂正発明5の「前記上方立て管接続部に接続される上方部材」に相当し、甲2発明1の「第1ブッシュ21」が「備えて」いる「第一旋回羽根21b」は、「中心軸線O回りに延びている」から、本件訂正発明5の「突起」に相当する。
また、甲2発明1では、「下部接続管12は、第2の縦管P2が接続される下側管部18を備えており、縦管接続部13の上端部には、第1ブッシュ21が設けられており、第1ブッシュ21は、第一旋回羽根21bを備えており、第一旋回羽根21bは、中心軸線O回りに延びて」いるから、甲2発明1は、本件訂正発明5と同様に、「前記横枝管接続部よりも上流側において、」「前記上方立て管接続部に接続される上方部材の内周面に1以上の突起が形成され」るといえる。
よって、甲2発明1は、本件発明特定事項5Eに相当する構成を有する。
カ 本件発明特定事項5Fについて
甲2発明1の「逆流防止リブ50」は、本件発明特定事項5Fの「流入防止機構」に相当する。
甲2発明1では、「上部接続管11の下方に増設用の延長管37と継手管本体38が設けられ」るところ、「縦管接続部13の上端部には、第1ブッシュ21が設けられており、第1ブッシュ21は、第一旋回羽根21bを備えて」いるのに対し、「継手管本体38の左右一対の横管接続部14にもそれぞれ横管継手本体部41と第3パッキン42とカバー部材43を備えたブッシュ45が接続されており、そして、継手管本体38の左側に設けた横管接続部14に逆流防止リブ50を備えたブッシュ45が嵌合されて」いる。そうすると、甲2発明1では、「第一旋回羽根21b」は「逆流防止リブ50を備えたブッシュ45が嵌合されて」いる「継手管本体38の左側に設けた横管接続部14」の上流側であるといえ、また、甲2発明1では、排水が「第一旋回羽根21b」にあたったことに起因して、「継手管本体38の左側に設けた横管接続部14」の方に排水が流れることになる。
ここで、甲2発明1では、「逆流防止リブ50は、横管接続部14の開口部41dの左右両側に縦リブ50Aを有し、それらの上部側に庇部50Bを有するので、これらが落下する排水を受け、横管接続部14を介し横管P5へ排水が逆流することを防止する」ところ、「継手管本体38の左側に設けた横管接続部14に逆流防止リブ50を備えたブッシュ45が嵌合されて」いるから、甲2発明1の「逆流防止リブ50を備えたブッシュ45」は、排水が「第一旋回羽根21b」にあたったことに起因する「横管P5」への排水の流入を防止する機構であるといえる。
したがって、甲2発明1の「逆流防止リブ50を備えたブッシュ45」は、本件訂正発明5の「排水が前記突起にあたったことに起因する前記横枝管への排水の流入を防止する流入防止機構」に相当する。
よって、甲2発明1は、本件発明特定事項5Fに相当する構成を有する。
キ 本件発明特定事項5Hについて
上記カで述べたように、甲2発明1では、「第一旋回羽根21b」は「逆流防止リブ50を備えたブッシュ45が嵌合されて」いる「継手管本体38の左側に設けた横管接続部14」の上流側であるといえる。
また、甲2発明1では、「接続可能な縦管接続部13」は「第1の縦管P1に接続可能」であるところ、「縦管接続部13の上端部には、第1ブッシュ21が設けられており、第1ブッシュ21は、第一旋回羽根21bを備えており、第一旋回羽根21bは、中心軸線O回りに延びて」いるから、甲2発明1では、「第1の縦管P1」の内径よりも「第一旋回羽根21b」が出っ張ることは明らかである。
よって、甲2発明1は、本件発明特定事項5Hに相当する構成を有する。
ク 本件発明特定事項5Kについて
上記カで述べたように、甲2発明1の「逆流防止リブ50を備えたブッシュ45」は、本件訂正発明5の「流入防止機構」に相当する。
また、甲2発明1によれば、「横管接続部14に」「横管継手本体部41」「が接続されて」いるところ、「逆流防止リブ50は、横管継手本体部41の先端面から突出され、横管継手本体部41の先端面に開口されている開口部41dの左右両側に突出された長方形板状の縦リブ50Aを備え、また、逆流防止リブ50は、左右の縦リブ50A、50Aの上端部どうしを接続する湾曲板からなる庇部50Bを備えて」いるから、甲2発明1の「逆流防止リブ50」は、本件訂正発明5の「前記横枝管接続部に接続される横枝管の上方側を覆う構造物」に相当する。
ここで、上記カで述べたように、甲2発明1では、「第一旋回羽根21b」は「逆流防止リブ50を備えたブッシュ45が嵌合されて」いる「継手管本体38の左側に設けた横管接続部14」の上流側であるから、「逆流防止リブ50」は、「第一旋回羽根21b」よりも下方に存在するといえる(申立人が令和5年12月26日に提出した意見書における第7頁第5行~第8頁第2行も参照。)。
よって、甲2発明1は、本件発明特定事項5Kに相当する構成を有する。
ケ 本件発明特定事項5K2について
甲2発明1の「第一旋回羽根21b」は「流下する排水を旋回流とする作用を奏」するところ、このような作用により「第一旋回羽根21b」の直下近傍には排水が流下しないことは、明らかである。そうすると、甲2発明1の「第一旋回羽根21b」は、水膜を切断するといえる。
よって、甲2発明1は本件訂正発明5と、「前記突起は水膜切断用の突起であ」る点で共通する。
コ 本件発明特定事項5Gについて
上記エで述べたように、甲2発明1の「管継手」は、本件訂正発明5の「樹脂製継手」に相当する。
よって、甲2発明1は、本件発明特定事項5Gに相当する構成を有する。
サ 一致点・相違点
以上のことから、本件訂正発明2と甲2発明1とは、
「5A 上流側の上立て管に接続可能な上方立て管接続部を上端に、
5B 横枝管に接続可能な横枝管接続部を側面に、
5C 下流側の配管部材に接続可能な下方配管接続部を下端に、
5D’ それぞれ有する本体部を含む樹脂製継手であって、
5E 前記横枝管接続部よりも上流側において、前記本体部の内周面、または、前記上方立て管接続部に接続される上方部材の内周面に1以上の突起が形成され、
5F 前記樹脂製継手は、排水が前記突起にあたったことに起因する前記横枝管への排水の流入を防止する流入防止機構を備え、
5H 前記横枝管接続部より上流側において、前記上立て管の内径よりも前記突起が出っ張るとともに、
5K 前記流入防止機構は、前記樹脂製継手の側面視において、前記横枝管接続部に接続される横枝管の上方側を覆う構造物が、前記突起よりも下方に存在することにより実現され、
5K2’ 前記突起は水膜切断用の突起である
5G 樹脂製継手。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点5-1(発明特定事項5D)>
本件訂正発明5では、「樹脂製継手」が「前記横枝管接続部を上下方向に2段以上備える多段式の樹脂製継手を除く単段式」であるのに対し、
甲2発明1では、「管継手」が「上部接続管11と中間管15との間に、横管接続部14を単数あるいは複数設けた多段構成」である点。
<相違点5-2(発明特定事項5K2)>
本件訂正発明5では、「排水が流下する上下方向に対して前記突起が左右対称であるために旋回流を発生させ」ないのに対し、
甲2発明1では、「第一旋回羽根21b」が「流下する排水を旋回流とする作用を奏」する点。
<相違点5-3(発明特定事項5K3)>
本件訂正発明5では、「前記樹脂製継手の側面視において、前記流入防止機構により排水の流入が防止される前記横枝管を接続する単段の前記横枝管接続部の管芯よりも上方に、前記突起の下端が存在する」のに対し、
甲2発明1では、そのように構成されていない点。
(2)判断
事案に鑑み相違点5-2から検討する。
甲2発明1の「第一旋回羽根21b」は、「流下する排水を旋回流とする作用を奏」するものである。
これに対して、甲1発明1の「突起41」は、「内周フランジ40の内周縁を通過して落下する筒状の排水流の水膜に切れ目を入れて水膜に分断部分を生成するために設けられて」いるものである。
このように、甲1発明1の「突起41」は、甲2発明1の「第一旋回羽根21b」と排水流が全く異なるものであるから、甲2発明1において、「第一旋回羽根21b」の代わりに甲1発明1の「突起41」を適用する動機付けがあるとは認められない。
したがって、甲2発明1において、「第一旋回羽根21b」の代わりに甲1発明1の「突起41」を適用することで相違点5-2に係る本件訂正発明5の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
よって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明5は、甲2発明1及び甲1発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4 本件訂正発明3~4、6~7、16~17の新規性、進歩性について
上記第4の2で述べたように、令和5年9月27日付けの取消理由において、請求項3~4、6~7、16~17に係る発明に対して甲1又は甲2を主たる証拠とした新規性、進歩性の欠如を通知した。また、令和6年2月13日付けの取消理由(決定の予告)において、請求項6~7、16~17に係る発明に対して甲2を主たる証拠とした進歩性の欠如を通知した。以下、これらの点について検討する。
本件訂正発明3~4、6~7、16~17は、本件訂正発明1又は5の一方又は両方を引用するものであるところ、上記2~3で述べたように、本件訂正発明1は甲1発明1に基づいて当業者が容易に発明することができたものではなく、また、本件訂正発明5は甲2発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、本件訂正発明3~4、6~7、16~17は、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
5 申立人の主張について
申立人が令和6年8月1日付けの意見書(以下「当該意見書」という。)で主張したことについて検討する。
(1)第1の主張について
申立人は、当該意見書における「(1)令和6年4月9日付け訂正請求書に記載の訂正事項4の「前記突起は、水膜切断用の突起であって、排水が流下する上下方向に対して前記突起が左右対称であるために旋回流を発生させず、」との訂正は、訂正要件に適合するものではないことについて」の欄において、訂正事項4は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではないこと等を主張する(以下、この欄に記載された主張を「第1の主張」という。)。
しかしながら、上記第2の2(4)ウで述べたように、本件特許明細書等の【0004】~【0006】、【0034】、図5~図10の(A)、及び、図5~図10の(B)等の記載から、本件特許明細書等には、「前記突起は、水膜切断用の突起であって、排水が流下する上下方向に対して前記突起が左右対称であるために旋回流を発生させ」ないことが記載されているといえる。
よって、当該意見書における第1の主張は、採用できない。
(2)第2の主張について
申立人は、当該意見書における「(2)令和6年4月9日付け訂正請求書により訂正された請求項1に係る発明(以下「本件再訂正発明1」という。)について」の欄において、本件訂正発明1は、本件発明特定事項1Fにおいて「前記樹脂製継手は、排水が前記突起にあたったことに起因する前記横枝管への排水の流入を防止する流入防止機構を備え」と特定されているが、樹脂製継手の内面に形成された「全ての突起」に対応して「流入防止機構」を備えるとは特定されていないから、「複数の突起」のうち「一つの突起」に対応して「流入防止機構」を備えるものも包含することになること等を主張する(以下、この欄に記載された主張を「第2の主張」という。)。
しかしながら、本件発明特定事項1Fの「前記突起」は、本件発明特定事項1Eの「前記横枝管接続部よりも上流側において、前記本体部の内周面、または、前記上方立て管接続部に接続される上方部材の内周面に」「形成され」た「1以上の突起」であるから、「複数の突起」のうちの「一つの突起」であるとは解されない。
よって、当該意見書における第2の主張は、本件発明特定事項1Fの解釈に誤りがあるから採用できない。
(3)第3の主張について
申立人は、当該意見書における「(3)令和6年4月9日付け訂正請求書により訂正された請求項3、4、16、17に係る発明(以下それぞれ「本件再訂正発明3」~「本件再訂正発明17」という。)について」の欄において、本件訂正発明3、4、16、17が甲1に記載された発明であること等を主張する(以下、この欄に記載された主張を「第3の主張」という。)。
しかしながら、上記2(2)で述べたように、本件訂正発明1が甲1に記載された発明ではないから、本件訂正発明1を引用する本件訂正発明3、4、16、17も甲1に記載された発明ではない。
よって、当該意見書における第3の主張は、採用できない。
(4)第4の主張について
申立人は、当該意見書における「(4)令和6年4月9日付け訂正請求書により訂正された請求項5に係る発明(以下「本件再訂正発明5」という。)について」の欄において、一般に樹脂製継手において、継手の内周面に形成された突起が、水膜切断用の突起であって、排水が流下する上下方向に対して前記穴起が左右対称であるために旋回流を発生させず、前記樹脂製継手の側面視において、横枝管を接続する単段の前記横枝管接続部の管芯よりも上方に、前記突起の下端が存在するものは、周知の技術事項であること等を主張する(以下、この欄に記載された主張を「第4の主張」という。)。
しかしながら、仮に上記の事項が周知の技術事項であるとしても、上記3(2)で述べたことと同様に、周知の技術事項は、甲2発明1の「第一旋回羽根21b」と排水流が全く異なるものであるから、甲2発明1において、「第一旋回羽根21b」の代わりに周知の技術事項を適用する動機付けがあるとは認められない。
よって、当該意見書における第4の主張は、採用できない。
(5)第5の主張について
申立人は、当該意見書における「(5)令和6年4月9日付け訂正請求書により訂正された請求項6、7、16、17に係る発明(以下それぞれ「本件再訂正発明6」~「本件再訂正発明17」という。)について」の欄において、本件訂正発明6、7は、甲2発明1、周知の技術事項1及び周知の技術事項2に基づいて当業者が容易に発明することができたものであること等を主張する(以下、この欄に記載された主張を「第5の主張」という。)。
しかしながら、上記3(2)や上記(4)で述べたように、本件訂正発明5が当業者が容易に発明することができたものではないから、本件訂正発明5を引用する本件訂正発明6、7も当業者が容易に発明することができたものではない。
よって、当該意見書における第5の主張は、採用できない。
(6)第6の主張について
申立人は、当該意見書における「(6)令和6年4月9日付け意見書について」の欄において、本件訂正発明5は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、甲2に記載された発明及び甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであること等を主張する(以下、この欄に記載された主張を「第6の主張」という。)。
しかしながら、上記3(2)で述べたように、甲1発明1の「突起41」は、甲2発明1の「第一旋回羽根21b」と排水流が全く異なるものであるから、甲2発明1において、「第一旋回羽根21b」の代わりに甲1発明1の「突起41」を適用する動機付けがあるとは認められないし、甲1発明1において、「突起41」の代わりに甲2発明1の「第一旋回羽根21b」を適用する動機付けがあるとも認められない。
よって、当該意見書における第6の主張は、採用できない。
(7)第7の主張について
申立人は、当該意見書における「(7)甲第8号証について」の欄において、本件訂正発明1は、甲8に記載された発明であり、また、甲8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであること等を主張する(以下、この欄に記載された主張を「第7の主張」という。)。
しかしながら、第7の主張は、特許異議申立書において提示されておらず、実質的に新たな理由及び証拠を提示するものであるところ、訂正の請求の内容に付随して生じる理由であるとも、適切な取消理由を構成することが一見して明らかであるともいえない(参考:審判便覧67-05.4の1.(2))。
また、第16頁の記載(その1)には、減速ガイドが排水を減速させることは記載されているが、減速ガイドが水膜切断用の突起であるか否かは、明らかでない。一方、第16頁の記載(その2)には、減速ガイドに流れた排水は切断されることなく、減速ガイドの下方に流れていることが記載されている。したがって、甲8の「減速ガイド」は、本件訂正発明1の構成1Fの「水膜切断用の突起である」「前記突起」に相当しないから、本件訂正発明1と甲8に記載された発明とは、少なくとも、その点で相違する。そして、「減速ガイド」を「水膜切断用の突起」にすることは、甲8等に記載されていない。
よって、当該意見書における第7の主張は、採用できない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1、3~7、16~17に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては取り消すことができない。
また、他に本件特許の請求項1、3~7、16~17に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700620