特許異議申立
2017-700387
積層セラミックコンデンサ
- 審判番号
- 2017-700387
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2014-080973外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年04月19日
- 審決日
- 2018年11月09日
- 公報発行日
- 2019年04月26日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 分類
- P1651.121-ZDA(H01G) / P1651.537-ZDA(H01G) / P1651.832-ZDA(H01G)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条6項1号特許法113条4号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第113条第4号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6011574号発明「積層セラミックコンデンサ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6011574号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正することを認める。
特許第6011574号の請求項1に係る特許を取り消す。
同請求項2に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1.手続の経緯
特許第6011574号の請求項1および2に係る特許についての出願は、平成26年4月10日(優先権主張 平成25年6月27日)に特許出願され、平成28年9月30日にその特許権の設定登録がされ、平成28年10月19日に特許公報が発行された。その後、その特許について、平成29年4月19日に特許異議申立人加納龍一郎により特許異議の申立てがされ、平成29年7月19日付けで取消理由が通知され、平成29年9月15日に意見書の提出および訂正請求がされ、平成29年11月29日に特許異議申立人から意見者が提出され、平成30年2月16日付けで訂正拒絶理由が通知され、平成30年3月19日に意見書および手続補正書が提出され、平成30年6月28日付けで取消理由が通知され(決定の予告)、平成30年8月21日に意見書の提出および訂正請求がされ、平成30年10月9日に特許異議申立人から意見書が提出されたものである。
なお、特許法第120条の5第7項の規定により、平成29年9月15日にされた訂正請求は、取り下げられたものとみなす。
第2.訂正請求について
1.訂正の内容
本件特許異議の手続において特許権者がした平成30年8月21日付けの訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)は、特許第6011574号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1および2からなる一群の請求項について訂正しようとするものであり、その訂正内容は、次のとおりである(下線は訂正箇所)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記セラミック素体の前記主面および前記側面に形成された前記中間電極層の厚みが、前記セラミック素体の端面に形成された前記中間電極層の厚みより大きく、」と記載されているのを、「前記セラミック素体の前記主面および前記側面に形成された前記中間電極層の厚みが、前記セラミック素体の端面に形成された前記中間電極層の厚みより大きく、前記セラミック素体の前記主面および前記側面に形成された前記下地電極層の厚みが、前記セラミック素体の端面に形成された前記下地電極層の厚みより小さく、前記上層電極層の厚みが、前記下地電極層および前記中間電極層の厚みより小さく、」に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「前記セラミック素体の主面および側面に形成される前記中間層の厚みは、前記セラミック素体の端面に形成される前記中間層の厚みの120%以上で300%以下」と記載されているのを「前記セラミック素体の主面および側面に形成される前記中間電極層の厚みは、前記セラミック素体の端面に形成される前記中間電極層の厚みの120%以上300%以下」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に「前記セラミック素体の主面および側面に形成される前記中間層の厚みは、前記セラミック素体の端面に形成される前記中間層の厚みの120%以上で300%以下である」と記載されているのを「前記セラミック素体の主面および側面に形成される前記中間電極層の厚みは、前記セラミック素体の端面に形成される前記中間電極層の厚みの120%以上300%以下であり、かつ、積層セラミックコンデンサの実装面における前記外部電極の最下点から前記セラミック素体の表面までの距離(スタンドオフ)は、前記セラミック素体の前記主面および前記側面に形成される前記下地電極層、前記中間電極層および上層電極層を合わせた厚みである」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項2に「前記セラミック素体の表面までの距離(スタンドオフ)が10.1μm以上20.1μm以下である」と記載されているのを「前記セラミック素体の表面までの距離(スタンドオフ)が11.1μm以上20.1μm以下である」に訂正する。
2.訂正の適否についての判断
(1)訂正事項1について
請求項1に係る発明における積層セラミックコンデンサに含まれる外部電極を構成する下地電極層の厚みと上層電極層の厚みを特定することにより、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとともに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
明細書の【0020】ないし【0022】、【0040】に記載された下地電極層、中間電極層、上層電極層の厚みの値から導き出される構成であって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
(2)訂正事項2について
請求項1の「前記中間層」は、これより前に「中間層」の記載がなく、正しくは「前記中間電極層」であることは明らかであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものであるとともに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
請求項1の「前記中間層」は、正しくは「前記中間電極層」であることは明らかであって、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
(3)訂正事項3について
請求項1に係る発明におけるスタンドオフの構成を特定することで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとともに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
明細書の【0030】のセラミック素体の面から外部電極の最下面までの距離が「下地電極層+中間電極層+上層電極層の厚み」である旨の記載に基づく構成であって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
(4)訂正事項4について
請求項2に係る発明におけるスタンドオフの数値範囲を狭めることで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとともに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
明細書の表1の実施例1におけるスタンドオフ高さが11.1μmである旨の記載に基づく構成であって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。
なお、全ての請求項について特許異議申立がされているので、いずれの訂正事項に関しても、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項に規定された独立特許要件は課されない。
3.訂正請求についてのむすび
以上のとおり、本件訂正請求により特許権者が求めている訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号および第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、ならびに、同条第9項において準用する第126条第5項および第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正を認める。
第3.当審の判断
(1)本件特許発明
本件訂正請求により訂正された請求項1および2に記載された発明(以下、それぞれ「本件発明1」「本件発明2」という。)は、訂正された特許請求の範囲の請求項1および2に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(下線は訂正箇所)。
「【請求項1】
複数の積層されたセラミック層を含み、互いに対向する主面と、互いに対向する側面と、互いに対向する端面とを有するセラミック素体、
前記セラミック素体内部に配置され、前記セラミック素体の前記端面に露出した露出部を有する内部電極、および
前記内部電極の露出部に接続されるようにして前記セラミック素体の前記端面に形成されるとともに、前記セラミック素体の前記端面から両主面および両側面に回り込むように形成される一対の外部電極を含み、
前記外部電極は、前記セラミック素体上に形成される下地電極層と、前記下地電極層上にNiめっきからなる中間電極層と、前記中間電極層上にPdめっきまたはPd-Ni合金からなる上層電極層とを含み、
前記セラミック素体の前記主面および前記側面に形成された前記中間電極層の厚みが、前記セラミック素体の端面に形成された前記中間電極層の厚みより大きく、前記セラミック素体の前記主面および前記側面に形成された前記下地電極層の厚みが、前記セラミック素体の端面に形成された前記下地電極層の厚みより小さく、前記上層電極層の厚みが、前記下地電極層および前記中間電極層の厚みより小さく、
前記セラミック素体の主面および側面に形成される前記中間電極層の厚みは、前記セラミック素体の端面に形成される前記中間電極層の厚みの120%以上300%以下であり、かつ、積層セラミックコンデンサの実装面における前記外部電極の最下点から前記セラミック素体の表面までの距離(スタンドオフ)は、前記セラミック素体の前記主面および前記側面に形成される前記下地電極層、前記中間電極層および上層電極層を合わせた厚みである、ことを特徴とする、積層セラミックコンデンサ。
【請求項2】
前記積層セラミックコンデンサの実装面における前記外部電極の最下点から前記セラミック素体の表面までの距離(スタンドオフ)が11.1μm以上20.1μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ。」
(2)取消理由通知に記載した取消理由の概要
平成29年7月19日付けで通知した取消理由の概要は以下のとおりである。
「本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
ア.請求項1について
請求項1において、「・・前記セラミック素体の前記主面および前記側面に形成された前記中間電極層の厚みが、前記セラミック素体の端面に形成された前記中間電極層の厚みより大きく、
前記セラミック素体の主面および側面に形成される前記中間層の厚みは、前記セラミック素体の端面に形成される前記中間層の厚みの120%以上で300%以下である、ことを特徴とする、積層セラミックコンデンサ。」とあり、セラミック素体の主面および側面に形成される中間電極層の厚みを端面上に形成される中間電極層の厚みより大きく形成すること、具体的には、セラミック素体の主面および側面に形成される中間(電極)層の厚みを、セラミック素体の端面に形成される中間(電極)層の厚みの120%以上で300%以下とすることにより、本件発明の主たる目的である、配線基板実装面の接着剤に接触する部分の外部電極の厚みを大きくすることができ、積層セラミック電子部品の実装面における外部電極の最下点からセラミック素体の表面までの間隔(スタンドオフ)を十分に確保することができることから、積層セラミック電子部品を導電性接着剤によって配線基板に実装する際に、導電性接着剤の積層セラミック電子部品への濡れ広がり(滲み出し)を抑制することができ、短絡不良の発生しにくい積層セラミック電子部品を得ることができるものと解される。
しかしながら、発明の詳細な説明には、「セラミック素体の主面および側面に形成される中間電極層の厚みを端面上に形成される中間電極層の厚みより大きく形成すること、具体的には、セラミック素体の主面および側面に形成される中間(電極)層の厚みを、セラミック素体の端面に形成される中間(電極)層の厚みの120%以上で300%以下とすること」のみで本件発明の目的・効果が達成されるとの記載はなく、出願時の技術常識に照らしても、「中間電極層の厚み(具体的には、セラミック素体の主面および側面に形成される中間電極層の厚みと、セラミック素体の端面に形成される中間電極層の厚みとの比率)」の規定のみで、それ以外の電極層(例えば下地電極層や上層電極層)が如何なる厚さであったとしても、本件発明の目的が達せられると解することはできない。
発明の詳細な説明の、段落【0008】ないし【0010】、【0026】、【0027】、【0030】、【0031】、【0040】、【0041】の各記載から、本件発明の技術的意義は、「セラミック素体の主面および側面に形成される中間電極層の厚みを、セラミック素体の端面に形成される中間電極層の厚みの120%以上で300%以下とすることで、配線基板実装面の接着剤に接触する部分の外部電極の厚みを大きくすることができ、積層セラミック電子部品の実装面における外部電極の最下点からセラミック素体の表面までの間隔(スタンドオフ)を十分に確保することにより、積層セラミック電子部品を導電性接着剤によって配線基板に実装する際に、導電性接着剤の積層セラミック電子部品への濡れ広がり(滲み出し)を抑制することが可能となり、短絡不良の生じにくい積層セラミック電子部品を提供することができる」もので、
特に、「スタンドオフの調整を下地電極層や上層電極層ではなく、中間電極層の厚み(具体的には、セラミック素体の主面および側面に形成される中間電極層の厚みと、セラミック素体の端面に形成される中間電極層の厚みとの比率)を変えて行うもの」であると認められる。
ここで、スタンドオフの調整、すなわち、セラミック素体の表面から外部電極の最下面までの距離(下地電極層+中間電極層+上層電極層の厚み)の調整は、少なくとも「下地電極層」と「中間電極層」と「上層電極層」のそれぞれの厚みにより影響を受ける(変化する)ものと認められる。
そして、本件発明の実施例においても、「下地電極層の厚みをセラミック素体の端面中央部において30μm、主面および側面において5μm」、「上層電極層の厚みをセラミック素体の端面中央部、主面および側面において0.1μm」との条件の下、つまり、セラミック素体の主面および側面における下地電極層の厚みが、端面中央部の下地電極層の厚みよりもかなり小さい条件で、「中間電極層」の厚み(比率)を変化させて各サンプルを測定しており、「下地電極層の厚み」や「上層電極層の厚み」が如何なるものであっても、「中間電極層の厚み(具体的には、セラミック素体の主面および側面に形成される中間電極層の厚みと、セラミック素体の端面に形成される中間電極層の厚みとの比率)」の規定のみで、本件発明の技術的意義が達成されるとは認められない。
即ち、セラミック素体に形成される中間電極層の厚みの比率ではなく、外部電極層全体の厚みで本件発明の技術的意義は達成されるものである。
そうすると、本件請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明において開示された内容を超えて特許を受けたものである。
したがって、本件請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとは認められない。
イ.請求項2について
請求項2において、「前記積層セラミックコンデンサの実装面における前記外部電極の最下点から前記セラミック素体の表面までの距離(スタンドオフ)が10.1μm以上20.1μm以下であることを特徴とする・・」とあるが、
発明の詳細な説明の【実施例1】、特に段落【0040】、【0041】及び【表1】には、スタンドオフ高さが、10.1μmである実施例の記載はなく、比較例1として、セラミック素体の主面および側面と端面との間における中間電極層の厚みを等しくしたサンプルが記載されているのみである。
そうすると、請求項2に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとは認められない。
なお、必要なスタンドオフ高さは、使用する導電性接着剤の材料や粘度によって異なるものと認められるが、どのような導電性接着剤を用いたとしても、スタンドオフが10.1μm以上20.1μm以下の範囲であれば本件発明の効果を奏するとの具体的な根拠を意見書にて説明されたい。」
(3)判断
ア.請求項1について
「(2)取消理由通知に記載した取消理由の概要」に記載したように、発明の詳細な説明の記載からは、「中間電極層の厚み(具体的には、セラミック素体の主面および側面に形成される中間電極層の厚みと、セラミック素体の端面に形成される中間電極層の厚みとの比率)」の規定のみで、それ以外の電極層(例えば下地電極層や上層電極層)が如何なる厚さであったとしても、本件発明の目的が達せられるとはいえず、むしろ、セラミック素体に形成される中間電極層の厚みの比率ではなく、外部電極層全体の厚みで本件発明の技術的意義は達成されるといえる。
訂正により、「下地電極層の厚み」は、「前記セラミック素体の前記主面および前記側面に形成された前記下地電極層の厚みが、前記セラミック素体の端面に形成された前記下地電極層の厚みより小さく、」と特定され、「上層電極層の厚み」は、「前記上層電極層の厚みが、前記下地電極層および前記中間電極層の厚みより小さく、」と特定され、「スタンドオフ」は、「積層セラミックコンデンサの実装面における前記外部電極の最下点から前記セラミック素体の表面までの距離(スタンドオフ)は、前記セラミック素体の前記主面および前記側面に形成される前記下地電極層、前記中間電極層および上層電極層を合わせた厚みである」と特定されたが、これらの特定により、外部電極層全体の厚みが、本件発明の技術的意義が達成されるものに限定されたとはいえない。
したがって、請求項1は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求するもので、本件発明1は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
イ.請求項2について
訂正により、スタンドオフの下限を「11.1μm」とすることにより、スタンドオフの数値範囲が、【表1】に記載された実施例1ないし5のスタンドオフ高さの最小値から最大値までとなり、請求項2に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものになったと認められ、取消理由は解消した。
第4.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1.甲第1号証に基づく請求項1に係る本件発明の進歩性欠如
(1)特許異議申立人の主張
甲第1号証(特開2005-243835号公報)の【0020】、【0024】、表3には、
「複数の積層されたセラミック層を含み、互いに対向する主面と、互いに対向する側面と、互いに対向する端面とを有するセラミック素体、
前記セラミック素体内部に配置され、前記セラミック素体の前記端面に露出した露出部を有する内部電極、および
前記内部電極の露出部に接続されるようにして前記セラミック素体の前記端面に形成されるとともに、前記セラミック素体の前記端面から両主面および両側面に回り込むように形成される一対の外部電極を含み、
前記外部電極は、前記セラミック素体上に形成される下地電極層と、前記下地電極層上にNiめっきからなる中間電極層と、前記中間電極層上にSnめっきからなる上層電極層とを含み、
前記セラミック素体の前記主面および前記側面に形成された前記中間電極層の厚みが、前記セラミック素体の端面に形成された前記中間電極層の厚みより大きく、
前記セラミック素体の主面および側面に形成される前記中間層の厚みは、前記セラミック素体の端面に形成される前記中間層の厚みの120%以上で300%以下である、ことを特徴とする、
積層セラミックコンデンサ。」
が開示してある。
訂正前の請求項1に係る発明と甲第1号証に開示された発明とでは、訂正前の請求項1に係る発明では、上層電極層がPdめっきまたはPd-Ni合金であるのに対して、甲第1号証に開示された発明では、上層電極層がSnめっきである点で異なる。
しかしながら、甲第2号証(特開2008-60214号公報)、甲第3号証(特表2010-510644号公報)、甲第4号証(特開2004-55679号公報)および甲第5号証(特開2000-299243号公報)に示すように、Pdの上層電極層と導電性接着剤の組合せは、周知技術であるから、訂正前の請求項1に係る発明は、甲第1号証に開示された発明および周知技術に基づいて当業者であれば容易に発明することができるものである。
(2)当審の判断
甲第1号証に開示された発明は、外部電極の側面部分のNiまたはNi合金めっき膜厚を、端面部分のNiまたはNi合金めっき膜厚の1.5倍以上とすることにより、溶融はんだを、外部電極の端面部分よりも外部電極の側面部分(ランド電極と対向する下面部分)に回り込ませやすくなり、ツームストーン現象が発生することをさらに効率よく抑制、防止することが可能になる(【0017】)ものであり、甲第1号証に開示された発明において、Snめっき膜またはSn合金めっき膜と溶融はんだの組合せに代えて、Pdの上層電極層と導電性接着剤の組合せを採用する動機付けは見当たらないから、訂正前の請求項1に係る発明は、甲第1号証に開示された発明および周知技術に基づいて当業者であれば容易に発明することができるものであるとはいえない。
本件発明1は、訂正前の請求項1に係る発明にさらに限定を加えたものであるから、やはり、甲第1号証に開示された発明および周知技術に基づいて当業者であれば容易に発明することができるものであるとはいえない。
2.甲第4号証に基づく請求項1に係る本件発明の進歩性欠如
(1)特許異議申立人の主張
甲第4号証(特開2004-55679号公報)の【0016】ないし【0017】、【0018】ないし【0022】には、
「複数の積層されたセラミック層を含み、互いに対向する主面と、互いに対向する側面と、互いに対向する端面とを有するセラミック素体、
前記セラミック素体内部に配置され、前記セラミック素体の前記端面に露出した露出部を有する内部電極、および
前記内部電極の露出部に接続されるようにして前記セラミック素体の前記端面に形成されるとともに、前記セラミック素体の前記端面から両主面および両側面に回り込むように形成される一対の外部電極を含み、
前記外部電極は、前記セラミック素体上に形成される下地電極層と、前記下地電極層上にNiめっきからなる中間電極層と、前記中間電極層上にPdめっきまたはPd-Ni合金からなる上層電極層とを含む、
積層セラミックコンデンサ。」
が開示してある。
訂正前の請求項1に係る発明と甲第4号証に開示された発明とでは、訂正前の請求項1に係る発明では、構成要件「前記セラミック素体の前記主面および前記側面に形成された前記中間電極層の厚みが、前記セラミック素体の端面に形成された前記中間電極層の厚みより大きく、前記セラミック素体の主面および側面に形成される前記中間層の厚みは、前記セラミック素体の端面に形成される前記中間層の厚みの120%以上で300%以下である」を有するのに対して、甲第4号証に開示された発明では、その旨の特定がない点で異なる。
しかしながら、甲第6号証(第307回めっき膜厚のバラツキ要因-2)、甲第7号証(特開2005-223317号公報)および甲第8号証(特開平2-47803号公報)に示すように、中間導電層であるであるNi層をセラミック素体の端部に一般的な電気めっきにより形成すれば、訂正前の請求項1に係る発明の上記構成要件を満足してしまうから、訂正前の請求項1に係る発明は、甲第4号証に開示された発明および技術常識に基づいて当業者であれば容易に発明することができるものである。
(2)当審の判断
甲第6号証は、電気めっきにおいては、尖っている部分でめっき厚が厚くなることが一般的であることを示すものであり、甲第7号証は、一般的なNiのめっき膜では、電子部品の角部で厚みが厚くなることが周知であることを示すものであり、甲第8号証は、電気バレルメッキ装置により、Niメッキ膜を抵抗体素子の両周端縁に析出させたところ、析出されたNiメッキ膜は平均4.3μmの厚みであったことを示すものであるに過ぎず、甲第4号証に開示された発明において、中間導電層であるNi層をセラミック素体の端部に一般的な電気めっきにより形成すれば、尖っている部分ないし角部でめっき厚が厚くなること、および、平均4.3μm程度の厚みになることはいえるとしても、構成要件「前記セラミック素体の前記主面および前記側面に形成された前記中間電極層の厚みが、前記セラミック素体の端面に形成された前記中間電極層の厚みより大きく、前記セラミック素体の主面および側面に形成される前記中間層の厚みは、前記セラミック素体の端面に形成される前記中間層の厚みの120%以上で300%以下である」を満足するとまではいえないから、訂正前の請求項1に係る発明は、甲第4号証に開示された発明および技術常識に基づいて当業者であれば容易に発明することができるものであるとはいえない。
本件発明1は、訂正前の請求項1に係る発明にさらに限定を加えたものであるから、やはり、甲第4号証に開示された発明および技術常識に基づいて当業者であれば容易に発明することができるものであるとはいえない。
3.甲第2号証または甲第3号証に基づく請求項2に係る本件発明の進歩性欠如
特許異議申立人の主張は、「1.甲第1号証に基づく請求項1に係る本件発明の進歩性欠如」もしくは「2.甲第4号証に基づく請求項1に係る本件発明の進歩性欠如」における主張を採用し得ることを前提としており、いずれの主張も採用し得ない以上、やはり、採用し得ないものである。
第5.むすび
以上のとおり、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求するもので、本件発明1は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
したがって、本件発明1に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件特許2に係る発明については、取消理由通知に記載した取消理由および特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。さらに、他に本件発明2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-700387