特許異議申立
2025-701003
グルコシノレート含有植物粉末、及びグルコシノレート含有植物粉末の製造方法
- 審判番号
- 2025-701003
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-105951
- 登録番号
- 7669208
- 請求日
- 2025年10月16日
- 審決日
- 2026年05月15日
- 公報発行日
- 2026年08月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】カゴメ株式会社
- 【権利者代理人】塚副 成
- 【異議申立人】高山 さち子
- 審判長/審判官
- 審判長 柴田 昌弘
- 審判官 水野 明梨
- 審判官 加藤 友也
- 分類
- P1651.121-YAA(A23B) / P1651.536-YAA(A23B) / P1651.537-YAA(A23B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7669208号発明「グルコシノレート含有植物粉末、及びグルコシノレート含有植物粉末の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7669208号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし4〕について訂正することを認める。
特許第7669208号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7669208号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、令和3年6月25日の出願であって、令和7年4月18日にその特許権の設定登録(請求項の数4)がされ、同年同月28日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年10月16日に特許異議申立人 高山 さち子(以下、「特許異議申立人」という。)から特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし4)がされ、同年12月24日付けで取消理由が通知され、令和8年2月26日付け(提出日:同年同月27日)で特許権者 カゴメ株式会社から訂正請求がされるとともに意見書が提出され、同年3月6日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、それに対して、特許異議申立人から何ら応答がなかったものである。
第2 本件訂正について
1 訂正の内容
令和8年2月26日付け(提出日:同年同月27日)でされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。下線は訂正箇所を示すものである。
・訂正事項
特許請求の範囲の請求項1の記載
「グルコシノレート含有植物粉末の製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも、以下の工程であり、:
加熱:ここで加熱されるのは、グルコシノレート含有植物であり、当該加熱は、水蒸気又は過熱水蒸気により行われ、
乾燥粉砕:ここで乾燥され、かつ、粉砕されるのは、前記加熱されたグルコシノレート含有植物であり、
造粒:ここで造粒されるのは、前記乾燥粉砕されたグルコシノレート含有植物であり、当該造粒において用いられるバインダーは、水、又はグルコシノレート含有液体組成物であり、
これによって得られるグルコシノレート含有植物粉末におけるグルコシノレートの含量は、前記グルコシノレート含有植物粉末1gあたり、5mg以上である。」を訂正して、
「グルコシノレート含有植物粉末の製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも、以下の工程であり、:
加熱:ここで加熱されるのは、グルコシノレート含有植物であり、当該加熱は、水蒸気又は過熱水蒸気により行われ、
乾燥粉砕:ここで乾燥され、かつ、粉砕されるのは、前記加熱されたグルコシノレート含有植物であり、
造粒:ここで造粒されるのは、前記乾燥粉砕されたグルコシノレート含有植物であり、当該造粒において用いられるバインダーは、水、又はグルコシノレート含有液体組成物であり、
これによって得られるグルコシノレート含有植物粉末におけるグルコシノレートの含量は、前記グルコシノレート含有植物粉末1gあたり、5mg以上であり、
前記グルコシノレート含有植物粉末におけるグルコラファニンの含有量は、前記グルコシノレート含有植物粉末1gあたり、5mg以上である。」とする。併せて、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2ないし4も同様に訂正する。
2 訂正の目的、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)請求項1についての訂正について
訂正事項による請求項1についての訂正は、「グルコシノレート含有植物粉末におけるグルコラファニンの含有量」に関する事項を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項による請求項1についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)請求項2ないし4についての訂正について
訂正事項による請求項2ないし4についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項による請求項2ないし4についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 むすび
以上のとおり、訂正事項による請求項1ないし4についての訂正は、いずれも、特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。
また、訂正事項による請求項1ないし4についての訂正は、いずれも、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。
なお、訂正前の請求項1ないし4は一群の請求項に該当するものである。
そして、訂正事項による請求項1ないし4についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
また、特許異議申立人からの特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし4に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし4〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
グルコシノレート含有植物粉末の製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも、以下の工程であり、:
加熱:ここで加熱されるのは、グルコシノレート含有植物であり、当該加熱は、水蒸気又は過熱水蒸気により行われ、
乾燥粉砕:ここで乾燥され、かつ、粉砕されるのは、前記加熱されたグルコシノレート含有植物であり、
造粒:ここで造粒されるのは、前記乾燥粉砕されたグルコシノレート含有植物であり、当該造粒において用いられるバインダーは、水、又はグルコシノレート含有液体組成物であり、
これによって得られるグルコシノレート含有植物粉末におけるグルコシノレートの含量は、前記グルコシノレート含有植物粉末1gあたり、5mg以上であり、
前記グルコシノレート含有植物粉末におけるグルコラファニンの含有量は、前記グルコシノレート含有植物粉末1gあたり、5mg以上である。
【請求項2】
請求項1の製造方法であって、前記グルコシノレート含有植物は、
アブラナ科野菜である。
【請求項3】
請求項1又は2の製造方法であって、
前記乾燥の方法は、少なくとも、熱乾燥である。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかの製造方法であって、前記造粒の方法は、流動層造粒である。」
第4 特許異議申立書に記載された特許異議申立ての理由の概要等
令和7年10月16日に特許異議申立人から提出された特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載された特許異議申立ての理由の概要及び証拠方法は次のとおりである。
1 申立理由1(甲第1号証に基づく進歩性)
本件特許発明1ないし4は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいてその出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 申立理由2(実施可能要件)及び申立理由3(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号及び同法同条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(1)グルコシノレート含有植物について
ブロッコリースプラウト、ケーリッシュ、ブロッコリー、ケール、及び小松菜は同じアブラナ科に属する野菜であるにもかかわらず、甲第4号証(2頁)には、グルコラファニンの含有量がこれらの品種によって大きく異なることが記載されている(なお、甲第5号証からも分かるとおり、甲第4号証に記載のケーリッシュ(品種名:サンテヴェール48)は、ラファノブラシカである)。さらに甲第4号証には、ブロッコリー及びケールのグルコラファニン含有量は、ケーリッシュの1/6程度であり、小松菜にいたってはグルコラファニンの含有量が0であることが記載されている。
また、甲第1号証の記載によると、GSL含有量は、同じ品種であっても、収穫時期、部位・貯蔵の有無の違い、土壌成分の違い、注水を行う時期、栽培年など様々な要因に影響を受けることが、当該技術分野における技術常識である。
そうすると、本件特許明細書に記載の実施例5において、グルコラファニンの濃度が7.26mg/gのラファノブラシカ乾燥物が得られたことが記載されているとしても、そもそもグルコラファニンの含有量がラファノブラシカの1/6程度であるブロッコリー及びケールを用いた場合には、乾燥物におけるグルコラファニン濃度も1/6程度になると考えるのが普通であり、ラファノブラシカに代えてブロッコリー又はケールを用いた場合に、グルコラファニン(グルコシノレート)の含有量が粉末1gあたり、5mg以上である粉末が得られると認識することはできない。また当然のことながら、グルコラファニンの含有量が0である小松菜を用いた場合にも、グルコラファニン(グルコシノレート)の含有量が粉末1gあたり、5mg以上である粉末が得られると認識することはできない。
よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が過度の試行錯誤なく、実施できるように記載されたものであるとは言えない。
また、本件特許発明1の全範囲において、本件特許の課題が解決されるとは認識できない。
本件特許発明2ないし4についても同様である。
従って、本件特許発明1ないし4は、実施可能要件及びサポート要件を充足しない。
(2)加熱、乾燥粉砕及び造粒工程を含むグルコシノレート含有植物粉末の製造方法について
本件特許明細書には、本件特許発明1に係る構成を全て満たす実施例が記載されていない。
そして、本件特許発明1には、「これによって得られるグルコシノレート含有植物粉末におけるグルコシノレートの含量は、前記グルコシノレート含有植物粉末1gあたり、5mg以上である」との記載があるところ、本件特許明細書には、加熱、乾燥粉砕、及び造粒工程の全てを含む方法により得られたグルコシノレート含有植物粉末が記載されていないのだから、加熱、乾燥粉砕、及び造粒工程の全てを経て得られるグルコシノレート含有植物粉末におけるグルコシノレートの含量が、グルコシノレート含有植物粉末1gあたり、5mg以上となると認識できない。よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が過度の試行錯誤なく、実施できるように記載されたものであるとは言えない。また、本件特許発明1の全範囲において、本件特許の課題が解決されるとは認識できない。本件特許発明2ないし4についても同様である。
従って、本件特許発明1ないし4は、実施可能要件及びサポート要件を充足しない。
(3)グルコシノレート含有液体組成物について
本件特許明細書には、バインダーとして、水を用いた実施例が示され得ているに留まり(実施例4)、グルコシノレート含有液体組成物を用いた実施例については開示がない。また、明細書中にもグルコシノレート含有液体組成物については何ら具体的な説明がない。
グルコシノレート含有液体組成物との記載からは、グルコシノレートを含む液体であればいかなるものであっても包含されると解されるところ、例えば、有機溶媒等のいかなる溶媒を用いた場合であっても、本件特許発明の効果が奏されるとは認識できない。よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が過度の試行錯誤なく、実施できるように記載されたものであるとは言えない。また、本件特許発明1の全範囲において、本件特許の課題が解決されるとは認識できない。本件特許発明2ないし4についても同様である。
従って、本件特許発明1ないし4は、実施可能要件及びサポート要件を充足しない。
3 証拠方法
甲第1号証:日本調理科学会誌 2016年49巻1号7~18頁、アブラナ科野菜の加熱によるグルコシノレート含有量の変化、長田早苗、青柳康夫、2016年3月1日公開
甲第2号証:特開2002-218964号公報
甲第3号証:特開2005-73557号公報
甲第4号証:カゴメニュースリリース 長野県と共同開発した新しい葉野菜 ケールとダイコンから生まれた「ケーリッシュ○R(当審注:Rを○で囲んだ記号である。以下、同様。)」の販売開始~今話題の健康成分スルフォラファンを多く含む~、https://www.kagome.co.jp/library/company/news/2019/img/20191101001.pdf、2019年11月1日公開
甲第5号証:新規野菜属間雑種(ダイコン×ケール変種)ラファノブラシカ「サンテヴェール48」の育成の内容を記載する情報検索サービス(インターネット)上の記載(https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=202002261499712547)、2020年3月28日公開
証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。
第5 取消理由の概要
令和7年12月24日付けで通知された取消理由(以下、「取消理由」という。)の概要は次のとおりである。なお、該取消理由は申立理由1とおおむね同旨である。
取消理由(甲1に基づく進歩性)
本件特許発明1ないし4は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明に基づいてその出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
第6 取消理由(甲1に基づく進歩性)についての当審の判断
1 甲1に記載された事項等
(1)甲1に記載された事項
甲1は、「アブラナ科野菜の加熱によるグルコシノレート含有量の変化」というタイトルの論文であり、おおむね次の事項が記載されている。摘記に際し、半角文字は適宜全角で摘記し、文字の右肩に付された参照文献の番号の摘記は省略した。下線は当審で付したものである。
・「1 緒言
アブラナ科野菜には,イオウを含むグルコース配糖体である多種多様な構造のグルコシノレート(glucosinolate,GSL)が含まれている。・・・(略)・・・GSL量を多く摂取することががん予防に効果があると報告されたため、・・・(略)・・・食品中に含まれるGSLの種類と含有量についての関心が高まっている。
既報において我々は,日本産アブラナ科野菜4属15種類を調査し,25種類のGSLの存在を確認した。」(第7ページ左欄)
・「(4)熱媒体が異なる加熱方法(蒸し加熱,過熱水蒸気による加熱,真空調理)がGSL含有量へ及ぼす影響【EX4】
大量調理で使用する3種類の加熱(蒸し加熱,過熱水蒸気による加熱,真空調理)を行い,加熱後の各試料中に含まれるGSL含有量を測定した。ブロッコリーは,2009年8月に埼玉県産を小売店で約7kg購入後,全てのブロッコリーの可食部分を20~25g/個の小房に切り,そこから生鮮物の分析用に無作為に500gを,また3種類の熱処理を行うために1,000gずつ分取し実験に供した。」(第9ページ左欄)
・「○1(当審注:丸付き数字の1である。以下、同様。)蒸し加熱:スチームコンベクションオーブン(FCCP 101G,(株)フジマック,東京都),440×640×760mm(トレー10段),ガス消費量36,980kcal/h:スチーム100℃。
○2過熱水蒸気による加熱:アクアガス加熱装置(タイヨー製作所,北海道),420×605×461mm(トレー5段),消費電力10.63kW:加熱チャンバー内処理温度115℃,湿度100%,チャンバー内酸素濃度0.2%による加熱。」(第9ページ右欄)
・「(5)試料の調製およびGSL含有量の測定
未加熱および加熱後の固形試料は,1昼夜以上-45℃で完全に凍結後,凍結乾燥機(FPC6型,日本フリーザー(株),東京都)を用いて凍結乾燥した。その後,粉砕機(レッチェ○Rグラインドミックス200,ヴァーダー・サイエンティフィック(株),東京都)を用いて粉砕(4.0×1,000rpm,30秒)し粉末にした後,それぞれ試料缶に入れ,測定まで-30℃で冷凍保存した。」(第9ページ右欄)
・「本実験で用いたクレソンは,既報と比較して,総GSL含有量が2~3割少なかった」(第10ページ右欄)
・「
[図:0001438297000001.jpg]
」(第10ページ)(Table1の下欄の特許異議申立人による訳:データ(実験2、3、及び4)は平均±標準偏差(n=3)で示した。実験1では、クレソン及びブロッコリーの試料を異なる温度(30~90℃又は99℃)で30分間加熱した際のGSL含有量を測定した。実験2では、異なる加熱時間処理したブロッコリー試料のGSL含有量を比較した。実験3では、異なる量の沸騰水で調理したブロッコリー試料のGSL含有量を比較した。実験4では、異なる加熱方法を用いたブロッコリー試料のGSL含有量を比較した。ND:検出限界未満。)
・「本実験で用いたブロッコリーの総GSL含有量は,既報と比較して少なく,中でも【EX3】に用いたブロッコリーの総GSL含有量は,最も多い時の3割程度であった。」(第11ページ左欄)
・「アブラナ科野菜のGSL含有量は遺伝子(品種),収穫時期,部位・貯蔵の有無の違いの他,土壌成分の違い,注水を行う時期,栽培年など様々な要因に影響される。本実験は,既報と同様に国産の試料を用いたが,品種や収穫時期,収穫場所が異なるため,それらのことがGSL含有量の違いに影響を及ぼしたものと思われた。」(第11ページ13~19行目)
・「以上のことにより,クレソンやブロッコリーを加熱する際にGSLの分解を抑制するためには,50~70℃の温度帯を早く通過させることが効果的であることが示唆された。」(第12ページ左欄ないし右欄)
・「内部温度の上昇が遅いものは,50~70℃あたりの温度帯の通過時間が長くなりGSLの減少が大きくなるのではないかと予測した。」(第14ページ右欄)
・「4MSB-GSLについては,スチームコンベクションオーブンを用いた蒸し加熱(ST)の含有率は,未加熱を100%とすると125.0%,過熱水蒸気による加熱(SS)では137.4%,真空パック後に蒸し加熱した場合(VC)は125.9%となった。3IM-GSLについては,STは134.6%,SSでは126.1%,VCでは115.9%となった。4M3IM-GSLについては,STは109.6%,SSは109.7%,VCは88.5%となった。1M3IM-GSLについては,STは145.2%,SSは138.9%,VCは98.9%となった。
また,加熱の際に測定した中心温度の履歴をFig.7に示した。中心温度95℃になるまで,STでは4分30秒,SSでは3分50秒,VCでは5分20秒かかった。また,50~70℃を通過した時間はSTでは35秒,SSでは27秒,VCでは50秒であった。SS,ST,VCの順番で経過時間が長くなった。
GSLは水溶性であり,STでは水蒸気(100℃)が,SSではSTよりも微細で高温(115℃)な水滴が試料表面に付着し熱伝達が行われるが,本研究では加熱後の減少が見られなかったため,これらによるGSLの損耗は殆どないものと推察された。また,STおよびSSによる加熱は試料の中心温度上昇速度が比較的大きいため,ミロシナーゼ活性が高い50~70℃を速く通過したことも損耗を抑えた一因と推察された。」(第14ページないし第15ページ)
・「
[図:0001438297000002.jpg]
」(第16ページ)(図の下欄の特許異議申立人による訳:図6.異なる3種類の加熱法で調理したブロッコリー試料のGSL含有量の変化。
(A)4-メチルスルフィニルブチルGSL;(B)3-インドリルメチルGSL;(C)4-メトキシ-3-インドリルメチルGSL;(D)1-メトキシ-3-インドリルメチルGSL;対照:未調理ブロッコリー。ST:蒸し調理;SS:過熱蒸し調理;VC:真空調理。
全てのブロッコリー試料は中心温度が95℃に達するまで加熱した。データは平均±標準偏差(n=3)で示す。)
・「
[図:0001438297000003.jpg]
」(第16ページ)(図の下欄の特許異議申立人による訳:図7.異なる3種類の加熱法で調理したブロッコリー試料の中心温度を示す加熱曲線。
全てのブロッコリー試料は中心温度が95℃に達するまで加熱した。
蒸し調理(ST)
過熱蒸し調理(SS)
真空調理(VC)
蒸し調理時間=270秒;過熱蒸し調理時間=290秒;真空調理時間=320秒。)
・「本実験で示された「未加熱試料と比較して,加熱後にGSL量が増加する現象」の要因については明らかではないが、Verkerkらは,加熱によりGSLの抽出が昂進したための現象であると報告している。しかし,本実験で適用した抽出法がこれらの要因で抽出率に変化がもたらされたとは考えにくく,加熱昇温過程でのこれら化合物の生合成が惹起されたと考えることが自然であると思われる。」(第16ページ右欄)
(2)甲1に記載された発明
甲1に記載された事項を、特にEX4に関して整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。
<甲1発明>
「ブロッコリーの可食部分を試料として、蒸し加熱又は過熱水蒸気による加熱を行い、加熱後の試料は、1昼夜以上-45℃で完全に凍結後、凍結乾燥機を用いて凍結乾燥し、その後、粉砕機を用いて粉砕し粉末にする方法。」
2 本件特許発明1について
(1)対比
本件特許発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明における「粉末にする方法」は「ブロッコリーの可食部分を試料」とするものであり、「ブロッコリー」は「グルコシノレート含有植物」であるから、甲1発明における「粉末にする方法」は本件特許発明1における「グルコシノレート含有植物粉末の製造方法」に相当する。
甲1発明における「蒸し加熱又は過熱水蒸気による加熱を行い」は本件特許発明1における「加熱:ここで加熱されるのは、グルコシノレート含有植物であり、当該加熱は、水蒸気又は過熱水蒸気により行われ」という「工程」に相当する。
甲1発明における「加熱後の試料は、1昼夜以上-45℃で完全に凍結後、凍結乾燥機を用いて凍結乾燥し、その後、粉砕機を用いて粉砕し」は本件特許発明1における「乾燥粉砕:ここで乾燥され、かつ、粉砕されるのは、前記加熱されたグルコシノレート含有植物であり」という「工程」に相当する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「グルコシノレート含有植物粉末の製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも、以下の工程であり、:
加熱:ここで加熱されるのは、グルコシノレート含有植物であり、当該加熱は、水蒸気又は過熱水蒸気により行われ、
乾燥粉砕:ここで乾燥され、かつ、粉砕されるのは、前記加熱されたグルコシノレート含有植物である。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点1>
本件特許発明1においては「造粒:ここで造粒されるのは、前記乾燥粉砕されたグルコシノレート含有植物であり、当該造粒において用いられるバインダーは、水、又はグルコシノレート含有液体組成物であり」と特定されているのに対し、甲1発明においてはそのようには特定されていない点。
<相違点2>
本件特許発明1においては「これによって得られるグルコシノレート含有植物粉末におけるグルコシノレートの含量は、前記グルコシノレート含有植物粉末1gあたり、5mg以上であり」と特定されているのに対し、甲1発明においてはそのようには特定されていない点。
<相違点3>
本件特許発明1においては「前記グルコシノレート含有植物粉末におけるグルコラファニンの含有量は、前記グルコシノレート含有植物粉末1gあたり、5mg以上である」と特定されているのに対し、甲1発明においてはそのようには特定されていない点。
(2)判断
事案に鑑みて、相違点3について検討する。
甲1の第10ページのTable1には、甲1発明の認定の根拠であるEX4における未加工のブロッコリーの各種GSL(当審注:「GSL」は「グルコシノレート」のことである。)含有量が示されており、以下に各種GSL含量をμmolからmgに換算した結果を示す。
[図:0001438297000004.jpg]
甲1の「4MSB-GSLについては,スチームコンベクションオーブンを用いた蒸し加熱(ST)の含有率は,未加熱を100%とすると125.0%,過熱水蒸気による加熱(SS)では137.4%,真空パック後に蒸し加熱した場合(VC)は125.9%となった。3IM-GSLについては,STは134.6%,SSでは126.1%,VCでは115.9%となった。4M3IM-GSLについては,STは109.6%,SSは109.7%,VCは88.5%となった。1M3IM-GSLについては,STは145.2%,SSは138.9%,VCは98.9%となった。」(第14ページないし第15ページ)との記載に基づいて、蒸し加熱又は過熱水蒸気加熱による加熱処理を行ったブロッコリーに含まれる各種GSL量を以下に示す。
・蒸し加熱による加熱処理を行った場合
グルコラファニン(4MSB-GSL):125.0%(1.25×2.37=2.96mg・gDW-1)
グルコブラシシン(3IM-GSL):134.6%(1.346×1.56=2.10mg・gDW-1)
4-メトキシグルコブラシシン(4M3IM-GSL):109.6%(1.096×0.27=0.30mg・gDW-1)
ネオグルコブラシシン(1M3IM-GSL):145.2%(1.452×1.37=1.99mg・gDW-1)
蒸し加熱処理を行ったブロッコリーに含まれる上記4種のGSLの合計量は、7.35mg・gDW-1である。
・過熱水蒸気加熱による加熱処理を行った場合
グルコラファニン(4MSB-GSL):137.4%(1.374×2.37=3.26mg・gDW-1)
グルコブラシシン(3IM-GSL):126.1%(1.261×1.56=1.97mg・gDW-1)
4-メトキシグルコブラシシン(4M3IM-GSL):109.7%(1.097×0.27=0.30mg・gDW-1)
ネオグルコブラシシン(1M3IM-GSL):138.9%(1.389×1.37=1.90mg・gDW-1)
過熱水蒸気加熱処理を行ったブロッコリーに含まれる上記4種のGSLの合計量は、7.43mg・gDW-1である。
すなわち、甲1発明における「粉末」中に含まれる上記グルコラファニンの含有量は、「蒸し加熱」による「加熱」を行った場合は粉末1gあたり2.96mgであり、「過熱水蒸気」による「加熱」を行った場合は粉末1gあたり3.26mgである。
したがって、甲1発明における「粉末」中に含まれるグルコラファニンの含有量は、「蒸し加熱」による「加熱」を行った場合及び「過熱水蒸気」による「加熱」を行った場合のいずれの場合でも、粉末1gあたり5mg以上であるといえず、相違点3は実質的な相違点である。
そして、甲1には、甲1発明において、グルコラファニンの含有量を粉末1gあたり5mg以上として、相違点3に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。
したがって、甲1発明において、甲1及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点3に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
(3)まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
3 本件特許発明2ないし4について
本件特許発明2ないし4のいずれも、請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
4 取消理由についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし4は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当しないので、取消理由によっては取り消すことができない。
第7 取消理由として採用しなかった特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由について
取消理由として採用しなかった特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由は申立理由2(実施可能要件)及び申立理由3(サポート要件)である。
以下、検討する。
1 判断基準
(1)実施可能要件の判断基準
上記第3のとおり、本件特許発明1ないし4は物を生産する方法の発明であるところ、物を生産する方法の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法を使用し、その方法により生産した物の使用をすることができる程度の記載があることを要する。
(2)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
以下、上記判断基準に従って検討する。
2 申立理由2(実施可能要件)についての判断
本件特許の発明の詳細な説明(以下、「発明の詳細な説明」という。)には、本件特許発明1ないし4の各発明特定事項について具体的に記載されている。すなわち、「グルコシノレート含有植物粉末」については発明の詳細な説明の【0019】ないし【0023】に、「加熱」については同【0026】ないし【0028】に、「乾燥粉砕」については同【0030】ないし【0037】に、「造粒」については同【0038】ないし【0040】に、「アブラナ科野菜」については同【0042】に、「グルコシノレート」及び「グルコラファン」については同【0043】ないし【0045】に、具体的に記載されている。
また、発明の詳細な説明の【0082】ないし【0092】には、実施例5として、グルコラファニン濃度が7.26mg/gのラファノブラシカ乾燥物が得られたことが具体的に記載されており、蒸気加熱処理による加熱により植物体内に内在する酵素(特にミロシナーゼ)は不活性化し、その後に粉砕及び造粒してもグルコラファニンは分解しないので、上記ラファノブラシカ乾燥物を粉砕及び造粒することで、本件特許発明1ないし4を実施できることが当業者であれば理解することができる。
したがって、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1ないし4の使用をし、それにより生産した物の使用をすることができる程度の記載があるといえる。
よって、本件特許発明1ないし4に関して、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を充足する。
3 申立理由3(サポート要件)についての判断
本件特許の特許請求の範囲(以下、「特許請求の範囲」という。)の記載は上記第3のとおりである。
発明の詳細な説明の【0007】の「本発明における課題は、グルコシノレート含有量の高い、グルコシノレート含有植物粉末を提供することである。」という記載によると、本件特許発明1ないし4の解決しようとする課題は「グルコシノレート含有量の高い、グルコシノレート含有植物粉末」の「製造方法」を提供すること(以下、「発明の課題」という。)である。
発明の詳細な説明の【0008】には「当該課題を解決するために、本発明者らが鋭意検討し発見したのは、グルコシノレート含有植物粉末におけるグルコシノレート含有量と、加工工程との関係である。グルコシノレート含有植物に含有されるグルコシノレートは、一般に、植物に内在するミロシナーゼの影響を受け、加工により減衰する。また、ミロシナーゼを失活するために、加熱等を行う手段も取りうるが、その失活方法やタイミングによっても、最終製品におけるグルコシノレート含有量が変化する。さらには、グルコシノレート含有植物粉末の分散性を高めるために一般的な賦形剤を用いると、分散性は高まるが、グルコシノレート含有植物粉末中のグルコシノレート含有量は低下する。」と記載され、同【0009】には「グルコシノレート含有植物粉末の製造方法を構成するのは、少なくとも、加熱、並びに乾燥及び粉砕である。加熱工程で装置によって加熱されるのは、グルコシノレート含有植物である。当該加熱は、水蒸気又は過熱水蒸気により行われる。当該グルコシノレート含有植物は、アブラナ科野菜であることが好ましい。前記グルコシノレート含有植物のグルコラファニン含有量は、当該グルコシノレート含有植物1gあたり、1.0mg以上であることが好ましい。」と記載され、同【0010】には「乾燥及び粉砕工程で人又は装置によって乾燥及び粉砕が行われるのは、前記加熱されたグルコシノレート含有植物である。当該乾燥は、当該粉砕と同時、又は当該粉砕の前に行われる。当該乾燥の方法は、少なくとも、熱乾燥を行うことが好ましい。」と記載され、同【0011】には「当該製造方法をさらに構成するのは、造粒である造粒工程で人又は装置によって造粒されるのは、前記乾燥及び粉砕されたグルコシノレート含有植物乾燥物である。当該造粒において用いられるバインダーは、水、又はグルコシノレート含有液体組成物である。当該造粒の方法は、流動層造粒であることが好ましい。」と記載され、同【0012】には「本願発明の一態様は、グルコシノレート含有植物粉末であって、当該グルコシノレート含有植物粉末が含有するのは、少なくとも、グルコラファニンである。当該緑色植物グルコシノレート含有植物粉末のグルコラファニン含有量は、当該グルコシノレート含有植物粉末1gあたり、5mg以上であることが好ましい。」と記載され、同【0045】には「本発明に係るグルコシノレート含有植物粉末において、グルコシノレートの含量は、好ましくは、グルコシノレート含有植物粉末1gあたり、5mg以上であり、より好ましくは、グルコシノレート含有植物粉末1gあたり、7mg以上である。また、本発明に係るグルコシノレート含有植物粉末において、グルコラファニン(以下、「GR」ともいう。)の含量は、好ましくは、グルコシノレート含有植物粉末1gあたり、5mg以上であり、より好ましくは、グルコシノレート含有植物粉末1gあたり、7mg以上である。」と記載されている。すなわち、発明の詳細な説明には、本件特許発明1ないし4に対応する記載があるといえる。
発明の詳細な説明の【0026】には「グルコシノレート含有植物を加熱する目的は、殺菌、及び植物体に内在する酵素、特にミロシナーゼを不活性化することである。植物体に内在するミロシナーゼは、切断や破砕等、植物細胞が破壊されることによって流出、及び活性化し、グルコシノレートを分解する。分解されたグルコシノレートは、イソチオシアネートと配糖体になる。イソチオシアネートは、後述するとおり種々の機能性を有するが、揮発性が高いため、安定性が低い。そのため、飲食品においては、安定性の高いグルコシノレートの状態で保持することが好ましい。」と記載され、同【0027】には「水蒸気又は過熱水蒸気による蒸煮を行うことで、熱効率がよく、グルコシノレート含有植物の加熱を短時間とすることができ、植物中の成分の酸化や酵素反応抑えることができる。」と記載され、同【0028】には「加熱の目標は、グルコシノレート含有植物中のミロシナーゼを不活性化できる程度であれば、特に限定されない。例示すると、ミロシナーゼの酵素失活温度が70~80℃程度であることを考慮し、グルコシノレート含有植物の中心温度において、90℃達温などである。当該ミロシナーゼは、50℃~70℃程度において活性が高まるため、加熱時に、いかに、植物体が当該温度帯を早く通過し、ミロシナーゼを失活させる温度に達するかが重要である。その観点からも、水蒸気による蒸煮、又は過熱水蒸気による蒸煮を行うことが好ましい。」と記載されており、当該箇所には、「加熱」を「水蒸気又は過熱水蒸気」により行うことの技術的意義が記載されているといえる。
発明の詳細な説明の【0082】ないし【0092】には、グルコシノレート含有植物の一種であるラファノブラシカを水蒸気により加熱し、乾燥させて得たラファノブラシカ乾燥物のグルコシノレートの一種であるグルコラファニン濃度が7.26mg/gとなっており、生鮮ラファノブラシカのグルコラファニン濃度の1.01mg/gよりも高くなっていることを確認する記載がある。
そうすると、発明の詳細な説明の記載から、当業者は「グルコシノレート含有植物粉末の製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも、以下の工程であり、:
加熱:ここで加熱されるのは、グルコシノレート含有植物であり、当該加熱は、水蒸気又は過熱水蒸気により行われ、
乾燥粉砕:ここで乾燥され、かつ、粉砕されるのは、前記加熱されたグルコシノレート含有植物であり、
これによって得られるグルコシノレート含有植物粉末におけるグルコシノレートの含量は、前記グルコシノレート含有植物粉末1gあたり、5mg以上である。」は発明の課題を解決できると認識できる。
そして、本件特許発明1ないし4は、当業者が発明の課題を解決できると認識できる上記「グルコシノレート含有植物粉末の製造方法」をさらに限定したものである。
したがって、本件特許発明1ないし4は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、本件特許発明1ないし4に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。
4 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人の上記第4 2における主張について検討する。
(1)上記第4 2(1)の主張について
特許異議申立人の上記第4 2(1)の主張は、要するに、グルコシノレート含有植物粉末として、ブロッコリー、ケール及び小松菜を用いた場合には、グルコラファニン(グルコシノレート)の含有量が粉末1gあたり、5mg以上である粉末が得られると認識することはできないから、本件特許発明1ないし4は、実施可能要件及びサポート要件を充足しないというものである。
しかし、発明の詳細な説明の記載(【0082】ないし【0092】)によると、少なくとも「ラファノブラシカ(ケーリッシュ)」を用いれば、グルコラファニン(グルコシノレート)の含有量が粉末1gあたり、5mg以上である粉末が得ることが可能であると当業者は認識するし、上記2のとおり、発明の詳細な説明には、本件特許発明1ないし4の各発明特定事項について具体的に記載されているから、発明の詳細な説明に、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1ないし4の使用をし、それにより生産した物の使用をすることができる程度の記載があるといえる。
また、上記3のとおり、本件特許発明1ないし4は、当業者が発明の課題を解決できると認識できる上記3記載の「グルコシノレート含有植物粉末の製造方法」をさらに限定したものであるから、本件特許発明1ないし4は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
したがって、特許異議申立人の上記第4 2(1)の主張は採用できない。
(2)上記第4 2(2)及び(3)の主張について
特許異議申立人の上記第4 2(2)及び(3)の主張は、要するに、発明の詳細な説明に、本件特許発明1に係る構成を全て満たす実施例及びグルコシノレート含有液体組成物を用いた実施例が記載されていないから、本件特許発明1ないし4は、実施可能要件及びサポート要件を充足しないというものである。
しかし、発明の詳細な説明に、本件特許発明1に係る構成を全て満たす実施例及びグルコシノレート含有液体組成物を用いた実施例が記載されていないとしても、上記2のとおり、本件特許発明1ないし4の各発明特定事項について発明の詳細な説明に具体的に記載されているから、当業者であれば過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1ないし4の使用をし、それにより生産した物の使用をすることができるといえる。
また、上記3のとおり、本件特許発明1ないし4は、当業者が発明の課題を解決できると認識できる上記3記載の「グルコシノレート含有植物粉末の製造方法」をさらに限定したものであるから、本件特許発明1ないし4は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
したがって、特許異議申立人の上記第4 2(2)及び(3)の主張はいずれも採用できない。
5 申立理由2及び3についてのむすび
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当しないので、申立理由2及び3によっては取り消すことはできない。
第8 結語
上記第6及び7のとおり、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立ての理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-701003