特許異議申立
2023-700151
コンデンサ
- 審判番号
- 2023-700151
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-155017
- 登録番号
- 7122657
- 請求日
- 2023年02月13日
- 審決日
- 2024年03月27日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】パナソニックIPマネジメント株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人北斗特許事務所
- 【異議申立人】ニチコン 株式会社
- 【異議申立人代理人】弁理士法人みのり特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 信一
- 審判官 畑中 博幸
- 審判官 山本 章裕
- 分類
- P1651.113-YAA(H01G) / P1651.121-YAA(H01G) / P1651.537-YAA(H01G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項、特許法第126条第5項、特許法第126条第4項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7122657号発明「コンデンサ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7122657号の明細書、特許請求の範囲及び図面を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲及び図面のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。
特許第7122657号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7122657号の請求項1ないし4に係る発明についての出願は、平成30年8月21日に出願され、令和4年8月12日にその特許権の設定登録がされ、同年8月22日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和5年 2月13日 :特許異議申立人ニチコン株式会社による請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立て
令和5年 5月22日付け:取消理由通知
令和5年 7月24日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和5年 9月14日 :特許異議申立人による意見書の提出
令和5年10月23日付け:取消理由通知(決定の予告)
令和5年12月25日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和6年 2月 2日 :特許異議申立人による意見書の提出
なお、令和5年12月25日提出の訂正請求書による訂正請求がされたので、令和5年7月24日提出の訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和5年12月25日提出の訂正請求の趣旨は、特許7122657号の明細書、特許請求の範囲及び図面を、訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲及び訂正図面のとおり訂正後の請求項1ないし4について訂正することを求めるものであり、その訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記バスバーの表面と前記側壁の内面との距離が、前記底壁側から前記膨出部に至るまでの部分よりも前記膨出部の部分で大きくなる、」と記載されているのを、「前記バスバーの表面と前記側壁の内面との距離が、前記底壁側から前記膨出部に至るまでの部分よりも前記膨出部の部分で大きくなり、前記バスバーと前記側壁との間に前記充填樹脂のみが存在する、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2ないし4も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に「前記膨出部は、前記ケースの開口方向と直交する方向において、前記バスバーよりも外側に延びる、」と記載されているのを、「前記膨出部は、前記ケースの開口方向と直交する方向であって、前記側壁に平行な方向において、前記バスバーよりも外側に延びる、」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項4も同様に訂正する)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に「前記直交する方向において、前記膨出部の寸法が前記側壁の寸法よりも小さくされる、」と記載されているのを、「前記側壁に平行な方向において、前記膨出部の寸法が前記側壁の寸法よりも小さくされる、」に訂正する。
(4)訂正事項4
願書に添付した明細書の段落【0031】に「・・・(略)・・・第2絶縁シート800により第2バスバー600の第2後接続端子部640とコンデンサ素子400の第1端面電極410との間の絶縁距離が確保される。る。また、第1前中継端子部530の一部と第2前中継端子部630の一部とが、・・・(略)・・・」と記載されているのを、「・・・(略)・・・第2絶縁シート800により第2バスバー600の第2後接続端子部640とコンデンサ素子400の第1端面電極410との間の絶縁距離が確保される。また、第1前中継端子部530の一部と第2前中継端子部630の一部とが、・・・(略)・・・」に訂正する。
(5)訂正事項5
願書に添付した図面の図1中に「530」及び「630」と記載されている符号を、それぞれ「540」及び「640」に訂正する。
2 訂正の適否についての判断
(1)一群の請求項について
本件訂正前の請求項1ないし4は、請求項2ないし4が、訂正の対象となる請求項1を直接又は間接的に引用しているものであるから、一群の請求項であり、これら訂正前の請求項1ないし4に対応する訂正後の請求項1ないし4は一群の請求項である。
したがって、訂正前の請求項1ないし4に対応する訂正後の請求項1ないし4は、特許法第120条の5第4項の規定に一群の請求項である。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1について
(ア)訂正の目的
訂正事項1は、「バスバー」と「側壁」との間における構成について、「前記充填樹脂のみが存在す」るとの限定を付加するものである。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
バスバー及び側壁に関し、本件特許明細書の段落【0014】に「また、前側壁202および後側壁203が、特許請求の範囲に記載の「側壁」に対応する。・・・(略)・・・。さらに、第1バスバー500および第2バスバー600が、特許請求の範囲に記載の「バスバー」に対応する。」、同段落【0017】に「フィルムコンデンサ1は、コンデンサ素子ユニット100と、ケース200と、充填樹脂300とを備える。コンデンサ素子ユニット100がケース200内に収容され、ケース200内に充填樹脂300が充填される。」、同段落【0036】に「コンデンサ素子ユニット100がケース200内に収容され、ケース200内に溶融状態の充填樹脂300が注入される。・・・(略)・・・。充填樹脂300が開口200aの近傍までケース200内に満たされ、充填樹脂300の注入が完了すると、ケース200が加熱される。これにより、ケース200内の充填樹脂300が硬化する。」、同段落【0042】に「本実施の形態では、前膨出部210および後膨出部220が設けられることにより、ケース200の開口端部において、毛細管現象が生じない程度に、第2バスバー600とケース200の前側壁202および後側壁203との間に隙間を確保することが可能となる。よって、第2バスバー600と前側壁202および後側壁203の隙間から充填樹脂300が這い上がりケース200から漏れ出してしまうことが防止される。しかも、前膨出部210および後膨出部220よりもケース200の底壁201側では、第2バスバー600と前側壁202および後側壁203の隙間を小さくできるので、充填樹脂300の使用量が増加することを抑制できる。」とそれぞれ記載されている。
そして、図6(a)及び図6(b)によれば、ケース200の底壁201から充填樹脂300の表面まで、「第2バスバー600」と「前側壁202」との間に「充填樹脂300」のみが存在することが見て取れる。同様に、「第2バスバー600」と「後側壁203」との間に「充填樹脂300」のみが存在することが見て取れる。
してみれば、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
イ 訂正事項2について
(ア)訂正の目的
訂正事項2は、「膨出部」の「バスバーよりも外側に延びる」方向について、「ケースの開口方向と直交する方向」に、さらに「前記側壁に平行な方向」を付加することにより、「膨出部」の延びる方向を明確にしたものである。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
膨出部、バスバー及び側壁に関し、本件特許明細書の段落【0014】に「また、前側壁202および後側壁203が、特許請求の範囲に記載の「側壁」に対応する。さらに、前膨出部210および後膨出部220が、特許請求の範囲に記載の「膨出部」に対応する。・・・(略)・・・。さらに、第1バスバー500および第2バスバー600が、特許請求の範囲に記載の「バスバー」に対応する。」、同段落【0034】に「前膨出部210の左右方向(ケース200の開口方向に直交する方向)の寸法は、第2バスバー600の第2前中継端子部630の左右方向の寸法よりも僅かに大きくされている。」、同段落【0044】に「図6(b)に示すように、左右方向(ケース200の開口方向に直交する方向)において、前膨出部210は、第2バスバー600の第2前中継端子部630よりも外側(左右側)に延びている。・・・(略)・・・。また、左右方向において、後膨出部220は、左右に並ぶ第1バスバー500の第1後接続端子部540および第2バスバー600の第2後接続端子部640よりも外側(左右側)に延びている。」、同段落【0052】に「さらに、前膨出部210および後膨出部220は、ケース200の開口方向と直交する方向(左右方向)において、第2バスバー600よりも外側に延びる。」、同段落【0054】に「さらに、ケース200の開口方向と直交する方向(左右方向)において、前膨出部210および後膨出部220の寸法が、前側壁202および後側壁203の寸法よりも小さくされる。」とそれぞれ記載されている
そして、図6(a)及び図6(b)によれば、「前膨出部210」が、「ケース200」の開口方向と直交する方向であって、「前側壁202」に平行な方向において、「第2バスバー600」よりも外側に延びていることが見て取れる。同様に、「後膨出部220」が、「ケース200」の開口方向と直交する方向であって、「後側壁203」に平行な方向において、「第1バスバー500」及び「第2バスバー600」よりも外側に延びていることが見て取れる。
してみれば、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
ウ 訂正事項3について
(ア)訂正の目的
訂正事項3は、訂正前の請求項4の「前記直交する方向」を「前記側壁に平行な方向」と訂正することにより、「側壁の寸法よりも小さくされる」「膨出部の寸法」がどの方向における寸法であるのか明確にしたものである。
よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
膨出部の寸法に関し、本件特許明細書の段落【0034】に「前膨出部210の左右方向(ケース200の開口方向に直交する方向)の寸法は、第2バスバー600の第2前中継端子部630の左右方向の寸法よりも僅かに大きくされている。しかしながら、前膨出部210の左右方向の寸法は、前側壁202の左右方向の寸法よりも小さく、前膨出部210は、前側壁202の左右方向全体に亘っては設けられていない。また、後膨出部220の左右方向の寸法は、左右方向に並んだ第1バスバー500の第1後接続端子部540と第2バスバー600の第2後接続端子部640との寸法よりも僅かに大きくされている。しかしながら、後膨出部220の左右方向の寸法は、後側壁203の左右方向の寸法よりも小さく、後膨出部220は、後側壁203の左右方向全体に亘っては設けられていない。」と記載されている。
そして、また、図6(a)及び図6(b)によれば、「前側壁202」に平行な方向において、「前膨出部210」の寸法が「前側壁202」の寸法よりも小さくされていることが見て取れる。同様に、「後側壁203」に平行な方向において、「後膨出部220」の寸法が「後側壁203」の寸法よりも小さくされていることが見て取れる。
したがって、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
エ 訂正事項4について
(ア)訂正の目的
訂正前の本件特許明細書の段落【0031】に記載された「・・・確保される。る。また、・・・」における「る。」は、文として成立しておらず、明らかな誤記といえるから、訂正事項4は当該誤記を正すものである。
よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
上記(ア)で述べたように、訂正事項4は、誤記を正すものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(ウ)明細書の訂正と関係する請求項について
明細書に対する訂正事項4は、誤記を訂正することを目的とするものであり、これは一群の請求項1ないし4の全てについて行う訂正である。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第4項の規定に適合するものである。
オ 訂正事項5について
(ア)訂正の目的
a 訂正前の図1に示された符号「530」に関し、本件特許明細書の段落【0024】に「第1電極端子部510と3つの第1前接続端子部520との間が、第1前中継端子部530により中継される。第1前中継端子部530は、第1電極端子部510の前端部から上方へと延びた後に屈曲して前方へと延び、さらに屈曲して下方へ延びる形状を有する。」と記載されていることからすれば、図1の符号「530」で示されたケース200の後方に位置し、3つの「第1前接続端子部520」と直接接続していない構成は、「第1前中継端子部530」に対応していないことは明らかである。
そして、同段落【0025】の「第1後接続端子部540は、第1電極端子部510の後端部に設けられる。第1後接続端子部540は、上方へと延びた後に屈曲して後方へと延び、さらに屈曲して下方へ延びた後に屈曲して後方へと延びる形状を有する。第1後接続端子部540には、先端部に円形の貫通孔541が形成される。」との記載、及び、図2、3、6を参酌すれば、図1の符号「530」で示されたケース200の後方に位置する構成は、「第1後接続端子部540」であると解され、図1の符号「530」は「540」の誤記であるといえる。
b また、訂正前の図1に示された符号「630」に関し、本件特許明細書の段落【0028】に「第2電極端子部610と3つの第2前接続端子部620との間が、第2前中継端子部630により中継される。第2前中継端子部630は、第2電極端子部610の前端部から上方へと延びた後に屈曲して前方へと延び、さらに屈曲して下方へ延びる形状を有する。」と記載されていることからすれば、図1の符号「630」で示されたケース200の後方に位置し、3つの「第2前接続端子部620」と直接接続していない構成は、「第2前中継端子部630」に対応していないことは明らかである。
そして、同段落【0029】の「第2後接続端子部640は、第2後中継端子部650の上端部に設けられる。第2後接続端子部640は、上方へと延びた後に屈曲して後方へと延び、さらに屈曲して下方へ延びた後に屈曲して後方へと延びる形状を有する。第2後接続端子部640には、先端部に円形の貫通孔641が形成される。」との記載、及び、図2、4、図6を参酌すれば、図1の符号「630」で示されたケース200の後方に位置する構成は、「第2後接続端子部640」と解され、図1の符号「630」は「640」の誤記であるといえる。
c してみると、符号「530」を「540」に、符号「630」を「640」に訂正する訂正事項5は当該誤記を正すものである。
よって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
上記(ア)で述べたように、訂正事項5は、誤記を正すものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(ウ)図面の訂正と関係する請求項について
図面に対する訂正事項5は、誤記を訂正することを目的とするものであり、これは一群の請求項1ないし4の全てについて行う訂正である。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第4項の規定に適合するものである。
(3)独立特許要件について
上記「(2)」で述べたように、訂正事項1は「特許請求の範囲の減縮」、訂正事項4、5は「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするところ、本件においては、全請求項について特許異議の申立てがされているから、訂正前の請求項1ないし4に係る訂正事項1、4、5に関して、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(4)異議申立人の主張
特許異議申立人は、令和6年2月2日に提出した意見書において、本件発明1の「前記バスバーと前記側壁との間に前記充填樹脂のみが存在する」構成が、バスバーと側壁との間の全領域において充填樹脂のみが存在する構成である場合、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲を超えるものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合しない旨主張する。(3頁下から6行ないし末行)
しかしながら、訂正された請求項1には、「前記バスバーと前記側壁との間の全領域において充填樹脂のみが存在する」とは記載されておらず、また、上記「(2)ア(イ)」で述べたように、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
よって、異議申立人の主張は採用できない。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合する。
よって、特許請求の範囲、明細書及び図面を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲、訂正明細書及び訂正図面のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記「第2」のとおり本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1ないし4に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明4」という。)は、その訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された次の事項により特定されるものである。なお、下線は、訂正箇所を示す。
「【請求項1】
コンデンサ素子と、
前記コンデンサ素子の電極に接続される板状のバスバーと、
前記コンデンサ素子が収容されるケースと、
前記ケース内に充填される充填樹脂と、を備え、
前記バスバーは、その表面を前記ケースの側壁の内面に対向させるようにして前記ケースの開口側へと延び、当該開口から前記ケースの外方と導出され、
前記ケースにおける前記バスバーが対向する側壁は、前記ケースの底壁側から前記開口側と至る途中の位置から前記開口に亘って形成され、外側彭らむ膨出部を含み、
前記バスバーの表面と前記側壁の内面との距離が、前記底壁側から前記膨出部に至るまでの部分よりも前記膨出部の部分で大きくなり、
前記バスバーと前記側壁との間に前記充填樹脂のみが存在する、
ことを特徴とするコンデンサ。
【請求項2】
請求項1に記載のコンデンサにおいて、
前記膨出部は、前記コンデンサ素子よりも前記ケースの開口に近い位置から当該開口に亘って形成される、
ことを特徴とするコンデンサ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のコンデンサにおいて、
前記膨出部は、前記ケースの開口方向と直交する方向であって、前記側壁に平行な方向において、前記バスバーよりも外側に延びる、
ことを特徴とするコンデンサ。
【請求項4】
請求項3に記載のコンデンサにおいて、
前記側壁に平行な方向において、前記膨出部の寸法が前記側壁の寸法よりも小さくされる、
ことを特徴とするコンデンサ。」
第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
1 令和5年10月23日付け取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要は次のとおりである。
(1)理由1(進歩性)
請求項1ないし4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
記
引用文献1:特開2005-039058号公報(甲第5号証)
(2)理由2(明確性)
本件訂正により、訂正前の請求項1の「バスバー」について、「ケースの開口側へと延び」の後に、「た後に屈曲して、前記ケースの開口方向と直交する方向において延びることによって」との限定が付加されたことから、該「バスバー」の延びる方向は、「ケースの開口方向と直交する方向」である。
ここで、本件発明の「ケースの開口方向と直交する方向」とは、該「ケース」の「開口方向」から見た幅方向や長さ方向(本件図面に示された「前」「後」方向や「左」「右」方向」に相当)が想定されるところ、請求項1を引用する請求項3には「前記膨出部は、前記ケースの開口方向と直交する方向において、前記バスバーよりも外側に延びる」と記載されていることから、請求項3の「膨出部」の延びる方向が、請求項1の「バスバー」の延びる方向と同じ方向であるのか、または、異なる方向であるのか不明である。
また、請求項3を引用する請求項4には「前記直交する方向において、前記膨出部の寸法が前記側壁の寸法よりも小さくされる」と記載されており、「膨出部の寸法が前記側壁の寸法よりも小さくされる」方向も、請求項1の「バスバー」の延びる方向と同じ方向であるのか、または、異なる方向であるのか不明である。
よって、請求項3、4に係る発明は明確ではなく、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
2 引用文献の記載、引用発明
(1)令和5年10月23日付け取消理由通知(決定の予告)において引用した引用文献1(特開2005-039058号公報(甲第5号証))には、以下の各記載がある。(下線は当審で付与した。)
「【0004】
この発明は、上記従来の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、リード部材間のピッチ精度を向上することができ、しかもリード部材が傾き難いケース入りコンデンサを提供することにある。
【0005】
そこで請求項1のケース入りコンデンサは、両端面1、1にリード部材2、2が接続されたコンデンサ素子3をケース4に収納して樹脂を充填したケース入りコンデンサであって、上記ケース4内に、その開口部10近傍において、突隆部21、21を有する基板11を配置すると共に、この突隆部21、21に、上記コンデンサ素子3のリード部材2、2をケース外へ引き出すためのガイド用貫通孔20、20を設け、さらに、上記ケース内面18に、上記基板11を係合支持する係合部Kを設けたことを特徴としている。
【0006】
上記請求項1のケース入りコンデンサでは、基板11に突隆部21、21を設け、この突隆部21、21にコンデンサ素子3のリード部材2、2をケース外へ引き出すためのガイド用貫通孔20、20を設けたので、このガイド用貫通孔20、20の長さ寸法が、基板の厚さ寸法(突隆部を含まない部分の厚さ寸法)よりも長くなり、リード部材2、2をこのガイド用貫通孔20、20の軸心方向に沿って安定してケース外へ引き出すことができる。しかも、ガイド用貫通孔20、20を有する基板11を配置しているので、リード部材2、2間のピッチ精度を向上することができる。さらに、ケース内面に、上記基板11を係合支持する係合部Kを設けたので、基板11をケース4内に安定して支持することができる。」
「【0015】
請求項1のケース入りコンデンサによれば、ガイド用貫通孔の長さ寸法が、基板の厚さ寸法(突隆部を含まない部分の厚さ寸法)よりも長くなり、リード部材をこのガイド用貫通孔の軸心方向に沿って安定してケース外へ引き出すことができる。これによって、リード部材における屈曲部の形成を難くして、リード部材が傾くのを防止することができる。また、リード部材間のピッチ精度を向上することができ、このコンデンサの他の部材へのリード部材の接続作業を精度良く行うことができる。さらに、ケース内面に、上記基板を係合支持する係合部を設けたので、基板をケース内に安定して支持することができる。これによって、このコンデンサの組立作業性の向上を図ることが可能である。
「【0020】
次に、この発明のケース入りコンデンサの具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、ケース入りコンデンサの分解斜視図を示している。このケース入りコンデンサは、端部電極としての両端面1、1にリード部材2、2が接続されたコンデンサ素子3をケース4に収納して樹脂を充填したものである。コンデンサ素子3は、巻芯3a(図3参照)の外周部に、金属化フィルムを巻回することによって構成され、巻回体の両端面にメタリコン金属を溶射して端部電極1、1が形成されている。
【0021】
また、ケース4は、この図1と図2~4に示すように、前壁5と、後壁6と、前壁5と後壁6とを連続連結する円弧状の底壁7と、左右の側壁8、9とからなり、開口部(上方開口部)10を有する。そして、このケース4にその上方開口部10を介してコンデンサ素子3を収納した状態でさらに基板11がこのケース4内に収納される。なお、底壁7は、収納されるコンデンサ素子3の外形形状に沿うよう円弧状とされる。すなわち、図4に示すように、底壁7の曲率半径を、コンデンサ素子3の外形の曲率半径と略同一、またはコンデンサ素子3の外形の曲率半径よりも僅かに大きく設定する。」
「【0024】
そして、基板11の各連結辺部14、15の連結部14c、15cには、上記コンデンサ素子3のリード部材2、2が挿通されるガイド用貫通孔20、20が設けられている。すなわち、この連結部14c、15cに上方へ突出する突隆部21、21を設け、この突隆部21、21及び連結部14c、15cを貫通する孔部を開設して、この孔部をもってガイド用貫通孔20、20を形成することができる。この際、ガイド用貫通孔20の長さ寸法L(図5参照)としては、リード部材2の直径以上に設定するのが好ましく、特にリード部材2の直径の3倍以上に設定するのが一層好ましい。なお、ガイド用貫通孔20の長さ寸法Lは、基板11自体の厚さ寸法に、この基板11から突設される突隆部21の高さ寸法を加えたものである。また、ガイド用貫通孔20の内径寸法D(図5参照)としては、リード部材2の直径よりも僅かに大きい寸法(例えば、1.1~1.3倍、好ましくは1.2倍程度の寸法)に設定するのが好ましい。
【0025】
ところで、基板11の各連結辺部14、15には、外側方へ突出する係合片部22、22が設けられ、この係合片部22、22がケース4に設けられた係合部K、Kに係合することによって、基板11はケース4内に収納される。この係合部K、Kは、ケース4内に収納されたコンデンサ素子3の端面1、1に対向するケース内面18、18(この場合、側壁8、9の内面)に設けられた凹部24、24から構成される。この場合、凹部24、24は、側壁8、9の上端中央部を夫々外側方へ突出させて形成する。このため、各凹部24、24は、底面26、26と、前面27、27と、後面28、28とを有する。そして、係合片部22、22を各凹部24、24に係合させた場合に、係合片部22、22は、その下面が各凹部24、24の底面26、26にて受けられると共に、その前端が各凹部24、24の前面27、27に当接状となり、その後端が各凹部24、24の後面28、28に当接状となる。これによって、基板11はがたつくことなく、ケース4内に収納される。このように収納された状態では、上記したように、各押え片部16・・の切欠部17・・がコンデンサ素子3の外面に嵌合してコンデンサ素子3を押えることができる。この際、上記突隆部21、21は、図3と図4等に示すように、その上端21a、21aがケース4の開口端縁30より突出しない高さ寸法とされている。」
「【0029】
このように、コンデンサ素子3と基板11とが、ケース4内に収納されれば、このケース4内に樹脂が充填されるが、図2に示すように、開口部10のコーナ部及び中央部には隙間S1、S2、S3、S4、S5が形成されて、この隙間S1、S2、S3、S4、S5を介して樹脂が充填される。また、樹脂は、基板11のケース4の開口端縁30近傍まで充填される。ところで、ケース4はその底壁7は円弧状とされているので、コンデンサ素子3の外形に沿ったものであり、上記図6で示した矩形状箱型のものに比べて、樹脂の充填量を軽減することができる。また、底壁7を円弧状としたことで、組立時(樹脂モールド時)等に、このケース4を載置部35に安定させて載置させるために、図4の仮想線で示すように、底壁7の外面に複数の脚36・・を設けるようにするのが好ましい。
【0030】
上記のように構成されるケース入りコンデンサでは、ケース4内に、コンデンサ素子3のリード部材2、2をケース外へ引き出すためのガイド用貫通孔20、20を有する基板11を配置しているので、リード部材2、2間のピッチ精度を向上することができる。これによって、このコンデンサを安定して種々の機器に接続することができる。また、基板11の突隆部21にガイド用貫通孔20が設けられて、このガイド用貫通孔20の長さ寸法Lが、上記リード部材2の外径以上に設定される。このため、リード部材2をガイド用貫通孔20の軸心方向に沿ってケース外へ引き出すことができ、屈曲部を構成し難くして、リード部材2が傾くのを防止することができる。これによって、このコンデンサの他の部材へのリード部材2、2の接続作業を精度良く行うことができる。なお、上記ピッチ精度の向上、及びリード部材2の傾き防止効果は、リード部材2にCP線等の単線を使用した際に特に顕著にあらわれる。」
「図1
[図:0001411267000001.jpg]
」
「図2
[図:0001411267000002.jpg]
」
「図3
[図:0001411267000003.jpg]
」
(2)上記(1)の記載事項より、次のことがいえる。
ア 段落【0020】によれば、引用文献1には、端部電極としての両端面1、1にリード部材2、2が接続されたコンデンサ素子3をケース4に収納して樹脂を充填したケース入りコンデンサが記載されている。
イ 段落【0021】によれば、ケース4にその上方開口部10を介してコンデンサ素子3を収納した状態で基板11がケース4内に収納される。また、段落【0029】によれば、樹脂は、基板11のケース4の開口端縁30近傍まで充填される。
ウ 段落【0024】、【0030】によれば、リード部材2、2は、基板11に設けられた突隆部21、21に形成されたガイド用貫通孔20、20に挿通され、ケース外へ引き出され、段落【0025】によれば、突隆部21、21は、その上端21a、21aがケース4の開口端縁30より突出しない高さ寸法とされている。
また、図1ないし図3によれば、リード部材2、2は、ケース4の側壁8、9の内面に対向し、上方開口部10側へ延びていることが見て取れる。
エ 段落【0025】によれば、コンデンサ素子3の端面1、1に対向するケースの側壁8、9には、その上端中央部を夫々外側方へ突出させて形成され、基板11の外側方へ突出する係合片部22、22が係合する係合部K、Kが設けられる。
オ 図2、図3によれば、リード部材2、2と側壁8、9の内面との距離は、ケースの底壁7側から係合部K、Kに至るまでの部分よりも係合部K、Kの部分で大きくなることが見て取れる。
(3)上記(2)によれば、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「端部電極としての両端面にリード部材が接続されたコンデンサ素子をケースに収納して樹脂を充填したケース入りコンデンサにおいて、
ケースにその上方開口部を介してコンデンサ素子を収納した状態で基板がケース内に収納され、
樹脂は、基板のケースの開口端縁近傍まで充填され、
リード部材は、ケースの側壁の内面に対向し上方開口部側へ延び、基板に設けられた突隆部に形成されたガイド用貫通孔に挿通され、ケース外へ引き出され、該突隆部は、その上端がケースの開口端縁より突出しない高さ寸法とされており、
コンデンサ素子の端面に対向するケースの側壁には、その上端中央部を夫々外側方へ突出させて形成され、基板の外側方へ突出する係合片部が係合する係合部が設けられ、
リード部材と側壁の内面との距離は、ケースの底壁側から係合部に至るまでの部分よりも係合部の部分で大きくなる、
ケース入りコンデンサ。」
3 取消理由に対する当審の判断
(1)理由1(進歩性)について
ア 本件発明1
(ア)本件発明1と引用発明との対比
本件発明1と引用発明とを対比する。
a 引用発明の「コンデンサ素子」は本件発明1の「コンデンサ素子」に相当する。
b 引用発明の「リード部材」は「コンデンサ素子」の「端部電極としての両端面」に接続されるから、引用発明の「リード部材」と本件発明1の「バスバー」とは、「コンデンサ素子の電極に接続される」接続部材である点で共通する。
ただし、接続部材に関し、本件発明1は「板状のバスバー」であるのに対し、引用発明はその旨特定されていない点で相違する。
c 引用発明の「コンデンサ素子を」「収納」する「ケース」は、本件発明1の「コンデンサ素子が収容されるケース」に相当する。
d 引用発明の「ケースに」「充填」される「樹脂」は、本件発明1の「ケース内に充填される充填樹脂」に相当する。
e 上記bも踏まえれば、引用発明の「リード部材は、ケースの側壁の内面に対向し上方開口部側へ延び、」「ケース外へ引き出され」ることと、本件発明1の「バスバーは、その表面を前記ケースの側壁の内面に対向させるようにして前記ケースの開口側へと延び、当該開口から前記ケースの外方へと導出され」ることとは、「接続部材は、その表面を前記ケースの側壁の内面に対向させるようにして前記ケースの開口側へと延び、当該開口から前記ケースの外方へと導出され」る点で共通する。
ただし、接続部材に関し、本件発明1が「前記バスバー」であるのに対し、引用発明はその旨特定されていない点で相違する。
f 引用発明の「リード部材は、ケースの側壁の内面に対向し」ている。
また、引用発明の「係合部」は「ケースの側壁」の「上端中央部」に「形成され」るから、ケースの底壁側から上方開口部側へと至る途中の位置から上方開口部に渡って形成されていることは明らかである。
そして、引用発明の「係合部」は「ケースの側壁」の「上端中央部を夫々外側方へ突出させて形成」され、「基板の外側方へ突出する係合片部」に係合されるから、「係合部」は外側に膨らんでいることは当然のことである。
してみると、上記bも踏まえれば、引用発明において「リード部材」が対向する「ケースの側壁」には、ケースの底壁側から上方開口部側へと至る途中の位置から上方開口部に渡って形成され、外側に膨らんでいる「係合部が設けられ」ることと、本件発明1の「前記ケースにおける前記バスバーが対向する側壁は、前記ケースの底壁側から前記開口側へと至る途中の位置から前記開口に亘って形成され、外側へ膨らむ膨出部を含」むこととは、「前記ケースにおける前記接続部材が対向する側壁は、前記ケースの底壁側から前記開口側へと至る途中の位置から前記開口に亘って形成され、外側へ膨らむ膨出部を含」む点で共通する。
ただし、接続部材に関し、本件発明1は「前記バスバー」であるのに対し、引用発明はその旨特定されていない点で相違する。
g 上記bを踏まえれば、引用発明の「リード部材と側壁の内面との距離は、ケースの底壁側から係合部に至るまでの部分よりも係合部の部分で大きくなる」ことと、本件発明1の「前記バスバーの表面と前記側壁の内面との距離が、前記底壁側から前記膨出部に至るまでの部分よりも前記膨出部の部分で大きくな」ることとは、「前記接続部分の表面と前記側壁の内面との距離が、前記底壁側から前記膨出部に至るまでの部分よりも前記膨出部の部分で大きくな」る点で共通する。
ただし、接続部材に関し、本件発明1は「前記バスバー」であるのに対し、引用発明はその旨特定されていない点で相違する。
h 本件発明1は「前記バスバーと前記側壁との間に前記充填樹脂のみが存在する」のに対し、引用発明はその旨特定されていない点で相違する。
i 上記aないしhによれば、本件発明1と引用発明とは、次の点で一致ないし相違する。
(一致点)
「コンデンサ素子と、
前記コンデンサ素子の電極に接続される接続部材と、
前記コンデンサ素子が収容されるケースと、
前記ケース内に充填される充填樹脂と、を備え、
前記接続部材は、その表面を前記ケースの側壁の内面に対向させるようにして前記ケースの開口側へと延び、当該開口から前記ケースの外方へと導出され、
前記ケースにおける前記接続部材が対向する側壁は、前記ケースの底壁側から前記開口側へと至る途中の位置から前記開口に亘って形成され、外側へ膨らむ膨出部を含み、
前記接続部材の表面と前記側壁の内面との距離が、前記底壁側から前記膨出部に至るまでの部分よりも前記膨出部の部分で大きくなる、
コンデンサ。」
(相違点1)
接続部材に関し、本件発明1は「板状のバスバー」であるのに対し、引用発明はその旨特定されていない点。
(相違点2)
本件発明1は、「前記バスバーと前記側壁との間に前記充填樹脂のみが存在する」のに対し、引用発明はその旨特定されていない点。
(イ)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点2について判断する。
a 引用発明において、「ケース」に「充填」される「樹脂」は、「基板のケースの開口端縁近傍まで充填され」るところ、「リード部材」が挿通される「ガイド用貫通孔」が形成される「突隆部」の「上端」は「ケースの開口端縁より突出しない高さ寸法とされて」いることから、「リード部材」と「ケース側壁」との間には、「樹脂」以外に少なくとも基板に設けられた「突隆部」が存在する。
してみれば、相違点2は実質的な相違である。
b ここで、引用文献1によれば、引用発明は、リード部材間のピッチ精度を向上することができ、しかもリード部材が傾き難いケース入りコンデンサを提供するという課題(段落【0004】を参照)を解決するために、ケースに突隆部を有する基板を配置し、該突隆部に形成されたガイド用貫通孔にリード部材を挿通して、リード部材をケース外へ引き出すものである。(段落【0005】、【0006】、【0015】、【0030】を各参照。)
してみると、引用文献1には、基板に設けられた「突隆部」を省くことに動機付けはなく、むしろ阻害要因があるというべきである。
c なお、取消理由通知(決定の予告)において周知技術として提示した、令和5年9月14日提出の意見書とともに提出された参考資料1(特開2015-95611号公報:段落【0010】ないし【0013】、図1ないし図3)には、「樹脂製ケース内に充填材を充填することによりコンデンサ素子が封止されたケースモールド型コンデンサにおいて、コンデンサ素子に一対のL字形のバスバーを接続し、各バスバーは、一端を充填材内でコンデンサ素子に接合し、他端を充填材から樹脂製ケース1外へ引き出す」技術が記載されているが、引用発明に参考資料1に記載された技術を採用したとしても、相違点2に係る構成を導き出すことはできない。
また、同意見書とともに提出された参考資料2(特開2003-124057号公報:段落【0005】、【0012】ないし【0015】、図1ないし図3)には、「コンデンサ素子と、このコンデンサ素子の両端部に接続される一対の端子と、上記コンデンサ素子を収納するケースと、このケース内に充填されて上記コンデンサ素子を被覆する樹脂被覆層とを備えるコンデンサにおいて、端子間寸法を安定して所定の寸法に維持することが可能なコンデンサを提供するために、各端子はそれぞれ平板状体からなり、ケースはケース本体と、このケース本体の開口部を塞ぐ蓋部材とを備え、蓋部材は、各端子がそれぞれ挿通される貫通孔を有する矩形平板状の本体部を備え、本体部の裏面にケース内部へ隆起する突隆部を設け、この突隆部乃至本体部のこの突隆部に対応する部位に、上記貫通孔を設けた」技術が記載されている。しかし、上記bで述べたように、引用発明は、リード部材間のピッチ精度を向上するために、ガイド用貫通孔が形成された突隆部を有する基板をケースに配置するものであり、引用発明にあえて参考資料2に記載された技術を採用すべき特段の理由もないから、引用発明に参考資料2に記載された技術を採用することは当業者に動機付けられない。
d してみれば、相違点2に係る構成は、引用発明に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。
(ウ)小括
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2ないし4について
請求項2ないし4は、請求項1をそれぞれ引用するものであり、本件発明2ないし4は、引用する本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明1に対する判断と同様な理由により、本件発明2ないし4は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ まとめ
以上から、請求項1ないし4に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、請求項1ないし4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
(2)理由2(明確性)について
上記「1(2)」のとおりの記載不備の指摘に対して、本件訂正により、請求項3における「膨出部」の「延びる方向」が、「ケースの開口方向と直交する方向であって、前記側壁に平行な方向」に限定され、及び、請求項4における「膨出部の寸法」方向が「前記側壁に平行な方向」に訂正されたことにより、請求項3における「膨出部」の「延びる方向」、及び、請求項4における「膨出部の寸法」方向が明確となった。
よって、取消理由で指摘した不備な点は解消され、請求項3及び請求項3を引用する請求項4に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものではない。
4 特許異議申立人の主張について
(1)特許異議申立人は、令和6年2月5日提出の意見書において、進歩性の判断に関して概略次のように主張する。
ア 相違点2について、本件発明1のバスバーと側壁との間に充填樹脂のみが存在する構成は、図6(a)及び図6(b)を参照すると、バスバーと側壁との間の一部の領域において充填樹脂のみが存在する構成であると解されるところ、引用発明では、図5に示すように、突隆部21を有する基板11の下に、接続部材と側壁との間に充填樹脂のみが存在する構成を備える。 また、引用文献1の段落【0032】に記載されているように突隆部21を反開口部側に突出させた場合、引用発明は、基板11の上にも、接続部材と側壁との間に充填樹脂のみが存在する構成を備える。(なお、図5の場合、充填樹脂が突隆部21よりも高い位置まで充填されているのであれば、基板11の上にも、接続部材と側壁との間に充填樹脂のみが存在する。)
してみれば、相違点2は、本件発明1と引用発明とで相違する点ではなく、両者で一致する点である。(4頁13ないし23行)
イ 相違点2について、引用発明の課題は、リード部材間のピッチ精度を向上することができ、しかもリード部材が傾き難いケース入りコンデンサを提供することであり(引用文献1の段落【0004】)、引用文献1の段落【0032】には、「この発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することが可能である。」との記載があることから、上記課題を解決できる範囲において、突隆部21を有する基板11の形状を変更したり、その位置を変更したりすることは、当業者が適宜なし得る事項である。
そして、上記課題を解決でき、かつ、接続部材と側壁との間に充填樹脂のみが存在する構成は、例えば、実開平6-2667号公報(参考資料1の段落【0011】、【0012】、【0013】、【図1】、【図2】)、特開2000-331861号公報(参考資料2の段落【0013】、【図1】)に見られるように周知の技術である。
してみれば、引用発明の「突隆部21を有する基板11」を、参考資料1のガイド4のような形状にするか、または、参考資料2の角形絶縁板1の位置(引用発明ではケース4の上)に配置して、相違点2に係る構成とすることは当業者が適宜なし得た事項である。(5頁7ないし31行)
ウ 接続部材と側壁との間に充填樹脂のみが存在する構成を示す周知の技術として、実開昭53-98353号公報(参考資料3)には、ケース入りの電子部品が開示され、電子部品は、内壁に係合部10を備えたケース1内に納められた電子部品2からの引出しリード線3に突起11を設け、該突起11が係合部10に係合して電子部品2が懸吊された状態で、ケース1内に絶縁材4が注入されて成るものであり(参考資料3の実用新案登録請求の範囲、第5図)、突起11は、リード線3を二重に折り曲げることにより形成できることから、突起11をそのように形成した場合、リード線3とケース1の側壁との間に絶縁材4のみが存在する構成となることは明らかである(参考資料3の明細書4頁9ないし11行、第5図)。また、参考資料3(明細書5頁1行ないし5行、第5図、第6図)によれば、制約されるe、T’を所定とすることは、突起11の長さや条溝12の位置の加減によって容易に解決できる。すなわち、参考資料3の電子部品は、リード線3間のピッチ精度を向上することができ、しかもリード線3が傾き難いケース入り電子部品を提供することができる。換言すれば、参考資料3のケース入りの電子部品の課題は、リード線3間のピッチ精度を向上することができ、しかもリード線3が傾き難いケース入り電子部品を提供することである。また、電子部品がコンデンサを含むことは明らかである。
以上を踏まえると、参考資料3のケース入りの電子部品と引用発明とは、技術分野が共通し、課題が共通し、作用、機能も共通する。さらに、引用発明において、参考資料3の突起11が形成されたリード線3を採用することに阻害要因はなく、むしろ、引用発明のケース4も内壁に係合部Kを備えることから、参考資料3のリード線3を採用するために発明のケース4に変更を加える必要ない。また、引用発明において参考資料3のリード線3を採用した場合に、引用発明の突隆部21を有する基板11が不要になることは明らかである。
してみれば、引用発明の「リード部材」および「突隆部21を有する基板11」に代えて上記周知技術である「突起11を有するリード線3」を採用し、相違点2に係る構成にすることは当業者が適宜なし得た事項である。(6頁8行ないし7頁10行)
エ 相違点2について、一般に、樹脂が充填されるケース入りコンデンサにおいて、毛細管現象により端子とケース内壁との間の隙間を樹脂が這い上がり、ケースから漏れ出すという課題は周知である(例えば、特開2003-100547号公報(甲第1号証)の段落【0004】、国際公開第2018/051656号の段落【0005】)から、引用発明においても同様の課題を内在しているといえる。
そして、引用発明は、膨出部(係合部K)を備えるため、毛細管現象により樹脂が這い上がりケースから漏れ出すことを制限できることは明らかである。さらにいえば、膨出部を備えるケースも、周知の技術である(例えば、特開昭52-98969号公報(甲第2号証)のコイルケース1、特開2006-216756号公報(甲第3号証)の図6(a)のコンデンサケース4、特開2014-116446号公報(甲第4号証)の図4のケース17、国際公開2018/051656号のケース20)。
一方で、引用発明の「突隆部21を有する基板11」は、引用発明に内在する課題(樹脂が充填されるケース入りコンデンサにおいて、毛細管現象により端子とケース内壁との間の隙間を樹脂が這い上がり、ケースから漏れ出すという課題)とは無関係の構成である。すなわち、引用発明から「突隆部21を有する基板11」を除外しても、上記の内在する課題を解決することができる。課題と無関係の構成を除外することは、当業者であれば容易になし得たことである。
してみれば、引用発明から「突隆部21を有する基板11」を除外して、相違点2に係る構成とすることは当業者が適宜なし得た事項である。(7頁15ないし8頁6行)
(2)特許異議申立人の上記各主張について検討する。
ア 主張アについて
下記「第5 6」で述べるように、本件発明1の「前記バスバーと前記側壁との間に前記充填樹脂のみが存在する」とは、「バスバー」と「側壁」の間には「充填樹脂」以外の物体要素は存在しないことを特定していると解される。
してみれば、「本件発明1のバスバーと側壁との間に充填樹脂のみが存在する構成は、・・・、バスバーと側壁との間の一部の領域において充填樹脂のみが存在する構成であると解される」との前提に基づく特許異議申立人の主張アは採用できない。
イ 主張イ及び主張ウについて
(ア)上記「3(1)ア(イ)b」で述べたように、引用発明において、基板に設けられた「突隆部」を省くことに動機付けはなく、むしろ阻害要因があるというべきであるから、仮に、接続部材と側壁との間に充填樹脂のみが存在する構成が周知の技術であるとしても、引用発明に該周知技術を採用することは当業者が容易に想到し得ないことである。
(イ)また、引用文献1の段落【0032】には、「この発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することが可能である。」との記載があるものの、「突隆部21を有する基板11の形状を変更したり、その位置を変更したりすること」は何等記載されていない。
(ウ)ここで、特許異議申立人が令和6年2月2日提出の意見書とともに提出した参考文献1(実開平6-2667号公報)には、「コンデンサ素子1の両端面に電極導出部としてのメタリコン電極2を形成し、このメタリコン電極2にリード線3を当接し、このリード線3導出間に、前記コンデンサ素子1周面と当接させて前記メタリコン電極2厚さを含めたコンデンサ素子1の長さと同一寸法のガイド4を配設し、前記リード線3のメタリコン電極2との当接部に溶接電極5を当接し、この溶接電極4に電流を流すことによりジュール熱でメタリコン電極2を溶かし、リード線3をメタリコン電極2に食い込ませ溶着する」技術が記載されているものの(段落【0011】を参照)、同文献1の段落【0012】に「次に図1に示すようにリード線3溶着後のコンデンサ素子1を樹脂ケース6に収納し、この樹脂ケース6空隙部に封口樹脂7を充填してなるものである。」と記載され、同図1には、該「ガイド4」は示されていないことから、該「ガイド4」は、リード線3間の間隔を、メタリコン電極2厚さを含めたコンデンサ素子1の長さに決定するための製造工程中で使用される部材に過ぎず、コンデンサを構成する部品とはいえない。
また、特許異議申立人が令和6年2月2日提出の意見書とともに提出した参考文献2(特開2000-331861号公報)には、「L字状の外部接続端子を配設した角形絶縁板1で樹脂ケース17の開口部を封口して乾式金属化フィルムコンデンサにおいて、引出線16を接合した部品素子15を樹脂ケース17内に収納し、角形絶縁板1の貫通孔2に引出線16を貫通させて表面より導出する」技術が記載されているものの(段落【0014】を参照)、同文献2の段落【0014】に「上記引出線を切断して」と記載されているように、参考文献2に記載された技術は「リードレスの電子部品」に関するものである(同段落【0001】を参照)から、リード部材をケース外へ引き出す引用発明に参考文献2に記載された技術を採用する動機はなく、むしろ阻害要因があるといえる。
さらに、特許異議申立人が令和6年2月2日提出の意見書とともに提出した参考文献3(実願昭52-2920号(実開昭53-98353号)のマイクロフィルム)には、「ケースと絶縁材と異質であると自然発生の空隙が電子部品に悪影響を及ぼすという欠点を排除するために、リード線に対応するケース側壁にケースの開口から下方に切り込む条溝を形成し、その為に段部に従って係合部を設け、リード線には側方に突出する突起を一体に設け、上方から突起を条溝に入れて段部に載置係合させ、電子部品をケース内で宙吊りさせ、充填された絶縁材が電子部品を一体に包んで固定する」技術(3頁9行ないし4頁下から3行を参照)が記載されているところ、参考文献3に記載された技術が解決しようとする課題と引用発明が解決しようとする課題(引用文献1の段落【0004】を参照)とは異なるものであり、また、引用発明の「ケースの側壁には、その上端中央部を夫々外側方へ突出させて形成され、基板の外側方へ突出する係合片部が係合する係合部」が既に設けられているから、引用発明の「ケースの側壁」に、更に「リード線」の「突起」を係合するための「係合部」を設けることは当業者に動機付けられない。
(エ)以上から、特許異議申立人の主張イ及び主張ウは採用できない。
ウ 主張エについて
(ア)引用文献1には、毛細管現象により端子とケース内壁との間の隙間を樹脂が這い上がり、ケースから漏れ出すことについて何等記載されていないことから、引用文献1に接した当業者は、引用発明の「ケース側壁」に設けられた「基板」の「係合片部が係合する係合部」により、毛細管現象により樹脂が這い上がりケースから漏れ出すことを制限できるとは容易に予測し得ない。
(イ)また、仮に、毛細管現象により端子とケース内壁との間の隙間を樹脂が這い上がり、ケースから漏れ出すという課題が周知であり、引用発明においても同様の課題を内在しているといえるとしても、上記「3(1)ア(イ)b」で述べたように、そもそも引用発明は、リード部材間のピッチ精度を向上することができ、しかもリード部材が傾き難いケース入りコンデンサを提供するという課題を解決するために、ケースに突隆部を有する基板を配置し、該突隆部に形成されたガイド用貫通孔にリード部材を挿通して、リード部材をケース外へ引き出すものであることから、課題解決に必須な発明特定事項件である基板に設けられた「突隆部」を除外することは、当業者といえども容易に想起し得ないことである。
(ウ)さらに、仮に、膨出部を備えるケースが周知の技術であったとしても、「基板」の「係合片部が係合する係合部」が設けられた「ケース」を有する引用発明に、あえて該周知技術を採用する特段の事情もない。
(エ)以上から、特許異議申立人の主張エは採用できない。
第5 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について
1 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由の概要は次のとおりである。
(1)申立理由1(新規性)
請求項1、2に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された甲第1号証であり、請求項1ないし4に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された甲第5号証に記載された発明であるから、特許第29条第1項第3号に該当し、請求項1ないし4に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2)申立理由2(進歩性)
請求項1ないし4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明、又は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術(甲第2号証ないし甲第4号証)に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
2 提出された証拠
異議申立人が提出した証拠は次のとおりである。
(1)異議申立書に添付された文献
甲第1号証:特開2003-100547号公報
甲第2号証:特開昭52-98969号公報
甲第3号証:特開2006-216756号公報
甲第4号証:特開2014-116446号公報
甲第5号証:特開2005-39058号公報
(2)令和5年9月14日の意見書に添付された文献
参考資料1:特開2015-95611号公報
参考資料2:特開2003-124057号公報
(3)令和6年2月2日の意見書に添付された文献
参考資料1:実開平6-2667号公報
参考資料2:特開2000-331861号公報
参考資料3:実願昭52-2920号(実開昭53-98353号)のマイクロフィルム
3 甲各号証の記載事項
(1)甲第5号証
甲第5号証は取消理由通知(決定の予告)において引用した引用文献1である。
また、甲第5号証に記載された事項は、上記「第4 2(1)」で述べたとおりであり、そして、甲第5号証には、上記「第4 2(3)」で述べた「引用発明」と同じ構成である発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されている。
(2)令和5年9月14日の意見書に添付された参考資料1、参考資料2、及び、令和6年2月2日の意見書に添付された参考資料1ないし参考資料3
令和5年6月15日の意見書に添付された参考資料1、参考資料2に記載された技術は、上記「第4 3(1)ア(イ)c」で述べたとおりであり、また、令和6年2月2日の意見書に添付された参考資料1ないし参考資料3に記載された技術は、上記「第4 4(2)イ(イ)c」で述べたとおりである。
(3)甲第1号証
ア 甲第1号証には、図面とともに、次の事項が記載されている。(下線は、当審で付与した。)
「【請求項1】1又は複数個にて構成される電子部品素子と、該電子部品素子を収納するケースと、前記電子部品素子から引き出されたリード線に接続され、前記ケースに挟み込んで固定されるリード板と、前記ケース内空隙部に充填する封止用樹脂からなる電子部品において、前記ケース内側面の前記リード板が固定される部分に、リード板とケースの隙間に入り込んだ封止用樹脂が這い上がりによりケースからあふれ出るのを防止する切り欠きを設けたことを特徴とする電子部品。」
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子部品素子をケースに収納し、ケース内空隙部に封止用樹脂を充填してなるフィルムコンデンサ、セラミックバリスタ、又はコイル等の樹脂封止型電子部品に関する。」
「【0007】本発明は、上記問題点を解決するものであり、電子部品素子をケースに収納し、封止用樹脂を充填する電子部品において、電子部品素子から引き出されるリード線を接続し、ケースに挟み込んで固定されるリード板とケースの間で毛細管現象による這い上がりが起きたとしても封止用樹脂がケースの外側にあふれ出ることがなく、さらに封止用樹脂の注入を1回で行える生産性の高い樹脂封止型電子部品を提供することを目的とする。」
「【0017】電子部品素子のリード線をリード板に溶接又ははんだ付け等の方法で接続し、電子部品素子をケースに収納し、リード板の固定部をケースの端面に挟み込み、さらに、ケース内空隙部に封止用樹脂を充填し、電子部品を作製する。
【0018】ここで、図1に示すように、あらかじめケース1内側面のリード板2が固定される部分のに三角形の切り欠き3を設ける。この際、三角形の切り欠き3は、ケース1とリード板2の間を這い上がる封止用樹脂4がケース1外部にあふれ出ることがないよう、十分な大きさを持つようにする。
【0019】同様に、図2,3に示すように、ケース1内側面のリード板2が固定される部分に矩形の切り欠き5又は楕円形の切り欠き6を設けても同等の効果を得ることができる。」
「図1
[図:0001411267000004.jpg]
」
「図2
[図:0001411267000005.jpg]
」
イ 甲第1号証の上記記載事項により、次のことがいえる。
(ア)段落【0001】によれば、甲第1号証には、電子部品素子をケースに収納し、ケース内空隙部に封止用樹脂を充填してなるフィルムコンデンサが記載されている。
(イ)段落【請求項1】、【0007】及び【0017】によれば、フィルムコンデンサは、電子部品素子から引き出されたリード線が接続されたリード板を有し、リード板は、ケースの端面を挟み込んで固定される。
(ウ)図2によれば、リード板は、その表面がケース内側面と対向し、ケースの開口側へと延び、開口からケースの外方に導出されていることが見て取れる。
(エ)段落【0019】によれば、ケース1内側面のリード板が固定される部分に矩形の切り欠きが設けられ、図2によれば、リード板と対向するケース内側面に、矩形の切り欠きが、ケースの底面側から開口側へと至る途中の位置から開口に亘って設けられていることが見て取れる。
(オ)図2によれば、ケース内側面と対向するリード板の面とケース内側面との距離は、ケース底面側から前記切り欠きに至るまでの部分よりも切り欠きの部分で大きくなることが見て取れる。
(カ)図2によれば、リード板とケース内側面との間に封止用樹脂のみが存在することが見て取れる。
ウ よって、上記イによれば、甲第1号証には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
「電子部品素子をケースに収納し、ケース内空隙部に封止用樹脂を充填してなるフィルムコンデンサにおいて、
電子部品素子から引き出されたリード線が接続されたリード板を有し、リード板は、ケースの端面を挟み込んで固定され、
リード板は、その表面がケース内側面と対向し、ケースの開口側へと延び、開口からケースの外方に導出され、
リード板と対向するケース内側面に、矩形の切り欠きが、ケースの底面側から開口側へと至る途中の位置から開口に亘って設けられ、
ケース内側面と対向するリード板の面とケース内側面との距離は、ケース底面側から前記切り欠きに至るまでの部分よりも切り欠きの部分で大きくなり、
リード板とケース内側面との間に封止用樹脂のみが存在する、
コンデンサ。」
(4)甲第2号証
ア 甲第2号証には、図面とともに、次の事項が記載されている。(下線は、当審で付与した。)
「特許請求の範囲
特許請求の範囲
1.合成樹脂モールドコイルの絶縁ケースにおいて、モールド樹脂注型含浸時に上方となる開口部の側壁に薄肉部でつながる外側に広がった段付部を形成し、モールド樹脂硬化後該段付部を薄肉部にて切除し得る構造としたことを特徴とするコイルケース。」(1頁左欄3ないし9行)
「この発明は合成樹脂モールドコイルの絶縁ケースに係り、特にモールド樹脂の注型含浸および硬化後の仕上げに便な、コイルケースに関する。」(1頁左欄11ないし13行)
「以下本発明を図示の実施例について詳細に説明する。図において、1はあらかじめ絶縁材で成型したコイルケース、2は注型すべきコイルである。3は注入樹脂であって、コイルケース1には側壁上部に薄肉部1bでつながった段付部1aを同時に成型して置くのである。
このようなコイルケース1を使用して合成樹脂モールドコイルを製作するには、コイルケース1内に注型すべきコイルなど2を組込み、注入樹脂3を注入含浸させるのであるが、注入樹脂3はコイルなど2への含浸分を見込んでコイルケース1の段付部1aの境界線より上部まで一度に注入することができ、また真空脱泡操作を行った時に気泡による注入樹脂3の体積増加があっても、段付部1aが堰堤となって注入樹脂3があふれ出ることがない。そして注入樹脂3の硬化後、段付部1aを薄肉部1bにて簡単に切除することができる。」(1頁右欄下から4行ないし2頁左欄13行)
「
[図:0001411267000006.jpg]
」
イ 上記記載事項によれば、甲第2号証には、次の技術(以下、「甲第2号証に記載された技術」という。)が記載されている。
「絶縁材で成型され、側壁上部に薄肉部でつながる外側に広がった段付部が同時に成型されたコイルケースにおいて、コイルケース内に注型すべきコイルなどを組込み、注入樹脂をコイルケースの段付部の境界線より上部まで一度に注入し、注入樹脂の硬化後、段付部を薄肉部にて切除すること。」
(5)甲第3号証
ア 甲第3号証には、図面とともに、次の事項が記載されている。(下線は、当審で付与した。)
「【請求項1】
複数のコンデンサ素子を一端に外部接続用の端子部を設けたバスバーで接続し、これをケース内に収容して少なくとも上記バスバーの端子部を除いて樹脂モールドしたケースモールド型コンデンサにおいて、上記ケースの周縁に被装着体への取り付け部を略対角位置に設けると共に、上記バスバーの端子部に設けた接続孔が所定の位置に位置決めされるバスバー位置決め手段を設けてなるケースモールド型コンデンサ。」
「【0015】
2は陽極バスバーであり、この陽極バスバー2は本体部2aと、この本体部2aの一端を折り曲げることにより一体で設けられた外部接続用の陽極端子2bと、この陽極端子2bに設けられた接続孔2cからなり、上記本体部2aは上記コンデンサ素子1を複数個(本実施の形態においては4個)密着して並べた状態で各コンデンサ素子1の一方の端面に形成された陽極と夫々接合され、また陽極端子2bはこのコンデンサ素子1の上方へ引き出され、後述するコンデンサケース4から表出するようにしているものである。
【0016】
3は陰極バスバーであり、この陰極バスバー3も上記陽極バスバー2と同様に本体部3aと、接続孔3cを備えた陰極端子3bからなり、本体部3aをコンデンサ素子1の他方の端面に形成された陰極と夫々接合することにより複数個のコンデンサ素子1を並列接続すると共に、陰極端子3bをコンデンサケース4から表出するようにしているものである。」
「【0032】
図6(a)、(b)は本発明の実施の形態3によるケースモールド型コンデンサの構成を示した断面図であり、同図において10は陽極バスバーを示し、この陽極バスバー10は本体部10aと陽極端子10bにより構成されているのは実施の形態1の陽極バスバー2と同様であるが、本実施の形態による陽極バスバー10は、陽極端子10bが本体部10aからテーパ部10cを介して立ち上がって設けられた構成としたものである。また、図6(b)に示した陽極バスバー11は陽極端子11bが本体部11aから段部11cを介して立ち上がって設けられた構成としたものである。
【0033】
なお、説明は省略したが、陰極バスバーについても上記陽極バスバーと同様に、陰極端子が本体部からテーパまたは段部を介して立ち上がって設けられた構成としたものである。
【0034】
このように構成された本実施の形態によるケースモールド型コンデンサは、エポキシ樹脂5と陽極バスバー10、11との界面から侵入する水分がコンデンサケース4内にエポキシ樹脂5によりモールドされたコンデンサ素子1に到達する距離を長くすることにより影響を受け難くすることができるようになるものである。」
「図6(a)
[図:0001411267000007.jpg]
」
また、図6(a)によれば、コンデンサケース4におけるバスバー10が対向する側壁は、コンデンサケース4の底面側から開口側へと至る途中の位置から開口に亘って形成された外側に膨らむ部分が見て取れる。
イ 上記記載事項によれば、甲第3号証には、次の技術(以下、「甲第3号証に記載された技術」という。)が記載されている。
「複数のコンデンサ素子を一端に外部接続用の端子部を設けたバスバーで接続し、これをケース内に収容して少なくとも上記バスバーの端子部を除いて樹脂モールドし、バスバーの端子部に設けた接続孔が所定の位置に位置決めされるバスバー位置決め手段を設けてなるケースモールド型コンデンサにおいて、陽極バスバーの本体部は各コンデンサ素子の陽極と、陰極バスバーの本体部は各コンデンサ素子の陰極と夫々接合し、陽極バスバーの陽極端子及び陰極バスバーの陰極端子はコンデンサケースから表出し、陽極バスバー及び陰極バスバーを、陽極端子及び陰極端子が本体部からテーパ部を介して立ち上がって設けられた構成とし、コンデンサケースにおけるバスバーが対向する側壁に、コンデンサケース底面側から開口側へと至る途中の位置から開口に亘って外側に膨らむ部分を形成すること。」
(6)甲第4号証
ア 甲第4号証には、図面とともに、次の事項が記載されている。(下線は、当審で付与した。)
「【請求項1】
上面に開口部を有するケースと、
前記ケース内部に収容されるとともに両端部に一対の端面電極を有するコンデンサ素子と、
前記ケース内部に注入され、前記コンデンサ素子をモールドするモールド樹脂と、
前記コンデンサ素子の前記一対の端面電極に一端が夫々接続され、他端が前記モールド樹脂から表出し外部端子と夫々接続される一対のバスバーとを備え、
前記一対のバスバーのうち少なくとも一方のバスバーは、前記モールド樹脂表面との接触部分にビードとこのビードの内側に設けられた貫通孔を有し、
前記貫通孔の一部は前記モールド樹脂に埋入したケースモールド型コンデンサ。」
「【0056】
また、バスバー2は図5に示したように、ケース17の内側壁の近傍に配置された構成となっているが、このようにバスバー2とケース17内側壁の間に僅かな隙間が存在すると、毛細管現象によりモールド樹脂20注入時にモールド樹脂20がこの僅かな隙間を這い上がってくることが考えられる。この課題は、バスバー2をケース17の内側壁とある程度離間させて配置することで解決するものではあるが、設計上バスバー2をケース17の内側壁の近傍に配置せざるを得ない場合もある。しかし、本実施の形態のケースモールド型コンデンサ21では、貫通孔8によりバスバー2とケース17内側壁の間のモールド樹脂20の表面張力を分散させることができ、モールド樹脂20の這い上がりが発生しにくいものとなっている。このように、本実施の形態のケースモールド型コンデンサ21では上述したようにモールド樹脂20のクラックの発生を抑制するとともに、モールド樹脂20の這い上がりの発生を抑制する効果も有する。」
「図4
[図:0001411267000008.jpg]
」
「図5
[図:0001411267000009.jpg]
」
また、図4、図5によれば、ケース17におけるバスバー2が対向する側壁は、ケース17の底面側から開口側へと至る途中の位置から開口に亘って形成された外側に膨らむ部分が見て取れる。
イ 上記記載事項によれば、甲第4号証には、次の技術(以下、「甲第4号証に記載された技術」という。)が記載されている。
「上面に開口部を有するケースと、前記ケース内部に収容されるとともに両端部に一対の端面電極を有するコンデンサ素子と、前記ケース内部に注入され、前記コンデンサ素子をモールドするモールド樹脂と、前記コンデンサ素子の前記一対の端面電極に一端が夫々接続され、他端が前記モールド樹脂から表出し外部端子と夫々接続される一対のバスバーとを備えケースモールド型コンデンサにおいて、バスバーをケースの内側壁とある程度離間させて配置し、ケースにおけるバスバーが対向する側壁は、ケースの底面側から開口側へと至る途中の位置から開口に亘って外側に膨らむ部分が形成されること。」
4 申立理由に対する当審の判断
(1)申立理由1(新規性)について
ア 甲第1号証に基づく新規性について
(ア)本件発明1について
a 本件発明と甲1発明とを対比する。
(a)甲1発明の「電子部品素子」と本件発明1の「コンデンサ素子」とは、電子部品素子である点で共通する。
ただし、電子部品素子に関し、本件発明1は「コンデンサ素子」であるのに対し、甲1発明はその旨特定されていない点で相違する。
(b)甲1発明の「リード板」は、技術常識からすれば板状のバスバーといえる。
そして、上記(a)の点も踏まえれば、甲1発明の「電子部品素子から引き出されたリード線」と本件発明1の「コンデンサ素子の電極」とは、電子部品素子の導体部である点で共通する。
してみれば、甲1発明の「リード板」と本件発明1とは、「電子部品素子の導体部に接続される板状のバスバー」である点で共通する。
ただし、電子部品素子の導体部に関し、本件発明1は「コンデンサ素子の電極」であるのに対し、甲1発明は「電子部品素子から引き出されたリード線」である点で相違する。
(c)上記(a)の点を踏まえれば、甲1発明の「ケース」と本件発明1とは、「電子部品素子が収容されるケース」である点で共通する。
ただし、電子部品素子に関し、本件発明1は「コンデンサ素子」であるのに対し、甲1発明はその旨特定されていない点で相違する。
(d)甲1発明の「ケース内空隙部に」「充填」される「封止用樹脂」は、本件発明1の「ケース内に充填される充填樹脂」に相当する。
(e)甲1発明の「ケース内側面」は本件発明1の「ケースの側壁の内面」に相当する。
してみると、甲1発明において「リード板は、その表面がケース内側面と対向し、ケースの開口側へと延び、開口からケースの外方に導出され」ることは、本件発明1の「バスバーは、その表面を前記ケースの側壁の内面に対向させるようにして前記ケースの開口側へと延び、当該開口から前記ケースの外方と導出され」ることに相当する。
(f)甲1発明は、「リード板と対向するケース内側面に、矩形の切り欠きが、ケースの底面側から開口側へと至る途中の位置から開口に亘って設けられ」いることから、甲1発明において、「リード板と対向するケース」の側壁は、「ケースの底面側から開口側へと至る途中の位置から開口に亘って設けられ」た「矩形の切り欠き」を含むといえる。
してみると、甲1発明において、「リード板と対向するケース」の側壁は、「ケースの底面側から開口側へと至る途中の位置から開口に亘って設けられ」た「矩形の切り欠き」を含むことと甲1発明とは、「前記ケースにおける前記バスバーが対向する側壁は、前記ケースの底壁側から前記開口側と至る途中の位置から前記開口に亘って形成された側壁構造を含」む点で共通する。
ただし、側壁構造に関し、本件発明1は「外側へ膨らむ膨出部」であるのに対し、甲1発明はケース内側面に設けられた「矩形の切り欠き」である点で相違する。
(g)甲1発明における「ケース内側面と対向するリード板の面とケース内側面との距離は、ケース底面側から前記切り欠きに至るまでの部分よりも切り欠きの部分で大きくなる」ことと本件発明1とは、上記(h)の点も踏まえれば、「前記バスバーの表面と前記側壁の内面との距離が、前記底壁側から側壁構造に至るまでの部分よりも前記側壁構造の部分で大きくな」る点で共通する。
ただし、側壁構造に関し、本件発明1は「外側へ膨らむ膨出部」であるのに対し、甲1発明はケース内側面に設けられた「矩形の切り欠き」である点で相違する。
(h)甲1発明の「リード板とケース内側面との間に封止用樹脂のみが存在する」ことは、本件発明1の「前記バスバーと前記側壁との間に前記充填樹脂のみが存在する」ことに相当する。
(i)甲1発明の「コンデンサ」は、本件発明1の「コンデンサ」に相当する。
b よって、上記aによれば、本件発明1と甲1発明とは、
「電子部品素子と、
電子部品素子の導体部に接続される板状のバスバーと、
電子部品素子が収容されるケースと、
ケース内に充填される充填樹脂と、を備え、
バスバーは、その表面を前記ケースの側壁の内面に対向させるようにして前記ケースの開口側へと延び、当該開口から前記ケースの外方と導出され、
前記ケースにおける前記バスバーが対向する側壁は、前記ケースの底壁側から前記開口側と至る途中の位置から前記開口に亘って形成された側壁構造を含み、
前記バスバーの表面と前記側壁の内面との距離が、前記底壁側から側壁構造に至るまでの部分よりも前記側壁構造の部分で大きくなり、
前記バスバーと前記側壁との間に前記充填樹脂のみが存在する、
コンデンサ。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点3)
電子部品素子に関し、本件発明1は「コンデンサ素子」であるのに対し、甲1発明はその旨特定されておらず、その導体部に関し、本件発明1は「電極」であるのに対し、甲1発明は「リード線」である点で相違する。
(相違点4)
側壁構造に関し、本件発明1は「外側へ膨らむ膨出部」であるのに対し、甲1発明はケース内側面に設けられた「矩形の切り欠き」である点で相違する。
してみると、本件発明1と甲1発明とは相違点を有するので、本件発明1は甲第1号証に記載された発明ではない。
(イ)本件発明2について
請求項2は、請求項1を引用するものであり、本件発明2は、引用する本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明2に対する理由と同様な理由により、本件発明2は、甲第1号証に記載された発明ではない。
(ウ)まとめ
したがって、請求項1、2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、請求項1、2に係る特許は特許法第29条第1項に違反してされたものでない。
イ 甲第5号証に基づく新規性について
(ア)本件発明1について
本件発明1と甲5発明とを対比する。
上記「第4 3(1)ア(ア)」で述べた点を踏まえれば、本件発明1と甲5発明とは以下の点で一致し、その余の点で一致する。
(相違点5)
接続部材に関し、本件発明1は「板状のバスバー」であるのに対し、甲5発明はその旨特定されていない点。
(相違点6)
本件発明1は、「前記バスバーと前記側壁との間に前記充填樹脂のみが存在する」のに対し、甲5発明はその旨特定されていない点。
してみると、本件発明1と甲5発明とは相違点を有するので、本件発明1は甲第5号証に記載された発明ではない。
(イ)本件発明2ないし4について
請求項2ないし4は、請求項1を直接的又は間接的に引用するものであり、本件発明2ないし4は、引用する本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明1に対する理由と同様な理由により、本件発明2ないし4は、甲第5号証に記載された発明ではない。
(ウ)まとめ
したがって、請求項1ないし5に係る発明は、甲第5号証に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、請求項1ないし5に係る特許は特許法第29条第1項に違反してされたものでない。
(2)申立理由2(甲第1号証に基づく進歩性)について
ア 本件発明1について
(ア)対比
上記「(1)ア(ア)b」によれば、本件発明1と甲1発明とは以下の点で相違し、その余の点で一致する。
(相違点3)
電子部品素子に関し、本件発明1は「コンデンサ素子」であるのに対し、甲1発明はその旨特定されておらず、その導体部に関し、本件発明1は「電極」であるのに対し、甲1発明は「リード線」である点で相違する。
(相違点4)
側壁構造に関し、本件発明1は「外側へ膨らむ膨出部」であるのに対し、甲1発明はケース内側面に設けられた「矩形の切り欠き」である点で相違する。
(イ)相違点に対する判断
事案に鑑み、まず相違点4について判断する。
a 甲第1号証によれば、甲1発明は、ケースに挟み込んで固定されるリード板とケースの間で毛細管現象による這い上がりが起きたとしても封止用樹脂がケースの外側にあふれ出ることがない樹脂封止型電子部品を提供するという課題(段落【0007】を参照)を解決するために、「矩形の切り欠き」が「リード板と対向するケース内側面に」「ケースの底面側から開口側へと至る途中の位置から開口に亘って」設けられるものであるが、甲第1号証には、ケースの側壁に「外側へ膨らむ膨出部」に係る記載や示唆はなく、甲第1号証に接した当業者であっても、甲1発明の「矩形の切り欠き」に代えてあえてケースの側壁に外側へ膨らむ「膨出部」を形成するようにすることは容易に想到し得たこととはいえない。
b ここで、上記「3(4)イ」によれば、甲第2号証に記載された技術は、「コイルケース」に係るものであり、甲1発明とは技術分野が異なる。
また、甲第2号証に記載された技術は、「側壁上部に薄肉部でつながる外側に広がった段付部」を「注入樹脂の硬化後」「切除する」技術であることから、「リード板」が「挟み込」まれ「矩形の切り欠き」が設けられる「ケース」に、「切除」される「外側に広がった段付部」を採用することに動機付けはなく、むしろ阻害要因があるといえる。
してみれば、甲1発明に甲第2号証に記載された技術を採用することは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
c そして、上記「3(5)イ」によれば、甲第3号証には、「陽極バスバー及び陰極バスバーを、陽極端子及び陰極端子が本体部からテーパ部を介して立ち上がって設けられた構成とし、コンデンサケースにおけるバスバーが対向する側壁に、コンデンサケース底面側から開口側へと至る途中の位置から開口に亘って外側に膨らむ部分を形成する」技術が記載されているところ、「側壁」に形成される「外側に膨らむ部分」は、「陽極端子及び陰極端子が本体部からテーパ部を介して立ち上がって設けられた」ことに伴い設けられたものと推測できる。
しかしながら、甲第3号証の段落【0032】、【0034】によれば、「陽極端子及び陰極端子」を「本体部からテーパ部を介して立ち上がって設け」、「側壁」に「外側に膨らむ部分」を形成する構成は、「エポキシ樹脂5と陽極バスバー10、11との界面から侵入する水分がコンデンサケース4内にエポキシ樹脂5によりモールドされたコンデンサ素子1に到達する距離を長くすることにより影響を受け難くするためのものである。さらに、「テーパ部」によりバスバーと側壁との間隔が広がることも鑑みれば、毛細管現象により封止用樹脂が這い上がりケースの外側にあふれ出ることを抑制するための「矩形の切り欠き」を有する甲1発明に、「テーパ部」を備える「バスバー」及び「側壁」に形成される「外側に膨らむ部分」を採用する動機はない。
してみれば、甲1発明に甲第3号証に記載された技術を採用することは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
d さらに、上記「3(6)イ」によれば、甲4号証に記載された技術が記載されているものの、「側壁」に「外側に膨らむ部分」を形成することについて、甲第4号証は何等説明しておらず、その作用効果は不明である。また、甲1発明に甲第4号証に記載された「外側に膨らむ部分」を採用する特段の事情もない。
してみると、甲1発明に甲第4号証に記載された技術を採用することは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
e したがって、相違点4に係る構成は、甲1発明、又は、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術に基づいて当業者が容易になし得たこととはいえない。
イ 本件発明2ないし4について
請求項2ないし4は、請求項1をそれぞれ引用するものであり、本件発明2ないし4は、引用する本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明1に対する理由と同様な理由により、本件発明2ないし4は、甲第1号証に記載された発明、又は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証ないし甲第5号証に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ まとめ
以上から、請求項1ないし4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、又は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができないものではないから、請求項1ないし4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
5 異議申立書における異議申立人の主張について
(1)特許異議申立人は、異議申立書において概略次のとおり主張する。
ア 仮に本件特許発明1と甲1-1発明とに相違点があるとしても、当該相違点に係る本件特許発明1の構成とすることに格別の困難性はなく、本件特許発明1は、甲1-1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである(特許法第29条第2項)。(13頁19ないし22行)
イ 当該技術分野において、ケースの側壁に、内面および外面が外側へ膨らむ膨出部を設けることは、当業者にとって周知技術である(例えば、甲第2号証の図面、甲第3号証の図6(a)または甲第4号証の図4には、ケースの側壁に、内面および外面が外側へ膨らむ膨出部を設けることが記載されている)。
そして、甲1-1発明において、上記周知技術を適用し、矩形の切り欠き5の部位において側壁の外面を外側へ膨らませることは、当業者が容易に想到し得ることである。また、矩形の切り欠き5の部位において側壁の外面を外側へ膨らませたとしても、甲1-1発明の技術的な効果(リード板とケースの隙間に入り込んだ封止用樹脂が毛細管現象による這い上がりによりケースからあふれ出るのを防止する効果)を失わせることはない。
したがって、本件特許発明1は、甲1-1発明および周知技術(甲第2号証、甲第3号証または甲第4号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(特許法第29条第2項)。(14頁5ないし17行)
(2)特許異議申立人の上記主張について検討する。
上記「4(2)ア(イ)a」で述べたように、甲第1号証には、ケースの側壁に「外側へ膨らむ膨出部」に係る記載や示唆はないから、甲第1号証に接した当業者であっても、甲1発明の「矩形の切り欠き」に代えてあえてケースの側壁に外側へ膨らむ「膨出部」を形成することは容易に想到し得たこととはいえない。
そして、上記「4(2)ア(イ)」の「b」ないし「d」で述べたように、甲1発明に甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術を採用する動機はなく、甲1発明に甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術を採用することは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
よって、特許異議申立人の主張は採用できない。
6 令和6年2月5日提出の意見書における明確性に係る主張について
(1)特許異議申立人は、令和6年2月5日提出の意見書において、訂正後の本件発明1ないし本件発明4は、明確性に関して概略次のように主張する。
ア 本件発明1ないし4の「前記バスバーと前記側壁との間に前記充填樹脂のみが存在する」について
本件発明1の「前記バスバーと前記側壁との間に前記充填樹脂のみが存在する」構成は、バスバーと側壁との間の全領域において充填樹脂のみが存在する構成であるのか、または、バスバーと側壁との間の一部の領域において充填樹脂のみが存在する構成であるのか不明である。
訂正後の請求項1には、充填樹脂がケースの開口に至るまで充填される旨の記載はなく、本件発明1は、充填樹脂がケース内のどの高さまで充填されるのか不明である。この点、図6(a)によれば、充填樹脂300の上面が前側壁202及び後側壁203の上端よりも低い位置にあるので、第2バスバー600と前側壁202及び後側壁203との間には、充填樹脂300よりも上の領域において、充填樹脂300以外の気体(例えば、空気)が存在することが見て取れる。
さらに、図6(b)には、第1バスバー500の第1後接続端子部540と後側壁203との間に、第2絶縁シート800が図示されている。すなわち、図6(b)によれば、第1バスバー500の第1後接続端子部540と後側壁203との間に、充填樹脂300以外のもの(第2絶縁シート800 )が存在することは明らかである。
このように、図6(a)及び図6(b)を参照すると、訂正事項1は、バスバーと側壁との間の一部の領域において充填樹脂のみが存在する構成であるのかのように読み取れる。
よって、本件発明1は明確ではない。
(2頁下から8行ないし3頁19行)
また、請求項1を引用する請求項2ないし請求項4に係る本件発明2ないし本件発明4も同様である。
(8頁9ないし11行、同頁17ないし19行、9頁3ないし5行)
イ 本件発明3、4の「側壁」について
本件発明3の「側壁」は、当該側壁の平面が開口に直交しているのか不明であり、また、側壁は膨張部を含むため、「側壁に平行な方向」は一意に定まらず不明である。
よって、本件発明3は明確ではない。(8頁20ないし22行)
また、請求項3を引用する請求項4に係る本件発明4も同様である。(9頁6行)
ウ 本件発明4の「前記側壁に平行な方向」について
「側壁に平行な方向」の直前の「前記」が請求項3の記載をどこまで含むのか不明であるから、本件発明4は明確ではない。(8頁6ないし8行)
(2)特許異議申立人の上記各主張について検討する。
ア 本件発明1ないし4の「前記バスバーと前記側壁との間に前記充填樹脂のみが存在する」について
本件発明1の「前記バスバーと前記側壁との間に前記充填樹脂のみが存在する」とは、「バスバー」と「側壁」の間には「充填樹脂」以外の物体要素は存在しないことを特定していると解される。
そして、上記「第2 2(2)ア(イ)」で述べたように、本件特許明細書の段落【0042】に「本実施の形態では、前膨出部210および後膨出部220が設けられることにより、ケース200の開口端部において、毛細管現象が生じない程度に、第2バスバー600とケース200の前側壁202および後側壁203との間に隙間を確保することが可能となる。よって、第2バスバー600と前側壁202および後側壁203の隙間から充填樹脂300が這い上がりケース200から漏れ出してしまうことが防止される。」と記載され、図6(a)及び図6(b)によれば、ケース200の底壁201から充填樹脂300の表面まで、「第2バスバー600」と「前側壁202」との間に「充填樹脂300」のみが存在することが見て取れることから、本件発明1における「前記バスバーと前記側壁との間に前記充填樹脂のみが存在する」との構成は、本件特許明細書及び図面に記載された、「第1バスバー500」と「ケース200」との間ではなく、「第2バスバー600」と「ケース200」との間における構造に基づくものと認められる。
また、本件特許明細書の段落【0036】に「充填樹脂300が開口200aの近傍までケース200内に満たされ」と記載され、該明細書では充填樹脂をケースの開口まで、即ち、特許異議申立人が主張する「空気」が存在しない程度にケースの側壁の縁まで満たすことも排除されていない。
してみれば、本件発明1における「前記バスバーと前記側壁との間に前記充填樹脂のみが存在する」との記載が第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるということはできない。
よって、特許異議申立人の主張は採用できない。
イ 本件発明3、4の「側壁」について
本件発明1の「側壁は、前記ケースの底壁側から前記開口側と至る途中の位置から前記開口に亘って形成され」る「膨出部を含む」との記載からすれば、「側壁」は「ケースの底壁側から開口側」に向かって延びる「壁」であるから、ケースの側壁面がケース開口面に対して垂直であることは明らかである。
また、本件発明3の「前記側壁に平行な方向」とは、ケースの開口方向と平行な方向、又は、ケースの開口方向と垂直な方向が想起されるところ、本件発明3では、「前記ケースの開口方向と直交する方向であって、前記側壁に平行な方向」と特定されていることからすれば、「膨出部」の「延びる」方向は、「ケースの開口方向と直交する方向」かつ「前記側壁に平行な方向」であり、一意に定まっていることは明らかである。
よって、特許異議申立人の主張は採用できない。
ウ 本件発明4の「前記側壁に平行な方向」について
請求項4は請求項3を引用するところ、本件発明4の「側壁に平行な方向」の直前の「前記」は、本件発明3の「側壁」を指していることは当然のことである。
よって、特許異議申立人の主張は採用できない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700151