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特許異議申立

2025-700215

EPAを含有する末梢の体温保持用の食品

審判番号
2025-700215
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-503515
登録番号
7542520
請求日
2025年02月20日
審決日
2026年05月13日
公報発行日
2026年08月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社ニッスイ
  • 【権利者代理人】弁理士法人秀和特許事務所
  • 【異議申立人】新井 誠一
審判長/審判官
  • 審判長 天野 宏樹
  • 審判官 加藤 友也
  • 審判官 壷内 信吾
分類
P1651.121-YAA(A23L) / P1651.537-YAA(A23L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第5項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第113条第4号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7542520号発明「EPAを含有する末梢の体温保持用の食品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7542520号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~12〕について訂正することを認める。 特許第7542520号の請求項1~5及び7~12に係る特許を維持する。 特許第7542520号の請求項6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7542520号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~12に係る特許についての出願は、2020年(令和2年)2月14日(優先権主張 平成31年3月4日)を国際出願日とする出願であって、令和6年8月22日にその特許権の設定登録(請求項の数12)がされ、同年同月30日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和7年2月19日に特許異議申立人 新井 誠一(以下、「特許異議申立人」という。)から特許異議の申立て(対象請求項:請求項1~12)がされ、同年7月9日付けで取消理由が通知され、同年9月12日に特許権者 株式会社ニッスイ(以下、「特許権者」という。)より訂正の請求がされるとともに意見書の提出がされ、同年同月26日付けで特許法第120条の5第5項に基づく訂正請求があった旨の通知を行ったところ、同年10月29日に特許異議申立人より意見書の提出がされ、令和8年1月30日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年3月23日に特許権者から訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされるとともに意見書が提出されたものである。 なお、令和7年9月12日にされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 また、既に特許異議申立人に意見書の提出の機会が与えられており、下記第2 1のとおり、本件訂正請求によって特許請求の範囲が相当程度減縮され、下記第6及び7のとおり、提出された全ての証拠や意見等を踏まえて更に審理を進めたとしても特許を維持すべきとの結論となると合議体は判断し、特許法第120条の5第5項ただし書に規定された特別の事情があるときといえるから、特許異議申立人に再度の意見書の提出の機会を与えていない。 第2 本件訂正について 1 訂正の内容 本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。なお、訂正事項の通し番号は訂正請求書の記載から一部改めた。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「下記成分(A)および(B)を有効成分として含有し、前記成分(A)及び前記成分(B)の1日分の用量の合計が、100mg以上11000mg以下である、末梢の体温保持用の食品:(A)エイコサペンタエン酸(EPA)、EPAと炭素数1~3のアルコールとのエステル、EPAを含有するグリセリド及びEPAを含有するリン脂質からなる群から選ばれる少なくとも1種(B)ドコサヘキサエン酸(DHA)、DHAと炭素数1~3のアルコールとのエステル、DHAを含有するグリセリド及びDHAを含有するリン脂質からなる群から選ばれる少なくとも1種。」とあるのを、「下記成分(A)および(B)を有効成分として含有し、前記成分(A)及び前記成分(B)の1日分の用量の合計が、100mg以上11000mg以下であり、前記成分(A)及び前記成分(B)の含有量の重量比(成分(A)/成分(B))が、1.5以上5以下である、末梢の体温保持用の食品:(A)エイコサペンタエン酸(EPA)、EPAと炭素数1~3のアルコールとのエステル、EPAを含有するグリセリド及びEPAを含有するリン脂質からなる群から選ばれる少なくとも1種(B)ドコサヘキサエン酸(DHA)、DHAと炭素数1~3のアルコールとのエステル、DHAを含有するグリセリド及びDHAを含有するリン脂質からなる群から選ばれる少なくとも1種。」に訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~5、7~12も同様に訂正する)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項6を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項7に「前記成分(A)の1日分の用量が、50mg以上6500mg以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の食品。」とあるのを、「前記成分(A)の1日分の用量が、50mg以上6500mg以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の食品。」に訂正する(請求項7の記載を直接又は間接的に引用する請求項8~12も同様に訂正する。)。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項8に「前記成分(A)、及び/又は前記成分(B)が含まれる場合の前記成分(B)が、水産物からの抽出物として食品に含有される、請求項1~7のいずれか1項に記載の食品。」とあるのを、「前記成分(A)、及び/又は前記成分(B)が含まれる場合の前記成分(B)が、水産物からの抽出物として食品に含有される、請求項1~5、7のいずれか1項に記載の食品。」に訂正する(請求項8の記載を直接又は間接的に引用する請求項9~12も同様に訂正する。)。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項12に「前記食品の適用対象が、20歳以上49歳以下の健常な女性である、請求項1~11のいずれか1項に記載の食品。」とあるのを、「前記食品の適用対象が、20歳以上49歳以下の健常な女性である、請求項1~5、7~11のいずれか1項に記載の食品。」に訂正する。 なお、訂正前の請求項1~12について、請求項2~12は請求項1を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1~5によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正される。よって、訂正前の請求項1~12に対応する訂正後の請求項1~12は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 2 訂正の目的、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1による請求項1についての訂正は、末梢の体温保持用食品が含有する成分(A)及び(B)について、【0022】等の記載に基づいて、「前記成分(A)及び前記成分(B)の含有量の重量比(成分(A)/成分(B))が、1.5以上5以下である」ことを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1による請求項1についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~5、7~12についても同様である。 (2)訂正事項2について 訂正事項2による請求項6についての訂正は、請求項6を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項2による請求項6についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、訂正前の請求項7が請求項1~6のいずれか1項を引用する記載であるところ、訂正事項2で請求項6が削除されたことに伴い、引用する請求項6を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項3による請求項7についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 請求項7の記載を直接又は間接的に引用する請求項8~12についても同様である。 (4)訂正事項4について 訂正事項4は、訂正前の請求項8が請求項1~7のいずれか1項を引用する記載であるところ、訂正事項2で請求項6が削除されたことに伴い、引用する請求項6を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項4による請求項8についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 請求項8の記載を直接又は間接的に引用する請求項9~12についても同様である。 (5)訂正事項5について 訂正事項5は、訂正前の請求項12が請求項1~11のいずれか1項を引用する記載であるところ、訂正事項2で請求項6が削除されたことに伴い、引用する請求項6を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項5による請求項12についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 独立特許要件について 本件においては、訂正前の全ての請求項1~12に対して特許異議の申立てがされているので、上記訂正事項に係る訂正については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 4 本件訂正についてのまとめ 以上のとおりであるから、訂正事項1~5に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~12〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2のとおり、訂正後の請求項〔1~12〕について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1~12に係る発明(以下、これらの発明を順に「本件特許発明1」、「本件特許発明2」などといい、総称して「本件特許発明」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~12に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 下記成分(A)および(B)を有効成分として含有し、 前記成分(A)及び前記成分(B)の1日分の用量の合計が、100mg以上11000mg以下であり、 前記成分(A)及び前記成分(B)の含有量の重量比(成分(A)/成分(B))が、1.5以上5以下である、末梢の体温保持用の食品: (A)エイコサペンタエン酸(EPA)、EPAと炭素数1~3のアルコールとのエステル、EPAを含有するグリセリド及びEPAを含有するリン脂質からなる群から選ばれる少なくとも1種 (B)ドコサヘキサエン酸(DHA)、DHAと炭素数1~3のアルコールとのエステル、DHAを含有するグリセリド及びDHAを含有するリン脂質からなる群から選ばれる少なくとも1種。 【請求項2】 前記成分(A)の含有量が、0.05重量%以上60重量%以下である、請求項1に記載の食品。 【請求項3】 前記成分(B)の含有量が、0.01重量%以上25重量%以下である、請求項1または2に記載の食品。 【請求項4】 前記食品における前記成分(A)及び前記成分(B)の含有量の合計が、0.06重量%以上85重量%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の食品。 【請求項5】 前記成分(A)及び前記成分(B)の含有量の重量比(成分(A)/成分(B))が、1以上10以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の食品。 【請求項6】(削除) 【請求項7】 前記成分(A)の1日分の用量が、50mg以上6500mg以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の食品。 【請求項8】 前記成分(A)、及び/又は前記成分(B)が含まれる場合の前記成分(B)が、水産物からの抽出物として食品に含有される、請求項1~5、7のいずれか1項に記載の食品。 【請求項9】 前記水産物が、魚介類、海獣類、及び藻類からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項8に記載の食品。 【請求項10】 前記水産物からの抽出物が、魚油である、請求項8又は9に記載の食品。 【請求項11】 前記食品が水産物からの抽出物をソフトカプセルに調製したものである、請求項8~10のいずれか1項に記載の食品。 【請求項12】 前記食品の適用対象が、20歳以上49歳以下の健常な女性である、請求項1~5、7~11のいずれか1項に記載の食品。」 第4 特許異議申立理由の要旨及び証拠方法 令和7年2月19日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した特許異議申立ての理由の要旨及び証拠方法は次のとおりである。 1 申立理由1(甲第1号証を主たる証拠とする進歩性) 本件特許発明1~12は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 2 申立理由2(サポート要件) 本件特許の請求項1~12に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 本件特許発明は、成分(A)及び成分(B)を有効成分として含有する、末梢の体温を保持するための食品を提供することを課題とする。本件特許明細書によれば、具体的に末梢の体温を保持することが確認されたのは「EPA及びDHAを含む魚油を含有するカプセル」である。一方、本件特許発明1は、「成分(A)および成分(B)を有効成分として含有する」と規定するのみであり、成分(A)及び成分(B)のみを含有する食品や、成分(A)及び成分(B)以外の種々の成分を含む食品が含まれることとなる。魚油には成分(A)及び成分(B)以外の脂肪酸等が含まれるところ、それらが存在しない成分(A)及び成分(B)のみからなる食品、あるいは、魚油には含まれない成分が共存した食品においても末梢の体温保持の効果が得られるかは不明である。したがって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載されたものであるとはいえない。本件特許発明2~12も同様である。 3 特許異議申立人の提出した証拠方法 ・甲第1号証:Geza Bruckner et al.、Fish oil increases peripheral capillary blood cell velocity in humans、Atherosclerosis、1987、Vol.66、pp.237-245 ・甲第2号証:後山尚久、冷え性の病態の臨床的解析と対応、医学のあゆみ、2005年12月10日 、Vol.215、No.11、pp.925-929 ・甲第3号証:高木絢加他、若年女性の安静時エネルギー消費量,および中性温度域における体温と温度感覚の変化-日常的な冷え感の有無による2群の比較-、女性心身医学(2012)、平成24年11月 、Vol 17、No. 2、pp.193-205 ・甲第4号証:尾形優他、冷え性の生理学的メカニズムについて-循環動態および自律神経活動指標による評価-、日本看護技術学会誌、2017、Vol.15、No.3、pp.227-234 ・甲第5号証:Susumu Yoshino et al.、Effects of Long Pepper Extract on Peripheral Coldness in Japanese Healthy Women-A Randomized Double-blind Placebo-controlled Crossover Trial-、Jpn Pharmacol Ther (2018)、 Vol.46、No.2、pp.219-225 ・甲第6号証:吉谷佳代他、冷えを訴える女性に及ぼす酵素処理ヘスペリジンの効果、日本栄養・食糧学会誌(2008)、Vol.61、No.5、pp.233-239 ・甲第7号証:魚油摂取は交感神経を介して、「脂肪燃焼細胞」を増やす-「魚油」の効果で体脂肪燃焼を促す新メカニズムを解明!、公開日2015年12月18日、https://www.kyoto-u.ac.jp/sites/default/files/embed/jaresearchresearch_results2015documents151217_101.pdf ・甲第8号証:特開2016-13976号公報 ・甲第9号証:作用機序に関する説明資料、日本水産株式会社、商品名 めぐりのみかた、別紙様式(VII)-1【添付ファイル用】、https://fldcaa.my.salesforce.com/sfc/p/#F90000022zIp/a/F9000000tBTY/dZXnh8jXC51Rl0OIf9jrdOzJB8Ff3uLiz3Br1KTA05U ・甲第9-2号証:消費者庁ホームページの機能性食品検索サイトにおいて「F1023」を検索した際の結果画面、https://www.fld.caa.go.jp/caaks/s/cssc01/ ・甲第9-3号証:甲第9-2号証の結果画面中の届出番号「F1023」をクリックすると出てくる画面、https://www.fld.caa.go.jp/caaks/s/cssc01/fwccd01?c_id=a09F900004sk7x3IAA ・甲第10号証:めぐりのみかた 商品詳細、プラスエイド、https://db.plusaid.jp/foods/F1023 また、特許異議申立人は、令和7年10月29日に提出した意見書に添付して、次の甲第11号証ないし甲第14号証を提出している。 ・甲第11号証:乾小児科内科医院Doctor's Blog 、手足が冷える!末端冷え症の原因と改善方法、公開日2019年2月4日、https://inui-iin.com/blog/1026/ ・甲第12号証:坂野克久他、ショウガ商品摂取によるヒト体温上昇効果、日本未病システム学会雑誌(2014)、Vol.20、No.2、pp.69-73 ・甲第13号証:研究レビューの結果と表示しようとする機能性の関連性に関する評価シート、日本水産株式会社、商品名 めぐりのみかた、別紙様式(V)-16【様式例 添付ファイル用】、消費者庁への届出日2021年3月17日、https://fldcaa.my.salesforce.com/sfc/p/#F90000022zIp/a/F9000000tBTY/dZXnh8jXC51Rl0OIf9jrdOzJB8Ff3uLiz3Br1KTA05U ・甲第14号証:特開2012-149060号公報 証拠の表記については、特許異議申立書及び証拠説明書における記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。 4 特許権者の提出した証拠方法 特許権者は、令和7年9月12日に提出した意見書に添付して、次の乙第1号証ないし乙第7号証を提出している。 ・乙第1号証:特開2005-343795号公報 ・乙第2号証:秋下雅弘、性差医学と脈管、脈管学、2006、Vol.46、pp.137-141 ・乙第3号証:秋下雅弘、動脈硬化の性差とホルモン補充療法、脈管学、2003、Vol.43、No.5、pp.179-184 ・乙第4号証:甲第1号証の抄訳 ・乙第5号証:SATORU KOBAYASHI et al.、REDUCTION IN BLOOD VISCOSITY BY EICOSAPENTAENOIC ACID、THE LANCET、1981、p.197(甲第1号証の参考文献10) ・乙第6号証:乙第5号証の抄訳 ・乙第7号証:松田保他、血液粘度の低温における変化とその意義、血液と脈管、1981、Vol.12、No.1、pp.13-15 第5 取消理由(決定の予告)の要旨 請求項1~12に係る特許に対して、当審が令和8年1月30日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、以下のとおりである。 ●取消理由(甲1に基づく進歩性) 本件特許発明1~5及び7~12は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明に基いて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。なお、該取消理由は申立理由1のうち、請求項1~5及び7~12についての理由とおおむね同旨である。 第6 取消理由(決定の予告)についての当審の判断 以下で検討するとおり、当審は、令和8年1月30日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)では、本件特許発明1~5及び7~12に係る特許を取り消すことはできないものと判断する。 1 甲1に記載された事項等 (1)甲1に記載された事項 甲1は、「魚油は人間の末梢毛細血管における血球速度を増加させる」というタイトルの論文であり、おおむね次の事項が記載されている。なお、甲1は外国語の文献であるため、甲1の抄訳として提出された訳文と当審により追加された当審訳のみを摘記する。 ・「n-3脂肪酸を含む魚油は人間に対しin vitroでの血小板凝集の減少、血漿トリグリセリドの低下、出血時間の増加をもたらすことが知られている。人間の毛細血管の血流に対する魚油のin vitroでの効果は今まで研究されてはいない。 21名の男性被験者が、オリーブオイル摂取群(n=10)と魚油摂取群(n=11)にランダムに振り分けられ、これらのオイルの爪郭部の毛細血管血流速度(CBV)に対する効果を決定した。被験者は単盲検によって 3 週間これらのオイルを与えられた(1.5g oil/10 kg b. wt./day)。・・・魚油摂取では、CBV が有意に増加し、1.75 倍であった(0.144±0.069 から 0.253±0.147 mm/s)。」(p.237 Summary 1~9行)(当審訳を含む) ・「・・・エイコサペンタエン酸(20:5n-3)およびドコサヘキサエン酸(20:6n-3)が蓄積され・・・」(p.238 左欄2~3行)(当審注:原文では eicosapentaenoic (20:5n3)と記載されているが、p.238のTABLE 1 を見ると、これは 20:5n-3の誤記であると思われる。また、同様に原文の(20:6n-3)は 22:6n-3の誤記であると認められる。) ・「21名の男性被験者、19-40歳が試験に参加すべくリクルートされた。」(p.238 左欄下から7~6行) ・「オイル(1g ゼラチンカプセル)が、体重に基づいて(1.5 g oil/10 kg b. wt./day)被験者に与えられた。・・・被験者が栄養食品を識別するのを最小限にするために、微量のペパーミントオイルが魚油とオリーブオイルのカプセルに含まれた。 オリーブオイルと魚油の脂肪酸組成をTable 1に示す。オリーブオイルは主に18:1n-9脂肪酸を含み、一方、魚油は20:5n-3と22:6n-3脂肪酸が増加した。魚油(Max Epa)とオリーブオイルのカプセルはまた、ビタミンE 1 IU/g オイルによって安定化された。そのオイルはミシガン州トロイのDr. Daviesによって快く提供されたものである。」(p.238 右欄18行~ p.239 左欄7行)(当審訳を含む) ・「TABLE 1 被験者に摂取された(1.5 g oil/10 kg b. wt./day)魚油(MAX EPA)とオリーブオイルカプセルの脂肪酸構成 [図:0001438270000001.jpg] * 14:0 は BHT と共溶出されるため評価されなかった ** wt%は、微量で確認されないピークが除かれたため100%にならない」(p.238 TABLE 1) ・「爪郭毛細血管の試験のための実験機器はFig.1に模式化して示される。」(p.240 左欄Microcirculation 1~3行) ・「光度計は、解析されようとする毛細血管の上部に置かれた上流と下流のラスター線窓を、赤血球(RBC)がこれらの窓を通過する際に電気シグナルに変換する。」(p.240 右欄下から5~1行) ・「 [図:0001438270000002.jpg] Fig. 1 微小循環機器の模式図」(p.240 Fig.1) ・「 [図:0001438270000003.jpg] Fig. 2 3週間、魚油あるいはオリーブオイルカプセルを摂取した(1.5 g oil/10kg b. wt./day)ヒトにおける爪郭毛細血管血流細胞速度(CBV)」(p.241 Fig.2) ・「爪郭毛細血管血流細胞速度(CBV)は、オリーブオイル摂取群において変化がなかった;一方、魚油摂取群においてはこのパラメータについて、平均で0.144から0.253 mm/sの有意な上昇があった(Table 5, Fig.2)。」(p.242 右欄9行~p.243 左欄2行) ・「TABLE 6 魚油(MAX EPA)とオリーブオイル補給前後の男性被験者における血圧と全血粘度(WBV) [図:0001438270000004.jpg] * 1.5g oil/10kg b.wt./dayにて三週間補給前後 ** WBV = 3% ポリビニルピロリドン(40000 dalton)に対する毛細管粘度計法によって測定された全血粘度 WBV/PVP a 補給前と比べて補給後が有意に異なる(P <0.05)」(p.243 TABLE 6)(当審訳) ・「オリーブオイルと魚油のいずれも摂取により収縮期血圧と拡張期血圧を低下させたが、有意に異なっていたのはオリーブオイルを摂取したグループのみであった(Table 6)。全血相対粘度には有意な変化は見られなかった(Table 6)。」(p.243 左欄3~8行)(当審訳) ・「観察されたCBVの増加に関して、考えられるメカニズムは、血液粘度の減少、血圧の増加、血管緊張の減少が挙げられる。魚油グループでは、摂取後に血圧はわずかに低下したが、摂取前の値と有意な差はみられなかった。両グループとも、全血粘度には変化は見られなかった。」(p.243 右欄6~13行)(当審訳) ・「よって、我々のデータは、観察されたCBVの変化は、前毛細血管性血管緊張の変化、すなわち細動脈および中動脈の血管拡張によることを示唆している。」(p.243 右欄13~16行) (2)甲1に記載された発明 甲1には、オイルによる爪郭部の毛細血管血流速度(CBV)の上昇に関する実験について、以下の発明が記載されている。 「19-40歳の11名の男性被験者の体重に基づいて(1.5 g oil/10 kg b. wt./day)被験者に3週間与えられたオイル(1g ゼラチンカプセル)であって、被験者が栄養食品を識別するのを最小限にするために、微量のペパーミントオイルが魚油のカプセルに含まれ、ビタミンE 1 IU/gオイルによって安定化され、TABLE 1に示された構成脂肪酸を含有する魚油(Max Epa)カプセル。」(以下、「甲1発明」という。当審注:TABLE 1については、上記(1)を参照。) 2 対比・判断 (1)本件特許発明1について ア 本件特許発明1と甲1発明との対比 本件特許発明1と甲1発明とを対比する。 甲1のTABLE 1の「20:5n-3」は、本件特許発明1の「(A)エイコサペンタエン酸(EPA)、EPAと炭素数1~3のアルコールとのエステル、EPAを含有するグリセリド及びEPAを含有するリン脂質からなる群から選ばれる少なくとも1種」を満たし、「成分(A)」に相当する。 また、甲1のTABLE 1の「22:6n-3」は、本件特許発明1の「(B)ドコサヘキサエン酸(DHA)、DHAと炭素数1~3のアルコールとのエステル、DHAを含有するグリセリド及びDHAを含有するリン脂質からなる群から選ばれる少なくとも1種。」を満たし、「成分(B)」に相当する。 さらに、甲1のTABLE 1によれば、魚油には「20:5n-3」(EPA)及び「22:6n-3」(DHA)以外にも16:0や18:1と記される脂肪酸なども含まれているものの、これらの脂肪酸はコントロールであるオリーブオイルにも含まれており、オリーブオイルには爪郭部CBVを上昇させる効果が見られない(p.241 Fig.2)ため、オリーブオイルと共通するこれら脂肪酸は、魚油において爪郭部CBVを上昇させる「有効成分」とは認められず、魚油にのみ含まれる「20:5n-3」(EPA)及び「22:6n-3」(DHA)は、甲1における爪郭部CBVを上昇させる「有効成分」であると認められる。 そして、甲1発明の魚油カプセルは被験者に経口摂取されるものであるから、本件特許発明1の「食品」に相当することは明らかである。 そうすると、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。 <一致点> 「下記成分(A)および(B)を有効成分として含有する食品: (A)エイコサペンタエン酸(EPA)、EPAと炭素数1~3のアルコールとのエステル、EPAを含有するグリセリド及びEPAを含有するリン脂質からなる群から選ばれる少なくとも1種 (B)ドコサヘキサエン酸(DHA)、DHAと炭素数1~3のアルコールとのエステル、DHAを含有するグリセリド及びDHAを含有するリン脂質からなる群から選ばれる少なくとも1種。」 <相違点1> 本件特許発明1は、「前記成分(A)及び前記成分(B)の1日分の用量の合計が、100mg以上11000mg以下である」ことが特定されているのに対して、甲1発明ではそのようには特定されていない点。 <相違点2> 本件特許発明1は、「末梢の体温保持用」であることが特定されているのに対して、甲1発明ではそのようには特定されていない点。 <相違点3> 本件特許発明1は、「前記成分(A)及び前記成分(B)の含有量の重量比(成分(A)/成分(B))が、1.5以上5以下である」ことが特定されているのに対して、甲1発明ではそのようには特定されていない点。 イ 判断 事案に鑑み、相違点3について検討する。 甲1のTABLE 1には、甲1発明の「魚油」は、「成分(A)」に相当するEPAである「20:5n-3」を18.09wt%、「成分(B)」に相当するDHAである「22:6n-3」を12.64wt%含有することが記載されていることから、重量比(成分(A)/成分(B))は1.431と算出される。 したがって、甲1には、「前記成分(A)及び前記成分(B)の含有量の重量比(成分(A)/成分(B))が、1.5以上5以下である」ことについては何ら記載されていないから、実質的な相違点である。 また、甲1には、魚油における成分(A)と成分(B)の重量比(成分(A)/成分(B))に着目し、これを「1.5以上5以下」とする動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。したがって、甲1及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点3に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 ウ 特許異議申立人の主張について 上記相違点3に関し、特許異議申立人は、特許異議申立書の24頁の(ア-6)において、申立理由1についておおむね以下の点を主張している。 EPAとDHAの比は1.431であるが、EPAとDHAの量を検討し、その比を1.5以上5以下の幅にして比を最適化することは、当業者が通常行う設計的事項にすぎない。 そこで、検討する。甲1には、被験者に摂取された魚油として、TABLE 1に記載された、成分(A)」に相当するEPAである「20:5n-3」を18.09wt%、「成分(B)」に相当するDHAである「22:6n-3」を12.64wt%含有するものが開示されているが、それ以外の魚油については開示がなく、甲1には、TABLE 1を除き、魚油におけるEPAとDHAの重量比を確認できる記載はない。また、甲1には、甲1の研究がn-3脂肪酸を含有する魚油の効果を明らかにするものであること(要約)、魚油は20:5n-3(EPA)及び22:6n-3(DHA)脂肪酸の含有量がオリーブオイルより高いこと(p.239)が記載されているが、n-3脂肪酸に含まれるEPA及びDHAの重量比に着目する記載や、EPA及びDHAの重量比が異なる魚油を用いて行った実験も記載されていない。さらに、他の全ての証拠の記載を見ても、甲1の魚油におけるEPA及びDHAの重量比を変更する動機があったとはいえない。加えて、EPAとDHAの重量比を1.5以上5以下に調整することが本願出願時において周知の技術的事項であったとも認められない。 そうすると、たとえ当業者であっても、甲1及び全ての証拠の記載から、魚油中のEPAとDHAの重量比に着目し、かつ、その重量比を「1.5以上5以下」の幅に調整することに容易に想到し得たとはいえない。 よって、特許異議申立人の主張は採用することができない。 (2)本件特許発明1についてのまとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件特許発明2~5、7~12について 本件特許発明2~5、7~12はいずれも、請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第7 取消理由として採用しなかった特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由について 取消理由として採用しなかった特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由は次のとおりである。 ・申立理由2(サポート要件)、対象請求項1~5、7~12 なお、申立理由1及び申立理由2のうちの請求項6に対する理由は本件訂正によりその対象がなくなった。 以下、検討する。 ○申立理由2(サポート要件)について (1)サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (2)特許請求の範囲の記載 本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。 (3)本件特許発明の課題について 本件明細書の【0002】~【0004】等の記載からみて、本件特許発明1~5、7~12の課題は「末梢の体温を保持する効果を持つ食品を提供すること」にあるものと認められる。 (4)サポート要件の判断 本件特許発明の課題の解決手段に関し、本件明細書の【0005】には「本発明者らは上記目的に即して鋭意検討した結果、EPA等を有効成分として含有する食品を摂取した人が、末梢の体温を保持することができることを見出し、本発明の完成に至った。」との記載があり、【0010】~【0014】には少なくともEPA(成分(A))を含み、さらにDHA(成分(B))を含むことが好ましいことが記載され、EPA及びDHAとしては、遊離脂肪酸、エステル、グリセリド、リン脂質の形態で用いられることが記載され、【0015】~【0016】には成分(A)及び成分(B)を含む食品として、水産物の抽出物などがあげられることが記載されている。 また、本件明細書の【0028】~【0029】には発明の効果を得る上で好ましい成分(A)及び成分(B)の含有量(1日当たりの用量)が記載されており、成分(A)及び成分(B)の含有量の合計は通常100mg以上であることが記載されている。 そして、本件明細書の【0038】~【0055】には比較例及び実施例のソフトカプセルについて、EPA及びDHAを含む魚油を含むものがEPA群用として実施例とされ、実施例の1日分にはEPA600mg及びDHA260mgが含まれており、コーン油にトコフェロールを添加したものを含むものがプラセボ群用として比較例とされ、恒温の環境下においては、EPA含有魚油の摂取により、プラセボ群と比較して手指の最低温度が有意に上昇したこと、冷水負荷試験後の手指の平均温度及び血流量においては、プラセボ群と比較してEPA群の方が手指の平均温度及び血流量の回復が早い傾向が見られたこと、さらには、冷えの感覚がプラセボ群と比較して低減することが示され、体感として冷えを感じにくくなることが示されている。 そうすると、EPA、DHAを含む魚油等の食品を【0028】~【0029】に記載された含有量(1日当たりの用量)で摂取すれば、すなわち、「下記成分(A)および(B)を有効成分として含有し、 前記成分(A)及び前記成分(B)の1日分の用量の合計が、100mg以上11000mg以下である、末梢の体温保持用の食品: (A)エイコサペンタエン酸(EPA)、EPAと炭素数1~3のアルコールとのエステル、EPAを含有するグリセリド及びEPAを含有するリン脂質からなる群から選ばれる少なくとも1種 (B)ドコサヘキサエン酸(DHA)、DHAと炭素数1~3のアルコールとのエステル、DHAを含有するグリセリド及びDHAを含有するリン脂質からなる群から選ばれる少なくとも1種。」であれば、当業者は、本件特許発明1~5、7~12の課題を解決できると認識できる。 そして、本件特許発明1~5、7~12は、当該発明の課題を解決できると認識できる上記食品をさらに限定したものであるから、本件特許発明1~5、7~12は、本件特許の発明の詳細な説明に記載された発明であって、本件特許の発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、本件特許発明1~5、7~12に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合するといえる。 (5)特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、上記第4 2のとおり、本件特許発明1は、「成分(A)および成分(B)を有効成分として含有する」と規定するのみであり、成分(A)及び成分(B)のみを含有する食品や、成分(A)及び成分(B)以外の種々の成分を含む食品が含まれることとなるが、例えば、魚油には成分(A)及び成分(B)以外の脂肪酸等が含まれるところ、それらが存在しない成分(A)及び成分(B)のみからなる食品、あるいは、魚油には含まれない成分が共存した食品においても末梢の体温保持の効果が得られるかは不明であるから、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載されたものであるとはいえないと主張している。 しかしながら、本件明細書にはEPA及びDHAを含有する魚油を実施例とし、コーン油を比較例とした実験により末梢の体温の保持効果を比較したことが記載されており、効果の違いはコーン油には含まれないEPA及びDHAによりもたらされたものと理解することができるから、本件特許時の請求項1のものであれば、当業者は、他の成分が共存していてもEPA及びDHAに由来する効果が発揮され、本件特許発明の課題を解決できると認識できる。また、成分(A)及び成分(B)のみである場合や、成分(A)及び成分(B)以外の成分を含む場合において、成分(A)、成分(B)の生理作用の有効性が失われることが本件特許の出願時における技術常識であったとはいえず、特許異議申立人もそのような証拠を提出していない。 よって、特許異議申立人の主張は採用できない。本件特許発明2~5、7~12についても同様である。 (6)申立理由2(サポート要件)についてのまとめ 以上をまとめると、本件特許の請求項1~5及び7~12に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものである。したがって、本件特許の請求項1~5及び7~12に係る特許は、特許法第113条第4号に該当しないので、申立理由2によっては取り消すことはできない。 第8 結語 以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由、及び特許異議申立書に記載した申立理由によっては、本件特許の請求項1~5及び7~12に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1~5及び7~12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、請求項6は本件訂正により削除され、これにより本件特許の請求項6に係る特許に対する特許異議の申立ては対象となる請求項が存在しないものとなったから、本件特許の請求項6に係る特許についての特許異議の申立ては、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700215

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