特許異議申立
2025-700779
固体電池
- 審判番号
- 2025-700779
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-533932
- 登録番号
- 7626136
- 請求日
- 2025年07月30日
- 審決日
- 2025年10月30日
- 公報発行日
- 2025年12月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社村田製作所
- 【権利者代理人】山尾 憲人
- 【権利者代理人】高岡 健
- 【権利者代理人】村石 桂一
- 【異議申立人】中村 絵美
- 審判長/審判官
- 審判長 涌井 智則
- 審判官 井上 信一
- 審判官 久々宇 篤志
- 分類
- P1651.121-Y (H01M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7626136号発明「固体電池」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7626136号の請求項1ないし12に係る特許を維持する。
理由
理 由
1.手続の経緯
特許第7626136号の請求項1ないし12に係る特許についての出願は、平和3年6月24日(優先権主張 令和2年7月1日)に出願され、令和7年1月27日にその特許権の設定登録がなされ、同年2月4日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1ないし12に係る特許に対して、同年7月30日に特許異議申立人 中村 絵美により特許異議の申立てがなされたものである。
2.本件発明
特許第7626136号の請求項1ないし12に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明12」という。)は、それぞれその特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
パッケージ化された固体電池であって、
正極層、負極層、および該正極層と該負極層との間に介在する固体電解質層を積層させた積層部と、前記積層の方向と交差する方向に位置する前記積層部の側面に設けられた外部端子と、前記積層部の前記積層の方向の最外側に設けられた絶縁最外層と、を備えた固体電池積層体と、
前記固体電池積層体の少なくとも一部と接触し、該固体電池積層体と密接一体化される吸湿膜と、
前記固体電池積層体と前記吸湿膜とを覆う被覆絶縁膜と、
を有し、
前記吸湿膜は、前記固体電池積層体の側面断面視において、前記外部端子の前記積層の方向と交差する方向に位置する側面から前記外部端子と前記積層部との界面を跨いで被覆する固体電池。
【請求項2】
前記吸湿膜は、前記積層の方向と交差する方向に位置する前記積層部の側面の一部を被覆する、請求項1に記載の固体電池。
【請求項3】
前記吸湿膜は、前記積層の方向に位置する前記固体電池積層体の主面を被覆する、請求項1または2に記載の固体電池。
【請求項4】
前記固体電池積層体が支持されるように設けられた支持基板をさらに含み、
前記吸湿膜は、前記支持基板の前記固体電池積層体を支持する支持面を被覆する、請求項1~3のいずれか1項に記載の固体電池。
【請求項5】
前記固体電池積層体が支持されるように設けられた支持基板をさらに含み、
前記支持基板の支持面と前記固体電池積層体の積層方向とが平行となっている、請求項1~4のいずれか1項に記載の固体電池。
【請求項6】
前記支持基板は、該基板の最外面を電気的に結線する配線を備えており、前記固体電池の外部端子のための端子基板となっている、請求項4または5に記載の固体電池。
【請求項7】
前記支持基板は、インナービアホールを有する配線板から成る、請求項4~6のいずれか1項に記載の固体電池。
【請求項8】
前記吸湿膜は、合成ゼオライト、シリカゲル、五酸化リン、酸化バリウム、酸化カルシウム、および、有機金属構造体から成る群から選択される少なくとも一種を含んで成る、請求項1~7のいずれか1項に記載の固体電池。
【請求項9】
前記吸湿膜における合成ゼオライトおよび/またはシリカゲルの含有量は、吸湿膜全体基準で1体積%以上85体積%以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載の固体電池。
【請求項10】
前記固体電池は、表面実装されるように前記パッケージ化されている、請求項1~9のいずれか1項に記載の固体電池。
【請求項11】
前記積層部が焼結体から構成されている、請求項1~10のいずれか1項に記載の固体電池。
【請求項12】
前記正極層および前記負極層は、リチウムイオンを吸蔵放出可能な層となっている、請求項1~11のいずれか1項に記載の固体電池。 」
3.申立理由の概要
請求項1ないし12に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証ないし甲第7号証に記載された技術事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
記
甲第1号証:国際公開第2020/031424号
甲第2号証:国際公開第2020/100682号
甲第3号証:特開2017-182945号公報
甲第4号証:国際公開第2018/181575号
甲第5号証:国際公開第2019/187939号
甲第6号証:特表2020-511745号公報
甲第7号証:特開2019-106372号公報
4.甲第1号証ないし甲第7号証の記載事項
(1)甲第1号証
甲第1号証(国際公開第2020/031424号)には、「固体電池」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
ア.「[請求項1] パッケージ化された固体電池であって、
前記固体電池が支持されるように設けられた支持基板、
前記固体電池の頂面および側面を覆うように設けられた被覆絶縁層、ならびに
前記被覆絶縁層上に設けられた被覆無機膜
によってパッケージ化された、固体電池。
・・・・(中 略)・・・・
[請求項12] 前記被覆絶縁層がフィラーを更に含んで成る、請求項1~11のいずれかに記載の固体電池。
[請求項13] 前記フィラーは水蒸気透過防止フィラーである、請求項12に記載の固体電池。」
イ.「[0001] 本発明は、固体電池に関する。より具体的には、本発明は、基板実装に適するようにパッケージ化された固体電池に関する。」
ウ.「[0009] 本発明はかかる課題に鑑みて為されたものである。即ち、本発明の主たる目的は、基板への実装特性を有しつつも水蒸気透過防止性がより優れた固体電池の技術を提供することである。
・・・・(中 略)・・・・
[0013] より具体的には、本発明は、主に水蒸気透過防止の観点からパッケージ化された固体電池となっている(以下では、そのようなパッケージ化された固体電池を「電池パッケージ品」とも称する)。本発明の電池パッケージ品では、支持基板上に設けられた固体電池の頂面および側面を覆う被覆絶縁層および被覆無機膜といった被覆材に少なくとも起因して、外部環境の水蒸気が固体電池に進入する虞がより確実に防止されている。また、電池底部に位置付けられた支持基板は、水蒸気バリア基板として供されるだけでなく、固体電池の外部端子基板としても供され得るので、本発明の電池パッケージ品は実装特性の点で好ましい。」
エ.「[0020][固体電池の基本的構成]
固体電池は、正極・負極の電極層と固体電解質とを少なくとも有して成る。具体的には図1に示すように、固体電池100は、正極層110、負極層120、およびそれらの間に少なくとも介在する固体電解質130から成る電池構成単位を含んだ固体電池積層体を有して成る。」
オ.「[0031](端面電極)
固体電池には、一般に端面電極150が設けられている。特に、固体電池の側面に端面電極が設けられている。より具体的には、正極層110と接続された正極側の端面電極150Aと、負極層120と接続された負極側の端面電極150Bとが設けられている(図1参照)。そのような端面電極は、導電率が大きい材料を含んで成ることが好ましい。端面電極の具体的な材質としては、特に制限されるわけではないが、銀、金、プラチナ、アルミニウム、銅、スズおよびニッケルから成る群から選択される少なくとも一種を挙げることができる。」
カ.「[0032][本発明の固体電池の特徴]
本発明の固体電池は、パッケージ化された電池である。特に、水蒸気透過防止に資すべくパッケージ化された固体電池である。それゆえ、本発明の固体電池は、水蒸気透過防止の点で特徴を持ったパッケージ構造を有している。
[0033] 具体的には、本発明の固体電池100は、図2に示すように、支持基板10、被覆絶縁層30および被覆無機膜50を備えたパッケージ構造を有している。このような電池パッケージ品200では、固体電池100が全体として包囲されるように(固体電池を成す全ての面が外部に露出することなく)、その周囲に支持基板10、被覆絶縁層30および被覆無機膜50が設けられている。」
キ.「[0075](フィラー含有の態様)
かかる態様では、被覆絶縁層30がフィラー35を含んでいる(図11参照)。被覆絶縁層30が樹脂材から成る場合、そのような樹脂材中に無機フィラー35が好ましくは分散している。
・・・・(中 略)・・・・
[0077] フィラーは水蒸気透過防止フィラーとなっていることが好ましい。ある好適な態様では、被覆絶縁層は、その樹脂材質中に水蒸気透過防止フィラーを含んで成る。これにより、被覆絶縁層が、被覆無機膜とともにより好適な水蒸気透過バリアとして供され易くなる。」
ク.「[図1]
[図:0001430036000001.jpg]
[図2]
[図:0001430036000002.jpg]
」
上記「ア.」ないし「ク.」から以下のことがいえる。
・甲第1号証に記載の「固体電池」は、上記「ア.」の[請求項1]、「イ.」、「ウ.」、「カ.」の記載、及び「ク.」の図2によれば、基板実装に適するように、また、水蒸気透過防止に資すべくパッケージ化された固体電池であって、固体電池が支持されるように設けられた支持基板、固体電池の頂面および側面を覆うように設けられた被覆絶縁層、ならびに被覆絶縁層上に設けられた被覆無機膜によってパッケージ化された固体電池である。
・上記「エ.」、「オ.」の記載、及び「ク.」の図1によれば、固体電池は、正極層、負極層、およびそれらの間に少なくとも介在する固体電解質からなる電池構成単位を含んだ固体電池積層体を有し、さらに、その側面には端面電極が設けられてなるものである。
・上記「ア.」の[請求項12]~[請求項13]、「キ.」の記載によれば、被覆絶縁層は水蒸気透過防止フィラーを含んでなるものである。
以上のことから、特に被覆絶縁層が水蒸気透過防止フィラーを含む場合のものに着目し、上記記載及び図面を総合勘案すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
「基板実装に適するように、また、水蒸気透過防止に資すべくパッケージ化された固体電池であって、
前記固体電池は、正極層、負極層、およびそれらの間に少なくとも介在する固体電解質からなる電池構成単位を含んだ固体電池積層体を有し、さらに、その側面には端面電極が設けられてなり、
前記固体電池が支持されるように設けられた支持基板、前記固体電池の頂面および側面を覆うように設けられ、水蒸気透過防止フィラーを含む被覆絶縁層、ならびに前記被覆絶縁層上に設けられた被覆無機膜によってパッケージ化された固体電池。」
(2)甲第2号証
甲第2号証(国際公開第2020/100682号)には、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
ア.「[0017] 本発明の固体電池100は、例えば、図1および図3それぞれにおいて、符号「100A」および「100B」(以下、単に「100」ということがある)で示されるような、層状構造(特に積層構造または積層構造体)を有するものである。すなわち、本発明の固体電池100は、1つ以上の正極層1および1つ以上の負極層2が固体電解質層3を介して交互に積層されており、積層構造の端面に端面電極4(4a、4b)を有している。積層構造の端面とは、積層されている各層の端面を含む、積層方向に平行な面(いわゆる側面)のことである。端面電極4a、4bは通常、積層構造において対向する2つの端面に形成されている。正極層1および負極層2の積層数は任意であり特に限定されない。本発明の固体電池は並列構造を有していてもよいし、または直列構造を有していてもよい。図1および図3はそれぞれ、本発明に係る第1実施態様および第2実施態様にかかる固体電池の模式的断面図である。」
イ.「[0050](保護層)
電極層の最外面には通常、保護層7が配置されている。電極層の最外面とは、最上に配置される電極層(図1および図3では正極層1)の最上面および最下に配置される電極層(図1および図3では正極層1)の最下面のことである。
[0051] 保護層7は、電気絶縁性を有し、かつ固体電池を外部からの衝撃から保護する層であれば特に限定されず、例えば、固体電解質材料から構成されてもよいし、または種々の樹脂材料、セラミック、ガラス材料、金属―樹脂積層材料などから構成されてもよい。」
ウ.「[図1]
[図:0001430036000003.jpg]
」
上記「ア.」及び「イ.」の記載、及び「ウ.」(図1)を総合勘案すると、甲第2号証には、次の技術事項が記載されている。
「1つ以上の正極層および1つ以上の負極層が固体電解質層を介して交互に積層されており、積層構造の端面に端面電極を有している固体電池において、
電極層(正極層)の最外面に、電気絶縁性を有し、かつ固体電池を外部からの衝撃から保護する保護層を配置したこと。」
(3)甲第3号証及び甲第4号証
甲第3号証(特開2017-182945号公報)には、図面とともに以下の記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
ア.「【請求項1】
正極層、電解質層、負極層を有する電池素体と、前記正極層及び前記負極層とそれぞれ接続する一対の端子電極を含む全固体リチウムイオン二次電池であって、前記電池素体上に弾性層を有し、前記弾性層上に防湿層を有する
ことを特徴とする全固体リチウムイオン二次電池。」
イ.「【0043】
(防湿層)
方法はこの限りではないが、防湿層21の作成方法は、例えばCVD法、塗布法、スパッタリング法、あるいは各種印刷法等を用いて弾性層20上に形成するのが好ましい。防湿層は弾性層上の少なくとも一部に形成されていれば良く、弾性層を含む電池素体の表面の全面に形成しても良い。なお、端子電極が形成される面に防湿層は不要である。特定の部分に弾性層を形成する方法としては、例えばマスキングをする、あるいは弾性層20形成後に端部を研磨する方法などが挙げられる。」
また、甲第4号証(国際公開第2018/181575号)には、図面とともに以下の記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
「[請求項1] 正極層及び負極層の間に電解質層を有する電池素体と前記電池素体の両端部で前記正極層及び負極層とそれぞれ接続する一対の端子電極と前記端子電極となる面を除いた面に防湿層を設けた全固体リチウムイオン二次電池であって、前記防湿層は、高分子化合物と、金属化合物粒子とを含む組成物の硬化物を含むことを特徴とする全固体リチウムイオン二次電池。」
上記甲第3号証及び甲第4号証の各記載を総合勘案すると、これら甲号証には、次の技術事項が記載されているといえる。
「正極層及び負極層の間に電解質層を有する電池素体と、前記電池素体の両端部で前記正極層及び負極層とそれぞれ接続する一対の端子電極とを有する全固体リチウムイオン二次電池であって、
前記端子電極が形成される面を除いた前記電池素体の面上に直接、あるいは弾性層を介して防湿層を設けたこと。」
(4)甲第5号証
甲第5号証(国際公開第2019/187939号)には、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
「[0094][膨張材]
上記のように、固体電解質を備える固体電池は、電池ケースに電池セルを挿入後は、電池セルの体積膨張は無視できるほど小さいため、液体の電解質を備えるリチウムイオン二次電池のように、電池セルの体積膨張による面圧は発生していなかった。そこで、本発明の固体電池モジュールを構成する固体電池は、固体電池セルと電池ケースとの間に膨張材を備えることが好ましい。電池ケースに電池セルを挿入の後に、膨張材によって電池ケースと電池セルとを密着させ、固体電池に面圧を付与することができる。
[0095] 図6は、固体電池セルと電池ケースとの間に膨張材を備える固体電池の一実施形態を示す例である。図6(a)に示されるように、本発明の一実施形態の固体電池は、電池セル102と電池ケース103との間に、膨張材120が配置され、図6(b)に示されるように、膨張材120を膨張させて、電池セル102と電池ケース103とを密着させ、固体電池に面圧を付与することが好ましい。
[0096] 膨張材としては、特に限定されるものではないが、吸水または重合等の化学反応により体積膨張、あるいは熱により体積変化するものが好ましい。
[0097] 電池の組み立ては、通常、ドライ環境下で実施されるが、ppmオーダーの水分の混入は避けられない状況である。吸水により膨張する膨張材を用いる場合には、混入した水分を吸収して体積膨張するため、電池ケースと電池セルとを密着させて、固体電池に面圧を付与すると同時に、固体電池内部の水分を0%に近づけることができる。特に、硫化物系の電解質を用いる場合には、水分の存在により硫化水素が発生し、電池セルを劣化させる場合があった。吸水により膨張する膨張材を用いることにより、硫化物系の電解質を用いる場合であっても硫化水素の発生を抑制することができ、その結果、固体電池の劣化を抑制することができる。また、固体電池の封止部が劣化して大気が入ってきた場合にも、電池内部に流入する大気中の水分を吸収するため、電池の劣化を抑制することができる。」
上記記載を総合勘案すると、甲第5号証には、次の技術事項が記載されている。
「電池セルと電池ケースとの間に膨張材が配置されてなる固体電池であって、
前記膨張材として吸水により膨張する膨張材を用い、混入した水分を吸収して体積膨張させることで、前記電池セルと前記電池ケースとを密着させ、固体電池に面圧を付与すると同時に、固体電池内部の水分や固体電池内部に流入する大気中の水分を吸収して固体電池の劣化を抑制することができるようにしたこと。」
(5)甲第6号証及び甲第7号証
甲第6号証(特表2020-511745号公報)には、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
「【0032】
このような二次電池製造方法は、一体型構造の電池ケースを製造する場合、電池ケースを成形する前、電池ケースの成形型に電極組立体を収納した状態で熱可塑性樹脂を注入して前記電極組立体の全外面に電池ケースを形成する工程を含む。
【0033】
このような場合には、前記製造方法のように上部ケース及び下部ケースの結合のための別途の工程の不要である利点がある。
【0034】
前記の製造方法に使われる前記熱可塑性樹脂は吸湿性の添加剤をさらに含むことができるので、電池の内部に発生する水分を吸収して電極組立体の性能が低下することを防止することができる。」
また、甲第7号証(特開2019-106372号公報)には、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
ア.「【請求項1】
電極組立体を収容する収容部を含む電池ケースであって、
前記収容部は、下部壁及び複数の側壁を含み、 前記下部壁及び前記側壁は、一体化して前記下部壁に対向する開放面(open side)を有して前記電極組立体が収容される空間を形成し、
前記収容部は、ベースポリマー、及びベースポリマーに分散された無機吸湿剤を含む組成物の成形品であり、「ISO 15106」又は「ASTM F1249」により38℃及び相対湿度100%で測定した水蒸気透過率(WVTR)が、0.05g/m2/day未満であることを特徴とする電池ケース。」
イ.「【0006】
本発明は上記従来の電池モジュールケースにおける問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、耐透湿性に優れた電池ケースを提供することにある。
本発明の他の目的は、上記電池ケースを含む電池を提供することにある。
本発明のまた他の目的は、優れた耐透湿性を有する電池の製造方法を提供することにある。」
上記甲第6号証及び甲第7号証の各記載を総合勘案すると、これら甲号証には、次の技術事項が記載されているといえる。
「電極組立体を収容する成形型の電池ケースであって、
電池の内部に発生する水分を吸収して電極組立体の性能が低下することを防止、あるいは耐透湿性に優れたものとするために、電池ケースを構成する熱可塑性樹脂(ベースポリマー)中に吸湿性の添加剤(無機吸湿剤)を含ませるようにしたこと。」
5.当審の判断
(1)本件発明1について
ア.対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明における「正極層」、「負極層」、それらの間に少なくとも介在する「固体電解質」は、それぞれ本件発明1でいう「正極層」、「負極層」、正極層と負極層との間に介在する「固体電解質層」に相当し、甲1発明における正極層、負極層、およびそれらの間に少なくとも介在する固体電解質からなる「電池構成単位」は、固体電池積層体を構成するものであることからも明らかなように、本件発明1でいう正極層、負極層、および該正極層と該負極層との間に介在する固体電解質層を積層された「積層部」に相当するといえる。さらに、甲1発明における電池構成単位を含んだ固体電池積層体の側面に設けられてなる「端面電極」は、本件発明1でいう積層の方向と交差する方向に位置する積層部の側面に設けられた「外部端子」に相当し、そして、該端面電極が設けられてなる「固体電池積層体」は、本件発明1でいう「固体電池積層体」に相当するものである。
したがって、本件発明1と甲1発明とは、「正極層、負極層、および該正極層と該負極層との間に介在する固体電解質層を積層させた積層部と、前記積層の方向と交差する方向に位置する前記積層部の側面に設けられた外部端子と、を備えた固体電池積層体」を有するものである点では一致する。
ただし、固体電池積層体について、本件発明1では「前記積層部の前記積層の方向の最外側に設けられた絶縁最外層」を備えることを特定するのに対し、甲1発明ではそのような絶縁最外層を備えていない点で相違する。
(イ)本件発明1では「前記固体電池積層体の少なくとも一部と接触し、該固体電池積層体と密接一体化される吸湿膜」を有し、「前記吸湿膜は、前記固体電池積層体の側面断面視において、前記外部端子の前記積層の方向と交差する方向に位置する側面から前記外部端子と前記積層部との界面を跨いで被覆する」ものであることを特定するのに対し、甲1発明ではそのような吸湿膜を有していない点で相違する。
(ウ)甲1発明における固体電池の頂面および側面を覆うように設けられ、水蒸気透過防止フィラーを含む「被覆絶縁層」は、少なくとも固体電池積層体を覆うものであり、本件発明1でいう「被覆絶縁膜」に相当するといえる。
したがって、本件発明1と甲1発明とは、「前記固体電池積層体を覆う被覆絶縁膜」を有するものである点では一致する。
ただし、被覆絶縁膜は、本件発明1では固体電池積層体と密接一体化される「前記吸湿膜」も覆うものであるのに対し、上記(イ)でも述べたように、甲1発明ではそもそも吸湿膜を有していない点で相違する。
(エ)そして、甲1発明における基板実装に適するように、また、水蒸気透過防止に資すべく「パッケージ化された固体電池」は、本件発明1でいう「パッケージ化された固体電池」に相当するものである。
よって上記(ア)ないし(エ)によれば、本件発明1と甲1発明とは、
「パッケージ化された固体電池であって、
正極層、負極層、および該正極層と該負極層との間に介在する固体電解質層を積層させた積層部と、前記積層の方向と交差する方向に位置する前記積層部の側面に設けられた外部端子と、を備えた固体電池積層体と、
前記固体電池積層体を覆う被覆絶縁膜と、
を有する、固体電池。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点1]
固体電池積層体について、本件発明1では「前記積層部の前記積層の方向の最外側に設けられた絶縁最外層」を備えることを特定するのに対し、甲1発明ではそのような絶縁最外層を備えていない点。
[相違点2]
本件発明1では「前記固体電池積層体の少なくとも一部と接触し、該固体電池積層体と密接一体化される吸湿膜」を有し、「前記吸湿膜は、前記固体電池積層体の側面断面視において、前記外部端子の前記積層の方向と交差する方向に位置する側面から前記外部端子と前記積層部との界面を跨いで被覆する」ものであり、被覆絶縁膜が固体電池積層体と密接一体化される「前記吸湿膜」も覆うものであることを特定するのに対し、甲1発明ではそもそもそのような吸湿膜を有していない点。
イ.判断
そこで、事案に鑑みまず相違点2について検討する。
甲第5号証には、上記「4.(4)」に記載したように「電池セルと電池ケースとの間に膨張材が配置されてなる固体電池であって、前記膨張材として吸水により膨張する膨張材を用い、混入した水分を吸収して体積膨張させることで、前記電池セルと前記電池ケースとを密着させ、固体電池に面圧を付与すると同時に、固体電池内部の水分や固体電池内部に流入する大気中の水分を吸収して固体電池の劣化を抑制することができるようにした」技術事項が記載され、また、甲第6号証及び甲第7号証には、上記「4.(5)」に記載したように「電極組立体を収容する成形型の電池ケースであって、電池の内部に発生する水分を吸収して電極組立体の性能が低下することを防止、あるいは耐透湿性に優れたものとするために、電池ケースを構成する熱可塑性樹脂(ベースポリマー)中に吸湿性の添加剤(無機吸湿剤)を含ませるようにした」技術事項が記載されている。しかしながら、これら甲第5号証ないし甲第7号証に記載のものはいずれも電池ケースを備えることを前提とするものであり、電池ケースを有さない甲1発明に適用すべき動機があるとはいえない。また、そもそも甲1発明は、被覆絶縁層に水蒸気透過防止フィラーを含ませることで水蒸気透過防止対策を講じている。
以上のことを踏まえると、たとえ甲第5号証ないし甲第7号証に記載された技術事項を参照したとしても、甲1発明において、固体電池積層体と被覆絶縁層との間に、固体電池積層体と密接一体化される吸湿膜をさらに付加するという相違点2に係る構成を導き出すことはできない。
なお、甲第2号証には、上記「4.(2)」に記載した技術事項が記載され、また、甲第3号証及び甲第4号証には、上記「4.(3)」に記載した技術事項が記載されているにすぎず、相違点2に係る構成について記載も示唆もない。
よって、他の相違点(相違点1)について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証ないし甲第7号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明2ないし12について
請求項2ないし12は請求項1を引用するものであり、少なくとも上記相違点2に係る発明特定事項を備えるものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明2ないし12は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証ないし甲第7号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)まとめ
以上のとおり、本件請求項1ないし12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということはできない。
6.むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1ないし12に係る特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2025-700779