特許異議申立
2022-701215
電気コネクタセット
- 審判番号
- 2022-701215
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-551625
- 登録番号
- 7095812
- 請求日
- 2022年12月06日
- 審決日
- 2024年08月05日
- 公報発行日
- 2024年12月27日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】株式会社村田製作所
- 【権利者代理人】岡部 博史
- 【権利者代理人】山田 裕三
- 【異議申立人】岩舘 憲一
- 審判長/審判官
- 審判長 小川 恭司
- 審判官 尾崎 和寛
- 審判官 中屋 裕一郎
- 分類
- P1651.16 -ZDB(H01R) / P1651.121-ZDB(H01R)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第29条の2、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第126条第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9号、特許法第126条第6項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7095812号発明「電気コネクタセット」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7095812号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項7について訂正することを認める。
特許第7095812号の請求項1~3、7、8に係る特許を取り消す。
特許第7095812号の請求項4~6に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7095812号の請求項1~8に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、2020年(令和2年)10月2日(優先権主張 令和元年10月11日)を国際出願日とする出願であって、令和4年6月27日に特許権の設定登録がされ、同年7月5日に特許掲載公報が発行された。
その後、本件特許についての、特許異議申立人岩舘憲一(以下「申立人」という。)による特許異議の申立てがされた。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和4年12月 6日 特許異議の申立て
令和5年 3月22日付け 取消理由通知書
同年 5月26日 特許権者より意見書・訂正請求書
同年 6月 5日付け 訂正請求があった旨の通知書
同年 9月29日付け 訂正拒絶理由通知書
同年11月 1日 特許権者より意見書・手続補正書
令和6年 2月 5日付け 取消理由通知書(決定の予告)
令和5年6月5日付けの訂正請求があった旨の通知に対して、申立人からの応答はなかった。
また、令和6年2月5日付けの取消理由通知(決定の予告)に対する、特許権者からの応答はなかった。
第2 訂正の適否
特許権者は、令和5年3月22日付け取消理由通知に応答して令和5年5月26日に訂正請求書を提出し、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めた(以下「本件訂正」という。)。その後、当審からの令和5年9月29日付け訂正拒絶理由通知に対して、特許権者は令和5年11月1日に手続補正書を提出して、訂正請求書及び訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲について補正することを求めた(以下「本件補正」という。)。
以下に、本件訂正及び本件補正の内容を列挙し、本件補正が訂正請求書の要旨を変更するものか否かを検討した後、訂正の適否について検討する。
なお、令和6年2月5日付け取消理由通知に対して、特許権者から訂正請求はされていない。
1 本件訂正の内容
本件訂正の内容は以下のとおりである(なお、下線部が訂正箇所である。以下、この項において同様。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、
『前記第2内部端子の外部に位置する第2外部端子をさらに備え、
前記第2外部端子は、前記第1内部端子と前記第2内部端子との嵌合方向と交差する方向に沿って内側に突出する突起を有する』という発明特定事項を追加する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2において、
「前記第2内部端子は、前記凹部の前記底部から一方側に立ち上がる第1部分と、他方側に立ち上がる第2部分とを有し、前記第1部分は自由片である、請求項1に記載の電気コネクタセット。」と記載されているのを、
『第1導体を有する第1基板と、
前記第1基板の前記第1導体に実装される第1実装部および第2実装部と、前記第1実装部と前記第2実装部との間で湾曲して延びる凸部とを有する第1内部端子と、
第2導体を有する第2基板と、
前記第2基板の前記第2導体に実装される第3実装部と、前記第3実装部を底部に形成する凹部とを有する第2内部端子と、を備え、
前記1内部端子の前記凸部と、前記第2内部端子の前記凹部とが嵌合されるように構成され、
前記第2内部端子は、前記凹部の前記底部から一方側に立ち上がる第1部分と、他方側に立ち上がる第2部分とを有し、前記第1部分は自由片であって、
前記第2内部端子は、前記第1内部端子と前記第2内部端子との嵌合方向と交差するX方向の辺に沿って複数配列され、
前記X方向の辺と交差するY方向の辺に沿って配列された第2外部端子をさらに備え、
前記第2外部端子は、前記Y方向に面して内側に向いている部分を有する、電気コネクタセット。』
に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4において、
「前記第2内部端子を保持する絶縁体をさらに備え、
前記第2内部端子の前記第3部分は幅の広くなった幅広部を有し、
前記絶縁体は、前記第3部分の前記幅広部を収容するように凹んだ第1切欠きを有する、請求項3に記載の電気コネクタセット。」と記載されているのを、
『第1導体を有する第1基板と、
前記第1基板の前記第1導体に実装される第1実装部および第2実装部と 、
前記第1実装部と前記第2実装部との間で湾曲して延びる凸部とを有する第1内部端子と、
第2導体を有する第2基板と、
前記第2基板の前記第2導体に実装される第3実装部と、前記第3実装部を底部に形成する凹部とを有する第2内部端子と、を備え、
前記第1内部端子の前記凸部と、前記第2内部端子の前記凹部とが嵌合されるように構成され、
前記第2内部端子は、前記凹部の前記底部から一方側に立ち上がる第1部分と、他方側に立ち上がる第2部分とを有し、前記第1部分は自由片であって、
前記第3実装部とは別に、前記第2内部端子を前記第2基板の前記第2導体に実装させる第4実装部をさらに備え、
前記第2内部端子はさらに、前記第2部分に接続される凸部と、前記凸部から前記第4実装部まで延びる第3部分とを有し、
前記第2内部端子を保持する絶縁体をさらに備え、
前記第2内部端子の前記第3部分は幅の広くなった幅広部を有し、前記絶縁体は、前記第3部分の前記幅広部を収容するように凹んだ第1切欠きを有する、電気コネクタセット。』
に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6において、
「前記第2内部端子の前記第1部分の幅は、前記第2部分の幅よりも大きい、請求項2から5のいずれか1つに記載の電気コネクタセット。」と記載されているのを、
『第1導体を有する第1基板と、
前記第1基板の前記第1導体に実装される第1実装部および第2実装部と、前記第1実装部と前記第2実装部との間で湾曲して延びる凸部とを有する第1内部端子と、
第2導体を有する第2基板と、
前記第2基板の前記第2導体に実装される第3実装部と、前記第3実装部を底部に形成する凹部とを有する第2内部端子と、を備え、
前記第1内部端子の前記凸部と、前記第2内部端子の前記凹部とが嵌合されるように構成され、
前記第2内部端子は、前記凹部の前記底部から一方側に立ち上がる第1部分と、他方側に立ち上がる第2部分とを有し、前記第1部分は自由片であって、
前記第2内部端子の前記第1部分の幅は、前記第2部分の幅よりも大きい、電気コネクタセット。』
に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項7において、
「前記第1、第2導体は、電源に接続する導体である、請求項1から6のいずれか1つに記載の電気コネクタセット。」と記載されているのを、
『第1導体を有する第1基板と、
前記第1基板の前記第1導体に実装される第1実装部および第2実装部と、前記第1実装部と前記第2実装部との間で湾曲して延びる凸部とを有する第1内部端子と、
第2導体を有する第2基板と、
前記第2基板の前記第2導体に実装される第3実装部と、前記第3実装部を底部に形成する凹部とを有する第2内部端子と、を備え、
前記第1内部端子の前記凸部と、前記第2内部端子の前記凹部とが嵌合されるように構成され、
前記第1、第2導体は、電源に接続する導体であって、
前記第1導体には、前記第1内部端子を2か所で実装させるように前記第1導体を分割するレジストが設けられる、電気コネクタセット。』
に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項8において、
「、請求項1から6のいずれか1つに記載の、」と記載されているのを、
『、請求項1に記載の、』
に訂正する。
(7)一群の請求項
訂正前の請求項1~8について、請求項2~8は請求項1を直接的又は間接的に引用しており、訂正事項1による請求項1の訂正に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1~8に対応する訂正後の請求項1~8は一群の請求項である。
よって、本件訂正は、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
2 本件補正の内容
本件補正は、訂正請求書の訂正事項1~6及び訂正特許請求の範囲を含んで訂正請求書全体を補正するものであり、その内容は、以下の(1)、(2)を含むものである(なお、下線部は補正箇所に当審が付した。)。
(1)訂正事項1の補正について
訂正請求書で訂正した特許請求の範囲の請求項1において、
「前記第2内部端子の外部に位置する第2外部端子をさらに備え、
前記第2外部端子は、前記第1内部端子と前記第2内部端子との嵌合方向と交差する方向に沿って内側に突出する突起を有する」と記載されているのを、
「前記第2内部端子を取り囲むように位置する第2外部端子をさらに備え、
前記第2外部端子は、前記第1内部端子と前記第2内部端子との嵌合方向と交差する短手方向に沿って、2列に配列された複数の前記第2内部端子のうちの一方の列から他方の列に向かう方向に突出する突起を有する」に補正する。
(2)訂正事項2の補正について
訂正請求書で訂正した特許請求の範囲の請求項2において、
「前記第2内部端子は、前記第1内部端子と前記第2内部端子との嵌合方向と交差するX方向の辺に沿って複数配列され、
前記X方向の辺と交差するY方向の辺に沿って配列された第2外部端子をさらに備え、
前記第2外部端子は、前記Y方向に面して内側に向いている部分を有する、」
と記載されているのを、
「前記第2内部端子は、前記第1内部端子と前記第2内部端子との嵌合方向と交差するX方向に延びる電気コネクタセットの辺に沿って2列に複数配列され、
前記X方向と交差するY方向に延びる電気コネクタセットの辺に沿って配置された第2外部端子をさらに備え、
前記第2外部端子は、前記Y方向に面して、前記第2内部端子の一方の列から他方の列に向かう方向に向いている部分を有する、」に補正する。
3 補正の適否
本件補正は、訂正事項1においては、第2内部端子「の外部に」位置すると特定していたものを、第2内部端子「を取り囲むように」位置するという特定に交換することによって、第2外部端子の位置に関する特定を変更するものである。また、前記第1内部端子と前記第2内部端子との嵌合方向と交差する「方向」に沿って「内側」に突出すると特定していたものを、前記第1内部端子と前記第2内部端子との嵌合方向と交差する「短手方向」に沿って「、2列に配列された複数の前記第2内部端子のうちの一方の列から他方の列に向かう方向」に突出するという特定に交換することによって、第2外部端子が有する突起が突出する方向に関する特定を変更するものである。
同様に、訂正事項2においては、「X方向の辺に沿って」複数配列され、と特定していたものを、「X方向に延びる電気コネクタセットの辺に沿って2列に」複数配列され、という特定に交換することによって、第2内部端子の配列に関する特定を変更するものである。また、前記X方向「の辺と交差するY方向の辺」に沿って「配列」され、と特定していたものを、前記X方向「と交差するY方向に延びる電気コネクタセットの辺」に沿って「配置」され、という特定に交換し、前記Y方向に面して「内側」に向いている部分を有する、と特定していたものを、前記Y方向に面して「、前記第2内部端子の一方の列から他方の列に向かう方向」に向いている部分を有する、という特定に交換することによって、第2外部端子の配置や第2外部端子が有する部分に関する特定を変更するものである。
これらはいずれも訂正事項の削除や軽微な瑕疵の補正に該当せず、発明特定事項の交換的変更であり、補正前の請求に代えて新たな請求をすることになる補正であるから、本件補正は、訂正請求書の要旨を変更するものと認められる。
したがって、特許法第120条の5第9号で準用する同法第131条の2第1項の規定により、本件補正を採用しない。
4 訂正の適否
上記3に示したとおり、本件補正は認められないので、本件訂正の内容は、上記1のとおりであり、これに基づいて訂正の適否を検討する。
(1)訂正事項1について
事案に鑑み、まず訂正事項1が、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内でしたものであるか否かについて検討する。
ア 本件特許明細書等の記載
訂正事項1で追加された、第2外部端子が「前記第2内部端子の外部に位置する」ことや、突起が「前記第1内部端子と前記第2内部端子との嵌合方向と交差する方向に沿って内側に突出する」という発明特定事項に関し、明細書には、「第2外部端子28は、図1A~図1Cに示した第1コネクタ2の第1外部端子10と嵌合して電気的に接続する端子である。第2外部端子28はグランド端子として機能する。」(段落【0041】)、「第2外部端子28はメス型の端子として構成されており、オス型の端子である第1外部端子10を内側に誘い込む機能を有する。」(段落【0042】)、「第2外部端子28は、複数の第2内部端子26を取り囲む形状を有する。」(段落【0043】)、「第2外部端子28はさらに、ロック部19を備える。ロック部19は、第2外部端子28に第1外部端子10が篏合した際に、第1外部端子10の抜け止めとして作用する突起である。」(段落【0045】)などと記載されている。
イ 図面から看取できる事項
図2A、図2Cから、第2外部端子28が複数の第2内部端子26を取り囲む形状を有することが看取できる。
また、図1A、図1C、図2A、図2C、図3Aから、第2外部端子28のロック部19が、特に図2A、図2Cに示される態様で突出することが看取できる。
ウ 判断
上記アに摘記した明細書の記載及びイに示した図面の記載から看取できる事項をみても、第2外部端子が「第2内部端子の外部に位置する」ことや、「前記第2外部端子は、前記第1内部端子と前記第2内部端子との嵌合方向と交差する方向に沿って内側に突出する突起を有する」ことの記載はない。
また、「第2内部端子の外部」とは、内外の基準が不明瞭なため、例えば、図2Aに示される第2内部端子の列と列との間の空間も「第2内部端子の外部」と解する余地もあるが、そこに第2外部端子を備えることまで本件特許明細書等に記載されているとはいえず、図2A、図2Cに示された第2外部端子の位置以外の「第2内部端子の外部」に備えられた第2外部端子を把握することはできない。
「嵌合方向と交差する方向」については、当該方向には嵌合方向に直交する面に平行なあらゆる方向が含まれ、「内側に突出する」についても、内側とは何に対してどちら方向か特定されていないところ、図2A、図2Cに示される方向(X、Y方向)にロック部19が突出する態様以外の態様で、ロック部19が「前記第1内部端子と前記第2内部端子との嵌合方向と交差する方向に沿って内側に突出する」ことを把握することができない。
したがって、訂正事項1は本件特許明細書等に明示的に記載された事項ではないし、本件特許明細書等の記載から自明である事項でもない。
そして、第2外部端子の位置や、突起であるロック部の突出する方向によって、電気コネクタセットにおける第2外部端子の役割や機能は変わるから、訂正事項1は「本件特許明細書等に記載した事項」との関係において新たな技術的事項を導入しないものであるとはいえない。
よって、訂正事項1は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内でしたものであるとは認められず、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しないものである。
(2)訂正事項2~4、6について
本件訂正は請求項ごとに請求するものである。そして、引用関係を有する請求項1~8は一群の請求項であるから、訂正の認否の判断は一群の請求項という請求単位ごとにされる。ただし、引用請求項の数を減少する訂正がされ、引用関係を解消する訂正等が認められたときは、訂正後に請求項間の引用関係が解消されることがあり、所定の求めをすることにより一群の請求項とは別の訂正単位として扱われる。
本件訂正では、請求項8において、「、請求項1から6のいずれか1つに記載の、」と記載されているのを、『、請求項1に記載の、』に訂正する訂正事項6が認められたときは、請求項2~6と請求項8との引用関係が解消するため、請求人の令和5年5月26日提出の訂正請求書の「(3)(3-3)別の訂正単位とする求め」によって、訂正後の請求項2、4、6、7については、別の訂正単位として扱われる。
しかし、請求項8は、訂正事項1によって訂正される請求項1の記載を引用するものであるところ、上記(1)に示すとおり、訂正事項1は特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合しないものであるから、請求項1と一群の請求項を構成する請求項8についての引用関係を解消する訂正事項6も認められない。そうすると、請求項8は請求項1~6のいずれかひとつを引用するから、請求項1~6と請求項8との引用関係は解消されない。したがって、請求項1~6及び8は一群の請求項であり、訂正事項2~4は認められず、訂正後の請求項2、4、6については別の訂正単位として扱えない。
(3)訂正事項5について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項5のうち、訂正前の請求項7が請求項1~6の記載を引用するものであったのを、そのうちの請求項1を引用するものについて請求項間の引用を解消して独立形式請求項へ記載を改める訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」を目的とするものといえる。
また、訂正事項5のうち、「第1導体」に関し、「前記第1導体には、前記第1内部端子を2か所で実装させるように前記第1導体を分割するレジストが設けられる」とする訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものといえる。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項5のうち、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ記載を改める訂正は、実質的な内容の変更を伴うものではない。
また、訂正事項5のうち、発明特定事項を限定する訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
ウ 新規事項の追加の有無
訂正事項5のうち、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ記載を改める訂正は、訂正前の請求項1、7の記載から導き出せる事項に基づくものである。
また、訂正事項5のうち、「前記第1導体には、前記第1内部端子を2か所で実装させるように前記第1導体を分割するレジストが設けられる、」という発明特定事項を付加する訂正は、明細書の「実施の形態では、第1導体50の中央部の表面にレジスト51が設けられており、第1導体50が2か所に分割されている。1つの第1内部端子8は1つの第1導体50に対して2か所にて実装される。」(段落【0026】及び図1Dの記載から導き出せる事項に基づくものである。
よって、訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
(4)小括
以上のとおり、本件訂正のうち訂正事項5に係るものは、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するから、訂正後の請求項7について、訂正を認める。
また、訂正事項1~4、6は、上記(1)及び(2)のとおりであるから、請求項〔1~6、8〕について訂正を認めない。
第3 本件発明
上記第2に示したとおり、本件訂正のうち、訂正後の請求項7については訂正を認め、請求項〔1~6、8〕については訂正を認めないから、本件特許の請求項1~8に係る発明は、次のとおりのものであると認める。
「【請求項1】
第1導体を有する第1基板と、
前記第1基板の前記第1導体に実装される第1実装部および第2実装部と、前記第1実装部と前記第2実装部との間で湾曲して延びる凸部とを有する第1内部端子と、
第2導体を有する第2基板と、
前記第2基板の前記第2導体に実装される第3実装部と、前記第3実装部を底部に形成する凹部とを有する第2内部端子と、を備え、
前記第1内部端子の前記凸部と、前記第2内部端子の前記凹部とが嵌合されるように構成された、電気コネクタセット。
【請求項2】
前記第2内部端子は、前記凹部の前記底部から一方側に立ち上がる第1部分と、他方側に立ち上がる第2部分とを有し、前記第1部分は自由片である、請求項1に記載の電気コネクタセット。
【請求項3】
前記第3実装部とは別に、前記第2内部端子を前記第2基板の前記第2導体に実装させる第4実装部をさらに備え、
前記第2内部端子はさらに、前記第2部分に接続される凸部と、前記凸部から前記第4実装部まで延びる第3部分とを有する、請求項2に記載の電気コネクタセット。
【請求項4】
前記第2内部端子を保持する絶縁体をさらに備え、
前記第2内部端子の前記第3部分は幅の広くなった幅広部を有し、
前記絶縁体は、前記第3部分の前記幅広部を収容するように凹んだ第1切欠きを有する、請求項3に記載の電気コネクタセット。
【請求項5】
前記絶縁体はさらに、前記第2内部端子の前記凸部に対して外側に凹んだ第2切欠きを有する、請求項4に記載の電気コネクタセット。
【請求項6】
前記第2内部端子の前記第1部分の幅は、前記第2部分の幅よりも大きい、請求項2から5のいずれか1つに記載の電気コネクタセット。
【請求項7】
第1導体を有する第1基板と、
前記第1基板の前記第1導体に実装される第1実装部および第2実装部と、前記第1実装部と前記第2実装部との間で湾曲して延びる凸部とを有する第1内部端子と、
第2導体を有する第2基板と、
前記第2基板の前記第2導体に実装される第3実装部と、前記第3実装部を底部に形成する凹部とを有する第2内部端子と、を備え、
前記第1内部端子の前記凸部と、前記第2内部端子の前記凹部とが嵌合されるように構成され、
前記第1、第2導体は、電源に接続する導体であって、
前記第1導体には、前記第1内部端子を2か所で実装させるように前記第1導体を分割するレジストが設けられる、電気コネクタセット。
【請求項8】
前記第1、第2導体は、グランドに接続する導体である、請求項1から6のいずれか1つに記載の電気コネクタセット。」
第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
本件訂正後の請求項1~8に係る特許に対して、令和6年2月5日付けで当審が通知した取消理由(決定の予告)の要旨は次のとおりである。
[取消理由](拡大先願)
本件特許の請求項1~3、7~8に係る発明は、その優先日前の特許出願であって、そのパリ条約による優先権主張の基礎となる特許出願の出願後に出願公開がされた下記の特許出願(以下、「先願」という。)の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。
先願:特願2019-048114号(特開2020-149926号)(申立人が提出した甲第1号証の特許出願)
2 先願について
(1)先願の明細書等に記載された事項及び認定事項
先願の明細書等には、以下の事項等が記載されている(下線は当審が付した。以下同様。)。
ア
「【0004】
近年、スマートフォン、携帯電話、携帯情報端末などの電子機器の軽薄短小化の要求に伴い、それに使用される部品の小型化・薄型化が進んでいる。しかしながら、それらの電子機器の高機能化に伴い、それらの電子機器に使用される電流も増加する傾向にある。また、これらの電子機器は、電源として、一般に充電式のバッテリを使用することが多いが、短時間充電の要求もあり、小型の電気コネクタに大電流が流れる場合があり、その大電流による発熱が問題になってくる。その発熱により電子機器の温度が上昇すると、電子機器の不具合の原因にもなる。」
イ
「【0012】
電気コネクタ内の端子が、それぞれ2つの接続部を有しているので、基板上の回路パターンと接続される部分が2点となり、電気の流れる経路が2通りになり、電気の流れる距離も短くなるので、全体の抵抗が小さくなり、大電流を流した場合であっても、端子の発熱を抑えることができ、電気コネクタの温度上昇が抑制される。」
ウ
「【0017】
本発明の一実施の形態に係る電気コネクタ組立体は、プラグコネクタ100及びレセプタクルコネクタ200から構成される。プラグコネクタ100及びレセプタクルコネクタ200は、それぞれ、プリント回路基板同士の回路を電気的に接続する基板対基板型電気コネクタの一種であって、一般に、プリント回路基板300、301に実装されて使用される。プリント回路基板300、301には、例えば、携帯電話、携帯情報端末等の充電式バッテリ、その制御回路などが接続される。そして、プラグコネクタ100とレセプタクルコネクタ200が嵌合し、それぞれの電源端子同士及び信号端子同士が接触することにより電気的に接続され、プリント回路基板上の回路と電気的に接続される。
【0018】
まず、図1~図4により、本実施の形態によるプラグコネクタ100の構成を説明する。本実施の形態によるプラグコネクタ100は、絶縁性のハウジング110、ハウジング110に保持された4個の電源端子120a~120d、ハウジング110に保持された4個の信号端子130a~130d、電源端子120a~120dにそれぞれ結合された4個の補強金具140a~140dなどから構成される。ハウジング110は、X1X2方向に沿った一対の側壁111と、2つの側壁111の端部同士を連結するY1Y2方向に沿った一対の端壁112と、側壁111及び端壁112に囲まれた嵌合凹部113などから構成される。嵌合凹部113の基板側(Z1側)には底壁114が設けられている。また、側壁111のZ2方向上面には、電源端子120a~120d及び信号端子130a~130dが配列されており、端壁112のZ2方向上面には、補強金具140a~140dが配列されている。プラグコネクタ100は、例えば、金型内に、補強金具140a~140dが結合した電源端子120a~120d、及び信号端子130a~130dを配置し、樹脂を注入してハウジング110を形成する一体成形又はインサート成形などの方法で形成される。
【0019】
電源端子120a~120dは、嵌合方向(Z2方向)に向かって突出した凸状の形状を有し、それぞれ、基板側(Z1側)に露出した外側接続部121a~121d(第1の接続部)及び内側接続部122a~122d(第2の接続部)を備えている。外側接続部121a~121dと内側接続部122a~122dとは、コネクタの幅方向(Y1Y2方向)において離間して配置されるように構成されている。外側接続部121a~121dは、側壁111から幅方向(Y1Y2方向)外側に向けて伸びており、板厚方向(Z1Z2方向)がプリント回路基板300の表面(XY平面)と交差する方向となっている。内側接続部122a~122dは、底壁114を貫通して露呈した端部として形成されており、板厚方向(Y1Y2方向)がプリント回路基板300の表面(XY平面)と並行する方向となっている。
【0020】
外側接続部121a~121d及び内側接続部122a~122dは、それぞれ、実装の際、プリント回路基板300上の個別の回路パターンに半田付けされる。また、電源端子120a~120dの各々は、大電流を流すことができるように、レセプタクルコネクタ200の電源端子との接触部分が長手方向(X1X2方向)に長くなっており、端子間での十分な接触面積を確保している。電源端子120a~120dは、大電流が流れるので、信号端子130a~130dと比較して表面積が広くなっている。表面積を広くすることにより、電源電流を流した際に生じえる熱を放熱することができる。電源端子120a及び120bを同電位とし、電源端子120c及び120dを同電位とすることができる。ここで、電源端子120a~120dに流れる電流量は特に限定されないが、例えば、数アンペアから数十アンペア、より具体的には、5アンペアから20アンペア程度の電流を流すことができる。」
エ
「【0022】
レセプタクルコネクタ200との嵌合時に、電源端子120a~120d及び信号端子130a~130dが、それぞれ、レセプタクルコネクタ200の電源端子220a~220d及び信号端子230a~230dに挟み込まれて接触して、電気的に接続されるようになっている。補強金具140a~140dは、コネクタの強度を補強するためのものであり、プリント回路基板300に実装される。補強金具140a~140dは、それぞれ、電源端子120a~120dと一体になっており、同一部材が使用される。」
オ
「【0023】
次に、図5~図8により、本実施の形態によるレセプタクルコネクタ200の構成を説明する。本実施の形態によるレセプタクルコネクタ200は、絶縁性のハウジング210、ハウジング210に保持された電源端子220a~220d、ハウジング210に保持された信号端子230a~230d、ハウジング210に保持された補強金具240a、240bなどから構成される。ハウジング210は、X1X2方向に沿った一対の側壁212と、2つの側壁212の端部同士を連結するY1Y2方向に沿った一対の端壁213と、側壁212及び端壁213に囲まれた嵌合凹部211と、嵌合凹部211に囲まれた島状の嵌合凸部214と、嵌合凹部211の基板側(Z2方向)の底壁215などから構成される。また、側壁212のZ1方向上面には、電源端子220a~220d及び信号端子230a~230dが配列されており、端壁213のZ1方向上面には、補強金具240a、240bが配置されている。レセプタクルコネクタ200は、例えば、金型内に、電源端子220a~220d、信号端子230a~230d、補強金具240a、240bを配置し、樹脂を注入してハウジング210を形成する一体成形又はインサート成形などの方法で形成される。
【0024】
電源端子220a~220dは、基板側(Z2方向)に窪んだ凹状の形状(「U」字状又は「S」字状)を有し、それぞれ、基板側(Z2側)に底壁215を貫通して露出した外側接続部221a~221d(第1の接続部又は第3の接続部)及び内側接続部222a~222d(第2の接続部又は第4の接続部)を備えている。外側接続部221a~221dと内側接続部222a~222dとは、コネクタの幅方向(Y1Y2方向)において離間して配置されるように構成されている。外側接続部221a~221dは、側壁212から幅方向(Y1Y2方向)外側に向けて伸びており、板厚方向(Z1Z2方向)がプリント回路基板301の表面(XY平面)と交差する方向となっている。内側接続部222a~222dは、底壁215を貫通して露呈した部分として形成されており、板厚方向(Z1Z2方向)がプリント回路基板301の表面(XY平面)と交差する方向となっている。
【0025】
外側接続部221a~221d及び内側接続部222a~222dは、それぞれ、実装の際、プリント回路基板301上の個別の回路パターンに半田付けされる。また、電源端子220a~220dの各々は、大電流を流すことができるように、プラグコネクタ100の電源端子との接触部分が長手方向(X1X2方向)に長くなっている。電源端子220a~220dは、大電流が流れるので、信号端子230a~230dと比較して表面積が広くなっている。表面積を広くすることにより、電源電流を流した際に生じえる熱を放熱することができる。また、電源端子220a及び220bを同電位とし、電源端子220c及び220dを同電位とすることができる。」
カ
「【0027】
プラグコネクタ100との嵌合時に、電源端子220a~220d及び信号端子230a~230dが、それぞれ、プラグコネクタ100の電源端子120a~120d及び信号端子130a~130dを挟み込んで接触して、電気的に接続されるようになっている。補強金具240a、240bは、コネクタの強度を補強するためのものであり、プリント回路基板301に実装される。
【0028】
プラグコネクタ100とレセプタクルコネクタ200とが嵌合される際、レセプタクルコネクタ200の矩形形状の嵌合凹部211に、プラグコネクタ100の電源端子及び信号端子が配列された突状部が嵌まり込み、端子同士が電気的に接続される。電源端子220a~220d及び信号端子230a~230dは、短手方向(Y1Y2方向)に拡がる弾性を有し、プラグコネクタ100の電源端子及び信号端子を両側から挟み込むようになっている。」
キ
「【0030】
図9~図14に示すように、プラグコネクタ100の電源端子120a~120dの外側接続部121a~121dは、端子の外側端部が基板側に露出しており、内側接続部122a~122dは、端子の内側端部が基板側に露出しており、プリント回路基板300の回路パターンと半田付けされる。その際、外側接続部121a及び内側接続部122aは、基板上の同一の回路パターン310aに接続され、外側接続部121b及び内側接続部122bは、基板上の同一の回路パターン310bに接続され、外側接続部121c及び内側接続部122cは、基板上の同一の回路パターンに接続され、外側接続部121d及び内側接続部122dは、基板上の同一の回路パターンに接続される。信号端子130a~130dも、電源端子120a~120dと同様に、それぞれ、基板側(Z1側)に露出した外側接続部131a~131d及び内側接続部132a~132dを備えている。図11に示すように、信号端子130a~130dの短手方向(YZ平面)における断面形状は、電源端子120a~120dの短手方向(YZ平面)における断面形状と略同一である。これにより、断面形状が略同一であるため、インサート成形が容易となる。
【0031】
レセプタクルコネクタ200の電源端子220a~220dの外側接続部221a~221dは、端子の外側端部が基板側に露出しており、内側接続部222a~222dは、端子の中央の「U」字状に凹んだ部分が基板側に露出しており、プリント回路基板300の回路パターンと半田付けされる。その際、外側接続部221a及び内側接続部222aは、基板上の同一の回路パターン320aに接続され、外側接続部221b及び内側接続部222bは、基板上の同一の回路パターン320bに接続され、外側接続部221c及び内側接続部222cは、基板上の同一の回路パターンに接続され、外側接続部221d及び内側接続部222dは、基板上の同一の回路パターンに接続される。
【0032】
プラグコネクタ100及びレセプタクルコネクタ200の嵌合時に、電源端子220a~220d及び信号端子230a~230dは、それぞれ、プラグコネクタ100の電源端子120a~120d及び信号端子130a~130dを両側から挟み込み、それぞれ複数の接点で接触して電気的に接続される。
【0033】
従来の導電端子は、基板上の回路パターンと接続される部分が、外側接続部の1点のみであったので、プラグコネクタの接続部とレセプタクルコネクタの接続部との間の距離が長くなり、その抵抗が大きくなる傾向があった。本実施の形態では、外側接続部以外に、内側接続部を有しているので、基板上の回路パターンと接続される部分が2点となり、電気の流れる経路が2通りになり(並列接続)、さらにプラグコネクタの接続部とレセプタクルコネクタの接続部との間の距離が短くなるので、全体の抵抗が小さくなり、大電流を流した場合であっても、端子の発熱を抑えることができる。また、それぞれの端子は、2点で基板上の回路パターンと接続されるので、基板との接続強度も高くなる。」
【図1】「
[図:0001417589000001.jpg]
」
【図2】「
[図:0001417589000002.jpg]
」
【図3】「
[図:0001417589000003.jpg]
」
【図4】「
[図:0001417589000004.jpg]
」
【図5】「
[図:0001417589000005.jpg]
」
【図6】「
[図:0001417589000006.jpg]
」
【図7】「
[図:0001417589000007.jpg]
」
【図8】「
[図:0001417589000008.jpg]
」
【図13】「
[図:0001417589000009.jpg]
」
ク
上記ウの「電源端子120a~120dは、嵌合方向(Z2方向)に向かって突出した凸状の形状を有し、それぞれ、基板側(Z1側)に露出した外側接続部121a~121d(第1の接続部)及び内側接続部122a~122d(第2の接続部)を備えている。」という記載及び図3~4、13の記載から、電源端子120a~120dは内側接続部122a~122dと外側接続部121a~121dとの間で嵌合方向に向かって突出した凸状の形状をなす部分(以下「凸形状部」という。)を有し、当該凸形状部は角のない湾曲形状であると認められる。
ケ
上記オの「電源端子220a~220dは、基板側(Z2方向)に窪んだ凹状の形状(「U」字状又は「S」字状)を有し、それぞれ、基板側(Z2側)に底壁215を貫通して露出した外側接続部221a~221d(第1の接続部又は第3の接続部)及び内側接続部222a~222d(第2の接続部又は第4の接続部)を備えている。」及び「内側接続部222a~222dは、底壁215を貫通して露呈した部分として形成されており、板厚方向(Z1Z2方向)がプリント回路基板301の表面(XY平面)と交差する方向となっている。」という記載並びに図5~8、13の記載から、電源端子220a~220dは、基板側に窪んだ凹状の形状をなす部分(以下「凹形状部」という。)を有しており、当該凹形状部のうち板厚方向がプリント回路基板301の表面と交差する方向となっている部分(以下「凹底部」という。)を有し、当該凹底部の一部が底壁215を貫通して露呈しており、内側接続部222a~222dを形成していると認められる。
そして、上記オの「外側接続部221a~221d及び内側接続部222a~222dは、それぞれ、実装の際、プリント回路基板301上の個別の回路パターンに半田付けされる。」及び上記キの「外側接続部221a及び内側接続部222aは、基板上の同一の回路パターン320aに接続され、外側接続部221b及び内側接続部222bは、基板上の同一の回路パターン320bに接続され、外側接続部221c及び内側接続部222cは、基板上の同一の回路パターンに接続され、外側接続部221d及び内側接続部222dは、基板上の同一の回路パターンに接続される。」という記載並びに図5~8、13の記載から、内側接続部222a~222dはプリント回路基板301の回路パターン320に実装されると認められる。
コ
上記オの「外側接続部221a~221d及び内側接続部222a~222dは、それぞれ、実装の際、プリント回路基板301上の個別の回路パターンに半田付けされる。」及び上記キの「外側接続部221a及び内側接続部222aは、基板上の同一の回路パターン320aに接続され、外側接続部221b及び内側接続部222bは、基板上の同一の回路パターン320bに接続され、外側接続部221c及び内側接続部222cは、基板上の同一の回路パターンに接続され、外側接続部221d及び内側接続部222dは、基板上の同一の回路パターンに接続される。」という記載並びに図5~8、13の記載から、電源端子220a~220dは外側接続部221a~221dを備え、外側接続部221a~221dもプリント回路基板301の回路パターン320に実装されると認められる。
サ
上記キの「プラグコネクタ100及びレセプタクルコネクタ200の嵌合時に、電源端子220a~220d及び信号端子230a~230dは、それぞれ、プラグコネクタ100の電源端子120a~120d及び信号端子130a~130dを両側から挟み込み、それぞれ複数の接点で接触して電気的に接続される。」という記載及び図13の記載から、電源端子220a~220dは凹底部の幅方向(Y1Y2方向)の内側から板厚方向(Z1Z2方向)のZ1方向に延在する部分(以下「第1延在部」という。)と、凹底部の幅方向(Y1Y2方向)の外側から板厚方向(Z1Z2方向)のZ1方向に延在する部分(以下「第2延在部」という。)とを有し、凹底部とともに凹形状部を構成する当該第1及び第2延在部が電源端子120a~120dの凸形状部を挟み込み、接点125で接触して電気的に接続されると認められる。また、第1及び第2延在部が電源端子120a~120dの凸形状部を挟み込むことから、第1延在部の板厚方向(Z1Z2方向)のZ1方向端部は幅方向(Y1Y2方向)に可動な自由端であると認められる。
シ
上記オの「電源端子220a~220dは、基板側(Z2方向)に窪んだ凹状の形状(「U」字状又は「S」字状)を有し、それぞれ、基板側(Z2側)に底壁215を貫通して露出した外側接続部221a~221d(第1の接続部又は第3の接続部)及び内側接続部222a~222d(第2の接続部又は第4の接続部)を備えている。」という記載及び図13の記載から、電源端子220a~220dは、第2延在部の板厚方向(Z1Z2方向)のZ1方向端部から幅方向(Y1Y2方向)の外側へ延在する部分(以下「第3延在部」という。)と、第3延在部の幅方向(Y1Y2方向)の外側端部から板厚方向(Z1Z2方向)のZ2方向へ延在する部分(以下「第4延在部」という。)と第4延在部の板厚方向(Z1Z2方向)のZ2方向端部から幅方向(Y1Y2方向)の外側へ延在する部分(以下「第5延在部」という。)とを備え、第2~4延在部は板厚方向(Z1Z2方向)のZ1方向に凸形状をなすことが看取され、第5延在部は底壁215を貫通して露出し外側接続部221a~221dを形成していると認められる。
(2)先願発明
上記(1)の記載事項ア~キ、図1~8、13の記載及び認定事項ク~シから、先願の明細書等には次の発明(以下「先願発明」という。)が記載されていると認められる。
[先願発明]
「回路パターン310を有するプリント回路基板300と、
前記プリント回路基板300の前記回路パターン310に実装される内側接続部122a~122d及び外側接続部121a~121dと、内側接続部122a~122dと外側接続部121a~121dとの間で嵌合方向に向かって湾曲して突出した凸形状部とを有する電源端子120a~120dと、
回路パターン320を有するプリント回路基板301と、
前記プリント回路基板301の前記回路パターン320に実装される内側接続部222a~222dと、前記内側接続部222a~222dを凹底部に形成する凹形状部とを有する電源端子220a~220dと、を備え、
前記電源端子120a~120dの凸形状部を、前記電源端子220a~220dの前記凹形状部の第1及び第2延在部が挟み込み、接点125で接触して電気的に接続する電気コネクタ組立体であって、
電源端子220a~220dは、前記凹形状部の前記凹底部のコネクタの幅方向の内側から板厚方向のZ1方向に延在する第1延在部と、幅方向の外側からZ1方向に延在する第2延在部とを有し、第1延在部のZ1方向端部は自由端であり、
内側接続部222a~222dとは別に、電源端子220a~220dをプリント回路基板301の回路パターン320に実装させる外側接続部221a~221dをさらに備え、
電源端子220a~220dはさらに、前記第2延在部の板厚方向のZ1方向端部から幅方向の外側へ延在する第3延在部と、第3延在部の幅方向の外側端部から板厚方向のZ2方向へ延在する第4延在部と、第4延在部の板厚方向のZ2方向端部から幅方向の外側へ延在する第5延在部とを備え、第2~4延在部は板厚方向のZ1方向に凸形状をなし、第5延在部は外側接続部221a~221dを形成し、
電源端子220a~220dを保持する絶縁性のハウジング210をさらに備えている、電気コネクタ組立体。」
3 当審の判断
(1)本件発明1について
本件発明1と先願発明とを対比する。
ア
先願発明の「回路パターン310」は、その機能からみて、本件発明1の「第1導体」に相当し、以下同様に、「プリント回路基板300」は「第1基板」に、「内側接続部122a~122d」は「第1実装部」に、「外側接続部121a~121d」は「第2実装部」に、それぞれ相当する。
また、先願発明の「凸形状部」は、「内側接続部122a~122dと外側接続部121a~121dとの間で嵌合方向に向かって湾曲して突出」するものであるから、本件発明1の「前記第1実装部と前記第2実装部との間で湾曲して延びる」ものである「凸部」に相当する。
そうすると、先願発明の「電源端子120a~120d」は、「内側接続部122a~122d及び外側接続部121a~121dと、内側接続部122a~122dと外側接続部121a~121dとの間で嵌合方向に向かって湾曲して突出した凸形状部とを有する」ものであるから、本件発明1の「第1実装部および第2実装部と、前記第1実装部と前記第2実装部との間で湾曲して延びる凸部とを有する」ものである「第1内部端子」に相当する。
イ
先願発明の「回路パターン320」は、その機能からみて、本件発明1の「第2導体」に、以下同様に、「プリント回路基板301」は「第2基板」に、「内側接続部222a~222d」は「第3実装部」に、「凹底部」は「底部」に、「凹形状部」は「凹部」に、それぞれ相当する。
また、先願発明の「電源端子220a~220d」は「内側接続部222a~222dと、前記内側接続部222a~222dを凹底部に形成する凹形状部とを有する」ものであるから、本件発明1の「第3実装部と、前記第3実装部を底部に形成する凹部とを有する」ものである「第2内部端子」に相当する。
ウ
先願発明の「前記電源端子120a~120dの凸形状部を、前記電源端子220a~220dの前記凹形状部の第1及び第2延在部が挟み込み、接点125で接触して電気的に接続する」ことは、電源端子120a~120dの凸形状部が電源端子220a~220dの凹形状部に進入することによって、凹形状部の第1及び第2延在部で凸形状部を挟み込むことであるから、本件発明1の「前記第1内部端子の前記凸部と、前記第2内部端子の前記凹部とが嵌合されるように構成された」に相当する。
エ
先願発明の「電気コネクタ組立体」は、本件発明1の「電気コネクタセット」に相当する。
したがって、本件発明1と先願発明とは、以下の一致点1で一致し、相違点はないから、本件発明1は先願発明と同一である。
[一致点1]
「第1導体を有する第1基板と、
前記第1基板の前記第1導体に実装される第1実装部及び第2実装部と、前記第1実装部と前記第2実装部との間で湾曲して延びる凸部とを有する第1内部端子と、
第2導体を有する第2基板と、
前記第2基板の前記第2導体に実装される第3実装部と、前記第3実装部を底部に形成する凹部とを有する第2内部端子と、を備え、
前記第1内部端子の前記凸部と、前記第2内部端子の前記凹部とが嵌合されるように構成された、電気コネクタセット。」
(2)本件発明2について
本件発明2と先願発明とを対比する。
オ
先願発明の「前記凹形状部の前記凹底部のコネクタの幅方向の内側から板厚方向のZ1方向に延在する第1延在部と、幅方向の外側からZ1方向に延在する第2延在部」は、コネクタの幅方向の内側を一方側とすれば、幅方向の外側は他方側となるから、本件発明2の「前記凹部の前記底部から一方側に立ち上がる第1部分と、他方側に立ち上がる第2部分」に相当する。
カ
先願発明の「第1延在部のZ1方向端部は自由端」は、第1延在部のZ1方向端は自由端であるから、本件発明2の「前記第1部分は自由片」に相当する。
したがって、本件発明2と先願発明とは、一致点1に加えて以下の一致点2で一致するから、本件発明2は先願発明と同一である。
[一致点2]
「第2内部端子は、前記凹部の前記底部から前記凹部の前記底部から一方側に立ち上がる第1部分と、他方側に立ち上がる第2部分とを有し、前記第1部分は自由片である、電気コネクタセット。」
(3)本件発明3について
本件発明3と先願発明とを対比する。
キ
先願発明の「外側接続部221a~221d」は、「内側接続部222a~222dとは別に、電源端子220a~220dをプリント回路基板301の回路パターン320に実装させる」ものであるから、本件発明3の「前記第3実装部とは別に、前記第2内部端子を前記第2基板の前記第2導体に実装させる」ものである「第4実装部」に相当する。
ク
先願発明の「電源端子220a~220dはさらに、前記第2延在部の板厚方向のZ1方向端部から幅方向の外側へ延在する第3延在部と、第3延在部の幅方向の外側端部から板厚方向のZ2方向へ延在する第4延在部と、第4延在部の板厚方向のZ2方向端部から幅方向の外側へ延在する第5延在部とを備え、第2~4延在部は板厚方向のZ1方向に凸形状をなし、第5延在部は外側接続部221a~221dを形成する」構成について検討する。
先願発明の「電源端子220a~220d」(第2内部端子)は「前記第2延在部の板厚方向のZ1方向端部から幅方向の外側へ延在する第3延在部と、第3延在部の幅方向の外側端部から板厚方向のZ2方向へ延在する第4延在部と、第4延在部の板厚方向のZ2方向端部から幅方向の外側へ延在する第5延在部とを備え、第2~4延在部は板厚方向のZ1方向に凸形状をな」す構成は、電源端子220a~220dが第2延在部に接続される凸形状をなす第2~4延在部を有することから、本件発明3の「前記第2部分に接続する凸部」を有する構成に相当する。
また、「第4延在部の板厚方向のZ2方向端部から幅方向の外側へ延在する第5延在部」であって「第5延在部は外側接続部221a~221dを形成する」構成は、第5延在部が第4延在部とともに「凸形状」から外側接続部221a~221d(第4実装部)まで延びることから、本件発明3の「前記凸部から前記第4実装部まで延びる第3部分」に相当する。
そうすると、先願発明の「電源端子220a~220dはさらに、前記第2延在部の板厚方向のZ1方向端部から幅方向の外側へ延在する第3延在部と、第3延在部の幅方向の外側端部から板厚方向のZ2方向へ延在する第4延在部と、第4延在部の板厚方向のZ2方向端部から幅方向の外側へ延在する第5延在部とを備え、第2~4延在部は板厚方向のZ1方向に凸形状をなし、第5延在部は外側接続部221a~221dを形成する」構成は、本件発明3の「前記第2内部端子はさらに、前記第2部分に接続される凸部と、前記凸部から前記第4実装部まで延びる第3部分とを有する」構成に相当する。
したがって、本件発明3と先願発明とは、一致点1~2に加えて以下の一致点3で一致するから、本件発明3は先願発明と同一である。
[一致点3]
「前記第3実装部とは別に、前記第2内部端子を前記第2基板の前記第2導体に実装させる第4実装部をさらに備え、
前記第2内部端子はさらに、前記第2部分に接続される凸部と、前記凸部から前記第4実装部まで延びる第3部分とを有する、電気コネクタセット。」
(4)本件発明7について
本件発明7と先願発明とを対比する。
ケ
先願発明の「回路パターン310」は、「電源端子120a~120d」が実装されるものであり、また、「回路パターン320」は、「電源端子220a~220d」が実装されるものであり、これら「電源端子120a~120d」及び「電源端子220a~220d」は、当然、電源に接続することを想定した端子といえるから、「回路パターン310」及び「回路パターン320」は、本件発明7の「電源に接続する導体」である「前記第1、第2導体」に相当する。
コ
先願発明の「前記回路パターン310に実装される内側接続部122a~122d及び外側接続部121a~121dと、・・・中略・・・を有する電源端子120a~120d」は、回路パターン310には、電源端子120a~120dが内側接続部122a~122d及び外側接続部121a~121dの2か所で実装されることから、本件発明7の「前記第1導体には、前記第1内部端子を2か所で実装させるように前記第1導体を分割するレジストが設けられる」構成と、「前記第1導体には、前記第1内部端子を2か所で実装させる」構成の限りで一致する。
したがって、本件発明7と先願発明とは、一致点1に加えて以下の一致点4で一致し、相違点1で一応相違する。
[一致点4]
「前記第1、第2導体は、電源に接続する導体であって、
前記第1導体には、前記第1内部端子を2か所で実装させる、電気コネクタセット。」
[相違点1]
「前記第1導体には、前記第1内部端子を2か所で実装させる」構成に関し、本件発明7では、「前記第1導体には、前記第1内部端子を2か所で実装させるように前記第1導体を分割するレジストが設けられる」のに対し、先願発明では、レジストに関する特定がない点。
上記相違点1について検討するに、基板への部品実装時に、回路パターンに不要なはんだが付着しないようカバーして、はんだ作業をスムーズに行うために、レジストを設けることは慣用的に用いられる技術である。したがって、上記2(1)アに摘記したように、「小型の電気コネクタに大電流が流れる場合があり、その大電流による発熱が問題になってくる。その発熱により電子機器の温度が上昇すると、電子機器の不具合の原因にもなる。」という問題を解決することを目的とする先願発明において、回路パターン310に、電源端子120a~120dを内側接続部122a~122d及び外側接続部121a~121dの2か所で実装するにあたり、回路パターン310に不要なはんだの付着を防ぐために導体を分割するレジストを設けることは、先願発明の上記目的に沿った慣用技術の付加であって、本件特許明細書等の段落【0007】に記載される「電気的特性を向上させた電気コネクタセットを提供する」ことを目的とする本件発明7に対して新たな効果を奏するものではない。
したがって、本件発明7は先願発明と実質的に同一である。
(5)本件発明8について
本件発明8と先願発明とを対比する。
サ
先願発明の「回路パターン310」は、「電源端子120a~120d」が実装されるものであり、また、「回路パターン320」は、「電源端子220a~220d」が実装されるものであり、これら「電源端子120a~120d」及び「電源端子220a~220d」は、当然、電源やグランドに接続することを想定した端子といえるから、「回路パターン310」及び「回路パターン320」は、本件発明8の「グランドに接続する導体」である「前記第1、第2導体」に相当する。
したがって、本件発明8と先願発明とは、一致点1に加えて以下の一致点5で一致するから、本件発明8は先願発明と同一である。
[一致点5]
「前記第1、第2導体は、グランドに接続する導体である、電気コネクタセット。」
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許法第29条の2(拡大先願)について
申立人は、特許異議申立書において、本件発明4~6は、甲第1号証に記載の発明と実質的に同一であるから特許を受けることができない旨主張する。そこで、以下、検討する。
(1)本件発明4について
本件発明4と先願発明とを対比する。
シ
先願発明の「絶縁性のハウジング210」は、本件発明4の「絶縁体」に相当する。
したがって、本件発明4と先願発明とは、一致点1~3に加えて以下の一致点6で一致し、相違点2で相違する。
[一致点6]
「前記第2内部端子を保持する絶縁体をさらに備えた、電気コネクタセット。」
[相違点2]
本件発明4は、「前記第2内部端子の前記第3部分は幅の広くなった幅広部を有し、前記絶縁体は、前記第3部分の前記幅広部を収容するように凹んだ第1切欠きを有する」ものとされているのに対し、先願発明の「電源端子220a~220d」の「第4延在部」が、幅広部を有するものとの特定はなく、また、「絶縁性のハウジング210」が、「電源端子220a~220d」の「第4延在部」の幅広部を収容するように凹んだ切欠きを有するとの特定もされていない点。
上記相違点2について検討する。
本件発明4は、相違点2に係る、「前記第2内部端子の前記第3部分は幅の広くなった幅広部を有し、前記絶縁体は、前記第3部分の前記幅広部を収容するように凹んだ第1切欠きを有する」との構成により、「絶縁体に第1切欠きを設けて第2内部端子の幅広部を収容することで、第2内部端子を絶縁体に位置決めすることができる。」(本件特許明細書の段落【0015】)、「第1切欠き76に幅広部72を配置することで、空隙74における第2内部端子26のY方向の移動を規制することができ、第2内部端子26を第2絶縁体30に位置決めすることができる。」(本件特許明細書の段落【0070】)との作用効果を奏するものである。
この点に関し申立人は、特許異議申立書において、「コネクタの構成において、第2内部端子を絶縁体に位置決めするために、絶縁体に第1切欠きを設けて第2内部端子の幅広部を収容するという技術は、本件特許発明に係る特許出願の優先日前において、当業者にとって周知技術又は慣用技術である。特許発明4は、引用発明1にこのような周知技術又は慣用技術を付加したものであり、新たな効果を奏するものではない。すなわち、特許発明4は引用発明1と実質的に同一である。」と主張する(第20頁第11行~第15行)。
この申立人の主張について検討するに、甲第1号証の段落【0023】の「レセプタクルコネクタ200は、例えば、金型内に、電源端子220a?220d、信号端子230a?230d、補強金具240a,240bを配置し、樹脂を注入してハウジング210を形成する一体成形又はインサート成形などの方法で形成される。」との記載や、【図13】から、「電源端子220a~220d」の「第2~4延在部」の「凸形状」の内部及び「第4延在部」の絶縁性ハウジング210の短手方向外側には、絶縁性のハウジング210が、(一体成形又はインサート成形により)隙間なく存在していることが見て取れる。
これらの甲第1号証の記載等からすれば、先願発明の「電源端子220a~220d」は、絶縁性のハウジング210の樹脂に一体成形又はインサート成形の過程で埋め込まれることによってすでに絶縁性のハウジング210中で位置決めされており、電源端子220a~220dを絶縁性のハウジング210において位置決めするためのさらなる構成を具備する必要はないといえる。
そうすると、仮に、コネクタの構成において、端子を絶縁体に位置決めするために、絶縁体に切欠きを設けて端子の幅広部を収容するという技術が、本件特許発明に係る特許出願の優先日前において、当業者にとって周知技術又は慣用技術であったとしても、先願発明に、このような周知技術又は慣用技術を付加する必要はないから、相違点2は実質的な相違点であり、本件発明4は先願発明と同一ないし実質的に同一であるとはいえない。
なお、甲第1号証の、信号端子230a~230dに着目すると、信号端子230a~230dのハウジング210の短手方向外側でZ軸方向に延在する部分には、幅広部が設けられていることが見て取れるが、この幅広部は、絶縁性のハウジング210の樹脂に一体成形又はインサート成形の過程で埋め込まれているといえるから、絶縁性のハウジング210には、この幅広部を収納する切欠きは存在しないし、絶縁性のハウジング210に、切欠きを設ける必要もないといえる。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
(2)本件発明5について
本件発明5は、本件発明4の発明特定事項を全て含み更に限定するものである。
本件発明4が上記(1)で述べたとおり、先願発明と同一ないし実質的に同一であるとはいえないから、本件発明5も同様の理由により、先願発明と同一ないし実質的に同一であるとはいえない。
(3)本件発明6について
本件発明6と先願発明とを対比する。
上記第4の3(1)~(3)を踏まえると、本件発明6と先願発明とは、一致点1~3で一致し、次の相違点3で相違する。
[相違点3]
本件発明6は、「前記第2内部端子の前記第1部分の幅は、前記第2部分の幅よりも大きい」とされているのに対し、先願発明の「電源端子220a~220d」の「第1延在部」と「第2延在部」の幅については、本件発明6のような特定がされていない点。
上記相違点3について検討する。
本件発明6は、相違点3に係る、「前記第2内部端子の前記第1部分の幅は、前記第2部分の幅よりも大きい」との構成により、「自由片である第1部分の幅を第2部分の幅よりも大きくすることで、自由片のばね定数を大きくすることができ、第2部分および第2部分に接続された凸部のばね定数の値に近付けることができる。これにより、第1内部端子との接点が確保しやすくなる。」(本件特許明細書の段落【0017】)、「これにより、第1部分26Bのばね定数を第2部分26Cや凸部26Dのばね定数の値に近付けることができ、それぞれに同等の弾性力を持たせることができる。このような構成によれば、第2内部端子26の凹部42に第1内部端子8の凸部40を篏合させたときに、第1内部端子8の凸部40に対してY方向の両側から挟む方向にそれぞれ力を均等に作用させることができる。これにより、精度良い篏合を実現させることができる。このように、自由片である第1部分26Bを選択的に太くして、凸部26Dのばね定数に近づけることで、接触圧を保ちつつ適度な嵌合を実現することができる。」(本件特許明細書の段落【0064】)との作用効果を奏するものである。
この点に関し申立人は、特許異議申立書において、「コネクタの構成において、自由片である第1部分のばね定数を大きくし、第2部分および第2部分に接続された凸部のばね定数の値に近付けるために、第1部分の幅を第2部分の幅よりも大きくするという技術は、本件特許発明に係る特許出願の優先日前において、当業者にとって周知技術又は慣用技術である。特許発明6は、引用発明1にこのような周知技術又は慣用技術を付加したものであり、新たな効果を奏するものではない。すなわち、特許発明6は引用発明1と実質的に同一である。」と主張する(第20頁第32行~第37行)。
この申立人の主張について検討するに、コネクタの端子において、端子の自由片の部分の幅を他の部分の幅よりも大きくするという技術は、申立人の提出した甲第5号証の段落【0040】及び【図6B】に、コネクタの端子4の接触部44が、Y軸方向で幅広に形成されていることが記載されているように(下記2(2)エを参照。)、本件特許発明に係る特許出願の優先日前において、当業者にとってすでに知られていた技術であるといえる。
しかしながら、甲第5号証の【図5】から接触部44の背面が内側ハウジングの2の中央壁部22に支持される点が看て取れる。このことから明らかなとおり、接触部44は、相手コネクタの端子と接触するときに弾性変形することを意図としたものではない。この甲第5号証に記載の技術は、相手方コネクタの端子が接触する面積を確保できるように端子4の接触部44を幅広に形成したものであり(下記2(2)エを参照。)、本件発明6のように、自由片である第1部分を選択的に太くしてばね定数を大きくすることで、第2部分および第2部分に接続された凸部のばね定数の値に近付けることにより、第1内部端子との接点を確保しやすくするためのものではない。また、コネクタの端子において、自由片である第1部分のばね定数を大きくし、第2部分および第2部分に接続された凸部のばね定数の値に近付けるために、第1部分の幅を第2部分の幅よりも大きくするという技術が、本件特許発明に係る特許出願の優先日前において、当業者にとって周知技術又は慣用技術であるとする証拠もない。
してみると、相違点3に係る本件発明6の「前記第2内部端子の前記第1部分の幅は、前記第2部分の幅よりも大きい」との構成は、新たな作用効果を奏する実質的な相違点であり、本件発明6は先願発明と同一ないし実質的に同一であるとはいえない。
2 特許法第29条第2項(進歩性)について
(1)申立人の主張
申立人は、特許異議申立書において、主たる証拠としての以下の甲第2号証及び従たる証拠としての以下の甲第3号証~甲第5号証を提出し、請求項1~8に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1~8に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。
そこで、かかる申立人の主張について以下検討する。
甲第2号証:特開2012-243600号公報
甲第3号証:特開2015-8053号公報
甲第4号証:特開2017-212035号公報
甲第5号証:特開2018-195567号公報
(2)甲第2号証~甲第5号証の記載
ア 甲第2号証の記載
甲第2号証には次の記載がある。
「【0001】
本発明は、回路基板に取り付けられる電気コネクタに関する。」
「【0009】
このような事情に鑑みて、本発明は、コネクタ嵌合そして抜出の際に、端子の被保持部およびハウジングの側壁が相手コネクタの嵌入部から上記対向方向外側へ向けた押圧力を受けても、上記半田接続部分の損傷を防止可能な回路基板用電気コネクタを提供することを目的とする。
【0010】
本発明に係る回路基板用電気コネクタは、回路基板上に配され上方から相手コネクタを受け入れて該相手コネクタと嵌合接続される電気コネクタであって、底壁から上方に起立し互いに対向して延びる二つの側壁を有するハウジングと、上記二つの側壁のうち少なくとも一方の側壁に配列保持された複数の端子とを備え、上記ハウジングは、上記二つの側壁の互いに対向する内側面同士間に、上記相手コネクタを受け入れるための受入空間が形成されており、上記端子は、側壁同士の対向方向にて受入空間側の位置で該受入空間内に向けて露呈して上下方向に延び相手コネクタの端子と接触可能に位置している内側脚部と、上記対向方向にて上記内側脚部よりも外側位置で上下方向に延びる外側脚部と、上記内側脚部および外側脚部の上端同士を連結する連結部と、上記外側脚部の下端側に形成され回路基板上に半田付けされる外側半田付部とを有している。
【0011】
かかる回路基板用電気コネクタにおいて、本発明では、上記端子は、上記内側脚部の下端から上記対向方向内側へ向け延びハウジングの底壁から下方に露呈して回路基板上に半田付けされる内側半田付部を有していることを特徴としている。
【0012】
本発明では、内側脚部の下端から側壁の対向方向内側へ向け延びる内側半田付部が上記対向方向にて内側脚部より内側に位置している。コネクタ嵌合そして抜出の際に、内側脚部が相手コネクタの端子(相手端子)と接触することにより、上記対向方向での外側へ向けた押圧力が該内側脚部およびハウジングの側壁に作用して、該内側脚部および側壁には下部を支点として外側に向くモーメントが生じると、これに対抗して、上記内側半田付部と回路基板との半田付け部分にて抗力が生じる。したがって、この抗力の分だけ、端子の外側半田付部と回路基板との半田付け部分に作用する外力が小さくなるので、該半田付け部分の損傷を防止できる。」
「【0015】
以上のように、本発明では、端子は、側壁の対向方向にて内側脚部よりも内側位置に、回路基板上に半田付けされる内側半田付部を有しているので、コネクタ嵌合そして抜出の際、相手コネクタからの押圧力に起因して、端子の内側脚部およびハウジングの側壁に上記対向方向外側へ向くモーメントが作用したとき、上記内側半田付部と回路基板との半田付け部分によって上記モーメントに対抗できる。この結果、端子の外側半田付部と回路基板との半田付け部分に作用する外力が小さくなり、該半田付け部分の損傷を防止できる。」
「【0019】
[コネクタの構成]
コネクタ1は、回路基板上に配されるレセプタクル型の回路基板用電気コネクタであり、他の回路基板上に配されるプラグ型の相手コネクタ2(図2ないし図4参照)を上方から受け入れて該相手コネクタ2と嵌合接続される電気コネクタである。該コネクタ1は、比較的薄い略直方体外形をなす合成樹脂製のハウジング10と、該ハウジング10の長手方向で該ハウジング10に配列保持される複数の金属製の端子20と、該ハウジング10の長手方向、すなわち端子配列方向で端子20の配列範囲に対して両方の外側位置で該ハウジング10に保持される固定金具30とを有している。」
「【0024】
図3によく見られるように、端子20は、帯状の金属板状片を板厚方向に屈曲して作られていて、該ハウジング10に一体モールド成形されて上記長手方向で配列保持されている。該端子20は、ハウジング10の側壁14に保持される第一逆U字状部21と、第一逆U字状部21の後述の第一内側脚部21Aの下端で屈曲されて上記短手方向内側へ延びる基部22と、該基部22の該短手方向内側の端部で屈曲され突壁部13に保持される第二逆U字状部23と、上記第一逆U字状部21の後述の第一外側脚部21Bの下端で屈曲されて上記短手方向外側へ延びる外側半田付部としての外側接続部24とを有している。
【0025】
上記第一逆U字状部21は、ハウジング10の側壁14に一体モールド成形により保持されており、上記短手方向にて外側受入空間16A側に位置する第一内側脚部21Aと、該第一内側脚部21Aより外側に位置する第一外側脚部21Bと、該第一内側脚部21Aおよび第一外側脚部21Bの上端同士を連結する第一連結部21Cとを有している。第一内側脚部21Aは、上記外側受入空間16A内に向く外面が露呈して上下方向に延びていて、上記外面には、側縁同士間で上記短手方向(板厚方向)に没したロック凹部21A-1が形成されている。該ロック凹部21A-1は、図1によく見られるように、端子20の幅寸法(ハウジング10の長手方向での寸法)よりも小さい幅寸法で、例えばプレス加工により形成されている。
【0026】
上記第一逆U字状部21が側壁14に一体モールド成形により保持された状態において、上記第一内側脚部21Aは、両側端面(ハウジング10の長手方向での両側の端面)および第一外側脚部21Bに対向する板面(内面)が側壁14に接面保持されていて、該側壁14から露呈した板面(外面)が、該側壁14の内側面と同一レベルの面をなすように位置している。また、第一外側脚部21Bおよび第一連結部21Cは、側壁14に埋設保持されている。」
「【0032】
上記基部22は、上記短手方向にて上記屈曲部分より外側に位置する部分の下面が底壁11の下面とほぼ同じレベルに位置して露呈していて、該部分は回路基板上に半田付けされる内側半田付部としての内側接続部22Aとして形成されている。本実施形態では、該内側接続部22Aは、回路基板上のパッドに半田付けされることにより該回路基板の対応回路部との電気的な接続が可能となっている。また、該内側接続部22Aは、回路基板へのコネクタ1の固定強度の向上に寄与する。
【0033】
また、上記基部22は、上記短手方向にて上記屈曲部分よりも内側に位置する部分が、上記内側接続部22Aよりも上方に位置しており、その上面が底壁11の上面とほぼ同じレベルに位置していて、上記外側受入空間16Aに対応する範囲にて該外側受入空間16A内へ露呈している。図3に見られるように、該外側受入空間16A内に上面が露呈した部分は、上記短手方向にて第二外側脚部23Bのロック突部23B-1の位置を含む範囲に位置している。また、第二逆U字状部23の第二外側脚部23Bの下端は、上記基部22の露呈した上面に当接している。
【0034】
上記外側接続部24は、既述の側壁14の下端直下で上記短手方向での外側へ向けて延びており、該外側接続部24の下面が底壁11の下面とほぼ同じレベルに位置していて、回路基板上のパッドに半田付けされることにより該回路基板の対応回路部との電気的な接続が可能となっている。該外側接続部24が半田付けされるパッドは、上述の内側接続部22Aが半田付けされるパッドと共用されてもよく、また、両パッドが互いに分離して設けられていてもよい。該外側接続部24は、上記内側接続部22Aと相俟って回路基板へのコネクタ1の固定強度の向上に寄与する。」
「【0047】
相手端子50は、帯状の金属板状片を板厚方向に屈曲して作られていて、該ハウジング40に一体モールド成形されて上記長手方向で配列保持されている。図3に見られるように、該相手端子50は、ハウジング40の側壁44に保持される第一U字状部51と、第一U字状部51の後述の相手第一内側脚部51Aの上端で屈曲されて上記短手方向内側へ延びる基部52と、該基部52の該短手方向内側の端部で屈曲され突壁部43に保持される第二U字状部53と、上記第一U字状部51の後述の相手第一外側脚部51Bの上端で屈曲されて上記短手方向外側へ延びる接続部54とを有している。」
「【0059】
[コネクタ嵌合動作]
以下、コネクタ1と相手コネクタ2との嵌合動作について説明する。まず、コネクタ1の端子20そして固定金具30を回路基板に半田付けするとともに、相手コネクタ2の端子50および固定金具60を他の回路基板に半田付けする。次に、図3に見られるように、コネクタ1を受入空間16が上方へ開口した姿勢とするとともに、相手コネクタ2を相手受入空間46が下方へ開口した姿勢として該コネクタ1の上方位置へもたらす。」
「【0061】
相手コネクタ2の側壁44をコネクタ1の外側受入空間16A内へ上方から嵌入させることにより、相手コネクタ2の相手端子50の第一U字状部51は、コネクタ1の端子20のロック凹部21A-1およびロック突部23B-1との間を押し拡げて進入する。また、相手コネクタ2の突壁部43をコネクタ1の内側受入空間16B内へ上方から嵌入させることにより、相手コネクタ2の相手端子50の第二U字状部53は、コネクタ1の端子20のロック凹部23A-1と中央壁部12との間を押し拡げて進入する。」
「【0064】
上述したように、コネクタ嵌合途中において、相手端子50の第一U字状部51は端子20のロック凹部21A-1およびロック突部23B-1との間を押し拡げて進入するので、ハウジング10の短手方向で外側へ向けた押圧力が端子20の第一内側脚部21Aおよびハウジング10の側壁14に作用して、該第一内側脚部21Aおよび側壁14の下部を支点として外側に向くモーメントが生じる。
【0065】
本実施形態では、第一内側脚部21Aの下端から上記短手方向内側へ向け延びる内側接続部22Aが該短手方向にて第一内側脚部21Aより内側に位置しているので、上記モーメントに対抗して、上記内側接続部22Aと回路基板との半田付け部分にて抗力が生じる。したがって、この抗力の分だけ、端子20の外側接続部24と回路基板との半田付け部分に作用する外力が小さくなるので、該半田付け部分の損傷を防止できる。」
【図3】「
[図:0001417589000010.jpg]
」
イ 甲第3号証の記載
甲第3号証には次の記載がある。
「【0001】
本発明は、コネクタおよび当該コネクタに用いられるヘッダならびにソケットに関する。」
「【0062】
ヘッダ側端子80も、ソケット側端子30と同様に、所定厚さを持った帯状の金属材を湾曲成形することにより形成することができる。ヘッダ側端子80は、図11に示すように、両側壁部81a,81aと連結部81bとで逆U字状に形成されたU字状部81を備えており、連結部81bの外側(図11の下側)には、平坦部81cが形成されている。
【0063】
そして、このU字状部81の両側壁部81aの先端には、第4屈曲部82を基点に水平に折曲された形状の略平坦なヘッダ側接続端子部83がそれぞれ形成されている。
【0064】
このように、本実施形態では、ヘッダ側端子80は、ヘッダハウジング100の外方に突出して第2の回路基板140に装着されるヘッダ側接続端子部83を備えており、ヘッダ側端子80のヘッダハウジング100の幅方向X両側からヘッダ側接続端子部83,83がそれぞれ突出している。
【0065】
したがって、ヘッダ側端子群80Gには、ヘッダ側接続端子部83がヘッダハウジング100の幅方向一方側に突出するヘッダ側端子80と他方側に突出するヘッダ側端子80とが存在するように形成されることとなる。
【0066】
そして、ヘッダ側端子80は、U字状部81が壁部(ヘッダ側嵌合部)102の先端部(図11の下側)を覆うようにしてヘッダハウジング100に配設されている。このヘッダ側端子80は、インサート成形によってヘッダハウジング100に装着されている。そして、この状態で、ヘッダ側端子80のヘッダ側接続端子部83が壁部(ヘッダ側嵌合部)102の下縁からX方向(幅方向)外方に突出し、これらのヘッダ側接続端子部83が、第2の回路基板140の導体パターン(端子)に半田付けにより接続されるようになっている。こうして、ヘッダ側端子80が第2の回路基板140と電気的に接続されることとなる。なお、ヘッダ側端子80をヘッダハウジング100に圧入することで、ヘッダ側端子80をヘッダハウジング100(ヘッダ側嵌合体90)に配設させるようにしてもよい。」
「【0120】
また、本実施形態では、ヘッダ側端子群80Gは、ヘッダ側接続端子部83がヘッダハウジング100の幅方向一方側に突出するヘッダ側端子80と他方側に突出するヘッダ側端子80とが存在するように形成されている。具体的には、ヘッダ側端子80のヘッダハウジング100の幅方向X両側からヘッダ側接続端子部83,83がそれぞれ突出している。したがって、ヘッダ側接続端子部83の第2の回路基板140への取付位置が幅方向Xの一方側や長手方向Yの一方側に偏って配置されてしまうのを抑制することができる。その結果、ヘッダ70の第2の回路基板140への取付位置のバランスがよくなり、半田付け時にヘッダ70が回転してしまうのを抑制することができる。また、ヘッダ70がマンハッタン現象により立ち上がってしまうのを抑制することもできる。また、ヘッダ70の第2の回路基板140への半田付け強度をより高めることができるようになる上、電流容量を向上させることができるようになる。」
【図9】「
[図:0001417589000011.jpg]
」
【図11】「
[図:0001417589000012.jpg]
」
ウ 甲第4号証の記載
甲第4号証には次の記載がある。
「【0020】
図1に示すように、本実施形態に係る電気コネクタ装置300は、回路基板に取り付けられる電気コネクタとしてのリセプタクルコネクタ100と、他の回路基板に取り付けられる相手電気コネクタとしてのプラグコネクタ200とを備える。なお、図1では、理解を容易にする為に、各回路基板の図示を省略している。」
「【0028】
被係合部材250は、一方の端壁233に設けられている。被係合部材250は、端壁233の頂部分において上記短手方向に延びる短手方向延在部251と、短手方向延在部251の上記短手方向両端の各々から端壁233に沿って垂下した一対の垂下部252と、各々の垂下部252の下端から上記短手方向外方に延出した一対のテール部253とを有する。」
「【0030】
もう1つの被係合部材260は、他方の端壁234に設けられている。被係合部材260も、被係合部材250と同じ形状を有しており、被係合部材250と同様に、短手方向延在部261、各々に爪部262aが形成された一対の垂下部262、及び一対のテール部263を有する。テール部253及び263が、半田付けによって、回路基板に機械的に接続される。」
「【0043】
第1固定部141は、第1傾斜腕部142の固定端部から立ち上がった固定端部側の第1立ち上がり部1411と、固定端部側の第1立ち上がり部1411の頂部分でU字状に折り返されて垂下した第1垂下部1412と、第1垂下部1412の垂下端部からY軸方向外方に延出した第1テール部1413と、第1垂下部1412に形成され、X軸方向に張り出した第1張出部1414とを有する。第1張出部1414を通じて、第1固定部141が第1短壁部121に固定される。その固定の為の構造については、図7を参照して後述する。第1テール部1413は、取付対象物に固定される被固定部としての役割を果たすものであり、取付対象物としての回路基板Kに、半田付けによって固定される。」
「【0052】
第2固定部151は、第2傾斜腕部152の一方端部から立ち上がった固定端部側の第2立ち上がり部1511と、固定端部側の第2立ち上がり部1511の頂部分でU字状に折り返されて垂下した第2垂下部1512と、第2垂下部1512の垂下端部からY軸方向外方に延出し、回路基板Kに半田付けされる第2テール部1513と、第2垂下部1512に形成され、X軸方向に張り出した第2張出部1514とを有する。」
「【0057】
図6(B)は、逆向き係合部材150を示す。逆向き係合部材150は、係合部材140と同一の形状を有する。但し、逆向き係合部材150は、係合部材140と対称的に、大第2張出部1514aがX軸方向他方(X軸プラス方向)に張り出し、小第2張出部1514bがX軸方向一方(X軸マイナス方向)に張り出す向きに取り付けられる。大第2張出部1514a及び小第2張出部1514bは、後述する通り、リセプタクルコネクタ100の組み立ての際、第2短壁部122に圧入される。」
【図1】「
[図:0001417589000013.jpg]
」
【図2】「
[図:0001417589000014.jpg]
」
【図6】「
[図:0001417589000015.jpg]
」
【図7】「
[図:0001417589000016.jpg]
」
エ 甲第5号証の記載
甲第5号証には次の記載がある。
「【0001】
本開示はコネクタ及びコネクタアッセンブリに関する。」
「【0040】
また、端子4は、内側の固定部42に接続し、相手コネクタ9が備える端子92(図7を参照)に接触する接触部44を有してよい。接触部44は、第2の係合部42bから上方に延在していてよい。図6Bに示すように、本実施形態では、第2の係合部42bは第2の基部42aからY軸方向に屈曲しているため、第2の係合部42bから延在している接触部44は、Y軸方向で幅広に形成されている。これにより、相手コネクタ9の端子92が接触する面積を確保することができ、コネクタ1と相手コネクタ9との電気的な接続を確実に行うことができる。なお、接触部44には、プレス加工等により凸部44aが形成されてもよい。凸部44aは、例えば、内側ハウジング2に形成されている孔の内面に引っかかり、端子4を内側ハウジング2に固定する。接触部44の形状、配置位置、及び延在方向は、必ずしもこれに限定されない。」
【図5】「
[図:0001417589000017.jpg]
」
【図6B】「
[図:0001417589000018.jpg]
」
(3)甲第2号証に記載された発明
上記(2)アの摘記事項から、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲2-1発明」という。)が記載されているといえる。
[甲2-1発明]
「他の回路基板と、
前記他の回路基板に半田付けされる接続部54と、基部52と、前記接続部54と前記基部52との間で湾曲して延びる第一U字状部51とを有する相手端子50と、
回路基板と、
前記回路基板上のパッドに半田付けされる内側接続部22Aと、前記内側接続部22Aを底部に形成する凹部とを有する端子20と、を備え、
前記相手端子50の前記第一U字状部51と、前記端子20の前記凹部とが嵌合されるように構成された、電気コネクタ1及び相手方コネクタ2。」
(4)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2-1発明とを対比する。
甲2-1発明の「他の回路基板」、「接続部54」、「第一U字状部51」、「相手端子50」、「回路基板」、「パッド」、「内側接続部22A」、「端子20」、及び「電気コネクタ1及び相手方コネクタ2」は、それぞれ本件発明1の「第1基板」、「第1実装部」、「凸部」、「第1内部端子」、「第2基板」、「第2導体」、「第3実装部」、「第2内部端子」、及び「電気コネクタセット」に相当する。
甲2-1発明の「他の回路基板」が導体回路パターン、すなわち、導体を有することは明らかであるから、甲2-1発明の「半田付けされる」とは、本件発明1の「導体に実装される」ことに相当する。甲2-1発明の「基部52」は、相手端子50の一部分(以下、この一部分を「所定の部分」という。)であることを踏まえれば、甲2-1発明の「前記他の回路基板に半田付けされる接続部54と、基部52と、前記接続部54と基部52との間で湾曲して延びる第一U字状部51とを有する相手端子50」は、本件発明1の「前記第1基板の前記第1導体に実装される第1実装部および第2実装部と、前記第1実装部と前記第2実装部との間で湾曲して延びる凸部とを有する第1内部端子」との対比において、「前記第1基板の前記第1導体に実装される第1実装部と、所定の部分と、前記第1実装部と前記所定の部分との間で湾曲して延びる凸部とを有する第1内部端子」との限度で一致する。
したがって、本件発明1と甲2-1発明との一致点及び相違点は次のとおりとなる。
[一致点ア]
「第1導体を有する第1基板と、
前記第1基板の前記第1導体に実装される第1実装部と、所定の部分と、前記第1実装部と前記所定の部分との間で湾曲して延びる凸部とを有する第1内部端子と、
第2導体を有する第2基板と、
前記第2基板の前記第2導体に実装される第3実装部と、前記第3実装部を底部に形成する凹部とを有する第2内部端子と、を備え、
前記第1内部端子の前記凸部と、前記第2内部端子の前記凹部とが嵌合されるように構成された、電気コネクタセット。」
[相違点ア]
「所定の部分」に関し、本件発明1では「前記第1基板の前記第1導体に実装される」「第2実装部」であるのに対し、甲2-1発明では「基部52」であって、他の回路基板に半田付けされていない点。
イ 判断
上記相違点アについて検討する。
甲第2号証の段落【0047】の「相手端子50は、帯状の金属板状片を板厚方向に屈曲して作られていて、該ハウジング40に一体モールド成形されて上記長手方向で配列保持されている。(以下、省略)」との記載、及び【図3】において、相手端子50の基部52がハウジング40の上壁41で覆われていることが見て取れることからすれば、相手端子50の一体モールド成型によって覆っている基部52上の樹脂からなる上壁41を削除し、露出した基部52を他の回路基板上の導体回路パターンに半田付けすることによって実装する実装部として構成する合理的な理由はないといえる。
この点に関し、申立人は、特許異議申立書において、「引用発明2では、コネクタ(1)の端子(20) において、基部(22)、特に、内側接続部(22A) が回路基板上に半田付けされ(段落0032)、外側接続部(24)が回路基板上に半田付けされる(段落0034)ことが明示されている。即ち、引用発明2を参照する当業者にとって、コネクタの端子を異なる2点で回路基板に実装することは、容易に想到することができる。また、引用発明3では、コネクタ(10)において、構成要件Bとして、ヘッダ側接続端子部(83、83)が第2の回路基板(140)の導体パターンに実装される(段落0066参照)ことが明示されている。引用発明4では、電気コネクタ装置(300)において、構成要件Bとして、テール部(253、253)が他の回路基板に実装される(段落0030、0080参照)ことが明示されている。このように、コネクタの端子を異なる2点で回路基板に実装することは、本件特許発明に係る特許出願の優先日前において、当業者にとって容易に想到することができる周知技術又は慣用技術である。従って、特許発明1の構成要素Bは、相違点2に拘わらず、引用発明2及び引用発明3や引用発明4等の周知技術又は慣用技術に基づいて、当業者が容易に想到することができる。」と主張する(第31頁第9~第22行)。
上記申立人の主張について検討する。
甲第2号証の段落【0009】の「コネクタ嵌合そして抜出の際に、端子の被保持部およびハウジングの側壁が相手コネクタの嵌入部から上記対向方向外側へ向けた押圧力を受けても、上記半田接続部分の損傷を防止可能な回路基板用電気コネクタを提供することを目的とする。」との記載、段落【0015】の「端子は、側壁の対向方向にて内側脚部よりも内側位置に、回路基板上に半田付けされる内側半田付部を有しているので、コネクタ嵌合そして抜出の際、相手コネクタからの押圧力に起因して、端子の内側脚部およびハウジングの側壁に上記対向方向外側へ向くモーメントが作用したとき、上記内側半田付部と回路基板との半田付け部分によって上記モーメントに対抗できる。この結果、端子の外側半田付部と回路基板との半田付け部分に作用する外力が小さくなり、該半田付け部分の損傷を防止できる。」との記載、及び段落【0065】の「第一内側脚部21Aの下端から上記短手方向内側へ向け延びる内側接続部22Aが該短手方向にて第一内側脚部21Aより内側に位置しているので、上記モーメントに対抗して、上記内側接続部22Aと回路基板との半田付け部分にて抗力が生じる。したがって、この抗力の分だけ、端子20の外側接続部24と回路基板との半田付け部分に作用する外力が小さくなるので、該半田付け部分の損傷を防止できる。」との記載からすれば、甲第2号証に記載のものの端子20は、第一内側脚部21Aの下端から内側へ向け延びる内側接続部22Aを第一内側脚部21Aより内側に設けることにより、相手端子50の第一U字状部51が、端子20のロック凹部21A-1およびロック突部23B-1との間に進入し、外側へ向けた押圧力が端子20の第一内側脚部21Aおよび側壁14の下部を支点として外側へ向くモーメントが生じた際、このモーメントに対抗して、端子20の外側接続部24と回路基板との半田付け部の損傷を防止するためであるといえる。
これに対し、相手端子50について、その第一U字状部51は、端子20のロック凹部21A-1およびロック突部23B-1との間に進入するものであることからすれば、第一U字状部51に接続部54の半田付けの損傷を生じさせるほどのモーメントが作用するとは認められない。してみると、相手端子50の基部52をモールド樹脂から露出させて(一体モールド成型時においてモールド樹脂に覆われないようにして)、モーメントに対抗する構成とする動機付けはないといえる。
また、甲第2号証の段落【0034】の「・・・該外側接続部24は、上記内側接続部22Aと相俟って回路基板へのコネクタ1の固定強度の向上に寄与する。」との記載からすれば、甲第2号証に記載のものの端子20は、回路基板への接続部を端子当たり2個所とすることによりコネクタ1の回路基板への固定強度を向上させているものであるともいえる。これに対し、甲第2号証に記載の相手方コネクタ2は、コネクタ1と同様の製造方法(樹脂による一体モールド成型)で製造される(段落【0024】)にもかかわらず、相手方コネクタ2の他の回路基板への固定手段である接続部を相手端子50当たり接続部54の1個所としていること、すなわち、相手端子50の他の回路基板への接続部を端子当たり2個所とすることが可能であったにもかかわらず、1個所にとどめていることからすれば、甲第2号証に記載のものは、相手端子50の基部52をモールド樹脂から露出させて(一体モールド成型時においてモールド樹脂に覆われないようにして)他の回路基板への接続部として構成しなくても、相手方コネクタ2の他の回路基板への固定強度を充分足りるものとすることができており、さらに、他の部分を回路基板への接続部とする必要性は無かったと解することができる。
以上のとおりであるから、、甲2-1発明において、相手端子50の「基部52」を他の回路基板への接続部として構成することは当業者が容易に想到することができたものということはできない。
このように、甲2-1発明において、相手端子50の基板の導体への実装部を2個所とする動機がそもそもないといえることからすれば、端子を複数部で屈曲することにより端子の基板の導体への実装部を2個所とする技術的事項が、甲第3号証、甲第4号証に記載されるように(上記(2)イ及びウ、参照。)、本件特許出願の優先日前に当業者にとって周知・慣用であったとしても、甲2-1発明において、相手端子50の「基部52」を他の回路基板への接続部として構成することは当業者が容易に想到することができたものということはできない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲2-1発明に基いて、または、甲2-1発明及び甲第3号証、甲第4号証に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
なお、甲第5号証にも、相違点に係る本件発明1の構成について容易想到であることを示すことは記載も示唆もされていない。
(5)本件発明2~6、8について
本件発明2~6、8は、本件発明1の発明特定事項を全て含み更に限定したものである。
本件発明1が上記(4)で述べたとおり、本件発明1は、甲2-1発明に基いて、または、甲2-1発明及び甲第3号証、甲第4号証に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明2~6、8も同様の理由により本件発明1は、甲2-1発明に基いて、または、甲2-1発明及び甲第3号証、甲第4号証に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(6)本件発明7について
ア 対比
本件発明7と甲2-1発明とを対比する。
上記(4)アを踏まえると、本件発明7と甲2-1発明とは、上記(4)アの一致点で一致し、次の相違点で相違する。
[相違点ア’]
「所定の部分」に関し、本件発明7では「前記第1基板の前記第1導体に実装される」「第2実装部であるのに対し、甲2-1発明では「基部52」であって、他の回路基板に半田付けされていない点。
[相違点イ]
本件発明7の「前記第1、第2導体」は、「電源に接続する導体であって、前記第1導体には、前記第1内部端子を2か所で実装させるように前記第1導体を分割するレジストが設けられている」のに対し、甲2-1発明の「接続部54」が半田付けされている「他の回路基板」の回路、「内側接続部22A」が半田付けされている「パッド」が電源に接続される導体であるとの特定はされていないし、他の回路基板の回路に、相手方端子50を2か所で半田付けさせるように回路を分割するレジストが設けられている、との特定もされていない点。
イ 判断
相違点ア’は相違点アと実質的に同じである。そうすると、相違点イについて検討するまでもなく、上記(4)イで述べたと同様の理由により、本件発明7は、甲2-1発明に基いて、または、甲2-1発明及び甲第3号証、甲第4号証に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
なお、甲第5号証にも、相違点ア’に係る本件発明7の構成について容易想到であることを示すことは記載も示唆もされていない。
第6 むすび
上記第4のとおり、請求項1~3、7、8に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであるから、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、上記第5の1(1)~(3)のとおり、請求項4~6に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものとはいえず、また、第5の2のとおり、請求項4~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものともいえない。
したがって、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由又は特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては請求項4~6に係る特許を取り消すことはできない。
さらに、他に請求項4~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-701215