審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2025-700712

石油プロセスにおける薬剤供給方法

審判番号
2025-700712
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-072636
登録番号
7692572
請求日
2025年07月10日
審決日
2026年03月31日
公報発行日
2026年04月24日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社片山化学工業研究所
  • 【権利者代理人】弁理士法人池内アンドパートナーズ
  • 【権利者】ナルコジャパン合同会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人池内アンドパートナーズ
  • 【異議申立人】松本 文彦
審判長/審判官
  • 審判長 遠藤 秀明
  • 審判官 西山 智宏
  • 審判官 八木 誠
分類
P1651.161-Y (C10G)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条の2
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7692572号発明「石油プロセスにおける薬剤供給方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7692572号の請求項1~7に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7692572号の請求項1~7に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、令和3年4月22日にした出願であって、令和7年6月6日に特許権の設定登録がされ、同年6月16日に特許掲載公報が発行された。その後、令和7年7月10日に、特許異議申立人松本文彦(以下「申立人」という。)は請求項1~7に係る特許に対して特許異議の申立てを行った。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~7に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明7」という。)は、それぞれその特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「 【請求項1】 石油精製プロセスにおける蒸留設備への界面活性剤の供給方法であって、 前記蒸留設備の操業をモニタリングすること、及び 前記モニタリングに基づき予測された、前記蒸留設備におけるアンモニウム塩及びアミン塩の少なくとも一方の析出箇所に応じて、前記界面活性剤の供給速度を制御することを含み、 前記界面活性剤は、窒素含有親水基を有する油溶性界面活性剤であり、 前記供給速度の制御は、前記アンモニウム塩及びアミン塩の少なくとも一方の析出箇所が蒸留塔内になると予測される場合、前記蒸留塔の塔頂に供給される界面活性剤の供給速度を増加させることを含む、方法。 【請求項2】 前記モニタリングは、蒸留塔内における温度、圧力、ナフサ流量、ナフサ比重、ナフサ蒸留特性、ドレン水量、ドレン水塩化物イオン濃度、ドレン水アンモニウムイオン濃度及びドレン水pHからなる群から選択される少なくとも1つ以上を測定することを含む、請求項1に記載の方法。 【請求項3】 前記界面活性剤を、1つの蒸留設備内に2カ所以上に供給することを含み、 前記制御は、前記1つの蒸留設備内の複数の供給箇所間における供給量のバランスをとるように前記界面活性剤の供給速度を制御することを含む、請求項1又は2に記載の方法。 【請求項4】 石油精製プロセスの蒸留設備における、原油に含まれる無機塩類に起因する汚れの堆積を抑制するための方法であって、 前記蒸留設備の操業をモニタリングすること、及び 前記モニタリングに基づき予測された、前記蒸留設備におけるアンモニウム塩及びアミン塩の少なくとも一方の析出箇所に応じて、界面活性剤の供給速度を制御することを含み、 前記界面活性剤は、窒素含有親水基を有する油溶性界面活性剤であり、 前記供給速度の制御は、前記アンモニウム塩及びアミン塩の少なくとも一方の析出箇所が蒸留塔内になると予測される場合、前記蒸留塔の塔頂に供給される界面活性剤の供給速度を増加させることを含む、方法。 【請求項5】 石油精製プロセスにおける蒸留設備の腐食を抑制するための方法であって、 前記蒸留設備の操業をモニタリングすること、及び 前記モニタリングに基づき予測された、前記蒸留設備におけるアンモニウム塩及びアミン塩の少なくとも一方の析出箇所に応じて、界面活性剤の供給速度を制御することを含み、 前記界面活性剤は、窒素含有親水基を有する油溶性界面活性剤であり、 前記供給速度の制御は、前記アンモニウム塩及びアミン塩の少なくとも一方の析出箇所が蒸留塔内になると予測される場合、前記蒸留塔の塔頂に供給される界面活性剤の供給速度を増加させることを含む、方法。 【請求項6】 石油精製プロセスにおける蒸留設備における原油に含まれる無機塩類に起因する汚れの堆積を抑制するための薬剤の自動供給システムであって、 前記薬剤を前記蒸留設備に供給するための供給ラインと 前記蒸留設備の操業をモニタリングするモニタリング部と、 前記供給ラインによる前記薬剤の供給速度を制御する制御部と、を備え、 前記制御部は、前記モニタリング部におけるモニタリング結果に基づいてアンモニウム塩及びアミン塩の少なくとも一方の析出箇所を予測し、それに応じて前記供給ラインによる前記薬剤の供給の制御を行うように構成されており、 前記供給速度の制御は、前記アンモニウム塩及びアミン塩の少なくとも一方の析出箇所が蒸留塔内になると予測される場合、前記蒸留塔の塔頂に供給される界面活性剤の供給速度を増加させることを含む、システム。 【請求項7】 請求項1~5のいずれかに記載の方法を行うための、請求項6記載のシステム。」 第3 特許異議申立理由の概要 申立人は、甲第1号証~甲第4号証(以下それぞれ「甲1」~「甲4」という。)を提出して、以下の申立理由により請求項1~7に係る特許を取り消すべきである旨主張する。 1 証拠方法 甲1:特開2021-94508号公報 甲2:国際公開第2006/032620号 甲3:米国特許第7585403号明細書 甲4:米国特許第5387733号明細書 2 特許異議申立理由(拡大先願) 本件発明1~7は、本件特許の出願の日前の特許出願であって、本件特許の出願後に出願公開がされた甲1に係る出願(特願2019-225908号。以下「先願」という。)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、請求項1~7に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである。 第4 当審の判断 1 甲号証の記載事項等 (1)先願(甲1に係る出願)について ア 記載事項 先願の当初明細書等には、以下の事項が記載されている。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、蒸留塔管理システム、蒸留塔状態分析方法及び蒸留塔管理方法に関する。 【背景技術】 【0002】 石油精製プロセス、石油化学プロセス又は石炭化学プロセス等の蒸留設備の蒸留塔では、塩化アンモニウムに代表される中和塩の析出により、プロセスの流れが妨げられることで設備使用効率の低下が問題となっている。また、析出した塩が吸湿することにより、設備内で激しい局所腐食が発生する問題がある。蒸留塔における塩などによる閉塞は所定の部位における圧力差(以下「差圧」という。)の増大等により確認される。 このような中、塩の析出(塩析)による差圧を解消する方法として、通常、昇華運転法や、塔内への洗浄水適用法が用いられている。 昇華運転法とは、蒸留塔の温度を上昇させることで、析出した塩を昇華させ、蒸留塔頂系へ排出する運転法のことである。昇華運転により、析出した塩を塔頂部より系外へと除去することができる。 洗浄水適用法は、蒸留塔のトップリフラックスライン及びトップポンプアラウンド等へ洗浄水を供給することにより、塩の析出部位に洗浄水を供給し、塩を溶解除去する処理法である。洗浄水の供給により、短時間で差圧の解消が可能である。 例えば、非特許文献1には、蒸留塔の温度を短期的に上昇させることで析出した塩を昇華させ、蒸留塔頂系へ排出する昇華運転法が記載されている。 また、例えば、特許文献1には、炭化水素油の蒸留処理において、蒸留塔に水を導入することで、塔内の水溶性塩類を除去する炭化水素油の蒸留方法が記載されている。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 従来、昇華運転法及び洗浄水適用法等の塩析による差圧を解消する方法は、蒸留塔の差圧の増大が確認され、その程度が問題ある状況に達していると判断された場合に実施される。つまり、蒸留塔における異常が顕在化した後でなければ対応されることがないため、対応が後手となり、処理量低下による損失や設備腐食の進行等の状況悪化を許してしまうという問題があった。差圧の上昇が確実であると確認されるまでには、場合によっては数日~数か月を要することもあり、この間に進行した腐食により進行した腐食や腐食生成物汚れは昇華運転で対応することができない。また、腐食生成物自体が高い腐食性を有するため、水洗浄時にさらなる設備の腐食を招いてしまう恐れがある。 また、塩除去剤や分散剤等を活用することにより、析出塩による差圧や腐食リスクは低減可能であるが、析出した塩によって腐食が既に進行してしまった場合には対応できない。 【0006】 本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、蒸留塔における異常が顕在化する前に予知することができ、予防処置を講じることができる蒸留塔管理システム、蒸留塔状態分析方法及び蒸留塔管理方法を提供することを課題とする。 【課題を解決するための手段】 【0007】 上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究した結果、蒸留塔の運転情報を入手し、運転情報の変化を分析することで異常の予兆を検知できることを見出した。 本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。」 「【0012】 [蒸留塔管理システム] 本実施形態に係る蒸留塔管理システム1は、図1に示すように、測定部10と、運転データ部20と、分析部30と、制御部40とを備える。 蒸留塔管理システム1の構成要素は、通信ネットワーク50で接続され、通信ネットワーク50を介してデータのやり取りが行われる。通信ネットワーク50は、例えば、有線又は無線のLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット、イントラネット及び専用線等である。蒸留塔管理システム1の構成要素が通信ネットワーク50で接続されていることでIoT(Internet of Things)により、遠隔制御、遠隔監視及びデータ送受信等を行うことができ、構成要素を相互に制御することを可能とする。」 「【0016】 <測定部> 測定部10は、蒸留塔103の高さ方向における異なる複数箇所の圧力を測定する圧力測定部11、蒸留塔103の塔頂部温度を測定する温度測定部12、及び、蒸留塔103に供給される供給塩素量と蒸留塔103から排出される排出塩素量を測定する塩素測定部13からなる群から選ばれる少なくとも1つである。つまり、測定部10によって測定する測定データは、圧力測定部11、温度測定部12及び塩素測定部13からなる群から選ばれる少なくとも1つから得られる。 以下に、圧力測定部11、温度測定部12及び塩素測定部13について詳細に説明する。 【0017】 《圧力測定部》 圧力測定部11は、蒸留塔103の高さ方向における異なる複数箇所の圧力を測定し、蒸留塔103における各箇所の圧力を取得する。圧力測定部11は、蒸留塔103の任意の箇所で圧力を測定することで、蒸留塔103内の任意の箇所の圧力を取得することができ、例えば、蒸留塔103の塔頂部での圧力、並びに、第1サイドリフラックス131、第2サイドリフラックス132及び第3サイドリフラックス133等の複数備えるサイドリフラックスの少なくともいずれかの上部又は下部圧力を取得することができる。圧力測定部11は、蒸留塔103内の圧力を直接測定する構成であってもよく、塔内圧力と相関する圧力を取得する構成であってもよい。圧力測定部11は、蒸留塔103の圧力を連続的に取得してもよく、断続的に取得してもよい。 圧力測定部11としては、例えば、歪みゲージ式の圧力センサ等を用いることができる。 また、圧力測定部11として取得する圧力は、推定値でもよい。 【0018】 《温度測定部》 温度測定部12は、好ましくは蒸留塔103の塔頂部近傍に設けられ、塔頂部温度を測定する。温度測定部12は、蒸留塔103内の温度を直接測定する構成であってもよく、塔頂部温度と相関する温度(例えば、熱交換器111B,111Cの前後の温度)を取得する構成であってもよい。温度測定部12は、蒸留塔103の塔頂部温度を連続的に取得してもよく、断続的に取得してもよい。 温度測定部12としては、例えば、熱電対等の温度センサを用いることができる。 また、温度測定部12として取得する塔頂部温度は、推定値でもよい。 【0019】 《塩素測定部》 塩素測定部13は、原料油を蒸留塔103に供給するライン102に設けられ、蒸留塔103に供給される供給塩素量を測定する。また、塩素測定部13は、ナフサ留分及びガス留分を蒸留塔103の塔頂部から排出するライン104、及び/又は、ドレン水を排出する排水部110に設けられ、蒸留塔103から排出される排出塩素量を測定する。塩素測定部13は、供給塩素量及び排出塩素量を連続的に取得してもよく、断続的に取得してもよい。 塩素測定部13としては、供給塩素量及び排出塩素量を測定することができるものであればよく、例えば、原料油及びドレン水のそれぞれから塩素量を測定する方法、及び、供給塩素量及び排出塩素量をX線分析等によって測定する方法などが挙げられる。 【0020】 <運転データ部> 運転データ部20は、測定部10によって測定した測定データを含む運転データを作成する。 測定部10が圧力測定部11である場合、運転データ部20は、蒸留塔103の部位間における差圧に関する差圧データ200を含む運転データを作成する。 差圧データ200は、圧力測定部11によって測定した蒸留塔103における部位間のそれぞれの圧力の差分を算出することで得られる。例えば、第1サイドリフラックス131における差圧データ200は、蒸留塔103の塔頂部の圧力と第1サイドリフラックス131の下部圧力を取得し、取得したこれら圧力の差分から求めることができる。 差圧データ200は、差圧を求めた個所を通過するプロセス流体量で補正した値である補正差圧であることが好ましい。 差圧データ200における推移は、連続的なデータに基づくものであってもよく、断続的なデータに基づくものであってもよい。 【0021】 測定部10が温度測定部12である場合、運転データ部20は、温度測定部12で測定した塔頂部温度と算出して得る塩析温度との温度差に関する温度差データ201を含む運転データを作成する。 温度差データ201は、塔頂部温度と塩析温度との差分を算出することで得られる。 Calculations estimate process stream depositions (Oil & Gas Journal Jan 3, 1994, P.38 - 41)に準拠して算出してもよい。 【0022】 測定部10が塩素測定部13である場合、運転データ部20は、塩素測定部13で測定した供給塩素量と排出塩素量との塩素量差に関する塩素量差データ202を含む運転データを作成する。 塩素量差データ202は、蒸留塔103に供給される供給塩素量と蒸留塔103から排出される排出塩素量との差分を算出することで得られる。 【0023】 <分析部> 分析部30は、運転データから蒸留塔103の状態を分析し、蒸留塔103の状態に関する分析データ300を作成する。分析部30は、蒸留塔103の状態として、例えば、塩析の有無を分析する。 分析部30は、差圧データ200から得られる差圧推移から将来の差圧の予測推移を分析することができる。差圧データ200から得られる差圧推移は、単位時間あたりの差圧の変化の値によって把握してもよく、差圧データ200から得られる差圧推移をグラフ化して把握してもよい。分析部30によって、差圧データ200を含む運転データを用いて分析して作成した分析データ300の一例を図2に示す。図2は、横軸が運転日数とし、縦軸が差圧としたグラフである。つまり、図2は、差圧推移を示すグラフである。分析部30は、現在までに得られた差圧推移に基づいて、移動平均、指数平均、直線近似、非直線近似、多変量解析及びその他自由設定値の群からなる少なくとも1つを実施することで、現在までに得られた差圧推移から将来の差圧の予測推移を分析する。具体的には、分析部30は、差圧データ200から得られる差圧推移を示すグラフの傾きから将来の差圧の予測推移を分析する。そして、分析部30は、蒸留塔103の運転に支障が出る状態であると設定した上限差圧に、分析して得られた予測推移が達するかについての予測を実施する。 差圧推移から将来の差圧の予測推移を分析した結果、例えば、上限差圧に達することが予測される期間が運転の目的期間を超える場合、良好である「A評価」とする。「A評価」の場合には、蒸留塔103の運転仕様(差圧解消剤の種類及び差圧解消剤の添加量等)の変更を推奨しない。一方、差圧推移から将来の差圧の予測推移を分析した結果、例えば、上限差圧に達することが予測される期間が運転の目的期間より短くなる虞がある場合は要注意である「B評価」とし、目的期間より短くなることが濃厚である場合は要対策である「C評価」とする。「B評価」又は「C評価」の場合には、蒸留塔103の運転仕様の変更を推奨する。 なお、将来の差圧の予測推移は、機械学習またはディープラーニングによって学習して得た結果を利用することでより精度を高めることができる。 【0024】 分析部30は、温度差データ201から得られる塔頂部温度と塩析温度との温度差推移から将来の温度差の予測推移を分析することができる。温度差データ201から得られる温度差推移は、単位時間あたりの温度差の変化の値によって把握してもよく、温度差データ201から得られる温度差推移をグラフ化して把握してもよい。分析部30によって、温度差データ201を含む運転データを用いて分析して作成した分析データ300の一例を図3に示す。図3は、横軸が運転日数とし、縦軸が温度としたグラフである。つまり、図3は、塔頂部温度と塩析温度との温度差推移を示すグラフである。分析部30は、現在までに得られた温度差推移に基づいて、移動平均、指数平均、直線近似、非直線近似、多変量解析及びその他自由設定値の群からなる少なくとも1つを実施することで、現在までに得られた温度差推移から将来の温度差の予測推移を分析する。具体的には、分析部30は、温度差データ201から得られる温度差推移を示すグラフの傾きから将来の温度差の予測推移を分析する。そして、分析部30は、塔頂部温度が塩析温度を下回る場合に蒸留塔103の運転に支障が出る状態であると設定し、分析して得られた予測推移において、塔頂部温度が塩析温度を下回るかについての予測を実施する。 温度差推移から将来の温度差の予測推移を分析した結果、例えば、塔頂部温度が塩析温度を下回る予測の場合、良好である「A評価」とする。「A評価」の場合には、蒸留塔103の運転仕様(差圧解消剤の種類及び差圧解消剤の添加量等)の変更を推奨しない。一方、温度差推移から将来の温度差の予測推移を分析した結果、例えば、塔頂部温度が塩析温度に達する虞がある予測の場合は要注意である「B評価」とし、塔頂部温度が塩析温度に達することが濃厚である予測の場合は要対策である「C評価」とする。「B評価」又は「C評価」の場合には、蒸留塔103の運転仕様の変更を推奨する。 なお、将来の温度差の予測推移は、機械学習またはディープラーニングによって学習して得た結果を利用することでより精度を高めることができる。 【0025】 分析部30は、塩素量差データ202から得られる供給塩素量と排出塩素量との塩素量差推移から将来の塩素差の予測推移を分析することができる。塩素量差データ202から得られる塩素差推移は、単位時間あたりの塩素差の変化の値によって把握してもよく、塩素差データ202から得られる塩素差推移をグラフ化して把握してもよい。分析部30によって、塩素量差データ202を含む運転データを用いて分析して作成した分析データ300の一例を図4に示す。図4は、横軸が運転日数とし、縦軸が塩素量としたグラフである。つまり、図4は、供給塩素量と排出塩素量との塩素量差推移を示すグラフである。分析部30は、現在までに得られた塩素量差推移に基づいて、移動平均、指数平均、直線近似、非直線近似、多変量解析及びその他自由設定値の群からなる少なくとも1つを実施することで、現在までに得られた塩素量差推移から将来の塩素量差の予測推移を分析する。具体的には、分析部30は、塩素量差データ202から得られる塩素量差推移を示すグラフの傾きから将来の塩素量差の予測推移を分析する。そして、分析部30は、供給塩素量と排出塩素量との塩素量差が一定値以上となる場合に蒸留塔103の運転に支障が出る状態であると設定し、分析して得られた予測推移において、供給塩素量と排出塩素量との塩素量差が一定値以上となるかについての予測を実施する。 塩素差推移から将来の温度差の予測推移を分析した結果、例えば、供給塩素量と排出塩素量との塩素量差が一定値を下回る予測の場合、良好である「A評価」とする。「A評価」の場合には、蒸留塔103の運転仕様(差圧解消剤の種類及び差圧解消剤の添加量等)の変更を推奨しない。一方、塩素差推移から将来の温度差の予測推移を分析した結果、例えば、供給塩素量と排出塩素量との塩素量差が一定値に達する虞がある場合は要注意である「B評価」とし、供給塩素量と排出塩素量との塩素量差が一定値に達することが濃厚である場合は要対策である「C評価」とする。「B評価」又は「C評価」の場合には、蒸留塔103の運転仕様の変更を推奨する。 なお、将来の塩素量差の予測推移は、機械学習またはディープラーニングによって学習して得た結果を利用することでより精度を高めることができる。 【0026】 <制御部> 制御部40は、分析データ300に基づいて、蒸留塔103に添加する差圧解消剤に関する制御データ400を作成する。制御データ400は、蒸留塔103に添加する差圧解消剤の種類及び差圧解消剤の添加量を含むデータである。 分析データ300において蒸留塔103の運転に支障が出る状態にならないと予測されている場合、制御部40は、蒸留塔103に添加する差圧解消剤の種類及び差圧解消剤の添加量を維持する制御データ400を作成する。一方、分析データ300において蒸留塔103の運転に支障が出る状態になると予測がある場合、制御部40は、蒸留塔103に添加する差圧解消剤の種類を変更する、及び/又は、差圧解消剤の添加量を増加する制御データ400を作成する。 制御部40は、制御データ400を差圧解消剤タンク120に送信し、制御データ400に基づいて、蒸留塔103に差圧解消剤を添加する。 なお、本発明の蒸留塔管理システム1は、制御データに基づいて蒸留塔103に差圧解消剤を添加する差圧解消剤添加部(図示せず)を備える構成であってもよい。 【0027】 差圧解消剤は、塩除去剤及び塩分散剤の少なくとも1つであることが好ましい。差圧解消剤の対象となる塩の種類としては、特に限定されないが、例えば、塩化アンモニウム、水硫化アンモニウム、硫酸アンモニウム等が挙げられる。 塩除去剤は、析出した塩を中和塩にする薬剤である。塩除去剤としては、第4級アンモニウム化合物であることが好ましい。第4級アンモニウム化合物は、特に限定されないが、ヒドロキシメチルトリメチルアンモニウムハイドロオキサイド、ヒドロキシメチルトリエチルアンモニウムハイドロオキサイド、ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムハイドロオキサイド、(2-ヒドロキシエチル)トリエチルアンモニウムハイドロオキサイド、(3-ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウムハイドロオキサイド等の1種又は2種以上であってよい。中でも、(2-ヒドロキシエチル)トリエチルアンモニウムハイドロオキサイド(以下、「コリンハイドロオキサイド」という。)が好ましく、コリンハイドロオキサイド単独で用いても、コリンハイドロオキサイドと他の有機アミン等のアルカリ性物質とを併用してもよい。 塩分散剤は、塩を流体に懸濁したものとして維持し、沈殿又は付着を防止する薬剤である。塩分散剤としては、例えば、国際公開第2006/032620号、米国特許第7585403号明細書及び米国特許第5387733号明細書に記載の塩分散剤を用いることができる。 【0028】 差圧解消剤を蒸留塔103に添加(注入)する位置は、特に限定されないが、析出した塩を蒸留塔103の系外に短時間に排出する観点から、常圧蒸留装置のトップリフラックスのライン(塔の最も高い位置に塔頂系より還流するプロセス流体)、トップポンプアラウンドの戻りライン(重質ナフサ,ガソリン留分に相当する留分;循環・冷却されるプロセス流体)、又はトップポンプアラウンドの抜出ライン(重質ナフサ,ガソリン留分に相当する留分;循環・冷却されるプロセス流体)に、添加(注入)することが好ましく、トップフラックスのラインがさらに好ましい。また、差圧解消剤の添加(注入)する位置は、いずれかのラインを組み合わせて、複数ラインにしてもよい。 例えば、図1において、差圧解消剤は、以下、差圧解消剤注入ライン121a、121b又は121cのいずれかのラインまたは複数のラインに対し添加(注入)することが好ましい。 差圧解消剤注入ライン121a:トップリフラックスの流体 差圧解消剤注入ライン121b:トップポンプアラウンドの戻りの流体 差圧解消剤注入ライン121c:トップポンプアラウンドの抜出の流体 注入ラインでは、プロセス流体への分散性の観点から、クイルノズルを使用することが好ましい。 【0029】 [蒸留塔状態分析方法] 本実施形態に係る蒸留塔状態分析方法は、図5に示すように、測定工程S1と、運転データ作成工程S2と、分析データ作成工程S3とを含むことを特徴とする。以下に、本実施形態に係る蒸留塔管理方法を図1及び図5を参照して説明する。 【0030】 <測定工程> 測定工程S1において、蒸留塔103の高さ方向における異なる複数箇所の圧力を圧力測定部11で測定する圧力測定工程S10、蒸留塔103の塔頂部温度を温度測定部12で測定する温度測定工程S11、及び、蒸留塔103に供給される供給塩素量と蒸留塔103から排出される排出塩素量を塩素測定部13で測定する塩素測定工程S12からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む。 【0031】 《圧力測定工程》 測定工程S1において、圧力測定工程S10を含む場合、具体的には、圧力測定部11によって、蒸留塔103の塔頂部での圧力、並びに、第1サイドリフラックス131、第2サイドリフラックス132及び第3サイドリフラックス133等の複数備えるサイドリフラックスの少なくともいずれかの下部圧力を測定する。圧力測定部11による圧力の測定方法としては、蒸留塔103内の圧力を直接測定する方法であってもよく、塔内圧力と相関する圧力を測定する方法であってもよい。圧力測定部11による圧力の測定は、蒸留塔103の圧力を連続的に測定してもよく、断続的に測定 してもよい。 圧力測定部11は、ネットワーク50を介して記憶部(図示せず)に測定した圧力を記憶させる。記憶部としては、例えば、ROM、RAM及びハードディスク等の記憶媒体を用いることができる。圧力測定部11が通信ネットワーク50で接続されていることでIoT(Internet of Things)により、遠隔制御、遠隔監視及びデータ送受信等を行うことができ、測定した圧力を利用して、蒸留塔管理システム1の構成要素が相互に情報交換することを可能とする。 【0032】 《温度測定工程》 測定工程S1において、温度測定工程S11を含む場合、具体的には、蒸留塔103の塔頂部に設けられた温度測定部12によって、蒸留塔103の塔頂部温度を測定する。温度測定部12による温度の測定方法としては、蒸留塔103内の温度を直接測定する方法であってもよく、塔頂部温度と相関する温度(例えば、熱交換器111B,111Cの前後の温度)を測定する方法であってもよい。また、温度測定部12によって取得する塔頂部温度は、推定値でもよい。温度測定部12による温度の測定は、蒸留塔103の塔頂部温度を連続的に測定してもよく、断続的に測定してもよい。 温度測定部12は、ネットワーク50を介して記憶部(図示せず)に測定した温度を記憶させる。 【0033】 《塩素測定工程》 測定工程S1において、塩素測定工程S12を含む場合、具体的には、原料油を蒸留塔103に供給するライン102に設けられた塩素測定部13によって、蒸留塔103に供給される供給塩素量を測定する。また、ナフサ留分及びガス留分を蒸留塔103の塔頂部から排出するライン104、及び/又は、ドレン水を排出する排水部110に設けられた塩素測定部13によって、蒸留塔103から排出される排出塩素量を測定する。塩素測定部13による供給塩素量及び排出塩素量の測定は、連続的に測定してもよく、断続的に測定してもよい。 塩素測定部13は、ネットワーク50を介して記憶部(図示せず)に測定した供給塩素量及び排出塩素量を記憶させる。 【0034】 <運転データ作成工程> 運転データ作成工程S2において、測定工程S1によって測定された測定データを含む運転データを運転データ部20で作成する。 【0035】 《差圧データ作成工程》 測定工程S1において圧力測定工程S10を含む場合、運転データ作成工程S2は、蒸留塔103の部位間における差圧に関する差圧データ200を含む運転データを運転データ部20で作成する差圧データ作成工程S20を含む。 具体的には、まず、運転データ部20は、記憶部に記憶されている測定工程S1で測定した圧力に関するデータを取得する。 次いで、運転データ部20は、測定工程S1で測定した蒸留塔103における部位間のそれぞれの圧力の差分を算出することで差圧データ200を作成する。このとき、運転データ部20は、差圧データ200を、差圧試算個所を通過するプロセス流体量で補正した補正差圧を差圧データ200とすることが好ましい。運転データ部20は、差圧データ200における推移を作成するに当たり、連続的なデータに基づくものであってもよく、断続的なデータに基づくものであってもよい。 運転データ部20は、ネットワーク50を介して記憶部(図示せず)に作成した差圧データ200を記憶させる。 【0036】 《温度差データ作成工程》 測定工程S1において温度測定工程S11を含む場合、運転データ作成工程S2は、塔頂部温度と算出して得る塩析温度との温度差に関する温度差データ201を含む運転データを作成する温度差データ作成工程S21を含む。 具体的には、運転データ部20は、記憶部に記憶されている温度測定工程S11で測定した塔頂部温度に関するデータを取得する。 次いで、運転データ部20は、塩析温度を塔頂部圧力、酸(例えば、塩化物)のモル流量、塩基(アンモニア及びアミン類)のモル流量、プロセスのモル流体量及びプロセスの圧力値に基づいて算出する。なお、酸のモル流量及び塩基のモル流量は、固定値を使用してもよく、塔頂ドレン水の分析値、又はセンサ読み取り値から試算してもよい。また、プロセスのモル流体量及びプロセスの圧力値は、実機既設のセンサ読み取り値を使用することができる。 次いで、運転データ部20は、塔頂部温度と塩析温度との差分を算出することで温度差データ201を作成する。 運転データ部20は、ネットワーク50を介して記憶部(図示せず)に作成した温度差データ201を記憶させる。 【0037】 測定工程S1において塩素測定工程S12を含む場合、運転データ作成工程S2は、供給塩素量と排出塩素量との塩素量差に関する塩素量差データ202を含む運転データを作成する塩素量差データ作成工程S22を含む。 具体的には、運転データ部20は、記憶部に記憶されている塩素測定工程S12で測定した供給塩素量及び排出塩素量に関するデータを取得する。 次いで、運転データ部20は、蒸留塔103に供給される供給塩素量と蒸留塔103から排出される排出塩素量との差分を算出することで塩素量差データ202を作成する。 運転データ部20は、ネットワーク50を介して記憶部(図示せず)に作成した塩素量差データ202を記憶させる。 【0038】 <分析データ作成工程> 分析データ作成工程S3において、運転データから蒸留塔103の状態を分析し、蒸留塔103の状態に関する分析データ300を分析部30で作成する。分析データ作成工程S3において、蒸留塔103の状態として、例えば、塩析の有無を分析部30で分析した分析データ300を作成する。 分析データ作成工程S3において、差圧データ200を含む運転データを用いて分析する場合について説明する。 まず、分析部30は、記憶部に記憶されている運転データ作成工程S2で作成された差圧データ200を含む運転データを取得する。 次いで、分析部30は、差圧データ200を含む運転データに基づいて、差圧データ200から得られる差圧推移から将来の差圧の予測推移を分析する。分析部30は、例えば、差圧データ200を含む運転データに基づいて、図2に示すような、差圧推移を示すグラフを作成し、差圧推移を示すグラフから将来の差圧の予測推移を分析する。具体的には、分析部30は、差圧データ200から得られる差圧推移を示すグラフの傾きから将来の差圧の予測推移を分析する。そして、分析部30は、蒸留塔103の運転に支障が出る状態であると設定した上限差圧に、分析して得られた予測推移が達するか否かを判断し、判断結果を含んだ分析データ300を作成する。 分析部30は、ネットワーク50を介して記憶部(図示せず)に作成した分析データ300を記憶させる。 【0039】 分析データ作成工程S3において、温度差データ201を含む運転データを用いて分析する場合について説明する。 まず、分析部30は、記憶部に記憶されている運転データ作成工程S2で作成された温度差データ201を含む運転データを取得する。 次いで、分析部30は、温度差データ201を含む運転データに基づいて、温度差データ201から得られる温度差推移から将来の温度差の予測推移を分析する。分析部30は、例えば、温度差データ201を含む運転データに基づいて、図3に示すような、温度差推移を示すグラフを作成し、温度差推移を示すグラフから将来の温度差の予測推移を分析する。具体的には、分析部30は、温度差データ201から得られる温度差推移を示すグラフの傾きから将来の温度差の予測推移を分析する。そして、分析部30は、塔頂部温度が塩析温度を下回る場合に蒸留塔103の運転に支障が出る状態であると設定し、分析して得られた予測推移において、塔頂部温度が塩析温度を下回るか否かを判断し、判断結果を含んだ分析データ300を作成する。 分析部30は、ネットワーク50を介して記憶部(図示せず)に作成した分析データ300を記憶させる。 【0040】 分析データ作成工程S3において、塩素量差データ202を含む運転データを用いて分析する場合について説明する。 まず、分析部30は、記憶部に記憶されている運転データ作成工程S2で作成された塩素量差データ202を含む運転データを取得する。 次いで、分析部30は、塩素量差データ202を含む運転データに基づいて、塩素量差データ202から得られる塩素量差推移から将来の温度差の予測推移を分析する。分析部30は、例えば、塩素量差データ202を含む運転データに基づいて、図4に示すような、塩素量差推移を示すグラフを作成し、塩素量差推移を示すグラフから将来の温度差の予測推移を分析する。具体的には、分析部30は、塩素量差データ202から得られる塩素量差推移を示すグラフの傾きから将来の塩素量差の予測推移を分析する。そして、分析部30は、供給塩素量と排出塩素量との塩素量差が一定値以上となる場合に蒸留塔103の運転に支障が出る状態であると設定し、分析して得られた予測推移において、供給塩素量と排出塩素量との塩素量差が一定値以上となるか否かを判断し、判断結果を含んだ分析データ300を作成する。 分析部30は、ネットワーク50を介して記憶部(図示せず)に作成した分析データ300を記憶させる。 【0041】 [蒸留塔管理方法] 本実施形態に係る蒸留塔管理方法は、図6に示すように、測定工程S1と、運転データ作成工程S2と、分析データ作成工程S3と、制御データ作成工程S4とを含むことを特徴とする。以下に、本実施形態に係る蒸留塔管理方法を図1及び図6を参照して説明する。 なお、測定工程S1、運転データ作成工程S2及び分析データ作成工程S3は、上述した蒸留塔状態分析方法と同様であるため、記載を省略する。 【0042】 <制御データ作成工程> 制御データ作成工程S4において、分析データ300に基づいて、蒸留塔103に添加する差圧解消剤に関する制御データ400を制御部40で作成する。 具体的には、まず、制御部40は、記憶部に記憶されている分析データ作成工程S3で作成された分析データ300を取得する。 次いで、制御部40は、分析データ300において蒸留塔103の運転に支障が出る状態にならないと予測されているか否かを判断する。そして、制御部40は、分析データ300において蒸留塔103の運転に支障が出る状態にならないと予測されている場合、蒸留塔103に添加する差圧解消剤の種類及び差圧解消剤の添加量を維持する制御データ400を作成する。また、制御部40は、分析データ300において蒸留塔103の運転に支障が出る状態になると予測がある場合、蒸留塔103に添加する差圧解消剤の種類を変更する、及び/又は、差圧解消剤の添加量を増加する制御データ400を作成する。 次いで、制御部40は、制御データ400を差圧解消剤タンク120に送信し、制御データ400に基づいて、蒸留塔103に差圧解消剤を添加する。差圧解消剤は、塩除去剤及び塩分散剤の少なくとも1つであることが好ましい。」 「【図1】 [図:0001434178000001.jpg] 」 「【図5】 [図:0001434178000002.jpg] 」 「【図6】 [図:0001434178000003.jpg] 」 イ 先願発明1 上記アを踏まえると、先願の当初明細書等には、次の発明(以下「先願発明1」という。)が記載されていると認められる。 「石油精製プロセスの蒸留設備に塩化アンモニウムの沈殿又は付着を防止する塩分散剤である差圧解消剤を添加し、設備腐食の予防措置を講じることができる蒸留塔管理方法であって、 蒸留塔103における複数箇所の圧力を測定し、蒸留塔103の塔頂部温度を測定し、蒸留塔103に供給される供給塩素量及び蒸留塔103から排出される排出塩素量を測定すること、及び 測定部10によって測定した測定データを含む運転データを作成し、運転データから蒸留塔103の塩化アンモニウムの塩析の有無に関する分析データ300を作成し、分析データ300において蒸留塔103の運転に支障が出る状態になると予測がある場合、差圧解消剤の添加量を増加することを含み、 差圧解消剤の添加量を増加することは、塩化アンモニウムの塩析が蒸留塔103の運転に支障が出る状態になると予測がある場合、常圧蒸留装置のトップリフラックスのライン、トップポンプアラウンドの戻りライン、又はトップポンプアラウンドの抜出ラインに添加する差圧解消剤の添加量を増加することを含む、蒸留塔管理方法。」 ウ 先願発明2 上記アを踏まえると、先願の当初明細書等には、次の発明(以下「先願発明2」という。)が記載されていると認められる。 「石油精製プロセスの蒸留設備に塩化アンモニウムの沈殿又は付着を防止する塩分散剤である差圧解消剤を添加する蒸留塔管理システムであって、 差圧解消剤を蒸留塔103に添加する差圧解消剤注入ライン121a、121b、121cと 蒸留塔103における複数箇所の圧力を測定する圧力測定部11、蒸留塔103の塔頂部温度を測定する温度測定部12、及び、蒸留塔103に供給される供給塩素量及び蒸留塔103から排出される排出塩素量を測定する塩素測定部13からなる測定部10と、 差圧解消剤注入ライン121a、121b、121cに添加する差圧解消剤の添加量を増加する制御部40と、を備え、 運転データ部20は、測定部10によって測定した測定データを含む運転データを作成し、分析部30は、運転データから蒸留塔103の塩化アンモニウムの塩析の有無に関する分析データ300を作成し、制御部40は、分析データ300において蒸留塔103の運転に支障が出る状態になると予測がある場合、差圧解消剤注入ライン121a、121b、121cに添加する差圧解消剤の添加量を増加するように構成されており、 差圧解消剤の添加量を増加することは、塩化アンモニウムの塩析が蒸留塔103の運転に支障が出る状態になると予測がある場合、常圧蒸留装置のトップリフラックスのライン、トップポンプアラウンドの戻りライン、又はトップポンプアラウンドの抜出ラインに添加する差圧解消剤の添加量を増加することを含む、蒸留塔管理システム。」 (2)甲2について ア 記載事項 甲2には、以下の事項が記載されている(翻訳文は申立人が提出した翻訳文に基づいて合議体が作成した。以下同様。)。 「CLAIMS 1. Use of N-alkyl-1, 3-diaminopropane with the formula R-NH- (CH2) 3-NH2 (1) where R represents a straight C8 through C18 alkyl chain, as dispersing agent to prevent the formation of, or to remove already formed deposits of ammonium salt in a hydrocarbon process plant.」(19頁1~9行) (翻訳文:請求項 1.式 R-NH-(CH2)3-NH2 (1) (ここで、Rは直鎖のC8からC18のアルキル基を表す)を有するN-アルキル-1,3-ジアミノプロパンを、炭化水素処理プラントにおけるアンモニウム塩の堆積物の形成を防止するため、または既に形成された堆積物を除去するための分散剤として使用すること。) (3)甲3について ア 記載事項 甲3には、以下の事項が記載されている。 「1. A method of preventing the formation of and removing already formed deposits of ammonium salts, amine salts or mixtures of ammonium salts and amine salts in a hydrocarbon process plant consisting of introducing into said plant as the sole agent to prevent the formation of and to remove already formed deposits of ammonium and/or amine salts and/or their mixtures an N-alkyl-1,3-diaminopropane of formula R-NH-(CH2)3-NH2 (1) where R represents a straight C8 through C18 alkyl chain, in a dispersing quantity sufficient to prevent the formation of said deposits, if not present, and to remove said deposits, if present.」(10欄12~25行) (翻訳文:1.炭化水素処理プラントにおいて、アンモニウム塩、アミン塩、またはアンモニウム塩とアミン塩の混合物の形成を防止し、かつ既に形成された堆積物を除去する方法であって、 前記プラントにおいて、アンモニウム塩および/またはアミン塩および/またはそれらの混合物の形成防止および既に形成された堆積物の除去のための唯―の剤として、次式(1)で表されるN-アルキル-1,3-ジアミノプロパンを分散量で導入することを特徴とする方法。 R-NH- (CH2)3-NH2 (1) ここで、Rは直鎖のC8からC18までのアルキル鎖を表し、前記分散量は、堆積物が存在しない場合にはその形成を防止するのに十分な量であり、存在する場合には当該堆積物を除去するのに十分な量である。) (4)甲4について ア 記載事項 甲4には、以下の事項が記載されている。 「1. A method for inhibiting the deposition of ammonium chloride on the internal surfaces of refinery equipment which processes liquid hydrocarbon at elevated temperatures comprising adding to the liquid hydrocarbon an effective deposition inhibiting amount of a non-filming polyamine having the structure: R2N-[(CHR')xNH]y-H where R=H or C1-C6 alkyl or -[(CHR')xNH]y-H R'=H or C1-C6 alkyl or -[(CHR')xNH]y-H x=2,3 y=1-6.」(4欄4~15行) (翻訳文:1.液体炭化水素を高温で処理する製油所設備の内部表面における塩化アンモニウムの堆積を抑制する方法であって、液体炭化水素に以下の構造を有する非フィルム形成性ポリアミンの堆積抑制に有効な量を添加することを含む方法: R2N-[(CHR')xNH]y-H ここで、 R=H又はC1-C6 alkyl又は-[(CHR')xNH]y-H R'=H又はC1-C6 alkyl又は-[(CHR')xNH]y-H x=2,3 y=1-6。) 2 申立理由(拡大先願)について (1)本件発明1について ア 対比 (ア)本件発明1と先願発明1とをその機能、構成及び技術的意義を考慮して対比すると、後者の「石油精製プロセス」は前者の「石油精製プロセス」に相当し、以下同様に、 「蒸留設備」は「蒸留設備」に、 「添加」は「供給」に、 「蒸留塔管理方法」は「方法」に、 「蒸留塔103における複数箇所の圧力を測定し、蒸留塔103の塔頂部温度を測定し、蒸留塔103に供給される供給塩素量及び蒸留塔103から排出される排出塩素量を測定すること」は「前記蒸留設備の操業をモニタリングすること」に、 「塩化アンモニウム」は「アンモニウム塩及びアミン塩の少なくとも一方」に、 「塩析」は「析出」に、 「予測がある」ことは「予測され」ることに、それぞれ相当する。 (イ)本件特許の【0017】の「これに対し、本開示で使用する窒素含有親水基を有する油溶性界面活性剤であれば、アンモニウム塩をプロセス流体に分散させた状態で系外に排出される。このため、目的の個所の汚れ(汚れの堆積)の防止を行うことができることのみならず、防食皮膜としての効果も有することから後段の設備への腐食を抑制できるという効果を奏しうる。さらに、窒素含有親水基を有する油溶性界面活性剤は、アンモニウム塩が凝集した状態であっても、アンモニウム塩に吸着してアンモニウム塩を分散状態とすることができ、これによりアンモニウム塩に起因する汚れの堆積をさらに抑制することができうる。」の記載を参酌すると、本件発明1における「界面活性剤」は「アンモニウム塩を分散状態と」し、「アンモニウム塩に起因する汚れの堆積を」「抑制する」ものである。してみると、先願発明1の「塩化アンモニウムの沈殿又は付着を防止する塩分散剤である差圧解消剤」は本件発明1の「界面活性剤」に相当すると認められる。そして、上記(ア)を踏まえると、先願発明1の「石油精製プロセスの蒸留設備に塩化アンモニウムの沈殿又は付着を防止する塩分散剤である差圧解消剤を添加し、設備腐食の予防措置を講じることができる蒸留塔管理方法」は本件発明1の「石油精製プロセスにおける蒸留設備への界面活性剤の供給方法」に相当する。 (ウ)上記(ア)を踏まえ、本件特許の【0031】の「特に限定されない一又は複数の実施形態において、供給速度の制御は、アンモニウム塩及びアミン塩の少なくとも一方の析出箇所が蒸留塔内になると予測される場合、トップリフラックスライン並びにトップポンプアラウンドライン(抜き出し部及び/又は戻り部)への界面活性剤の供給量を増加させることを含む。」の記載を参酌すると、先願発明1の「添加量を増加する」ことは本件発明1の「供給速度を制御する」こと及び「供給速度を増加させる」ことに相当し、以下同様に、「差圧解消剤の添加量を増加すること」は「前記供給速度の制御」に相当すると認められる。 (エ)上記(ア)、(ウ)を踏まえると、先願発明1の「分析データ300において」「予測がある」ことは本件発明1の「前記モニタリングに基づき予測され」ることに相当する。してみると、先願発明1の「測定部10によって測定した測定データを含む運転データを作成し、運転データから蒸留塔103の塩化アンモニウムの塩析の有無に関する分析データ300を作成し、分析データ300において蒸留塔103の運転に支障が出る状態になると予測がある場合、差圧解消剤の添加量を増加する」ことは、本件発明1の「前記モニタリングに基づき予測された、前記蒸留設備におけるアンモニウム塩及びアミン塩の少なくとも一方の析出箇所に応じて、前記界面活性剤の供給速度を制御することを含」むことと、前記モニタリングに基づき予測された、前記蒸留設備におけるアンモニウム塩及びアミン塩の少なくとも一方の析出に応じて、前記界面活性剤の供給速度を制御するという限りにおいて一致する。 (オ)上記(ア)、(ウ)を踏まえ、本件特許の【0031】の「塔頂に供給することとしては、一又は複数の実施形態において、塔頂、塔頂付近又は塔頂近傍に供給される配管に供給することを含む。該配管としては、一又は複数の実施形態において、トップリフラックスライン及びサイドリフラックス(Top Pump Around)ライン等が挙げられ、好ましくは蒸留塔の最上段に戻るラインである。」の記載を参酌すると、先願発明1の「常圧蒸留装置のトップリフラックスのライン、トップポンプアラウンドの戻りライン、又はトップポンプアラウンドの抜出ラインに添加する」ことは本件発明1の「前記蒸留塔の塔頂に供給される」ことに相当すると認められる。してみると、先願発明1の「塩化アンモニウムの塩析が蒸留塔103の運転に支障が出る状態になると予測がある場合、常圧蒸留装置のトップリフラックスのライン、トップポンプアラウンドの戻りライン、又はトップポンプアラウンドの抜出ラインに添加する差圧解消剤の添加量を増加する」ことは、本件発明1の「前記アンモニウム塩及びアミン塩の少なくとも一方の析出箇所が蒸留塔内になると予測される場合、前記蒸留塔の塔頂に供給される界面活性剤の供給速度を増加させる」ことと、前記アンモニウム塩及びアミン塩の少なくとも一方の析出が予測される場合、前記蒸留塔の塔頂に供給される界面活性剤の供給速度を増加させるという限りにおいて一致する。 そうすると、本件発明1と先願発明1との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点1> 「石油精製プロセスにおける蒸留設備への界面活性剤の供給方法であって、 前記蒸留設備の操業をモニタリングすること、及び 前記モニタリングに基づき予測された、前記蒸留設備におけるアンモニウム塩及びアミン塩の少なくとも一方の析出に応じて、前記界面活性剤の供給速度を制御することを含み、 前記供給速度の制御は、前記アンモニウム塩及びアミン塩の少なくとも一方の析出が予測される場合、前記蒸留塔の塔頂に供給される界面活性剤の供給速度を増加させることを含む、方法。」 <相違点1-1> 前記モニタリングに基づき予測された、前記蒸留設備におけるアンモニウム塩及びアミン塩の少なくとも一方の析出に応じて、前記界面活性剤の供給速度を制御することを含み、 前記供給速度の制御は、前記アンモニウム塩及びアミン塩の少なくとも一方の析出が予測される場合、前記蒸留塔の塔頂に供給される界面活性剤の供給速度を増加させることを含むことに関して、 本件発明1は、前記モニタリングに基づき予測された、前記蒸留設備におけるアンモニウム塩及びアミン塩の少なくとも一方の析出「箇所」に応じて、前記界面活性剤の供給速度を制御し、前記アンモニウム塩及びアミン塩の少なくとも一方の析出「箇所」が「蒸留塔内になると」予測される場合、前記蒸留塔の塔頂に供給される界面活性剤の供給速度を増加させるのに対して、 先願発明1は、予測された析出「箇所」に応じて、供給速度を制御するものではなく、析出「箇所」が「蒸留塔内になると」予測される場合、供給速度を増加させるものでもない点。 <相違点1-2> 本件発明1は、界面活性剤は、「窒素含有親水基を有する油溶性界面活性剤」であるのに対して、 先願発明1は、界面活性剤は、「窒素含有親水基を有する油溶性界面活性剤」であるか不明な点。 イ 判断 まず相違点1-1について検討する。 甲2~4の記載を参酌しても、蒸留設備におけるアンモニウム塩及びアミン塩の少なくとも一方の析出「箇所」が予測されることが、技術常識であるとも、周知技術であるとも認められないから、相違点1-1に係る本件発明1の発明特定事項が課題解決のための具体化手段における微差であるとは認められない。また、他に、相違点1-1が課題解決のための具体化手段における微差であると認めるに足る証拠もない。 してみると、相違点1-2について検討するまでもなく、本件発明1は先願発明1と同一ではない。 ウ 申立人の主張について (ア)申立人の主張 申立人は特許異議申立書(以下「申立書」という。)(30ページ)において、相違点1に関連して、以下のように主張する。 「(iii)界面活性剤の供給速度の制御(構成要件C、L、M) 甲第1号証の【0023】-【0028】、【0038】-【0042】には、蒸留塔の運転データから蒸留塔の塩析の有無を分析(予測)した分析データを得ること、「塩」にはアンモニウム塩が含まれること、及び分析データに基づいて差圧解消剤の添加量(つまり供給速度)を制御することが開示されている。 ここで、「塩の析出箇所を予測すること」は、甲第1号証に明記されていないが、甲第1号証の【0017】には、蒸留塔の複数の箇所で圧力(差圧データ)を測定することが開示され、【0023】には、差圧データに基づいて差圧を予測することが記載されている。また、蒸留塔内の差圧が、塩析による閉塞に起因することは、本件特許出願時における技術常識である。 したがって、甲第1号証には、「モニタリングに基づき予測された、蒸留設備 におけるアンモニウム塩及びアミン塩の少なくとも一方の析出箇所に応じて、界面活性剤の供給速度を制御すること」が記載されている。」 (イ)申立人の主張についての判断 申立人が主張するように、「甲第1号証の【0017】には、蒸留塔の複数の箇所で圧力(差圧データ)を測定することが開示され、【0023】には、差圧データに基づいて差圧を予測することが記載されている。また、蒸留塔内の差圧が、塩析による閉塞に起因することは、本件特許出願時における技術常識である。」としても、先願発明1において、蒸留設備におけるアンモニウム塩及びアミン塩の少なくとも一方の析出「箇所」が予測されているとまではいうことができない。 したがって、申立人の主張を参酌しても、相違点1-1が課題解決のための具体化手段における微差であるとは認められない。 エ 小括 本件発明1は、先願発明1と同一ではない。 (2)本件発明2、3について 本件発明2、3は、本件発明1の全ての発明特定事項を含み、更なる限定を付加したものであるから、上記(1)イ及びウで説示したのと同様の理由により、先願発明1と同一ではない。 (3)本件発明4について ア 対比 本件発明4と先願発明1とをその機能、構成及び技術的意義を考慮して対比すると、上記(1)ア(ア)~(オ)において対比したものに加えて、先願発明1の「塩化アンモニウム」は原油に含まれる無機塩類に起因することが技術常識であることを考慮すると、先願発明1の「石油精製プロセスの蒸留設備に塩化アンモニウムの沈殿又は付着を防止する塩分散剤である差圧解消剤を添加し、設備腐食の予防措置を講じることができる蒸留塔管理方法」は本件発明4の「石油精製プロセスの蒸留設備における、原油に含まれる無機塩類に起因する汚れの堆積を抑制するための方法」に相当する。 そうすると、本件発明4と先願発明1との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点4> 「石油精製プロセスの蒸留設備における、原油に含まれる無機塩類に起因する汚れの堆積を抑制するための方法であって、 前記蒸留設備の操業をモニタリングすること、及び 前記モニタリングに基づき予測された、前記蒸留設備におけるアンモニウム塩及びアミン塩の少なくとも一方の析出に応じて、界面活性剤の供給速度を制御することを含み、 前記供給速度の制御は、前記アンモニウム塩及びアミン塩の少なくとも一方の析出が予測される場合、前記蒸留塔の塔頂に供給される界面活性剤の供給速度を増加させることを含む、方法。」 <相違点4-1> 前記モニタリングに基づき予測された、前記蒸留設備におけるアンモニウム塩及びアミン塩の少なくとも一方の析出に応じて、界面活性剤の供給速度を制御することを含み、 前記供給速度の制御は、前記アンモニウム塩及びアミン塩の少なくとも一方の析出が予測される場合、前記蒸留塔の塔頂に供給される界面活性剤の供給速度を増加させることを含むことに関して、 本件発明4は、前記モニタリングに基づき予測された、前記蒸留設備におけるアンモニウム塩及びアミン塩の少なくとも一方の析出「箇所」に応じて、界面活性剤の供給速度を制御し、前記アンモニウム塩及びアミン塩の少なくとも一方の析出「箇所」が「蒸留塔内になると」予測される場合、前記蒸留塔の塔頂に供給される界面活性剤の供給速度を増加させるのに対して、 先願発明1は、予測された析出「箇所」に応じて、供給速度を制御するものではなく、析出「箇所」が「蒸留塔内になると」予測される場合、供給速度を増加させるものでもない点。 <相違点4-2> 本件発明4は、界面活性剤は、「窒素含有親水基を有する油溶性界面活性剤」であるのに対して、 先願発明1は、界面活性剤は、「窒素含有親水基を有する油溶性界面活性剤」であるか不明な点。 イ 判断 まず相違点4-1について検討する。 相違点4-1は、相違点1-1と実質的に同一である。してみると、上記(1)イ、ウにおいて検討したとおり、相違点4-1が課題解決のための具体化手段における微差であるとは認められず、他に、相違点4-1が課題解決のための具体化手段における微差であると認めるに足る証拠もない。 してみると、相違点4-2について検討するまでもなく、本件発明4は先願発明1と同一ではない。 (4)本件発明5について ア 対比 本件発明5と先願発明1とをその機能、構成及び技術的意義を考慮して対比すると、上記(1)ア(ア)~(オ)において対比したものに加えて、先願発明1の「石油精製プロセスの蒸留設備に塩化アンモニウムの沈殿又は付着を防止する塩分散剤である差圧解消剤を添加し、設備腐食の予防措置を講じることができる蒸留塔管理方法」は本件発明5の「石油精製プロセスにおける蒸留設備の腐食を抑制するための方法」に相当する。 そうすると、本件発明5と先願発明1との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点5> 「石油精製プロセスにおける蒸留設備の腐食を抑制するための方法であって、 前記蒸留設備の操業をモニタリングすること、及び 前記モニタリングに基づき予測された、前記蒸留設備におけるアンモニウム塩及びアミン塩の少なくとも一方の析出に応じて、界面活性剤の供給速度を制御することを含み、 前記供給速度の制御は、前記アンモニウム塩及びアミン塩の少なくとも一方の析出が予測される場合、前記蒸留塔の塔頂に供給される界面活性剤の供給速度を増加させることを含む、方法。」 <相違点5-1> 前記モニタリングに基づき予測された、前記蒸留設備におけるアンモニウム塩及びアミン塩の少なくとも一方の析出に応じて、界面活性剤の供給速度を制御することを含み、 前記供給速度の制御は、前記アンモニウム塩及びアミン塩の少なくとも一方の析出が予測される場合、前記蒸留塔の塔頂に供給される界面活性剤の供給速度を増加させることを含むことに関して、 本件発明5は、前記モニタリングに基づき予測された、前記蒸留設備におけるアンモニウム塩及びアミン塩の少なくとも一方の析出「箇所」に応じて、界面活性剤の供給速度を制御し、前記アンモニウム塩及びアミン塩の少なくとも一方の析出「箇所」が「蒸留塔内になると」予測される場合、前記蒸留塔の塔頂に供給される界面活性剤の供給速度を増加させるのに対して、 先願発明1は、予測された析出「箇所」に応じて、供給速度を制御するものではなく、析出「箇所」が「蒸留塔内になると」予測される場合、供給速度を増加させるものでもない点。 <相違点5-2> 本件発明5は、界面活性剤は、「窒素含有親水基を有する油溶性界面活性剤」であるのに対して、 先願発明1は、界面活性剤は、「窒素含有親水基を有する油溶性界面活性剤」であるか不明な点。 イ 判断 まず相違点5-1について検討する。 相違点5-1は、相違点1-1と実質的に同一である。してみると、上記(1)イ、ウにおいて検討したとおり、相違点5-1が課題解決のための具体化手段における微差であるとは認められず、他に、相違点5-1が課題解決のための具体化手段における微差であると認めるに足る証拠もない。 してみると、相違点5-2について検討するまでもなく、本件発明5は先願発明1と同一ではない。 (5)本件発明6について ア 対比 (ア)本件発明6と先願発明2とをその機能、構成及び技術的意義を考慮して対比すると、後者の「石油精製プロセス」は前者の「石油精製プロセス」に相当し、以下同様に、 「蒸留設備」及び「蒸留塔103」は「蒸留設備」に、 「沈殿又は付着を防止する」ことは「堆積を抑制する」ことに、 「塩分散剤である差圧解消剤」は「薬剤」に、 「添加」は「供給」に、 「蒸留塔管理システム」は「システム」に、 「差圧解消剤注入ライン121a、121b、121c」は「供給ライン」に、 「蒸留塔103における複数箇所の圧力を測定する圧力測定部11、蒸留塔103の塔頂部温度を測定する温度測定部12、及び、蒸留塔103に供給される供給塩素量及び蒸留塔103から排出される排出塩素量を測定する塩素測定部13からなる測定部10」は「前記蒸留設備の操業をモニタリングするモニタリング部」に、 「制御部40」は「制御部」に、 「塩化アンモニウム」は「アンモニウム塩及びアミン塩の少なくとも一方」に、 「塩析」は「析出」に、 「予測がある」ことは「予測」すること及び「予測され」ることに、それぞれ相当する。 (イ)先願発明2の「塩化アンモニウム」は原油に含まれる無機塩類に起因することが技術常識であることを考慮すると、先願発明2の「塩化アンモニウム」は本件発明6の「原油に含まれる無機塩類に起因する汚れ」に相当する。してみると、先願発明2の「石油精製プロセスの蒸留設備に塩化アンモニウムの沈殿又は付着を防止する塩分散剤である差圧解消剤を添加する蒸留塔管理システム」は、本件発明6の「石油精製プロセスにおける蒸留設備における原油に含まれる無機塩類に起因する汚れの堆積を抑制するための薬剤の自動供給システム」と、「石油精製プロセスにおける蒸留設備における原油に含まれる無機塩類に起因する汚れの堆積を抑制するための薬剤の供給システム」という限りにおいて一致する。 (ウ)上記(ア)を踏まえ、本件特許の【0031】の「特に限定されない一又は複数の実施形態において、供給速度の制御は、アンモニウム塩及びアミン塩の少なくとも一方の析出箇所が蒸留塔内になると予測される場合、トップリフラックスライン並びにトップポンプアラウンドライン(抜き出し部及び/又は戻り部)への界面活性剤の供給量を増加させることを含む。」の記載を参酌すると、先願発明2の「添加量を増加する」ことは本件発明6の「供給速度を制御する」こと、「供給の制御を行う」こと及び「供給速度を増加させる」ことに相当し、以下同様に、「差圧解消剤の添加量を増加すること」は「前記供給速度の制御」に相当すると認められる。 (エ)上記(ア)、(ウ)を踏まえると、先願発明2の「分析データ300において」「予測がある」ことは本件発明6の「モニタリング結果に基づいて」「予測」することに相当する。してみると、先願発明2の「運転データ部20は、測定部10によって測定した測定データを含む運転データを作成し、分析部30は、運転データから蒸留塔103の塩化アンモニウムの塩析の有無に関する分析データ300を作成し、制御部40は、分析データ300において蒸留塔103の運転に支障が出る状態になると予測がある場合、差圧解消剤注入ライン121a、121b、121cに添加する差圧解消剤の添加量を増加するように構成されて」いることは、本件発明6の「前記制御部は、前記モニタリング部におけるモニタリング結果に基づいてアンモニウム塩及びアミン塩の少なくとも一方の析出箇所を予測し、それに応じて前記供給ラインによる前記薬剤の供給の制御を行うように構成されて」むことと、前記制御部は、前記モニタリング部におけるモニタリング結果に基づいてアンモニウム塩及びアミン塩の少なくとも一方の析出を予測し、それに応じて前記供給ラインによる前記薬剤の供給の制御を行うように構成されてという限りにおいて一致する。 (オ)上記(ア)、(ウ)を踏まえ、本件特許の【0031】の「塔頂に供給することとしては、一又は複数の実施形態において、塔頂、塔頂付近又は塔頂近傍に供給される配管に供給することを含む。該配管としては、一又は複数の実施形態において、トップリフラックスライン及びサイドリフラックス(Top Pump Around)ライン等が挙げられ、好ましくは蒸留塔の最上段に戻るラインである。」の記載を参酌すると、先願発明2の「常圧蒸留装置のトップリフラックスのライン、トップポンプアラウンドの戻りライン、又はトップポンプアラウンドの抜出ラインに添加する」ことは本件発明6の「前記蒸留塔の塔頂に供給される」ことに相当すると認められる。してみると、先願発明2の「塩化アンモニウムの塩析が蒸留塔103の運転に支障が出る状態になると予測がある場合、常圧蒸留装置のトップリフラックスのライン、トップポンプアラウンドの戻りライン、又はトップポンプアラウンドの抜出ラインに添加する差圧解消剤の添加量を増加する」ことは、本件発明6の「前記アンモニウム塩及びアミン塩の少なくとも一方の析出箇所が蒸留塔内になると予測される場合、前記蒸留塔の塔頂に供給される界面活性剤の供給速度を増加させる」ことと、前記アンモニウム塩及びアミン塩の少なくとも一方の析出が予測される場合、前記蒸留塔の塔頂に供給される界面活性剤の供給速度を増加させるという限りにおいて一致する。 そうすると、本件発明6と先願発明2との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点6> 「石油精製プロセスにおける蒸留設備における原油に含まれる無機塩類に起因する汚れの堆積を抑制するための薬剤の供給システムであって、 前記薬剤を前記蒸留設備に供給するための供給ラインと 前記蒸留設備の操業をモニタリングするモニタリング部と、 前記供給ラインによる前記薬剤の供給速度を制御する制御部と、を備え、 前記制御部は、前記モニタリング部におけるモニタリング結果に基づいてアンモニウム塩及びアミン塩の少なくとも一方の析出を予測し、それに応じて前記供給ラインによる前記薬剤の供給の制御を行うように構成されており、 前記供給速度の制御は、前記アンモニウム塩及びアミン塩の少なくとも一方の析出が予測される場合、前記蒸留塔の塔頂に供給される界面活性剤の供給速度を増加させることを含む、システム。」 <相違点6-1> 前記制御部は、前記モニタリング部におけるモニタリング結果に基づいてアンモニウム塩及びアミン塩の少なくとも一方の析出を予測し、それに応じて前記供給ラインによる前記薬剤の供給の制御を行うように構成されており、 前記供給速度の制御は、前記アンモニウム塩及びアミン塩の少なくとも一方の析出が予測される場合、前記蒸留塔の塔頂に供給される界面活性剤の供給速度を増加させることを含むことを含むことに関して、 本件発明6は、モニタリング結果に基づいてアンモニウム塩及びアミン塩の少なくとも一方の析出「箇所」を予測し、それに応じて前記供給ラインによる前記薬剤の供給の制御を行い、前記アンモニウム塩及びアミン塩の少なくとも一方の析出「箇所」が「蒸留塔内になると」予測される場合、前記蒸留塔の塔頂に供給される界面活性剤の供給速度を増加させることを含むのに対して、 先願発明2は、析出「箇所」を予測し、それに応じて供給の制御を行うものではなく、析出が「箇所」が「蒸留塔内になると」予測される場合、供給速度を増加させるものでもない点。 <相違点6-2> 薬剤の供給システムに関して、 本件発明6は、薬剤の「自動」供給システムであるのに対して、 先願発明2は、薬剤の供給システムが「自動」であるかが不明な点。 イ 判断 まず相違点6-1について検討する。 相違点6-1は、相違点1-1と実質的に同一である。してみると、上記(1)イ、ウにおいて検討したとおり、相違点6-1が課題解決のための具体化手段における微差であるとは認められず、他に、相違点6-1が課題解決のための具体化手段における微差であると認めるに足る証拠もない。 してみると、相違点6-2について検討するまでもなく、本件発明6は先願発明2と同一ではない。 (6)本件発明7について 本件発明7は、本件発明1、4、5のいずれかの発明の全ての発明特定事項を含むものであるから、上記(1)、(3)、(4)で説示したのと同様の理由により、先願発明1と同一ではない。 (7)小括 以上によれば、申立理由(拡大先願)は成り立たない。 第5 むすび 以上によれば、特許異議の申立理由及び証拠によっては、本件発明1~7を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1~7を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2025-700712

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決44件(ナルコジャパン合同会社、松本 文彦、株式会社片山化学工業研究所)
  • 2024-701015異議申立 / 2025-02-28 / 維持廃水処理方法
    同じ当事者: ナルコジャパン合同会社、株式会社片山化学工業研究所
  • 2024-701016異議申立 / 2025-02-28 / 維持廃水処理方法
    同じ当事者: ナルコジャパン合同会社、株式会社片山化学工業研究所
  • 2023-700365異議申立 / 2024-03-29 / 訂正認容固体燃料及び/又は鉄鋼原料の改質方法
    同じ当事者: ナルコジャパン合同会社、株式会社片山化学工業研究所
  • 2020-700024異議申立 / 2020-10-06 / 訂正認容コークス炉ガス精製におけるタール汚れの抑制方法及びそのための組成物
    同じ当事者: ナルコジャパン合同会社、株式会社片山化学工業研究所
  • 2018-700206異議申立 / 2019-02-26 / 訂正認容シアン含有廃水の処理方法
    同じ当事者: ナルコジャパン合同会社、株式会社片山化学工業研究所
同じ論点・分野の審決(審決分類)1件(161・C10G)
  • 2024-004620拒絶査定不服審判 / 2026-02-25 / 原査定取消(特許/登録すべき)液体燃料合成システム及び液体燃料合成方法
    共通の審決分類: 161・C10G

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存