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特許異議申立

2025-701056

アンダーフィル材、電子部品装置及び電子部品装置の製造方法

審判番号
2025-701056
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2024-120328
登録番号
7687499
請求日
2025年11月10日
審決日
2026年03月11日
公報発行日
2026年04月24日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社レゾナック
  • 【権利者代理人】弁理士法人太陽国際特許事務所
  • 【異議申立人】松本 文彦
審判長/審判官
  • 審判長 小宮 慎司
  • 審判官 棚田 一也
  • 審判官 今井 聖和
分類
P1651.121-Y (H10W) / P1651.537-Y (H10W) / P1651.536-Y (H10W)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7687499号発明「アンダーフィル材、電子部品装置及び電子部品装置の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7687499号の請求項1~14に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7687499号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~14に係る特許についての出願は、平成28年10月14日に出願された特許出願(特願2016-202715号)の一部を、令和 4年 6月15日に新たな特許出願(特願2022-96826号)とし、さらに、その一部を令和 6年 7月25日に新たな特許出願としたものであって、令和 7年 5月26日に特許権の設定登録がされ、同年 6月 3日に特許掲載公報が発行され、その後、本件特許の請求項1~14に係る特許について、同年11月10日に特許異議申立人松本文彦(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~14に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明14」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)は、特許請求の範囲の請求項1~14に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 (A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤及び(C)無機充填剤を含み、 硬化物としたときの、TMA(熱機械分析)で測定したガラス転移温度以下の熱膨張係数が30ppm/℃以下であり、DMA(動的粘弾性測定)で測定した240℃における貯蔵弾性率が0.10GPa以下であり、DMA(動的粘弾性測定)で測定した25℃における貯蔵弾性率が、5GPa~9.5GPaであり、 前記(A)エポキシ樹脂全量に占める、分子中に芳香環を含むエポキシ樹脂の割合が、65質量%以上であり、 前記(A)エポキシ樹脂全量に占める、3官能以上のエポキシ樹脂の割合が、0質量%であり、 前記(A)エポキシ樹脂が、ビスフェノール型エポキシ樹脂及びアルキルジオールとエピクロロヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を含み、 前記(B)硬化剤が、芳香族アミン化合物であるアンダーフィル材。 【請求項2】 硬化物としたときの、TMA(熱機械分析)で測定したガラス転移温度が、60℃~150℃である、請求項1に記載のアンダーフィル材。 【請求項3】 さらに(D)可撓化剤を含有する、請求項1又は請求項2に記載のアンダーフィル材。 【請求項4】 さらに(E)界面活性剤を含有する、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のアンダーフィル材。 【請求項5】 さらに(F)イオントラップ剤を含有する、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のアンダーフィル材。 【請求項6】 さらに(G)硬化促進剤を含有する、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のアンダーフィル材。 【請求項7】 さらに(H)カップリング剤を含有する、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のアンダーフィル材。 【請求項8】 さらに(I)酸化防止剤を含有する、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載のアンダーフィル材。 【請求項9】 さらに(J)有機溶剤を含有し、前記有機溶剤の含有率が10質量%以下である、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載のアンダーフィル材。 【請求項10】 配線基板と、 前記配線基板上に配置され、前記配線基板と接続部を介して電気的に接続される電子部品と、 少なくとも、前記配線基板と前記電子部品との接続部を封止する請求項1~請求項9のいずれか1項に記載のアンダーフィル材の硬化物と、 を備える電子部品装置。 【請求項11】 前記接続部が鉛を含まない、請求項10に記載の電子部品装置。 【請求項12】 前記接続部が銅を含む、請求項10又は請求項11に記載の電子部品装置。 【請求項13】 電子部品と配線基板とが接続部を介して電気的に接続される電子部品装置の製造方法であって、 前記電子部品における前記配線基板と対向する側の面及び前記配線基板における前記電子部品と対向する側の面の少なくとも一方の面に、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載のアンダーフィル材を供給する供給工程と、 前記電子部品と前記配線基板とを前記接続部を介して接続し、かつ前記アンダーフィル材を硬化する接続工程と、を有する電子部品装置の製造方法。 【請求項14】 電子部品と配線基板とが接続部を介して電気的に接続される電子部品装置の製造方法であって、 接続された前記電子部品と前記配線基板との隙間に請求項1~請求項9のいずれか1項に記載のアンダーフィル材を充填する充填工程と、 前記アンダーフィル材を硬化させる硬化工程と、を有する電子部品装置の製造方法。」 第3 特許異議の申立ての理由の概要 申立人は、下記1の甲第1号証~甲第6号証を証拠方法として提出し、下記2の申立理由1~3により、本件特許の請求項1~14に係る特許を取り消すべきである旨主張している。(以下、甲第1号証~甲第3号証、甲第6号証を「甲1」~「甲3」、「甲6」等といい、甲第4号証の1~甲第5号証の4を「甲4の1」~「甲5の4」等という。) 1 証拠方法 甲1:特開2004-210901号公報 甲2:久保山俊史、“アンダーフィル材 概論”、日本ゴム協会誌、一般社団法人日本ゴム協会、2011年10月、第84巻、第10号、p.313-320 甲3:特開2008-277631号公報 甲4の1:桂山悟、“フリップチップパッケージにおける反り及びバンプ接続信頼性に対する実装方法とアンダーフィル材の影響”、ネットワークポリマー、合成樹脂工業協会、2010年7月10日、第31巻、第4号、p.168-176 甲4の2:見山克己、高橋寿文、岩田智行、田中大之、“ベアチップ内蔵プリント配線板の信頼性に及ぼす配線板構造の影響”、エレクトロニクス実装学会誌、エレクトロニクス実装学会、2012年11月、第15巻、第7号、p.550-557 甲4の3:特開2010-262973号公報 甲5の1:特開2015-189847号公報 甲5の2:特開2015-189848号公報 甲5の3:特開2013-028659号公報 甲5の4:特開2007-182561号公報 甲6:特許第7687499号公報 2 申立理由 (1)申立理由1(進歩性) 本件発明1~14は、甲1に記載された発明と、甲2に記載された事項及び技術常識並びに甲3~甲5の4に記載された周知技術とに基いて、又は、甲3に記載された発明と、甲2に記載された事項及び技術常識並びに甲1及び甲4の1~甲5の4に記載された周知技術とに基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1~14に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (2)申立理由2(サポート要件) 本件発明1~14は、発明の詳細な説明に記載したものではないから、本件特許の請求項1~14に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (3)申立理由3(実施可能要件) 本件特許の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1~14を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないから、本件特許の請求項1~14に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 第4 甲号証の記載、甲1発明、甲3発明 1 甲1の記載、甲1発明 (1)甲1の記載 甲1には、以下の記載がある。(下線は、当審にて付した。以下、同じ。) 「【請求項1】 (A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤及び(C)無機充填剤を必須成分とする無溶剤型液状エポキシ樹脂組成物であって、チキソトロピック指数が0.8より小さいことを特徴する液状エポキシ樹脂組成物。」 「【請求項6】 (C)無機充填剤が球状の溶融シリカであり、組成物全体に対する配合量(容積%)が充填剤単体の最密充填分率よりも少なく、最密充填分率×0.6よりも多い量である請求項1~5のいずれかに記載の液状エポキシ樹脂組成物。」 「【請求項8】 エポキシ樹脂が液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂及びアミノグリシジルエーテル型エポキシ樹脂の少なくとも一方を含み、 硬化剤が液状芳香族アミンである請求項1~7のいずれかに記載の液状エポキシ樹脂組成物。 【請求項9】 素子の回路形成面と無機または有機基板の回路形成面とが対向し、前記素子の電極と前記基板の回路とがバンプを介して電気的に接続され、前記素子と前記基板との隙間に請求項1~8のいずれかに記載の液状エポキシ樹脂組成物が充填されていることを特徴とする電子部品装置。」 「【0013】 【発明の実施の形態】 本発明に用いる(A)エポキシ樹脂は、特に制限はなく、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、ナフタレンジオール、水添ビスフェノールA等とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂をはじめとするフェノール類とアルデヒド類とを縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したもの、フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンの反応により得られるアミノグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂、及び脂環族エポキシ樹脂などを用いることができる。特に、本発明では、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、アミノグリシジルエーテル型エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種類の液状エポキシ樹脂を含むことが望ましく、液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂及びアミノグリシジルエーテル型エポキシ樹脂の少なくとも一方を用いるのがさらに好ましい。 これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。 【0014】 また、発明の目的を損なわない範囲であれば固形のエポキシ樹脂を用いても良い。さらには粘度調整のためエポキシ基を有する反応性希釈剤を混合しても良い。エポキシ基を有する反応性希釈剤としては例えばn-ブチルグリシジルエーテル、バーサティック酸グリシジルエーテル、スチレンオキサイド、エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルが挙げられ、これらの内の1種類あるいは複数種と併用しても良い。 これらのエポキシ樹脂は、十分に精製されたもので、イオン性不純物が少ないものが好ましい。例えば、遊離Naイオン、遊離Clイオンは500ppm以下であることが好ましい。 【0015】 本発明に用いる(B)硬化剤は、特に制限はなく、エポキシ樹脂の硬化剤として一般に使用されている酸無水物、フェノール樹脂、芳香族アミン、各種イミダゾール誘導体などを用いることができるが、低粘度化の観点からは酸無水物、保存安定性の観点からはフェノール樹脂及びイミダゾール誘導体、耐湿接着性の観点からは芳香族アミンがより好ましい。これらのうち、液状酸無水物、液状フェノール樹脂、液状芳香族アミンから選ばれる少なくとも1種類の化合物を含むことが特に好ましく、さらに好ましくは液状芳香族アミンである。 なお、組成物が液状であれば硬化剤は固形の化合物を使用しても良いし、液状及び固形の化合物を併用しても良い。」 「【0018】 芳香族アミンとしては、例えば、エピキュアW、エピキュアZ(いずれもジャパンエポキシレジン株式会社製商品名)、カヤハードA-A、カヤハードA-B、カヤハードA-S(いずれも日本化薬株式会社製商品名)、トートアミンHM-205(東都化成株式会社製商品名)、アデカハードナーEH-101(旭電化工業株式会社製商品名)、エポミックQ-640、エポミックQ-643(いずれも三井化学株式会社製商品名)、DETDA80(Lonza社製商品名)等が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。」 「【0026】 本発明の樹脂組成物には必要に応じて、(D)硬化促進剤を用いることができる。また、カップリング剤、可撓化剤、着色剤などを用いることができる。 (D)硬化促進剤としては、エポキシ樹脂組成物で一般に使用されている、(A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤との硬化反応を促進するものであれば、特に制限はなく、各種アミン系化合物、2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール系化合物、オルガノホスフィン系化合物、四級アンモニウムまたはホスホニウム系化合物などを使用することができる。たとえば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5、5,6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7等のシクロアミジン化合物及びこれらの化合物に無水マレイン酸、1,4-ベンゾキノン、2,5-トルキノン、1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルベンゾキノン、2,6-ジメチルベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4ベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン、フェニル-1,4-ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン類及びこれらの誘導体、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール類及びこれらの誘導体、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(4-メチルフェニル)ホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等の有機ホスフィン類などのホスフィン化合物、及びこれらのホスフィン化合物に上記キノン化合物、無水マレイン酸、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有するリン化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムエチルトリフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムテトラブチルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート、2-エチル-4-メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N-メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩及びこれらの誘導体などが挙げられ、これらの1種を単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。 カップリング剤は無機充填剤と樹脂の濡れ、被着体との接着性改善効果があり、具体的には、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ-ウレイドトリメトキシシラン、γ-ジブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールシランなどを用いることができる。可撓化剤としてはシリコーン及びポリオレフィン系エラストマーあるいはその粉末、着色剤としてはカーボンブラック、有機染料、有機顔料、酸化チタン、鉛丹、ベンガラなどを用いることができる。」 「【0028】 本発明の液状エポキシ樹脂組成物の製造方法は特に限定されないが、上記各種成分を均一に分散混合できる方法であれば良い。一般的な方法としては、三本ロール、らいかい機、プラネタリミキサー等による分散混練を挙げることができる。混合の間、必要に応じて減圧しても良い。 図1は、本発明の液状エポキシ樹脂組成物をアンダーフィル材に用いたフリップチップ実装型半導体装置の一例の縦断面模式図を示す。図2は、フリップチップ実装型半導体装置の素子と基板の隙間に液状エポキシ樹脂組成物を含浸する方法の一例を示す縦断面模式図である。 本発明の液状エポキシ樹脂組成物による半導体素子の樹脂封止は通常ディスペンス方式によって行われる。例えば、図2のように、半導体チップ1の回路形成面がはんだボール等のバンプ2を介して基板3の回路形成面と対向するようにフリップチップ実装した半導体装置を用意する。液状エポキシ樹脂組成物であるアンダーフィル材4を、デイスペンサーのシリンジ5から、ホットプレート6上で予熱した半導体装置のチップ1の側面の一辺に滴下する。アンダーフィル材4は、毛細管現象により、チップ1の対向する側面の辺ヘ向けて図2の矢印の方向に含浸される。これによりチップ1と基板3の隙間がアンダーフィル材4で充填される。含浸終了後、半導体装置を高温槽中で加熱することにより樹脂組成物を硬化させて目的とする樹脂封止型半導体装置(図1参照。)を得ることができる。 【0029】 【実施例】 次に実施例により本発明をさらに説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。 [実施例1~7、比較例1~5] (A)エポキシ樹脂として、液状の、ビスF型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂1:エポキシ当量160、[東都化成株式会社製商品名YDF-8170C])、アミノグリシジルエーテル型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂2:エポキシ当量95、[ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名EP-630])、及び反応性希釈剤(エポキシ当量128、[坂本薬品工業株式会社製商品名SR-16HL])を用意した。 (B)硬化剤として、液状芳香族アミン(硬化剤1:活性水素当量45、[ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名エピキュアW])、液状酸無水物(硬化剤2:無水酸当量168、[日立化成工業株式会社製商品名製HN5500])を用意した。 (C)無機充填剤として、表1に示す特性で、組成および形状が実質的に球状の溶融シリカである無機充填剤1~6を用意した。なお、0.1μm未満の粒子、16μmより大きい粒子の各含有量はHORIBA(株式会社堀場製作所)製レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(型番LA-920)により求めた。 (D)硬化促進剤として、2-エチル-4-メチルイミダゾール(以下、2E4MZという。)を用意した。 カップリング剤としてエポキシシラン(γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)を、着色剤としてカーボンブラック(〔三菱化学株式会社製商品名MA-600〕)を用意した。」 「【0031】 [実施例1~7] これら各素材を表2に示す配合割合で計量し、真空擂潰機に入れ、5torrに減圧しながら約20分間混練して目的とする7種類の液状エポキシ樹脂組成物を得た。 次に、チップを実装した半導体装置を80℃に予熱したホットプレート上に置き、デイスペンサーを用いて上記液状エポキシ樹脂組成物を半導体装置のチップの側面の一辺に滴下してチップと基板の隙間に含浸させた。含浸終了後半導体装置を150℃に加熱した高温槽中で3時間加熱し樹脂を硬化させて目的とする樹脂封止型半導体装置を得た。 得られた液状エポキシ樹脂組成物の特性、半導体装置の成形性、信頼性の評価を次のように行った。評価結果を表2に纏めて併記する。」 「【0035】 (3)ガラス転移温度及び線膨張係数 液状エポキシ樹脂組成物を直径4mm、長さ20mmの円柱状に150℃3時間加熱成形し、熱機械分析装置TMA8140(理学電気株式会社製商品名)を用い、昇温速度3℃/min、測定温度範囲-120~250℃で熱膨張量を測定し、低温側の直線の接線と高温側の直線の接線との交点をガラス転移温度とし、低温側の直線の勾配を線膨張係数として表した。 (4)弾性率 液状エポキシ樹脂組成物を厚さ0.4mmのシート状に150℃3時間加熱成形し、このシートを5mm×30mmの短冊状に切り取ったものを試験片とし、動的粘弾性測定装置DVE型(株式会社レオロジ製)を用いて昇温速度3℃/min、測定温度-120~250℃、周波数10Hzで動的粘弾性特性を測定し、25℃の弾性率(GPa)を読取った。」 「【0042】 【表2】 [図:0001434193000001.jpg] 」 「【図1】 [図:0001434193000002.jpg] 【図2】 [図:0001434193000003.jpg] 」 (2)甲1発明 ア 上記(1)の段落0028には、「図1は、本発明の液状エポキシ樹脂組成物をアンダーフィル材に用いたフリップチップ実装型半導体装置の一例の縦断面模式図を示す。」と記載されている。 したがって、アンダーフィル材は液状エポキシ樹脂組成物からなるといえる。 イ 上記(1)の段落0029には、「実施例1~7」「(A)エポキシ樹脂として、液状の、ビスF型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂1:エポキシ当量160、[東都化成株式会社製商品名YDF-8170C])」「及び反応性希釈剤(エポキシ当量128、[坂本薬品工業株式会社製商品名SR-16HL])を用意した。」と記載されている。 したがって、下記オの「ビスF型」は「東都化成株式会社製商品名YDF-8170C」であり、「反応性希釈剤」は「坂本薬品工業株式会社製商品名SR-16HL」であるといえる。 ウ 上記(1)の段落0031には、「これら各素材を表2に示す配合割合で計量し、真空擂潰機に入れ、5torrに減圧しながら約20分間混練して」「液状エポキシ樹脂組成物を得た。」及び「液状エポキシ樹脂組成物の特性」「の評価を次のように行った。評価結果を表2に纏めて併記する。」と記載されている。 したがって、上記(1)の段落0042の表2には、素材を表2に示す配合割合で計量して、真空擂潰機に入れ、5torrに減圧しながら約20分間混練して得た液状エポキシ樹脂組成物の特性が記載されている。 エ 上記(1)の段落0035には、実施例1~7について、「液状エポキシ樹脂組成物を」「円柱状に」「加熱成形し、熱機械分析装置TMA8140(理学電気株式会社製商品名)を用い、昇温速度3℃/min、測定温度範囲-120~250℃で熱膨張量を測定し、低温側の直線の接線と高温側の直線の接線との交点をガラス転移温度とし、低温側の直線の勾配を線膨張係数として表した。」及び「液状エポキシ樹脂組成物を」「シート状に」「加熱成形し」「たものを試験片とし、動的粘弾性測定装置DVE型(株式会社レオロジ製)を用いて昇温速度3℃/min、測定温度-120~250℃、周波数10Hzで動的粘弾性特性を測定し、25℃の弾性率(GPa)を読取った。」と記載されている。 したがって、下記オの「ガラス転移温度」は、液状エポキシ樹脂組成物を円柱状に加熱成形し、熱機械分析装置TMA8140(理学電気株式会社製商品名)を用い、昇温速度3℃/min、測定温度範囲-120~250℃で測定した低温側の熱膨張量の直線の接線と高温側の直線の接線との交点であり、「線膨張係数」は、低温側の熱膨張量の直線の勾配であり、「弾性率」は、液状エポキシ樹脂組成物をシート状に加熱成形したものを試験片とし、動的粘弾性測定装置DVE型(株式会社レオロジ製)を用いて昇温速度3℃/min、測定温度-120~250℃、周波数10Hz、25℃で測定した動的粘弾性特性であるといえる。 オ 上記(1)の段落0042の表2には、実施例1の組成について、「液状エポキシ樹脂」として「ビスF型」「80」(重量部)及び「反応性希釈剤」「20」(重量部)、「硬化剤」として「液状芳香族アミン」「30」(重量部)、「無機充填剤」「250」(重量部)、「カップリング剤」「2.5」(重量部)、「着色剤」「0.5」(重量部)が記載され、硬化後の特性について、「ガラス転移温度」が「100」(℃)であり、「線膨張係数」が「33」(ppm/℃)であり、弾性率が「9」(GPa)であることが記載されているといえる。 したがって、上記ウを踏まえると、液状エポキシ樹脂組成物が、エポキシ樹脂としてビスF型80(重量部)及び反応性希釈剤20(重量部)、硬化剤として液状芳香族アミン30(重量部)、無機充填剤250(重量部)、カップリング剤2.5(重量部)、着色剤0.5(重量部)を計量して、真空擂潰機に入れ、5torrに減圧しながら約20分間混練して得たものであり、液状エポキシ樹脂組成物の硬化後のガラス転移温度が100(℃)、線膨張係数が33(ppm/℃)、弾性率が9(GPa)であることが記載されている。 カ 上記ア~オによれば、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。(段落の後の括弧内は、参照先の項番を示す。) <甲1発明> 「液状エポキシ樹脂組成物からなるアンダーフィル材であって、(上記ア) 液状エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂としてビスF型80(重量部)及び反応性希釈剤20(重量部)、硬化剤として液状芳香族アミン30(重量部)、無機充填剤250(重量部)、カップリング剤2.5(重量部)、着色剤0.5(重量部)を計量して、真空擂潰機に入れ、5torrに減圧しながら約20分間混練して得たものであり、 液状エポキシ樹脂組成物の硬化後のガラス転移温度が100(℃)、線膨張係数が33(ppm/℃)、弾性率が9(GPa)であり、(上記オ) ビスF型は「東都化成株式会社製商品名YDF-8170C」であり、反応性希釈剤は「坂本薬品工業株式会社製商品名SR-16HL」であり、(上記イ) ガラス転移温度は、液状エポキシ樹脂組成物を円柱状に加熱成形し、熱機械分析装置TMA8140(理学電気株式会社製商品名)を用い、昇温速度3℃/min、測定温度範囲-120~250℃で測定した低温側の熱膨張量の直線の接線と高温側の直線の接線との交点であり、 線膨張係数は、低温側の熱膨張量の直線の勾配であり、 弾性率は、液状エポキシ樹脂組成物をシート状に加熱成形したものを試験片とし、動的粘弾性測定装置DVE型(株式会社レオロジ製)を用いて昇温速度3℃/min、測定温度-120~250℃、周波数10Hz、25℃で測定した動的粘弾性特性である、(上記エ) アンダーフィル材。」 2 甲2の記載 甲2には、以下の記載がある。 「アンダーフィル材では主に熱膨張率の低下を目的にシリ力などのフィラーを用いるが,フィラーを高充填にすると,被着体との界面に存在する樹脂分の存在確率が相対的に減少するため接着力が低下しやすい.これは低熱膨張率化を図る上で避けて通ることが出来ず,その他の方法を用いて接着力を向上させるのが賢明である. また,フィラーを高充填することで樹脂の貯蔵弾性率は高まる.その結果,変位に対する追従性が低下し,はく離を生じさせやすくなる.弾性率を下げるには,分子構造内にエーテルのような可動箇所の多い単官能または2官能の鎖状構造体を用いて構造的に軟化させるか,可塑剤や有機フィラーを用いて架橋密度を下げるなどの方法がある. ○2適度な柔軟性 特に耐衝撃性や耐曲げ性において,アンダーフィル材は柔軟性が必要である.機器の軽量化・薄型化が進み,実装チップも薄型化されると,チップ自体の剛性が低下し,脆く割れ易くなる.使用されるアンダーフィル材に柔軟性が不足していると,衝撃や曲げによる基板変形の歪みでアンダーフィル材が割れ,亀裂がチップまで進展して損傷を与える.あるいは,基板の変形をアンダーフィル材がフィレットを通じてチップヘ直接ダメージを与え,チップを割ることもある.貯蔵弾性率で言えば,0.1 GPa~5 GPa程度が最もバランスが良いとされている. ○3低熱膨張率(C.T.E.:Coefficient of Thermal Expansion) 熱衝撃による断線の主な原因は,チップと基板間の熱膨張率の違いによって発生する,ずり応力である.チップのXY方向の熱膨張率が数ppm/K なのに対し,FR4基板のそれは20~40 ppm/K程度になる.表面実装チップと基板ははんだパンプを介してのみ接続されているため,熱膨張率の違いによる歪みはバンプに直接ダメージを与えることになる.特にサーマルショックやサーマルサイクルのような繰り返し試験を行うと,非常に高い頻度で断線が発生する.そこで,チップと基板の間に低熱膨張率のアンダーフィル材を挟むことによりアンダーフィル材全体でずり応力を吸収・分散し,バンプの長寿命化を図る. また,サーマルサイクル時のアンダーフィル材自体のZ方向への膨張収縮によりアンダーフィル材がチップを押し上げ断線することがあるため,アンダーフィル材の熱膨張率は出来る限り低い方が良い. ○4高Tg エポキシ系アンダーフィル材の場合,一般的にTgは40℃~150℃となるため,通常使用環境およびサーマルサイクル試験の温度範囲にTgが存在する.そのためTgの前後で貯蔵弾性率は約10O分の1,接着力は約 10分の 1,熱膨張率は約3 ~4 倍になり,物性が大きく変化する.低熱膨張率を維持しつつ,安定した物性値を得るためには,Tgを使用温度より高くするのが良いとされる. 一方,ウレタン系アンダーフィル材の場合,Tgは一般的に使用温度以下の-80℃~-40℃となるため,使用温度の籍囲でゴム状領域となり比較的安定した物性となる.但し,フィラーレスの場合,α2(ゴム状領域)は180~220ppm/Kと高く,アンダーフィル材自体が膨張することでチップ押し上げてしまい断線が懸念されるため,フィラーを高充填し熱膨張率を少なくともエポキシのα1(ガラス状領域)程度(50ppm/K~70ppm/K)まで下げなくては,実使用は難しい.」(第316頁左欄第13行~右欄第23行)(「○2」等は、いわゆる丸数字を表す。) 3 甲3の記載、甲3発明 (1)甲3には、以下の記載がある。 「【請求項1】 半導体チップの低誘電率配線層と基板の配線層とをPbフリー半田でバンプ接続した後、チップと基板との間にアンダーフィルを形成したフリップチップ型半導体装置であって、 チップの直下に形成したアンダーフィルは、25℃での弾性率が6GPa~8GPaで、ガラス転移温度以下での線膨張係数が35ppm/K以下であり、 チップの外周またはチップのコーナーに形成したアンダーフィルは、25℃での弾性率が6GPa以下で、ガラス転移温度以下での線膨張係数が50ppm/K以下である半導体装置。 【請求項2】 チップの外周またはチップのコーナーに形成したアンダーフィルは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂と、芳香族アミン系硬化剤と、シリコーン系応力緩和剤とシリカ粒子を含む材料により形成された請求項1に記載の半導体装置。」 「【0007】 本発明の課題は、低誘電率層を形成した半導体チップとPbフリー半田を組み合わせたFC-BGAであって、数百から数千個のバンプを有する半導体装置において、アンダーフィルにより半導体チップへの応力を緩和し、Pbフリー半田の保護を強化し、信頼性の高い半導体装置を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明のある実施の形態によれば、半導体チップの低誘電率配線層と基板の配線層とをPbフリー半田でバンプ接続した後、チップと基板との間にアンダーフィルを形成したフリップチップ型半導体装置であって、チップの直下に形成したアンダーフィルは、25℃での弾性率が6GPa~8GPaで、ガラス転移温度以下での線膨張係数が35ppm/K以下であり、チップの外周またはチップのコーナーに形成したアンダーフィルは、25℃での弾性率が6GPa以下で、ガラス転移温度以下での線膨張係数が50ppm/K以下である半導体装置が提供される。」 「【0013】 本発明の半導体装置の断面図を図1に例示する。半導体チップ1における配線層の誘電体層には低誘電率層が用いられる。半導体チップ1の配線層の最外層に、プリント基板2との接続のために、Pbフリー半田3を形成する。プリント基板2には、Pbフリー半田による回路パターンを形成した配線層が設けられている。プリント基板2は、汎用のFR4、FR5または高周波対応基板などを用途に応じて使い分けることができる。プリント基板の積層数およびサイズも、用途に応じて、任意に選択することができる。低誘電率層を有する半導体チップ1とプリント基板2は、フリップチップ接続され、両者の回路パターンが接続される。半導体チップ1とプリント基板2とのギャップは、10~300μmが一般的である。 【0014】 FC-BGAは、チップと基板間にアンダーフィル樹脂を注入して、加熱硬化して形成する。アンダーフィル樹脂は、チップの外方まで及び、フィレット(チップの外周部)を形成する。本発明では、2種類のアンダーフィルを組み合わせて、FC-BGAを作製する。図1に示すように、アンダーフィル4のうち、アンダーフィル4a(以下、「アンダーフィルA」ともいう。)は、半導体チップ1の直下に形成する。また、アンダーフィル4b(以下、「アンダーフィルB」ともいう。)は、半導体チップ1の外周またはコーナーに形成する。 【0015】 図2と図3は、本発明の半導体装置の平面図である。図2に示す半導体装置におけるアンダーフィル24のうち、アンダーフィル24aは、半導体チップ21と基板22の間に注入したアンダーフィルがフィレットにまで及び、加熱により形成したものである。また、半導体チップ21のコーナーには、アンダーフィル24bが形成されている。一方、図3に示す半導体装置では、半導体チップ31の外周にアンダーフィル34bが形成されている。半導体チップ直下に形成したアンダーフィルAは、低誘電率層の応力緩和とPbフリー半田の保護強化の役割を担っている。Pbフリー半田のバンプ数は製品によって異なるが、全てのPbフリー半田をアンダーフィルAで覆う態様が好ましい。Pbフリー半田は、半導体チップの少し内側に配置され、チップの外周には存在しないが、低誘電率層は、通常、半導体チップの全面に設けられる。したがって、チップの外周は、低誘電率層のみが存在する領域になるため、アンダーフィルBは、チップの外周またはコーナーにおける低誘電率層の応力緩和を主目的として形成される。」 「【0018】 そのため、本発明においては、機能に応じた最適なアンダーフィルを形成するために、2種類のアンダーフィル樹脂を使い分ける。半導体チップの直下に形成するアンダーフィルAは、Pbフリー半田の保護を強化する点で、25℃での弾性率を6GPa以上とし、6.5GPa以上が好ましい。また、アンダーフィルAについても、低誘電率層の応力緩和機能を維持する点で、25℃での弾性率を8GPa以下とし、7.5GPa以下とするのが好ましい。一方、半導体チップの外周またはコーナーに形成するアンダーフィルBは、Pbフリー半田が存在せず、低誘電率層の応力緩和を主目的とするため、25℃での弾性率を6GPa以下とし、5GPa以下が好ましい。アンダーフィルAの弾性率を高く設定し、Pbフリー半田の保護強化を図りながら、アンダーフィル樹脂Bの弾性率を低く設定し、低弾性率層の応力緩和を効果的に行なうことができる。本明細書における弾性率は、JIS規格K6911に定める方法により測定する。 【0019】 また、半導体チップの直下に形成するアンダーフィルAは、半導体チップとパッケージ基板との熱膨張係数の差を小さくすることによって、冷熱ヒートサイクルにより発生する低誘電率層の熱応力とPbフリー半田の熱応力の両者を効果的に緩和させる点で、ガラス転移温度以下での線膨張係数を35ppm/K以下とし、好ましくは33ppm/K以下とする。一方、半導体チップの外周またはコーナーに形成するアンダーフィルBは、脆弱なポーラス構造の低誘電率層に発生する熱応力のみを緩和させる点で、ガラス転移温度以下の線膨張係数を50ppm/K以下とし、好ましくは45ppm/K以下とする。本明細書における線膨張係数は、熱機械分析装置TMA(Thermomechanical Analysis)により測定する。 【0020】 本発明のアンダーフィル樹脂は、有機成分と無機充填剤を分散させたものが好ましい。有機成分の主成分は、液状エポキシ樹脂であり、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェニルグリシジルエーテル、シリコーン変性エポキシ樹脂などが好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が、基板との接着性が良好である点で、より好ましい。また、有機成分には、硬化剤として、芳香族アミン、脂肪族アミン、酸無水物系などを用いるのが好ましく、芳香族系アミン系硬化剤が、耐湿性と接着性が優れている点で、より好ましい。硬化剤の配合比は、主剤のエポキシ当量と合致するように調整する。さらに、有機成分には、添加剤として、パウダーを添加する態様が、応力緩和を促進する点で、好ましい。パウダーとしては、シリコーンゴム、シリコーンオイル、ポリブタジエンゴムまたはメタクリル酸メチル・ブタジエン・スチレン樹脂などが好適であり、応力緩和の観点から、シリコーン系パウダーがより好ましい。 【0021】 無機充填剤としては、シリカ、アルミナ、窒化アルミ、窒化珪素またはタルクなどを用いることができ、接着性を向上する点で、シランカップリング剤などで表面処理したものを好ましく使用することができ、シリカ粒子が安価であるため、好ましく用いられる。シリカ粒子は、平均粒径が1μm前後で、流動性の優れた球状シリカが好ましく用いられる。また、半導体装置の誤動作を防止するため、α線を放射するウランやトリウムなどの不純物濃度が、0.1ppb以下のシリカ粒子が好ましい。 【0022】 有機溶剤は、粘度調整のために、適宜使用することができる。有機溶剤の例としては、ジエチレングリコール、キシレン、シクロヘキサノン、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2-エトキシエタノール、1,2-エタンジオール、ホルムアミド、カルビトール、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテートが挙げられる。また、必要に応じて、カーボンブラックなどの顔料もしくは染料を配合することができ、カーボンブラックは、樹脂劣化による変色を隠す点で、好ましい。以上の樹脂組成は、半導体チップにおける低誘電率層の応力緩和を主目的とし、チップの外周またはコーナーに形成するアンダーフィルBの樹脂組成として特に重要である。」 「【0027】 (実施例1) アンダーフィル樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂1000g、フェニレンジアミン230g、反応性希釈剤としてヘキサンジオールジグリシジルエーテル154g、平均粒径1μmの球状シリカを3本ロールで混合分散して作製した。球状シリカは、表1に示す配合率になるように調製し、接着性向上を目的として、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン23gを配合し、応力緩和剤として、シリコーンゴム154gを配合した。このようにして、硬化後、25℃での弾性率と、ガラス転移温度以下での線膨張係数が表1に示すようなアンダーフィル樹脂A1,A2,B~Eを作製した。 【0028】 【表1】 [図:0001434193000004.jpg] 」 「【0030】 【表2】 [図:0001434193000005.jpg] 」 「【0034】 (実施例2) 半導体チップの直下にアンダーフィル樹脂A1を注入し、半導体チップの外周にアンダーフィル樹脂Bを塗布した以外は実施例1と同様に半導体装置を作製し、実施例1と同様に評価した。その結果、冷熱ヒートサイクル試験を2000サイクル行なったが、誘電体層は破壊されなかった。つまり、低誘電率層とPbフリー半田を組み合わせた半導体装置において、優れた信頼性が得られた。アンダーフィルの物性と評価の結果を表2に示す。」 「【図1】 [図:0001434193000006.jpg] 【図2】 [図:0001434193000007.jpg] 【図3】 [図:0001434193000008.jpg] 」 (2)甲3発明 ア 上記(1)の段落0018には、「本明細書における弾性率は、JIS規格K6911に定める方法により測定する。」と記載され、段落0019には、「本明細書における線膨張係数は、熱機械分析装置TMA(Thermomechanical Analysis)により測定する。」と記載されている。 イ 上記(1)の段落0020には、「本発明のアンダーフィル樹脂は、有機成分と無機充填剤を分散させたものが好ましい。」、「有機成分には、硬化剤として、芳香族アミン」「を用いるのが好ましく」と記載され、段落0021には、「無機充填剤としては、シリカ」「を用いることができ」と記載されている。 したがって、アンダーフィル樹脂において、芳香族アミンは硬化剤として用いられ、シリカは無機充填剤として用いられるといえる。 ウ (ア)上記(1)の段落0027には、「アンダーフィル樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂1000g、フェニレンジアミン230g、反応性希釈剤としてヘキサンジオールジグリシジルエーテル154g、平均粒径1μmの球状シリカを3本ロールで混合分散して作製した。」、「接着性向上を目的として、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン23gを配合し、応力緩和剤として、シリコーンゴム154gを配合した。このようにして、」「アンダーフィル樹脂A1」「を作製した。」と記載されている。ここで、フェニレンジアミンが芳香族アミン化合物であることは、本件特許の出願時の技術常識である。 したがって、上記イを踏まえると、アンダーフィル樹脂A1は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂1000g、硬化剤としてフェニレンジアミン230g、反応性希釈剤としてヘキサンジオールジグリシジルエーテル154g、無機充填剤として平均粒径1μmの球状シリカを3本ロールで混合分散し、接着性向上を目的としてグリシドキシプロピルトリメトキシシラン23gを配合し、応力緩和剤としてシリコーンゴム154gを配合したものであるといえる。 (イ)また、上記(1)の段落0027には、「このようにして、硬化後、25℃での弾性率と、ガラス転移温度以下での線膨張係数が表1に示すようなアンダーフィル樹脂A1」「を作製した。」と記載されている。 したがって、上記ア及び下記エを踏まえると、アンダーフィル樹脂A1は、硬化後の、JIS規格K6911に定める方法により測定した25℃での弾性率が7.6(GPa)であり、熱機械分析装置TMAにより測定されたガラス転移温度以下での線膨張係数が30(ppm/K)であるといえる。 エ 上記(1)の段落0028の表1には、「アンダーフィル樹脂」「A1」の「弾性率」及び「線膨張係数」が「7.6」(GPa)及び「30」(ppm/K)であることが記載されている。 オ 上記ウによれば、甲3には、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されている。(段落の後の括弧内は、参照先の項番を示す。) <甲3発明> 「ビスフェノールA型エポキシ樹脂1000g、硬化剤としてフェニレンジアミン230g、反応性希釈剤としてヘキサンジオールジグリシジルエーテル154g、無機充填剤として平均粒径1μmの球状シリカを3本ロールで混合分散し、接着性向上を目的としてグリシドキシプロピルトリメトキシシラン23gを配合し、応力緩和剤としてシリコーンゴム154gを配合した、(上記ウ(ア)) 硬化後の、JIS規格K6911に定める方法により測定した25℃での弾性率が7.6(GPa)であり、熱機械分析装置TMAにより測定されたガラス転移温度以下での線膨張係数が30(ppm/K)である、(上記ウ(イ)) アンダーフィル樹脂A1。」 4 甲4の1の記載 甲4の1には、以下の記載がある。 「概要 半導体パッケージの小型化,薄型化への要求から,フリップチップ実装が広く電子産業界で適用されている。フリップチップパッケージ封止において,その接続信頼性のみならず,パッケージの反りを制御することは非常に重要である。本稿では,フリップチップパッケージの性能,すなわちパッケージの反りや接続信頼性に及ぼす実装方式の影響を調べ,さらに異なる機械的,熱的特性を有する 3 種のアンダーフィル材を用いて,バンプ保護に対してどのような因子が影響するか調査した。高ヤング率を有するアンダーフィル材は,高接続信頼性を示した。熱サイクル試験において発生した接続不良の不良解析を実施したところ,チップコーナー付近にバンプクラックが発生していることが観察された。有限要素法を用いた解析から,高ヤング率を有するアンダーフィル材は,バンプ内に蓄積するひずみを効率的に小さくすることができることが分かった。アンダーフィル材の物性は,接続信頼性と封止工程中の予ひずみの関係に影響し,フリップチップパッケージの高性能化を実現させるためには,アンダーフィル材とその封止工程の最適な選択が必要不可欠であるという注目すべき結果を得た。」(第168頁「概要」) 「2.2 アンダーフィル材 今回,UF 材としては 3 種の材料を使用した(UF1,UF2,UF3)。機械的物性の異なる UF 材を用意するために,フィラー添加量を変え,CTE とヤング率(E)の異なる材料を作製した。これらの UF 材の CTE,及び E を測定するため,熱機械測定(TMA)及び動的粘弾性測定(DMA)によって精度よく測定した。ここで,TMA 測定は昇温速度 10℃ /min,圧縮法で行い,DMA 測定は昇温速度 5℃ /min,引っ張り法,振動数 10Hz で行った。 2.3 フリップチップの実装方法 また,フリップチップパッケージの封止プロセスの影響を調べるために,3 種類の実装法を検討した。その検討においては,3 種の UF 材のうち,中間的な物性を有する UF2 を用いて結果を比較できるようにした。Fig. 2(a)に示す CUF プロセスは一般的な実装・封止方法である。フリップチップボンダーを用いてSi チップを印刷回路基板(PCB)へマウントし,そのパッケージをリフロー装置へ投入した。実装されたパッケージにディスペンス機を用いて UF を毛細管現象によって充填し,150℃,2h にて硬化させた。 NUF プロセスの概要を Fig. 2(b)に示す。このプロセスにおいて,著者は 2 つの方法を適用した。一つはリフロー接続法であり,これを NUF プロセスと本稿では呼ぶことにする。この NUF プロセスにおいては,UF をまず PCB 上へディスペンスし,Si チップをその上からマウントした。そのパッケージをリフロー装置へ投入し,150℃,2h にて硬化させた。UFの硬化条件は全ての実装方法で同一の条件を用いた。もう一方のプロセスとして,加熱-圧着工法を実施した。本稿では NUF-TC プロセスと呼ぶことにする。このプロセスにおいても,UF を PCB に塗布し,その上からチップをマウントした。この方法では,フリップチップボンダー上にて,加熱はチップ側のみから与えられ,非常に短時間で行われる。リフロー実装における温度プロファイルを Fig. 3 に示し,CUF 及びNUF 工法でのリフロープロファイルを Fig. 3(a)に示した。Fig. 3(b)には NUF-TC プロセスのプロファイルを示してある。最高到達温度は全ておよそ 250℃でそろえた。NUF-TC プロセスで特筆すべきところは,およそ 10s のみの加熱であるということである。 」(第169頁左欄下から4行~第170頁左欄第8行) 「 [図:0001434193000009.jpg] 」(第170頁 Fig.2) 「 [図:0001434193000010.jpg] 」(第171頁 Fig.4) 5 甲4の2の記載 甲4の2には、以下の記載がある。 「2. 実験方法 2.1 試験基板 評価に使用したベアチップ内蔵配線板(以下“EPADs-TV”,EPADs Test Vehicle)概要をFig. 1に示す。Fig. 1(a)に示す通り配線層は4層とし,L2-L3間に部品を内蔵した。内蔵する部品はSIPOS (System Integration Platform Organization Standard) より提供いただいた,Fig. 1(b) に示す「SIPOS-TEG (Test Element Group)」であり,配線板と接続することでデイジーチェーンパターンを形成できるようにパッド配置されている。チップサイズは10 mm×10 mm,厚みは0.15 mmにバックグラインドされている。なお電極ピッチは0.12 mmであり,ここに金スタッドバンプを形成し,フェイスダウンのフリップチップ接続で実装する方式とした。実装方式は,熱圧着工法と超音波圧接工法の2種類を採用し,いずれもベアチップと配線板間にはアンダーフィル樹脂を充填した。なお熱圧着と超音波圧接ではそれぞれに適切なアンダーフィル材を選定した。また,配線板材料はハロゲンフリーのFR-4(パナソニック製,コア材R-1566,プリプレグR-1551)およびFR-5(同,コア材R-1515,プリプレグR-1410)を用いた。したがって,材料2種類と実装方式2種類で計4種類のサンプルを試作することとした。EPADsTV完成後の外観をFig. 1(c)に示す。中央部がベアチップ内蔵部であり,図中下部に配列されているランドはデイジーチェーンの入出力端子である。また,内蔵部左右に配列されているランドはデイジーチェーン故障箇所を特定するためのチェック端子である。なお基板サイズは30 mm×35 mmとした。 配線板製作は,まず初めにベアチップを実装するベース基板の片面をパターン形成した後,ベアチップをフェイスダウンでフリップチップ実装した。片面をパターン形成したトップ層基板とプリプレグを介して積層プレスした後,貫通スルーホール穴明・銅めっきを行い,外層のパターン形成を行った。ソルダーレジストは現像型フォトレジストインク(太陽インキ製造製 PSR-4000AUS308)を用いて両面に形成した。また,外層電極の表面処理は無電解のフラッシュ金めっき(Ni: 5μm, Au: 0.05μm) とした。 2.2 熱変形解析 配線板構造が部品内蔵配線板の熱変形挙動に与える影響について考察するため,シミュレーションによる解析を行った。用いたソルバーはADINA8.6(米ADINA社製),プリ・ポストプロセッサはI-deas 12(シーメンス社製)である。EPADsTVのガーバーデータから作成した3DCADデータをベースに,I-deas 12を用いてメッシュ作成を行い,ADINA8.6(米ADINA社製)を用いて熱伝導解析および熱変形解析を実施した。得られた結果は再びI-deas 12を用いて出力した。なお,要素数が多く計算負荷を調整するため,粘弾性や塑性変形は考慮せず弾性解析とした。また配線板内で温度は均一に上昇すると仮定し,熱分布は発生しないものとした。解析に用いた各構成材料の物性値をTable 1に示すが,ヤング率および線膨張係数の温度依存性,また絶縁材料であるガラスエポキシ(以下ガラエポ)の異方性を考慮した。以上の条件の下,室温から250°Cまで加熱した場合の熱変形挙動を解析した。」(第551頁左欄第10行~右欄下から5行) 「 [図:0001434193000011.jpg] 」(第551頁右欄 Table 1.) 6 甲4の3の記載 甲4の3には、以下の記載がある。 「【請求項1】 配線基板と、 前記配線基板上に鉛フリーはんだからなるバンプを介してフリップチップ接合された半導体チップと、 前記半導体チップと前記配線基板との間隙を充填するアンダーフィル樹脂とを備え、 前記アンダーフィル樹脂は、 エポキシ樹脂、硬化剤および無機充填剤を含有し、 ガラス転移温度が125℃以上であり、 25℃における熱膨張係数が30ppm/℃以下であり、 -55℃以上ガラス転移温度未満の温度域における貯蔵弾性率が4GPa以上9GPa以下、かつ損失弾性率が100MPa以上であり、前記損失弾性率は複数のピークを有している、半導体装置。」 「【0031】 本発明のアンダーフィル樹脂14には、必要に応じて、樹脂の内部応力を低下させる目的で、低応力化剤を添加してもよい。低応力化剤としては、シリコーンゴム、シリコーンオイル、ポリブタジエンゴム、熱可塑性樹脂などを用いることができる。これらは、エポキシ樹脂や硬化剤と化学反応するものであっても、反応に関与しないものであってもよい。また、これらの低応力化剤が固体の場合は、アンダーフィル樹脂14の粘度やチクソ性を増加させないよう、粒形や粒径を調整する。なお、これらの低応力化剤が液状の場合は、アンダーフィル樹脂14の熱硬化の際にエポキシ樹脂や硬化剤から分離して浮遊し、アンダーフィル樹脂の接着性を低下させたり、硬化物物性を低下させたり、沁みだして半導体部品を汚染したりすることのないように調整する必要がある。 【0032】 本発明のアンダーフィル樹脂14には、さらに必要に応じて、フィラとマトリクス樹脂との界面の接着、密着を促進するシランカップリング剤などのフィラ表面処理剤、カーボンブラックなどの着色剤、イオントラップ剤、反応性希釈剤、レベリング剤、その他の添加剤を配合することができる。 【0033】 本実施の形態におけるアンダーフィル樹脂14を構成するエポキシ樹脂、硬化剤、低応力化剤等は、その分子構造、分子量は特に限定されないが、硬化物であるアンダーフィル樹脂14の貯蔵弾性率、損失弾性率、ガラス転移温度、熱膨張係数、強度などの機械特性は、エポキシ樹脂と硬化剤とが3次元的に架橋した状態における、その分子構造、架橋構造および架橋点間距離によって規定される。エポキシ樹脂や硬化剤の分子量が低く、架橋点間距離が短いと、貯蔵弾性率が高く、損失弾性率が低く、強度も低くなる傾向がある。一方、エポキシ樹脂や硬化剤の分子量が高く、架橋点間距離が長いと、貯蔵弾性率が低く、損失弾性率が高くなる傾向がある。架橋点が多いとガラス転移温度は上昇し、熱膨張係数は低くなり、強度が高くなる傾向がある。すなわち、硬化物の貯蔵弾性率、損失弾性率、ガラス転移温度、熱膨張係数、強度などの機械特性は、樹脂を構成するエポキシ樹脂、硬化剤、その他架橋にかかわる樹脂の、分子量、分子構造、官能基の数等に依存する。 【0034】 本実施の形態におけるアンダーフィル樹脂14は、ガラス転移温度が125℃以上であり、かつ25℃での熱膨張係数が30ppm/℃以下である。たとえば、エポキシ樹脂と硬化剤とにおいて、2官能以上のものを用いて樹脂の架橋密度を高くすることにより、ガラス転移温度125℃以上と、熱膨張係数30ppm/℃以下とを実現することができる。熱膨張係数30ppm/℃以下は、樹脂の粘度や貯蔵弾性率、損失弾性率を所望の範囲に維持できる範囲でフィラの充填率を増加させることによっても実現できる。 【0035】 本実施の形態におけるアンダーフィル樹脂14は、-55℃以上ガラス転移温度未満の温度域における貯蔵弾性率が4GPa以上9GPa以下であることを特徴とする。エポキシ樹脂と硬化剤、無機充填剤の配合の他、貯蔵弾性率が高すぎる場合には、シリコーンゴムなどの低応力化剤を添加する。シリコーンゴム、シリコーンオイルなどの低応力化剤は、半導体装置の動作保証温度範囲内にガラス転移点を持たず、当該温度範囲において低い弾性率を保持する。したがって、アンダーフィル樹脂14の他の特性を損なわない範囲で添加量を調節して、アンダーフィル樹脂14の弾性率を調整することができる。また、無機充填剤の添加量を下げることによっても、効果的に貯蔵弾性率を低下させることができる。 【0036】 本実施の形態におけるアンダーフィル樹脂14は、損失弾性率が100MPa以上であり、かつ複数の損失弾性率のピークを有することを特徴とする。樹脂硬化物の損失弾性率は、熱エネルギーによる、樹脂の架橋点間での分子鎖の緩和を示すものであるため、エポキシ樹脂や硬化剤の架橋反応に寄与する官能基と官能基との間がフレキシブルな構造で、かつ分子鎖の長いものを用いることによって、上記特性を実現することができる。さらに、架橋反応に寄与する官能基間の分子量や分子構造の異なるエポキシ樹脂や硬化剤を複数種類用いることにより、複数の損失弾性率のピークを有する硬化物(アンダーフィル樹脂14)を実現することができる。また、無機充填剤はマトリクス樹脂の動きを妨げるので、無機充填剤の添加量を減ずることにより、マトリクス樹脂の特性が発現しやすくなり、損失弾性率の上昇や、複数のピークを実現できる。 【0037】 ここで、本実施の形態における半導体装置1においては、アンダーフィル樹脂14のガラス転移温度以上の温度域における貯蔵弾性率が100MPa以上であることが好ましい。これにより、半導体装置1の温度が万一アンダーフィル樹脂14のガラス転移温度を超えた場合でも、半導体チップ12と配線基板11との熱膨張係数差に起因してバンプ13にかかる熱応力を、アンダーフィル樹脂14によって分散して緩和し、バンプ13の破壊を抑制することができる。 【0038】 また、本実施の形態における半導体装置1においては、アンダーフィル樹脂14は、周波数10-2Hz以上10Hz以下の全範囲において、ガラス転移温度が125℃以上であり、25℃における熱膨張係数が30ppm/℃以下であり、-55℃以上ガラス転移温度未満の温度域における貯蔵弾性率が4GPa以上9GPa以下、かつ損失弾性率が100MPa以上であり、当該損失弾性率は複数のピークを有していることが好ましい。 【0039】 このように、広い周波数範囲において上記所定の特性を有するアンダーフィル樹脂14を採用することにより、上記半導体装置1の信頼性を向上させることができる。」 「【0051】 【表1】 [図:0001434193000012.jpg] 」 第5 当審の判断 1 申立理由1(進歩性)について (1)甲1を主引用例とした進歩性の判断 ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 a 甲1発明の「エポキシ樹脂として」の「ビスF型」及び「反応性希釈剤」は、「東都化成株式会社製商品名YDF-8170C」及び「坂本薬品工業株式会社製商品名SR-16HL」であるところ、その構造式は、当審が参考として引用する特開2017-66242号公報の段落0040及び段落0041によれば、それぞれ次の(II-1)及び(II-2)のとおりであり、いずれもエポキシ基を有するから、本件発明1の「エポキシ樹脂」に相当する。 [図:0001434193000013.jpg] b (a)本件特許明細書の段落0066には、「(2)熱膨張係数」として「アンダーフィル材の硬化物についてTMA(熱機械分析)をティーエーインスツルメント社製TA4000SAを用いて行い、得られたチャートの10℃と30℃の2点を結んだ傾きを試験片長さで割った値を熱膨張係数とした。」と記載され、「熱膨張係数」は、測定値を「試験片の長さ」で割った値であるから、線膨張係数であると解される。 (b)一方、甲1発明の「線膨張係数」は、「液状エポキシ樹脂組成物を円柱状に加熱成形し、熱機械分析装置TMA8140(理学電気株式会社製商品名)を用い、昇温速度3℃/min、測定温度範囲-120~250℃で測定した低温側の熱膨張量の直線の接線と高温側の直線の接線との交点」すなわち「ガラス転移温度」の「低温側の熱膨張量の直線の勾配であ」る。 (c)上記(a)及び(b)によれば、本件発明1の「熱膨張係数」と、甲1発明の「線膨張係数」とは、「硬化物としたときの、TMA(熱機械分析)で測定したガラス転移温度以下の熱膨張係数」である点で共通する。 c 甲1発明の「弾性率」は、「液状エポキシ樹脂組成物をシート状に加熱成形したものを試験片とし、動的粘弾性測定装置DVE型(株式会社レオロジ製)を用いて昇温速度3℃/min、測定温度-120~250℃、周波数10Hz、25℃で測定した動的粘弾性特性」であり、その値は「9(GPa)」である。 そうすると、甲1発明の「弾性率が9(GPa)であ」ることは、本件発明1の「DMA(動的粘弾性測定)で測定した25℃における貯蔵弾性率が、5GPa~9.5GPaであ」ることに相当する。 d 上記aによれば、甲1発明の「ビスF型」は、分子中に芳香環を含むエポキシ樹脂であり、「反応性希釈剤」は、分子中に芳香環を含まないエポキシ樹脂である。また、甲1発明は、「エポキシ樹脂としてビスF型80(重量部)及び反応性希釈剤20(重量部)」「を計量し」たものであるから、エポキシ樹脂全量に占める、分子中に芳香環を含むエポキシ樹脂の割合は、80質量%であるといえる。 そうすると、甲1発明の「エポキシ樹脂としてビスF型80(重量部)及び反応性希釈剤20(重量部)」含むことは、本件発明1の「エポキシ樹脂全量に占める、分子中に芳香環を含むエポキシ樹脂の割合が、65質量%以上であ」ることに相当する。 e 上記aによれば、「ビスF型」及び「反応性希釈剤」は2官能のエポキシ樹脂であるから、甲1発明の「エポキシ樹脂としてビスF型80(重量部)及び反応性希釈剤20(重量部)」「を計量し」たことは、本件発明1の「エポキシ樹脂全量に占める、3官能以上のエポキシ樹脂の割合が、0質量%であ」ることに相当する。 f 甲1発明の「坂本薬品工業株式会社製商品名SR-16HL」は、特開2017-66242号公報の段落0040に記載されているように、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルである。また、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルは、当審が参考として引用する特開2003-73453号公報の段落0037に記載されているように、1,6-ヘキサンジオールとエピクロルヒドリンすなわちエピクロロヒドリンとの反応により得られることは本件特許の出願時の技術常識である。 そうすると、甲1発明の「反応性希釈剤」は、「坂本薬品工業株式会社製商品名SR-16HL」であるから、本件発明1の「ビスフェノール型エポキシ樹脂及びアルキルジオールとエピクロロヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂」に相当する。 g 甲1発明の「硬化剤として」の「液状芳香族アミン」は、本件発明1の「硬化剤が、芳香族アミン化合物である」ことに相当する。 h 甲1発明は、「エポキシ樹脂としてビスF型80(重量部)及び反応性希釈剤20(重量部)、硬化剤として液状芳香族アミン30(重量部)、無機充填剤250(重量部)」「を計量」したものであるから、上記aを踏まえると、本件発明1と、甲1発明とは、「エポキシ樹脂」、「硬化剤」、「無機充填剤」を含む点で共通する。 i 上記a~hによれば、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で一致し、相違する。 <一致点> 「エポキシ樹脂、硬化剤及び無機充填剤を含み、 硬化物としたときの、DMA(動的粘弾性測定)で測定した25℃における貯蔵弾性率が、5GPa~9.5GPaであり、 前記エポキシ樹脂全量に占める、分子中に芳香環を含むエポキシ樹脂の割合が、65質量%以上であり、 前記エポキシ樹脂全量に占める、3官能以上のエポキシ樹脂の割合が、0質量%であり、 前記エポキシ樹脂が、ビスフェノール型エポキシ樹脂及びアルキルジオールとエピクロロヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を含み、 前記硬化剤が、芳香族アミン化合物であるアンダーフィル材。」 <相違点1> 「アンダーフィル材」を「硬化物としたときの、TMA(熱機械分析)で測定したガラス転移温度以下の熱膨張係数」について、本件発明1が「30ppm/℃以下であ」るのに対し、甲1発明は「33(ppm/℃)」である点。 <相違点2> 本件発明1が「DMA(動的粘弾性測定)で測定した240℃における貯蔵弾性率が0.10GPa以下であ」るのに対し、甲1発明は、DMA(動的粘弾性測定)で測定した240℃における貯蔵弾性率が規定されていない点。 (イ)相違点についての検討 相違点1について検討する。 甲1発明において「線膨張係数」を33(ppm/℃)から30(ppm/℃)にする場合、アンダーフィル材の組成が変更され、「弾性率」も9(GPa)から変化することは、本件特許の出願時の技術常識から明らかである。 そうすると、甲1発明から本件発明1の構成に想到するため、甲1発明を、相違点1に係る本件発明1の構成を備えたものとするには、「TMA(熱機械分析)で測定したガラス転移温度以下の熱膨張係数が30ppm/℃以下であり」、「DMA(動的粘弾性測定)で測定した25℃における貯蔵弾性率が、5GPa~9.5GPaであ」るもの(以下、「構成1」という。)とする必要がある。 しかし、甲1には、アンダーフィル材を、構成1を備えたものとする方法は記載されていないから、甲1発明において、構成1を備えたものとすることが、当業者が適宜なし得たことであるとはいえない。 また、甲2の第316頁左欄第13行~第14行、第21行~第23行に、熱膨張率の低下を目的にフィラーを用いること、及び、弾性率を下げるために単官能または2官能の鎖状構造体を用いることが記載されているとしても、熱膨張率及び弾性率の具体的な値は記載されていないから、甲1発明において甲2に記載された方法を用いて、構成1を備えたものとすることができるとはいえない。 さらに、甲3には「DMA(動的粘弾性測定)で測定した25℃における貯蔵弾性率が、5GPa~9.5GPaであ」ることが記載されておらず、甲4の1には、エポキシ樹脂の種類が記載されておらず、甲4の2には「DMA(動的粘弾性測定)で測定した25℃における貯蔵弾性率が、5GPa~9.5GPaであ」ることが記載されておらず、甲4の3には「ビスフェノール型エポキシ樹脂及びアルキルジオールとエピクロロヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂」を用いることが記載されていないから、甲3~甲4の3に記載された事項を甲1発明に適用したとしても、構成1を備えたものとすることができるとはいえない。 そして、甲5の1~甲5の4の記載は、上記判断を変えるものではない。 よって、甲2~甲5の4の記載を参酌しても、甲1発明を、相違点1に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。 (ウ)申立人の主張について 申立人は、特許異議申立書の第74頁7行~第76頁第22行において、甲2~甲4の3の記載を参酌して、甲1発明において「TMA(熱機械分析)で測定したガラス転移温度以下の熱膨張係数が30ppm/℃以下であり」、「DMA(動的粘弾性測定)で測定した25℃における貯蔵弾性率が、5GPa~9.5GPaであ」る構成とすることは、当業者が容易になし得たことである旨主張している。 しかし、上記(イ)において検討したとおりであるから、上記申立人の主張を採用することはできない。 (エ)小括 以上のとおりであるから、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明と、甲2~甲5の4の記載とに基いて当業者が容易に発明をすることができたものはない。 イ 本件発明2~14について 本件特許の請求項2~14の記載は、請求項1の記載を引用するものであるところ、本件発明2~14は、本件発明1の構成をすべて備えるものであるから、上記アにおける検討と同様の理由により、甲1発明と、甲2~甲5の4の記載とに基いて当業者が容易に発明をすることができたものはない。 (2)甲3を主引用例とした進歩性の判断 ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲3発明とを対比する。 a 甲3発明の「反応性希釈剤として」の「ヘキサンジオールジグリシジルエーテル」がエポキシ樹脂であることは、当審が参考として引用する特開2017-66242号公報の段落0039及び段落0040に記載されているように、本件特許の出願時の技術常識である。よって、甲3発明の「ビスフェノールA型エポキシ樹脂」及び「反応性希釈剤として」の「ヘキサンジオールジグリシジルエーテル」は、本件発明1の「エポキシ樹脂」に相当する。 b 甲3発明の「硬化剤として」の「フェニレンジアミン」は、本件発明1の「芳香族アミン化合物」である「硬化剤」に相当する。 c 甲3発明の「無機充填剤として」の「平均粒径1μmの球状シリカ」は、本件発明1の「無機充填剤」に相当する。 d 上記(1)ア(ア)d(a)と同様の理由により、甲3発明の「熱機械分析装置TMAにより測定されたガラス転移温度以下での線膨張係数が30(ppm/K)である」ことは、本件発明1の「TMA(熱機械分析)で測定したガラス転移温度以下の熱膨張係数が30ppm/℃以下であ」ることに相当する。 e 上記a及び上記(1)ア(ア)aによれば、ヘキサンジオールジグリシジルエーテルは芳香環を含まない2官能のエポキシ樹脂である。また、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が芳香環を含む2官能のエポキシ樹脂であることは、本件特許の出願時の技術常識である。したがって、甲3発明の「ビスフェノールA型エポキシ樹脂1000g、」「反応性希釈剤としてヘキサンジオールジグリシジルエーテル154g」「を3本ロールで混合分散し」たことは、本件発明1の「前記(A)エポキシ樹脂全量に占める、分子中に芳香環を含むエポキシ樹脂の割合が、65質量%以上であり、」「前記(A)エポキシ樹脂全量に占める、3官能以上のエポキシ樹脂の割合が、0質量%であ」ることに相当する。 f 甲3発明の「ビスフェノールA型エポキシ樹脂」は、本件発明1の「ビスフェノール型エポキシ樹脂」に相当する。また、上記(1)ア(ア)fと同様の理由により、本件発明1の「グリシジルエーテル型エポキシ樹脂」と甲3発明の「ヘキサンジオールジグリシジルエーテル」とは、「ビスフェノール型エポキシ樹脂及びアルキルジオールとエピクロロヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂」である点で共通する。 g 一般に、JIS規格K6911に定める方法により測定される弾性率は曲げ弾性率であり、動的粘弾性測定で測定される貯蔵弾性率ではないことは本件特許の出願時の技術常識であるから、甲3発明の「JIS規格K6911に定める方法により測定した25℃での弾性率」は、本件発明1の「DMA(動的粘弾性測定)で測定した25℃における貯蔵弾性率」ではない。 よって、本件発明1が、「DMA(動的粘弾性測定)で測定した240℃における貯蔵弾性率が0.10GPa以下であり、DMA(動的粘弾性測定)で測定した25℃における貯蔵弾性率が、5GPa~9.5GPaであ」るのに対し、甲3発明は、「JIS規格K6911に定める方法により測定した25℃での弾性率が7.6(GPa)であ」る点で、両者は相違する。 h 上記a~cによれば、本件発明1の「アンダーフィル材」と、甲3発明の「アンダーフィル樹脂A1」とは、「エポキシ樹脂」、「硬化剤」及び「無機充填剤」を含む点で共通する。 i 上記a~hによれば、本件発明1と甲3発明とは、以下の点で一致し、相違する。 <一致点> 「エポキシ樹脂、硬化剤及び無機充填剤を含み、 硬化物としたときの、TMA(熱機械分析)で測定したガラス転移温度以下の熱膨張係数が30ppm/℃以下であり、 前記エポキシ樹脂全量に占める、分子中に芳香環を含むエポキシ樹脂の割合が、65質量%以上であり、 前記エポキシ樹脂全量に占める、3官能以上のエポキシ樹脂の割合が、0質量%であり、 前記エポキシ樹脂が、ビスフェノール型エポキシ樹脂及びアルキルジオールとエピクロロヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を含み、 前記硬化剤が、芳香族アミン化合物であるアンダーフィル材。」 <相違点3> 本件発明1が、「DMA(動的粘弾性測定)で測定した240℃における貯蔵弾性率が0.10GPa以下であり、DMA(動的粘弾性測定)で測定した25℃における貯蔵弾性率が、5GPa~9.5GPaであ」るのに対し、甲3発明は、「JIS規格K6911に定める方法により測定した25℃での弾性率が7.6(GPa)であ」る点。 (イ)相違点についての検討 相違点3について検討する。 a 甲3の段落0007には、「本発明の課題は」「アンダーフィルにより半導体チップへの応力を緩和し、Pbフリー半田の保護を強化し、信頼性の高い半導体装置を提供することにある。」と記載され、段落0008には、「課題を解決するための手段」として「チップの直下に形成したアンダーフィルは、25℃での弾性率が6GPa~8GPaで、ガラス転移温度以下での線膨張係数が35ppm/K以下であり、チップの外周またはチップのコーナーに形成したアンダーフィルは、25℃での弾性率が6GPa以下で、ガラス転移温度以下での線膨張係数が50ppm/K以下である半導体装置」と記載され、段落0034には、「半導体チップの直下にアンダーフィル樹脂A1を注入し、」「評価した。」「低誘電率層とPbフリー半田を組み合わせた半導体装置において、優れた信頼性が得られた。」と記載されている。 b したがって、甲3発明は、半導体チップへの応力を緩和し、Pbフリー半田の保護を強化し、信頼性の高い半導体装置を提供すること(以下、「甲3目的」という。)を目的として、チップの直下に注入されるアンダーフィル樹脂A1の25℃での弾性率を7.6(GPa)としたものであるといえる。 c そうすると、甲3発明において、「JIS規格K6911に定める方法により測定した25℃での弾性率が7.6(GPa)であ」る構成を、相違点3に係る本件発明1の構成に変更することには、甲3目的のための構成が変更されるから、阻害要因がある。 d そして、甲1、甲2、甲4の1~甲5の4の記載は、上記判断を変えるものではない。したがって、甲1、甲2、甲4の1~甲5の4の記載を鑑みても、甲3発明を相違点3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。 (ウ)申立人の主張について 申立人は、特許異議申立書の第86頁第4行~第88頁第13行において、甲3発明を「TMA(熱機械分析)で測定したガラス転移温度以下の熱膨張係数が30ppm/℃以下であり、DMA(動的粘弾性測定)で測定した240℃における貯蔵弾性率が0.10GPa以下であり、DMA(動的粘弾性測定)で測定した25℃における貯蔵弾性率が、5GPa~9.5GPaであ」る構成とすることは、甲2、甲4の1~甲4の3の記載によれば、当業者が容易に想到し得たものであり、また、本件発明1が奏する作用効果は、当業者の予測を超える格別顕著なものではない旨主張している。 しかし、上記(イ)において検討したとおりであるから、上記申立人の主張を採用することはできない。 (エ)小括 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲3発明と、甲1、甲2、甲4の1~甲5の4の記載とに基いて当業者が容易に発明をすることができたものはない。 イ 本件発明2~14について 本件特許の請求項2~14の記載は、請求項1の記載を引用するものであるところ、本件発明2~14は、本件発明1の構成をすべて備えるものであるから、上記アにおける検討と同様の理由により、甲3発明と、甲1、甲2、甲4の1~甲5の4の記載とに基いて当業者が容易に発明をすることができたものはない。 (3)申立理由1(進歩性)についてのまとめ 以上のとおりであるから、申立理由1は理由がない。 2 申立理由2(サポート要件)について (1)申立人の主張 申立人は、特許異議申立書の第94頁第2行~第96頁末行において、「ビスフェノール型エポキシ樹脂及びアルキルジオールとエピクロロヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を所定の割合で組み合わせて用いた例のみが示されているに過ぎない本件特許明細書の実施例2に基づいて、何らビスフェノール型エポキシ樹脂及びグリシジルエーテル型エポキシ樹脂の割合、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂の種類が特定されていない本件特許の請求項1に係る発明の範囲まで、本件発明の課題を解決できると当業者が認識できる程度に具体例又は説明が記載されておらず、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化するための根拠も見いだせない」旨主張している。 (2)当審の判断 ア 本件課題について 本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落0007の記載によれば、本件発明が解決しようとする課題は、「リフローの際のソルダーレジストのクラックの発生が抑制され、且つ耐温度サイクル特性に優れるアンダーフィル材を提供すること」(以下、「本件課題」という。)である。 イ 本件解決手段について 本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落0008には、本件課題を解決する手段として、「アンダーフィル材の組成を、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤及び(C)無機充填剤を含むものとし、硬化物としたときの、TMA(熱機械分析)で測定したガラス転移温度以下の熱膨張係数を30ppm/℃以下とし、DMA(動的粘弾性測定)で測定した240℃における貯蔵弾性率を0.10GPa以下とすること」(以下、「本件解決手段」という。)が記載されている。 そして、同じく段落0068の表1、段落0071の表2、並びに、段落0072の「高温での貯蔵弾性率が高いとリフロー温度においてはんだの膨張をアンダーフィル材の硬化物が吸収できず、ソルダーレジストに応力がかかったためと考えられる。」及び「熱膨張係数が大きいと温度サイクルによるアンダーフィル材の硬化物の膨張及び収縮量が大きく、収縮時にチップ界面とアンダーフィル材が剥離したためと考えられる。」の記載によれば、本件解決手段により本件課題を解決できることを理解できる。 ウ 本件発明について 本件発明は、「(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤及び(C)無機充填剤を含み、硬化物としたときの、TMA(熱機械分析)で測定したガラス転移温度以下の熱膨張係数が30ppm/℃以下であり」、「DMA(動的粘弾性測定)で測定した240℃における貯蔵弾性率が0.10GPa以下であ」るものであるから、本件解決手段を備えたものであり、本件課題を解決できるものである。 したがって、本件発明は、当業者が本件課題を解決できると認識できる範囲内のものであるから、発明の詳細な説明に開示された内容を本件発明の範囲まで拡張ないし一般化することができるといえる。 (3)小括 よって、上記(1)の申立人の主張を採用することはできず、申立理由2は理由がない。 3 申立理由3(実施可能要件)について (1)申立人の主張 申立人は、特許異議申立書の第97頁第1行~第98頁末行において、「実施例2のみから、ビスフェノール型エポキシ樹脂及びグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を配合する割合、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂の種類(特に、本件特許の実施例で用いたアルキルジオールの詳細は不明である)について、どのようにすれば、本件特許明細書の実施例2と同様のリフローの際のソルダーレジストのクラックの発生が抑制され、且つ耐温度サイクル特性に優れるアンダーフィル材を得ることができるのか、合理的に推測することは困難であり、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤や複雑高度な実験等が必要である」旨主張している。 (2)当審の判断 ア 発明の詳細な説明の記載 本件特許明細書の発明の詳細な説明には、段落0006に「アンダーフィル材の硬化物の弾性率はアンダーフィル材に含まれる無機充填剤を減量することで低くすることができる」と記載され、段落0016に「TMA(熱機械分析)で測定したガラス転移温度以下の熱膨張係数を30ppm/℃以下とするには、エポキシ樹脂全量に占める、分子中に芳香環を含むエポキシ樹脂の割合を65質量%以上とすることが好ましく、70質量%以上とすることが好ましい。」及び「DMA(動的粘弾性測定)で測定した240℃における貯蔵弾性率を0.10GPa以下とするには、エポキシ樹脂全量に占める、3官能以上のエポキシ樹脂の割合を80質量%以下とすることが好ましく、70質量%以下とすることがより好ましく、60質量%以下とすることがさらに好ましい。」と記載されている。 上記記載によれば、アンダーフィル材の硬化物について、無機充填材の減量により弾性率を低くでき、エポキシ樹脂全量に占める、分子中に芳香環を含むエポキシ樹脂の割合を65質量%以上に増量することすることにより、TMA(熱機械分析)で測定したガラス転移温度以下の熱膨張係数を30ppm/℃以下とすることができ、エポキシ樹脂全量に占める、3官能以上のエポキシ樹脂の割合を80質量%以下に減量することにより、DMA(動的粘弾性測定)で測定した240℃における貯蔵弾性率を0.10GPa以下とすることができるといえる。また、本件特許の出願時の技術常識によれば、DMA(動的粘弾性測定)で測定した25℃における貯蔵弾性率と、DMA(動的粘弾性測定)で測定した240℃における貯蔵弾性率、及び弾性率とが連動することは明らかであるから、無機充填材とエポキシ樹脂全量に占める、分子中に芳香環を含むエポキシ樹脂の割合を制御することにより、DMA(動的粘弾性測定)で測定した25℃における貯蔵弾性率を5GPa~9.5GPaに調整できるといえる。 イ 本件発明の実施について 上記アによれば、当業者は、「(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤及び(C)無機充填剤を含み」、「前記(A)エポキシ樹脂全量に占める、分子中に芳香環を含むエポキシ樹脂の割合が、65質量%以上であり、前記(A)エポキシ樹脂全量に占める、3官能以上のエポキシ樹脂の割合が、0質量%であり、前記(A)エポキシ樹脂が、ビスフェノール型エポキシ樹脂及びアルキルジオールとエピクロロヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を含み、前記(B)硬化剤が、芳香族アミン化合物であるアンダーフィル材」を製造する際に、無機充填材、エポキシ樹脂全量に占める分子中に芳香環を含むエポキシ樹脂の割合、及び、エポキシ樹脂全量に占める3官能以上のエポキシ樹脂の割合を調整することにより、「硬化物としたときの、TMA(熱機械分析)で測定したガラス転移温度以下の熱膨張係数」を「30ppm/℃以下」とし、「DMA(動的粘弾性測定)で測定した240℃における貯蔵弾性率」を「0.10GPa以下」とし、「DMA(動的粘弾性測定)で測定した25℃における貯蔵弾性率」を「5GPa~9.5GPa」とすることができるといえる。 したがって、当業者は、発明の詳細な説明と本件特許の出願時の技術常識とに基づき、本件発明を実施することができるといえる。 (3)小括 よって、上記(1)の申立人の主張を採用することはできず、申立理由3は理由がない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、申立人の主張する特許異議の申立ての理由及び申立人が提出した証拠によっては、本件特許の請求項1~14に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に、本件特許の請求項1~14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-701056

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