審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2024-701169

封止用樹脂組成物、電子部品装置及び電子部品装置の製造方法

審判番号
2024-701169
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-187764
登録番号
7513074
請求日
2024年12月04日
審決日
2026年03月13日
公報発行日
2026年06月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社レゾナック
  • 【権利者代理人】弁理士法人太陽国際特許事務所
  • 【異議申立人】松本 文彦
審判長/審判官
  • 審判長 藤原 浩子
  • 審判官 細井 龍史
  • 審判官 浅野 裕之
分類
P1651.113-YAA(C08L) / P1651.121-YAA(C08L) / P1651.537-YAA(C08L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7513074号発明「封止用樹脂組成物、電子部品装置及び電子部品装置の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7513074号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-13〕について訂正することを認める。 特許第7513074号の請求項1~13に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7513074号(以下「本件特許」という。)の請求項1~13に係る特許についての出願は、平成29年9月26日を国際出願日とする特願2018-544739号の一部を令和4年11月24日(優先日 平成28年10月14日)に新たに出願したものであって、令和6年7月1日にその特許権の設定登録(請求項の数13)がされ、同年同月9日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和6年12月4日に松本 文彦(以下「申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1~13)がされたものである。 その後の手続は以下のとおりである。 令和7年 4月10日付け 取消理由通知 同年 6月16日 訂正請求及び意見書の提出(特許権者) 同年 同月19日付け 訂正請求があった旨の通知 同年 7月11日 意見書の提出(申立人) 同年 9月25日付け 取消理由通知(決定の予告) 同年12月 1日 訂正請求及び意見書の提出(特許権者) 同年 同月11日付け 訂正請求があった旨の通知 令和8年 1月 8日 意見書の提出(申立人) 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 令和7年12月1日付けの訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである(下線は、当審により付した。)。 ・訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1において、 「(A)エポキシ樹脂、(B)1分子中にアミノ基を少なくとも1つ有する硬化剤及び(C)無機充填材を含み、 前記(C)無機充填材が、(C1)平均粒径が0.1μm~20μmの第1の無機充填材及び(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材を含み、 前記(C)無機充填材の比表面積に、固形分質量に占める前記(C)無機充填材の質量の割合を乗じた値が、7.1m2/g~14.0m2/gであり、 前記(C)無機充填材に占める前記(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材の割合が、5.0質量%~13.3質量%である封止用樹脂組成物。」とあるのを、 「(A)エポキシ樹脂、(B)1分子中にアミノ基を少なくとも1つ有する硬化剤及び(C)無機充填材を含み、 前記(C)無機充填材が、(C1)平均粒径が0.1μm~20μmの第1の無機充填材及び(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材を含み、 前記(C)無機充填材の比表面積に、固形分質量に占める前記(C)無機充填材の質量の割合を乗じた値が、10.9m2/g~14.0m2/gであり、 前記(C)無機充填材に占める前記(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材の割合が、9.2質量%~13.3質量%であり、 前記(A)エポキシ樹脂が、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、及び、3官能のエポキシ基を有するアミン型エポキシ樹脂を含み、 前記(B)1分子中にアミノ基を少なくとも1つ有する硬化剤が、ジアミノトルエン型アミン硬化剤、及び、ジアミノジフェニルメタン型アミン硬化剤を含む封止用樹脂組成物。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~13も同様に訂正する)。 なお、訂正前の請求項1~13について、請求項2~13は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1~13に対応する訂正後の請求項1~13は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 したがって、訂正事項1による本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとに請求されたものである。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項1による請求項1についての訂正は、「前記(C)無機充填材の比表面積に、固形分質量に占める前記(C)無機充填材の質量の割合を乗じた値」を「7.1m2/g~14.0m2/g」から「10.9m2/g~14.0m2/g」(以下「訂正事項1-1」という。)とし、「前記(C)無機充填材に占める前記(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材の割合」を、「5.0質量%~13.3質量%」から「9.2質量%~13.3質量%」(以下「訂正事項1-2」という。)とし、「前記(A)エポキシ樹脂を、「ビスフェノールF型エポキシ樹脂、及び、3官能のエポキシ基を有するアミン型エポキシ樹脂を含」むもの(以下「訂正事項1-3」という。)とし、「前記(B)1分子中にアミノ基を少なくとも1つ有する硬化剤」を、「ジアミノトルエン型アミン硬化剤、及び、ジアミノジフェニルメタン型アミン硬化剤とを含」むもの(以下「訂正事項1-4」という。)とするものである。 訂正事項1-1は、「前記(C)無機充填材の比表面積に、固形分質量に占める前記(C)無機充填材の質量の割合を乗じた値」の下限を「7.1m2/g」から「10.9m2/g」とし、数値範囲を狭めるとともに、訂正事項1-2は、「前記(C)無機充填材に占める前記(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材の割合」の下限を「5.0質量%」から「9.2質量%」とし、数値範囲を狭めるもので、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、当該事項については、本件特許明細書の段落【0059】の【表1】の実施例6及び実施例7に記載されていることから、訂正事項1-1及び訂正事項1-2による請求項1についての訂正は、新規事項を追加するものではなく、また、特許請求の範囲の減縮を目的とすることからみて、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 訂正事項1-3は、「(A)エポキシ樹脂」の種類を、「ビスフェノールF型エポキシ樹脂、及び、3官能のエポキシ基を有するアミン型エポキシ樹脂を含」むものに限定するものであり、訂正事項1-4は、「前記(B)1分子中にアミノ基を少なくとも1つ有する硬化剤」の種類を、「ジアミノトルエン型アミン硬化剤とジアミノジフェニルメタン型アミン硬化剤とを含」むものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、当該エポキシ樹脂については、本件特許明細書の段落【0052】に、当該硬化剤については、同段落【0053】に記載されていることから、訂正事項1-3及び訂正事項1-4による請求項1についての訂正は新規事項を追加するものではなく、また、特許請求の範囲の減縮を目的とすることからみて、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 また、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2~13も同様である。 3 本件訂正後の独立特許要件について 特許異議の申立ては、訂正前の請求項1~13に対してされているので、当該請求項における訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。 4 むすび 以上のとおり、請求項1~13についての訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、また、同法同条第9項で準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。 したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-13〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2で示したとおり、本件訂正は認められたため、本件特許の請求項1~13に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、本件特許発明1~13を総称して「本件特許発明」ともいう。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~13に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。 「 【請求項1】 (A)エポキシ樹脂、(B)1分子中にアミノ基を少なくとも1つ有する硬化剤及び(C)無機充填材を含み、 前記(C)無機充填材が、(C1)平均粒径が0.1μm~20μmの第1の無機充填材及び(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材を含み、 前記(C)無機充填材の比表面積に、固形分質量に占める前記(C)無機充填材の質量の割合を乗じた値が、10.9m2/g~14.0m2/gであり、 前記(C)無機充填材に占める前記(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材の割合が、9.2質量%~13.3質量%であり、 前記(A)エポキシ樹脂が、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、及び、3官能のエポキシ基を有するアミン型エポキシ樹脂を含み、 前記(B)1分子中にアミノ基を少なくとも1つ有する硬化剤が、ジアミノトルエン型アミン硬化剤、及び、ジアミノジフェニルメタン型アミン硬化剤を含む封止用樹脂組成物。 【請求項2】 110℃での粘度が、0.20Pa・s以下である請求項1に記載の封止用樹脂組成物。 【請求項3】 前記封止用樹脂組成物の固形分に占める前記(A)エポキシ樹脂の割合が、5質量%~28質量%である請求項1又は請求項2に記載の封止用樹脂組成物。 【請求項4】 前記(C)無機充填材に占める前記(C1)平均粒径が0.1μm~20μmの第1の無機充填材の割合が、70質量%以上である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。 【請求項5】 25℃における粘度が、0.1Pa・s~50.0Pa・sである請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。 【請求項6】 前記(C1)平均粒径が0.1μm~20μmの第1の無機充填材が、シリカを含む請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。 【請求項7】 前記(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材が、シリカを含む請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。 【請求項8】 前記(C)無機充填材の含有率が、40質量%~85質量%である請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。 【請求項9】 前記(C1)平均粒径が0.1μm~20μmの第1の無機充填材の比表面積が、1m2/g~30m2/gである請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。 【請求項10】 前記(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材の比表面積が、20m2/g~500m2/gである請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。 【請求項11】 25℃における揺変指数が、0.5~1.5である請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。 【請求項12】 回路層を有する基板と、前記基板上に配置され、前記回路層と電気的に接続された電子部品と、 前記基板と前記電子部品との間隙に配置された請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物の硬化物と、 を備える電子部品装置。 【請求項13】 回路層を有する基板と、前記基板上に配置され、前記回路層と電気的に接続された電子部品とを、請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物を用いて封止する工程を有する電子部品装置の製造方法。」 第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要、証拠方法及び取消理由の概要 1 申立人が提出した特許異議申立書(以下、「申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。 (1)申立理由1-1(甲第1号証に基づく新規性欠如) 本件特許の請求項1~13に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (2)申立理由1-2(甲第3号証の1に基づく新規性欠如) 本件特許の請求項1~13に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証の1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (3)申立理由2-1(甲第1号証を主引用文献とする進歩性欠如) 本件特許の請求項1~13に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明並びに技術常識及び周知技術(甲第2号証ないし甲第4号証の2)に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という 。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (4)申立理由2-2(甲第3号証の1を主引用文献とする進歩性欠如) 本件特許の請求項1~13に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証の1に記載された発明並びに技術常識及び周知技術(甲第1号証、甲第2号証、甲3号証の2ないし甲第4号証の2)に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (5)申立理由2-3(甲第3号証の3を主引用文献とする進歩性欠如) 本件特許の請求項1~13に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証の3に記載された発明並びに技術常識及び周知技術(甲第1号証ないし甲3号証の2、甲3号証の4ないし甲第4号証の2)に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (6)申立理由3(サポ-ト要件違反) 本件特許の請求項1~13に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 (7)申立理由4(明確性要件違反) 本件特許の請求項1~13に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 2 証拠方法 申立人は、申立書に添付して、以下の証拠を提出している。 甲第1号証:特開2015-218229号公報 甲第2号証:“Admatechs Technical Overview”、2016年12月06日、Admatechs Co., Ltd.、インターネット<URL:https://www.dreytek.com/wp-content/uploads/2016/09/20160701-Admatechs-Technical-Overview.pdf> 甲第3号証の1:特開2015-105304号公報 甲第3号証の2:特開2011-006618号公報 甲第3号証の3:特開2015-189848号公報 甲第3号証の4:特開2016-113525号公報 甲第4号証の1:“用途別製品紹介 ナノコンポジット用途 封止剤/接着剤ほか”、INTERNET ARCHIVE WAYBACK MACHINE、[online]、2016年4月14日、日産化学工業株式会社ホームページ、[2024年1月25日検索]、インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20160414181844/http://www.nissanchem.co.jp:80/products/materials/inorganic/function/05/> 甲第4号証の2:“高純度ナノシリカ分散液~CTE低減/ワニスの流動性改善~”、INTERNET ARCHIVE WAYBACK MACHINE、[online]、2015年8月7日、日産化学工業株式会社ホームページ、[2024年1月25日検索]、インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20150807102042/https://www.nissanchem.co.jp/products/materials/silicasol.pdf> 甲第4号証の3:特開2006-016429号公報 甲第5号証:特開2010-192525号公報 甲第6号証(本件特許公報):特許第7513074号公報 以下、「甲第1号証」等を「甲1」等という。 3 取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由の概要 当審において令和7年9月25日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。 ・取消理由2(甲3の1を主引用文献とする進歩性欠如) 本件特許の請求項1~13に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3の1に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 第5 当審の判断 以下に述べるとおり、本件特許の請求項1~13に係る特許は、当審において通知した取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由及び申立書に記載した申立ての理由によっては取り消すことはできない。 1 取消理由2(甲3の1を主引用文献とする進歩性欠如)、申立理由1-2(甲3の1に基づく新規性欠如)及び申立理由2-2(甲3の1を主引用文献とする進歩性欠如)について 申立理由1-2及び申立理由2-2は、取消理由2と同じく甲3の1を主引用文献とするものであるから、併せて検討する。 (1)甲3の1に記載された発明 甲3の1の【請求項9】に係るエポキシ樹脂組成物を用いた半導体封止剤の実施態様である実施例9に着目して整理すると、以下の発明が記載されていると認められる。 「(A)41.4質量%のエポキシ樹脂a1:新日鐵住金化学株式会社製のYDF8170と、 (B)16.6質量%の硬化剤b1:日本化薬株式会社製のカヤハードAAと、 (C)2.0質量%のシリカフィラーである株式会社アドマテックス製のYA010C(平均粒径:10nm)と、 (D)40.0質量%のシリカフィラーである株式会社アドマテックス製のSE-2300(平均粒径:0.6μm)とを有し、前記(C)成分及び前記(D)成分を、合計で42.0質量%含む半導体封止剤に用いられる、粘度(液温25℃、50rpm)が9Pa・sであるエポキシ樹脂組成物。」(以下、「甲3の1発明」という。) (2)対比・判断 ア 本件特許発明1について (ア)対比 本件特許発明1と甲3の1発明とを対比する。 a 本件特許明細書の段落【0053】に、「エポキシ樹脂として、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂1;新日鉄住金化学株式会社製、商品名「YDF-8170C」と記載されていることから、甲3の1発明の「エポキシ樹脂a1:新日鐵住金化学株式会社製のYDF8170」は、本件特許発明1の「ビスフェノールF型エポキシ樹脂」である「(A)エポキシ樹脂」に相当し、甲3の1発明の「硬化剤b1:日本化薬株式会社製のカヤハードAA」は、甲1の段落【0051】によると、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチルジフェニルメタンであるから、本件特許発明1の「ジアミノジフェニルメタン型アミン硬化剤」である「(B)1分子中にアミノ基を少なくとも1つ有する硬化剤」に相当する。そして、甲3の1発明の「半導体封止剤に用いられる、」「エポキシ樹脂組成物」は、本件特許発明1の「封止用樹脂組成物」に相当する。 b 甲3の1発明の「シリカフィラーである株式会社アドマテックス製のYA010C(平均粒径:10nm)」及び「シリカフィラーである株式会社アドマテックス製のSE-2300(平均粒径:0.6μm)」は、各々本件特許発明1の「(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材」及び「(C1)平均粒径が0.1μm~20μmの第1の無機充填材」に相当する。 c 甲3の1発明のYA010C(平均粒径:10nm)及びSE-2300(平均粒径:0.6μm)に占めるYA010C(平均粒径:10nm)の割合は、4.8質量%(=2.0/(2.0+40.0)×100)である。 そうすると、本件特許発明1と甲3の1発明とは以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。 <一致点> 「(A)エポキシ樹脂、(B)1分子中にアミノ基を少なくとも1つ有する硬化剤及び(C)無機充填材を含み、 前記(C)無機充填材が、(C1)平均粒径が0.1μm~20μmの第1の無機充填材及び(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材を含む、封止用樹脂組成物。」 <相違点3の1-1> 前記(C)無機充填材の比表面積に、固形分質量に占める前記(C)無機充填材の質量の割合を乗じた値(以下、「比表面積×質量割合」という。)が、本件特許発明1は「10.9m2/g~14.0m2/g」であるのに対し、甲3の1発明は不明である点 <相違点3の1-2> 前記(C)無機充填材に占める前記(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材の割合が、本件特許発明1は「9.2質量%~13.3質量%」であるのに対し、甲3の1発明は「4.8質量%」である点 <相違点3の1-3> 前記(A)エポキシ樹脂が、本件特許発明1は「ビスフェノールF型エポキシ樹脂、及び、3官能のエポキシ基を有するアミン型エポキシ樹脂を含」むものであるのに対し、甲3の1発明は「ビスフェノールF型エポキシ樹脂」からなるものである点 <相違点3の1-4> 前記(B)1分子中にアミノ基を少なくとも1つ有する硬化剤が、本件特許発明1は「ジアミノトルエン型アミン硬化剤、及び、ジアミノジフェニルメタン型アミン硬化剤を含む」むものであるのに対し、甲3の1発明は「ジアミノジフェニルメタン型アミン硬化剤」からなるものである点 (イ)判断 a 相違点の検討 ・新規性について 甲3の1発明の「前記(C)無機充填材に占める前記(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材の割合」が「4.8質量%」である点で、本件特許発明1の「9.2質量%~13.3質量%」と少なくとも相違するので、当該点は実質的な相違点である。 そうすると、本件特許発明1は、甲3の1発明ではなく、甲3の1に記載されたものではない。 ・進歩性について <相違点3の1-1>及び<相違点3の1-2>に係る事項は、無機充填材に関するものであり、<相違点3の1-1>に係る事項は<相違点3の1-2>に係る事項に連動して変化するため、併せて検討する。 甲3の1には、<相違点3の1-1>に係る「比表面積×質量割合」を設定することは記載も示唆もされていないものの、「比表面積×質量割合」の値自体は計算により算出することができるため計算してみる。粒子径と比表面積の関係は、以下の(式1)で示されることが技術常識である(要すれば、https://www.microtrac.com/jp/applications/knowledge-base/specific-surface-area/を参照)。 (式1)粒子径[nm]=6000/(比表面積[m2/g]×密度[g/cm3]) シリカフィラーYA010C(平均粒径:10nm)の比表面積を計算すると、シリカの場合、密度=2.2g/cm3であるから、272.73m2/g(=6000/(10×2.2))であり、シリカフィラーSE-2300(平均粒径:0.6μm)の比表面積を計算すると、4.55m2/g(=6000/(600×2.2))となる。そして、「比表面積×質量割合」は、7.27m2/g(=272.73×(2/100)+4.55×(40/100))となり、本件特許発明1の「10.9m2/g~14.0m2/g」の範囲を満たしていない。 また、甲3の1の【表2】には、甲3の1発明(実施例9)と同じく「シリカフィラーである株式会社アドマテックス製のYA010C(平均粒径:10nm)」の含有量を2.0質量%としたまま、「シリカフィラーである株式会社アドマテックス製のSE-2300(平均粒径:0.6μm)」の含有量を55.0質量%(実施例2)、68.0質量%(実施例10)とした実施例が示されているところ、「前記(C)無機充填材に占める前記(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材の割合」は、4.8質量%(実施例9)、3.5%(実施例2)、2.9%(実施例10)である一方、ブリードは、1081μm(実施例9)、950μm(実施例2)、850μm(実施例10)となっている。すなわち、「前記(C)無機充填材に占める前記(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材の割合」が小さくなるにつれて、ブリードの距離が短くなっている。そうすると、甲3の1発明において、「前記(C)無機充填材に占める前記(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材の割合」を、上記実施例の範囲から外れる「9.2質量%~13.3質量%」の範囲とし、当該事項に連動して変化する「比表面積×質量割合」を「10.9m2/g~14.0m2/g」の範囲する動機付けがあるとはいえない。 また、申立人が提出した他の証拠(甲1、甲2、甲3の2~甲5)にも、<相違点3の1-1>に係る「比表面積×質量割合」を設定することは記載も示唆もされていないし、<相違点3の1-1>及び<相違点3の1-2>及に係る事項を同時に満足する例も見当たらないため、<相違点3の1-2>に係る「(C)無機充填材に占める前記(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材の割合が、9.2質量%~13.3質量%」とした上で、<相違点3の1-1>に係る「比表面積×質量割合」が「10.9m2/g~14.0m2/g」とすることが技術常識や周知技術ともいえない。 したがって、本件特許発明1は、他の相違点を検討するまでもなく、甲3の1発明並びに技術常識及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 b 本件特許発明1の効果について 本件特許発明1は、本件特許明細書の段落【0010】に、ブリードを抑制するという効果を奏することが記載されている。そして、本件特許明細書の実施例と比較例を対比すると、本件特許発明1のすべての発明特定事項を満たす実施例9は、ブリードが133μmと最も短くなっている。 すなわち、本件特許発明1は、本件特許発明1の発明特定事項を有することで、当該発明特定事項を有していないものに比して、よりブリードを抑制するという効果を奏するものである。 (ウ)小括 したがって、本件特許発明1は、甲3の1発明並びに技術常識及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件特許発明2~13について 本件特許発明2~13は、本件特許発明1を直接又は間接的に引用するものであって、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、上記アで示した本件特許発明1と同様の理由により、本件特許発明2~13は、甲3の1に記載された発明ではないし、また甲3の1に記載された発明並びに技術常識及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)申立人の主張について 申立人は、令和8年1月8日付けの意見書において、以下の主張を行っている。 「(B)実験的に数値範囲を最適化又は好適化することに進歩性はないこと ○1(当審注:丸囲みの1を表す。)相違点1及び○2(当審注:丸囲みの2を表す。)相違点2は、令和7年9月25日付けの取消理由通知書の<相違点3の1-1>及び<相違点3の1-2>であるが、取消理由通知書の19頁6行~20頁7行で指摘されているとおり、甲3の1に記載の数値範囲内で各シリカフィラーの配合量を調整することは当業者の設計的事項であり、当業者が容易になし得たことである。」(第3ページ) しかしながら、上記(2)ア(イ)aで説示したように、甲3の1及び申立人の提出した他の証拠(甲1、甲2、甲3の2~甲5)にも、<相違点3の1-1>に係る「比表面積×質量割合」を設定することは記載も示唆もされていないし、<相違点3の1-1>及び<相違点3の1-2>に係る事項を同時に満足することが技術常識や周知技術ともいえないことから、甲3の1発明において、<相違点3の1-1>及び<相違点3の1-2>に係る事項とすることは当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 したがって、申立人の上記主張を首肯することができない。 (4)取消理由2(甲3の1を主引用文献とする進歩性欠如)、申立理由1-2(甲3の1に基づく新規性欠如)及び申立理由2-2(甲3の1を主引用文献とする進歩性欠如)のまとめ 以上によれば、本件特許発明1~13は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1~13に係る特許は、取消理由2、申立理由1-2及び申立理由2-2によっては取り消すことはできない。 2 申立理由1-1(甲1に基づく新規性欠如)及び申立理由2-1(甲1を主引用文献とする進歩性欠如)について (1)甲1に記載された発明 甲1の実施例10に着目して整理すると、以下の発明が記載されていると認められる。 「(A)エポキシ樹脂A-1:ビスフェノールF型エポキシ樹脂、製品名YDF8170、新日鐵化学株式会社製、エポキシ当量158 32.23質量部、 (B)硬化剤B-1:4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチルジフェニルメタン、製品名カヤハードA-A、日本化薬株式会社製 11.8質量部、 (C)シリカフィラーC-2:2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン表面処理シリカフィラー(平均粒径:10nm)、製品名YA010A-JGP、株式会社アドマテックス製 3質量部、及び、 (D)シリカフィラーD-1:表面未処理シリカフィラー(平均粒径:0.3μm)、製品名SP-03B、扶桑化学株式会社製 53質量部からなり、前記(A)(B)(C)(D)の合計が100.03質量部であり、 粘度(液温25℃、50rpm)が68.4Pa・sである液状封止材。」(以下、「甲1発明」という。) (2)対比・判断 ア 本件特許発明1について (ア)対比 本件特許発明1と甲1発明とを対比する。 a 甲1発明の「(A)エポキシ樹脂A-1:ビスフェノールF型エポキシ樹脂、製品名YDF8170、新日鐵化学株式会社製、エポキシ当量158」は、本件特許発明1の「ビスフェノールF型エポキシ樹脂」である「(A)エポキシ樹脂」に相当し、甲1発明の「(B)硬化剤B-1:4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチルジフェニルメタン、製品名カヤハードA-A、日本化薬株式会社製」は、本件特許発明1の「ジアミノジフェニルメタン型アミン硬化剤」である「(B)1分子中にアミノ基を少なくとも1つ有する硬化剤」に相当する。そして、甲1発明の「液状封止材」は、樹脂、硬化剤、シリカフィラーを含んだ樹脂組成物であるから、本件特許発明1の「封止用樹脂組成物」に相当する。 b 甲1発明の「(C)シリカフィラーC-2:2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン表面処理シリカフィラー(平均粒径:10nm)、製品名YA010A-JGP、株式会社アドマテックス製」、「(D)シリカフィラーD-1:表面未処理シリカフィラー(平均粒径:0.3μm)、製品名SP-03B、扶桑化学株式会社」は、各々本件特許発明1の「(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材」、「(C1)平均粒径が0.1μm~20μmの第1の無機充填材」に相当する。 c 甲1発明のシリカフィラーC-2及びシリカフィラーD-1に占めるシリカフィラーC-2の割合は、5.4質量%(=3/(3+53)×100)である。 そうすると、本件特許発明1と甲1発明とは以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。 <一致点> 「(A)エポキシ樹脂、(B)1分子中にアミノ基を少なくとも1つ有する硬化剤及び(C)無機充填材を含み、 前記(C)無機充填材が、(C1)平均粒径が0.1μm~20μmの第1の無機充填材及び(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材を含む、封止用樹脂組成物。」 <相違点1-1> 前記(C)無機充填材の比表面積に、固形分質量に占める前記(C)無機充填材の質量の割合を乗じた値(以下、「比表面積×質量割合」という。)が、本件特許発明1が「10.9m2/g~14.0m2/g」であるのに対し、甲1発明は不明である点 <相違点1-2> 前記(C)無機充填材に占める前記(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材の割合が、本件特許発明1は「9.2質量%~13.3質量%」であるのに対し、甲1発明は「5.4質量%」である点 <相違点1-3> 前記(A)エポキシ樹脂が、本件特許発明1は「ビスフェノールF型エポキシ樹脂、及び、3官能のエポキシ基を有するアミン型エポキシ樹脂を含」むものであるのに対し、甲1発明は「ビスフェノールF型エポキシ樹脂」からなるものである点 <相違点1-4> 前記(B)1分子中にアミノ基を少なくとも1つ有する硬化剤が、本件特許発明1は「ジアミノトルエン型アミン硬化剤、及び、ジアミノジフェニルメタン型アミン硬化剤を含む」むものであるのに対し、甲1発明は「ジアミノジフェニルメタン型アミン硬化剤」からなるものである点 (イ)判断 a 相違点の検討 ・新規性について 甲1発明の「前記(C)無機充填材に占める前記(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材の割合」は「5.4質量%」と、本件特許発明1の「9.2質量%~13.3質量%」の点で相違するので、当該点は実質的な相違点である。 そうすると、本件特許発明1は、甲1発明ではなく、甲1に記載されたものではない。 ・進歩性について <相違点1-1>及び<相違点1-2>に係る事項は、無機充填材に関するものであり、<相違点1-1>に係る事項は<相違点1-2>に係る事項に連動して変化するため、併せて検討する。 甲1には、<相違点1-1>に係る「比表面積×質量割合」を設定することは記載も示唆もされていないものの、「比表面積×質量割合」の値自体は計算により算出することができるため計算してみる。「(C)シリカフィラーC-2:2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン表面処理シリカフィラー(平均粒径:10nm)、製品名YA010A-JGP、株式会社アドマテックス製」の比表面積を計算すると、シリカの場合、密度=2.2g/cm3であるから、272.73m2/g(=6000/(10×2.2))であり、「(D)シリカフィラーD-1:表面未処理シリカフィラー(平均粒径:0.3μm)の比表面積を計算すると、9.09m2/g(=6000/(300×2.2))となる。そして、「比表面積×質量割合」は13.0m2/g(=272.73×(3/100)+9.09×(53/100))となり、本件特許発明1の「10.9m2/g~14.0m2/g」の範囲を満たすものとなっている。 一方、甲1のエポキシ樹脂、硬化剤の組成が同じ実施例8~11のシリカフィラー合計量は56質量部であるから、甲1発明において、例えば、(C)シリカフィラーC-2の量を3質量部から5.15質量部、(D)シリカフィラーD-1の量を53質量部から50.85質量部(=56-5.15)とし、「(C)無機充填材に占める前記(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材の割合」を、本件特許発明1の下限値である9.2質量%(=5.15/56×100)とすると、「比表面積×質量割合」は、18.6m2/g(=272.73×(5.15/100)+9.09×(50.85/100))となり、本件特許発明1の「10.9m2/g~14.0m2/g」の範囲を満たさない。 また、甲1の実施例9は、(C)シリカフィラーC-2の量が0.5質量部、(D)シリカフィラーD-1の量が55.5質量部であるところ、「前記(C)無機充填材に占める前記(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材の割合」は、0.9質量%(=0.5/56×100)と本件特許発明1の「9.2質量%~13.3質量%」の範囲外であり、「比表面積×質量割合」も、6.4m2/g(=272.73×(0.5/100)+9.09×(55.5/100))となり、本件特許発明1の「10.9m2/g~14.0m2/g」の範囲を満たさない。 すなわち、<相違点1-1>及び<相違点1-2>に係る事項を同時に満たすように設定することは困難なことといえる。 また、申立人が提出した他の証拠(甲2~甲5)にも、<相違点1-1>に係る「比表面積×質量割合」を設定することは記載も示唆もされていないし、<相違点1-1>及び<相違点1-2>に係る事項を同時に満足する例も見当たらないため、<相違点1-2>に係る「(C)無機充填材に占める前記(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材の割合が、9.2質量%~13.3質量%」とした上で、<相違点1-1>に係る「比表面積×質量割合」が「10.9m2/g~14.0m2/g」とすることが技術常識や周知技術ともいえない。 したがって、本件特許発明1は、他の相違点を検討するまでもなく、甲1発明並びに技術常識及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 b 本件特許発明1の効果について 本件特許発明1は、本件特許発明1の発明特定事項を有することで、当該発明特定事項を有していないものに比して、よりブリードを抑制するという効果を奏するものである。 (ウ)小括 したがって、本件特許発明1は、甲1発明並びに技術常識及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件特許発明2~13について 本件特許発明2~13は、本件特許発明1を直接又は間接的に引用するものであって、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、上記アで示した本件特許発明1と同様の理由により、本件特許発明2~13は、甲1に記載された発明ではないし、また甲1に記載された発明並びに技術常識及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)申立人の主張について 申立人は、令和7年7月11日付けの意見書において、以下の主張を行っている。 「(A)実験的に数値範囲を最適化又は好適化することに進歩性はないこと 甲1発明では、第2の無機充填剤の割合が5.4質量%であり、本件訂正発明1の9.2質量%~13.3質量%の範囲外である点で相違するが、実験的に数値範囲を最適化又は好適化することは、通常、当業者の通常の創作能力の発揮といえるため、甲1発明は依然として進歩性を有していない。」(第3ページ) しかしながら、上記(2)ア(イ)aで説示したように、甲1及び申立人が提出した他の証拠(甲2~甲5)にも、<相違点1-1>に係る「比表面積×質量割合」を設定することは記載も示唆もされていないし、<相違点1-1>及び<相違点1-2>に係る事項を同時に満足することが技術常識や周知技術ともいえないことから、甲1発明において、<相違点1-1>及び<相違点1-2>に係る事項とすることは当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 したがって、申立人の上記主張を首肯することができない。 (4)申立理由1-1(甲1に基づく新規性欠如)及び申立理由2-1(甲1を主引用文献とする進歩性欠如)のまとめ 以上によれば、本件特許発明1~13は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1~13に係る特許は、申立理由1-1及び申立理由2-1によっては取り消すことはできない。 3 申立理由2-3(甲3の3を主引用文献とする進歩性欠如)について (1)甲3の3に記載された発明 甲3の3は、「電子部品装置の封止用に特に好適な電子部品用液状樹脂組成物、及びこの組成物で封止された素子を備えた電子部品装置に関する」(【0001】)技術が記載されているところ、その【請求項1】に係る電子部品用液状樹脂組成物の実施態様である実施例1に着目して整理すると、以下の発明が記載されていると認められる。 「液状エポキシ樹脂: ビスフェノールFをエポキシ化して得られるエポキシ当量160の液状ジエポキシ樹脂(エポキシ樹脂1) 70質量部、 アミノフェノールをエポキシ化して得られるエポキシ当量95の3官能液状エポキシ樹脂(エポキシ樹脂2) 30質量部、 硬化剤:活性水素当量45のジエチルトルエンジアミン 34質量部、 硬化促進剤:2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール 1質量部、 カップリング剤:γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 3質量部、 イオントラップ剤:ビスマス系イオントラップ剤(東亞合成株式会社、商品名IXE-500) 1質量部、 酸化防止剤:3,9-ビス[2-〔3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン 1質量部、 有機溶剤:1質量部、 無機充填材1:レーザー回折法でのピーク3μmの球状シリカ 320質量部、 無機充填材4:レーザー回折法でのピーク10nmの球状シリカ、9質量部 を配合し、三本ロール及び減圧可能な擂潰機にて混練分散して作製された電子部品装置の封止用に特に好適な電子部品用液状樹脂組成物。」(以下、「甲3の3発明」という。) (2)対比・判断 ア 本件特許発明1について (ア)対比 本件特許発明1と甲3の3発明とを対比する。 a 甲3の3発明の「ビスフェノールFをエポキシ化して得られるエポキシ当量160の液状ジエポキシ樹脂(エポキシ樹脂1)」は、本件特許発明1の「ビスフェノールF型エポキシ樹脂」に相当する。また、甲3の3発明の「アミノフェノールをエポキシ化して得られるエポキシ当量95の3官能液状エポキシ樹脂(エポキシ樹脂2)」は、3官能の基はエポキシ基であるといえるから、本件特許発明1の「3官能のエポキシ基を有するアミン型エポキシ樹脂」に相当する。 また、甲3の3発明の「活性水素当量45のジエチルトルエンジアミン」である「硬化剤」は、本件特許発明1の「ジアミノトルエン型アミン硬化剤」に相当する。そして、甲3の3発明の「電子部品用液状樹脂組成物」は、甲3の3に、「本発明は、電子部品装置の封止用に特に好適な電子部品用液状樹脂組成物」(段落【0001】)と記載されていることから、本件特許発明1の「封止用樹脂組成物」に相当する。 b 甲3の3発明の「無機充填材4:レーザー回折法でのピーク10nmの球状シリカ」及び「無機充填材1:レーザー回折法でのピーク3μmの球状シリカ」は、各々本件特許発明1の「(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材」及び「(C1)平均粒径が0.1μm~20μmの第1の無機充填材」に相当する。 c 甲3の3発明の無機充填剤に占める「無機充填材4としてレーザー回折法でのピーク10nmの球状シリカ」の割合は、2.7質量%(=9/(9+320)×100)である。 そうすると、本件特許発明1と甲3の3発明とは以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。 <一致点> 「(A)エポキシ樹脂、(B)1分子中にアミノ基を少なくとも1つ有する硬化剤及び(C)無機充填材を含み、 前記(C)無機充填材が、(C1)平均粒径が0.1μm~20μmの第1の無機充填材及び(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材を含み、 前記(A)エポキシ樹脂が、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、及び、3官能のエポキシ基を有するアミン型エポキシ樹脂を含む、 封止用樹脂組成物。」 <相違点3の3-1> 前記(C)無機充填材の比表面積に、固形分質量に占める前記(C)無機充填材の質量の割合を乗じた値(以下、「比表面積×質量割合」という。)が、本件特許発明1は「10.9m2/g~14.0m2/g」であるのに対し、甲3の3発明は不明である点 <相違点3の3-2> 前記(C)無機充填材に占める前記(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材の割合が、本件特許発明1は「9.2質量%~13.3質量%」であるのに対し、甲3の3発明は「2.7質量%」である点 <相違点3の3-3> 前記(B)1分子中にアミノ基を少なくとも1つ有する硬化剤が、本件特許発明1は「ジアミノトルエン型アミン硬化剤、及び、ジアミノジフェニルメタン型アミン硬化剤を含む」ものであるのに対し、甲3の3発明は「ジアミノトルエン型アミン硬化剤」からなるものである点 (イ)判断 a 相違点の検討 <相違点3の3-1>及び<相違点3の3-2>に係る事項は、無機充填材に関するものであり、<相違点3の3-1>に係る事項は<相違点3の3-2>に係る事項に連動して変化するため、併せて検討する。 甲3の3には、<相違点3の3-1>に係る「比表面積×質量割合」を設定することは記載も示唆もされていないものの、「比表面積×質量割合」の値自体は計算により算出することができるため計算してみる。「無機充填材4:レーザー回折法でのピーク10nmの球状シリカ」の比表面積を計算すると、シリカの場合、密度=2.2g/cm3であるから、272.73m2/g(=6000/(10×2.2))であり、及び「無機充填材1:レーザー回折法でのピーク3μmの球状シリカ」の比表面積を計算すると、0.91m2/g(=6000/(3000×2.2))となる。そして、「比表面積×質量割合」は、5.8m2/g(=272.73×(9/471)+0.91×(320/471))となり、本件特許発明1の「10.9m2/g~14.0m2/g」の範囲を満たしていない。 また、甲3の3のすべての実施例は無機充填剤の合計量が329質量であるから、甲3の3発明において、例えば、無機充填剤4の量を9質量部から30.25質量部、無機充填剤1の量を320質量部から298.75質量部(=329-30.25)とし、「(C)無機充填材に占める前記(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材の割合」を、本件特許発明1の下限値である「9.2質量%」としても、「比表面積×質量割合」は、18.0m2/g(=272.73×(30.25/471)+0.91×(298.75/471))となり、本件特許発明1の「10.9m2/g~14.0m2/g」の範囲を満たさない。 そして、無機充填材の配合量が異なる甲3の3の実施例8についても見てみると、「(C)無機充填材に占める前記(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材の割合」は14.3質量%(=47/(47+282)×100)と、本件特許発明1の「9.2質量%~13.3質量%」を満たしていないし、「比表面積×質量割合」を計算しても、27.8m2/g(=272.73×(47/471)+0.91×(282/471))となり、本件特許発明1の「10.9m2/g~14.0m2/g」の範囲を満たしていない。 すなわち、<相違点3の3-1>及び<相違点3の3-2>に係る事項を同時に満たすように設定することは困難なことといえる。 また、申立人が提出した他の証拠(甲1、甲2、甲3の1、甲3の2、甲3の4~甲5)にも、<相違点3の3-1>に係る「比表面積×質量割合」を設定することは記載も示唆もされていないし、<相違点3の3-1>及び<相違点3の3-2>に係る事項を同時に満足する例も見当たらないため、<相違点3の3-2>に係る「(C)無機充填材に占める前記(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材の割合が、9.2質量%~13.3質量%」とした上で、<相違点3の3-1>に係る「比表面積×質量割合」が「10.9m2/g~14.0m2/g」とすることが技術常識や周知技術ともいえない。 したがって、本件特許発明1は、他の相違点を検討するまでもなく、甲3の3発明並びに技術常識及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 b 本件特許発明1の効果について 本件特許発明1は、本件特許発明1の発明特定事項を有することで、当該発明特定事項を有していないものに比して、よりブリードを抑制するという効果を奏するものである。 (ウ)小括 したがって、本件特許発明1は、甲3の3発明並びに技術常識及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件特許発明2~13について 本件特許発明2~13は、本件特許発明1を直接又は間接的に引用するものであって、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、上記アで示した本件特許発明1と同様の理由により、本件特許発明2~13は、甲3の3に記載された発明ではないし、また甲3の3に記載された発明並びに技術常識及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)申立人の主張について 申立人は、申立書において、以下の主張を行っている。 「甲3の3発明においても、周知の課題であったブリードの抑制を目的として、(C)成分であるレーザー回折法で100nm以下のピークを有する無機充填材を実施例1及び実施例8における配合割合(約2.7質量%~14.3質量%)の間で調整することは当業者であれば容易に想到し得たことであり、それに伴って「前記(C)無機充填材の比表面積に、固形分質量に占める前記(C)無機充填材の質量の割合を乗じた値」も「7.1m2/g~14.0m2/g」の範囲内となるものと思料する。」(82ページ) しかしながら、上記(2)ア(イ)aで説示したように、<相違点3の3-1>及び<相違点3の3-2>に係る事項を同時に満たすように設定することは困難なことであり、また、<相違点3の3-1>及び<相違点3の3-2>に係る事項を同時に満足することが技術常識や周知技術ともいえないことから、甲3の3発明において、<相違点3の3-1>及び<相違点3の3-2>に係る事項とすることは当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 したがって、申立人の上記主張を首肯することができない。 (4)申立理由2-3(甲3の3を主引用文献とする進歩性欠如)のまとめ 以上によれば、本件特許発明1~13は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1~13に係る特許は、申立理由2-3によっては取り消すことはできない。 3 申立理由3(サポ-ト要件違反)について (1)サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (2)検討 ア 本件特許発明は、本件特許明細書の段落【0008】等から、「ブリードを抑制することができる封止用樹脂組成物並びにそれを用いた電子部品装置及びその製造方法を提供すること」を課題とするものである。 イ そこで、まず本件特許明細書の発明の詳細な説明の一般的記載について 見てみる。 本件特許明細書の段落【0009】には、「前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。 <1> (A)エポキシ樹脂、(B)1分子中にアミノ基を少なくとも1つ有する硬化剤及び(C)無機充填材を含み、 前記(C)無機充填材が、(C1)平均粒径が0.1μm~20μmの第1の無機充填材及び(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材を含み、 前記(C)無機充填材の比表面積に、固形分質量に占める前記(C)無機充填材の質量の割合を乗じた値が、4.0m2/g以上である封止用樹脂組成物。」と記載され、同段落【0025】には、「(C1)成分の第1の無機充填材は、封止用樹脂組成物の硬化物に耐ヒートサイクル性、耐湿性、絶縁性等を付与し、封止用樹脂組成物の硬化の際の応力を低減する。」、同段落【0031】には、「(C2)成分の第2の無機充填材を用いることで、ブリードの抑制効果が向上する。第2の無機充填材の平均粒径は、10nm~80nmであり、10nm~70nmであることが好ましく、10nm~60nmであることがより好ましい。第2の無機充填材の平均粒径が10nm以上であれば、封止用樹脂組成物の粘度が増大しにくく、流動性の悪化が生じにくい傾向にある。」、同段落【0033】には、「 無機充填材に占める第2の無機充填材の割合は、0.3質量%以上であることが好ましい。また、無機充填材に占める第2の無機充填材の割合は、30質量%以下であることが好ましい。無機充填材に占める第2の無機充填材の割合は、0.3質量%~30質量%であることがより好ましく、0.5質量%~25質量%であることがさらに好ましい。無機充填材に占める第2の無機充填材の割合が上記範囲であれば、ブリードの低減効果を発現でき、且つ流動性に優れる封止用樹脂組成物が得られる。」、同段落【0036】には、「無機充填材の比表面積に、固形分質量に占める無機充填材の質量の割合を乗じた値は、4m2/g以上であり、4m2/g~30m2/gであることが好ましく、5m2/g~26m2/gであることがより好ましく、6m2/g~24m2/gであることがさらに好ましい。無機充填材の比表面積に、固形分質量に占める無機充填材の質量の割合を乗じた値が上記範囲であれば、ブリードの低減効果を発現でき、且つ流動性に優れる樹脂組成物が得られる。」と記載されている。 すなわち、上記記載から、「(A)エポキシ樹脂、(B)1分子中にアミノ基を少なくとも1つ有する硬化剤及び(C)無機充填材を含み、 前記(C)無機充填材が、(C1)体積累積50%径が0.1μm~20μmの第1の無機充填材及び(C2)体積累積50%径が10nm~80nmの第2の無機充填材を含み、 前記(C)無機充填材の比表面積に、固形分質量に占める前記(C)無機充填材の質量の割合を乗じた値が、4.0m2/g以上であり、 前記(C)無機充填材に占める前記(C2)体積累積50%径が10nm~80nmの第2の無機充填材の割合が、0.3質量%~30質量%である、封止用樹脂組成物。」(技術的事項ア)により、ブリードの低減効果が奏することが記載されているといえる。 ウ 次いで、本件特許明細書の発明の詳細な説明の上記一般的記載を除く、【実施例】について見てみる。 無機充填材として、(C1)平均粒径が0.1μm~20μmの第1の無機充填材のみを使用した比較例のブリードの距離が一番短いもので、「358μm」となっている。一方、(A)エポキシ樹脂が、ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂とグリシジルアミン型エポキシ樹脂を、(B)1分子中にアミノ基を少なくとも1つ有する硬化剤が、ジアミノトルエン型アミン硬化剤とジアミノジフェニルメタン型アミン硬化剤を使用した上で、上記技術的事項アを満たすいずれの実施例(133μm(実施例9)~311μm(実施例4))も、比較例1よりもブリードの距離が短くなっている。 エ そうすると、技術的事項アを更に特定し、ブリードが最も短い実施例である実施例9に対応する「(A)エポキシ樹脂、(B)1分子中にアミノ基を少なくとも1つ有する硬化剤及び(C)無機充填材を含み、 前記(C)無機充填材が、(C1)平均粒径が0.1μm~20μmの第1の無機充填材及び(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材を含み、 前記(C)無機充填材の比表面積に、固形分質量に占める前記(C)無機充填材の質量の割合を乗じた値が、10.9m2/g~14.0m2/gであり、 前記(C)無機充填材に占める前記(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材の割合が、9.2質量%~13.3質量%であり、 前記(A)エポキシ樹脂が、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、及び、3官能のエポキシ基を有するアミン型エポキシ樹脂を含み、 前記(B)1分子中にアミノ基を少なくとも1つ有する硬化剤が、ジアミノトルエン型アミン硬化剤、及び、ジアミノジフェニルメタン型アミン硬化剤を含む封止用樹脂組成物。」(技術的事項イ)により、本件特許発明の課題が解決されることが認識できる。 そして、本件特許発明1、及び本件特許発明1を直接又は間接的に引用する本件特許発明2~13は、前記技術的事項イを備えるものであるから、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件特許発明の課題を解決できると認識できるものといえる。 オ したがって、本件特許発明1~13は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件特許発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 (3)申立人の主張について 申立人は、申立書及び意見書において、以下の主張を行っている。 ・主張ア:「(エの1の1)構成(B)について・・・ (D)サポート要件違反であること ここで、甲第5号証の【0022】、【0023】に記載されているように、硬化剤として用いる物質が変われば発生するブリード現象の程度が変わることが技術常識である。 してみると、(B)1分子中にアミノ基を少なくとも1つ有する硬化剤を用いたとしても、当該技術常識を参酌すれば、硬化剤として、ジアミノトルエン型アミン硬化剤を26.4質量部、及びジアミノジフェニルメタン型アミン硬化剤を18.9質量部の割合で組み合わせて用いた例のみが示されているに過ぎない本件特許明細書の実施例に基づいて、硬化剤について、特定硬化剤以外の種類の硬化剤や含有量が特定されていない場合にまで、本件特許発明の課題(ブリードの抑制)を解決できると当業者が認識できる程度に具体例又は説明が記載されていない。そのため、本件特許発明(請求項1)のように、硬化剤の種類や含有量を特定しない範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を一般化できるとはいえない。」(申立書の第88~90ページ) 主張イ:「(エの1の2)構成(A)について・・・ (C)サポート要件違反であること ここで、甲第3号証の1の【表4】、【0056】に記載されているように、エポキシ樹脂として用いる物質が変われば発生するブリード現象の程度が変わることが技術常識である。 してみると、(A)エポキシ樹脂を用いたとしても、当該技術常識を参酌すれば、エポキシ樹脂として、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を50質量部及び3官能のエポキシ基を有するアミン型エポキシ樹脂を50質量部の割合で組み合わせて用いた例のみが示されているに過ぎない本件特許明細書の実施例に基づいて、エポキシ樹脂について、何ら種類や含有量が特定されていない場合にまで、本件特許発明の課題(ブリードの抑制)を解決できると当業者が認識できる程度に具体例又は説明が記載されていない。そのため、本件特許発明(請求項1)のように、エポキシ樹脂の種類や含有量を特定しない範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を一般化できるとはいえない。」(申立書の第90~92ページ) 主張ウ:「(A)各成分の含有量について 特許権者は、令和7年12月1日付の意見書の4頁14~5頁2行において、液状成分の滲み出しやすさは、液状成分の種類によって異なると考えられること、本件発明では、無機充填材を特定の組合せ及び配合量とすることにより、これら特定のエポキシ樹脂及び硬化剤の組み合わせに対してブリード抑制の効果が示されていることを主張している。 この特許権者の主張によれば、エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填材の種類のみならず各成分(特に、エホキシ樹脂及び硬化剤)の含有量を発明特定事項とすべきであるし、各成分を「含み」とするオープンクレームではなく、「からなる」とするクローズドクレームにすべきである。 具体的には、液状成分の滲み出しやすさは、液状成分の種類によって異なるものではなく、液状成分の含有量によってはブリードが発生しない場合も当業者は想定し得るし、硬化剤の含有量によっても樹脂組成物の硬化度合いも異なるため、滲み出す液状成分の量も変化する。」(意見書の第3~4ページ) ・主張エ:「(B)無機充填材の含有量について 本件特許明細書の実施例は、(C)無機充填材の含有率が60質量%のみであるが、特許権者の主張も踏まえれば、(C)無機充填材の含有率が60質量%ではない場合においてもブリード抑制の効果が奏されるか不明であるので、本件訂正発明1のように、(C)無機充填材の含有率を何ら特定しない範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を一般化できるとはいえないし、かつ、第2の無機充填材について封止用樹脂組成物に対する含有量を特定しない範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を一般化できるとはいえない。 (C)無機充填材の含有率に関連して、本件訂正発明1の「前記(C)無機充填材の比表面積に、固形分質量に占める前記(C)無機充填材の質量の割合を乗じた値が、10.9m2/g~14.0m2/g」についても、本件特許明細書の実施例9では、14.0m2/gであり、10.9m2/g~14.0m2/gの範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を一般化できるとはいえない。」(意見書の第4ページ) そこで、上記主張ア~エについて併せて検討する。 上記(2)でも説示したように、「前記(A)エポキシ樹脂が、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、及び、3官能のエポキシ基を有するアミン型エポキシ樹脂を含み、 前記(B)1分子中にアミノ基を少なくとも1つ有する硬化剤が、ジアミノトルエン型アミン硬化剤、及び、ジアミノジフェニルメタン型アミン硬化剤を含む」特定事項を備えた上、「前記(C)無機充填材が、(C1)平均粒径が0.1μm~20μmの第1の無機充填材及び(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材を含み、 前記(C)無機充填材の比表面積に、固形分質量に占める前記(C)無機充填材の質量の割合を乗じた値が、10.9m2/g~14.0m2/gであり、 前記(C)無機充填材に占める前記(C2)平均粒径が10nm~80nmの第2の無機充填材の割合が、9.2質量%~13.3質量%である」特定事項を備える上記技術的事項イにより、本件特許発明の課題が解決されることが認識できる。 そして、本件特許発明1は、(A)エポキシ樹脂、(B)1分子中にアミノ基を少なくとも1つ有する硬化剤及び(C)無機充填材の各含有量が特定されていないものの、(A)、(B)及び(C)の各含有量は、封止用樹脂組成物として用を成す範囲に自ずと定まるものである。 そうすると、エポキシ樹脂、硬化剤及び無機充填材の含有量が特定されていない場合においても、本件特許発明の課題が解決し得るものといえる。 また、申立人は、一般論を述べるだけで、実験成績証明書等の具体的な証拠を示して、本件特許発明1の実施例以外の範囲において、本件特許発明の課題が解決し得ないことを立証していない。 したがって、申立人の上記主張ア~エを首肯することができない。 (4)申立理由3(サポ-ト要件違反)のまとめ 以上によれば、本件特許の請求項1~13に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、申立理由3によっては取り消すことはできない。 4 申立理由4(明確性要件違反)について (1)明確性要件の判断基準 特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきものである。 (2)検討 申立人は、「本件特許明細書の実施例の【0061】では、エポキシ樹脂やアミン硬化剤も固形分として扱われて固形分質量が計算されている。しかし、揮発性成分について、有機溶剤以外の成分が何であるか本件特許明細書には何ら記載されておらず、液状成分であれば少なからず揮発性を有していることは当業者にとって技術常識であるにもかかわらず、本件特許明細書の【0061】では液状のエポキシ樹脂やアミン硬化剤が固形分として扱われており、いかなる成分が本件特許発明の請求項1に記載の「固形分」に該当するのか、当業者が理解できるように記載されておらず、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。」(申立書の第92~93ページ)と主張する。 しかしながら、本件特許明細書の段落【0036】には、「固形分質量」とは封止用樹脂組成物に含まれる固形分の質量をいい、封止用樹脂組成物から有機溶剤等の揮発性成分を除いた残りの成分を意味する。」と記載されているところ、揮発性成分は、当業者であれば「有機溶剤」のようなものを意味すると理解するものであり、「液状成分であれば少なからず揮発性を有している」ことが当業者にとって技術常識であっても、主成分である、エポキシ樹脂やアミン硬化剤を揮発成分として取り扱わず、固形分として取り扱うことは当業者に明らかである。 そうすると、本件特許発明1、及び本件特許発明1を直接又は間接的に引用する本件特許発明2~13は、本件特許明細書の記載を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。 したがって、本件特許発明1~13は、明確である。 (3)申立理由4(明確性要件違反)のまとめ 以上によれば、本件特許の請求項1~13に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、申立理由4によっては、取り消すことはできない。 第6 むすび 上記第5のとおり、本件特許の請求項1~13に係る特許は、当審において通知した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては取り消すことはできない。 さらに、他に本件特許の請求項1~13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2024-701169

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決166件(松本 文彦、株式会社レゾナック)
  • 2024-701168異議申立 / 2026-03-13 / 訂正認容封止用樹脂組成物、電子部品装置及び電子部品装置の製造方法
    同じ当事者: 松本 文彦、株式会社レゾナック
  • 2025-701056異議申立 / 2026-03-11 / 維持アンダーフィル材、電子部品装置及び電子部品装置の製造方法
    同じ当事者: 松本 文彦、株式会社レゾナック
  • 2024-700142異議申立 / 2025-02-21 / 維持液状樹脂組成物並びに電子部品装置及びその製造方法
    同じ当事者: 松本 文彦、株式会社レゾナック
  • 2024-700473異議申立 / 2024-12-05 / 維持アンダーフィル材、電子部品装置及び電子部品装置の製造方法
    同じ当事者: 松本 文彦、株式会社レゾナック
  • 2024-700474異議申立 / 2024-12-05 / 維持アンダーフィル材、電子部品装置及び電子部品装置の製造方法
    同じ当事者: 松本 文彦、株式会社レゾナック
同じ論点・分野の審決(審決分類)1,513件(113・C08L、121・C08L、537・C08L)
  • 2025-700661異議申立 / 2026-04-30 / 訂正認容ポリプロピレンコーティング組成物
    共通の審決分類: 113・C08L、121・C08L、537・C08L
  • 2025-700469異議申立 / 2026-04-27 / 訂正認容樹脂組成物及び電子部品装置
    共通の審決分類: 113・C08L、121・C08L、537・C08L
  • 2025-700320異議申立 / 2026-03-31 / 訂正認容澱粉含有樹脂組成物、ペレット、フレーク、樹脂成形物、澱粉含有樹脂組成物の製造方法…
    共通の審決分類: 113・C08L、121・C08L、537・C08L
  • 2024-700791異議申立 / 2026-03-26 / 訂正認容導電性組成物および生体センサ
    共通の審決分類: 113・C08L、121・C08L、537・C08L
  • 2024-701168異議申立 / 2026-03-13 / 訂正認容封止用樹脂組成物、電子部品装置及び電子部品装置の製造方法
    共通の審決分類: 113・C08L、121・C08L、537・C08L

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存